IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2023-519535官能化末端基を有するポリジエンゴム
<>
  • 特表-官能化末端基を有するポリジエンゴム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】官能化末端基を有するポリジエンゴム
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/22 20060101AFI20230501BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230501BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C08C19/22
C08L15/00
C08K3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554895
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2021057529
(87)【国際公開番号】W WO2021191250
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】20165996.8
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ルエンツィ
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・シュタインハウザー
(72)【発明者】
【氏名】キリアン・ヴュースト
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC012
4J002AC111
4J002DA036
4J002DA047
4J002FD016
4J002FD070
4J002FD147
4J002GJ02
4J002GM01
4J002GN01
4J100AS02P
4J100BA11H
4J100BA27H
4J100BC53H
4J100CA15
4J100CA31
4J100HC63
4J100JA29
(57)【要約】
一般式(I)

(式中、R1は、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、線状又は分岐状、好ましくは脂肪族の炭化水素基を表し、C及びHに加えて好ましくはO、N、S、又はSiから互いに独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、R2、R3は、同一又は異なり、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、炭化水素基は、C及びH原子に加えて好ましくはO、N、S、及びSiからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、Aは、O-R4-OH、R5-OH、及びR6-NH-R7からなる群から選択される残基、好ましくはO-R4-OHを表し、R4、R5、及びR6は、飽和又は不飽和、線状又は分岐状の炭化水素基を表し、C及びH原子に加えてO、N、S、又はSiから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、且つ1~20個の炭素原子を含有し、且つR7は、Hを表すか、又は1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状若しくは環状の脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基を表し、C及びH原子に加えて好ましくはO、N、S、若しくはSiから選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい)による1個以上の末端基を有する末端基官能化ポリマーであって、ポリマーが、共役ジエンのホモポリマー、又は少なくとも1種以上の共役ジエンと、1種以上のビニル芳香族モノマーと、任意選択的に1種以上の他のコモノマーと、のコポリマーである、末端基官能化ポリマー。また、本ポリマーの作製プロセス及び本ポリマーを用いて作製される物品も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
R1は、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、線状又は分岐状、好ましくは脂肪族の炭化水素基を表し、C及びHに加えて好ましくはO、N、S、又はSiから互いに独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、
R2、R3は、同一又は異なり、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、炭化水素基は、C及びH原子に加えて好ましくはO、N、S、及びSiからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、
Aは、O-R4-OH、R5-OH、及びR6-NH-R7からなる群から選択される残基、好ましくはO-R4-OHを表し、
R4、R5、及びR6は、互いに独立して、飽和又は不飽和、線状又は分岐状の炭化水素基を表し、C及びH原子に加えてO、N、S、又はSiから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、且つ1~20個の炭素原子を含有し、
R7は、Hを表すか、又は1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状若しくは環状の脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基を表し、C及びH原子に加えて1個以上のヘテロ原子を含有してもよい)
による1個以上の末端基を有する末端基官能化ポリマーであって、
前記ポリマーが共役ジエンのホモポリマー又は共役ジエンのコポリマーである、末端基官能化ポリマー。
【請求項2】
前記共役ジエンが、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーが、1,3-ブタジエンのホモポリマー並びに1,3-ブタジエンと1種以上のビニル芳香族モノマー及び1種以上の任意選択のコモノマーとのコポリマーから選択され、前記ビニル芳香族モノマーが、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーが、1,3-ブタジエンのホモポリマー並びに1,3-ブタジエンとスチレン及び1種以上の任意選択のコモノマーとのコポリマーから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
R1が、一般式(IIa):
-[CHX-[CHX-[O]-[CHX- (IIa)
(式中、zは、1又は0であり、o、p、及びqは、0、1、及び2から独立して選択され、ただし、o、p、及びqの少なくとも1つは、0ではなく、X、X、及びXは、Hから、1~12個の炭素原子を有する線状又は分岐状のアルキル基、アルキルアリール基、及びアリール基から、並びにアミノアルキル基N-R(ここで、Rは、1~12個の炭素原子を有する線状又は分岐状又は環状のアルキル残基又はアルキルアリール残基である)から、並びに一緒になって炭素-炭素結合を形成して炭素鎖中に不飽和を提供するX及びXから、独立して選択され、且つo、p、q、X、X、及びXは、炭素原子の合計数が20以下になるように選択される)
