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特表2023-519710ウイルス感染症における呼吸機能の障害の治療に使用するためのフィトエクジソン及びその誘導体
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  • 特表-ウイルス感染症における呼吸機能の障害の治療に使用するためのフィトエクジソン及びその誘導体 図1
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  • 特表-ウイルス感染症における呼吸機能の障害の治療に使用するためのフィトエクジソン及びその誘導体 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ウイルス感染症における呼吸機能の障害の治療に使用するためのフィトエクジソン及びその誘導体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20230502BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P31/12
A61P11/00
A61P31/14
A61P31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559613
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 FR2021050503
(87)【国際公開番号】W WO2021198588
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2003131
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513285907
【氏名又は名称】ビオフィティス
(71)【出願人】
【識別番号】507416908
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ディルダ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ラフォン,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイエ,スタニスラス
(72)【発明者】
【氏名】アグス,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ディオ,ワリー
(72)【発明者】
【氏名】カメロ,セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ラティル,マチルド
(72)【発明者】
【氏名】シャバーヌ・ドゥ・サントーバン,ムーニア
(72)【発明者】
【氏名】トゥレット,ソンドリーヌ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、特にウイルス感染に関する、より詳細にはコロナウイルスによる感染における、哺乳類の呼吸機能の障害の治療に使用することを目的とした、フィトエクジソン及びフィトエクジソンの半合成誘導体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐少なくとも20‐ヒドロキシエクジソン;
並びに/又は
‐一般式(I):
【化1】
のフィトエクジソンの少なくとも1つの半合成誘導体であって:
V‐Uは炭素‐炭素単結合であり、Yはヒドロキシル基若しくは水素であるか、若しくはV‐UはC=Cエチレン結合であり;
Xは酸素であり
Qはカルボニル基であり;
は:(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)CO(C‐C)基;(C‐C)A基であって、AはOH、OMe、(C‐C)、N(C‐C)若しくはCO(C‐C)タイプの基で任意に置換された複素環を表す、基;CHBr基から選択され;
Wは、N、O及びSから選択され、好ましくはOであり、更に優先的にはSであるヘテロ原子である、フィトエクジソンの少なくとも1つの半合成誘導体;
並びに/又は
‐式(II):
【化2】
のフィトエクジソンの少なくとも1つの半合成誘導体
を含む、哺乳類のウイルス感染症に起因する呼吸機能の障害の治療に使用するための、組成物。
【請求項2】
前記呼吸機能の前記障害は、ライノウイルス、合胞体呼吸器ウイルス、流行性感冒ウイルス、A型インフルエンザウイルス、及びコロナウイルスから選択されるウイルスによる感染症に起因する、請求項1に記載の、使用するための組成物。
【請求項3】
前記呼吸機能の前記障害は、ACE2を哺乳類細胞の表面上の受容体として使用するコロナウイルスによる感染症に起因する、請求項1及び2のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項4】
前記呼吸機能の前記障害は、SARS‐CoV型のコロナウイルスによる感染症に起因する、請求項1~3のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項5】
前記呼吸機能の前記障害は、SARS‐CoV‐2型のコロナウイルスによる感染症に起因する、請求項1~3のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項6】
前記呼吸機能の前記障害の前記治療は、前記ウイルス感染症に罹患した哺乳類の呼吸不全の予防及び治療を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項7】
前記呼吸機能の前記障害の前記治療は、前記ウイルス感染症に罹患した哺乳類の急性呼吸窮迫症候群の予防及び治療を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項8】
前記呼吸機能の前記障害の前記治療は、呼吸筋機能の治療を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項9】
前記呼吸機能の前記障害の前記治療は、低酸素症、及びCOの排除能力の低下から選択される、ウイルス感染症に罹患した哺乳類の呼吸機能の疾患のうちの1つの治療を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項10】
前記呼吸機能の前記障害は:
‐患者を自宅又は一般医療ケアサービスに移送することを特徴とする、死亡及び治癒、
‐人工呼吸器の必要性、及び気道の持続的陽圧換気又は高流量の酸素といった非侵襲的呼吸補助の必要性によって定義される、呼吸不全型のイベントの回数、
‐順次呼吸器障害評価スコア(sequential respiratory failure evaluation score:SOFA)、及び肺重症度指数(pulmonary severity index:PSI)、及び滲出性炎症性疾患の進行のレベルを段階的に評価できるようにする医用撮像、
‐炎症誘発性及び抗炎症性サイトカイン血漿レベル
から選択されるパラメータのうちの少なくとも1つの変化に関連する、請求項1~9のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項11】
前記20‐ヒドロキシエクジソンは、植物又は植物の一部の抽出物の形態であり、前記植物は、前記植物の乾燥重量に対して少なくとも0.5%の20‐ヒドロキシエクジソンを含有する植物から選択され、前記抽出物は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の20‐ヒドロキシエクジソンを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項12】
