IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーエフエス ファイテル,エルエルシーの特許一覧

特表2023-519538三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム
<>
  • 特表-三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム 図1
  • 特表-三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム 図2
  • 特表-三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム 図3
  • 特表-三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム 図4
  • 特表-三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム 図5
  • 特表-三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム 図6A
  • 特表-三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム 図6B
  • 特表-三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム 図6C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】三次元空間に沿ったマイクロベンドおよび任意の微小変形を測定するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
G01D5/353 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555062
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2021022051
(87)【国際公開番号】W WO2021183846
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/989,117
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】アーマド,ラジャ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェストブルック,ポール,エス.
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA37
2F103CA07
2F103EB02
2F103EB05
2F103EB12
2F103EB19
2F103EC09
2F103ED27
(57)【要約】
光ファイバの分布長さに基づいて三次元空間におけるマイクロベンドおよび微小変形をセンシングするためのシステムは、ファイバの長さに沿って螺旋構成で配置されたオフセットコアのグループを含むように形成され、各コアは、同じブラッグ波長を示すファイバブラッググレーティングを含む。マルチコアファイバのマイクロスケール局所変形は、ブラッグ波長の局所シフトを生じ、複数のコアの使用は、局所変形の完全なマイクロスケールモデリングを可能にする。各コアのシーケンスプロービングは、光周波数領域反射率測定(Ofdr)を可能にし、所定の三次元形状の再構成を可能にし、様々なマイクロベンドおよび微小変形の位置およびサイズを描写する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元(3D)空間におけるマイクロベンドおよび微小変形をセンシングおよび測定するための分散システムであって、
マルチコアセンシングファイバであって、
前記マルチコアセンシングファイバの中心から半径方向にRだけ離間された複数のオフセットコアと、
1対1の関係で前記複数のオフセットコアに刻まれた複数の連続ファイバブラッググレーティング(FBG)であって、各FBGは共通のブラッグ波長λBraggで光を反射するように形成される複数のFBGとを備える、マルチコアセンシングファイバと、
光後方散乱反射率計であって、
