(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】SSEA-4結合メンバー
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230502BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230502BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230502BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230502BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230502BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230502BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230502BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230502BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C12N5/0783
C12Q1/04
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022514814
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2020074878
(87)【国際公開番号】W WO2021044039
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520104123
【氏名又は名称】スキャンセル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デュラント,リンダ ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】チュア,チアシン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA14
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QS10
4B063QS12
4B063QS33
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4B064CC15
4B064CC24
4B064DA05
4B064DA14
4B065AA90X
4B065BA25
4B065BB19
4B065BB34
4B065BD14
4B065CA44
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BA01
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、in vivoおよびin vitroの両方でステムメモリーT細胞(TSCM)のサブセットを単離、活性化、および増殖させるための標的としてその後使用され得る、ステムメモリーT細胞(TSCM)上の発生段階に特異的な胚性抗原4(SSEA-4)の発現に関連する。またこれは、SSEA-4に結合し、TSCMを標的とする医薬抗体組成物およびその使用のための方法に関する。本開示の抗体は、SSEA-4糖脂質を認識し、TSCMの増殖を誘導し、血液由来のこの固有の集団を選別するために使用されて、形質導入T細胞受容体(TCR)、形質導入キメラ抗原受容体(CAR)-Tの養子T細胞移入のためまたは造血幹細胞移植用の細胞のための臨床的な増殖を行うことができる。使用方法として、限定するものではないが、がんの治療および診断における使用方法が挙げられる。例は、表記F2811.72を有する抗体に関連していた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)に特異的に結合することができ、ステムメモリーT細胞(T
SCM)を標的とすることができる、単離された特異的な結合メンバー。
【請求項2】
糖脂質上でSSEA-4に結合できる、請求項1に記載の結合メンバー。
【請求項3】
ステムメモリーT細胞(T
SCM)の増殖を誘導できる、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項4】
SSEA-3に結合しない、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項5】
mAb FG2811.72またはキメラのFG2811.72(CH2811/CH2811.72)、またはそれらのフラグメントである、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項6】
二重特異性である、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項7】
二重特異性の結合メンバーが、さらにCD3に対して特異的である、請求項7に記載の結合メンバー。
【請求項8】
図2aの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)、および105~113(CDRH3)のアミノ酸配列から選択される1つ以上の結合ドメインを含む、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項9】
図2bの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)、および105~113(CDRL3)のアミノ酸配列から選択される1つ以上の結合ドメインを含む、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項10】
前記結合メンバーが、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のうちの1つ以上を含む軽鎖可変配列であって、
LCDR1が、SSVNYを含み、
LCDR2が、DTSを含み
LCDR3が、FQASGYPLTを含む、
軽鎖可変配列と、
HCDR1、HCDR2、およびHCDR3のうちの1つ以上を含む重鎖可変配列であって、
HCDR1が、GFSLNSYGを含み、
HCDR2が、IWGDGSTを含み、
HCDR3が、TKPGSGYAFを含む、
重鎖可変配列と
を含む、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項11】
前記結合ドメインが、ヒト抗体フレームワークにより担持されている、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項12】
前記結合メンバーが、
図2aのアミノ酸配列の残基1~126を含むVHドメイン、および/または
図2bのアミノ酸配列の残基1~123を含むVLドメインを含む、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項13】
前記結合メンバーが、抗体、抗体フラグメント、Fab、(Fab’)2、scFv、Fv、dAb、Fd、またはジアボディである、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項14】
前記結合メンバーが、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ化抗体である、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項15】
治療に使用するための、先行する請求項のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項16】
がんを予防、処置、または診断する方法に使用するための、請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバー。
【請求項17】
がんに対する防御免疫応答を亢進する方法であって、請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項18】
前記結合メンバーが、任意選択でがんワクチンであるさらなる免疫原性作用物質と共に投与するように調製されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバーをコードする配列を含む核酸。
【請求項20】
がんの診断のための方法であって、個体由来のサンプル中の糖脂質に結合したグリカンSSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)を検出するために請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバーを使用するステップを含む、方法。
【請求項21】
請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバーと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項22】
ex vivoでステムメモリーT細胞(T
SCM)の増殖を誘導する方法であって、ステムメモリーT細胞(T
SCM)を請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバーと接触させるステップを含む、方法。
【請求項23】
請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバーを含む、ステムメモリーT細胞(T
SCM)の増殖を誘導するための細胞培養培地。
【請求項24】
請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバーでステムメモリーT細胞(T
SCM)上のSSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)の存在を検出することにより、前記細胞を同定する方法。
【請求項25】
請求項1~14のいずれかに記載の結合メンバーでステムメモリーT細胞(T
SCM)上のSSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)の存在を検出することにより、前記細胞を精製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、in vivoおよびin vitroの両方でステムメモリーT細胞(TSCM)のサブセットを単離、活性化、および増殖させるための標的としてその後使用され得る、ステムメモリーT細胞(TSCM)上の発生段階に特異的な胚性抗原4(SSEA-4)の発現に関連する。またこれは、SSEA-4に結合し、TSCMを標的とする医薬抗体組成物およびその使用のための方法に関する。本開示の抗体は、SSEA-4糖脂質を認識し、TSCMの増殖を誘導し、血液由来のこの固有の集団を選別するために使用されて、形質導入T細胞受容体(TCR)、形質導入キメラ抗原受容体(CAR)-Tの養子T細胞移入のためまたは造血幹細胞移植用の細胞のための臨床的な増殖を行うことができる。使用方法として、限定するものではないが、がんもしくは長期間ウイルスに感染した患者におけるかまたは化学療法後におけるTSCMのin vivoでの刺激のためのアゴニスト(IgG2)キメラモノクローナル抗体(mAb)としてのがんの治療および診断における使用方法が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
SSEAは、グロボ系列の糖脂質であり、3種:SSEA-1、SSEA-3、およびSSEA-4から構成されている(Suzuki et al. 2013)。シアリルガラクトシルグロボシド(シアリルGb5Cer、SGG、MSGG)またはSSEA-4は、酵素ST3 β-ガラクトシドα-2,3-シアリルトランスフェラーゼ2(ST3GAL2)によりSSEA-3から合成されるグロボ系列のガングリオシドである(Saito et al. 2003)。これらグロボシドの発現は、精製の複雑さおよびこれらの合成に関与する遺伝子の数のために、主にmAbにより定義されている。この手法の主な限定は、これらmAbの大部分は特異性が低く、個別のグロボシドの発現の解釈を困難なものにしているという点である。この注意事項により、SSEA-4の発現は、以下のように定義されている:SSEA-4は、細胞膜のグリコシナプスの成分である。ヒトの着床前発生の間、SSEA-4は、最初に、内部細胞塊の多能性細胞で観察され、その後、分化後に消失する(Tondeur et al. 2008)。出生後、ヒトの精巣および卵巣における生殖幹細胞(Harichandan, Sivasubramaniyan, and Buhring 2013)ならびに間葉系幹細胞(Gang et al. 2007)ならびに心筋幹細胞(Sandstedt et al. 2014)は、SSEA-4を発現する(Gang et al. 2007)。これは、ヒト胚性癌細胞(ヒト奇形癌腫細胞;3つ全ての胚葉の組織誘導体を含む腫瘍)での動物の免疫処置を介して同定されており(Shevinsky et al. 1982; Kannagi et al. 1983; Wright and Andrews 2009)、ヒト胚性幹細胞およびそれらの悪性対応物、胚性癌細胞を定義するための細胞表面マーカーとして広く使用されている(Kannagi et al. 1983; Lou et al. 2014; Henderson et al. 2002)。固形腫瘍では、SSEA-4の過剰発現は、神経膠芽腫(グレードIの約55%、グレードIIの約55%、グレードIIIの約60%、およびグレードIVの星状細胞腫の約69%)(Lou et al. 2014)、腎細胞癌(Saito et al. 1997)、乳がん細胞および乳がん幹細胞(Huang et al. 2013)、類基底細胞肺がん(Gottschling et al. 2013)、卵巣上皮癌(Ye et al. 2010)、ならびに口腔がん(Noto et al. 2013)で見出されている。がんに関連し、かつ/またはがんを予測する超特異的なグリカンマーカーを同定し、幅広いスペクトラムのがんの診断および処置に使用するためのマーカーに対する抗体を開発することに多くの関心が集まっている。SSEA-4は、胚性幹細胞で発現し、成年幹細胞でダウンレギュレートされるグリカンである。しかしながら、予想外なことに本発明者らは、この発現がヒトおよびマウスのTSCMで保持されることを示した。TSCMに固有のマーカーの記載がなされたのは、今回が初めてである。
【0003】
メモリーT細胞(CD4+およびCD8+メモリーT細胞を含む)は、いくつかのサブセット:TSCM、セントラルメモリーT細胞(TCM)、トランジショナルメモリーT細胞(TTM)(CD4+メモリーT細胞でのみ記載)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、およびターミナルエフェクターT細胞(TTE)を含む(Mateus et al. 2015; Takeshita et al. 2015)。ヒトの臨床試験でより強力な抗腫瘍細胞をもたらすために、ナイーブなセントラルメモリーリンパ球または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)由来のTSCM細胞の産生を誘導するためにどの方法を使用すべきかに関しては、議論が続いている(Klebanoff, Gattinoni, and Restifo 2012)。
【0004】
ヒトTSCM細胞は、長期間生存するメモリーT細胞集団として記載されており、ナイーブT細胞と表現型の類似性を共有しており(CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+、CD27+、CD28+、およびIL-7Rα+)、またCD95、IL-2Rβ(CD122)、およびCXCR3を著しく発現している(Gattinoni et al. 2011)。TSCM細胞は、抗原刺激により生じ、有意に高い増殖能および再構成能を呈する、クローンにより増殖した始原的なメモリーTのサブセットである(Gattinoni et al. 2011)。
【0005】
長期間持続する免疫の維持はTSCM細胞に依存すると考えられており、これは、小さな集団を構成し、最も分化度が低いメモリーT細胞のサブセットであり、血液におけるCD4+およびCD8+T細胞集団の合計の約2~4%である(Gattinoni et al. 2011; Lugli, Gattinoni, et al. 2013)。TSCM細胞は、Sca-1(幹細胞抗原1)、CD122、およびBcl-2を発現する有糸分裂後のCD44lowCD62highCD8+T細胞の新規のサブセットを報告したZhangら(Zhang et al. 2005)により、移植片対宿主病(GVHD)のマウスモデルで最初に観察された。このT細胞集団は、GVHD反応において全てのアロジェニックなT細胞のサブセットを産生および維持することができた。これらアロ反応性のCD8+T細胞は、高い自己再生能および多分化能を有することが示されており、TCM、TEM、およびTTE細胞へ分化することができた(Chahroudi, Silvestri, and Lichterfeld 2015; Zhang et al. 2005)。ヒトにおいては、一例は、ワクチン接種後のナイーブな黄熱(YF)に特異的なCD8+T細胞集団の同定に由来しており、これは、25年超の間安定して維持されており、ex vivoで自己再生することができた(Fuertes Marraco et al. 2015)。TSCM細胞は、マーカーCD95と共にいくつかのナイーブなマーカーの同時発現に基づきフローサイトメトリーにより同定することができる(Mahnke et al. 2013)。これら細胞の頻度の低さが詳細な性質決定を限定しているため、抗原に特異的なTSCM細胞に関する報告は限定されている。たとえば、総ヒトT細胞の1%未満が、CD8+CD45RA+CCR7+CD127+CD95+のウイルスに特異的なTSCM細胞と定義されている。ヒトCMVに特異的なTSCM細胞は、約1/10,000個のT細胞の頻度の、他のサブセットで観察される頻度と同様の頻度で検出され得る(Schmueck-Henneresse et al. 2015; Di Benedetto et al. 2015)。抗原に特異的なTSCM細胞が、リンパ節に優先的に存在し、脾臓および骨髄では少なく存在することが示されている(Lugli, Dominguez, et al. 2013)。
【0006】
TSCM細胞は、特異的な抗腫瘍応答および腫瘍に対する長期間の免疫監視に主要な役割を果たし得る(Darlak et al. 2014; Coulie et al. 2014; Martin 2014)。また、優れた持続能を有するTSCM細胞は、長命のT細胞のメモリーの維持における重要なプレイヤーとして注目を浴びつつあり、よって、がんの養子移入ベースの免疫療法で使用するための魅力的な集団とみなされている。しかしながら、これらの産生を調節する分子シグナルは、依然として定義が不十分である。養子免疫療法の状況で行われる実験は、T細胞の分化を管理する2つの鍵となる転写因子、Tボックス転写因子(T-bet)およびEomesodermin(eomes:エオメス)を欠いているT細胞が、抗腫瘍応答を誘発できず、発現したマーカーがTSCMと一致したことを明らかにした。よって、TSCMの抗腫瘍の可能性は、それらの内因的な活性よりも、エフェクターメモリー細胞へのさらなる分化により依存していると思われる(Li et al. 2013)。
【0007】
養子T細胞療法は、がん免疫療法に有効な戦略ではあるが、注入したT細胞は、高頻度で、機能的に消耗され、結果として、患者へ移植した後に不十分な予後を提供する。腫瘍抗原に特異的なTSCM細胞の養子移入は、この欠点を克服している。これは、TSCM細胞がナイーブT細胞に近いが、著しく増殖性であり、長期間生存し、抗原の刺激に応答して多数のエフェクターT細胞を産生するためである。天然のTCRまたは人工的なCARに由来する腫瘍特異性を有するT細胞を使用する養子細胞療法は、後期の臨床試験に達している。CARを発現するT細胞を使用したがんの免疫療法による処置は、養子細胞療法において比較的新規の手法である。CAR-T細胞は、特定のB細胞の悪性化において顕著な成功を示しているが、固形がんに対する奏効率は、今日まであまり成功してはいない。この戦略は、抗体様認識細胞外ドメインおよびT細胞シグナリング細胞内ドメインからなる新規の合成受容体をT細胞に遺伝的に装備することに基づく。この受容体の抗体由来の結合ドメインにより提供されるインタクトな抗原の直接的な同定により、T細胞は、主要組織適合抗原(MHC)が介在する抗原認識の制限を迂回することができ、これにより、所定のCARが、そのMHCのハプロタイプに関わらず、全ての患者で使用できる。MHCからの独立性はCAR-T細胞に基本的な抗腫瘍性の利点をもたらす。何故ならば、一部の腫瘍細胞はTCRが介在する免疫応答を回避するためにMHC発現をダウンレギュレートするためである(Garrido et al. 1993)。しかしながら、目的のCARを発現するように操作されたT細胞は、依然として腫瘍細胞を認識および根絶できる。さらに、CAR-T細胞を使用することにより、潜在的な腫瘍標的の範囲をTCRベースの認識の範囲を超えるエピトープまで広げることができ、たとえば、腫瘍の標的化でタンパク質だけではなく炭水化物(Mezzanzanica et al. 1998)および糖脂質(Yvon et al. 2009)をも含めることが可能である。
【0008】
増殖および養子移入のために選択されるT細胞の性質決定は、移入された細胞の持続の決定に重要である。感染症またはがんの存在下で抗原に特異的なT細胞は、増殖でき、病原体を迅速に排除することに特化したエフェクターT細胞、および長期間持続でき、疾患の再発を防御し得るメモリーT細胞に分化できる。メモリーT細胞の区画は、不均一であり、特有の性質を有する複数のサブセットを包有する。免疫学的なメモリーのスペクトラムは、ナイーブT細胞のようにCD45RA、CCR7、およびCD62Lを発現し、同様にCD95を発現するTSCM細胞を含む。TSCM細胞は、セントラルメモリーT細胞(TCM)およびエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)、およびターミナルエフェクターT細胞(TTE)に分化し得、またこれらは、段階的な移植実験により示されるように、自己再生に関して顕著な可能性を有している(Cieri et al. 2013)。抗原に特異的なT細胞の総合的なメモリー区画の維持に対する異なるメモリーサブセットの寄与は、TSCM細胞が低頻度であることから完全には解明されてはおらず、これらの詳細な性質決定は限定されている(Schmueck-Henneresse et al. 2015)。TSCM細胞を産生、増殖し、がん細胞に対するTSCM細胞の再支持を可能にする戦略が、完全に定義される必要がある。Cieriおよびその同僚は、ナイーブT細胞を抗CD3/CD28および低用量のIL-7およびIL-15でプライミングすることにより多数のTSCM細胞が産生することを記載しており、ナイーブな前駆体からin vitroでTSCM細胞を産生、増殖、および遺伝子操作することが可能であることを示唆している。しかしながら、増殖した細胞は、もはやCD45RAを発現していないがCD45ROを発現しており、よってこれらはTCMであり得る。さらに、in vitroで産生されたTSCM細胞は、免疫欠損マウスへの養子移入の後に高い増殖能を呈し、この知見は天然に存在するTSCM細胞と一致している(Gattinoni and Restifo 2013; Cieri et al. 2013)。既知のメモリーT細胞集団の中で、TSCM細胞のサブセットは、有効なワクチンの設計および開発ならびにT細胞ベースの治療に深く関係している(Restifo and Gattinoni 2013; Gattinoni et al. 2011; Lugli, Dominguez, et al. 2013)。TSCM細胞は、細胞性(CAR-T)免疫療法の臨床的な開発を促進し得る(Han et al. 2013; Akinleye, Avvaru, et al. 2013; Breton et al. 2014; Akinleye, Chen, et al. 2013; Novero et al. 2014; Suresh et al. 2014)が、循環するリンパ球におけるTSCM細胞の数の少なさが、これらの手法を限定している(Gattinoni and Restifo 2013)。
【0009】
グリコシル化の変化は、がん細胞の特性であり、いくつかのグリカン構造は、よく知られている腫瘍マーカーである(Meezan et al. 1969; Hakomori 2002)。これらの異常な変化は、N結合したグリカンの分枝の全体的な増大(Lau and Dennis 2008)およびシアル酸含有量の全体的な増大(van Beek, Smets, and Emmelot 1973)、特定のグリカンエピトープの喪失または過剰発現(Sell 1990; Hakomori and Zhang 1997; Taylor-Papadimitriou and Epenetos 1994)、トランケートされたグリカンの持続または新規グリカンの出現(Huang et al. 2013)を含み得る。実際に、多くの腫瘍が、特定の糖脂質、特にガングリオシド、スフィンゴ糖脂質(GSL)、およびグリカン鎖に結合したシアル酸の発現を増大させている。多くの試験は、異常なグリコシル化が、最初の発がん性の形質転換に寄与しており、腫瘍の侵襲および転移の誘導に重要な役割を果たしていることを表している(Hakomori 2002)。幅広い範囲のGSLの過剰発現が、様々な種類のヒト悪性腫瘍で同定されている:メラノーマにおけるGD4(Nudelman et al. 1982)、神経外胚葉性腫瘍におけるGD2(Cahan et al. 1982)、小細胞肺癌におけるフコシル-GM1(Nilsson et al. 1986)、乳癌および卵巣癌におけるGlobo-H(Chang et al. 2008)、ならびに乳がんおよび乳がん幹細胞における発生段階に特異的な胚性抗原(SSEA)-3およびSSEA-4(Chang et al. 2008)。
【0010】
がん免疫療法の成功は、良好な特異性および強力な殺滅を有するmAbの作製に依存している。グライコームの複雑さおよび悪性の形質転換に関連するグリコシルトランスフェラーゼの発現の変化は、がん細胞に関連する炭水化物を優れた標的にする(Christiansen et al. 2014; Dalziel et al. 2014; Daniotti et al. 2013; Hakomori 2002)。特に糖脂質は、それらの密な細胞表面分布、移動度、および膜のマイクロドメインとの関連(これらは全て、幅広い範囲の細胞シグナリングおよび接着特性におけるそれらの関与に寄与している)により魅力的である(Fuster and Esko 2005; Hakomori 2002; Hakomori 2008)。しかしながら、抗糖脂質抗体を作製することは、糖脂質はT細胞の支援を提供せず、mAbは通常低い親和性のIgMであるため、困難なタスクである。
【発明の概要】
【0011】
FG2811.72(またFG2811とも略される)mAbは、グリコシルを操作したマウス線維芽細胞株のSSEA-3/4-LMTKで免疫処置したマウスから作製したマウスIgG3 mAbである。興味深いことに、FG2811 mAbは、SSEA-4を特異的に認識した。SSEA-4は、さらなる末端のシアル酸残基を有することを除き、構造の観点からSSEA-3と類似している。α-2,3-シアリルトランスフェラーゼは、ST3GAL2遺伝子によりコードされており、SSEA-3のSSEA-4へのシアリル化に寄与する主要な酵素であることが示唆されている。FG2811 mAbは、SSEA-4に特異的に結合し、SSEA-3と交差反応しない。これは、以前に派生した、本発明者らがSSEA-3およびフォルスマンとも結合することを見出したmAb MC813、ならびにSSEA-3およびGlobo-Hと結合したMC613とは対照的である。MC813とは対照的に、FG2811は、赤血球に結合せず、これら細胞がSSEA-4を発現せず、MC813の結合がSSEA-3/フォルスマンの発現に関連し得ることが示唆される(Cooling and Hwang 2005)。米国特許公開公報第2010/0047827号は、SSEA-4に結合するmAbを記載しているが、出願人らはこれが、他のグロボシドのある範囲により発現され得る末端の二糖Neu5Ac(α2-3)Galのみに結合するだけでなく、SSEA-3およびGlobo-Hにも結合することもまた示している。米国特許公開公報第2016/0289340号は、いくつかの新規の抗SSEA4結合mAbを開示しており、これらは特異的と思われるが、それらのアッセイにおいて、MC813もまた本発明者らの結果とは対照的にSSEA-4に特異的である。正常な血液の結合のスクリーニングは、MC813ではなくFG2811が、小さな集団のリンパ球を認識したことを明らかにした。これは、TSCMとしてさらに特徴づけられた。以前の、SSEA-3およびフォルスマンの抗原と交差反応するSSEA-4 mAb(MC813)とは対照的に、本開示は、TSCMの増殖および維持を刺激し得る、著しくSSEA-4に特異的なmAbのFG2811を記載している。
