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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】癌の治療のための細胞免疫療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20230508BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230508BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17
A61K39/00 H
A61K38/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558492
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2021024123
(87)【国際公開番号】W WO2021202232
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/001,275
(32)【優先日】2020-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レズヴァニ、ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】シャンリー、マイラ
(72)【発明者】
【氏名】マリン コスタ、ダビド
(72)【発明者】
【氏名】シャイム、ヒラ
(72)【発明者】
【氏名】シュポール、エリザベス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA12
4C084NA05
4C084ZB092
4C084ZB262
4C085AA02
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本開示の実施形態は、ナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫エフェクター細胞を含む組成物を包含し、細胞は1つ以上の外来的に提供されるインターロイキン(IL)を含み、細胞は、任意で、1つ以上の操作された受容体を含む。特定の実施形態では、ILはIL-15ではなく、IL-12、IL-21又はその両方である。NK細胞は、少なくとも神経膠芽細胞腫を含む、任意の種類の癌の治療に利用することができる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルキラー(NK)細胞を含む組成物であって、前記NK細胞が、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキン(IL)を含み、前記ILがIL-15ではなく、前記NK細胞が1つ以上の操作された受容体を含む、組成物。
【請求項2】
前記ILが、IL-12、IL-21、IL-2、IL-18、IL-7、リンカーで人工的に連結されたIL-12のp35及びp40サブユニット、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ILが、IL-12、IL-21又はその両方である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ILが、前記細胞において、分泌されている、繋留されている、又は膜結合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
外来的に提供されたことが、前記細胞中のベクターから発現されていることとしてさらに定義され、及び/又は、前記NK細胞が、1つ以上のILの存在下で培養された、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記操作された受容体が、操作された抗原受容体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記操作された抗原受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗原が、癌抗原である、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗原が、固形腫瘍抗原である、請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗原が、5T4、8H9、αβインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD5、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CS1、CLL1、CD99、DLL3、EGFR、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、FBP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、Lambda、Lewis-Y、L1CAM、Kappa、KDR、MCSP、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSC1、PSCA、PSMA、ROR1、SP17、サバイビン、TAG72、TEMs、HMW-MAA及びVEGFR2からなる群より選択される、請求項6~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記操作された受容体が、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体又はホーミング受容体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記NK細胞が、自殺遺伝子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞が、TDAG8、NKG2A、SIGLEC-7、LAG3、TIM3、CISH、FOXO1、TGFBR2、TIGIT、CD96、ADORA2、NR3C1、PD1、PDL-1、PDL-2、CD47、SIRPA、SHIP1、ADAM17、RPS6、4EBP1、CD25、CD40、IL21R、ICAM1、CD95、CD80、CD86、IL10R、CD5、CD7及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の内在性遺伝子の発現が減少又は阻害されている、請求項1~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を含み、適切な培地中に含まれた、細胞の集団。
【請求項15】
個体における癌を治療する方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の治療有効量を個体に投与する工程を含む、方法。
【請求項16】
前記個体における癌細胞が、NKリガンドの発現が増加している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記個体における前記癌細胞が、MICA/B、ULBP1、ULBP2/5、ULBP3、B7-H6、CD112、CD155、HLA-ABC、HLA-DR、HLA-3又はそれらの組み合わせの発現が増加している、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記癌が固形腫瘍であるか、又は固形腫瘍ではない、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が、肺、脳、乳房、血液、皮膚、膵臓、肝臓、結腸、頭頸部、腎臓、甲状腺、胃、脾臓、胆嚢、骨、卵巣、精巣、子宮内膜、前立腺、直腸、肛門、子宮頸部の癌、又は血液学的な癌である、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記癌が、神経膠芽細胞腫である、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記個体が、哺乳動物である、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記個体が、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、又は齧歯類である、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記個体が、1つ以上の追加の癌療法を投与される、請求項15~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記追加の癌療法が、手術、放射線、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、又はそれらの組み合わせである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記個体において癌を診断する工程をさらに含む、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞を生成する工程をさらに含む、請求項15~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、前記個体に対して自己由来である、請求項15~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が、前記個体に対して同種異系である、請求項15~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞の集団が、頭蓋内に、注射によって、静脈内に、動脈内に、腹腔内に、気管内に、腫瘍内に、筋肉内に、内視鏡的に、病変内に、頭蓋内に、経皮的に、皮下に、局所的に、潅流によって、腫瘍微小環境内に、又はそれらの組み合わせで前記個体に投与される、請求項15~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年3月28日に出願された米国仮特許出願第63/001,275号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、免疫学、及び医学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
神経膠芽細胞腫(GBM)は、予後不良の侵攻性悪性腫瘍である。再発後は標準療法がなく、生存期間は9カ月未満である。最近、IL13Rα2(Brownら、2016)、Her2/CMV(Ahmedら、2010)、及びEGFRvIII(O’Rourkeら、2017)を標的とする3つの初の人体適用となるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞試験からの結果が、期待外れの臨床結果とともに報告された。
【0004】
現在、他の固形腫瘍と同様にGBMについて、特に白血病及びリンパ腫において証明された大きな応答性を伴った細胞療法を進めることに極めて重要な必要性がある。本開示は、少なくとも神経膠芽細胞腫を含む、癌に対して細胞療法を進展させるという長年にわたる必要性に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、医学的状態のための細胞療法に関連する方法及び組成物を含む。細胞療法は、それを必要とする個体への投与のための免疫エフェクター細胞又は他の細胞を包含する。特定の実施形態では、細胞が1つ以上の外来的に提供されるインターロイキン(IL)を含み、任意で1つ以上の他の異種遺伝子産物、例えば、1つ以上の操作された受容体を含むので、他の細胞療法と比較して活性が増強される。細胞は、(培養中など)1つ以上のサイトカインの外部に曝露されてもよく、及び/又は1つ以上のベクターに由来する(細胞のゲノムから発現される内在性サイトカインとは対照的に)異種サイトカインを発現するようにトランスフェクトされてもよい。本開示は、神経膠芽細胞腫(GBM)及び他の癌の治療のために、外来性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-21、IL-18、IL-15、IL-7)と組み合わせた、エクスビボで拡張され活性化されたナチュラルキラー(NK)細胞、又は、膜結合又は繋留されたサイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-21、IL-18、IL-15、IL-7)を分泌するか、若しくは表面に発現するNK細胞による免疫療法を包含する。送達前に、細胞は、培養中に有効量のIL-2、IL-12、IL-21、IL-18、IL-15、及び/又はIL-7に適切な条件下で曝露されていてもよい。特定の実施形態では、細胞は、IL-15ではない1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含むが、代替の実施形態では、細胞は、外来的に提供されたIL-15を含む。
【0006】
特定の実施形態では、本開示は、NK細胞を含む養子細胞療法を用いて神経膠芽細胞腫を治療する方法を包含する。特定の態様では、NK細胞は、神経膠芽細胞腫幹細胞に対して特に有効であり、本開示は、神経膠芽細胞腫細胞を含む、任意の種類の神経膠芽細胞腫細胞に対してNK細胞を増強するための方法及び組成物を提供する。本開示は、神経膠芽細胞腫を有する個体において神経膠芽細胞腫幹細胞を殺傷する方法であって、1つ以上の外来的に提供されたILを発現するように操作された、及び/又は1つ以上のILの存在下で培養されたNK細胞の有効量を個体に投与することを含む、方法を包含する。いくつかの実施形態では、神経膠芽細胞腫幹細胞は、1つ以上の操作された受容体を発現するNK細胞によって殺傷されるが、該操作された受容体は、神経膠芽細胞腫幹細胞上で発現される1つ以上の抗原を標的にしても、しなくてもよい。ある場合には、神経膠芽細胞腫幹細胞は、1つ以上の操作された受容体を発現するように操作された、1つ以上の外来性サイトカインを発現するように操作された、及び/又は、1つ以上のILの存在下で培養された、NK細胞によって殺傷される。
【0007】
本開示の実施形態は、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む任意の種類の免疫エフェクター細胞を含有する組成物を含み、前記細胞は、1つ以上の外来的に提供されたILを含み、任意選択でILはIL-15ではなく、細胞は、1つ以上の操作された受容体を含む。特定の実施形態では、ILがIL-12、IL-21、IL-2、IL-15、IL-18、IL-7及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の場合において、ILは、IL-12、IL-21又はその両方である。本開示の任意の実施形態では、ILが細胞において分泌され、繋留され、又は膜結合され得る。本明細書で使用される場合、「外来的に提供される」は、細胞中のベクターから発現される、及び/又は、細胞が1つ以上のILに外部から曝露されることとしてさらに定義され得る。
【0008】
特定の実施形態では、本開示の細胞において利用される操作された受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)などの操作された抗原受容体である。抗原は、固形腫瘍抗原を含む癌抗原であってもよく、又は病原体に関連する抗原であってもよい。抗原が癌抗原である場合の具体例としては、5T4、8H9、αβインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD5、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CS1、CLL1、CD99、DLL3、EGFR、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、FBP、胎児AchR、FR、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、IL-11R、IL-13R2、Lambda、Lewis-Y、L1CAM、Kappa、KDR、MCSP、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSC1、PSCA、PSMA、ROR1、SP17、サバイビン、TAG72、TEMs、HMW-MAA、VEGFR2、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される抗体を含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、又はホーミング受容体であるか、又は、細胞がこれらの組み合わせを有し得る。
【0009】
特定の実施形態では、本開示の細胞は、自殺遺伝子を含むNK細胞を含む細胞である。いくつかの場合において、細胞は、TDAG8、NKG2A、SIGLEC-7、LAG3、TIM3、CISH、FOXO1、TGFBR2、TIGIT、CD96、ADORA2、NR3C1、PD1、PDL-1、PDL-2、CD47、SIRPA、SHIP1、ADAM17、RPS6、4EBP1、CD25、CD40、IL21R、ICAM1、CD95、CD80、CD86、IL10R、CD5、CD7及びそれらの組み合わせからなる群より選択される内在性遺伝子の1つ以上の発現が減少又は阻害される。
【0010】
本開示の実施形態は、本明細書に包含される任意の細胞の集団を含む。
【0011】
一実施形態では、本明細書に包含される組成物のいずれかの治療有効量を投与するステップを含む、個体における癌を治療する方法がある。いくつかの場合において、個体における癌細胞は、MICA/B、ULBP1、ULBP2/5、ULBP3、B7-H6、CD112、CD155、HLA-ABC、HLA-DR若しくはHLA-3、又はそれらの組み合わせなどのNKリガンドの発現が増加している。操作されたNK細胞は、これらのNKリガンドの1つ以上を標的とする、又は他の標的を標的とし得る、1つ以上の操作された抗原受容体を発現し得る。組成物は、頭蓋内に、注射によって、静脈内に、動脈内に、腹腔内に、気管内に、腫瘍内に、筋肉内に、内視鏡的に、病変内に、頭蓋内に、経皮的に、皮下に、局所的に、潅流によって、腫瘍微小環境内において、又はそれらの組み合わせによって、個体に提供され得る。
【0012】
癌治療のために、癌は固形腫瘍であっても、固形腫瘍でなくてもよい。癌は、肺、脳、乳房、血液、皮膚、膵臓、肝臓、結腸、頭頸部、腎臓、甲状腺、胃、脾臓、胆嚢、骨、卵巣、精巣、子宮内膜、前立腺、直腸、肛門、子宮頸部の癌であってもよいし、血液性の癌であってもよい。特定の場合において、癌は神経膠芽細胞腫である。
【0013】
本開示の治療方法の実施形態では、個体がヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、又はげっ歯類などの哺乳動物であってもよい。個体は、手術、放射線、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、又はそれらの組み合わせを含む、1つ以上の追加の癌療法を施され得る。いくつかの実施形態では、本開示の任意の方法は、個体における癌を診断するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本開示の任意の方法は、細胞を生成するステップをさらに含む。本明細書において利用される任意の細胞は、個体に関して自己由来(autologous)又は同種異系(allogenic)であり得る。
【0014】
上記では、本開示の特徴及び技術的利点が、下記の詳細な説明がよりよく理解され得るためにかなり広く概説されている。本明細書中における請求項の主題を形成するさらなる特徴及び利点が本明細書中下記において記載されるであろう。開示される概念及び具体的な実施形態は、本件設計の同じ目的を実施するために他の構成を変更するための、又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されなければならない。そのような同等な組立ては、添付された請求項において示されるような精神及び範囲から逸脱しないこともまた、当業者によって認識されなければならない。さらなる目的及び利点と一緒にではあるが、構成及び操作方法の両方に関して、本明細書中に開示される設計に特徴的であると考えられる新規な特徴が、添付されている図面に関連して検討されたとき、下記の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、図面のそれぞれが例示及び説明のためだけに提供されており、本開示の限界の定義として意図されないことが、明確に理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示のより完全な理解のために、ここで、添付の図面と併せて以下の説明を参照する:
【0016】
図1図1A及び図1B。アストロサイトではなく神経膠芽細胞腫幹細胞(GSC)は、NK媒介溶解に非常に感受性である。(図1A)NK細胞を、異なる比率でCr51標識GSCと4時間共培養し(n=4)、Cr51放出を測定した。(図1B)GSC及びアストロサイト上のNKリガンドの発現。
【0017】
