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特表2023-519715皮膚組織の超音波測定値を使用する位置追跡システムによる解剖学的画像の術前位置合わせ
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  • 特表-皮膚組織の超音波測定値を使用する位置追跡システムによる解剖学的画像の術前位置合わせ 図1
  • 特表-皮膚組織の超音波測定値を使用する位置追跡システムによる解剖学的画像の術前位置合わせ 図2
  • 特表-皮膚組織の超音波測定値を使用する位置追跡システムによる解剖学的画像の術前位置合わせ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】皮膚組織の超音波測定値を使用する位置追跡システムによる解剖学的画像の術前位置合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559642
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 IB2021052565
(87)【国際公開番号】W WO2021198872
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】16/836,633
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601DD10
4C601EE11
4C601GA18
4C601GA25
4C601LL33
(57)【要約】
方法は、超音波(US)変換器及び位置追跡システムの位置センサを含む位置合わせツールを使用して取得される複数の測定値を受信することを含む。測定値は、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部上の複数のそれぞれの部位に位置合わせツールを位置付け、かつ部位で位置センサのそれぞれの位置測定値及び皮膚組織のそれぞれのUS測定値を取得することによって取得される。第1の位置は、位置合わせツールを使用して得られた位置測定値及びUS測定値に基づいて計算される。第2の位置は、患者の頭部の解剖学的画像において識別される。患者の頭部へ挿入され、かつ別の位置センサを含む医療機器の追跡を可能にするように、解剖学的画像は、第1の位置と第2の位置との相関をとることによって、位置追跡システムの座標系と位置合わせされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
位置合わせツールであって、
前記位置合わせツールが、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部上の複数のそれぞれの部位に順次位置付けられるときに、前記部位で前記皮膚組織のそれぞれのUS測定値を取得するように構成されている超音波(US)変換器、及び
前記部位で前記位置合わせツールのそれぞれの位置測定値を取得するように構成されている位置追跡システムの位置センサ、を備える、位置合わせツールと、
プロセッサであって、
前記位置合わせツールによって取得された前記複数のUS測定値及び前記それぞれの位置測定値を受信すること、
前記位置測定値及び前記US測定値に基づいて、前記複数の部位での前記皮膚組織の第1の位置を計算すること、
前記患者の頭部の解剖学的画像における、前記複数の部位での前記皮膚組織の第2の位置を識別すること、及び
前記位置追跡システムと位置合わせされた前記解剖学的画像を使用して、前記患者の頭部へ挿入され、かつ前記位置追跡システムの別の位置センサを備える医療機器の追跡を可能にするように、前記第1の位置と前記第2の位置との相関をとることによって、前記解剖学的画像を前記位置追跡システムの座標系と位置合わせすること、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、装置。
【請求項2】
前記位置合わせツールが、前記部位で前記位置センサのそれぞれの位置測定値及び骨組織のそれぞれのUS測定値を取得するように構成されており、前記プロセッサが、前記複数の部位での前記骨組織の第1の骨位置を計算し、かつ前記複数の部位での前記骨組織の第2の骨位置を識別するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記US変換器が、前記位置センサに対して固定された変位で配設され、前記プロセッサが、前記第1の位置の計算において前記固定された変位を考慮するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記解剖学的画像が、1つ又は2つ以上のコンピュータ断層撮影(CT)画像を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記部位が、頬骨の突出部、鼻柱、鼻尖、及び顎からなるリストから選択される骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記複数のUS測定値が、前記部位のうちの1つ又は2つ以上で、前記位置合わせツールの先端と前記患者の頭部の前記皮膚組織との間を横断するUSパルスの往復伝播時間を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記部位が、骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含み、前記プロセッサが、(a)前記部位の1つ又は2つ以上で、前記位置合わせツールの先端と前記部位の前記骨特徴との間を横断するUSパルスの所与の往復伝播時間を受信することと、(b)前記解剖学的画像を前記位置追跡システムの前記座標系と位置合わせするために、前記所与の往復伝播時間を使用することと、を行うように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記医療機器が、副鼻腔形成カテーテルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記位置合わせツールが、手持ち式ワンドを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記US変換器が、所与の温度及び所与の湿度で前記複数の測定値を取得するように構成されており、前記所与の温度及び前記所与の湿度のうちの少なくとも1つからの偏差によって引き起こされる前記US測定値の変化を補償するために、前記位置合わせツールを較正するためのジグを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
