(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】連続晶析法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/24 20060101AFI20230502BHJP
C07C 237/46 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C07C231/24
C07C237/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559762
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021058529
(87)【国際公開番号】W WO2021198386
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】396019387
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ハーランド,トルフィン
(72)【発明者】
【氏名】アスキルドセン,アーネ
(72)【発明者】
【氏名】クヴァンデ,ヘイディ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD15
4H006BB31
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM74
4H006BN10
4H006BV25
4H006BV72
(57)【要約】
本発明は、5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを精製する方法であって、溶媒中の粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを含む流れに1回分の酸を加えること、少なくとも溶媒の画分の除去と共に、粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドから5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを連続的に結晶化することを含み、結晶化が連続式反応器内で行われ、連続式反応器がプラグフロー反応器である、方法を提供する。結晶化の間に、追加の少なくとも3回分の酸が連続式反応器に加えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを精製する方法であって、
(i)溶媒中の粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを含む流れに1回分の酸を加えること、
(ii)少なくとも前記溶媒の画分の除去と共に、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドから5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを連続的に結晶化することであって、ここで、前記結晶化が連続式反応器内で行われ、前記連続式反応器がプラグフロー反応器であること、
を含み、
前記結晶化の間に、追加の少なくとも3回分の酸を前記連続式反応器に加える、
方法。
【請求項2】
ステップ(i)における前記酸が、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して0.3~0.6モル当量、0.4~0.5モル当量、または約0.45モル当量の量で、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを含む前記流れに加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも3回分の酸が、粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して0.05~0.6モル当量の量で、前記連続式反応器にそれぞれ加えられる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも3回分の酸のうちのそれぞれが、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して0.1~0.5モル当量の間の量で、前記連続式反応器に加えられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記追加の少なくとも3回分の酸が、追加の少なくとも5回分の酸であり、
(i)前記少なくとも5回分の酸の1回目の分が、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して0.1~0.2モル当量の量で、前記連続式反応器に加えられ、
(ii)前記少なくとも5回分の酸の2回目の分が、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して0.5~1.5モル当量の量で、前記連続式反応器に加えられ、
(iii)前記少なくとも5回分の酸の3回目の分が、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して0.5~1.5モル当量の量で、前記連続式反応器に加えられ、
(iv)前記少なくとも5回分の酸の4回目の分が、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して0.03~0.11モル当量の量で、前記連続式反応器に加えられ、かつ
