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特表2023-519703リチウムイオン電池用の電極及び/又は電解質として使用できる緻密層の製造方法、及びこの方法で得られるリチウムイオンマイクロ電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用の電極及び/又は電解質として使用できる緻密層の製造方法、及びこの方法で得られるリチウムイオンマイクロ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230502BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230502BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230502BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20230502BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20230502BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230502BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230502BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230502BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230502BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/36 D
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M50/46
H01M50/491
H01M50/403 D
H01M50/443 M
H01M50/403 A
H01M10/0568
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559538
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 IB2021052604
(87)【国際公開番号】W WO2021198890
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2003104
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン,ファビアン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB12
5H021HH02
5H021HH03
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029HJ19
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA13
5H050EA01
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA19
(57)【要約】
緻密層を製造する方法であって、以下の工程を含む:基質及び材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液を供給する工程;前記材料Pの一次ナノ粒子の懸濁液を使用して、前記基板上に層を堆積する工程;前記得られた層を乾燥させる工程;前記乾燥した層を機械的圧縮及び/又は熱処理によって緻密化する工程;前記方法は、前記材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液がサイズ分布を有する材料Pのナノ粒子を含み、前記サイズ分布は、前記D50によって特徴付けられ、以下のようなものであることを特徴とする、方法:前記サイズ分布が20nm~50nmの第1サイズD1の材料Pのナノ粒子と、D1の値よりも少なくとも5倍小さいD50値によって特徴付けられる第2サイズD2の材料Pのナノ粒子とを含む;又は、前記サイズ分布が前記材料Pのナノ粒子の平均サイズが50nm未満であり、かつ平均サイズに対する標準偏差の比が0.6よりも大きい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緻密層の製造方法であって、
基質及び材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液を供給する工程(i)と、
前記材料Pの一次ナノ粒子の懸濁液を使用して、前記基板上に層を堆積する工程(ii)と、
前記得られた層を乾燥させる工程(iii)と、
前記乾燥した層を機械的圧縮及び/又は熱処理によって緻密化する工程(iv)とを含み、
前記工程(iii)及び前記工程(iv)は、少なくとも部分的に同時に又は温度上昇中に実行され得、
前記方法は、前記材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液がサイズ分布を有する材料Pのナノ粒子を含み、
前記サイズ分布は、D50値によって特徴付けられ、以下のようなものであることを特徴とする、製造方法:
前記サイズ分布が、20nm~50nmの第1サイズD1の材料Pのナノ粒子と、前記第1サイズD1の値よりも少なくとも5倍小さい前記D50値によって特徴付けられる第2サイズD2の材料Pのナノ粒子とを含む、又は、
前記サイズ分布が、前記材料Pのナノ粒子の平均サイズが50nm未満であり、かつ平均サイズに対する標準偏差の比が0.6よりも大きい。
【請求項2】
前記材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液は、20nm~50nmの第1サイズD1の材料Pのナノ粒子と、前記第1サイズD1の値よりも少なくとも5倍小さいD50値によって特徴付けられる第2サイズD2の材料Pのナノ粒子とを含み、
前記第1サイズD1の粒子は、前記ナノ粒子の総質量の50%~75%を占める、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2サイズD2のナノ粒子の平均直径は、前記第1サイズD1のナノ粒子の平均直径の少なくとも15分の1、好ましくは少なくとも12分の1である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液は、前記第1サイズD1の単分散懸濁液を使用して得られることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2サイズD2のナノ粒子の懸濁液は、単分散懸濁液を使用して得られることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記緻密層の堆積は、電気泳動、ディップコーティング法、インクジェット印刷法、ロールコーティング、カーテンコーティング又はドクターブレードによって行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記懸濁液は、20℃で測定した粘度が20cP~2000cPであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記材料Pは、無機材料であり、好ましくは以下によって形成される群から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法:
-酸化物LiMn、Li1+xMn2-x(0<x<0.15)、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Ni0.5-x(XはAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd及びSc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどの他の希土類から選択され、0<x<0.1)、LiMn2-x(M=Er、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mg又はこれらの化合物の混合物、0<x<0.4)、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiAlMn2-x(0≦x<0.15)、LiNi1/xCo1/yMn1/z(x+y+z=10);
-リン酸塩LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO;式LiMM’POのリン酸塩(M及びM’(M≠M’)はFe、Mn、Ni、Co、Vから選択される);
-以下のカルコゲニドのすべてのリチウム形態:V、V、TiS、オキシ硫化チタン(TiO(z=2-yかつ0.3≦y≦1)、オキシ硫化タングステン(WO(0.6<y<3かつ0.1<z<2))、CuS、CuS、好ましくはLi(0<x≦2)、LixV(0<x≦1.7)、LiTiS(0<x≦1)、オキシ硫化チタン及びオキシ硫化リチウムLiTiO(z=2-y、0.3≦y≦1)、LiWO、LiCuS、LiCuS
-カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト;
-リン酸鉄リチウム(一般式LiFePO);
-ケイ素及びスズ酸窒化物の混合物(一般式SiSn(a>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3))(SiTONとしても知られる)、特にSiSn0.871.21.72;同様に一般式SiSnの酸窒化物-炭化物(a>0、b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24、0<z<17);
-窒化物Si(特にx=3かつy=4)、Sn(特にx=3かつy=4)、Zn(特にx=3かつy=2)、Li3-xN(M=Coの場合は0≦x≦0.5、M=Niの場合は0≦x≦0.6、M=Cuの場合は0≦x≦0.3);Si3-x(M=Co又はFeかつ0≦x≦3);
-酸化物SnO、SnO、LiSnO、SnSiO、LiSiO(x>=0かつ2>y>0)、LiTi12、TiNb、Co、SnB0.60.42.9及びTiO
-0~10質量%の炭素を含み、好ましくは炭素がグラフェン及びカーボンナノチューブから選択される複合酸化物TiNb
-一般式Li (TOのガーネット(Aは酸化度+IIのカチオン、好ましくはCa、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdを表し、Aは酸化度+IIIのカチオン、好ましくはAl、Fe、Cr、Ga、Ti、Laを表し、(TO)はアニオンを表し、Tは酸素原子によって形成される四面体の中心に位置する酸化度+IVの原子、TOは、有利にはケイ酸塩又はジルコン酸のアニオンを表し、酸化度+IVの元素Tは、その全部又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taなどの酸化度+III又は+Vの原子で置き換えられ得、dは2~10、好ましくは3~9、より好ましくは4~8である;xは2.6~3.4(好ましくは2.8~3.2)である;yは1.7~2.3(好ましくは1.9~2.1)である;zは2.9~3.1である;
-ガーネット、好ましくは以下から選択されるもの:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12(M=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物);Li7-xBaLa3-x12(0≦x≦1かつM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物);Li7-xLaZr2-x12(0≦x≦2かつM=Al、Ga、Ta又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物);
-リン酸リチウム、好ましくは以下から選択される;NaSICONタイプのリン酸リチウム、LiPO;LiPO;「LASP」で表わされるLiAl0.4Sc1.6(PO;Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO;LiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSi(1.8<x<2.3);Li1+6xZr(P1-x(0≦x≦0.25);Li(Sc2-x)(PO(M=Al若しくはYかつ0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(PO(M=Al、Y、Ga又は3つの化合物の混合物でかつ0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(PO(0≦x≦0.8;0≦y≦1かつM=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物);Li1+x(Ga)2-x(PO(M=Al、Y又はこれら2つの化合物の混合物でかつ0≦x≦0.8);「LATP」で表わされるLi1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1);又は「LAGP」で表わされるLi1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦1);又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12(0≦x≦0.8かつ0≦y≦1.0かつ0≦z≦0.6かつM=Al、Ga若しくはY又はこれら2つ若しくは3つの化合物の混合物);Li3+y(Sc2-x)Q3-y12(M=Al及び/又はYかつQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8かつ0≦y≦1);又はLi1+x+ySc2-x3-y12(M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物、Q=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8かつ0≦y≦1);又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12(0≦x≦0.8、0≦y≦1、0≦z≦0.6、M=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物、Q=Si及び/又はSe);又はLi1+xZr2-x(PO(0≦x≦0.25);又はLi1+xZr2-xCa(PO(0≦x≦0.25);又はLi1+x 2-x12(0≦x≦1かつM=Cr、V、Ca、B、Mg、Bi及び/又はMo、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se若しくはSi又はこれらの化合物の混合物);Li1+2xCaZr2-x(PO(0≦x≦0.25);
