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特表2023-519589プルシアンブルー系遷移金属シアン化物、その製造方法、及び関連する正極板、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに装置
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  • 特表-プルシアンブルー系遷移金属シアン化物、その製造方法、及び関連する正極板、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】プルシアンブルー系遷移金属シアン化物、その製造方法、及び関連する正極板、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに装置
(51)【国際特許分類】
   C01C 3/12 20060101AFI20230501BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230501BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230501BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20230501BHJP
【FI】
C01C3/12
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/136
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558232
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2021128648
(87)【国際公開番号】W WO2022121570
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202011423372.7
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】田佳瑞
(72)【発明者】
【氏名】郭永▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼楚英
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼欣欣
(72)【発明者】
【氏名】黄▲麗▼▲テイ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼▲碩▼▲劍▼
(72)【発明者】
【氏名】林文光
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼金余
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA11
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA10
5H050HA13
5H050HA20
(57)【要約】
本出願の実施例は、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物、その製造方法、及び関連する正極板、二次電池、電池パック並びに装置を提供する。プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、前記一次粒子は、球形状又は球形状に近い形状である。プルシアンブルー系遷移金属シアン化物に1グラムあたりの容量が比較的に低いという問題が存在し、ナトリウムイオン電池のエネルギ密度が比較的に低く、ナトリウムイオン電池の商業化応用に影響を与える。二次粒子は、粒子の粒状性と粉体圧密密度を増大させ、さらに正極板の圧密密度を向上させるとともに、正極板の活性イオン輸送性能と電子導電性を改善することにより、それを採用する二次電池のエネルギ密度とレート特性を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次粒子を含むプルシアンブルー系遷移金属シアン化物であって、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、前記一次粒子は、球形状又は球形状に近い形状である、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物。
【請求項2】
前記二次粒子の内角角度は、150°~300°である、請求項1に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物。
【請求項3】
前記一次粒子の曲率半径≧0.2μmである、請求項1に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物。
【請求項4】
前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の体積平均粒径Dv50≧1μmである、請求項1に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物。
【請求項5】
前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の600MPaの圧力下での粉体圧密密度は、1.7g/cm~2.1g/cmである、請求項1に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物。
【請求項6】
前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、A[M(CN)を含み、
Aは、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちの一つ又は複数から選択され、
は、Mn、Ni、Cu、Co、Fe、Zn、Crのうちの一つ又は複数から選択され、
は、Mn、Ni、Cu、Co、Fe、Zn、Crのうちの一つ又は複数から選択され、
1.5≦x≦2、
0.6≦y≦1である、請求項1に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物。
【請求項7】
前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の12MPa圧力下での粉体抵抗率は、10kΩ・cm~100kΩ・cmである、請求項1に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物。
【請求項8】
前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量は、140mAh/g~170mAh/gである、請求項1に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物。
【請求項9】
プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の製造方法であって、
遷移金属カチオンを含む第1の溶液を提供し、前記第1の溶液における遷移金属カチオンの濃度≧0.1mol/LであるステップS1と、
遷移金属シアネートのA塩を含む第2の溶液を提供し、前記第2の溶液における遷移金属シアネートアニオンの濃度≧0.1mol/Lであり、Aは、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちの一つ又は複数から選択されるステップS2と、
撹拌の条件で、10cm/s~100m/sの流速で、0.5h~48hの時間内に、前記第1の溶液と前記第2の溶液との一方を他方に加えて混合し、共沈化学反応を起こし、懸濁液を得て、前記一方の溶液温度が10℃~40℃であり、前記他方の溶液温度が40℃~180℃であるステップS3と、
撹拌及び40℃~180℃の条件で、前記懸濁液に対してエージングを、≧0.5h行うステップS4と、
分離、洗浄、乾燥を経て、前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物を得て、前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、前記一次粒子は、球形状又は球形状に近い形状であるステップS5とを含む、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の製造方法。
【請求項10】
ステップS1において、前記第1の溶液における遷移金属カチオンの濃度は、0.2mol/L~4mol/Lである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップS2において、前記第2の溶液における遷移金属シアネートアニオンの濃度は、0.2mol/L~4mol/Lである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
ステップS1における前記第1の溶液又はステップS2における前記第2の溶液にはAソースがさらに含まれ、
Aソースは、Aの塩化塩、Aの硝酸塩、Aの硫酸塩、Aの水酸化物、Aの蟻酸塩、Aの酢酸塩、Aのシュウ酸塩、Aのリン酸塩、Aの過塩素酸塩、Aの安息香酸塩、Aのクエン酸塩のうちの一つ又は複数から選択される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップS1における前記第1の溶液又はステップS2における前記第2の溶液には酸化防止剤が含まれる、請求項9に記載の製造方法。
【請求項14】
ステップS3において、前記混合の流速は、50cm/s~10m/sである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
ステップS3において、前記混合の時間は、1h~24hである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項16】
ステップS3において、前記他方の溶液温度は、60℃~140℃である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項17】
ステップS4において、前記エージングの温度は、60℃~140℃であり、及び/又は、
ステップS4において、前記エージングの時間は、1h~24hである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項18】
正極材料を含む正極板であって、前記正極材料は、請求項1~8のいずれか一項に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物又は請求項9~17のいずれか一項に記載の製造方法で得られるプルシアンブルー系遷移金属シアン化物を含む、正極板。
【請求項19】
請求項18に記載の正極板を含む、二次電池。
【請求項20】
請求項19に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項21】
請求項19に記載の二次電池、又は請求項20に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項22】
