(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】どろどろとした特性を有するペースト状食品組成物をもたらす食感改良剤としての、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンの使用
(51)【国際特許分類】
A23L 29/212 20160101AFI20230502BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20230502BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230502BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20230502BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20230502BHJP
【FI】
A23L29/212
A23L29/30
A23L5/00 N
A23L29/00
A23L23/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559776
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 FR2021050552
(87)【国際公開番号】W WO2021198607
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】デデュー、ジェラルディン
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B036
4B041
【Fターム(参考)】
4B025LD02
4B025LD08
4B025LG28
4B025LG42
4B025LP01
4B025LP03
4B025LP10
4B025LP15
4B035LC03
4B035LG01
4B035LG06
4B035LG12
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG32
4B035LG33
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
4B036LE02
4B036LF03
4B036LG03
4B036LH01
4B036LH07
4B036LH10
4B036LH12
4B036LH25
4B036LH29
4B036LP01
4B041LC03
4B041LD10
4B041LH03
4B041LK01
4B041LK07
4B041LK11
4B041LK18
4B041LK24
4B041LK27
4B041LP01
4B041LP04
4B041LP07
(57)【要約】
本発明は、どろどろとした食感を有するペースト状食品組成物をもたらす食感改良剤としての、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンの使用に関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
どろどろとした特性を有するペースト状食品組成物をもたらす食感改良剤としての、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンの使用であって、前記プレゼラチン化デンプンのアミロース含有量がデンプンの総重量に対して25重量%を超え、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定される前記プレゼラチン化デンプンの粒径が、1.7を超える「n」値及び850μmを超える「d」値によって定義される、使用。
【請求項2】
前記アミロースリッチなデンプンがマメ科植物、より具体的には、エンドウマメ又はソラマメから得られることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記デンプンのアミロース含有量がデンプンの総重量の25%~45%、好ましくは約35%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定される前記デンプンの粒径が、1.7~2、好ましくは約1.8の「n」値及び850~1,000μm、好ましくは約900μmの「d」値を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