-ホウ酸リチウム、好ましくは以下から選択される:Li(Sc2-x)(BO(M=Al又はYかつ0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(BO(M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物で、かつ0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(BO(0≦x≦0.8、0≦y≦1かつM=Al又はY);Li1+x(Ga)2-x(BO(M=Al、Y、又は両方の化合物の混合物で、0≦x≦0.8);LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
-酸窒化物、好ましくはLiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、LiGeO4-x2x/3(0<x<4)又はLiBO3-x2x/3(0<x<3)から選択される;
-LiPO(x~2.8かつ2y+3z~7.8かつ0.16≦z≦0.4)で表わされるリチウム酸窒化物及びリンに基づく、「LiPON」と呼ばれる、リチウム化合物、特にLi2.9PO3.30.46、化合物LiPO(2x+3y+2z=5=w)又は化合物LiPO(3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3)、又はLiAlの形式の化合物(5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2);
-リチウムリン又はホウ素酸窒化物に基づく、それぞれ「LiPON」及び「LIBON」と呼ばれる材料であって、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄及び/又はケイ素の組み合わせ、並びにリチウムリン酸窒化物に基づく材料の場合はホウ素を含み得る材料;
-「LiSiPON」と呼ばれる、リチウム、リン及びケイ素酸窒化物に基づくリチウム化化合物、特にLi1.9Si0.281.01.11.0
-LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、チオ-LiSiCON、LiPONBタイプのリチウム酸窒化物(B、P及びSはそれぞれホウ素、リン及び硫黄を表す);
-(1-x)LiBO2-xLiSO(0.4≦x≦0.8)であってLiBSOタイプのリチウム酸窒化物;
-リチウム酸窒化物、好ましくは以下から選択される:LiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12(A=Sc、Y、Al、Gaかつ1.4≦x≦2)、Li0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiO(0≦x≦0.16)(LLTO);
-ケイ酸塩、好ましくはLiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択される;
-以下から選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:LiOA(Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);Li(3-x)x/2OA(0<x≦3、Mは2価の金属、好ましくはMg、Ca、Ba、Srから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくは、F、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);Li(3-x) x/3OA(0≦x≦3、Mは3価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);又はLiCOX(1-z)(X及びYはAに関して上記のハロゲン原子でありかつ0≦z≦1);
-化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb、LiAlGaSPO
-LiCO、B、LiO、Al(POLiF、P、LiS、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li3.25Ge0.250.25、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1+xAl2-x(PO(M=Ge、Ti及び/又はHfかつ0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0≦x≦1かつ0≦y≦1)に基づく配合物。
【請求項9】
前記材料Pのナノ粒子は、前記材料Pのコア及びシェルで構成されるナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記シェルは、電子伝導体である材料で形成されていることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記シェルは、電子絶縁体及びカチオン伝導体、特にリチウムイオン伝導体である材料から形成されていることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の緻密層の製造方法の工程を含む、リチウムイオン電池の製造方法。
【請求項13】
セパレータを形成することを意図した多孔質層も堆積される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記多孔質層は、25%~75%、より好ましくは30%~60%のメソポーラス体積を有するメソポーラス層である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記多孔質層を堆積させる方法は、好ましくは以下によって形成される群から選択される方法である、請求項13又は14に記載の製造方法:
電気泳動、好ましくはインクジェット印刷及びフレキソ印刷から選択される印刷方法、並びに好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイコーティング、ディップコーティングから選択されるコーティング方法であって、いずれの場合もナノ粒子凝集体又は塊の懸濁液を使用して堆積が行われる。
【請求項16】
平均一次直径D50が2nm~100nm、好ましくは2nm~60nmである、少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の凝集体又は塊を含む前記多孔質層を堆積させるために、コロイド懸濁液が使用され、
前記凝集体又は塊は、通常、平均一次直径D50が50nm~300nm、好ましくは100nm~200nmである、請求項13~15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記得られた層を乾燥させ、加圧及び/又は加熱によって圧密して、好ましくはメソポーラスで無機質の多孔質層を得る、請求項15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記多孔質層は、前記緻密層上に堆積されている、請求項13~17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記緻密層は、前記多孔質層上に堆積されている、請求項13~17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記多孔質分離層は、好ましくは以下によって形成される群から選択される移動性リチウムイオン担体液体を含浸させる、請求項13~19のいずれか1項に記載の製造方法:
・少なくとも1つの非プロトン性溶媒と少なくとも1つのリチウム塩で構成される電解質;
・少なくとも1つのイオン性液体又はイオンポリ液体と少なくとも1つのリチウム塩で構成される電解質;
・少なくとも1つの非プロトン性溶媒と少なくとも1つのイオン性液体又はイオンポリ液体と少なくとも1つのリチウム塩の混合物;
・少なくとも1つのリチウム塩を加えることによってイオン導電性にされたポリマー;及び
・ポリマー相又はメソポーラス構造のいずれかで液体電解質を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー、
前記ポリマーは、好ましくは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF-ヘキサフルオロプロピレンによって形成される群から選択される。
【請求項21】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法で作製可能な緻密層。
【請求項22】
電気化学デバイス、特にリチウムイオン電池のアノード、カソード又は電解質から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の緻密層。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の少なくとも1つの緻密層を含む、電気化学デバイス。
【請求項24】
1mAhを超えない静電容量を有する電池、特にリチウムイオン電池からなることを特徴とする、請求項23に記載の電気化学デバイス。
【請求項25】
請求項21又は22に記載の緻密層であるアノード及び/又はカソードを含むことを特徴とする、請求項24に記載のリチウムイオン電池。
【請求項26】
請求項21又は22に記載の緻密層である電解質層を含むことを特徴とする、請求項24又は25に記載のリチウムイオン電池。
【請求項27】
前記アノードと前記カソードを分離する多孔質セパレータに浸入した電解液を含むことを特徴とする、請求項25に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電極又は電解質の層として、電気化学デバイスでの使用に適した緻密層の製造に関する。これらの層は、特にリチウムイオンマイクロ電池などの多層電池に使用され得る。それらは無機ナノ粒子から製造され、必要に応じてポリマーであり得る有機コーティングの層で官能基化され得る。
【0002】
本発明はまた、ナノ粒子からこれらの緻密層を製造するための新規な方法に関する。また、この方法で得られる層及びこの方法で得られる少なくとも1つの層を組み込んだ多層マイクロ電池にも関する。
【0003】
本発明はまた、リチウムイオン電池を製造するための新規な方法にも関し、ここで、少なくとも1つの緻密な電極層が、緻密層を製造するための新規な方法を使用して堆積され、多孔質層も堆積される。
【背景技術】
【0004】
リチウムイオン電池は、提案されている様々な電気化学的電気エネルギー貯蔵技術の中で最高のエネルギー密度を有する。リチウムイオン電池を製造するための電極には、様々な構造及び化学組成がある。リチウムイオン電池の製造方法は、数多くの論文や特許に記載されており、2002年に発行された出版物「Advances in Lithium-Ion Batteries」(W.van Schalkwijk及びB.Scrosati)(Kluever Academic/Plenum Publishers)に概要が記載されている。
【0005】
マイクロ電池、すなわち電子カードに組み込み可能な非常に小さいサイズの再充電可能な電池の必要性が高まっている;これらの電子回路は、取引を保護するためのカード、電子タグ、埋め込み型医療機器、様々なマイクロメカニカルシステムなど、様々な分野で使用され得る。
【0006】
従来技術によれば、リチウムイオン電池用電極は、コーティング技術(特に:ロールコーティング、ドクターブレードコーティング、テープキャスティング、スロットダイコーティング)を使用して作製され得る。これらの方法では、電極を製造するのに役立つ活物質は、平均粒子径が直径5~15μmの粉末の形態である。これらの粒子は、これらの粒子から形成され、基材の表面に堆積されるインクに組み込まれる。
【0007】
これらの技術は、厚さ約50μm~約400μmの層を作製することを可能にする。層の厚さ、その気孔率及び活物質粒子のサイズに応じて、電池の出力及びエネルギーが調整され得る。マイクロ電池を製造するためには、より薄い厚さが求められる。
【0008】
電極を作製するために堆積されたインク(又はペースト)は、活物質粒子だけでなく、(有機)バインダ、粒子間の電気的接触を提供するための炭素粉末及び電極の乾燥工程中に蒸発させる溶媒も含む。粒子間の電気的接触の品質を改善し、堆積層を圧縮するために、電極上でカレンダー工程が実行される。この圧縮工程の後、電極の活物質粒子は堆積物の体積の約60%を占めており、これは、一般に40%の気孔率が粒子間に存在することを意味する。
【0009】
各粒子間の接触は本質的に点状であり、電極の構造は多孔性である。多孔性は、液体(リチウム塩が溶解している非プロトン性溶媒)又はリチウム塩を含浸させた多かれ少なかれ重合されたゲルの形態であり得る電解質で満たされる。リチウムイオン電池用電極の厚さは一般に50μm~400μmであり、リチウムイオンは、電解質(リチウム塩を含む)で満たされた多孔性を介して電極の厚さ方向に輸送される。気孔の量と大きさに応じて、電極の厚さにおけるリチウムの拡散速度が変化する。
