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特表2023-519858フリートポロジー波形を使用した精密システムの制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】フリートポロジー波形を使用した精密システムの制御
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20230508BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558256
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021024250
(87)【国際公開番号】W WO2021195443
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/994,368
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SMALLTALK
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シドルガタ・ブイ・スリーニヴァサン
(72)【発明者】
【氏名】ブレント・スナイダー
(72)【発明者】
【氏名】シュラワン・シンガル
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB27
2C056EB32
2C056EB40
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC42
2C056FA04
2C057AL16
2C057AL19
2C057AL32
2C057AL36
2C057AM16
2C057BA14
(57)【要約】
精密インクジェット印刷のための方法、コンピュータプログラム製品、およびシステム。インクジェット波形に関連する作動パラメータの制御変数ベクトルが決定される。次いで、インクジェット波形に基づいて、印字ヘッドが作動させられて、基板上にインクジェットから液滴のグリッドを噴出する。基板上の液滴のグリッドの画像が取得される。次いで、取得された画像が処理されて、印刷特性に関連する検知出力変数の関数を含むインクジェット波形の適合度関数を計算する。次いで、最適化されたインクジェット波形に関連する最適化された制御変数ベクトルを得るために、適合度関数に基づいて、そのトポロジーを更新することによって、制御変数ベクトルが調節される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムを制御するためのコンピュータ実施方法であって、
トポロジーと、前記トポロジーに関連するスカラー値のセットとによって、制御変数ベクトルを規定するステップと、
検知出力変数の初期セットを生成するために、前記システムを作動させる前記制御変数ベクトルの初期値を決定するステップと、
検知出力変数の前記初期セットを含む適合度関数を計算するステップであって、前記適合度関数が、前記システムの所望の挙動を規定する、ステップと、
前記適合度関数と目標適合度関数との間の差を最小化することに基づいて、そのトポロジーを更新することによって、最適化された制御変数ベクトルを、前記適合度関数を使用して生成するステップと、
前記生成された最適化された制御変数ベクトルを使用して、前記システムを制御するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータ実施方法。
【請求項2】
固定システムパラメータのセットを受け取るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最適化された制御変数ベクトルが、フリートポロジー最適化を使用して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最適化された制御変数ベクトルが、初期適合度関数が最大値に達するまで実行されるアルゴリズムに応じて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記最適化された制御変数ベクトルが、最適トポロジーと、前記最適トポロジーに対する最適パラメータのセットとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記システムが、インクジェットシステムであり、前記制御変数ベクトルが、インクジェット波形を規定し、検知出力変数の前記初期セットが、量、液滴配置精度、速度、インクジェットされた液滴のサテライト、欠損液滴、およびインクジェットされた液滴の過渡欠陥のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
システムを制御するためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、具現化されたプログラムコードを有する1つまたは複数のコンピュータ読取り可能な記憶媒体を含み、前記プログラムコードが、
トポロジーと、前記トポロジーに関連するスカラー値のセットとによって、制御変数ベクトルを規定することと、
検知出力変数の初期セットを生成するために、前記システムを作動させる前記制御変数ベクトルの初期値を決定することと、
検知出力変数の前記初期セットを含む適合度関数を計算することであって、前記適合度関数が、前記システムの所望の挙動を規定する、計算することと、
前記適合度関数と目標適合度関数との間の差を最小化することに基づいて、そのトポロジーを更新することによって、最適化された制御変数ベクトルを、前記適合度関数を使用して生成することと、
前記生成された最適化された制御変数ベクトルを使用して、前記システムを制御することと、
のためのプログラミング命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項8】
システムを制御するためのコンピュータプログラムを記憶するためのメモリと、
前記メモリに接続されたプロセッサであって、前記プロセッサが、
トポロジーと、前記トポロジーに関連するスカラー値のセットとによって、制御変数ベクトルを規定することと、
検知出力変数の初期セットを生成するために、前記システムを作動させる前記制御変数ベクトルの初期値を決定することと、
検知出力変数の前記初期セットを含む適合度関数を計算することであって、前記適合度関数が、前記システムの所望の挙動を規定する、計算することと、
前記適合度関数と目標適合度関数との間の差を最小化することに基づいて、そのトポロジーを更新することによって、最適化された制御変数ベクトルを、前記適合度関数を使用して生成することと、
前記生成された最適化された制御変数ベクトルを使用して、前記システムを制御することと、
を含む前記コンピュータプログラムのプログラム命令を実行するように構成される、プロセッサと、
を備えることを特徴とするコントローラ。
【請求項9】
インクジェット印刷を実行するためのコンピュータ実施方法であって、
インクジェット波形に関連する作動パラメータの制御変数ベクトルを決定するステップと、
前記インクジェット波形に基づいて、印字ヘッドを作動させて、基板上にインクジェットから液滴のグリッドを噴出するステップと、
前記基板上の液滴の前記グリッドの画像を取得するステップと、
前記取得された画像を処理して、印刷特性に関連する検知出力変数の関数を含む前記インクジェット波形の適合度関数を計算するステップであって、前記適合度関数が、インクジェットシステムの所望の挙動を規定する、ステップと、
最適化されたインクジェット波形に関連する最適化された制御変数ベクトルを得るために、前記適合度関数に基づいて、そのトポロジーを更新することによって、前記制御変数ベクトルを調節するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記最適化された制御変数ベクトルが、最適トポロジーと、前記最適トポロジーに対する最適パラメータのセットとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記印刷特性が、液滴量均一性、平均液滴量、液滴配置精度、過渡欠陥の存在、サテライト液滴数、欠損液滴数、デブリの存在のうちの1つまたは複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記制御変数ベクトルの前記調節が、前記適合度関数と目標適合度関数との間の誤差を計算するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
フリートポロジー進化的アルゴリズムを使用して、前記誤差を最適化するステップ
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記インクジェット波形が、20個より多いパラメータを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記インクジェット波形が、3個より多いパラメータを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