方法であって、
超音波(US)変換器及び位置追跡システムの位置センサを備える位置合わせツールを使用して取得される複数の測定値を受信することであって、前記測定値が、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部上の複数のそれぞれの部位に前記位置合わせツールを位置付け、かつ前記部位で前記位置センサのそれぞれの位置測定値及び前記皮膚組織のそれぞれのUS測定値を取得することによって取得される、受信することと、
前記位置合わせツールを使用して得られた前記位置測定値及び前記US測定値に基づいて、前記複数の部位での前記皮膚組織の第1の位置を計算することと、
前記患者の頭部の解剖学的画像における、前記複数の部位での前記皮膚組織の第2の位置を識別することと、
前記位置追跡システムと位置合わせされた前記解剖学的画像を使用して、前記患者の頭部へ挿入され、かつ前記位置追跡システムの別の位置センサを備える医療機器の追跡を可能にするように、前記第1の位置と前記第2の位置との相関をとることによって、前記解剖学的画像を前記位置追跡システムの座標系と位置合わせすることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記部位で前記位置センサのそれぞれの位置測定値及び骨組織のそれぞれのUS測定値を取得することを含み、前記第1の位置を計算することが、前記複数の部位での前記骨組織の第1の骨位置を計算することを含み、前記第2の位置を識別することが、前記複数の部位での前記骨組織の第2の骨位置を識別することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記US変換器が、前記位置センサに対して固定された変位で配設され、前記第1の位置を計算することが、前記第1の位置の計算において前記固定された変位を考慮することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記解剖学的画像が、1つ又は2つ以上のコンピュータ断層撮影(CT)画像を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記部位が、頬骨の突出部、鼻柱、鼻尖、及び顎からなるリストから選択される骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記US測定値を受信することが、前記部位のうちの1つ又は2つ以上で、前記位置合わせツールの先端と前記患者の頭部の前記皮膚組織との間を横断するUSパルスの往復伝播時間を受信することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記部位が、骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含み、前記US測定値を受信することが、前記部位のうちの1つ又は2つ以上で、前記位置合わせツールの先端と前記部位の前記骨特徴との間を横断するUSパルスの所与の往復伝播時間を受信することを含み、かつ前記解剖学的画像を前記位置追跡システムの前記座標系と位置合わせするために前記所与の往復伝播時間を使用することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記医療機器が、副鼻腔形成カテーテルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記位置合わせツールが、手持ち式ワンドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の測定値が、所与の温度及び所与の湿度で取得され、前記所与の温度及び前記所与の湿度のうちの少なくとも1つからの偏差によって引き起こされる前記US測定値の変化を補償するために、前記位置合わせツールを較正することを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して画像誘導医療手技に関し、特に、位置追跡システムによる解剖学的画像の位置合わせのための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波(Ultrasound、US)変換器及び位置追跡システムは、画像誘導手技等、様々な医療用途で使用され得る。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2019/0192228号は、ナビゲーション等の画像誘導手術特徴に必要とされる、三次元空間における術前画像と患者の顔面の目印とを関連付けるために、ENT手技の前に患者の顔面の目印の非接触式位置合わせを実行するために使用され得るセンサのアレイを記載する。非接触式又は軽度接触式位置合わせは、変形し、これにより、誤った位置合わせデータを導く可能性がある、患者の皮膚に対して強く押し付ける必要性を回避することによって正確性を改善し得る。センサはまた、アレイとは対照的に、単一センサを有する手持ち式プローブ等の、アレイ以外の形態で実装され得る。
【0004】
米国特許出願公開第2019/0192228号は、患者の顔面の複数の標的部位の上に位置合わせプローブをホバリングすることを含む、顔位置合わせを実行するための方法及び装置を記載する。超音波は、標的部位の各々で位置合わせプローブから放射され、超音波の反射は、標的部位の各々から受信される。磁気信号は、磁気エミッタに対する位置合わせプローブの空間における部位を識別するために、患者の顔面に近接して位置する磁気エミッタから位置合わせプローブによって受信される。受信された超音波反射の標的部位は、磁気エミッタに対して空間において識別された部位と相関される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、超音波(US)変換器及び位置追跡システムの位置センサを含む位置合わせツールを使用して取得される複数の測定値を受信することを含む、方法を提供する。測定値は、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部上の複数のそれぞれの部位に位置合わせツールを位置付け、かつ部位で位置センサのそれぞれの位置測定値及び皮膚組織のそれぞれのUS測定値を取得することによって取得される。複数の部位での皮膚組織の第1の位置は、位置合わせツールを使用して得られた位置測定値及びUS測定値に基づいて計算される。複数の部位での皮膚組織の第2の位置は、患者の頭部の解剖学的画像において識別される。解剖学的画像は、位置追跡システムと位置合わせされた解剖学的画像を使用して、患者の頭部へ挿入されかつ位置追跡システムの別の位置センサを含む医療機器の追跡を可能にするように、第1の位置と第2の位置との相関をとることによって、解剖学的画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせされる。