【0010】
電池の適切な動作を確保するために、リチウムイオンは粒子の厚さと電極の厚さの両方に拡散する必要がある。活物質の粒子内の拡散は、多孔質電極に含浸されている電解質内よりも遅い:この電解質は液体又はゲル状である。電極粒子内の拡散が遅いため、電池の直列抵抗が大きくなる。また、十分な電池電力を達成するには、粒子径を小さくする必要がある;標準的なリチウムイオン電池では、通常5μm~15μmである。
【0011】
さらに、層の厚さ、インクに含まれる活物質粒子のサイズと密度に応じて、電池の電力及びエネルギーが調整され得る。エネルギー密度は必然的に増加し、出力密度が損なわれる。高出力の電池セルは、薄くて気孔率の高い電極及びセパレータを使用する必要があるが、エネルギー密度を高めるには、これらの同じ厚さを増やして気孔率を下げる必要がある。John Newmanによる記事「Optimization of Porosity and Thickness of a Battery Electrode by Means of a Reaction-Zone Model」、J.Electrochem.Soc.、Vol.142、No.1、1995年1月)は、電極の厚さ及びその気孔率が放電率(電力)及びエネルギー密度に及ぼすそれぞれの影響を実証している。
【0012】
しかしながら、電極の気孔率を高くすると、電池のエネルギー密度が低下する傾向がある:電極のエネルギー密度を高くするには、気孔率を下げる必要がある。現在のリチウムイオン電池では、本質的に、電極内でリチウムイオンを拡散可能にするには、活物質粒子間に位置する電解質で満たされた多孔性である。電解質で満たされた多孔性が存在しない場合、リチウムイオンは、粒子間の接触において1つの粒子から別の粒子へ輸送され、この接触は実質的に点の形態である。したがって、リチウムイオン輸送抵抗は、電池が機能し得ないほどのものである。
【0013】
さらに、適切に機能するためには、電極の気孔を電解質で満たす必要がある。この充填は、これらの気孔が開いている場合にのみ可能である。さらに、気孔のサイズ及びその曲がり具合に応じて、電極に電解質を含浸させることが非常に困難になるか、又は不可能になることさえある。電解質を含浸させた気孔率が減少すると、層の電気抵抗が減少し、そのイオン抵抗が増加する。気孔率が30%又は20%を下回ると、一部の気孔が再び閉じることが可能であるため、イオン抵抗が大幅に増加し、電解液による電極の濡れが防止される。
【0014】
したがって、エネルギー密度を高めるために気孔のない電極膜を作製しようとすると、固体中のリチウムイオンを速やかに拡散させ、かつ電力を低下させないために、その膜厚を50μm以下、できれば25μm以下とする必要がある。
【0015】
緻密な膜を製造するために使用される主なプロセスは、リチウム挿入電極材料の膜を真空法で蒸着することである。この技術により、多孔性やバインダを有しない緻密な膜を得ることが可能になり、その結果優れたエネルギー密度で満足のいく温度挙動を得ることが可能になる。
【0016】
多孔性がないことにより、リチウム塩を含むポリマー又は溶媒をベースとする有機電解質を使用する必要なく、膜を介した拡散によってリチウムイオンを輸送することが可能になる。
【0017】
そのような完全な無機膜は、老化、安全性及び温度挙動に関して優れた性能を提供する。
【0018】
PVD(物理蒸着法)は、現在、薄膜マイクロ電池を製造するために最も一般的に使用される技術である。実際、これらの製品は、電気化学デバイスの適切な動作に必要な低電気抵抗率と適切なイオン伝導を保証するために、多孔性やその他の点欠陥のない膜を必要とする。
【0019】
このような技術で得られる堆積速度は、1時間あたり0.1μm~1μmのオーダーである。PVD堆積技術により、実質的に点欠陥を含まない非常に高品質の膜が得られ、比較的低温での堆積が可能になる。しかしながら、異なる要素間の蒸発速度の違いにより、そのような技術で複雑な化合物を堆積させ、層の化学量論を制御することは困難である。この技術は、単純な化学組成の薄層を作製するのに完全に適しているが、堆積物の厚さを増やそうとすると、堆積時間が長くなりすぎて、低コスト製品の分野での工業的用途を想定できなくなる。
【0020】
さらに、そのような膜を製造するために使用される真空蒸着技術は非常に費用がかかり、高い生産性で大きな表面積に工業的に実施することは困難である。
【0021】
緻密なセラミック膜を製造するために現在利用可能な他の技術は、コンパクトな粒子の堆積物の緻密化に基づく実施形態、又は実際にゾルゲルタイプの技術を使用して膜を得る実施形態を含む。ゾルゲル技術は、加水分解、重合及び縮合工程後に得られるポリマー格子を基材の表面に堆積させることからなる。ゾルゲル転移は、表面での反応プロセスを加速させる溶媒の蒸発時に発生する。この技術により、非常に薄いコンパクトな堆積物を作製することが可能になる。このようにして得られた膜は、約100ナノメートル程度の厚さを有する。これらの厚さは小さすぎて、電池用途で妥当なエネルギー貯蔵を行うことができない。
【0022】
クラックやひび割れの発生の危険性を生じさせずに堆積の厚さを増やすには、一連の工程を進める必要がある。しかしながら、層の厚さを増やそうとすると、この技術の工業生産性が低下する。
【0023】
また、粉末焼結により電池用のセラミック電極及び/又は電解質膜を製造することも可能である。このために、セラミック粒子及び有機バインダを含むペーストを膜状に配置して、一般に「グリーンシート」として知られる前駆体ストリップを得る。
【0024】
次に、この前駆体ストリップを焼成して有機物を除去し、高温で焼結してセラミック材料のシートを得る。
【0025】
この場合、これらの電極上で電流を収集するのに役立つ金属膜も、インキング技術を使用して堆積される。金属粉末も「グリーンシート」と同時に焼結される。実際、焼結工程中に、セラミック材料の粒子間の気孔が充填され、その結果、ストリップが収縮する。
【0026】
集電体をセラミック膜で焼結することにより、セラミック膜及び金属集電体の寸法変動に対応し、クラックの発生を防止することが可能になる。
【0027】
これらの方法は非常に高い温度で行われる。しかしながら、電池材料は一般に温度に敏感であり、そのような熱処理を受けると急速に劣化する。
【0028】
この焼結温度を下げるために、ナノ粒子の使用が提案されている。この場合、凝集していないナノ粒子のコンパクトな堆積物を生成することになる。これらの堆積物は、比較的低い温度で容易に焼結され得る。この低温により、金属基板上で直接焼結を行うことを想定することが可能になる。
【0029】
しかしながら、これらの堆積物は、金属基板上に生成される場合、堆積物の厚さ、そのコンパクトさ、粒子径に応じて、乾燥及び/又は焼結工程中にクラックの発生を助長することが観察されている。
【0030】
電気泳動ナノ粒子堆積技術は、堆積物の緻密性を高め、クラックの少ない低温焼結を容易にするために使用される;これは、例えば、国際公開第2013/064773号、国際公開第2013/064776号、国際公開第2013/064777号及び国際公開第2013/064779号(Fabien Gaben)など、いくつかの特許出願に記載されている。熱凝集は、ナノ粒子径が小さいので特に低い温度で実施され、実際には好ましくは100nm未満である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、上述の従来技術の欠点を少なくとも部分的に改善しようとするものである。
【0032】
より具体的には、本発明が解決しようとする課題は、簡便、安全、迅速、実施が容易で、安価な、金属基板上に直接に緻密なセラミック層を製造する方法を提供することである。
【0033】
本発明の目的はまた、リチウムイオンマイクロ電池に適した、欠陥や多孔性がない又はほとんど含まない、緻密な固体(セラミック)層を製造することにある。
【0034】
本発明の目的はまた、高いイオン伝導性、安定した機械的構造、良好な熱安定性及び長い耐用年数を有する緻密な電極及び緻密な電解質を提供することにある。
【0035】
本発明のさらなる目的は、本発明による緻密な電極又は緻密な電解質を含むマイクロ電池、キャパシタ、スーパーキャパシタ、光電池などの電子、電気又は電気技術デバイスを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明によれば、この課題は次の工程を含む緻密層の製造方法によって解決される:
-基質及び材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液を供給する工程;
-前記材料Pの一次ナノ粒子の懸濁液を使用して、前記基板上に層を堆積する工程;
-前記得られた層を乾燥させる工程;
-前記乾燥した層を機械的圧縮及び/又は熱処理によって緻密化する工程;
前記乾燥工程及び前記緻密化工程は、少なくとも部分的に同時に、又は温度上昇中に実行され得ることがわかっている。
【0037】
本発明の第1の目的を形成する前記方法は、材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液が、特定のサイズ分布を有する材料Pのナノ粒子を含み、堆積後75%より大きい密度を得ることを可能にすることを特徴とする。前記サイズは、そのD50値によって特徴付けられる。
【0038】
この粒度分布は、以下のいずれかで得られ得る:
-連続的に:この場合、材料Pのナノ粒子の標準偏差/平均サイズの比率は0.6より大きく、材料Pの一次ナノ粒子の平均サイズは50nm以下でなければならない;又は
-不連続的に:この場合、材料Pのナノ粒子のサイズ分布は、50nm~20nmの第1サイズD1のナノ粒子と、D1のサイズの少なくとも5分の1の第2サイズD2のナノ粒子を含む。非常に有利には、サイズD1の粒子は、ナノ粒子の総質量の50%~75%を占める。
【0039】
前記材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液は、サイズD1の単分散懸濁液を使用して得られ得、及び/又はサイズD2のナノ粒子の懸濁液は、単分散懸濁液を使用して得られ得る。
【0040】
本発明によれば、固体で緻密なセラミック層の堆積は、電気泳動、ディップコーティング法、インクジェット印刷法、ロールコーティング、スロットダイコーティング、カーテンコーティング又はドクターブレードによって行われる。
【0041】
堆積後、前記乾燥した層は、その構成ナノ粒子の粒度分布のおかげで、75%より大きい密度を有する。この密度は、前記乾燥した層を機械的圧縮及び/又は熱処理によって緻密化する工程によってさらに増加され得る。
【0042】
本発明の第2の目的は、第1の目的による方法によって得ることができる緻密層である。特に、リチウムイオン電池用のアノード、カソード及び/又は電解質から選択され得る。
【0043】
本発明の第3の目的は、電池(好ましくはリチウムイオン電池)、キャパシタ、スーパーキャパシタ、静電容量、抵抗器、誘導コイル、トランジスタなどの電気化学、電子、電気又は電気技術的デバイスにおける緻密層であり、前記緻密層は、本発明による方法で得ることが可能である。前記緻密層は、特に、アノード層、カソード層及び/又は電解質層であり得る。
【0044】
本発明の第4の目的は、リチウムイオン電池における緻密層の製造方法であって、前記方法は、上述の緻密層の製造方法の特徴を有し、全ての実施形態は、リチウムイオン電池における緻密層を製造するために実施され得る。
【0045】
本発明の最終的な目的は、本発明の第2の目的による少なくとも1つの緻密層を含む、電気化学デバイス、特にマイクロ電池、特にリチウムイオンマイクロ電池である。
【0046】
一実施形態では、前記リチウムイオンマイクロ電池は、本発明による緻密層であるアノード及びカソードを含む。このアノード及び/又はカソードは、約1μm~約50μmの厚さを有し得る。
【0047】
第1変形例では、その電解質層は、本発明による緻密層でもあり得る。第2変形例では、前記マイクロ電池は、前記アノード及び前記カソードを分離する多孔質セパレータに浸透した液体電解質を含む。この電解質層又はセパレータは、約1μm~約20μm、好ましくは約3μm~約10μmの厚さを有することが有利である。
【0048】
さらなる実施形態では、その電解質層のみが本発明による緻密層である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
1.定義
本明細書の範囲内で、粒子のサイズはその最大寸法によって定義される。「ナノ粒子」という用語は、その寸法の少なくとも1つが100nm以下であるナノメートルサイズの任意の粒子又は物体を表す。このサイズDは、ここではサイズD50と表記している。
【0050】
「ナノ粒子」という用語は、ここでは、いくつかの一次粒子の凝集又は塊によって形成された粒子とは対照的に、一次粒子を表すために使用される。このような塊は、例えば、粉砕又は超音波処理による分散操作によってナノ粒子(ここで理解される意味で)に縮小され得る。
【0051】
層の密度は、ここでは相対値(例えばパーセント)で表され、層の実際の密度(ここではdlayerとする)と構成固体材料の理論密度(ここではdtheoreticalとする)を比較することによって得られる。したがって、パーセントで表される層の気孔率は、次のように決定される:
【数1】
【0052】
本明細書の範囲内において、電子絶縁材料又は層、好ましくはイオン伝導層は、電気抵抗率(電子の流れに対する抵抗)が10Ω・cmより大きい材料又は層である。「イオン性液体」という用語は、電気を輸送可能で、100℃未満の融点によってすべての溶融塩とは区別される、任意の液体の塩を指す。これらの塩の一部は、周囲温度で液体のままであり、非常に低い温度でも固化しない。そのような塩は「室温でのイオン性液体」と呼ばれる。
【0053】
