(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】実験室試料分析装置、液体クロマトグラフィー用カートリッジ、及び試料を加熱するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/54 20060101AFI20230508BHJP
G01N 30/60 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G01N30/54 E
G01N30/54 F
G01N30/60 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559292
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 FI2021050222
(87)【国際公開番号】W WO2021191508
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501286093
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(72)【発明者】
【氏名】ムスタヤルヴィ ライモ
(72)【発明者】
【氏名】リンタ ヘイッキ
(72)【発明者】
【氏名】ヌオティオ バサ
(72)【発明者】
【氏名】エロ アルト
(72)【発明者】
【氏名】ペルトネン マッティ
(72)【発明者】
【氏名】マイリライネン オリ
(57)【要約】
本発明によれば、分析器であって、分析タスクを実行するために、1つ以上の液体クロマトグラフィーカラム(4、5)を備えるカートリッジ(3)を受容し、かつ、それを分析器に接続するためのインターフェースと、クロマトグラフィーカラム(5、6)を加熱するためのヒータ(11)と、液体クロマトグラフィーカラム(4、5)の収容のためのカートリッジケーシング(6)を備える、カートリッジ(3)と、液体クロマトグラフィーカラム(5)に熱的に接続された、加熱ブロック(7)と、加熱ブロック(7)をヒータ(11)に熱的に接続するための、熱インターフェース(8)と、を備える、分析器が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析器であって、
-カートリッジであって、
○液体クロマトグラフィーカラムと、
○前記液体クロマトグラフィーカラムの収容のためのカートリッジケーシングと、
○前記液体クロマトグラフィーカラムに熱的に接続された加熱ブロックと
○前記加熱ブロックをヒータに熱的に接続するための熱インターフェースと、を備える、カートリッジと、
-分析タスクを実行するために、前記カートリッジを受容し、それを前記分析器に接続するためのインターフェースと、
-前記クロマトグラフィーカラムを加熱するためのヒータと、を備える、分析器。
【請求項2】
前記ヒータが、温度を測定するためのサーミスタを備え、前記サーミスタが、前記カートリッジの前記熱インターフェースに熱的に接続可能である、請求項1に記載の分析器。
【請求項3】
前記ヒータが、前記カートリッジの前記熱インターフェースとの位置合わせを提供するために、前記ヒータに移動可能に装着された熱伝達部を備える、請求項1又は2に記載の分析器。
【請求項4】
前記ヒータが、前記熱伝達部を前記熱インターフェースに押圧するための、押圧要素を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項5】
液体クロマトグラフィーカートリッジであって、液体クロマトグラフィーカラムの収容のための、カートリッジケーシングと、前記液体クロマトグラフィーカラムに熱的に接続された加熱ブロックと、前記加熱ブロックをヒータに熱的に接続するための熱インターフェースと、を備える、液体クロマトグラフィーカートリッジ。
【請求項6】
前記熱インターフェースが熱テープで覆われている、請求項5に記載の液体クロマトグラフィーカートリッジ。
【請求項7】
前記加熱ブロックが、前記液体クロマトグラフィーカラムを少なくとも部分的に包被し、その表面に対して設定される、請求項5又は6に記載の液体クロマトグラフィーカートリッジ。
【請求項8】
カートリッジのケーシング内に配置された液体クロマトグラフィーカラム内の試料を加熱するための方法であって、
-前記カートリッジケーシングの内側に、前記カラムの表面と接触し、熱インターフェースを有する、加熱ブロックを設けることと、