に対応し、好ましくは、R1が、-CH=CH-、-CHCH=CH-、-CH-CH-、及び-CH-CH-CH-からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
、Rが、同一又は異なり、且つメチル、エチル、プロピル、フェニル、ベンジル、及びトリアルキルシリルから選択され、前記トリアルキルシリルの各アルキル基が、1~4個の炭素原子を含有しうるとともに、前記フェニル及びベンジルが、1個以上の置換基、好ましくは1~4個の炭素原子を有する1個以上のアルキル置換基を含有しうる、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
R4、R5、及びR6が、nが1~5の整数である一般式-[CH-に対応する非置換アルキレン基、及び前記-[CH-単位の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基で置き換えられた置換アルキレン基からなる群から選択され、ただし、炭素原子の合計数が20以下である、前記一般式に対応する請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
R7が、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、シクロヘキシル、2-フェニルエチル、フェニルメチル、及びトリアルキルシリルから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項9】
R1が、-CHCH-であり、且つR2及びR3が、メチル及びエチルからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーが、請求項11又は12に記載の方法により得られうる、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項11】
末端基官能化ポリマーの調製方法であって、
(b)共役ジエンを重合してポリジエンホモポリマー又はポリジエンコポリマーを製造することと、
(b)一般式(II)
【化2】
の第1の官能化剤を添加して前記ポリジエンポリマーのポリマー鎖末端と式(II)の官能化剤との反応により得られる1個以上の末端基を含有する第1の官能化ポリマーを生成することと、
(c)第2の官能化剤を添加して前記第1の官能化ポリマーと反応させることであって、前記第2の官能化剤が、式(IIIa)、(IIIb)、及び(IIIc)
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、請求項1~9のいずれか一項に定義される通りである)
による環状カルボニルの群から選択される、ことと、
を含む調製方法。
【請求項12】
前記重合がアニオン溶液重合を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記重合がアニオン溶液重合を含み、且つ溶媒が、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n-ヘキサン、及びそれらの混合物を含み、且つ前記重合が、好ましくはn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種の開始剤の存在をさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマーと、少なくとも1種の充填剤、好ましくは炭素系充填剤と、を含むコンパウンドであって、前記コンパウンドが加硫可能である、コンパウンド。
【請求項15】
請求項14に記載のコンパウンドの作製方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマーと、少なくとも1種の充填剤、好ましくは炭素系充填剤、好ましくはカーボンブラックと、を混合することを含む、作製方法。
【請求項16】
請求項14に記載のコンパウンドを加硫することにより得られる組成物を含む物品であって、前記物品が、タイヤ、タイヤのコンポーネント、ケーブルシース、ホース、ドライブベルト、コンベヤーベルト、ロールライニング、シューソール、シーリングリング、及びダンピングエレメントからなる群から選択される、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、官能化末端基を有するポリジエンゴム、その製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリジエンゴムは、多くの異なる用途で使用される。典型的には、それと1種以上の充填剤とが組み合わされてゴムコンパウンドが製造され、次いで、物品に造形されるか又は他の成分と組み合わされて物品が製造される。ポリジエンゴムの主な用途は、タイヤ又はタイヤトレッドなどのタイヤのコンポーネントである。
【0003】
ポリマー鎖に官能性末端基を導入することにより、ポリマーは、ゴムコンパウンドの作製に使用される充填剤とより良好に相互作用しうる。最も一般的に使用される充填剤は、シリカ及びカーボンブラックのような炭素系充填剤である。充填剤の表面と物理的又は化学的に相互作用することにより、コンパウンドマトリックス中のポリマー鎖の移動度は低減され、これにより動応力下でのエネルギー散逸が低減される。同時に、こうした官能基は、ゴム組成物中の充填剤の分散を改善可能であるので、充填剤ネットワークの弱化ひいてはコンパウンドの性質の改善をもたらすことが可能である。
【0004】
各種末端基変性ゴムが開発されてきた。たとえば、(特許文献1)には、充填剤としてのシリカとアミノ末端基を含有する変性ゴムとを含有するゴム組成物が開示されている。ゴム変性剤として環状アミンを用いたとき、低減された転がり抵抗のような改善された性質を有するタイヤを作製可能であることが見いだされた。しかしながら、環状アミンで変性されたポリマーは、低減されたムーニースコーチ時間など、未変性ポリマーと比較して劣った処理性を有することが見いだされた。このため、ゴムを昇温に暴露可能な時間が低減される。環状アミンでポリマーを変性することは、ポリマーの押出し性に有害であり、(より多くの)表面欠陥の発生をもたらすことも見いだされた。以上の問題は、炭素系充填剤を含有するゴム組成物でとくに顕在化した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,894,409号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
このたび、第1の官能化剤として環状アミンを用いたときに追加として第2の官能化剤を用いることにより、以上に記載の問題を低減又は克服することが可能であることを見いだした。驚くべきことに、こうして製造された官能化ポリマーはどれも、改善されたムーニースコーチ時間又は改善された押出し性又はその両方を有することが見いだされた。このようなポリマーは、非官能化ポリマーを用いて作製されたコンパウンドと比較して改善された性質を有する物品の製造のためのコンパウンドを作製するために使用可能である。
【0007】
したがって、一態様では、一般式(I)
【化1】
(式中、
R1は、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の線状又は分岐状の好ましくは脂肪族の炭化水素基を表し、C及びHに加えて好ましくはO、N、S、又はSiから互いに独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、
R2、R3は、同一又は異なり、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、炭化水素基は、C及びH原子に加えて好ましくはO、N、S、及びSiからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、
