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特表2023-519582コンタクトレンズ媒介ドラッグデリバリーによる眼疾患を治療するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ媒介ドラッグデリバリーによる眼疾患を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20230501BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20230501BHJP
   A61L 27/26 20060101ALI20230501BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230501BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230501BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
G02C7/04
A61L27/16
A61L27/26
A61L27/54
A61K9/00
A61K47/32
A61K47/34
A61K31/573
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558127
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 US2021023572
(87)【国際公開番号】W WO2021195016
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/994,456
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522375545
【氏名又は名称】キオラ ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダ ケー.マン
(72)【発明者】
【氏名】ダレン スターランド
(72)【発明者】
【氏名】マイケル マンゾー
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー シアーダウン
(72)【発明者】
【氏名】タレーナ ランバーラン
(72)【発明者】
【氏名】リナ リウ
【テーマコード(参考)】
2H006
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
2H006BB06
4C076AA99
4C076BB24
4C076EE10
4C076EE12
4C076EE27
4C076FF68
4C081AB23
4C081CA08
4C081CA27
4C081CC06
4C081CE02
4C081CE08
4C081DA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA58
4C086MA70
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA33
(57)【要約】
本開示は、コンタクトレンズと、式X-(CH-Z(式中、Xは光架橋性基である)を有する化合物を含むことができる、ドラッグデリバリー部分とを含む眼ドラッグデリバリーシステムを提供する。有利なことに、ドラッグデリバリー部分は、高濃度の負電荷治療剤を眼ドラッグデリバリーシステムに装填するのを助けることができる。さらに、開示された眼ドラッグデリバリーシステムは、約4時間~約24時間にわたって、患者の眼への負電荷治療剤の制御されたデリバリーを助けることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有結合で架橋されたポリマー、
式X-(CH-Z(式中、Xは架橋性基であり、nは2、3又は4であり、Zはモルホリノ、イミダゾール又はピペラジン基である)を有するモノマーであって、ここで、該モノマーはXを介して前記架橋されたポリマーに共有結合されている、モノマー、
及び、負電荷を有する治療用分子、
を含む、ドラッグデリバリー部分、
を含む、コンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、約20wt%~約40wt%の水を有する、コンタクトレンズ。
【請求項2】
Xは、メタクリル、アクリル、メタクリルアミド、アクリルアミド又はビニル基である、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記モノマーは約5wt%~約20wt%の濃度である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記ポリマーは光を用いて共有結合架橋されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記光は約200nm~約400nmの波長を有する、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記治療用分子はコルチコステロイドである、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記治療用分子はデキサメタゾン誘導体である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記治療用分子はホスフェート基を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記治療用分子は約1%~約5%の濃度を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記コンタクトレンズは約0.1mm~約0.5mmの厚さを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記ポリマーはHEMAを含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記ポリマーはシリコーンマクロマーを含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記治療用分子は、架橋前に前記ドラッグデリバリー部分に組み込まれる、