(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキルポリカルボキシレート化合物を含む潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 135/36 20060101AFI20230502BHJP
C10M 139/00 20060101ALI20230502BHJP
C10M 135/18 20060101ALI20230502BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20230502BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20230502BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230502BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
C10M135/36
C10M139/00 Z
C10M135/18
C10N10:12
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559774
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021058073
(87)【国際公開番号】W WO2021198131
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522232558
【氏名又は名称】トタルエナジーズ ワンテク
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ボワイエ,シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】ティエボー,ブノワ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BG10C
4H104BG19C
4H104BJ07C
4H104DA02A
4H104FA06
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA42
4H104PA44
(57)【要約】
少なくとも1つの有機モリブデン化合物と少なくとも1つの2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキルポリカルボキシレート化合物を含む潤滑油添加剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1つの有機モリブデン化合物と、
- 少なくとも1つの2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物と、
を含む潤滑油添加剤組成物。
【請求項2】
有機モリブデン化合物が、二核有機モリブデン化合物の中から、好ましくはモリブデンジチオカルバメート類の中から選択される、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項3】
2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物が、化学式(IV)、
【化1】
の化合物の中から選択され、式中、R’は、少なくとも1つのC
1~C
34のアルキルカルボキシレート部分、好ましくは少なくとも2つのC
1~C
34のアルキルカルボキシレート部分で置換されたC
1~C
34のアルキル部分である、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
R’が、C
1~C
30のアルキル部分、好ましくはC
1~C
20、より好ましくはC
1~C
10、典型的にはC
1~C
5のアルキル部分であり、例えばエチル部分である、請求項3に記載の添加剤組成物。
【請求項5】
アルキルカルボキシレート部分(単複)が、C
1~C
30、好ましくはC
1~C
20、より好ましくはC
1~C
10のアルキルカルボキシレート部分、例えば2-エチルヘキシル部分の中から独立して選択されている、請求項3または4に記載の添加剤組成物。
【請求項6】
2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物が、化学式(V)、
【化2】
を有する、請求項1から5のいずれか一つに記載の添加剤組成物。
【請求項7】
有機モリブデン化合物と2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の間の重量比が、1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1、より好ましくは1:5~5:1の範囲内である、請求項1から4のいずれか一つに記載の添加剤組成物。
【請求項8】
- 少なくとも1つの基油と、
- 請求項1から7のいずれか一つに記載の少なくとも1つの添加剤組成物と、
を含む潤滑剤組成物。
【請求項9】
潤滑剤組成物の総重量との関係において、50重量%~99.5重量%の基油を含む、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
元素モリブデンの含有量が、潤滑剤組成物の総重量に比較して、50~1,500重量ppm、好ましくは100~1,000重量ppmの範囲内にある、請求項8または9に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.2重量%~1.0重量%、好ましくは、0.2重量%~0.9重量%、例えば0.5重量%の2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物を含む、請求項8から10のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%の範囲内の硫黄含有量を有する、請求項8から11のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの基油および少なくとも1つの有機モリブデン化合物を含む潤滑剤組成物中での2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の使用。
【請求項14】
内燃機関の経時的燃料経済性を維持するための、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
有機モリブデン化合物が、二核有機モリブデン化合物から選択される、請求項13または14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物の分野に関し、詳細には潤滑剤組成物の燃料経済性(FEすなわち「フューエルエコ」)に関する。より具体的には、本発明は、潤滑剤組成物の燃料経済性特性を経時的に維持すること(FE保持すなわち「フューエルエコ保持」)を可能にする添加剤組成物に関する。本発明は同様に、本発明に係る添加剤組成物の潤滑剤組成物中での使用および結果として生じる潤滑性組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン開発とエンジンの潤滑剤組成物の性能は、密接に関連している。エンジン設計が複雑になればなるほど、効率および燃料消費量の最適化が高くなり、潤滑剤組成物の性能を改良する必要性がさらに高くなる。
【0003】
ガソリンおよびディーゼルエンジンの動作条件には、極端に短い旅程および極端に長い旅程の両方が含まれる。実際、西欧における自動車の旅程の80%が、12キロメートル未満である一方で、一部の車両は最高300,000kmの年間走行距離に適用される。
【0004】
オイル交換の間隔もまた、一部の小型ディーゼルエンジンについての5,000kmから現代の商業車用ディーゼルエンジンについての100,000kmまでと、広く変動する。
【0005】
自動車用の潤滑剤組成物は、全てのこれらの使用条件に適応可能でなければならず、したがって、改良された特性および性能を有していなければならない。
