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特表2023-519585ウイルス感染を予防または治療するカテプシン阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ウイルス感染を予防または治療するカテプシン阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/55 20060101AFI20230501BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230501BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230501BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230501BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230501BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230501BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/24 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/4706 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/7052 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/4965 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/4741 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20230501BHJP
   A61K 31/5365 20060101ALI20230501BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20230501BHJP
   C07D 215/46 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 277/28 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 241/24 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 213/65 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 473/08 20060101ALN20230501BHJP
   C07J 5/00 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 311/24 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 491/052 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 451/10 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 471/04 20060101ALN20230501BHJP
   C07D 498/14 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
A61K31/55
A61P31/12
C07D405/14 CSP
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P31/14
A61P31/18
A61P31/16
A61K31/24
A61K31/4706
A61K31/427
A61K38/21
A61K31/7052
A61K31/4965
A61K39/395 N
A61K31/137
A61K31/44
A61K31/522
A61K31/135
A61K31/573
A61K31/352
A61K31/4741
A61K31/46
A61K31/5513
A61K31/5365
C07D487/04 140
C07D215/46
C07D277/28
C07D241/24
C07D213/65
C07D473/08
C07J5/00
C07D311/24
C07D491/052
C07D451/10
C07D471/04 121
C07D498/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558166
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 IB2021052548
(87)【国際公開番号】W WO2021191875
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,487
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】522376346
【氏名又は名称】ザ、ガバメント、オブ、ジ、ユナイテッド、ステイツ,アズ、リプリゼンティッド、バイ、ザ、セクレタリー、オブ、ジ、アーミー
(71)【出願人】
【識別番号】508019975
【氏名又は名称】ヘンリー エム.ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドバンスメント オブ ミリタリー メディスン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー、ディー.ケイン
(72)【発明者】
【氏名】ベロニカ、ソロベバ
(72)【発明者】
【氏名】シナ、バーバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、ジェームズ、ピート
【テーマコード(参考)】
4C050
4C055
4C063
4C065
4C072
4C084
4C085
4C086
4C091
4C206
【Fターム(参考)】
4C050AA08
4C050BB07
4C050CC18
4C050DD10
4C050EE01
4C050FF02
4C050FF03
4C050GG03
4C050HH01
4C055AA01
4C055BA03
4C055BA06
4C055BA16
4C055BA27
4C055BB02
4C055CA02
4C055DA01
4C055DA42
4C063AA03
4C063BB09
4C063CC76
4C063DD19
4C063EE01
4C065AA04
4C065AA18
4C065BB15
4C065CC09
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK01
4C065KK09
4C065LL04
4C065PP15
4C072AA01
4C072BB03
4C072CC02
4C072CC11
4C072DD10
4C072EE06
4C072FF08
4C072GG07
4C072GG09
4C072HH02
4C072UU01
4C084AA19
4C084BA44
4C084DA21
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA14
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA08
4C086BC17
4C086BC28
4C086BC31
4C086BC48
4C086BC82
4C086CB07
4C086CB11
4C086CB22
4C086DA10
4C086EA11
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB05
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK02
4C091KK12
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA03
4C091PA05
4C091PA09
4C091PB02
4C091QQ01
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206HA31
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA14
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
動物におけるウイルス性疾患の治療または予防に使用するための、カテプシン阻害剤化合物およびその薬学的に許容可能な塩、ならびにその組合せが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に治療有効量の以下の構造:
【化1】
[式中、
Xは、NおよびCRから選択され、
およびRは、それぞれ独立して、-Hおよび-(C-C)アルキルから選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなる、方法。
【請求項2】
が-(C-C)アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がHである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
が-CHであり、RがHである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記対象に治療有効量の以下の構造:
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、
前記方法が、前記対象に治療有効量の第1の治療剤を投与する工程、および、前記対象に治療有効量の第2の治療剤を投与する工程を含んでなり、
前記第1の治療剤が、請求項6に記載の化合物であり、
前記第2の治療剤が、請求項6に記載の化合物ではない、方法。
【請求項8】
前記第2の治療剤が、前記対象の細胞内へのウイルスの侵入をブロックする薬剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の治療剤が、ウイルスに対して直接的に作用する薬剤、例えばウイルスタンパク質を調節することによってウイルスに対して直接的に作用する薬剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の治療剤が、前記対象における、カテプシン以外のタンパク質、受容体または標的を調節することによってウイルスを阻害する薬剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の治療剤が、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)を調節する薬剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の治療剤が、前記対象における受容体を調節する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記対象における前記受容体が、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)阻害剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
TMPRSS2を調節する前記第2の治療剤が、カモスタット(FOY-305)、ナファモスタットまたはそれらの薬学的に許容可能な塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の治療剤が、免疫調節剤として機能し、かつ前記対象におけるサイトカインストームを防止または改善する薬剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
免疫調節剤として機能する前記第2の治療剤が、4-アミノキノリン化合物もしくは8-アミノキノリン化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
免疫調節剤として機能する前記第2の治療剤が、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、タフェノキン、プリマキンまたはそれらの治療的に許容可能な塩である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、動物である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、ヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルス性疾患が、マイナス鎖RNAウイルスまたはプラス鎖RNAウイルスによって引き起こされる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルス性疾患が、ピコルナウイルス科、フラビウイルス科、フィロウイルス科、およびコロナウイルス科からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルス性疾患が、コロナウイルス科のウイルスによって引き起こされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルス性疾患が、フラビウイルス科のウイルスによって引き起こされる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルス性疾患が、フィロウイルス科のウイルスによって引き起こされる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルス性疾患が、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス(口蹄疫ウイルス(FMDV))、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、フラビウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルス)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルス(NiV)、ヘンドラウイルス、アレナウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、エコーウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスが、コロナウイルスである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記コロナウイルスが、SARS-CoVである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ウイルス性疾患が、COVID-19である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ウイルス性疾患が、重症急性呼吸器症候群(SARS)である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記ウイルス性疾患が、中東呼吸器症候群(MERS)である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記ウイルスが、エボラウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルスが、ニパウイルス(NiV)である、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記ウイルスが、ジカウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルスが、ヘンドラウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルスが、ライノウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
前記ウイルスが、コクサッキーウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記ウイルスが、インフルエンザウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
前記ウイルスが、エンテロウイルス、例えば、エンテロウイルスA71である、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記ウイルスが、アイチウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
前記ウイルスが、エコーウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスが、肝炎ウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルスが、呼吸器合胞体ウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項44】
前記ウイルスが、フニンウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項45】
前記ウイルスが、リフトバレー熱ウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項21に記載の方法。
【請求項47】
抗ウイルス療法に使用するための、以下の構造:
【化4】
[式中、
Xは、NおよびCRから選択され、
およびRは、それぞれ独立して、-Hおよび-(C-C)アルキルから選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項48】
抗ウイルス療法に使用するための、以下の構造:
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項49】
抗ウイルス療法に使用するための、以下の構造:
【化6】
[式中、
Xは、NおよびCRから選択され、
およびRは、それぞれ独立して、-Hおよび-(C-C)アルキルから選択される。]
の、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項50】
が-(C-C)アルキルである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
がHである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項49または50に記載の化合物。
【請求項52】
が-CHであり、RがHである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項49~51のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項53】
前記化合物が、
【化7】
であり、
ウイルスが、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV))、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、フラビウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(CoV-SARSウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルス、CoV-SARS-2)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルス(NiV)、ヘンドラウイルス、アレナウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、エコーウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項49に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項54】
前記化合物が、
【化8】
である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項53に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項55】
第1の治療剤としての請求項53に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であって、
前記第1の治療剤が、第2の治療剤と組み合わせて投与され、
前記第2の治療剤が、請求項53に記載の化合物ではない、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項56】
前記第2の治療剤が、対象の細胞内へのウイルスの侵入をブロックする薬剤である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項57】
前記第2の治療剤が、ウイルスに対して直接的に作用する薬剤、例えばウイルスタンパク質を調節することによってウイルスに対して直接的に作用する薬剤である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項58】
前記第2の治療剤が、対象における、カテプシン以外のタンパク質、受容体または標的を調節することによってウイルスを阻害する薬剤である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項59】
前記第2の治療剤が、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)を調節する薬剤である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項60】
前記第2の治療剤が、対象における受容体を調節する、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項61】
前記対象における前記受容体が、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)阻害剤である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項60に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項62】
TMPRSS2を調節する前記第2の治療剤が、カモスタット(FOY-305)、ナファモスタットまたはそれらの薬学的に許容可能な塩である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項59に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項63】
前記第2の治療剤が、免疫調節剤として機能し、かつ前記対象におけるサイトカインストームを防止または改善する薬剤である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項59に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項64】
免疫調節剤として機能する前記第2の治療剤が、4-アミノキノリン化合物もしくは8-アミノキノリン化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項63に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項65】
免疫調節剤として機能する前記第2の治療剤が、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、タフェノキン、プリマキンまたはそれらの治療的に許容可能な塩である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項63に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項66】
前記ウイルスが、コロナウイルスである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項53または請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項67】
前記コロナウイルスが、SARS-CoVである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項66に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項68】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項66に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項69】
前記ウイルス性疾患が、COVID-19、SARSまたはMERSである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項66に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項70】
前記ウイルスが、エボラウイルスである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項53または請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項71】
前記ウイルスが、ジカウイルスである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項53または請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項72】
前記ウイルス性疾患が、小頭症、ギランバレー症候群、重度の脳異常または神経障害である、ウイルス性疾患の治療における使用のための、請求項71に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項73】