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記治療用分子は、前記治療用分子を含む溶液中に前記コンタクトレンズを浸漬することによって前記ドラッグデリバリー部分に組み込まれる、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記溶液中の前記治療用分子は約5~約80mg/mlの濃度である、請求項14に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記溶液中の前記治療用分子は約5~約40mg/mlの濃度である、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記治療用分子はリン酸デキサメタゾンである、請求項16に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記治療用分子は、架橋前に、かつ、また、前記治療用分子を含む溶液中に前記コンタクトレンズを浸漬することによって、前記ドラッグデリバリー部分に組み込まれる、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
前記治療用分子はリン酸デキサメタゾンである、請求項18に記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
前記ドラッグデリバリー部分は前記コンタクトレンズの周囲部分である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、治療剤のコンタクトレンズ媒介デリバリーによって眼疾患を治療するための組成物及び方法に関する。特に、本開示は、装填容量が高く、眼への負電荷治療剤の制御されたデリバリーを提供する分子を含むドラッグデリバリー部分を有するコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
薬剤をデリバリーするように設計されたコンタクトレンズは、すべての薬剤を非常に迅速(1~2時間以内)に放出するか、又は、何日もかけて薬剤をデリバリーする。第一の場合において、そのような高用量の薬剤が非常に迅速にデリバリーされたときに発生する可能性がある毒性を回避するために、コンタクトレンズ内の薬剤の濃度を制限しなければならない。さらに、眼の表面からの薬剤のクリアランスが高いため、デリバリーされたものの多くがすぐに排除される。第二の場合において、使用者はコンタクトレンズを何日も連続して装着しなければならず、このことは酸素透過性の問題 (例えば、角膜への酸素輸送の減少)のために、目に有害な影響を与える可能性がある。したがって、約4時間~約24時間かけてデリバリーされる高濃度の薬剤を装填できるコンタクトレンズが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
開示の概要
本開示は、治療剤のコンタクトレンズ媒介デリバリーによって眼疾患を治療するための組成物及び方法を提供する。特に、本開示は、高い装填容量を提供し、治療剤(例えば、負電荷治療剤)を短時間(例えば、1日未満)にわたって制御されたデリバリーを提供する分子を含むドラッグデリバリー部分を有するコンタクトレンズに関する。
【0004】
1つの態様において、本開示は、共有結合で架橋されたポリマー、式X-(CH-Z(式中、Xは架橋性基であり、nは2、3又は4であり、Zはモルホリノ、イミダゾール又はピペラジン基である)を有するモノマー、ここで、前記モノマーはXを介して前記架橋されたポリマーに共有結合されている、及び、負電荷を有する治療用分子を有するドラッグデリバリー部分を含む、コンタクトレンズであって、ここで、約20wt%~約40wt%の水を有する、コンタクトレンズを提供する。
【0005】
幾つかの実施形態において、Xは、メタクリル、アクリル、メタクリルアミド、アクリルアミド又はビニル基である。
【0006】
幾つかの実施形態において、前記モノマーは、約5wt%~約20wt%の濃度である。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記ポリマーは光を使用して共有結合で架橋されている。幾つかの実施形態において、光は、約200nm~約400nmの波長を有する。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子はコルチコステロイドである。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子はデキサメタゾン誘導体である。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子はホスフェート基を有する。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子は、約1%~約5%の濃度を有する。
【0012】
幾つかの実施形態において、コンタクトレンズは、約0.1mm~約0.5mmの厚さを有する。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記ポリマーはHEMAを含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記ポリマーはシリコーンマクロマーを含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子は、架橋前に前記ドラッグデリバリー部分に組み込まれる。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子は、前記治療用分子を含む溶液中に前記コンタクトレンズを浸漬することによって前記ドラッグデリバリー部分に組み込まれる。
【0017】
幾つかの実施形態において、前記溶液中の前記治療用分子は、約5~約80mg/mlの濃度である。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記溶液中の前記治療用分子は、約5~約40mg/mlの濃度である。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子はリン酸デキサメタゾンである。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記溶液中の前記治療用分子は、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39又は約40mg/mlの濃度である。