【0006】
いくつかの実施形態では、本方法は、部位で位置センサのそれぞれの位置測定値及び骨組織のそれぞれのUS測定値を取得することを含み、第1の位置を計算することが、複数の部位での骨組織の第1の骨位置を計算することを含み、第2の位置を識別することが、複数の部位での骨組織の第2の骨位置を識別することを含む。いくつかの実施形態では、US変換器は、位置センサに対して固定された変位で配設され、第1の位置を計算することが、第1の位置の計算において固定された変位を考慮することを含む。更に別の実施形態では、解剖学的画像は、1つ又は2つ以上のコンピュータ断層撮影(computerized tomography、CT)画像を含む。
【0007】
実施形態では、部位は、頬骨の突出部、鼻柱、鼻尖、及び顎からなるリストから選択される骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含む。別の実施形態では、位置追跡システムは、磁気位置追跡システムを含む。更に別の実施形態では、US測定値を受信することは、部位のうちの1つ又は2つ以上で、位置合わせツールの先端と患者の頭部の皮膚組織との間を横断するUSパルスの往復伝播時間を受信することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、部位は、骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含み、US測定値を受信することが、部位のうちの1つ又は2つ以上で、位置合わせツールの先端と部位の骨特徴との間を横断するUSパルスの所与の往復伝播時間を受信することを含み、本方法は、解剖学的画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせするために所与の往復伝播時間を使用することを含む。いくつかの実施形態では、医療機器は、副鼻腔形成カテーテルを含む。
【0009】
実施形態では、位置合わせツールは、手持ち式ワンドを含む。別の実施形態では、複数の測定値は、所与の温度及び所与の湿度で取得され、本方法は、所与の温度及び所与の湿度のうちの少なくとも1つからの偏差によって引き起こされるUS測定値の変化を補償するために、位置合わせツールを較正することを含む。
【0010】
本発明の実施形態によれば、位置合わせツール及びプロセッサを含む装置が、追加的に提供されている。位置合わせツールは、超音波(US)変換器及び位置追跡システムの位置センサを含む。US変換器は、位置合わせツールが、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部上の複数のそれぞれの部位に順次位置付けられるときに、部位で皮膚組織のそれぞれのUS測定値を取得するように構成されている。位置センサは、部位で位置合わせツールのそれぞれの位置測定値を取得するように構成されている。プロセッサは、(a)位置合わせツールによって取得された複数のUS測定値及びそれぞれの位置測定値を受信することと、(b)位置測定値及びUS測定値に基づいて、複数の部位での皮膚組織の第1の位置を計算することと、(c)患者の頭部の解剖学的画像における、複数の部位での皮膚組織の第2の位置を識別することと、(d)位置追跡システムと位置合わせされた解剖学的画像を使用して、患者の頭部へ挿入されかつ位置追跡システムの別の位置センサを含む医療機器の追跡を可能にするように、第1の位置と第2の位置との相関をとることによって、解剖学的画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせすることと、を行うように構成されている。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による、副鼻腔形成外科用システムの概略的な絵画図である。
図2】本発明の実施形態による、位置合わせツールの概略的な絵画図である。
図3】本発明の別の実施形態による、解剖学的画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせするための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
副鼻腔形成等のいくつかの医療手技は、問題の器官の解剖学的画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせすることを必要とする。位置合わせを使用して、位置センサが嵌着された外科用ツールは、治療される器官へ進められ、解剖学的画像にオーバーレイされて視覚化される。
【0014】
原則として、位置合わせは、位置追跡システムの位置センサが嵌着された何らかの外部位置合わせツールを使用して実行され得る。そのようなツールは、患者の顔面上の事前選択された部位(例えば、鼻尖、鼻柱、及び2つの頬の中心)との物理的接触にもってこられることができる。解剖学的画像は、次いで、事前選択された部位での骨組織の測定された位置に基づいて、位置追跡システムの座標系に位置合わせされることができる。
【0015】
しかしながら、この可能な解決策は、1mmよりも良好な精度レベルで解剖学的画像の位置合わせを得るために典型的には重要である、副鼻腔形成手技について不正確であり不適切である可能性が高い。位置合わせツールによって、制御されていない圧力が患者の顔面における軟部組織に加えられるため、この仮説的解決の精度は、不十分になり得る。
【0016】
以下に記載されている本発明の実施形態は、解剖学的画像(例えば、三次元コンピュータ断層撮影画像の二次元スライス)を位置追跡システムの座標系に位置合わせするための改善された技法を提供する。いくつかの実施形態では、位置合わせツールは、互いに事前定義された距離で、位置合わせツール内に嵌着された、超音波(US)変換器と位置追跡システムの位置センサとを備える。位置合わせを実行するために、オペレータ(例えば、医師)は、患者の皮膚組織からの間隙(典型的には数ミリメートルの空気間隙)を維持しながら、患者の頭部上の複数の事前定義された部位で、位置合わせツールを位置付けする。事前定義された部位の各々で、以下の測定が実行される。
・位置追跡システムは、位置合わせツールに嵌着された位置センサの位置及び配向を測定する。
・位置合わせツールは、それぞれの部位でUS変換器と皮膚組織との間の距離を測定する。
【0017】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、患者の頭部上の事前定義された部位の各々について、位置追跡システムの座標系におけるそれぞれの皮膚組織の位置を計算するために、これらの測定値を使用する。
