(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】バイオポリマー粒子の製造
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559820
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 GB2021050804
(87)【国際公開番号】W WO2021198688
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522384374
【氏名又は名称】ネイチャービーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Naturbeads Ltd
【住所又は居所原語表記】2 The Old Orchard,Tetbury Hill,Malmesbury,Wiltshire SN16 9JW United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナーイカル,ロラン
(72)【発明者】
【氏名】マッティア,ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ジャネット レズリー
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070DA37
4F070DA38
4F070DC07
(57)【要約】
本開示は、バイオポリマー粒子を製造する方法であって、分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含み、該分散相が膜を通過して連続相中に前記バイオポリマーのエマルジョンを形成することにより、分散相を連続相中で膜乳化すること、及び貧溶媒で相転換させて前記バイオポリマーの粒子を形成することを含み、(b)の前に、前記エマルジョンを冷却して温度T1とする方法を提供する。本方法により得られるバイオポリマー粒子も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオポリマー粒子を製造する方法であって、
a.分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含み、該分散相が膜を通過して連続相中に前記バイオポリマーのエマルジョンを形成することにより、分散相を連続相中で膜乳化すること、及び
b.貧溶媒で相転換させて前記バイオポリマーの粒子を形成すること
を含み、
(b)の前に、前記エマルジョンを冷却して温度T
1とし、T
1は前記連続相の流動点(T
cont)より高く、前記分散相の転移温度(T
disp)以下であり、すなわちT
cont<T
1≦T
dispであり;前記転移温度は、凝固点、ガラス転移温度及び流動点からなる群から選択され、
T
disp>T
contである方法。
【請求項2】
前記分散相の転移温度が凝固点である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分散相の転移温度が流動点である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分散相の転移温度がガラス転移温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
相転換(b)のために、前記貧溶媒を温度T
2まで冷却し、T
2がT
dispより低く、好ましくはT
2がT
1に等しい、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エマルジョンの冷却を前記膜の出口で行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記相転換をせん断下で行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記相転換が濾過工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記膜乳化が、クロスフロー膜乳化、回転膜乳化、振動膜乳化、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記貧溶媒が水系であり、及び/又は有機溶媒を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が連続的である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記相転換(b)の後、前記貧溶媒/連続相混合物を前記粒子から除去する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記バイオポリマーが多糖類であり、好ましくは前記バイオポリマーがセルロースである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法によって製造されたバイオポリマー粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオポリマー粒子の製造方法に関し、詳細には、前記バイオポリマー粒子の収率の向上をもたらす方法に関するものであり、ここで収率は本明細書において定義される。本発明はまた、本発明の方法によって得られるバイオポリマー粒子を提供する。
【背景技術】
【0002】
