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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】防汚剤及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20230502BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20230502BHJP
   C08F 2/40 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C08F2/00 F
C08F10/00 510
C08F2/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552133
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 US2021024325
(87)【国際公開番号】W WO2021202273
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/002,474
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】エワート、ショーン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ムンジャル、サラット
(72)【発明者】
【氏名】フランケル、アレクサンドラ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン、ヘンク
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011DA04
4J011DB32
4J011DB35
4J011HA03
4J011HB16
4J011HB24
4J011NA02
4J011NA18
4J011NA23
4J011NA26
4J011NA35
4J011NB03
4J011NB06
(57)【要約】

本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、プロセスは、防汚剤を反応器システムのエチレン供給物に導入することを含む。反応器システムは、エチレン供給物、ハイパー圧縮機、予熱器、及び重合反応器を含む。エチレン供給物は、ハイパー圧縮機の上流に位置する。防汚剤は、阻害剤、分子状酸素、及び任意選択的に溶媒からなる。エチレン供給物がハイパー圧縮機の上流に位置するため、プロセスは、防汚剤をハイパー圧縮機の上流のエチレン供給物内に導入することを含む。プロセスは、フリーラジカル開始剤を重合反応器に添加することを更に含む。プロセスは、高圧フリーラジカル重合条件下で重合反応器中のエチレンを重合することと、エチレン系ポリマーを形成することとを更に含む。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスであって、
防汚剤を反応器システムのエチレン供給物に導入することであって、前記反応器システムが、前記エチレン供給物、ハイパー圧縮機、予熱器、及び重合反応器を含み、前記エチレン供給物が、前記ハイパー圧縮機の上流に位置し、前記防汚剤が、阻害剤、分子状酸素、及び任意選択の溶媒からなる、導入することと、
フリーラジカル開始剤を前記重合反応器に添加することと、
高圧フリーラジカル重合条件下で前記重合反応器中の前記エチレンを重合することと、
エチレン系ポリマーを形成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記防汚剤を用いて、前記ハイパー圧縮機、前記予熱器、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成要素における前記エチレンの予備重合を防止することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記導入前に、前記阻害剤及び前記分子状酸素を前記溶媒中に分散させることであって、前記阻害剤が、フェノチアジン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)、又はその誘導体、モノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記溶媒が、脂肪族C~C炭化水素、オレフィン性C~C炭化水素、C~Cケトン、C~Cアルデヒド、C~Cアルコール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、分散させることを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
重合性コモノマーを前記重合反応器に添加することと、
エチレンコポリマーを形成することと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
0.01mol ppm~1.0ppm未満の阻害剤、0.01mol ppm~1.0ppm未満の分子状酸素、及び任意選択の溶媒からなる防汚剤を、前記エチレン供給物に導入することと、
前記ハイパー圧縮機、前記予熱器、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成要素におけるプレポリマーの形成を防止することと、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
0.01mol ppm~1.0ppm未満のモノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)、0.01mol ppm~1.0ppm未満の分子状酸素、及び任意選択の溶媒からなる防汚剤を、前記エチレン供給物に導入することと、