-前記加熱ブロックを、ヒータの熱伝達要素と接触させることと、
-熱エネルギーを前記カラムに伝導するための前記ヒータにより、前記加熱ブロックを加熱することと、を含む、方法。
【請求項9】
-前記加熱ブロックの温度を測定することと、
-前記ヒータにより、前記加熱ブロックの前記温度を制御し、それによって、前記カラム内の試料の温度を制御することと、を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能な液体クロマトグラフィーカートリッジを利用する、分析器での実験室試料の調製及び分析に関する。より具体的には、本発明は、液体クロマトグラフィーカラム、及びその中の試料の加熱に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィー(LC)は、化学分離、化合物精製、及び化学分析の分野において周知である。液体クロマトグラフィーシステムの中心的構成要素は、クロマトグラフィーカラムである。カラムは、チューブ、例えば、それ自体がクロマトグラフィー固定相であるか、又は、クロマトグラフィー固定相を含む、若しくは支持する、透過性固体材料が充填された、毛細チューブを含む。クロマトグラフ移動相として、精製又は分離のための対象化合物の両方を含む流体混合物は、加圧下で、入口から出口端までカラムを通って流される。
【0003】
1つ以上の液体クロマトグラフィーカラムを、耐用年数が終わるとき、又は、カラムの種類を変更する必要があるときに、変更することができる交換可能なカートリッジに配置し得る。そのようなシステムの一種が、US2017/0023536に説明されている。クロマトグラフィーカートリッジを開示する別の文書は、米国特許出願第13882116号である。
【0004】
液体クロマトグラフィー、並びに、関連するシステム及び分析器に関する更なる文書は、本明細書の末尾にある引用リストに記載された文書で開示されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの具体的な実施形態は、従属請求項において定義される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、分析器であって、分析タスクを実行するために、1つ以上の液体クロマトグラフィーカラムを備えるカートリッジを受容し、かつ、それを分析器に接続するためのインターフェースと、クロマトグラフィーカラムを加熱するためのヒータと、液体クロマトグラフィーカラムの収容のためのカートリッジケーシングを備える、カートリッジと、液体クロマトグラフィーカラムに熱的に接続された加熱ブロックと、加熱ブロックをヒータに熱的に接続するための、熱インターフェースと、を備える、分析器が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、液体クロマトグラフィーカートリッジであって、液体クロマトグラフィーカラムの収容のための、カートリッジケーシングと、液体クロマトグラフィーカラムに熱的に接続された加熱ブロックと、加熱ブロックをヒータに熱的に接続するための熱インターフェースと、を備える、液体クロマトグラフィーカートリッジが提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、ヒータが、温度を測定するためのサーミスタを備え、サーミスタが、カートリッジの熱インターフェースに熱的に接続可能である、分析器が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、ヒータが、カートリッジの熱インターフェースとの位置合わせを提供するために、ヒータに移動可能に装着された熱伝達部を備える、分析器が提供される。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、ヒータが、熱伝達部を熱インターフェースに押圧するための、押圧要素を備える、分析器が提供される。
【0011】
本発明の第6の態様によれば、ヒータが、温度を測定するためのサーミスタと、熱を発生させるための抵抗と、を備え、サーミスタ及び抵抗が、カートリッジの熱インターフェースに熱的に接続可能である、分析器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の少なくともいくつかの実施形態による、分析器を例解する。
【
