(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】医療装置、装置の制御方法、装置を含むシステム、及び装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20230501BHJP
A61L 33/04 20060101ALI20230501BHJP
A61L 33/06 20060101ALI20230501BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20230501BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20230501BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20230501BHJP
A61L 31/18 20060101ALI20230501BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20230501BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20230501BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20230501BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20230501BHJP
A61K 49/04 20060101ALI20230501BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230501BHJP
A61K 49/06 20060101ALI20230501BHJP
A61K 49/22 20060101ALI20230501BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20230501BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20230501BHJP
A61P 37/04 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
A61B34/30
A61L33/04
A61L33/06 200
A61L31/16
A61L31/02
A61L31/04
A61L31/18
A61L31/12
A61L31/04 120
A61L31/14 300
A61L31/10
A61L31/06
A61L31/04 110
A61K49/04
A61K49/00
A61K49/06
A61K49/22
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554224
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2021058593
(87)【国際公開番号】W WO2021198411
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/000300
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521130310
【氏名又は名称】アルテドローン
【氏名又は名称原語表記】ARTEDRONE
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プーレティ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノー,マエル
(72)【発明者】
【氏名】ポウポネウ,ピエール
【テーマコード(参考)】
4C081
4C085
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081AC09
4C081AC16
4C081BA05
4C081BA17
4C081CA062
4C081CA082
4C081CA102
4C081CA182
4C081CA231
4C081CD012
4C081CD022
4C081CD082
4C081CD092
4C081CD111
4C081CD112
4C081CE02
4C081CF131
4C081CF161
4C081CG02
4C081CG03
4C081CG04
4C081CG05
4C081CG07
4C081DA16
4C081DC03
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085EE01
4C085GG02
4C085HH05
4C085HH07
4C085HH09
4C085HH11
4C085KA27
4C085KA28
4C085LL18
(57)【要約】
本発明は、身体の内部に適用され、好ましくは人体(2)の内部に適用される医療装置(10)、好ましくはマイクロロボットに関する。医療装置(10)は、本体部分(11)及び尾部(12)を含む。制御ライン(13)が、尾部(12)に取り付けられる。制御ライン(13)は、装置を標的位置から引き戻し、かつ/又はその速度を制御するために充分な引張強度と、医療装置(10)を押すには充分でないカラム強度とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは人体(2)の内部に適用される医療装置(10)、好ましくは身体の血管において使用するためのマイクロロボットであって、
本体部分(11)と、
尾部(12)と
を含んでおり、
制御ライン(13)が、前記装置、好ましくは前記尾部(12)に取り付けられ、前記制御ライン(13)は、前記医療装置(10)を標的場所から引き戻し、かつ/又はその速度を制御するように構成され、前記制御ラインの剛性は、前記医療装置(10)を標的場所へと移動させるためには不充分である、医療装置(10)。
【請求項2】
前記医療装置(10)は、
i)前記装置を或る方向に能動的に移動させるための駆動部(15)、及び
ii)外的作用によって体内での移動方向を変更するための制御部材(16)
の少なくとも一方を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の医療装置(10)。
【請求項3】
前記医療装置(10)は、体内での前記医療装置(10)の位置を決定するための位置決め手段(18)を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医療装置(10)。
【請求項4】
前記制御ライン(13)は、エネルギー及び/又はデータ、とくには光又は電気信号を前記医療装置(10)に伝送するための伝送ケーブル(30、31)、好ましくはマイクロ同軸ケーブルを備える、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項5】
前記制御ライン(13)は、金属、とくには銅、ステンレス鋼、コバルト-クロム-ニッケル合金、チタニウム、チタニウム合金、白金、白金合金、Nitinol、ニッケル-チタニウム三元合金、ニッケルを含まない合金、金属複合材料、ポリマー、炭素繊維、グラフェン、織物、生糸、たんぱく繊維、アラミド、とくにはKevlar及びTwaronのうちの一方、及びカーボンナノチューブからなる材料群から選択される材料を含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項6】
前記制御ラインは、前記医療装置よりも小さい断面を有する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項7】
前記医療装置(10)は、IRM、スキャナ、超音波検査、X線、及び蛍光透視法を含む撮像技術群のうちの少なくとも1つによる検出を可能にする材料を備える、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項8】
前記制御ライン(13)は、10~1000μm、好ましくは100μm~400μmの外形を有する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項9】
前記本体部分(11)は、磁性部分(14)を含む、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項10】
前記本体部分(11)は、少なくとも1つの機能ユニット(51)を含み、前記機能ユニット(51)は、とくにはクランプ、外科用メス、ドリル、フック、ステント、レッグ、連続軌道、プロペラ、起爆装置、カメラ、及びセンサからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項11】
前記本体部分(11)は、薬物(62)を貯蔵及び放出するように構成されたコンパートメント(41)を備える、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項12】
前記本体部分(11)は、前記医療装置から受信機(18)へと、とくには前記制御ライン(13)を介してデータを送信するように構成された送信機(17)を含む、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項13】
前記医療装置は、8~2000μm、好ましくは50~1000μm、より好ましくは200~500μmのサイズを有する、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項14】
前記医療装置(10)の前記本体部分(11)及び前記尾部(12)は、金属、プラスチック、ガラス、鉱物、セラミック、炭水化物、ニチノール、カーボン、生体材料、又は生分解性材料の群から選択される材料を含む、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項15】
前記制御ライン(13)は、前記装置(10)に取り外し可能に取り付けられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項16】
前記制御ライン(13)は、とくには電気的刺激、磁性部分の回転、物理的作用、及び化学的作用のうちの少なくとも1つによって、前記装置(10)から選択的に取り外し可能である、請求項15に記載の医療装置(10)。
【請求項17】