前記ハイパー圧縮機、前記予熱器、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成要素におけるプレポリマーの形成を防止することと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
工業規模の低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)生成に対向する大きな障壁は、反応器システム内で生じる汚れである。重合反応器の上流に生じるエチレンの予備重合は、圧縮機の部品上にプレポリマー蓄積物をもたらし、重合反応器の上流に位置する管及び配管の内壁にプレポリマーケーキングをもたらす。システム構成要素上のプレポリマーのこの蓄積物は、それが生成速度の低下をもたらし、蓄積物の除去のための反応器の停止時間をもたらすため、LDPE生成に有害である。
【0002】
従来のLDPE生成システムは、典型的には、ハイパー圧縮機プランジャを潤滑するために使用される油中に汚れ物質阻害剤を添加する。このアプローチは問題がある。阻害剤が潤滑油に組み込まれるときに、予備重合が生じる領域に実際に達する阻害剤の量を制御及び管理することは困難である。したがって、当該技術分野は、LDPE生成における予備重合の汚れの低減及び防止のための改善されたプロセスの必要性を認識している。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、プロセスは、防汚剤を反応器システムのエチレン供給物に導入することを含む。反応器システムは、エチレン供給物、ハイパー圧縮機、予熱器、及び重合反応器を含む。エチレン供給物は、ハイパー圧縮機の上流に位置する。防汚剤は、阻害剤、分子状酸素、及び任意選択的に溶媒からなる。エチレン供給物がハイパー圧縮機の上流に位置するため、プロセスは、防汚剤をハイパー圧縮機の上流のエチレン供給物内に導入することを含む。プロセスは、フリーラジカル開始剤を重合反応器に添加することを更に含む。プロセスは、高圧フリーラジカル重合条件下で重合反応器中のエチレンを重合することと、エチレン系ポリマーを形成することとを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の実施形態による反応器システムのためのフロースキームの概略図である。
図2】大規模工業用LDPE反応器システムにおけるハイパー圧縮機及び予熱器の動作条件を再現するために使用される機器の概略図であり、図2の機器は、比較例及び本発明の実施例を生成するために使用される。
図3】比較試料1の汚れのレベルの2枚の写真を示す。
図4】比較試料2の汚れのレベルの2枚の写真を示す。
図5】比較試料3の汚れのレベルの2枚の写真を示す。
図6】比較試料4の汚れのレベルの2枚の写真を示す。
図7】本発明の実施例1の汚れのレベルの2枚の写真を示す。
【0005】
定義
元素周期表への任意の参照は、CRC Press,Inc.,1990-1991によって出版されたものへの参照である。この表での元素群への参照は、群に番号を付けるための新しい表記法によるものである。
【0006】
米国特許実務の目的のために、任意の参照された特許、特許出願、又は刊行物の内容は、特に定義の開示に関して(本開示で具体的に提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲で)、それらの全体が参照として組み込まれる(又はその相当する米国版が参照によってそのように組み込まれる)。
【0007】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値及び上限値のすべての値を含む。明示的な値(例えば、1又は2、又は3~5、又は6、又は7)を含有する範囲の場合、任意の2つの明示的な値の間のあらゆるサブ範囲が含まれる(例えば、上記の1~7の範囲は、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などのサブ範囲を含む)。
【0008】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、又は当該技術分野で慣習的でない限り、すべての部及びパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0009】
「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」という用語は、使用される場合、2つ以上のポリマーの混合物を指す。ブレンドは、混和性であってもよく、又はそうでなくてもよい(分子レベルで相分離していなくてもよい)。ブレンドは、相分離していてもよく、又はしていなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、x線散乱、及び当該技術分野において既知の他の方法から決定されるように、1つ以上のドメイン構成を含有してもよいか、又はしていなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、溶融ブレンド樹脂若しくは配合)又はミクロレベル(例えば、同じ反応器中での同時形成で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって達成され得る。
【0010】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、並びに組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0011】
