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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】海上二酸化炭素捕捉用のシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/92 20060101AFI20230501BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B01D53/92 240
B01D53/92 ZAB
B01D53/92 331
B63H21/32 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559316
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 NO2021050088
(87)【国際公開番号】W WO2021201690
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2004609.0
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522380620
【氏名又は名称】シンテフ・テーテーオー・アーエス
【氏名又は名称原語表記】SINTEF TTO AS
【住所又は居所原語表記】Strindvegen 4, 7034 Trondheim, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】アインブ、アスラク
(72)【発明者】
【氏名】ペターセン、トービョルン
(72)【発明者】
【氏名】モルド、ジョン
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA03
4D002AA09
4D002BA02
4D002BA16
4D002CA01
4D002DA31
4D002DA32
4D002DA34
4D002DA59
4D002EA01
4D002EA03
4D002EA05
4D002EA06
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB08
4D002GB20
4D002HA08
(57)【要約】
海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システム、及び海上二酸化炭素捕捉のための方法が述べられている。海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システム100、システム100は、加圧煙道ガス101を供給するように構成された加圧煙道ガス源200と、液体溶媒102を供給するように構成された溶媒源104と、加圧煙道ガス源200及び溶媒源140と流体連通する二相噴霧化ノズル130とを備え、二相噴霧化ノズル103が、液体溶媒102の噴霧化溶媒スプレー103を生成するために、加圧煙道ガス101と液体溶媒102との混合物の二相流のために構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システムであって、
加圧煙道ガスを供給するように構成された加圧煙道ガス源と、
液体溶媒を供給するように構成された溶媒源と、
前記加圧煙道ガス源及び前記溶媒源と流体連通する二相噴霧化ノズルとを備え、
前記二相噴霧化ノズルが、前記液体溶媒の噴霧化溶媒スプレーを生成するために、前記加圧煙道ガスと前記液体溶媒との混合物の二相流のために構成されている、
捕捉システム。
【請求項2】
前記加圧煙道ガスが、前記二相噴霧化ノズルを通して前記溶媒を押し進めて、前記噴霧化溶媒スプレーを生成するように構成される、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項3】
前記噴霧化溶媒スプレーが、生成時に、150μm以下の液滴直径を有する溶媒液滴を含む、請求項1又は2に記載の捕捉システム。
【請求項4】
前記加圧煙道ガス源が、ガスタービンエンジンである、請求項1、2又は3に記載の捕捉システム。
【請求項5】
前記加圧煙道ガスが、前記ガスタービンエンジンの排ガスから取り出され、
残りの排ガスが、前記噴霧化溶媒スプレーに通される前に廃熱回収ユニットに通される、請求項4に記載の捕捉システム。
【請求項6】
前記廃熱回収ユニットから回収された熱が、溶媒再生のための高温加圧水及び/又は高温加圧油を生成するように構成される、請求項5に記載の捕捉システム。
【請求項7】
溶媒再生ユニットが、溶媒中に存在する任意の溶質から前記溶媒を分離するように構成され、好ましくは前記溶質が二酸化炭素である、請求項1~6のいずれか一項に記載の捕捉システム。
【請求項8】
前記溶媒再生ユニットが、前記溶媒源である、請求項7に記載の捕捉システム。
【請求項9】
前記噴霧化溶媒スプレーの下流に直接接触冷却器をさらに備え、
前記直接接触冷却器が、前記噴霧化溶媒スプレーを凝縮するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の捕捉システム。
【請求項10】
前記噴霧化溶媒スプレーを凝縮するように構成された1つ又は複数のデミスタをさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の捕捉システム。
【請求項11】
前記噴霧化溶媒スプレーが、前記加圧煙道ガス中に存在する二酸化炭素を捕捉するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の捕捉システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のシステムを備える海上船舶。
【請求項13】
前記システムを冷却するために海水を使用するように構成された、請求項12に記載の海上船舶。
【請求項14】
海上二酸化炭素捕捉のための方法であって、
加圧煙道ガスを二相噴霧化ノズルに供給するステップと、
液体溶媒を前記二相噴霧化ノズルに供給するステップと、
前記二相噴霧化ノズルを使用して噴霧化溶媒スプレーを生成するステップとを含み、
前記二相噴霧化ノズルが、前記液体溶媒の前記噴霧化溶媒スプレーを生成するために、前記加圧煙道ガスと前記液体溶媒との混合物の二相流のために構成される、
方法。
【請求項15】
前記加圧煙道ガスを使用して前記二相噴霧化ノズルを通して前記液体溶媒を押し進めるステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記噴霧化溶媒スプレーを使用して前記加圧煙道ガス中に存在する二酸化炭素を捕捉するステップを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
ガスタービンエンジンの排ガスから加圧煙道ガスの流れを取得するステップと、
前記排ガスの流れを廃熱回収ユニットに通し、その後、前記排ガスの流れを前記噴霧化溶媒スプレーに通すステップと
を含む、請求項14、15又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
溶媒再生ユニットを使用して、前記溶媒中に存在する任意の溶質から溶媒を分離するステップを含み、好ましくは前記溶質が二酸化炭素である、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載の捕捉システム、又は請求項12若しくは13に記載の海上船舶によって実施される、海上二酸化炭素捕捉のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システム、及び海上二酸化炭素捕捉のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出によって引き起こされる環境への影響は十分に文書化されており、克服すべき重要な課題であることがよく理解されている。例えば、二酸化炭素排出が重大となる1つの技術分野は、国際海運業界である。第3回国際海事機関温室効果ガス研究(2014年)によれば、国際海運により、人為的排出量全体の2.2%を占める二酸化炭素排出量が排出されていると推定されており、介入がなければ、国際海運産業の全体的な成長により、海運産業から排出される二酸化炭素量は現在の生成量の50%~250%増加する可能性があると予測されている。他の例では、陸上及び海上の石油及びガス掘削プラットフォーム、船舶、及び/又は精油所も大量のCO排出をもたらすことがある。同様に、廃棄物燃焼プラント、発電所、及び製造プラントを含む定置設備は全て、地球全体の二酸化炭素排出に直接影響を及ぼす可能性がある。したがって、二酸化炭素を排出する船及び他の海洋船舶を含むがこれらに限定されないそのようなシステムの二酸化炭素排出量を大幅に削減する解決策を提供することが望まれている。