【0006】
エンジン潤滑剤組成物は、多くの目標を満たしていなければならない。
【0007】
互いに摺動する部品の潤滑は、詳細には、これらの部品間の摩擦、ひいては摩耗および引裂を削減し、こうして今度は燃料を節約する上で、主要な役割を果たす。
【0008】
エンジン潤滑剤組成物の必須の要件は、環境に関する側面である。CO2の排出を削減する目的で燃料消費量を削減することが不可欠になってきた。
【0009】
自動車用エンジン潤滑剤組成物の性質は、燃料消費量に影響を及ぼす。燃料節約型自動車エンジン潤滑剤組成物は、多くの場合「フューエルエコ」(FE)と呼ばれる。
【0010】
フューエルエコ性能レベルを改良することが、自動車用潤滑剤の調合において、常時探求されている。
【0011】
しかしながら、この性能改良では十分ではない。それには、潤滑剤組成物の使用を通して得られるこのフューエルエコ性能レベルを経時的に維持または保存することが伴っていなければならない。
【0012】
エンジンを老朽化させる潤滑剤組成物をエンジン内で使用する場合、フューエルエコ性能を可能なかぎり維持しなければならない。実際、フューエルエコ性能の低下は、メリットを減少させる。したがって、高いフューエルエコ性能レベルを達成する必要性に加えて、例えば2回のオイル交換間隔の間または一定のキロメートル数を走行した後で、潤滑剤組成物のこのフューエルエコ性能レベルを経時的に維持または保存できることが重要である。
【0013】
詳細には、エンジン、特に車両エンジンの優れた燃料経済性を維持する潤滑剤組成物を有することが重要である。
【0014】
有機モリブデン化合物などの摩擦調整剤を潤滑剤組成物に添加して摩擦係数を低下させることが公知である。このような化合物の添加は、結果として燃料の節約をもたらし、潤滑剤にFE特性を付与する。使用される摩擦調整剤の中でも、MoDTC(モリブデンジチオカルバメート)が、摩擦係数を低下させ、ひいては燃料節約を達成するための最も有効な添加剤の1つである。
【0015】
エンジンの動作中、MoDTCなどの有機モリブデン化合物は、2つの化合物、すなわち摩擦を低減させるMoS2(層状二硫化モリブデン)と摩耗を増大させる傾向を有する三酸化モリブデン(MoO3)とを形成する。
【0016】
有機モリブデン化合物の一部を形成するモリブデンは酸化し、これが、経時的な有機モリブデン化合物の性能損失、ひいてはフューエルエコ潤滑剤組成物の性能(ひいては燃料経済性)損失の経時的な原因となる。
【0017】
この問題を克服するためには、有機摩擦調整剤を使用することができるが、これらの有効性は比較的低いものである。有機モリブデン化合物の増量も考慮された。しかしながら、高いモリブデン含有量は、莫大な追加の調合コストを意味する。一方で、典型的に1,500ppm超の高いレベルでは、潤滑剤組成物はもはや安定しておらず、これらの安定性の問題が結果として、特に銅エンジンにおけるエンジン腐食および/またはエンジン汚染の高いリスクをもたらす。
【0018】
したがって、従来技術の潤滑剤組成物の問題のいくつかまたは全てを解決することのできる、特に車両エンジンのためのエンジン潤滑剤組成物に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、経時的に持続する燃料経済性特性を伴う潤滑剤組成物を提供し、これによって、燃料消費量の経時的な削減を維持することにある。
【0020】
本発明のさらなる目的は、低い摩擦係数を経時的に維持する潤滑剤組成物を提供することにある。
【0021】
本発明のさらなる目的は、有機モリブデン化合物の効率の経時的な低下に対する解決法を提供することにある。
【0022】
本発明のさらなる目的は、特に酸化による経時的な劣化から潤滑剤組成物の有機モリブデン化合物を保護する化合物を提供することにある。
【0023】
さらなる目的は、本発明の以下の説明から明らかになるものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、第一に、
- 少なくとも1つの有機モリブデン化合物と、
- 少なくとも1つの2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物と、
を含む潤滑油添加剤組成物に関する。
【0025】
本発明はまた、
- 少なくとも1つの基油と、
- 以上で定義され以下で詳述される少なくとも1つの添加剤組成物と、
を含む潤滑剤組成物にも関する。
【0026】
本発明は、最後に、好ましくは二核有機モリブデン化合物の中から選択された、少なくとも1つの有機モリブデン化合物および少なくとも1つの基油を含む潤滑剤組成物中での2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の使用に関する。
【0027】
好ましくは、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物は、内燃機関の燃料経済性を経時的に維持するために使用される。
【0028】
有利には、有機モリブデン化合物と2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の間の質量比は1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1、より好ましくは1:5~5:1の範囲内である。
【0029】
有利には、有機モリブデン化合物は、二核有機モリブデン化合物の中から、好ましくはモリブデンジチオカルバメート類の中から選択される。
【0030】
有利には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物は、化学式(IV):
【化1】
の化合物の中から選択されており、式中、R’は、少なくとも1つのC
1~C
34アルキルカルボキシレート部分、好ましくは少なくとも2つのC
1~C
34アルキルカルボキシレート部分で置換されたC
1~C
34アルキル部分である。
【0031】
好ましくは、部分R’は、C1~C30、好ましくはC1~C20、より好ましくはC1~C10、典型的にはC1~C5のアルキル部分であり、例えばエチル部分である。
【0032】
好ましくは、アルキルカルボキシレート部分は、C1~C30、好ましくはC1~C20、より好ましくはC1~C10のアルキルカルボキシレート部分の中から独立して選択されており、例えば2-エチルヘキシル部分である。
【0033】
より有利には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物は、化学式(V):
【化2】
を有する。
【0034】
好ましくは、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量との関係において、50重量%~約99.5重量%の基油(単複)を含む。
【0035】
好ましくは、潤滑剤組成物中の元素モリブデンの含有量は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、50~1,500重量ppm、好ましくは100~1,000重量ppmの範囲内にある。
【0036】
好ましくは、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.2重量%~1.0重量%、好ましくは、0.2重量%~0.9重量%、例えば0.5重量%の2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物を含む。
【0037】
有利には、潤滑剤組成物は、組成物の総重量に比較して、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%の範囲内の硫黄含有量を有する。
【0038】