【0021】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子はリン酸デキサメタゾンである。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記治療用分子は、架橋の前に、また前記治療用分子を含む溶液中に前記コンタクトレンズを浸漬することによって、前記ドラッグデリバリー部分中に組み込まれ、場合により、前記治療用分子はリン酸デキサメタゾンである。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記ドラッグデリバリー部分は、前記コンタクトレンズの周囲部分である。
【0024】
定義
別段の規定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本開示で使用される多くの用語の一般的な定義を備えた技術を提供する。The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Riegerら(eds.), Springer Verlag (1991);及びHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用されるときに、以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の用語に帰する意味を有する。
【0025】
特に記載されない限り、又は関係から明白でない限り、本明細書で使用するときに、「約」という用語は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均値の2標準偏差内であると理解される。記載された値の約は10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内と理解できる。関係から特に明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、約という用語によって修飾されている。
【0026】
本開示において、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(containing)」、及び「有する(having)」などは、米国特許法で定められた意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することができる。同様に、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「本質的になる(consists essentially)」は、米国特許法で定められた意味を有し、その用語は無制限であり、列挙されているものの基本的又は新規な特徴が、列挙されている以上のものが存在しても変更されない限り、列挙されている以上のものが存在することが可能であるが、先行技術の実施形態を除外する。
【0027】
本明細書で提供される範囲は、範囲内のすべての値の簡略表記であると理解される。例えば、1~50までの範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50、及び、例えば、1.1、1.2、1.3 、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9などの上述の整数の間にあるすべての小数値からなる群からの任意の数値、数値の組み合わせ又は部分範囲を含むことが理解される。部分範囲に関しては、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子の部分範囲」は具体的に考えられる。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子の部分範囲は、1つの方向に、1~10、1~20、1~30及び1~40、又は、反対方向に、50~40、50~30、50~20、50~10を含むことができる。
【0028】
「薬剤」又は「治療剤」とは、任意の小分子化合物、抗体、核酸分子もしくはポリペプチド又はその断片を意味する。
【0029】
「寛解する」とは、疾患又はその症状の発症又は進行を低減、抑制、減弱、減少、停止又は安定化することを意味する。
【0030】
「類似体」とは、同一ではないが、類似の機能的又は構造的特徴を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチド類似体は、対応する天然起源のポリペプチドの生物学的活性を保持する一方で、天然起源のポリペプチドと比べて類似体の機能を増強する特定の生化学的修飾を有する。このような生化学的修飾は、リガンド結合性などを変更することなく、類似体のプロテアーゼ耐性、膜透過性又は半減期を増加させることができる。類似体は、非天然アミノ酸を含むことができる。
【0031】
本明細書で使用されるときに、用語「共投与(co-administering)」又は「共投与(co-administration)」などは、2つ以上の薬剤(例えば、相乗剤を伴う抗生物質又は治療剤)、化合物、治療を同時に又はほぼ同時に施す行為を指す。本開示の異なる薬剤、例えば、抗生物質又は相乗剤を投与する順序又は順番を変えることができ、特定の順序に限定されない。共投与はまた、2つ以上の薬剤(例えば、相乗剤を伴う抗生物質又は治療剤)が、本明細書に記載されるように、コンタクトレンズの異なる部分を介して投与される状況を指すこともでき、例えば、コンタクトレンズの中央部分のドラッグデリバリー部分により第一の薬剤が投与され、そしてコンタクトレンズの周囲部分のドラッグデリバリー部分によって第二の薬剤が投与される。
【0032】
「対象」とは、限定するわけではないが、ヒト、又は、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ又は霊長類などの非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物を意味する。
【0033】
「治療有効量」とは、臨床結果を含む、有益な又は望ましい結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で(例えば、1つ以上のコンタクトレンズ上で)投与することができる。
