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特表2023-519532シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンを含む経口用複合錠剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンを含む経口用複合錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/24 20060101AFI20230501BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230501BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230501BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230501BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A61K9/24
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/14
A61P3/10
A61K31/4985
A61K31/351
A61K31/155
A61K47/36
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554727
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-09
(86)【国際出願番号】 KR2021003080
(87)【国際公開番号】W WO2021201461
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0038568
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タク、チン ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポ シク
(72)【発明者】
【氏名】クォン、テク クァン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ホ テク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン イル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA40
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD47
4C076EE16
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF01
4C076FF63
4C076GG11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZC35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA03
4C206ZC33
4C206ZC75
(57)【要約】
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及び、ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む乾式顆粒を含む第1層と、メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩、及びコロイド性二酸化ケイ素を含む湿式顆粒を含む第2層と、を含む複合錠剤、及びその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及び
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む乾式顆粒を含む第1層と、
メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩を含む湿式顆粒、及びコロイド性二酸化ケイ素を含む第2層と、を含む複合錠剤。
【請求項2】
前記第1層及び前記第2層の収縮率差が1%以内である、請求項1に記載の複合錠剤。
【請求項3】
前記コロイド性二酸化ケイ素は、メトホルミン主成分対比で、0.7~2.8重量%で存在する、請求項1に記載の複合錠剤。
【請求項4】
前記第2層のメトホルミン湿式顆粒は、水分含量が2.5~3.5重量%である、請求項1に記載の複合錠剤。
【請求項5】
前記コロイド性二酸化ケイ素は、メトホルミン主成分対比で、0.7~2.8重量%で存在し、前記第2層のメトホルミン湿式顆粒は、水分含量が2.5~3.5重量%である、請求項1に記載の複合錠剤。
【請求項6】
前記第1層は、主成分として、シタグリプチンリン酸塩及びダパグリフロジンL-プロリンを含む、請求項1に記載の複合錠剤。
【請求項7】
前記第2層は、主成分として、メトホルミン遊離塩基を含む、請求項1に記載の複合錠剤。
【請求項8】
前記第1層は、
微結晶セルロース(MCC)、D-マンニトール、予備糊化澱粉、低置換されたヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(cross-linked CMC Na)、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の複合錠剤。
【請求項9】
前記第2層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ローカストビーンガム、微結晶セルロース、D-マンニトール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、グルコース、コロイド性二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の複合錠剤。