λBraggを取り囲む波長範囲にわたる掃引波長出力ビームを生成する可変レーザ源と、
前記掃引波長出力ビームを前記マルチコアセンシングファイバに向けられた掃引波長プローブビームおよび反射器に向けられた掃引波長参照ビームに分割する光ビームスプリッタ/コンバイナであって、前記光ビームスプリッタ/コンバイナは、また前記マルチコアセンシングファイバからの掃引波長戻りビームおよび反射された掃引波長参照ビームを結合し、干渉FBGセンシングビームを生成する光ビームスプリッタ/コンバイナと、
前記干渉FBGセンシングビームに応答して、その電子バージョンを生成する光検出器と、
前記光検出器に結合され、前記干渉FBGセンシングビームの前記電子バージョンに対してフーリエ変換を実行して前記マルチコアセンシングファイバの前記長さに沿ったブラッグ波長の局所的変化の測定値を生成し、前記三次元空間の前記形状を前記測定値から再構築するために利用するフーリエ変換アナライザとを備える光後方散乱反射率計とを備える分散システム。
【請求項2】
前記複数のコアは、前記マルチコアセンシングファイバの軸方向長さに沿って螺旋パターンで配置され、前記螺旋パターンは、所定の周期Λで周期的であることを特徴とする請求項1に記載の分散システム。
【請求項3】
前記掃引波長プローブビームの経路に沿って配置され、前記掃引波長プローブビームおよび前記マルチコアセンシングファイバ内の前記複数のオフセットコアの間の結合を制御する光スイッチング構成をさらに備える請求項1に記載の分散システム。
【請求項4】
前記光スイッチング構成は1×N光スイッチを備え、前記複数のオフセットコアは複数のN個のオフセットコアを備え、前記1×N光スイッチは複数のN個のスイッチポートおよび前記複数のN個のオフセットコアを1対1の関係で結合するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の分散システム。
【請求項5】
前記1×N光スイッチは、前記掃引波長プローブビームを前記複数のN個のスイッチポートの各スイッチポートに順次結合し、前記掃引波長プローブビームを各オフセットコアに順次順次結合するように制御し、期間にわたって前記マルチコアセンシングファイバの走査シーケンスを実行することを特徴とする請求項4に記載の分散システム。
【請求項6】
前記フーリエ変換アナライザによって生成される測定値の信号対雑音比を低減するために各オフセットコアの複数の走査が実行されることを特徴とする請求項5に記載の分散システム。
【請求項7】
前記1×N光スイッチの前記出力および前記マルチコアセンシングファイバの入力端面の間に配置されるテーパファイババンドルをさらに備え、
前記テーパファイババンドルは、前記1×N光スイッチを出る前記複数の出力ファイバの物理的サイズを前記マルチコアセンシングファイバの直径に実質的に等しい直径に縮小することを特徴とする請求項4に記載の分散システム。
【請求項8】
前記三次元空間における分布曲率κ(z)を決定する再構成処理部であって、前記分布曲率は、局所的マイクロベンドの方向に関する情報を提供する位相を有するベクトル量であり、前記分布曲率は、数式1に定義され、
【数1】
は前記マルチコアセンシングファイバの前記中心およびオフセットコアの中心の間の前記半径方向オフセットであり、uは個々のコアであり、ρ(z)は前記関連するオフセットコアの単位ベクトルであり、ε(z)は前記関連するオフセットコアに誘起される歪みであり、数式2に定義され、
【数2】
として定義され、ηは、前記マルチコアセンシングファイバの組成に関連する歪み光学係数である再構成処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の分散システム。
【請求項9】
前記再構成処理部は、前記決定された分布曲率ベクトルκ(z)と数式3に基づいて、三次元空間における分布形状Sをさらに決定することを特徴とする請求項8に記載の分散システム。
【数3】
ここで、
【数4】
であり、T(x,y,z)は前記分布曲率ベクトルの接線であり、N(x,y,z)は前記分布曲率ベクトルの主法線であり、B(x,y,z)は前記分布曲線ベクトルの二項式であり、
【数5】
であり、τ(z)はねじれであり、前記マルチコアセンシングファイバの長さに沿って曲げ方向がどれだけ急速に変化するかを定量化するものである。
