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特表2023-519639窒化ガリウム基板及び半導体複合基板
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  • 特表-窒化ガリウム基板及び半導体複合基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(54)【発明の名称】窒化ガリウム基板及び半導体複合基板
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20230501BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20230501BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230501BHJP
   H01L 21/205 20060101ALN20230501BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/20
H01L21/66 N
H01L21/205
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560495
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 CN2021112383
(87)【国際公開番号】W WO2022151728
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202110061226.2
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522390456
【氏名又は名称】蘇州納維科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU NANOWIN SCIENCE AND TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 518, NW-20, 99Jinji Lake Avenue, Suzhou Industrial Park Suzhou, Jiangsu 215123, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】徐 兪
(72)【発明者】
【氏名】王 建峰
(72)【発明者】
【氏名】徐 科
【テーマコード(参考)】
4G077
4M106
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077AB09
4G077BE15
4G077DB04
4G077ED04
4G077GA02
4G077GA06
4G077HA02
4G077HA06
4G077HA12
4G077TA04
4M106AA01
4M106BA05
4M106CA18
4M106CB19
4M106DH12
4M106DJ12
4M106DJ20
5F045AA03
5F045AB14
5F045AB18
5F045AC08
5F045AC12
5F045AC13
5F045AC19
5F045AD12
5F045AD14
5F045AE29
5F045AF04
5F045BB12
5F045CA12
5F045DA52
5F045DQ08
(57)【要約】
本発明は窒化ガリウム基板を提供し、前記窒化ガリウム基板は直径が50mm以上の表面を有し、該窒化ガリウム基板の表面に9つの直径1mm範囲内の円形領域を取って、多光子励起フォトルミネッセンス地図によって前記9つの円形領域に対して貫通転位密度及び貫通転位傾斜角を計算し、該9つの円形領域における貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値が1E6cm-2以下であり、該9つの円形領域内の貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商が50%以下である。本発明は窒化ガリウム基板の応力を減少させて、他のエピタキシャル層を支持するとき、裂開及び破片の発生を抑える効果を有させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム基板であって、
前記窒化ガリウム基板は非周期的な構造をエピタキシャル成長させて得られたものであり、前記窒化ガリウム基板は直径が50mm以上の表面を有し、該窒化ガリウム基板の表面に9つの直径1mm範囲内の円形領域を取って、9つの前記円形領域の位置がそれぞれ前記窒化ガリウム基板の表面の中心位置及び8つの周囲位置に配置され、多光子励起フォトルミネッセンス地図によって前記9つの円形領域に対して貫通転位密度及び貫通転位傾斜角を計算し、該9つの円形領域における貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値が1E6cm-2以下であり、該9つの円形領域内の貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商が50%以下であることを特徴とする窒化ガリウム基板。
【請求項2】
前記窒化ガリウム基板は直径が100mm以上の表面を有し、前記9つの円形領域における貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値が5E5cm-2以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム基板。
【請求項3】
前記窒化ガリウム基板は直径が100mm以上の表面を有し、前記9つの円形領域内の貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商が40%以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム基板。
【請求項4】