「含む(comprising)」」、「含む(including)」、「有する」という用語、及びそれらの派生語は、それが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、又は手順の存在を除外することを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、又は手順を除く。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の成分、ステップ、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、並びに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は複数形の使用を含み、その逆もまた同様である。
【0012】
本明細書で使用される「エチレン系ポリマー」という用語は、重合形態で、ポリマーの重量に基づいて、50重量%を超える、又は大部分の量のエチレンを含むポリマーを指し、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマー又は他の分子を含み得る。
【0013】
本明細書で使用される「エチレンモノマー」という用語は、間に二重結合を有する2個の炭素原子を有し、かつ各炭素が2個の水素原子に結合した化学単位を指し、化学単位は、他のそのような化学単位と重合して、エチレン系ポリマー組成物を形成する。
【0014】
「汚れ」という用語は、重合反応器システム、又は重合反応器システム(例えば、LDPE反応器システムなど)で使用される他の装置における構成要素の表面上へのプレポリマー層(又はポリマー層)の堆積(一時的又は永久的)を指す。ハイパー圧縮機(又はハイパー圧縮機のチェックバルブ上)におけるこの性質のプレポリマー(又はポリマー)の層は、反応器中の総エチレンスループットに悪影響を及ぼす可能性がある。予熱器又は重合反応器におけるこの性質のプレポリマー(又はポリマー)の層は、LDPEを生成するために使用される反応器システムの1つ以上の構成要素における全体の熱伝達率に影響を与える可能性があり、したがって、ポリマーの生成速度を低下させる。
【0015】
本明細書で使用される「炭化水素系分子」という用語は、炭素原子及び水素原子のみを有する化学成分を指す。
【0016】
本明細書で使用される「低密度ポリエチレン」(又はLDPE)という用語は、0.909g/cc~0.940g/cc未満、又は0.917g/cc~0.930g/ccの密度と、広い分子量分布(3.0超のMWD)を有する長鎖分岐とを有するエチレン系ポリマーを指す。LDPEは、直鎖状低密度ポリエチレンとは異なる。本明細書で使用される「直鎖状低密度ポリエチレン」(又は「LLDPE」)という用語は、エチレンに由来する単位と、少なくとも1つのC~C10αオレフィン、又はC~Cαオレフィンコモノマーに由来する単位とを含む不均一な短鎖分岐分布を含有する直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーを指す。LLDPEは、長鎖分岐を有する従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。LLDPEの非限定的な例は、TUFLIN(商標)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(the Dow Chemical Companyから入手可能)、及びMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「分子状酸素」という用語は、互いに共有結合した2つの酸素原子からなる二原子分子を指す。分子状酸素は、元素酸素、又はOと互換的に称される。分子状酸素の供給源の非限定的な例は、例えば、空気(約21体積%の分子状酸素)、Oガス、液体O、及び窒素、Nなどの他の不活性ガス中のOのブレンドを含む。酸素は、ガスストリームとして添加され得るか、又は溶媒中に予備溶解され得る。
【0018】
本明細書で使用される「ポリマー」又は「ポリマー材料」という用語は、同じタイプであるか、又は異なるタイプであるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製された化合物を指し、ポリマーを構成する複数及び/若しくは繰り返しの「単位」又は「マー単位」を重合形態で提供する。したがって、一般的なポリマーという用語は、ただ1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常使用されるホモポリマーという用語と、少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されるポリマーを指すために通常使用されるコポリマーという用語と、を包含する。それはまた、例えば、ランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」及び「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレン又はプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマー又はモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含有する」などと称されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残基を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものを指す。
【0019】
試験方法
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、グラム/立方センチメートル(g/cc)で報告される。
【0020】
メルトインデックス