前記ウイルスが、ニパウイルスである、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項53または請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項74】
前記ウイルスが、エンテロウイルスである、前記ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項53または請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項75】
前記ウイルスが、インフルエンザウイルスである、前記ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、請求項53または請求項55に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項76】
ウイルス性疾患の治療に使用するための医薬の製造における、以下の構造:
【化9】
を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、前記ウイルスが、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV)、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、フラビウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルス)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルス(NiV)、ヘンドラウイルス、アレナウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、エコーウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、使用。
【請求項77】
ウイルス性疾患の治療に使用するための医薬の製造における、治療有効量の第2の治療剤と組み合わせた、治療有効量の請求項76に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である第1の治療剤の使用であって、
前記第2の治療剤が、請求項76に記載の化合物ではない治療剤である、使用。
【請求項78】
ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、レラカチブまたはその薬学的に許容可能な塩と、カモスタットまたはその薬学的に許容可能な塩とを含む組合せ。
【請求項79】
前記ウイルス性疾患が、SARS-CoV-2によって引き起こされる、請求項78に記載の組合せ。
【請求項80】
前記ウイルス性疾患が、COVID-19である、請求項78に記載の組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
共同研究契約の当事者の名称
本明細書に記載されている発明は、GlaxoSmithKline LLC(GSK)とアメリカ陸軍感染症医学研究所(USAMRIID)との間で2015年10月22日に締結された共同研究開発協定(CRADA)およびGSKとUSAMRIIDとの間で2018年12月21日に締結された共同研究開発協定(CRADA)の対象である。
【0002】
本発明は、米国陸軍感染症医学研究所(アメリカ陸軍医学研究開発コマンドの従属コマンド)によって与えられたW81XWH-16-0019およびW81XWH-19-0083に基づく政府の援助によってなされたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本明細書と共に提出される、2021年3月26日に作成されたPU66782WO_SEQ_LIST_ST25と名付けられた配列表(サイズは2KB)は、これによって、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
本発明は、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を予防および/または治療するためのある特定のカテプシン阻害剤化合物、方法および医薬組成物に関する。そのような化合物を調製する方法およびその化合物を使用する方法も開示されている。特に、なかでも、コロナウイルス科およびフィロウイルス科のウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療および予防が開示されている。
【背景技術】
【0005】
毎年、ウイルスによって、世界中で数百万人の死がもたらされる(例えば、Fact Sheets on HIV/AIDS,Hepatitis C Virus,and Influenza(世界保健機構)を参照のこと)。ウイルス感染によって引き起こされる疾患は、その原因となるウイルスの構造、サイズ、ゲノムおよび感染サイクルが多種多様であるため、多種多様であり、これがこの分野における研究の努力を複雑にし、打ち砕く傾向がある事実である。ウイルスは、ウイルスゲノムの種類を含む、いくつかの特徴を評価することによって分類される。ウイルスゲノムは、DNAまたはRNAから構成され得、二本鎖または一本鎖であり得(これらは、さらに、プラス鎖、マイナス鎖またはアンビセンスであり得る)およびサイズおよびゲノム構成によって大きく異なり得る。
【0006】
一例として、エボラ出血熱は、5つの異なるエボラウイルスのうちの1つによって引き起こされる疾患である。系統の4つは、ヒトおよび動物において重症疾患を引き起こし得る。5つめであるレストンウイルスは、いくつかの動物において病気を引き起こしていたが、ヒトでは病気を引き起こしていなかった。エボラウイルス性疾患(これは、致死率が90%に及ぶ)は、しばしば、急な発熱、強い脱力感、筋肉痛、頭痛、吐き気および咽喉痛によって特徴付けられる、重症急性ウイルス性疾患である。その後、嘔吐、下痢、腎臓および肝臓の機能不全、ならびに、場合により、内出血および外出血が起こる。検査所見には、白血球および血小板数の低下、ならびに肝酵素の上昇が含まれることが多い。このような症状は、典型的には、初感染後2~21日の間に起こる。
【0007】
2014年に、歴史上最も大規模なエボラのアウトブレイクが西アフリカで発生し、1年後に沈静化する前に、28,000人超の患者が発生した。Warrenら、Nature Vol.531,p.381-389(2016)を参照のこと。このアウトブレイクの間にエボラに感染した患者は、5人中2人が死亡した。さらに、エボラウイルスを特異的に標的とする市販の承認薬の著しい欠品が生じた。その代わりとして、大多数の治療は、単純な緩和ケアに限られた。米国疾病管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)のEbola Outbreaks、2014(ウェブサイト)を参照のこと。https://www.cdc.gov/vhf/ebola/outbreaks/2014-west-africa/
【0008】
2018年に、今度はコンゴ民主共和国(DRC)の東部で、エボラの別のアウトブレイクが起こり、このアウトブレイクはウガンダに広がり、現在も続いている。この2回目の大規模なエボラのアウトブレイクにおいては、2592症例が確認され、2019年7月の時点で1743人が死亡している。
【0009】
2014年末から2016年にかけて、ジカウイルスとして知られている、以前は休止状態および/または軽症の蚊媒介ウイルスが、ブラジルで爆発的に増加し、蚊の種Aedes aegyptiの生息地であったラテンアメリカとカリブのほぼ全ての国に1年以内に広がった。ジカウイルス感染は、典型的には、感染者に軽症または無症状の疾患を生じさせるが、場合により、ジカウイルスによる感染後のギランバレー症候群(まれな神経障害である)の報告数が増加し、その影響が持続する。さらに厄介なことに、2015年に、ブラジルからWHOに、ある特定の症例、特に妊娠中にジカウイルスに感染した母親から生まれた乳児において、ジカが、潜行性かつ厄介な有害事象に関係することが報告された。観察された有害事象は、小頭症および重度の脳異常であった。2016年の初めまでに、WHOは、ジカと、小頭症の症例および他の神経障害との間の関連が、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であることを報告し、また、ジカのアウトブレイクが起きている国において報告されている小頭症およびギランバレー症候群障害の原因として、ジカウイルスは、科学的な共通認識によって支持されていると結論した(さらなる議論については、https://www.who.int/emergencies/zika-virus/articles/one-year-outbreak/en/index1.htmlを参照のこと)。2018年7月の時点で、ジカウイルス感染は、86か国で報告されており、このウイルスまたは関連する神経疾患のための治療は知られていない(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/zika-virus)。
【0010】
伝染性が高く、発症率が高いコロナウイルス感染症もまた、過去20~30年に、多数の世界的規模の衛生上の危機をもたらしている。2003年に、病因不明の非典型的な肺炎のアウトブレイクが複数の国で起こり、重症急性呼吸器症候群(SARS)と呼ばれた。SARSは、コロナウイルスの新たな株と関連しており(https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5214a1.htm)、最終的にSARS-CoVと名付けられた。SARS-CoVは、29か国で、8,098人の感染者を出し、774人の死亡が報告された(https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5249a2.htm)。
【0011】
2012年9月に、サウジアラビアで重症呼吸器疾患の患者が報告された。この疾患は、新たなコロナウイルスの重症合併症であると特定された。追跡したところ、後に中東呼吸器症候群(MERS)と名付けられることになる疾患の最初の症例は、2012年4月にヨルダンで発生したものと確認され、MERSの原因となるウイルスは、MERS-CoVと名付けられた。MERSは、重症呼吸器疾患を引き起こし、患者は、発熱、咳および重度の息切れを示す。MERSの発症率は35%近いと判定されており、MERS10症例あたり3~4人が死に至る。2019年の遅くまでに、MERS2494症例の確認および858人の死亡が報告され(https://www.who.int/emergencies/mers-cov/en/)、これらの症例および死亡の大部分がサウジアラビアで報告された。今日までに、27か国でMERS-CoVの症例が報告されているが、報告されたMERSの全ての症例は、アラビア半島への旅行、アラビア半島からの旅行、アラビア半島を通過する旅行、アラビア半島内での居住またはアラビア半島付近での居住が関係している。
【0012】
最近、2019年12月の最終週に、別の新たなコロナウイルス関連疾患が、中国の武漢で報告された。2020年1月30日に、WHOは、COVID-19が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であると宣言した(https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/events-as-they-happen)。この新たなウイルス性疾患の原因となるコロナウイルスは、最初は2019-nCoVと呼ばれ、この疾患は、2020年2月11日に、WHOによってCOVID-19と名付けられた(https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/events-as-they-happen)。同じく2020年2月11日に、COVID-19の原因となるウイルスは、国際ウイルス分類委員会(International Committee Taxonomy of Viruses)(ICTV)によって、公式に、改めてSARS-CoV-2と命名された(https://talk.ictvonline.org/)。2020年3月11日に、WHOは、COVID-19をパンデミックであると宣言した(https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19---11-march-2020)。
【0013】
2019年12月以後、COVID-19は、中国から190か国に広がり、531,000を超える症例が確認され、24,000人を超える死亡が報告されており(https://experience.arcgis.com/experience/685d0ace521648f8a5beeeee1b9125cd)(数字は、2020年3月26日の午後11時(米国の東部夏時間)現在)、COVID-19(死亡率は、およそ2%(https://www.who.int/csr/sars/archive/2003_05_07a/en/))は、SARSまたはMERS(https://www.hindustantimes.com/world-news/who-warns-against-novel-coronavirus-blanket-measures/story-bbTlCTA9xwzC8fSWK4d9CN.html_)ほど致命的ではないが、範囲と重症度において、2003年のSARS-CoVコロナウイルスのアウトブレイクで見られた影響をはるかに上回っている(https://www.ibtimes.sg/drawing-parallels-sars-mers-wuhan-coronavirus-38517)。SARSは、死亡率が約15%であり(https://www.who.int/csr/sars/archive/2003_05_07a/en/)、MERSは、死亡率が約35%である(https://www.who.int/news-room/q-a-detail/middle-east-respiratory-syndrome-coronavirus-(mers-cov))。
【0014】
コロナウイルスは、長さが26~32kbである、エンベロープがある一本鎖プラス鎖RNAゲノムから構成されている。コロナウイルスは、系統発生学的な類似性によって、4つのカテゴリー、すなわちα(例えば、229EおよびNL-63)、β(例えば、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、HKU1およびOC43)、γおよびδに分類される。SARS-CoV-2は、また、SARS-CoV-1と79%の配列相同性を有すると報告されているが、SARS-CoV-2ゲノムのある特定の領域は、SARS-CoV-1に対して、より高いまたはより低い保存性を示す。
【0015】
コロナウイルス(SARS-CoV-2を含む)は、細胞に侵入するために、宿主の細胞表面受容体(ACE2)に結合するための、膜に結合しているスパイク(S)タンパク質を利用する。この三量体のSタンパク質は、2つのサブユニット、S1とS2を含む。S1サブユニットは、ACE2に結合することができる、受容体結合領域(RBD)と呼ばれるフラグメントを含む。宿主細胞に侵入した後、RNAゲノムは、宿主のリボソーム機構によって、2つの大きなポリペプチドおよびいくつかのより小さなポリペプチドに翻訳される。この2つの大きなポリペプチドは、2種類のプロテアーゼ、コロナウイルスメインプロテアーゼ(3C様)およびパパイン様プロテアーゼによってプロセシングを受け、ウイルスの複製およびパッケージングに必要なタンパク質が生成される。
【0016】
SARS-CoV-2のいくつかのクレード(株)が同定されており、それらは、L(武漢に由来する原株)、S(LからSへのアミノ酸交換(ORF8:L84S変異)にちなんで名付けられた)、G(スパイクタンパク質におけるDからGへのアミノ酸交換(S:D614G変異)にちなんで名付けられた)、V(GからVへのアミノ酸交換(ORF3a:G251V変異)にちなんで名付けられた)およびO(他のクレードに関するこれらの基準のいずれにも合致しない配列)と呼ばれる。クレードGは、2つの派生クレード、GH(ORF3a:Q57H変異によって特徴付けられる)およびGR(N:RG203KR変異を有する)を含む。一般に、クレードGおよびGRは、欧州で流行しており、クレードSおよびGHは、主として米国で確認されている。Lクレードは、主としてアジアからの配列によって代表される。現在、クレードGおよびそこから派生した子孫クレードGHおよびGRは、SAR-CoV-2ゲノム配列の中で最も一般的であり、全世界的に、世界の全ての配列の74%を占めている。GRクレード(スパイクのD614G変異と、ヌクレオカプシドのRG203KR変異の両方を有する)は、世界的に、SARS-CoV-2ゲノム集団の最も一般的な代表である。最初のウイルス株(クレードL)は、引き続き配列決定されたゲノムの7%を占めており、クレードSおよびVは、配列の世界的なデータセットにおいて同様の頻度を示す。SARS-CoV-2クレードのやや異なる評価については、Li,T.,Liu,D.,Yang,Y.ら、Phylogenetic supertree reveals detailed evolution of SARS-CoV-2.Sci Rep 10,22366(2020)を参照のこと。https://doi.org/10.1038/s41598-020-79484-8。
【0017】
いくつかのグループがSARS-CoV-2ゲノムの比較的低い可変性を確認したが、異なる国の中で観察される致死率または伝染速度の違いが異なるクレード間の病原性の違いと関係があるかどうかについては明らかではない。いくつかの新しい変異体が、最近、英国(201/501Y.V1/B.1.1.7)、南アフリカ(20H/501Y.V2/B.1.351)、ブラジル(P.1/20J/501Y.V3/B.1.1.248)で出現しており、カリフォルニアにおける新たな変異体は、クラスター20Cに由来し、5つの変異(ORF1a:I4205V、ORF1b:D1183Y、S:S13I;W152C;L452R)によって規定され、CAL.20C(20C/S;452R;B.1.429)と呼ばれる。
【0018】
不活化ワクチン、核酸ワクチン、アデノウイルスベースのベクターワクチンおよびリコンビナントサブユニットワクチンを含む、多様な種類のSARS-CoV-2ワクチンが現在開発中である。大多数のワクチンは、Sタンパク質の一部または全部を含むか、またはそれらをコードしている。しかしながら、これらのワクチンは、Sタンパク質の変異を含むSARS-CoV-2の新たに出現する変異体に対して、十分な防護をもたらさない可能性があるという重大な懸念が存在する。
【0019】
ウイルス侵入およびSARS-CoV-2の複製を減少させる代替的な薬剤は、ウイルス感染の程度を減少させる能力を有し、この急速に進化するパンデミックにおける利益をもたらし得る。
【0020】
したがって、限定するものではないが、コロナウイルス、エボラウイルス、デングウイルス、ならびにZika(ZIKV)および西ナイルウイルスなどの蚊媒介ウイルスによって引き起こされる疾患を含む、ある特定のウイルス性疾患を治療または予防するための、安全かつ有効な医薬品に関する技術分野における、継続的な必要性が存在する。
【0021】
カテプシンは、ヒトを含む動物におけるタンパク質分解の通常の生理学的プロセスにおいて、例えば、結合組織の分解において機能する。しかしながら、身体内のカテプシン濃度が高くなると、疾患を引き起こす病理学的状態がもたらされ得る。特に、カテプシンK阻害剤の1つは、ある特定の寄生虫病および/または骨もしくは軟骨の分解を治療することが報告されている。PCT特許出願公開番号WO2001070232およびPCT特許出願公開番号WO2002017924、ならびにWangら、Tetrahedron,65:32(2009)を参照のこと。カテプシンKは、文献において、カテプシンOまたはカテプシン02という様々な名称で呼ばれてきた。しかしながら、名称カテプシンKが、最も適切な名称であると考えられている。よって、カテプシンは、種々の疾患状態において原因となる因子として意味づけられてきた。
【0022】
カテプシンL(カテプシンL1としても知られる)は、CTSL1遺伝子によってコードされている。カテプシンLは、タンパク質分解を引き起こし、また、骨分解および血管形成を含む様々な細胞内プロセスに関係するリソソームシステインプロテアーゼである。カテプシンLは、さらに、MHCクラスII抗原提示の間に抗原ペプチドを分解する役割を有している。細胞外に存在する場合、コラーゲンおよびエラスチンタンパク質を含む細胞外マトリックスを分解することが知られている。さらに、エボラウイルスのウイルスタンパク質を含むウイルスタンパク質の切断および成熟に関与することも報告されている。
【0023】
カテプシンBは、CTSB遺伝子によってコードされているリソソームシステインプロテアーゼである。カテプシンBは、細胞内および細胞外タンパク質分解の両方に重要であり、また、骨分解、がんおよびアルツハイマー病を含む多種多様な疾病に関連している。
【0024】
多くのウイルスは、感染、複製および伝播を可能にするために、宿主の細胞機構を乗っ取る。カテプシンと呼ばれるヒトシステインプロテアーゼファミリーのメンバーは、いくつかのウイルス由来のタンパク質の活性化に重要であることが知られている(Zhouら、Protease inhibitors targeting coronavirus and filovirus entry,Antiviral Research,2015)。例えば、宿主のカテプシンは、エボラウイルス糖タンパク質(K Schornburgら、J Virol(2006)80,4174)およびSARSコロナウイルススパイクタンパク質(B Boschら、J Virol (2008)82,8887)を切断および活性化することができる。より最近、ジカウイルスによる宿主感染における作用において、異化経路のありうる二重の機能、すなわち、オートファジーと自然免疫の間の協働およびオートファジーによる自然免疫の抑制が存在し得ることが報告された(Shoji-Kawatら、Int.Immunopharmaco.l,2014;18:55-65)。よって、オートファジーの後期のステージ(リソソーム酵素によるオートファゴソーム内容物の分解)を阻害する化合物(リソソームカテプシンBの活性を、(場合により、リソソームカテプシンBに直接結合することによって)阻害する化合物を含む)は、ジカウイルス(ZIKV)およびデングウイルスなどのウイルスに対して有効な薬剤であり得る(Grattonら、Int.J.Mol.Sci,2019 Mar;20(5):1048およびBalasubramianら、Antiviral Res.2017;vol.137;pp.141-159)。カテプシンBは、エボラウイルスのウイルスタンパク質を含むウイルスタンパク質の切断および成熟に関与することが報告されている。さらに、SARS-CoVは、受容体結合、およびそのスパイク(S)糖タンパク質による細胞内への侵入を媒介することが知られており、このプロセスは、カテプシンL阻害剤によって阻害される(Simmons,G.ら、“Inhibitors of cathepsin L prevent severe acute respiratory syndrome coronavirus entry”PNAS August 16,2005 102(33)11876-11881;https://doi.org/10.1073/pnas.0505577102)。このようなプロセスを調節し、およびウイルス複製サイクルを妨害し、それによって疾患の症状を軽減することができる阻害剤を同定する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0025】
本発明の目的は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のシステインプロテアーゼの阻害剤を投与すること、なかでも、治療有効量のパパインシステインプロテアーゼスーパーファミリーの阻害剤を投与すること、とりわけ、治療有効量のカテプシンファミリーのシステインプロテアーゼの阻害剤を投与することを含んでなる、方法を提供することである。レラカチブ(SB-462795)は、ヒト組織においてin vitroでおよびカニクイザルにおいてin vivoで、の両方で骨吸収を阻害する、カテプシンKの強力かつ経口的に生物が利用可能である小分子阻害剤である。SB-462795は、他のカテプシンと比較して39~300倍の選択性を示す、ヒトカテプシンK、LおよびVの強力な阻害剤である(Kは、それぞれ、およそ41、68および53pM)(S.Kumarら、Bone(2007),vol 40(1),pp.122-131を参照のこと)電子出版は2006年9月7日。レラカチブ(SB-462795)は、また、ヒト、サルおよびrate CatBについて、それぞれ15nM、11nMおよび6.7nMのKを有する、カテプシンB(CatB)の強力な阻害剤でもある(Yamashitaら、J.Med.Chem.(2006),49,1597-1612および下記表1を参照のこと)。したがって、本発明の目的は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のSB-462795(レラカチブ)またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなる、方法を提供することである。
【0026】
本発明の一態様は、それを必要とする対象においてウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の構造:
【化1】
[式中、
Xは、NおよびCRから選択され、
およびRは、それぞれ独立して、-Hおよび-(C-C)アルキルから選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0027】
本発明の一態様は、それを必要とする対象においてウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の構造:
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0028】
本発明の特定の態様は、それを必要とする対象においてウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記方法が、前記対象に、治療有効量の前記構造の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなり、前記化合物が、
【化3】
である、方法を提供する。
【0029】
