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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】燃料高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/26 20060101AFI20230501BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F02M59/26 330J
F02M59/44 D
F02M59/44 K
F02M59/26 330N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556145
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021052244
(87)【国際公開番号】W WO2021185508
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】102020203652.7
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス シェッター
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AD02
3G066BA51
3G066BA59
3G066BA65
3G066BA67
3G066CA08
3G066CA09
3G066CE02
(57)【要約】
燃料高圧ポンプ(10)は、ポンプハウジング(12)と、ポンプピストン(18)と、このポンプピストン(18)とポンプハウジング(12)との間に配置されていて、ポンプピストン(18)を高圧領域(24)に対して密封する高圧シール部材(40)と、ポンプピストン(18)を滑り嵌めした状態でガイドし、高圧シール部材(40)から見て高圧領域(24)の側に配置された環状のガイド要素(36)とを備える。環状のガイド要素(36)が、このガイド要素(36)の第1の端面(54)に隣り合った第1の領域(60)を、ガイド要素(36)の第2の端面(56)に隣り合った第2の領域(62)に流体接続する少なくとも1つの流体接続路(58)を有することが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料高圧ポンプ(10)であって、
ポンプハウジング(12)と、
ポンプピストン(18)と、
前記ポンプピストン(18)と前記ポンプハウジング(12)との間に配置されていて、前記ポンプピストン(18)を高圧領域(24)に対して密封する高圧シール部材(40)と、
前記ポンプピストン(18)を滑り嵌めした状態でガイドし、前記高圧シール部材(40)から見て前記高圧領域(24)の側に配置された環状のガイド要素(36)と、
を備える、燃料高圧ポンプ(10)において、
前記環状のガイド要素(36)は、該ガイド要素(36)の第1の端面(54)に隣り合った第1の領域(60)を、前記ガイド要素(36)の第2の端面(56)に隣り合った第2の領域(62)に流体接続する少なくとも1つの流体接続路(58)を有することを特徴とする、燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項2】
前記流体接続路(58)は、前記ガイド要素(36)の周面(52)に、前記ガイド要素(36)の軸線方向に全体的に延在する溝(64)を有することを特徴とする、請求項1記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項3】
前記ガイド要素(36)の軸線方向に全体的に延在する前記溝(64)は、半径方向内側または半径方向外側の周面(52)に配置されていることを特徴とする、請求項2記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項4】
前記流体接続路(58)は、前記ガイド要素(36)の端面(54)に、前記ガイド要素(36)の半径方向に全体的に延在する溝(66)を有することを特徴とする、請求項1から3までの少なくとも1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項5】
前記環状のガイド要素(36)は、複数の流体接続路(58)を有することを特徴とする、請求項1から4までの少なくとも1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項6】