バイオポリマーの開発は、消費者製品の環境負荷を低減する上で重要である。高分子からなる材料は、その適応性、耐久性及び価格から広く使用されており、高分子材料を含まない消費者製品を特定することが困難であるほどである。しかしながら、開発された合成高分子の多くは、主に石油及び石炭由来のものを原料としており、それは環境との適合性が悪く、持続不可能な資源に依存していることを意味する。ポリマー微粒子は特に、消費者が製品を廃棄した後も生態系に残留することが多いことから、深刻な環境問題を引き起こしている。従って、バイオポリマー及びバイオポリマー粒子は、再生可能で持続可能な原材料由来であるだけでなく、生分解性であることが多いことから、これらの問題に対処する上で大きな役割を果たす。しかしながら、バイオポリマー粒子の製造は容易ではないと考えられる。
【0003】
バイオポリマー粒子の製造に用いられてきた一つの方法は、膜乳化とそれに続く相転換である。膜乳化プロセスでは、バイオポリマーの分散相を微多孔膜の孔に強制的に通して直接連続相に押し出すことでエマルジョンを形成して、そこから粒子を抽出することができる。しかしながら、このプロセスでは、連続相中の粒子の合体や凝結(aggregation)など、さまざまな問題が生じる。相転換には、例えばエマルジョンを貧溶媒に浸漬するなど、エマルジョンの貧溶媒への曝露が関与し、曝露/浸漬時に変形が起こり、さらに凝結や合体が起こり得る。
【0004】
全体として、当技術分野においては、現在もなお上記の問題を抱えないバイオポリマー粒子の製造方法が必要とされている。特に、バイオポリマー粒子の合体、凝結及び/又は変形を防止し、それによって収率を改善する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、バイオポリマー粒子を製造する方法を提供することであり、その方法は、(a)分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含み、該分散相が膜を通過して連続相中に前記バイオポリマーのエマルジョンを形成することにより、分散相を連続相中で膜乳化すること、及び(b)貧溶媒で相転換させて前記バイオポリマーの粒子を形成することを含む。当該方法は、(b)の前に、前記エマルジョンを冷却して温度T1とすることを含み、T1は前記連続相の流動点(Tcont)より高いが、前記分散相の転移温度(Tdisp)以下である。分散相の転移温度は、凝固点、ガラス転移温度及び流動点からなる群から選択される。
【0006】
T1は次のように定義される。
Tcont<T1≦Tdisp;
式中、Tdisp>Tcontである。
【0007】
本発明の各種実施形態において、貧溶媒は水系であり、すなわち水を含む。本発明の各種実施形態において、貧溶媒は有機溶媒、例えばアルコール、アセトンなどを含む。各種実施形態において、貧溶媒は有機溶媒及び水を含む。本発明の各種実施形態において、貧溶媒を冷却する。貧溶媒は例えば、相転換(b)のために温度T2まで冷却することができ、T2はTdispより低い。好ましくはT2は実質的にT1に等しく、より好ましくはT2はT1に等しい。
【0008】
本発明の各種実施形態において、膜乳化はクロスフロー膜乳化、回転膜乳化、振動膜乳化及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、膜乳化はクロスフロー膜乳化を含む。
【0009】
本発明の各種実施形態において、例えば連続相中での分散相のエマルジョンが形成されることから、エマルジョンの冷却は膜の出口で行われる。本発明の各種実施形態において、連続相は非極性溶媒を含む。本発明の各種実施形態において、分散相は極性溶媒を含む。
【0010】
本発明の各種実施形態において、相転換は、せん断下で行われる。各種実施形態において、相転換は、濾過工程を含む。各種実施形態において、相転換はせん断下で行われ、濾過工程を含む。
【0011】
本発明の各種実施形態において、本方法は連続的である。
【0012】
本発明の各種実施形態において、相転換(b)の後、貧溶媒/連続相混合物を粒子から除去する。
【0013】
本発明の各種実施形態において、バイオポリマーは多糖類である。好ましくは、バイオポリマーはセルロースである。
【0014】
本明細書に記載の方法によって得られるバイオポリマー粒子を提供することが、本発明の別の目的である。従って、当該方法の文脈で本明細書に記載されている特徴は、本方法によって得られるバイオポリマー粒子にも適用可能である。本明細書に記載の方法によって得られるバイオポリマー粒子は、収率の増加、並びに大きさ及び形状の規則性の故に、先行技術から区別可能である。そのような規則性は、例えば
図5(b)から見ることができる。
【0015】
これらの目的及び実施形態は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は互いに組み合わせることができ、請求項に明示的に記載されている以外の組み合わせで独立請求項の特徴と組み合わせることができることが理解されよう。さらに、本明細書に記載のアプローチは、以下に示されるような特定の実施形態に限定されるものではなく、本明細書で提供される特徴の任意の組み合わせを含み、かつ、企図するものである。
【0016】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と共に下記の詳細な説明を考慮することで、以下においてより完全に明らかになるであろう。しかしながら、明らかに理解されるべきものとして、図面は説明を目的としたものであり、本発明の範囲を定義するものと解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】所望の粒子径(<50μm)及び形状(球状)の一例(
図2(a))と、先行技術で発生する変形及び凝結の問題(