前記医療装置の第1及び第2の部分を備えており、前記第1の部分は、前記制御ラインに取り付けられ、前記第2の部分は、前記第1の部分に取り外し可能に取り付けられ、前記第1の部分は、とくには電気的刺激、磁性部分の回転、物理的作用、及び化学的作用のうちの少なくとも1つによって、前記医療装置(10)の前記第2の部分から選択的に取り外し可能である、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項18】
前記制御ライン(13)によって形成された正確に1つのラインを備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項19】
前記制御ラインは、データ又はエネルギーを伝送することができない、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項20】
前記制御ラインを、実質的な材料応力を伴うことなく3mm、好ましくは1mm、さらにより好ましくは700μm未満の曲率半径を有する曲線へと曲げることができる、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項21】
前記制御ラインは、放射線不透過性材料を含み、好ましくは放射線不透過性材料で構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項22】
前記放射線不透過性材料は、前記制御ラインに関連付けられた前記制御ラインと平行な別個のケーブル(71)として、かつ/又は前記制御ライン上のコーティングとして配置される、請求項21に記載の医療装置(10)。
【請求項23】
前記制御ラインは、親水性表面、とくにはPEGで機能化された表面を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項24】
前記制御ラインは、抗血栓形成性を有する表面、とくにはホスホリルコリン、フェノックス、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリルアミドのうちの少なくとも1つを備える表面を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項25】
前記制御ラインは、ヒドロゲル、とくにはELP、PEG、HEMA、PHEMA、ポリビニルピロリドン、メタクリレート系ポリマー、メタクリル酸系ポリマー、とくにはPMA、アガロース、ヒアルロン酸、メチルセルロース、エラスチン、及びキトサンを含む群から選択されたヒドロゲルで被覆された表面を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項26】
前記制御ラインは、結び目、クリップ、溶接接続、接着剤による接続、材料の混合、及び化学結合のうちの少なくとも1つによって前記医療装置に取り付けられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項27】
前記制御ラインに対して平行に配置された中空管をさらに備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項28】
好ましくは前記制御ラインに関連付けられて前記制御ラインに対して平行に配置され、前記装置の機能をトリガするように構成されたトリガワイヤをさらに備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の医療装置(10)。
【請求項29】
医療装置、好ましくは人体(2)を制御するための方法であって、
・本体部分(11)と尾部(12)とを含む医療装置(10)、好ましくは請求項1~14のいずれか1項に記載の医療装置(10)を、挿入部位において身体に挿入するステップと、
・前記医療装置(10)を、好ましくは前記医療装置(10)の前記尾部(12)に取り付けられる制御ライン(13)を押すことなく、標的部位(25)へと操縦するステップと、
・前記制御ライン(13)を引っ張ることによって、前記医療装置(10)を前記標的部位(25)から取り除くステップと
を含む方法。
【請求項30】
請求項9に記載の医療装置(10)と、磁場発生器(23)とを備える医療装置(10)を制御するためのシステムであって、
前記医療装置(10)を前記磁場発生器(23)が発生させる磁場(21)によって誘導することができる、ことを特徴とするシステム。
【請求項31】
前記医療装置の速度を、好ましくは前記装置に取り付けられた制御ラインの速度を制御することによって制御するように構成された制御部をさらに備える、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
結合要素をさらに備え、前記結合要素は、前記結合要素を前記装置に接続してその速度を好ましくは連続的に制御するために、前記制御ラインに結合するように構成されている、請求項30又は31に記載のシステム。
【請求項33】
前記制御部は、前記制御ラインを、制御された速度で、好ましくは連続的に、引き込み、かつ/又は解放するようにさらに構成されている、請求項30~32のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項34】
前記制御部は、好ましくは前記制御ラインの解放を制御することによって、前記マイクロロボットの位置を制御するための機構を備える、請求項30~33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項35】
流体の流れ、好ましくは血管内の血液において、制御ラインが取り付けられた装置、好ましくはマイクロロボット、さらにより好ましくは請求項1~28のいずれか1項に記載の装置を制御する方法であって、
前記装置の速度が、前記制御ラインを介して制御される、ことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記速度は、前記装置が分岐部に近付くときに下げられる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記装置の速度を、好ましくは前記制御ラインに力を印加することによって、自動的に制御する制御部をさらに備える、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記制御部は、分岐部を自動的に検出する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
好ましくは第1の接着成分、とくに好ましくはシアノアクリレート成分を介して、制御ラインに取り付けられ、あるいは取り付け可能である磁気ヘッド部を備えている医療装置、好ましくは請求項1~28のいずれか1項に記載の医療装置であって、
保護層、好ましくは第2の接着成分、とくに好ましくは樹脂を含み、あるいは第2の接着成分、とくに好ましくは樹脂で構成された保護層をさらに備えており、
前記保護層は、少なくとも前記接続ラインに取り付けられ、あるいは取り付け可能である前記磁気ヘッド部の領域、好ましくは前記磁気ヘッド部の全体について、流体シールをもたらすように構成されている、ことを特徴とする医療装置。
【請求項40】
医療装置、好ましくは請求項39に記載の医療装置を製造する方法であって、
・磁気ヘッド部に、制御ラインに取り付けられ、あるいは取り付け可能である取り付け領域を設けるステップと、
・前記磁気ヘッド部と前記取り付け領域との間の界面領域を少なくとも部分的に覆い、かつ/又は形成する保護層を設けるステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置及び体内で外科手術を実行するための方法に関する。いくつかの非限定的な例において、医療装置は、人体の内部に適用されるマイクロロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲処置は、低侵襲手術としても知られるが、最小限のサイズの切開しか必要とせず、したがって創傷治癒時間が少なくて済み、患者の外傷のリスクが低減される外科技術である。カテーテル、光ファイバケーブル、長い棒上の把持具及びピンサー、あるいは小型ビデオカメラなどの特定のツールが、低侵襲手術のために設計された。
【0003】
低侵襲手術の制限は、外科医が、おそらくは長時間の操作において疲労しかねない穏やかな手を必要とするツールを使用しなければならないことである。
【0004】
低侵襲手術の分野におけるさらなる発展は、ロボット支援手術又はロボット手術である。これにより、ロボットシステムが、外科医を支援するために外科処置において使用される。複数のロボットアームが、外科医がロボットアームを例えばジョイスティックで操作するときに低侵襲手術を実行することができる。しかしながら、作業は依然として或る程度は侵襲的であり、治癒時間を必要とする内部及び外部の創傷を生じさせる。
【0005】
さらなる発展は、診断、手術、又は治療を行うために人体に注入されるマイクロロボットである。これらのマイクロロボットを、糖尿病患者のグルコースレベルを測定するリアルタイムでの疾患の診断又は監視、あるいは標的位置、例えば腫瘍への薬物の送達に使用することができる(Ornes、2017年、PNAS)。これらのマイクロロボットは、小型装置であり、数ミリメートル~数ミクロンの範囲のサイズを有する。したがって、マイクロロボットは、微小血管の付近の領域又は曲がりくねった血管網の後の領域への到達に有用である。これらの標的領域は、手術及び低侵襲手術による到達が困難である。
【0006】
Eddらが、人間の尿管の内側を移動する手術用マイクロロボットを開示しており、腎臓結石の新規な破壊方法の提供が提案されている(Proceedings 2003 IEEE)。Peyerらが、さまざまな粘度の流体内を移動するための人工細菌鞭毛を有する遊泳マイクロロボットを開示している(2012 IEEE)。マイクロロボットは、そのサイズゆえに、バッテリ及びモータを担持することができない。マイクロロボットを目標位置へと誘導する一般的なやり方は、外部磁場を使用して、磁性材料を含むマイクロロボットを制御することである。ETH ZurichのMulti-Scale Robotic labが、眼の手術を実行するための直径285μmの索を持たないマイクロロボットを開示している。
【0007】