請求項19に記載の二次電池、請求項20に記載の電池モジュール、又は請求項21に記載の電池パックのうちの少なくとも一つを含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月08日に提出された名称が「プルシアンブルー系遷移金属シアン化物、その製造方法、及び関連する正極板、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに装置」の中国特許出願番号202011423372.7の優先権を主張しており、同出願の内容の全ては、ここに参照として取り込まれる。
【0002】
本出願は、エネルギ貯蔵装置の技術分野に属し、具体的には、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物、その製造方法、及び関連する正極板、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、リチウムイオン電池が世界範囲内で新エネルギー自動車及び電気化学エネルギー貯蔵などの新興分野の大規模な普及に伴い、リチウム及びその他の貴金属リソース、例えばコバルト、ニッケルなどのリソースの存在度は、次第に人々の懸念を引き起こした。これは、需要の急激な増加により、これらのリソースの埋蔵量が減少したり、採取や採掘のコストが著しく増加したりするためである。そのため、低いエネルギー貯蔵コストを実現するために、リソースの存在度が高い新たな電気化学エネルギー貯蔵体系を開発する研究がますます重要視されている。
【0004】
ナトリウムイオン電池に代表される他の体系の二次電池は、リチウムイオン電池とエネルギー貯蔵の原理が類似しているが、充放電サイクルで正負両極に往復移動するイオンがリチウムイオンからナトリウムイオンなどの活性イオンに変化する点が異なる。ナトリウム元素の存在度が高いため、潜在的で広い応用の将来性があり、特に低速電気自動車、大規模エネルギー貯蔵分野で比較的大きな潜在的な応用価値を有する。
【0005】
正極材料は、ナトリウムイオン電池等の二次電池の最も主要な構成部分である。ナトリウムイオン電池の産業化の代替正極材料は、主にプルシアンブルー系遷移金属シアン化物、層状遷移金属酸化物、ポリアニオン型酸化物などを含む。その他の正極材料と比べ、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、コストが低く、比容量が高く、製造しやすいという3つのコア産業化の優位性を有し、産業化の将来性が最も高い。しかしながら、一般に使用されているリチウムイオン電池の正極材料に対して、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物に1グラムあたりの容量が比較的に低いという問題が依然として存在し、ナトリウムイオン電池のエネルギ密度が比較的に低く、ナトリウムイオン電池の商業化応用に影響を与える。
【発明の概要】
【0006】
本出願の第1の態様によるプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、そのうち、前記一次粒子は、球形状又は球形状に近い形状である。
【0007】
本出願のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、複数の球形状又は球形状に近い形状の一次粒子が集合した二次粒子を含み、粒子の粒状性と粉体圧密密度を増大させ、さらに正極板の圧密密度を向上させるとともに、正極板の活性イオン輸送性能と電子導電性を改善することにより、それを採用する二次電池のエネルギ密度とレート特性を向上させることができる。
【0008】
本出願の任意の実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の二次粒子の内角角度は、150°~300°であり、任意選択的には、180°~270°、又は200°~250°である。粒子表面の鈍角が比較的に多いプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、粒子と粒子との互いの接触面積の増加に有利であり、の圧密密度を向上させることにより、電池のエネルギ密度とレート特性を改善する。
【0009】
本出願の任意の実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の二次粒子において、一次粒子の曲率半径≧0.2μmであり、任意選択的には、0.5μm~100μm、又は0.8μm~50μmである。適切な曲率半径は、の圧密密度の向上に有利であり、それにより、電池のレート特性及びエネルギ密度を改善することができる。
【0010】
本出願の任意の実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の体積平均粒径Dv50≧1μmであり、任意選択的には、2μm~50μm、又は2μm~10μmである。適切な粒径範囲は、圧密密度の向上に有利であるため、電池のエネルギ密度とレート特性の向上に役立つ。
【0011】
本出願の任意の実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の600MPa圧力下での粉体圧密密度は、1.7g/cm~2.1g/cmであり、任意選択的には、1.8g/cm~2.1g/cmである。プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の粉体圧密密度が大きく、粒子と導電剤との接触に有利であり、さらに極板の圧密密度の向上に有利であり、それにより、電池のエネルギ密度とレート特性を向上させる。
【0012】
本出願の任意の実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、A[M(CN)を含み、そのうち、Aは、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちの一つ又は複数から選択され、Mは、Mn、Ni、Cu、Co、Fe、Zn、Crのうちの一つ又は複数から選択され、Mは、Mn、Ni、Cu、Co、Fe、Zn、Crのうちの一つ又は複数から選択され、1.5≦x≦2、0.6≦y≦1である。このプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の欠陥程度が比較的に小さいほど、1グラムあたりの容量が高くなり、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0013】
本出願の任意の実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の12MPa圧力下での粉体抵抗率は、10kΩ・cm~100kΩ・cmであり、任意選択的には、20kΩ・cm~90kΩ・cmである。粉体抵抗率が適切な範囲内にあり、電池のレート特性を改善することができる。
【0014】
本出願の任意の実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量は、140mAh/g~170mAh/gであり、任意選択的には、150mAh/g~165mAh/gである。プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、1グラムあたりの容量が比較的に大きく、電池のエネルギ密度を増大させることができる。
【0015】
本出願の第2の態様によるプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の製造方法は、
遷移金属カチオンを含む第1の溶液を提供し、前記第1の溶液における遷移金属カチオンの濃度≧0.1mol/LであるステップS1と、
遷移金属シアネートのA塩を含む第2の溶液を提供し、前記第2の溶液における遷移金属シアネートアニオンの濃度≧0.1mol/Lであり、Aは、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちの一つ又は複数から選択されるステップS2と、
撹拌の条件で、10cm/s~100m/sの流速で、0.5h~48hの時間内に、前記第1の溶液と前記第2の溶液との一方を他方に加えて混合し、共沈化学反応を起こし、懸濁液を得て、そのうち、前記一方の溶液温度が10℃~40℃であり、他方の溶液温度が40℃~180℃であるステップS3と、
撹拌及び40℃~180℃の条件で、前記懸濁液に対してエージングを、≧0.5h行うステップS4と、
分離、洗浄、乾燥を経て、前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物を得て、そのうち、前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、前記一次粒子は、球形状又は球形状に近い形状であるステップS5とを含む。
【0016】
第1の溶液と第2の溶液において、遷移金属カチオンと遷移金属シアネートアニオンの濃度が比較的に大きければ、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の収量を向上させ、生産コストを低減させることができる。
【0017】
本出願の任意の実施形態では、S1において、前記第1の溶液における遷移金属カチオンの濃度は、0.2mol/L~4mol/Lであり、任意選択的には、0.3mol/L~3mol/Lである。
【0018】
本出願の任意の実施形態では、S2において、前記第2の溶液における遷移金属シアネートアニオンの濃度は、0.2mol/L~4mol/Lであり、任意選択的には、0.3mol/L~3mol/Lである。
【0019】
第1の溶液遷移金属カチオンと第2の溶液遷移金属シアネートアニオンの濃度が適切な範囲内にあり、結晶濃度を熱力学的に飽和溶解度よりも小さくすることができ、液相として示されることにより、安定的な濃度を維持して反応し、本出願に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物を得る。
【0020】
本出願の任意の実施形態では、S1における前記第1の溶液又はS2における第2の溶液にはAソースがさらに含まれ、そのうち、Aソースは、Aの塩化塩、Aの硝酸塩、Aの硫酸塩、Aの水酸化物、Aの蟻酸塩、Aの酢酸塩、Aのシュウ酸塩、Aのリン酸塩、Aの過塩素酸塩、Aの安息香酸塩、Aのクエン酸塩のうちの一つ又は複数から選択され、選択的に、Aソースは、Aの塩化塩、Aの硝酸塩、Aの硫酸塩のうちの一つ又は複数から選択される。
【0021】
Aソースの添加は、Aのプルシアンブルー系遷移金属シアン化物のフレームへのマイグレーションを促進することができ、生成物構造の完全化に有利であり、これによってプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量を向上させることにより、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0022】
本出願の任意の実施形態では、S1における前記第1の溶液又はS2における前記第2の溶液には酸化防止剤が含まれる。酸化防止剤は、反応溶液で遷移金属が酸化することを抑制し、生成物に酸化不純物がドーピングされる確率を低減させ、これによってプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量を向上させることにより、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0023】