【0034】
本明細書で使用されるときに、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、「治療(treatment)」などの用語は、眼疾患及び/又はそれに関連する症状(例えば、炎症、細菌感染、眼瞼炎など)を軽減又は寛解することを指す。排除するわけではないが、疾患又は状態を治療することは、疾患、状態又はそれに関連する症状が完全に除去されることを必要としないことが理解される。
【0035】
本明細書で使用されるときに、「医薬的に許容可能な」という用語は、本明細書に記載の化合物の生物学的活性又は特性を無効にせず、比較的に非毒性である材料(例えば、キャリア又は希釈剤)を指す(すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こしたり、又は、組成物中に含まれている組成物の成分のいずれかと有害な様式で相互作用したりすることなく、個体に投与される)。
【0036】
「医薬的に許容可能なキャリア、賦形剤又は希釈剤」という語句は、当該技術分野で認識されており、本開示の化合物を哺乳動物に投与するのに適した医薬的に許容可能な材料、組成物又はビヒクルを含む。本明細書で使用されるときに、「医薬的に許容可能な」という用語は、連邦政府又は州政府の管理機関によって承認されているか、又は、米国薬局方、欧州薬局方、又は哺乳動物、例えばヒトでの使用が一般的に認められている他の薬局方にリストされていることを意味する。
【0037】
該当する場合、又は特に放棄されていない場合、本明細書に記載されている実施形態のいずれかは、実施形態が開示の異なる態様の下で記載されているとしても、他の1つ以上の実施形態のいずれかと組み合わせることができると考えられる。これら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明によって開示及び/又は包含される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下の詳細な説明は、例として示されているが、記載されている特定の実施形態のみに開示を限定することを意図するものではなく、添付の図面と併せて最もよく理解することができる。
【0039】
図1図1は、幾つかの製剤で使用されるシリコーンマクロマーの化学構造である。
【0040】
図2図2は、MPMAモノマーを含む(製剤#2)及びMPMAモノマーを含まない(製剤#5)シリコーンベースのヒドロゲル製剤の引張試験からの弾性率及び最大強度の比較を示す。
【0041】
図3図3は、MPMAモノマーを含む又は含まない、シリコーンベース及びHEMAベースの幾つかのヒドロゲル製剤の平衡状態での含水量を示す。
【0042】
図4図4は、未反応ポリマー及びモノマー成分を除去するための抽出洗浄中にヒドロゲルから洗い流される、架橋中にヒドロゲルに取り込まれたリン酸デキサメタゾンの量を示す。
【0043】
図5図5は、ヒドロゲルを薬剤溶液に48時間浸漬することによって取り込まれた、MPMAモノマーを含む又は含まないヒドロゲルに装填された薬剤の量を示す。
【0044】
図6A図6A及び6Bは、薬剤溶液中の初期浸漬(A)、又は、薬剤を再装填するための、初期放出後の薬物溶液中の再浸漬(B)の後の、MPMAモノマーが組み込まれた場合及び組み込まれない場合の、シリコーンベースのヒドロゲルからのdexPの放出を示している。
【0045】
図6B図6A及び6Bは、薬剤溶液中の初期浸漬(A)、又は、薬剤を再装填するための、初期放出後の薬物溶液中の再浸漬(B)の後の、MPMAモノマーが組み込まれた場合及び組み込まれない場合の、シリコーンベースのヒドロゲルからのdexPの放出を示している。
【0046】
図7図7は、MPMAモノマーが組み込まれた場合及び組み込まれない場合の、HEMAベースのヒドロゲルから放出及び抽出された薬剤の総量を示す。
【0047】
図8図8は、MPMAモノマーが組み込まれた場合及び組み込まれない場合の、HEMAベースのヒドロゲルからの経時的なリン酸デキサメタゾンの放出を示す。
【0048】
図9図9は、MPMAモノマーが組み込まれた場合及び組み込まれない場合の、HEMAベースのヒドロゲルからの経時的なリン酸プレドニゾロンの放出を示す。
【0049】
図10図10は、MPMAモノマーが組み込まれた場合及び組み込まれない場合の、HEMAベースのヒドロゲルからの経時的なメトロニダゾールの放出を示す。
【0050】
図11図11は、MPMAモノマーが組み込まれた場合及び組み込まれない場合の、HEMAベースのヒドロゲルからの経時的なトブラマイシンの放出を示す。
【0051】
図12図12は、HEMAベースのヒドロゲルから強膜組織内へそして強膜組織を横切ってPBSリザーバへのリン酸デキサメタゾンの放出を決定するために使用される実験設備を示す。A:様々な構成要素を表示するための拡大図、及び、B:完全に組み立てられた図。
【0052】
図13図13は、HEMAベースのヒドロゲルからの薬剤の放出後の強膜組織及び該組織の下のPBSリザーバにおける異なる時点でのリン酸デキサメタゾンの量を示す。
【0053】
図14図14は、装填溶液中の薬剤濃度に対する、コンタクトレンズに装填されたリン酸デキサメタゾン(dexP)の量を示す。
【0054】
図15図15は、装填溶液中の薬剤濃度に対する、8時間にわたってコンタクトレンズから放出されたdexPの量を示す。
【0055】
図16図16は、遊離酸形態のdexP(EG dexP)又は二ナトリウム形態(二ナトリウムdexP)のいずれかを使用して、MPMAが組み込まれたコンタクトレンズに装填されたdexPの量を示す。
【0056】
図17図17は、遊離酸形態のdexP(ブルー丸)又は二ナトリウム形態のdexP(オレンジ丸)のいずれかを使用してレンズを装填した後の、MPMAが組み込まれたコンタクトレンズからのdexPの放出を示す。
【0057】
図18A図18A及び18Bは、dexPを装填したコンタクトレンズをウサギの眼に2、4又は8時間置いた後の組織中のデキサメタゾン(dex)+リン酸デキサメタゾン(dexP)の総濃度を示す。図18Aは、すべての組織における全量を示すようにスケーリングされている。図18Bは、低濃度の組織をよりよく示すために、スケールの上部を取り除いている。
【0058】