前記8つの周囲位置は同一円周上に位置し、且つ該円周を8等分することを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム基板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化ガリウム基板を支持基板とする半導体複合基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体の技術分野に関し、特に比較的低い応力を有する窒化ガリウム基板に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNは第3世代の半導体産業の重要な基幹材料として、極めて高い電気光変換効率、低い電力消費等の優れた性能を有し、将来次世代の光エレクトロニクス、パワーエレクトロニクス及び高周波マイクロエレクトロニクスの重要な基礎である。
【0003】
現在、主な自立性GaN基板の製造方法はハイドライド気相成長法(HVPE)であり、該方法におけるすべての反応はHVPE装置の石英管の中で行われるのであり、該反応装置が2つの異なる温度領域に分けられる。
【0004】
まず、金属Gaを石英管の850℃温度領域、基板を1050℃温度領域に置いて、その後、反応物であるアンモニアガスNH及び塩化水素ガスHClを石英管の左端から850℃温度領域に通じ、該領域において下記化学反応が生じる。
2Ga(l)+2HCl(g)=2GaCl(g)+H(g) (1-1)
上記得られた反応物GaClガスは適量のHを混合したNをキャリアガスとして1050℃高温領域に入るように案内され、NHと反応する。
GaCl(g)+NH(g)=GaN(s)+HCl(g)+H(g) (1-2)
【0005】
これらの2つの反応によってGaN材料が生成され、HVPEでGaNをエピタキシャルさせる成長メカニズムを構成し、生成された廃ガスは石英管の一端から排気ガスパイプに排出される。高温領域内に適切なヘテロ基板(例えば、サファイア等)を置けば、GaNを基板上にエピタキシャル成長させ、一定の厚さに成長してから取り出し、更に基板の分離、外形加工、研磨・バフ磨きを行って自立性基板を得ることが実現される。
【0006】
しかしながら、ヘテロエピタキシャル成長過程においてヘテロ基板とGaNとの間に格子定数及び熱膨張率の違い(格子不整合及び熱不整合)があるため、GaN基板に結晶欠陥が複数あり、これらの欠陥に起因して、後続のGaN加工を行い又はGaN基板をベースエピタキシャルとして用いる場合、破片及び裂開が発生しやすく、悪影響を及ぼしてしまう。
【0007】
上記問題を解決するために、CN106536794において、窒化ガリウム基板に対してそのミクロラマン散乱反射のピークでの波数差分の表示を限定し、且つ、窒化ガリウム基板が該特許における制限パラメータを満足する場合、窒化ガリウム基板の応力を減少させて、後続のエピタキシャルプロセスの裂開及び破片の発生を効果的に減少させることができると見られている。
【0008】
ところが、パターン化された周期的なエピタキシャル成長によってGaN基板を製造する場合にのみ、応力が周期的に変動し、ミクロラマン散乱反射のピークでの波数差分が一定の範囲内に変動するように制御することが求められる。非周期的な構造をエピタキシャル成長させて製造されたGaN基板の場合、必ずその応力をある特定の比較的狭い範囲内に制御しなければならない。最新の研究により、エピタキシャル後のGaN基板の多くの欠陥は主に刃状転位、らせん転位、混合転位の形式で存在し、その中で刃状転位又は混合転位の水平方向における成分(横方向転位とも称される)がGaNの内部応力に関連する(詳細は非特許文献1を参照する)ことがわかる。従って、転位密度及び転位の水平方向における成分を制御することにより、GaNの内部応力を効果的に制御することができるが、ミクロラマン散乱反射パラメータで窒化ガリウム基板を示すだけでは、窒化ガリウム基板の欠陥の形式を完全に示すことができず、且つその解像度が限られた(一般的に0.1cm-1)ため、その内部の比較的小さな応力をより良く示すこともできない。特に、いくつかのデバイスのエピタキシャル過程において、大きな応力を用いるシーンがあり、例えば、GaN青色光又は緑色光レーザー装置のエピタキシャルにおいて、GaN基板への要求が一層強まり、一層強まるエピタキシャル要求を満足するように、必ずGaN基板の内部応力を制御する一層良い検出方法を探し求めなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
[1]Foronda,H.M.;Romanov,A.E.;Young,E.C.;Roberston,C.A.;Beltz,G.E.;Speck,J.S.Curvature and bow of bulk GaN substrates.Journal of Applied Physics 2016,120(3)035104.
[2]Tanikawa,T.;Ohnishi,K.;Kanoh,M.;Mukai,T.;Matsuoka、T.Three-dimensional imaging of threading dislocations in GaN crystals using two-photon excitation photoluminescence.Applied Physics Express 2018,11(3)031004.。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに鑑みて、本発明の目的は窒化ガリウム基板を提供することにあり、製造のために横方向転位を制御して(即ち、刃状転位又は混合転位密度、及び刃状転位又は混合転位の傾斜角度の2つの態様を制御する)応力を減少させる必要があるように限定することにより、GaN基板の加工過程又はその上での関連デバイスのエピタキシャル製造過程において裂開及び破片の発生を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記発明の目的を実現するために、本発明は窒化ガリウム基板を提供し、前記窒化ガリウム基板は直径が50mm以上の表面を有し、該窒化ガリウム基板の表面に9つの直径1mm範囲内の円形領域を取って、前記9つの円形領域の位置が前記窒化ガリウム基板の表面の中心位置及び8つの周囲位置に配置され、光子励起フォトルミネッセンス地図によって前記9つの円形領域に対して貫通転位密度及び貫通転位傾斜角を計算し、該9つの円形領域における貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値が1E6cm-2以下であり、該9つの円形領域内の貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商が50%以下である。
