(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】アンモニア貯蔵及び送達システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20230508BHJP
F17C 11/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C11/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557170
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2021058245
(87)【国際公開番号】W WO2021198227
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269659
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・デデールワーダー
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB20
3E172BA01
3E172BB13
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA10
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA48
3E172EB18
3E172FA04
3E172FA05
3E172FA08
3E172KA02
3E172KA03
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
本発明はアンモニア貯蔵及び送達システム(1)に関する。
本発明によれば、このようなアンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、複数のアンモニア貯蔵カートリッジ(10)であって、カートリッジの各々が、貯蔵手段(11)と、第1の加熱手段を含む第1の内圧調整手段(12)と、第1の入口弁(13)と、第1の出口弁(14)とを具備する複数のアンモニア貯蔵カートリッジ(10)と、各々のカートリッジについて他のカートリッジとは独立にアンモニアの貯蔵及び送達を操作することができる操作装置(20)と、複数のカートリッジ(10)を連結する第1の充填又は再充填ライン(30)であって、第2の入口弁(31)を具備する第1の充填又は再充填ライン(30)と、複数のカートリッジ(10)を連結するアンモニア送達ライン(40)であって、圧力センサ(42)と、計量装置(43)と、開位置と閉位置との間で選択的に交番することができる第2の出口弁(41)とを具備するアンモニア送達ライン(40)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)において、
- 複数のアンモニア貯蔵カートリッジ(10)であって、カートリッジの各々が、
・アンモニア貯蔵手段(11)と、
・各々のカートリッジの内圧を他のカートリッジとは独立に調整する第1の内圧調整手段(12)であって、第1の加熱手段を有する第1の内圧調整手段(12)と、
・パイロット式弁タイプ又は逆止弁タイプの第1の入口弁(13)と、
・パイロット式弁タイプ又は逆止弁タイプの第1の出口弁(14)と
を具備する、複数のアンモニア貯蔵カートリッジ(10)と、
- 好ましくは前記複数のカートリッジ(10)に共通の操作装置(20)であって、各々のカートリッジについて他のカートリッジとは独立にアンモニアの貯蔵及び送達を操作することができる操作装置(20)と、
- 前記複数のカートリッジ(10)を連結する第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)であって、第2の入口弁(31)を具備する第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)と、
- 前記複数のカートリッジ(10)を連結するアンモニア送達ライン(40)であって、
・圧力センサ(42)と、
・アンモニア計量装置(43)と、
・開位置と閉位置との間で選択的に交番することができる第2の出口弁(41)であって、前記開位置では、前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)内の余剰分のアンモニアを前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の補給段階後に補給ステーション(70)側に排出するように構成され、前記閉位置では、前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の前記補給段階の終了時に前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)を遮断するように構成された第2の出口弁(41)と
を具備するアンモニア送達ライン(40)と
を少なくとも備えることを特徴とする、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)。
【請求項2】
分流ライン(50)に配設された分流弁(51)であって、前記第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)と前記アンモニア送達ライン(40)とを流体連通する分流弁(51)を備える、請求項1に記載のアンモニア貯蔵及び送達システム(1)。
【請求項3】
- 前記アンモニア送達ライン(40)に配設された第1の過圧弁(62)及び/又は
- 分流ライン(50)と並列に過圧ライン(61)に配設された第2の過圧弁(63)
を備える、請求項1又は2に記載のアンモニア貯蔵及び送達システム(1)。
【請求項4】
前記第1の過圧弁(62)が安全カートリッジ(60)と流体連通した、請求項3に記載のアンモニア貯蔵及び送達システム(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの第1の起動カートリッジ(15)であって、
- 第1の冷却システム(151)と、
- 第2の加熱手段を有する第2の内圧調整手段(152)と、
- アンモニア出口(153)としても機能するアンモニア入口と
を具備する少なくとも1つの第1の起動カートリッジ(15)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のアンモニア貯蔵及び送達システム(1)。
【請求項6】
前記第1の起動カートリッジ(15)のアンモニア出口(153)としても機能するアンモニア入口が、前記第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)とは独立した第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)によって前記アンモニア送達ライン(40)と流体連通しており、前記第2のアンモニア充填又は再充填ライン(30)は前記アンモニア送達ライン(40)であり、好ましくは、前記第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)は第1のパイロット式弁(154)を備える、請求項5に記載のアンモニア貯蔵及び送達システム(1)。
【請求項7】
第2の起動カートリッジ(16)であって、
- 第2の冷却システム(161)と、
- 第3の加熱手段を有する第3の内圧調整手段(162)と、
- 第2のパイロット式弁(165)を含むことが好ましい前記アンモニア送達ライン(40)との流体連結部(163)と、
- 前記第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)との流体連結部(164)と
を具備する第2の起動カートリッジ(16)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のアンモニア貯蔵及び送達システム(1)。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか一項に記載のアンモニア貯蔵及び送達システム(1)の補給方法であって、
- 前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の入口(1A)及び出口(1B)で補給ステーション(70)と接続するステップと、
- 前記第2の入口弁(31)及び前記第2の出口弁(41)を開放するステップと、
- 前記複数のカートリッジ(10)の前記第1の入口弁(13)及び前記第1の出口弁(14)を開放するステップと、
- 前記複数のカートリッジ(10)にアンモニアを補給するステップと、
- 前記アンモニア送達ライン(40)及び/又は前記複数のカートリッジ(10)の各々のカートリッジの出口における圧力及び/又は温度を測定することによって、前記複数の貯蔵カートリッジ(10)のアンモニア補給終了を検出するステップと、
- 前記第2の入口弁(31)を閉鎖するステップと、
- 分流弁(51)を開放するステップと、
- 前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)内の余剰分のアンモニアを前記第2の出口弁(41)から排出するステップと、
- 前記第2の出口弁(41)及び前記分流弁(51)を閉鎖するステップと、
- 前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の前記補給ステーション(70)との接続を外すステップと
を少なくとも含む、補給方法。
【請求項9】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の起動方法であって、
- 前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の起動カートリッジ(15、16)を加熱するステップと、
- 前記起動カートリッジ(15、16)からアンモニアを送達することにより、前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のアンモニア送達ライン(40)内に圧力P1を獲得し、保持するステップと、
- 前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)のうち少なくとも1つのアンモニア貯蔵カートリッジを加熱するステップであって、前記複数のカートリッジ(10)のうち少なくとも1つのカートリッジからアンモニアを送り出すことによって、前記アンモニア送達ライン(40)内に前記圧力P1を上回る圧力P2が得られるようになるまで加熱するステップと、
- 前記起動カートリッジ(15、16)の加熱を停止するステップであって、好ましくは前記起動カートリッジ(15、16)の冷却をあわせて行う、ステップと、
を少なくとも含む、起動方法。
【請求項10】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のアンモニア送達の調節方法であって、
- 前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)の第1のアンモニア貯蔵カートリッジを加熱して、アンモニア送達ライン(40)に圧力P3を得るステップと、
