(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】疾患の処置のためのアンチセンスオリゴマー
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230501BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20230501BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230501BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230501BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230501BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230501BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230501BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230501BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
C12N15/57 ZNA
A61P31/14
A61P11/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P9/12
A61P3/10
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554199
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 AU2021050261
(87)【国際公開番号】W WO2021189104
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594202523
【氏名又は名称】モナシュ ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】507192415
【氏名又は名称】マードック ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィルトン, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】アン-トゥ, メイ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, マーリン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ピカリング, レリーン ジェーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA58
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4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
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4C084ZB331
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4C084ZC351
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4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZB33
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)におけるプレmRNAのスプライシングを修飾して、ACE2遺伝子転写物またはその一部のスプライシングをモジュレートするための単離または精製されたアンチセンスオリゴマーであって、修飾された主鎖構造およびこのようなアンチセンスオリゴマーに対して少なくとも75%の配列同一性を有し、かつ修飾された主鎖構造を有する配列を有する、アンチセンスオリゴマーが提供される。このアンチセンスオリゴマーは、スプライススイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)と称され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)におけるプレmRNAのスプライシングを修飾して、ACE2遺伝子転写物またはその一部のスプライシングをモジュレートするための単離または精製されたアンチセンスオリゴマーであって、修飾された主鎖構造およびこのようなアンチセンスオリゴマーに対して少なくとも75%の配列同一性を有し、かつ修飾された主鎖構造を有する配列を有する、アンチセンスオリゴマー。
【請求項2】
a)配列番号1~31;および/または
b)配列番号5、6、9もしくは11;および/または
c)表3
を含むリストから選択される、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項3】
(i)修飾された糖部分;(ii)RNase Hに対する抵抗性;および/または(iii)オリゴマー模倣化学を含むリストから選択される代替化学または修飾を受ける1つまたは複数のヌクレオチド位置を含有する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項4】
(i)部分への化学的コンジュゲーション;および/または(ii)細胞透過性ペプチドによるタグ付けによってさらに修飾されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴマー中にウラシルが存在する場合、前記アンチセンスオリゴマーの前記ウラシル(U)が、チミン(T)によって置き換えられている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項6】
プレmRNAスプライシングの前記修飾が、前記ACE2プレmRNAの1つまたは複数のエクソン配列のスキッピングをもたらす、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項7】
対象におけるACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するための医薬、予防用、防止用、または治療用組成物であって、
a)請求項1から6のいずれか一項に記載の1つまたは複数のアンチセンスオリゴマー、ならびに
b)1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤
を含む、組成物。
【請求項8】
ACE2遺伝子転写物におけるスプライシングを操作するための方法であって、
a)請求項1から6のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴマーのうちの1つまたは複数を提供して、前記オリゴマーを標的核酸部位に結合させるステップ
を含む、方法。
【請求項9】
ACE2アイソフォームの発現、濃度または活性をモジュレートするための方法であって、
a)請求項1から6のいずれか一項に記載の1つもしくは複数のアンチセンスオリゴマーまたは1つもしくは複数のアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップ
を含む、方法。
【請求項10】
ACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するための方法であって、
a)請求項1から6のいずれか一項に記載の1つもしくは複数のアンチセンスオリゴマーまたは1つもしくは複数のアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップ
を含む、方法。
【請求項11】
ACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するための医薬の製造のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用。
【請求項12】
対象におけるACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するためのキットであって、好適な容器内にパッケージングされた、請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくともアンチセンスオリゴマーおよびその組合せまたはカクテルを、その使用のための使用説明書と一緒に含む、キット。
【請求項13】
前記ACE2発現に関連する疾患が、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルスによって引き起こされる感染症、肺障害、慢性腎疾患、慢性心疾患、高血圧および糖尿病を含むリストから選択される、請求項7に記載の組成物、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法、請求項11に記載の使用、または請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記アンチセンスオリゴマーが、可溶性ACE2アイソフォーム、RAASをモジュレートすることができる化合物、コロナウイルスを標的とする抗ウイルス療法または受動免疫療法を含むリストから選択される第2の治療剤と組み合わせて投与される、請求項7に記載の組成物、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法、請求項11に記載の使用、または請求項12に記載のキット。
【請求項15】
前記アンチセンスオリゴマーが、アンチセンスオリゴマーの組合せである、請求項7に記載の組成物、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法、請求項11に記載の使用、または請求項12に記載のキット。
【請求項16】
アンチセンスオリゴマーの前記組合せが、配列番号6と9または配列番号6と11の組合せから選択される、請求項15に記載の組成物、方法、使用またはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)またはその一部をコードするプレmRNAのスプライシングのモジュレーションのための方法であって、スプライススイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を使用して、可溶性ACE2アイソフォームをコードする新規ACE2スプライスバリアントの生成を誘導する方法、および前記モジュレーターを使用するACE2関連障害の処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2;EC 3.4.17.23)は、エキソペプチダーゼスーパーファミリーに属する92kDAの1型膜内在性糖タンパク質である。ACE2は、ほとんどの組織内で発現され、活性である。
【0003】
ヒトACE2遺伝子は、ヒトのX染色体のXp22.2領域に見られる。これは、18個のエクソンおよび17個のイントロン、ならびにその転写を調節する5’隣接領域を含む。
【0004】
ヒトACE2タンパク質は、球状の細胞外ドメイン(残基18~740)、1回膜貫通ドメイン(残基741~761)および短い細胞質側末端(残基762~805)から構成されている。ACE2は、Asn53、Asn90、Asn103、Asn322、Asn432、Asn546、およびAsn690でN-グリコシル化されている。
【0005】
重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS-CoVおよびSARS-CoV-2を含む)、HNL63-CoV(NL63-S)およびSARS様WIV1-CoVは、その深く凹んだ触媒ドメインとは別個の、それから遠位の部位で、ACE2の外部ドメインに結合する。ACE2に対するSARS-CoV-2の親和性は、SARS-CoVを含む他のCoVの親和性よりも高く、おそらく、ヒトでのより高い感染性の一因となっているようである。
【0006】
ACE2の外部ドメインは、例えば、Ang II(1~8)からC末端のフェニルアラニンを切断してAng(1~7)を生じる、末端カルボキシペプチダーゼとして機能する単一のメタロペプチダーゼドメインを含有する。ACE2の遺伝的枯渇によって、Ang IIレベルの増加、およびAng-(1~7)レベルの低下がもたらされる。このように、ACE2は、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)における重要な調節酵素であると考えられる。
【0007】
RAASは、多くの一般的な疾患および疾患プロセスの発生および進行に関与する恒常性維持経路である。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、またはアンジオテンシンII受容体1型(AT1R)遮断薬(阻害剤)によるRAASの阻害は、高血圧、心血管疾患(CVD)、心不全、慢性腎疾患(CKD)、および糖尿病の合併症を含む多くの疾患および/または状態の管理のために広く使用される。RAASの阻害は、糖尿病の防止、神経保護、ある特定のがんの増殖の修飾、さらにはマウスにおいて長寿をもたらすAT1Rの遺伝的枯渇に関する老化において有益であることも示されている。RAASの活性化は、アテローム性動脈硬化、慢性心疾患、慢性腎疾患、高血圧、肺疾患およびコロナウイルス感染症の重要なメディエーターであることが公知である。
【0008】
ACE2の非触媒性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを網羅する残基614~805を組み込んだACE2のC末端は、小胞輸送および膜融合のプロセスに関与する酵素活性を有さないタンパク質であるコレクトリンと、47.8%の配列同一性を示す。結論として、ACE2は、ACE様である19~613、およびコレクトリン様である614~805を含む融合タンパク質であると考えられる。
【0009】
ACE2の細胞質側末端は、インテグリンおよびカルモジュリン結合部位も含有する。細胞質ドメインは、大型アミノ酸輸送体B(O)AT1の輸送アダプターとしての役割を果たし、それを、腸の上皮細胞の頂端膜に移行させる。コロナウイルスの細胞内への取込みもまた、ACE2のサイトゾル側末端に媒介される内在化に依存する。
【0010】
ほとんどのACE2は、膜アンカー型である。しかし、外部ドメインの構成的および誘導性の脱落が、シェダーゼの影響下で起こり得る。脱落によって生じた低レベルのC末端切断型ACE2アイソフォームは、血流、尿、気管支肺胞液および唾液中に自然に見られる。ACE2のこの可溶性アイソフォームは、膜アンカーおよび細胞質側末端を欠く。
【0011】
ACE2は、肺疾患の発生および進行に関与する。Ace2 KOマウスは、肺疾患の様々なモデルに応じて肺傷害の増強を示し、傷害の表現型は、ACE2を再導入することによって救済され得る。特に、急性呼吸促迫症候群(ARDS)の病態は、ACE2の非存在下で増幅され、肺のACE2の下降は、臨床成績不良の前兆である。組換え可溶性ACE2は、急性および慢性の肺傷害の実験モデルにおいて有益な効果を有し、ARDSを有する患者の臨床試験において研究されている。
【0012】
ACE2は、アテローム性動脈硬化プラークの発生において重要な役割を果たす。本発明者らは、Ace2の遺伝的欠損がアンジオテンシンII注入後に観察されたものに匹敵する、プラーク蓄積の増加に関連することを以前に示している。ACE2発現は、確立されたアテローム性動脈硬化プラークおよび糖尿病などのアテローム性動脈硬化誘発状態において低下する。循環する可溶性ACE2を増加させるための方法によって、このモデルにおけるアテローム性動脈硬化が低減する。
【0013】
RAASの活性化は、高血圧の重要なメディエーターであることが公知であり、RAAS活性化を遮断するための介入は、すべての血圧低下剤の中で最も広く使用されているものの1つである。これらの作用剤の降圧剤としての有効性は、Ang IIまたはそのシグナル伝達を低下させるそれらの能力によって部分的に媒介される。しかし、従来のRAS遮断の降圧効果は、Ang(1~7)の循環レベルを増加させるACE阻害剤とアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)の両方の能力によっても、部分的に決定される。血管系におけるAng(1~7)の主要な供給源がACE2であることを考えると、このデータは、ACE2が、高血圧の発生だけでなく、その処置に対する応答にも影響を及ぼす可能性があることを示唆する。ACE2とRAASは、中枢性高血圧の発病にも関与している。自然発症高血圧のラットでは、ACE2発現は延髄吻側腹外側部(RVLM)において低下し、RVLMにおけるACE2の持続的過剰発現により高血圧の有意な減弱がもたらされる。
【0014】
心臓では、ACE2は、Ang IIの代謝のための主要な経路を表す。マウスにおけるACE2欠損は、初期心臓肥大をもたらし、有害な心筋梗塞後の心室リモデリングを加速させる。一部のモデルでは、ACE2欠損は、加齢および/または心圧負荷に伴う進行性の心筋線維化ももたらす。再度、これらの変化は、組換えACE2、ACE阻害剤またはAT1R遮断薬による処置後に回復し、心臓におけるRAASのバランスが進行性心疾患に関する重要な駆動因子であることを示唆する。
【0015】
ACE2欠損マウスが腎損傷を加速させたため、糖尿病性腎臓ならびに腎損傷および腎活性化に関連する他の状態において、ACE2は重要な役割を果たす。実験的糖尿病における腎損傷は、循環する可溶性ACE2を増加させる発明によって低減される。
【0016】
RAASは、いくつかの代謝機能も有する。ACE2欠損は、インスリン抵抗性およびグルコース恒常性障害に関連し、これは、高脂肪食により悪化する。ACE2欠損は、骨格筋および肝臓における脂質蓄積の増加に関連する。
【0017】
完全長ACE2よりも可溶性ACE2の好ましい生成に向けて、ACE2スプライシングのモジュレーションのためのエクソン-スキッピングAONを使用する本方法が説明されるのは、この背景に対してである。
【0018】
背景技術の上記論述は、本発明の理解を容易にすることのみを意図するものである。この論述は、参照した資料のいずれかが、本出願の優先日の時点で、共通の一般的知識の一部であるか、またはその一部であったことの承認でも自認でもない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要旨
概括的に、本発明の一形態によれば、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)またはその一部をコードするプレmRNA遺伝子転写物の選択的スプライシングをモジュレートするために使用される単離もしくは精製されたAONまたはAONの組合せが提供される。精製されたAONは、好ましくは、修飾された主鎖構造を有する。このようなアンチセンスオリゴマーに対して少なくとも75%、80%、85%、90%または少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ修飾された主鎖構造を有する配列も提供される。
【0020】
本発明の一態様では、ACE2プレmRNAのイントロン付近またはその中の領域に対して相補的な標的配列を含む、10~50ヌクレオチドのAONが提供される。
【0021】
本発明の一態様では、ACE2プレmRNAのスプライス部位に対して相補的であるかまたはそれに隣接する標的配列を含む、10~50ヌクレオチドのAONが提供される。
【0022】
RNA二次構造、AONとSRタンパク質の間の競合、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)、および/またはスプライセオソームを構成する他のエレメントなどの因子が、AONの作用に影響を及ぼし得るため、重要なアクセプターまたはドナーのスプライス部位に向けられたAONは、常にスプライシングを変更する訳ではない。結果として、本発明の一態様では、スプライセオソームのエレメント(例えば、タンパク質スプライシング因子、uRNA、lncRNA)が結合すると、近くのエクソンのスプライシングをモジュレートするエンハンサーまたはサイレンサーとして作用する、ACE2のプレmRNAにおけるシス作用型RNAエレメントに対して相補的であるかまたはそれに隣接する標的配列を含む10~50ヌクレオチドのAONが提供される。
【0023】
本発明の一態様では、スプライス部位の選択に影響を与える前記mRNAの二次構造をモジュレートするACE2プレmRNAに対して相補的な標的配列を含む10~50ヌクレオチドのAONが提供される。
