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特表2023-519697ライノウイルス感染の防止または処置における使用のための酪酸ナトリウム
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  • 特表-ライノウイルス感染の防止または処置における使用のための酪酸ナトリウム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ライノウイルス感染の防止または処置における使用のための酪酸ナトリウム
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230502BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230502BHJP
   A23L 33/155 20160101ALI20230502BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/19
A61P31/12
A61K31/59
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/72
A61K9/127
A61K47/26
A61K47/44
A23L33/155
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559508
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 GB2021050809
(87)【国際公開番号】W WO2021198691
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2004690.0
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522382901
【氏名又は名称】エディンバラ ネピア ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】EDINBURGH NAPIER UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Sighthill Campus, Edinburgh EH11 4BN(GB)
(74)【代理人】
【識別番号】100083150
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻木 信義
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】バーロウ,ピーター
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD09
4B018MD23
4B018ME14
4C076AA19
4C076AA36
4C076AA42
4C076AA53
4C076AA60
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB25
4C076CC35
4C076CC40
4C076DD66
4C076EE51
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA24
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA59
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206KA12
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA44
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206MA79
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染の防止および/または処置のための酪酸ナトリウムを含む組成物。組成物は、さらにビタミンDを含んでもよい。組成物は、錠剤、カプセル、または、吸入器の形態で投与されてもよい。または、ダイエタリーサプリメントとして提供されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染の防止および/または処置における使用のための酪酸ナトリウムを含む組成物。
【請求項2】
急性ライノウイルス感染の防止および/または処置における使用のための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、ライノウイルスを殺すおよび/またはライノウイルスの複製を阻害する物質を放出するために個体の免疫細胞を刺激する、請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、さらにビタミンDを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、経口投与される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、錠剤またはカプセルの形態で投与される、請求項8に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、吸入器の形態で投与される、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、脂質または糖などの材料、または、これらの材料の組み合わせによってコーティングされる、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、少なくとも1つの許容される担体を含み、小胞、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、または、その他の好適な媒体によって運ばれてもよい、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、ダイエタリーサプリメントとして提供される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、食品または飲料に組み込まれる、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染の防止および/または処置のための酪酸ナトリウムを含む組成物を含むダイエタリーサプリメント。
