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  • 特表-ポリマー組成物を含有する弾薬筒 図1
  • 特表-ポリマー組成物を含有する弾薬筒 図2
  • 特表-ポリマー組成物を含有する弾薬筒 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ポリマー組成物を含有する弾薬筒
(51)【国際特許分類】
   F42B 5/30 20060101AFI20230502BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20230502BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20230502BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20230502BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230502BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F42B5/30
C08L81/02
C08L33/14
C08L23/08
C08K3/013
C08K7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552306
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 US2021022553
(87)【国際公開番号】W WO2021202099
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/001,827
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ウィエファ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,シンユー
(72)【発明者】
【氏名】マグレディ,クリストファー・ディー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB072
4J002BG042
4J002BG052
4J002BG072
4J002CN011
4J002DJ016
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD202
4J002GT00
(57)【要約】
発射体を受容するように構成された中空内部を画定するケーシング体を含む弾薬筒を提供する。ケーシング体は、ポリアリーレンスルフィドおよび耐衝撃性改質剤を含むポリマー組成物を含有する。耐衝撃性改質剤は、エポキシ官能化ポリマーを含む。さらに、ポリマー組成物は、ISO試験番号179-1:2010にしたがって23℃の温度で決定した場合に約6kJ/m以上のノッチ付きシャルピー衝撃強さを示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射体を受容するように構成された中空内部を画定するケーシング体を含む弾薬筒であって、前記ケーシング体が、ポリアリーレンスルフィドおよび耐衝撃性改質剤を含むポリマー組成物を含み、前記耐衝撃性改質剤がエポキシ官能化ポリマーを含み、さらに、前記ポリマー組成物が、ISO試験番号179-1:2010にしたがって23℃の温度で決定した場合に約6kJ/m以上のノッチ付きシャルピー衝撃強さを示す、弾薬筒。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、ISO試験番号179-1:2010にしたがって-30℃の温度で決定した場合に約5kJ/m以上のノッチ付きシャルピー衝撃強さを示す、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、ISO試験番号527:2012にしたがって23℃の温度で決定した場合に約6000MPa以下の引張弾性率を示す、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、約310℃の温度および1200s-1の剪断速度でISO試験番号11443:2005にしたがって決定した場合に約6000kP以下の溶融粘度を示す、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項5】
前記ポリアリーレンスルフィドが、前記ポリマー組成物の約50wt%~約98wt%を占める、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項6】
前記ポリアリーレンスルフィドが、ポリフェニレンスルフィドである、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項7】
前記ポリアリーレンスルフィドが、直鎖状ポリフェニレンスルフィドである、請求項6に記載の弾薬筒。
【請求項8】
耐衝撃性改質剤が、前記ポリマー組成物中に用いられるポリアリーレンスルフィドの100重量部当たり、1~約50重量部を占める、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物中のポリアリーレンスルフィドの100重量部当たり、約0.3~約1.2重量部のエポキシ含有量を有する、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物中のポリアリーレンスルフィドの100重量部当たり、約0.5~約0.9重量部のエポキシ含有量を有する、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項11】
前記エポキシ官能化ポリマーが、エポキシ官能化(メタ)アクリルモノマー成分を含有する、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項12】
前記エポキシ官能化(メタ)アクリルモノマー成分が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、またはこれらの組合せから形成された、請求項11に記載の弾薬筒。
【請求項13】
前記エポキシ官能化ポリマーが、α-オレフィンモノマー成分をさらに含む、請求項11に記載の弾薬筒。
【請求項14】
前記α-オレフィンモノマー成分が、前記ポリマーの約55wt%~約95wt%を占め、前記エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分が、前記ポリマーの約1wt%~約20wt%を占める、請求項13に記載の弾薬筒。
【請求項15】
前記エポキシ官能化ポリマーが、前記ポリマーの約5wt%~約35wt%の量で、非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分をさらに含む、請求項14に記載の弾薬筒。
【請求項16】
前記エポキシ官能化ポリマーが、2.16kgの負荷および190℃の温度で、ASTM D1238-13にしたがって決定した場合に、10分当たり約1~約30グラムのメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項17】
前記ポリマー組成物が、触媒をさらに含む、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項18】
前記触媒が金属カルボン酸塩を含む、請求項17に記載の弾薬筒。
【請求項19】
前記金属カルボン酸塩が、脂肪酸の金属塩である、請求項18に記載の弾薬筒。
【請求項20】
前記塩が、二価の金属カチオンを含有する、請求項19に記載の弾薬筒。
【請求項21】
前記脂肪酸が、8~22個の炭素原子の炭素鎖長を有する、請求項18に記載の弾薬筒。
【請求項22】
前記耐衝撃性改質剤が、約1~約1000ナノメートルの平均サイズを有する別個の領域の形態で、前記ポリマー組成物中に分散している、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項23】