【0012】
一態様では、本発明は、SSEA-4 Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glcに特異的に結合する特異的な結合メンバーを提供する。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、本発明の特異的な結合メンバーを使用してステムメモリーT細胞(TSCM)上のSSEA-4 Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glcの存在を検出することにより、上記細胞を同定する方法を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、本発明の特異的な結合メンバーを使用してステムメモリーT細胞(TSCM)上のSSEA-4 Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glcの存在を検出することにより、上記細胞を精製する方法を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、ステムメモリーT細胞(TSCM)を標的化できる特異的な結合メンバーを提供する。さらなる態様では、本発明は、ステムメモリーT細胞(TSCM)に特異的に結合できる特異的な結合メンバーを提供する。本発明の一部の態様では、特異的な結合メンバーは、ステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を誘導できる。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、SSEA-4 Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glcに結合する特異的な結合メンバーであって、単離された抗体またはその結合フラグメントもしくはメンバーが、超特異的(ultra-specific)である、特異的な結合メンバーを提供する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、SSEA-4 Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glcに結合する特異的な結合メンバーであって、ステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を刺激できる、特異的な結合メンバーを提供する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、SSEA-4 Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glcに結合する特異的な結合メンバーであって、ステムメモリーT細胞(TSCM)を活性化できる、特異的な結合メンバーを提供する。
【0019】
本発明の一部の態様では、本発明の特異的な結合メンバーは、特異的な結合メンバーの非存在下でのステムメモリーT細胞(TSCM)と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%、ステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を刺激できる。
【0020】
本発明の一部の態様では、ステムメモリーT細胞(TSCM)の活性化は、特異的なマーカーの産生によるか、または細胞の機能的な作用の増大により、測定され得る。本発明の一部の態様では、本発明の特異的な結合メンバーは、特異的な結合メンバーの非存在下でのステムメモリーT細胞(TSCM)と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%、ステムメモリーT細胞(TSCM)を活性化できる。
【0021】
本発明の一部の態様では、特異的な結合メンバーは、約10-8M未満の親和性(Kd)で、糖脂質により提示されるNeu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glcに結合できてよい。特異的な結合メンバーは、約10-9Mの親和性(Kd)で糖脂質により提示されたものに結合できてもよい。特異的な結合メンバーは、約10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12M未満の親和性(Kd)で糖脂質により提示されたものに結合できてもよい。
【0022】
本発明のさらなる態様は、重鎖結合ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3と、軽鎖結合ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3とを含む特異的な結合メンバーを提供する。本発明は、
図2aおよび2bの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)、および105~113(CDRH3)のアミノ酸配列から選択される1つ以上の結合ドメインを含む特異的な結合メンバーを提供し得る。
【0023】
本発明の特異的な結合メンバーは、
図2aの1~126(VH)として実質的に提示されるアミノ酸配列を含み得る。本発明の一実施形態では、本発明の特異的な結合メンバーは、
図2aのアミノ酸配列の残基105~113(CDRH3)として実質的に提示されるアミノ酸配列を含む、結合ドメインを含む。本発明のこの実施形態では、特異的な結合メンバーは、
図2aに示されるアミノ酸配列の残基27~38(CDRH1)および残基56~65(CDRH2)として実質的に提示される結合ドメインのうちの1つまたは両方、好ましくは両方をさらに含み得る。
【0024】
別の態様では、本発明は、
図2bの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)、および105~113(CDRL3)のアミノ酸配列から選択される1つ以上の結合ドメインを含む特異的な結合メンバーを提供する。
【0025】
本発明の一態様では、結合ドメインは、
図2bのアミノ酸配列の残基105~113(CDRL3)として実質的に提示されるアミノ酸配列を含み得る。この実施形態では、特異的な結合メンバーは、
図2bに示されるアミノ酸配列の残基27~38(CDRL1)および残基56~65(CDRL2)として実質的に提示される結合ドメインのうちの1つまたは両方、好ましくは両方をさらに含み得る。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、可変重鎖および/または軽鎖は、抗体FG2811のHCDR1~3およびLCDR1~3を含み得る。本発明の一部の実施形態では、可変重鎖および/または軽鎖は、抗体FG2811のHCDR1~3およびLCDR1~3と、FG2811のフレームワーク領域とを含み得る。
【0027】
同じまたは異なる配列の複数の結合ドメイン、またはそれらの組み合わせを含む特異的な結合メンバーは、本発明の範囲内に含まれる。各結合ドメインは、ヒト抗体フレームワークにより担持され得る。たとえば、1つ以上のフレームワーク領域は、ヒト全抗体またはその可変領域のフレームワーク領域で代用され得る。
【0028】
本発明の1つの単離された特異的な結合メンバーは、
図2bに示されるアミノ酸配列の残基1~123(VL)として実質的に提示される配列を含む。
【0029】
一部の実施形態では、
図2aのCDRの配列を有する特異的な結合メンバーは、
図2bのCDRの配列を有する特異的な結合メンバーと組み合わせられ得る。
【0030】
一実施形態では、特異的な結合メンバーは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のうちの1つ以上(すなわち1、2、または3つ)を含む軽鎖可変配列であって、
LCDR1が、SSVNYを含み、
LCDR2が、DTSを含み
LCDR3が、FQASGYPLTを含む、
軽鎖可変配列と、
HCDR1、HCDR2、およびHCDR3のうちの1つ以上(すなわち1、2、または3つ)を含む重鎖可変配列であって、
HCDR1が、GFSLNSYGを含み、
HCDR2が、IWGDGSTを含み、
HCDR3が、TKPGSGYAFを含む、
重鎖可変配列と
を含み得る。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、
図2aのアミノ酸配列の残基1~126を含むVHドメインと、
図2bのアミノ酸配列の残基1~123を含むVLドメインとを含む特異的な結合メンバーを提供する。
【0032】
特定の実施形態では、特異的な結合メンバーは、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である。本発明の一部の態様では、特異的な結合メンバーは、モノクローナル抗体である。本発明の一部の態様では、特異的な結合メンバーは、ポリクローナル抗体である。
【0033】
また本発明は、結合ドメインの配列が
図2に実質的に提示される通りである、上述の特異的な結合メンバーを包有する。よって、1つ以上の結合ドメインが、1~5、1~4、1~3、2、または1つのアミノ酸置換により、
図2に記載される結合ドメインと異なる、上述の特異的な結合メンバーが提供される。
【0034】
また本発明は、
図2に記載のVH配列およびVL配列と同じエピトープに結合する特性を有する特異的な結合メンバーを包有する。単離された抗体またはその結合フラグメントもしくはメンバーのエピトープは、単離された抗体またはその結合フラグメントもしくはメンバーが結合する抗原の領域である。2つの抗体またはその結合フラグメントもしくはメンバーは、それぞれが抗原に対する他の結合を競合的に阻害(遮断)する場合、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、1×、5×、10×、20×、または100×過剰な1つの単離された抗体またはその結合フラグメントもしくはメンバーは、競合する抗体を欠いている対照と比較して、競合結合アッセイで測定される場合に、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、90%、またはさらには99%、他の結合を阻害する(たとえば本明細書中参照により組み込まれている(Junghans et al. 1990)を参照されたい)。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、競合する特異的な結合メンバーは、
図2aの残基1~126のアミノ酸配列を有するVH鎖と、
図2bの残基1~123のアミノ酸配列を有するVL鎖とを含む抗体と、糖脂質にのみ結合したSSEA-4、Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glcに対する結合に関して競合する。
【0036】
好ましくは、競合する特異的な結合メンバーは、抗体、たとえばmAb、または本文書を通して記載される抗体フラグメントのいずれかである。
【0037】
本明細書中記載される望ましい特性を有する単一の原型mAb、たとえばFG2811 mAbが単離された後、当該分野で知られている方法を使用することにより、同様の特性を有する他のmAbを作製することは容易である。たとえば、例として参照により本明細書に組み込まれている(Jespers et al. 1994)の方法を使用して同じエピトープ、よって、原型mAbと同様の特性を有するmAbの選択が導かれ得る。ファージディスプレイを使用して、まず原型抗体の重鎖を、グリカンに結合するmAbを選択するため(好ましくはヒトの)軽鎖のレパートリーと対形成し、次に、新規の軽鎖を、原型mAbと同じエピトープを有する(好ましくはヒトの)グリカンに結合するmAbを選択するため(好ましくはヒトの)重鎖のレパートリーと対形成する。
【0038】
糖脂質にのみ結合したSSEA-4に結合でき、ADCCおよび/またはCDCを誘導し、VHドメインおよび/またはVLドメインにおいて
図2のVHドメインまたはVLドメインと少なくとも90%、95%、または99%同一であるmAbは、本発明に含まれる。90%、95%、または99%の同一性に対する言及は、VHドメインおよび/またはVLドメインのフレームワーク領域のみに対してであり得る。特に、CDR領域は同一であり得るが、フレームワーク領域は、最大1%、5%、または10%変動し得る。好ましくは、このような抗体は、少数の機能的に重要ではないアミノ酸の置換(たとえば保存的置換)、欠失、または挿入により、
図2の配列と異なる。本発明の全ての実施形態では、特異的な結合対は、抗体、または抗体フラグメント、Fab、(Fab’)2、scFv、Fv、dAb、Fd、またはジアボディであり得る。一部の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。本発明の抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、もしくはベニヤ化抗体(veneered antibody)であり得、またはいずれかの種の非ヒト抗体であり得る。一実施形態では、本発明の特異的な結合パートナーは、
図2aに記載の重鎖と
図2bに記載の軽鎖とを含むマウス抗体FG2811である。
【0039】
本発明の特異的な結合メンバーは、検出可能または機能的な標識を担持し得る。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、本発明の特異的な結合メンバーをコードする単離された核酸、および本発明の特異的な結合メンバーを調製する方法であって、上記結合メンバーの発現をもたらす条件下で上記核酸を発現させるステップと、上記結合メンバーを回収するステップとを含む、方法を提供する。SSEA-4に特異的に結合でき、本明細書中提供される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である特異的な結合メンバーをコードする単離された核酸は、本発明に含まれる。
【0041】
本発明の特異的な結合メンバーは、ヒトまたは動物の身体の処置または診断の方法、たとえば、患者(好ましくはヒト)の腫瘍を処置する方法であって、本発明の特異的な結合メンバーの有効量を上記患者に投与するステップを含む方法に、使用され得る。また本発明は、医薬で使用するため、好ましくは腫瘍の処置に使用するための本発明の特異的な結合メンバー、および腫瘍の診断または処置のための薬剤の製造における本発明の特異的な結合メンバーの使用を提供する。この腫瘍は、胃、結腸直腸、膵臓、肺、卵巣、または乳房の腫瘍であり得る。
【0042】
本明細書において、本発明の特異的な結合メンバーが結合する抗原が開示される。本発明の特異的な結合メンバーにより、好ましくは特異的に、結合できるSSEA-4が提供され得る。SSEA-4は、単離された形態で提供されてもよく、それに対するさらなる特異的な結合メンバーを開発するためのスクリーニングに使用され得る。たとえば、化合物のライブラリーは、SSEA-4に特異的に結合するライブラリーのメンバーに関してスクリーニングされ得る。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、胃、結腸直腸、膵臓、肺、卵巣、および乳房の腫瘍の診断または予後診断に使用するための、好ましくは本発明の第1の態様の、SSEA-4含有グリカン(すなわちNeu5Ac(α2 3)Gal(β1 3)GalNAc(β1 3)Gal(α1 4)Gal(β1 4)Glc)に結合できる単離された特異的な結合メンバーを提供する。
【0044】
本発明のさらなる態様では、ex vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を誘導する方法であって、ステムメモリーT細胞(TSCM)を本明細書の特異的な結合メンバーと接触させるステップを含む、方法が提供される。
【0045】
本発明のさらなる態様では、本発明の特異的な結合メンバーを含む、ステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を誘導するための細胞培養培地が提供される。
【0046】
本発明のさらなる態様では、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を誘導する方法であって、本発明の特異的な結合メンバーを対象に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0047】
本発明のさらなる態様では、治療に使用するための本発明の結合メンバーが提供される。本発明のさらなる態様では、患者を処置する方法であって、それを必要とする患者に本発明の特異的な結合メンバーを投与するステップを含む、方法が提供される。
【0048】
本発明のさらなる態様では、自己免疫疾患、HIV、成人T細胞白血病、または移植片対宿主病を処置する方法に使用するための本発明の特異的な結合メンバーが提供される。
【0049】
本発明のさらなる態様では、がんを処置または予防する方法であって、本発明の特異的な結合メンバーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0050】
本発明のさらなる態様では、長期間ウイルスに感染した患者を処置または予防する方法であって、本発明の特異的な結合メンバーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0051】
本発明のさらなる態様では、自己免疫疾患、HIV、成人T細胞白血病、または移植片対宿主病を処置または予防する方法であって、本発明の特異的な結合メンバーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0052】
本発明のさらなる態様では、ステムメモリーT細胞(TSCM)および本発明の特異的な結合メンバーを含む細胞培養物であって、増殖速度が、本発明の特異的な結合メンバーを伴わないステムメモリーT細胞(TSCM)を含む対応する細胞培養物と比較する場合に、少なくとも10%速い、細胞培養物が提供される。
【0053】
本発明の一部の態様では、ステムメモリーT細胞(TSCM)および本発明の特異的な結合メンバーを含む細胞培養物の増殖速度は、本発明の特異的な結合メンバーを伴わないステムメモリーT細胞(TSCM)を含む対応する細胞培養物と比較する場合に、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%速い。
【0054】
本発明のさらなる態様では、本発明の特異的な結合メンバーを使用してステムメモリーT細胞(TSCM)を精製する方法であって、細胞集団におけるステムメモリーT細胞(TSCM)の比率が、本発明の特異的な結合メンバーを使用して精製されていない対応する細胞集団と比較する場合に少なくとも約10%高い、方法が提供される。
【0055】
本発明の一部の態様では、精製した細胞集団におけるステムメモリーT細胞(TSCM)の比率は、本発明の特異的な結合メンバーを使用して精製されていない対応する細胞集団と比較する場合に少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%高い。
【0056】
本発明の一部の態様では、本発明の特異的な結合メンバーは、単離された抗体またはその結合フラグメントもしくはメンバーである。
【0057】
さらに本発明は、がんの診断のための方法であって、個体由来のサンプルにおけるSSEA4含有グリカンを検出するために本発明の特異的な結合メンバーを使用するステップを含む、方法を提供する。本発明の一部の診断方法では、結合メンバーにより検出されるグリカンのパターンは、個体の治療の選択肢を層別化するために使用され得る。
【0058】
本発明のこれらおよび他の態様を、以下でさらに詳述する。
【0059】
本明細書中使用される場合、「特異的な結合メンバー」は、互いに対して結合特異性を有する、分子の対のメンバーである。特異的な結合対のメンバーは、自然由来であり得るか、または全体的もしくは部分的に合成により作製され得る。分子対の1つのメンバーは、その表面上に、突起またはキャビティであり得る領域であって、分子対の他のメンバーの特定の空間的かつ正反対の構成に特異的に結合し、よってこれに相補的である領域を有する。よって、対のメンバーは、互いに特異的に結合する特性を有する。特異的な結合対の種類の例として、抗原-抗体、ビオチン-アビジン、ホルモン-ホルモン受容体、5受容体-リガンド、酵素-基質がある。本発明は、全般的に抗原-抗体の種類の反応に関するが、本明細書中定義される抗原に結合する小分子にも関連する。
【0060】
本明細書中使用される場合、「処置」は、ヒトまたは非ヒトの動物、好ましくは哺乳類に利益を与え得る全てのレジームを含む。処置は、既存の病態に関するものであってもよく、または防止的(予防的な処置)であり得る。
【0061】
本明細書中使用される場合、「腫瘍」は、組織の異常な増殖である。これは、局在化されていてもよく(良性)、または近くの組織を浸潤してもよく(悪性)、または遠くの組織を浸潤してもよい(転移性)。腫瘍は、がんを引き起こす新生物の増殖を含み、ならびに食道、結腸直腸、胃、乳房、卵巣、および子宮内膜の腫瘍、ならびに限定するものではないが白血球細胞を含むがん性組織または細胞株を含む。本明細書中使用される場合、「腫瘍」はまた、その範囲内に子宮内膜症を含む。
【0062】
用語「抗体」は、本明細書中使用される場合、天然であるかまたは部分的もしくは全体的に合成により作製されるかどうかに関わらず、イムノグロブリン分子およびイムノグロブリン分子の免疫学的に活性の部分、すなわち抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を表す。この用語はまた、抗体結合ドメインであるかまたは抗体結合ドメインと相同である結合ドメインを有する全てのポリペプチドまたはタンパク質を包有する。これらは、天然の供給源に由来してもよく、またはこれらは部分的もしくは全体的に合成により作製されてもよい。本発明の抗体の例として、イムノグロブリンのアイソタイプ(たとえばIgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)、ならびにそれらのアイソタイプのサブクラス;抗原結合ドメインを含むフラグメント、たとえばFab、scFv、Fv、dAb、Fd;ならびにジアボディがある。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。モノクローナル抗体は、「mAb」と表され得る。
【0063】
モノクローナル抗体および他の抗体を採取し、組み換えDNA技術を使用して元の抗体の特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子を産生させることが可能である。このような技術は、抗体の、イムノグロブリン可変領域またはCDRをコードするDNAを、異なるイムノグロブリンの定常領域または定常領域+フレームワーク領域に導入することを含み得る。たとえば、欧州特許公開公報第184187号、イギリス特許公開公報第2188638号、または欧州特許公開公報第239400号を参照されたい。抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞は、遺伝的変異または他の変化に供されてよく、これにより産生される抗体の結合特異性を変えてもよくまたは変えなくてもよい。
【0064】
抗体は多くの方法で修飾され得るため、用語「抗体」は、必要とされる特異性を有する結合ドメインを有する全ての特異的な結合メンバーまたは物質を包有すると解釈されるべきである。よってこの用語は、天然であるかまたは全体的もしくは部分的に合成であるかどうかにかかわらず、イムノグロブリン結合ドメインを含む全てのポリペプチドを含む、抗体、ヒト化抗体の抗体フラグメント、誘導体、機能的な均等物、および相同体を含む。よって、別のポリペプチドに融合した、イムノグロブリン結合ドメインを含むキメラ分子または均等物が含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現は、欧州特許公開公報第0120694号および同第0125023号に記載されている。ヒト化抗体は、非ヒト、たとえばマウスの抗体の可変領域と、ヒト抗体の定常領域とを有する修飾された抗体であり得る。ヒト化抗体を作製するための方法は、たとえば米国特許第5225539号に記載されている。
【0065】
全抗体のフラグメントが、抗原に結合する機能を行うことができることが示されている。結合フラグメントの例は、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなるFabフラグメント;(ii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iii)単一の抗体のVLドメインおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(iv)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al. 1989);(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの結合したFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(vii)一本鎖のFv分子(scFv)(ここでVHドメインおよびVLドメインは、2つのドメインを結合させるペプチドリンカーにより結合することにより抗原結合部位を形成する)(Bird et al. 1988; Huston et al. 1988);(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(国際特許公開公報第92/09965号);ならびに(ix)「ジアボディ」、遺伝子融合により構築される多価または多重特異性フラグメント(国際特許公開公報第94/13804号;(Holliger, Prospero, and Winter 1993))がある。
【0066】
ジアボディは、ポリペプチドの多量体であり、ここで各ポリペプチドは、イムノグロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメインとイムノグロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインとを含み、2つのドメインは(たとえばペプチドリンカーにより)結合しているが、抗原結合部位を形成するために互いに結合することはできない:抗原結合部位は、多量体の中の1つのポリペプチドの第1のドメインと多量体の中の別のポリペプチドの第2のドメインとの結合により形成される(国際特許公開公報第94/13804号)。
【0067】
二重特異性抗体が使用される場合、これらは、様々な方法(Holliger and Winter 1993)で製造され得る従来の二重特異性抗体であってよく、たとえば化学的にもしくはハイブリッドハイブリドーマから調製されてもよく、または上述の二重特異性抗体フラグメントのいずれかであってもよい。全抗体よりもscFv二量体またはジアボディを使用することが好ましい場合があり得る。ジアボディおよびscFvは、可変ドメインのみを使用してFc領域を伴わずに構築でき、恐らくは抗イディオタイプ反応の作用を低減する。二重特異性抗体の他の形態として、(Traunecker, Lanzavecchia, and Karjalainen 1991)に記載される一本鎖「Janusins」が挙げられる。
【0068】
また二重特異性ジアボディは、二重特異性全抗体とは対照的に、大腸菌で容易に構築および発現できるため有用であり得る。適切な結合特異性のジアボディ(および多くの他のポリペプチド、たとえば抗体フラグメント)は、ライブラリーからファージディスプレイ(国際特許公開公報第94/13804号)を使用して容易に選択され得る。ジアボディの1つのアームが、たとえば抗原Xに対する特異性を伴い一定であり続ける場合、これにより他のアームが変動するライブラリーを作製し、適切な特異性の抗体が選択され得る。
【0069】