【請求項13】
前記組成物は、さらにビタミンDを含む、請求項12に記載のダイエタリーサプリメント。
【請求項14】
ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染の防止および/または処置のための酪酸ナトリウムを含む組成物を含む錠剤。
【請求項15】
前記組成物は、さらにビタミンDを含む、請求項14に記載の錠剤。
【請求項16】
ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染の防止および/または処置のための酪酸ナトリウムを含む組成物を含む吸入器。
【請求項17】
前記組成物は、さらにビタミンDを含む、請求項16に記載の吸入器。
【請求項18】
前記吸入器は、鼻吸入器である、請求項16ないし請求項17のいずれかに記載の吸入器。
【請求項19】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の酪酸ナトリウムを含む組成物を用いて、ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染を防止および/または処置するための方法。
【請求項20】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の酪酸ナトリウムを含む組成物を用いて、急性ライノウイルス感染を防止および/または処置するための、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
酪酸ナトリウムおよびビタミンDを含む組成物の使用を含む、請求項19ないし請求項20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライノウイルスによって引き起こされる感染の防止および/または処置における使用のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ライノウイルスは、普通感冒の主要な原因であり、ヒトの最も普通のウイルス性の感染因子の1つであると考えられている。ライノウイルスには、大体160個の異なる血清型がある。ライノウイルスは、蛋白質組成の異なるヒトに感染し得る。急性ライノウイルス感染は、ウイルス性上気道感染である。
【0003】
現在のところ、ヒトにおけるライノウイルス感染の防止のための有効なワクチンは、存在しない。典型的には、未成年は、1年あたり大体8回から12回ライノウイルスに感染し、成人は、1年あたり大体3回から4回感染する。米国経済に対するライノウイルスの概算コストは、毎年大体400億米ドルであると見積もられる。
【0004】
普通感冒または類似のウイルス感染を患う個体は、多くの場合に、症状を緩和するための痛み止めまたは充血除去薬のような対症的な処置をする。加えて、患者は、多くの場合に、医師の処方なしに市販されるサプリメントを購入する。このサプリメントには、例えば、ビタミンC、亜鉛、および免疫応答向上効果を有すると考えられる他の物質が含まれる。かかるサプリメントの例は、「エアボーン(Airborne)」または「ザイカム(Zicam)」という製品である。免疫を補助する製品は、1年あたり大体5から6パーセントで成長している5億米ドル産業の一部である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の問題に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に従うと、ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染の防止、改善、および/または処置における使用のための、酪酸ナトリウムを含む組成物が提供される。
【0007】
好ましくは、急性ライノウイルス感染の防止および/または処置のための酪酸ナトリウムを含む組成物が提供される。好ましくは、ウイルス性上気道感染の防止および/または処置のための酪酸ナトリウムを含む組成物が提供される。好ましくは、前記組成物は、式C4H7NaO2(またはCNaO)を有する酪酸ナトリウムを含む。
【0008】
有利には、酪酸ナトリウムを含む前記組成物の使用は、個体内のライノウイルス感染の縮減および/または除去をもたらす。
【0009】
有利には、前記組成物の使用は、ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染に関して予防効果を有し得る。
【0010】
典型的には、本発明の前記組成物は、個体内の免疫応答の刺激を通じて作用する。好ましくは、前記組成物は、ライノウイルスを殺すおよび/またはライノウイルスの複製を阻害する一つのまたは複数の物質を放出させるために、個体の免疫細胞を刺激する。
【0011】
有利には、酪酸ナトリウムを含む前記組成物の使用は、個体内の抗菌の抵抗性を誘発しない。なぜなら、前記組成物は、ウイルス自体を直接的に標的とするよりもむしろ、先天的な免疫応答の刺激を通じて作用するからである。
【0012】
