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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】放射線治療計画
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556178
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021058505
(87)【国際公開番号】W WO2021204633
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】20168169.9
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ティアンファン
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AN02
(57)【要約】
第2の治療計画の基となる第1の治療計画を受信することであって、第1の治療計画は線量分布を示すことと、線量分布の少なくとも一部に基づいて値を提供するように構成された少なくとも1つの線量分布導関数を受信することと、確率分布を受信することを含む、各線量分布導関数のそれぞれの値の目標を受信することと、最適化問題を決定することであって、当該もしくは各目的関数は線量分布導関数、それぞれの確率分布およびそれぞれの損失関数のうちの関数であることと、前記最適化問題に基づいて最適化プロセスを行うことと、前記第2の治療計画を決定することとを含む、体積のために放射線治療計画を生成するための方法および装置。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体積に対する放射線治療計画を生成するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
第2の治療計画の基となる第1の治療計画を受信することであって、前記第1の治療計画は患者の体積にわたる線量分布を示すことと、
少なくとも1つの線量分布導関数を受信することであって、前記もしくは各線量分布導関数は、それが定められている前記体積の少なくとも一部に関して、入力としての前記線量分布の少なくとも一部に基づく出力としての値を提供するように構成されていることと、
前記少なくとも1つの線量分布導関数のそれぞれまたはグループのための確率分布を受信することを含む、各線量分布導関数の前記それぞれの値の目標を受信することであって、前記確率分布は入力線量分布のために前記線量分布導関数から出力された前記値の範囲の望ましさを表していることと、
全目的関数を含む最適化問題を決定することであって、前記全目的関数は1つ以上の目的関数の合計を含み、ここでは前記もしくは各目的関数は前記少なくとも1つの線量分布導関数、前記それぞれの確率分布およびそれぞれの損失関数のうちの1つ以上の関数を含むことと、
前記最適化問題に基づいて最適化プロセスを行うことと、
前記最適化プロセスから前記第2の治療計画を決定することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記線量分布導関数のそれぞれまたはグループのための前記確率分布は、それぞれの目標値の前後の入力線量分布のために前記線量分布導関数から出力された前記値の範囲に対する嗜好度または到達可能度を表す、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記確率分布を受信する工程は、
前記確率分布を定めるユーザ入力を受信すること、および
ユーザが複数の予め定められた候補確率分布から確率分布を選択すること
のうちの1つ以上を含む、請求項1または請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記第1の治療計画は、
放射線療法送達装置の動作パラメータおよびどこから前記体積にわたる線量分布を導出することができるかに関して定められた治療計画、
前記線量分布に関して定められた治療計画、および
空間中の各方向から経時的に統合される照射強度およびどこから前記体積にわたる線量分布を導出することができるかに関して定められた治療計画
のうちの1つを含む、いずれかの先行する請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記線量分布導関数を受信する工程は、
ユーザ入力を受信して前記線量分布導関数の1つ以上を定めること、および
候補線量分布導関数のセットからの1つ以上の線量分布導関数であり、その中に前記体積が定められている前記患者の体の一部に基づいて決定された前記候補線量分布導関数を選択すること
のうちの1つ以上を含む、いずれかの先行する請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記線量分布導関数は前記体積全体またはその一部について、線量/体積、体積/線量、平均線量、前記全体もしくは一部の体積における線量均一性の尺度を含む均一性、一致指数、および最小線量、最大線量または線量-体積ヒストグラム関数を含むペナルティ関数のうちの1つ以上を含む、いずれかの先行する請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの線量分布導関数は、少なくとも第1の線量分布導関数および第2の線量分布導関数を含み、
前記第1の線量分布導関数は、前記第1の線量分布導関数がその関連づけられた目標と共に、前記体積の選択された部分体積のために前記線量分布における所望の変化のために改善を示す値を提供するように構成されているという点で、前記最適化プロセスに応答して、前記第1の治療計画に対して前記第2の治療計画において前記体積の前記選択された部分体積のために前記線量分布を改善するために使用するための関数を含み、かつ
前記第2の線量分布導関数は、前記第2の線量分布導関数がその関連づけられた目標と共に、前記体積の1つ以上の選択された部分体積のために前記線量分布におけるあらゆる偏差の悪化を示す値を提供するように構成されているという点で、前記最適化プロセス後に前記第2の治療計画において前記第1の治療計画において定められている1つ以上の部分体積の前記線量分布を実質的に維持するために使用するための関数を含む、
いずれかの先行する請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記損失関数は、
ログ損失関数、および
交差エントロピー損失関数
のうちの1つ以上から選択される、いずれかの先行する請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記もしくは各目的関数は、前記線量分布導関数、前記目標に集中した正規分布によって表されている前記それぞれの目標およびそれぞれの損失関数のうちの1つ以上の関数を含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記最適化問題における累積分布関数または確率密度関数として各線量分布導関数のために前記確率分布を表す工程を含む、いずれかの先行する請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記最適化プロセスを行う工程は、
前記全目的関数を最小化することであって、ここでは前記全目的関数は前記1つ以上の目的関数の加重和を含むこと
を含む、いずれかの先行する請求項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
放射線治療計画を生成するための装置であって、前記装置は、プロセッサと、メモリと、前記メモリに記憶されたコンピュータプログラムコードとを備え、前記コンピュータプログラムコードは前記プロセッサによって実行されるときに、前記装置に請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法を行わせるように構成されている、装置。
【請求項13】
前記装置は、確率分布を表すユーザによって描かれた入力を受信するように構成されている入力装置を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