本明細書で使用される「メルトインデックス」又は「MI」という用語は、溶融状態にあるときに熱可塑性ポリマーがどれだけ容易に流動するかの尺度を指す。メルトインデックス、又はIは、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。I10は、ASTM D 1238、条件190℃/10kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、プロセスは、防汚剤を反応器システムのエチレン供給物に導入することを含む。反応器システムは、エチレン供給物、ハイパー圧縮機、予熱器、及び重合反応器を含む。エチレン供給物は、ハイパー圧縮機の上流に位置する。防汚剤は、阻害剤(又は1つ以上の阻害剤の混合物)、分子状酸素、及び任意選択的に溶媒からなり、防汚剤は、ハイパー圧縮機の上流のエチレン供給物に導入される。プロセスは、フリーラジカル開始剤を重合反応器に添加することと、高圧フリーラジカル重合条件下で重合反応器中のエチレンを重合することとを含む。プロセスは、エチレン系ポリマー組成物を形成することを含む。
【0022】
プロセスは、防汚剤を重合反応器システムのエチレン供給物に導入することを含む。本明細書で使用される場合、「反応器システム」は、1つ以上のオレフィンモノマーを重合するために使用される構成要素及びデバイスを指す。反応器システムは、ハイパー圧縮機、予熱器、及び互いに流体連通する重合反応器を含む。重合反応器は、1つ以上の高圧重合反応器である。好適な高圧重合反応器の非限定的な例は、オートクレーブ反応器、管状反応器、又は管状反応器と動作可能に連通するオートクレーブ反応器の組み合わせを含む。
【0023】
反応器システムは、互いに流体連通するか、又はそうでなければ動作可能に連通する各構成要素の、エチレン供給物、ハイパー圧縮機、予熱器、及び重合反応器を含む。本明細書で使用される場合、「ハイパー圧縮機」は、1つ以上のエチレン供給物を少なくとも100MPaの圧力に加圧する圧縮機である。エチレン供給物は、ハイパー圧縮機の上流に位置する。反応器システムによる上流における下流方向への移動は、(ii)ハイパー圧縮機と流体連通する(i)エチレン供給物と、(iii)予熱器と流体連通するハイパー圧縮機と、(iv)重合反応器と流体連通する予熱器と、を含む。予熱器は、フリーラジカル開始剤の注入前に重合反応器の内容物を加熱する。反応器システムは、これらの構成要素に加えて他の構成要素を含み得る。
【0024】
図1は、本反応器システムのフロースキームの実施形態を示す。エチレンモノマーは、1つ以上のエチレン供給物として反応器システム内に導入される。エチレンモノマーは、(i)新鮮なエチレンの供給物(1)、(ii)リサイクルエチレンの供給物(18)、又は(iii)(i)と(ii)との組み合わせ、すなわち、新鮮なエチレン供給物(1)とリサイクルエチレン供給物(18)との両方で構成される、組み合わされたエチレン供給物(3)であり得る。リサイクルエチレン供給物(18)は、高圧分離機(図1の「HPS」)によって重合反応混合物から分離されたエチレンモノマーである。前述のエチレン供給物のいずれも、微量の潜在的な酸素を含んでもよい(又は含まなくてもよい)。分子状酸素は、エチレン供給物中に存在する任意の微量の酸素とは別個であり、異なることが理解される。
【0025】
エチレン供給物(1)、(18)、及び/又は(3)は、エチレンモノマーをハイパー圧縮機(図1の「ハイパー圧縮機」)に供給する。ハイパー圧縮機は、エチレン供給物を、重合反応器(図1の「反応器」)に供給し、高圧フリーラジカル重合条件を生成するのに十分なレベルまで加圧する。予熱器(図1の「予熱器」)は、ハイパー圧縮機から出力を受け取り、この出力を高圧フリーラジカル重合のための温度、又は130℃~170℃の温度に加熱する。重合反応器は、予熱器から出力を受け取り、温度を250℃~360℃に増加させる。重合は、250℃~360℃の温度で重合反応器中で生じる。本明細書で使用される場合、「高圧フリーラジカル重合条件」という用語は、(i)少なくとも100MPa(1000バール)の圧力、(ii)150℃~360℃の温度、並びに(iii)フリーラジカル開始剤の存在を有する重合反応器(オートクレーブ反応器及び/又は管状反応器)中の環境を指す。
【0026】
一実施形態では、新鮮なエチレン供給物(1)は、一次圧縮機(図1の「一次」)によって、ブースタ圧縮機(図1の「ブースタ」)の出口と一緒に圧縮され、エチレン供給物(2)を生成する。更なる実施形態では、エチレン供給物(2)は、リサイクルエチレンストリーム(18)と組み合わされて、組み合わされたエチレン供給物(3)を形成し、ハイパー圧縮機(図1の「ハイパー圧縮機」)の吸引入口にわたって分配される。
【0027】
プロセスは、防汚剤を反応器システムのエチレン供給物に導入することを含む。防汚剤は、(i)阻害剤(又は1つ以上の阻害剤)、(ii)分子状酸素、及び(iii)任意選択的に溶媒(又は1つ以上の溶媒)からなる。言い換えれば、防汚剤は、2つの成分(阻害剤及び分子状酸素)のみからなるか、又は3つの成分(阻害剤、分子状酸素、及び溶媒)のみからなる。任意選択の溶媒が存在しない場合、防汚剤は、2つの成分、すなわち、阻害剤(又は1つ以上の阻害剤)及び分子状酸素からなる。
【0028】
一実施形態では、阻害剤及び分子状酸素は、防汚剤の唯一の成分であり、エチレン供給物に添加される。阻害剤及び分子状酸素は、各々、エチレンに別個に添加され得るか、各々、同じ位置で添加され得るか、又は各々、ハイパー圧縮機の上流の異なる位置で添加され得る。
【0029】