【請求項10】
は変形の前記存在下でブラッグ波長の所望の変化ΔλBraggを提供するように選択されることを特徴とし、
【数6】
であり、ηは前記マルチコアセンシングファイバを形成する材料の歪み光学係数を表す定数であり、yは直線中立面に対する前記変形の横断面における局所的な変位量であり、kは前記マルチコアセンシングファイバの長さに沿って加えられる前記変形の周期である、請求項1に記載の分散システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年3月13日付の米国仮特許出願第62/989,117号の優先権を主張し、その出願は引用することにより本明細書の一部をなす。
本発明は、光ファイバベースの分散センサに関し、より詳細には、所定のファイバの範囲に沿ったマイクロベンドの存在を検出することができるマルチコアファイバベースのセンサに関し、分散センサを取り囲む空間内の様々な変形の位置およびサイズに関する三次元情報を提供する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバベースの分散型センサは、三次元空間における任意の変形の特徴付けを実行する際の貴重なツールとして出現した。潜在的な用途としては、3D印刷、外科用カテーテル、スマートウェアラブル、燃料タンクの監視システム、複合構造などが挙げられる。「形状センシング」のための光ファイバの使用は、高精度および高速動作を提供し、センシングプローブとして使用される光ビームの生来のシールド性の結果として、アクセス困難な表面および環境を特徴付けるために特に適用可能であり得る。
【0003】
これまで、ファイバベースの分散センサは、「マクロ」レベルでのみ(すなわち、測定に関してセンチメートル/メートルのスケールで)任意の経路および形状を再構築することが可能であった。推し進めると、より小さいスケール(すなわち、サブミリメートルの変化/屈曲)で分散センシングを実行する能力がより重要になる。例えば、伝送ファイバに沿って伝搬する光通信信号の減衰に対するマイクロベンドの影響は、数年間関心を集めている。光ファイバにおける伝送損失が、ガラスにおける固有の吸収および散乱によって決定される基本的限界に近づくにつれて、光ファイバ(およびケーブル)における微視的な物理的屈曲によって誘発される損失は、ますます関連性が高まっている。しかしながら、そのようなマイクロベンドは、現在利用可能なセンサを用いて直接測定することができない。
【発明の概要】
【0004】
従来技術に残っている課題は、本発明によって対処され、本発明は、所定のファイバの範囲に沿ったマイクロベンドの存在を検出することができ、分散型センサを取り囲む空間内の様々な変形の位置およびサイズに関する三次元情報を提供するマルチコアファイバベースのセンサに関する。
【0005】
本発明の原理によれば、光ファイバの長さに沿って分散する微小変形を「再構成」する能力は、複数の導波コア内の光の分散反射を調べるためのツイストマルチコア光ファイバの使用に基づくシステムによって提供される。コアは、全て同じブラッグ波長を示す連続ファイバブラッググレーティング(FBG)を含むように形成される。センシングファイバのマイクロスケール局所変形は、ブラッグ波長の局所シフトを生成し、複数のコアの使用は、特定の場所における屈曲の完全なモデル化を可能にする。
【0006】
例示的な一実施形態では、本発明は、光後方散乱反射率計と組み合わせてマルチコアセンシングファイバを利用する、三次元(3D)空間内のマイクロベンドおよび微小変形を感知および測定するための分散システムの形態をとる。特に、マルチコアセンシングファイバは、マルチコアセンシングファイバの中心から半径方向に量Rだけ離間した複数のオフセットコアと、複数のオフセットコアに1対1の関係で刻まれた複数の連続ファイバブラッググレーティング(FBG)とを含むように形成される。FBGのセットは、共通のブラッグ波長λBraggで光を反射するように形成される。光後方散乱反射率計は、λBraggを取り囲む波長範囲にわたる掃引波長出力ビームを生成するための可変レーザ源と、光ビームスプリッタ/コンバイナと、光検出器と、光周波数領域反射率測定(OFDR)を実行するためのフーリエ変換アナライザとを含む。