【請求項10】
前記複合錠剤を60℃苛酷条件下で4週間保管するとき、シタグリプチン類縁物質の総含量が0.2重量%以下であり、ダパグリフロジン類縁物質の総含量が2重量%以下である、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項11】
単位剤形当たり、前記シタグリプチンを遊離塩基として、25~100mgの量で含み、ダパグリプロジンを遊離塩基として、5~10mgの量で含み、そしてメトホルミンを遊離塩基として,500~1,000mgの量で含む、請求項1に記載の経口用複合錠剤。
【請求項12】
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;及び賦形剤を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
得られた顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合し、第1混合部を製造する段階と、
メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩、及び賦形剤を含むメトホルミン湿式顆粒を製造する段階と、
得られたメトホルミン湿式顆粒を乾燥させる段階と、
乾燥されたメトホルミン湿式顆粒を、コロイド性二酸化ケイ素及び滑沢剤と共に混合し、第2混合部を製造する段階と、
二層錠打錠機を使用し、前記第1混合部を第1層に打錠し、前記第2混合部を第2層に打錠する段階と、を含む、請求項1~11のうちいずれか1項に記載の経口用複合錠剤の製造方法。
【請求項13】
前記第1層製造段階において乾式顆粒化する段階は、ローラ圧着機を利用して圧着物を形成する段階を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記メトホルミン湿式顆粒の乾燥は、水分含量が2.5~3.5重量%になるように行われる、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記打錠する段階において、二層錠打錠に必要な必要打錠圧は、2,000~2,500kNである、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分として、シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンを含む経口用複合錠剤に係り、さらに具体的には、保存安定性にすぐれながらも、生産性が高い経口用複合錠剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第2型糖尿患者は、一般的に、過体重、腹部肥満、高血圧を伴い、それにより、糖尿病は、高血圧、高脂血症、心筋梗塞、脳卒中のような二次的な慢性疾患あるいは代謝症侯群を引き起こす疾病と知られており、大韓糖尿病学会の診療指針によれば、症状改善増大のために、薬物併合療法が積極的に勧告されている。特に、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)抑制剤系薬物と、SGLT-2(sodium-glucose linked transporter 2)抑制剤系薬物との併用は、最近、学界で糖尿病治療においてすぐれた効能と効果とを立証され、メトホルミン(metformin)との3剤治療までも研究されている分野である。
【0003】
シタグリプチン(sitagliptin)(製品名:ジャヌビア錠)は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)抑制剤系薬剤であり、化合物名は、(R)-3-アミノ-1-(3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)-4-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-1-オンである。該シタグリプチンは、インクレチンという胃腸管ホルモンの分解を抑制し、インシュリンとグルカゴンとを調節するインクレチンの機能が、体内において良好になされるようにすることによって血糖を調節し、2型糖尿病患者にシタグリプチンを経口投与するとき、HbA1cレベルが有意的に低下し、空腹時の血糖、及び食後の血糖の分泌が減少すると知られている。
【0004】
ダパグリフロジン(dapagliflozin)(製品名:フォシーガ錠)は、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT-2:sodium-glucose linked transporter 2)抑制剤系薬剤であり、化合物名は、(2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールである。該ダパグリフロジンは、腎臓において、SGLT-2を選択的に抑制し、ニョにおいて、グルコースの排出を増強させ、それにより、インシュリン感受性を改善させ、糖尿病合併症の発病を遅延させることにより、血漿グルコースレベルを正常化させることができる。原開発社であるアストラゼネカABが、ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物を有効成分にする錠剤形態(フォシーガ錠)を市販している。
【0005】
メトホルミンは、ビグア二ド(biguanide)系糖尿病治療剤であり、2型糖尿病患者の治療に主に使用される経口用抗高血糖薬物である。該メトホルミンの血糖調節メカニズムは、インシュリン分泌とは無関係に作用し、例えば、肝臓において、ブドウ糖輸送体を活性化させると知られている。該メトホルミンは、糖尿病患者の体重低減を誘導し、血中中性脂肪と低密度脂蛋白との減少効果、及び高密度脂蛋白の増大効果を示す。従って、インシュリン抵抗性を示すインシュリン非依存性糖尿病患者の一次薬剤として使用することができる。
