(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】薬品の結晶化のための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 498/18 20060101AFI20230508BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230508BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C07D498/18
A61P37/06
A61K31/436
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558285
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 US2021022188
(87)【国際公開番号】W WO2021194772
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ツォン、ホンシア
(72)【発明者】
【氏名】チャキー、ジョナサン パスカル
(72)【発明者】
【氏名】チェン、イェン-レーン
【テーマコード(参考)】
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA03
4C072BB03
4C072CC01
4C072CC12
4C072DD07
4C072EE09
4C072FF15
4C072GG07
4C072HH01
4C072UU01
4C086AA01
4C086CB22
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA20
4C086ZB08
(57)【要約】
薬品のような物質を結晶化するための方法を含む方法が開示される。例示的な方法は、薬品前駆体分散液/懸濁液を形成するために、核形成開始剤、界面活性剤溶液、及び薬品の非晶質形態を含み得る。本方法はまた、薬品を非晶質形態から結晶形態へ変換するために薬品前駆体分散液/懸濁液をインキュベートすることを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品を結晶化するための方法であって、
薬品前駆体分散液/懸濁液を形成するために核形成開始剤と、界面活性剤溶液と、薬品の非晶質形態と、を組み合わせることと、
前記薬品を前記非晶質形態から結晶形態に変換するために、前記薬品前駆体分散液/懸濁液をインキュベートすることと、を含む方法。
【請求項2】
前記薬品はエベロリムスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核形成開始剤はエベロリムスを含む、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記核形成開始剤はエベロリムス微結晶を含む、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記核形成開始剤、前記界面活性剤溶液、又はその両方は溶媒を含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒は酢酸エチル、ヘプタン、又は酢酸エチル及びヘプタンの両方を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒は酢酸エチル及びヘプタンを含み、酢酸エチル対ヘプタンの比は約1:4から1:30の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒は酢酸エチル及びヘプタンを含み、酢酸エチル対ヘプタンの比は約1:4から1:20の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒は酢酸エチル及びヘプタンを含み、酢酸エチル対ヘプタンの比は約1:20の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤溶液はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを含む、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記界面活性剤溶液はポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエートを含む、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(a)前記薬品の前記結晶形態を濾過すること、(b)前記薬品の前記結晶形態を洗浄すること、及び(c)前記薬品の前記結晶形態を乾燥させることのうち一つ以上をさらに含む、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