光ビームスプリッタ/コンバイナは、可変レーザ源からの掃引波長出力ビームを、マルチコアセンシングファイバに向けられる掃引波長「プローブ」ビームと、反射器に向けられる掃引波長参照ビームとに分割するように機能する。光ビームスプリッタ/コンバイナはまた、干渉FBGセンシングビームを生成するために、マルチコアセンシングファイバからの掃引波長リターンビームと反射掃引波長参照ビームとを結合するために使用される。光検出器は、干渉ビームの電子バージョンを生成するために干渉FBGセンシングビームに応答し、フーリエ変換アナライザは、その後、干渉FBGセンシングビームの電子バージョンに対してフーリエ変換を実行して、マルチコアセンシングファイバの長さに沿ったブラッグ波長の局所的変化の測定値を生成し、それから三次元空間の形状を再構築するために使用される。
【0007】
センサファイバは、従来のガラス材料から形成されてもよいが、他の実施形態は、より微細な測定分解能を可能にする、より小さいヤング率を伴う、より弾性が低い材料から形成されるセンサファイバを利用してもよい。
【0008】
本発明の他のさらなる実施形態および特徴は、以下の議論の過程で、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0009】
ここで図面を参照することであって、いくつかの図において、同様の数字は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明によるマルチコアセンシングファイバにおいて有用なツイストマルチコア光ファイバの断面の等角図である。
図2図2は、図1のマルチコアセンシングファイバの端面図である。
図3図3は、マルチコアセンシングファイバの位置に関連する三次元空間内の変形をセンシングおよび測定するための例示的なシステムのブロック図である。
図4図4は、様々なオフセットコア間の圧縮および膨張の両方の存在を示す、マルチコアセンシングファイバに沿った屈曲位置の拡大断面図である。
図5図5は、ファイバ形状測定値の標準偏差の減少を、測定回数の関数として示すグラフである。
図6A図6Aは、複数の測定の実行に関連する形状再構成の改善を示す図であって、マルチコアセンシングファイバのループの写真複製である。
図6B図6Bは、複数の測定の実行に関連する形状再構成の改善を示す図であって、単一の測定に基づく再構成である。
図6C図6Cは、複数の測定の実行に関連する形状再構成の改善を示す図であって、10回の別々の測定のセットに基づく再構成である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の原理による、三次元空間におけるマイクロベンド(および概して様々な他のマイクロ変形)の検出を実行するために使用され得る例示的なツイストマルチコア光ファイバ10の等角図である。図2は、図1のファイバ10の端面図であり、特にマルチコアファイバ10内のオフセットコアのセットの配置を示す。この実施形態では、マルチコアファイバ10は、ファイバ10の中心Cからすべて同じ量(R)だけ半径方向にオフセットされた6つのコア12~12のセットを利用する。図示のように、コアは互いに等しく離間され、6つのコアのセットは、隣接するコア間に60°の角度変位Zをもたらす。
【0012】
図1に最もよく示されるように、センシングコア12は、マルチコアファイバ10の長さに沿って螺旋パターンに従う(すなわち、センシングファイバ10の設計を説明する際の「ツイストされた」という意味である)。そのようなファイバは、光プリフォームをファイバに絞り込むプロセス中に形成することができ、プリフォームは連続的に回転され、一定の「ツイスト周波数」でファイバの中心軸の周りに螺旋状に延びるオフセットコア12をもたらす。したがって、メートル当たりの回転として特徴付けられ得る定義されたツイスト周波数は、図1においてΛとして示される定義された空間ツイスト周期を形成する。
【0013】
各オフセットコア12は、プリフォームを最終ファイバに絞り込むプロセス中にコアに書き込まれ得る連続FBG14を含むように形成される。各FBG14は、ブラッグ波長値のシフトをもたらすいかなる局所的な曲がりまたは変形の存在しない状況下でもすべて同じ波長の光を反射するように、同じブラッグ波長λBraggを示すように作成される。
【0014】