本出願の任意の実施形態では、S3において、前記混合の流速は、50cm/s~10m/sであり、任意選択的には、1m/s~5m/sである。この流速範囲内で混合を行い、反応して生成したプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、分散性が比較的に高く、粒子同士が過度に凝集しにくいが、過度に分散することもなく、一次粒子が球形状を保持する状態で二次粒子を形成することにより、極板の抵抗率を低減させるとともに、極板の圧密密度を向上させることができるため、電池のエネルギ密度とレート特性を向上させることができる。
【0024】
本出願の任意の実施形態では、S3において、前記混合の時間は、1h~24hであり、任意選択的には、2h~12hである。この時間範囲内に混合すれば、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物が比較的に大きな粒径を備るようにすることができ、それにより、極板の抵抗率を低減させるとともに、極板の圧密密度を向上させるため、電池のエネルギ密度とレート特性の向上に有利である。
【0025】
本出願の任意の実施形態では、S3において、前記他方の溶液温度は、60℃~140℃であり、任意選択的には、70℃~110℃である。溶液温度を制御すれば、生成物の化学式における金属A及び遷移金属M2の含有量を向上させることができ、結晶の構造をより完全にし、欠陥をより少なくし、これによってプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、より高い1グラムあたりの容量を示し、それにより、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0026】
本出願の任意の実施形態では、S4において、前記エージングの温度は、60℃~140℃であり、任意選択的には、70℃~110℃である。この温度範囲内にエージングを行うことにより、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量及び電池のエネルギ密度をさらに向上させることができる。さらに、電池のレート特性を向上させることもできる。
【0027】
本出願の任意の実施形態では、S4において、前記エージングの時間は、1h~24hであり、任意選択的には、2h~12hである。この時間範囲内にエージングを行うことにより、生成物の化学式におけるNaの含有量比率を向上させることができ、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量及び電池のエネルギ密度をさらに向上させることができる。
【0028】
本出願の第3の態様による正極板は、正極材料を含み、前記正極材料は、本出願の第1の態様に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物又は本出願の第2の態様に記載の製造方法で得られるプルシアンブルー系遷移金属シアン化物を含む。
【0029】
本出願の正極板は、本出願の正極材料を採用するため、それを採用するナトリウムイオン電池が比較的に高いエネルギ密度を備えるようにすることができる。
【0030】
本出願の第4の態様による二次電池は、正極板を含み、前記正極板は、本出願の第3の態様に記載の正極板である。選択的に、二次電池は、ナトリウムイオン電池である。
【0031】
本出願の二次電池は、本出願の正極板を採用するため、比較的に高いエネルギ密度を有することができる。
【0032】
本出願の第5の態様による電池モジュールは、本出願の第4の態様に記載の二次電池を含む。
【0033】
本出願の第6の態様による電池パックは、本出願の第4の態様に記載の二次電池、又は本出願の第5の態様に記載の電池モジュールを含む。
【0034】
本出願の第7の態様による装置は、本出願の第4の態様に記載の二次電池、本出願の第5の態様に記載の電池モジュール、又は本出願の第6の態様に記載の電池パックのうちの少なくとも一つを含む。
【0035】
本出願の電池モジュール、電池パックと装置は、本出願に記載の二次電池を含み、したがって少なくとも前記二次電池と同じ又は類似する技術的効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本出願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、本出願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明するが、明らかなことに、以下に説明する図面は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を支払うことなく、図面に基づいて他の図面を入手することができる。
【0037】
図1】比較例1で得られたプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の走査型電子顕微鏡(SEM)図である。
図2】実施例1で得られたプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の走査型電子顕微鏡(SEM)図である。
図3】(a)比較例1及び(b)実施例1で得られたプルシアンブルー系遷移金属シアン化物のイオン研磨断面走査型電子顕微鏡(SEM)図である。
図4】二次粒子の内角角度の概略図である。
図5】実施例1で得られたプルシアンブルー系遷移金属シアン化物のX線回折(XRD)図であり、結果は、材料が典型的な単斜晶相(Monoclinic)であることを示す。
図6】二次電池の一実施形態の概略図である。
図7図6の分解図である。
図8】電池モジュールの一実施形態の概略図である。
図9】電池パックの一実施形態の概略図である。
図10図9の分解図である。
図11】二次電池が電源として用いられる装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本出願の発明の目的、技術的解決手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下、具体的な実施例を参照しながら、本出願について詳細に説明する。なお、本明細書に記述されている実施例は、本出願を説明するためだけのものであり、本出願を限定するためのものではない。
【0039】
簡潔にするために、本明細書ではいくつかの数値範囲のみが明示的に開示されている。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、また、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は、他の任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値は、いずれもこの範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は、それ自体の下限又は上限として、他の任意の点又は単一の数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0040】
本明細書の記述では、別段の記載がない限り、「以上」、「以下」は、その数字を含むものであり、「一つ又は複数」のうちの「複数」の意味は、2つ以上であることを説明する必要がある。
【0041】
本明細書の説明では、別段の記載がない限り、用語「又は」は包含的なである。例えば、「A又はB」という用語は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれか一つの条件は、いずれも「A又はB」という条件を満たし、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽であり(又は存在せず)、Aが偽であり(又は存在せず)且つBが真であり(又は存在し)、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)。
【0042】
本出願の上記発明の概要は、本出願における開示された各実施形態又は各実現形態を記述することを意図しているものではない。以下に、例を挙げて、例示的な実施形態をより具体的に記述する。様々な組み合わせの形態で使用することができる一連の実施例によって、出願全体の複数の箇所でガイダンスが提供される。それぞれの例では、列挙は、代表的な群としてのみ行われ、網羅的なものと解釈すべきではない。
【0043】
発明者の研究によると、既存のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の粒状性が小さく、粉体の圧密密度が低く、導電性が低すぎるなどという問題のため、二次電池のエネルギ密度が比較的に低く、二次電池の生産難易度が高くなり、且つ機器に対する要求が高い。この現象を引き起こす主な原因は、共沈反応段階で得られる生成物の形状が一般的に正立方体であるため、極板における活物質粒子と粒子との間の隙間が大きくて充填されにくく、活物質粒子と導電剤粒子との間の接続が緊密でないためである。そのため、どのように粒子と粒子との間の接触を補強し、ギャップを減少するかは、ナトリウムイオン電池等の二次電池のエネルギ密度を向上させるキーである。
【0044】
そのため、本発明者は、さらに多くの研究を行い、本出願の第1の態様によるプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、そのうち、前記一次粒子は、球形状又は球形状に近い形状である。図1図2に示すとおりである。
【0045】
本出願において、一次粒子と二次粒子は、本分野で公知の意味である。一次粒子とは、凝集状態を形成していない粒子である。二次粒子とは、二つ又は二つ以上の一次粒子が集合した凝集状態の粒子である。一次粒子と二次粒子、及び粒子形状は、走査型電子顕微鏡でSEM画像を撮影して容易に区別されることができる。
【0046】
発明者は、研究により、独立に分散した一次粒子と比べて、二次粒子の粒状性が増大し、且つ二次粒子における一次粒子の間が体相と直接接触するため、接触がより緊密であることを発見した。球形状又は球形状に近い形状の一次粒子によって提供される曲面は、独立に分散した各活物質粒子と粒子との間の接触面を増大させ、プレス条件での空孔率を減少させ、空間利用率を向上させ、図3に示す通りである。そのため、本出願のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物を採用すれば、比較的に高い粉体圧密密度と極板の圧密密度を得ることができ、それにより、二次電池の質量エネルギ密度及び体積エネルギ密度を向上させることができる。また、活物質粒子の間の緊密な接触は、活性イオンの固相輸送性能を向上させることができ、且つ一次粒子によって提供される曲面は、活物質粒子と導電剤粒子(例えばSuper P等)とを緊密に接触させ、極板導電性を向上させることにより、二次電池が比較的に高いエネルギ密度を得るとともに、レート特性を改善することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の二次粒子の内角角度は、150°~300°であり、例えば、170°~270°、180°~270°、200°~270°、210°~265°、215°~250°、215°~240°、又は200°~250°であってもよい。
【0048】