いくつかの挿入用の医療装置が技術的に知られており、例えば、米国特許出願公開第2013/0282173号明細書、米国特許出願公開第2008/0058835号明細書、米国特許第6,240,312号明細書、米国特許出願公開第2009/0076536号明細書、日本特許出願公開第2002/000556号明細書、及び独国特許出願公開第10 2005 032371号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらのマイクロロボットは、サイズが小さいがゆえに、血流などの流体の流れに逆らって移動する能力が限られる。磁場が、ロボットを誘導し、あるいは停止させることができるが、ロボットを、血流内で、とりわけマイクロロボットの移動の方向とは反対の方向に流れる血流に逆らって迅速に移動させるためには、充分に強力でないかもしれない。
【0009】
本発明は、上述の問題のうちの1つ以上を軽減し、とくには製造及び使用が簡単な医療装置、好ましくはマイクロロボットを提供しようと試みる。いくつかの実施形態は、信頼性が高く、安全な再捕捉を可能にするという追加の利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この課題が、独立請求項の特徴的な特徴によって解決される。
本発明は、医療装置に関する。医療装置は、身体血管において使用するためのマイクロロボットであってよい。とくに、医療装置又はマイクロロボットは、人体の内部への適用に好適であってよい。医療装置は、本体部分及び尾部を含む。制御ラインは、装置、好ましくは尾部に取り付けられ、医療装置を第1の位置から引き戻し、かつ/又はその速度を制御するように構成されてよい。一実施形態において、制御ラインは、医療装置を標的位置へと移動させるには不充分な剛性を有することができる。
【0011】
第1の位置は、とくには、医療装置の標的部位であってよい。
好ましくは、制御ラインは、医療装置を制動し、かつ/又は停止させることを目的とした再捕捉ラインである。
【0012】
とくには、とりわけ制御ラインが尾部に取り付けられている場合に、制御ラインを使用して、血流などの流体の流れにおける速度を制御することが可能である。
【0013】
制御ラインは、医療装置を引き戻すために充分な引張強度を有することができ、静的又は動的な体液が生じさせる力に逆らって医療装置を押すには不充分なカラム強度を有することができる。したがって、ラインを身体ダクトへと容易に挿入できるように充分に細く形成することができる。
【0014】
本明細書において使用されるとき、「ライン」という用語は、装置を引っ張るというタスクを果たす一方で、随意により他の非限定的なタスクも果たすことができるあらゆる構造を包含するように意図される。
【0015】
医療装置は、身体、とくには人体へと注入されるように構成されてよい。尾部、及び随意により本体部分は、制御ラインよりも大きい断面を有することができる。医療装置を、機械的に、又は手動で、保持又は引き戻すことができる。そのような制御ラインは、例えば血流などの対向する流体の流れを通って医療装置を引っ張ることを可能にする。また、血流によって運ばれる医療装置の速度を制御すること、減速させること、又は血流にもかかわらず患者の体内で装置を停止させることも可能にする。この引っ張り動作は、医療装置の位置のわずかな調整又は再捕捉であってよい。とくには、装置は、制御ラインのためのハンドルを備えることができる。
【0016】
制御ラインは、医療装置から医療装置の挿入部位まで延びるように構成された長さを有することができる。本発明の一実施形態は、ポートと医療装置とを備えるシステムに関し、制御ラインが尾部からポートまで延びる。
【0017】
制御ラインは、ストリング、とくには可撓性ストリングであってよい。好都合には、ストリングは、屈曲可能である。利点は、そのような医療装置が、既知のカテーテル装置と比較して、サイズが小さく、小さな切開しか必要としないことである。
【0018】
医療装置を、身体血管内へと解放し、身体血管を通って血管内の標的部位へと流体の流れによって運び、簡単なやり方で再捕捉することができる。装置を、制御ラインを緩め、あるいは制御ラインを引っ張ることによって、再配置することができる。
【0019】
医療装置は、好ましくは、装置を或る方向に能動的に移動させるための少なくとも1つの駆動部と、体内での医療装置の動きを制御し、好ましくは変更するための制御部材とを有する。医療装置は、体液の流れの中を移動すること、及び/又は組織上を移動することが可能である。
【0020】
駆動部は、医療装置を移動させる任意の種類の機能であってよい。可能な実施形態は、プロペラ、車輪、連続軌道(例えば、無限軌道)、鞭毛、レッグ、フック、又は外部操縦用の磁気駆動部であってよい。制御部材は、例えば信号などの外部作用によって装置を移動させ、あるいは操縦又は停止させることができる。制御部材は、駆動部の速度又は回転方向を調整し、したがって位置を制御することができる。駆動部は、医療装置が血管内の急な曲がりを通って移動することを可能にすることができる。
【0021】
医療装置は、好ましくは、体内の医療装置の位置を決定するための位置決め手段を有する。位置決め手段は、受信機によって受信される信号を発する。次いで、受信機は、医療装置の位置を算出する。この信号は、電波、放射性トレーサ、音波、Bluetooth、又は任意の他の無線信号であってよい。代替の実施形態において、位置決め手段は、温度、pH、酸化還元電位、塩濃度、粘度、圧力、電位、ガス濃度、放射能、及び/又は代謝レベルなどの種々の環境パラメータを測定するためのセンサを含むことができる。位置決め手段は、測定されたパラメータを、医療装置の位置を計算する受信機へと送信する。測定されたパラメータを、環境を分析するために使用することもできる。
【0022】
医療装置の制御ラインは、好ましくは、エネルギー及び/又はデータ、とくには光又は電気信号を医療装置との間で伝送するための伝送ケーブルを備える。伝送ケーブルは、1つがエネルギー及びデータを届けるためのものであり、1つがデータを受信するためのものである2つの別個のケーブルを含むことができる。また、伝送ケーブルは、エネルギー及びデータを伝送し、制御ラインとして構成される単一のケーブルであってもよい。これに加え、あるいはこれに代えて、伝送ラインは、マイクロ同軸ケーブルであってもよい。
【0023】
制御ラインは、生体適合性材料を含むことができ、あるいは生体適合性材料で構成されてよい。制御ラインは、好ましくは、金属、とくには銅、ステンレス鋼、コバルト-クロム-ニッケル合金、チタニウム、チタニウム合金、白金、白金合金、Nitinol、ニッケル-チタニウム三元合金、ニッケルを含まない合金、金属複合材料、ポリマー、炭素繊維、グラフェン、織物、生糸、たんぱく繊維、及びカーボンナノチューブからなる材料群から選択される材料を含み、あるいはそのような材料で実質的に構成される。
【0024】
とくに好適なポリマーは、アラミド、とりわけKevlar及びTwaronのうちの1つ、ポリアミド(とくにはナイロン、すなわちPA6及びPA66)、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、生体吸収性ポリマー、例えばポリグリコール酸(PGA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ乳酸(PLA、とくにはPLLA及びPDLAのうちの1つ、並びに/あるいはP(LA-GA)などのそれらの対応するコポリマー)、ポリ-ε-カプロラクトン及びその対応するコポリマー(例えば、P(LA-CL))である。さらに、コラーゲン及びキトサンが、制御ラインの材料として同様に好適である天然ポリマーである。
【0025】
上記のポリマーのいずれも、それぞれのコポリマーとしてブレンド、混合、又は使用されてよいことを、理解できるであろう。
【0026】
とくに適した金属は、マグネシウム及びマグネシウム合金である。マグネシウムは、生物腐食性かつ生体適合性であり得る。さらに、その腐食(したがって、分解)速度は、合金化による調整及び/又は電圧の印加による加速が可能である。この特性を、例えば、医療装置又は医療装置の一部を解放するために使用することができる。
【0027】
これらの材料は、治療の期間にわたって分解せず、あるいは血栓症などの有害な影響を引き起こさないような充分な生体適合性を有する。これは、医療装置を必要に応じていつでも取り出すことができることを保証する。さらに、これらの材料は、特定の時間枠の間、さまざまなpH又は酸化ストレスなどの体内の環境影響に耐える。典型的には、そのような時間枠は、数時間であるが、1~60分の間又は1~6時間の間のどこかであってよい。加えて、それらは、医療装置を引っ張るための充分な長手方向強度を有する。さらに、上記の材料は、好ましくは少なくとも数時間又は数日にわたって劣化に耐える。一部の材料は、より遅れて劣化してもよい(すなわち、治療が必要とするより長い期間にわたって)。例えば、医療装置又はその一部が意図的に治療後に人体内に残される場合や、人体内での装置の紛失の場合の安全機構として、より遅い劣化を採用することができる。
【0028】
好ましくは、制御ラインは、とくには制御ラインの長手方向に垂直な平面において、医療装置よりも小さい断面を有する。ラインの断面は、医療装置の断面の50%よりも小さくてよい。
【0029】
医療装置は、好ましくは、例えばMRI、CTスキャナ、超音波検査、X線、又は蛍光透視法による撮像技術によって検出可能な材料を含む。
【0030】
これにより、処置の最中のあらゆる時点において装置の位置を決定することができる。必要に応じて、とりわけリアルタイムで、位置を追跡することも可能である。連続的な位置特定プロセスは、流体の粘度又は体液の流れからの外圧などのパラメータに応じて医療装置の誘導が複雑になる可能性があるため、有益である。
【0031】
医療装置は、血管、とりわけ動脈又は静脈にとくに適することができる。他の適用領域は、尿道又は尿管であってよい。
【0032】
医療装置の制御ラインは、好ましくは10~1000μm、より好ましくは100~400μmの外径を有する。
【0033】
本体部分は、磁性部分を備えることができる。この磁性部分を、外部磁場との相互作用によって医療装置を誘導するために使用することができる。磁性部分は、磁性材料で作られ、あるいは磁性材料を含んでいる内側コア、マトリックス又はコーティング中の磁性マイクロ又はナノ粒子であってよい。
【0034】
医療装置は、好ましくは、クランプ、外科用メス、ドリル、フック、ステント、脚、無限軌道、プロペラ、起爆装置、カメラ又はセンサ、あるいは薬物放出成分などの少なくとも1つの機能ユニットを備える。
【0035】
機能ユニットは、医療装置に取り付け可能であってよい。機能ユニットを、医療装置を組織上で移動させ、あるいは流体を通って移動させるために使用することができる。また、医療装置を組織部位に取り付けるため、又は塞がれた開口部を通る通路を開くため、又は新たな開口部を作成するために使用することもできる。あるいは、機能ユニットを、身体環境からデータを収集するために使用することができる。