【0018】
患者の頭部上の所与の事前定義された部位について、US変換器の出力は、US変換器と皮膚組織との間の間隙を示している。US変換器と位置センサとの間の相対変位(もしあるならば)は、固定され、既知であり、位置センサの位置は、位置追跡システムの座標系で測定される。したがって、プロセッサは、位置追跡システムの座標系における皮膚組織の位置を計算するために、前述の測定値を使用する。この位置は、本明細書では、患者の頭部上の事前定義された部位について、皮膚組織の「US座標」、又は「US皮膚座標」と呼ばれている。上記の手技は、US座標のセットを生成するために、複数の事前定義された部位の一部又は全部について繰り返される。
【0019】
更に、プロセッサは、事前取得されたコンピュータ断層撮影(CT)画像において、事前定義された複数の部位で皮膚組織の位置を識別する。これらの識別された位置は、本明細書では、皮膚組織の「CT座標」、又は「CT皮膚座標」と呼ばれている。プロセッサは、次いで、例えば、US皮膚座標をそれぞれのCT皮膚座標と一致させる幾何学的変換を計算することによって、CT画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせする。
【0020】
開示された位置合わせプロセスは、位置合わせツールと皮膚組織との間の間隙を維持しながら、皮膚組織の測定に基づくことに留意されたい。言い換えれば、測定中に、位置合わせツールは、皮膚組織に接触しない。したがって、位置合わせツールが問題の皮膚組織において歪みを生じさせないため、位置合わせは、正確である。
【0021】
開示された技法は、患者の頭部に挿入され、かつ位置追跡システムの別の位置センサを備える、副鼻腔形成外科用ツールの改善されたナビゲーションを可能にする。
【0022】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、副鼻腔形成外科用システム20の概略的な絵画図である。システム20は、患者22の頭部における1つ又は2つ以上の位置センサの位置を追跡するように構成されている、磁気位置追跡システムを備える。磁気位置追跡システムは、磁場発生器と、1つ又は2つ以上の位置センサと(全て以下に詳細に記載される)、を備える。位置センサは、磁場発生器から検知された外部磁場に応答して位置信号を生成し、それによって、プロセッサ34が、以下に記載されるように、位置追跡システムの座標系における各センサの位置をマッピングすることを可能にする。
【0023】
位置検知のこの方法は、種々の医療用途、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)によって製造されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、これらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【0024】
本実施例では、システム20は、フレーム46上に固定された複数の磁場発生器44を備える、部位パッド40を備える。図1に示された例示的な構成では、パッド40は、5つの磁場発生器44を備えるが、他の実施形態では、パッド40は、任意の他の好適な数の発生器44を備え得る。パッド40は、発生器44が患者の外部の固定された既知の位置に位置するように、患者22の頭部41の下に配置された枕42を更に備える。システム20は、プロセッサ34と、頭部41の周囲に事前定義された可動範囲において磁場を発生させるように、磁場発生器44を好適な信号で駆動するように構成された駆動回路(図示せず)とを備える、コンソール33を更に備える。
【0025】
実施形態では、プロセッサ34は、典型的には汎用コンピュータの汎用プロセッサである。プロセッサ34は、外部源からのデータ、及びケーブル32を介してワンド30からの測定値を受信するために、並びにシステム20の他の構成要素を制御するために好適なフロントエンド回路及びインターフェース回路を備える。
【0026】
いくつかの実施形態では、コンソール33は、頭部41の周囲の空間における事前定義された可動範囲において磁場を発生させるように、ケーブル37を介して、好適な信号で磁場発生器44を駆動するよう構成された駆動回路43を備える。コンソール33は、入力デバイス39と、システム20の任意のユーザに対してデータを表示するように構成されているユーザディスプレイ36と、を更に備える。
【0027】
いくつかの実施形態では、システム20は、磁気位置追跡システムの座標系を後述の事前取得コンピュータ断層撮影(CT)画像の座標系と位置合わせするためにシステム20によって使用される、手持ち式ワンド30等の位置合わせツールを備える。位置合わせツールは、超音波測定値及び位置測定値を取得するように構成され、以下の図2に詳細に示される。
【0028】
典型的には、医師24は、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部41の外面(例えば、皮膚組織)上の複数の事前定義された部位でワンド30を順次位置付けする。事前定義された各部位は、典型的には、頬骨の突出部、鼻柱26(患者22の眼と眼の間に位置する)、鼻尖26、顎、又は他の任意の好適な特定可能な特徴等の頭部41上の容易に特定可能な特徴であるように選択される。
【0029】
実施形態では、プロセッサ34は、外部CTシステム(図示せず)を使用して得られたCT画像35を受信する。プロセッサ34は、患者の頭部41の少なくとも一部の表面画像を形成するために、画像35を使用する。いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、皮膚の放射密度及び場合によっては骨の放射密度を決定するためにハウンスフィールド単位(hounsfield unit、HU)を使用するように構成されている。例えば、-200~500の範囲のHUは、筋肉組織及び皮膚のためにプロセッサ34によって使用され得、700~3000の範囲のHUは、患者の顔面における骨の放射密度を決定するために使用され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、患者の顔面の境界を決定するように、これらのHU数字を、空気についての標準スケールである-1000のHUと比較するように構成されている。代替的な実施形態では、500を超えるHUは、骨の放射密度を決定するために使用され得、-200以下のHUは、空気について使用され得、-200~500の範囲のHUは、筋組織及び骨について使用され得る。
【0031】