本発明の一態様は、抗ウイルス療法に使用するための、以下の構造:
【化4】
[式中、
Xは、NおよびCRから選択され、
およびRは、それぞれ独立して、-Hおよび-(C-C)アルキルから選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0030】
本発明の一態様は、抗ウイルス療法に使用するための、
【化5】
である化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0031】
本発明の一態様は、第2の抗ウイルス化合物と組み合わせて、抗ウイルス療法に使用するための、
【化6】
である化合物またはその薬学的に許容可能な塩である第1の抗ウイルス化合物を提供する。
【0032】
本発明の一態様は、動物において、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、以下の構造:
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供し、前記ウイルスは、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV))、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、フラビウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(CoV-SARSウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルス、CoV-SARS-2)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルス(NiV)、ヘンドラウイルス、アレナウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、エコーウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。
【0033】
本発明の一態様は、COVID-19の治療または予防における使用のための、
N-((2S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)ベンゾフラン-2-カルボキサミド;
3-メチル-N-((S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)フロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボキサミド
である化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0034】
一実施形態において、対象、例えばヒトにおいてCOVID-19の治療または予防するための、
N-((2S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)ベンゾフラン-2-カルボキサミド;
3-メチル-N-((S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)フロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボキサミド
である化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0035】
一実施形態において、前記対象は、SARS-CoV-2に感染している。
【0036】
本発明は、また、治療有効量の
N-((2S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)ベンゾフラン-2-カルボキサミド;
3-メチル-N-((S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)フロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボキサミド
から選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩による、COVID-19に罹患した対象の治療方法も提供する。
【0037】
一実施形態において、前記対象は、ヒトである。
【0038】
さらに、本発明は、本明細書に記載されている方法にしたがって治療されるべき対象を特定する方法であって、SARS-CoV-2RNAの存在について、対象からの検体をアッセイする工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記方法は、L株SARS-CoV-2RNA、S株SARS-CoV-2RNA、G株SARS-CoV-2RNA、GH株SARS-CoV-2RNA、GR株SARS-CoV-2RNA、V株SARS-CoV-2RNA、O株SARS-CoV-2RNAを特定することができる。いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2RNAが検出された場合、前記方法は、本明細書に記載されている治療工程をさらに含んでもよい。
【0039】
特定の実施形態において、本発明は、COVID-19に罹患した患者の特定の集団、例えば、SARS-CoV-2に感染した患者または対象、すなわち、SARS-Co-2の検査結果が陽性の患者または対象、ハイリスクなカテゴリーの患者または対象、および二次性の状態を有する患者または対象のための治療を提供する。特定の実施形態において、患者または対象は、肺炎または急性呼吸促迫症を有する。さらなる実施形態において、患者または対象は、さらに、体外膜型酸素供給、機械式人工呼吸、非侵襲的人工呼吸を受けている、酸素療法を受けている、または抗ウイルスもしくはステロイド治療を受けている。
【0040】
一実施形態において、本明細書に記載されている使用および方法は、SARS-CoV-2のL株(クレード)、S株(クレード)、G株(クレード)、GH株(クレード)、GR株(クレード)、V株(クレード)またはO株(クレード)から選択されるSARS-CoV-2の株(クレード)に感染した患者の治療のためのものである。
【0041】
一実施形態において、本明細書に記載されている使用および方法は、SARS-CoV-2のL株(クレード)またはその変異株に感染した患者の治療のためのものである。別の実施形態において、本明細書に記載されている使用および方法は、SARS-CoV-2のS株(クレード)またはその変異株に感染した患者の治療のためのものである。別の実施形態において、本明細書に記載されている使用および方法は、SARS-CoV-2のG株(クレード)またはその変異株に感染した患者の治療のためのものである。
【0042】
別の実施形態において、本明細書に記載されている使用および方法は、SARS-CoV-2のGH株(クレード)またはその変異株に感染した患者の治療のためのものである。別の実施形態において、本明細書に記載されている使用および方法は、SARS-CoV-2のGR株(クレード)またはその変異株に感染した患者の治療のためのものである。別の実施形態において、本明細書に記載されている使用および方法は、SARS-CoV-2のV株(クレード)またはその変異株に感染した患者の治療のためのものである。別の実施形態において、本明細書に記載されている使用および方法は、SARS-CoV-2のO株(クレード)またはその変異株に感染した患者の治療のためのものである。特定の実施形態において、UK変異株(201/501Y.V1/B.1.1.7)、南アフリカ変異株(20H/501Y.V2/B.1.351)、ブラジル変異株(P.1/20J/501Y.V3/B.1.1.248)およびクラスター20Cに由来し、5つの変異(ORF1a:I4205V、ORF1b:D1183Y、S:S13I;W152C;L452R)によって規定され、CAL.20C(20C/S;452R;B.1.429)と呼ばれる新たなカリフォルニア変異株を含む、SARS-CoV-2の変異株に感染した対象の治療に関するものである。
【0043】
別の実施形態において、対象は、SARS-CoV-2に感染しておらず、よって、その使用は、COVID-19の予防のためのものである。このような予防的な使用に適した対象としては、ハイリスクなカテゴリーの対象、医療従事者およびSARS-CoV-2に感染した対象との濃厚接触者が挙げられる。
【0044】
本発明の一態様は、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療に使用するための医薬の製造における、以下の構造:
【化8】
を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、前記ウイルスは、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV)、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、フラビウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルス)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルス(NiV)、ヘンドラウイルス、アレナウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、エコーウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、使用を提供する。
【0045】
また、対象において、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、治療有効量の本明細書で開示されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を、薬学的に許容可能な担体または賦形剤と一緒に含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、レラカチブ(SB-462795)およびカテプシン結合の計算モデルを示す図である。図1Aは、(A)Cα二乗平均平方根が1.82Å(オングストローム)、配列相同性が24.8%となる、ヒトCatL(青、暗色)とCatB(バラ色、明色)の構造的アライメントを示す。図1Bは、ヒトCatL(青色)の分子表面に結合したSB-462795のドッキングポーズを示し;最上位にランク付けされたポーズは白色に着色されている。黄色に着色された表面領域(明色の右下領域)は、残基Leu144であり、残基Metを含むMacaca mulatta(アカゲザル)からの問い合わせ配列との差異である。図1Cは、ヒトCatLの形状充填モデルに結合したSB-462795の最上位にランク付けされたポーズを示す。図1Dは、ヒトCatBの形状充填モデルに結合したSB-462795の最上位にランク付けされたドッキングポーズを示す。図1Eは、ヒトCatL(緑色、手前左、上方中央)、ヒトCatB(バラ色、奥左、上方中央)およびヒトCatK(シアン、右上の離れた環)についてのSB-462795の最上位にランク付けされた立体構造的ポーズを示す。
図2図2は、SB-462795の広域スペクトル抗ウイルス活性を示す図である。抗ウイルス活性は、示されているウイルスと細胞の組合せを使用して、細胞ベースのハイコンテントアッセイにおいて評価した。図2A~2Jは、SB-462795の非存在下(DMSO単独、左側のパネル)および存在下(中央または右側のパネル、濃度が示されている)におけるウイルス感染細胞を示す。図2K~2Nは、イメージングアッセイを示し、緑色(最も明るい領域)は、示されているウイルスコートタンパク質に対する抗体を示し、青色(より暗く画像化された領域)は、ヘキスト色素を示す。図2Kは、Ebola Makonaを示す。図2Lは、マールブルグウイルスを示す。図2Mは、MERSコロナウイルスを示す。図2Nは、CoV-SARSを示す。図2Oは、ニパウイルスを示し、ニパウイルスは、HeLa細胞のin vitro感染の間にシンシチウムを形成させる。
図3図3は、エボラウイルス(EBOV)感染がない場合および感染がある場合における、SB-462795の薬剤学を示す図である。薬物動態パラメーターは、ラット(黒色)、アカゲザル(赤色)および非感染の正常な健常ヒト(青色)における、SB-462795について多段階での用量を増加させた研究において算出した。図3Aは、時間に対する血漿濃度の曲線下面積(AUC)を縦軸、および用量を横軸に示す。図3Bは、血漿中半減期を縦軸、これに対して用量を横軸に示す。図3Cは、投与後の血漿中濃度最大値を縦軸(Cmax)、これに対して用量を横軸に示す。図3Dは、血漿中濃度最小値またはトラフ濃度を縦軸(Cmin)、これに対して用量を横軸に示す。図3Eは、EBOVに感染したアカゲザルにおける、SB-462795の血漿曝露を示す。前記薬物を、1日1回で14日間、経管栄養によって経口的に投与した。ドットプロットは、個々の曝露レベルを示し、これと共に群平均(垂直のバー)および標準偏差(黒色で示されている)も示す。
図4図4は、アカゲザルにおける、EBOVに対する、SB-462795曝露後の保護を示す図である。図4Aは、エボラウイルスに曝露した個々のアカゲザルにおける、疾患の臨床徴候を示す。動物は、盲検の評価者によって、それぞれの日に複数回観察し、応答性、姿勢および活動性に基づいて、0~5の範囲の臨床疾患スコアに客観的に割り当てた。この図表は、第1~4日の間、臨床スコアを目立たせるために省略した。図4Bは、カプラン・マイヤー生存曲線を示す。ログランクマンテルコックス検定を使用して、ビヒクル対照(黒色)群対SB-462795治療(青色)について*P=0.0565。図4Cは、治療(青色)対ビヒクル(黒色)における個々の血漿中ウイルスRNA濃度についてのドットプロットを示す。図4D図4Iは、d 血小板、e 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、f フィブリノーゲン、g C反応性タンパク質(CRP)、h 血中尿素窒素(BUN)、i アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)を含む、選択された分析物についての、SB-462795治療(青色)およびビヒクル(黒色)の臨床病理学値を示す。
図5図5は、対照およびSB-462795治療サル(アカゲザル)サバイバーに存在するエボラウイルスの徴候を示す図である。図5Aは、肝臓における肝細胞壊死を示す。図5Bは、(アカゲザル)の脾臓における、リンパ濾胞の線維症、壊死および枯渇を示す。図5Cは、対照とSB-462795治療動物の両方の結腸において認められた、粘膜潰瘍、貫壁性壊死、出血および多発性梗塞を含む、増強された胃腸病理学を示す。
図6図6は、Calu-3細胞におけるSARS-CoV-2に対するカモスタットまたはレラカチブの抗ウイルス活性を示す図である。図6Aは、Calu-3細胞におけるSARS-CoV-2に対するカモスタット抗ウイルス活性を示す。図6Bは、Calu-3細胞におけるSARS-CoV-2に対するレラカチブ抗ウイルス活性を示す。
図7図7は、レムデシビルの主要血漿中代謝物と比較した、種々の濃度のカモスタットおよびレラカチブによって気液界面で培養した初代ヒト肺細胞におけるSARS-CoV-2抗ウイルス活性を示す図である。図7Aは、レムデシビルの主要血漿中代謝物と比較した、種々の濃度のカモスタットおよびレラカチブによって気液界面で培養した初代ヒト肺細胞におけるSARS-CoV-2抗ウイルス活性を示す。図7Bは、特に第6日において、レムデシビルの主要血漿中代謝物と比較した、種々の濃度のカモスタットおよびレラカチブによって気液界面(ALI)で培養した初代ヒト肺細胞におけるSARS-CoV-2抗ウイルス活性を示す。
図8図8は、レラカチブ単独、カモスタット単独およびレムデシビルの主要血漿中代謝物と比較した、気液界面(ALI)で培養した初代ヒト肺細胞の、レラカチブ(4μM)とカモスタット(30μM)の組合せについてのデータを示す図である。図8Aは、レラカチブ単独、カモスタット単独およびレムデシビルの主要血漿中代謝物と比較した、気液界面(ALI)で培養した初代ヒト肺細胞の、レラカチブ(4μM)とカモスタット(30μM)の組合せについての有効性データを示す。図8Bは、レラカチブ単独、カモスタット単独およびレムデシビルの主要血漿中代謝物と比較した、気液界面(ALI)で培養した初代ヒト肺細胞の、レラカチブ(4μM)とカモスタット(30μM)の組合せについての細胞毒性(cytoxicity)データ(ウイルスなし)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の目的は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防における使用もしくは方法のための、システインプロテアーゼを阻害する化合物、なかでも、パパインスーパーファミリーのシステインプロテアーゼを阻害する化合物、とりわけ、カテプシンファミリーのシステインプロテアーゼを阻害する化合物を提供することであり、ここで、前記方法は、そのような化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明の特定の実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防における使用もしくは方法のための、カテプシンK(CatK)、カテプシンL(CatL)、カテプシンV(CatV(L2))、カテプシンS(CatS)、カテプシンG(CatG)、カテプシンD(CatD)、カルパインおよび/またはカスパーゼ3-4のいずれかを阻害する化合物を提供し、ここで、前記方法は、治療有効量の本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0048】
本出願を全体にわたって、化合物、組成物および方法に関連する種々の実施形態に言及する。記載されている種々の実施形態は、多様な説明に役立つ例を提供することが意図されており、いずれかを選択すべき種の記載と解釈すべきではない。むしろ、本明細書において提供されている種々の実施形態の記載は、重なり合う範囲があり得ることに留意すべきである。本明細書において議論される実施形態は、例証的なものにすぎず、本発明の発明を限定することを意図するものではない。
【0049】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明することを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、以下の意味を有するものと定義されることとする多数の用語に言及する。
【0050】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、「アルキル」は、炭素原子数1~8、いくつかの実施形態においては炭素原子数1~8、いくつかの実施形態においては炭素原子数1~6の一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。「(Cx-Cy)アルキル」は、炭素原子数x~yのアルキル基を指す。用語「アルキル」としては、例えば、メチル(CH-)、エチル(CHCH-)、n-プロピル(CHCHCH-)、イソプロピル((CHCH-)、n-ブチル(CHCHCHCH-)、イソブチル((CHCHCH-)、sec-ブチル((CH)(CHCH)CH-)、t-ブチル((CHC-)、n-ペンチル(CHCHCHCHCH-)およびネオペンチル((CHCCH-)などの直鎖または分枝鎖ヒドロカルビルが挙げられる。
【0051】
「濃厚接触者」および「SARS-CoV-2に感染した対照との濃厚接触者」は、(i)感染した対照と同じ家庭で生活している者;(ii)感染した対照と直接的または物理的な接触があった者;(iii)対象が最初に症状を訴えた日またはそれ以後に、または、無症候性の対照については、試験検体採取前2日間に、感染した対照と2メートル以内に15分間を超えてとどまった者と定義される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「化合物」、「化合物(複数)」、「化学物質」および「化学物質(複数)」は、本明細書に記載されている一般式に包含される化合物、それらの一般式の下位属、および前記一般式および下位一般式の範囲内の化合物の任意の形態(前記化合物または化合物(複数)のラセミ体、立体異性体および互変異性体を含む)を指す。
【0053】
「COVID-19」は、SARS-CoV-2の任意の株またはクレードが感染した患者が示す症状(例えば、https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/symptoms-testing/symptoms.html)の集合を指す。症状としては、典型的には、咳、発熱および息切れ(呼吸困難)が挙げられるが、一部の患者は無症候性であり、そのようなケースでは、COVID-19は、単なるSARS-CoV-2感染を指す。
【0054】
「COVID-19に関連する二次的な状態」または「COVID-19に関連する二次的な状態(複数)」は、限定するものではないが、発熱;悪寒;咳;息切れ;呼吸困難;疲労;筋肉の痛み;身体痛;頭痛;胸部痛;伝染性角膜結膜炎(結膜炎);発疹;味覚の喪失;嗅覚の喪失;咽喉痛;うっ血;鼻水;吐き気;嘔吐;下痢;心悸亢進;激しい心拍;たこつぼ型心筋症;頭部ふらふら感;気が遠くなる感覚;ブレインフォグ;指、手、足、肢のしびれ;身体のピリピリ感;体位性起立性頻拍症候群(POTS);血液ポンプ作用の有効性低下;心臓の炎症;心膜の炎症;血餅;および神経症状を含む、COVID-19に関連する無数の症状のいずれか1つ以上を意味する。
【0055】
「サイトカインストーム」は、本明細書で使用される場合、炎症性サイトカインの過剰および/または制御されていない放出、例えば、多種多様な感染性疾患および非感染性疾患において、特にウイルス性疾患において起こることが観察されているものを指し、この場合、細胞機構と分子機構の両方が、そのような疾患(例えば、SARS、COVID-19、MERSなどのコロナウイルス疾患、ならびにインフルエンザ、エボラおよび他のウイルス性疾患)において見られるサイトカインストームに寄与し得る。サイトカインストームは、本明細書で使用される場合、例えば、Tisoncik,J.R.ら、in Microbiol.Mol.Biol Rev.(2012),76(1),16-32(“Into the Eye of the Cytokine Storm”)によって説明されている、過剰な免疫反応を指す。
【0056】
「ハイリスク」な対象および「ハイリスク」なカテゴリーは、年齢が60歳以上の対象;高ボディ・マス・インデックス(BMI)≧35の対象;喫煙者、心疾患、肺疾患、糖尿病、がんまたは高血圧を含む慢性の医学的状態を有する対象;がんまたは関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症および炎症性腸疾患などの自己免疫疾患のための治療を受けている対象、移植片を有する対象およびHIV陽性個体などの免疫不全の対象を含み、寮(dormatory)、介護付き住宅、ナーシングホーム、リハビリテーションセンターなどのコミュニティーレジデンスの居住者、約6フィート(2メートル)の間隔を取っていないおよび/またはフェイスマスクもしくはシールドによる保護を行っていない、10、25、50、100、500、1000人またはそれを超える人々の集まりへの参加者、ならびにSARS-CoV-2およびCOVID-19の症例が高水準である地域への、地域からのまたは地域を通過した旅行者が含まれる。
【0057】
「薬学的に許容可能な塩」は、種々の有機および無機対イオンに由来する薬学的に許容可能な塩であり、単に例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウム、ならびに、分子が塩基性官能基を含む場合、有機または無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩およびシュウ酸塩を含む。適切な塩としては、P.Heinrich Stahl,Camille G.Wermuth(編),Handbook of Pharmaceutical Salts Properties,Selection,and Use;2002に記載されているものが挙げられる。他の適切な薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載されている。
【0058】
「患者」または「対象」は、動物、特に哺乳動物を指し、また、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む。
【0059】
「COVID-19の予防」は、語句「予防」の通常の意味の通りに解釈される。
【0060】
「ラセミ体」は、エナンチオマーの混合物を指す。本発明の実施形態において、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、1つのエナンチオマーで鏡像異性的に富化されており、ここで、言及されている全てのキラル炭素は、1つの立体配置にある。一般に、鏡像異性的に富化された化合物または塩に対する言及は、特定されたエナンチオマーが、その化合物または塩の全てのエナンチオマーの総重量の50%(重量%)超を構成することを指すことが意図されている。
【0061】