- 前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の前記複数のカートリッジ(10)の前記第1のアンモニア貯蔵カートリッジが第1の基準飽和レベルに達したとき、前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の前記複数のカートリッジ(10)の第2のアンモニア貯蔵カートリッジを加熱するステップであって、前記第1の基準飽和レベルの検出が、好ましくは温度測定によって行われる、ステップと、
- 前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の前記複数のカートリッジ(10)の前記第1のアンモニア貯蔵カートリッジが第2の基準飽和レベルに達したとき、前記アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の前記複数のカートリッジ(10)の前記第1のアンモニア貯蔵カートリッジの加熱を停止するステップであって、前記第2の基準飽和レベルの検出が、好ましくは温度測定によって行われる、ステップと
を少なくとも含む、調節方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載のアンモニア貯蔵及び送達システム(1)を備える自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア貯蔵及び送達システム、並びにそのアンモニア貯蔵及び送達システムを備える自動車両に関する。本発明はさらに、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給方法に関する。より詳細には、本発明は、アンモニア貯蔵及び送達システムの起動方法、並びにアンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア送達の調節方法に関する。
【0002】
本発明は一般に、アンモニアの貯蔵に関し、そのアンモニア貯蔵は特に、一般にNOxと呼ばれる窒素酸化物に対する選択的触媒還元による還元用途におけるものであり、熱機関、とりわけディーゼル機関による汚染物質の排出削減を可能にする用途、さらには燃料電池の分野にも関する。
【背景技術】
【0003】
このように、自動車部門で汚染のより少ない解決法が追求されるなか、気体貯蔵の潜在的用途は益々広がりつつある。密度と安全という気体貯蔵における従来からの2つの限界を押し広げるため、気体を吸収する固体材料がとりわけ関心を呼んでいる。そうした吸収材料によって気体を貯蔵するための単純にして強力、かつ容易に生産可能な新しい解決法を確立することは、自動車産業にとって中期的な重要課題である。
【0004】
また、気体吸収材料のための貯蔵システムは、一定の技術的制約に対応したものでなければならない。実際、システムは高い自律性を有していなければならず、したがって、気体吸収材料が利用できる内部容積を最大限活用することが必要となる。一方で、貯蔵システムは、車両内に容易に組み込めるように十分にコンパクトである必要がある。高い圧力に耐える大型のタンクを実現しようとすると、設計、実装、保守それぞれの面で問題に突き当たる。実際、円筒形でない形状の貯蔵タンクの製作には制約があり、そのために既存の貯蔵システムは体積も重量も嵩むものとなっている。
【0005】
そのため、現在の技術では、気体貯蔵材料を含んだ単一の貯蔵タンクが提供されてきた。このような解決法には、大型の単一のタンクは制御が困難であるという欠点がある。実際、このようなタンクは、運転状態にある車両での利用段階、すなわちガス脱着段階でコントロールすることは難しい。これは、このようなタンクでは、圧力コントロールの精度及び力学を保ちながら素早い応答時間を得ることが困難であるためである。また、こうした貯蔵タンクは、気体の脱着を果たすために膨大なエネルギー所要量を必要とする。さらに、大型の単一のタンクは、その再充填段階、すなわちその吸収段階では、特に吸収時間が長い場合、その制御が困難となる。
【0006】
そのため、自動車に適合したこうした気体貯蔵システムを実現するに当たっては、気体貯蔵材料の熱管理の難しさ、気体の貯蔵及び送達システムのコンパクトさ、その重量、その使用、その製造コスト、保守時の人間工学、さらにはその再充填など、幾多の制約を考慮に入れなければならない。
【0007】
そこで、複数の貯蔵タンクを用い、その複数のタンクが互いに協働し合うシステムとすることが提案された。この方法により、貯蔵材料の熱管理を向上させることによって貯蔵システムの性能の面でも、特に車両への組込みを単純化する複数の小型貯蔵タンクの利用などによってシステムの組込みの面でも、さらには小型で軽量の複数のタンクの取外しによって保守時の人間工学の面でも、改善を得ることができる。
【0008】
加熱を貯蔵材料の一部分だけに制限できるようにするために、複数のカートリッジに分割したアンモニアガスの貯蔵システムがある。複数のカートリッジを有するそうした貯蔵システムは、一方で、関連するセル及び機器が多ければ、製作コストもそれ相応のものとなる。
【0009】
さらに、複数のカートリッジを有するこのようなシステムにとって、アンモニアの送達、圧力管理、又は各カートリッジ内に残るアンモニアの管理などの操作を行うことは、やはり簡単ではない。このようなシステムではコンパクトさの問題も生じる。そのため、こうしたシステムは、容量の小さい多数のカートリッジを必要とし、結果的に物質的な量は全体として大きくなり、制御のための構成部品も、そして、留め具、掛止具、さらには熱遮蔽など、システムを自動車両に組み込むための構成部品も増える。さらに、そしてとりわけ、車載されたシステムに対して再充填を行う際の安全上の問題がある。
【0010】
固体アンモニアの貯蔵システムに関連したこれらの問題を解決できるようにするため、現在の技術では固体アンモニアの様々な貯蔵システムが提案されている。様々な解決法が提案されている中でも、とりわけ特許文献1では、自動車両に再充填を行うように設計された複数の貯蔵カートリッジを有する固体アンモニア貯蔵システムであって、複数の安全機構を備える貯蔵システムを開示している。しかし、この文献に示されているアンモニアの貯蔵システムは、車載状態での容易な補給を可能にするものではない。さらに、このアンモニア貯蔵システムで説明されている安全機構は、最適な安全条件の下で当該アンモニア貯蔵システムの再充填を可能にするには十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2181963号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特に従来技術のそうした欠点を補うことを目的とする。
【0013】
本発明は、その実施形態の少なくとも1つでは、アンモニアの貯蔵及び送達の最適化された起動を可能にする気体アンモニアの貯蔵及び送達システムを提供することをさらに目的とする。
【0014】
本発明のもう1つの目的、少なくともその実施形態の1つにおける目的は、アンモニア貯蔵及び送達システムの改善された補給方法を実施することにある。
【0015】
本発明の目的、少なくともその実施形態の1つにおける目的は、アンモニア貯蔵及び送達システムにおける改良されたアンモニアの調節方法を提供することにもある。
【0016】
本発明の目的は、アンモニア貯蔵及び送達システムを備える自動車両を提供することにもある。
【0017】
一実施形態によれば、本発明は、アンモニア貯蔵及び送達システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、そうしたアンモニア貯蔵及び供給システムは、少なくとも複数のアンモニア貯蔵カートリッジであって、カートリッジの各々は、アンモニア貯蔵手段と、各々のカートリッジの内圧を他のカートリッジとは独立に調整する第1の内圧調整手段であって、第1の加熱手段を有する第1の内圧調整手段と、パイロット式弁タイプ又は逆止弁タイプの第1の入口弁と、パイロット式弁タイプ又は逆止弁タイプの第1の出口弁とを具備する複数のアンモニア貯蔵カートリッジと、好ましくは複数のカートリッジに共通の操作装置であって、各々のカートリッジについて他のカートリッジとは独立にアンモニアの貯蔵及び送達を操作することができる操作装置と、複数のカートリッジを連結する第1のアンモニア充填又は再充填ラインであって、第2の入口弁を具備する第1のアンモニア充填又は再充填ラインと、複数のカートリッジを連結するアンモニア送達ラインであって、圧力センサと、アンモニア計量装置と、開位置と閉位置との間で選択的に交番することができる第2の出口弁であって、開位置では、アンモニア貯蔵及び送達システム内の余剰分のアンモニアをアンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階後に補給ステーション側に排出するように構成され、閉位置では、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階の終了時にアンモニア貯蔵及び送達システムを遮断するように構成された第2の出口弁とを具備するアンモニア送達ラインとを備える。
【0019】
本発明の基本原理は、アンモニア貯蔵及び送達システム内におけるアンモニアの貯蔵及び送達の管理の最適化、並びに自動車両に搭載された状態でのアンモニア貯蔵及び送達システムの補給の安全条件の改善をよりどころとしている。
【0020】
そのため、本発明は、アンモニア貯蔵及び送達システムに対する全く新しい発明的な実施アプローチに立脚しており、そのアンモニア貯蔵及び送達システムは、複数のアンモニア貯蔵カートリッジであって、カートリッジの各々が、アンモニア貯蔵手段と、各々のカートリッジの内圧を他のカートリッジとは独立に調整する第1の内圧調整手段であって、第1の加熱手段を有する第1の内圧調整手段と、パイロット式弁又は逆止弁タイプの第1の入口及び出口の弁とを具備する複数のアンモニア貯蔵カートリッジと、好ましくは複数のカートリッジに共通の操作装置であって、各々のカートリッジについて他のカートリッジとは独立にアンモニアの貯蔵及び送達を操作することができる操作装置と、複数のカートリッジを連結する第1のアンモニア充填又は再充填ラインであって、第2の入口弁を具備する第1のアンモニア充填又は再充填ラインと、複数のカートリッジを連結するアンモニア送達ラインであって、圧力センサと、アンモニア計量装置と、開位置と閉位置との間で選択的に交番することができる第2の出口弁であって、開位置では、アンモニア貯蔵及び送達システム内の余剰分のアンモニアをアンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階後に補給ステーション側に排出するように構成され、閉位置では、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階の終了時にアンモニア貯蔵及び送達システムを遮断するように構成された第2の出口弁とを備えるアンモニア送達ラインとによって形成される。
【0021】