図3は、図1および図2のマルチコアセンシングファイバ10を利用する例示的な分散形状センシングシステム100を示す。システム100は、マルチコアセンシングファイバ10に沿った微小変形の存在を確認するために、以下で完全に説明される方式で光周波数領域反射率測定(OFDR)測定を利用する、光後方散乱反射率計(OBR)20を含み、それらの位置および形状に関する詳細な情報を提供する。マルチコアセンシングファイバ10の範囲に沿った任意の横方向位置で複数のオフセットコア12から測定値を収集する能力は、ファイバ内のマイクロベンドの非常に正確なセンシングを提供するために必要な分解能を提供する。
【0015】
OBR20自体は、FBG14のブラッグ波長(λBragg)を中心とする掃引波長(周波数)源として構成された可変レーザ源22を含む。例示的な一実施形態では、可変レーザ源22は、λBraggの両側で±10nmの波長範囲(すなわち、20nmの波長範囲である)を通して掃引される狭い線幅出力を提供するように構成され得る。例えば、λBragg=1541nmの場合、可変レーザ源は、1531nm~1551nmの波長範囲にわたって走査される出力ビームを提供するように構成されてもよい。20nmの可変帯域幅は例示にすぎず、以下で説明するように、より大きい帯域幅が望ましい場合がある。
【0016】
可変レーザ22からの出力ビームは、その後、OBR20のビームスプリッタ24を通過し、これは、(「プローブビーム」または「プローブ信号」と呼ばれることもある)ビームの大部分をOBR20から出て1×N光スイッチ30に向ける。スイッチ30は、以下で詳細に説明されるように、プローブビームをマルチコアセンシングファイバ10の選択されたオフセットコア12に向けるように制御される。
【0017】
OBR20の説明に戻ると、(「参照ビーム」と呼ばれることもある)ビームスプリッタ24からの残りの出力は、反射信号経路26に沿って向けられる。マルチコアセンシングファイバ10からの反射された参照ビームおよび後方散乱された反射は、ビームスプリッタ24(この方向においてコンバイナとして動作する)内で結合され、これらの信号の干渉する組み合わせをOBR20内に含まれる光検出器28に向ける。その後、光検出器28からの出力は、フーリエアナライザ29への入力として適用され、フーリエアナライザは、周波数領域分析を実行し、光検出器28からの周波数領域測定値を、マルチコアセンシングファイバ10に沿った長さの関数として位相および振幅の空間領域測定値に変換する。
【0018】
マルチコアセンシングファイバ10が平坦で真っ直ぐであり、マイクロベンド(または他のタイプの微小変形)がない場合、FBG14はすべて参照ブラッグ波長λBraggを維持し、この波長のみでプローブビーム光を一貫して反射し、残りの波長がマルチコアセンシングファイバ10に沿って伝搬し続けることを可能にする。したがって、λBraggに変化がないので、光検出器28の出力の周波数成分にも変化がない。したがって、フーリエアナライザ29は、「非摂動」マルチコアセンシングファイバ10を示す一定の線形出力信号を提供する。いったん任意のマイクロベンド/変形がファイバ10内に示されると、1つまたは複数のオフセットコア12のブラッグ波長が変化し(以下に述べる図4参照)、フーリエアナライザ29からの出力は、マイクロベンドと関連付けられるピークのセットを含有するであろう。フーリエアナライザ29からの出力は、OBRシステム20からの出力センシング信号と見なすことができる。
【0019】
したがって、OFDRの原理によれば、定義された波長範囲にわたって走査されるプローブビームで各オフセットコア12を照射することによって、マルチコアセンシングファイバ10に沿った変形/マイクロベンドが、フーリエアナライザ29によって処理される干渉信号内で識別される。すなわち、干渉ビームのフーリエ変換を実行することによって、スペクトル情報を使用して、マルチコアセンシングファイバ10に沿った微小変形を検出および測定することができる。フーリエ変換は、受信された干渉信号におけるスペクトル情報を、マイクロベンド/変形が存在する位置における分布ブラッグ波長変化の形態で示される空間(時間)情報に変換する。
【0020】
フーリエ関係は、可変レーザ源22の波長走査範囲を歪み(したがって曲率および形状)の長手方向空間領域測定値に逆相関させる。例えば、20nmの波長走査範囲は、40μmの測定分解能に変換される。波長走査範囲を80nm(依然として所定のブラッグ波長を中心とする)に増加させることは、そのような大きい掃引波長範囲を生成することができる可変レーザ源22を必要とするという犠牲を払っても、局所的マイクロベンドの測定において10μmの分解能につながる。