図2】サイトカイン遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターの例の概略図:hIL-12p40linkerp35は、p35及びp40サブユニットがリンカーとともに人工的に連結されたヒトIL-12である。
【0018】
図3図3A及び図3B。3次元腫瘍培養モデルとしての患者由来神経膠芽細胞腫幹細胞株(GSC)のスフェロイド培養(図3A)及びGSC標的に対するサイトカイン形質導入CB-NK細胞の細胞傷害性(図3B)。IL-12、IL-21又はIL-21形質導入NK細胞(赤線(上)、緑線(上から3番目)及び青線(上から2番目))はIncucyte(登録商標)ライブイメージングによって示されるように、非形質導入CB-NK(黒線(下))と比較してGSCに対して優れた細胞傷害性を発揮する。アポトーシス細胞は、カスパーゼ3/7緑色シグナルによって測定される。
【0019】
図4図4A~4C。FFluc形質導入GSCの患者由来異種移植片(PDX)モデルにおける非形質導入(NT)対IL12及びIL21形質導入NK細胞の比較。IL-12又はIL21形質導入NK細胞を1×10細胞の投与量で1回注入すると、生物発光イメージングによって示されるように腫瘍が根絶され(図4A~4B)、動物の長期治癒もたらされる(図4C)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[I.定義例]
長年の特許法の条約に従い、用語「a」及び「an」は本明細書において、特許請求の範囲を含む「1つ以上」を含む用語と併せて使用される場合、本開示のいくつかの実施形態は本開示の1つ以上の要素、方法ステップ、及び/又は方法から構成され得るか、又は本質的にそれらから構成され得る。本明細書に記載の任意の方法又は組成物を、本明細書に記載の任意の他の方法又は組成物に関して実施することができ、異なる実施形態を組み合わせ得ることが企図される。
【0021】
本明細書全体を通して、文脈が別途必要としない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は記述されたステップ又は要素又はステップ又は要素の群の包含を意味するが、任意の他のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素の群の除外を意味しないと理解される。「からなる(consisting of)」とは「からなる(consisting of)」という語句に続くものを含むこと、及びそれに限定されることを意味し、したがって、「からなる(consisting of)」という語句は列挙された要素が必要又は必須であることを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素についての開示において指定された活性又は作用に干渉しないか、又は寄与しない他の要素に限定される。したがって、語句「から本質的になる」は列挙された要素が必要又は必須であることを示すが、他の要素は任意ではなく、列挙された要素の活性又は作用に影響を及ぼすかどうかに応じて存在してもよいし、存在しなくてもよいことを示す。
【0022】
本明細書を通じて、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」、又は「さらなる実施形態」又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態と関連して記載された特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書中の様々な場所における前述の語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「又は」及び「及び/又は」は、互いに組み合わせて又は排他的に複数の構成要素を説明するために利用される。例えば、「x、y、及び/又はz」は「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、及びz」、「(x及びy)又はz」、「x又は(y及びz)」又は「x又はy又はz」を指し得る。x、y、又はzは実施形態から具体的に除外され得ることが具体的に企図される。
【0024】
本出願を通して、用語「約」は、細胞及び分子生物学の分野におけるその単純で通常の意味に従って使用され、値が値を決定するために使用されるデバイス又は方法の誤差の標準偏差を含むことを示す。
【0025】
本明細書で使用される「操作された」という用語は、細胞、核酸、ポリペプチド、ベクターなどを含む、人の手によって生成される実体を指す。少なくともいくつかの場合において、操作された実体は合成であり、本開示において利用される様式で天然に存在しないか、又は構成されない要素を含む。
【0026】
本明細書で使用される「外来性(exogenous)」という用語は、免疫細胞などの哺乳動物細胞中に内因的に存在しないか、又は組換え技術などによって哺乳動物細胞の外部で合成的に生成されるポリヌクレオチド(遺伝子産物又は遺伝子産物の一部をコードするものなど)を指す。特定の場合には、特定の遺伝子産物を細胞に外来的に提供することができ、細胞は細胞中で対応する内在性遺伝子産物を発現していてもよく、発現していなくてもよい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「予防する」及び、「予防された」「予防すること」等の類似の語は、疾患又は状態、例えば、癌の発生又は再発の可能性を予防、阻害、又は低減するためのアプローチを示す。それはまた、疾患若しくは状態の発症若しくは再発を遅延させること、又は疾患若しくは状態の症状の発症若しくは再発を遅延させることを指す。本明細書で使用される場合、「予防」及び同様の用語はまた、疾患又は状態の発症又は再発に先立って、疾患又は状態の強度、効果、症状及び/又は負担を低減することを含む。
【0028】
本明細書で使用される「対象」又は「個体」という用語は互換性があり、一般に、医学的状態の治療を必要とする個体を指す。特定の場合において、個体は、癌を有するか、又は癌を有することが疑われる。対象は哺乳動物、例えば、ヒト、実験動物(例えば、霊長類、ラット、マウス、ウサギ)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シチメンチョウ、及びニワトリ)、家庭用ペット(例えば、イヌ、ネコ、及びげっ歯類)、ウマ、及びトランスジェニック非ヒト動物を含む、方法又は材料の対象である任意の生物又は動物対象であり得る。対象は、患者、例えば、良性若しくは悪性新生物、又は癌などの疾患(医学的状態と称され得る)を有するか、又は有することが疑われる患者であり得る。対象は、治療を受けているか、又は受けたことがあってもよい。対象は、無症候性であり得る。対象は健康な個体であり得るが、癌の予防を望んでいる。本明細書で使用される「対象」又は「個体」は、医療施設に収容されていても、収容されていなくてもよく、医療施設の外来患者として治療されてもよい。個体は、インターネットを介して1つ以上の医療用組成物を受け取っていてもよい。個体はヒト又は非ヒト動物の任意の年齢を含んでもよく、したがって、成人及び若者(すなわち、子供)及び乳児の両方を含み、子宮内の個体を含む。したがって、この用語は医学的治療の必要性を示唆するものではなく、個人は、臨床的なものであるか基礎科学研究を支援するものであるかを問わず、自発的に又は非自発的に、実験に参加することができる。代替的な場合において、対象又は個体は、病原体処置を必要とする。
【0029】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「処置」は、疾患又は病理学的状態の症状又は病態に対する任意の有益な又は望ましい効果を含み、治療される疾患又は状態、例えば、癌の1つ以上の測定可能なマーカーの最小限の低減さえ含み得る。治療は、場合により、疾患若しくは状態の1つ以上の症状の軽減若しくは改善、又は疾患若しくは状態の発症若しくは進行の遅延のいずれかを含むことができる。治療は、必ずしも、疾患若しくは状態、又はその関連症状の完全な根絶又は治癒を示すものではない。治療は、医学的状態の1つ以上の症状の重症度を低減することを含み得る。
【0030】
本開示の実施形態は、神経膠芽細胞腫を含む任意の種類の癌の免疫療法のために、NK細胞などの免疫エフェクター細胞を利用する。特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞はNK細胞である。NK細胞は、Tリンパ球及びBリンパ球とは異なり、再構成されたV(D)J受容体を有さず、主要組織適合複合体(MHC)結合抗原提示によって制限されないので、GBMなどの高度に不均一な腫瘍に対する治療エフェクターとして適している。その代わりに、それらのエフェクター機能は、特定の抗原特異性又は共刺激の必要性なしに癌標的上の複数のリガンドを認識することができる生殖系列コード化受容体を通して受容されたシグナルの統合により決定される。
【0031】
NK細胞は、神経膠芽細胞腫(GBM)に浸潤する最も豊富なリンパ系サブセットの1つを含み、この疾患の免疫監視におけるNK細胞の役割を支持する。さらに、正常なアストロサイトではなく、GBM幹細胞(GSC)がMHC鎖関連抗原(MICA/B)及び(DNAMによって認識される)NKG2D及びCD155によって認識されるUL16結合タンパク質(ULBP)などのNK活性化受容体によって認識されるリガンドの多くを発現し、GSCは、インビトロで同種異系の健常NK細胞による溶解に対して高度に感受性であることが本明細書において示されている(図1A)。このように、GBMに対してのCAR T細胞を超えるNK細胞免疫療法の主な利点は、CARを使用して特定の抗原を標的とすることを必要とせず、生殖系列にコードされた受容体を介してGSC上の複数の抗原を標的とするそれらの固有の能力にある。NK細胞のこの特性は、GBMを含むCAR T細胞療法で観察される抗原回避及び腫瘍不均一性に関連する課題を克服し得る。本開示は、IL-2、IL-12、IL-21、IL-7、又はIL-18などの1つ以上の外来性サイトカインのいずれかにNK細胞を曝露することによって、及び/又は、それらのエフェクター機能、持続性、及び輸送を助けるために1つ以上のサイトカイン遺伝子を発現するようにそれらを操作することによって、GBMに対するNK細胞の活性をさらに改善することを可能にする。NK細胞は、神経膠芽細胞腫細胞上の抗原を標的とする操作された抗原受容体を利用することを含め、神経膠芽細胞腫細胞を特異的に標的とするようにさらに改変されてもよい。
【0032】
本開示の特定の実施形態は、1つ以上の外来性サイトカインと組み合わせた同種異系のNK細胞及び/又は1つ以上のサイトカインを表面に分泌又は発現するよう遺伝子操作されたNK細胞を包含する。このような細胞は、コストを低減し、この療法を多くの患者に拡張する既製の治療に利用することができる。
【0033】
[II.サイトカイン]
本開示の実施形態は、1つ以上のサイトカインに外部から(例えば、培養物中を含む)に曝露された免疫エフェクター細胞、及び/又は1つ以上のサイトカインを発現するベクターで細胞をトランスフェクトされた免疫エフェクター細胞を含む。サイトカインは任意の種類であり得るが、特定の実施形態ではサイトカインがIL-2、IL-12、IL-15、IL-21、IL-7、又はIL-18である。しかしながら、特定の実施形態では、サイトカインはIL-15ではない。
【0034】
特定の実施形態では、細胞中でベクターから発現された1つ以上の外来的に提供されるサイトカインは、膜結合性である。サイトカインは、任意の種類の膜結合分子、例えば、B7-1、CD40、CD28、CD8、GMCSF受容体、IgG1又はIgG4の膜貫通ドメインに異種的に結合され得るので、任意のサイトカインが膜結合され、NK細胞の表面上に発現され得る。
【0035】
いくつかの場合において、1つ以上のサイトカインは、操作された受容体などの別の遺伝子産物と同じベクター分子上に存在するが、他の場合において、それらは別々の分子上にある。特定の実施形態では、1つ以上のサイトカインが1つ以上の操作された受容体と同じベクターから共発現される。1つ以上のサイトカインは、抗原特異的受容体とは別個のポリペプチドとして産生されてもよい。特定の場合において、サイトカインはNK細胞の発生及び細胞増殖を誘導し、腫瘍常在細胞の機能的抑制を緩和することによって定着腫瘍の根絶を促進し、及び/又は、活性化誘導細胞死を阻害する。他のサイトカインも想定される。これらにはヒトへの適用に使用される細胞の活性化及び増殖に寄与するケモカイン及び他の分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
特定の実施形態では、NK細胞は、1つ以上の外来的に提供されるサイトカインを発現する。サイトカインは、フィーダー細胞内の発現ベクターから発現されるために、又はNK細胞培養物に直接添加され得るために、細胞に外来的に提供され得る。別の場合において、細胞中の内在性サイトカインは、サイトカインのプロモーター部位での遺伝子組換えなどの内在性サイトカインの発現の調節の操作の際にアップレギュレートされる。サイトカインが発現構築物上で細胞に提供される場合、サイトカインは、自殺遺伝子などの別の遺伝子産物を発現するものと同じベクターからコードされ得る。サイトカインは、自殺遺伝子とは別個のポリペプチド分子として、及び細胞の操作された受容体とは別個のポリペプチドとして発現され得る。いくつかの実施形態では、本開示は、IL-15ではないサイトカインとCAR及び/又はTCRベクターの共利用に関する。
【0037】
[III.免疫エフェクター細胞]
本開示は、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを有する、任意の種類の免疫エフェクター細胞を包含し、ここでインターロイキンはIL-15ではなく、任意選択で、細胞が1つ以上の操作された受容体及び/又は他の異種遺伝子産物を含む。特定の実施形態では、細胞に外来的に提供されたILは、人の手による細胞の意図的操作の直接的又は間接的な結果である。これは、細胞が1つ以上のサイトカイン(例えば、培養物中)に外部から曝露されているかどうか、及び/又は細胞がベクター(細胞ゲノムに組み込まれていても、組み込まれていなくてもよい)から1つ以上のILを発現するようにトランスフェクトされているかどうかにかかわらず、当てはまる。そのような方法での免疫エフェクター細胞の操作は、任意の機構によるものであり得る。免疫エフェクター細胞は、NK細胞、T細胞、T制御性細胞、iNKT細胞、B細胞、MSCなどであってもよい。
【0038】
免疫エフェクター細胞が1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを有する場合、細胞は、1つ以上のサイトカインを含む培地中で培養されるプロセスによって、1つ以上のサイトカインに外部から曝露されていてもよい。培地中のサイトカインの濃度の範囲は、例えば、0.1ng~1000ng、0.1ng~750ng、0.1ng~500ng、0.1~250ng、0.1~100ng、0.1~75ng、0.1~50ng、0.1~25ng、0.1~10ngなどである。培地中のサイトカインの濃度の範囲は、例えば、1単位~5000単位、1単位~4000単位、1単位~3000単位、1単位~2000単位、1単位~1000単位、1単位~750単位、1単位~500単位、1単位~250単位、1単位~100単位、1単位~75単位、1単位~50単位、1単位~25単位などであり得る。いくつかの場合において、サイトカインは、細胞が培養される間中培地中にあり、一方、他の場合において、サイトカインは、培養の後の時点で培養物に添加される。サイトカインは、第1、第2、第3、第4、若しくはそれ以降の継代、又はそれらの組み合わせにおいて培養培地中に存在し得る。
【0039】
本開示は、従来のT細胞、γδT細胞、NK細胞、NK T細胞、インバリアントNK T細胞、制御性T細胞、マクロファージ、B細胞、樹状細胞、腫瘍浸潤リンパ球、又はそれらの混合物を含む、任意の種類の免疫エフェクター細胞を包含する。細胞は、癌を有する個体などの、細胞を必要とする個体を含む個体に対して、同種異系、自己由来、又は異種由来であり得る。
【0040】
特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、人の手によって修飾されて、1つ以上のサイトカインを発現するか、そうでなければ産生し、これらは組換えであるなど、細胞中の内在性サイトカインではない。免疫エフェクター細胞は、操作された受容体、自殺遺伝子、それらの組み合わせなどの追加の異種タンパク質を発現させるなどによって、さらなる方法で改変され得る。細胞はまた、1つ以上の内在性遺伝子の発現が低減又は抑制されるように改変され得る。
【0041】
免疫エフェクター細胞が2種以上の方法で改変されている場合、免疫エフェクター細胞が改変される順序は任意の種類であり得る。例えば、外来的に提供されたサイトカインを発現する(及び/又は培養物中などの、1つ以上のサイトカインに外部的に曝露されている)免疫エフェクター細胞を、1つ以上の操作された受容体でトランスフェクトすることができる。他の場合において、1つ以上の操作された受容体を発現する免疫エフェクター細胞は、外来的に提供されたサイトカインでトランスフェクトされ得、及び/又は培養物中の1つ以上のサイトカインに曝露され得る。
【0042】
特定の実施形態では、IL-15ではない1つ以上の外来的に提供されたILを含む免疫エフェクター細胞は、抗原受容体などの操作された受容体を発現するように改変された細胞と同じ細胞である。本開示に包含される任意の免疫エフェクター細胞は、固形腫瘍抗原でもあり得る癌抗原である抗原に対する受容体を含む、任意の種類のものであってよい抗原受容体を発現する。特定の実施形態では、受容体は、例えば、キメラ抗原受容体又はT細胞受容体である。免疫エフェクター細胞は、1つ以上の外来的に提供されるILを含むように特異的に設計されてもよく、個体の癌細胞上の抗原を標的とする抗原受容体を発現するように特異的に設計されてもよい。すなわち、細胞は、個体の癌細胞上に存在することが知られている抗原を標的とする1つ以上の抗原受容体を含むように調整され得る。
【0043】
特定の実施形態では、本開示の細胞は、既製の細胞として使用される目的で産生される。例えば、1つ以上の外来的に提供されたILを含む細胞は、例えば、リポジトリ中に存在してもよく、それらは、リポジトリから得られ、外来的に提供されたサイトカインを発現すること以外のさらなる修飾を有するように操作されてもよい。他の場合には、外来的に提供されたサイトカインを発現する他の修飾を有する細胞がリポジトリから得られ、1つ以上の外来的に提供されたサイトカインを発現するように操作される。リポジトリから細胞を得た後の細胞へのそのような改変に続いて、細胞を保存してもよく、又は有効量の細胞を、それを必要とする個体に提供してもよい。
【0044】
任意の免疫エフェクター細胞は、極低温保存などの任意の形態のリポジトリから得ることができ、さらに改変することができる。細胞は1つ以上のサイトカインを発現する発現構築物を有するものとして保存されてもよく、その後得られ、例えば、必要とする個体の特定の癌に合わせて調整された抗原を標的とするように操作された受容体などの目的とする特定の1つ以上の操作された抗原受容体を発現するようにも改変され得る。細胞は、特定の癌に対する抗原を標的とする受容体などの、1つ以上の目的とする操作された抗原受容体を発現する発現構築物を有するものとして保存され得、その後、必要に応じて1つ以上の外来性サイトカインを発現するように改変される。貯蔵の前又は後に、細胞は自殺遺伝子を含むように改変され得、場合によっては自殺遺伝子がそれぞれのサイトカイン又は操作された抗原受容体と同じベクターから発現される。
【0045】
特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、1つ以上の外来的に提供されたILを含み、1つ以上の操作された抗原標的化受容体も発現し、及び/又は少なくとも1つの自殺遺伝子を発現する。1つ以上の外来的に提供されたILを含む細胞について、いくつかの場合、異なるベクターが抗原標的化受容体をコードするのに対して、自殺遺伝子及び/又は外来性サイトカインをコードする。他の場合には、それら(又はサブセット)が同じベクター上にある。NK細胞を含む免疫エフェクター細胞は、臍帯血、末梢血、人工多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞(HSC)、骨髄、又はそれらの混合物などの、任意の適切な供給源に由来し得る。NK細胞は、例えば、限定されないが、NK-92細胞などの細胞株に由来し得る。NK細胞は、臍帯血単核細胞、例えば、CD56+ NK細胞であり得る。
【0046】
いくつかの場合において、1つ以上の外来的に提供されたILを含む免疫エフェクター細胞(NK細胞を含む)は、任意の適切な比率で含む有効量のユニバーサル抗原提示細胞(UAPC)の存在下で増殖させたものである。細胞は、例えば、10:1~1:10;9:1~1:9;8:1~1:8;7:1~1:7;6:1~1:6;5:1~1:5;4:1~1:4;3:1~1:3;2:1~1:2;又は1:1の比でUAPCと共培養されてもよく、例えば1:2の比を含んでUAPCと共培養されてもよい。いくつかの場合において、NK細胞は、IL-2の存在下、例えば、10~500、10~400、10~300、10~200、10~100、10~50、100~500、100~400、100~300、100~200、200~500、200~400、200~300、300~500、300~400、又は400~500U/mLの濃度のIL-2の存在下で増殖したものであり得る。