【0024】
本発明の一形態では、ACE2遺伝子転写物またはその一部における1つまたは複数のエクソン配列の排除(スキッピングとしても公知)を誘導する単離または精製されたAONが提供される。
【0025】
本発明の一形態では、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、チオモルホリノオリゴヌクレオチド(TMO)、2’-O-メチル(2’-O-Me)ホスホロチオエート(PTO)オリゴヌクレオチドおよび2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)PTOオリゴヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)修飾AON、熱安定性のねじれ挿入核酸(twisted intercalating nucleic acid)(TINA)およびペプチド核酸(PNA)を含むがこれらに限定されないAONが、プレmRNA-AON複合体の分解を妨げるために化学修飾される。
【0026】
本発明の一形態では、AONは、それらの送達を増加させる部分にコンジュゲートされる。この部分には、以下に限定されないが、細胞透過性ペプチド(CPP)、vivo-モルホリノ(VMO)またはペプチドホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)が含まれる。
【0027】
好ましくは、AONは、表3に示される配列、およびそれらの組合せ、誘導体またはカクテルを含む群から選択される。好ましくは、AONは、配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9または11を含むリストから選択される。より好ましくは、AONは、配列番号6および9または配列番号6および11である。
【0028】
本発明のAONは、スプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位、スプライスエンハンサー配列、スプライスサイレンサー配列またはプレmRNAの二次構造をモジュレートする部位から選択される推定mRNAスプライシング部位標的部位に結合することが可能なAONであってもよい。ドナーまたはアクセプターのスプライス部位が標的とされる場合、標的部位には、いくつかの隣接するイントロン配列が含まれてもよい。
【0029】
より詳細には、AONは、配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9もしくは11、ならびに/または表3のいずれかに示される配列、およびそれらの組合せ、誘導体またはカクテルのうちのいずれか1つまたは複数を含む群から選択されてもよい。より好ましくは、AONは、AONの組合せ;好ましくは配列番号6と9または配列番号6と11の組合せである。これには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でこのような配列にハイブリダイズすることができる配列、それに対して相補的な配列、ACE2遺伝子転写物におけるプレmRNAプロセシング活性をモジュレートする修飾された塩基、修飾された主鎖、およびその機能的切断または伸長を含有する配列にハイブリダイズすることができる配列が含まれる。
【0030】
ある特定の実施形態では、AONは、オリゴヌクレオチドと標的配列の間に形成されるヘテロ二重鎖が、細胞ヌクレアーゼの作用およびin vivoで起こり得る他の分解様式に耐えるのに十分安定である限り、標的配列に対して100%相補的であってもよく、または例えば、バリアントを収容するように、ミスマッチを含んでもよい。したがって、ある特定のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドと標的配列の間に、約または少なくとも約70%の配列相補性、例えば70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列相補性を有してもよい。
【0031】
本発明は、ACE2プレmRNAの選択的スプライシングをモジュレートするために選択された標的に結合することが可能な2つまたはそれより多いAONの組合せにも及び、2つまたはそれより多いこのようなAONを含む構築物も含む。構築物は、組み合わされたAONベースの治療として一緒に使用されてもよい。AONの組合せは、好ましくは、配列番号6と9または配列番号6と11の組合せである。
【0032】
本発明は、そのまたさらなる態様によれば、本発明のAON配列のcDNAまたはクローニングされたコピー、および本発明のAON配列を含有するベクターに及ぶ。本発明は、このような配列および/またはベクターを含有する細胞にもさらに及ぶ。
【0033】
ACE2遺伝子転写物のスプライシングを操作するための方法であって、
a)本明細書に記載されたAONのうちの1つまたは複数を提供して、オリゴマーを標的核酸部位に結合させるステップ
を含む、方法も提供される。
【0034】
対象におけるACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するための医薬、予防用、または治療用組成物であって、
a)本明細書に記載された1つまたは複数のAON;ならびに
b)1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤
を含む、組成物も提供される。
【0035】
組成物は、本発明の所望のAONのそれぞれを、約1nM~1000nM含んでもよい。好ましくは、組成物は、本発明のAONのそれぞれを、約1nM~500nM、最も好ましくは1nM~10nMの間で含んでもよい。
【0036】
ACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するための方法であって、
本明細書に記載された1つもしくは複数のAONまたは1つもしくは複数のAONを含む医薬組成物の有効量を、対象に投与するステップ
を含む、方法も提供される。
【0037】
本発明の一形態では、AONは、アンジオテンシン受容体遮断薬およびACE阻害剤および組換えACE2を含むレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)をモジュレートする他の作用剤と同時投与される。
【0038】
本発明の一形態では、AONは、受動免疫、能動免疫または抗ウイルス療法を含む、コロナウイルス感染力をモジュレートする他の作用剤と同時投与される。
【0039】
ACE2発現および/または活性に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するための医薬の製造のための、本明細書に記載された精製および単離されたAONの使用も提供される。
【0040】
対象におけるACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するためのキットであって、好適な容器内にパッケージングされた、本明細書に記載された少なくともAONおよびその組合せまたはカクテルを、その使用のための使用説明書と一緒に含む、キットも提供される。
【0041】
好ましくは、対象におけるACE2発現に関連する疾患は、コロナウイルス感染症、肺疾患、アテローム性動脈硬化、慢性心疾患、慢性腎疾患または糖尿病である。
【0042】
ACE2発現に関連する疾患を有する対象は、ヒトを含む哺乳動物であってもよい。
【0043】
本発明のさらなる態様は、添付の非限定的な例および図面を参照してここに記載される。
本発明のさらなる特徴は、いくつかのその非限定的な実施形態についての以下の記載においてより十分に説明される。この記載は、本発明を例示するためにのみ含まれる。これは、上に示されるような本発明の広範な概要、開示または記載に関する制限として理解されるべきではない。この記載は、添付の図面を参照してなされる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1a】ポリクローナル抗ACE2抗体(
図1a-i)またはモノクローナル抗His抗体(
図1a-ii)によって検出された、ウエスタンブロッティングで選択されたC末端切断型ACE2構築物でトランスフェクトされたCHO細胞由来の細胞培養培地中の可溶性ACE2タンパク質の発現。
【
図1b】抗ACE2 ELISAによって検出された、選択されたC末端切断型mACE2構築物でトランスフェクトされたCHO細胞由来の細胞培養培地中の可溶性ACE2タンパク質の発現。バーは、平均±SEMを示す。構築物当たりn=6。
【
図1c】消光蛍光ACE2活性アッセイによって検出された、選択されたC末端切断型mACE2構築物でトランスフェクトされたCHO細胞由来の培養培地中のACE2の触媒活性。バーは平均を示し、エラーバーはSEMを示す。構築物当たりn=6。
【
図1d】ポリクローナル抗ACE2抗体を使用するウエスタンブロッティングによって検出された、選択されたC末端切断型mACE2構築物を含有するDNAミニサークルでトランスフェクトされたCHO細胞由来の培養培地中の可溶性mACE2タンパク質の発現。
【
図1e】抗ACE2 ELISAによって検出された、mACE2(19~615)をコードするDNAミニサークルでトランスフェクトされたCHO細胞由来の培養培地中の可溶性mACE2タンパク質の発現。バーは平均を示し、エラーバーはSEMを示す。構築物当たりn=6。
【
図1f】HAEC細胞における炎症性サイトカイン、MCP-1のAng IIに誘導される発現は、mACE2(19~615)を過剰発現するCHO細胞由来の培地とのプレインキュベーションによってアンタゴナイズされ、この保護は、選択的ACE2阻害剤、MLN4760によってアンタゴナイズされた。データは、平均±SEMとして表した。各カラムはn=8の群である。
【
図1g】HAEC細胞における接着分子、ICAM-1のAng IIに誘導される発現は、mACE2(19~615)を過剰発現するCHO細胞由来の培地とのプレインキュベーションによってアンタゴナイズされ、この保護は、選択的ACE2阻害剤、MLN4760によってアンタゴナイズされた。
【
図1h】mACE2(19~615)をコードするDNAミニサークルによる筋肉内注射の4週間後の、マウスの血清中の循環するACE2タンパク質の増加。
【
図1i】mACE2(19~615)をコードするDNAミニサークルによる筋肉内注射の4週間後の、マウスの血清中の循環するACE2活性の増加。
【
図1j】ベクターによってトランスフェクトされた細胞と比較した、ウエスタンブロッティングによって検出された、トランスフェクトされたCHO細胞由来の15μLの細胞培地中のヒトY613L-hACE2(19~613)タンパク質の発現。
【
図1k】ACE2活性アッセイによって検出された、Y613L-hACE2(19~613)でトランスフェクトされたCHO細胞由来の培養培地中のACE2の触媒活性。組換えAce2(1~740)を陽性対照として示し、トランスフェクトされていないCHO細胞由来の培地を陰性対照として示す。
【
図1l】SARS-CoV-2によるVeroE6細胞の感染後のプラーク蓄積は、Y613L-ACE2による処置後に用量依存的に低減する。
【
図2a】ACE2の構成的スプライシングによって、エクソン13-14-15の融合が創出される。エクソン14のドナーおよびアクセプターのスプライス部位を標的とするAONを使用することによって、このスプライシングパターンが変更され、エクソン14スキッピングを引き起こすことができれば、Y613L-ACE2(19~613)をコードする新規mRNAスプライスバリアント(Δ14スプライスバリアント)を生じることになる。
【
図2b】ヒトCaco-2細胞の(ii)H14A[-17+8](100nM)または(iii)H14A[-17+8]とH14D[+13-12](50+50nM)の組合せによる処置の48時間後に誘導された、Δ14スプライスバリアント(矢印、緑色)のde novo発現を示すRT-PCR増幅プロット。非標的AON(100nM、i)でトランスフェクトされた細胞では、Δ14スプライスバリアントの発現は観察されていない。18Sは、発現対照(青色)として示される。
【
図2c】用量対照非標的AONと比較した、AONの組合せ、具体的には、H14D[+9-16]とH14A[-17+8]およびH14D[+13-12]とH14A[-17+8]によるヒトCaco-2細胞の処置後の、エクソン14を含有する従来の方法でスプライシングされたACE2 mRNAの発現。データは、平均±SEMを示す。
*p<0.01対用量対照。
【
図2d】ACE2標的AONまたは非標的対照AONによるヒトCaco-2細胞のトランスフェクション後のすべてのACE2 mRNAスプライスバリアント(すなわち、エクソン13とエクソン15の両方を含有するACE2 mRNA)の発現。データは、平均±SEMを示す。
*p<0.01対用量対照。データは、平均±SEMを示す。
【
図2e】AON、具体的には、H14D[+9-16]とH14A[-17+8]、H14D[+13-12]とH14A[-17+8]、または非標的対照AONによるヒトCaco-2細胞のトランスフェクション後の、エクソン14を保持する従来の方法でスプライシングされたACE2 mRNAおよびすべてのACE2 mRNAスプライスバリアント(すなわち、エクソン13とエクソン15の両方を含有する)の発現。データは、平均±SEMを示す。
*p<0.01対用量対照。
【
図2f】AONの組合せ(i)H14D[+9-16]とH14A[-17+8];50+50nMによるヒトCaco-2細胞の処置の24時間後のΔ14スプライスバリアントのde novo発現(緑色)を示すRT-PCR増幅プロット。非標的AON(100nM、ii)でトランスフェクトされた細胞では、Δ14スプライスバリアントの発現は観察されていない。18Sは、発現対照(紫色/青色)として示される。
【
図3a】ACE2標的AON、具体的には、H14A[-17+8]とH14D[+13-12]、または非標的対照AONによるVeroE6細胞のトランスフェクション後の、エクソン14を含有する従来の方法でスプライシングされたACE2 mRNAの発現およびエクソン13とエクソン15の両方を含有するすべてのACE2 mRNAスプライスバリアントの発現。データは、平均±SEMを示す。
*p<0.01対用量対照。
【
図3b】プールした培地試料におけるACE2活性によって測定した、ACE2標的AON、具体的には、H14A[-17+8]とH14D[+13-12]、H14A[-17+8]とH14D[+9-16]、H14A[-6+19]とH14D[+13-12]または非標的対照AONによるVeroE6細胞のトランスフェクション後の細胞培地中の触媒活性可溶性ACE2の発現。
【
図3c】ELISAによって測定した、ACE2標的AON、具体的には、H14A[-17+8]とH14D[+13-12]または非標的対照AONによるVeroE6細胞のトランスフェクション後の細胞培地中の可溶性ACE2タンパク質の発現。データは、平均±SEMを示す。
*p<0.01対用量対照。
【
図3d】ACE標的AON、具体的には、H14A[-17+8]とH14D[+13-12]または非標的対照AONによるトランスフェクション後のVeroE6細胞の表面へのSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S1-サブユニット)の吸着。GFPの吸着は、陰性対照として示される。代表的なイメージを左側に示す。右側のデータは、平均±SEMを示す。
*p<0.01対非標的対照。
【
図4a】エクソン13(フォワード)およびエクソン15(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって検出された、2’-O-Me PTO AON(50μM)によるトランスフェクション後のCaco-2細胞におけるACE2 mRNAスプライスバリアントの発現。
【
図4b】エクソン13(フォワード)およびエクソン15(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって検出された、2’-O-Me PTO AON(50nM)による72時間のトランスフェクション後のCalu-3細胞におけるACE2 mRNAスプライスバリアントの発現。
【
図4c】H14A[-22+3](配列番号6;1uM)のvivo-モルホリノ製剤で72時間前処置し、それに続いて、SARS-CoV-2(Vic01)とインキュベーションしたCalu-3細胞の培地中の組織培養感染量の中央値(TCID50)。
【
図5a】エクソン17(最後から2番目のエクソン)を含む場合と含まない場合の、エクソン9~18のACE2転写物のリーディングフレーム。エクソン17はインフレームエクソンであるため、エクソン17を除去すると、エクソン18の読取りにおいてフレームシフトはもたらされない。
【
図5b】エクソン13(フォワード)およびエクソン18(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって測定した、50~200μMのエクソン17を標的とする2’-O-Me PTO AONによるヒト線維芽細胞のトランスフェクションの24時間後の、様々なACE2 mRNAスプライスバリアントの誘導。
【
図5c】エクソン13(フォワード)およびエクソン18(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって測定した、50~200μMのエクソン17を標的とする2’-O-Me PTO AONによるヒト角化細胞の細胞株HaCaTのトランスフェクションの24時間後の、様々なACE2 mRNAスプライスバリアントの誘導。
【
図5d】エクソン13(フォワード)およびエクソン18(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって測定した、エクソン17を標的とする2’-O-Me PTO AONを含む上位3つの候補AON 50~200μMによるHaCaT細胞のトランスフェクション後のエクソン17スキッピングの経時的分析。
【
図5e】エクソン13(フォワード)およびエクソン18(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRを使用する、M17A[+21+45](配列番号9)のvivoモルホリノ製剤による処置(1~3μM)の48時間後の、Caco-2細胞内でのACE2 mRNAスプライスバリアントの発現。
【
図5f】リアルタイムRT-PCRによって測定した、DI水中で気管支内に送達された3mg/kgの用量のM17A[+21+45](配列番号9)、対照AONまたはビヒクルによる処置の7日後のマウスの肺におけるACE2 mRNAの発現。
【
図5g】ELISAによって測定した、DI水中で気管支内に送達された3mg/kgの用量のM17A[+21+45](配列番号32)、対照AONまたはビヒクルによる処置の7日後のマウスの気管支肺胞液中の可溶性ACE2タンパク質の発現。
【
図5h】H17A[+21+45](配列番号9;1uM)のvivo-モルホリノ製剤で72時間前処置し、それに続いて、SARS-CoV-2(Vic01)とインキュベーションしたCalu-3細胞の培地中の組織培養感染量の中央値(TCID50)。
【
図6a】エクソン13(フォワード)およびエクソン15(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって検出された、vivo-モルホリノAON、H17A[+21+45]またはH14A[-22+3]またはその両方(それぞれ1μM)による処置後のCalu-3細胞におけるACE2 mRNAスプライスバリアントの発現。
【
図6b】エクソン13(フォワード)およびエクソン15(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって検出された、vivo-モルホリノAON、H17A[+21+45]、H14A[-22+3]、H17A[+21+45]とH14A[-22+3]の両方、または対照オリゴヌクレオチド(それぞれ1μM)による処置後のCaco-2細胞におけるACE2 mRNAスプライスバリアントの発現。
【
図6c】エクソン13(フォワード)およびエクソン18(リバース)内に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって検出された、vivo-モルホリノAON、H17A[+21+45]またはH14A[-22+3]またはその両方(それぞれ1μM)による処置後のCaco-2細胞におけるACE2 mRNAスプライスバリアントの発現。
【