Aは、O-R4-OH、R5-OH、及びR6-NH-R7からなる群から選択される残基、好ましくはO-R4-OHを表し、
R4、R5、及びR6は、互いに独立して、飽和又は不飽和の線状又は分岐状の炭化水素基を表し、C及びH原子に加えてO、N、S、又はSiから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、且つ1~20個の炭素原子を含有し、
R7は、Hを表すか、又は1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状若しくは環状の脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基を表し、C及びH原子に加えて1個以上のヘテロ原子を含有してもよい)
による1個以上の末端基を有する末端基官能化ポリマーであって、ポリマーが共役ジエンのホモポリマー又は共役ジエンのコポリマーである、末端基官能化ポリマーが提供される。
【0008】
ポリマーは、以下に記載の方法により得られる。
【0009】
他の一態様では、末端基官能化ポリマーの調製方法であって、
(a)共役ジエンを重合してポリジエンホモポリマー又はポリジエンコポリマーを製造することと、
(b)一般式(II)
【化2】
の第1の官能化剤を添加してポリジエンポリマーのポリマー鎖末端と式(II)の官能化剤との反応により得られる1個以上の末端基を含有する第1の官能化ポリマーを生成することと、
(c)第2の官能化剤を添加して第1の官能化ポリマーと反応させることであって、第2の官能化剤が、式(IIIa)、(IIIb)、及び(IIIc):
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、以上に定義される通りである)
で示される環状カルボニルの群から選択される、ことと、
を含む調製方法が提供される。
【0010】
さらなる態様では、本ポリマーを含むコンパウンドが提供される。
【0011】
なおさらなる態様では、本ポリマーと少なくとも1種の充填剤とを混合することを含むコンパウンドの作製方法が提供される。
【0012】
また、コンパウンドを加硫することにより得られる組成物を含む物品も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実験の部に記載の押出し実験で得られた押出し形材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリマーの調製
本開示に係る末端基官能化ポリジエンゴムは、共役ジエンの重合を含むプロセスにより得られうる。重合は、単独重合又は共重合でありうる。プロセスは、少なくとも1種の第1の官能化剤の添加により第1の官能化ポリジエンポリマーを生成することと、第1の官能化ポリジエンポリマーへの少なくとも1種の第2の官能化剤の添加と、をさらに含む。
【0015】
好ましい共役ジエンとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、オシメン、及び/又はファルネセンが挙げられる。1,3-ブタジエン及び/又はイソプレンは、とくに好ましい。
【0016】
好ましい実施形態では、本開示に係る官能化ポリマーは、ポリブタジエンホモポリマー、より好ましくは1,3-ブタジエンホモポリマーである。
【0017】
他の好ましい一実施形態では、本開示に係る官能化ポリマーは、共役ジエンのコポリマーである。
【0018】
他の好ましい一実施形態では、本開示に係る第2の官能化ポリマーは、以上に記載の1種以上の共役ジエンと1種以上のビニル芳香族モノマーとから誘導される単位と、任意選択的に1種以上の他のコモノマーから誘導される1つ以上の単位と、を含むコポリマーである。ビニル芳香族モノマーの例としては、限定されるものではないが、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tertブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びそれらの組合せが挙げられる。スチレンは、とくに好ましい。好ましい実施形態では、本開示に係る官能化ポリマーは、1,3-ブタジエンとスチレンとから誘導される繰返し単位を含む。かかるポリマーは、1,3-ブタジエンとスチレンとの共重合を含む重合により得られる。
【0019】
ポリジエンのホモポリマー又はコポリマーは、当技術分野で公知の方法により調製可能である。好ましくは、ポリマーは、アニオン溶液重合又は1種以上の配位触媒を用いた重合を含むプロセスにより得ることが可能である。重合は、溶液中又は気相中で行われうる。これとの関連での配位触媒は、チーグラー・ナッタ触媒又はモノメタリック触媒系である。好ましい配位触媒は、Ni、Co、Ti、Zr、Nd、V、Cr、Mo、W、又はFeに基づくものである。
【0020】
好ましくは、重合反応は、アニオン溶液重合を含む。アニオン溶液重合用の開始剤としては、有機金属、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属に基づくものが挙げられる。例としては、限定されるものではないが、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、オクチルリチウム、デシルリチウム、2-(6-リチオ-n-ヘキソキシ)テトラヒドロピラン、3-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-1-プロピルリチウム、フェニルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、p-トルイルリチウム、及び第3級N-アリルアミンから誘導されるアリルリチウム化合物、たとえば、[1-(ジメチルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-[ビス(フェニルメチル)アミノ]-2-プロペニル]リチウム、[1-(ジフェニルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-(1-ピロリジニル)-2-プロペニル]リチウムなど、第2級アミンのリチウムアミド、たとえば、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウム1-メチルイミダゾリジド、リチウム1-メチルピペラジド、リチウムモルホリド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムジベンジルアミド、リチウムジフェニルアミドなどが挙げられる。また、アリルリチウム化合物及びリチウムアミドは、有機リチウム化合物とそれぞれの第3級N-アリルアミン又はそれぞれの第2級アミンとを反応させることによりin situで調製可能である。また、二官能性及び多官能性の有機リチウム化合物、たとえば、1,4-ジリチオブタン、ジリチウムピペラジドも使用可能である。好ましくは、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、又はそれらの組合せが使用される。
【0021】
ポリマーの構造を制御するために、当技術分野で公知のランダマイザー及び制御剤を重合に使用可能である。かかる作用剤としては、たとえば、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)-2-メチル-プロパン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジオキサン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1,2-ジピペリジノエタン、1,2-ジピロリジノエタン、1,2-ジモルホリノエタン、アルコール、フェノール、カルボン酸、スルホン酸、及びそれらの組合せのカリウム塩及びナトリウム塩が挙げられる。