図4】本発明の少なくともいくつかの実施形態を裏付けることができる、例示的な装置を例解する。
【
図5】本発明の少なくともいくつかの実施形態を裏付けることができる、例示的な装置を例解する
図1の断面図である。
【
図6】開位置にあるヒータを示す、
図5の分析器を例解する。
【
図7】ヒータを開位置で示し、かつ部分断面図として示す、
図5の分析器のヒータ部を例解する。
【
図8】
図5、6、及び7の分析器のヒータ部のいくつかの部分を例解する。
【0013】
実施形態
定義
本文脈において、「液体クロマトグラフィー」という用語は、微細物質のカラム、又は毛細管通路を通って流体が均一に浸透する際に、流体溶液の1つ以上の成分を選択的に保持するプロセスを意味する。
【0014】
いくつかのLC法は、温度に非常に敏感である。例として、温度感度が現在どのように対処されているかを示すと、プレヒータスリーブを使用して、分析カラムに曝露する前に液体を加熱する。カラム内の液体の温度は環境温度に敏感すぎるため、環境気流を制御して、十分に安定させる必要がある。加熱ブロックへの熱的接続を介して、分析カラムを加熱することにより、より安定し、かつ制御可能な加熱及び温度制御を達成することができる。例示的な加熱ブロックは、分析計器に含まれるヒータ構成要素への、熱インターフェースを有する。カラム及び加熱ブロックは、カートリッジのケーシングに収容される。カートリッジは、交換可能であり、分析器から設置及び取り外すことができる。分析器にはヒータが含まれており、ヒータは、カートリッジへの熱的な接続及び接続解除が可能である。
【0015】
図1は、本発明の少なくともいくつかの実施形態を裏付けることができる、分析器のいくつかの部分を例解する。分析器は、分析物、試薬、及び試料の取り扱い及び処理、分析の実行のための機器と、その操作に必要とされる他の要素と、を含む。このような分析器の一般的な動作説明の開示は、以下の通りである。
図1は、具体的には、1つ以上の液体クロマトグラフィーカラムを含む、カートリッジを受容するためのインターフェースを備える、分析器を例解する。
【0016】
分析器は、カートリッジ3を受容するためのインターフェース2を含む、フレーム1を備える。インターフェースは、取り外し可能にカートリッジを分析器に結合するための機械的コネクタだけでなく、電気的接続、データ接続及び流体接続を備え得る。カートリッジは、ケーシング6を備える。ケーシング6は、液体クロマトグラフィー用の第1のカラム4と、液体クロマトグラフィー用の第2のカラム5と、を収容する。第2のカラム5は、加熱ブロック7内に部分的に囲まれている。加熱ブロック7は、良好な熱伝導能力を有する材料でできており、接触面間の良好な熱伝達、及び良好な熱伝導容量を確保するために、第2のカラムの表面と接触している。加熱ブロック7は、ケーシング6の外に延在する表面を有する。この表面は、分析器のヒータにカートリッジを接続するための熱インターフェース8を形成する。
【0017】
図2は、開位置にあるヒータを例解する。ここで、カートリッジ3のケーシング6から露出した熱インターフェース8を見ることができ、熱インターフェース8に接続するために、外側に延在する表面を有するヒータ11が、上を向いたヒータ11上に視認可能である。熱インターフェース8は、熱テープ14で覆われている。
【0018】
ヒータ11は、軸9に回転可能に装着されている。ヒータ11は、カートリッジの取り外しのために、ヒータ11がカートリッジから持ち上げられ、かつ、ヒータ11をカートリッジ3に接続するために、それに押圧されるように、ハンドル10を軸上で回転させることによって操作することができる。別のバージョンのヒータは、電子構成要素のケーシングと合体したハンドルを備えることができ、ヒータの回転はそれによって達成することができる。
【0019】
抵抗15から第2のカラム5までの、装置の要素間の熱伝達インターフェースが、
図3に描かれている。第1のインターフェースは、抵抗15と、ヒータ11の熱伝達部13との間にある。抵抗15は、ヒータ11の熱伝達部13を加熱するために使用され、良好な熱伝達を保証するために、熱伝達部に恒久的かつ確実に装着され得る。