「複数のカートリッジ」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムが少なくとも2つのアンモニア貯蔵カートリッジを有するということを意味する。つまり、アンモニア貯蔵及び送達システムは、n+2個(ただし、nは自然数)のアンモニア貯蔵カートリッジを含む。複数のカートリッジの前記カートリッジは、特に前記貯蔵及び送達システムの稼働段階では、貯蔵及び送達システムのアンモニア送達ラインにおけるアンモニアの貯蔵及び送達を可能にする。
【0022】
用語「アンモニア貯蔵手段」とは、アンモニアの貯蔵及び送達、すなわちアンモニアの吸収及び/又は吸着並びに脱着を行うアンモニア貯蔵材料をいう。アンモニア貯蔵材料は、固体材料であることが好ましく、より好ましくはアンモニア貯蔵材料は、アルカリ土類金属塩化物の粉末塩である。そのほか、貯蔵材料は、特に材料の熱伝導度及び機械的強度を高めることができる複合材料を塩とともに形成する添加剤をさらに含むことができる。この添加剤には、金属、炭素繊維又は膨張黒鉛を含むことができる。
【0023】
アンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニアは、そのようなシステムによるアンモニアの貯蔵又は送達の際に実施されるそれぞれのステップに固有の様々な動作の際には、それぞれの物理的状態にある。実際、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階では、アンモニアは液相であることが好ましい。アンモニアの貯蔵段階では、アンモニアは固形であることが好ましく、それによって複数のカートリッジの各々のカートリッジの内圧の調整中は、第1の加熱手段によって気体状となることが好ましく、それによってアンモニア送達ラインにアンモニアを送り出すことが可能となり、それによってアンモニア消費装置によるアンモニアの消費が可能となる。
【0024】
「アンモニアが固形」という表現は、アンモニアがアンモニア貯蔵手段に吸着及び/又は吸収した状態のことをいう。
【0025】
「アンモニア消費装置」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムから送達されるアンモニアの仕向け先の装置のことをいう。つまり、アンモニアを必要とする装置のことである。前記アンモニア消費装置は、燃料電池又は燃焼機関であることが好ましく、より好ましくは燃焼機関である。
【0026】
「第1の内圧調整手段」という表現は、複数のカートリッジの各々のカートリッジの第1の内圧調整手段が加熱手段を備えることをいう。前記加熱手段は、好ましくは水性流体、より好ましくは水である流体の循環回路を備える。加熱手段は、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路の形でアンモニア消費装置の冷却装置を備えることが好ましい。
【0027】
実際、前記冷却装置は、アンモニア消費装置を冷却することができる。アンモニア消費装置の冷却回路の出口では、冷却装置の冷却流体、好ましくは水性流体、より好ましくは水の温度は、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジを加熱するのに十分に高温である。実際、冷却装置内の温度は、好ましくは摂氏90度である。
【0028】
第1のアンモニア充填又は再充填ラインは、第1の入口弁を通して、アンモニア貯蔵及び送達システムのカートリッジの外から内にアンモニアを通すことができる。前記第1の入口弁は、アンモニア充填又は再充填ラインの圧力が複数のカートリッジのうち1つのカートリッジの内圧を上回ると、複数のカートリッジのうち1つのカートリッジの中にアンモニアが入り込むことができるようにする。その前記第1の入口弁は、パイロット式であっても受動式であってもよく、好ましくは第1の入口弁は、逆止弁タイプの受動弁である。そのため、第1のアンモニア充填又は再充填ラインと第1の入口弁とは、アンモニア貯蔵及びアンモニア送達システムの補給段階及び充填段階で使用される。つまり、第1のアンモニア充填又は再充填ラインは、特にアンモニア吸収段階で使用される。第2の入口弁は、特に補給段階では、アンモニア貯蔵及び送達システムを大気から遮断しつつ、アンモニア貯蔵及び送達システムにコントロール下で補給を行うことを可能にする。第1の充填又は再充填ライン内のアンモニアは、気体、液体又は気液二相の形で存在し、好ましくはアンモニアは、液体又は気液二相の形で、より好ましくは液体の形で存在する。
【0029】
アンモニア送達ラインは、第1の出口弁を通して、アンモニア貯蔵及び送達システム内の貯蔵カートリッジの内から外にアンモニアを通すことができる。前記第1の出口弁は、複数のアンモニア貯蔵カートリッジのうちカートリッジの内圧がアンモニア送達ラインの圧力を上回ると、複数のカートリッジのうちそのカートリッジから、好ましくは気体であるアンモニアを出すことができる。前記第1の出口弁は、パイロット式であっても受動式であってもよく、好ましくは第1の入口弁は、逆止弁タイプの受動弁である。そのため、1つの第1の出口弁が開くと、その他の第1の出口弁は圧力差によって閉じ、第1の出口弁が開くことによって送達ラインにアンモニアが送り出されて前記ライン内の圧力上昇がもたらされ、それによってその他の第1の出口弁が閉じる。実際、この場合、送達ライン内の圧力は、その他の第1の出口弁が開放可能となる所定の圧力以上になる。このように、気体アンモニアの送達時には、第1のアンモニア送達ラインと第1の入口弁が使用される。
【0030】
用語「好ましくは複数のカートリッジに共通の操作装置」とは、前記操作装置がアンモニア送達流量調節手段及び/又は複数のカートリッジの内圧調整手段を備えることを意味する。複数のカートリッジの前記内圧調整手段又はアンモニア送達流量調節手段の操作は、各々のカートリッジをその他のカートリッジと独立に操作することができる。操作装置は、有利には、アンモニア貯蔵及び送達システムの各パイロット式弁の制御も行う。
【0031】
アンモニア計量装置は、アンモニア流量調節手段を備え、前記計量装置は、アンモニア消費装置に向かうアンモニア送達ラインの出口に配設され、アンモニア送達流量調節手段は、たとえば弁であり、好ましくはパイロット式弁、より好ましくは電磁弁である。
【0032】
したがって、このようなアンモニア貯蔵及び送達システムは、特にアンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階の際に、より具体的には、充填又は再充填ラインに配設された第2の入口弁によるアンモニア貯蔵及び送達システムの補給ステーションとの接続を外す際に、大気にさらされる可能性のあるアンモニア体積を制限することによって、アンモニア貯蔵及び送達システムを外界から遮断することができる。それにより、大気中への潜在的なアンモニア漏れが減ることになる。さらに、このようなアンモニア貯蔵及び送達システムは、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給の終了を表示することができる。
【0033】
本発明の特定の実施形態によれば、このようなアンモニア貯蔵及び送達システムは、互いに邪魔にならない複数の連通区画に振り分けられた貯蔵材料を含む少なくとも1つのアンモニア貯蔵カートリッジを備える。同一のアンモニア貯蔵カートリッジの各々の区画は、同一のアンモニア貯蔵材料を含んでおり、同一の内圧調整手段によって制御される。
【0034】
本発明による一実施形態では、このようなアンモニア貯蔵及び送達システムは、複数のカートリッジのうちカートリッジの第1の出口弁と複数のカートリッジのうちカートリッジの出口との間に位置する温度センサを、複数のカートリッジの各々のカートリッジに備える。
【0035】
「第2の出口弁」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階後のアンモニア貯蔵及び送達システム内の余剰分のアンモニアの、補給ステーション側への排出と、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階終了時のアンモニア貯蔵及び送達システムの遮断とを交互に行うことができる弁を意味する。前記第2の出口弁は、アンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア送達ラインに、好ましくはアンモニア貯蔵及び送達システムの出口付近に配設される。
【0036】
「アンモニア貯蔵及び送達システムの出口付近」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階の際に、補給ステーションに向けられたアンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア出口位置で補給ステーションに接続されるアンモニア貯蔵及び送達システムの部分を意味する。
【0037】
そのため、アンモニア貯蔵及び送達システムは、アンモニア貯蔵及び送達システムを外界から遮断することによって大気中へのアンモニアの放出を防ぎつつ、アンモニアの流入流とアンモニアの流出流とが含まれるアンモニア貯蔵及び送達システムの補給方法を実施することができる。それにより、特にアンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階、とりわけ補給ステーションに対するアンモニア貯蔵及び送達システムの接続を外す際に、大気にさらされるアンモニアの体積が制限される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、アンモニア貯蔵及び送達システムは、分流ラインに配設された分流弁であって、第1のアンモニアの充填又は再充填ラインとアンモニア送達ラインとを流体連通する分流弁を備える。
【0039】
用語「分流ライン」とは、アンモニア貯蔵及び送達システムが第1のアンモニア充填又は再充填ラインとアンモニア送達ラインとの間の流体連通を有しており、それによって補給段階で分流弁による余剰分のアンモニアのコントロール下での排除動作などを可能にするか、また複数のアンモニア貯蔵カートリッジの再充填動作の実施をさらに可能にすることをいう。
【0040】
用語「分流弁」とは、分流ラインに配設された弁であって、好ましくはパイロット式弁である弁、より好ましくは電磁弁である弁をいう。
【0041】
そして、アンモニア貯蔵及び送達システムの分流ライン及び分流弁は、アンモニア貯蔵及び送達システムの補給段階後などに、アンモニア充填又は再充填ライン及びアンモニア送達ラインを外界から遮断できるようにしてアンモニアが大気中に漏れるのを防ぎつつ、アンモニア充填又は再充填ライン内の余剰分のアンモニアをコントロール下で排除する。
【0042】
さらに、アンモニア貯蔵及び送達システムの分流ライン及び分流弁は、アンモニア充填又は再充填ラインとアンモニア送達ラインとの間の流体連通を可能にして、アンモニア貯蔵及び送達システムにおけるアンモニアの流れをより良好にコントロールし、それによって、アンモニア貯蔵及び送達システムにおけるアンモニア調節の最適化を得る。
【0043】
好ましい実施形態によれば、アンモニア貯蔵及び送達システムは、アンモニア送達ラインに配設された第1の過圧弁及び/又は分流ラインと並列に過圧ラインに配設された第2の過圧弁を備える。
【0044】
「第1の過圧弁」という表現は、過圧S1が検出されたときに開位置になる弁のことをいう。前記過圧S1の検出は、アンモニア送達ラインに配設された圧力センサによる圧力測定によってアンモニア送達ラインで行われる。