「結合ドメイン」は、抗原の一部または全てに特異的に結合しこれに対し相補的である領域を含む特異的な結合メンバーの一部である。結合メンバーが抗体またはその抗原結合フラグメントである場合、結合ドメインはCDRであり得る。抗原が大きい場合、抗体は、抗原の特定の一部にのみ結合し得、この一部はエピトープと称される。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメインにより提供され得る。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含み得る。
【0070】
「特異的な」は、全般的に、特異的な結合対の1つのメンバーがその特異的な結合パートナー以外の分子に対し有意な結合を全く示さず、たとえば他のいずれかの分子と約30%未満、好ましくは20%未満、10%未満、または1%未満の交差反応性を有する状況を表すために使用される。またこの用語は、たとえば抗原結合ドメインが多くの抗原により担持される特定のエピトープに特異的である場合に適用可能であり、この場合抗原結合ドメインを担持する特異的な結合メンバーは、このエピトープを担持する様々な抗原に結合できる。本発明の特異的な結合メンバーは、結合が本明細書中の実施例における「グライコーム分析」で提示されるプロトコルにより試験される場合、他のいずれの抗原(たとえば他のいずれのグリカン)に対する検出可能な結合がない状況で、Leyに特異的に結合できる場合がある。
【0071】
「単離された」は、本発明の特異的な結合メンバーまたは当該結合メンバーをコードする核酸が、好ましくは本発明に係るものである状況を表す。全般的に、メンバーおよび核酸は、それらの天然の環境または調製される(当該調製がin vitroまたはin vivoで行われる組み換えDNA技術によるものである場合の)環境(たとえば細胞培養)で見出される他のポリペプチドまたは核酸などの本来関連する物質を含まないかまたは実質的に含まない。特異的な結合メンバーおよび核酸は、希釈剤またはアジュバントと共に製剤化されてよく、さらには実務的な目的のため単離され得る-たとえば、メンバーは、通常、イムノアッセイでの使用のためマイクロタイタープレートをコーティングするために使用される場合ゼラチンもしくは他の担体と混合され、または診断または治療に使用される場合は薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と混合される。特異的な結合メンバーは、天然にもしくは異種性真核細胞の系によりグリコシル化されてよく、またはこれらは、(たとえば原核細胞での発現により産生される場合)非グリコシル化され得る。
【0072】
「実質的に提示される(substantially as set out)」は、本発明のアミノ酸配列が、記載されるアミノ酸配列と同一であるかまたは著しく相同性であることを意味する。「著しく相同性」により、1~5、1~4、1~3、2または1のアミノ酸置換が配列でなされ得ることが企図される。
【0073】
また本発明は、
図2に提示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
図2に提示される核酸配列を有するポリヌクレオチド、それらと実質的な同一性、たとえばそれらと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する配列を、その範囲内に含む。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性は、全般的に、最適な比較のため配列をアライメントし(たとえばギャップが、第2の配列との最良のアライメントで第1の配列に導入され得る)、対応する位置でアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較することにより決定される。「最良のアライメント」は、最も高いパーセント同一性をもたらす2つの配列のアライメントである。パーセント同一性は、配列の中の同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの数を比較することにより決定される(すなわち%同一性=同一な位置の数/位置の総数×100)。
【0074】
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、当業者に知られている数学的なアルゴリズムを使用して達成され得る。2つの配列を比較するための数学的なアルゴリズムの一例は、Karlin and Altschul, 1993(Karlin and Altschul 1993)のように改変した、Karlin and Altschul, 1990(Karlin and Altschul 1990)のアルゴリズムである。Altschul et al., 1990(Altschul et al. 1990)のNBLASTおよびXBLASTのプログラムは、このようなアルゴリズムを組み込んでいる。BLASTのヌクレオチドの検索は、本発明の核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラムで行われ得る(スコア=100、ワード長=12)。BLASTのタンパク質の検索は、本発明のタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラムで行われ得る(スコア=50、ワード長=3)。比較のためギャップのあるアライメントを得るために、Gapped BLASTが、Altschul et al., 1997(Altschul et al. 1997)に記載されるように利用され得る。あるいは、PSI-Blastが、分子間の遠い関係を検出する反復探索(iterated search)を行うために使用され得る(Id.)。BLAST、Gapped BLAST、およびPSI-Blastのプログラムを利用する場合、各プログラムのデフォルトのパラメータ(たとえばXBLASTおよびNBLAST)が使用され得る。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列の比較のために利用される数学的なアルゴリズムの別の例は、Myers and Miller, 1989(Myers and Miller 1989)のアルゴリズムである。GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)は、このようなアルゴリズムを組み込んでいる。当該分野で知られている配列分析のための他のアルゴリズムとして、Torellis and Robotti, 1994(Torelli and Robotti 1994)に記載されるADVANCEおよびADAM;ならびにPearson and Lipman, 1988(Pearson and Lipman 1988)に記載されるFASTAが挙げられる。FASTAの中で、ktupは、検索の感度および速度を設定する制御オプションである。
【0075】
本発明の単離された特異的な結合メンバーは、SSEA-4セラミドであり得るかまたはタンパク質部分上にあり得るSSEA-4炭水化物に結合できる。
図2の残基105~116(CDRH3)および
図2の105~113として実質的に提示されるアミノ酸配列を含む結合ドメインは、SSEA-4炭水化物に対するこれら領域の結合を可能にする構造で担持され得る。
【0076】
本発明の結合ドメインを担持するための構造は、全般的に、結合ドメインが、再配置されたイムノグロブリン遺伝子によりコードされる天然に存在するVHおよびVLの抗体可変ドメインのCDR3領域に対応する位置に位置している、抗体の重鎖もしくは軽鎖配列またはそれらの実質的な一部であり得る。イムノグロブリン可変ドメインの構造および位置は、http://www.imgt.org/を参照することにより決定され得る。
図1aおよび1bの残基105~116として実質的に提示されるアミノ酸配列は、ヒト重鎖可変ドメインまたはその実質的な一部のCDR3として担持されてもよく、
図1cの残基105~113として実質的に提示されるアミノ酸配列は、ヒト軽鎖可変ドメインまたはその実質的な一部のCDR3として担持され得る。
【0077】
可変ドメインは、いずれかの生殖系列もしくは再配置されたヒト可変ドメインに由来してもよく、または既知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づく合成可変ドメインであってもよい。本発明のCDR3由来の配列は、組み換えDNA技術を使用してCDR3領域を欠いている可変ドメインのレパートリーに導入され得る。たとえば、Marks et al., 1992(Marks et al. 1992)は、可変ドメイン領域の5’末端を対象とするかまたは5’末端に隣接するコンセンサスなプライマーがCDR3を欠いているVH可変ドメインのレパートリーを提供するためにヒトVH遺伝子の第3のフレームワーク領域に対しコンセンサスなプライマーと併せて使用される抗体可変ドメインのレパートリーを産生する方法を記載している。さらにMarks et al., 1992(Marks et al. 1992)は、どのようにこのレパートリーが特定の抗体のCDR3と組み合わせられ得るかを記載している。同様の技術を使用して、本発明のCDR3由来の配列は、CDR3を欠いているVHドメインまたはVLドメインのレパートリーとシャッフリングされてよく、シャッフリングされた完全なVHまたはVLドメインを同族のVLまたはVHドメインと組み合わせて、本発明の特異的な結合メンバーを提供することが可能である。次に、このレパートリーは、国際特許公開公報第92/01047号のファージディスプレイシステムなどの適切な宿主系で提示され得、これにより適切な特異的な結合メンバーが選択され得る。レパートリーは、104以上の個別のメンバー、たとえば106~108または1010のメンバーからなり得る。
【0078】
類似のシャッフリングまたはコンビナトリアルな技術もまた、Stemmer, 1994(Stemmer 1994)により開示されており、Stemmerはβ-ラクタマーゼ遺伝子に関連する技術を記載しているが、この手法が抗体の作製に使用され得ることを観察している。さらなる代替案は、全可変ドメインの中に変異を作製するために、たとえばFG2811VHまたはVL遺伝子の、ランダムな変異誘発を使用して本発明のCDR3由来の配列を担持する新規のVHまたはVL領域を作製することである。このような技術は、error-prone PCRを使用したGram et al., 1992(Gram et al. 1992)により記載されている。
【0079】
使用され得る別の方法は、VHまたはVL遺伝子のCDR領域に対する変異誘発を生じさせることである。このような技術は、Barbas et al., 1994(Barbas et al. 1994)およびSchier et al., 1996(Schier et al. 1996)により開示されている。イムノグロブリン可変ドメインの実質的な一部は、全般的に、それらに介入するフレームワーク領域と共に、少なくとも3つのCDR領域を含む。この部分はまた、第1および第4のフレームワーク領域のいずれかまたは両方の少なくとも約50%を含み得、この50%は、第1のフレームワーク領域のC末端側の50%および第4のフレームワーク領域のN末端側の50%である。可変ドメインの実質的な部分のN末端またはC末端のさらなる残基は、天然に存在する可変ドメイン領域と通常関連しなくてもよい。たとえば、組み換えDNA技術によりなされる本発明の特異的な結合メンバーの構築は、以下により詳細に論述されるように、イムノグロブリンの重鎖、(たとえばジアボディの産生における)他の可変ドメインまたはタンパク質標識を含むさらなるタンパク質配列に本発明の可変ドメインを結合するためのリンカーの導入を含む、クローニングまたは他の操作ステップを容易にするために導入されるリンカーによりコードされたN末端またはC末端の残基の導入をもたらし得る。
【0080】
本発明は、
図2に実質的に提示されるVL領域およびVH領域のアミノ酸配列、すなわち
図2のアミノ酸1~127(VH)および
図2のアミノ酸1~124(VL)に基づく結合ドメインの対を含む特異的な結合メンバーを提供する。これら配列のいずれかに基づく単一の結合ドメインは、本発明のさらなる態様を形成する。
図2に実質的に提示されるVH領域のアミノ酸配列に基づく結合ドメインの場合、このような結合ドメインは、イムノグロブリンVHドメインが特定の方法で標的の抗原に結合できることが知られているため、標的化作用物質として使用され得る。一本鎖の特異的な結合ドメインのいずれかの場合、これらドメインは、本明細書中開示されるFG2811抗体と同じ程度良好であるかまたは同等のin vivoでの特性を有する2ドメインの特異的な結合メンバーを形成できる相補的なドメインに関してスクリーニングするために使用され得る。
【0081】
これは、国際特許公開公報第92/01047号に開示されるいわゆる階層的なデュアルコンビナトリアルな手法(hierarchical dual combinatorial approach)を使用するファージディスプレイスクリーニング法(ここでH鎖またはL鎖のクローンのいずれかを含む個々のコロニーが、他の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全なライブラリーに感染させるために使用され、結果得られる二本鎖の特異的な結合メンバーが、この参照文献に開示されるものなどのファージディスプレイ技術により選択される)により、達成され得る。この技術はまた、Marks et al., 1992(Marks et al. 1992)に開示されている。
【0082】
本発明の特異的な結合メンバーは、抗体の定常領域またはその一部をさらに含み得る。たとえば、
図2aに示されるVL領域に基づく特異的な結合メンバーは、それらのC末端で抗体の軽鎖定常ドメインに結合し得る。同様に、
図2に示されるVH領域に基づく特異的な結合メンバーは、それらのC末端で、いずれかの抗体のアイソタイプ、たとえば、IgG、IgA、IgE、およびIgM、ならびにアイソタイプのサブクラス、特にIgG1、IgG2、およびIgG4に由来するイムノグロブリン重鎖の全てまたは一部に結合し得る。
【0083】
本発明の特異的な結合メンバーは、ヒトまたは動物の対象における腫瘍の診断および処置の方法に使用され得る。
【0084】
診断に使用される場合、本発明の特異的な結合メンバーは、検出可能な標識、たとえば131Iまたは99Tcなどの放射性標識で標識されてよく、これは、抗体イメージングの分野で知られている従来の化学技術を使用して本発明の特異的な結合メンバーに結合され得る。また標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素標識を含む。さらに標識は、特定の同族の検出可能な部分、たとえば標識したアビジンへの結合を介して検出され得るビオチンなどの化学的な部分を含む。
【0085】
さらに、本発明の特異的な結合メンバーは、処置される病態に応じて、単独でか、または他の処置と同時もしくは連続的に併用して投与され得る。よって、さらに本発明は、腫瘍の処置における同時使用、別々の使用、または逐次使用のための配合剤としての、本発明の特異的な結合メンバーと有効な作用物質とを含む製品をさらに提供する。有効な作用物質は、本発明の結合メンバーと相乗的に作用し得る、5-フルオロウラシル、シスプラチン、マイトマイシンC、オキサリプラチン、およびタモキシフェンを含む化学療法剤または細胞毒性剤を含み得る。他の有効な作用物質は、適切な用量の鎮痛剤、たとえば非ステロイド系抗炎症薬物(たとえばアスピリン、パラセタモール、イブプロフェン、もしくはケトプロフェン)もしくはオピエート(opitate)、たとえばモルヒネ、または鎮吐剤を含み得る。
【0086】
理論により拘束されることを望むものではないが、腫瘍の殺滅を高めるために有効な作用物質と相乗的に作用する本発明の結合メンバーの特性は、免疫エフェクター機構によるものでなくてよく、むしろ細胞表面に結合したSSEA-4グリカンに対する結合メンバーの結合の直接的な結果であり得る。免疫チェックポイント分子に対する抗体を含むがん免疫療法は、様々な悪性腫瘍(malignance)に対して、異なる免疫-腫瘍学の処置形式と組み合わせて有効であることを示している。
【0087】
本発明の特異的な結合メンバーは、通常医薬組成物の形態で投与され、これは、当該特異的な結合メンバーに加えて少なくとも1つの成分を含み得る。医薬組成物は、有効成分に加え、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、バッファー、安定化剤、または当業者によく知られている他の物質を含み得る。このような物質は、非毒性であるべきであり、有効成分の効力を妨げるべきではない。担体または他の物質の精確な性質は、経口であり得るかまたは注射、たとえば静脈内注射といった注射によるものであり得る投与経路に応じて変化する。注射は、組成物の治療上の投与のための主要な経路であるが、カテーテルまたは他の外科的なチューブを介した送達もまた使用されることが想定されている。一部の適切な投与経路として、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、および筋肉内投与が挙げられる。液体製剤は、散剤の製剤から再構成した後に利用され得る。
【0088】
静脈内注射または罹患部位での注射では、有効成分は、パイロジェンフリーであり、適切なpH、等張性、および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態である。当業者は、たとえば塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、乳酸加リンゲル液などの等張性ビヒクルを使用して適切な液剤を良好に調製できる。保存剤、安定化剤、バッファー、抗酸化剤、および/または他の添加剤が、必要に応じて含まれ得る。
【0089】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、または液体の形態であり得る。錠剤は、ゼラチンなどの固体の担体またはアジュバントを含み得る。液体の医薬組成物は、全般的に、水、石油、動物性または植物性油、鉱油、または合成油などの液体の担体を含む。生理食塩水、デキストロース、または他の糖溶液またはグリコール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールが含まれ得る。製剤が液体である場合、これは、たとえば、pH6.8~7.6の非リン酸バッファーを含む生理的な塩の溶液または凍結乾燥した粉末であってもよい。
【0090】
また本組成物は、血液を含む特定の組織に置かれるミクロスフィア、リポソーム、他のマイクロ粒子送達システムまたは徐放製剤を介して投与され得る。徐放担体の適切な例として、たとえば坐薬またはマイクロカプセルといった共通の物品の形態における半透過性のポリマーマトリックスが挙げられる。埋め込み可能またはマイクロカプセル状の徐放マトリックスとして、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号;欧州特許公開公報第0058481号)、L-グルタミン酸およびγエチル-L-グルタマートのコポリマー(Sidman et al. 1983)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)が挙げられる。ポリペプチドを含むリポソームは、よく知られている方法:DE 3,218, 121A;(Eppstein et al. 1985);(Hwang, Luk, and Beaumier 1980);欧州特許公開公報第0052522号;欧州特許公開公報第0036676号;欧州特許公開公報第0088046号;欧州特許公開公報第0143949号;欧州特許公開公報第0142541号;特許公開公報第83-11808号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号により調製される。基本的に、リポソームは、小さな(約200~800オングストローム)の単層型であり、ここでの脂質の含有量は、約30mol%超のコレステロールであり、選択された比率が、ポリペプチド漏出の最適な比率のため調節されている。本組成物は、腫瘍部位もしくは他の望ましい部位へ局在化した方法で投与されてもよく、または腫瘍もしくは他の細胞を標的とする方法で送達されてもよい。
【0091】
本組成物は、好ましくは「治療上有効量」で個体に投与され、これは、個体に利点を示すために十分な量である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間過程は、処置されるものの性質および重症度に応じて変化する。処置の処方、たとえば用量の決定などは、一般開業医および他の医師の責任の範囲内にあり、通常、処置される障害、個別の患者の状態、送達部位、投与方法、および実務者に知られている他の要因を考慮する。本発明の組成物は、特に、既存の腫瘍、特にがんの処置、および最初の処置または外科手術の後の当該病態の再発の予防に関連している。上述の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo, A. (ed), 1980 (Remington 1980)で見出され得る。
【0092】
最適な用量は、たとえば年齢、性別、体重、処置される病態の重症度、投与される有効成分、および投与経路を含む多くのパラメータに基づき医師により決定され得る。一般的に、受容体の飽和を許容するポリペプチドおよび抗体の血清中濃度が望ましい。通常、約0.1nMを超える濃度が十分である。たとえば、100mg/m2の用量の抗体は、約8日間約20nMの血清中濃度を提供する。
【0093】
おおよそのガイドラインとして、抗体の用量は、10~300mg/m2の量で毎週投与され得る。等しい用量の抗体フラグメントは、SSEA4炭水化物の飽和を可能にする濃度を超える血清レベルを維持するためにより頻繁な間隔で使用される。本組成物の用量は、結合メンバーの特性、たとえばその結合活性およびin vivoでの血漿中半減期、製剤中のポリペプチドの濃度、投与経路、投与部位および速度、関与する患者の臨床的耐性、患者を苦しめる病態などに応じて変化し、これは医師の技能の範囲内にある。たとえば、投与あたり、患者あたり300μgの抗体の用量が好ましいが、用量は、投与あたり約10μg~6mgの範囲にあり得る。異なる用量が、一連の逐次接種の間利用される。実務者は、最初の接種を行い、次に、相対的により低い用量の抗体を用いてブーストを行い得る。
【0094】
また本発明は、がんに対する防御免疫応答を高めるために最適化された免疫処置スケジュールを対象とする。本発明は、がんに対する防御免疫応答を高めるための免疫処置スケジュールを提供する。
【0095】
本発明の結合メンバーは、全体的または部分的に化学的な合成により作製され得る。結合メンバーは、良好に確立されている標準的な液相または好ましくは固相ペプチド合成法により容易に調製でき(この一般的な記載は、広く利用可能である(たとえばJ.M. Stewart and J.D. Young, 1984(Stewart and Young 1984)、M. Bodanzsky and A. Bodanzsky, 1984(Bodanzsky and Bodanzsky 1984)を参照)、またはこれらは、溶液において、液相法もしくは固相、液相、および溶液の化学技術のいずれかの組み合わせにより、たとえば最初に各ペプチド部分を完成させ、次に望ましくかつ適切である場合、存在する保護基を全て除去した後、各炭酸もしくはスルホン酸もしくはそれらの反応性の誘導体の反応により残基Xを導入することにより、調製され得る。
【0096】
本発明に係る結合メンバーを生産する別の簡便な方法は、発現系において核酸を使用することにより、それをコードする核酸を発現することである。
【0097】
さらに本発明は、本発明の特異的な結合メンバーをコードする単離された核酸を提供する。核酸は、DNAおよびRNAを含む。好ましい態様では、本発明は、上記に定義される本発明の特異的な結合メンバーをコードする核酸を提供する。このような核酸の例は、
図2に示されている。当業者は、本発明の特異的な結合メンバーを依然として提供する、当該核酸に対する置換、欠失、および/または付加を決定することができる。
【0098】
また本発明は、上述の少なくとも1つの核酸を含むプラスミド、ベクター、転写または発現カセットの形態のコンストラクトを提供する。また本発明は、上記の1つ以上のコンストラクトを含む組み換え宿主細胞を提供する。言及されるように、本発明の特異的な結合メンバーをコードする核酸は、コードした核酸からの発現を含む、特異的な結合メンバーの産生方法と同様に、本発明の一態様を形成する。発現は、この核酸を含む組み換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、簡便に達成され得る。発現による産生の後に、特異的な結合メンバーは、いずれかの適切な技術を使用して単離および/または精製されてよく、次に適宜使用され得る。
【0099】
様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のためのシステムは、よく知られている。適切な宿主細胞として、細菌、哺乳類細胞、酵母、およびバキュロウイルスの系が挙げられる。異種性ポリペプチドの発現のため当該分野で利用可能な哺乳類細胞株として、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ヒーラ細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウスメラノーマ細胞、および多くの他の細胞が挙げられる。一般的な好ましい細菌宿主は、大腸菌である。大腸菌などの原核細胞での抗体および抗体フラグメントの発現は、当該分野で良好に確立されている。レビューとして、たとえばPluckthun, 1991(Pluckthun 1991)を参照されたい。培養物における真核細胞の発現はまた、特異的な結合メンバーの産生のための選択肢として当業者に利用可能である。近年のレビューとして、たとえばReff, 1993(Reff 1993); Trill et al., 1995(Trill, Shatzman, and Ganguly 1995)を参照されたい。
【0100】
プロモーター配列、転写終結配列、ポリアデニル化配列、エンハーサー配列、マーカー遺伝子、および他の配列を含む適切な制御配列を適宜含む適切なベクターが、選択または構築され得る。ベクターは、適宜、プラスミド、ウイルス、たとえば「ファージ」またはファージミドであり得る。さらなる詳細に関しては、たとえばSambrook et al., 1989(Sambrook 1989)を参照されたい。たとえば核酸コンストラクトの調製における核酸の操作、変異誘発、シーケンシング、DNAの細胞への導入、および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析のための多くの知られている技術およびプロトコルは、Ausubel et al., 1992(Ausubel 1992)に詳述されている。
【0101】
よって、本発明のさらなる態様は、本明細書中開示される核酸を含む宿主細胞を提供する。さらなる態様は、当該核酸を宿主細胞に導入することを含む方法を提供する。この導入は、いずれかの利用可能な技術を使用し得る。真核細胞では、適切な技術は、リン酸カルシウムのトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソームが介在するトランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス、たとえばワクシニアウイルス、もしくは昆虫細胞ではバキュロウイルスを使用する形質導入を含み得る。細菌細胞では、適切な技術は、塩化カルシウムによる形質転換、エレクトロポレーション、およびバクテリオファージを使用するトランスフェクションを含み得る。この導入を行った後に、たとえば宿主細胞を遺伝子発現のための条件下で培養することにより、核酸からの発現が引き起こされてもよくまたはこれが可能となり得る。
【0102】
本発明の核酸は、宿主細胞のゲノム(たとえば染色体)に統合され得る。統合は、標準的な技術によるゲノムでの組み換えを促進する配列の包含により、促進され得る。
【0103】
また本発明は、上述の特異的な結合メンバーまたはポリペプチドを発現するための発現系において上述のコンストラクトを使用することを含む方法を提供する。
【0104】
本発明の各態様の好ましい特性は、必要な変更を加えた他の各態様と同様である。本明細書中言及される従来技術の文献は、法律により許容される最も完全な度合いまで組み込まれている。
【0105】
特定の態様では、本開示は、本明細書中記載のmAbまたはその結合フラグメントと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0106】
