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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】電気モータ及び真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/00 20060101AFI20230501BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H02K7/00 A
F04C29/00 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560266
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2021053728
(87)【国際公開番号】W WO2021197704
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102020108924.4
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020119335.1
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522387179
【氏名又は名称】バキューブランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー トビアス
(72)【発明者】
【氏名】フェーン クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ギットマンス フランク
【テーマコード(参考)】
3H129
5H607
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AB06
3H129BB41
3H129BB51
3H129CC27
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD07
5H607DD19
5H607EE26
(57)【要約】
本発明は、2つの磁気的にカプリングしたシャフトを備える、特に真空ポンプのための電気モータに関する。本発明の提案により、調節磁石デバイスを用いて各シャフト上に矯正力を設定することができ、それによって磁気カプリングの誤差に起因する悪影響を補償することができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは真空ポンプ(10)を作動するための、特に2軸同期モータである、電気モータ(1)であって、平行に延びるシャフト(2)上にそれぞれ配置された2つの回転子磁石デバイス(3)を備え、前記磁石デバイス(3)は、回転角度位置に関して相互カプリングのために互いに相互作用するように前記電気モータ(1)の作動状態において共通の固定子(4)に配置されている、前記電気モータ(1)において、
少なくとも1つの調節磁石デバイス(9)が、前記2つのシャフト(2)の各々の上に配置され、前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、関連付けられた前記シャフト(2)に対する回転により調節可能であり、及び/又はそれぞれの他方のシャフト(2)の相補的調節磁石デバイス(9)に対する回転角度位置が可変である、
ことを特徴とする電気モータ(1)。
【請求項2】
各シャフト(2)の前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つは、前記固定子(4)の外側に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項3】
前記相補的調節磁石デバイス(9)の間に、2つの相補的回転子磁石デバイス(3)間に作用するカプリング力(F2)よりも大きいか又はそれに等しい矯正力(F1)が存在する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気モータ。
【請求項4】
前記回転子磁石デバイス(3)の少なくとも1つ及び/又は前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、1又は2以上の磁石、特に、焼結された及び/又は接着された及び/又はプレス加工された磁石を有する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項5】
前記回転子磁石デバイス(3)の少なくとも1つ及び/又は前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、磁気多極、好ましくは、少なくとも8重極、より好ましくは少なくとも12重極、特に好ましくは少なくとも24重極を有する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項6】
前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、電磁石を備える、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項7】
前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、円筒形ベース本体を有し、及び/又は
前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、1又は2以上の半径方向突出要素を有する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項8】
前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、前記シャフト(2)の中に一体化される、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項9】
前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、前記シャフト(2)に沿って軸線方向に変位可能である、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項10】
前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、軸線方向にオフセットされた複数の磁石を備える、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項11】
前記調節磁石デバイス(9)の前記磁石は、特にシャフト軸線の周りに同一磁極(8)の螺旋配置がもたらされるように、前記シャフト軸線の周りを互いに対して回転される、ことを特徴とする請求項10に記載の電気モータ。
【請求項12】
前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つを支持するための支持デバイス、特にスリーブ、好ましくはアルミニウムスリーブが、前記シャフト(2)上に配置される、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項13】
少なくとも2つの置換要素(12)を回転させるための少なくとも1つの電気モータ(1)を用いて好ましくは50m3/h未満のポンピング速度を有し、特に回転ローブポンプ又はスクリューポンプである真空ポンプにおいて、