有利には、本発明の前記組成物は、製造することが容易であり、購入することが安上がりである。有利には、本発明の前記組成物は、推奨用量の範囲内で摂取するときには、患者内に何ら副作用を生じない。
【0013】
別の実施形態では、前記組成物は、さらに、ビタミンDを含む。一実施形態では、酪酸ナトリウムおよびビタミンDを含む組成物の使用は、個体内のライノウイルス感染を縮減および/または除去する。典型的には、酪酸ナトリウムおよびビタミンDの組み合わせは、患者の免疫応答を刺激し、患者のライノウイルス感染を縮減および/または除去する。
【0014】
典型的には、前記組成物は、100mgと300mgとの間の酪酸ナトリウムを含む。一実施形態では、前記組成物は、およそ2000mgの酪酸ナトリウムを含んでもよい。
【0015】
典型的には、前記組成物は、さらに、400IUと4000IUとの間の(すなわち、10μgと100μgとの間の)ビタミンDを含む。
【0016】
前記組成物は、1日あたり1回としての服用が好ましい。
【0017】
一実施形態では、前記組成物は、ダイエタリーサプリメントとして提供される。有利には、ダイエタリーサプリメントとしての前記組成物の提供は、ウイルスに対して個体が先天的に有する免疫応答を増幅させる。有利には、酪酸ナトリウムおよび/またはビタミンDを含む前記組成物を用いたダイエタリーサプリメントの補充は、ライノウイルスに対する宿主免疫応答を向上させる。
【0018】
有利には、酪酸ナトリウムは、天然に存在する物質(短鎖脂肪酸)であり、薬局および/もしくは薬剤師から購入されてもよいし、または、サプリメントとして患者に処方されてもよい。有利には、酪酸ナトリウムは、文書化された副作用の情報がない状態で、医師の処方なしに、推奨用量の範囲内で、摂取されてもよい。
【0019】
一実施形態では、前記組成物は、経口投与されてもよい。好ましい実施形態では、前記組成物は、錠剤またはカプセルの形態で投与されてもよい。別の実施形態では、前記組成物は、鼻吸入器などの吸入器の形態で投与されてもよい。好ましくは、前記組成物は、1日あたり1回として服用される。
【0020】
一実施形態では、前記組成物は、脂質または糖などの材料、または、これらの組み合わせによってコーティングされてもよい。典型的には、コーティングまたは標的誘導材料は、前記組成物を細胞、組織、または臓器へ効率的にかつ十分に運ぶために溶解してもよい。
【0021】
一実施形態では、前記組成物は、食品または飲料に組み込まれてもよい。
【0022】
一実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つの許容される担体を含んでもよい。前記組成物は、小胞、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、または他の好適な媒体によって運ばれてもよい。
【0023】
第2の態様に従うと、本発明の前記第1の態様に従う組成物を含むダイエタリーサプリメントが提供される。
【0024】
第3の態様に従うと、本発明の前記第1の態様に従う組成物を含む錠剤が提供される。
【0025】
第4の態様に従うと、本発明の前記第1の態様に従う組成物を含む吸入器が提供される。
【0026】
一実施形態では、前記吸入器は、鼻吸入器である。
【0027】
第5の態様に従うと、本発明の前記第1の態様に従う酪酸ナトリウムを含む組成物を用いて、ライノウイルスによって引き起こされるウイルス感染を防止、改善、および/または処置するための方法が提供される。
【0028】
好ましくは、本発明の前記第1の態様に従う酪酸ナトリウムを含む組成物を用いて、急性ライノウイルス感染を防止、改善、および/または処置するための方法が提供される。
【0029】
一実施形態では、前記方法は、酪酸ナトリウムおよびビタミンDを含む組成物の使用を含む。
【0030】
本発明は、さらに、例を挙げて、そして、以下の図の参照によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、酪酸ナトリウム、ビタミンD、または、酪酸ナトリウムおよびビタミンDの組み合わせによる処置後の、ライノウイルスに感染した細胞に対する効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
有利には、酪酸ナトリウムおよび/またはビタミンDを含む前記組成物の使用は、個体内のライノウイルス感染の縮減および/または除去をもたらす。
【0033】
本発明に従う前記組成物は、個体内の免疫応答の刺激を通じて作用する。そこで、前記組成物は、ライノウイルスを殺す/不活化する、および/または、ライノウイルスの複製を阻害する一つのまたは複数の物質を放出するために、個体の免疫細胞を刺激する。
【0034】
一実施形態では、前記組成物は、ダイエタリーサプリメントとして提供される。有利には、酪酸ナトリウムを用いたダイエタリーサプリメントの補充は、ライノウイルスに対する宿主免疫応答を向上させる。好ましくは、前記組成物は、錠剤のダイエタリーサプリメントの形態で提供され、ダイエタリーサプリメントとして医師の処方なしに市販される。
【0035】
別の実施形態では、前記組成物は、錠剤またはカプセルの形態で投与されてもよい。この実施形態では、前記組成物は、脂質または糖などの材料、または、これらの組み合わせによってコーティングされてもよい。典型的には、前記コーティングまたは標的誘導材料は、前記複合体を細胞、組織、または臓器へ効率的にかつ十分に運ぶために溶解する。
【0036】
薬剤、フードサプリメント、またはダイエタリーサプリメントは、多くの場合に、化合物および/または天然由来のまたは合成された他の成分を含有する。天然由来のまたは合成された前記成分は、有益な効果を提供する活性成分でもよいし、または、不活性成分でもよい。
【0037】
