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特表2023-519860血管アクセスデバイス並びに関連するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】血管アクセスデバイス並びに関連するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
A61M37/00 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558262
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2021021987
(87)【国際公開番号】W WO2021194761
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/993,685
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/192,802
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング ウェストン エフ
(72)【発明者】
【氏名】バークホルツ ジョナサン カール
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード カーティス エイチ
(72)【発明者】
【氏名】シュリッチ メーガン
(72)【発明者】
【氏名】マー イーピン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA12
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB19
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC08
4C267GG02
4C267GG22
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】器具を送達する血管アクセスデバイスを提供する。
【解決手段】血管アクセスデバイスが、ハウジングと、ハウジング内に配置された器具と、を含んでもよい。ハウジングは、近位端部と、遠位端部と、溝と、前進タブと、を含んでもよい。前進タブは、後退位置と前進位置との間で溝に沿って直線的に動くように構成されてもよい。器具の近位端部は、前進タブに結合されることにより、前進タブが後退位置から前進位置まで動くことに応じて、器具の遠位先端が、ハウジングの遠位端部を越えて患者のカテーテルアセンブリ及び/又は血管系内に前進させられてもよい。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管アクセスデバイスであって、
近位端部、遠位端部、溝、及び後退位置と前進位置との間で前記溝に沿って直線的に動くように構成された前進タブを備えるハウジングと、
前記ハウジング内に配置された器具であって、前記器具は、近位端部及び遠位先端を備え、前記器具の前記近位端部は、前記前進タブに結合され、前記後退位置から前記前進位置までの前記前進タブの動作に応じて、前記器具の前記遠位先端は、前記ハウジングの前記遠位端部を越えて前進させられる、器具と、
を備える血管アクセスデバイス。
【請求項2】
前記器具は、ガイドワイヤ、カテーテル、又はプローブを備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項3】
前記ハウジングは、実質的に剛性である、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項4】
前記ハウジングの前記遠位端部は、カテーテルアセンブリに結合する結合要素を備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項5】
前記結合要素は、ルアーアダプタを備える、請求項4に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項6】
前記結合要素は、カニューレと、カテーテルアセンブリに結合するように構成された複数のレバーロックアームと、を備える、請求項4に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項7】
前記前進タブが前記後退位置を越えて遠位方向に動かされることに応じて、前記ハウジングから前記カテーテルアセンブリが係合解除することを防ぐよう前記結合要素をロックする、前記ハウジング内に配置されたロック要素を更に備える、請求項4に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項8】
前記ロック要素は、前記前進タブが前記後退位置を越えて遠位方向に動かされることに応じて、前記結合要素を自動的にロックする付勢要素又はカム要素を備える、請求項7に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項9】
前記結合要素は、カニューレと、カテーテルアセンブリに結合するように構成された複数のレバーロックアームと、を備え、前記器具が前記前進位置にあることに応じて、前記ロック要素は、前記ハウジングと前記複数のレバーロックアームとの間に配置されて、前記ハウジングから前記カテーテルアセンブリを解放するために前記複数のレバーロックアームを押下することを防止する、請求項7に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項10】
カテーテルアセンブリに結合する、前記ハウジングの前記遠位端部に結合されたTアダプタ又はYアダプタと、
前記Tアダプタ又は前記Yアダプタから延在する拡張チューブであって、採血経路が前記拡張チューブを通って延在し、前記器具が、ガイドワイヤを備える、拡張チューブと、
を更に備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項11】
前記ハウジングの前記遠位端部と前記溝の遠位端部との間で前記ハウジングから延在する拡張チューブを更に備え、採血経路は、前記拡張チューブを通って延在し、前記器具が、ガイドワイヤを備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項12】
前記ハウジングの前記近位端部と前記溝の近位端部との間で前記ハウジングから延在する拡張チューブを更に備え、採血経路が、前記拡張チューブを通って延在し、前記器具が、ガイドワイヤを備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項13】
前記溝に対する前記前進タブの位置を自動的に維持する停止機構を更に備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項14】
前記停止機構は、前記前進タブに結合されて、前記ハウジングの特徴と相互作用することにより、前記後退位置と前記前進位置との間での前記器具の直線的な動作を妨げる、請求項13に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項15】
