(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】uPAR/FPRs受容体の相互作用の阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07C 39/15 20060101AFI20230501BHJP
C07C 39/367 20060101ALI20230501BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230501BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20230501BHJP
A61K 31/09 20060101ALI20230501BHJP
A61K 31/055 20060101ALI20230501BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230501BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230501BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230501BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230501BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230501BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230501BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230501BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230501BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230501BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230501BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20230501BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20230501BHJP
C07C 39/21 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C07C39/15
C07C39/367
A61K31/05
A61K31/12
A61K31/09
A61K31/055
A61P37/06
A61P29/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P1/16
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/28
A61P27/02
A61P43/00 111
C07C39/16
C07C43/23 C
C07C43/23 D
C07C39/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558525
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 IB2021052382
(87)【国際公開番号】W WO2021198844
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102020000006931
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522379059
【氏名又は名称】オルファ バイオテック エッセ・エレ・エレ
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】デ パウリス、アマート
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェッキア、アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】モントゥオーリ、ヌンツィア
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ、フランチェスカ ワンダ
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA17
4C206CA18
4C206CA19
4C206CA33
4C206CA34
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4C206KA01
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4C206ZB08
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4C206ZB15
4C206ZC41
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006FC52
4H006FE13
(57)【要約】
uPAR/FPRs受容体の相互作用によって媒介される病態を処置するための方法において使用するための、下式1の構造式で示される化合物であって、式中、R1は、H、Me、OHからなる群から選択され;R2は、H、OH、Me、t-Bu、Et、OMe、Pr、アリルからなる群から選択され;R3は、H、OH、Me、Cl、Fからなる群から選択され;R4は、H、Me、Ome、t-Bu、Clからなる群から選択され;R5は、H、OH、Me、OMeからなる群から選択され;R6は、H、Me、OH、OMeからなる群から選択され;R7は、H、Me、OMe、t-Bu、Clからなる群から選択され;R8は、OH、Me、H、Fからなる群から選択され;R9は、OH、Me、H、t-Bu、Et、OMe、Pr、アリルからなる群から選択され;R10は、H、Me、OHからなる群から選択され;Xは、存在しないか、または、下式2の置換基、CO、下式3の置換基、CH2、からなる群から選択される、化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