図18B図18A及び18Bは、dexPを装填したコンタクトレンズをウサギの眼に2、4又は8時間置いた後の組織中のデキサメタゾン(dex)+リン酸デキサメタゾン(dexP)の総濃度を示す。図18Aは、すべての組織における全量を示すようにスケーリングされている。図18Bは、低濃度の組織をよりよく示すために、スケールの上部を取り除いている。
【発明を実施するための形態】
【0059】
開示の詳細な説明
本開示は、少なくとも部分的に、式X-(CH-Z(式中、Xが光架橋に関与することができる基(限定するわけではないが、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド又はビニルを含む)であり、nは2、3又は4であり、Zはモルホリノ、イミダゾール又はピペラジン基であり、ここで、モノマーはXを介してソフト/ヒドロゲルコンタクト レンズのマトリックスに共有結合されている)を有する化合物が、眼ドラッグデリバリーシステム(例えば、コンタクトレンズのドラッグデリバリー部分)に含まれ、負電荷治療剤の高濃度の装填を助け、続いて、約4時間~約24時間、特に約8時間~約16時間にわたる眼へのその治療剤の制御されたデリバリーを助けることができるという発見に基づいている。本明細書のコンタクトレンズ(CL)は、従来技術を超える多くの利点を提供する:治療用分子の装填容量の増加、及び一日装着CLの期間にわたる治療用分子の制御放出を含む。さらに、約4時間~約24時間にわたる治療用分子の制御放出は、硝子体液、網膜、脈絡膜及び視神経を含む、眼の後眼部への分子の標的化を容易にしうる。
【0060】
最初のポリマーコンタクトレンズは、1960年代初期に一般的に利用できるようになり、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)と呼ばれるポリマーから作られた。PMMA製のレンズはハードレンズと呼ばれる。1979年に、最初の硬質ガス透過性レンズ(RGPとしても知られる)が利用可能になった。これらのレンズは、PMMA、シリコーン及びフルオロポリマーの組み合わせから作られている。この組み合わせにより、酸素がレンズを通って眼に直接通過することができるようになり、着用者にとってレンズがより安全で快適になる。
【0061】
シリコーンヒドロゲルレンズ中のシリコーンは、その剛性及び可撓性に影響を与える。ヒドロゲル成分は湿潤性と流体輸送を促進し、レンズの動きを助ける。シリコーンヒドロゲルレンズは、一般に弾性率が高く、したがって、標準のヒドロキシエチルメタクリレートレンズよりも剛性が高い。従来のソフトコンタクトは、ヒドロゲルポリマー(軟質含水プラスチック)から作られている。ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)は、親水性ポリマーの製造に使用される。これらのレンズは、ポリマー内の水の量に依存して、レンズを通過できる酸素の量を調節する。
【0062】
HEMAベースのポリマーとしては、限定するわけではないが、テフィルコン、テトラフィルコン、クロフィルコン、ヘルフィルコンA/B、マフィルコン、ポリマコン、ヒオキシフィルコンB、サーフィルコンA、リドフィルコンA、リドフィルコンB、ネトラフィルコンA、ヘフィルコンB、アルファフィルコンA、オマフィルコンA、オマフィルコンB、バサーフィルコンA、ヒオキシフィルコンA、ヒオキシフィルコンD、ネルフィルコンA、ヒラフィルコンA、ヒラフィルコンB、アコフィルコンA、ネソフィルコンA、ブフィルコンA、デルタフィルコンA、フェムフィルコン、ブフィルコンA、パーフィルコンA、エタフィルコンA、フォコフィルコンA、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、オキュフィルコンE、オキュフィルコンF、フェムフィルコン A、メタフィルコンA、メタフィルコンB及びビルフィルコンAが挙げられる。
【0063】
シリコーンヒドロゲルポリマーとしては、限定するわけではないが、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、ガリフィルコンA、セノフィルコンA、セノフィルコンC、シフィルコンA、コムフィルコンA、エンフィルコンA、バラフィルコンA、デレフィルコンA、ナラフィルコンB、ナラフィルコンA、ステンフィルコンA、ソモフィルコンA、ファンフィルコンA、サムフィルコンA及びエラストフィルコンが挙げられる。
【0064】
治療剤又は治療用分子は、前眼部及び/又は後眼部の疾患又は状態を治療するために使用されるものであることができる。本開示のコンタクトレンズを介したデリバリーに適することができる治療剤又は治療用分子としては、限定するわけではないが、アニオン性抗生物質、アニオン性抗炎症剤及びアニオン性抗アレルギー薬を挙げることができる。アニオン性抗生物質としては、限定するわけではないが、セフロキシム、ペニシリンG、オキサシリン、セフォキシチン、カルベニシリン、チカルシリン二ナトリウム、ペフロキサシン、デラフロキサシン及びレボフロキサシンを含むフルオロキノロン、ならびに、デルミシジン及びアニオン性デフェンシンなどのペプチドが挙げられる。
【0065】
アニオン性抗炎症剤としては、限定するわけではないが、コルチコステロイドエステル塩、例えば、リン酸プレドニゾロン、硫酸プレドニゾロン、リン酸メチルプレドニゾロン、硫酸メチルプレドニゾロン、リン酸ヒドロコルチゾン、硫酸ヒドロコルチゾン、リン酸ベタメタゾン、硫酸ベタメタゾン、リン酸デキサメタゾン、硫酸デキサメタゾン、リン酸トリアムシノロンアセトニド及びリン酸デソニドが挙げられる。
【0066】
薬剤をアニオン性にする薬剤のプロドラッグ又は塩もまた、デリバリーされうる。治療用化合物をアニオン性界面活性剤に封入することにより、追加の治療剤をデリバリーすることができる。アニオン性界面活性剤は、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩などのアニオン性官能基をヘッドに含む。著名なアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SLS又はSDS)、及び関連するアルキルエーテル硫酸塩であるラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム又はSLES)、及びミレス硫酸ナトリウムが挙げられる。他のアニオン性界面活性剤としては、限定するわけではないが、ドキュセート(スルホコハク酸ジオクチルナトリウム)、ペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホネート、アルキルアリールエーテルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、ステアリン酸ナトリウムなどのカルボン酸塩、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム及びペルフルオロノナノエート、ペルフルオロオクタノエート(PFOA又はPFO)などのカルボキシレートベースフルオロ界面活性剤が挙げられる。