乾燥食品組成物の調製方法であって、前記乾燥組成物の成分の総重量に対して12~18重量%、好ましくは15重量%の量を大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンで置き換えることを含み、前記プレゼラチン化デンプンのアミロース含有量が、デンプンの総重量に対して25重量%を超え、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定される前記プレゼラチン化デンプンの粒径が、1.7を超える「n」値及び850μmを超える「d」値によって定義される、調製方法。
【請求項6】
ペースト状食品組成物の調製方法であって、以下の工程、すなわち、
- 前記組成物の成分の総重量に対して12~18重量%、好ましくは約15重量%の量の大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンを含む乾燥食品組成物を提供する工程、
- 有効量の水を提供する工程、
- このようにして得られた前記乾燥組成物と前記水との混合物を均質化する工程、
- 前記混合物を加熱調理して前記ペースト状食品組成物を得る工程を含み、
前記プレゼラチン化デンプンが、デンプンの総重量に対して25重量%を超えるアミロース含有量及びドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定される、1.7を超える「n」値及び850μmを超える「d」値によって定義される粒径を有する、方法。
【請求項7】
前記アミロースリッチなデンプンがマメ科植物、より具体的にはエンドウマメ又はソラマメから得られることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記デンプンのアミロース含有量がデンプンの総重量の25%~45%、好ましくは約35%であることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定される前記デンプンの粒径が、1.7~2、好ましくは約1.8の「n」値、及び850~1,000μm、好ましくは約900μmの「d」値を有することを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載の調製方法によって得られるペースト状食品組成物。
【請求項11】
再構成されたトマトソースであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
再構成してペースト状食品組成物を形成することを意図した乾燥食品組成物であって、前記乾燥組成物が、前記乾燥組成物の成分の総重量に対して12~18重量%、好ましくは約15重量%の量の、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンを含み、前記プレゼラチン化デンプンのアミロース含有量がデンプンの総重量に対して25重量%を超え、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定される、前記プレゼラチン化デンプンの粒径が、1.7を超える「n」値及び850μmを超える「d」値によって定義される、乾燥組成物。
【請求項13】
再構成されるトマトソースであることを特徴とする、請求項12に記載の乾燥食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、どろどろとした特性を有するペースト状食品組成物、特に、いわゆる「即席」の、再構成されるトマトソースをもたらす、食感改良剤としての大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンの使用に関する。
【0002】
本発明はまた、食品組成物の総重量の12~18重量%、好ましくは約15重量%が、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンによって置き換えられている点で注目されるペースト状食品の調製方法に関する。
【0003】
本発明はまた、組成物の総重量の12~18重量%、好ましくは約15重量%が、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンによって置き換えられたトマトソース組成物に関する。
【0004】
本発明はまた、乾燥食品組成物及び再構成される当該乾燥組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0005】
食品組成物において、「どろどろとした」又は「粒状」という官能特性は、主に粗く構造化された粒子の存在に関連する食感の感覚的な特性評価である。
【0006】
したがって、どろどろとした、及び粒状の食感は、クリーミー又は滑らかな食感とは対照的である。
【0007】
当該食品組成物の成分として、タンパク質、脂質、及び様々な糖類に加えて、デンプンは使用される最も重要な食感改良剤の1つである。