いかなる理論によっても束縛されることなく、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物は、ポリスルフィド化合物またはリン-硫黄化合物などの潤滑剤組成物中で使用される他の硫黄化合物よりも熱安定性が高い。したがって、MoDTCとも呼ばれるモリブデンジチオカルバメートなどの、有機モリブデン化合物を含む潤滑剤組成物中に2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物が存在することによって、モリブデンの酸化を削減するか、さらにはモリブデンを酸化から保護することさえ可能となり、有機モリブデン化合物の硫化およびモリブデンの硫化副産物が助長され、ひいては、MoDTCなどの有機モリブデン化合物の特性が経時的に維持されることになる。
【0039】
いかなる理論によっても束縛されることなく、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物を、MoDTCなどの有機モリブデン化合物と組合わせることで、低い摩擦係数の経時的な維持、潤滑剤のFE特性の経時的な維持、ひいては経時的な燃料経済性が可能になる。
【0040】
本発明は、
- 少なくとも1つの有機モリブデン化合物と、
- 少なくとも1つの2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物と、
を含む潤滑油添加剤組成物に関する。
【0041】
本発明は、
- 少なくとも1つの基油と、
- 少なくとも1つの有機モリブデン化合物と、
- 少なくとも1つの2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物と、
を含む潤滑剤組成物にも関する。
【0042】
有機モリブデン化合物
本発明に係る有機モリブデン化合物は、あらゆる脂溶性有機モリブデン化合物を意味する。
【0043】
本発明に係る有機モリブデン化合物は、少なくとも1つの化学元素モリブデン(Mo)、好ましくは少なくとも2つの化学元素モリブデン(Mo)および少なくとも1つの配位子、例えばカルボキシレート配位子、エステル配位子、アミド配位子、ジチオホスフェート配位子、ジチオカルバメート配位子を含む有機モリブデン錯体の中から選択され得る。
【0044】
例えば、カルボキシレート、エステルおよびアミドとモリブデンとの有機錯体は、酸化モリブデンまたはモリブデン酸アンモニウムと脂肪、グリセリド、脂肪酸または脂肪酸誘導体(エステル、アミン、アミドなど)と反応させることによって得ることができる。
【0045】
本発明の目的のためには、カルボキシレート配位子、エステル配位子およびアミド配位子は、硫黄およびリンを含まない。
【0046】
一実施形態において、本発明の有機モリブデン化合物は、主として、例えば三酸化モリブデンであり得るモリブデン源、およびアミン誘導体、および例えば植物油または動物油中に含有される脂肪酸などの、例えば4~36個の炭素原子を含む脂肪酸を反応させることによって調製された、モリブデンとアミド配位子の錯体の中から選択される。
【0047】
このような化合物の合成は、例えば米国特許第4889647号明細書、欧州特許第0546357号明細書、米国特許第5412130号明細書または欧州特許第1770153号明細書中に記載されている。
【0048】
好ましい実施形態において、有機モリブデン化合物は、二核有機モリブデン化合物から選択される。
【0049】
本発明の目的のためには、「二核有機モリブデン化合物」は、核内に2つのモリブデン原子を伴う有機モリブデン化合物を意味する。これらの化合物は、同様に、二量体有機モリブデン化合物としても公知である。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、有機モリブデン化合物は、
(i) モノ、ジまたはトリグリセリド脂肪または脂肪酸と、
(ii) 化学式(A):
【化3】
のアミノ源であって、
式中、
- X
1は、酸素原子または窒素原子を表わし、
- X
2は、酸素原子または窒素原子を表わし、
- nまたはmは、X
1またはX
2がそれぞれ酸素原子を表わす場合、1を表わし、
- nまたはmは、X
1またはX
2がそれぞれ窒素原子を表わす場合、2を表わしている
アミノ源と、
(iii) 三酸化モリブデンまたはモリブデン酸塩、好ましくはモリブデン酸アンモニウムの中から選択されるモリブデン源と、
の反応によって得られるモリブデンとアミド配位子の有機錯体の中から選択される。
【0051】
本発明の一実施形態において、有機モリブデン化合物は、有機モリブデン錯体の総重量に比較して0.1~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは2~8.5重量%のモリブデンを含み得る。
【0052】
好ましくは、有機モリブデン化合物は、単独かまたは混合物の形で、
化学式(I):
【化4】
で、式中、
X
1が、酸素原子または窒素原子を表わし;
X
2が、酸素原子または窒素原子を表わし;
nは、X
1が酸素原子を表わす場合1を表わし、mは、X
2が酸素原子を表わす場合1を表わし;
nは、X
1が窒素原子を表わす場合2を表わし、mは、X
2が窒素原子を表わす場合2を表わし;
R
1が、4~36個の炭素原子、好ましくは4~20個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子を含む直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキル部分を表わす、有機モリブデン錯体;
あるいは化学式(II):
【化5】
で、式中、
X
1が、酸素原子または窒素原子を表わし;
X
2が、酸素原子または窒素原子を表わし;
nは、X
1が酸素原子を表わす場合1を表わし、mは、X
2が酸素原子を表わす場合1を表わし;
nは、X
1が窒素原子を表わす場合2を表わし、mは、X
2が窒素原子を表わす場合2を表わし;
R
1が、4~36個の炭素原子、好ましくは4~20個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子を含む直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキル部分を表わし;
R
2が、4~36個の炭素原子、好ましくは4~20個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子を含む直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキル部分を表わす、有機モリブデン錯体;
を少なくとも1つ含む。
【0053】
有利には、化学式(I)または(II)の有機モリブデン錯体は:
(i)モノ、ジまたはトリグリセリド脂肪または脂肪酸、
(ii)ジエタノールアミンまたは2-(2-アミノエチル)アミノエタノール、
(iii)および三酸化モリブデンまたはモリブデン酸塩、好ましくはモリブデン酸アンモニウムの中から選択されたモリブデン源、
の反応によって調製される。
【0054】
より有利には、化学式(I)の有機モリブデン錯体は、単独または混合物の形で、少なくとも1つの、
化学式(I-a):
【化6】
で、式中、R
1が、4~36個の炭素原子、好ましくは4~20個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子を含む直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキル部分を表わす化合物;
あるいは化学式(I-b):
【化7】
で、式中、R
1が、4~36個の炭素原子、好ましくは4~20個の炭素原子、有利には6~18個の炭素原子を含む直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキル部分を表わす化合物;
で構成されている。
【0055】
本発明に係る硫黄を含まないモリブデン錯体の一例は、Vanderbilt社から市販されているMolyvan855(登録商標)である。
【0056】
本発明の別の実施形態においては、有機モリブデン化合物は、モリブデンとジチオホスフェート配位子の有機錯体またはモリブデンとジチオカルバメート配位子の有機錯体の中から選択される。
【0057】