一実施形態では、プロセスは、分子状酸素及び阻害剤を同時に、又は実質的に同時に同じ位置でエチレンストリームに導入することによって、防汚剤をエチレン供給物に導入することを含む。プロセスは、阻害剤及び分子状酸素を溶媒中に分散させるか、又はそうでなければ溶解させることを含む。好適な阻害剤の非限定的な例は、フェノチアジン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)、TEMPOの誘導体、モノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、Irganox 1010、Irganox 1076、ビタミンE、及びそれらの組み合わせを含む。
【0030】
溶媒システムは、単一の溶媒、又は2つ以上の溶媒の混合物であり得る。溶媒システムに好適な溶媒の非限定的な例は、脂肪族C~C炭化水素(プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン)、オレフィン性C~C炭化水素(プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン)、C~Cケトン(アセトン、メチルエチルケトン)、C~Cアルデヒド、C~Cアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール)、及びそれらの組み合わせを含む。
【0031】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤をエチレン供給物に導入する前、又は前に、阻害剤及び分子状酸素を溶媒中に分散させるか、又はそうでなければ溶解させることを含む。更なる実施形態では、プロセスは、(防汚剤をエチレン供給物に導入する前に)分子状酸素、並びにフェノチアジン(PTZ)、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)、TEMPOの誘導体、モノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、Irganox 1010、Irganox 1076、ビタミンE、及びそれらの組み合わせから選択される阻害剤を、脂肪族C~C炭化水素、オレフィン性C~C炭化水素、C~Cケトン、C~Cアルデヒド、C~Cアルコール、及びそれらの組み合わせから選択される溶媒中に分散させ、防汚剤を形成することを含む。
【0032】
防汚剤は、次のエチレン供給物:エチレン供給物(1)、及び/若しくはエチレン供給物(2)、及び/若しくは組み合わされたエチレン供給物(3)、及び/若しくはリサイクルエチレン供給物(18)のうちの1つ、いくつか、又はすべてに導入される。
【0033】
防汚剤は、エチレン供給物に導入されるため(かつエチレン供給物は、ハイパー圧縮機の上流に位置するため)、防汚剤添加が生じる点は、ハイパー圧縮機の上流である。防汚剤は、ハイパー圧縮機の上流に導入されるため(及びハイパー圧縮機は、予熱器の上流にあるため)、防汚剤添加が生じる点は、予熱器の上流である。防汚剤は、予熱器の上流に導入されるため(及び予熱器は、重合反応器の上流にあるため)、防汚剤添加が生じる点は、重合反応器の上流である。
【0034】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤を新鮮なエチレン供給物(1)に導入することを含む。
【0035】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤をエチレン供給物(2)に導入することを含む。
【0036】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤を組み合わされたエチレン供給物(3)に導入することを含む。
【0037】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤をリサイクルエチレン供給物(18)に導入することを含む。
【0038】
一実施形態では、反応器システムは、それぞれの1つ以上のエチレン供給物と流体連通する1つ以上の防汚剤入口を含む。防汚剤入口は、エチレン供給物と直接流体連通している。「直接流体連通」という用語は、第1の構造(すなわち、防汚剤入口)が、第2の構造(すなわち、エチレン供給物)とすぐに流体連通することにより、その結果、第1の構造と第2の構造との間に介在する第3の構造が位置しない、構成を指す。プロセスは、防汚剤を防汚剤入口に導入し、エチレン供給物に導入することを含む。
【0039】
一実施形態では、反応器システムは、エチレン供給物(1)と直接流体連通する防汚剤入口1a、及び/又はエチレン供給物(2)と直接流体連通する防汚剤入口2a、及び/又は組み合わされたエチレン供給物(3)と直接流体連通する防汚剤入口3a、及び/又はリサイクルエチレン供給物(18)と直接流体連通する防汚剤入口18aを含む。
【0040】
一実施形態では、防汚剤は、液体阻害剤、分子状酸素、及び溶媒のみからなり、防汚剤は、防汚剤入口(1a)、及び/又は(2a)、及び/又は(3a)、及び/又は(18a)に導入される。
【0041】
防汚剤入口は、ハイパー圧縮機の上流に位置するため、防汚剤入口が防汚剤をエチレン供給物に導入する点は、ハイパー圧縮機の上流であり、防汚剤入口はまた、予熱器の上流にあり、防汚剤入口はまた、重合反応器の上流にある。
【0042】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤を防汚剤入口(1a)に導入し、新鮮なエチレン供給物(1)に直接導入することを含む。
【0043】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤を防汚剤入口(2a)に導入し、エチレン供給物(2)に直接導入することを含む。
【0044】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤を防汚剤入口(3a)に導入し、組み合わされたエチレン供給物(3)に直接導入することを含む。
【0045】
一実施形態では、プロセスは、防汚剤を防汚剤入口(18a)に導入し、リサイクルエチレン供給物(18)に直接導入することを含む。