(v)前記少なくとも5回分の酸の5回目の分が、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して0.1~0.5モル当量の量で、前記連続式反応器に加えられる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記追加の少なくとも3回分の酸が、追加の少なくとも5回分の酸であり、
(i)前記少なくとも5回分の酸の1回目の分が、合計滞留時間の9%~19%の間の時点で加えられ、かつ/または
(ii)前記少なくとも5回分の酸の2回目の分が、合計滞留時間の31%~41%の間の時点で加えられ、かつ/または
(iii)前記少なくとも5回分の酸の3回目の分が、合計滞留時間の44%~54%の間の時点で加えられ、かつ/または
(iv)前記少なくとも5回分の酸の4回目の分が、合計滞留時間の61%~71%の間の時点で加えられ、かつ/または
(v)前記追加の少なくとも5回分の酸の5回目の分が、合計滞留時間の84%~94%の間の時点で加えられる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1のステップ(i)および(ii)で加えられた酸の合計量が、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドに対して1~1.2モル当量である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
種晶が前記連続式反応器に加えられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記種晶が、ステップi)における前記酸と共にか、または前記酸の後でかつ前記追加の少なくとも5回分の酸が前記連続式反応器に加えられる前に、前記連続式反応器に加えられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸の1回目の分が、前記プロセス流の注入時に、前記連続式反応器に加えられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、(i)蒸留または(ii)共沸蒸留によって除去される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶化工程が、1つまたは複数の晶析装置内で実施され、好ましくは、前記粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドが一定速度で前記晶析装置に供給される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
結晶性5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドが、一定速度、好ましくは、前記晶析装置の容積負荷が一定に保たれる速度で回収される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸が、
(i)水溶性無機酸であるか、または
(ii)硫酸、硝酸、および塩酸からなる群より選択されるか、または
(iii)塩酸である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって生成される、精製された5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを精製する方法およびこのような工程によって生成される5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド(以降「本発明の化合物」)に関する。
【0002】
本発明は、この化合物を精製するための先行技術の工程に勝る利点を提供する。
【背景技術】
【0003】
先行技術は、バッチ反応器によって5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを精製する。先行技術における方法は、反応混合物が濁るまで反応混合物に塩酸を加えること、化合物を精製するための種晶を加えること、追加の塩酸を加える前に得られたスラリーを撹拌することを含む。次に、このスラリーを一晩冷却する(例えば、約20~25℃まで)。翌日、このスラリーを濾過し、濾過ケーキをメタノールで洗浄し、次に、真空オーブン内で乾燥させる。このような工程は、米国特許出願公開第2016/304438号明細書に記載されている。
【発明の概要】
【0004】
工業規模での(本発明の化合物のような)商業的に有用な化合物の精製における改善は、継続的な目的である。
【0005】
本発明は、5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを精製する方法であって、
(i)溶媒中の粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを含む流れに1回分の酸を加えること、
(ii)少なくとも溶媒の画分の除去と共に、粗5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドから5-アセトアミド-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミドを連続的に結晶化することであって、ここで、結晶化が連続式反応器内で行われ、連続式反応器がプラグフロー反応器であること、
