(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】電磁アクチュエータとその使用方法
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20230501BHJP
H02K 33/02 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H01F7/16 D
H02K33/02 A
H01F7/16 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560267
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 DE2021100305
(87)【国際公開番号】W WO2021197545
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102020109120.6
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522387157
【氏名又は名称】アルフレート イェーガー ゲセルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー アクセル
(72)【発明者】
【氏名】エルテルト ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ フランク
【テーマコード(参考)】
5E048
5H633
【Fターム(参考)】
5E048AB10
5E048AC05
5E048AD02
5H633BB07
5H633BB10
5H633GG02
5H633GG09
5H633HH02
5H633HH07
(57)【要約】
ハウジング(1)を備えた電磁アクチュエータにおいて、2つの強磁性の磁極片(4、5)と、可動構造(3)と、が設けられる。2つの強磁性の磁極片(4、5)は、互いから距離をおいて配置され、ハウジングに剛性的に接続される。可動構造(3)は、ハウジング(1)内において2つの端位置間で軸線に沿って移動され得て、磁極片(4、5)間に配置されていて、少なくとも1つの磁石システムを含む。可動構造(3)は、ハウジング(1)内において軸線方向に変位可能なシャフト(2)に接続される。磁石システムは、軸線に対して半径方向に分極されている1または複数の永久磁石(9、10)からなる少なくとも1つの配列と、電流源に接続され得る環状のコイル(8)と、を含んでおり、磁極片(4、5)と共に、軸線方向に可変のエアギャップ(L1、L2)を有するエアギャップシステムを形成する。可動構造(3)は、コイル(8)の励磁無しで、2つの端位置の各々に固定され得て、コイル(8)の励磁によって、占められていた一方の端位置から反対の端位置へと移動され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
互いから距離をおいて配置され、前記ハウジングに剛性的に接続されている2つの強磁性の磁極片(4、5)と、
前記ハウジング(1)内において2つの端位置間で軸線に沿って移動され得て、前記磁極片(4、5)間に配置されていて、少なくとも1つの磁石システムを含む、可動構造(3)と、
を備え、
前記可動構造(3)は、前記ハウジング(1)内において軸線方向に変位可能なシャフト(2)に接続されており、
前記磁石システムは、
磁束伝導材料からなる半径方向内側及び半径方向外側の磁極体(6、7)と、
前記軸線に対して半径方向に分極されている1または複数の永久磁石(9、10)からなる少なくとも1つの配列と、
電流源に接続され得る環状のコイル(8)と、
を含んでおり、前記磁極片(4、5)と共に、軸線方向に可変のエアギャップ(L1、L2)を有するエアギャップシステムを形成しており、
前記可動構造(3)は、前記コイル(8)の励磁無しで、前記2つの端位置の各々に固定され得て、前記コイル(8)の励磁によって、各場合に占められていた端位置から反対の端位置へと移動され得る
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記磁石システムは、半径方向に同一方向に分極された複数の永久磁石(9、10)の環状配列を有しており、