前記電気モータ(1)は、請求項1から12のいずれか1項に従って設計される、
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項14】
前記置換要素(12)の少なくとも1つが、追加の回転子磁石デバイス(3)、及び/又は前記調節磁石デバイス(9)の1つ又は追加の調節磁石デバイス(9)を備える、ことを特徴とする請求項13に記載の真空ポンプ。
【請求項15】
前記調節磁石デバイス(9)の少なくとも1つが、相補的センサ回路と相互作用するための送信機磁石として設計された磁石を備える、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による特徴を有する電気モータに関する。本発明は、更に請求項13の前文による真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
産業で頻繁に使用される電気モータの実施形態は、複数のシャフトを同期的に駆動するのに使用される多重シャフト電気モータのものである。特に2つのシャフトを有する電気モータに対する典型的な用途は、互いに対して回転する2つの置換要素がポンプの出力を達成するポンプである。これらは、特にスクリューポンプ、ルーツポンプ、スクリュー圧縮機を含む。以上のポンプでは、これらのシャフトは、反対方向に稼働する。置換要素、例えば、スクリュースピンドルは、回転移動中に可能な限り密接に互いに係合する。しかし、それらは、この過程中に実際に互いに接触してはならず、それは、これが摩耗、ノイズ発生、及び電力消費の増大の形態で作動中に悪影響を及ぼすと考えられるからである。従って、特にそのようなポンプの多くの場合に高い回転速度の観点から、精密な製造、並びに可動構成要素の正確な均衡及び位置合わせを保証することが重要である。要求される密接性に起因して、置換要素の区域での間隙幅は極端に小さい。その結果、小さい製造公差のみが想定され、両方のシャフトの回転移動の同期性に対する高度な要件が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2つのシャフトを同期するための様々な手法は、既に従来技術から公知である。例えば、シャフトは、例えば歯車を使用して機械的にカプリングすることができる。この場合に、一方のシャフトだけを駆動することで多くの場合に十分であり、他方のシャフトは、歯車箱を通じて駆動される。しかし、ここでの欠点は、カプリング要素の構成要素の機械的接触が上記に言及した問題、すなわち、摩耗、作動ノイズ、及び電力消費の増大を引き起こすことである。比較的大きい空間要件に加えて、この解決法は、多くの場合に適度な注油も必要とし、これは、次に、ポンプ室に対する信頼性が高くて同時に耐久性のあるシールを必要とする。設計の多大な労力に起因して、この手法は、相対的にコストがかかる。
【0004】
代替案は、シャフトの速度及びそれらの相対位相の純粋に電子的な制御である。しかし、特に高速に関して、低遅延時間での非常に精密な制御がここで要求される。相応に強力な電子制御システム以外に、設計労力は、両方のシャフトに対する複雑なセンサ機器に起因して比較的高い。
【0005】
上述の解決法の欠点は、両方のシャフトが共通固定子磁場に配置されたモータを使用する手法によって部分的に克服される。ここで、固定子磁場は、シャフトにその各々が接続された2つの回転子磁石デバイスに対して同時に作用する。すなわち、両方の回転子磁石デバイスは、固定子磁場のいずれの変動も同様に常に受ける。これは、対応する同期変動を殆ど回避する。
【0006】
シャフトの回転移動のカプリングは、回転子磁石デバイスの隣接配置によって更に達成され、これは、この関連では磁気変速機を形成する。
【0007】
しかし、ここでの問題は、2つの磁場、すなわち、固定子磁場及び他方の回転子磁石デバイスの磁場が各回転子デバイスに対して基本的に互いに独立に作用することである。実際には調節の精度に限界があるので、シャフトの位置合わせに関して、静的な固定子磁場に対する静止位置は、回転子磁石デバイスの互いとの磁気相互作用に関する静止位置に厳密には対応しないという状況がここで生じる可能性がある。固定子磁場の磁場強度は、通常は回転子磁石デバイスの互いに対するカプリング効果よりも高い。従って、固定子磁場が有効である時に、上述の場合の2つのシャフトは、それらの互いに対する静止位置に関してある一定の回転角度だけ常にオフセットされる。
【0008】
引っ張られたバネの場合と同じように、相対トルクとしてシャフトに伝達される力の形態で回転子磁石デバイスの間に引張力が存在する。これは、固定子磁場が変化した時、すなわち、シャフトが駆動された時でさえも残存する。この状況でポンプが作動される時に、重畳された回転振動が僅かな同期変動から生じる可能性があり、これは、シャフトの同期回転を損ない、すなわち、かなりの外乱に至る可能性がある。そのような回転振動は、特にシャフトが相対的に長くて比較的小さいシステム又は片側軸受を有するシステムでは問題になる方式で発生する。更に、PEEKのようなプラスチックが、ポンプ構成要素の製造に関してそれらの耐薬品性に起因して頻繁に使用される。しかし、金属材料と比べて、プラスチックは、一般的に密度が低くて弾性が高く、これは、材料内の振動の発生を助ける。
【0009】
共通固定子磁場の場合、シャフトの回転は、個々に電子制御することができないので、破壊的な回転振動を打ち消すために代替の可能性に頼らなければならない。例えば、この回転振動の振幅は、通常は接触なしで稼働する機械式非常歯車によって制限することができる。この場合に、シャフトの相対回転は、例えば噛み合っている歯車間の接触によって停止される。しかし、これは、一方でかなりのノイズ発生に及び他方で短時間の歯車の摩耗に起因してメンテナンスの必要性を増大させる。
【0010】
更に、共振周波数をシフトすることによって回転振動を減衰させることは、特に、関わっている構成要素の質量の調節を必要とすると考えられる。しかし、この手法は、全ての速度に対して等しく有効であるわけではない。これに加えて、軽すぎる設計は、構造的不安定に関連付けられ、一方で重すぎる設計は、エネルギの要求の望ましくない増大に至る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この背景に対して、本発明は、シャフトの回転が特に確実に同期され、かつ特に上述の問題が回避される、2つのシャフトを有する電気モータを提供するという課題に基づくものである。
【0012】
上記に言及した課題は、請求項1に記載の特徴を有する電気モータにより、並びに請求項13に記載の特徴を有する真空ポンプによって解決される。
【0013】
本発明による電気モータの2つのシャフトの各々の上の少なくとも1つの調節磁石デバイスを用いて、上述のような両方のシャフトの回転子磁石デバイス間に作用する力の形態の磁気引張力を補償することができる。この目的のために、一方のシャフトの調節磁石デバイスとそれぞれの他方のシャフトの相補的調節デバイスとの磁気相互作用によって、逆トルク(カウンタトルク)が2つのシャフト間に発生する。ここでの逆トルクは、好ましくは、固定子磁場が有効である時に、相対静止位置と比べて互いに対する回転角度のシフトに基づくものである力が回転子磁石デバイス間に少なくとも本質的には作用しないという意味で、矯正手段として作用する。