【0003】
現況技術で知られている現在の解決策は、溶媒を使用して二酸化炭素を捕捉及び/又は吸収することである。二酸化炭素捕捉に使用される溶媒の1つの族はアミンであり、一般に以下の反応で作用する。
RNH+CO⇔RNH +CO
ここで、Rは任意の適切な炭化水素鎖化合物を表す。
【0004】
ガススクラビングの文脈では一般に溶媒と呼ばれるが、溶媒は、必ずしも二酸化炭素ガス(この文脈では溶質と呼ばれることがある)を溶解するとは限らない。当業者には容易に理解されるように、溶媒は、一般に可逆反応で溶質と結合する。吸収/捕捉中、捕捉される溶質の量が最大化されるように平衡が図られる。
【0005】
現況技術で知られており船などに使用される二酸化炭素捕捉システムは、従来のスクラバカラムを使用することがあり、従来のスクラバカラムは、処理すべき排ガス又は他の煙道ガスの流路に配置された稠密の微粒子溶媒を含むことがある。従来のスクラバカラムのカラム充填剤は、標的ガスを吸収及び/又は捕捉するための表面積を増加させる。しかし、従来のスクラバカラムは、それらの固体状態を仮定すると、一般に重い。さらに、煙道ガスは、充填された吸収器にわたる圧力差により、従来のスクラバカラムを通って押し進むことができるようにするためにはかなり高い圧力でなければならない。これは、追加のポンプ及び/又は圧縮機の使用を必要とすることがあり、従来の捕捉システムの重量及びフットプリント、並びに上記システムのエネルギー需要を増加させる。
【0006】
従来のスクラバカラムは、従来のスクラバカラムの表面積と溶媒との接触時間を最大にする狙いで、比較的高い液体ホールドアップ時間(すなわち、液体溶媒が従来のスクラバカラムを通過するのにかかる時間)を有することもある。しかし、液体が従来のスクラバカラム内に滞留される時間が長くなればなるほど、従来のスクラバカラムは、システム内で必要とされて存在する液体の重量の追加により、実質的により重くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改良された、より軽量であり、コンパクトであり、エネルギー効率がより高い二酸化炭素捕捉システムを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様から見ると、本発明は、海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システムであって、加圧煙道ガスを供給するように構成された加圧煙道ガス源と、液体溶媒を供給するように構成された溶媒源と、加圧煙道ガス源及び溶媒源と流体連通する二相噴霧化ノズルとを備え、二相噴霧化ノズルが、液体溶媒の噴霧化溶媒スプレーを生成するために、加圧煙道ガスと液体溶媒との混合物の二相流のために構成されている、捕捉システムを提供する。
【0009】
溶媒と溶質との間の溶媒-ガス接触面積を増加させることで、溶媒が溶質又は他の標的化合物を溶解及び/又は吸収する機能を向上させることができることはよく理解されよう。二相噴霧化ノズルの提供により、生成される噴霧化溶媒スプレーが、標的ガスを捕捉及び/又は吸収するための大きい表面積を有するので、従来のスクラバカラムを捕捉システムに配置する必要がなくなる。したがって、従来のスクラバカラムがないと仮定すると、捕捉システム全体にわたってより大きい圧力低下が観察される。二相噴霧化ノズル全体にわたる圧力降下は、3kPa程度又は3kPa未満であり得る。捕捉システム、したがって二相噴霧化ノズルを通して溶媒を押し進めるように構成された駆動ガスが必要とする圧力は減少され、したがって、加圧煙道ガス(例えば、ガスタービンエンジン又は他の既知の加圧煙道ガス源によって生成される)は、駆動ガスの機能を実施するのに適した圧力となる。
【0010】
したがって、二相噴霧化ノズルと流体連通する加圧煙道ガス源を提供することによって、二相噴霧化ノズルを通して溶媒源によって供給される溶媒を押し進めるために別個のガス源は必要とされない。その結果、捕捉システムの重量及びフットプリントを低減することができる。
【0011】
噴霧化溶媒スプレーを生成する二相噴霧化ノズルに加圧煙道ガスが供給されることを必要とすることによって、加圧煙道ガスと溶媒との接触を増大することができる。これにより、噴霧化溶媒スプレー中の溶媒による加圧煙道源からのガス、例えば二酸化炭素の捕捉効率を高めることができる。
【0012】
液体溶媒の噴霧化溶媒スプレーを生成するために、加圧煙道ガスと液体溶媒との混合物の二相流は並流であることが容易に理解されよう。従来のスクラバカラムは、そのカラム充填剤中に複数の溶媒化合物を有することがあり、これらの溶媒化合物により、処理すべき標的溶質/ガスの捕捉/吸収において複数の平衡ステップが可能になる。二相噴霧化ノズルを使用する捕捉システムでは、その捕捉/吸収プロセスでの平衡ステップがより少ないことがあるが、噴霧化溶媒スプレーと加圧煙道ガスとの並流の流れがより大きい溶媒-ガス接触面積を生成することができ、それによりこのシステムは、より少数の平衡ステップを補償することができる。
【0013】
海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システムは、そのコンパクト性(すなわち小さいフットプリント)、軽量性、及び効率性により、海上用途に適していることがある。しかし、そのようなシステムは、陸上でも海上でも実現することができることを容易に理解されよう。
【0014】
ガス捕捉の文脈では一般に溶媒と呼ばれるが、液体溶媒は、この文脈では溶質と呼ばれることがある加圧煙道ガス(例えば二酸化炭素を含む)を必ずしも溶解するわけではない。当業者には容易に理解されるように、溶媒は可逆反応で溶質と結合する。吸収/捕捉中、捕捉される溶質の量が最大化されるように平衡が図られる。
【0015】
加圧煙道ガスは、二相噴霧化ノズルを通して液体溶媒を押し進め、噴霧化溶媒スプレーを生成するように構成することができる。
【0016】
噴霧化溶媒スプレーは、150μm以下、任意選択的に100μm以下の液滴直径を有する溶媒液滴、例えば25μm~150μmの直径又は50μm~100μmの直径を有する液滴を含むことがある。したがって、噴霧化溶媒スプレーの生成時に形成される液滴の直径は、そのような範囲内に収まることがある。したがって、液滴の直径は、噴霧化溶媒スプレー中の溶媒液滴の体積に対する表面積の比が、加圧煙道ガスからの標的溶質、例えば二酸化炭素の捕捉及び/又は吸収の効率を高めることができるような値であり得る。
【0017】
加圧煙道ガスは、一般に温かい(すなわち、標準周囲温度の298Kを超える温度である)ことがある。加圧煙道ガスが温かいことにより、二相噴霧化ノズルでの混合中に液体溶媒の実効粘度が低下されることがある。これにより、噴霧化溶媒スプレーでのより小さい溶媒液滴の生成が促されることがある。
【0018】
捕捉システムは、二酸化炭素をそこから捕捉することが望まれる煙道ガスのための主流路を備えることがある。したがって、二相噴霧化ノズルの上流にある捕捉システムへの入口と、二相噴霧化ノズルの下流にある捕捉システムからの出口とが存在し得る。煙道ガス(排ガス)は入口から入り、二相噴霧化ノズルを通って流れ、噴霧化溶媒スプレーにさらされた後、出口に流れることができる。捕捉システムは、以下で論じるように、入口と出口との間にさらなる要素を備えることもできる。
【0019】
加圧煙道ガス源は、ガスタービンエンジンでよい。ガスタービンエンジンによって生成される圧力は、例えばエンジンの排気の背圧によって、煙道ガス源のための加圧を提供することができる。これにより、ポンプ、ファン、送風機、又は圧縮機などのさらなる圧力源が必要なくなる。しかし、加圧煙道ガス源は、ガスタービンエンジンの代わりに、周囲空気を加圧する、さらには任意選択的に加温するように構成されたポンプ、ファン、送風機、若しくは圧縮機、又は他の適切なガス源でもよいことは容易に理解されよう。さらに、加圧煙道ガス源は、加圧され、任意選択的に温かい排気生成物を一般に生成する任意の燃焼機関でよく、その排気生成物を加圧煙道ガスとして使用することができる。
【0020】
二相ノズルと共に使用するための加圧煙道ガスは、ガスタービンエンジンの排ガスから取得することができ、例えば排ガスが2つ以上の部分に分割され、1つの部分が、二相ノズルのための加圧煙道ガスを提供し、別の部分(残りの部分でよい)が、例えば上述した入口と出口との間で捕捉システムを通って流れて、排ガスが処理される。
【0021】
捕捉システムは、ガスタービンエンジンと一体化されることがあり、したがって、第2の態様では、本発明は、本明細書で論じる捕捉システムを備えるガスタービンエンジンを提供することができる。