図6d】H17A[+21+45]とH14A[-22+3](それぞれ0.5μM)のvivo-モルホリノ製剤の組合せで72時間前処置し、それに続いて、SARS-CoV-2(Vic01)とインキュベーションしたCalu-3細胞の培地中の組織培養感染量の中央値(TCID50)。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の説明
発明の詳細な説明
アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)は、ワトソン-クリック塩基対合によって、プレRNA/mRNAに選択的にハイブリダイズし、標的RNAの機能を選択的にモジュレートすることができるDNAまたはRNAの短い、合成の、アンチセンスの修飾された鎖である。
【0046】
AONを使用して、mRNAの選択的スプライシングをモジュレートする場合、これらは、スプライス-スイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)と称されることが多い。本発明では、AONおよびSSOという用語は交換可能に使用されてもよい。AONは、プレmRNAと塩基対合し、スプライシング機構の構成成分とプレmRNAの間に生じるRNA-RNA塩基対合またはタンパク質-RNA結合の相互作用を遮断することによって、転写物の正常なスプライシングレパートリーを破壊する。AONは、選択されたエクソンの「スキッピング」および/またはイントロン配列の保持を誘導し、翻訳産物をモジュレートすることができる。これは、スプライス部位を直接標的とするか、または特異的タンパク質の結合をモジュレートするか、もしくはプレmRNAの二次構造を変更することによって、スプライシングを増強またはサイレンシングすることに関与するシス作用配列を標的とすることによって達成することができる。
【0047】
治療用AONは、遺伝性障害の処置のために使用され、不完全であるかまたは誤ってアライメントされたセクションをスキップして、内部に欠失があるが、治療として依然として機能的なタンパク質の生成を可能にし得る。
【0048】
選択的スプライシングは、ACE2の転写後遺伝子調節の重要な層として現在は認識されていない。転写は、自然に選択的にスプライシングされたバリアントを生じることがあり、大多数は、エクソン1の5’伸長によって異なる。しかし、これらの配列は非コードRNAであるため、機能的な意義は不明である。注目すべきは、エクソン14は、自然には選択的スプライシングを受けないことである。
【0049】
本発明は、ACE2プレmRNAのスプライシングパターンを操作するためにAONを使用し、酵素的に機能性である、および/またはコロナウイルスの内因性ACE2への結合をアンタゴナイズするデコイ受容体として作用する可溶性ACE2アイソフォームをコードする新規スプライスバリアントの生成をもたらす。
【0050】
注目すべきは、今日までに、これらのスプライス部位に共通のACE2多型が見つかっていないことである。ACE2配列は、種間であっても、高度に保存されている。したがって、エクソンスキッピング技術による遺伝性障害の管理とは異なり、個人化または個別化された配列修飾は必要とされない。
【0051】
本発明は、ACE2プレmRNAまたはその一部のスプライシングをモジュレートするAONを開発することによって、コロナウイルス感染症、肺障害、高血圧、心臓障害、腎臓障害、および糖尿病を含むがこれらに限定されない、ACE2が発生または進行に関与する疾患の影響の処置、防止または改善のための代替方法を提供する。
【0052】
概括的に、本発明の一態様によれば、ACE2遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングをモジュレートするための単離または精製されたAONが提供される。好ましくは、ACE2プレmRNAまたはその一部において、エクソンの排除および/またはイントロンの保持を誘導するための単離または精製されたAONが提供される。精製されたAONは、好ましくは、修飾された主鎖構造を有する。このようなアンチセンスオリゴマーに対して少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ修飾された主鎖構造を有する配列も提供される。
【0053】
本発明は、ACE2遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングをモジュレートするために、ACE2遺伝子転写物上の選択された標的に結合することが可能なAONを提供する。例えば、本発明の一態様では、mRNAのスプライシングの調節に関与するタンパク質の結合に関連するACE2プレmRNAまたはその一部の領域に対して相補的な標的配列を含む10~50ヌクレオチドのAONが提供される。
【表1a】
【表1b-1】
【表1b-2】
【表2】
【0054】
他のAONベースの治療とは対照的に、本発明は、ACE2遺伝子のDNAに二重結合したRNAに優先的に結合し、それを分解するRNase Hの動員によるRNA分解の増加を誘導しない。これは、AONのACE2ゲノムDNAへのハイブリダイゼーションまたはAONのmRNAへの結合に依拠して、複製、転写、転位および翻訳などの正常な機能を妨害することによって生じるACE2タンパク質の量をモジュレートするものでもない。むしろ、AONを使用して、ACE2遺伝子転写物またはその一部のプレmRNAスプライシングを選択的にモジュレートし、エクソンの「スキッピング」を誘導する。この戦略は、好ましくは、完全長膜関連ACE2の発現を低減する、および/または膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインを欠く切断型可溶性ACE2アイソフォームの生成を増加させる。
【0055】
本発明の第一の態様によれば、ACE2遺伝子転写物上の選択された標的に結合し、ACE2遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングをモジュレートすることが可能なAONが提供される。概括的に、ACE2遺伝子転写物またはその一部において、標的とされるエクソンの排除/イントロンの保持を誘導するための単離または精製されたAONが提供される。
【0056】
「単離された」は、そのネイティブの状態で通常伴う構成成分を実質的または本質的に含まない物質を意味する。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたオリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から精製または取り除かれたポリヌクレオチド、例えば、ゲノムにおいて断片に隣接する配列から取り除かれたDNA断片を指し得る。「単離する(isolating)」という用語は、細胞に関する場合、供給源となる対象(例えば、ポリヌクレオチド反復疾患を有する対象)からの細胞(例えば、線維芽細胞、リンパ芽球)の精製を指す。DNA、mRNAまたはタンパク質の文脈において、「単離する」は、供給源、例えば細胞からのDNA、mRNAまたはタンパク質の回収を指す。
【0057】
AONは、それがハイブリダイズする標的配列を「対象とする」かまたは「標的とする」と言うことができる。ある特定の実施形態では、標的配列は、プレプロセシングされたmRNAの3’もしくは5’スプライス部位、分岐点、またはスプライスエンハンサーおよびスプライスサイレンサーおよびスプライシングに影響を与えるRNAの二次構造を決定する部位を含むスプライシングの調節に関与する他の配列を含む領域を含む。標的配列は、エクソン内もしくはイントロン内、またはイントロン/エクソン接合部にまたがる配列であってもよい。
【0058】
ある特定の実施形態では、AONは、標的RNA(例えば、プレmRNA)の領域を効果的に遮断するために、標的RNA(すなわち、スプライス部位の選択がモジュレートされるRNA)に対して十分な配列相補性を有する。例示的な実施形態では、ACE2プレmRNAのこのような遮断は、そうでなければスプライシングをモジュレートするであろうスプライセオソームタンパク質に関する結合部位をマスキングする、および/または標的RNAの構造を変更することのいずれかによって、スプライシングをモジュレートする役割を果たす。一部の実施形態では、標的RNAは、標的プレmRNA(例えば、ACE2遺伝子のプレmRNA)である。
【0059】
標的RNAのスプライシングをモジュレートする標的RNA配列に対して十分な配列相補性を有するAONは、AONが、そうでなければスプライシングをモジュレートするであろうネイティブタンパク質に関する結合部位のマスキングを誘発する、および/または標的RNAの三次元構造を変更するのに十分な配列を有することを意味する。
【0060】
選択されたAONは、配列が、標的配列へのハイブリダイゼーションの際にスプライスモジュレーションをもたらすのに十分に相補的であり、必要に応じて45℃またはそれより高いTmを有するヘテロ二重鎖をRNAと共に形成する限り、より短く、例えば約12塩基にされても、またはより長く、例えば約50塩基にされてもよく、少数のミスマッチを含んでもよい。
【0061】
好ましくは、AONは、配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9もしくは11、および/または表3に示される配列を含む群から選択される。より好ましくは、AONは、配列番号6と9または配列番号6と11である。
【0062】
ある特定の実施形態では、標的配列とAONの間の相補性の程度は、安定な二重鎖を形成するのに十分である。AONの標的RNA配列との相補性の領域は、8~11塩基と同程度に短くてもよいが、12~15塩基またはそれより多い塩基数、例えば10~50塩基、10~40塩基、12~30塩基、12~25塩基、15~25塩基、12~20塩基、または15~20塩基(これらの範囲の間のすべての整数を含む)であり得る。約16~17塩基のAONは、一般に、固有の相補配列を有するのに十分長い。ある特定の実施形態では、本明細書において論じられるように、必要な結合Tmを達成するために、相補塩基の最小限の長さが必要とされ得る。
【0063】
ある特定の実施形態では、少なくとも最小数の塩基、例えば10~12塩基が標的配列に対して相補的である、50塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドが好適であり得る。しかし、一般に、細胞内への取込みの促進または活性は、約30塩基未満のオリゴヌクレオチド長で最適化される。本明細書にさらに説明されるホスホロージアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)AONについては、結合安定性および取込みの最適なバランスは、一般に、18~25塩基の長さで生じる。約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50塩基からなるAON(例えば、PMO、PMO-X、PNA、LNA、TINA、2’-O-Me)が含まれる。
【0064】
ある特定の実施形態では、AONは、オリゴヌクレオチドと標的配列の間に形成されたヘテロ二重鎖が、細胞ヌクレアーゼの作用およびin vivoで起こり得る他の分解様式に耐えるのに十分安定である限り、標的配列に対して100%相補的であってもよく、または例えば、バリアントを収容するように、ミスマッチを含んでもよい。したがって、ある特定のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドと標的配列の間に、約または少なくとも約70%の配列相補性、例えば70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列相補性を有してもよい。
【0065】
ミスマッチは、存在する場合、典型的には、ハイブリッド二重鎖の末端領域に向かって、中間領域におけるよりも不安定化の程度が低い。許容されるミスマッチの数は、二重鎖安定性の十分に理解された原理に従って、オリゴヌクレオチドの長さ、二重鎖中のG:C塩基対のパーセンテージ、および二重鎖中のミスマッチの位置に依存することになる。このようなAONは、標的配列に対して必ずしも100%相補的ではないが、標的プレRNAのスプライシングがモジュレートされるように、標的配列に安定かつ特異的に結合するのに有効である。
【0066】
AONと標的配列の間に形成される二重鎖の安定性は、結合Tmおよび細胞酵素切断に対する二重鎖の感受性の関数である。相補的配列RNAに関するオリゴヌクレオチドのTmは、例えばHames et al., Nucleic Acid Hybridization, IRL Press, 1985, pp. 107-108により記載されているか、またはMiyada C. G. and Wallace R. B., 1987, Oligonucleotide Hybridization Techniques, Methods Enzymol. Vol. 154 pp. 94-107に記載されているものなどの従来の方法によって、測定することができる。ある特定の実施形態では、AONは、相補的配列RNAに関して、体温よりも高く、好ましくは約45℃または50℃よりも高い結合Tmを有してもよい。60~80℃の範囲またはそれよりも高いTmも含まれる。
【0067】
バリアントの追加の例は、配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9もしくは11および/または表3に示される配列のいずれかの全長にわたり、約または少なくとも約70%の配列同一性または相同性、例えば70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性または相同性を有するAONを含む。より好ましくは、AONは、配列番号6と9または配列番号6と11である。
【0068】
より詳細には、ACE2遺伝子転写物またはその一部におけるプレmRNAスプライシングを修飾するために選択された標的部位に結合することが可能なAONが提供される。AONは、好ましくは、配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9もしくは11、および/または表3のいずれかに示される配列から選択される。より好ましくは、AONは、配列番号6と9または配列番号6と11である。
【0069】
プレmRNAスプライシングの修飾は、好ましくは、「スキッピング」、あるいはmRNAの1つもしくは複数のエクソンの除去またはイントロンの保持を誘導する。得られたタンパク質は、内部切断または未熟終結のいずれかによって、親の完全長ACE2タンパク質と比較した場合に、より短い長さのものであることが好ましい。これらのC末端切断型ACE2タンパク質は、完全長ACE2タンパク質のアイソフォームと称され得る。
【0070】
生成されたmRNAの残りのエクソンは、インフレームであってもよく、それが、元の3’末端と5’末端の間の領域において内部切断を有することを除いて、親の完全長タンパク質の配列と類似する配列を有するより短いタンパク質を生じ得る。別の可能性では、エクソンスキッピングは、タンパク質の第1の部分が親の完全長タンパク質と実質的に同一であるが、タンパク質の第2の部分がフレームシフトによって異なる配列(例えば、ナンセンス配列)を有するタンパク質をもたらすフレームシフトを誘導し得る。あるいは、エクソンスキッピングは、リーディングフレームの破壊および翻訳の未熟終結の存在によって、未熟に終結したタンパク質の産生を誘導し得る。未熟に終結したタンパク質は、未熟に終結したmRNA(例えば、エクソン14のスキッピング)、またはエクソン14mRNAを含有するmRNAを提供するが、これらのエクソンによってコードされたタンパク質の発現を提供しないミスセンススキップの結果であり得る。
【0071】
個々のエクソンのスキッピングは、好ましくは、ACE2転写物のリーディングフレームを破壊し得る。これによって、タンパク質の機能不全または分解をもたらすミスセンスコード配列、またはC末端切断型タンパク質の翻訳またはナンセンスに媒介される崩壊によるmRNA分解の増加を生じる未熟終結コドンをもたらすナンセンスコード配列が導入され得る。
【0072】
個々のエクソンのスキッピングは、好ましくは、リーディングフレームをインタクトに保ち得る。これによって、好ましくは、内部切断型タンパク質の翻訳がもたらされることになる。切断型タンパク質またはACE2アイソフォームは、完全に切除された機能を有する場合もあり、低減した機能を有するかまたはデコイ受容体として作用する場合もある。
【0073】
好ましくは、これらの切断型、または未熟に終結したタンパク質は、膜保持および受容体内在化に関与する1つまたは複数の機能的ドメインを欠いている。
【0074】
例えば、エクソン14は、ACE2の非触媒的コレクトリン様ドメインの開始をコードし、このエクソンを除去することによって、可溶性ACE2タンパク質が生成され、これが、ACE2によって媒介されるコロナウイルス内在化の可溶性デコイまたは競合的アンタゴニストとして作用し得る可能性がある。切断型の、ナンセンスまたは未熟に終結したタンパク質は、他の因子への結合またはそれに対する結合部位をさらに欠く場合があり、その除去によって、ACE2タンパク質の、関連するシグナル伝達経路との相互作用の低下がもたらされる可能性がある。
【0075】
内部切断型タンパク質(すなわち、1つまたは複数のエクソンによってコードされたアミノ酸を欠くタンパク質)の存在が好ましい。ACE2触媒活性が阻害されると、身体がACE2タンパク質の全量の低下を補おうとするため、ACE2転写の増加に関して問題となり得る。対照的に、内部切断型タンパク質(好ましくは、完全なACE2タンパク質の特徴のうちの1つまたは複数を欠く)の存在は、転写の増加を妨げるのに十分であるはずだが、可溶性ACE2の増加および膜に結合したACE2タンパク質総量の低下によって、依然として治療的利益をもたらす。
【0076】
AONを使用する本発明のスキッピングプロセスは、個々のエクソンを排除(スキップ)することができるか、または2つもしくはそれより多いエクソンのスキッピングを一度でもたらすことができる。
【0077】
AONを使用する本発明のスキッピングプロセスは、1つまたは複数のエクソンを直接スキッピングするかまたはしないイントロン配列の保持を含み得る。
【0078】
本発明のAONは、ACE2遺伝子転写物におけるエクソン排除を誘導するために、選択された標的に結合することが可能な2つまたはそれより多いAONの組合せであってもよい。この組合せは、2つもしくはそれより多いAONのカクテルおよび/あるいは2つもしくはそれより多いAONまたは一緒に接合した2つもしくはそれより多いAONを含む構築物であってもよい。
【表3】
【0079】
本発明は、ACE2遺伝子転写物における選択的スプライシングをモジュレートするための方法であって、
本明細書に記載されたAONの1つまたは複数を提供して、オリゴマーを標的核酸部位に結合させるステップ
を含む、方法をさらに提供する。
【0080】
本発明のさらに別の態様によれば、配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9もしくは11、および/または表3のいずれかに示される配列およびそれらに相補的な配列からなる群から選択される核酸配列のDNA等価物を含むACE2プレmRNAの選択的スプライシングをモジュレートするための核酸配列標的が提供される。より好ましくは、AONの組合せは、好ましくは、配列番号6と9、または配列番号6と11の組合せである。
【0081】
コンセンサススプライス部位を完全にマスクするようAONを設計することによって、標的エクソンのスプライシングの変化は必ずしも生じ得ない。さらに、本発明者らは、AONを設計する場合に、AON自体のサイズまたは長さが、常に主要な要因である訳ではないことを発見した。いくつかの標的に関して、20塩基程度の短いAONは、いくつかのエクソンの包含を誘導することができ、ある特定の場合には、同じエクソンを対象とする他のより長い(例えば、25塩基)オリゴマーよりも効率的に誘導することができた。
【0082】
本発明者らは、スプライシングを再指示するために、AONによって遮断またはマスクされ得る標準的モチーフは何ら存在しないようであることも発見した。各遺伝子標的に対して、AONが設計され、それらの個々の有効性が経験的に評価されなければならないことが見出された。
【0083】
より詳細には、AONは、表3に示されるものから選択されてもよい。配列は、好ましくは、配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9または11、およびその組合せまたはカクテルのうちのいずれか1つまたは複数からなる群から選択される。AONの組合せは、好ましくは、配列番号6と9、または配列番号6と11の組合せである。これには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でこのような配列にハイブリダイズすることができる配列、それに対して相補的な配列、ACE2遺伝子転写物におけるプレmRNAプロセシングを有するかまたはモジュレートする修飾された塩基、修飾された主鎖、およびその機能的切断または伸長を含有する配列にハイブリダイズすることができる配列が含まれる。