本発明の意味合いにおいて、モリブデンとジチオホスフェート配位子の有機錯体は、モリブデンジチオホスフェートすなわちMo-DTP化合物とも呼ばれ、モリブデンとジチオカルバメート配位子の有機錯体は、モリブデンジチオカルバメートすなわちMo-DTC化合物とも呼ばれる。
【0058】
本発明のさらにもう1つの好ましい実施形態において、有機モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートから選択される。
【0059】
Mo-DTC化合物は、配位子がアルキルジチオカルバメート部分であるものとして、単数または複数の配位子に結合されたモリブデン金属核によって形成された錯体である。これらの化合物は、当業者にとって周知のものである。
【0060】
本発明の一実施形態において、Mo-DTC化合物は、Mo-DTCの総重量に比較して、1~40重量%、好ましくは2~30重量%、より好ましくは3~28重量%、有利には4~15重量%のモリブデンを含み得る。
【0061】
本発明の別の実施形態において、Mo-DTC化合物は、Mo-DTCの総重量に比較して、1~40重量%、好ましくは2~30重量%、より好ましくは3~28重量%、有利には4~15重量%の硫黄を含み得る。
【0062】
本発明の好ましい実施形態において、Mo-DTC化合物は、二量体Mo-DTC化合物である。
【0063】
二量体Mo-DTC化合物の例としては、欧州特許第0757093号明細書、欧州特許第0719851号明細書、欧州特許第0743354号明細書、または欧州特許第1013749号明細書中に記載の化合物およびその調製方法がある。
【0064】
二量体Mo-DTC化合物は概して、化学式(III):
【化8】
の化合物に対応し、式中、
同一のものまたは異なるものであり得る、R
3、R
4、R
5、R
6は、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはシクロアルケニル部分の中から選択された炭化水素部分を表わし、
同一のものまたは異なるものであり得る、X
3、X
4、X
5およびX
6は、独立して、酸素原子または硫黄部分を表わす。
【0065】
本発明の意味における「アルキル部分」は、1~24個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を含む直鎖または分岐、飽和または不飽和炭化水素部分を意味する。
【0066】
本発明の一実施形態において、アルキル部分は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルtert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシルヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-エチルヘキシル、2-ブチルオクチル、2-ブチルデシル、2-ヘキシルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-オクチルデシル、2-ヘキシルドデシル、2-オクチルドデシル、2-デシルテトラデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-ヘキサデシルオクタデシル、2-テトラデシルオクタデシル、ミリスチル、パルミチルおよびステアリルからなる群の中から選択される。
【0067】
本発明の意味合いにおける「アルケニル部分」は、少なくとも1つの二重結合を含みかつ2~24個の炭素原子を含む直鎖または分岐炭化水素部分を意味する。アルケニル部分は、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニルおよびオレイックの中から選択されてよい。
【0068】
本発明の意味合いにおける「アリール部分」は、アルキル部分によって置換されているか否かにかかわらず、多環式芳香族炭化水素または芳香族部分を意味する。アリール部分は、6~24個の炭素原子を含み得る。
【0069】
一実施形態において、アリール部分は、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、フェニルスチレン、p-クミルフェニルおよびナフチルからなる群の中から選択されてよい。
【0070】
「シクロアルキル部分」は、本発明の意味合いにおいて、アルキル部分により置換されているか否かに関わらず、多環式または環状炭化水素を意味する。
【0071】
「シクロアルケニル部分」は、本発明の意味合いにおいて、アルキル部分により置換されているか否かに関わらず、多環式または環状炭化水素を意味し、少なくとも1つの二重結合を含む。
【0072】
シクロアルキル部分およびシクロアルケニル部分は、3~24個の炭素原子を含み得る。
【0073】
本発明の目的のためには、シクロアルキル部分およびシクロアルケニル部分は、非限定的に、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニルからなる群の中から選択されてよい。
【0074】
本発明の好ましい一実施形態において、同一のものまたは異なるものであり得るR3、R4、R5およびR6は、独立して、1~24個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を含むアルキル部分、または2~24個の炭素原子を含むアルケニル部分を表わす。
【0075】
本発明の一実施形態において、X3、X4、X5およびX6は、同一であり得、かつ硫黄原子を表わしていてよい。
【0076】
本発明の別の実施形態において、X3、X4、X5およびX6は、同一であり得、かつ酸素原子であり得る。
【0077】
本発明の別の実施形態において、X3およびX4は、硫黄原子を表わしていてよく、X5およびX6は酸素原子を表わしていてよい。
【0078】
本発明の別の実施形態において、X3およびX4は、酸素原子を表わしていてよく、X5およびX6は、硫黄原子を表わしていてよい。
【0079】
本発明の別の実施形態において、Mo-DTC化合物の硫黄原子数対酸素原子数の比率(S/O)は、(1/3)から(3/1)まで変動し得る。
【0080】
本発明の別の実施形態において、化学式(III)のMo-DTC化合物は、対称型Mo-DTC化合物、非対称型Mo-DTC化合物およびそれらの組合せの中から選択されてよい。
【0081】
本発明に係る「対称型Mo-DTC化合物」とは、部分R3、R4、R5およびR6が同一である化学式(V)のMo-DTC化合物を意味する。
【0082】
本発明に係る「非対称型Mo-DTC化合物」とは、部分R3およびR4が同一であり、部分R5およびR6が同一であり、部分R3およびR4が部分R5およびR6と異なっている化学式(V)のMo-DTC化合物を意味する。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、Mo-DTC化合物は、少なくとも1つの対称型Mo-DTC化合物と少なくとも1つの非対称型Mo-DTC化合物の混合物である。
【0084】
本発明の一実施形態において、同一であるR3およびR4は、5~15個の炭素原子、好ましくは8~13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、同一であるR5およびR6は、5~15個の炭素原子、好ましくは8~13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、部分R3およびR4は、R5およびR6と同一であるかまたは異なるものである。
【0085】
本発明の別の好ましい実施形態において、同一であるR3およびR4は、6~10個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、同一であるR5およびR6は、10~15個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、部分R3およびR4は、部分R5およびR6と異なっている。
【0086】