uPAR/FPRs受容体の相互作用によって媒介される疾患を処置するための方法において使用するための下式1の構造式で示される化合物であって、
式中、R1は、H、Me、OHからなる群から選択され;R2は、H、OH、Me、t-Bu、Et、OMe、Pr、アリルからなる群から選択され;R3は、H、OH、Me、Cl、Fからなる群から選択され;R4は、H、Me、OMe、t-Bu、Clからなる群から選択され;R5は、H、OH、Me、OMeからなる群から選択され;R6は、H、Me、OH、OMeからなる群から選択され;R7は、H、Me、OMe、t-Bu、Clからなる群から選択され;R8は、OH、Me、H、Fからなる群から選択され;R9は、OH、Me、H、t-Bu、Et、OMe、Pr、アリルからなる群から選択され;R10は、H、Me、OHからなる群から選択され;Xは、存在しないか、または、下式2の置換基、CO、下式3の置換基、CH2、からなる群から選択される、化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
全身性硬化症の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
モルフェアの処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
好酸球性筋膜炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
特発性肺線維症の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
糸球体腎炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
サルコイドーシスの処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
再発性多発性軟骨炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
関節リウマチの処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
全身性エリテマトーデスの処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
シェーグレン症候群の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
クローン病の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
潰瘍性直腸大腸炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
萎縮性前庭部胃炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
原発性胆汁性肝硬変の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
多発性筋炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
皮膚筋炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
乾癬の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
乾癬性関節炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
天疱瘡の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
皮膚および全身性血管炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
ブドウ膜炎の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
ベーチェット病の処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
アミロイドーシスの処置において使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
X=0;R1=H;R2=Pr;R3=OH;R4=4;R5=H;R6=H;R7=H;R8=OH;R9=Pr:R10=Hである、請求項1~24のいずれか一項に記載の用途のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
X=CH2;R1=OH;R2=t-Bu;R3=H;R4=Me;R5=H;R6=OH;R7=t-Bu;R8=H;R9=Me;R10=Hである、請求項1~24のいずれか一項に記載の用途ための、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
X=CH2;R1=H;R2=t-Bu;R3=H;R4=Cl;R5=OH;R6=OH;R7=Cl;R8=H;R9=t-Bu;R10=Hである、請求項1~24のいずれか一項に記載の用途のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