【0022】
溶液重合用の好ましい溶媒としては、脂肪族炭化水素などのイナート非プロトン性溶媒が挙げられる。具体例としては、限定されるものではないが、異性体を含めて、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、及びシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、並びにそれらの組合せが挙げられる。さらなる例としては、1-ブテンなどのアルケン、又はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素、及びそれらの組合せが挙げられる。これらの溶媒は、個別に又は混合物として使用可能である。好ましい溶媒は、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びn-ヘキサンである。また、溶媒は、適宜、極性溶媒と混合してもよい。
【0023】
重合は、最初にモノマーと溶媒とを導入し、次いで開始剤又は触媒を添加して重合を開始することにより、行うことが可能である。また、重合は、モノマーと溶媒とを添加することにより重合反応器が充填される供給プロセスでも行いうる。開始剤又は触媒は、モノマー及び溶媒と共に導入又は添加される。また、反応器に溶媒を導入し、開始剤又は触媒を添加し、続いてモノマーを添加するなど、変更も行いうる。重合は、連続モード又はバッチ式で行うことが可能である。さらなるモノマー及び溶媒は、重合時又は重合終了時に添加されうる。
【0024】
重合時間は、数分間~数時間で変動可能である。重合は、通常は10分間~8時間、好ましくは20分間~4時間の時間内で行われる。重合は、常圧又は昇圧(たとえば1~10bar)又は減圧で行うことが可能である。
【0025】
典型的反応温度としては、35℃~130℃の温度が挙げられる。
【0026】
本開示に係る末端基官能化ポリマーの調製にはさらに、第1の官能化剤の添加に続いて第2の官能化剤の添加が必要とされる。第2の官能化剤の添加は、連続プロセスの一部でありうる。しかしながら、第1の官能化剤の添加後にプロセスを停止して第2の官能化剤の添加前にプロセスを再び開始するなど、プロセスをバッチ式で行うことも可能である。第1の官能化ポリマーは、単離されうるとともに、次いで、第2の官能化剤の添加前、添加時、又は添加後に再溶解又は懸濁されうる。好ましくは、第1の官能化ポリマーは単離されない。好ましくは、プロセスは連続プロセスである。
【0027】
第1の官能化剤は、環状アミン、又はより具体的には環状ウレア若しくはウレア誘導体である。第2の官能化剤は、環状カルボニルである。両方の官能化剤について以下でより詳細に説明する。
【0028】
第1の官能化剤は、そのままで又は溶液、スプレー、ディスパージョン、若しくはサスペンジョンとして添加可能である。第1の官能化剤は、反応性ポリマー鎖末端と反応して官能化ポリマーをもたらし、これを本明細書では「第1の官能化ポリマー」という。典型的には、第1の官能化剤は、モノマー転化の完了後に、又はモノマー転化の完了前の重合反応の終了に向けて、たとえば、モノマーを転化する重合時間の最後の40%、最後の20%、最後の10%、最後の5%、若しくは最後の1%以内に添加される。第1の官能化剤の添加は、適宜、重合が行われたときと同一の温度で行われる。しかしながら、第1の官能化剤の添加前、添加時、又は添加後、反応温度を上昇又は低下させてもよい。
【0029】
少なくとも1種の第1の官能化剤は、反応性ポリマー鎖末端に対して等量で、モル過剰で、又は反応性ポリマー鎖末端に対して化学量論量未満の量で添加されうる。典型的量としては、重合に使用される開始剤又は触媒のモル量に対して0.3~2モル当量が挙げられる。好ましくは、第1の官能化剤は、重合に使用される開始剤又は触媒のモル量を基準にして0.6~1.5モル当量の範囲内の量で使用される。
【0030】
第2の官能化剤は、第1の官能化剤の添加が開始された後に添加される。好ましくは、第1及び第2の官能化剤の添加時のオーバーラップは、ほとんど又はまったく存在せず、より好ましくは、第1の官能化剤とポリマーとの反応が完了した後に第2の官能化剤が添加される。第2の官能化剤は、そのままで又は溶液、スプレー、ディスパージョン、若しくはサスペンジョンとして添加されうる。好ましくは、第2の官能化剤は、第1の官能化ポリマーに添加される。第2の官能化剤と第1の官能化ポリマーとの反応は、本開示に係る末端基官能化ポリマーを提供する。
【0031】
第2の官能化剤の反応は、好ましくは、重合に使用したのと同一の温度で行われるか、又は温度は、第2の官能化剤の添加前、添加時、若しくは添加後に上昇若しくは低下されうる。第2の官能化反応が行われる時間は、数分間~数時間の範囲内でありうる。
【0032】
第2の官能化剤は、第1の官能化剤のモル量に対して0.3~2モル当量の範囲内、とくに好ましくは1~3モル当量の範囲内の量で使用されうる。言い換えると、第1の官能化剤対第2の官能化剤の好ましいモル比は、0.3~2、好ましくは1:1から1:3(同1:3を含む)までである。
【0033】
鎖末端凝集を低減するために及びポリメリックカルバニオンの反応性を増加させるために、第1又は第2の官能化剤の添加前又は添加時に1種以上の極性変性剤を添加してもよい。例としては、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、テトラヒドロフラン(THF)、又はジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)が挙げられる。
【0034】
また、反応性ポリマー鎖末端との反応のために、アニオンジエン重合に特有なカップリング試薬を使用可能である。かかるカップリング試薬の例は、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、四塩化スズ、ジブチルスズジクロライド、テトラアルコキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,2,4-トリス(クロロメチル)ベンゼンである。かかるカップリング試薬は、第1の官能化剤の添加前、添加と同時、又は添加後に添加されうる。
【0035】
第1及び第2の官能化剤並びに任意選択的にカップリング試薬の添加後、立体障害フェノール、芳香族アミン、ホスファイト、チオエーテルなどの当技術分野で公知の酸化防止剤を反応混合物に添加してもよい。好ましくは、それらは、本開示の末端基官能化ポリマーのワーキングアップ前又はワーキングアップ時に添加される。
【0036】
反応は、第2の官能化剤の添加と共に終了してもよく、又は反応は、第2の官能化剤の添加後に終了してもよい。たとえば、反応は、第2の官能化剤の添加後、たとえば、第2の官能化剤の添加が完了した後1~60分以内又は1~10分以内又は10~30分以内にクエンチされうる。アルコールたとえばオクタノールを使用するなど、当技術分野で公知のクエンチング剤を使用しうる。
【0037】
ワークアップ前又はワークアップ時、TDAE(処理留出芳香族抽出物)油、MES(軽度抽出溶媒和物)油、RAE(残留芳香族抽出物)油、TRAE(処理残留芳香族抽出物)油、ナフテン系油、重質ナフテン系油など、ジエンゴムに使用されるエクステンダー油を反応混合物に添加可能である。ポリマーコンパウンドについてより詳細に記載されるように、単離ポリマーに対するワークアップ前又はワークアップ時さらにはワークアップ後、充填剤、たとえば、カーボンブラックなどの炭素系充填剤、シリカ、他のゴム、及びゴム添加剤を反応混合物に添加可能である。
【0038】