図2(b)~2(d))を示す粒子の4枚の写真を含む図である。
【
図3】先行技術のプロセスの模式図(
図3(a))と、本発明によるエマルジョン冷却の一実施形態の図(
図3(b))を含む図である。
【
図4】本発明による方法の一実施形態の図式表示である。
【
図5】2枚の写真を含み、
図5(a)は本発明によるエマルジョン冷却を行わない比較例から得られたセルロース粒子の写真であり、
図5(b)は本発明による後述の実施例によって得られたセルロース粒子の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では様々な例示的な実施形態が記載又は提案されているが、本明細書に記載又は提案されているものと類似又は等価な各種方法及び材料を利用する他の例示的な実施形態が、一般的な発明概念によって包含される。従来から実施されている実施形態の態様及び特徴については、簡潔さの観点から、詳細に議論又は説明しない場合がある。従って、詳細には記載されていない本明細書に記載の装置及び方法の態様及び特徴は、そのような態様及び特徴を実施するための任意の従来技術に従って実施され得ることが理解されるであろう。
【0019】
一般的発明概念は、膜乳化及び相転換プロセスからのバイオポリマー粒子の収率を高めることに中心を置き、ここで、「収率」という用語は、規定の粒径分布内の球状粒子又はビーズの質量を指す。膜乳化は当技術分野で知られており、分散相を微多孔膜の孔に通して連続相に直接押し込む技術であり、そこで乳化液滴は一滴ずつのメカニズムで孔の端で形成され、離脱する。膜乳化プロセスの模式図を
図1に示すが、矢印は流れの方向を示している。
【0020】
分散相は一般に、溶媒中に溶解したバイオポリマーを含む第1の液体を含み、連続相は第1の液体と非混和性の第2の液体を含む。分散相が膜を通して押されるなどして輸送される際の2つの液体の相互作用を分散プロセスと呼び、それらの不均一な混合物をエマルジョンと呼び、すなわち連続相に取り囲まれた分散相の液滴である。
【0021】
従来の乳化と比較した膜乳化の利点は当技術分野で認識されており、それには制御された液滴径及び狭い液滴径分布を有する非常に微細なエマルジョンを得る能力などがある。さらに、乳化剤及びエネルギーの消費をかなり少なくして乳化を成功させることができる。そして、せん断応力の影響が低下するため、膜乳化により、デンプンやタンパク質などのせん断の影響を受けやすい原料を使用することができるようになる。しかし、膜乳化の工業的応用を拡大するために、この方法の生産性を向上させる必要があることが認識されている。
【0022】
バイオポリマー製造に関しては、連続相中の分散相の液滴を相転換させることで分離することに成功している。セルロースに関しては、これは「ACS Sustainable Chem. Eng. 2017, 5, 7, 5931-5939」に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。相転換は、人工膜の作製に利用される化学現象であり、液体-高分子溶液から溶媒を除去することによって行われる。ポリマー溶液を貧溶媒と呼ばれる第3の液体に浸漬するなどの各種の相転換方法がある。貧溶媒に基づく相転換の使用が、分散相/連続相のエマルジョンからバイオポリマーの液滴を粒子状に析出させるのに特に有効であることが実証されている。
【0023】
しかし、残念ながら、エマルジョン中の分散相液滴は、収率を低下させる望ましくないプロセスに係わる危険性がある。ここで、本明細書で言及する収率は、規定された粒径分布内の球状粒子又はビーズの質量を指す。液滴は、互いに不可逆的に相互作用し(本明細書では別の言い方で合体又は凝結と呼ぶ)、及び/又は、例えば相転換時に不可逆的に変形し得る。
【0024】
図2(a)~
図2(d)に4つのバイオポリマー粒子形状を示す。
図2(a)は、特定の用途において望ましいと思われる例示的な粒子の形状及び大きさを示しており、個別の球状ビーズが直径<50μmを有しており;
図2(b)は、望ましくない形状変形を示しており、個別の涙滴形状粒子であり;
図2(c)は、直径>200μmの、複数の球状粒子の望ましくない合体を示しており;
図2(d)は、複数のビーズの望ましくない非対称凝結を示している。変形及び凝結は、バイオポリマー粒子の粒径及び形状の両方の分布に影響を与え、これはバイオポリマー粒子の収率にマイナスの影響を与える。
【0025】
形成中の粒子をin-situで調べることは困難であるため、変形した形状、合体構造、凝結構造などが、どこでどのように形成されるかについて、理論的に説明することができるのみである。いずれか一つの理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、分散相液滴が、膜乳化に通常用いられる装置内又はその後のプロセス配管、継手及び装置内で流れる際に、互いに望ましくない相互作用をする可能性があると考えている。これらの液滴は、例えば、層流から乱流への移行点、再循環ゾーン、流れ方向の変化等の流体輸送流動様式に変化があるときに合体する可能性がある。別の理論は、分散相液滴が、例えば、相転換プロセス中に(例えば、エマルジョンが貧溶媒中を流れる際に)せん断力によって変形し、これらの変形形状(例えば、涙滴)が貧溶媒によって保存される可能性があるというものである。分散相の液滴はまた、貧溶媒と接触する前又は接触する際に相転換プロセス時に相互作用する可能性があり、合体してより大きな液滴を作ったり、一緒にグループ化してより大きな構造を作り、それが貧溶媒によって保存されたりする可能性がある。また、相転換プロセス中に、相対的に大きい液滴によって相対的に小さい相転換粒子が取り込まれ、その後、貧溶媒によってこれらの構造が保存されるなどの他の機構も存在し得る。