【0084】
オリゴマーとDNA、cDNAまたはRNAとは、各分子における十分な数の対応する位置が、互いに水素結合し得るヌクレオチドによって占有されている場合に、互いに相補的である。よって、「特異的にハイブリダイズ可能な」および「相補的な」は、オリゴマーとDNA、cDNAまたはRNA標的との間に安定かつ特異的な結合が生じるような十分な程度の相補性または対合を示すために使用される用語である。AONの配列が、特異的にハイブリダイズ可能であるべきその標的配列の配列に対して100%相補的である必要がないことは、当技術分野において理解されている。化合物の標的DNAまたはRNA分子への結合が標的DNAまたはRNAの産物の正常な機能を妨害し、かつ特異的結合が望ましい条件下、すなわちin vivoアッセイまたは治療処置の場合には生理学的条件下、およびin vitroアッセイの場合にはアッセイが実施される条件下で、AONの非標的配列への非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する場合に、AONは特異的にハイブリダイズ可能である。
【0085】
選択的ハイブリダイゼーションは、低、中または高ストリンジェンシー下にあってもよいが、好ましくは高ストリンジェンシー条件下にある。当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが、塩基組成、相補鎖の長さおよびハイブリダイズする核酸間のヌクレオチド塩基のミスマッチ数に加えて、塩濃度、温度、または有機溶媒などの条件によって影響を受けることを認識するであろう。ストリンジェントな温度条件は、一般に、30℃を超える温度、典型的には37℃を超える温度、好ましくは45℃を超える温度、好ましくは少なくとも50℃、典型的には60℃~80℃またはそれより高い温度を含むことになる。ストリンジェントな塩の条件は、通常1000mM未満、典型的には500mM未満、好ましくは200mM未満となる。しかし、パラメーターの組合せは、いずれの単一のパラメーターの尺度よりもはるかにより重要である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、65℃で0.1×SSC(1×SSC=0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム pH7.0)である。よって、本発明のAONは、表3、または配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9または11に与えられる配列と選択的にハイブリダイズするオリゴマーを含んでもよい。より好ましくは、AONの組合せは、好ましくは、配列番号6と9、または配列番号6と11の組合せである。
【0086】
構造タンパク質におけるエクソンの末端でのコドンの配置はコドンの末端で必ずしも切れると限らなくてもよく、その結果、プレmRNAから1を超えるエクソンを欠失させて、mRNAのインフレームでの読取りを確保する必要性があってもよいことが認識されるであろう。このような状況では、それぞれが所望のエクソンおよび/またはイントロンの包含を誘導するのを担う様々な領域に向けられる複数のAONが、本発明の方法によって選択される必要があってもよい。所与のイオン強度およびpHでは、Tmは、標的配列の50%が相補的ポリヌクレオチドとハイブリダイズする温度である。このようなハイブリダイゼーションは、AONの標的配列に対する正確な相補性で生じるのと同様に、「おおよその(near)」または「実質的な」相補性で生じてもよい。
【0087】
典型的には、少なくとも約14ヌクレオチドのストレッチにわたって、AONのヌクレオチドとの、少なくとも約55%の同一性、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%および最も好ましくは少なくとも約90%、95%、98%または99%の同一性が存在する場合に、選択的ハイブリダイゼーションが生じることになる。記載されているような相同性比較の長さは、さらに長いストレッチにわたってもよく、ある特定の実施形態では、少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約12ヌクレオチド、より通常には少なくとも約20、多くの場合少なくとも約21、22、23または24ヌクレオチド、少なくとも約25、26、27または28ヌクレオチド、少なくとも約29、30、31または32ヌクレオチド、少なくとも約36またはそれより多いヌクレオチドのストレッチにわたることが多い。
【0088】
よって、本発明のAON配列は、好ましくは、本明細書の配列表に示される配列に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86、87、88、89または90%の相同性を有する。より好ましくは、少なくとも91、92、93、94、または95%、より好ましくは少なくとも96、97、98%、または99%の相同性が存在する。一般に、AONの長さが短いほど、選択的ハイブリダイゼーションを得るのに要する相同性は大きい。その結果、本発明のAONが約30未満のヌクレオチドからなる場合、同一性のパーセンテージは、本明細書の配列表で設定されるAONと比較して、75%を超える、好ましくは85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95%、96、97、98%または99%を超えることが好ましい。ヌクレオチド相同性の比較は、GCG Wisconsin BestfitプログラムまたはGAP(Deveraux et al., 1984, Nucleic Acids Research 12, 387-395)などの配列比較プログラムによって行われてもよい。このようにして、本明細書で引用されるものに類似するかまたは実質的に異なる長さの配列は、アライメント中にギャップを挿入することによって比較されてもよく、このようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0089】
本発明のAONは、標的配列との低下した相同性の領域、および正確な相同性の領域を有してもよい。オリゴマーが、その全長に対して正確な相同性を有することは必要ではない。例えば、オリゴマーは、標的配列と同一である少なくとも4または5塩基の連続ストレッチ、好ましくは標的配列と同一である少なくとも6または7塩基の連続ストレッチ、より好ましくは標的配列と同一である少なくとも8または9塩基の連続ストレッチを有してもよい。オリゴマーは、標的配列と同一である少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26塩基のストレッチを有してもよい。オリゴマー配列の残りのストレッチは、標的配列と断続的に同一であってもよく、例えば、残りの配列は、同一の塩基、それに続いて同一ではない塩基、それに続いて同一の塩基を有してもよい。あるいは(または同様に)、オリゴマー配列は、完全な相同性に満たないストレッチが散在したいくつかの同一配列のストレッチ(例えば、3、4、5または6塩基)を有してもよい。このような配列ミスマッチは、好ましくは、スプライススイッチング活性を全く喪失しないかまたはほとんど喪失しない。
【0090】
「モジュレートする(modulate)」または「モジュレートする(modulates)」という用語は、必要に応じて、定義された量および/または統計的に有意な量によって、1つまたは複数の定量可能なパラメーターを「増加させる」または「減少させる」ことを含む。「増加させる(increase)」もしくは「増加させること(increasing)」、「増強する(enhance)」もしくは「増強すること(enhancing)」、または「刺激する(stimulate)」もしくは「刺激すること(stimulating)」という用語は、一般に、AONがないことまたは対照化合物のいずれかによって引き起こされる応答に対して、細胞または対象においてより大きな生理的応答(すなわち、下流効果)を生じるかもしくは引き起こすものまたはAONまたは組成物の能力を指す。「減少させること(decreasing)」または「減少させる(decrease)」という用語は、一般に、AONがないことまたは対照化合物のいずれかによって引き起こされる応答に対して、細胞または対象において低下した生理的応答(すなわち、下流効果)を生じるかもしくは引き起こすものまたはAONまたは組成物の能力を指す。
【0091】
関連する生理的なまたは細胞性の応答(in vivoまたはin vitro)は当業者にとって明らかであり、それには、それを必要とする細胞、組織または対象における、ACE2をコードするプレmRNAにおける特定のエクソンの排除の増加、可溶性ACE2の増加または完全長ACE2タンパク質の発現の低下が含まれてもよい。「増加した(increased)」または「増強された(enhanced)」量は、典型的には、統計的に有意な量であり、AONがないこと(作用剤の非存在)または対照化合物によって産生される量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50倍またはそれより多い倍数(例えば、500倍、1000倍)(1との間の、および1を上回るあらゆる整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8を含む)である増加を含んでもよい。「低減する(reduce)」または「阻害する(inhibit)」という用語は、一般に、診断の技術分野における日常的技法によって測定される場合、本明細書に記載の疾患または状態の症状などの関連する生理的なまたは細胞性の応答を「低下させる(decrease)」1つまたは複数のAONまたは組成物の能力に関してもよい。関連する生理的なまたは細胞性の応答(in vivoまたはin vitro)は当業者にとって明らかであり、それには、コロナウイルス感染症、肺障害、慢性腎疾患、慢性心疾患、高血圧および糖尿病のなどの疾患の症状または病態の低減が含まれてもよい。応答における「低下」は、AONがないことまたは対照組成物によって生じる応答と比較して、統計的に有意であってもよく、それには、その間のすべての整数をふくむ、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の低下が含まれてもよい。
【0092】
AONの長さは、それがプレmRNA分子内での意図された位置に選択的に結合することが可能である限り、変化してもよい。このような配列の長さは、本明細書に記載の選択手順に従って決定することができる。一般に、AONは、長さ約10ヌクレオチドから長さ約50ヌクレオチドまでとなる。しかし、この範囲内の任意の長さのヌクレオチドが、本方法において使用され得ることが認識されるであろう。好ましくは、AONの長さは、10~40、10~35、15~30ヌクレオチド長、または20~30ヌクレオチド長、最も好ましくは約25~30ヌクレオチド長の間である。例えば、オリゴマーは、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長であってもよい。
【0093】
本明細書で使用される場合、「AON」は、ワトソン-クリックの塩基対合によって、RNAにおいて核酸塩基を標的配列にハイブリダイズさせて、標的配列内にオリゴヌクレオチド:RNAのヘテロ二重鎖を形成するヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログの線状配列を指す。「AON」、「AON」、「オリゴマー」および「アンチセンス化合物」という用語は、オリゴヌクレオチドを指すのに交換可能に使用することができる。環状サブユニットは、リボース糖もしくは別のペントース糖、またはある特定の実施形態では、モルホリノ基(以下のモルホリノオリゴヌクレオチドの説明を参照されたい)に基づいてもよい。企図されるのはまた、当技術分野で公知の他のアンチセンス作用剤の中でも、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、および2’-O-Me PTOオリゴヌクレオチドである。
【0094】
含まれるのは、(i)修飾された主鎖構造、例えば、天然に存在するオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに見られる標準的ホスホジエステル連結以外の主鎖、ならびに/または(ii)修飾された糖部分、例えば、リボース部分もしくはデオキシリボース部分ではなくモルホリノ部分を有するAONまたはオリゴヌクレオチドを含む、天然に存在しないAONまたは「オリゴヌクレオチドアナログ」である。オリゴヌクレオチドアナログは、標準的ポリヌクレオチド塩基に対するワトソン-クリック塩基対合による水素結合が可能な塩基をサポートし、ここで、アナログの主鎖は、オリゴヌクレオチドアナログ分子と標準的ポリヌクレオチド(例えば、一本鎖RNAまたは一本鎖DNA)における塩基との間で配列特異的な方式でこのような水素結合を許容する様式で塩基を提示する。好ましいアナログは、実質的に非荷電性のリン含有主鎖を有するものである。
【0095】
本発明の当業者は本発明の目的で使用可能であり得る好適な主鎖の他の形態に気付くであろうが、AONを生成するための1つの方法は、2’ヒドロキシリボース位のメチル化であり、ホスホロチオエート主鎖の組込みは一見RNAに類似するが、ヌクレアーゼ分解にはるかに抵抗性である分子を生じる。
【0096】
AONとの二重鎖形成中のプレmRNAの分解を回避するために、本方法で使用されるAONは、内因性RNase Hによる切断を最小限にするかまたは防ぐように適合させてもよい。RNase Hを含有する細胞内または粗抽出物のいずれかにおけるメチル化されていないオリゴマーによるRNAの処置は、プレmRNA:AON二重鎖の分解をもたらすので、この特性は非常に好ましい。このような分解を迂回するかまたは誘導しないことが可能である任意の形態の修飾されたAONを本発明の方法において使用することができる。ヌクレアーゼ抵抗性は、それが、部分的に不飽和の脂肪族炭化水素鎖と、カルボン酸基、エステル基、およびアルコール基を含む1つまたは複数の極性基または荷電基とを含むように、本発明のAONを修飾することによって達成されてもよい。
【0097】
RNAと二重鎖を形成する場合、細胞のRNase Hによって切断されないAONの例は、2’-O-Me誘導体である。このような2’-O-Meオリゴリボヌクレオチドは、細胞環境および動物組織において安定であり、RNAとのそれらの二重鎖はリボ-またはデオキシリボ-対応物よりも高いTm値を有する。あるいは、本発明のヌクレアーゼ抵抗性AONは、フッ素化された最後の3’末端ヌクレオチドの少なくとも1つを有してもよい。またあるいは、本発明のヌクレアーゼ抵抗性AONは、最後の3’末端ヌクレオチド塩基の少なくとも2つの間を連結するホスホロチオエート結合を有し、好ましくは最後の4つの3’末端ヌクレオチド塩基間を連結するホスホロチオエート結合を有する。
【0098】
スプライススイッチングの増加は、代替のオリゴヌクレオチド化学を用いて達成されてもよい。例えば、AONは、ホスホロアミデートまたはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO);PMO-X;PPMO;ペプチド核酸(PNA);ロックド核酸(LNA)、チオモルホリノ(TMO);およびアルファ-L-LNA、2’-アミノLNA、4’-メチルLNAおよび4’-O-メチルLNAを含む誘導体;エチレン架橋した核酸(ENA)およびそれらの誘導体;ホスホロチオエートオリゴマー;トリシクロ-DNAオリゴマー(tcDNA);トリシクロホスホロチオエートオリゴマー;2’-O-Me修飾オリゴマー(2’-O-Me);2’-O-メトキシエチル(2’-MOE);2’-フルオロ,2’-フルオロアラビノ(FANA);非ロックド核酸(UNA);熱安定性のねじれ挿入核酸(TINA)、ヘキシトール核酸(HNA);シクロヘキセニル核酸(CeNA);2’-アミノ(2’-NH2);2’-O-エチレンアミンまたはミックスマーとしてのもしくはギャップマーとしての前述のものの任意の組合せを含むリストから選択されてもよい。送達有効性をさらに改善するために、上述の修飾ヌクレオチドは、糖部分または核酸塩基部分に対して、脂肪酸/脂質/コレステロール/アミノ酸/炭水化物/多糖類/ナノ粒子などによりコンジュゲートされることが多い。これらのコンジュゲートされたヌクレオチド誘導体を使用して、エクソンスキッピング用のAONを構築することもできる。ヒトACE2遺伝子転写物のアンチセンスオリゴヌクレオチドに誘導されるスプライス修飾は、一般に、ホスホロチオエート主鎖においてオリゴリボヌクレオチド、PNA、2’-O-Meまたは2’-MOEのいずれかで修飾された塩基を使用している。2’-O-Me PTO AONは、カチオン性リポプレックスとして送達される場合にそれらのin vitroでの効率的取込みに起因して、一般に、オリゴの設計に使用される。代替の化学構造を使用して、本発明のAONを生成する場合、本明細書において提供される配列のウラシル(U)はチミン(T)によって置き換えられてもよく、またはリボヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドで置き換えられてもよい。
【0099】
本発明のAONの範囲内に含まれるのは、(i)修飾された主鎖構造、例えば、天然に存在するオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドにおいて見られる標準的なホスホジエステル連結以外の主鎖、ならびに/または(ii)修飾された糖部分、例えば、リボース部分もしくはデオキシリボース部分ではなくモルホリノ部分を有するオリゴマーを含む天然に存在しないオリゴマー、または「オリゴヌクレオチドアナログ」である。オリゴマーアナログは、標準的ポリヌクレオチド塩基に対するワトソン-クリック塩基対合による水素結合が可能な塩基をサポートし、ここで、アナログの主鎖は、オリゴマーアナログ分子と標準的ポリヌクレオチド(例えば、一本鎖RNAまたは一本鎖DNA)における塩基との間で配列特異的な方式でこのような水素結合を許容する様式で塩基を提示する。好ましいアナログは、実質的に非荷電性のリン含有主鎖を有するものである。
【0100】
RNase Hを活性化しないアンチセンスオリゴヌクレオチドは、公知の技法(例えば、米国特許第5,149,797号を参照されたい)に従って作製することができる。デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列であり得る、このようなAONは、その1つのメンバーとしてオリゴマーを含有する二重鎖分子へのRNase Hの結合を立体的に妨害するかまたは防止するいずれかの構造的修飾を単に含有し、その構造的修飾は二重鎖形成を実質的に妨害も破壊もしない。二重鎖形成に関与するオリゴマーの部分が、それへのRNase Hの結合に関与するこれらの部分と実質的に異なるため、RNase Hを活性化しない多数のAONが利用可能である。例えば、このようなAONは、ヌクレオチド間を架橋するリン酸残基の少なくとも1つ、またはすべてが、ホスホン酸メチル、メチルホスホロチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、ボラノホスフェート、アミド連結およびホスホロアミデートなどの修飾されたリン酸であるオリゴマーであってもよい。例えば、ヌクレオチド間を架橋するリン酸残基が1つおきに、記載されているように修飾されてもよい。別の非限定的な例では、このようなAONは、ヌクレオチドの少なくとも1つ、またはすべてが、2’低級アルキル部分(例えば、C1~C4の線状または分枝状の、飽和または不飽和のアルキル、例えばメチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、およびイソプロピルなど)を含有する分子である。例えば、ヌクレオチドが1つおきに、記載されているように修飾されてもよい。
【0101】
上記AONは本発明のAONの好ましい形態である一方で、本発明は、以下に記載されているようなオリゴマー模倣体を含むが、これらに限定されない他のオリゴマーアンチセンス分子を含む。
【0102】
本発明において有用な好ましいAONの具体例には、修飾された主鎖または非天然のヌクレオシド間連結を含有するオリゴマーが含まれる。本明細書で定義されているように、修飾された主鎖を有するオリゴマーには、主鎖中にリン原子を保持するもの、および主鎖中にリン原子を有さないものが含まれる。本明細書の目的として、および当技術分野で参照されることがあるように、それらのヌクレオシド間の主鎖中にリン原子を有さない修飾されたオリゴマーもAONであると考えることができる。