【0008】
この食感改良剤の機能のためのデンプンの特性には、
- 当該ペースト状食品組成物中においてその制御された放出及び/又は保持に有用な量の水と結合できること、
- 三次元ネットワークの形成によって当該組成物のレオロジーを改変できること、及び
- 多くの場合に他の成分又は食感改良剤と相乗的に作用して当該組成物のより良好な安定性を保証し、それにより「軟らかい」固体からゲル状構造までの範囲の様々な食感が得られることが含まれる。
【0009】
得られた食感はまた、そのいくらかを含有する食品組成物の味の改善にも決定的に寄与する。
【0010】
食品組成物の商業的及び工業的製造において、様々なデンプン及びそれらの誘導体の使用は一般的な方法である。
【0011】
天然及び/又は変性デンプンを使用して、食品の感覚的及び物理的特性に決定的に影響を及ぼし、それにより製品の品質をほぼ要求に合わせることができる。
【0012】
生化学的に合成され、炭水化物の供給源であるデンプンは、植物界に最も広く存在する有機物質の1つであり、生物の栄養素の貯蔵を構成する。
【0013】
デンプンは、このように高等植物の貯蔵器官及び組織、特に穀物(小麦、トウモロコシなど)、マメ科植物の粒子(エンドウマメ類、インゲンマメ類(beans)など)、ジャガイモ又はキャッサバの塊茎、根、鱗茎、茎及び果実の中に天然に存在する。
【0014】
デンプンは、α-(1-4)結合及び分子構造中の分岐の元となるα-(1-6)結合を介して互いに結合したD-グルコース単位から構成される2つのホモポリマー、アミロースとアミロペクチンの混合物である。これらの2つのホモポリマーはその分岐の程度、及びその重合度において異なる。
【0015】
アミロースは短い分岐でわずかに分岐し、10,000~1,000,000ダルトンの分子量を有する。分子は600~1,000個のグルコース分子で形成される。
【0016】
アミロペクチンは、α(1-6)結合を介して24~30個のグルコース単位ごとに長い分岐鎖を有する分岐した分子である。その分子量は、1,000,000~100,000,000ダルトンの範囲であり、その分岐度はおよそ5%である。鎖全体で10,000~100,000個のグルコース単位を含む。
【0017】
アミロース対アミロペクチンの比はそのデンプンの植物源に依存する。
【0018】
デンプンは粒状の状態、すなわち半結晶性粒子の形態で貯蔵器官及び組織に蓄えられる。
【0019】
この半結晶の状態は実質的にアミロペクチン高分子の存在によるものである。
【0020】
天然の状態ではデンプン粒子の結晶化度は15~45%であり、それは由来する植物及びそれが受けた全て処理に実質的に依存する。
【0021】
したがって、偏光下に置かれた粒状のデンプンは、顕微鏡検査において、「マルタ十字」と呼ばれる特徴的な黒色の十字を有する。
【0022】
この正の複屈折の現象はこれらの粒子の半結晶性の組織に起因し、ポリマー鎖の平均の配向は放射状である。
【0023】
粒状デンプンのより詳細な説明については、Groupe Francais d’Etudes et d’Application des Polymeres[French Polymer Group]の2000年の”Initiation a la chimie et a la physico-chimie macromoleculaires”[”Introduction to macromolecule chemistry and physical chemistry”]の第1版、第13巻、41~86ページのS.Peresの表題”Structure et morphologie du grain d’amidon”[”Structure and morphology of the starch grain”]の第2章を参照することができる。
【0024】
乾燥デンプンは由来する植物に応じて12~20重量%の範囲の含水量を有する。この含水量は明らかに媒体に残留する水分に依存する(aw=1の場合、デンプンは、デンプン1グラム当たり最大0.5gの水を固定することができる)。
【0025】
過剰の水と共にデンプン懸濁液をその糊化温度に近い温度まで加熱すると、粒子は不可逆的に膨潤してそれは分散し、次いでそれは溶解する。
【0026】
デンプンにその興味深い技術的特性を付与するのは、特にこれらの特性である。
【0027】
「糊化範囲」と呼ばれる所定の温度範囲において、デンプン粒子は非常に急速に膨潤して、その半結晶構造を失う(複屈折の喪失)。
【0028】
全ての粒子は5~10℃程度の温度範囲で最大限に膨潤する。分散相を構成する膨潤粒子と水性の連続相を増粘する分散した分子(主にアミロース)で構成されたペーストが得られる。
