(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ヒータを制御する制御システムの動的校正
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20230501BHJP
H05B 1/02 20060101ALI20230501BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H05B3/00 310E
H05B1/02
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549896
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 US2021019413
(87)【国際公開番号】W WO2021173668
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501162454
【氏名又は名称】ワットロー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライトロウ、スタントン、エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】イェンダー、マシュウ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス、ブリタニー
【テーマコード(参考)】
3K058
5F131
【Fターム(参考)】
3K058AA84
3K058BA14
3K058CA04
3K058CA23
5F131AA02
5F131CA03
5F131EA24
5F131EB81
(57)【要約】
【解決手段】 1つ以上の抵抗発熱体によって画定される複数のゾーンを有するヒータを動的に較正する方法は、動的抵抗-温度(R-T)モデルに基づき複数のゾーンを有するヒータへの電力を制御して、ヒータの温度を温度設定値に制御することを含む。複数のゾーンのそれぞれについて、本方法は、それぞれのゾーンの抵抗発熱体の抵抗値及び動的R-Tモデルに基づき、それぞれのゾーンの温度を測定することと、それぞれのゾーンについて基準温度を測定することと、それぞれのゾーンについて動的R-Tモデルで提供される温度設定値に関連する抵抗値を較正された抵抗値に増分的に調節することと、をさらに含む。本方法は、複数のゾーンの較正された抵抗値を温度設定値と相関させる動的R-Tモデルを較正されたR-Tモデルとして提供することをさらに含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の抵抗発熱体によって画定される複数のゾーンを有するヒータを動的に較正する方法であって
動的抵抗-温度(R-T)モデルに基づき複数のゾーンを有するヒータへの電力を制御して、前記ヒータの温度を温度設定値に制御することと、
前記複数のゾーンのそれぞれについて、
それぞれのゾーンの前記1つ以上の抵抗発熱体の抵抗値と前記動的R-Tモデルに基づき、前記それぞれのゾーンの温度を測定することと、
前記それぞれのゾーンの基準温度を測定することと、
前記それぞれのゾーンの前記動的R-Tモデルにおいて提供される前記温度設定値に関連する抵抗値を較正された抵抗値まで増分的に調整することと、
前記複数のゾーンの前記較正された抵抗値を前記温度設定値と相関させた前記動的R-Tモデルを較正されたR-Tモデルとして提供することと、
を具備する方法。
【請求項2】
前記抵抗発熱体の抵抗を測定することと、
前記それぞれのゾーンについて前記測定された抵抗及び前記動的R-Tモデルに基づき、前記複数のゾーンのそれぞれの前記温度を決定することと、
前記それぞれのゾーンの前記温度が前記温度設定値と等しくなるまで、前記それぞれのゾーンの前記温度が前記温度設定値と異なることに応答して、前記それぞれのゾーンへの電力を調節することと、
をさらに具備する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のゾーンのそれぞれの前記温度が前記温度設定値に等しいとき、前記方法は、前記複数のゾーンに電圧パルスを印加することと、前記複数のゾーンの熱応答を測定することと、
をさらに具備する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のゾーンのそれぞれの前記温度が前記温度設定値に等しいとき、前記方法は、外部システム変数を調整することと、前記複数のゾーンの熱応答を測定することをさらに含み、前記外部システム変数は、チャンバ圧力、裏面ガス圧力、ガス流量、チャンバの放射率、ペデスタルの放射率、又はそれらの組み合わせを具備する、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
抵抗値を増分的に調整することは、前記それぞれのゾーンについて、予め定義された利得係数と、前記それぞれのゾーンに関連する前記基準温度と前記それぞれのゾーンの前記温度との差とに基づき、抵抗調整率を決定すること、
をさらに具備する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抵抗値を増分的に調整することは、
前記それぞれのゾーンの前記基準温度が前記それぞれのゾーンの前記温度よりも高いとき、前記それぞれのゾーンに関連する抵抗値を減少させることと、
前記それぞれのゾーンの前記基準温度が前記それぞれのゾーンの前記温度より低いとき、前記それぞれのゾーンに関連する前記抵抗値を増加させること、
をさらに具備する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のゾーンの前記基準温度は、1つ又は複数のセンサにより測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のゾーンのそれぞれに公称測定電圧を印加することと、
前記ヒータの前記温度を前記温度設定値に制御する前に、前記複数のゾーンのそれぞれについてコールドスタート抵抗を測定することと、
をさらに具備する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記温度設定値は、複数の温度設定値の中から選択され、前記ゾーンのそれぞれのための前記較正された抵抗値は、前記複数の温度設定値のそれぞれについて決定され、
前記動的R-Tモデルは、前記複数の温度設定値のそれぞれについて、前記複数のゾーンのそれぞれに対する前記較正された抵抗値を提供する、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1ゾーンの前記基準温度が、前記第1ゾーンに関連する第2ゾーンの基準温度と実質的に同じであるように、前記複数のゾーンの前記基準温度を熱的に平準化することをさらに具備する、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ゾーンのそれぞれについて、