【0103】
他の好ましいオリゴマー模倣体では、ヌクレオチド単位の糖とヌクレオシド間連結の両方、すなわち主鎖が、新規の基で置き換えられる。適当な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために塩基単位が維持される。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴマー模倣体であるこのようなオリゴマー化合物の1つは、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴマーの糖主鎖は、アミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置き換えられる。核酸塩基は保持され、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される。
【0104】
別の好ましい化学構造は、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)オリゴマー化合物であり、これは任意の公知のヌクレアーゼまたはプロテアーゼによって分解されない。これらの化合物は非荷電性であり、RNA鎖に結合した場合にRNase H活性を活性化せず、in vivo投与の後に持続したスプライスモジュレーションを発揮することが示されている(Summerton and Weller, Antisense Nucleic Acid Drug Development, 7, 187-197)。
【0105】
修飾されたオリゴマーは、1つまたは複数の置換された糖部分を含有してもよい。オリゴマーは、核酸塩基(当技術分野では、単に「塩基」と呼ばれることが多い)の修飾または置換を含んでもよい。ある特定の核酸塩基は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに特に有用である。これらには、5-置換されたピリミジン、6-アザピリミジン、ならびに2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含むN-2、N-6およびO-6置換されたプリンが含まれる。5-メチルシトシン置換は、さらにより詳細には2’-MOE修飾と組み合わせた場合に、0.6~1.2℃で核酸二重鎖の安定性を高めることが示されている。
【0106】
本発明のオリゴマーの別の修飾は、オリゴマーの活性、細胞分布または細胞への取込みを増強する1つもしくは複数の部分またはコンジュゲートをオリゴマーに化学的に連結させることに関与する。このような部分としては、コレステロール部分、コール酸などの脂質部分、チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、ミリスチル、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
細胞透過性ペプチドをホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーに添加して、細胞の取込みおよび核局在化を増強した。Jearawiriyapaisarn et al. (2008), Mol. Ther. 16 9, 1624-1629において示されるように、様々なペプチドタグが取込みの効率および標的組織の特異性に影響を与えることが示されている。
【0108】
所与の化合物におけるすべての位置について均一に修飾される必要はなく、実際に、1を超える前述の修飾は、単一の化合物に、またはオリゴマー内の単一ヌクレオシドにさえも、組み込まれてもよい。本発明は、キメラ化合物であるAONも含む。本発明の文脈における「キメラ」AONまたは「キメラ」は、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位、すなわち、オリゴマー化合物の場合にはヌクレオチドで構成される2つまたはそれより多い化学的に別個の領域を含有するAON、特にオリゴマーである。これらのオリゴマーは、典型的には、オリゴマーまたはAONにヌクレアーゼ分解に対する増加した抵抗性、増加した細胞取込み、および標的核酸に対する増加した結合親和性のための追加の領域を付与するようにオリゴマーが修飾される少なくとも1つの領域を含有する。
【0109】
当技術分野における日常的技法に従って、AONおよびそのバリアントの活性をアッセイすることができる。例えば、調査されるRNAおよびタンパク質のスプライス形態および発現レベルは、転写された核酸またはタンパク質のスプライス形態および/または発現を検出するための多種多様な周知の方法のいずれかによって評価されてもよい。このような方法の非限定的な例としては、RNAのスプライス形態のRT-PCRとその後のPCR産物のサイズ分離、核酸のハイブリダイゼーション方法、例えば、ノーザンブロットおよび/または核酸アレイの使用;核酸増幅方法;タンパク質の検出のための免疫学的方法;タンパク質の精製方法;ならびにタンパク質の機能または活性のアッセイが挙げられる。
【0110】
RNAの発現レベルは、細胞、組織または生物からmRNA/cDNA(すなわち、転写されたポリヌクレオチド)を調製することによって、およびアッセイされる核酸、またはその断片の相補鎖である参照ポリヌクレオチドとmRNA/cDNAをハイブリダイズさせることによって評価するこができる。相補的ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに先立って、種々のポリメラーゼ連鎖反応またはin vitro転写方法のいずれかを使用して、cDNAを必要に応じて増幅することができ、好ましくは、これは増幅されない。転写物の発現レベルを評価するために、1つまたは複数の転写物の発現を、定量PCRを使用して検出することもできる。
【0111】
本発明は、ACE2遺伝子転写物のAONに誘導されるスプライススイッチング、臨床的に関連するオリゴマー化学構造および送達系を提供して、ACE2のスプライス操作を治療レベルの対象とする。ACE2遺伝子の転写からの完全長ACE2 mRNA、ひいては完全長ACE2タンパク質の量の実質的な低下は、
a)(i)イントロン-エンハンサー標的モチーフ、(ii)AONの長さとオリゴマーカクテルの開発、(iii)化学構造の選択、および(iv)オリゴマー送達を増強するための細胞透過性ペプチド(CPP)の添加という実験的な評価による、線維芽細胞の細胞株を使用するin vitroでのオリゴマーの洗練;ならびに
b)1つまたは複数のエクソンが欠けているACE2転写物を生成するための新規のアプローチの詳細な評価
によって達成される。
【0112】
このように、本明細書では、ACE2プレmRNAの選択的スプライシングが、特定のAONによりモジュレートされ得ることが実証される。このようにして、完全長(ウイルスの内在化を可能にする)ACE2タンパク質の量の機能的に有意な低下を得ることができ、および/または可溶性デコイ-受容体ACE2アイソフォームまたは他のデコイ受容体の増加を達成することができ、それによって、コロナウイルス感染症、肺疾患、慢性心疾患、慢性腎疾患、高血圧および糖尿病などの疾患に関連する重度の病態を低減することができる。
【0113】
本発明に従って使用されるAONは、固相合成の周知の技法によって好都合に作製されてもよい。このような合成のための機器は、例えば、Applied Biosystems(Foster City、Calif.)を含むいくつかの供給業者によって販売されている。修飾された固形支持体上でオリゴマーを合成する1つの方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0114】
当技術分野で公知のこのような合成のためのいずれかの他の手段が、追加的にまたは代替として用いられてもよい。類似の技法を使用して、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などのオリゴマーを調製することは周知である。このような自動化された一実施形態では、ジエチル-ホスホルアミダイトが出発材料として使用され、Beaucage, et al., (1981) Tetrahedron Letters, 22:1859-1862に記載されたように合成されてもよい。
【0115】
本発明のAONは、in vitroで合成され、生物起源のアンチセンス組成物、またはAONのin vivo合成を対象とするように設計された遺伝子ベクター構築物を含まない。本発明の分子は、取り込み、分布および/または吸収を補助する他の分子、分子構造または化合物の混合物、例としては、リポソーム、受容体が標的とする分子、経口製剤、直腸製剤、局所製剤または他の製剤と混合されても、封入されても、コンジュゲートされてもよく、またはそうでなければそれに関連してもよい。
【0116】
本発明のAONは、予防薬または治療薬として使用することもでき、これは、疾患の処置の目的で利用されてもよい。したがって、一実施形態では、本発明は、ACE2プレmRNAにおける選択された標的に結合し、本明細書に記載されている効率的かつ一貫したエクソンスキッピングを誘導し、治療有効量で、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合される、AONを提供する。
【0117】
したがって、本発明は、対象におけるACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するための医薬、予防用または治療用組成物であって、
a)本明細書に記載されているような1つまたは複数のAON、ならびに
b)1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤
を含む、組成物を提供する。
【0118】
好ましくは、ACE2発現に関連する疾患は、コロナウイルス感染症;心血管障害;呼吸器障害、筋骨格、腎臓障害、および内分泌障害を含むリストから選択される。
【0119】
本発明の一形態では、ACE2関連障害は、以下の群:重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス、SARS、SARS-2、HNL63-CoV(NL63-S)およびWIV1-CoVから選択されるコロナウイルス感染症である。
【0120】
本発明の一形態では、ACE2関連障害は、以下の群:アテローム性動脈硬化、虚血性心疾患、心筋炎、心内膜炎、心筋症、急性リウマチ熱、慢性リウマチ性心疾患(chronic rhematic heart disease)、脳血管疾患/卒中、心不全、血管石灰化、末梢血管疾患、およびリンパ管炎から選択される心血管障害である。
【0121】
本発明の一形態では、ACE2関連障害は、呼吸器(肺)障害であり、以下の群:急性上気道感染症、鼻炎、上咽頭炎、副鼻腔炎、喉頭炎、インフルエンザおよび肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、肺気腫、外部因子による慢性肺疾患、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、肺好酸球増多症、および胸膜炎、肺の外傷および肺の傷害、外傷または手術からの回復から選択される。
【0122】
本発明の一形態では、ACE2関連障害は、腎臓障害であり、以下の群:糸球体腎炎、腎炎、糖尿病性腎疾患、間質性腎炎、閉塞性および逆流性腎症、急性腎不全、および慢性腎疾患から選択される。
【0123】
本発明の一形態では、ACE2関連障害は、以下の群:真性糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能障害および甲状腺炎から選択される内分泌障害である。
【0124】
組成物は、本発明の所望のAONのそれぞれを、約1nM~1000nM含んでもよい。好ましくは、組成物は、本発明のAONのそれぞれを、約1nM~500nM、10nM~500nM、50nM~750nM、10nM~500nM、1nM~100nM、1nM~50nM、1nM~40nM、1nM~30nM、1nM~20nM、最も好ましくは1nM~10nMの間含んでもよい。
【0125】
組成物は、本発明の所望のAONのそれぞれを、約1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、20nm、50nm、75nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nmまたは1000nm含んでもよい。
【0126】
本発明は、ACE2発現に関連する疾患または病態などの疾患の症状の予防または治療処置、防止または改善を補助するように適合させた1つまたは複数のAONを、対象への送達に好適な形態でさらに提供する。
【0127】
「薬学的に許容される」という語句は、生理的に忍容性であり、かつ対象に投与された場合に、急性胃蠕動などのようなアレルギー反応または類似する有害反応を典型的には生じない分子実体および組成物を指す。「担体」という用語は、化合物が共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような医薬担体は、水、および石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などの無菌の液体であり得る。水または生理食塩水溶液ならびに水性デキストロースおよびグリセロールの溶液は、好ましくは、特に注射溶液のための担体として用いられる。好適な医薬担体はMartin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, (1990)において記載されている。
【0128】
本発明のより特別な形態では、薬学的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体と一緒に、治療有効量の本発明の1つまたは複数のAONを含む医薬組成物が提供される。このような組成物は、様々な緩衝剤内容物(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の希釈剤、ならびに界面活性剤および可溶化剤(例えば、Tween(登録商標) 80、Polysorbate 80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含む。材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのようなポリマー化合物の微粒子調製物中、またはリポソーム中に組み込まれてもよい。ヒアルロン酸も使用されてもよい。このような組成物は、本発明のタンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、in vivo放出の速度、およびin vivoクリアランスの速度に影響を与え得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990, Mack Publishing Co., Easton, PA 18042) pages 1435-1712を参照されたい。組成物は、液体形態で調製されてもよく、または凍結乾燥形態などの乾燥粉末であってもよい。
【0129】
本発明に従って提供される医薬組成物が、当技術分野で公知の任意の手段によって投与されてもよいことが認識されるであろう。好ましくは、投与のための医薬組成物は、注射によって、経口的に、局所的にまたは肺もしくは鼻の経路によって投与される。適当な経路は、処置下の対象の状態に対して適宜、当業者によって決定されてもよい。
【0130】
ある特定の実施形態では、本開示のAONは、肺または鼻の経路(例えば、AONを組み込んだ霧状化生理食塩水によって)で送達されてもよい。ACE2 mRNAの高レベルの内因性発現は、肺において見られ、気道を介してアクセス可能である。吸入されたオリゴヌクレオチドは、呼吸器疾患に対して出現した治療モダリティである。気道は、独特に、双性イオン脂質から主に構成される肺サーファクタントで裏打ちされている。これらのサーファクタント脂質は、呼吸器のpHにおいてカチオン性を有する。アニオン性オリゴヌクレオチドが吸入される場合、これらは、サーファクタントによって吸着される傾向があり、気管上皮細胞および肺胞上皮細胞によって肺細胞中に効率的に取り込まれることが仮定された再製剤化された粒子をもたらす。注目すべきことに、AONは、噴霧化プロセスに耐えることができることが示されている。
【0131】
ある特定の実施形態では、AONは、より好ましくは、投与の静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内または皮下の経路によって送達される。血管循環または血管外循環、血液系またはリンパ系、および脳脊髄液は、AONが導入されてもよい一部の非限定的な部位である。
【0132】
ある特定の実施形態では、直接的なCNSへの送達が用いられてもよく、例えば、脳内、心室または髄腔内投与が、投与経路として使用されてもよい。
【0133】
局所投与用の製剤としては、本開示のオリゴマーが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤および表面活性物質などの局所送達剤との混合物中にあるものが挙げられる。脂質およびリポソームには、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が含まれる。局所投与または他の投与については、本開示のオリゴマーはリポソーム内に封入されてもよく、またはそれとの、特にカチオン性リポソームとの複合体を形成してもよい。あるいは、オリゴマーは、脂質、特にカチオン性脂質と複合体形成されてもよい。脂肪酸およびエステル、その薬学的に許容される塩、ならびにそれらの使用は、米国特許第6,287,860号および/または1999年5月20日に出願された米国特許出願第09/315,298号においてさらに記載されている。
【0134】
ある特定の実施形態では、本開示のAONは、経皮法(例えば、必要に応じてリポソーム内にパッケージングされたこのようなAONによる、AONの、例えば、エマルションへの組込みによる)によって送達することができる。送達のこのような経皮法およびエマルション/リポソームに媒介される方法は、当技術分野におけるAONの送達について、例えば、米国特許第6,965,025号において記載されている。
【0135】
本明細書に記載のAONは、埋め込み可能なデバイスを介して送達されてもよい。このようなデバイスの設計は、当技術分野で認識されたプロセスであり、例えば合成インプラントの設計は、例えば米国特許第6,969,400号において記載されている。
【0136】
経口投与用の組成物および製剤としては、粉末または顆粒、微粒子、ナノ粒子、水または非水性媒体における懸濁液または溶液、カプセル剤、ゲルカプセル剤、サシェ、錠剤またはミニ錠剤が挙げられる。増粘剤、風味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい場合もある。経口製剤は、本開示のオリゴマーが、1つまたは複数の浸透増強剤、表面活性物質およびキレート剤と併せて投与されるものである。表面活性物質としては、脂肪酸および/またはそのエステルもしくは塩、胆汁酸および/またはその塩が挙げられる。胆汁酸/塩および脂肪酸ならびにそれらの使用は、米国特許第6,287,860号においてさらに記載されている。一部の実施形態では、本開示は、浸透増強剤の組合せ、例えば胆汁酸/塩と組み合わせた脂肪酸/塩を提供する。例示的な組合せは、ラウリン酸のナトリウム塩、カプリン酸およびUDCAである。さらなる浸透増強剤としては、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルが挙げられる。本開示のオリゴマーは、噴霧される乾燥粒子を含む顆粒形態で経口的に送達されてもよく、または複合体化されて微粒子またはナノ粒子を形成してもよい。オリゴマー複合体形成剤およびそれらの使用は、米国特許第6,287,860号においてさらに記載されている。オリゴマーのための経口製剤およびそれらの調製物は、US6,887,906、1999年5月20日に出願された09/315,298および/またはUS20030027780において詳細に記載されている。
【0137】
非経口、髄腔内または脳室内投与のための組成物および製剤は、緩衝液、希釈剤ならびに以下に限定されないが、浸透増強剤、担体化合物および他の薬学的に許容される担体または賦形剤などの他の好適な添加剤を含有してもよい無菌の水溶液を含んでもよい。
【0138】