溶媒は、蒸留、スチームによるストリッピングをはじめとする従来の方法により、又は必要であれば昇温で真空若しくは減圧を適用することにより、反応混合物から除去可能である。得られたポリマークラムはさらに、ミルで乾燥させたり、又はミルでシートなどに加工したり、又はベールなどに圧縮したりすることが可能である。
【0039】
本開示に係る末端基官能化ポリマーは、好ましくは10,000~2,000,000g/mol、好ましくは100,000~1,000,000g/molの平均分子量(数平均Mn)を有する。
【0040】
好ましくは、本開示に係る末端基官能化ポリマーは、約-110℃~約+20℃、好ましくは約-110℃~約0℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0041】
好ましくは、本開示に係る末端基官能化ポリマーは、約10~約200、好ましくは約30~約150ムーニー単位のムーニー粘度[ML1+4](100℃)を有する。
【0042】
ポリマーは、典型的には約1.03~約3.5の分散度を有する。
【0043】
第1の官能化剤:
本開示に係る第1の官能化剤は、環状ウレア又は環状ウレア誘導体であり、典型的には一般式(II)
【化4】
に対応する。式(II)中、R1は、1~20個の炭素原子を有する2価の飽和又は不飽和の線状又は分岐状の好ましくは脂肪族の炭化水素基を表し、C及びHに加えて好ましくはO、N、S、又はSiから互いに独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。好ましくは、R1は、一般式(IIa):
-[CHX-[CHX-[O]-[CHX- (IIa)
に対応する。式中、zは、1又は0であり、o、p、及びqは、0、1、及び2から独立して選択され、ただし、o、p、及びqの少なくとも1つは、0ではない。X、X、及びXは、H、並びに1~12個の炭素原子を有する線状又は分岐状のアルキル基、アルキルアリール基、及びアリール基、並びにアミノアルキル(N-R)基から独立して選択され、ここで、Rは、1~12個の炭素原子を有する線状又は分岐状又は環状のアルキル残基又はアルキルアリール残基であり、且つX及びXは、炭素-炭素結合が形成されるように間の化学結合を表して炭素鎖中に不飽和を提供しうる。o、p、q、X、X、及びXは、炭素原子の合計数が20以下になるように選択される。
【0044】
一実施形態では、R1は、置換アルキレンから、たとえば、X、X、及びXの少なくとも1つがHでない式(IIa)に対応する置換アルキレンから、選択される。
【0045】
一実施形態では、R1は、非置換アルキレンから、たとえば、X、X、及びXのすべてがHである式(IIa)に対応する非置換アルキレンから、選択される。好ましい実施形態では、R1は、nが1~5、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2の整数である-[(CH)-に対応する。
【0046】
一実施形態では、R1は、不飽和の置換又は非置換のアルキレンから選択され、たとえば、X及びXが一緒になって炭素-炭素結合を形成する式(IIa)に対応する。不飽和アルキレンの具体例としては、限定されるものではないが、-CH=CH-又は-CH-CH=CH-が挙げられる。
【0047】
式(II)中、R2、R3は、同一又は異なり、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、炭化水素基は、C及びH原子に加えて好ましくはO、N、S、及びSiからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。たとえば、R2及びR3は、同一であっても異なっていてもよく、-(C~C20)-アルキル基、-(C~C20)-シクロアルキル基、-(C~C20)-アリール基、-(C~C20)-アルカリール基、又は-(C~C20)-アラルキル基から選択され、これらは、好ましくはO、N、S、又はSiから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。好ましくは、R、Rは、互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アルキル基1個当たり1~4個の炭素原子のアルキル基を有するトリアルキルシリル、フェニル、並びに1、2、又は3個のメチル残基、エチル残基、プロピル残基、及び/又はブチル残基で独立して置換されたフェニルから選択される。
【0048】
第1の官能化剤の好ましい具体例としては、限定されるものではないが、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)、1,3-ジエチル2-イミダゾリジノン(2)、1-メチル-3-フェニル2-イミダゾリジノン(3)、1、3ジフェニル2-イミダゾリジノン(4)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(4)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(4)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3)、1,3,4-トリメチル-2-イミダゾリジノン(6)、1,3-ビス(トリメチルシリル)-2-イミダゾリジノン(7)、1,3-ジヒドロ-1,3-ジメチル-2H-イミダゾール-2-オン(8)、テトラヒドロ-1,3-ジメチル-2(1H)-ピリミジノン(9)、テトラヒドロ-1-メチル-3-フェニル-2(1H)-ピリミジノン(10)、テトラヒドロ-1,3,5-トリメチル-2(1H)-ピリミジノン(11)、テトラヒドロ-3,5-ジメチル-4H-1,3,5-オキサジアジ-4-オン(12)、テトラヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン-2(1H)-オン(13)、ヘキサヒドロ-1,3-ジメチル-2H-1,3-ジアゼピン-2オン(14):
【化5】
が挙げられる。
【0049】
とくに好ましい例は、DMIともいわれる1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(1)
【化6】
である。すなわち、Rは、-CH-CH-であり、且つ/又はR及びRは両方とも、-CHである。
【0050】
第2の官能化剤:
本開示に係る第2の官能化剤は、典型的には、環状カーボネート、環状ラクトン、及び環状ラクタムからなる群から選択される環状カルボニルである。本開示の一実施形態では、環状カーボネートは、式(IIIa)により表され、且つ本開示の一実施形態では、環状ラクトンは、式(IIIb)により表され、且つ本開示のさらなる実施形態では、環状ラクタムは、式(IIIc)により表される。
【化7】
式中、R4、R5、及びR6は、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の線状又は分岐状の炭化水素基を表し、C及びHに加えてO、N、S、又はSiから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。R4、R5、及びR6は、一般式(IIId):
-[CHX-[CHX-[O]-[CHX- (IIId)
に対応しうる。式中、zは、1又は0であり、o、p、及びqは、0、1、及び2から独立して選択され、ただし、o、p、及びqの少なくとも1つは、0ではない。X、X、及びXは、H、並びに1~12個の炭素原子を有する線状又は分岐状のアルキル基、アルキルアリール基、及びアリール基、並びにアミノアルキル(N-R)基から独立して選択され、ここで、Rは、1~12個の炭素原子を有する線状又は分岐状又は環状のアルキル残基又はアルキルアリール残基であり、且つX及びXは、炭素-炭素結合が形成されるように間の化学結合を表して炭素鎖中に不飽和を提供しうる。o、p、q、X、X、及びXは、炭素原子の合計数が20以下になるように選択される。
