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特表2023-519879触覚インタフェースを備えるロボット脊椎手術システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】触覚インタフェースを備えるロボット脊椎手術システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20230508BHJP
   A61B 34/35 20160101ALI20230508BHJP
   A61B 90/11 20160101ALI20230508BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/35
A61B90/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558326
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2021024438
(87)【国際公開番号】W WO2021195542
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/001,019
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507280594
【氏名又は名称】マコ サージカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ボウリング,デイヴィッド,ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ゴスパヴィッチ,ボージャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,クリストファー,ダブルユー.
(72)【発明者】
【氏名】マキューアン,グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】グセルマン,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ニシムラ,カナ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ウェイイー
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、スクリューと連結して回転軸を中心としてスクリューを回転させるための手術用ツールを含むロボットマニピュレータを含む技術である。触覚デバイスは、アクチュエータと、アクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、回転インタフェースは、オペレータの手によって手動で操作可能である。1つ以上のコントローラは、ロボットマニピュレータの動きを制御して、計画された軌道に沿って手術用ツールの回転軸を維持し、手術用ツールを自律的に制御して、回転軸を中心とした回転速度でスクリューを回転させ、スクリューの既知のねじ山形状に従って前進速度でスクリューを直線的に前進させ、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得し、触覚デバイスのアクチュエータを制御して、回転インタフェースがスクリューと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることを可能にする。
【選択図】図14A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットマニピュレータと、
前記ロボットマニピュレータに結合され、スクリューと連結して回転軸を中心に前記スクリューを回転させるように構成された手術用ツールと、
アクチュエータと該アクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、前記回転インタフェースはオペレータの手によって手動で操作可能であるように構成されている、触覚デバイスと、
標的部位の位置を追跡するように構成されたナビゲーションシステムと、
前記ロボットマニピュレータと前記触覚デバイスと前記ナビゲーションシステムとに結合された1つ以上のコントローラと
を含んでなるロボット手術システムであって、
前記1つ以上のコントローラは、前記標的部位の前記追跡された位置に基づいて前記標的部位に対して計画された軌道に沿って前記手術用ツールの前記回転軸を維持するように前記ロボットマニピュレータの運動を制御することと、前記回転軸を中心とした回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前進速度で前記スクリューを直線的に前進させるように前記手術用ツールを自律的に制御することであって、前記回転速度および前記前進速度は、事前定義されており、前記スクリューの既知のねじ山形状に比例しているものである、制御することと、前記スクリューと前記標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得することと、前記取得された測定値に基づいて、前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して、前記回転インタフェースが前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用をエミュレートすることを可能にすることとを行うように構成されたものである、ロボット手術システム。
【請求項2】
前記1つ以上のコントローラが、前記アクチュエータに抵抗力を提供して前記オペレータの前記手によって前記回転インタフェースを回転させるのに必要な力を調整するように構成されることによって、前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用をさらにエミュレートしており、前記回転インタフェースを回転させるのに必要な前記力が、前記標的部位に対して前記スクリューを回転させるために必要とされる現在の力を反映するものである、請求項1に記載のロボット手術システム。
【請求項3】
前記1つ以上のコントローラが、自律チェックモードを開始するようにさらに構成されており、前記回転インタフェースが、前記調整された力に従って、前記標的部位に対して前記スクリューを回転させるのに必要な前記現在の力を反映する触覚フィードバックを前記オペレータに提供するように、前記スクリューを回転させるように前記手術用ツールを制御する能力を用いることなく、手動で操作可能である、請求項2に記載のロボット手術システム。
【請求項4】
条件またはコマンドに応じて、前記1つ以上のコントローラが、前記手術用ツールを自律的に制御するのと同時に前記自律チェックモードを開始するようにさらに構成される、請求項3に記載のロボット手術システム。
【請求項5】
条件またはコマンドに応じて、前記1つ以上のコントローラが、前記手術用ツールを自律的に制御して前記スクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、前記自律チェックモードを開始するようにさらに構成される、請求項3または4に記載のロボット手術システム。
【請求項6】
条件またはコマンドに応じて、前記1つ以上のコントローラが、前記手術用ツールの自律制御が停止または一時停止されて前記スクリューの回転を停止した後、前記手術用ツールを自律的に制御することを再開して前記スクリューを回転させるようにさらに構成される、請求項3~5のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項7】
前記1つ以上のコントローラが、手動制御モードを開始するようにさらに構成され、前記回転インタフェースが、前記オペレータが前記回転インタフェースを手動で操作するのに基づいて、前記スクリューの前記回転速度または前記スクリューの前記前進速度のうちの1つを制御する能力を用いて手動で操作可能であり、
前記1つ以上のコントローラが、前記回転インタフェースが手動で操作されて前記スクリューの前記回転速度または前記スクリューの前記前進速度のうちの1つを制御するのに応じて、前記手術用ツールを制御して、前記回転軸を中心とした前記回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前記前進速度で前記スクリューを直線的に前進させるように構成されており、
前記回転インタフェースが、前記調整された力に従って手動で操作可能であり、前記標的部位に対して前記スクリューを回転させるために必要な前記現在の力を反映する触覚フィードバックを前記オペレータに提供するものである、
請求項2~6のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項8】
条件またはコマンドに応じて、前記1つ以上のコントローラが、前記手術用ツールを自律的に制御して前記スクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、前記手動制御モードを開始するようにさらに構成される、請求項7に記載のロボット手術システム。
【請求項9】
条件またはコマンドに応じて、前記1つ以上のコントローラが、前記手動制御モードから、前記手術用ツールを自律的に制御して前記スクリューを回転させるのを再開することに切り替えるようにさらに構成される、請求項8に記載のロボット手術システム。
【請求項10】
前記触覚デバイスが、前記条件または前記コマンドをトリガするように構成されている、請求項4~9のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項11】
前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用を示す前記測定値を取得するように構成されているセンサをさらに含み、前記1つ以上のコントローラが前記センサに結合されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項12】
前記1つ以上のコントローラが、
前記スクリューの制御中に条件が存在すると判定し、
前記条件が存在すると判定することに応じて、前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して前記回転インタフェースを回転させる能力を妨げることによって、前記条件に関する触覚フィードバックを前記オペレータに提供する
ように構成されている、請求項7~11のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項13】
前記ナビゲーションシステムが、
前記標的部位に登録されている前記標的部位の解剖学的モデルに対する前記スクリューの位置を決定することであって、前記ナビゲーションシステムは、前記解剖学的モデルに対する前記スクリューの複数の位置における前記スクリューと前記解剖学的モデルとの間の予想される相互作用を示す所定のデータを含むものである、決定することと、
前記解剖学的モデルに対する前記スクリューの前記決定された位置と前記所定のデータとに基づいて、前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用を示す前記測定値を取得することと
を行うようにさらに構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項14】
前記回転速度および前記前進速度は、関係
【数1】
に従って前記既知のねじ山形状に比例しており、式中、
【数2】
は前記回転速度であり、
【数3】
は前記前進速度であり、ピッチは前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数である、請求項1~13のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項15】
前記触覚デバイスは手持ち式ペンダントとしてさらに定義され、前記回転インタフェースがノブとしてさらに定義される、請求項1~14のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項16】
前記触覚デバイスが、前記ロボットマニピュレータおよび前記手術用ツールから離間されて遠隔に配置されている、請求項1~15のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項17】
前記触覚デバイスが、前記ロボットマニピュレータまたは前記手術用ツールに直接取り付けられている、請求項1~16のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項18】
前記1つ以上のコントローラは、前記オペレータからの入力を受信して、
前記アクチュエータに提供される前記抵抗力と、
前記手術用ツールを制御して前記スクリューを回転させる前記回転インタフェースの能力の感度と
のうちの1つ以上を選択的に調整するようにさらに構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項19】
前記ロボット手術システムがディスプレイをさらに含み、前記1つ以上のコントローラがシミュレートされた自律チェックモードを開始するようにさらに構成され、
前記1つ以上のコントローラは、
前記回転軸を中心とした前記回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前記前進速度で前記スクリューを直線的に前進させることにより、前記手術用ツールを自律的に制御することをシミュレートし、
前記手術用ツールの前記シミュレートされた自律制御を前記ディスプレイに表示し、
前記スクリューと前記標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得し、
前記シミュレートされた現在の相互作用に基づいて、前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して、前記回転インタフェースが前記スクリューと前記標的部位との間の前記シミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にする
ように構成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項20】
前記1つ以上のコントローラが、前記手術用ツールを自律的に制御する前に、前記シミュレートされた自律チェックモードを開始するようにさらに構成されている、請求項19に記載のロボット手術システム。
【請求項21】
前記ロボット手術システムがディスプレイをさらに含み、前記1つ以上のコントローラがシミュレートされた手動制御モードを開始するようにさらに構成され、
前記1つ以上のコントローラは、
前記回転インタフェースが、手動で操作されて、前記スクリューの前記回転速度または前記スクリューの前記前進速度のうちの1つを制御するのに応じて、制御入力を受信し、
前記制御入力に応じて、前記回転軸を中心とした前記回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前記前進速度で前記スクリューを直線的に前進させることにより、前記手術用ツールを手動で制御することをシミュレートし、
前記手術用ツールの前記シミュレートされた手動制御を前記ディスプレイに表示し、
前記スクリューと前記標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得し、
前記シミュレートされた現在の相互作用に基づいて、前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して、前記回転インタフェースが前記スクリューと前記標的部位との間の前記シミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にする
ように構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載のロボット手術システム。
【請求項22】
条件またはコマンドに応じて、前記1つ以上のコントローラが、前記手術用ツールを自律的に制御して前記スクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、前記シミュレートされた手動制御モードを開始するようにさらに構成される、請求項21に記載のロボット手術システム。
【請求項23】
ロボットマニピュレータと、該ロボットマニピュレータに結合され、スクリューと連結して回転軸を中心として前記スクリューを回転させるように構成された手術用ツールと、アクチュエータと該アクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、オペレータの手によって手動で操作できるように構成された触覚デバイスと、標的部位の位置を追跡するように構成されたナビゲーションシステムと、前記ロボットマニピュレータと前記触覚デバイスと前記ナビゲーションシステムとに結合された1つ以上のコントローラとを含んでなるロボット手術システムを制御する方法であって、
前記1つ以上のコントローラが、前記標的部位の前記追跡された位置に基づいて前記標的部位に対して計画された軌道に沿って前記手術用ツールの前記回転軸を維持するように前記ロボットマニピュレータの運動を制御するステップと、
前記1つ以上のコントローラが、前記回転軸を中心とした回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前進速度で前記スクリューを直線的に前進させるように前記手術用ツールを自律的に制御するステップであって、前記回転速度および前記前進速度は、事前定義されており、前記スクリューの既知のねじ山形状に比例している、前記制御するステップと、
前記1つ以上のコントローラが、前記スクリューと前記標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得するステップと、
前記1つ以上のコントローラが、前記取得された測定値に基づいて、前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して、前記回転インタフェースが前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするステップと
を含んでなるロボット手術システムを制御する方法。
【請求項24】
前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して、前記取得された測定値に基づいて、前記回転インタフェースが前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするステップは、前記1つ以上のコントローラが、前記アクチュエータに抵抗力を提供して、前記オペレータの前記手によって前記回転インタフェースを回転させるのに必要な力を調整することを含み、前記回転インタフェースを回転させるのに必要な前記力が、前記標的部位に対して前記スクリューを回転させるのに必要な現在の力を反映するものである、請求項23に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項25】
前記1つ以上のコントローラが自律チェックモードを開始するステップをさらに含み、
前記回転インタフェースが、前記調整された力に従って、前記標的部位に対して前記スクリューを回転させるのに必要な前記現在の力を反映する触覚フィードバックを前記オペレータに提供するように、前記スクリューを回転させるように前記手術用ツールを制御する能力を用いることなく、手動で操作可能である、請求項24に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項26】
前記1つ以上のコントローラが、条件またはコマンドに応じて、前記手術用ツールを自律的に制御するのと同時に前記自律チェックモードを開始するステップをさらに含む、請求項25に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項27】
前記1つ以上のコントローラが、条件またはコマンドに応じて、前記手術用ツールを自律的に制御して前記スクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、前記自律チェックモードを開始するステップをさらに含む、請求項25または26に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項28】
前記1つ以上のコントローラが、条件またはコマンドに応じて、前記手術用ツールの自律制御が停止または一時停止されて前記スクリューの回転を停止した後、前記手術用ツールを自律的に制御することを再開して前記スクリューを回転させることをさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項29】
前記1つ以上のコントローラが、手動制御モードを開始するステップであって、前記回転インタフェースは、前記オペレータが前記回転インタフェースを手動で操作するのに基づいて、前記スクリューの前記回転速度または前記スクリューの前記前進速度のうちの1つを制御する能力を用いて手動で操作可能である、前記開始するステップと、
前記1つ以上のコントローラが、前記回転インタフェースが手動で操作されて前記スクリューの前記回転速度または前記スクリューの前記前進速度のうちの1つを制御するのに応じて、前記手術用ツールを制御して、前記回転軸を中心とした前記回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前記前進速度で前記スクリューを直線的に前進させるステップと
をさらに含み、
前記回転インタフェースは、前記調整された力に従って手動で操作可能であり、前記標的部位に対して前記スクリューを回転させるために必要な前記現在の力を反映する触覚フィードバックを前記オペレータに提供する、請求項24に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項30】
前記1つ以上のコントローラが、条件またはコマンドに応じて、前記手術用ツールを自律的に制御して前記スクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、前記手動制御モードを開始するステップをさらに含む、請求項29に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項31】
前記1つ以上のコントローラが、条件またはコマンドに応じて、前記手動制御モードから、前記手術用ツールを自律的に制御して前記スクリューを回転させるのを再開することに切り替えるステップをさらに含む、請求項30に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項32】
前記触覚デバイスが、前記条件または前記コマンドをトリガするステップをさらに含む、請求項26~31のいずれか一項に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項33】
前記ロボット手術システムがセンサを含み、該センサを用いて、前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用を示す前記測定値を取得するステップをさらに含み、前記1つ以上のコントローラは前記センサに結合されている、請求項23~32のいずれか一項に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項34】
前記1つ以上のコントローラが、前記スクリューの制御中に条件が存在すると判定するステップと、
前記1つ以上のコントローラが、前記条件が存在すると判定することに応じて、前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して、前記回転インタフェースを回転させる能力を妨げることによって、前記条件に関する触覚フィードバックを提供するステップと
をさらに含む、請求項29~33のいずれか一項に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項35】
前記ナビゲーションシステムが、前記標的部位に登録されている前記標的部位の解剖学的モデルに対する前記スクリューの位置を決定するステップであって、前記ナビゲーションシステムは、前記解剖学的モデルに対する前記スクリューの複数の位置における前記スクリューと前記解剖学的モデルとの間の予想される相互作用を示す所定のデータを含む、決定するステップと、
前記ナビゲーションシステムが、前記解剖学的モデルに対する前記スクリューの前記決定された位置および前記所定のデータに基づいて、前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用を示す前記測定値を取得するステップと
をさらに含む、請求項23~34のいずれか一項に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項36】
前記1つ以上のコントローラが、前記オペレータからの入力を受信して、
前記アクチュエータに提供される前記抵抗力と、
前記手術用ツールを制御して前記スクリューを回転させる前記回転インタフェースの能力の感度と
のうちの1つ以上を選択的に調整することをさらに含む、請求項23~35のいずれか一項に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項37】
前記ロボット手術システムがディスプレイをさらに含み、前記方法は、前記1つ以上のコントローラがシミュレートされた自律チェックモードを開始するステップをさらに含み、
前記1つ以上のコントローラは、
前記回転軸を中心とした前記回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前記前進速度で前記スクリューを直線的に前進させることにより、前記手術用ツールを自律的に制御することをシミュレートするステップと、
前記手術用ツールの前記シミュレートされた自律制御を前記ディスプレイに表示するステップと、
前記スクリューと前記標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得するステップと、
前記シミュレートされた現在の相互作用に基づいて、前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して、前記回転インタフェースが前記スクリューと前記標的部位との間の前記シミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするステップと
を含むものである、請求項23~26のいずれか1項に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項38】