注目すべきことに、前記抽出物の乾燥重量に対して0~0.05%の、前記抽出物の医薬品用途の無害性、可用性、又は効力に影響を及ぼす可能性がある不純物を含む、請求項11に記載の、使用するための組成物。
【請求項13】
前記植物は、Stemmacantha carthamoides、Cyanotis arachnoidea、及びCyanotis vagaから選択される、請求項11~12のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項14】
前記一般式(I)において:
Yはヒドロキシル基であり;
は:(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)CO(C‐C)基;(C‐C)A基であって、AはOH、OMe、(C‐C)、N(C‐C)又はCO(C‐C)タイプの基で任意に置換された複素環を表す、基から選択され;
Wは、N、O及びSから選択され、好ましくはOであり、より好ましくはSである、ヘテロ原子である、請求項1~13のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【請求項15】
一般式(I)の前記少なくとも1つの化合物は:
‐No.1:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐17‐(2‐モルホリノアセチル)‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン
‐No.2:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(3‐ヒドロキシピロリジン‐1‐イル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.3:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(4‐ヒドロキシ‐1‐ピペリジル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.4:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐[4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペリジル]アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.5:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐[2‐(3‐ジメチルアミノプロピル(メチル)アミノ)アセチル]‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.6:2‐[2‐オキソ‐2‐[(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐6‐オキソ‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル]エチル]スルファニル酢酸エチル;
‐No.7:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐(2‐エチルスルファニルアセチル)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
‐No.8:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(2‐ヒドロキシエチルスルファニル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1Hシクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン
から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の、使用するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にウイルス起源の疾患に関連する呼吸機能の障害の治療のための、フィトエクジソン及びフィトエクジソンの半合成誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス起源の呼吸器感染症は、上気道及び下気道に影響を及ぼす。これらの感染症の原因となるウイルスは多数存在する。上記ウイルスとしては特に、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、流行性感冒(インフルエンザ)ウイルス、A型インフルエンザ(H1N1)ウイルス、及びコロナウイルスが挙げられる。
【0003】
動物コロナウイルスは高い多様性を有する。過去20年間にヒトへのコロナウイルスの感染はいくつかの致命的な流行病を引き起こした。ヒトコロナウイルスは、上気道及び下気道の感染症を引き起こす。
【0004】
ある割合の患者は、流行病及び関与するコロナウイルスに応じて異なるものの、挿管を必要とする呼吸不全及び急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の急速な悪化を発症する(非特許文献1)。
【0005】
ARDSは、コロナウイルスに感染した患者の主な死因となっている(非特許文献2、3)。従って、呼吸器系の問題を可能な限り迅速に検出して治療することが不可欠である。
【0006】
21世紀の3つの主要な致命的なコロナウイルスの流行は、2003年のもの(中華人民共和国の広東省から発生したSARS‐CoV)、2012年のもの(中東から発生したMERS‐CoV)、及び2019年のもの(中華人民共和国の湖北省から発生したSARS‐CoV‐2)である。
【0007】
例えば、現在のCOVID‐19パンデミックにおける患者の死亡率は、3.6%である。感染した患者の13%は深刻な状態となる(即ち呼吸代償不全を伴う)と考えられている。現在、世界中でSARS‐CoV‐2によって、500,000人以上の症例及び25,000人以上の死者が発生している。
【0008】
結論として、呼吸器系が十分な酸素化及び二酸化炭素除去を提供できないことを特徴とする呼吸不全は、コロナウイルスに感染した患者に共通している。
【0009】
従って、呼吸機能の機能不全の評価は、コロナウイルス感染症に関する治療法の確立及び評価にあたって考慮するべき重要なパラメータである。
【0010】
特に肺上皮及び内皮細胞で発現されるアンジオテンシン2変換酵素(angiotensin‐2 converting enzyme:ACE2)は、SARS‐CoV及びSARS‐CoV‐2の受容体であり、これらはそれぞれ2003年及び2019年のSARS流行の原因である(非特許文献4、5、6)。アンジオテンシン・レニン系(angiotensin renin system:ARS)の一部を形成するACE2は、アンジオテンシンII(AngII)をアンジオテンシン1‐7(Ang‐1‐7)に変換する。Ang‐1‐7は、Mas受容体(MasR)に結合することによって、抗炎症、抗酸化、及び血管拡張作用を仲介する(非特許文献7、8、9)。反対にACEはアンジオテンシンI(AngI)をアンジオテンシンII(AngII)に変換する。AngIIがその受容体(1型AngII受容体(AT1))に結合すると、血管収縮、炎症誘発、及び酸化促進作用が生じる。ACE/AngII/AT1軸、及びACE2/Ang‐1‐7/MasR軸は、それぞれARSの「有害(harmful)」アーム及び「保護(protecting)」アームとして知られている(非特許文献10)。
【0011】