【0006】
該メトホルミンは、その塩酸塩として、グルコファージ(Glucophage、Bristol-Myers Squibb Company)の錠剤(tablet)形態で市販されている。市販されているグルコファージ錠剤は、500mg、850mgまたは1,000mgのメトホルミン塩酸塩を含んでおり、その投与は、効能及び耐性の両側面を考慮し、一日に、2,550mgの最大要求用量を超えない範囲内でなされている。該メトホルミンの使用と係わる副作用は、服用患者の20ないし30%と示される食欲減退、腹部膨満感、吐き気、下痢などであり、ほとんど一過性であり、服用後2~3週が経てば、なくなる場合が多い。下痢や激しい腹部膨満感などがなくならなければ、服用を中断した方がよい。まれには、皮膚発疹や蕁麻疹などが出たりもする。そのような副作用は、最小用量及び/または持続用量を低減させたり、投薬回数を減らしたりすることができる徐放性製剤を利用する方法により、部分的に避けることができる。
【0007】
糖尿病は、血糖調節、副作用などの低減などの目的として、1以上の抗糖尿病薬を複合で投与する場合が多い。シタグリプチン及びダパグリフロジンは、低血糖危険がなく、血糖を降下させる主効果以外にも、シタグリプチンの場合、膵臓ベータ細胞保護効果、GLP-1増加効果があり、ダパグリフロジンの場合、体重低減効果、血圧降下効果があり、2つの有効成分の組み合わせが、相乗的な効果を示す臨床的結果として紹介されている。また、シタグリプチン単独投与、またはシタグリプチン及びメトホルミンの二重投与により、血糖調節が効果的ではない場合、ダパグリフロジンを付加し、シタグリプチン、メトホルミン及びダパグリフロジンの三重投与が、血糖調節に効果的でるということが報告されている(Diabetes Care 2014 Mar; 37(3): 740-750)。
【0008】
また、糖尿病患者の場合、糖尿が進行するほ、ど血糖調節が困難になり、合併症を伴うことになり、特に、高齢者糖尿病患者の場合、高血圧、肥満、高脂血症を共に病んでいる可能性が高い。そのような糖尿患者の特性上、服薬順応度が非常に重要な要素であり、服薬順応度の低下は、患者が生きる質を落とすだけではなく、患者の治療率を低下させ、個人医療費増大と、保険財政の悪化とをもたらしてしまう。従って、主成分として、シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンのいずれをも含む三重複合錠剤開発が必要である。
【0009】
ところで、前述の複合錠剤の開発は、各主成分(API)の物性差による錠剤の生産性、安定性のような山積された問題点により、困難さが伴う。例えば、メトホルミンは、錠剤製造時、フロー性などの問題により、湿式顆粒化を必要とするが、シタグリプチン及びダパグリフロジンは、水分に不安定であるという特徴がある。また、ダパグリフロジンの場合、密度が低く、少量であるにもかかわらず、主成分の体積が大きく、生産性が良好ではなく、他の主成分、及び賦形剤と、層分離が生じる可能性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一態様は、シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンを含みながら、保存安定性にすぐれ、生産性が高い三重複合錠剤を提供するものである。
【0011】
他の一態様は、前記複合錠剤の製造方法を提供するものである。
【0012】
本出願の他の目的及び利点は、添付請求範囲と共に、下記の詳細な説明により、さらに明確になるであろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野内、または類似した技術分野内において、当業者であるならば、十分に認識して類推することができるものであるので、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及び
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む乾式顆粒を含む第1層と、
メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩を含む湿式顆粒、及びコロイド性二酸化ケイ素を含む第2層と、を含む複合錠剤を提供する。
【0014】
他の一態様は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;及び賦形剤を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
得られた顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合し、第1混合部を製造する段階と、
メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩、及び賦形剤を含むメトホルミン湿式顆粒を製造する段階と、
得られたメトホルミン湿式顆粒を乾燥させる段階と、
乾燥されたメトホルミン湿式顆粒を、コロイド性二酸化ケイ素及び滑沢剤と共に混合し、第2混合部を製造する段階と、
二層錠打錠機を使用し、前記第1混合部を第1層に打錠し、第2混合部を第2層に打錠する段階と、を含む、前記一態様による経口用複合錠剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
一態様によれば、シタグリプチン及びダパグリフロジンを含有する第1層、並びに及びメトホルミン含有第2層を1つの製剤にいずれも含みながら、主成分の安定性を確保することができ、キャッピングやラミネーティングが起きるというような打錠障害が生ずることなく、生産性にすぐれる錠剤を獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一具体例による二層錠を製造するとき、メトホルミン湿式顆粒の水分含量を異ならせて製造された二層錠を撮影した写真である。