【0045】
「第2の過圧弁」という表現は、過圧S2が検出されたときに開位置になる弁のことをいう。前記過圧S2の検出は、アンモニア送達ラインに配設された圧力センサによる圧力測定によってアンモニア送達ラインで行われる。前記過圧S2は、過圧S1時の圧力より低いが、アンモニア送達ラインに余剰分のアンモニアがあるだけのときに分流ライン及び分流弁が使用される場合の圧力より高い。そのため、第2の過圧弁が開位置のとき、第1の過圧弁は閉位置となり、逆の場合はそれと反対になる。分流動作の場合には、第1の過圧弁と第2の過圧弁はいずれも閉位置となる。これらの動作全体は、操作装置の指示を受けて行われるか、又は使用される弁のタイプに応じて受動的な編成が行われる。
【0046】
こうして、過圧弁は、アンモニア貯蔵及び送達システム内にアンモニアをコントロールしながら流すことで、アンモニア貯蔵及び送達システムを損ねることなく前記システム内に過圧を受け入れる可能性をもたらし、それによって前記過圧を軽減し、本発明によるこのようなアンモニア貯蔵及び送達システムをより長く使用することを可能にする。
【0047】
好ましい実施形態によれば、アンモニア貯蔵及び送達システムは、第1の過圧弁が安全カートリッジと流体連通する。
【0048】
「安全カートリッジ」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジに属さないアンモニア貯蔵カートリッジのことをいう。安全カートリッジと呼ぶのは、送達ラインに過圧S1が生じたときに前記カートリッジがアンモニアを貯蔵できるためである。実際、過圧S2時、アンモニアは、アンモニア充填又は再充填ラインの第2の過圧弁によって複数のカートリッジに再充填され得るか、又は補給段階で排除され得る。
【0049】
安全カートリッジは、最初は空で、補給段階では余剰分のアンモニアを第2の出口弁を通して排除することができるが、アンモニア貯蔵及び送達システムの稼働段階では、余剰分のアンモニアを複数のカートリッジに再分配することもでき、その際、アンモニアは、特に分流弁を通過する。
【0050】
そのため、第1の過圧弁と安全カートリッジとの間を流体連通させることによって、アンモニア貯蔵及び送達システム内を流れる余剰分のアンモニアを前記安全カートリッジの方に向かわせることができ、それによって大気中に漏れるアンモニアを制限することができると同時に、アンモニア貯蔵及び送達システムを保全し、そうした過圧局面でのシステムの劣化を抑え込むことができる。こうしたカートリッジを利用することで、有利には、アンモニア貯蔵及び送達システムの不具合を示すことができる。
【0051】
好ましい実施形態によれば、アンモニア貯蔵及び送達システムは、第1の冷却システムと、第2の加熱手段を有する第2の内圧調整手段と、アンモニア出口としても機能するアンモニア入口とを具備する第1の起動カートリッジを少なくとも備える。
【0052】
「第1の冷却システム」と言う表現は、第1の起動カートリッジの温度を下げることができるシステムであって、それによってアンモニアが気体の状態から固体の状態に変わるのを容易にして、第1の起動カートリッジの再充填をより迅速に行えるようにするシステムのことをいう。第1の冷却システムは、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路を一例として備える。
【0053】
「第2の内圧調整手段」という表現は、第1の起動カートリッジの内圧調整手段が、好ましくは抵抗である第2の加熱手段を備えることをいう。
【0054】
「アンモニア出口としても機能するアンモニア入口」という表現は、アンモニアが第1の起動カートリッジから出る箇所と同一の箇所からアンモニアが入ることをいう。つまり、第1の起動カートリッジとの流体連通ルートは1つだけ存在するということである。
【0055】
そのため、アンモニア貯蔵及び送達システムの第1の起動カートリッジは、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジがアンモニア送達ラインにアンモニアを送り出せる状態となるまでの間、十分な量のアンモニアを迅速に送り出すことができる。さらに、アンモニア貯蔵及び送達システムの第1の起動カートリッジの冷却システムは、前記第1の起動カートリッジをより効率的に再充填することができる。それにより、第1の起動カートリッジは、アンモニア貯蔵及び送達システムの新たな起動段階のためにより迅速に動作状態となる。
【0056】
用語「十分な量のアンモニア」とは、アンモニア貯蔵及び送達システムの稼働段階でアンモニア貯蔵及び送達システムが稼働するために必要な量のアンモニアのことをいう。
【0057】
実際、第1の起動カートリッジは、より優れたアンモニア送達性能のおかげで、先回りしてアンモニア送達ラインにアンモニアを送り出すことができる。
【0058】
用語「性能」とは、内圧調整が容易なこと、貯蔵材料の伝導性が高いこと、貯蔵材料の熱容量が高いこと、貯蔵カートリッジの断熱性が高いこと、さらには、カートリッジの貯蔵容積が異なること、好ましくは第1の起動カートリッジが、複数のカートリッジの1つのカートリッジの容積より小さく、それによって気体アンモニアを迅速に送り出せることなどをいう。
【0059】
上記の好ましい実施形態によれば、アンモニア貯蔵及び送達システムは、前記第1の起動カートリッジのアンモニア出口としても機能するアンモニア入口が、第1のアンモニア充填又は再充填ラインとは独立した第2のアンモニア充填又は再充填ラインによってアンモニア送達ラインと流体連通しており、前記第2のアンモニア充填又は再充填ラインはアンモニア送達ラインであり、好ましくは、前記第2のアンモニア充填又は再充填ラインは第1のパイロット式弁を備える。
【0060】
「第1のパイロット式弁」という表現は、起動カートリッジの充填又は再充填及び送達を可能にする弁であって、好ましくは、第2のアンモニア充填又は再充填ライン上にあって、アンモニア出口ともなるアンモニア入口と、アンモニア送達ラインとの流体連通を可能にする連結部との間に配設された弁のことをいう。
【0061】
そのため、アンモニア貯蔵及び送達システムの第1の起動カートリッジは、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジがアンモニア送達ラインにアンモニアを送り出すことができる状態となるまでの間、十分な量のアンモニアを迅速に送り出すことができる。さらに、アンモニア貯蔵及び送達システムの第1の起動カートリッジの冷却システムは、前記第1の起動カートリッジの再充填をより効率的に行えるようにする。そのため、第1の起動カートリッジは、アンモニア貯蔵及び送達システムの新たな起動段階で一段と迅速に動作態勢となることができる。第1の起動カートリッジがパイロット式弁を含む独立したアンモニア充填又は再充填ラインを備えることにより、アンモニア貯蔵及び送達システムの調節を最適化することができる。
【0062】
上述の2つの実施形態に対して別法の実施形態によれば、アンモニア貯蔵及び送達システムは、第2の冷却システムと、第3の加熱手段を有する第3の内圧調整手段と、第2のパイロット式弁を含むことが好ましいアンモニア送達ラインとの流体連結部と、第1のアンモニア充填又は再充填ラインとの流体連結部とを具備する第2の起動カートリッジを備える。
【0063】
「第2の冷却システム」という表現は、起動カートリッジの温度を下げることができるシステムであって、それによってアンモニアが気体の状態から固体の状態に変わるのを容易にして、起動カートリッジの再充填をより迅速化できるシステムのことをいう。第2の冷却システムは、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路を一例として備える。
【0064】
「第3の内圧調整手段」という表現は、第2の起動カートリッジの内圧調整手段が、好ましくは抵抗である第3の加熱手段を備えることをいう。
【0065】
そのため、この実施形態によるアンモニア貯蔵及び送達システムの第2の起動カートリッジは、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジがアンモニア送達ラインにアンモニアを送り出すことができる状態となるまでの間、十分な量のアンモニアを迅速に送り出すことができる。さらに、アンモニア貯蔵及び送達システムの第2の起動カートリッジの冷却システムは、前記第2の起動カートリッジの再充填をより効率的に行えるようにする。そのため、第2の起動カートリッジは、アンモニア貯蔵及び送達システムの新たな起動段階で一段と迅速に動作態勢となることができる。
【0066】
好ましい実施形態によれば、アンモニア貯蔵及び送達システムは、好ましくはアンモニア送達ライン上にあって、アンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア計量装置の上流側に、より好ましくは計量装置に組み込まれた形で、さらにより好ましくはアンモニア送達ライン上にあって、計量装置の下流側に配設された第3の出口弁を備える。
【0067】
「第3の出口弁」という表現は、アンモニア消費装置に供給されるアンモニア送達流量を調整できる弁のことをいう。
【0068】
「アンモニア計量装置の上流側」という表現は、前記第3の出口弁が、アンモニア貯蔵及び送達システムの稼働段階におけるアンモニアの流れ方向に沿って、アンモニア計量装置より手前に配設されることをいう。
【0069】
「アンモニア計量装置の下流側」という表現は、前記第3の出口弁が、アンモニア貯蔵及び送達システムの稼働段階におけるアンモニアの流動方向に沿って、アンモニア計量装置より後方に配設されることをいう。
【0070】
そのため、アンモニア貯蔵及び送達システムは、アンモニア消費装置に対して流量がコントロールされたアンモニアを供給することができる。
【0071】
本発明はさらに、本発明によるアンモニア貯蔵及び送達システムの補給方法に関する。前記補給方法は少なくとも、
・アンモニア貯蔵及び送達システムの入口及び出口で補給ステーションと接続するステップと、
・第2の入口弁及び出口弁を開放するステップと、
・複数のカートリッジの第1の入口弁及び出口弁を開放するステップと、
・複数のカートリッジにアンモニアを補給するステップと、
・アンモニア送達ライン及び/又は複数のカートリッジの各々のカートリッジの出口における圧力及び/又は温度を測定することによって、複数の貯蔵カートリッジのアンモニア補給終了を検出するステップと、
・第2の入口弁を閉鎖するステップと、
・分流弁を開放するステップと、
・アンモニア貯蔵及び送達システム内の余剰分のアンモニアを第2の出口弁から排出するステップと、
・第2の出口弁及び分流弁を閉鎖するステップと、
・アンモニア貯蔵及び送達システムの補給ステーションとの接続を外すステップと
を含む。
【0072】
「アンモニア貯蔵及び送達システムの入口及び出口で補給ステーションに接続」という表現は、貯蔵及び送達システムの補給段階で、前記アンモニア貯蔵及び送達システムが、前記システムの入口から始まって、複数のカートリッジ及び起動カートリッジを経由し、前記システムの出口に至るアンモニアの流動ループを形成することをいう。このループは、アンモニア貯蔵及び送達システムの各カートリッジが飽和するまで繰り返される。