「SARS-CoV-2」は、China National Microbiological Data Centreに受入番号NMDC10013002で寄託された配列のいずれか1つに対してRNAレベルで90%超の配列相同性を有するか、またはGlobal Initiative on Sharing All Influenza Data(GISAID)にリファレンスNC_045512.2SARS-CoV-2武漢ゲノム(Coronaviridae Study Group of the International Committee on Taxonomy of Viruses,2020)で寄託された配列のいずれか1つに対してRNAレベルで90%超の配列同一性を有するベータコロナウイルスである。別の実施形態において、SARS-CoV-2コロナウイルスは、China National Microbiological Data Centreに受入番号NMDC10013002で寄託された配列のいずれか1つに対して、またはリファレンスNC_045512.2SARS-CoV-2武漢ゲノム(GISAID)に対して、RNAレベルで95%超の配列相同性を有する。他の実施形態において、SARS-CoV-2コロナウイルスは、China National Microbiological Data Centreに受入番号NMDC10013002で寄託された配列のいずれか1つに対して、またはリファレンスNC_045512.2SARS-CoV-2武漢ゲノム(GISAID)に対して、RNAレベルで、96%超の配列相同性、97%超の配列相同性、98%超の配列相同性、99%超の配列相同性を有する。SARS-CoV-2の定義は、L、S、G、GH、GR、VおよびOクレード、ならびに最近のそれらのバリアント(UK変異株(201/501Y.V1/B.1.1.7)、南アフリカ変異株(20H/501Y.V2/B.1.351)、ブラジル変異株(P.1/20J/501Y.V3/B.1.1.248)およびクラスター20Cに由来し、5つの変異(ORF1a:I4205V、ORF1b:D1183Y、S:S13I;W152C;L452R)によって規定され、CAL.20C(20C/S;452R;B.1.429)と呼ばれる新たなカリフォルニア変異株を含む)を含む、SARS-CoV-2の全ての株を包含することが意図されている。定義されているように、参照ゲノム2019-nCoV-2(NC_045512)に対するナンバリングで、Sクレードは、位置8782にTおよび位置28144にCを有し;Lクレードは、位置8782にCおよび位置28144にTを有し;Gクレードは、位置23403にGを有し(A23403G);GHクレードは、位置25563にTを有し(G25563T);GRクレードは、位置28881から始まるGGGに代えてAACを有し(GGG28881AAC);クレードVは、位置26144にTを有し(ORG2a:G251V);およびOは、クレードL、S、G、GH、GRまたはVによって規定されない配列バリアントおよび変異を有する。留意すべきことは、SARS-CoV-2ゲノム中の実際のRNA塩基は、U(ウラシル)であるが、元のNCBI NC_045512.2リファレンスゲノムの標記と一致させるために、ここでは、遺伝的イベントを特徴付けるためにTが使用されていることである。SARS-CoV-2の定義は、また、クレードS(ORF8:L84S変異)、クレードG(S:D614G変異)、クレードGH(ORF3a:Q57H変異)、クレードGR(S:D614GとN:RG203KR変異の両方)、クレードV(ORF3a:G251V変異)およびクレードO(他のクレードに関するこれらの基準のいずれにも合致しない配列および変異)、ならびに上記で規定されたクレードに由来する他の新たに出現するバリアントについてのアミノ酸変異を有するSARS-CoV-2クレードも包含する。
【0062】
化合物の「溶媒和物」または「溶媒和物(複数)」は、上記で規定されているように、化学量論的または非化学量論的な量の溶媒に結合した化合物を指す。化合物の溶媒和物には、化合物のあらゆる形態の溶媒和物が含まれる。ある特定の実施形態において、溶媒は、揮発性、非毒性および/またはヒトへの微量の投与が許容される。適切な溶媒和物には、水が含まれる。
【0063】
「立体異性体」または「立体異性体(複数形)」は、1つ以上の立体中心のキラリティーが異なる化合物を指す。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。
【0064】
「互変異性体」は、プロトンの位置が異なる、化合物の交互に現れる形態、例えばエノール-ケトおよびイミン-エナミン互変異性体など、またはピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールなどの環の-NH-部分と環の=N-部分の両方に結合した環原子を含むヘテロアリール基の互変異性形態を指す。
【0065】
「治療有効量」は、本明細書で使用される場合(or as used herein mean)、所望の生物学的または医学的反応を誘発するために有効な量を指し、疾患を治療するために対象に投与された場合に、その疾患に対してそのような治療をもたらすために十分な化合物の量が挙げられる。有効量は、特定の化合物および治療を受ける対象の特徴、例えば、年齢、体重などによって異なる。有効量は、量の範囲を含み得る。当該技術分野において理解されているように、治療有効量は、1つ以上の用量中であり得る、すなわち、所望の治療エンドポイントを実現するために、単一用量または複数用量が必要とされ得る。治療有効量は、1つ以上の治療剤を投与する文脈において考えてもよく、1つ以上の他の薬剤と組み合わせて、所望のまたは有益な結果が実現され得るか、または実現される場合、単一の薬剤は、治療有効量で投与されると考えてもよい。一緒に投与される任意の化合物の適切な用量は、組み合わされた作用(例えば、相加または相乗作用)を理由として、場合により低減され得る。
【0066】
「対象における疾患の治療または治療もしくは予防」は、1)疾患の原因が与えられている対象または疾患の症状がまだ現れていない対象において、疾患が起こらないようにすること;2)疾患を抑制することまたは疾患の発症を阻止すること;3)疾患を改善することまたは疾患の退行を引き起こすこと、を指す。
【0067】
「COVID-19の治療」は、SARS-CoV-2のウイルス負荷の低減および/またはSARS-CoV-2のウイルス力価の低減および/またはこの疾患の症状の重症度または持続期間の低減を指す。ウイルス負荷は、患者からの検体に対して行われる、定量的RT-PCRアッセイまたはLFIAに基づくRDTなどの適切な定性的診断検査によって測定され得る。一実施形態において、検体は、上気道または下気道からの検体(例えば、鼻咽頭(nasopharyneal)もしくは中咽頭スワブ、唾液、下気道吸引物、気管支肺胞洗浄液、気管支生検、経気管支生検および鼻咽頭洗浄液/吸引物または鼻吸引物など)、唾液または血漿であり得る。特定の実施形態において、検体は、粘液である。さらに具体的な実施形態において、検体は、唾液である。多くの定量的RT-PCRアッセイのプロトコルは、https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/technical-guidance/laboratory-guidanceに記載されている。さらに、Cormanらのチームは、そのようなアッセイに使用するためのプライマーおよびプローブを公開している(Cormanら、European communicable disease bulletin,2020,DOI:10.2807/1560-7917)。一実施形態において、COVID-19 RdRp/He1アッセイが使用される。これは、臨床検体によってバリデートされており、検出限界は、ゲノムRNAで1.8TCID50/mLおよびin vitroRNA転写物で11.2RNAコピー/反応である。(Chanら、J Clin Microbiol.,2020,doi:10.1128/JCM.00310-20)。ウイルス力価は、当該技術分野においてよく知られているアッセイによって測定され得る。
【0068】
一実施形態において、COVID-19の治療は、単一の患者において、治療前(ベースライン)と治療期間の終わりに同じ起源から採取した検体から同一のアッセイによって測定されたウイルス負荷(RNAコピー/ml)の、少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、500倍または1000倍の低減を指す。一実施形態において、COVID-19の治療は、0.5log単位を超えるウイルス負荷の低減を指す。別の実施形態において、COVID-19の治療は、30人の患者からの同じ起源の検体から同一のアッセイで測定された平均ウイルス負荷(RNAコピー/ml)が、ベースラインと比較して、治療期間の終わりにおいて、少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、500倍または1000倍低減している状況を指す。
【0069】
一実施形態において、COVID-19の治療は、患者のバイタル、患者自身の報告および臨床的観察によって明らかにされるような、徴候および症状の臨床的な改善を指す。
【0070】
一実施形態において、COVID-19の治療は、治療期間の終わりにおいて、ウイルス負荷が、19RdRp/He1アッセイの検出限界未満に低減することを指す。
【0071】
芳香環を有する特定の化合物または一般式(例えばアリールまたはヘテロアリール環など)が記述される場合、当業者は、任意の二重結合の特定の芳香族性の位置は、それらが化合物ごとにまたは式ごとに異なる位置に記述されていた場合であっても、等価な位置の混合であることを理解するであろう。例えば、下記の2つのピリミジン環(AおよびB)において、二重結合は異なる位置に記述されているが、これらは同じ構造および化合物であることが知られている:
【化9】
【0072】
本発明は、セリンプロテアーゼ阻害剤、なかでもカテプシン阻害剤であり、かつウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患のための治療および/または予防療法としての用途を有する化合物、組成物および医薬組成物に向けられている。
【0073】
ウイルスは、ウイルスゲノムの種類を含む、いくつかの特徴を評価することによって分類される。ウイルスゲノムは、DNAまたはRNAから構成され得、二本鎖または一本鎖(これらは、さらにプラス鎖またはマイナス鎖であり得る)であり得、また、サイズおよびゲノム構成によって大幅に異なり得る。RNAウイルスは、遺伝子材料としてRNA(リボ核酸)を有するウイルスである。この核酸は、通常一本鎖RNA(ssRNA)である。RNAウイルスは、そのRNAのセンスまたは極性によって、マイナス鎖およびプラス鎖にさらに分類され得る。プラス鎖ウイルスRNAは、mRNAに類似しており、したがって宿主細胞によって直ちに翻訳され得る。マイナス鎖ウイルスRNAは、mRNAに対して相補的であり、したがって、翻訳前に、RNAポリメラーゼによってプラス鎖RNAに変換されなければならない。そうであるから、プラス鎖ウイルスの精製RNAは、完全なウイルス粒子よりも感染性は低いが、直接的に感染を引き起こし得る。マイナス鎖ウイルスの精製RNAは、プラス鎖RNAに転写される必要があるため、それ自体は感染性ではない;各ビリオンは、いくつかのプラス鎖RNAに転写され得る。
【0074】
プラス鎖一本鎖RNAウイルス(「プラス鎖RNAウイルス」)は、多くの異なるサブファミリーから、ウイルスの大きなスーパーファミリーを構成する。これらのウイルスは、植物界と動物界の両方にわたって、軽症の表現型から重症型の衰弱性疾患に及ぶ病状を引き起こす。プラス鎖RNAウイルスポリメラーゼスーパーグループの構成は、少なくとも、以下の科を含む:レビウイルス、ナルナウイルス、ピコルナウイルス、ジシストロウイルス、マルナウイルス、セキウイルス、コモウイルス、ポティウイルス、カリシウイルス、アストロウイルス、ノダウイルス、テトラウイルス、ルテオウイルス、トンブスウイルス、コロナウイルス、アルテリウイルス、ロニウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、ブロモウイルス、ティモウイルス、クロステロウイルス、フレキシウイルス、セコウイルス、バルナウイルス、イフラウイルス、サドワウイルス、チェラウイルス、ヘペウイルス、ソベモウイルス、ウムブラウイルス、トバモウイルス、トブラウイルス、ホルデイウイルス、フロウイルス、ポモウイルス、ペクルウイルス、ベニウイルス、ウルミアウイルスおよびイダエオウイルス。
【0075】
マイナス鎖一本鎖RNAウイルス(「マイナス鎖RNAウイルス」)は、異なるサブファミリーから、ウイルスのより小さなスーパーファミリーを構成する。これらのウイルスもまた、軽症の表現型から重症型の衰弱性疾患および死に及ぶ病状を引き起こす。マイナス鎖RNAウイルスポリメラーゼスーパーグループの構成は、少なくとも、以下の科を含む:ボルナウイルス科、フィロウイルス科、Paramyxoviridae、ラブドウイルス科、Nyamiviridae、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、Ophioviridae、Orthomyxoviridae、デルタウイルス、Dichorhavirus、Emaravirus、NyavirusおよびVaricosavirus。
【0076】
SARS-CoV-2に感染した対象の特定
SARS-CoV-2に感染した対象は、対象から取得した検体から、SARS-CoV-2由来のウイルスRNAを検出することによって特定され得る。限定することを意図するものではないが、上気道または下気道からの検体(例えば、鼻咽頭(nasopharyneal)または中咽頭スワブ、唾液、下気道吸引物、気管支肺胞洗浄液および鼻咽頭洗浄液/吸引液(spirate)または鼻吸引物など)であり得る。RNA検出の知られている任意の方法、例えば、ハイスループットシーケンシングまたはリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイなどが使用され得る。一実施形態において、前記方法は、以下の工程:
・検体からRNAを単離する工程;
・前記RNAを逆転写する工程;
・プローブ存在下でフォワードおよびリバースプライマーによって増幅する工程;および
・前記プローブを検出する工程
を含んでなり、ここで、増殖曲線が閾値と交差するサイクル閾値(Ct)が40サイクル以内である場合に、SARS-CoV-2の存在が確証される。
【0077】
さらに具体的な実施形態において、工程C)は、以下のものを使用する:
フォワードプライマー 5’ GACCCCAAAATCAGCGAAAT 3’(配列番号1)
リバースプライマー 5’ TCTGGTTACTGCCAGTTGAATCTG 3’(配列番号2)
プローブ 5’ FAM-ACCCCGCATTACGTTTGGTGGACC-BHQ-1 3’(配列番号3)
【0078】
代替的な実施形態において、工程C)は、以下のものを使用する:
フォワードプライマー 5’ TTACAAACATTGGCCGCAAA 3’(配列番号4)
リバースプライマー 5’ GCGCGACATTCCGAAGAA 3’(配列番号5)
プローブ 5’ FAM-ACAATTTGCCCCCAGCGCTTCAG-BHQ-1 3’(配列番号6)
【0079】
これらのプライマーおよびプローブは、Integrated DNA Technologies(カタログ番号10006606)およびBioSearch Technologies(カタログ番号KIT-nCoV-PP1-1000)から商業的に入手可能である。これらのプライマーを使用したリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイを実施するための詳細な説明は、CDCによって公開されている(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/lab/index.html)。
【0080】
したがって、一実施形態において、本発明は、対象から得た検体からのSARS-CoV-2に由来するウイルスRNAを検出する方法、および、ウイルスRNAが検出された場合、本明細書で説明されているようにCOVID-19を治療する工程、を含む、対象におけるCOVID-19を治療する方法を含む。
【0081】
一態様において、本発明は、対象におけるSARS-CoV-2を試験し、対象におけるSARS-CoV-2感染を治療する方法であって、以下の工程:
・対象に由来する検体からRNAを単離する工程;
・前記RNAを逆転写する工程;
・プローブの存在下でフォワードおよびリバースプライマーによって増幅する工程;
・前記プローブを検出する工程;
ここで、増殖曲線が閾値と交差するサイクル閾値(Ct)が40サイクル以内である場合に、前記対象はSARS-CoV-2感染を有すると定義される;
・前記SARS-CoV-2感染を有する対象を、治療有効量の
N-((2S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)ベンゾフラン-2-カルボキサミド;
3-メチル-N-((S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)フロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボキサミド、
またはその薬学的に許容可能な塩
である化合物で治療する工程
を含んでなる、方法を提供する。
【0082】
特定の実施形態において、前記化合物は、
【化10】
またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0083】
本方法の特定の実施形態において、前記対象は、ヒトであり、前記検体ならびに/またはプライマーおよびプローブは、上記の通りである。前記治療は、また、本明細書に記載されているように実施され得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2に感染した対象の特定方法は、対象が、L株SARS-CoV-2RNA、S株SARS-CoV-2RNA、G株SARS-CoV-2RNA、GH株SARS-CoV-2RNA、GR株SARS-CoV-2RNA、V株SARS-CoV-2RNAまたはO株SARS-CoV-2RNAに感染しているかどうかを特定することが可能である。本明細書に記載されている方法は、対象が、S株、L株、G株、GH株、GR株、V株またはO株に感染しているかどうかを特定するために、増幅されたcDNAをシークエンシングするさらなる工程、ならびに、対象が、最近のそれらのバリアント(UK変異株(201/501Y.V1/B.1.1.7)、南アフリカ変異株(20H/501Y.V2/B.1.351)、ブラジル変異株(P.1/20J/501Y.V3/B.1.1.248)およびクラスター20Cに由来し、5つの変異(ORF1a:I4205V、ORF1b:D1183Y、S:S13I;W152C;L452R)によって規定され、CAL.20C(20C/S;452R;B.1.429)と呼ばれる新たなカリフォルニア変異株を含む)に感染しているかどうかを特定するためのさらなる工程を含み得る。
【0085】
代替的な実施形態において、SARS-CoV-2に感染した対象は、対象から採取した血液または粘液のサンプル中のSARS-CoV-2抗原またはSARS-CoV-2に対する対象の抗体を検出することによって特定され得る。一実施形態において、SARS-CoV-2に感染した対象は、対象から採取した血液または粘液のサンプル中のSARS-CoV-2抗原を検出することによって特定され得る。任意の適切なアッセイが使用され得る。このような血清学的アッセイを行うためのキットは、既に、例えばBiomerica and Pharmactから、商業的に利用可能である。承認されている血清学試験の実施の詳細は、https://www.fda.gov/medical-devices/coronavirus-disease-2019-covid-19-emergency-use-authorizations-medical-devices/eua-authorized-serology-test-performanceで入手可能である。
【0086】
一実施形態において、SARS-CoV-2に感染した対象を特定するためのアッセイは、
a)SARS-CoV-2由来の少なくとも1つの固定化抗原を、前記対象からの血液と接触させる工程;および
b)前記固定化抗原に対する対象の抗体と、前記固定化抗原の間で形成される複合体を検出する工程
を含んでなり、ここで、工程b)において複合体が検出された場合に、前記対象はSARS-CoV-2に感染したものと特定される。
【0087】
このアッセイの特定の実施形態において、SARS-CoV-2由来の抗原は、N-タンパク質およびSタンパク質、またはそれらのフラグメントから選択される。より具体的な実施形態において、SARS-CoV-2由来の抗原は、N-タンパク質、Sタンパク質のS1ドメインおよびSタンパク質のS2ドメインから選択される。一実施形態において、このアッセイは、1つを超える固定化抗原を含む。
【0088】
一実施形態において、工程a)の後、かつ工程b)の前に、固定化抗原を洗浄する工程が存在する。
【0089】
一実施形態において、検出工程b)は、形成された複合体を、同じ抗原または抗原(複数)を認識する標識抗体または抗体(複数)と接触させた後、前記標識を検出することを含む。より具体的な実施形態において、前記複合体は、標識抗体(単数または複数)を加えた後、前記標識を検出する前に洗浄される。
【0090】
一実施形態において、前記標識は、着色した生成物を生成することができ、それによって標識の視覚的検出が可能になる。
【0091】
一実施形態において、前記アッセイは、ラテラルフローアッセイである。より具体的な実施形態において、前記ラテラルフローアッセイは、ディップスティック上に固定化抗原(単数または複数)を有する。
【0092】
一実施形態において、本発明は、対象におけるSARS-CoV-2を試験し、対象におけるSARS-CoV-2感染を治療する方法であって、以下の工程:
a)SARS-CoV-2由来の少なくとも1つの固定化抗原を、前記対象からの血液と接触させる工程;
b)前記固定化抗原に対する対象の抗体と前記固定化抗原の間で形成される複合体を検出する工程;
ここで、工程b)において複合体が検出された場合に、前記対象はSARS-CoV-2に感染したものと特定される;および
c)治療有効量の
N-((2S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)ベンゾフラン-2-カルボキサミド;
3-メチル-N-((S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)フロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボキサミド;
またはその薬学的に許容可能な塩
から選択される化合物によって、SARS-CoV-2感染を有する対象を治療する工程
を含んでなる、方法を提供する。
【0093】
特定の実施形態において、前記化合物は、
【化11】
またはその薬学的に許容可能な塩である。この方法の特定の実施形態において、前記対象は、ヒトであり、前記アッセイは、上記のように実施される。前記治療は、また、本明細書に記載されているように実施され得る。
【0094】
一実施形態において、SARS-CoV-2に感染した対象を特定する方法は、
a)SARS-CoV-2由来の抗原を認識する固定化抗体を、前記対象からの血液と接触させる工程;および
b)SARS-CoV-2由来の抗原と、前記抗原を認識する固定化抗体の間で形成される複合体を検出する工程
を含んでなり、ここで、工程b)において複合体が検出された場合に、前記対象はSARS-CoV-2に感染したものと特定される。
【0095】
このアッセイの特定の実施形態において、SARS-CoV-2由来の抗原は、N-タンパク質およびSタンパク質、またはそれらのフラグメントから選択される。
【0096】
より具体的な実施形態において、SARS-CoV-2由来の抗原は、N-タンパク質、Sタンパク質のS1ドメインおよびSタンパク質のS2ドメインから選択される。一実施形態において、このアッセイは、1つを超える固定化抗体を含み、各抗体は、異なる抗原を認識する。
【0097】
一実施形態において、工程a)の後、かつ工程b)の前に、固定化抗体を洗浄する工程が存在する。
【0098】
一実施形態において、検出工程b)は、工程a)で形成された複合体を、同じ抗原または抗原(複数)を認識する標識抗体と接触させた後、前記標識を検出することを含む。より具体的な実施形態において、工程b)は、前記標識を検出する前に、洗浄する工程を含む。
【0099】
一実施形態において、前記標識は、着色した生成物を生成することができ、それによって標識の視覚的検出が可能になる。
【0100】
一実施形態において、前記アッセイは、ラテラルフローアッセイである。より具体的な実施形態において、前記ラテラルフローアッセイは、ディップスティック上に固定化抗体(単数または複数)を有する。
【0101】
一実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染を試験し、治療する方法であって、以下の工程:
a)SARS-CoV-2由来の抗原を認識する固定化抗体を、前記対象からの血液と接触させる工程;および
b)SARS-CoV-2由来の抗原と、前記抗原を認識する固定化抗体の間で形成される複合体を検出する工程;
ここで、工程b)において複合体が検出された場合に、前記対象はSARS-CoV-2に感染したものと特定される、および治療有効量の
N-((2S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)ベンゾフラン-2-カルボキサミド;
3-メチル-N-((S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)フロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボキサミド;
またはその薬学的に許容可能な塩
から選択される化合物によって、SARS-CoV-2感染を有する対象を治療する工程
を含んでなる、方法を提供する。
【0102】
特定の実施形態において、前記化合物は、N-((2S)-4-メチル-1-(((4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-(ピリジン-2-イルスルホニル)アゼパン-4-イル)アミノ)-1-オキソペンタン-2-イル)ベンゾフラン-2-カルボキサミド
【化12】
またはその薬学的に許容可能な塩である。この方法の特定の実施形態において、前記対象は、ヒトであり、前記アッセイは、上記のように実施される。前記治療は、また、本明細書に記載されているように実施され得る。
【0103】
本発明の一態様は、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の以下の構造:
【化13】
[式中、
Xは、NおよびCRから選択され、
およびRは、それぞれ独立して、-Hおよび-(C-C)アルキルから選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む方法を提供する。
【0104】
特定の実施形態は、記載されているような、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法を提供し、ここで、Rは、-(C-C)アルキルである。
【0105】
特定の実施形態は、それを必要とする前記対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法を提供し、ここで、Rは、Hである。
【0106】