プロセッサによって実行されるときに、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法を行うように構成されているコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記コンピュータプログラムは非一時的コンピュータ可読媒体などのコンピュータ可読媒体に記憶されている、請求項14に記載のコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線治療計画のための装置および方法に関する。特に本開示は、治療計画を導出するために最適化プロセスを用いる放射線治療計画のための装置および方法に関する。本開示は関連方法およびコンピュータプログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療計画は、光子、軽イオンまたは電子をベースとする外部ビーム放射線療法あるいは小線源療法などの異なる種類の放射線療法のために行う場合がある。
【0003】
放射線治療の分野における主要課題は高品質な計画を考案することである。治療計画は、治療法のために標的体積に照射される放射線の量、および例えば前記治療法中に1つ以上のリスク臓器(OAR)または他の体組織に与えることができる放射線の量を定めることができる。健康な組織への損傷を可能な限り少なくし、好ましくは心臓または脊髄などのOARには全く損傷を与えずに腫瘍などの標的体積に与えられる所望の放射線線量を保証するための治療計画の作成、および特に治療計画の改善を可能にするプロセスが存在する。
【0004】
治療計画を作成または改善するための1つの手法は、数学的最適化技法を使用する最適化プロセスを含む。この最適化プロセスは通常、関数のセットを含む最適化問題に基づいており、ここでは各関数は目的(すなわち目的関数)または制約(すなわち制約関数)を表すことができる。最適化問題で使用される関数は、1つの関数からの出力が他の関数の1つ以上からの出力の悪化を必要とする場合があるという意味で、少なくともある程度は両立し得ない。理想化された放射線線量分布で開始し、かつ送達可能な治療計画を定めるパラメータのセットに到達するまで最適化させるという観点から、治療計画を作成するために最適化プロセスを使用することができる。
【0005】
最適化問題で使用される目的関数および制約関数は、治療計画のための品質尺度とみなしてもよい。目的関数は、典型的には線量分布に関する所望の値からのパラメータの偏差を測定してもよい。パラメータの所望の値は、例えば特定の臓器または体積への最小もしくは最大線量を示してもよい。制約関数は品質尺度を含んでもよく、かつ/またはパラメータが取り得る実行可能な値のセットを定めてもよい。従って1つ以上の例では、実行可能な値は、放射線療法送達装置の技術的限界を考慮に入れるように構成されていてもよい。関数として使用される品質尺度は、それらを連続性および微分可能性などの最適化にとって適したものにさせる数学的特性を有していなければならない。
【0006】
最適化問題を定めた後に治療計画に到達する最も一般的な方法は、制約を満たしながらも目的関数の加重和を最小化または最大化するような方法で前記治療計画を表しているパラメータを見つけることである。全加重和目的において構成要素の目的の中に矛盾する誘因が存在するときに、作成された計画が計画者の嗜好に適合させた特性を有することを保証するために、それらの重みを典型的に調整し、かつ反復プロセスにおいて満足な品質の計画が見つかるまで再最適化を行う。目的および制約として使用される関数は通常、計画品質評価のために使用される基準に直接関連していないため、この反復プロセスは著しく時間のかかるものとなる場合がある。従って、より具体的には既存の治療計画を微調整すること、特に計画品質測定基準の現在のレベルと所望のレベルとの偏差をより正確に測定し、かつ計画者の嗜好における複雑さをより正確に捉えることを目的としたツールが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、本発明者らは、
第2の治療計画の基となる第1の治療計画を受信することであって、第1の治療計画は患者の体積にわたる線量分布を示すことと、
少なくとも1つの線量分布導関数を受信することであって、当該もしくは各線量分布導関数は、それが定められている体積の少なくとも一部に関して、入力としての線量分布の少なくとも一部に基づく出力としての値を提供するように構成されていることと、
少なくとも1つの線量分布導関数のそれぞれまたはグループのための確率分布を受信することを含む、各線量分布導関数のそれぞれの値の目標を受信することであって、確率分布は入力線量分布のために前記線量分布導関数から出力された値の範囲の望ましさを表していることと、
全目的関数を含む最適化問題を決定することであって、全目的関数は1つ以上の目的関数の合計を含み、ここでは当該もしくは各目的関数は少なくとも1つの線量分布導関数、それぞれの確率分布およびそれぞれの損失関数のうちの1つ以上の関数を含むことと、
前記最適化問題に基づいて最適化プロセスを行うことと、
最適化プロセスから前記第2の治療計画を決定することと、
を含む、患者の体積に対する放射線治療計画を生成するためのコンピュータ実装方法を提供する。
【0008】
1つ以上の例では、少なくとも1つの線量分布導関数を受信する前記工程は少なくとも2つの線量分布導関数を受信することを含む。
【0009】
1つ以上の例では、線量分布導関数のそれぞれまたはグループのための確率分布は、それぞれの目標値の前後の入力線量分布のために前記線量分布導関数から出力された値の範囲に対する嗜好度または到達可能度を表す。1つ以上の例では、最も好ましい目標値は確率分布の1つ以上のピークに位置していてもよい。
【0010】
1つ以上の例では、確率分布を受信する工程は、
確率分布を定めるユーザ入力を受信すること、および
ユーザが複数の予め定められた候補確率分布から確率分布を選択すること
のうちの1つ以上を含む。
【0011】
1つ以上の例では、第1の治療計画は、
放射線療法送達装置の動作パラメータおよびどこから前記体積にわたる線量分布を導出することができるかに関して定められた治療計画、
線量分布に関して定められた治療計画、および
空間中の各方向から経時的に統合される照射強度およびどこから前記体積にわたる線量分布を導出することができるかに関して定められた治療計画
のうちの1つを含む。
【0012】
1つ以上の例では、線量分布導関数を受信する工程は、
ユーザ入力を受信して線量分布導関数の1つ以上を定めること、および
候補線量分布導関数のセットからの1つ以上の線量分布導関数であり、その中に前記体積が定められている患者の体の一部に基づいて決定された候補線量分布導関数を選択すること
のうちの1つ以上を含む。
【0013】
1つ以上の例では、前記少なくとも1つの線量分布導関数は、体積全体またはその一部について、線量/体積、体積/線量、平均線量、全体もしくは一部の体積における線量均一性の尺度を含む均一性、一致指数(CI)、および最小線量、最大線量または線量-体積ヒストグラム関数を含むペナルティ関数のうちの1つ以上を含む。
【0014】
1つ以上の例では、少なくとも1つの線量分布導関数は、少なくとも第1の線量分布導関数および第2の線量分布導関数を含み、ここでは
第1の線量分布導関数は、第1の線量分布導関数がその関連づけられた目標と共に、前記体積の前記選択された部分体積のための線量分布における所望の変化のために改善を示す値を提供するように構成されているという点で、前記最適化プロセスに応答して第1の治療計画に対して第2の治療計画において前記体積の選択された部分体積のための線量分布を改善するために使用するための関数を含み、かつ
第2の線量分布導関数は、第2の線量分布導関数がその関連づけられた目標と共に、前記体積の1つ以上の選択された部分体積のために線量分布におけるあらゆる偏差の悪化を示す値を提供するように構成されているという点で、前記最適化プロセス後に第2の治療計画において第1の治療計画において定められている1つ以上の部分体積の線量分布を実質的に維持するために使用するための関数を含む。
【0015】
1つ以上の例では、損失関数は、
ログ損失関数、および
交差エントロピー損失関数
のうちの1つ以上から選択される。
【0016】
1つ以上の例では、当該もしくは各目的関数は、線量分布導関数、その目標に集中した正規確率分布によって表されているそれぞれの目標、およびそれぞれの損失関数のうちの1つ以上の関数を含む。他の例では、正規分布とは異なる形態を有する確率分布を使用する。
【0017】
従って1つ以上の例では、本方法は、線量分布導関数および目標を定める確率分布(これは例えば正規分布を含んでもよい)を受け取り、かつそれを損失関数への入力として使用するプロセスによって、線量分布導関数を最適化問題の少なくとも一部を形成するための目的関数に変換できるという点で有利であり得る。1つ以上の例では、全目的関数は本方法によって線量分布導関数から変換される目的関数のみを含んでいてもよい。
【0018】