図2】多様な含量のコロイド性二酸化ケイ素及びメトホルミン顆粒水分量を含む、一具体例による二層錠について測定された、メトホルミン顆粒の水分含量(x軸)による必要打錠圧(y軸)を図示して示したグラフである。
図3】多様な含量のコロイド性二酸化ケイ素及びメトホルミン顆粒層水分量を含む、一具体例による二層錠について測定された、第2層に含有されたコロイド性二酸化ケイ素含量(x軸)による二層錠収縮率差(y軸)を図示して示したグラフである。
図4】一具体例による錠剤写真である。
図5】多様な含量のコロイド性二酸化ケイ素及びメトホルミン顆粒層水分量を含む、一具体例による二層錠につき、60℃苛酷条件において経時的に測定された、シタグリプチンの総類縁物質の量を測定した結果を図示したグラフである。
図6】多様な含量のコロイド性二酸化ケイ素及びメトホルミン顆粒層水分量を含む二層錠につき、60℃苛酷条件において経時的に測定された、ダパグリフロジンの総類縁物質の量を測定した結果を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0018】
本明細書で使用される全ての技術用語は、取り立てて定義されない以上、関連分野において、当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それと類似しているか、あるいは同等なものも、本明細書の範疇に含まれる。また、本明細書に記載された数値は、明示されていなくとも、「約」の意味を含むものであると見なす。本明細書に参考文献として記載される全刊行物の内容は、全体が本明細書に参照として統合される。本明細書で使用された用語「約」は、言及される値が、ある程度変わりうるということを意味する。例えば、前記値は、10%、5%、2%または1%にも変わる。例えば、「約5」は、4.5と5.5との間、4.75と5.25との間、または4.9と5.1との間、または4.95と5.05との間の任意の値を含むということを意味する。本明細書で使用された用語「有する」、「有しうる」、「含む」または「含むものでもある」というような表現は、当該特徴(例:数値または成分などの構成要素)の存在を示すが、追加される特徴の存在を排除するものではない。
【0019】
本明細書において、用語「二層錠収縮率差」とは、二層錠の各層の収縮率差を意味し、各層の収縮率は、打錠直後の錠剤長軸直径と、40℃、1時間条件で保管した後の錠剤長軸直径との差を測定した後、打錠直後の錠剤長軸直径対比の比率を計算し、百分率で示した。
【0020】
用語「メトホルミンの湿式顆粒中の水分含量」とは、湿式顆粒製造後の乾燥時、湿式顆粒重量に対する水分重量を百分率(%)で示したものである。
【0021】
用語「必要打錠圧」とは、所望する錠剤硬度を有するために、錠剤製造過程において、打錠時に必要な打錠圧を意味する。
【0022】
一態様は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及び
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む乾式顆粒を含む第1層と、
メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩を含む湿式顆粒、及びコロイド性二酸化ケイ素を含む第2層と、を含む複合錠剤を提供する。
【0023】
主成分である前述のシタグリプチン及びダパグリフロジンは、それらの結晶形、水和物、共結晶、溶媒化物、塩、部分立体異性体または鏡像異性体をいずれも含むものである。
【0024】
前記第2層の主成分であるメトホルミンは、それらのそれぞれの結晶形、共結晶、溶媒化物または異性体をいずれも含むものである。
【0025】
前記薬剤学的に許容可能なその塩は、当該技術分野で一般的に使用されうる任意の薬剤学的に許容される塩を称する。
【0026】
一具体例において、前述のシタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、シタグリプチンリン酸塩水和物でもある。
【0027】
一具体例において、前述のダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、薬剤学的に許容可能なダパグリフロジンの共結晶でもある。一具体例において、前述のダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩は、ダパグリフロジンL-プロリンまたはダパグリフロジンプロパンジオール水和物でもある。一具体例において、ダパグリフロジンL-プロリンでもある。
【0028】
一具体例において、前記メトホルミンは、メトホルミン塩酸塩あるいはメトホルミン遊離塩基でもある。
【0029】
本明細書において、シタグリプチン、ダパグリフロジン、メトホルミンであると記載されていたも、前述のそれぞれの可能な全ての塩、溶媒化物、異性体のいずれもを含むものを称すると理解されなければならない。
【0030】
前述の一態様による複合錠剤は、シタグリプチン及びダパグルリプロジンを含む乾式顆粒を含む第1層、並びにメトホルミンを含む湿式顆粒、及びコロイド性二酸化ケイ素を含む第2層を含む。シタグリプチン及びダパグルリプロジンは、メトホルミンに比べ、相対的に水分に脆弱であるので、そのように、二層錠の構造を有することにより、主成分の安定性を図ることができる。また、メトホルミンは、フロー性が低く、湿式顆粒の形態を有することにより、すぐれたフロー性を確保することができ、従って、前記二層錠を製造するとき、高い生産性を確保することができる。
【0031】
一具体例において、前記第1層と前記第2層との収縮率差が1%以内でもある。収縮率差が1%を超えるとき、保存過程において、該第1層と該第2層との層分離が起こりうる(試験例1参照)。
【0032】
一具体例において、前記第2層に存在するコロイド性二酸化ケイ素は、メトホルミン主成分対比で、0.7~2.8重量%で存在しうる。
【0033】
一具体例において、前記第2層のメトホルミン湿式顆粒は、水分含量が2.5~3.5重量%でもある。