6,6’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(3-メチルフェノール);3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2-メチルフェノール);3,3’,5,5’-テトラメトキシ[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;[1,1’-ビフェニル]-3,3’,4,4’-テトロール;[1,1’-ビフェニル]-3,3’,4,4’,5,5’-ヘキソール;3,3’-ジプロピル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール);6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-エチルフェノール);2,2’’,4,4’’-テトラメチル-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-2’,5’-ジオール;6,6’-メチレンビス(4-(tert-ブチル)-2-クロロフェノール);3,3’-ジアリル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;4,4’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-6-メチルフェノール);2’,4,4’,6’-テトラメチル[1,1’-ビフェニル]-2,5-ジオールおよび組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、その薬学的に許容され得る賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項29】
3,3’-ジプロピル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール);6,6’-メチレンビス(4-(tert-ブチル)-2-クロロフェノール)または組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、その薬学的に許容され得る賦形剤とを含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
薬学的に許容され得る、溶液、懸濁液、散剤、粒剤、錠剤、丸剤、カプセル、シロップ、坐剤、スプレー、エアロゾルまたは制御放出系、クリーム、軟膏またはゲル、潤滑剤、ペースト、シロップ、バイアル、滴剤、点眼剤、エアロゾルの形態の、請求項28および29のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
医学的用途のための、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
uPAR/FPRs受容体の相互作用によって媒介される疾患の処置において使用するための、請求項28~30のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
全身性硬化症、モルフェア、好酸球性筋膜炎、特発性肺線維症、糸球体腎炎、サルコイドーシス、再発性多発性軟骨炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、クローン病、直腸大腸炎潰瘍、萎縮性前庭部胃炎、原発性胆汁性肝硬変、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、乾癬性関節炎、天疱瘡、皮膚および全身性血管炎、ブドウ膜炎、ベーチェット病、アミロイドーシスから選択される疾患の処置において使用するための、請求項28~30のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
経口的に、経皮的に、皮下に、静脈内に、筋肉内に、直腸におよび鼻腔内に投与される、請求項33に記載の使用のための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、特に免疫学の分野に関する。より詳細には、本発明は、uPAR/FPRs受容体の相互作用によって媒介される現象の後に生じる病態の処置において使用するために、典型的には、限定されないが、全身性硬化症の処置において使用するために、適切に選択された特定のクラスの化合物に関する。本発明はまた、前記化合物を含む薬学的組成物、ならびに前記病態の処置、特に全身性硬化症の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
強皮症としても知られる全身性硬化症(SSc)は、結合組織の多臓器性慢性炎症性疾患である。全身性硬化症は、変化した免疫応答、自己抗体の産生を特徴とし、びまん性微小血管疾患および線維症を引き起こす。コラーゲン沈着物は、皮膚だけでなく内臓にも影響を及ぼし、解剖学的変化およびかなりの機能障害を引き起こす。この病態はまた、疾患の進行とともに、顔貌の変化、手の機能能力の低下、有痛性および壊死性の皮膚潰瘍の出現、ならびに重要な臓器機能の変化などの現象を経験する患者にとってかなりの問題を示す。
【0003】
したがって、患者の自立が次第に制限されることによって、SScが自律性および全体的な生活の質を明確に損なう病態となることは明白である。この全てが、対象の感情領域および心理身体的幸福にも影響を及ぼす。
【0004】
より具体的には、これは、皮膚の進行性の肥厚および線維症とともに発現され、特定の症例では、内臓(特に心臓、肺、胃腸管および腎臓)に影響を及ぼす病態である。
【0005】
SScの病因は現在までほとんど知られていない。過去数十年間に、線維芽細胞によるコラーゲンの異常な産生の特定、微小循環の広範な変化、内皮の損傷および免疫系の不規則的な活性化など、本疾患のいくつかの基本的な側面を理解する上で、かなりの進歩が遂げられた。多数のデータは、前記側面のそれぞれにおける不規則性を確認しているが、疾患の根本的な原因は未だ解明されておらず、不規則な初期の誘因事象も解明されていない。その後、現在まで、1つの治療法も存在しない。さらに、その処置のために現在使用されている薬物は、臓器合併症の予防または処置を目的とする(1)。
