(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】マルチソースラマンプローブにおけるラマン励起波長の選択方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
G01N21/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558511
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2021024310
(87)【国際公開番号】W WO2021195471
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522378845
【氏名又は名称】イノベイティブ・フォトニック・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOVATIVE PHOTONIC SOLUTIONS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャレイチェ,グレッグ・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ルッダー,スコット・エル
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA14
2G043BA17
2G043CA04
2G043DA08
2G043EA03
2G043FA06
2G043JA01
2G043KA01
2G043KA02
2G043NA01
2G043NA11
(57)【要約】
本発明は、分光学の分野に関し、より詳細には、プロセス制御のための強化された定量分析を提供するためのコンパクトなラマン分光システムおよび方法に関する。本発明はさらに、ラマン分光システムで使用するためのラマンプローブデバイスに関する。本方法は、標的物の少なくとも1つの特性に基づいて第1の励起波長を選択するステップと、第1の励起波長に関連する第1のラマン信号の範囲を決定するステップと、分光計に関連する量子効率曲線の決定された範囲内のピーク量子効率値を決定するステップと、標的物の目的のラマンシフトピークを決定するステップと、ピーク量子効率値および目的のラマンシフトピークに基づいて第2の励起波長を決定するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二波長レーザー分光計システムで使用するための第1の励起波長(λ
p
2)および第2の励起波長(λ
p
1)を決定するための方法であって、前記システムは、
-第1の励起波長(220)を放出するように構成される第1のレーザー源(110)と、第2の励起波長(210)を放出するように構成される第2のレーザー源(120)と、
-第1のラマン信号および第2のラマン信号を受け取るように構成される分光計(190)であって、前記第1のラマン信号は前記第1の励起波長(220)に関連し、前記第2のラマン信号は前記第2の励起波長(210)に関連する、分光計(190)と、を備え、
前記方法は、
-標的物(160)の少なくとも1つの特性に基づいて前記第1の励起波長を選択するステップであって、前記少なくとも1つの特性は、好ましくは、前記第1の励起波長(220)と前記標的物(160)との相互作用によって生成される蛍光に関連する、ステップと、
-前記第1の励起波長(220)に関連する第1のラマン信号の範囲、好ましくはフィンガープリント領域を決定するステップと、
-前記分光計に関連する量子効率曲線QE(λ)の前記決定された範囲、好ましくはフィンガープリント領域内のピーク量子効率値(λ
QE)を決定するステップ、好ましくは量子効率曲線QE(λ)(230)の前記範囲内の前記量子効率が前記分光計に関連するピーク値をとる波長(λ
QE)を決定するステップと、
-目的のラマンシフトピーク(v
poi)を前記標的物について決定するステップと、
-前記ピーク量子効率値および目的の前記ラマンシフトピークに基づいて前記第2の励起波長(210)を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
目的の前記ラマンシフトピーク(ν
poi)は、前記第2の励起波長(210)での前記第1のレーザー光の照射時に前記標的物によって放出されるストレッチピークである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の励起波長(λ
p
2)は、前記標的物(160)の少なくとも1つの特性に基づいて選択され、
前記第2のレーザー光の波長は、
【数1】
と決定され、式中、λ
QEは、λ
p
2~λ
s
11-λ
s
22の前記範囲内の前記ピーク量子効率であり、v
poiは、前記標的物の目的の前記ラマンシフトピークである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的物の前記少なくとも1つの特性は、前記第1の励起波長(220)によって照射されたときの前記標的物の蛍光に関連する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
診断システムであって、
-任意選択的に分光計(190)であって、既知の量子効率を有する分光計(190)と、
-ラマン光波長を既知の量子効率を有する分光計(190)に提供するように構成されるラマンプローブデバイス(100)であって、前記ラマン光波長は、標的物(160)を照射する励起光に応答して生成される、ラマンプローブデバイス(100)と、を備え、
前記励起光は、第1の波長λ
p
2(220)を備える第1の光、および第2の波長λ
p
1(210)を備える第2の光のうちの少なくとも1つを備え、前記第1の励起波長(220)は、前記標的物(160)の少なくとも1つの特性に基づいて選択され、前記第2の励起波長(210)は、前記第1の励起波長(220)および前記既知の量子効率のピーク値に実質的に関連する波長に基づいて決定される、診断システム。
【請求項6】
前記第2の励起波長(210)は、前記第1の励起波長(220)および標的物(160)の目的のラマンシフトピークによって規定されるフィンガープリント領域(223)内の前記分光計の量子効率に基づいて選択される、請求項5に記載の診断システム。
【請求項7】
前記第2の励起波長(210)は、
【数2】
と決定され、式中、λ
QEは、前記第1の励起波長によって規定される範囲、好ましくはフィンガープリント領域内の前記量子効率の実質的に前記ピーク値に関連する前記波長であり、v
poiは、前記標的物の目的の前記ラマンシフトピークである、請求項5または6に記載の診断システム。
【請求項8】
前記システムは、
-好ましくは請求項1から4のいずれか1項に記載の方法を実行することによって、前記第2の励起波長(210)を決定するように適合される制御ユニットを備える、請求項5から7のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記第2の励起波長(210)を、
-前記第1の励起波長(220)に関連する前記標的物(160)によって放出される第1のラマン信号の範囲、好ましくはフィンガープリント領域(223)を決定するステップと、
-量子効率曲線QE(λ)の前記決定された範囲内、好ましくは前記フィンガープリント領域(223)内の前記量子効率が前記分光計(190)に関連するピーク値をとる波長(λ
QE)を決定するステップと、
-前記標的物(160)の目的のラマンシフトピーク(ν
poi)を決定するステップと、
-前記ピーク量子効率値および目的の前記ラマンシフトピークに基づいて前記第2の励起波長(210)を決定するステップと、によって決定するように適合される、請求項8に記載の診断システム。
【請求項10】
目的の前記ラマンシフトピーク(ν
poi)は、第2の波長(210)を備える前記励起光の照射時に前記標的物(160)によって放出されるストレッチピークである、請求項6から9のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項11】
請求項5から10のいずれか1項に記載のシステムで使用するためのラマンプローブデバイス(100)であって、
-第1のレンズ(150)であって、第1の励起波長λ
p
2(220)および第2の励起波長λ
p
1(210)のうちの少なくとも1つを受け取るように構成され、前記第1の励起波長は、標的物(160)の少なくとも1つの特性に基づいて決定され、前記第1の励起波長(220)および前記第2の励起波長(210)のうちの前記少なくとも1つを前記標的物(160)に集束させるようにさらに構成され、
ラマン波長は、前記第1の励起波長(220)および前記第2の励起波長(210)のうちの少なくとも1つの対応する1つによって前記標的物(160)が照射されることに応答して生成される、第1のレンズ(150)と、
-前記第1の励起波長(220)および前記第2の励起波長(210)のうちの少なくとも1つの対応する1つによって前記標的物が照射されるのに応答して生成されるラマン光波長を、既知の量子効率を有する分光計(190)に伝送するように構成されるフィルタ(171)であって、
前記第2の励起波長(220)は、
【数3】
と決定され、式中、λ
QEは、前記第1の励起波長によって規定される範囲内の前記量子効率の実質的な前記ピーク値に関連する前記波長であり、v
poiは、前記標的物の目的のラマンシフトピークである、フィルタ(171)と、を備える、ラマンプローブデバイス(100)。
【請求項12】
前記ラマン光波長を収集し、収集された前記ラマン光波長を前記フィルタ(171)に提示するように構成される第2のレンズ(151)を備える、
請求項11に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項13】
好ましくは請求項11または12に記載のラマンプローブデバイス(100)であって、
第1の励起波長λ
p
2(220)で第1のレーザー光を放出するための第1のレーザー源(110)と、
第2の励起波長λ
p
1(210)で第2のレーザー光を放出するための第2のレーザー源(120)であって、前記第2の励起波長λ
p
1は、前記デバイスに関連する分光計の量子効率および前記第1の励起波長λ
p
2に基づいて選択される、第2のレーザー源(120)と、
第1のダイクロイックミラー(135)であって、
前記第1の励起波長(220)を受け取り、
前記第2の励起波長(210)を受け取るように構成される、第1のダイクロイックミラー(135)と、
第2のダイクロイックミラー(140)であって、
前記第1の励起波長光(220)および前記第2の励起波長(210)を受け取り、
前記第1の励起波長(220)および前記第2の励起波長(210)を標的物(160)に向けて伝送し、
伝送された前記第1の励起波長(220)に関連する第1のラマン光(225)を受け取り、前記第2の励起波長(210)に関連する第2のラマン光(215)を受け取り、前記第1のラマン光および前記第2のラマン光は、前記第1の励起波長および前記第1の励起波長と前記標的物(160)との相互作用をそれぞれ表す、第2のダイクロイックミラー(140)と、
集束光学系(150)であって、
前記第1の励起波長(220)および前記第2の励起波長(210)を受け取り、
前記第1の励起波長および前記第2の励起波長を前記標的物(160)に集束させ、
前記第1のラマン光(225)および前記第2のラマン光(215)を収集し、