【0067】
デリバリーに適することができる他の治療剤としては、ペプチド、オリゴ、タンパク質、siRNA、抗血管新生因子及び抗アポトーシス因子が挙げられる。
【0068】
治療剤又は治療用分子が、約5~約80mg/ml、又は約5~約40mg/ml、又は約5~約30mg/ml、又は約5~約20mg/ml、又は約5~約10mg/mlの濃度で存在しうることは、本開示の範囲内であると考えられる。
【0069】
治療剤又は治療用分子が、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39又は約40mg/mlの濃度で存在しうることは、本開示の範囲内であると考えられる。
【0070】
幾つかの実施形態において、治療剤又は治療用分子はリン酸デキサメタゾンである。
【0071】
本明細書の技術によれば、本開示は、ドラッグデリバリー部分を有するコンタクトレンズを提供し、ドラッグデリバリー部分は、コンタクトレンズのすべて又はその一部を含むことができる。実施形態において、ドラッグデリバリー部分は、コンタクトレンズの中央部分であることができる。実施形態において、ドラッグデリバリー部分は、コンタクトレンズの周囲部分(例えば、環)であることができる。ドラッグデリバリー部分が上記のモノマーと結合されていることができ、これにより、ドラッグデリバリー部分に結合している治療剤のデリバリーの増加が促進され、角膜又はレンズに対する毒性の可能性が低下することは本開示の範囲内であると考えられる。
【実施例
【0072】
本開示は以下の実施例によってさらに例示され、それは限定と解釈されるべきではない。本出願を通じて引用されたすべての参考文献、公開された特許及び特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示が、開示された構造、材料、組成物及び方法に対して変更を伴って実施されてよいことを当業者は認識し、そのような変更は本開示の範囲内であると考えられる。
【0073】
実施例1:ヒドロゲルの形成
ソフトコンタクトレンズ材料(ヒドロゲル)の様々な製剤は、薬剤の装填及び放出を補助するモノマーとして3-(N-モルホリノ)プロピルメタクリレート(MPMA)を使用して作製された。製剤はシリコーンベース又はHEMAベースのいずれかであり、MPMA(0~20%)、光開始剤(0.4~3%)及びリン酸デキサメタゾン(0~5%)の濃度を変化させた。幾つかの例示的な製剤の成分の最終濃度を表1に示す。各製剤について、成分をアルコール(メタノール、エタノール及び/又はヘキサノール)の存在下で混合し、準備したUV透過性ポリエステルモールド(52mmx57mm、厚さ0.25又は0.5mm)に移行した。次いで、モールドを各側で5分間UV光(365nm)に暴露して、材料を架橋させ、ヒドロゲルを形成した。
【0074】
表1.MPMAモノマーを用いて作られたソフトコンタクトレンズヒドロゲル材料の様々な製剤の成分。成分の量は、最終架橋材料のw/w%としてリストされている。EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、DMA:ジメチルアセトアミド、Tris:3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、PEGm:ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ACR:α-アクリレート-ω-プロピルヘプタメチルトリシロキシ-(オリゴエチレングリコール)又はSiltech CorpのSilmer ACR A008 UP、MW813.8g/モル(界面活性剤)、xリンカー:シリコーンマクロマー、Mw1717g/モル、図1を参照、1-HCHPK:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光開始剤)、MPMA:3-(N-モルホリノ)プロピルメタクリレート、dexP:リン酸デキサメタゾン。「--」は、成分が製剤に使用されなかったことを示す。
【0075】
【表1】
【0076】
上記の表の各製剤により、モールドから取り外すことができる架橋ヒドロゲルが得られた。
【0077】
3-(N-モルホリノ)プロピルアクリルアミド、3-(N-モルホリノ)プロピルアクリレート、2-(N-モルホリノ)エチルアクリレート、2-(N-モルホリノ)エチルメタクリレート、MPMAの代わりに4-(N-モルホリノ)ブチルメタクリレートを用いて、15~30wt%で濃度を変化させて製剤1又は3の架橋ヒドロゲルを作製した。
【0078】
実施例2:ヒドロゲルの物性
表1の製剤2及び5を使用してソフトコンタクトレンズヒドロゲルを作製した。これらの製剤は、♯2がMPMAを組み込み、♯5がそれを含まないことを除いて同じ成分を有し、ヒドロゲルの弾性率及び最大強度に対するモノマーの影響を決定した。この引張試験では、ヒドロゲルをダンベル型の小片(ゲージ領域3mmx12.5mm)に切断し、50N荷重セルでInstron 4401のグリップに置き、破損するまで延伸した(10mm/分)。表1の製剤1、2、4、5及び6をさらに使用して、ヒドロゲルの含水量を決定した。平衡含水量を決定するために、ヒドロゲルの直径8mmのディスクを切り取り、少なくとも12時間DI水中に入れ、キムワイプで吸い取り、余分な流体を取り除き、重量を量った。次いで、ゲル片を真空オーブン内で少なくとも24時間乾燥させ、再度秤量した。次に、平衡含水量を([湿重量]-[乾燥重量])/[湿重量]x100%として求めた。
【0079】