前記複数の永久磁石(9、10)は、前記コイル(8)の両側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記磁石システムと前記コイル(8)とは、回転対称である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記半径方向内側の磁極体(6)は、リング状であって、前記1または複数の永久磁石(9、10)及び前記コイル(8)の内側に延在している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記半径方向外側の磁極体(7)は、前記1または複数の永久磁石(9、10)及び前記コイル(8)を環状に取り囲んでいる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記磁極片(4、5)の軸線方向の厚さは、異なっている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記シャフト(2)は、前記磁極片(4、5)内に存在する滑り軸受内に案内されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項8】
前記ハウジング(1)は、非磁性材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項9】
エアギャップが、前記ハウジング(1)と前記半径方向外側の磁極体(7)との間に存在している
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項10】
バネ(13)が、前記シャフト(2)上に直接的または間接的に作用しており、
前記可動構造(3)の前記端位置の一方への移動は、前記バネのバネ力に対抗して行われる
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項11】
スピンドルハウジング(19)内に、電気モータと、それによって回転駆動され得ると共にワーク加工用の工具のための工具ホルダを含むスピンドル(20)と、を備えたモータスピンドル(17)であって、
前記スピンドル(20)は、中空シャフトとして設計されており、内部の長手方向穴内において、工具または工具ホルダを堅固にクランプするクランプ装置(22)を含んでいる
というモータスピンドル(17)において、請求項1乃至10のいずれかに記載の電磁アクチュエータを用いる方法であって、
前記アクチュエータの前記ハウジング(1)が、前記スピンドルハウジング(19)に直接的または間接的に固定され、
前記可動構造(3)が、前記クランプ装置(22)の要素(21)に対して、力伝達可能であって移動伝達可能な態様での動作接続状態にもたらされ得て、
前記クランプ装置(22)は、前記スピンドル(20)の長手方向穴内で軸線方向に変位可能であり、
前記クランプ装置(22)は、開放位置へと移動可能である
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、互いから距離をおいて配置されハウジングに剛性的に接続された2つの強磁性磁極片と、ハウジング内で2つの端位置間で軸線に沿って移動され得て前記磁極片間に配置されて少なくとも1つの磁石システムを含む可動構造と、を備えた電磁アクチュエータに関する。また、本発明は、モータスピンドルを備えた電磁アクチュエータの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
DE19712293A1は、互いから離れて配置され各々が励磁コイルを有する2つの磁石システムを含む電磁動作アクチュエータを開示している。これら2つの磁石システム間には、調整シャフトに剛性的に接続されたアーマチュアディスクが配置されている。当該アーマチュアディスクは、対向して作用する2つのバネの間に位置しており、磁石システムによって2つの切替位置に移動可能である。磁石システムの一方に、アーマチュアの移動方向に分極された永久磁石が割り当てられており、非通電状態でアーマチュアを一方の切替位置で安定させる。アーマチュアを他方の切換位置に保持する場合には、通電が永久的に必要とされる。
【0003】
更に、EP0568028A1は、アーマチュア(電機子)、2つの内側磁極片、2つの外側磁極片、2つの永久磁石、及び、1つのコイル、からなる電磁リニアモータを開示している。当該アーマチュアは、内側磁極片及び外側磁極片と共に、軸線方向に変化可能で中央位置で同じサイズとなる4つの磁気エアギャップからなるエアギャップシステムを形成している。永久磁石は、中央位置でコイルが無通電の場合に、アーマチュアを安定させる。磁極片は、半割型であって、同様に半割型の永久磁石と共に、2つの固定分極磁石システムを形成している。
【0004】