SARS‐CoVで蓄積された知識に基づくと、SARS‐CoV‐2とACE2との相互作用はACE2の活性を低下させ、これによってAng‐1‐7の産生が低減され、またACEによるAngIIの産生が過剰となり、これがARSの全体的な妨害につながると思われる。ARSの「保護」アームと「有害」アームとの間の不均衡は、COVID‐19に関連する急性肺病変(acute pulmonary lesion:APL)及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)において中心的な役割を果たすと思われる(非特許文献11、12)。
【0012】
「有害」ACE/AngII/AT1軸のシグナル伝達の利益となる、ARSの「保護」ACE2/Ang‐1‐7/MasRアームの阻害は、肺血管収縮(非特許文献13)、及びSARS‐CoV‐2に感染した患者のAPL/ARDSに向かって進行する器官の炎症/酸化性病変(非特許文献14)の原因であると思われる。この理論は、COVID‐19患者の血清AngIIのレベルが感染していない個体よりも有意に高く、また更に重要なことに、ウイルス負荷及び肺病変と線形の関連性を有していたことを示す、近年の研究によって支持されている(非特許文献15)。
【0013】
ACE2/Ang‐1‐7/Mas軸を刺激することによって、肺組織及び呼吸機能に有益な効果をもたらすことができる可能性が、いくつかの研究によって実証されている。これは特に、肺気腫(非特許文献16)、肺線維症(非特許文献17、18、19)、肺高血圧症(非特許文献20)、肺炎症(非特許文献21、22)、及びニコチン中毒(非特許文献23)の状態に当てはまる。
【0014】
アンジオテンシン1‐7は更に血管拡張性を有し、降圧作用(非特許文献24)及び抗高血圧作用(非特許文献25)を有する。
【0015】
フィトエクジソンは、昆虫の脱皮ホルモンと類似した構造のポリヒドロキシル化フィトステロールの重要なファミリーである。これらの分子は多くの植物種によって産生され、害虫に対する防御に関与している。主要なフィトエクジソンは、20‐ヒドロキシエクジソン(20E)である。
【0016】
20Eは、哺乳類の体内で薬理学的活性を有する。これは、ARSの保護アーム上のMas受容体を活性化させる(非特許文献26)。20EによるMasの動員は、正常な状態及び病理学的状態における多数の前臨床の有益な活性の原因である。
【0017】
20‐ヒドロキシエクジソンは、急性肺損傷(acute lung injury:ALI)のマウスモデルにおいて、インビボでの抗炎症作用を有している。血漿炎症性サイトカイン(TNF‐α、IL‐2、IL‐6、IL‐8)、及び抗炎症性サイトカイン(IL‐4、IL‐10)は、20‐ヒドロキシエクジソンによる治療によってそれぞれ減少及び増加する。炎症の調節は、治療を受けた動物の肺の組織学的検査によって示されるように、肺損傷の減少と関連している(非特許文献27、28)。
【0018】
BIO101は、純度が97%以上の20‐ヒドロキシエクジソンの経口製剤である。その調製方法は、特許文献1において開示されている。BIO101は、サルコペニア及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーにおいて臨床的に開発された、新規の候補薬である。後者の治療への応用は、特許文献2の主題である。特許文献3で開示されているように、半合成誘導体20‐ヒドロキシエクジソンも開発されており、上述のような治療用途に使用されている。
【0019】
SARS‐CoV又はSARS‐Cov‐2に感染した患者のアンジオテンシン・レニン系(ARS)の均衡の再確立を目的とした1つの選択肢は、変換酵素(ACE)の、又はアンジオテンシン2受容体(AT1)のアンタゴニストを用いて、ARSの「有害」アームを阻害することである。しかしながら、コロナウイルス感染症の状態においてACE/AngII/AT1軸に干渉することは不適切であり、また危険である可能性があるように思われる。というのは、ACE阻害剤は望ましくない呼吸器への影響を引き起こすことが知られており(非特許文献29)、またAT1受容体のアンタゴニストの使用は、SARS‐CoV及びSARS‐Cov‐2受容体であるACE2の発現を引き起こすことが知られており(非特許文献30、31)、これは細胞内にウイルスを侵入させやすくする効果を有するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2018/197731号(Lafont et al. 2018)
【特許文献2】国際公開第2018/197708号(Dilda et al. 2018)
【特許文献3】国際公開第2015/177469号(Lafont et al. 2015)
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Mckay & Al‐Haddad 2009
【非特許文献2】Greenland et al. 2020
【非特許文献3】Zhou et al. 2020
【非特許文献4】Hoffmann et al. 2020
【非特許文献5】Wan et al. 2020
【非特許文献6】Xu et al. 2020
【非特許文献7】Magalhaes et al. 2018
【非特許文献8】Jiang et al. 2013
【非特許文献9】van Twist et al. 2014
【非特許文献10】Santos et al. 2013
【非特許文献11】Kuba et al. 2005
【非特許文献12】Imai et al. 2005
【非特許文献13】Lipworth & Dagg 1994
【非特許文献14】Zhang & Baker 2017
【非特許文献15】Liu et al. 2020
【非特許文献16】Candida Bastos et al. 2019
【非特許文献17】Meng et al. 2014
【非特許文献18】Meng et al. 2015
【非特許文献19】Shao et al. 2019
【非特許文献20】Daniell et al. 2020
【非特許文献21】Ye et al. 2020
【非特許文献22】Chen et al. 2013
【非特許文献23】Zhang et al. 2018
【非特許文献24】Benter et al. 1993
【非特許文献25】Zhang et al. 2019
【非特許文献26】Dilda et al. 2019
【非特許文献27】Xia et al. 2016
【非特許文献28】Song et al. 2019
【非特許文献29】Kostis et al. 2005
【非特許文献30】Wang et al. 2016
【非特許文献31】Klimas et al. 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、感染した患者のアンジオテンシン・レニン系(ARS)の均衡の再確立のための別の方法を発見することが有利であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的のために、本発明は、哺乳類のウイルス感染症に起因する呼吸機能の障害の治療に使用するための、少なくとも1つのフィトエクジソン及び/又は少なくとも1つの半合成フィトエクジソン誘導体を含む組成物に関する。
【0024】