【0012】
好ましくは、前記窒化ガリウム基板は直径が100mm以上の表面を有し、前記9つの円形領域における貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値が5E5cm-2以下である。
【0013】
好ましくは、前記窒化ガリウム基板は直径が100mm以上の表面を有し、前記9つの円形領域内の貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商が40%以下である。
【0014】
好ましくは、前記8つの周囲位置は同一円周上に位置し、且つ該円周を8等分する。
【0015】
本発明の目的に基づいて、以上に記載の窒化ガリウム基板を支持基板とする半導体複合基板を更に提供する。
【発明の効果】
【0016】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、窒化ガリウム基板の応力を減少させ、他のエピタキシャル層を支持するとき、裂開及び破片の発生を抑える効果を有させ、それにより半導体複合基板の歩留りを向上させ、コストを削減することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施例又は従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下に実施例又は従来技術の記述に必要な図面を簡単に説明するが、明らかに、以下に記載する図面は単に本発明に記載の実施例の一例であって、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、更にこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
図1図1は二光子蛍光顕微鏡の構造図である。
図2図2は代表的な自立性GaN基板の二光子励起フォトルミネッセンスマップである。
図3図3は第1実施例の自立性GaN基板の表面の模式図である。
図4図4は2層の結晶の間に傾斜転位を形成する模式図である。
図5a】~
図5d図5a~図5dは第1実施例の自立性GaN基板の製造方法の模式図である。
図6図6はレーザー装置構造をエピタキシャル成長させる模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に各実施形態によって本発明を詳しく説明するが、説明されるように、これらの実施形態は本発明を制限するものではなく、当業者がこれらの実施形態に基づいて行った機能、方法、又は構造上の等価置換又は代替は、いずれも本発明の保護範囲内に属する。
【0019】
本発明の革新的なスキームの都合上、本発明の貫通転位密度の表示方法については、まずその原理を説明する。
【0020】
一般的に、貫通転位とはGaN基板に存在するC軸方向の刃状転位、らせん転位又は混合転位を指し、該転位はGaN結晶の内部を通ってGaNの表面に到達する転位である。
【0021】
貫通転位密度は一定の表面面積範囲内にGaNの表面に貫通する転位の数であり、単位が個cm-2(cm-2と略記される)であり、以下の方法で評価されてもよい。
GaN基板を酸性(HPO)又はアルカリ性(溶融KOH)溶液に浸して腐食し、転位箇所は腐食されて穴ができやすく、取得されたGaNの表面の腐食された穴の密度が貫通転位密度であり、
従来技術は一般的に陰極蛍光(CL)を用いてGaNの表面の画像をテストし、転位位置が発光しないため、画像上に暗点で示され、計算された暗点密度が貫通転位密度であり、
本発明では、二光子又は多光子励起フォトルミネッセンスマップを用いてGaNの表面の画像(非特許文献2参照)をテストし、その基本原理は、一定の高光子密度を満足する場合、GaNにおける電子が極めて短い時間内(約10-18s)に2つの長波長の光子を同時に吸収することができ、それにより基底状態から励起状態に遷移し、エネルギー緩和した後、励起状態から基底状態に戻り、且つ1つの波長が比較的短い光子を放射することである。図1は二光子蛍光顕微鏡の構造図であり、高光子密度の条件を満足する必要があるため、二光子蛍光顕微鏡に使用されたレーザー装置は一般的に高瞬時電力・低平均電力のフェムト秒パルスレーザー装置である。二光子蛍光顕微鏡のイメージング過程は、フェムト秒パルスレーザー装置101がレーザーを発した後、ビームエキスパンダー102により拡大され、二色性ミラー103を通過した後、対物レンズ104により焦点をサンプル105の表面に合わせる。サンプル105から蛍光が励起された後、対物レンズ104を通過して、二色性ミラー103により反射され、光学フィルター106によりフィルタリングされた後、サンプル情報を含む蛍光信号が最終的に検出器107により検出され、物体のイメージングが実現される。二光子イメージング技術を利用して、GaNの内部転位が変化する状況について研究する。GaNの内部の転位が非放射再結合中心であるため、サンプルに貫通転位が存在する場合、非平衡キャリアが非放射再結合により大量減少し、転位中心から発する光子がない。従って、転位線は二光子からなる画像上に黒線で示される。単位面積の黒線の個数を計算することにより、GaN材料の転位密度を定量取得することができる。また、GaN材料の内部の異なる深さの二光子イメージングマップを測定することにより、更に三次元斜視図を構築することができ、これはGaN内の転位の発生及び変化を直接観察するために道を切り開いた。
【0022】