治療上有用な量のAONの送達は、以前公開された方法によって達成されてもよい。例えば、AONの細胞内送達は、AONと有効量のブロックコポリマーの混合物を含む組成物を介してもよい。この方法の例は、米国特許出願US20040248833において記載されている。AONの核への送達の他の方法は、Mann CJ et al. (2001) Proc, Natl. Acad. Science, 98(1) 42-47、およびGebski et al. (2003) Human Molecular Genetics, 12(15): 1801-1811において記載されている。発現ベクターによって、ネイキッドDNAまたは脂質担体と複合体形成したDNAのいずれかとして、核酸分子を細胞内に導入する方法は、US6,806,084において記載されている。
【0139】
コロイド分散系においてAONを送達することが望ましい場合がある。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および水中油エマルションを含む脂質ベースの系、ミセル、混合ミセル、およびリポソームまたはリポソーム製剤が含まれる。これらのコロイド分散系は、治療用医薬組成物の製造において使用することができる。
【0140】
リポソームは人工膜小胞であり、これは、in vitroおよびin vivoでの送達ビヒクルとして有用である。これらの製剤は、正味のカチオン性、アニオン性、または中性の電荷特性を有してもよく、in vitro、in vivoおよびex vivoの送達法について有用な特徴を有してもよい。大きな単層小胞が大きな高分子を含有する水性緩衝剤の実質的なパーセンテージを封入できることが示されている。RNAおよびDNAは、水性内部中に封入することができ、生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる(Fraley, et al., Trends Biochem. Sci. 6:77, 1981)。
【0141】
リポソームが効率的な遺伝子移入ビヒクルであるために、以下の特徴が存在するべきである:(1)それらの生物活性を損なわないようにしながら高効率で目的のAONを封入すること;(2)非標的細胞と比較して、優先的かつ実質的な標的細胞への結合;(3)標的細胞の細胞質への小胞の水性内容物の高効率での送達;および(4)遺伝情報の正確かつ効果的な発現(Mannino, et al., Biotechniques, 6:682, 1988)。通常、リポソームの組成は、通常ステロイド、特にコレステロールと組み合わせた、リン脂質、特に相転移温度の高いリン脂質の組合せである。他のリン脂質または他の脂質が使用されてもよい。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、および二価のカチオンの存在に左右される。カチオン性リポソームは、負に荷電したDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成すると考えられている正に荷電したリポソームである。pHに感受性であるか、または負に荷電しているリポソームは、それと複合体形成するのではなく、DNAを捕捉すると考えられる。カチオン性リポソームと非カチオン性リポソームの両方が、DNAを細胞に送達するために使用されている。
【0142】
リポソームには、本明細書で使用される場合、リポソーム中に組み込まれた場合に、特殊化された脂質を欠いているリポソームに対して増強された循環寿命を生じる1つまたは複数のこのように特殊化された脂質を含むリポソームを指す用語である「立体的に安定化された」リポソームも含まれる。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、1つまたは複数の糖脂質を含むか、またはポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つまたは複数の親水性ポリマーとの誘導体であるものである。リポソームおよびそれらの使用は、US6,287,860においてさらに記載されている。
【0143】
本明細書に記載のAONは、埋め込み可能なデバイスを介して送達されてもよい。このようなデバイスの設計は、例えば、その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,969,400号に記載された、例えば、合成インプラント設計に関する当技術分野で認識されたプロセスである。
【0144】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野で認識された技法(例えば、トランスフェクション、電気穿孔、融合、リポソーム、コロイド状ポリマー粒子ならびにウイルスベクターおよび非ウイルスベクターならびに当技術分野で公知の他の手段)を使用して細胞内に導入することができる。選択される送達方法は、処置される細胞および細胞の位置に少なくとも左右され、当業者にとって明らかであろう。例えば、局在化は、表面にリポソームを対象とする特異的マーカーを有するリポソーム、標的細胞を含有する組織への直接注射、特異的な受容体に媒介される取込みなどによって達成され得る。
【0145】
当技術分野で公知のように、AONは、例えば、リポソームに媒介される取込み、脂質コンジュゲート、ポリリシンに媒介される取込み、ナノ粒子に媒介される取込み、および受容体に媒介されるエンドサイトーシス、ならびに送達の追加の非エンドサイトーシス方式、例えば微量注入、透過処理(例えば、ストレプトリジン-O透過処理、アニオン性ペプチド透過処理)、電気穿孔、および当技術分野で公知である様々な非侵襲性非エンドサイトーシスの送達方法(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるDokka and Rojanasakul, Advanced Drug Delivery Reviews 44, 35-49を参照のこと)に関与する方法を使用して送達されてもよい。
【0146】
AONを他の薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて、医薬組成物を生成してもよい。好適な担体および希釈剤としては、等張生理食塩水溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。組成物は、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口、または経皮の投与のために製剤化されてもよい。
【0147】
熟練した開業医は、最適な投与経路ならびにいずれかの特定の動物および状態に対するいずれかの投与量を容易に決定することができるため、記載された投与経路はガイドとして意図されるにすぎない。
【0148】
in vitroとin vivoの両方で、機能的な新しい遺伝物質を細胞内に導入するための複数のアプローチが試みられている(Friedmann (1989) Science, 244:1275-1280)。これらのアプローチには、発現される遺伝子の修飾レトロウイルスへの組込み(Friedmann (1989) 上掲;Rosenberg (1991) Cancer Research 51(18), suppl.: 5074S-5079S);非レトロウイルスベクターへの組込み(Rosenfeld, et al. (1992) Cell, 68:143-155;Rosenfeld, et al. (1991) Science, 252:431-434);またはリポソームを介した異種のプロモーター/エンハンサーエレメントに連結された導入遺伝子の送達(Friedmann (1989)、上掲;Brigham, et al. (1989) Am. J. Med. Sci., 298:278-281;Nabel, et al. (1990) Science, 249:1285-1288;Hazinski, et al. (1991) Am. J. Resp. Cell Molec. Biol., 4:206-209;およびWang and Huang (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 84:7851-7855);リガンド特異的なカチオン系輸送システムへの接続(Wu and Wu (1988) J. Biol. Chem., 263:14621-14624)またはネイキッドDNA、発現ベクターの使用(Nabel et al. (1990)、上掲);Wolff et al. (1990) Science, 247:1465-1468)が含まれる。組織への導入遺伝子の直接注入は局在化された発現のみを生じる(Rosenfeld (1992) 上掲);Rosenfeld et al. (1991) 上掲;Brigham et al. (1989) 上掲;Nabel (1990) 上掲;およびHazinski et al. (1991) 上掲)。Brighamらのグループ(Am. J. Med. Sci. (1989) 298:278-281およびClinical Research (1991) 39 (abstract))は、DNAリポソーム複合体の静脈内または気管内の投与のいずれかに続くマウスの肺のみのin vivoトランスフェクションを報告している。ヒトの遺伝子療法の手順の総説の例は:Anderson, Science (1992) 256:808-813;Barteau et al. (2008), Curr Gene Ther; 8(5):313-23;Mueller et al. (2008). Clin Rev Allergy Immunol; 35(3):164-78;Li et al. (2006) Gene Ther., 13(18):1313-9;Simoes et al. (2005) Expert Opin Drug Deliv; 2(2):237-54である。
【0149】
本発明のAONは、ヒトを含む動物への投与の際、生物学的に活性なその代謝物または残基を(直接的または間接的に)提供することが可能である、任意の薬学的に許容される塩、エステル、またはこのようなエステルの塩、または任意の他の化合物を包含する。従って、例として、本開示はまた、本発明の化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容される塩、このようなプロドラッグの薬学的に許容される塩、および他の生物学的等価物にも向けられる。
【0150】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生理学的かつ薬学的に許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物活性を保持し、かつ望ましくない毒性効果をそれに付与しない塩を指す。オリゴマーについては、薬学的に許容される塩の好ましい例としては、以下に限定されないが、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムなどのカチオン、スペルミンおよびスペルミジンなどのポリアミンなどと共に形成される塩;(b)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などと共に形成される酸付加塩;(c)有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などのような有機酸と共に形成される塩、ならびに(d)塩素、臭素およびヨウ素などの元素アニオンから形成される塩が挙げられる。本発明の医薬組成物は、局所的または全身的な処置が望ましいかどうかに応じて、および処置される領域に応じて、いくつかの方法で投与されてもよい。投与は、局所(眼膜および粘膜、ならびに直腸への送達を含む)、例えば粉末もしくはエアロゾルの吸入もしくは吹き込み(ネブライザー、気管内、鼻内、表皮および経皮によるものを含む)による肺、経口または非経口であってもよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内の注射もしくは点滴;または頭蓋内、例えばクモ膜下もしくは脳室内の投与が含まれる。少なくとも1つの2’-MOE修飾を伴うオリゴマーは、経口投与に特に有用であると考えられる。好ましくは、AONは、肺経路を介して送達される。
【0151】
単位剤形で好都合に提示され得る本発明の医薬製剤は、製薬業界で周知の従来の技法に従って調製することができる。このような技法には、有効成分を医薬担体または医薬賦形剤と結び付けるステップが含まれる。一般に、製剤は、有効成分を液体担体または微細に分割した固体担体またはその両方と均一にかつ密接に結び付け、次いで必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0152】
一実施形態では、AONは、少なくとも200~400nMのAONのピーク血中濃度をもたらすのに有効な量および方法で投与される。典型的には、1回または複数回用量のAONが、一般に、一定の間隔で約1~2週間の期間投与される。経口投与に好ましい用量は、70kg当たり約1mg~1000mgのオリゴマーである。一部の場合には、対象当たり1000mgを超えるオリゴマーの用量が必要であり得る。i.v.投与では、好ましい用量は、70kg当たり約0.5mg~1000mgのオリゴマーである。静脈内または皮下の投与では、AONは、約120mg/kgの投薬量で毎日または毎週投与されてもよい。
【0153】
AONは、一定の間隔で、短い期間、例えば2週間またはそれより短い期間、毎日投与されてもよい。しかし、一部の場合には、オリゴマーは、より長い期間にわたって断続的に投与される。投与は、抗生剤の投与または他の治療処置が続いてもよく、またはそれと同時であってもよい。処理レジメンは、処置下の対象のイムノアッセイ、他の生化学検査および生理的検査の結果に基づいて、示されるように調整されてもよい(用量、頻度、経路など)。
【0154】
投薬は、処置される疾患状態の重症度および応答性に依存し、処置の経過は、数日から数カ月まで、または治癒が達成されるまで、または疾患状態の縮小が達成されるまで続く。最適な投薬スケジュールは、対象の体内での薬物蓄積の測定から算出することができる。当業者は、最適な投薬量、投薬方法および繰り返し率を容易に決定することができる。最適な投薬量は、個々のオリゴマーの相対的効力に応じて変化してもよく、一般に、in vitroおよびin vivoの動物モデルにおいて有効であることが判明したEC50に基づいて推定することができる。一般に、投薬量は、体重1kg当たり0.01μg~100gであり、1日ごと、1週間ごと、1カ月ごともしくは1年ごとに1回もしくは複数回、またはさらには2~20年ごとに1回与えられてもよい。当業者は、体液または組織における薬物の測定された滞留時間および濃度に基づいて、投薬のための繰り返し率を容易に推定することができる。処置の成功に続いて、疾患状態の再発を防ぐために対象に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、その際、オリゴマーは、体重1kg当たり0.01μg~100gの範囲に及ぶ維持用量で、1日1回または複数回から20年ごとに1回までで投与される。
【0155】
本発明のAONを使用する有効なin vivoでの処置レジメンは、投与の持続時間、用量、頻度および経路、ならびに処置下の対象の状態に従って変化してもよい(すなわち、局在化したかまたは全身性の感染に応じた投与に対する予防的投与)。したがって、このようなin vivoでの治療は、最適な治療結果を達成するために、処置下の特定の種類の障害に適する検査によるモニタリング、および用量または処置レジメンにおいて対応する調整を必要とすることが多くなる。
【0156】
処置は、例えば、当技術分野で公知の疾患の一般的指標によってモニターされてもよい。in vivoで投与された本発明のAONの有効性は、AONの投与に先立って、その間におよびその後で、対象から採取された生体試料(組織、血液、尿など)から決定されてもよい。このような試料のアッセイとしては、(1)当業者に公知の手順、例えば電気泳動ゲル移動アッセイを使用する標的配列および非標的配列とのヘテロ二重鎖形成の有無のモニタリング;(2)RT-PCR、ノーザンブロッティング、ELISAまたはウエスタンブロッティングなどの標準的技法によって決定される参照の正常mRNAまたはタンパク質と比較した突然変異体のmRNAの量のモニタリングが挙げられる。
【0157】
核内のオリゴマー送達は、AONにとって主要な課題である。異なる細胞透過性ペプチド(CPP)は異なる条件および細胞系において種々の程度にPMOを局在化させ、新規のCPPは標的細胞にPMOを送達するそれらの能力について、本発明者らによって評価されている。CPPまたは「細胞の取込みを増強するペプチド部分」という用語は、交換可能に使用され、「輸送ペプチド」、「担体ペプチド」、または「ペプチド形質導入ドメイン」とも呼ばれるカチオン性細胞透過性ペプチドを指す。本明細書で示されているペプチドは、所与の細胞培養集団の細胞の約または少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の範囲内で細胞透過を誘導する能力を有し、全身性投与の際に、in vivoの複数の組織内での高分子の転位を可能にする。CPPは、当該技術で周知であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2010/0016215号において開示されている。
【0158】
したがって、本発明は、治療用医薬組成物を製造するために細胞透過性ペプチドと組み合わせた本発明のAONを提供する。
【0159】
本発明のまたさらなる態様によれば、AONベースの治療における使用のための、本明細書に記載されている1つまたは複数のAONが提供される。好ましくは、治療は、ACE2発現に関連する状態のためのものである。より好ましくは、ACE2発現に関連する状態のための治療は、コロナウイルス感染症、肺障害、慢性腎疾患、慢性心疾患、高血圧および糖尿病から選択される疾患に関する治療である。
【0160】
より詳細には、AONは、表3に列挙されたAONおよび/または配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9もしくは11およびその組合せまたはカクテルのうちのいずれか1つまたは複数からなる群から選択されてもよい。より好ましくは、AONは、配列番号6および9または配列番号6および11である。これには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、このような配列とハイブリダイズすることができる配列、それに対して相補的な配列、ACE2遺伝子転写物におけるプレmRNAのプロセッシング活性を有するかまたはそれをモジュレートする修飾された塩基、修飾された主鎖、およびその機能的な切断または伸長を含有する配列が含まれる。
【0161】
本発明は、選択された標的に結合してACE2遺伝子転写物におけるエクソンの排除を誘導することが可能な2つまたはそれより多いAONの組合せにまでも及ぶ。組合せは、AONベースの治療における使用のための、2つもしくはそれより多いAONのカクテル、2つもしくはそれより多いAONを含む構築物または一緒に接合した2つもしくはそれより多いAONであってもよい。AONの組合せは、好ましくは、配列番号6と9の組合せ、または配列番号6と11の組合せである。
【0162】
本発明は、ACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善するための方法であって、
a)本明細書に記載された1つもしくは複数のAONまたは1つもしくは複数のAONを含む医薬組成物の有効量を対象に投与するステップ
を含む、方法を提供する。
【0163】
さらに、本発明は、コロナウイルス感染症、肺障害、慢性腎疾患、慢性心疾患、高血圧および糖尿病の影響を処置、防止または改善するための方法であって、
a)本明細書に記載された1つもしくは複数のAONまたは1つもしくは複数のAONを含む医薬組成物の有効量を対象に投与するステップ
を含む、方法を提供する。
【0164】
好ましくは、治療法を使用して、エクソンスキッピング戦略を介してACE2タンパク質の可溶性レベルを増加させる。ACE2のレベルの増加は、好ましくは、ACE2遺伝子転写物またはその一部においてプレmRNAのスプライシングを修飾することにより転写物のレベルをモジュレートすることによって達成される。
【0165】
可溶性ACE2の増加は、好ましくは、コロナウイルス感染症、肺障害、慢性腎疾患、慢性心疾患、高血圧および糖尿病などのACE2関連状態または病態の症状の量、持続期間または重症度の低下をもたらす。
【0166】