前記収集された前記第1のラマン光および前記第2のラマン光を前記第2のダイクロイックミラー(140)に向けるように構成される、集束光学系(150)と、
フィルタ(170)であって、
前記第2のダイクロイックミラー(140)から前記収集された前記第1のラマン光(225)および前記第2のラマン光(215)を受け取り、
前記収集された前記第1のラマン光および前記第2のラマン光から、前記第1の励起波長(220)および前記第2の励起波長(210)以外の波長を前記分光計(190)に伝送するように構成される、フィルタ(170)と、を備える、ラマンプローブデバイス(100)。
【請求項14】
前記第1のレーザー源および前記第2のレーザー源の少なくとも1つは、前記ラマンプローブデバイスの外部にある、請求項13に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項15】
前記第1の励起波長および前記第2の励起波長は並列で放出される、請求項13または14に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項16】
前記第1の励起波長および前記第2の励起波長は連続的に放出される、請求項13または14に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項17】
前記第1の励起波長λ
p
2の波長は、前記標的物の少なくとも1つの特性に基づいて決定され、
前記第2の励起波長は、
【数4】
と決定され、式中、λ
QEは、前記第1の励起波長によって規定される範囲内の前記ピーク量子効率であり、v
poiは、前記標的物の目的の前記ラマンシフトピークである、請求項13から16のいずれか1項に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項18】
前記標的物の前記少なくとも1つの特性は、前記第1の励起波長によって照射されたときに前記標的物によって生成される蛍光に関連する、請求項17に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項19】
前記第1の励起波長は、前記第1の励起波長によって照射されたときに前記標的物によって生成される前記蛍光が前記第1のラマン波長を不明瞭にしないように選択される、請求項18に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項20】
前記標的物は、医療診断、石油化学処理またはバイオリアクターに関連する、請求項13から19のいずれか1項に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項21】
好ましくは請求項11から20のいずれか1項に記載のラマンプローブデバイス(100)であって、
-分光計(190)と、
-第1の励起波長λ
p
2(220)で第1のレーザー光を放出するための第1のレーザー源(110)と、
-第2の励起波長λ
p
1(210)で第2のレーザー光を放出するための第2のレーザー源(120)であって、前記第2の励起波長λ
p
1(210)は、前記第1の励起波長(220)と標的物(160)の目的のラマンシフトピークとによって規定される範囲、好ましくはフィンガープリント領域(223)内の前記分光計(190)の量子効率に基づいて選択される、第2のレーザー源(120)と、
-集束光学系(150)であって、
前記第1のレーザー光および前記第2のレーザー光を標的物(160)に集束させ、
前記標的物(160)から反射された第1のラマン光(225)および第2のラマン光(215)のうちの対応する1つを収集するように構成される、集束光学系(150)と、
-フィルタ(170)であって、
収集された前記光を受け取り、
収集された前記光のうち、前記第1のレーザー光および前記第2の光以外の波長を有する光を前記分光計(190)に伝送するように構成される、フィルタ(170)と、を備える、ラマンプローブデバイス(100)。
【請求項22】
前記第2のレーザー光の波長は、
【数5】
と決定され、式中、λQEは、λ
p
2~λ
s
11-λ
s
22の前記範囲内の前記ピーク量子効率であり、v
poiは、前記標的物の目的の前記ラマンシフトピークである、請求項21に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項23】
前記第1の励起波長λ
p
2の波長は、前記標的物の少なくとも1つの特性に基づいて決定され、
前記第2の励起波長は、
【数6】
と決定され、式中、λ
QEは、前記第1の励起波長によって規定される範囲内の前記ピーク量子効率であり、
δは、前記ピーク量子効率値付近の領域であり、v
poiは、前記標的物の目的の前記ラマンシフトピークである、
請求項11から22のいずれか1項に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項24】
医療診断における、または石油化学処理もしくはバイオリアクターに関連する分析における、請求項11から23のいずれか1項に記載のラマンプローブデバイスの使用。
【請求項25】
前記ラマンプローブは、
第1のレンズであって、
前記第1の光および前記第2の光を前記標的物上に集束させるように構成される、第1のレンズと、
フィルタであって、
前記ラマン光波長を通過させ、
前記第1の波長および前記第2の波長が前記分光計を通過するのを阻止するように構成されるフィルタと、を備える、請求項5から10のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項26】
前記第1のレンズは、
前記ラマン光波長を収集し、
収集された前記ラマン光波長を前記フィルタに提供するように構成される、請求項25に記載の診断システム。
【請求項27】
第2のレンズであって、
前記ラマン光波長を収集し、
前記ラマン光波長を前記フィルタに提供するように構成される第2のレンズを備える、
請求項25または26に記載の診断システム。
【請求項28】
光デバイスであって、
少なくとも1つの光ファイバであって、
前記励起光を受け取り、
受け取った前記励起光を前記標的物に向けるように構成される光ファイバと、
複数の光ファイバであって、
前記ラマン光波長を受け取り、
受け取った前記ラマン光波長を前記第2のレンズに向けるように構成される、複数の光ファイバと、を備える、光デバイスを備える、
請求項25から27のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項29】
前記ラマン光波長を受け取る前記複数の光ファイバのうちの選択された光ファイバが前記ラマン光波長を受け取るのを防止するマスクを備える、
請求項28に記載の診断システム。
【請求項30】
前記光デバイスは、
光ファイバの1次元アレイおよびファイバ光ファイバの2次元アレイのうちの1つに配置された複数の光ファイバを備える、請求項28または29に記載の診断システム。
【請求項31】
前記光デバイスは、
中心光ファイバの周りに環状に配置された複数の光ファイバを備え、前記中心ケーブルは、前記透過型光デバイスおよび前記受容型光デバイスのうちの1つである、請求項27から30のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項32】
前記標的物の前記少なくとも1つの特性は、前記第1の励起波長によって照射されたときに前記標的物によって生成される蛍光に関連する、請求項5から10のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項33】
第1のレーザーであって、
前記第1の光を生成するように構成され、前記ラマンプローブの内部および前記ラマンプローブデバイスの外部のうちの1つである、第1のレーザーと、
第2のレーザーであって、
前記第2の光を生成するように構成され、前記ラマンプローブの内部および前記ラマンプローブデバイスの外部のうちの1つである、第2のレーザーと、を備える、
請求項5から10のいずれか1項に記載の診断システム。
【請求項34】
前記第1の励起波長を放出するように構成される、
第1のレーザー源と、
前記第2の励起波長を放出するように構成される第2のレーザー源であって、
少なくとも1つの第1のレーザー源および前記第2のレーザー源は、前記ラマンプローブの外部および前記ラマンプローブの内部にある、
請求項11から12のいずれか1項に記載のラマンプローブデバイス。
【請求項35】
前記第1の励起波長および前記第2の励起波長は、同時および連続的のうちの一方で放出される、請求項11から12または34のいずれか1項に記載のラマンプローブ。
【請求項36】
光デバイスあって、
複数の光ファイバを備え、前記光ファイバのうちの選択された光ファイバは、前記第1の励起波長および前記第2の励起波長を受け取り、
前記光ファイバのうちの選択された光ファイバは、前記ラマン光波長を受け取る、光デバイスを備える、
請求項11から12または34から35のいずれか1項に記載のラマンプローブ。
【請求項37】
前記複数の光ファイバは、マトリクス構成および環状構成のうちの1つに配置される、請求項36に記載のラマンプローブ。
【請求項38】
請求項5から10のいずれか1項に記載のシステムに、好ましくは請求項1から4のいずれか1項に記載の方法を実行することによって前記第2の励起波長(210)を決定させる命令を備えるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、分光学の分野に関し、より詳細には、プロセス制御のための強化された定量分析を提供するためのコンパクトなラマン分光システムおよび方法に関する。
【0002】
関連特許
本明細書に開示される本発明は、米国特許第10,359,313号明細書に列挙され教示される主題に関連し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ラマン分光法は、分子内の振動、回転および他の低周波モードを観察するために使用することができる周知の技術である。ラマン散乱は、レーザーによって通常提供される単色光が分子振動、フォノンまたは他の励起と相互作用して、レーザー光子のエネルギーが上下にシフトする非弾性プロセスである。エネルギーの保存により、放出された光子は、振動状態のエネルギーに等しいエネルギーを得たり失ったりする。
【0004】
多くのラマン測定値は蛍光に悩まされており、これは、ラマン信号を超え、それによってラマン信号を抽出することを不可能にする蛍光信号を軽減するためにより長い波長(より低いエネルギー)の励起レーザーを使用することを余儀なくさせる。より長い励起波長の使用は、蛍光試料からのラマン信号の抽出を容易にするが、分光計信号を捕捉するシリコンCCD検出器の感度を低下させる。
【0005】
0cm-1~4000cm-1の波数の全範囲をカバーするラマンスペクトルを捕捉する公知のラマンプローブは、以下を使用することにより完成する。
【0006】
(1)十分な分解能ですべての関連する波数で光子を捕捉するための長いセンサを組み込んだ大型分光計を備えた単一のレーザー源、
(2)各々が異なる波長範囲(例えば、シリコンおよびInGaAs)をカバーする複数の分光計/検出器を備えた単一のレーザー源、
(3)単一の分光計を備えた複数のレーザー源、または
(4)各々がより狭い範囲の波数をカバーする複数のラマンスペクトルを捕捉するように構成された別々の分光計を備えた複数のレーザー源。
【0007】