前記停止機構は、前記ハウジングに結合されて、前記前進タブと相互作用することにより、前記後退位置と前記前進位置との間での前記器具の直線的な動作を妨げる、請求項13に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項16】
閉鎖された流体経路を維持するために前記ハウジングの前記遠位端部内部に配置された流体シールを更に備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項17】
カテーテルアセンブリに血管アクセスデバイスを結合させる工程を含み、
この工程において、前記カテーテルアセンブリは、近位端部、遠位端部、及び前記遠位端部から延在するカテーテルを含むカテーテルアダプタを備え、
前記血管アクセスデバイスは、近位端部、遠位端部、溝、及び後退位置と前進位置との間で前記溝に沿って直線的に動くように構成された前進タブを備えるハウジングと、
前記前進タブに結合された近位端部及び前記後退位置から前記前進位置までの前記前進タブの動作に応じて、前記ハウジングの前記遠位端部を越えて前進させられる遠位先端を有し、前記ハウジング内部に配置された器具と、を備え、
前記カテーテルと前記血管アクセスデバイスの結合は、前記カテーテルアセンブリに前記ハウジングを結合することを含み、
さらに、前記後退位置から前記前進位置まで前記溝に沿って直線的に前記前進タブを作動させる工程を含む、前記前進タブが前記前進位置まで動くことに応じて、前記器具の前記遠位先端が、前記ハウジングの前記遠位端部を越えて延在させる方法。
【請求項18】
更に前記前進タブが前記後退位置を越えて遠位方向に動くことに応じて、前記血管アクセスデバイスを前記カテーテルアセンブリに固定するロック要素を作動させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記前進タブの作動は、前記溝に対する前記前進タブの位置を自動的に維持することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記前進タブの作動は、前記位置を解除するために、前記前進タブに力を加えることを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルなどの器具を備えた血管アクセスデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、様々な注入療法に一般的に使用されている。例えば、カテーテルは、流体、例えば通常の生理食塩水、様々な薬剤、及び完全静脈栄養を患者に注入するために使用され得る。カテーテルは、患者から血液を採取して血液サンプルを得るためにも使用され得る。
【0003】
一般的なタイプのカテーテルは、オーバザニードル末梢静脈内(「IV」)カテーテルである。その名前が示すように、オーバザニードルカテーテルは、鋭利な遠位端部を有する誘導針の上に取り付けられ得る。カテーテルと誘導針は、誘導針の遠位端部が、針のベベルを上に向けて患者の皮膚から離れる状態で、カテーテルの遠位端部を越えて延びるように組み立てられ得る。カテーテル及び誘導針は、一般に、患者の皮膚を通して血管系内へ浅い角度で挿入される。
【0004】
誘導針及び/又はカテーテルが血管内に適切に配置されていることを確認するために、臨床医は一般に、血液の「逆流」がカテーテルアセンブリのフラッシュバックチャンバ内にあることを確認する。針の配置が確認されると、臨床医は血管系の流れを一時的に遮断して針を抜去し、今後の採血、輸液、又はプローブアクセスのためにカテーテルを所定の位置に残留し得る。
【0005】
カテーテルを使用した採血又は注入は、いくつかの理由で困難な場合があり、特に患者内のカテーテルの留置時間が1日を超える場合である。例えば、カテーテルが長期間、患者に挿入されたままである場合、カテーテルは、狭窄化、潰れ、捩れ、破片(例えば、フィブリン又は血小板凝塊)による閉塞、及び血管系へのカテーテルの先端の付着の影響を受けやすくなる可能性がある。このため、カテーテルは、カテーテル配置時に血液サンプルを採取するために使用されることが多いが、カテーテル留置期間中に血液サンプルを採取するために使用される頻度ははるかに低い。したがって、血液サンプルが必要な場合、追加の針穿刺を用いて採血のために静脈へのアクセスを行うが、これは患者にとって苦痛であり、より高い材料費をもたらす場合がある。
【0006】
本明細書で特許請求される主題は、任意の不利益を解決する実施形態、又は上述のような環境においてのみ動作する実施形態に限定されない。むしろ、この背景は、本明細書で説明されるいくつかの実装が実施され得る1つの例示的な技術分野を示すためにのみ提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、概して、例えば、ガイドワイヤ、プローブ、又は静脈内カテーテルのような器具を収容してもよい血管アクセスデバイス、及び関連するシステム及び方法に関する。いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイスは、採血、流体送出し、患者若しくはデバイスモニタリング、又は別の臨床的ニーズのために、既存の末梢血管間カテーテルを通して器具を送達してもよい。いくつかの実施形態では、器具は、カテーテル内に導入されることにより、カテーテル先端での血栓若しくフィブリンシース蓄積、弁、静脈崩壊、又は別の障害物のような流体の流れを妨げ得る合併症を克服することがある。器具は、そのような閉塞を押しのけて、静脈内への又はそれから外への流体の流れのための経路を清掃してもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイスは、近位端部、遠位端部、溝、及び前進タブを備えるハウジングを含んでもよい。前進タブは、後退位置と前進位置との間で溝に沿って直線的に動くように構成されてもよい。器具は、ハウジング内に配置され、それによって外部環境からの損傷又は汚染から保護されてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジングの遠位端部は、ハウジングの遠位端部内に配置された流体シールを含んでもよい。流体シールは、閉鎖された流体経路を維持してもよい。
【0009】
器具の近位端部は、前進タブに結合されてもよい。前進タブが後退位置から前進位置まで動くことに応じて、器具の遠位先端は、ハウジングの遠位端部を越えて前進させられてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、実質的に剛性であってもよい。いくつかの実施形態では、ハウジングの遠位端部は、カテーテルアセンブリに結合するための、ルアーアダプタのような結合要素を含んでもよい。別の実施形態では、結合要素は、カニューレと、カテーテルアセンブリに結合する複数のレバーロックアームと、を備えてもよい。いくつかの実施形態は、ハウジングからのカテーテルアセンブリの係合解除を防止するために、ハウジング内に配置されたロック要素を含んでもよい。ロック要素は、前進タブが後退位置を越えて遠位方向に動くこと応じて作動させられてもよい。いくつかの実施形態では、ロック要素は、前進タブが後退位置を越えて遠位方向に動かされることに応じて、結合要素を自動的にロックする付勢要素又はカム要素を含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、結合要素がカニューレ及び複数のレバーロックアームを含む場合のように、ロック要素は、器具が前進位置にあることに応じて、ハウジングと複数のレバーロックアームとの間に配置されてもよい。