「メソポーラス」材料という用語は、その構造内に、ミクロ細孔のサイズ(幅2nm未満)とマクロ細孔のサイズ(幅50nm超え)の中間サイズ、すなわち2nm~50nmの「メソ細孔」と呼ばれる細孔を有する、任意の固体を意味する。この用語は、当業者のための参照としてのIUPAC(国際純正・応用化学連合)によって採用された用語と一致する。したがって、「ナノ細孔」という用語は、上記で定義されたようなメソ細孔はナノ粒子の定義に従ってナノメートルの寸法を有するが、ここでは使用されない。メソ細孔のサイズよりも小さいサイズの細孔は当業者によって「ミクロ細孔」と呼ばれることが知られている。
【0054】
多孔質の概念(及び上記で開示された用語)の概要は、「Techniques de l’Ingenieur」,Analysis and Characterisation paper,section 1050頁に掲載された、F. Rouquerolらによる「Texture des materiaux pulverulents ou poreux」に記載されている;この記事には、多孔性を特定する技術、特にBET法について記載されている。
【0055】
本発明において、「メソポーラス層」という用語は、メソ細孔を有する層を指す。以下で説明するように、これらの層では、メソ細孔が総多孔質体積に大きく寄与する;この事実は、以下の説明で使用される「多孔度がX%よりも大きいメソポーラス層」という表現によって言及される。ここで、X%は層の総体積の25%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、30~50%がさらに好ましい。
【0056】
「凝集体」という用語は、IUPACの定義によれば、一次粒子が弱く結合した集合体を意味する。この場合、これらの一次粒子は、透過型電子顕微鏡で測定され得る直径を有するナノ粒子である。通常、当業者に既知の技術によれば、凝集した一次ナノ粒子の凝集体は、通常、超音波の影響下で液相に懸濁して破壊され得る(すなわち、一次ナノ粒子となる)。
【0057】
「塊」という用語は、IUPACの定義によれば、一次粒子又は凝集体が強く結合した集合体を意味する。
【0058】
本発明によれば、「電解質層」という用語は、電気化学デバイス内の層に関し、このデバイスは、その最終用途に応じて動作することが可能である。電解質層はイオン伝導体であるが、電気的には絶縁体である。例として、電気化学デバイスがリチウムイオン二次電池である場合、「電解質層」という用語は、リチウムカチオンが移動する緻密な電解質層、又はリチウムを担持する相で含浸された「多孔質無機層」のいずれかを指す。電気化学デバイス中の前記多孔質無機層は、当業者によって使用される用語に従って、ここでは「セパレータ」とも呼ばれる。
【0059】
2.詳細な説明
本発明によれば、本課題は、ナノ粒子のサイズが特定のタイプの粒度分布を有する、ナノ粒子懸濁液を用いて層を堆積させる方法によって解決される。
【0060】
本発明の本質的な様態の1つによれば、焼結前にナノ粒子の堆積密度を著しく増加させるような方法で、特定のナノ粒子サイズ分布を表すナノ粒子懸濁液が使用される。
【0061】
焼結前に可能な限りコンパクトな堆積物を得ることで、収縮やクラックのリスクを減らすことが可能になる。最もコンパクトな堆積物を得るためには、ナノ粒子のサイズ分布を完璧に制御するだけでなく、これらのナノ粒子が凝集することなく最もコンパクトに堆積させる必要がある。
【0062】
このようなコンパクトな堆積物を得るために、希薄懸濁液の電気泳動堆積技術又はインキング、ディップコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレード、スロットダイなどによるこれらの多分散ナノ粒子の凝集していない濃縮懸濁液の実際の堆積技術のいずれかを使用することが可能である。このような濃縮懸濁液を得るためには、ナノ粒子間の凝集現象を防止するために、有機配位子(例えばPVPタイプ)である安定剤を使用する必要がある。これらの配位子は、焼結熱処理の開始時に除去される:通常、焼結前にこれらの有機化合物をすべて除去するために、中間の熱ランプが完了する。
【0063】
蒸着に使用される懸濁液の粘度は、基本的に液相(溶媒)の性質、粒子のサイズ及びその濃度(乾燥抽出物で表される)に依存する。懸濁液の粘度、及び堆積方法のパラメータ(特に液中の移動速度又は通過速度)によって、堆積の厚さが決まる。堆積技術に固有のこれらのパラメータによれば、ディップコーティング、カーテンコーティング又はスロットダイコーティングに一般的に使用される粘度は、大きく変化され得、20℃で測定して約20cP~約2000cPに位置する。堆積を行うことを目的としたコロイド懸濁液は、その粘度に関係なく、「インク」と呼ばれることが多い。
【0064】
これらの有機化合物が除去されると、ナノ粒子が接触し、固化プロセスが開始される。ナノ粒子の表面は接点で一緒に溶接される;この現象は「ネッキング」(ネック形成)として知られている。焼結中に溶着部となったこれらの接点は拡散によって増加し、堆積初期の気孔によって残された空隙を埋める。これらの空隙を埋めることが収縮の原因である。
【0065】
さらに、クラックのない金属基板上に生成された厚い堆積物で最終的に15%未満、好ましくは10%未満の気孔率を得るためには、固化温度を下げて金属基板の使用との互換性を保つことが可能なナノメートル効果を維持しながら、初期のナノ粒子堆積物のコンパクトさを最大化する必要がある。
【0066】
本発明によれば、平均ナノ粒子径が100nmを超えないコロイドナノ粒子懸濁液が使用される。さらに、これらのナノ粒子は、比較的広いサイズ分布を有する。このサイズ分布がほぼ正規分布になる場合、ナノ粒子の平均半径に対する標準偏差の比(σ/Rmean)は0.6よりも大きくなければならない。
【0067】
焼結前の初期堆積物のこのコンパクトさを高めるために、2つのナノ粒子径集団の混合物を使用することも可能である。この場合、最大分布の平均直径は100nmを超えてはならず、好ましくは50nmを超えてはならない。最大のナノ粒子のこの第1集団は、σ/Rmean比が0.6未満である狭いサイズ分布を有してもよい。この「大きな」ナノ粒子の集団は、蒸着の乾燥抽出物の50%~75%を占める必要がある(堆積物中のナノ粒子の総質量に対する質量%として表される)。その結果、ナノ粒子の第2集団は、堆積物の乾燥抽出物の50%~25%を占める(堆積物中のナノ粒子の総質量に対する質量%として表される)。この第2集団の粒子の平均直径は、最大のナノ粒子集団の平均直径よりも少なくとも5倍小さくなければならない。最大のナノ粒子に関しては、この第2集団のサイズ分布はより狭く、σ/Rmean比が0.6未満になる可能性がある。第2集団の平均直径は、最大ナノ粒子集団の少なくとも15分の1、好ましくは少なくとも12分の1であることが好ましい;これにより、堆積後の層の緻密化が促進される。
【0068】
いずれにせよ、2つの集団は、生成されたインクで凝集を示す必要がある。さらに、これらのナノ粒子は、ナノ粒子の凝集又は塊を防止するために、配位子又は有機安定剤の存在下で有利に合成され得る。
【0069】
湿式ナノ粉砕によるコロイド懸濁液の調製により、比較的広いサイズ分布を得ることが可能になる。しかしながら、粉砕された材料の性質、その「脆さ」、適用される還元係数に応じて、一次ナノ粒子は損傷又は非晶質化され得る。
【0070】
リチウムイオン電池の製造に使用される材料は特に敏感であり、その結晶状態や化学組成のわずかな変化が電気化学的性能の低下をもたらす。さらに、このタイプの用途では、所望の一次ナノ粒子径で、ソルボサーマル法又は水熱法などの方法に従って、沈殿によって直接懸濁液中で調製されたナノ粒子を使用することが好ましい。
【0071】
これらの沈殿によるナノ粒子の合成法では、サイズ分布が小さく均質な大きさで、良好な結晶度及び純度を有する一次ナノ粒子を得ることが可能になる。これらの方法を用いて、潜在的に10nm未満の非常に小さな粒子径を、凝集していない状態で得ることも可能である。このため、合成中の塊、凝集体の形成を防ぐために、合成反応器にリガンドを直接添加する必要がある。例えば、PVPはこの機能を果たすために使用され得る。
【0072】
沈殿によって得られる凝集していないナノ粒子のサイズ分布は比較的狭いため、焼結前の堆積物のコンパクトさを最大化するために、上記の規則に従って2つのサイズ分布を混合するコロイド懸濁液調製戦略を好む必要がある。これにより、焼結後に比較的厚い堆積物を金属基板上に直接生成することが可能になり、使用するナノ粒子のサイズが小さいため、焼結の熱処理は比較的低温に維持され、クラックが生じるリスクはほとんど又はまったくない。
【0073】
次に、バイモーダルナノ粒子懸濁液は、その後、低温熱処理によって緻密化され、特にリチウムイオン電池などの電気化学デバイスの電極又は電解質として使用するのに適したコンパクトな層を堆積させるために使用される。これらの層を堆積させるために、様々な方法、特に電気泳動、インクジェット印刷及びフレキソ印刷から選択される印刷方法、並びに好ましくはドクターブレードコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロットダイから選択されるコーティング方法が使用され得る。これらの方法は、簡便、安全、実装が容易で、工業化が容易であり、最終的に均質な緻密層を得ることを可能にする。電気泳動は、広い表面積に速い堆積速度で均一な層を堆積させることを可能にする。コーティング技術、特にディップコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、又はドクターブレードコーティングは、コーティングによる堆積中、浴の組成が一定に保たれるため、電気泳動に関する溶液槽の管理を簡素化することを可能にする。インクジェット印刷による堆積は、局所的な堆積を生成することを可能にする。
【0074】
バイモーダル又は多分散性ナノ粒子懸濁液を用いた上記の方法で、単一工程で製造された厚い層の緻密な電極及び電解質が得られ得る。
【0075】
本発明による方法は、理論密度の少なくとも90%、好ましくは理論密度の少なくとも95%、より好ましくは理論密度の少なくとも96%、最適には理論密度の少なくとも97%の密度を有する緻密層を製造することを可能にし、残部は閉じた気孔からなる残留気孔で構成されることが知られている。
【0076】
ここで、本発明による緻密な電極の実施形態を、非限定的な例として説明する;この説明では、本発明による方法の特定の詳細のより詳細な説明が与えられる。
【0077】
集電体の性質
原則として、本発明による緻密な電極を使用する電池の集電体として機能する基板は、金属、例えば金属シートである。この基板上に堆積された層に適用される熱処理又は熱機械処理の温度に耐えられるように選択する必要があり、この温度は前記層の化学的性質に依存する。基板は、好ましくは、チタン、モリブデン、クロム、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス鋼又は前記元素の少なくとも1つを含む任意の合金で作られたストリップから選択される。
【0078】
原則として、金属シートは、特に金、白金、パラジウム、チタン、モリブデン、タングステン、クロム又はこれらの金属の少なくとも1つ又は複数を主に含む合金から選択された貴金属の層、又はITOタイプの導電性材料の層(拡散バリアとしても機能するという利点がある)でコーティングされ得る。
【0079】
この例では、厚さ10ミクロンの316Lタイプのステンレス鋼のシートを使用する。
【0080】
ディップコーティングによる緻密な電極層の堆積
原則として、この電極層は、集電体の金属表面、又は別の緻密な又は多孔質無機層、例えば緻密な電解質層又は多孔質セパレータのいずれかに堆積させ得る。
【0081】
使用するナノ粒子の化学的性質に関係なく、ディップコーティング法でバイモーダルナノ粒子を堆積させることが可能である;明らかに、上記の他の堆積技術も使用され得る。
【0082】
例えば、LiTi12の緻密なセラミック蒸着を生成するために、2つの異なるサイズのナノ粒子で構成されるインクを生成し得る。LiTi12からなるアノードの場合、約5nmのLiTi12のナノ粒子をグリコサーマル法により合成する(記事「Impact of the Synthesis Parameters on the microstructure of nano-structured LTO prepared by glycothermal routes and Li NMR structural investigations」、M.Odziomek、F.Chaputら、J Sol-Gel Sci Technol 89、225-233(2019年)公開を参照する)。この合成では、ナノ粒子の凝集を制限するために配位子が追加される。これらの直径5nmのナノ粒子は、水熱合成で得られた粒径30nmのLiTi12ナノ粒子と関連している。
【0083】
これらのナノ粒子は、安定剤としてPVPを含む、エタノール中の15%の総乾燥抽出物を含むインク中で、70質量%の30nm粒子及び30質量%の5nmナノ粒子と混合され、超音波によって分散される。各ディップコーティングパスは、比較的限られた厚さの層しか生成しない;湿った層を乾燥させる必要がある。所望の最終厚さの層を得るために、ディップコーティング堆積工程と乾燥工程は、必要な回数だけ繰り返され得る。
【0084】
この一連のディップコーティング/乾燥工程は時間がかかるが、ディップコーティング堆積法は、シンプルで、安全、実施が容易で、工業化が容易で、均質でコンパクトな最終層を得ることを可能にする。
【0085】
堆積層の処理及び特性
原則として、ディップコーティングで堆積した層は乾燥させる必要がある。乾燥後、2段階で熱処理を行う。第1段階では、堆積物に含まれるすべての有機化合物を焼成するために、堆積物を400℃で10分間維持する。次に、処理温度を550℃まで上昇させ、この温度で1時間維持して堆積物を固化させる。
【0086】
ナノ粒子の材料の選択は、対象となる電気化学、電気又は電子デバイスに堆積される層の機能に明らかに依存する。原則として、本発明で使用するナノ粒子は無機及び非金属であり、有機官能基化層(「コアシェル」タイプの粒子)であることが知られている;これについては後述する。有機層で被覆されたこれらの粒子は、ここでは、「無機粒子」という用語に含まれる。