前記ポリマー組成物中のポリアリーレンスルフィドの100重量部当たり約1~約40重量部の量で無機充填材をさらに含む、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項24】
前記無機充填材がガラス繊維を含む、請求項23に記載の弾薬筒。
【請求項25】
発射薬が、前記ケーシング体の中空内部中に配置され、さらに、プライマーが、前記発射薬と燃焼可能に連通して、前記ケーシング体中に配置される、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項26】
発射体が、前記ケーシング体の中空内部中に配置される、請求項25に記載の弾薬筒。
【請求項27】
前記ケーシング体が実質的に円筒形である、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項28】
前記ケーシング体が単一の構成要素から形成される、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項29】
前記ケーシング体が、複数の構成要素から形成される、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項30】
前記ケーシング体が、前記発射体を受容するためのオープンエンドを画定するヘッド構成要素に連結されたベース構成要素を含有する、請求項1に記載の弾薬筒。
【請求項31】
前記ベース構成要素が、前記ポリマー組成物を含有する、請求項30に記載の弾薬筒。
【請求項32】
前記ヘッド構成要素が、前記ポリマー組成物を含有する、請求項30に記載の弾薬筒。
【請求項33】
前記ベース構成要素が、プライマーインサートを含む、請求項30に記載の弾薬筒。
【請求項34】
前記ベース構成要素と前記ヘッド構成要素との間に位置し、それらに連結された中間構成要素をさらに含む、請求項30に記載の弾薬筒。
【請求項35】
前記中間構成要素が、前記ポリマー組成物を含む、請求項34に記載の弾薬筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、出願日が2020年3月30日の米国仮特許出願第63/001,827号の出願利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]用途の極端な性質に起因して、弾薬筒(ammunition cartridge)の製造に使用される材料は、優れた機械的および熱的性質を実証しなければならない。世界中の弾薬の全口径用の薬莢(cartridge casing)の製造のために普及している材料は金属である。真鍮が主な材料であり、続いて少量の鋼鉄、および限られた量のアルミニウムが続く。真鍮、鋼鉄、およびより少量のアルミニウム製の薬莢にはいくつかの欠点があるが、最も重要な欠点は重い重量および腐食の問題である。アルミニウムは、さらに潜在的な爆発性酸化的分解の欠点を有し、そのため、低圧の弾薬筒または比較的厚い薬莢の壁が許容される用途でのみ使用される。これらの問題を考慮すると、弾薬の薬莢を製造するための所望の材料は、弾薬用途における使用に適した機械特性を有しながら、軽量かつ腐食の影響を受けないものとなる。プラスチック製の弾薬筒を設計するために膨大な労力が費やされてきた。これらの試みにもかかわらず、着実な成功は達成されなかった。例としては、ポリマー組成物は、さまざまな作動温度下での発砲事象の間、相対的な度合いの衝撃エネルギーを吸収できなければならない。しかし、残念なことに、衝撃強さを増加させる試みは、脆性の増加および低い流動性をもたらし、組成物が、機械的完全性の損失なしに組立工程を耐え抜くことを困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]したがって、現在、弾薬筒に使用されうる高分子材料に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本発明の一実施形態によれば、発射体を受容するように構成された中空内部を画定するケーシング体(casing body)を含む弾薬筒を開示する。ケーシング体は、ポリアリーレンスルフィドおよび耐衝撃性改質剤を含むポリマー組成物を含有する。耐衝撃性改質剤は、エポキシ官能化ポリマーを含む。さらに、ポリマー組成物は、ISO試験番号179-1:2010にしたがって23℃の温度で決定した場合、約6kJ/m2以上のノッチ付きシャルピー衝撃強さを示す。
【0005】
[0005]本発明のその他の特徴および態様は、以下でより詳細に説明する。
[0006]本開示は、以下の図面を参照してよりよく理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0007]本発明の弾薬筒の一実施形態の横断面図である。
図2】[0008]図1の弾薬筒の一部の分解図である。
図3】[0009]図1の弾薬筒の断面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0010]当業者は、本考察が例示的実施形態の説明であり、本開示のより広い態様を限定することを意図しないことを理解するものとする。
[0011]一般的に言えば、本発明は、発射体を受容するための中空内部を画定するケーシング体を含有する弾薬筒を対象とする。特に、ケーシング体は、エポキシ官能化ポリマーを含むポリマー組成物を含有する。ポリアリーレンスルフィドは、高度な腐食および熱への耐性をもたらすことができる。その上、これらの材料の特定の性質および濃度の選択的な制御を通して、本発明者らは、結果として得られるポリマー組成物は、良好な延性および流動性を依然として維持しながら、広範囲の温度にわたって高度な衝撃強さを達成できることも発見した。ポリマー組成物は、ISO試験番号179-1:2010(技術的にASTM D256、方法Bに相当)にしたがって23℃の温度で決定した場合、例としては、約6kJ/m以上、いくつかの実施形態では約8kJ/m以上、いくつかの実施形態では約10~約150kJ/m、いくつかの実施形態では約20~約100kJ/m、いくつかの実施形態では約30~約80kJ/mのノッチ付きシャルピー衝撃強さを示しうる。有利には、ポリマー組成物は、高度の耐熱性も有し、したがって高温および低温の両方で良好な特性を示すことができる。例えば、ポリマー組成物は、ISO試験番号179-1:2010(技術的にASTM D256、方法Bに相当)にしたがって-30℃の温度で決定した場合、約5kJ/m以上、いくつかの実施形態では約6~約100kJ/m、いくつかの実施形態では約8~約50kJ/mのノッチ付きシャルピー衝撃強さを示すことができる。ポリマー組成物はまた、非常に良好な引張特性も示しうる。例えば、ポリマー組成物は、約6000MPa以下、いくつかの実施形態では約5000MPa以下、いくつかの実施形態では約4000MPa以下、いくつかの実施形態では約3500MPa以下、いくつかの実施形態では約500~約3200MPa、いくつかの実施形態では約1500~約3000MPaの、組成物の延性を示す、引張弾性率を示しうる。引張強さはまた、約25MPa以上、いくつかの実施形態では約30MPa以上、いくつかの実施形態では約50~約200MPaであってよい。そのような引張特性は、試験速度5mm/minでのISO試験番号527:2012(技術的にASTM D638に相当)にしたがって23℃の温度で決定することができる。当然ながら、良好な機械特性の維持に加えて、ポリマー組成物は、比較的低い溶融粘度を有し得、それによって製造中に型穴中に容易に流すことを可能にする。例としては、組成物は、約310℃の温度で、1200s-1の剪断速度にて、ISO試験番号11443:2005にしたがって決定した場合、約6000キロポアズ(kP)以下、いくつかの実施形態では約5000kP以下、いくつかの実施形態では約3500kP以下、いくつかの実施形態では約500~約3000kP、いくつかの実施形態では約1000~約2500kPの溶融粘度を有しうる。