複数のレーザー技術の使用の例は、以下によって開示される。
「Novel Pressure-Induced Molecular Transformations Probed by In Situ Vibrational Spectroscopy」、Yang Song、
「Applications of Molecular Spectroscopy to Current Research in theChemical and Biological Sciences」、Mark T.Stauffer(編)、2016年10月5日、第8章、
「Spatially Compressed Dual-Wavelength Excitation Raman Spectrometer」J.B.Cooper、S.Marshall、R.Jones、M.Abdelkader、およびK.L.Wise、Applied Optics、53、3333(2014年)、
「Dual Wavelength Raman Spectroscopy:Improved Compactness and Spectral Resolution」J.Kiefer、https://www.americanpharmaceuticalreview.com/Featured-Articles/354604-Dual-Wavelength-Raman-Spectroscopy-Improved-Compactness-and-Spectral-Resolution/、2018年10月16日投稿。
【0008】
「Raman Fusion Spectroscopy:Multiwavelength Excitation for Compact Devices」、J.Kiefer、SciX2019(2019年10月13日~18日)。
【0009】
「Apparatus and Method fo rComposite Raman Multispectrum Spectrometry」、BRUNEEL、Jean-Luc、BUFFETEAU、Thierry、DAUGEY、Nicolas、RODRIGUEZ、Vincent、国際公開第2019220047号(2019)および
本出願の譲受人の譲受人に譲渡され、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10、359、313号明細書。
【0010】
参照される参照文献の各々は、二波長レーザー構成を使用した複数のラマンスペクトルの捕捉に焦点を合わせている。しかしながら、参考文献は、選択された材料および利用される分光計の特性に基づいてスペクトル分析に使用される波長を選択するための手段を開示していない。したがって、業界では、2つ以上のプローブレーザー波長を使用して改善された定量分析を提供するコンパクトなラマンプローブおよび分光計システム、ならびに異なる用途のために調査中の標的材料の定量分析を強化するためにレーザープローブ波長を選択する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本明細書中に記載されるラマンスペクトル連結の概念は、フィンガープリントおよびストレッチのラマンスペクトル(すなわち、収集されたラマン波長)の両方を収集するための単一の比較的コンパクトな分光計の使用、および調査中の標的材料の強化された定量分析を提供するためのレーザー源波長を選択するための方法を可能にする。本発明の原理によれば、フィンガープリントスペクトルは、1つの励起波長を使用して捕捉され、ストレッチスペクトルは、分光計の量子効率および第1の波長に基づいて選択された第2の波長を使用して捕捉される。本明細書に開示される方法でレーザー源波長の1つまたは複数を選択することにより、調査中の標的材料の定量分析の性能を高めるように、信号対ノイズ比が向上する。
【0012】
調査中の材料の強化された定量分析を提供するように選択された2つ以上の別個のレーザー波長を提供するように構成されたコンパクトな二波長ラマンプローブが開示される。
【0013】
2つのレーザー源がラマンプローブのハウジング内(またはプローブ内部)および/またはラマンプローブのハウジングの外部に一体化され得る実施形態が本明細書に記載される。
【0014】
本明細書では、2つのレーザー源によって放出された光出力が共通の光路で結合され得る実施形態が説明され、放出された光は、ダイクロイックミラーによる波長ビーム結合または幾何学的ビーム結合のいずれかを使用して結合され得る。
【0015】
同じ光軸を利用する励起光および収集光の共整列を利用するラマンプローブの実施形態を本明細書中に記載する。
【0016】
別々の光路を利用する励起光および収集光の空間的なオフセットを利用するラマンプローブの実施形態を本明細書中に記載する。
【0017】
本明細書では、ラマンプローブの2つのレーザー源によって放出される光の波長を選択するための方法の実施形態が記載され、レーザー源またはプローブの波長は、標的材料によって反射された光の分析に使用される分光計の量子効率に部分的に基づいて選択される。
【0018】
本発明の原理によれば、二波長ラマンプローブに使用されるプローブレーザーの波長は、分光計内に単一の検出器アレイ(シリコン、InGaAs、または任意の他の検出器アレイ)を備える分光計の量子効率に基づいて選択される。検出器の量子効率は、収集された光子対入射光子の比対波長の尺度であり、製造業者によって供給される分光計の一般的な特性である。
【0019】
二波長レーザー分光計システムで使用するための第1の励起波長および第2の励起波長を決定するための方法が本明細書に記載される。そのようなシステムは、第1の励起波長を放出するように構成される第1のレーザー源と、第2の励起波長を放出するように構成される第2のレーザー源と、第1のラマン信号および第2のラマン信号を受け取るように構成される分光計であって、前記第1のラマン信号は前記第1の励起波長に関連し、前記第2のラマン信号は前記第2の励起波長に関連する、分光計とを備えてもよい。本方法は、
-標的物の少なくとも1つの特性に基づいて前記第1の励起波長を選択するステップであって、前記少なくとも1つの特性は、好ましくは、前記第1の励起波長と前記標的物との相互作用によって生成される蛍光に関連する、ステップと、
-前記第1の励起波長に関連する第1のラマン信号の範囲、好ましくはフィンガープリント領域を決定するステップと、
-前記分光計に関連する量子効率曲線QE(λ)の決定された範囲、好ましくはフィンガープリント領域内のピーク量子効率値(λQE)を決定するステップ、好ましくは、量子効率曲線QE(λ)の範囲内の量子効率が前記分光計に関連するピーク値をとる波長(λQE)を決定するステップと、
-目的のラマンシフトピーク(vpoi)を標的物について決定するステップと、
-ピーク量子効率値および目的のラマンシフトピークに基づいて前記第2の励起波長を決定するステップと、を含む。
【0020】
診断システムがさらに本明細書に記載され、診断システムは、任意選択的に分光計であって、既知の量子効率を有する分光計と、ラマン光波長を分光計に提供するように構成されるラマンプローブデバイスであって、前記ラマン光波長は、標的物を照射する励起光に応答して生成される、ラマンプローブデバイスと、を備え、
前記励起光は、第1の波長λp
2を備える第1の光、および第2の波長λp
1を備える第2の光のうちの少なくとも1つを備え、前記第1の励起波長は、前記標的物の少なくとも1つの特性に基づいて選択され、前記第2の励起波長は、前記第1の励起波長および前記既知の量子効率のピーク値に実質的に関連する波長に基づいて決定される。
【0021】
診断システムは、第2の励起波長を決定するように適合される、好ましくは実質的に上述の方法を実行するように適合される制御ユニットを備えてもよい。
【0022】
好ましくは実質的に上述の方法を実行することによって、上述のシステムに第2の励起波長を決定させる命令を備えるコンピュータプログラムが本明細書に記載される。
【0023】
本発明の原理によれば、プローブレーザー波長は、所望のラマンスペクトルが検出器量子効率のピークと実質的に一致し、したがってより高い信号対ノイズ比を達成するように、分光計の量子効率および標的物中の材料に基づいて異なる用途について決定され得る。
【0024】
本発明の原理によれば、分光計の量子効率に基づくラマン励起波長の選択は、ラマンスペクトルのフィンガープリント領域およびストレッチ領域の両方を、シリコン検出器(または同様の検出器)が比較的高い量子効率を有する波長にシフトさせることを可能にする。
【0025】
本発明の一態様において、2つのレーザー源の各々のラマンスペクトルは、フィンガープリント領域およびストレッチ領域を含むデータの全範囲を包含する単一のスペクトルスキャンを提供するために、別々に捕捉され、続いて連結され得るか、または一緒に編まれ得、ストレッチ領域におけるラマン信号の信号対ノイズ比が増強される。
【0026】
本発明の一態様によれば、各データセットを独立して分析することも可能であるが、両方の励起波長からスペクトルを同時に収集することも可能であり得る。
【0027】
本明細書に開示されるコンパクトな二波長ラマンプローブは、円形の形状またはレーザー近接場の細長い発光領域の形状に近似する円形、楕円形または細長い断面を有するように各レーザー源の出力ビームを構成するための光学系を含み得る。
【0028】
本発明の一態様では、レーザー源によって生成された光は、調査中の標的物または材料に向かって放出され得、得られた散乱信号光は、やはり対応する楕円形の断面を有し得る光ビームを介してコンパクトなラマンプローブによって伝送される。励起および収集経路は、同一線上(すなわち、共整列)または別個(例えば、空間オフセット(米国特許出願公開第20080076985号明細書参照)または伝送ジオメトリ(米国特許第8085396号明細書参照))であってもよい。戻ってきた散乱光に近似する寸法のコアを内蔵した光ファイバは、戻ってきた散乱光を分光計の入射開口部に伝送する。
【0029】
本明細書に開示される二波長ラマンプローブの本発明の原理によれば、二波長ラマンプローブは、波長安定化レーザー源としてプローブに組み込まれ得る外部キャビティレーザー(ECL)を含み得る。例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,059,555号明細書「Wavelength-Stabilized Diode Laser」を参照されたい。または、ラマンプローブの外部にECLを保持し得る。
【0030】
本明細書に開示されるコンパクトなラマンプローブの原理によれば、分布ブラッグ反射器(DBR)または分布帰還型(DFB)レーザーは、ラマンプローブに一体的に組み込まれ得るか、またはラマンプローブの外部に保持され得る波長安定化レーザー源を含み得る。
【0031】
本明細書に開示されるコンパクトな二波長ラマンプローブの原理によれば、レーザーによって放出された光は、例えば、第2の高調波発生(SHG)、第3の高調波発生(THG)、または任意の他の非線形光学プロセスによって異なる波長を生成するための非線形光学(NLO)変換のためのポンプ源として使用され得る。
【0032】
コンパクトな二波長ラマンプローブの本発明の原理によれば、第2の波長の選択は、ラマン信号を収集するために使用される分光計の第1の波長およびスペクトル効率に部分的に基づく。
【0033】
図面の簡単な説明