を含み、
前記結晶化の間に、追加の少なくとも3回分の酸を連続式反応器に加える、
方法に関する。
【0006】
このため、工程は、連続式反応器工程であり、反応器は、プラグフロー反応器である。任意の種類の連続式反応器を使用した本明細書に記載される方法も開示される。例えば、COBR(連続式振動流バッフル反応器)または連続式撹拌槽型反応器(CSTR)は、本明細書に記載される方法のいずれかを用いて使用され得る。
【0007】
本発明の方法は、好ましくは、20℃~60℃の間の温度で実施され、典型的には、約60℃で開始し、続いて約20℃に冷却する。その中で本発明の粗化合物(精製前)が生成された反応混合物が、より高い温度であった場合、その後に冷却が必要とされるであろう。
【0008】
方法で使用される酸は、水溶性無機酸であってよく、好ましくは、硫酸、硝酸、および塩酸の群から選択される。酸は、最も好ましくは、塩酸である。
【0009】
工程のステップ(i)における酸は、粗混合物中の本発明の化合物に対して0.3~0.6モル当量、0.4~0.5モル当量、または0.45モル当量の量で、本発明の粗化合物を含む流れに加えられてもよい。
【0010】
追加の少なくとも3回分の酸は、粗混合物中の本発明の化合物に対して0.05~0.6モル当量の量で、連続式反応器にそれぞれ加えられてもよい。
【0011】
少なくとも3回分の酸は、粗混合物中の本発明の化合物に対して0.1~0.5モル当量の間の量で、連続式反応器に加えられてもよい。
【0012】
より具体的には、追加の少なくとも5回分の酸は、連続式反応器に加えられてもよく、ここで、
(i)追加の少なくとも5回分の酸の1回目の分は、粗混合物中の本発明の化合物に対して0.1~0.2モル当量の量で、連続式反応器に加えられてもよく、
(ii)少なくとも5回分の酸の2回目の分は、粗混合物中の本発明の化合物に対して0.5~1.5モル当量の量で、連続式反応器に加えられてもよく、
(iii)少なくとも5回分の酸の3回目の分は、粗混合物中の本発明の化合物に対して0.5~1.5モル当量の量で、連続式反応器に加えられてもよく、
(iv)少なくとも5回分の酸の4回目の分は、粗混合物中の本発明の化合物に対して0.03~0.11モル当量の量で、連続式反応器に加えられてもよく、かつ
(v)少なくとも5回分の酸の5回目の分は、粗混合物中の本発明の化合物に対して0.1~0.5モル当量の量で、連続式反応器に加えられてもよい。
【0013】
本発明の方法において、追加の少なくとも5回分の酸は、連続式反応器に加えられてもよく、ここで、
(i)追加の少なくとも5回分の酸の1回目の分は、合計滞留時間の9%~19%の間の時点で加えられてもよく、かつ/または
(ii)少なくとも5回分の酸の2回目の分は、合計滞留時間の31%~41%の間の時点で加えられてもよく、かつ/または
(iii)少なくとも5回分の酸の3回目の分は、合計滞留時間の44%~54%の間の時点で加えられてもよく、かつ/または
(iv)少なくとも5回分の酸の4回目の分は、合計滞留時間の61%~71%の間の時点で加えられてもよく、かつ/または
(v)少なくとも5回分の酸の5回目の分は、合計滞留時間の84%~94%の間の時点で加えられてもよい。
【0014】
追加の少なくとも5回分の酸は、連続式反応器に加えられてもよく、ここで、
(i)追加の少なくとも5回分の酸の1回目の分は、合計滞留時間の13%~16%の間の時点で加えられてもよく、かつ/または
(ii)少なくとも5回分の酸の2回目の分は、合計滞留時間の34.5%~37.5%の間の時点で加えられてもよく、かつ/または
(iii)少なくとも5回分の酸の3回目の分は、合計滞留時間の48%~51%の間の時点で加えられてもよく、かつ/または
(iv)少なくとも5回分の酸の4回目の分は、合計滞留時間の66%~69%の間の時点で加えられてもよく、かつ/または
(v)少なくとも5回分の酸の5回目の分は、合計滞留時間の88%~91%の間の時点で加えられてもよい。
【0015】
上記のタイミングに関する選択肢(i)~(v)を、好ましく組み合わせてもよい。
【0016】
追加の少なくとも5回分の酸を連続式反応器に加える場合、連続式反応器は、任意の種類の連続式反応器であってもよい。特に、連続式反応器は、プラグフロー反応器、COBR(連続式振動流バッフル反応器)、または連続式撹拌槽型反応器(CSTR)のうちの1つであってもよい。特に、酸は、塩酸であってもよい。
【0017】
精製工程の時間は、通常、約40分間~3時間、任意選択で1~2時間の範囲である。
【0018】
方法のステップ(i)および(ii)で加えられた酸の合計量は、好ましくは、精製される本発明の粗化合物に対して1~1.4モル当量、最も好ましくは、精製される本発明の粗化合物に対して約1.2モル当量である。
【0019】
方法では、種晶を連続式反応器に加えてもよい。種晶の最初のスラリーは限定因子ではない。種晶は、好ましくは、酸の1回目の分と共にか、または酸の1回目の分の後であって、追加の少なくとも3回分の酸が連続式反応器に加えられる前に、連続式反応器に加えられる。
【0020】
酸の1回目の分は、好ましくは、プロセス流の注入時に、連続式反応器に加えられる。
【0021】