複数の液滴を噴出するように複数のノズルを制御するステップであって、前記複数のノズルのそれぞれが、独立して制御される、ステップ
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記印字ヘッドが、複数の流体を分注するように構成され、前記複数の流体の1つが、前記複数の流体の別の流体とは異なるレオロジー特性を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
インクジェット印刷を実行するためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、具現化されたプログラムコードを有する1つまたは複数のコンピュータ読取り可能な記憶媒体を含み、前記プログラムコードが、
インクジェット波形に関連する作動パラメータの制御変数ベクトルを決定することと、
前記インクジェット波形に基づいて、印字ヘッドを作動させて、基板上にインクジェットから液滴のグリッドを噴出することと、
前記基板上の液滴の前記グリッドの画像を取得することと、
前記取得された画像を処理して、印刷特性に関連する検知出力変数の関数を含む前記インクジェット波形の適合度関数を計算することであって、前記適合度関数が、インクジェットシステムの所望の挙動を規定する、計算することと、
最適化されたインクジェット波形に関連する最適化された制御変数ベクトルを得るために、前記適合度関数に基づいて、そのトポロジーを更新することによって、前記制御変数ベクトルを調節することと、
のためのプログラミング命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
インクジェット印刷を実行するためのコンピュータプログラムを記憶するためのメモリと、
前記メモリに接続されたプロセッサであって、前記プロセッサが、
インクジェット波形に関連する作動パラメータの制御変数ベクトルを決定することと、
前記インクジェット波形に基づいて、印字ヘッドを作動させて、基板上にインクジェットから液滴のグリッドを噴出することと、
前記基板上の液滴の前記グリッドの画像を取得することと、
前記取得された画像を処理して、印刷特性に関連する検知出力変数の関数を含む前記インクジェット波形の適合度関数を計算することであって、前記適合度関数が、インクジェットシステムの所望の挙動を規定する、計算することと、
最適化されたインクジェット波形に関連する最適化された制御変数ベクトルを得るために、前記適合度関数に基づいて、そのトポロジーを更新することによって、前記制御変数ベクトルを調節することと、
を含む前記コンピュータプログラムのプログラム命令を実行するように構成される、プロセッサと、
を備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月25日に出願された、「Precision Inkjet Control Using Free Topology Waveforms」という名称の米国仮特許出願第62/994,368号の優先権を主張し、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
政府の利益
本発明は、米国国立科学財団から授与された助成金第EEC1160494号の下で政府支援を受けて行われたものである。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、一般に、インクジェット印刷に関し、より詳細には、フリートポロジー波形を使用した精密インクジェット印刷に関する。
【背景技術】
【0004】
プリンタなどのインクジェットデバイスは、紙、プラスチック、または他の材料などの基材に画像を印刷するように構成される。インクジェットデバイスは、一般に、印字ヘッドのノズルからインク液滴を基材上に選択的に噴出する(「インクジェット」とも称される)印字ヘッドを含む。インク液滴は基板上に堆積し、所望の画像が印刷される。
【0005】
インクジェットは、相互作用するいくつかの異なる物理的プロセスを含む複雑な現象である。インクジェットのために異なる機構を使用する様々なタイプのインクジェットデバイスがある。例えば、インクジェットデバイスは、機構、例えば、圧電、熱、電気流体力学、および他の適切な機構を使用する印字ヘッドを含む場合がある。圧電式インクジェットは、圧電素子を用いて、ノズルの後方のチャネル内のインクを音響的に刺激する。その結果生じるノズルにおける圧力変化により、液滴が噴出する。圧電素子は、液滴の各噴出に対して生成される短い電気パルスである作動波形によって動作させられる。
【0006】
圧電式インクジェットでは、オリフィスにおける圧力は、典型的には、数10ボルト程度の一連の電圧のランプとプラトーで、およそ2~50マイクロ秒(μs)持続する圧力波形に基づく。電圧が変化するたびに圧電素子が変形し、それによって、ノズルおよび流体溜まりに伝わる音圧力波が起きる。圧力波がノズルに到達すると、その結果生じる圧力の変化がノズルにおける流体の力学を制御し、その結果、ノズルから1つまたは複数の液滴へと噴出する流体の柱を形成することができる。
【0007】
インク流が液滴に分解するとき、単一の大きさの液滴を生成しない場合がある。インク流は、一連の均一で大きな液滴に分解し、この液滴は、「サテライト」と称される、より小さな液滴を有する場合もある。圧力波形の形状は、ノズルにおける流体力学を決定し、これは、液滴の量および速度、ならびにサテライトの量および大きさなど、流体滴の複数の特性を決定する。残念ながら、圧力波形とその結果生じる液滴の形態および速度との相関をとることは困難である。
【0008】
圧力波形は、特定の実施様態に基づいて変わる場合がある。例えば、標準的な圧力波形は、立ち上がりと立ち下がりが順番にある2つのインパルスからなるユニポーラ波形である。ユニポーラ波形は、ピーク電圧と、パルス間の経過時間であるドエルタイムとによってパラメータ化される。特定の流体とインクジェットに対して、ユニポーラ波形に対する最適なドエルタイムは、所与の電圧において噴出される液滴の運動量が最大になるときに存在する。典型的な動作では、液滴の量と速度は、最適なドエルタイムにおいて、電圧と共に直線的に増加する傾向がある。
【0009】
特定の実装形態の目標に基づいて他の圧力波形を利用することができる。例えば、液滴量を減らすには、オリフィスにおいて複雑な圧力勾配を引き起こすような高度な波形が必要となる場合がある。加えて、レオロジー特性に難のある流体は、不安定な噴射になりやすい場合があり、標準的なユニポーラ波形では噴射可能でない場合がある。
【0010】
圧電式インクジェットを改良するために多くの方法が提案され、利用されてきたが、これらには液滴量を最適化することが含まれている場合がある。これらの方法の多くは、無次元数を含み、ドエルタイムを修正したバイポーラ波形を使用することなどによって、圧力波形を変える場合もある。いくつかの方法で提案され使用される数は、オーネゾルゲ数、関連するZ数、および/または他の比を含む。このような数は、特定のインクジェットでの特定の流体の噴射性および/または印刷性に関係する。これらの数に対しては、ワックス懸濁液または低粘度インクなどの様々な流体、およびオリフィス半径、オリフィス長さ、またはオリフィス直径などのインクジェットノズルの構造に基づく限界がしばしば提示されている。これら限界は、流体粘度、粘性散逸、流体表面張力、流体密度、および/またはサテライトの形態などの流体パラメータを考慮したものである。
【0011】
様々な圧力波形に関しては、手作業で試行錯誤的なプロセスを行って最適な波形を選択することが多い。インクジェットデバイスのための典型的な動作条件に該当する流体および性能要件に対して、安定した噴射になるように、単純なユニポーラ波形を容易に最適化することができる。しかしながら、液滴の解像度を特定しながら、極端な特性を有する流体を噴射するためには、ますます複雑な波形が必要となる。波形の複雑性が増すにつれて、多用性は増すが、その問題の構造またはトポロジーは激増する。これは、波形の構造またはトポロジーを規定するためには、より多くの数のパラメータが必要となり、それは、従来の手作業での調整方法の範囲を超えるためである。マルチフィジックスシミュレーションおよびモデルが、液滴形態を予測することができるが、これらのモデルは複雑であり、非線形であり、特定用途向けであり、過度に時間がかかり、本質的に非可逆である。さらに、作動波形から液滴量を予測するのに有用な解析モデルは存在しない。加えて、いかなる波形の調整も、流体とインクジェットデバイスとの特定の組合せに特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第10,336,062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