フィトエクジソン及び/又は半合成フィトエクジソン誘導体による、アンジオテンシン‐2変換酵素(ACE2)の下流のアンジオテンシン・レニン系(ARS)の「保護」アームの、Mas受容体の活性化を介した直接的な活性化は、哺乳類のウイルス感染症におけるARSの均衡の再確立のための有効な治療選択肢であると思われる。更にフィトエクジソン及びその半合成誘導体は、アンジオテンシン1‐7(Ang‐1‐7)の全ての効果を再現するものではない(Benter et al. 1993;Zhang F. et al. 2019)。これらはその抗炎症作用及び抗線維化作用を有するものの、哺乳類の心血管パラメータに影響を及ぼさない。しかしながら、降圧作用は、特にウイルス感染症及びショック状態に関連する呼吸窮迫の状況には有害であることが判明する可能性がある(Bitker & Burell et al. 2019;Wujtewicz et al. 2020)。フィトエクジソン及びその半合成誘導体はまた、有利なことに、ピーク吸気流量(peak inspiratory flow rate:PIFR)、ピーク呼気流量(peak expiratory flow rate:PEFR)、呼吸数、そして最終的にはPenhに影響を及ぼさない。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、個別に実装される、又は技術的に作用可能な各組み合わせで実装される、以下の特徴も満たす。
【0026】
フィトエクジソン及びその誘導体は有利には、医薬品グレードまで精製される。
【0027】
本発明に従って使用できる1つのフィトエクジソンは、例えば20‐ヒドロキシエクジソンであり、使用できるフィトエクジソンの半合成誘導体は、例えば20‐ヒドロキシエクジソンの半合成誘導体である。
【0028】
この目的のために、ある特定の実施形態によると、上記組成物は、20‐ヒドロキシエクジソン及び/又は20‐ヒドロキシエクジソンの少なくとも1つの半合成誘導体を含む。
【0029】
20‐ヒドロキシエクジソン及びその誘導体は有利には、医薬品グレードまで精製される。
【0030】
使用される20‐ヒドロキシエクジソンは、20‐ヒドロキシエクジソンが豊富な植物の抽出物の形態、又は20‐ヒドロキシエクジソンを活性剤として含む組成物の形態である。20‐ヒドロキシエクジソンが豊富な植物の抽出物は例えば、Stemmacantha carthamoides(Leuzea carthamoidesとしても公知)、Cyanotis arachnoidea、及びCyanotis vagaの抽出物である。
【0031】
得られた抽出物は好ましくは医薬品グレードまで精製される。
【0032】
一実施形態では、20‐ヒドロキシエクジソンは、植物抽出物、又は植物の一部の抽出物の形態であり、上記植物は、上記植物の乾燥重量に対して少なくとも0.5%の20‐ヒドロキシエクジソンを含有する植物から選択され、上記抽出物は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の20‐ヒドロキシエクジソンを含む。上記抽出物は好ましくは医薬品グレードまで精製される。
【0033】
上記抽出物をこれ以降、BIO101と呼ぶ。注目すべきことには、これは、上記抽出物の医薬品用途の無害性、可用性、又は効力に影響を及ぼす可能性がある微量化合物等の不純物を、抽出物の乾燥重量に対して0~0.05%含む。
【0034】
本発明の一実施形態によると、上記不純物は、ルブロステロン、ジヒドロルブロステロン又はポストステロンといった、炭素原子を19個又は21個有する化合物である。
【0035】
BIO101の製造の元となる植物は好ましくは、Stemmacantha carthamoides(Leuzea carthamoidesとしても公知)、Cyanotis arachnoidea、及びCyanotis vagaから選択される。
【0036】
フィトエクジソン、特に20‐ヒドロキシエクジソンの誘導体は、半合成によって得られ、特に特許文献3に記載された方法で得ることができる。
【0037】
ある特定の実施形態によると、本発明は、ライノウイルス、合胞体呼吸器ウイルス、流行性感冒(インフルエンザ)ウイルス、A型インフルエンザウイルス(H1N1)、及びコロナウイルスから選択されるウイルスによる哺乳類のウイルス感染症に起因する呼吸機能の障害の治療に使用するための、組成物に関する。
【0038】
アンジオテンシン‐2変換酵素(ACE2)の下流のアンジオテンシン・レニン系(ARS)の「保護」アームの、Mas受容体の活性化を介した直接的な活性化は、ARSの均衡を再確立することによって、コロナウイルスに感染した患者を急性呼吸窮迫症候群(ARDS)から保護するための、有効な治療選択肢であると思われる。
【0039】
ある特定の実施形態によると、本発明は、ACE2を哺乳類細胞の表面上の受容体として使用するコロナウイルスによるウイルス感染症に起因する呼吸機能の障害の治療に使用するための、組成物に関する。
【0040】
ある好ましい実施形態によると、本発明は、哺乳類におけるSARS‐CoVによるウイルス感染症に起因する呼吸機能の障害の治療に使用するための、組成物に関する。SARS‐CoVは、重篤な急性呼吸器症候群の原因となるコロナウイルスである。
【0041】
ある特定の実施形態によると、本発明は、哺乳類におけるSARS‐CoV‐2によるウイルス感染症に起因する呼吸機能の障害の治療に使用するための、組成物に関する。SARS‐CoV‐2は、COVID‐19パンデミックの重篤な急性呼吸器症候群の原因となる2型コロナウイルスである。
【0042】
ある特定の実施形態によると、呼吸機能の障害の治療は、ウイルス感染症の影響を受けた哺乳類の呼吸不全の予防及び治療を含む。
【0043】
ある特定の実施形態によると、呼吸機能の障害の治療は、ウイルス感染症に罹患した哺乳類の急性呼吸窮迫症候群の予防及び治療を含む。
【0044】
ある特定の実施形態では、本発明は、低酸素症、及びCOの排除能力の低下から選択される、ウイルス感染症に罹患した哺乳類の呼吸機能の障害のうちの少なくとも1つ以上の治療に使用するための、組成物に関する。
【0045】
ある特定の実施形態では、呼吸機能の障害の治療は、呼吸筋機能の治療を含む。
【0046】
一実施形態では、本発明は:
‐患者を自宅又は一般医療ケアサービスに移送することを特徴とする、死亡及び治癒、
‐不十分な動脈血酸素飽和度、人工呼吸器の必要性(挿管されていない患者を含む)、及び気道の持続的陽圧換気又は高流量の酸素といった非侵襲的呼吸補助の必要性によって定義される、呼吸不全型のイベントの回数、
‐順次呼吸器障害評価スコア(sequential respiratory failure evaluation score:SOFA)、肺重症度指数(pulmonary severity index:PSI)、及び滲出性炎症性疾患の進行のレベルを段階的に評価できるようにする医用撮像、
‐炎症誘発性及び抗炎症性サイトカイン血漿レベル
から選択されるパラメータのうちの少なくとも1つの変化に関連する呼吸機能の障害の治療において哺乳類に使用するための、組成物に関する。
【0047】
ある特定の実施形態では、フィトエクジソンは人体に1~15ミリグラム/キログラム/日の用量で投与される。ここでもフィトエクジソンは、一般的なフィトエクジソンとその誘導体の両方、20‐ヒドロキシエクジソン(特に抽出物形態)とその誘導体の両方を意味する。
【0048】
好ましくは、フィトエクジソンは、成人に200~1000mg/日の用量で1回以上、及び乳幼児に5~350mg/日の用量で1回以上、投与される。ここでフィトエクジソンは、一般的なフィトエクジソンとその誘導体の両方、20‐ヒドロキシエクジソン(特に抽出物形態)とその誘導体の両方を意味する。
【0049】
実施形態では、上記組成物は、フィトエクジソン誘導体とみなされる少なくとも1つの化合物を含み、上記少なくとも1つの化合物は、一般式(I):
【0050】
【化1】
【0051】
のものであり、ここで:
V‐Uは炭素‐炭素単結合であり、Yはヒドロキシル基若しくは水素であるか、又はV‐UはC=Cエチレン結合であり;
Xは酸素であり、
Qはカルボニル基であり;
は:(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)CO(C‐C)基;(C‐C)A基であって、AはOH、OMe、(C‐C)、N(C‐C)又はCO(C‐C)タイプの基で任意に置換された複素環を表す、基;CHBr基から選択され;