本発明の粗化合物に対して、方法で使用される溶媒は、任意の溶媒であってよい。例えば、溶媒には、水、メタノール、2-メトキシ-エタノール、または任意の混合物が含まれ得る。追加の適当な溶媒の例には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、またはジメトキシエタンのようなエーテル、メタノールまたはエタノールのようなアルコール、および水が含まれる。これらの内、アルコール、特にメタノール、または水と1種または複数のアルコールの混合物が好ましい。
【0022】
本発明の方法において、溶媒は、任意選択で、減圧下にて行われることがある(i)蒸留または(ii)共沸蒸留によって、好ましくは、除去される。
【0023】
結晶化工程は、1つまたは複数の晶析装置内で実施されてもよく、好ましくは、本発明の粗化合物が一定速度で晶析装置に供給される。本発明の結晶性化合物は、好ましくは、一定速度、より好ましくは、晶析装置の容積負荷が一定に保たれる速度で回収される。
【0024】
本発明によると、酸は(各段階および/または全体で)、特定のpHに達するまで加えられてもよい。全体のpHは、約pH2~8、好ましくは、5~7であることがある。
【0025】
本発明において、ステップ(i)の酸は、流れが本発明の粗化合物に対して過飽和となるまで、本発明の粗化合物を含む流れに加えられてもよい。
【0026】
本発明の方法のある実施形態において、追加の少なくとも5回分の酸の2回目から4回目のそれぞれは、先行する2回分の酸添加の間の期間の20%以内である期間(間隔)で加えられてもよい。分割分の酸添加の間の期間のそれぞれは、好ましくは、5~15分間の間、より好ましくは、6~12分間の間である。追加の少なくとも5回分の酸のうちの1回目と2回目および分割分の酸のうちの4回目と5回目の分の添加の間の期間は、同程度であってもよく、時間の10%以内であってもよい。好ましくは、追加の少なくとも5回分の酸添加のうちの3回目と4回目の間の期間は、任意の2回分の酸添加の間の最も短い期間である。
【0027】
本発明は、本発明の方法によって生成された、本発明の精製された化合物も提供する。
【0028】
本発明の精製法は、何らかの形で、本発明の化合物の形成自体に先行されると思われ、この形成工程は必要とされないが、特許請求されている本発明の方法の一部であり得る。形成の方法の一例において、5-アミノ-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨード-1,3-ベンゼンジカルボキサミドを無水酢酸/酢酸と混合してスラリーを形成する。次に、このスラリーを約60℃に加熱し、酸性触媒を反応物に加え、反応温度を65℃~85℃の間で維持する。この生成物の精製に提供される前に、最終ステップでは、脱アセチル化剤を加える。触媒は、スルホン酸であってもよい。
【0029】
本発明は、連続式晶析法であり、(バッチ反応器内における)バッチ晶析法とは基本的に異なる。前者において、反応器内の所定地点における過飽和は、経時的に一定である。言い換えると、過飽和は、反応器注入口からの距離の関数である。後者において、過飽和は、時間の関数である。したがって、先行技術のバッチ結晶化が、競合的に、また工業規模で連続方式(プラグフロー反応器)に移行可能であろうことは、見込まれることも、予想されることもなかった。実際に、連続式工程における工程の種々の方法論(本発明の方法を除く)は適当ではなかった。しかし、生産能力の必要性および現行の容量制約のため、ヨウ化アリール化合物を精製するための代替工程を探す必要性があり、本発明者らは、本発明の方法を確立するための連続式工程への移行によって、問題を解決した。本発明は、縮小された設置面積、低い投資費用、再現性、および結晶の濾過挙動に関する利点を有することが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の方法を使用して得られた結晶は、以前の方法を使用して得られたものとは異なる形状であることが認められた(
図1参照:上は本発明の方法;下は以前の方法)。本発明からの結晶は、母液からの分離、予備乾燥、ならびに塩および副生成物の除去がより容易であった。本発明の結晶は、「スケーリング(scaling)」、すなわち、反応器の壁における結晶の成長であって、経時的に反応器の妨害を招くことがある「スケーリング」を生じる傾向が少ないことも認められた。産業的観点から、このことは、規定された濾過能力を得るために必要とされる投資がより少ないことを意味するため、有利である。
【0031】
本発明は、連続方式での反応晶析による、本発明の化合物の精製に関する。このため、方法は非常に特異的であって、したがって、近似するものであっても他のヨウ化化合物には適していない。
【0032】
本発明に至る前の予備試験において、濾過、洗浄、および乾燥において取扱いが容易である結晶を得るために、どのように塩酸を加えることが可能かについて探究された。短時間で容易な結晶化のためには、可能な限り少量の塩酸を添加することが有益であると考えられた。しかし、これはより高い過飽和を生じることがあり、続いて、取扱いが困難な結晶の形成を招く可能性があり、またプラグフロー反応器内の管壁の内側におけるスケーリングの高いリスクも存在する。いくつかの実験において、全ての塩酸は1回で加えられた。このような結晶化は、高い過飽和のため、制御不能であった。本発明の方法において、以下の実施例に記載される通り、塩酸は複数回に分割して加えられる。
【実施例】
【0033】
本発明は、以下の実施例を参照して説明される。以下の実施例ではHClが使用されているが、上記の通り、任意の水溶性無機酸が使用されてもよい。
【0034】
[実施例1]
使用される塩酸の合計量は、精製される本発明の化合物に対して1.2モル当量であった。