【0036】
提案される装置は、動脈の血栓を除去し、動脈瘤を埋め、あるいは腫瘍へと薬物を届けるためにとくに適する。起爆装置は、血栓を開くことができる。
【0037】
機能ユニットは、活性化可能であってよい。いくつかの実施形態において、機能ユニットは、特定の環境において磁場又は電磁波によって活性化される。これは、例えば薬物の制御された放出を可能にする。機能ユニットは、エネルギー、例えば電気信号によって活性化可能であってよい。
【0038】
機能ユニットは、医療装置及び/又は制御ラインに取り付けられてよく、あるいは取り付け可能であってよい。とくには、機能ユニットは、医療装置に直接隣接し、あるいはそれから離れて、医療装置の背後の制御ラインに接ぎ木されてよい。
【0039】
同様に、2つ以上の医療装置を同じ制御ラインに取り付けることも可能である。そのような複数の医療装置は、直列(すなわち、医療装置のチェーンとして)、並列、又は任意の他の配置(円、ツリーライン、など)で取り付けられてよい。
【0040】
医療装置は、好ましくは、薬物を貯蔵及び放出するためのリザーバを含む。リザーバを、特定の適用部位に薬物を適用するために使用することができる。例えば、腫瘍細胞を毒性薬物で局所的に処置することができる。これにより、医療装置を、毒性薬物を適用部位まで運び、そこに放出するために使用することができる。薬物の制御された放出は、時限的な薬物適用の可能性も可能にする。医療装置を挿入し、適用部位へと誘導し、薬物の予定放出時間まで待機することができる。また、例えば活性薬物及び薬物を不活性化する酵素などの2つの異なる薬物の遅延させた放出を制御することも可能である。
【0041】
医療装置は、好ましくは、とくには制御ラインを介して医療装置から受信機へとデータを送信するための送信機を備える。
【0042】
制御ラインを、エネルギーを伝送するように構成することができる。これにより、医療装置内のセンサによって取得されたデータを、送信することができる。
【0043】
装置を、制御ラインを介してエネルギーを受け取り、かつ/又は医療装置、とくには本体部分のセンサによって得られたデータを、制御ラインを介して送信するように構成することができる。追加又は代替の実施形態において、医療装置又は制御ラインは、エネルギー又はデータの送信及び/又は受信のための無線送信機及び/又は無線受信機を備えることができる。
【0044】
医療装置は、好ましくは8~2000μm、好ましくは50~1000μm、より好ましくは200~500μmのサイズを有する。このサイズは、医療装置の長さ、直径、又は最長寸法であってよい。
【0045】
医療装置の本体部分及び/又は尾部は、好ましくは、金属、プラスチック、ガラス、鉱物、セラミック、炭水化物、ニチノール、カーボン、生体材料、又は生分解性材料などの材料を含む。
【0046】
好ましくは、制御ラインは、医療装置に取り外し可能に取り付けられる。これは、医療装置を制御ラインから取り外すことを可能にする。この目的のために、要素をストリング状の要素から取り外すための技術的に知られた任意の機構を使用することができる。例えば、制御ラインを医療装置に接着でき、この接着による接続が、血液又は別の液体において溶解する。接着剤を、特定の温度よりも上又は下でのみ血液に溶解するように構成することも考えられる。
【0047】
とくには、制御ラインを医療装置に化学的に連結でき、この化学的な接続が、温度上昇、pH変化、電気刺激、などの特定の条件下で切断されてよい。
【0048】
機械的手段も考えられる。例えば、制御ラインを、フック、結び目、カラビナ、及び/又はクランプを介して医療装置に取り付けることができる。これに加え、あるいはこれに代えて、接続ラインが、医療装置を少なくとも部分的に貫き、医療装置内又は医療装置の表面、とくには医療装置の制御ラインと比べて反対側に位置する表面に固定されてよい。機械的インターロック、すなわち2つの要素を接続するように互いに相互作用する第1及び第2の輪郭を使用することも考えられる。機械的インターロック機構を接着剤と組み合わせて使用することが、接着剤と医療装置/制御ラインとの間の接着力ではなく、接着剤における凝集力によって接続がもたらされるため、とくに有利である。
【0049】
同様に、化学的又は物理的な分離(化学吸着、物理吸着、磁場及び/又は電場)も考えられる。
【0050】
例えば、固定点、医療装置、又は医療装置の一部を、鉄系材料によって少なくとも部分的に形成することができる。電流及び/又は電圧を制御ラインに印加することにより、鉄系部分の溶解を引き起こすアノードからカソードへの第一鉄イオンの移動を生じさせることができる。これに加え、あるいはこれに代えて、制御ラインは、制御ライン及び/又は装置の一部分を腐食及び溶解から保護するための絶縁部分を有することができる。
【0051】
好ましくは、制御ラインは、医療装置から選択的に取り外すことが可能である。とくには、選択的取り外しを、電気刺激、磁性部分の回転、物理的作用、及び/又は化学的作用によってトリガすることができる。
【0052】
例えば、制御ラインを、制御ラインを医療装置から切り離す電気信号を送信するように構成することができる。同様に、これを、磁石及び/又は電磁石によって行うことができる。また、医療装置は、制御ラインからの医療装置の取り外しを選択的にトリガする無線信号を、例えば無線信号受信機を介して受信してもよい。
【0053】
これに加え、あるいはこれに代えて、医療装置は、その周囲の組織/液体の特性を検出し、制御ラインを自動的に解放してもよい。例えば、温度、pH、身体流量値、炎症値、又はバイオマーカーを検出し、その値に基づいて制御ラインを解放することができる。
【0054】
好ましくは、医療装置は、第1及び第2の部分を備える。とくには、第1の部分は尾部であってよく、第2の部分は本体部分であってよい。第1の部分は、制御ラインに取り付けられる。第2の部分は、第1の部分に取り外し可能に取り付けられる。第1の部分は、とくには電気的刺激、磁性部分の回転、物理的作用、及び化学的作用のうちの少なくとも1つによって、医療装置の第2の部分から選択的に取り外し可能である。
【0055】
とくには、医療装置からの制御ラインの選択的な取り外しに適するとして上述した任意の機構が、第2の部分の第1の部分からの選択的な取り外しにも適する。
【0056】
好ましくは、医療装置は、制御ラインによって形成された正確に1つのラインを備える。医療装置は、とくには、そこから延びるケーブルなどのいかなる他の要素にも取り付けられなくてよい。医療装置が正確に1つの制御ラインを備え、この制御ラインが装置から選択的に取り外される場合、装置は、その環境内で自由に浮遊する。
【0057】
好ましくは、制御ラインは、データ又はエネルギーを伝送することができない。これは、非導電性材料で作られてよく、あるいは、例えばその構造(絶縁体を含むサンドイッチ構造など)ゆえにその長手方向に沿って電気を伝導することが不可能であってよい。制御ラインは金属で作られてよいが、医療装置への接続が、例えば接続が絶縁材料で作られ、あるいは絶縁材料でコーティングされるがゆえに、電気の伝達に不適であってよい。したがって、これに加え、あるいはこれに代えて、装置は、制御ラインを介してデータ又はエネルギーを受け取ることが不可能であってよい。
【0058】
好ましくは、制御ラインを、実質的な材料応力を伴うことなく3mm、好ましくは1mm、さらにより好ましくは700μm未満の曲率半径を有する曲線へと曲げることができる。当業者であれば、上記の曲率半径が、他の点では直線状の制御ライン(すなわち、曲率0、すなわち無限大の半径における0Paの理論的応力)を指すことを、理解できるであろう。とくには、制御ラインを、最小破壊応力(すなわち、塑性変形及び/又は材料破壊が発生する前の制御ラインにおける機械的応力)が0.5~4MPaの範囲内にあるような材料及び/又は構造で製作することができる。当業者であれば、より高い破断応力を有する制御ライン(すなわち、より丈夫な制御ライン)で本発明を実施できることを、理解できるであろう。しかしながら、より高い値は不要であってよい。本発明が機能するために。
【0059】
制御ラインの弾性率は、0.001~200GPaの範囲内であってよい。好ましくは、ポリマー材料を含み、あるいはポリマー材料で構成される制御ラインは、0.001~5GPaの弾性率を有し得る。金属を含み、あるいは金属で構成される制御ラインは、30~200GPaの弾性率を有し得る。当然ながら、任意の弾性率を達成するために、複合材料など、材料を混合し、ブレンドし、あるいは組み合わせて使用することが可能である。とくには、ポリマーと金属との複合材料を使用して、0.001~200GPaの範囲内のどこかの弾性率を達成することができる。
【0060】
典型的には、医療装置を制御するときに制御ラインの破断応力に到達することはない。制御ラインがNiTiワイヤである場合、最終引張強度(UTS)は1300±200MPaに達することができ、ポリマーワイヤについて、UTSは30~900MPaの間であり得る。
【0061】
好ましくは、制御ラインは、バリウム化合物、ヨウ素、タンタル、白金、ビスマス、又はポリマー材料などの放射線不透過性材料を含み、あるいはそのような放射線不透過性材料で構成される。
【0062】
好ましくは、放射線不透過性材料は、制御ラインに関連付けられた制御ラインと平行な別個のケーブルとして、かつ/又は制御ライン上のコーティングとして配置される。これにより、ユーザが、制御ラインを直接撮像し、患者の体内におけるその位置を決定することができる。これに加え、あるいはこれに代えて、制御ラインに沿って1つ又は複数の放射線不透過性マーカを含むことも可能である。放射線不透過性マーカは、制御ラインに沿って一定の距離又はランダムな分布で配置されてよい。
【0063】
好ましくは、制御ラインは、PEG(ポリエチレングリコール)又はポリビニルピロリドン(PVP)又はポリ(ビニルアルコール)(PVA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)あるいはこれらの任意の組み合わせで機能化された表面などの親水性表面を備える。このような表面は、血液による湿潤を可能にし、したがって血液中でのより容易かつより安全な移動を可能にする。さらに、親水性表面は、制御ラインへのたんぱく質吸着を制限し、したがって例えば免疫カスケードの誘発を防止することができる。
【0064】