【0073】
そのため、アンモニア貯蔵及び送達システムのこれらの補給ステップは、複数のカートリッジのうち幾つかのカートリッジを並行して補給することで、アンモニア貯蔵及び送達システムのより効率的な補給が可能となる一方、アンモニア貯蔵及び送達システムのそうした補給方法の安全性を高めることができる。
【0074】
本発明はまた、第1及び第2の起動カートリッジの中から選ばれることが好ましい1つの起動カートリッジと、複数の貯蔵カートリッジとを備えるアンモニア貯蔵及び送達システムの起動方法であって、
・アンモニア貯蔵及び送達システムの起動カートリッジを加熱するステップと、
・起動カートリッジからアンモニアを送達することにより、アンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア送達ライン内に圧力P1を獲得し、保持するステップと、
・アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジのうち少なくとも1つのアンモニア貯蔵カートリッジを加熱するステップであって、複数のカートリッジのうち少なくとも1つのカートリッジからアンモニアを送り出すことによって、アンモニア送達ライン内に圧力P1を上回る圧力P2が得られるようなるまで加熱するステップと、
・起動カートリッジの加熱を停止するステップであって、好ましくは前記起動カートリッジの冷却をあわせて行う、ステップと
を少なくとも含む起動方法に関する。
【0075】
「起動カートリッジ」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムによるアンモニア送達ステップの起動時にアンモニアを送り出すアンモニア貯蔵及び送達システムの第1のカートリッジのことをいう。
【0076】
「圧力P1」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの起動カートリッジによってアンモニアが送達されることによって、アンモニア消費装置にアンモニアを供給するアンモニア送達ラインで得られる圧力であって、好ましくは1.5バールの絶対圧である圧力のことをいう。絶対圧という表現は、真空中での圧力ゼロを基準とした圧力をいう。圧力P1は、アンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア送達ラインに配設された圧力センサによる圧力測定によって検出される。
【0077】
「圧力P2」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジのうち1つのカートリッジによるアンモニアの送達によって、アンモニア消費装置にアンモニアを供給するアンモニア送達ラインで得られる圧力であって、好ましくは2バールの絶対圧である圧力のことをいう。圧力P2は、アンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア送達ラインに配設された圧力センサによる圧力測定によって検出される。
【0078】
「あわせて冷却」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの第1及び第2の起動カートリッジの中から選ばれることが好ましい起動カートリッジの冷却システムを利用することをいう。
【0079】
このように、アンモニア貯蔵及び送達システムの起動ステップは、起動カートリッジ稼働の起動及び停止を最適なシーケンスで組み立てることができる。それによって、アンモニア貯蔵及び送達システムの起動方法は、より効率的なものとなる。
【0080】
本発明はさらに、複数の貯蔵カートリッジを備えるアンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア送達の調節方法であって、
・アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第1のアンモニア貯蔵カートリッジを加熱して、アンモニア送達ラインに圧力P3を得るステップと、
・アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第1のカートリッジが第1の基準飽和レベルに達したとき、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第2のアンモニア貯蔵カートリッジを加熱するステップであって、前記第1の基準飽和レベルの検出が、好ましくは温度測定によって行われる、ステップと、
・アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第1の貯蔵カートリッジが第2の基準飽和レベルに達したとき、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第1のアンモニア貯蔵カートリッジの加熱を停止するステップであって、前記第2の基準飽和レベルの検出が、好ましくは温度測定によって行われる、ステップと
を少なくとも含む方法に関する。
【0081】
「圧力P3」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジのうち1つのカートリッジによるアンモニアの送達によって、アンモニア消費装置にアンモニアを供給するアンモニア送達ラインで得られる圧力であって、好ましくは2バールの絶対圧である圧力のことをいう。圧力P3の検出は、アンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア送達ラインに配設された圧力センサによる圧力測定によって行われる。
【0082】
「アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第1のカートリッジが第1の基準飽和レベルに達した」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第1のカートリッジ内のアンモニア貯蔵手段1モル当たりアンモニア8モルの飽和レベルからアンモニア貯蔵手段1モル当たりアンモニア4モルの飽和レベルになることをいう。つまり、複数のカートリッジの前記第1のカートリッジは、前記カートリッジが第1の基準飽和レベルに達したときにはアンモニア飽和度50%になっていることになる。
【0083】
「アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第1の貯蔵カートリッジが第2の基準飽和レベルに達した」という表現は、アンモニア貯蔵及び送達システムの複数のカートリッジの第1のカートリッジ内のアンモニア貯蔵手段1モル当たりアンモニア4モルの飽和レベルからアンモニア貯蔵手段1モル当たりアンモニア2モルの飽和レベルになることをいう。つまり、複数のカートリッジの前記第1のカートリッジは、前記カートリッジが第2の基準飽和レベルに達したときにはアンモニア飽和度25%になっていることになる。
【0084】
この場合、複数のカートリッジの第1のカートリッジのアンモニア飽和度が100%のとき、温度T1でアンモニア送達ラインに圧力P3が得られ、それを維持することができる。温度T1の検出は、好ましくはアンモニア送達ラインにおける温度測定によって、より好ましくは複数のカートリッジのうちカートリッジの各出口での温度測定によって行われ、温度センサは、複数のカートリッジのうちカートリッジの第1の出口弁と複数のカートリッジのうちカートリッジの出口との間に配設される。
【0085】
すると、飽和度50%、すなわち第1の基準飽和レベルでは、温度T2でアンモニア送達ラインに圧力P3を維持することができる。温度T2は温度T1より高い。温度T2の検出は、好ましくはアンモニア送達ラインにおける温度測定によって、より好ましくは複数のカートリッジのうち1つのカートリッジの各出口での温度測定によって行われる。
【0086】
さらに、飽和度25%、すなわち第2の基準飽和レベルでは、圧力P3を維持するために温度T3が必要となる。しかし、前記圧力P3を維持するための前記温度T3は高すぎる。そのため、複数のカートリッジの第1のカートリッジが第2の基準飽和レベルに達すると、複数のカートリッジのうち前記カートリッジは停止し、複数のカートリッジのうち第2のカートリッジへの切換えが起こる。温度T3は温度T2より高い。温度T3の検出は、好ましくはアンモニア送達ラインにおける温度測定によって、より好ましくは複数のカートリッジのうちカートリッジの各出口での温度測定によって行われ、温度センサは、複数のカートリッジのうちカートリッジの第1の出口弁と、複数のカートリッジのうちカートリッジの出口との間に配設される。
【0087】
さらに、複数のカートリッジのうち第1のカートリッジで第1の基準飽和レベルに達すると、複数のカートリッジのうち第2のカートリッジの加熱が始まり、それによって、複数のカートリッジのうち前記第1のカートリッジの停止時に、複数のカートリッジのうち第2のカートリッジがアンモニア送達ラインで圧力P3を維持するのに十分な温度となることを可能にする。そのため、アンモニア消費装置のためのアンモニア送達が途切れることがない。
【0088】
こうして、アンモニア貯蔵及び送達システムの各調節ステップは、アンモニア貯蔵及び送達システムの稼働を最適化することができる。
【0089】
本発明のもう1つの目的は、アンモニア貯蔵及び送達システムを備える自動車両を提供することにある。
【0090】
本発明のその他の特徴及び利点は、あくまでも参考であって限定的でない例として添付の図とともに示す好ましい実施形態についての以下の説明を読むことによってより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】本発明によるアンモニア貯蔵及び送達システムであって、補給段階にあるシステムの図である。
【
図2】本発明によるアンモニア貯蔵及び送達システムであって、補給段階にあるシステムの図である。
【
図3】本発明によるアンモニア貯蔵及び送達システムであって、稼働段階にあるシステムを説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1と関連させながら、補給段階及び起動段階におけるアンモニア貯蔵及び送達システムを紹介する。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、複数のアンモニアカートリッジ(10)であって、カートリッジの各々が、好ましくはアルカリ土類金属塩化物の粉末塩であるアンモニア貯蔵手段(11)と、各々のカートリッジの内圧を他のカートリッジとは独立に調整する第1の内圧調整手段(12)であって、たとえば、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路を含む冷却システムであることが好ましい第1の加熱手段を具備する第1の内圧調整手段(12)と、好ましくは逆止弁である第1の入口弁(13)と、好ましくは逆止弁である第1の出口弁(14)とを具備する複数のアンモニアカートリッジ(10)と、複数のカートリッジ(10)に共通であることが好ましい操作装置(20)であって、各々のカートリッジについて他のカートリッジとは独立にアンモニアの貯蔵及び送達を操作できる、複数のカートリッジ(10)のアンモニア流量の調節手段の操作手段、又はさらに第1の内圧調整手段(12)の操作手段を具備する操作装置(20)と、複数のカートリッジ(1)を連結する第1の充填又は再充填ライン(30)であって、第2の入口弁(31)を具備する第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)と、圧力センサ(42)及びアンモニア計量装置(43)を具備し、複数のカートリッジ(10)を連結するアンモニア送達ライン(40)とを少なくとも備える。冷却システムは、アンモニア消費装置を冷却することができる冷却装置の一部をなすことが好ましい。