【0034】
一具体例において、前記コロイド性二酸化ケイ素は、メトホルミン主成分対比で、0.7~2.8重量%で存在し、前記第2層のメトホルミン湿式顆粒は、水分含量が2.5~3.5重量%でもある。
【0035】
前記第2層は、コロイド性二酸化ケイ素を含むことにより、適切な硬度(約20kp)を有する複合錠剤を製造することができる。実験結果、該コロイド性二酸化ケイ素を含む場合、複合錠剤が適切な硬度を有するようにする打錠時の打錠圧を低くすることができると分かった。打錠時、打錠圧が高い場合、錠剤のキャッピングまたはラミネーティングのような打錠障害が生じてしまいもするが、該コロイド性二酸化ケイ素を含むことにより、打錠圧を低くすることができ、従って、打錠障害なしに、適切な硬度を有する二層錠を製造することができると確認された(試験例2参照)。また、実験結果、前記コロイド性二酸化ケイ素は、その含量がメトホルミン主成分対比で、2.8重量%超過で存在する場合、苛酷4週において、シタグリプチン及びダパグリフロジンのいずれについても、基準を超えるか、あるいは基準に近い類縁物質増加を示した。また、全般的に、該コロイド性二酸化ケイ素の量が増加するほど、シタグリプチン及びダパグリフロジンの類縁物質が増加した。従って、該コロイド性二酸化ケイ素の量は、メトホルミン主成分対比で、2.8重量%以内で使用することが、安定性を確保することができると評価された(試験例3)。
【0036】
前記第2層のメトホルミン湿式顆粒は、水分含量により、生産性、及び各層間の収縮率の差に影響を及ぼすと確認された。メトホルミン湿式顆粒が、水分を3.5%超えて含む場合、二層錠を打錠するときには、打錠障害が生じなかったが、錠剤をコーティングするとき、及び加速条件、苛酷条件において、第1層と第2層との収縮率差が約1%超と示され、層分離が生じると確認された。また、メトホルミン湿式顆粒が、水分を2.0%未満に含む場合、水分が不足し、打錠時、錠剤の硬度が確保されず、容易に破損されると示された(試験例1参照)。また、メトホルミン湿式顆粒の水分含量が増大するほど、複合錠剤をして、所望する硬度を有させるために必要な打錠圧、すなわち、必要打錠圧を低くすることができると分かった。打錠時、打錠圧が高い場合、錠剤のキャッピングまたはラミネーティングのような打錠障害が生じてしまいもするが、水分を適切に含むことにより、打錠圧を低くすることができ、従って、打錠障害なしに、適切な硬度を有する二層錠を製造することができると確認された(試験例2参照)。
【0037】
従って、前記二層錠は、メトホルミン含有第2層に、コロイド性二酸化ケイ素を含むことにより、打錠障害が生じることなく、生産性が高く、保存時、層分離などが起こらない物理的安定性を確保することができつつも、保存時、類縁物質の発生が基準値以内に維持され、化学的安定性まで有することができる。従って、前記二層錠は、生産性及び安定性にすぐれる複合錠剤としても製造されると確認された。
【0038】
一具体例において、前記第1層は、希釈剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤のうちから選択される1種以上の賦形剤を含むものでもある。
【0039】
前記希釈剤は、例えば、D-マンニトール、予備糊化澱粉、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、微結晶セルロース、スクロース、ソルビトール、キシリトール、グルコース、及びそれらの任意の組み合わせによってなる群からも選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0040】
前記滑沢剤は、モノステアリン酸グリセリル、グリセリルパルミトステアレート、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、硬化された植物性オイル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、タルク、及びそれらの任意の組み合わせによってなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記滑沢剤は、フマル酸ステアリルナトリウムである。
【0041】
一具体例において、前記希釈剤は、D-マンニトール、予備糊化澱粉、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、微結晶セルロース、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちからも選択される。
【0042】
前記崩壊剤は、例えば、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(C.CMC Na(cross-linked CMC Na)またはクロスカルメロースナトリウム)、とうもろこし澱粉、カルボキシメチルセルロースカルシウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、及びそれらの任意の組み合わせによってなる群からも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記崩壊剤は、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0043】
前記結合剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、ポビドン、及びそれらの任意の組み合わせによってなる群からも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記結合剤は、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0044】