親水性コーティングは、50nm~10μm、好ましくは100nm~500nmの厚さを有することができる。
【0065】
親水性コーティングを、親水性分子をグラフトすることによって作製することができる。グラフトを、制御表面の表面処理の有無にかかわらず行うことができる。表面処理は、例えば、化学エッチング又は機械的研磨であってよい。グラフトを、例えば化学蒸着又は電気化学蒸着などの化学プロセスによって行うことができる。グラフトを、物理蒸着、層堆積、噴霧、又はエレクトロスプレーなどの物理的プロセスに従って行うことができる。
【0066】
親水性コーティングは、表面機能化であってよい。
代替の設計においては、親水性コーティングを、PTFEライナーなどの親水性ライナーで作製することができる。
【0067】
好ましくは、制御ラインは、抗血栓形成性を有する表面を備える。例えば、実質的な血栓症を引き起こすことがない材料でコーティングされてよい。とくには、表面は、ホスホリルコリン、フェノックス、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリルアミドのうちの少なくとも1つを備えることができる。これに加え、あるいは代えて、制御ラインは、抗血栓形成作用を有する薬物でコーティングされてよい。
【0068】
好ましくは、制御ラインは、ヒドロゲルでコーティングされた表面を有する。ヒドロゲルは、合成ヒドロゲル及び/又は天然ヒドロゲルであってよい。好ましくは、エラスチン様ポリペプチド(ELP)、ポリエチレングリコール(PEG)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリヒドロキシメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸(PMA)(並びに、他のメタクリレート系及びメタクリル酸系ポリマー)、アガロース、ヒアルロン酸、メチルセルロース、エラスチン、及びキトサンを含む群から選択されるヒドロゲルが使用される。合成ヒドロゲル(ELP、PEG、HEMA、ポリビニルピロリドン、PMA)及び天然ヒドロゲル(アガロース、ヒアルロン酸、メチルセルロース、エラスチン、キトサン)の両方は、化学的に架橋及び/又は物理的に架橋されてよい。制御ラインと血管壁との間の摩擦を少なくとも部分的に低減する他の材料も、使用することができる。
【0069】
技術的に知られたすべての種類のヒドロゲル、とくにはホモポリマー、コポリマー、ポリマーブレンド、相互浸透ネットワーク、自己組織化構造、及びポリマーの混合物を使用して、本発明を実施することができる。
【0070】
これに加え、あるいは代えて、弾性及び/又は軟質ブイを制御ラインに沿って取り付け、制御ラインのより滑らかな移動を可能にすることができる。
【0071】
好ましくは、制御ラインは、結び目、クリップ、溶接接続、接着剤による接続、材料の混合、及び化学結合のうちの少なくとも1つによって、医療装置に取り付けられる。
【0072】
制御ラインの形成に関して、とくには制御ラインの方向に沿った材料組成の勾配にて配置される材料の混合物を提供することができる。例えば、装置の尾部が第1のポリマーを備えることができる一方で、制御ラインは第2のポリマーを備える。第1及び第2のポリマーを、第1及び第2のポリマーの勾配ブレンドを介して接続することができる。とくには、制御ラインは、編み上げによる構造及び/又はより合わせによる構造あるいは他のマルチフィラメント構造などの構造を備えてもよい。あるいは、モノフィラメントを使用してもよい。マルチフィラメント構造が使用される場合、すべてのフィラメントが同じ材料から構成されても、異なるフィラメントが使用されてもよい。
【0073】
好ましくは、医療装置は、制御ラインに対して平行に配置された中空管を備える。中空管は、吸引動作の目的にとくに合わせて構成され、中空管は、周囲の流体及び/又は組織の中空管への吸引を生じさせる低い圧力を生成する。吸引作用を、凝血塊の除去又は組織上のマイクロロボットの安定化を助けるために使用することができる。さらに、中空管を使用して、バルーンを膨張させることができる。
【0074】
好ましくは、医療装置は、トリガワイヤをさらに備える。とくに好ましくは、トリガワイヤは、制御ラインに関連付けられ、制御ラインの長手方向に対して平行に配置されてよい。例えば、制御ラインの内側に配置されてよい。あるいは、別個の要素として制御ラインの隣に配置されてよいが、制御ラインに関連付けられることが好ましい。トリガワイヤは、装置の機能をトリガするように構成される。
【0075】
トリガワイヤは、とくには、機械的又は電気的信号を伝送することができ、とりわけ、薬物を放出する機能又は医療装置を制御ラインから選択的に分離する機能をトリガすることができる。
【0076】
トリガワイヤは、10μm~150μmの間、好ましくは20μm~70μmの間の直径を有することができる。トリガワイヤは、円筒形状又はストリップ形状を有することができる。トリガワイヤを、PETなどのポリマー、あるいはニチノール又はステンレス鋼などの金属で製作することができる。一構成において、トリガワイヤは、ヘッドの要素を後退させるための機械的な力を伝達することができる。
【0077】
さらに、本発明は、体内、好ましくは人体内で外科手術を行うための方法を提供する。第1のステップにおいて、医療装置が体内に挿入される。次いで、医療装置を、制御ラインを押すことなく、相互作用の場所へと移動させる。とくには、医療装置は、標的部位の上流に挿入される。流体の流れが、医療装置を標的部位へと運ぶことができる。医療装置は、制御ラインを緩め、あるいは引っ張ることにより、軌跡に沿って位置決め及び/又は誘導することができる。
【0078】
医療装置は、1つ以上の場所において1つ以上の動作を実行することができる。医療装置は、制御ラインを引っ張ることによって身体から取り出される。
【0079】
さらに、本発明は、医療装置を制御するためのシステムを提供する。システムは、医療装置、好ましくは上述のとおりの医療装置と、磁場発生器とを備える。したがって、医療装置は、磁場発生器が発生させる磁場によって誘導される。
【0080】
外部磁場発生器は、0.1~20T/m、好ましくは0.2~1T/mの勾配を有する磁場を生成する。ひとたび医療装置が体内に挿入されると、磁場を使用して医療装置を適用部位に誘導することができる。したがって、医療装置は、とくには体液の流れの中を浮遊している間に、磁場によって移動又は停止させられ、あるいは操縦される。全時間の間、医療装置は制御ラインに取り付けられたままである。
【0081】
さらなる実施形態において、医療装置は、磁気異方性を有してもよい。これにより、医療装置を、磁場によって配向させることができる。
【0082】
さらに、本発明は、身体の内部に適用され、好ましくは人体の内部に適用される医療装置、好ましくはマイクロロボットに関する。
【0083】
好ましくは、システムは、医療装置の速度を好ましくは連続的に制御するように構成された制御部をさらに備える。制御部は、とくには、医療装置に取り付けられた制御ラインの速度を制御することによって医療装置の速度を制御することができる。制御部は、とくには、制御ラインの巻き取り、かつ/又は解放するためのリールを備えることができる。
【0084】
好ましくは、システムは、結合要素をさらに備え、結合要素は、結合要素を装置に接続してその速度をとくには連続的に制御するために、制御ラインに結合するように構成される。
【0085】
システムは、好ましくは、制御された速度で、好ましくは連続的に、制御ラインを引き込み、かつ/又は解放するように構成される。
【0086】
制御ラインの速度、したがって医療装置の速度を、所定の速度関数に従って制御することができ、あるいは医療装置の位置に基づいて制御することができる。
【0087】
とくに好ましくは、制御ラインの速度及び位置は、リニアモータ及び/又はスピンドル/リール機構を使用して調整される。
【0088】
好ましくは、システムは、好ましくは制御ラインの解放を制御することによってマイクロロボットの位置を制御するための機構を備える。これは、とくには、引き込み/解放距離を測定するセンサを備えることができる。また、制御ラインの解放の程度を自動的に決定するサーボモータを備えてもよい。
【0089】
制御ラインの連続的な解放又は解放の停止を、とくには目標の軌跡に対する医療装置の位置の関数として制御することができる。
【0090】
さらに、本発明は、流体の流れにおいて装置を制御する方法に関する。装置は、好ましくはマイクロロボットであり、さらにより好ましくは本明細書において上述した装置である。流体の流れは、好ましくは血管内の血液である。装置は、装置に取り付けられた制御ラインを備える。装置の速度は、制御ラインを介して制御される。
【0091】
好ましくは、速度は、装置が分岐部に近付くときに下げられる。これにより、所望の経路に沿ったより正確な移動、したがってより安全な移動が可能になる。
【0092】
好ましくは、装置の速度を、好ましくは制御ラインに力を印加することによって、自動的に制御する制御部が設けられる。
【0093】
好ましくは、制御部は、分岐部を自動的に検出する。そのような検出は、超音波撮像、MRI、断層撮影、X線、又は他の既知の方法などの外部撮像に基づくことができる。これに加え、あるいは代えて、医療装置によって取得される測定データに基づいてもよい。例えば、医療装置は、分岐部の存在を示す流体の流れの特性を検出することができる。
【0094】
これに加え、あるいは代えて、医療装置を、制御部によって、最初は事前に計画された軌跡に沿って、例えば血管網へと目標の領域まで誘導することができる。
【0095】
さらに、本発明は、医療装置に関する。好ましくは、医療装置は、本明細書に記載の任意の医療装置である。医療装置は、制御ラインに取り付けられ、あるいは取り付け可能である磁気ヘッド部を備える。制御ラインは、好ましくは、第1の接着成分を介して取り付けられ、あるいは取り付け可能である。とくに好ましくは、第1の接着成分は、当業者にとって公知かつ市販されているシアノアクリレート成分又はエポキシ接着剤である。第1の接着成分が、医療用接着剤であってよいことを、理解できるであろう。医療装置は、保護層をさらに備える。保護層は、第2の接着成分を含むことができ、好ましくは第2の接着成分で構成される。とくに好ましくは、第2の接着成分は、樹脂を含み、あるいは樹脂で構成される。樹脂は、水性の環境において安定である。樹脂は、エポキシ樹脂であってよい。エポキシ樹脂は、とくに好都合な耐水性を提供することができる。
【0096】