安定した端位置で高い保持力を達成するための電磁ソレノイドが、DE10207828B4から知られている。それは、軸線方向に間隔を置いた2つの磁石システムを有するステータからなり、それらの磁石システムの各々が、電磁束を発生させるための励磁巻線を含んでいる。アーマチュアが、2つの磁石システム間で案内されており、励磁巻線の通電無しで当該アーマチュアを永久的に保持するために、その移動方向に対して垂直に分極された永久磁石配置を保持している。この場合、当該永久磁石配置は、2つの励磁巻線の間にあり、その結果、漏れ磁束のためにその有効性が損なわれる。更に、当該永久磁石配置の通常の脆い材料は、アーマチュアの衝撃的な動きに悩まされる可能性がある。
【0005】
US2016/0293310A1は、対称的な双方向の力を発生させ得る電磁アクチュエータを開示している。当該装置は、強磁性材料からなるハウジングと、ハウジング内の軸線に沿って移動可能な磁気的に不活性な材料からなるシャフトと、を含む。あるアクチュエータタイプでは、永久磁石がハウジングの対向する内端壁上に配置され、電磁コイルがシャフトの中央部上に配置されている。
【0006】
US5257014A1は、コアと、当該コアの周囲に配置されて両者間に環状空間を画定する円筒形シェルと、を有する電気アクチュエータを開示している。当該環状空間内に、コイルが設けられている。DC増幅器が、所望の位置信号に応答して励磁信号を送信する。コイルは、励起信号を受信して、それに応答して励起信号の大きさに比例する磁場を生成し、コイルまたはコアのそれらの他方に対する相対的な移動を引き起こすように、設計されている。
【0007】
DE102013102400A1は、ハウジングと、アーマチュアと、を含む電磁アクチュエータを開示しており、当該アーマチュアは、2つの端位置間でハウジング内で移動可能であって、互いから距離をおいて配置された2つのアーマチュアディスクと、アーマチュアシャフトと、を有している。ハウジング内には、軸線に対して半径方向に同一方向に分極された永久磁石の2つの環状配列が、アーマチュアディスク間に配置されており、電流源に接続可能な環状コイルが、2つの永久磁石間に配置されている。アーマチュアは、コイルの励磁無しで、2つの端位置に固定され得て、コイルの励磁によって、各場合に占められていた一方の端位置から反対の端位置へと移動され得る。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、電流による励磁無しで両端位置で安定し、少なくとも一方の端位置で高い保持力を吸収できる、冒頭に述べたタイプの電磁アクチュエータを提供することである。当該アクチュエータは、簡単且つ安価に製造できることが望ましい。
【0009】
当該目的は、請求項1に規定された特徴を有する電磁アクチュエータによって達成される。当該アクチュエータの有利な実施形態が、従属請求項に規定されている。
【0010】
本発明によれば、電磁アクチュエータは、ハウジングと、互いから距離をおいて配置され前記ハウジングに剛性的に接続されている2つの強磁性の磁極片と、前記ハウジング内において2つの端位置間で軸線に沿って移動可能であって、前記磁極片間に配置されていて、少なくとも1つの磁石システムを含む、可動構造と、を備える。前記可動構造、前記ハウジング内において軸線方向に変位可能なシャフトに接続されており、前記磁石システムは、磁束伝導材料からなる半径方向内側及び半径方向外側の磁極体と、前記軸線に対して半径方向に分極されている1または複数の永久磁石からなる少なくとも1つの配列と、電流源に接続され得る環状のコイルと、を含んでおり、前記磁極片と共に、軸線方向に可変のエアギャップを有するエアギャップシステムを形成している。前記可動構造は、前記コイルの励磁無しで、前記2つの端位置の各々に固定されことが可能であり、前記コイルの励磁によって、各場合に占められていた端位置から反対の端位置へと移動可能であり得る。
【0011】
本発明は、従来技術と比較して、可動構造がコイルの励磁無しで両方の端位置で固定され得る、という利点を有する。可動構造が反対側の端位置に移動されるべき場合には、コイルが通電される。結果として、アクチュエータの簡単かつ迅速な切替が可能である。更に、1つのみのコイルを使用するため、製造コストが低く、全体のサイズも小さくなる。更に、可動構造は、磁気部品と共に、ハウジング内に確実に埋め込まれており、それによって動的な応力から保護される。
【0012】
アクチュエータの一実施形態において、永久磁石は、環状に配置された個々の磁石で構成され得て、あるいは、リング磁石の形態で設計され得る。1または複数の永久磁石の形状の設計は自由であり、例えば、環状、角状などの形状が可能である。更に、高感度磁性材料、例えば複合材料、からなる磁石が使用され得て、高い分極値及び磁場強度を可能にし得る。
【0013】