結晶性薬品物質は前記界面活性剤を実質的に含まない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記薬品前駆体分散液を攪拌することなく、前記薬品を前記非晶質形態から結晶形態へ変換するために、前記薬品前駆体分散液/懸濁液をインキュベートすることが行われる、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート界面活性剤の存在下において、非晶質エベロリムスを結晶化することにより形成されるエベロリムス微結晶を含み、
前記エベロリムス微結晶は実質的に前記界面活性剤を含まないように処理され、
前記エベロリムス微結晶は約3マイクロメートル未満の幅と、約1マイクロメートル未満の厚さと、約10マイクロメートル未満の長さと、を有する、常温保存可能な結晶性物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は結晶化のための方法、例えば、薬品の結晶化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な医療デバイスが医療用途のために、例えば、血管内用途のために開発されてきている。これらのデバイスのいくつかは、ガイドワイヤ、カテーテル、バルーン、及びステント等を含む。これらのデバイスは、様々な異なる製造方法のいずれか一つによって製造され、様々な方法のいずれか一つに従って使用され得る。これらの医療デバイスのいくつかは、薬品、例えば、薬品の結晶形態を含み得る。既知の医療デバイス及び方法の各々は、特定の利点と欠点とを有する。代替的な医療デバイス及び医療デバイスを製造及び使用するための代替的な方法を提供することが継続的に必要とされる。これは、結晶性物質(例えば、薬品の結晶形態)の形成を含み得る。
【発明の概要】
【0003】
薬品を結晶化するための方法が開示される。本方法は、薬品前駆体分散液/懸濁液を形成するために核形成開始剤と、界面活性剤溶液と、薬品の非晶質形態と、を組み合わせることと、前記薬品を前記非晶質形態から結晶形態に変換するために前記薬品前駆体分散液/懸濁液をインキュベートすることと、を含む。
【0004】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記薬品はエベロリムスを含む。
【0005】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記核形成開始剤はエベロリムスを含む。
【0006】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記核形成開始剤はエベロリムス微結晶を含む。
【0007】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記核形成開始剤、前記界面活性剤溶液、又はその両方は溶媒を含む。
【0008】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記溶媒は、酢酸エチル、ヘプタン、又は酢酸エチル及びヘプタンの両方を含む。
【0009】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記溶媒は酢酸エチル及びヘプタンを含み、酢酸エチル対ヘプタンの比は約1:4から1:30の範囲である。
【0010】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記溶媒は酢酸エチル及びヘプタンを含み、酢酸エチル対ヘプタンの比は約1:4から1:20の範囲である。
【0011】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記溶媒は酢酸エチル及びヘプタンを含み、酢酸エチル対ヘプタンの比は約1:20の範囲である。
【0012】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記界面活性剤溶液は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを含む。
【0013】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記界面活性剤溶液は、ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエートを含む。
【0014】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、(a)前記薬品の前記結晶形態を濾過すること、(b)前記薬品の前記結晶形態を洗浄すること、及び(c)前記薬品の前記結晶形態を乾燥させることのうち一つ以上をさらに含む。
【0015】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、結晶性薬品物質は前記界面活性剤を実質的に含まない。