免疫調節性mAbは、エフェクターT細胞(チェックポイントブロッカー)を抑制する鍵となる阻害性経路を遮断するか、または共刺激免疫受容体(免疫賦活性)をアゴニスティックに必要とするように設計されている。この特許で、本発明者らは、2811 mAbがin vitroおよびin vivoでT細胞の増殖を刺激し得ることを示した。アイソタイプに依存するFcγRIIBの関与は、免疫アゴニスティックなmAbの活性に不可欠であることが示されている。これら作用物質は、それらの標的受容体、通常は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーを介してシグナリングを刺激し、受容体のクラスタリングおよびそれに続く下流のシグナリングは、FcγRIIBとmAb Fcの相互作用により促進される。癌治療として、これらは、APCもしくはTエフェクター細胞上のCD40、4-1BB、もしくはOX40などの共刺激受容体を必要とすることにより腫瘍免疫を高めるように、またはがん細胞上のDR4、DR5、もしくはFas(CD95)などの細胞死受容体(DR)を刺激することによりアポトーシスを促進させるように設計されている。直接的な標的化作用物質とは対照的に、これらmAbのアゴニスティックな活性は、阻害性FcγRIIBを必要とするそれらの特性に依存しており、阻害性受容体よりも活性化受容体に対する結合の比(A:I)が高いmAb(たとえばマウスIgG2a、ヒトIgG1)は、前臨床モデルにおいて大部分が不活性であり、低いA:I比を有するもの(たとえばマウスIgG1およびhIgG2)は、著しくアゴニスティックである。FcγRIIBを介したシグナリングは、活性を提供することを必要とされておらず;むしろFcγRIIBは、TNFRのクラスタリングおよび活性化を促進するためmAbに架橋スキャフォールドを提供するものである(Beers, Glennie, and White 2016)。そのため、FG2811 mIgG1は、TSCMを刺激するためにin vivoで使用され、プレートに結合した2811 hIgG1またはmIgG3は、in vitroで使用され得る。別の手法は、hIgG2アイソタイプの使用を構成する。このヒトのアイソタイプは、FcγRIIBに対して限定した結合親和性を有しており、その固有のヒンジジスルフィド構成を介して、受容体のクラスタリングを駆動する内因性の特性を有する(White 2015; Liu 2019; Yu 2020)。合成時に、hIgG2は、そのヒンジドメインおよびCH1ドメインのジスルフィド結合の再配置を介してある範囲のアイソフォームに転換し、よりコンパクトで強固な形態が、in vitroおよびin vivoで強力なFcγRIIBに依存しない受容体のクラスタリングを呈している。よって、本発明者らは、TSCMの2811 hIgG2により誘導される刺激を示している。
【0107】
一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する本発明の単離された特異的な結合メンバーの結合を介して、ex vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離する方法を提供する。一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する本発明の単離された特異的な結合メンバーの結合を介して、ex vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を増殖する方法を提供する。一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する本発明の単離された特異的な結合メンバーの結合を介して、ex vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離および増殖する方法を提供する。
【0108】
特定の態様では、本発明は、いずれかのマウスまたはヒトのアイソタイプのmAb 2811を使用して、ex vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離および/または増殖する方法を提供する。特定の態様では、本発明は、いずれかのマウスまたはヒト抗体のアイソタイプ由来のmAb 2811の結合ドメインおよびいずれかのフレームワーク領域を含む単離された抗体またはその結合フラグメントもしくはメンバーを使用して、ex vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離および/または増殖する方法を提供する。
【0109】
一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する本発明の単離された特異的な結合メンバーの結合を介して、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離する方法を提供する。一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する本発明の単離された特異的な結合メンバーの結合を介して、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を増殖する方法を提供する。一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する本発明の単離された特異的な結合メンバーの結合を介して、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離および増殖する方法を提供する。
【0110】
一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する結合を介して、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離する方法に使用するための本発明の単離された特異的な結合メンバーを提供する。一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する結合を介して、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を増殖する方法に使用するための本発明の単離された特異的な結合メンバーを提供する。一部の態様では、本発明は、SSEA-4抗原に対する結合を介して、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離および増殖する方法に使用するための本発明の単離された特異的な結合メンバーを提供する。
【0111】
特定の態様では、本発明は、いずれかのマウスまたはヒトのアイソタイプのmAb 2811を使用して、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離および/または増殖する方法を提供する。特定の態様では、本発明は、いずれかのマウスまたはヒトの抗体のアイソタイプ由来のmAb 2811の結合ドメインおよびいずれかのフレームワーク領域を含む単離された抗体またはその結合フラグメントもしくはメンバーを使用して、in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)を単離および/または増殖する方法を提供する。
【0112】
本発明の一部の態様では、ステムメモリーT細胞(TSCM)を増殖することは、細胞の増殖を増大させることおよび/または細胞分裂を促進させることを表す。
【0113】
本発明の一部の態様では、細胞は、細胞を標的化または標識するため本発明の結合メンバーを使用し次にセルソーティングまたは細胞分離方法を適用することにより、同定または精製される。本発明の一部の態様では、本発明の結合メンバーは、蛍光標識細胞分取(FACS)、フローサイトメトリー、免疫磁気細胞分離、免疫密度細胞分離(Immunodensity Cell Separation)、免疫誘導型レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM:Immunoguided Laser Capture Microdissection)などのセルソーティングまたは細胞分離方法で使用され得る。好ましい実施形態では、本発明の結合メンバーは、蛍光標識細胞分取(FACS)で使用され得る。好ましい実施形態では、本発明の結合メンバーは、フローサイトメトリー法で使用され得る。
【0114】
特定の態様では、本発明は、それを必要とする対象のがんを処置する方法であって、本発明の単離された特異的な結合メンバーを含む医薬組成物の治療上有効量を対象に投与するステップを含む、方法を提供する。本発明の一部の方法では、投与された結合メンバーは、対象において本発明の単離された特異的な結合メンバーの増殖を刺激する。
【0115】
特定の実施形態では、本方法は、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、骨がん、皮膚がん、子宮頸がん、卵巣がん、および前立腺がんからなる群から選択されるがんの処置を提供する。
【0116】
特定の態様では、本発明は、それを必要とする対象のがんを処置する方法であって、本医薬組成物の治療上有効量を対象に投与するステップを含む方法に使用するための、本発明の単離された特異的な結合メンバーを含む医薬組成物を提供する。本発明の一部の方法では、投与された結合メンバーは、対象において本発明の単離された特異的な結合メンバーの増殖を刺激する。
【0117】
特定の実施形態では、本発明の方法に係る使用のための医薬組成物は、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、骨がん、皮膚がん、子宮頸がん、卵巣がん、および前立腺がんからなる群から選択されるがんを処置する。
【0118】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、以下の説明に記載する。本発明の他の特性または利点は、以下の図面およびいくつかの実施形態の詳細な説明から、また添付の特許請求の範囲から明らかである。
【0119】
本明細書中使用される場合、たとえばAjit Varkiら(Varki et al. 2009)による「Symbols Nomenclatures for Glycan Representation」を含むグリカンおよび関連する構造を説明するための記号、図画、およびテキストの術語体系は、当該分野で良好に確立および理解されている。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図1】ラクトシルセラミド(LC)由来のSSEA-3およびSSEA-4グリカンの産生の模式図。LMTKマウス線維芽細胞株に、A4GALT、B3GALNT1、およびB3GALT5遺伝子を形質導入し、それぞれα-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,3-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼおよびβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼを作製し、グリカンを順次LCに添加してSSEA-3およびSSEA-4グリカンを産生させた。
【
図2】FG2811 IgG3重鎖およびκ軽鎖の可変領域ならびにmIgG1、hIgG1、およびhIgG2の定常領域のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列。 (A)フレームワーク領域(FR)1~3および相補性決定領域(CDR)1~3を示す、成熟FG2811重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。 (B)フレームワーク領域(FR)1~3および相補性決定領域(CDR)1~3を示す、成熟FG2811κ鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。 (C)生殖系列でアライメントされたmIgG1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。 (D)生殖系列でアライメントされたhIgG2のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。 (E)生殖系列でアライメントされたhIgG1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。
【
図3】SSEA-3/4-LMTK細胞に対する2811マウスIgG(IgG1およびIgG3)アイソタイプ対キメラIgG(IgG1およびIgG2)アイソタイプの結合パターン。 FG2811mG3、FG2811mG1、CH2811hG1、CH2811hG2、MC813(抗SSEA-4 mAb;マウスIgG1)、MC631(抗SSEA-3 mAb;ラットIgM)、FG88.7(抗Lewis
a/c/x mAb;マウスIgG3)、抗マウス二次抗体および三次抗体単独、抗ヒト二次抗体および三次抗体単独、ならびに培地単独のSSEA-3/4-LMTK細胞に対する結合を、フローサイトメトリーにより評価した。この結果は、幾何平均(Gm)の値として提示されている。
【
図4】SSEA-4に対するFG2811mG3の特異性の評価 (A)HPTLCにより評価されるFG2811mG3 mAbの脂質抗原に対する結合。5μg/mlのi)FG2811mG3 mAb、ii)MC631 mAb、およびiii)MC813 mAbを使用した、1)野生型LMTKおよび2)SSEA-3/4-LMTK細胞膜脂質抽出物の薄層クロマトグラフィー分析。 (B)SSEA-3/4-LMTK細胞表面抗原に結合したFG2811mG3 mAb。5μg/mlのi)二次抗体単独、ii)MC813、iii)FG2811mG3、およびiv)MC631のSSEA-3/4-LMTK細胞に対する結合を、直接的な免疫蛍光染色およびフローサイトメトリー分析により評価した。結果は、Gm値として表されている。 (C)HSAとカップリングしたグリカン抗原(SSEA-3、SSEA-4、Globo-H、およびフォルスマン)とFG2811mG3 mAbの反応性。5μg/mlのi)FG2811mG3、ii)MC813、iii)MC631、iv)M1/87、およびv)KM93 mAbのHSAとカップリングしたグリカンに対する結合を、ELISAにより評価した。MC631(抗SSEA-3およびSSEA-4)、MC813(抗SSEA-4)、M1/87(抗フォルスマン)、およびKM93(抗シアリル-Lewis
x)が、陽性対照mAbとして含まれていた。抗体活性は、450nmの吸光度により測定した。エラーバーは、四連のウェルの平均値±標準偏差を表している(***p<0.0001;*p<0.05対対照、ANOVA、続いてボンフェローニの多重比較検定、GraphPad Prism 6)。 (D)Consortium for Functional Glycomicsアレイ(CFG, core H, version 5.1)に対するFG2811mG3 mAbの結合。Spは、スライド上のグリカン間のスペーサーの長さを意味する。
【
図5】抗原に対するFG2811mG3親和性の評価 (A)FG2811mG3 mAbのSSEA-3/4-LMTK細胞膜脂質抗原の結合動態を、SPR(Biacore X)を使用して試験した。 (B)SSEA-3/4-LMTK細胞膜脂質のELISA。ある濃度範囲のFG2811mG3 mAbを、SSEA-3/4-LMTK細胞膜脂質でコーティングしたマイクロウェルでインキュベートした。EC
50値(6.8×10
-10M)は、対数変換したデータ上の非線形回帰を介して得た(GraphPad Prism 6)。 (C)SSEA-3/4-LMTK細胞表面結合。SSEA-3/4-LMTK細胞を、ある濃度範囲のFG2811mG3 mAbとインキュベートし、フローサイトメトリーにより細胞結合を分析した。バックグラウンド減算したデータを1つの部位特異的な結合モデルに適合することにより(GraphPad Prism 6)、Kd値がもたらされた。3つの独立した実験からの代表的な結合曲線が示されている。
【
図6】ヒトがん細胞株のパネルに対するFG2811mG3抗体の結合 (A)脳がん細胞株(U251、KNS42、DAOY、SF188、U87、およびUW2283)に対する抗体結合。5μg/mlの脳がん細胞株に対する抗体FG2811mG3、MC813、マウスIgG3κアイソタイプ対照および二次抗体単独(一次抗体なし)の結合を、フローサイトメトリーにより評価し、結果は、Gm値として提示された。 (B)卵巣(SKOV3、IGROV1、およびOVCAR-5)、乳房(T47D、MCF7、DU4475、およびHCC1187)、ならびに結腸直腸(Colo205およびHCT15)に対する抗体結合。5μg/mlでのがん細胞株のパネルに対する抗体FG2811mG3、抗HLA-A、B、C(W6/32)、および二次抗体単独(一次抗体なし)の結合は、フローサイトメトリーにより評価されており、結果は、Gm値として提示された。
【
図7】FG2811mG3抗体の細胞傷害性活性 (A)FG2811mG3 mAbによるがん細胞のADCC殺滅。SKOV3細胞およびT47D細胞上のFG2811mG3 mAbの用量依存的なADCC活性。
51Crで標識したがん標的細胞を、増大する濃度のFG2811mG3 mAb(0.003~10μg/ml)およびヒトPBMC(標的細胞:PBMC;100:1)と共インキュベートした。上清内へ放出された
51Crを測定し、10%のTriton-Xで放出された総
51Crのパーセンテージとして表した。抗CD55 mAb(791T/36)を、陰性対照mAbとして使用した。PBMC対照と比較した有意性を、ANOVA、次いでボンフェローニの多重比較検定をGraphPad Prism 6で行うことにより確立した(***、P<0.001対対照)。 (B)FG2811mG3 mAbによるがん細胞のCDC殺滅。SKOV3細胞およびT47D細胞上のFG2811mG3 mAbの用量依存的なCDC活性。
51Crで標識したがん標的細胞を、増大する濃度のFG2811mG3 mAb(0.003~10μg/ml)およびヒト血清と共インキュベートした。上清内へ放出された
51Crを測定し、10%のTriton-Xで放出された総
51Crのパーセンテージとして表した。抗CD55 mAb(791T/36)を、陰性対照mAbとして使用した。PBMC対照と比較した有意性を、ANOVA、次いでボンフェローニの多重比較検定をGraphPad Prism 6で行うことにより確立した(*、P<0.005;***、P<0.001対対照)。 (C)FG2811mG3は、37℃でがん細胞の直接的な細胞死を誘導した。mAbで曝露した後のヨウ化プロピジウム(PI)の取り込みを、フローサイトメトリー分析により評価した。SSEA-3/4-LMTK細胞を、30μg/mlのFG2811mG3 mAbと37℃でインキュベートした。過酸化水素(H
2O
2)および培地単独を、それぞれ陽性対照および陰性対照として含めた。 (D)FG2811mG3で処置したがん細胞の位相差像。画像(倍率×10)は、72時間、30μg/mlのFG2811mG3 mAbおよび培地単独とインキュベートした後のSSEA-3/4-LMTK細胞、SKOV3細胞、およびLMTK細胞を示す。
【
図8】正常な赤血球結合 (A)フローサイトメトリーによる健常なドナーの赤血球に対するFG2811mG3 mAbの結合の評価。FG2811mG3 mAbによる赤血球の結合を、フローサイトメトリーにより791T/36陽性対照mAb(抗CD55 mAb)と比較した。両方のmAbは、10μg/mlで使用した。アイソタイプ対照mAbおよび培地単独は、陰性対照として使用した。結果は、5名のドナーを代表する。 (B)赤血球凝集アッセイ。様々な濃度(0.625~10μg/ml)のFG2811mG3 mAbによる赤血球の凝集を、791T/36および抗血液グループの陽性対照抗体と比較した。PBSを陰性対照として使用した。結果は、5名のドナーを代表する。
【
図9】ヒト血液細胞に対するFG2811mG1の結合 (A)FG2811mG1は健常なドナー由来の全血のPBMCに結合した。FG2811mG1、MC813、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(アイソタイプctrl)、OKT3(抗CD3)、198(抗CEACAM6)、および抗マウスIgG Fcに特異的なFITC二次抗体単独(一次抗体なし)と健常なドナーの全血の結合を、間接的な免疫蛍光染色およびフローサイトメトリー分析により評価した。全てのmAbは、5μg/mlで使用した。示された結果は、7名の異なる健常なドナーの全血を代表する。結果は、ドットプロットおよびヒストグラムで示されている。 (B)PBMCの表現型決定。CD3
+FG2811mG3
+PBMCを表現型決定するために使用されるフローサイトメトリーのゲート戦略を記載する連続的なパネル;ゲートは、CD3
+FG2811mG3
+細胞での分析のために描かれており;CD3
+FG2811mG3
+細胞を、CD45RAおよびCD45ROの発現に関して確認した。さらにCD45RA
+、CD45RA
+RO
+、およびCD45RO
+細胞を、CD62L、CD95、およびCCR-7マーカーの発現について確認した。
【
図10】4名の健常なドナー(BD3、BD13、BD61、BD96)由来のCH2811hG1を多く含むナイーブT細胞およびCD122/CD95を多く含むナイーブT細胞を、バルクRNAseqを使用して転写的にプロファイリングした。 (A)ナイーブなCD8T細胞(GSE83808)を、CH2811hG1を多く含むナイーブT細胞およびCD122/CD95を多く含むナイーブT細胞とそれぞれ比較することにより得た差次的に発現した(DE)遺伝子の2つのセットの間で共通する遺伝子を示すベン図。同定した2227の共通する遺伝子を、StemChecker(Pinto et al. 2015)を使用して幹細胞性シグネチャーについて分析した。幹細胞のサブセットに関連する遺伝子の統計的に有意なエンリッチメントおよび幹細胞性に関連する転写因子の有意に多い標的が、表に示されている。 (B)ESC由来の257の重複する遺伝子およびHSCに由来する113の重複する遺伝子(両方ともAの表由来)それぞれに基づく、CH2811hG1を多く含むトランスクリプトームプロファイルおよびCD122/CD95を多く含むトランスクリプトームプロファイルのヒートマップおよび階層クラスタリング(ユークリッド距離)。2つの多く含まれる集団の明確な分離はなく、これらの幹細胞性プロファイルにおける共通性が示唆される。 (C)(i)Gattinoni et al., 2011(Gattinoni et al. 2011)からのCD8+T
SCMおよびT
Nの間のDE遺伝子に基づき、かつ、(ii)Pilipow et al., 2018(Pilipow et al. 2018)からのエフェクターの分化に関連することが示されている転写因子、エフェクター機能、消耗、およびホーミング接着の遺伝子のサブセットに基づく、ヒートマップ(2倍超、p<0.001)。ドナー1~6は、GSE114765、CD8/CD4ナイーブに由来しており、メモリーのデータセットは、GSE23321由来であった。
【
図11】CH2811hG1抗体はPBMC増殖を誘導した。 (A)PBMCは、2名の健常なドナー(BD3およびBD18)の全血から単離し、CSFE色素で標識した。健常なドナー由来のCSFEで標識したT細胞を、プレートに結合したi)PHA、ii)CH2811hG1 mAb、およびiii)培地で刺激し、11日目に細胞を回収してCD4およびCD8T細胞の増殖を確認した。特異的なT細胞集団の増殖のパーセンテージを、CSFE色素希釈分析を介して評価した。結果は、2名のドナーを代表する。 (B)CD4およびCD8のPBMC増殖の概要。
【
図12】CH2811hG1抗体はT細胞増殖を誘導した。 (A)T細胞の純度およびCSFE標識の確認。純粋なT細胞を、4名の健常なドナー(BD61、BD2、BD3、BD26)の全血から単離し、CSFE色素で標識した。T細胞の純度を、抗CD3抗体でT細胞を染色することにより確認し、CSFE標識を、FITCチャネルで確認した。 (B)プレートに結合したCH2811hG1抗体は、5μg/mlでT細胞の増殖を誘導した。健常なドナー由来のCSFEで標識したT細胞を、プレートに結合したi)CH2811hG1、ii)抗CD3抗体、およびiii)培地で刺激し、7、11、および14日目に細胞を回収して、CD4およびCD8T細胞の増殖を確認した。特異的なT細胞集団の増殖のパーセンテージを、CSFE色素希釈分析を介して評価した。結果は、4名のドナーを代表する。 (C)CSFE色素希釈分析により評価される4名の健常なドナー(BD61、BD2、BD3、BD26)由来のi)総T細胞の増殖、ii)CD4T細胞の増殖、およびiii)CD8T細胞の増殖の概要。 (D)in vitroで11日後の特定の数の分裂でのCH2811hG1で刺激したCD4T細胞のパーセンテージ。T細胞に、CSFE色素を充填し、0日目にi)抗CD3、ii)CH2811hG1、またはiii)培地で刺激した。11日目に、CSFEプロファイルを、フローサイトメトリーにより分析した。細胞分裂回数は、四角のボックスで表されており、特定の回数分裂した細胞のパーセンテージは、四角のボックスの上に表されている。
【
図13】CH2811hG1で刺激したT細胞におけるTCRレパートリーのクローン型の評価 T細胞のレパートリーを、2名のドナー由来のCSFEhighおよびlowのCH2811hG1で刺激したT細胞の抽出したRNAから、それぞれ19日目(BD3)および14日目(BD26)に検出した。TCRのレパートリーの多様性は、tree mapで示されている(ここで、それぞれの角丸長方形は固有のエントリー:V-J-uCDR3を表し、スポットの大きさは、相対的な頻度を意味する)。 (A)CH2811で刺激したT細胞のCFSEhigh(B)およびCFSElow(C)TRA鎖、CFSEhigh(D)およびCFSElow(E)TRB鎖の多様性のプロット。サンプルの多様性が高いほど、実線は破線に近づく。この線は、サンプルの総合的な多様性を記載する曲線に構築しており、ここで「完全な」多様性は、黒色の破線である(各固有のクローン型は、同等の読み取りを受領し、すなわちクローン的な増殖または優性のクローンはない)。
【
図14】個別のサイトカイン/ケモカイン応答の動態 4名の健常なドナー(BD61、BD2、BD3、BD26)から単離した純粋なT細胞を、0日目にCH2811hG1(5μg/ml)で刺激した。刺激していない細胞(培地)を、陰性対照として含めた。上清を7、11、および14日目に回収し、IFNγ、TNFα、IL-8、IL-10、IL-2、IL-5、IL-17A、IL-7、およびIL-21の濃度(pg/ml)について評価した。個別のドットは、異なるドナーを表す。CH2811hG1で刺激したT細胞と刺激していない細胞との間のサイトカイン/ケモカインの結果の比較分析を、独立スチューデントt検定を適用することにより行い、これによりP値を計算した(***、P<0.0001、**、P<0.01、*、P<0.05;GraphPad Prism 6)。
【
図15】CH2811hG1で刺激したT細胞は、2カ月超の間in vitroで生存可能であり続けた。 (A)T細胞を、プレートに結合したCH2811hG1(5μg/ml)または抗CD3抗体(0.005μg/ml)または培地で、0日目に刺激した。35日目に、光学顕微鏡下で、i)抗CD3抗体およびii)培地で刺激した細胞は、iii)CH2811hG1で刺激した細胞を除き、全て死亡していた(倍率×20)。 (B)35日目での生存可能なCH2811hG1で刺激したT細胞の表現型の分析。FG2811mG3
+細胞を表現型決定するために使用されるフローサイトメトリーのゲート戦略を表す連続パネル。ゲートは、i)FG2811mG3
+およびii)FG2811mG3
-細胞での分析のために描かれており;これらは、CD3およびCD122の発現に関して確認された。さらにCD3
+細胞を、CD45RA、CD45RO、CD62L、およびCD95マーカーの発現について確認した(結果は、1名のドナーの代表である)。 (C)CH2811hG1で刺激したT細胞は、35日目に、in vitroにおいて依然として生存可能であり、増殖能を維持した。33日目に、生存可能なCH2811hG1で刺激したT細胞を、プレートに結合したCH2811hG1(5μg/ml)またはプレートに結合した抗CD3(0.005μg/ml)および抗CD28(5μg/ml)抗体の組み合わせで再刺激した。光学顕微鏡下で、i)抗CD3/CD28で再刺激したT細胞は、大量のT細胞の増殖を経て、39日目にT細胞の芽細胞を形成し、ii)70日目に、CH2811hG1で刺激した細胞は、依然として生存可能であり、有意なT細胞増殖を示した(倍率×10および×20)。 (D)IL-7およびIL-21は、CH2811hG1で刺激したT細胞のin vitroでの長期間の生存にとって重要な自立したサイトカインであり得る。i)CH2811hG1およびii)抗CD3/CD28で再刺激したT細胞における代表的なサイトカイン/ケモカイン発現レベル(pg/ml)。T細胞は、0日目にCH2811で刺激し、次に、33日目および64日目にCH2811hG1で再刺激するか、または33日目に抗CD3/CD28抗体で再刺激した。上清を、7、11、14、39、54、および70日目に回収し、IFNγ、IL-10、IL-17A、IL-2、IL-21、IL-5、IL-7、IL-8、およびTNF-αの濃度(pg/ml)に関して評価した。三角形および矢印は、それぞれ2811およびCD3/CD28抗体で再刺激した日を表した。