前記それぞれのゾーンの前記温度が前記それぞれのゾーンの前記基準温度に等しいかどうかを決定し、前記温度が前記基準温度に等しくないことに応答して、前記抵抗値が増分的に調整されることと、
前記それぞれのゾーンの前記温度が前記基準温度に等しいことに応答して、前記抵抗値を前記それぞれのゾーンの前記較正された抵抗値として記憶することと、
をさらに具備する請求項1記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の抵抗発熱体によって画定される複数のゾーンを有するヒータを動的に較正する方法であって、
動的抵抗-温度(R-T)モデルに基づき前記ヒータへの電力を制御し、前記ヒータの温度を温度設定値に制御することと、
複数のゾーンのそれぞれについて、
それぞれのゾーンについて基準温度を測定することと、
前記それぞれのゾーンの前記1つ以上の抵抗発熱体の抵抗値と前記動的R-Tモデルに基づき、前記それぞれのゾーンについてゾーン温度を測定することと、
前記それぞれのゾーンについて、前記ゾーン温度が前記基準温度と等しいかどうかを判断することと、
前記ゾーン温度が前記基準温度に等しくないことに応答して、前記それぞれのゾーンについて、前記動的R-Tモデルの前記温度設定値に関連する抵抗値を増分的に調整することと、
前記ゾーン温度が前記基準温度に等しいことに応答して、前記動的R-Tモデルの前記抵抗値を前記温度設定値に対する較正された抵抗値として提供することと、
前記較正された抵抗値が前記複数のゾーンのそれぞれに対して提供されることに応答して、前記動的R-Tモデルを較正されたR-Tモデルとして記憶することと、
を具備する方法。
【請求項13】
第1ゾーンの前記基準温度が、前記第1ゾーンに関連する第2ゾーンの基準温度と実質的に同じであるように、前記複数のゾーンの前記複数の基準温度を熱的に平準化することをさらに具備する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抵抗値は、前記ゾーン温度が前記基準温度に等しく、前記複数の基準温度が熱的に平準化されることに応答して、前記温度設定値の較正された抵抗値として前記動的R-Tモデルに記憶される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記温度設定値は、複数の温度設定値の中から選択され、較正された抵抗値は、前記複数の温度設定値のそれぞれについて決定され、
前記動的R-Tモデルは、前記複数の温度設定値のそれぞれについて、前記複数のゾーンのそれぞれについて前記較正された抵抗値を提供する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
抵抗値を増分的に調整することは、予め定義された利得係数と、前記基準温度と前記それぞれのゾーンの前記ゾーン温度との間の差とに基づき、抵抗調整率を決定することをさらに具備する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記それぞれのゾーンの前記抵抗値を増分的に調整することは、
前記それぞれのゾーンの前記基準温度が前記それぞれのゾーンの前記温度より高いとき、前記それぞれのゾーンに関連する抵抗値を減少させることと、
前記それぞれのゾーンの前記基準温度が前記それぞれのゾーンの前記温度より低いとき、前記それぞれのゾーンに関連する前記抵抗値を増加させることと、
をさらに具備する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
複数のゾーンを有するヒータへの電力を制御するための制御システムであって、複数のゾーンのそれぞれは、1つ以上の抵抗発熱体によって画定され、前記制御システムは、
前記ヒータへの電力を制御し、較正された抵抗-温度(R-T)モデルに基づき前記複数のゾーンのそれぞれの温度を決定するように構成されたコントローラであって、前記コントローラは、前記較正されたR-Tモデルを定義するために動的較正プロセスを実行するように構成されており、前記動的較正プロセスは、
動的R-Tモデルを使用して、前記ヒータの温度を温度設定値に維持するための閉ループ温度制御を実行することと、
前記複数のゾーンのそれぞれについて
それぞれのゾーンの基準温度を取得することと、
前記ヒータの前記温度が前記温度設定値と等しくないことに応答して、前記それぞれのゾーンに関連する前記抵抗値を調整することにより、前記それぞれのゾーンの前記基準温度を1つ以上の他の基準温度と熱的に平準化することと、
前記それぞれのゾーンの前記1つ以上の抵抗発熱体の抵抗値と、前記それぞれのゾーンの前記動的R-Tモデルに基づき、前記それぞれのゾーンについてゾーン温度を測定することと、
前記それぞれのゾーンについて、前記ゾーン温度が前記基準温度と等しいかどうかを判断することと、
前記ゾーン温度が前記基準温度に等しくないことに応答して、前記それぞれのゾーンの前記動的R-Tモデルで提供される前記温度設定値に関連する前記抵抗値を増分的に調整することと、
前記ゾーン温度が前記基準温度に等しく、前記基準温度が熱的に平準化されていることに応答して、前記動的R-Tモデルの前記抵抗値を、前記それぞれのゾーンの前記温度設定値に対する較正された抵抗値として提供することと、
前記較正された抵抗値を前記複数のゾーンの前記温度設定値と相関させる前記動的R-Tモデルを前記較正されたR-Tモデルとして記憶することと、
を具備する制御システム。
【請求項19】
抵抗値を増分的に調整することは、予め定義された利得係数と、前記基準温度と前記それぞれのゾーンの前記ゾーン温度との差に基づき、抵抗調整率を決定することをさらに具備する、請求項18に記載の制御システム。
【請求項20】
前記それぞれのゾーンの前記抵抗値を増分的に調整することは、
前記それぞれのゾーンの前記基準温度が前記それぞれのゾーンの前記温度より高いとき、前記それぞれのゾーンに関連する抵抗値を減少させることと、
前記それぞれのゾーンの前記基準温度が前記それぞれのゾーンの前記温度より低いとき、前記それぞれのゾーンに関連する抵抗値を増加させることと、
をさらに具備する、請求項18に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2020年2月24日に出願された米国仮出願62/980,738の優先権及びその利益を主張するものである。上記出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、複数のゾーンを有するヒータを制御する制御システムを較正することに関する。
【背景技術】
【0003】
本節の記述は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成するものではない場合がある。
【0004】
ヒータは、通常、1つ以上の加熱ゾーンを画定する抵抗発熱体を含む。いくつかの用途において、抵抗発熱体は、熱を生成するヒータとして、及び温度を測定するセンサとして機能する。一態様において、そのような抵抗発熱体は、非線形抵抗温度係数(TCR)を有する材料によって画定されてもよく、抵抗発熱体の温度は、発熱体の抵抗に基づき決定されてもよい。