例示的な実施形態をよりよく理解し、それをどのように実施することができるかを示すために、添付の図面を参照する。示されている詳細は、例示にすぎず、本開示の好ましい実施形態の例示的な説明の目的のためであり、本発明の原理および概念的態様の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されていることが強調される。これに関して、本発明の基本的な理解に必要な以上に本発明の構造的詳細を詳細に示すことは試みられていない。図面を用いた説明は、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具現化され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】外部レーザー源を使用する二波長共整列/反射型ラマンプローブの例示的な実施形態のブロック図を示す。
【
図1B】内部レーザー源を使用する二波長共整列/反射型ラマンプローブの例示的な実施形態のブロック図を示す。
【
図1C】外部レーザー源を使用する二波長共整列/透過型ラマンプローブの例示的な実施形態のブロック図を示す。
【
図1D】二波長空間オフセット/透過型ラマンプローブの例示的な実施形態のブロック図を示す。
【
図2】本発明の原理による二波長ラマンプローブにおけるレーザー波長の選択のグラフ表示を示す。
【
図3A】本発明の原理による二波長ラマンプローブにおけるレーザー波長を選択するための例示的なプロセスのフローチャートを示す。
【
図3B】本発明の原理による二波長ラマンプローブに関連する例示的なプロセスのフローチャートを示す。
【
図4A】2つの異なるラマンレーザポンプ源に対して300nm分散を有するシリコン検出器線形アレイの例示的な量子効率応答を示す。
【
図4B】2つの異なるラマンレーザポンプ源に対して300nm分散を有するシリコン検出器線形アレイの例示的な量子効率応答を示す。
【
図5A】本発明の原理による2つの異なるラマンレーザポンプ源に対して300nm分散を有するシリコン検出器線形アレイの第2の例示的な量子効率応答を示す。
【
図5B】本発明の原理による2つの異なるラマンレーザポンプ源に対して300nm分散を有するシリコン検出器線形アレイの第2の例示的な量子効率応答を示す。
【
図6A】本発明の原理による励起波長の選択の有無にかかわらず、シクロヘキサンを含有する標的材料の例示的なスペクトル分析を示す。
【
図6C】尿素を含有する標的材料の例示的なスペクトル分析を示す。
【
図6D】水を含有する標的材料の例示的なスペクトル分析を示す。
【
図7】距離ベースの空間オフセットラマンプローブ構成の例示的な実施形態のブロック図を示す。
【
図8】空間的にオフセットされたラマンプローブの別の実施形態のブロック図を示す。
【
図9A】励起波長の透過およびラマン波長の収集のための例示的な1次元および2次元線形アレイを示す。
【
図9B】励起波長の透過およびラマン波長の収集のための例示的な1次元および2次元線形アレイを示す。
【
図10A】励起波長の透過およびラマン波長の収集のための例示的な円形または環状の構成を示す。
【
図10B】励起波長の透過およびラマン波長の収集のための例示的な円形または環状の構成を示す。
【
図10C】励起波長の透過およびラマン波長の収集のための例示的な円形または環状の構成を示す。
【
図10D】励起波長の透過およびラマン波長の収集のための例示的な円形または環状の構成を示す。
【
図10E】励起波長の透過およびラマン波長の収集のための例示的な円形または環状の構成を示す。
【
図10F】励起波長の透過およびラマン波長の収集のための例示的な円形または環状の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書に記載された本発明の図および説明は、本発明の明確な理解に関連する要素を示すために簡略化されており、明確にするために、多くの他の要素を排除していることを理解されたい。しかしながら、これらの省略された要素は当技術分野で周知であり、本発明のより良い理解を容易にしないので、そのような要素の説明は本明細書では提供されない。本明細書の開示は、当業者に知られている変形および修正も対象とする。
【0036】
詳細な説明
図1Aは、ラマン分光法における光源としてのダイオードレーザーの使用を開示している米国特許第10,359,313号明細書の
図5に示され、これに関して開示されている構成と同様の、ダイクロイックミラーによる波長ビーム結合を使用して、示されている2つのレーザー源の対応する1つによって出力される光が同じ光路に沿って結合されるコンパクトな二波長共整列/反射型ラマンプローブ構成の例示的な実施形態のブロック図を示す。
【0037】
この例示的な実施形態では、二波長ラマンプローブ100は、ハウジング105と、2つの外部光源110および120(以下、レーザーまたはレーザー源と呼ぶ)とを含む。しかしながら、光源110および120は、同様に、それぞれ光ファイバ113および123を介してハウジング100内の内部光学系に結合された非レーザー光源、例えばスーパールミネッセントダイオードであってもよいことが認識されるであろう。
【0038】
レーザー110および120は、単一の空間モードまたは複数の空間モードで光を放出することができる。光結合部111、112、121、122は、光ファイバを機器またはデバイスに結合するための既知のデバイスである。
【0039】
レーザー源110および120は、任意のレーザーデバイスまたはシステムであってもよく、好ましくは、レーザー源110および120は、狭帯域幅を有する波長安定化レーザー源である。
【0040】
波長安定化レーザー源として使用され得るレーザーの1つのクラスは、外部キャビティレーザーである。例えば、本出願の譲受人に譲渡され、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれ、例示的な外部波長安定化ダイオードレーザーを説明する米国特許第9,059,555号明細書および米国特許第9,577,409号明細書を参照されたい。光源110、120はまた、分布帰還型(DFB)レーザーまたは分布ブラッグ反射器(DBR)レーザーなど、それらの構造内に格子を組み込む半導体レーザーであってもよい。
【0041】
レーザー源110、120はまた、当該技術分野でよく知られているように、より短い波長のレーザー光の二次または三次高調波生成のために非線形光学素子に結合されたDFBまたはDBRレーザーであってもよい。
【0042】
コンパクトな二波長ラマンプローブ100は、レーザー源110、120の出力ビームを構成するための光学系115、125をさらに含む。
【0043】
図1Aに示す例示的な構成要素は、レーザー110に関連する光ビームを再成形して、例えば、目的の標的160によってラマン信号(または波長)を励起するのに適したビーム断面を形成するためのレンズ116、117および118(光学系115)、ならびにレーザー120に関連する光ビームを再成形するための対応する構成要素126、127および128(光学系116)である。
【0044】
狭帯域フィルタ119、129は、レーザー110、120の出力からの自然放出を阻止する。
【0045】
コリメート光ビーム131および132は、第1のダイクロイックミラー135および反射ミラー136を使用して単一のコリメートビーム138に結合され、ミラー136は光ビーム132を第1のダイクロイックミラー135に向け直す。
【0046】
第1のダイクロイックミラー135はさらに、光ビーム132を通過させ、光ビーム131を向け直してコリメート光ビーム138を形成する。
【0047】
本発明の一態様では、第1のレーザー110および第2のレーザー120によって放出される波長を通過させるが、2つの波長のうちの長い方を超える波長を遮断するように設計されたカットオフ波長(すなわち、光ビーム131、132)を備えた単一のショートパスフィルタ(図示せず)は、光ビーム131、132がコリメート光ビーム138に組み合わされた後に配置されてもよい。
【0048】
プローブ(励起、照射)光ビーム138は、挿入
図141に概略的に示されている透過特性を有する第2のショートパスダイクロイックミラー140を透過してレンズ150に至り、これは、光路145に沿って標的物160上に第1のレーザー110および第2のレーザー120によって放出された波長を含む結合光を集束する。
【0049】
標的物160から散乱された光は、ラマン、レイリーおよび蛍光成分を含み、これらはレンズ150によって収集され、光路145を通って第2のダイクロイックミラー140に向けて戻され得る。
【0050】
この図示の場合、ダイクロイックミラー140は、より長いストークスシフトのラマン光子をコリメートビーム155に反射するように構成される。
【0051】
2つの励起波長を含むフィルタカットオフよりも長い波長の光は、大部分が第2のダイクロイックミラー140を通過し、ビーム155からほとんど除去される。
【0052】
本発明の一態様では、光ビーム138を成形するために、光ビーム138の光路に追加の光学素子(図示せず)を含めることができる。
【0053】
例えば、光ビーム138は、光ビーム138(すなわち、組み合わされた第1の励起波長および第2の励起波長)が前記標的物160上に環状領域を形成するように円形ビームに成形されてもよい。
【0054】
追加の一態様では、光学素子は、標的物に投影された環状領域の直径を調整するように構成されてもよい。本発明の別の態様によれば、追加の光学素子(図示せず)は、光ビーム138を楕円形または細長い形状に成形するために光ビーム138の光路に含まれてもよい。
【0055】
標的160上の励起光の空間的範囲は、軸外散乱光を生じさせるのに十分に長くてもよく、第2のダイクロイックミラー140によるビーム155への波長範囲(優先的に除外される波長を含む)の反射をもたらし得る。
【0056】
ダイクロイックミラー140の設計は、好ましくは、望ましくない光が可能な限り除去されるような設計である。
【0057】
ダイクロイックミラー140は、ポンプ波長付近の他の光を実質的に除去しながら、ラマン散乱光の波長を単一の光ファイバまたは軸(すなわち、共整列)に沿って分光計190に向けるように設計されたエッジフィルタであってもよい。
【0058】
ストークス信号波長が検出されるような本開示の実施形態では、ダイクロイックミラー140は、示されるように、ポンプ波長よりも長い波長を反射し、かつ光ビーム155からポンプ波長以下の波長を実質的に除去するショートパスフィルタである。
【0059】
アンチストークス信号が検出されるような開示される本発明の一実施形態では、ダイクロイックミラー140は、ポンプ波長よりも短い波長を反射し、かつ光ビーム155からポンプ波長以上の波長を実質的に除去するロングパスフィルタである。
【0060】
ダイクロイックミラー140は、通常、45°の入射角で使用され、
図1Aに示す実施形態では、レーザー源110および120からの光を調査中の標的160に向けて透過させる。例示的なダイクロイックミラーは、SemrockのRAZOREDGEビームスプリッタである。RAZOREDGEは、カリフォルニア州ローネートパーク所在のIDEX Health&Science社の登録商標である。
【0061】
ストークス信号を検出するために、ロングパスダイクロックフィルタ170は、挿入
図171に示すように、そのカットオフ波長よりも長い波長を透過するように設計される。
【0062】
レンズ180は、フィルタリングされた光を光ファイバ185の入射ファセット上に集束させ、それは光をコンパクトな分光計190のスリット191に透過させる。
【0063】