【0006】
病因に関するここ数年間の研究は、ウロキナーゼに対する受容体(uPAR)によっておよびホルミル化ペプチドに対する受容体(FPRs)によって媒介される分子シグナルに極めて重要な役割を割り当てた(2)。
【0007】
uPARは、GPI型のアンカー様膜受容体であり、胚形成、炎症、組織修復、腫瘍浸潤および転移などの、細胞外マトリックス(ECM)のリモデリングを伴う全ての生理学的および病理学的過程に関与する。uPARの伝統的な役割は、強力なセリン-プロテアーゼであるウロキナーゼ(uPA)を結合し、そのタンパク質分解活性を細胞表面に集中させることであるが、uPARには、その他の機能も存在すると考えられてきた。実際、uPARは、血漿中に存在し、腫瘍および炎症過程に関連するECM中に豊富に存在する、肝臓合成を伴う糖タンパク質であるビトロネクチン(VN)も結合する。この結合は、ECMを「握る」可能性をuPARに付与し、これにより、細胞遊走のために必要とされる接着を可能にする。uPAおよびVNの両方によるuPARの刺激は、接着、遊走および細胞増殖を調節し、アポトーシスから保護し、上皮間葉転換(EMT)を誘導する。このような活動を行うために、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠くuPARは、細胞内シグナル伝達経路を活性化することができる他の膜受容体と相互作用しなければならない。uPARの主な補助受容体はインテグリン、EGFRおよびPDGFRなどの増殖因子受容体、N-ホルミルペプチド(fMLF)に対する受容体ファミリー、FPRsであることが一般に認められている(3)。
【0008】
FPRsは、Gタンパク質に共役し(GPCR)、病原体に対する宿主の防御に関与する自然免疫を伴う受容体のファミリーである。FPRsの機能は、遊走し、感染部位に蓄積して、そこでROSおよび侵入微生物と戦うためのその他の因子を放出する食作用性白血球(例えば、好中球および単球)において非常によく知られている。FPRsのファミリーは、高い配列相同性を有する3つのメンバー:FPR1、FPR2/ALXおよびFPR3からなる。しかしながら、FPRsは、他の細胞型および上皮組織においても発現される。最近、炎症過程後での、腸型、胃型および鼻型の上皮組織の増殖および修復におけるFPRsの関与が記載された(4)。
【0009】
SScに関して、実験室で実施された試験から得られたデータは、本発明を定義する過程で、uPARがFPRsとの構造的および機能的相互作用を介して線維化促進機能を発揮し、SScに罹患した患者から得られた皮膚線維芽細胞における活性酸素種の遊走、増殖および産生などの重要な過程を調節することを示した。特に、実施された研究は、本疾患の分子的基礎のより深い理解を可能にし、新規化合物による、FPRsとのuPARの構造的および機能的阻害がSSc療法のための新しい戦略となり得ることを実証する(5)。
【0010】
このような問題に関して、以下に詳細に記載されている、本発明の定義に至った研究は、特定の薬物の調製のために、相互作用uPAR/FPRsを阻害することができる小さな可溶性分子を同定することに重点を置いてきた。このような問題に関して、現在、小さな可溶性分子は、経口経路を介したバイオアベイラビリティおよび比較的低い製造コストの両方に関して最も魅力的な治療の選択肢の1つを構成することが明記されなければならない。
【発明の概要】
【0011】
本記述は、本発明の適用分野において、医薬品として使用するためのいわゆる「小分子」のカテゴリーに属する化合物の特定のクラスに関する。
【0012】
より詳細には、本記述は、新しい医学的用途のために、特に、uPAR/FPRs相互作用によって媒介される特定の事象の開始後に生じる病態の処置において使用するために選択された化合物のクラスに関する。
【0013】
さらにより詳細には、本記述は、前記受容体間の相互作用に関連する病態の処置において使用するための、既存のリストから特に選択された27の化合物のクラスに関する。非限定的な例として、全身性硬化症、モルフェア、好酸球性筋膜炎、特発性肺線維症、糸球体腎炎、サルコイドーシス、再発性多発性軟骨炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、クローン病、潰瘍性直腸大腸炎、萎縮性前庭部胃炎、原発性胆汁性肝硬変、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、乾癬性関節炎、天疱瘡、皮膚および全身性血管炎、ブドウ膜炎、ベーチェット病、アミロイドーシスなどの病態の処置において使用するために、本発明による化合物が選択された。
【0014】
本記述は、前記化合物を含むことを特徴とする特定の組成物および薬学的製剤、ならびにFPRsとのuPARの構造的および機能的相互作用によって上流で誘導される炎症状態に関連する病態の処置におけるそれらの使用にも関する。非限定的な例として、本発明による化合物は、前記病態の処置において、特に全身性硬化症の処置において使用するためのものである。
【0015】
選択された化合物の同定を達成するために、実施された研究は、FPRsとの相互作用のために重要であり、接着、遊走、ROSの産生を含む多数の生物学的応答に関与するuPARの機能的ドメインに焦点を当てた(5,6)。
【0016】
具体的には、National Cancer Institute(NCI)オープンデータベース(Open Database)において、SRSY配列に対する2Dフィンガープリントおよび骨格分析に基づく類似性検索によって、27の新規化合物を同定した。
【0017】
皮膚線維芽細胞BJの株(ATCC(登録商標)CRL-2522(商標))上でのタンパク質-タンパク質相互作用および細胞接着のアッセイによって、選択された阻害剤をインビトロで性質決定した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、添付の図面も参照して、以下で詳細に記載される。