【0005】
ヒータを制御するために、制御システムは、抵抗発熱体(複数可)の抵抗に基づき、抵抗発熱体の温度を測定する。具体的には、制御システムは、抵抗を決定するために抵抗発熱体の電圧及び/又は電流を測定し、抵抗と温度とを相関させるデータを用いて、ゾーン(複数可)の温度を決定する。予め定義された抵抗-温度(R-T)データを使用することができるが、抵抗発熱体は同じ材料で作られていても、ヒータは互いに異なる動作をすることがある。R-Tデータのばらつきは、例えば、製造上のばらつき、材料のバッチのばらつき、ヒータの経年変化、サイクル数、及び/又はその他の要因によって生じ、計算された温度に誤差を生じさせる可能性がある。このような、例えばマルチゾーン用途のセンサとして動作する抵抗ヒータの使用に関する他の問題は、本開示によって対処される。
【発明の概要】
【0006】
このセクションは、本開示の一般的な要約を提供し、その全範囲又はその特徴の全ての包括的な開示ではない。
【0007】
一態様において、本開示は、1つ以上の抵抗発熱体によって画定される複数のゾーンを有するヒータを動的に較正する方法に向けられている。本方法は、動的抵抗-温度(R-T)モデルに基づき、複数のゾーンを有するヒータへの電力を制御して、ヒータの温度を温度設定値に制御することを含む。複数のゾーンのそれぞれについて、本方法は、それぞれのゾーンの1つ以上の抵抗発熱体の抵抗値及び動的R-Tモデルに基づきそれぞれのゾーンの温度を測定することと、それぞれのゾーンについて基準温度を測定することと、それぞれのゾーンについて動的R-Tモデルで提供される温度設定値に関連する抵抗値を較正された抵抗値に増分的に調節することと、をさらに含む。本方法は、複数のゾーンの較正された抵抗値を温度設定値と相関させる動的R-Tモデルを較正されたR-Tモデルとして提供することをさらに含む。
【0008】
1つの変形例において、ヒータへの電力を制御することは、抵抗発熱体の抵抗を測定することと、それぞれのゾーンについての測定された抵抗及び動的R-Tモデルに基づき、複数のゾーンのそれぞれの温度を決定することと、それぞれのゾーンの温度が温度設定値と等しくなるまで、それぞれのゾーンの温度が温度設定値と異なることに応答して、それぞれのゾーンへの電力を調節することとをさらに含む。
【0009】
別の変形例において、複数のゾーンのそれぞれの温度が温度設定値に等しいとき、この方法は、複数のゾーンに電圧パルスを印加することと、複数のゾーンの熱応答を測定することと、をさらに含む。
【0010】
さらに別の変形例において、複数のゾーンのそれぞれの温度が温度設定値に等しいとき、この方法は、外部システム変数を調整することと、複数のゾーンの熱応答を測定することと、をさらに含む。外部システム変数は、チャンバ圧力、裏面ガス圧力、ガス流量、チャンバの放射率、ペデスタルの放射率、又はそれらの組合せを含む。
【0011】
1つの変形例において、抵抗値を増分的に調整することは、それぞれのゾーンについて、予め定義された利得係数と、それぞれのゾーンに関連する基準温度とそれぞれのゾーンの温度との差に基づき、抵抗調整率を決定することをさらに含む。
【0012】
別の変形例において、抵抗値を増分的に調整することは、それぞれのゾーンの基準温度がそれぞれのゾーンの温度よりも高いとき、それぞれのゾーンに関連する抵抗値を減少させることと、それぞれのゾーンの基準温度がそれぞれのゾーンの温度よりも低いとき、それぞれのゾーンに関連する抵抗値を増加させることと、をさらに含む。
【0013】
さらに別の変形例において、複数のゾーンの基準温度は、1つ又は複数のセンサによって測定される。
【0014】
1つの変形例において、本方法は、複数のゾーンのそれぞれに公称測定電圧を印加することと、ヒータの温度を温度設定値に制御する前に、複数のゾーンのそれぞれについてコールドスタート抵抗を測定することと、をさらに含む。
【0015】
別の変形例において、温度設定値は、複数の温度設定値の中から選択され、ゾーンのそれぞれのための較正された抵抗値は、複数の温度設定値のそれぞれについて決定される。動的R-Tモデルは、複数の温度設定値のそれぞれについて、複数のゾーンのそれぞれに対する較正された抵抗値を提供する。
【0016】
さらに別の変形例において、本方法は、第1ゾーンの基準温度が、第1ゾーンに関連する第2ゾーンの基準温度と実質的に同じであるように、複数のゾーンの基準温度を熱的に平準化することをさらに含む。
【0017】
1つの変形例において、方法は、ゾーンのそれぞれについて、それぞれのゾーンの温度がそれぞれのゾーンの基準温度に等しいかどうかを決定し、温度が基準温度に等しくないことに応答して、抵抗値が増分的に調整されることと、それぞれのゾーンの温度が基準温度に等しいことに応答して、抵抗値をそれぞれのゾーンの較正された抵抗値として記憶することと、をさらに含む。
【0018】
一態様において、本開示は、1つ以上の抵抗発熱体によって画定される複数のゾーンを有するヒータを動的に較正する方法に向けられている。本方法は、動的抵抗-温度(R-T)モデルに基づきヒータへの電力を制御し、ヒータの温度を温度設定値に制御することを含む。複数のゾーンのそれぞれについて、本方法は、それぞれのゾーンについて基準温度を測定することと、それぞれのゾーンの1つ以上の抵抗発熱体の抵抗値及び動的R-Tモデルに基づき、それぞれのゾーンについてゾーン温度を測定することと、それぞれのゾーンについて、ゾーン温度が基準温度と等しいかどうかを判断することとを含む。ゾーン温度が基準温度に等しくないことに応答して、それぞれのゾーンについて、動的R-Tモデルの温度設定値に関連する抵抗値を増分的に調整することと、ゾーン温度が基準温度に等しいことに応答して、動的R-Tモデルの抵抗値を温度設定値に対する較正された抵抗値として提供することと、を含む。本方法は、較正された抵抗値が複数のゾーンのそれぞれに対して提供されることに応答して、動的R-Tモデルを較正されたR-Tモデルとして記憶することをさらに含む。
【0019】
1つの変形例において、本方法は、第1ゾーンの基準温度が、第1ゾーンに関連する第2ゾーンの基準温度と実質的に同じであるように、複数のゾーンの基準温度を熱的に平準化することをさらに含む。
【0020】
別の変形例において、抵抗値は、ゾーン温度が基準温度に等しく、複数の基準温度が熱的に平準化されることに応答して、温度設定値に対する較正された抵抗値として動的R-Tモデルに記憶される。
【0021】
さらに別の変形例において、温度設定値は、複数の温度設定値の中から選択され、較正された抵抗値は、複数の温度設定値のそれぞれについて決定され、動的R-Tモデルは、複数の温度設定値のそれぞれについて、複数のゾーンのそれぞれについて較正された抵抗値を提供する。
【0022】
1つの変形例において、抵抗値を増分的に調整することは、予め定義された利得係数と、基準温度とそれぞれのゾーンのゾーン温度との間の差とに基づき、抵抗調整率を決定することをさらに含む。
【0023】