無次元数および/または様々な波形を使用する方法の課題は、これらの方法が保守的でありすぎること、例えば、噴射性能の限界を人為的に制限する場合があることである。これらの方法はまた、ピエゾ構造材料、作動力学、インクジェット形状、および流体レオロジー間の複雑な相関を考慮することなしに、流体レオロジーおよびインクジェットデバイスの形状に依存する場合がある。手作業での調整は、上述のように、パラメータが少ない単純な波形にのみ限定される。残念ながら、材料とインクジェットデバイスとのいかなる組合せに対しても、液滴配置精度または他の性能指数を維持しながら、液滴解像度を制御するためにより複雑な構造またはトポロジーを用いて圧力波形を自動的に最適化するための手段は、現在のところ存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態では、システムを制御するためのコンピュータ実施方法は、トポロジーと、トポロジーに関連するスカラー値のセットとによって、制御変数ベクトルを規定するステップを含む。本方法は、検知出力変数の初期セットを生成するために、システムを作動させる制御変数ベクトルの初期値を決定するステップをさらに含む。本方法は、これに加えて、検知出力変数の初期セットを含む適合度関数を計算するステップを含み、この適合度関数は、システムの所望の挙動を規定する。さらに、本方法は、適合度関数と目標適合度関数との間の差を最小化することに基づいて、そのトポロジーを更新することによって、最適化された制御変数ベクトルを、適合度関数を使用して生成するステップを含む。加えて、本方法は、生成された最適化された制御変数ベクトルを使用して、システムを制御するステップを含む。
【0015】
上記のコンピュータ実施方法の実施形態の他の形態は、システムおよびコンピュータプログラム製品におけるものである。
【0016】
本発明の別の実施形態では、インクジェット印刷を実行するためのコンピュータ実施方法は、インクジェット波形に関連する作動パラメータの制御変数ベクトルを決定するステップを含む。本方法は、インクジェット波形に基づいて、印字ヘッドを作動させて、基板上にインクジェットから液滴のグリッドを噴出するステップをさらに含む。本方法は、これに加えて、基板上の液滴のグリッドの画像を取得するステップを含む。さらに、本方法は、取得された画像を処理して、印刷特性に関連する検知出力変数の関数を含むインクジェット波形の適合度関数を計算するステップを含み、この適合度関数はインクジェットシステムの所望の挙動を規定する。加えて、本方法は、最適化されたインクジェット波形に関連する最適化された制御変数ベクトルを得るために、適合度関数に基づいて、そのトポロジーを更新することによって、制御変数ベクトルを調節するステップを含む。
【0017】
上記のコンピュータ実施方法の実施形態の他の形態は、システムおよびコンピュータプログラム製品におけるものである。
【0018】
前述の内容は、後続する本発明の詳細な説明がより良く理解され得るように、本発明の1つまたは複数の実施形態の特徴および技術的利点を、むしろ概略的に概説したものである。以下、本発明の特許請求の範囲の主題を形成し得る、本発明の追加の特徴および利点を説明する。
【0019】
以下の詳細な説明を以下の図面と共に考慮すると、本発明をより良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態によるテストベッドの一実施形態を示す図である。
図2】本発明を実施するためのハードウェア環境を代表するコントローラのハードウェア構成の本開示の一実施形態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による、マルチノズルピエゾインクジェットヘッドを用いた精密インクジェット印刷のための方法のフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態による、システムを制御するための方法のフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態による、バイナリー遺伝的アルゴリズムにおけるマルチレベルインデックス交差を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による、反復超遺伝子を有する染色体に対するマルチレベル交差を示す図である。
図7A】本発明の一実施形態によるフリートポロジーの波形成分のパラメータ化を示す図である。
図7B】本発明の一実施形態による、図7Aに示された成分を重ね合わせた結果を示す図である。
図8A】本発明の一実施形態による、曲線の幅および裾の重さをそれぞれ制御するαおよびρを変化させた効果を示すスーパーガウス曲線を示す図である。
図8B】本発明の一実施形態による、曲線の幅および裾の重さをそれぞれ制御するαおよびρを変化させた効果を示すスーパーガウス曲線を示す図である。
図9A】本発明の一実施形態による、手作業での調整によって得られた波形を示す図である。
図9B】本発明の一実施形態による、パーフルオロオクチルトリクロロシラン(FOTS:perfluorooctyltrichlorosilane)でコーティングされたシリコンウエハ上の、図9Aの手作業での波形による分注された液滴の画像である。
図10A】本発明の一実施形態による、固定トポロジー最適化によって得られた波形を示す図である。
図10B】本発明の一実施形態による、FOTSでコーティングされたシリコンウエハ上の、図10Aの固定トポロジー波形による分注された液滴の画像である。
図11A】本発明の一実施形態による、フリートポロジー最適化を使用した自動調整によって得られた波形時系列を示す図である。
図11B】本発明の一実施形態による、FOTSでコーティングされたシリコンウエハ上の、図11Aのフリートポロジー波形による分注された液滴の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
背景技術の項で述べたように、無次元数および/または様々な波形を使用する方法の課題は、これらの方法が保守的でありすぎること、例えば、噴射性能の限界を人為的に制限する場合があることである。これらの方法はまた、ピエゾ構造材料、作動力学、インクジェット形状、および流体レオロジー間の複雑な相関を考慮することなしに、流体レオロジーおよびインクジェットデバイスの形状に依存する場合がある。手作業による調整は、パラメータが少ない単純な波形にのみ限定される。残念ながら、材料とインクジェットデバイスとのいかなる組合せに対しても、配置精度を維持しながら、液滴解像度を制御するために複雑な圧力波形を自動的に最適化する手段は、現在のところ存在しない。
【0022】
本発明の原理は、材料とインクジェットデバイスとのいかなる組合せに対しても、配置精度を維持し、かつ過渡欠陥、サテライト液滴、欠損液滴、およびデブリの存在を最小化しながら、液滴解像度を制御するために複雑な圧力波形を自動的に最適化する手段を提供する。特に、本発明の実施形態は、in-situ画像化および波形の自動調整を可能にするマルチノズルピエゾジェットのためのインクジェットテストベッドの使用によって、材料とインクジェットデバイスとのいかなる組合せに対しても所望の性能を得るために複雑な圧力波形を自動的に最適化する。さらに、本発明の実施形態は、フリートポロジー最適化に基づく新規の調整方式を含む。
【0023】
一実施形態では、マルチノズル印字ヘッドテストベッドは、基板上の液滴のコンピュータビジョン画像化を組み込む。インクジェット印字ヘッドは、精密なXY移動ステージによって運ばれる基板上に分注する。次いで、ステージは、分注された液滴を顕微鏡の下に配置し、性能は、コンピュータビジョンベースの自動検査技術を使用して測定される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態によるテストベッド100の一実施形態を示す。図1を参照すると、テストベッド100は、印字ヘッドコントローラ103と共に印字ヘッド102を含む流体分注サブシステム101(例えば、Samba(登録商標) G3L印字ヘッド)を含み、印字ヘッドコントローラ103は、流体分注サブシステム101の印字ヘッド102による印刷液滴の分注を制御するように構成される。一実施形態では、流体分注サブシステム101は、コントローラ107(本明細書では「コンピュータビジョンシステム」とも称する)によって制御されるモーションコントローラ106(例えば、Newport(商標) XPS C8モーションコントローラ)によって動かされるXYステージ105(例えば、Newport(商標) XML350ステージ)上に配置されたウエハチャック104(例えば、直径200mmのウエハチャック)によって保持されたウエハ上に印字ヘッド102によって印刷液滴を分注するように構成される。印刷液滴は、画像化サブシステム109(例えば、Mitutoyo(登録商標)対物レンズおよびFLIRカメラ)によって検査される(要素108参照)。一実施形態では、テストベッド100は、コントローラ107によって制御される自動化ソフトウェアシステム110をさらに含んでもよい。コントローラ107のハードウェア構成は、図2に関連してさらに以下に説明される。