【0047】
任意のベクターによる遺伝子改変に続いて、1つ以上の外来的に提供されたILを含む免疫エフェクター細胞は、個体に直ちに送達されてもよいし、又は保存されてもよい(又は細胞の一部が個体に送達され、細胞の残りが保存される)。特定の態様では、遺伝子改変後、細胞は、細胞への遺伝子導入後に約1、2、3、4、5日又はそれ以上以内に、バルク集団としてエクスビボで数日、数週間又は数ヶ月間増殖させることができる。さらなる態様では、トランスフェクタントをクローン化し、単一の組み込まれた又はエピソーム的に維持された発現カセット又はプラスミドが実際に存在するクローンをエクスビボで増殖させる。増殖のために選択されたクローンは1つ以上の外来的に提供されたサイトカインの発現を示す。組換え免疫細胞は、IL-2、又は共通のγ鎖に結合する他のサイトカイン(例えば、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21など)による刺激によって増殖され得る。組換え免疫細胞は、人工抗原提示細胞による刺激によって増殖させることができる。さらなる態様では、任意の遺伝子改変細胞を凍結保存することができる。
【0048】
本開示の実施形態は、1つ以上の外来的に提供されるIL及び1つ以上の抗原受容体を含む1つ以上の操作された受容体を含む免疫エフェクター細胞を包含する。1つ以上の操作された抗原受容体は、例えば組換え技術を用いて人の手によって生成され、免疫エフェクター細胞にとって天然のものではない。操作された受容体は任意の種類のものであってもよいが、特定の実施形態では、受容体は、キメラ抗原受容体、T細胞受容体、ホーミング受容体、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)/Cas9媒介遺伝子変異、デコイ受容体、サイトカイン受容体、キメラサイトカイン受容体、それらの組み合わせなどである。
【0049】
本開示の実施形態は、1つ以上の外来的に提供されたIL及び1つ以上の自殺遺伝子を含む細胞を包含する。免疫エフェクター細胞は、1つ以上の外来的に提供されたILを含み得、任意の種類の自殺遺伝子をコードする組換え核酸を含み得る。自殺遺伝子の例としては、操作された非分泌性(膜結合型を含む)腫瘍壊死因子(TNF)-α変異体ポリペプチド(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT/US2019/062009を参照されたい)が挙げられ、それらはTNF-α変異体に結合する抗体の送達によって影響され得る。使用され得る自殺遺伝子/プロドラッグの組み合わせの例は、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)及びガンシクロビル、アシクロビル、又はFIAU;オキシドレダクターゼ及びシクロヘキシミド;シトシンデアミナーゼ及び5-フルオロシトシン;チミジンキナーゼチミジル酸キナーゼ(Tdk::Tmk)及びAZT;ならびにデオキシシチジンキナーゼ及びシトシンアラビノシドなどが挙げられる。プロドラッグ6-メチルプリンデオキシリボシドを毒性のあるプリン6-メチルプリンに変換する、いわゆる自殺遺伝子である大腸菌プリンヌクレオシドホスホリラーゼを利用することもできる。他の自殺遺伝子として、CD20、CD52、誘導性カスパーゼ9、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、チトクロームp450酵素(CYP)、カルボキシペプチダーゼ(CP)、カルボキシルエステラーゼ(CE)、ニトロレダクターゼ(NTR)、グアニンリボシルトランスフェラーゼ(XGRTP)、グリコシダーゼ酵素、メチオニン-α、γ-リアーゼ(MET)、及びチミジンホスホリラーゼ(TP)などが挙げられる。
【0050】
細胞は、個体から直接得ることができ、又はデポジトリ若しくは他のデポジトリから得ることができる。治療としての細胞は、細胞が治療として提供される個体に関して、自己由来又は同種異系であり得る。
【0051】
細胞は、医学的状態のための治療を必要とする個体からのものであってもよく、1つ以上の外来的に提供されたIL、任意の自殺遺伝子、任意のサイトカイン、及び任意の受容体を含むように(例えば、養子細胞療法のための形質導入及び拡大のための標準的技術を使用して)操作した後で、それらは、それらが最初に供給された個体に戻されてもよい。場合によっては、細胞が個体又は別の個体のための後の使用のために保存される。
【0052】
免疫細胞は細胞の集団に含まれてもよく、その集団は1つ以上の外来的に提供されたIL及び/又は1つ以上の自殺遺伝子及び/又は1つ以上のサイトカインを含む大部分を有してもよい。細胞集団は、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の、1つ以上の外来的に提供されたIL及び/又は1つ以上の自殺遺伝子、及び/又は1つ以上の操作された受容体を含む免疫細胞を含み得;これらの遺伝子の各々は別個のポリペプチドとして産生されていても産生されていなくてもよい。
【0053】
免疫細胞は、特定の目的に関してモジュール式であることを目的として、1つ以上の外来的に提供されたIL及び/又は1つ以上の自殺遺伝子及び/又は1つ以上のサイトカインを含むように産生され得る。例えば、1つ以上の外来的に提供されたIL及び/又は1つ以上の自殺遺伝子(又はその後の形質導入のために自殺遺伝子をコードする核酸とともに流通する)を含む商業的流通のためを含めて細胞を作製することができ、ユーザーは、目的に応じて1つ以上の他の目的の遺伝子(治療用遺伝子を含む)を発現するようにそれらを改変することができる。例えば、癌細胞を治療することに関心のある個体は、自殺遺伝子発現細胞(又は異種サイトカイン発現細胞)を取得又は生成し、1つ以上の外来的に提供されたILを含むようにそれらを改変することができ、逆もまた可能である。
【0054】
特定の実施形態では、NK細胞が利用され、1つ以上の外来的に提供されたIL及び/又は1つ以上の自殺遺伝子及び/又は1つ以上の操作された受容体を含むNK細胞のゲノムが改変され得る。ゲノムは任意の様式で改変され得るが、特定の実施形態ではゲノムが例えば、CRISPR遺伝子編集によって改変される。細胞のゲノムは任意の目的のために、細胞の有効性を増強するように改変され得る。特定の場合において、細胞は、1つ以上の遺伝子の発現の阻害によってさらに改変される。いくつかの場合において、編集される遺伝子は、細胞が腫瘍微小環境においてより効果的に働くことを可能にする。特定の場合、遺伝子は、TDAG8、NKG2A、SIGLEC-7、LAG3、TIM3、CISH、FOXO1、TGFBR2、TIGIT、CD96、ADORA2、NR3C1、PD1、PDL-1、PDL-2、CD47、SIRPA、SHIP1、ADAM17、RPS6、4EBP1、CD25、CD40、IL21R、ICAM1、CD95、CD80、CD86、IL10R、CD5、及びCD7のうちの1つ以上である。特定の実施形態では、これらの遺伝子の1つ以上が細胞内でノックアウトされるか、又はノックダウンされる。
【0055】
細胞が1つ以上の遺伝子の発現のノックアウト又はノックダウンを有するように遺伝子編集される場合、そのような遺伝子編集は、任意の適切な様式で実施され得る。いくつかの実施形態において、細胞における任意の遺伝子編集は、RNAガイド化エンドヌクレアーゼ(RGEN)を介する改変などの、1つ以上のDNA結合核酸を使用して実施される。例えば、改変は、CRISPR及びCRISPR関連(Cas)タンパク質を用いて行うことができ、いくつかの実施形態では、Cas9の代わりにCpF1が利用される。一般に、「CRISPRシステム」はCRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与する転写物及び他のエレメント、例えば、Cas遺伝子、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNA又は活性部分tracrRNA)、tracr-mate配列(「ダイレクトリピート」及びtracrRNAでプロセシングされた内在性CRISPRシステムの文脈における部分的ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの文脈において「スペーサー」とも呼ばれる)、並びに/又はCRISPR遺伝子座由来の他の配列及び転写物を含む。
【0056】
CRISPR/Casヌクレアーゼ又はCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、DNAに配列特異的に結合する非コードRNA分子(ガイド)RNAと、ヌクレアーゼ機能性(例えば、2つのヌクレアーゼドメイン)を有するCasタンパク質(例えば、Cas9)を含むことができる。CRISPRシステムの1つ以上の構成要素が、例えば、内在性CRISPRシステムを含む特定の生物(例えば、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)など)から得られるI型、II型又はIII型のCRISPRシステムに由来することができる。
【0057】
いくつかの態様において、Casヌクレアーゼと、(標的配列について特異的なcrRNAと、固定されたtracrRNAとの融合物を含む)gRNAとが細胞に導入される。一般に、gRNAの5’末端における標的部位は、Casヌクレアーゼを、相補的な塩基対形成を使用して標的部位に対して、例えば、遺伝子に対して標的化する。標的部位は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列(典型的にはNGG又はNAGなど)のすぐ5’側のその位置に基づいて選択される場合がある。この点で、gRNAは、標的DNA配列に対応するようにガイドRNAの最初の20、19、18、17、16、15、14、14、12、11又は10ヌクレオチドを改変することによって所望の配列に標的化される。一般に、CRISPRシステムは、標的配列の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進させる構成要素によって特徴づけられる。典型的には、「標的配列」は一般には、ガイド配列が相補性を有するように設計される配列で、標的配列とガイド配列との間でのハイブリダイゼーションによりCRISPR複合体の形成を促進させる配列を示す。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進させるための十分な相補性が存在するならば、完全な相補性は必ずしも要求されない。
【0058】
CRISPRシステムは、標的部位における二本鎖切断(DSB)、続いて、本明細書中で議論されるような破壊又は改変を誘導することができる。他の実施形態において、「ニッカーゼ」とみなされるCas9バリアントが、標的部位において一本鎖に切れ目を入れるために使用される。一対の異なるgRNAによってそれぞれ指向化される対となったニッカーゼが、例えばニックを同時に導入する際に5’側突出部が導入されるように配列を標的化することにより、例えば、特異性を改善するために使用することができる。他の実施形態において、触媒不活性なCas9が、遺伝子発現に影響を及ぼすために異種のエフェクタードメイン(例えば、転写リプレッサー又は転写活性化因子など)に融合される。
【0059】
標的配列は、例えば、DNAポリヌクレオチド又はRNAポリヌクレオチドなど、任意のポリヌクレオチドを含む場合がある。標的配列は細胞の核又は細胞質に、例えば、細胞のオルガネラの内部などに位置する場合がある。一般に、標的配列を含む標的となった遺伝子座の中への組換えのために使用され得る配列又はテンプレートが、「編集用テンプレート」又は「編集用ポリヌクレオチド」又は「編集用配列」として示される。いくつかの態様において、外来性のテンプレートポリヌクレオチドが編集用テンプレートとして示される場合がある。いくつかの態様において、組換えは相同組換えである。
【0060】
典型的には、内在性CRISPRシステムとの関連において、(標的配列にハイブリダイゼーションし、1つ以上のCasタンパク質と複合体化するガイド配列を含む)CRISPR複合体の形成により、標的配列内又は標的配列の近傍(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50塩基対以内、又はそれ以上の塩基対以内で)の一方又は両方のストランドの切断がもたらされる。tracr配列は、野生型tracr配列の全体又は一部(例えば、野生型tracr配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85、又はそれ以上のヌクレオチド)を含む場合があり、tracr配列はまた、CRISPR複合体の一部を、例えば、ガイド配列に機能的に連結されるtracrメイト配列の全体又は一部に対するtracr配列の少なくとも一部に沿ったハイブリダイゼーションなどによって形成する場合がある。tracr配列は、ハイブリダイゼーションし、CRISPR複合体の形成に加わるためにtracrメイト配列に対する十分な相補性を有しており、例えば、最適にアラインメントされたときには、tracrメイト配列の長さに沿って少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%などの配列相補性を有する。
【0061】
CRISPRシステムの1つ以上の構成要素を発現させる1つ以上のベクターを、CRISPRシステムの当該構成要素の発現により、CRISPR複合体の形成が1つ以上の標的部位で導かれるように細胞に導入することができる。構成要素はまたタンパク質及び/又はRNAとして細胞に送達されることが可能である。例えば、Cas酵素、tracrメイト配列に連結されたガイド配列、及びtracr配列はそれぞれが、別個のベクターにおいて別個の調節エレメントに機能的に連結され得るであろう。代替として、同じ調節エレメント又は異なる調節エレメントから発現される構成要素の2つ以上が単一のベクターにおいて組み合わされてもよく、この場合、1つ以上のさらなるベクターにより、第1のベクターに含まれないCRISPRシステムの任意の構成要素が提供される。ベクターは、1つ以上の挿入部位、例えば、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(これはまた、「クローニング部位」として示される)などを含む場合がある。いくつかの実施形態において、1つ以上の挿入部位が1つ以上のベクターの1つ以上の配列エレメントの上流側及び/又は下流側に位置する。複数の異なるガイド配列が使用されるときには、単一の発現構築物が、細胞内の複数の異なる対応する標的配列にCRISPR活性を標的化するのに使用してもよい。
【0062】
ベクターは、Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に機能的に連結される調節エレメントを含む場合がある。Casタンパク質の限定されない例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(これはまた、Csn1及びCsx12として知られている)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、又はそれらの改変型が含まれる。これらの酵素は知られており、例えば、S.pyogenesのCas9タンパク質のアミノ酸配列がSwissProtデータベースにおいてアクセッション番号Q99ZW2により見出され得る。
【0063】
CRISPR酵素はCas9(例えば、S.pyogenes又はS.pneumoniaから得られるもの)であり得る。いくつかの場合、Cas9の代わりにCpF1がエンドヌクレアーゼとして使用され得る。CRISPR酵素は、標的配列の場所において、例えば、標的配列の内部及び/又は標的配列の相補体の内部などで一方の鎖又は両方の鎖の直接的な切断をもたらすことができる。ベクターは、変異させたCRISPR酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方の鎖又は両方の鎖を切断する能力を欠くように、対応する野生型酵素に関して変異させられるCRISPR酵素をコードすることができる。例えば、S.pyogenes由来のCas9のRuvCI触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)により、Cas9は、両方の鎖を切断するヌクレアーゼからニッカーゼに変わる(一本鎖が切断される)。いくつかの実施形態において、Cas9ニッカーゼがガイド配列(1つ以上)と組み合わせて、例えば、DNA標的のセンス鎖及びアンチセンス鎖をそれぞれ標的とする2つのガイド配列と組み合わせて使用される場合がある。この組み合わせは、両方の鎖に切れ目を入れ、両方の鎖が、NHEJ又はHDRを誘導するために使用されることを可能にする。
【0064】
いくつかの実施形態において、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列が、真核生物細胞などの特定の細胞における発現のためにコドン最適化される。真核生物細胞は、特定の生物、例えば、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ又は非ヒト霊長類を含む哺乳動物などの細胞、あるいはそれらに由来する細胞である場合がある。一般に、コドン最適化は、目的とする宿主細胞における強化された発現のために、ネイティブ型配列の少なくとも1つのコドンを、ネイティブ型のアミノ酸配列を維持しながら、その宿主細胞の遺伝子においてより頻繁に、又は最も頻繁に使用されるコドンで置き換えることによって核酸配列を改変するプロセスを示す。様々な生物種が、特定のアミノ酸のある特定のコドンについて特定の偏りを示す。コドンの偏り(生物間のコドン使用頻度における差)は多くの場合、とりわけ、翻訳されているコドンの特性、及び特定の転移RNA(tRNA)分子の利用可能性に結果として依存していると考えられるメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関する。選択されたtRNAが細胞において優勢であることは一般に、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンを反映している。したがって、遺伝子を、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現ができるように遺伝子を調整することができる。
【0065】
一般に、ガイド配列には、標的配列とハイブリダイゼーションし、標的配列に対するCRISPR複合体の配列特異的な結合を導くために標的ポリヌクレオチド配列との十分な相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列が挙げられる。いくつかの実施形態において、好適なアラインメントアルゴリズムを使用して最適にアラインメントされたとき、ガイド配列と、その対応する標的配列との間における相補性の程度は、約50%又は約50%超、約60%又は約60%超、約75%又は約75%超、約80%又は約80%超、約85%又は約85%超、約90%又は約90%超、約95%又は約95%超、約97%又は約97%超、約99%又は約99%超、あるいはそれ以上である。
【0066】
最適なアラインメントは、配列をアラインメントするための任意の好適なアルゴリズムを使用することにより求めてもよく、そのようなアルゴリズムの限定されない例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies)、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnにおいて入手可能)、及びMaq(maq.sourceforge.netにおいて入手可能)が含まれる。
【0067】