別の変形例において、それぞれのゾーンの抵抗値を増分的に調整することは、それぞれのゾーンの基準温度がそれぞれのゾーンの温度よりも高いとき、それぞれのゾーンに関連する抵抗値を減少させることと、それぞれのゾーンの基準温度がそれぞれのゾーンの温度よりも低いとき、それぞれのゾーンに関連する抵抗値を増加させることと、をさらに含む。
【0024】
一態様において、本開示は、複数のゾーンを有するヒータへの電力を制御するための制御システムに向けられており、複数のゾーンのそれぞれは、1つ以上の抵抗発熱体によって画定される。制御システムは、ヒータへの電力を制御し、較正された抵抗-温度(R-T)モデルに基づき複数のゾーンのそれぞれの温度を決定するように構成されたコントローラを含む。コントローラは、較正されたR-Tモデルを定義するために動的較正プロセスを実行するように構成されている。動的較正プロセスは、動的R-Tモデルを使用して、ヒータの温度を温度設定値に維持するための閉ループ温度制御を実行することを含む。複数のゾーンのそれぞれについて、動的較正プロセスは、それぞれのゾーンの基準温度を得ることと、ヒータの温度が温度設定値に等しくないことに応答して、それぞれのゾーンに関連する抵抗値を調整することにより、それぞれのゾーンの基準温度を1つ以上の他の基準温度と熱的に平準化することと、それぞれのゾーンの1つ以上の抵抗発熱体の抵抗値と、それぞれのゾーンの動的R-Tモデルに基づき、それぞれのゾーンについてゾーン温度を計測することと、をさらに含む。それぞれのゾーンについて、ゾーン温度が基準温度に等しいかどうかを判断することと、ゾーン温度が基準温度に等しくないことに応答して、それぞれのゾーンの動的R-Tモデルで提供される温度設定値に関連する抵抗値を増分的に調整することと、ゾーン温度が基準温度に等しく、基準温度が熱的に平準化されていることに応答して、動的R-Tモデルの抵抗値を、それぞれのゾーンの温度設定値に対する較正された抵抗値として提供することと、を備え、動的較正プロセスは、較正された抵抗値を複数のゾーンの温度設定値と相関させる動的R-Tモデルを較正されたR-Tモデルとして記憶することをさらに含む。
【0025】
1つの変形例において、抵抗値を増分的に調整することは、予め定義された利得係数と、基準温度とそれぞれのゾーンのゾーン温度との差とに基づき、抵抗調整率を決定することをさらに含む。
【0026】
別の変形例において、それぞれのゾーンの抵抗値を増分的に調整することは、それぞれのゾーンの基準温度がそれぞれのゾーンの温度よりも高いとき、それぞれのゾーンに関連する抵抗値を減少させることと、それぞれのゾーンの基準温度がそれぞれのゾーンの温度よりも低いとき、それぞれのゾーンに関連する抵抗値を増加させることをさらに含む。
【0027】
適用可能な更なる領域は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。説明及び具体例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示がよく理解されるように、次に、添付の図面を参照しながら、例として与えられるその様々な形態が説明されるであろう。
【0029】
【0030】
【0031】
【
図1C】
図1Cは、マルチゾーン・ヒータの異なる変形を示す図。
【
図1D】
図1Dは、マルチゾーン・ヒータの異なる変形を示す図。
【0032】
【
図2】
図2は、本開示に従った較正システムのブロック図。
【0033】
【0034】
【
図4】
図4は、本開示による動的較正の抵抗-温度(R-T)モデルの一例である。
【0035】
【
図5A】
図5Aは、本開示に従った動的較正制御ルーチンのフローチャート。
【
図5B】
図5Bは、本開示に従った動的較正制御ルーチンのフローチャート。
【0036】
【
図6】
図6は、
図5Aの閉ループ温度設定値制御ルーチンのフローチャート。
【0037】
【
図7】
図7は、
図4の動的較正R-Tモデルにおいて提供される抵抗値の動的調節を示す図。
【0038】
【
図8】
図8は、本開示に従った動的較正グラフの一例である。
【0039】
【
図9】
図9は、本開示に従った半導体プロセスラボの一例である。
【0040】
本明細書に記載された図面は、説明のためだけのものであり、本開示の範囲をいかなる形でも限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、応用、又は用途を限定することを意図していない。図面全体を通して、対応する参照数字は、同様又は対応する部品及び特徴を示すことを理解されたい。
【0042】
本開示は、抵抗発熱体の温度(すなわち、フィラメント温度)を制御しながらヒータを動作させる制御システムを自動較正する動的較正制御に向けられている。具体的には、動的較正制御は、ヒータが温度設定値に制御されている間に、抵抗-温度(R-T)モデルの抵抗値を動的に変更する。R-Tモデルは、抵抗発熱体の抵抗と温度設定値をと関連付ける。動的較正制御は、R-Tモデルの抵抗値を一定時間ごとに増分制御しながら調整し、外乱を抑制して抵抗値とフィラメントの温度応答をより滑らかにする。一度校正されたR-Tモデルは、標準的な動作中にヒータの各ゾーンの温度を決定し、ヒータの熱性能を制御するために使用される。
【0043】
動的較正制御をよりよく理解するために、マルチゾーン・ヒータ及び制御システムを有する熱システムの構成例を最初に提供する。動的較正制御は、マルチゾーン・ヒータに関連して説明されるが、ヒータは、1つ以上のゾーンを含んでもよく、2つ以上のゾーンに限定されるものではない。
図1A及び
図1Bを参照すると、熱システム100は、マルチゾーン・ペデスタル・ヒータ102と、ヒータコントローラ106及び電力変換器システム108を有する制御システム104とを含む。一態様において、ヒータ102は、加熱板110と、加熱板110の底面に配置された支持軸112とを含む。加熱板110は、基板111と、基板111に埋め込まれた、又は基板111の表面に沿って配置された複数の抵抗発熱体(図示せず)とを含む。一態様において、基板111は、セラミック又はアルミニウムで作られてもよい。抵抗発熱体は、制御システム104によって独立して制御され、
図1Aに破線点線で示されるように、複数の加熱ゾーン114を画定する。加熱ゾーンは、本開示の範囲内に留まりながら、様々な好適な方法で構成されることが可能であり、2つ以上の加熱ゾーンを含み得ることが容易に理解される。例えば、
図1Cは、3つのゾーン(Z1-Z3)を有するマルチゾーン・ヒータ103-Aを図示し、
図1Dは、9つのゾーン(Z1-Z9)を有するマルチゾーン・ヒータ103-Bを図示している。
【0044】