本発明の別の好ましい実施形態において、同一であるR3およびR4は、10~15個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、同一であるR5およびR6は、6~10個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、部分R3およびR4は、部分R5およびR6と異なっている。
【0087】
本発明の別の好ましい実施形態において、同一であるR3、R4、R5およびR6は、5~15個の炭素原子、好ましくは8~13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わす。
【0088】
有利には、Mo-DTC化合物は、化学式(III)の化合物の中から選択され、式中:
- X3およびX4は、酸素原子を表わし、
- X5およびX6は、硫黄原子を表わし、
- R3は、8個の炭素原子を含むアルキル部分または13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、
- R4は、8個の炭素原子を含むアルキル部分または13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、
- R5は、8個の炭素原子を含むアルキル部分または13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、
- R6は、8個の炭素原子を含むアルキル部分または13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わす。
【0089】
したがって、有利には、Mo-DTC化合物は、化学式(III-a):
【化9】
の化合物の中から選択され、式中、部分R
3、R
4、R
5およびR
6は化学式(III)について定義された通りである。
【0090】
より有利には、Mo-DTC化合物は:
- R3、R4、R5およびR6が8個の炭素原子を含むアルキル部分を表わす化学式(III-a)のMo-DTC化合物、
- R3、R4、R5およびR6が13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わす化学式(III-a)のMo-DTC化合物、および/または、
- R3、R4が8個の炭素原子を含むアルキル部分を表わし、R5およびR6が13個の炭素原子を含むアルキル部分を表わす化学式(III-a)のMo-DTC化合物、
の混合物である。
【0091】
Mo-DTC化合物の例としては、R.T.Vanderbilt Company(登録商標)により市販されているMolyvan L(登録商標)、Molyvan 807(登録商標)またはMolyvan 822(登録商標)またはAdeka社により市販されている製品、サクラルーブ200(登録商標)、サクラルーブ165(登録商標)、サクラルーブ525(登録商標)またはサクラルーブ600(登録商標)がある。
【0092】
好ましくは、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、50重量ppm~1500重量ppm、好ましくは100重量ppm~1000重量ppmの元素モリブデンを含んでいる。
【0093】
2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物
「2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物」とは、本発明の意味において、チオール部分の少なくとも1つがアルキル(ポリ)カルボキシレート部分によって置換されている2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールから誘導された化合物を意味する。
【0094】
「アルキル(ポリ)カルボキシレート部分」とは、本発明の意味合いにおいて、単数または複数カルボキシレート部分によって置換されたアルキル部分を意味する。単一のカルボキシレート部分で置換された場合、それは「アルキルカルボキシレート部分」と呼ばれる。少なくとも2つのカルボキシレート部分で置換された場合、それは「アルキルポリカルボキシレート部分」と呼ばれる。
【0095】
好ましくは、チオール部分の1つのみが、アルキル(ポリ)カルボキシレート部分で置換されている。
【0096】
より好ましくは、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物は、化学式(IV):
【化10】
の化合物から選択され、式中、R’は、少なくとも1つのC
1~C
34のアルキルカルボキシレート部分で置換された直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和のC
1~C
34のアルキル部分である。
【0097】
好ましくは、部分R’は、少なくとも1つのC1~C34のアルキルカルボキシレート部分で置換されたC1~C30、より好ましくはC1~C20、さらに一層好ましくはC1~C10そして有利にはC1~C5のアルキル部分の中から選択される。
【0098】
より好ましくは、部分R’は、少なくとも1つのC1~C34アルキルカルボキシレート部分によって置換されたメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチルおよびネオペンチル部分の中から選択される。
【0099】
有利には、部分R’は、少なくとも1つのC1~C34のアルキルカルボキシレート部分によって置換されたエチル部分である。
【0100】
好ましくは、アルキルカルボキシレート部分は、C1~C30、より好ましくはC1~C20、さらに一層好ましくはC5~C10のアルキルカルボキシレート部分の中から選択される。
【0101】
アルキルカルボキシレート部分のアルキル部分は、直鎖、分岐または環状であり得る。
【0102】
好ましくは、アルキルカルボキシレート部分のアルキル部分は、分岐アルキル部分の中から選択される。
【0103】
アルキルカルボキシレート部分のアルキル部分は、飽和または不飽和である。
【0104】
好ましくは、アルキルカルボキシレート部分のアルキル部分は、飽和である。
【0105】
有利には、アルキルカルボキシレート部分は、2-エチルヘキシルカルボキシレート部分である。
【0106】
一実施形態において、部分R’は、少なくとも2つのC1~C34のアルキルカルボキシレート部分で置換されている。
【0107】
アルキルカルボキシレート部分は、同一のものまたは異なるものであり得る。
【0108】
好ましくは、本実施形態によると、アルキルカルボキシレート部分は同一である。
【0109】
より好ましくは、アルキルカルボキシレート部分は全て、2-エチルヘキシルカルボキシレート部分である。
【0110】
好ましい実施形態によると、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物は、化学式(V):
【化11】
を有する。
【0111】
このような化合物は、例えばVanderbilt社から、Vanlube(登録商標)871(CAS no.12610453-53-8)なる品番で市販されている。
【0112】
有利には、有機モリブデン化合物および2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物は、本発明に係る添加剤組成物中に、1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1、より好ましくは1:5~5:1の範囲内の重量比で存在する。
【0113】
好ましくは、本発明に係る潤滑油組成物は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.2重量%~1.0重量%の2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物、好ましくは0.2重量%~0.9重量%、例えば0.5重量%の2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物を含む。