【0087】
本発明による層が電池、特にリチウムイオン電池のカソードとして機能する場合、例えば、以下から選択されるカソード材料である材料Pから製造され得る:
-酸化物LiMn、Li1+xMn2-x(0<x<0.15)、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Ni0.5-x(XはAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd及びSc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどの他の希土類から選択され、0<x<0.1)、LiMn2-x(M=Er、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mg又はこれらの化合物の混合物、0<x<0.4)、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiAlMn2-x(0≦x<0.15)、LiNi1/xCo1/yMn1/z(x+y+z=10);
-リン酸塩LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO;式LiMM’POのリン酸塩(M及びM’(M≠M’)はFe、Mn、Ni、Co、Vから選択される);
-以下のカルコゲニドのすべてのリチウム形態:V、V、TiS、オキシ硫化チタン(TiO(z=2-yかつ0.3≦y≦1)、オキシ硫化タングステン(WO(0.6<y<3かつ0.1<z<2))、CuS、CuS、好ましくはLi(0<x≦2)、LixV(0<x≦1.7)、LiTiS(0<x≦1)、オキシ硫化チタン及びオキシ硫化リチウムLiTiO(z=2-y、0.3≦y≦1)、LiWO、LiCuS、LiCuS
【0088】
本発明による層が電池、特にリチウムイオン電池のアノードとして機能する場合、例えば、以下から選択されるアノード材料である材料Pから製造され得る:
-カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト;
-リン酸鉄リチウム(一般式LiFePO);
-ケイ素及びスズ酸窒化物の混合物(一般式SiSn(a>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3))(SiTONとしても知られる)、特にSiSn0.871.21.72;同様に一般式SiSnの酸窒化物-炭化物(a>0、b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24、0<z<17);
-窒化物Si(特にx=3かつy=4)、Sn(特にx=3かつy=4)、Zn(特にx=3かつy=2)、Li3-xN(M=Coの場合は0≦x≦0.5、M=Niの場合は0≦x≦0.6、M=Cuの場合は0≦x≦0.3);Si3-x(M=Co又はFeかつ0≦x≦3)、
-酸化物SnO、SnO、LiSnO、SnSiO、LiSiO(x>=0かつ2>y>0)、LiTi12、TiNb、Co、SnB0.60.42.9及びTiO
-0~10質量%の炭素を含み、好ましくは炭素がグラフェン及びカーボンナノチューブから選択される複合酸化物TiNb
-一般式LiTi1-x Nb2-y 7-z (M及びMはそれぞれNb、V、Ta、Fe、Co、Ti、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Al、Zr、Si、Sr、K、Cs及びSnからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、M及びMは任意で互いに同一又は異なり、Mは少なくとも1つのハロゲンであり、0≦w≦5、0≦x<1、0≦y<2かつ0<z≦0.3)。
【0089】
本発明による層が電池、特にリチウムイオン電池において電解質として機能する場合、例えば、以下から選択される電解質材料である材料Pから製造され得る:
-一般式Li (TOのガーネット(Aは酸化度+IIのカチオン、好ましくはCa、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdを表し、Aは酸化度+IIIのカチオン、好ましくはAl、Fe、Cr、Ga、Ti、Laを表し、(TO)はアニオンを表し、Tは酸素原子によって形成される四面体の中心に位置する酸化度+IVの原子、TOは、有利にはケイ酸塩又はジルコン酸のアニオンを表し、酸化度+IVの元素Tは、その全部又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taなどの酸化度+III又は+Vの原子で置き換えられ得;dは2~10、好ましくは3~9、より好ましくは4~8である;xは2.6~3.4(好ましくは2.8~3.2)である;yは1.7~2.3(好ましくは1.9~2.1)である;zは2.9~3.1である;
-ガーネット、好ましくは以下から選択されるもの:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12(M=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物);Li7-xBaLa3-x12(0≦x≦1かつM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物);Li7-xLaZr2-x12(0≦x≦2かつM=Al、Ga、Ta又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物);
-リン酸リチウム、好ましくは以下から選択される:NaSICONタイプのリン酸リチウム、LiPO;LiPO;「LASP」で表わされるLiAl0.4Sc1.6(PO;Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO;LiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSi(1.8<x<2.3);Li1+6xZr(P1-x(0≦x≦0.25);Li(Sc2-x)(PO(M=Al若しくはYかつ0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(PO(M=Al、Y、Ga又は3つの化合物の混合物でかつ0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(PO(0≦x≦0.8;0≦y≦1かつM=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物);Li1+x(Ga)2-x(PO(M=Al、Y又はこれら2つの化合物の混合物でかつ0≦x≦0.8);「LATP」で表わされるLi1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1);又は「LAGP」で表わされるLi1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦1);又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12(0≦x≦0.8かつ0≦y≦1.0かつ0≦z≦0.6かつM=Al、Ga若しくはY又はこれら2つ若しくは3つの化合物の混合物);Li3+y(Sc2-x)Q3-y12(M=Al及び/又はYかつQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8かつ0≦y≦1);又はLi1+x+ySc2-x3-y12(M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物、Q=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8かつ0≦y≦1);又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12(0≦x≦0.8、0≦y≦1、0≦z≦0.6、M=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物、Q=Si及び/又はSe);又はLi1+xZr2-x(PO(0≦x≦0.25);又はLi1+xZr2-xCa(PO(0≦x≦0.25);又はLi1+x 2-x12(0≦x≦1かつM=Cr、V、Ca、B、Mg、Bi及び/又はMo、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se若しくはSi又はこれらの化合物の混合物);Li1+2xCaZr2-x(PO(0≦x≦0.25);
-ホウ酸リチウム、好ましくは以下から選択される:Li(Sc2-x)(BO(M=Al又はYかつ0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(BO(M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物で、かつ0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(BO(0≦x≦0.8、0≦y≦1かつM=Al又はY);Li1+x(Ga)2-x(BO(M=Al、Y、又は両方の化合物の混合物で、0≦x≦0.8);LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
-酸窒化物、好ましくはLiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、LiGeO4-x2x/3(0<x<4)又はLiBO3-x2x/3(0<x<3)から選択される;
-LiPO(x~2.8かつ2y+3z~7.8かつ0.16≦z≦0.4)で表わされるリチウム酸窒化物及びリンに基づく、「LiPON」と呼ばれる、リチウム化合物、特にLi2.9PO3.30.46、化合物LiPO(2x+3y+2z=5=w)又は化合物LiPO(3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3)、又はLiAlの形式の化合物(5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2);
-リチウムリン又はホウ素酸窒化物に基づく、それぞれ「LiPON」及び「LIBON」と呼ばれる材料であって、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄及び/又はケイ素の組み合わせ、並びにリチウムリン酸窒化物に基づく材料の場合はホウ素を含み得る材料;
-「LiSiPON」と呼ばれる、リチウム、リン及びケイ素酸窒化物に基づくリチウム化化合物、特にLi1.9Si0.281.01.11.0
-LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、チオ-LiSiCON、LiPONBタイプのリチウム酸窒化物(B、P及びSはそれぞれホウ素、リン及び硫黄を表す);
-(1-x)LiBO2-xLiSO(0.4≦x≦0.8)であってLiBSOタイプのリチウム酸窒化物;
-リチウム酸窒化物、好ましくは以下から選択される:LiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12(A=Sc、Y、Al、Gaかつ1.4≦x≦2)、Li0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiO(0≦x≦0.16)(LLTO);
-ケイ酸塩、好ましくはLiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択される;
-以下から選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:LiOA(Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);Li(3-x)x/2OA(0<x≦3、Mは2価の金属、好ましくはMg、Ca、Ba、Srから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくは、F、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);Li(3-x) x/3OA(0≦x≦3、Mは3価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);又はLiCOX(1-z)(X及びYはAに関して上記のハロゲン原子でありかつ0≦z≦1);
-化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb、LiAlGaSPO
-LiCO、B、LiO、Al(POLiF、P、LiS、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li3.25Ge0.250.25、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1+xAl2-x(PO(M=Ge、Ti及び/又はHfかつ0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0≦x≦1かつ0≦y≦1)に基づく配合物。
【0090】
コーティングされたナノ粒子の使用(「コアシェル」タイプ)
原則として、電極用のこれらの堆積物を作成するのに役立つインクで使用されるナノ粒子も、コアシェル構造を有し得る。実際、本発明による方法で得られる緻密な電極の性能は、そのイオン及び電子伝導特性に依存する。さらに、活物質のナノ粒子の表面に、良好な電子及び/又はイオン伝導特性を備えた有機又は無機材料の「シェル」を適用することが重要になり得る。
【0091】