磁石システムは、コイルの両側に配置される半径方向に分極された永久磁石の環状配置を有する場合に、有利であり得る。本発明の好適な一実施形態では、磁石システム及びコイルは、回転対称である。もっとも、これとは異なる設計も可能である。
【0014】
磁石システムは、磁束伝導材料からなる半径方向内側の磁極体と半径方向外側の磁極体とを有する。磁極体間で磁極片に直接隣接するように永久磁石を配置する有利な点は、コイルが電流で励磁されていない時に、高い保持力を可能にする点である。本発明の更なる提案によれば、1または複数の磁石とコイルとが、軟磁性材料からなる磁極体間に配置され、当該磁極体は、例えば、リングの形状であり得る。磁極片の軸方向の厚さは、好適には同一であるが、2つの端位置で異なる保持力を達成するために、異なっていてもよい。
【0015】
有利な実施形態では、前記シャフトは、磁極片内に存在する滑り軸受内に案内され得る。
【0016】
本発明において、アクチュエータのハウジングは、アクチュエータの構成部品が存在する空洞を形成するが、磁束の散乱を防止して前記可動構造に磁束を集中させるために、非磁性材料で構成されることが好ましい。
【0017】
ハウジングと外側磁極体との間にエアギャップが存在することが好ましい。これにより、可動構造とハウジングとの間の摩擦を防止し得る。もっとも、ハウジング内での可動構造の移動を支援する摺動ブシュまたは他の手段が存在することも、提案され得る。
【0018】
本発明によるアクチュエータの特に有利な使用は、前述のようなアクチュエータを有するモータスピンドルであり、当該モータスピンドルは、スピンドルハウジング内に、電気モータと、それによって回転駆動され得ると共にワーク加工用の工具のための工具ホルダを含むスピンドルと、を備えており、当該スピンドルは、中空シャフトとして設計されており、その長手方向穴内において、工具または工具ホルダを堅固にクランプするクランプ装置を含んでおり、前記アクチュエータの前記ハウジングが、前記スピンドルハウジングに直接的または間接的に取り付けられており、前記可動構造が、前記クランプ装置の要素に対して、力伝達可能であって移動伝達可能な態様での動作接続状態にもたらされることが可能であり、前記クランプ装置は、前記スピンドルの長手方向穴内で軸線方向に変位可能であり、前記クランプ装置は、開放位置へと移動することが可能であり、当該移動は、有利な実施形態では、前記可動構造のシャフトまたはそのタペットの周りに配置されたバネとの協働で行われ得る。従って、本開示は、開示された電気アクチュエータとモータスピンドルとの組合せも含む。電気アクチュエータの記載される利点は、その使用方法や前記組合せにも同様に適用される。
【0019】
モータスピンドルにおける当該アクチュエータの使用は、複雑なアクチュエータを省くことを可能にする。後者のアクチュエータは、多くの場合、不利であると考えられており、モータスピンドルにおける工具クランプ装置を作動させるために慣習となっている空気圧エネルギーあるいは油圧エネルギーによって駆動される。本発明によるアクチュエータの助けにより、そのような工具クランプ装置のバネクランプセットを一緒に押圧して当該クランプ装置を解放するために、十分に高い作動力が、好適なサイズ及び許容可能な重量で達成され得る。本発明による装置によって、工具クランプ装置を解放位置に保持するために必要とされる保持力は、永久磁石を使用して生成され得て、工具クランプ装置を解放してクランプ位置に戻るために、コイルが短時間作動されれば足りる。その結果、高速の切替時間が達成され得る。
【0020】
可動構造がバネ力に対抗して一方の端位置に移動され得るように、タペットの周りにバネが配置され得る。実施形態によって、バネは、クランプ装置が解放される時、あるいは、それがクランプ位置に戻される時、アクチュエータを支援し得る。これにより、切替時間の短縮が可能である。
【0021】
本発明による使用方法は、特に、工具のクランプ及び解放のため、並びに、機械加工動作を実施するべく工具を駆動するために、1つのみの駆動エネルギー、例えば電流、を必要とするモータスピンドルにおいて、可能である。
【0022】
アクチュエータは、有利には、モータスピンドルに直接取り付けられ得る。この目的のために、アクチュエータは、特には、モータスピンドルへの迅速かつ可逆的な接続を可能にする穴接続またはネジ接続等の手段を含み得る。もっとも、本発明は、起動運動及び起動力が、例えばプッシュプルケーブルのような機械的な伝達システム、あるいは、油圧伝達システム、によってモータスピンドルに伝達される実施形態も含み、その結果、モータスピンドルの重量は低く維持され得る。
【0023】