一具体例において、前記第1層は、微結晶セルロース(MCC)、D-マンニトール、予備糊化澱粉、低置換されたヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(cross-linked CMC Na)、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択される賦形剤をさらに含むものでもある。
【0045】
一具体例において、前記第2層は、希釈剤、結合剤、徐放化担体、滑沢剤、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちから選択された1種以上の賦形剤をさらに含むものでもある。
【0046】
前記希釈剤は、微結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、D-マンニトール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの任意の組み合わせによってなる群からも選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0047】
前記結合剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、ポビドン、及びそれらの任意の組み合わせによってなる群からも選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0048】
前記徐放化担体は、当該技術分野に公知され、それは、任意の徐放化担体でもある。前記徐放化担体は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジステアリン酸グリセリル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちからも選択される。一具体例において、前記徐放化担体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910及びローカストビーンガムの組み合わせである。前記徐放化担体は、メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩100重量部に対し、10ないし50重量部、具体的には、約20~40重量部の量によっても含有される。
【0049】
前記滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、コロイド性二酸化ケイ素(fumed silica、Aerosil)、モノステアリン酸グリセリル、グリセリルパルミトステアレート、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、硬化された植物性オイル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、タルク、及びそれらの任意の組み合わせによってなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0050】
一具体例において、前記複合錠剤は、60℃苛酷条件下で4週間保管するとき、シタグリプチン類縁物質の総含量が0.2重量%以下であり、ダパグリフロジン類縁物質の総含量が2重量%以下のものである経口用複合錠剤である。
【0051】
前記複合錠剤は、単位剤形当たり、前記シタグリプチンをシタグリプチン遊離塩基として、25~100mgの量で含み、ダパグリプロジンを遊離塩基として、5~10mgの量で含み、そしてメトホルミンを遊離塩基として、500~1,000mgの量で含むものでもある。例えば、前記複合錠剤は、単位剤形当たり遊離塩基として、メトホルミンを500mg、750mg、850mgまたは1,000mg含み、シタグリプチン50mg及びダパグリプロジン5mgを含むものでもある。
【0052】
前記複合錠剤は、シタグリプチン及びダピグルロプルロジンを含む乾式顆粒を、第1層にして、前記メトホルミンを含む湿式顆粒を第2層にし、二層錠の形態に打錠することによっても形成される。
【0053】
前記二層錠は、外部表面に、フィルムコーティング層を追加して含むものでもある。前記フィルムコーティング層は、速放性を示す任意のフィルムコーティング剤、及び着色剤を含むものでもある。前記フィルムコーティング剤としては、HPCとHPMCとの混合物、またはポリビニルアルコール(PVA)とポリエチレングリコール(PEG)との混合物などがあるが、それらに限定されるものではない。前記着色剤としては、二酸化チタン、酸化鉄などがあるが、それらに限定されるものではない。商業的に市販される代表的なフィルムコーティング剤としては、オパドライ(Opadry(登録商標))がある。前記フィルムコーティング層は、味を遮蔽する役割、及び/または最終的な複合錠剤に安定性を付与する役割を行うことができる。
【0054】
前記二層錠は、シタグリプチン、ダパグリフロジンまたはメトホルミンの単独、または2種複合でもっては、十分に制御されない2型糖尿病の成人患者、またはすでにシタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンの三重併用治療を受けている患者の治療のために使用されうる。前記二層錠は、含まれる主成分の含量により、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与されうる。
【0055】
他の一態様は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;及び賦形剤を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
得られた顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合し、第1混合部を製造する段階と、
メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩、及び賦形剤を含むメトホルミン湿式顆粒を製造する段階と、