【0046】
一実施形態では、プロセスは、ガスとしての分子状酸素を反応器システム内の第1の位置でエチレンストリームに導入し、阻害剤を反応器システム内の第2の位置でエチレンストリームに別個に導入することによって、防汚剤をエチレン供給物に導入することを含み、第1の位置と第2の位置は異なる。第1の位置及び第2の位置は各々、ハイパー圧縮機の上流である。プロセスは、(i)分子状酸素ガスを、ブースタの上流(図1の位置13)、又は一次(図1の位置1)から選択される第1の位置で導入することと、(ii)阻害剤を、新鮮なエチレン供給物(1)、防汚剤入口(1a)、エチレン供給物(2)、防汚剤入口(2a)、組み合わされたエチレン供給物(3)、防汚剤(3a)、リサイクルエチレン供給物(18)、防汚剤入口(18a)、及びそれらの任意の組み合わせから選択される第2の位置で別個に導入することと、を含む。
【0047】
一実施形態では、プロセスは、ガスとしての分子状酸素を、反応器システム内の第1の位置で、かつ反応器システム内の第2の位置でのエチレンストリームへの阻害剤の添加とは別個に、エチレンストリームに導入することによって、防汚剤をエチレン供給物に導入することを含む。プロセスは、(i)分子状酸素ガスを、ブースタの上流(図1の位置(13))の第1の位置で導入することと、(ii)阻害剤を、新鮮なエチレン供給物(1)、防汚剤入口(1a)、エチレン供給物(2)、防汚剤入口(2a)、組み合わされたエチレン供給物(3)、防汚剤(3a)、リサイクルエチレン供給物(18)、防汚剤入口(18a)、及びそれらの任意の組み合わせから選択される第2の位置で別個に導入することと、を含む。
【0048】
一実施形態では、1つ以上の連鎖移動剤(chain transfer agent、CTA)は、重合反応器への導入のためにハイパー圧縮機に供給され、得られるエチレン系ポリマーの分子量を制御する。好適なCTAの非限定的な例は、プロピレン、イソブタン、n-ブタン、1-ブテン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、プロピオンアルデヒド、ISOPAR(ExxonMobil Chemical Co.)、イソプロパノール、及びそれらの組み合わせを含む。プロセスで使用されるCTAの量は、全反応混合物の、0.01重量パーセント~10重量パーセント、又は0.01重量パーセント~5重量パーセント、又は0.1重量パーセント~1.0重量パーセント、又は0.1重量パーセント~0.5重量パーセント、又は0.01重量パーセント~0.1重量パーセントである。
【0049】
一実施形態では、防汚剤のための溶媒は、高圧フリーラジカル重合のCTAである。結果として、CTAの添加は、エチレン供給物への防汚剤の導入と同時に、又は実質的に同時に生じる。更なる実施形態では、本プロセスは、CTA(阻害剤のための溶媒として、防汚剤のCTA成分)を防汚剤とともにエチレン供給物に導入することを含み、CTAの導入は、ハイパー圧縮機の上流に生じる。
【0050】
一実施形態では、反応システムは、CTAストリーム(4)及び/又はリサイクルCTAストリーム(5)を含む。CTAストリーム4及び/又はCTAリサイクルストリーム(5)は、原則的に、側方ストリーム(8)及び正面ストリーム(9)にわたって供給及び/又は分配された主圧縮ストリームにわたって自由に分配され得る。CTAストリーム(4)及び/又はCTAリサイクルストリーム(5)は、ハイパー圧縮機の入口、段間、出口、及び/又は重合反応器中の反応ゾーンの入口に供給され得る。
【0051】
防汚剤のための溶媒がCTAである場合、CTAストリーム(4)及び/又はリサイクルCTAストリーム(5)は、防汚剤供給物と併せて動作して、反応システムに適切な量のCTAを提供する。防汚剤のための溶媒がCTAではない場合、CTAストリーム(4)及び/又はリサイクルCTAストリーム(5)は、反応器システムのCTAの唯一の供給源である。
【0052】
一実施形態では、反応器システムは、分岐剤ストリーム(6)及び/又は重合性コモノマーストリーム(7)を含む。分岐剤供給物(6)及び/又は重合性コモノマーストリーム(7)は、原則的に、側方ストリーム(8)及び/又は正面ストリーム(9)にわたって供給及び/又は分配された主圧縮ストリームにわたって自由に分配され得る。分岐剤供給物(6)及び/又は重合性コモノマーストリーム(7)は、ハイパー圧縮機の入口、段間、出口、反応器への個別のエチレン供給物ストリームに供給され得るか、又は反応ゾーン内に直接供給され得る。
【0053】
ハイパー圧縮機の吐出温度は、60℃~110℃である。予熱器は、ハイパー圧縮機から受け取ったエチレン供給物(及び他の供給物)を130℃~170℃の温度に加熱する。ハイパー圧縮機及び予熱器を通過した後、防汚剤を有するエチレンモノマーは、重合反応器(図1の「反応器」)に流入するか、又はそうでなければそれに入る。プロセスは、フリーラジカル開始剤を重合反応器に添加することと、高圧フリーラジカル重合条件下で重合反応器中のエチレンを重合して、エチレン系ポリマーを形成することとを含む。
【0054】