図4に示すように、内角角度は、二次粒子の表面内側の角度範囲であり、二次粒子における他の一次粒子と隣接しない一次粒子の表面内側角度、及び隣接する一次粒子が形成するなす角内側角度を含む。二次粒子の内角角度の例示的なテスト方法は、以下のとおりである。ZEISS Gemini SEM 300走査型電子顕微鏡(SEM)を利用し、10kの倍率で後方散乱電子モードを選択し、3つのランダムな異なる位置の写真を撮影し、各写真から2つの二次粒子をランダムに見つけ、この2つの二次粒子は、いずれも粒度がプルシアンブルー系遷移金属シアン化物のDv50以上の一次粒子で構成され、各二次粒子の最大内角角度を測定する。3つの写真における6つの二次粒子の最大内角角度の測定値の平均値を取り、すなわち二次粒子の内角角度である。
【0049】
粒子表面の鈍角が比較的に多いプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、自体のセル構造が比較的に長い配位結合で形成されるフレームであるため、粒子が弾性を有する。且つ、粒子表面の鈍角は、さらに粒子の間の相互接触面積を増加させることに有利である。そのため、このプルシアンブルー系遷移金属シアン化物を採用すれば、極板の圧密密度を向上させ、導電ネットワークの構築をより円滑にすることにより、電池のエネルギ密度とレート特性を改善することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の二次粒子において、一次粒子の曲率半径≧0.2μmである。100マイクロスケール以内で、一次粒子の曲率半径が大きいほど、その形状は、球形状に近づく。選択的に、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の一次粒子の曲率半径は、0.2μm~100μm、0.5μm~100μm、0.8μm~70μm、0.8μm~50μm、0.8μm~20μm、0.8μm~15μm、0.8μm~10μm、0.8μm~8μm、0.8μm~5μm、1.5μm~50μm、1.5μm~18μm、1.5μm~12μm、1.5μm~7μm、1μm~70μm、2μm~50μm、2μm~20μm、5μm~50μm、3μm~30μm、3μm~20μm、5μm~20μm、又は2μm~10μmであってもよい。
【0051】
曲率半径は、一定の直径の円を利用してフィッティングし、フィッティングした円の半径は、すなわち測定物の曲率半径である。プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の一次粒子の曲率半径の例示的なテスト方法は、以下のとおりである。ZEISS Gemini SEM 300走査型電子顕微鏡(SEM)を利用し、10kの倍率で後方散乱電子モードを選択し、3つのランダムな異なる位置の写真を撮影し、各写真から2つの二次粒子をランダムに見つけ、この2つの二次粒子は、粒度がプルシアンブルー系遷移金属シアン化物のDv50以上の一次粒子で構成され、二次粒子における一次粒子の任意の箇所の曲率半径を測定し、3つの写真における6つの二次粒子における一次粒子の曲率半径測定値の平均値を取り、すなわち一次粒子の曲率半径である。
【0052】
適切な曲率半径は、プルシアンブルー粒子と粒子との間の緊密なラップに有利であり、これによって極板圧密密度の向上、イオンと電子との円滑な輸送に有利であり、それにより、電池のレート特性及びエネルギ密度を改善することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の体積平均粒径Dv50≧1μmである。選択的に、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物のDv50は、1μm~50μm、2μm~50μm、2μm~40μm、10μm~40μm、5μm~20μm、8μm~25μm、5μm~45μm、5μm~30μm、5μm~20μm、5μm~15μm、4μm~30μm、8μm~20μm、1μm~10μm、又は2μm~10μmであってもよい。適切な粒径範囲は、極板の圧密密度の向上に有利であり、且つイオンと電子の伝達も比較的に速いため、電池のエネルギ密度とレート特性の向上に役立つ。
【0054】
いくつかの実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の600MPa圧力下での粉体圧密密度は、1.7g/cm~2.1g/cmである。選択的に、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の600MPa圧力下での粉体圧密密度は、1.8g/cm~2.1g/cm、1.74g/cm~2.02g/cm、1.8g/cm~1.95g/cm、1.85g/cm~1.9g/cm、1.71g/cm~1.9g/cm、又は1.71g/cm~1.85g/cmであってもよい。
【0055】
プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の粉体圧密密度が大きく、粒子と導電剤との接触に有利であり、それにより、電池のレート特性を向上させる。また、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の粉体圧密密度は、さらに極板の圧密密度の向上に有利であり、これによって電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、A[M(CN)を含み、そのうち、Aは、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちの一つ又は複数から選択され、Mは、Mn、Ni、Cu、Co、Fe、Zn、Crのうちの一つ又は複数から選択され、Mは、Mn、Ni、Cu、Co、Fe、Zn、Crのうちの一つ又は複数から選択され、1.5≦x≦2、0.6≦y≦1である。そのうち、xは、Aの含有量を表し、yは、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の欠陥程度を表す。Aの含有量が大きいほど、欠陥の程度が少ないほど、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量は、高くなる。
【0057】
いくつかの実施例では、Aは、Na、K、Zn、Liのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。一例として、Aは、Naから選択される。
【0058】
いくつかの実施例では、Mは、Mn、Ni、Co、Feのうちの一つ又は複数から選択される。一例として、Mは、Mnから選択される。
【0059】
いくつかの実施例では、Mは、Mn、Ni、Co、Feのうちの一つ又は複数から選択される。一例として、Mは、Feから選択される。
【0060】
いくつかの実施例では、1.7≦x≦2、1.8≦x≦2、又は1.9≦x≦2である。
【0061】
いくつかの実施例では、0.8≦y≦1、0.9≦y≦1、又は0.95≦y≦1である。
【0062】
x、yの値が高ければ、元素価数が低くなり、充電プロセスにおいて価数が上昇可能な元素の比率が増加するため、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量が向上することにより、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の12MPa圧力下での粉体抵抗率は、10kΩ・cm~100kΩ・cmである。選択的に、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の12MPa圧力下での粉体抵抗率は、10kΩ・cm~90kΩ・cm、10kΩ・cm~70kΩ・cm、20kΩ・cm~90kΩ・cm、20kΩ・cm~80kΩ・cm、30kΩ・cm~80kΩ・cm、30kΩ・cm~70kΩ・cm、20kΩ・cm~60kΩ・cmであり、又は40kΩ・cm~60kΩ・cmである。粉体抵抗率が適切な範囲内にあることは、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物粒子の間のラップが緊密であることを示し、且つ極板が比較的に高いイオン導電率を得ることに役立つことにより、電池のレート特性を改善することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量は、120mAh/g~170mAh/gである。選択的に、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量は、140mAh/g~170mAh/g、145mAh/g~165mAh/g、150mAh/g~165mAh/g、155mAh/g~165mAh/g、又は155mAh/g~160mAh/gである。プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、1グラムあたりの容量が比較的に大きく、電池のエネルギ密度を増大させることができる。
【0065】
本出願において、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の体積平均粒径Dv50は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば、レーザ回折粒度分析法である。例として、標準GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析器(例えばMalvern Master Size 3000)で測定することができる。テストにおいて、媒体は、例えば水であり、吸光率は、例えば1.567である。そのうち、Dv50は、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の累積体積分布百分率が50%に達する時に対応する粒径である。
【0066】
本出願において、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の粉体圧密密度は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば標準GB/T24533-2009を参照し、電子圧力試験機(例えばUTM7305型)で測定する。例示的なテスト方法は、以下のとおりである。プルシアンブルー系遷移金属シアン化物のサンプル1gを秤量し、底面積が1.327cmの金型に加え、600MPaに加圧し、30s保圧し、その後に放圧し、10s保持し、その後にプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の600MPa圧力下での粉体圧密密度を記録して計算する。具体的には、加圧後にスリーブの外側に露出するルーフピラーの高さ(H1)をノギスで測定し、且つサンプルの圧密密度=m/(S×(H1-H0))を算出することができ、そのうち、
m:サンプルの質量、
H1:サンプルがプレスされた後にスリーブの外側に露出するルーフピラーの高さ、
H0:サンプルを入れない時にスリーブの外側に露出するルーフピラーの高さ、
S:ルーフピラーの断面積。
【0067】
本出願において、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の化学組成は、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば誘導結合プラズマ体分光器ICP(例えばSpectroblue型)は、サンプルにおける各元素が材料に占める比率を測定する。
【0068】
本出願において、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の粉体抵抗率は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えばGB/T 30835-2014を参照し、PRCD1100粉体抵抗率計でテストを行うことができる。