【0025】
一実施形態では、自動化ソフトウェアサブシステム110は、エレクトロニクスコントローラ111(例えば、Samba(登録商標)ドライブエレクトロニクスコントローラ)、インターフェースカード112(例えば、Samba(登録商標)周辺構成要素相互接続(PCI:peripheral component interconnect)expressインターフェースカード)、およびブレークアウトボード113(例えば、Samba(登録商標) PCI expressブレークアウトボード)を含む。
【0026】
一実施形態では、テストベッド100は、廃棄物濾過および画像化システムブリッジなど、図1に示されていない他のサブシステムを含んでもよい。
【0027】
一実施形態では、画像化サブシステム109は、テストベッドの精密な組立を可能にするために追加の飛行液滴監視システムからなる。このような飛行液滴監視システムは、特許文献1に記載されており、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0028】
一実施形態では、ソフトウェアアプリケーションはプログラミング言語(例えばPython)で記述されて、高レベルの自動化機能と共に、モーションコントロール、噴射、および画像取込のための低レベルの機器ドライバ、画像処理および解析、波形解析および生成能力、ならびにグラフィカルユーザインターフェース(GUI:graphical user interface)を提供して、オペレータが試験およびデバッグ用の様々なサブプロシージャを行うことを可能にする。一実施形態では、自動化ソフトウェアサブシステム110は、高レベルの自動化機能と共に、モーションコントロール、噴射、および画像取込のための低レベルの機器ドライバ、画像処理および解析、波形解析および生成能力、ならびにグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供して、オペレータが試験およびデバッグ用の様々なサブプロシージャを行うことを可能にすることを含め、繰返し可能なプロセスを置き換え、人手の介入を減らすためにソフトウェアおよびシステムを生成するよう構成される。一実施形態では、自動化ソフトウェアサブシステム110は、本明細書で論じるようなフリートポロジー最適化を使用して印字ヘッド102を作動させるように波形を提供するように構成される。
【0029】
一実施形態では、そのようなソフトウェアアプリケーションは、図2に関連してさらに以下に論じるように、コントローラ107のアプリケーションに存在する。
【0030】
次に、図2を参照すると、図2は、本発明を実施するためのハードウェア環境を代表するコントローラ107(図1)のハードウェア構成の本発明の一実施形態を示す。
【0031】
コントローラ107は、システムバス202によって他の様々な構成要素と接続されたプロセッサ201を有する。オペレーティングシステム203は、プロセッサ201で実行され、図2の様々な構成要素の機能を制御および調整する。本開示の原理に従うアプリケーション204は、オペレーティングシステム203と共に実行され、オペレーティングシステム203に呼を提供する。ここで、これらの呼は、アプリケーション204によって実行されるべき様々な機能またはサービスを実施する。アプリケーション204は、例えば、高レベルの自動化機能と共に、モーションコントロール、噴射、および画像取込のための低レベルの機器ドライバ、画像処理および解析、波形解析および生成能力、ならびにグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供して、オペレータが試験およびデバッグ用の様々なサブプロシージャを行うことを可能にするためのプログラムを含むことができる。
【0032】
再び図2を参照すると、読取り専用メモリ(「ROM:read-only memory」)205はシステムバス202に接続され、コントローラ107の特定の基本機能を制御する基本入出力システム(「BIOS:basic input/output system」)を含む。ランダムアクセスメモリ(「RAM:random access memory」)206およびディスクアダプタ207もまた、システムバス202に接続される。オペレーティングシステム203およびアプリケーション204を含むソフトウェアコンポーネントは、コントローラ107の実行用メインメモリであり得るRAM206にロードすることができることに留意すべきである。ディスクアダプタ207は、ディスクユニット208、例えば、ディスクドライブと通信するインテグレーテッドドライブエレクトロニクス(「IDE:integrated drive electronics」)アダプタであってもよい。本明細書で論じるように、高レベルの自動化機能と共に、モーションコントロール、噴射、および画像取込のための低レベルの機器ドライバ、画像処理および解析、波形解析および生成能力、ならびにグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供して、オペレータが試験およびデバッグ用の様々なサブプロシージャを行うことを可能にするためのプログラムは、ディスクユニット208またはアプリケーション204に存在してもよいことに留意されたい。
【0033】
コントローラ107は、バス202に接続された通信アダプタ209をさらに含んでもよい。通信アダプタ209は、他のデバイスと通信するためにバス202を外部ネットワークと相互接続する。
【0034】
本発明は、技術的に詳細な任意の可能な統合度でのシステム、方法、および/またはコンピュータプログラム製品であってもよい。コンピュータプログラム製品は、プロセッサに本発明の態様を実行させるためのコンピュータ読取り可能なプログラム命令を有するコンピュータ読取り可能な記憶媒体を含んでもよい。
【0035】
コンピュータ読取り可能な記憶媒体は、命令実行デバイスによって使用するための命令を保持し記憶することができる有形のデバイスとすることができる。コンピュータ読取り可能な記憶媒体は、例えば、限定するものではないが、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光学記憶デバイス、電磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、またはこれらの任意の適切な組合せであってもよい。コンピュータ読取り可能な記憶媒体のより具体的な例の非網羅的なリストには、携帯型コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル読取り専用メモリ(EPROM:erasable programmable read-only memoryまたはフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM:static random access memory)、携帯型コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD-ROM:compact disc read-only memory)、デジタル多用途ディスク(DVD:digital versatile disk)、メモリスティック、フロッピーディスク、パンチカードまたは記録された命令を有する溝の中の隆起構造などの機械的に符号化されたデバイス、およびこれらの任意の適切な組合せが含まれる。本明細書で使用するとき、コンピュータ読取り可能な記憶媒体はそれ自体、電波または他の自由に伝播する電磁波、導波管を通って伝播する電磁波、もしくは他の伝送媒体(例えば、光ファイバーケーブルを通過する光パルス)、または電線を通って伝送される電気信号などの一時的な信号であると解釈すべきでない。
【0036】
本明細書で説明するコンピュータ読取り可能プログラム命令は、コンピュータ読取り可能な記憶媒体からそれぞれのコンピューティング/処理デバイスにダウンロードすることができるか、またはネットワーク、例えばインターネット、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワークおよび/もしくは無線ネットワークを介して外部コンピュータもしくは外部記憶デバイスにダウンロードすることができる。ネットワークは、銅伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータ、および/またはエッジサーバを備えてもよい。各コンピューティング/処理デバイス内のネットワークアダプタカードまたはネットワークインターフェースは、ネットワークからコンピュータ読取り可能なプログラム命令を受け取り、それぞれのコンピューティング/処理デバイス内のコンピュータ読取り可能な記憶媒体に記憶するために、コンピュータ読取り可能なプログラム命令を転送する。
【0037】