前記1つ以上のコントローラが、前記手術用ツールを自律的に制御する前に、前記シミュレートされた自律チェックモードを開始するステップをさらに含む、請求項37に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項39】
前記ロボット手術システムがディスプレイをさらに含み、前記方法は、前記1つ以上のコントローラがシミュレートされた手動制御モードを開始するステップをさらに含み、
前記1つ以上のコントローラは、
前記回転インタフェースが、手動で操作されて、前記スクリューの前記回転速度または前記スクリューの前記前進速度のうちの1つを制御するのに応じて、制御入力を受信するステップと、
前記制御入力に応じて、前記回転軸を中心とした前記回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前記前進速度で前記スクリューを直線的に前進させることにより、前記手術用ツールを手動で制御することをシミュレートするステップと、
前記手術用ツールの前記シミュレートされた手動制御を前記ディスプレイに表示するステップと、
前記スクリューと前記標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得するステップと、
前記シミュレートされた現在の相互作用に基づいて、前記触覚デバイスの前記アクチュエータを制御して、前記回転インタフェースが前記スクリューと前記標的部位との間の前記シミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするステップと
を含むものである、請求項23~27のいずれか1項に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項40】
前記1つ以上のコントローラが、条件またはコマンドに応じて、前記手術用ツールを自律的に制御して前記スクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、前記シミュレートされた手動制御モードを開始するステップをさらに含む、請求項39に記載のロボット手術システムを制御する方法。
【請求項41】
ロボットマニピュレータと、
前記ロボットマニピュレータに結合され、スクリューと連結して回転軸を中心に前記スクリューを回転させるように構成された手術用ツールと、
アクチュエータと該アクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、前記回転インタフェースはオペレータの手によって手動で操作可能であるように構成されている、触覚デバイスと、
標的部位の位置を追跡するように構成されたナビゲーションシステムと、
前記ロボットマニピュレータと前記触覚デバイスと前記ナビゲーションシステムとに結合された1つ以上のコントローラと
を含んでなるロボット手術システムであって、
前記1つ以上のコントローラは、前記標的部位の前記追跡された位置に基づいて前記標的部位に対して計画された軌道に沿って前記手術用ツールの前記回転軸を維持するように前記ロボットマニピュレータの運動を制御することと、前記触覚デバイスから制御入力を受信することであって、前記回転インタフェースは、前記オペレータが前記回転インタフェースを手動で操作することに基づいて、前記スクリューの回転速度または前記スクリューの前進速度のうちの1つを制御する能力を用いて手動で操作可能である、前記受信することと、前記触覚デバイスからの制御入力に応じて、前記回転軸を中心とした回転速度で前記スクリューを回転させ、前記計画された軌道に沿った前進速度で前記スクリューを直線的に前進させるように、前記手術用ツールを制御することであって、前記回転速度および前記前進速度は、事前定義されており、前記スクリューの既知のねじ山形状に比例している、前記制御することと、前記スクリューと前記標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得することと、前記取得された測定値に基づいて、前記触覚デバイスを制御して、前記回転インタフェースが前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用をエミュレートすることを可能にすることとを行うように構成されたものである、ロボット手術システム。
【請求項42】
請求項41に記載のロボット手術システムを操作する方法。
【請求項43】
ロボットマニピュレータと、
前記ロボットマニピュレータに結合され、回転軸を中心に回転するように構成された手術用ツールと、
アクチュエータと該アクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、前記回転インタフェースはオペレータの手によって手動で操作可能であるように構成されている、触覚デバイスと、
標的部位の位置を追跡するように構成されているナビゲーションシステムと、
前記ロボットマニピュレータと前記触覚デバイスと前記ナビゲーションシステムとに結合された1つ以上のコントローラと
を含んでなるロボット手術システムであって、
前記1つ以上のコントローラは、前記標的部位の前記追跡された位置に基づいて前記標的部位に対して計画された軌道に沿って前記手術用ツールの前記回転軸を維持するように前記ロボットマニピュレータの運動を制御することと、前記手術用ツールを自律的に制御して、前記回転軸を中心とした回転速度で前記手術用ツールを回転させ、前記計画された軌道に沿った前進速度で前記手術用ツールを直線的に前進させることと、前記手術用ツールと前記標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得することと、前記取得された測定値に基づいて、前記触覚デバイスを制御して、前記回転インタフェースが前記手術用ツールと前記標的部位との間の前記現在の相互作用をエミュレートすることを可能にすることとを行うように構成されたものである、ロボット手術システム。
【請求項44】
請求項42に記載の手術システムを操作する方法。
【請求項45】
アクチュエータと、該アクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、前記回転インタフェースはオペレータの手によって手動で操作可能であるように構成されている、触覚デバイスと、
ディスプレイデバイスと、
前記触覚デバイスと前記ディスプレイデバイスとに結合され、前記ディスプレイデバイス上でシミュレーションを提供するように構成された1つ以上のコントローラと
を含んでなるシミュレーションシステムであって、
前記シミュレーションは、
シミュレートされた手術用ツールを提供することであって、前記シミュレートされた手術用ツールは、シミュレートされたスクリューと連結し、シミュレートされた標的部位に対してシミュレートされた軌道に沿って回転軸を中心として前記シミュレートされたスクリューを回転させる、前記提供することと、
前記回転軸を中心とした回転速度で前記シミュレートされたスクリューを回転させ、前記シミュレートされた軌道に沿った前進速度で前記シミュレートされたスクリューを直線的に前進させるように、前記シミュレートされた手術用ツールのシミュレートされた制御を提供することであって、前記回転速度および前記前進速度は、事前定義されており、前記シミュレートされたスクリューの既知のねじ山形状に比例している、前記提供することと、
前記シミュレートされたスクリューと前記シミュレートされた標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得することと、
前記シミュレートされた現在の相互作用に基づいて、前記触覚デバイスを制御して、前記回転インタフェースが前記シミュレートされたスクリューと前記シミュレートされた標的部位との間の前記シミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にすることと
を行うように構成されている、シミュレーションシステム。
【請求項46】
請求項45に記載のシミュレーションシステムを操作する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月27日出願の米国特許仮出願第63/001,019号の優先権およびすべての利益を主張し、その開示全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
患者の脊椎に外科手術を実施するロボット手術システムはよく知られている。例えば、ロボット手術システムは、患者の脊椎(spine)に椎弓根スクリュー(pedicle screws)を配置するために現在利用されている。
【0003】
椎弓根スクリューの配置を伴う手術を患者が必要とする場合、術前撮像および/または術中撮像(pre-operative imaging and/or intra-operative imaging)は、治療が必要な患者の解剖学的形態(この場合は患者の脊椎)を視覚化するためによく使用される。そして、外科医は、画像に関して、および/または画像から作成された3Dモデルに関して、椎弓根スクリューを配置するべき位置を計画する。この仕組みとしては、例えば、画像および/または3Dモデル内の所望の姿勢を特定することによって、椎弓根スクリューが配置されている特定の椎骨に対する各椎弓根スクリューの位置および配向(すなわち、姿勢)を決定することを含む。このような計画が設定されると、この計画は実行のためにロボット手術システムに転送される。
【0004】
典型的には、ロボット手術システムは、ロボットマニピュレータを含み、このロボットマニピュレータは患者の上方で、かつ配置される椎弓根スクリューの所望の配向とアライメントを取る所望の軌道に沿って、ツールガイドを位置決めする。また、ロボット手術システムは、ロボットマニピュレータが外科医の計画に従って所望の軌道に沿ってツールガイドを配置することができるように、患者の解剖学的形態に対するツールガイドの位置を決定するナビゲーションシステムを含む。場合によっては、ナビゲーションシステムは、マニピュレータおよび患者に取り付けられる追跡デバイスを含み、ロボット手術システムが、所望の軌道を維持するために必要に応じてツールガイドを動かすことによって、外科手術中の患者の運動を監視し、この運動に応答することができる。
【0005】
ツールガイドが所望の軌道にアライメントを取るように位置決めされると、ロボットマニピュレータは、アライメントを維持するように制御される。そして、外科医は、ツールガイドを介して、椎骨(vertebra)に隣接してカニューレを位置決めする。外科医は、従来の穿孔ツールをカニューレに挿入し、椎弓根スクリュー用のパイロットホールを穿孔する。そして、外科医は、穿孔ツールを取り外し、椎弓根スクリュードライバー(screwdriver)を用いて椎弓根スクリューをパイロットホール内の適所に挿入する。この方法では、ロボットマニピュレータがパイロットホールの穿孔の際にまたは椎弓根スクリューの挿入の際にほとんどまたはまったく役割を果たさないため、ロボットマニピュレータはあまり利用されていない。
【0006】
他方、「Robotic Spine Surgery System and Methods」と題された、2018年11月8日に提出された米国特許第16/184,376号の開示は、ロボットシステムを利用して、回転軸を中心とした回転速度でスクリューを回転させて、計画された軌道に沿った前進速度でスクリューを直線的に前進させるために、手術用ツールを自律的に制御することができる技術を開示している。この方法論でロボットマニピュレータを利用しているにもかかわらず、外科医は、組織との相互作用中に関与する力、エネルギー、材料、および情報の流れに直接接触または制御することができない。次に、これは、外科医が外科手術中の組織相互作用プロセスを監視および評価するために慣れている触覚および感覚情報の喪失につながる可能性がある。感覚入力の欠如のために外科医がプロセスを評価できないことは、とりわけ、外科医の自信の喪失、感情的なストレス、手順の有効性の不十分さ、および、そうでなければ外科医には認識可能であるがロボットソリューションによってはキャプチャされない予期しない状況に対応できないことにつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の第1の態様は、ロボットマニピュレータと、ロボットマニピュレータに結合され、スクリューと連結して回転軸を中心にスクリューを回転させるように構成された手術用ツールと、アクチュエータと該アクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、回転インタフェースはオペレータの手によって手動で操作可能であるように構成されている、触覚デバイスと、標的部位の位置を追跡するように構成されたナビゲーションシステムと、ロボットマニピュレータと触覚デバイスとナビゲーションシステムとに結合された1つ以上のコントローラとを含んでなるロボット手術システムであって、1つ以上のコントローラは、標的部位の追跡された位置に基づいて標的部位に対して計画された軌道に沿って手術用ツールの回転軸を維持するようにロボットマニピュレータの運動を制御することと、回転軸を中心とした回転速度でスクリューを回転させ、計画された軌道に沿った前進速度でスクリューを直線的に前進させるように、手術用ツールを自律的に制御することであって、回転速度および前進速度は、事前定義されており、スクリューの既知のねじ山形状に比例している、制御することと、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得することと、取得された測定値に基づいて、触覚デバイスを制御して、回転インタフェースがスクリューと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることとを可能にすることとを行うように構成されたものである、ロボット手術システムを含む。
【0008】
いくつかの実施態様では、回転インタフェースは、ノブ、ホイール、ロータリースイッチ、またはダイヤルのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0009】
いくつかの実施態様では、触覚デバイスは、回転インタフェースの代わりに、線形押しボタン、線形スイッチ、線形トリガ、または線形スライダなどであるがこれらに限定されない線形インタフェースを含む。
【0010】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、触覚デバイスのアクチュエータを制御するように構成されることによって、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートする。
【0011】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、アクチュエータに抵抗力を提供してオペレータの手によって回転インタフェースを回転させるのに必要な力を調整するように構成されることによって、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用をさらにエミュレートしており、回転インタフェースを回転させるのに必要な力は、標的部位に対してスクリューを回転させるために必要とされる現在の力を反映する。
【0012】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、アクチュエータ以外の、またはアクチュエータに加えた手段を利用して、インタフェースの機械的運動に抵抗するように構成される。例えば、インタフェースの動きの影響に対して、触覚デバイスは、バイアス機構、戻り止め、ラチェットおよび/もしくはギアシステムなどを含むがこれらに限定されない機械的コンポーネント、誘導性、容量性および/もしくは抵抗性要素などであるがこれらに限定されない電気コンポーネント、磁気コンポーネント、電磁コンポーネント、電気機械コンポーネント、油圧コンポーネントならびに/または空気圧コンポーネントを利用することができる。
【0013】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、インタフェースの動きの範囲を制限するように構成されることによって、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用をさらにエミュレートする。
【0014】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、自律チェックモードを開始するようにさらに構成され、回転インタフェースは、標的部位に対してスクリューを回転させるのに必要な現在の力を反映する触覚フィードバックをオペレータに提供するように、スクリューを回転させるように手術用ツールを制御する能力を用いることなく、調整された力に従って手動で操作可能である。
【0015】
いくつかの実施態様では、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラは、手術用ツールを自律的に制御すると同時に自律チェックモードを開始するようにさらに構成される。
【0016】
いくつかの実施態様では、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラは、手術用ツールを自律的に制御してスクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、自律チェックモードを開始するようにさらに構成される。
【0017】
いくつかの実施態様では、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラは、手術用ツールの自律制御が停止または一時停止されてスクリューの回転を停止した後、手術用ツールを自律的に制御することを再開してスクリューを回転させるようにさらに構成される。
【0018】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、手動制御モードを開始するようにさらに構成され、回転インタフェースは、オペレータが回転インタフェースを手動で操作するのに基づいて、スクリューの回転速度またはスクリューの前進速度のうちの1つを制御する能力を用いて手動で操作可能であり、1つ以上のコントローラは、回転インタフェースが手動で操作されてスクリューの回転速度またはスクリューの前進速度のうちの1つを制御するのに応じて、手術用ツールを制御して、回転軸を中心とした回転速度でスクリューを回転させ、計画された軌道に沿った前進速度でスクリューを直線的に前進させるように構成されており、回転インタフェースは、調整された力に従って手動で操作可能であり、標的部位に対してスクリューを回転させるために必要な現在の力を反映する触覚フィードバックをオペレータに提供する。
【0019】
いくつかの実施態様では、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラは、手術用ツールを自律的に制御してスクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、手動制御モードを開始するようにさらに構成される。
【0020】
いくつかの実施態様では、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラは、手動制御モードから、手術用ツールを自律的に制御してスクリューを回転させるのを再開することに切り替えるようにさらに構成される。
【0021】
いくつかの実施態様では、触覚デバイスは、条件またはコマンドをトリガするように構成される。
【0022】
いくつかの実施態様では、ロボット手術システムは、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得するように構成されているセンサをさらに含み、1つ以上のコントローラはセンサに結合されている。
【0023】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、スクリューの制御中に条件が存在することを判定し、条件が存在することを判定したことに応じて、触覚デバイスのアクチュエータを制御して回転インタフェースを回転させる能力を妨げることによって、オペレータにその条件に関する触覚フィードバックを提供するように構成される。
【0024】
いくつかの実施態様では、ナビゲーションシステムは、標的部位に登録されている標的部位の解剖学的モデルに対するスクリューの位置を決定することであって、ナビゲーションシステムは、解剖学的モデルに対するスクリューの複数の位置におけるスクリューと解剖学的モデルとの間の予想される相互作用を示す所定のデータを含む、決定することと、前記解剖学的モデルに対する前記スクリューの前記決定された位置および前記所定のデータに基づいて、前記スクリューと前記標的部位との間の前記現在の相互作用を示す前記測定値を取得することとを行うようにさらに構成される。
【0025】
いくつかの実施態様では、回転速度および前進速度は、関係
【数1】
に従って既知のねじ山形状に比例し、式中、
【数2】
は回転速度であり、
【数3】
は前進速度であり、ピッチはスクリューの単位長さあたりのねじ山の数である。
【0026】
いくつかの実施態様では、触覚デバイスは、手持ち式ペンダントとしてさらに定義される。
【0027】
いくつかの実施態様では、触覚デバイスは、ノブ、ロータリースイッチ、またはダイヤルなどであるがこれらに限定されない回転インタフェースである。
【0028】
いくつかの実施態様では、スクリューの代わりに、ロッド、アンカー、スペーサー、ケージまたはプレートなどの脊椎インプラントなど、任意のインプラントを利用することができる。
【0029】
いくつかの実施態様では、スクリューはより具体的にはセルフタッピングスクリュー(a self-tapping screw)である。
【0030】
いくつかの実施態様では、触覚デバイスは、ロボットマニピュレータおよび手術用ツールから離間されて遠隔に配置されている。
【0031】
いくつかの実施態様では、触覚デバイスは、ロボットマニピュレータまたは手術用ツールに直接取り付けられている。
【0032】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、オペレータからの入力を受け取り、アクチュエータに提供される抵抗力と、手術用ツールを制御してスクリューを回転させる回転インタフェースの能力の感度とのうちの1つ以上を選択的に調整するようにさらに構成される。
【0033】
いくつかの実施態様では、ロボット手術システムはディスプレイをさらに含み、1つ以上のコントローラはシミュレートされた自律チェックモードを開始するようにさらに構成され、1つ以上のコントローラは、回転軸を中心とした回転速度でスクリューを回転させ、計画された軌道に沿った前進速度でスクリューを直線的に前進させることにより、手術用ツールを自律的に制御することをシミュレートし、手術用ツールのシミュレートされた自律制御をディスプレイに表示し、スクリューと標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得し、シミュレートされた現在の相互作用に基づいて、触覚デバイスのアクチュエータを制御して、回転インタフェースが、アクチュエータに抵抗力を提供して、オペレータの手によって回転インタフェースを回転させるのに必要な力を調整するように構成することにより、スクリューと標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするように構成され、回転インタフェースを回転させるのに必要な力は、標的部位に対してスクリューを回転させるのに必要なシミュレートされた現在の力を反映しており、回転インタフェースは、シミュレートされた現在の力を反映する触覚フィードバックをオペレータに提供するための調整された力に従って、手術用ツールを制御してスクリューを回転させる能力を用いることなく、手術用ツールのシミュレートされた自律制御を制御する能力を用いることなく、手動で操作可能である。
【0034】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラは、手術用ツールを自律的に制御する前に、シミュレートされた自律チェックモードを開始するようにさらに構成される。
【0035】
いくつかの実施態様では、ロボット手術システムは、ディスプレイをさらに含み、1つ以上のコントローラは、シミュレートされた手動制御モードを開始するようにさらに構成され、回転インタフェースは、手術用ツールを制御してスクリューを回転させる能力を用いることなく、オペレータが回転インタフェースを手動で操作することに基づいて、手術用ツールのシミュレートされた手動制御中にスクリューの回転速度またはスクリューの前進速度のうちの1つを制御する能力を用いて、手動で操作可能であり、1つ以上のコントローラは、回転インタフェースが手動で操作されてスクリューの回転速度またはスクリューの前進速度のうちの1つを制御するのに応じて、回転軸を中心とした回転速度でスクリューを回転させ、計画された軌道に沿った前進速度でスクリュー直線的に前進させることによって、手術用ツールを手動で制御することをシミュレートし、手術用ツールのシミュレートされた手動制御をディスプレイに表示し、スクリューと標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得し、シミュレートされた現在の相互作用に基づいて、触覚デバイスのアクチュエータを制御して、回転インタフェースが、アクチュエータに抵抗力を提供して、オペレータの手によって回転インタフェースを回転させるのに必要な力を調整するように構成することにより、スクリューと標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするように構成され、回転インタフェースを回転させるのに必要な力は、標的部位に対してスクリューを回転させるのに必要なシミュレートされた現在の力を反映しており、回転インタフェースは、シミュレートされた現在の力を反映する触覚フィードバックをオペレータに提供するために、調整された力に従って手動で操作可能である。
【0036】
いくつかの実施態様では、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラは、手術用ツールを自律的に制御してスクリューの回転を停止することを停止または一時停止した後、シミュレートされた手動制御モードを開始するようにさらに構成される。
【0037】
本開示の第2の態様は、本開示の第1の態様に従って、そして任意選択的に、このセクション内の任意の実施態様に従って、ロボット手術システムを操作する方法を含む。本開示の第1の態様および第2の態様は、このセクション内の実施態様のいずれかに従って任意選択的に実装される。
【0038】