【0051】
好ましくは、R4、R5、及びR6は、非置換アルキレン基、すなわち、nが1~5の整数である-[CH-基、又は-[CH-単位の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、アリール基、アルカリール基により置き換えられた置換アルキレン基である。好ましい置換基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、フェニル、ベンジル、シクロヘキシルからなる群から選択される。
【0052】
R7は、Hを表すか、又は1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状若しくは環状の脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基を表し、C及びH原子に加えて好ましくはO、N、S、若しくはSiから選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。典型的例としては、限定されるものではないが、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、シクロヘキシル、2-フェニルエチル、フェニルメチル、トリアルキルシリルが挙げられる。
【0053】
式(IIIa)で示される環状カーボネートの具体例としては、限定されるものではないが、エチレンカーボネート(R4は-HC-HC-である)、プロピレンカーボネート(4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、R4は-(HC)CH-CH-である)、ブチレンカーボネート(4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、R4は-(H)CH-CHである)、スチレンカーボネート(4-フェニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、R4は-(Ph-)CH-CH-である)が挙げられる。
【0054】
式(IIIb)で示されるラクトンの具体例としては、限定されるものではないが、アルファ-アセトラクトン(R5=メチレン-CH-)、ベータ-プロピオラクトン(R5=エチレン-CHCH-)、ガンマ-ブチロラクトン(R5=n-プロピレン-CHCHCH-)、デルタ-バレロラクトン(ガンマメチルガンマブチロラクトン(R5=-(CH)CHCHCH-=メチル置換プロピレン)、デルタバレロラクトン(R5=n-ブチレン=-CHCHCHCH-)、イプシロン-カプロラクトン(R5=ペンチレン-CHCHCHCHCH-)が挙げられる。
【0055】
式(IIIc)で示されるラクタムの具体例としては、限定されるものではないが、N-メチル-2-ピロリドン(R6=プロピレン-CHCHCH-、R7=メチル)、N-エチル-2-ピロリドン(R6=プロピレン-CHCHCH-、R7=エチル)、N-フェニル-2-ピロリドン(R6=プロピレン-CH2CH2CH2-、R7=フェニル)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(R6=プロピレン-CHCHCH-、R7=シクロヘキシル)、N-メチル-ε-カプロラクタム(R6=ペンチレン-CHCHCHCHCH-、R7=H)、N-イソブチル-2-ピペリドン(R6=ブチレン-CHCHCHCH-、R7=イソブチル)が挙げられる。
【0056】
好ましくは、第2の官能化剤は、式(IIIa)から選択される。
【0057】
また、単一の第1の官能化剤の代わりに2種以上の官能化剤の組合せも使用しうる。また、単一の第2の官能化剤の代わりに2種以上の第2の官能化剤の組合せも使用しうる。
【0058】
本開示に係るポリマーは、以上に記載の反応、すなわち、第1の官能化剤との反応により官能化されたポリマーと第2の官能化剤との反応の反応生成物である。
【0059】
得られるポリマーは、式(I):
【化8】
で示される一般構造の末端基をもたせて表すことが可能である。式中、Aは、O-R4-OH、R5-OH、及びR6-NH-R7からなる群から選択される残基、好ましくはO-R4-OHを表し、且つR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、以上に記載のものと同一の意味を有する。
【0060】
本開示の好ましい実施形態では、ポリマーは、以上に記載の第1の官能化剤で官能化されたポリマーと式(IIa)で示される第2の官能化剤との反応生成物である。一実施形態では、かかるポリマーは、一般式(Ia):
【化9】
で表される。式中、「ポリマー」は、本明細書に記載のジエンホモポリマー又はコポリマーを表すとともに、式(Ia)に示される末端基の少なくとも1つを含有し、且つR1、R2、R3、及びR4は、以上に記載のものと同一の意味を有する。
【0061】
本開示の他の一実施形態では、ポリマーは、以上に記載の第1の官能化剤で官能化されたポリマーと式(IIb)で示される第2の官能化剤との反応生成物である。一実施形態では、かかるポリマーは、一般式(Ib):
【化10】
で表される。式中、「ポリマー」は、本明細書に記載のジエンホモポリマー又はコポリマーを表すとともに、式(Ib)に示される末端基の少なくとも1つを含有し、且つR1、R2、R3、及びR5は、以上に記載のものと同一の意味を有する。
【0062】
本開示の他の一実施形態では、ポリマーは、以上に記載の第1の官能化剤で官能化されたポリマーと式(IIc)で示される第2の官能化剤との反応生成物である。一実施形態では、かかるポリマーは、一般式(Ic):
【化11】
で表される。式中、「ポリマー」は、本明細書に記載のジエンホモポリマー又はコポリマーを表すとともに、式(Ic)に示される末端基の少なくとも1つを含有し、且つR1、R2、R3、R6、及びR7は、以上に記載のものと同一の意味を有する。
【0063】
ゴムコンパウンド
本開示に係る末端基官能化ポリマーは、末端基官能化ポリマーと1種以上の充填剤とを混合することを含むプロセスによりゴムコンパウンドを作製するために使用可能である。本開示に係る末端基官能化ポリマーは、末端基官能化ポリマーと1種以上の充填剤と少なくとも末端基官能化ポリマーを架橋するための1種以上の架橋剤とを混合することを含むプロセスにより加硫性ゴムコンパウンドを作製するために使用可能である。ゴムコンパウンドは、タイヤ又はサイドウォールやタイヤトレッドなどのタイヤのコンポーネントを作製するのに好適である。本開示に係る加硫性ゴムコンパウンドは、本開示に係る末端基官能化ポリマーを架橋するための1種以上の硬化剤又は硬化系と、任意選択的に他の架橋性充填剤又は成分と、を含有する。得られるタイヤ又はタイヤコンポーネントは、典型的には、その加硫形態でゴムコンパウンドを含有するであろう。
【0064】
ゴムコンパウンド及び加硫性ゴムコンパウンドは、1種以上の充填剤を含有するとともに、活性及び不活性充填剤の両方を含む。従来の充填剤を使用可能である。従来の充填剤としては、シリカ、ケイ酸塩、及び好ましくは1種又は2種以上の炭素系充填剤、たとえば、カーボンブラックが挙げられる。
【0065】
好適なシリカの例としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
- 5~1000、好ましくは20~400m/g(BET表面)の比表面積及び10~400nmの一次粒子サイズを有する、高分散性シリカ、たとえば、ケイ酸塩溶液の沈殿又はハロゲン化ケイ素の火炎加水分解により製造されるもの。シリカはまた、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ti酸化物などの他の金属酸化物との混合酸化物としても存在しうる。