CRISPR酵素は、1つ以上の異種タンパク質ドメインを含む融合タンパク質の一部である場合がある。CRISPR酵素融合タンパク質は、任意のさらなるタンパク質配列を含む場合があり、また、必要な場合にはリンカー配列をいずれか2つのドメインの間に含む場合がある。CRISPR酵素に融合され得るタンパク質ドメインの例には、限定されないが、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、並びに以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性及び核酸結合活性のうちの1つ以上を有するタンパク質ドメインが含まれる。エピトープタグの限定されない例には、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザ血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ及びチオレドキシン(Trx)タグが含まれる。レポーター遺伝子の例には、グルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)βガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、及び青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自家蛍光タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。CRISPR酵素は、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、Lex AのDNA結合ドメイン(DBD)の融合物、GAL4AのDNA結合ドメインの融合物、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質の融合物(これらに限定されない)を含めて、DNA分子と結合するタンパク質又は当該タンパク質のフラグメント、あるいは他の細胞分子と結合するタンパク質又は当該タンパク質のフラグメントをコードする遺伝子配列に融合される場合がある。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の一部を形成し得るさらなるドメインが米国特許出願公開第20110059502号(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される。
【0068】
[IV.治療方法]
本開示の実施形態は、例えば、癌免疫療法、抗病原体免疫療法、自己免疫又は同種免疫に関連する治療の方法を含む。特定の場合において、癌免疫療法及び抗病原体免疫療法は、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含む免疫エフェクター細胞を含む組成物を少なくとも含む。本方法は癌及び/又は病原体を有する個体に、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含む有効量の免疫エフェクター細胞を提供することを含む。
【0069】
特定の場合において、個体は、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含む有効量の細胞を提供される。特定の場合において、細胞はまた、1つ以上の操作された抗原受容体を発現している。特定の場合において、細胞はまた、CRISPR/Cas9を用いてノックアウトされる。遺伝子操作された免疫エフェクター細胞は、固形腫瘍に対するそれらの有効性を高めるために様々な細胞療法において使用され、これらの細胞療法は個体に提供される。
【0070】
一例として、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含むNK細胞は、1つ以上のCARを発現し、固形腫瘍の酸性TMEにおけるそれらの有効性を高める目的で、1つ以上の内在性遺伝子を欠失させるように遺伝子操作され、特定の実施形態では、この療法の固形腫瘍への拡大をもたらす。さらに、この遺伝子操作戦略は、CAR-NK細胞、T細胞受容体(TCR)-T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの様々な他の形態の細胞療法において使用され、様々なタイプの固形腫瘍に対してそれらを増強する。
【0071】
特定の実施形態では、本開示の細胞が任意の種類の癌及び/又は任意の種類の病原体感染症などの医学的状態を改善する目的で個体に提供される。本明細書で企図される細胞(それを含む医薬組成物を含む)の使用は、腫瘍性疾患などの癌性疾患又は病原体感染症の予防、治療、又は改善のために使用される。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、例えば、固形腫瘍であってもなくてもよい癌を含む、癌の予防、改善及び/又は治療に特に有用であり得る。
【0072】
特定の実施形態では本開示は、部分的に、単独で又は1つ以上の他の療法との任意の組み合わせで、そして少なくともいくつかの態様において薬学的に許容される担体又は賦形剤と一緒に投与され得る、本明細書に包含される細胞の使用を企図する。特定の実施形態では、任意の核酸分子又はベクターは、対象に細胞を送達する前に、細胞のゲノムに安定に組み込まれ得る。
【0073】
本開示の任意の細胞は、注射、静脈内、動脈内、腹腔内、気管内、腫瘍内、筋肉内、内視鏡的に、病変内、頭蓋内、経皮、皮下、局所、潅流で、腫瘍微小環境内に、又はそれらの組み合わせによって個体に投与され得る。
【0074】
さらに、本開示は、本明細書において企図される1つ以上の外来的に提供されるインターロイキンを含む任意の細胞の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、腫瘍性疾患の予防、治療、又は改善のための方法に関する。
【0075】
細胞の組成物の投与の可能な適応症は、例えば、神経膠芽細胞腫、B細胞悪性腫瘍、多発性骨髄腫、肺、脳、乳房、血液、皮膚、膵臓、肝臓、結腸、頭頸部、腎臓、甲状腺、胃、脾臓、胆嚢、骨、卵巣、精巣、子宮内膜、前立腺、直腸、肛門又は子宮頸部等の腫瘍性疾患を含む癌性疾患である。細胞の組成物の投与における例示的な適応症は、個体の癌に関連する1つ以上の特定の抗原を発現する任意の悪性腫瘍を含む、癌性疾患である。本開示の組成物の投与は、例えば、微小残存病変、早期癌、進行癌、及び/又は転移性癌及び/又は難治性癌を含む、全ての病期及びタイプの癌に有用である。
【0076】
本開示はさらに、免疫細胞を介して作用する他の化合物、例えば、二重特異性抗体構築物、標的化毒素又は他の化合物との共投与プロトコルを包含する。本発明の化合物の共投与のための臨床レジメンは、他の成分の投与と同時に、投与前に、又は投与後に共投与することを包含し得る。特定の併用療法には、化学療法、放射線療法、手術、ホルモン療法、又は他のタイプの免疫療法が含まれる。
【0077】
本開示の実施形態は、アストロサイトを同じ細胞免疫療法から標的化することから除外しながら、細胞免疫療法を神経膠芽細胞腫幹細胞に標的化する方法を含む。細胞免疫療法は、少なくともNK細胞を含む任意の種類の免疫エフェクター細胞を含み得る。細胞免疫療法は、1つ以上の外来的に提供されたサイトカインを含む免疫エフェクター細胞を含み得る。
【0078】
実施形態は、細胞を産生するための構築物、本明細書で定義される核酸配列、本明細書で定義されるベクター、及び/又は本明細書で定義される宿主細胞(免疫エフェクター細胞など)を含むキットに関する。本開示のキットは、本明細書に記載の医薬組成物を、単独で、又は医学的処置若しくは介入を必要とする個体に投与されるさらなる薬剤と組み合わせて含むことも企図される。
【0079】
[V.遺伝子操作された受容体]
1つ以上の外来的に提供されるインターロイキンを含む本開示の免疫細胞は、1つ以上の非内在性遺伝子産物を発現するようにさらに修飾され得る。遺伝子産物は、遺伝子操作された受容体であってもなくてもよい。受容体は、例えば、抗原、ケモカイン、又はサイトカインに対する受容体を含む、任意の種類のものであってもよい。受容体が抗原に対するものである場合、抗原は、固形腫瘍抗原を含む癌抗原であってもよい。
【0080】
1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含む免疫エフェクター細胞は、特定の抗原を標的とする抗原受容体を発現するように遺伝子操作されてもよく、そのような細胞は、個体の癌細胞上に存在する1つ以上の抗原を標的とするように特異的に設計されてもよい。
【0081】
特定の実施形態では、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含む免疫エフェクター細胞は、操作されたTCR又はCARなどの操作された抗原受容体を含み得る。例えば、免疫細胞は、1つ以上の特定の抗原に対して抗原特異性を有する1つ以上のCAR及び/又はTCRを発現するように改変されたNK細胞であってもよい。いくつかの態様では、免疫細胞は、例えばCRISPRを用いたCAR又はTCRのノックインによって、抗原特異的CAR又は抗原特異的TCRを発現するように操作される。
【0082】
改変の適切な方法は、当技術分野で公知である。例えば、上記のSambrook及びAusubelを参照されたい。例えば、細胞は、Heemskerk et al、2008及びJohnson et al、2009に記載されている形質導入技術を用いて、癌抗原に対する抗原特異性を有するTCRを発現するように形質導入され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、細胞は、遺伝子操作によって導入された1つ以上の抗原受容体をコードする1つ以上の核酸、及びそのような核酸の遺伝子操作産物を含む。いくつかの実施形態では、核酸が異種(heterologous)、すなわち、例えば、別の生物又は細胞から得られるものなどの、細胞又は細胞から得られる試料中に通常は存在しないものであり、例えば、操作される細胞及び/又はそのような細胞が由来する生物において通常見出されないものである。いくつかの実施形態では、核酸が天然に存在しない(例えば、天然に見出されない核酸(例えば、キメラ))。
【0084】
CAR及び組換えTCRをはじめとした例示的な抗原受容体、ならびにそれらの受容体を操作するための方法及び細胞に導入するための方法には、例えば、国際特許出願公開番号WO200014257、WO2013126726、WO2012/129514、WO2014031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開番号US2002131960、US2013287748、US20130149337、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号及び同第8,479,118号、ならびに欧州特許出願番号EP2537416に記載されているもの、及び/又はSadelain et al.,2013;Davila et al.,2013;Turtle et al.,2012;Wu et al.,2012によって記載されたものが含まれる。いくつかの態様において、遺伝的に操作された抗原受容体には、米国特許第7,446,190号に記載されているようなCAR、及び国際特許出願公開番号WO/2014055668Alに記載されているものが含まれる。
【0085】
操作された受容体が抗原受容体である場合、抗原は、5T4、8H9、αβインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD5、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CS1、CLL1、CD99、DLL3、EGFR、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、FBP、胎児AchR、FR、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、IL-11R、IL-13R2、Lambda、Lewis-Y、L1CAM、Kappa、KDR、MCSP、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSC1、PSCA、PSMA、ROR1、SP17、サバイビン、TAG72、TEMs、HMW-MAA及びVEGFR2からなる群より選ばれてもよい。
【0086】
(A.キメラ抗原受容体)
いくつかの態様において、抗原特異的CARは、a)1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、及びc)所望の抗原を標的とする(特異的に結合することを含む)抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、上記操作された受容体はCARを含み、活性化型又は刺激型のCAR、共刺激型のCAR(WO2014/055668を参照のこと)及び/又は阻害型のCAR(iCAR、Fedorov et al.,2013を参照のこと)をはじめとしたCARが含まれる。それらのCARは、一般に、1つ以上の細胞内のシグナル伝達構成要素に、いくつかの態様ではリンカー及び/又は膜貫通ドメインを介して連結された、細胞外の抗原(又はリガンド)結合ドメインを含む。そのような分子は、通常、天然の抗原受容体を介するシグナル、共刺激受容体とともにそのような受容体を介するシグナル、及び/又は共刺激受容体のみを介するシグナルを模倣するか近似している。
【0088】
本開示のある特定の実施形態は、細胞内の少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上のシグナル伝達モチーフを含む細胞外のドメインを含む、抗原特異的CARポリペプチド(免疫原性を低減するためにヒト化されたCAR(hCAR)を含む)をコードする核酸を含む核酸の使用に関する。ある特定の実施形態において、抗原特異的CARは、1つ以上の抗原の間で共有される空間を含むエピトープを認識し得る。ある特定の実施形態において、結合領域は、モノクローナル抗体の相補性決定領域、モノクローナル抗体の可変領域、及び/又はそれらの抗原結合フラグメントを含み得る。別の実施形態において、その特異性は、受容体に結合するペプチド(例えば、サイトカイン)に由来する。
【0089】
ヒト抗原CAR核酸は、ヒト患者に対する細胞免疫療法を増強するために使用されるヒト遺伝子であり得ると企図される。具体的な実施形態において、本開示は、抗原特異的CARの完全長cDNA又はコード領域を含む。その抗原結合領域又はドメインは、特定のヒトモノクローナル抗体に由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)のVH鎖及びVL鎖のフラグメント(例えば、参照により本明細書中に援用される米国特許第7,109,304号に記載されているもの)を含み得る。そのフラグメントは、ヒト抗原特異的抗体の任意の数の異なる抗原結合ドメインでもあり得る。より具体的な実施形態において、そのフラグメントは、ヒト細胞における発現のためにヒトのコドン使用頻度に最適化された配列によってコードされる抗原特異的scFvである。
【0090】
配置は、多量体であり得る(例えば、ダイアボディ又は多量体)。その多量体は、軽鎖及び重鎖の可変部分がダイアボディに交差対形成することによって形成される可能性が最も高い。その構築物のヒンジ部分には、完全欠失から、1つ目のシステインが維持されること、セリン置換ではなくプロリン置換であること、1つ目のシステインまで切断されることにまで及ぶ複数の選択肢があり得る。Fc部分を欠失させることができる。安定したかつ/又は二量体化する任意のタンパク質が、この目的にかない得る。Fcドメインのうちの1つだけ、例えば、ヒト免疫グロブリンのCH2ドメイン又はCH3ドメインを使用することができる。二量体化を改善するように改変されたヒト免疫グロブリンのヒンジ、CH2及びCH3領域を使用することもできる。免疫グロブリンのヒンジ部分だけを使用することもできる。CD8αの部分を使用することもできる。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記CAR核酸は、膜貫通ドメイン及び改変されたCD28細胞内シグナル伝達ドメインなどの、他の共刺激受容体をコードする配列を含む。他の共刺激受容体としては、CD28、CD27、OX-40(CD134)、DAP10、DAP12及び4-1BB(CD137)のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。CD3ζによって惹起される1次シグナルに加えて、ヒトCARに挿入されたヒト共刺激受容体によって提供されるさらなるシグナルが、NK細胞の完全な活性化にとって重要であり、インビボでの持続性及び養子免疫療法の治療の成功の改善を助け得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、抗原特異的CARは、抗原、例えば、正常細胞型上又は非罹患細胞型又は罹患細胞型上に発現される抗原に対する特異性を有するように構築される。したがって、上記CARは通常、その細胞外の部分に、1つ以上の抗原結合分子(例えば、1つ以上の抗原結合フラグメント、抗原結合ドメイン若しくは抗原結合部分)又は1つ以上の抗体可変ドメイン、及び/又は抗体分子を含む。いくつかの実施形態において、抗原特異的CARは、抗体分子の抗原結合部分(例えば、モノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)に由来する一本鎖抗体フラグメント(scFv))を含む。
【0093】
キメラ受容体をコードするオープンリーディングフレームの配列は、ゲノムDNA起源、cDNA起源から得ることができるか、又は合成することができるか(例えば、PCRを介して)、又はそれらの組み合わせであり得る。イントロンはmRNAを安定化すると見出されているので、ゲノムDNAのサイズ及びイントロンの数に応じて、cDNA又はそれらの組み合わせを使用することが望ましい場合がある。また、mRNAを安定化するために内在性又は外来性の非コード領域を使用することもさらに有益であり得る。
【0094】
上記キメラ構築物は、裸のDNAとして又は好適なベクターに入った状態で免疫細胞に導入され得ることが企図される。裸のDNAを用いたエレクトロポレーションによって細胞を安定的にトランスフェクトする方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号を参照のこと。裸のDNAとは、一般に、発現にとって適切な向きでプラスミド発現ベクターに含まれるキメラ受容体をコードするDNAのことを指す。
【0095】
あるいは、キメラ構築物を免疫細胞に導入するために、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はレンチウイルスベクター)を用いることができる。本開示の方法に従って使用するのに適したベクターは、免疫細胞において非複製性のベクターである。細胞内に維持されるそのウイルスのコピー数は、その細胞の生存能を維持するほど十分低いウイルスに基づくベクターが多数知られており、例えば、HIV、SV40、EBV、HSV又はBPVに基づくベクターが挙げられる。
【0096】
いくつかの態様において、抗原に特異的に結合する構成要素又は抗原特異的認識構成要素は、1つ以上の膜貫通ドメイン及び細胞内のシグナル伝達ドメインに連結される。いくつかの実施形態において、上記CARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含む。1つの実施形態において、そのCARにおけるドメインの1つと天然に会合する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの場合において、その膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるためにそのようなドメインが同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合するのを回避するように、選択されるか又はアミノ酸置換によって改変される。
【0097】
膜貫通ドメインは、いくつかの実施形態において、天然起源又は合成起源に由来する。起源が天然である場合、そのドメインは、いくつかの態様において、任意の膜結合型タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のα鎖、β鎖又はζ鎖、CD28、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS/CD278、GITR/CD357、NKG2D及びDAP分子に由来する(すなわち、それらの分子の膜貫通領域を少なくとも含む)膜貫通領域を含む。あるいは、膜貫通ドメインは、いくつかの実施形態において、合成の膜貫通ドメインである。いくつかの態様において、合成の膜貫通ドメインは、ロイシン及びバリンなどの疎水性残基を主に含む。いくつかの態様では、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが、合成の膜貫通ドメインの各末端に見られる。
【0098】
ある特定の実施形態において、免疫細胞、例えばNK細胞を遺伝的に改変するための本明細書中に開示されるプラットフォーム技術としては、(i)エレクトロポレーションデバイス(例えば、ヌクレオフェクター)を用いた非ウイルス遺伝子導入、(ii)エンドドメイン(例えば、CD28/CD3-ζ、CD137/CD3-ζ又は他の組み合わせ)を介してシグナル伝達するCAR、(iii)長さが不定の細胞外ドメインであってCD70認識ドメインを細胞表面に接続する細胞外ドメインを有するCAR、及びいくつかの場合では、(iv)CAR免疫細胞を頑強かつ数値的に拡大することができる、K562に由来する人工抗原提示細胞(aAPC)(Singh et al.,2008;Singh et al.,2011)が挙げられる。
【0099】
(B.T細胞受容体(TCR))
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体は、天然に存在するT細胞からクローニングされた組換えTCR及び/又はTCRを含む。「T細胞受容体」又は「TCR」は可変α鎖及びβ鎖(それぞれ、TCRα及びTCRβとしても知られる)又は可変γ鎖及びδ鎖(それぞれ、TCRγ及びTCRδとしても知られる)を含み、主要組織適合複合体(MHC)受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合することができる分子を指す。いくつかの実施形態では、TCRはαβ型である。