本開示の第3の態様は、ロボットマニピュレータと、ロボットマニピュレータに結合され、スクリューと連結して回転軸を中心にスクリューを回転させるように構成された手術用ツールと、アクチュエータとアクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、回転インタフェースはオペレータの手によって手動で操作可能であるように構成されている、触覚デバイスと、標的部位の位置を追跡するように構成されているナビゲーションシステムと、ロボットマニピュレータと触覚デバイスとナビゲーションシステムとに結合された1つ以上のコントローラとを含んでなるロボット手術システムであって、1つ以上のコントローラは、標的部位の追跡された位置に基づいて標的部位に対して計画された軌道に沿って手術用ツールの回転軸を維持するようにロボットマニピュレータの運動を制御することと、触覚デバイスから制御入力を受信することであって、回転インタフェースは、オペレータが回転インタフェースを手動で操作するのに基づいて、スクリューの回転速度またはスクリューの前進速度のうちの1つを制御する能力を用いて手動で操作可能である、受信することと、触覚デバイスからの制御入力に応じて、回転軸を中心とした回転速度でスクリューを回転させ、計画された軌道に沿った前進速度でスクリューを直線的に前進させるように、手術用ツールを制御することであって、回転速度および前進速度は、事前定義されており、スクリューの既知のねじ山形状に比例している、制御することと、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得することと、取得された測定値に基づいて、触覚デバイスのアクチュエータを制御して、回転インタフェースがスクリューと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることを可能にすることとを行うように構成されたものである、ロボット手術システムを含む。
【0039】
本開示の第4の態様は、本開示の第3の態様に従って、そして任意選択的に、このセクション内の任意の実施態様に従って、ロボット手術システムを操作する方法を含む。本開示の第3の態様および第4の態様は、このセクション内の実施態様のいずれかに従って任意選択的に実装される。
【0040】
本開示の第5の態様は、ロボットマニピュレータと、ロボットマニピュレータに結合され、回転軸を中心に回転するように構成された手術用ツールと、アクチュエータとアクチュエータに結合されたインタフェースとを含み、インタフェースはオペレータの手によって手動で操作可能であるように構成されている、触覚デバイスと、標的部位の位置を追跡するように構成されているナビゲーションシステムと、ロボットマニピュレータと触覚デバイスとナビゲーションシステムとに結合された1つ以上のコントローラとを含んでなるロボット手術システムであって、1つ以上のコントローラは、標的部位の追跡された位置に基づいて標的部位に対して計画された軌道に沿って手術用ツールの回転軸を維持するようにロボットマニピュレータの運動を制御し、手術用ツールを自律的に制御して、回転軸を中心とした回転速度で手術用ツールを回転させ、計画された軌道に沿った前進速度で手術用ツールを直線的に前進させ、手術用ツールと標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得し、取得された測定値に基づいて、触覚デバイスのアクチュエータを制御して、回転インタフェースが手術用ツールと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするように構成されたものである、ロボット手術システムを含む。
【0041】
本開示の第6の態様は、本開示の第5の態様に従って、そして任意選択的に、このセクション内の任意の実施態様に従って、ロボット手術システムを操作する方法を含む。本開示の第5の態様および第6の態様は、このセクション内の実施態様のいずれかに従って任意選択的に実装される。
【0042】
本開示の第7の態様は、アクチュエータと該アクチュエータに結合された回転インタフェースとを含み、回転インタフェースはオペレータの手によって手動で操作可能であるように構成されている、触覚デバイスと、ディスプレイデバイスと、触覚デバイスとディスプレイデバイスとに結合され、ディスプレイデバイス上でシミュレーションを提供するように構成された1つ以上のコントローラとを含んでなるシミュレーションシステムを含み、シミュレーションは、シミュレートされたスクリューと連結し、シミュレートされた標的部位に対してシミュレートされた軌道に沿って回転軸を中心としてシミュレートされたスクリューを回転させるように構成されているシミュレートされた手術用ツールを提供するステップと、回転軸を中心とした回転速度でシミュレートされたスクリューを回転させ、シミュレートされた軌道に沿った前進速度でシミュレートされたスクリューを直線的に前進させるように、シミュレートされた手術用ツールのシミュレートされた制御を提供するステップであって、回転速度および前進速度は、事前定義されており、シミュレートされたスクリューの既知のねじ山形状に比例している、提供するステップと、シミュレートされたスクリューとシミュレートされた標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得するステップと、シミュレートされた現在の相互作用に基づいて、触覚デバイスを制御して、回転インタフェースがシミュレートされたスクリューとシミュレートされた標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするステップとを行う。
【0043】
本開示の第8の態様は、本開示の第7の態様に従って、そして任意選択的に、このセクション内の任意の実施態様に従って、シミュレーションシステムを操作する方法を含む。本開示の第7の態様および第8の態様は、このセクション内の実施態様のいずれかに従って任意選択的に実装される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】一実施例による、ロボット手術システムの斜視図である。
図2図1のロボット手術システムと共に使用される手術用ロボットアームの一実施例の斜視図である。
図3】脊椎手術を実施するために撮像デバイスと組み合わせて使用されるロボット手術システムの一実施例の斜視図である。
図4】ドリルに結合されるハウジングを含む手術用ツールを備える、ロボットアームに結合される手術用ツールの一実施例の部分斜視図である。
図5】ドライバーおよびスクリューに結合される手術用ツールに結合されるロボットアームの部分斜視図である。
図6】代替の手術用ツールの立面図である。
図7】一実施例による、椎弓根内にパイロットホールを穿孔する図である。
図8】一実施例による、椎骨への椎弓根スクリューの図である。
図9】ライン触覚に沿って配置された椎弓根スクリューの図である。
図10図1のロボット手術システムの一例の斜視図であり、ロボット手術システムは触覚デバイスを含む。
図11A】自律チェックモード、手動制御モード、シミュレートされた自律チェックモード、およびシミュレートされた手動制御モードを含む様々な動作モードと、触覚デバイスのパラメータとを示す表である。
図11B】手動制御モード中の触覚デバイスからの入力に基づいて椎弓根スクリューの挿入を制御するための様々な技術を示す表である。
図11C】ホーム位置から非ホーム位置に手動で操作されている触覚デバイスの回転インタフェースの図である。
図12A】自律チェックモード中に椎弓根スクリューが挿入されている間、オペレータに触覚フィードバックを提供する触覚デバイスの図である。
図12B】手動制御モード中に椎弓根スクリューが挿入されている間、オペレータに触覚フィードバックを提供する触覚デバイスの図である。
図13】AおよびBは、電流出力対深さを示す図であり、穿孔および椎弓根スクリューの挿入がオペレータの計画に従っていることを検証するために使用されることができる。
図14A】一実施例による、触覚デバイスを含み、挿入されている椎弓根スクリューのシミュレーションを表示するロボット手術システムの斜視図である。
図14B】シミュレートされた自律チェックモード中に椎弓根スクリューが挿入されている間、オペレータに触覚フィードバックを提供する触覚デバイスの図である。
図14C】シミュレートされた手動制御モード中に椎弓根スクリューが挿入されている間、オペレータに触覚フィードバックを提供する触覚デバイスの図である。
図15A】触覚デバイスを使用してロボット手術システムを操作する方法のフローチャートである。
図15B】自律チェックモードを実行するためのサンプルステップのフローチャートである。
図15C】手動制御モードを実行するためのサンプルステップのフローチャートである。
図15D】シミュレートされた自律チェックモードを実行するためのサンプルステップのフローチャートである。
図15E】シミュレートされた手動制御モードを実行するためのサンプルステップのフローチャートである。
図15F】椎弓根スクリューPSの挿入を自律的に制御するために外科手術中に実行されるサンプルステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
I. システム概要
図1および図2を参照すると、脊椎手術など、例えば、椎弓根スクリュー、他のスクリュー、または他のタイプのインプラントが脊椎内に配置される脊椎手術などを含むがこれらに限定されない、様々な外科手術に使用され得る手術用ロボット手術システム10が示されている。ロボット手術システム10は、ローカライザ14および追跡デバイス16を含むナビゲーションシステム12と、1つ以上のディスプレイ18と、ロボットマニピュレータ(例えば、ベース22、テーブルなどに取り付けられたロボットアーム20)とを含む。ロボットアーム20は、ベース22に回転自在に結合されるベースリンク24と、ベースリンク24から遠位端部28まで延在する複数のアームリンク26とを含む。アームリンク26は、ロボットアーム20内の複数の関節を中心に枢動/回転する。脊椎手術を実施する際に使用する手術用ツールは、例えば、一般に30で示される。手術用ツール30は、ロボットアーム20の遠位端部28に枢結され得る。アームリンク26は、直列に取り付けることができる。あるいは、ロボットアーム20は、平行アームリンケージを含み得る。さらに、任意の数のロボットアーム20を使用することができる。
【0046】
ロボットコントローラ32は、手術用ツール30の操作中に、ロボットアーム20の制御、または外科医(本明細書では「オペレータ」と呼ばれる)へのガイダンスを提供するように構成される。一例では、ロボットコントローラ32は、ロボットアーム20を介してオペレータに触覚フィードバックを提供するように、ロボットアーム20を制御する(例えば、その関節用モータを制御することによって)ように構成される。この触覚フィードバックは、オペレータが外科手術に関連する所定の仮想境界を越えて手術用ツール30を手動で動かすことを制約する、または抑制するのに役立つ。このような触覚フィードバックシステムと、仮想境界を定義する関連した触覚オブジェクトとは、例えば、2006年2月21日に出願され、「Haptic Guidance System And Method」と題された、Quaidらの米国特許第8,010,180号、および/または2012年12月21日に出願され、「Systems And Methods For Haptic Control Of A Surgical Tool」と題された、Ottoらの米国特許出願公開第2014/0180290号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。一例では、ロボット手術システム10は、米国フロリダ州フォートローダーデールのMAKO Surgical Corp.によって製造されたRIO(商標)Robotic Arm Interactive Orthopedic Systemである。
【0047】
いくつかの例では、ロボットアーム20は、外科手術を実施するために、所定のツールパスおよび/または他の所定の運動に基づいて自律的に動作する。それらのような運動は、外科手術の間に、および/またはこの手術の前に、定義されることができる。さらなる例では、手動制御および自律制御の組み合わせを利用する。例えば、オペレータが手術用ツール30に力を加えてロボットアーム20の運動を引き起こす手動モードと、オペレータがペンダントを保持してロボットアーム20がツールパスを自律的に追従するように制御する半自律モードとの両方を用いるロボット手術システムは、2015年6月4日に出願され、「Robotic surgical system And Method For Transitioning Between Operating Modes」と題された、Bowlingらの米国特許第9,566,122号に記載されており、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0048】
ナビゲーションシステム12は、標的座標系に関して手術室内の様々なオブジェクトの運動を追跡するようにセットアップされる。それらのようなオブジェクトは、例えば、手術用ツール30、対象となる患者の解剖学的形態(1つ以上の椎骨など)、および/または他のオブジェクトを含む。ナビゲーションシステム12は、標的座標系中のそれらの相対的な位置および配向をオペレータに表示する目的で、そして場合によっては、患者の解剖学的形態に関連付けられて(例えば、手術用ナビゲーションでよく知られている座標系変換を介して)標的座標系に関して定義される仮想境界に対する手術用ツール30の運動を制御するまたは制約する目的で、これらのオブジェクトを追跡する。
【0049】
手術用ナビゲーションシステム12は、ナビゲーションコントローラ36を収容するコンピュータカートアセンブリ34を含む。ナビゲーションコントローラ36およびロボットコントローラ32は、合わせて、ロボット手術システム10の制御システムを形成する。ナビゲーションインタフェースは、ナビゲーションコントローラ36と操作可能に通信している。ナビゲーションインタフェースは、コンピュータカートアセンブリ34に調整可能に取り付けられるディスプレイ18を含む。キーボードおよびマウスなどの入力デバイスを使用して、ナビゲーションコントローラ36に情報を入力する、またはその他の方法により、ナビゲーションコントローラ36のある特定の態様を選択する/制御することができる。タッチスクリーン(図示せず)または音声アクティブ化を含む他の入力デバイスが企図される。
【0050】
ローカライザ14は、ナビゲーションコントローラ36と通信する。示される例では、ローカライザ14は、光学的ローカライザであり、カメラユニット(感知デバイスの一例)を含む。カメラユニットは、1つ以上の光学的位置センサを収容する外側筐体を含む。いくつかの例では、少なくとも2つの光センサ、時には3つ以上の光センサを用いる。光センサは、別個の電荷結合素子(CCD)であってもよい。カメラユニットは、調整可能なアームに取り付けられ、理想的には障害物がない、以下で説明される追跡デバイス16の視野に関して光センサを位置決めする。いくつかの例では、カメラユニットは、回旋性ジョイントを中心に回転することによって、少なくとも1の自由度で調整可能である。他の例では、カメラユニットは、約2以上の自由度で調整可能である。
【0051】
ローカライザ14は、光センサから信号を受信するために光センサと通信するローカライザコントローラ(図示せず)を含む。ローカライザコントローラは、有線または無線のいずれかの接続(図示せず)を介してナビゲーションコントローラ36と通信する。そのような接続の1つは、IEEE1394インタフェースであることができ、このIEEE1394インタフェースは、高速通信およびアイソクロナス・リアルタイムデータ転送(isochronous real-time data transfer)のためのシリアルバスインタフェース規格である。また、接続は、企業独自のプロトコルを使用することができる。他の例では、光センサは、ナビゲーションコントローラ36と直接通信する。
【0052】
位置および配向の信号および/またはデータは、オブジェクトを追跡する目的でナビゲーションコントローラ36に伝送される。コンピュータカートアセンブリ34と、ディスプレイ18と、ローカライザ14とは、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする、2010年5月25日に発行され、「Surgery System」と題された、Malackowskiらの米国特許第7,725,162号に記載されるものと同様であってもよい。
【0053】
ロボットコントローラ32およびナビゲーションコントローラ36は、それぞれ、または合わせて、1つ以上のパーソナルコンピュータまたはラップトップコンピュータと、ローカルメモリ、外部メモリ、クラウドベースメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性RAM(NVRAM)、フラッシュメモリ、またはいずれかの他の適切な形式のメモリのような、データおよびコンピュータ可読命令の記憶に適しているメモリとを含み得る。ロボットコントローラ32およびナビゲーションコントローラ36は、それぞれ、または合わせて、マイクロプロセッサなどの1つ以上のプロセッサを含み、これらのプロセッサは、メモリに記憶される、命令を処理し、またはアルゴリズムを処理し、本明細書に記載される機能を実行することができる。これらのプロセッサは、いずれかのタイプのプロセッサ、マイクロプロセッサ、またはマルチプロセッサシステムでありうる。追加でまたは代替で、ロボットコントローラ32およびナビゲーションコントローラ36は、それぞれ、または合わせて、1つ以上のマイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、システムオンチップ、ディスクリート回路、および/または本明細書に記載される機能を実行することができる他の適切なハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェアを含み得る。ロボットコントローラ32およびナビゲーションコントローラ36は、ロボットマニピュレータやコンピュータカートアセンブリ34によって運ばれることができ、および/または、いずれかの他の適切な位置に取り付けられることができる。ロボットコントローラ32および/またはナビゲーションコントローラ36には、以下に説明されるようなソフトウェアをロードする。ソフトウェアは、ローカライザ14から受信する信号を、追跡されるオブジェクトの位置および配向を表すデータに変換する。
【0054】
手術用ロボットシステム10は、ロボットコントローラ32に加えて、手術用ロボットシステム10のコンポーネントを制御するための任意の数のコントローラを含み得る。例えば、手術用ロボットシステム10は、手術用ツール30を制御するように構成されたツールコントローラを含み得る。別の例として、手術用ロボットシステム10は、手術用ロボットシステム10の触覚デバイスを制御するように構成された触覚デバイスコントローラを含み得る(以下でより詳細に説明する)。手術用ロボットシステム10のコントローラは、外科手術の機能を個別にまたは組み合わせて実行するように構成することができる。例えば、ロボットコントローラ32と、ナビゲーションコントローラ36と、ローカライザコントローラと、ツールコントローラと、触覚デバイスコントローラとは、組み合わせて動作して、手術用ロボットシステム10の触覚デバイスを介してオペレータに触覚フィードバックを提供することができる。別の例として、ロボットコントローラ32は、ロボットアーム20を制御するために個別に動作することができる。したがって、これらの様々な構成を取り込むために、以下のこの説明は、図1にも示されているように、「1つ以上のコントローラ33」を参照する場合がある。「1つ以上のコントローラ33」は、参照される機能を実行するのに適した任意の個々のコントローラまたは任意のコントローラの組み合わせを含むことを理解されたい。集合的な1つ以上のコントローラも制御システムと見なすことができる。
【0055】
さらに、本明細書に記載の1つ以上のコントローラ33のいずれかによって実行される本明細書内のステップのいずれも、本明細書に記載されているタスクを解決するための有限の一連のステップに従って実施され得る、本明細書に記載の制御アルゴリズムに従って動作可能である。
【0056】
図3を参照すると、ナビゲーションシステム12は、本明細書ではトラッカーとも称される、複数の追跡デバイス16を含む。図示された例では、トラッカー16は、患者の別個の椎骨に結合される。場合によっては、トラッカー16は、ボーンスクリュー、ボーンピンなどを介して骨の切片に固着される。他の場合には、棘突起(spinous process)または脊椎の他の部分の上にクランプを使用して、トラッカー16を取り付けることができる。さらなる例では、トラッカー16は、他の組織タイプ、または解剖学的形態の部分に取り付けられることができる。トラッカー16が取り付けられている解剖学的形態に対するトラッカー16の位置は、ポイントベースの登録などの登録技術によって決定されることができ、これらの登録技術では、デジタルプローブ73(例えば、それ自体マーカーを備えたナビゲーションポインタ)を使用して、この骨の上の骨標識上で接触をオフにする、または表面ベースの登録のために骨の上のいくつかのポイントで接触をオンにする。従来の登録技術を用いて、トラッカー16の姿勢を患者の解剖学的形態、例えば、治療される椎骨Vに相関させることができる。
【0057】
また、椎骨Vの棘突起に取り付けられ、クランプが取り付けられる棘突起の形状を決定する触覚センサ(図示せず)を含む機械的クランプを備えたトラッカー16を使用するなど、他のタイプの登録も可能である。そして、棘突起の形状を、登録のために棘突起の3Dモデルにマッチングさせることができる。触覚センサと、追跡デバイス16上の3つ以上のマーカーとの間の既知の関係は、ナビゲーションコントローラ36に予めロードされる。この既知の関係に基づいて、患者の解剖学的形態に対するマーカーの位置を決定することができる。
【0058】
ベーストラッカー16は、手術用ツール30の姿勢を追跡するためにベース22に結合され得る。他の例では、別個のトラッカー16は、手術用ツール30に固定されていてもよく、例えば、製造中に手術用ツール30に統合されていてもよく、または外科手術に備えて手術用ツール30に別個に取り付けられていてもよい。いずれの場合でも、手術用ツール30の作業用端部は、ベーストラッカー16または他のトラッカーによって追跡されている。作業用端部は、手術用ツール30の付属品の遠位端部であることができる。それらのような付属品は、ドリル、バー、ソー、電気除去デバイス(an electrical ablation device)、スクリュードライバー、タップ、手術用ナイフ、Jamshidi針などを含み得る。
【0059】
図示された例では、トラッカー16は受動型トラッカーである。この例では、各トラッカー16は、ローカライザ14からの光を反射して光センサに戻すために、少なくとも3つの受動追跡素子またはマーカーMを含む。他の例では、トラッカー16は、能動型トラッカーであり、光センサに赤外光などの光を伝送する発光ダイオードまたはLEDを含み得る。受信した光信号に基づいて、ナビゲーションコントローラ36は、従来の三角測量技術を使用して、ローカライザ14に対するトラッカー16の相対的な位置および配向を示すデータを生成する。場合によっては、より多い、またはより少ないマーカーを用いることができる。例えば、追跡されるオブジェクトが線を中心に回転可能である場合、2つのマーカーを使用して、この線の周りの様々な位置でマーカーの位置を測定することによって、この線の配向を決定することができる。ローカライザ14およびトラッカー16が、光学追跡技術を利用するものとして上述されているが、代替的にまたは追加で、電磁追跡、超音波、高周波追跡、慣性追跡、それらの組み合わせなど、他の追跡モダリティを利用してオブジェクトを追跡することができることを理解されたい。
【0060】
また、手術用ツール30がいかなる所望の切開境界の外側でも患者の皮膚に不注意に接触しない、または貫入しないことを確実にするために、患者の皮膚表面を追跡することが望ましい場合がある。この目的のために、接着性の裏打ちを備えた能動型または受動型マーカーなどの皮膚付着マーカーMを、患者の皮膚に付着させて、患者の皮膚に関連する境界を画定することができる。それらのようなマーカーMのアレイは、外周リング74(円形、矩形など)を実質的に妨げることなく、外科手術がリング74の内側で継続するように、外周リング74に提供されることができる(すなわち、リングが対象となる切開および椎骨の周りの患者の皮膚上に配置される)。適切なスキンマーカーアレイの1つは、Stryker Leibinger GmbH&Co KG(Botzinger StraBe41,D-79111 Freiburg,Germany)によって製造されているSpineMask(登録商標)トラッカーである。また、2015年5月13日に出願され、「Navigation System For And Method Of Tracking The Position Of A Work Target」と題された、Schoeppらの米国特許出願公開第2015/0327948号を参照されたい。これは、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。他の適切なスキントラッカーも企図されている。デジタルプローブも使用して、皮膚表面および/または切開もマッピングすることができる。ただし、マッピングすると、さらにデジタル化しないと皮膚のいかなる運動も検出しないが、付着したトラッカーアレイは、患者の皮膚の運動を検出することができる。
【0061】
外科手術の開始前に、追加のデータをナビゲーションコントローラ36へとロードする。トラッカー16の位置および配向、ならびに以前にロードされたデータに基づいて、ナビゲーションコントローラ36は、作業用端部が適用される組織に対する、手術用ツール30の作業用端部の位置と、手術用ツール30の配向とを決定する。追加データは、手術用ツール30の作業用端部に対する、トラッカー16またはそのマーカーMの位置および/または配向に関する幾何学的形状データなどの較正データを含み得る。また、この較正データは、既知の幾何学的形状のトラッカー16上で較正プローブまたは較正ディボットを使用して、手術用ツール30の作業用端部の位置を、例えばそれ自体のトラッカーまたはベーストラッカー16に対して決定することなどによって、術前または術中に決定されることができる。追加データは、トラッカー16を患者の解剖学的形態またはその3Dモデルに関連付ける変換データなどの登録データを含み得る。いくつかの例では、ナビゲーションコントローラ36は、これらのデータをロボットコントローラ32に転送する。そして、ロボットコントローラ32は、このデータを使用して、米国特許第8,010,180号または第9,566,122号に記載されているようにロボットアーム20を制御することができ、これらは両方とも、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0062】