前記流体接続路(58)は、前記ガイド要素(36)の周方向で見て均等に分配されて配置されていることを特徴とする、請求項5記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の前提部に記載の燃料高圧ポンプに関する。
【0002】
市場から、内燃機関の燃料システム用の燃料高圧ポンプが知られている。このような燃料高圧ポンプは、燃料を高い圧力に圧縮して、この燃料を燃料集合管路(「レール」)内に引き続き案内し、そこから、燃料は内燃機関の燃焼室内に直接噴射される。ポンプハウジング内にポンプピストンがガイドされており、このポンプピストンには、ピストンばねによって駆動装置に向かって荷重が加えられる。独国特許出願公開第102013226088号明細書に基づき、ポンプピストンを、軸線方向で互いに離間させられた2つの箇所でポンプハウジングに対して、特に例えば環状のガイド要素によって支持しかつガイドすることが公知である。さらに、独国特許出願公開第102013226088号明細書に基づき、ポンプピストンとハウジングとの間に、ポンプピストンを高圧領域に対して密封する高圧シール部材を配置することが公知である。
【0003】
発明の開示
本発明の根底にある問題は、請求項1の特徴を有する燃料高圧ポンプによって解決される。有利な改良形態は、従属請求項に記載してある。
【0004】
高圧シール部材の最適なシール作用のためには、高圧領域で形成された高い流体圧(流体として、例えばガソリンまたはディーゼルが可能である)が、可能な限り絞られずに高圧シール部材にまで達することが必要となる。このことは、高圧シール部材が典型的には1つ以上のシールリップを有していて、このシールリップの、高圧と反対側の領域に比較的低い流体圧が加えられることに関連している。したがって、最適なシール作用を得るために、シールリップは、高圧で形成された高い流体圧によって、可動のポンプピストンおよび/またはハウジング区分に向かって加圧される。
【0005】
本発明に係る燃料高圧ポンプでは、環状のガイド要素の流体接続路によって、ポンプピストンと環状のガイド要素との間のガイド間隙が比較的僅かでしかない場合でも、高い流体圧がほぼ絞られずにガイド要素を越えて高圧シール部材にまで達することが保証される。しかしながら、このような僅かなガイド間隙によって、理想的なガイド軸線もしくは高圧シール部材の中心軸線に対して相対的なポンプピストンの長手方向軸線の傾倒は比較的僅かとなり、これによって、1つには、特に組付け中の高圧シール部材の損傷が阻止され、もう1つには、ポンプピストンおよび/またはハウジング側の区分に対する高圧シール部材による不均一な密封が阻止されることが保証される。
【0006】
このことは、具体的には、ポンプハウジングとポンプピストンとを備えた燃料高圧ポンプによって達成される。ポンプハウジングは、例えば多角形または回転対称であってよく、たいてい金属から製作されている。ポンプピストンは、通常、大きい方の直径を有する区分によって圧送室を画定する段付きピストンであり、これに対して、小さい方の直径を有する区分には、ピストンばねによって駆動装置に向かって荷重が加えられる。この駆動装置は、例えば偏心区分またはカム区分を備えていてよい。燃料高圧ポンプは、いわゆる「プラグインポンプ」であることが多い。このプラグインポンプは、エンジンブロックのシリンダヘッドに設けられた開口内に差し込まれ、内燃機関のカムシャフトによって駆動される。
【0007】
燃料高圧ポンプには、ポンプピストンとポンプハウジングとの間に配置されていて、ポンプピストンを高圧領域に対して密封する前述した高圧シール部材も含まれている。この高圧シール部材も同じく環状であってよく、1つ以上のシールリップを有していてよい。高圧シール部材は、高圧領域と反対の側でポンプハウジング内に、例えば保持リングによって保持される。この保持リングは、ポンプハウジング内に圧入されていて、この限りにおいて、例えば上述したハウジング側の区分を形成することができる。
【0008】
さらに、燃料高圧ポンプには、ポンプピストンを滑り嵌めした状態で僅かなガイド遊びを伴ってガイドし、高圧シール部材から見て高圧領域の側に配置されており、ガイド要素の第1の端面に隣り合った第1の領域を、ガイド要素の第2の端面に隣り合った第2の領域に流体接続する少なくとも1つの流体接続路を有する前述した環状のガイド要素が属している。この環状のガイド要素は、例えば金属、特に黄銅から製作されていてよく、ポンプハウジング内にプレス嵌めされて固定されていてよい。本発明によれば、ガイド要素とポンプピストンとの間の半径方向のガイド遊びが、可能な限り僅かである。
【0009】