【0026】
本発明は、驚くべきことに、これらの変形及び凝結の問題を回避し、それによって全体的な収率を向上させるものである。この収率の改善は、膜乳化によって形成されたエマルジョンを、相転換前に温度T1まで冷却することによって達成される。特に、T1は、連続相の流動点より大きく(すなわち、それより高く)、本明細書で定義される分散相の転移温度以下(すなわち、それより低い)であり、ただし分散相の転移温度は連続相の流動点より大きい/高い。分散相の液滴が液体状態にあるときに変形及び凝結が起こると考えられているので、エマルジョンを分散相の流動点以下に冷却することで、エマルジョンの「コロイドクラス」をエマルジョン(すなわち液中液)からゾル(液中固体)に一時的に(少なくとも部分的に)変え、それによって分散相が下流工程で扱いやすくなると考えられている。
【0027】
さらに、分散相が、連続相の流動点よりも高い転移温度(転移温度は凝固点、ガラス転移温度及び流動点からなる群から選択される)を有するということは、固化した分散相を取り巻く連続相が依然として輸送媒体として機能し得ることを意味する。冷却コイル熱交換器内で冷却され、一時的にゾルに変換されるエマルジョンの模式図を
図3(b)に示す。
【0028】
図3(a)は従来技術を表すものであり、連続相が分散相の液滴(この例では微小液滴;以下の定義参照)とエマルジョンを形成し、流れの停滞と乱れによって望ましくない合体が起こり、収率が低下する。次に
図3(b)は、エマルジョンを、コイル熱交換器内で分散相の転移温度以下であるが連続相の流動点より高い温度まで冷却することで、連続相が可動性を維持し、転移した液滴を輸送できるようにする例である。
図3(b)の例示的な実施形態は、
図3(a)の先行技術のプロセスで遭遇する粒子の合体、変形、凝結、及び結果として生じる収率低下を回避するものである。
【0029】
別断の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術を有する者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0030】
「バイオポリマー」という用語は、生物によって産生される高分子を意味する。言い換えれば、高分子生体分子である。バイオポリマーには、使用されるモノマー単位と形成されるバイオポリマーの構造に従って分類される3つの主要なクラスがあり、13以上のヌクレオチドモノマーからなるポリマーであるポリヌクレオチド(RNA及びDNA);アミノ酸のポリマーであるポリペプチド;及び代表的には高分子炭水化物構造である多糖類である。バイオポリマーの他の例としては、ゴム、スベリン、メラニン、キチン及びリグニン、好ましくはキチン及びリグニンなどがある。
【0031】
本発明の各種実施形態において、バイオポリマーは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド及び多糖類からなる群から選択される。好ましくは、バイオポリマーは、ポリペプチド及び多糖類からなる群から選択される。より好ましくは、バイオポリマーは、多糖類、例えば、デンプン、セルロース、キチン、キトサン又はグリコーゲンである。最も好ましくは、バイオポリマーは、デンプン又はセルロースである。
【0032】
「粒子」という用語は、本明細書において「ビーズ」と互換的に使用され、分散相液滴の相転換に続いて形成される固体を指す。本発明の各種実施形態において、粒子又はビーズは、微粒子又はマイクロビーズである。当業者には理解されるであろうが、微粒子又はマイクロビーズは、1~1000ミクロン(μm)の直径を有する粒子/ビーズである。このような粒子は、例えば、光学顕微鏡画像及び適切な検出アルゴリズムを有する画像分析ソフトウェア(例えば、エッジ検出アルゴリズムを用いるImageJ)、マルバーン・パナリティカル(Malvern Panalytical)製のマスターサイザー(Mastersizer)(例えば、マスターサイザー3000(Mastersizer 3000))などの市販の装置によるレーザー回折、又は適切なサイズの篩を用いて当業者が容易に確認することができる。
【0033】
本発明の方法の膜乳化段階は、分散相を、膜を介して連続相に通し、エマルジョンを形成させることを含む。膜には限定はなく、膜乳化工程に適した任意の多孔質構造とすることができる。例えば、膜は、細孔(例えば、ミクロンサイズの孔)として機能する孔を有するプレート、有孔金属管、又は焼結多孔質ガラスとすることができる。
【0034】
「エマルジョン」という用語は、両方の相が液体である物質の2相系のクラスを意味する。エマルジョンはコロイドの一種であり、一般に2つの混和しない液体からなる。本発明の各種実施形態において、エマルジョンはマクロエマルジョンであってもよい。これは、分散相の粒子が約1~1000ミクロンの直径を有するエマルジョンである。「ゾル」という用語は、連続相が液体であり、分散相が固体である物質の2相系の一般的なクラスを指す。
【0035】
「凝集体(agglomerate)」という用語は、代表的には再分散させることができる一次粒子からなる構造体を指す。また、「凝結体(aggregate)」という用語は、再び分散させることができない一次粒子で構成された構造を指す。
【0036】
「流動点」という用語は、物質(例えば液体)がそれ以下の温度で流動特性を失う温度を指す。それは代表的には、液体(例えば油)がビーカーから流れ落ちることができる最低温度と定義される。流動点は、当技術分野で知られる標準的な方法で測定することができる。例えば、ASTM D7346「石油製品及び液体燃料の無流動点及び流動点の標準試験方法」が使用され得る。市販の材料の場合、流動点は販売業者又は製造者から提供されることが多い。