【0093】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア消費装置に向かうアンモニア送達ライン(40)の出口に、アンモニア流量調節装置を具備したものであることが好ましいアンモニア計量装置(43)をさらに備え、アンモニア流量調節手段は、たとえば弁であり、より好ましくはパイロット式弁である。
【0094】
第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)は、第1の入口弁(31)を通してアンモニア貯蔵及び送達システム(1)の貯蔵カートリッジの外から内にアンモニアを通すことができる。この第1の入口弁(13)は、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)の圧力が、複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジの内圧を上回ると、複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジの中にアンモニアが入り込むことができるようにする。この第1の入口弁(13)は、パイロット式であっても受動式であってもよく、好ましくは第1の入口弁は、逆止弁タイプの受動弁である。第2の入口弁(31)は、特に補給段階では、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)を大気から遮断した状態で、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のコントロール下での補給を行うことを可能にする。アンモニア送達ライン(40)は、第1の出口弁(14)を通してアンモニア貯蔵及び送達システム(1)の貯蔵カートリッジの内から外にアンモニアを通すことができる。この第1の出口弁(14)は、内圧がアンモニア送達ライン(40)の圧力を上回ると、複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジから気体アンモニアを出すことができる。この第1の出口弁(14)は、パイロット式であっても受動式であってもよく、好ましくは第1の出口弁(14)は、逆止弁タイプの受動弁である。そのため、1つの第1の出口弁(14)が開くと、圧力差によって他の第1の出口弁(14)が閉じる。アンモニア送達ライン(40)は、補給段階でアンモニア貯蔵及び送達システム(1)を遮断できる第2の出口弁(41)を備える。
【0095】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)はまた、分流ライン(50)に配設された分流弁(51)であって、特に補給段階で、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)とアンモニア送達ライン(40)とを流体連通して、余剰分のアンモニアをその分流弁(51)から排除するコントロール下の動作を可能にする分流弁(51)を備える。この分流弁(51)は、パイロット式弁であることが好ましく、より好ましくは分流弁(51)は電磁弁である。
【0096】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア送達ライン(40)に配設された第1の過圧弁(62)、及び/又は分流ライン(50)と並列に過圧ライン(61)に配設された第2の過圧弁(63)を備える。第1の過圧弁(62)は、過圧S1が検出されると開位置になる。この過圧S1の検出は、アンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によってアンモニア送達ライン(40)で行われる。第2の過圧弁(63)は、過圧S2が検出されると開位置になる。この過圧S2の検出は、アンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によってアンモニア送達ライン(40)で行われる。その過圧S2は過圧S1時の圧力より低いが、アンモニア送達ライン(40)に余剰分のアンモニアがあるだけのときの圧力より高い。そのため、第2の過圧弁(63)が開位置のとき、第1の過圧弁(62)は閉位置となり、また逆の場合はそれと反対になる。ライン(50)及び分流弁(51)が使用される分流動作の際には、第1の過圧弁(62)と第2の過圧弁(63)はいずれも閉位置となる。さらに、第1の過圧弁(62)は、安全カートリッジ(60)と流体連通される。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア送達ライン(40)上にあって、アンモニア計量装置(43)の上流側に配設されることが好ましい第3の出口弁(45)を備える。アンモニア消費装置に供給されるアンモニアの流量を調整することができるこの第3の出口弁(45)は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の稼働段階におけるアンモニアの流動方向に沿ってアンモニア計量装置(43)の上流側に配設される。
【0097】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、第1の冷却システム(151)を具備する第1の起動カートリッジ(15)と、第2の加熱手段を具備する第2の内圧調整手段(152)と、アンモニア出口(153)としても機能するアンモニア入口とを備える。第1の冷却システム(151)は、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路を一例として備える。第1の起動カートリッジ(15)のこの第2の内圧調整手段(152)は、たとえば抵抗である第2の加熱手段を備える。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のこの第1の起動カートリッジ(15)は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)がアンモニア送達ライン(40)にアンモニアを送り出すことができる状態となるまでの間、十分な量のアンモニアを迅速に送り出すことができる。さらに、この第1の起動カートリッジ(15)のアンモニア出口(153)としても機能するアンモニア入口は、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)とは独立した第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)によってアンモニア送達ライン(40)と流体連通し、その第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)は、アンモニア送達ライン(40)であり、好ましくはこの第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)は、第1のパイロット式弁(154)を備える。第1の起動カートリッジ(15)の充填又は再充填及び送達を可能にするこの第1のパイロット式弁(154)は、好ましくは、第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)上にあって、アンモニア出口(153)としても機能するアンモニア入口と、アンモニア送達ライン(40)に対する流体連通を可能にする連結部との間に配設される。
【0098】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の補給段階では、補給ステーション(70)に接続されたこのアンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、このシステム(1)の入口(1A)から始まって、複数のカートリッジ(10)及び第1の起動カートリッジ(15)を経由し、このシステム(1)の出口(1B)に至るアンモニアの流動ループを形成する。このループは、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)が飽和するまで繰り返される。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の第1の起動カートリッジ(15)によってアンモニアが送達されることによって、アンモニア消費装置にアンモニアを供給するアンモニア送達ライン(40)に圧力P1が得られる。この圧力P1は、好ましくは1.5バールの絶対圧である。圧力P1の検出は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のアンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によって行われる。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジによるアンモニアの送達によって、アンモニア消費装置にアンモニアを供給するアンモニア送達ライン(40)に圧力P2が得られ、この圧力P2は、好ましくは2バールの絶対圧である。圧力P2の検出は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のアンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によって行われる。最後に、第1の起動カートリッジ(15)は、第1の冷却システム(151)によって冷却される。
【0099】
図2は、補給段階及び起動段階における本発明の具体的な実施形態によるアンモニア貯蔵及び送達システム(1)を示したものである。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、複数のアンモニアカートリッジ(10)であって、カートリッジの各々が、好ましくはアルカリ土類金属塩化物の粉末塩であるアンモニア貯蔵手段(11)と、各々のカートリッジの内圧を他のカートリッジとは独立に調整する第1の内圧調整手段(12)であって、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路を一例として含む冷却システムであることが好ましい第1の加熱手段を具備する第1の内圧調整手段(12)と、好ましくは逆止弁である第1の入口弁(13)と、好ましくは逆止弁である第1の出口弁(14)とを具備する複数のアンモニアカートリッジ(10)と、複数のカートリッジ(10)に共通であることが好ましい操作装置(20)であって、各々のカートリッジについて他のカートリッジとは独立にアンモニアの貯蔵及び送達を操作できる、複数のカートリッジ(10)の流量の調節手段の操作手段又はさらに第1の内圧調整手段(12)の操作手段を具備する操作装置(20)と、複数のカートリッジ(10)を連結する第1の充填又は再充填ライン(30)であって、第2の入口弁(31)を具備する第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)と、圧力センサ(42)及びアンモニア計量装置(43)を具備し、複数のカートリッジ(10)を連結するアンモニア送達ライン(40)とを少なくとも備える。冷却システムは、アンモニア消費装置を冷却することができる冷却装置の一部をなすことが好ましい。