【0008】
[0012]ここで、本発明のさまざまな実施形態を、より詳細に説明していく。
I. ポリマー組成物
A. ポリアリーレンスルフィド
[0013]ポリマー組成物は、一般に、少なくとも1種のポリアリーレンスルフィドを、ポリマー組成物の約50wt%~約98wt%、いくつかの実施形態では約60wt%~約96wt%、いくつかの実施形態では約80wt%~約95wt%の量で用いる。ポリアリーレンスルフィドは、次式:
-[(Ar-X]-[(Ar-Y]-[(Ar-Z]-[(Ar-W]
[式中、
Ar、Ar、Ar、およびArは、独立に6~18個の炭素原子のアリーレン単位であり;W、X、Y、およびZは、独立に、-SO-、-S-、-SO-、-CO-、-O-、-C(O)O-、または少なくとも1つの連結基が-S-である、1~6個の炭素原子のアルキレンもしくはアルキリデン基から選択される二価の連結基であり;n、m、i、j、k、l、o、およびpは、独立に0、1、2、3、または4であるが、ただしこれらの合計が2以上であることを条件とする]
の繰り返し単位を有しうる。
【0009】
[0014]アリーレン単位Ar、Ar、Ar、およびArは、選択的に置換されていてもされていなくてもよい。有利なアリーレン単位は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセンおよびフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは、典型的には、約30mol%超、約50mol%超、または約70mol%超のアリーレンスルフィド(-S-)単位を含む。例えば、ポリアリーレンスルフィドは、2つの芳香環に直接結合された少なくとも85mol%のスルフィド結合を含んでもよい。特定の一実施形態において、ポリアリーレンスルフィドは、本明細書中でフェニレンスルフィド構造-(C-S)-[式中、nは1以上の整数である]を含有すると定義されるポリフェニレンスルフィドである。
【0010】
[0015]ポリアリーレンスルフィドを作製する上で用いられうる合成技術は、当該技術分野において一般的に知られている。例として、ポリアリーレンスルフィドの製造方法は、有機アミド溶媒中で、ヒドロスルフィドイオン(例えば、アルカリ金属スルフィド)を生成する材料をジハロ芳香族化合物と反応させることを含んでもよい。アルカリ金属スルフィドは、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムまたはこれらの混合物であってもよい。アルカリ金属スルフィドが水和物または水性混合物である場合、アルカリ金属スルフィドを、重合反応の前に、脱水化の操作にしたがって処理してもよい。アルカリ金属スルフィドは、インサイチュで発生させることもできる。加えて、少量のアルカリ金属水酸化物を反応中に含めて、アルカリ金属スルフィドと共にごく少量で存在しうるアルカリ金属ポリスルフィドまたはアルカリ金属チオ硫酸塩などの不純物を除去するか、または(該不純物を無害物質に変化させるために)それらを反応させてもよい。
【0011】
[0016]ジハロ芳香族化合物は、非限定的に、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ-ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシドまたはジハロジフェニルケトンであってもよい。ジハロ芳香族化合物は、単独またはこれらの任意の組合せのいずれかで使用されうる。具体的な例示的ジハロ芳香族化合物としては、非限定的には、p-ジクロロベンゼン;m-ジクロロベンゼン;o-ジクロロベンゼン;2,5-ジクロロトルエン;1,4-ジブロモベンゼン;1,4-ジクロロナフタレン;1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン;4,4’-ジクロロビフェニル;3,5-ジクロロ安息香酸;4,4’-ジクロロジフェニルエーテル;4,4’-ジクロロジフェニルスルホン;4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシド;および4,4’-ジクロロジフェニルケトンを挙げることができる。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であってもよく、同一のジハロ芳香族化合物中の2個のハロゲン原子は、互いに同一であっても異なっていてもよい。一実施形態において、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼンまたはこれらの2種以上の化合物の混合物が、ジハロ芳香族化合物として使用される。当該技術分野において公知であるように、ポリアリーレンスルフィドの末端基を形成するために、または重合反応および/またはポリアリーレンスルフィドの分子量を調整するために、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくてもよい)をジハロ芳香族化合物と組み合わせて使用することも可能である。
【0012】
[0017]ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。例としては、ジハロ芳香族化合物の選択的な組合せは、2つ以上の異なる単位を含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーを生成することができる。例としては、p-ジクロロベンゼンをm-ジクロロベンゼンまたは4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用するとき、次式:
【0013】
【化1】
【0014】
の構造を有するセグメント、および次式:
【0015】
【化2】
【0016】
の構造を有するセグメントまたは次式:
【0017】
【化3】
【0018】
の構造を有するセグメントを含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーが形成されうる。
[0018]ポリアリーレンスルフィドは、直鎖状、半線形、分枝状または架橋であってもよい。直鎖状ポリアリーレンスルフィドが特に好適であり、80mol%以上、いくつかの実施形態では90mol%以上の繰り返し単位-(Ar-S)-を含有しうる。そのような直鎖状ポリマーはまた、少量の分枝状単位または架橋単位も含みうるが、分枝状または架橋単位の量は、典型的には、ポリアリーレンスルフィドの総モノマー単位の約1mol%未満である。直鎖状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記の繰り返し単位を含有するランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。半線形ポリアリーレンスルフィドもまた同様に、ポリマー中に導入された架橋構造または分枝構造、3つ以上の反応性官能基を有する1種以上のモノマーを少量有しうる。例としては、半線形ポリアリーレンスルフィドを形成する上で使用されるモノマー構成成分は、分枝ポリマーの調製に利用できる1分子当たり2つ以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物をある程度の量で含むことができる。そのようなモノマーは、式R’Xによって表すことができ、式中、各Xは、塩素、臭素、およびヨウ素から選択され、nは3~6の整数であり、R’は、最大で約4つのメチル置換基を有しうる原子価nの多価芳香族基であり、R’中の合計炭素原子数は、6~約16の範囲内である。半線形ポリアリーレンスルフィドを生成する上で用いることができる1分子当たり2個超の置換ハロゲンを有する一部のポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’-テトラクロロジフェニル、2,2’,5,5’-テトラヨードビフェニル、2,2’,6,6’-テトラブロモ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