あるいは、保護層は、網状ポリマーを含んでよく、あるいは網状ポリマーで構成されてよい。例えば、制御ラインに取り付けられた磁気ヘッドを備える装置を、後に硬化するポリマー溶液に浸漬させることができる。
【0097】
保護コーティングは、少なくとも磁気ヘッド部のうちの接続ラインに取り付けられ、あるいは取り付け可能である領域について、流体シールを提供するように構成される。好ましい実施形態において、保護層は、磁気ヘッド部の全体について流体シールを提供するように構成される。
【0098】
保護コーティングは、親水性を示すことができる。一構成において、保護シェルは、PEGなどの親水性材料を含むことができ、あるいはPEGなどの親水性材料で構成されてよい。一構成において、保護シェルは、PVP又はPTFEなどの親水性材料でコーティングされる。
【0099】
好ましくは、取り付け領域は、磁気ヘッド部のS極に配置される。あるいは、取り付け領域は、N極に配置されても、S極とN極との間に配置されてもよい。
【0100】
磁気ヘッド部の流体シールは、全体又は一部分のみが保護層によって形成されてよい。例えば、制御ラインが丸みを帯びた磁気ヘッド部に取り付けられる場合、保護層は、制御ラインのための開口部ゆえに閉じたカプセルを形成しない可能性がある。そのような構成が、依然として磁気ヘッド部の流体シールを提供できることを、理解できるであろう。
【0101】
保護層は、磁気ヘッド部への制御ラインのより安全な取り付けを提供し、とくには血液などの流体における磁気ヘッド部への腐食作用を低減し、治療器具のためのさらなる取り付け機構をさらに提供することができるため、とくに好都合である。
【0102】
医療装置が、結び目、クリップ、溶接接続、接着接続、材料の混合、及び化学結合のうちの少なくとも1つによって取り付けられた制御ラインを含む場合、保護コーティングを設けることがとくに好ましい。
【0103】
したがって、保護コーティングは、とくには制御ラインが取り付けられ、あるいは取り付け可能である領域の周囲の腐食を低減又は防止することができる。これは、とくには、制御ラインが前記接着剤を介して磁気ヘッド部に取り付けられる場合に、接着剤と磁気ヘッド部との間の界面に位置しうる。これにより、磁気ヘッド部に対する制御ラインのより確実かつより安定した取り付けを提供することができる。
【0104】
とくには、保護層の結果として、磁気ヘッド部と制御ラインとの間の破断力を高めることができる。好ましくは、破断力は、少なくとも1N、とくに好ましくは少なくとも7Nである。
【0105】
好ましくは、保護層は、磁気ヘッド部の全体がシールされるように設けられる。
この目的のために、保護層は、閉じたカプセルを形成することができる。例えばシアノアクリレート接着剤によって形成される取り付け領域が、保護層表面に形成されてよい。
【0106】
あるいは、保護層は、別の要素、とくには第1の接着成分、制御ライン、及び/又は磁気ヘッド部と制御ラインとの間の別の取り付け機構と協働することによってシールを形成することができる。保護層が、これらの要素との間にも液体を漏らさないシールを形成できることを、理解できるであろう。
【0107】
さらなる代案の実施形態において、保護層は、磁気ヘッド部の周囲に部分的にのみ形成される。したがって、液体を漏らさないシールは、取り付け領域と磁気ヘッド部との間の界面にのみ設けられてよい。例えば、保護層を、磁気ヘッド部上の取り付け領域を少なくとも部分的に覆う球状キャップ又は球状セグメントとして形成することができる。
【0108】
好ましくは、磁気ヘッド部は、ネオジム(Nd-Fe-B)磁石を備え、あるいはネオジム(Nd-Fe-B)磁石で構成される。磁気ヘッド部は、好ましくは、0.2~2mm、好ましくは0.7~1.3mm、とくに好ましくは1mmの直径を有する実質的に球形であってよい。磁気ヘッド部は、好ましくは、0.5~2.0T、とくに好ましくは1.0~1.5Tの残留誘導(Br)を有する。
【0109】
これに加え、あるいは代えて、磁性部分を、
・FePt合金、Nd-Fe-B合金、SrO6Fe2O3合金などの硬強磁性材料、
・Fe合金(ステンレス鋼AISI 420C、例えばグラファイト製の保護シェルで被覆されたFe)、Ni合金、Co合金、又はこれらの磁性要素の任意の組み合わせなどの軟強磁性合金、
・例えば、酸化鉄(Fe3O4又はFe2O3)などのフェリ磁性材料
で製作することができる。
【0110】
磁気ヘッド部は、ポリマーマトリックス中に磁性粒子を備えることができる。これに加え、あるいは代えて、磁気ヘッド部は、中空管を備えることができる。磁気ヘッド部を、ヤヌス粒子として構成することができる。磁気ヘッド部を、磁気シェル又はコーティングを備える磁性又は非磁性であってよいコア粒子として構成することができる。
【0111】
磁気ヘッド部は、追跡要素を有するコーティングをさらに備えることができる。追跡要素は、例えば、バリウム化合物、ヨウ素、タンタル、白金、及び/又はビスマスなど、医療装置及び/又は磁気ヘッド部の位置を追跡するための放射線不透過性要素であってよい。放射線不透過性コーティングを、ストリップ、リング、又は粉末で作製することができる。例えば、磁気ヘッドの表面に白金ストリップ(幅100μm及び/又は厚さ50μmであってよい)を設置することができる。
【0112】
あるいは、バリウム粉末をエポキシなどのポリマーと混合し、磁気ヘッドの表面に塗布することができる。コーティングの厚さは、1μm~70μm、好ましくは5μm~15μmの間であってよい。放射線不透過性粉末の粒子は、20nm~3μm、好ましくは50nm~100nmの間の直径を有することができる。
【0113】
これに加え、あるいは代えて、追跡要素は、制御ラインに含まれてもよい。
したがって、制御ラインの位置及び/又は速度を追跡及び検出することが可能である。
【0114】
追跡要素は、制御ライン及び/又は磁気ヘッド部に接ぎ木され、含浸され、かつ/又はコーティングされてよい。
【0115】
これに加え、あるいは代えて、磁気ヘッド部は、硬強磁性材料、軟強磁性材料、強磁性材料、及び/又は超常磁性材料を含むことができ、あるいはそれらで構成されてよい。上述の材料のどれも、構造内で組み合わせることが考えられる。例えば、磁気ヘッド部は、硬強磁性材料を含むコアと、軟強磁性材料を含むシェルとを備えることができる。そのような構造は、とくには磁場が印加されない場合に好都合であり得、医療装置の永久的な磁気凝集を低減することができる。
【0116】
保護層を含む磁気ヘッド部分は、0.2~2mm、好ましくは0.7~1.5mm、とくに好ましくは1.0~1.2mmの直径を有することができる。
【0117】
好ましくは、制御ラインは、シアノアクリレート系接着剤を介して磁気ヘッド部に取り付けられ、あるいは取り付け可能である。
【0118】
制御ラインは、マルチフィラメントナイロンを含むことができ、あるいはマルチフィラメントナイロンで構成されてよい。制御ラインは、50~500μm、好ましくは100~350μm、とくに好ましくは約200μmの直径を有することができる。
【0119】
制御ラインは、1~50GPa、好ましくは1~20GPa、とくに好ましくは1~3GPaのヤング率を有することができる。
【0120】
制御ラインは、0.01~1N・mm2、好ましくは0.05~0.5N・mm2の曲げ剛性を有することができる。
【0121】
制御ラインは、0.1~5GPa、好ましくは0.1~1GPa、とくに好ましくは0.3~0.7GPaの破断応力を有することができる。
【0122】
制御ラインは、長手方向軸に垂直な平面において、0.001~0.1mm2、好ましくは0.004~0.1mm2、とくに好ましくは0.01~0.05mm2の断面積を有することができる。
【0123】
とくには、制御ラインは、とくには材料、直径、及び長手方向軸に垂直な平面における断面のうちの少なくとも1つの選択によって、直径に応じて1~20N、好ましくは8~12Nの範囲の破断力を有するように構成されてよい。
【0124】
さらに、本発明は、医療装置、とくには本明細書に記載の医療装置を製造する方法に関する。本方法は、制御ラインに取り付けられ、あるいは取り付け可能である取り付け領域を有する磁気ヘッド部分を提供するステップを含む。取り付け領域は、第1の接着成分、例えばシアノアクリレートであってよい。あるいは、任意の他の取り付け機構、とくには本明細書に記載の取り付け機構を使用することができる。本方法は、磁気ヘッド部と取り付け領域との間の界面領域を少なくとも部分的に被覆及び/又は形成する保護層を設けるステップをさらに含む。保護層は、好ましくは第2の接着成分、とくには樹脂を含む。
【0125】
好ましくは、保護層は、磁気ヘッド部の表面を覆う連続した層として設けられる。保護層は、磁気ヘッド部の中央部分及び/又は近位部分を覆ってもよい。
【0126】
好ましくは、保護層は、磁気ヘッド部及び取り付け領域に対して径方向外側の位置に配置される。しかしながら、取り付け領域を保護層上、すなわち磁気ヘッド部に対して保護層の外側に配置することも考えられる。
【0127】
本発明の非限定的な実施形態が、あくまでも例として、添付の図面に関して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【
図3】駆動部及び制御部材を有する医療装置の概略図。
【
図6】医療装置の制御ラインによるデータ及びエネルギーの伝送の概略図。
【
図7a】医療装置に取り付けられた機能ユニットの概略図。
【
図7b】医療装置に取り付けられた機能ユニットの概略図。
【
図7c】医療装置に取り付けられた機能ユニットの概略図。
【
図7d】医療装置に取り付けられた機能ユニットの概略図。
【
図8】腫瘍及び医療装置によって腫瘍へと届けられる抗体の概略図。
【
図9a】制御ラインに解放可能に取り付けられた医療装置の種々の実施形態。
【
図9b】制御ラインに解放可能に取り付けられた医療装置の種々の実施形態。
【
図12a】本発明による方法を概略的に示している。
【
図12b】本発明による方法を概略的に示している。
【
図12c】本発明による方法を概略的に示している。
【
図13a】本発明による代替の方法を概略的に示している。
【
図13b】本発明による代替の方法を概略的に示している。
【
図13c】本発明による代替の方法を概略的に示している。
【
図14】血液で満たされた血管内の医療装置を概略的に示している。
【
図15a】関連の要素を有する制御ラインの種々の実施形態の断面図。
【
図15b】関連の要素を有する制御ラインの種々の実施形態の断面図。
【
図15c】関連の要素を有する制御ラインの種々の実施形態の断面図。
【
図15d】関連の要素を有する制御ラインの種々の実施形態の断面図。