【0014】
調節磁石デバイスは、好ましくは、回転子磁石デバイスと類似の構造を有する。例えば、調節磁石デバイスは、少なくとも1つの磁石を備え、その磁極は、相補的調節磁石デバイスの磁石の磁極と相互作用することができる。しかし、磁石の数、配置、及び/又は向きは、個々に異なることができる。特に、シャフト周りの磁石又は磁極の環状の、好ましくは等距離の配置が、特に適切であると判明している。
【0015】
相対回転の観点では、角度変位によって引き起こされるトルクは、振動が可能な系におけるバネ力に抗する撓みに対応する。得られるトルクがほぼゼロである場合に、当該のシステムは、たとえ高速時でも、共振条件によっては臨界範囲まで蓄積する可能性がある重畳回転振動が発現しにくい。そのような回転振動の振幅が過度に大きくなる場合に、回転子磁石デバイス間の磁気カプリングは、非同期になる可能性があり、そのために両方のシャフトの同期作動はもはや保証されない。ポンプの場合には、例えば、これは、回転する置換要素の衝突に至る可能性があり、摩耗の増大及び作動ノイズの増大に加えて、深刻な場合にポンプの故障をもたらす可能性もある。
【0016】
作動中にシャフト間に相対同期変動が発生する場合に、調節磁石デバイスは、互いに対して回転する。本発明により、これは、調節磁石デバイスのそれぞれの磁極間の矯正力の増大を引き起こし、摩耗なしに回転振動の形成を打ち消す。
【0017】
ポンプの作動中にシャフトと共に回転する全ての構成要素の群は、本発明の関連では「回転子」と総称する。シャフト自体に加えて、これは、特に、回転子磁石デバイス、調節磁石デバイス、いずれかの置換要素、及び/又は作動中に電気モータと共に回転するようにシャフト又は回転子の他の部品に接続されたシャフトに関連付けられた他の構成要素も含む。
【0018】
2つの回転子がそれらの相互磁気相互作用に関連して互いに対して引張される、すなわち、回転的に変位される程度は、構成要素の製造での及び電気モータの組立での避けられない公差に本質的に依存する。この寸法は、従って、殆ど正確に予想することができない。この理由のために、調節磁石デバイスの少なくとも1つは、関連のシャフト上に回転可能に装着され、そのためにそれは、回転を用いて後者に対して調節することができる。これに代えて又はこれに加えて、調節磁石デバイスの調節可能性は、それがそれぞれの他方のシャフトの相補的調節磁石デバイスに対してその回転角度位置が可変であるという事実によって表現することができる。すなわち、調節磁石デバイスの矯正位置の具体的な調節は、個々の場合に応じて実行することができる。
【0019】
相補ペアの相互作用する調節磁石デバイスの両方が上述の方式で調節可能であることは絶対に必要ということではないが、これは、好ましい実施形態では提供される。これは、調節磁石デバイスの正しい補償位置を設定することをより容易にする。更に、デバイスの取扱いは、例えば構造的条件に起因して調節磁石デバイスの1つがユーザにとって届きにくい場合にサポートすることができる。
【0020】
回転子磁石デバイスの場合と同じように、調節磁石デバイスの相互の影響は、好ましくは、磁気歯車の原理に従って回転子を同じくカプリングさせる。例えば上述のように重畳回転振動を回避するためのそれらの均衡効果に加えて、調節磁石デバイスはまた、回転子の安定同期にこのようにして寄与する。
【0021】
実際の磁気的に相互作用する構成要素、すなわち、1又は2以上の磁石に加えて、調節磁石デバイスはまた、例えば、シャフトへの締結、磁石の凝集、及び/又は特に回転及び/又は軸線方向変位の形態の調節可能性に寄与する更に別の要素を備えることができる。同じことは、回転子磁石デバイスに適用される。
【0022】
本発明による電気モータの回転子又は本発明による電気モータを有するポンプの回転子は、固定子磁場内のドライブの一部として配置された回転子磁石デバイス及び調節磁石デバイスに加えて、回転子の更に別の磁気カプリングに寄与する更に別の回転子磁石デバイスを固定子の外側に同じく有することができる。本発明により、調節可能な調節磁石デバイスと固定式(リジッド)の回転子磁石デバイスとの組合せ設計も可能である。この場合に、シャフトに対する回転によって調節可能な部品は、好ましくは、調節磁石デバイスの上述の機能、すなわち、特に互いに対する回転子の望ましくない相対トルクの静的及び/又は動的な補償を遂行し、一方でシャフトに固定式に接続された部品は、単に回転子の相対カプリングを補強するのに寄与する。
【0023】
複数の調節磁石デバイスは、シャフト毎に設けることもできることは理解される。特に、シャフトの調節磁石デバイスは、例えば異なる数の磁石を備えることによって別様に設計することができる。このようにして、補償力又は補償トルクのより正確な設定を一部の用途で行うことができる。
【0024】
好ましくは、各シャフトの調節磁石デバイスの少なくとも1つは、固定子の外側に配置される。これは、調節磁石デバイスが固定子磁場からのいずれの追加の力も受けないことを意味する。調節磁石デバイスの均衡機能は、すなわち、回転子に作用する他の力とは独立に実行することができる。
【0025】
機能的には、調節磁石デバイス間に作用する矯正力と、2つの相補的回転子磁石デバイス間に作用するカプリング力とを区別しなければならない。この区別は、相補的調節磁石デバイスの相互作用によってもカプリングが生じるという事実と矛盾するものではない。矯正力は、特に調節磁石デバイス間の相対回転角度の具体的な設定から生じる。作動中に回転子が回転する時に、2つの調節磁石デバイス間の矯正力は、2つの回転子磁石デバイス間のカプリング力とは位相がシフトしていることが好ましい。カプリング力に対する付勢は、例えば、回転子の回転移動の加速に至るが、これは、位相がシフトした矯正力によって制限される。
【0026】
カプリング力は、典型的に回転子を同期させる役割だけを果たす。従って、矯正力は、カプリング力の高さ、位置合わせ、及び/又は位相の誤差を補償する特別の機能を有する。これらの誤差は、性質が静的なものと動的なものとの両方があると考えられる。後者の場合に、この補償は、例えば、上記で説明した重畳回転振動の形成を防止する。
【0027】
好ましい実施形態では、相補的調節磁石デバイス間の矯正力は、2つの相補的回転子磁石デバイス間に作用するカプリング力よりも大きいか又はそれに等しい。このようにして、補償矯正力は、特に有効な影響を与えることができる。特に、達成可能な最大矯正力がカプリング力よりも著しく大きい場合に、相対的な同期変動及び重畳回転振動は、好ましくは回転振動がかなり増大する前に又は回転子相互の相対回転変位が臨界レベルに達する前に迅速に減衰する。
【0028】
最も単純な実施形態では、本発明による電気モータの回転子磁石デバイス及び/又は調節磁石デバイスは、ただ1つの磁石を有する。しかし、回転子磁石デバイスの場合は回転子の確実なカプリングを保証し、更に調節磁石デバイスの場合はより正確な調節を保証するように複数の磁石を有する実施形態が特に好ましい。1又は複数の磁石は、全体として回転子磁石デバイス又は調節磁石デバイスに設置されるか又は取り付けられ、特に接着され、及び/又は複数部品の実施形態の意味で個別部品で構成することができる。従って、対応する構成要素の製造は、簡単かつ廉価な方法で可能である。好ましくは、焼結磁石及び/又はプラスチック接着磁石が使用される。
【0029】