特定の実施形態は、それを必要とする前記対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法を提供し、ここで、Rは、-CHであり、Rは、Hである。
【0107】
1つの特定の実施形態は、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の化合物を投与することを含んでなり、前記化合物が、
【化14】
またはその薬学的に許容可能な塩である方法を提供する。
【0108】
1つの特定の実施形態は、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の化合物を投与することを含んでなり、前記化合物が、
【化15】
またはその薬学的に許容可能な塩である方法を提供する。
【0109】
関連する実施形態は、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書に記載されている第1の治療剤(特にSB-462795またはその薬学的に許容可能な塩)を、治療有効量の第2の治療剤と組み合わせて投与することを含んでなり、前記第2の治療剤が第1の治療剤ではない方法を提供する。
【0110】
関連する実施形態において、前記第2の治療剤は、動物の細胞内へのウイルス侵入をブロックする薬剤、ウイルスに対して直接的に(例えば、ウイルスタンパク質を調節することによって)作用する薬剤、動物における、カテプシン以外のタンパク質、受容体または標的を調節することによってウイルスを阻害する薬剤、フューリンおよび関連するプロタンパク質転換酵素(PC)プロテアーゼを調節する薬剤(Chengら、Furin Inhibitors Block SARS-CoV-2 Spike Protein Cleavage to Suppress Virus Production and Cytopathic Effects,Cell Reports,33,pp.108254,2020を参照のこと)(例えば、デカノイル-RVKR-クロロメチルケトン(CMK)などのペプチド阻害剤またはナフトフルオレセインなどの小分子阻害剤)、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)を調節する薬剤(例えば、カモスタット、ナファモスタットまたはその薬学的に許容可能な塩)、動物における受容体を調節する薬剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)阻害剤)、免疫調節剤(かつ、対象におけるサイトカインストームを防止または改善する)(例えば、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、タフェノキン、プリマキンもしくはその治療的に許容可能な塩を含む、4-アミノキノリン化合物または8-アミノキノリン化合物)であり、ここで、なかでも、前記対象は、動物であり、より具体的には、ヒトである。
【0111】
特定の実施形態は、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書に記載されている第1の治療剤(特にSB-462795またはその薬学的に許容可能な塩)を投与することを含んでなり、前記ウイルス性疾患が、マイナス鎖RNAウイルスまたはプラス鎖RNAウイルスによって引き起こされる方法を提供する。
【0112】
特定の実施形態は、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書に記載されている第1の治療剤(特にSB-462795またはその薬学的に許容可能な塩)を投与することを含んでなり、前記ウイルス性疾患が、ピコルナウイルス科、フラビウイルス科、フィロウイルス科およびコロナウイルス科からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる方法を提供する。
【0113】
特定の実施形態は、それを必要とする対象における、ウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書に記載されている第1の治療剤(特にSB-462795またはその薬学的に許容可能な塩)を投与することを含んでなり、前記ウイルス性疾患が、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス(口蹄疫ウイルス(FMDV))、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、フラビウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルス)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルス(NiV)、ヘンドラウイルス、アレナウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、エコーウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる方法を提供する。
【0114】
関連する実施形態において、それを必要とする対象における、ウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書に記載されている第1の治療剤(特にSB-462795またはその薬学的に許容可能な塩)を投与することを含んでなり、前記ウイルスがコロナウイルス、具体的にはSARS-CoV、なかでもSARS-CoV-2である方法が提供される。
【0115】
関連する実施形態において、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書に記載されている第1の治療剤(特にSB-462795またはその薬学的に許容可能な塩)を投与することを含んでなり、前記ウイルス性疾患が、COVID-19、重症急性呼吸器症候群(SARS)または(MERS)である方法が提供される。
【0116】
特定の実施形態は、抗ウイルス療法に使用するための、以下の構造:
【化16】
[式中、
Xは、NおよびCRから選択され、
およびRは、それぞれ独立して、-Hおよび-(C-C)アルキルから選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0117】
別の実施形態は、抗ウイルス療法に使用するための以下の構造:
【化17】
[式中、
Xは、NおよびCRから選択され、
およびRは、それぞれ独立して、-Hおよび-(C-C)アルキルから選択される。]
の、ウイルス性疾患の治療または予防における使用のための、化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0118】
特定の実施形態において、前記治療または予防における使用のための化合物は、前述のとおりであり、ここで、Rは、-(C-C)アルキルである。
【0119】
特定の実施形態において、前記治療または予防における使用のための化合物は、前述のとおりであり、ここで、Rは、Hである。
【0120】
特定の実施形態において、前記治療または予防における使用のための化合物は、前述のとおりであり、ここで、Rは、-CHであり、Rは、Hである。
【0121】
特定の実施形態において、治療または予防における使用のための化合物であって、前記化合物が、
【化18】
であり、前記ウイルスは、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV))、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、フラビウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(CoV-SARSウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルス、CoV-SARS-2)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルス(NiV)、ヘンドラウイルス、アレナウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、エコーウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、化合物が記述されている。
【0122】
特定の実施形態において、前記治療または予防における使用のための化合物は、前述のとおりであり、ここで、前記化合物は、
【化19】
である。
【0123】
特定の実施形態において、前記治療または予防における使用のための化合物は、前述のとおりであり、前記化合物は、第1の治療剤として使用するための、
【化20】
であり、前記第1の治療剤は、第2の治療剤と組み合わせて投与され、前記第2の治療剤は、前記第1の治療剤ではない。
【0124】
関連する実施形態において、前記ウイルス性疾患の治療または予防における前記第1の治療剤として使用するための化合物は、
【化21】
であり、前記第2の治療剤は、動物の細胞内へのウイルス侵入をブロックする薬剤、ウイルスに対して直接的に(例えば、ウイルスタンパク質を調節することによって)作用する薬剤、動物における、カテプシン以外のタンパク質、受容体または標的を調節することによってウイルスを阻害する薬剤、フューリンおよび関連するプロタンパク質転換酵素(PC)プロテアーゼを調節する薬剤(例えば、デカノイル-RVKR-クロロメチルケトン(CMK)などのペプチド阻害剤またはナフトフルオレセインなどの小分子阻害剤)、トリプシンまたはトリプシン様プロテアーゼを調節する薬剤、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)を調節する薬剤(例えば、カモスタット、ナファモスタットまたはその薬学的に許容可能な塩)、動物における受容体を調節する薬剤(and agent)(例えば、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)阻害剤)、免疫調節剤として機能し、かつ対象におけるサイトカインストームを防止または改善する薬物(例えば、免疫調節剤として機能する薬剤は、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、タフェノキン、プリマキンまたはその薬学的に許容可能なを含む、4-アミノキノリン化合物もしくは8-アミノキノリン化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩)である。
【0125】
特定の実施形態において、前記治療または予防における使用のための化合物は、前述のとおりであり、前記化合物は、
【化22】
であり、前記ウイルスは、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2)である。
【0126】
特定の実施形態において、前記治療または予防における使用のための化合物は,前述のとおりであり、前記化合物は、
【化23】
であり、前記ウイルス性疾患は、COVID-19、SARSまたはMERSである。
【0127】
特定の実施形態において、前記治療または予防における使用のための化合物は、前述のとおりであり、前記化合物は、
【化24】
であり、前記ウイルスは、エボラウイルス、ニパウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルスまたはジカウイルスのいずれかであり、前記ウイルス性疾患は、小頭症、ギランバレー症候群、重度の脳異常または神経障害である。
【0128】
一実施形態は、ウイルス性疾患の治療に使用するための医薬の製造における、以下の構造:
【化25】
を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、前記ウイルスが、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV)、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、フラビウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルス)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルス(NiV)、ヘンドラウイルス、アレナウイルス、リフトバレー熱ウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、エコーウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、使用を提供する。
【0129】
関連する実施形態において、説明したような、ウイルス性疾患の治療において使用するための医薬の製造における、治療有効量の第2の治療剤と組み合わせた、治療有効量の、以下の構造:
【化26】
を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩(salt therein)である第1の治療剤の使用を提供し、前記第2の治療剤は、前記第1の治療剤ではない治療剤である。
【0130】
一実施形態は、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療における使用のための医薬の製造における使用を提供し、前記ウイルスは、コロナウイルスである。なかでも、前記コロナウイルスは、SARS-CoV、SARS-CoV-2またはMERSを引き起こすコロナウイルスである。
【0131】
特定の実施形態は、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療に使用するための医薬の製造における、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供し、前記ウイルスは、コロナウイルスであり、前記ウイルス性疾患は、SARS、COVID-19またはMERSである。
【0132】
一実施形態は、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療における使用のための医薬の製造における、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供し、前記ウイルスは、コロナウイルスであり、前記ウイルスは、エボラウイルスである。
【0133】
一実施形態は、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療に使用するための医薬の製造における、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供し、前記ウイルスは、コロナウイルスであり、前記ウイルスは、ジカウイルスである。
【0134】
特定の実施形態において、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療に使用するための医薬の製造における、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の使用が提供され、前記ウイルスは、コロナウイルスであり、前記ウイルスは、ジカウイルスであり、前記ウイルス性疾患は、小頭症、ギランバレー症候群、重度の脳異常または神経障害である。
【0135】
一実施形態は、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療に使用するための医薬の製造における、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供し、前記ウイルスは、コロナウイルスであり、前記ウイルスは、ニパウイルス、エンテロウイルスまたはインフルエンザウイルスである。
【0136】
一実施形態において、対象において、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を治療または予防する方法であって、治療有効量のN-[(2S)-4-メチル-1-[[(4S,7R)-7-メチル-3-オキソ-1-ピリジン-2-イルスルホニルアゼパン-4-イル]アミノ]-1-オキソペンタン-2-イル]-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩(SB-462795またはレラカチブとしても知られる)を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、方法が提供される。名称は、PubChem U.S.National Library of Medicine,National Center for Biotechnology Information for レラカチブ(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/レラカチブ)で提供されている通りである。
【0137】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている化合物は、対象においてウイルス性疾患を予防または治療するために有用であり、前記ウイルス性疾患は、一本鎖RNAウイルスによって引き起こされる。
【0138】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている化合物は、対象において予防または治療するために有用であり、前記ウイルス性疾患は、プラス鎖一本鎖RNAウイルスによって引き起こされるか、または前記ウイルス性疾患は、マイナス鎖一本鎖RNAウイルスによって引き起こされる。
【0139】
いくつかの実施形態において、それを必要とする対象においてウイルス性疾患を治療する方法が提供され、前記ウイルス性疾患は、ニドウイルス目、ピコルナウイルス目、tymovirales、モノネガウイルス目、レオウイルス科、pycobirnaviridae、パルボウイルス科、アデノウイルス科、ポックスウイルス科、ポリオーマウイルス科、ヘルペスウイルス科、パラミクソウイルス科のウイルスのウイルスによって引き起こされ、前記方法は、本明細書に記載されている任意の化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物を、前記対象に投与することを含む。
【0140】
実施形態は、ウイルス性疾患を治療するための化合物、方法および医薬組成物を提供し、前記ウイルス性疾患は、ウイルスによって引き起こされ、前記方法は、治療有効量の本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする対象に投与することを含む。このような化合物を調製する方法、および前記化合物またはその医薬組成物を使用する方法もまた開示されている。特に、RNAまたはDNAウイルスによって引き起こされた対象におけるウイルス性疾患の治療および予防のための実施形態が開示されている。
【0141】
他の実施形態において、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)は、対象においてウイルス性疾患を治療するために有用であり、前記ウイルス性疾患は、ピコルナウイルス科、フラビウイルス科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科またはコロナウイルス科に属するウイルスによって引き起こされる。他の実施形態において、本明細書に記載されている化合物は、対象においてウイルス性疾患を治療するために有用であり、前記ウイルス性疾患は、ピコルナウイルス科に属するウイルスによって引き起こされる。他の実施形態において、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)は、対象におけるウイルス性疾患を治療するために有用であり、前記ウイルス性疾患は、コロナウイルス科に属するウイルスによって引き起こされる。
【0142】
さらに他の実施形態において、本明細書に記載されている化合物は、任意の系統学的な目、属、科または、限定するものではないが、下記表Aに列挙されているものを含む特定の種からのウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を予防または治療するために有用である。
【0143】
【表1-1】
【表1-2】
【0144】
さらなる実施形態において、治療方法または使用のための本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、下記表Bに記載されている化合物から選択される。
【0145】
化合物の調製
【0146】
【表2】
【0147】
本明細書に記載されている化合物、ならびに上記化合物1(SB-462795/レラカチブ)および化合物2は、以下の参考文献(これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている合成方法、一般的スキーム、および実施例を読むことによって、ならびにWangら、Tetrahedron,65:32(2009)に記載されているように、当業者によって合成され得る:CummingsらのPCT特許出願公開番号WO2001070232、およびTewらのPCT特許出願公開番号WO2002017924。
【0148】
本明細書に記載されている化学物質および中間体の単離および精製は、必要に応じて、任意の適切な分離または精製手順、例えば、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層クロマトグラフィー、またはこれらの手順の組合せなどによって実施することができる。適切な分離および単離手順の具体的な実例は、本明細書の下記の実施例を参照することによって得ることができる。しかしながら、他の同等の分離または単離手順もまた使用することができる。
【0149】
所望により、異性体(R)-体と(S)-体は、当業者に知られている方法によって、例えば、(例えば結晶化によって)分離することができるジアステレオ異性体塩または錯体の形成によって;(例えば結晶化、ガス液体または液体クロマトグラフィーによって)分離することができるジアステレオ異性の誘導体の形成によって;エナンチオマー特異性試薬を使用した1つのエナンチオマーの選択的反応、例えば、酵素的酸化または還元と、それに続く修飾および未修飾エナンチオマーの分離;キラル環境(例えば、キラルリガンドが結合したシリカなどのキラル担体上、またはキラル溶媒の存在下)におけるガス液体または液体クロマトグラフィーによって分割することができる。あるいは、特定のエナンチオマーは、光学活性試薬、基質、触媒または溶媒を使用した不斉合成によって、または1つのエナンチオマーを他のエナンチオマーに不斉転換によって変換することによって合成することができる。
【0150】
投与および製剤
ある実施形態において、薬学的に許容可能な希釈剤と、治療有効量の本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を投与する方法が提供される。
【0151】
本明細書に記載されている本発明の態様および実施形態において使用するための化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で供給することができる。
【0152】
本明細書の化合物の例示的な薬学的に許容可能な酸塩は、以下に限定するものではないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グルタル酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、硝酸(nitic)、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、イソクエン酸、トリフルオロ酢酸、パモ酸、プロピオン酸、アントラニル酸、メシル酸、オキサロ酢酸、オレイン酸、ステアリン酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、ニコチン酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、硫酸、サリチル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルギン酸(algenic)、β-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸およびガラクツロン酸を含む酸から調製され得る。好ましい薬学的に許容可能な塩としては、塩酸およびトリフルオロ酢酸の塩が挙げられる。
【0153】
本発明の化合物の例示的な薬学的に許容可能な無機塩基塩は、金属イオンを含む。より好ましい金属イオンは、限定するものではないが、適切なアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および他の生理学的に許容できる金属イオンを含む。無機塩基に由来する塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、三価マンガン、二価マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを、それらの通常の価数で含む。他の例示的な塩基塩は、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩を含む。さらに他の例示的な塩基塩は、NaOH、KOH、NaCO、KCO、NaHおよびカリウムt-ブトキシドを含む水酸化物、炭酸塩、水素化物およびアルコキシドを含む。
【0154】
薬学的に許容可能な有機非毒性塩基に由来する塩は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンを含み、部分的に、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)およびプロカイン;天然の置換アミンを含む置換アミン;環状アミン;第四級アンモニウムカチオン;および塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどを含む。
【0155】