【0016】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記薬品前駆体分散液を撹拌することなく、前記薬品を前記非晶質形態から結晶形態に変換するために、前記薬品前駆体分散液/懸濁液をインキュベートすることが行われる。
【0017】
非晶質エベロリムスを結晶性エベロリムスに変換するための方法が開示される。本方法は、核形成開始剤、界面活性剤溶液、及びエベロリムスの非晶質形態を組み合わせることにより薬品前駆体分散液/懸濁液を形成することと、前記薬品前駆体分散液/懸濁液が酢酸エチル及びヘプタンを含み、前記界面活性剤溶液がポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含み、エベロリムスの前記非晶質形態をエベロリムス微結晶に変換するために前記薬品前駆体分散液/懸濁液をインキュベートすることと、を備える。
【0018】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記溶媒における酢酸エチル対ヘプタンの比は約1:4から1:20の範囲である。
【0019】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記溶媒における酢酸エチル対ヘプタンの比は約1:20である。
【0020】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記核形成開始剤はエベロリムスを含む。
【0021】
上記の実施形態のいずれかの代わりに又は加えて、前記界面活性剤を実質的に含まないようにエベロリムス微結晶を濾過すること、前記エベロリムス微結晶を洗浄すること、及び前記エベロリムス微結晶を乾燥させることのうち一つ以上をさらに含む。
【0022】
常温保存可能な結晶性物質が開示される。前記物質は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート界面活性剤の存在下において非晶質エベロリムスを結晶化することにより形成されるエベロリムス微結晶を含み、前記エベロリムス微結晶は、前記界面活性剤を実質的に含まないように処理され、前記エベロリムス微結晶は、約3マイクロメートル未満の幅と、約1マイクロメートル未満の厚さと、約10マイクロメートル未満の長さと、を有する。
【0023】
いくつかの実施形態の上記概要は、本開示にそれぞれ開示された実施形態又は全ての実施を記載することを意図しない。以下の図面及び詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示は、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を考慮することによって、より完全に理解され得る。
【0025】
【0026】
本開示は、様々な修正及び代替の形態を受け入れ可能であるが、それらの詳細は、例によって図面に示されており、詳細に記載されるであろう。しかし、その意図が本発明を記載される特定の実施形態に限定することではないことは理解されるべきである。対照的に、その意図は本開示の趣旨及び範囲に収まる全ての変更、均等物及び代替物を対象とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
異なる定義が本明細書の特許請求の範囲又は他の部分において与えられない限り、以下に定義される用語にはこれらの定義が適用されるものとする。
【0028】
明確に示されているか否かに関わらず、全ての数値は本明細書において用語「約(about)」によって修飾されることが想定される。用語「約(about)」は、一般に、当業者の一人が列挙された値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えるであろう数の範囲を参照する。多くの場合、用語「約(about)」は、最も近い有効数字に丸められた数を含み得る。
【0029】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内の全ての数字を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられるとき、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「その(the)」は、内容が明確に他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられるとき、用語「又は(or)」は、内容が明確に他のことを指示しない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味において一般に用いられる。
【0031】