代替の実施形態では、任意の他の好適な値が、使用されることができる。更に代替的に、プロセッサ34は、任意の他の好適な基準又は技法を使用して、CT画像における異なるタイプの組織を区別し得、特に皮膚組織及び場合によっては骨組織を識別し得る。
【0032】
実施形態では、再定義された部位で皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部上の事前定義された部位に配置されたときに、ワンド30は、(i)皮膚組織のUS測定値を取得し、(ii)磁気位置追跡システムの座標系におけるこの事前定義された部位の位置を示す位置信号を生成するように構成されている。ワンド30による皮膚組織測定値の取得は、以下の図2において詳細に記載されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、患者の頭部上の事前定義された各部位について、「US座標」及び「CT座標」の2つの座標を計算するように構成されている。US座標は、この事前定義された部位でのワンド30のUS測定値及び位置測定値から導出され、磁気位置追跡システムの座標系におけるこの部位での皮膚組織の座標を示すものである。CT測定値は、CT画像において識別されたものとして、この部位での皮膚組織の座標を示すものである。
【0034】
実施形態では、プロセッサ34は、CT画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせするように、画像35において事前定義された部位で皮膚のUS座標とCT座標との間で相関をとるように構成されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、皮膚組織のUS測定値を取得することに加えて、プロセッサ34は、骨組織のUS測定値を取得するために、本明細書では所与の往復伝搬時間とも呼ばれる、上で記載された技法を、必要な変更を加えて、適用するように構成されている。そのような実施形態では、プロセッサ34は、CT画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせするように、画像35において事前定義された部位で骨のUS座標とCT座標との間で相関をとるように構成されている。
【0036】
位置合わせプロセスは、典型的には、実際の副鼻腔形成手技の前に実行される。副鼻腔形成手技中に、医師24は、副鼻腔形成バルーンカテーテル、又は位置追跡システムの追加的な位置センサを備える他の好適な耳鼻咽喉(ear nose throat、ENT)ツール等の医療デバイス(図示せず)を頭部41の中へ挿入し得る。CT画像が位置追跡システムと既に位置合わせされているので、医師24は、その遠位端がCT画像上に表示されている医療デバイスを、頭部41における標的部位へ進め得る。
【0037】
代替的な実施形態では、CT画像35の代わりに、プロセッサ34は、蛍光透視又は磁気共鳴撮像(magnetic resonance imaging、MRI)等であるが、これらに限定されない別の好適な解剖学的撮像技法を使用して取得された1つ又は2つ以上の画像を受信し、これらの解剖学的画像を上で記載された座標系と位置合わせするように構成されている。
【0038】
図1は、簡潔性及び明瞭性のために、開示された技法に関する要素のみを示す。システム20は、典型的には、開示された技法に直接的には関連せず、したがって図1及び対応する記載から意図的に省略されている、付加的なモジュール及び要素を備える。
【0039】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行するように、かつソフトウェアによって処理されるか、又は別様に使用されるデータをメモリ(図示せず)に記憶するように、ソフトウェアでプログラムされ得る。本ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードされ得、又は光学的、磁気的、若しくは電子的メモリ媒体等、非一時的な有形媒体上に提供され得る。代替的に、プロセッサ34の機能の一部又は全ては、専用又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行され得る。
【0040】
システム20のこの特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を説明し、またこのようなシステムの性能を向上させる際のこれらの実施形態の適用を実証するために、実施例として示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例となるシステムに決して限定されることはなく、本明細書に記載されている原理は、他の種類の医療システム及び/又は位置合わせシステムに同様に適用され得る。例えば、上記の図1において記載された実施形態、及び以下の図2及び図3において記載される実施形態は、患者22の顔皮膚に加えて、又はその代わりに、任意の軟部組織の2つ又は3つ以上の座標系間で位置合わせするために適用され得る。
【0041】
超音波を使用して解剖学的画像を位置追跡システムと位置合わせすること
図2は、本発明の実施形態によるワンド30の概略的な絵画図である。いくつかの実施形態では、医師24は、ワンド30の先端59と皮膚組織50との間の間隙99(例えば、数ミリメートル~約1~2cm)を維持しながら、患者の頭部41上の複数の事前定義された部位のうちの1つにワンド30を位置付けする。先端59と皮膚組織50との間の間隙99は、(a)空気若しくは任意の他のタイプの気体、(b)ゲル若しくは任意の他のタイプの液体、又は(c)気体と液体の任意の好適な組み合わせ等、任意の好適なタイプの流体を有し得るが、これらに限定されないことに留意されたい。概念を明確にするために、以下の記載は、間隙99内の空気のみを有することを想定しているが、以下に記載された全ての実施形態及び技法は、間隙99内に位置付けられた任意の好適なタイプの1つ又は2つ以上の流体に、必要な変更を加えて、適用可能である。
【0042】
本開示の文脈において、及び特許請求の範囲において、任意の数値又は範囲について、「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は集合が、本明細書に記載されたその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば、「約90%」は、72%~100%の値の範囲を指し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、ワンド30は、位置センサ77及び超音波(US)変換器66含む、ハウジング58を備える。図2の実施例では、位置センサ77及びUS変換器66は、ワンド30内の異なる部位に位置付けられている。他の実施形態では、位置センサ77及びUS変換器66は、同心円状に周囲に配設された位置センサ77及びUS変換器66等の任意の他の好適な構成を使用して、ワンド30内に配列され得るが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態では、US変換器66は、USパルス88を組織の中へ生成するように構成されている。図2は、皮膚組織50、中間組織52、骨組織56、及び組織52と56との間の界面層54を備える、例示的な組織構造体を示す。