また、ナビゲーションコントローラ36は、対象となる組織に対して手術用ツール30の作業用端部の相対位置を示す画像信号を生成する。これらの画像信号はディスプレイ18に印加される。ディスプレイ18は、これらの信号に基づいて、オペレータおよびスタッフが手術部位に対する手術用ツール30の相対位置を見ることを可能にする画像を生成する。上記に考察されるようなディスプレイ18は、コマンドの入力を可能にする、タッチスクリーンまたは他の入力/出力デバイスを含み得る。
【0063】
示される例では、手術用ツール30の姿勢は、ナビゲーションシステム12を使用して、ベーストラッカー16を介してベース22の位置を追跡し、ロボットアーム20の関節からの関節エンコーダデータと、手術用ツール30とロボットアーム20との間の既知の幾何学的形状の関係とに基づいて、手術用ツール30の姿勢を計算することによって決定されることができる。最終的に、ローカライザ14および追跡デバイス16は、手術用ツール30の姿勢と、患者の解剖学的形態の決定とを可能にするので、ナビゲーションシステム12は、手術用ツール30と患者の解剖学的形態との間の相対的な関係を認識する。そのようなナビゲーションシステムの1つは、2013年9月24日に出願され、「Navigation System Including Optical And Non-Optical Sensors」と題された、Wuの米国特許第9,008,757号に示され、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0064】
手術中に、ある特定の手術用タスクについて、オペレータは、ロボットアーム20を手動で操作し(例えば、ロボットアームを動かし、またはロボットアームの運動を引き起こし)、手術用ツール30を操作して、穿孔、切断、ソーイング、リーミング、インプラント挿入などのような外科手術を患者に実施する。オペレータが手術用ツール30を操作すると、ナビゲーションシステム12は、手術用ツール30および/またはロボットアーム20の位置を追跡し、触覚フィードバック(例えば、力のフィードバック)をオペレータに提供し、患者の解剖学的形態に対して登録されている(またはマッピングされている)1つ以上の所定の仮想境界を越えて手術用ツール30を動かす(または手術用ツールの運動を引き起こす)オペレータの能力を制限した結果、非常に正確で、再現性のある穿孔、切断、ソーイング、リーミング、および/またはインプラントの配置が行われる。
【0065】
一例では、ロボットアーム20は、受動方式で動作し、オペレータが仮想境界を越えて手術用ツール30を動かそうとするときに触覚フィードバックを提供する。触覚フィードバックは、ロボットアーム20内の1つ以上のアクチュエータ(例えば、関節用モータ)によって生成され、ケーブル駆動トランスミッションなどの可撓性トランスミッションを介してオペレータに伝送される。ロボットアーム20が触覚フィードバックを提供していないときには、ロボットアーム20をオペレータが自由に動かせる。他の例では、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする、米国特許第9,566,122号に示されるものと同様に、ロボットアーム20は、同様の方法でオペレータによって操作されるが、ロボットアーム20は能動方式で動作する。例えば、オペレータが手術用ツール30に力を加えると、この力を力/トルクセンサが測定し、この力/トルクセンサからの測定値に基づくオペレータの所望の運動を、ロボットアーム20がエミュレート(emulate)する。他の手術用タスクについて、ロボットアーム20は自律的に動作する。
【0066】
図4および図5を参照すると、ロボットアーム20の遠位端部28に結合される手術用ツール30の一例が示される。より具体的には、カップリング40が手術用ツール30とロボットアーム20の遠位端部28との間に提供されることで、軸Aを中心とした遠位端部28に対する手術用ツール30の回転が可能になる。図4では、手術用ツール30は、椎弓根スクリュー、他のスクリュー、または他のタイプのインプラント用のパイロットホールを穿孔するドリル42を含む。ドリル42は、回転軸Rを中心に回転するように配置される。図5では、手術用ツール30は、椎弓根スクリューPSまたは他のインプラントを挿入するために、回転軸Rを中心に回転するように回転軸Rに沿って配置されるドライバー44(例えば、スクリュードライバー)を含む。手術用ツール30はハウジング45を含む。駆動系(例えば、モータ)は、ドリル42、ドライバー44、または別の付属品を駆動するためにハウジング45内に位置している。駆動系は可変速でありうる。
【0067】
さらに、ハウジング45は、ドリル42、ドライバー44、または他の付属品を駆動系に解放可能に付装するために、コレット47または他のタイプのカプラを含む。場合によっては、減速機48(図5を参照)がコレット47に解放可能に取り付けられ、ある特定の付属品として使用されてよい。減速機48は、駆動系に直接連結されている場合と比較して、付属品の回転速度を低下させるトランスミッションまたはギヤ配置を含む。これは、より遅い回転速度が望ましい場合に役立つ。
【0068】
図6に示される別の例では、カップリング40の1つの端部は、軸Aを中心とする回転に対して手術用ツール30を支持する。カップリング40のもう1つの端部は、ハウジング45を支持する。ハウジング45は、カップリング40に固定されてもよい、またはカップリング40内で回転軸Rを中心とする回転に対して支持されてもよい。換言すれば、ハウジング45は、カップリング40内で受動的に回転することができる。ただし、同時に、カップリング40は、ハウジング45の位置決めを正確に制御することができるように、カップリング40に対する回転軸Rに沿ったハウジング45の軸方向の運動を制限する。トラッカー(図示せず)をハウジング45に取り付けて、ハウジング45の位置および/または配向を追跡することで、回転軸Rを、および/またはハウジング45に付装される付属品の遠位端部を追跡することができる。回転シャフト60は、ハウジング45内で回転自在に支持される。回転シャフト60は、付属品(例えば、示されるようなドライバー44)に結合する遠位インタフェース/コレット62と、モータなどのトルク源、手動回転用の回転可能なハンドルなどのような動力源に結合する近位インタフェース/コレット64とを含む。例えば、ドライバー44は、遠位インタフェース62/回転シャフト60に結合されて示されている。
【0069】
ロボット手術システム10は、ドリル42および/またはドライバー44を制御するための様々なコンポーネントを含み得る。例えば、図4および図5において、手術用ツール30は、ハウジング45から垂れ下がるハンドル46を含む。ハンドル46は、グリップを含んでもよく、外科手術中に、オペレータは、このグリップを把持し、手術用ツール30および/またはロボットアーム20を操作する。トリガ49もまた存在し、このトリガは、ドリル42および/またはドライバー44の速度を制御する、またはロボットアーム20の運動を開始する、または所望の軌道と回転軸Rのアライメントを取るなどを行う。トリガ49は、ロボットアーム20および/または手術用ツール30を制御する信号を、ロボットコントローラ32および/またはツールコントローラに通信することができる。
【0070】
図6の例では、手術用ツール30は、手術用ツール30およびドリル42を制御するための内部モータを備えたハンドピース66を含む。示されるように、オペレータがハンドピース66を把持し、モータの動作をトリガし、モータが回転シャフト60を介してドライバー44に、そして最終的には椎弓根スクリューPSにトルクを伝達させることができるように、ハンドピース66は近位インタフェース64に結合されている。
【0071】
術前撮像および/または術中撮像を用いて、患者の脊椎などの治療が必要な患者の解剖学的形態を視覚化することができる。オペレータは、画像に関して、および/またはこれらの画像から作成された3Dモデルに関して、椎弓根スクリューPSを配置するべき位置を計画することができる。この計画は、例えば、画像および/または3Dモデル内の所望の姿勢を特定することによって、各椎弓根スクリューPSの姿勢を、それらが配置されている特定の椎骨Vに対して決定することを含む。これは、患者の解剖学的形態の3Dモデルに関して椎弓根スクリューPSの別個の3Dモデルを作成する、または位置決めすることを含んでもよい。そして、計画が設定されると、この計画は実行のためにロボット手術システム10に転送される。
【0072】
ロボット手術システム10を、撮像デバイス50(例えば、図3に示されるCアーム)と共に使用して、任意の術前画像、例えば、手術前に取得されるX線、CTスキャン、もしくはMRI画像に加えて、またはそれらの代わりに、患者の解剖学的形態の術中画像を取得することができる。撮像デバイス50からの術中画像は、患者の脊椎に置かれている椎弓根スクリューPSの所望の配向に対するドリル42またはドライバー44の実際の位置を決定するのに役立つことができる。別々の追跡デバイス16を各椎骨Vに用いて、椎弓根スクリューPSまたは他のインプラントを椎骨V内へと置くときに、各椎骨Vと、別個の椎骨Vに対するドリル42および/またはドライバー44の対応する姿勢とを別々に追跡することができる。
【0073】
ロボット手術ステム10は、椎弓根スクリューPSの所望の姿勢を評価し、椎弓根スクリューPSの所望の姿勢に対応する、仮想境界(例えば、触覚オブジェクト)、所定のツールパス、および/または他の自律運動命令を作成し、ロボットアーム20の運動を制御し、手術用ツール30のドリル42およびドライバー44は、最終的にオペレータの計画に従って椎弓根スクリューPSを置くように制御される。これは、例えば、外科手術中に、手術用ツール30の軌道が椎弓根スクリューPSの所望の姿勢とアライメントを取ること、例えば、椎弓根スクリューPSの所望の姿勢と回転軸Rのアライメントを取ることを確実にすることを含み得る。
【0074】
他の例では、オペレータは、手術中に所望の軌道および/またはスクリュー配置を計画することができる。例えば、オペレータは、対象となる解剖学的形態、例えば椎骨Vに対して所望の刺入点にドリル42を位置決めし、回転軸Rの軌道が所望の配向内にあることをディスプレイ18が示すまでドリル42を配向することができる。オペレータがこの軌道に満足すると、オペレータは、この軌道を手術中に維持される所望の軌道として設定する、入力(例えば、タッチスクリーン、ボタン、フットペダルなど)を制御システムに提供することができる。回転軸Rを維持して所望の軌道に沿って留まるために手術用ツール30の運動を制約するように作成される触覚オブジェクトは、図4に示されるようなライン触覚オブジェクトLHであることができる。ライン触覚オブジェクトLHは、さらに以下に説明されるような開始点SPと、ドリル42、椎弓根スクリューPSなどの所望の深さを画定する標的点TPと、刺出点EPとを含んでよい。他の触覚オブジェクトの形状、サイズなどもまた企図される。
【0075】
図7および図8を参照すると、椎骨Vの1つが示される。脊椎固定術などの外科手術中に、オペレータは、椎弓根領域を通して椎骨Vの椎体(a vertebral body)100内へと1つ以上の椎弓根スクリューPSを挿入することができる。椎弓根スクリューPSを挿入する前に、オペレータは、ドリル42を用いて、椎体100にパイロットホール102を開けることができる。代替の例では、自己穿孔、セルフタッピングのボーンスクリューを用いる場合などでは、パイロットホールを除外することができる。例えば、2009年12月29日に発行され、「Self-drilling bone screw」と題された、Stefan Authの米国特許第7,637,929号の教示を参照されたい。これは、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0076】
一例では、穿孔が始まる前に、ロボット手術システム10は、手術用ツール30の回転軸Rをパイロットホール102の所望の配向と一致する所望の軌道に自律的にとアライメントを取ることによって、所望の軌道に沿って回転軸Rを置くように手術用ツール30の運動を制御する。この場合、ロボットアーム20は、所望の軌道に沿っているが、椎体100より上に間隔を置いて(図4に示されるように)ドリル42を自律的に位置決めすることができ、ドリル42は椎体100にまだ接触していない。そのような自律的な位置決めは、オペレータが手術用ツール30のトリガを引くことによって、またはその他の方法で運動を開始する入力を制御システムに提供することによって、開始されることができる。場合によっては、手術用ツール30のツール中心点(TCP)は、所望の軌道を提供するライン触覚オブジェクトLHの開始点SPから所定の距離内に(所定の開始球体などの内に)最初にもたらされる。TCP(例えば、バーの重心、ドリルチップの中心など)が開始点SPから所定の距離内にあると、トリガを引く(または代替にフットペダルを押す、または別の入力を動かす)ことで、ロボットアーム20は、自律的に、所望の軌道上で手術用ツール30のアライメントを取り、この手術用ツールを位置決めするようになる。例えば、2012年12月21日に出願され、「Systems And Methods For Haptic Control Of A Surgical Tool」と題された、Ottoらの米国特許出願公開第2014/0180290号の記載を参照されたい。これは、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。ロボットアーム20は、術前計画に基づいて手術用ツール30を患者から一定の距離に動かすようにプログラムされることができるか、またはTCPを軌道上の最も近い点に動かすことができる。手術用ツール30が所望の姿勢内にあると、ロボット手術システム10は、所望の軌道上に回転軸Rを保つために、すなわち、ライン触覚オブジェクトLHとアライメントを取るために、患者の運動を追跡し、必要に応じてロボットアーム20を自律的に調整することによって、所望の軌道上に手術用ツール30の回転軸Rを効果的に保持することができる。
【0077】
ロボット手術システム10が手術用ツール30を所望の軌道上に保持している間、オペレータは、手術用ツール30を手動で操作して、ライン触覚オブジェクトLHに沿って椎体100に向けてドリル42を動かし(またはこのドリルの運動を引き起こし)、パイロットホール102を穿孔することができる。受動型ロボットアーム20を使用する場合など、場合によっては、オペレータがライン触覚オブジェクトLHおよび所望の軌道から外れる方法で手術用ツール30を動かそうとしても、ロボット手術システム10は、触覚フィードバックをオペレータに提供することで、手術用ツール30のオペレータの運動を制約し、所望の軌道に沿って留まる。手術用ツール30の制約されていない運動のために、オペレータがロボットアーム20をフリーモードに戻したい場合、オペレータは、刺出点EPに達するまで、手術用ツール30をライン触覚オブジェクトLHに沿って、患者から離れるように引き戻すことができる。
【0078】
そして、オペレータは、パイロットホール102を所望の深さまで穿孔する。穿孔速度は、トリガ49を介してオペレータによって制御されることができるか、または患者の解剖学的形態に対するドリル42の位置に基づいて自動的に制御されることができる。例えば、ドリル42の回転速度は、椎体Vへの最初の穿孔中に高く設定されることができるが、椎体Vへのさらなる穿孔中に遅くされることができ、そして最終的な深さへの最終穿孔中にさらに遅く設定されることができる。また、制御システムは、ロボットコントローラ32と通信する1つ以上のセンサS(例えば、1つ以上の力センサ、力/トルクセンサ、トルクセンサ、圧力センサ、光センサなど)を介するライン触覚誘導中に、接触/接触力を監視することができる。有意な接触/接触力が検出されない場合、これは、手術用ツール30が軟組織(soft tissue)を通過していることを意味するため、制御システムは、手術用ツール30のモータ、または他の動力源(例えば、RFエネルギー、超音波モータなど)を作動させないようにする。骨との接触が検出される場合(例えば、光学的に、感知された力が所定の閾値を上回る場合など)、制御システムは、モータまたは他の動力源を作動させることができる。また、オペレータは、接触/接触力を受動的に感じ、スイッチをトリガして動力源を作動させることができる。
【0079】
オペレータがパイロットホール102の所望の深さに達したときに、例えば、標的点TPに達したときに、所望の軌道に沿ったオペレータの運動を制約するために使用される仮想境界(例えば、触覚オブジェクト)をも、触覚フィードバックを介して示すことができる。また、別個の仮想境界を使用して、所望の深さを設定することができる。他の場合には、ロボット手術システム10は、パイロットホール102を所望の深さまで自律的に穿孔することができる。さらなる場合では、ロボット手術システム10は、最初は自律的に穿孔することができるが、その後、最終的な穿孔を手動で行うことができる、またはその逆を行うことができる。パイロットホール102が作製されると、ドライバー44を使用して椎弓根スクリューPSを配置することができる。いくつかの例では、パイロットホール102は、不要であることがあり、椎弓根スクリューPSは、ロボット手術システム10によって配置されるガイドワイヤ上に、またはいかなるガイダンスもなく、配置されることができる。自己穿孔、セルフタッピングのボーンスクリューを用いる場合などでは、パイロットホールは不要な場合がある。例えば、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする、2009年12月29日に発行され、「Self-drilling bone screw」と題された、Stefan Authの米国特許第7,637,929号の教示を参照されたい。
【0080】
ナビゲーションシステム12を使用して各椎骨Vを別々に連続的に追跡し、ドリル42の運動を追跡することの1つの利点は、椎弓根スクリューPSを脊髄103に近接して挿入することができることであり、そのため、椎弓根スクリューPSおよびそれらの対応するパイロットホール102の配置は、脊髄103との相互作用または損傷を回避するように正確にアライメントを取らなければならない。オペレータのパイロットホール102の穿孔が不適切な角度である、および/または深すぎる場合、椎弓根スクリューPS、またはパイロットホール102を穿孔するために使用されるドリル42が、脊髄103を損傷する可能性がある。その結果、ナビゲーションシステム12を使用して、患者の解剖学的形態、具体的には術前画像および/または術中画像内で輪郭を描かれるような解剖学的形態に対する、ドリル42および/またはドライバー44の姿勢を追跡することにより、脊髄103を避けることができる。
【0081】
穿孔が完了すると、ドリル42は椎体100から取り外され、コレット47を介して駆動系から切り離される。そして、ドライバー44は、(減速機48の有無にかかわらず)駆動系に結合される。
【0082】
椎弓根スクリューPSは、ロボット手術システム10の助けを借りて挿入することができる。一例では、ロボットコントローラ32は、回転軸Rを中心とした回転速度で、計画された軌道に沿った前進速度が椎弓根スクリューのねじ山形状に比例するように、椎弓根スクリューPSの挿入を自律的に制御する。ロボットコントローラ32は、様々な方法を使用して、椎弓根スクリューPSの挿入を自律的に制御することができる。
【0083】
例えば、椎弓根スクリューPSは、ロボット手術システム10のメモリに術前に記憶され得る、一定の回転速度または一定の前進速度で挿入され得る。そのような場合、前進速度および/または回転速度は、手術の前にロボット手術システム10のメモリに記憶され得る。前進速度および/または回転速度はまた、オペレータによる手術中にロボット手術システムのメモリに入力および記憶され得る。
【0084】
別の例では、ロボットコントローラ32は、回転速度または前進速度について所定のプロファイルに従うことができる。回転速度または前進速度の所定のプロファイルは、時間または椎弓根スクリューPSの位置などの任意の適切な変数に基づくことができる。例えば、図9を参照すると、椎弓根スクリューPSの挿入は、患者の解剖学的形態に対するドライバー44および/または椎弓根スクリューPSの位置に基づいて自律的に制御され得る。そのような場合、ドライバー44の回転速度は、椎体V内への最初の挿入中に高く設定されることができるが、椎体V内へのさらなる挿入中に遅くされることができ、そして最終的な深さへの最終埋め込み中にさらに遅く設定されることができる。
【0085】
図9は、ロボットコントローラ32が手術用ツール30を自律的に制御している間の椎弓根スクリューPSのホーム位置を示している。図示されるように、椎弓根スクリューPSは、標的部位に隣接し、この場合、線形触覚オブジェクトLHによって指定される計画された軌道と共に、椎骨Vとして示されている。椎弓根スクリューPSと椎体100との間のねじ付きインタフェースは、椎弓根スクリューが正しく挿入されていない場合、骨、スクリューPS、ドライバー44、または手術用ツール30に損傷を与える危険がある。骨はおそらく最も弱い材料であるため、スクリューが正しく挿入されていない場合、損傷を受ける可能性が最も高くなる。不適切な挿入は、例えば、回転軸Rを中心とした不十分な回転で、椎弓根スクリューPSが軌道LHに沿って直線的に前進する場合に起こることがある。これが原因で、骨材料がねじ山に隣接してせん断され、骨の中に押し込まれるようになる可能性がある。別の例では、例えば、椎弓根スクリューPSが軌道LHに沿った不十分な前進で回転軸Rを中心に回転することが原因で、骨材料がねじ山に隣接してせん断され、ねじ山に沿って押し戻されるようになり、事実上ホールを穿孔しすぎる場合に、不適切な挿入が起こる可能性がある。いずれの例でも、不適切な挿入の結果は、椎弓根スクリューPSを骨に固定する骨材料の強度および量が減少することである。
【0086】
図9はまた、ロボットコントローラ32が手術用ツール30を自律的に制御している間に、位置制御を使用して椎弓根スクリューPSを挿入することを示している。スクリューを挿入するための位置制御は、手術全体を通して適切な深さ位置および角度または回転位置が維持されることを確実にする。上記の例に示されるように、椎体100にパイロットホールを形成することができる、または手術はパイロットホール(a pilot hole)を必要としないような自己穿孔およびセルフタッピングのスクリューを用いることができる。椎弓根スクリューPSの開始点Doは、椎体100に隣接しており、すなわち、スクリューのいずれかの部分が椎体100に貫入する前にある。代替例では、開始点Doは、手術全体を通して適切な位置制御を確実にするために、安全域として椎体100から一定の距離まで離隔されることができる。挿入深さDは、椎体100内への椎弓根スクリューPSの挿入を完了するために計画された深さとして、最終的な深さDfまで軌道LHに沿って進む。
【0087】
ロボットコントローラ32は、回転速度および軌道LHに沿った前進速度が椎弓根スクリューPSのねじ山形状に比例するように、椎弓根スクリューPSの挿入を自律的に制御するように構成される。各椎弓根スクリューPSは、ロボット手術システム10のメモリに記憶された既知のねじ山形状を有する。例えば、各椎弓根スクリューPSの場合、ねじ山形状は、椎弓根スクリューPSの長さと、ねじ山の直径と、ねじ山の深さと、ヘッドサイズと、単位長さあたりのねじ山の数として定義されるねじ山のピッチPとのいずれか1つ以上を含み得る。特定の例では、図11Aに示される椎弓根スクリューPSは、1インチ(2.54センチメートル)あたり12個のねじ山のねじ山のピッチを有することができる。他の例示的な椎弓根スクリューPSは、1インチ(2.54センチメートル)あたり8、10、14、16個または他の数のねじ山を有することができる。ロボットアーム20と椎弓根スクリューPSとの間に定義された関係と、ロボット手術システム10のメモリに記憶される椎弓根スクリューPSの既知の形状とを有することにより、ロボットコントローラ32は、特定のねじ山のピッチを有する椎弓根スクリューPSを挿入するために適切な回転速度および前進速度に確実に確保するように構成される。
【0088】
椎弓根スクリューPSのねじ山形状は、術前または術中にロボット手術システム10のメモリに記憶されることができる。一例では、椎弓根スクリューPSは、手術計画の一部分として選択され、椎弓根スクリューPSの対応するねじ山形状は、椎弓根スクリューPSに関連付けられ、計画へと入力される。術中の手術のために計画がロードされると、ロボット手術システム10は、即時アクセスのために、既知のねじ山形状をメモリに記憶させる。別の例では、オペレータは、異なる椎弓根スクリューPSを手動で選択することができるか、またはロボット手術システム10の操作に関連するGUIを使用してねじ山形状を手動で入力することができる。入力されたねじ山形状は、メモリに記憶されるデータベースから取得されることができるか、またはオペレータが選択された椎弓根スクリューPSに関連するオフライン仕様からそのような情報を取得することから導出されることができる。これらの例のいずれかでは、GUIを使用してオペレータが入力した後に、ねじ山形状をメモリに記憶することができ、その後、ロボット手術システム10は、入力されたねじ山形状を用いて本明細書に記載の制御技術を実行することができる。さらに別の例では、ロボット手術システム10に直接に、または無線で接続される測定ツールを利用して、任意の意図された椎弓根スクリューPSをスキャンし、または測定し、ねじ山形状を抽出し、測定されたねじ山形状をロボット手術システム10のメモリに伝送することができる。椎弓根スクリューPSのねじ山形状がロボット手術システム10のメモリに記憶されると、椎弓根スクリューPSは、仮想的にナビゲーションシステム12内に提示され得る。
【0089】
椎弓根スクリューのねじ山のピッチ、角度もしくは回転位置と、挿入深さまたは軌道に沿った前進との間の関係は、式θ=D*(ピッチ/2π)によって決定され、式中、θは角度位置であり、Dは単位長さでの挿入深さであり、ピッチは椎弓根スクリューPSの単位長さあたりのねじ山数である。ロボットコントローラ32は、この関係を使用して、椎弓根スクリューPSの挿入を制御する。例えば、時間、角度位置での変化率、または回転速度δθ/δtに関して一次導関数を行うと、2πで除算されたピッチで乗算された、挿入深さでの変化率、または前進速度δD/δtに等しい。これを、次のように、δθ/δt=δD/δt*ピッチ/2π(式1)と表すことができる。
【0090】
ロボット手術システム10は、椎弓根スクリューPSの解剖学的形態を準備するための様々な付属品を含み得る。例えば、手術用ツール30の付属品の1つは、メス、電気メス、鋭利なチップを有する他のツールなどの皮膚切開ツールを含み得る。皮膚切開ツールは、ドリル42および/またはドライバー44と同様に取り付けられてもよく、または別個のエンドエフェクタの一部分であり、カップリング40に取り付ける架台に連結されてもよく、皮膚切開は、前述されているものと同様の方法での触覚ガイダンス、すなわち、仮想境界(例えば、触覚オブジェクト)を用いて行われることができ、切開を作成するときに仮想境界を用いて、患者の皮膚内の所望の切開に関してオペレータの運動を制約することができる。一例では、デジタルプローブは、所望の切開位置に接触し、関連した境界/触覚オブジェクトを作成するために使用されることができる。別の例では、デジタル化することによって、および/または術前の方法によって、スキントラッカーの姿勢に基づいて3D皮膚モデルを決定することができ、制御システムが椎弓根スクリューの配置の所望の計画を使用し、この皮膚モデルに基づいて切開の位置を決定することができる。