- 20~400m/gのBET表面及び10~400nmの一次粒子直径を有する、合成ケイ酸塩、たとえば、ケイ酸アルミニウム、アルカリ土類ケイ酸塩、たとえば、ケイ酸マグネシウム又はケイ酸カルシウム。
- 天然ケイ酸塩、たとえば、カオリン、モンモリロナイト、及び他の天然に存在するシリカ。
【0066】
シリカでない且つ炭素系でない好適な充填剤の例としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
- ガラス繊維及びガラス繊維製品(マット、ストランド)又はマイクロスフェア(シリカ又はケイ酸塩を含有してもよい)、
- 金属酸化物、たとえば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、
- 金属炭酸塩、たとえば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、
- 金属水酸化物、たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、
- 金属硫酸塩、たとえば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、
- ゴムゲル、とくにBR、E-SBR、及び/又はポリクロロプレンに基づく、好ましくは、粒子サイズ5~1000nmを有するもの。
【0067】
好適な炭素系充填剤の例としては、限定されるものではないが、フレームスートプロセス、チャネルプロセス、ファーネスプロセス、ガススートプロセス、サーマルプロセス、アセチレンスートプロセス、又はアークプロセスにより製造されるカーボンブラックが挙げられる。炭素系充填剤は、9~200m2/gのBET表面を有しうる。具体的カーボンブラックの例としては、限定されるものではないが、SAF-、ISAF-LS-、ISAF-HM-、ISAF-LM-、ISAF-HS-、CF-、SCF-、HAF-LS-、HAF-、HAF-HS-、FF-HS-、SPF-、XCF-、FEF-LS-、FEF-、FEF-HS-、GPF-HS-、GPF-、APF-、SRF-LS-、SRF-LM-、SRF-HS-、SRF-HM-、及びMT-スート、又はASTM準拠N110-、N219-、N220-、N231-、N234-、N242-、N294-、N326-、N327-、N330-、N332-、N339-、N347-、N351-、N356、N358、N375、N472、N539、N550、N568、N650、N660、N754、N762、N765、N774、N787、及びN990カーボンブラックが挙げられる。
【0068】
好ましくは、本開示のゴムコンパウンドは、充填剤として1種以上のカーボンブラックを含有する。
【0069】
充填剤は、単独又は混合物で使用可能である。とくに好ましい形態では、ゴム組成物は、高分散シリカなどのシリカ充填剤とカーボンブラックとの混合物を含有する。シリカ充填剤対カーボンブラックの重量比は、0.01:1~50:1、好ましくは0.05:1~20:1でありうる。
【0070】
充填剤は、100重量部のゴムを基準にして10~500、好ましくは20~200重量部の範囲内の量で使用されうる。
【0071】
ゴムコンパウンド及び加硫性ゴムコンパウンドは、本開示に係る官能化ゴム以外の1種以上の追加のゴムと、1種又は2種以上のゴム添加剤と、をさらに含有しうる。
【0072】
追加のゴムとしては、たとえば、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。存在する場合、それらは、組成物中のゴムの合計量を基準にして0.5~95重量%の範囲内、好ましくは10~80重量%の範囲内の量で使用されうる。好適な合成ゴムの例としては、BR(ポリブタジエン)、アクリル酸アルキルエステルコポリマー、IR(ポリイソプレン)、E-SBR(乳化重合により製造されたスチレン-ブタジエンコポリマー)、S-SBR(溶液重合により製造されたスチレン-ブタジエンコポリマー)、IIR(イソブチレン-イソプレンコポリマー)、NBR(ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー)、HNBR(部分又は完全水素化NBRゴム)、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)、及びそれらの混合物が挙げられる。天然ゴム、-60℃超のガラス温度を有するE-SBR及びS-SBR、Ni、Co、Ti、又はNdに基づく触媒を用いて製造された高cis含有率(>90%)を有するポリブタジエンゴム、80%までのビニル含有率を有するポリブタジエンゴム、及びそれらの混合物は、自動車用タイヤの製造にとくに関心がもたれている。
【0073】
ゴム添加剤は、ゴム組成物の処理性を改善したり、ゴム組成物を架橋する働きをしたり、ゴムから製造される加硫物の物理的性質を改善したり、ゴムと充填剤との相互作用を改善したり、又はゴムを充填剤に結合する働きをしたりしうる成分である。ゴム補助剤としては、硫黄や又は硫黄供給化合物などの架橋剤、反応促進剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、処理助剤、可塑剤、タック付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、シラン、遅延剤、金属酸化物、エクステンダー油、たとえば、DAE(留出芳香族抽出物)油、TDAE(処理留出芳香族抽出物)油、MES(軽度抽出溶媒和物)油、RAE(残留芳香族抽出物)油、TRAE(処理残留芳香族抽出物)油、ナフテン系油及び重質ナフテン系油、さらには活性化剤が挙げられる。
【0074】
ゴム添加剤の合計量は、組成物中の100重量部の合計ゴムを基準にして1~300重量部、好ましくは5~150重量部の範囲内でありうる。
【0075】
ゴム組成物は、ローラー、ニーダー、インターナルミキサー、又は混合押出機を含めて、(加硫性)ゴムコンパウンドを作製及び処理するための従来の処理装置により、調製可能である。ゴム組成物は、単段又は多段プロセスで、好ましくは2~3混合段で製造可能である。硫黄などの架橋剤及び促進剤は、好ましくは30℃~90℃の範囲内の温度で、ローラーなどにより個別の混合段で添加されうる。硫黄などの架橋剤及び促進剤は、好ましくは最終混合段を添加される。
【0076】
用途
本開示に係るゴム組成物は、ゴム加硫物の製造に、とくにタイヤとくにタイヤトレッドの製造に使用可能である。
【0077】
本明細書に提供される(加硫性)ゴム組成物はまた、成形物品の製造に、たとえば、ケーブルシース、ホース、ドライブベルト、コンベヤーベルト、ロールライニング、シューソール、シーリングリング、及びダンピングエレメントの製造に好適である。
【0078】
本開示の他の一態様は、本開示に従って提供される加硫性ゴム組成物を加硫することにより得られる加硫ゴム組成物を含有する成形物品とくにタイヤに関する。
【0079】
下記の実施例は、本開示をさらに例示するために提供されるが、しかしながら、これらの実施例に示される実施形態に本開示を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0080】
方法
ポリマーデータ:
スチレン-ブタジエンゴムの数平均分子量Mn、分散度
【数1】
、及びカップリング度は、35℃でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて決定された(ポリスチレン検量)。
【0081】
ポリマーのムーニー粘度は、100℃で測定条件ML(1+4)でDIN ISO289-1(2018)に準拠して測定された。