【
図16】マウス免疫細胞でのSSEA-4の発現 HHDII/DP4マウスを安楽死させ、脾臓、腸間膜リンパ節および鼠径リンパ節を回収した。i)脾細胞、ii)腸間膜リンパ節細胞、およびiii)鼠径リンパ節細胞を、FITCで標識したCH2811hG1抗体で染色し、フローサイトメトリー分析を使用して評価した。
【
図17】FG2811mG1は、C57/B6マウスにおいて表現型のTSCM細胞を誘導した。 (A)16日目に、グループAおよびBに由来する脾細胞の細胞の総数を、トリパンブルー排除分析を使用して計算した。 (B)16日目に、グループAおよびBに由来する個別のマウス由来の脾細胞を、CD4、CD8、CD44、CD62L、SCA-1、およびCH2811hG1抗体で染色し、フローサイトメトリー分析を使用して評価した。 (C)16日目に、グループAおよびグループBの脾細胞を、プレートに結合したFG2811mG1(5μg/ml)と共に(A+2811およびB+2811)、または伴わずに(A-2811およびB-2811)培養し、24日目に回収した。24日目に、脾細胞を、CD3、CD4、CD8、CD44、CD62L、SCA-1、およびCH2811hG1抗体で染色し、フローサイトメトリー分析を使用して評価した。 (D)24、27、および30日目に、A+2811脾細胞を回収し、抗CD3、CD4、CD8、CD44、CD62L、SCA-1、およびCH2811hG1で染色し、フローサイトメトリー分析を使用して評価した。
【
図18】HHDIIマウスおよびHHDII/DP4マウスから直接ex vivoで表現型決定したTscm細胞。 ナイーブなHHDIIマウスおよびHHDII/DP4マウスを選別し、脾細胞を回収し、CD3、CD44、CD62L、SCA-1、およびCH2811hG2-PeCy7抗体で染色して、フローサイトメトリー分析を使用して評価した。 (A)HHDIIマウス由来のex vivoで直接染色された脾細胞の代表的なフローサイトメトリープロット。 (B)HHDIIマウスから単離した脾細胞に対する表現型決定の結果の概要。 (C)HHDII/DP4マウス由来のex vivoで直接染色された脾細胞の代表的なフローサイトメトリープロット。 (D)HHDII/DP4マウスから単離した脾細胞に対する表現型決定の結果の概要。 (E)HHDII/DP4マウスから単離したCD4T細胞およびCD8T細胞に対する表現型決定の結果の概要。
【
図19】マウス脾細胞は、プレートに結合したFG2811mG1およびFG2811hG1に応答して増殖する。 ナイーブなHHDIIマウスを選別し、脾細胞を回収し、panT細胞を多く含むように処理し、CFSEで標識した。次に、CFSEで標識したT細胞を、プレートに結合した2811マウスIgG1(5μg/mL)またはヒトIgG1(5μg/ml)または抗CD3(1μg/ml)を含むウェルにプレーティングし、37℃でインキュベートした。7、12、および14日目に、細胞を、サンプルとして採取し、抗CD4および抗CD8で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。 (A)12日目の、FG2811mG1およびFG2811hG1に応答して増殖したT細胞の代表的なフローサイトメトリープロット。 (B)12日目の、プレートに結合したFG2811mG1、FG2811hG1、または抗CD3に応答して増殖した細胞の総パーセンテージ。 (C)12日目の、プレートに結合したFG2811mG1、FG2811hG1、または抗CD3に応答して増殖したCD8T細胞の総パーセンテージ。 (D)12日目の、プレートに結合したFG2811mG1、FG2811hG1、または抗CD3に応答して増殖したCD4T細胞の総パーセンテージ。
【
図20】抗CD3および抗CD28は、エフェクターメモリー細胞の増殖を駆動するナイーブなHHDIIマウス由来の幹細胞様の特性を有する細胞のex vivoでの増殖を誘導する。 ナイーブなHHDIIマウスを選別し、脾細胞を回収し、panT細胞を多く含むように処理し、CFSEで標識した。次に、CFSEで標識したT細胞を、抗CD3および抗CD28(それぞれ1μg/ml)を含むウェルにプレーティングし、37℃でインキュベートした。7、12、および14日目に、細胞を、サンプルとして採取し、抗CD4および抗CD8で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。 (A)11、15、および20日目に、細胞を採取し、CH2811hG2-PeCy7および/または抗CD3で染色した。(i)CD3+細胞の2811+細胞のパーセンテージ、(ii)CD3+細胞のCFSE
lowのパーセンテージ、(iii)2811+細胞の数(1mLあたり×10
4)、(iv)CD3+T細胞の数(1mLあたり×10
5)、(n=2つのウェル)。 (B)CD3/CD28で刺激してから11日後に染色した脾細胞の代表的なフローサイトメトリーのプロット。細胞は、抗CD3、CD44、CD62L、およびCH2811hG2-PeCy7で染色し、フローサイトメトリー分析を使用して評価した。 (C)CD3/CD28で刺激してから11日後に、2811+エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターT細胞、およびナイーブT細胞の総数を決定した(n=2つのウェル)。 (D)CD3/CD28で刺激してから11日後に、2811+エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターT細胞、およびナイーブT細胞のパーセンテージを決定した(n=2つのウェル)。
【
図21】ヒト2811hG2およびマウス2811mG1は、エフェクターメモリー細胞の増殖を駆動するナイーブなHHDII/DP4マウス由来の幹細胞様の特性を有する細胞のex vivoでの増殖を誘導する。 ナイーブなHHDII/DP4マウスを選別し、脾細胞を回収し、panT細胞を多く含むように処理し、CFSEで標識した。次に、CFSEで標識したT細胞を、AKTiを伴うかまたは伴うことなく、可溶性ヒトIgG2(5μg/mL)またはマウスIgG1 2811 Ab(5μg/mL)または抗CD3(1μg/ml)およびCD28を含むウェルにプレーティングし、これにより刺激し、細胞を37℃でインキュベートした。11および15日目に、細胞をサンプルとして採取し、抗CD3、CD44、CD62L、SCA 1、およびCH2811hG2-PeCy7で染色し、フローサイトメトリー分析を使用して評価した。 (A)11日目の、FG2811mG1および2811hG2に応答して増殖したT細胞の代表的なフローサイトメトリープロット(n=2つのウェル)。 (B)CD3/CD28、FG2811mG1、または2811hG2で刺激してから11日後に、2811+エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターT細胞、およびナイーブT細胞の総数を決定した(n=2つのウェル)。 (C)CD3/CD28、FG2811mG1、または2811hG2で刺激してから11日後に、2811+エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、およびエフェクターT細胞のパーセンテージを決定した(n=2つのウェル)。
【
図22】抗CD3およびCD28は、健常なドナーから単離した2811+細胞のex vivoでの増殖を誘導する。 PBMCを、バフィーコートから単離し、PanT細胞を多く含むように処理し、24ウェルプレートのウェルあたり約2×10
6個の細胞を、さらなるサイトカイン(IL-7またはIL-21)を伴うかまたは伴わずに、抗CD3/CD28の存在下で20日間インキュベートした。15日目および20日目に、細胞をサンプルとして採取し、CD45RA、CD62L、CD122、CD95、CD3、CCR7、および2811hG Pe-Cy7で染色した。 (A)20日目の、抗CD3/CD28での刺激に応答して増殖したT細胞を表現型決定した代表的なフローサイトメトリーのプロット(n=2つのウェル)。 (B)抗CD3/CD28で刺激してから15日目および20日目後の、(i)2811+CD3+T細胞のパーセンテージ、(ii)2811+細胞の総数(×10
4/mL、n=2つのウェル)。
【
図23】Tscm細胞の頻度は、抗CD3/CD28での刺激により増大する。 PBMCを、バフィーコートから単離し、PanT細胞を多く含むように処理し、24ウェルプレートのウェルあたり約2×10
6個の細胞を、抗CD3/CD28の存在下で20日間インキュベートした。15日目および20日目に、細胞を採取し、TscmをCD3+CD45RA+CCR7+CD95+CD122
lowの発現により染色した。CD3T細胞集団におけるTscm細胞のパーセンテージ(i)、2811+でもあるTscm細胞のパーセンテージ(ii)、Tscm 2811+CD3+細胞のパーセンテージ(iii)。
【
図24】可溶性FG2811mG1は、Fc架橋を介してマウスT細胞を刺激し得る。 脾細胞を、HHDIIおよびHHDII/FDP4マウスから単離し、HHDIIマウスから回収した脾細胞からpanT細胞を多く含むように処理した。HHDIIpanT細胞およびHHDII/DP4脾細胞をCFSE標識した。CFSE標識したT細胞を、可溶性FG2811mG1、培地単独(陰性対照)およびLPS(陽性対照)を含む対照の存在下で、単独で培養するか、またはHHDII/DP4脾細胞と1:1の比率で混合した。 (A)(i)15日目の、FG2811mG1、LPS、または培地単独の存在下で培養したT細胞の代表的なフローサイトメトリープロット。増殖した(CFSE
low)細胞および増殖しなかった(CFSE
high)細胞のCD4およびCD8T細胞集団が示されている。 (ii)15日目の、FG2811mG1、LPS、または培地単独の存在下で脾細胞と培養したT細胞の代表的なフローサイトメトリープロット。増殖した(CFSE
low)細胞および増殖しなかった(CFSEhigh)細胞のCD4およびCD8T細胞集団が示されている。 (B)FG2811mG1、LPS、または培地単独と、脾細胞を伴うかまたは伴わずに培養した場合のCD4およびCD8T細胞の増殖性応答の概要。
【発明を実施するための形態】
【0121】
方法
細胞膜糖脂質の抽出
SSEA-3/4-LMTK細胞のペレット(5×107個の細胞)を、500μlのマンニトール/HEPESバッファー(50mMのマンニトール、5mMのHEPES、pH7.2、両方ともSigma)に再懸濁し、それぞれ30回3つの針(23G、25G、27G)に通した。5μlの1MのCaCl2を細胞に添加し、上記のようにそれぞれ30回3つの針に通した。剪断された細胞を氷上で20分間インキュベートした後、3,000gで15分間、室温にて回転させた。上清を回収し、48,000gで30分間、4℃で回転させ、上清を廃棄した。ペレットを1mlのメタノールに再懸濁した後、1mlのクロロホルムに再懸濁し、回転させながら室温で30分間インキュベートした。次に、このサンプルを、1,200gで10分間回転させて沈殿したタンパク質を除去した。細胞膜糖脂質を含む上清を回収し、-20℃で保存した。
【0122】
リポソームの調製
SSEA-3/4-LMTK細胞膜(pm)糖脂質抽出物(5×107個の細胞に相当)を、丸底フラスコにおいて総濃度10mgの脂質[コレステロール、ジセチルホスフェート(DCP)、ホスファチジルコリン(PC)およびα-GalCer]と、様々な比率で混合した(表2)。次に、脂質混合物を、ロータリーエバポレーターを使用して、溶媒が蒸発しフラスコの壁に均一な脂質の薄い膜を残すまで、60℃で乾燥させた。フラスコを室温に冷却した後、100μlの無菌性PBSを添加した。フラスコの開口部をパラフィルムで覆い、次に、超音波槽に10分間浸漬してリポソームを産生させた(クロロホルムおよびメタノールを用いる全ての作業は、ヒュームフードで行った)。
【0123】
免疫処置プロトコル
BALB/cマウスは、6~8週齢であった(Charles River, UK)。免疫処置の前に、正常マウス血清(NMS)を、陰性対照として使用するため、尾からの出血の抽出を介して回収し、-20℃で保存した。マウスを、1mlのインスリンシリンジ(BD Bioscience, Spain)を使用して、2週間間隔で、SSEA-3/4-LMTK細胞(1×106個の細胞/免疫処置/マウス)で腹腔内(i.p.)にて免疫処置した。第2の免疫処置から7日後に、さらにその後7日ごとに、抗血清を尾からの出血の抽出を介して回収し、IgGおよびIgMの抗体応答に関してスクリーニングした。高い力価のIgG応答を得た後、動物を、SSEA-3/4-LMTK細胞(1×105個の細胞/免疫処置/マウス)を用いて静脈内(i.v.)にブーストし、5日後に屠殺した。
【0124】
mAbの作製
脾細胞の単離-マウスを安楽死させ、脾臓を取り出した。25ゲージの針を使用して5mlの血清フリー培地(RPMI 1640)で洗浄した後、脾臓を無菌性の鉗子で優しく撹拌して、脾細胞を回収した。5mlの脾細胞を無菌性の25mlの一般的なチューブ内に回収し、過剰な脂肪および結合組織を廃棄した。脾細胞を含む液量の合計を、血清フリー培地(RPMI 1640)で25mlまで増大させ、100gで10分間遠心分離した。この上清を除去し、1mlの培地および脾細胞を残し、次に5mlの血清フリー培地(RPMI 1640)に再懸濁し、バイアビリティの評価のため、トリパンブルー染色を用いて血球計算器を使用して計測した。
【0125】
NS0ミエローマ細胞と脾細胞の融合-洗浄した脾細胞を、25mlの一般的なチューブにおいて、健常なNS0ミエローマ細胞と1:10の比率(NS0:脾細胞;1×107:1×108個の細胞)で組み合わせ、317gで5分間遠心分離した。この上清を吸引し、組み合わせた細胞ペレットを、800μlのポリエチレングリコール(PEG)に1分間にわたり穏やかかつ徐々に再懸濁した。細胞混合物を1分間優しく撹拌した後、1mlの血清フリー培地(RPMI 1640)を、撹拌し続けながら1分間にわたり添加した。さらに20mlの血清フリー培地(RPMI 1640)を、撹拌し続けながら1分間にわたり添加した。次に、細胞混合物を317gで5分間遠心分離し、上清を除去し、細胞混合物を、15mlのハイブリドーマ培地[500mlのハイブリドーマ血清フリー培地(Gibco):10mlのHT(ヒポキサンチンチミジン)上清(50×Hybri-Max;Sigma):31μl(31μg)のメトトレキサート(1mg/ml;Sigma):25mlのハイブリドーマクローニング因子(Opti-Clone II;MP):50mlの濾過したNS0 spent培地)に再懸濁した。細胞懸濁物を、96ウェルの平底プレートを通して均等に播種し、細胞培養インキュベーター(5%のCO2)において37℃でインキュベートした。
【0126】
CH2811hG1の作製
総RNAを、Trizol(Invitrogen, Paisley, UK)を製造社のプロトコルにしたがい使用して、5×106個のFG2811ハイブリドーマ細胞から調製した。第1の鎖のcDNAを、第1の鎖のcDNA合成キットおよびAMV逆転写酵素を製造社のプロトコルにしたがい使用して(Roche Diagnostic)、3μgの総RNAから調製した。重鎖および軽鎖の可変領域のPCRおよびシーケンシングは、Syd Labs, Inc(Natick, MA 01760, USA)により行い、可変領域ファミリーの使用は、IMGTデータベース(Lefranc et al. 2018)を使用して分析した。その後、FG2811可変領域を、hIgG1/κ二重発現ベクターpDCOrig-hIgG1(Metheringham et al. 2009)にクローニングし、配列をシーケンシングにより確認した。
【0127】
mAbの性質決定
mAbのアイソタイプ決定-Spentハイブリドーマ血清フリー培地(Invitrogen Scotland, UK)を回収し、150μlをPBS 1(w/v)%のBSAにおいて1/10に希釈し、次に、mouse mAb isotyping test kit(AbD Serotec, Kidlington, UK)の展開チューブ(development tube)の中へとピペッティングし、室温で30秒間インキュベートした。このチューブを、短い時間ボルテックスにかけ、着色したマイクロ粒子溶液が完全に再懸濁したことを確保した。このチューブに、1つのアイソタイピング切片を、切片の無地の赤色の端部がチューブの底になるようにして5~10分間入れた。この結果は、mAbの重鎖および軽鎖の組成を表す、切片のクラスまたはサブクラスのウインドウおよびκまたはλのウインドウの1つの文字の上に現れた青色のバンドを確認することにより解釈された。
【0128】
マウスmAbの精製-2リットルのSpentハイブリドーマ血清フリー培地(Invitrogen Scotland, UK)を回収し、0.2%のアジ化ナトリウム(Sigma)を添加した。その後、spent培地を、Whatmanろ紙を介して濾過し、次に0.2μmのステリトップ(steritop)フィルター(Sigma)を使用して濾過した。HiTrap Protein G HP antibody purification column(GE Healthcare)を、製造社の推奨により、精製に使用した。mAb結合バッファーは、PBS-Tris pH7.0からなり、mAbは、Tris-Glycine pH12.0を使用して溶出した。IgG mAbを含むフラクションを集め、10MのHClを使用してpHを中性化し、PBSに対して一晩透析した後、アリコートし、-80℃で保存した。
【0129】
一過性mAbの産生-FG2811mG1、CH2811hG1、およびCH2811hG2 mAbを、ExpiFectamine(商標)293 Transfection kit(Gibco, Life Technologies)を使用して、Expi293(商標)細胞の一過性トランスフェクションにより入手した。懸濁液におけるHEK293細胞(100ml、2×106個の細胞/ml)を、100μgのプラスミドDNAでトランスフェクトし、トランスフェクションの後7日目に、条件付け培地を回収した。
【0130】
腫瘍細胞株
細胞株は、完全培養培地の定期的な交換および対数期増殖を維持するための分裂により、維持した。全ての細胞株は、定期的に、マイコプラズマの濃度に関して確認され、ショートタンデムリピート(STR)のプロファイリングを使用して立証された(表1)。
【表1】
表1:がん細胞株。GBM:多形神経膠芽腫
【0131】
がん細胞株およびマウス線維芽細胞に対する抗体の結合
1×105個の細胞を、50μlの一次抗体(様々な濃度)と4℃で1時間インキュベートした。細胞を、200μlのRPMI 10%のFCSで洗浄し、100gで5分間回転させた。上清を廃棄し、RPMI 10%のFCSで1/100に希釈した50μlのFITCにコンジュゲートした抗マウス/抗ヒトまたはビオチンにコンジュゲートした抗マウス/抗ヒトのIgG/IgM Fcに特異的な抗体(Sigma)を、二次抗体として使用した。細胞を、暗室において4℃で1時間インキュベートした。細胞を、200μlのRPMI 10%のFCSで洗浄し、100gで5分間回転させた。RPMI 10%のFCSで1/100に希釈した50μlのストレプトアビジン-FITC(Sigma)またはStrep-PeCy7(eBioscience)を使用して、ビオチン化二次抗体を検出した。細胞を、200μlのRPMI 10%のFCSで洗浄し、100gで5分間回転させた。細胞を、0.4%のホルムアルデヒドで固定し、Beckman Coulter Fc-500フローサイトメーター(Beckman Coulter, High Wycombe, UK)またはMACSQフローサイトメーター(Miltenyi Biotech, Bisley, UK)で分析した。
【0132】
全血に対する抗体結合
50μlの健常なドナーの全血を、50μlの一次抗体と4℃で1時間インキュベートした。血液を、150μlのRPMI 10%のNBCSで洗浄し、100gで5分間回転させた。上清を廃棄し、50μlのFITCにコンジュゲートした抗マウス/抗ヒトまたはビオチンにコンジュゲートした抗マウス/抗ヒトのIgG Fcに特異的な抗体(Sigma;RPMI 10%のNBCSにおいて1/100)を、二次抗体として使用して、細胞を、暗室において4℃で1時間インキュベートし、その後、150μlのRPMI 10%のNBCSで洗浄し、100gで5分間回転させた。50μlのストレプトアビジン-FITC(Sigma;RPMI 10%のNBCSにおいて1/100)またはストレプトアビジン-PE-Cy7(eBioscience;RPMI 10%のNBCSにおいて1/100)を使用して、ビオチン化二次抗体を検出した。細胞を、暗室において4℃で1時間インキュベートし、その後200μlのRPMI 10%のNBCSで洗浄し、100gで5分間回転させた。上清を廃棄した後、50μl/ウェルのCal-Lyse(Invitrogen, Paisley, UK)を使用し、次に、500μl/ウェルの蒸留水を使用して、赤血球を溶解した。その後、血液を100gで5分間回転させ、上清を廃棄し、細胞を500μlのPBSに再懸濁した。サンプルは、FC-500フローサイトメーター(Beckman Coulter)で分析した。生のデータを分析およびプロットするために、WinMDI 2.9ソフトウェアを使用した。
【0133】
糖脂質の結合のTLC分析
LMTKおよびSSEA-3/4-LMTK細胞膜脂質サンプルを、シリカプレート上にブロッティングし、クロロホルム(Sigma)/メタノール(Sigma)/蒸留水(体積により60:30:5)に2回展開し、その後、ヘキサン(Sigma):ジエチルエーテル(Sigma):酢酸(Sigma)(体積により80:20:1.5)に2回展開した。乾燥したプレートに、アセトンにおいて0.1%のポリイソブチルメタクリレート(Sigma)を噴霧した。空気乾燥させた後、プレートを、室温で1時間、PBS 2(w/v)%のBSAでブロッキングし、PBS 2(w/v)%のBSAに希釈した一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。次に、プレートをPBSで3回洗浄し、PBS 2(w/v)%のBSAで1/1000に希釈したビオチンにコンジュゲートした抗マウスIgG Fcに特異的な二次抗体(Sigma)と、室温で1時間インキュベートした。その後、プレートを再度PBSで洗浄した後、PBS 2(w/v)%のBSAで1/1000に希釈したIRDye 800CWストレプトアビジン(LICOR Biosciences, Cambridge, UK)と、暗室において室温で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBSでさらに3回洗浄し、暗室において空気乾燥させた。脂質のバンドは、LICOR Odyssey scannerを使用して可視化した。
【0134】
(HSAとカップリングした)グリカンのELISA
ELISAプレート(Becton Dickinson, Oxford, UK)を、100ng/ウェルのSSEA-3、SSEA-4、フォルスマン、Globo-H、およびシアリル-Lewisx(SLex)グリカン-HSAコンジュゲートで、4℃で一晩コーティングし、PBS(Elicityl、Crolles, France)に再懸濁し、200μl/ウェルのPBS 5(w/v)%のBSAを用いて、室温で1時間ブロッキングし、次に、50μl/ウェルの一次抗体(5μg/ml)とインキュベートした。一次抗体を、PBS 1(w/v)%のBSAで1/5000に希釈したビオチン化抗マウスIgGまたは抗ラットIgM二次抗体(Sigma)を使用して検出した。PBS 1(w/v)%のBSAで1/5000に希釈したストレプトアビジン西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(Invitrogen)とインキュベートし、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB;Sigma)で展開した後、プレートを、Tecan Infinite F50を使用して450nmで読み取った。
【0135】
赤血球結合アッセイ
健常なドナーの赤血球を、PBSで3回洗浄し、充填された細胞容量の10倍のPBSに再懸濁した。次に、50μlの洗浄した赤血球を、50μlの一次抗体と37℃で1時間インキュベートした。細胞を、150μlのPBSで洗浄し、100gで5分間回転させた。上清を廃棄し、細胞を、PBS 1(w/v)%のBSAで1/100に希釈した50μlのFITCにコンジュゲートした抗マウスIgG Fcに特異的な二次抗体(Sigma)に再懸濁した。細胞を、暗室において37℃で1時間インキュベートし、次に、150μlのPBSで洗浄し、100gで5分間回転させた。上清を廃棄し、細胞を500μlのPBSに再懸濁した。サンプルは、FC-500フローサイトメーター(Beckman Coulter)により分析した。生のデータを分析およびプロットするために、WinMDI 2.9ソフトウェアを使用した。
【0136】
赤血球の血球凝集アッセイ
4mlの正常なドナーの全血を、ヘパリンチューブ(Becton Dickinson)に回収した。全血を、無菌性の15mlのコニカルチューブに移し、無菌性PBSで洗浄した。洗浄した血液を、100gで5分間遠心分離した。上清を吸引した。洗浄ステップは、2回反復した。最後の洗浄の後、血液細胞のペレットを無菌性PBSで希釈し、最終的な作業濃度の0.5%の赤血球を作製した。0.5%の赤血球50μlを96ウェルのU底プレートの各ウェルに添加した。赤血球の上部に、一次抗体を50μl/ウェルで添加し、室温で1時間か、または赤血球が凝集するまでインキュベートした。
【0137】
モノクローナル抗体の親和性分析
SSEA-4含有リポソームに対するFG2811mG3 mAbの結合の動態パラメータを、表面プラズモン共鳴(SPR, Biacore 3000, GE Healthcare)により決定した。L1センサーチップ(GE-healthcare)を、40mMのオクチルD-グルコシドであらかじめ条件付けし、次に、SSEA4含有リポソーム(6000RU)でコーティングし、短いパルス(short pulse)のNaOH(10mM)でゆるく結合したリポソームを除去した。参照フローセルは、SSEA-4を欠いたリポソームを使用したこと以外は同じ方法で処置した。両方のフローセルで、カバー度の度合いは、HSA(0.1mg/ml)の注射がRUのわずかな増大(50~60RU)しか誘導しなかったためほぼ完全であった。両方のフローセルからのシグナルの安定化の後、増大する濃度(0.3nmol/L~200nmol/L)のFG2811mG3 mAbを注射し、その後、サイクル後に再生(10mMのグリシン、pH1.5)を行った。結合曲線を、BIAevaluation 4.1を使用して1:1(Langmuir)結合モデルに適合した。
【0138】
FG2811mG3のグライコーム分析(Consortium for Functional Glycomics)
FG2811mG3抗体の微細な特異性を決定するために、抗体をFITCで標識し、Consortium for Functional Glycomicsに送付した。ここでこれらを、600以上の天然および合成のグリカンに対してスクリーニングした(core H group, version 5.1)。アミノリンカーを含む合成および哺乳類のグリカンを、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)により活性化した顕微鏡のスライドガラス上にプリントし、アミド結合を形成した。プリントされたスライドを、5μg/mlの抗体と室温で1時間インキュベートした後、結合を、Alexa488にコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgGで検出した。次に、スライドを乾燥させ、スキャンし、スクリーニングデータを、Consortium for Functional Glycomicsデータベースと比較した。
【0139】
CSFE T細胞増殖アッセイ
PBMCの分離