図2は代表的な自立性GaN基板の二光子励起フォトルミネッセンスマップである。図示のように、図2では、図2(a)はその最表面の励起フォトルミネッセンスマップであり、図中の黒線が貫通転位であり、黒線の密度を計算することにより、貫通転位密度を取得することができる。図2(b)は30μm深さの励起フォトルミネッセンスマップである。図2(c)は三次元合成図であり、異なる深さでテストする画像を合成し、その三次元立体画像を構築し、GaN基板における貫通転位の配置状況が明確に見え、主な貫通転位が一定の傾斜角度を有する混合転位であり、これによって貫通転位の傾斜角度を計算することができる。
【0023】
貫通転位傾斜角αФ1、貫通転位密ρTDФ1、貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値Ave[ρTDФ1*tan(αФ1)]、貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の均一性Δ/Ave[ρTDФ1*tan(αФ1)]の計算方法は以下のとおりである。
【0024】
図3に第1実施例の自立性GaN基板の表面の模式図を示す。該自立性GaN基板2の直径Dは50mmであり(直径が図3において参照辺23を使用しない場合の点線円24の直径である)、点線円24との同心円25は自立性GaN基板2の外周の点線円24より内向き5mmの円である。点線円24上に等分して1~8の8つの点を取って、該8つの点が第9点(点線円24の中心)と組み合わせられ、点5、9、1の位置する直線と点3、9、7の位置する直線とがそれぞれ互いに直交する直線を形成し、且つ点5、9、1からなる直線が参照辺23に垂直である。これらの9つの点を円心として直径1mmの円を構築し、該円内に多光子励起フォトルミネッセンスマップを描き、一定の長さ・幅・深さの範囲内の三次元転位イメージングマップを測定する。
【0025】
Ф1の内部(直径1mmの円内)で、まず貫通転位密度ρTDФ1を取得し、次に取得された各貫通転位に対してその傾斜角αを計算し、すべての貫通転位傾斜角の平均値αФ1を取得し、
ФDの内部(直径50mmの円内)で、9つの位置をテストし、それぞれ9つの点の位置での貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積ρTDФ1*tan(αФ1)を取得し、これによってその平均値Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を取得し、且つ更に貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商(9つの積値の均一性)を取得する。
Δ/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]={Max[ρTDФ1-9*tan(αФ1-9)]-Min[ρTDФ1-9*tan(αФ1-9)]}/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]。
【0026】
非特許文献1において貫通転位のGaNの結晶応力への影響が詳しく説明される。即ち、図4に示すように、1つのストレートな貫通転位が界面で折り曲げられ、折り曲げ角度がαである場合、X方向において投影した転位の長さがL=htan(α)であり、ここで、hが上位層GaNの厚さであり、αが貫通転位の傾斜角度である。
(即ち、角度が増加し、応力が大幅に増加する)。GaNには貫通転位密度が比較的大きく、又は貫通転位傾斜角が比較的大きい状況が局所的に存在する場合、該局所的な領域に比較的大きな応力が存在し、HVPEで成長させるGaN結晶に対して基板の分離、外形加工又は研磨・バフ磨きを行う過程、又は該基板上での関連デバイスのエピタキシャル製造過程において、局所的な応力が比較的大きな領域にはGaN基板が裂開する恐れがある。GaNには貫通転位密度が比較的大きく、又は貫通転位傾斜角が比較的大きい状況が全体的に存在する場合、サンプル全体に比較的大きな応力が存在し、HVPEで成長させるGaN結晶に対して基板の分離、外形加工又は研磨・バフ磨きを行うとき、又は該基板上にデバイス構造をエピタキシャル成長させるとき、全体の応力が比較的大きい場合、GaN基板に破片が発生する恐れがある。
【0027】
従って、本発明では、貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値Ave[ρTDФ1*tan(αФ1)]及び貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商Δ/Ave[ρTDФ1*tan(αФ1)]の2つのパラメータで窒化ガリウム基板の欠陥を示し、窒化ガリウム基板の内部の応力の真の状況に一層接近することができ、特に、発明者の研究により、生産により得られた窒化ガリウム基板は上記2つのパラメータの値が一定の範囲内に限定される場合、優れたエピタキシャル特性を有し、これによって得られたGaN基板又はGaN基板上に製造されたエピタキシャルシートは、裂開及び破砕しにくい。
【0028】
具体的に、本発明の1つの実施例のGaN基板において、該窒化ガリウム基板は直径が50mm以上の表面を有し、表面に9つの直径1mm範囲内の円形領域を取って、これらの9つの円形領域がGaN基板の表面の中心位置及び8つの周囲位置に位置する。該9つの円形領域の多光子励起フォトルミネッセンス地図において計算により取得された貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値が1E6cm-2以下であり、貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商が50%以下である。
【0029】
好適な実施形態として、本発明の窒化ガリウム基板は直径が100mm以上の表面を更に有し、表面に9つの直径1mm範囲内の円形領域を取って、該9つの円形領域内の多光子励起フォトルミネッセンス地図において計算により取得された貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の平均値が5E5cm-2以下である。更に、該9つの円形領域の貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商が40%以下である。