本発明の動作を実行するためのコンピュータ読取り可能なプログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA:instruction-set-architecture)命令、マシン命令、マシン依存型命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、集積回路用構成データ、あるいはSmalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または類似のプログラミング言語などの手続き型プログラミング言語を含む1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかであってもよい。コンピュータ読取り可能なプログラム命令は、ユーザのコンピュータ上で完全に実行されてもよいし、スタンドアローンソフトウェアパッケージとしてユーザのコンピュータ上で部分的に実行されてもよいし、ユーザのコンピュータ上で部分的かつリモートコンピュータ上で部分的に実行されてもよいし、またはリモートコンピュータもしくはサーバ上で完全に実行されてもよい。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)または広域ネットワーク(WAN:wide area network)を含む任意のタイプのネットワークを通じてユーザのコンピュータに接続されてもよく、あるいは、(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通じて)外部のコンピュータに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の態様を実行するために、例えば、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)、またはプログラマブル論理アレイ(PLA:programmable logic array)を含む電子回路が、コンピュータ読取り可能なプログラム命令の状態情報を利用して電子回路をカスタマイズし、コンピュータ読取り可能なプログラム命令を実行してもよい。
【0038】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して本明細書で説明される。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図および/またはブロック図のブロックの組合せは、コンピュータ読取り可能なプログラム命令によって実行可能であることが理解されよう。
【0039】
これらのコンピュータ読取り可能なプログラム命令は、コンピュータのプロセッサ、または他のプログラム可能なデータ処理装置に提供されて、機械を生成することができ、その結果、コンピュータのプロセッサまたは他のプログラム可能なデータ処理装置によって実行される命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1つもしくは複数のブロックにおいて特定された機能/行為を実施するための手段を生成する。これらのコンピュータ読取り可能なプログラム命令はまた、コンピュータ、プログラム可能なデータ処理装置、および/または他のデバイスに特定の方法で機能するように指示することができるコンピュータ読取り可能な記憶媒体に記憶することもでき、その結果、記憶された命令を有するコンピュータ読取り可能な記憶媒体は、フローチャートおよび/またはブロック図の1つもしくは複数のブロックにおいて特定された機能/行為の態様を実施する命令を含む製品を含む。
【0040】
コンピュータ読取り可能なプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、または他のデバイスにロードされて、コンピュータ、他のプログラム可能な装置、または他のデバイスで一連の動作ステップを実行させて、コンピュータ実施プロセスを生成し、その結果、コンピュータ、他のプログラム可能な装置、または他のデバイスで実行する命令は、フローチャートおよび/またはブロック図のブロックで特定された機能/行為を実施する。
【0041】
図のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実施様態のアーキテクチャ、機能性、および動作を示す。この点に関して、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、特定の論理機能を実施するための1つまたは複数の実行可能な命令を含む、命令のモジュール、セグメント、または部分を表すことができる。いくつかの代替の実施様態では、ブロックに記された機能は、図に記された順序とは異なる順序で起きてもよい。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際には、1つのステップとして達成される場合もあり、同時に、実質的に同時に、部分的または全体的に時間的に重なるように実行される場合もあり、またはブロックは、含まれる機能に応じて、時には逆の順序で実行される場合もある。また、ブロック図および/またはフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図および/またはフローチャート図のブロックの組合せは、特定の機能もしくは行為を実行する、または特別な目的のハードウェアとコンピュータ命令との組合せを実行する特別な目的のハードウェアベースのシステムによって実施することができることに留意されたい。
【0042】
次に、図3を参照すると、図3は、本発明の一実施形態による、マルチノズルピエゾインクジェットヘッドを用いた精密インクジェット印刷のための方法300のフローチャートである。
【0043】
図1図2と併せて、図3を参照すると、ステップ301において、電圧波形(例えば、インクジェット波形)に関連する作動パラメータの制御変数ベクトルがコントローラ107によって決定される。
【0044】
ステップ302において、電圧波形に基づいて、流体分注サブシステム101の印字ヘッド102は、印字ヘッドコントローラ103によって作動されて、ウエハチャック104によって保持された基板上にインクジェットから液滴のグリッドを噴出する。一実施形態では、印字ヘッド102は、複数の流体を分注するように構成され、この場合、分注される流体の1つは、分注される流体の別のものとは異なるレオロジー特性を有する。
【0045】
ステップ303において、基板上の液滴のグリッドの画像が、画像化サブシステム109などによって取得される。
【0046】
ステップ304において、取得された画像は、コントローラ107によって処理されて、印刷特性(例えば、液滴量均一性、平均液滴量、液滴配置精度、過渡欠陥の存在、サテライト液滴数、欠損液滴数、デブリの存在など)に関連する推定検知出力変数の関数を含む波形の適合度関数を計算する。一実施形態では、適合度関数は、インクジェットシステムの所望の挙動を規定する。
【0047】
ステップ305において、制御変数ベクトルは、最適化された波形(例えば、最適化されたインクジェット波形)に関連する最適化された制御変数ベクトルを得るために、計算された適合度に基づいて、そのトポロジーを更新することによって、コントローラ107によって調節される。制御変数ベクトルの調節に関連して、適合度関数と目標適合度関数との間の誤差が計算される。例えば、一実施形態では、計算された適合度と目標適合度との間の差を最小化する目的で、作動パラメータの新しいセットが計算され、目標適合度に対して比較される。計算された適合度と目標適合度との間の差を最小化することに関連して、作動パラメータのセットは複数回調節され得る。
【0048】
方法300は、さらに以下でより詳細に論じられる。
【0049】
次に、図4を参照すると、図4は、本発明の一実施形態による、システム(またはシステムのモデル)を制御するための方法400のフローチャートである。
【0050】
図1図2と併せて、図4を参照すると、ステップ401において、コントローラ107などによって、固定システムパラメータのセットが受け取られる。一実施形態では、方法400がシステムを直接制御するために使用され、システムのモデルでない場合、ステップ401は不要である。上記の固定システムパラメータは、システムを制御する過程で不変であるか、または変化しないシステムの態様もしくは特性を表す。一実施形態では、システムは、ノズルの数、ノズルピッチ、公称ノズル直径、および噴射される流体のうちの1つまたは複数を含む固定システムパラメータのセットを有する精密インクジェットである。一実施形態では、このような固定システムパラメータのセットは、コントローラ107への入力手段などを介して、コントローラ107のユーザによってコントローラ107に入力される。
【0051】