全血(バフィーコート)を、国立血液サービス(Sheffield)から入手するか、または健常なドナーからヘパリンリチウム(1000単位/ml;Sigma H0878)を含むシリンジに回収した。全血は、RPMI 1640を用いて1:1の比率で希釈し、リンパ球分離培地(Histopaque-1077;Sigma)上に層状化し、次に800gで25分間ブレーキをかけずに遠心分離した。遠心分離した後、血漿を上層の、バフィーコート層由来のPBMCから回収した。PBMCをRPMI 1640で2回洗浄し、317gで5分間回転させた。PBMCの数を計測し、細胞の、T細胞の単離に関する準備を完了させた。
【0140】
純粋なT細胞の単離
全ての1×107個のPBMCを、40μlの冷却したMACSバッファー[PBS 1(v/v)%のFCS 1(v/v)%のEDTA](PBS:Sigma D8537;FCS:Sigma F9665および0.5M pH8 EDTA:Invitrogen)に再懸濁した。次に、10μlのPanT細胞ビオチン抗体(Miltenyi)を、全ての1×107個の細胞に添加し、暗室において4℃で5分間インキュベートした。30μlの冷却したMACSバッファーを全ての1×107個の細胞に添加した後、20μlのPanT細胞のマイクロビーズ(Miltenyi)を全ての1×107個の細胞に添加し、暗室において4℃で10分間インキュベートした。細胞をLSカラム(Miltenyi)に添加し、CD3の精製したT細胞を含む素通り画分を回収した。カラムに保持された細胞は、非T細胞であった。
【0141】
CSFEの充填
精製したT細胞を、RPMI 1640で洗浄し、細胞の数を計測した。細胞を、317gで5分間回転させ、上清を除去した。全ての1×107個の精製したT細胞を、1mlのPBS 10%のFCSに再懸濁した。CSFEを、18μlのDMSO(Invitrogen)、次に、1.8mlのPBS 10%のFCSに溶解させた。次に、110μlの希釈したCSFEを、全ての1×107個のT細胞に添加し、暗室において室温で5分間インキュベートした。CSFEを充填した細胞を、PBS 10%のFCSで洗浄し、次に、1×106個の細胞/mlで完全培地(RPM1640 2(v/v)%のHepes 1(v/v)%のLグルタミン 1(v/v)%のペニシリン・ストレプトマイシン)10%のドナーの血漿に再懸濁した。細胞(2mlにおいて2×106個)を、CH2811hG1抗体(5μg/ml)、FG2811mG1(5μg/ml)、CH2811hG2抗体(5μg/ml)であらかじめコーティングされているか、または抗CD3抗体(OKT 3;0.005μg/ml)、抗CD3e Ab(1μg/mL、eBioscience, 16-0031-85)、および抗CD28 Ab(1μg/ml eBioscience 16-0281-85)、または培地単独を含む24ウェルプレートの各ウェルに添加した。7、11、および14日目に細胞を回収し、CD3に対する関連する抗体(eBioscience, 17-0031)、SCA-1に対する関連する抗体(Miltenyi, 130-102-343)、CD62Lに対する関連する抗体(Miltenyi, 130-102-543)、CD44に対する関連する抗体(Miltenyi, 130-116-495)、抗CD4-APC-780(eBioscience 47-0049)、抗CD8-VioGreen(Miltenyi, 130-102-805)、Tim3-PE(eBioscience, 130-118-563)、またはCH2811hG2-PeCy7(組織内、1:50希釈)で染色し、次に、MACSQフローサイトメーター(MACSQUANT analyser 10)を使用して分析した。
【0142】
Luminex[Milliplex Map Kit-ヒト高感受性T細胞磁性ビーズパネル(96ウェルプレートアッセイ)]
9ウェルの形式のアッセイを、製造社の推奨に基づきフィルタープレートで行った。合計で200μlのウォッシュバッファーを96ウェルのフィルタープレート(Millipore)の各ウェルに添加した。このプレートを密閉し、プレートシェーカー上にて室温で10分間混合した。プレートを反転させ、ペーパータオル上でタッピングすることによりウォッシュバッファーを除去した。次に、各標準物質、対照、およびサンプル(CSFE増殖アッセイ由来の培養上清)25μlを各ウェルに添加し、25μlの血清マトリックスを、各標準物質および対照のウェルに添加し、25μlのアッセイバッファーを、各サンプルウェルに添加した。作業ビーズの混合物を、使用の直前にボルテックスした。次に、25μlの混合したビーズを各ウェルに添加した。次に、プレートを密閉し、アルミホイルで覆い、プレートシェーカー上で撹拌しながら(500~800rpm)4℃で16~18時間インキュベートした。インキュベートの後、プレートを、60秒間ハンドヘルドの磁石上で休ませ、次に、プレートを反転しペーパータオル上でタッピングすることにより、プレートから液体を除去した。毎回、プレートを、200μlのウォッシュバッファーで2回洗浄した。第2の洗浄の後、プレートの底を、ペーパータオル上でタッピングすることにより乾燥させ、25μlの検出抗体を各ウェルに添加した。次に、プレートを密閉し、アルミホイルで覆い、プレートシェーカー上で撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。次に、25μlのストレプトアビジン-フィコエリトリンを、25μlの検出抗体を含む各ウェルに添加した。プレートを、室温でさらに30分間振とうさせた。インキュベートの後、プレートを、ハンドヘルド磁石上で60秒間休ませた後、プレートを反転させペーパータオル上でタッピングすることにより、プレートから液体を除去した。毎回、プレートを、200μlのウォッシュバッファーで2回洗浄した。次に、150μlのsheath fluid(Luminex)を各ウェルに添加した。ビーズを、プレートシェーカー上で5分間再懸濁させ、Bio-Plex 3D instrument(Bio-Rad, Hercules, CA)で読み取った。この器具は、分析物あたり少なくとも50のビーズを回収するように設定した。生のデータは、平均蛍光強度(MFI)として測定した。
【0143】
ナイーブT細胞の単離
全血を、正常なドナーからヘパリンリチウム(1000単位/ml;Sigma H0878)を含むシリンジに回収した。全血は、RPMI 1640を用いて1:1の比率で希釈し、リンパ球分離培地(Histopaque-1077;Sigma)上に層状化した後、ブレーキをかけずに、800gで25分間遠心分離した。遠心分離の後、血漿を、バフィーコート層由来の上層のPBMCから回収した。PBMCを、RPMI 1640で2回洗浄し、317gで5分間回転させた。PBMCの数を計測し、細胞の、ナイーブT細胞の単離の準備が完了した。全ての1×107個のPBMCを、40μlの冷却したMACSバッファー[PBS 1(v/v)%のFCS 1(v/v)%のEDTA](PBS:Sigma D8537;FCS:Sigma F9665および0.5M pH8 EDTA:Invitrogen)に再懸濁した。次に、10μlのナイーブなPanT細胞ビオチン抗体(Miltenyi)を、全ての1×107個の細胞に添加し、暗室において4℃で5分間インキュベートした。30μlの冷却したMACSバッファーを全ての1×107個の細胞に添加し、次に、20μlのナイーブなPanT細胞のマイクロビーズ(Miltenyi)を、全ての1×107個の細胞に添加し、暗室において4℃で10分間インキュベートした。細胞を、LSカラム(Miltenyi)に添加し、CD3の精製したT細胞を含む素通り画分を回収した。カラムに保持された細胞は、非T細胞であった。ナイーブT細胞は、CH2811hG1、またはCD95/CD122抗体の組み合わせで30分間染色した。細胞を、MACSバッファーで洗浄し、セルソーティングに進ませた。CH2811hG1+およびCD95/CD122+細胞を、RNA protect(QIAGEN)に選別し、-80℃に保存した。
【0144】
サンプルの抽出およびクオリティコントロール
8つのT細胞のサンプルを、RNA保護試薬に入れた。サンプル容量全体を、Qiagen RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して抽出した。抽出したRNAサンプルは、量および完全性について、それぞれNanoDrop 8000 spectrophotometer V2.0(ThermoScientific, USA)およびEukaryote RNA Pico Bioanalyser chipと組み合わせたAgilent 2100 Bioanalyser(Agilent Technologies, Waldbronn, Germany)を使用して、評価した。サンプルは、7.4~10のRIN(RNA integrity numbers)を伴う低レベルの分解、および平均110ngの収率を呈した。
【0145】
cDNA合成
完全長のcDNA分子を、SMART-Seq(登録商標)v4 Ultra(登録商標)Low Input RNA Kit for Sequencing(Clontech, Mountain View, CA, USA)を使用して、サンプルあたり1ngの総RNAから作製した。cDNAの量は、Qubit(登録商標)2.0 Fluorometer(Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)を使用して測定し、質については、Agilent 2200 Tapestationおよびhigh-sensitivity D5000 screentape(Agilent Technologies, Waldbronn, Germany)を使用して確認した。全てのサンプルは、十分な量のcDNAを呈し、分子の大きさは、400~10,000bpの範囲であった。
【0146】
ライブラリーの作製およびRNAシーケンシング
シーケンシングライブラリーを、Illumina Nextera XT Sample Preparation Kit(Illumina Inc., Cambridge, UK)を使用して調製し、ここではサンプルあたり150pgのcDNAを投入した。11サイクルの最終的なPCR増幅を行った。最終的なライブラリーは、Qubit(登録商標)2.0 Fluorometer(Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)、およびhigh-sensitivity D1000 screentapeを伴うAgilent 2200 Tapestation(Agilent Technologies, Waldbronn, Germany)を使用して定量化および定性化した。等モル量の各サンプルライブラリーを、llumina NextSeq(登録商標)500 Mid-output kitを使用して行うシーケンシングのためにまとめて集め、75bpのペアエンドリードを作製した。
【0147】
差次的な発現分析
FastQC(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc)を使用してクオリティの確認を行った後、75bpのペアエンドリードを、STAR(version 2.6.1d)を使用してホモサピエンス参照ゲノムhg19に対してアライメントした。マッピングは、デフォルトパラメータを用いて行い、読み取りは、GeneCountsで計測した。2811および同様にCD95/CD122を多く含むT細胞の差次的な発現分析(DE)を、edgeR package(version 3.22)、次にBenjamini-Hochberg多重検定の訂正を使用して、GSE114765由来のCD4およびCD8のナイーブT細胞由来のデータセットを使用して行い(Pilipow et al. JCI insight 2018)、FDR(FDR<0.05)を確立した。T細胞のDEセット(CD8で2つ、CD4で2つ)の間に共通する遺伝子を、Venny 2.1を使用して同定し、StemCheckerデータベースの入力として使用して、「幹細胞性」シグネチャーを同定した(Pinto et al. 2015)。
【0148】
RNAseqを使用した転写のプロファイリング
8つのT細胞のサンプル(4つのCH2811+、4つのCD122/CD95+)を、RNA保護試薬で選別した。サンプル容量全体を、Qiagen RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して抽出した。抽出したRNAサンプルは、量および完全性について、それぞれNanoDrop 8000 spectrophotometer V2.0(ThermoScientific, USA)およびEukaryote RNA Pico Bioanalyser chipと組み合わせたAgilent 2100 Bioanalyser(Agilent Technologies, Waldbronn, Germany)を使用して、評価した。サンプルは、7.4~10のRIN(RNA integrity numbers)を伴う低レベルの分解および平均110ngの収率を呈した。完全長のcDNA分子を、SMART-Seq(登録商標)v4 Ultra(登録商標)Low Input RNA Kit for Sequencing(Clontech, Mountain View, CA, USA)を使用して、サンプルあたり1ngの総RNAから作製した。cDNAの量は、Qubit(登録商標)2.0 Fluorometer(Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)を使用して測定し、質については、Agilent 2200 Tapestationおよびhigh-sensitivity D5000 screentape(Agilent Technologies, Waldbronn, Germany)を使用して確認した。全てのサンプルは、十分な量のcDNAを呈し、分子の大きさは、400~10,000bpの範囲であった。シーケンシングライブラリーを、Illumina Nextera XT Sample Preparation Kit(Illumina Inc., Cambridge, UK)を使用して調製し、ここではサンプルあたり150pgのcDNAを投入した。11サイクルの最終的なPCR増幅を行った。最終的なライブラリーは、Qubit(登録商標)2.0 Fluorometer(Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)、およびhigh-sensitivity D1000 screentapeを伴うAgilent 2200 Tapestation(Agilent Technologies, Waldbronn, Germany)を使用して定量化および定性化した。等モル量の各サンプルライブラリーを、llumina NextSeq(登録商標)500 Mid-output kitを使用して行うシーケンシングのためにまとめて集め、75bpのペアエンドリードを作製した。FastQC(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc)を使用してクオリティの確認を行った後、75bpのペアエンドリードを、STAR(version 2.5.1b)を使用してホモサピエンス参照ゲノム(Esembl assembly GRCh37(hg19))に対してアライメントした。マッピングは、デフォルトパラメータを用いて行い、読み取りは、GeneCountsで計測した。
【0149】
CH2811および同様にCD95/CD122を多く含む転写プロファイルの差次的な発現分析(DE)を、edgeR package(version 3.22)、次にBenjamini-Hochberg多重検定の訂正を使用して、GSE83808由来のCD4およびCD8のナイーブT細胞由来のデータセットを使用して行い(Hosokawa et al. 2017)、FDR(FDR<0.05)を確立した。T細胞のDEセット(CD8で2つ、CD4で2つ)の間に共通する遺伝子を、Venny 2.1を使用して同定し、StemCheckerデータベースの入力として使用して、「幹細胞性」シグネチャーならびに造血幹細胞(haematopoetic stem cell)(HSC)および胚性幹細胞(ESC)に関連する遺伝子セットとの重複を同定した(Pinto et al. 2015)。有意に多く含まれる遺伝子の分布は、ヒートマップ分析(https://software.broadinstitute.org/morpheus/)を介して提示される。同時に、公開されているナイーブなCD4およびCD8T細胞ならびにメモリーCD4およびCD8T細胞(GSE23321)ならびに活性化したナイーブなCD8T細胞(GSE114765)と比較したCH2811およびCD95/CD122を多く含むプロファイルでの、TscmおよびエフェクターTの分化に関連する遺伝子の分布は、http://bioinformatics.sdstate.edu/idep/を使用して可視化した。
【0150】
マウス試験
8~12週齢のC57BL/6Jマウス(Charles River)、HHDII/HLA-DP4(DP*0401)マウス(EM:02221, European Mouse Mutant Archive)、HHDIIマウス(Pasteur Institute)を使用した。全ての作業は、内務省により承認されたプロジェクトライセンスの下行われた。6匹のマウスを、無作為に2つのグループ(グループAおよびB)に分け、調査者に対し盲検は行わなかった。0日目に、エンドトキシンフリーのFG2811mG1 mAbをグループAのマウスに腹腔内経路(i.p.)を介して免疫処置した(250μg/マウス)。グループBのマウスは、免疫処置を行わない対照グループとして使用した。16日目に分析のため脾臓を回収し、次に、サンプルグループ内で脾細胞をまとめて集め、プレートに結合したFG2811mG1抗体(5μg/ml)の存在下または非存在下で再刺激した。24、27、および30日目に、抗CD3、CD4、CD8、CD44、CD62L、SCA-1、およびCH2811hG1抗体を使用して、分析のため脾細胞を、培養物から回収した。
【0151】
染色マウス試験
ナイーブなHHDII DP4マウスを使用した。全ての作業は、内務省により承認されたプロジェクトライセンスの下行われた。ナイーブなマウスから脾臓、腸間膜リンパ節、鼠径リンパ節、骨髄、および血液のサンプルを、分析のため回収した。組織は、CH2811hG2-PeCy7(組織内、1:50希釈)、抗CD3(eBioscience, 17-0031)、SCA-1(Miltenyi, 130-102-343)、CD62L(Miltenyi, 130-102-543)、CD44(Miltenyi, 130-116-495)、抗CD4-APC-780(eBioscience 47-0049)、抗CD8-VioGreen(Miltenyi, 130-102-805)、およびTim3-PE(eBioscience, 130-118-563)とインキュベートした。
【0152】
実施例
ここで本発明を、以下の実施例および添付の図面を参照してさらに記載する。
【0153】
実施例1.FG2811.72の作製
FG2811 mAbの作製および性質決定
BALB/cマウスを、3カ月間にわたり、SSEA-3/4発現細胞株(SSEA-3/4-LMTK)を用いて腹腔内(i.p.)に免疫処置し、静脈内(i.v.)にてブーストした。この細胞株は、野生型LMTKマウス線維芽細胞にα-1-4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(A4GALT)、β-1-3-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B3GALNT1)、およびβ-1-3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(B3GALT5)の遺伝子(Cid et al. 2013)を形質導入することにより、産生させた。この細胞株は、SSEA-3グリカンの末端にシアル酸を付加し、SSEA-4を産生させる内因性シアリルトランスフェラーゼを有する(
図1)。
【0154】
抗SSEA-4特異的mAbを作製するために、免疫処置したマウスの脾細胞を、ミエローマNS0細胞と融合させた。スクリーニングおよび限界希釈のクローニングを数ラウンド反復した後、抗SSEA-4 mAb、FG2811mG3を得た。
【0155】
SSEA-3およびSSEA-4は、グロボ系列の糖脂質であることが知られている。FG2811mG3 mAbがSSEA-3/4-LMTK細胞上で細胞表面糖脂質抗原を認識することを確認するために、SSEA-3/4-LMTK細胞膜脂質抽出物の高速薄層クロマトグラフィー(HPTLC)分析およびFG2811mG3 mAbでの免疫染色を行った(
図4A)。MC631 mAb(市販の抗SSEA-3 mAb)およびMC813 mAb(市販の抗SSEA-4 mAb)を、比較として含め、野生型のLMTK細胞を、陰性対照細胞株として使用した。FG2811mG3およびMC631 mAbは、SSEA-3/4-LMTK細胞で発現した糖脂質を染色したが、野生型LMTK細胞を染色しなかった。FG2811mG3 mAbは非常に特異的な糖脂質染色を示したが、MC631は、3つの異なる糖脂質抗原を染色し、MC631 mAbはSSEA-3/4-LMTK細胞で発現した他の2つの糖脂質抗原と交差反応することが示唆された。MC813は、SSEA-3/4-LMTK細胞およびLMTK細胞の両方に由来する糖脂質を染色することができず、これは恐らくSSEA-4抗原に対する自身の低い親和性によるものであり得る。その後の細胞表面抗原結合により、SSEA-3/4-LMTK細胞表面抗原に対する結合は、MC631(ラットIgM;Gm:55.93)が最も強く、次いでFG2811mG3(マウスIgG3;Gm:20.77)およびMC813(マウスIgG1;8.77)のmAbであることが示された(
図4B)。二次抗体単独(Gm:0.34)は、陰性対照として使用した。次に、ELISAアッセイを行い、HSAとカップリングしたSSEA-3、SSEA-4、Globo-H、フォルスマン、およびシアリル-Lewisxグリカンに対しFG2811mG3 mAbをスクリーニングした(
図4C)。ELISAからの結果は、FG2811mG3 mAbがSSEA-4グリカンに特異的(1.2OD単位)であり、M1/87 mAbがフォルスマングリカンに特異的(1.1OD単位)であることを示した。対照的に、MC631およびMC813は両方とも、他のグリカンと交差反応した。MC631 mAbは、SSEA-3(1.0OD単位)、SSEA-4(1.0OD単位)およびGlobo-H(0.5OD単位)のグリカンを認識した。MC813 mAbは、SSEA-3(0.8OD単位)、SSEA-4(1.2OD単位)およびフォルスマン(0.7OD単位)に結合した。FG2811mG3は、微細な特異性を決定するために、600以上の天然および合成のグリカンに対して、Consortium for Functional Glycomics(CFG)によりスクリーニングがなされ、FG2811mG3のみがSSEA-4グリカンに結合し、SSEA-4に対するその特異性が確認された(
図4D)。
【0156】
FG2811mG3 mAbのSSEA-3/4-LMTK細胞膜脂質抗原結合動態を、表面プラズモン共鳴(SPR;Biacore X)を使用して試験した。結合曲線の適合は、2811 mAbに関する速い結合速度(約10
5 1/Ms)および遅い解離速度(約10
-4 1/s)を有する強力で明確な機能的な親和性(K
d 約2×10
-9M)を明らかにした(
図5A)。これは、SSEA-3/4-LMTK細胞膜脂質のELISA由来のEC
50値(EC
50=6.8×10
-10M)(
図5B)および細胞の機能的な結合活性(K
d=5×10
-9M)(
図5C)と一致していた。
【0157】
実施例2.FG2811抗体配列
DNAシーケンシングは、FG2811mG3 mAbがIGHV2-3*01重鎖およびIGKV4-63*01軽鎖の遺伝子ファミリーに属していることを明らかにした(
図2AおよびB)。変異の評価は、FG2811重鎖と生殖系列配列との間に9ヌクレオチドの差異を示し、ここでアミノ酸残基では5つ変化があった。同様に、FG2811κ鎖と生殖系列配列との間に7ヌクレオチドの差異があり、アミノ酸残基においては結果として5つの変化があった。変異の性質およびパターンは、体細胞の高頻度変異および親和性の変異を示唆している。
【0158】
FG2811の重鎖および軽鎖の可変領域を、マウスIgG1、ヒトIgG2およびIgG1の発現ベクターにクローニングした(
図2C~E)。これを、HEK293細胞にトランスフェクトし、抗体をプロテインGで精製した。mIgG3、mIgG1、hIgG1、およびhIgG2 mabは、SSEA3/4 LMTK細胞株に結合した(
図3)。
【0159】
実施例3.ヒトがん細胞株のパネルに対する2811の結合
SSEA-4の過剰発現が、MC813 mAbにより定義されるように、神経膠芽腫がん細胞株で報告されている。よって、脳がん細胞株のパネルを、5μg/mlのFG2811mG3およびMC813 mAbの両方を使用して、SSEA-4の発現に関してフローサイトメトリー分析により評価した(
図6A)。マウスIgG3κアイソタイプ対照および培地単独(一次抗体なし)を、陰性対照として使用した。がん細胞株U251およびU87は、成年GBM細胞であり、SF188およびKNS42は、小児GBM細胞であり、UW2283およびDAOYは、髄質芽細胞腫がん細胞である。FG2811mG3は、DAOY(Gm:50)およびUW2283(Gm:36)に弱く結合するが、他のがん細胞株と結合しなかった。対照的に、MC813は、U251(Gm:27)およびU87(Gm:38)に弱く結合し、DAOY(Gm:169)およびUW2283(Gm:152)に強く結合し、KNS42およびSF188に結合しなかった。MC813抗体の低い特異性により、この結果は、SSEA-4の発現がDAOY細胞株およびU251細胞株でみ見出され得、この発現レベルは低いことを示唆している。卵巣細胞、乳房細胞、および結腸直腸細胞から構成されるがん細胞株のパネルに対するFG2811mG3抗体の結合を、FACSによりさらに評価した(
図6B)。FG2811mG3は、SKOV3(Gm:203)に強く結合し、T47D(Gm:95)およびMCF7(Gm:76)に中程度に結合し、IGROV1(Gm:41)およびOVCAR-5(Gm:87)に弱く結合し、DU4475(Gm:26)、HCC1187(Gm:22)、Colo205(Gm:13)、およびHCT15(Gm:22)に結合しなかった。
【0160】
実施例4.2811 mAbの細胞傷害性
ADCCを介して腫瘍細胞死を誘導するFG2811mG3 mAbの特性を調査した(
図7A)。ヒトPBMCを、エフェクター細胞の供給源として使用し、SKOV3細胞およびT47D細胞を、標的細胞として扱った。FG2811mG3 mAbにより殺滅された細胞の数を、37℃で18時間のインキュベーションの後に測定した。卵巣がん細胞のSKOV3(EC
50:10
-10M)は、濃度依存的な方法でFG2811mG3 mAbの殺滅の影響を受けやすく、最大66%の細胞溶解を示した。FG2811mG3 mAbはT47Dに結合したにも関わらず、このmAbはADCCを介してT47D細胞の殺滅を誘導できず、この殺滅効果がSSEA-4の発現レベルに依存していることが示唆された。CDCは、in vivoでの腫瘍細胞の排除に関与する重要な機構であることが知られている。補体の供給源としてのヒト血清の存在下または非存在下でFG2811mG3 mAbにより誘導されるCDCにより殺滅されるSKOV3細胞およびT47D細胞の特性をアッセイした(
図7B)。FG2811mG3 mAbは、SKOV3(EC
50:10
-9M)細胞の最大48%の細胞溶解を示した。FG2811mG3は、CDCを介してもまたT47D細胞の殺滅を誘導しなかった。FG2811mG3 mAbが腫瘍細胞に直接的な殺滅を誘導し得るかどうかを調査するために、PIの取り込みアッセイを、SSEA-3/4-LMTK細胞およびSKOV3細胞を用いて30μg/mlのFG2811mG3 mAbを使用することにより行った(
図7C)。過酸化水素および培地単独は、それぞれ陽性対照および陰性対照として含めた。FG2811mG3 mAbは、SSEA-3/4-LMTKで、74.7%のPIの取り込みを誘導し、SKOV-3細胞で28.6%と弱く誘導した。PIアッセイが真に増殖する細胞の細胞死を反映していることを確認するために、30μg/mlのFG2811mG3 mAbで処置したSSEA-3/4-LMTK細胞およびSKOV3細胞の細胞バイアビリティを、光学顕微鏡下で評価した(