一改良形態では、流体接続路が、ガイド要素の周面に、ガイド要素の軸線方向に全体的に延在する溝を有することが特定されている。このことは、技術的に極めて簡単かつ廉価に実現可能である。しかし、当然ながら、このような溝に対して代替的または付加的に、例えば、環状のガイド要素の軸線方向に全体的に延在する貫通孔が設けられてよい。
【0010】
これに対する改良形態では、ガイド要素の軸線方向に全体的に延在する溝が、半径方向内側または半径方向外側の周面に配置されていることが特定されている。後者の事例では、ガイド要素とポンプピストンとの間の接触面が、流体接続路によって影響を受けず、ひいては、最適なままであり、前者の事例では、流体経路が簡略化される。
【0011】
一改良形態では、流体接続路が、ガイド要素の端面に、ガイド要素の半径方向に全体的に延在する溝を有することが特定されている。この根底にある考えは、環状のガイド要素が、ポンプハウジングに設けられた段状の開口もしくは孔内に収容されていて、特に高圧領域に向けられた端面で段状の開口の段部に接触していることが多いというものである。この端面に、半径方向に全体的に延在する溝が存在していることによって、流体接続路の一貫性が保証される。
【0012】
一改良形態では、環状のガイド要素が、複数の流体接続路を有することが特定されている。このことは、流体接続路の有効横断面を増大させる。これによって、高い流体圧が高圧シール部材にまで特に良好に案内される。
【0013】
これに対する改良形態では、流体接続路が、ガイド要素の周方向で見て均等に分配されて配置されていることが特定されている。特にガイド要素がポンプハウジング内にプレス嵌めされて収容されていると、これによって、均等な加圧が保証される。
【0014】
以下に、本発明を添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】環状のガイド要素を備えた燃料高圧ポンプの縦断面図である。
図2図1の環状のガイド要素の斜視図である。
図3図1の燃料高圧ポンプの拡大領域の縦断面図である。
【0016】
図中、内燃機関の燃料システム用の燃料高圧ポンプには、全体として符号10が付してある。燃料高圧ポンプ10はポンプハウジング12を備えている。このポンプハウジング12は、図示の構成では、例えば、全体的にほぼ円筒形の形状を有していて、長手方向軸線14を有している。ポンプハウジング12内には、図示の構成では、例えば、長手方向軸線14に対して同軸に段状の盲孔状の開口16、例えば孔により製作された開口16が存在しており、この開口16内にポンプピストン18が収容されている。
【0017】
ポンプピストン18は、細長い円筒形の部材として形成されていて、軸線方向で見て第1の区分20と第2の区分22とを備えている。第1の区分20は、第2の区分22よりも大きな直径を有している。第1の区分20が圧送室24に面しているのに対して、第2の区分22は駆動装置(図示せず)に面している。
【0018】
燃料高圧ポンプ10には、流入弁26も含まれている。この流入弁26は逆止弁として形成されているが、電磁式の操作装置28によって強制的に開放位置に保持することができる。さらに、燃料高圧ポンプ10には、逆止弁として形成された流出弁30と、圧力制限弁32とが属している。図1では、ポンプハウジング12の上側の端面(符号なし)の領域に、さらに、低圧脈動を減衰するためのダイヤフラムダンパ34が存在している。
【0019】
燃料高圧ポンプ10は、内燃機関の燃料システム(詳細には図示せず)の一部である。流入弁26には、燃料、例えばガソリンまたはディーゼルが、たいてい電気的に駆動されるプレフィードポンプから到達する。ポンプピストン18は、図1において下側の端部で駆動装置、例えば、内燃機関のカムシャフトによって往復運動させられる。これによって、燃料が、流入弁26を介して圧送室24内に吸い込まれ、そこで高い圧力に圧縮され、最終的に流出弁30を介して燃料集合管路(「レール」)に吐出される。そこから、燃料は複数のインジェクタを介して、それぞれ割り当てられた燃焼室内に到達する。
【0020】
ポンプピストン18は、ポンプハウジング12に対して相対的に、互いに軸線方向で離間させられた2つの箇所、つまり、圧送室24のやや下方にて一方の第1の環状のガイド要素36と、図1において下側の端部のやや上方にて第2の環状のガイド要素38とによってガイドされる。以下に、第1の環状のガイド要素36について、さらにより詳しく説明する。これに対して、ポンプピストン18と、開口16の、圧送室24に隣り合った区分との間には、比較的明確な間隙39が存在している。
【0021】