【0100】
典型的には、αβ型及びγδ型で存在するTCRは、一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は、解剖学的位置又は機能が異なる場合がある。TCRは、細胞の表面上に、又は可溶性形態で見出すことができる。一般に、TCRは、T細胞(又はTリンパ球)の表面に見出され、ここで、TCRは一般に、MHC分子に結合した抗原を認識する役割を果たす。いくつかの実施形態では、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメイン及び/又は短い細胞質尾部を含むことができる(例えば、Janeway et al、1997を参照されたい)。例えば、いくつかの態様では、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、及びC末端の短い細胞質尾部を有することができる。いくつかの実施形態では、TCRがシグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と関連する。特に明記しない限り、「TCR」という用語は、その機能的TCR断片を包含すると理解されるべきである。この用語は、αβ型又はγδ型のTCRを含む、インタクト又は完全長のTCRも包含する。
【0101】
したがって、本明細書の目的のために、TCRへの言及は、MHC分子中に結合した特異的抗原性ペプチド、すなわちMHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合部分などの任意のTCR又は機能的断片を含む。互換的に使用され得るTCRの「抗原結合部分」又は「抗原結合フラグメント」はTCRの構造ドメインの一部を含むが、完全長TCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)に結合する分子を指す。いくつかの場合において、抗原結合部分は、TCRの可変ドメイン、例えば、TCRの可変α鎖及び可変β鎖を含むが、これは、特異的MHC-ペプチド複合体への結合のための結合部位を形成するのに十分であり、例えば、一般に、各鎖が3つの相補性決定領域を含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、TCR鎖の可変ドメインは、会合して、ループ、又は免疫グロブリンに類似する相補性決定領域(CDR)を形成し、TCR分子の結合部位を形成することによって抗原認識を付与し、ペプチド特異性を決定する。典型的には、免疫グロブリンと同様に、CDRはフレームワーク領域(FR)によって分離されている(例えば、Jores et al、1990; Chothia et al、1988; Lefranc et al、2003参照)。いくつかの実施形態において、CDR3は、プロセシングされた抗原の認識に関与する主要なCDRであるが、α鎖のCDR1も抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されており、一方β鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2はMHC分子を認識すると考えられている。いくつかの実施形態では、β鎖の可変領域は、さらなる超可変性(HV4)領域を含むことができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、TCR鎖は定常ドメインを含む。例えば、免疫グロブリンのように、TCR鎖の細胞外部分(例えば、a鎖、β鎖)は2つの免疫グロブリンドメイン、即ちN末端に可変ドメイン(例えば、V又はVp;典型的にはKabat et al「Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5thed.」に基づくKabatのナンバリングに基づくアミノ酸1~116番)、及び、細胞膜に近接する1つの定常ドメイン(例えば、典型的にはKabat、に基づくアミノ酸117~259番であるa鎖定常ドメイン又はC、典型的にはKabatに基づくアミノ酸117~295であるβ鎖定常ドメイン又はCp)を含んでもよい。例えば、場合によっては、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインと、CDRを含有する2つの膜遠位可変ドメインとを含有する。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、2つの鎖の間に連結を形成する短い連結配列を含む。いくつかの実施形態では、TCRは、TCRが定常ドメイン中に2つのジスルフィド結合を含むように、α鎖及びβ鎖のそれぞれに追加のシステイン残基を有してもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、TCR鎖は膜貫通ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは正に荷電している。いくつかの場合において、TCR鎖は、細胞質尾部を含む。いくつかの場合において、この構造は、TCRがCD3のような他の分子と会合することを可能にする。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し、CD3シグナル伝達機構又は複合体のインバリアントサブユニットと会合することができる。
【0105】
一般に、CD3は、哺乳動物では3つの異なる鎖(γ、δ、及びε)とζ鎖においてを有し得るマルチタンパク質複合体である。例えば、哺乳動物において、複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、及びCD3ζ鎖のホモ二量体を含み得る。CD3γ、CD3δ、及びCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連する細胞表面タンパク質である。CD3γ、CD3δ、及びCD3ε鎖の膜貫通領域は負に荷電しており、これは、これらの鎖が正に荷電したT細胞受容体鎖と会合することを可能にする特徴である。CD3γ、CD3δ、及びCD3ε鎖の細胞質尾部はそれぞれ、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMとして知られる1つの保存されたモチーフを含むが、各CD3ζ鎖には3つ存在する。一般に、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能に関与する。これらのアクセサリー分子は負に帯電した膜貫通領域を有し、TCRから細胞へのシグナルの伝播に役割を果たす。CD3鎖及びζ鎖はTCRとともに、T細胞受容体複合体として知られるものを形成する。
【0106】
いくつかの実施形態では、TCRが2つの鎖α及びβ(又は場合によりγ及びδ)のヘテロ二量体であってもよく、又は単鎖TCR構築物であってもよい。いくつかの実施形態では、TCRがジスルフィド結合又はジスルフィド結合などによって連結された2つの別々の鎖(α及びβ鎖又はγ及びδ鎖)を含有するヘテロ二量体である。いくつかの実施形態では、標的抗原(例えば、癌抗原)に対するTCRが同定され、細胞に導入される。いくつかの実施形態では、TCRをコードする核酸は、公的に利用可能なTCR DNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの様々な供給源から得ることができる。いくつかの態様において、TCRは生物学的供給源から、例えば、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)か、T細胞ハイブリドーマ又は他の公的に利用可能な供給源などから得られる。いくつかの実施形態では、T細胞がインビボで単離された細胞から得ることができる。いくつかの実施形態では、高親和性T細胞クローンを患者から単離し、TCRを単離することができる。いくつかの実施形態では、T細胞が培養T細胞ハイブリドーマ又はクローンであり得る。いくつかの態様において、標的抗原のためのTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、又はHLA)を用いて操作されたトランスジェニックマウスにおいて作製されている。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst et al.,2009及びCohen et al.,2005を参照されたい)。いくつかの実施形態では、標的抗原に対するTCRを単離するためにファージディスプレイが用いられる(例えば、Varela-Rohenaら、2008年及びLi、2005年を参照されたい)。いくつかの実施形態では、TCR又はその抗原結合部分は、TCRの配列の知識により合成的に作製することができる。
【0107】
[IV.ベクター]
免疫エフェクター細胞が非内在性の操作された遺伝子産物又は外来的に提供された遺伝子産物、例えば、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含む場合、遺伝子産物は、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターを含む任意の適切なベクターによってレシピエントの免疫エフェクター細胞に送達され得る。ウイルスベクターの例としては、少なくともレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、又はアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。非ウイルスベクターの例としては、少なくともプラスミド、トランスポゾン、脂質、ナノ粒子などが挙げられる。
【0108】
免疫細胞が抗原標的化受容体をコードするベクターで形質導入され、また、別の遺伝子又は遺伝子、例えば、自殺遺伝子及び/又はサイトカイン及び/又は任意の治療用遺伝子産物の細胞への形質導入を必要とする場合において、抗原標的化受容体、自殺遺伝子、サイトカイン及び任意の治療用遺伝子は、同じベクター上に、又は同じベクターとともに含まれてもよいし、含まれなくてもよい。いくつかの場合において、抗原標的化CAR、自殺遺伝子、サイトカイン及び任意の治療用遺伝子は、同一のウイルスベクター分子などの同一のベクター分子から発現される。そのような場合、サイトカイン、任意の抗原標的化受容体、任意の自殺遺伝子、及び任意の治療用遺伝子の発現は、同じ調節エレメントによって調節されてもよいし、同じ調節エレメントによって調節されなくてもよい。サイトカイン、任意の抗原標的化CAR、任意の自殺遺伝子、及び任意の治療用遺伝子が同じベクター上に存在する場合において、それらは、別個のポリペプチドとして発現されてもよいし、別個のポリペプチドとして発現されなくてもよい。それらが別々のポリペプチドとして発現される場合、それらは、例えば、2Aエレメント又はIRESエレメントによってベクター上で分離され得る(又は両種が同じベクター上で1回又は2回以上使用されてもよい)。
【0109】
(A.一般的実施形態)
当業者は、本開示の抗原受容体の発現のための標準的な組換え技術(例えば、両方とも参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al、2001 and Ausubel et al、1996を参照されたい)によりベクターを構築することは十分に可能であろう。
【0110】
(1.調節エレメント)
本開示において有用なベクターに含まれる発現カセットは、特に(5’から3’方向に)、タンパク質コード配列に作動可能に連結された真核生物転写プロモーター、介在配列を含むスプライスシグナル、及び転写終結/ポリアデニル化配列を含む。真核細胞におけるタンパク質をコードする遺伝子の転写を制御するプロモーター及びエンハンサーは、複数の遺伝的エレメントから構成され得る。細胞機構は各エレメントによって運ばれる調節情報を集め、統合することができ、異なる遺伝子が区別され、しばしば複雑な転写調節のパターンを発生させることを可能とする。本開示の文脈において使用されるプロモーターは、例えば、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、及び組織特異的プロモーターを含む。ベクターが癌治療の生成のために利用される場合、プロモーターは、低酸素の条件下で有効であり得る。
【0111】
(2.プロモーター/エンハンサー)
本明細書で提供される発現構築物は、抗原受容体及び他のシストロン遺伝子産物の発現を駆動するためのプロモーターを含む。プロモーターは一般に、RNA合成のための開始部位を位置付けるように機能する配列を含む。この最もよく知られている例はTATAボックスであるが、TATAボックスを欠くいくつかのプロモーター、例えば、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子プロモーター及びSV40後期遺伝子プロモーターでは、開始部位自体に重なる別個のエレメントが開始部位を確定するのに役立つ。さらなるプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を調節する。典型的にはこれらは開始部位の上流の領域に位置するが、多くのプロモーターは開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが示されている。コード配列をプロモーターの「制御下に」置くために、選択されたプロモーターの「下流」(すなわち、3’側)に転写リーディングフレームの転写開始部位の5’末端を配置する。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0112】
プロモーターエレメント間の間隔は、多くの場合柔軟であり、そのため、プロモーター機能は、エレメントが反転されたり、又は相対的に移動しても保存される。tkプロモーターにおいて、例えば、プロモーターエレメント間の間隔は、活性が低下し始めることなく50bp離れるまで増加させることができる。プロモーターに依存して、個々のエレメントは、転写を活性化するために協同的に又は独立して機能することが可能と思われる。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列を指す「エンハンサー」と併せて使用されてもよく、又は使用されなくてもよい。
【0113】
プロモーターは、コードセグメント及び/又はエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得ることができるように、核酸配列と天然において関連するものであってもよい。そのようなプロモーターは、「内在性」と呼ぶことができる。同様に、エンハンサーは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置する核酸配列と天然において関連するものであってもよい。あるいはある種の利点がコード核酸セグメントを組換え又は異種(heterologous)プロモーターの制御下に配置することによって得られるが、異種プロモーターはその天然環境において核酸配列と通常は関連していないプロモーターを指す。組換えエンハンサー又は異種エンハンサーはまた、その天然環境において核酸配列と通常は関連していないエンハンサーを指す。そのようなプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、及び任意の他のウイルス又は原核細胞又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、並びに「天然に存在しない」、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメント及び/又は発現を変化させる変異を含む、プロモーター又はエンハンサーを含み得る。例えば、組換えDNA構築において最も一般的に使用されるプロモーターは、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース及びトリプトファン(trp-)プロモーター系を含む。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列を合成的に生成することに加えて、配列は、本明細書に開示される組成物に関連して、組換えクローニング及び/又はPCR(商標)を含む核酸増幅技術を使用して生成され得る。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの非核オルガネラ内の配列の転写及び/又は発現を指示する制御配列も同様に用い得ることが企図される。
【0114】
もちろん、発現のために選択された細胞小器官、細胞型、組織、器官、又は生物においてDNAセグメントの発現を効果的に指令するプロモーター及び/又はエンハンサーを使用することが重要である。分子生物学の当業者は、一般に、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサー及び細胞型の組み合わせの使用を知っている(例えば、Sambrook et al。1989、参照により本明細書に組み込まれる)。使用されるプロモーターは、構成的、組織特異的、誘導性、及び/又は組換えタンパク質及び/又はペプチドの大規模生産において有利であるような、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指向するための適切な条件下で有用であり得る。プロモーターは、異種又は内在性であり得る。
【0115】
さらに、任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(例えば、Eukaryotic Promoter Data Base EPDB、epd.isb-sib.ch/のワールドワイドウェブによる)も、発現を駆動するために使用され得る。T3、T7又はSP6細胞質発現系の使用は、別の可能な実施形態である。真核細胞は、送達複合体の一部として、又はさらなる遺伝子発現構築物として、適切な細菌ポリメラーゼが提供される場合は、特定の細菌プロモーターからの細胞質転写を支持することができる。
【0116】
プロモーターの非限定的な例としては、初期又は後期ウイルスプロモーター、例えば、SV40初期又は後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)初期プロモーター;真核細胞プロモーター、例えば、ベータアクチンプロモーター、GADPHプロモーター、メタロチオネインプロモーター;及び連結型応答エレメントプロモーター、例えば、サイクリックAMP応答エレメントプロモーター(cre)、血清応答エレメントプロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)及び最小TATAボックス付近の応答エレメントプロモーター(tre)が挙げられる。ヒト成長ホルモンプロモーター配列(例えば、GenBank(登録商標)のアクセッション番号X05244、ヌクレオチド283~341に記載のヒト成長ホルモン最小プロモーター)又はマウス乳房腫瘍プロモーター(ATCC、カタログ番号ATCC 45007から入手可能)を使用することも可能である。特定の実施形態では、プロモーターは、CMV IE、デクチン-1、デクチン-2、ヒトCD11c、F4/80、SM22、RSV、SV40、Ad MLP、β-アクチン、MHCクラスI又はMHCクラスIIプロモーターであるが、治療用遺伝子の発現を駆動するのに有用な任意の他のプロモーターは本開示の実施に適用可能である。
【0117】
特定の態様では、本開示の方法はまた、エンハンサー配列、すなわち、プロモーターの活性を増加させ、シスで、そしてそれらの配向にかかわらず、比較的長い距離(標的プロモーターから数キロベースまで)にわたってさえも作用する可能性を有する核酸配列に関する。しかし、エンハンサー機能は、必ずしもこのような長距離に限定されず、所与のプロモーターにごく近接して機能してもよい。
【0118】
(3.開始シグナルと連結発現)
本開示において提供される発現構築物においては、コード配列の効率的な翻訳のために特定の開始シグナルもまた使用され得る。これらのシグナルには、ATG開始コドン又は隣接配列が含まれる。ATG開始コドンを含む外来性翻訳制御シグナルを提供する必要があり得る。当業者であれば、これを決定し、必要なシグナルを提供することが容易に可能であろう。開始コドンはインサート全体の翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームと「インフレーム」でなければならないことは周知である。外来性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然又は合成のいずれかであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメントを含めることによって増強され得る。
【0119】