[0019]要望に応じて、ポリアリーレンスルフィドは官能化されていてもよい。例としては、反応性官能基(例えば、カルボキシル、ヒドロキシル。アミンなど)を含有するジスルフィド化合物をポリアリーレンスルフィドと反応させることができる。ポリアリーレンスルフィドの官能化は、耐衝撃性改質剤とポリアリーレンスルフィドとの間の結合部位をさらに提供することができ、ポリアリーレンスルフィド全体にわたる耐衝撃性改質剤の分布を改善し、相分離を防止することができる。ジスルフィド化合物は、溶融加工中、ポリアリーレンスルフィドとの鎖の切断反応を経て、その全体の溶融粘度を低下させることができる。用いた場合、ジスルフィド化合物は、典型的には、ポリマー組成物の約0.01wt%~約3wt%、いくつかの実施形態では約0.02wt%~約1wt%、いくつかの実施形態では約0.05~約0.5wt%を構成する。ポリアリーレンスルフィドの量とジスルフィド化合物の量との比も同様に、約1000:1~約10:1、約500:1~約20:1、または約400:1~約30:1であってもよい。好適なジスルフィド化合物は、典型的には、次式:
-S-S-R
を有するものである。
【0020】
[0020]式中、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、独立に1~約20個の炭素を含む炭化水素基である。例としては、RおよびRは、アルキル、シクロアルキル、アリール、または複素環式基であってもよい。特定の実施形態において、RおよびRは、一般的に、フェニル、ナフチル、エチル、メチル、プロピルなどの非反応性官能基である。そのような化合物の例としては、ジフェニルジスルフィド、ナフチルジスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、およびジプロピルジスルフィドが挙げられる。RおよびRはまた、ジスルフィド化合物の末端に反応性官能基も含みうる。例えば、RおよびRのうちの少なくとも片方は、末端カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換アミノ基、またはニトロ基などを含みうる。化合物の例としては、非限定的に、2,2’-ジアミノジフェニルジスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジチオサリチル酸(または2,2’-ジチオ安息香酸)、ジチオグリコール酸、α,α’-ジチオジ乳酸、β,β’-ジチオジ乳酸、3,3’-ジチオジピリジン、4,4’-ジチオモルホリン、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)、2,2’-ジチオビス(ベンゾイミダゾール)、2,2’-ジチオビス(ベンゾオキサゾール)、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0021】
B.耐衝撃性改質剤
[0021]耐衝撃性改質剤は、典型的には、ポリマー組成物中に用いられるポリアリーレンスルフィドの100重量部当たり、1~約50重量部、いくつかの実施形態では約2~約30重量部、いくつかの実施形態では約5~約20重量部を構成する。例えば、耐衝撃性改質剤は、ポリマー組成物の約1wt%~約30wt%、いくつかの実施形態では約2wt%~約20wt%、いくつかの実施形態では約5wt%~約15wt%を構成しうる。
【0022】
[0022]耐衝撃性改質剤の特定の性質を選択して、溶融粘度、延性(例えば、引張弾性率)、および衝撃強さの間の所望のバランスの達成を助けてもよい。すなわち、耐衝撃性改質剤は、一般的に、1分子当たりに平均で2つ以上のエポキシ官能基を典型的に含有する「エポキシ官能化」ポリマーを含む。そのような官能基の一例は、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分である。本明細書で用いる場合、用語「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルモノマー、ならびにそれらの塩またはエステル、例えばアクリレートおよびメタクリレートモノマーを含む。例えば、好適なエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、これらに限定されないが、1,2-エポキシ基を含有するもの、例えばグリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートを挙げることができる。その他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート(ethacrylate)、およびグリシジルイタコネート(itoconate)が挙げられる。用いた特定のタイプにもかかわらず、組成物全体のエポキシモノマーの相対濃度(「エポキシ含有量」)を選択的に制御して、所望のメルトフローレート、延性、および衝撃強さの達成を助けてもよい。例えば、低すぎるエポキシ含有量は、ポリアリーレンスルフィドとの相互作用の欠乏につながる可能性があり、そのため、結果として得られるポリマー組成物の衝撃強さが限定されてしまう。一方、エポキシ含有量が高すぎると、組成物の全体の延性に影響を及ぼしうる。したがって、典型的には、組成物のエポキシ含有量は、ポリマー組成物中に用いられるポリアリーレンスルフィドの100重量部当たり、約0.3~約1.2重量部、いくつかの実施形態では約0.45~約1重量部、いくつかの実施形態では約0.5~約0.9重量部であることが望ましい。
【0023】
[0023]エポキシ官能化ポリマーは、当該技術分野において公知のその他のモノマー成分も含有しうる。例えば、ポリマーは、ポリマーがエポキシ官能化オレフィンコポリマーとみなされるように、1種以上のα-オレフィンに由来するオレフィンモノマー成分を含有しうる。好適なオレフィンモノマーの例としては、例えば、2~20個の炭素原子、典型的には2~8個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝状α-オレフィンが挙げられる。具体的な例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ペンテン;1つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-オクテン;1つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチルまたはジメチル置換1-デセン;1-ドデセン;およびスチレンが挙げられる。特に望ましいα-オレフィンモノマーは、エチレンおよびプロピレンである。α-オレフィンモノマーは、例えば、コポリマーの約55wt%~約95wt%、いくつかの実施形態では約60wt%~約90wt%、いくつかの実施形態では約65wt%~約85wt%を構成しうる。エポキシモノマー(例えば、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー)もまた同様に、コポリマーの約1wt%~約20wt%、いくつかの実施形態では約2wt%~約15wt%、いくつかの実施形態では約3wt%~約10wt%を構成しうる。
【0024】
[0024]エポキシ官能化オレフィンコポリマーは、当該技術分野において公知のその他のモノマー単位も含有しうる。例えば、別の好適なモノマーとしては、エポキシ官能性ではない(メタ)アクリルモノマーを挙げることができる。そのような(メタ)アクリルモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、i-アミルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、i-アミルメタクリレート、s-ブチル-メタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなど、およびこれらの組合せを挙げることができる。用いられる場合、そのような非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーは、コポリマーの約5wt%~約35wt%、いくつかの実施形態では約8wt%~約30wt%、いくつかの実施形態では約10wt%~約25wt%を構成しうる。