一形態において、ヒータ102は、抵抗発熱体が、4本ではなく2本のリード線のみが動作可能に発熱体に接続されてヒータとして及び温度センサとして機能する、「2線式」ヒータである。このような2線式機能は、例えば、本願と共通に譲渡され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,196,295号に開示されている。典型的には、2線式システムにおいて、抵抗発熱体は、抵抗発熱体の抵抗の変化に基づき抵抗発熱体の平均温度が決定されるように、変化する温度で変化する抵抗を示す材料によって画定される。一態様において、抵抗発熱体の抵抗は、まず発熱体を横切る電圧及び発熱体を通る電流を測定することによって計算され、次に、オームの法則を用いて、抵抗が決定される。抵抗発熱体は、比較的高い抵抗温度係数(TCR)材料、負のTCR材料、言い換えれば、非線形TCRを有する材料によって定義されてもよい。
【0045】
制御システム104は、ヒータ102の動作を制御し、より詳細には、ゾーン114のそれぞれへの電力を独立して制御するように構成される。一形態において、制御システム104は、複数の端子115を介してゾーン114に電気的に結合され、各ゾーン114は電力を提供し、温度を感知するように2つの端子に結合される。
【0046】
一形態において、制御システム104は、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、タッチスクリーンなどの1つ以上のユーザインターフェースを有するコンピューティングデバイス117に通信可能に結合される(例えば、無線通信及び/又は有線通信)。コンピューティングデバイス117を使用して、ユーザは、温度設定値、電力設定値、制御システム104によって記憶されたテスト又はプロセスを実行するコマンドなどの入力又はコマンドを提供することができる。
【0047】
制御システム104は、インターロック120を介して、電力変換器システム108に入力電圧(例えば、240V、208V)を供給する電源118に電気的に結合される。インターロック120は、電源118と電力変換器システム108の間を流れる電力を制御し、電源118からの電力を遮断する安全機構としてヒータコントローラ106によって操作可能である。
図1Aに図示されているが、制御システム104は、インターロック120を含まなくてもよい。
【0048】
電力変換器システム108は、入力電圧を調整し、出力電圧(V
OUT)をヒータ102に印加するように動作可能である。一形態において、電力変換器システム108は、複数の電力変換器122(
図1B中122-1~122-N)を含み、これらは、所定のゾーン114(図中114-1~114-N)の抵抗発熱体に調節可能な電力を印加するように動作可能である。このような電力変換器システムの一例は、2017年6月15日に出願され、「POWER CONVERTER FOR A THERMAL SYSTEM」と題された同時係属出願米国シリアル番号15/624,060に記載されており、これは本願と共通所有であり、その内容は参照によりその全体が本書に組み込まれる。本実施例において、各電力変換器は、所定のゾーン114の1つ以上の発熱体のための所望の出力電圧を生成するために、ヒータコントローラによって動作可能な降圧コンバータを含む。従って、電力変換器システムは、ヒータ102の各ゾーン114にカスタマイズ可能な量の電力(すなわち、所望の電力)を供給するように動作可能である。所望の電力を提供するために他の電力変換器システムが採用されてもよく、本開示は本明細書で提供される実施例に限定されないことを容易に理解されたい。
【0049】
二線式ヒータの使用により、制御システム104は、抵抗発熱体の電気特性(すなわち、電圧及び/又は電流)を測定するための複数のセンサ回路124(すなわち、
図1Bの124-1~124-N)を含み、これは次に、抵抗、温度及び他の適切な情報など、ゾーン114の性能特性を決定するために使用される。一形態において、所定のセンサ回路124は、所定のゾーン114内の発熱体(1つ又は複数)を流れる電流及び発熱体に印加される電圧をそれぞれ測定するために電流計126及び電圧計128を含む。描かれていないが、電流計126及び電圧計128のためのセンサ回路の一部として、分路及び分圧器のような追加の回路が実装されてもよい。一形態において、電流計126及び電圧計128は、発熱体に印加される電力に関係なく電流及び電圧を同時に測定するための電力測定チップとして提供される。別の形態において、米国特許第7,196,295号に記載されているように、電圧及び/又は電流の測定は、ゼロクロスで行われてもよい。
【0050】
一形態において、ヒータコントローラ106は、1つ以上のマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサによって実行されるコンピュータが読取り可能な命令を記憶するためのメモリとを含む。一形態において、ヒータコントローラ106は、コントローラ106が、入力電圧の100%、入力電圧の90%など、ゾーン114に印加されるべき所望の電力を決定する1つ以上の制御プロセスを実行するように構成される。例示的な制御プロセスは、上記の同時係属出願米国シリアル番号15/624,060、及び2018年8月10日に出願され、「SYSTEM AND METHOD FOR CONTROLLING POWER TO A HEATER」と題する同時係属同出願米国シリアル番号16/100,585に記載されており、本願と共通所有であり、その内容は参照によりその全体が本願に組み込まれる。一形態において、ヒータコントローラ106は、ヒータ102の温度が温度設定値に制御される閉ループ温度制御を実行する。例えば、抵抗発熱体の抵抗値及び較正されたR-Tモデル150を使用して、ヒータコントローラ106は、ゾーン114の温度を決定し、次に、ゾーン114の温度を温度設定値に近づけるためにゾーン114への電力を調節する。
【0051】
一形態において、較正されたR-Tモデル150は、与えられたゾーンに対する抵抗値を、一つ以上の温度設定値と相関させる。較正されたR-Tモデルは、各ゾーン114について、温度設定値に対する較正された抵抗値を相関させる1つ以上のルックアップテーブルとして提供されてもよい。較正されたR-Tモデル150はまた、温度と抵抗の間の非線形関係を示す1つ以上のアルゴリズムとして提供されてもよい。
【0052】
一形態において、ヒータコントローラ106は、較正されたR-Tモデルを提供するために、1つ以上の温度設定値で抵抗発熱体の抵抗値を動的に較正する動的較正制御152を含むように構成される。本明細書でさらに説明するように、動的較正制御152は、動的R-Tモデルに基づきヒータ102の温度設定値制御を行い、動的R-Tモデル内の温度設定値に関連する抵抗値を増分的に調節して各ゾーンの温度をそれぞれの基準温度に向かって駆動する。基準温度は、熱電対(TC)、ウェハに埋め込まれた複数のTCを有するTCウェハ、赤外線カメラ、温度プローブのアレイ、及び/又は他の適切なディスクリートセンサなど、少なくとも1つのディスクリートセンサを使用して測定される。
【0053】
図2を参照すると、較正システム200は、制御システム206と、2線式ヒータである2ゾーンペデスタルヒータ208とを含む熱システムの動的較正制御を行うように構成されている。一形態において、制御システム206は、2線式ヒータを制御するための制御システム104と同様であり、ヒータコントローラ106と同様であるヒータコントローラ210を含む。ヒータコントローラ210は、各ゾーンの抵抗値を1つ以上の温度設定値と相関させる較正R-Tモデル212と、本明細書に記載されるように、2ゾーンヒータ208を較正するための動的較正制御214と、を含む。