【0069】
本出願において、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例示的なテスト方法は、以下のとおりである。製造されたプルシアンブルー系遷移金属シアン化物、導電剤(例えばアセチレンブラック(Denka、Denka Black))、バインダー(例えばポリビニリデンフルオライド(Arkema、HSV 900))を7:2:1の質量比で溶媒N-メチルピロリドン(NMP)と均一に混合し、スラリーを作製し、作製されたスラリーをアルミホイル集電体にコーティングし、オーブンに乾燥して使用に供する。ナトリウム金属シートを対極として、セラミックセパレータ、1mol/LのNaPFのプロピレンカーボネート(PC)電解液とともに、アルゴンで保護されたグローブボックスで2025型コイン電池を組み立てる。得られたコイン電池を12時間静置した後、ランドテスタで、25℃で、0.1Cのレートで4Vに定電流充電し、さらに電流≦0.05Cに定電圧充電し、5分間静置し、さらに0.1Cのレートで2Vに定電流放電し、放電容量を記録する。放電容量とプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の質量との比は、すなわち製造されるプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量である。
【0070】
本出願の第2の態様によるプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の製造方法は、この製造方法に基づいて上記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物を製造することができる。プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の製造方法は、
遷移金属カチオンを含む第1の溶液を提供し、前記第1の溶液における遷移金属カチオンの濃度≧0.1mol/LであるステップS1と、
遷移金属シアネートのA塩を含む第2の溶液を提供し、前記第2の溶液における遷移金属シアネートアニオンの濃度≧0.1mol/Lであり、Aは、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちの一つ又は複数から選択されるステップS2と、
撹拌の条件で、10cm/s~100m/sの流速で、0.5h~48hの時間内に、前記第1の溶液と前記第2の溶液との一方を他方に加えて混合し、共沈化学反応を起こし、懸濁液を得て、そのうち、前記一方の溶液温度が10℃~40℃であり、他方の溶液温度が40℃~180℃であるステップS3と、
撹拌及び40℃~180℃の条件で、前記懸濁液に対してエージングを、≧0.5h行うステップS4と、
分離、洗浄、乾燥を経て、前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物を得て、そのうち、前記プルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、二次粒子を含み、前記二次粒子は、複数の一次粒子を含み、前記一次粒子は、球形状又は球形状に近い形状であるステップS5とを含む。
【0071】
S1において、遷移金属カチオンを提供する物質は、遷移金属塩化塩、遷移金属硝酸塩、遷移金属硫酸塩、遷移金属水酸化物、遷移金属蟻酸塩、遷移金属酢酸塩、遷移金属シュウ酸塩、遷移金属リン酸塩、遷移金属亜リン酸塩、遷移金属亜硫酸塩、遷移金属チオ硫酸塩、遷移金属過塩素酸塩、遷移金属安息香酸塩、遷移金属クエン酸塩のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。選択的に、遷移金属ソースは、遷移金属塩化塩、遷移金属硝酸塩、遷移金属硫酸塩のうちの一つ又は複数から選択される。そのうち遷移金属は、Mであってもよい。具体的な例として、遷移金属カチオンを提供する物質は、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルトのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、第1の溶液における遷移金属カチオン濃度は、0.2mol/L~4mol/Lである。選択的に、第1の溶液における遷移金属カチオンの濃度は、0.25mol/L~3.5mol/L、0.3mol/L~3mol/L、0.2mol/L~2mol/L、0.35mol/L~2mol/L、又は0.4mol/L~1mol/Lである。
【0073】
S2において、遷移金属シアネートにおける遷移金属は、Mであってもよい。例えば、遷移金属シアネートは、フェロシアネート、マンガンシアネート、コバルトシアネート、ニッケルシアネート、銅シアネートのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。Aは、本明細書に記述されている金属であってもよい。例として、遷移金属シアネートのA塩は、フェリシアン化ナトリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化ナトリウム、フェロシアン化リチウム、ニッケルシアン化ナトリウム、コバルトシアン化亜鉛、コバルトシアン化カリウムのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、第2の溶液における遷移金属シアネートアニオンの濃度は、0.2mol/L~4mol/Lである。選択的に、第2の溶液における遷移金属シアネートアニオンの濃度は、0.25mol/L~3.5mol/L、0.3mol/L~3mol/L、0.2mol/L~2mol/L、0.35mol/L~2mol/L、又は0.4mol/L~1mol/Lである。
【0075】
第1の溶液と第2の溶液の溶媒は、独立に、水、重水、アセトニトリル、アジポニトリル、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、アセトン、グリセリン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。例えば、第1の溶液と第2の溶液の溶媒は、水、例えば脱イオン水から選択されてもよい。
【0076】
遷移金属カチオンと遷移金属シアネートアニオンの濃度が比較的に大きければ、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の収量を向上させ、生産コストを低減させることができる。特に、第1の溶液遷移金属カチオンと第2の溶液遷移金属シアネートアニオンの濃度が適切な範囲内にあれば、反応して生成した結晶濃度を熱力学的に飽和溶解度よりも小さくすることができ、液相として示されることにより、安定的な濃度を維持して反応し、本出願に記載のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物を得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1の溶液又は第2の溶液には、選択的にAソースがさらに含まれる。Aソースは、Aの塩化塩、Aの硝酸塩、Aの硫酸塩、Aの水酸化物、Aの蟻酸塩、Aの酢酸塩、Aのシュウ酸塩、Aのリン酸塩、Aの過塩素酸塩、Aの安息香酸塩、Aのクエン酸塩のうちの一つ又は複数から選択される。選択的に、Aソースは、Aの塩化塩、Aの硝酸塩、Aの硫酸塩のうちの一つ又は複数から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1の溶液又は第2の溶液に加えられるAソースの濃度は、0.05mol/L~10mol/Lであり、任意選択的には、0.05mol/L~5mol/L、1mol/L~5mol/L、3mol/L~8mol/L、2mol/L~6mol/L、4mol/L~9mol/L、又は4mol/L~7mol/Lである。
【0079】
Aソースの添加は、Aのプルシアンブルー系遷移金属シアン化物のフレームへのマイグレーションを促進することができ、生成物構造の完全化に有利であり、これによってプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量を向上させることにより、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1の溶液又は第2の溶液には酸化防止剤が含まれる。例として、酸化防止剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムから選択されてもよい。酸化防止剤は、反応溶液で遷移金属が酸化することを抑制し、生成物に酸化不純物がドーピングされる確率を低減させ、これによってプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量を向上させることにより、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0081】
S3において、任意の機器と方法を採用して第1の溶液と第2の溶液の一方を他方に加える流速と時間を調節することができる。例として、直径が0.3mm~2mmのシリンジ、ペリスタポンプ又はオートサンプラを利用することができる。混合時間、流速と試料導入管の直径との間の関係を計算することによって、特定の流速と特定の時間条件での溶液混合を行う。
【0082】
溶液混合の順序は、生成物の物性に影響を与え、例えば第1の溶液を第2の溶液に加えることは、第1の溶液に第2の溶液を加えることに比べて、得られる二次粒子の内角角度が低下するが、一次粒子の曲率半径及び材料のDv50が増大し、粉体抵抗率も向上する。
【0083】
いくつかの実施形態では、S3において、前記混合の流速は、10cm/s~20m/sである。選択的に、S3において、前記混合の流速は、50cm/s~20m/s、10cm/s~10m/s、50cm/s~10m/s、50cm/s~5m/s、1m/s~8m/s、1m/s~5m/s、2m/s~5m/s、又は50cm/s~2m/sである。適切な流速範囲内に、液体に加えられる遷移金属カチオン又は遷移金属シアネートアニオンは、混合液に一定の局所濃度を形成することができる。混合界面で、添加液体と被添加液体の遷移金属カチオン又は遷移金属シアネートアニオン濃度は、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の飽和度を超えており、且つ過飽和度が比較的に大きいため、核形成が起こりやすい。核形成が発生した瞬間に、比較的速い流速で混合液を結晶核に迅速に分散させることにより、最終粒子の分散性が向上し、粒子同士が過度に凝集しにくいが、過度に分散することもなく、一次粒子が球形状を保持する状態で二次粒子を形成することができる。これによって、得られたプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、適切な粒度分布と形状を有し、極板の圧密密度を向上させ、且つ極板抵抗率を低減させることに有利であるため、電池のエネルギ密度を改善することに役立つ。
【0084】