【0037】
「凝固点」という用語は、標準大気圧(1気圧)下で、物質が液体から固体に状態変化する温度を指す。凝固点は、当技術分野で知られる標準的な方法で測定することができる。例えば、ASTM E794「熱分析溶融及び結晶化温度のための標準試験方法」を使用することができる。市販の材料の場合、凝固点は、販売業者又は製造者から提供されることがある。
【0038】
「ガラス転移点」又は「ガラス転移温度」という用語は、ポリマー構造が硬い材料又はガラス状の材料から柔らかいゴム状の材料に転移する温度を指す。この温度は、標準的な試験法:ASTM E1356「示差走査熱量測定によるガラス転移温度の割当てのための標準試験方法」に従って示差走査熱量計によって測定することができる。市販の材料の場合、ガラス転移温度は供給元又は製造元から提供されることがある。
【0039】
参照を容易にするために、本発明のこれら及びさらなる特徴は、ここで適切な項目見出しの下で議論されている。しかしながら、各項目下の教示は、それらが記載されている項目に限定されるものではない。
【0040】
膜乳化
上述したように、膜乳化は限定されず、当技術分野で知られている任意の膜乳化プロセスであってよい。例えば、膜乳化プロセスは、クロスフロー膜乳化、回転膜乳化、振動膜乳化、又はそれらの組み合わせとすることができる。当技術分野において理解されるように、「クロスフロー」、「回転」及び「振動」という用語は、膜表面上にせん断を発生させるために使用される方法を指す。連続相は、例えば、せん断を生じさせるために固定膜に対して相対的に移動することができると考えられるか、膜が固定相に対して移動することができると考えられる。或いは、分散相を固定された連続相に注入することも可能である。膜の種類、平均孔径及び孔隙率、クロスフロー速度、膜貫通圧及び乳化剤などの既知のプロセスパラメータも使用することができる。本発明の各種実施形態において、膜乳化には、クロスフローシステム、攪拌セルチューブ膜、攪拌セル平膜、回転平膜、振動/回転チューブ膜、及び/又は予混合膜乳化が含まれていてもよい。
【0041】
国際特許出願第WO01/45830号には、回転膜乳化の一例が記載されている。国際特許出願第WO2012/094595号には、クロスフロー膜乳化の一例が記載されている。「Pedro S. Silva et al. “Azimuthally Oscillating Membrane Emulsification for Controlled Droplet Production”, AIChE Journal 2015 Vol. 00, No. 00」には、振動膜乳化:具体的には、穏やかに交差流動する連続相中で周期的に方位的振動する管状金属膜を含む膜乳化システムが記載されている。WO2019/092461には、クロスフロー膜乳化が記載されている。これらの方法の記載はそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本発明の各種実施形態において、膜乳化は、クロスフロー膜乳化である。好ましくは、連続相が固定膜に対して相対的に移動する乳化プロセスである。
【0043】
当業者には理解されるように、分散相及び連続相は、製造されるバイオポリマーによって決まることになる。分散相は、バイオポリマーを分散又は溶解させる溶媒を含み、連続相は、分散相が多孔質膜を通過させられるときにエマルジョンが形成されるように、分散相と非混和性である溶媒を含むであろう。
【0044】
「溶媒」という用語は、バイオポリマーを分散又は溶解する任意の物質(例えば液体)を意味する。「溶媒」という用語は、溶媒混合物も含む。
【0045】
分散相及び連続相に適した溶媒の特定は、具体的には、当業者の共通の一般知識の範囲内である。上述したように、必要なことは、2つの相-すなわち分散相及び連続相-が互いに非混和性であることだけである。従って、各相の溶媒は互いに非混和性でなければならないことになる。溶媒としては、例えば、水系溶媒、イオン液体[環境温度~100℃の温度で液状の塩、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド等のイミダゾリウム系イオン液体]、有機溶媒、又は無機非水系溶媒とすることができる。
【0046】
本発明の各種実施形態において、分散相の溶媒は、イオン液体、無機非水系溶媒、水系溶媒、又はこれらの組み合わせを含む。本発明の各種実施形態において、分散相の溶媒は、イオン液体、無機非水系溶媒、又はそれらの組み合わせを含む。本発明の各種実施形態において、分散相の溶媒は、1以上のイオン液体を含む。他の実施形態では、分散相の溶媒は、有機溶媒を含む。
【0047】
溶媒の非限定的な例としては、水、メタノール、エタノール、アンモニア、アセトン、酢酸、n-プロパノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、塩化スルフリル、塩化リン、二硫化炭素、モルホリン、N-メチルモルホリン、尿素及びチオ尿素の会合がない及び会合があるNaOH、五フッ化臭素、フッ化水素、フッ化塩化スルフリル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、炭化水素系油及びその混合物、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、ヘキサン、ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、ニトロメタン、炭酸プロピレン、ギ酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、リン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-メトキシメチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、N-エチルピリジニウムクロライド、N-メチルモルホリン-N-オキサイド、1-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、γ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、N-メチルピロリジノン及び塩化メチレンなどがある。