【0021】
システム100の構成要素の説明を続けると、OBR20を出る可変プローブビームは、上述のように、1×N光スイッチ30への入力として提供される。光スイッチ30は、単一の入力/出力ポート32と、複数のN個の接続ポート34~34とを含み、各接続ポート34は、固有のオフセットコア12に関連付けられる。光スイッチ30からの複数のN個の出力は、1対1の関係でオフセットコア12~12に関連付けられた複数の別個の光ファイバ38~38に結合される。マルチコアセンシングファイバ10の遠端は、ファイバ10の遠端面における望ましくないフレネル反射が複数のオフセットコア12の1つまたは複数に再び入ることを抑制するために、インデックスマッチングゲル50に浸漬される。
【0022】
図3はまた、光スイッチ30からの出力をマルチコアセンシングファイバ10に結合するための例示的な構成を示す。特に、図3は、(光スイッチ30からの)ファイバ38とファイバ10のオフセットコア12との間の効率的な光結合を提供するためのテーパファイババンドル(TFB)40の使用を示す。所与のTBFの動作の既知の原理に従って、TBF40は、入力ファイバ38の「束」の全体的な直径を、マルチコアセンシングファイバ10の端面に整合する出力テーパ42に縮小するように機能する(上述の図2に示される)。出力テーパ42は、各ファイバ38のコア領域がオフセットコア12のうちの別個のコア領域と整列するように配向される。すなわち、TBF40の出力端面44の断面形状は、図2に示すように、マルチコアセンシングファイバ10の端面に整合される。TBF40の使用は、マルチコアセンシングファイバ10内へのプローブ信号の効率的な送出、ならびにそこからの後方散乱信号の収集を可能にする。
【0023】
図3に示すシステム100は、マルチコアセンシングファイバ10に沿ったマイクロベンドを認識するために使用され、所定のマイクロベンドBの位置のファイバ断面内に生成される局所非対称応力によって認識される。図4は、変形を経験している特定の場所Bでのマルチコアセンシングファイバ10の拡大された断面等角図である。この特定の屈曲は、コア12を圧縮させ、したがって、FBG14内の隣接するグレーティング間の間隔を減少させる。ブラッググレーティングの既知の特性に従って、グレーティング周期のこの減少はまた、FBG14によって経験されるブラッグ波長を減少させる。コア12は、(図4に示されるように)ファイバ10の中立面にあり、したがって、FBG14のブラッグ波長は、一定のままであるため、この屈曲によって影響されない。コア12は、この屈曲位置で拡張を受け、FBG14を形成する隣接するグレーティング間の空間を広げ、FBG14のグレーティング周期およびブラッグ波長を低減する。
【0024】
光スイッチ30を使用して、掃引波長プローブビームで各個々のオフセットコア12を順次照射することによって、所与の横断位置における特定のコアに関連するブラッグ波長の変化は、形状変形のタイプを再作成することを可能にする。すなわち、システム100内にスイッチング機能を含めることにより、ファイバ10に沿った選択された位置で断面変形を得るように、1つずつ複数のオフセットコア12からデータを収集することが可能になる。マルチコアセンシングファイバ10の範囲に沿ってこのプロセスを繰り返すことにより、そのスパンに沿って生じる様々なマイクロベンド(および他のタイプの変形)の完全な再構成が可能になる。
【0025】
フーリエアナライザ29によってすべての測定が完了すると、図3に示すように、フーリエアナライザ29の出力に結合された再構成モジュール27によって、関連する三次元空間の分布曲率および形状を作成することができる。マルチコアセンシングファイバ10の分布曲率はベクトル量κ(z)であり、その位相は、局所的なマイクロベンドの方向に関する情報を提供し、これは、センシングマルチコアファイバ10の分布形状の再構築に役立つ。一般に、空間依存曲率κ(z)は、オフセットコア12の局所歪みおよび幾何学的形状に依存する。
【数1】