【0019】
【
図1】
図1は、uPAR/FPRs相互作用に関連する病態の処置において使用するための、本発明による27の選択された化合物によって共有される一般式を示す。
【
図2】
図2は、ELISAアッセイ(
図2(A))およびBJ細胞上のVNへの細胞接着アッセイ(図(2B))において、精製されたuPARのVNへの結合に対する27の選択された化合物の阻害活性を評価するために検出された結果を示す。具体的には、
図2(A)は、50μMの濃度の化合物(黒い棒)または対照としてのビヒクルDMSOのみ(白い棒)の存在下での、ビオチン化されたuPARのVNへの結合の百分率を示す。化合物の非存在下でVNに結合するuPARの量を100%に確定した。値は、3つ組で実行された3つの実験の平均(±S.D.)を表す(*p<0.05)。
図2(B)は、代わりに、50μMの濃度の化合物(黒い棒)またはビヒクルDMSOのみ(白い棒)で処理されたBJ細胞のVNへの接着の百分率を示す。データは、それぞれ3つ組で実施された3つの独立した実験の平均(±DS)を表す。アスタリスクは、スチューデントのt検定によって決定された、100%に等しいと考えられる、DMSOのみの存在下での接着に対する化合物の存在下でのVNへの細胞接着の統計学的有意性を示す(*p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
uPAR/FPRs受容体の相互作用によって媒介される特異的活動の阻害に構造的および機能的に適合する可能性のある化合物を同定するために、自由にアクセス可能であり、薬物の可能性がある25万を超える生物活性小分子の三次元座標を含有するNational Cancer Institute(NCI)オープンデータベースにおいて、コンピュータ上でのスクリーニングを実施した(2Dフィンガープリントおよび骨格分析に基づく類似性検索)。これは全て、本発明の定義に関与した同じ研究チームによって行われた以前の研究の対象であったリード化合物4,4’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-2,2’,5,5’-テトラオールの新規類似構造を同定するためであったが、改善された阻害活性を与え、uPAR-VNまたはuPAR-FPRs複合体のタンパク質-タンパク質相互作用を妨害することができる。
【0021】
したがって、類似性探索は、一般に類似の生物学的活性を有する小分子を検出することを目的とし、構造活性相関(SAR)に関する重要な洞察を提供し、したがって構造の最適化研究を行うために不可欠になっていることを明記することは興味深い(7)。
【0022】
初期の薬物設計段階(8)においては薬物らしさの要件を推定することが必須であるので、化学的-物理的特性および官能基に基づいて初期データベースを164,085の化合物のサブグループに縮小したFILTERを使用することによって、NCIオープンデータベースの前処理を行った。次いで、リード化合物である4,4’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-2,2’,5,5’-テトラオールの構造をクエリとして使用して、得られた薬物らしい化合物のサブセットを、Canvasソフトウェア(Schrodinger software)による2D-フィンガープリントに基づく類似性検索に供した。次の段階において、骨格分析は、前記化合物の同じ分子骨格を有する化合物のみを選択することを可能にした。さらに、検討される化学種の数を拡大する目的で、4,4’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-2,2’,5,5’-テトラオールの重要なファーマコフォアを維持する構造的に相関する骨格も含めた。
【0023】
本発明の目的を定義する過程で使用された計算戦略は、27の小分子の同定をもたらし(表1)、VNへのuPARの結合、VNへのuPARによって媒介される細胞接着およびuPARによって媒介される細胞遊走を阻害するそれらの能力について評価した。
【0024】
【0025】
【0026】
したがって、本発明によれば、一般式の化合物、すなわち、適切に同定されたその中に存在する異なる可能な置換基が前述の検索された阻害活性を前記化合物に付与する式1の化合物が、
図1に示される化合物のように同定された。
【0027】
具体的には、可能な置換基は、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10について、これらはH、Me、OH、t-Bu、Et、OMe、Pr、アリル、Cl、Fからなる群において選択されるようなものである。
【0028】
好ましくは、R1についての可能な置換基は、H、Me、OHからなる群において選択され;R2については、H、OH、Me、t-Bu、Et、OMe、Pr、アリルからなる群において選択され;R3については、H、OH、Me、Cl、Fからなる群において選択され;R4については、H、Me、OMe、t-Bu、Clからなる群において選択され;R5については、H、OH、Me、OMeからなる群において選択され;R6については、H、Me、OH、OMeからなる群において選択され;R7については、H、Me、OMe、t-Bu、Clからなる群において選択され;R8については、OH、Me、H、Fからなる群において選択され;R9については、OH、Me、H、t-Bu、Et、OMe、Pr、アリルからなる群において選択され;R10については、H、Me、OHからなる群において選択され;Xにおいて、前記置換基は、存在しないか、または、下式2の置換基、CO、下式3の置換基、CH
2、からなる群において選択されるかのいずれかである。
【化2】
【化3】
【0029】