当業者は、例示的な溶媒が、イオン液体、有機溶媒、及び/又は無機非水系溶媒のいずれであるかを容易に認識するであろう。
【0048】
好ましくは、分散相及び連続相の少なくとも一方に使用される溶媒は、環境に優しいものである。より好ましくは、分散相と連続相の両方に使用される溶媒は、環境に優しいものである。「環境に優しい」という用語は、溶媒が専門的な装置又はプロセスを必要とせずに廃棄できるような、環境に有害でないこと、すなわち無毒であることを意味する。
【0049】
多糖類は、一般的な溶媒の大部分に、ほとんど溶解しないことが当技術分野で知られている。また、多糖類を溶解する溶媒はしばしば毒性がある、及び/又は選択性が高いことも当技術分野では知られている。従って、バイオポリマーがセルロース、デンプン、キチン、グリコーゲン及び/又はキトサンなどの多糖類である場合、分散相の溶媒は、イオン液体を含むことができる。イオン液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドによるセルロースの溶解については、例えば、「Richard et al., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 4974-4975」に記載されている。「Verma et al, Sustainable Chemistry and Pharmacy 13(2019), 100162」には、同様に、イオン液体及び共溶媒とイオン液体中のセルロースの溶解度について記載されている。これらの開示の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
分散相中のバイオポリマーの濃度は限定されず、膜乳化に適した任意の濃度とすることができる。
【0051】
分散相及び/又は連続相は、さらに任意成分を含んでもよい。これらの任意成分には、共溶媒、界面活性剤、ポロゲン、有効成分、気泡、複合エマルジョン、顔料及び色素などがあるが、これらに限定されるものではない。任意成分のいずれのレベルも、本発明において重要ではない。各種実施形態において、分散相は共溶媒を含む。
【0052】
共溶媒は、限定されず、連続相及び/又は分散相について上述したものなど、当技術分野で公知の溶媒とすることができる。共溶媒は、さらに共溶媒混合物であってもよい。可能な共溶媒の例としては、水、1-メチルイミダゾール(1-MI);ジメチルスルホキシド(DMSO);N,N-ジメチルホルムアミド(DMF);N,N’-ジメチルイミダゾリジン-2-オン(DMI);N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc);スルホラン;γ-バレロラクトン(γ-val);γ-ブチロラクトン(γ-but);炭酸プロピレン(PC);N,N,N’,N’-テトラメチル尿素(TMU);及びN-メチルピロリジノン(NMP)などがある。例えば、1-メチルイミダゾール(1-MI);ジメチルスルホキシド(DMSO);N,N-ジメチルホルムアミド(DMF);N,N’-ジメチルイミダゾリジン-2-オン(DMI);N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc);スルホラン;γ-バレロラクトン(γ-val);γ-ブチロラクトン(γ-but);炭酸プロピレン(PC);N,N,N’,N’-テトラメチル尿素(TMU);又はN-メチルピロリジノン(NMP)である。
【0053】
界面活性剤は、当技術分野で知られている任意の適切な界面活性剤、例えば、イオン性又は非イオン性界面活性剤とすることができる。イオン性界面活性剤には、アルキル硫酸塩、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム及びミレス硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、及びアルキルカルボン酸塩などの、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩及びカルボン酸塩がある。非イオン性界面活性剤には、ポリエーテル、ヘキシトールのポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタンオレートなどの部分長鎖脂肪酸エステル、長鎖アルコールのエチレンオキサイド誘導体、エトキシ化植物油、ポリジメチルシルオキサン、及びエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体などがあり得る。
【0054】
エマルジョンの冷却
本発明の利点は、主として、相転換の前に、膜乳化によって形成されたエマルジョンを冷却することに起因する。エマルジョンは温度T1まで冷却され、T1は、連続相の流動点(Tcont)より高く、分散相の凝固点、ガラス転移温度及び流動点からなる群から選択される転移温度(Tdisp)以下であり、Tdisp>Tcontである。しかしながら、T1の絶対値は本発明にとって重要ではなく、むしろ重要なのは分散相と連続相のそれぞれの温度に対するT1の関係である。
