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特表2023-519709がんを治療するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】がんを治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/761 20150101AFI20230502BHJP
   A61K 31/7032 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230502BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230502BHJP
   C12N 15/21 20060101ALN20230502BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20230502BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230502BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
A61K35/761
A61K31/7032
A61P13/10
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 M
G01N33/574 D
C12N15/21 ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/13
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559573
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2021000206
(87)【国際公開番号】W WO2021198777
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/002,168
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519162156
【氏名又は名称】トライゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フィリップソン, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】イラ-ヘルットゥアラ, セッポ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA811
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA04
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA56
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA16
4C087MA56
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA10
4C087NA13
4C087ZA81
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、膀胱癌などのがんを治療するための組成物及び方法を含む。本開示は、特に、がん性障害(例えば、膀胱癌、例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC))を治療するための組成物及び方法を提供する。本明細書には、(i)インターフェロンα-2bをコードする組み換えアデノウイルスベクター(例えば、非複製組み換えアデノウイルスベクター)と、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含む組成物(例えば、医薬組成物)が少なくとも部分的に開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を治療する方法であって、前記対象に組成物を3か月ごとに少なくとも1年間膀胱内投与することを含み、前記組成物が、(i)インターフェロンα-2b(IFNα-2b)をコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター(例えば、5型非複製組み換えアデノウイルスベクター)と、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含み、それにより、前記対象のNMIBCを治療する、前記方法。
【請求項2】
例えば、前記組成物の投与後約1年以上の時点で、前記対象に対して、または前記対象からの試料に対して、アッセイを実施することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アッセイが、前記組成物の有効性を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を有するまたは高悪性度NMIBCと診断された対象における組成物の有効性を評価するまたはモニタリングする方法であって、前記対象に対して、または前記対象からの試料に対して、アッセイを実施することを含み、
前記組成物が、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター(例えば、5型非複製組み換えアデノウイルスベクター)と、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含み、
前記対象が、前記組成物の膀胱内投与を3か月ごとに少なくとも1年間受けている、前記方法。
【請求項5】
前記組成物を前記対象に投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象から前記試料を取得することをさらに含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、血液試料(例えば、血漿または血清試料)、唾液試料、組織試料、または尿試料を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アッセイが、前記試料の細胞診及び/または前記対象の膀胱鏡検査を実施することを含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
細胞診及び/または膀胱鏡検査が実施されない、請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象に少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの追加の治療剤が、チェックポイント阻害剤を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3及び/またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、CD80、CD86、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、HVEM(例えば、TNFRSF14またはCD270)、KIR、A2aR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、アデノシン、またはTGF(例えば、TGFβ)から選択されるチェックポイント分子を標的にする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体もしくはそのフラグメント、例えば、ペムブロリズマブを含む、または抗PD-1抗体もしくはそのフラグメント、例えば、ペムブロリズマブである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ペムブロリズマブが、約3週間間隔で、または3週間よりも長い間隔(例えば、4週間間隔、5週間間隔、6週間間隔、またはそれ以上の間隔)で、静脈内投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、前記組成物による治療に対して、完全奏効(CR)、部分奏効、または非奏効を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、前記組成物による治療を受けた後に、例えば、前記組成物の投与後少なくとも1年間、高悪性度の再発を示さない、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、2以下の米国東海岸がん臨床試験グループステータスを有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、危険性の高いNMIBCを有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、バシル・カルメット-ゲラン(BCG)を含む少なくとも1つの前治療に反応していない、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、BCGによる複数の治療を受けている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、BCGを含む少なくとも1つの前治療の後に、NMIBCの再発を示した、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、BCG難治性NMIBCを有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、再発したNMIBCを有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、上皮内癌(CIS)または高悪性度乳頭状疾患の一方または両方を有する、あるいはその一方または両方であると診断されている、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、例えば、BCGを含む少なくとも1つの前治療の後に、T1膀胱癌を有する、またはT1膀胱癌と診断されている、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、ペンブロリズマブ、バルルビシン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ゲムシタビンとマイトマイシンとの併用、ゲムシタビンとドセタキセルとの併用、及び/またはナブパクリタキセルを含む少なくとも1つの治療を以前に受けたことがある、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ベクターが、膀胱上皮組織を標的とする、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、前記組成物による治療よりも前に、抗コリン剤による治療を受けるか、または受けたことがある、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記非複製組み換えアデノウイルスベクターが、5型非複製アデノウイルスベクターを含むか、または5型非複製アデノウイルスベクターである、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記非複製組み換えアデノウイルスベクターが、約2.25×1013ウイルス粒子(vp)の用量で投与される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記用量の総量が、約75mlである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記非複製組み換えアデノウイルスベクターが、約1×1011ウイルス粒子(vp)/ml~約3×1011vp/mlの投与量で投与される、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、対象集団に投与されるか、または投与されている、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象集団における完全奏効(CR)を評価することまたはモニタリングすることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象集団における、CRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値または平均値)、高悪性度無再発生存期間、根治的膀胱切除不要生存期間、または全生存期間のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを評価することまたはモニタリングすることをさらに含む、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記対象集団が、CISまたは高悪性度乳頭状疾患の一方または両方を有する対象、あるいはその一方または両方であると診断された対象を含む、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象(例えば、CISを有する対象)の約24.3%が、前記組成物による少なくとも約1年の治療後に、高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象(例えば、CISを有する対象)のCRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値または平均値)が、約9.69か月である、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象(例えば、CISを有する対象)の約45.5%が、前記組成物による少なくとも約1年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度の再発を示さない、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約43.8%が、前記組成物による少なくとも約1年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度のRFSを示す、請求項33~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)のCRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値または平均値)が、約12.35か月である、請求項33~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約60%が、前記組成物による少なくとも約1年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度の再発を示さない、請求項33~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象(例えば、CISを有する対象及び乳頭状疾患を有する対象)のCRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値または平均値)が、約7.31か月である、請求項33~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象(例えば、CISを有する対象及び乳頭状疾患を有する対象)の約30.5%が、前記組成物による少なくとも約1年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度のRFSを示す、請求項33~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記対象(例えば、CISを有する対象及び乳頭状疾患を有する対象)の膀胱切除不要生存期間が、前記組成物による少なくとも約2年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約2年後に)、約64.5%である、請求項33~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象(例えば、CISを有する対象)の全生存期間が、前記組成物による少なくとも約2年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約2年後に)、約91.9%である、請求項33~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の全生存期間が、前記組成物による少なくとも約2年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約2年後に)、約93.5%である、請求項33~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象(例えば、CISを有する対象)の約4.9%未満が、筋層浸潤への進行を示す、請求項33~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約6.3%未満が、筋層浸潤への進行を示す、請求項33~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記対象(例えば、CISを有する対象)の約23.3%が、前記組成物による少なくとも約15か月の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約15か月後に)、高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す、請求項33~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約39.6%が、前記組成物による少なくとも約15か月の治療後に(例えば、少なくとも1用量の前記組成物による治療から少なくとも約15か月後に)、高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す、請求項33~50のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月30日に出願された米国仮特許出願第63/002,168号の利益を主張するものであり、この米国仮特許出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
高悪性度の筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の患者を治療するために、現在、バシル・カルメット-ゲラン(BCG)が使用されている。BCGを受ける大多数の患者は、時の経過に伴い腫瘍再発を経験し、多くの患者は、BCG不応性(BCG unresponsive)である高悪性度のNMIBCを発症する可能性がある。根治的膀胱切除術も、高悪性度NMIBCの現在利用可能なもう一つの治療法である。しかし、この手術には高い周術期死亡率が伴い、多くの患者は、この手術を受けることをためらう、または受けることができない。BCGによる治療の後のサルベージ膀胱内療法として様々な薬剤が評価されているが、これまでのところ、患者に強固で持続的な奏効をもたらした薬剤はない。
【0003】
したがって、膀胱癌、特に高悪性度NMIBCの患者に対する効果的で安全な治療法が求められているが未だ対処されていない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、特に、がん性障害(例えば、膀胱癌、例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC))を治療するための組成物及び方法を提供する。本明細書には、(i)インターフェロンα-2bをコードする組み換えアデノウイルスベクター(例えば、非複製組み換えアデノウイルスベクター)と、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含む組成物(例えば、医薬組成物)が少なくとも部分的に開示される。本明細書に開示される組成物(例えば、医薬組成物)は、がん性障害(例えば、膀胱癌、例えば、高悪性度NMIBC)を治療または予防するために、単体で、または他の治療剤、治療手技、もしくは治療法と組み合わせて、使用することができる。
【0005】
一態様において、本開示は、対象における高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を治療する方法を特徴とし、当該方法は、対象に組成物を3か月ごとに少なくとも1年間膀胱内投与することを含み、組成物は、(i)インターフェロンα-2b(IFNα-2b)をコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター(例えば、5型非複製組み換えアデノウイルスベクター)と、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含み、それにより対象のNMIBCを治療する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、組成物の投与後約1年以上の時点で、対象に対して、または対象からの試料に対して、アッセイを実施することをさらに含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、組成物の有効性を示す。
【0007】
一態様において、本開示は、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を有するまたは高悪性度NMIBCと診断された対象における組成物の有効性を評価するまたはモニタリングする方法を特徴とし、当該方法は、対象に対して、または対象からの試料に対して、アッセイを実施することを含み、組成物は、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター(例えば、5型非複製組み換えアデノウイルスベクター)と、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含み、対象は、組成物の膀胱内投与を3か月ごとに少なくとも1年間受けている。
【0008】
いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、対象から試料を取得することをさらに含む。いくつかの実施形態では、試料は、血液試料(例えば、血漿または血清試料)、唾液試料、組織試料、または尿試料を含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、試料の細胞診及び/または対象の膀胱鏡検査を実施することを含む。いくつかの実施形態では、細胞診及び/または膀胱鏡検査は実施されない。
【0009】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象に少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤は、チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3及び/またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、CD80、CD86、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、HVEM(例えば、TNFRSF14またはCD270)、KIR、A2aR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、アデノシン、またはTGF(例えば、TGFβ)から選択されるチェックポイント分子を標的にする。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体もしくはそのフラグメント、例えば、ペムブロリズマブを含む、または抗PD-1抗体もしくはそのフラグメント、例えば、ペムブロリズマブである。いくつかの実施形態では、ペムブロリズマブが、約3週間間隔で、または3週間よりも長い間隔(例えば、4週間間隔、5週間間隔、6週間間隔、またはそれ以上の間隔)で、静脈内投与される。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象が、組成物による治療に対して、完全奏効(CR)、部分奏効、または非奏効を有する。いくつかの実施形態では、対象は、組成物による治療を受けた後に、例えば、組成物の投与後少なくとも1年間、高悪性度の再発を示さない。いくつかの実施形態では、対象は、2以下の米国東海岸がん臨床試験グループステータスを有する。いくつかの実施形態では、患者は、危険性の高いNMIBCを有する。いくつかの実施形態では、患者は、バシル・カルメット-ゲラン(BCG)を含む少なくとも1つの前治療に反応していない。いくつかの実施形態では、対象は、BCGによる複数の治療を受けている。いくつかの実施形態では、対象は、BCGを含む少なくとも1つの前治療の後に、NMIBCの再発を示した。いくつかの実施形態では、対象は、BCG難治性(BCG refractory)NMIBCを有する。いくつかの実施形態では、対象は、再発したNMIBCを有する。いくつかの実施形態では、対象は、上皮内癌(CIS)または高悪性度乳頭状疾患の一方または両方を有する、あるいはその一方または両方であると診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、例えば、BCGを含む少なくとも1つの前治療の後に、T1膀胱癌を有する、またはT1膀胱癌と診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、ペンブロリズマブ、バルルビシン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ゲムシタビンとマイトマイシンとの併用、ゲムシタビンとドセタキセルとの併用、及び/またはナブパクリタキセルを含む少なくとも1つの治療を以前に受けたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、組成物による治療よりも前に、抗コリン剤による治療を受けるか、または受けたことがある。
【0011】
いくつかの実施形態では、ベクターが、膀胱上皮組織に標的化されている。いくつかの実施形態では、非複製組み換えアデノウイルスベクターが、5型非複製アデノウイルスベクターを含むか、または5型非複製アデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、非複製組み換えアデノウイルスベクターが、約2.25×1013ウイルス粒子(vp)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、用量の総量は、約75mlである。いくつかの実施形態では、非複製組み換えアデノウイルスベクターが、約1×1011ウイルス粒子(vp)/ml~約3×1011vp/mlの投与量で投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物が、対象集団に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、本方法は、対象集団における完全奏効(CR)を評価することまたはモニタリングすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、対象集団における、CRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値または平均値)、高悪性度無再発生存期間、根治的膀胱切除不要生存期間、または全生存期間のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを評価することまたはモニタリングすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象集団は、CISまたは高悪性度乳頭状疾患の一方または両方を有する対象、あるいはその一方または両方であると診断された対象を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象)の約20~30%(例えば、約22~26%、例えば、約24.3%)が、組成物による少なくとも約1年の治療後に、高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す。いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象)の約17~27%(例えば、約20~24%、例えば、約21.4%)が、組成物による少なくとも約1年(例えば、約18か月)の治療後に、高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す。いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象)の約15~25%(例えば、約18~22%、例えば、約19.4%)が、組成物による少なくとも約1年(例えば、約2年)の治療後に、高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象)のCRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値または平均値)が、約7~12か月(例えば、約8~10か月、例えば、約9.69か月)である。いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象)の約30~55%(例えば、約35~50%、例えば、約40~50%、例えば、約45.5%)が、組成物による少なくとも約1年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度の再発を示さない。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約35~55%(例えば、約40~50%、例えば、約43.8%)が、組成物による少なくとも約1年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度のRFSを示す。いくつかの実施形態では、対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約28~38%(例えば、約31~36%、例えば、約33.3%)が、組成物による少なくとも約1年(例えば、約18か月)の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度のRFSを示す。いくつかの実施形態では、対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約22~32%(例えば、約25~30%、例えば、約27.1%)が、組成物による少なくとも約1年(例えば、約2年)の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度のRFSを示す。いくつかの実施形態では、対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)のCRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値または平均値)が、約10~14か月(例えば、約11~13か月、例えば、約12.35か月)である。いくつかの実施形態では、対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約40~80%(例えば、約50~70%、例えば、約60%)が、組成物による少なくとも約1年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度の再発を示さない。