【0045】
実施形態では、CTの座標系と位置追跡システムとの間の位置合わせは、典型的には、副鼻腔形成手技を実行する前に実行される。そのような実施形態では、術前位置合わせにおいて、医師24は、例えば、鼻尖26から、患者の頭部41上の複数の事前定義された部位のうちの1つ又は2つ以上から、間隙99にワンド30を位置付けする。
【0046】
実施形態では、医師24は、ワンド30の軸90に沿って伝送されるUSパルス88を生成するように、変換器66を作動するために、(例えば、入力デバイス39を使用して)プロセッサ34に命令する。ワンドが皮膚組織50から間隙99に位置付けられたときに、USパルス88は、間隙99の空気を通って横断する。続いて、USパルス88の第1の部分(例えば、少なくとも一部)は、皮膚組織50から反射され、間隙99の空気を通ってワンド30に戻るように移動する。
【0047】
いくつかの実施形態では、皮膚組織50から反射されないUSパルス88の第2の部分は、皮膚組織50及び中間組織52を通って界面層54及び骨組織56に向かって移動する。そのような実施形態では、USパルス88は、界面54から反射され、組織52及び皮膚組織50を通ってワンド30に戻るように移動する。
【0048】
いくつかの実施形態では、ワンド30は、USパルス88の第1の反射部分(皮膚組織50から反射される)及びUSパルス88の第2の反射部分(界面54から反射される)を感知し、USパルス88の第1及び第2の反射部分の少なくとも時間及び振幅を示す信号を、プロセッサ34に(例えば、ケーブル32を介して)送信するように構成されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、それぞれ第1及び第2の飛行時間(TOF)とも呼ばれる、USパルスの第1及び第2の部分の各々の往復伝播時間を測定するように構成されている。空気における、組織52における、及び皮膚組織50におけるUSパルス88の既知の速度に基づいて、プロセッサ34は、測定された第1及び第2のTOFを、(a)間隙99のサイズ、及び(b)先端59と骨組織56との間の距離とに並進させるように構成されている。そのような実施形態では、ワンド30は、位置センサ77から得られた位置測定値、及びUS変換器66を使用して測定されたTOFを、ケーブル32を介して、プロセッサ34へ伝送するように構成されている。
【0050】
空気におけるUSパルス88の速度は、間隙99内の空気の温度及び/又は湿度でわずかに変化し得る。いくつかの実施形態では、システム20は、位置合わせ手技を実行する前にワンド30を較正するためのジグ70を備え得る。ジグ70は、好適なUS受信機(図示せず)から既知の間隙で先端59を位置付けし、ワンド30を較正するように、異なる温度及び湿度レベルで空気を有するように構成されている。図2の実施例では、ジグ70は、ワンド30から十分に遠くで(例えば、5cmより大きい距離で)頭部41と物理的接触をするように構成されたドーム形状を有し、したがって、ジグ70は、ワンド30によって取得された測定値に影響しない。更に、ジグ70は、USパルス88に透明な材料を含み、その結果、ジグ70は、ワンド30によって取得された測定値にごくわずかな影響を有する。そのような実施形態では、プロセッサ34は、位置合わせ手技を実行する前に、ワンド30の測定値を較正するように構成されている。
【0051】
ジグ70の構成は、簡略化され、概略的であり、概念を明確にするために例示的に提供される。他の実施形態では、ジグ70は、皮膚組織50から既知の間隙で先端59を位置付けするための任意の他の好適な形状及び方法を有し得る。位置合わせ手技の間、プロセッサ34は、温度及び湿度のうちの少なくとも1つからの任意の偏差を補償するために、較正に基づいて、問題の組織に近接している空気の温度及び湿度を示す信号を受信し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、システム20は、好適なUS受信機から、又はUSパルスを検出及び/又は反射するための任意の他の好適な装置から、それぞれの既知の間隙で先端59を位置付けするように構成された、複数のジグ又は調整可能なジグを備え得る。そのような実施形態では、プロセッサ34、又はワンド30の任意の他のコントローラは、医師24が異なる間隙99でワンド30を位置付けするときに、位置合わせプロセスが十分に正確であるように、間隙99の範囲についてワンド30を較正するように構成されている。
【0053】
頭部41、特に顔器官は、事前定義された部位において、自然に変形する軟部組織(例えば、日中の頬における液位の変化に起因して)を含み得るため、これらの軟部組織の天然の変形に依存しない測定値を有することが重要である。
【0054】
上で記載された実施形態では、ワンド30は、事前定義された部位でUS変換器66の先端59と骨組織56との間の距離を測定するための信号を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、骨組織56に対する測定された距離に基づいて、患者の頭部41上の事前定義された部位の各々について、位置追跡システムの座標系におけるそれぞれの骨組織の位置を計算するように構成されている。この位置は、本明細書では「US骨座標」とも呼ばれている。同様に、プロセッサ34は、本明細書では「CT骨座標」とも呼ばれる、事前に取得されたCT画像において事前定義された複数の部位で骨組織56の位置を識別するように構成されている。いくつかの実施形態では、「US骨座標」及びそれぞれの「CT骨座標」に基づいて、プロセッサ34は、CT画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせするように構成されている。したがって、位置合わせプロセスは、患者の頭部41における軟部組織の任意の天然の変形によって影響されない。更に、開示された技法は、天然の(例えば、液位における前述された変化に起因する)、又は人工の(例えば、位置合わせツールによって適用される圧力に起因する)軟部組織のいかなる変形に敏感ではない。
【0055】
骨座標に基づく解剖学的画像と位置追跡システムとの間の追加の位置合わせ方法は、例えば、米国特許出願公開第2018/0098816号に詳細に記載されており、その開示が参照により本明細書に組み込まれている。