【0030】
該9つの円形領域のうち、エッジに位置する8つの円形領域は8等分の方式で同一円周上に配置される。
【0031】
本発明は上記窒化ガリウム基板を支持基板としてエピタキシャルプロセスにより製造して得られた半導体複合基板を更に提供する。
【0032】
以下、本発明のGaN基板を得る例については、1つの実施形態を挙げる。ただし、下記製造方法は単に該GaN基板を得るより好適な方式であるが、本発明により限定される該GaNを製造する唯一の方法ではなく、当業者であれば理解されるように、他の技術的手段で取得された、上記本発明により限定される窒化ガリウム基板の特性を有するスキームも、本発明の主旨範囲内に属すべきである。
図5a~5dの模式図は第1実施例の自立性GaN基板を製造する模式的な方法を説明するためのものであり、
【0033】
図5aに示すように、まず基板1にHVPE法で一定の厚さのGaN厚膜22を成長させ、この過程は直接に基板上に非周期的な構造をエピタキシャル成長させ、即ち該成長過程において1つの方法を用いて所定時間エピタキシャル成長させ続ける。基板1がGaNテンプレート、サファイア、炭化ケイ素、シリコン等を選択する。好適なスキームはGaNテンプレートをホモ基板として用いてエピタキシャルさせることであり、このように、品質がより優れた窒化ガリウム基板を得ることができる。該GaNテンプレートは金属有機化学気相成長システムを用いてサファイア上に厚さ>2μmのGaN薄膜21基板を成長させて得られたものであってもよく、且つ該基板に対して転位密度の選別のみを行い、又は電気化学的腐食によりマイクロ又はナノピラーの表面を形成するが、周期的なマスク構造を作らない。
【0034】
次に、図5bに示すように、基板1とGaN結晶20(GaN薄膜21及びGaN厚膜22を含む)を分離し、具体的なスキームはレーザー剥離、機械的研磨、化学的腐食等であってもよく、
次に、図5cに示すように、分離後の自立性GaN結晶20を、参照辺23を有する特定の円形に外形加工し、更に平面研磨して表面の平坦化を実現し、次に表面バフ磨きを行い、これにより第1実施例の自立性GaN基板2を得る。
【0035】
また、図5dに示すように、自立性GaN基板2をヘテロ基板3の表面に結合することにより、複合基板32を得ることができ、ヘテロ基板はサファイア、炭化ケイ素、シリコン、窒化アルミニウム等であってもよい。その結合方法は制限されず、金属ボンディング、溶融ボンディング等を用いてもよく、金属ボンディングが好ましい。
【0036】
サファイア上にGaNをエピタキシャル成長させることは、ヘテロエピタキシャルに属し、必ず低温緩衝層を成長させてから高温層を成長させなければならない。GaN層がある基板上にGaNをエピタキシャル成長させることは、ホモエピタキシャルに属し、直接に高温で成長させてもよい。そして、上記実施形態の製造方法の利点は以下のとおりである。
【0037】
第1として、MOCVDに比べて、HVPE法の最も大きな優位性は成長速度が速いことであり、一般的に、HVPEの成長速度が50~200um/hであり、MOCVDの成長速度が0.5~5um/hであり、従って、ヘテロエピタキシャル成長過程において、HVPEの成長界面の成長モードがMOCVDよりも制御されにくく、このため、貫通転位の湾曲度がMOCVDよりも大きい。従って、MOCVDで成長させるGaNテンプレートを基板とすることは、HVPEでGaNを成長させる際の貫通転位の傾斜角度の制御に寄与する。
【0038】
第2として、異なる転位密度のMOCVDで成長させるGaNテンプレートを用いることは、HVPEでGaNを成長させる際の貫通転位密度を効果的に制御することができる。
【0039】
第3として、速い成長速度はGaN厚膜の製造効率に寄与するが、GaNにおける貫通転位が傾斜しやすくなってしまう。
【0040】
第4として、MOCVDで成長させるGaNテンプレートが電気化学的腐食方法を用いることは、HVPEで成長させるGaN厚膜の貫通転位密度を効果的に減少させることができる。その原理は、電気化学的腐食を行うとき、まず転位欠陥がある箇所から腐食し、従って、腐食後のGaNテンプレートにマイクロ又はナノピラーが形成され、該マイクロ又はナノピラーに基本的に転位が存在せず、転位が存在しない基板上にHVPEで成長させるGaN厚膜の貫通転位密度が小さいことである。
【0041】
要約すれば、1~4の4つの技術的手段をまとめて、HVPEで小さな貫通転位密度・小さな貫通転位の傾斜角度のGaN厚膜を成長させる場合があり、このように製造された自立性GaN基板の応力が比較的小さい。これにより、その加工過程又はその上での関連デバイスのエピタキシャル製造過程において裂開及び破片の発生を抑える。
【0042】
第2実施例
第2実施例と第1実施例との相違点は、
自立性GaN基板2が100mm以上の直径を有することにある。
【0043】
Ф1の内部(直径1mmの円内)で、まず貫通転位密度ρTDФ1を取得し、次に取得された各貫通転位に対してその傾斜角αを計算し、すべての貫通転位傾斜角の平均値αФ1を取得し、
ФDの内部(直径100mmの円内)で、9つの位置をテストし、それぞれ9つの点の位置での貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積ρTDФ1*tan(αФ1)を取得し、その平均値Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を5E5cm-2以下に設定し、貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商(9つの積値の均一性)Δ/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を40%以下に設定する。
【0044】
第2実施例において、第1実施例に比べて、自立性GaN基板2の直径Dが比較的大きく、従って、裂開又は破片が発生しやすい。このような場合、Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を5E5cm-2以下、Δ/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を40%以下に制御することにより、GaN基板に裂開又は破片が発生することを効果的に抑えることができる。以上の相違点を除き、第2実施例は第1実施例と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0045】