1つ以上の例では、本方法は最適化問題における累積分布関数または確率密度関数として、各線量分布導関数のために前記確率分布を表す工程を含む。
【0019】
1つ以上の例では、最適化プロセスを行う工程は全目的関数を最小化することを含み、ここでは全目的関数は1つ以上の目的関数の加重和を含む。
【0020】
1つ以上の例では、本方法は、当該体積の画像を受信することを含み、第1および/または第2の治療計画から導出される線量分布は、前記画像の複数のボクセルに基づいて定められていてもよい。1つ以上の例では、当該画像は当該画像の別個の部分体積を定める複数のボクセルを含む。
【0021】
1つ以上の例では、コンピュータ実装方法は計算装置によって行われる方法である。1つ以上の例では、本方法はユーザ入力を受信するための入力装置、メモリから予め定められたデータを取り出すためのメモリ呼び出し装置および処理装置を有する計算装置によって行う。1つ以上の例では、第1の治療計画を受信する工程および/または少なくとも1つの線量分布導関数を受信する工程および/または目標を受信する工程は、入力装置またはメモリ呼び出し装置によって行ってもよい。1つ以上の例では、最適化問題を決定する工程および/または最適化プロセスを行う工程および/または前記第2の治療計画を決定する工程は、処理装置によって行ってもよい。1つ以上の例では、計算装置は決定された第2の治療計画をさらなる装置またはユーザに出力することができる出力装置を備える。
【0022】
1つ以上の例では、第2の治療計画は放射線療法送達装置をプログラムするために使用することができる装置から出力されたデータを含む。他の例では、第2の治療計画は空間中の各方向から経時的に統合される照射強度を表すデータを含んでいてもよい。
【0023】
1つ以上の例では、当該体積は3次元画像を含み、第1および/または第2の治療計画から導出される線量分布は前記画像の複数のボクセルに基づいて定められていてもよく、前記ボクセルは当該画像の3次元領域を定めている。
【0024】
本開示の第3の態様によれば、本発明者らは放射線治療計画を生成するための装置を提供し、本装置はプロセッサと、メモリと、前記メモリに記憶されたコンピュータプログラムコードとを備え、コンピュータプログラムコードは前記プロセッサによって実行されるときに、本装置に第1の態様の方法を行わせるように構成されている。
【0025】
1つ以上の例では、本装置は、確率分布を表すユーザによって描かれた入力を受信するように構成された入力装置を備える。
【0026】
さらなる態様によれば、本発明者らは、
第2の治療計画の基となる第1の治療計画を受信することであって、第1の治療計画は体積にわたる線量分布を示すこと、
少なくとも1つの線量分布導関数を受信することであって、当該もしくは各線量分布導関数は、それが定められている体積の少なくとも一部に関して、入力としての線量分布の少なくとも一部に基づく出力としての値を提供するように構成されていること、
少なくとも1つの線量分布導関数のそれぞれまたはグループのための確率分布を受信することを含む、各線量分布導関数のそれぞれの値の目標を受信することであって、確率分布は入力線量分布のために前記線量分布導関数から出力された値の範囲の望ましさを表していること、
全目的関数を含む最適化問題を決定することであって、全目的関数は1つ以上の目的関数の合計を含み、ここでは当該もしくは各目的関数は、線量分布導関数、それぞれの確率分布およびそれぞれの損失関数のうちの1つ以上の関数を含むこと、
前記最適化問題に基づいて最適化プロセスを行うこと、および
最適化プロセスから前記第2の治療計画を決定すること
のための手段またはそれらを行うように構成された少なくとも1つの処理モジュールを備える、放射線治療計画を生成するための装置を提供する。
【0027】
1つ以上の例では、複数の手段または処理モジュールは、第1の治療計画を受信し、少なくとも1つの線量分布導関数を受信し、目標を受信し、最適化問題を決定し、最適化プロセスを行い、かつ前記第2の治療計画を決定するためのそれぞれの動作の1つ以上をそれぞれ行うために提供されていてもよい。
【0028】
さらなる態様によれば、本発明者らは、複数のボクセルを含む画像によって表されている体積への放射線の送達を定める計画を生成するための装置または方法であって、前記方法は当該体積の前記画像を用いて第1の態様の工程によって定められる装置または方法を提供する。
【0029】
本開示の第3の態様によれば、本発明者らは、少なくとも1つのプロセッサを有する装置によって実行されるときに、第1の態様の方法を行うように構成されている命令を含むコンピュータプログラムを提供する。
【0030】
1つ以上の例では、コンピュータプログラムは非一時的コンピュータ可読媒体などのコンピュータ可読媒体に記憶されている。
【0031】
次に、以下の図を参照しながら単なる例として本発明の実施形態の詳細な説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】放射線治療計画を生成するための装置の例を示す。
図2】第1の治療計画および第2の治療計画からの線量-体積ヒストグラムの例を示す。
図3】第1の治療計画からの線量-体積ヒストグラムの例を示し、かつ関連づけられた確率分布と共に線量分布導関数の定義を概略的に示す。
図4】患者の体積に対する放射線治療計画を生成するための方法の例を示すフローチャートを示す。
図5】コンピュータ可読媒体の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
放射線治療計画は、一部の役割を果たす多くの異なる因子を含む複雑な作業である。体内の腫瘍のサイズおよび位置、腫瘍の周囲の臓器(いわゆるリスク臓器)の位置および感受性、放射線療法送達装置の技術的能力ならびに過去の放射線治療の臨床結果は全て、治療計画の決定に寄与し得る。
【0034】
図1の例は、治療計画装置100の例を示す。装置100は、コンピュータプログラムコードによって定められた方法を行うように構成されたプロセッサ102およびメモリ103を備えたコンピュータシステム101を備えていてもよく、そのコードは前記メモリに記憶されているか、そうでなければコンピュータシステム101に提供されてもよい。当然のことながらコンピュータシステム101は、インターネットなどのネットワークに接続された端末を備えていてもよく、本方法を行うプロセッサおよびメモリは、端末がユーザにインタフェースを提供する状態で1つ以上のリモートサーバ(図示せず)上に位置していてもよい。
【0035】
治療計画装置100は、ユーザが治療計画を行うために情報を入力するのを可能にするための入力装置104を備えていてもよい。1つ以上の例では、入力装置104はグラフィカルユーザインタフェースにより嗜好または他の入力を入力するのを可能にしてもよい。1つ以上の例では、入力装置104はユーザが入力を絵で描くのを可能にしてもよい。従って入力装置104は、特にスタイラス、マウスまたはタッチスクリーンインタフェースを含んでもよい。治療計画装置100は、情報の表示および/またはグラフィカルユーザインタフェースの提示のためにコンピュータシステム101に接続された表示装置105を備えていてもよい。
【0036】
1つ以上の例では、治療計画装置100は患者への放射線の送達のために放射線療法送達装置106に接続させているか接続可能であってもよい。従って治療計画装置100を用いて決定された治療計画は、それによるその後の送達のために放射線療法送達装置106に提供されてもよい。1つ以上の例では、治療計画は放射線療法送達装置106の動作パラメータに変換してもよく、あるいは治療計画は放射線療法送達装置106の動作パラメータに関して既に定められていてもよい。
【0037】
最適化技術を用いて治療計画を行うときには、第1の治療計画により開始し、かつそれを改善するための試みで調整を行うのが一般的である。そのようなプロセスは治療計画最適化として当該技術分野で知られている。但し当然のことながら「最適化」という用語は、絶対最適解を見つけるのではなく、定められた尺度に基づいて改善を得るという意味で使用される。一般に治療計画の最適化は、いくつかの制約下で治療計画を評価するいくつかの全目的関数を可能な限り最良に最小化する治療計画のパラメータの探索である。例えば治療計画のパラメータは、放射線療法送達装置106の動作パラメータ(例えばマルチリーフコリメータ位置、経時的なガントリ回転速度、経時的な放射線ビームパワーおよび任意の他の動作パラメータ)を含んでいてもよく、全目的関数はそれらの動作パラメータに基づいて体積に送達される計算された放射線線量分布に関して定められていてもよく、制約は装置106の技術的限界を含んでいてもよい。他の例では、治療計画のパラメータはフルエンスマップであってもよく、ここでは当該パラメータは、空間中の各方向から経時的に統合される照射強度を定める。従って当然のことながら、治療計画は治療される患者の体積における放射線線量分布を定めるかそれを示す多くの異なる種類のパラメータに関して定められていてもよい。線量分布は、どのように線量が体積にわたって分布されるかという定義を含む。線量分布は複数のボクセルのそれぞれに送達される線量に関して定められていてもよく、複数のボクセルは治療される体積の画像から導出される別個の体積を含む。一般に治療計画は放射線の送達を定めてもよく、体積にわたる線量分布をそこから導出してもよい。