図2に見られるように、14%のMPMAの組み込みは、MPMAを含まない材料と比較して、弾性率を増加させ、最大強度を低下させる。しかしながら、これらの値は他のソフトコンタクトレンズ材料と同様である。したがって、そのモノマーの存在は、ヒドロゲルの引張特性に悪影響を与えない。図3に見られるように、ヒドロゲルの平衡含水量は、製剤に依存し、また、シリコーンベースであるか又はHEMAベースであるかに依存して、約25~35%で変化する。MPMAの存在により、ヒドロゲルの平衡含水量がわずかに高くなるが(図3中の製剤♯2vs♯5)、MPMAを含むヒドロゲル及びMPMAを含まないヒドロゲルの含水量は非常に類似しており、これらはすべてソフトコンタクトレンズの許容範囲内にある。
【0080】
実施例3:ヒドロゲルへの薬剤の架橋
表1の製剤4を使用してソフトコンタクトレンズヒドロゲルを作製した。ここで、架橋してヒドロゲルを形成する前に製剤中にdexPを組み込んだ。水及びアルコールの抽出洗浄は、通常、未反応/未架橋成分を除去するためにソフトコンタクトレンズヒドロゲル材料の架橋後に行われるため、水及びアルコールの抽出洗浄中に、MPMAがヒドロゲル中にdexPを保持するのに有益な効果があるかどうかを判断するために、MPMAモノマーを含む及び含まないヒドロゲルを作製した。ヒドロゲルを脱イオン(DI)水に37℃/200rpmで35分間入れ、続いてイソプロピルアルコールに37℃/200rpmでそれぞれ25分間3回入れて、次にDI水にそれぞれ25分間さらに2回入れた。DI水洗浄液及びアルコール洗浄液を収集し、HPLC-UVを使用してdexPの量を決定した。図4に見られるように、MPMAがヒドロゲルに取り込まれなかった場合と比較して、MPMAが取り込まれた場合に、水洗浄及びアルコール洗浄の両方の洗浄中にヒドロゲルから、取り込まれたdexPがほとんど除去されなかった。これらの結果は、薬剤が架橋前のヒドロゲルに取り込まれ、コンタクトレンズの製造中に行われる抽出洗浄中に失われないというモノマーの有益な効果を示す。
【0081】
実施例4:薬剤溶液中の浸漬による装填
15%のMPMAを含んだ及び含まない表1の製剤5のHEMAベースのヒドロゲルを作製した。DI水で少なくとも3時間洗浄し、続いて試薬アルコール及びDI水の50:50の混合液で少なくとも3時間洗浄し、次いで、再びDI水で少なくとも3時間洗浄することにより、未反応成分を抽出した。直径15mmのディスクを打ち抜き、真空デシケータ中で少なくとも72時間乾燥させた。乾燥ディスクを秤量して、薬剤を含まない初期重量を得た。次いで、ディスクを200rpmでシェーカー上で48時間薬剤溶液中に入れた。この研究で使用した薬剤溶液を表2に見ることができる。48時間後に、ディスクを薬剤溶液から取り出し、キムワイプで叩いて表面から溶液を取り除き、次いで、真空デシケータ中で少なくとも48時間乾燥させた。乾燥した薬剤を装填したディスクを秤量し、装填した薬剤の量を、薬剤を装填したディスクの重量から初期重量を差し引いたものとして決定した。
【0082】
【表2】
【0083】
図5に見られるように、薬剤溶液中に単純に48時間浸漬した後に、様々な薬剤をディスクに装填した。2つの負に帯電した薬剤、dexP及びpredPについて、架橋された材料にMPMAを組み込むと、MPMAを含まない架橋された材料と比較して、装填される薬剤の量を有意に増加させた。材料中のMPMAの存在は、この初期の48時間の浸漬では、中性電荷薬剤のメトロニダゾールの装填にも、また、正電荷薬剤のトブラマイシンの装填にも影響を与えなかった。
【0084】
実施例5:シリコーンベースの材料からの薬剤放出
表1の製剤2と同様であるが、1%のEGDMAのみを含むシリコーンベースのヒドロゲルを、15%MPMAを含む場合及び含まない場合で作製した。未反応成分を例4に記載されるように抽出した。直径10mmのディスクを打ち抜き、dexP溶液中に5日間入れた。dexPを装填したディスクを薬剤装填溶液から取り出し、吸い取り、余分な流体を除去し、PBS中に入れて薬剤の放出を開始した。PBSを様々な時点でサンプリングし、UV吸光度を使用してdexP濃度を分析した。薬剤を放出してから12時間後に、ディスクを一晩薬剤装填溶液に戻し、dexPを再装填し、再装填したディスクからのdexPの放出を記載のようにPBS中で行った。
【0085】
図6Aに見られるように、放出されたdexPの総量は、MPMAが架橋された材料に組み込まれた場合に有意に多かった。装填溶液中に再び浸漬することによってディスクをdexPで再装填した後に、MPMAをディスクに組み込んだ材料は、図6Bに示されるように、再び大量のdexP放出を示した。
【0086】
実施例6:HEMAベースの材料からの薬剤放出及び抽出
例4に記載の薬剤装填ディスクを、37℃で200rpmでシェーカー上で24時間、それぞれの薬剤溶液に戻し、ディスクを再膨潤させた。24時間後に、ディスクを薬剤溶液から取り出し、吸い取って余分な溶液を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れて研究の放出部分を開始した。0.5、1、2、4、6及び8時間で、PBSを除去し、新鮮なPBSを加えた。24時間後に、PBSを取り出し、ディスクを吸い取り、次いで、抽出媒体(80%試薬アルコール、20%PBS)に48時間入れて、残留薬剤を除去した。取り出したPBSサンプル及び抽出媒体を、dexP、predP及びメトロニダゾールのUV吸光度、及びトブラマイシンのニンヒドリンアッセイを使用して、薬剤濃度を分析した。
【0087】
図7に見られるように、架橋された材料にMPMAが組み込まれた場合に、放出及び抽出された薬剤の総量は、負電荷薬剤であるdexP及びpredPについて有意に多かった。中性電荷薬剤であるメトロニダゾールについては、マトリックス中のMPMAの存在は、放出及び抽出される量に影響を与えなかった。正電荷薬剤であるトブラマイシンについては、マトリックス中にMPMAが存在すると、放出及び抽出される薬剤の量は有意に低下した。メトロニダゾールについての放出及び抽出された薬剤の総量は、dexP及びpredPよりも低かった。これは、浸漬溶液中の薬剤濃度の低下によるものである可能性があり(メトロニダゾールについての10mg/mlに対して、他の薬剤についての40mg/ml)、これはメトロニダゾールの水への溶解度が低く、その結果、装填される薬剤の量を減少させることによる。
【0088】
時間の経過に伴う薬剤放出プロファイルを図8~11に示す。図8及び図9に見られるように、dexP及びpredPは、架橋された材料にMPMAが組み込まれた場合に、少なくとも24時間にわたって制御された様式で放出されるが、MPMAが組み込まれていない場合に、放出はわずか2~4時間後にかなり低くなる。架橋された材料へのMPMAの組み込みは、メトロニダゾールの放出にほとんど影響を及ぼさず、図10に示されるように、MPMAを含む場合及び含まない場合で、非常に類似した放出プロファイルを有する。架橋された材料にMPMAが組み込まれる場合に、トブラマイシンの放出は有意に低下し、図11に示されるように、放出される薬剤の総量及び経時的な放出プロファイルの両方に影響を与える。