【0055】
また、冷却の方法も限定されない。エマルジョンは、系から熱(エネルギー)を除去するために当技術分野で知られている任意の手段によって冷却されてもよい。エマルジョンはさらに、相転換の前の任意の時点で冷却されてもよい。各種実施形態において、これは、エマルジョンが膜乳化工程と同時に、又は膜乳化工程とは別に冷却されることを意味する。エマルジョンは、例えば、形成される際に冷却されてもよい(例えば、膜の出口に配置された冷却手段によって)。或いは、エマルジョンは、膜乳化後の工程で、例えば膜乳化装置とは別の冷却装置で冷却されてもよい。有利には、冷却は、液体状態の分散相液滴が合体及び/又は凝結する可能性を低減するために、乳化が行われた後できるだけ早く行われるべきである。
【0056】
各種実施形態において、エマルジョンは、エマルジョンが形成される容器を少なくとも部分的に取り囲む冷却媒体(例えば、水、氷など)によって冷却されてもよい。好ましい実施形態において、エマルジョンが形成される容器(例えば、パイプ)は、冷却媒体を含む冷却ジャケットを有することができる。冷却媒体は、特に限定されず、エマルジョンよりも低い温度を有する任意の媒体を含む。
【0057】
各種実施形態において、エマルジョンは、膜乳化装置に接続された冷却装置によって冷却されてもよい。冷却装置は、浸漬型熱交換器などの熱交換器とすることができる。以下に記載の例示的な実施形態では、コイル熱交換器を冷却媒体(例えば、冷水浴)に浸漬するが、本発明はこの点で限定されるものではない。例えば、チューブアンドシェル熱交換器、プレートアンドフレーム熱交換器、又はジャケット管など、任意のタイプの熱交換器を使用することができると考えられる。さらに、エマルジョンを冷却してT1とするために、凍結防止剤、ドライアイスなどの別の冷却媒体と共に浸漬型熱交換器を使用することもできると考えられる。
【0058】
相転換
相転換は、同様に限定されず、貧溶媒の使用を含む当技術分野で公知の任意の相転換プロセスとすることができる。上述したように、相転換は、本発明において凍結した分散相が含まれる連続相である液体-ポリマー溶液から溶媒を除去することによって行われる。
【0059】
貧溶媒は、当技術分野で知られている任意の適切な溶媒又は溶媒混合物とすることができる。本発明の各種実施形態において、貧溶媒は水系である。各種実施形態において、貧溶媒は非水系である。貧溶媒は、例えば、アルコール若しくはアセトンなどの有機溶媒、又は当技術分野で公知の任意の他の有機溶媒を含んでいてもよい。好適なアルコールには、エタノール及び/又はメタノールなどがある。各種実施形態において、貧溶媒は、例えば、アルコール、アセトン、水、又はそれらの混合物などの、有機溶媒、水又はそれらの混合物を含む。
【0060】
本発明の各種実施形態において、相転換は、環境温度、すなわち約20~25℃で実施される。そのような実施形態では、貧溶媒は、約20~25℃の温度を有する。或いはかつ好ましくは、貧溶媒は、環境温度以下の温度、すなわち約20℃以下の温度まで冷却される。本発明の各種実施形態において、貧溶媒は、分散相の凝固点より低い温度T2を有する。貧溶媒の温度(T2)を制御する利点は、凍結液滴の早期解凍を防止することである。本発明の各種実施形態において、T2はT1に等しく、T1は上記で定義される。
【0061】
いずれか一つの理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、貧溶媒をT2まで冷却することにより、液滴は凍結状態(従って、球状及び非凝結)のままであり、その周囲にある連続相は相転換により取り除かれると考えている。貧溶媒は液滴の表面に接触することができ、それがバイオポリマーの析出を引き起こし、析出物の表面を硬化させる。さらに、凍結した分散相液滴が解凍されると、貧溶媒は、溶媒系を貧溶媒中に濾しながら、溶解したバイオポリマーの液滴をそれのビーズ/粒子に変換する。
【0062】
本発明の各種実施形態において、相転換はせん断下で行われる。当業者は、相転換のための好適なせん断条件を知っているであろう。せん断は、例えば、撹拌容器(例えば、機械的撹拌容器)又は沈降容器(例えば、重力沈降容器)の使用により達成することができる。「せん断」という用語は、本明細書では、物体又は表面に対し、その物体又は表面が存在する斜面又は平面に平行に作用する外力であって、応力が歪みを生じさせる傾向のあるものを指すのに使用される。
【0063】
せん断は、連続相が分散相液滴から除去される速度を向上させ、ひいては全体として相転換の速度を向上させることから有利である。相転換プロセスは拡散速度により制限され(フィックの拡散)、せん断は分散相液滴を取り囲む連続相層の厚さを減少させ、分散相液滴の表面への貧溶媒分子の移動距離が短縮され、それによって相転換プロセスが加速される。しかしながら、せん断は粒子形状や粒子径に悪影響を及ぼすため、現在の相転換プロセスでは通常使用されない。現在では、エマルジョンを(室温で)流動しない貧溶媒で沈降させることができる、穏やかな相転換段階が用いられる。驚くべきことに、凍結状態の分散相液滴は、連続相から分離する他の方法に対して比較的耐性が高く、この向上した耐性により、そのような分離の効率が高くなる。
【0064】