回転子磁石デバイスの少なくとも1つ及び/又は調節磁石デバイスの少なくとも1つは、磁気多極を備える。各磁石自体が既に双極子を表しているので、本明細書での磁気多極という用語は、少なくとも1つの磁気四極子を有する実施形態、すなわち、少なくとも4つの磁極を設けた実施形態を指す。しかし、より高次の磁気多極、好ましくは少なくとも8重極、より好ましくは少なくとも12重極、特に好ましくは少なくとも24重極が特に推奨される。しかし、本発明により、磁極の数は上限がない。原理的には、あらゆる次数の多極という意味でn多極を使用することができる。回転子磁石デバイス又は調節磁石デバイスの磁極数に応じて相応により精密な回転子のカプリング又は調節磁石デバイスのより細かい調節を達成し、上述の歪みを補償することができる。
【0030】
本発明による電気モータの回転子磁石デバイス及び/又は調節磁石デバイスは、常に同数の磁石又は磁極を有する必要はないことは理解される。しかし、互いに相補的である回転子磁石デバイス及び/又は調節磁石デバイスは、それらの磁石又は磁極の数、及び/又は他の設計で互いに対応することが好ましい。特に、ペアの相補的回転子磁石デバイス又は調節磁石デバイスについて少なくとも実質的に同一又は対称な設計が好ましい。
【0031】
設計労力が少ないという点で、特に永久磁石は、回転子磁石デバイス及び/又は調節磁石デバイスに使用するのに適している。廉価な鉄磁石に加えて、ネオジム含有磁石が特に好ましく、それは、ネオジム含有磁石が高い残留磁気を特徴とし、従って回転子磁石デバイス及び/又は調節磁石デバイスの小規模設計に特に適切だからである。永久磁石の代わりとして又はそれに加えて、調節磁石デバイスは、電磁石を有することができる。それにより、調節磁石デバイスとそれぞれの他の回転子の相補的調節磁石デバイスとの相対位置を調節するだけでなく、磁場強度、従って矯正力も設定することができる。
【0032】
更に、電磁石としての設計により、仮に必要である場合に要求の通りに調節磁石デバイスをオン/オフすることができる。例えば、電気モータの電子制御に関連して、特に速度に関して同期変動又は非同期性が検出された場合に、調節磁石デバイスの電磁効果をオンにすることで矯正処置を実行することができる。従って、特に重畳回転振動の発生を早い段階で、好ましくは振動振幅が適切な作動を妨げる臨界レベルに達する前に制限することができる。
【0033】
回転移動に関して、調節磁石デバイスの少なくとも1つは、円筒形ベース本体を有する。ここで、円筒の長手軸線は、特に回転子のシャフトの回転軸と平行に延び、好ましくはそれと一致する。調節磁石デバイスの磁極は、好ましくは、円筒バレルの周囲に等距離に配置することができる。
【0034】
これに代えて又はこれに加えて、調節磁石デバイスの少なくとも1つは、特に、それが半径方向に突出した好ましくは環状の要素又は特に軸線方向に互いに離間したいくつかのそのような要素を有することにより、純粋な円筒形状から逸脱することができる。従って、原理的には、磁石又は磁極の位置を半径方向に更に外側へシフトさせ、調節磁石デバイスの直径を全体として、すなわち、軸線方向全長にわたって増大することなく、2つの回転子の調節磁石デバイス間の距離を低減することができる。このようにして、磁極が更に外側に移動しているにも関わらず、調節デバイスの慣性モーメントが比較的低く保たれ、外乱的不均衡の危険が低減する。その結果として、回転子はより円滑に稼働し、回転移動は、より制御し易くなる。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態は、2つの相補的調節磁石デバイスが、各々少なくとも1つの半径方向突出要素、特に軸線方向セクションを有し、このセクションが、相補的調節デバイスの対応する区域が軸線方向投影で少なくとも部分的に重なる程度にそれぞれのシャフトから少なくとも部分的に半径方向に突出することを規定する。これは、例えば、調節磁石デバイスの1又は2以上の円盤状構造によって実現することができ、その各々は、それぞれの相補的調節磁石デバイスの対応する自由空間、好ましくは環状溝内に係合する。調節磁石デバイスの磁極が、対応する区域の外側に、すなわち、特に円盤状構造内に放射状に配置された場合に、それにより、相補的調節磁石デバイスの磁極が互いに空間的に交絡することになる。この場合に、磁気相互作用は、もはや調節磁石デバイスの対向するタンジェンシャル面だけを通じて生じるわけではない。これに代えて、連動した配置により、相補的調節磁石デバイスの各々に割り当てられた磁極の磁場の中に磁極を更にもたらすことができる。それにより、調節磁石デバイス間の磁気カプリング、すなわち、特に達成可能な最大矯正力が強化される。例えばいくつかの平行な円盤状構造の形態にあるいくつかの特に軸線方向にオフセットさせた半径方向に突出した要素の場合に、調節磁石デバイスの磁極は、好ましくは、相補的調節磁石デバイス内に設けられた自由空間に入り込み、そのために自由空間に隣接する磁極のうちの2又は3以上の磁場が各場合に作用し、それによってカプリングが更に強化される。
【0036】
より高度な統合は、調節磁石デバイスの少なくとも1つを関連のシャフトに少なくとも実質的に一体化することによって達成することができる。この場合に、調節磁石デバイスの区域では、調節磁石デバイスのいずれの部分も又は少なくとも小さな部分だけしかシャフトの中心半径を超えて突出しない。これは、シャフトが密接に隣接配置されている場合に特に有利である。この場合は特に、しかし、これとは独立に、少なくとも1つの回転子磁石デバイスの対応する一体化も好ましい。調節磁石デバイスと回転子磁石デバイスとの両方の統合は、同じシャフトに設けられる必要はなく、異なるシャフトに設けることも可能である。
【0037】
回転子磁石デバイスを通じた回転子のカプリングでの誤差の補償に影響を与えるための更に別の出発点は、調節磁石デバイスの少なくとも1つが関連のシャフトに沿って軸線方向に変位可能であることによって生成することができる。このようにして、例えば、軸線方向に局所的に生じる不均衡又は一時的に及び/又は周期的に生じる回転子又はシャフトの捩れに反応することが可能である。これに代えて又はこれに加えて、固定子に配置された回転子磁石デバイスの少なくとも1つも、相補的回転子磁石デバイスに対して軸線方向に変位可能である及び/又はオフセットさせることができる。
【0038】
本発明により、調節磁石デバイスが、例えば、シャフトの周りに配置された磁石又は磁極のリングの形態で特定の軸線方向位置に1つの磁石群だけを有することは絶対に必要という訳ではない。むしろ、好ましい実施形態では、調節磁石デバイスに関連付けられた軸線方向にオフセットさせた複数の磁石及び/又は磁石群を設けることができる。従って、そのような調節磁石デバイスは、リングに配置された複数の磁石群を有することができ、その場合に、様々な磁石又は磁石群は、軸線方向に互いに直接隣接した配置と互いに離間した配置との両方が可能である。更に、調節磁石デバイスの異なる磁石群は、異なる数の磁極を有することができる。更に、磁石群は、好ましくは、他方のシャフトの相補的調節磁石デバイスに対するその回転角度位置を調節することによって互いに独立に調節可能である。
【0039】