得られたメトホルミン湿式顆粒を乾燥させる段階と、
乾燥されたメトホルミン湿式顆粒を、コロイド性二酸化ケイ素及び滑沢剤と共に混合し、第2混合部を製造する段階と、
二層錠打錠機を使用し、前記第1混合部を第1層に打錠し、第2混合部を第2層に打錠する段階と、を含む、前記一態様による経口用複合製剤の製造方法を提供する。
【0056】
前記複合錠剤の製造方法の詳細は、前記本発明の一態様による複合錠剤に係わる説明がそのまま適用されうる。
【0057】
前記第1層製造段階において乾式顆粒化する段階は、当該技術分野に公知されている一般的な乾式顆粒製法によっても製造される。一具体例において、前記乾式顆粒化は、主成分、希釈剤、結合剤及び滑沢剤を含む混合物をローラ圧着機(roller compactor)を利用して圧着物を形成する段階を含むものでもある。
【0058】
前記第2層製造段階において湿式顆粒化する段階は、当該技術分野に公知されている一般的な湿式顆粒製法によっても製造される。一具体例において、メトホルミン湿式顆粒の乾燥は、水分含量が2.5~3.5重量%になるように遂行することができる。
【0059】
前記複合錠剤の製造方法に伴われる各段階の工程は、当該技術分野で遂行される一般的な二層錠製造工程に基づいて遂行することができる。
【0060】
一具体例において、前記二層錠製造時、二層錠打錠に必要な必要打錠圧は、約2,000~2,500kNである。
【実施例
【0061】
以下、本発明につき、下記実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、それらにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0062】
試験例1:メトホルミン層水分量による評価
(1)サンプル製造方法
シタグリプチン、ダパグリフロジン、微結晶セルロース、D-マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカメルロースナトリウム及びフマル酸ステアリルナトリウムを、20号篩でもって篩過を行い、大きい塊を粉砕させ、十分に混合する。その混合物に対し、ローラ圧着機で圧力を加え、スラグを製造する。製造されたスラグを、20号篩で整粒し、乾式顆粒を製造する。製造された乾式顆粒に、滑沢剤としてフマル酸ステアリルナトリウムを使用して混合し、第1層部最終混合部を製造する。
【0063】
なお、メトホルミン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ローカストビーンガム類に対して篩過を行った後、高速顆粒製造機を使用し、水を結合液溶媒にした湿式顆粒を製造する。製造された顆粒を、流動層乾燥機で水分基準に合うように乾燥させた後、整粒機を使用して整粒する。コロイド性二酸化ケイ素に篩過を行った後、製造された顆粒と混合し、同様に、植物性ステアリン酸マグネシウムを篩過し、第2層部最終混合部を製造する。
【0064】
前記第1層部と前記第2層部とを、二層錠打錠機を利用し、適切な硬度に合うように打錠し、外被コーティングを進める。
【0065】
(2)収縮率及び生産性の評価
前記サンプル製造方法により、表1の組成でもって、実施例1,2,3,4及び比較例1,2,3の二層錠を製造した。製造過程において、メトホルミン顆粒を製造するとき、乾燥工程において、乾燥時間によって水分を調節し、メトホルミン顆粒層の水分量を、下記表1のように調節した。また、二層錠打錠機で打錠するとき、2,000kNの一定打錠圧で打錠を進め、それぞれ二層錠を製造した。
【0066】
【表1】
【0067】
その結果、製造された錠剤につき、各層の収縮率を測定した。
【0068】
各層の収縮率は、打錠直後の錠剤長軸直径と、40℃、1時間条件で保管した後の錠剤長軸直径との差を測定した後、打錠直後の錠剤長軸直径対比の比率を計算し、百分率で示した。
【0069】
その結果を下記表2に示した。また、各錠剤の性状を観察し、硬度と摩損度とを比較した。各錠剤を撮影した写真を図1に示した。
【0070】
【表2】
【0071】
前述の表2及び図1の結果によれば、メトホルミン顆粒層(第2層部)の水分が、4.0%以上である場合(比較例1)には、生産性には、問題がなかったが、錠剤をコーティングするとき、及び苛酷、加速条件において、第1層部、第2層部の収縮率差による層分離を確認した。また、水分が2.0%未満である場合(比較例2,3)には、一定打錠圧において水分が不足し、錠剤の硬度が確保されず、錠剤が容易に破損される現象を確認した。メトホルミン顆粒層(第2層部)の水分が、2.0ないし3.5重量%である場合には、十分な硬度が確保されながら、層分離現象も観察されなかった。
【0072】
試験例2:コロイド性二酸化ケイ素量による収縮率評価
前記試験例1における製法、及び表1の処方と同一に行うものの、メトホルミン顆粒層水分量、及びコロイド性二酸化ケイ素の含量を、下記表3の条件にし、製造された離層錠が同一硬度(20kp)を有するように打錠することにより、下記実施例5~19の錠剤を製造した。このとき、同一硬度(20kp)を有するように、各二層錠を打錠するときに必要な打錠圧を測定し、打錠後、各錠剤の性状を観察し、打錠障害いかんを観察した。また、製造された二層錠の収縮率差を、前記試験例1と同一方法で評価した。
【0073】
それぞれの二層錠に係わる必要打錠圧、及び錠剤の収縮率差を測定した結果を、下記表4に示した。また、前記評価結果として得られた必要打錠圧及び錠剤収縮率差データを基に、メトホルミン顆粒層の水分含量による必要打錠圧を図2に図示し、コロイド性二酸化ケイ素の含量による錠剤収縮率の差を、図3に図示した。製造された複合錠剤の性状を観察した結果、実施例5~13及び実施例17~19の場合、打錠障害なしに、滑らかな錠剤が生成され(図4:実施例6の錠剤写真)、実施例14~16の場合だけがキャッピングやラミネーティングが起こるというような打錠障害が示された。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