図3の装置において、抵抗15は、抵抗15の交換を可能にするために、ネジにより熱伝達部13に装着される。第2の熱伝達インターフェースは、熱伝達部13と熱テープ14との間に形成され、第3の熱伝達インターフェースは、加熱ブロック7と熱テープ14との間に形成される。これらのインターフェースでは、良好な熱伝達を確保するために、熱テープ14が使用される。第4のインターフェースは、加熱ブロック7と第2のカラム5との間にある。他の全てのインターフェースは、装置が動作しているときに固定されるように構成され、修理又はメンテナンスが必要なときにのみ取り外される。ヒータ11(加熱ブロック)と、熱テープ14と、加熱ブロック7との間のインターフェースのうちの1つは、カートリッジ3の交換を可能にするために、開放可能に構成される。
【0020】
図6及び7は、開位置にあるヒータ11を示す。ここで、カートリッジは、容易に交換することができる。また、
図5及び6から、回転によるヒータの移動により、カートリッジ3の上に、正確かつ確実にヒータ11が配置されることが分かる。
【0021】
図8は、蓋又はカバーのないヒータ11を示す。この図では、熱伝達部13を熱インターフェース8に押圧するための、ばね12を見ることができる。抵抗15及びサーミスタ16も、熱伝達部13上に視認可能である。また、加熱ブロックと熱伝達部との間には、「熱テープ」14がある。これにより、ヒータ要素の接続(又は熱伝達インターフェース)が、汚れ、異物(例えば、紙の小さな破片が、熱伝達能力の大きな損失の原因となる)、ヒータ要素レベルの誤差に対してより堅牢になり、金属間の摩耗も防止される。
【0022】
サーミスタ16は、温度を測定するためのものであり、カートリッジの熱インターフェースに熱的に接続されている。更に、
図8のヒータ11は、カートリッジの熱インターフェースとの位置合わせを提供するために、ヒータ11に移動可能に装着されている、熱伝達部を備える。ヒータ11はまた、熱伝達部を熱インターフェースに押圧するための、押圧要素を備える。熱を発生させるために抵抗15が提供され、サーミスタ及び抵抗が、カートリッジの熱インターフェースに熱的に接続可能である。
【0023】
カートリッジは、例えば、Quick Connect Cartridge H(Thermo Fisher Scientific社)を含み得る。カートリッジの第2のカラム(又は、必要に応じて、第1のカラム)の温度は、Column Heaterと呼ばれるヒータで変更及び制御される。Column Heater及びQuick Connect Cartridge Hは、液体クロマトグラフィーカラムに効果的に熱を伝える部品であり、熱的に接続されている。これらの熱伝達部を正確に接続することは、正確な温度測定及び熱伝達のために不可欠である。
-Column Heaterは、熱伝達部を介してCartridgeのカラムを加熱する、抵抗を有する。
-Column Heaterは、温度を測定するサーミスタを有し、熱伝達部に接続されている。
-熱伝達部は、熱伝達部が一緒にロックされているときに、正確な位置決めを確保するために、ある程度の移動の自由度を有する。
-熱伝達部はばね12を有し、熱伝達部間の一定の力を確保する。
【0024】
ユーザは、カートリッジを交換するために、Quick Connect Cartridge HからColumn Heaterを容易に取り外すことができる。Column Heaterの位置は、センサで測定される。可動熱伝達部間の熱テープは、不適切な熱伝達接続のリスクを軽減する。
【0025】
ヒータ11は、カートリッジハウジング内にはなく、分析器の一部である。カートリッジの問題点は、カートリッジは消耗品であり、最大で週に一度交換することもあるため、外部ヒータよりもコストがかかること、ヒータを含むカートリッジのリサイクルがより困難であること、及び大量の組み立ての品質管理もより難しくなることである。本発明の少なくともいくつかの実施形態によるカートリッジでは、最も単純な機械部品だけがカートリッジ内に配置され、電子構成要素及び可動機械部品は、外部ヒータ上に配置されている。ヒータの要素及び部材は、確実(ユーザエラーに対するカウンター設計の特徴)かつ正確な(機構の摩耗及び破損に対するカウンター設計の特徴)熱伝達のために、カートリッジを介して、容易に(ユーザフレンドリーに)カラムに対して取り外し、かつ再度取り付けることができる。本発明の実施形態の少なくともいくつかは、熱伝達部を介して十分に良好に接触することができる取り外し可能な外部ヒータを、どのようにして機械的に作製するかという問題に答えている。
【0026】