さらにより好ましくは、置換基の以下の組み合わせおよび選択は、表1に列記されている27の化合物に対応する27の選択された化合物の定義をもたらした。具体的には、好ましい化合物は、式1を有し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10を介して特定の置換基が割り当てられているが、Xについては、置換基は上に列記されているものの中から選択することができるか、または前記置換基は非存在であり得る(表1中のX=0に対応する表示)化合物である。
【0030】
図2ならびに表1および2を参照すると、uPAR/FPRs相互作用によって媒介される事象に後続する病態の処置においてより適切であるとして同定された化合物は以下の通りである:表1および2に示される化合物3、11、13、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、すなわち化合物:
6,6’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(3-メチルフェノール);
3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;
4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2-メチルフェノール);
3,3’,5,5’-テトラメトキシ[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;
[1,1’-ビフェニル]-3,3’,4,4’-テトロール;
[1,1’-ビフェニル]-3,3’,4,4’,5,5’-ヘキソール;
3,3’-ジプロピル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;
6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール);
6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-エチルフェノール);
2,2’’,4,4’’-テトラメチル-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-2’,5’-ジオール;
6,6’-メチレンビス(4-(tert-ブチル)-2-クロロフェノール);
3,3’-ジアリル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;
4,4’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-6-メチルフェノール);
2’,4,4’,6’-テトラメチル[1,1’-ビフェニル]-2,5-ジオール。
【0031】
前記選択された化合物の大部分が市販されているか、またはいずれの場合でも当業者に公知の手順および方法を用いて合成することができることを明記することは興味深い。
【0032】
さらに
図2を参照すると、実施された実験は、前記化合物の中でも、インビトロでのVNとのuPARの相互作用に対しておよびVNへのその細胞接着に対してより大きな阻害活性を示した化合物が、前記表1および2に示される化合物3、19、20、23であることを示した。特に、最も有望なものは化合物19、20および23であり、これらについては、細胞接着の前述の阻害に対してかなりの寄与が見られた。
【0033】
前記化合物は、具体的には、3,3’-ジプロピル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール);6,6’-メチレンビス(4-(tert-ブチル)-2-クロロフェノール)である。
【0034】
さらにより具体的には、前記化合物の構造は、
- X=0;R1=H;R2=Pr;R3=OH;R4=4;R5=H;R6=H;R7=H;R8=OH;R9=Pr:R10=H;または
- X=CH2;R1=OH R2=t-Bu R3=H;R4=Me;R5=H;R6=OH;R7=t-Bu;R8=H R9=Me;R10=H;または
- X=CH2;R1=H;R2=t-Bu;R3=H;R4=Cl;R5=OH;R6=OH;R7=Cl;R8=H;R9=t-Bu;R10=H
である式1の化合物の構造に対応する。
【0035】
〔材料および方法〕
計算化学
リガンドデータベースの作成
経口バイオアベイラビリティが乏しい、非標準的な化学元素、過度に反応性の官能基などの望ましくない化学的-物理的特性を有する分子を除去するために、265,242個のリガンドを含有するNCI オープンデータベースをFilterソフトウェア(リリース3.1.1.2,OpenEye Scientific Software Inc.,Santa Fe,USA,http://www.eyesopen.com/)で処理した。得られたデータベースは、薬物らしい特徴を有する164,085個の構造からなっていた。
【0036】
2Dフィンガープリントおよび骨格解析に基づく類似性検索
データベース中に含まれる化合物の構造的特徴をコード化するために、Canvasソフトウェア(Schrodinger Release 2019-3:Canvas,Schrodinger,LLC,NewYork,NY,2019.)に実装されたフィンガープリントMACCS(9)を使用した。フィンガープリントMACCSは、予め定義された構造のフラグメントの辞書からなる。リード化合物である4,4’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-2,2’,5,5’-テトラオールとデータベース中に存在する化合物との間の類似性を定量化するために、類似性探索の領域で広く使用されている(10)Tanimoto係数(Tc)を選択し、0(化合物が共通のフラグメントを有しない場合)と1(化合物が同一のフラグメントを有する場合)との間に含まれるスコアを割り当てた。続いて、スコアを基準にしてデータベースの化合物を降順で並べ、最初の1640個の化合物(データベース全体の1%を相当する)をさらなる研究のために選択した。実際、このような規模の構造の部分集団(約1%)をデータベースから事前選択することにより、平均して骨格の25%を回収することができ、したがってより多くの構造的に異なるヒットを得ることができることが先行研究において報告された(11)。続いて、Canvasに実装された骨格分解モジュールによってヒットを分析した。リード化合物4,4’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-2,2’,5,5’-テトラオールのビフェニル骨格を含有し、この構造モチーフを含有するいくつかの同族体も含む100個の化合物を収集した。最後に、化学的直感および化合物の利用可能性に基づいて、本発明者らは生物学的試験のために27個の分子を選択し、注文した。