これが、複数のレバーロックアームの押下を防止してもよく、それでカテーテルアセンブリがハウジングから解放されるのを防止してもよい。装置が後退位置にあることに応じて、ロック要素は、レバーロックアームの近位に配置されてもよく、それによって、レバーロックアームが、カテーテルアセンブリを押下してハウジングから解放することを可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイスは、カテーテルアセンブリに結合するハウジングの遠位端部に結合されたTアダプタ又はYアダプタを含んでもよい。いくつかの実施形態では、拡張チューブが、Tアダプタ又はYアダプタから延在し、採血経路が、拡張チューブを通って延在して、血液サンプルを取得するために使用され得る。器具は、ガイドワイヤであってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、拡張チューブは、ハウジングの遠位端部と溝の遠位端部との間でハウジングから延在してもよい。別の実施形態では、拡張チューブは、ハウジングの近位端部と溝の近位端部との間でハウジングから延在してもよい。採血経路は、拡張チューブを通って延在してもよく、そして血液サンプルを取得するために使用されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイスは、溝に対する前進タブの位置を自動的に維持する停止機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、停止機構は、前進タブに結合されてもよく、そしてハウジングの特徴と相互作用してもよい。停止機構は、このように後退位置と前進位置との間での器具の直線的な動作を妨げてもよい。別の実施形態では、停止機構は、ハウジングに結合されて、前進タブと相互作用することにより、器具の直線的な動作を妨げてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、血管アクセスを提供する方法は、血管アクセスデバイスをカテーテルアセンブリに結合することを含んでもよい。カテーテルアセンブリは、近位端部と、遠位端部と、遠位端部から延在するカテーテルと、を含むカテーテルアダプタを含んでもよい。血管アクセスデバイスは、近位端部と、遠位端部と、溝と、を備えるハウジングを含んでもよい。前進タブは、後退位置と前進位置との間で溝に沿って直線的に動くように構成されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、器具は、ハウジング内に配置されてもよい。器具は、近位端部と、遠位先端と、を含んでもよい。器具の近位端部は、前進タブに結合されてもよい。後退位置から前進位置までの前進タブの動作に応じて、器具の遠位先端は、ハウジングの遠位端部を越えて前進させられてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイスをカテーテルアセンブリに結合することは、ハウジングをカテーテルアセンブリに結合することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、方法は、後退位置から前進位置まで溝に沿って直線的に前進タブを動かすことを更に含んでもよい。前進タブが前進位置まで動くことに応じて、器具の遠位先端は、ハウジングの遠位端部を越えて延在してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、ロック要素を作動させて、カテーテルアセンブリに血管アクセスデバイスを固定することを更に含んでもよい。ロック要素は、前進タブが後退位置を越えて遠位方向に動くことに応じて作動させられてもよい。いくつかの実施形態では、前進タブの位置は、溝に対して自動的に維持され得る。いくつかの実施形態では、前進タブへの力が適用されることにより、位置を解放してもよい。
【0019】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は、例、及び説明であって、特許請求されるように本発明を限定するものではないことを理解する必要がある。様々な実施形態は、図面に示される構成及び手段に限定されないことを理解すべきである。また、実施形態は組み合わせられてもよい、又は別の実施形態が利用されてもよいということ、また構造上の変更が、特許請求されていない限り、本発明の様々な実施形態の範囲から逸脱することなく行われ得るということも理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
例示的な実施形態が、以下の添付図面の使用によって、追加の特性及び詳細について記述され説明される。
図1A】いくつかの実施形態に従う、後退位置にある例示的な器具を示す、例示的な血管アクセスデバイスについての上方斜視図である。
図1B図1Aの血管アクセスデバイスについての断面図である。
図2A】いくつかの実施形態に従う、前進位置にある器具を示す、図1Aの血管アクセスデバイスについての上方斜視図である。
図2B】いくつかの実施形態に従う、前進位置にある器具を示す、図1Aの血管アクセスデバイスについての断面図である。
図3】いくつかの実施形態に従う、血管アクセスデバイス及び例示的なアダプタについての部分分解図である。
図4図3の血管アクセスデバイス及びアダプタについての断面図である。
図5】いくつかの実施形態に従う、別の例示的な血管アクセスデバイスについての分解図である。
図6】いくつかの実施形態に従う、図5の血管アクセスデバイス及び別の例示的なアダプタについての断面図である。
図7】いくつかの実施形態に従う、ハウジングの近位端部から延在する流体経路を示す、別の例示的な血管アクセスデバイスについての上方斜視図である。
図8】いくつかの実施形態に従う、図7の血管アクセスデバイス及び別の例示的なアダプタについての断面図である。
図9A】いくつかの実施形態に従う、ロック解除位置にあるロック要素を含む例示的なハウジングについての上方斜視図である。
図9B図9Aのハウジング及びロック要素についての断面図である。
図10A】いくつかの実施形態に従う、ロックされた位置にあるロック要素を含む別の例示的なハウジングについての上方斜視図である。
図10B図10Aのハウジング及びロック要素についての断面図である。
図11】いくつかの実施形態に従う、前進タブによる移動距離の2倍だけ器具を前進させるように構成された例示的なハウジングについての断面図である。
図12】いくつかの実施形態に従う、ガイド要素を含む例示的なハウジングについての断面図である。
図13】いくつかの実施形態に従う、片手操作のために構成された例示的な血管アクセスデバイスについての断面図である。
図14】いくつかの実施形態に従う、片手操作のために構成された例示的な前進タブについての上方斜視図である。
図15A】いくつかの実施形態に従う、例示的なルアーアダプタについての断面図である。
図15B】いくつかの実施形態に従う、別の例示的なルアーアダプタについての断面図である。
図15C】いくつかの実施形態に従う、別の例示的なルアーアダプタについての断面図である。
図16A】いくつかの実施形態に従う、拡張チューブを収容している例示的なレバーロックについての斜視図である。
図16B図16Aのレバーロックについての断面図である。