比較実施例1
直径55mmのサファイアを基板として用いて、直接にHVPE法でGaNを成長させ、具体的な方法は、まずサファイア基板を管状抵抗炉の高温定温領域内に置いて、HClガスが一定の比率のN/H混合ガスをキャリアガスとして管状抵抗炉の低温定温領域(850度)に入って、金属ガリウムと反応してGaClガスを生成し、次に高温定温領域に入ってNHガスと反応した後に基板上にGaNを生成する。まず、高温定温領域を650度として設定し、約50~100nmの低温GaN緩衝層を成長させ、次に1040度に温度上昇して更に約10時間成長させ、成長速度を低速度に制御する条件(<100um/h)において成長させ、厚さが約800μmのGaN厚膜を得る。
【0046】
次に、レーザー剥離技術で基板とGaN厚膜を分離し、分離後の自立性GaN結晶を、参照辺を有する特定の円形に外形加工し、更に平面研磨して表面の平坦化を実現し、次に表面バフ磨きを行い、これにより、比較実施例1の自立性GaN基板を得て、該基板の直径を50mm、厚さを400μmに制御する。
【0047】
次に、該自立性GaN基板に対して二光子励起フォトルミネッセンステストを実行する。波長700nmのパルスフェムト秒レーザー装置を選択使用し、パルス持続時間を100fs、周波数を10nsとし、比較的高い瞬時電力を有し、対物レンズは拡大倍率40倍の水鏡を用いる。一定の範囲内のイメージングマップをテストする。表面から内部数十μm深さまでの範囲の同一位置を測定し、且つ1μmあたりに1枚のマップのテストステップ幅を収集すれば、その三次元立体画像を構築することができる。観察しやすくするために、三次元画像のコントラストを反転する。構築された自立性GaN基板の三次元斜視図において、実際に測定された暗線が輝線として表示され、輝線が貫通転位である。これにより、GaN基板における貫通転位の配置状況が明確に見え、主な貫通転位が一定の傾斜角度を有する混合転位であり、これによって貫通転位密度及び傾斜角度を計算することができる。
【0048】
次に、該自立性GaN基板上の9つの点の位置でそれぞれ二光子励起フォトルミネッセンスマップをテストし、9つの三次元転位イメージングマップを取得する。各三次元転位イメージングマップを計算し、表1.1~表1.4に示すように、まず貫通転位密度ρTDФ1を取得し、次に各貫通転位傾斜角αを取得し、すべての貫通転位傾斜角の平均値αФ1を計算し、更に9つの三次元転位イメージングマップデータを統計分析し、それぞれ9つの点の位置での貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積ρTDФ1*tan(αФ1)を取得し、平均値Ave[ρTDФD*tan(αФD)]及び貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商(9つの積値の均一性)Δ/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を取得する。表1にその結果を示す。
【0049】
比較実施例2
比較実施例2と比較実施例1との相違点は、HVPEでGaN厚膜を成長させる成長速度を高速度に制御する条件(>150um/h)において成長させ、1040度の高温で5時間成長させて厚さが約800μmのGaN厚膜を得ることにある。以上の相違点を除き、比較実施例2は比較実施例1と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0050】
比較実施例3
比較実施例3と比較実施例1との相違点は、
(1)では、転位密度5E8cm-2のGaNテンプレートを基板1として用い、
(2)では、成長過程において直接に1040度の高温でGaN厚膜を成長させ、650度の低温でGaN緩衝層を成長させる過程がないことにある。以上の相違点を除き、比較実施例3は比較実施例1と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0051】
比較実施例4と比較実施例2との相違点は、
(1)では、転位密度5E8cm-2のGaNテンプレートを基板1として用い、
(2)では、成長過程において直接に1040度の高温でGaN厚膜を成長させ、650度の低温でGaN緩衝層を成長させる過程がないことにある。以上の相違点を除き、比較実施例4は比較実施例2と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0052】
比較実施例5と比較実施例3との相違点は、転位密度7E7cm-2のGaNテンプレートを基板1として用いることにあり、以上の相違点を除き、比較実施例5は比較実施例3と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0053】
比較実施例6と比較実施例4との相違点は、転位密度7E7cm-2のGaNテンプレートを基板1として用いることにあり、以上の相違点を除き、比較実施例6は比較実施例4と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0054】
比較実施例7と比較実施例3との相違点は、基板1に対して先に電気化学的腐食を行い、詳細が本会社の既存の特許CN102163545Aを参照し、腐食がGaNテンプレートの転位から始めるため、腐食後に形成されたGaNマイクロピラー(ナノピラー)の転位密度が極めて小さく、比較的小さな貫通転位密度のGaN厚膜を得ることができることにある。以上の相違点を除き、比較実施例7は比較実施例3と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0055】