【0025】
[0025]エポキシ官能化ポリマーのメルトフローインデックスもまた、選択的に制御して所望の特性の達成を助けることができる。例としては、耐衝撃性改質剤のメルトフローインデックスは、2.16kgの荷重で、190℃の温度下、ASTM D1238-13にしたがって決定した場合、約1~約30グラム/10分(「g/10min」)、いくつかの実施形態では約2~約20g/10min、いくつかの実施形態では約4~約15g/10minであってもよい。本発明において使用されうる好適なエポキシ官能化コポリマーの一例は、Arkema社から名称LOTADER(登録商標)AX8840で市販されている。例えば、LOTADER(登録商標)AX8840は、5g/10minのメルトフローインデックスを有し、8wt%のグリシジルメタクリレートモノマー含有量を有する。別の好適なコポリマーは、DuPont社から名称ELVALOY(登録商標)PTWで市販されている、エチレン、ブチルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートのターポリマーであり、12g/10minのメルトフローインデックスおよび5wt%のグリシジルメタクリレートモノマー含有量を有する。
【0026】
[0026]要望に応じて、追加の耐衝撃性改質剤も、エポキシ官能化ポリマーと組み合わせて使用してもよい。例えば、別の好適な耐衝撃性改質剤は、少なくとも1つの相が室温下で硬質だが加熱すると流体になる材料で作られ、別の相が室温でゴム状の軟質材料である、ブロックコポリマーを含んでもよい。例としては、ブロックコポリマーは、Aが硬質セグメントを表し、Bが軟質セグメントである、A-BまたはA-B-Aブロックコポリマー繰り返し構造を有しうる。A-B繰り返し構造を有する耐衝撃性改質剤の非限定的な例としては、ポリアミド/ポリエーテル、ポリスルホン/ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン/ポリエステル、ポリウレタン/ポリエーテル、ポリエステル/ポリエーテル、ポリカーボネート/ポリジメチルシロキサン、およびポリカーボネート/ポリエーテルが挙げられる。トリブロックコポリマーもまた同様に、硬質セグメントとしてのポリスチレンおよび軟質セグメントとしてのポリブタジエン、ポリイソプレン、またはポリエチレン-コ-ブチレンのいずれかを含有しうる。同様に、スチレンブタジエン繰り返しコポリマー、およびポリスチレン/ポリイソプレン繰り返しポリマーを用いてもよい。特定の一実施形態において、ブロックコポリマーは、ポリアミドおよびポリエーテルの交互ブロックを有してもよい。そのような材料は、例えば、Atofina社からPEBAX(商標)の商品名で市販されている。ポリアミドブロックは、二酸成分とジアミン成分とのコポリマーに由来してよく、または環状ラクタムの単独重合によって調製してもよい。ポリエーテルブロックは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびテトラヒドロフランなどの環状エーテルのホモまたはコポリマーにしてもよい。
【0027】
C.触媒
[0027]要望に応じて、ポリマー組成物は、ポリアリーレンスルフィドとエポキシ官能化ポリマーとの間の反応の促進を助けて材料間の相溶性を改善する触媒も含有してよい。一実施形態において、例えば、触媒は、典型的には脂肪酸の金属塩である金属カルボン酸塩であってもよい。塩に用いられる金属カチオンはさまざまでありうるが、典型的にはカルシウム、マグネシウム、鉛、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、鉄、カドミウム、ニッケル、銅、スズなど、およびこれらの混合物などの二価金属であり、亜鉛が特に好適である。脂肪酸は、一般的に、約8~22個の炭素原子、いくつかの実施形態では約10~約18個の炭素原子の炭素鎖長を有する任意の飽和または不飽和酸であってもよい。要望に応じて、酸は置換されていてもよい。好適な脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リシノール酸、カプリン酸、ネオデカン酸、水素化獣脂脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸、水素化ヒマシ油の脂肪酸、エルカ酸、ヤシ油脂肪酸など、およびこれらの混合物を挙げることができる。金属カルボン酸塩は、典型的には、ポリマー組成物の約0.05wt%~約5wt%、いくつかの実施形態では約0.1wt%~約2wt%、いくつかの実施形態では約0.2wt%~約1wt%を構成する。理論によって制限されることを意図するものではないが、カルボキシレート中の金属原子は、耐衝撃性改質剤のエポキシ官能基中に位置する酸素原子からの電子を受容するルイス酸として作用することができると考えられている。カルボキシレートと反応すると、官能基が活性化し、求核置換を介して三員環中のいずれかの炭素原子で容易にアタックされ得、それによって耐衝撃性改質剤の各鎖間の反応が促進される。
【0028】
D.その他の成分
[0028]組成物は、特性および/または処理可能性を強化するために、当該技術分野において一般的に知られている1種以上の添加剤、例えば充填材(例えば、微粒子充填材、繊維など)、オルガノシラン化合物、着色剤、難燃剤、核形成剤、カップリング剤、安定剤(例えば、UV安定剤、UV吸収剤、熱安定剤など)、滑剤、酸化防止剤、流動促進剤(flow promoters)なども含むことができる。
【0029】
[0029]一実施形態において、例えば、ポリマー組成物は、無機充填材(例えば、繊維充填材、微粒子充填材など)を含有してもよい。そのような充填材は、組成物中に用いられるポリアリーレンスルフィド100重量部当たり、1~約40重量部、いくつかの実施形態では約2~約30重量部、いくつかの実施形態では約4~約25重量部を構成しうる。例としては、充填材は、組成物の約0.5wt%~約30wt%、いくつかの実施形態では約1wt%~約25wt%、いくつかの実施形態では約2wt%~約20wt%を構成しうる。繊維充填材は、一般的に、例えば、その質量に対して高度の引張強さを有する繊維を含有しうる。例えば、繊維の最大抗張力(ASTM D2101にしたがって決定した場合)は、典型的には、約1000~約15000MPa、いくつかの実施形態では約2000MPa~約10000MPa、いくつかの実施形態では約3000MPa~約6000MPaである。高強力繊維は、性質上、電気的に絶縁状態でもある材料、例えばガラス、セラミック(例えば、アルミナまたはシリカ)など、およびこれらの混合物から形成されうる。E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1ガラス、S2-ガラスなど、およびこれらの混合物などのガラス繊維が特に好適である。繊維はまた、相対的に長い長さを有しうる。例えば、繊維は、約1~約400マイクロメートル、いくつかの実施形態では約80~約250マイクロメートル、いくつかの実施形態では約100~約200マイクロメートル、いくつかの実施形態では約110~約180マイクロメートルの体積平均長さを有しうる。繊維はまた、狭い長分布も有しうる。すなわち、少なくとも約70体積%の繊維、いくつかの実施形態では少なくとも約80体積%の繊維、いくつかの実施形態では少なくとも約90体積%の繊維が、約1~約400マイクロメートル、いくつかの実施形態では約80~約250マイクロメートル、いくつかの実施形態では約100~約200マイクロメートル、いくつかの実施形態では約110~約180マイクロメートルの範囲内の長さを有する。上述の長さ特性を持つことに加えて、繊維は、結果として得られるポリマー組成物の機械特性の改善を助けるために、比較的高いアスペクト比(平均長さを公称直径で割ったもの)も有しうる。例えば、繊維は、約2~約50、いくつかの実施形態では約4~約40、いくつかの実施形態では約5~約20のアスペクト比を有しうる。繊維は、例えば、約5~約35マイクロメートル、いくつかの実施形態では約8~約30マイクロメートルの公称直径を有しうる。