回転子の滑らかな稼働は、特に2つの相補的調節磁石デバイス間の連続的な磁気相互作用によって達成される。この目的に対して、軸線方向にオフセットさせた磁石を有する調節磁石デバイスでは、これらは、シャフト軸線の周りを互いに対して回転する。この場合に、シャフト軸線周りの同一磁極に関する渦巻形状又は螺旋配置が特に好ましい。回転子が回転すると、相互に相補的な調節磁石デバイスの2つの磁極は、最初は互いに相互作用する。回転が継続した場合に、これらの磁極は、再び互いに遠ざかり、一方で軸線方向に隣接する磁極は、より強く相互作用する。シャフト軸線の周りに同じ磁極が螺旋状に配置されていることに起因して、このシーケンスは、回転子が回転する時に軸線方向に継続され、完全に回転した後で再び開始される。
【0040】
冒頭に示した外乱効果を補償するために、関連のシャフトに対して調節磁石デバイスをある一定の回転角度だけ回転調節することも螺旋配置にある全磁極に対して同じ効果がある。しかし、このようにして、調節磁石デバイス間に作用する矯正力のピークが周期的に発生することは回避される。矯正力は、調節磁石デバイスの2つの相補的な磁極が回転の結果として相互間の最小距離に達した時に最大になる。回転が継続した場合に、次の磁極ペアが互いに相互作用するまで矯正力は最初は再び減少する。力のピークの周期的な作用は、望ましくない振動を引き起こし、回転子の不均一な回転をもたらす可能性がある。2つの相補的調節磁石デバイスの磁極間に作用する矯正力は、調節磁石デバイスの円周の一部、好ましくはその全周にわたってほぼ連続的に分配することにより、上述の効果をかなり軽減することができる。
【0041】
磁極の螺旋配置が特に好ましく、この場合に、調節磁石デバイスの軸線方向一端にある最初の磁極の相互作用は、調節磁石デバイスの軸線方向他端にある最後の磁極の相互作用から可能な限り継ぎ目なく続く。この目的に対して、回転子周りの磁極が描き出す螺旋線は、完全な1回転又は整数回の回転をする。この場合に、調節磁石デバイスの最初と最後の磁極ペアは、あたかも直接隣接しているかのように挙動して螺旋を継続させることになる。従って、回転子の回転中に、調節磁石デバイス間の相互接続又は矯正力の作用に大きい中断はない。
【0042】
調節磁石デバイスの1又は2以上は、対応する支持デバイスによってシャフトに接続することができる。この目的に対して、特に好ましくはアルミニウムスリーブである支持デバイスは、シャフト上に適切な方法で配置される。最初に調節デバイスが支持デバイス上に製造され、次にそれぞれのシャフトに後者を使用して押し込まれるか又は他に付加される場合に、これは、全体として回転子又は電気モータの設計をかなり簡略化する。廉価な製造に加えて、これはまた、より容易な保守及び修理に関連付けられる。これらの目的のために、調節磁石デバイスは、僅かな労力でシャフトから取り外すことができ、電気モータの外側で修理又は交換することができる。
【0043】
本発明はまた、本発明による電気モータによって駆動される真空ポンプに適用される。本発明による真空ポンプは、特に、回転ピストンポンプ又はルーツポンプ又はスクリューポンプである。一般的に、本発明による真空ポンプは、電気モータで回転駆動される少なくとも2つの置換要素を有する。しかし、このポンプは、特定タイプの置換要素に限定されない。例えば、いくつかの下流ポンプ段の形態にある異なる置換要素を組み合わせることも可能である。
【0044】
本発明による真空ポンプは、特に中及び低ポンピング速度に対して設計される。好ましくは、それは、50m3/h未満のポンピング速度を有する。
【0045】
特別な実施形態では、置換要素の少なくとも1つは、回転子の磁気カプリングがポンプ室内にも存在するように追加の回転子磁石デバイスを有する。これに代えて又はこれに加えて、それぞれのシャフトの調節磁石デバイス又は追加の調節磁石デバイスは、シャフトの置換要素上又は内に設けることができる。それにより、更に集積度を高め、従ってポンプのサイズが小さくなる。更に、回転角度不整合を補償するための追加のカプリング及び/又は調節オプションは、両方の回転子の同期作動の重畳回転振動又は他の同期変動又は外乱が最大の悪影響を及ぼす置換要素の区域での配置によって提供される。
【0046】
回転子の回転位置又は回転速度を検出するために、対応する感知デバイスを設けることが好ましい。特に、真空ポンプは、回転子の相補的送信機磁石と相互作用する対応するセンサ回路を有する。特に好ましい実施形態では、回転子の調節磁石デバイスの少なくとも1つは、そのような配置内で送信機磁石の機能を実行する磁石を備える。
【0047】
以下では実施形態の例を使用して本発明をより詳細に説明する。この関連では、説明する及び/又は図面に示す全ての特徴の各々は、実施形態例でのその組合せ又は特許請求の範囲での参照に関係なく本発明の独立した態様を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明による電気モータの駆動区域での概略断面図である。
図2】別の作動状態にある図1に対応する図1の電気モータを表す図である。
図3】本発明による電気モータの概略縦断面図である。
図4A】2つの回転子磁石アセンブリの断面図である。
図4B】2つの調節磁石デバイスの断面図である。
図5】本発明による真空ポンプの2つの回転子の概略図である。
図6】本発明による真空ポンプの概略縦断面図である。
図7】2つの調節磁石デバイスの好ましい実施形態の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、2つのシャフト2を有する本発明による電気モータ1の断面図を示している。この描写では、断面平面は、図3に一点鎖線I/II/IVAに示すように、実際の電気モータドライブの区域ではシャフト2の長手軸線又は回転軸と垂直に延びる。電気モータ1は、好ましくは2軸同期モータとして設計される。
【0050】
シャフト2は特に平行に延び、各々がシャフト2に回転固定的に接続された回転子磁石デバイス3を支持する。電気モータ1の作動中に、両方のシャフトの回転子磁石デバイス3は、特にシャフト2の逆回転移動を駆動する役割を果たす。この場合に、図1及び2に示すように、それらは共通固定子4に配置される。固定子4は、回転子磁石デバイス3と相互作用し、固定子磁場内に対応する周期的な変化があるときに駆動(ドライブ)の意味で回転子磁石デバイス3を回転させる磁場を発生させるように設計される。
【0051】
従って、電気モータ1の作動状態では、両方の回転子磁石デバイス3は、固定子4が発生させた磁場の効果を等しく受ける。勿論、これは、両方の回転子磁石3の位置での磁場の形状及び/又は磁場強度が同一でなければならないことを意味しない。むしろ、これは、用途に応じて別様に設計することができる。それにも関わらず、固定子4がオンになると、すなわち、特に通電された状態で、両方の回転子磁石デバイス3は、発生した磁場を磁場の全ての変化又は変動に関して同時にかつ同期的に受ける。この点で2つのシャフト2の同期変動又は速度差を予想することができないことが確実になる。
【0052】
固定子4は、回転子磁石デバイス3が配置された固定子内部5を有する。固定子内部5では、固定子4の磁場は、磁場発生器6により、好ましくは複数の磁場発生器6によって発生する。磁場発生器6は、特に、電流が流れる時に磁場を発生させるコイルである。磁場発生器6の個数及び配置は、固定子内部5での磁場の形状及び局所的な磁場強度に影響を与える可能性がある。
【0053】