【0114】
基油
本発明に係る潤滑剤組成物中で使用される基油は、API分類(またはATIEL分類に準じたその等価物)中で定義されているクラスにしたがって(表1)I群からV群に属する鉱物または合成由来の油、またはその混合物であり得る。
【0115】
【0116】
本発明に係る鉱物性基油は、原油の常圧蒸留および真空蒸留とそれに続く精製作業、例えば溶媒抽出、脱アルカリ、溶剤脱ろう、水素処理、水素化分解、水素異性化および水素精製によって得られた全てのタイプの基油を含む。
【0117】
合成油と鉱油の混合物も、使用可能である。
【0118】
本発明に係る潤滑剤組成物の基油は、合成油、例えばカルボン酸とアルコールの特定のエステルの中から、およびポリアルファオレフィンの中から選択されてもよい。基油として使用されるポリアルファオレフィンは例えば、ASTM D445にしたがって100℃において1.5~15mm2/sの粘度を有する、4~32個の炭素原子を伴うモノマー、例えばオクテンまたはデセンから得られる。その平均モル重量は概して、ASTM D5296にしたがって250~3,000である。
【0119】
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、組成物の総重量に比較して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%の基油を含む。
【0120】
さらに特に有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、組成物の総重量に比較して50重量%~99.5重量%の基油、好ましくは70~99.5重量%の基油を含む。
【0121】
任意の添加剤
本発明に係る潤滑剤組成物中には、多くの任意の添加剤も存在し得る。
【0122】
本発明に係る潤滑剤組成物のための好ましい添加剤は、洗剤添加剤、以上で定義されたモリブデン化合物以外の摩擦調整添加剤、極圧添加剤、分散剤、流動点降下剤、消泡剤、増粘剤およびそれらの混合物の中から選択される。
【0123】
好ましくは、本発明に係る潤滑剤組成物は、少なくとも1つの極圧添加剤、または混合物を含む。
【0124】
耐摩耗添加剤および極圧添加剤は、その表面上に吸着された保護膜を形成することによって表面摩擦を保護する。
【0125】
多様な耐摩耗添加剤が存在する。好ましくは、本発明の潤滑剤組成物のためには、耐摩耗添加剤は、例えばアルキルチオリン酸金属、詳細にはアルキルチオリン酸亜鉛、そしてより詳細には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛すなわちZnDTPのような、リンおよび硫黄を含む添加剤の中から選択される。好ましい化合物は、化学式Zn((SP(S)(OR)(OR’))2の化合物であり、式中同じかまたは異なるものであるRおよびR’は独立して、アルキル部分、好ましくは1~18個の炭素原子を含むアルキル部分を表わす。
【0126】
アミンホスフェートも、本発明に係る潤滑剤組成物中で使用することのできる耐摩耗添加剤である。しかしながら、これらの添加剤によって提供されるリン原子は、これらの添加剤が灰を生成するため、自動車触媒系には毒として作用する可能性がある。これらの効果は、アミンホスフェートを非リン系添加剤、例えばポリスルフィド、特に硫黄含有オレフィンで部分的に置換することによって最小限に抑えることができる。
【0127】
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.01~6重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~2重量%の耐摩耗添加剤および極圧添加剤を含み得る。
【0128】
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.01~6重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~2重量%の耐摩耗添加剤(または耐摩耗化合物)を含む。
【0129】
有利には、本発明に係る組成物は、本発明のモリブデン化合物とは異なる少なくとも1つの摩擦調整剤添加剤を含み得る。摩擦調整剤添加剤は、金属元素を提供する化合物および無灰化合物の中から選択されてよい。金属元素を提供する化合物としては、その配位子が酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含む炭化水素化合物であり得るMo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどの遷移金属錯体に言及することができる。無灰摩擦調整剤添加剤は概して、有機由来のものであるか、またはポリオールの脂肪酸モノエステル、アルコキシル化アミン、アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪族エポキシド、脂肪族エポキシドボレート、脂肪族アミンまたはグリセロール酸エステルの中から選択されてよい。本発明によると、脂肪族化合物は、10~24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素部分を含む。
【0130】
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.01~2重量%、または0.01~5重量%、好ましくは0.1~1.5重量%または0.1~2重量%の範囲内の量で、耐摩耗添加剤および極圧添加剤を含み得る。
【0131】
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、少なくとも1つの酸化防止剤添加剤を含んでいてよい。
【0132】
酸化防止剤添加剤は概して、潤滑剤組成物の劣化を遅延させる。この劣化は結果として、堆積物の形成、スラッジの存在または潤滑剤組成物の粘度の上昇をもたらし得る。
【0133】
酸化防止剤添加剤は、ラジカル阻害剤またはヒドロペルオキシドデストラクタ阻害剤として作用する。一般的に使用される酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン酸化防止剤、および硫黄およびリン含有酸化防止剤が含まれる。これらの酸化防止剤のいくつか、例えば硫黄およびリンを含む酸化防止剤は、灰分を生成し得る。フェノール系酸化防止剤添加剤は、灰分を含まないかまたは中性あるいは塩基性の金属塩の形態をしている可能性がある。酸化防止剤添加剤は、詳細には、立体障害性フェノール、立体障害性フェノールエステル、チオエーテル架橋を含む立体障害性フェノール、ジフェニルアミン、少なくとも1つのC1~C12のアルキル部分によって置換されたジフェニルアミン、N,N’-ジアルキルアリールジアミンおよびそれらの混合物の中から選択されてよい。
【0134】
本発明によると好ましくは、立体障害性フェノールは、アルコール官能基を担持する炭素原子の近傍の炭素原子の少なくとも1つが、少なくとも1つのC1~C10のアルキル部分、好ましくはC1~C6のアルキル部分、好ましくはC4のアルキル部分、好ましくはtert-ブチル部分によって置換されているフェノール部分を含む化合物の中から選択される。
【0135】
アミノ化合物は、任意にはフェノール性酸化防止剤添加剤と組合わせて使用可能である別の部類の酸化防止剤添加剤である。アミノ化合物の例としては、芳香族アミン、例えばNRaRbRcなる化学式の芳香族アミンがあり、ここで、Raは、任意に置換されている脂肪族部分または芳香族部分を表わし、Rbは、任意に置換されている芳香族部分を表わし、Rcは、水素原子、アルキル部分、アリール部分または、RdS(O)zReなる化学式の部分であり、この式中、Rdはアルキレン部分またはアルケニレン部分を表わし、Reはアルキル部分、アルケニル部分またはアリール部分を表わし、zは0、1または2を表わす。
【0136】
硫黄を含むアルキルフェノールまたは、それらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩も、酸化防止剤添加剤として使用可能である。