本明細書に記載されている上記の塩は、本明細書に記載されている対応する化合物から特に化合物SB-462795から、通常の手段で、当業者によって調製され得る。例えば、本明細書に記載されている薬学的に許容可能な塩は、通常の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、遊離酸または塩基形態のこれらの化合物を、水中または有機溶媒中で、またはこれら2種の混合物中で(一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水媒体が好ましい)、化学量論的な量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製することができる。前記塩は、溶液から析出し得、濾過によって集められ得るか、または溶媒の蒸発によって回収され得る。塩中のイオン化の程度は、完全なイオン化から、ほぼ非イオン化まで様々であり得る。適切な塩の他のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418(この文献の開示は、参照により、適切な塩のリストに関してのみ本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0156】
本明細書に記載されている本発明の態様および実施形態における使用のための化合物は、非溶媒和形態と溶媒和形態の両方で存在し得る。用語「溶媒和物」は、本明細書において、本発明の化合物と、1つ以上の薬学的に許容可能な溶媒分子、例えばエタノールを含む分子複合体を記述するために使用される。用語「水和物」は、前記溶媒が水である場合に使用される。薬学的に許容可能な溶媒和物は、水和物および他の溶媒和物を含み、ここで、結晶化の溶媒は、同位体的に置換されていてもよい(例えば、DO、d-アセトン、d-DMSO)。
【0157】
本明細書に記載されている本発明の態様および実施形態において使用するための化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を含み得、また、2つ以上の立体異性体として存在し得る。
【0158】
本発明の特許請求されている化合物の範囲には、本明細書に記載されている化合物の全ての立体異性体、幾何異性体および互変異性形態(1種類を超える異性を示す化合物、およびその1つ以上の混合物を含む)が含まれる。また、酸付加または塩基塩も含まれ、ここで、前記対イオンは、光学活性(例えば、D-乳酸塩またはL-リジン)またはラセミ(例えば、DL-酒石酸塩またはDL-アルギニン)である。
【0159】
個々のエナンチオマーの調製/単離のための通常の技術としては、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または、例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用した、ラセミ体(または塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割が挙げられる。
【0160】
あるいは、ラセミ体(またはラセミ前駆体)は、適切な光学活性化合物(例えばアルコール)または、本明細書に記載されている化合物が酸性または塩基性部位を含んでいる場合、酒石酸または1-フェニルエチルアミンなどの酸または塩基と反応させてもよい。得られたジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶化によって分離することができ、また、このジアステレオ異性体の1つまたは両方は、当業者によく知られている方法によって、対応する純粋なエナンチオマー(単数または複数)に変換することができる。
【0161】
本発明のキラル化合物(またはそのキラル前駆体)は、不斉な固定相を有する樹脂、および、0~50%(典型的には2~20%)のイソプロパノール、および0~5%のアルキルアミン(典型的には0.1%のジエチルアミン)を含む炭化水素(典型的にはヘプタンまたはヘキサン)からなる移動相によるクロマトグラフィー(典型的にはHPLC)を使用して、鏡像異性的にされた形態で得られ得る。溶出液を濃縮することによって、富化された混合物を得る。
【0162】
立体異性体の混合物は、当業者に知られている通常の技術によって分離することができる。[例えば、“Stereochemistry of Organic Compounds”by E L Eliel(Wiley,New York,1994)を参照のこと。]
【0163】
本発明は、本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容可能な同位体的に標識された形態を含み、ここで、1つ以上の原子が、同じ原子番号であるが、天然に通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置換されている。
【0164】
本明細書に記載されている化合物(特にSB-46-2795)またはその薬学的に許容可能な塩、および本明細書に記載されているその医薬製剤は、それを必要とする対象における、ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療または予防のための、1つ以上の他の治療剤と組み合わせて使用し得るか、または、そのような1つ以上の他の治療剤を含み得る。前記1つ以上の他の治療剤は、抗炎症剤、抗コリン剤(特にM1/M2/M3受容体アンタゴニスト)、β2-アドレナリン受容体アゴニスト、抗生物質などの抗感染剤、抗ウイルス剤、抗レトロウイルス剤、または抗ヒスタミン剤、3Cプロテアーゼ阻害剤、P4IKB阻害剤、カモスタットおよびナファモスタットを含むII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)阻害剤、「サイトカインストーム」を改善および/または防止する免疫調節化合物(限定するものではないが、ヒドロキシクロロキン、クロロキンおよびタフェノキンを含む)およびPDE4阻害剤から選択され得る。よって、本発明の実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための組合せを提供し、前記組合せは、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または生理学的に機能するその誘導体を、第2の治療剤と一緒に含み、ここで、前記第2の治療剤は、コロナウイルス(特にSARS-CV-2-2)の治療のために研究されているか、または現在投与されている薬剤(クロロキン、hydrochloriquine、タフェノキン、カレトラ(リトナビルおよびロピナビル)、インターフェロン-α-2b、レムデシビル、ファビピラビル、アクテムラ(トシリズマブ)、ケブザラ(サリルマブ)を含む)である。特定の実施形態において、前記第2の治療剤は、抗ウイルス剤、特に抗レトロウイルス剤、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、抗マラリア剤、抗炎症剤、免疫調節剤、気管支拡張剤、抗喘息剤、RNAポリメラーゼ阻害剤、ヘムポリメラーゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、picornain3C阻害剤または3C様(3CL)プロテアーゼ阻害剤を含むシステイン(3CまたはC3)プロテアーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害剤(isnhibitor)、ホスファチジルイノシトール-4-キナーゼベータ(PI4KB)阻害剤、B-アドレナリン受容体アゴニストまたは抗コリン剤である。
【0165】
本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)と組み合わせて使用するために適切なβ2-アドレナリン受容体アゴニストとしては、例えば、サルメテロール(これは、ラセミ体であってもよく、またはR-エナンチオマーなどの単一のエナンチオマーであってもよい)、サルブタモール(これは、ラセミ体であってもよく、またはR-エナンチオマーなどの単一のエナンチオマーであってもよい)、ホルモテロール(これは、ラセミ体であってもよく、またはR,R-ジアステレオマーなどの単一のジアステレオマーであってもよい)、salmefamol、フェノテロール、carmoterol、etanterol、naminterol、クレンブテロール
ピルブテロール、flerbuterol、レプロテロール、バンブテロール、インダカテロール、テルブタリン、ならびにそれらの塩(例えば、サルメテロールのキシナホ酸(1-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボキシレート)塩、サルブタモールの硫酸塩もしくは遊離塩基、またはホルモテロールのフマル酸塩)が挙げられる。
【0166】
本明細書に記載されている化合物(特にSB-462785)と組み合わせて使用するために適切な抗炎症剤としては、抗炎症関節リウマチ免疫療法剤(トシリズマブおよびサリルマブを含む)、副腎皮質ステロイドが挙げられる。本明細書に記載されている化合物と組み合わせて使用され得る副腎皮質ステロイドの例は、抗炎症活性を有する経口および吸入副腎皮質ステロイドおよびそれらのプロドラッグである。例としては、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル(フロ酸フルチカゾン)、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸Σ-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3S-イル)エステル、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-(2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピルカルボニル(tetramethycyclopropylcarbonyl))オキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸シアノメチルエステルおよび6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-(1-メチルシクロプロピルカルボニル(methycyclopropylcarbonyl))オキシ-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル、ベクロメタゾンエステル(例えば、17-プロピオン酸エステルまたは17,21-ジプロピオン酸エステル、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾンエステル(例えば、フロ酸モメタゾン)、トリアムシノロンアセトニド、rofleponide、シクレソニド(16α,17-[[(R)-シクロヘキシルメチレン]ビス(オキシ)]-11β,21-ジヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン)、butixocort propionate、RPR-106541およびST-126が挙げられる。一実施形態において、副腎皮質ステロイドとしては、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-(2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピルカルボニル(tetramethycyclopropylcarbonyl))オキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸シアノメチルエステルおよび6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-(1-メチルシクロプロピルカルボニル(methycyclopropylcarbonyl))オキシ-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルが挙げられる。一実施形態において、副腎皮質ステロイドは、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルである。
【0167】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物と組み合わせて使用するために適切な副腎皮質ステロイドとしては、例えば、WO2002/088167、WO2002/100879、WO2002/12265、WO2002/12266、WO2005/005451、WO2005/005452、WO2006/072599およびWO2006/072600に記載されているものが挙げられる。
【0168】
転写促進に対する転写抑制について選択性を有し得、かつウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(SB-462795を含む)との組合せにおいて有用であり得るグルココルチコイドアゴニスト作用を有する非ステロイド性化合物としては、以下の特許出願公開および特許に包含されているものが挙げられる:WO1998/54159、WO2000/66590、WO2001/16128、WO2002/02565、WO2003/059899、WO2003/061651、WO2003/082280、WO2003/082787、WO2003/082827、WO2003/086294、WO2003/101932、WO2003/104195、WO2004/005229、WO2004/009017、WO2004/018429、WO2004/026248、WO2006/000398、WO2006/000401、WO2006/015870、WO2006/108699、WO2007/000334、WO2007/054294、WO2007/122165、WO2007/144327およびWO2008/000777。
【0169】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)と組み合わせて使用するための適切な抗炎症剤としては、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。
【0170】
適切なNSAIDとしては、例えば、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤または混合されたPDE3/PDE4阻害剤)、ロイコトリエンアンタゴニスト、ロイコトリエン合成の阻害剤(例えば、モンテルカスト)、iNOS阻害剤、トリプターゼおよびエラスターゼ阻害剤、ベータ-2インテグリンアンタゴニストおよびアデノシン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、アデノシン2aアゴニスト)、サイトカインアンタゴニスト(例えば、ケモカインアンタゴニスト、例えば、CCR3アンタゴニストなど)もしくはサイトカイン合成の阻害剤または5-リポキシゲナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0171】
一実施形態において、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)と組み合わせて使用するためのiNOS(誘導型一酸化窒素シンターゼ)阻害剤としては、WO1993/13055、WO1998/30537、WO2002/50021、WO1995/34534およびWO1999/62875に開示されているiNOS阻害剤が挙げられる。
【0172】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)と組み合わせて使用するためのCCR3阻害剤としては、例えば、WO2002/26722に開示されているものが挙げられる。
【0173】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)と組み合わせて使用するためのPDE4阻害化合物としては、例えば、シス-4-シアノ-4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オンおよびシス-[4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール]が挙げられる。また、シス-4-シアノ-4-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]シクロヘキサン-1-カルボン酸(シロミラストとしても知られる)およびその塩、エステル、プロドラッグまたは物理的形態(これは、1996年9月3日に発行された米国特許第5,552,438号(この特許および底に開示されている化合物は、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)。
【0174】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)と組み合わせて使用するための抗コリン剤としては、例えば、ムスカリン受容体においてアンタゴニストとして機能する化合物、特にMまたはM受容体のアンタゴニスト、M/MまたはM/Mのデュアルアンタゴニスト、M/M/M受容体の受容体またはパンアンタゴニストである化合物が挙げられる。例示的なウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)と組み合わせて使用するための抗コリン剤としては、吸入による投与用に、イプラトロピウム(例えば、臭化物として、CAS22254-24-6(アトロベントという名称で販売されている))、オキシトロピウム(例えば、臭化物として、CAS30286-75-0)およびチオトロピウム(例えば、臭化物として、CAS136310-93-5(スピリーバという名称で販売されている))が挙げられる。revatropate(例えば、臭化水素酸塩として、CAS262586-79-8)およびLAS-34273(これはWO2001/04118に開示されている)もまた注目されている。経口投与用の例示的な化合物としては、ピレンゼピン(CAS28797-61-7)、ダリフェナシン(CAS133099-04-4、または臭化水素酸塩についてCAS133099-07-7(Enablexという名称で販売されている))、オキシブチニン(CAS5633-20-5(Ditropanという名称で販売されている))、テロジリン(CAS15793-40-5)、トルテロジン(CAS124937-51-5、または酒石酸塩についてCAS124937-52-6(Detrolという名称で販売されている))、オチロニウム(例えば、臭化物について、CAS26095-59-0(Spasmomenという名称で販売されている))、塩化トロスピウム(CAS10405-02-4)およびソリフェナシン(CAS242478-37-1、または、コハク酸塩としてCAS242478-38-2(YM-905としても知られており、ベシケアという名称で販売されている)が挙げられる。
【0175】
追加の適切な抗コリン化合物は、WO2005/037280、WO2005/046586、WO2005/104745、およびWO2005/009439(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。この組合せは、限定するものではないが、(3-エンド)-3-(2,2-ジ-2-チエニルエテニル)-8,8-ジメチル-8-アゾナイアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;(3-エンド)-3-(2-シアノ-2,2-ジフェニルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾナイアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;4-[ヒドロキシ(ジフェニル)メチル]-1-{2-[(フェニルメチル)オキシ]エチル}-1-アゾナイアビシクロ[2.2.2]オクタンブロミド;および(1R,5S)-3-(2-シアノ-2,2-ジフェニルエチル)-8-メチル-8-{2-[(フェニルメチル)オキシ]エチル}-8-アゾナイアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミドを含む。
【0176】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と組み合わせるために適切な抗ウイルス剤としては、例えば、限定するものではないが、カプシド阻害剤、リバビリン、パリビズマブ、GS-5806、AL-8176、MEDI-8897、REGN-2222、ALX-0171、ALN-RSV01、AK0529、ファビピラビル(T-705)、VX-878(JNJ-872)、S-033188、FI6、CR9114、MHAA4549A(39.29)、VIS410、ラミブジン、インターフェロン、ヌクレオシドアナログ、および非環状ヌクレオシドホスホネートアナログ、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、NS5A阻害剤、NS5Bポリメラーゼ阻害剤、5-置換2’-デオキシウリジンアナログ、進入阻害剤、ヌクレオシドアナログ、ピロホスフェートアナログ、非環状グアノシンアナログ、マトリックス2タンパク質阻害剤、RNAポリメラーゼ阻害剤、およびノイラミニダーゼ阻害剤、非環状グアノシンアナログ、非環状ヌクレオシドホスホネートアナログ、ピロホスフェートアナログ、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシドアナログ、5-置換2’-デオキシウリジンアナログ、抗体、イミキモド、sinecatechins、ポドフィロックス、アシクロビル、TMPRSS2阻害剤、PI4KB阻害剤、3Cプロテアーゼおよび3CL-プロテアーゼ阻害剤、カモスタット、ナファモスタットおよびタフェノキンが挙げられる。ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防における使用のための本明細書に記載されているカテプシン阻害剤化合物(特にSB-462795)と組み合わせるために適切な追加の抗ウイルス剤としては、E.de ClercqおよびG.LiによってClin Microbiol Rev(2016),29:695-747(“Approved Antiviral Drugs over the Past 50 Years”)に記載されている抗ウイルス化合物が挙げられる。
【0177】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と組み合わせるために適切な抗レトロウイルス剤としては、例えば、ドルテグラビル、カボテグラビル、カボテグラビルLA、レムデシビル、ジドブジン(is zidovudine)、ジダノシン、ラミブジン、ザルシタビン、アバカビル、スタブジン、アデホビル、アデホビルピボキシル、fozivudine、elsufavirine、VM-1500A、ABX464、リルピビリン、todoxil、エムトリシタビン、アロブジン、アムドキソビル、elvucitabine、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、loviride、immunocal、オルチプラズ、カプラビリン、レルシビリン、doravirine、3TC、AZT、TMC-278、TMC-125、エトラビリン、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ホスアンプレナビル、fostemsavir、EFdA(MK-8591)、MK-8583、MK-8527、MK-8558、GS-9131、GS-9148、GS-PI1、GS-CA1、GS-PS1、ブレカナビル、ダルナビル、アタザナビル、チプラナビル、パリナビル、lasinavir、エンフビルチド、T-20、T-1249、PRO-542、PRO-140、TNX-355、BMS-806、BMS-663068およびBMS-626529、5-Helix、ラルテグラビル、エルビテグラビル、GSK2248761、GSK3640254、GSK1349572、GSK1265744、GSK3732394(Combinectin)、ビクリビロク(Sch-C)、Sch-D、TAK779、マラビロク、TAK449、ジダノシン、テノホビル、ロピナビル、ダルナビル、イバリズマブ(ibulizamab)、PRO-140(leronlimab)、UB-421、VRC01、VRC01/LS、VRC07-523LS、3BNC117/LS、10-1074/LS、PGDM1400、PGT121、10E8.4/iMabが挙げられる。
【0178】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と組み合わせるために適切な抗菌剤としては、例えば、The Pew Charitable Trustsによってhttps://www.pewtrusts.org/en/research-and-analysis/data-visualizations/2014/antibiotics-currently-in-clinical-developmentに記載されているものが挙げられる。特に、本明細書に記載されているウイルス性疾患の治療における使用または治療方法のための本明細書に記載されている化合物と組み合わせて使用するための適切な抗菌剤としては、例えば、限定するものではないが、エラバサイクリン、オマダサイクリン、イクラプリム、S-649266、イミペネム、シラスタチン、デヒドロペプチダーゼ阻害剤、カルバペネム(carbapeneum)、relabactam、lefamulin(BC-3781)、ラスクフロキサシン(KRP-AM1977)、CRS3123、delpazolid(LCB01-0371)、ETX0282CPDP、SPR741、TP-271、TP-6076、WCK5222、ACX-362E、afabidin、ARV-1801、brilacidin、CG-549、フィナフロキサシン、MDB-BP-3、gepotidacin(GSK2140944)、セファロスポリン、β-ラクタマーゼ阻害剤、テトラサイクリン、プレウロムチリン、フルオロキノロン、2,4-アミノピリミジン、ジアリールジアミン、オキサゾリドン、ポリミキシン、ベンゾフランナフチリジン、fusidane、デフェンシン模倣物、ベンジルピリジノン、ディスタマイシン、キノロン、リファマイシン-キノロンハイブリッド、トリアザアセナフチレン、ビス-ベンズイミダゾール、抗菌ペプチド模倣物およびマクロライドが挙げられる。
【0179】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と組み合わせるために適切な3Cプロテアーゼまたは3CL阻害剤としては、例えば、2018年4月19日に公開されたWO2018/042343に開示されている化合物が挙げられる。
【0180】
ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と組み合わせるために適切なPI4KB阻害剤としては、例えば、2019年7月25日に公開されたWO2019/141694に開示されている化合物が挙げられる。