ステップ402において、コントローラ107は、トポロジーと、トポロジーに関連するスカラー値のセットとによって制御変数ベクトルを規定する。「制御変数」とは、本明細書で使用するとき、最適化され、システムの所望の性能が達成されるようにシステムを制御することができるシステムへの入力を指す。「制御変数ベクトル」とは、本明細書で使用するとき、1つまたは複数の制御変数のセットを指す。一実施形態では、制御変数ベクトルのトポロジーは、ベクトルの構造によって与えられ、その複雑さを推定する。一実施形態では、トポロジーは、制御変数ベクトルに存在する制御変数の数として定義される。概して、より高いトポロジー制御変数ベクトルは、より高い複雑さを有し、手作業での技法を使用して最適化することがより困難であり、それにより、自動最適化技術が必要となる。一実施形態では、制御変数ベクトルは、電圧ランプおよびドエルなどのパラメータを定めることによって、インクジェット波形を規定する。このようなパラメータの数は、インクジェット波形のトポロジーを規定するために使用される。
【0052】
ステップ403において、コントローラ107は、初期制御変数ベクトルを決定し、その結果、この初期制御変数ベクトルがコントローラ107に渡されると、システムまたはそのモデルは、検知出力変数の初期セットを生成するように作動させられる。「検知出力変数」とは、本明細書で使用するとき、システムに関連するセンサからのデータの助けを借りて推定される量を指す。一実施形態では、コントローラ107は、検知出力変数を推定するようにセンサからのデータを処理するために使用される。一実施形態では、システムの作動は、基板上に液滴のグリッドを噴射することを含む。一実施形態では、制御変数ベクトルの初期値は、検知出力変数の初期セットを生成するためにインクジェットシステムを作動させる。一実施形態では、検知出力変数の初期セットは、量、液滴配置精度、速度、インクジェットされた液滴のサテライト、欠損液滴、およびインクジェットされた液滴の過渡欠陥のうちの1つまたは複数を含む。一実施形態では、検知出力変数は、画像化サブシステムからのデータを使用して推定される。
【0053】
ステップ404において、コントローラ107は初期適合度関数を生成する。ここで、「適合度関数」は、本明細書で使用するとき、検知出力変数の初期セットの1つまたは複数の関数としてシステムの性能を規定するために使用される1つまたは複数の性能指数を表す。一実施形態では、初期適合度関数は、インクジェットシステムの所望の挙動を規定する。ここで、所望の挙動は、目標液滴量解像度に一致すること、液滴配置精度を最大限にすること、過渡欠陥を最小限にすること、サテライト液滴を最小限にすること、欠損液滴を最小限にすること、およびデブリを最小限にすることのうちの1つまたは複数を含む。
【0054】
ステップ405において、コントローラ107は、最適化された制御変数ベクトルの適合度関数の値と目標適合度関数の値との間の差が最小化されるように制御変数ベクトルのトポロジーを更新および調節することによって、最適化された制御変数ベクトルを、初期適合度関数を使用して生成するように自動最適化方式を実行する。一実施形態では、最適化された制御変数ベクトルは、初期適合度関数が最大値に達するまで実行されるアルゴリズムに応じて生成される。一実施形態では、最適化された制御変数ベクトルは、最適トポロジーと、最適トポロジーに対する最適パラメータのセットとを含む。一実施形態では、最適化された制御変数ベクトルのトポロジーは、初期制御変数ベクトルのトポロジーよりも複雑である。
【0055】
ステップ406において、コントローラ107は、生成された最適化された制御変数ベクトルを使用してシステムを制御する。
【0056】
方法400は、以下でより詳細に論じられる。
【0057】
図1図4を参照すると、コントローラ107のアプリケーション204は、例えば、図4に関連して上述したようなインクジェットシステムのようなシステムを制御するためのプログラムを含むことができる。一実施形態では、アプリケーション204は、例えば、高レベルの自動化機能と共に、モーションコントロール、噴射、および画像取込のための低レベルの機器ドライバ、画像処理および解析、波形解析および生成能力、ならびにグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供して、オペレータが試験およびデバッグ用の様々なサブプロシージャを行うことを可能にするためのプログラムを含むことができる。一実施形態では、各実験の波形は遺伝的アルゴリズムを使用して生成され、コンピュータビジョンシステム(コントローラ107)は、画像化サブシステム109によって液滴配置精度および液滴サイズを測定する。XYステージ105は、ソケットインターフェースを介してコントローラ107にコマンドを送ることによって制御される。
【0058】
一実施形態では、流体分注サブシステム101の一例は、Fujifilm(登録商標) Dimatix Samba(登録商標)ピエゾジェット印字ヘッド、Samba(登録商標) Development Kitコントローラ/ドライブエレクトロニクス、およびPCIeインターフェースカード、ならびにSamba(登録商標)インク送出システムからなる。すなわち、一実施形態では、自動化ソフトウェアシステム110の一部分は、流体分注サブシステム101内に埋め込まれる。一実施形態では、流体分注サブシステム101は、21.1167μmのノズルピッチで43.349mmのスパンにわたって16列に配置された2,048個のノズルのアレイを有するSamba(登録商標) G3L印字ヘッドを利用する。単一の印字ヘッドは、中央の1,920個のノズルを使用して、40.64mmの高さで1インチ当たり1,200ドットの液滴パターンまたは画像を噴射することができる。一実施形態では、印字ヘッドコントローラ103(例えば、Samba(登録商標)コントローラ)は、より大きな画像を印刷するために横に並べて取り付けることができる最大4つの印字ヘッドをサポートする。
【0059】
一実施形態では、テストベッド100の画像化サブシステム109は、シリコン基板上に分注された液滴のトップダウン検査のために、インライン照明および3.2メガピクセルカメラ(例えば、それぞれ3.45μm×3.45μmの2048×1536ピクセルを有するSony(登録商標) IMX252モノクロ画像センサを有するFLIR Grasshopper(登録商標)3 GS3-U3-32S4M-C)を備えたテレセントリック顕微鏡を組み入れている。顕微鏡の一例は、ディストーションが0.05%より小さい35mmまでのセンサをサポートするMoritex MML3-HR110DVI-43Fテレセントリック顕微鏡である。一実施形態では、照明は、CCS HLV2-22SW-3WスポットライトLEDおよびPJ-1505-2CA電流源によって提供される。画像は、Pythonドライバを使用してソフトウェアトリガをかけ、カメラのUSB3.0接続を介してコントローラ107に画像をダウンロードすることによって取り込まれる。平坦な基板上の付着液滴の検出は、背景減算、画像2値化、およびセグメント化、ならびに輪郭解析のステップを使用して行うことができる。この手順により、作動波形の性能を評価するために重要なサテライト霧滴の検出も可能となる。
【0060】
一実施形態では、平面基板の複数の画像は、XおよびYの配向とカメラのミスアライメントとを組み合わせる追加の較正ステップの助けを借りてつなぎ合わされる。一実施形態では、そのような画像は、液滴のグリッドの画像を生成するためにつなぎ合わされる。一実施形態では、較正目標は、画像の歪みを解析するために使用することができる。
【0061】
噴射性能は、液滴配置および液滴量の統計値によってまとめることができる。一実施形態では、遺伝的アルゴリズムによって生成された波形の性能を試験するために、液滴パターンは、各波形を印字ヘッドにロードした後、基板上に印刷される。カメラは、各分注の前後に画像を取り込み、それらの画像は、分注された液滴の図心および面積を決定するために処理される。次いで、液滴の位置は、理想的な液滴パターンと比較される。一実施形態では、液滴配置性能は、整列した理想的なグリッドと液滴位置との間の平均二乗差によって解析される。
【0062】
一実施形態では、様々な欠陥モードは、基板上のインクジェット印刷された液滴を見るときに検出され、その根本原因に基づいて分類される。これらの欠陥は、波形の不安定性、印字ヘッドノズル面板での流体の蓄積、または基板の汚染から生じ得る。
【0063】
以下では、ピエゾジェット作動波形のパラメトリックおよびトポロジカルな最適化を実行するためにマルチノズルインクジェットシステムに適用される高度な進化的アルゴリズムを論じる。特許文献1に論じられているような精密インクジェット印刷に関する議論は、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0064】