【0037】
〔タンパク質の調製〕
受容体uPAR、ウロキナーゼ(uPA)のN末端(ATF)断片およびビトロネクチンのソマトメジンB(SMB)ドメインの間の三元複合体の結晶構造の座標を、Protein Data Bank(PDBコード:3BT1)からダウンロードした(12)。Chimera 1.6.1のMODELLERソフトウェアのグラフィカルインターフェース(13)を用いて、残基82~85の間に含まれる未確定のセグメントを構築した。次いで、Maestroのグラフィカルインターフェースのモジュール「Protein Preparation」によって、タンパク質の構造を調製した。生理学的pH(7.0)を考慮して、水素原子をタンパク質に加えた。次いで、結合形状の起こり得る不一致を除去するために、Macromodelに実装されたPolak-Ribiere共役勾配の方法および力場OPLS3を使用することによって、2500回の反復を用いて、得られた構造をエネルギー的に最小化した。
【0038】
Maestro中のMolecular Builderモジュールを用いて、類似性検索およびその後の生物学的アッセイによって同定された化合物を構築し、LigPrepソフトウェア(LigPrep,Schrodinger,LLC,NewYork,NY,2019)によるドッキングのために調製した。最急降下法とともに力場MMFFを使用し(1000ステップ)、続いて切り捨てニュートン型の共役勾配法での500ステップを使用することによって、得られた構造をMacromodel(Schroedinger,LLC,New York,NY,2019)で最適化した。部分原子荷重には、力場OPLS-AAを割り当てた。
【0039】
分子ドッキング
uPAR上のVNの結合部位の類似性を介して同定された化合物のドッキングシミュレーションは、GOLD5.5(CCDC Software Limited,Cambridge,UK,2008)中に実装された遺伝的アルゴリズムを用いて実行された(14)。ドッキングシミュレーションのために、プログラムの初期設定パラメータを使用して、10Åの範囲内のVNとの結合に関与する残基に重点を置いて、グリッドを計算した。uPARのドメインDIおよびDIIを連結する可動ループ上に位置する走化性配列SRSRY(残基88~92の間に含まれる)は、柔軟であると考えられた。このような残基の可動性は、回転異性体のLovellライブラリを実装するGOLD中の特定のオプションによって設定した(15)。スコアリング関数ChemPLPおよびChemScore(16)に基づいて、得られたポーズを分類した。実験的に得られた情報と一致する最良のスコアを有するポーズを選択することによって、各化合物に対するリガンド最終受容体複合体を選択した。
【0040】
得られた結果に基づいて、uPAR/FPRs相互作用に関連する病態の処置において使用するために、
非限定的な例として、全身性硬化症、モルフェア、好酸球性筋膜炎、特発性肺線維症、糸球体腎炎、サルコイドーシス、再発性多発性軟骨炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、クローン病、潰瘍性直腸大腸炎、萎縮性前庭部胃炎、原発性胆汁性肝硬変、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、乾癬性関節炎、天疱瘡、皮膚および全身性血管炎、ブドウ膜炎、ベーチェット病、アミロイドーシスなどの病態の処置において使用するために、
特に全身性硬化症の処置において使用するために選択された化合物を含む、薬学的組成物およびそれらの可能な製剤を設計し、調製した。
【0041】
添付の特許請求の範囲に示されているものに従って、本記述の目的はまた、以下の中から選択される以下の化合物:
6,6’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(3-メチルフェノール);
3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;
4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2-メチルフェノール);
3,3’,5,5’-テトラメトキシ[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;
[1,1’-ビフェニル]-3,3’,4,4’-テトロール;
[1,1’-ビフェニル]-3,3’,4,4’,5,5’-ヘキソール;
3,3’-ジプロピル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;
6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール);
6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-エチルフェノール);
2,2’’,4,4’’-テトラメチル-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-2’,5’-ジオール;
6,6’-メチレンビス(4-(tert-ブチル)-2-クロロフェノール);
3,3’-ジアリル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;