【0038】
1つ以上の例では、最適化プロセスの開始点は、現在の患者のために以前に送達された治療計画などの既に存在している治療計画に対応するパラメータを有する治療計画を含み、これは最適化プロセスそれ自体によって決定されていてもよい(当該技術分野ではウォームスタートとして知られている)。1つ以上の他の例では、最適化のための開始点は、それらの適当な値の臨床医の経験に基づく条件を満たした推測などの推測がなされているパラメータを有する治療計画を含んでもよい(当該技術分野ではコールドスタートとして知られている)。例えばコールドスタート治療計画は、ランダムに選択された計画パラメータまたは関連づけられた処方された線量レベルに等しい、標的体積(または標的体積に近似の標的)における平均線量の送達に対応する計画パラメータのうちの1つ以上に関して定められていてもよい。本明細書に記載されている最適化プロセスは、それが計画装置106が技術的に送達可能である計画を表すという点で治療計画が実現可能であるか否か、または放射線療法送達装置106によって送達可能であってもそうでなくてもよいという点で、治療計画が理想化されているか否かは重要ではない。
【0039】
従って要約すると、当然のことながら第1の治療計画は、例えば放射線療法送達装置の動作パラメータの制約または他の制約下で達成可能なものを含む現実的な治療計画を含んでいてもよい。他の例では、第1の治療計画はそれが達成可能であるか否かが決定されていなくてもよいという点で理想化された治療計画であってもよい。
【0040】
本開示の例によれば、所与の線量分布のために線量分布導関数から得られた値に関して最適化プロセスにおいて治療計画のパラメータの調整を行うことが望まれてもよく、ここでは線量分布は治療計画のパラメータから導出可能である。本発明者らは線量分布導関数によって、入力として線量分布(またはその一部)を受け取り、かつ出力として数を返す任意の関数を意味する。従って線量分布導関数によって出力される数は、評定尺度に対する評点として使用することができる線量に関する尺度を表し、ここではさらなる関数が評定尺度を定めてもよい。線量分布導関数への入力は、治療される体積またはその一部を表す複数のボクセルにわたる線量分布を含んでもよい。
【0041】
従って本明細書中の例に記載されている最適化プロセスは、第1の治療計画のパラメータの調整を行い、調整されたパラメータに基づいて当該体積のために修正された線量分布を決定し、次いで例えば線量分布導関数の出力を使用することにより修正された線量分布を評価するように構成されてもよい。従って最適化を(部分的に)解くことにより、第2の治療計画を定める調整されたパラメータを得てもよい。第2の治療計画は、それぞれの線量尺度目標により近い達成される線量分布導関数値を考慮して第1の治療計画の改善とみなしてもよい。実際に第2の治療計画は、その線量分布が3次元線量分布または線量分布導関数のいくつかの集合体のいずれかに基づくいくつかの距離尺度に関して、第1の治療計画の元の線量分布と比較的にあまり異ならないようなものであってもよい。但し最適化プロセスにより、改善であるとみなされる第2の治療計画をなお得ることができる。
【0042】
他の例では、第1の治療計画は線量分布に関して定められていてもよく、1つ以上の目的関数の決定は第2の治療計画のパラメータを決定することを含んでもよく、最適化プロセスは、第2の治療計画の決定されたパラメータを調整し、かつ調整されたパラメータに基づいて当該体積のために修正された線量分布を決定するように構成されてもよい。本方法は例えば線量分布導関数の出力を使用することにより、修正された線量分布を評価することをさらに含んでもよい。
【0043】
図2図3および図4の例を参照すると、本発明者らは前記治療計画装置100によって行われる方法400の例について説明している。
【0044】
本方法は、以下の例において第2の治療計画と呼ばれる放射線治療計画の生成に関する。第2の治療計画は、どのように放射線を患者の体積に送達するべきかを定めるパラメータを含んでいてもよい。
【0045】
図4を参照すると、工程401は、第2の治療計画の基となる第1の治療計画を受信することを含む。従って本明細書中の例では、第1の治療計画のパラメータを最適化させて第2の治療計画を生成する。
【0046】
第1の治療計画および第2の治療計画も前記体積にわたる線量分布を示す。従って当該体積にわたる線量分布は、第1の治療計画のパラメータ(および/または第2の治療計画のパラメータ)から計算することができる。1つ以上の例では、第1の治療計画のパラメータは対応する線量分布を一意的に決定するという点で、「完全な」ものである。第1の治療計画は様々な方法で定められていてもよい。1つ以上の例では、第1の治療計画は放射線療法送達装置106の動作パラメータを定めるパラメータを有し、前記体積にわたる線量分布をそこから計算する。1つ以上の他の例では、第1の治療計画は線量分布を定めるパラメータを有する。1つ以上の他の例では第1の治療計画は、いわゆるフルエンスマップを含む空間中の各方向から経時的に統合される照射強度を定めるパラメータを有し、前記体積にわたる線量分布をそこから決定する。第1の治療計画のパラメータまたは第2の治療計画のパラメータから得られる線量分布を導出するために使用されるアルゴリズムは当業者に知られている。
【0047】
線量分布は、ボクセルのセットに離散化されている患者の体積の3次元画像に基づいて決定してもよく、ここでは各ボクセルまたはボクセルのグループには、ボクセルまたはボクセルのグループが第1の治療計画(およびその後に、以下に説明されている第2の治療計画)に基づいて受ける線量を表す値が割り当てられている。当該画像は典型的にX線もしくはポジトロン断層法ベースのスキャナなどのコンピュータ断層撮影(CT)スキャナまたは磁気共鳴画像法(MRI)スキャナからの出力を含むが、他の医学的イメージング技術を使用してもよい。
【0048】
図2の例は線量-体積ヒストグラム200を示す。x軸201は線量を表し、y軸202は目的の体積の量を表す。線203および204は腫瘍における線量を表し、従って患者の体積の第1の部分体積を表す。線205および206はリスク臓器における線量を表し、従って患者の体積の第2の部分体積を表す。破線203は第1の治療計画によって送達される線量を表す。実線204は臨床医が本方法の後に、第2の治療計画によって腫瘍に送達されることを望む線量(すなわち、より均一な線量)を表す。破線205は第1の治療計画によって送達される線量を表す。実線206は臨床医が本方法後に、第2の治療計画によってリスク臓器に送達されることを望む線量(すなわち、より低い線量)を表す。
【0049】
従って当然のことながらこの例では、臨床医は矢印207によって示されているように、治療計画における腫瘍への線量の均一性を変化させることを望む場合がある。また当然のことながらこの例では、臨床医は矢印208によって示されているように、治療計画におけるOARへの線量を減少させることを望む場合がある。以下に説明するように、1つ以上の線量分布導関数は変化207および208を達成するように定められていてもよい。
【0050】
工程402は1つ以上の線量分布導関数を受信することを含む。そのような関数は、線量の統計もしくは臨床目標として当該技術分野で知られている場合がある。臨床医/ユーザ(またはAI)は線量分布導関数を指定または入力して、患者のために有効な治療計画を達成する方法で最適化プロセスを制御してもよい。その入力は以下に説明するように、当該体積の領域、線量に関する要求または関数それ自体のうちの1つ以上を含んでもよい。各線量分布導関数は、それが定められている体積の少なくとも一部に関して、入力としての線量分布の少なくとも一部に基づく出力として数値を提供する関数を含む。従って線量分布導関数は、ボクセル全体の部分体積にわたる線量分布または体積全体にわたる線量分布を入力として受け取ってもよい。この数値は言及しやすいよう線量尺度値と呼ぶ。
【0051】