Wは、N、O及びSから選択され、好ましくはOであり、更に優先的にはSである、ヘテロ原子である。
【0052】
本発明の範囲内において、「(C‐C)」は、炭素原子が1~6個の直鎖又は分岐鎖アルキル基、特にメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、n‐ペンチル、及びn‐ヘキシル基を意味する。有利には、これはメチル、エチル、イソプロピル又はtert‐ブチル基、特にメチル又はエチル基、より具体的にはメチル基である。
【0053】
ある好ましい実施形態では、上記式(I)において:
Yはヒドロキシル基であり;
は:(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)W(C‐C)基;(C‐C)W(C‐C)CO(C‐C)基;(C‐C)A基であって、AはOH、OMe、(C‐C)、N(C‐C)又はCO(C‐C)タイプの基で任意に置換された複素環を表す、基から選択され;
Wは、N、O及びSから選択され、好ましくはOであり、より好ましくはSである、ヘテロ原子である。
【0054】
実施形態では、上記組成物は、以下の化合物:
No.1:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐17‐(2‐モルホリノアセチル)‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン、
No.2:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(3‐ヒドロキシピロリジン‐1‐イル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.3:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(4‐ヒドロキシ‐1‐ピペリジル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.4:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐[4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1‐ピペリジル]アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.5:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐[2‐(3‐ジメチルアミノプロピル(メチル)アミノ)アセチル]‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.6:2‐[2‐オキソ‐2‐[(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐6‐オキソ‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐17‐イル]エチル]スルファニル酢酸エチル;
No.7:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐17‐(2‐エチルスルファニルアセチル)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1H‐シクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン;
No.8:(2S,3R,5R,10R,13R,14S,17S)‐2,3,14‐トリヒドロキシ‐17‐[2‐(2‐ヒドロキシエチルスルファニル)アセチル]‐10,13‐ジメチル‐2,3,4,5,9,11,12,15,16,17‐デカヒドロ‐1Hシクロペンタ[a]フェナントレン‐6‐オン
から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0055】
実施形態では、上記組成物は、フィトエクジソン誘導体であると考えられる少なくとも1つの化合物を含み、上記少なくとも1つの化合物は、式(II):
【0056】
【化2】
のものである。
【0057】
式(II)の化合物は、これ以降BIO103と呼ばれる。
【0058】
実施形態では、上記組成物を、経口投与できる、薬学的に許容可能な製剤に組み込む。
【0059】
本発明の範囲内において「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」は、一般に安全かつ無毒であり、獣医学用途及びヒト用薬剤の両方について許容可能な、医薬組成物の調製に使用できることを意味する。
【0060】
以下の説明を読むことによって、本発明は最もよく理解されるだろう。以下の説明は決して限定的な例ではなく、図面を参照して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、ACE2を受容体として用いるコロナウイルスに罹患した患者に関する、ACE2/Ang1‐7/Masアームの活性化の科学的根拠を説明する図を示す。
図2A図2Aは、自然発生的な高血圧を有する動物において、BIO101の抗高血圧作用が存在しないことを説明するグラフを示す。BIO101単独の作用は、単回経口投与後に評価された。6頭のSHラットを、治療と治療の間の排除期間が最短で72時間であるクロスオーバー治療に使用した。治療の前に、動物に、動脈圧を測定するための遠隔測定機器が装着された。図2Aに記載の実験に関して、動物は以下の治療を受けた:ビヒクル、5mg/kgのBIO101、又は50mg/kgのBIO101、又は50mg/kgのエナラプリル。
図2B図2Bは、抗高血圧剤エナラプリルで既に治療された高血圧の動物において、BIO101の降圧作用が存在しないことを説明するグラフを示す。エナラプリルは変換酵素(ACE)の阻害剤である。BIO101単独の作用は、4日間エナラプリル(30mg/kg*日)で治療された動物で、繰り返し投与後に評価された。6頭のSHラットを、治療と治療の間の排除期間が最短で72時間であるクロスオーバー治療に使用した。治療の前に、動物に、動脈圧を測定するための遠隔測定機器が装着された。図2Bに記載の実験に関して、動物は以下の治療を受けた:30mg/kgのエナラプリルを4日間、又は30mg/kgのエナラプリル+5mg/kgのBIO101を4日間、30mg/kgのエナラプリル+50mg/kgのBIO101を4日間。
図3A図3Aは、単回経口投与後に評価された平均動脈圧に対するBIO101の作用を説明するグラフを示す。4頭のビーグル犬を、治療と治療の間の排除期間が最短で72時間であるクロスオーバー治療に使用した。治療の前に、動物に、動脈圧を測定するための遠隔測定機器が装着された。図3Aに記載の実験に関して、動物は以下の経口治療を受けた:ビヒクル、30mg/kgのBIO101、又は120mg/kgのBIO101、又は500mg/kgのBIO101。
図3B図3Bは、単回経口投与後に評価された心拍数に対するBIO101の作用を説明するグラフを示す。4頭のビーグル犬を、治療と治療の間の排除期間が最短で72時間であるクロスオーバー治療に使用した。治療の前に、動物に、心拍数を測定するための遠隔測定機器が装着された。図3Bに記載の実験に関して、動物は以下の経口治療を受けた:ビヒクル、30mg/kgのBIO101、又は120mg/kgのBIO101、又は500mg/kgのBIO101。
図4A図4Aは、単回用量の経口投与後のピーク吸気流量(PIFR)に対するBIO101の作用が存在しないことを説明するグラフを示す。8頭のラットを、治療と治療の間の排除期間が最短で72時間であるクロスオーバー治療に使用した。この実験に関して、動物は以下の経口治療を受けた:ビヒクル、100mg/kgのBIO101、又は300mg/kgのBIO101、又は1000mg/kgのBIO101。呼吸パラメータを、プレチスモグラフィによって4時間30分にわたって測定する。