【0181】
一実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物、なかでもSB-462705またはその薬学的に許容可能な塩を、H1アンタゴニストと一緒に含む組合せを提供する。適切なH1アンタゴニストとしては、例えば、限定するものではないが、アンレキサノクス、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、アクリバスチン、ブロムフェニラミン、セチリジン、レボセチリジン、efletirizine、クロルフェニラミン、クレマスチン、シクリジン、カレバスチン、シプロヘプタジン、カルビノキサミン、デスカルボエトキシロラタジン、ドキシラミン、ジメチンデン、エバスチン、エピナスチン、efletirizine、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、ロラタジン、レボカバスチン、ミゾラスチン、メキタジン、ミアンセリン、noberastine、メクリジン、norastemizole、オロパタジン、picumast、ピリラミン、プロメタジン、テルフェナジン、トリペレナミン、temelastine、トリメプラジンおよびトリプロリジン、特に、アゼラスチン、セチリジン、レボセチリジン、efletirizineおよびフェキソフェナジンが挙げられる。
【0182】
本発明の別の実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462705)またはその薬学的に許容可能な塩を、H3アンタゴニスト(および/またはインバースアゴニスト)と一緒に含む組合せを提供する。適切なH3アンタゴニストの例としては、例えば、WO2004/035556、WO2006/045416、WO2006/090142、WO2006/125665、WO2007/009739およびWO2007/009741に開示されている化合物が挙げられる。本発明の別の実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、H1/H3デュアルアンタゴニスト(および/またはインバースアゴニスト)と一緒に含む組合せを提供する。H1/H3デュアルアンタゴニストの例としては、例えば、WO2004/035556、WO2007/071691、WO2007/122156およびWO2007/135081に開示されている化合物が挙げられる。
【0183】
治療剤の活性および/または安定性および/または物理的特性(例えば、溶解性など)を最適化するために、適切な場合、前記1つ以上の追加の治療剤(単数または複数)は、塩の形態で(例えば、アルカリ金属またはアミン塩として、または酸付加塩として)、またはプロドラッグの形態で、またはエステル(例えば、低級アルキルエステル)として、または溶媒和物(例えば、水和物)として使用され得ることが、当業者には明白である。また、適切な場合、治療剤は、光学的に純粋な形態で使用され得ることも明白である。
【0184】
よって、本発明のある実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462705)またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または生理学的に機能する誘導体を、PDE4阻害剤と一緒に含む組合せを提供する。
【0185】
よって、本発明のある実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能する誘導体を、β2-アドレナリン受容体アゴニストと一緒に含む組合せを提供する。
【0186】
よって、本発明のある実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能する誘導体を、副腎皮質ステロイドと一緒に含む組合せを提供する。
【0187】
よって、本発明のある実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能する誘導体を、非ステロイドGRアゴニストと一緒に含む組合せを提供する。
【0188】
よって、本発明のある実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能する誘導体を、抗コリン剤と一緒に含む組合せを提供する。
【0189】
よって、本発明のある実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能する誘導体を、抗ヒスタミン剤と一緒に含む組合せを提供する。
【0190】
よって、本発明のある実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能する誘導体を、PDE4阻害剤およびβ2-アドレナリン受容体アゴニストと一緒に含む組合せを提供する。
【0191】
前記一実施形態のある実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と、3Cプロテアーゼ阻害剤を含む組合せを提供する。
【0192】
一実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と、PI4KB阻害剤を含む組合せを提供する。
【0193】
一実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と、TMPRSS2阻害剤を含む組合せを提供する。
【0194】
一実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と、トリプシンプロテアーゼ阻害剤またはトリプシン様プロテアーゼの阻害剤を含む組合せを提供する。
【0195】
一実施形態は、ウイルスによって引き起こされる、対象におけるウイルス性疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と、フューリン阻害剤または関連するプロタンパク質転換酵素(PC)プロテアーゼの阻害剤(例えば、デカノイル-RVKR-クロロメチルケトン(CMK)などのペプチド阻害剤またはナフトフルオレセインなどの小分子阻害剤)を含む組合せを提供する。
【0196】
上記の組合せは、便宜には、医薬製剤の形態で使用するために提供され、よって、上記の組合せを薬学的に許容可能な希釈剤または担体と一緒に含む医薬製剤は、本発明のさらなる態様を表す。
【0197】
このような組合せの個々の化合物は、別々の医薬製剤または組み合わされた医薬製剤で、順次または連続的のいずれかで投与され得る。一実施形態において、個々の化合物は、組み合わされた医薬製剤で同時に投与される。既知の治療剤の適切な用量は、当業者によって容易に理解されるであろう。
【0198】
本発明の化合物は、プロドラッグとして投与され得る。よって、本明細書に記載されている任意の化合物のある特定の誘導体(これは、それ自体は、わずかな薬理活性を有するか、または薬理活性を有さない)は、身体内または身体上に適用された場合、例えば、加水分解によって、所望の活性を有する化合物に変換され得る。このような誘導体は、「プロドラッグ」と呼ばれる。
【0199】
医薬組成物または製剤は、固形、半固形、液体およびエアロゾルの剤形(例えば、錠剤、カプセル、粉末、液体、懸濁液、エアロゾルなど)を含む。前記化学物質は、また、所定の速度での、長期的投与および/または時間依存的な、パルス投与のために、持続放出または放出制御剤形で投与され得る。ある特定の実施形態において、前記組成物は、正確な用量の単回投与に適した単位剤形で提供される。
【0200】
本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩は、単独で、または、より典型的には通常の医薬担体、賦形剤など(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリナトリウム、タルカム、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、ショ糖、炭酸マグネシウムなど)と組み合わせて、のいずれかで投与され得る。液体担体(注射可能溶液のためのもの)としては、水、生理食塩水、デキストロース水溶液およびグリコールが挙げられる。
【0201】
必要に応じて、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物は、さらに、微量の湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤などの非毒性の補助的な物質(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン(cyclodextrine)誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミンなど)も含んでいてもよい。一般に、投与の意図するモードに応じて、医薬組成物は、約0.005%~95%;ある特定の実施形態においては、約0.5%~50%(重量%)の化学物質を含む。このような剤形を調製するための実際の方法は、当業者に知られているか、または明白であり;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvaniaを参照のこと。
【0202】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩は、ピルまたは錠剤の形態を取る。よって、前記組成物は、活性物質と共に、ラクトース、ショ糖、リン酸ニカルシウムなどの希釈剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびデンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリジン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体などのバインダーを含む。別の固形剤形粉末、marume、溶液または懸濁液(例えば、炭酸プロピレン、植物油またはトリグリセリド中のもの)は、ゼラチンカプセル中に封入され得る。
【0203】
本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む液体の医薬的に投与可能な組成物は、例えば、少なくとも1つの化学物質と、必要に応じて医薬アジュバントを、担体(例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、グリコール、エタノールなど)中に溶解させること、分散させることなどによって、溶液または懸濁液を形成することによって調製することができる。注射剤は、通常の形態で、すなわち、溶液または懸濁液のいずれかとして、乳剤として、または注射前に液体に溶解または懸濁するために適切な固形形態で、調製することができる。このような非経口組成物に含有されている化学物質の割合(パーセント)は、その特定の性質、ならびにその化学物質の活性および対象の必要性に大きく依存する。しかしながら、溶液中の0.01%~10%の活性成分の割合(パーセント)が使用可能であり、これは、組成物が固形であり、それが次いで上記の割合(パーセント)に希釈されることになる場合は、より高い。ある特定の実施形態において、前記組成物は、溶液中に約0.2~2%の活性薬剤を含む。液体担体(注射可能溶液のためのもの)としては、水、生理食塩水、デキストロース水溶液およびグリコールが挙げられる。
【0204】
本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物は、また、ネブライザー用のエアロゾルまたは溶液として、またはインサフレーション用のミクロファイン粉末として、単独で、またはラクトースなどの不活性な単体と組み合わせて、気道に投与され得る。このようなケースにおいて、医薬組成物の粒子は、50ミクロン未満、特定の実施形態においては、10ミクロン未満の直径を有する。
【0205】
一般に、本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩は、治療有効量で、類似の効用をもたらす薬剤のための任意の許容できる投与モードで投与される。化学物質(すなわち、活性成分)の実際の量は、治療される疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、使用される化学物質の有効性、投与の経路および形態、および他の因子などの数多くの要因に依存する。薬物は、1日に1回を超えて、例えば、1日に1回または2回投与され得る。
【0206】
本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量は、1日あたり、レシピエントの体重1kgあたり、およそ0.01~200mg;例えば、約0.01~100mg/kg/日など、例えば約0.1~50mg/kg/日の範囲であり得る。よって、70kgのヒトに投与するためには、用量範囲は、約7~3500mg/日であり得る。
【0207】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩は、経鼻または経口経路によって局所的に投与され得る。これは、肺または鼻への吸入による、本明細書に記載されている化合物の適用を含む。鼻腔を通した浸透、吸入のための局所投与のために適切な製剤としては、液体または半液体調製物があげられ、これには、鼻道を通した浸透による吸入、および/または肺もしくは炎症部位への吸入に適した製剤(適切な滴薬などの調製物を含む)が含まれる。活性成分(吸入による局所投与用のもの)は、製剤の0.001%~10%(w/w)、例えば1%~2%(重量%)を構成し得る。しかしながら、活性成分は、製剤の10%(w/w)を構成し得るが、好ましくは5%(w/w)未満、より好ましくは0.1%~1%(w/w)を構成する。
【0208】
ある特定に実施形態において、滴剤は、無菌の水溶液もしくは油性溶液または懸濁液を含み得、また、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む活性成分を、殺菌および/または殺真菌剤、および/または任意の他の適切な保存剤(および、好ましくは界面活性剤を含む)の適切な水溶液に溶解することによって調製され得る。得られた溶液は、次いで、濾過によって清澄化し、適切な容器に移し、次いでそれを密封し、オートクレーブまたは30分間98~100℃に保つことによって滅菌してもよい。実施形態において、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と混合するための溶液は、濾過によって滅菌し、無菌的な操作によって容器に移してもよい。実施形態において、滴剤に含有させるために適切な殺菌および殺真菌剤の例は、硝酸または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油性溶液の調製のための適切な溶媒は、グリセロール、希釈したアルコールおよびプロピレングリコールである。
【0209】
本明細書の化合物のいずれも、非経口的に(すなわち静脈内、筋肉内または皮下)投与され得る。非経口投与の皮下および筋肉内形態が、一般に好ましい。このような投与のために適切な剤形は、通常の技術によって調製され得る。本明細書に記載されている任意の化合物は、また、吸入によって投与され得る(これは、経鼻または経口吸入投与によるものである)。このような投与のために適切な剤形(例えば、エアロゾル製剤または定量噴霧式吸入器など)は、通常の技術によって調製され得る。本発明の一実施形態において、本発明の化合物のいずれも、経口吸入または経鼻投与によって送達される。このような投与のための適切な剤形(例えば、エアロゾル製剤または定量噴霧式吸入器など)は、通常の技術によって調製され得る。
【0210】
本発明の実施形態は、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の吸入による投与のための製剤を提供し、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、テトラフルオロエタンまたはヘプタフルオロプロパンなどのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用することによって、加圧されたパックまたはネブライザーから、エアロゾルスプレープレゼンテーション(presentation)の形態で送達される。ある特定の実施形態は、加圧されたエアロゾルを使用した吸入のための製剤を提供し、ここで、投与単位は、計量した量の本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を送達するためのバルブを装備することによって決定され得る。ある特定の実施形態において、吸入器または吹入れ器において使用するための、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤のパウダーミックスを含む、(例えばゼラチンの)カプセルおよびカートリッジが製剤化され得る。
【0211】
本発明のある特定の実施形態は、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を、吸入による肺への局所送達のためのドライパウダー組成物として提供する。好ましくは、ドライパウダー組成物は、例えば、吸入器または吹入れ器中で使用するための、(例えばゼラチンの)カプセルおよびカートリッジ、または(例えばラミネートされたアルミ箔の)ブリスターに入れられて提供され得る。ある特定の実施形態において、粉末ブレンド製剤は、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩の吸入のためのパウダーミックス、およびモノ、ジ、またはポリサッカライド(例えば、ラクトースまたはデンプン)などの適切な粉末基剤(担体/希釈剤/賦形剤物質)を含む。ある特定の実施形態において、前記粉末組成物におけるラクトースの使用が好ましい。
【0212】
他の実施形態において、粉末組成物のための各カプセルまたはカートリッジは、一般に、20μg~10mgの本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩のいずれかを(場合により別の治療活性成分と組み合わせて)含有し得る。あるいは、粉末組成物において使用するための、本明細書に記載されている本発明の化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩は、賦形剤なしで提供され得る。実施形態において、パッキング/薬剤ディスペンサーは、リザーバー式ドライパウダー吸入器(RDPI)、複数回分の用量を含むドライパウダー吸入器(MDPI)および定量噴霧式吸入器(MDI)などのタイプである。
【0213】
リザーバー式ドライパウダー吸入器(RDPI)は、ドライパウダー形態の複数回分(計量されていない用量)の薬剤を入れるために適したリザーバー形態のパックを有し、かつリザーバーから送達部位への薬剤の用量を計量する手段を含む吸入器を意味する。
【0214】
実施形態において、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬剤をエアロゾル形態で分配するために適切な薬剤ディスペンサーのための定量噴霧式吸入器(MDI)を使用してもよく、ここで、前記薬剤は、噴射剤によるエアロゾル医薬製剤を入れるために適切なエアロゾル容器に入れられている。ある特定の実施形態において、エアロゾル容器は、エアロゾル形態の医薬製剤を患者に対して放出するための計量バルブ(例えば、スライドバルブ)を備えていてもよい。ある特定の実施形態において、エアロゾル容器は、バルブによる操作のたびに、所定の用量の薬剤を送達するように設計されていてもよく、このバルブは、容器が固定された状態でバルブを押し下げることによって、またはバルブが固定された状態で容器を押し下げることによって、のいずれかによって開放され得る。実施形態において、計量される体積は、典型的には、10~100μL(例えば、25μL、50μLまたは63μLなど)である。
【0215】
ある特定の実施形態において、バルブは、スライドバルブであってもよく、ここで、開閉機構は、シーリングリングと、前記シーリングリングによって受けることができ、分配路を有するバルブステムとを含んでなり、前記バルブステムは、前記シーリングリングの中を滑るように、バルブが閉じる位置から開く位置まで移動することができ、ここで、バルブ本体の内部は、前記分配路によって、バルブ本体の外側と通じている。
【0216】
ある特定の実施形態において、バルブは、また、チャンバーと、前記チャンバーの中に延び、チャンバーに対して分配位置と非分配位置の間を移動することができるバルブステムとを有する、「フリーフローエアロゾルバルブ」も含んでいてもよい。前記バルブステムと前記チャンバーの間に前記計量された体積が限定されるように、かつ、非分配位置と分配位置の間を移動する間、前記バルブステムが、順次、(i)エアロゾル製剤を前記チャンバー中に自由に流入させ、(ii)前記バルブステムの外面と前記チャンバーの内面の間に、加圧されたエアロゾル製剤のための閉じた計量された体積を限定し、および(iii)前記閉じた計量された体積と共に、前記チャンバーの中を、前記計量された体積が出口通路と連絡し、それによって加圧されたエアロゾル製剤の計量された体積が分配されるまで、前記閉じた計量された体積を減少させることなく移動するように、前記バルブステムは、ある構造を有し、前記チャンバーは、ある内部構造を有する。この種類のバルブは、米国特許第5,772,085号に記載されている。
【0217】
複数回分の用量を含むドライパウダー吸入器(MDPI)は、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩をドライパウダー形態で含む薬剤を分配するために適切な吸入器を意味し、ここで、前記薬剤は、複数回分の規定された用量(または、その一部)を含む(または、他の方法で保持する)複数回分の用量を含むパックに入れられている。好ましい実施形態において、前記担体は、ブリスターパック形態を有するが、また、例えば、カプセルベースのパック形態を有していてもよく、または印刷、塗布および真空吸蔵を含む任意の適切なプロセスによって薬剤が付けられている担体を含んでいてもよい。
【0218】
本明細書に記載されている薬剤の複数回分の用量を送達する実施形態において、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含むドライパウダー組成物の製剤は、事前に計量されていてもよく、または使用時に計量されてもよい。単位用量デバイスの例は、Rotahaler(米国特許第4,353,656号および第5,724,959号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0219】
本発明の実施形態は、効果的な経鼻医薬組成物として製剤化された本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を提供し、ここで、前記薬剤は、鼻腔(標的組織)の全ての部位に容易に送達され、そこで、その薬理学的機能を発揮する。実施形態において、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬剤は、比較的長期間にわたって標的組織との接触を維持する。好ましくは、薬剤は、長期間にわたって標的組織との接触を維持する。実施形態において、本明細書に記載されている化合物(なかでもSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬剤は、鼻から粒子を除去する機能を果たす、鼻道内の力に耐えることができる。このような力(「粘液線毛クリアランス」と呼ばれる)は、粒子を鼻から迅速な様式(例えば、粒子が鼻の中に入ってから10~30分以内)で非常に効果的に除去すると認識されている。
【0220】
本発明の実施形態は、吸入によって肺に局所送達するためのスプレー組成物を提供し、また、例えば、加圧されたパック(例えば定量噴霧式吸入器など)から適切な液化された噴射剤を使用して送達される水性溶液または懸濁液として、またはエアロゾルとして製剤化され得る。吸入に適したエアロゾル組成物は、懸濁液または溶液のいずれかであり得、一般に、(場合により別の治療活性成分と組み合わせて)本明細書に記載されている化合物(特にSB-462795)またはその薬学的に許容可能な塩と、適切な噴射剤(例えば、フルオロカーボンもしくは水素を含有するクロロフルオロカーボンまたはそれらの混合物、特にヒドロフルオロアルカン(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンまたはそれらの混合物)など)を含有する。二酸化炭素または他の適切なガスもまた、噴射剤として使用され得る。エアロゾル組成物は、賦形剤を含んでいなくてもよく、または、場合により、当該技術分野においてよく知られている追加の製剤賦形剤(例えば、界面活性剤(例えば、オレイン酸またはレシチン)または共溶媒(例えば、エタノール)など)を含んでいてもよい。加圧された製剤は、一般に、バルブ(例えば計量バルブ)によって閉じられ、マウスピースを備えたアクチュエーター内に装着されるキャニスター(例えば、アルミニウムキャニスター)中に貯留される。
【0221】
本発明の一実施形態は、吸入による投与のための、SB-462795またはその薬学的に許容可能な塩のスプレードライ分散製剤を提供する。吸入による投与のための薬剤は、制御された粒径を有していることが望ましい。気管支系内への吸入のために最適な粒径は、1~10μm、好ましくは2~5μmである。20μmを超える粒径を有する粒子は、細い気道に到達させるために吸入させる場合、一般に大きすぎる。このような粒径を実現するために、製造された活性成分の粒子は、通常の方法(例えば、微粒子化)によって、粒径を減少させてもよい。所望の画分は、空気分級またはふるい分けによって分別され得る。適切には、粒子は、結晶形態である。ラクトースなどの賦形剤が使用される場合、一般に、前記賦形剤の粒径は、本発明において吸入される薬剤よりも、はるかに大きい。前記賦形剤がラクトースである場合、典型的には、粉砕されたラクトース(この場合、ラクトースの85%以下は、MMDが60~90μmであり、15%以上は、MMDが15μm未満である)として提供される。鼻腔内スプレーは、水性または非水性ビヒクルを用いて、増粘剤、pHを調節するための緩衝塩または酸もしくはアルカリ、等張性調整剤または抗酸化剤などの薬剤を加えて製剤化され得る。
【0222】