当該もしくは各線量分布導関数によって出力された線量尺度値を部分的に使用して、最適化を駆動する。従って線量分布導関数は、評点を導出するために使用することができる線量尺度値を出力するように構成されている。評点は、関連づけられた線量分布導関数に提供される線量分布が標的に対して望ましいときに高い値または低い値を取ってもよい。線量分布導関数は臨床医などのユーザによって決定してもよく、かつ/または候補線量分布導関数のセットから選択してもよい。
【0052】
従って1つ以上の例では、線量分布導関数を受信する工程402は、線量分布導関数の1つ以上を定めるために入力装置204などを介してユーザ入力を受信することを含む。ユーザ入力は、当該体積の1つ以上の画像において領域を選択すること、およびその選択した領域を線量に関する要求と関連づけることを含んでもよい。線量分布導関数は、このユーザ入力に基づいて決定してもよい。従って1つ以上の例では、ユーザは当該体積の部分体積を定め、かつ最小線量、最大線量または他の標的要求などの線量関連目標を入力してもよく、線量分布導関数は少なくとも部分的に前記ユーザ定義に基づいていてもよい。
【0053】
1つ以上の他の例では、工程402は、候補線量分布導関数のセットから1つ以上の線量分布導関数を選択することを含む。1つ以上の例では、候補線量分布導関数を前記体積が位置している患者の体の一部に基づいて決定する。従って、予め定められた線量分布導関数を体の異なる部分と関連づけ、次いで目的の体の部分に基づいて候補として選択してもよい。1つ以上の例では本方法は、ユーザが当該体積において体内臓器を識別すること、またはコンピュータシステム201が予め定められた臓器識別子などに基づいて当該体積における体内臓器を識別すること、および前記識別された臓器と予め関連づけられている複数の予め定められた「候補」線量分布導関数を選択のために提示することを含んでもよい。
【0054】
当該もしくは各線量分布導関数は、体積全体またはその一部について、当該体積の予め定められた部分または全てに関する線量/体積(当該体積の割合などに関する)、予め定められた線量レベルに関する体積/線量、または平均線量のうちの1つ以上を決定する関数であってもよい。当該もしくは各線量分布導関数は、体積全体またはその一部について、標的体積またはその部分体積における線量均一性を表す当該体積の予め定められた部分または全てに関する均一性指数(当該体積の割合などに関する)を決定する関数であってもよい。当該もしくは各線量分布導関数は、体積全体またはその一部について、予め定められた等線量レベルに関する一致指数を決定する関数であってもよい。治療計画の一致指数は、参照等線量レベルによってカバーされる体積と標的体積との比として定めてもよい。当然のことながら、均一性指数および一致指数の複数の定義およびそれらを計算するアルゴリズムが存在するが、本開示の目的ではどちらを使用するかは問題ではない。
【0055】
当該もしくは各線量分布導関数は、体積全体またはその一部について、二次ペナルティ関数などのペナルティ関数であってもよい。二次ペナルティ関数の種類としては、最小線量関数、最大線量関数または線量-体積ヒストグラム関数が挙げられる。
【0056】
線量分布導関数は、体積全体またはその一部についていくつかのボクセルに送達される線量を出力する、前記ボクセルに関するいわゆる単一ボクセル関数であってもよい。1つ以上の例では、候補線量分布導関数のセットは、当該体積におけるボクセルのそれぞれのために対応する単一ボクセル関数を含む。従って線量分布導関数の上の例では、当該体積の部分に対する言及は1つ以上の例では単一ボクセルを含んでもよい。
【0057】
一般に線量分布導関数は、当該体積のいくつかの関心領域(すなわち、単一ボクセルまたはボクセルのグループ)のために入力として線量分布を受け取り、かつ出力として単一の数を与える任意の関数であってもよい。その数すなわち線量尺度値は、線量関連目標と比較することができる線量に関する統計を含む。
【0058】
以下に説明されている工程403は、各線量分布導関数のそれぞれの線量尺度値のために線量関連目標を受信することを含む。従って線量分布導関数によって出力された線量尺度値には、最適化プロセスにおいてそこに向かって移動するための目標が割り当てられていてもよい。従って臨床医は、最適化プロセスによって達成することを望む標的線量尺度を指定してもよい。
【0059】
1つ以上の例では、少なくとも2つの線量分布導関数を受信してもよい。少なくとも2つの線量分布導関数は、治療計画の一部の線量分布を改善するかまたは治療計画の一部の線量分布を維持するかのいずれかのための異なる「種類」のものであってもよい。従って1つ以上の例では、線量分布導関数は、少なくとも第1の線量分布導関数および第2の線量分布導関数を含む。
【0060】
第1の線量分布導関数は、第1の治療計画において選択された部分体積のための線量分布に対して、第2の治療計画において前記体積の選択された部分体積のための線量分布を改善するために使用するための関数であってもよい。当然のことながら前記改善は、以下に説明するように最適化プロセスによって達成される。従って第1の線量分布導関数はその関連づけられた目標と共に、前記関連づけられた目標との線量尺度値の一致(第2の治療計画から導出された線量分布に対して評価される)が前記体積の前記選択された部分体積のための前記線量分布の所望の変化の改善を示すような方法で構成されている。
【0061】
第2の線量分布導関数は、第2の治療計画において第1の治療計画において定められている1つ以上の部分体積の線量分布を実質的に維持するために使用するための関数であってもよい。従って第2の線量分布導関数は、前記最適化中に部分体積のための線量分布を維持するという効果を有する。従って第2の線量分布導関数はその関連づけられた目標と共に、前記関連づけられた標的に関するその線量尺度値の不一致(第2の治療計画の線量分布に対して評価される)が選択された部分体積のための第1の治療計画の線量分布からの前記線量分布における任意の偏差の悪化を示すような方法で構成されている。
【0062】
線量分布導関数の種類のこの組み合わせは、以前に可能ではなかった最適化の有効な制御を提供してもよい。従って最適化の変数は治療計画のパラメータを含んでもよく、線量分布導関数は第2の治療計画の評価のために使用される任意の基準を含んでもよく、これは1つ以上の例では、以前に可能であったよりも正確に目標が定められた最適化を提供することができ、従って改善された第2の治療計画に到達するプロセスにおいて、場合により時間のかかる繰り返される最適化の必要性も減少する。線量分布導関数の使用およびそれらのその後の最適化プロセスへの組み込みは、以下に記載するように臨床医の望みを解決すべき最適化問題により有効に適合させる。
【0063】
実例としてユーザ(例えば臨床医)は、第2の治療計画の線量分布に対して評価される線量分布導関数の線量尺度値をいくつかの関連づけられた閾値または目標値よりも小さくまたは大きくなるようにすることにより、特定の臨床目標を満たすことを望む場合がある。従って、最適化プロセスに含めるために対応する線量分布導関数を定める。
【0064】
ユーザは他の態様では、第1の治療計画に対して第2の治療計画の品質を可能な限り最良に保存することを望む場合もある。これを達成するために、現在の計画の状態を要約するために1つ以上の第2の線量分布導関数を生成してもよい。1つ以上の第2の線量分布導関数は、第2の治療計画の線量分布に基づく目標に対するそれらの線量尺度値の悪化が、第1の治療計画に対する第2の治療計画の品質の悪化を暗示するように設計されていてもよい。
【0065】
1つ以上の例では、例えばユーザによって選択された1つ以上の関心領域のための(例えば同等に)離間された体積位置において線量/体積目標を決定することにより、1つ以上の第2の線量分布導関数を生成してもよい。1つ以上の例では、例えば関心領域の各ボクセルのために線量分布を前記ボクセルにおける線量に対応づける対応する単一ボクセル関数を決定することにより、1つ以上の第2の線量分布導関数を生成してもよい。添字iを有するボクセルのための単一ボクセル関数は、線量分布d=(d_1,…,d_n)をd_iに対応づける。
【0066】
1つ以上の例では、目標を受信する工程403は、少なくとも1つの線量分布導関数における確率分布を受信することを含む。1つ以上の例では、目標または確率分布は少なくとも1つの線量分布導関数の特定の1つに特有であってもよい。但し本明細書に記載されている例では、各線量分布導関数のための確率分布はセット(例えば複数)の線量分布導関数のための目標として表される。そのような場合、本方法は別々の線量分布導関数間の独立を仮定し、かつそのセットのために確率分布を導出してもよい。あるいは、本方法は予め定められた相関データを使用して、構成要素の線量分布導関数のそれぞれのための確率分布から線量分布導関数のセットのために確率分布を導出してもよく、その相関データは異なる線量分布導関数をどのように互いに相関させることができるかを示してもよい。