【0056】
図2に示されたワンド30の構成では、位置センサ77は、変換器66に対して固定された既知の変位で嵌着されているため、プロセッサ34は、US皮膚座標及びUS骨座標を計算することにおいて固定された変位を考慮に入れるように構成されている。
【0057】
図2に示された動作モードでは、先端59は、皮膚組織50から間隙99に位置付けられ、したがって、患者22の皮膚組織50又は他の組織に圧力を加えず、かつ変形させない。いくつかの実施形態では、この動作モードに基づいて、プロセッサ34は、軟部組織によって引き起こされるいかなる歪みもなく、US皮膚座標とCT皮膚座標との間の位置合わせプロセスを実行するように構成されている。
【0058】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、(a)皮膚座標、(b)骨座標、又はそれらの好適な組み合わせに基づいて位置合わせを実行するように構成されている。例えば、CT画像における皮膚組織の位置が事前定義された部位の所与の部位で十分に明確ではない場合、プロセッサ34は、所与の部位での位置合わせのためのUS骨座標及びCT骨座標を使用し得る。この実施例では、プロセッサ34は、(a)全ての事前定義された部位の骨座標に基づいて位置合わせを実行するように、又は(b)所与の点においてのみ骨座標に基づいて位置合わせを実行し、所与の部位以外の全ての事前定義された部位における位置合わせを計算するための皮膚座標を使用するように構成されている。
【0059】
図3は、本発明の別の実施形態による、CT画像35を位置追跡システムの座標系と位置合わせするための方法を概略的に示すフローチャートである。本方法は、CT画像取得ステップ100で始まり、ここで、プロセッサ34は、頭部41の少なくとも皮膚組織(本明細書では、CT皮膚画像と呼ばれる)を捕捉し、及び骨組織(本明細書では、CT骨画像と呼ばれる)を捕捉し得る1つ又は2つ以上のCT画像を受信する。
【0060】
いくつかの実施形態では、CT画像取得ステップ100において、プロセッサ34は、事前定義された部位を有する頭部41の少なくとも一部の容積画像(例えば、ボクセルを有する)を受信し得る。そのような実施形態では、プロセッサ34は、容積画像から、事前定義された部位のうちの1つ又は2つ以上を含む少なくともスライスを選択するように構成されている。実施形態では、選択されたスライスは、全ての事前定義された部位を有し得る。別の実施形態では、プロセッサ34は、全ての事前定義された部位を一緒に含む複数のスライスを選択し得る。
【0061】
位置合わせツール付着ステップ102にて、医師24は、患者の頭部41上の複数の事前定義された部位のうちの1つ又は2つ以上から間隙99で順次にワンド30を位置付けする。以下に記載される後続のステップ(104~110)は、これらの事前定義された部位の各々で実行されていることに留意されたい。
【0062】
位置計算ステップ104にて、プロセッサ34は、位置センサ77から位置測定値を受信し、位置追跡システムの座標系における変換器66の位置を計算する。US測定値ステップ106にて、システム20は、US測定値を取得するように、変換器66を作動する。組織位置計算ステップ108にて、プロセッサ34は、変換器66からの位置信号、及び変換器66からのTOF測定値を受信し、US座標、例えば、位置追跡システムの座標系における皮膚組織の位置を計算する。CT組織識別ステップ110にて、プロセッサ34は、当該技術分野において周知の任意の好適な技法を使用して、対応するCT座標、例えば、CT画像35における皮膚組織の位置を識別する。上述のように、ステップ104~110は、事前定義された部位の各々について繰り返されている。
【0063】
位置合わせステップ112にて、プロセッサ34は、頭部41において事前定義された部位におけるUS皮膚座標と対応するCT皮膚座標との間で相関をとることで、CT画像35を位置追跡システムの座標系と位置合わせする。
【0064】
上で図2に記載されているように、プロセッサ34は、事前定義された部位のうちの1つ又は2つ以上のUS骨座標及びCT骨座標を使用して、(必要な変更を加えて)上で記載された位置合わせ方法を実行するように構成されている。プロセッサ34は、画像35の座標系と位置追跡システムとの間の位置合わせ精度を改善するように、皮膚座標の代わりに、又はそれに加えて、骨座標を使用し得ることに留意されたい。
【0065】
本明細書に記載された実施形態は、主として副鼻腔形成手技に対処するが、本明細書に記載された方法及びシステムはまた、他の用途及び/又は他の器官において使用され得る。例えば、整形外科手技では、医師24は、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者22の整形外科器官(例えば、手)の外面(例えば、皮膚組織)上の複数の事前定義された部位でワンド30を順次位置付けし得る。上で記載された方法及びシステムはまた、骨組織なしの軟部組織を有する器官において、必要な変更を加えて、使用され得ることに留意されたい。
【0066】
したがって、上で記載された実施形態は、実施例として引用されたものであり、本発明は、上記の本明細書に特に示され、かつ記載されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載された様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分とみなすものとする。
【0067】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
超音波(US)変換器及び位置追跡システムの位置センサを備える位置合わせツールを使用して取得される複数の測定値を受信することであって、前記測定値が、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部上の複数のそれぞれの部位に前記位置合わせツールを位置付け、かつ前記部位で前記位置センサのそれぞれの位置測定値及び前記皮膚組織のそれぞれのUS測定値を取得することによって取得される、受信することと、
前記位置合わせツールを使用して得られた前記位置測定値及び前記US測定値に基づいて、前記複数の部位での前記皮膚組織の第1の位置を計算することと、
前記患者の頭部の解剖学的画像における、前記複数の部位での前記皮膚組織の第2の位置を識別することと、
前記位置追跡システムと位置合わせされた前記解剖学的画像を使用して、前記患者の頭部へ挿入され、かつ前記位置追跡システムの別の位置センサを備える医療機器の追跡を可能にするように、前記第1の位置と前記第2の位置との相関をとることによって、前記解剖学的画像を前記位置追跡システムの座標系と位置合わせすることと、を含む、方法。