本明細書で使用される場合、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)または細胞の「処置」は、個体または細胞の自然経過を変更する試みにおいて使用される任意の種の医療介入である。処置は、医薬組成物の投与を含むがこれに限定されず、予防的に、または病的事象の開始もしくは病原因子との接触に続いてのいずれかで実施されてもよい。含まれるのはまた、処置される疾患もしくは状態の進行速度を低下させること、その疾患もしくは状態の発症を遅らせること、またはその発症の重症度を低減することを対象とし得る「予防的」処置である。「処置」または「予防」は、必ずしも疾患または状態、またはそれらの関連する症状の完全な撲滅、治癒または予防を示さない。
【0167】
本発明の別の態様によれば、ACE2発現に関連する疾患のモジュレーションまたは制御のための医薬の製造における、本明細書に記載された1つまたは複数のAONの使用が提供される。
【0168】
本発明は、ACE2発現に関連する疾患の処置のための医薬の製造のための、本明細書に記載された精製および単離されたAONの使用も提供する。
【0169】
ACE2発現に関連する疾患の影響を処置、防止または改善する医薬の製造のための、本明細書に記載された精製および単離されたAONの使用が提供される。
【0170】
好ましくは、ACE2関連病態または疾患は、コロナウイルス感染症、肺障害、慢性腎疾患、慢性心疾患、高血圧および糖尿病である。
【0171】
本発明は、そのまたさらなる態様によれば、本発明のAON配列のcDNAまたはそのAON配列のクローニングされたコピー、および本発明のAON配列を含有するベクターに及ぶ。本発明は、このような配列および/またはベクターを含有する細胞にもさらに及ぶ。
【0172】
本発明のAONは、別の治療用分子と同時投与されてもよい。例えば、AONは、ACE阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬などのレニンアンジオテンシン系の遮断薬などの化合物である第2の治療剤と共に投与されてもよい。抗炎症剤が、本発明のAONと組み合わされて提供されてもよい。
【0173】
本発明の一形態では、AONは、受動免疫化および抗ウイルス治療を含む、コロナウイルス感染症をモジュレートする他の作用剤と同時投与される。ACE2関連病態または疾患は、コロナウイルス感染症であり、本発明のAONは、以下を含むリストから選択される別の抗ウイルス治療用分子と同時投与されてもよい:オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、ザナミビル(Relenza(登録商標))、リバビリン、レムデシビル、ペンシクロビル、faviparvir、ナファモスタット、ニタゾキサニド、メシル酸カモスタット、インターフェロンα(例えば、インターフェロンαB2)、リトナビル、ロピナビル、ASC09、アズブジン、バロキサビル マルボキシル、ダルナビル、コビシスタット、アジスロマイシン、クロロキンおよびヒドロキシクロロキン。このような追加の治療剤は、コロナウイルスがSARS-CoV-2である場合に特に助けとなるものであり得る。
【0174】
本発明はまた、対象におけるACE2発現に関連する疾患または状態を処置、防止または改善するためのキットであって、好適な容器内にパッケージングされた、ACE2遺伝子転写物またはその一部においてプレmRNAのスプライシングを修飾するための少なくとも単離または精製されたAONを、その使用のための使用説明書と一緒に含む、キットも提供する。
【0175】
好ましい実施形態では、キットは、本明細書に記載された少なくとも1つのAON、すなわち、本明細書に記載された配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9もしくは11、および/または表3のいずれかに示される配列、またはAONのカクテルのうちのいずれか1つまたは複数を含有する。キットは、緩衝剤、安定剤などのような周辺試薬を含有してもよい。より好ましくは、AONは、配列番号6および9、または配列番号6および11である。
【0176】
したがって、対象におけるACE2発現に関連する疾患または状態を処置、防止または改善するためのキットであって、好適な容器内にパッケージングされた、本明細書に記載の少なくともAON、すなわち、配列番号1~31、より好ましくは配列番号5、6、9もしくは11、および/または表3に示される配列、その組合せ、もしくはカクテルのうちのいずれか1つまたは複数を、その使用のための使用説明書と一緒に含む、キットが提供される。より好ましくは、AONの組合せは、好ましくは、配列番号6と9、または配列番号6と11の組合せである。
【0177】
好ましくは、疾患または状態は、以下を含むリストから選択される:コロナウイルス感染症、肺障害、慢性腎疾患、慢性心疾患、高血圧および糖尿病。
【0178】
キットの内容物は凍結乾燥されてもよく、キットは、凍結乾燥された構成成分の再構成のための好適な溶媒をさらに含有してもよい。キットの個々の構成成分は、別々の容器内にパッケージングされ、このような容器に関連付けられ、通知は、医薬品または生物製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって指示された形態であってもよく、その通知はヒトへの投与のための製造、使用または販売の当局による認可を反映する。
【0179】
キットの構成成分は、1つまたは複数の液体溶液中で提供され、液体溶液は、水性溶液、例えば滅菌水溶液であってもよい。in vivoでの使用では、発現構築物は、薬学的に許容される注入可能な組成物へと製剤化されてもよい。この場合には、容器手段はそれ自体、そこから製剤が肺などの動物の罹患した領域に適用されてもよいか、動物に注射されてもよいか、またはさらに、キットの他の構成成分と共に適用されて、かつそれと混合されてもよい吸入器、注射器、ピペット、点眼器、または他のこのような装置であってもよい。
【0180】
キットの構成成分はまた、乾燥形態または凍結乾燥形態で提供されてもよい。試薬または構成成分が乾燥形態で提供される場合、再構成は一般に、好適な溶媒の添加による。溶媒も別の容器手段で提供されてもよいことが想定される。容器の数または種類に関わりなく、本発明のキットは、動物の体内での最終的な複合体組成物の注射/投与または配置を補助する器具を含んでもよくまたはそれと共にパッケージングされてもよい。そのような器具は、吸入器、注射器、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器または任意のこのような医療上認可された送達媒体であってもよい。
【0181】
当業者は、上記方法の適用が、多数の他の疾患の処置における使用に好適であるAONを特定するための広い適用を有することを認識すべきである。
【0182】
本発明のAONは、例えば、薬物療法などの代替療法と併せて使用されてもよい。
【0183】
したがって、本発明は、ACE2発現に関連する疾患または状態の影響を処置、防止または改善する方法を提供し、本発明のAONは、ACE2発現に関連する疾患または状態の影響を処置、防止または改善することに関連する別の代替療法と連続して、または同時に投与される。好ましくは、疾患または状態は、以下を含むリストから選択される:コロナウイルス感染症、肺傷害、慢性腎疾患、慢性心疾患、高血圧および糖尿病。
一般
【0184】
当業者は、本明細書に記載の本発明が具体的に記載されているもの以外の変形および修飾の影響を受け易いことを認識するであろう。本発明は、このような変形および修飾のすべてを含むことが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書で言及または示されているステップ、特徴、組成物および化合物のすべてを、個々にまたはまとめて、ならびにステップまたは特徴のうちのいずれか2つまたはそれより多くのありとあらゆる組合せを含む。
【0185】
本発明は、本明細書に記載の具体的な実施形態によって範囲を限定されることはなく、これは例示のみを目的とすることを意図する。機能的に均等な生成物、組成物および方法は明確に、本明細書に記載されている本発明の範囲内にある。
【0186】
本明細書で引用されるすべての刊行物(特許、特許出願、雑誌の論文、実験室マニュアル、書籍、または他の文書を含む)の開示全体は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。参考文献のいずれかが、従来技術を構成する、または本発明が関係する分野で働く者の共通の常識の一部であるという自認はなされない。
【0187】
この本文で引用される各文書、参考文献、特許出願または特許は、参照によりその全体が明確に本明細書に組み込まれ、これは、それがこの本文の一部として読み手に読み取られ、考慮されるべきであることを意味する。この本文で引用されている文書、参考文献、特許出願または特許がこの本文で反復されないということは、単に簡潔さの理由のためである。
【0188】
本明細書で言及される、または参照により本明細書に組み込まれる任意の文書における任意の製品についての製造元の使用説明書、説明、製品仕様、および製品シートは、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実践において用いられてもよい。
【0189】
本明細書で使用される場合、「誘導される(derived)」および「由来する(derived from)」という用語は、特定の整数が、必ずしも特定の供給源に直接由来しないにもかかわらず、その供給源から得られてもよいことを示すように解釈されるべきである。
【0190】
本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が別段に明確に指示しない限り、複数の参照を含む。
【0191】
本明細書の全体を通して、文脈が別段に必要としていなければ、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記述された整数または整数の群の包含を示すが、任意の他の整数または整数の群の排除を示さないことが理解されるであろう。
【0192】
操作例における、または別段に示される場合以外で、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分、反応条件などの量を表す数はすべて、あらゆる場合に、「約(about)」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において示される数値パラメーターは、本発明によって得られるように求められる所望の特性に応じて変化してもよい近似値である。よって、「約80%」は、「約80%」と「80%」も意味する。少なくとも、各数値パラメーターは、有意な数字の数および普通の四捨五入法という観点で解釈されるべきである。
【0193】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターが近似値であることにもかかわらず、特定の例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それらの各試験測定で見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を固有に含有する。
【0194】
本明細書で使用される選択された用語についての他の定義は、本発明の詳細な説明の中で見出されてもよく、全体にわたって適用されてもよい。別段に定義されていなければ、本明細書で使用されているすべての他の科学用語および専門用語はすべて、本発明が属する技術分野における当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0195】
本明細書に含まれるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報を含有する配列識別番号(「配列番号」)は、説明の最後にまとめられ、プログラムPatentInバージョン3.0を使用して作成されている。各ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、数的識別子<210>に続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2など)によって、配列表において特定される。各ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列についての配列の長さ、種類および起源となる生物は、それぞれ、数的指標の領域<211>、<212>および<213>において提供される情報によって示される。
【0196】
様々なアンチセンスオリゴマー間で識別するために、アンチセンスオリゴマーの命名システムが提案され、公開された(Mann et al., (2002) J Gen Med 4, 644-654を参照されたい)。この命名法は、以下に示されているように、すべて同じ標的領域に向けられた、いくつかのやや異なるアンチセンスオリゴマーを試験する場合に特に意味を持つようになる。
H # A/D(x:y)
最初の文字は種を指定する(例えば、H:ヒト、M:マウス)
「#」は標的のエクソン番号を指定する。
「A/D」は、それぞれ、エクソンの始まり/終わりでのアクセプターまたはドナーのスプライス部位を示す。
(x y)は、「-」または「+」がそれぞれイントロンまたはエクソンの配列を示すアニーリング座標を表す。一例として、A[-6+18]は、標的エクソンの前のイントロンの最後の6塩基と、標的エクソンの最初の18塩基を示すことになる。最も近接するスプライス部位は、アクセプターであるため、これら座標の前に「A」と記載することになる。ドナースプライス部位におけるアニーリング座標の記載は、D[+2-18]となり得、ここで、最後の2つのエクソン塩基および最初の18個のイントロン塩基はアンチセンスオリゴマーのアニーリング部位に対応する。A[+65+85]によって表される全体がエクソンであるアニーリング座標は、すなわち、そのエクソンの最初から65番目のヌクレオチドと85番目のヌクレオチドとの間の部位である。
【0197】
以下の実施例は、上記の本発明を使用する方法をさらに十分に説明すると共に、本発明の様々な態様を実行するための最良の方法を示す。これらの方法は本発明の範囲を限定するものではなく、むしろ例示目的で提示されることが理解される。
【実施例】
【0198】
以下の実施例のそれぞれにおいて、文脈が別段に要求していなければ、以下の一般的な材料および方法を適用する。
【0199】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は組換えタンパク質を高レベルで発現し、切断型ACE2の発現、活性および分泌への、ACE2のC末端切断の影響を調べるのに理想的な系となる。実験では、CHO細胞をF12培地(10%FBSを補充した)中で増殖させた。次いで、CHO細胞を、Lipofectamine 2000を使用して切断型ACE2構築物をコードするプラスミドでトランスフェクトした。2日後に、培地を回収し、分子量カットオフフィルターを使用して濃縮し、抗hACE2抗体(R&D systems)を使用するウエスタンブロットおよびACE2触媒活性によって調査した。
【0200】
実験では、Caco-2細胞を、MCDB131培地(10mMのグルタミン、EGFおよびヒドロコルチゾンを含む10%FCS)中で培養した。Calu-3細胞を、EMEM(10%FCS)中で培養した。HeCAT細胞を、10%FBS DMEM中で培養した。初代正常ヒト皮膚線維芽細胞を、10%FBS DMEMを補充したDMEM、および10ng/mlの上皮増殖因子、1μg/mlのヒドロコルチゾン、10%のFBS DMEMおよび1×のグルタミンを補充したMCDB131中のHMEC中で増殖させた。アフリカミドリザル(Chlorocebus sp)由来のVeroE6細胞を、αMEM培地中で培養した。
【0201】
AONのトランスフェクションのために、細胞を、6または24ウェルプレート中に播種し、次いで、ヒトACE2を標的とするAONまたは用量等価非標的対照(RAGEスプライシングを変更せずにヒトRAGEのエクソン9に対してアニーリングする)のいずれかでLipofectamine 3000試薬(リポフェクタミン3000を0.15ul/ウェル;0.4ul/ウェル P3000/ウェル)を使用してトランスフェクトした。次いで、細胞を、50~200μMのAON/カチオン性リポプレックスと共に37℃で24~72時間インキュベートした後、細胞を溶解させ、RNAを抽出し、Cycle Threshold法またはTrizol法のいずれかを使用して、cDNAを生成した。Superscript III[Life Technologies:Carlsbad、CA、USA]および約50ngの総RNAを鋳型として使用して、ワンステップRT-PCRを実施した。ACE2テール領域に対するフォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用するPCR産物を、Tris-Acetate-EDTA緩衝剤中2%のアガロースゲルで分画化し、ゲル記録システム[Vilber Lourmat、Eberhardzell、Germany]で画像を撮影した。
【0202】
次いで、ACE2のスプライシングに関するAONの定量的効果を測定するために、ACE2 mRNAのエクソン境界に対するプローブを使用する定量的リアルタイムRT-PCRを使用して、遺伝子発現を決定した。
【0203】
また、分子量カットオフフィルターを使用して、培地を回収し、濃縮した。次いで、可溶性ACE2の存在を、ELISAおよびACE2触媒活性の存在によって決定した。
【0204】
SARS-CoV-2由来のS1のVeroE6細胞の細胞表面への吸着を決定するために、トランスフェクトした細胞を、無血清Optimum培地中でGFP標識S1と共に30分間インキュベートし、その後、それらを培地で洗浄し、蛍光プレートリーダーを使用して緑色蛍光を検出した。
【0205】
SARS-Cov-2による感染を決定するために、プラークアッセイを使用した。このアッセイでは、Y613L-ACE2(19-613)をVeroE6細胞(0.002~2ug/ml)に添加し、その後、SARS-CoV-2(50PFU)を各ウェルに添加した。30分後、2X L15培地およびアガロース(0.9%w/v)でウェルを覆い、次いで37℃で1~3日間インキュベートした後、プラークをカウントし、TCID50を推定した。
【0206】
in vivo実験では、雄のC57bl6マウスを、全身麻酔(ケタミン)下で、AON(30uLのDI水中で3mg/kg)の単回気管内用量で処置し、次いで、7日間追跡し、その後、CO2ナルコーシスを使用して人道的に死亡させた。死後、気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、市販のELISAを使用して、液体をACE2について測定した。次いで、肺を摘出し、Trizol抽出後にACE2 mRNAの発現を推定した。
(実施例1)
C末端切断型ACE2突然変異体の構築および検証
【0207】
この実施例は、C末端切断型ACE2アイソフォームが、in vitroおよびin vivoで発現した場合に、可溶性、安定性、分泌性、触媒活性であり、かつ抗ウイルス活性を保持できることを実証する。
【0208】
ACE2の分泌、安定性および酵素活性へのC末端切断の効果をin vitroおよびin vivoで確立するために、一連のC末端切断型マウスACE2(mAce2)突然変異体を最初に生成し、発現させた。内因性のN末端シグナルペプチド(1~18)をすべての構築物から省き、6-Hisタグおよび短いリンカー(-GKT)-を、精製するためにすべての構築物のC末端に付加した。615部位はコレクトリン相同性ドメインとの推定上の境界を表し(表1)、選択的スプライシングによりエクソン14がスキップされた場合の産物であるため選択された。膜貫通ドメインとの境界を表しているため、740部位を選択した。ACE2に関する推定誘導性切断部位を表しているため、697部位を選択した。非マウスACE2の発現が、中和抗体の開発をもたらし、in vivoでの長期試験を不可能にするため、マウスACE2を特に使用した。
【0209】
ウエスタンブロット(
図1a)およびELISA(
図1b)によって、培地中に分泌された活性ACE2の最高量は、mAce2(19~615)を含有するプラスミドによるCHO細胞のトランスフェクションの48時間後に観察され、mAce2(19~740)ではより少ない量しか観察されなかった。さらに、両方の構築物は、酵素的に活性なタンパク質を産生した(
図1c)。注目すべきことに、誘導性ACE2脱落の推定産物であるにもかかわらず、mAce2(19~697)では乏しい発現しか観察されなかった(
図1a)。
【0210】
より短いACE2構築物であるmAce2(19~615)はまた、CHO細胞をC末端切断型ACE2を含有するDNAミニサークルでトランスフェクトした場合にも、ウエスタンブロッティングで実証されたように、mAce2(19~740)より多量に分泌した(