ここで、Rはファイバ10の中心とオフセットコア12の中心との間の半径オフセットであり、uは個々のコアを定義し、ρ(z)はそれぞれのコア12の単位ベクトルであり、ε(z)は対応するコア12に誘起される歪みである。フーリエアナライザ29によって記録されたシリカガラスのひずみ光学係数η(~0.78)およびブラッグ波長の測定された局所変化ΔλBraggを使用して、コアuが経験する対応する局所ひずみε(z)は、再構成モジュール29によって以下のように定義することができる。
【数2】
【0026】
各オフセットコア12~12を順次照明するために光スイッチ30を利用することによって、複数のN個(例えば、N=6)のオフセットコア12からの歪み情報は、空間依存曲率κ(z)の定義で示されるように再構成モジュール29内で合計され、分布ファイバ曲率の大きさおよび位相の両方を展開する。マルチコアセンシングファイバ10に沿った各曲線の曲げ配向は、曲率の位相部分によって表される。マルチコアセンシングファイバ10内に含まれる個々のオフセットコア12の数は、計算された分布曲率の精度に直接影響を及ぼし、オフセットコアの数を増加させることは、フーリエアナライザ29によって捕捉および記録されるデータの量を増加させることを理解されたい。
【0027】
最後に、変形されたファイバの分布形状Sはまた、再構成モジュール27からの出力として提供され得る。特に、分布形状は、計算された空間依存曲率κ(z)から、(三次元(3D)曲線を記述する微分方程式のセットである)フレネ-セレ(Frenet-Serret)の公式を使用して再構成され、モジュール27から出力される分布形状を提供する。具体的には、フレネ-セレ方程式は、接線T(x,y,z)、主法線N(x,y,z)、および従法線B(x,y,z)ベクトルを含む局所形状パラメータを、近接して離間した位置で測定されたファイバ曲率およびねじれと関連付ける。数学的には、これは以下のように表される。
【数3】
ここで、
【数4】
であり、
【数5】
であり、ねじれτ(z)は、湾曲したファイバの長さに沿って曲げ方向がどれだけ急速に変化するかを定量化する。実際には、分布曲率ベクトルの位相成分の空間導関数は、マルチコアセンシングファイバ10の長さに沿って生成されるねじれ量τ(z)(=dθ(z)/dz)をもたらす。マルチコアセンシングファイバ10の長さ(z軸)に沿って集合Sの固有値および固有ベクトルについてこの式を繰り返し解くことによって、ファイバの分布形状を推定することができる。
【0028】
上記の式を解くための初期条件は、マルチコアセンシングファイバ10への入力において、位置z(=0)、すなわちκ(0)=τ(0)=0で曲率およびねじれがないと仮定することに留意することが重要である。さらに、接線T(x,y,z)、主法線N(x,y,z)および従法線B(x,y,z)ベクトルは、z=0で、任意に選択された三次元空間基準フレームにおける3つの正規直交単位ベクトルとして定義される。任意の位置における接線ベクトルは、ファイバ長が増加する方向に「向いている」と仮定し、局所的なファイバ方向を示す。したがって、マルチコアセンシングファイバ10の長さに沿って密接に離間した位置における接線ベクトルの連結は、ファイバの分布形状を表す。
【0029】
本発明のシステムの測定感度は、OBR20の信号対雑音比(SNR)を増大させることによって、または(上述のように)測定分解能を増大させるために可変レーザ22の可変波長範囲を広げることによって増大させることができる。SNRは、参照ビーム(
【数6】
)をOBR20における後方散乱信号(
【数7】
)と干渉させることによって生成されるスペクトルビート信号に依存する。すなわち、
【数8】
である。したがって、
【数9】
なので、SNRは、可変レーザ源22の強度を増加させることによって、または単にブラッググレーティング14の屈折率変調Δnacの振幅を2倍増加させることによって、(例えば)2倍増加させることができる。OBR20自体の計装内に存在するバックグラウンドノイズ(例えば、ショットノイズ、暗電流ノイズ、周波数測定ノイズなど)を低減することはまた、OBR20のSNRを増加させ、その結果、システムの測定感度を増加させる。
【0030】
マルチコアセンシングファイバ10の横断面における測定の感度を高めることはまた、ファイバの同じ外径を維持しながら、コア12とファイバ10の中心軸との間の半径方向オフセットRを高めることによってもたらされ得る。曲げ誘起ファイバひずみの存在下でのブラッグ波長シフトの量(=ΔλBragg)は、以下の関係によって示されるように、Rの値に直接関係する。