したがって、有利な実施形態では、コアは電極材料(アノード又はカソード)で形成され、シェルは電子伝導性でかつリチウムイオンの通過を妨げない材料で形成される。例として、シェルは、リチウムイオンを通過させるのに十分薄い金属の層、又はリチウムイオンを通過させるのに十分薄いグラファイトの層、又は良好な電子伝導体でもあるイオン伝導体の無機層若しくは有機層によって形成され得る。
【0092】
コアシェルアプローチは、電解質の製造にも適用され得る。したがって、さらなる実施形態では、本発明による方法で使用されるナノ粒子のコアは、電解質材料で形成され、シェルは、良好なイオン伝導体、特にリチウムイオンでありかつ良好な電子絶縁体でなければならない無機又は有機材料で形成される。
【0093】
シェル層が有機層である場合、この層はポリマー材料でできていることが好ましい。ポリマー層は、とりわけ、可鍛性であるという利点を有し、これらの粒子を用いて堆積された層の圧縮を容易にする。
【0094】
ここで、ポリマーシェルを有する無機ナノ粒子を調製する方法について説明する。これは、シェルが電気絶縁体かつイオン伝導体でなければならない電解質材料のナノ粒子に特に適している。本明細書でシェルによるコアを形成する無機ナノ粒子の「官能基化」と呼ばれるこの方法は、ナノ粒子の表面にQ-Zタイプ構造を有する分子をグラフトすることからなり、ここで、Qは分子を表面に結合する官能基であり、Zは好ましくはPEO基である。
【0095】
Q基として、リン酸又はホスホネート官能基などのナノ粒子の表面カチオンの錯化官能基が使用され得る。
【0096】
好ましくは、無機ナノ粒子は、以下のタイプのPEO誘導体によって官能基化され、
【化1】
ここで、Xはアルキル鎖又は水素原子を表し、nは40~10,000(好ましくは50~200)であり、mは0~10であり、Q’はQの一実施形態であって以下の群から選択される:
【化2】
ここで、Rはアルキル鎖又は水素原子を表し、R’はメチル基又はエチル基を表し、xは1~5であり、x’は1~5である。
【0097】
より好ましくは、無機ナノ粒子は、メトキシ-PEO-リン酸塩によって官能基化され、
【化3】
ここで、nは40~10,000、好ましくは50~200である。
【0098】
有利な実施形態によれば、Q-Z(又は該当する場合はQ’-Z)の溶液を、電解質又は電子絶縁体の電解質ナノ粒子のコロイド懸濁液に加え、Q(ここではQ’を含む)と無機ナノ粒子(ここでは「NP-C」と略記)中のすべてのカチオンとのモル比が、1~0.01、好ましくは0.1~0.02となるようにする。モル比Q/NP-Cが1を超えると、分子Q-Zによる電子無機ナノ粒子の官能基化は、ナノ粒子が完全に官能基化し得ないような立体サイズを誘発する傾向がある;これは、ナノ粒子のサイズにも依存する。モル比Q/NP-Cが0.01未満の場合、分子Q-Zは、リチウムイオンの十分な伝導率を提供するのに十分な量ではない傾向がある;これは、粒子サイズにも依存する。官能基化中に大量のQ-Zを使用すると、Q-Zが不要に消費される。
【0099】
無機ナノ粒子の官能基化を行うために、0.1%~50%、好ましくは5%~25%、より好ましくは10%の質量濃度の無機ナノ粒子のコロイド懸濁液が使用される。高濃度では、架橋のリスク及び官能基化する表面へのアクセスの欠如が生じる可能性がある(官能基化されていない、又は官能基化が十分でない粒子が沈殿するリスクがある)。好ましくは、無機ナノ粒子は、水又はエタノールなどの液相に分散される。
【0100】
この反応は、分子Q-Zを可溶化することを可能にする任意の適切な溶媒中で行われ得る。
【0101】
分子Q-Zによれば、反応温度、反応時間及び使用する溶媒を調整することにより、官能基化条件を最適化し得る。Q-Zの溶液を電解質ナノ粒子のコロイド懸濁液に加えた後、反応媒体を0時間~24時間(好ましくは5分~12時間、より好ましくは0.5時間~2時間)攪拌したまま維持し、分子Q-Zの少なくとも一部、好ましくはすべてが無機ナノ粒子の表面にグラフトされ得る。官能基化は、好ましくは20℃~100℃の温度で加熱して行われ得る。反応媒体の温度は、官能基化分子Q-Zの選択に適合させる必要がある。
【0102】
したがって、これらの官能基化ナノ粒子は、コア又は無機材料とPEOのシェルを有する。シェルの厚さは、通常、1nm~100nmである;この厚さは、酸化ルテニウム(RuO)でポリマーをマーキングした後、透過型電子顕微鏡で測定され得る。
【0103】
有利には、このように官能基化されたナノ粒子は、次に、遠心分離サ及び再分散の連続サイクルによって及び/又は接線流濾過によって精製される。
【0104】
官能基化された無機ナノ粒子を再分散させた後、任意の適切な手段によって、所望の乾燥抽出物が得られるまで、懸濁液を再濃縮し得る。
【0105】
有利には、PEOで官能基化された無機ナノ粒子の懸濁液の乾燥抽出物は、40%(体積で)を超える固体電解質材料、好ましくは60%を超える、より好ましくは70%を超える固体電解質材料を含む。
【0106】
堆積後の有機コアシェルタイプのナノ粒子で生成された層を緻密化することは、適切な手段、好ましくは、以下によって行われ得る:
a)任意の機械的手段、特に機械的圧縮、好ましくは一軸圧縮;
b)熱圧着、すなわち圧力下での熱処理。最適な温度は、堆積した材料の化学組成に密接に依存し、粒子サイズ及び層の緻密性にも依存する。堆積した粒子の酸化及び表面汚染を防ぐために、制御された雰囲気を維持することが好ましい。
【0107】
有利には、固化は、制御された雰囲気で、周囲温度と使用されるポリマー(通常、PEO)の溶融温度との間の温度で実施される;熱圧着は周囲温度(約20℃)~約300℃の温度で行われ得る;ただし、PEOの劣化を防ぐために、200℃(又はより好ましくは100℃)を超えないことが好ましい。
【0108】
前述のように、有機シェルの利点の1つは、シェルの可鍛性である;PEOは、例えば、比較的低い圧力で容易に変形可能なポリマーである。したがって、PEOなどのポリマーによって官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の緻密化は、機械的圧縮(機械的圧力の作用)によってのみ得られ得る。有利には、圧縮は、10MPa~500MPa、好ましくは50MPa~200MPaの圧力で、20℃~200℃程度の温度で行われる。
【0109】
界面では、PEOはアモルファスであり、固体電解質粒子間の良好なイオン接触を保証する。したがって、PEOは、液体電解質がなくてもリチウムイオンを伝導し得る;PEOは同時に電子絶縁体でもある。低温でのリチウムイオン電池の組み立てに適しているため、電解質と電極の間の界面での相互拡散のリスクが制限される。
【0110】
リチウムイオン電池では、緻密化後に得られる電解質層の厚さは、10μm未満、好ましくは6μm未満、好ましくは5μm未満であり、電池の特性を損なうことなく電池の厚さ及び重量を制限する。
【0111】
メソポーラス層を含むデバイスに層を堆積させるための本発明による方法の使用
本発明による方法は、リチウムイオン電池などの電気化学的及び他のデバイスにおいて無機緻密層を堆積させることを可能にする。これらのデバイスでは、前記緻密層は、アノード又はカソード又は電極の機能を果たし得、デバイスは、本発明によるいくつかの無機緻密層を含み得る。これらのデバイスは「全固体」タイプであり得、緻密層は、非常に低い気孔率のみ有する。本発明の変形例によれば、デバイスはまた、少なくとも1つの多孔質無機層を含む。
【0112】
本発明のこの変形例によれば、「多孔質無機層」は、好ましくはメソポーラスであり、好ましくは以下によって形成される群から選択される方法を用いて堆積され得る:電気泳動、インクジェット印刷及びフレキソ印刷から好ましくは選択される印刷方法、及びロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイコーティング、ディップコーティングから好ましくは選択されるコーティング方法、ナノ粒子凝集体又は塊の懸濁液、好ましくはナノ粒子塊を含む濃縮懸濁液の使用。
【0113】
より具体的には、平均一次直径D50が2nm~100nm、好ましくは2nm~60nmである、少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の凝集体又は塊を含むコロイド懸濁液が使用され、前記凝集体又は塊は、通常、平均直径D50が50nm~300nm(好ましくは100nm~200nm)を有する。次に、このようにして得られた層を乾燥させ、加圧及び/又は加熱によって層を圧密して、好ましくはメソポーラスで無機の多孔質層を得る。この方法は、電解質材料で形成されたナノ粒子に特に有利である。
【0114】
メソポーラス層は、本発明による方法で堆積させた緻密層上に堆積され得、又は前記緻密層は、上記の方法で調製された前記メソポーラス層上に堆積される。
【0115】
前記多孔質層がその電解質機能を果たし得るように、移動性カチオン担体液体を含浸させなければならない;リチウムイオン電池の場合、このカチオンはリチウムカチオンである。このリチウムイオン担体相は、好ましくは、以下によって形成される群から選択される:
・少なくとも1つの非プロトン性溶媒と少なくとも1つのリチウム塩で構成される電解質;
・少なくとも1つのイオン性液体又はイオンポリ液体と少なくとも1つのリチウム塩で構成される電解質;
・少なくとも1つの非プロトン性溶媒と少なくとも1つのイオン性液体又はイオンポリ液体と少なくとも1つのリチウム塩の混合物;
・少なくとも1つのリチウム塩を加えることによってイオン導電性にされたポリマー;及び
・ポリマー相又はメソポーラス構造のいずれかで液体電解質を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー、
前記ポリマーは、好ましくは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF-ヘキサフルオロプロピレンによって形成される群から選択される。
【0116】
リチウムイオンマイクロ電池の製造例
ここでは、本発明に係る層を用いたリチウムイオンマイクロ電池の製造方法について説明する。
【0117】
a)本発明に係る堆積方法による電極の調製
「ディップコーティングによる緻密な電極層の堆積」の項で説明した方法で得られた第1の緻密なLiTi12電極を堆積させた。第2の緻密なLiMn電極も同様の方法で堆積させた。
【0118】
次に、これら2つの電極のそれぞれに、電池の分離膜として機能する、後述するように調製されたLiPO塊のメソポーラス薄膜を堆積させた。
【0119】
b)分離層の堆積
以下に記載する2つの溶液を使用して、LiPOナノ粒子の懸濁液を調製した:まず、45.76gのCHCOOLi、2HOを448mlの水に溶解し、次に、この媒体に224mlのエタノールを激しく撹拌しながら加え、溶液Aを得た。次に16.24gのHPO(水中で85wt%)を422.4mlの水で希釈し、この溶液に182.4mlのエタノールを加えて、以下溶液Bと呼ばれる第2溶液を得た。次に、溶液Bを溶液Aに激しく撹拌しながら加えた。
【0120】
得られた溶液は、混合時に形成された泡が消えて完全に透明になった後、媒体を均質化するために、ウルトラタラックスタイプのホモジナイザーの動作下で、4.8リットルのアセトンに加えた。液相に懸濁した白色沈殿物が直ちに観察された。
【0121】
反応媒体を5分間ホモジナイズした後、磁気撹拌下で10分間維持した。全体を1時間~2時間静置した。上清を除去し、残りの懸濁液を6000gで10分間遠心分離した。次に、1.2リットルの水を加えて、沈殿物を再懸濁した(ソノトロード、磁気攪拌の使用)。次に、このタイプの洗浄をエタノールでさらに2回行った。15mlのリン酸ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]の溶液を、激しく撹拌しながら、このようにして得たエタノール中のコロイド懸濁液に1g/mlで加えた。このようにして、懸濁液がさらに安定した。次に、ソノトロードを用いて懸濁液を超音波処理した。次に、懸濁液を6000gで10分間遠心分離した。次に、ペレットをエタノール1.2リットルに再分散させてから、6000gで10分間遠心分離した。このようにして得られたペレットを900mlのエタノールに再分散させ、電気泳動体積を行うことが可能な15g/lの懸濁液を得る。
【0122】
このようにして、10nmのLiPOの一次粒子からなる約200nmの塊がエタノールに懸濁して得られた。
【0123】
LiPOの多孔質薄層は、先に調製したアノード及びカソードの表面に、上記で得られたLiPOのナノ粒子懸濁液に20V/cmの電界を90秒間印加することにより、電気泳動によって堆積させて、約2μmの層を得た。次に、この層を120℃で風乾させた後、微量の有機残留物を除去するために350℃で120分間の焼成処理を行った。
【0124】
c)電極とセパレータの組み立て
あらかじめ用意した電極(Li1+xMn2-y及びLiTi12)のそれぞれに2μmの多孔質LiPOを堆積させた後、LiPO膜が接触するように2つのサブシステムを積層した。次に、この積層体を2枚の平面プレートの間に真空中でホットプレスした。これを行うために、まず、積層体を5MPaの圧力下に配置し、次に10-3barで30分間真空乾燥させた。次に、プレスのプレートを0.4℃/秒の速度で550℃に加熱した。次に、積層体を550℃で45MPaの圧力下で20分間熱圧縮し、システムを周囲温度まで冷却した。次に、組立体を真空中(10mbar)、120℃で48時間乾燥させた。
【0125】
d)液体電解質によるセパレータの含浸
次に、この組立体を、PYR14TFSI及び0.7MのLiTFSIを含む電解質溶液に浸漬させることによって、無水雰囲気下で含浸させた。PYR14TFSIは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの標準略語である。LITFSIは、リチウム ビス-トリフルオロメタンスルホンイミド(CAS番号:90076-65-6)の標準略語である。このイオン性液体は、毛細管現象によりセパレータの気孔に瞬時に入り込む。システムの両端をそれぞれ電解質混合液の滴下に5分間浸漬させた状態を維持した。
【0126】