比較実施例8と比較実施例4との相違点は、基板に対して先に電気化学的腐食を行い、詳細が本会社の既存の特許CN102163545Aを参照し、腐食がGaNテンプレートの転位から始めるため、腐食後に形成されたGaNマイクロピラー(ナノピラー)の転位密度が極めて小さく、比較的小さな貫通転位密度のGaN厚膜を得ることができることにある。以上の相違点を除き、比較実施例8は比較実施例4と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0056】
比較実施例9と比較実施例5との相違点は、基板に対して先に電気化学的腐食を行い、詳細が本会社の既存の特許CN102163545Aを参照し、腐食がGaNテンプレートの転位から始めるため、腐食後に形成されたGaNマイクロピラー(ナノピラー)の転位密度が極めて小さく、比較的小さな貫通転位密度のGaN厚膜を得ることができることにある。以上の相違点を除き、比較実施例9は比較実施例5と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0057】
比較実施例10と比較実施例6との相違点は、基板に対して先に電気化学的腐食を行い、詳細が本会社の既存の特許CN102163545Aを参照し、腐食がGaNテンプレートの転位から始めるため、腐食後に形成されたGaNマイクロピラー(ナノピラー)の転位密度が極めて小さく、比較的小さな貫通転位密度のGaN厚膜を得ることができることにある。以上の相違点を除き、比較実施例10は比較実施例6と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0058】
基板の分離、外形加工又は研磨・バフ磨き等の加工過程及び関連デバイスのエピタキシャル製造過程についての評価
上記実施例1~10を評価し、その中で、実施例1、2、4は加工過程において砕裂が既に発生しており、実施例3、6は加工過程において裂開が既に発生している(砕裂又は裂開が発生したが、テストに影響せず、しかしながら、関連デバイスのエピタキシャル製造に参加しない)。ここで、裂開とはひびの数が3つよりも小さいことを意味し、砕裂とはひびの数が3つ以上であることを意味する。
【0059】
実施例5、7、8、9、10の場合にMOCVDでレーザー装置構造をエピタキシャル成長させ、具体的な構造は図6に示される。該成長条件は、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム及びビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムをガリウム、アルミニウム、インジウム、マグネシウム原料物質として用い、NHを窒素原料物質として用い、シランガスをドープ原料として用い、Hをキャリアガスとしてコールドウォール加熱システムに通じて、自立性GaN基板上にデバイス構造をエピタキシャル成長させる。次に、エピタキシャル成長後の実施例の表面状況を観察し、その結果は表1.1~表1.4に示される。実施例8の表面に裂開現象が生じる。以上の結果から見れば、Ave[ρTDФD*tan(αФD)]>1E6cm-2の自立性GaN基板2全体の応力が比較的大きく、加工過程において砕裂しやすく、Δ/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]>50%の自立性GaN基板2の局所的な応力が比較的大きく、加工過程において裂開しやすく、加工過程において裂開しなくても、関連デバイスを更にエピタキシャルさせた後にも裂開しやすい。
【0060】
比較実施例11
直径50mmのGaN基板の制御状況(比較実施例1~10)に応じて直径100mm以上のGaN基板を製造するとき、1~4、6、8スキームを用いなくなる。本実施例は直径105mm、転位密度7E7cm-2のGaNテンプレートを基板1として用い、直接にHVPE法でGaN厚膜を成長させ、その成長方法は比較実施例5に類似し、その相違点は成長厚さを約1000μmのGaN厚膜に制御することである。次に、レーザー剥離技術で基板とGaN厚膜を分離し、分離後の自立性GaN結晶を、参照辺を有する特定の円形に外形加工し、更に平面研磨して表面の平坦化を実現し、次に表面バフ磨きを行い、これにより、比較実施例11の自立性GaN基板を得て、該基板の直径を100mm、厚さを600μmに制御する。
【0061】
次に、該自立性GaN基板に対して二光子励起フォトルミネッセンステストを実行する。テスト方法は比較実施例1と同じであり、次に該自立性GaN基板上の9つの点の位置でそれぞれ二光子励起フォトルミネッセンスマップをテストし、9つの三次元転位イメージングマップを取得する。各三次元転位イメージングマップを計算し、表2.1~表2.2に示すように、まず貫通転位密度ρTDФ1を取得し、次に各貫通転位傾斜角αを取得し、すべての貫通転位傾斜角の平均値αФ1を計算し、更に9つの三次元転位イメージングマップデータを統計分析し、それぞれ9つの点の位置での貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積ρTDФ1*tan(αФ1)を取得し、平均値Ave[ρTDФD*tan(αФD)]及び貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商(9つの積値の均一性)Δ/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を取得する。表2.1~表2.2に実施例11~14の結果を示す。
【0062】
比較実施例12
比較実施例12と比較実施例11との相違点は、転位密度5E8cm-2のGaNテンプレートを基板1として用い、基板1に対して先に電気化学的腐食を行い、詳細が本会社の既存の特許CN102163545Aを参照し、腐食がGaNテンプレートの転位から始めるため、腐食後に形成されたGaNマイクロピラー(ナノピラー)の転位密度が極めて小さく、比較的小さな貫通転位密度のGaN厚膜を得ることができることにある。以上の相違点を除き、比較実施例12は比較実施例11と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0063】
比較実施例13