図4B図4Bは、単回用量の経口投与後のピーク呼気流量(PEFR)に対するBIO101の作用が存在しないことを説明するグラフを示す。8頭のラットを、治療と治療の間の排除期間が最短で72時間であるクロスオーバー治療に使用した。この実験に関して、動物は以下の経口治療を受けた:ビヒクル、100mg/kgのBIO101、又は300mg/kgのBIO101、又は1000mg/kgのBIO101。呼吸パラメータを、プレチスモグラフィによって4時間30分にわたって測定する。
図4C図4Cは、単回用量の経口投与後の呼吸数に対するBIO101の作用が存在しないことを説明するグラフを示す。8頭のラットを、治療と治療の間の排除期間が最短で72時間であるクロスオーバー治療に使用した。この実験に関して、動物は以下の経口治療を受けた:ビヒクル、100mg/kgのBIO101、又は300mg/kgのBIO101、又は1000mg/kgのBIO101。呼吸パラメータを、プレチスモグラフィによって4時間30分にわたって測定する。
図4D図4Dは、単回用量の経口投与後のPenhに対するBIO101の作用が存在しないことを説明するグラフを示す。Penhは気管支の反応性を表す。これは:(PIFR/PEFR)×休止時間として計算され、ここで休止時間=(TE-TR)/TRである。TR=弛緩時間(relaxation time)(正常な体積の65%の吐出に必要な時間)、TE=呼気時間(expiratory time)(呼気の開始から次の吸気までの時間)である。8頭のラットを、治療と治療の間の排除期間が最短で72時間であるクロスオーバー治療に使用した。この実験に関して、動物は以下の経口治療を受けた:ビヒクル、100mg/kgのBIO101、又は300mg/kgのBIO101、又は1000mg/kgのBIO101。呼吸パラメータを、プレチスモグラフィによって4時間30分にわたって測定する。
図5図5は、シリアンハムスターの血漿中のBIO101の薬物動態プロファイルを示す。これらは、0.5%のメチルセルロース4000cP水溶液媒体で処方された50mg/kgのBIO101の単回経口投与(PO)後(図5A)、又は0.9%のNaClで処方された10mg/kgの単回腹腔内投与(IP)後(図5B)の時間の関数としての血漿濃度を示すグラフである。
図6図6は、SARS‐CoV‐2ウイルスに感染したシリアンハムスターの呼吸機能の障害の治療の研究、及び様々なパラメータのタイミング図を示す。この研究は、以下の3つの群の動物を提示する:SARS‐CoV‐2に感染していない対照ハムスター(n=10)、SARS‐CoV‐2に感染してビヒクルで処置されたハムスター(n=10)、及びSARS‐CoV‐2に感染してBIO101 IP(10mg/kg*日)で治療されたハムスター(n=10)。呼吸機能は、接種前及びウイルス感染の5日後に、全身プレチスモグラフィで評価される。研究の終了時点(ウイルス接種の7日後)において、感染性肺ウイルス負荷の定量化を実施する。
図7図7は、SARS‐CoV‐2に感染していない動物の群(対照)、SARS‐CoV‐2に感染してビヒクルで処置された動物の群(SARS‐CoV‐2+ビヒクル)、又はSARS‐CoV‐2に感染してBIO101 IPで治療された動物の群(SARS‐CoV‐2+BIO101)の、肺ウイルス負荷の定量化を説明するヒストグラムを示す。
図8図8Aは、全身プレチスモグラフィによって記録できる呼吸サイクル(吸気とそれに続く呼気)及び様々なデータのトレースの概略図である。Penhは単位のない測定値であり、呼吸応答曲線の複数のパラメータを測定することによって、以下の式:(PIFR/PEFR)×休止時間、ただし休止時間=(TE-TR)/TRに従って計算される(Adler et al., 2004)。PIFR:ピーク吸気流量、PEFR:ピーク呼気流量、PTE:呼気後休止時間、TE:呼気時間、TI:吸気時間、TR:空気の総体積の65%の吐出に必要な呼気時間。図8Bは、SARS‐CoV‐2に感染していない群(対照)、SARS‐CoV‐2に感染してビヒクルで処置された群(SARS‐CoV‐2+ビヒクル)、及びSARS‐CoV‐2に感染してBIO101 IPで治療された群(SARS‐CoV‐2+BIO101)のPenh値を、*p<0.05及び**p<0.01で示す。
図9図9は、SARS‐CoV‐2に感染していない動物の群(対照)、SARS‐CoV‐2に感染してビヒクルで処置された動物の群(SARS‐CoV‐2+ビヒクル)、又はSARS‐CoV‐2に感染してBIO101 IPで治療された動物の群(SARS‐CoV‐2+BIO101)の、全身プレチスモグラフィによって測定される様々な呼吸パラメータを示す。測定されたパラメータは:ミリ秒を単位とする吸気時間(図9A)、ミリ秒を単位とする呼気時間(図9B)、ミリ秒を単位とする呼気後休止時間(図9C)であり、*p<0.05及び**p<0.01である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
1.臨床試験
本発明者らは、フィトエクジソン、より詳細にはBIO101を、COVID‐19パンデミックの原因であるSARS‐CoV‐2コロナウイルスに罹患した患者の呼吸機能及び呼吸パラメータについて試験した。
【0063】
この研究は、直近28日間にPCRによって認められたSARS‐CoV‐2による感染症に罹患し、直近7日間に、以下のパラメータのうちの1つによる呼吸代償不全の兆候として定義される重篤な症状を発症した、18歳以上の成人に関するものである:毎分25呼吸サイクル(吸気及び呼気)以上の呼吸数、並びに/又は周囲空気下で若しくは毎分3リットルの酸素で92%以下の動脈血酸素飽和度。
【0064】
BIO101は毎日経口投与される。
【0065】
BIO101は、植物の乾燥重量で少なくとも0.5%の20‐ヒドロキシエクジソンを含有する植物から選択される植物の抽出物であり、上記抽出物は少なくとも97%の20‐ヒドロキシエクジソンを含む。
【0066】
SARS‐CoV‐2コロナウイルスに罹患した患者に対するBIO101による治療の効果を、以下の測定に基づいて、7、14、28日目に評価する:
‐患者を自宅又は一般医療ケアサービスに移送することを特徴とする、死亡及び治癒、
‐不十分な動脈血酸素飽和度、人工呼吸器の必要性(挿管されていない患者を含む)、及び気道の持続的陽圧換気又は高流量の酸素といった非侵襲的呼吸補助の必要性によって定義される、呼吸不全型のイベントの回数、
‐呼吸器障害順次評価スコア(respiratory failure sequential evaluation score:SOFA、Zhou et al. 2020)、肺重症度指数(PSI、Liu et al. 2020)、及び滲出性炎症性疾患の進行のレベルを段階的に評価できるようにする医用撮像によっても、治療の効果を評価する。
‐炎症誘発性及び抗炎症性サイトカイン血漿レベルに対するBIO101の効果も評価する。
【0067】
2.心血管パラメータ及び呼吸パラメータに対する作用に関連する前臨床評価
本発明者らは、5及び50mg/kgの用量での経口投与後の高血圧の動物において、フィトエクジソン、より詳細にはBIO101を遠隔測定によって試験した。この研究は、高血圧型SH(spontaneously hypertensive:自然発生的高血圧)ラットに関する。
【0068】
採用した実験条件下において、5及び50mg/kgの用量のBIO101は、使用した用量にかかわらず、高血圧の動物の平均動脈圧の低下を全く引き起こさない(図2A)。従ってBIO101は、抗高血圧作用を有しない。その一方で、ACE阻害剤であるエナラプリルは抗高血圧活性を有する。