本発明の実施形態は、1つまたは複数の固定システムパラメータ、1つまたは複数の制御変数、および1つまたは複数の検知出力変数を有する制御システムを含む。一実施形態では、コントローラは、制御変数の数が可変、したがって、トポロジーまたは次元数が可変であるこのシステムに対して生成することができる。自動調整がない場合、またはコントローラを単純に保つために、一実施形態では、制御システムのトポロジーは固定されたままであり、この場合、固定された制御変数のセットが使用される。しかしながら、そのような手法は、制御システムから最高の性能を引き出さない場合がある。その結果、一実施形態では、精密インクジェット印字ヘッドなど、制御システムから所望の性能を引き出すために、可変トポロジーを有する制御システムを扱うことができ、トポロジーとそのトポロジーに関連する制御変数の値との両方を同時に最適化することができる自動化アルゴリズム(本明細書では「フリートポロジー最適化」と称する)が利用される。例えば、一実施形態では、進化的アルゴリズム、具体的には遺伝的アルゴリズムなどの最適化方式が、制御システムから所望の性能を引き出すために選択され得る。一実施形態では、検知出力変数は、制御システムのための1つまたは複数の適合度関数または性能指数を定めるために使用される。ここで、この適合度関数は、検知出力変数の関数の目標値と検知出力変数の関数の達成値との間の差として定義される。
【0065】
一実施形態では、本発明の原理は、以下の態様を含む。(i)シリコンウエハなどの基板上に分注された液滴のトップダウン画像処理を必要とするマルチノズルインクジェットシステムが調査され、(ii)20より多い独立変数によってパラメータ化された複雑な波形を可能にする、固定トポロジー(または固定パラメータ数)波形を超える「フリートポロジー」波形が探求される。
【0066】
固定トポロジー最適化では、飛行液滴のコンピュータビジョン測定を取り入れた最適化アルゴリズムは、それぞれ4個、7個、または10個の固定パラメータ数を有するユニポーラ、バイポーラ、およびトリポーラ波形などの波形トポロジーのセットのパラメトリックな最適化を行うことができる。固定トポロジーの最適化でさえも、噴射される液滴の量と速度の調整、および高Z数材料の噴射の安定性がピエゾジェット作動波形に依存するという結果が示されている。
【0067】
一実施形態では、本発明の原理は、高次トポロジーを有する波形を生成するための方式を開発する。高次トポロジー、すなわち、手作業で調整することが困難な多数のパラメータを有する波形は、低次トポロジーと比較してより高い性能指標を達成する能力を示している。加えて、一実施形態では、この方式は、単一ノズル印字ヘッドに対して定常状態の性能を示すことができる飛行液滴の測定に適用されている。別の実施形態では、この方式は、過渡性能、安定性、および信頼性も測定する基板上の液滴の画像化(前に説明した)を使用してマルチノズルインクジェット印字ヘッドにおいて実証されている。
【0068】
一実施形態では、ピエゾジェットコントローラは、液滴が印字ヘッドから噴出されるたびに、成形された電圧パルスを印加することによって、各ノズルを作動させる。波形の形状に対する典型的な制約は、コントローラ電圧(流体分注サブシステム101の印字ヘッドコントローラ103の電圧)およびタイムステップ分解能、増幅器のスルーレート、増幅器の最大および最小出力電圧、ならびに同じ電圧(典型的には0V)で波形が開始および終了するウェーブレット状のDC電圧の境界状態である。
【0069】
コントローラ103への入力は、典型的には、時間-電圧の対のセット、または時間、スルーレート、および飽和電圧の3組によって定められる電圧ランプのセットのいずれかによって定められる。
【0070】
例えば、Fujifilm(登録商標) Samba(登録商標)印字ヘッド波形は、電圧ランプの3組で表現され、波形電圧は、0Vから36Vの間で256ステップ、タイムステップは64ns、最大スルーレートはタイムステップあたり25電圧ステップ、または55.147V/μsに制約される。これは、最適な波形のための実質的に大きな機会空間を提供し、所与の材料に対する噴射ハードウェアの潜在力を最大限に実現するために、ますます複雑な波形を探索するための体系的手法を導き出す。
【0071】
一実施形態では、高次トポロジー波形の最適化のための進化的アルゴリズムは、可変長の染色体を使用する。可変長の染色体をサポートする遺伝的アルゴリズムでは、異なる長さの染色体間の交差を可能にするために、特殊な交差および遺伝子構造が必要である。通常のバイナリー文字列染色体では、交差の前に様々な遺伝子からのビットが単一の文字列に連結される。組換えは、各染色体文字列の同じインデックスからスライスされた同じ長さの部分の交換に限定される。長さの異なる染色体では、より長い染色体はより多くのインデックスを有し、それは、対応するスライスが必ずしも染色体間で形成されるとは限らないことを意味することがある。交差インデックスをより短い染色体のものに制限することは、魅力的な解決策ではないが、スライスインデックスを完全に自由にさせることは、遺伝子構造の侵害を引き起こすことがある。一実施形態では、本発明の原理は、この問題を解決するために、マルチレベルインデックス手法を利用する。
【0072】
遺伝子の数が固定された染色体では、異なるビット数で遺伝子を表したとき、特定の遺伝子内部で交差スライスインデックスが発生する可能性を等しくするために、マルチレベルインデックスが使用される。図5に示す4遺伝子の染色体を考える。図5は、本発明の一実施形態による、バイナリー遺伝的アルゴリズムにおけるマルチレベルインデックス交差を示す図である。
【0073】
図5を参照すると、遺伝子0、1、2、および3は、それぞれ3、11、5、および5ビットで表される。第1の交差動作は、遺伝子0、ビット2で生じる。次に、第2の交差動作が、遺伝子2、ビット3に適用される。その結果、各交差点間のビットが交換される。
【0074】
前述したように、遺伝子1は11ビットを有し、一方、遺伝子0は3ビットしか有しない。各ビットを均等に扱う交差のインデックスは、遺伝子1のときは34.6%の確率であるのに対して、遺伝子0の内部ではわずか7.7%の確率でしか発生しないことになる。その代わりに、遺伝子の数に基づいて外側インデックスを用いて確率的に遺伝子を選択することができ、次いで、選択された遺伝子のビット数に基づいて内側インデックスを選択することができる。また、各遺伝子インデックスを選択するために用いられる重み付け関数はまた、ビット数に基づいて各遺伝子を重み付けすることができる。
【0075】
遺伝子インデックスを選択した後、内側インデックスは一様分布から選択される。最終的な遺伝子が選択される場合、染色体の末端で終わるスライスを表すために、選択可能な最大の内側インデックスを1つだけ増やす。パラメトリックインデックスとモジュラー複合「超遺伝子」構造に基づく反復遺伝子構造とを組み合わせると、長さの異なる染色体に対して交差を行うとき、交差へのマルチレベルインデックス手法はまた、遺伝子スライスの問題を解決するために使用することができる。超遺伝子は、一様な構造に適合した小遺伝子のセットとして規定される。図6に示すように、内側の交差インデックスが同じに保たれるとき、異なる数の超遺伝子を含む染色体間で交差を行うことができる。
【0076】
図6は、本発明の一実施形態による、反復超遺伝子を有する染色体に対するマルチレベル交差を示す図である。
【0077】
一実施形態では、あらゆる作動波形は、液滴を分注するために少なくとも1つの上昇電圧ランプと1つの下降電圧ランプとを必要とする。このため、可変数のパラメータによって規定される波形は、主電圧ランプの台形の対に対応する最小数のパラメータを有することが必要である。
【0078】
一実施形態では、台形のパルスの重ね合わせは順次処理される。各ランプは時間的に順序付けられ、波形の時系列は、ランプ開始時点から飽和電圧に達するまでの各タイムステップで電圧をスルーレートだけ増加させることによって、各ランプによって修正される。一実施形態では、最終電圧ランプはゼロになる。コントローラソフトウェアの波形を変換するとき、2つ以上のランプの交点がスルーレートの重ね合わせをもたらす領域を規定するために、必要に応じて余分な制御点が導入される。
【0079】
フリー波形トポロジーの波形成分のパラメータ化および重ね合わせは、図7Aに示される。図7Aは、本発明の一実施形態によるフリートポロジーの波形成分のパラメータ化を示す。矢印701は、各ランプの電圧の変化を示し、矢印702は、各ランプの開始および終了を示す。スルーレートも各ランプに対して規定される。
【0080】
図7Bは、本発明の一実施形態による、図7Aに示された成分を重ね合わせた結果を示す。図7Bに示す波形を作るとき、図7Aからの各ランプは左から右に実施され、最後の立ち下がりランプは0Vに戻される。
【0081】
図7A図7Bを参照すると、主な膨張および圧縮パルスは0Vで始まり、ピーク電圧V0まで上昇し、V1だけ下降する。2つの「フリー」台形パルスがこれらに続き、上記で説明し図7Bに示されように、順次重なる。
【0082】
進化的アルゴリズムにおける適合度関数は、推定される性能指標のセットを検知出力変数の1つまたは複数の関数を用いて1つまたは複数の性能指数に結合する。適合度関数は、スカラー化を介して多目的状況での最適性を規定し、このプロセスは各指標の収束と多様性のバランスを取る。適合度比例選択を含むほとんどの選択法では、適合度関数はより良い性能に対応するより大きな値を戻すはずである。噴射性能に関連するほとんどの性能指標は、Lノルム(例えば、L-2、L-無限大ノルム)または平均二乗誤差のような関数(例えば、回帰損失関数)によって表すことができるが、二乗誤差の逆数和または負の和は、適合度比例選択に適切ではない。一実施形態では、加重積(WPR:weighted product)スカラー化手法が使用される。一実施形態では、リマッピング関数と組み合わせて、各性能指標に適合度関数の感度を縮小拡大し束縛する。WPR手法の利点は、シグモイド関数、またはスーパーガウス関数など、他の形態のメリット関数も含めることができることである。スーパーガウシアンは次のように定義される。