【
図15e】関連の要素を有する制御ラインの種々の実施形態の断面図。
【
図15f】関連の要素を有する制御ラインの種々の実施形態の断面図。
【
図16】医療装置の製造の方法ステップを概略的に示している。
【
図17a】磁気ヘッド部分の種々の実施形態を概略的に示している。
【
図17b】磁気ヘッド部分の種々の実施形態を概略的に示している。
【
図17c】磁気ヘッド部分の種々の実施形態を概略的に示している。
【
図17d】磁気ヘッド部分の種々の実施形態を概略的に示している。
【
図18a】保護層を有する医療装置の種々の実施形態を概略的に示している。
【
図18b】保護層を有する医療装置の種々の実施形態を概略的に示している。
【
図18c】保護層を有する医療装置の種々の実施形態を概略的に示している。
【
図18d】保護層を有する医療装置の種々の実施形態を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0129】
図1が、本体部分11と尾部12とを備える医療装置10の概略図を示している。制御ライン13が、本体部分12に取り付けられている。制御ライン13は、医療装置10を引っ張るために使用される。
【0130】
図2が、医療装置10に関する人体2の挿入部位20の概略図を示している。心臓1が、血流に接続されている。血流は、大動脈3、静脈4、及び毛細血管5などのさまざまな種類の血管6を含む。医療装置10は、挿入部位20において血管6に挿入される。したがって、血管6は、挿入部位20においてカテーテル22によって穿刺される。医療装置10は、血流Bへと挿入される。血流Bが、医療装置が相互作用の部位25(
図5)に到達するまで、血管を通って医療装置10を運んでいる。医療装置10は、常に制御ライン13に接続されており、挿入部位20へと引き戻すことが可能である。
【0131】
図3が、血管6内の制御ライン13を有する医療装置10を示している。医療装置10は、駆動部15と、駆動部を制御する制御部材16とを有する。駆動部15は、医療装置10を或る方向に能動的に移動させる。制御部材16は、駆動部15の動作を調整する。制御部材16は、駆動部15の回転方向を反転させたり、その速度を調整したりすることができる。
【0132】
図4が、血管6内の制御ライン13を有する医療装置10を示している。医療装置10は、位置決め手段17を有する。位置決め手段17は、受信機18によって受信される信号19を発する。受信機18は、信号19に基づいて、医療装置10の位置を算出する。
【0133】
図5が、医療装置10を有する血管6の概略図を示している。医療装置10は、血流Bによって運ばれ、制御ライン13に取り付けられている。磁場発生器23が、適用部位25に磁場21を発生させている。医療装置10の本体部分11が、磁場21によって引き付けられる磁性部分14を有する。適用部位25において、医療装置10は、血流Bの力に抗して磁場21によって保持され、所定の位置に留まる。任意の種類の動作を実行した後に、磁場発生器23はオフに切り替えられ、磁場21は消失する。医療装置は、制御ライン13を引っ張ることにより、血流Bの力に抗して取り除かれる。
【0134】
図6が、医療装置10の概略図を示している。制御ライン13は、エネルギー伝送ケーブル30及びデータ伝送ケーブル31を備える。エネルギー伝送ケーブル30は、センサ40及びコンパートメント41にエネルギーを伝送する。センサは、データ伝送ケーブル31を介してデータを送信する。代替として、エネルギー伝送ケーブル30及びデータ伝送ケーブル31は、同じケーブルに統合されてもよい。このケーブルは、制御ライン13を介して医療装置へとエネルギーを伝送するため、並びに制御ライン13を介して医療装置との間でデータを伝送するために使用される。
【0135】
図7a~
図7dが、取り付け可能な機能ユニット51を有する医療装置10の概略図を示している。
図7aにおいて、機能ユニット51は、装置を通る長手方向軸に沿って順方向又は逆方向に医療装置10を移動させるためのプロペラである。
図7bは、機能ユニット51が無限軌道である医療装置10を示している。無限軌道は、医療装置10を組織部位へと移動させるために使用される。
図7cにおいて、医療装置10の機能ユニット51は、ドリルである。ドリルを、組織に穴を開け、物理的障壁を横切って移動するための開口部を生成するために使用することができる。
図7dにおいて、医療装置10の機能ユニット51は、フックである。フックを、医療装置10を所定の位置に保持し、あるいは医療装置10が再捕捉されるときに物体又は物質を引きずるために使用することができる。
【0136】
図8が、腫瘍部位63の概略図を示している。腫瘍細胞61は、正常細胞60よりも大きなサイズ及び速い複製サイクルを有する。医療装置10は、腫瘍部位へと誘導され、コンパートメント41内に腫瘍特異性抗体62を担持する。腫瘍部位63において、医療装置10は、腫瘍特異性抗体62を放出する。抗体は、腫瘍細胞に結合し、免疫療法のプロセスを引き起こす。抗体62を放出した後に、医療装置10は、制御ライン13を引っ張ることによって腫瘍部位63から除去される。
【0137】
図9aが、本発明による医療装置10の別の実施形態を示している。医療装置10は、別個の要素として構成された尾部12及び本体部分11を備える。本体部分11及び尾部12は、接続機構26を介して接続される。ロボットは、流体の流れにおけるロボットの速度を制御するように構成された単一の制御ライン13に取り付けられる。接続機構26を、例えば電流を印加することによって本体部分11を尾部12から取り外すように選択的に非活性化可能である。接続機構26は、電流が流れると電気分解によって崩壊する鉄系材料を含む。したがって、接続機構26は、医療装置10の本体部分11を解放する。
【0138】
図9bは、制御ライン13と医療装置10とが選択的に取り外し可能な接続機構26によって直接接続された代替の実施形態を示している。したがって、医療装置10は、上述した取り外しと同様の電気的取り外しによって制御ライン13から解放可能である。接続機構26は、鉄系部分に取り付けられた白金合金などの貴金属を含む貴金属部分を備える。電流の印加により、鉄系部分がアノードとして作用し、第一鉄イオンが周囲の液体に溶解し、したがって、例えば医療装置を解放するように鉄系部分を崩壊させる。これに加え、あるいはこれに代えて、接続機構26を、局所的な加熱要素又は超音波などの任意の既知の方法によって引き起こされる温度の上昇によって分解させることができる。
【0139】
図10が、本発明によるシステム60を概略的に示している。システム60は、制御ライン13の第1の端部13’に接続された制御部61を備える。制御ライン13の第2の端部13’’は、医療装置10に取り付けられる。ここで、磁場発生器23が、流体の流れ(図示せず)の中で医療装置10を案内又は操縦するために、システム60に含まれる。
【0140】
図11が、医療装置10の代替の実施形態を示している。医療装置10は、速度の制御のための制御ライン13を備える。さらに、医療装置10は、医療装置10と外部のコンピュータ(図示せず)との間でデータを伝送する伝送ケーブル31に接続される。ケーブル31を使用して医療装置10に電気エネルギーを伝送することも可能であると考えられる。
【0141】
図12aが、本発明による方法の第1のステップを概略的に示している。マイクロロボット10が、分岐部Bの近傍の血管6内に浮いている。治療計画に従い、マイクロロボット10は、標的部位25へと向けられるべきであり、したがって分岐部Bにおいて正しい方向に操縦される必要がある。したがって、マイクロロボット10は、分岐部Bの上流の位置で停止するまで、制御ライン13によって減速させられる。マイクロロボット10は、今や血液の流れの方向に関して固定された位置にあるが、マイクロロボット6は、制御ラインが典型的には可撓性要素であるため、依然としていくつかの限られた動きを実行することが可能である。
【0142】
図12bが、マイクロロボット10が、標的部位25へと通じる分岐部Bの標的側に向かって押されることを示している。マイクロロボット10が位置決めされると、制御ライン13を、マイクロロボットが再び血液によって運ばれるように、制御された速度で再び解放することができる。
【0143】
図12cが、血流中で、血流と実質的に同じ速度で、標的部位25の方向に移動するロボットを示している。標的部位に到達すると、制御ラインを保持することによってロボットを停止させることができる。
【0144】
図13a~
図13bが、血管6内の医療装置10を制御するための代替の方法を示している。この方法は、
図12a~
図12cに概略的に示した方法と同様であるが、マイクロロボット10が決して完全には停止しない点で異なる。
【0145】
したがって、
図13aは、血管6内の制御ラインに取り付けられたマイクロロボット10を示している。マイクロロボット10が分岐部Bに近付くにつれて、マイクロロボット10は、制御ライン13によって減速させられる。
【0146】
図13bは、減速と並行して、どのように磁場21を使用してマイクロロボット10を標的部位25の方向に操縦するかを示している。
【0147】
図13cは、血管内で再び浮遊するマイクロロボット10を示している。
図14が、いくつかの分岐部B、B’、B’’、B’’’を有する血管系6におけるマイクロロボット10を概略的に示している。カテーテルCが、マイクロロボット10を処置すべき血管系6へともたらすために使用される。マイクロロボット10の速度が、とくには分岐部B、B’、B’’、B’’’の近傍において、マイクロロボット10に取り付けられた制御ライン13の制御された解放又は引っ張りによって制御される。制御ライン13は、生糸で製作され、ヒドロゲルでコーティングされている。この理由で、機械的に可撓性であり、血管系6に適合するように曲がることが可能である。さらに、ヒドロゲル表面は、制御ライン13の血栓形成性を低下させ、血管壁における摩擦を低減する。
【0148】
図15aが、ここではKevlarである単一の材料で作られた制御ライン13を断面図にて示している。
【0149】
図15bは、制御ライン13の長手方向に平行に配置された放射線不透過性ライン71を有する制御ライン13を示している。放射線不透過性ライン71は、生体適合性ポリマーと硫酸バリウムとの複合体で構成される。したがって、X線画像化において視認可能である。これに加え、あるいはこれに代えて、白金又は金のリングを制御ラインに組み合わせ、接続することができる。
【0150】