【0100】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア消費装置に向かうアンモニア送達ライン(40)の出口に、好ましくはアンモニア流量調節手段を具備したアンモニア計量装置(43)をさらに備え、そのアンモニア流量調節手段は、たとえば弁であり、より好ましくはパイロット式弁である。
【0101】
第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)は、第1の入口弁(31)を通して、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の貯蔵カートリッジの外から内にアンモニアを通すことができる。この第1の入口弁(13)は、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)の圧力が複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジの内圧を上回ると、アンモニアを複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジの中に入り込めるようにする。この第1の入口弁(13)は、パイロット式であっても受動式であってもよく、好ましくは第1の入口弁は、逆止弁タイプの受動弁である。第2の入口弁(31)は、特に補給段階では、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)を大気から遮断した状態で、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)にコントロール下で補給を行うことを可能にする。アンモニア送達ライン(40)は、第1の出口弁(14)を通して、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の貯蔵カートリッジの内から外にアンモニアを通すことができる。この第1の出口弁(14)は、内圧がアンモニア送達ライン(40)の圧力を上回ると、複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジから気体アンモニアが出られるようにする。この第1の出口弁(14)は、パイロット式であっても受動式であってもよく、好ましくは第1の出口弁(14)は、逆止弁タイプの受動弁である。この場合、1つの第1の出口弁(14)が開くと、圧力差によって他の第1の出口弁(14)が閉じる。アンモニア送達ライン(40)は、補給段階でアンモニア貯蔵及び送達システム(1)を遮断することのできる第2の出口弁(41)を備える。
【0102】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)はまた、分流ライン(50)に配設された分流弁(51)であって、特に補給段階で、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)とアンモニア送達ライン(40)とを流体連通して、余剰分のアンモニアをその分流弁(51)から排除するコントロール下の動作を可能にする分流弁(51)を備える。分流弁(51)は、パイロット式弁であることが好ましく、より好ましくは分流弁(51)は電磁弁である。
【0103】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア送達ライン(40)に配設された第1の過圧弁(62)、及び/又は分流ライン(50)と並列に過圧ライン(61)に配設された第2の過圧弁(63)を備える。第1の過圧弁(62)は、過圧S1が検出されると開位置になる。この過圧S1の検出は、アンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によってアンモニア送達ライン(40)で行われる。第2の過圧弁(63)は、過圧S2が検出されると開位置になる。この過圧S2の検出は、アンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によってアンモニア送達ライン(40)で行われる。その過圧S2は、過圧S1時の圧力より低いが、アンモニア送達ライン(40)に余剰分のアンモニアがあるだけのときの圧力より高い。そのため、第2の過圧弁(63)が開位置のとき、第1の過圧弁(62)は閉位置となり、また逆の場合はそれと反対になる。ライン(50)及び分流弁(51)が使用される分流動作の際には、第1の過圧弁(62)と第2の過圧弁(63)はいずれも閉位置となる。さらに、第1の過圧弁(62)は、安全カートリッジ(60)と流体連通する。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア送達ライン(40)上にあって、アンモニア計量装置(43)の上流側に配設されることが好ましい第3の出口弁(45)を備える。アンモニア消費装置に供給されるアンモニアの流量を調整することができるこの第3の出口弁(45)は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の稼働段階におけるアンモニアの流動方向に沿ってアンモニア計量装置(43)の上流側に配設される。
【0104】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、第2の冷却システム(161)と、第3の加熱手段を有する第3の内圧調整手段(162)と、アンモニア送達ライン(40)との第1の流体連結部(163)であって、第2のパイロット式弁(165)を含むことが好ましいアンモニア送達ライン(40)との第1の流体連結部(163)と、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)との第2の流体連結部(164)とを具備する第2の起動カートリッジ(16)を備える。第2の冷却システム(161)は、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路を一例として備える。第2の起動カートリッジ(16)のこの第3の内圧調整手段(162)は、たとえば抵抗である第3の加熱手段を備える。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のこの第2の起動カートリッジ(16)は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)がアンモニア送達ライン(40)にアンモニアを送り出すことができる状態となるまでの間、十分な量のアンモニアを迅速に送り出すことができる。第2の起動カートリッジ(16)の送達を可能にするこの第2のパイロット式弁(165)は、アンモニア送達ライン(40)との第1の流体連結部(163)に配設されることが好ましい。
【0105】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の補給段階では、補給ステーション(70)に接続されたこのアンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、このシステム(1)の入口(1A)から始まって、複数のカートリッジ(10)及び第1の起動カートリッジ(15)を経由し、このシステム(1)の出口(1B)に至るアンモニアの流動ループを形成する。このループは、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)が飽和するまで繰り返される。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の第1の起動カートリッジ(15)によってアンモニアが送達されることにより、アンモニア消費装置にアンモニアを供給するアンモニア送達ライン(40)に圧力P1が獲得され、この圧力P1は、好ましくは1.5バールの絶対圧である。圧力P1の検出は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のアンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によって行われる。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジによるアンモニアの送達によって、アンモニア消費装置にアンモニアを供給するアンモニア送達ライン(40)に圧力P2が得られ、この圧力P2は、好ましくは2バールの絶対圧である。圧力P2の検出は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のアンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によって行われる。最後に、第1の起動カートリッジ(15)は、第1の冷却システム(151)によって冷却される。
【0106】
図3は、稼働段階にあるアンモニア貯蔵及び送達システム(1)を示している。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、複数のアンモニアカートリッジ(10)であって、カートリッジの各々が、好ましくはアルカリ土類金属塩化物の粉末塩であるアンモニア貯蔵手段(11)と、各々のカートリッジの内圧を他のカートリッジとは独立に調整する第1の内圧調整手段(12)であって、たとえば、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路を含む冷却システムであることが好ましい第1の加熱手段を具備する第1の内圧調整手段(12)と、好ましくは逆止弁である第1の入口弁(13)と、好ましくは逆止弁である第1の出口弁(14)とを具備する複数のアンモニアカートリッジ(10)と、複数のカートリッジ(10)に共通であることが好ましい操作装置(20)であって、各々のカートリッジについて他のカートリッジとは独立にアンモニアの貯蔵及び送達を操作できる、複数のカートリッジ(10)のアンモニア流量の調節手段の操作手段、又はさらに第1の内圧調整手段(12)の操作手段を具備する操作装置(20)と、複数のカートリッジ(1)を連結する第1の充填又は再充填ライン(30)であって、第2の入口弁(31)を具備する第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)と、圧力センサ(42)及びアンモニア計量装置(43)を具備し、複数のカートリッジ(10)を連結するアンモニア送達ライン(40)とを少なくとも備える。
【0107】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア消費装置に向かうアンモニア送達ライン(40)の出口に、好ましくはアンモニア流量調節手段を具備したアンモニア計量装置(43)をさらに備え、そのアンモニア流量調節手段は、たとえば弁であり、より好ましくはパイロット式弁である。