図17】いくつかの実施形態に従う、前進タブ及び停止機構の一例についての断面図である。
図18】いくつかの実施形態に従う、前進タブによる移動距離の3倍だけ器具を前進させるように構成された例示的な血管アクセスデバイスについての断面図である。
図19図18の血管アクセスデバイスについての上方斜視図である。
図20】いくつかの実施形態に従う、採血アダプタに取り付けられた例示的なハウジングについての斜視図である。
図21】いくつかの実施形態に従う、可撓性継ぎ手を有する例示的な血管アクセスデバイスについての斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「遠位」とは、デバイスを患者と接触させるように置くことになる臨床医から離れる方の、患者により近い方向を指す。用語「近位」とは、デバイスを患者と接触させるように置くことになる臨床医により近い、患者からより遠くに離れる方の方向を指す。従って、例えば、患者の身体に最初に接触するカテーテルの端部は、遠位端部であり、一方、カテーテルの反対側の端部は、カテーテルの近位端部である。
【0022】
ここで図1A及び1Bを参照すると、いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイス100は、例えば、採血、流体送達、患者若しくはデバイスモニタリング、又は別の臨床的ニーズのためのカテーテルアセンブリのカテーテルを通して器具102を送達するように構成されてもよい。例示的なカテーテルアセンブリが、図21に示されている。いくつかの実施形態では、カテーテルは、末梢IVカテーテル、末梢挿入型中心カテーテル、又は正中カテーテルを含み得る。いくつかの実施形態では、器具102がそれを通して送達されるカテーテルは、患者の血管系内に前に挿入されて、血管系内にあり続けてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、器具102は、カテーテル及びカテーテルアセンブリの流体経路を通って前進させられることにより、器具102の遠位先端118がカテーテルの遠位先端の遠位で患者の血管系内に置かれてもよい。いくつかの実施形態では、手術中、臨床医は、器具102を配備して、カテーテル又は血管系内のなんらかの閉塞物(例えば、カテーテル先端での血栓又はフィブリンの蓄積、静脈崩壊、弁等)を押してのけて、流体の流れのための障害物の無い経路を作成してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、器具102は、周囲の外部環境からの損傷及び/又は汚染から器具102を保護するように構成されたハウジング104内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジングは、剛性又は半剛性であってもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング104は、ステンレス鋼、アルミニウム、ポリカーボネート、金属、セラミック、プラスチック、及び別の適切な材料のうちの1つ又は複数から作成されてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング104は、近位端部106と、遠位端部108と、溝110と、前進タブ112と、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、溝110は、ハウジング104の長手方向軸に平行に延在してもよい。いくつかの実施形態では、以下により詳細に論じられるように、ハウジング104の遠位端部108は、例えば、ルアーコネクタのような結合要素122に結合されることにより、カテーテルアセンブリに接続してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、器具102は、例えば、ガイドワイヤ、別のカテーテル、プローブ、又は別の適切な器具を含んでもよい。いくつかの実施形態では、器具102は、様々な開口及び/又はセンサを含んでもよい。いくつかの実施形態では、器具102は、プローブとカテーテルの両方の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、開口及び/又はセンサは、器具102の遠位先端118に向かって配置されてもよい。いくつかの実施形態では、開口は、流体入口及び/又は出口として機能してもよい。いくつかの実施形態では、センサは、1つ又は複数のパラメータを測定してもよく、及び/又は、例えば、診断情報、血液化学、圧力、流量、薬剤同定、微生物、移植可能なステントの配置、静脈内カテーテル先端安定化機構、又は別のデバイス等に関連した1つ又は複数の要素を検出してもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、前進タブ112は、後退位置114と前進位置116との間で溝110に沿って直線的に動くように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、前進タブ112は、器具102の近位端部120に結合されることにより、前進タブ112を溝110に沿って直線的に動かすことが、器具102をハウジング104に対して前進タブ112と同じ方向に動かしてもよい。いくつかの実施形態では、臨床医は、前進タブ112を挟んで締め付ける又は把持することにより、後退位置114と前進位置116との間で器具102を動かしてもよい。以下に更に詳細に記述するように、いくつかの実施形態では、ハウジング104に対する器具102による移動距離は、溝110に対する前進タブ112による移動距離に比例してもよく、任意の比率を含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、図2A及び2Bに示すように、後退位置114から前進位置116までの前進タブ112の動作は、器具102の遠位先端118をハウジング104の遠位端部108を越えて前進させてもよい。いくつかの実施形態では、前進タブ112を前進位置116まで動かすことが、例えば、器具102をカテーテルアセンブリ内に導入してもよい。いくつかの実施形態では、器具102がカテーテルアセンブリ内に導入されることに応じて、器具102は、カテーテルアセンブリの流体経路及び/又は患者の血管系にアクセスしてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、血管系内でのかなりの留置時間を有するカテーテルアセンブリのカテーテルは、細片(例えば、フィブリン又は血小板血餅)による狭窄化、潰れ、捩れ、閉塞、及びカテーテルの先端の血管系への付着に影響を受けやすいことがある。それで、カテーテルを用いる採血が困難である場合がある。いくつかの実施形態では、器具102は、カテーテルアセンブリのカテーテルの直径よりも小さい直径を有することにより、追加の針刺しを用いずに患者の血管系へのアクセスを提供するガイドワイヤ又は別のカテーテルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、血液サンプルを収集するための経路を清掃してもよい。それで、いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイス100は、針無しの採血及び/又は輸液のために使用されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、前進タブ112は、前進位置116から後退位置114まで溝110に沿って動かされることにより、器具102の少なくとも一部分をハウジング104内に引き下げ又は格納させてもよい。