いくつかの実施形態では、S3において、前記混合の時間は、1h~24hである。選択的に、S3において、前記混合の時間は、4h~20h、6h~12h、2h~12h、0.5h~10h、5h~15h、8h~24h、10h~48h、又は1h~4hである。適切な混合時間範囲内に、結晶粒は、過飽和状態でさらに成長し、比較的に大きな粒径を得ることにより、極板の抵抗率を低減させることによって、電池の1グラムあたりの容量を改善し、且つ極板の圧密密度及び電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、S3において、前記他方の溶液温度は、60℃~140℃である。選択的に、S3において、前記他方の溶液温度は、60℃~120℃、70℃~110℃、又は80℃~100℃である。溶液温度を制御すれば、生成物の化学式における金属A及び遷移金属M2の含有量を向上させることができ、結晶の構造をより完全にし、欠陥をより少なくし、これによってプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、より高い1グラムあたりの容量を示し、それにより、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、S4において、前記エージングの温度は、60℃~140℃である。選択的に、S4において、前記エージングの温度は、60℃~120℃、70℃~110℃、又は80℃~100℃である。
【0087】
いくつかの実施形態では、S4において、前記エージングの時間は、1h~24hである。選択的に、S4において、前記エージングの時間は、2h~12h、5h~15h、8h~20h、10h~15h、又は6h~12hである。
【0088】
適切なエージング温度と時間範囲内に、沈澱生成物は、変性を行うことができ、より多くのNa元素をプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の構造内に入れ、生成物におけるNaの比率を向上させ、さらにプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量及び電池のエネルギ密度を向上させる。
【0089】
S5の分離、洗浄、乾燥は、本分野で公知の手段を採用してもよい。例として、吸引濾過法を利用してプルシアンブルー系遷移金属シアン化物生成物を反応溶液から分離する。洗浄は、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物生成物を脱イオン水で3~5回洗浄し、無水エタノールで1~5回洗浄してもよい。乾燥は、120℃~180℃の真空乾燥箱で12~48時間乾燥してもよい。
【0090】
合成に成功したプルシアンブルー系遷移金属シアン化物は、典型的な単斜晶相(Monoclinic)であり、図5に示す通りである。
【0091】
本出願の第3の態様による正極板は、正極材料を含み、前記正極材料は、本出願のいずれか一つ又は複数のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物を含む。
【0092】
本出願の正極板は、本出願の正極材料を採用するため、それを採用するナトリウムイオン電池が比較的に高いエネルギ密度を備えるようにすることができる。さらに、ナトリウムイオン電池は、さらに比較的に高いレート特性を兼ねることができる。
【0093】
本出願の正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設けられ且つ正極材料を含む正極膜層とを含む。一例としての正極板において、正極集電体は、自体の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の二つの対向する表面のいずれか一方又は両方に積層設置されてもよい。
【0094】
本出願の正極板において、前記正極集電体は、金属箔片又は複合集電体を採用してもよい。例えば、アルミホイルを用いてもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子基材に形成することによって形成することができる。
【0095】
本出願の正極板において、正極膜層は、正極材料を含み、正極材料は、本出願のいずれか一つ又は複数のプルシアンブルー系遷移金属シアン化物を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、正極材料は、ナトリウムイオン電池正極のための他の正極活物質をさらに含んでもよい。他の正極活物質の例としては、例えばNa0.9Fe0.5Mn0.5、NaMnO、NaFeO、NaCoO、NaFe0.33Mn0.33Ni0.33等の層状金属酸化物、例えばNa(PO、NaFePO、NaFe(PO等のポリアニオン型正極材料を含んでもよい。
【0097】
本出願の二次電池において、前記正極膜層は、通常で正極材料と選択的なバインダーと選択的な導電剤とを含み、通常で正極スラリーで塗布され、且つ乾燥、冷間プレスを経て形成されるものである。正極スラリーは、通常で正極活物質及び選択的な導電剤とバインダー等を溶媒に分散させ且つ均一に撹拌して形成されるものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよい。
【0098】
正極膜層のバインダーは、本分野で既知の正極のためのバインダーを採用してもよい。例として、正極膜層のためのバインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリル多元共重合体(LA133)のうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、正極膜層におけるバインダーの質量割合は、1%~20%であり、任意選択的には、1%~10%、2%~5%、2%~12%、3%~8%、5%~10%、5%~15%、10%~20%等である。本出願において、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の粒状性が増大し、正極スラリーの加工性能を改善することができ、さらに極板が比較的に高い粘着力を得るようになるとともにバインダーの使用量を減少することにより、さらに二次電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0100】
正極膜層の導電剤は、本分野で既知の正極のための導電剤を採用してもよい。例として、正極膜層のための導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラック(例えばSuper P、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、カーボンスポット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、正極膜層における導電剤の質量割合は、1%~20%であり、任意選択的には、1%~10%、2%~5%、2%~12%、3%~8%、5%~10%、5%~15%、10%~20%等である。本出願において、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物粒子は、導電剤と緊密に接触することができ、さらに極板が比較的に高い導電性を得るようになるとともに導電剤の使用量を減少することにより、二次電池のレート特性とエネルギ密度を向上させることができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、正極膜層の圧密密度は、1.2~1.6g/cmであり、例えば、1.25~1.55g/cm、1.3~1.5g/cm、又は1.35~1.45g/cmであってもよい。正極膜層の圧密密度が比較的に大きく、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0103】
正極膜層の圧密密度は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば、片面塗布し且つ冷間プレスした後の正極板を取り(両面塗布した極板であれば、まずそのうちの一面の正極膜層を払拭してもよい)、正極膜層の厚さをテストし、さらに下記方法で正極膜層の面密度をテストし、正極膜層の圧密密度=正極膜層の面密度/正極膜層の厚さである。
【0104】
正極膜層の面密度は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば、片面塗布し且つ冷間プレスした後の正極板を取り(両面塗布した極板であれば、まずそのうちの一面の正極膜層を払拭してもよい)、面積がS1の小さなウェハに打ち抜き、その重量を計量してM1として記録する。その後に上記計量した後の正極板の正極膜層を払拭し、正極集電体の重量を計量し、M0として記録し、正極膜層面密度=(正極板の質量M1-正極集電体の重量M0)/S1である。
【0105】
本出願の第4の態様による二次電池は、正極板を含み、前記正極板は、本出願の任意の正極板である。
【0106】
本出願の二次電池は、活性イオン(A)の違いにより、異なる種類の二次電池、例えばナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、カリウムイオン電池、亜鉛イオン電池、リチウムイオン電池等に区別されることができる。
【0107】
本出願の二次電池は、本出願の正極板を採用するため、比較的に高いエネルギ密度を有することができる。
【0108】
本出願の二次電池は、負極板と電解質をさらに含む。電池の充放電プロセスにおいて、活性イオンは、正極板と負極板との間に往復して吸蔵と放出する。電解質は、正極板と負極板との間にイオンを伝達するという役割を果たす。
【0109】
本出願の二次電池において、負極板は、負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設けられる負極膜層とを含む。
【0110】
本出願の二次電池において、負極集電体は、金属箔片又は複合集電体を採用してもよい。例えば、アルミホイル又は銅箔を用いてもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子基材に形成することによって形成することができる。
【0111】
負極膜層は、負極材料を含む。本出願の二次電池には、本分野で既知の二次電池に用いることができる負極材料が採用されてもよい。例として、負極材料は、天然グラファイト、人造グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料のうちの一つ又は複数を含んでもよい。シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化合物、スズ合金のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0112】
本出願の二次電池において、負極膜層は、通常で負極材料と、選択的なバインダーと、選択的な導電剤と、他の選択的な助剤とを含み、通常で負極スラリーで塗布して乾燥して形成されるものである。負極スラリーは、通常で負極活物質及び選択的な導電剤とバインダー等を溶媒に分散させ且つ均一に撹拌して形成されるものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。
【0113】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラック(例えばSuper P、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、カーボンスポット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0114】