【0022】
ガスタービンエンジンは、その燃料源の燃焼により、温かく高圧であり得る排気生成物を生成する。加圧煙道ガスを含むことがある温かい排気生成物は、液体溶媒が二相噴霧化ノズル内で加圧煙道ガスと混合されるときに、液体溶媒の実効粘度を低下させることがある。これにより、噴霧化溶媒スプレーでのより小さい溶媒液滴の生成が促されることがある。
【0023】
ガスタービンエンジンの排ガスは、高い比率の二酸化炭素ガス成分を含むことがある。したがって、捕捉システムは、ガスタービンエンジンの排ガス中に存在する二酸化炭素を吸収及び/又は捕捉するように構成することができる。二酸化炭素は自然に発生することもあるが、排ガス中の二酸化炭素の大部分がガスタービンエンジン内での燃焼の副生成物であることは容易に理解されよう。
【0024】
捕捉システムは、1つ又は複数のガスタービンエンジンの排ガスを処理するように構成することができる。
【0025】
第1の態様又は第2の態様の捕捉システムは、廃熱回収ユニットを備えることができる。残りの排ガスは、噴霧化溶媒スプレーに通される前に廃熱回収ユニットに通されることがある。したがって、二相噴霧化ノズル及び得られるスプレーでの混合中に、又は噴霧化溶媒スプレーに個別に通されることにより、全ての排ガスを噴霧化溶媒スプレーに通すことができる。
【0026】
廃熱回収ユニットは、必要に応じて、噴霧化溶媒スプレーに通される前に排ガスを冷却することができる。これにより、噴霧化溶媒スプレー中の溶剤の蒸発を防ぐことができる。
【0027】
廃熱回収ユニットは、流体の流れと熱接触することがある。流体の流れは、水、油、又はそれらの混合物を含むことがある。1つ又は複数の熱交換器は、廃熱回収ユニットに通された排ガスと流体の流れとの間の熱交換を容易にすることができる。したがって、廃熱回収ユニットは、高温の加圧された水、油、又はそれらの混合物を生成するように構成することができる。加圧された水、油、又はそれらの混合物は、溶媒再生に使用することができる。
【0028】
有利には、溶媒再生に使用するための熱エネルギーを有益に提供する廃熱回収ユニットを含むことで、二相噴霧化ノズルの上流にある従来の直接冷却器など、より大きくて重い従来の冷却デバイスの必要がなくなる。これにより、捕捉システムの重量及びフットプリントを低減することができる。
【0029】
噴霧化溶媒スプレーを生成する際には、温かい加圧煙道ガスを提供することが好ましいが、排ガスの残りの加熱部分が噴霧化溶媒スプレーに通されることは好ましくない。通される場合、高温の排ガスが捕捉システム内の液体溶媒(及び他の液体、例えば水)を加熱し、液相で再循環するのではなく、気相でシステムから排出されるおそれがある。
【0030】
廃熱回収ユニットによる排ガスの冷却により、二相噴霧化ノズルを通る加圧煙道ガスの安全な圧力を維持することができ、二相噴霧化ノズルにわたる非常に高い圧力により二相噴霧化ノズルが損傷を受けることがない。
【0031】
廃熱回収ユニットによる排ガスの冷却は、捕捉システム内の温度を低下させることがあり、それにより、溶質(二酸化炭素など)と溶媒との間の可逆的な捕捉反応が溶質の捕捉/吸収に有利になる。
【0032】
捕捉システムによって必要とされる溶媒の量を最小限に抑えるために、噴霧化溶媒スプレーから、液体溶媒を供給する溶媒源に、使用可能な任意の溶媒を再循環させることが望ましい。したがって、二相噴霧化ノズルの下流にデミスタを設けることができる。デミスタは、噴霧化溶媒スプレーを凝縮して溜めるように構成することができる。このとき、加圧煙道ガスは、デミスタを通過することができる。デミスタ内で凝縮しないより小さい溶媒液滴も、加圧煙道ガスと共にデミスタを通過することがある。
【0033】
デミスタは、シェブロンベーンデミスタ、メッシュパッドデミスタ、ブラウン拡散デミスタ、又は上記の任意の組合せでよい。追加として及び/又は代替として、デミスタは、シェブロンベーンデミスタ、メッシュパッドデミスタ、又はブラウン拡散デミスタの液滴よりも小さい液滴をさらに分離するために、より小さい細孔を有するフィルタ材を備えたデバイスでもよい。
【0034】
捕捉システムは、直接接触冷却器を備えることがある。直接接触冷却器は、二相噴霧化ノズルの下流にあり得る。直接接触冷却器は、デミスタによって凝縮されない溶媒を凝縮することができる。
【0035】
デミスタは、二相噴霧化ノズルと直接接触冷却器との境界を提供することができる。デミスタは、二相噴霧化ノズルと直接接触冷却器とを分離することができる。
【0036】
直接接触冷却器は、一般に、噴霧化溶媒スプレー中のより小さい液滴を凝縮するために必要とされることがあり、それらの液滴を、デミスタによって分離されるのに十分な大きさに成長させる。例えば、噴霧化溶媒スプレー中のより小さい液滴は、エアロゾルとみなすことができる。エアロゾルは、デミスタで分離するには小さすぎることがある。
【0037】
直接接触冷却器は、噴霧化溶媒スプレーを凝縮するように構成することができる。直接接触冷却器は、噴霧化溶媒スプレーを並流水スプレーと共に噴霧することができる。並流水スプレーは、噴霧化溶媒スプレーを冷却することができ、それによりスプレー中の溶媒液滴のサイズが大きくなる(すなわち凝縮する)。
【0038】
並流水スプレーの使用により、捕捉システムにわたる圧力降下を低減することができる。並流水スプレーの使用は、捕捉システムにわたる3kPa又は3kPa未満の全圧力降下の実現に寄与することができる。並流水スプレーの使用は、捕捉システム及び/又は二相噴霧化ノズルを通る駆動ガスとして加圧煙道ガス源を適切に使用することができるように、適切な圧力降下を実現することができる。
【0039】
第2のデミスタを直接接触冷却器の下流に設けることができ、噴霧化溶媒スプレーが凝縮し、溜められた液体溶媒に落ちる。標的溶質(例えば二酸化炭素)がガスから実質的に除去されるように処理された残りの加圧煙道ガスは、例えば上述した出口を通して捕捉システムから排出される。
【0040】
噴霧化溶媒スプレーを十分に冷却できるように水スプレーに供給される水を冷却するために、水を海水で冷却してもよい。水と海水との間の熱交換を容易にするために、1つ又は複数の熱交換器を設けることができる。
【0041】
海水は、海上用途において豊富に存在することがあり簡単に入手可能な例示的な冷却液であるが、陸上用途においても同様に海水を入手可能であることは容易に理解できよう。代替として、内陸で使用される場合には、河川及び/又は湖などの他の大きい水域が、捕捉システムの冷却構成要素のための適切な水源を提供することができる。
【0042】
捕捉システムは、二相噴霧化ノズルの下流に直接接触冷却器を1つだけ必要とすることがある。これにより、捕捉システムのフットプリントを低減することができ、捕捉システムの総重量を低減することができる。直接接触冷却器が1つだけでよいことは、例えば廃熱回収ユニットを使用することによって実現することができる。廃熱回収ユニットは、二相噴霧化ノズルに供給されない噴霧化溶媒スプレーに通された煙道ガスを冷却し、廃熱回収ユニットから回収された熱が溶媒再生プロセスで有利に利用されるので、残りの排ガスを噴霧化溶媒スプレーに通すことができるようになる前に追加の冷却デバイスが必要とされない。したがって、溶媒再生のための追加の加熱デバイス及び排ガスのための追加の冷却デバイスは不要であり、任意選択的に省略することができる。したがって、捕捉システムの重量及びフットプリントのさらなる低減を実現することができる。
【0043】
溜められた溶媒と、直接接触冷却器内で噴霧化溶媒スプレーを洗浄するために使用された水とを、サンプ容積と考えることができる。捕捉デバイスは、サンプ容積を構成する溶媒及び水を保持するためのサンプを備えることができる。溜められた溶媒及び水を捕捉システムを通して再循環させるために、サンプポンプを設けることができる。
【0044】
捕捉システムは、溶媒再生ユニットを備えることがある。サンプポンプは、溶媒再生ユニットと流体連通することができる。溶媒再生ユニットは、噴霧化溶媒スプレー中に存在する溶質及び任意選択的に水から溶媒を分離するように構成することができる。溶質は二酸化炭素でよい。次いで、溶媒再生ユニットで分離された溶媒は、液体溶媒として二相噴霧化ノズルに供給することができる。したがって、溶媒源は溶媒再生ユニットでよい。溶媒再生ユニットは、水を直接接触冷却器に戻すことができる。
【0045】
液体溶媒からの水の分離は、噴霧化溶媒スプレーを生成するために所望の濃度の液体溶媒が二相噴霧化ノズルに送られ、それにより効率的な溶質、例えば二酸化炭素の捕捉を実現することができることを保証することができる。
【0046】