【0030】
ここで図3~8を参照すると、いくつかの実施形態では、拡張チューブ126が、血管アクセスデバイス100に結合されてもよく、拡張チューブ126は、患者の静脈内に注入されるか又はそれから引き出され得る採血及び/又は輸液に使用されてもよく、そして様々な方法のうちのいずれかを指向してもよい。図5~6に示すように、いくつかの実施形態では、拡張チューブ126は、ハウジング104から直接延在してもよい。いくつかの実施形態では、結合要素122は、例えば、レバーロック130を含んでもよい。いくつかの実施形態では、結合要素122は、雄型又は雌型ルアーコネクタのようなルアーコネクタを含んでもよい。いくつかの実施形態では、拡張チューブ126は、ハウジング104の遠位端部108又はレバーロック130と、溝110の遠位端部との間でハウジング104から延在してもよい。
【0031】
これらの及び別の実施形態に示すように、流体シール131が、ハウジング104の遠位端部108に若しくはその内部に配置されることにより、閉鎖された流体経路を維持しながら、器具102が遠位端部108から前進及び/又は後退することを可能にすることがある。例えば、拡張チューブ126がハウジング104の近位端部106から延在する場合のような別の実施形態では、流体シール131は、ハウジング104の近位端部106に又はその内部に配置されることにより、閉鎖された流体経路を維持しながら、それを通る器具102の動作を許容してもよい。いくつかの実施形態では、流体シール131は、シリコーン、ゴム、エラストマー、又は別の適切な材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、流体シール131は、それを通して器具102を収容するための開口、スリット等を含んでもよい。
【0032】
図3~4に示すように、いくつかの実施形態では、ハウジング104に結合されたTアダプタ又はYアダプタのようなアダプタ124を通して、血管アクセスシステムの流体経路を誘導することが有利である場合がある。いくつかの実施形態では、拡張チューブ126がアダプタ124から延在することにより、採血経路のような流体経路は、ハウジング104を通してではなく、拡張チューブ126を通して誘導されてもよい。流体経路が血液サンプルを取得するために使用される場合のような、これらの又は別の実施形態において、例えば、拡張チューブ126の内径及び長さは、流体経路の長さにわたってせん断応力を均衡させるように選択されることにより、血液溶血を減少させてもよい。
【0033】
図7~8に示すように、いくつかの実施形態では、拡張チューブ126は、ハウジング104の近位端部106から延在してもよい。いくつかの実施形態では、拡張チューブ126は、溝110の近位端部に近位のハウジング104の近位端部106から、ハウジング104から延在してもよい。いくつかの実施形態では、拡張チューブ126の近位端部は、コネクタ300を含んでもよく、該コネクタは、それに結合されたルアーコネクタ又は別の適切なコネクタを含んでもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、コネクタ300は、例えば、ニュージャージ州フランクリンレイクスのBecton Dickinson and Companyから入手可能であるVACUTAINER(登録商標)又はVACUTAINER(登録商標)LUER-LOK(商標)のような採血デバイスに結合されてもよい。いくつかの実施形態では、コネクタ300は、注入デバイスに結合されてもよい。いくつかの実施形態では、血管アクセスシステムの流体経路は、カテーテルアセンブリ及び/又はアダプタ124を通って延在してもよい。いくつかの実施形態では、血管アクセスシステムの流体経路は、ハウジング104の全部又は一部を通って延在してもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、拡張チューブ126の長さLは、特定のカテーテルのゲージ、特定のカテーテルアセンブリ構成、又は臨床装置のうちの1つ又は複数に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、拡張チューブ126は、内径Dを含んでもよい。
【0036】
管状である拡張チューブ126を通る流体経路内の流体の流れは、以下のポアズイユの式を使用して分析され得る。
ここでΔPは、流体経路の長さにわたる圧力勾配の変化であり、D及びLはそれぞれ流体経路の内径及び長さであり、μは流体の粘性であり、R=128μL/πDは流体抵抗である。μは流体の粘性であり、拡張チューブのジオメトリの一部ではないため、幾何学的係数Gは、R(流体抵抗)がR=(128μ/π)×Gであるように定義され、ここでG=L/Dである。
【0037】
いくつかの実施形態では、拡張チューブ126は、長さ(L1、L2、L3)及び内径(D1、D2、D3)を有する複数のセクションを有してもよく、幾何学的係数は以下である。
いくつかの実施形態では、拡張チューブ126は、拡張チューブ126の長さにわたって変化する内径を有してもよく、そのとき、幾何学的係数は以下である。
いくつかの実施形態では、拡張チューブ126は、円形ではない断面を有してもよく、又は複雑な内径プロファイルを有してもよい。幾何学的係数は、そのとき、既知の粘性(μ)の流体を使用して、所定の圧力(ΔP)での流量(Q)を測定することによって以下のように決定され得る。
【0038】
拡張チューブ126のG値は、各カテーテルゲージに対する最大せん断応力を低減するように選択され、以前は採血の絶対的基準と見なされた、BD 21G VACUTAINER(登録商標)UltraTouch(商標)押しボタン式採血セット(ニュージャージ州フランクリンレイクスのBecton Dickinson & Companyから入手可能)の最大せん断応力以下にし得る。いくつかの実施形態では、拡張チューブ126のG値は、各カテーテルゲージの最大せん断応力を低減するように選択され、BD 25G VACUTAINER(登録商標)UltraTouch(商標)押しボタン式採血セット(ニュージャージ州フランクリンレイクスのBecton Dickinson & Companyから入手可能)の最大せん断応力以下にすることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、採血デバイス、拡張チューブ126、アダプタ124、及びカテーテルアセンブリのうちの1つ又は複数を含んでもよい血管アクセスシステムの流体経路は、採血中に、血液が血管系を出た後に、採血デバイス内へと又は採血デバイスを通って流れる採血経路の全体を含んでもよい。血管アクセスシステムの流体経路についてのシステム幾何学的係数Gfsは、前述の拡張チューブ126のG値と同様の方法で決定され得る。いくつかの実施形態では、前進位置にある装置102についてのシステム幾何学的係数Gfsは、7.34E+06(1/in)以上であり得る。いくつかの実施形態では、Gfsは別の値を含み得る。いくつかの実施形態では、前進位置にある器具102についてのシステム幾何学的係数Gfsは、7.34E+06(1/in)プラスマイナス10パーセント、プラスマイナス25パーセント、プラスマイナス50パーセント、又はプラスマイナス75パーセントであり得る。いくつかの実施形態では、Gfsは、別の値を含み得て、カテーテルのゲージ及び/又は長さに基づいて選択され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、ハウジング104内に配置された器具102は、非流体環境内に保持されてもよく、そして使用までの汚染及び環境上の障害から保護されてもよい。有利なことに、いくつかの実施形態では、拡張チューブ126はまた、カテーテル及び/又はカテーテル固定ドレッシングの妨害又は脱落を減少させながら、閉鎖システム及び無菌技術の維持を可能にする場合がある。