【0035】
第1の実験「パッケージ」では、8つの実験を実施し、塩酸の量を4回分に分割した。1回目の分(0.45モル当量)を、60℃で注入時に加えた。種晶のスラリー(結晶化された化合物の合計量に対して1.7w/w%)を、注入の3.4分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.15モル当量)を、注入の6.6分後に加えた。3回目の分(0.20モル当量)および4回目の分(0.40モル当量)を、それぞれ注入の16.3分後および25.8分後に加えた。注入の34.6分後に冷却(60℃から20℃まで)を開始し、12.4分間を要した。このため、塩酸添加のための合計時間は25.8分間であったが、合計工程時間は47.0分間であった。COBR反応器は、振幅40mmおよび周波数1.5Hzで操作された。
【0036】
以下の実験では、振幅および周波数の異なる組合せが検討された。これらの実験のうちのいくつかにおいて、4回目の分における塩酸の(量ではなく)濃度を17.5%から8.75%に低下させた。
【0037】
次の実験では、2つのことを変更した。第1に、周波数を1.5Hzから1.3Hzに低下させた。第2に、4回目の分における塩酸の(量ではなく)濃度を17.5%から8.75%に低下させた。周波数を、さらに1.3Hzから1.2Hzに低下させ、次に、再び上昇させた。周波数1.5Hzおよび振幅30mmの組合せも試みた。
【0038】
全般的に、結晶の製品品質および濾過挙動は、許容範囲内であった。いくらかのスケーリングが、塩酸の3回目および4回目の添加地点付近で認められた。しかし、これは研究室規模から工業規模に移行することで、ほぼ確実に解決されるであろう。後者の場合、管の直径がはるかに大きいため、管壁における結晶化よりも、塩酸を加えることによって生じた液体内の過飽和が解消されるであろう。
【0039】
[実施例2]
いくつかの実験は、第2の「パッケージ」で実施された。全ての実験において、周波数および振幅は、それぞれ1.3Hzおよび35mmであった。
【0040】
全ての実験において、種晶スラリーの量は、2.0w/w%であった。60℃から20℃への冷却は、COBR反応器の排出口に続けて設置されたCSTR反応器内で実施された。周波数および振幅と同様に、これらのパラメータは標準的であり、本発明の方法に対して決定的であるとは判断されなかった。COBR反応器に加えられた塩酸の合計量は、精製される化合物に対して1.0または1.2モル当量であった。全ての実験では、(塩酸を4回分に分割した第1の「パッケージ」とは異なり)塩酸を6回分に分割した。
【0041】
第1の実験では、1回目の分(0.45モル当量)を、注入時に加えた。種晶のスラリーを、注入の2.8分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.15モル当量)を、注入の7.6分後に加えた。3回目の分(0.10モル当量)を、注入の19.1分後に加え、4回目の分(0.10モル当量)を、注入の26.2分後に加え、5回目の分(0.20モル当量)を、注入の35.7分後に加え、6回目の分(0.20モル当量)を、注入の43.3分後に加えた。(COBRからCSTRへの)排出口における時間は52.8分であった。
【0042】
実験1からの実験2の差異を、以下にボールド体で記載する(訳注:翻訳文中では下線を引いた。)。
【0043】
第2の実験では、1回目の分(0.48モル当量)を、注入時に加えた。種晶のスラリーを、注入の2.8分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.18モル当量)を、注入の7.6分後に加えた。3回目の分(0.10モル当量)を、注入の19.1分後に加え、4回目の分(0.10モル当量)を、注入の26.2分後に加え、5回目の分(0.11モル当量)を、注入の35.7分後に加え、6回目の分(0.23モル当量)を、注入の43.3分後に加えた。(COBRからCSTRへの)排出口における時間は52.8分であった。
【0044】
実験2からの実験3の差異を、以下にボールド体で記載する(訳注:翻訳文中では下線を引いた。)。
【0045】
第3の実験では、1回目の分(0.45モル当量)を、注入時に加えた。種晶のスラリーを、注入の2.8分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.15モル当量)を、注入の7.6分後に加えた。3回目の分(0.10モル当量)を、注入の19.1分後に加え、4回目の分(0.10モル当量)を、注入の26.2分後に加え、5回目の分(0.10モル当量)を、注入の35.7分後に加え、6回目の分(0.10モル当量)を、注入の43.3分後に加えた。塩酸の合計量が(1.2ではなく)1.0モル当量であったことに留意すること。(COBRからCSTRへの)排出口における時間は52.8分であった。
【0046】
実験3からの実験4の差異を、以下にボールド体で記載する(訳注:翻訳文中では下線を引いた。)。
【0047】
第4の実験では、1回目の分(0.45モル当量)を、注入時に加えた。種晶のスラリーを、注入の2.8分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.15モル当量)を、注入の7.6分後に加えた。3回目の分(0.10モル当量)を、注入の19.1分後に加え、4回目の分(0.10モル当量)を、注入の26.2分後に加え、5回目の分(0.08モル当量)を、注入の35.7分後に加え、6回目の分(0.12モル当量)を、注入の43.3分後に加えた。塩酸の合計量が(1.2ではなく)1.0モル当量であったことに留意すること。(COBRからCSTRへの)排出口における時間は52.8分であった。