【0091】
皮膚切開ツールに取り付けられることができるレーザポインタ、エンドエフェクタ、または可視光を患者の皮膚上に投射して切開の位置を示す他のコンポーネントのような、デジタルプローブと同様の他のタイプのポインタをも使用して、所望の切開位置を識別することができる。そのようなレーザポインタを使用して、所望の軌道と皮膚切開ツールの回転軸Rのアライメントを最初に取り、その後、レーザポインタを作動させて、所望の軌道に沿って光を投射することができる。皮膚切開ツールの代替形態は、ロボットアームによって適所に保持されるツールガイドを通して配置される。スキントラッカーを介して達成される患者の皮膚の追跡のために、ナビゲーションシステム12もまた、(例えば、表面モデルや点群などの)皮膚モデルと、その皮膚モデルを備えた所望の軌道の交点とに基づいて切開の所望の位置を近似的に決定することができ、これにより、オペレータは、触覚フィードバックによって患者の皮膚内の所望の位置に所望の切開を行うことができる。
【0092】
触覚オブジェクトは、切開法をガイドする触覚フィードバックを確立するために様々な方法で定義されることができる。触覚オブジェクトは、皮膚切開ツールの幅、皮膚切開の所望の長さ、および/または切開の所望の深さに基づいて定義されることができる。また、所望の切開の深さは、最大切開深さ以内でオペレータによって制御されることができ、触覚オブジェクトの一部分としてプログラムされるこの最大切開深さか、皮膚切開ツールが所定の点を越えてエンドエフェクタのツールガイドTG内のガイド開口部(図示せず)に摺動することを防止するために使用されることができる機械的停止かいずれかによって決定されることができる。
【0093】
手術用ツール30の付属品の1つは、Jamshidi針、スタイレットを備えた別のアクセスカニューレなどのワイヤ挿入ツールを含み得る。ワイヤ挿入ツールは皮膚切開ツールと同様に取り付けられることができる、または別個のエンドエフェクタの一部分であり、カップリング40に取り付けられる架台に固定して連結されることができる。ワイヤ挿入ツールと架台との間に相対運動が許容されない場合、すなわち、それらが互いに固定されている場合、ワイヤ挿入ツールは、ライン触覚オブジェクトによってガイドされ、皮膚切開に入り、骨、例えば椎骨上の標的点に達することができる。架台が開口部を備えたツールガイドを含む場合など、ワイヤ挿入ツールと架台との間の相対的な軸方向の摺動運動が許容される場合、ツールガイドは所望の配向に位置決めされることができ、ワイヤ挿入ツールはツールガイド内の開口部に沿って挿入されることができる。標的点までの相対距離と、ワイヤ挿入ツールの長さと、ツールガイド位置とに応じて、ワイヤ挿入ツールは、ドリル42および/またはドライバー44について前述されるものと同じ方法で、ライン触覚オブジェクトを介してガイドされることができる。
【0094】
この皮膚と、切開についての所望の位置とが追跡されているために、ロボット手術システム10は、切開のために作成される触覚オブジェクトに関して皮膚切開ツールの運動を制御することができる。触覚オブジェクトは、患者の皮膚内の所望の位置を切開するように、標的座標系に定義される。一例では、ロボット手術システム10は、皮膚切開ツールの手動操作を制御することによって、触覚オブジェクトに対する皮膚切開ツールの運動を制御することができる。これは、オペレータが手動で動かしている間、またはオペレータが皮膚切開ツールの運動を手動で引き起こす間、皮膚切開ツールが所望の位置に切開を行うように、触覚オブジェクトで定義される仮想境界に対して皮膚切開ツールの運動を制約することによって行われることができる。ロボット手術システム10は、皮膚切開ツールが切開の所望の深さに達したこと、またはその他の方法により切開に対する所望の限界値に達したことを示す、オペレータへの触覚フィードバックを生成することによって、触覚オブジェクトに対する皮膚切開ツールの運動を制約することができる。切開が所望の位置で行われると、皮膚切開ツールは、解剖学的形態から引き抜かれ、すべての切開が行われるまで手術は進行する。皮膚切開技術は、「Robotic Spine Surgery System and Methods」と題された、2018年11月8日に出願された米国特許出願第16/184,376号に記載されているものと同様であり得る。
【0095】
II.触覚フィードバック技術
上記のように、ロボットシステム10を利用して、手術用ツール30を制御して、計画された軌道に沿ってスクリューを回転させることができる。本明細書で説明するのは、ロボットシステム10が手術用ツール30を組織と相互作用させる間に関与する、外科医への直接の触覚「感触」と、力の接触または制御と、エネルギーと、材料と、情報の流れとを提供するために、ロボットシステム10と組み合わせて利用される技術である。次に、本明細書に記載の技術は、外科医が外科手術中の組織相互作用プロセスを監視および評価するために(手動で)慣れている触覚および感覚情報をエミュレートするための技術的ソリューションを提供する。本明細書に記載されている触覚技術は、ロボット制御された手術の間にプロセスを評価する外科医の能力を回復させる。このソリューションは、例えば、1つの自由度(例えば、回転)と1つの付随する現象(例えば、抵抗)を使用して、触覚フィードバックを提供するための洗練されたメカニズムを提供する。触覚デバイスは、ロボットアーム20および/または手術用ツール30によって操作されるスクリュー(または付属品)の相互作用を制御またはエミュレートするインタフェース(例えば、ノブ)を含み得る。いくつかの例では、インタフェースの抵抗は調節または増幅され、スクリューとスクリューが挿入されている周囲の組織との間の相互作用に応じて動的に変化し得る。いくつかの例では、ユーザがインタフェースを操作すると、ロボットがスクリューを回転して前進させる。ロボットシステムは、適切なセンサを介してスクリュー挿入プロセスのパラメータをキャプチャする。そして、センサ情報が変換され、インタフェースへのフィードバックを調節するために使用され、これにより、外科医が、スクリューが挿入されている組織の一貫性と、スクリューと組織との間にフィットするフォームのグリップの質を理解するのに役立つ、強化された感覚的鋭敏さを外科医に与える。次に、ここで説明する触覚技術は、外科医の自信を高め、感情的なストレスを減らし、手順の有効性を高め、ロボットソリューションでは捉えられない予期しない状況を認識して対応する能力を外科医に提供する。
【0096】
本明細書に記載の触覚技術は、様々な医療用途で使用することができる。例えば、触覚技術はスクリュー挿入プロセスに関連しているが、触覚技術はまた、他の様々な医療用途で使用され得る。一例として、メスまたは注射器を含む手術中に、触覚デバイスのインタフェースは、メスまたは注射器が異なる組織を通って進むときにメスまたは注射器によって加えられる力をエミュレートするための触覚フィードバックを提供し得る。触覚技術は、軟組織への損傷を防ぐために軟組織に関わる手術で使用することができる。例えば、伸延器(a distractor)が軟組織を分離する手術の間、触覚デバイスのインタフェースは、伸延器が創傷部位、外科的開口部、関節腔内の骨の間、または骨成長手術中の骨の間(例えば、下顎伸延)の軟組織を分離するときに、伸延器によって軟組織に加えられる力(または伸延器上の軟組織によって加えられる張力)をエミュレートするための、触覚フィードバックを提供し得る。別の例として、止血帯を含む手術中に、触覚デバイスのインタフェースは、止血帯(tourniquet)によって軟組織に加えられる圧力をエミュレートするための触覚フィードバックを提供し得る。さらに別の例として、関節空間を開くためのジャッキを含む手術中に、触覚デバイスのインタフェースは、ジャッキによって靭帯に加えられる力(またはジャッキ上の靭帯による張力)をエミュレートして、靭帯のバランスを取るプロセスを助けるための触覚フィードバックを提供し得る。
【0097】
A.触覚デバイス
一例を参照すると、図10に示されるように、ロボット手術システム10は、手術用ツール30を制御するための触覚デバイス51を含む。触覚デバイス51は、オペレータの手によって手動で操作可能であり得るインタフェース53を含み得る。1つの非限定的な例では、触覚デバイス51は、手持ち式ペンダントであり得る。あるいは、触覚デバイス51は、表面上に置くことができるユニット、触覚グローブ、または手動の外科手術で利用されるツール(例えば、スクリュードライバー)を模倣する物理的設計を含み得る。触覚デバイス51は、外科医に本明細書に記載の機能を提供するように構成された他の任意のデバイスであり得る。
【0098】
触覚デバイスにおける「デバイス」という用語は、本明細書に記載の特定の実施形態(複数可)に限定されない。実際、触覚デバイスは、触覚応答が触覚デバイスから離れた環境で発生する条件をエミュレートする、触覚(感触)をオペレータに提供するように構成された任意のデバイスを含み得る。このデバイスは、適切な触覚を提供するために、機械的コンポーネント、電気的コンポーネント、電気機械的コンポーネント、ソフトウェア、コントローラ(複数可)、空気圧コンポーネント、油圧コンポーネントのいずれか1つ以上のコンポーネントで構成され得る。
【0099】
図10において、触覚デバイス51は、ベース22を介してロボットマニピュレータまたは手術用ツール30に直接取り付けられる。他の例では、触覚デバイス51は、コンピュータカートアセンブリ34またはナビゲーションシステム12などの、ロボット手術システム10の他の任意の適切なコンポーネントに取り付けられ得る。さらに別の例では、触覚デバイス51は、触覚デバイス51がオペレータによって保持される必要がないように、ロボットアーム20または手術用ツール30に直接結合され得る。触覚デバイス51はまた、図10に示されるように、ロボットマニピュレータおよび手術用ツール30から離れて間隔をあけて遠隔に配置され得る。そのような場合、触覚デバイス51は、ロボット手術システム10に無線で結合され得る。あるいは、触覚デバイス51は、図10に示されるように、システム10に接続されたコードで電力を供給され得る。さらに他の例では、触覚デバイス51は、必ずしもロボット手術システム10に取り付けられているとは限らないスタンドアロンデバイスとして使用することができる。例えば、触覚デバイス51は、ロボットマニピュレータおよび/またはナビゲーションシステム12を含まない手術システムと共に使用することができる。
【0100】
触覚デバイス51のインタフェース53は、触覚デバイス51に対してある自由度で動くことができる。一例では、インタフェース53は、触覚デバイス51に対してある回転自由度で移動することができる回転インタフェースである。いくつかの例では、回転インタフェース53は、図10に示されるように、回転ノブであり得る。回転インタフェース53はまた、回転可能なダイヤル、ボール、またはホイールであり得る。インタフェース53は、図面に具体的に示されている、または本明細書に記載されているもの以外の構成を有し得る。
【0101】
回転インタフェース53は、オペレータが回転インタフェース53の回転自由度を、スクリューまたはツールがそれを中心として回転する回転自由度に関連付けることを可能にすることが望ましい場合がある。しかしながら、回転インタフェース53以外の構成を利用して、触覚デバイス51のインタフェース53を実現することが可能である。例えば、触覚デバイス51は、オペレータの手によって手動で操作可能であり得る線形インタフェース53を含み得る。いくつかの例では、線形インタフェース53は、枢動レバー、押しボタン、手のひらまたは指のトリガ、ばねスイッチ、プランジャ、弾性パッド、またはスライダであり得る。さらに、1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51のアクチュエータ55を制御して、線形インタフェース53がスクリューと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることを可能にすることができる。例えば、線形インタフェース53が押しボタンである場合、1つ以上のコントローラ33は、現在の相互作用に応じて、オペレータが押しボタンを押すためにより大きなまたはより小さな力を加えるようにアクチュエータ55を制御することができる。別の例では、線形インタフェース53がスイッチまたはプランジャである場合、1つ以上のコントローラ33は、オペレータがスイッチまたはプランジャを作動させるためにより大きなまたはより小さな力を加えるように、触覚デバイス51のアクチュエータ55を制御することができる。さらに別の例では、線形インタフェース53は、経路に沿ってスライドするように構成された機構を含むスライダである。1つ以上のコントローラ33は、オペレータがより大きなまたはより小さな力を加えてスライダを作動させるように、および/またはアクチュエータ55を制御してスライダの線形変位を制限するように、触覚デバイス51のアクチュエータ55を制御することができる。
【0102】
ロボット手術システム10は、触覚デバイス51を介してオペレータに触覚フィードバックを提供する。図10に示すように、触覚デバイス51は、1つ以上のコントローラ33によって制御され得るアクチュエータ55を含み得る。アクチュエータ55は、インタフェース53に結合され、インタフェース53に力を加えるように構成される。アクチュエータ55は、アクチュエータ55とインタフェース53との間に結合された駆動出力駆動シャフト68を含み得る。1つ以上のコントローラ33は、アクチュエータ55を制御して、インタフェース53がスクリューと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることを可能にすることができる。いくつかの例では、インタフェース53を利用して、スクリューを回転させるために手術用ツール30および/またはドライバー44を直接制御する。触覚デバイス51を介した直接制御はまた、触覚フィードバックと組み合わせて、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることができる。これらの例では、オペレータは、知覚を通じて、インタフェース53の自由度を、スクリューがそれを中心として動く自由度に関連付けることができる。
【0103】
アクチュエータ55は、ブラシ付きまたはブラシレスモータ、直接駆動モータ、アクティブアクチュエータ、DCモータ、電気リニアモータ、リニア電流制御モータ、ステッパーモータ、電気ロータリーモータ、トルカー(a torquer:角度範囲が制限されたモータ)、ばねベースのアクチュエータ、磁気アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、手動機械式アクチュエータ、磁性粒子ブレーキを含むパッシブアクチュエータ、摩擦ブレーキ、減衰抵抗機構、または摩擦生成機構、またはそれらの組み合わせ、などのモータとして実装することができる。
【0104】
いくつかの例では、触覚デバイス51は、ロボットシステム10または触覚デバイス51の意図しない使用を防ぐための安全機能を含み得る。例えば、触覚デバイス51は、インタフェース53が操作可能であるために押される必要があり得るユーザインタフェース57(デッドマンスイッチ)を含み得る。同様に、触覚デバイス51がロボット手術システム10にコマンドを送信するために、ユーザインタフェース57を押す必要があり得る。別の例では、インタフェース53は、操作される前に、押されて、押された位置に保持される必要があり得る。さらに別の例では、触覚デバイス51は、1つ以上のコントローラ33がオペレータの手が触覚デバイス51に接触しているかどうかを判断することを可能にするために、力センサ、温度センサ、近接センサ、光センサ、および/または圧力センサなどの1つ以上のセンサを含み得る。
【0105】
触覚デバイス51は、様々な動作モードで利用することができ、そのいくつかは、図11Aの表に記載されている(動作モードは「触覚デバイス動作モード」と呼ばれる)。示されているように、これらの動作モードは、「自律チェックモード」と「手動制御モード」と「シミュレートされた自律チェックモード」と「シミュレートされた手動制御モード」とを含むが、これらに限定されない。これらのモードの名前は、理解と説明を簡単にするために提供されているため、他の適切な規則で名前を付けてもよい。これらのモードの機能は、以下の説明に基づいて完全に理解される。
【0106】
図11Aの表の列Bを参照すると、触覚デバイスの動作モードのそれぞれにおいて、1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51に触覚フィードバックを提供する。自律チェックモードおよび手動制御モードでは、触覚デバイス51は、椎弓根スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートする。シミュレートされた自律チェックモードとシミュレートされた手動制御モードとでは、触覚デバイス51は、シミュレートされた椎弓根スクリューとシミュレートされた標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートする。これらのモードはいずれも、ロボットシステム10によって自動的に開始されるか、オペレータによって手動で開始されるか、または任意の他のコマンドに従って開始される。
【0107】
さらに、スクリューの位置および深さは、本明細書に記載の任意の制御モードについて、ディスプレイデバイス上に表示することができる。
【0108】
B. 相互作用センサ
本明細書に記載の動作モードのいずれについても、ロボット手術システム10は、1つ以上のコントローラ33に結合された1つ以上のセンサを含み、システムの可動要素(インプラント、スクリュー、および/またはツール自体など)と標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を得ることができる。例えば、ロボット手術システム10は、標的部位に対する椎弓根スクリューPSの位置を感知するように構成された位置センサ、および/または手術用ツール30のドライバー44の回転もしくは椎弓根スクリューPSの回転を感知するように構成されたロータリーエンコーダを含み得る。ロボット手術システム10は、標的部位によって椎弓根スクリューPSに加えられた力を感知するように構成された力センサを含み得る。ロボット手術システム10は、標的部位によって椎弓根スクリューPSに加えられたトルクを感知するように構成されたトルクセンサ、および/または手術用ツール30のアクチュエータによって生成された電気パラメータを感知するように構成された電気パラメータセンサを含んでもよく、電気パラメータは、スクリューと標的部位との間の現在の相互作用によって手術用ツール30に加えられるトルクに比例する。例えば、そのような場合、トルクの増加は、椎弓根スクリューPSが皮質壁に接触したか、または接触することを示すことができ、トルクの急速な低下は、椎弓根スクリューPSが皮質壁を破り、底を打ったことを示すことができる。ロボット手術システム10はまた、標的部位の特徴に対する椎弓根スクリューPSの近接を感知するように構成された近接センサと、標的部位内の椎弓根スクリューPSの深さを感知するように構成された深さセンサと、標的部位の特徴に対する椎弓根スクリューPSの変位を感知するように構成された変位センサとを含み得る。
【0109】
一実施態様では、ナビゲーションシステム12は、追加的にまたは代替的に、椎弓根スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用を決定する。前述のように、術前撮像および/または術中撮像を用いて、患者の解剖学的形態を視覚化することができる。例えば、術前画像、例えば、X線、CTスキャン、またはMRI画像を使用して、患者の解剖学的形態、具体的には標的部位の解剖学的(仮想)モデルを作成することができる。標的部位の解剖学的モデルは、任意の適切な登録方法を使用して標的部位に登録することができる。ナビゲーションシステム12は、ロボット、ツール、スクリュー、および/または患者を追跡し、標的部位の解剖学的モデルに対する椎弓根スクリューPSの位置を決定することができる。ナビゲーションシステム12は、解剖学的モデルに対する椎弓根スクリューPSの複数の位置での椎弓根スクリューPSと解剖学的モデルとの間の予想される相互作用を示す所定のデータを含み得る。一例では、データは、1つ以上のコントローラ33によるアクセスのために、メモリ内のルックアップテーブルに格納され得る。ナビゲーションシステム12は、解剖学的モデルおよび所定のデータに対するスクリューの決定された状態、位置、向き、および/または姿勢に基づいて、椎弓根スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得することができる。所定のデータは、椎骨Vの骨密度データを含み得る。ナビゲーションシステム12は、骨密度データおよび椎骨Vの解剖学的モデルに対するスクリューの状態を使用して、椎弓根スクリューPSと椎骨Vとの間の、例えば、図12Aに示される深さAでの現在の相互作用を示す測定値を取得し得る。所定のデータは、スクリュー、ツールの形状、または、相互作用の定義に関連する任意の他の機能についての既知のデータも含み得る。
【0110】
ナビゲーションシステム12を含む上記のセンサの任意の組み合わせを組み合わせて、可動要素と標的部位との間の感知を実施することができる。
【0111】
C.触覚相互作用フィードバック
コントローラ32は、触覚デバイス51に物理的フィードバックを提供するように構成されることによって、椎弓根スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることができる。以下で説明するように、物理的フィードバックは様々な形を取ることができる。
【0112】
本明細書に記載の制御モードである、「自律チェックモード」と「手動制御モード」と「シミュレートされた自律チェックモード」と「シミュレートされた手動制御モード」とのいずれも、本明細書に記載の触覚相互作用フィードバック技術のいずれをも完全に利用することができる。
【0113】
これらの技術を可能にするために、触覚デバイス51は、図10に示されるように、触覚デバイス51の特徴を感知するための1つ以上のセンサ65を備え得る。例えば、1つ以上のセンサは、アクチュエータ55、インタフェース53、それらの任意の組み合わせ、または任意の他の機能に関連する任意の測定値を検出することができる。そのようなセンサ65は、位置または変位センサ、増分/絶対エンコーダ、角度センサ、電位差計、ホール効果センサ、誘導センサ、容量センサ、加速度計などの慣性センサ、速度/速さセンサ、傾斜計、ジャイロスコープ、力センサ、トルクセンサ、ひずみゲージセンサ、またはそれらの任意の組み合わせもしくは同等物として実装され得る。
【0114】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラ33は、アクチュエータ55以外の手段を利用して、またはそれに加えて、インタフェース53の機械的動きを修正または制限するように構成される。例えば、インタフェース54の動きの影響に対して、触覚デバイス51は、バイアス機構、戻り止め、ラチェット、および/またはギアシステムなどを含むがこれらに限定されない機械的コンポーネント、誘導性、容量性、および/または抵抗性要素などであるがこれらに限定されない電気コンポーネント、磁気コンポーネント、電磁コンポーネント、電気機械コンポーネント、油圧コンポーネントおよび/または空気圧コンポーネントを利用することができる。
【0115】
いくつかの実施態様では、1つ以上のコントローラ33は、インタフェース53を手動で操作する能力を妨げるように構成される。例えば、1つ以上のコントローラ33は、椎弓根スクリューPSの制御中にある条件が存在すると判定することができ、それに応じて、触覚デバイス51のアクチュエータ55を制御して、回転インタフェース53を回転させる能力を妨げることによって、オペレータにその条件に関する触覚フィードバックを提供することができる。例えば、この条件は、回転インタフェース53を回転させる能力を妨げるであろうエラー条件を含み得る。これらの停止条件は、椎弓根スクリューPSが所望の深さに到達すること、椎弓根スクリューPSが所定の回転数回転されること、(2016年6月28日に出願されたMoctezuma de la Barrera et alの「Robotic surgical systems And Methods For Controlling A Tool Removing Material From A Workpiece」と題される米国特許出願公開第2017/0000572号に記載されており、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)椎弓根スクリューPSと骨との間の接触点の予測、および/またはオペレータの停止する主観的な知識(例えば、オペレータが各椎弓根スクリューPSを回転させる時間量を設定できること)を含む。加えて、この条件は、ロボット手術システム10内で検出された障害などのエラー条件を含み得る。いくつかの例では、回転インタフェース53の回転を妨げる代わりに、ロボット手術システム10は、振動および/またはパルスを介してオペレータに触覚フィードバックを提供することができる。例えば、1つ以上のコントローラ33は、椎弓根スクリューPSが所望の深さに達したときに触覚デバイス51を振動させることができる。
【0116】
上記の触覚技術のいずれも、本明細書に記載の任意のモードもしくは例、またはそれらの同等物のために、個別にまたは組み合わせて利用することができる。さらに、1つ以上のコントローラ33は、相互作用センサ、触覚デバイス51のセンサ65からの読み取り値、制御モードの変更または開始などの任意の条件に応じて、またはオペレータによる入力に基づいて、触覚技術のいずれかを変更または修正することができる。さらに、本明細書に記載の技術のいずれも、触覚デバイス51の回転インタフェースまたは線形インタフェースに適合させることができる。
【0117】
1.触覚フィードバック - 抵抗力またはトルク
一例では、物理的フィードバックは、インタフェース53に加えられる抵抗力である。アクチュエータ55は、オペレータの手によってインタフェース53を操作するために必要な力またはトルクを調整することができる。回転インタフェース53を操作するために必要とされる力は、標的部位に対してスクリューを回転させるために必要とされる現在の力を反映し得る。インタフェース53はアクチュエータ55に結合されているので、アクチュエータ55は、インタフェース53の自由度における動きに抵抗するための抵抗力を生成することができる。