例として、バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニリデンフルオライド、アクリロニトリル多元共重合体のうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0115】
他の選択的な助剤は、例えば、増稠剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料等である。
【0116】
本出願の二次電池は、電解質の種類に具体的な制限がなく、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体状電解質及び液状電解質(すなわち電解液)のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、電解質は、電解液を採用する。電解液は、電解質塩と溶媒を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、NaPF、NaClO、NaBF、KPF、KClO、KBF、LiPF、LiClO、LiBF、Zn(PF、Zn(ClO、Zn(BFのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。例えば、電解質塩は、NaPF、NaClO、NaBFのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、酢酸エチル(EA)のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、電解液には、選択的に添加剤がさらに含まれる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに電池のなんらかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、本出願の二次電池には、セパレータがさらに含まれる。セパレータが正極板と負極板との間に設けられ、分離の役割を果たすことができる。本出願は、セパレータの種類に特別な制限がなく、任意の公知の良好な化学安定性と機械安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。例として、セパレータは、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンフルオライドのうちの一つ又は複数の単層又は多層複合フィルムから選択されてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、正極板、負極板とセパレータは、巻き取りプロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを作製することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装体を含んでもよい。外装体は、ハードケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼質ケース等であってもよい。外装体は、軟質バッグ、例えば袋式軟質バッグであってもよい。ソフトバッグの材質プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの一つ又は複数である。
【0124】
本出願は、二次電池の形状に特に制限がなく、それは、円柱状、四角形又は他の任意の形状であってもよい。図6は、一例としての四角形構造の二次電池5を示す。
【0125】
いくつかの実施形態では、図7を参照すると、外装体は、ハウジング51と蓋板53を含んでもよい。そのうち、ハウジング51、底板と底板に接続される側板とを含み、底板と側板とが囲まれて収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を閉鎖するように、前記開口に蓋設されることができる。正極板、負極板とセパレータは、巻き取りプロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52内に浸潤されることができる。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又はいくつであってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0126】
本出願の第5の態様による電池モジュールは、本出願の第4の態様に記載の二次電池を含む。いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用と容量に基づいて調節を行うことができる。
【0127】
図8は、一例としての電池モジュール4である。図8を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順次配列されて設けられてもよい。無論、他の任意の方式で配列されてもよい。さらにファスナーによってこの複数の二次電池5を固定する。
【0128】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5がこの収容空間に収容される。
【0129】
本出願の第6の態様による電池パックは、本出願の第4の態様に記載の二次電池、又は本出願の第5の態様に記載の電池モジュールを含む。いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの応用と容量に基づいて調節を行うことができる。
【0130】
図9図10は、一例としての電池パック1である。図9図10を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと電池ボックスに設けられる複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2が下ケース3に蓋設可能であり、且つ電池モジュール4を収容するための閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに配列されることができる。
【0131】
本出願の第7の態様による装置は、本出願の第4の態様に記載の二次電池、本出願の第5の態様に記載の電池モジュール、又は本出願の第6の態様に記載の電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池は、装置の電源として用いることができ、前記装置のエネルギ貯蔵ユニットとして用いることもできる。本出願の装置は、本出願による二次電池を採用するため、少なくとも前記二次電池と同じである優位性を有する。
【0132】
前記装置は、移動機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば純電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電車、船舶及び衛星、エネルギ貯蔵システム等であるがそれらに限らない。
【0133】
前記装置は、その使用需要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0134】
図11は、一例としての装置である。この装置は、純電気自動車、ハイブリッド車、又はプラグインハイブリッド車等である。この装置の二次電池に対する高パワーと高エネルギ密度の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0135】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコン等であってもよい。この装置は、一般的に軽量化と薄型化が要求されるが、電源として二次電池を採用することができる。
【0136】
実施例
本出願の発明の目的、技術的解決手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下、実施例を参照しながら、本出願についてさらに詳細に説明する。しかしながら、本出願の実施例は、本出願を説明するためだけのものであり、本出願を限定するためのものではなく、本出願の実施例は、本明細書に与えられる実施例に限定されないことを理解されたい。実施例に具体的な実験条件又は操作条件が明記されていないものは、通常の条件で製作されるか、又は材料供給者が推奨する条件で製作される。
【0137】
実施例1
S1、25℃の条件で、塩化マンガン6.292g、塩化ナトリウム35g、チオ硫酸ナトリウム(酸化防止剤)2.48gを脱イオン水100mLに分散させ、第1の溶液を得る。
S2、25℃の条件で、フェロシアン化ナトリウム19.203gを脱イオン水100mLに分散させ、第2の溶液を得る。
S3、第1の溶液を80℃に加熱した後、内径0.6mmの注射針で2m/sの流速で、10h内に25℃の第2の溶液を第1の溶液に注入し、共沈化学反応を発生させるとともに、800rpm/minの速度で磁気撹拌を行う。注射針の針先を液面の下に挿入して混合効果を確保する。
S4、得られた懸濁液を80℃に維持し且つ撹拌の条件で24時間エージングし、小さな結晶粒が溶解し、大きな結晶粒が絶えず成長する。
S5、吸引濾過、水洗、エタノール洗浄、乾燥を経て、白色の球形状に近いプルシアンブルー系遷移金属シアン化物材料NaMn[Fe(CN)]を得る。
【0138】
実施例2、11
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が1gのアスコルビン酸である点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0139】
実施例3
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が0.5gのアスコルビン酸である点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0140】
実施例4
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が1gのアスコルビン酸である点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0141】
実施例5
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が2gのアスコルビン酸である点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0142】
実施例6
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が0.5gのアスコルビン酸である点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0143】
実施例7
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が0.1gのアスコルビン酸ナトリウムと0.48gのチオ硫酸ナトリウムである点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0144】
実施例8
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が0.1gのアスコルビン酸ナトリウムと0.48gのチオ硫酸ナトリウムである点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0145】