本発明の各種実施形態において、相転換は、濾過工程を含む。濾過工程は、限定されず、機械的又は他の任意のタイプの濾過(例えば、ハイドロサイクロンのような当技術分野で公知の装置を使用する)を含むものとすることができる。濾過工程はまた、相転換を上記のせん断下で実施する場合にも行われ得る。各種実施形態において、濾過媒体(例えば、フィルター)を使用して、貧溶媒を通してエマルジョンを濾過し、それによってバイオポリマー粒子を回収することができる。そのような実施形態において、エマルジョンは、連続相がフィルターを通過する(濾液)一方で、貧溶媒を通ってフィルターに重力沈降(せん断)し得る。次に、凍結した液滴を、フィルターで濾過ケーキとして回収することができる。
【0065】
相転換の一部として回収されない場合(例えば、濾過などを介して)、バイオポリマー粒子を、貧溶媒/連続相混合物から分離してもよく、又は貧溶媒/連続相混合物を粒子から除去してもよい。除去の方法は限定されない。しかしながら、各種実施形態において、除去の方法は、本発明の方法がバッチモードで操作されているか、又は連続モードで操作されているかによって決まる。
【0066】
本発明の方法をバッチモードで行う場合、相転換段階をまず閉鎖容器中で行い、得られた混合物を次にデカンター容器に移し、沈降段階に到達させることができる。沈降したら、層を容器の底部から順次取り出すことができる。代表的には、層の順序は、(1)連続相、(2)湿潤バイオポリマー粒子を含む界面層、及び(3)残りの逆溶剤とすることができる。しかしながら、本発明はこの点で限定されず、当業者は、層の順序がそれらのそれぞれの密度によって決まるものであることを理解するであろう。
【0067】
本発明の各種実施形態において、当該方法は連続的であり、連続モードで動作し、相転換段階は、エマルジョン及び貧溶媒の連続投入及びデカンターへの多相混合物の連続排出下で実施されてもよい。デカンター内では、混合物の定常状態の仕切りが存在してもよく、各相からの連続的及び好ましくは同時の除去があり得る。例えば、(1)連続相、(2)貧溶媒、及び(3)湿潤バイオポリマー粒子からの連続的かつ好ましくは同時の除去があり得る。当然のことながら、これらの層の順序は変わるものであり、本発明はいずれか特定の順序に限定されるものではない。
【0068】
或いは、多相(例えば3相)混合物は、ディスクスタック分離器(例えばアンドリッツ(Andritz)製の遠心分離器など)のような当技術分野で公知の技術を用いて分離することができる。
【0069】
連続相転換と共に連続冷却を提供するために、冷却媒体(例えば、エマルジョンを含む容器を囲む媒体又は膜乳化ユニットに接続された熱交換器と共に用いられる媒体)は、好適な装置でリサイクル又は再循環する必要がある場合がある。例えば、再循環冷却装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック(ThermoFisher Scientific)から入手可能なThermoFlex)のような装置を、冷却媒体を所望の温度に維持するために使用することができる。
【0070】
本発明による方法の別の利点は、事象の順序に柔軟性があることである。分散相の液滴をエマルジョン内で凍結させることができることから、この柔軟性が生じる。従って、本発明の各種実施形態において、相転換の後に、上記のようなバイオポリマー粒子を取り出すか、相転換の際にバイオポリマー粒子を取り出す。相転換を行ってからデカンテーションを行い、次に混合物からバイオポリマー粒子を取り出すことができ、及び/又は相転換の際に、貧溶媒/連続相/粒子混合物から湿潤粒子を機械的に濾過することができる。
【0071】
或いは、バイオポリマー粒子は、相転換の前に連続相から除去することができる。そのような実施形態では、濡れた凍結液滴をゾルから除去し(例えば、濾過を使用して)、次に相転換を実施してバイオポリマーを析出させ、そのビーズ/粒子を形成することができる。
【0072】
以上、本発明について説明したが、以下に例示する特定の具体例を参照することにより、さらなる理解を得ることができる。これら具体例は例示の目的でのみ提供され、別断の断りがない限り、包括的であったり限定的であったりすることを意図するものではない。
【実施例】
【0073】
70重量%の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート及び30重量%のジメチルスルホキシド中の8重量%のセルロースを含む分散相を、当技術分野で公知の常法に従って調製した。この分散相は、約11℃の転移温度(例えば、凝固点)を有していた。水系連続相もまた、当技術分野で公知の常法に従って調製した。この連続相は、-15℃の流動点を有していた。
【0074】
その分散相と連続相を、
図4に示すような膜乳化装置に供給し、それによってエマルジョンを形成した。次に、このエマルジョンを0~11℃の温度まで冷却してから、エタノール貧溶媒を用いて相転換装置に移して、セルロース粒子を形成させた。
【0075】
エマルジョンの冷却を、
図4の挿入図に示すように、浸漬コイル式熱交換器を用いて行った。浸漬コイル式熱交換器は、層流を維持し、エマルジョンの冷却に伴う流れの乱れを最小限に抑えるために選択した。コイル式熱交換器には、0℃の冷水浴に入れられた、長さ(L)の直径D及びピッチPを有するコイル管があり、それは0.5L/分のエマルジョンを11℃以下に冷却するのに十分であった。エマルジョンの温度は、コイル式熱交換器の出口で温度計によってモニタリングした。
【0076】
冷却段階を行わずにセルロース粒子を製造する比較例も実施した。
図5に、比較例(a)及び本発明による実施例(b)の2枚の写真(倍率5倍)がある。これらの写真から、相転換前に冷却段階を行うことにより、セルロース粒子の合体及び凝結の程度が著しく減少したことが分かる。このことは、結果的に収率向上につながる。
【国際調査報告】