特定の実施形態では、内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用が、多重遺伝子又はポリシストロニックメッセージを作製するために使用される。IRESエレメントは、5′メチル化Cap依存性翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回し、内在部位で翻訳を開始することができる。ピコルナウイルスファミリーの2つのメンバー(ポリオ及び脳心筋炎)からのIRESエレメント、ならびに哺乳動物メッセージからのIRESが記載されている。IRESエレメントは異種オープンリーディングフレームと連結させることができる。複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写させることができ、各々はIRESによって分離され、ポリシストロニックメッセージを生じる。IRESエレメントによって、各オープンリーディングフレームはリボソームにアクセス可能であり、効率的な翻訳が可能である。複数の遺伝子を単一のプロモーター/エンハンサーを用いて効率的に発現させて、単一のメッセージを転写することができる。
【0120】
本明細書の他の箇所で詳述されるように、特定の2A配列エレメントが、本開示で提供される構築物中の遺伝子の連結又は共発現を作製するために使用され得る。例えば、オープンリーディングフレームを連結して単一のシストロンを形成することによって遺伝子を共発現させるのに、切断配列を使用することができる。例示的な切断配列は、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)又はF2A(口蹄疫ウイルス2A)又は「2A様」配列(例えば、Thosea asignaウイルス2A;T2A)又はブタテッショウウイルス(teschovirus)-1(P2A)である。特定の実施形態では、単一のベクターにおいて複数の2A配列は非同一であるが、代替の実施形態では同一のベクターが2つ以上の同じ2A配列を利用する。2A配列の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0065779号に提供されている。
【0121】
(4.複製起点)
宿主細胞中でベクターを増殖させるために、それは、複製が開始される特定の核酸配列である、1つ以上の複製起点(しばしば「ori」と呼ばれる)、例えば、上記のようなEBVのoriPに対応する核酸配列、又はプログラミングにおいて類似の又は上昇した機能を有する遺伝子操作されたoriPを含み得る。あるいは、上記のような他の染色体外複製ウイルスの複製起点又は自律複製配列(ARS)を用いることができる。
【0122】
(5.選択マーカーとスクリーニング可能なマーカー)
いくつかの実施形態では、本開示のCD70標的化受容体構築物を含むNK細胞は、発現ベクターにマーカーを含めることによってインビトロ又はインビボで同定され得る。そのようなマーカーは、細胞に同定可能な変化を与えるため、発現ベクターを含有する細胞を容易に同定することができる。一般に、選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するマーカーである。陽性選択マーカーはマーカーの存在がその選択を可能にするものであり、一方、陰性選択マーカーは、その存在がその選択を妨げるものである。陽性選択マーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
【0123】
通常、薬物選択マーカーを含めることは形質転換体のクローニング及び同定に役立ち、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン及びヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子は、有用な選択マーカーである。条件の実施に基づいて形質転換体の識別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、測色分析を基礎とするGFPなどのスクリーニング可能なマーカーを含む他のタイプのマーカーも企図される。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)又はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などのネガティブ選択マーカーとしてスクリーニング可能な酵素を利用してもよい。当業者はまた、おそらくFACS分析と併せて、免疫学的マーカーを使用する方法を知っているであろう。使用されるマーカーは遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現され得る限り、重要であるとは考えられない。選択及びスクリーニング可能なマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
【0124】
(B.マルチシストロン性ベクター)
特定の実施形態では、サイトカイン、任意の抗原標的化受容体、任意の自殺遺伝子、及び/又は任意の治療用遺伝子は、マルチシストロン性ベクターから発現される(本明細書で使用される用語「シストロン」は、遺伝子産物が産生され得る核酸配列を指す)。特定の実施形態では、マルチシストロン性ベクターが少なくとも1つのサイトカイン、自殺遺伝子、及び/又は操作された受容体、例えば、T細胞受容体及び/又は追加の非抗原標的化CARをコードする。いくつかの場合において、マルチシストロン性ベクターは、少なくとも1つの抗原標的化CAR、少なくとも1つの自殺遺伝子、及び少なくとも1つのサイトカインをコードする。サイトカインは、ヒト又はマウス又は任意の種などの特定のタイプのサイトカインであってもよい。特定の場合において、サイトカインは、IL-7、IL-12、IL-2、IL-18、及び/又はIL-21である。
【0125】
特定の実施形態では、本開示は、実質的に同一のレベルで複数のシストロンを発現する能力を有するポリシストロン性ベクターを利用する、融通性があるモジュラーシステム(本明細書で使用される「モジュラー」という用語はシストロン全体又はシストロンの構成要素の除去及び置換などによって、それぞれシストロン全体又はシストロンの構成要素の交換を可能にするシストロン又はシストロンの構成要素を指す)を提供する。このシステムは、複数の遺伝子のコンビナトリアル発現(過剰発現を含む)を可能にする細胞操作に使用され得る。特定の実施形態では、ベクターによって発現される1つ以上の遺伝子は、1つ、2つ、又はそれ以上の抗原受容体を含む。複数の遺伝子は、CAR、TCR、サイトカイン、ケモカイン、ホーミング受容体、CRISPR/Cas9媒介遺伝子変異、デコイ受容体、サイトカイン受容体、キメラサイトカイン受容体などを含み得るが、これらに限定されない。ベクターはさらに、(1)1つ以上のレポーター、例えば、細胞アッセイ及び動物イメージングのための蛍光又は酵素レポーター;(2)1つ以上のサイトカイン又は他のシグナル伝達分子;及び/又は(3)自殺遺伝子を含み得る。
【0126】
特定の場合において、ベクターは、2A切断部位などの任意の種類の切断部位によって分離された少なくとも4個のシストロンを含み得る。ベクターは、pUC19骨格にpsiパッケージング配列を有する3’及び5’LTRを含むモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV又はMMLV)ベースのものであってもよく、そうでなくてもよい。ベクターは、3つ以上の2A切断部位及び遺伝子スワッピングのための複数のORFを有する4つ以上のシストロンを含み得る。システムはサブクローニングを介した迅速な組み込みのために制限部位に隣接する複数の遺伝子(7以上)のコンビナトリアル過剰発現を可能にし、このシステムはまた、いくつかの実施形態において、少なくとも3つの2A自己切断部位を含む。したがって、システムは、複数のCAR、TCR、シグナル伝達分子、サイトカイン、サイトカイン受容体、及び/又はホーミング受容体の発現を可能にする。このシステムはまた、レンチウイルス、アデノウイルスAAV、ならびに非ウイルスプラスミドを含むがこれらに限定されない、他のウイルスベクター及び非ウイルスベクターに適用され得る。
【0127】
本システムのモジュラー特性はまた、ポリシストロン性発現ベクター中の4つのシストロンのそれぞれへの遺伝子の効率的なサブクローニング、及び、迅速な試験などのための遺伝子のスワッピングを可能にする。ポリシストロン性発現ベクターに戦略的に配置された制限部位により、効率的に遺伝子のスワッピングを行うことができる。
【0128】
本開示の実施形態は、ポリシストロン性ベクターを利用するシステムを包含し、ここで、例えば、1つ以上のシストロン(又は1つ以上のシストロンの構成要素)の除去及び置換を可能にすることによって、例えば、ベクターのモジュラー的な使用を容易にするためにその同一性及び位置が特異的に選択される1つ以上の制限酵素部位を利用することなどによって、ベクターの少なくとも一部がモジュラーである。ベクターはまた、複数のシストロンが単一のポリペプチドに翻訳され、別々のポリペプチドにプロセシングされる実施形態を有し、それにより、ベクターが実質的に等モル濃度で別々の遺伝子産物を発現する利点を付与する。
【0129】
本開示のベクターは、ベクターの1つ以上のシストロンを変化させることができるように、及び/又は1つ以上の特定のシストロンの1つ以上の構成要素を変化させることができるようモジュール化された構成である。ベクターは、1つ以上のシストロンの末端に隣接する、及び/又は特定のシストロンの1つ以上の構成要素の末端に隣接する、ユニークな制限酵素部位を利用するように設計され得る。
【0130】
本開示の実施形態は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つのシストロンを含むポリシストロン性ベクターを含み、各シストロンは1つ以上の制限酵素部位に隣接し、少なくとも1つのシストロンが少なくとも1つの抗原受容体をコードする。いくつかの場合において、シストロンのうちの2つ、3つ、4つ、又はそれ以上が単一のポリペプチドに翻訳され、別個のポリペプチドに切断されるが、他の場合において、シストロンのうちの複数が単一のポリペプチドに翻訳され、別個のポリペプチドに切断される。ベクター上の隣接シストロンは、2A自己切断部位などの自己切断部位によって分離され得る。いくつかの場合において、シストロンのそれぞれは、ベクターから別々のポリペプチドを発現する。特定の場合には、ベクター上の隣接するシストロンがIRESエレメントによって分離される。
【0131】
ある特定の実施形態では、本開示は、例えば、1つ、2つ、又はそれ以上の抗原受容体を含み得る複数のシストロンの過剰発現を含む、コンビナトリアル発現を可能にする細胞工学のためのシステムを提供する。特定の実施形態では、本明細書に記載のポリシストロン性ベクターの使用は、ベクターが同じmRNAから等モルレベルの複数の遺伝子産物を産生することを可能にする。複数の遺伝子はサイトカイン、CAR、TCR、ケモカイン、ホーミング受容体、CRISPR/Cas9媒介遺伝子変異、デコイ受容体、サイトカイン受容体、キメラサイトカイン受容体などを含み得るが、これらに限定されない。ベクターは、細胞アッセイ及び動物イメージングのためなどの、1つ以上の蛍光レポーター又は酵素レポーターをさらに含み得る。ベクターはまた、ベクターを保有する細胞がもはや必要でなくなった場合、又はベクターが提供された宿主に対して有害になった場合に、ベクターを保有する細胞を停止させるための自殺遺伝子産物を含んでもよい。
【0132】
本開示の特定の実施形態では、ベクター上のシストロンの少なくとも1つは、2つ以上のモジュラー構成要素を含み、シストロン内のモジュラー構成要素のそれぞれが、1つ以上の制限酵素部位に隣接している。シストロンは、例えば、3つ、4つ、又は5つのモジュラー構成要素を含むことができる。少なくともいくつかの場合において、シストロンは、対応するモジュラー構成要素によってコードされる受容体の異なる部分を有する抗原受容体をコードする。シストロンの第1のモジュラー構成要素は、受容体の抗原結合ドメインをコードし得る。さらに、シストロンの第2のモジュラー構成要素は、受容体のヒンジ領域をコードし得る。さらに、シストロンの第3のモジュラー構成要素は、受容体の膜貫通ドメインをコードし得る。加えて、シストロンの第4のモジュラー構成要素は、第1の共刺激ドメインをコードし得る。さらに、シストロンの第5のモジュラー構成要素は、第2の共刺激ドメインをコードし得る。さらに、シストロンの第6のモジュラー構成要素は、シグナル伝達ドメインをコードし得る。
【0133】
本開示の特定の態様では、ベクター上の2つの異なるシストロンは、それぞれ、非同一の抗原受容体をコードする。両方の抗原受容体は、2つ以上のモジュラー構成要素を含む別個のシストロンを含む、2つ以上のモジュラー構成要素を含むシストロンによってコードされ得る。抗原受容体は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)及び/又はT細胞受容体(TCR)であってもよい。
【0134】
特定の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクター)又は非ウイルスベクターである。ベクターは、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)5’LTR、3’LTR、及び/又はpsiパッケージングエレメントを含み得る。特定の場合において、psiパッケージングは、5’LTRと抗原受容体コード配列との間に組み込まれる。ベクターは、pUC19配列を含んでも含まなくてもよい。ベクターのいくつかの態様において、少なくとも1つのシストロンは、サイトカイン(例えば、インターロイキン15(IL-15)、IL-7、IL-21、又はIL-2)、ケモカイン受容体、サイトカイン受容体、及び/又はホーミング受容体をコードする。
【0135】
2A切断部位がベクターにおいて利用される場合、2A切断部位は、P2A、T2A、E2A及び/又はF2A部位を含み得る。
【0136】
CD70標的化CARをコードする1つのシストロンに加えて、ベクターの任意のシストロンは、自殺遺伝子を含み得る。ベクターの任意のシストロンは、レポーター遺伝子をコードし得る。特定の実施形態では、第1のシストロンが自殺遺伝子をコードし、第2のシストロンがCD70標的化CARをコードし、第3のシストロンがレポーター遺伝子をコードし、第4のシストロンがサイトカインをコードする。特定の実施形態では、第1のシストロンが自殺遺伝子をコードし、第2のシストロンがCD70標的化CARをコードし、第3のシストロンが第2のCAR又は別の抗原受容体をコードし、第4のシストロンがサイトカインをコードする。特定の実施形態では、CD70標的化CAR及び/又は別の受容体の異なる部分が対応するモジュラー構成要素によってコードされ、第2のシストロンの第1の構成要素が抗原結合ドメインをコードし、第2の構成要素がヒンジ及び/又は膜貫通ドメインをコードし、第3の構成要素が共刺激ドメインをコードし、第4の構成要素がシグナル伝達ドメインをコードする。
【0137】
特定の実施形態において、シストロンの少なくとも1つは、自殺遺伝子をコードする。いくつかの実施形態では、シストロンの少なくとも1つは、サイトカインをコードする。特定の実施形態において、少なくとも1つのシストロンは、抗原標的化CARをコードする。シストロンは、レポーター遺伝子をコードしてもしなくてもよい。特定の実施形態において、少なくとも2つのシストロンは、2つの異なる抗原受容体(例えば、CAR及び/又はTCR)をコードする。シストロンは、レポーター遺伝子をコードしてもしなくてもよい。
【0138】
目的の遺伝的カーゴの特定の構成において、単一のベクターは、抗原標的化CARをコードするシストロン、及び抗原標的化受容体と同一ではない第2の抗原受容体をコードするシストロンを含み得る。特定の実施形態では、第1の抗原受容体は抗原標的化CARをコードし、第2の抗原受容体はTCRをコードし、逆もまた同様である。特定の実施形態では、抗原標的化CAR及び第2の抗原受容体をそれぞれコードする別個のシストロンを含むベクターはまた、サイトカイン又はケモカインをコードする第3のシストロンと、自殺遺伝子をコードする第4のシストロンとを含む。しかし、自殺遺伝子及び/又はサイトカイン(又はケモカイン)は、ベクター上に存在しなくてもよい。
【0139】
特定の実施形態では、少なくとも1つのシストロンがモジュラーである複数の構成要素自体を含む。例えば、1つのシストロンは、複数の部分を有する抗原受容体などのマルチコンポーネント遺伝子産物をコードし得;特定の場合、抗原受容体は単一のシストロンからコードされ、それによって、最終的に単一のポリペプチドを産生する。複数の構成要素をコードするシストロンは、複数の構成要素が1、2、3、4、5、又はそれ以上の制限酵素消化部位によって分離されていてもよく、1、2、3、4、5又はそれ以上の制限酵素部位は、シストロンを含むベクターにおいて他にないものであってもよい。特定の実施形態では、複数の構成要素を有するシストロンは、それぞれ固有の機能を受容体に帰属させる複数の対応する部分を有する抗原受容体をコードする。特定の実施形態では、マルチコンポーネントシストロンの構成要素のそれぞれ又は大部分は、ベクターに固有の1つ以上の制限酵素消化部位によって分離され、所望の場合、別々の構成要素の相互交換可能性をもたらす。
【0140】
特定の実施形態では、マルチコンポーネントシストロンの各構成要素は、抗原標的化CARなどのコードされた抗原受容体の異なる部分に対応する。例示的な実施形態では、構成要素1が受容体の抗原結合ドメインをコードし得;構成要素2が受容体のヒンジドメインをコードし得;構成要素3が受容体の膜貫通ドメインをコードし得;構成要素4が受容体の共刺激ドメインをコードし得、構成要素5が受容体のシグナル伝達ドメインをコードし得る。特定の実施形態では、抗原標的化CARは、受容体内の共刺激ドメインの相互交換可能性のために、ユニークな制限酵素消化部位によってそれぞれ分離された1つ以上の共刺激ドメインを含み得る。
【0141】
特定の実施形態では、隣接するシストロンが2A切断部位によって分離される、4つの別個のシストロンを有するポリシストロン性ベクターが存在するが、特定の実施形態では、2A切断部位の代わりに、シストロンから別個のポリペプチドを直接的又は間接的に産生させる要素(IRES配列など)が存在する。例えば、4つの別個のシストロンは3つの2Aペプチド切断部位によって分離され得、各シストロンはシストロンの各末端に隣接する制限部位(X、Xなど)を有し、標準的な組換え技術を使用する際の別のシストロン又は他のタイプの配列などの特定のシストロンの相互交換可能性をもたらす。特定の実施形態では、シストロンの各々に隣接する制限酵素部位は、組換えを容易にするためにベクターにおいてユニークなものであるが、代替の実施形態では、制限酵素部位はベクターにおいてユニークなものではない。
【0142】
特定の実施形態では、ベクターは、特定のシストロンの複数の構成要素内を含む特定のシストロン内での相互交換可能性を可能にすることによって、特有の第2のレベルのモジュール性を提供する。特定のシストロンの複数の構成要素は、シストロン内の1つ以上の構成要素の相互交換を可能にするために、ベクターにユニークなものを含む、1つ以上の制限酵素部位によって分離され得る。一例として、シストロン2はシストロン当たり2、3、4、5、6、又はそれ以上の構成要素があってもよいが、5つの別個の構成要素を含んでもよい。例えば、ベクターは各々が独特の酵素制限部位X、X10、X11、X12、X13、及びX14によって分離された5つの構成要素を有するシストロン2を含み得、異なる構成要素1、2、3、4、及び/又は5を交換するための標準的な組換えを可能にすることができる。いくつかの場合において、異なる構成要素間に複数の制限酵素部位が存在し得(これはユニークであるが、あるいは1つ以上はユニークではない)、複数の制限酵素部位間に配列が存在し得る(しかし、代替的には、存在し得ない)。特定の実施形態では、シストロンによってコードされるすべての構成要素が相互交換可能であることを目的として設計される。特定の場合には、シストロンの1つ以上の構成要素は交換可能であるように設計されるが、シストロンの1つ以上の他の構成要素は交換可能であるように設計されなくてもよい。
【0143】
特定の実施形態では、シストロンは、複数の構成要素を有する抗原標的化CAR分子をコードする。例えば、シストロン2は、構成要素1、構成要素2、構成要素3などで表されるその別個の構成要素を有する抗原標的化CAR分子をコードする配列から構成され得る。CAR分子は、2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上の交換可能な構成要素を含み得る。具体的には構成要素1はscFvをコードし、構成要素2はヒンジをコードし、構成要素3は膜貫通ドメインをコードし、構成要素4は共刺激ドメインをコードし(ただし、交換のための制限部位に隣接する第2以上の共刺激ドメインをコードする構成要素4′も存在し得る)、構成要素5はシグナル伝達ドメインをコードする。特定の例において、構成要素1は、scFvをコードし;構成要素2がIgG1ヒンジ及び/又は膜貫通ドメインをコードし;構成要素3がCD28をコードし;構成要素4がCD3ζをコードする。
【0144】
当業者は、ベクターの設計において、様々なシストロン及び構成要素が必要なときにインフレームで保持されるように構成されなければならないことを認識する。
【0145】