液体溶媒は、アミン基を含む物質でよい。例えば、液体溶媒は、モノエタノールアミン(MEA)、ピペラジン、又はそれらの混合物でよい。液体溶媒は、20重量%~70重量%のMEAでよい。液体溶媒は、20重量%~40重量%のMEAでよい。液体溶媒は、50重量%~70重量%のMEAでよい。液体溶媒は、10重量%~30重量%のピペラジンでよい。
【0047】
他の二酸化炭素捕捉溶媒も適宜使用することができる。例えば、液体溶媒は、一般に、可逆反応で二酸化炭素と結合することができる任意の溶媒でよく、必ずしもアミン基を含む物質である必要はない。そのような溶媒には、二酸化炭素親和性で知られている炭酸系、グリコール、有機酸、又は微生物の懸濁溶液が含まれることがある。
【0048】
液体溶媒は、必要に応じて、二酸化炭素以外の選択された標的溶質と結合するように選択することができる。例えば、溶質は硫化水素でよい。
【0049】
二相噴霧化ノズルは、吸収器に収容することができる。吸収器は、柱状タンク又は槽でよく、垂直スタック及び/又は煙突の一部を形成することがある。噴霧化溶媒スプレーが吸収器を通過するのにかかる時間は、3秒未満であり得る。噴霧化溶媒スプレーが溶媒と加圧煙道ガスとの間の大きい表面積を提供するので、噴霧化溶媒スプレーの短い滞留時間でも、標的溶質の適切な吸収及び/又は捕捉を提供することができる。したがって、加圧煙道ガスから捕捉することができる二酸化炭素の量を増加させるより高い流速の液体溶媒を提供することができる。
【0050】
捕捉システムを通る液体溶媒の再循環により、任意の所与の時点で捕捉システムに必要とされる液体溶媒の体積をより小さくすることができるので、噴霧化溶媒スプレーの短い滞留時間により、捕捉システムの重量を低減することができる。
【0051】
処理すべきガス(加圧煙道ガス及び/又は排ガス)と接触していない液体溶媒はリーン液体溶媒と考えることができる。処理すべきガスと接触した液体溶媒は、リッチ液体溶媒と考えることができる。
【0052】
廃熱回収ユニットは、吸収器の下に位置することができる。直接接触冷却器は、吸収器の上に位置することができる。したがって、捕捉システムは、垂直スタック及び/又は煙突を実質的に備えることがある。したがって、捕捉システムのフットプリントは、従来の捕捉システムのフットプリントよりも小さくすることができる。
【0053】
第3の態様から見ると、本発明は、第1の態様の捕捉システムを備え、任意選択的に第2の態様のガスタービンとその一体型の捕捉システムとを備える海上船舶を提供する。
【0054】
海上船舶は、海での動作に適した任意の船舶でよい。海上船舶は、タンカ、輸送船舶、又は海で動作される別のガスタービンエンジン駆動式の船舶でよい。海上船舶は、海上プラットフォーム及び浮体式プラットフォームにまで及ぶことがある。同様に、動力発生源は、加圧煙道ガスとして使用することができる、加圧され、任意選択的に温かい排気生成物を一般に生成する任意の燃焼エンジンでよい。
【0055】
海上船舶は、海水を使用して捕捉システムを冷却するように構成することができる。理解されるように、海上にある海上船舶は海水によって囲まれており、したがって豊富な海水が利用可能であり、捕捉システム用のクーラントとして使用される。
【0056】
本発明の第1の態様及び/又は第2の態様に従って、捕捉システムの周りの多くの位置で海水冷却を使用することができる。例えば、海水を使用して、直接接触冷却器の水スプレーで使用される水を冷却することができる。海水を使用して、二相噴霧化ノズルに供給される液体溶媒を冷却することもできる。海上船舶又は海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システムを取り囲む環境からの海水を利用することによって、捕捉システムの動作中に発生する大量の熱を放散するのに十分な冷却を提供することができる。また、海水を使用することで、通常であれば動作にかなりの量のエネルギーを必要とし得るさらなる冷却システム又はクーラントがシステム内で必要なくなる。
【0057】
海水は、海上用途において豊富に存在することがあり簡単に入手可能な例示的な冷却液であるが、陸上用途においても同様に海水を入手可能であることは容易に理解できよう。代替として、内陸で使用される場合には、河川及び/又は湖などの他の大きい水域が、捕捉システムの冷却構成要素のための適切な水源を提供することができる。
【0058】
第4の態様から見ると、本発明は、海上二酸化炭素捕捉のための方法であって、加圧煙道ガスを二相噴霧化ノズルに供給するステップと、液体溶媒を二相噴霧化ノズルに供給するステップと、二相噴霧化ノズルを使用して噴霧化溶媒スプレーを生成するステップとを含み、二相噴霧化ノズルが、液体溶媒の噴霧化溶媒スプレーを生成するために、加圧煙道ガスと液体溶媒との混合物の二相流のために構成される、方法を提供する。
【0059】
溶媒と溶質との間の溶媒-ガス接触面積を増加させることで、溶媒が溶質又は他の標的化合物を溶解及び/又は吸収する機能を向上させることができることはよく理解されよう。二相噴霧化ノズルを使用する噴霧化溶媒スプレーの生成により、生成される噴霧化溶媒スプレーが、標的ガスを捕捉及び/又は吸収するための大きい表面積を有するので、従来のスクラバカラムを捕捉システムに配置する必要がなくなる。したがって、従来のスクラバカラムがないと仮定すると、捕捉システム全体にわたってより大きい圧力低下が観察される。二相噴霧化ノズル全体にわたる圧力降下は、3kPaの程度又は3kPa未満であり得る。捕捉システム、したがって二相噴霧化ノズルを通して溶媒を押し進めるように構成された駆動ガスが必要とする圧力は減少され、したがって、加圧煙道ガス(例えば、ガスタービンエンジン又は他の既知の加圧煙道ガス源によって生成される)は、駆動ガスの機能を実施するのに適した圧力である。
【0060】
したがって、二相噴霧化ノズルと流体連通する加圧煙道ガス源を提供することによって、二相噴霧化ノズルを通して溶媒源によって供給される溶媒を押し進めるために別個のガス源は必要とされない。その結果、捕捉システムの重量及びフットプリントを低減することができる。
【0061】
噴霧化溶媒スプレーを生成する二相噴霧化ノズルに加圧煙道ガスが供給されることを必要とすることによって、加圧煙道ガスと溶媒との接触を増大することができる。これにより、噴霧化溶媒スプレー中の溶媒による加圧煙道源からのガス、例えば二酸化炭素の捕捉効率を高めることができる。
【0062】
液体溶媒の噴霧化溶媒スプレーを生成するために、加圧煙道ガスと液体溶媒との混合物の二相流は並流であることが容易に理解されよう。従来のスクラバカラムは、そのカラム充填剤中に複数の溶媒化合物を有することがあり、これらの溶媒化合物により、処理すべき標的溶質/ガスの捕捉/吸収において複数の平衡ステップが可能になる。二相噴霧化ノズルを使用する捕捉システムは、その捕捉/吸収プロセスでの平衡ステップがより少ないことがあるが、噴霧化溶媒スプレーと加圧煙道ガスとの並流の流れがより大きい溶媒-ガス接触面積を生成することができ、それによりこのシステムは、より少数の平衡ステップを補償することができる。
【0063】
海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システムは、そのコンパクト性(すなわち小さいフットプリント)、軽量性、及び効率性により、海上用途に適していることがある。しかし、そのようなシステムは、陸上でも海上でも実現することができることを容易に理解されよう。
【0064】
ガス捕捉の文脈では一般に溶媒と呼ばれるが、液体溶媒は、この文脈では溶質と呼ばれることがある加圧煙道ガス(例えば二酸化炭素を含む)を必ずしも溶解するわけではない。当業者には容易に理解されるように、溶媒は、一般に可逆反応で溶質と結合する。吸収/捕捉中、捕捉される溶質の量が最大化されるように平衡が図られる。
【0065】
この方法は、加圧煙道ガスを使用して二相噴霧化ノズルを通して液体溶媒を押し進めるステップを含むことがある。
【0066】
噴霧化溶媒スプレーの生成は、150μm以下、任意選択的に100μm以下の液滴直径を有する溶媒液滴、例えば25μm~150μmの直径又は50μm~100μmの直径を有する液滴を含むことがある。したがって、液滴の直径は、噴霧化溶媒スプレー中の溶媒液滴の体積に対する表面積の比が、加圧煙道ガスからの標的溶質、例えば二酸化炭素の捕捉及び/又は吸収の効率を高めることができるような値であり得る。
【0067】
加圧煙道ガスは、一般に温かい(すなわち、標準周囲温度の298Kを超える温度である)ことがある。加圧煙道ガスが温かいことにより、二相噴霧化ノズルでの混合中に液体溶媒の実効粘度が低下されることがある。これにより、噴霧化溶媒スプレーでのより小さい溶媒液滴の生成が促されることがある。
【0068】