【0016】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象及び乳頭状疾患を有する対象)のCRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値または平均値)が、約5~10か月(例えば、約6~9か月、例えば、約7.31か月)である。いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象及び乳頭状疾患を有する対象)の約20~40%(例えば、約25~35%、例えば、約30.5%)が、組成物による少なくとも約1年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約1年後に)、高悪性度のRFSを示す。いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象及び乳頭状疾患を有する対象)の膀胱切除不要生存期間が、組成物による少なくとも約2年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約2年後に)、約50~75%(例えば、約60~70%、例えば、約64.5%)である。
【0017】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象)の全生存期間が、組成物による少なくとも約2年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約2年後に)、約85~95%(例えば、約91.9%)である。いくつかの実施形態では、対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の全生存期間が、組成物による少なくとも約2年の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約2年後に)、約85~95%(例えば、約93.5%)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象)の約2~8%(例えば、約3~6%、例えば、約4.9%)未満が、筋層浸潤への進行を示す。いくつかの実施形態では、対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約4~8%(例えば、約5~7%、例えば、約6.3%)未満が、筋層浸潤への進行を示す。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、CISを有する対象)の約15~35%(例えば、約20~30%、例えば、約23.3%)が、組成物による少なくとも約15か月の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約15か月後に)、高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す。いくつかの実施形態では、対象(例えば、乳頭状疾患を有する対象)の約25~50%(例えば、約30~45%、例えば、約39.6%)が、組成物による少なくとも約15か月の治療後に(例えば、少なくとも1用量の組成物による治療から少なくとも約15か月後に)、高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ADSTILADRIN(登録商標)による治療を受けた高悪性度でBCG不応性の筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を有する患者を対象にした奏効の持続性の経時的なグラフを示す。高悪性度無再発生存期間は、3か月の有効性評価を経て明らかにされた区間で提示される。CIS=上皮内癌、CI=信頼区間、HGRF=高悪性度無再発、である。CISコホートには、乳頭状疾患(Ta/T1)を併発しているCIS患者、及び併発していないCIS患者を含めた。クロッパー-ピアソン法を用いて、HGRF生存率の95%正確な二項CIを計算した。中央値はカプラン-マイヤー推定値である。ブルックマイヤー及びクローリーの方法を用いて、両側CIを計算した。
【0021】
図2】ADSTILADRIN(登録商標)による治療を受けた図1の同じ患者を対象にした膀胱切除不要生存期間の経時的なグラフを示す。CIS=CISのみ、Ta+CIS、T1+CISである。乳頭状疾患=Ta及びT1である。膀胱切除不要生存期間は、初回投与から膀胱切除の初回発生日または何らかの原因による死亡までの期間と定義される。膀胱切除不要生存率は、各特定時点における生存関数のカプラン-マイヤー推定値である。対数-対数変換法によるグリーンウッドの公式を使用して、95%CIを計算した。
【0022】
図3】ADSTILADRIN(登録商標)による治療を受けた図1及び図2に示す患者と同じ患者を対象にした全生存期間の経時的なグラフを示す。CIS=CISのみ、Ta+CIS、T1+CISである。乳頭状疾患=Ta及びT1である。+=打ち切り観察値である。
【0023】
図4】ADSTILADRIN(登録商標)による治療を受けた図1図3に示す患者と同じ患者を対象にした高悪性度無再発生存期間(RFS)の発生率を示すグラフである。CISまたは高悪性度乳頭状疾患の患者を対象にした高悪性度RFSを、3か月、6か月、9か月、12か月、及び15か月の時点で示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本出願では、特に文脈から明らかではない限り、(i)用語「1つの(a)」は「少なくとも1つ」を意味すると解されてもよく、(ii)用語「または」は「及び/または」を意味すると解されてもよく、(iii)用語「備えている」及び「含んでいる」は、項目分けした構成要素またはステップが、それら自体で提示されるか、1つ以上の追加の構成要素またはステップと共に提示されるかにかかわらず、それらを包含すると解されてもよく、(iv)用語「約」及び「およそ」は、当業者によって理解されるはずである標準的な変動を許容すると解されてもよく、(v)範囲が指定されている場合は両端点も含まれる。
【0025】
投与:本明細書で使用するとき、用語「投与」は、典型的には、対象またはシステムへの組成物の投与を指す。当業者であれば、適切な状況下で、対象、例えばヒトへの投与に利用できる様々な経路を認識していよう。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、眼内、経口、非経口、または局所投与であり得る。非経口経路の例としては、限定されないが、膀胱内、腹腔内、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内、軟骨内、仙骨内、空洞内、腔内、脳内、槽内、角膜内、歯冠内、冠動脈内、海綿体内、頭蓋内、皮内、脊髄内、管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、病巣内、管腔内、リンパ腺内、骨髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心膜内、腹膜内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、眼球内、鼻腔内、髄腔内、滑膜内、腱内、精巣内、くも膜下腔内、胸腔内、尿細管内、鼓膜内、子宮内、血管内、静脈内(例えば、ボーラスまたは点滴)、脳室内、及び皮下が挙げられる。いくつかの実施形態では、投与は、膀胱内投与を含む。いくつかの実施形態では、投与は、間欠的な(例えば、時間的な隔たりがある複数の用量の)投薬及び/または定期的な(例えば、一定期間を隔てた個々の用量の)投薬を含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたる持続投薬(例えば、灌流)を含み得る。
【0026】
およそまたは約:本明細書で使用するとき、用語「およそ」または「約」は、目的の1つ以上の値に適用される場合、記載された基準値に類似した値を表す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、特に明記しない限り、または特に文脈から明らかでない限り、記載された基準値のいずれかの方向(上回るまたは下回る)で、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に収まる値の範囲を指す(ただし、そのような数値が、取り得る値の100%を超える場合を除く)。
【0027】
がん:用語「がん」、「悪性腫瘍」、「新生物」、「腫瘍」、及び「癌腫」は、本明細書では、比較的異常な、無制御な、及び/または自律的な増殖を示す結果、細胞増殖の制御の著しい喪失によって特徴付けられる異常増殖表現型を示す細胞を指すために使用される。いくつかの実施形態では、腫瘍は、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、及び/または非転移性の細胞である場合があり、またはこれらの細胞を含む場合がある。本開示は、その教示が特に関連する可能性のある特定のがんを具体的に特定する。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、がんは、血液腫瘍によって特徴付けられ得る。一般に、当技術分野で知られている様々な種類の癌の例としては、例えば、白血病、リンパ腫(ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、骨髄腫及び骨髄増殖性疾患を含む造血癌、肉腫、黒色腫、腺腫、及び固形組織の癌腫、口、喉、喉頭、及び肺の扁平上皮癌、肝癌、前立腺癌、子宮頸癌、膀胱癌、子宮癌、子宮内膜癌、または腎細胞癌などの尿生殖器癌、骨癌、膵癌、皮膚癌、皮膚黒色腫または眼内黒色腫、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、頭頸部癌、乳癌、胃腸癌、神経系の癌、ならびに乳頭腫などの良性病変が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、膀胱癌、例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を含む、または膀胱癌、例えば、NMIBCである。いくつかの実施形態では、がんは、上皮内癌(CIS)及び/または高悪性度乳頭状疾患を含む、またはCIS及び/または高悪性度乳頭状疾患である。いくつかの実施形態では、がんは、TaもしくはT1膀胱癌を含む、またはTaもしくはT1膀胱癌である。いくつかの実施形態では、がんは、バシル・カルメット-ゲラン(BCG)抵抗性(BCG resistant)癌を含む、またはBCG抵抗性癌である。
【0028】
併用療法:本明細書で使用するとき、用語「併用療法」は、対象が同時に2つ以上の治療レジメン(例えば、2つ以上の治療剤)に曝露される状況を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上のレジメンが同時に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、そのようなレジメンが順次投与されてもよい(例えば、第1のレジメンの全ての「用量」が投与されてから、第2のレジメンの任意の用量が投与される)。いくつかの実施形態では、そのような薬剤は、部分的に重なった投薬レジメンで投与される。いくつかの実施形態では、併用療法の「投与」は、併用として他の薬剤またはモダリティを受ける対象に、1つ以上の薬剤またはモダリティを投与することを含み得る。明確にするために、併用療法は、個々の薬剤を単一の組成物にまとめて投与する必要はない(または必ずしも同時に投与する必要さえもない)が、いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤、またはその活性部分を、併用組成物にまとめて、またはさらに併用化合物に(例えば、単一の化学複合体または共有結合体の一部として)まとめて、一緒に投与してもよい。いくつかの実施形態では、併用療法は、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクターと、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含む組成物を、チェックポイント阻害剤と併用して構成される。いくつかの実施形態では、併用療法は、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクターと、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含む組成物を、抗コリン剤と併用して構成される。
【0029】
判定する:本明細書に記載された多くの方法は、「判定する」ステップを含む。本明細書を読む当業者は、そのような「判定すること」が、例えば本明細書で明示的に言及されている特定の技法を含む、当業者に利用可能な様々な技法のいずれかを利用し得ること、またはその利用を通じて達成され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、判定することは、物理的な試料の操作を含む。いくつかの実施形態では、判定することは、例えば、関連分析を実行するように適合されたコンピュータまたは他の処理装置を利用して、データまたは情報の検討及び/または操作を行うことを含む。いくつかの実施形態では、判定することは、情報源から関連した情報及び/または資料を受け取ることを含む。いくつかの実施形態では、判定することは、試料または疾患単位の1つ以上の特徴を比較可能な基準と比較することを含む。
【0030】
剤形または単位剤形:当業者は、用語「剤形」が、対象に投与するための活性薬剤(例えば、治療剤または診断薬)の物理的に別個の単位を指すのに使用され得ることを理解するであろう。通常、そのような各単位は、所定の量の活性薬剤を含む。いくつかの実施形態では、かかる量は、関連性のある集団に投与した場合に所望のまたは有益な結果と相関することが確定している投薬レジメン(すなわち、治療用投薬レジメン)に従って投与するのに適切な単位投与量(またはその全部)である。当業者は、特定の対象に投与される治療用の組成物または薬剤の総量は、1名以上の主治医によって判定され、複数の剤形の投与を含み得ることを理解している。
【0031】
投薬レジメン:当業者は、用語「投薬レジメン」が、典型的には、ある期間をおいて対象に個別に投与される(典型的には1回以上の)単位用量のセットを指すのに使用され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、所与の治療剤は、1回以上の用量を含み得る推奨投薬レジメンを有する。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数の用量を含み、各用量は、他の用量と時間的に隔たりがある。いくつかの実施形態では、個々の用量は、同じ長さの期間によって相互に分離される。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数の用量と、個々の用量を分離する少なくとも2つの異なる期間とを含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメン内の全ての用量は、同じ単位薬用量である。いくつかの実施形態では、投薬レジメン内の異なる用量は、異なる量である。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、第1の薬用量での初回投与と、その後に続く、第1の薬用量とは異なる第2の薬用量での1回以上の追加投与とを含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、第1の薬用量での初回投与と、その後に続く、第1の薬用量と同じ第2の薬用量での1回以上の追加投与とを含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメン(すなわち、治療用投薬レジメン)は、関連性のある集団にわたって投与された場合に、所望のまたは有益な結果と相関する。