【0083】
【数1】
【0084】
スーパーガウシアンのパラメータρは、裾の重さを修正することができるように追加の自由度をガウス関数に加えた。より重い裾のメリット関数は、図8A図8Bに示すように、変曲点間の臨界領域の感度を上げただけの、より低い感度を有するより広範囲のより低い性能解を扱う。
【0085】
図8A図8Bは、本発明の一実施形態による、曲線の幅および裾の重さをそれぞれ制御するαおよびρを変化させた効果を示すスーパーガウス曲線を示す。
【0086】
シグモイド関数の重みは、ベースライン性能レベル(その周りで感度は最大化される)と、性能目標(その後、感度は下がって、全体的な適合度関数の感度を残りの性能指標に対して上昇させる)とを選択することによって決定することができる。
【0087】
一実施形態では、適合度関数に組み込まれる指標は、液滴配置精度、平均液滴量、液滴量均一性、過渡欠陥の存在、デブリの存在、ならびにサテライト液滴および欠損液滴の数である。一実施形態では、液滴配置は、各基準グリッド位置に基づいて計算される。各基準グリッド位置に対する液滴配置誤差は、その基準位置が最も近かったすべての液滴に対する誤差の体積加重和として定義することができる。一実施形態では、欠損液滴位置はこの平均二乗誤差(MSE:mean squared error)から除外され、したがって、平均は、基準位置の数と欠損液滴の数との間の差に基づく。MSEは、0と1との間の束縛を保つためにガウシアンにリマッピングされる。最大液滴サイズの平均および各基準点における液滴サイズの合計の平均は、それぞれ平均液滴サイズを反映するメリット関数を規定するために使用される。一実施形態では、液滴サイズの均一性は、最大液滴のサイズのばらつき、および各基準位置におけるすべての液滴のサイズの合計のばらつきに基づく適合度関数において規定することができる。サテライト液滴は、任意の他の液滴よりも任意の基準位置に近くない液滴として規定される。サテライト液滴の存在に対するペナルティもまた、適合度関数に組み込まれる。サテライトの影響はまた、性能の上記の尺度のいくつかに暗に示されるが、多数存在することは大きな欠陥と考えられる。
【0088】
欠損液滴は、近くに液滴がない基準位置によって規定される。過渡欠陥は、最初の数滴は欠損するが、残りの液滴は一様に分注される場合に生じることがあるので、欠損液滴に対するペナルティはサテライト液滴に対するペナルティと同様にすることもあるし、異なるものとすることもある。
【0089】
図9Aは、本発明の一実施形態による、手作業での調整によって得られた波形を示す。図9Bは、本発明の一実施形態による、パーフルオロオクチルトリクロロシラン(FOTS)でコーティングされたシリコンウエハ上の、図9Aの手作業での波形による分注された液滴の画像を示す。この波形は、13個のパラメータによって規定される。
【0090】
図10Aは、本発明の一実施形態による、固定トポロジー最適化によって得られた波形を示す。図10Bは、本発明の一実施形態による、FOTSでコーティングされたシリコンウエハ上の、図10Aの固定トポロジー波形による分注された液滴の画像を示す。この波形は、13個のパラメータの固定トポロジーによって規定される。
【0091】
図11Aは、本発明の一実施形態による、フリートポロジー最適化を使用した自動調整によって得られた波形の波形時系列を示す。図11Bは、本発明の一実施形態による、FOTSでコーティングされたシリコンウエハ上の、図11Aのフリートポロジー波形による分注された液滴の画像を示す。この波形は、20個未満のパラメータの初期トポロジーを有していたが、最終的には124個のパラメータのトポロジーで最適化された。
【0092】
フリートポロジーGAは、観測された液滴サイズが最小となる波形を生成すると同時に、噴射信頼性、ならびにx方向およびy方向ともに10μm以内の3シグマ配置精度を維持する、100個のパラメータを超える高性能な波形を見つけることができた。特に、フリートポロジー波形で生成された最小液滴の測定面積は303.8μmで、それは、336fLの推定量に相当する。これは,手作業での調整で生成された最小液滴と比較して、付着液滴面積で49.4%の低減,液滴量で64.1%の低減、さらに、固定トポロジー波形で生成された最小液滴と比較して液滴量で22.8%の低減を示した。
【0093】
一実施形態では、インクジェット作動波形を最適化するための確率的方法として遺伝的アルゴリズムが選択され、このインクジェット作動波形は、典型的には、インクジェットを作動させるときにアナログ波形を生成するインクジェットコントローラに送られるパラメータのセットによって規定される。典型的には、波形パラメータ変域は離散的であり有界である。
【0094】
インクジェットシステムでは、液滴速度、液滴サイズ(量)、または各動作時に噴出される液滴数を決定するために使用することができる内部センサは存在しない。さらに、インクジェットシステムの正確なモデルは、得ることが困難、または不可能な場合がある。したがって、一実施形態では、作動波形は、フィードバックとしてリアルタイムのコンピュータビジョンを使用して実際のインクジェットシステムで実施され、遺伝的アルゴリズムを利用するために必要な反復実験と相乗効果を生む。
【0095】
一実施形態では、マルチノズルインクジェットヘッドテストベッドのために、基板上画像化テストベッドが、2つのタイプの洗練された遺伝的アルゴリズム(「固定トポロジー」アルゴリズムと、より高度な「フリートポロジー」アルゴリズム)を使用して波形をテストするために構築される。飛行中画像化が、液滴の連続流を印刷するときのインクジェットの定常的な挙動しか捉えることができないのとは対照的に、基板上画像化は、インクジェットの過渡的な挙動を捉えることができる。さらに、複数のノズルからの液滴を単一の基板上画像で観察することができ、集合した液滴の配置精度を直接測定することができる。配置精度、液滴サイズ(量)、および各ノズルの過渡的な不規則さおよび状態のばらつきに対する波形のロバスト性がコンピュータビジョンによって評価された。
【0096】
一実施形態では、フリートポロジー方式は、波形に存在する超遺伝子の数に応じて、超遺伝子(6つの波形パラメータのセット)の追加または除去を可能にするように修正される。一度に2つ以上の超遺伝子が追加される場合があり、開始時間の範囲に基づくブロックで除去される場合がある。別の実施形態では、別の波形の超遺伝子に時間的に「近い」1つの波形の超遺伝子を確率的に選択するファジー尤度関数の感度が実験される。一実施形態では、(自由トポロジー方式または固定トポロジー方式のいずれかに対する)各世代の適合度係数は、現在の集団における性能の分布に基づいて構成される。
【0097】
一実施形態では,高性能な波形は、所与のジェットと材料との組合せに対して様々な複雑さのレベルで見出されるが,より多くの数のパラメータを有することは,信頼性とロバスト性の観点から有益である。ピエゾジェットの周波数応答は、0.1~1MHzに近づく周波数における共振ピークを含み、したがって、大きなパラメータ波形の微妙なインパルスおよびオーバーシュートは、これらのマルチジェットピエゾ印字ヘッドの全体性能に影響を与える場合がある。
【0098】
本発明の様々な実施形態の説明は、説明のために提示されたが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることを意図するものではない。説明した実施形態の範囲および趣旨から逸脱することなく、多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実用化、または市場で見出される技術を超える技術改良を最も良く説明するため、あるいは本明細書に開示した実施形態を他の当業者が理解することを可能にするために選ばれた。
【符号の説明】
【0099】
100 テストベッド
101 流体分注サブシステム
102 印字ヘッド
103 印字ヘッドコントローラ
104 ウエハチャック
105 XYステージ
106 モーションコントローラ
107 コントローラ
108 印刷された液滴の検査
109 画像化サブシステム
110 自動化ソフトウェアサブシステム
111 エレクトロニクスコントローラ
112 インターフェースカード
113 ブレークアウトボード
201 プロセッサ
202 システムバス
203 オペレーティングシステム
204 アプリケーション
205 読取り専用メモリ(ROM)
206 ランダムアクセスメモリ(RAM)
207 ディスクアダプタ
208 ディスクユニット
209 通信アダプタ
300 方法
400 方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
【国際調査報告】