【0041】
いくつかの実施形態では、ハウジング104の遠位端部108は、ハウジング104をカテーテルアセンブリに結合するレバーロック130を含んでもよい。レバーロック130は、カニューレ132と、レバーロックアーム128a、bのうちの少なくとも2つと、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カニューレ132は、鈍端でもよい。いくつかの実施形態では、カニューレ132は、ハウジング104の遠位端部108から、ハウジング104の長手方向軸線と実質的に整列した方向に延在してもよい。いくつかの実施形態では、レバーロックアーム128a、bは、互いに離間していてもよく、いくつかの実施形態では、カニューレ132に関して互いに実質的に反対側に位置してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、手術中に、カニューレ132は、カテーテルアセンブリのルアーコネクタを貫通して、カテーテルアセンブリの流体経路にアクセスしてもよい。いくつかの実施形態では、レバーロックアーム128a、bの近位端部は、ハウジング104の長手方向軸に向かって内側に付勢されて、ルアーコネクタにスナップ留めするか、又は別様に結合してもよい。このようにして、レバーロックアーム128a、bは、カニューレ132をルアーコネクタに自動的に固定してもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルアセンブリのルアーコネクタは、レバーロックアーム128a、bの1つ又は複数の突出部を受け取るように構成された1つ又は複数の陥凹を含んでもよい。いくつかの実施形態では、レバーロックアーム128a、bは、レバーロックアーム128a、bの突出部を係合して、ハウジング104をカテーテルアセンブリに固定してもよい。
【0043】
ここで、図15A~15Cを参照すると、いくつかの実施形態では、結合要素122は、例えば、カテーテルアセンブリに接続する雄ルアーコネクタのようなルアーコネクタを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ルアーコネクタは、ルアーロックコネクタ1500を含んでもよく、該ルアーロックコネクタは、カテーテルアセンブリのルアーコネクタの対応するねじと係合する内部ねじ1502を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ルアーロックコネクタ1500は、カテーテルアセンブリのルアーコネクタ内に貫入又は挿入するカニューレ132を更に含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、レバーロック130(例えば、図1~11を参照)又はルアーロックコネクタ1500のような結合要素122は、ハウジング104に固着されてもよい。別の実施形態では、結合要素122は、ハウジング104に結合されてもよく、そしてそれに関する任意のクロック位置まで回転するように構成されてもよい。
【0045】
図16A及び16Bを参照すると、いくつかの実施形態では、レバーロック130(例えば、図1~11を参照)又はルアーロックコネクタ1500(例えば、図15を参照)のような結合要素122は、単一のユニットとしてハウジング104とモノリシックに形成され得る。
【0046】
ここで図9A~B及び10A~Bを参照すると、いくつかの実施形態は、器具102がカテーテル内に前進させられる間に、ハウジング104をカテーテルアセンブリに選択的又は自動的に固定するロック要素900を含んでもよい。いくつかの実施形態では、上記のように、結合要素122は、カニューレ132と、カテーテルアセンブリに結合するレバーロックアーム128a、bと、を含んでもよい。これらの及び別の実施形態では、ロック要素900は、レバーロックアーム128a、bと相互作用するように構成されたロッキング部材902を含んでもよい。ロッキング部材902は、ハウジング104内に配置され、その長さの全長又は部分に沿って延在する細長い拡張部材904と一体化されてもよく又はそれに結合されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、器具102が前進位置116にあることに応じて、ロッキング部材902は、ハウジング104とレバーロックアーム128a、bとの間でロックされる位置に配置されてもよい。この位置では、ロッキング部材902は、レバーロックアーム128a、bの押下を防止してもよく、それでハウジング104からのカテーテルアセンブリの解放を防止してもよい。器具102が後退位置114にあることに応じて、ロッキング部材902は、ロック解除される位置にあるレバーロックアーム128a、bの近位に配置され、それによって、レバーロックアーム128a、bが、カテーテルアセンブリを押下し、それでハウジング104から解放してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、ロック要素900は、ばねのような付勢要素、又はカムとフォロアのようなカム要素を含んでもよく、これらは、ハウジング104内に配置されて、前進タブ112が後退位置114を越えて遠位方向に動くことに応じて自動的に作動させられる。付勢要素又はカム要素は、ロック要素900を自動的に作動させることにより、結合要素122をロックし、それによってカテーテルアセンブリのハウジング104からの係合解除を防止してもよい。
【0049】
とりわけ、いくつかの実施形態では、細長い拡張部材904は、前進タブ112が後退位置114にあるときに、ロッキング部材902がロック解除される位置にあるように、近位に保持されてもよい。前進タブ112が遠位方向に動かされて、器具102をカテーテル内へと前進させるとすぐに、ロッキング部材902が解放されてもよい。付勢要素又はカム要素は、次いで、ロッキング部材902を遠位方向に押して、レバーロックアーム128a、bをロックされる位置に係合させてもよい。
【0050】
同様に、前進タブ112が作動させられて器具102を後退させるとき、近位方向の最終的動作は、ロッキング部材902を付勢要素又はカム要素に抗して引っ張り、それでレバーロックアーム128a、bをロック解除してもよい。このことは、前進タブ112がその最近位及び後退位置114を除く任意の位置にあるとき、ユーザがカテーテルアセンブリから器具102を取り外すことを防止してもよい。
【0051】