【0032】
遺伝子療法:本明細書で使用するとき、用語「遺伝子療法」は、特定のゲノムDNA配列の挿入または欠失を行って、そのような療法が求められている障害または病態を治療するまたは予防することを意味する。いくつかの実施形態では、ゲノムDNA配列の挿入または欠失は、特定の細胞(例えば、標的細胞)で生じる。標的細胞は、哺乳動物由来であってもよく、及び/または哺乳動物対象(例えば、ヒト)の細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、異種DNAが標的細胞に導入される。この異種DNAは、異種DNAが発現され、それによってコードされる治療用産物が産生されるように、選択された標的細胞に導入され得る。追加として、または代替として、異種DNAは、治療用産物をコードするDNAの発現を何らかの形で媒介し得、あるいは治療用産物の発現を直接的または間接的に何らかの形で媒介するペプチドまたはRNAなどの産物をコードし得る。遺伝子療法はまた、欠陥遺伝子を置換する遺伝子産物をコードし、または導入先の哺乳動物もしくは細胞によって産生される遺伝子産物を補う遺伝子産物をコードする核酸を送達するために使用され得る。治療用産物をコードする異種DNAは、産物またはその発現を増強し、または他の形で改変するために、罹患した宿主の細胞に導入するより前に修飾されることがある。遺伝子療法はまた、遺伝子発現の阻害剤、またはリプレッサー、またはその他の修飾物質の送達を伴うこともある。遺伝子療法には、インビボまたはエクスビボの技法が含まれ得る。いくつかの実施形態では、ウイルス及び非ウイルスに基づく遺伝子導入法を使用して、目的のポリペプチドをコードする核酸を哺乳類細胞または標的組織に導入することができる。非ウイルスベクター送達システムは、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、及びポロキサマーまたはリポソームなどの送達担体と複合体化された核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームゲノムか統合ゲノムを有するDNAウイルス及びRNAウイルスを含む。遺伝子療法手順のレビューについては、Anderson, Science 256:808-813 (1992)、Miller, Nature 357:455-460 (1992)、Feuerbach et al., Kidney International 49:1791-1794 (1996)、Urnov et al., Nature Reviews Genetics 11, 636-646 (2010)、及び Collins et al., Proceedings Biologicial Sciences / The Royal Society, 282(1821):pii 20143003 (2015)を参照されたい。これらのそれぞれを参照により全体として本明細書に援用する。
【0033】
阻害剤:本明細書で使用するとき、用語「阻害剤」は、その存在、レベル、程度、タイプ、または形態が、別の薬剤(例えば、阻害された薬剤、または標的)のレベルまたは活性の低下と相関する薬剤、病態、または事象を指す。一般に、阻害剤は、例えば、小分子、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、金属、及び/または関連する阻害活性を示す他の任意の疾患単位、病態、または事象を含む任意の化学的分類の薬剤であり得、またはその薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、阻害剤は、例えばその標的に結合することにより、標的に直接にその影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、阻害剤は、標的のレベル及び/または活性が低下するように、標的のレギュレーターと相互作用すること、及び/または他の形でレギュレーターを変化させることにより、間接的にその影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、阻害剤は、チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3及び/またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、CD80、CD86、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、HVEM(例えば、TNFRSF14またはCD270)、KIR、A2aR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、アデノシン、またはTGF(例えば、TGFβ)から選択されるチェックポイント分子を標的とするチェックポイント阻害剤を含み、またはそのチェックポイント阻害剤である。ある特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-L1抗体またはそのフラグメント、例えば、ペムブロリズマブを含む。
【0034】
同一性:本明細書で使用するとき、用語「同一性」は、高分子分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間及び/またはポリペプチド分子間の全体的な相似度を指す。いくつかの実施形態では、高分子分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である場合に、互いに「実質的に同一」であると見なされる。例えば、2つの核酸またはポリペプチドの配列のパーセント同一性の計算は、最適な比較のために2つの配列をアラインメントすることによって行うことができる(例えば、最適なアラインメントのために第1の配列及び第2の配列の一方または両方にギャップを導入することがあり、比較目的のため非同一配列を無視することがある)。ある特定の実施形態では、比較のためにアラインメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%である。そして、対応する位置にあるヌクレオチドが比較される。第1の配列のある位置が、第2の配列の対応する位置と同じ残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)で占められている場合、その位置で分子は同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、配列に共通する同一位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の判定は、数学的アルゴリズムを使用して行い得る。例えば、2つのヌクレオチド配列間の一致度は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り入れられているMeyers and Miller(CABIOS,1989,4:11-17)のアルゴリズムを用いて判定することができる。いくつかの例示的な実施形態では、ALIGNプログラムを用いて行われる核酸配列比較では、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用する。2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、代替として、NWSgapdna.CMP行列を用いるGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して判定することもできる。
【0035】
医薬組成物:本明細書で使用するとき、用語「医薬組成物」は、活性薬剤(例えば、インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター)が1種以上の薬学的に許容される担体(例えば、[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3))と共に製剤化された組成物を指す。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、関連性のある集団に投与された場合に所定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンにおける投与に適切な単位薬用量で存在する。医薬組成物は、経口投与、例えば、飲薬(水溶性または非水溶性の溶液または懸濁液)、錠剤(例えば、口腔吸収、舌下吸収、及び体内吸収を標的とするもの)、ボーラス、粉末、顆粒、舌に塗布するペースト、非経口投与、例えば、膀胱内、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外の注入による、例えば、無菌溶液もしくは無菌懸濁液、または徐放性製剤としての投与、局所適用、例えば、皮膚、肺、または口腔に塗布されるクリーム、軟膏、または放出制御パッチもしくは放出制御スプレーとしての適用、膣内または直腸内に、例えば、ペッサリー、クリーム、または泡としての適用、舌下適用、眼への適用、経皮的適用、あるいは経鼻的適用、経肺的適用、及び他の粘膜面への適用、に適したものを含め、固体または液体の形態で投与するために特別に製剤化され得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、膀胱内注入のための懸濁液(例えば、滅菌懸濁液)として製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ヒト対象への投与が意図されており、ヒト対象への投与に適している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は無菌であり、実質的にパイロジェンフリーである。
【0036】
薬学的に許容される担体:本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される担体」は、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒カプセル化材料など、ある器官または身体部分から別の器官または身体部分への対象化合物の搬送または輸送に関与する、薬学的に許容される材料、組成物、または溶媒剤を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、かつ患者に有害でないという意味において「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース、トラガント末、麦芽、ゼラチン、タルク、カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、発熱因子を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、pH緩衝溶液、ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ酸無水物、ならびに医薬製剤に用いられる他の非毒性の親和性物質が挙げられる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む。
【0037】
予防する、または予防:本明細書で使用される用語「予防する」または「予防」は、特定の疾患、障害または病態(例えば、膀胱癌(例えば、高悪性度NMIBC)など、本明細書に記載のがん)の1つ以上の症状の、発症の遅延、及び/または頻度の減少及び/または重症度の低下を意味する。いくつかの実施形態では、予防は、特定の疾患、障害または病態の1つ以上の症状の発現、頻度、及び/または強度の統計的に有意な減少が、その疾患、障害または病態に陥りやすい集団において観察される場合に、薬剤がその疾患、障害または病態を「予防」すると見なされるように、人口当たりで評価される。予防は、疾患、障害または病態の発現が所定の期間遅れた場合に完了したと見なすことができる。
【0038】
難治性:本明細書で使用するとき、用語「難治性」は、提供された組成物の投与後に、臨床の医療関係者によって通常認められる期待された臨床効果を奏さない任意の対象を意味する。
【0039】
奏効:本明細書で使用するとき、治療に対する奏効は、治療の結果として生じる、または治療と相関する、対象の病態における任意の有益な変化を指し得る。このような変化には、病態の安定化(例えば、治療がなければ起こるであろう悪化の防止)、病態の1つ以上の症状の改善、及び/または病態の治癒の見通しの改善が含まれ得る。奏効は、対象の奏効を指す場合、または腫瘍の奏効を指す場合がある。腫瘍または対象の奏効は、臨床的基準及び客観的基準を含む様々な基準に従って測定され得る。奏効を評価するための技法としては、対象から(例えば、生検で)得られた試料中の腫瘍マーカーの存在またはレベル、細胞診、膀胱鏡検査、臨床検査、陽電子放出断層撮影、胸部X線CTスキャン、MRI、超音波検査、内視鏡検査、腹腔鏡検査、及び/または組織診が挙げられるが、これらに限定されない。これらの技法の多くは、腫瘍の大きさを判定するため、または別の方法で総腫瘍量を判定するために使用することができる。的確な奏効基準は、腫瘍群及び/または患者群を比較する場合、比較すべき群が、奏効率を判定するための同じまたは同等の基準に基づいて評価されることを条件として、任意の適切な方法で選択することができる。当業者であれば、適切な基準を選択することができよう。
【0040】
試料:本明細書で使用するとき、用語「試料」は、本明細書に記載される、対象となっている採取元(例えば、腫瘍)から得られた、またはそれに由来する生体試料を指す。いくつかの実施形態では、生体試料は、生体組織または生体液を含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、組織生検試料、骨髄、血液、血球、腹水、組織または細針生検試料、細胞含有体液、遊離核酸、喀痰、唾液、尿、脳脊髄液、腹腔液、胸腔内液、糞便、リンパ液、婦人科分泌液、皮膚スワブ、膣スワブ、口腔スワブ、鼻腔スワブ、乳管洗浄液または気管支肺胞洗浄液などの洗浄液または灌流液、吸引物、剥離物、骨髄検体、摘出標本、その他の体液、分泌物、及び/または排泄物、及び/またはその細胞を含むことができる。いくつかの実施形態では、生体試料は、個体、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)から得られた細胞を含む。いくつかの実施形態では、得られた細胞は、試料が得られた個体からの細胞であるか、または試料が得られた個体からの細胞を含む。いくつかの実施形態では、試料は、任意の適切な手段により、対象となっている採取元から直接得られた「一次試料」である。例えば、いくつかの実施形態では、一次生体試料は、生検(例えば、微細針吸引生検または組織生検)、外科手術、または体液の採取(例えば、血液、リンパ液、または糞便)からなる群から選択される方法によって得られる。いくつかの実施形態では、文脈から明らかなように、「試料」という用語は、一次試料を処理すること(例えば、一次試料の1つ以上の成分を除去すること、及び/または1つ以上の薬剤を一次試料に添加すること)によって得られる調製物を指す。例えば、半透膜を用いてろ過することが行われる。そのような「処理が行われた試料」は、例えば、試料から抽出された核酸またはポリペプチド、あるいは一次試料を、mRNAの増幅または逆転写、特定成分の単離及び/または精製などの技法に供するることによって得られる核酸またはポリペプチドを含み得る。
【0041】