特定の例において、シストロン1が自殺遺伝子をコードし;シストロン2が抗原標的化CARをコードし;シストロン3がレポーター遺伝子をコードし;シストロン4がサイトカインをコードし;シストロン2の構成要素1がscFvをコードし;シストロン2の構成要素2がIgG1ヒンジをコードし;シストロン2の構成要素3がCD28をコードし;そして構成要素4がCD3ζをコードする。
【0146】
制限酵素部位は任意の種類であってもよく、その認識部位中の任意の数の塩基、例えば、4~8塩基を含んでもよく;認識部位中の塩基の数は、少なくとも4、5、6、7、8、又はそれ以上であってもよい。切断されると、その部位は、平滑末端又は付着末端を生成し得る。制限酵素は、例えば、I型、II型、III型又はIV型であってもよい。制限酵素部位は、Integrated relational Enzyme database(IntEnz)又はBRENDA(The Comprehensive Enzyme Information System)などの利用可能なデータベースから取得することができる。
【0147】
例示的ベクターは、円形であってよく、慣例により、位置1(円の頂点の12時の位置、シーケンスの残りの部分は時計回り方向)が5’LTRの開始点に設定される。
【0148】
自己切断型2Aペプチドが利用される実施形態では、2Aペプチドは、真核細胞における翻訳中のポリペプチドの「切断」を媒介する18~22アミノ酸(aa)長のウイルスオリゴペプチドであってもよい。「2A」という名称はウイルスゲノムの特定の領域を指し、異なるウイルス2Aは一般に、それらが由来したウイルスにちなんで命名されている。最初に発見された2AはF2A(口蹄疫ウイルス)であり、その後E2A(ウマ鼻炎Aウイルス)、P2A(ブタテッショウウイルス-1 2A)、及びT2A(thosea asignaウイルス2A)も同定された。2Aによる「自己切断」の機構は、リボソームが2AのC末端でのグリシル-プロリルペプチド結合の形成をスキップすることであることが発見された。
【0149】
特定の場合において、ベクターは、γ-レトロウイルストランスファーベクターであってもよい。レトロウイルストランスファーベクターは、HindIIIとEcoRI制限酵素サイト間のpUC19遺伝子(2.63kb)のようなプラスミドに基づくバックボーンを含むことができる。バックボーンは、5’LTR、psiパッケージング配列、及び3’LTRを含むモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)由来のウイルス成分を保有し得る。LTRは、レトロウイルスプロウイルスのいずれかの側に見出される長い末端反復であり、トランスファーベクターの場合、目的の遺伝子カーゴ(例えば、抗原標的化CAR及び関連構成要素)を囲む。ヌクレオカプシドによるパッケージングの標的部位であるpsiパッケージング配列もまた、5’LTRとCARコード配列との間に挟まれてシスで組み込まれる。したがって、トランスファーベクターの一例の基本構造は、pUC19配列-5’LTR-psiパッケージング配列-目的の遺伝的カーゴ-3’LTR-pUC19配列のように構成することができる。このシステムはまた、レンチウイルス、アデノウイルスAAV、ならびに非ウイルスプラスミドを含むがこれらに限定されない、他のウイルスベクター及び非ウイルスベクターに適用され得る。
【0150】
[VII.医薬組成物]
本明細書に包含される免疫エフェクター細胞及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物及び製剤が、本明細書に提供される。細胞は、個体に移入するのに適した培地に含まれてもよく、個体に移入する前に凍結保存などの保存に適した個体及び/又は培地に移入するのに適した培地に含まれてもよい。
【0151】
本明細書に記載の医薬組成物及び製剤は、所望の程度の純度を有する活性成分(細胞など)を、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 22 nd edition、2012)と混合することによって調製することができる。薬学的に許容される担体は、使用される投与量及び濃度において一般にレシピエントに対して無毒性であり、限定はされないが、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウム等の塩を形成する対イオン;金属複合体(例えば、Znタンパク質複合体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤などを含む。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、バクスターインターナショナル社)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの間質薬物分散剤(interstitial drug dispersion agent)をさらに含む。rHuPH20を含む特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び第2006/0104968号に記載されている。ある態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼのような1つ以上の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0152】
[VIII.併用療法]
ある特定の実施形態において、本実施形態の組成物及び方法には、少なくとも1つの追加の療法と組み合わされる免疫細胞集団(NK細胞集団を含む)に関する。追加の治療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘤摘出術及び乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、ホルモン療法、又は前述の組み合わせである場合がある。さらなる治療法はアジュバント療法又はネオアジュバント療法の形態である場合がある。
【0153】
いくつかの実施形態において、さらなる治療法は小分子酵素阻害剤(1つ以上)又は転移抑制剤(1つ以上)の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は、副作用制限剤(例えば、処置の副作用の発生及び/又は重篤度を軽減するために意図される薬剤(例えば、制吐剤など)など)の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は放射線療法である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は手術である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は放射線療法と手術との組み合わせである。いくつかの実施形態において、さらなる治療法はガンマ線照射である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は、PBK/AKT/mTOR経路を標的とする治療、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/又は化学予防剤(1つ以上)である。さらなる治療法は、この技術分野において知られている化学療法剤の1つ以上であってもよい。
【0154】
免疫細胞療法が、さらなる癌療法(例えば、免疫チェックポイント療法など)の前に、その期間中に、その後で、又はそれに対して様々な組み合わせで施される場合がある。施すことが、同時から、数分にまで、数日にまで、数週間にまで及ぶ間隔で行われる場合がある。免疫細胞療法が追加の治療剤とは別個に患者に与えられる実施形態においては一般に、かなりの期間がそれぞれの送達時との間で経過せず、その結果、2つの化合物が依然として、好適な併用効果を患者に及ぼされることが保証されるであろう。そのような場合、患者には抗体療法及び抗癌療法が互いに約12時間~24時間又は72時間の範囲内で、より具体的には互いに約6時間~12時間の範囲内で与えられ得ることが意図される。いくつかの状況では、処置のための期間を著しく延長することが望ましい場合があり、この場合、数日(2、3、4、5、6又は7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7又は8)までがそれぞれの投与の間において経過する。
【0155】
様々な組み合わせを用いることができる。以下の例では、免疫細胞療法は「A」、抗癌療法は「B」とする:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A
A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B
A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B
A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A。
【0156】
本実施形態の任意の化合物又は細胞療法を患者に施すことは、因子の毒性がもし存在するならばそれを考慮したうえで、そのような化合物の投与のための一般的プロトコルに従うこととなる。したがって、いくつかの実施形態において、併用療法に起因し得る毒性をモニタリングする工程が存在する。
【0157】
(A.化学療法)
広範囲の様々な化学療法剤が本実施形態に従って使用される場合がある。用語「化学療法」は、癌を処置するために薬物を使用することを示す。「化学療法剤」が、癌の処置において投与される化合物又は組成物を含意するように使用される。これらの薬剤又は薬物は、細胞内におけるそれらの活性様式によって、例えば、それらが細胞周期に影響を与えるかどうか、及びどの段階で影響を与えるかによって分類される。代替において、薬剤が、DNAを直接に架橋し得るか、DNA内へのインターカレーションを生じさせ得るか、又は核酸合成に影響を与えることによって染色体異常及び有糸分裂異常を誘導し得るかに基づいて特徴づけられる場合がある。
【0158】
化学療法剤の例には、下記のものが含まれる:アルキル化剤(例えば、チオテパ及びシクロホスファミドなど);アルキルスルホナート(例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなど);アジリジン系化合物(例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)及びウレドパ(uredopa)など);エチレンイミン系化合物及びメチルメラミン系化合物(methylamelamines)(例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチイレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチロールメラミンなど));アセトゲニン類(とりわけ、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン類(例として、合成類似体のトポテカン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(例として、その合成類似体であるアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例として、合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin)類;スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド及びウラシルマスタードなど);ニトロソウレア系化合物(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチンなど);抗生物質、例えば、エンジイン系抗生物質(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンガンマII及びカリケアミシンオメガII)など);ジネミシン(例えば、ジネミシンA);ビスホスホネート系化合物、例えば、クロドロナートなど;エスペラミシン類;同様にまた、ネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン系抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オートラルニシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(例として、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン類(例えば、マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラルニシン(nogalarnycin)、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン及びゾルビシン;代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)など);葉酸類似体(例えば、デノプテリン、プテロプテリン及びトリメトレキサートなど);プリン類似体(例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン及びチオグアニンなど);ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン及びフロクスウリジンなど);アンドロゲン類(例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピチオスタン及びテストラクトンなど);抗副腎剤(anti-adrenal)(例えば、ミトタン及びトリロスタンなど);葉酸補充剤(例えば、フロリン酸(frolinic acid)など);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン類;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(例えば、メイタンシン及びアンサミトシン類など);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKポリサッカリド複合体;ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(とりわけ、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル;ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位複合体(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなど);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロナート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド(例えば、レチノイン酸など);カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナム(transplatinum)、並びに上記のいずれかの医薬的に許容され得る塩、酸又は誘導体。
【0159】
(B.放射線療法)
DNA損傷を引き起こし、広範囲に使用されている他の因子として、γ線、X線、及び/又は放射性同位体の腫瘍細胞への誘導送達として一般に知られているものが含まれる。他の形態のDNA損傷因子もまた意図される:例えば、マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号及び同第4,870,287号)、及びUV照射など。これらの因子のすべてが、DNAに関して、DNAの前駆体に関して、DNAの複製及び修復に関して、また、染色体の組み立て及び維持に関して広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が最も高い。X線についての適用量範囲は、長期間(3週間~4週間)にわたっての50レントゲン~200レントゲンの1日線量から、2000レントゲン~6000レントゲンの単回線量にまで及ぶ。放射性同位体についての適用量範囲は、放射性同位体の半減期、放射される放射線の強度及びタイプ、並びに腫瘍細胞による取り込みに依存して、多岐にわたる。
【0160】
(C.免疫療法)
当業者は、さらなる免疫療法が、本実施形態の方法との組み合わせで、又は本実施形態の方法との併用で使用され得ることを理解するであろう。癌処置との関連において、免疫療法剤は一般に、癌細胞を標的とし、破壊するための免疫エフェクター細胞及び免疫エフェクター分子の使用による。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))がそのような一例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面における何らかのマーカーについて特異的な抗体であってもよい。抗体は単独では治療のエフェクターとして役立つ場合があり、又は抗体は、他の細胞を動員して、実際に細胞殺傷に影響を与えることもある。抗体はまた、薬物又は毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲート化され、標的化剤として役立つ場合がある。代替において、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的又は間接的のどちらでも相互作用する表面分子を保持するリンパ球である場合がある。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が含まれる。
【0161】
抗体-薬物コンジュゲートが、癌治療剤の開発に対する画期的な取り組みとして現れている。癌は世界中で最大の死因の一つである。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞殺傷薬物に共有結合により連結されるモノクローナル抗体(MAb)を含む。このアプローチでは、MAbの、その抗原標的に対する高い特異性が、非常に強力な細胞毒性薬物と組み合わされ、これにより、抗原を高レベルで有する腫瘍細胞にペイロード(薬物)を送達する「武装」MAbがもたらされる。薬物の標的化された送達はまた、正常な組織におけるその曝露を最小限にし、これにより、毒性の低下及び治療指数の改善をもたらしている。FDAによる2つのADC薬物の承認により、すなわち、2011年におけるADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)及び2013年におけるKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシン又はT-DM1)の承認により、この取り組みが有効であることが証明された。現在では30を超えるADC薬物候補が、癌処置のための臨床試験の様々な段階にある(Leal他、2014)。抗体工学及びリンカー-ペイロード最適化がますます成熟しつつあるので、新しいADCの発見及び開発は、このアプローチに適した新しい標的の特定及び検証、並びに標的化用MAbの作製にますます依存している。ADC標的のための2つの基準は、腫瘍細胞におけるアップレギュレーションされた/高い発現レベルと、ロバストな内在化である。
【0162】
免疫療法の1つの態様において、腫瘍細胞は、標的化されやすい何らかのマーカー、すなわち、他の細胞の大部分には存在しない何らかのマーカーを有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在しており、これらのどれもが、本実施形態との関連において標的化のために好適である場合がある。一般的な腫瘍マーカーには、CD20、癌胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbB、及びp155が含まれる。免疫療法の1つの代替となる態様が、抗癌作用を免疫刺激作用と組み合わせることである。免疫刺激分子もまた存在しており、これらには、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなど)、ケモカイン(例えば、MIP-1、MCP-1、IL-8など)、及び増殖因子(例えば、FLT3リガンドなど)が含まれる。
【0163】
現時点で検討中又は使用中である免疫療法の例には、免疫アジュバント、例えば、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン及び芳香族化合物(米国特許第5,801,005号及び同第5,739,169号;Hui及びHashimoto、1998;Christodoulides他、1998);サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β及びγ、IL-1、GM-CSF及びTNF(Bukowski他、1998;Davidson他、1998;Hellstrand他、1998);遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2及びp53(Qin他、1998;Austin-Ward及びVillaseca、1998;米国特許第5,830,880号及び同第5,846,945号);及びモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2及び抗p185(Hollander、2012;Hanibuchi他、1998;米国特許第5,824,311号)がある。1つ以上の抗癌療法が本明細書中に記載される抗体療法とともに用いられる場合があることが意図される。