もちろん、当業者が理解するように、自動ロッキング機構が逆転されることにより、付勢部材又はカム要素が、ロッキング部材902を引っ張ってロックを係合解除し、そしてロッキング部材902を係合状態へと押し込んでカテーテルアセンブリをハウジング104に固定してもよい。いくつかの実施形態では、自動ロック機構は、前進タブ112の動作が開始又は終了するときに、作動させられてもよい。いくつかの実施形態では、ロッキング部材902は、前方及び後方にスライドするのではなく、回転してロックされる位置に出入りしてもよい。
【0052】
ここで図13、14、及び17を参照すると、いくつかの実施形態では、前進タブ112の位置は、器具102の使用前、中、及び後に制御されてもよい。いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイス100は、溝110に対する前進タブ112の位置を自動的に維持する停止機構1300を含んでもよい。いくつかの実施形態では、停止機構1300は、前進タブ112に結合されてもよく、そしてハウジング104の特徴と相互作用してもよい。停止機構1300は、それで後退位置114と前進位置116との間で器具102の直線運動を妨げてもよい。別の実施形態では、停止機構1300は、ハウジング104に結合され、そして前進タブ112と相互作用して、器具102の直線動作を妨げてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、停止機構1300は、前進タブ112の動作が力の適用を必要とするように、前進タブ112とハウジング104との間に設計された摩擦を提供してもよい。このような力の適用がない場合、前進タブ112は、溝110に沿ってその直線位置を維持してもよい。いくつかの実施形態では、停止機構1300は、溝110の全長に沿って摩擦を作用させてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、停止機構1300は、前進タブ112とハウジング104との間の単純な干渉を含んでもよく、そして制御のためのばねとして前進タブ112の材料の引張応力を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、前進タブ112とハウジング104の両方が、実質的に楕円形の断面を有してもよい。前進タブ112は、ハウジング104に対して回転し、それによって前進タブ112の位置をロックするように構成されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、停止機構1300は、ばねとして作用する前進タブ112又はハウジング104に一体化した片持ち梁であってもよい。別の実施形態では、停止機構1300は、前進タブ112がハウジング104に抗して又はその逆にスライドするときに摩擦を作用させる、前進タブ112に取り付けられた別個のばね部材を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ばね力に加えて、前進タブ112及び/又はハウジング104に使用される表面仕上げ及び/又は材料が、両者の間の摩擦を最適化するように選択されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、停止機構1300は、溝110又はハウジング104の遠位端部108及び/又は近位端部106に実質的に対応してもよく、それで器具102の前進位置116及び/又は後退位置114に対応してもよい。いくつかの実施形態では、停止機構1300は、溝110又はハウジング104の遠位端部108及び/又は近位端部106と一体化又はそれに結合された1つ又は複数の戻り止め又は別の特徴を含んでもよい。いくつかの実施形態では、戻り止めは、前進タブ112と機械的に又は磁気的に相互作用して、前進タブ112を前進位置116及び/又は後退位置114に保持してもよい。このようにして、器具102は、完全に後退した又は完全に挿入された位置に維持されてもよい。もちろん、1つ又は複数の戻り止めが、溝110又はハウジング104に沿った任意の位置に実装されることにより、前進タブ112を任意のそのような位置に維持してもよい。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の戻り止めが、別の停止機構1300に加えて実装されてもよい。
【0057】
ここで図17を参照すると、いくつかの実施形態では、停止機構1300は、前進タブ112と一体化された又はそれに結合されたばね式留め金1700を含んでもよい。ばね式留め金1700は、前進タブ112が溝110に沿って直線的に移動するとき、ハウジング104内に配置された陥凹1702と自動的に係合してもよい。前進タブ112は、選択的に押下されて、ばね式留め金1700を陥凹1702から解放してもよい。このようにばね式留め金1700を解放して、前進タブ112が溝110に沿って直線方向にスライドすることにより、器具102を前進させる又は取り外してもよい。いくつかの実施形態では、陥凹1702は、溝110又はハウジング104に沿った任意の所望の位置又は距離においてハウジング104内に一体化されてもよい。
【0058】
ここで図11及び18~19を参照すると、いくつかの実施形態では、前進タブ112は、前進タブ112自体が移動するよりも大きく器具102を前進させるように構成されてもよい。図11に示すように、例えば、前進タブ112は、近位方向を向いているハウジング104の遠位端部108に器具102の近位端部120を取り付けることによって、前進タブ112が移動する距離よりも大きい距離、例えば2倍の距離だけ、器具102を前進させるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、器具102は、前進タブ112を通る「U字形」折返しを形成して、遠位端部108でハウジング104を出てもよい。いくつかの実施形態では、前進タブ112は、器具102の「U字形」部分を押して器具102を前進させてもよく、そして器具102の「U字形」部分を引っ張って器具102を後退させてもよい。器具102は、それが動くときに前進タブ112を通ってスライドしてもよい。このようにして、前進タブ112は、プーリとして作用することにより、前進タブ112による移動距離の2倍の距離だけ器具102を動かしてもよい。
【0059】
ここで図18~19を参照すると、いくつかの実施形態では、1つ又は複数の追加の屈曲部が、前進タブ112に近位端部120を取り付ける前に、器具102内に組み込まれてもよい。これにより、前進タブ112は、前進タブ112による移動距離に対する器具102による移動距離を、屈曲部又は「U字形」折返し部の数に等しい倍数だけ更に増加させることが可能になり得る。いくつかの実施形態では、倍数は、器具102を屈曲部又は「U字形」折返し部の数に1を加えたものに等しくてもよい。例えば、屈曲部が無いことが、器具102と前進タブ112との間の前進の1倍に対応してもよく、1つの屈曲部が、器具102と前進タブ112との間の前進の2倍に対応してもよく、2つの屈曲部が、器具102と前進タブ112との間の前進の3倍に対応してもよい、等である。しかし、このように器具102及び前進タブ112を構成することは、挿入中に器具102を座屈させることがある。従って、いくつかの実施形態は、座屈を防止するために、器具102を支持するガイド又は拘束を含んでもよい。
【0060】