【0054】
ヒータ208は、参照番号222によって一般的に識別される内側ゾーン(IZ)及び参照番号224によって一般的に識別される外側ゾーン(OZ)を有する2ゾーンヒータを画定する複数の抵抗発熱体220を含む。以下において、内側ゾーン222及び外側ゾーン224は、まとめてゾーン222、224と呼ばれることがある。2つのゾーンが図示されているが、ヒータ208は1つ以上のゾーンを含んでもよく、ゾーンは1つ以上の抵抗発熱体によって画定されてもよい。
【0055】
上記で提供したように、2線式ヒータにおいて、制御システム206は、それぞれのゾーン222、224に設けられた抵抗発熱体220の抵抗と、抵抗-温度(R-T)モデルとに基づき、それぞれのゾーン222、224の温度を決定するよう構成される。以下において、内側ゾーン222及び外側ゾーン224の温度をまとめてゾーン温度と呼び、個別に内側温度及び外側温度と呼ぶことがある。
【0056】
較正システム200は、ゾーン222、224のそれぞれについて基準温度を測定するための1つ以上の離散基準センサをさらに含む。ここで、基準センサは、ヒータ208と一体化された中央TC226と、ヒータ208の表面に沿って配置されたTCウェハ228とを含む。中央TC226及びTCウェハ228は、入出力インターフェース(図示せず)を介してヒータコントローラ210に通信可能に結合される。中央TC226は、内側ゾーン222に関連する基準温度である、ヒータ208の中心における温度を測定する。
【0057】
TCウェハ228は、ヒータ208の表面に沿った複数の温度測定値を得るために、ウェハ230内に分散された複数のTC229を含む。ウェハ230の特定の領域に設けられたTC229は、ヒータ208のそれぞれのゾーン222、224と関連付けられている。一形態において、ゾーン222、224のそれぞれについて、それぞれのゾーン222、224でTC229によって取得された温度測定値は、それぞれのゾーンについての基準温度を提供するために集約され平均化される。したがって、中央TC226からの測定値の代わりに、内側ゾーンのための基準温度は、TCウェハ228からの測定値に基づいてもよい。他の基準センサが採用されてもよいことは容易に理解されよう。例えば、1つの変形例において、ヒータ208の熱画像を取得するため、赤外線カメラがヒータ208の上に配置される。ヒータ208の各ゾーンは、ゾーンに対する基準温度を得るために、熱画像のそれぞれの部分に関連付けられる。
【0058】
一形態において、外側ゾーン224における仮想TC温度は、TCウェハ228及び中央TC226からの温度測定値に基づき、外側ゾーンの基準温度として決定されてもよい。具体的には、仮想TC温度は、「T_VTC」が仮想熱電対温度であり、「T_CTC」が中央TC226によって検出された温度であり、「T_IW」がTCウェハの内側部分の温度であり、ヒータ208の内側ゾーンに関連するTCウェハ228のTCに基づいており、「T_OW」がTCウェハ228の外側部分の温度であり、ヒータ208の外側ゾーン224に関連するTCウェハ228のTCに基づくものであるとしたとき、T_VTC=(T_CTC-T_IW)+T_OWにより決定してもよい。以下において、内側ゾーン及び外側ゾーンに関連する基準温度は、それぞれ内側基準温度及び外側基準温度として提供されてもよい。
【0059】
図3を参照すると、一形態において、動的較正制御214は、R-T較正302と、上述の閉ループ温度制御と同様の方法で動作する閉ループ温度設定値制御304と、動的R-Tモデル306と、を提供する。動的R-Tモデル306は、ヒータ208を制御するために使用されている現在の較正R-Tモデル212と同じであってよく、ヒータコントローラ210の一時記憶装置内に提供される。
図4は、複数の温度設定値を、内側及び外側ゾーン222、224を画定する抵抗発熱体(
図4において「RHE」)の抵抗値と関連付けるテーブル400として、例示的な動的R-Tモデルを提供する。
【0060】
R-T較正302は、較正される温度設定値を選択し、各ゾーン222、224について、温度設定値に対する較正抵抗値を決定するように構成される。具体的には、閉ループ温度設定値制御304は、動的R-Tモデル306を使用して、選択された温度設定値までヒータ208を動作させる。選択された温度設定値になると、R-T較正302は、基準センサからのデータに基づき、各ゾーン222、224に対する基準温度を決定する。
【0061】
一形態において、閉ループ温度設定値制御304がヒータ208の温度を選択された温度設定値にランプ(ramp)させると、R-T較正302は基準センサを熱的に平準化させる。より詳細には、それぞれのゾーンの基準温度は、1つ以上の選択された隣接ゾーンの温度と実質的に同じになるように制御(すなわち、調整)される。例えば、ヒータ208に関して、R-T較正302は、内側基準温度と外側基準温度とを比較する。内側基準温度が外側基準温度より高いか低い場合、外側基準温度が内側基準温度と実質的に同じになるように、外側ゾーンの抵抗発熱体の抵抗値が調整される(すなわち、減少又は増加される)。従って、基準センサ、ひいてはヒータ208の熱プロファイルは、実質的に均一である。ランピング(ramping)中に基準センサを熱的に平準化することにより、ヒータ208に対する割れなどの物理的損傷の可能性が低減又は抑制され得る。別の例において、
図1Cの3ゾーンヒータ103-Aに関して、Z2の基準温度はZ1の基準温度と熱的に平準化され、Z3の基準温度はZ2の基準温度と熱的に平準化される。さらに別の例において、
図1Dの9ゾーンヒータ103-Bについて、Z2~Z9の基準温度は、Z1の基準温度と熱的に平準化される。あるいは、各外部ゾーン(すなわち、Z2~Z9)の基準温度は、Z1及び選択された隣接する外部ゾーンの基準温度と熱的に平準化される。したがって、あるゾーン(例えば第1ゾーン)の基準温度は、そのゾーンに隣接する関連ゾーン(例えば第2ゾーン)の基準温度と熱的に同等にされる。
【0062】
ゾーン温度が選択された温度設定値にある状態で、R-T較正302は、ゾーン温度を基準温度に収束させる。具体的には、各ゾーン222、224の抵抗発熱体220は、基準温度又は基準温度に基づく収束帯内の温度(例えば、基準温度±0.5℃;基準温度±(0.5%*基準温度))であってよい目標温度に向かって駆動される。R-T較正302は、各ゾーン222、224について、所定のゾーンに対する目標温度がゾーン222、224の抵抗発熱体220の温度(すなわち、「ゾーン温度」)と異なるかどうかを判断し、増分抵抗制御を行って動的R-Tモデルにおいて提供される抵抗値を調節するように構成される。具体的には、それぞれのゾーンの目標温度がそれぞれのゾーンの抵抗発熱体220の温度より高い場合、動的R-Tモデル306における抵抗値を漸減させる。それぞれのゾーンに対する目標温度が抵抗発熱体220の温度よりも低い場合、抵抗値は増分的に増加する。温度設定値に関連する抵抗値を増分的に調整することによって、動的較正制御214は、故障を誘発し得る温度スパイクを低減又は抑制し得る。例えば、