実施例9~10
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が0.2gのアスコルビン酸である点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0146】
実施例12
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が0.5gのアスコルビン酸であり、また、S3において、第2の溶液を80℃に加熱した後、内径0.6mmの注射針で、25℃の第1の溶液を第2の溶液に注入する点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0147】
実施例13
実施例1と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が0.5gのアスコルビン酸であり、第1の溶液を95℃に加熱し、注射針の直径が0.4mmである点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0148】
実施例14
実施例13と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が0.3gのアスコルビン酸ナトリウムと0.48gのチオ硫酸ナトリウムである点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0149】
実施例15
実施例13と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が1gのアスコルビン酸である点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0150】
実施例16~17
実施例13と同様であり、第1の溶液の酸化防止剤が1gのアスコルビン酸である点が異なり、残りのパラメータは、表1に示すとおりである。
【0151】
実施例18~21、比較例1~6、8
実施例1と同様であり、異なるパラメータは、表1に示すとおりである。
【0152】
比較例7
実施例13と同様であり、異なるパラメータは、表1に示すとおりである。
【0153】
テスト部分
(1)混合流速(m/s):高速カメラ(CCD)を利用してシリンジの出口位置での流体の吐出速度を測定する。
【0154】
(2)混合時間(h):シリンジが液体の噴射を開始してから終了するまでに必要とする時間。
【0155】
(3)加熱の溶液温度(℃):熱電対を利用して溶液の底部に挿入して測定を行う。
【0156】
(4)エージング時間(h):シリンジが液体噴射を終了した時刻で計時を開始する。
【0157】
(5)エネルギ密度(Wh/kg):
S1、各実施例又は比較例における正極材料(プルシアンブルー遷移金属シアン化物)、導電剤アセチレンブラック(Denka、Denka Black)、バインダーポリビニリデンフルオライド(Arkema、HSV 900)を90:5:5の重量比でN-メチルピロリドン溶媒に分散させ、十分に撹拌して均一に混合し、固体含有量が30%の正極スラリーを得る。ブレードでこの正極スラリーを厚さが12μmのアルミホイルの両側にコーティングし、厚さがそれぞれ120μmのウェットコーティング層を形成する。オーブンに移行し、150℃の温度で60分間乾燥し、冷間プレス機で60トンの圧力で冷間プレスを行い、アルミホイルの両側の正極膜層の厚さがそれぞれ130μmであり、圧密密度がそれぞれ1.3g/cmである正極板を得る。
S2、負極材料ハードカーボン、導電剤アセチレンブラック、バインダースチレンブタジエンゴム、増稠剤カルボキシメチルセルロースナトリウムを95:2:2:1の重量比で脱イオン水溶媒に分散させ、十分に撹拌して均一に混合し、固体含有量が15%の負極スラリーを得て、ブレードでこの負極スラリーを厚さが12μmのアルミホイルの両側にコーティングし、それぞれ120μmの厚さのウェットコーティングを形成する。オーブンに移行し、150℃の温度で60分間乾燥し、冷間プレス機で50トンの圧力で冷間プレスを行い、アルミホイルの両側の負極膜層の厚さがそれぞれ60μmであり、圧密密度がそれぞれ0.95g/cmである負極板を得る。
S3、正極板、セパレータ、負極板を順番に巻き取り、サイズが16cm×10cm×2.8cmの巻き取り積層構造のベアセルを形成する。ベアセルを鋼質ケースの外装体に置き、鋼質ケース内に150グラムの電解液を注入し、パッケージングした後に二次電池を得ることができる。前記電解液は、組成が1mol/L NaPFのプロピレンカーボネート(PC)溶液である。
25℃で、0.1Cのレートで電池を定格電圧4.0Vに定電流充電し、30分間定電圧充電し、次に0.1Cのレートで1.5Vに定電流放電し、定電流放電によって放出されたエネルギを記録し、電池全体の質量で除算し、すなわち電池のエネルギ密度である。
【0158】
(6)レート特性(%):
25℃で、0.1Cのレートで電池を定格電圧4.0Vに定電流充電し、30分間定電圧充電し、次に0.1Cのレートで1.5Vに定電流放電し、定電流放電によって放出された容量C1を記録する。
25℃で、0.1Cのレートで電池を定格電圧4.0Vに定電流充電し、30分間定電圧充電し、次に1Cのレートで1.5Vに定電流放電し、定電流放電によって放出された容量C2を記録する。
C2をC1で除算して100%を乗じたものは、すなわち電池のレート特性である。
【0159】
【0160】
表1において、加熱溶液温度とは、第1の溶液と第2の溶液との一方を他方に加えて混合する時、他方の溶液が加熱され、この溶液の温度は、加熱溶液温度である。
【0161】
【0162】
表2において、主な粒子タイプは、電子顕微鏡(ZEISS Gemini SEM 300)の10kの倍率の視域で、50%以上の粒子の粒子タイプである。比較例の四角形粒子の曲率半径は、隣接する二つの面のなす角からテストされる。
【0163】
【0164】
実施例1~5と比較例1~2の比較から分かるように、混合流速は、二次粒子の内角角度、一次粒子の曲率半径及び材料粒径に影響を与える。試料注入時に溶液を直接混合する方式を除いて、二次粒子の内角角度、一次粒子の曲率半径及び材料粒径は、いずれもほぼ混合流速の増加に伴って増加する現象を示す。溶液を直接混合する方式では、混合時の粒子状態が一致しないため、一次粒子の曲率半径及び材料粒径が小さすぎる。比較的に大きい混合流速を使用する時、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の化学式におけるNaの含有量が大幅に増加し、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量及び粒径を向上させ、且つ極板の圧密密度を向上させることにより、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0165】
実施例1、6~8と比較例3~4との比較から分かるように、混合時間は、生成物の化学組成、二次粒子の内角角度、一次粒子の曲率半径及び材料粒径に影響を与える。比較例3から分かるように、混合時間が短すぎると、一次粒子が大量に凝集し、大きな粒径の二次粒子を得る。且つ、混合時間が短すぎると、一次粒子の曲率半径が小さすぎ、四角形の粒子を得る。混合時間が0.5h~48hの区間で、粒子は、まず凝集してから徐々に分解するため、粒径は、大きくなってから小さくなる現象を呈し、混合時間が0.5h~48hの区間で、曲率半径も、大きくなってから小さくなる状況がある。比較例4の化学式及び1グラムあたりの容量から分かるように、反応時間が長すぎると、遷移金属元素の酸化現象が起こり、粒子の分解が激しくなり、一次粒子の曲率半径及び材料粒径が減少する。そのため、適切な混合時間は、粒子の粒径及び形状を効果的に制御することにより、電池のエネルギ密度大幅を向上させることができる。
【0166】
実施例1、9~10と比較例5との比較から分かるように、遷移金属カチオン及び遷移金属シアネートアニオンの濃度は、二次粒子の内角角度及び一次粒子の曲率半径に大きな影響を与える。遷移金属カチオン又は遷移金属シアネートアニオンの濃度が低すぎる時、二次粒子の内角角度及び一次粒子の曲率半径が比較的に小さくなり、四角形の一次粒子を得る。遷移金属カチオンと遷移金属シアネートアニオンの濃度がいずれも0.1mol/L以上であるが、遷移金属カチオンと遷移金属シアネートアニオンとの濃度差が増大する時、二次粒子の内角角度が増大し、材料粒径が減少する。そのため、適切な遷移金属カチオン及び遷移金属シアネートアニオン濃度は、電池のエネルギ密度を向上させることができる。
【0167】
実施例1、11と比較例6の比較から分かるように、加熱溶液の温度は、一次粒子の曲率半径及び材料粒径に影響を与える。溶液の温度が低すぎる時、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の過飽和度が大幅に向上することにより、結晶が迅速に核形成し、小粒径の粒子を形成する。溶液の温度が低すぎると、四角形の粒子の生成を引き起こす。溶液の温度が比較的に高い時、結晶の二次粒子が分解しやすく、比較的に小さな二次粒子を得る。しかし、比較的に高い溶液温度も一次粒子の曲率半径の増加に有利であり、球形度が比較的に高い。溶液温度の向上は、さらにプルシアンブルー系遷移金属シアン化物におけるNaの含有量を大幅に増加させることにより、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量及び粒径を向上させ、且つの圧密密度を向上させるため、電池のエネルギ密度を改善することができる。
【0168】
実施例1、12との比較から分かるように、添加順番は、一次粒子の曲率半径及び材料粒径に影響を与える。第1の溶液を第2の溶液に加える方式を採用すれば、比較的に大きな二次粒子を得るが、全体の粒子粒径に対する一次粒子の曲率半径の比率が低減し、得られるプルシアンブルー系遷移金属シアン化物の1グラムあたりの容量がより高いため、電池が比較的に高いエネルギ密度を備えることに有利である。
【0169】
実施例1、18~21、比較例8の比較から分かるように、エージング時間は、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の構造完全度に影響を与える。適切なエージング時間は、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の構造完全度を向上させることができ、それによって、Naの含有量が上昇してFe(CN) 4-の欠陥が減少する。そして、活性Naイオンが増加するため、プルシアンブルー系遷移金属シアン化物の粉体抵抗率を低減させることができ、それにより電池のレート特性及びサイクル性能を改善する。
【0170】
上記明細書の開示及びガイダンスに基づいて、本出願の当業者は、上記実施形態を適切に変更及び修正することもできることを付記しておく。したがって、本出願は、上記で開示及び記述された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本出願のいくつかの修正及び変更も、本出願の請求項の保護範囲内に含まれる。なお、本明細書ではいくつかの特定の用語が使用されているが、これらの用語は、単に説明を容易にするためのものであり、本出願を制限するものではない。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】