【0067】
確率分布から、いくつかの関連づけられた目標値の前後の前記線量分布導関数の範囲のために、線量尺度値に対する嗜好度または到達可能度を決定することができる。当然のことながら嗜好度は臨床医の嗜好を表してもよく、従って嗜好度はその目標に対する線量尺度値の受容の程度として理解することもできる。
【0068】
従って1つ以上の例では、線量分布導関数のための単一の目標値ではなく確率分布を使用することにより、治療計画を行うときの臨床医ユーザの目標および嗜好をより良好に表す能力を得てもよく、かつ/または線量分布導関数から出力される異なる線量尺度に関連づけられた臨床的関連/満足の程度を確率分布によってより有効に特徴付けることができるので、より有効かつ効率的な最適化を得てもよい。従って1つ以上の例では、第2の治療計画の異なる結果に関連づけられた臨床的(不)満足における異なるニュアンスが前記確率分布の指定において捉えられる。従って単一の目標値の代わりに確率分布を使用することは、それを「ファジーな」目標値とみなすことができ、従って最適化プロセスのために単一の目標値を使用する場合よりも多くの情報を得ることができるという点で有利であり得る。また当該もしくは各線量分布導関数に対する重みの使用と比較した確率分布の使用は、確率分布が最適化プロセスのためにより多くの情報が得られるので有利であり得る。従って、最適化プロセスのためのより多くの情報により、より効率的かつ有効な最適化プロセスが得られ、従ってより有効な第2の治療計画が得られる。
【0069】
確率分布を受信する工程は、入力装置204などを介して確率分布を定めるユーザ入力を受信することを含んでもよい。従って1つ以上の例では、ユーザ入力はユーザによって描かれた確率分布を表してもよく、従って前記1つ以上の線量分布導関数の値の範囲に対する嗜好度を示してもよい。他の例では本方法は、平均ベクトル、共分散および少なくとも線量尺度値の範囲のために指定されている前記確率分布の特性の任意の他の定義特徴のうちの1つ以上を示すユーザによって入力された1つ以上のパラメータに基づいて、確率分布を生成することを含んでもよい。
【0070】
1つ以上の例では、確率分布を受信する工程は、複数の予め定められた候補確率分布からの確率分布のユーザ選択を受信することを含んでもよい。候補確率分布は様々な形状、幅、平均ベクトルまたは共分散および任意の他の定義特性を有していてもよい。候補確率分布はシステム201によって、ユーザによる選択のために提示されてもよい。選択のためにユーザに表示される候補確率分布を、特定の体内臓器の選択などの当該体積の選択された領域に基づくフィルタリング工程に供して、予め定められたフィルタリング情報に基づいて選択されたその領域にとって最も適当な1つ以上の候補確率分布を得てもよい。
【0071】
1つ以上の例では、予め定められた候補確率分布は他の治療計画からの過去のデータに基づいていてもよく、従って過去に達成されたものに基づいて線量分布導関数の線量尺度値の範囲のために所望の目標を達成する確率を示してもよい。
【0072】
1つ以上の例では、確率分布はいくつかの確率分布の組成として表される。従って、例えば線量分布導関数のセットの線量尺度値に関する確率分布は、前記線量分布導関数のそれぞれの関連づけられた確率分布によって表されてもよい。当然のことながら、各構成要素の線量分布導関数の線量尺度値の関連づけられた確率分布は、前記線量分布導関数の全てに関する同時確率分布から決定することができる。
【0073】
確率分布は、予め定められた範囲の線量尺度値に関する連続的な関数を含んでもよい。例えば予め定められた範囲の線量尺度値は、ユーザによって指定されるゼロ以外の範囲を含んでもよく、システム101によって行われる方法のデフォルト設定を含んでもよい。
【0074】
図3の例は、図2の例に示されている第1の治療計画の線量分布203、205を表す注釈付きの線量-体積ヒストグラム300を示し、ここでは矢印301および302によって示されている体積(腫瘍およびOAR)の2つの異なる領域のために2つの線量分布導関数が定められている。各線量分布導関数301、302のために確率分布303および304も定められている。
【0075】
1つ以上の例では、それぞれの線量分布導関数301、302に関する確率分布303、304は、治療計画(すなわち第2の治療計画)において達成される/許容可能な/満足な線量尺度値(入力線量分布を所与とした線量分布導関数からの出力)の対応する可能性を有効に割り当てる。1つの確率分布303は広く、かつ対称的であり、これは臨床医が標的線量尺度値の前後のより広い範囲の線量尺度値を受け入れていることを示してもよい。他の確率分布304はより狭く、かつ歪んでおり、これは臨床医が標的線量尺度値の反対側よりも一方側にある線量尺度値をあまり受け入れていないことを示してもよい。
【0076】
それにより、それぞれの線量分布導関数301、302に関する確率分布303、304は、第2の治療計画のための各線量分布導関数の線量尺度値における許容差が反映されるような方法で設計されている。これは、ユーザ/臨床医の嗜好または過去のデータに基づいて達成可能なものを定める際の柔軟性を提供する。従って臨床医は、関連づけられた線量尺度線量分布導関数が厳密に満たされなければならない場合には、小さい標準偏差と共に所望の線量尺度目標に集中したピークを有する確率分布を入力してもよい。あるいは、線量分布導関数に関連づけられた線量尺度目標があまり厳密に満たされる必要がない場合には、より大きい標準偏差と共に所望の目標に集中したピークを有する確率分布を使用してもよい。また必要に応じて対称的であっても非対称的であってもよい異なる形状の確率分布を使用して、臨床医の嗜好を表現してもよい。同様に、過去のデータはどの程度正確に線量尺度目標を満たすことができるかを示してもよく、確率分布の形状/定義特性がこれを反映してもよい。
【0077】
例えば、治療標的における線量/体積関数の線量尺度値における許容差は、リスク臓器における線量/体積関数の線量尺度値のためのものよりも小さい可能性が高く、またそれらはcGy(例えば線量/体積について)または無次元量(例えば均一性指数について)などの異なる単位で測定することができる。確率分布303、304の使用により、これらの差を説明することができる。
【0078】
より詳細には、線量分布導関数のセットを定めたら、線量分布導関数の数nに等しい次元を有する多次元の実確率変数の確率分布を指定してもよい。そのような確率分布は、各線量分布導関数の確率分布から導出してもよい。n次元の確率変数x=(x,x,…,x)の確率分布は、
i=1,2,…,nの全てについてx≦yであるように、xおよびyの実現値の全ての対(x,x,…,x)、(y,y,…,y)についてF(x,x,…,x)≦F(y,y,…,y)であり、
i=1,2,…,nの全てについて
【数1】
であり、
【数2】
であり、かつ
i=1,2,…,nの全てについて
【数3】
であるように、入力としてn個の実数を受け取り、かつ出力として区間[0,1]で数を与えるその累積分布関数Fによって一意的に決定される。
【0079】
従って1つ以上の例では、線量分布導関数のセットのための確率分布を累積分布関数として表す。但し確率分布は異なる方法で指定してもよく、累積分布関数は単に1つの方法である。
【0080】
各成分xについて、周辺累積分布関数Fxiは以下の積分:
【数4】
(式中、xj≠i=(x,…,xi-1,xi+1,…,x)である)
によって与えられる。
【0081】
従って1つ以上の例では、確率分布を周辺累積分布関数Fxi(i=1,2,…,n)によって表す。当然のことながら1つ以上の例では、対応する最適化問題を十分に定めるために、構成要素の線量分布導関数のそれぞれに関連づけられた周辺累積分布関数を指定するだけで十分である。1つ以上の例では、xの分布特性についてのさらなる仮定により、全てのxの周辺累積分布関数Fxiから、xに関する累積分布関数Fを回復することができる。従って1つ以上の例では、xが多変量正規分布に従い、かつ各対x,x間の相関が与えられる(例えばユーザ入力によって、あるいは予め定められた値として)と仮定し、これから当業者に知られているプロセスによって累積分布関数Fを決定することができる。
【0082】
上述のように、第1の線量分布導関数は、第1の治療計画において選択された部分体積のための線量分布に対して、第2の治療計画において前記体積の選択された部分体積のための線量分布を改善するために使用するための関数を含んでもよい。実例として、対応する目標値を有する2つの第1の線量分布導関数は、例として「標的の95体積%において少なくとも5900cGy」および「標的の5体積%において多くとも6100cGy」と定めてもよい。