【0118】
例えば、図12Aを参照すると、椎弓根スクリューPSを回転させるのに必要な現在の力はFPSとして示され、アクチュエータ55に提供される抵抗力はFAとして示され、回転インタフェース53を回転させるのに必要な力はFRIとして示される。FRIは、オペレータが回転インタフェース53を手動で操作したときにFRIが発生するため、点線で示されている。軌道LHに沿った様々な深さで、現在の力FPSの大きさが変化し、それに応じて抵抗力FAと力FRIが変化する。
【0119】
コントローラ32は、アクチュエータ55を制御して、抵抗力を調節、修正、増幅、または動的に変更することができる。そうするために、コントローラ32は、アクチュエータ55の動作電圧、周波数、または電流を変更することができる。抵抗力は、ばね力、ダンパー力、衝撃力などとしてモデル化または実装することができる。さらに、抵抗力は、位置、速度、および/または加速度パラメータに基づくことができる。
【0120】
いくつかの例では、ロボット手術システム10は、アクチュエータ55に提供される抵抗力FAを選択的に調整するために、オペレータからの入力を受け取るように構成され得る。加えて、ロボット手術システム10は、オペレータからの入力を受け取り、インタフェース53の能力の感度を選択的に調整して、手術用ツール30を制御して椎弓根スクリューPSを回転させるように構成され得る。いくつかの例では、抵抗力FAとインタフェース53の感度が関連している。例えば、抵抗力FAが大きいほど、インタフェース53の感度が高くなり、抵抗力FAが小さいほど、インタフェース53の感度が低くなる。インタフェース53の感度を変更するために調整可能であり得るパラメータは、ばねパラメータ、減衰パラメータ、力パラメータ、アクチュエータ55とインタフェース53の回転比の間のスケーリング係数、アクチュエータパラメータ、力の大きさ、力の方向、任意の所与の抵抗力に対するインタフェース53の変位限界または範囲、抵抗力曲線または傾斜などを含むが、これらに限定されない。例えば、インタフェース53がばねを含み、ばねパラメータが調整される場合、そのようなばねパラメータはばね定数であってもよく、ここで、より大きなばね定数は、インタフェース53を作動させるためにより大きな力を必要とする。そのような場合、ばねは、弾性要素の材料特性を変更することによって、または弾性要素の幾何学的特性を変更することによって、ばね定数を変更できるように、弾性要素から形成され得る。
【0121】
一例では、抵抗力は、インタフェース53上またはインタフェース53とアクチュエータ55との間で定義されたホーム位置(ゼロ戻り止め)からのインタフェース53の偏差の大きさに比例する大きさを有する復元力であり得る。ホーム位置は、例えば、触覚モードが開始された瞬間にコントローラによって定義されるインタフェース53の位置であり得る。一例では、ホーム位置は、触覚デバイス51に対して静的な位置で定義される。別の例では、1つ以上のコントローラ33は、相互作用センサ、触覚デバイス51のセンサ65からの読み取り値、制御モードの変更または開始、タスクの完了などの任意の既存の条件に基づいて、またはオペレータによる入力に基づいて、ホーム位置の場所を動的に調整することができる。あるいは、ホーム位置は、例えば、物理的な戻り止め(physical detent)などを使用して、機械的に事前定義され得る。
【0122】
いくつかの実施態様では、抵抗力は、インタフェース53の動きに屈する可能性がある。言い換えれば、抵抗力は、インタフェース53の位置を任意のホーム位置に復元しようとはしない。抵抗力は、最初は大きさが小さく、インタフェース53がホーム位置からより遠くに移動するにつれて大きさが大きくなり得る。
【0123】
いくつかの例では、抵抗力は、スクリューPSが標的部位に対して限界に達したことをユーザに伝えるために必要な大きさまで増加する。例えば、これは、スクリューが椎体の内皮質壁に隣接する可能性がある状況において適切であってもよく、それにより、皮質壁の破壊を回避するための制限が提供される。一例では、抵抗力は、剛性の大きさが大きいバリア力効果としてモデル化することができる。あるいは、そのような場合、コントローラは、アクチュエータ55を制御して、インタフェース53の動きに機械的な制限を適用することができる。
【0124】
多くの例では、抵抗力は回転運動に抵抗するために適用される。しかしながら、線形運動に抵抗するために抵抗力を加えることもできる。例えば、線形運動は、インタフェース53の線形運動に抵抗し得る。そのような線形運動は、スライダ、押しボタンなどの線形インタフェース53の機構の動きであり得る。代替的にまたは追加で、線形運動は、回転インタフェース53を押し下げることができる例であり得る。そのような例における抵抗力は、回転インタフェース53の押し下げに抵抗し得る。
【0125】
抵抗力は、椎弓根スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用に関連する異なる条件に応じて提供され得る。これらの条件のいずれも、上記の相互作用センサのいずれかによって検出できる。
【0126】
一例では、椎弓根スクリューPSの回転位置に応じて、抵抗力がインタフェース53に加えられる。基準点に対するスクリューPSの位置が決定される。インタフェース53に加えられる抵抗力は、スクリューが指定された位置に到達するまで漸進的に増加または減少させることができる。この例では、インタフェース53のホーム位置を利用することができる。インタフェース53は、スクリューの駆動を命令するために、ホーム位置から離れるように回転させることができる。非ホーム位置にある間、抵抗力がインタフェース53に加えられる。しかしながら、特定の位置に達すると、抵抗力をゼロにすることができ、インタフェース53はホーム位置に跳ね返ることができる。あるいは、スクリューが徐々に特定の位置に到達するのに近づくにつれて、抵抗力を徐々に(ゼロまで)減らすことができる。
【0127】
別の例では、椎弓根スクリューPSの挿入深さに応じて、抵抗力がインタフェース53に加えられる。この例では、インタフェース53のホーム位置を利用することができる。インタフェース53は、スクリューの駆動を命令するために、ホーム位置から離れるように回転させることができる。非ホーム位置にある間、抵抗力がインタフェース53に加えられる。しかしながら、挿入深さに達すると、抵抗力をゼロにすることができ、インタフェース53はホーム位置に跳ね返ることができる。あるいは、スクリューが徐々に挿入深さに到達するのに近づくにつれて、抵抗力を徐々に(ゼロまで)減らすことができる。
【0128】
別の例では、椎弓根スクリューPSの回転速度に応じて、抵抗力がインタフェース53に加えられる。この例では、インタフェース53のホーム位置を利用することができる。インタフェース53は、スクリューの駆動を命令するために、ホーム位置から離れるように回転させることができる。非ホーム位置にある間、抵抗力はスクリューの回転速度に応じて徐々に増減することができる。
【0129】
別の例では、抵抗力は、標的部位によって椎弓根スクリューPSに加えられたトルクに応じて、またはツールによって加えられたトルクに応じて、インタフェース53に加えられる。
【0130】
別の例では、1つ以上のコントローラ33はまた、振動および/またはパルスを介してオペレータに触覚フィードバックを提供することができる。例えば、1つ以上のコントローラ33は、標的部位に対してスクリューを回転させるのに必要な現在の力に基づいて、触覚デバイス51の振動の周波数および/または振幅を調整することができる。より具体的な例では、標的部位に対してスクリューを回転させるのに必要な力が増加するにつれて、触覚デバイス51の振動の振幅は増加してもよく、触覚デバイス51の振動の周波数は減少してもよい。同様に、標的部位に対してスクリューを回転させるのに必要な力が減少するにつれて、触覚デバイス51の振動の振幅は減少してもよく、触覚デバイス51の振動の周波数は増加してもよい。
【0131】
抵抗力は、本明細書に記載の実施例の任意の組み合わせ、またはその同等物を使用して実装することができる。
【0132】
2.触覚フィードバック - 位置
インタフェース53は、抵抗力以外のフィードバック技術を採用してもよい。一例では、インタフェース53の位置は、スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用に応じてアクチュエータ55によって能動的に制御(移動)され、オペレータにフィードバックを提供する。これらの条件のいずれも、上記の相互作用センサのいずれかによって検出できる。
【0133】
一例では、インタフェース53の位置は、椎弓根スクリューPSの回転位置に応じて制御される。インタフェース53の位置は、スクリューのリアルタイム位置に基づいて、アクチュエータ55によって能動的に回転させることができる。スクリューが回転すると、インタフェース53も回転する。別の例では、インタフェース53の位置を特定の固定位置またはその間に移動して、最大位置または挿入深さなどのスクリューに関連する任意の位置情報についてオペレータに通知することができる。インタフェース53は、インタフェース位置をスクリュー位置に相関させるためのグラフィックスケールまたはしるしを含み得る。
【0134】
別の例では、インタフェース53の位置は、標的部位によって椎弓根スクリューPSに加えられたトルクに応じて、またはツールによって加えられたトルクに応じて、制御される。インタフェース53の位置は、アクチュエータ55によって能動的に動かされて、スクリューが受ける様々なトルクレベルをオペレータに示すことができる。インタフェース53は、インタフェース位置をスクリュートルクに相関させるためのグラフィックスケールまたはしるしを含み得る。
【0135】
さらに別の例では、インタフェース53の位置は、椎弓根スクリューPSの回転速度に応じて制御される。インタフェース53の位置は、アクチュエータ55によって能動的に動かされて、スクリューが受ける様々な速度レベルをオペレータに示すことができる。インタフェース53は、インタフェース位置をツールまたはスクリュー速度に相関させるためのグラフィックスケールまたはしるしを含み得る。
【0136】
3.触覚フィードバック - 可動域
別の例では、インタフェース53の位置は、スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用に応じて制限されるように制御されて、オペレータにフィードバックを提供する。これらの条件のいずれも、上記の相互作用センサのいずれかによって検出できる。
【0137】
一例では、インタフェース53は、スクリューが回転した量に関連する量だけ回転することが許されるように制限されている。別の例では、インタフェース53は、スクリューが挿入された深さに関連する量だけ回転することが許されるように制限されている。別の例では、インタフェース53は、スクリューが物理的または仮想的な境界に到達した場所を識別する量だけ回転することしか許されないように制限されている。
【0138】
別の実施態様では、インタフェース53が回転しているとき、その可動域は、連続的な回転、例えば、任意の回数の完全な360度の回転を可能にするように制御され得る。これは、以下に説明するように、回転インタフェース53が入力制御のための速度または力/トルクに到達することを制御することによってユーザがスクリュー挿入を手動で制御できるようにするために触覚デバイス51が利用される場合など、特定の制御モードにおいて適切であり得る。
【0139】
D.自律チェックモード
触覚デバイス51の1つのモードは、自律チェックモードである。自律チェックモード中に、ロボット手術システム10は、ロボットシステム10によるスクリューPSの自律挿入に従って、椎弓根スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートするために、オペレータに触覚フィードバックを提供する。自律チェックモード中に、回転インタフェース53は、力FRIに従って手動で操作可能であり、椎骨Vに対して椎弓根スクリューPSを回転させるのに必要な現在の力FPSを反映する触覚フィードバックをオペレータに提供する。言い換えれば、自律チェックモードにより、オペレータは、自律スクリュー挿入前、挿入中、または挿入後の任意の時点でスクリューの相互作用を「感じる」ことができる。
【0140】
図11Aの表の列Bおよび列Dに示されているように、触覚フィードバックは、チェックのために触覚デバイス51に提供されるが、触覚デバイス51は、スクリューがロボットシステム10によって自律的に挿入されているので、自律チェックモード中に椎弓根スクリューPSを挿入するために手術用ツール30またはドライバー44を制御しない(図11Aの列Dを参照)。
【0141】
図12Aは、自律チェックモード中に標的部位である椎骨Vと相互作用する椎弓根スクリューPSの例を提供する。図12Aでは、1つ以上のコントローラ33は、計画された軌道LHに沿った椎弓根スクリューPSの挿入を自律的に制御する。この場合、スクリューはセルフタッピングである。一方、1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51を制御して、椎弓根スクリューPSと椎骨Vとの間の現在の相互作用をエミュレートする。例えば、椎弓根スクリューPSが計画された軌道LHに沿って深さAまで挿入されると、1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51を制御して、深さAでの椎弓根スクリューPSと椎骨Vとの間の現在の相互作用をエミュレートする。したがって、システム10は、ロボットシステムによって実行されているスクリューPS挿入を体験する触覚感知をオペレータに提供する。
【0142】
一例では、図11Aの表の列Fに概説されているように、自律チェックモードは、ロボットシステム10による能動的および自律的なスクリュー挿入と同時に/その最中に実行することができる。そのような場合、自律チェックモードを開始することにより、回転インタフェース53は、スクリューが自律的に挿入されているときに、オペレータが回転インタフェース53を介してロボット手術システム10から触覚フィードバックを受け取ることができるように手動で操作可能であるように制御される。この例では、触覚チェックのために自律的スクリュー挿入は停止しない。スクリューPSが自律的に挿入され続けると、挿入深さが連続的に変化するため、椎弓根スクリューPSと椎骨との間の現在の相互作用が変化する。したがって、この例では、回転インタフェース53への抵抗性フィードバックを変更して、椎弓根スクリューPSと椎骨との間のほぼリアルタイムの現在の相互作用を反映することができる。抵抗力の更新は、N秒ごと、スクリューのN度の回転ごと、スクリューの変位のNmmごとの更新など、任意の適切な時間ステップに従って設定できる。
【0143】
あるいは、図11Aの表の列Fに概説されているように、自律チェックモードは、1つ以上のコントローラ33が、手術用ツール30を自律的に制御して椎弓根スクリューPSの回転を停止または一時停止した後に開始され得る。一例では、ロボットシステム10は、オペレータが自律チェックモードをトリガすることに応じて、自律制御を停止または一時停止する。あるいは、ロボットシステム10は、ユーザが開始する自律運動の停止など、他の任意のシステムコマンドに応じて自律制御を停止または一時停止する。いずれの場合も、システム10は、触覚デバイス51を制御して、システム10が停止または一時停止されたときに存在する椎弓根スクリューPSと椎骨との間の相互作用をエミュレートする。自律チェックモードが実行された後、オペレータは、ロボットシステム10の自律制御を再開して、スクリューの挿入を継続することができる。
【0144】
別の例では、図11Aの表の列Fに概説されているように、ロボット手術システム10は、1つ以上のコントローラ33が手術用ツール30を自律的に制御して椎弓根スクリューPSを挿入する前に、自律チェックモードを開始することができる。例えば、オペレータは、1つ以上のコントローラ33が手術用ツール30を自律的に制御して椎弓根スクリューPSを挿入する前に、椎弓根スクリューPSの触覚フィードバックに関心を持つ可能性がある。そのような場合、スクリューPSは、外科医による手動挿入に従って部分的にインプラントされ、後で自律的に挿入され得る。部分的にインプラントさたスクリューPSと標的部位との間の既存の相互作用は、外科医が自律挿入を開始する前にチェックするために触覚デバイス51に反映され得る。
【0145】
いくつかの例では、自律チェックモードの開始は、1つ以上のコントローラ33による手術用ツール30の自律制御を自動的に開始する。同様に、自律チェックモードが非アクティブ化されると、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツール30の自律制御を停止することができる。自律チェックモードの代替例と、その機能および使用とが検討されている。
【0146】
E.手動制御モード
手動制御モードでは、オペレータは、触覚デバイス51を利用して、限定するものではないが、椎弓根スクリューPSの挿入などの目的のために、手術用ツール30を制御する。手動制御モード中に、1つ以上のコントローラ33は、(図11Aの列Dに示されるように)椎弓根スクリューPSの挿入を自律的に制御しない。代わりに、触覚デバイス51のインタフェース53は、椎弓根スクリューPSの挿入を制御するために1つ以上のコントローラ33に入力を提供するように操作される。触覚デバイス51からの制御入力に応じて、1つ以上のコントローラ33は、回転軸Rを中心とした回転速度でスクリューを回転させ、計画軌道LHに沿った前進速度でスクリューを直線的に前進させるように手術用ツールを制御する。
【0147】
手動制御モードは、本明細書に記載されている他の触覚デバイスモードのいずれかの前または後に利用することができる。一例では、ロボットは、所望のまたは所定のトルクピーク、挿入深さ、またはスクリューの回転数まで、スクリューを自律的に挿入することができる。そして、手動制御モードを利用して、タスクの残りを完了することができる。
【0148】
1.手動制御入力
手動制御モードについて図11Aの表の列Gを参照すると、1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51が入力としてどのように利用され得るかを定義する入力制御技術を決定または受信するように構成され得る。
【0149】
図11Bの表を参照すると、これらの入力制御技術の例は、力もしくはトルク入力、回転位置入力、または回転速度入力として触覚デバイス51を利用することを含むが、これらに限定されない。入力制御技術は、外科医の好みに従って設定されるか、システムによって指定されるか、またはそれらの任意の組み合わせとすることができる。オペレータは、触覚デバイス51の(図10に示される)ユーザインタフェース57を使用して、またはディスプレイデバイス18への入力などの他の方法によって、入力制御技術を選択することができる。
【0150】
手動制御モードでは、触覚デバイス51からの入力に応じてスクリューを挿入するためにツールが制御される。以下に説明するように、スクリューを制御するための様々な出力技術もあり、これは、入力制御に利用される技術と同じであるかまたは異なってもよい。
【0151】
a.触覚デバイスからの力またはトルク入力
図11Bを参照すると、触覚デバイス51によって提供される一例の入力は、オペレータによってインタフェース53に加えられる力またはトルク入力である。図12Bに示すように、オペレータは、力Finを加えて、インタフェース53を手動で操作することができる。この力Finは、加えられるトルクでもあり得る。1つ以上のコントローラ33は、インタフェース53に加えられる力の測定値を取得して、椎弓根スクリューPSを挿入するための所望の力を決定し、所望の力に基づいて椎弓根スクリューPSの挿入を制御することができる。加えられる力またはトルクは、スクリューPSと標的部位との間にオペレータが望む力またはトルクを表すことができる。
【0152】
例えば、1つ以上のコントローラ33は、図11Cに示すように、回転インタフェース53をホーム位置P0から非ホーム位置P1まで手動で操作するために使用される力Finに基づいて、椎弓根スクリューPSを挿入するための所望の力を決定することができる。これらの例のそれぞれにおいて、位置P1は、インタフェース53がホーム位置に対して位置し得る多くの位置の1つの可能な例としてのみ示されている。一例では、1つ以上のコントローラ33は、オペレータが力Finを加えるときに回転インタフェース53に加えられるトルクを測定または計算することによって、力Finの測定値を取得するように構成され得る。別の例では、1つ以上のコントローラ33は、オペレータが力Finヲ加えるときに回転インタフェース53の加速度を決定することによって、力Finの測定値を取得するように構成され得る。
【0153】
一例では、ロボット手術システム10が、図4図6に示されるトリガ49を有する手術用ツール30を含む場合、オペレータは、触覚デバイス51の回転インタフェース53の代わりにトリガ49を手動で操作することによって、椎弓根スクリューPSの挿入を制御することができる。このような場合、オペレータは、力Finでトリガ49を押し下げることができ、トリガ49は、オペレータの入力を示す信号を1つ以上のコントローラ33に伝達することができる。
【0154】
インタフェース53は、力を加えた後にオペレータによって解放されたときにインタフェース53がホーム位置に戻るように、ゼロ戻り止め(ホーム位置P0)を含み得る。こうして、オペレータは、手を不必要に動かすことなく、一連の力Finを回転インタフェース53に加えることができる。別の例では、インタフェース53は、所望の力を達成するのに十分なインタフェース53の回転を可能にすることを妨げられることなく自由度を持って回転し続けることができる。こうして、回転インタフェース53は、完全な360度の可動域を提供し、オペレータが手でスクリューを回転させるのをシミュレートすることを可能にする。
【0155】
b.触覚デバイスからの位置入力
別の例では、1つ以上のコントローラ33は、制御入力を提供するために、インタフェース53の位置(または位置の変化)の測定値を取得することができる。例えば、オペレータが回転インタフェース53をホーム位置P0から位置P1に手動で操作する場合、1つ以上のコントローラ33は、ホーム位置P0の場所に対する位置P1の場所に基づいて椎弓根スクリューPSの所望の回転位置を決定することができる。いくつかの例では、1つ以上のコントローラ33は、ホーム位置P0に対する位置P1での回転インタフェース53の回転角の測定値を取得することができる。位置は、インタフェース53および/またはアクチュエータ55に結合されたインクリメンタルまたはアブソリュートエンコーダなどの任意の適切なセンサを使用して決定することができる。ホーム位置P0に対するインタフェース53の変位も、入力を提供するために利用できる。あるいは、インタフェース53の完全な運動度(例えば、360度)に対するインタフェース53の位置は、ホーム位置に関係なく入力として利用することができる。位置はまた、完全な運動度に対するインタフェース53の累積回転数(例えば、1.5回転または540度)を考慮し得る。
【0156】
一例では、インタフェース53は、ゼロ戻り止め(ホーム位置P0)を含んでもよく、その結果、インタフェース53は、所望の位置でオペレータによって解放されたときにホーム位置に戻る。別の例では、インタフェース53は、所望の位置を達成するのに十分なインタフェース53の回転を可能にすることを妨げられることなく自由度を持って回転し続けることができる。
【0157】
c.触覚デバイスからの速度入力
さらに別の例では、触覚デバイス51によって提供される入力は、オペレータの操作に応じてインタフェース53が経験する速度である。1つ以上のコントローラ33は、慣性センサ、エンコーダ、ホール効果センサなどの任意の適切な感知デバイスを使用して、インタフェース53の速度の測定値を取得することができる。例えば、図11Bに示すように、インタフェース53が時間T0でホーム位置P0にあり、オペレータが時間T1で位置P1に移動するようにインタフェースを手動で操作すると仮定する。1つ以上のコントローラ33は、時間T1-T0の変化に対するP1とP0との間の距離または変位を決定して、インタフェース53の速度を決定することができる。この距離または変位は、線形または角度とすることができる。1つ以上のコントローラ33は、積分器、微分器、ルックアップテーブルなどの感知された読み取り値に基づいて、速度を計算するための任意の適切なソフトウェアまたは論理を利用することができる。
【0158】
一例では、インタフェース53は、ゼロ戻り止め(ホーム位置P0)を含んでもよく、その結果、インタフェース53は、オペレータによって解放されたときにホーム位置に戻る。別の例では、インタフェース53は、所望の速度入力を達成するのに十分なインタフェース53の回転を可能にすることを妨げられることなく自由度を持って回転し続けることができる。
【0159】
触覚デバイス51からの入力制御は、力、位置、および/または速度の任意の組み合わせであり得る。
【0160】
2.手動制御出力
上記の入力技術(力、位置、速度)のいずれかを利用する触覚デバイス51からの制御入力に応じて、システム10は、スクリューの挿入を制御するように構成される。図11Bを参照すると、ツールは、様々な出力制御技術に従ってスクリューを駆動するように制御することができる。これらの出力制御技術は、力と、回転位置と、挿入深さと、速度とを含む。これらの出力制御技術については、以下で詳しく説明され、出力制御技術は、任意の入力技術(力、位置、速度)に応じて利用できる。
【0161】
1つ以上のコントローラ33は、ツールが手動制御モードでどのように操作されるべきかを定義する出力制御技術(すなわち、力、回転位置、挿入深さ、および速度)を決定または受信するように構成され得る。出力制御技術は、外科医の好みに従って設定されるか、システムによって指定されるか、またはそれらの任意の組み合わせとすることができる。オペレータは、触覚デバイス51の(図10に示される)ユーザインタフェース57を使用して、またはディスプレイデバイス18への入力などの他の方法によって、出力制御技術を選択することができる。
【0162】
手動制御モード出力のすべての例で、スクリューの回転および前進速度は、本明細書で説明する技術に従ってねじピッチによって結びつけられる。さらに、ツールの制御を引き起こすためのインタフェース53の感度は、本明細書に記載されている例のいずれについても変更することができる。インタフェース53の感度は、骨密度を考慮するために、手動または自動で更新することができる。
【0163】
a.ツールの力出力制御
任意の入力技術(力、位置、速度)に応じて、1つ以上のコントローラ33は、力制御に基づいて、ツールに対して動作してスクリューPSを駆動することができる。
【0164】