図15cが、制御ラインの表面上の抗血栓形成性ヒドロゲルコーティング72を有する制御ライン13を示している。ここで、ヒドロゲルはPEGに基づく。しかしながら、ヒドロゲルは、ELP、HEMA、PHEMA、ポリビニルピロリドン、PMA(又は、他のメタクリレート/メタクリル酸系ポリマー)、アガロース、ヒアルロン酸、メチルセルロース、エラスチン、及びキトサンからなる群から選択される任意の材料を含むことができる。
【0151】
図15dが、制御ライン13の長手方向に平行に配置された別個の要素として構成されたエネルギー伝送用の伝送ケーブル30を有する制御ライン13を示している。伝送ラインは、金で構成され、電気エネルギーを伝送することができる。あるいは、伝送ラインは、白金、あるいは金及び白金の少なくとも一方コーティングされた任意の導電性金属(銅など)で構成されてもよい。これに加え、あるいはこれに代えて、伝送ラインは、データを伝送するために使用されてもよい。
【0152】
図15eが、データ伝送用の伝送ケーブル31が制御ライン13の内側に配置されている制御ライン13の代替の実施形態を示している。これに加え、あるいはこれに代えて、伝送ライン13は、エネルギーを伝送してもよい。
【0153】
図15fが、中空管73が制御ライン13に平行に制御ライン13の外側に配置された制御ライン13の代替の実施形態を示している。中空管は、組織サンプルを採取し、あるいは流体及び/又は細胞を標的領域から除去するために、吸引作用の目的に合わせて構成される。
【0154】
図16が、医療装置の製造の方法ステップを概略的に示している。S極101及びN極102を有する磁気ヘッド部100が、磁石101の磁場に対して磁気ヘッド部100を配向させるように、磁石101に動作可能に接触させられる。これにより、制御ライン13を、磁気ヘッド部100へと、そのS極101に選択的に取り付けることができる。あるいは、制御ライン13を、N極102又は磁気ヘッド部100の任意の他の位置に取り付けることができる。磁石101を使用することで、磁気特性に対する磁気ヘッド部100の向きを知ることができるため、取り付けが容易になる。
【0155】
図17aが、磁気ヘッド部100の一実施形態を示している。磁気ヘッド部100は、ポリマーマトリックス105内に配置された複数の磁性粒子104を含む。
【0156】
そのような実施形態を製造するための1つの可能な方法を、以下で説明する。消磁された硬強磁性粒子を、ポリマーマトリックスに取り入れることができる。次いで、粒子は磁化される。これに加え、あるいはこれに代えて、軟強磁性粒子、超常磁性粒子、又はフェリ磁性粒子を、ポリマーマトリックスに取り入れることができる。5nm~5μmの間、好ましくは30nm~100nmの間の直径を有する粒子を、エマルジョン、成型、又はプリリングによって取り入れることができる。ポリマーマトリックスは、生体吸収性(例えば、PLLA、PLGA、PDO、PCL)であってよく、あるいは非生体吸収性、例えばシリコーン、PDMS、ポリウレタンであってよい。
【0157】
さらに、磁気ヘッド部100は、放射線不透過性粒子の形態の追跡部材(見て取ることができない)を備える外層103を備える。磁気ヘッド部100は、300μm~1.5mm、好ましくは400μm~800μmの範囲の直径を有する。
【0158】
図17bが、中空管107を有する実質的に球形の磁性材料106を備える磁気ヘッド部100の別の実施形態を示している。中空管を、とくには真空を生成し、かつ/又は液体、気体、治療溶液を届けるために、流体の伝達又は吸引に使用することができ、装置及び/又はマイクロロボットの前部で治療器具を移動させるために使用することができ、あるいは光ケーブル又は電気ケーブルを案内するために使用することができる。中空管107は、70μm~200μmの間、好ましくは0.1mmの直径を有し、磁気ヘッド部100の中央領域を実質的に横切って延びる。しかしながら、中空管を中央部分から横方向に変位させた位置に配置することも考えられる。中空管106は、少なくとも部分的に湾曲していてよく、かつ/又は直線状であってよい。磁気ヘッド部100の直径は1.1mmであった。
【0159】
図17cが、ヤヌス粒子として構成された磁気ヘッド部100の他の実施形態を示している。ここで、ヤヌス粒子は、磁性材料106の部分と、活性材料108を含む部分とを含む。
【0160】
これに加え、あるいはこれに代えて、ヤヌス粒子は、2つの異なる磁性材料で製作されてもよい。例えば、FePt及びFe2O3である。そのような構成において、磁性粒子は、硬強磁性挙動(FePt)及びフェリ磁性挙動(Fe2O3)を示す。別の構成においは、一方側が磁性材料で製作され、他方側が非磁性材料で製作される。非磁性材料は、NiTiなどの金属又はポリウレタンなどのポリマーであってよい。非磁性材料を、マイクロロボットの治療器具を設定し、あるいは活性化させるために使用することができる。例として、非磁性材料を、例えば電流によって生じさせることができる温度上昇などの刺激下でその形状を変化させるNiTiで製作することができる。
【0161】
図17dは、外殻として構成された磁性材料106を含む磁気ヘッド部100のさらに別の実施形態を示している。内側コア109は、磁性又は非磁性であってよい任意の他の適切な材料であってよい。例えば、外側層を、厚さ200μmのFe
3O
4で製作することができ、内側コアを、直径400μmのFePtで製作することができる。あるいは、外側層を、厚さ300μmのFe
2O
3及びFePtの混合物で製作することができ、内側コアを、直径400μmのPDMSで製作することができる。この設計は、マイクロロボットの剛性の低下に寄与する。
【0162】
図17a~
図17dの文脈において説明した特徴のいずれも、本明細書に開示された任意の装置に、とくには本明細書に開示された任意の他の特徴と組み合わせて使用することができることを、理解できるであろう。
【0163】
図18aが、磁気ヘッド部100と、そこに取り付けられた制御ライン13とを備える医療装置10の一実施形態を示している。ここで、制御ライン13は、磁気ヘッド部100と制御ライン13との間の取り付けを提供するシアノアクリレート接着剤を含む取り付け領域101に取り付けられる。さらに、エポキシ樹脂の層として構成された保護層111が、磁気ヘッド部100上に配置されている。ここで、保護層111は、磁気ヘッド部100及び取り付け領域110の全面に連続的に配置されている。取り付け領域110に取り付けられた制御ライン13は、保護層111を通って突出する。したがって、保護層は、磁気ヘッド部分100を、医療装置10の周囲に存在し得る流体からシールし、腐食の影響を低減する。いくつかの代替の実施形態において、保護層が、制御ライン13と接触せず、周状の領域(
図18b及び
図18dを参照)において取り付け領域110を部分的に覆うだけでよく、これでも磁気ヘッド部100の流体シールが依然としてもたらされることを、理解できるであろう。
【0164】
図18bが、
図18aの実施形態に類似した医療装置10の異なる実施形態を示している。医療装置10は、取り付け領域を介して制御ライン13に取り付けられた磁気ヘッド部100を備える。ここで、磁気ヘッド部100は、帯として形成されて取り付け領域110と磁気ヘッド部100との間の界面112を覆う保護層110で部分的に覆われている。ここに示されている保護層の構成は、例えば磁気ヘッド部100への制御ライン13の確実な取り付けを提供するために、とくには典型的な処置時間枠にわたって、充分な腐食低減を提供することができる。それでいて、好都合なことに、保護層111をもたらすために必要な材料がより少なく、これは、より経済的であり、より環境に優しく、医療装置10の全体サイズを縮小することができる。ここに示される実施形態における保護層111が、磁気ヘッド部100の近位部分113及び中央部分が保護層111で覆われていないため、磁気ヘッド部分100の全体の流体シールは提供しないことを、理解できるであろう。しかしながら、界面112は、保護層111によって流体に関してシールされている。いくつかの代替の実施形態においては、例えば磁気ヘッド部100の全体の流体シールを提供するために、中央部分114及び近位部分113を保護層111で覆うことも考えられる。
【0165】
この手法は、1つは制御ラインと磁性部分との取り付けを固定するためのものであり、1つはマイクロロボットのヘッドの機能化のためのものである2つの異なるコーティングを有することを可能にする。例えば、薬物用タンク又はフックなどの治療器具を、覆われていない磁性面に樹脂層で取り付けることができる。
【0166】
あるいは、磁気ヘッドを、制御ラインと共に互いに閉じられる2つの部分から構成することもできる。このような設計により、制御ラインは磁性部分に埋め込まれる。例えば、一方の磁性部分が雌の設計を有し、他方の部分が雄の設計を有する。両方の部分は、制御ラインのための領域を有する。制御ラインは、組み立て時に2つの部分の間で圧縮される。
【0167】
図18cが、医療装置10のさらに別の実施形態を示している。ここで、磁気ヘッド部100は、その全表面において、保護層111で連続的に被覆される。シアノアクリレート接着剤を含む取り付け領域110が、保護層111の外面に配置される。制御ライン13は、取り付け領域110を介して磁気ヘッド部100に取り付けられる。そのような構成は、制御ライン13のとくに確実な取り付けを提供することができる。
【0168】
図18dが、医療装置10のさらに別の実施形態を示している。ここに示される実施形態は、
図18bに示した実施形態に類似する。ここで、保護層111は、やはり取り付け領域110と磁気ヘッド部100との間の界面112を覆う帯として形成されている。しかしながら、帯は、磁気ヘッド部100の表面の50%超を覆うように構成されている。ホットメルト接着剤によって形成される取り付け領域110は、保護層111で覆われていない。磁気ヘッド部100の近位領域113は、保護層111で覆われていない。ここで、制御ライン13を、ホットメルト接着剤を加熱して、制御ライン13をそこに固定することにより、取り付け領域110に取り付け可能である。
【0169】
図18a~
図18dの実施形態の特徴を自由に組み合わせることができることを、理解できるであろう。とくには、任意の磁気ヘッド部分100が、制御ライン13に取り付けられてよく、あるいは制御ライン13に別個に取り付け可能であってよい。同様に、
図18a~
図18dに示される保護層の構成のいずれも、ここに示され、あるいは本明細書にさらに開示される任意の他の実施形態又は特徴と組み合わせて使用することが可能である。
【国際調査報告】