図4の表400に提供される抵抗値は、T_RHEがそれぞれのゾーンの温度であり、Ref_Tempがそれぞれのゾーンに関連付けられた基準温度であり、GFが熱システムの様々な特性に基づき予め定義することができる利得係数(例えば、とりわけ、秒当たり0.5ミリオーム)である以下の式によって提供される定義された増分で秒毎に調整されてもよい。定義された増分=I(T_RHE-Ref_Temp)/GF)I。
【0063】
内側ゾーン222及び外側ゾーン224の抵抗発熱体が目標温度(例えば、基準温度又は収束帯内の温度)になると、温度設定値の抵抗値は較正されたとみなされ、R-T較正302は抵抗値を較正するために動的R-Tモデル306の次の温度設定値まで継続される。各温度設定値が較正された後、動的R-Tモデル306は、ペデスタルヒータ208の標準動作中に使用するために較正されたR-Tモデル212として記憶される。
【0064】
図5A、5B、及び6を参照すると、例示的な動的較正制御ルーチン500が提供され、マルチゾーン・ヒータ(102、208)を較正するために本開示の制御システム(104、206)により実行可能である。実行に先立って、TCウェハ228及び/又は中央TC226などの基準センサ(複数可)は、ヒータ208に配置される。動的較正制御ルーチン500は、本開示の動的較正制御の一例に過ぎず、本開示の動的較正制御を実行するために、他の適切なルーチンが使用されてもよい。
【0065】
ヒータ102、208が冷えた状態にあるとき、制御システム104、206は、502において、公称測定電圧(例えば、5V)を抵抗発熱体に印加する。一態様において、公称測定電圧は、電圧及び/又は電流を測定するのに十分な電力を提供するが、抵抗発熱体が熱を発生することを阻害する。504において、制御システムは、センサ回路からのデータを使用して、ヒータ102、208の各ゾーンにおける抵抗発熱体の抵抗を測定し、測定された抵抗を動的R-Tモデルにおいて提供される冷えた状態の温度と関連付ける。例えば、
図4において、冷えた状態の温度は20.35℃として提供され、内側ゾーン及び外側ゾーンの関連する抵抗が記録される。504において、制御システム104、206は、さらに、ゾーンのそれぞれに関連する基準温度を測定する。コールドスタート測定は、抵抗発熱体及び基準センサの均質性測定を提供し、第1の温度設定値測定として提供されてもよい。基準温度は図示されていないが、このデータは、動的R-Tモデルの一部として記憶されてもよい。
【0066】
506において、制御システムは、動的R-Tモデルに基づき、制御温度設定値をi番目の較正温度設定値又は次の較正点に設定する。例えば、
図4において、動的R-Tモデルは、次の較正設定値が250℃である4つの温度設定値に対して較正されることになる。508において、制御システムは、
図6に提供される閉ループ温度設定値制御600を実行する。
【0067】
図6を参照すると、制御システム104、206は、602及び604において、各ゾーンに電力を供給し、上述のように各ゾーンの抵抗発熱体の抵抗を測定する。606において、制御システム104、206は、それぞれのゾーンについての測定された抵抗及び動的R-Tモデルに基づき、ゾーン温度(すなわち、それぞれのゾーンについての抵抗発熱体の温度)を決定する。ゾーンのそれぞれについて、制御システム104、206は、608において、ゾーン温度が制御温度設定値に等しいか否かを判断する。等しくない場合、610において、特定のゾーンへの電力は、ゾーン温度が制御温度設定値に等しくなるように、調整される。制御システムは、その後、604に戻り、各ゾーンの温度を制御温度設定値に制御し続ける。
【0068】
図5Aに戻ると、制御システム104、206が閉ループ温度設定値制御600を実行するとき、システムは、ゾーン温度が制御温度設定値にあるかどうかを決定するために、動的較正制御ルーチン500を継続する。したがって、510において、制御システム104、206は、ゾーンに対する抵抗発熱体の抵抗を測定し、511において、上述のように、基準センサを熱的に平準化する。512において、制御システム104、206は、ゾーンの抵抗及び動的R-Tモデルに基づき、ゾーン温度を決定する。514において、制御システムは、ゾーンのそれぞれについて、ゾーン温度が制御温度設定値に等しいかどうかを判断する。そうでない場合、制御システムは510に戻り、ゾーンが制御温度設定値に達するまで待機する。
【0069】
一態様において、ゾーンが制御温度設定値に達すると、制御システムは、ゾーン温度を設定時間期間(例えば、2分、5分など)維持し、ゾーン温度を目標温度、より詳細には、本明細書に記載の基準温度まで、駆動する前に較正システムを等化し安定させる。
図5Bを参照すると、516において、制御システム104、206は、1つ以上の基準センサを用いて各ゾーンの基準温度を測定し、518において、各ゾーン温度がそれぞれの基準温度に等しいかどうかを判断する。そうでない場合、それぞれの基準温度に等しくない所定のゾーンについて、制御システム104、206は、520において、動的R-Tモデルにおいて提供される抵抗設定値を増分的に調整することにより、ゾーン温度と基準温度とを収束させる。上記で提供されるように、一形態において、制御システム104、206は、予め定義された利得係数と、ゾーンに関連する基準温度とゾーン温度との間の差とに基づき、抵抗調整率を決定する。一形態において、ゾーンに関連する基準温度がゾーン温度よりも高い場合、抵抗値は漸増的に減少される。あるいは、抵抗値は、ゾーンに関連付けられた基準温度がゾーン温度より低いとき、増分的に増加される。
【0070】
例えば、
図4を参照すると、内側ゾーンの温度が内側基準温度に等しくない場合、制御システムは、与えられた温度設定値(250℃)に対して抵抗値61.20Ωを増分的に変更する。すなわち、
図7は、内側ゾーンの抵抗値が61.15Ωに調整された動的R-Tモデル700を示すものである。制御システム104、206が閉ループ温度設定値制御600を同時に行っていることを念頭に置き、ヒータ102、208は内側ゾーンの温度を制御温度設定値に制御するために調整された抵抗値を使用し、それによって基準温度とゾーン温度を収束させる。抵抗値は、基準温度と温度設定値に維持されているゾーン温度が同じになるまで、上記のように定められた割合で増分的に調整される。ステップ518及び520において、ゾーン温度を基準温度と比較し、基準温度に収束させる代わりに、制御システム104、206は、ゾーン温度を、基準温度に基づき定義された収束帯内の温度と比較し、収束させることができる。そして、このように、ゾーン温度は、より一般的に、目標温度と比較され、収束される。
【0071】