一例では、インタフェース53の入力位置は、ツール30によるスクリューへの力出力を決定する。力出力はトルクにすることができる。一例では、インタフェース53の入力位置は、ツールがスクリューに加えるべき特定の力またはトルクレベルを決定することができ、ツール30は、指定された力またはトルクを加えるように制御される。別の例では、インタフェース53の位置は、ツールがスクリューに加えるべき最大の力またはトルクレベルを決定することができ、ロボットおよびツール30は、最大の力またはトルクが達成されるまでスクリューを挿入し続ける。これらの例では、インタフェース53は、ゼロ戻り止め(ホーム位置P0)を含んでもよく、その結果、インタフェース53は、オペレータによって解放されたときにホーム位置に戻る。
【0165】
一例では、インタフェース53の入力速度は、ツール30によるスクリューへの力出力を決定する。例えば、インタフェース53の速度の増加/減少は、ツールによってスクリューに加えられるトルクの増加/減少を引き起こし得る。この例では、完全なスクリュー挿入を達成するために、ユーザはインタフェース53をどんどん速く回す必要があり得る。
【0166】
さらに別の例では、インタフェース53に加えられる入力の力またはトルクにより、ツールは、力またはトルク出力を加えてスクリューを駆動する。一例では、インタフェース53の入力の力またはトルクは、ツールがスクリューに加えるべき特定の力またはトルクレベルを決定することができ、ツール30は、指定された力またはトルクを加えるように制御される。あるいは、インタフェース53の入力の力またはトルクは、ツールがスクリューに加えるべき最大の力またはトルクレベルを決定することができ、ロボットおよびツール30は、最大の力またはトルクが達成されるまでスクリューを挿入し続ける。
【0167】
b.ツールの回転位置出力制御
任意の入力技術(力、位置、速度)に応じて、1つ以上のコントローラ33は、回転位置制御に基づいて、ツールに対して動作してスクリューPSを駆動することができる。回転位置は、基準角度に対するスクリューの回転角度として定義できる。
【0168】
一例では、インタフェース53の入力位置により、ツールはスクリューPSをある位置まで回転させる。あるいは、インタフェース53の変位により、ツールは、変位に従ってスクリューPSを回転させる。
【0169】
別の例では、インタフェース53の速度入力により、ツールはスクリューPSをある位置まで回転させる。インタフェース53の入力速度の増加/減少もまた、出力位置制御の変化を引き起こし得る。この例では、完全なスクリュー挿入を達成するために、ユーザはインタフェース53をどんどん速く回す必要があり得る。
【0170】
別の例では、インタフェース53の力またはトルク入力により、ツールはスクリューPSをある位置まで回転させる。一例では、インタフェース53の入力の力またはトルクは、ツールがスクリューに駆動すべき特定の位置を決定することができる。あるいは、インタフェース53の入力の力またはトルクは、ツールがスクリューを駆動すべき最大位置を決定することができ、ロボットおよびツール30は、最大位置に達するまでスクリューを挿入し続ける。
【0171】
c.ツールの挿入深さ出力制御
任意の入力技術(力、位置、速度)に応じて、1つ以上のコントローラ33は、ツールに対して動作してスクリューPSを標的部位内の特定の挿入深さまで駆動することができる。
【0172】
一例では、インタフェース53の入力位置により、ツールはスクリューPSを特定の挿入深さまで回転させる。あるいは、インタフェース53の変位により、ツールは、挿入深さに従ってスクリューPSを回転させる。
【0173】
別の例では、インタフェース53の速度入力により、ツールはスクリューPSを特定の挿入深さまで回転させる。インタフェース53の入力速度の増加/減少もまた、挿入深さの変化を引き起こし得る。この例では、完全な挿入深さを達成するために、ユーザはインタフェース53をどんどん速く回す必要があり得る。
【0174】
別の例では、インタフェース53の力またはトルク入力により、ツールはスクリューPSを特定の挿入深さまで回転させる。一例では、インタフェース53の入力の力またはトルクは、ツールがスクリューに駆動すべき特定の挿入深さを決定することができる。あるいは、インタフェース53の入力の力またはトルクは、ツールがスクリューを駆動すべき最大の特定の挿入深さを決定することができ、ロボットおよびツール30は、特定の挿入深さに達するまでスクリューを挿入し続ける。
【0175】
d.ツールの速度出力制御
任意の入力技術(力、位置、速度)に応じて、1つ以上のコントローラ33は、速度制御に基づいて、ツールに対して動作してスクリューPSを駆動することができる。速度は、スクリューの回転角、スクリューの線形挿入速度、工具の回転速度、またはそれらの任意の組み合わせの、時間に対する変化によって定義できる。
【0176】
一例では、インタフェース53の入力速度により、ツールは関連する速度に従ってスクリューPSを回転させる。あるいは、インタフェース53の変位により、ツールは、関連する速度に従ってスクリューPSを回転させる。
【0177】
別の例では、インタフェース53の速度入力により、ツールは関連する速度に従ってスクリューPSを回転させる。インタフェース53の入力速度の増加/減少もまた、出力速度制御の変化を引き起こし得る。この例では、特定の速度を達成するために、ユーザはインタフェース53をどんどん速く回す必要があり得る。
【0178】
別の例では、インタフェース53の力またはトルク入力により、ツールは関連する速度に従ってスクリューPSを回転させる。一例では、インタフェース53の入力の力またはトルクは、ツールがスクリューに駆動すべき特定の速度を決定することができる。あるいは、インタフェース53の入力の力またはトルクは、ツールがスクリューを駆動すべき最大速度を決定することができ、ロボットおよびツール30は、最大速度に達するまでスクリューを挿入し続ける。
【0179】
e.入力と出力の関係
上で説明したのは、触覚デバイス51によって提供される様々な入力制御技術と、ツールを駆動するための様々な出力制御技術とである。触覚デバイス51の入力とツールへの出力との間の関係は、以下に説明される様々な構成に従って定義することができる。触覚デバイス51の入力とツールへの出力との間の関係は、以下に説明される様々な構成の任意の組み合わせに従って定義することができる。
【0180】
1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51の入力を、ツールへの所定の出力にマッピングすることができ、これは、ツールのデフォルト設定に対応することができる。例えば、1つ以上のコントローラ33のメモリは、触覚デバイス51の入力がツールへの所定のデフォルト出力に対応するルックアップテーブルを含み得る。1つのそのような例では、1つ以上のコントローラ33は、インタフェース53が30度回転されている測定値を取得することができる。そして、1つ以上のコントローラ33は、ルックアップテーブルに基づいて、椎弓根スクリューPSが1.5回転/秒の回転速度で回転されるべきであると決定することができる。
【0181】
1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51の入力を、様々な変数に基づくことができるツールへの所定の出力にマッピングすることができる。例えば、ツールへの所定の出力は、上記の相互作用センサまたはセンサ65のいずれかによって検出することができる触覚デバイス51の条件に基づくことができる。例えば、所定の出力は、椎弓根スクリューPSの挿入深さ、椎弓根スクリューPSを回転させるのに必要な現在の力FPS、および/または椎骨Vの骨密度データに基づくことができる。別の例として、ツールへの所定の出力は、触覚デバイス51のユーザインタフェース57のセンサ65によって感知された読み取り値に基づくことができる。例えば、ユーザインタフェース57は、「感知」制御のために押され得る押しボタン、または制御の所望の感度を示すために作動され得るスライダを含み得る。所定の出力は、センサ65によって感知される、制御の所望の感度に基づくことができる。
【0182】
1つ以上のコントローラ33は、単調、線形(例えば、比例)、指数、対数、多項式、根、累乗、および有理関数などの任意の適切な数学関数に基づいて、入力と出力との間の関係をマッピングすることができる。一例では、1つ以上のコントローラ33は、回転インタフェース53が回転する角度の量が所望の挿入深さに比例するように、線形関数に基づいて測定位置を所望の挿入深さにマッピングすることができる。例えば、回転インタフェース53が回転される度数ごとに、1つ以上のコントローラ33は、所望の挿入深さを90分の1ミリメートルだけ増加させる。別の例では、1つ以上のコントローラ33は、区分的定数関数(すなわち、床関数(a floor function))に基づいて、測定された位置を回転速度にマッピングすることができる。そのような場合、1つ以上のコントローラ33は、回転インタフェース53が1度から180度(両端値を含む)の間で回転するときに、1つ以上のコントローラ33が所望の回転速度を1回転/秒であると決定し、回転インタフェース53が181度から360度(両端値を含む)の間で回転するときに、1つ以上のコントローラ33が所望の回転速度を2回転/秒であると決定するように、測定位置を所望の回転速度にマッピングすることができる。
【0183】
1つ以上のコントローラは、触覚デバイス51の入力とツールへの出力との間のマッピング関係に基づいて、任意の入力技術(力、位置、速度)をツールの出力制御(力、回転位置、挿入深さ、速度)にマッピングすることができる。
【0184】
図11Bの列Dに示されるように、力入力は、回転位置出力、挿入深さ出力、力出力、または速度出力にマッピングされ得る。例えば、力の入力を回転位置の出力に線形にマッピングすることができ、その結果、力の入力の測定値(Finの測定値)を比例するスクリュー回転角度にマッピングすることができる。同様に、力入力は、挿入深さ出力、力出力、および速度出力に線形にマッピングすることができ、その結果、力入力は、比例するスクリュー挿入深さと、椎弓根スクリューPSに加えられる比例するトルクと、スクリュー挿入の比例する速度とにマッピングすることができる。
【0185】
図11Bの列Dに示されるように、位置入力は、回転位置出力、挿入深さ出力、力出力、または速度出力にマッピングされ得る。例えば、位置入力は回転位置出力に線形にマッピングすることができ、その結果、位置入力の測定値(位置P1の測定値または位置P1とP0との間の変位の測定値)は、比例するスクリュー回転角度にマッピングすることができる。同様に、位置入力は、挿入深さ出力、力出力、および速度出力に線形にマッピングすることができ、その結果、ホーム位置P0に対する位置P1の測定値は、比例するスクリュー挿入深さと、椎弓根スクリューPSに適用する必要のある比例する最大トルクレベルと、スクリュー挿入の比例する速度とにマッピングすることができる。
【0186】
図11Bの列Dに示されるように、速度入力は、回転位置出力、挿入深さ出力、力出力、または速度出力にマッピングされ得る。例えば、速度入力は、回転位置出力に線形にマッピングすることができ、その結果、速度入力の測定値(時間T1-T0の変化に対するP1とP0との間の変位の測定値)は、比例するスクリュー回転角度にマッピングすることができる。同様に、速度入力は、挿入深さ出力と、力出力と、速度出力とに線形にマッピングすることができ、その結果、速度入力は、比例するスクリュー挿入深さと、椎弓根スクリューPSに加えられる比例するトルクと、スクリュー挿入の比例する速度とにマッピングすることができる。
【0187】
F.シミュレートされたモード
上記の触覚デバイス51に関連する技術は、物理的なロボット制御および/またはツールへの駆動を利用する術中技術に関連している。しかしながら、実際の外科手術を実行する前に、ロボットシステムを使用する際の訓練またはより大きな信頼をオペレータに提供するために、触覚デバイス51を利用してシミュレーションを実行することが企図される。図11Aの表および図14A図14Cを参照すると、触覚デバイス51で利用することができる様々なシミュレートされたモードが存在する。これらのモードは、シミュレートされた自律チェックモードとシミュレートされた手動制御モードとを含み、これらのモードについては、以下で詳しく説明する。
【0188】
シミュレーションモードは、患者、ロボットシステム、ロボットマニピュレータ、患者テーブル、ナビゲーションシステム、ツール、スクリューを含むがこれらに限定されない、術中に存在する可能性のある手術室の条件全体をシミュレートすることができる。あるいは、シミュレーションは、スクリューおよび標的部位と、ツールとスクリューと標的部位とをシミュレーションすることができるか、または、ロボットマニピュレータとツールとスクリューと標的部位とをシミュレートすることができる。さらに、参照用のシミュレーションでは、標的軌道と挿入深さとを含む手術計画を提供できる。
【0189】
シミュレーションは、ロボットシステム10のディスプレイ18、または手術室の外にあるディスプレイのうちの1つ以上などであるがこれらに限定されない、任意の適切なグラフィックディスプレイデバイス上で実行することができる。1つ以上のコントローラ33が、シミュレーションを実行することができる。あるいは、触覚デバイス51は、シミュレーションシステムがそれ自身の制御システムを有するロボットシステム10とは別のシミュレーションシステムに接続することができる。
【0190】
本明細書で説明されるシミュレートされたモードは、術前または術中に実行され得る。例えば、外科医は、物理的なロボット制御の実行を指示する直前に、手術室でシミュレーションを実行できる。あるいは、シミュレーションを手術前に実行することもできる。いずれの場合も、外科医は、シミュレーション中に経験されるシステム10の任意の動作パラメータを、設定、確認、または修正することができる。例えば、外科医は、椎弓根スクリューのサイズ、挿入深さ、椎弓根入口点の位置などの手術計画、触覚デバイスの操作または感度、触覚デバイスの好ましい制御入力技術(力/トルク、位置、速度)、ツール操作、送り速度、線形前進速度、回転速度、または感度、ツールに適した制御出力技術(力/トルク、位置、速度)、ポーズや向きなどのロボットパラメータなどを、設定、確認、または修正することができる。
【0191】
前述のように、術前撮像および/または術中撮像を用いて、患者の解剖学的形態を視覚化することができる。例えば、術前画像、例えば、X線、CTスキャン、またはMRI画像を使用して、患者の解剖学的形態、具体的には標的部位の解剖学的モデルを作成することができる。この仮想解剖学的モデルは、シミュレーションで利用できる。加えて、椎弓根スクリューPSのねじ山形状がロボット手術システム10のメモリに記憶されると、選択された椎弓根スクリューPSは、仮想的にシミュレーション内に提示され得る。
【0192】
シミュレートされたモードの実行中に、1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51に触覚フィードバックを提供する。1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51のアクチュエータ55を制御して、回転インタフェース53が椎弓根スクリューPSと標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能とするように構成される。図14Bおよび図14Cを参照すると、1つ以上のコントローラ33は、オペレータの手によって回転インタフェース53を回転させるのに必要な力FRIを調整するためにアクチュエータ55に抵抗力FAを提供するように構成されることによって、シミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることができ、回転インタフェース53を回転させるのに必要な力は、図14CにFSPSとして示されている、椎骨V(標的部位)に対して椎弓根スクリューPSを回転させるために必要とされるシミュレートされた現在の力を反映している。もちろん、触覚デバイス51は、上記の力、位置、または可動域フィードバック技術などの抵抗性フィードバック以外の任意の技術を使用して、触覚フィードバックを提供するように制御することができる。
【0193】
シミュレートされたモードの実行中に、1つ以上のコントローラ33は、様々な方法を使用して、(シミュレートされた)椎弓根スクリューPSと(シミュレートされた)標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を取得するように構成され得る。例えば、1つ以上のコントローラ33は、シミュレーションの座標系においてシミュレートされた現在の相互作用に対応する仮想測定値を取得することができる。シミュレーションシステムは、シミュレートされたロボット、ツール、スクリュー、および/または患者を追跡し、標的部位の解剖学的モデルに対するシミュレートされた椎弓根スクリューPSの位置を決定することができる。シミュレーションシステムは、解剖学的モデルに対するシミュレートされた椎弓根スクリューPSの複数の位置でのシミュレートされた椎弓根スクリューPSと解剖学的モデルとの間の予想される相互作用を示す所定のデータを含み得る。一例では、データは、1つ以上のコントローラ33によるアクセスのために、メモリ内のルックアップテーブルに格納され得る。シミュレーションシステムは、解剖学的モデルおよび所定のデータに対するスクリューの決定された状態、位置、向き、および/または姿勢に基づいて、椎弓根スクリューPSと標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を示すパラメータを計算することができる。所定のデータは、椎骨Vの骨密度データを含み得る。シミュレーションシステムは、骨密度データと椎骨Vの解剖学的モデルに対するスクリューの状態とを使用して、様々な深さでの椎弓根スクリューPSと椎骨Vとの間のシミュレートされた現在の相互作用を示すパラメータを計算または取得できる。所定のデータは、スクリュー、ツールの形状、または相互作用の定義に関連するその他の機能に関する既知のデータも含み得る。
【0194】
1.シミュレートされた自律チェックモード
ある意味では、シミュレートされた自律チェックモードは、自律チェックモードのシミュレートされたバージョンである。したがって、上記の自律チェックモードの説明をここに組み込んで、シミュレートされた自律チェックモードを理解することができる。シミュレートされた自律チェックモード中に、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツール30を自律的に制御することを(グラフィカルに)シミュレートし、オペレータは、触覚デバイス51を使用して、シミュレートされた自律挿入を触覚的に感知することができる。1つ以上のコントローラ33は、回転軸Rを中心とした回転速度で椎弓根スクリューPSを回転させることをシミュレートすることによって、そして、計画された軌道LHに沿った前進速度で椎弓根スクリューPSを直線的に前進させることをシミュレートすることによって、手術用ツール30を自律的に制御することをシミュレートする。しかしながら、ロボットシステムはツールの動作を物理的に制御はしていない。代わりに、1つ以上のコントローラ33は、(図11Aの列Eに示されるように)手術用ツール30の自律制御をシミュレートして、椎弓根スクリューPSを自律的に挿入することをシミュレートする。シミュレートされた自律チェックモード中に、回転インタフェース53は、調整された力FRIに従って手動で操作され得るが、シミュレートされた手術用ツール30を制御して椎弓根スクリューPSを回転させる能力を用いることなく、手術用ツール30のシミュレートされた自律制御を制御する能力を用いない。自律チェックモードと正に同様に、シミュレートされた自律チェックモードは、自律スクリュー挿入のシミュレーションを停止/一時停止する前、停止/一時停止中、または停止/一時停止後に実行できる。
【0195】
2.シミュレートされた手動制御モード
ある意味では、シミュレートされた手動制御モードは、手動制御モードのシミュレートされたバージョンである。したがって、上記の手動制御モードの説明をここに組み込んで、シミュレートされた手動制御モードを理解することができる。手動制御モードとは対照的に、シミュレートされた手動制御モード中に、インタフェース53は、(物理的)手術用ツール30を制御する能力を用いることなく手動で操作可能である。代わりに、1つ以上のコントローラ33は、オペレータが触覚デバイス51のインタフェース53を手動で操作することに応じて、(図11Aの列Eに示されるように)手術用ツール30の手動制御をシミュレートする。シミュレートされた手動制御モード中に、1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス51からの入力に応じて手術用ツール30を手動で制御することをシミュレートする。シミュレートされた手動制御モード中に、1つ以上のコントローラ33は、椎弓根スクリューPSの回転速度または前進速度のうちの1つを制御することをシミュレートする。オペレータは、触覚デバイス51を手動で操作し、それに応じて、1つ以上のコントローラ33は、(図11Aの列Gに示されるように)椎弓根スクリューPSの回転速度または前進速度のうちの1つを制御することをシミュレートすることができる。例えば、オペレータは、上記の任意の入力技術を使用して、インタフェース53を手動で操作することができる。制御入力に応じて、1つ以上のコントローラ33は、椎弓根スクリューPSのシミュレートされた挿入のための力、位置または速度などの任意の適切な出力技術に基づいて、シミュレートされたツールの出力を制御する。この例では、図14Cに示すように、ユーザは、入力の力Finをインタフェース53に加えて、ディスプレイ18上でスクリュー挿入のシミュレートされた手動制御を実行する。入力の力は、アクチュエータ55によって出力される(抵抗)力FRIに抵抗している。
【0196】
III.ロボット手術システムを制御する方法
ここで図15Aを参照すると、フローチャートは、ロボット手術システム10を制御する方法の一例を示している。示されているように、フローチャートは、手術中の様々な触覚デバイス動作モードの動作を示している。
【0197】
フローチャートは、椎弓根スクリューPSを挿入または挿入をシミュレートするようにロボット手術システム10を制御する方法を示している。この方法は、ステップ200で始まり、椎弓根スクリューPSを受け入れるための解剖学的形態を準備するステップ202に直接進む。ステップ202の間に、椎弓根スクリューPSを挿入するための解剖学的形態を準備するために、様々なステップが実行され得る。これらのステップは、患者に切開を形成するステップ(1)と、組織開創器で組織を開創するステップ(2)と、開創した組織にカニューレを配置するステップ(3)と、解剖学的形態にパイロットホール102を穿孔するステップ(4)と、解剖学的形態にねじ山をタップするステップ(5)とを含み得る。ステップ202は、上記のステップ(1)~(5)を含む必要があるわけではないことに留意されたい。例えば、代替の例では、パイロットホール102の穿孔および解剖学的形態へのねじ山のタッピングが除外され得るので、ステップ(4)および(5)が除外され得る。例えば、そのような例は、自己穿孔、セルフタッピングのボーンスクリューが使用される例を含む。
【0198】
そして、方法は、椎弓根スクリューPSが手術用ツール30によって相互作用されるステップ204に進む。いくつかの実施態様では、解剖学的形態と相互作用する前に、ツール30がスクリューPSに結合される。あるいは、椎弓根スクリューPSは、手動またはロボットによる挿入を含む任意の技術を使用して、標的部位の解剖学的形態へと部分的に着座させることができ、その後、ツール30は、部分的に着座したスクリューPSと相互作用する。より可能性があるのは、椎弓根スクリューPSが、パイロットホール102の1つに配置するために、ドライバー44の遠位端部に取り付けられることである。元のライン触覚オブジェクトは、椎弓根スクリューPSを挿入するために使用されることができ、または新しい開始点、標的点、および刺出点を含む新しいライン触覚オブジェクトは、ドライバー44および/または椎弓根スクリューPSを取り付けるときに作成されることができる。この場合、1つ以上のロボットコントローラ33がハウジング45に連結される付属品を識別することができるように、ドリル42および/またはドライバー44は、RFIDタグまたは他の識別デバイスを含み得る。ハウジング45は、対応するRFIDリーダーなどを含み、このRFIDリーダーは、1つ以上のコントローラ33と通信して、タグを読み取り、どの付属品が取り付けられているかを判断することができる。そして、この情報に基づいて、コントローラは、新しいライン触覚オブジェクトを作成し、これにアクセスし、またはその他の方法によりこれを決定することができる。同様に、1つ以上のコントローラ33が取り付けられる椎弓根スクリューPSのサイズ/タイプを判断することもできるように、椎弓根スクリューPSにもRFIDタグを取り付けることができ、ドライバー44は同様のリーダーを含み得る。したがって、ライン触覚オブジェクトは、ドライバー44および/または椎弓根スクリューPSに基づくことができるため、その特定の椎弓根スクリューPSを所望の位置、例えば、患者の解剖学的形態に対する所望の配向および深さに配置するようにロボットアーム20を正確に制御する。
【0199】
さらに、RFIDタグか、ビジョンカメラなどの他の検出デバイスかいずれかを介した付属品の自動検出により、制御システムは、ロボット手術システム10によって利用されるいずれかの外科手術ソフトウェアを、ドライバー44に関連する次の画面に進めることができ、ここではドライバー44が連結されているため、オペレータのために異なるプロンプトや命令(instructions)などを与えることができる。音声認識、ジェスチャセンシング、またはその他の入力デバイスを使用して、ソフトウェアを進めること、および/または治療される次の椎骨100に変更すること、および/または手術が行われている椎体100の側面を変更することができる。これもまた、手術用ツール30の位置に基づくことができる。例えば、取り付けられた付属品のTCPをオペレータが椎骨Vの1つの側面に、もう1つの側面よりも近くに手動で配置する場合、ソフトウェアは、椎骨Vのその側面に対応するように自動的に進むことができる。選択された椎骨Vと手術の側面とは、ディスプレイ18によって視覚的に、またはオーディオ入力/出力を介して確認されることができる。
【0200】
いくつかの手術では、すべてのパイロットホール102が最初に穿孔され、その後、すべての椎弓根スクリューPSがそれらの所望の位置内に挿入されるときなど、パイロットホール102の穿孔と椎弓根スクリューPSの挿入との間に、回転軸Rは、所望の軌道から離れてもよい。そのような場合、各椎弓根スクリューPSを配置する前に、ロボット手術システム10は、前述される方法で椎弓根スクリューPSごとに所望の軌道と手術用ツール30の回転軸Rのアライメントを自律的に取ることによって所望の軌道に沿って回転軸Rを配置するように、手術用ツール30の運動を最初に制御することができる。