【0029】
ペーストのレオロジー特性は、これらの2つの相、分散相と水相の相対的な割合と粒子の膨潤体積に依存する。糊化範囲は、デンプンの由来する植物に応じて変化する。
【0030】
最大粘度は、デンプンペーストが多数の高膨潤粒子を含有する時に得られる。加熱を続けると、粒子が破裂して物質が媒体中に分散する。しかしながら、温度が100℃を超える場合は、可溶化しか起こらない。
【0031】
アミロース-脂質複合体は、その組合せによってアミロースと水分子との相互作用が阻害されるために膨潤が遅くなり、粒子を完全に膨潤させるためには90℃超の温度が必要である(アミロメイズが脂質と複合体を形成するため)。
【0032】
粒子の消失及び高分子の溶解によって粘度は低下する。
【0033】
(冷却して)デンプンペーストの温度を下げると、高分子の不溶化及びアミロースとアミロペクチンとの非相溶性による相分離が生じて、これらの高分子の結晶化が観察される。
【0034】
この現象は老化という名称によって知られている。
【0035】
ペーストがアミロースを含有する場合、アミロースが老化を生じるこの最初の分子である。
【0036】
それは、二重らせんの形成と、連接ゾーンを介した三次元ネットワークを生じる後者の結合による「結晶」(タイプB)の形成からなる。
【0037】
このネットワークは数時間で非常に迅速に形成される。このネットワークの成長中、水素結合を介する二重らせんの互いの会合が、そのらせんと結合した水分子を置換し、著しいシネレシスが生じる。
【0038】
一般則として、通常のデンプン及びデンプン誘導体は、それらの処理方法により、クリーミー又は滑らかな食感を形成する傾向がある。
【0039】
例えば、国際特許出願第WO1993/22938号には、改善された凍結解凍安定性と「良好な」食感、この場合は「滑らかさ」を有するデンプン増粘食品組成物が記載されている。
【0040】
デンプンは糊化された天然デンプンとアミロペクチンとの混合物であり、プロセスは当該混合物のアミロペクチン成分を別々に加熱調理及び剪断することを含む。
【0041】
アミロペクチン成分が剪断された、すなわち機械的に分解されたこの混合物は、増粘効果のみを与え、どろどろとした効果を与えることはない。
【0042】
これを改善するために、どろどろとした、又は粒状の食感を有する特定の食品組成物をもたらすためには、完全なアミロペクチンリッチな天然デンプンの使用が提案されている。
【0043】
したがって、国際特許出願第WO2000/32061号では、アミロペクチンリッチなジャガイモデンプンを処理された食品の所望の官能特性を変化させるために有効な量で食品組成物に添加する方法が提案され、ここで、この出願におけるアミロペクチンリッチとは95%超又はさらには98%超のアミロペクチン濃度を意味すると理解される。
【0044】
これらの著者によれば、このアミロペクチンリッチなデンプンの品質のみが、食品組成物のどろどろとした食感を補強し、さらには安定化することができる。
【0045】
しかしながら、食品組成物の調製のための従来の処理法は、デンプンの「超分子」構造を破壊する可能性があり、したがって明確に回避されなければならないとも記述されている。
【0046】
これを改善するために、本発明者らは、アミロペクチンリッチなデンプンの代わりに、その天然の形態ではなくプレゼラチン化させた形態のアミロースリッチなデンプンの使用がより実用的であることを見出した。
【発明の概要】
【0047】
本発明は、どろどろとした特性を有するペースト状食品組成物、特に、いわゆる「即席」の、再構成されるトマトソースをもたらす、食感改良剤としての大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンの使用に関する。
【0048】
したがって、本発明はどろどろとした特性を有するペースト状食品組成物をもたらす食感改良剤としての、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンの使用に関し、そのアミロース含有量はデンプンの総重量に対して25重量%を超え、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定されるその粒径は、1.7より大きい「n」値と850μmより大きい「d」値によって定義される。
【0049】
好ましくは、アミロースリッチなデンプンはマメ科植物、具体的にはエンドウマメ又はソラマメに由来する。
【0050】
したがって、デンプンのアミロース含有量はデンプンの総重量の25%~45%、好ましくは約35%である。
【0051】
好ましくは、プレゼラチン化デンプンは天然である。
【0052】