炭素捕捉方法は、二酸化炭素をそこから捕捉することが望まれる煙道ガスのための主流路の使用を含むことがある。したがって、二相噴霧化ノズルの上流にある主流路への入口と、二相噴霧化ノズルの下流にある主流路からの出口とが存在し得る。煙道ガス(排ガス)は入口から入り、二相噴霧化ノズルを通って流れ、噴霧化溶媒スプレーにさらされた後、出口に流れることができる。したがって、この方法は、煙道ガスを入口に通すステップと、煙道ガスを噴霧化溶媒スプレーに露出するステップと、露出された煙道ガスを出口に通すステップとを含むことができる。捕捉システムは、以下で論じるように、入口と出口との間にさらなる要素を備えることもできる。
【0069】
加圧煙道ガス源は、ガスタービンエンジンでよい。ガスタービンエンジンによって生成される圧力は、例えばエンジンの排気の背圧によって、煙道ガス源のための加圧を提供することができる。これにより、ポンプ、ファン、送風機、又は圧縮機などのさらなる圧力源が必要なくなる。しかし、加圧煙道ガス源は、ガスタービンエンジンの代わりに、周囲空気を加圧し、さらには任意選択的に加温するように構成されたポンプ、ファン、送風機、若しくは圧縮機、又は他の適切なガス源でもよいことは容易に理解されよう。さらに、加圧煙道ガス源は、加圧され、任意選択的に温かい排気生成物を一般に生成する任意の燃焼機関でよく、その排気生成物を加圧煙道ガスとして使用することができる。
【0070】
この方法は、ガスタービンエンジンの排気から加圧煙道ガスの1つ又は複数の流れを取得、分割、及び/又は分断するステップを含むことができる。例えば、排ガスが2つ以上の部分に分割され、1つの部分が、二相ノズルのための加圧煙道ガスを提供し、別の部分(残りの部分でよい)が、例えば上述した入口と出口との間で主流路を通って流れて、排ガスが処理される。したがって、この方法は、排ガスの取得、分割、及び/又は分断された流れを噴霧化溶媒スプレーに通すステップを含むことができる。
【0071】
この方法はガスタービンエンジン用であり得て、したがって第5の態様では、本発明は、本明細書で論じたガスタービンエンジン用の海上炭素捕捉のための方法を提供することができる。
【0072】
ガスタービンエンジンは、その燃料源の燃焼により、温かく高圧であり得る排気生成物を生成する。加圧煙道ガスを含むことがある温かい排気生成物は、液体溶媒が二相噴霧化ノズル内で加圧煙道ガスと混合されるときに、液体溶媒の実効粘度を低下させることがある。これにより、噴霧化溶媒スプレーでのより小さい溶媒液滴の生成が促されることがある。
【0073】
ガスタービンエンジンの排ガスは、高い比率の二酸化炭素ガス成分を含むことがある。したがって、この方法は、ガスタービンエンジンの排ガス中に存在する二酸化炭素を吸収及び/又は捕捉するステップを含むことがある。二酸化炭素は自然に発生することもあるが、排ガス中の二酸化炭素の大部分がガスタービンエンジン内での燃焼の副生成物であることは容易に理解されよう。
【0074】
この方法は、1つ又は複数のガスタービンエンジンの排ガスを処理するステップを含むことがある。
【0075】
第4の態様又は第5の態様の方法は、廃熱回収ユニットの使用を含むことがある。この方法は、残りの排ガスを噴霧化溶媒スプレーに通す前に、残りの排ガスを廃熱回収ユニットに通すステップを含むことがある。したがって、この方法は、二相噴霧化ノズル及び得られるスプレーでの混合中に、又は噴霧化溶媒スプレーに個別に通されることにより、全ての排ガスを噴霧化溶媒スプレーに通すステップを含むことがある。この方法は、噴霧化溶媒スプレーに通す前に必要に応じて廃熱回収ユニットを使用して排ガスを冷却するステップを含むことがある。これにより、噴霧化溶媒スプレー中の溶剤の蒸発を防ぐことができる。
【0076】
廃熱回収ユニットは、流体の流れと熱接触することがある。流体の流れは、水、油、又はそれらの混合物を含むことがある。1つ又は複数の熱交換器は、廃熱回収ユニットに通された排ガスと流体の流れとの間の熱交換を容易にすることができる。したがって、この方法は、廃熱回収ユニットを使用して、高温の加圧水、油、又はそれらの混合物を生成するステップを含むことがある。加圧された水、油、又はそれらの混合物は、溶媒再生に使用することができる。
【0077】
有利には、溶媒再生に使用するための熱エネルギーを有益に提供する廃熱回収ユニットを含むことで、二相噴霧化ノズルの上流にある従来の直接冷却器など、より大きくて重い従来の冷却デバイスの必要がなくなる。これにより、捕捉システムの重量及びフットプリントを低減することができる。
【0078】
噴霧化溶媒スプレーを生成する際には、温かい加圧煙道ガスを提供することが好ましいが、排ガスの残りの加熱部分が噴霧化溶媒スプレーに通されることは好ましくない。通される場合、高温の排ガスが捕捉システム内の液体溶媒(及び他の液体、例えば水)を加熱し、液相で再循環するのではなく、気相でシステムから排出されるおそれがある。
【0079】
廃熱回収ユニットによる排ガスの冷却により、二相噴霧化ノズルを通る加圧煙道ガスの安全な圧力を維持することができ、二相噴霧化ノズルにわたる非常に高い圧力により二相噴霧化ノズルが損傷を受けることがない。
【0080】
廃熱回収ユニットによる排ガスの冷却は、捕捉システム内の温度を低下させることがあり、それにより、溶質(二酸化炭素など)と溶媒との間の可逆的な捕捉反応が溶質の捕捉/吸収に有利になる。
【0081】
この方法において必要とされる溶媒の量を最小限に抑えるために、噴霧化溶媒スプレーから、液体溶媒を供給する溶媒源に、使用可能な任意の溶媒を再循環させることが望ましい。したがって、二相噴霧化ノズルの下流にデミスタを設けることができる。したがって、この方法は、噴霧化溶媒スプレーを二相噴霧化ノズルの下流でデミスタに通すステップを含むことがある。デミスタは、噴霧化溶媒スプレーを凝縮して溜めるように構成することができる。この方法は、噴霧化溶媒スプレーを凝縮するステップを含むことがある。加圧煙道ガスは、デミスタを通過することもある。デミスタ内で凝縮しないより小さい溶媒液滴も、加圧煙道ガスと共にデミスタを通過することがある。
【0082】
デミスタは、シェブロンベーンデミスタ、メッシュパッドデミスタ、ブラウン拡散デミスタ、又は上記の任意の組合せでよい。追加として及び/又は代替として、デミスタは、シェブロンベーンデミスタ、メッシュパッドデミスタ、又はブラウン拡散デミスタの液滴よりも小さい液滴をさらに分離するために、より小さい細孔を有するフィルタファブリックを備えたデバイスでもよい。
【0083】
この方法は、直接接触冷却器の使用を含むこともある。直接接触冷却器は、デミスタによって凝縮されない溶媒を凝縮することができる。直接接触冷却器は、二相噴霧化ノズルの下流にあってもよい。
【0084】
デミスタは、二相噴霧化ノズルと直接接触冷却器との境界を提供することができる。デミスタは、二相噴霧化ノズルと直接接触冷却器とを分離することができる。
【0085】
直接接触冷却器は、一般に、噴霧化溶媒スプレー中のより小さい液滴を凝縮するために必要とされることがあり、それらの液滴を、デミスタによって分離されるのに十分な大きさに成長させる。例えば、噴霧化溶媒スプレー中のより小さい液滴は、エアロゾルとみなすことができる。エアロゾルは、デミスタで分離するには小さすぎることがある。
【0086】
したがって、この方法は、直接接触冷却器を使用して、噴霧化溶媒スプレーを凝縮するステップを含むことがある。直接接触冷却器は、噴霧化溶媒スプレーを並流水スプレーと共に噴霧することができる。したがって、この方法は、噴霧化溶媒スプレーを並流水スプレーと共に噴射するステップを含むことがある。並流水スプレーは、噴霧化溶媒スプレーを冷却することができ、それによりスプレー中の溶媒液滴のサイズが大きくなる(すなわち凝縮する)。
【0087】
並流水スプレーの使用により、捕捉システムにわたる圧力降下を低減することができる。並流水スプレーの使用は、捕捉システムにわたる3kPa又は3kPa未満の全圧力降下の実現に寄与することができる。並流水スプレーの使用は、捕捉システム及び/又は二相噴霧化ノズルを通る駆動ガスとして加圧煙道ガス源を適切に使用することができるように、適切な圧力降下を実現することができる。
【0088】
第2のデミスタを直接接触冷却器の下流に設けることができ、噴霧化溶媒スプレーが凝縮し、溜められた液体溶媒に落ちる。標的溶質(例えば二酸化炭素)がガスから実質的に除去されるように処理された残りの加圧煙道ガスは、例えば上述した出口を通して捕捉システムから排出される。
【0089】
噴霧化溶媒スプレーを十分に冷却できるように水スプレーに供給される水を冷却するために、水を海水で冷却してもよい。水と海水との間の熱交換を容易にするために、1つ又は複数の熱交換器を設けることができる。
【0090】