固定子内部5は、特にハウジング7内に形成される。ハウジング7は、固定子内部5の直前まで延びることができる。しかし、ハウジング7が可動構成要素及び導電性構成要素に対する外側ケーシングに過ぎず、従って、ユーザを保護する役割を果たす実施形態も可能である。固定子内部5は、最後に磁場発生器6の配置によって形成され、その形状は大きく影響を受ける。機能的には、固定子内部5は、磁場発生器6に囲まれた区域であり、回転子磁石デバイス3を駆動する磁場が発生する区域である。しかし、図1及び2に示すように、これに可能な限り精密に適応させたハウジング7のセクションは、熱遮蔽及び/又は電磁遮蔽の点で又は遮音に対して有利であるとすることができる。
【0054】
電気モータ1の作動中に、回転子磁石デバイス3は、固定子4の変化する磁場によって回転状態に設定される。上述のように、固定子4の磁場は、特に磁場発生器6によって発生する。一定の直流電流が磁場発生器6として使用されるコイルを流れた場合に、静的磁場が、固定子内部5に発生され、それに従って回転子磁石デバイス3がその回転位置に関してそれ自体で位置合わせする。
【0055】
この目的のために、回転子磁石デバイス3は、固定子4の磁場と相互作用するために、少なくとも1つの磁石を備える。従って、回転子磁石デバイス3の各々は、少なくとも2つの磁極8、すなわち、磁性北極Nと磁性南極Sを有する。ここで回転子磁石デバイス3の区域に十分な強さの外部磁場が印加された場合に、磁極8はこの磁場に従って位置合わせし、回転子磁石デバイス3をシャフト2と共に回転させる。外部磁場の周期的な変化は、各場合に磁極を更に位置合わせされるので回転移動は継続され、連続して維持することができる。
【0056】
外部磁場、特に固定子磁場がない場合に、隣接して配置された2つの回転子磁石デバイス3の磁極8の相互作用が明らかになる。回転子磁石デバイス3は、図1の図解に従って2つの回転子磁石デバイス3の2つの異なる磁極8が互いに向き合い、可能な限り接近した間隔になるように、その回転角度位置に関してそれ自体で位置合わせする。この相互作用は、回転子磁石デバイス3間に磁気歯車の意味でカプリング効果をもたらす。
【0057】
固定子4が発生させる磁場の存在下では、上述の相互作用、すなわち、磁石又は磁極8の外部磁場に対する反応と相補的回転子磁石デバイス3の磁極8の相互接続との両方が競合的に一緒に生じる。乱れのない作動に関して、一般的に電気モータ1の製造では、固定子4の磁場に対する回転子磁石デバイス3の位置合わせと、それぞれの相補的回転子磁石デバイス3の磁極8の磁場に対する回転子磁石デバイス3の位置合わせとは、可能な限り対応するように図られる。この場合に、(静的な)固定子磁場が起動された時でさえも図1に示すような回転子磁石デバイス3の位置合わせは予想されることになる。
【0058】
しかし、実際には製造公差及び限られた組立精度のために、例えば、経時的に不変なDC電流を通電することにより、固定子4が一定の磁場を発生させた場合に、図2に示すような場合が頻繁に生じる。固定子4が発生させた外部磁場は、一般的に回転子磁石デバイス3の磁極8間のカプリングよりもマグニチュードが大きいので、この場合に、これらは主として外部磁場に位置合わせする。一方で外部磁場に関して、他方で他の回転子磁石デバイス3の磁場に関して回転子磁石デバイス3の各々の静止位置が製造上の理由で互いに逸脱すると、図2に示すような場合が生じる。この場合に、回転子磁石デバイス3は、固定子4のより強い磁場に関してほぼ静止位置に対応する位置に到達する。しかし、この位置は、回転子磁石デバイス3の磁気相互作用に関して静止位置からの振れを示している。同じく、この不均衡は、磁場発生器6が特に周期的に変化する方式で通電される場合に、動的に変化する固定子磁場内での回転子磁石デバイス3の回転中にも持続する。
【0059】
回転子磁石デバイス3が、それらの相互接続に関する静止位置に関して上述したように振れることにより、撓んだ機械バネにおけるバネ引張力に相当する、結果として生じる相対力の形態で引張力をもたらす。この力は、回転子磁石デバイス3又はシャフト2間にそれぞれ相対トルクを発生させる。これは、特に電気モータ1の高速時に、回転子磁石デバイス3の相互引張力の印加に起因して振動システムが形成されるという点で問題になる可能性がある。電気モータ1の作動中に、これは、回転子磁石デバイス3又はシャフト2の互いに対する重畳回転振動をもたらす場合がある。この重畳回転振動の振幅が増大する時に、回転子磁石デバイス3のカプリング及び従って両方のシャフト2の回転移動の同期が望ましい範囲から益々外れることになる。特に、振動システム又は重畳回転振動が特定の速度で共振し始めると致命的である。振動振幅の増大により、そのような場合に、電気モータ1によって駆動される構成要素の衝突又はその破壊が生じる可能性がある。
【0060】
そこで、本発明では、2つのシャフト2の各々に少なくとも1つの調節磁石デバイス9を配置する。2つの調節磁石デバイス9は、好ましくは、相補的な協働ペアを形成する。
【0061】
調節磁石デバイス9は、図3に例示的に示すように、回転子磁石デバイス3に加えてシャフト2上に配置される。調節磁石デバイス9の少なくとも1つは、特に固定子の外側に配置される。図3の図解では、これを軸線方向でのハウジング7が回転子磁石デバイス3の区域に限定されることによって視覚的に明らかにしている。しかし、ハウジング7は、電気モータ1の他の部分と同様に調節磁石デバイス9を取り囲むこともできることは理解される。
【0062】
調節磁石デバイス9の効果は、調節磁石デバイス9の少なくとも1つを関連のシャフト2に対する回転によって調節することができ、又はそれぞれの他方のシャフト2の各々の相補的調節磁石デバイス9に対してその回転角度位置に関して変化させることができるという事実に基づいている。この目的に対して、調節磁石デバイス9は、それ自体もシャフト2の回転中に回転するが、シャフト2に対して及び従って他のシャフト2の相補的調節磁石デバイス9に対してその回転角度位置に関してそれを変化させることができ、かつ変化した位置で固定することができるようにシャフト2に留められる。
【0063】
図4A及び4Bは、回転子磁石デバイス3及び調節磁石デバイス9の相対的な向きを示している。ここで、図4Aは、図2に示す状況に対応する回転子磁石デバイス3を通過する断面に対応するが、ハウジング7と同様に固定子4を取り囲むデバイスを含まない。最も接近して対面する2つの回転子磁石デバイス3の磁極8は、その相互引力による静止位置に対応する位置にないことが分かる。この静止位置では、現在の右側回転子磁石デバイス3に最も近い現在の左側回転子磁石デバイス3の磁性北極Nは、その中心点が右側回転子磁石デバイス3に最も近い点を示すように基準磁石又は基準磁極として位置合わせすることになる。言及した磁性北極Nの中心点は、この例では幾何学的に周方向に関連付けられる。機能的には、これは、特に、磁力線が垂直に及び/又は最も高い密度で出現する点である。同じことは、他方の回転子磁石デバイス3の磁性南極Sにも対応する形で当て嵌まる。静止位置は、最後に、図1に示す回転子磁石デバイス3の位置合わせに対応することになる。
【0064】
図4Aに示す回転子磁石デバイス3の相互引張力印加の場合は、上述のその否定的な結果を含む本発明によって提供される調節磁石デバイス9によって補償される又は少なくとも許容可能なレベルまで軽減することができる。図4Bには、図3に示す調節磁石デバイス9を断面平面IVBに従って通過する断面が示されている。図4Aと比較すると、調節磁石デバイス9も、調節磁石デバイス9の磁極8により、静止位置に対応する位置に関してある一定の相対角度だけ回転していることが分かる。ここで、回転子磁石デバイス3間に作用するカプリング力F2に加えて、ある一定の矯正力F1が調節磁石デバイス9間に作用する。