さらにより好ましくは、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定されるデンプン粒子の大きさは、1.7~2、好ましくは約1.8の「n」値、850~1,000μm、及び好ましくは約900μmの「d」値を有する。
【0053】
次いで、本発明に従って実施される大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンを、レシピの総成分の総重量の12~18%、好ましくは約15重量%を置き換えるように、ペースト状食品組成物のレシピに導入する。言い換えれば、この方法によって調製される乾燥食品組成物は、12~18重量%の大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンを含む。
【0054】
別の態様によると、本発明は、乾燥食品組成物、特に再構成されるトマトソースの調製方法に関し、方法は、当該組成物の成分の総重量に対して12~18重量%、好ましくは約15重量%の量を、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンで置き換えることを含み、そのアミロース含有量はデンプンの総重量に対して25重量%を超え、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定されるその粒径は1.7を超える「n」値及び850μmを超える「d」値によって定義される。
【0055】
本発明の乾燥食品組成物は、ペースト状食品、特に「即席」トマトソース、すなわち乾燥組成物から再構成されるトマトソースの調製に有用である。実際、それにより、乾燥食品の総重量の12~18重量%、好ましくは約15重量%を、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンで置き換えることができる。
【0056】
したがって、本発明はペースト状食品組成物の調製方法に関し、以下の工程、すなわち、
- 当該組成物の成分の総重量に対して、12~18重量%、好ましくは約15重量%の量の、大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンを含む乾燥食品組成物を提供する工程、
- 有効量の水を提供する工程、
- このようにして乾燥組成物と水との間で得られた混合物を均質化する工程、
- 混合物を加熱調理してペースト状食品組成物を得る工程を含み、ここで、プレゼラチン化デンプンはデンプンの総重量に対して25重量%を超えるアミロース含有量、並びにドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定される、1.7を超える「n」値及び850μmを超える「d」値によって定義される粒径を有する。
【0057】
好ましくは、アミロースリッチなデンプンはマメ科植物、具体的にはエンドウマメ又はソラマメに由来する。
【0058】
したがって、デンプンのアミロース含有量はデンプンの総重量の25%~45%、好ましくは約35%である。
【0059】
好ましくは、プレゼラチン化デンプンは天然である。
【0060】
さらにより好ましくは、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定されるデンプン粒子の大きさは、1.7~2、好ましくは約1.8の「n」値、及び850~1,000μm、好ましくは約900μmの「d」値を有する。
【0061】
別の態様によると、本発明は前の態様の調製方法によって得られるペースト状食品組成物に関する。好ましくは、組成物は、いわゆる「即席」の、再構成されたトマトソースである。
【0062】
本発明はまた、再構成してペースト状食品組成物を形成することを意図した乾燥食品組成物に関し、当該乾燥組成物は、乾燥組成物の成分の総重量に対して12~18重量%、好ましくは15重量%の量の大きな粒径を有するアミロースリッチなプレゼラチン化デンプンを含み、そのアミロース含有量はデンプンの総重量に対して25重量%を超え、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って決定されるその粒径は、1.7を超える「n」値及び850μmを超える「d」値によって定義される。
【0063】
好ましくは、当該乾燥食品組成物は再構成されるトマトソースである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】PREGEFLO(登録商標)L100Fを含む乾燥食品組成物の写真を示し、画像の倍率は35である。
【
図2】PREGEFLOL(登録商標)L100Gを含む乾燥食品組成物の写真を示し、画像の倍率は35である。
【
図3】PREGEFLO(登録商標)P100Gを含む乾燥食品組成物の写真を示し、画像の倍率は35である。