例えば、図12を参照すると、いくつかの実施形態は、器具102を拘束するためにハウジング104内に配置されたガイド要素1204を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ガイド要素1204は、器具102を収容するハウジング104の孔1206内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、ガイド要素1204は、コネクタ部材1202を介して前進タブ112に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、コネクタ部材1202は、孔1206と溝110との間の屈曲した経路1200を実質的に占有するように構成されてもよい。コネクタ部材1202は、それによって屈曲した経路1200を塞いでもよく、そしてさもなければ溝110に進入して器具102に到達する汚染を防止してもよい。別の実施形態では、コネクタ部材1202は、溝110と、孔1206及び/又は器具102との間の真直ぐな経路を占有してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、例えば、前進タブ112が前進タブ112による移動距離の2倍の距離だけ器具102を移動させるような場合、ガイド要素1204は、「U字形」形状を形成する器具102の部分同士の間の空間を占有してもよい。このようにして、器具102は、3つの側面において拘束されてもよく、それによって、器具102のこれらの3方向の動作を防止する。第4方向の座屈を防止するために、いくつかの実施形態は、第4方向の開口領域を選択的に遮蔽するための遮蔽要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、遮蔽要素は、選択的に除去されることにより、それを通して器具102を前進させてもよい。別の実施形態では、器具102は、小規模な屈曲又は偏向を含んでもよく、これらは、器具102を、開放領域又は側面から離れる方に、そしてその代わりに壁又は拘束される領域内へと向かわせる。
【0062】
有利なことに、前進タブ112による移動距離よりも大きく器具102を前進させるように前進タブ112を構成することが、コンパクトであるハウジング104が低減された寸法及び低減された溝110長さを有することを容易にしてもよい。換言すれば、前進タブ112が器具102を前進及び後退させるために移動しなければならない距離が低減され、それで、よりコンパクトな設計を有する血管アクセスデバイス100を必要としてもよい。血管アクセスデバイス100は、その結果として片手で操作されてもよい。
【0063】
実際、図13及び14に示すように、血管アクセスデバイス100のいくつかの実施形態が、同じ手に血管アクセスデバイス100を保持しながら、単一の指又は親指を動かすことによって操作されてもよい。片手操作を可能にする血管アクセスデバイス100のいくつかの実施形態が、カラー前進グリップ1302又は中央グリップ1303を含んでもよい。図示のように、カラー前進グリップ1302又は中央グリップ1303は、親指と中指でハウジング104を保持する臨床医又はユーザによって、前進タブ112を片手で前進させることを可能にしてもよい。カラー前進グリップ1302又は中央グリップ1303は、例えば、人差し指によって並進させられてもよい。
【0064】
ここで図20~21を参照すると、いくつかの実施形態では、ハウジング104は、臨床医又は別のユーザに器具102の挿入深さを視覚的に示してもよい1つ又は複数のマーキング2000又は寸法を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マーキング2000は、前進タブ112上の指標2004と整列してもよいハウジング104の側面上のスケール2002であってもよい。いくつかの実施形態では、スケール2002は、特定のカテーテル設定及び長さでの使用のために固着されてもよい。いくつかの実施形態では、マーキング2000は、異なるカテーテル設定及び長さに対する位置を示す表を含んでもよい。いくつかの実施形態では、スケール2002は、カテーテル設定及び長さに応じて調整可能であるスライディングスケール2002及び/又はインジケータ2004であってもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、マーキング2000は、例えば、異なるタイプのカテーテルのような1つ又は複数の異なる器具102をどの程度まで挿入する及び/又は引き出すか示してもよい。いくつかの実施形態では、マーキング2000は、器具102の前進位置116、器具102の後退位置114、及び器具102の前進位置116と後退位置114との間の様々な位置、のうちの1つ又は複数を示してもよい。いくつかの実施形態は、器具102のカテーテル先端と遠位先端118との間の整列を示すアイコンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、追加のアイコンは、器具102の遠位先端118による、カテーテル先端を越える特定の移動距離を示してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、マーキング2000同士の間の距離は、血管アクセスデバイス100が、前進タブ112に対する器具102による移動距離に及ぼす乗数効果を有する、器具102と前進タブ112の構成を含む場合に調整されてもよい。もちろん、乗数は、当業者に既知の任意の数又は比であってもよい。
【0067】
ここで図20を参照すると、いくつかの実施形態では、採血アダプタ2006は、血管アクセスデバイス100に固着されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、採血アダプタ2006は、拡張チューブ126に直接接合されてもよい。別の実施形態では、採血アダプタ2006は、ルアー接続を介して血管アクセスデバイス100に結合されることにより、例えば、採血アダプタ2006が選択的に取り外されて、シリンジのような別のデバイスと置換されることを可能にしてもよい。
【0068】
ここで図21を参照すると、いくつかの実施形態では、可撓性継ぎ手2100が、レバーロック130又は別の結合要素122と、ハウジング104との間に組み込まれてもよい。可撓性継ぎ手2100は、カテーテルへの付属品とハウジング104との間に可撓性を提供してもよい。いくつかの実施形態では、可撓性継ぎ手2100は、ハウジング104及び/又はレバーロック130に結合されたチューブの小片又はボールとソケット、或いは別の結合要素122を含んでもよい。
【0069】
本明細書に列挙された全ての例及び条件的な言い回しは、本発明及び本発明者による当該技術を促進することに寄与させられる概念を理解することにおいて読者を支援する教育的目的を意図しており、そしてそのような具体的に記載された例及び条件に限定されるものでないと解釈されるべきである。本発明の実施形態が詳細に説明されてきたが、様々な変更、置換、及び代替が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、それに対してなされる得ることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0070】
100 血管アクセスデバイス
102 器具
104 ハウジング
106 近位端部
108 遠位端部
110 溝
112 前進タブ
114 後退位置
116 前進位置
118 遠位先端
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】