【0048】
実験4からの実験5の差異を、以下にボールド体で記載する(訳注:翻訳文中では下線を引いた。)。
【0049】
第5の実験では、1回目の分(0.45モル当量)を、注入時に加えた。種晶のスラリーを、注入の2.8分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.15モル当量)を、注入の7.6分後に加えた。3回目の分(0.10モル当量)を、注入の19.1分後に加え、4回目の分(0.10モル当量)を、注入の26.2分後に加え、5回目の分(0.08モル当量)を、注入の35.7分後に加え、6回目の分(0.16モル当量)を、注入の43.3分後に加えた。塩酸の合計量が(1.2ではなく)1.04モル当量であったことに留意すること。(COBRからCSTRへの)排出口における時間は52.8分であった。
【0050】
実験5からの実験6の差異を、以下にボールド体で記載する(訳注:翻訳文中では下線を引いた。)。
【0051】
第6の実験では、1回目の分(0.45モル当量)を、注入時に加えた。種晶のスラリーを、注入の2.8分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.15モル当量)を、注入の7.6分後に加えた。3回目の分(0.10モル当量)を、注入の19.1分後に加え、4回目の分(0.10モル当量)を、注入の26.2分後に加え、5回目の分(0.08モル当量)を、注入の35.7分後に加え、6回目の分(0.32モル当量)を、注入の43.3分後に加えた。塩酸の合計量が今回は1.2モル当量であったことに留意すること。(COBRからCSTRへの)排出口における時間は52.8分であった。
【0052】
実験6からの実験7の差異を、以下にボールド体で記載する(訳注:翻訳文中では下線を引いた。)。
【0053】
第7の実験では、1回目の分(0.45モル当量)を、注入時に加えた。種晶のスラリーを、注入の2.8分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.15モル当量)を、注入の7.6分後に加えた。3回目の分(0.10モル当量)を、注入の19.1分後に加え、4回目の分(0.10モル当量)を、注入の26.2分後に加え、5回目の分(0.08モル当量)を、注入の35.7分後に加え、6回目の分(0.32モル当量)を、注入の47.2分後に加えた。塩酸の合計量が今回は1.2モル当量であったことに留意すること。(COBRからCSTRへの)排出口における時間は52.8分であった。
【0054】
実験7からの実験8の差異を、以下にボールド体で記載する(訳注:翻訳文中では下線を引いた。)。
【0055】
第8の実験では、1回目の分(0.45モル当量)を、注入時に加えた。種晶のスラリー(2.0w/w%の代わりに今回は3.1w/w%)を、注入の2.8分後に加えた。2回目の分の塩酸(0.15モル当量)を、注入の7.6分後に加えた。3回目の分(0.10モル当量)を、注入の19.1分後に加え、4回目の分(0.10モル当量)を、注入の26.2分後に加え、5回目の分(0.08モル当量)を、注入の35.7分後に加え、6回目の分(0.32モル当量)を、注入の47.2分後に加えた。塩酸の合計量が今回は1.2モル当量であったことに留意すること。(COBRからCSTRへの)排出口における時間は52.8分であった。
【0056】
6回目の分の塩酸添加地点付近におけるスケーリングは、5回目と6回目の分の塩酸添加の間の時間を延長することによって、僅かに減少した。上記で得られた結晶の濾過挙動は、前述の実験と同じであった。驚くべきことに、この乾燥前の液体含有率は、製品からの結晶の液体含有率よりも今や幾分低かった。このため、結晶を、走査型電子顕微鏡検査(SEM)で調べた。結晶は、製品のものとは形状が僅かに異なっていることが認められた(
図1参照)。この実験からの結晶は、(窒素を吹き付けることによる)予備乾燥が、製品からの結晶よりも容易であった。この結晶の塩含有率も低かった(≦0.2w/w%)。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、本発明に従って塩酸を加えることによるプラグフロー反応器内での結晶化からの結晶(上)および現行のバッチ工程からの結晶(下)のSEM-写真を例示している。我々は、
図1の上の結晶は、母液からの分離が、
図1の下の結晶よりも容易であることを見出した。我々は、乾燥前の残存水分が、上の結晶において著しく低いことも見出した。上の結晶は乾燥もより容易であり、これは、現存する乾燥装置における規定の乾燥能力またはより高い性能を得るための投資がより少ないことを意味する。
【0058】
結晶の製品品質は、第1の「パッケージ」と同じであった。この濾過挙動は、概ね僅かに改善されており、この結晶の乾燥もさらにより容易であった。「パッケージ」1における数回の塩酸添加において観察されたスケーリングは、「第2のパッケージ」における多くの実験において消失した。
【0059】
実施例は研究室規模で実施されており、使用された条件は、本発明を工業規模で実践する際に適合される場合があることは、当業者によって理解されるであろう。例えば、より少ない分割分の酸が使用されてもよい。
【国際調査報告】