対象:本明細書で使用するとき、用語「対象」は、生物、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、ネコ、またはイヌ)を指す。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、成人、青年、または小児対象である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害または病態、例えば、本明細書に記述のとおり治療することができる疾患、障害または病態、例えば、本明細書に記載されているがんまたは腫瘍(例えば、膀胱癌または膀胱腫瘍、例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC))に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態に罹患しやすい。いくつかの実施形態では、罹患しやすい対象は、疾患、障害、または病態に罹患しやすい素因を有し、及び/または(基準対象または基準集団で観察される平均リスクと比べて)疾患、障害、または病態を発症するリスクの増加を示す。いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の疾患、障害または病態と診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害または病態の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態の特定の症状(例えば、疾患の臨床症状)または特徴を示さない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態のいずれの症状または特徴も示さない。いくつかの実施形態では、対象は患者である。いくつかの実施形態では、対象は、診断及び/または療法が施される及び/または施されている個体である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態を診断及び/または治療するために、特定の療法を受けているか、または受けたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、対象の集団、例えば、本明細書に記載される組成物の臨床試験を受けている患者の集団の一部である。
【0042】
治療有効量:本明細書で使用するとき、用語「治療有効量」は、その量がそのために投与される所望の効果をもたらす量を意味する。いくつかの実施形態では、この用語は、治療用投薬レジメンに従って疾患、障害、及び/または病態に罹患しているかまたは罹患しやすい集団に投与された場合に、その疾患、障害、及び/または病態を治療するのに十分な量を指す。いくつかの実施形態では、治療有効量は、疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の症状の発生率及び/または重症度を低減し、及び/または発症を遅延させる量である。当業者は、「治療有効量」という用語が、実際には、特定の個体において治療が成功することを必要としないことを理解するであろう。むしろ、治療有効量は、そのような治療を必要とする患者に投与されたときに、かなりの数の対象に特定の所望の薬理反応をもたらす量であり得る。いくつかの実施形態では、治療有効量への言及は、1つ以上の特定の組織(例えば、疾患、障害、または病態の影響を受ける組織)または体液(例えば、血液、唾液、血清、汗、涙、または尿)で測定される量への言及であり得る。当業者は、いくつかの実施形態では、特定の薬剤または療法の治療有効量が、単回用量で処方及び/または投与され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、治療効果のある薬剤は、例えば、投薬レジメンの一部として、複数の用量で処方及び/または投与され得る。
【0043】
治療:本明細書で使用するとき、用語「治療」(同様に「治療する」または「治療すること」)は、特定の疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の症状、特徴、及び/または原因を部分的または完全に軽減する、改善する、緩和する、抑制する、その発症を遅延させる、その重症度を低減させる、及び/またはその発生率を低減させる療法の任意の施行を意味する。いくつかの実施形態では、そのような治療は、関連する疾患、障害、及び/または病態の兆候を示さない対象、及び/または疾患、障害、及び/または病態の初期兆候のみを示す対象の治療であり得る。あるいは、またはさらに、そのような治療は、関連する疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の確立された徴候を示す対象の治療であり得る。いくつかの実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、及び/または病態に罹患していると診断された対象の治療であり得る。いくつかの実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、及び/または病態の発症リスクの増大と統計的に相関する1つ以上の感受性因子を有することが分かっている対象の治療であり得る。
【0044】
本開示は、一部、本明細書に記載の組成物(例えば、医薬組成物)の投与が、比較的長期の期間、例えば、少なくとも1年間の投与にわたってがん(例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)などの膀胱癌)を治療するのに有効であるという発見に基づいている。いくつかの実施形態では、組成物は、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクターと、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、単剤療法として投与される。他の実施形態では、本組成物は、1つ以上の他の治療剤(例えば、チェックポイント阻害剤及び/または抗コリン剤)と併用して投与される。
【0045】
対象または患者集団
本開示は、とりわけ、対象または患者集団のがん(例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)などの膀胱癌)を治療する方法を含む。本開示はまた、対象または患者集団に投与された(例えば、本明細書に記載の)組成物の有効性をモニタリングまたは評価する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象または患者集団は、膀胱癌、例えば、高悪性度NMIBCを含むまたは有する。本開示は、一部、がん性腫瘍(例えば、膀胱腫瘍、例えば、高悪性度NMIBC腫瘍)の増殖が阻害または低減されるように、本明細書に記載の組成物を使用して対象を治療することを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト、例えば、膀胱組織の異常な細胞増殖を特徴とする障害または病態を有するヒト患者である。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類などの「非ヒト動物」である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、免疫応答の増強を必要としているヒト患者である。本明細書に記載の方法及び組成物は、抗増殖性、アポトーシス、血管新生抑制、及び/または免疫増強のうちの1つ、2つ、3つ、または4つなどの抗腫瘍効果を促進することによって治療できる障害を有するヒト患者の治療に好適である。
【0047】
いくつかの実施形態では、対象または患者集団は、上皮内癌(CIS)及び/または高悪性度乳頭状疾患を含むまたは有する。いくつかの実施形態では、対象または患者集団は、Ta膀胱癌またはT1膀胱癌を含むまたは有する。いくつかの実施形態では、対象または患者集団は、バシル・カルメット-ゲラン(BCG)抵抗性癌を含むまたは有する。いくつかの実施形態では、対象は、BCG難治性癌または再発性癌(例えば、再発性NMIBC)を含むまたは有する。いくつかの実施形態では、対象は、BCG不応性NMIBCを有する。いくつかの実施形態では、BCG抵抗性、BCG難治性、またはBCG不応性と見なされる対象は、例えば、承認されたまたは標準のケアレジメン(例えば、規制ラベル指示のレジメン)と比較して、BCGの総用量もしくは用量の一部またはBCG治療を受けたことがある。いくつかの実施形態では、対象がBCGの総用量またはBCG治療を受けることができないかまたは受ける意思がないため、及び/または対象への投与に利用できるBCGが不十分であったため、対象は用量の一部を受けた可能性がある。いくつかの実施形態では、対象または患者集団は、2以下の米国東海岸がん臨床試験グループステータスを有するまたは含む(例えば、Oken et al., Am J. Clin. Oncol. 5:649-655 (1982)参照)。
【0048】
治療方法
本開示は、とりわけ、本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)を投与することにより、対象または患者集団におけるがん(例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)などの膀胱癌)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、対象における腫瘍細胞(例えば、膀胱腫瘍細胞、例えば、高悪性度NMIBC腫瘍細胞)の増殖を阻害する方法を提供し、当該方法は、例えば、本明細書に記載される投与レジメンに従って、本明細書に記載される対象または患者集団に、治療有効量の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)を投与することを含む。
【0049】
本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)は、本明細書に記載の対象または患者集団におけるがん(例えば、膀胱癌、例えば、高悪性度NMIBC)を治療(例えば、阻害、低減、改善、または予防)するために、本明細書に記載の投与レジメンに従って投与され得る。
【0050】
本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)は、本明細書に記載の対象または患者集団におけるがん性腫瘍の増殖を阻害するための単剤療法として使用することができる。あるいは、本明細書に記載の組成物は、がん性障害(例えば、膀胱癌、例えば、高悪性度NMIBC)を治療または予防するために、他の治療剤、手術、またはモダリティと併用して使用され得る。
【0051】
投与レジメン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)は、約2.25×1013個のウイルス粒子(vp)の用量で、例えば、本明細書に記載の組成物による初期治療後3か月ごとに(例えば、3か月時点で、6か月時点で、9か月時点で、12か月時点で、15か月時点で、18か月時点で、21か月時点で、24か月時点で、36か月時点で、48か月時点で、60か月時点で、またはそれ以上の時点で)約10ml、約25ml、約50ml、約75ml、約100ml、約150ml、または約200mlの総量を投与される。いくつかの実施形態では、用量は、膀胱内注入によって投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、約1.0×1011vp/ml~約3.0×1011vp/ml(例えば、約1×1011vp/ml、1.2×1011vp/ml、1.4×1011vp/ml、1.6×1011vp/ml、1.8×1011vp/ml、2.0×1011vp/ml、2.2×1011vp/ml、2.4×1011vp/ml、2.6×1011vp/ml、2.8×1011vp/ml、または約3.0×1011vp/ml)の用量で3か月ごとに(例えば、本明細書に記載の組成物による初回治療後、3か月時点で、6か月時点で、9か月時点で、12か月時点で、15か月時点で、18か月時点で、21か月時点で、24か月時点で、及びそれ以上の時点で)投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、約1.0×1011vp/mlの用量で投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、約3.0×1011vp/mlの用量で投与される。
【0053】
併用療法
本開示は、とりわけ、少なくとも1つの他の治療剤、手術、またはモダリティと併用して使用するための、本明細書に記載される組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)を含む。いくつかの実施形態では、他の治療剤、手術、またはモダリティは、がん(例えば、膀胱癌、例えば、高悪性度NMIBC)に対する標準的ケア治療、抗体またはその抗原結合性フラグメント、免疫調節剤(例えば、副刺激分子の活性剤または抑制分子の阻害剤)、ワクチン(例えば、治療用がんワクチン)、あるいは本明細書に記載の対象または患者集団におけるがん性腫瘍の増殖を治療及び/または抑制する本明細書に記載されている免疫療法の任意の他の形態のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、または5つを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、(例えば、本明細書に記載されている)1つ以上の治療剤、手術、またはモダリティが、本明細書に記載される組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)による処置の前、同時、及び/または後に投与される。本明細書に記載の組成物と、治療剤、手術、またはモダリティとは、同時にまたは任意の順序で順次に、投与または使用することができる。本明細書に記載される組成物と治療剤、手術、またはモダリティとの任意の併用及び順序を用いることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)と追加の治療剤との併用投与は、本組成物または追加の治療剤のいずれか単独でもたらされるがんの改善を上回るほどの改善をもたらす。併用の効果と各薬剤の単独効果との差は、統計的に有意な差となり得る。いくつかの実施形態では、併用の効果は、相乗効果となり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物と追加の治療薬との併用投与は、標準的な投薬レジメン、例えば、追加の治療薬について承認された投薬レジメンと比較して、用量を減らし、用量数を減らし、及び/または投与頻度を減らして追加の治療剤を投与することを可能にする。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療方法は、他の手段による治療における医学的状態の他の治療法(例えば、バシル・カルメット-ゲラン(BCG)を含む治療法)が、失敗した対象、またはそれほど成功しなかった対象に実施される。さらに、本明細書に記載される治療方法は、医学的状態の1つ以上の追加の治療と併用して実行することができる。例えば、本方法は、本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)の投与の前、その投与と実質的に同時に、または投与の後に、がんレジメン、例えば、骨髄非破壊的化学療法、外科手術、ホルモン療法、及び/または放射線を投与することを含むことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗コリン剤が、本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)による治療の前に、同時に、または後に投与される。いくつかの実施形態では、抗コリン剤は、本明細書に記載の組成物による治療中に、尿意切迫を予防、治療、または緩和する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗コリン剤が、本明細書に記載の組成物による治療に先立って、本明細書に記載の組成物を投与する例えば少なくとも約5分前に、約10分前に、約20分前に、約30分前に、約1時間前に、約2時間前に、約3時間前に、約4時間前に、約5時間前にまたはそれ以上前に投与される。
【0058】