図7D)。LMTKの野生型の細胞および培地単独(RPMI)で処置した細胞を、陰性対照として使用した。SSEA-3/4-LMTK細胞は、FG2811mG3 mAbを添加してから数秒以内に凝集することが観察された。しかしながら、この現象は、SKOV3細胞およびLMTK細胞をFG2811mG3 mAbとインキュベートした場合には発達しなかった。FG2811mG3で処置したSSEA-3/4-LMTK細胞およびSKOV3細胞は、72時間のmAbの添加の後に増殖阻害のエビデンスを示した。FG2811mG3 mAbは、LMTK細胞に関する作用を示さなかった。培地単独とインキュベートした細胞は、増殖阻害を示さず、72時間のインキュベーション期間にわたりいくつかの細胞死を伴い100%のコンフルエントを達成した。
【0161】
実施例5.赤血球の2811の染色
SSEA-3およびSSEA-4は両方とも、大部分の人々の赤血球で発現することが報告されていた。よって、ある濃度範囲(10μg/ml)のFG2811mG3 mAbの、5名のドナー由来の赤血球に対する結合を、フローサイトメトリーにより評価した(
図8A)。抗CD55 mAb(791T/36;10μg/ml;Gm:202)を陽性対照として含め、IgGアイソタイプ対照およびPBSを陰性対照として使用した。FG2811mG3(Gm:10)は、全ての5名のドナー由来の赤血球と結合しなかった。さらに赤血球凝集アッセイから、FG2811mG3 mAb(0.625~10μg/ml)が5名のドナー由来の赤血球を凝集しなかったことが確認された。対照的に、791T/36 mAbおよび抗血液血清抗体は、全てのドナー由来の赤血球を凝集した。PBSを陰性対照として使用した(
図8B)。
【0162】
実施例6.ステムメモリーT細胞(T
SCM)に対する2811の結合
T
SCM細胞の発見およびSSEA-4が幹細胞マーカーであるとの事実により、2811 mAbがT
SCM細胞を認識し得るとの仮説がもたらされた。全血サンプルを、7名の健常なドナー(BD3、BD13、BD18、BD27、BD38、BD96、BD31)から回収し、FG2811mG1 mAbで染色した(
図9A)。MC813 mAbを比較として含め;マウスIgG1アイソタイプ対照抗体および二次抗体単独(一次抗体なし)を、本発明者らは、陰性対照として使用し;198抗体(抗CEACAM6)およびOKT3抗体(抗CD3)を、それぞれ顆粒球およびPBMCの陽性対照抗体として使用した。FG2811mG1 mAbは、7名の健常なドナーの中の、0.8~2.3%の範囲の小さな集団の末梢血単核球(PBMC)を染色した。SSEA3、SSEA4、およびフォルスマンの抗原を認識するMC813 mAbは、7名のドナーを通していずれの血液細胞も染色しなかった。198 mAbは、顆粒球を染色し、OKT3 mAbは、CD3
+T細胞を染色した。二次抗体および培地単独は、細胞染色を示さなかった。次に、これら2811
+PBMCがTSCM細胞であるかどうかを調査するために、PBMCを、2名の健常なドナーから回収し、FG2811、CD3、CD122、CD45RA、CD45RO、CD62L、およびCD95の抗体と共染色し、マルチパラメーターフローサイトメトリーにより分析した(
図9B、表2)。CD3
+のT細胞全てを最初に同定し、次に、2811
+集団を同定した。2811
+細胞の頻度は、2名のドナーを通して0.32~0.41%であった。その後、CD45RAおよびCD45ROのマーカーの発現を、CD3
+2811
+集団から分析した。CD3
+2811
+T細胞は、CD45RA
+細胞(37.5~38.6%)、CD45RO
+細胞(38~47.8%)およびCD45RA
+RO
+細胞(12.7~23.1%)のサブセットから構成されていた。最終的に、CD62L、CD95、およびCCR-7の発現を、CD45RA
+、CD45RO
+、およびCD45RA
+RO
+の集団から評価した。大部分のCD45RA
+(88.7~90%)、CD45RA
+RO
+(79.5~89.6%)、およびCD45RO
+(64.5~67.1%)は、CD62L
+であり、CD45RA
+細胞の27.6~59.7%、CD45RA
+RO
+細胞の29.5~85.7%、およびCD45RO
+細胞の81.2~86.1%は、CD95
+であり、CD45RA
+細胞の56.1~78.9%、CD45RA
+RO
+細胞の51.4~78.1%、およびCD45RO
+細胞の53.7~61.2%は、CCR-7
+であった。これら結果は、2811/CD45RA
+細胞がT
SCM細胞であり、2811/CD45RA
+RO
+細胞が活性化されたT
SCMであり得、2811/CD45RO
+細胞が活性化されたT
SCM細胞またはT
CM細胞であり得ることを示唆していた。
【0163】
【表2】
表2.PBMCの表現型決定。PBMCを、2名の健常なドナー(BD13およびBD38)から単離し、抗体のパネル(CD3、FG2811、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD95、およびCCR-7)で染色した。PBMCの表現型は、フローサイトメトリーを使用して決定し、結果は、陽性細胞のパーセンテージとして提示した。
【0164】
ヒトT細胞の分化の階層的なモデルにおいて、抗原のプライミングの後、ナイーブT細胞(TN)は、ステムメモリーT細胞(TSCM)、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、および最終的に分化したエフェクターT細胞(TTE/TEMRA)に漸進的に分化する。これらT細胞のサブセットは、異なるマーカーのコンビナトリアルな発現により区別される(表3)(Gattinoni et al. 2017)。
【0165】
【0166】
実施例7.2811陽性T細胞のRNAシーケンシング
トランスクリプトーム解析により、本発明者らは、推定上のT
SCM細胞(Gattinoni et al. 2017)と2811+T細胞との間の関連性の度合いを調査した。CD95およびCD122(IL-2Rβ)のマーカーは、T
N細胞とT
SCM細胞を識別し;CD45ROマーカーは、他のメモリーT細胞のサブタイプをT
SCM細胞と区別する。よって、ナイーブT細胞を、メモリーT細胞および非T細胞の欠乏に関するビオチン化抗体のカクテルを含むPan naive human T-cell isolation kit(Miltenyi)を使用して、4名の健常なドナーから単離した。その後、精製したナイーブT細胞(CD45RA
+)を、CH2811hG1またはCD95/CD122の組み合わせで染色して、2811+細胞および推定上のT
SCM細胞をそれぞれ単離した。CH2811hG1およびCD95/CD122を多く含むT細胞のRNAシーケンシングならびにCD8の天然のT細胞からのデータセットを使用した差次的な遺伝子発現(DE)分析は、SSEA-4陽性(CH2811)細胞で有意にアップレギュレートまたはダウンレギュレートした5,036の遺伝子のうちの2227(44%)が、CD95/CD122陽性T細胞でアップレギュレートまたはダウンレギュレートされたDE遺伝子と共通することを示しており、これら2つの集団の間に実質的な重複遺伝子が存在することが示唆される(
図10A)。共通する遺伝子のうち有意に、257は胚性幹細胞遺伝子のセットと重複し、103は造血幹細胞と重複し、78は胚性癌と重複し(
図10A)、SSEA-4が実際に、幹細胞様の挙動を有するT細胞のサブセットに関連することを暗示していた。本発明者らのデータセットにおける前者の2つの重複した遺伝子セットの分布プロファイルが、ヒートマップ分析を使用して示されている。さらにまた、本発明者らのCH2811hG1およびCD95/CD122を多く含むT細胞プロファイルの中のTSCMおよびエフェクターの分化の遺伝子の分布、ならびにCD8/CD4ナイーブT細胞およびメモリーT細胞および活性化したCD8の天然のT細胞(「ドナー」との比較も示されている(
図10B)。階層クラスタリングは、CH2811hG1およびCD95/CD122のサンプルの明らかな分離を示しており、これらが、真のナイーブT細胞/メモリーT細胞または活性化ナイーブT細胞と比較して互いに類似しており、幹細胞様挙動を有する明確に異なるT細胞のサブセットを表し得ることを示唆している(
図10C)。
【0167】
実施例8.T細胞の増殖(proliferation and expansion)
共刺激のパラダイムにより、T
N細胞は、増殖および分化をもたらす完全な活性化のためT細胞受容体(TCR)シグナル1および共刺激シグナル2の両方の関与を必要とする。しかしながら、CD28スーパーアゴニストとして知られているCD28に特異的な抗体のサブクラスは、従来のCD28抗体とは異なり、TCRをさらに刺激することなくT細胞を完全に活性化できる。本発明者らは、CH2811hG1 mAbが、CD4およびCD8のT細胞の増殖を誘導できるかどうかを調査した。最初に、PBMCを、2名の健常なドナー(BD3およびBD18)から単離し、CSFEを標識し、次に、5μg/mlのプレートに結合したCH2811hG1 mAbを使用して抗体により刺激し、これにより、11日目にCD4T細胞の増殖(13~20%)およびCD8T細胞の増殖(2~31%)が示された(
図11A~B)。PHAおよび培地単独で刺激されたPBMCは、陽性対照および陰性対照であった。
【0168】
これが、抗原提示細胞のFcの活性化によるものであったことを未然に防ぐために、精製したT細胞(96%の純度;
図12A)を、4名の健常なドナーから単離し、CSFEで標識し、次に、5μg/mlのプレートに結合したCH2811hG1 mAbで刺激した。14日目に、CD4
+T細胞の8~18%およびCD8
+T細胞の3~7%が増殖し、この増殖は、Fcの相互作用により媒介されなかったことが示唆された(
図12B~C)。抗CD3 mAb(0.005μg/ml)および培地単独で刺激した細胞は、それぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。細胞分裂を経た細胞のパーセンテージは、SSEA4陽性細胞の大部分が14日以内に少なくとも4回の細胞分裂を経た(96%)のに対してCD3で刺激した細胞のうちの55%しか4回の細胞分裂を経ていないため、異なるものであった(
図12D)。
【0169】
実施例10.TCRレパートリーのクローン型の評価
CH2811IgG1で刺激したT細胞のクローン性を、2名のドナー(BD3およびBD26)から評価し、TCRレパートリーを決定し、完全に自動化されたマルチプレックスPCRを行い、固有のCDR3(uCDR3)の次世代シーケンシング(NGS)分析のためのTCRα(TRA)およびTCRβ(TRB)鎖ライブラリーを作製した。ツリープロット分析(
図13)は、両ドナーのCSFElow集団においていくつかの比較的優性なクローン型の存在を明らかにした。非増殖集団の多様性は、TRA鎖およびTRB鎖それぞれで、それぞれ18.9および12.8であった。予想されるように、2811で刺激した集団の多様性は、TRA鎖およびTRB鎖それぞれで、3および3.3であった。この多様性は少なく、これら細胞が抗原を経験した細胞を表すことが示唆された。
【0170】
実施例11.個別のサイトカイン/ケモカイン応答の動態
TSCM細胞は、高い増殖能を有することが示されており、自己再生し多能性であり、さらにこれらは、他のT細胞のサブセットへ分化し得る。本発明者らは、FG2811
+T
SCM細胞が、いずれの補足されるサイトカインもない状態でin vitroで増殖および自己再生し得るとの仮説を立てた。最初に、本発明者らは、CH2811hG1抗体での刺激によりFG2811
+TSCM細胞により放出されるサイトカインを同定し、次に、推定上のFG2811
+T
SCM細胞を増殖させこの幹細胞性を維持するのに使用できる方法を設計することを目的とした。T細胞は、4名の健常なドナーから精製し、プレートに結合したCH2811hG1 mAbで刺激し、7、11、および14日目に上清を回収し、サイトカインまたはケモカインの放出について評価した。刺激していない細胞(培地のみ)を、陰性対照として使用した。9個のサイトカイン/ケモカイン(IFNγ、IL-10、IL-17A、IL-2、IL-21、IL-5、IL-7、IL-8、およびTNFα)の分泌を、マルチプレックスサイトカインアッセイ(Luminex technology)を使用してアッセイした(
図14)。CH2811hG1 mAbの刺激により、ケモカインIL-8は強力にアップレギュレートされ、対してより控えめなレベルのTNFα、IL-10、およびIL-5が、7~14日目から検出可能であった。
【0171】
トリパンブルー排除により示されるように、刺激しなかったT細胞および抗CD3で刺激したT細胞は、14日を超えて培養物で生存せず、CH2811hG1で刺激したT細胞のみが14日を超えて生存した(
図15A)。35日目に、生存可能な、CH2811hG1で刺激したT細胞を回収し、抗体のパネル(FG2811、CD3、CD122、CD45RA、CD45RO、CD62L、およびCD95)で細胞を染色することにより性質決定し、マルチパラメーターフローサイトメトリーを使用して分析した(
図15B)。32.47%の生細胞のうち、3%がFG2811
+であり、残りの97%はFG2811
-であった。FG2811
+細胞(
図15B(i))は、99%がCD3
+およびCD122
+であり、このうちの60%がCD45RA/RO二重陽性(CD45RA/RO
+)であり、30%がCD45RA
+であった。CD45RA/RO
+およびCD45RA
+細胞は両方ともCD62L
+およびCD95
+であり、これらがTSCM細胞であることを示唆していた。CD45RA/RO
+集団は、活性化したTSCM細胞であり得、対してCD45RA
+は、よりナイーブ様のTSCM細胞であり得る。FG2811
-集団(
図15B(ii))は、99%がCD3
+であるが、34%のみがCD122
+であった。FG2811
-CD3
+集団は、62%がCD45RO
+であり、17%がCD45RA
+であった。CD62Lは、49%のFG2811
-CD3
+CD45RO
+細胞で発現し、CD95は、FG2811
-CD3
+CD45RO
+細胞の79%で発現した。CD45RO/CD62L/CD95トリプル陽性細胞(CD45RO/CD62L/CD95
+)は、活性化したT
SCM細胞またはT
CM細胞であり得、CD45RO/CD95
+細胞は、TEMまたはTEMRAであり得る。CD45RA
+集団は、より多くのCD62L
+細胞(約76%)を含んでいたが、CD95
+細胞は少なかった(約28%)。CD45RA/CD62L/CD95
+細胞は、T
SCM細胞であり得る。この結果は、CH2811hG1の刺激が、長期間培養液において「幹細胞様」およびメモリーの特徴を有するT細胞を維持すること、ならびにこれらが他のT細胞種に分化し得ることを示唆している。これら生細胞の増殖の可能性を、これらを33日目に抗CD3/CD28抗体で再刺激するか、または33および64日目にCH2811hG1 mAbで再刺激することにより評価した。光学顕微鏡下で、39日目に、抗CD3/CD28抗体で再刺激した細胞は、T細胞の芽細胞を形成しており(
図15C(i))、CD3/CD28で再刺激したT細胞の大部分は死亡しており、いくつかの生細胞のみが残存していた。対照的に、CH2811抗体で2回再刺激した細胞は、70日目に依然として生存可能であり、多くにおいて明らかな増殖を示した(
図15C(ii))。これら2つの培養物由来の上清を、39、54、および70日目に回収し、サイトカインおよびケモカインについてスクリーニングした(
図15D)。CH2811hG1で再刺激した培養物では、他のサイトカイン/ケモカインのレベルは、14日目から徐々に70日目まで検出不能なレベルに至るまで減少し、IL-7およびIL-21のレベルは徐々に増大した(
図15D(i))。この結果は、IL-7およびIL-21が、培養物でのFG2811
+T
SCM細胞の自立に重要な役割を果たし得ることを示唆しており、IL-7は、T
SCMの形成にとって重要な指令的なシグナルを提供することが知られており(Cieri et al. 2013)、IL-21は、エフェクターT細胞の分化の阻害に重要な役割を果たしている(Lugli, Dominguez, et al. 2013)。抗CD3/28抗体で再刺激した培養物では、全てのサイトカインおよびケモカインが増大し、異なるT細胞のサブセットのバリエーションの活性化が存在することが示唆される(
図15D(ii))。たとえば、Th1細胞は、IL-2、IFNy、およびTNFαの分泌を特徴とし、Th2は、IL-5を分泌し、Th17は、IL-17AおよびIL-21を分泌し、制御性T細胞(Treg)は、IL-10を分泌する(Raphael et al. 2015)。
【0172】
実施例12.マウスにおけるFG2811+T
SCM細胞の同定
次に、本発明者らは、CH2811hG1抗体を使用して、マウスの脾細胞、腸間膜リンパ節細胞、および鼠径リンパ節細胞でのSSEA-4の発現を調査した(
図16)。これら結果は、CH2811hG1抗体が、脾細胞の0.5%、腸間膜リンパ節細胞の0.37%、および鼠径リンパ節細胞の0.52%を染色したことを示した。
【0173】
実施例13.FG2811(マウスIgG1)は、C57B/6Jマウスにおいて表現型T
SCM細胞を誘導する。
in vivoでのFG2811mG1のT細胞へのアゴニスティックな作用を決定するために、3匹のマウスのグループ(グループA)を、0日目に、250μgのFG2811でi.p.により免疫処置した。3匹の免疫処置しなかったマウスを対照グループとして含めた(グループB)。16日目に、両方のグループ由来のマウスを安楽死させ、脾臓を回収した。グループA由来の脾細胞の総数は、グループBのマウスと比較して多く、それぞれ7×10
7~1×10
8個の細胞および3.9×10
7~6.2×10
7個の細胞の範囲であった(
図17A)。各グループの中の個別のマウスに由来する脾細胞を、CH2811hG1、抗CD4、CD8、CD19、SCA-1、CD44、CD62L、CD11b、およびF4/80抗体で染色し、マルチパラメーターフローサイトメトリーにより分析した(
図17B)。CH2811hG1 mAbを使用して、T細胞では抗CD4およびCD8、TおよびB細胞のサブセットではCD44およびCD62L、幹細胞様細胞ではSCA-1(他のマーカーに加えて造血幹細胞およびマウスT
SCM細胞を同定するために使用されるマーカー)、ならびにマクロファージではCD11bおよびF4/80のSSEA-4
+脾細胞を同定した。グループAのマウスにおける2811
+(0.97~1.2%)、CD62L
+(5.51~10.83%)、およびCD62
+CD44
+(8.74~15.03%)の細胞の頻度は、グループB(それぞれ1.62~1.74%、17.39~19.2%、および18.4~27.34%)と比較して低かった。両グループ間のCD4
+、CD8
+、CD19
+、CD11b
+、F4/80
+、およびCD11b
+F4/80
+細胞のパーセンテージの差異は、マウスA3が少ないCD8
+T細胞集団を含んでいたことを除き、最小限であった(表4)。これら結果は、FG2811mG1抗体の免疫処置が2811
+細胞の増殖および分化を誘導し、in vivoでナイーブ様の細胞(2811
+、SCA-1
+、およびCD62L
+)の低減をもたらすことを示唆している。
【0174】
【表4】
表4:16日目のグループAおよびBの脾細胞における異なる免疫細胞のサブセットの頻度の概要
【0175】
各グループ由来の脾細胞を共にまとめ、次に、5μg/mlのプレートに結合したFG2811mG1 mAbの存在下(A+2811およびB+2811)または非存在下(A-2811およびB-2811)で培養した。その後、24、27、および30日目に、これら細胞を回収し、FG2811、CD3、CD4、CD8、CD44、CD62L、SCA-1、CD11b、F4/80、およびCD19抗体で染色し、マルチパラメーターフローサイトメトリーにより分析した(
図17C~D)。24日目に、グループAの脾細胞を、FG2811mG1 mAbを伴い(A+2811)または伴わずに(A-2811)再刺激し、FSC/SSC(forward and side scatter)プロファイルにより示されるように小さい細胞集団および大きな細胞集団を形成した。対照的に、FG2811mG1 mAbを伴い(B+2811)または伴わずに(B-2811)再刺激したグループBの脾細胞は、大きな集団をもたらさなかった(
図17C)。大きな集団は、30日目までA+2811およびA-2811脾細胞の培養物において持続し続けた(
図17D)。大きな細胞集団は主にCD3
moderate-high(CD3
mo-hi)CD4
high(CD4
hi)およびCD8
high(CD8
hi)T細胞からなり、小さな細胞集団は、CD3
low-moderate(CD3
lo-mo)CD4
low(CD4
lo)およびCD8
low(CD8
lo)のT細胞からなる。
【0176】
マウスT細胞の分化の階層的なモデルにおいて、抗原プライミングの後、ナイーブT細胞(TN)は、ステムメモリーT細胞(TSCM)、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)に漸進的に分化する。これらT細胞のサブセットは、異なるマーカーのコンビナトリアルな発現により区別される(表5)。
【0177】
【0178】
表現型の分析は、A+/-2811培養物におけるCD3mo-hi集団が、主にCD44-CD62L+の表現型を有するT細胞(TNおよび/またはTSCM;28.8~32.49%)およびCD44+CD62L+の表現型を有するT細胞(TCM;37.92~41.08%)、次にCD44+CD62L-の表現型を有するT細胞(TEF/TEM;約27.8%)、ならびにCD44-CD62L-表現型を有する細胞の小さなフラクション(1.72~2.26%)からなることを明らかにした。対照的に、全ての培養物におけるCD3lo-mo集団は、主にCD44+CD62L-の表現型(TEF/TEM;66.09~70.83%)、次にCD44-CD62L-の表現型(26.77~32.17%)からなる。TNおよび/またはTSCM細胞、およびTCM細胞のパーセンテージは、それぞれ0.08~0.24%および1.5~2.29%であった。T細胞に加え、大きな細胞集団はまた、CD19hi、CD62L+、およびCD62L+SCA-1+細胞を含み、これらは全て、小さな細胞集団では存在しなかった。CD19lo細胞のみが小さな細胞集団で検出された。興味深いことに、CD11b+F4/80+マクロファージ集団のパーセンテージは、A+/-2811グループで有意に低下した。免疫処置を行わなかったマウスの脾細胞B+2811培養物由来の脾細胞のin vitroでのFG2811mG1抗体での刺激は、30日目までであっても、これら大きな集団を形成せず、この細胞集団の産生がin vivoでのFG2811抗体の免疫処置作用であることを表している。
【0179】
実施例14.HHDIIマウスおよびHHDIIトランスジェニックマウスにおけるTscm細胞の同定
HHDIIマウス(
図18AおよびB)ならびにHHDII/DP4マウス(
図18C-E)におけるTscm細胞の頻度を決定するために、脾細胞を、ナイーブなマウスから回収し、CH2811hG2-PeCy7、抗CD3、CD4、CD8、CD44、CD62L、およびSCA-1で染色し、次に、マルチパラメーターフローサイトメトリーにより分析した。CH2811hG2 mAbを使用して、T細胞では抗CD4およびCD8、T細胞のサブセットではCD44およびCD62L、幹細胞様細胞ではSCA-1(他のマーカーに加えて造血幹細胞およびマウスT
SCM細胞を同定するために使用されるマーカー)のSSEA-4
+脾細胞を同定した。HHDIIマウスでは、細胞の10.88%が、2811+CD3+細胞であり、これは1mlあたり1.85×10
5個の細胞に翻訳され、さらに、CD3+集団の24.61%がTscm細胞であった(
図18B)。HHDIIマウスにおける2811+集団(10.88%)は、C57/B6マウスで以前に観察された頻度(2.42~3.60%)よりも高かった。さらに、HHDIIマウスにおける2811+集団の表現型の分析(
図18B)は、33.38%のCD44+CD62L-および47.98%がCD44+CD62L+であることを示した。また、幹細胞マーカーのSCA-1を発現した2811+細胞のパーセンテージを決定し、このマーカーは、他のマーカー(CD44-CD62L+)と併用して使用される場合に、これらマウスにおけるTscm細胞を定義し得る。また、2811+SCA-1+細胞の大部分は、CD44を発現しており、これらが抗原を経験していることが示唆される。
【0180】
HHDII/DP4マウスでは、細胞の12.01%が、2811+CD3+細胞であり、これは1mlあたり0.91×10
5個の細胞に翻訳され、さらにCD3+集団の6.98%が同様に2811+であった(
図18CおよびD)。HHDII/DP4マウスにおける2811+集団(12.01%)は、HHDIIマウスの頻度に類似しており、同様に、C57/B6マウスで以前に観察された頻度(2.42~3.60%)よりも高かった。さらに、HHDII/DP4マウスにおける2811+集団の表現型の分析(
図18D)は、12.09%がCD44+CD62L-であり、77.15%がCD44+CD62L+であることを示した。また、幹細胞マーカーのSCA-1を発現した2811+細胞のパーセンテージを決定した。また、2811+SCA-1+細胞の大部分はCD44を発現する(75.51%のCD44+CD62L+、30.03%のCD44+CD62L-)。
【0181】
より詳細な表現型の分析を、HHDII/DP4マウス由来のT細胞集団で行い、この分析は、CD4およびCD8のT細胞のサブセットにおける2811の発現を見るが、同様に消耗マーカー(exhaustion marker)のTim3の発現も見た。HHDII/DP4マウスにおけるCD4+T細胞のパーセンテージは、14.30%であったが、CD8+T細胞のパーセンテージは、非常に低く、わずか0.50%のCD8+細胞であり(
図18E)、CD4T細胞のうち9.47%が2811+であり、CD8T細胞のうち10.14%が2811+であった。消耗マーカー、Tim3の発現は、CD4+2811+(0.42%)細胞およびCD8+2811+(0.34%)細胞において、これらの幹細胞特性と一致して、低かった。
【0182】
実施例15.プレートに結合したヒト(IgG1)およびマウス(IgG1)2811は、マウス脾細胞のex vivoでの増殖を誘導した。
本発明者らは、プレートに結合したCH2811hG1およびFG2811mG1 mAbが、CD4およびCD8のT細胞の増殖を誘導できるかどうかを調査した。脾細胞を、ナイーブなHHDIIマウスから回収し、panT細胞を多く含むように処理し(CD3+)、CFSEで標識し、次に、プレートに結合したCH2811hG1 mAbまたはFG2811mG1を使用して抗体刺激を行い、抗CD3を陽性対照として使用し、培地を陰性対照として使用した(
図19A)。CD3、CD4、およびCD8のT細胞集団の増殖性応答を、7、12、および14日目に決定した(
図19B~D)。これら結果は、CD3、CD4、およびCD8のT細胞が、プレートに結合したCH2811hG1およびFG2811mG1 mAbでの刺激に応答して増殖し、これは、培地対照と同等またはわずかにこれを上回るものであったことを示した。7日目に、CD3T細胞では、2.72%がFG2811mG1に応答して増殖し、2.24%がCH2811hG1に応答して増殖し、CD8T細胞では、2.47%がFG2811mG1に応答して増殖し、1.46%がCH2811hG1に応答して増殖し、CD4T細胞では、1.32%がFG2811mG1に応答して増殖し、0.96%がCH2811hG1に応答して増殖した。12日目に、プレートに結合したCH2811hG1およびFG2811mG1に対する増殖性応答は増大し、CD3T細胞では、6.46%がFG2811mG1に応答して増殖し、6.27%がCH2811hG1に応答して増殖し、CD8T細胞では、6.21%がFG2811mG1に応答して増殖し、3.33%がCH2811hG1に応答して増殖し、CD4T細胞では、5.79%がFG2811mG1に応答して増殖し、2.82%がCH2811hG1に応答して増殖した。14日目では、プレートに結合したCH2811hG1およびFG2811mG1に対する増殖性応答はさらに増大し、CD3T細胞では、10.07%がFG2811mG1に応答して増殖し、8.7%がCH2811hG1に応答して増殖し、CD8T細胞では、7.87%がFG2811mG1に応答して増殖し、6.61%がCH2811hG1に応答して増殖し、CD4T細胞では、7.29%がFG2811mG1に応答して増殖し、5.15%がCH2811hG1に応答して増殖した。これら結果は、マウス脾細胞が、プレートに結合したCH2811hG1およびFG2811mG1 mAbに応答してex vivoで増殖することを示している。
【0183】
実施例16.抗CD3およびCD28は、HHDIIマウス由来の2811+細胞のex vivoでの増殖を誘導する。