本明細書における「一つの実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態(some embodiments)」、「他の実施形態(other embodiments)」等への言及は、記載される実施形態が一つ以上の特定の特徴、構造、及び/又は特性を含み得ることを示すことに注意されたい。しかし、そのような記述は、全ての実施形態が特定の特徴、構造、及び/又は特性を含むことを必ずしも意味しない。加えて、特定の特徴、構造、及び/又は特性が一つの実施形態と関連して記載されるとき、そのような特徴、構造、及び/又は特性はまた、明確に反対に述べられない限り、明示的に記載されるか否かに関わらず、他の実施形態に関連して用いられ得ることは理解されるべきである。
【0032】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、異なる図面における類似の要素は同じ番号が付けられる。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、例示的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0033】
薬品コーティングされたステント、及び薬品コーティングされたバルーン等のような薬品コーティングされた医療デバイスは、ラクナ梗塞及び/又は血管疾患を治療するために用いられ得る。そのようなデバイスと共に用いられ得るいくつかの例示的な薬品は、パクリタキセル、エベロリムス等を含む。医療デバイスへの薬品の適用は、医療デバイスの表面に薬品の結晶形態を適用することを含み得る。少なくともいくつかの場合において、製造プロセスは、薬品の非晶質形態を結晶形態に変換することを含み得る。物質(例えば、薬品)の非晶質形態を結晶形態に変換するための方法が本明細書に開示される。さらに、そのようなコーティングが適用された医療デバイス、コーティングのための方法等が本明細書に開示される。
【0034】
薬品の非晶質形態を結晶形態に変換するためのいくつかの例示的なプロセスは、一般に、(a)適切な溶媒を調製すること、(b)溶媒を用いて核形成開始剤を調製すること、(c)薬品前駆体分散液/懸濁液を形成するために核形成開始剤を薬品の非晶質形態と組み合わせ/混合すること、及び(d)薬品の非晶質形態を薬品の結晶形態に変換するために薬品前駆体分散液/懸濁液をインキュベートすることを含み得る。薬品前駆体分散液/懸濁液と共に適切な界面活性剤を使用することは、所望の形態を有する薬品結晶の形成を可能にし、所望の大きさ及び/又は形状及び/又はアスペクト比を有する薬品結晶の形成を可能にし、所望の安定性を有するコーティング懸濁液の形成、及び/又はそれらの組み合わせを可能にし得る。従って、薬品の非晶質形態を結晶形態に変換するためのプロセスの少なくともいくつかは、(a)適切な溶媒を調製すること、(b)界面活性剤を溶媒と組み合わせ/混合することにより界面活性剤溶液を調製すること、(c)溶媒を用いて核形成開始剤を調製すること、(d)薬品前駆体分散液/懸濁液を形成するために核形成開始剤を界面活性剤溶液及び薬品の非晶質形態と組み合わせ/混合すること、及び(e)薬品の非晶質形態を薬品の結晶形態に変換するために薬品前駆体分散液/懸濁液をインキュベートすることを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、薬品は、マクロライド免疫抑制薬(リムス)であり得る。いくつかの実施形態において、マクロライド免疫抑制薬は、ラパマイシン、バイオリムス(バイオリムスA9)、40-O-(2-ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40-O-ベンジル-ラパマイシン、40-O-(4’-ヒドロキシメチル)ベンジル-ラパマイシン、40-O-[4’-(1,2-ジヒドロキシエチル)]ベンジル-ラパマイシン、40-O-アリル-ラパマイシン、40-O-[3’-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4(S)-イル)-プロプ-2’-エン-1’-イル]-ラパマイシン、(2’:E,4’S)-40-O-(4’,5’-ジヒドロキシペンタ-2’-エン-1’-イル)-ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシ)エトキシカル-ボニルメチル-ラパマイシン、40-O-(3-ヒドロキシ)プロピル-ラパマイシン、40-O-(6-ヒドロキシ)ヘキシル-ラパマイシン、40-O-[2-(2-ヒドロキシ)エトキシ]エチル-ラパマイシン、40-O-[(3S)-2,2-ジメチルジオキソラン-3-イル]メチル-ラパマイシン、40-O-[(2S)-2,3-ジヒドロキシプロプ-1-イル]-ラパマイシン、40-O-(2-アセトキシ)エチル-ラパマイシン、40-O-(2-ニコチノイルオキシ)エチル-ラパマイシン、40-O-[2-(N-モルホリノ)アセトキシ]エチル-ラパマイシン、40-O-(2-N-イミダゾリルアセトキシ)エチル-ラパマイシン、40-O-[2-(N-メチル-N’-ピペラジニル)アセトキシ]エチル-ラパマイシン、39-O-デスメチル-39,40-O、O-エチレン-ラパマイシン、(26R)-26-ジヒドロ-40-O-(