【0030】
[0030]ポリマー組成物はまた、ポリアリーレンスルフィドとその他の成分(例えば、繊維充填材)との間の相溶性の改善を助けるためにオルガノシラン化合物も含有してよい。用いられる場合、そのようなオルガノシラン化合物は、典型的には、組成物中に用いられるポリアリーレンスルフィド100重量部当たり、0.01~約5重量部、いくつかの実施形態では約0.02~約2重量部、いくつかの実施形態では約0.05~約1重量部、およびポリマー組成物の約0.01wt%~約3wt%、いくつかの実施形態では約0.02wt%~約1wt%、いくつかの実施形態では約0.05~約0.5wt%を構成する。オルガノシラン化合物は、例えば、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、およびこれらの組合せなどの、当該技術分野において公知の任意のアルコキシシランであってもよい。一実施形態において、例えば、オルガノシラン化合物は、以下の一般式:
-Si-(R
[式中、
は、スルフィド基(例えば、-SH)、1~10個の炭素原子を含有するアルキルスルフィド(例えば、メルカプトプロピル、メルカプトエチル、メルカプトブチルなど)、2~10個の炭素原子を含有するアルケニルスルフィド、2~10個の炭素原子を含有するアルキニルスルフィド、アミノ基(例えば、NH)、1~10個の炭素原子を含有するアミノアルキル(例えば、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなど);2~10個の炭素原子を含有するアミノアルケニル、2~10個の炭素原子を含有するアミノアルキニルなどであり;
は、1~10個の炭素原子のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシなどである]
を有してもよい。
【0031】
[0031]混合物中に含まれうるオルガノシラン化合物のいくつかの代表例としては、メルカプトプロピルトリメチルオキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、エチレントリメトキシシラン、エチレントリエトキシシラン、エチントリメトキシシラン、エチントリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシランまたは3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-アミノプロピル)テトラメトキシシラン、ビス(3-アミノプロピル)テトラエトキシジシロキサン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ジアリルアミノプロピルトリメトキシシランなど、およびこれらの組合せが挙げられる。特に好適なオルガノシラン化合物は、3-アミノプロピルトリエトキシシランおよび3-メルカプトプロピルトリメトキシシランである。
【0032】
[0032]用いる成分にかかわらず、ポリマー組成物を生成するために、本発明では、多種多様な技術が用いられうる。一実施形態において、例えば、ポリマー組成物は、ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改質剤および任意選択の触媒を約100℃~約400℃、いくつかの実施形態では約150℃~約350℃で溶融加工することによって生成することができる。材料は、材料を分散的にブレンドする溶融加工装置と同時に、または順々に供給してよい。バッチ式および/または連続式溶融加工技術を用いてもよい。例えば、ミキサー/ニーダー、バンバリーミキサー、ファレル連続ミキサー、一軸押出機、二軸押出機、ロールミルなどを利用して、材料のブレンドおよび溶融加工を行ってもよい。特定の好適な1つの溶融加工装置は、共回転式二軸押出機(例えば、Leistritz社製の完全にかみ合った共回転式二軸押出機)である。そのような押出機は、供給口および排出口を含んでよく、高強度の分配および分散混合をもたらす。例えば、成分は、二軸押出機の同一のまたは異なる供給口に供給されてよく、溶融ブレンドされて、実質的に均一な溶融混合物を形成する。溶融ブレンドは、高い剪断/圧力下で起こり、十分な分散を確保できる。例えば、溶融加工中の見掛け剪断速度は、約100秒-1~約10000秒-1、いくつかの実施形態では約500秒-1~約1500秒-1の範囲であってもよい。当然ながら、その他の変数、例えば押出量に反比例する、溶融加工中の滞留時間も、所望の均一度を達成するために制御することができる。
【0033】
[0033]要望に応じて、1つ以上の分配および/または分散混合素子を、溶融加工装置の混合部内で用いてもよい。好適な分配ミキサー、例としては、Saxon、Dulmage、Cavity Transferミキサーなどを含んでもよい。同様に、好適な分散ミキサーとしては、Blisterリング、Leroy/Maddock、CRDミキサーなどを挙げることができる。当該技術分野において周知であるように、ポリマー溶解物の折り畳みおよび再配向を作製する銃身中のピン、例えばBuss Kneader押出機、Cavity Transferミキサー、およびVortex Intermeshing Pinミキサーに使用されるものを使用することによって、混合をさらに積極的に増加させることができる。組成物の特性を改善するために、スクリュー速度を制御することもできる。例としては、スクリュー速度は、約400rpm以下、一実施形態では、例えば約200rpm~約350rpm、または約225rpm~約325rpmであってもよい。一実施形態において、改善された衝撃特性および引張特性を示すポリマー組成物を生成するように配合条件のバランスをとることができる。例えば、配合条件は、軽度、中程度、または積極的スクリュー条件をもたらすスクリュー設計を含んでもよい。例えば、システムは、スクリューが、緩やかな溶融および分配溶融均一性を目的としてスクリューの下半分に1つの単一溶融部を有する、やや積極的なスクリュー設計を有してもよい。中程度に積極的なスクリュー設計は、より強力な分配素子に焦点を絞って均一な溶融を達成する充填材供給筒から上流のより強力な溶融部を有しうる。加えて、これは、下流に別の緩やかな混合部を有して充填材を混合することができる。この部分は、より弱いが、依然としてスクリューの剪断強度を増加させることができ、やや積極的な設計より全体的に強力にすることができる。高度に積極的なスクリュー設計は、3つのうち最も強力な剪断強度を有しうる。主要の溶融部は、長蛇の高分散性混練ブロックで構成されうる。下流の混合部は、分配素子および集約的分散素子の混合を利用して全タイプの充填材の均一な分散を達成することができる。高度に積極的なスクリュー設計の剪断強度は、他の2つの設計より優位に高いことがある。一実施形態において、システムは、比較的軽度のスクリュー速度(例えば、約200rpm~約300rpm)で中程度から積極的なスクリュー設計を含むことができる。
【0034】
[0034]成分がブレンドされる特定の様式にもかかわらず、ポリアリーレンスルフィドおよび耐衝撃性改質剤の相溶性および分配率を顕著に改善することができる。例えば、耐衝撃性改質剤は、ナノスケール寸法の別個の領域の形態でポリマー組成物中に分散していてもよい。例えば、領域は、約1~約1000ナノメートル、いくつかの実施形態では約5~約800ナノメートル、いくつかの実施形態では約10~約500ナノメートルの平均断面寸法を有しうる。領域は、楕円形、球形、円筒形、板状、管状などのさまざまな形状を有しうる。そのような改善された分散は、より良好な機械特性をもたらすことができるか、または少量の耐衝撃性改質剤で同等の機械特性を達成することを可能にできる。
【0035】
II.弾薬筒