海水は、海上用途において豊富に存在することがあり簡単に入手可能な例示的な冷却液であるが、陸上用途においても同様に海水を入手可能であることは容易に理解できよう。代替として、内陸で使用される場合には、河川及び/又は湖などの他の大きい水域が、捕捉システムの冷却構成要素のための適切な水源を提供することができる。
【0091】
この方法は、二相噴霧化ノズルの下流に直接接触冷却器を1つだけ必要とすることがある。これにより、この方法によって必要とされる装置のフットプリントを低減することができ、捕捉システムの総重量を低減することができる。直接接触冷却器が1つだけでよいことは、例えば廃熱回収ユニットを使用することによって実現することができる。廃熱回収ユニットは、二相噴霧化ノズルに供給されない噴霧化溶媒スプレーに通された煙道ガスを冷却し、廃熱回収ユニットから回収された熱が溶媒再生プロセスで有利に利用されるので、残りの排ガスを噴霧化溶媒スプレーに通すことができるようになる前に追加の冷却デバイスが必要とされない。したがって、溶媒再生のための追加の加熱デバイス、及び排ガスのための追加の冷却デバイスは不要であり、任意選択的に省略することができる。したがって、捕捉システムの重量及びフットプリントのさらなる低減を実現することができる。
【0092】
溜められた溶媒と、直接接触冷却器内で噴霧化溶媒スプレーを洗浄するために使用された水とを、サンプ容積と考えることができる。この方法は、サンプ容量を構成する溶媒及び水を保持することを必要とすることがある。溜められた溶媒及び水を捕捉システムを通して再循環させるために、サンプポンプを設けることができる。
【0093】
この方法は、溶媒再生ユニットの使用を含むことがある。サンプポンプは、溶媒再生ユニットと流体連通することができる。溶媒再生ユニットは、噴霧化溶媒スプレー中に存在する溶質及び任意選択的に水から溶媒を分離するように構成することができる。したがって、この方法は、噴霧化溶媒スプレー中に存在する溶質及び任意選択的に水から溶媒を分離するステップを含むことがある。溶質は二酸化炭素でよい。次いで、溶媒再生ユニットで分離された溶媒は、液体溶媒として二相噴霧化ノズルに供給することができる。したがって、溶媒源は溶媒再生ユニットでよい。溶媒再生ユニットは、水を直接接触冷却器に戻すことができる。
【0094】
液体溶媒からの水の分離は、噴霧化溶媒スプレーを生成するために所望の濃度の液体溶媒が二相噴霧化ノズルに送られ、それにより効率的な溶質、例えば二酸化炭素の捕捉を実現することができることを保証することができる。
【0095】
液体溶媒は、アミン基を含む物質でよい。例えば、液体溶媒は、モノエタノールアミン(MEA)、ピペラジン、又はそれらの混合物でよい。液体溶媒は、20重量%~70重量%のMEAでよい。液体溶媒は、20重量%~40重量%のMEAでよい。液体溶媒は、50重量%~70重量%のMEAでよい。液体溶媒は、10重量%~30重量%のピペラジンでよい。
【0096】
液体溶媒は、一般に、可逆反応で二酸化炭素と結合することができる任意の溶媒でよく、必ずしもアミン基を含む物質である必要はない。二酸化炭素親和性で知られている炭酸系、グリコール、有機酸、又は微生物を含む溶液を全て使用することができる。
【0097】
液体溶媒は、必要に応じて、二酸化炭素以外の選択された標的溶質と結合するように選択することができる。例えば、溶質は硫化水素でよい。
【0098】
二相噴霧化ノズルは、吸収器に収容することができる。吸収器は、柱状タンク又は槽でよく、垂直スタック及び/又は煙突の一部を形成することがある。噴霧化溶媒スプレーが吸収器を通過するのにかかる時間は、3秒未満であり得る。噴霧化溶媒スプレーが溶媒と加圧煙道ガスとの間の大きい表面積を提供するので、噴霧化溶媒スプレーの短い滞留時間でも、標的溶質の適切な吸収及び/又は捕捉を提供することができる。したがって、加圧煙道ガスから捕捉することができる二酸化炭素の量を増加させるより高い流速の液体溶媒を提供することができる。
【0099】
捕捉システムを通る液体溶媒の再循環により、任意の所与の時点で捕捉システムに必要とされる液体溶媒の体積をより小さくすることができるので、噴霧化溶媒スプレーの短い滞留時間により、捕捉システムの重量を低減することができる。
【0100】
処理すべきガス(加圧煙道ガス及び/又は排ガス)と接触していない液体溶媒はリーン液体溶媒と考えることができる。処理すべきガスと接触した液体溶媒は、リッチ液体溶媒と考えることができる。
【0101】
廃熱回収ユニットは、吸収器の下に位置することができる。直接接触冷却器は、吸収器の上に位置することができる。したがって、この方法は、垂直スタック及び/又は煙突内で実質的に実施することができる。したがって、この方法を実施するために必要な装置のフットプリントは、従来の捕捉方法におけるフットプリントよりも小さくすることができる。
【0102】
第4及び第5の態様の方法は、第1及び第2の態様の特徴の使用に対応する1つ又は複数のステップを含むことがある。したがって、限定はしないが全ての技術的利点及び代替実施形態を含む第1の態様の装置の上記の説明は、第2の態様の方法に同様に適用可能であり得る。
【0103】
第4の態様の方法は、第1の態様の海上二酸化炭素捕捉用の捕捉システムによって実施することができる。したがって、この方法は、第1の態様の海上二酸化炭素捕捉用の捕捉方法でよい。
【0104】
第5の態様の方法は、第2の態様のガスタービンエンジンによって実施することができる。したがって、この方法は、第2の態様のガスタービンエンジンを使用する海上二酸化炭素用の捕捉方法でよい。
【0105】
次に、本発明の特定の例示的実施形態を、単に例として添付図面を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1A】炭素捕捉システムを搭載した船舶を示す図である。
図1B図1Aの船舶の炭素捕捉システム及びガスタービンエンジンを実際の比率で表した図である。
図2】炭素捕捉システムの概略図である。
図3A】時間の関数として、炭素捕捉システムでの煙道ガス中の二酸化炭素濃度のシミュレートされたグラフを示す図である。
図3B】時間の関数として、炭素捕捉システムでの液体溶媒中の二酸化炭素濃度のシミュレートされたグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
図1Aに、船舶1を示す。図示の船舶1は船に似ているが、船舶1は、浮体式オイルリグ、静的オイルリグ、又は任意のサイズの船及び/又はボートなど、任意の海洋プラットフォームでよいことを理解されたい。船舶1には、二酸化炭素捕捉システム100(本明細書では捕捉システム100と呼ぶ)及びガスタービンエンジン200が搭載されている。図中、船舶1に搭載されている捕捉システム100及びガスタービンエンジン200は、それらが船舶1で占めることがあるフットプリントを実際の比率で表している。ガスタービンエンジン200は、例えば必要に応じて船舶1を推進させるためにプロペラによって推力を提供するために、又は浮体式船舶1の1つ若しくは複数の構成要素への電力を生成するために使用される1つ又は複数のガスタービンを備えることがある。
【0108】
図1Bは、丸で囲まれている図1の船舶1に設置された捕捉システム100及びガスタービンエンジン200のより詳細な図である。捕捉システム100の脇に人3が示されている。人3は、捕捉システム100のサイズを実際の比率で表している。捕捉システム100は、実質的に細い垂直プロファイルを備える。したがって、捕捉システムの底部の幅は12mであり得て、捕捉システムの高さhは20mであり得る。図1Aには示されていないが、捕捉システム100は、ガスタービンエンジンの排気管と流体連通している。
【0109】
図1Aに示されている捕捉システム100は、大まかには3つのセクションを含む。捕捉システム100の底部には廃熱回収ユニット(WHRU)120がある。WHRU120の上には吸収器110がある。吸収器110の上には、直接接触冷却器130が配置されている。直接接触冷却器130は、水洗浄液を含むことがある。図1Bには示されていないが、捕捉システム100は、溶媒再生ユニット140を備えることもある。吸収器110は、直径7m及び高さ11mを有することがある。捕捉システム100の構成要素を概して垂直に互いに積み重ねることによって、船舶1に搭載された捕捉システム100のフットプリントを縮小することができる。
【0110】
図2は、ガスタービンエンジン200と流体連通する捕捉システム100の概略図を示す。捕捉システム100は、液体溶媒102で処理することによって、加圧煙道ガス101などの煙道ガスから二酸化炭素を除去する。捕捉プロセスの効率を最大化するために、二相噴霧化ノズル103が、本明細書で述べるように噴霧化溶媒スプレー104を生成することによって加圧煙道ガス101と液体溶媒102との混合を容易にする。