2-ヒドロキシ)エチル-ラパマイシン、28-O-メチル-ラパマイシン、40-O-(2-アミノエチル)-ラパマイシン、40-O-(2-アセトアミノエチル)-ラパマイシン、40-O-(2-ニコチンアミドエチル)-ラパマイシン、40-O-(2-(N-メチル-イミダゾ-2’-イルカルベトキサミド)エチル)-ラパマイシン、40-O-(2-エトキシカルボニルアミノエチル)-ラパマイシン、40-O-(2-トリルスルホンアミドエチル)-ラパマイシン、40-O-[2-(4’、5’-ジカルボエトキシ-1’、2’、3’-トリアゾール-1’-イル)-エチル]-ラパマイシン、42-エピ-(テトラゾリル)ラパマイシン(タクロリムス)、42-[3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパノエイト]ラパマイシン(テムシロリムス)、(42S)-42-デオキシ-42-(1H-テトラゾル-1-イル)-ラパマイシン(ゾタロリムス)、又はそれらの誘導体、異性体、ラセミ体、ジアステレオ異性体、プロドラッグ、水和物、エステル、又は類似体である。他の薬品には、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミン、及びそれらの類似体のような抗炎症剤、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンジオスタチン、チミジンキナーゼ阻害剤、及びそれらの類似体のような抗腫瘍薬/抗増殖剤/抗有糸分裂薬、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、及びそれらの類似体のような麻酔薬、抗凝固剤、及び成長因子を含み得る。
【0036】
本明細書に示すように、薬品の非晶質形態を結晶形態に変換するための例示的なプロセスは、適切な溶媒を調製することを含む。溶媒が単一の物質であるとき、適切な溶媒を調製することは溶媒を適切な容器に入れることと同じくらい単純であり得る。溶媒が物質の混合物であるとき、適切な溶媒を調製することは溶媒を組み合わせること又は混合することを含み得る。
【0037】
少なくともいくつかの例では、溶媒は、メタノール、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、n-ブタノール、イソブチルアルコール又はt-ブチルアルコールのようなアルコール、アセトニトリル(ACN)、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロピルエーテル(IPE)、ジエチルエーテル(DEE)のようなエーテル、アセトン、2-ブタノン(MEK)又はメチルイソブチルケトン(MIBK)のようなケトン溶媒、ジクロロメタン(DCM)、モノフルオロベンゼン(MFB)、α,α,α-トリフルオロトルエン(TFT)、ニトロメタン(NM)、トリフルオロ酢酸エチル(ETFA)のようなハロゲン化溶媒、ヘキサン、又はヘプタン等のような脂肪族炭化水素、トルエン又はキシレンのような芳香族炭化水素、及び酢酸エチルのようなエステル溶媒を含み得る。例えば、酢酸エチル/ヘプタン、アセトン/水、IPA/水、IPA/THF、メタノール/水、IPA/ヘプタン、又はTHF/ヘプタンのような混合溶媒はまた用いられ得る。
【0038】
溶媒の混合物が使用されるとき、混合物は各物質の適切な比を有し得る。例えば、いくつかの例示的な溶媒は、酢酸エチル及びヘプタンの混合物を含み得る。酢酸エチル対ヘプタンの比は、約1:4から1:30の範囲、又は約1:4から1:20の範囲、又は約1:20の範囲であり得る。他の混合物及び/又は比が考えられる。従って、いくつかの例では、薬品の非晶質形態を結晶形態に変換するためのプロセスは、例えば、酢酸エチルをヘプタンと混合することにより溶媒を調製することを含み得る。
【0039】
薬品の非晶質形態を結晶形態に変換するためのプロセスは、界面活性剤溶液を調製すること(例えば、溶媒を用いて界面活性剤溶液を調製すること)を含み得る。少なくともいくつかの例では、界面活性剤は、TWEEN20(登録商標)(例えば、ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、又はPEG(20)ソルビタンモノオレエート)、TWEEN80(登録商標)(例えば、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート、又はPEG(80)ソルビタンモノオレエート)、SPAN(商標)80、SPAN(商標)20、TRITON(登録商標)X-100、TRITON(登録商標)400、及び/又は非イオン性界面活性剤等を含み得る。界面活性剤溶液は、適切な濃度を有し得る。例えば、界面活性剤溶液の濃度は、約0.01から1%(重量%)、約0.05から0.5%(重量%)、又は約0.1%(重量%)であり得る。
【0040】