本発明者らは、抗CD3および抗CD28がHHDIIマウスから単離した2811+細胞の増殖を誘導し得るかどうかを調査した。脾細胞を、ナイーブなHHDIIマウスから回収し、panT細胞を多く含むように処理し(CD3+)、CFSEで標識し、次に、抗CD3および抗CD28(1μg/mL)で刺激した。2811+集団の増殖性応答を、CH2811hG2-PeCy7 mAbを使用して、11、15、および20日目に決定した(
図20A)。2811+CD3+T細胞のパーセンテージは、抗CD3および抗CD28での刺激により、11日目まで増大し、T細胞の61.2%が2811+であり、15日目までに、これはさらに69.84%まで増大したが、20日目までには、2811+T細胞のパーセンテージは、57.58%に低下した。また、20日目に観察される2811+細胞のパーセンテージの減少は、T細胞および2811+T細胞の総数の低下を伴う細胞のバイアビリティの減少と相関した(
図20Aiiiおよびiv)。培地のみの対照における2811+細胞のパーセンテージは、ex vivoでは直接10%であり、これは、11および15日目に20~30%に増大したが、同様に20日目に減少した。
【0184】
表現型の分析を、抗CD3および抗CD28での刺激により増殖した2811+細胞で行った。11日目に、染色を、CH2811hG2-PeCy7、抗CD3、CD44、およびCD62Lを使用して行った(
図20B)。同定したT細胞のサブセットは、CD44+CD62L-により定義されるエフェクターメモリーT細胞(T
EM)、CD44+CD62L+により定義されるセントラルメモリーT細胞(T
CM)、CD44-CD62L-により定義されるエフェクターT細胞(T
EFF)、およびCD44-CD62L+により定義されるナイーブT細胞(T
N)であった。11日目の表現型決定の結果(
図20C)は、抗CD3およびCD28での刺激が2811+T
EM(平均値67.35×10
3)、T
CM(平均値61.15×10
3)、T
EFF(平均値141×10
3)、およびT
N(平均値16.45×10
3)の総数を増大させたことを示している。抗CD3および抗CD28での刺激は、2811+細胞の表現型をよりエフェクターT細胞の表現型へと押し進めていた(
図20D)。2811+、T
EFF細胞のパーセンテージは、47.7%(平均値)であり、対してT
CM細胞およびT
EM細胞のパーセンテージは、刺激していない細胞(培地単独)よりも低いパーセンテージに低下していた。
【0185】
これら結果は、抗CD3および抗CD28が、HHDIIマウス由来の2811+細胞のex vivoでの増殖を誘導することを示している。抗CD3および抗CD28での刺激は、刺激から11~15日後に2811+細胞の数およびパーセンテージの増大をもたらした。各サブセットの中の2811+T細胞(TCM、TN、TEM、TEFF)の総数は増大したが、この刺激は、T細胞をよりエフェクターT細胞の表現型へと押し進めた。
【0186】
実施例17.ヒト(IgG2)およびマウス(IgG1)2811は、HHDII/DP4マウス由来の脾細胞のex vivoでの増殖を誘導した。
本発明者らは、プレートに結合したCH2811hG2およびFG2811mG1 mAbが、CD4およびCD8のT細胞の増殖を誘導できるかどうかを調査した。脾細胞を、ナイーブなHHDIIマウスから回収し、panT細胞を多く含むように処理し(CD3+)、CFSEで標識し、次に、プレートに結合したCH2811hG2、FG2811mG1で抗体刺激し、抗CD3/CD28(+/-AKTi)を陽性対照として使用し、培地を陰性対照として使用した。CD3T細胞集団の増殖性応答を、11、15、および20日目に決定した(
図21A)。これら結果は、2811+CD3T細胞が、プレートに結合したCH2811hG2およびFG2811mG1 mAbでの刺激に応答して増殖したことを示した。11日目に、8.73%の2811+CD3+T細胞がFG2811mG1に応答して増殖し、50.47%がCH2811hG2に応答して増殖し、15日目には、20.48%の2811+CD3+T細胞がFG2811mG1に応答して増殖し、40.55%がCH2811hG2に応答して増殖し、20日目までに、パーセンテージは、わずかに減少し、21.41%の2811+CD3+T細胞がFG2811mG1に応答して増殖し、35.13%がCH2811hG2に応答して増殖した。同じ2811+細胞の増加が、2811+細胞のパーセンテージ、2811+CD3+細胞および2811+細胞の総数を見る際にも見られた。AKTiを伴うかまたは伴わない抗CD3/CD28での刺激もまた、2811+細胞の増殖を誘導し、ここで80%の2811+CD3+T細胞が、各時点でCD3/CD28での刺激により増殖し、このパーセンテージは、細胞に対してわずかに毒性であるAKTiの添加により、60%に低下した。これら結果は、CH2811hG2が、刺激により全ての時点で2811+細胞の増殖を誘導し、また同じことが、より少ない度合いではあるが、FG2811mG1でも見られたことを示している。
【0187】
次に、表現型の分析を、抗CD3/CD28(+/-AKTi)、CH2811hG2、およびFG2811mG1 mAbでの刺激により増殖した2811+細胞で行った。11日目に、染色を、CH2811hG2-PeCy7、抗CD3、CD44、およびCD62Lを使用して行った(
図20B)。同定したT細胞のサブセットは、CD44+CD62L-により定義されるエフェクターメモリーT細胞(T
EM)、CD44+CD62L+により定義されるセントラルメモリーT細胞(T
CM)、CD44-CD62L-により定義されるエフェクターT細胞(T
EFF)、およびCD44-CD62L+により定義されるナイーブT細胞(T
N)であった。11日目の表現型決定の結果(
図21B)は、CH2811hG2またはFG2811mG1 mAbでの刺激が、2811+T
EMの総数をCH2811hG2での刺激により62.8×10
3個の細胞に、FG2811mG1での刺激により5.24×10
3個の細胞に増大させたことを示した。2811+T
CMの総数は、CH2811hG2での刺激により6.95×10
3個の細胞に、FG2811mG1での刺激により1.8×10
3個の細胞に増大した。2811+T
EFFの総数は、CH2811hG2での刺激により29.05×10
3個の細胞に、FG2811mG1での刺激により7.02×10
3個の細胞に増大し、2811+T
N細胞の総数はわずかにのみ増大し、CH2811hG2での刺激により0.61×10
3個に(培地のみ0.07×10
3)増大し、FG2811mG1での刺激では増大しなかった。また本発明者らは、抗CD3/CD28、FG2811mG1、およびCH2811hG2での刺激による2811+T細胞のパーセンテージを観察し(
図21C)、2811+T
EFF細胞のパーセンテージが、FG2811mG1での刺激では34.82%であり、CH2811hG2での刺激では57.59%であり、抗CD3/CD28での刺激では47.36%であった。これら結果は、HHDII/DP4マウス由来のT細胞において、HHDIIマウスから得た結果(
図20D)と比較した場合に、T細胞のエフェクターの表現型への偏りが少ないことを示している。また、HHDII/DP4マウスにおけるT
CMおよびT
EMのサブセットのパーセンテージは、HHDIIマウスと比較して高かった。
【0188】
これら結果は、HHDII/DP4マウス由来の脾細胞が、プレートに結合したCH2811hG2およびFG2811mG1 mAbに応答してex vivoで増殖することを示しており、これは、2811+エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターT細胞、およびナイーブT細胞の数の増大に加え、2811+CD3+T細胞の総数の増大をもたらす。CH2811hG2に対するex vivoでの増殖性応答の大きさは、FG2811mG1に対する応答と比較して大きく、よってより多数の2811+細胞をもたらす。
【0189】
実施例18.抗CD3およびCD28は、健常なドナー由来の2811+細胞のex vivoでの増殖を誘導する。
TSCM細胞は、高い増殖能を有することが示されており、自己再生しかつ多能性であり、さらにこれらは他のT細胞のサブセットへと分化し得る。本発明者らは、抗CD3/CD28での刺激または異なるサイトカインの添加が、健常なドナーから単離されたTscm細胞のex vivoでの増殖を誘導し得るかどうかを調査した。PBMCを、4名の健常なドナー(バフィーコート)から単離し、panT細胞を多く含むように処理し、抗CD3/CD28、IL-7、IL-15、またはIL-21の存在下でT細胞を培養した。15および20日目に、表現型の分析を、抗CD3、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD95、CD122、およびCCR7を使用して行い、T細胞集団を同定するために使用した異なるマーカーの発現を、表6に列挙する。
【0190】
【0191】
表現型の分析を、抗CD3/CD28での刺激によるか、またはある範囲の組み合わせで添加されるIL-7、IL-15、およびIL-21の添加で増殖したCD3+T細胞で行った。15および20日目に、染色を行った(
図22A)。15日目の表現型決定の結果(
図22B)は、CD3/CD28単独、またはIL-7、IL-15、およびIL-21と組み合わせたCD3/CD28での刺激は、2811+CD3+細胞のパーセンテージを増大させることを示しており、またこれは、2811+細胞およびCD3+細胞の総数の増大と相関している。15日目に、抗CD3/CD28での刺激による2811+CD3+T細胞のパーセンテージは、19.64%および23.94%であり、これは、サイトカインのみ(CD3/CD28での刺激なし)の存在下で培養したT細胞よりも多かった。抗CD3/CD28での刺激と組み合わせたIL-7/IL-21またはIL-7/IL-15/IL-21の添加は、2811+CD3+細胞のパーセンテージをわずかに向上させた。2811+CD3+T細胞のパーセンテージは、細胞をCD3/CD28、IL-7/IL-21の存在下で培養した場合に23.8%および27.4%まで増大し、IL-15の添加では、パーセンテージは31.53%に増大した。また、2811+CD3+T細胞のパーセンテージの増大は、総細胞数の増大と相関しており、15日目には、80×10
4個の2811+CD3+が存在していた。20日目には、2811+CD3+のパーセンテージは、CD3/CD8、IL-7/IL-21/IL-15と培養した場合に16.45%および17.56%に低下し、これは、15日目の31.53%から減少している。また、2811+CD3+T細胞のパーセンテージの減少は、2811+T細胞の総数の減少と相関していた。
【0192】
さらにより詳細な表現型の分析を、2名のドナー由来のT細胞で行い、CD3/CD28単独またはIL-7、IL-15、およびIL-21と組み合わせたCD3/CD28の存在下で培養したT細胞におけるTscm細胞を同定した。ヒトにおけるTscm細胞の頻度は低く、4名の健常なドナーのTscmのパーセンテージは、0.64%~3.48%の範囲にあった。本発明者らは、Tscmが、CD3/CD28単独またはIL-7、IL-15、およびIL-21と組み合わせたCD3/CD28の存在下で増殖し得るかどうかを調査した(
図23)。Tscm細胞の最大増殖が、T細胞を抗CD3/CD28の存在下にて、IL-7/IL-21の存在下(3.51%および6.32%のTscm)またはIL-7、IL-15、IL-21を伴い(3.62%のTscm)培養した場合に観察され、1名のドナーでは、これは5倍のTscm細胞増殖であり、第2のドナーでは8倍の増殖であった。20日目に、T細胞を、抗CD3/CD28の存在下にて、IL-7/IL-21の存在下(14.84%および11.33%のTscm)またはIL-7/IL-15/IL-21を伴い(13.67%)培養した場合に、Tscm細胞のパーセンテージはさらに増殖し、1名のドナーでは、これは3倍のTscm細胞増殖であり、第2のドナーでは9倍の増殖であった(20日目の培地対照と比較)。次に、本発明者らは、Tscm細胞の何パーセントが2811でも陽性であるかを決定した(
図23ii)。0日目に、2811+であるTscm細胞のパーセンテージは46.89%および63.60%であった。15日目に、Tscm 2811+細胞のパーセンテージは、全ての条件の間で依然として類似しており、これらは31.51~53.52%の範囲にあった。20日目に、Tscm 2811+細胞のパーセンテージは、大部分の条件で低下し、培地単独またはCD3/CD28単独の存在下で培養したT細胞のみが15日目の結果と同様のパーセンテージを維持していた。次に、本発明者らは、Tscm細胞の何パーセントがCD3および2811でも陽性であるかを決定した(
図23iii)。15日目で、CD3/CD28の存在下またはIL-7、IL-15、IL-21との組み合わせたCD3/CD28の存在下で、Tscm細胞のパーセンテージは、培地のみの対照または0日目の結果と比較して増大しなかった。20日目では、CD3/CD28の存在下またはIL-7、IL-15、IL-21との組み合わせたCD3/CD28の存在下で、Tscm細胞のパーセンテージは、培地のみの対照または0日目の結果と比較して増大しなかった。
【0193】
これら結果は、CD3/CD28での刺激が、健常なヒトドナーから単離した2811+細胞のex vivoでの増大を誘導したことを示している。抗CD3/CD28でのT細胞の刺激は、2811+細胞の頻度を増大させたが、この増殖は、IL-7、IL-15、およびIL-21全てを培養物に添加する場合にさらに増大し、この増殖は、刺激から15日後にピークを迎えた。組み合わせた抗CD3/CD28でのT細胞の刺激は、Tscm集団を増殖させ、この増殖は、これら細胞の3~9倍の増殖をもたらした。
【0194】
実施例19.可溶性FG2811mG1で刺激したT細胞は、Fc架橋を介してCD4およびCD8のT細胞の増殖を刺激する。
次に、本発明者らは、可溶性FG2811mG1が、脾細胞の存在下または非存在下で培養される場合にCD4およびCD8のT細胞を刺激し得るかどうかを調査した。脾細胞の添加は、Fcの架橋を可能にし、T細胞応答を刺激する。脾細胞を、HHDIIマウスおよびHHDII/DP4マウスから単離し、HHDII脾細胞からpanT細胞を多く含むように処理し(CD3+)、HHDII T細胞およびHHDII/DP4脾細胞を、CFSEで標識した。次に、HHDIIT細胞を、FG2811mG1、LPS、または培地単独に加えて、HHDII/DP4脾細胞を伴うかまたは伴わずに培養した。15日目に、CD4およびCD8の増殖性応答を決定した。脾細胞との共培養の非存在下では、0.14%のCD4Tのみが可溶性FG2811mG1の存在下で増殖した(CFSElow)が、これは、培地のみの対照(0.16%のCFSElow)を上回るものではなく、よって単なるバックグラウンドレベルであった。脾細胞との共培養の非存在下で、0.02%のCD8Tのみが、可溶性FG2811mG1の存在下で増殖し(CFSElow)、これは、培地のみの対照(0%のCFSElow)と非常に類似しており、よって単なるバックグラウンドレベルであった。CD4およびCD8のT細胞は、両方とも、LPSに対して良好な増殖性応答を示した(それぞれ3.34%、39.56%)。脾細胞との共培養の存在下では、15.2%のCD4T細胞が可溶性FG2811mG1の存在下で増殖し(CFSElow)、2.33%のCD8Tが可溶性FG2811mG1の存在下で増殖し(CFSElow)、CD4およびCD8のT細胞は、両方とも、PBMCの存在を亢進させるLPSに対する良好な増殖性応答を示した(それぞれ59.88%、54.10%)。
【0195】
これら結果は、可溶性FG2811mG1が、脾細胞の存在下で共培養される場合に、CD4およびCD8の増殖性応答を刺激し得ることを示している(
図24)。培養物に脾細胞を添加しない場合、T細胞は増殖せず、これは、Fc架橋が2811 mAbの作用様式であることを示している。CD4T細胞集団において、脾細胞およびFG2811mG1と共培養した場合のT細胞の増殖は、CD8T細胞と比較して多かった(15.2%vs2.33%)。これら結果は、ex vivoでT細胞を増殖させる2811 mAbの潜在性およびその作用様式が、Fc架橋を介していることを示している。
【0196】
実施形態
本発明のさらなる実施形態を以下に記載する。
【0197】
1.SSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)に結合できる単離された特異的な結合メンバー。
【0198】
2.糖脂質上でSSEA-4に結合できる、実施形態1に記載の結合メンバー。
【0199】
3.ステムメモリーT細胞(TSCM)を標的とすることができる、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0200】
4.ステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を誘導できる、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0201】
5.SSEA-3に結合しない、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0202】
6.mAb FG2811.72またはキメラのFG2811.72(CH2811/CH2811.72)、またはそれらのフラグメントである、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0203】
7.二重特異性である、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0204】
8.前記二重特異性結合メンバーが、さらにCD3に対して特異的である、実施形態7に記載の結合メンバー。
【0205】
9.
図2aの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)、および105~113(CDRH3)のアミノ酸配列から選択される1つ以上の結合ドメインを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0206】
10.
図2bの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)、および105~113(CDRL3)のアミノ酸配列から選択される1つ以上の結合ドメインを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0207】
11.前記結合メンバーが、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のうちの1つ以上を含む軽鎖可変配列であって、
LCDR1が、SSVNYを含み、
LCDR2が、DTSを含み
LCDR3が、FQASGYPLTを含む、
軽鎖可変配列と、
HCDR1、HCDR2、およびHCDR3のうちの1つ以上を含む重鎖可変配列であって、
HCDR1が、GFSLNSYGを含み、
HCDR2が、IWGDGSTを含み、
HCDR3が、TKPGSGYAFを含む、
重鎖可変配列と
を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0208】
12.前記結合ドメインが、ヒト抗体フレームワークにより担持されている、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0209】
13.前記結合メンバーが、
図2aのアミノ酸配列の残基1~126を含むVHドメイン、および/または
図2bのアミノ酸配列の残基1~123を含むVLドメインを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0210】
14.前記結合メンバーが、ヒト抗体定常領域を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0211】
15.前記結合メンバーが、抗体、抗体フラグメント、Fab、(Fab’)2、scFv、Fv、dAb、Fd、またはジアボディである、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0212】
16.前記結合メンバーが、以下の順で、1)リーダー配列、2)重鎖可変領域、3)3xGGGGSスペーサー、4)軽鎖可変領域、および5)精製のためのポリ-Alaおよび6×Hisタグを含むscFvである、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0213】
17.前記結合メンバーが、以下の順で、1)リーダー配列、2)軽鎖可変領域、3)3xGGGGSスペーサー、および4)重鎖可変領域を含み、任意選択で5’または3’精製タグをさらに含むscFvである、実施形態1~15のいずれかに記載の結合メンバー。
【0214】
18.キメラ抗原受容体(CAR)の形態で提供されている、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0215】
19.前記結合メンバーが、重鎖-軽鎖の配向または軽鎖-重鎖の配向のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)の形態で提供されているscFvである、実施形態18に記載の結合メンバー。
【0216】
20.アゴニスト(IgG2)モノクローナル抗体の形態で提供されている、実施形態1~17のいずれかに記載の結合メンバー。
【0217】
21.アンタゴニストモノクローナル抗体の形態で提供されている、実施形態1~17のいずれかに記載の結合メンバー。
【0218】
22.前記結合メンバーが、モノクローナル、たとえばモノクローナル抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0219】
23.前記結合メンバーが、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ化抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0220】
24.SSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)に特異的に結合でき、実施形態1~23のいずれか1項で具現化されている単離された特異的な結合メンバーと競合する、単離された特異的な結合メンバー。
【0221】
25.治療に使用するための、先行する実施形態のいずれかに記載の結合メンバー。
【0222】
26.がんを予防、処置、または診断する方法に使用するための、実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバー。
【0223】
27.長期間ウイルスに感染した患者を処置する方法に使用するための、実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバー。
【0224】
28.自己免疫疾患、HIV、成人T細胞白血病、または移植片対宿主病を処置する方法に使用するための、実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバー。
【0225】
29.がんを処置または予防する方法であって、実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【0226】
30.長期間ウイルスに感染した患者を処置または予防する方法であって、実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【0227】
31.自己免疫疾患、HIV、成人T細胞白血病、または移植片対宿主病を処置または予防する方法であって、実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【0228】
32.がんに対する防御免疫応答を亢進する方法であって、実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【0229】
33.前記結合メンバーが、任意選択でがんワクチンであるさらなる免疫原性作用物質と共に投与するように調製されている、実施形態32に記載の方法。
【0230】
34.前記結合メンバーおよびさらなる免疫原性作用物質が、同時または連続的に投与するように調製されている、実施形態33に記載の方法。
【0231】
35.前記がんが、膵臓がん、胃がん、結腸直腸がん、卵巣がん、または肺がんである、実施形態25もしくは26に記載の使用のための結合メンバーまたは実施形態29に記載の方法。
【0232】
36.前記結合メンバーが、単独でかもしくは他の処置と組み合わせて投与または投与するように調製される、実施形態25、26、もしくは35に記載の使用のための結合メンバーまたは実施形態28もしくは実施形態31に記載の方法。
【0233】
37.実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーをコードする配列を含む核酸。
【0234】
38.プラスミド、ベクター、転写カセット、または発現カセットの形態のコンストラクトである、実施形態37に記載の核酸。
【0235】
39.実施形態37または38に記載の核酸を含む組み換え宿主細胞。
【0236】
40.がんの診断のための方法であって、個体由来のサンプル中の糖脂質に結合したグリカンSSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)を検出するために実施形態1~24のいずれかで具現化された結合メンバーを使用するステップを含む、方法。
【0237】
41.前記結合メンバーにより検出されるグリカンのパターンを、個体の治療の選択肢を層別化するために使用する、実施形態40に記載の方法。
【0238】
42.実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【0239】
43.少なくとも1つまたは他の薬学的に有効な(作用物質)をさらに含む、請求項42に記載の医薬組成物。
【0240】
44.がんの処置に使用するための実施形態42または実施形態43に記載の医薬組成物。
【0241】
45.長期間ウイルスに感染した患者の処置に使用するための、実施形態42または43に記載の医薬組成物。
【0242】
46.自己免疫疾患、HIV、成人T細胞白血病、または移植片対宿主病の処置に使用するための、実施形態42または実施形態43に記載の医薬組成物。
【0243】
47.ex vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を誘導する方法であって、ステムメモリーT細胞(TSCM)を実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーと接触させるステップを含む、方法。
【0244】
48.実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーを含む、ステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を誘導するための細胞培養培地。
【0245】
49.in vivoでステムメモリーT細胞(TSCM)の増殖を誘導する方法であって、実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーを、対象に投与するステップを含む、方法。
【0246】
50.実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーでステムメモリーT細胞(TSCM)上のSSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)の存在を検出することにより、前記細胞を同定する方法。
【0247】
51.実施形態1~24のいずれかに記載の結合メンバーでステムメモリーT細胞(TSCM)上のSSEA-4(Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-3)Gal(α1-4)Gal(β1-4)Glc)の存在を検出することにより前記細胞を精製する方法。
【0248】
52.前記同定または精製を、in vivoまたはex vivoで行う、実施形態50または51に記載の方法。
【0249】
53.前記結合メンバーを使用して、精製のためステムメモリーT細胞(TSCM)を標識する、実施形態51または52に記載の方法。
【0250】
54.任意選択で添付の図面に準拠した、本明細書中実質的に記載される結合メンバー。
【0251】
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【国際調査報告】