【0111】
加圧煙道ガス101は二相噴霧化ノズル103に供給される。加圧煙道ガス101は気相である。液体溶媒102も二相噴霧化ノズル103に供給される。液体溶媒102はリーン溶媒である。すなわち、二相噴霧化ノズル103に供給される液体溶媒102には、溶質が装填されていない。二相噴霧化ノズル103は、噴霧化溶媒スプレー104を生成する。噴霧化溶媒スプレー104は、加圧煙道ガス101と液体溶媒103との混合物を含む。
【0112】
加圧煙道ガス101は、液体溶媒102が二相噴霧化ノズル103を通して押し進められて噴霧化溶媒スプレー104を生成するのに十分な圧力である。本明細書において、十分な圧力とは、液体溶媒102が二相噴霧化ノズル103を通して誘導されて噴霧化溶媒スプレー104を生成するように、捕捉システム100から直接接触冷却器130を通して排出される処理済ガス131の圧力よりも高い圧力として定義される。したがって、加圧煙道ガスは、必要に応じて、処理済ガス131の圧力よりも6kPa以下、5kPa以下、又は3kPa以下だけ高い圧力であり得る。
【0113】
加圧煙道ガス101は、二相噴霧化ノズル103を通して液体溶媒102を押し進めるのに十分な圧力であるだけでなく、二相噴霧化ノズル103を通して液体溶媒102を押し進めるときに、150μm未満若しくは100μm未満の液滴直径、又は25μm~150μmの直径、又は50μm~100μmの直径を有する液体溶媒102の液滴を噴霧化溶媒スプレー104中に生成するのに十分な圧力でもある。液滴直径は、ザウター平均粒径に従って定義することができる。
【0114】
生成された噴霧化溶媒スプレーが多数の溶媒液滴を含み、これらの溶媒液滴が液体溶媒102の実効表面積を増加させるので、加圧煙道ガス101からの二酸化炭素の捕捉は、二相噴霧化ノズル103によって向上される。したがって、当業者には容易に理解されるように、液相、すなわち液体溶媒102と気相、すなわち加圧煙道ガス101との間に大きい接触面が提供され、気相からの二酸化炭素の捕捉及び/又は吸収が増加される。また、加圧煙道ガス101と噴霧化溶媒スプレー104との間の並流の流れは、加圧煙道ガス101と噴霧化溶媒スプレー104とが接触する時間を延ばし、したがって気相からの二酸化炭素の捕捉及び/又は吸収を増加させることができる。
【0115】
図2には2つの二相噴霧化ノズル103が示されているが、捕捉システムは、必要に応じて1つ又は複数の二相噴霧化ノズル103を備えることもできる。例えば、二相噴霧化ノズル103は、220個以上の一群の二相噴霧化ノズル102でもよい。二相噴霧化ノズル103は、従来使用されている固体充填溶媒よりもかなり軽量である。したがって、捕捉システム100内での二相噴霧化ノズル103の使用により、捕捉システム100の重量を低減することができる。
【0116】
二相噴霧化ノズル103は、大型槽やタンクに収納される。これは、吸収器110と呼ぶこともでき、噴霧化溶媒スプレー104による加圧煙道ガス101の処理が行われる場所である。捕捉システム100によって処理された加圧煙道ガス101(ここでは処理済ガス131)をシステムから排出することができると共に、液体溶媒が捕捉システム100によってリサイクル及び/又は再利用されるように、1つ又は複数のデミスタ105が、噴霧化溶媒スプレー104の下流で吸収器110に配置されることがある。デミスタ105は、メッシュパッドデミスタ105a及びシェブロンベーンデミスタ105bでよい。ここではメッシュパッドデミスタ105a及びシェブロンベーンデミスタ105bが示されているが、必要に応じて任意の組合せ又は数のデミスタ105を実装することができる。例えば、デミスタは、ブラウン拡散デミスタでよく、又はシェブロンベーンデミスタ、メッシュパッドデミスタ、若しくはブラウン拡散デミスタよりも小さい液滴をさらに分離するために、より小さい孔を有するフィルタ材を備えたデバイスでもよい。
【0117】
デミスタ105は、噴霧化溶媒スプレー104のより大きい液滴を凝縮し、より小さい液滴は、それらのサイズを仮定して通過することができる。処理済ガス131は、デミスタ105を通過する。凝縮された噴霧化溶媒スプレー104は、二相噴霧化ノズル103の上流にある吸収器110の底部に溜まる。凝縮された噴霧化溶媒スプレー104は、サンプ容積106を形成する。サンプ容積106は、加圧煙道ガス101からの捕捉された二酸化炭素を含む凝縮された液体溶媒102の混合物を含む。したがって、液体溶媒102は、「装填」されていると考えることができ、したがってリッチ溶媒である。サンプ容積106は、液体水を含むこともある。
【0118】
吸収器110のデミスタ105で凝縮されなかった液体溶媒102のより小さい液滴は、加圧煙道ガス101によって直接接触冷却器130に搬送される。直接接触冷却器130は、吸収器110の上に積み重ねられた柱状タンク及び/又は槽に収容される。直接接触冷却器130は、吸収器の下流にあり、デミスタ105によって吸収器から分離される。直接接触冷却器130は、処理済ガス131が捕捉システム100から排出される出口136を備える。
【0119】
有利には、捕捉システム100は、二相噴霧化ノズル103の下流に位置する直接接触冷却器130を1つだけ必要とすることがある。二相噴霧化ノズル103は、従来技術で使用される従来の充填溶媒の必要性をなくすので、直接接触冷却器130は、加圧煙道ガス101が充填固体溶媒に合流する前に加圧煙道ガス101を冷却する必要がない。したがって、捕捉システム100の重量及びフットプリントを低減することができる。直接接触冷却器130が1つだけ必要とされる場合があり、図2の捕捉システム100に示されているが、捕捉システム100に2つ以上の直接接触冷却器130を実装することもできる。
【0120】
1つ又は複数の水スプレーノズル133が直接接触冷却器130内に位置され、液体水132を受け取り、液体水132を含む水洗浄液134を生成する。水洗浄液134は、直接接触冷却器130を通過する処理済ガス131及び液体溶媒102のより小さい液滴と並流である。したがって、直接接触冷却器130に入る噴霧化溶媒スプレー104の液体溶媒102のより小さい液滴は、並流の水洗浄液134に通される。並流の水洗浄液134の使用は、捕捉システム100全体にわたる圧力降下を減少させることができ、それにより、加圧煙道ガス源101は、二相噴霧化ノズル103用の駆動ガスとなるのに適した圧力になる。
【0121】
並流の水洗浄液134中の液体水132により、液体溶媒102のより小さい液滴がより大きい液滴を生成する。次いで、液体溶媒102のより大きい液滴は、水132と同様に、直接接触冷却器130の出口136に位置された一連のデミスタ135で凝縮する。吸収器110と同様に、デミスタ135は、メッシュパッドデミスタ135a及びシェブロンベーンデミスタ135bでよい。必要に応じて任意の数及びタイプのデミスタ135を実装することができる。典型的にはリッチ(すなわち「装填された」)溶媒である凝縮された液体溶媒102と、凝縮された液体水132とが、ベーンコレクタ137によって収集され、吸収器110に送られ、底部でサンプ容積106に溜まる。
【0122】
並流の水洗浄液134に存在する液体水132の一部は、ベーンコレクタ137で収集され、ポンプ138によって水スプレーノズル133に戻される。水スプレーノズル133に戻される前に、液体水132を熱交換器138に通すことができる。熱交換器138は液体水132を冷却し、水洗浄液134が液体溶媒102を十分に凝縮できるほど冷たくなるようにする。熱交換器139は、海水を使用して液体水132を冷却することができる。
【0123】
リッチ液体溶媒102、及び直接接触冷却器130などからの液体水132を含むサンプ容積106は、サンプポンプ141によって吸収器110から溶媒再生ユニット140に送られる。液体溶媒102及び液体水132は溶媒熱交換器143を通過することができ、溶媒熱交換器143で、リッチ液体溶媒102は、溶媒再生ユニット140によって生成されたリーン液体溶媒102と熱交換する。リッチ液体溶媒102は、溶媒熱交換器143内でリーン液体溶媒102によって加熱され、それにより、リッチ液体溶媒102からリーン液体溶媒102を再生する際に溶媒再生ユニット140によって必要とされるエネルギーが少なくなる。
【0124】