図5Bに戻って参照すると、ゾーン温度が基準温度に等しいか、又はそれぞれの収束帯域内にあると、制御システム104、206は、522において、制御温度設定値に対する動的R-Tモデルで提供される抵抗値を較正された抵抗値として保存する。524において、制御システムは、全ての較正設定値が処理されたかどうかを判断する。例えば、
図4において、制御システムは、4つの温度設定値のうちの2つが較正されたと判断し、したがって、次の温度設定値(すなわち、450℃)に進むことができる。従って、526において、制御システムは、制御温度設定値をi番目の較正設定値に設定し、510に戻る。あるいは、全ての較正設定値が処理された場合、制御システムは、528において、閉ループ温度設定値制御を終了し、動的R-Tモデルを較正R-Tモデルとして保存する。
【0072】
ルーチン500及び600は、様々な好適な方法で構成することができ、本明細書に記載のステップに限定されるべきではないことは、容易に理解されるべきである。例えば、動的較正制御ルーチン500は、サーマルレベリングステップを含まなくてもよい。従って、520において、制御システムは、ゾーン温度を基準温度に収束させるだけである。
【0073】
図4及び
図7に提供された温度設定値及び抵抗値は説明のためだけのものであり、較正R-Tモデルは他の温度設定値及び任意の数の温度設定値を定義できることを容易に理解されたい。
【0074】
図8を参照すると、動的較正グラフ800は、動的較正制御中に抵抗値が修正されるときのゾーン温度と基準温度の収束例を示している。ここで、線802は、第1ゾーンの抵抗発熱体の温度を示し、線804は、第1ゾーンに関連する基準温度を示している。コールドスタート時(例えば、約25℃)、第1ゾーンの初期抵抗値は記録され、動的R-Tモデルに保存されるであろう。その後、第1ゾーンの温度は次の温度設定値(例:100℃)に制御される。第1ゾーンが100℃になると(
図8の点A付近)、制御システムはゾーン温度と基準温度が同じでないことを認識し、動的R-Tモデル内の第1ゾーンの温度設定値に関連する抵抗値を、定められたレート(例えば、毎秒0.5ミリオーム又は他の適切なレート)で調整し始めるであろう。基準温度とゾーン温度が収束すると(グラフ900のほぼ点B)、制御システムは100℃設定値に関連する抵抗値を第1ゾーンの較正された抵抗値として保存し、次の温度設定値(例えば、200℃)まで継続することになるであろう。
【0075】
一態様において、動的較正制御は、ヒータへの電力が調整されたとき、及び/又は外部システム変数が調整されたときに、ヒータの熱応答を測定するように構成されてもよい。例えば、ゾーン温度が温度設定値にある状態で、制御システムは、電圧パルス又はエネルギーパルスをゾーンのそれぞれに印加し、ゾーンの熱応答を測定してもよい。
【0076】
図9を参照すると、例示的な適用において、本開示の制御システムは、半導体プロセスラボ900に提供され、それは、その中に配置された1つ以上のヒータ(図示せず)を有する少なくとも1つのチャンバ902を含む。ヒータは、ヒータ102及び208と同様の方法で構成されてもよい。図示されていないが、制御システム104及び206と同様の1つ又は複数の制御システムが、ヒータを制御するために提供される。ラボ900は、半導体ウェハを処理するための他のサブシステムを含み、それらのサブシステムは、ヒータの熱応答に影響を及ぼす可能性がある。例えば、配送ライン904及び排気ライン906を有する流体ラインシステムは、チャンバ902との間でプロセスガスを輸送する。チャンバ内のガス流量及び圧力さえも、例示的な外部システム変数である。ゾーン温度が温度設定値にある状態で、1つ以上の外部システム変数がそれぞれのサブシステムによって調整されてもよく、制御システムはヒータのゾーンの熱応答を測定する。外部システム変数は、チャンバ圧力、裏面ガス圧力、チャンバ902の放射率、及び/又はペデスタルの放射率を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。ラボ900は、ヒータの動作に影響を与え得る他のサブシステムを含み、本開示は、本明細書に提供される例に限定されるべきではないことを容易に理解されたい。
【0077】
本開示の動的較正制御は、ヒータの温度を決定するために制御システムによって使用されるR-Tモデルのライブ較正を実行する。したがって、動的較正制御は、R-Tモデル及び温度測定値の精度を向上させる。さらに、抵抗値に対して行われる漸増的な調整は、誤った測定値(例えば、温度スパイク)を低減又は抑制し、較正された抵抗値の精度を向上させることができる。
【0078】
特定の構成要素が図示され、説明されているが、熱システムは、本開示の範囲内に留まりながら、他の構成要素を含んでもよいことは、容易に理解されたい。例えば、一態様において、制御システムは、低電圧コンポーネントを高電圧コンポーネントから分離し、且つコンポーネントが信号を交換することを可能にする電子コンポーネントを含んでもよい。
【0079】
本願において、用語「コントローラ」は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログ、又はアナログ/デジタルの混合ディスクリート回路、デジタル、アナログ、又はアナログ/デジタルの混合集積回路、組合せ論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ回路(共有、専用、又はグループ)、プロセッサ回路によって実行されるコードを格納するメモリ回路(共有、専用、又はグループ)、記載の機能を提供する他の適切なハードウェアコンポーネント、又はシステムオンチップのように上記の一部又は全ての組合せ、のいずれかを指すか、その一部であるか、又は含むことができる。
【0080】
メモリという用語は、コンピュータが読取り可能な媒体という用語のサブセットである。本明細書で使用されるように、コンピュータが読取り可能な媒体という用語は、媒体(搬送波上など)を伝播する一過性の電気又は電磁信号を包含しない;したがって、コンピュータが読取り可能な媒体という用語は、有形かつ非一過性と考えられる。
【0081】
本明細書で明示的に示されない限り、機械的/熱的特性、組成割合、寸法及び/又は公差、又は他の特性を示す全ての数値は、本開示の範囲を説明する際に「約」又は「およそ」という言葉によって修正されるものとして理解されるものである。この修正は、工業的慣行;材料、製造、及び組立の公差;並びに試験能力を含む様々な理由で望まれる。
【0082】
本明細書で使用されるように、A、B、及びCの少なくとも1つというフレーズは、非排他的論理和を用いた論理(AOR B OR C)を意味すると解釈されるべきで、"Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、及びCの少なくとも1つ"を意味すると解釈されるべきではない。
【0083】
本開示の説明は、本質的に単なる例示であり、したがって、本開示の実体から逸脱しない変形は、本開示の範囲内にあることが意図される。そのような変形は、本開示の精神及び範囲から逸脱するものとはみなされない。
【国際調査報告】