4,4’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-6-メチルフェノール);
2’,4,4’,6’-テトラメチル[1,1’-ビフェニル]-2,5-ジオール;
の少なくとも1つまたはこれらの組み合わせを含む薬学的組成物、ならびに医学における、特に、非限定的な例として、前記病態:全身性硬化症、モルフェア、好酸球性筋膜炎、特発性肺線維症、糸球体腎炎、サルコイドーシス、再発性多発性軟骨炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、クローン病、潰瘍性直腸大腸炎、萎縮性前庭部胃炎、原発性胆汁性肝硬変、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、乾癬性関節炎、天疱瘡、皮膚および全身性血管炎、ブドウ膜炎、ベーチェット病、アミロイドーシスの処置における、典型的には、但しそれに限らないが、全身性硬化症の処置におけるその使用である。好ましくは、前記組成物は、以下のもの:3,3’-ジプロピル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール;6,6’-メチレンビス(2-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール);6,6’-メチレンビス(4-(tert-ブチル)-2-クロロフェノール)またはこれらの組み合わせの選択と、薬学的に許容され得る賦形剤、非限定的な例として、場合によっては組み合わされた、アルコールまたは有機溶媒などの溶媒、界面活性剤によって水性媒体中に分散された軽質流動パラフィン、鉱油、ワックスとを含む。前記組成物は、医学的用途に対して許容され得る、溶液、懸濁液、散剤、粒剤、錠剤、丸剤、カプセル、シロップ、坐剤、スプレー、エアロゾルまたは制御放出系、クリーム、軟膏またはゲル、潤滑剤、ペースト、シロップ、バイアル、滴剤、点眼剤、エアロゾルとして製剤化することができる。組成物は、異なる経路、特に経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、直腸および鼻腔内を通して投与することができる。
【0042】
化学的阻害剤
選択された化合物は、National Cancer Institute(NCI)のDevelopmental Therapeutics Program(DTP)のOpen Chemical Repository(http://dtp.cancer.gov)から入手した。その後、凍結乾燥された化合物を0.01mol/Lの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0043】
細胞培養
ヒト皮膚線維芽細胞のモデルとして、細胞株BJ(ATCC CRL2522)を使用した。ウシ胎児血清(FBS)を10%で含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%CO2で、細胞を培養した。
【0044】
uPARのビオチン化
可溶性組換えuPAR(suPAR;R&D System,Minneapolis,MN,USA)をビオチン化し、製造者の説明書(GE Healthcare,Buckinghamshire,UK)に従って、タンパク質のビオチン化モジュールECL Amershamを用いて精製した。
【0045】
固定されたVNへの可溶性uPARの結合
PBS(0.08M NaCl、0.002M KCl、0.0115M Na2HPO4、0.002M KH2PO4、pH7.2)で希釈された0.5μg/ウェルのVN(Becton Dickinson Biosciences,Franklin Lakes,NJ,USA)または陰性対照としてのウシ血清アルブミン(BSA)で、96ウェルを有する(高結合)プレート(Corning,NewYork,USA)を被覆し、4℃で一晩インキュベートした。PBS中での洗浄後、周囲温度で1時間、200μLの、PBS中1%のBSAで残存する結合部位をブロッキングした。単独でまたは選択された化合物の存在下で、25nmol/Lのビオチン化されたs-uPAR(PBS、1mg/mLのBSA中に希釈)を被覆されたウェル中に配置した。プレートを4℃で1時間維持し、0.1%Tween20を含有するPBSで洗浄し、次いでペルオキシダーゼ(Amersham)でアビジンを標識し、10mg/mLのBSAを含有するPBS中に1:1.500希釈した。さらに洗浄した後、ペルオキシダーゼの基質o-フェニレンジアミン(Sigma,St.Louis,MO,USA)を添加し、3分間反応させた。1mol/LのH2SO4で反応を停止させ、自動プレートリーダー(Bio-Rad,Munich,Germany)を使用することによって、生成物を492nmで測定した。
【0046】
細胞接着のアッセイ
VN(1μg)で、または陰性対照としてのPBS中の熱で失活させた100μlの1%BSAで、96ウェルを有するプレート(Nunc,Roskilde,Denmark)を被覆し、4℃で一晩インキュベートした。次いで、周囲温度で1時間、1%PBS中の熱で失活させた1%BSAでプレートをブロックした。2mMのEDTAを含有するPBSで細胞を剥離し、血清を欠くDMEMで洗浄し、計数し、105細胞/ウェルの密度でウェル中に播種し、選択された化合物の存在下または非存在下で、37℃で1時間インキュベートした。次いで、PBS中の3%のパラホルムアルデヒドで細胞を10分間固定し、次いで、2%のメタノールとともに10分間インキュベートした。最後に、20%メタノール中の0.5%クリスタルバイオレットで細胞を10分間着色し、50%エタノール中の0.1mol/lのクエン酸ナトリウム(pH4.2)で溶出し、分光光度計で540nmの吸光度を測定した。
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