薬品の非晶質形態を結晶形態に変換するためのプロセスは、核形成開始剤を調製すること(例えば、溶媒を用いて核形成開始剤を調製すること)を含み得る。このプロセス又は工程はまた、「シーディング」と呼ばれ得る。少なくともいくつかの例では、核形成開始剤は、適切な溶媒(例えば、薬品の非晶質形態を溶解するために用いられる溶媒と同じであってもよく、又は同じでなくてもよい)中に懸濁された薬品の結晶形態を含み得る。使用される薬品がエベロリムスであるとき、核形成開始剤は適切な溶媒中に適切な量の結晶性エベロリムスを含み得る。溶媒中の結晶性エベロリムスの濃度は、約0.1から10%、又は約0.1から2%、又は約0.5%の割当量であり得る。結晶性エベロリムスは、本明細書に記載されるように形成されたエベロリムス微結晶を含み得る。又は、結晶性エベロリムスは、異なる形態を有するエベロリムス結晶を含み得る。
【0041】
薬品の非晶質形態を結晶形態へ変換するためのプロセスは、薬品前駆体分散液/懸濁液を形成するために、核形成開始剤を界面活性剤溶液及び薬品の非晶質形態と混合すること及び/又は組み合わせることを含み得る。添加される薬品の非晶質形態の量は変わり得る。例えば、1ミリリットルあたり(例えば、溶媒1ミリリットルあたり)約0.5ミリグラムから100ミリグラムのエベロリムスが添加され/分散されてよく、又は1ミリリットルあたり約1ミリグラムから50ミリグラムのエベロリムスが添加され/分散されてよく、又は1ミリリットルあたり約10ミリグラムから30ミリグラムのエベロリムスが添加され/分散されてよく、又は1ミリリットルあたり約20ミリグラムのエベロリムスが溶解され得る。少なくともいくつかの例では、薬品分散溶液は、スラリーと呼ばれてもよく、及び/又はスラリーに似ていてもよい。
【0042】
薬品前駆体分散液/懸濁液は、薬品の非晶質形態を結晶形態へ変換するためにインキュベートされ得る。いくつかの例において、インキュベーションは、数時間から数日のオーダーの適切な期間にわたって行われ得る。例えば、インキュベーションは24時間にわたって行われ得る。これらの例のいくつかにおいて、及び他の例において、インキュベーションは、適切な温度における(例えば、約20℃から80℃における、又は約40℃から60℃における、又は約50℃における)高温又は暖温インキュベーション工程を含み得る。いくつかの例では、高温インキュベートは、薬品前駆体分散液を(例えば、オービタルシェーカのような適切なデバイスを使用することにより)撹拌することを含み得る。しかし、他の例では、高温インキュベーション工程は、撹拌/かき混ぜを含まない。高温インキュベーション工程は、数時間から数日のオーダーの適切な期間にわたって行われ得る。例えば、インキュベーションはおよそ2日間にわたって行われ得る。これらの例のいくつかにおいて、及び他の例では、インキュベーションはまた、適切な温度における(例えば、約-10℃から10℃における、又は約0℃から5℃における、又は約4℃における)低温又は冷温インキュベーション工程を含み得る。低温インキュベーション工程は、数時間から数日のオーダーの適切な期間にわたって行われ得る。例えば、インキュベーションは数日にわたって行われ得る。
【0043】
いくつかの例において、薬品の非晶質形態を結晶形態に変換するためのプロセスは、(a)薬品の結晶形態を濾過すること、(b)薬品の結晶形態を洗浄すること、及び(c)薬品の結晶形態を乾燥させることのうち一つ以上を含み得る。例えば、薬品の結晶形態を濾過、洗浄、及び乾燥することを含むいくつかのプロセスが考えられる。そうするとき、溶媒、界面活性剤、又はその両方は薬品結晶から本質的に完全に除去され得る。
【0044】
このプロセスによって形成される薬品の結晶形態(例えば、エベロリムスの結晶形態)は、形成された結晶が微結晶であると説明されることを可能にする形態、大きさ、及び形状を有する結晶をもたらし得る。特に、結晶化プロセスにおける界面活性剤の使用は、適切な比で混合された適切な溶媒混合物と共に、微結晶の形成をもたらす。本開示の目的のために、微結晶が比較的平坦な薄いシートであると説明され得る結晶であることは理解され得る。いくつかの例示的な寸法は、約3マイクロメートル未満の幅(例えば、約3マイクロメートル未満であり0でない幅を有する)、約1マイクロメートル未満の厚さ(例えば、約1マイクロメートル未満であり0でない厚さを有する)、及び約10マイクロメートル未満の長さ(例えば、約10マイクロメートル未満であり0でない長さを有する)を有する微結晶を含み得る。微結晶は多くの理由で望ましいことがあり得る。例えば、「より大きい」、棒状、または「非マイクロ」結晶を形成するいくつかの結晶化プロセスにおいて得られる結晶は、コーティング物質/分散液中に懸濁されるとき、急速に沈み得る。これは、薬品結晶を医療デバイスに適用することをより困難にし得る。本明細書に記載されるプロセスによって形成される微結晶は、例えば、コーティング物質/分散液中に懸濁され、そして長期間(例えば、数ヶ月以上のオーダー)にわたって懸濁液中に残り得る。
【0045】