【0065】
図4Aに示す回転子磁石デバイス3の相互引張力印加について静的に考慮した場合に、矯正力F1は、回転子磁石デバイス3のその静止位置に対する振れの結果としてカプリング力F2によって引き起こされる相対トルクに対抗する相対トルクを調節磁石デバイス9間に発生させる。図3の図解により、共通のシャフト2の回転子磁石デバイス3と調節磁石デバイス9は、共通のシャフトを通して互いに回転的にカプリングする。理想的には、カプリング力F2によって引き起こされる望ましくないトルクと、調節磁石デバイス9によって矯正力F1が発生させる逆トルクとは、こうしてシャフト2に関して互いに大部分は釣り合う。
【0066】
図4Aに示す回転子磁石デバイス3の望ましくない引張力印加が生じる程度は、一般的に十分な精度で予想することができない。従って、本発明による解決法は、矯正力F1又はそれによって引き起こされる逆トルクを各個別の場合でのそれぞれの適用状況に適応させるために調節磁石デバイス9の互いに対する回転角度位置の調節を可能にする。
【0067】
動的に考慮した場合、すなわち、電気モータ1の作動中にシャフト2が回転する場合に、上述の重畳回転振動の形成が生じる可能性がある。この回転振動の増大の過程で振幅及び従って回転子磁石デバイス3の相対回転角度が増加した場合に、それぞれの回転子磁石デバイス3とのカプリングに起因して、調節磁石デバイス9もより強く相対的に回転する。相補的調節磁石デバイス9の基本的な相対配置の設定に応じて、高振幅の場合の矯正力F1は、相応に増加したトルクをシャフト2間に振動と反対方向に引き起こし、その結果として破壊的な回転振動が減衰して完全に弱まる。
【0068】
上述の手順では、矯正力F1がカプリング力F2よりも大きいか又はそれと少なくとも等しい量であると有利である。これは特に、それぞれに相補的回転子磁石デバイス及び調節磁石デバイス9の2ペアを比較することで理解することができる。これに代えて又はこれに加えて、この条件は、生じる全ての矯正力F1を合わせた総計と生じる全てのカプリング力F2を合わせた総計とにも適用することができる(複数の調節磁石デバイス9及び/又は回転子磁石デバイス3を設ける場合)。
【0069】
図4Aと4Bの比較から、回転子磁石デバイス3と調節磁石デバイス9は、同数の磁極8を有する必要はないことが分かる。それぞれの数は、むしろ、具体的な用途では、回転子磁石デバイス3間のカプリング又は調節磁石デバイス9の矯正効果の調節可能性がどの程度細かいかに依存する。
【0070】
回転子磁石デバイス3及び/又は調節磁石デバイス9の各々は、少なくとも1つの磁石を備え、それにより磁極8が与えられる。磁石は、好ましくは焼結され、及び/又はシャフト2に又は明確にするために詳細には示さないが別々の回転子磁石デバイス3又は調節磁石デバイス9の支持デバイスに接着剤接合、プレス加工、材料上での収縮又は材料による別様の収縮、強制ロッキング、及び/又は形態嵌合によって取り付けることができる。
【0071】
特に好ましくは、本発明による電気モータ1の回転子磁石デバイス3及び/又は調節磁石デバイス9は、磁気多極を有する。簡略化の理由から、ここでは、磁気四極子(図1、2、4A)又は8重極(図4B)の表現を選択する。しかし、原理的には、n重極、すなわち、より高次の多極とすることができ、この場合に、本発明により、磁極8の数に根本的な上限は存在しない。8重極、より好ましくは12重極、特に好ましくは24重極は、必要な設計労力と良好な機能上の効果との間で特に適切な妥協点になることが判明している。上述の値は、特に、多極の好ましい極数の下限に対応する。
【0072】
回転子磁石デバイス3及び/又は調節磁石デバイス9の磁石は、特に永久磁石であり、これは、外部電源とは独立に磁場を発生させ、従ってカプリング効果又は矯正効果を発現させる。しかし、好ましい実施形態では、少なくとも1つの回転子磁石デバイス3及び/又は調節磁石デバイス9の磁石は、好ましくは1又は2以上の接触ブラシを有する電磁石として設計される。これに代えて又はこれに加えて、そのような電磁石は、特に誘導を用いて非接触作動のために設計することも可能である。更に、誘導された渦電流は、同期変動を打ち消すのにも寄与することができる。従って、矯正力F1及び/又はカプリング力F2の強さに対して特に連続的に影響を与えることができ、及び/又はそれに関連付けられた効果を各場合にオン/オフにすることができる。永久磁石と電磁石は、1つの回転子磁石デバイス3又は調節磁石デバイス9に又は異なる回転子磁石デバイス3/調節磁石デバイス9に組み合わせて設けることができることは理解される。
【0073】
特に調節磁石デバイス9の場合に、しかし、同じく回転子磁石デバイス3の場合も、電気モータ1の作動中にそれらが行う回転移動に関して円筒形状が有利である。従って、調節磁石デバイス9及び/又は回転子磁石デバイス3は、円筒形のベース本体を有することができる。この場合に、円筒の回転対称軸は、特に図3に示すようにシャフト2の長手方向回転軸と平行であるか又はそれと一致する。
【0074】
平均して円筒形である調節磁石デバイス9又は回転子磁石デバイス3のベース本体の基本形状は、特に円盤状構造の形態にある基本的な円筒形状から半径方向に突出する1又は2以上の要素の可能性を排除するものではない。この場合に、回転軸に垂直な断面に関してほぼ回転対称な設計が有利である。図7は、対応する調節磁石デバイスの実施形態の一例を示している。ここでは、特に、磁極8は、突出要素の半径方向外側区域に位置する。
【0075】
この場合は周方向環状溝の形態にある自由空間を介在させた円盤状構造の形成により、強い同期変動の場合でも構成要素の機械的な衝突の危険を伴うことなく、関連の磁極8の空間的交互配置が可能である。
【0076】
図示の好ましい実施形態では、各調節磁石デバイス9の1つの磁性北極Nは、相補的調節磁石デバイス9の2つの磁性南極Sの間に位置し、逆も同様である。このようにして、調節磁石デバイス9は、磁極8の単なる対向配置の場合、すなわち、ここに示す交絡がない場合よりも、互いにより強くカプリングする。従って、シャフト2間と同期変動が生じた場合に、より大きい矯正力を発揮することができる。調節磁石デバイス9の回転の結果として磁性北極Nと磁性南極Sは交互に互いに最も近い位置まで移動するので、図7に示す磁性北極Nと磁性南極Sの比率は、各場合に周期的に逆転することになる。
【0077】
図7による説明から逸脱して突出要素及び対応する自由空間の不規則な又は非対称な配置を設けることができることは理解される。更に、一方又は両方の調節磁石デバイス9は、上述の方法で互いに相互作用する軸線方向に離間した複数の別々の円盤又はリングなどを有することができる。
【0078】
逆に、可能な限りコンパクトな設計を達成するために、代替案として又はそれに加えて、調節磁石デバイス9及び/又は回転子磁石デバイス3をシャフト2に一体化することができる。この目的のために、シャフト2は、それぞれの調節磁石デバイス9又は回転子磁石デバイス3の区域で相応に直径を低減させることができるので、その結果として当該区域は、シャフト2の最大半径を超えて突出する調節磁石デバイス9又は回転子磁石デバイス3の構成要素が存在しない。
【0079】
更に、図3に示す方法で、調節磁石デバイス9を回転子磁石デバイス3の近くに配置することは決して必要というわけではない。シャフト2の軸線に沿った相応の間隔も本発明によれば可能である。特に好ましい実施形態では、調節磁石デバイス9の少なくとも1つは、軸線方向、すなわち、シャフト2に沿って変位可能であるように設計することさえ可能である。