【0089】
実施例7:強膜組織へのインビトロ薬剤放出
dexPを装填したディスクは、ディスクが直径17mmであり、薬剤溶液に浸漬した後に乾燥しなかったことを除いて、例4に記載されたように作製した。ガラスフランツセルを使用して、ソフトコンタクトレンズヒドロゲルディスクから強膜組織へそして強膜組織を横切る薬剤放出を決定するための実験設備(図12に示す)を作製した。フランツセルをPBSで充填した。セルストレーナ(BD Falcon、70mmナイロン、23mmID) を、強膜とヒドロゲルディスクを一緒に保持するためのフレームワークとしてフランツセル上に装着した。ブタ強膜組織(直径21mm、厚さ1mm)をセルストレーナに入れ、薬剤装填したヒドロゲルディスクを強膜組織の上に置き、ガラス瓶をディスクの上に置いてアセンブリをセルストレーナ中でしっかりと保持した。4分、4時間又は8時間の時点で、強膜組織を取り出し、フランツセルからPBSのサンプルを採取した。コラゲナーゼを用いて強膜組織を消化し、消化された強膜組織及びPBS中のdexPの量をHPLC-UVを用いて決定した。図13に示すように、経時的に強膜組織及びPBS中のdexPの量が増加した。
【0090】
実施例8:薬剤装填及びコンタクトレンズからの放出に対する装填溶液濃度の影響
製剤3を用いて例4に記載されるように、HEMAベースのヒドロゲルを作製した。リン酸デキサメタゾン(dexP)について、例4に記載されるように装填及び放出研究を行い、装填溶液中のdexPの濃度を変化させて(40mg/mL、20mg/mL、10mg/mL及び5mg/mLのdexP)、装填及びデリバリーされる薬剤の量を変化させる可能性を評価した。図14及び図15に示されるように、研究の結果は、装填溶液中のdexPの濃度と、CL材料に実際に装填された量及び放出された量との間に直線関係を示した。
【0091】
実施例9:異なる形態のリン酸デキサメタゾンを使用した装填及び放出
製剤3を用いて例4に記載されるように、HEMAベースのヒドロゲルを調製した。リン酸デキサメタゾン(dexP)について、例4に記載されるように、装填及び放出研究を行い、ここで、ヒドロゲルディスクを、dexP遊離酸又は二ナトリウムdexPのいずれかの40mg/ml溶液に7日間浸漬した。次いで、ディスクをPBS中に最大8時間置き、経時的に放出されたdexPの量を評価した。ディスクの重量あたりに放出されたdexPの総量も決定した。図16及び17に示されるように、二ナトリウムdexP溶液中に存在する追加のイオンは、コンタクトレンズ材料中のMPMAモノマーとのイオン相互作用を制限するようであり、その結果、遊離酸形態と比較して二ナトリウム形態でのdexPの装填及び放出が減少した。
【0092】
実施例10:コンタクトレンズからの放出後のインビボ薬剤分布
製剤3を使用してコンタクトレンズを作製し、液体材料をUV透過コンタクトレンズモールドに入れ、約10分間、UV光(365nm)にさらして材料を架橋させた。コンタクトレンズをモールドから取り出し、未反応成分を例4に記載されるように抽出した。次に、コンタクトレンズを水の入ったガラス瓶に入れ、121℃で18分間オートクレーブして滅菌した。滅菌後に、レンズを無菌的に取り扱った。例4に記載されるようにコンタクトレンズを浸漬することによってリン酸デキサメタゾンをコンタクトレンズに装填し、コンタクトレンズを、使用するまで4℃で無菌リン酸デキサメタゾン溶液中に保存した(dexP装填レンズ)。対照(薬剤を含まない)レンズを浸漬し、使用するまで滅菌等張生理食塩水中に(4℃で)保存した。対照は、保持評価及び眼健康評価にのみ使用した。
【0093】
この研究では、合計11匹のニュージーランド白ウサギを使用した。2匹の動物は対照群に、9匹の動物は処置群にあった。ウサギの瞬膜を除去し、研究開始前の2週間、ウサギを回復させた。この研究のために、動物の各眼にコンタクトレンズを装着し、コンタクトレンズの保持を助けるためにまぶたの角に単一のステープルを配置することによって瞼板癒合術を行った。レンズ保持及び眼健康をモニタリングするために、動物のケージ側の観察を2時間ごとに行った。レンズ配置の2、4及び8時間後に、処置群の3匹の動物を安楽死させ、各眼からステープル及びコンタクトレンズを取り除き、眼の健康状態を記録した。次に、房水(AH)、硝子体液(VH)、網膜、脈絡膜、角膜、結膜及び強膜の組織を分離した。動物の眼がまだ無傷である間に、1mL注射器で無菌の30ゲージの針を使用して各眼から房水を回収した。ドライアイスの箱内の事前に秤量され、事前にラベル付けされたチューブに組織を移した。その後、組織サンプルをさらに処理するまで-80℃フリーザに移した。デキサメタゾン及びリン酸デキサメタゾン濃度について、LC-MS/MSを用いて組織サンプルを分析した。
【0094】
研究中、ケージ側の問題は観察されなかった。対照動物及び処置動物では8時間の時点で幾らかの分泌物が認められ(しかし、2時間又は4時間の時点では認められなかった)、これはウサギの眼にコンタクトレンズが完全に適合していないことが原因である可能性がある。デキサメタゾン及びリン酸デキサメタゾンは、図18A及び18Bに示されるように、各時点で処置動物の組織において検出された。薬剤濃度は、眼の表面にデリバリーされる薬剤について予想されるように、眼組織(AH、角膜、結膜)の前部で最も高かった。組織中の薬剤濃度は2時間の時点で最も高く、時間の経過とともに減少した。これはまた、例6からの薬剤放出プロファイルに基づいて予想される。経時的な濃度の減少にもかかわらず、眼上での8時間にわたる薬剤の継続的な放出により、単一の大きな薬剤ボーラスと比較して、目の表面にデリバリーされる薬剤の長時間の存在を可能にする。さらに、VH、網膜及び脈絡膜で観察される薬剤濃度によって見られるように、継続的な放出により、眼組織を通って眼の奥に到達する薬剤の継続的な移動が可能になり、このことは、典型的に、薬剤のボーラスを眼の表面にデリバリーする時には観察されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
【国際調査報告】