【0069】
動物の平均動脈圧を、4日間にわたる30mg/kgのエナラプリルの使用によって正常化すると、5及び50mg/kgの用量のBIO101による治療は、使用した用量にかかわらず、動物の平均動脈圧の更なる低下を全く引き起こさない(図2B)。これは、BIO101が降圧作用を全く有しないことを実証している。
【0070】
本発明者らは、30、120及び500mg/kgの用量での経口投与後の正常な血圧の動物において、フィトエクジソン、より詳細にはBIO101を、平均動脈圧及び心調律について試験した。この研究はビーグル犬に関する。この研究の実験条件下において、30、120及び500mg/kgのBIO101の単回経口投与は、意識のあるオスのビーグル犬の動脈圧(図3A)及び心拍数(図3B)に影響を及ぼさなかった。
【0071】
本発明者らは、100、300及び1000mg/kgの用量での経口投与後の覚醒状態のラットにおいて、フィトエクジソン、より詳細にはBIO101を、プレチスモグラフィによって呼吸パラメータについて試験した。この研究の実験条件下において、100、300又は1000mg/kgのBIO101の単回経口投与は、ピーク吸気流量(PIFR、図4A)、ピーク呼気流量(PEFR、図4B)、呼吸数(図4C)、そして最後にPenh(図4D)に対して影響を及ぼさなかった。
【0072】
3.シリアンハムスターに対して実施された試験
シリアンハムスター(Mesocricetus auratus)は、SARS‐CoV、インフルエンザウイルス又はアデノウイルスといった呼吸器系ウイルスによる感染のモデルとして使用されてきた小型哺乳類である(Miao et al., 2019;Roberts et al., 2005;Iwatsuki‐Horimoto, K. et al., 2018;Wold et al., 2012)。最近では、SARS‐CoV‐2による実験的な鼻腔内感染中、シリアンハムスターは、体重の漸減を伴う中等度の病的状態、及び呼吸窮迫を呈することが示されている(Chan et al. 2020;Boudewijns et al. 2020)。ヒトでは、SARS‐CoV‐2による感染は、ウイルスの高レベルの複製、及び病的状態の組織病理学的エビデンスと関連付けられる。肺疾患はまた、感染したハムスターの気道の拡張及び肺の実質的な硬化を示す断層密度撮影によっても明らかにされた(Boudewijns et al. 2020)。
【0073】
ヒトにおけるCOVID‐19の臨床症状は、下気道でのウイルス複製、呼吸困難、両側肺疾患、並びに集中的な浮腫及び炎症の存在といった、SARS‐Cov‐2に感染したシリアンハムスターが発症する肺の疾患と共通の特徴を共有する(Munoz‐Fontela et al. 2020)。従ってシリアンハムスターは、SARS‐CoV‐2ウイルスの感染及び伝播を研究するための、関心を集めるモデルを構成し、様々な治療ソリューションの試験を可能とすることが認められている。
【0074】
様々な実験アプローチによって、小動物の呼吸能力の障害の変化の監視が可能となる。これは特に全身プレチスモグラフィによる。この技法の利点は、覚醒状態の動物に対する監視を、密閉されたエンクロージャ内で上記動物が自由に動きながら、非侵襲的に実施できるという事実にある。その結果、動物の取り扱いによるストレスは低減され、長期間にわたって測定を繰り返すことができる。従って気圧プレチスモグラフィは、小動物の呼吸機能及び気管支の反応性の測定に非常によく使用される(Chong et al., 1998;Djuric et al., 1998;Hoffman et al., 1999)。
【0075】
A.健康なハムスターにおけるBIO101の経口及び腹腔内薬物動態研究
BIO101の薬物動態研究は、ウイルス感染のない健康なハムスターで既に実施され、これによって、第1相臨床試験の14日にわたる350mgのBIO101の1日2回の経口摂取後のヒトで見られる血漿中曝露量と同等の血漿中曝露量をハムスターで得ることができる投与方法がどのようなものかが決定された。
【0076】
BIO101の薬物動態研究は、6~7週齢のメスのシリアンハムスターを用いて実施された。BIO101分子を、50mg/kg体重の用量で経口(PO、強制給餌)投与するか、又は10mg/kg体重の容量で腹腔内投与した。BIO101の投与後、t=0.08時間;0.25時間;0.5時間;1時間;2時間;4時間;6時間;8時間;10時間;12時間、及び24時間の時点で血液試料を尾から採取した。
【0077】
上記血液試料を遠心分離して血漿を得た。
【0078】
9個の標準試料(10,000ng/mL~10ng/mL)、及び3個の品質管理試料(4000ng/mL~40ng/mL)を用いて、検量線を得る。標準試料をハムスターの血漿中で希釈する。各試料(標準試料溶液又は品質管理試料)の一部を96ウェルプレート(200μL)に移す。次に4μLの内部標準物質を加える(MeOH中の10μg/mLのシアステロン)。4倍量のMeOH(80μl)を加えてタンパク質除去することによって、試料を調製する。遠心分離後、試料の上清を96ウェルプレート(150μL)に移してから注入する。
【0079】
LC‐MS/MS分析は、1260 infinity HPLCシステム、及びポジティブモード(MRM)のESIソースを備えたQQQ6420質量分析計を用いて実施される。注入体積は5μLである。BIO101は、C18逆相カラム(2.1×50mm、3.5μm粒子;Fortis)上で、アセトニトリル及び水(0.1%のギ酸を含む)勾配、並びに0.3mL/分の流量を用いて溶出される。
【0080】
(上述の方法に従った)血漿試料の分析により、薬物動態パラメータ、即ち分子の投与後に観察される最高濃度に相当するCmax、分子の投与後の最高濃度に達するために必要な時間に相当するTmax、及び血漿中曝露量に対応する曲線の下の面積であるAUCの決定が可能となった。
【0081】
50mg/kgのPO投与後、Cmax=58ng/mlであり、Tmax=0.25hであり、血漿中曝露量は243ng.h/mlである(図5A)。
【0082】
10mg/kgのIP投与後、Cmax=3221ng/mlであり、Tmax=0.5hであり、血漿中曝露量は3393ng.h/mlである(図5B)。
【0083】
BIO101のIP投与は、14日にわたる350mgで1日2回(3841ng.h/ml)のBIO101の経口投与後にヒトで見られるものに極めて近い血漿中曝露量をもたらした。
【0084】
結果として、SARS‐CoV‐2によるウイルス感染後のハムスターにおけるBIO101の効力を試験するために、BIO101のIP投与を選択した。
【0085】
B.SARS‐CoV‐2によるハムスターの感染、及びBIO101の投与
SARS‐CoV‐2のBetaCoV/Belgium/Sart‐Tilman/2020/1株(Misset et al., 2020)の、力価10TCID50/mLの接種材料原料を調製した。この原料100マイクロリットルからなる接種材料を各ハムスターに、即ち各鼻孔に50マイクロリットル、接種した。接種はイソフルランを用いた短時間の全身麻酔下で実施された。動物は最大90秒後に麻酔から目覚めた。
【0086】
BIO101は、0.9%のNaCl媒体で処方された10mg/kgの腹腔内(IP)投与で、7日間毎日投与された。
【0087】
6~7週齢のメスのハムスターの、以下の3つの群を比較した:感染しておらずビヒクルで処置されてもいないハムスター、SARS‐CoV‐2に感染してビヒクルで処置されたハムスター、SARS‐CoV‐2に感染して腹腔内経路でBIO101で治療されたハムスター(図6)。各群の動物は10頭である。
【0088】
C.SARS‐CoV‐2による感染後の肺のウイルス負荷の分析