[0035]前述のとおり、ポリマー組成物は、弾薬筒の構造中で使用される。本明細書で用いられる場合、用語「弾薬」は、キャップ、ケーシング、発射薬(propellant)、発射体などを含めた、小火器中に容易に装填されて発砲される、組立済みの弾丸または筒一式を指しうる。弾薬は、発射体が装着された実包、または発射体がない空包であってよく、非致死弾丸、ゴム弾を含有する弾丸、複数の発射体を含有する弾丸(弾)、および液体の詰まったキャニスター、トレーサー、徹甲弾、焼夷弾またはカプセルなどの銃弾以外の発射体を含有する弾丸などの他のタイプであってもよい。弾薬は、ピストルまたはライフル銃の任意の口径であってもよい。非限定的な例としては、5.56mm、7.62mm、308、338、3030、3006、50口径、45口径、380口径、38口径、9mm、10mm、12.7mm、14.5mm、14.7mm、20mm、25mm、30mm、40mm、57mm、60mm、75mm、76mm、81mm、90mm、100mm、105mm、106mm、115mm、120mm、122mm、125mm、130mm、152mm、155mm、165mm、175mm、203mm、460mm、20.32cm(8インチ)、または10.668cm(4.2インチ)が挙げられる。発射体は、いかなるプロフィールを有していてもよいが、一般に、頭部および尾部に空気力学的流線形状、例えば、送弾筒、スプリッツァ、フラットベーススプリッツァ、ボートテールスプリッツァ、テーパードヒールスプリッツァ、ラウンドノーズ、ラウンドノーズフラットベース、ラウンドノーズボートテール、ラウンドノーズテーパードヒール、フラットノーズ、フラットノーズフラットベース、フラットノーズボートテール、フラットノーズテーパードヒール、ホローポイント、ホローポイントボートテール、ホローポイントフラットベース、ホローポイントテーパードヒールなどを有する。いずれのヘッド形状をしてもよいが、より一般的な形状としては、スプリッツァ形状、円形、円錐形、円錐台形、平滑未端型、ワッドカッター、またはホローポイントが挙げられ、より一般的なテール形状としては、フラットベース、ボートテール、テーパードヒール拡張ベースまたはバンドベースが挙げられる。本発明の銃弾は、特定の用途によって指示される任意のプロフィールおよび重量を有しうる。
【0036】
[0036]弾薬のタイプにかかわらず、筒は、開放された発射体端部と反対側の端部との間で画定されうる中空内部を画定するケーシング体を含有する。中空内部は、発射装薬、プライマー(primer)、および/または発射体を保持するように構成される。例えば、発射薬は、中空ケーシング体中に配置され閉じ込められ得、プライマーは、発射薬と燃焼可能に連通して、ケーシング体の第1の端部に配置されうる。ケーシング体は、さまざまな異なる形状および/またはサイズを有しうるが、典型的には実質的に円筒形の形状である。ケーシング体を成形するために、押出、射出成形、ブロー成形、熱成形、発泡、圧縮成形、ホットスタンピング、紡糸、引き抜き成形などのさまざまな異なる技術が用いられうる。特定の実施形態では、例としては、ケーシング体は、射出成形、圧縮成形、ナノ成形、オーバーモールド、ブロー成形などの成形技術によって成形してもよい。当該技術分野において公知であるように、射出成形は、2つの主要な段階、すなわち射出段階と待機段階で行われうる。射出段階の間、型穴は溶融ポリマー組成物で完全に充填される。保持段階は、射出段階の完了後に開始され、該段階において、保持圧力を制御して追加の材料を型穴に詰め、冷却中に生じる体積収縮を補う。弾が構築された後、次いでこれを冷却することができる。冷却が完了したら、鋳型が開き、例えば鋳型内部の突出しピンを活用して部品が排出されるとき、成形サイクルが完了する。
【0037】
[0037]ケーシング体は、単一の構成要素から形成されるモノリシックであってもよい。あるいは、ケーシング体は、同一または異なるポリマー組成物から生成される複数の構成要素から形成される「マルチピース」であってもよい。一実施形態では、例えば、ケーシング体は、実質的に円筒形のベース構成要素とヘッド構成要素とを含有する「ツーピース」ケーシングであってもよい。そのような実施形態において、ベース構成要素は、対向する第1および第2の端部を有してもよく、ここで、第1の端部は閉じてプライマー孔を有してよく、第2の端部は、第1の連結要素を有していてもよい。ヘッド構成要素も同様に、対向する第3および第4の端部を有してもよく、この第3の端部は、第1の連結要素と結合する第2の連結要素を有し、それによってヘッド構成要素の第3の端部とベース構成要素の第2の端部とを接続する。ヘッド構成要素の第4の端部は、発射体を受容するために開かれていてよい。要望に応じて、本発明のポリマー組成物を、ベース構成要素および/またはヘッド構成要素中で用いてよい。当然ながら、ポリマー組成物は、用いる特定の成分に応じて、異なる相対濃度および/または異なる成分を有しうることを理解されたい。別の実施形態では、ケーシング体は、実質的に円筒形のベース構成要素と、ヘッド構成要素と、ベース構成要素およびヘッド構成要素間に位置する中間構成要素とを含有する「スリーピース」ケーシングであってもよい。そのような実施形態において、ベース構成要素は、対向する第1および第2の端部を有してもよく、ここで、第1の端部は閉じてプライマー孔を有してよく、第2の端部は第1の連結要素を有する。中間構成要素も同様に、対向する第3および第4の端部を有してもよく、この第3の端部は、第1の連結要素と結合する第2の連結要素を有し、それによって中間構成要素の第3の端部とベース構成要素の第2の端部とを接続する。中間構成要素の第4の端部もまた、第3の連結要素を有する。ヘッド構成要素は、開口端部と、中間構成要素の第3の連結要素と結合することによって中間構成要素の第4の端部とヘッド構成要素の開口端部を接続する第4の連結要素を有する対向端部と、を有しうる。要望に応じて、本発明のポリマー組成物は、ベース構成要素、中間構成要素、および/またはヘッド構成要素中で用いることができる。当然ながら、ポリマー組成物は、用いる特定の成分に応じて、異なる相対濃度および/または異なる成分を有しうる。
【0038】
[0038]図1~3を参照して、例えば、そのような「マルチピース」弾薬筒10の特定の一実施形態をより詳細に示す。この特定の実施形態において、筒10は、高速ライフルに特に適しており、内部で発射体(図示せず)が発射体端の開口部16を介して挿入されうる薬室14を示すケーシング体12を含む。ヘッド構成要素18は、本発明のポリマー組成物から生成され得、典型的には約0.00762~約0.508cm(約0.003~約0.2インチ)、いくつかの実施形態では約0.0127~約0.381cm(約0.005~約0.15インチ)、いくつかの実施形態では約0.0254~約0.254cm(約0.01~約0.1インチ)の壁厚を有する。ヘッド構成要素18の前端は、チャンバーネック26を形成するショルダー24を有する。ケーシング体12はまた、ヘッド構成要素18から反対側の端部20まで延伸する、実質的に円筒形のオープンエンド中間構成要素28も有しうる。中間構成要素28は、本発明のポリマー組成物から形成することができ、これはヘッド構成要素18と同一であっても異なっていてもよい。典型的には、中間構成要素28は、約0.00762~約0.508cm(約0.003~約0.2インチ)、いくつかの実施形態では約0.0127~約0.381cm(約0.005~約0.15インチ)、いくつかの実施形態では約0.0254~約0.254cm(約0.01~約0.1インチ)の壁厚を有する。
【0039】