抗コリン薬は、イプラトロピウム、アトロピン、グリコピロニウム、またはチオトロピウム、または前述のいずれかの塩、溶媒和物、エステル、異性体、多形体、または誘導体を含むことができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗コリン剤は、塩化トロスピウム(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,998,430号に記載されている)を含む。いくつかの実施形態では、抗コリン剤は、臭化チオトロピウム(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれるWO2004/064789に記載されている)を含む。いくつかの実施形態では、抗コリン剤は、臭化グリコピロニウム(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれるWO2001/17480に記載されている)を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療剤は、生物学的製剤もしくは免疫薬を含むか、または生物学的製剤もしくは免疫薬である。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、腫瘍浸潤リンパ球、CAR-T細胞、抗体、抗原、治療ワクチン(例えば、患者自身の腫瘍細胞、または例えば、ある特定の腫瘍(例えば、膀胱腫瘍)によって産生される抗原などの他の物質から作られる)、免疫調節剤(例えば、サイトカイン、例えば、免疫調節薬剤または生物学的反応修飾物質)、チェックポイント阻害剤、または他の免疫薬を含む。ある特定の実施形態では、免疫薬は、免疫グロビン、免疫賦活薬(例えば、細菌ワクチン、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン、治療ワクチン、ワクチン組み合わせ、またはウイルスワクチン)及び/または免疫抑制剤(例えば、カルシニューリン阻害剤、インターロイキン阻害剤、またはTNF-α阻害剤)を含む。
【0060】
本明細書に記載される併用療法のための追加の治療剤には、免疫チェックポイント治療薬(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、またはセミプリマブ)、他のモノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ベバシズマブ、カツマキソマブ、デノスマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、ラムシルマブ、ペルツズマブ、ニモツズマブ、ラムブロリズマブ、ピディリズマブ、シルツキシマブ、BMS-936559、RG7446/MPDL3280A、またはMEDI4736)、抗体薬物複合体(例えば、ブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(登録商標)、Seattle Genetics)、アドトラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標)、Roche)、ゲムツズマブオゾガマイシン(Wyeth)、CMC-544、SAR3419、CDX-011、PSMA-ADC、BT-062、及びIMGN901(例えば、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Sassoon et al.,Methods Mol. Biol. 1045:1-27 (2013)、Bouchard et al., Bioorganic Med. Chem. Lett. 24: 5357-5363 (2014)参照))、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)と併用して、チェックポイント阻害剤が、患者(例えば、膀胱癌(例えば、NMIBC)を有する患者)に投与される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、患者が、例えば、本明細書に記載の1つ以上のアッセイ(例えば、生検)を用いて判定されて、腫瘍(例えば、高悪性度腫瘍、例えば、高悪性度膀胱腫瘍)に対して陽性であると判定される場合に投与される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、,CEACAM-1、CEACAM-3及び/またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、CD80、CD86、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、HVEM(例えば、TNFRSF14またはCD270)、KIR、A2aR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、アデノシン、またはTGF(例えば、TGF-β)から選ばれるチェックポイント分子を標的とする。
【0062】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、もしくはピディリズマブを含むか、またはそれらから選択される。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブを含むか、またはペムブロリズマブである。ペムブロリズマブ(ラムブロリズマブ、MK-3475、MK03475、SCH-900475、またはKEYTRUDA(登録商標)として知られている)は、PD-1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である(例えば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hamid, O. et al. (2013) New England Journal of Medicine 369 (2): 134-44、WO2009/114335、及び米国特許第8,354,509号に開示されている)。ペムブロリズマブの重鎖配列及び軽鎖配列のアミノ酸配列を表1に示す。


【表1】
【0063】
有効性の評価またはモニタリングの方法
本開示は、とりわけ、対象(例えば、がん、例えば、本明細書に記載のがん、例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を有する対象)における本明細書に記載の組成物の効力を評価するまたはモニタリングする方法を含む。有効性を評価するためのアッセイ及び技法としては、対象から(例えば、生検で)得られた試料中の腫瘍マーカーの存在またはレベル、細胞診、膀胱鏡検査、臨床検査、陽電子放出断層撮影、MRI、超音波検査、内視鏡検査、腹腔鏡検査、及び/または組織診が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物の用量を投与してから、約1週間後、2週間後、3週間後、1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、6か月後、7か月後、8か月後、9か月後、10か月後、11か月後、12か月後、15か月後、18か月後、21か月後、24か月後、またはそれ以上の期間の後に、1つ以上のアッセイが行われる。
【0064】
いくつかの実施形態では、アッセイは、対象または対象からの試料に対して実施される。いくつかの実施形態では、アッセイは、患者集団または患者集団からの1つ以上の試料に対して実施される。いくつかの実施形態では、試料が対象から取得される。いくつかの実施形態では、試料は、血液試料(例えば、血漿または血清試料)、唾液試料、組織試料、または尿試料を含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、対象から(例えば、膀胱組織の)生検試料を取得すること、例えば、組成物による少なくとも1年の治療後に対象から生検材料を取得することを含む。いくつかの実施形態では、生検は、試料(例えば、尿試料)の細胞診及び/または対象の膀胱鏡検査の一方または両方に追加して実施される。他の実施形態では、生検は、試料(例えば、尿試料)の細胞診及び/または対象の膀胱鏡検査の一方または両方の代わりに実施される。いくつかの実施形態では、生検試料は膀胱組織試料を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物を投与するよりも前に、生検試料が、患者が腫瘍(例えば、高悪性度腫瘍、例えば、高悪性度膀胱腫瘍)に対して陽性であることを示す。いくつかの実施形態では、患者からの生検が腫瘍陽性であると判定された場合に、チェックポイント阻害剤(例えば、本明細書に記載されているチェックポイント阻害剤)が投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)を投与された対象は、組成物中のベクターの生体内分布または放出の一方または両方について評価またはモニタリングされる。いくつかの実施形態では、試料は、血液試料(例えば、血漿または血清試料)、唾液試料、組織試料、または尿試料を含む。いくつかの実施形態では、組成物中の本明細書に記載のベクター(例えば、インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター)は、試料(例えば、血液または尿試料)中に検出可能である。他の実施形態では、本明細書に記載のベクターは、例えば、本明細書に記載の投与レジメンで組成物を、少なくとも1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、6か月、またはそれ以上投与した後に、試料(例えば、血液または尿試料)中に検出されない。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で治療された対象が、本組成物による治療に対して完全奏効(CR)を示す。本明細書で使用される「完全奏効対象」は、本明細書に記載の組成物による治療に対して完全奏効(例えば、完全寛解)を示すがん(例えば、本明細書に記載のがん、例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC))を有する対象を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で治療された対象が、本組成物による治療に対して部分奏効を示す。本明細書で使用される「部分奏効対象」は、本明細書に記載の組成物による治療に対して部分奏効を示すがん(例えば、本明細書に記載のがん、例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC))を有する対象を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で治療された対象が、本組成物による治療に対して非奏効を示す。本明細書で使用される「非奏効対象」は、本明細書に記載の組成物による治療に対して奏効を示さないがん(例えば、本明細書に記載のがん、例えば、高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC))を有する対象を指す。
【0067】
対象または対象集団における完全奏効、部分奏効、または非奏効は、本明細書に記載のアッセイによって、例えば、(例えば、膀胱組織の)腫瘍に対する細胞診(例えば、尿細胞診)、膀胱鏡検査、または生検のうちの1つ、2つ、または3つによって識別することができる。いくつかの実施形態では、CRを示す対象は、本明細書に記載のアッセイ、例えば、腫瘍に対する陰性の尿細胞診、無病変膀胱鏡検査、または陰性の生検のうちの1つ、2つ、または3つで判定して、腫瘍または腫瘍タイプ(例えば、高悪性度腫瘍、例えば、高悪性度膀胱腫瘍)に対して陰性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で治療された対象集団は、本組成物による治療に対して完全奏効(CR)、部分奏効、または非奏効のうちの1つ、2つ、または3つを示す。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で治療された対象(例えば、CISを有する対象)集団は、本組成物による少なくとも約1年の治療後(例えば、本組成物による少なくとも約13か月、約14か月、約15か月、約16か月、約17か月、約18か月、約19か月、約20か月、約21か月、約22か月、約23か月、約2年またはそれ以上の治療後)に、約10%、約13%、約15%、約17%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約35%、約37%、約40%、約42%、約45%、約50%またはそれ以上の持続的奏効または高悪性度無再発生存期間(RFS)を示す。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で治療された対象(例えば、TaまたはT1疾患を有する患者など、乳頭状疾患を有する患者)集団は、本組成物による少なくとも約1年の治療後(例えば、本組成物による少なくとも約13か月、約14か月、約15か月、約16か月、約17か月、約18か月、約19か月、約20か月、約21か月、約22か月、約23か月、約2年またはそれ以上の治療後)に、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約35%、約37%、約40%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約52%、約53%、約55%、約57%、約60%、約62%、約65%、約67%、約70%またはそれ以上の持続的奏効または高悪性度RFSを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で治療された対象(例えば、CISまたは乳頭状疾患を有する対象)集団のCRの持続性(例えば、CRの持続性の中央値、CRの持続性の平均値)は、(例えば、本組成物による少なくとも約13か月、約14か月、約15か月、約16か月、約17か月、約18か月、約19か月、約20か月、約21か月、約22か月、約23か月、約2年またはそれ以上の治療後に)約1か月、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、約12か月またはそれ以上である。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で治療された対象(例えば、CISまたは乳頭状疾患を有する対象)集団は、本明細書に記載の組成物による12か月の治療から、本明細書に記載の組成物による15か月またはそれ以上の治療まで(例えば、組成物による約16か月、約17か月、約18か月、約19か月、約20か月、約21か月、約22か月、約23か月、約2年またはそれ以上の治療)、持続的奏効または高悪性度RFSにおいて5%未満の減少(例えば、約4%、約3%、約2%、約1%、またはそれ以下)を示す。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物による対象(または対象集団)の治療後、本明細書に記載の1つ以上のアッセイからの対象の結果が、対応する対照結果(例えば、疾患/障害のない対象(または対象集団)からの結果、及び/または本明細書に記載の組成物の用量を投与する前の任意の時間における同じ対象(または対象集団)からの結果)と比較され得る。いくつかの実施形態では、比較の後に、治療または投与に関する判定を行い得る。例えば、治療を継続すべきか中止すべきか、投与量を増やすべきか減らすべきか、及び/または投薬レジメンを変更すべきかの判定を下すことができる。いくつかの実施形態では、ある療法から別の療法に切り替える判定、例えば、本明細書に記載の組成物による単剤療法治療から、本明細書に記載の併用療法に切り替えるという判定が行われる。
【0072】