研究の終了時、即ちSARS‐CoV‐2ウイルスの接種の7日後に、動物の様々な群の肺ウイルス負荷を比較した(図7)。
【0089】
VeroE6細胞を播種し(DMEM/FBS10%培養培地100μlあたり7.5×10細胞)、一晩放置してインキュベートする。翌日、細胞を光学顕微鏡で観察して、細胞が均一に分布し、およそ75%のコンフルエンスに達していることを確認する。バイオセキュリティレベル3の環境において、肺ホモジネートの段階希釈液(1:10)を感染培地(DMEM/FBS2%)中で調製する。細胞から成長培地を除去した後、肺ホモジネートの様々な調製物を、事前に調製したVeroE6細胞マットに移す。細胞を37℃で2時間インキュベートし、100μLの感染培地を各ウェルに加える。プレートを37℃で5日間インキュベートして、様々な肺ホモジネートの細胞変性効果を監視する。ウイルス力価を、標準的なリード・ミュンヒ法に従って計算する。例えば、VeroE6細胞株において5日で10TCID50/mLとして表される力価は、1:1000に希釈された肺ホモジネート1mLが、VeroE6細胞株の使用中に5日間で細胞の50%を感染させることと解釈できる。
【0090】
SARS‐CoV‐2の接種の7日後、肺のウイルス負荷は、感染したハムスターの肺において依然として検出可能である。SARS‐CoV‐2に感染してビヒクルで処置された動物の肺のウイルス負荷は、SARS‐CoV‐2に感染してBIO101で治療された動物で観察されたものと変わらない(それぞれ4.85±0.018、4.83±0.011;p=ns)。
【0091】
予想されたように、7日間毎日治療した後、BIO101は感染した動物の肺のウイルス負荷に対して影響を及ぼさない。
【0092】
D.全身プレチスモグラフィによるハムスターの呼吸機能の分析
全身プレチスモグラフィ分析を、研究におけるいずれのウイルス感染の前の全ての動物に対して、プロトコルの開始時に実施し、各群の呼吸特性が実際に同一であることを確認した(結果は示さない)。SARS‐CoV‐2に感染した動物の生体重の最下点(Chan et al. 2020)、即ちウイルスの接種の5日後において、呼吸機能の分析を以下の3つの異なる群に対して実施した:感染しておらずビヒクルで処置されてもいないハムスター、SARS‐CoV‐2に感染してビヒクルで処置されたハムスター、及びSARS‐CoV‐2に感染して腹腔内経路でBIO101で治療されたハムスター。
【0093】
プレチスモグラフィ分析中、基準チャンバに関して測定された圧力の変動により、吸気圧及び呼気圧のピーク及び時間、呼吸数、並びに気管支の反応性の評価を可能にするPenh(enhanced Pause:気道収縮指標)と呼ばれる単位のない量(Menachery et al., 2015)といった、多数の呼吸パラメータを定義できる(図8A)。
【0094】
Penh値は定義するべき重要な指標である。というのは、その変動は呼吸抵抗の変動と並行して変化するため、呼吸器系の抵抗特性の変化を予測できるパラメータを表すからである(Hamelmann et al., 1997; Bergren, 2001; Onclinx et al., 2003)。
【0095】
更に、感染性ウイルス性疾患、特にコロナウイルスの間、下気道の障害は、プレチスモグラフィによって測定される呼吸パラメータの変化、例えばPenh及び呼気時間の増大を引き起こす(Menachery et al., 2015; Dinnon et al., 2020)。
【0096】
過去に文献(Menachery et al., 2015; Dinnon et al., 2020)に記述されているように、Penh値は、SARS‐CoV‐2に感染してビヒクルで処置されたハムスターの群において、非感染対照群に比べて大幅に上昇する(それぞれ0.63±0.11、0.28±0.01;p<0.01)。感染した動物がBIO101による治療を5日間受けると、Penh値は、ビヒクルで処置された感染した動物に比べて大幅に低下する(0.35±0.02;p<0.05)ことが分かる(図8B)。
【0097】
吸気時間及び呼気時間は、ビヒクルで処置された感染したハムスターの群において、感染していない対照ハムスターの群に比べて増大する傾向がある(図8A、9A、9B)。これは、吸気時間が75.9±2.9msecから88.4±6.87msecに増大し、呼気時間が133.2±7.4msecから150.7±5.2msecに増大するためである(p=0.06)。SARS‐CoV‐2に感染し、BIO101による治療を5日間受けたハムスターの群では、ビヒクルで処置された感染した群(88.4±6.87msec)に比べて有意に短い吸気時間(66.4±2.6msec;p<0.01)が観察される。同様に、ビヒクルで処置された感染した群(150.7±5.2msec)に比べて有意に短い呼気時間(134.9±3.2msec;p<0.05)が観察される。
【0098】
呼吸サイクルの別のパラメータを評価した。これは呼気後休止時間(TEP)であった(図8A、9C)。TEPは、呼気の終了時の呼気流量の平坦域に対応する。深部呼吸器疾患では、細気管支が少なくとも部分的に閉塞するため、流れに対する抵抗が増大し、これにより排出が遅くなってTEPが延長される(Menachery et al., 2015)。従ってTEPの長さは、一回換気量の最後の吐出の困難さの尺度を提供し、この困難さは、(管腔障害による、又は単に壁の炎症性浮腫による断面積の狭窄による)下気道の閉塞の程度に比例する。
【0099】
予想されたように、呼気休止時間は、SARS‐CoV‐2に感染したハムスターにおいて、対照群の非感染ハムスターに比べて有意に増大する(それぞれ18.8±1.6msec、12.4±0.5msec;p<0,01)。驚くべきことに、SARS‐CoV‐2に感染してBIO101による治療を受けたハムスターの群では、この呼気休止時間は、ビヒクルで処置された感染した動物に比べて有意に短い(12.6±0.3msec;p<0,01)。
【0100】
BIO101を5日間毎日投与すると、治療された動物の呼気休止時間が、非感染対照動物に見られるもの(IC95%:11.3~13.4)に匹敵するレベル(IC95%:11.9~13.4)まで回復する(図9C)。
【0101】
E.結論
シリアンハムスターは、SARS‐CoV‐2ウイルスの感染及び伝播を研究するための、関心を集めるモデルを構成し、様々な治療ソリューションの試験を可能にする。10mg/kg*日の用量で腹腔内投与されたBIO101によって、350mgのBIO101に1日2回14日間曝露された患者において得られるものと同等の、BIO101の血漿中曝露量を、ハムスターにおいて得ることができる。更に、感染の7日後において、BIO101は肺のウイルス負荷に有意な影響を及ぼさない。
【0102】
その一方で驚くべきことに、本研究は、SARS‐CoV‐2に感染したハムスターの呼吸パラメータに対する、特に空気の通過に対する気道の抵抗を測定する指標(Penh、TEP)に対する、BIO101による治療の有意かつ有益な作用を実証している。ウイルス性疾患が、急性肺感染症において予想されるものである気道の抵抗を増大させることは、実証されている。全身プレチスモグラフィによって実施された、呼吸機能に対する本研究は、BIO101がこの機能不全(penh、TEP)を有意に軽減することだけでなく、TEPの軽減を裏付ける疾患中の呼気時間の延長を明らかにしている。
【0103】
フィトエクジソン、特にBIO101による治療により、SARS‐CoV‐2に感染した哺乳類のモデルにおいて、肺の機能を改善できる。
【0104】
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図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】