【0137】
他の部類の酸化防止剤添加剤としては、銅を含む化合物、例えばチオリン酸銅またはジチオリン酸銅、カルボン酸の銅塩、ジチオカルバメート、スルホネート、フェネート、銅アセチルアセトン酸銅がある。銅塩(I)および銅塩(II)、コハク酸塩または無水物塩も使用可能である。
【0138】
本発明に係る潤滑剤組成物は、当業者にとって公知のあらゆるタイプの酸化防止剤を含んでもよい。
【0139】
有利には、潤滑剤組成物は、少なくとも1つの無灰酸化防止剤添加剤を含む。
【0140】
同等に有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、組成物の総重量に比較して0.1~2重量%の少なくとも1つの酸化防止剤添加剤を含む。
【0141】
本発明に係る潤滑剤組成物は、少なくとも1つの洗剤添加剤も含み得る。
【0142】
洗剤添加剤は概して、酸化および燃焼副産物を溶解させることによって、金属部品の表面上の堆積物の形成を削減する。
【0143】
本発明に係る潤滑剤組成物中で使用可能な洗剤添加剤は概して、当業者にとって公知である。洗剤添加剤は、親油性炭化水素長鎖と疎水性頭部を含むアニオン化合物であり得る。付随するカチオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属カチオンであり得る。
【0144】
洗剤添加剤は、好ましくは、カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、スルホネート、サリチレート、ナフテネートおよびフェネート塩の中から選択される。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、好ましくは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはバリウムである。
【0145】
これらの金属塩は概して、化学量論量のまたは余剰の、すなわち化学量論量よりも多い量の金属を含有する。これらは、過塩基化洗剤添加剤であり、洗剤に過塩基化特性を付与する余剰の金属は、概して油不溶性金属塩、例えばカルボネート、ヒドロキシド、オキサレート、アセテート、グルタメート、好ましくはカルボネートの形態をしている。
【0146】
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量との関係において、0.5重量%~0.8重量%または2重量%~4重量%の過塩基性洗剤添加剤を含み得る。
【0147】
同等に有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、少なくとも1つの流動点降下剤添加剤も含み得る。
【0148】
パラフィン結晶の形成を減速させることによって、流動点降下剤添加剤は概して、本発明に係る潤滑剤組成物の低温挙動を改善する。
【0149】
流動点降下剤の例としては、アルキルポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、アルキルポリスチレンがある。
【0150】
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、分散剤も含み得る。
【0151】
分散剤は、マンニッヒ塩基、スクシンイミドおよびそれらの誘導体の中から選択されてよい。
【0152】
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.2重量%~10重量%の分散剤を含み得る。
【0153】
有利には、本発明の潤滑剤組成物は、粘度指数を向上することのできる少なくとも1つの追加のポリマーも含み得る。追加の粘度指数向上ポリマーの例としては、ポリマーエステル、スチレン、ブタジエンおよびイソプレンの、水素化または非水素化ホモポリマーまたはコポリマー、ポリメタクリレート(PMA)がある。同等に有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に比較して、1~15重量%の粘度指数を向上する添加剤を含み得る。
【0154】
本発明に係る潤滑剤組成物は、少なくとも1つの増粘剤も含み得る。
【0155】
本発明に係る潤滑剤組成物は、消泡剤および解乳化剤も含み得る。
【0156】
潤滑剤組成物
有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量と比較して:
- 50重量%~99.5重量%の基油、
- 0.1重量%~1.5重量%の有機モリブデン化合物、
- 0.2重量%~1.0重量%の2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物、
- 任意には、0.1重量%~45重量%の添加剤、
を含む。
【0157】
より有利には、本発明に係る潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量と比較して:
- 60重量%~99.5重量%の基油、
- 0.1重量%~1重量%の有機モリブデン化合物、
- 0.2重量%~0.9重量%の2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物、
- 任意には、0.5重量%~40重量%の添加剤、
を含む。
【0158】
好ましくは、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物総重量に比較して、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%の範囲内の硫黄含有量を有する。
【0159】
使用
本発明は、有機モリブデン化合物、例えばMoDTCを劣化から保護し、好ましくは有機モリブデン化合物、例えばMoDTCを酸化から保護することを目的とした2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の使用にも関する。
【0160】
本発明は、経時的に潤滑剤組成物の燃料経済性特性を維持することを目的とした、少なくとも1つの基油と少なくとも1つの有機モリブデン化合物、例えばモリブデンとジチオカルバメート配位子の有機錯体とを含む潤滑剤組成物中での2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の使用にも関する。
【0161】
本発明は、潤滑剤組成物に対する2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の添加を含む、少なくとも1つの基油と有機モリブデン化合物、例えばMoDTCとを含む前記潤滑剤組成物の有機モリブデン化合物、例えばMoDTCを劣化、特に酸化による劣化から保護するための方法にも関する。
【0162】
本発明は、潤滑剤組成物に対する2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の添加を含む、少なくとも1つの基油および有機モリブデン化合物、例えばMoDTCを含む前記潤滑剤組成物の燃料経済性特性を経時的に維持する方法にも関する。
【0163】
有機モリブデン化合物および2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物について以下で詳述される変形形態および実施形態は、同様に、以上で定義された様々な使用にもあてはまる。
【0164】
潤滑剤組成物の燃料経済性特性の維持は、典型的に、試験対象の組成物で潤滑されたエンジンの動作中の組成物の摩擦係数の変化を決定することによって、査定可能である。
【0165】
エンジン動作中に、規則的な時間的間隔で、潤滑剤組成物の試料が採取される。
【0166】
その後組成物の摩擦係数は、当業者にとっては公知の任意の方法によって測定される。これは例えば、往復動ボールオンフラット摩擦計を用いて行なうことができる。経時的な摩擦係数が低ければ低いほど、潤滑剤組成物の燃料経済性特性に対する効果が経時的に一層維持される、ということが理解される。
【0167】