溶媒再生ユニット140は、加圧煙道ガス101からの捕捉された二酸化炭素を装填されたリッチ液体溶媒102を、液体溶媒102から上記捕捉された二酸化炭素をストリッピングすることによってリサイクルする。溶媒再生プロセスは、捕捉された二酸化炭素を液体溶媒から解放するための任意の既知の従来のプロセスによって実施することができる。例えば、二酸化炭素を選択的に脱着するように複数のリボイラ及び構造化充填剤を構成することができる。一般に、溶媒再生プロセスは、二酸化炭素が気体として解放されるように、捕捉プロセスの平衡を調整することができる。次いで、従来の二酸化炭素貯蔵法を使用して貯蔵することができる。次いで、ストリッピングされた、すなわちリーン液体溶媒102は、二相噴霧化ノズル103に戻される。したがって、この点で、溶媒再生ユニット140は、液体溶媒源と考えることができる。溶媒再生ユニット140から供給され、溶媒熱交換器143を通過した液体溶媒102は、さらなる熱交換器144に通される。熱交換器144は、海水を用いて液体溶媒102を冷却する。二相噴霧化ノズル103に通す前に液体溶媒102を冷却することは、液体溶媒102が噴霧化されて噴霧化溶媒スプレー104を生成する液滴になるときに液体溶媒102の蒸発を防止するのに役立つことがある。
【0125】
捕捉システム100の様々な例での海水冷却の使用は、捕捉システム100のエネルギー需要を低減することができる。捕捉システム100が船舶1に設置されるとき、必要に応じて捕捉システム100の様々な構成要素を冷却することができる大量の海水が利用可能である。海水は、加熱されても、さらなる冷却デバイスによって冷却する必要はない。代わりに、周囲環境からの一定の海水流を使用することができる。したがって、海水の使用は、捕捉システム100のエネルギー効率を高めることができる。
【0126】
本実施形態に関しては海水が論じられるが、任意の大きい水域が、捕捉システム100で使用するための豊富な冷却水を提供することができることは容易に理解されよう。したがって、捕捉システム100は、川、湖、又は他の適切な水源の近くの陸上で利用することもできる。
【0127】
また、溶媒再生ユニット140は、液体溶媒102から液体水132を分離し、液体水102を直接接触冷却器130に戻す。溶媒再生プロセスに必要な熱は、加圧水及び/又は油122によって提供されることもある。加圧水及び/油122からの熱は、熱交換器142を使用して溶媒再生ユニット140に伝達される。
【0128】
捕捉システム100は、WHRU120も備える。WHRU120は、吸収器110の下に位置する。排ガス201は、加圧煙道ガス101から取得、分断、及び/又は分割され、WHRU120に通される。WHRU120に通された排ガス201は、余剰の加圧煙道ガス101であり得る。乱流又は圧力上昇などの望ましくない流れ効果が発生しないように、排ガス201が全て二相アトマイザノズル103を通されるとは限らない。WHRU120は、複数の熱交換器121を備える。WHRU120は、必要に応じて任意の数の熱交換器121を備えることができる。熱交換器121は、排ガス201から加圧水及び/又は油122に熱を伝達する。次いで、加圧水及び/又は油122は、溶媒生成プロセスで使用するために溶媒再生ユニット140に熱を伝達する。したがって、通常であれば廃棄物と考えられることがある熱が、捕捉システム100の別の有利な要素で使用される。
【0129】
1つ又は複数の熱交換器120によって廃熱が引き抜かれた排ガス201は、次いで吸収器110に通される。排ガス201は、二相噴霧化ノズル103を通して噴霧化溶媒スプレー104に直接通される加圧煙道ガス101と共に、噴霧化溶媒スプレー104に通される。したがって、排ガス201も処理することができ、排ガス201中に存在する二酸化炭素が液体溶媒102によって捕捉される。したがって、処理済ガス131は、二相噴霧化ノズルを通して噴霧化溶媒スプレー104に通された加圧煙道ガス101と、WHRU120を通して噴霧化溶媒スプレー104に通された排ガス201とを含む。
【0130】
当業者に理解されるように、二相噴霧化ノズル103に送られた加圧煙道ガス101のみが、二相噴霧化ノズル103を通して液体溶媒102を押し進めて噴霧化溶媒スプレー104を生成するが、煙道ガス101と排ガス201とはどちらも、噴霧化溶媒スプレー104を通された後には処理済ガス131と考えることができると仮定して、吸収器110の下流にある捕捉システムのための煙道ガスとして作用する。煙道ガスと呼ばれるが、加圧煙道ガス101及び/又は排ガスは、駆動ガスと考えることもできる。
【0131】
図2に示される加圧煙道ガス101及び排ガス201は、ガスタービンエンジン200によってそれぞれ吸収器110及びWHRU120に供給される。この点で、ガスタービンエンジン200は加圧煙道ガス源と考えることができる。ガスタービンエンジン200は熱交換器202を備え、熱交換器202は、二相噴霧化ノズル103に供給される前に加圧煙道ガス101を冷却するように構成される。
【0132】
図2に示されているように、ガスタービンエンジン200は、ファンなどの空気入口203、低圧圧縮機204、高圧圧縮機205、燃焼器206、低圧タービン207、高圧タービン208、及び空気出口209を備える。ガスタービンエンジン200の構造は、図2に示されている構造に限定される必要はなく、十分に加圧された煙道ガス源101を構成することが可能な任意のガスタービンエンジン200でよい。加圧煙道ガス源101の圧力は、例えば、ガスタービンエンジン200の排気生成物の背圧によって提供されることがある。ガスタービンエンジン200内に存在する圧縮機204、205は、加圧煙道ガス源101に必要とされる圧力を提供することができる。本明細書では、WHRU120に供給される排ガス201とは別個の加圧煙道ガス源101として述べているが、加圧煙道ガス101は、ガスタービンエンジン200の排気生成物でもよいことを理解されたい。
【0133】
加圧煙道ガス源101は、必ずしもガスタービンエンジン200である必要はない。加圧煙道ガス源101は、任意の燃焼エンジン、又は二酸化炭素などの化合物を生成する他のエンジンでよい。代替として、圧縮機、ファン、送風機、又はポンプを利用して、周囲空気を二相噴霧化ノズル103に送る前に加圧及び/又は加温することによって(すなわち標準温度及び標準圧力で)周囲空気を処理することができる。
【0134】
図3A及び3Bは、捕捉システム100のシミュレーションのための、シミュレートされた異なる変数を示す。図3Aは、加圧煙道ガス101が噴霧化溶媒スプレー104によって処理されて処理済ガス131になるときに、加圧煙道ガス101中の二酸化炭素濃度がどのように減少するかを示す。図3Bは、加圧煙道ガス101及び排ガス201が噴霧化溶媒スプレーに通されるときに、液体溶媒102の二酸化炭素含有量がどのように増加するかを示す。表1は、捕捉システム100をシミュレートするために使用される所定の入力変数のリストを示す。
【0135】
【表1】
【0136】
30重量%のモノエタノールアミン(MEA)を含む液体溶媒102についてシミュレーションを行ったが、ピペラジン又はその混合物も液体溶媒102として使用することができる。同様に、混合物は、20重量%のMEA、60重量%のMEA、又は同様の捕捉率を実現する任意の他の重量パーセンテージのMEAでよい。また、このシミュレーションは、噴霧化溶媒スプレー104中の液滴と加圧煙道ガス101との並流の気液流があることを仮定している。
【0137】
図3A及び3Bに示されるように、3秒間の滞留時間にわたってガスが液滴と相互作用するとき、ガスから二酸化炭素が捕捉され、溶媒液滴に装填される。この基本シミュレーションに関する捕捉システム100の効率は、約75%の二酸化炭素捕捉である。
【0138】
したがって、捕捉システム100は、煙道ガスから二酸化炭素を効率的に捕捉することが可能であり得る。二酸化炭素を除去することの環境的な利点はよく理解されており、したがって、捕捉システム100は、二酸化炭素を多く含むガスが環境に及ぼす影響を有利に低減することが可能であると考えることができる。ガスは、ガスタービンエンジン200の排気生成物でもよく、したがって捕捉システム100は、ガスタービンエンジン200でのガス燃焼が環境に及ぼす有害な影響を低減することができる。
【0139】
さらに、炭素捕捉に使用される液体溶媒102を捕捉システム100内の二相噴霧化ノズル103を通して押し進めるために、ガスタービンエンジン200の排気生成物、例えば加圧煙道ガス101を使用することによって、捕捉システム100のエネルギー要件を低減することができる。追加として又は代替として、ガスタービンエンジン200の排気生成物からの加圧煙道ガス101の使用は、加圧煙道ガス101を適切に加圧するための追加のポンプ及び/又は圧縮機の必要性をなくすことができる。
【0140】
さらに、従来のスクラバカラムを使用する必要性をなくすことによって、捕捉システム100の全体的な重量及びフットプリントを減少することもできる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】