[0039]中間構成要素28は、ケーシング体12のベース構成要素として作用する実質的に円筒形のインサート32に接続されうる。より具体的には、中間構成要素28は、端部20上に形成される結合端22を含んでもよい。中間構成要素28は、底面34から反対側の上面36まで延伸する実質的に円筒形の結合要素30を介して、実質的に円筒形のプライマーインサート32に接続される。インサート32は、本発明のポリマー組成物から形成されてもよく、これはヘッド構成要素18および/または中間構成要素28と同一であっても異なっていてもよい。プライマー陥凹38は、底面34に向かって延伸する上面36中に位置してもよく、プライマー点火口40も同様に底面34を通って薬室14中へ延伸する。結合端22は、プライマー点火口40を通って延伸し、プライマー点火口40の支持および保護をもたらすように底面34を通って上面36から薬室14中への通路を保持しながらアパーチャコーティング42を形成する。結合要素30はまた、テーパーを有して先端部44へ延伸する。このようにして、先端部44を有する結合端22とプライマー点火口40内部との間の接触は、インサート32と中間構成要素28との間の物理的連結を形成することができる。
【0040】
[0040]薬室14の室内容積は、弾薬筒を装填するときの発射薬の簡易化された容積測定を利用できるように、選択された発射薬により薬室14を完全に充填するために必要な容量が提供されるように変動しうる。粒子状または団結状いずれかの発射薬を使用することができる。インサート32はまた、プライマー(図示せず)の挿入を容易にするために、切り込まれたフランジ46および内部に形成されたプライマー陥凹38も有する。プライマー陥凹38は、組み立て中に締りばめでプライマー(図示せず)を受容するようにサイズ調整される。プライマー点火口40はインサート32の底面34を通して薬室14中に連結し、それによってプライマー(図示せず)の爆ごう時に薬室14中の火薬が発火する。発射体または銃弾(図示せず)は、締りばめによって発射体端の開口部16の薬室ケースネック26中の位置に保持されうる。機械的クリンピングも、銃弾引張力の増加に適用されうる。発射体は、薬室15の充填が完了した後で所定の位置に挿入されうる、または溶媒、接着剤、スピン溶接、振動溶接、超音波溶接もしくはレーザー溶接技術を用いた溶接もしくは結合に先立って、直接、発射体端開口部16上に射出成形してもよい。溶接または結合は、接合強度を増加し、したがってケーシングは、クックオフ温度で発射した後、高温のガンケーシングから抜き取られうる。次いで発射体端および銃弾成分を、溶媒、接着剤、スピン溶接、振動溶接、超音波溶接またはレーザー溶接技術を用いて、溶接または結合させることができる。溶接または結合は、接合強度を増加し、したがってケーシングは、クックオフ温度で発射した後、高温のガンケーシングから抜き取られうる。任意選択の第1および第2の環状溝(薬莢圧入溝)が、2つの構成要素間にスナップを設けるためのオス結合要素の連結面中の発射体端中に設けられうる。薬莢圧入溝は、銃弾にとって最適な装填深さになるように決定された位置の銃弾表面に形成される。
【0041】
[0041]本発明は、以下の実施例を参照することによってよりよく理解することができる。
試験方法
[0042]ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:ノッチ付きシャルピー特性は、ISO試験番号179-1:2010(技術的にASTM D256、方法Bに相当)にしたがって決定することができる。この試験は、タイプAノッチ付き(底面半径0.25mm)およびタイプ1試料サイズ(長さ80mm、幅10mm、および厚さ4mm)を用いて行ってよい。試料は、1枚歯フライス盤を使用して多目的バーの中心から切削される。試験温度は、23℃または-30℃であってもよい。
【0042】
[0043]引張特性:引張弾性率および強度は、ISO試験番号527:2012(技術的にASTM D638に相当)にしたがって決定することができる。測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの試験片サンプル上で行う。試験温度は23℃であり、試験速度は5mm/minである。
【0043】
[0044]溶融粘度:溶融粘度は、約310℃の温度および1200s-1の剪断速度で、Dynisco 7001毛管レオメータを使用して、ISO試験番号11443:2005にしたがって決定することができる。レオメータオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および導入角180°を有していた。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmだった。
【0044】
使用する材料
[0045]PPS1:FORTRON(登録商標)0214直鎖状ポリフェニレンスルフィド(Celanese社製);
[0046]耐衝撃性改質剤1:LOTADER(登録商標)AX8900-Arkema社製のエチレン、メチルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートのランダムコポリマー(グリシジルメタクリレート含有量8wt%、メチルアクリレート含有量24wt%、190℃でのメルトインデックス6g/10min);
[0047]耐衝撃性改質剤2:ELVALOY(登録商標)PTW-Dow社製のエチレン、ブチルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートのターポリマー(グリシジルメタクリレート含有量5wt%、190℃でのメルトフローインデックス12g/10min);
[0048]耐衝撃性改質剤3:LOTADER(登録商標)AX8840-Arkema社製のエチレンおよびグリシジルメタクリレートのランダムコポリマー(グリシジルメタクリレート含有量8wt%、190℃でのメルトインデックス5g/10min);
[0049]触媒:ステアリン酸亜鉛;ならびに
[0050]滑剤:Lonza社製のGLYCOLUBE(登録商標)P。
【0045】
実施例1
[0051]10個の温度制御領域を有する(1つはダイにある)十分にかみ合った32mmのCoperion共回転式二軸押出機を使用してさまざまな試料を溶融混合する。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改質剤、触媒、および滑剤は、重量測定供給装置によって、主要供給口に供給される。材料をさらに混合し、次いでストランドダイに通して押し出す。ストランドを浴中で水焼き入れして固化し、ペレッタイザーで造粒する。得られた組成物を、以下の表1~2で、より詳細に説明する。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
[0052]形成後、試料をさまざまな物理的特性について試験する。結果を以下の表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例2
[0053]10個の温度制御領域を有する(1つはダイにある)十分にかみ合った32mmのCoperion共回転式二軸押出機を使用してさまざまな試料を溶融混合する。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改質剤、ガラス繊維、オルガノシラン化合物、触媒、離型剤、および滑剤は、重量測定供給装置によって、主要供給口に供給される。材料をさらに混合し、次いでストランドダイに通して押し出す。ストランドを浴中で水焼き入れして固化し、ペレッタイザーで造粒する。得られた組成物を、以下の表3~4で、より詳細に説明する。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
[0054]形成後、試料をさまざまな物理的特性について試験する。結果を以下の表5に示す。
【0054】
【表6】
【0055】
[0055]本開示に対するこれらのおよびその他の修正および変更は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実践されうる。加えて、さまざまな実施形態の態様は、全体的にまたは部分的に交換可能であることを理解されたい。さらに、当業者は、前述の説明が例として述べたにすぎず、本開示を限定することを意図しないことを理解するであろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】