噴霧化による吸入のための溶液は、水性ビヒクルを用いて、酸もしくはアルカリ、緩衝塩、等張性調整剤または抗菌剤などの薬剤を加えて製剤化され得る。これらは、濾過またはオートクレーブ内での加熱によって滅菌してもよく、または非滅菌製品として提供してもよい。適切には、吸入による投与は、好ましくは、呼吸器疾患のための対象となる器官(すなわち、肺)を標的としてもよく、そうすることによって、患者への送達が必要とされる有効用量が低減され得る。さらに、吸入による投与は、化合物に対する全身的曝露を低減し、よって、肺以外における化合物の作用を回避し得る。
【0223】
以下、実施例により、本明細書に記載されている本発明の態様および実施形態を裏付ける方法および実験例を説明する。
【実施例
【0224】
生物学的実施例
【0225】
実施例1.カテプシンの生化学的阻害
カテプシン活性の阻害は、基本的に、(B Vottaら、J.Bone Miner.Res.(2015)16,478)に記載されているように実施した。酵素を、一方の末端に蛍光タグ、他方の末端にクエンチャータグを含むペプチド基質とインキュベートし、触媒作用を蛍光シグナルの増大によって定量した。Cbz-Phe-Arg-AMCの基質を、2%DMSO中の50mM MES(pH6.5)、5mM EDTA、10mMシステインの反応バッファー中で使用した。初期速度曲線の直線部分を分析し、定常状態の動力学定数を求めた。
【0226】
【表3】
【0227】
実施例2.レラカチブ(SB-462795)によるウイルス阻害
細胞
HeLa(CCL-2)、MRC5(CCL-171)、HFF(SCRC-1041)、Vero(CCL-81)、BHK-21(CCL-10)細胞を、ATCC(American Type Culture Collection)から購入した。HeLa、VeroおよびHFF細胞は、T225(Corning Life Sciences)フラスコ内で、10%ウシ胎児血清(FBS、Hyclone、GE Life Sciences)、1%L-グルタミン、10mM HEPES(Sigma Aldrich)、1%非必須アミノ酸(ThermoFischer Scientific)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Corning)を添加した最小必須培地(MEM、Corning Life Sciences)中で培養した。HFF細胞には、また、ピルビン酸ナトリウム溶液(Sigma Aldrich)も添加した。MRC5およびBHK-21細胞は、T225(Corning)フラスコ内で、10%ウシ胎児血清(FBS、Hyclone)を添加した最小必須培地(MEM、Corning Cellgro)中で培養した。サブコンフルエントな培養を継代し、3日ごとに分け、継代数は16~19代を超えなかった。細胞は、0.25%トリプシン/0.5mM EDTA溶液(Sigma Aldrich)を用いて剥離させ、処理の24時間前に、用量反応研究のためにアッセイプレート中に播種した(播種密度については表2を参照のこと)。全血をNew York Blood Centerから購入し、ヒトPBMCを、Ficoll Paque Plus(GE Healthcare)を使用して単離した。示されている場合、CD14陽性単球は、ヒトCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用してさらに単離した。細胞をマクロファージに分化させるために、PBMCまたはCD14+単球を、10cmプレート内で、10%の熱で不活性化したFBS(ThermoFisher Scientific)と1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Corning)を添加したRPMI 1640培地(Fisher Scientific)中に播種し、3日後に、リコンビナントヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、10ng/ml)で処理した。2日後に、細胞に、新鮮な培地とGM-CSFを加えた。播種から6または7日後に、細胞を剥離し、カウントし、用量反応研究(doe response studies)のために、96ウェルプレート(Greiner Bio-One)内に播種した。
【0228】
細胞ベースの感染アッセイ
感染性ウイルスを用いた実験は、USAMRIID内で、適切な生物学的封じ込め条件下で行った。ウイルスストックは、全て、USAMRIIDで調製し、特徴付けした。
【0229】
細胞は、処理の20~24時間前に、Multidrop Combiディスペンサー(ThermoFisher Scientific)を使用して、表示された密度(表2)で、384ウェルイメージングプレート(Aurora)または96ウェルプレート(Greiner Bio-One)内に播種した。SB-462795は、少なくとも2回の反復実験において、10~100μMから開始し、2または3倍の段階希釈によって、8~10の用量で試験した(各実験の開始濃度および希釈倍率については表2を参照のこと)。各用量は、100%DMSO中の10mMストック溶液から、HP D300デジタルディスペンサー(Hewlett Packard)を用いて、アッセイウェル中に直接加えた。各ウェル中の最終的なDMSO濃度は、1%に正規化した。各プレートについて、16ウェルは、ウイルスに感染させず、正規化のための「無ウイルス」対照(0%ウイルス感染)として用いた。さらなる16ウェルは、ウイルスに感染させたが、1%DMSOだけで処理し、正規化のための高感染対照(100%ウイルス感染)として用いた。処理の2時間後に、アッセイプレートは、バイオセーフティーレベル(BSL)-3または4の部屋に移され、表示されているウイルスを、表示されている感染多重度(MOI)で播種した。MOIは、細胞の平均倍加時間(16時間)に基づいて算出され、アッセイのエンドポイントにおいて60~80%の感染率が達成されるように選択された。ウイルスを播種した後、アッセイプレートは、5%CO、37℃で、20時間(VEEVおよびCHIKV)、24時間(NiV)または48時間(EBOV、MARV、LASV、SARS-CoV、MERS-CoV、WNV、HTNV)インキュベートした。次いで、細胞を、免疫染色前に、10%の緩衝ホルマリンで少なくとも48時間固定した。
【0230】
【表4】
【0231】
EC50、50%有効濃度(μM)。SD、標準偏差、EC90、90%有効濃度
CC50:細胞毒性濃度(μM)。SI、選択指数。ウイルスの略称の定義は、方法において示されている。
【0232】
ハイコンテントイメージングアッセイ。
培養細胞におけるウイルス感染の検出および定量は、ハイコンテントイメージング(HCI)アッセイを用いて、免疫蛍光標識後に、ウイルス抗原産生を測定することによって行った。アッセイするウェルは、ブロッキングバッファー(3%BSAを含む1×PBS)中で1,000倍希釈したマウスまたはウサギモノクローナル抗体(表3)によって1時間染色した。インキュベーション後、前記の一次抗体を除去し、細胞を1×PBSで3回洗浄した。次いで、細胞を、ブロッキングバッファー中で1,000倍希釈したDyLight-488標識ヤギ抗マウス/ウサギIgG(ThermoFisher Scientific)と1時間インキュベートした。核と細胞質は、それぞれ、1×PBS中に希釈したDraq5(HeLaおよびU2OS細胞;ThermoFisher Scientific)またはHoechstとCellMask(ThermoFisher Scientific)で染色した。細胞のイメージは、Perkin ElmerのOpera共焦点プレートリーダーを使用し、10倍の乾燥対物レンズを用いて、1ウェルごとに5~15イメージを取得した。取得したイメージは、Acapella(Harmony)PEソフトウェアを使用して解析した。選択した閾値よりも高い抗原シグナルを示す細胞を、ウイルス感染についてポジティブとしてカウントした。ウイルスポジティブ細胞と、解析した細胞の総数の比を、アッセイプレート中の各ウェルについての感染率(パーセント)を決定するために使用した。ウイルス感染に対する化合物の効果は、Genedataソフトウェアを使用して評価し、各プレート上の16ウェルの非感染(0%感染)対照ウェルおよび16ウェルのDMSO処理(100%感染)対象ウェルに基づいて、感染阻害率(パーセント)として算出した。得られた感染阻害率(%)は、各ウェルについて算出し、用量反応曲線解析のために使用した。多パラメーター回帰解析には、最適モデルの選択およびデータポイント除外のために、Levenberg-Marquardtアルゴリズムを利用した。R値は、フィットの質を定量化するものであり、R>0.8の場合に、フィッティング手法を許容可能とみなした。
【0233】
【表5】
【0234】
SARS-CoV-2の阻害
抗ウイルス性の評価-Vero E6細胞におけるSARS-CoV1、SARS-CoV2およびMERSのin vitroセルベースアッセイ
【0235】
出願人は、下記のように、CPEアッセイによって、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2およびMERSに対する阻害効果について、SB-462795(レラカチブ)およびカモスタットを別々に評価した。
【0236】
コロナウイルスアッセイについての材料と方法
SB-462795およびカモスタットは、固体として供給され、DMSO中の50mMまたは10mMストック溶液のいずれかで希釈し、アッセイの日まで4℃で保存した。ポジティブコントロール抗ウイルス化合物のセットを、実施した各アッセイに含めた。
【0237】
ウイルス株および細胞株
これらの評価のために使用したウイルスおよび細胞株は、それぞれ表4および表5にリスト化されているように、WRCEVAおよびATCC(American Type Culture Collection)から入手した(次いで、ACE2の高発現のために、細胞をソーティングおよびサブクローニングした)。評価は、抗ウイルス効果を測定するためにCPE低下アッセイを使用し、化合物の細胞毒性効果を測定するために細胞生存率アッセイを使用して行った(非GLPアッセイ)。各アッセイの日、事前に力価を測定したウイルスのアリコートをフリーザー(-80℃)から出し、バイオセーフティーキャビネット内で、室温で解凍した。組織培養培地中にウイルスを再懸濁し、希釈した。細胞を、下記表5に記載されているように、標準的な細胞培養技術および細胞培養培地を使用して、スプリット比1:2~1:5で、1週間に2回継代培養した。総細胞数および生存率(パーセント)の決定は、Luna細胞生存率分析装置およびトリパンブルー色素排除法を用いて行った。アッセイに使用することになる細胞について、細胞生存率(パーセント)は、95%超であった(各アッセイについて、1ウェルあたりに播種された細胞数については、表5を参照のこと)。
【0238】
【表6】
【0239】
【表7】
【0240】
材料:
1.Corning3764BC(黒色壁、クリアボトム)およびGreiner784076(黒色壁、小容量384プレート)
2.Promega CellTiter-Glo(CTG)(G7573、Promega)
3.培地:
a.MEM Gibco(#11095)
b.HI FBS Gibco(#14000)
c.Pen/Strep Gibco(#15140);10U/mlペニシリンおよび10μg/mlストレプトマイシン
4.PBS -/-(Ca2+もMg2+もなし)
5.トリプシン-EDTA Gibco(#25300-054)
6.細胞-高ACE2発現のために選択したVero E6細胞。
7.ポジティブコントロール:
a.カルパイン阻害剤IV(Calbiochem #208724)
b.クロロキン(Applicant Repository)
c.レムデシビル(Selleck)
装置:
1.Beckman FX
2.Echo and Thermo Combiリキッドハンドラー
3.Matrix WellMate
4.Thermo Fisher Steri-Cultインキュベーター
5.マイクロプレートリーダー-Envision,Spectromax M2、M5またはGeminiもしくはPheraSTAR
【0241】
化合物調製:
化合物ストック溶液(100%DMSO中、10または50mMで50μL)を、空のECHOプレート(ストックプレート)のウェルの中に移した。17μLの各サンプルを、ストックプレートから、各ウェルに34μLのDMSOが入っている隣のウェルに移し、撹拌することによって、化合物を3倍希釈した。このプロセスを繰り返し、さらに8ウェルの段階希釈サンプルを作成した(各ウェルは、前のウェルの3倍希釈サンプルを含む)。各サンプルについて、30nLのアリコートを、ECHO555アコースティック液体ハンドリングシステムを用いて、アッセイレディープレートの対応するウェルの中に分注した。最終的なアッセイ濃度範囲は以下の通りである:10mMストックについて、10~0.0005μM;50mMストックについて、50~0.003μM。DMSOを対照ウェルに加え、全てのウェルにおいて0.1%という一定のアッセイ濃度とした。
【0242】
化合物の抗ウイルス活性の測定方法:
Vero E6細胞を、10%HI FBSを添加したMEMで増殖させ、アッセイの日に、2%HI FBSを添加したMEM/1%PS中で収集した。BSL-2実験室内で、試験化合物を事前に入れたアッセイレディープレートを、各ウェルに5μlのアッセイ培地を加えることによって調製した。プレートと細胞を、次いで、BSL-3施設に移した。細胞は、適切なコロナウイルス(SARS CoV-1、SARS CoV-2またはMERS)を用いてM.O.I.約0.002でバッチ接種し、その結果、感染後72時間(SARSについて)または96時間(MERSについて)で細胞生存率は5%になった。ウイルス接種細胞の25μlアリコート(4,000Vero E6細胞/ウェル)をアッセイプレートの第3~24列の各ウェルに加えた。第23~24列のウェルには、0%CPE低下対照のために、ウイルス感染細胞だけを入れた。ウイルス播種前に、細胞だけの100%CPE低下対照のために、25μlアリコートの細胞を各プレートの第1~2列に加えた。プレートを37℃/5%COおよび湿度90%で72時間インキュベートした後、30μlのCellTiter-Glo(Promega)を各ウェルに加えた。細胞生存率を測定するために、室温で10分間インキュベーションした後に、Perkin Elmer Envisionプレートリーダーを用いて発光を読み取った。プレートは、発光を読み取る前に、透明なカバーでシールし、表面の汚染を除去した。
【0243】
化合物の細胞毒性効果を測定する方法:
化合物の細胞毒性は、BSL-2カウンタースクリーン内で、以下のようにして評価した:培地中のVero E6細胞を、上記のように試験化合物を用いて調製したアッセイレディープレートの各ウェルに、25μlアリコート(4,000細胞/ウェル)で加えた。細胞のみ(100%生存率)および最終濃度100μMのhyamineで処理した細胞(0%生存率)を、このアッセイにおける細胞毒性効果について、それぞれ高シグナル対照および低シグナル対照とした。DMSOは、ストック試験化合物濃度の希釈倍率によって規定されるように、全てのウェルで一定の濃度に維持した。プレートを37℃/5%COおよび湿度90%で72時間インキュベートした後、30μlのCellTiter-Glo(Promega)を各ウェルに加えた。細胞生存率を測定するために、室温で10分間インキュベーションした後に、BMG PHERAstarプレートリーダーを用いて発光を読み取った。
【0244】
結果-Vero E6細胞におけるSARS-CoV1、SARS-CoV2およびMERSのin vitroセルベースアッセイ
参照化合物および試験物質についての要約データを表6~8および9~12に示す。表13は、4つのアッセイ全てからの網羅的なデータを示す。
【0245】
【表8】
【0246】
【表9】
【0247】
【表10】
【0248】
【表11】
【0249】
【表12】
【0250】
【表13】
【0251】
【表14】
【0252】
【表15】
【0253】
表6~12に記載および表13にまとめられているように、ならびに図6A(レラカチブ)および図6B(カモスタット)に示されているように、レラカチブは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2およびMERSが感染しているVero E6細胞において、それぞれIC50が0.23、0.02および0.60μMの抗ウイルス活性を示した。これに対して、カモスタットは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2およびMERS感染Vero E6細胞のいずれにおいても、抗ウイルス活性を示さなかった。これは、Vero E6細胞はTMPRSS2を発現しないという事実と一致しており、レラカチブ(これはカテプシン阻害剤である)がカテプシン依存性のスパイクタンパク質ウイルス侵入経路を標的化すること可能にする。これに対し、カモスタットは、このようなウイルスのTMPRSS2侵入経路を標的化することが期待されるが、Vero E6細胞はTMPRSS2を発現せず、したがって、Vero E6細胞においてカモスタットはSARS-CoV-1、SARS-CoV-2およびMERSを阻害しないという知見は、それらの作用機序に対するこのような理解と一致する。
【0254】
抗ウイルス性の評価:Calu-3細胞におけるSARS-CoV-2のin vitro阻害
抗ウイルス性の評価-Calu-3細胞におけるSARS-CoV-2のin vitro阻害(Operettaハイコンテントイメージングシステム)
出願人は、下記のように、不死化したヒト肺細胞Calu-3を使用した細胞アッセイにおいて、SARS-CoV-2に対する阻害効果について、カモスタットおよびレムデシビルと比較して、SB-462795を別々に評価した。
【0255】
SARS-CoV-2コロナウイルス細胞アッセイのためのプロトコル
SB-462795(レラカチブ)およびカモスタットを、コロナウイルスNタンパク質の発現および細胞核をイメージングのエンドポイントとして利用した(それぞれ、効率の指標および細胞毒性の指標)細胞アッセイによって試験した。Calu-3細胞(ATCC、HTB-55)に、SARS-CoV-2コロナウイルス(βCoV/KOR/KCDC03/2020)を感染させた。レムデシビルおよびカモスタットは、以下に示すように、免疫学的に測定した場合(表14参照)、Nタンパク質の発現を低下させたが、レラカチブは、Calu-3細胞において、SARS-CoV-2に対して測定可能な活性を有していなかった(図6Aにおけるカモスタットの活性と図6Bにおけるレラカチブの活性を比較されたい)。SB-462795が、Calu-3細胞においてSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を有さないということは、このウイルスが、おそらくSARS-CoV-2のエンドソーム内のカテプシン依存的スパイクタンパク質プロセシングではなく、SARS-CoV-2の細胞表面におけるスパイクタンパク質のTMPRSS2依存的プロセシングを利用することによって、カテプシン阻害剤であるレラカチブによって影響を受けない代替的な侵入メカニズムを使用したことを示している。アッセイのための準備において、DMSO中の試験化合物について、0.0025~50μMの化合物濃度範囲で、10ポイントの用量反応曲線(DRC)を3つ作成した。
【0256】
Calu-3細胞を、実験の24時間前に、黒色の384ウェルμClearプレート(Greiner Bio-One)内の20%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、1%MEM-非必須アミノ酸溶液(Gibco)および1×抗菌-抗真菌溶液(Gibco)を添加したイーグルの最小必須培地(EMEM、ATCC)中に、1ウェルあたり2.0×10細胞で播種した。細胞は、5%COで37℃に維持した。
【0257】
細胞は、濃度範囲0.0025~50μMのレラカチブ、カモスタットまたはレムデシビルによって1~48時間処理した後、0.03のMOIでSARS-CoV-2を感染させた。DMSOは、反応ウェルにおいて、0.5%の最終濃度に正規化した。プレートを37℃で24時間インキュベートした後、4%パラホルムアルデヒド(PFA)、0.25%トリトンX-100溶液で固定した。
【0258】
抗SARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)一次抗体、488標識ヤギ抗ウサギIgG二次抗体およびHoechst33342を、免疫蛍光法の前に加えた。イメージは、Operettaハイスループットイメージング装置(Perkin Elmer)によって取得し、Columbusソフトウェア(Perkin Elmer)を使用して解析して、細胞数と感染比を定量した。Operettaエンドポイントについて、抗ウイルス活性は、各アッセイプレートにおいて、感染対照(0.5%DMSO)に対して正規化した。細胞生存率は、各ウェルにおいて核をカウントすることによって測定し、感染対照に対して正規化した。IC50値は、非線形回帰分析-log[阻害剤]vs.反応-可変傾斜(4パラメーター)を使用して算出した。全てのIC50
【0259】
結果-Calu-3
【0260】
【表16】
【0261】
表14から理解できるように、レラカチブは、Calu-3細胞(この細胞は、TRPMSS2を発現する)において、SARS-CoV-2に対して活性を有していないが、カモスタットは、Calu-3細胞において、実験1および実験2で、それぞれ0.16μMおよび0.29μMのIC50値が測定された。図6A(カモスタット)および図6B(レラカチブ)も参照されたい。
【0262】
抗ウイルス性の評価:ALIモデルにおけるSARS-CoV-2のin vitro阻害
出願人は、下記のように、カモスタットあり、およびなしで、ヒト肺細胞を使用した気液界面(ALI)アッセイにおいて、CPEアッセイによって、SARS-CoV-2に対する阻害効果について、SB-462795を別々に評価した。
【0263】
初代ヒト肺細胞を、気液界面アッセイにおいて、基本的にはRandell,S.HおよびFulcher,M.L.(編)in Chapter Eight of Epithelial Cell Culture Protocols:Second Edition,Methods in Molecular Biology,vo.945,DOI 10.1007/978-1-62703-125-7_8(copyright)Springer Science+Business Media,LLC 2012に記載されている通りに、試験化合物を評価するために使用した。要約すれば、HBE細胞を、気管領域ならびに上部気管支から単離する。可能であれば、およそ2mmの気管支を単離する。全ての細胞は、これらの単離の間、全て一緒にプールされる。得られた細胞は、気液界面において多孔質基材上で増殖させることによって粘膜毛様体分化し、これが、前記細胞において、in vivoで、形態学的プロセスと重要な生理学的プロセスの両方を再現する。ALIアッセイを、基本的にはSims,A.C.ら、in J.Virol(Dec 2005),vol.79(24),p.15511-15524(“Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Infection of Human Ciliated Airway Epithelia:Role of Ciliated Cells in Viral Spread in the Conducting Airways of the Lungs”),0022-538X/05/$08.00+0 doi:10.1128/JVI.79.24.15511-15524.2005に記載されている通りのSARS-CoV感染を評価するためのプロトコルを使用して、SARS-CoV-2に対する本明細書に記載されている試験化合物の抗ウイルス活性を評価するための別の手段として使用した。初代肺細胞(Marsico Lung Institute)を、基本的には、RandellおよびFulcherに記載されている通りに培養し、基本的には、Simsらに記載されている通りに、0.5のMOIで、SARS-CoV-2に感染させた。SB-462795、カモスタット、またはSB-462795とカモスタットを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、3μM、10μMまたは30μM(SB-462795単独またはカモスタット単独;または4μMカモスタット+30μM SB-462795t)の用量で48時間にわたって投与し、抗ウイルス活性を、プラークアッセイによって、DMSO溶媒中の10μM レムデシビル、ウイルスの対照およびDMSO溶媒のみの対照と比較して評価した。
【0264】
結果-ALIモデル
結果を図8Aに示す。ここから理解できるように、カモスタット(図8A中のGSKC)は、4μM(薄い上向きの三角形)および10μM(濃い上向きの三角形)において、10μMのレムデシビル(図8A中のRDV)と比較して、用量依存的なSARS-CoV-2抗ウイルス活性を示したのに対し、レラカチブ(図8A中のGSKC)は、30μM(下向きの三角形)または4μM(四角形)において、本質的に活性を示さなかった。しかしながら、レラカチブ(30μM)とカモスタット(4μM)の組合せ(菱形)は、ALI研究において、レラカチブ単独またはカモスタット単独と比較して、SARS-CoV-2に対して増大した活性を示した(図8A参照)。各記号は、1つの培養物からの力価を示す。
【0265】
図8Bは、ALI研究において測定された、レムデシビルの主要血漿中代謝物(四角形)およびスタウロスポリン(ポジティブコントロール)(円)と比較した、レラカチブ(下向きの三角形)、カモスタット(上向きの三角形)およびレラカチブとカモスタットの組合せ(菱形)の細胞毒性を示す。
【0266】
配列表
配列番号1:N1フォワードプライマー
5’ GACCCCAAAATCAGCGAAAT 3’
配列番号2:N1リバースプライマー
5’ TCTGGTTACTGCCAGTTGAATCTG 3’
配列番号3:N1プローブ配列
5’ FAM-ACCCCGCATTACGTTTGGTGGACC-BHQ-1 3’
配列番号4:N2フォワードプライマー
5’ TTACAAACATTGGCCGCAAA 3’
配列番号5:N2リバースプライマー
5’ GCGCGACATTCCGAAGAA 3’
配列番号6:N2プローブ配列
5’ FAM-ACAATTTGCCCCCAGCGCTTCAG-BHQ-1 3’
図1A
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】