図1d)。mAce2(19~615)をコードするDNAミニサークルによるCHO細胞のトランスフェクションにより、ELISAで実証されたように、培地中でACE2タンパク質も生成された(
図1e)。
【0211】
mAce2(19~615)でトランスフェクトしたCHO細胞からの培地はまた、機能的に関連するアンジオテンシナーゼ活性の存在と一致して、ヒト大動脈内皮細胞におけるICAM-1およびMCP-1遺伝子発現のAng II(1μM)に依存する誘導をアンタゴナイズした(
図1fおよび1g)。注目すべきことに、この保護は、選択的ACE2阻害剤であるMLN-4760によって遮断され、培地中のACE2触媒活性のみによって保護がもたらされることと一致した。
【0212】
次いで、mAce2(19~615)をコードするDNAミニサークルをC57bl6マウスの腓腹に注射し(40μg/IM)、注射の4週間後に循環ACE2タンパク質および活性の検出可能な増加を誘導し(それぞれ、
図1hおよび1i)、C末端切断型産物mAce2(19~615)がいずれも、そのコンフォメーションの完全性と一致して、in vivoで発現、分泌され、かつ酵素機能を保持できることを確認した。
【0213】
次いで、最適なmAce2(19~615)構築物のヒトアナログである、Y613L-ACE2(19~613)を開発し、CHO細胞へとトランスフェクトし、そこで、これがまた高レベルで発現し、培地中に効率的に分泌されるACE2タンパク質を生成し(
図1j)、触媒的ACE2活性は市販の組換えACE2をスパイクした培地と同等であった(1~740;
図1k)。
【0214】
SARS-CoV-2によるVeroE6細胞の感染後のプラーク蓄積は、用量依存的にトランスフェクト-CHO細胞培地から濃縮したY613L-ACE2タンパク質による処置後にも阻害され(
図1l)、その抗ウイルス活性が確認された。
【0215】
まとめると、この例は、触媒(ACE様)ドメインおよびコレクトリン様ドメインの推定境界で優先的にC末端を切断されたACE2アイソフォームが、コンフォメーションの完全性と一致して、十分に発現し、分泌され、酵素活性および抗ウイルス性であることを実証する。
(実施例2)
Caco-2細胞においてAONを使用してACE2のエクソン14のスプライシングをモジュレートする
【0216】
この実施例は、ヒトACE2プレmRNA中のエクソン14をスキップするためにAONを設計し利用して、ACE様ドメインとコレクトリン様ドメインの推定上の境界で切断される可溶性ACE2アイソフォームをコードする新規ACE2 mRNAスプライスバリアント(Δ14スプライスバリアント)を生成し、同時にエクソン14を保持して膜結合した完全長のACE2アイソフォームをコードする従来の方法でスプライスされたACE2 mRNAの発現を低下させる方法について詳述する。
【0217】
ヒトACE2のエクソン14は、アミノ酸613~633をコードする(
図2a)。これは、2つの大きなイントロン(1kbを超える;表1b)の間に位置する短いコード化配列(59bp)である。エクソン13および15の位相が異なるため、エクソン14をスキップすると、最も近い下流のエクソン-エクソン接合部から55ヌクレオチドを超えるインフレーム停止コドンが導入されることになる。このような異常なスプライシングによって導入される早期終止コドン(PTC)は、通常、非効率的な転写産物を排除するために、ナンセンス媒介性崩壊(NMD)の標的である。しかし、55bpのヒューリスティックは、ほとんどの場合、NMDの感受性を予測するが、いくつかの例外が報告されている。本発明者らは、エクソン14をスキップすると、機能的な切断型アイソフォームであるY613L-ACE2(19~613)をコードするスプライスバリアントが生じ(
図2a)、この切断は、思わぬことにACE2の外部ACE様アンジオテンシナーゼドメインとコレクトリン様内部ドメインの間のキメラ境界で正確に起こり、このスプライスバリアントはNMDから逃れる可能性があると仮定している。
【0218】
エクソンスキッピングを誘導するために、ヒト大腸上皮細胞(Caco-2)を、エクソン14の5’および/または3’スプライス部位を標的とする2’O-Me PTOアンチセンスオリゴヌクレオチド(50~100μM)でトランスフェクトした。Caco-2は内因性にACE2を高レベルで発現し、SARS-CoV-2を取り込むことが公知である。ベクター処理した細胞では、ACE2 mRNAのスプライスバリアントは存在せず、ここではエクソン14がスキップされている(
図2b、パネルi)。しかし、H14A[-17+8](100nM;パネルii)またはAONのH14A[-17+8]とH14D[+13-12]の組合せ(各50nm;パネルiii)によるトランスフェクションの48時間後には、RT-PCR増幅曲線によって実証されたように、エクソン14がスキップされ、エクソン13および15が一緒にスプライシングされたΔ14スプライスバリアントのde novo生成が生じた(
図2b)。
【0219】
H14A[-17+8]またはH14A[-17+8]を含む組合せによるCaco-2細胞の処置後のΔ14スプライスバリアントの発現の増加は、エクソン14の配列を保持する従来の方法でスプライスされたACE2 mRNAスプライスバリアントの付随する減少と関連していたが(
図2c)、一方、総ACE2 mRNA発現は、有意に変化しなかった(
図2d)。
【0220】
同様の結果が、より大きなmRNAコピー数を達成するために、RNA精製にTrizol法を使用して、H14D[+13-12]と共にH14A[-17+8]およびH14D[+9-16]と共にH14A[-17+8]を含むACE2を標的とするAONでトランスフェクトしたCaco-2細胞において観察され、ここで、エクソン14を含有するACE2スプライスバリアントは、総ACE2を全く減らすことなく80%を超えて減少した(すなわち、エクソン13および15の両方を含有するACE2スプライスバリアント;
図2e)。
【0221】
経時的研究では、Δ14スプライスバリアントのde novo生成が、RT-PCR増幅曲線によって実証されたように、トランスフェクションのわずか24時間後に観察された(
図2f)。特に、H14A[-17+8]とH14D[+13-12]の組合せ(パネルi)は、Δ14スプライスバリアントのde novo生成をもたらした。再度、対照のAONによるトランスフェクション後に、新規スプライスバリアントは観察されなかった(パネルii)。
【0222】
まとめると、このデータは、エクソン14がスキップされた新規ACE2 mRNAスプライスバリアント(Δ14スプライスバリアント)が、予想外に実質的なNMDを回避し、ある特定のAONによる処置後に誘導され得ることを実証する。
(実施例3)
VeroE6細胞においてAONを使用してACE2のエクソン14のスプライシングをモジュレートする
【0223】
この実施例は、ヒトACE2のエクソン14をスキップするように設計されたAONが、VeroE6細胞におけるACE2のスプライシングをモジュレートすることもでき、そこでSARS-CoV-2スパイクタンパク質の細胞表面への吸着を阻害する方法を詳述している。
【0224】
ヒトExon14の5’および3’スプライス部位を標的とする2’-O-Me PTO AONによるVeroE6細胞のトランスフェクションによっても、サル由来のVeroE6細胞におけるACE2スプライシングがモジュレートされる。特に、H14A[-17+8]とH14D[+13-12]の組合せ(各50nm)によるトランスフェクションの48時間後に、Exon 14を含有する従来の方法でスプライシングされたACE2 mRNAスプライスバリアントが有意に減少した(95%を超える)(
図3a)。同時に、全ACE2発現(エクソン13とエクソン15の両方を含有するACE2 mRNAスプライスバリアントによって示される)は、有意に変化しなかった。このことは、エクソン14のスキップも起こったはずであることを意味する。
【0225】
ヒトExon14の5’および3’スプライス部位を標的とする2’-O-Me PTO AON、具体的にはH14A[-17+8]およびH14D[+13-12]によるVeroE6細胞のトランスフェクションはまた、濃縮細胞培地のAce2活性の増加をもたらし(
図3b)、非標的AONでトランスフェクトした細胞と比較した場合、ELISAによって測定した培地中の可溶性ACE2タンパク質の増加(
図3c)は、新規可溶性ACE2タンパク質アイソフォームの遊離と一致した。
【0226】
スパイク糖タンパク質(S1)のVeroE6細胞上への吸着は、ACE2の表面発現に依存している。ヒトExon14の5’および3’スプライス部位を標的とする2’-O-Me PTO AON、具体的にはH14A[-17+8]およびH14D[+13-12]によるVeroE6細胞のトランスフェクションはまた、緑蛍光タンパク質(GFP)で標識したS1のVeroE6細胞上への吸着を低減させ(
図3d)、ACE2のExon14を標的とするAONによるトランスフェクションの抗ウイルス活性を実証した。
(実施例4)
ACE2のエクソン14のスプライシングをモジュレートするオリゴヌクレオチドの最適化
【0227】
この実施例は、ヒトACE2のエクソン14をスキップするように設計されたAONが、その有効性を改善するためにその標的配列を少量移動させることによって修飾された方法を詳細に説明する。
【0228】
それ自体で、特定のAON、特にH14A[-17+8]が、ACE2のエクソン14のスプライシングをモジュレートする適度な能力を有することが示され(
図2bおよび2c)、隣接領域を標的とする追加の2’-O-Me PTO AONを設計し(配列番号5~8)、ヒト大腸上皮(Caco-2)細胞において試験した。これらの構築物のうち、H14A[-25-1]およびH14A[-22+3](それぞれ配列番号5および6)によるトランスフェクションは、エクソン13とエクソン15の間の配列に対するプライマーを使用するワンステップPCRでのより小さいバンド(白色の矢印)によって示されたように、48時間後にエクソン14のスキッピングの誘導に最大の個々の効果を有しており、H14A[-17+7](配列番号4)単独による応答を上回った(
図4a)。
【0229】
2’-O-MeホスホロチオエートAON、H14A[-25-1]およびH14A[-22+3](それぞれ配列番号5および6)によるCalu-3細胞のトランスフェクションも、エクソン13とエクソン15の間の配列に対するプライマーを使用するワンステップPCRでのより小さいバンド(白色の矢印)によって示されたように、48時間後にエクソン14のスキッピングを誘導した(
図4b)。
【0230】
H14A[-22+3](配列番号6)のvivo-モルホリノ製剤によるCalu-3細胞のトランスフェクションも、エクソン13とエクソン15の間の配列に対するプライマーを使用するワンステップPCRでのより小さいバンド(白色の矢印)によって示されたように、72時間後にエクソン14のスキッピングを誘導した(
図6a)。H14A[-22+3](配列番号6)のvivo-モルホリノ製剤によるCalu-3細胞の72時間の前処理も、細胞をSARS-CoV-2(Vic01)にin vitroで曝露させた後に、培地中のウイルスのTCID50を低下させ(
図4c)、エクソン14のスキッピングから生じるコロナウイルスの感染活性の有意な阻害を示した。
(実施例5)
AONを使用してACE2のエクソン17のスプライシングをモジュレートする
【0231】
この実施例は、ACE2プレmRNAの最後から2番目のエクソンである、エクソン17をスキップし、それによって、残基706~762のコード配列を除去し、膜貫通ドメインをコードしない新規ACE2スプライスバリアントを生成し、同時に、膜保持されて、コロナウイルス吸着を媒介することが可能であるACE2アイソフォームをコードするエクソン17を保持している従来の方法でスプライスされたACE2 mRNAの発現を低下させるように、AONを設計および利用する方法を詳述する。
【0232】
ACE2のエクソン17の5’および3’スプライス部位、またはエクソン17のスプライシングをモジュレートするシス作用配列として機能する可能性を有する隣接領域を標的とする25マーの2’-O-Me PTO AONで15,000個のヒト線維芽細胞をLipofectamine 3000を使用してトランスフェクトした。対照処置細胞および未処置(UT)細胞では、エクソン17がスキップされるACE2 mRNAの選択的スプライシングは見られない。しかし、H17A[-15+10]、H17A[-5+20]、H17A[-10+15]、H17A[+21+45]によるトランスフェクションの24時間後には、エクソン13(フォワード)およびエクソン18(リバース)に位置するプライマーを使用するワンステップPCRでの新しい低いバンドによって実証されたように、エクソン17がスキップされた新規ACE2 mRNAスプライスバリアント(Δ17スプライスバリアント)の発現が観察された(
図5b)。
【0233】
エクソン17の5’および3’スプライス部位の一方、またはスプライシングをモジュレートするシス作用配列として機能する可能性を有する隣接領域を標的とする20マーの2’-O-Me PTO AONによる3万個のヒト角化細胞系(HaCat)のトランスフェクションも、エクソン13(フォワード)およびエクソン18(リバース)に位置するプライマーを使用するワンステップPCRでの新しい低いバンドによって実証されたように、新規Δ17スプライスバリアントを生じた(
図5c)。
【0234】
エクソン17のスプライシングを変更することが示された3つの最良の2’-O-Me PTO AONである、H17A[-2+18]、H17A[+26+45]およびH17A[+21+45]によるHaCat細胞のトランスフェクションはすべて、新規Δ17スプライスバリアントの生成をもたらし、ワンステップPCRでの新しい低いバンドによって実証されたように、エクソン17が保持される従来の方法でスプライスされた形態の発現を低減させた(
図5d)。このことは、好ましい25マーの、H17A[+21+45](配列番号9)またはH17A[-5+20](配列番号11)の短縮された誘導体が、in vitroで同様の有効性を達成することができることを実証する。
【0235】
H17A[+21+45]のvivo-モルホリノ製剤によるCaco-2細胞の処置(1μM)により、リアルタイムRT-PCRによって検出されたように、48時間後にエクソン17をコードする従来の方法でスプライスされたACE2 mRNAの顕著な抑制ももたらされた(
図5e)。
【0236】
次いで、雄のC57bl6マウスを、マウスACE2 mRNA配列(配列番号32)に特異的な2’-O-Me PTO AON構築物であるM17A[+21+45]で、DI水中で気管内送達される3.0mg/kgの用量で処置した。その7日後に、総ACE2においては有意な変化がないが、エクソン17をコードする従来の方法でスプライスされたACE2 mRNAについては肺における有意な低減が見られ、ACE2の選択的スプライシングの誘導を示した(
図5f)。さらに、非標的AON対照で処置したマウスと比較した場合、ELISA法で測定した気管支肺胞液中の可溶性ACE2タンパク質が増加しており(
図5g)、可溶性タンパク質アイソフォームを生成するACE2プレmRNAスプライシングのモジュレーションと一致した。
【0237】
H17A[+21+45](2uM)単独のvivo-モルホリノ製剤による72時間のCalu-3細胞の前処置は、次いで、細胞をin vitroでSARS-CoV-2(Vic01)に曝露させた後に、培地中のウイルスのTCID50を有意に低下させなかった(
図5h)。これは、
図4bに詳述したH14A[-22+3]とは対照的である。これは、可溶性ACE2が生成され、完全長ACE2 mRNAがH17A[+21+45]による処置によって減るが、抗ウイルス活性もコンフォメーションの完全性を必要とすることを例証する。
(実施例6)
ヒトACE2のエクソン14および17を標的とするAONの組合せを使用してACE2のスプライシングをモジュレートする
【0238】
この実施例は、好ましい可溶性ACE2アイソフォームをコードし、生成する新規ACE2 mRNAスプライスバリアントの生成を増強し、同時に、いずれもが膜保持され、ウイルス吸着および取込みを媒介することが可能な完全長ACE2をコードする従来の方法でスプライスされたACE2 mRNAの発現を低減するために、ある特定のAONを組み合わせ得る方法を詳述する。
【0239】
エクソン17をスキップすることにより(例えば、H17A[+21+45]またはH17A[-5+20]により)、残基19~705を含有するACE2タンパク質アイソフォームが生じ、膜貫通ドメインをスキップし、ACE2の短い(43aa)サイトゾル側末端に続くことが予測される。この新規Δ17スプライスバリアントからのタンパク質の発現は、本発明者らが、ACE2(19~697)を含むより長いACE2外部ドメイン構築物よりも活性であり、より良好に発現することを示すY613L-ACE2(19~613)を生成するΔ14スプライスバリアントよりも低い可能性がある(
図1a)。Δ17スプライスバリアントによって生成された可溶性タンパク質は、その活性、保持または安定性を妨害する可能性を有するサイトゾル側末端の保持に起因して、ネイティブACE2とは異なるコンフォメーションを有する可能性もある。これは、触媒活性であり、抗ウイルス作用が実証されている好ましいアイソフォームであるY613L-ACE2(19~613)とは異なる(
図1l)。本発明者らは、エクソン14と17の両方が、ACE2 mRNAにおいてスキップできれば(例えば、H14A[-22+3]をH17A[+21+45]と組み合わせて使用した)、より望ましい高発現Y613L-ACE2(19~613)アイソフォームの生成を増加させることができると仮定した。加えて、1つの標的部位でプレmRNAのスプライシングを変更するために1つのAONを使用することにより、プレmRNAのコンフォメーションを変えることによって(例えば、標的配列へのSSOのアクセスを増加させ、新規スプライスバリアントの安定性や崩壊を変更する)、別の場所で選択的スプライシングを誘導する異なるAONの能力をモジュレートする可能性もある。しかし、このような相互作用は予測不可能であり、各プレmRNAおよび各ターゲットに固有のものである。
【0240】
この実施例では、2つのvivo-モルホリノAON、すなわち、H17A[+21+45]およびH14A[-22+3](各1μM)の組合せによるCalu-3細胞の処置により、この細胞系で72時間後にわずかな効果しかなかったH14A[-22+3]単独と比較した場合に、エクソン14がスキップされた新規ACE2 mRNAスプライスバリアントの発現が有意に増加したことを、本発明者らが示している(白色の矢印;
図6a)。H17A[+21+45]単独では、それ自体ではエクソン14スプライシングに影響を及ぼさなかった(エクソン17を標的とするため)。エクソン14を保持するACE2 mRNAスプライスバリアントの発現も、エクソン13(フォワード)およびエクソン15(リバース)に位置するプライマーを使用するワンステップPCRによって検出されたように、H17A[+21+45]およびH14A[-22+3]の組合せによる処置の72時間後に減少した(赤色の矢印)。
【0241】
2つのvivo-モルホリノAONである、H17A[+21+45]およびH14A[-22+3]の組合せに対する同様の相乗応答は、Caco-2細胞においても観察され、エクソン14がスキップされた新規ACE2 mRNAスプライスバリアントの発現が有意に増加した(白色の矢印;
図6b)。注目すべきことに、H17A[+21+45]を単独で使用する場合に観察されたΔ17スプライスバリアントは、H14A[-22+3]と組み合わせて使用した場合にも低減したことであり(
図6c)、エクソン13(フォワード)およびエクソン18(リバース)に位置するプライマーを使用するワンステップPCRで測定した場合に、組合せによって生じた主要なスプライスバリアントが、エクソン17と14の両方をスキップした(緑色の矢印)ことが確認される。この新規スプライスバリアント(Δ 14、17)は、好ましいタンパク質産物であるY613L-ACE2(19~613)をコードしていることになる。加えて、完全長スプライスバリアント(赤色の矢印)の低減は、併用処置で明らかに最大となる。
【0242】
H17A[+21+45]およびH14A[-22+3](各1μM)のvivo-モルホリノ製剤の組合せによりCalu-3細胞を72時間前処置する場合、いずれかのAON単独による応答を超えて、細胞をSARS-CoV-2(Vic01)に曝露させた後に、培地中のウイルスのTCID50の低下によって実証したように(
図6d)、強力な抗ウイルス応答が観察された。
【配列表】
【国際調査報告】