いくつかの実施形態では、対象(または対象集団)は、本明細書に記載の組成物による治療後、例えば、少なくとも約1か月、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、約12か月またはそれ以上(例えば、少なくとも約13か月、約14か月、約15か月、約16か月、約17か月、約18か月、約19か月、約20か月、約21か月、約22か月、約23か月、約2年またはそれ以上)の治療後に、膀胱切除をもはや必要としないか、または回避することが可能である。
【0073】
本明細書に記載される方法は、電子的、ウェブベース、または紙の形態などで、レポートを作成及び/または提供することを含むことができる。このレポートは、本明細書に記載の方法からの1つ以上の出力、例えば、本明細書に記載の治療に対する対象の奏効を含むことができる。いくつかの実施形態では、レポートは、紙または電子の形態などで生成され、これにより、対象について本明細書に記載された1つ以上の結果及び/またはエンドポイント、及び任意選択で、推奨される治療過程が特定される。いくつかの実施形態では、レポートは、対象の識別情報を含む。一実施形態では、レポートは、ウェブベースの形態である。
【0074】
いくつかの実施形態では、追加として、または代替として、レポートは、予後、抵抗性、または見込みがあるもしくは提案されている治療オプションに関する情報を含む。報告書は、治療オプションの予想される有効性、治療オプションの受容性、または例えばレポートで識別された対象へ治療オプションの適用することの適否に関する情報を含むことができる。例えば、レポートは、本明細書に記載の組成物及び/または1つ以上の追加の治療薬の対象への投与に関する情報、または推奨を含むことができる。レポートは、例えば、本明細書に記載の方法を実行してから7、14、21、30、または45日以内に、本明細書に記載の実体に送り届けることができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて対象が評価されるたびに、思い起こすためにレポートが生成される。対象は、本明細書に記載される組成物に対する反応性、及び/または例えば本明細書に記載される1つ以上のがん症状の改善について、対象をモニタリングするために、1か月ごと、2か月ごと、6か月ごと、もしくは1年ごとなどの間隔で、またはより頻繁にもしくはより少なく再評価することが可能である。いくつかの実施形態では、レポートは、少なくとも対象の治療歴を記録することができる。
【0076】
一実施形態では、本方法は、別の関係者にレポートを提供することをさらに含む。他の関係者とは、例えば、対象、介護人、医師、腫瘍医、病院、診療所、第三者支払人、保険会社、または役所であり得る。
【0077】
組成物及び投与
本開示は、とりわけ、(i)インターフェロン、例えばインターフェロンα-2bをコードする組み換え型非複製アデノウイルスベクターと、(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)とを含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー/プロモーターの制御下でヒトインターフェロンα2(IFNA2、インターフェロンα-2b)遺伝子をコードする複製欠損アデノウイルス5型(Ad5)ベクターであるnadofaragene firadenovacを含む。本明細書に記載の組成物は、医薬組成物に組み込むことができる。そのような医薬組成物は、例えば、疾患、例えば、がん(例えば、膀胱癌、例えば、NMIBC)の予防及び/または治療に有用であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤を含むように製剤化され得る。
【0078】
本明細書に記載される組成物は、その欠失、挿入、または置換変異体、生物学的に活性なフラグメント、及び対立遺伝子の形態を含む、1型及び/または2型のインターフェロンを含むかまたはこれをコードする。1型インターフェロンには、インターフェロン-α、-β、-ε、-κ、-ω、-δ、-ζ及び-τとそれらのサブタイプとがあり、一方、2型インターフェロンは、インターフェロン-γと呼ばれている(例えば、Lee et al.,Front.Immunol.9:2061(2018)参照)。特定のインターフェロン-αには、α-1(GenBankアクセッション番号NP076918)、α-1b(GenBankアクセッション番号AAL35223)、α-2、α-2a(GenBankアクセッション番号NP000596)、α-2b(GenBankアクセッション番号AAP20099)、α-4(GenBankアクセッション番号NP066546)、α-4b(GenBankアクセッション番号CAA26701)、α-5(GenBankアクセッション番号NP002160及びCAA26702)、α-6(GenBankアクセッション番号CAA26704)、α-7(GenBankアクセッション番号NP066401及びCAA26706)、α-8(GenBankアクセッション番号NP002161及びCAA26903)、α-10(GenBankアクセッション番号NP002162)、α-13(GenBankアクセッション番号NP008831及びCAA53538)、α-14(GenBankアクセッション番号NP002163及びCAA26705)、α-16(GenBankアクセッション番号NP002164及びCAA26703)、α-17(GenBankアクセッション番号NP067091)、α-21(GenBankアクセッション番号P01568及びNP002166)を含むがこれらに限定されないヒトインターフェロンαサブタイプと、米国特許第5,541,293号、米国特許第4,897,471号、及び米国特許第4,695,629号に記載のコンセンサスインターフェロンと、米国特許第4,414,150号に記載のハイブリッドインターフェロンとが含まれる。インターフェロン-γは、例えば、EP77,670A及びEP146,354A、ならびにGenBankアクセッション番号NP002168に記載されている。本開示の特定の組成物は、例えば、シグナル配列を有するかまたは有しない、米国特許第6,835,557号に記載されているインターフェロン-αをコードする組み換えアデノウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、非複製組み換えアデノウイルスベクターは、5型非複製アデノウイルスベクターを含むか、または5型非複製アデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、非複製組み換えアデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第6,210,939号に記載された組み換えアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組み換えアデノウイルスベクターは、少なくとも1つのIFNα-2(例えば、IFNα-2aまたはIFNα-2bの一方または両方)をコードする。ある特定の実施形態では、組み換えアデノウイルスベクターは、ヒトIFNα-2bをコードする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、インターフェロンIFN-α2bを発現するアデノウイルスベクターベースの遺伝子療法を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、組み換えアデノウイルスベクターが非複製アデノウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、組み換えアデノウイルスベクターは、複製可能アデノウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組み換えアデノウイルスベクターの投与は、IFN-α2b遺伝子のコピーを、対象内の細胞(例えば、尿路上皮細胞)に送達する。対象におけるIFN-α2bの産生は、抗増殖性、アポトーシス、血管新生抑制、及び免疫増強のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む1つ以上の抗腫瘍効果をもたらす可能性がある。本明細書に記載の組み換えアデノウイルスベクターを含む組成物を投与することにより、IFN-α2bへの(例えば、膀胱組織の)腫瘍の曝露のレベル及び/または期間を増加させ得る。本明細書に記載の組み換えアデノウイルスベクターを含む組成物による尿路上皮細胞の形質導入は、例えば、抗腫瘍効果をもたらす、IFN-α2bの持続的な過剰発現をもたらし得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、(i)インターフェロンα-2bをコードする非複製組み換えアデノウイルスベクター、及び(ii)[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(SYN3)を含む組成物)は、従来の薬務に従って、注射用の無菌製剤として製剤化することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、膀胱内注入のための無菌懸濁製剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、対象の尿路上皮組織における本明細書に記載のアデノウイルスベクターの形質導入を強化するために、ポリアミド界面活性剤(例えば、SYN3)を含む。
【0081】
本明細書に記載の組成物の適切な用量は、本組成物の用量が、対象における障害(例えば、がん、例えば、膀胱癌、例えば、NMIBC)を治療または予防することが可能であり、例えば、治療すべき対象の年齢、性別、及び体重、ならびに使用する特定の阻害化合物を含む様々な因子によって決まり得る。例えば、本明細書に記載の組み換えアデノウイルスベクターを含む1つの組成物の異なる用量が、その抗体の異なる製剤の用量と比較して、がん(例えば、NMIBC)を有する対象を治療するために必要とされ得る。対象に投与される用量に影響を与える他の要因としては、例えば、障害の種類または重症度が挙げられる。その他の要因としては、例えば、対象に時を同じくしてまたは過去に影響を与えた他の医学的障害、対象の健康全般、対象の遺伝的素因、食事、投与時期、排泄率、薬物の組み合わせ、及び対象に投与される他の追加の治療薬を挙げることができる。また、特定の対象に対する特定の投与量及び治療レジメンもまた、治療する医師の判断に基づいて調整できることを理解されたい。
【0082】
薬剤溶液は、本明細書に記載される組成物の治療有効量を含むことができる。このような有効量は、当業者であれば、投与された組成物の効果、または1つ以上の薬剤が使用される場合には、本組成物と1つ以上の追加の活性薬剤との組み合わせ効果に部分的に基づいて、容易に決定することができる。本明細書に記載の組成物の治療有効量はまた、個体の病状、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の奏効、例えば少なくとも1つの病態パラメータの改善、例えば本明細書に記載のがん(例えば膀胱癌、例えばNMIBC)の少なくとも1つの症状の改善を引き出す本明細書に記載の組成物の能力により異なり得る。例えば、本明細書に記載される組成物の治療有効量は、特定の障害、及び/または当技術分野で知られているもしくは本明細書に記載される特定の障害の症状のいずれか1つを抑制する(その重症度を軽減するまたは発生を無くす)ことができ、及び/または予防することができる。治療有効量はまた、治療上有益な作用が組成物の毒作用または有害作用を上回る量でもある。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、例えば、3か月ごとに膀胱内注入するために、約75mlの総量中に2.25×1013個のウイルス粒子(vp)で投薬するように、製剤化されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物の単回用量は、4つのバイアルを含むことができ、そのそれぞれは、3.0×1011vp/mLの非複製組み換えアデノウイルスベクターと、[[N-(3-コラミドプロピル)-N-(3-ラクトビオナミドプロピル)]-コラミド(Syn3)(例えば、20mgのSyn3)、クエン酸一水和物(例えば、0.2mgのクエン酸一水和物)、クエン酸ナトリウム二水和物(例えば、0.8mgのクエン酸ナトリウム二水和物)、ポリソルベート80(Tween(登録商標) 80)(例えば、10mgのTween(登録商標) 80)、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(例えば、164mgのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(例えば、28mgのリン酸二水素ナトリウム二水和物)、トロメタミン(例えば、28mgのトロメタミン)、スクロース(例えば、334mgのスクロース)、塩化マグネシウム六水和物(例えば、6mgの塩化マグネシウム六水和物)、グリセロール(例えば、1674mgのグリセロール)、及び(例えば、20mlを抽出可能な量の)水を含む賦形剤を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、汚染物質(例えば、宿主細胞(例えば、HEK293細胞)及び/または血清(例えば、ウシ胎仔血清)の成分(例えば、DNA及びタンパク質))を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、微量の汚染物質(例えば、宿主細胞(例えば、HEK293細胞)及び/または血清(例えば、ウシ胎仔血清)の成分(例えば、DNA及びタンパク質))を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤を実質的に含まない。
【0085】
特定の形態の選択または使用は、部分的には、意図された投与様式及び治療用途に依存し得る。例えば、全身的または局所的な送達を対象とした組成物は、注射可能または注入可能な溶液の形態であり得る。それに応じて、組成物を、非経口様式(例えば、静脈内、皮下、腹膜内、または筋肉内注射)による投与向けに製剤化することができる。本明細書で使用するとき、非経口投与とは、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を指し、通常は注射によるものであり、限定されないが、膀胱内、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹膜内、気管、皮下、表皮下、関節腔内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外の、脳内、頭蓋内、頸動脈内及び胸骨内への注射及び注入が含まれる。投与は、全身投与または局所投与があり得る。投与経路は、非経口投与、例えば、膀胱内への注入または注射による投与があり得る。いくつかの実施形態では、膀胱内投与は、カテーテルなどのデバイスによって遂行することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物の約75mlが、尿道カテーテルによって対象の膀胱に投与され、膀胱表面が組成物に最大限さらされるように対象が(例えば、約15分ごとに)体位を変えながら、約1時間膀胱内に留置される。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、0℃未満(例えば、約-20℃または約-80℃)の温度で保存するように製剤化され得る。いくつかの実施形態では、本組成物は、約2℃~約8℃(例えば、4℃)で最大2年間(例えば、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、1年間、または2年間)保存するように製剤化され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の対象へ投与するよりも前に、室温(例えば、約20℃~約25℃)で液状になるまで解凍される。
【0087】