【0201】
方法はステップ208に進み、オペレータがステップ206中に手術の動作を終了しない場合、1つ以上のコントローラ33がどの触覚デバイス動作モードが選択されるかを決定する(ステップ206について以下でより詳細に説明する)。触覚デバイスの動作モードは、任意の条件またはコマンドに応じて選択できる。ステップ210の間に、方法は、選択された触覚デバイス動作モードが1つ以上のコントローラ33によって現在実行されているかどうかを判断する。選択された触覚デバイス動作モードが1つ以上のコントローラ33によって実行されていない場合、方法は最初にステップ212に進み、1つ以上のコントローラ33は、触覚デバイス動作モードが実行中である場合、実行されている触覚デバイス動作モードを終了する。それに応じて、方法は、選択された触覚デバイス動作モードに基づいて、自律チェックモード、手動制御モード、シミュレートされた自律チェックモード、またはシミュレートされた手動制御モードのうちの1つに進む。選択した触覚デバイス動作モードがすでに実行されている場合、方法は選択された触覚デバイス動作モードの実行を続行する。したがって、ステップ208とステップ210との間に、1つ以上のコントローラ33は、条件が触覚デバイス動作モードの開始を促すかどうか、またはオペレータが触覚デバイス動作モードの開始を命令するかどうかを決定する。
【0202】
したがって、任意の触覚デバイス動作モードは、条件またはコマンドに応じて、任意の適切な時間に開始することができる。例えば、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツール30を自律的に制御することを停止または一時停止した後、手動制御モードを開始して、椎弓根スクリューPSの回転を停止するように構成され得る(図11Aの列Fにも示されている)。別の例として、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツール30を自律的に制御する前に手動制御モードを開始するように構成され得る(図11Aの列Fにも示されている)。このような場合、1つ以上のコントローラ33は、手動制御モードから、手術用ツール30の自律制御を停止または一時停止した後、手術用ツールの自律制御を再開してスクリューを回転させるように切り替えることができる。さらに別の例では、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツールの自律制御を停止または一時停止する前または後にシミュレートされた自律チェックモードを開始するように構成され得る(図11Aの列Fにも示されている)。さらにまた別の例では、条件またはコマンドに応じて、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツールの自律制御を停止または一時停止する前または後にシミュレートされた手動制御モードを開始するように構成され得る(図11Aの列Fにも示されている)。
【0203】
任意の適切な時間に任意の触覚デバイス動作モードを開始する能力により、オペレータは自分の好みに基づいて手術をカスタマイズすることができる。例えば、1つ以上のコントローラ33が、手術用ツール30を自律的に制御することを停止または一時停止した後に手動制御モードを開始する1つの構成では、1つ以上のコントローラ33は、最初に、オペレータが手動制御モード中に椎弓根スクリューPSを最終的な深さまでインプラントする前の初期の深さまで、椎弓根スクリューPSを自律的に挿入することができる(またはその逆)。そのような構成では、椎弓根スクリューPSは、椎弓根スクリューPSが(ナビゲーションシステム12によって決定されるような)最終的な深さの所定の距離内になるまで、自律的に配置され得る。この時点で、オペレータは、手術用ツール30を用いて手動で椎弓根スクリューPSのインプラントを終了して、オペレータが椎弓根スクリューPSの締め付けをより能動的に感じることができるようにすることができる。オペレータは、自律制御中に使用されるものとは別のツール(電動または手動)を使用して、手動制御モード中に椎弓根スクリューPSの配置を完了することを選択することもできる。
【0204】
他の構成も、好みに基づいて手術をカスタマイズするオペレータの能力を示している。例えば、別の構成では、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツール30を自律的に制御する前に、シミュレートされた自律チェックモードを開始する。そのような構成では、1つ以上のコントローラ33が椎弓根スクリューPSを挿入するための自律制御を開始する前に、オペレータは、ディスプレイ18上で手術用ツール30の自律制御のシミュレーションを視覚化することができる。別の構成では、1つ以上のコントローラ33は、手動制御モードを開始して手術用ツール30を制御する前に、シミュレートされた手動制御モードを開始する。そのような構成では、1つ以上のコントローラ33が椎弓根スクリューPSを挿入することを手動で制御するための手動制御モードを開始する前に、オペレータは、ディスプレイ18上で手術用ツール30の手動制御のシミュレーションを視覚化することができる。
【0205】
さらに、条件またはコマンドに応じて任意の触覚デバイス動作モードを開始する能力は、潜在的なエラー(例えば、脊髄103との衝突)を排除し、オペレータに手術の実行中制御(on-the-fly control)を提供する。例えば、手動制御モード中に、オペレータが椎弓根スクリューPSを最終的な深さまでインプラントする前に、1つ以上のコントローラ33が最初に椎弓根スクリューPSを最初の深さまで自律的に挿入する上記の構成では、1つ以上のコントローラ33は、条件またはコマンドに応じて手動制御モードを開始することができる。手動制御モードの開始と自律制御の停止とが条件によって促される場合、1つ以上のコントローラ33は、自律制御中に椎弓根スクリューPSが最終深度の所定の距離内にあることを検出し、1つ以上のコントローラ33に条件を送信することができる。そして、1つ以上のコントローラ33は、手動制御モードを開始し、自律制御を停止するように促され、その結果、オペレータは、椎弓根スクリューPSの配置を手動で完了することができる。最終的な深さの所定の距離は、椎弓根スクリューPSが脊髄103に接触しないように事前に決定することができる。手動制御モードの開始がコマンドによって命令される場合、オペレータは、自律制御の状態についてナビゲーションシステム12によって指示され得る。例えば、ディスプレイ18は、椎弓根スクリューPSが最大の深さに達するまでに何回転残っているかを示すことができ、および/またはディスプレイ18は、椎弓根スクリューPSのさらなる挿入がどの程度必要とされているかをオペレータが容易に視覚化することができるように、椎弓根スクリューPS、解剖学的形態、および/または標的点をグラフィカルに表すことができる。1つ以上のコントローラ33はまた、触覚デバイス51を介してオペレータに触覚フィードバック(例えば、振動またはパルス)を提供して、椎弓根スクリューPSが所定の深さに到達したことをオペレータに通知することができる。椎弓根スクリューPSが最終深さの所定の距離内にあるとオペレータが判断すると、オペレータは、1つ以上のコントローラ33に手動制御モードを開始し、自律制御を停止して、オペレータが手動で椎弓根スクリューPSの配置を完了できるように命令することができる。
【0206】
触覚デバイス動作モードの開始を促すことができるいくつかの例示的な条件は、椎弓根スクリューPSが所望の深さに到達することと、椎弓根スクリューPSが脊髄103と衝突する可能性があることと、椎弓根スクリューPSが所定の回転数回転されることとを含み得る。そのような場合、1つ以上のコントローラ33は、自律チェックモード、手動制御モード、シミュレートされた自律チェックモード、またはシミュレートされた手動制御モードのうちの1つを自動的に選択するように構成され得る。そのような一例では、1つ以上のコントローラ33が手術用ツール30を自律的に制御して椎弓根スクリューPSを所定の回転数回転させた後、1つ以上のコントローラ33は、手動制御モードを自動的に選択して、オペレータが椎弓根スクリューPSの挿入を手動で完了することを可能にするように構成され得る。
【0207】
ロボット手術システム10は、触覚デバイス動作モードの開始を命令するための様々なコンポーネントを含み得る。例えば、オペレータは、触覚デバイス51を使用して、触覚デバイス動作モードの開始を命令することができる。図10に示すように、触覚デバイス51は、ユーザインタフェース57を含み得る。オペレータは、ユーザインタフェース57を作動させて1つ以上のコントローラ33にコマンドを送信することにより、ユーザインタフェース57を使用して触覚デバイス動作モードを選択することができる。あるいは、いくつかの例では、オペレータは、回転インタフェース53を押し下げて、触覚デバイス動作モードを選択することができる。ロボット手術システム10が、図4図6の手術用ツール30を含む場合、オペレータは、手術用ツール30のトリガ49またはユーザインタフェース59を使用して、触覚デバイス動作モードを選択することができる。他の例では、オペレータは、コンピュータカートアセンブリ34のキーボード61などのコンピュータカートアセンブリ34のユーザインタフェースを介して触覚デバイス動作モードを選択することができる。オペレータはまた、ベース22のユーザインタフェース63を介して触覚デバイス動作モードを選択することができる。オペレータ以外の個人が触覚デバイス動作モードの開始を命令することができることが企図される。例えば、触覚デバイス動作モードの開始は、リモートユーザインタフェースを使用して、リモートロケーションからリモートユーザによって命令され得る。
【0208】
図15Bは、自律チェックモードの例示的なステップを示している。示されるように、自律チェックモードは、椎弓根スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用を示す測定値を取得するステップ304と、得られた測定値に基づいて触覚デバイスのアクチュエータを制御して、触覚デバイス51の回転インタフェース53が椎弓根スクリューPSと標的部位との間の現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするステップ306であって、抵抗力FAを触覚デバイス51のアクチュエータ55に提供して、オペレータの手によって回転インタフェース53を回転させるのに必要な力FRIを調整するステップ308を含み、回転インタフェース53を回転させるのに必要な力FRIは、椎弓根スクリューPSを標的部位に対して回転させるために必要な現在の力FPSを反映する、ステップ306と、調整された力FRIに従って回転インタフェース53を手動で操作して、手術用ツール30を制御する能力を用いることなく、標的部位に対して椎弓根スクリューPSを回転させるのに必要な現在の力FPSを反映する触覚フィードバックをオペレータに提供するステップ310とを含む。
【0209】
図15Cは、手動制御モードの例示的なステップを示している。示されるように、手動制御モードは、オペレータが回転インタフェース53を手動で操作することに基づいて、椎弓根スクリューPSの回転速度または椎弓根スクリューPSの前進速度のうちの1つを制御する能力を用いて、回転インタフェース53を手動で操作するステップ300と、手術用ツール30を制御して、回転インタフェースが手動で操作されて椎弓根スクリューPSの回転速度または椎弓根スクリューPSの前進速度のうちの1つを制御するのに応じて、回転軸を中心とした回転速度で椎弓根スクリューPSを回転させ、計画された軌道に沿った前進速度で椎弓根スクリューPSを直線的に前進させるステップ302と、前述のステップ304、306、および308と、調整された力FRIに従って回転インタフェース53を手動で操作して、標的部位に対して椎弓根スクリューPSを回転させるのに必要な現在の力FPSを反映する触覚フィードバックをオペレータに提供するステップ311とを含む。
【0210】
図15Dは、シミュレートされた自律チェックモードの例示的なステップを示す。示されるように、シミュレートされた自律チェックモードは、回転軸Rを中心とした回転速度で椎弓根スクリューPSを回転させ、計画された軌道LHに沿った前進速度でスクリューを直線的に前進させることをシミュレートすることによって、手術用ツール30を自律的に制御することをシミュレートするステップ312と、手術用ツール30のシミュレートされた自律制御をディスプレイ18上に表示するステップ314と、椎弓根スクリューPSと標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用を示す測定値を取得する(ステップ304’として示される)ステップ304の一例と、得られた測定値に基づいて触覚デバイスのアクチュエータを制御して、触覚デバイス51の回転インタフェース53が椎弓根スクリューPSと標的部位との間のシミュレートされた現在の相互作用をエミュレートすることを可能にするステップ306の一例であって、抵抗力FAをアクチュエータ55に提供して、オペレータの手によって回転インタフェース53を回転させるのに必要な力FRIを調整する(ステップ308’として示される)ステップ308の一例を含み、回転インタフェース53を回転させるのに必要な力FRIは、椎弓根スクリューPSを標的部位に対して回転させるために必要な現在の力FSPSを反映する、(ステップ306’として示される)ステップ306の一例と、調整された力FRIに従って回転インタフェース53を手動で操作して、手術用ツール30を制御して椎弓根スクリューPSを回転させる能力を用いることなく、かつ手術用ツール30のシミュレートされた自律制御を制御する能力を用いることなく、シミュレートされた現在の力FSPSを反映する触覚フィードバックをオペレータに提供するステップ316とを含む。
【0211】
図15Eは、シミュレートされた自律チェックモードの例示的なステップを示す。示されるように、シミュレートされた自律チェックモードは、手術用ツール30を制御して椎弓根スクリューPSを回転させる能力を用いることなく、オペレータが回転インタフェース53を手動で操作するのに基づいて椎弓根スクリューPSの回転速度または椎弓根スクリューPSの前進速度のうちの1つを制御する能力を用いて、回転インタフェース53を手動で操作するステップ318と、回転インタフェース53が手動で操作されて、椎弓根スクリューPSの回転速度または椎弓根スクリューPSの前進速度の1つを制御するのに応じて、回転軸Rを中心とした回転速度で椎弓根スクリューPSを回転させ、計画された軌道LHに沿った前進速度で椎弓根スクリューPSを直線的に前進させることにより、手術用ツール30を手動で制御することをシミュレートするステップ320と、手術用ツール30のシミュレートされた手動制御をディスプレイ18上に表示するステップ322と、前述のステップ304’と、前述のステップ308’を含む前述のステップ306’と、調整された力FRIに従って回転インタフェース53を手動で操作して、手術用ツール30を制御して椎弓根スクリューPSを回転させる能力を用いることなく、シミュレートされた現在の力FSPSを反映する触覚フィードバックをオペレータに提供するステップ324とを含む。
【0212】
図15Aを参照すると、破線のボックスは、手術用ツール30を自律的に制御して椎弓根スクリューPSを挿入するステップ214を示している。解剖学的形態を準備するステップ202と椎弓根スクリューPSを手術用ツール30に配置するステップ204との後、ステップ214は、ステップ206、208、210、および自律チェックモードのいずれかと同時に発生し得る。前述のように、手動制御モードと、シミュレートされた自律チェックモードと、シミュレートされた手動制御モードとの間に、1つ以上のコントローラ33は手術用ツール30を自律的に制御していない。したがって、1つ以上のコントローラ33は、手動制御モードと、シミュレートされた自律チェックモードと、シミュレートされた手動制御モードとのいずれか1つを開始すると、1つ以上のコントローラ33は、ステップ214の実行を中止し、手術用ツール30の自律制御を停止する(1つ以上のコントローラ33が手術用ツール30を自律的に制御している場合)。しかしながら、ステップ206、208、210のいずれかの間、または自律チェックモード中のいつでも、ステップ214を実行することができ、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツール30の自律制御を同時に開始することができる。
【0213】
手術用ツール30を自律的に制御するステップ214は、図15Fにさらに示されている。示されるように、この方法は、標的部位の位置を追跡するステップ400と、回転軸Rを所望の軌道に沿って配置するステップ402と、ロボットマニピュレータの動きを制御して標的部位の追跡された位置に基づいて、標的部位に対して計画された軌道LHに沿って手術用ツール30の回転軸Rを維持するステップ404と、手術用ツール30を自律的に制御して、回転軸Rを中心とした回転速度で椎弓根スクリューPSを回転させ、計画された軌道LHに沿った前進速度で椎弓根スクリューPSを直線的に前進させるステップ406であって、回転速度と前進速度は、事前に決定されており、椎弓根スクリューPSの既知のねじ山形状に比例している、ステップ406とを含む。
【0214】
ステップ400の間、標的部位の位置が追跡される。超音波トランスデューサ(図示せず)を患者の皮膚の裏側に取り付けて、患者の解剖学的形態と外科手術の進行とのリアルタイム画像を生成することができる。術中画像を使用して、椎弓根スクリューPSが計画された所望の軌道に追従していると判断することができるか、またはドリル42もしくは椎弓根スクリューPSが神経と内側もしくは外側の皮質境界とを含むいずれかの重要な構造に近づいているかどうかを判断することができる。
【0215】
ステップ402の間に、回転軸Rは計画された軌道LHとアライメントを取られる。図9でのように、手術計画に従って、回転軸Rが計画された軌道LHとアライメントをまだ取っていない場合、または、回転軸Rが他の理由で所望の軌道から離れている場合、ステップ402では、回転軸Rのアライメントを取る。具体的には、ステップ402では、ロボット手術システム10は、回転軸Rを所望の軌道に沿って配置するように、手術用ツール30の運動を制御する。これは、ロボット手術システム10が、回転軸Rを所望の軌道に沿って配置するように手術用ツール30の自律運動を引き起こすことを含み得る。あるいは、ロボット手術システム10は、回転軸Rを計画された軌道LHに沿って配置するまで、オペレータが手動モードで力/トルクを加えることで手術用ツール30を動かすことを可能にしてもよい。ロボット手術システム10は、適切なアライメントを示すフィードバック(視覚、可聴、および/または触覚)をオペレータに生成することができる。いくつかの例では、誘引性触覚が定義する閾値距離だけ、ツールの位置が計画された軌道LHに近いので、誘引性触覚を利用して、ツール30を計画された軌道LHに向かって引くことができる。
【0216】
ステップ406の間に、ロボット手術システム10は、手術用ツール30の自律運動を引き起こすと同時に、計画された軌道LHに沿った直線的なツールの自律前進を制御し、そのうえ回転軸Rを中心とした手術用ツールの自律回転も制御する。前進および回転の自律制御は、上述される(式1)によって定義されるねじ山のピッチに関連している。ねじ山のピッチによって決定される自律制御は、椎弓根スクリューの適切な挿入を確実にし、周囲の骨組織への損傷を引き起こさないようにする。
【0217】
ステップ214は、複数の選択肢でオペレータによって命令され得る。第1の例では、ロボット手術システム10は、完全な自律性で実行するように構成されることができる。すなわち、オペレータがロボット手術システム10に手術用ツール30の自律制御を実行するように命令すると、ロボット手術システム10は、操作が完了するまで、さらなるオペレータ入力を用いることなく自律制御を実行する。代替の例では、オペレータは、操作の自律実行を開始することに続き、ボタンを押し続けること、フットスイッチを押し続けること、または他の連続入力制御などによって、連続入力を提供することができることで、入力が停止した場合、例えば、ボタンまたはフットスイッチが解放される場合、ロボット手術システム10は、操作の実行を一時停止する。自律制御と協働して、オペレータは、操作を実行する速度を調節することができる。ボタンまたはフットスイッチに加えて、複数の離散した速度に関するステップワイズ機能では、ロボットの速度での増加または減少をオペレータが命令することができるように、追加の制御を提供することができる。追加の速度制御は、ボタン、セレクタ、ダイヤル、または他の適切な制御のセットを含み得る。
【0218】
図15Aを参照すると、ステップ206中の場合、ロボット手術システム10が、操作が終了したかどうかを判断する。操作は、様々な方法を使用して終了したと判断できる。例えば、オペレータが、すべての椎弓根スクリューPSが所望の深さまでインプラントされていると判断した場合、オペレータは操作の終了を命じることができる。別の例として、オペレータは操作が終了したと主観的に判断した場合、オペレータは操作の終了を命令することができる。さらに別の例では、1つ以上のコントローラ33がすべての椎弓根スクリューPSが所望の深さまで挿入されていると判断した場合、1つ以上のコントローラ33が動作の終了をトリガすることができる。しかしながら、いくつかの例では、椎弓根スクリューPSを希望の深さまでインプラントした後、操作が終了していない。そのような場合、この方法は、別の椎弓根スクリューPSに対して図15Aの方法のステップを繰り返して、すべての椎弓根スクリューPSがインプラントされるまで続けることができる。
【0219】
ロボット手術システム10が、ステップ206の間に操作が終了したと判断した場合、方法は、手術用ツール30が標的部位に挿入されているかどうかを判断するステップ216に進む。ステップ216の間に、1つ以上のコントローラ33は、手術用ツール30の位置と、手術用ツール30が標的部位に挿入されているかどうかとを判断することができる。ロボット手術システム10は、手術用ツール30が挿入されていないと判断した場合、方法は操作の終了であるステップ218に進む。ロボット手術システム10は、手術用ツール30が挿入されていると判断した場合、方法は、ステップ218の終了に進む前に、ツールを引き抜くステップ220に進む。
【0220】
ステップ220の間に、手術用ツール30はインプラントから引き抜かれる。椎弓根スクリューPSを骨の中に前進させることと同様に、オペレータは、椎骨Vから離れる方向で手術用ツール30に力を入力して、手術用ツール30の引き抜きを命令することができる。あるいは、ロボット手術システム10は、インプラントが配置されると、オペレータからのさらなる入力なしに、手術用ツール30を自律的に引き抜くことができる。
【0221】
部分的脊椎関節突起切除(a partial facetectomy)は、手術用ツール30が椎弓根スクリューPSのヘッドの最終的な受容のために滑らかな骨表面を提供しながら実施することができる。切除量は、オペレータの計画に基づいて、すなわち、3Dモデル中のヘッドの位置を決定することによって定義することができる。ヘッド形状に対応するバーまたは予め形成されたリーマ(reamer)70を使用して、材料を除去することができる。場合によっては、ドリル42は、別個のツールを回避するためにリーマをその中に組み込むことができ、その結果、ドリル42は、パイロットホールを作製するために、より小さな輪郭の穿孔シャフトを含み、椎弓根スクリューPSのヘッド用のシート72を作製するために、リーマ70により近位に位置しているようにすることで、パイロットホール102およびシート72の少なくとも一部分を同時に形成することができる。示される例では、ドリル42は、近位端部および遠位端部を有する穿孔シャフトと、この遠位端部にあるドリルチップとを含む。リーマ70は、ドリル42が標的椎体内の所望の深さまで挿入されると、リーマ70が椎間関節の近くに位置しているように、ドリル先端から近位に間隔を置かれる。いずれかの適切なドリルおよび/またはリーマの切断機能を用いて、ホールを形成することができ、例えば、インプラントを受容する患者の脊椎中のパイロットホールおよびシートを形成することができる。
【0222】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、椎弓根スクリューPS、他のスクリュー、ファスナ、または他のインプラントを患者に配置するために用いられ得ることを理解されたい。したがって、椎弓根スクリューPSが一例として全体を通して参照されているとしても、本明細書に記載されているものと同じシステムおよび方法を利用して、患者の任意の解剖学的形態を治療することができる、および/またはいずれかのインプラントを患者へと、例えば、股関節、膝、大腿骨、脛骨、顔、肩、脊椎などに配置することができる。例えば、ロボットアーム20も使用して、脊椎インプラント用のケージを配置すること、ロッドを配置すること、ピンを駆動すること、ねじ付きカップをインプラントすること、または他の構成要素を配置することができ、ロボットアームを椎間板切除術または他の手術に使用することができる。他の手術のために、異なるエンドエフェクタもロボットアーム20に取り付けることができる。場合によっては、エンドエフェクタは、関節アームも含み、この関節アームは、インプラントの挿入を容易にする、すなわち、インプラントを所望の姿勢に配置することができる。エンドエフェクタの関節アームは、インプラントを配置するために同じ方法で制御されるロボットアーム20の単なる縮小版であってもよく、またはインプラントを位置決めするように制御される別の機構であってもよい。
【0223】
ナビゲーションシステム12は、光学ベースのトラッカーを備えた光学ナビゲーションシステムを含み得るが、超音波を介して物体を追跡する超音波ナビゲーションシステム、RFエネルギーを介して物体を追跡する無線周波数ナビゲーションシステム、および/または電磁信号を介して物体を追跡する電磁ナビゲーションシステムなどの他のモダリティを追加でまたは代替で使用することができる。他のタイプのナビゲーションシステムも企図されている。場合によっては、本明細書に記載のモデルが三角形メッシュ、ボクセルを使用する体積モデル、または他のタイプの3Dおよび/または2Dモデルを含み得ることも理解されたい。
【0224】
前述の説明では、いくつかの例について説明してきた。しかしながら、本明細書で論じられる例は、網羅的であること、または本開示をいずれかの特定の形態に限定することを意図するものではない。使用されている用語は、限定ではなく説明の言葉の性質にあることを意図するものである。上記の教示に照らして多くの修正形態および変形形態が可能であり、本開示は、具体的に記載されている以外のものによって実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
【国際調査報告】