フィルタ170は、ダイクロイックフィルタ、体積ホログラフィック格子フィルタ、およびファイバブラッグ格子フィルタのうちのいずれかであってもよく、集束光学系および収集光学系、または必要な波長依存性の阻止および透過能力を提供する任意のフィルタと組み合わせて使用される。例示的なフィルタは、ストップライン単一ノッチフィルタおよびストークス検出用のRAZOREDGE(登録商標)超急峻ロングパスエッジフィルタおよびアンチストークス検出用の超急峻ショートパスエッジフィルタを含む。STOPLINEおよびRAZOREDGEは、カリフォルニア州ローネートパーク所在のIDEX Health&Science社の登録商標である。
【0064】
分光計190は、スリット191を通って入射した光を線形シリコン検出器アレイ(図示せず)に回折させるように設計されている。アレイ上に回折される光の範囲は、当技術分野で周知のように、分光計の回折格子の設計および検出器アレイの線形範囲によって制限される。したがって、分光計の格子および検出器は、検出器が限られた範囲の波長、例えば、ストークス信号の場合約791nm~934nmの波長を受け取るように構成することができる。例示的な2048素子線形検出器は、別々に検出された場合、スペクトルのフィンガープリント領域とストレッチ領域の両方で約1cm-1(すなわち、1つの波数であり、波数は、光学分野内の技術用語である)の分解能を有することができる。
【0065】
本発明の別の実施形態では、
図1Aのレーザー110および120からの光は、ダイクロイックミラー140に提示される前に、単一のファイバ(図示せず)上に結合されてもよい。
【0066】
レーザー110および120からの光を生成および結合する要素は、本体105内に含まれる必要はなく、代わりに、幾何学的またはダイクロイック結合によって本体105の外側で結合され、続いてダイクロイックミラー140に提示される前に単一のファイバに結合されてもよい。
【0067】
図1Bは、二波長レーザー共整列/反射型ラマンプローブの例示的な実施形態を示し、レーザー源110、120は、ラマンプローブハウジング105内に組み込まれている。
【0068】
二波長レーザーラマンプローブのこの第2の例示的な実施形態において、
図1Bに示されるラマンプローブの要素(構成要素)および操作は、
図1Aに示される二波長ラマンプローブに関して論じられた要素および操作と同様である。
図1Bに示される構成要素および構成の動作の両方が
図1Aに示される二波長レーザーラマンプローブの構成要素および動作と同様であるので、
図1Bに示される構成の構成要素および動作の詳細は、
図1Aの構成要素および動作を読むことによって当業者には理解され得、したがって、
図1Bのさらなる議論は必要ないと考えられる。
【0069】
図1Cは、ラマンプローブを有する二波長レーザー共整列ラマン/透過プローブの例示的な実施形態を示し、外部レーザー源110、120によって出力された光は、前述のように、ダイクロイックミラー135および反射ミラー136による波長ビーム結合を使用して単一の光ビーム138に結合される。この第3の実施形態では、第2のダイクロイックフィルタ140は、レーザー源の励起光をレンズ150を介して標的物160に向けるように機能する。
【0070】
レンズ150はさらに、励起波長の相互作用に応答して生成されたラマン波長を収集し、ダイクロイックフィルタ140に透過させる。次いで、ダイクロイックフィルタ140は、収集されたラマン光を光ビーム155としてフィルタ170に透過させる。
【0071】
この場合、フィルタ170は、レーザー源110および120の光が分光計190のスリット191に提示されないよう除去するように動作する。
【0072】
二波長レーザーラマンプローブのこの第3の例示的な実施形態において、
図1Cに示される残りの要素(構成要素)および操作は、
図1Aに示される二波長ラマンプローブに関して論じられた要素および操作と同様である。
図1Cに示される構成要素および構成の動作の両方が
図1Aに示される二波長レーザーラマンプローブの構成要素および動作と同様であるので、
図1Cに示される構成の構成要素および動作の詳細は、
図1Aの構成要素および動作を読むことによって当業者には理解され得、したがって、
図1Cのさらなる議論は必要ないと考えられる。
【0073】
図1Dは、二波長レーザー空間オフセット/透過型ラマンプローブの例示的な実施形態を示し、2つの外部レーザー源110、120によって出力された光は、前述のように、ダイクロイックミラー135およびミラー136による波長ビーム結合を使用して同じ光路に沿って結合される。次いで、結合光138は、集束レンズ150を介してミラー152によって標的物160に向けられる。収集レンズ151は、結合励起(または照射光)光138による標的物160の照射に応答して生成されたラマン光を収集し、収集されたラマン光、すなわち光ビーム155をフィルタ170に向け、これは、前述のように、収集されたラマン光から励起波長を除去するように動作する。
【0074】
二波長レーザーラマンプローブのこの第4の例示的な実施形態において、
図1Dに示される残りの要素(構成要素)および操作は、
図1Aに示される二波長ラマンプローブに関して論じられた要素(構成要素)および操作と同様である。
図1Dに示される残りの構成要素および構成の動作の両方が
図1Aに示される二波長レーザーラマンプローブの残りの構成要素および動作と同様であるので、
図1Dに示される構成の残りの構成要素および動作の詳細は、
図1Aの構成要素および動作を読むことによって当業者には理解され得、したがって、
図1Dのさらなる議論は必要ないと考えられる。
【0075】
本発明はさらに診断システムに関し、診断システムは、既知の量子効率を備える分光計と、ラマン光波長を前記分光計に提供するように構成されたラマンプローブデバイスであって、前記ラマン光波長は、標的物を照射する励起光に応答して生成される、ラマンプローブデバイスと、を備え、前記励起光は、第1の波長λp
2を備える第1の光、および第2の波長λp
1を備える第2の光のうちの少なくとも1つを備え、前記第1の励起波長は、前記標的物の少なくとも1つの特性に基づいて選択され、前記第2の励起波長は、前記第1の励起波長および前記既知の量子効率のピーク値に実質的に関連する波長に基づいて決定される。
【0076】
好ましい実施形態では、上述のシステム内で、前記第2の励起波長は、以下のように決定される。
【0077】
【0078】
式中、λQEは、第1の励起波長によって規定される範囲内の前記量子効率の実質的に前記ピークに関連する前記波長であり、νpoiは、標的物の目的のラマンシフトピークである。より正確には、νpoiは、1/λQEと同じ次元で与えられる、目的のラマンシフトピークの波数である。好ましくは、目的のラマンシフトピーク(νpoi)は、第2の励起波長での第2のレーザー光の照射時に標的物によって放出されるストレッチピークである。
【0079】
好ましい実施形態では、上記のシステム内で、前記ラマンプローブは、前記第1の光および前記第2の光を前記標的物上に集束させるように構成された第1のレンズを備え、前記ラマン光波長を通過させ、前記第1の波長および前記第2の波長が前記分光計を通過するのを阻止するように構成されたフィルタとを備える。
【0080】
好ましい実施形態では、上述のシステム内で、前記第1のレンズは、前記ラマン光波長を収集し、前記収集されたラマン光波長を前記フィルタに提供するように構成される。
【0081】
好ましい実施形態では、上述のシステムは第2のレンズを備え、前記第2のレンズは、前記ラマン光波長を収集し、前記ラマン光波長を前記フィルタに提供するように構成される。
【0082】
好ましい実施形態では、システムは光デバイスを備え、光デバイスは、前記励起光を受け取り、前記受け取った励起光を前記標的物に向けるように構成された少なくとも1つの光ファイバと、前記ラマン光波長を受け取り、前記受け取ったラマン光波長を前記第2のレンズに向けるように構成された複数の光ファイバとを備える。
【0083】
好ましい実施形態では、システムはマスクを備え、前記マスクは、前記ラマン光波長を受け取る前記複数の光ファイバのうちの選択された光ファイバが前記ラマン光波長を受け取るのを防止する。
【0084】
好ましい実施形態では、上述のシステム内で、前記光デバイスは、光ファイバの1次元アレイおよび光ファイバの2次元アレイのうちの1つに配置された複数の光ファイバを備える。
【0085】
好ましい実施形態では、上述のシステム内で、前記光デバイスは、中心光ファイバの周りに環状に配置された複数の光ファイバを備え、前記中心ケーブルは、前記透過型光デバイスおよび前記受容型光デバイスのうちの1つである。
【0086】
好ましい実施形態では、上述のシステム内で、標的物の前記少なくとも1つの特性は、前記第1の励起波長によって照射されたときに前記標的物によって生成される蛍光に関連付けられる。好ましくは、第1の励起波長は、ラマン分光信号に対する蛍光の影響を最小限に抑えるように選択される。
【0087】
前記第1の光および前記第2の光は、同時に放出されてもよい。前記第1の励起波長および前記第2の励起波長は、連続的に放出されてもよい。
【0088】
好ましい実施形態では、上記のシステムは、前記第1の光を生成するように構成された第1のレーザーであって、前記ラマンプローブの内部および前記ラマンプローブデバイスの外部のうちの1つである、第1のレーザーと、および/または前記第2の光を生成するように構成された第2のレーザーであって、前記ラマンプローブの内部および前記ラマンプローブデバイスの外部のうちの1つである、第2のレーザーと、を備える。
【0089】
本発明はさらに、第1のレンズを含むラマンプローブデバイスに関し、前記第1のレンズは、第1の励起波長λp
2、標的物の少なくとも1つの特性に基づいて決定される前記第1の励起波長、および第2の励起波長λp
1のうちの少なくとも1つを受け取るように構成され、前記第1のレンズは、前記第1の励起波長および前記第2の励起波長のうちの前記少なくとも1つを前記標的物に集束させるように構成され、ラマン波長は、前記第1の励起波長および前記第2の励起波長のうちの少なくとも1つの対応する1つによって照射される前記標的物に応答して生成され、前記ラマンプローブデバイスはフィルタをさらに備え、前記フィルタは、前記第1の励起波長および前記第2の励起波長のうちの少なくとも1つの対応する1つによって前記標的物が照射されるのに応答して生成された前記ラマン波長を分光計に通すように構成され、前記分光計は既知の量子効率を備え、前記第2の励起波長は、
【0090】
【0091】
として決定され、式中、λQEは、第1の励起波長によって規定される範囲内の前記量子効率のピークに関連する波長であり、vpoiは、標的物の目的のラマンシフトピークである。
【0092】
上述のようなラマンプローブの好ましい実施形態では、前記第1のレンズは、前記ラマン波長を収集し、前記収集されたラマン波長を前記フィルタに提示するように構成される。
【0093】
好ましい実施形態では、上述のようなラマンプローブは第2のレンズを備え、前記第2のレンズは、前記ラマン波長を収集し、前記収集されたラマン波長を前記フィルタに提示するように構成される。
【0094】
好ましい実施形態において、上述のようなラマンプローブは、前記第1の励起波長を放出するように構成された第1のレーザー源と、前記第2の励起波長を放出するように構成された第2のレーザー源と、を備え、前記第1のレーザー源および前記第2のレーザー源のうちの少なくとも一方は、前記ラマンプローブの外部にある。あるいは、前記第1のレーザー源および前記第2のレーザー源のうちの少なくとも1つは、前記ラマンプローブの内部にあってもよい。