【0083】
従って本発明者らは、x=(x,x)が平均5900、6100および共分散行列:
【数5】
を有する多変量正規確率変数であると仮定してもよい。
【0084】
故に、x、xの周辺累積分布関数は、平均5900、6100および標準偏差50をそれぞれ有する一変量正規分布の関数である。この例では値50(cGy)がデフォルトパラメータ値として使用されているが、他の標準偏差値を使用してもよい。従って累積分布関数Fは、前記一変量正規分布の累積分布関数の積として表すことことができる。
【0085】
上述のように、1つ以上の第2の線量分布導関数は、第2の治療計画において第1の治療計画の品質を維持するように設計する。
【0086】
従って一例として、当該体積のいくつかの部分体積(リスク臓器をカバーしている)の場合に、10、20、…、90%の体積における線量/体積値がそれぞれ900、800、…、100cGyである第1の治療計画を有してもよい。リスク臓器線量の現在の状況を可能限り最良に保存するために、本発明者らは、周辺分布が平均900、800、…、100および標準偏差200(デフォルトパラメータ値)を有する一変量正規分布であるように、上に記載されている同じ方法で多変量正規分布を構築してもよい。この例では値200(cGy)がデフォルトパラメータ値として使用されているが、他の標準偏差値を使用してもよい。
【0087】
1つ以上の他の例では、第1の治療計画は、過去に送達された臨床計画のセットの1つ以上の線量分布に関してのみ定められていてもよい(これはいわゆるコールドスタートの場合の例である)。従って本方法は、過去の線量分布に対して線量分布導関数を評価し、かつその周辺分布から計算された評価されるガウス混合モデル(要するに、いくつかの正規分布の組み合わせ)を生成するように構成されていてもよい。ガウス混合モデルから周辺分布を計算するための数学的プロセスは当業者に知られている。
【0088】
工程404は、解くべき最適化問題を決定することを含む。一般に工程404は、当該もしくは各線量分布導関数からの寄与およびその対応する標的/確率分布を含む全目的関数および存在する場合にはあらゆる制約を決定することを含んでもよく、ここでは損失関数が各線量分布導関数またはそこから導出される目的関数に適用される。全目的関数は目的関数からの重み付けされた寄与を含んでもよい。
【0089】
工程404は、それに対して最適化プロセスを行うための目的関数のセットを決定すること、すなわち最適化問題を(部分的に)解くことを含んでもよく、目的関数の前記セットの各目的関数は、第2の治療計画を定めるパラメータを含む少なくとも1つの変数であり、ここでは少なくとも1つの変数の修正は、線量分布導関数によって出力される線量尺度値の少なくとも1つに影響を与えるように構成されており、ここでは目的関数のセットの決定は、線量分布導関数ならびにそれらのそれぞれの目標(および任意に確率分布)に基づいている。
【0090】
従って、第1の治療計画は第1のパラメータのセットに関して定められていてもよく、以下に説明されている最適化プロセスは、パラメータの第1のセットに対する変更の決定を行って第2の治療計画を定めるパラメータの第2のセットを提供してもよい。目的関数はそれらのパラメータの1つ以上に関して定められていてもよい。あるいは第1の治療計画はそれに基づいて線量分布導関数が決定される線量分布を提供してもよく、工程404は第2の治療計画を定めるパラメータである目的関数を定めることを含んでもよい。
【0091】
工程404は、1つ以上の線量分布導関数を目的関数に変換することを含んでもよく、これは、それぞれの損失関数を各線量分布導関数およびその関連づけられた確率分布に適用することにより最適化問題を定めてもよい。工程403が線量尺度目標を受信し、かつ確率分布を受信しないことを含む他の例では、工程404は、それぞれの損失関数を各線量分布導関数および線量尺度目標に集中したデフォルト分布(例えば正規分布)に適用することにより、1つ以上の線量分布導関数を、最適化問題を定めることができる目的関数に変換することを含んでもよい。
【0092】
線量分布導関数からどのように1つ以上の目的関数およびひいては全目的関数を導出するかに関する例は、以下のとおりである。
【0093】
工程402および403は、線量分布dのn個の線量分布導関数Ψ、Ψ、…、Ψのセット(例えば1つ以上)、および例えば当該セットのための関連づけられた確率分布を提供する。
【0094】
全目的関数Ψtotを決定するために、ηは第2の治療計画を表すために本発明者らが使用する計画パラメータを意味するものとする。計画パラメータは例えば装置106の動作パラメータを含んでもよく、そこから線量分布を導出することができるが、原則として計画パラメータは線量分布を一意的に決定する任意のパラメータとすることができる。当然のことながら対応する線量分布d=d(η)は計画パラメータによって完全に決定される。計画パラメータを線量分布に変換する関数d(η)は、予め決定されているか当業者に知られているものであってもよい。
【0095】
工程405では、工程404で定められた解くべき最適化問題は、
最小化:Ψtot(η)
条件:ηはユーザにより提供され得る任意の制約または放射線療法送達装置106の技術的制約を満たす
である。
【0096】
1つ以上の例では、本方法は加重和形態:
【数6】
を使用してもよい。
【0097】
当然のことながら、全目的関数を形成するM個の目的関数は、線量分布導関数の数nと等しいかそれによりも小さくてもよい。従って1つ以上の例では、複数の線量分布導関数の2つ以上を1つの目的関数に組み合わせてもよい。
【0098】
そのセットアップは、以下の工程を含んでもよい。
1.関数の数Mおよび重みwを決定する。システム101はユーザ入力を受信してこれらの値を指定するか、あるいはデフォルト値を有していてもよい。例えばMは2に等しくてもよく、線量分布導関数を2つの群、すなわち単一ボクセル関数および非単一ボクセル関数に分割してもよい。従って、この2つの群のそれぞれの関数を2つの目的関数に組み合わせてもよい。
2.i=1,2,…,Mのそれぞれのために、
a.全ての添字{1,2,…,n}のサブセットである添字集合Sを決定する。システム101はユーザ入力を受信してS値を指定してもよく、あるいはデフォルト値を使用してもよい。
b.添字集合において線量分布導関数:
【数7】
例えば累積分布関数Fまたは確率密度関数∫(式中、x=(x,x,…,x)は、ベクトル値の確率変数である)の値に関する確率分布のパラメータ表示を決定する。これは、ユーザ入力または予め定められたアルゴリズムによって決定することができる。1つの例示的な方法は、単一ボクセル型の線量分布によって定められた関数のための確率密度関数およびそれ以外の累積分布関数を使用することである。
c.2bにおけるパラメータ表示の出力を入力として受け取り、かつパラメータ表示の前記出力を観測したら、出力として損失寄与を表す数を与える損失関数Lを決定する。例えば、Lはログ損失L(t)=-log tまたは交差エントロピー損失L(t)=-a log t-(1-a)log(1-t)(式中、a∈{0,1}である)とすることができる。ここでも損失関数の選択をユーザ入力によって受信してもよく、あるいは予め定められた損失関数を選択してもよい。1つ以上の例では、損失関数の選択は線量分布により定められる関数の型、例えば単一ボクセル型または非単一ボクセル型に基づいていてもよい。
d.本発明者らがFまたは∫を使用したか否かに応じて(前者を想定する)、
【数8】
としてΨを得る。
【0099】
一例として本発明者らが、線量分布導関数をより低い/より高いピークの探索(可能な限り低い/高くなる)およびテールの探索(可能な限り最頻値に近くなる)にグループ化することを望むものと想定する。次いで本発明者らは、累積分布関数および交差エントロピー損失を前者の場合に0/1と共に、後者の場合に確率密度関数およびログ損失と共に使用する。ここでは添字集合は関数の関連する添字を表す。
【0100】
従って要約すると1つ以上の例では、全目的関数は全ての目的関数の合計であり、各目的関数は、線量分布導関数および関連づけられた確率分布または標的および損失関数の1つ以上を用いて決定する。従って全目的関数Ψtotは本質的に、線量分布導関数および任意の確率分布を組み込んでいる。本明細書に記載されているように最適化問題の式はこのように、最適化プロセスをガイドするために線量尺度を選択するための柔軟性に関して有利である。
【0101】
より具体的な例として、本方法は、
(i)全ての成分の単一ボクセル関数の添字集合Sおよび単一ボクセル関数ではない全ての成分の関数の添字集合Sに分割された線量分布導関数のセットを受信する、