(2) 前記部位で前記位置センサのそれぞれの位置測定値及び骨組織のそれぞれのUS測定値を取得することを含み、前記第1の位置を計算することが、前記複数の部位での前記骨組織の第1の骨位置を計算することを含み、前記第2の位置を識別することが、前記複数の部位での前記骨組織の第2の骨位置を識別することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記US変換器が、前記位置センサに対して固定された変位で配設され、前記第1の位置を計算することが、前記第1の位置の計算において前記固定された変位を考慮することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記解剖学的画像が、1つ又は2つ以上のコンピュータ断層撮影(CT)画像を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記部位が、頬骨の突出部、鼻柱、鼻尖、及び顎からなるリストから選択される骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含む、実施態様1に記載の方法。
【0068】
(6) 前記US測定値を受信することが、前記部位のうちの1つ又は2つ以上で、前記位置合わせツールの先端と前記患者の頭部の前記皮膚組織との間を横断するUSパルスの往復伝播時間を受信することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記部位が、骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含み、前記US測定値を受信することが、前記部位のうちの1つ又は2つ以上で、前記位置合わせツールの先端と前記部位の前記骨特徴との間を横断するUSパルスの所与の往復伝播時間を受信することを含み、かつ前記解剖学的画像を前記位置追跡システムの前記座標系と位置合わせするために前記所与の往復伝播時間を使用することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記医療機器が、副鼻腔形成カテーテル(sinuplasty catheter)を含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記位置合わせツールが、手持ち式ワンドを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記複数の測定値が、所与の温度及び所与の湿度で取得され、前記所与の温度及び前記所与の湿度のうちの少なくとも1つからの偏差によって引き起こされる前記US測定値の変化を補償するために、前記位置合わせツールを較正することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0069】
(11) 装置であって、
位置合わせツールであって、
前記位置合わせツールが、皮膚組織からの間隙を維持しながら、患者の頭部上の複数のそれぞれの部位に順次位置付けられるときに、前記部位で前記皮膚組織のそれぞれのUS測定値を取得するように構成されている超音波(US)変換器、及び
前記部位で前記位置合わせツールのそれぞれの位置測定値を取得するように構成されている位置追跡システムの位置センサ、を備える、位置合わせツールと、
プロセッサであって、
前記位置合わせツールによって取得された前記複数のUS測定値及び前記それぞれの位置測定値を受信すること、
前記位置測定値及び前記US測定値に基づいて、前記複数の部位での前記皮膚組織の第1の位置を計算すること、
前記患者の頭部の解剖学的画像における、前記複数の部位での前記皮膚組織の第2の位置を識別すること、及び
前記位置追跡システムと位置合わせされた前記解剖学的画像を使用して、前記患者の頭部へ挿入され、かつ前記位置追跡システムの別の位置センサを備える医療機器の追跡を可能にするように、前記第1の位置と前記第2の位置との相関をとることによって、前記解剖学的画像を前記位置追跡システムの座標系と位置合わせすること、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、装置。
(12) 前記位置合わせツールが、前記部位で前記位置センサのそれぞれの位置測定値及び骨組織のそれぞれのUS測定値を取得するように構成されており、前記プロセッサが、前記複数の部位での前記骨組織の第1の骨位置を計算し、かつ前記複数の部位での前記骨組織の第2の骨位置を識別するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記US変換器が、前記位置センサに対して固定された変位で配設され、前記プロセッサが、前記第1の位置の計算において前記固定された変位を考慮するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(14) 前記解剖学的画像が、1つ又は2つ以上のコンピュータ断層撮影(CT)画像を含む、実施態様11に記載の装置。
(15) 前記部位が、頬骨の突出部、鼻柱、鼻尖、及び顎からなるリストから選択される骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含む、実施態様11に記載の装置。
【0070】
(16) 前記複数のUS測定値が、前記部位のうちの1つ又は2つ以上で、前記位置合わせツールの先端と前記患者の頭部の前記皮膚組織との間を横断するUSパルスの往復伝播時間を含む、実施態様11に記載の装置。
(17) 前記部位が、骨特徴を被覆する皮膚組織の部位を含み、前記プロセッサが、(a)前記部位の1つ又は2つ以上で、前記位置合わせツールの先端と前記部位の前記骨特徴との間を横断するUSパルスの所与の往復伝播時間を受信することと、(b)前記解剖学的画像を前記位置追跡システムの前記座標系と位置合わせするために、前記所与の往復伝播時間を使用することと、を行うように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(18) 前記医療機器が、副鼻腔形成カテーテルを含む、実施態様11に記載の装置。
(19) 前記位置合わせツールが、手持ち式ワンドを含む、実施態様11に記載の装置。
(20) 前記US変換器が、所与の温度及び所与の湿度で前記複数の測定値を取得するように構成されており、前記所与の温度及び前記所与の湿度のうちの少なくとも1つからの偏差によって引き起こされる前記US測定値の変化を補償するために、前記位置合わせツールを較正するためのジグを備える、実施態様11に記載の装置。
図1
図2
図3
【国際調査報告】