モータスピンドルでの使用に加えて、本発明によるアクチュエータは、ワークのクランプ、電気接点の迅速なスイッチング、あるいは、圧縮空気の生成、等の様々な用途に使用され得る。更に、限定列挙的ではなく、例えば、ワークのクランプやテーブルのロックのような用途も可能である。
以下に、本発明が、図面に示される実施形態を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、好適な電磁アクチュエータの断面図である。
【
図2】
図2は、電気アクチュエータを有するモータスピンドルの概略図である。
【
図3】
図3は、第1方向への作動力を発生させるためにコイルが通電される時の磁力線図である。
【
図4】
図4は、コイルが非通電であって永久磁石によって位置が維持されている場合の磁力線図である。
【
図5】
図5は、第2方向への作動力を発生させるために逆方向にコイルが通電される時の磁力線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示される電磁アクチュエータは、ポット形状のハウジング1を備えている。ハウジング1は、一部品で形成されても複数部品で形成されてもよく、例えば、本体に接続され得るカバー及びベースを有し得る。ハウジング1内には、アーマチュアが配置されている。当該アーマチュアは、軸線方向に移動可能に取り付けられており、シャフト2と、これに固定的に連結された可動構造3と、で構成されている。可動構造3は、ハウジング1に固定的に接続された2つの回転対称形の磁極片4、5の間に配置されている。磁極片4、5は、平行な側面を有し、且つ、シャフト2の直線的な案内のための滑り軸受を収容する孔を有している。前方側の磁極片4は、例えば、ネジ接続によってハウジングベースに固定され得る。後方側の磁極片5は、例えば、ハウジング1の肩部と周縁部との間でハウジング1内に固定され得る。
【0026】
可動構造3は、磁極片4、5間の中間空間内に配置されている。一実施形態では、可動構造3は、内側環状磁極体6と、そこから半径方向に距離を置いた外側環状磁極体7と、を有し得る。磁極体6、7は、複数部品でも構成され得る。2つの磁極体6、7間の空間内には、少なくとも1つの巻線を有するコイル8が配置されており、コイル8の両側に、それぞれ、永久磁石9、10が配置されている。2つの永久磁石9、10は、半径方向に同一方向に、従ってアーマチュアの移動方向を横切るように、分極されており、一実施形態では、特に、磁極体6、7及び磁極片4、5と共に、磁石システムを形成している。永久磁石9、10は、磁極体6の周りに環状に配置されており、リング磁石として、または、同一方向に分極された個々の磁石の配列として、設計され得る。永久磁石9、10の他の設計、例えば、角柱型の永久磁石も、可能である。磁極体6、7及び永久磁石9、10は、互いに剛性的に接続され得る。
【0027】
永久磁石9、10は、コイル8に対して対称に配置される代わりに、コイル8の片側に隣り合うように横並びに配置され得るし、あるいは、例えばリング磁石のように対応する厚さの単一の永久磁石によって形成され得る。
【0028】
エアギャップシステムの軸線方向に可変のエアギャップL1、L2が、可動構造3と磁極片4、5との間のそれぞれに位置している。
【0029】
2つの磁極体6、7及び磁極片4、5は、良好な導電性の材料、特には軟磁性材料、からなっている。シャフト2も、磁束伝導性材料で構成され得るが、好ましくは、磁束の散乱を打ち消すような非磁性材料で構成される。また、ハウジング1も、非磁性材料で構成される。
【0030】
当該電磁アクチュエータの場合、可動構造3は、永久磁石9、10の磁力によって、その両端位置で比較的大きな力で保持され得る。同一のサイズのエアギャップL1、L2を有する位置である可動構造3の中央位置は、不安定である。可動構造3を一方または他方の端位置に移動させるために、コイル8が短時間電流で励磁され、当該電流方向が可動構造3の移動方向を決定する。
【0031】
図1は、タペット11の形態のシャフト2が、ハウジング1に接続されているカバー12を貫いて突出している、電気アクチュエータの好適な一実施形態を示している。カバー12は、ネジ接続を介して、または、ハウジング内に存在する内部ネジを介して、ハウジング1に接続され得る。シャフト2とタペット11は、一部品で設計され得るし、あるいは、複数部品でも設計され得る。シャフト2についても同様であり、これもまた、一部品で、あるいは、複数部品で形成され得る。
【0032】