【0095】
上述のようなラマンプローブの好ましい実施形態において、前記第1の励起波長および前記第2の励起波長は、同時および逐次のうちの1つで放出される。
【0096】
好ましい実施形態において、上述のようなラマンプローブは、複数の光ファイバを備える光デバイスを備え、前記光ファイバのうちの選択された光ファイバは、前記第1の励起波長および前記第2の励起波長を受け取り、前記光ファイバのうちの選択された光ファイバは、前記ラマン光波長を受け取る。
【0097】
上述のようなラマンプローブの好ましい一実施形態において、前記複数の光ファイバは、マトリクス構成および環状構成のうちの1つに配置される。
【0098】
図7は、距離ベースの空間的オフセットラマンプローブ構成の例示的な実施形態のブロック図を示し、励起光波長702と収集された光波長704との間の空間的分離(または距離)710は、標的物160の表面下領域の検出を可能にする。
【0099】
以後、第1の励起波長210および第2の励起波長220を備える結合光138を励起光702と呼び、ラマン光波長を収集された光波長704と呼ぶものとする。
【0100】
励起光波長702と収集された光波長704との間の距離710を増加させることにより、標的物160の表面下の領域を観察することができる。
【0101】
図8は、本発明の原理による、距離ベースの空間的に配向されたラマンプローブの第2の実施形態のブロック図を示す。この図示の実施形態では、
図1Dに示す実施形態と同様に、レンズ150および151と光学的に連通する光デバイス810をさらに含む。
【0102】
この第2の実施形態では、レンズ150によって放出された光(または励起波長)は、光学的に透明な材料(例えば、光ファイバ)を介して光デバイス810に向けられ、標的物160を照射する励起光702に応答して生成されたラマン光704は、光デバイス810によって収集され、光学的に透明な材料(例えば、光ファイバ)の第2のセットを介して収集レンズ151に提供され得る。
【0103】
例えば、光デバイス810は、励起波長702を放出し、ラマン波長704を収集しながら、標的物160を走査するために使用され得る光プローブを備え得る。
【0104】
光プローブの先端は、レンズ150から励起波長を受け取る光学的に透明な材料(例えば、複数の光ファイバ)と、ラマン光波長を収集し、収集されたラマン波長を収集レンズ151に提供する第2の別個の光学的に透明な材料(例えば、光ファイバ)とを含み得る。
【0105】
あるいは、光デバイス810は、標的物が配置または収容され得るプラットフォームを含む固定デバイスであってもよい。本発明の一態様では、光デバイス810は、例えば励起波長702を受け取る複数の光ファイバと、例えばラマン光波長704を収集し、収集されたラマン光波長を収集レンズ151に提供する第2の複数の光ファイバとを含み得る。
【0106】
また、第1のセットの光ファイバおよび第2のセットの光ファイバは、例えば、
図7に示すように配向されてもよい。別の態様では、第1のセットの光ファイバは、励起波長702がある角度で標的物160上に投射されるように配向されてもよく、第2のセットの光ファイバは、標的物160に対してある角度で配向されてもよい。
【0107】
本発明のさらに別の態様では、第1のセットの光ファイバ(または透明な材料)は、標的物160の一方の側に配置されてもよく、第2のセットの光ファイバは、標的物160の他方の側に配置されてもよい。
【0108】
光デバイス810は、ハウジング110の外部に示されているが、光デバイス810は、ハウジング110の内部にあってもよいことが認識されるであろう。
【0109】
図9Aは、第1のセットの複数の光ファイバ(または他の光学的に透明な材料)910および第2のセットの光ファイバ920が一次元アレイに配置されている光デバイス810の第1の例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、光ファイバ910は、励起波長または光702を標的物160に提供するために使用され得る透過デバイスを表し、光ファイバ920は、ラマン光または波長704を収集し、収集された光を収集レンズ151(
図8参照)に提供するために使用され得る受容デバイスを表す。
【0110】
励起波長702とラマン波長704との間の空間距離710は、例えば、異なる収集ファイバ920を利用することによって変えることができる。
【0111】
図9Bは、第1のセットの光ファイバ910、および第2のセットの光ファイバ920がマトリクス状に配置された2次元アレイを含む光デバイス810の第2の例を示す。
【0112】
図9Aに示す配置と同様に、励起波長または光702は、ファイバ910を介して標的物160に提供されてもよく、ラマン光704は、光ファイバ920を介して収集されてもよい。
【0113】
この図示の実施形態では、空間距離710は、透過ファイバおよび受容ファイバに対して水平、垂直、または斜めに測定することができる。
【0114】
本発明の態様では、マスクを利用して、ラマン光波長を受け取る受容デバイスの数を制限することができる。マスクは、最小分離(または最大分離距離)を決定するために使用され得る。
図9Aに戻ると、透過ファイバ光ケーブル910と受容ファイバ光ケーブル920との間に最小分離距離を確立するために、マスク(図示せず)を受容ファイバ光ケーブル920の第2の列と第5の列との間に配置することができる。
【0115】
これにより、分離距離を可変とすることができる。
図10A~
図10Fは、光ファイバ910、920が円形または環状構成で配置される、光デバイス810の例示的な実施形態を示す。
【0116】
図10Aは、複数の収集ファイバ920に囲まれた中心透過ファイバ910の一例を示す。
【0117】
図10Bは、2列の複数の収集ファイバ920に囲まれた中心透過ファイバ910の一例を示す。
【0118】
図10Cは、中心収集ファイバ920を中心とする複数の透過ファイバ910の一例を示す。
【0119】
図10Dは、ラマン光704を収集するための光学的に透明な材料1020のリングによって囲まれた中心ベースの透過ファイバ910の一例を示す。
【0120】
図10Eは、複数の収集ファイバ920に囲まれた中心ベースの透過ファイバ910の一例を示す。
【0121】
図10Fは、光学的に透明な材料1010によって囲まれた中心ベースの収集ファイバ920の一例を示す。
【0122】
本発明の一態様では、収集された波長704からの励起波長702の物理的分離710は、中央照射(励起)領域および環状収集領域の使用によって達成され得る。本発明の別の態様では、収集された波長704からの励起波長702の物理的分離710は、環状照射(励起)領域および中央収集領域の使用によって達成され得る。別の態様では、収集波長領域は、励起波長照射領域と収集光波長領域との間の可変距離を可能にするために、励起波長領域から物理的に移動またはマスクされてもよい。
【0123】
本発明の別の態様では、励起波長領域および収集波長領域は、いわゆる透過構成において、標的物160の両側に配向されてもよい。
【0124】
本発明のさらに別の実施形態では、励起波長702は、ある角度で標的物160に向けられてもよい。同様に、収集された波長704は、標的物160に対してある角度で収集されてもよい。
【0125】
外部レーザーを備えた二波長共整列/反射型ラマンプローブ(
図1A)、内部レーザーを備えた二波長共整列/反射型nラマンプローブ(
図1B)、外部レーザーを備えた二波長共整列/透過型ラマンプローブ(
図1C)、および外部レーザーを備えた二波長空間配向/反射型ラマンプローブ(
図1D)の例示的な実施形態が論じられているが、本明細書に提示される励起波長の選択方法は、他の種類の二波長ラマンプローブ(例えば、外部レーザーまたは内部レーザーを備えた空間配向/反射型ラマンプローブ)にも適用可能であり、特許請求される本発明の範囲内であると見なされることが理解されよう。
【0126】
さらに、説明した励起波長の結合は、既知の数の既知の波長結合方法(例えば、ダイクロイックミラーによる波長ビーム結合または幾何学的ビーム結合、米国特許第7,420,996号明細書を参照)のいずれかによって実行され得ることが当業者には知られている。
【0127】
本発明の原理によれば、本明細書に開示される励起レーザー110、120は、同時に、並列で、または順次に動作させることができる。連続動作は、両方のレーザー源が同時に動作されるべきであったときに生成され得る偽信号、例えば蛍光を排除する。しかしながら、同時または並列動作が考慮されており、レーザー源の並列および逐次動作の両方が本発明の範囲内であると考えられることが理解されよう。したがって、光源の動作が並列である場合、2つの光源のレーザー光は、2つの波長で構成される単一の光ビームを形成するために互いに結合するように組み合わされてもよい。一方、(例えば、波長ビーム、幾何学的ビーム結合(例えば、米国特許第7420,996号明細書を参照)。
【0128】
光源の動作が連続的である場合、1つの光源のレーザー光は、単一波長の単一ビームが形成されるように、第2のレーザー光源からの光が存在しないことと「組み合わされる」と考えられる。
【0129】
現在使用されているラマンポンプ波長の例は、532nm、638nm、785nm、830nmおよび1064nmである。当技術分野において知られているように、より短い波長のポンプ波長は、ラマン強度がλ-4に比例するので、より高いラマン散乱信号をもたらす。
【0130】
しかしながら、より短いポンプ波長は蛍光を生じさせる可能性がより高く、これはラマンスペクトルの特徴を圧倒し得る。ラマン信号はλ-4に比例し、励起波長に対してシフトするが、蛍光は波長依存性であるため、ラマン連結の方法は、より短い波長の励起源で蛍光の悪影響を緩和する可能性を提供する。これにより、高レベルの蛍光が存在する場合にフィンガープリント領域のラマン信号を定量化することができないとき、ストレッチ帯域のラマン信号を定量化することが可能になる。最後に、短波長または長波長レーザー源の特定の波長は、任意の蛍光共鳴効果を緩和するように選択することができる。
【0131】
さらに、ストークススペクトルは、典型的には、アンチストークススペクトルよりも強い。当技術分野で周知のように、vのストークスシフト(波数、すなわちcm-1で測定される)は、プローブ波長λpに関連するラマン信号波長λsを以下によって生じさせる。
【0132】
【0133】
一般に、スペクトルの「フィンガープリント」領域は、約2000cm-1未満の波数を含むのに対して、「ストレッチ」領域は、約2000cm-1~4000cm-1の範囲の波数を含む。
【0134】
図2は、コンパクトな分光計において単一の検出器アレイを使用して2つの得られたストークス信号スペクトルを検出することができるように、2つの別個の波長によって励起され得るスペクトルのフィンガープリント領域およびストレッチ領域の決定の一例を示す。
【0135】
本発明の原理によれば、λp
1210およびλp
2220として示される2つのプローブ波長は、それぞれラマンスペクトルのストレッチ領域およびフィンガープリント領域を励起する。この例示の場合、第2の励起波長λp
1は、第1の励起波長λp
2220よりも短波長である。
【0136】
さらに、波数で表されるフィンガープリント領域Δv2、223に関連する例示的な波長範囲が示されている。図示のフィンガープリント領域213は、第1の励起波長λp
2220に関連するラマン信号波長λs