【数10】
ここで、ηは石英ガラスの歪光学係数を表す定数であり、yは直線(平坦)中立面に対する横断面でのファイバ変位量であり、kはファイバの長さに沿って加えられる変形の周期である。明らかに、検出された波長シフトの量は、コア12の半径方向オフセット(すなわち、R)を比例して増加させることによって増加させることができる。これは、システムのSNRの線形増加につながり、最終的に測定の感度を改善する。
【0031】
測定感度を高めるための別の代替手法は、マルチコアセンシングファイバ10の全体直径を縮小することである。ファイバは円筒形であるため、直径を減少させることは、慣性モーメントI(I=π/4*R)(Rはファイバ10の半径である)を低下させるのに有用である。その結果、慣性モーメントを低下させることによって、マルチコアセンシングファイバ10自体の可撓性(したがって曲げ)が増大し、FBG14におけるブラッグ波長のより大きなシフトがもたらされる。Iの増加は、局所歪み、局所曲率、および最終的に分布形状測定の感度を改善し得る。具体的には、ファイバ直径を50%減少させることによって、I50%の値は約0.0625Iに減少し、結果として生じる曲げ振幅yおよび関連するブラッグ波長シフトΔλBraggの両方において16倍増加する。
【0032】
従来のシリカガラス(E=~70GPa)よりも小さいヤング率(E)を有する光学材料からマルチコアセンシングファイバ10を製造することも、SNRの改善につながる。軟質ガラスであって、このようなカルコゲン化合物およびフッ化物ガラスは、マルチコアセンシングファイバ10のヤング率の低減に適したプラットフォームを提供する。他方、形状センシング測定の縦方向感度は、分布後方散乱信号に対する推定群遅延の精度を増大させることによって比例的に増大させることができる。ファイバ10の屈折率の分布測定値のセットを使用して、推定群遅延を決定することができる。
【0033】
また、各オフセットコアの反復測定を実行することにより、平均値に存在するノイズを低減することができることも分かっている。例えば、スイッチ30は、ポート34からポート34への複数のスイッチングを実行するように制御されてもよく、マルチコアセンシングファイバ10の複数の測定走査を形成する。すなわち、各オフセット12の複数の走査を実行することによって、単一の走査に関連するノイズ寄与は、複数の走査にわたって平均化することによって低減される。すなわち、反復測定は、複数回の走査にわたってデータを平均化することによって測定データに存在するノイズを抑制することをもたらし、それによってSNRを効果的に向上させ、ファイバ形状測定の精度を向上させる。図5は、平均化走査の数の関数としての歪み測定値の標準偏差の減少を示す。10回の別々の測定にわたってデータを平均した場合、標準偏差において3dBを超える抑制が観察された。このマルチ走査ノイズ抑制の効果は、形状再構成の精度に関しても分析されている。
【0034】
図6Aは、円形ループに曲げられ、ループが約40cmの直径を有する例示的なマルチコアセンシングファイバの写真複製である。図6Bは、単一の測定セットのみが得られた(すなわち、単一の走査)場合、本発明の教示に従って形成された再構成であり、図6Cに示される再構成は、10回の別々の走査の結果を平均することによって得られた。ファイバの再構築された形状は、測定が複数の走査にわたって平均化されなかった場合に、ファイバの実際のレイアウトに対してかなり高いエラーを示すことが見出され、ノイズの影響を明確に実証した。これは、ひずみ信号がノイズよりも実質的に大きくない穏やかな屈曲および小さな曲率の設定の下で特に当てはまる。
【0035】
当業者には、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を行うことができることが明らかであろう。したがって、本発明は、上述の実施形態の修正形態および変形形態を包含することが意図されており、これらの修正形態および変形形態はすべて、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内にあると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
【国際調査報告】