【
図4】陰性対照に対応するPREGEFLO(登録商標)を含まない対照の乾燥食品組成物の写真を示し、画像の倍率は35である。
【
図5】水中のPREGEFLO(登録商標)P100Gを含む水性組成物の写真を示し、画像の倍率は35である。
【
図6】加熱調理工程の前に再構成されるPREGEFLO(登録商標)P100Gを含む食品組成物の写真を示し、画像の倍率は35である。
【
図7】それぞれ陰性対照又はPREGEFLO(登録商標)L100F、PREGEFLO(登録商標)L100G又はPREGEFLO(登録商標)P100Gを含む組成物についてのDmode、D90及びD(4;3)の直径タイプの測定結果に対応する3つのグラフを示す。
【
図8】それぞれPREGEFLO(登録商標)L100F、PREGEFLO(登録商標)L100G又はPREGEFLO(登録商標)P100Gを含む組成物に関するDmode、D90及びD(4;3)の直径タイプから見た粒径分布に対応する3つのグラフを示す。
【
図9】PREGEFLO(登録商標)を含まない再構成された対照のペースト状食品組成物の3つの写真(a、b、c)を示し、写真b及びcは写真aに示された成分の拡大写真に対応する。
【
図10】PREGEFLO(登録商標)L100Gを含む再構成された対照のペースト状食品組成物の3つの写真(a、b、c)を示し、写真b及びcは写真aに示された成分の拡大写真である。
【
図11】PREGEFLO(登録商標)L100Fを含む再構成された対照のペースト状食品組成物の3つの写真(a、b、c)を示し、写真b及びcは写真aに示された成分の拡大写真に対応する。
【
図12】PREGEFLO(登録商標)P100Gを含む再構成された対照のペースト状食品組成物の3つの写真(a、b、c)を示し、写真b及びcは写真aに示された成分の拡大写真である。
【
図13】PREGEFLO(登録商標)を含まない陰性対照組成物又はPREGEFLO(登録商標)L100F、PREGEFLO(登録商標)L100G若しくはPREGEFLO(登録商標)P100Gをそれぞれ含む組成物に対応するペースト状食品組成物の粘度測定の結果に対応する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
したがって、本発明はどろどろとした特性を有するペースト状食品組成物、特に、「即席」として知られる再構成されるトマトソースをもたらす、食感改良剤としての大きな粒径を有するプレゼラチン化されたアミロースリッチなデンプンの使用に関する。
【0066】
それらは、本明細書では、より優先的に選択されたエンドウマメ及びソラマメなどのマメ科植物から抽出される、天然でアミロースが豊富な品種である。
【0067】
「ペースト状組成物」とは湿潤した中間組成物として理解され、一貫した完全な固体でも完全な液体でもなく、むしろ柔らかく可撓性である。本発明において、トマトソースに関しては、当該ペースト状食品組成物は一般に知られた粘度を有する。
【0068】
本明細書において、「エンドウマメ」という用語は、その最も広義のものとして理解され、具体的には、
- 「まるエンドウマメ」の全ての野生型品種、及び
- それらの品種について通常意図される用途(ヒト食品、動物飼料、及び/又は他の用途)にかかわらず、「まるエンドウマメ」と「しわエンドウマメ」の全ての変異種を含む。
【0069】
当該変異品種は具体的には、C-L HEYDLEYらの表題”Developing novel pea starches”,Proceedings of the Symposium of the Industrial Biochemistry and Biotechnology Group of the Biochemical Society,1996,77~87ページの論文に記載された”mutants r”、”mutants rb”、”mutants rug3”、”mutants rug4”、”mutants rug5”及び”mutants lam」と命名されたものである。
【0070】
「ソラマメ」とは、マメ科、マメ亜科、マメ連のマメ科植物の群に属するソラマメ種の一年生植物の群と理解される。マイナー品種及びメジャー品種の区別がされている。本発明において、野生型品種及び遺伝子工学又は品種選抜によって得られたものは全て優れた供給源である。
【0071】
「アミロースリッチな」デンプンとは、エンドウマメデンプンの総重量に対して25重量%~45重量%、約35重量%のアミロース含有量を有するデンプンと理解される。
【0072】
「デンプン」とは、エンドウマメ又はソラマメから任意の方法で抽出された全ての組成物と理解され、そのデンプン含有量は、40%超、好ましくは50%超、さらにより好ましくは75%超であり、これらのパーセンテージは当該組成物の乾燥重量に対する乾燥重量で表される。