21225からλs
22227まで延伸するものとして示されている。
【0137】
波長λs
21215およびλs
22217は、それぞれシフト値V21およびV22によって波長λp
2220から決定され、シフト値V21およびV22は、上記の式1から決定することができる。
【0138】
この図示の例では、ラマン信号波長λs
21225は、後方散乱ポンプ光による分光計の飽和を回避するために、第1の励起波長λp
2220から従来法では1~2nm(ナノメートル)シフトされているが、ラマン信号波長λs
22227は、フィンガープリントの波数範囲Δv2223に関連する波長を計算することによって決定される。
【0139】
【0140】
さらに、ラマン信号ストレッチ領域Δv1、213に関連する波長範囲が波数で示されている。図示のストレッチ領域は、第2の励起波長λp
1210に関連するラマン信号波長λs
11215およびλs
12217から延伸するものとして示されている。
【0141】
波長λs
11215およびλs12217は、λp
1210からの波長からシフト値V11およびV12によってそれぞれ決定され、値V11およびV12は、上記の式1から決定することができる。
【0142】
したがって、ラマン信号波長λs
11215は、分光計の検出器素子が両方のポンプレーザーに利用されることを可能にするようにλs
21225と本質的に一致するように選択され、一方、ラマン信号波長λs
12217は、ストレッチ波数範囲Δv1213に関連する波長を計算することによって決定され、λs
11とλs
12との差はストレッチ領域を規定する。
【0143】
【0144】
さらに、第1および第2の励起波長によって生成されるラマン信号の収集および分析に使用される分光計の例示的な量子効率曲線QE(λ)230が示されている。
【0145】
したがって、第2の励起波長λp
1210および第1の励起波長λp
2220を適切に選択することにより、ストレッチ領域およびフィンガープリント領域の両方において生成されたラマン信号を単一の分光計の検出器素子によって捕捉することができる。
【0146】
本発明と見なされる主題を当業者に説明する目的で、フィンガープリント領域波数範囲およびストレッチ領域波数範囲はほぼ等しく、すなわちΔv1≒Δv2であり、λs
11≒λs
21およびλs
21≒λs
22となる。
【0147】
さらに、第2の励起波長λp
1210および第1の励起波長λp
2220は、同じ検出器アレイを使用してフィンガープリント領域とストレッチ領域の両方の捕捉を提供するように選択され得るが、本発明の原理による波長λp
1210およびλp
2220の選択は、分光計の分析性能の向上を提供する。
【0148】
図3は、本発明の原理による二波長ラマンプローブの波長を決定するための例示的なプロセスのフローチャート300を示す。
【0149】
本発明の原理によれば、ステップ310において、第1の励起波長(すなわち、λp
2)が選択される。第1の励起波長は、第1の励起波長によって照射されたときに標的物によって反射または散乱されたラマン信号のフィンガープリント領域と関連付けられる。
【0150】
第1の励起波長λp
2は、標的物による第1の励起波長の非弾性散乱によって生成されるラマンスペクトルの蛍光を緩和するために可能な限り短くなるように選択される。したがって、第1の励起波長λp
2は、調査中のラマン標的試料160および励起波長によって照射されたときのその特定の蛍光特性に基づいて決定される。
【0151】
例えば、重質石油(油)、生物学的材料、医薬材料、および透明液体などの材料の標的クラスについての第1の励起波長λp
2は、それぞれ1064nm、830nm、785nm、および532nmとして選択され得ることが当技術分野で公知であろう。
【0152】
特許請求される本発明を教示する目的で、785nm(ナノメートル)などの波長を第1の励起波長として選択することができ、785nmは、第1の励起波長によって照射されたときに標的物によって生成される蛍光を最小にするように選択される。
【0153】
フィンガープリント領域波数の所望の範囲(Δv2)は、ステップ320において、分光計の所望のスペクトル範囲および分解能(例えば2000cm-1)に基づいて選択される。
【0154】
第1の励起波長λp
2およびΔv2の選択は、分光計の最長測定波長(λs
22)(ステップ330)を次のように定義する。
【0155】
【0156】
この例示的な例では、785nmの第1の励起波長λp
2を使用して、最長測定波長λs
22は、上記の式4から931nmとして決定され得る。
【0157】
次いで、ラマン信号の収集および分析に使用される分光計に関連する量子効率スペクトルの検査を実行して、決定されたフィンガープリント領域における分光計量子効率応答のピーク波長QE(λ)(すなわち、波長λp
2(λs
21にほぼ等しい)とλs
22との間)を決定することができる(ステップ340)。
【0158】
量子効率曲線QE(λ)は、既知の波長帯域にわたってラマン信号を収集する分光計の効率の尺度を提供する。例えば、特許請求される発明を説明する目的で、決定されたフィンガープリント領域の範囲内の量子効率応答曲線(λQE)は、分光計の応答特性の現在の測定値または以前の測定値から決定することができる。
【0159】
例えば、特許請求される発明を当業者に説明する目的で、
図2を参照して、決定されたフィンガープリント領域223内の量子効率応答曲線230のピーク(最大)量子効率(λ
QE)235を決定することができる。特許請求される発明を教示する目的で、この例示された例におけるピーク量子効率は、800nmであると決定され得る。
【0160】
次いで、ステップ350において、目的のラマンシフトピーク(vpoi)を、調査中の特定の化学化合物(すなわち、標的物)について決定することができる。
【0161】
例えば、特許請求される本発明を当業者に説明する目的で、特定の標的物の目的のラマンシフトピークは、3000cm-1の波数に関連すると決定することができる。
【0162】
次いで、ステップ360において、ストレッチ領域での定量分析のための第2の励起波長(λp
1)を以下のように決定することができる。
【0163】
【0164】
したがって、第2の励起波長(λp
1)は、特定の標的物に関連する目的のラマンシフトピークと、第1の励起波長の選択によって規定されるフィンガープリント領域内の分光計のピーク量子効率とに基づいて決定され得る。
【0165】
第1の励起波長(λp
2)220として選択された例示的な波長から、3000cm-1の例示的な目的のラマンシフトピーク(vpoi)およびピーク量子効率(λQE)235について、第2の励起波長(λp
1)210は645nmと決定され得る。
【0166】
理解されるように、式5に開示される様式での第2の励起波長の選択は、フィンガープリント領域内の分光計の量子効率のピーク波長(λQE)と目的波長のラマンピークとの一致をもたらす。
【0167】
したがって、第2の励起波長に関連するラマン信号の分析は、分光計のピーク量子効率で、または実質的にそれに近いところで行われ、これは、標的物のより良好な分析性能をもたらす。
【0168】
第2の励起波長の選択は、式5に表されるようにピーク量子効率に基づいて決定され、決定された第2の励起波長がピーク量子効率と一致する場合に最も顕著なスペクトル性能が達成され得るが、第2の励起波長を決定するために非ピーク量子効率値が同様に利用され得ることが認識されるであろう。しかしながら、量子効率曲線QE(λ)の範囲内の量子効率が前記分光計に関連するピーク値をとる波長λ
QEが決定されることが好ましい。すなわち、本発明の原理によれば、「ピーク量子効率」という用語に関して使用される「ピーク」という用語は、通常および通例の意味で使用される「ピーク」または最大値である必要はない。むしろ、本明細書で使用される「ピーク」という用語は、スペクトル量子効率の最大(またはピーク)値付近の範囲であると考えられる。例えば、範囲は、スペクトル量子効率の最大値の波長数の±10%の範囲で規定してもよい。同様に、範囲は、スペクトル量子効率の最大値の波長数の±15%として規定してもよい。別の例では、範囲は、スペクトル量子効率の最大値の3dB以内の波長数として規定してもよい。例えば、
図2を参照すると、点240a、240bは、ピーク量子効率235に対して3db(またはハーフパワー)点を表す。
【0169】
本発明の別の態様によれば、特定の範囲は、受け取られたラマンスペクトルの信号対ノイズ比の所望の増加によって決定され得る。
【0170】
したがって、第2の励起波長ベースの式5の決定は、より一般的には、以下のように表すことができる。
【0171】
【0172】
式中、δは、最大(ピーク)量子効率値付近の範囲を表す。
したがって、本発明の原理によれば、「ピーク」という用語は、分光計の応答スペクトルの最大値および分光計の応答スペクトルの最大値に関する範囲のうちの1つであると考えられる。
【0173】
図3Bは、本発明の原理による二波長ラマンプローブを操作するための例示的なプロセスを示す。
【0174】
本発明の原理によれば、第1の励起波長による標的物の励起によって生成された第1のスペクトルラマン成分が、それぞれステップ310、365、368、371、374に示すように捕捉され、フィルタリングされ、受け取られ、処理され、記憶される。より具体的には、標的物は、第1の励起波長(すなわち、λp
2)によって照射され、第1の励起波長は、第1の励起波長によって照射されたときに標的物によって生成される蛍光を最小にするように選択されている。標的物によって反射または散乱されたラマン散乱光は、ステップ365で捕捉される。
【0175】
次いで、ラマン散乱光は、ステップ368でフィルタリングされ、ステップ371で分光計に提供される。
【0176】
ステップ374で、分光計に提供された反射または散乱信号に対して実行されたスペクトル分析が、次にステップ374において記憶される。
【0177】
ステップ360で、上述したように、第1の励起波長と、第1の励起波長に基づいて決定されたフィンガープリント領域内の分光計の量子効率とに基づいて、第2の励起波長(すなわち、λp
1)が決定される。
【0178】
本発明の原理によれば、上記の式5に基づいて第2の励起波長の決定が行われた後、既知の波長出力を有する従来のレーザーを使用する適合性を決定するために、決定された第2の励起波長の評価を従来のレーザーデバイスの波長性能に関して行うことができる。
【0179】
すなわち、1つまたは複数の選択された従来のレーザーの波長を式6に関して評価して、式5に基づいて波長を出力する特別に設計されたレーザーの代わりに、複数の選択された従来のレーザーのうちのどれを使用することができるかを決定することができる。
【0180】
決定された第2の励起波長による標的物160の励起によって生成された第2のラマン成分は、それぞれステップ377、381、384、387、390に示すように捕捉され、フィルタリングされ、受け取られ、処理され、記憶される。具体的には、標的物160は、ステップ377において第2の励起波長によって照射される。
【0181】
第2の励起波長に関連する散乱または反射型ラマン波長が捕捉され(ステップ381)、ステップ384でフィルタリングされる。
【0182】
ステップ387において、ラマン波長が分光計に提供され、ステップ390において、分光計によって実行されたスペクトル分析の結果が記憶される。
【0183】