工業的な製造方法では、電池を封入した後に含浸が行われ、続いて電気接点部材が製造されることに留意されたい。
【0127】
原則として、本発明による電池は、リチウムイオンマイクロ電池であり得る。特に、約1mAh以下の静電容量を有するように設計し、寸法決定し得る(一般に「マイクロ電池」と呼ばれる)。通常、マイクロ電池は、マイクロエレクトロニクスの製造方法に適合するように設計されている。
【0128】
これらのマイクロ電池は、以下で製造され得る:
-本発明による層のみで、「全固体」タイプ、すなわち、含浸された液相又はペースト相(前記液相又はペースト相は、電解質として作用することができるリチウムイオン伝導媒体である)を含まないもの、
-又は、本発明による電極とメソポーラス「全固体」タイプのセパレータで、液相又はペースト相、典型的にはリチウムイオン伝導性媒体を含浸させ、自発的に層の内側に入り、この層からはもはや出ることはなく、この層を準固体と見なし得るもの、
-又は、本発明による電極と含浸された多孔質セパレータ(すなわち、液相又はペースト相を含浸させ得、これらの層に湿潤特性を与える開放細孔の格子を有する層)。
【0129】
本発明の異なる様態
与えられた説明から明らかなように、本発明は、いくつかの様態、特徴、及び特徴の組み合わせを有し、これらは以下に要約された方法でまとめられる。
【0130】
本発明の第1様態は、緻密層を製造する方法であって、以下の工程を含む:
-基質及び無機材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液を供給する工程;
-前記材料Pの一次ナノ粒子の懸濁液を使用して、前記基板上に層を堆積する工程;
-前記得られた層を乾燥させる工程;
-前記乾燥した層を機械的圧縮及び/又は熱処理によって緻密化する工程;
前記第3及び第4工程は、少なくとも部分的に同時に、又は昇温中に実行され得ることを知り;
前記方法は、前記材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液がサイズ分布を有する材料Pのナノ粒子を含み、前記サイズがそのD50の値によって特徴付けられることを特徴とする、以下のような方法である:
前記分布は、20nm~50nmの第1サイズD1の材料Pのナノ粒子と、D1の値よりも少なくとも5倍小さいD50値によって特徴付けられる第2サイズD2の材料Pのナノ粒子とを含む。
【0131】
代替案によれば、分布は、材料Pのナノ粒子の平均サイズが50nm未満であり、平均サイズに対する標準偏差の比が0.6よりも大きい。
【0132】
この第1様態の第1変形例によれば、前記材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液は、20nm~50nmの第1サイズD1の材料Pのナノ粒子と、D1の値よりも少なくとも5倍小さいD50値によって特徴付けられる第2サイズD2の材料Pのナノ粒子とを含み、サイズD1の前記粒子はナノ粒子の総質量の50~75%を占める。好ましくは、第2集団の平均直径は、第1ナノ粒子集団の平均直径の少なくとも15分の1であり、好ましくは少なくとも12分の1である。
【0133】
この第1様態の第1変形例にも適合する第2変形例によれば、前記材料Pの凝集していないナノ粒子の懸濁液は、サイズD1のナノ粒子の単分散懸濁液を使用して得られる。
【0134】
この第1様態の第1及び第2変形例にも適合する第3変形例によれば、単分散懸濁液を使用してサイズD2のナノ粒子の懸濁液が得られる。
【0135】
この第1様態の第1、第2及び第3変形例にも適合する第4変形例によれば、最大分布の平均直径が100nmを超えないように、好ましくは50nmを超えないように、2つのナノ粒子径集団の混合物が使用される。好ましくは、この最大のナノ粒子の第1集団は、σ/Rmean比が0.6未満であることを特徴とするサイズ分布を有する。
【0136】
この変形例の第1サブ変形例では、好ましくは、最大のナノ粒子集団は、堆積物の乾燥抽出物の50%~75%を表し、第2ナノ粒子集団は、堆積物の乾燥抽出物の50%~25%を表す(これらのパーセンテージは、堆積物中のナノ粒子の総質量に対する質量%として表される)。
【0137】
この第4変形例の第2サブ変形例では、この第2集団の粒子の平均直径は、第1のナノ粒子集団の粒子の平均直径よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは、第2集団の平均直径は少なくとも1/15である。第1のナノ粒子集団のそれであり、好ましくは少なくとも12分の1である。好ましくは、この第2集団は、σ/Rmean比が0.6未満であることを特徴とするサイズ分布を有する。
【0138】
第1様態の第1、第2、第3及び第4変形例にも適合する第5変形例によれば、前記緻密層の堆積のために、印刷技術、特にインクジェット及びフレキソ印刷、電気泳動技術並びにコーティング技術、特にロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、ディップコーティング又はスロットダイコーティングから選択される方法が使用される。
【0139】
この第1様態の第1、第2、第3、第4及び第5変形例にも適合する第6変形例によれば、前記懸濁液は、20℃で測定した粘度が20cP~2000cPである。
【0140】
この第1様態の第1、第2、第3、第4、第5及び第6変形例にも適合する第7変形例によれば、前記材料Pは無機材料であり、好ましくは、以下によって形成される群から選択される:
-好ましくは、以下によって形成される群から選択されるカソード材料:
-酸化物LiMn、Li1+xMn2-x(0<x<0.15)、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Ni0.5-x(XはAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd及びSc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどの他の希土類から選択され、0<x<0.1)、LiMn2-x(M=Er、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mg又はこれらの化合物の混合物、0<x<0.4)、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiAlMn2-x(0≦x<0.15)、LiNi1/xCo1/yMn1/z(x+y+z=10);
-リン酸塩LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO;式LiMM’POのリン酸塩(M及びM’(M≠M’)はFe、Mn、Ni、Co、Vから選択される);
-以下のカルコゲニドのすべてのリチウム形態:V、V、TiS、オキシ硫化チタン(TiO(z=2-yかつ0.3≦y≦1)、オキシ硫化タングステン(WO(0.6<y<3かつ0.1<z<2))、CuS、CuS、好ましくはLi(0<x≦2)、LixV(0<x≦1.7)、LiTiS(0<x≦1)、オキシ硫化チタン及びオキシ硫化リチウムLiTiO(z=2-y、0.3≦y≦1)、LiWO、LiCuS、LiCuS
-好ましくは、以下によって形成される群から選択されるアノード材料:
-カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト;
-リン酸鉄リチウム(一般式LiFePO);
-ケイ素及びスズ酸窒化物の混合物(一般式SiSn(a>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3))(SiTONとしても知られる)、特にSiSn0.871.21.72;同様に一般式SiSnの酸窒化物-炭化物(a>0、b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24、0<z<17);
-窒化物Si(特にx=3かつy=4)、Sn(特にx=3かつy=4)、Zn(特にx=3かつy=2)、Li3-xN(M=Coの場合は0≦x≦0.5、M=Niの場合は0≦x≦0.6、M=Cuの場合は0≦x≦0.3);Si3-x(M=Co又はFeかつ0≦x≦3)、
-酸化物SnO、SnO、LiSnO、SnSiO、LiSiO(x>=0かつ2>y>0)、LiTi12、TiNb、Co、SnB0.60.42.9及びTiO
-0~10質量%の炭素を含み、好ましくは炭素がグラフェン及びカーボンナノチューブから選択される複合酸化物TiNb
-好ましくは、以下によって形成される群から選択される電解質材料:
-一般式Li (TOのガーネット(Aは酸化度+IIのカチオン、好ましくはCa、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdを表し、Aは酸化度+IIIのカチオン、好ましくはAl、Fe、Cr、Ga、Ti、Laを表し、(TO)はアニオンを表し、Tは酸素原子によって形成される四面体の中心に位置する酸化度+IVの原子、TOは、有利にはケイ酸塩又はジルコン酸のアニオンを表し、酸化度+IVの元素Tは、その全部又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taなどの酸化度+III又は+Vの原子で置き換えられ得、dは2~10、好ましくは3~9、より好ましくは4~8である;xは2.6~3.4(好ましくは2.8~3.2)である;yは1.7~2.3(好ましくは1.9~2.1)である;zは2.9~3.1である;
-ガーネット、好ましくは以下から選択されるもの:LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12(M=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物);Li7-xBaLa3-x12(0≦x≦1かつM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物);Li7-xLaZr2-x12(0≦x≦2かつM=Al、Ga、Ta又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物);
-リン酸リチウム、好ましくは以下から選択される;NaSICONタイプのリン酸リチウム、LiPO;LiPO;「LASP」で表わされるLiAl0.4Sc1.6(PO;Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO;LiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSi(1.8<x<2.3);Li1+6xZr(P1-x(0≦x≦0.25);Li(Sc2-x)(PO(M=Al若しくはYかつ0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(PO(M=Al、Y、Ga又は3つの化合物の混合物でかつ0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(PO(0≦x≦0.8;0≦y≦1かつM=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物);Li1+x(Ga)2-x(PO(M=Al、Y又はこれら2つの化合物の混合物でかつ0≦x≦0.8);「LATP」で表わされるLi1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1);又は「LAGP」で表わされるLi1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦1);又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12(0≦x≦0.8かつ0≦y≦1.0かつ0≦z≦0.6かつM=Al、Ga若しくはY又はこれら2つ若しくは3つの化合物の混合物);Li3+y(Sc2-x)Q3-y12(M=Al及び/又はYかつQ=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8かつ0≦y≦1);又はLi1+x+ySc2-x3-y12(M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物、Q=Si及び/又はSe、0≦x≦0.8かつ0≦y≦1);又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12(0≦x≦0.8、0≦y≦1、0≦z≦0.6、M=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物、Q=Si及び/又はSe);又はLi1+xZr2-x(PO(0≦x≦0.25);又はLi1+xZr2-xCa(PO(0≦x≦0.25);又はLi1+x 2-x12(0≦x≦1かつM=Cr、V、Ca、B、Mg、Bi及び/又はMo、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se若しくはSi又はこれらの化合物の混合物);Li1+2xCaZr2-x(PO(0≦x≦0.25);
-ホウ酸リチウム、好ましくは以下から選択される:Li(Sc2-x)(BO(M=Al又はYかつ0≦x≦1);Li1+x(Sc)2-x(BO(M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物で、かつ0≦x≦0.8);Li1+x(Ga1-ySc2-x(BO(0≦x≦0.8、0≦y≦1かつM=Al又はY);Li1+x(Ga)2-x(BO(M=Al、Y、又は両方の化合物の混合物で、0≦x≦0.8);LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
-酸窒化物、好ましくはLiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、LiGeO4-x2x/3(0<x<4)又はLiBO3-x2x/3(0<x<3)から選択される;