フリーラジカル開始剤は、重合反応器の1つ以上の反応ゾーンに直接添加される。あるいは、フリーラジカル開始剤は、側方ストリーム(8)によって重合反応器中に導入される。好適なフリーラジカル開始剤の非限定的な例は、有機過酸化物、環状過酸化物、ジアシル過酸化物、ジアルキル過酸化物、ヒドロ過酸化物、ペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-t-ブチル過酸化物、t-ブチルペルオキシアセテート、及びt-ブチルペルオキシ-2-ヘキサノエート、並びにそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、フリーラジカル開始剤は、環構造に組み込まれた少なくとも1つの過酸化物基を含む。環構造に組み込まれた過酸化物基を有するフリーラジカル開始剤の非限定的な例は、両方ともAkzo Nobelから入手可能な、TRIGONOX 301(3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン(triperoxonaan))、及びTRIGONOX 311(3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン)、並びにUnited Initiatorsから入手可能なHMCH-4-AL(3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトロキソナン)を含む。有機ペルオキシ開始剤は、重合性モノマーの重量に基づいて、0.001重量%~0.2重量%の量で使用される。
【0055】
一実施形態では、高圧フリーラジカル重合は、複数の反応器ゾーン(3~6つの反応器ゾーン)を有する管状反応器中で生じる。各反応器ゾーンにおける最高温度は、150℃~360℃、又は170℃~350℃、又は200℃~340℃である。各反応器ゾーンにおける圧力は、100MPa~380MPa、110MPa~340MPa、又は110MPa~300MPaである。
【0056】
本明細書で使用される「予備重合」(又は「プレポリマー」)は、ハイパー圧縮機及び/又は予熱器におけるエチレン(並びに任意選択の分岐剤及び/又は任意選択の重合性コモノマー)の早期重合である。ハイパー圧縮機において(また、段間冷却器において)、及び予熱器において形成されたプレポリマーは、高密度(0.930~0.965g/cc)高分子量(150,000~500,000g/mol)のポリマーであり、相分離して固体堆積物を形成し、したがって、ハイパー圧縮機の動作を妨げ、段間冷却器及び予熱器における熱伝達を低減する。一実施形態では、プロセスは、ハイパー圧縮機及び/又は予熱器において、防汚剤を用いて、予備重合(又はエチレン及び/若しくは任意選択の分岐剤及び/若しくは任意選択の重合性コモノマーで構成されるプレポリマー)を低減するか、又はそうでなければ防止することを含む。
【0057】
出願人は、非常に汚れた「1」の評価(図3に示されるような非常に汚れた「1」評価を有する比較例1)、非常に清潔である「4」の評価(図7に示されるような非常に清潔である「4」評価を有する本発明の実施例1)、及び完全に清潔である「5」の評価を有する汚れ評価尺度を開発した。一実施形態では、プロセスは、防汚剤をエチレン供給物に導入して、0.01mol ppm~5mol ppmの阻害剤、及び0.05ppm~3ppmの分子状酸素、又は0.05mol ppm~3mol ppmの阻害剤、及び0.1ppm~1.0ppmの分子状酸素、又は0.07mol ppm~2mol ppmの阻害剤、及び0.2ppm~0.5ppmの分子状酸素、又は0.1mol ppm~1.0mol ppmの阻害剤、及び0.2ppm~0.5ppmの分子状酸素を含有するエチレン供給物を形成することを含み、プロセスは、ハイパー圧縮機及び/又は予熱器において、予備重合(若しくはプレポリマーの形成)を低減するか、又はそうでなければ防止すること(汚れ評価4~5、若しくは5である「防止」)を更に含む。阻害剤又は分子状酸素は各々、個々に防汚剤として作用し得るが、出願人は、阻害剤と分子状酸素とを一緒に組み合わせることが、阻害剤単独又は分子状酸素単独と比較して、プレポリマー形成を低減/防止する、より高い能力を有する防汚剤をもたらすことを発見した。この阻害剤/分子状酸素の組み合わせは、阻害剤及び酸素のより低いレベルの使用を可能にし、それらの各々は、より高い濃度で反応器の不安定性をもたらし得る。
【0058】
一実施形態では、プロセスは、重合性コモノマーストリーム(7)によって重合性コモノマーを重合反応器に添加することと、エチレンコポリマーを形成することとを含む。好適な重合性コモノマーの非限定的な例は、1つ以上のC~C20α-オレフィンコモノマー、アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、一酸化炭素、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のジエステル、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルキルシラン、及びそれらの任意の組み合わせを含む。好適なC~C20α-オレフィンコモノマーの非限定的な例は、1つ以上の直鎖若しくは分岐鎖C~C12α-オレフィンコモノマー、又は1つ以上の直鎖若しくは分岐鎖C~Cα-オレフィンコモノマー、例えば、プロピレン、1-ブテン、1ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンを含む。
【0059】
一実施形態では、防汚剤は、重合性コモノマーを含まないか、又はそうでなければ除外する。
【0060】
反応が終了し(図1を参照し)、複数の冷却ステップを適用した後、反応混合物は、(10)において減圧及び/又は冷却され、高圧分離機(high pressure separato、HPS)内で分離される。高圧分離機は、反応混合物を、少量のワックス及び/又は同伴ポリマーを含有するエチレンに富んだストリーム(15)と、更なる分離のために低圧分離機(low pressure separator、LPS)へと送られるポリマーに富んだストリーム(11)とに分離する。エチレンストリーム(15)は、冷却されて、ストリーム(17)中で洗浄される。ストリーム(16)は、不純物及び/又は不活性物質を除去するためのパージストリームである。LPS中で分離されたエチレン系ポリマーは、(12)において更に処理される。LPSで除去されたエチレンは、ブースタ圧縮機(図1の「ブースタ」)に供給され、ここで、圧縮中に、溶媒、潤滑油、及び他の液体などの凝縮物が、ストリーム(14)を通して回収及び除去される。ブースタ圧縮機(図1の「ブースタ」)の出口は、新鮮なエチレン供給物(1)と組み合わされ、一次圧縮機(図1の「一次」)によって更に圧縮される。