【0082】
ビニル及びスチレンの含有率は、ゴム膜でFTIR分光法により決定可能である。
【0083】
コンパウンドの性質:
ムーニースコーチ時間は、DIN ISO289-2(2018)に準拠して125℃で測定された。MS-t3、MS-t5、及びMS-t10の値は、粘度最小値と比較して、それぞれ、粘度が3MU、5MU、及び10MU増加したときの時間(サンプル材料の挿入から始めた)に対応する。
【0084】
コンパウンドは、Garvey Die(ASTM D-2230)の寸法を半分に低減したダイを用いてBrabender Plastograph EC Plus押出し機(L/D=19/10)で押し出された。押出し実験は、100℃で実施された。
【0085】
加硫コンパウンドの性質:
温度依存動的機械的性質を決定するために、0℃及び60℃で損失係数tanδ(本明細書では「tanデルタ」ともいう)を測定した。この目的でGabo製のEplexorデバイス(Eplexor500N)を使用した。測定は、-100℃~100℃の範囲内の温度でAresストリップで10HzでDIN53513に準拠して行われた。この目的でEplexor500Nを使用した。歪み依存動的機械的性質を決定するために、0.5%歪みでの剪断弾性率と15%歪みでの剪断弾性率との差としてΔG’さらには最大損失係数tanδmaxを決定した。これらの測定は、60℃の温度で2mmの圧縮で、及び0.1%~40%の歪み範囲で10Hzの測定周波数で、円柱試料(20×6mm)でMTSエラストマー試験システムでDIN53513-1990に準拠して行われた。
【0086】
反発弾性は、DIN53512に準拠して60℃で決定された。
【0087】
実施例
1. ポリマーの合成
比較実施例1(C1): 未変性ポリブタジエンの合成
8500gヘキサン、4.18ml n-ブチルリチウム(ヘキサン中23wt.%)、及び1500g 1,3-ブタジエンを20l反応器に充填し、70℃で1h重合した。続いて、アニオンポリマー鎖末端の重合を停止するオクタノールを用いて重合をクエンチした。ポリマーを安定化させるために4.5g IRGANOX1520を添加した。溶液をエタノール中で沈殿させ、減圧下70℃で乾燥させた。得られたポリマーは、369700g mol-1の分子量(M)、1.10の
【数2】
、及び58ムーニー単位のムーニー粘度(ML(1+4)@100℃)を有していた。
【0088】
比較実施例2(C2): DMI官能化ポリブタジエンの合成
8500gヘキサン、3.98ml n-ブチルリチウム(ヘキサン中23wt.%)、及び1500gブタジエンを20l反応器に充填し、70℃で1h重合した。1.84mlジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)を添加して5分撹拌し、そして1.09mL 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を添加して20分撹拌した。続いて、オクタノールを用いて重合をクエンチした。4.5g IRGANOX1520を添加した。溶液をエタノール中で沈殿させ、減圧下70℃で乾燥させた。得られたポリマーは、340700g mol-1の分子量(M)、1.10の
【数3】
、及び48ムーニー単位のムーニー粘度(ML(1+4)@100℃)を有していた。
【0089】
実施例1(E1): DMI/EC官能化ポリブタジエンの合成
8500gヘキサン、4.48ml n-ブチルリチウム(ヘキサン中23wt.%)、及び1500gブタジエンを20l反応器に充填し、70℃で1h重合した。2.09ml DTHFPを添加して5分撹拌し、そして1.23mL 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを添加して20分撹拌した。テトラヒドロフランに溶解された0.99gエチレンカーボネートを添加してさらに20分撹拌した。続いて、オクタノールを用いて重合をクエンチした。4.5g IRGANOX1520を添加した。溶液をエタノール中で沈殿させ、減圧下70℃で乾燥させた。得られたポリマーは、361800g mol-1の分子量(M)、1.23の
【数4】
、及び58ムーニー単位のムーニー粘度(ML(1+4)@100℃)を有していた。
【0090】
実施例2(E2): DMI/BL官能化ポリブタジエンの合成
8500gヘキサン、3.98ml n-ブチルリチウム(ヘキサン中23wt.%)、及び1500gブタジエンを20l反応器に充填し、70℃で1h重合した。1.84ml DTHFPを添加して5分撹拌し、そして1.09mL 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを添加して20分撹拌した。0.77mLガンマ-ブチロラクトン(BL)を添加してさらに20分撹拌した。続いて、オクタノールを用いて重合をクエンチした。4.5g IRGANOX1520を添加した。溶液をエタノール中で沈殿させ、減圧下70℃で乾燥させた。得られたポリマーは、361000g mol-1の分子量(M)、1.09の
【数5】
、及び54ムーニー単位のムーニー粘度(ML(1+4)@100℃)を有していた。
【0091】
2. コンパウンドの調製
実施例C1、C2、E1、及びE2で得られたポリマーと、表1にまとめられた成分及び量と、を1.5リットルの容量のインターナルミキサーで混合し、コンパウンドC3及びC4(比較)並びにE3及びE4(本開示に係る)を作製した。インターナルミキサーで調製されたコンパウンド組成物に硫黄及び促進剤を個別に添加して40℃でローリングミルにかけた。
【0092】
【表1】
【0093】
3. 加硫
160℃の加熱成形型でコンパウンドC3、C4、E3、及びE4を11分間加硫し、表3に示されるそれらの性質を試験した。
【0094】
【表2】
【0095】
表2から分かるように、変性ポリマーはすべて、加硫物の性能を改善した。
【0096】
コンパウンドの性質
ムーニースコーチ時間:
実験の部に記載のように、コンパウンドC3、C4、E3、及びE4をそれらの125℃でのムーニースコーチ時間について試験した。結果は表3に示される。
【0097】
【表3】
【0098】
DMIで変性されたポリマーを用いて作製されたコンパウンドC4は、未変性ポリマーから得られたコンパウンドC3よりも短いムーニースコーチ時間を有することが、表3に示される結果から示唆される。DMI及びECで変性されたポリマーを用いて作製されたコンパウンドE3は、コンパウンドC4よりも優れたムーニースコーチ時間及び未変性ポリマーを用いて作製されたコンパウンドC3に類似したスコーチ時間を有していた。DMI及びBLで変性されたポリマーを用いて作製されたコンパウンドE4もまた、DMIで変性されたポリマーを用いて作製されたコンパウンドよりも優れたムーニースコーチ時間を有していた。
【0099】
押出し実験:
コンパウンドは、Garvey Die(ASTM D-2230)の寸法を半分に低減したダイを用いてBrabender Plastograph EC Plus押出し機(L/D=19/10)で押し出された。押出し実験は、100℃で実施された。結果は図1に示される。
【0100】
未変性ポリマーを用いて作製されたコンパウンドにより得られた形材(C3、図1の形材a)と、比較例2のDMI変性ポリマーを用いて作製されたコンパウンドにより得られた形材(C4、図1の形材b)と、の比較から分かるように、DMI変性は、押出し性を劣化させる。DMI/EC変性ポリマーを含むコンパウンドの押出し(E3、図1の形材c)は、DMI変性ポリマーを含むコンパウンドのものよりも優れている。DMI/BL変性ポリマーを用いて作製されたコンパウンド(E4、形材d)は、DMI変性ポリマーのものC4に類似した押出し形材を有していた。
図1
【国際調査報告】