可動構造3の移動は、タペット11をして、対応する方向に移動させる。カバー12内の肩部14とタペット11上の周縁部15とに支持されるバネ13が、タペット11の周囲に配置され得る。バネの設計に応じて、可動構造3は、バネ13のバネ力に対抗して、一方または他方に、すなわち、一方の端位置または他方の端位置に、移動されて、バネ13は、可動構造3の反対側の端位置への移動を支援する。バネ13は、引張バネまたは圧縮バネとして設計され得る。
【0033】
コイル8への電源供給を確保するべく、穴16がハウジング1内に設けられ得る。
【0034】
電気アクチュエータは、例えば、
図2に概略的に示されるように、モータスピンドル17内の工具を交換する時に使用され得る。これは、一例として示された、単なる例示的な装置の使用方法に過ぎない。この場合、アクチュエータは、カバー12の助けによって、工具ホルダ受容用の円錐形孔18とは反対側の(円錐形孔18から離れた方向で面する)スピンドルハウジング19の端部に、固定され得る。カバーから突出するシャフト2の端部は、タペット11の形態で、スピンドル20の長手方向穴内に係合され得て、ハウジング1内に撤退(格納)される可動構造3の位置において、クランプ装置22の要素、特にはクランプ装置22のタペット21、の端面と対向し且つそこから短い距離に配置され得る。アクチュエータのこの記述された位置で、工具ホルダは、例えば皿バネの力の助けによって、クランプ装置22によってクランプされ得る。可動構造3は、永久磁石9と磁極片4とからなる磁石システムにより、コイル8の励磁無しに、撤退(格納)位置に保持される。
【0035】
工具が取り付けられた工具ホルダが交換されるべき時、スピンドル20が停止された後にコイル8が電流で励磁される。当該電流によって、
図3に示すように、可動構造3がハウジング1から更に外側に延びた位置にまで移動される。この場合、シャフト2は、タペット11と共に、皿バネの力に対抗して、下方に移動され、例えば、円錐形孔18内に係合する工具ホルダの工具コーンのクランプピンが、クランプ装置22から解放されて、工具コーンが解放され得るようになる。これによって、工具ホルダとそれに固定された工具は、手動で、または自動的に、取り外され得る。工具コーンは、加工工具に直接的に取り付けられてもよいし、工具ホルダに取り付けられてもよい。
【0036】
クランプ装置22の解放後、コイル8は通電解除されるが、クランプ装置22の解放位置は、皿バネの力に対抗して、コイル8の励磁無しで、永久磁石9、10のみによって、
図3に示すように保持される。
【0037】
スピンドル20のレセプタクルへの新しい工具の挿入後、当該新しい工具をクランプするために、コイル8は、逆向きに通電され、
図4に示すように、タペット11と共に可動構造3が戻るように移動する。この場合、皿バネの助けにより、新しい工具のクランプピンが、クランプ装置22によって把持され、スピンドル20のレセプタクル内にクランプされる。バネ13の設計に応じて、当該バネ13が可動構造3の移動を支援し得る。すなわち、バネ13が圧縮バネとして設計されている場合、可動構造3は、バネ13のバネ力に対抗するように、後方側の磁極片5の方向に移動され得る一方、バネ力の支援を受けるように、前方側の磁極片4の方向に移動され得る。一方、バネ13は、可動構造3の移動が反対方向に支援されるように、引張バネ(図示せず)としても設計され得る。
【0038】
図3乃至
図5は、アクチュエータの異なる動作状態における磁束の磁力線を示す。ここでは、磁束を伝導する部品の半分の(中央での)軸線方向断面が示されている。
【0039】
図3に示される例では、コイル8は、永久磁石9、10の磁場と同一方向のコイル磁場を発生させる方向の電流で励磁される。これらの2つの磁場は、互いに補い合って強い電磁束を発生させ、当該電磁束は、永久磁石9によって偏向され、磁極片4を介して伝導される。永久磁石9、10の磁場は、磁極片5の方向には弱められる。結果として、可動構造3には矢印Fの方向に強い力が作用し、それによって可動構造3は左端位置に移動される。
【0040】
図4は、コイル8の励磁除去後の可動構造3の左端位置を示す。永久磁石9が、磁極片4を把持する強い磁場を発生させ、力Fで可動構造3を端位置に保持する。永久磁石9の磁場は、更に、永久磁石10の磁場の一部によって強化される。右側の磁極片5を介して伝導される永久磁石10の磁束は、ここでは広いエアギャップL2によって大きく弱められ、ほとんど効果を発揮しない。
【0041】
図5は、可動構造3を逆方向に移動させるために、コイル8を逆方向の電流で励磁した時の磁束のコース(経路)を示している。コイルの磁場は、今度は永久磁石9の磁場を強くし、永久磁石10の磁場を弱くして、永久磁石10は、コイル8の共通磁束と永久磁石9の磁束とを磁極片5に向け、可動構造3は右端位置へ移動される。
【国際調査報告】