(ii)SおよびSにおける各関数のために、周辺累積分布関数として表されている関連づけられた確率分布を受信する、
(iii)SおよびSにおける全ての関数の線量尺度値の独立を仮定し、かつ2つの累積分布関数、すなわちSにおけるそれらの1つおよびSにおけるそれらの1つを得る(累積分布を周辺分布から導出する方法および独立の仮定は当業者に知られている)、
(iv)Sのために、1つの目的関数Ψを定める対応する累積分布関数に対して交差エントロピー損失関数を適用する、
(v)Sのために、累積分布関数から得ることを対応する確率密度関数から識別し、かつ別の目的Ψを定めるログ損失関数を適用する、
(vi)等しい重みw=w=1を使用してΨtot=Ψ+Ψとして全目的関数を得る
ことにより、それぞれの少なくとも1つの線量分布定義関数に基づいて少なくとも1つの目的関数を含む全目的関数を決定するように構成されてもよい。
【0102】
1つ以上の例では、本方法は最適化問題を定義する際により大きい柔軟性を提供するため有利である。先行技術の方法では、目的関数は典型的には二次ペナルティである。但し先行技術の方法では、容易に最適化されなかったり直接最適化することができなかったりする1つ以上の線量分布導関数(通常は臨床目標と呼ぶ)を用いて最適化プロセスを行うことが望ましい場合があり、故に線量分布導関数の代わりに二次ペナルティに対して最適化を行うという妥協が存在してきた。
【0103】
本方法は、最適化プロセスの各反復を評価するために線量分布導関数を使用するのではなく、線量分布導関数から目的関数ならびにそれらの目標および任意の確率分布を直接導出することにより、さらなる柔軟性を提供することができる。線量分布導関数を損失関数と共に正規分布と組み合わせられた確率分布または線量尺度目標のいずれかを用いて最適化問題を定める目的関数に変換する本明細書に記載されている方法は、向上した柔軟性および有効性を提供することができる。
【0104】
工程405は、工程404で決定した最適化問題を(部分的に)解くことを含む。従って工程405は、制約を満たすという条件で全目的関数を最小化する変数(第2の治療計画のパラメータ)を見つけることを含む。工程404で定められた最適化問題を解くことは従来的である。
【0105】
工程406は、工程405から得られる治療計画パラメータから前記第2の治療計画を決定することを含んでもよい。
【0106】
工程407は、第2の治療計画に従って放射線療法の送達のために第2の治療計画を用いて放射線療法送達装置106を構成またはプログラミングする任意の工程を含む。
【0107】
本開示の例示的な方法は、治療計画を微調整することを試みるときに臨床目標に関して特定の目的を捉えることを可能にしてもよい。新規な全目的関数の使用により、臨床医の嗜好に対応する従来のペナルティ関数の特定の重みを見つける(これは時間のかかるプロセスであり得る)必要性を減らす。また最適化問題の式は非線形制約を含んでいなくてもよいため、1つ以上の例では最適化を著しくより速く行うのを可能にしてもよい。
【0108】
本明細書に記載されている方法は、任意の線量分布定義関数を選択して全目的関数を生成する能力を提供するという点で、1つ以上の例では有利であり得る。例えば臨床目標などの評価基準を直接入れることができる。これにより、上に記載されている前記第1および第2の線量分布定義関数を使用することにより、既存の治療計画を微調整する自然な方法を可能にする。さらに確率分布は1つ以上の例では、二次ペナルティのみを使用する場合よりも複雑なユーザの嗜好のニュアンスを捉えることができる。代わりに確率分布の形態でユーザ入力を受信すること、および適当な損失関数を使用することにより、全目的関数はその値が当該計画が妥当でないとみなされるときに非常に大きくなるような関数であり、これは臨床医が手作業で計画を立てるときに考えることができる方法により類似している。1つ以上の例では、本方法は確率分布の使用により異なる目標間のトレードオフもより有効に取り扱うことができる。
【0109】
当然のことながら1つ以上の例では、本方法は1つ以上の制約を受信する工程を含み、ここでは第1の治療計画は、第1のパラメータのセットに関して定められており、1つ以上の制約は、第2の治療計画のパラメータが前記最適化を受け入れることができる値および/または受け入れることができない値を定める。例えば、第1の治療計画は放射線療法送達装置106に関連するパラメータに関して定められていてもよく、従って制約は、最大ガントリ回転速度または最大パワー出力などに関して放射線療法送達装置の技術的限界に関するものであってもよい。他の例では、制約は当該体積またはその部分体積のための線量分布に対する限界を表してもよい。
【0110】
図5の例は、コンピュータプログラム製品の一例としてコンピュータ可読媒体500を示す。コンピュータ可読媒体は非一時的コンピュータ可読媒体を含んでもよい。コンピュータ可読媒体500は、プロセッサ202およびメモリ203を有するコンピュータシステム201などの装置によって実行されるときに、本明細書に記載されている方法を行うように構成されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムを含む。
【0111】
上の図の中の命令および/またはフローチャート工程は、具体的な順序が明記されていない限り任意の順序で実行することができる。また当業者であれば、命令/方法の1つの例示的なセットを考察してきたが、本明細書中の材料を様々な方法で組み合わせて他の例を得ることもでき、かつそれらがこの詳細な説明によって提供されている文脈の範囲内であると理解すべきことを認識しているであろう。
【0112】
いくつかの例示的な実施形態では、上に記載されている方法の工程は、前記実行可能命令によりプログラムされ、かつそれによって制御されるコンピュータまたはマシン上で行われる実行可能命令のセットとして具体化される機能およびソフトウェア命令として実装されている。そのような命令は、プロセッサ(1つ以上のCPUなど)上での実行のためにロードされる。プロセッサという用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プロセッサモジュールまたはサブシステム(1つ以上のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを備える)、あるいは他の制御もしくは計算装置を含む。プロセッサは単一コンポーネントまたは複数コンポーネントを指すことができる。
【0113】
他の例では、本明細書に説明されている方法ならびにそれらに関連づけられたデータおよび命令はそれぞれの記憶装置に記憶されており、これらは1つ以上の非一時的マシンあるいは1つ以上のコンピュータ可読媒体またはコンピュータ使用可能記憶媒体として実装されている。そのような1つ以上のコンピュータ可読もしくはコンピュータ使用可能記憶媒体は、物品(または製品)の一部とみなされる。物品または製品は任意の製造された単一コンポーネントまたは複数コンポーネントと呼ぶことができる。本明細書に定義されている1つ以上の非一時的マシンまたはコンピュータ使用可能媒体は信号を排除するが、そのような1つ以上の媒体は、信号および/または他の一時的媒体からの情報を受信して処理することができるものであってもよい。
【0114】
本明細書で考察されている材料の例示的な実施形態は、ネットワークを介した全体もしくは部分的にコンピュータまたはデータベースの装置および/またはサービスに実装することができる。これらとしては、クラウド、インターネット、イントラネット、モバイル、デスクトップ、プロセッサ、ルックアップテーブル、マイクロコントローラ、消費者機器、インフラまたは他のイネーブル装置およびサービスが挙げられる。本明細書および特許請求の範囲で使用され得るように、以下の非排他的な定義が提供される。
【0115】
一例では、本明細書で考察されている1つ以上の命令または工程は自動化されている。自動化または自動的という用語(およびそれらの同様の変形)は、特に明記しない限りユーザ入力を必要とするような人間の介入、観察、努力および/または決定の必要性がない、コンピュータおよび/または機械/電気装置を用いた装置、システムおよび/またはプロセスの制御された動作を意味する。
【0116】
本明細書では選択されたセットの詳細に関して例示的な実施形態が提供されている。但し当業者であれば、異なる選択されたセットのこれらの詳細を含む多くの他の例示的な実施形態を実施することができることを理解するであろう。以下の特許請求の範囲は、全ての可能な例示的な実施形態を包含することが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】