【0061】
反応器システムは、ハイパー圧縮機のための潤滑剤供給物を含む。潤滑油は、酸化防止剤を含有してもよい(又は含有しなくてもよい)。いくつかの潤滑剤は、ハイパー圧縮機の圧縮チャンバに漏れ、したがってエチレンに漏れ得る。本プロセスは、有利には、防汚剤をハイパー圧縮機の上流のエチレン供給物に直接添加し、潤滑油中に防汚剤を溶解させる必要性を回避する。一実施形態では、エチレン供給物に添加するときに、防汚剤は、潤滑油を含まないか、又はそうでなければ除外する。
【0062】
限定ではなく例として、ここで、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例
【0063】
本発明の実施例及び比較試料に使用されるプロセス
図2は、比較例及び本発明の実施例を調製するために使用される機器の概略図を示す。300mlの連続重合反応器(continuous polymerization reactor、CPR)を使用して、工業規模のLDPE生成システムのハイパー圧縮機及び予熱器部分を再現する。CPRに、エチレンモノマーを7lb/時で添加する。このエチレンストリーム及びハイパー圧縮機の上流に、プロピオンアルデヒド(連鎖移動剤及び防汚剤溶媒の両方として機能する)を1000mol ppmでエチレンに添加する。次いで、エチレン及びプロピオンアルデヒドを、バルブの使用を通して、ハイパー圧縮機内で30,000psi(206,800キロパスカル(kiloPascal、kPa))に加圧する。CPRを140℃に加熱して、工業規模のLDPE生成システムのハイパー圧縮機及び予熱器部分における温度を再現する。エチレン及びプロピオンアルデヒドを、140℃で18時間、CPR反応器を通して流動させて、工業規模のLDPE生成システムのハイパー圧縮機及び予熱器部分を更に再現する。18時間の過程の間に形成されたすべてのプレポリマーを、回収し、秤量する。18時間の終わりに、CPRを開き、汚れのレベルについて検査する(以下、プロセス1と称する)。
【0064】
比較試料
比較例1~4(CE1~4)では、溶媒(プロピオンアルデヒド)に添加された様々な量の分子状酸素(CE1 0ppm、CE2 1ppm、CE3 5ppm、CE4 0ppm)を用いて、プロセス1を実施する。CE4では、CS4に分子状酸素を添加せずに、0.5ppmのMEHQをプロピオンアルデヒドに溶解させる。
【0065】
本発明の実施例
本発明の実施例(IE1)では、三成分防汚剤として、Isopar-E溶媒中に溶解した0.5ppmの分子状酸素、及びプロピオンアルデヒド中に溶解した0.5ppmのMEHQを用いて、プロセス1を実施する。防汚剤を、反応器システムにエチレンモノマーと同時に添加する。プロセス1は、CS1~4及びIE1の各々について実行され、5回別個に実施される。
【0066】
18時間の過程の間に回収されたプレポリマーの量を、各実行について測定する。次いで、反応器を開けた後、比較例及び本発明の実施例における汚れのレベルを、1~5の尺度で評価し、1は非常に汚れており、5は完全に清潔である。結果を以下の表1に示す。
【0067】
【表1】
CE=比較例
IE=本発明の実施例
【0068】
表1に見ることができ、図3~7に示され得るように、エチレンモノマーとの防汚剤(阻害剤、分子状酸素、及び溶媒)の反応システムへの直接添加は、ハイパー圧縮機及び予熱器の動作条件で生成されるプレポリマーの量を低減、又は排除/防止するように作用する。阻害剤と分子状酸素との組み合わせは相乗的に作用して、反応条件を下回る温度及び圧力で、すなわち、ハイパー圧縮機及び/又は予熱器の動作条件で、形成されるプレポリマーの量を低減する。IE1は、構成要素表面上に汚れ及びプレポリマー蓄積物をほとんど生じさせず、比較例のいずれかよりも実験の過程にわたってより少ないポリマー形成をもたらす。出願人は、阻害剤と組み合わされた分子状酸素が効果的な防汚剤として相乗的に働き、依然としてプレポリマー蓄積物がほとんど又は全くないことを達成しながら、分子状酸素の低減(0.1ppm~1.0ppm未満、又は0.1ppm~0.5ppmの分子状酸素)、及び阻害剤の低減(0.1ppm~1.0ppm未満、又は0.1ppm~0.5ppmの阻害剤)を可能にすることを発見した。酸素がより高い濃度において反応器の不安定性を引き起こすことが既知であるため、分子状酸素の低減は有利である。
【0069】
CE2(1.0ppmのO/0ppmのMEHQ)と比較したIE1(0.5ppmのO/0.5ppmのMEHQ)は、1.2lbでのCE2(Oのみ)の約4倍多いプレポリマー蓄積物と比較して、0.33lbのプレポリマー蓄積物を示すIE1によって、O/阻害剤の組み合わせの相乗効果を示す。
【0070】
CE4(0ppmのO/1.0ppmのMEHQ)と比較したIE1(0.5ppmのO/0.5ppmのMEHQ)は、0.62lbでのCE4(阻害剤のみ)の約2倍多いプレポリマー蓄積物と比較して、0.33lbのプレポリマー蓄積物を示すIE1によって、O/阻害剤の組み合わせの相乗効果を示す。
【0071】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態及び例示に限定されず、実施形態の一部、及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含むそれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲に該当する範囲で含むことが特に意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】