図2は、多様な含量のコロイド性二酸化ケイ素及びメトホルミン顆粒層水分量を含む二層錠について測定された、トポルミン顆粒層の水分含量(x軸)による必要打錠圧(y軸)を図示して示したグラフである。
【0077】
図3は、多様な含量のコロイド性二酸化ケイ素及びメトホルミン顆粒層水分量を含む二層錠について測定された、コロイド性二酸化ケイ素含量(x軸)による錠剤収縮率差(y軸)を図示して示したグラフである。
【0078】
図2の結果によれば、20kpの同一硬度を確保するためには、メトホルミン顆粒の水分が増えるほど必要打錠圧が低下するということが分かった。また、同一顆粒水分を基準として見れば、コロイド性二酸化ケイ素の量が増加するほど、必要な打錠圧が低下した。また、実施例14,15及び16の場合には、打錠圧が2,500kN以上であるということが分かり、打錠圧が2,500kN以上である場合には、二層錠他定時、過剰な打錠圧による錠剤内空気放出などの原因により、キャッピングやラミネーティングが起こるというような打錠障害が生ずることになるので、打錠圧が2,500kN以下である実施例が適するということが確認された。
【0079】
また、図3の結果によれば、各メトホルミン顆粒水分において、コロイド性二酸化ケイ素の量が増加するほど、錠剤収縮率差が減少する傾向が示された。
【0080】
前述の図2及び図3の結果を総合すれば、実施例5~13及び実施例17~19に該当するメトホルミン顆粒水分含量2.5~3.5重量%において、コロイド性二酸化ケイ素がメトホルミン主成分対比で、0.7~3.5重量%の量で含む場合、打錠性と錠剤収縮率差とに問題がないと確認された。また、前記試験例1における結果である図1によれば、実施例4の場合、打錠圧をおよそ2,000kNに調整することにより、打錠性及び錠剤収縮率差(基準:1%以下)に問題がないと確認された。従って、メトホルミン顆粒水分含量2.5~3.5重量%において、コロイド性二酸化ケイ素をメトホルミン主成分対比で、0.7~3.5重量%の量で含みながら、打錠圧を2,500kN以下、具体的には、2,000~2,500kNに調整すれば、打錠性及び錠剤収縮率差に問題がない複合錠剤を獲得することができると評価された。
【0081】
試験例3:コロイド性二酸化ケイ素量による類縁物質評価
前記実施例5~7及び比較例17~19につき、シタグリプチン及びダパグリフロジンの類縁物質量を評価することにより、コロイド性二酸化ケイ素量による複合錠剤の経時的な安定性評価を進めた。具体的には、それぞれの二層錠につき、60℃苛酷条件において、1,2及び4週経過時、それぞれの主成分に係わる総類縁物質を測定した。
【0082】
該類縁物質の測定方法は、下記の通りである。
【0083】
サンプル製造
実施例で製造した錠剤5錠を取り、重さを精密に計り1,000mL容量フラスコに入れ、マグネチックバーと希釈液約600mLを入れ、60分間撹拌して十分に溶解させた後、マグネチックバーを取り出し、希釈液を標線に合わせた。その液を0.45μmメンブレンフィルタで濾過し、検液にした。以下の条件で試験した。
【0084】
移動相
A液:pH3.0緩衝液、B液:アセトニトリル(ACN)
希釈液
移動相A液:移動相B液=60:40
HPLC条件
カラム:内径4.6mm、長さ150mmのステンレス管に、2.7μmのクロマトグラフィ用C18相を充填したカラム
ポンプ:0.8mL/分
注入体積(injection Vol.):10μL
UVランプ:220nm
分析時間:80分
【0085】
【表5】
【0086】
その結果を下記の表6及び表7に示し、図5及び図6にグラフで図示した。
【0087】
図5は、多様な含量のコロイド性二酸化ケイ素及びメトホルミン顆粒層水分量を含む二層錠につき、60℃苛酷条件において経時的に測定された、シタグリプチンの総類縁物質の量を測定した結果を図示したグラフである。
【0088】
図6、は多様な含量のコロイド性二酸化ケイ素及びメトホルミン顆粒層水分量を含む二層錠につき、60℃苛酷条件において経時的に測定された、ダパグリフロジンの総類縁物質の量を測定した結果を図示したグラフである。
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
米国薬典(USP)及び既存市販単一剤の基準を適用し、シタグリプチンの場合、総類縁物質0.2%以内、ダパグリフロジンの場合、総類縁物質2.0%以内を基準として設定した。
【0092】
前述の表6~表7及び図5図6の結果によれば、コロイド性二酸化ケイ素を2.8重量%以下で含む実施例5,6及び7の場合、シタグリプチン及びダパグリフロジンにつき、いずれも苛酷4週時点まで、基準以内の類縁物質増加を示した。それに対し、コロイド性二酸化ケイ素を3.5重量%含む実施例17,18及び19の場合、苛酷4週において、シタグリプチン及びダパグリフロジンのいずれについても、基準を超えるか、あるいは基準に近い類縁物質増加を示した。また、全般的に、コロイド性二酸化ケイ素の量が増加するほど、シタグリプチン及びダパグリフロジンの類縁物質が増加した。従って、コロイド性二酸化ケイ素の量は、2.8重量%以内で使用することが安定性を確保することができると評価された。
【0093】
以上、本発明につき、その望ましい実施例を中心に説明した。本発明が属する技術分野において当業者であるならば、本発明が、本発明の本質的な特性からはずれない範囲において変形された形態にも具現されるということを理解することができるであろう。従って、前記開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されなければならない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異は、本発明に含まれたものであると解釈されなければならないのである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】