【0073】
有利には、このデンプン含有量は90%超(乾燥/乾燥)である。具体的には95重量%超であり、98重量%超を含む。
【0074】
「プレゼラチン化」又は「プレゲル」デンプンとは、デンプン工場で加熱調理され、次いで乾燥ドラム又は押出機中で乾燥されたデンプンと理解され、デンプンは冷水に溶解する。
【0075】
デンプンのプレゼラチン化は当業者に公知の操作であり、加熱調理はデンプンの糊化温度未満の温度で行われる。
【0076】
「大きな粒径を有する」デンプンとは、1976年4月付けのドイツ工業規格(DIN66145:1976-04)に従って決定される、1.7~2、好ましくは約1.8の「n」値、及び850~1,000μm、好ましくは約900μmの「d」値の粒径を有するデンプンと理解される。
【0077】
本発明において、大きな粒径を有するプレゼラチン化エンドウマメデンプンは、考えられる食品組成物の様々な成分、この場合は「即席」トマトソースとの粉末形態の混合物として導入される。
【0078】
下に例示されるように、レシピへの導入は、トマト粉末の一部、30~35重量%の置き換えによって行われる。
【0079】
これによって、本発明に従って実施される大きな粒径を有するプレゼラチン化エンドウマメデンプンを「即席」トマトソースのレシピに導入して、当該レシピの成分の総重量の12~18重量%、好ましくは約15重量%を置き換える。
【0080】
そのようなプレゼラチン化デンプンの寄与を、より微細な粒径のプレゼラチン化エンドウマメデンプン、又は同じ粒径であるが異なる由来のプレゼラチン化デンプン、この場合はプレゼラチン化ジャガイモデンプンと比較して推定する。
【0081】
本発明は以下の実施例によってより良く理解されるが、これは例示的なもので限定されるものではないことを意図している。
【0082】
実施例
【0083】
試験したプレゼラチン化デンプンの提示
【0084】
プレゼラチン化デンプンは、特にスチームクッキング、ジェットクッキング、ドラムクッキング、又はニーディングクッキングによる天然デンプンの水熱糊化によって得ることができる。
【0085】
そのようなデンプンは一般に、20℃で5重量%超、より典型的には10%~100%の脱イオン水中の溶解度を有し、またデンプンの結晶化度は15%未満(A_RX回折強度)、典型的には5%未満、最も一般的には1%未満又はゼロである。
【0086】
溶解度の測定には、200mlのビーカーに100mlの蒸留水中、5gの製品を入れる。室温で15分間撹拌する。4,000rpmで10分間遠心分離する。沈殿がない場合は完全な溶解である。
【0087】
結晶化度は、米国特許第5,362,777号(第9カラム、8~24行)に記載されているように、X線回折によって測定される。
【0088】
例として、PREGEFLO(登録商標)の商標で出願人によって製造及び販売されている製品を挙げることができ、より具体的には本発明の実施例で使用されるものである。
- 大きな粒径の天然のエンドウマメデンプンから調製されたPREGEFLO(登録商標)L100Gであり、すなわち、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って、1.6~2、好ましくは約1.8の「n」値、及び900~1,000μm、好ましくは約900μmの「d」値を有する。アミロース含有量は約35%である。
- 大きな粒径の天然のエンドウマメデンプンから調製されたPREGEFLO(登録商標)L100Fであり、ドイツ工業規格DIN66145:1976-04に従って、1.2~1.8の「n」値、及び100~120μmの「d」値になるような方法でPREGEFLO(登録商標)L100Gを粉砕することによって得た。アミロース含有量は約35%である。
- PREGEFLO(登録商標)P100Gであり、本発明で使用されるPREGEFLO(登録商標)L100Gと同じ粒径の天然ジャガイモデンプンから調製された。アミロース含有量は約21%である。
【0089】
材料及び方法
【0090】
加熱調理されたトマトソース組成物中の粒径の測定
【0091】
機器はマルバーンのマスターサイザー3000を使用する。
【0092】
(ミー理論による)レーザー回折技術を使用して、粉末又はこれらの粉末に基づく湿式コロイド分散体の粒径分布を測定する。製品を粒径分析装置のボウルの浸透水に分散させて、1,900rpmで撹拌する。
【0093】
方法:
【0094】
5~10%の遮蔽
【0095】
光学モデル=1.5+0.01i
【0096】
3回繰り返して粒径を測定する。得られたデータに基づいて3つの値の算術平均を計算する。この平均を保持する。
【0097】
ポイントの選択:
【0098】
Dmodeは、主集団の直径(最大ピーク値)である。
【0099】
D90は、全体の90%を表す粒子の直径である。
【0100】
D(4.3)は、分布の算術平均である。
【0101】
粉末化又は再構成されたソースの視覚的様相
【0102】
試験した各デンプンベースの成分についてソース製造の各ステップに対して、再構成前の乾燥粉末組成物及び最終的に再構成された組成物で視覚的な分析を行う。0~3のスコア(最小から最大)を割り当てて、粒度/どろどろさ(pulpiness)を評価する。したがって、スコア0は粒状ではない/どろどろではない特徴に対応し、スコア1はわずかに粒状/どろどろとした特徴に対応し、スコア2は中くらいの粒状/どろどろとした特徴に対応し、スコア3は非常に粒状/どろどろとした特徴に対応する。
【0103】
粘度測定RVA(Rapid Visco Analyser)
【0104】
参照:パターン、急速粘度分析計、RVA4500
【0105】
【0106】
顕微鏡検査
【0107】
写真は以下の条件でライカの装置で得た。
【0108】
光源:白色
【0109】
対物レンズ:x20
【0110】
倍率:x150
【0111】
ソース試料を脱塩水に分散させ、次いで、ルゴールで染色してデンプン顆粒を強調する。ルゴールは1%水性ヨウ素系溶液である。ヨウ素はアミロースと反応して、螺旋構造の錯体を形成する。
【0112】
デンプンが少なくとも20重量%のアミロースを含む場合に青色/紫色となる。そうでなければ、デンプン顆粒の色は茶色/黄色のままである。
【0113】
分析は、乾燥組成物の再構成の48時間以内に実行されなければならない。
【0114】
配合
【0115】
「ドライミックス」と呼ばれる乾燥組成物及び「ソース」と呼ばれる再構成された組成物のレシピを以下の表2に示す。
【表2】
【0116】
加熱調理方法
【0117】
標準化の目的及び粘度の発生をモニターするために、ソースの加熱調理をRVA中で行う。当業者はデンプンの糊化温度未満の温度を選択する。
【0118】
4.1gの粉末混合物を23.9gの水で再構成する。プログラムを開始する前にスプーンで均質化する。
【0119】
結果
【0120】
顕微鏡-デンプンの状態/顆粒の大きさ
【0121】
【0122】
PREGEFLO(登録商標)L100Gのソースで大きな顆粒が観察され、これはまた他の試験と比較しても最大の顆粒である。
【0123】
PREGEFLO(登録商標)P100Gを含有するソースでは、PREGEFLO(登録商標)L100Gよりも小さいプレゼラチン化粒子が観察され、色は茶色である。この最後の点ではジャガイモ中の特定のアミロース含有量と一致していないため、
図4と5に対応する2つの相補的な画像を作製した。
【0124】
図5:加熱調理していない水単独の中のPREGEFLO(登録商標)P100G。
【0125】
【0126】
これらの2つの写真は酸性度による系中のデンプン顆粒の内容物の部分的な放出についての以下の仮説を示している。PREGEFLO(登録商標)P100Gは、事実上、PREGEFLO(登録商標)L100Fのそれに近い粒度分布を有する。
【0127】
粒径-レーザー粒度分布
【0128】
Dmode値は各タイプのデンプン間で非常に近いが、D90及びD(4;3)直径の違いがPREGEFLO(登録商標)L100Gで観察され、直径が最も大きい(
図7)。
【0129】
そのように粉末上で実施した分析から、粒径分布が主に単峰性であることが明らかである(
図8)。PREGEFLO(登録商標)L100Gの分布は直径が最も大きく、このことから、このデンプンをベースとしたソースの粒径分布が確認される。
【0130】
トマトソースの視覚的様相
【0131】
【0132】
4つの試料のうち、PREGEFLO(登録商標)L100Gのソースのみがより濃くてどろどろとした状態を示す。
【0133】
PREGEFLO(登録商標)L100F及びP100Gは、PREGEFLO(登録商標)を含まない陰性対照に近い。
【0134】
ソースのどろどろさの検討において、それは最小のどろどろさから最大のどろどろさで示される(スコア0~3)。
【0135】
PREGEFLO(登録商標)L100G:3
【0136】
PREGEFLO(登録商標)P100G:1
【0137】
PREGEFLO(登録商標)L100F:0
【0138】
粘度分析-RVA
【0139】
【0140】
PREGEFLO(登録商標)L100G及びL100Fの粘度プロファイルは、(それらの粒径差とは独立して)同様であり、PREGEFLO(登録商標)P100Gよりも高い粘度を示す。
【0141】
結論として、PREGEFLO(登録商標)L100Gは「即席」トマトソースの調製に好ましいものである。
【国際調査報告】