ステップ395において、第1および第2のラマンスペクトル成分データが連結または結合され、第1のラマンスペクトル成分は、標的物160の化合物の同定を決定するために使用することができ、第2のラマンスペクトル成分は、標的物の化合物の濃度を決定するために使用され得る。あるいは、第1および第2のラマンスペクトルは、標的物のより詳細な分析を提供するために独立して処理され得る。本発明の原理による第1および第2の励起波長の選択は、ラマンスペクトルがフィンガープリント領域内の分光計の量子効率のピークと一致する(または実質的に一致する)ので、定量分析を向上させる。ラマン信号と分光計の量子効率のピークとの一致によって引き起こされる受容ラマン信号の信号対ノイズ比の増加は、標的物(または標的物内の分析中の成分)の際立った特徴の増加をもたらす。
【0184】
したがって、本明細書中に記載の二波長レーザーラマンプローブは、例えば、医薬バイオリアクター(すなわち、細菌が水性液体中で増殖する密閉容器)を監視する機会を提供する。別の態様では、Hストレッチ帯域が、CHおよびNHストレッチ帯域が監視される較正標準として使用され得る。例えば、CHおよびNHストレッチ帯域を使用して、タンパク質が細菌によって生成され、食品(炭水化物)が消費されるときの医薬バイオリアクター内のタンパク質の変化を決定することができる。本明細書に開示される二波長レーザーラマンプローブの別の用途によれば、添加剤の濃度は、純水のラマン信号を使用した較正によって決定され得る。
【0185】
図4Aおよび
図4Bは、典型的なシリコン検出器量子効率曲線(
図4A)および300nmの波長分散範囲についての第1のラマンポンプレーザー源についての予想量子効率対波数を示す対応する表(
図4B)を示す。
【0186】
例示的な量子効率対波数、および785nmポンプレーザー源に関連する波長シフトに関連する効率を示す
図4Aを参照すると、200cm
-1波数に関連する785nm励起波長の波長シフトは96%の量子効率を提供し、3600cm
1波数に関連する波長シフトは1%の効率を提供する。したがって、200cm
-1での785nm励起波長に関連するラマンシフト波長の分析は、3600cm
-1での785nm励起波長に関連するラマンシフト波長の分析よりも著しく良好であり、これは、分光計の性能が200cm
-1でのラマンシフト波長に対して著しく高いためである。
【0187】
図4Bは、異なる波長シフトに対する785nm励起波長に関連する分光計効率の量子効率を表にしている。
【0188】
図5Aおよび
図5Bは、本発明の原理による、励起波長の選択のために得られた効率改善および対応する表を示す。
【0189】
本発明の原理によれば、第1の波長および分光計のスペクトル効率に基づく第2の励起波長(例えば、680nm)の選択は、200cm-1で90%の量子効率を提供するが、3600cm-1の波数に関連する波長シフトは82%の量子効率を提供する。したがって、本発明の原理による第2の励起波長の選択は、ラマン信号の分析の著しい改善をもたらす。
【0190】
したがって、本発明の原理による、量子効率曲線のピークを目的の特定の波数帯域に一致させることによる2つの励起波長の選択は、分光計の信号処理能力の向上をもたらす。
【0191】
第1および第2の励起波長の選択の一例は、以下のように決定することができる。
【0192】
【0193】
したがって、本発明の原理による827.0676692nmの第2の励起波長の選択は、分析されるラマン信号における改善され増強された信号対ノイズ比を提供する。
【0194】
さらに、拡張ストレッチ帯域信号では、拡張ストレッチ帯域全体が、ケモメトリックアルゴリズムのための入力として、またはフィンガープリント領域からのデータを検証するための直交データとして、追加データのために使用され得る。
【0195】
例えば、本明細書中に記載されるラマンプローブ励起波長選択方法は、OH帯域水を使用してCH帯域およびNH帯域ならびに水を使用して脂肪およびタンパク質を監視することができるので、医療診断に使用することができる。
【0196】
本明細書中に記載される改善されたまたは強化された信号分析性能を有するCH帯域およびNH帯域の分析は、炎症または他の病理学的状態を診断するのに役立ち得る。
【0197】
本明細書に記載のラマンプローブ励起波長選択方法は、近赤外(NIR)分光法を使用したこのような化合物の分析が有効ではないため、水中(H2O)で成長させた化合物の医薬品プロセス分析に使用することができる。
【0198】
本明細書に記載のラマンプローブ励起波長選択方法は、CH帯域が重要であり、水が一般に汚染物質であるので、石油化学物質を分析するために使用することができる。
【0199】
一般的に言えば、本発明は、医療診断における、および石油化学処理またはバイオリアクターに関連する分析における、本明細書に記載の装置の使用を包含する。
【0200】
図6Aおよび
図6Bは、シクロヘキサンについての本発明の原理による、ストレッチ帯域領域における波長レーザーポンプ源を使用したラマン信号処理の強化の例を示す。
【0201】
具体的には、
図6Aは、シクロヘキサンを含む標的物に関連付けられたフィンガープリント領域およびストレッチ領域に関連付けられたスペクトル分析を示す。
図6Bは、
図6Aに示すストレッチ領域の拡大版を示す。
【0202】
図6Aは、2つのラマンスペクトル610および615を示し、スペクトル610は、785nm波長のレーザー励起信号を使用して得られ、スペクトル615は、785nmの785個の第1の励起波長および680nmの第2の励起波長を使用して得られ、680nm波長は、本明細書に開示される本発明の原理によって選択される。
【0203】
本発明の原理によれば、本明細書中に開示される二波長ラマンプローブ技術は、プロセス自動化市場における新しい用途を可能にする。例えば、-Hストレッチ領域対フィンガープリント領域の使用は、濃度変化の改善された定量的測定または濃度の予測定量化を提供し得る。例えば、本明細書中に示されるような波長選択を有する二波長ラマンプローブは、以下の分析を強化するために直接適用可能であり得る。
【0204】
・ 水中の石油生成物の%
・ 水中の汚染物質の%
・ 水中糖の%
・ 水中タンパク質の%
・ バイオファーマプロセス反応における糖/タンパク質の%対時間
・ 細菌副生成物の同定(例えば、所望のものを製造していますか?)
・ 1つのセットのピーク対別のピークの比強度(例えば、システム較正の複雑さを低減する)
・ 1つまたは複数のピークの強度を経時的に監視すること。
【0205】
・ ノイズフロア低減による高感度化(S/N向上)
・ 目的のラマン帯域および検出器の量子効率の最適化(例えば、アルキン帯域の信号の増幅)
・ 合否分析(例えば、特定の帯域の存在または欠如の特定)。
【0206】
要約すると、第1および第2の励起波長を備える二波長ラマンプローブシステムが標的物に衝突し、標的物による反射または散乱波長が分光計によって収集および分析される。本発明の原理によれば、励起波長は、ラマン信号を分光計のピーク量子効率と実質的に一致させることによってラマン信号の信号対ノイズ比を改善するために、標的物および分光計の量子効率(または既知の範囲内)に基づいて選択される。分光計のピーク量子効率と実質的に一致するラマン信号の収集は、ラマン信号の信号対ノイズ比の改善をもたらす。
【0207】
本発明は、レーザー源によって放出されるか、ラマン散乱およびレイリー散乱によって操作される「波長」に関して説明されているが、「波長」という用語は技術用語であり、公称所望波長付近の波長または波長帯域を指すことが認識されるであろう。本発明は、特定の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができることを認識する。したがって、本明細書は、限定的な観点ではなく例示的な方法で考慮されるべきであり、そのような修正はすべて本発明の範囲内に含まれることが意図されている。利益、他の利点、および問題の解決策は、特定の実施形態に関して上述されている。利益、利点、および問題の解決策、ならびに任意の利益、利点、または解決策を生じさせるか、またはより顕著になる可能性がある任意の要素は、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要な、要求される、または本質的な特徴または要素として解釈されるべきではない。
【0208】
本発明の目的のために、「波長」という用語は、「(特定の)波長の光」という表現の略語として使用されることがある。当業者は、これらの場合、表現が交換可能であることを認識するであろう。
【0209】
当業者は、本発明の目的のために、波数(ν、通常cm-1で与えられる)および波長(λ、通常nmで与えられる)を計算の目的のために同じ次元に変換しなければならないことを理解するであろう。
【0210】
本明細書で使用される場合、用語「備える」、「備える」、「含む」、「含む」、「有する」、「有する」、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図している。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていないかまたはそのようなプロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素を含むことができる。さらに、明示的に反対の記載がない限り、用語「または」は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を指す。例えば、条件AまたはBは、以下のうちのいずれか1つによって満たされる。Aは真(または存在する)であり、Bは偽(または存在しない)である。Aは偽(または存在しない)であり、Bは真(または存在する)である。AおよびBの両方が真(または存在する)である。
【0211】
本明細書で使用される「a」または「an」という用語は、本発明の要素および構成要素を説明するためのものである。これは、読者の便宜のために、および本発明の一般的な意味を提供するために行われる。本明細書の説明におけるこれらの用語の使用は、1つまたは少なくとも1つを含むと理解されるべきである。加えて、特に断らない限り、単数形は複数形も含む。例えば、「化合物」を含有する組成物への言及は、1つまたは複数の化合物を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または」という用語は、一般に、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「および/または」を含む意味で使用される。
【0212】
本明細書では、明示的に示されているか否かにかかわらず、すべての数値は「約」という用語によって修飾されるととる。「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値と等価である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と考えるであろう数の範囲を指す。いずれの場合も、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた(または下げられた)数字を含むことができる。
【0213】
同じ結果を達成するために実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を実行するそれらの要素のすべての組み合わせが本発明の範囲内であることが明確に意図される。記載された1つの実施形態から別の実施形態への要素の置換もまた、完全に意図され、企図される。
【国際調査報告】