【0080】
図1、2、4A、及び4Bの断面図は、回転子磁石デバイス3又は調節磁石デバイス9がその円周に沿って複数の磁石又は磁極8を有するが、軸線方向には一定の設計であることを示唆することができる。しかし、本発明により、特に異なる設計の複数の磁石を調節磁石デバイス9に設けるという設計も可能である。特に、これは、シャフト2の周りに好ましくはリングに配置された一連の磁石とすることができ、それにより、各リングの磁極8の数は異なることができる。
【0081】
更に、軸線方向に直接隣接する磁石を設けるだけでなく、軸線方向にオフセットさせた磁石、又は特にリング状磁石群の間隔も設定することができる。このようにして、個々の用途に応じて構造条件を考慮することができる。
【0082】
軸線方向にオフセットさせた磁石は、異なる回転角度だけオフセットさせることができる。この場合に、特に、磁石又は磁極8の斜めの連動が好ましくはシャフト2の周りに磁極8を螺旋状配置する形態で可能であり、それにより、矯正力F1のほぼ連続した効果がより大きい稼働円滑性と共に生じる。
【0083】
更に、いくつかの軸線方向にオフセットされて独立に調節可能な複数の磁石又は調節磁石デバイス9の磁石群、並びにシャフト2上の複数の調節磁石デバイス9も使用して、純粋な回転振動以外の外乱現象に反応することができる。これらは、例えば、シャフト2の重畳曲げ振動又は捩り振動を含む。
【0084】
調節磁石デバイス9又は回転子磁石デバイス3の磁石のための及び/又は調節磁石デバイス9又は回転子磁石デバイス3自体のための支持デバイスは、簡略化の理由から詳細には示していないが、特にスリーブとして設計される。好ましくは、ここではアルミニウム製スリーブを使用する。特に好ましいのは、最初に完全に製造することができ、次に支持デバイスを使用してシャフト2に付加することができるように、調節磁石デバイス9の少なくとも1つを全体として支持する支持デバイスを設ける実施形態である。特に、好ましくは棒磁石形態の1又は2以上の磁石をスリーブに挿入することができる。
【0085】
支持デバイス、特にスリーブ状のものは、磁石を冷却するためのヒートシンクとして更に機能することができる。そうでなければ、永久磁石の場合に、作動中に温度が上昇し過ぎると熱減磁のおそれがある。
【0086】
本発明による電気モータ1は、図6に例示的に示すような真空ポンプ10を駆動するのに特に適切である。そのような真空ポンプ10では、電気モータ1は、特に2軸同期モータとして図5に概略平面図に示す2つの回転子11を駆動する役割を果たす。真空ポンプ10の回転子11は、シャフト2に加えて、少なくとも1つの回転子磁石デバイス3と1つの調節磁石デバイス9、特に1又は2以上の置換要素12も含む。ここに示す例では、置換要素12は、スクリューポンプのためのスクリューとして設計される。ここでは、非圧縮性実施形態を例示的に示していり、スクリューは一定のピッチを有する。特に圧縮のために可変ピッチを有する設計も依然として提供することができることは理解される。同じく、例えば、回転ピストン又はローリングピストン形態の置換要素12、又は同等の原理に基づく置換要素12も可能である。
【0087】
図6の模式的かつ例示的描写に従って、特に本発明による電気モータ1によって2つの回転子11を駆動するための本発明による真空ポンプ10を提供する。ここでは、上述の調節磁石デバイス9の機能を使用する。ここに示す真空ポンプ10の場合に、平行な回転子11は、一方で電気モータ1の駆動有効部分の区域で、すなわち、特に固定子4及び/又は電気モータ1のハウジング7内で稼働する。
【0088】
更に、回転子11のシャフト2は、ポンプハウジング13内を通って延び、そこに回転可能に装着される。置換要素12は、ポンプハウジング13の前部に配置される。それらは、例えば、密封空間から排気すべき流体、好ましくは気体であるポンピング媒体が、吸込み口14を通してポンプハウジング13に吸い込まれ、置換要素12によって更に運ばれるようにそこで協働する。置換要素12を超えた搬送方向では、運ばれた流体は、次に出口コネクタを通ってポンプハウジング13を離れる。ここに示す例では、出口コネクタは画像平面と垂直な方向に配置され、従って、本断面図には示されない。
【0089】
置換要素12は、作動中に互いに又はポンプハウジング13と接触しないことが好ましい。それにも関わらず、置換要素12間に又はポンプハウジング13に対して十分な密封性を保証しなければならない。従って、ここでは、関連の構成要素間に極めて小さい間隙距離が使用される。従って、同期変動の発生、回転子11間の同期誤差、及び特に増大する回転子11の重複回転振動を伴う上述の問題は、直ちに真空ポンプ10の作動に重大な影響を及ぼす可能性がある。
【0090】
特に好ましい実施形態では、置換要素12の少なくとも1つは、追加の回転子磁石デバイス3を有することができる。このようにして、相互作用するそれぞれの相補的な置換要素12が、対応する回転子磁石デバイス3によって別の磁気歯車を更に形成する場合に、2つの回転子11間のカプリングを強化することができる。
【0091】
これに代えて又はこれに加えて、好ましい実施形態では、1又は2以上の調節磁石デバイス9が置換要素12に一体化されてもよい。これは、1次調節磁石デバイス9のうちの1つ、又は追加の調節磁石デバイス9とすることができる。従って、調節磁石デバイス9による矯正アクションは、上述のタイプの故障が発生した場合に否定的な結果が最初に明らかになる箇所に直接に作用することができる。
【0092】
電気モータ1及び/又は真空ポンプ10は、制御デバイス15、特に電子制御デバイスを有することができる又は更に有することができ、この制御デバイスを用いて例えば回転子11の回転速度、固定子磁場の強度及び/又は位相、真空ポンプ10の吐出流量、真空ポンプ10の環境でのノイズレベル、電気モータ1の電力消費及び/又は温度値を検出する及び/又はモニタすることができる。更に、制御デバイス15を用いて上述の及び/又は別のパラメータを制御することも可能である。
【0093】
一方又は両方の回転子11の回転速度及び/又は回転位置を検出するために、それぞれのデバイスを設けることができる。この目的のために、真空ポンプ10は、好ましくは対応するセンサ回路を有し、このセンサ回路は、特に制御デバイス15に統合される。センサ回路を用いてセンサ磁石を読み出すことができ、これは、センサ回路又は制御デバイス15に対して回転子の完全な又は部分的な回転を示すものである。対応する送信機磁石は、好ましくは調節磁石デバイス9の少なくとも1つに一体化され、回転移動をモニタするために回転子11に追加の構成要素を加える必要がないようにする。特に好ましくは、調節磁石デバイス9の磁石又は磁極8は、相補的なセンサ回路によって送信機磁石として認識される。
【符号の説明】
【0094】
1 電気モータ
2 シャフト
3 回転子磁石デバイス
4 固定子
5 固定子内部
6 磁場発生器
7 ハウジング
8 磁極
9 調節磁石デバイス
10 真空ポンプ
11 回転子
12 置換要素
13 ポンプハウジング
14 吸込みノズル
15 制御デバイス
N 磁性北極
S 磁性南極
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
【国際調査報告】