不活性成分は、多くの場合に添加剤と称されるが、典型的には、薬剤または食品またはダイエタリーサプリメント製剤中に存在する。製剤中の単数または複数の添加剤の選択は、前記活性成分が運ばれる形態が錠剤か、カプセルか、または、液体かに依存する。または、前記添加剤の選択は、製造工程に依存する。
【0038】
前記活性成分または前記不活性成分は、ヒトまたは動物の摂取にとって「一般的に安全と認められる」(GRAS)と考えられる化合物であってもよい。
【0039】
添加剤は、天然由来でも、または、合成されたものでもよい。添加剤は、広範囲の物理的または化学的特性を有する。物理的または化学的の前記特性は、添加剤の構造に依存する。添加剤の特性としては、防着、結合、増量、保護のまたは腸溶のコーティングの提供、溶解または崩壊の補助、色彩の、香味のまたは甘味の付加効果の提供、流動性または滑剤効果の提供、溶媒和、吸着剤効果または潤滑効果が含まれるが、これらに限定されない。これらの特性は、前記活性成分の製剤、製造、または、運ぶことにおいて有益である。
【0040】
本発明に従う前記組成物の例は、以下に説明され、薬剤および食品またはダイエタリーサプリメントにおいては一般的である活性成分および添加剤成分の両方を含有する。

活性成分:
ビタミンD(CAS No:69-97-0)25マイクログラム(1000IUまたは25ug)
酪酸ナトリウム(CAS No:156-54-7)300ミリグラム(mg)

添加剤/不活性成分:
微結晶性セルロース(CAS No:9004-34-6)350ミリグラム(mg)
二リン酸カルシウム(CAS no:7758-87-4)300ミリグラム(mg)
シリカSiO2(CAS No:7631-86-9)20ミリグラム(mg)
ステアリン酸マグネシウム(CAS No:557-04-0)30ミリグラム(mg)。
【0041】
上の例の製剤は、一回に、固形で、経口投与する場合のものである。
【0042】
当業者は、ヒトまたは動物が摂取するための錠剤またはカプセルの大量製造を可能にするために、上の例の製剤中の成分の比率を変えることの利益を理解するであろう。
【0043】
別の実施形態では、活性成分としての酪酸ナトリウムと、上記の分量における添加剤/不活性成分である微結晶性セルロースと、二リン酸カルシウムと、シリカSiO2と、ステアリン酸マグネシウムと、を含む前記組成物が調製されてもよい。
【0044】
図1のとおり、白血球(マクロファージに分化したヒト単球系THP-1マクロファージ細胞株)を酪酸ナトリウム、ビタミンD、または酪酸ナトリウムおよびビタミンDの組み合わせによって処置するための実験が実施された。
【0045】
前記白血球細胞をある期間に渡って培養して、前記白血球細胞に周囲の細胞培地に蛋白質を放出させた(「馴化培地」といわれる)。それから、前記馴化培地は、HRV1Bライノウイルスと一緒に培養された。前記白血球細胞は、0.5mMの酪酸ナトリウムを含む溶液と、0.5mMのビタミンDを含む溶液と、0.5mMの酪酸ナトリウムおよび0.5mMのビタミンDの両方を含む溶液と、一緒に培養された。
【0046】
図1に示された結果は、酪酸ナトリウムと一緒の培養が、コントロール(精製水で処置された)と比較すると、測定可能な活性ウイルスの75~80%の縮減をもたらしたことを示している。加えて、ビタミンD単独と一緒の培養、または酪酸ナトリウムおよびビタミンDと一緒の培養は、コントロールと比較すると、測定可能な活性ウイルスの著しい縮減をもたらした。
【0047】
示された前記データは、n=3の独立した生物学的反復実験の平均である(滴定は、3回の反復実験を通して数値化した10倍の縮減の平均である)。
【0048】
ウイルス感染に対する有効な応答を提供するために、酪酸ナトリウムおよびビタミンDは、異なる細胞内伝達物質および/またはシグナリング分子に対する効果を有する。それゆえに、酪酸ナトリウムおよびビタミンDの両方を含む組成物の提供は有利であろう。なぜなら、いくつかの個体は、自然免疫という文脈において、酪酸ナトリウムまたはビタミンDのいずれかに対して、より敏感である可能性があるからである。それゆえに、酪酸ナトリウムおよびビタミンDの両方を含む組成物を投与することは、より広範囲の人々において、ウイルス感染の有効な縮減を提供するであろう。
【0049】
酪酸は、カテリシジンの産生を増大させることが示されている(Schauber et al, Gut 2003, 52(5), 735-741およびHase et al, Infect Immun 2002, 70 (2), 953-963)。
【0050】
本発明の参照によって、酪酸ナトリウムは、カテリシジンの刺激を通してライノウイルス力価の水準を縮減することが理解される。
【0051】
加えて、ウイルス感染の文脈における炎症の下方制御は、付加的な有益な結果であり得る。なぜなら、ライノウイルス感染においては、症状論の大部分は、ウイルスによって誘発された炎症に帰せられ得るからである(Greenberg, Arch Int Med, 2003 163(3), 278-284)。インフルエンザ感染のマウスモデルにおいては、外因性のLL-37(カテリシジンファミリーのヒトメンバー)が、炎症を減少させ(Barlow et al, PLos One, 2011, 6(10))、それゆえに生存率を向上し得ることが示されている。また、外因性のLL-37は、細胞モデルにおいて、ライノウイルスによって誘発された炎症性サイトカインの放出を縮減し得ることが示されている(Casanova et al, Front Immunol 2020, 11 (85))。
【0052】
本発明の参照によって、酪酸ナトリウムは、核内因子κB(NFKappa B)のシグナル伝達の縮減を通して、ウイルス感染によって引き起こされる炎症を縮減し得ることが理解される。これはライノウイルス感染の症状の緩和のために有益であろう。
図1
【国際調査報告】