【0108】
第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)は、第1の入口弁(31)を通して、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の貯蔵カートリッジの外から内にアンモニアを通すことができる。この第1の入口弁(13)は、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)の圧力が複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジの内圧を上回ると、複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジの中にアンモニアが入り込むことができるようにする。この第1の入口弁(13)は、パイロット式であっても受動式であってもよく、好ましくは第1の入口弁は、逆止弁タイプの受動弁である。第2の入口弁(31)は、特に補給段階では、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)を大気から遮断した状態で、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)にコントロール下で補給を行うことを可能にする。アンモニア送達ライン(40)は、第1の出口弁(14)を通して、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の貯蔵カートリッジの内から外にアンモニアを通すことができる。この第1の出口弁(14)は、内圧がアンモニア送達ライン(40)の圧力を上回ると、複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジから気体アンモニアを出すことができる。この第1の出口弁(14)は、パイロット式であっても受動式であってもよく、好ましくは第1の出口弁(14)は、逆止弁タイプの受動弁である。そのため、1つの第1の出口弁(14)が開くと、圧力差によって他の第1の出口弁(14)が閉じる。アンモニア送達ライン(40)は、補給段階でアンモニア貯蔵及び送達システム(1)を遮断することのできる第2の出口弁(41)を備える。
【0109】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)はまた、分流ライン(50)に配設された分流弁(51)であって、特に補給段階で、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)とアンモニア送達ライン(40)とを流体連通して、余剰分のアンモニアをその分流弁(51)から排除するコントロール下の動作を可能にする分流弁(51)を備える。この分流弁(51)は、パイロット式弁であることが好ましく、より好ましくは分流弁(51)は電磁弁である。
【0110】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア送達ライン(40)に配設された第1の過圧弁(62)、及び/又は分流ライン(50)と並列に過圧ライン(61)に配設された第2の過圧弁(63)を備える。第1の過圧弁(62)は、過圧S1が検出されると開位置になる。この過圧S1の検出は、アンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によってアンモニア送達ライン(40)で行われる。第2の過圧弁(63)は、過圧S2が検出されると開位置になる。この過圧S2の検出は、アンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によってアンモニア送達ライン(40)で行われる。その過圧S2は過圧S1時の圧力より低いが、アンモニア送達ライン(40)に余剰分のアンモニアがあるだけのときの圧力より高い。そのため、第2の過圧弁(63)が開位置のとき、第1の過圧弁(62)は閉位置となり、また逆の場合はそれと反対になる。ライン(50)及び分流弁(51)が使用される分流動作の際には、第1の過圧弁(62)と第2の過圧弁(63)はいずれも閉位置となる。さらに、第1の過圧弁(62)は、安全カートリッジ(60)と流体連通される。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、アンモニア送達ライン(40)上にあって、アンモニア計量装置(43)の上流側に配設されることが好ましい第3の出口弁(45)を備える。アンモニア消費装置に供給されるアンモニアの流量を調整することができるこの第3の出口弁(45)は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の稼働段階におけるアンモニアの流動方向に沿ってアンモニア計量装置(43)の上流側に配設される。
【0111】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)は、第1の冷却システム(151)を具備する第1の起動カートリッジ(15)と、第2の加熱手段を具備する第2の内圧調整手段(152)と、アンモニア出口(153)としても機能するアンモニア入口とを備える。第1の冷却システム(151)は、好ましくは水性流体、より好ましくは水である冷却流体の循環回路を一例として備える。第1の起動カートリッジ(15)のこの第2の内圧調整手段(152)は、たとえば抵抗である第2の加熱手段を備える。アンモニア貯蔵及び送達システム(1)のこの第1の起動カートリッジ(15)は、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)がアンモニア送達ライン(40)にアンモニアを送り出すことができる状態となるまでの間、十分な量のアンモニアを迅速に送り出すことができる。さらに、この第1の起動カートリッジ(15)のアンモニア出口(153)としても機能するアンモニア入口は、第1のアンモニア充填又は再充填ライン(30)とは独立した第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)によってアンモニア送達ライン(40)と流体連通し、その第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)は、アンモニア送達ライン(40)であり、好ましくはこの第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)は、第1のパイロット式弁(154)を備える。第1の起動カートリッジ(15)の充填又は再充填及び送達を可能にするこの第1のパイロット式弁(154)は、好ましくは、第2のアンモニア充填又は再充填ライン(301)上にあって、アンモニア出口(153)としても機能するアンモニア入口と、アンモニア送達ライン(40)に対する流体連通を可能にする連結部との間に配設される。
【0112】
アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の稼働段階では、アンモニア貯蔵及び送達システム(1)の複数のカートリッジ(10)のうち1つのカートリッジによるアンモニアの送達によって、アンモニア消費装置にアンモニアを供給するアンモニア送達ライン(40)に圧力P3が得られ、この圧力P3は、好ましくは2バールの絶対圧である。圧力P3の検出は、アンモニア貯蔵及び送達システムのアンモニア送達ライン(40)に配設された圧力センサ(42)による圧力測定によって行われる。この場合、複数のカートリッジのうち第1のカートリッジのアンモニア飽和度が100%のとき、温度T1でアンモニア送達ライン(40)に圧力P3が得られ、それを維持することができる。温度T1の検出は、好ましくはアンモニア送達ライン(40)における温度測定によって、より好ましくは複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジの各出口での温度測定によって行われ、温度センサは、複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジの第1の出口弁(14)と、複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジの出口との間に配設される。
図2には温度センサは示されていない。このとき、飽和度50%、すなわち第1の基準飽和レベルでは、温度T2はアンモニア送達ライン(40)で圧力P3を維持することができる。温度T2は温度T1より高い。温度T2の検出は、好ましくはアンモニア送達ライン(40)における温度測定によって、より好ましくは複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジの各出口で、複数のカートリッジの第1の出口弁(14)手前での温度測定によって行う。さらに、飽和度25%、すなわち第2の基準飽和レベルでは、温度T3は圧力P3を維持するには高すぎるため、複数のカートリッジ(10)の第1のカートリッジの停止が起こり、それに続いて複数のカートリッジ(10)の第2のカートリッジへの切換えが起こる。温度T3は温度T2より高い。温度T3の検出は、好ましくはアンモニア送達ライン(40)における温度測定によって、より好ましくは複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジの各出口での温度測定によって行われ、温度センサは、複数のカートリッジ(10)のうちカートリッジの第1の出口弁(14)と、複数のカートリッジのうちカートリッジの出口との間に配置される。そして、第1の基準飽和レベルに達すると、複数のカートリッジ(10)の第2のカートリッジの加熱が始まり、複数のカートリッジの第1のカートリッジが空になるのと並行して、複数のカートリッジ(10)の第2のカートリッジがアンモニア送達ライン(40)で圧力P3を維持するのに十分な温度となることを可能にする。そのため、アンモニア消費装置のためのアンモニア送達が途切れることがない。
【符号の説明】
【0113】
1 アンモニア貯蔵及び送達システム
1A 入口
1B 出口
10 複数の(アンモニア貯蔵)カートリッジ
11 (アンモニア)貯蔵手段
12 第1の内圧調整手段
13 第1の入口弁
14 第1の出口弁
15 第1の起動カートリッジ
16 第2の起動カートリッジ
20 操作装置
30 第1の(アンモニア)充填又は再充填ライン
31 第2の入口弁
40 (アンモニア)送達ライン
41 第2の出口弁
42 圧力センサ
43 (アンモニア)計量装置
45 第3の出口弁
50 分流ライン
51 分流弁
60 安全カートリッジ
61 過圧ライン
62 第1の過圧弁
63 第2の過圧弁
70 補給ステーション
151 第1の冷却システム
152 第2の内圧調整手段
153 アンモニア出口、アンモニア入口
154 第1のパイロット式弁
161 第2の冷却システム
162 第3の内圧調整手段
163 第1の流体連結部
164 第2の流体連結部
165 第2のパイロット式弁
301 第2の(アンモニア)充填又は再充填ライン
【国際調査報告】