-LiPO(x~2.8かつ2y+3z~7.8かつ0.16≦z≦0.4)で表わされるリチウム酸窒化物及びリンに基づく、「LiPON」と呼ばれる、リチウム化合物、特にLi2.9PO3.30.46、化合物LiPO(2x+3y+2z=5=w)又は化合物LiPO(3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3)、又はLiAlの形式の化合物(5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2);
-リチウムリン又はホウ素酸窒化物に基づく、それぞれ「LiPON」及び「LIBON」と呼ばれる材料であって、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄及び/又はケイ素の組み合わせ、並びにリチウムリン酸窒化物に基づく材料の場合はホウ素を含み得る材料;
-「LiSiPON」と呼ばれる、リチウム、リン及びケイ素酸窒化物に基づくリチウム化化合物、特にLi1.9Si0.281.01.11.0
-LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、チオ-LiSiCON、LiPONBタイプのリチウム酸窒化物(B、P及びSはそれぞれホウ素、リン及び硫黄を表す);
-(1-x)LiBO2-xLiSO(0.4≦x≦0.8)であってLiBSOタイプのリチウム酸窒化物;
-リチウム酸窒化物、好ましくは以下から選択される:LiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12(A=Sc、Y、Al、Gaかつ1.4≦x≦2)、Li0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiO(0≦x≦0.16)(LLTO);
-ケイ酸塩、好ましくはLiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択される;
-以下から選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:LiOA(Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);Li(3-x)x/2OA(0<x≦3、Mは2価の金属、好ましくはMg、Ca、Ba、Srから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくは、F、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);Li(3-x) x/3OA(0≦x≦3、Mは3価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であり、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ、3つ若しくは4つの混合物);又はLiCOX(1-z)(X及びYはAに関して上記のハロゲン原子でありかつ0≦z≦1);
-化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb、LiAlGaSPO
-LiCO、B、LiO、Al(POLiF、P、LiS、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li3.25Ge0.250.25、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1+xAl2-x(PO(M=Ge、Ti及び/又はHfかつ0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0≦x≦1かつ0≦y≦1)に基づく配合物。
【0141】
この第1様態の第1、第2、第3、第4、第5、第6及び第7変形例にも適合する第8変形例によれば、前記無機材料Pのナノ粒子は、コア及びシェルから構成されるナノ粒子を含み、コアは前記無機材料Pで形成され、シェルは別の材料で形成され、好ましくは有機材料であり、より好ましくは高分子材料である。
【0142】
この第8変形例の第1サブ変形例では、前記シェルは、電子伝導体である材料から形成される。
【0143】
この第8変形例の第2サブ変形例では、前記シェルは、電子絶縁体及びカチオン伝導体、特にリチウムイオン伝導体である材料から形成される。
【0144】
この第8変形例の第3サブ変形例では、前記シェルは、電子伝導体及びカチオン伝導体、特にリチウムイオン伝導体である材料から形成される。
【0145】
この第1様態の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8変形例にも適合する第9変形例によれば、前記無機材料Pのナノ粒子(又は、第8変形例の場合、前記ナノ粒子の無機材料Pで作られた前記コア)は、沈殿により懸濁液で調製されたものである。
【0146】
本発明の第2様態は、リチウムイオン電池における少なくとも1つの緻密層の製造方法であって、前記緻密層の製造方法は、本発明の第1様態によるものであり、この第1様態に関連して記載されたすべての変形例及びすべてのサブ変形例を有するものである。
【0147】
この第2様態の第1変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池のアノードとして機能し得るように選択される。
【0148】
この第2様態の第2変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池のカソードとして機能し得るように選択される。
【0149】
この第2様態の第1及び第2変形例にも適合する第3変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池の電解質として機能し得るように選択される。
【0150】
本発明の第3様態は、リチウムイオン電池における少なくとも1つの緻密層の製造方法であって、前記緻密層は、本発明の第1様態に係る方法によって、この第1様態に関連して記載されたすべての変形例及びすべてのサブ変形例で得ることができる。
【0151】
この第3様態の第1変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池のアノードとして機能し得るように選択される。
【0152】
この第3様態の第1変形例にも適合する第2変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池のカソードとして機能し得るように選択される。
【0153】
この第3様態の第1及び第2変形例にも適合する第3変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池の電解質として機能し得るように選択される。
【0154】
本発明の第4様態は、リチウムイオン電池の製造方法であって、前記電池は、本発明の第1様態に係る方法で堆積された少なくとも1つの緻密な電極層を含み、この第1様態に関連して記載されたすべての変形例及びすべてのサブ変形例を備え、好ましくは本発明の第1様態の第7変形例による電解質材料を使用して、セパレータを形成することを意図した多孔質層も堆積される。
【0155】
この第4様態の第1変形例によれば、前記多孔質層はメソポーラス層であり、好ましくはメソポーラス体積が25%~75%、より好ましくは30%~60%である。
【0156】
この第4様態の第1変形例にも適合する第2変形例によれば、前記多孔質層を堆積させる方法は、好ましくは以下によって形成される群から選択される方法である:電気泳動、好ましくはインクジェット印刷及びフレキソ印刷から選択される印刷方法、並びに好ましくはロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイコーティング、ディップコーティングから選択されるコーティング方法であって、いずれの場合も、ナノ粒子凝集体又は塊の懸濁液を使用して堆積が行われる。
【0157】
この第4様態の第1及び第2変形例にも適合する第3変形例によれば、ナノ粒子塊を含む濃縮懸濁液は、前記多孔質層を堆積するために使用される。
【0158】
この第4様態の第1、第2及び第3変形例にも適合する第4変形例によれば、コロイド懸濁液は、平均一次直径D50は2nm~100nm、好ましくは2nm~60nmの少なくとも1つの無機材料のナノ粒子の凝集体又は塊を含む前記多孔質層を堆積させるために使用され、前記凝集体又は塊は、通常、50nm~300nm、好ましくは100nm~200nmの平均直径D50を有する。
【0159】
この第4様態の第1、第2、第3及び第4変形例にも適合する第5変形例によれば、前記得られた層を乾燥させ、加圧及び/又は加熱によって圧密して、好ましくはメソポーラスで無機の多孔質層を得る。
【0160】
この第4様態の第1、第2、第3、第4、及び第5変形例にも適合する第6変形例によれば、前記多孔質層は前記緻密層上に堆積される。
【0161】
この第4様態の第1、第2、第3、第4、第5、及び第6変形例にも適合する第7変形例によれば、前記緻密層は前記メソポーラス層上に堆積される。
【0162】
この第4様態の第1、第2、第3、第4、第5、第6及び第7変形例にも適合する第8変形例によれば、前記第2電極層は前記多孔質層上に堆積される。
【0163】
この第8変形例の第1サブ変形例によれば、前記第2電極層は、本発明の第1様態による方法で堆積された緻密な電極である。
【0164】
この第8変形例の第2サブ変形例によれば、前記第2電極層は多孔質電極であり、好ましくは本発明の第4様態に関連する多孔質分離層の調製方法に従って、特に第1、第2、第3、第4及び第5変形例に従って、セパレータ材料が適切な電極材料によって置き換えられ、好ましくは本発明の第1様態の第7変形例に従って、アノード材料又はカソード材料を用いて調整される。
【0165】
この第4様態の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7及び第8変形例にも適合する第9変形例によれば、前記多孔性分離層は、移動性リチウムイオン担体液体で含浸され、好ましくは、以下によって形成される群から選択される:
・少なくとも1つの非プロトン性溶媒と少なくとも1つのリチウム塩で構成される電解質;
・少なくとも1つのイオン性液体又はイオンポリ液体と少なくとも1つのリチウム塩で構成される電解質;
・少なくとも1つの非プロトン性溶媒と少なくとも1つのイオン性液体又はイオンポリ液体と少なくとも1つのリチウム塩の混合物;
・少なくとも1つのリチウム塩を加えることによってイオン導電性にされたポリマー;及び
・ポリマー相又はメソポーラス構造のいずれかで液体電解質を添加することによってイオン伝導性にされたポリマー、
前記ポリマーは、好ましくは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、PVDF-ヘキサフルオロプロピレンによって形成される群から選択される。
【0166】
本発明の第5様態は、本発明の第1様態に関連して記載されたすべての変形及びすべてのサブ変形例を有する、本発明の第1様態による方法で得られる緻密層である。
【0167】
この第5様態の第1変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池のアノードとして機能し得るように選択される。
【0168】
この第5様態の第1変形例にも適合する第2変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池のカソードとして機能し得るように選択される。
【0169】
この第5様態の第1及び第2変形例にも適合する第3変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池の電解質として機能し得るように選択される。
【0170】
この第5様態の第1、第2、及び第3変形例にも適合する第4変形例によれば、前記緻密層は、理論密度の少なくとも90%、好ましくは理論密度の少なくとも95%、より好ましくは理論密度の少なくとも96%、最適には理論密度の少なくとも97%の密度を有する。
【0171】
本発明の第6様態は、本発明の第1様態に係る方法で得ることができるリチウムイオン電池における緻密層であって、本発明の第1様態に関連して記載されたすべての変形例及びすべてのサブ変形例を有するものである。
【0172】
この第6様態の第1変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池のアノードとして機能し得るように選択される。
【0173】
この第6様態の第1変形例にも適合する第2変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池のカソードとして機能し得るように選択される。
【0174】
この第6様態の第1及び第2変形例にも適合する第3変形例によれば、前記材料Pは、前記緻密層がリチウムイオン電池の電解質として機能し得るように選択される。
【0175】
本発明の第7様態は、本明細書では「マイクロ電池」と呼ばれる、静電容量が1mAhを超えないリチウムイオン電池であって、本発明の第5様態による少なくとも1つの緻密層を含み、本発明の第5様態に関連して記載されたすべての変形及びすべてのサブ変形例が含まれる。
【0176】
この第7様態の第1変形例によれば、前記マイクロ電池は、本発明の第5様態による緻密層であるアノードを含む。
【0177】
この第7様態の第2変形例によれば、前記マイクロ電池は、本発明の第5様態による緻密層であるカソードを含む。
【0178】
この第7様態の第3変形例によれば、前記マイクロ電池は、本発明の第5様態による緻密層であるアノード及びカソードを備える。
【0179】
この第7様態の第4変形例によれば、前記マイクロ電池は、本発明の第5様態による緻密層であるアノード、カソード及び電解質を含む。
【0180】
この第7様態の第1、第2及び第3変形例にも適合する第4変形例によれば、前記マイクロ電池は、本発明の第4様態による多孔質層であるセパレータを含む。
【国際調査報告】