したがって、特に有利にも、有機モリブデン化合物、好ましくは二核有機モリブデン化合物と組合わされた2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の使用は、以下のことを可能にする:
- 詳細には潤滑剤として、好ましくは摩擦調整剤としての経時的な有機モリブデン化合物、例えばMoDTCの特性の延長、
- 少なくとも1つの基油および有機モリブデン化合物、例えばMoDTCを含む潤滑剤組成物の経時的な燃料経済性特性の維持、および/または、
- 経時的な燃料経済性の維持。
【0168】
本発明に係る組合された使用の特定の、有利なまたは好ましい特徴は、本発明にしたがって使用可能な特定の、有利なまたは好ましい組合せを定義する。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【
図1】本発明に係る組成物および基準組成物の摩擦係数の推移を、エンジン動作時間の関数として示している。
【発明を実施するための形態】
【0170】
以下で詳述する組成物を、以下の化合物から調製した:
- 基油:グレード0 W-12の調合済み基油。
【0171】
この基油は、基油の総重量に比較して、次のものを含む:
- 81.7重量%の基油、
- 17.8重量%の通常の添加剤(4.4%の粘度指数向上剤、0.5%の酸化添加剤、0.20%の流動点降下剤および12.7%の添加剤パッケージ)、および
- 0.05重量%のモリブデンジチオカルバメート(以下MoDTC)。
- 2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキルポリカルボキシレート化合物:以下チアジアゾールと呼ぶ、以上で定義された化学式(V)の化合物。
【0172】
実施例1:組成物の調製
組成物C0およびC1を、下表2に示されている量で異なる構成成分を混合することによって調製する。
【0173】
組成物C0は、基準組成物(無添加基油)である。
【0174】
組成物C1は、本発明に係る組成物である。
【0175】
【0176】
実施例2:エンジン試験
C0およびC1潤滑剤組成物の摩擦係数を、以下の方法にしたがってエンジン試験条件下で測定する。
【0177】
各々の潤滑剤組成物(10kg)を、ターボチャージャ付きガソリンエンジンの清浄度試験において評価する。エンジンは、4気筒で1.6Lの排気量を有する。その出力は、115kWである。試験サイクル時間は、アイドル回転数(500~750rpm)と高負荷回転数(2500~5800rpm)の間で交番させて、30時間である。潤滑剤組成物の温度は、50~150℃とし、冷却システム内の水の温度は50~97℃とする。試験中、潤滑剤組成物の排出または補充は、全く行なわない。E10燃料を使用する。
【0178】
試験中、T=0時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間および168時間において、2~3mLの潤滑剤組成物の試料を採取し、以下の特性を有する回転する3-フラットボール接点を伴う摩擦計を用いて、この組成物の摩擦係数を測定する:
- ボールの直径:5mm、
- 温度:100℃、
- 周波数:5Hz、
- 最大接触圧力:700MPa、
- トレース長:5mm、
- 持続時間:1時間。
【0179】
【0180】
【0181】
これらの結果(表3)および
図1中の曲線は、有機モリブデン化合物を単独で含む比較用組成物とは対照的に、有機モリブデン化合物を含む潤滑剤組成物中に2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物が存在している場合に、この2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物を使用することで、エンジン内で使用される本発明に係る潤滑剤組成物が、低い摩擦係数を維持することを可能にする、ということを示している。
【0182】
したがって、エンジンにおける潤滑剤の実際の使用条件をシミュレートするエンジン試験を用いて、MoDTCなどの有機モリブデン化合物を含む組成物中で2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物を使用することによって、経時的に有機モリブデン化合物を酸化から保護し、その結果として経時的に潤滑剤組成物について低い摩擦係数を得ることが可能となる、ということが実証されている。経時的な摩擦係数が低ければ低いほど、潤滑剤組成物の燃料経済性特性に対する効果は経時的に一層維持される、ということが理解される。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1つの有機モリブデン化合物と、
- 少なくとも1つの2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物と、
を含む潤滑油添加剤組成物。
【請求項2】
有機モリブデン化合物が、二核有機モリブデン化合物の中か
ら選択される、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項3】
2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物が、化学式(IV)、
【化1】
の化合物の中から選択され、式中、R’は、少なくとも1つのC
1~C
34のアルキルカルボキシレート部
分で置換されたC
1~C
34のアルキル部分である、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
R’が、C
1~C
30のアルキル部
分である、請求項3に記載の添加剤組成物。
【請求項5】
アルキルカルボキシレート部分(単複)が、C
1~C
30
のアルキルカルボキシレート部
分の中から独立して選択される、請求項
3に記載の添加剤組成物。
【請求項6】
2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物が、化学式(V)、
【化2】
を有する、請求項
1に記載の添加剤組成物。
【請求項7】
有機モリブデン化合物と2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の間の重量比が、1:100~100:
1の範囲内である、請求項
1に記載の添加剤組成物。
【請求項8】
- 少なくとも1つの基油と、
- 請求項
1に記載の少なくとも1つの添加剤組成物と、
を含む潤滑剤組成物。
【請求項9】
潤滑剤組成物の総重量との関係において、50重量%~99.5重量%の基油を含む、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
元素モリブデンの含有量が、潤滑剤組成物の総重量に比較して、50~1,500重量pp
mの範囲内にある、請求項
8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
潤滑剤組成物の総重量に比較して、0.2重量%~1.0重量
%の2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物を含む、請求項
8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
組成物の総重量に比較して、0.01重量%~5重量
%の範囲内の硫黄含有量を有する、請求項
8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの基油および少なくとも1つの有機モリブデン化合物を含む潤滑剤組成物中での2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールアルキル(ポリ)カルボキシレート化合物の使用。
【請求項14】
内燃機関の経時的燃料経済性を維持するための、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
有機モリブデン化合物が、二核有機モリブデン化合物から選択される、請求項1
3に記載の使用。
【国際調査報告】