当業者であれば、細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに使用するための投与量の範囲を処方する際に使用できることを理解するであろう。本明細書に記載の組成物の適切な投与量は、一般に、毒性をほとんどまたは全く伴わないED50を含む組成物の血中濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。本明細書に記載される組成物については、治療上有効な用量は、初めに細胞培養アッセイから推定することが可能である。細胞培養で決定されたIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで用量を処方することができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために利用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、局所投与(例えば、膀胱組織への局所投与)が望まれる場合、細胞培養または動物モデリングを用いて、局所部位内で治療上有効な濃度を達成するのに必要な用量を決定することができる。
【0088】
本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許などの参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定することを意図していない。本明細書で使用している全ての技術用語及び科学用語は、別途定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている同じ意味を有する。本発明の実施または試験には、本明細書に記載したものと類似または同等の方法及び材料を用いることができるが、本明細書には、好適な方法及び材料を記載している。
【0089】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明される。本実施例は、説明のためにのみ提供される。本実施例は、本開示の範囲または内容を何らかの形で限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0090】
実施例1.アデノウイルスベクターをベースとする遺伝子治療薬ADSTILADRIN(登録商標)(nadofaragene radenovec)の膀胱内注入臨床試験
組み換えアデノウイルス(rAd)-IFNα及びSyn3の製剤(Nadofaragene firadenovac(ADSTILADRIN(登録商標)))の安全性及び有効性を、BCG不応性の高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌患者における多施設、非盲検単一群臨床試験で評価した。ここで、「BCG不応性」とは、十分なBCG治療を受けた高悪性度筋層非浸潤性膀胱癌患者のうち、さらなるBCG膀胱内投与による効果が期待できず、投与すべきでない患者と定義した(第2試験、NCT02773849)。現在または過去に筋層(固有筋層)への浸潤または転移性疾患の形跡がある患者は、この試験から除外した。
【0091】
対象となる患者は、書面によるインフォームドコンセントの時点で18歳以上であり、2018年FDAガイドラインに準じてBCG不応性疾患の定義を満たす必要があった。これには、導入量6回中5回以上、維持療法3回中2回以上と定義される十分なBCG投与にもかかわらず、6か月時点でCISまたは高悪性度乳頭状疾患が持続する患者が含まれる(従来は「BCG難治性」と呼ばれていた)。また、BCG後に無病状態を達成してから6か月以内に高悪性度乳頭状NMIBCが再発した患者や12か月以内にCISが再発した患者(従来は「BCG再発性」と呼ばれていた)、さらにはBCG導入後にT1疾患が持続または進行している患者も含まれる。患者は、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)ステータスが2以下であり、平均余命が少なくとも2年であった。目に見える乳頭状腫瘍は全て切除する必要があり、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けているT1疾患の患者は、試験治療を開始する前の14~60日以内に追加の再TURBTを受けることが要求された。また、試験治療を開始する前に、明らかなCIS領域を放電治療した。
【0092】
有効性アウトカム
全体として、151人の患者(CISコホート103人、乳頭状[Ta/T1]コホート48人)を有効性分析対象集団に含み、これにはBCG不応性NMIBCの厳密な定義を満たす全ての患者を含めた。ICH E9ガイダンスに基づき、6人の患者(CISコホート4人、乳頭状コホート2人)は、主要な試験参加基準を満たさなかったため、有効性分析対象集団から除外した。2019年7月8日の本レポートのデータ分析カットオフ時点では、全ての患者が12か月目の有効性評価訪問を完了したか、または治療を中止して安全性評価を完了していた。18か月目及び24か月目の有効性評価訪問時に、さらにデータ分析を実施した。
【0093】
本試験の主要エンドポイントに関しては、CISコホートの55人(53.4%)の患者(95%CI:[43.3,63.3])がCRの主要エンドポイントを達成し、全てのCRを3か月目までに認めた(表2)。CIS患者におけるCR期間の中央値は9.69か月(95%CI、9.17か月~推定不能)であり(表2)、25人の患者(24.3%、95%CI[16.4,33.7])が12か月時点で高悪性度RFSを維持していた(図1)。特に初回CRのCIS患者では、45.5%が12ヵ月で高悪性度の再発がないままであった。CIS患者のうち、73人(70.9%)が再発性の高悪性度NMIBCを発症し、5人(4.9%)が排尿筋浸潤(≧pT2)に進行した。MIBCに進行した患者のうち、3人は試験参加時にT1 NMIBCの既往歴があり、1人は9か月目にCISで再発し、根治的膀胱切除術で潜伏pT2N0が確認され、最後の1人は、3か月目にCISで再発し、KEYNOTE-057臨床試験に登録され全身投与ペムブロリズマブを受けた後に膀胱切除でpT2N1に進行した。

【表2-1】
【表2-2】
【0094】
高悪性度の乳頭状(Ta/T1)NMIBC患者のうち、35人(72.9%,95%CI:[58.2,84.7])が3か月目に高悪性度再発がなく、21人(43.8%,95%CI[29.5,58.8])は12か月目に高悪性度再発がないままであった(図1)。したがって、奏効の持続性に関しては、3か月時点で高悪性度乳頭状のみのNMIBC患者の60.0%が、12か月時点でもその状態を維持していた。HG RFSの期間中央値は12.35か月(95%CI[6.67,20.27])であった。このコホートのうち、23人(48.0%)が追跡調査中に生検で高悪性度NMIBCの再発が証明され、1人(2.1%)が膀胱癌以外の原因(再発の証拠がない)で死亡、3人(6.3%)がMIBCへの進行を経験した。これら3人のうち、2人は根治的膀胱切除術時に潜伏MIBCと判明し、後者のうち1人は9か月後にCISで再発し、膀胱切除時にpT2bN0 MIBCと判明、他方は12か月目にcT1 NMIBCを再発し、pT2aN0 MIBCと判明した。
【0095】
膀胱鏡検査が正常であった6人の患者が、12か月後の生検時にCISであることが判明した。膀胱鏡検査または細胞診で高悪性度疾患の再発が認められない患者は、通常は生検を受けないが、治療開始12か月目に全患者が生検を受けた。これらの患者は、高悪性度腫瘍の再発を経験したと考えられたが、これら6人のうち5人は、実際には細胞診及び膀胱鏡検査のみに基づいて(生検が行われない場合に、細胞診及び膀胱鏡検査が高悪性度腫瘍再発に対して陰性である場合の典型例と同様に)高悪性度再発がないと考えられ、1人は尿細胞診が疑わしい結果であった。したがって、生検を行わない場合、CIS患者及び乳頭状患者のそれぞれ28人(27.2%)及び23人(47.9%)が12か月時点で高悪性度無再発生存期間を経験した。
【0096】
全試験コホートについて、なんらかの病期の再発が104人(68.9%)の患者で観察され、高悪性度NMIBCが96人(61.1%)の個体で観察され、筋層浸潤性膀胱癌への進行が8人(5.3%)の患者で観察され、1人が試験中の非膀胱癌関連死であった。1年後の高悪性度無再発生存期間は30.5%(95%CI[23.2,38.5])であった。
【0097】
CISコホートの32人(31.1%)及び乳頭状疾患コホートの11人(22.9%)を含む、合計43人(28.5%)の患者がデータカットオフまでに膀胱切除術を受けた。その結果、治療を受けた全患者の24か月膀胱切除不要生存期間は64.5%(95%CI[53.6,73.4])であり、コホート間で差がなかった(図2)。病理学的データは、2人を除く全ての患者(CIS及び乳頭状疾患コホートにそれぞれ1人)で利用可能であった。膀胱切除術を受けたCIS患者のうち、1人がpT0にダウンステージされ、3人がpT2以上にアップステージされた。このうち、pT2N1の患者1人はADSTILADRIN(登録商標)投与後にCISを再発し、Keynote-057でペムブロリズマブによる治療後に進行したものである。これら3人の患者のうち2人はまた、CISの試験に参加する前に、cT1 NMIBCの、ずっと前の既往歴を持っていた。膀胱切除術を受けた乳頭状コホートの患者のうち、4人(36.4%)が、膀胱切除標本にCISが存在する発散型病理を有することが確認され、2人が潜伏型MIBCであると判明した。したがって、膀胱切除術で筋肉浸潤性または膀胱外疾患にアップステージされた患者は5人(11.5%)のみであった。
【0098】
ADSTILADRIN(登録商標)を少なくとも1用量受けた全患者の24か月OSは91.9%(95%CI[80.9,96.7])となり、CIS患者では91.2%(95%CI[74.7,97.1])、乳頭状疾患患者では93.5%(95%CI[75.0,98.5])となった(図3)。長期フォローアップで治療が終了した患者5人の死亡が報告された。3人は心イベントによる二次的なもので、1人は肺炎によるものであった。1人の患者の死因は不明であった。5人の死亡例は、いずれも試験薬最終投与から4か月以上経過した後に発生した。
【0099】
完全奏効を示したCIS患者のうち、6か月、9か月、12か月、15か月、18か月、及び24か月で、それぞれ42人(76.4%)、36人(65.5%)、25人(45.5%)、24人(43.6%)、22人(21.4%)、及び20人(19.4%)が高悪性度再発のない状態にあった(表3、図4)。3か月の時点で高悪性度無再発生存期間を達成した乳頭状患者のうち、6か月、9か月、12か月、15か月、18か月、及び24か月で、それぞれ30人(85.7%)、28人(80.0%)、21人(60.0%)、19人(54.3%)、16人(33.3%)、及び13人(27.1%)が高悪性度無再発生存期間を維持した。完全奏効の持続性の中央値は、12か月のデータに基づき、9.72か月(9.17-24.28)であると推定した。


【表3】
【0100】
安全性アウトカム
患者の人口統計情報と試験薬に関連する有害事象(試験中に5%以上の患者に発生)とを表4及び表5に示す。全体では、試験期間中、146名(93.0%)の患者が有害事象(AE)を経験し、そのうち110名(70.1%)の患者が試験薬に関連する事象を経験した(表4及び表5)。薬剤関連で最も多く報告されたAEは、点滴注入時のカテーテル周囲の漏出(n=39、24.8%)、倦怠感(n=31、19.7%)、膀胱痙攣(n=25、15.9%)、及び尿意切迫(n=24、15.3%)であった(表3)。とりわけ、大多数の患者において、AEは一過性であり、グレード1または2のいずれかに分類された。グレード3または4の有害事象は29人の患者(18.5%)に発生し、そのうち試験薬に関連する事象は6人の患者(3.8%)のみが経験した。その内訳は、尿意切迫が2例であり、膀胱痙攣、尿失禁、失神及び高血圧が各1例であった。グレード4の敗血症の事象は、試験薬とは無関係であり、手術に関連したものであると考えられた。グレード5のAEはなかった。3人の患者がAEのために(膀胱痙縮、点滴注入中のカテーテル周囲の分泌、及び膀胱の良性新生物の同定のために、それぞれ1人の患者が)試験薬を中止した。

【表4-1】
【表4-2】


【表5-1】
【表5-2】
【0101】
結論
本試験では、ADSTILADRIN(登録商標)の膀胱内投与により、主要分析集団であるBCG不応性CIS±Ta/T1を有する患者の53.4%で完全奏効を達成した。これは、2つの別試験でバルルビシンが達成したCR率を大きく上回っており、臨床的に意義のある改善といえるものである。さらに、CRは有望なことに持続性があるようであり、CRを達成した患者のほぼ半数が12か月でも高悪性度の再発がないままであった。乳頭状BCG不応性NMIBCの患者では、3か月でのCR率は72.9%であった。重要なことには、筋層浸潤への進行はまれな事象となり、CISコホートの5人の患者(4.9%)と乳頭状コホートの3人の患者(6.3%)とにのみ発生した。これらの進行率は、膀胱温存療法を受けたBCG不応性NMIBC患者におけるこれまでの報告よりも低く、ADSTILADRIN(登録商標)の注入により膀胱癌の進行及びその後の死亡のリスクが高くなることはなく、疾患の自然経過を変える可能性を示唆している。さらに、調査コホート全体の24か月での膀胱切除不要生存期間は64.5%であり、この治療困難な疾患単位を持つ患者の大多数は、依然として外科手術による罹患を回避することを選択していることが示された。
【0102】
膀胱切除術を受けた患者のうち、CISコホートでは32人中3人(9.3%)が、pT2以上の病期の疾患であることが判明し、この中には膀胱切除術に進む前にペムブロリズマブによる治療を受けて進行した患者1人が含まれていた。3人の患者のうち2人は、試験に参加する前にcT1疾患の、ずっと前の既往歴があり、これらの患者はスクリーニング時に重症度が過小評価されている可能性があることを示唆している。さらに、膀胱切除術を受けた乳頭状コホートでは、最終病理検査でCISを併発している患者が複数見られた(4/11、36.3%)。乳頭状コホートでこのような多様な発散型病理が存在することは、膀胱切除術時でのCISの有病率を浮き彫りにしている。乳頭状疾患の患者の多くは、初診時にCISもまた潜伏しており、膀胱切除術時まで発見されなかった可能性が高い。歴史的には、乳頭状腫瘍の切除を受ける患者は、潜伏性CISを特定するために無作為に膀胱生検を受けることもあったが、そのような生検の結果は治療に影響しないため、もはや当たり前のように行われることではない。
【0103】
さらに、12か月の時点での膀胱生検は、長期間の追跡調査や持続性評価を開始する前に、観察されたCRの信憑性を確実にするために有用であった。ここでのADSTILADRIN(登録商標)の安全性プロファイルは、有害事象による治療中止が3例のみであり、治療に関連する死亡はなく、免疫関連の有害事象のパターンも認められなかったことから、許容範囲内であった。加えて、3か月に1回の膀胱内療法というADSTILADRIN(登録商標)の投薬スケジュールは、患者にとっても医師にとっても利便性が高いものであった。
【0104】
要約すると、BCG不応性のNMIBC患者に対するADSTILADRIN(登録商標)の膀胱内投与は、遺伝子治療としては初めての有効性を示すばかりでなく、管理可能な安全性プロファイル、及び送達スケジュールも示して、良好な利益リスクプロファイルをもたらす。これらのデータは、ADSTILADRIN(登録商標)が、歴史的に治療の困難な病状に対する重要な治療法の進歩であることを裏付けている。
【0105】
均等物
本発明を、その詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を説明するためのものであり、その範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023519709000001.app
【国際調査報告】