いくつかの例において、本明細書に開示されるプロセスによって形成される微結晶は、適切なコーティング物質/分散液中に懸濁され得る。これは、適切な添加剤の添加を含み得る。例示的な添加剤は、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)を含み得る。いくつかの例において、薬品微結晶は、約20:80から約90:10の比において、又は約80:20の比において添加剤と混合され得る。次に、コーティング物質/分散液は、適切なプロセスを使用して医療デバイスに適用され得る。例えば、次に、コーティング物質/分散液は、シリンジを介するディップコーティング、ロールコーティングによって、及び/又は同様のものによって医療デバイスに適用され得る。図式的に示される、いくつかの例示的な薬品コーティングされた医療デバイスが、
図1及び
図2に示される。例えば、
図1は、カテーテルシャフト14に連結されるバルーン12を含む、薬品コーティングされたバルーンデバイス10を示す。薬品コーティング16(例えば、本明細書に開示されるように形成されたエベロリムス微結晶を含む結晶性エベロリムス)は、バルーン12に沿って配置され得る。
図2は、薬品コーティングされたステント110を示す。薬品コーティング116(例えば、本明細書に開示されるように形成されたエベロリムス微結晶を含む結晶性エベロリムス)は、ステント110に沿って配置され得る。
【0046】
実施例
本開示は、いくつかの実施形態を例示することに役立ち、かつ、本開示を限定しない以下の実施例を参照することによりさらに明確にされ得る。
【0047】
実施例1-溶媒の調製
ボトル内において200mLのヘプタンを10mLの酢酸エチルと混合することにより溶媒を調製した。
【0048】
実施例2-界面活性剤溶液の調製
50mgのTWEEN(登録商標)80を容器に秤量し、実施例1において調製した50mLの溶媒を容器に添加することにより、界面活性剤溶液を調製した。界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)80)が溶媒中に十分に分散するまで、界面活性剤溶液を振盪/混合した。任意に、溶液を15秒間超音波処理し得る。さらに、以前に作製された界面活性剤溶液のストックを再使用するとき、界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)80)を再分散するために超音波処理を使用し得る。
【0049】
実施例3-核形成開始剤
(例えば、以前に行った結晶化プロセスから)5mgのエベロリムス微結晶をバイアルに秤量し、実施例1において調製した10mLの溶媒をバイアルに添加することにより核形成開始剤を調製した。
【0050】
実施例4-結晶化
960mgの非晶質エベロリムスを、実施例3において調製した核形成開始剤を含有するバイアルに添加した。
【0051】
実施例2において調製した30mLの界面活性剤溶液をバイアル(例えば、実施例3において調製した核形成開始剤を含有し、960mgの非晶質エベロリムスを含有するバイアル)に添加した。
【0052】
核形成開始剤、界面活性剤、及び非晶質エベロリムスの得られた組合せが、薬品前駆体分散液であることは理解され得る。
【0053】
薬品前駆体分散液をバイアル中で1分間超音波処理した。
【0054】
バイアルを室温において24時間インキュベートすること(例えば、薬品前駆体分散液をインキュベートすること)により結晶化を生じさせた。
【0055】
インキュベーション後、バイアルを1分間超音波処理し得る。
【0056】
薬品前駆体分散液をインキュベートした結果、エベロリムス微結晶(例えば、微結晶懸濁液)を形成する。
【0057】
微結晶懸濁液を、0.45マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを備えた真空濾過システムを用いて濾過した。これは、微結晶懸濁液を濾過システムに移動させること、任意の残留結晶をフィルタに移動させるためにヘプタンを用いてバイアルをすすぐこと、濾過システム上において真空吸引すること、及びヘプタンを用いて微結晶を3回すすぐことを含む。
【0058】
微結晶を有するフィルタを、予め秤量した清浄なバイアルに移動させた。次に、微結晶を真空チャンバ中において一晩乾燥させた。
【0059】
乾燥した微結晶を秤量し、収率を計算した。
【0060】
示差走査熱量測定を介して結晶化パーセントを決定するために乾燥した微結晶を分析した。
【0061】
乾燥した微結晶を長期保存のために冷凍庫に入れた。
【0062】
濾過プロセスは、SEM分析のためのディスク上に微結晶懸濁液の滴を置くことを含み得る。
【0063】
本開示が、多くの点において例示的なものにすぎないことは理解されるべきである。本開示の範囲を逸脱することなく、詳細に、特に形状、大きさ、及び工程の配置に関して変更され得る。これは、適切な範囲で、他の実施形態に使用されている一つの例示的な実施形態の特徴のいずれかの使用を含み得る。本発明の範囲は、言うまでもなく、添付の特許請求の範囲が表現される言語において定義される。
【国際調査報告】