【0164】
いくつかの実施形態において、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤である場合がある。免疫チェックポイントはシグナル(例えば、共刺激分子)を強めるか、又はシグナルを弱めるかのどちらもある。免疫チェックポイント遮断によって標的とされ得る抑制性の免疫チェックポイントには、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(これはCD276としてもまた知られている)、Bリンパ球・Tリンパ球アテニュエーター(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、これはCD152としてもまた知られている)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、並びにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)が含まれる。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸及び/又はCTLA-4を標的とする。
【0165】
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子、リガンド又は受容体の組換え体などの薬物であってもよく、又は特に、ヒト抗体などの抗体であってもよい(例えば、国際特許公開第2015/016718号;Pardoll,Nat Rev Cancer、12(4): 252-64、2012;両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。免疫チェックポイントタンパク質の公知の阻害剤又はそのアナログを使用することができ、特にキメラ化、ヒト化又はヒト型の抗体を使用することができる。当業者が知っているように、本開示で言及される特定の抗体のために、代替的及び/又は等価な名称が使用され得る。そのような代替的及び/又は等価な名称は、本開示の文脈において交換可能である。例えば、ラムブロリズマブは、MK-3475及びペムブロリズマブという代替名及び等価名でも知られている。
【0166】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様において、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1及び/又はPDL2である。別の実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様において、PDL1結合パートナーは、PD-1及び/又はB7-1である。別の実施形態では、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様において、PDL2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質又はオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、米国特許第8735553号,同第8354509号、及び同第8008449号に記載されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で提供される方法で使用するための他のPD-1軸アンタゴニストは、米国特許出願第2014/0294898号、同第2014/022021号、及び同第2011/0008369号に記載されているような当技術分野で公知であり、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0167】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体)である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ及びCT-011からなる群より選択される。いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPDL1又はPDL2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。ニボルマブはMDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、及びOPDIVO(登録商標)としても知られており、WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。ペムブロリズマブは、MK-3475、Merck 3475、ラムブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、SCH-900475とも呼ばれ、WO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。CT-011は、hBAT又はhBAT-1としても知られ、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られ、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されているPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0168】
本明細書において提供される方法において標的化され得る別の免疫チェックポイントは、CD152としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、GenBank(登録商標)アクセッション番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面上に見出され、抗原提示細胞の表面上のCD80又はCD86に結合すると、「オフ」スイッチとして作用する。CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面上に発現され、T細胞に阻害シグナルを伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質であるCD28に類似しており、両分子は抗原提示細胞上でCD80及びCD86(それぞれB7-1及びB7-2とも呼ばれる)に結合する。CTLA4はT細胞に抑制性シグナルを伝達するが、CD28は刺激性シグナルを伝達する。細胞内CTLA4はまた制御性T細胞にも見出され、それらの機能にとって重要であり得る。T細胞受容体及びCD28を介したT細胞活性化は、B7分子に対する抑制性受容体であるCTLA-4の発現の増加をもたらす。
【0169】
いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質又はオリゴペプチドである。
【0170】
本方法での使用に適した抗ヒトCTLA-4抗体(又はそれに由来するVH及び/又はVLドメイン)は、当技術分野で周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗CTLA-4抗体を使用することができる。例えば、米国特許第8,119,129号、WO01/14424号、WO98/42752号;WO00/37504号(CP675,206、トレメリムマブとしても知られる;以前はチシリムマブ)、米国特許第6,207,156号;Hurwitz et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95(17):10067-10071;Camacho et al.(2004)J Clin Oncology 22(145):Abstract No.2505(抗体CP-675206);及びMokyrら(1998)Cancer Res 58:5301-5304に開示される抗CTLA-4抗体は、本明細書に開示される方法において使用することができる。前述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。CTLA-4への結合について、これらの当技術分野で認識されている抗体のいずれかと競合する抗体もまた使用することもできる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許公開第2001/014424、国際公開第2000/037504号、及び米国特許第8,017,114号(全て参照により本明細書に組み入れられる)。
【0171】
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、及びヤーボイ(登録商標)としても知られる)又はその抗原結合フラグメント及びバリアントである(例えば、国際特許公開第01/14424号を参照されたい)。他の実施形態では、抗体は、イピリムマブの重鎖及び軽鎖CDR又はVRを含む。したがって、一実施形態では、抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びにイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、CTLA-4上の上記抗体と同じエピトープとの結合について競合し、及び/又は同じエピトープに結合する。別の実施形態では、抗体は、上記の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、95%、又は99%の可変領域同一性)を有する。
【0172】
CTLA-4を調節するための他の分子には、米国特許第5844905号、同5885796号及び国際特許出願番号WO1995/001994及びWO1998/042752(全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるようなCTLA-4リガンド及び受容体、並びに米国特許第8329867号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のようなイムノアドヘシンがある。
【0173】
(D.手術)
癌を有する人のおよそ約60%が、予防的、診断的又は病期分類、治療的及び緩和的な手術を含めて、何らかのタイプの手術を受けることになる。治療的手術は、癌性組織のすべて又は一部が物理的に除かれ、切除され、かつ/又は破壊される摘出を含んでおり、他の治療法との併用で、例えば、本実施形態の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法及び/又は代替療法などとの併用で使用される場合がある。腫瘍摘出は、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除くことを示す。腫瘍摘出に加えて、手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術及び顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。
【0174】
癌細胞、組織又は腫瘍の一部又はすべてを切除すると、空洞が体内に形成される場合がある。処置が、灌流、直接注入、又はさらなる抗癌療法による当該部位への局所適用によって達成される場合がある。そのような処置が、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎若しくは7日毎に、又は1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎及び5週間毎に、又は1か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、6か月毎、7か月毎、8か月毎、9か月毎、10か月毎、11か月毎若しくは12か月毎に繰り返される場合がある。これらの処置は同様に、様々な適用量のものである場合がある。
【0175】
(E.他の薬剤)
処置の治療効果を改善するために、他の薬剤を本実施形態のある特定の態様との組み合わせで使用することが意図される。これらのさらなる薬剤には、細胞表面受容体及びGAP結合のアップレギュレーションに影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤及び分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導剤に対する過剰増殖性細胞の感受性を増大させる薬剤、又は他の生物学的薬剤が含まれる。GAP結合の数を増加させることによる細胞間シグナル伝達の増加は、近傍の過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増大させるであろう。他の実施形態では、処置の抗過剰増殖効果を改善するために、細胞増殖抑制剤又は分化剤を本実施形態の特定の態様との組み合わせで使用することができる。細胞接着の阻害剤は、本実施形態の効果を改善するために意図される。細胞接着阻害剤の例は、フォーカルアドヒージョンキナーゼ(FAK)阻害剤及びロバスタチンである。過剰増殖性細胞のアポトーシスに対する感受性を増大させる他の薬剤(例えば、抗体c225など)が、処置効果を改善するために本実施形態のある特定の態様との組み合わせで使用され得るであろうことがさらに意図される。
【0176】
[IX.本開示のキット]
本明細書に記載される組成物のいずれもがキットに含まれ得る。非限定的な例では、1つ以上の外来的に提供されたインターロイキンを含む細胞、細胞を産生するための試薬、ベクター、及びベクター及び/又はその構成要素を産生するための試薬は、キットに含まれ得る。特定の実施形態では、NK細胞がキットに含まれてもよく、それらは任意の様式で改変されてもよいし、改変されなくてもよい。そのようなキットは、細胞の操作のための1つ以上の試薬を有していてもよいし、有していなくてもよい。そのような試薬には、例えば、サイトカイン、小分子、タンパク質、核酸、抗体、緩衝液、プライマー、ヌクレオチド、塩、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上のサイトカイン及び/又は1つ以上の操作された抗原受容体を発現するベクター、又はいずれかを製造するための試薬を、キットに含めることができる。1つ以上のサイトカインをコードするヌクレオチド、1つ以上の特定の遺伝子をKOするためのCRISPR試薬をコードするヌクレオチド、自殺遺伝子産物、受容体などが、キットに含まれ得る。サイトカイン、又はモノクローナル抗体を含む抗体などのタンパク質をキットに含めることができる。操作されたCAR受容体又はTCR受容体の構成要素をコードするヌクレオチドは、それを生成するための試薬を含めて、キットに含まれ得る。
【0177】
特定の態様において、キットは、本開示のNK細胞療法、及び別の癌療法も含む。いくつかの場合において、キットは、細胞療法の実施形態に加えて、例えば、化学療法、ホルモン療法、及び/又は免疫療法などの第2の癌療法も含む。キットは、個体の特定の癌に合わせて調整することができ、個体のそれぞれの第2の癌療法を含むことができる。
【0178】
キットは、本開示の適切に分注した組成物を含み得る。キットの構成要素は、水性媒質中に又は凍結乾燥された形態で、包装され得る。キットの容器手段としては、一般に、構成要素が入れられ得る、好ましくは、適切に等分され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ又は他の容器手段が挙げられる。2つ以上の構成要素がキットに存在する場合、そのキットは、通常、追加の構成要素が別々に入れられ得る、第2、第3又は他のさらなる容器も含み得る。しかしながら、構成要素の様々な組み合わせが、1つのバイアルに含められてもよい。本発明のキットはまた、典型的には、組成物を含めるための手段並びに他の任意の試薬容器を、商業的販売のために厳重に閉じ込められた状態で含む。そのような容器には、所望のバイアルを保持する、射出成形又はブロー成形されたプラスチック容器が含まれ得る。
【実施例
【0179】
以下の実施例は、本開示の特定の非限定的な態様を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技術は、開示された主題の実施において良好に機能するように本発明者らによって発見された技術を表すことを、当業者は理解するはずである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、それでも開示される主題の精神及び範囲から逸脱することなく、同様又は類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0180】
[実施例1 神経膠芽細胞腫の治療のためのNK細胞免疫療法]
NK細胞を、神経膠芽細胞腫を処置する能力について試験した。NK細胞は、患者由来神経膠芽細胞腫幹細胞株(GCS)を殺傷することができるが、正常なアストロサイトを殺傷できない(図1)。図1Bは、GCSとアストロサイトとの間の選択的NKリガンドの発現の差異を示す。
【0181】
NK細胞は1つ以上のサイトカイン遺伝子(例えば、IL-15、IL-12、IL-21)などの特定の所望の遺伝子を発現するように操作することができる。特定のコンストラクトの例を図2に示すが、2Aエレメントは同じ発現コンストラクト上にあるが、IgG1の産生とサイトカインの産生を分離する。これらの具体例において、ヒトIL-15、ヒトIL-21、又はヒトIL-12は、p35及びp40サブユニットがリンカーで人工的に連結されるように構成される。そのような発現コンストラクトは、NK細胞内の任意のタイプのベクターに存在し得る。
【0182】
GSCの3D腫瘍スフェロイド培養モデルを用いて、サイトカイン操作NK細胞の活性を試験した(図3A)。腫瘍スフェロイドモデルは、固形腫瘍塊をシミュレートする。腫瘍細胞増殖及びNK細胞による殺傷の生細胞イメージングを用いて、Incucyte(登録商標)デバイスにおいて殺傷アッセイを行った。記された臍帯血由来サイトカイン操作NK細胞(赤色、青色及び緑色の線)は、非形質導入NK細胞(黒色の線)と比較して、患者由来神経膠芽細胞腫幹細胞株に対して優れた殺傷を示した(図3B)。
【0183】
GBMに対するNK細胞のIn vivo活性を特徴づけた。NOD/SCID/IL2Rγcヌルマウス(各群n=5)において、ffLuc+患者由来神経膠芽細胞腫幹細胞株(5×10)をNSGマウスの右前脳に定位的に移植した。7日後、BLIイメージングにより腫瘍ができたことを確認した後、マウスに1.0×10個のNK細胞を頭蓋内投与した。IL-12形質導入又はIL-21形質導入(分泌可能)臍帯血NK細胞で処置された動物は、非形質導入(NT)NK細胞で処置された動物と比較して生存率の有意な改善を伴って、腫瘍の著しい退縮(腫瘍がBLIイメージングではもはや検出できない)が見られた(図4A、4B、及び4C)。
【0184】
本開示及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような設計の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び変更を本明細書で行うことができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及びステップの特定の実施形態に限定されるものではない。当業者は本開示から、本明細書に記載された対応する実施形態が本開示に従って利用され得るのと実質的に同じ機能を実行するか、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか、又は後に開発される、プロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又はステップを容易に理解するのであろう。したがって、添付の特許請求の範囲はその範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、又はステップを含むことが意図される。
【0185】
(参考文献)
本明細書において言及される全ての特許及び刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルを示す。すべての特許及び刊行物は各個々の刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されたのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
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WO 1995/001994
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WO 2013/126726
WO 2013/166321
WO 2014/031687
WO 2014/055668
WO 2015/016718
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】