図3から明らかであるように、第1の環状のガイド要素36のやや下方でポンプハウジング12とポンプピストン18との間に、環状の高圧シール部材40が配置されている。この高圧シール部材40は、例えばPTFE材料から製作されていてよい。長手方向軸線14の軸線方向で見て、この長手方向軸線14と第1の環状のガイド要素36との間には、環状のばね42が緊締されている。このばね42は、例えば皿ばねまたはコイルばねであってよい。ばね42によって、高圧シール部材40には、図面において高圧シール部材40の下方に配置された保持リング44に向かって荷重が加えられる。この保持リング44は、ポンプハウジング12の開口16内にプレス嵌めされて保持されている。保持リング44とポンプピストン18の区分20との間には、比較的十分に明確な間隙46が存在している。図1において第2のガイド要素38の上方には、低圧シール部材48が配置されている。
【0022】
ここで、第1のガイドリング36をより詳しく示した図2を参照する。第1のガイドリング36は、金属材料、例えば黄銅から製作されていてよい。第1のガイドリング36は、全体的に真っ直ぐな円筒形の形状を有していて、組込み位置で長手方向軸線14に対して平行に真っ直ぐに延在する内側の周面50と、組込み位置で長手方向軸線14に対して平行に真っ直ぐに延在する外側の周面52と、図2において上側の第1の端面54と、図2において下側の第2の端面56とを有している。内側の周面50の直径は、ポンプピストン18の第1の区分20が、第1の環状のガイド要素36内に滑り嵌めされて比較的小さなガイド遊びでのみガイドされているように選択されている。
【0023】
第1の環状のガイド要素36は、互いに正確に向かい合って位置していて、この限りにおいて第1のガイド要素36の周方向で見て均等に分配されて配置された2つの流体接続路58を有している。これら2つの流体接続路58は、第1の端面54に隣り合った第1の領域60を、第2の端面56に隣り合った第2の領域62に流体接続する。両方の流体接続路58は互いに同一である。したがって、以下では、両方の流体接続路58のうちの一方だけを詳細に説明する。
【0024】
流体接続路58は、第1のガイド要素36の外側の周面52に、軸線方向で長手方向軸線14に対して平行に延在する溝64を有している。この溝は、全体的にほぼ方形の横断面を有している。しかしながら、基本的には、別形の横断面も可能である。図示していない実施形態では、溝は、長手方向軸線14に対して斜めに延在していてもよい。図示していない別の実施形態では、溝は、内側の周面にも存在していてよい。さらに、流体接続路58は、図面において上側の第1の端面54に、半径方向(長手方向軸線14に対して直交方向)に延在する溝66を有している。図示していない実施形態では、この溝は斜めに配置されていてもよく、つまり、周方向に向けられた方向成分を有していてもよい。半径方向に延在する溝66は、軸線方向に延在する溝64に開口している。これによって、一貫して延びる流体接続路58が提供される。
【0025】
図1および図3に示した組込み位置では、第1の環状のガイド要素36の上側の第1の端面54が、段状の開口16の段部68に接触している。さらに、第1の環状のガイド要素36はその外側の周面52でもって開口16内にプレス嵌めされて収容されているかもしくは開口16内に保持されている。ポンプピストン18の圧縮行程中、この限りにおいて高圧領域に属する圧送室24内に形成された極めて高い流体圧は、圧送室24から間隙39を介して、第1の環状のガイド要素36の上方に位置する第1の領域60に伝達され、そこから、両方の流体接続路58の半径方向に延在する溝66と軸線方向に延在する溝64とを介して、図1および図3において第1の環状のガイド要素36の下方に位置する第2の領域62に伝達される。
【0026】
こうして、高圧シール部材40の半径方向の外面にも、前述した高い流体圧が作用する。これによって、高圧シール部材40が、一方では、半径方向内向きでポンプピストン18に押圧され、他方では、軸線方向下向きで保持リング44に押圧される。したがって、高圧シール部材40によって、高い流体圧を、図1および図3において高圧シール部材40の下方に位置する領域に対して良好に密封することができる。同時に、ポンプピストン18は、第1の環状のガイド要素36によって僅かなガイド間隙に基づきほぼ遊びなしにガイドされるため、ポンプピストン18が、長手方向軸線14に対して相対的に傾倒することはあり得ないかまたは少なくとも著しく傾倒することはあり得ない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】