比較実施例13と比較実施例12との相違点は、転位密度7E7cm-2のGaNテンプレートを基板1として用いることにあり、以上の相違点を除き、比較実施例13は比較実施例12と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0064】
比較実施例14
比較実施例14と比較実施例13との相違点は、HVPEでGaN厚膜を成長させる成長速度を高速度に制御する条件(>150um/h)において成長させ、1040度の高温で6時間以上成長させ、厚さが約1000μmのGaN厚膜を得ることにある。以上の相違点を除き、比較実施例14は比較実施例13と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0065】
基板の分離、外形加工又は研磨・バフ磨き等の加工過程及び関連デバイスのエピタキシャル製造過程についての評価
上記実施例11~14を評価し、その中で、実施例11は加工過程において既に砕裂しており、実施例14は加工過程において既に裂開している(砕裂又は裂開したが、テストに影響せず、しかしながら、関連デバイスのエピタキシャル製造に参加しない)。
【0066】
実施例12、13の場合にMOCVDでレーザー装置構造をエピタキシャル成長させ、具体的な構造は図6に示される。該成長条件は、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム及びビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムをガリウム、アルミニウム、インジウム、マグネシウム原料物質として用い、NHを窒素原料物質として用い、シランガスをドープ原料として用い、Hをキャリアガスとしてコールドウォール加熱システムに通じて、自立性GaN基板上にデバイス構造をエピタキシャル成長させる。次に、エピタキシャル成長後の実施例の表面状況を観察し、その結果は表2.1~表2.2に示される。実施例12の表面に裂開現象が生じる。以上の結果から見れば、Ave[ρTDФD*tan(αФD)]>5E5cm-2の自立性GaN基板2全体の応力が比較的大きく、加工過程において砕裂しやすく、Δ/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]>40%の自立性GaN基板2の局所的な応力が比較的大きく、加工過程において裂開しやすく、加工過程において裂開しなくても、関連デバイスを更にエピタキシャルさせた後にも裂開しやすい。
【0067】
表1.1
【0068】
表1.2
【0069】
表1.3
【0070】
表1.4
【0071】
表2.1
【0072】
表2.2
【0073】
上記実施例では、裂開とは自立性GaN基板の内部にひびが生じるが、基板を2枚又は複数枚に分割する程度にならない状況を指し、該ひびは自立性GaN基板の内部に上下表面を貫通しないひびであってもよく、上下表面を貫通するひびであってもよく、裸眼で見えるひびとして定義され、
破片とは自立性GaN基板にひびが生じ、且つ自立性GaN基板を少なくとも2枚以上に分割する状況を指す。
【0074】
以上から分かるように、第1実施例では、自立性GaN基板の9つの点の位置での貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積ρTDФ1*tan(αФ1)については、その平均値Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を1E6cm-2以下に設定し、従って、自立性GaN基板2の貫通転位による巨視的な応力が比較的小さく、基板の分離、外形加工又は研磨・バフ磨き過程又は該基板上での関連デバイスのエピタキシャル製造過程においてGaN基板に破片が発生することを効果的に抑えることができる。貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商(9つの積値の均一性)Δ/Ave[ρTDФD*tan(αФD)]を50%以下に設定する。従って、自立性GaN基板2の貫通転位による微視的な応力が比較的小さく、これにより、微視的な応力のより均一な分布を実現することができる。基板の分離、外形加工又は研磨・バフ磨き過程又は該基板上での関連デバイスのエピタキシャル製造過程においてGaN基板が裂開することを効果的に抑えることができる。ただし、より好ましくは、1mm円内のαФ1の値が比較的小さい。局所的な微少領域範囲内のαが比較的小さい場合、局所的な領域の微視的な応力が小さく、そうでなければ、局所的な範囲内の応力がα角につれて正接関数上昇を示し、局所的な微視的な応力が大きいと、GaNが局所的に裂開しやすくなってしまう。また、本発明者が長期間の研究において発見したことは、貫通転位密度と貫通転位傾斜角の正接値との積の最大値と最小値との差分を平均値で割った商(9つの積値の均一性)を必ず50%以内に制御しなければならず、このようにGaN基板が裂開することを効果的に抑えることができる。そうでなければ、基板の分離、外形加工又は研磨・バフ磨き過程に問題がなくても、該基板上での関連デバイスのエピタキシャル製造過程、例えばレーザー装置のエピタキシャルシートの製造過程においてGaN基板が依然として裂開することになる。
【0075】
当業者にとっては、本発明は上記例示的な実施例の詳細に限らないことが明らかであり、且つ本発明の主旨又は基本特徴から逸脱しない限り、他の具体的な形式で本発明を実現することができる。従って、どの点から見ても、いずれも実施例を非制限的で例示的なものとして見なすべきであり、本発明の範囲は上記説明ではなく添付の特許請求の範囲により限定され、従って、特許請求の範囲の等価要件の意味及び範囲内に入るあらゆる変更が、本発明内に含まれることが意図される。
【0076】
また、理解されるように、本明細書は実施形態に基づき記述するものであるが、各実施形態は1つの独立した技術案だけを含むことを意味しなく、明細書のこのような叙述方式は単に明確にするためのものであり、当業者は明細書を全体とすべきであり、各実施例に係る技術案は適宜に組み合わせられて当業者の理解できる他の実施形態として構成され得る。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
【国際調査報告】