上で説明されるカラムヒータ機構では、カラムがカートリッジケーシング内に位置し(US2017/0023536A1、及びその親出願である米国特許出願第13/882,116号に説明され、出願第PCT/US11/58229号として出願されている)、熱がカラム表面に伝達され、温度が、空気ではなく、接触する熱伝達部を介して、カラム表面から測定される。これらの機械部品は、カートリッジが挿入されたとき(Clamp Heaterの概念)、又は、カラムヒータケーシング(熱伝達部、温度測定センサ、熱生成構成要素を収容する)がそのロック位置に移動したときに接触する。主な移動方向は、スライド又は横向きではなく、回転又は直線であり、2つの対向する平坦な表面を、直接面一に位置合わせする。また、次のいずれかの要素がある。
-ヒータケーシング(加熱及び感知構成要素を収容する)を移動させて、固定カラム部に接触させる、又は
-カラム部が、ユーザによるカートリッジの設置中に、固定加熱及び感知構成要素と接触する。
-カートリッジの位置又は加熱/センサ部の位置を確保するために、ロックハンドルを使用する可能性がある。
【0027】
いくつかの既知の解決策は、熱がカラムに伝達され、空気を介して温度が測定される、という問題を有する。これにより、温度伝達が遅くなり、測定が、環境影響(外気温及び空気流動など)に左右されやすくなり、不正確になる。熱伝達の間で良好な機械的接触を行うことで、高速の熱伝達を行い、高速かつ正確な温度測定を行うことが重要である。これらの課題は、本発明の少なくともいくつかの実施形態によって対処することができる。
【0028】
また、いくつかの既知の解決策では、カラム交換と回転移動中との間に、カラム区画を洗浄することが説明されていないため、相互汚染のリスクがあり、及び、カラム使用されていないときに、カラムの端が、それぞれのシール部で個別にシールされていない場合、汚染のリスクがある。本開示のカートリッジ(内部にカラムを有する)は、容易に交換され、使用されていないときは、それぞれシーリングキャップを有する。
【0029】
図4は、本発明の少なくともいくつかの実施形態を裏付けることができる、装置の一例を例解する。
【0030】
ヒータ11の熱伝達部13は、カートリッジ3内のヒータブロックに対する、均等なレベリング及び熱接触圧力のために、四隅にばね仕掛けが施されている。この機能は、製造公差、及び、使用に伴い発生し得る摩耗に対する堅牢性のためのものである。ヒータ11の熱伝達部13と、加熱ブロック7との間の熱テープ14は、熱接触に対する堅牢性を高める。この機能は、製造公差、及び、ヒータ要素間に生じ得る小粒子のためのものである。
【0031】
カラム温度は、(±2℃まで)正確に制御することができる。ヒータ要素は、Quick Connect Cartridgeの外側に配置されているが、カラム自体を囲むヒータブロックに、しっかりと接続されている。これにより、Quick Connect Cartridgeの容易な交換を可能にする一方で、ヒータが、アッセイによって要求されるカラムにおける必要とされる温度を制御する子を可能にする。
【0032】
ヒータブロックの移動は、複数の方法又は機構で行うことができる。説明されている例は、正しい機能(熱伝達及び温度測定)を提供する。カラムのヒータブロックへの接続、ヒータブロックの熱伝達部への接続、及び、熱伝達部のサーミスタへの接続をしっかりと行い、また、接続時の熱伝達断面積を常に同じにすることが重要だが、温度測定を、カラム付近で正確に、かつ、提供された熱を制御するためにカートリッジが接続されるたびに同様に行うことも関連する。
【0033】
以下において、液体クロマトグラフィーに関連する試料処理及び分析方法のいくつかの特徴について説明する。
【0034】
分析器は、臨床患者試料の分析用の完全自動化ランダムアクセスワークフローを提供できる。WO2012/058632は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に関連して使用するのに特に好適である、試料調製及び分析のための自動化システムを開示する。本システムには、オンラインで以下の特徴が組み込まれている:試料調製、TurboFlow技術及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術、多重化技術、及び選択反応モニタリング(SRM)モードでのタンデム質量分析検出。多重化技術は、同時に実行することができる2つのLCチャネルを、1つの質量分析計に組み合わせた構成であり、試料処理能力を最大化する。SRMは、タンデム質量分析を使用して、特定の分析物を検出するために使用される高選択性技術である。
【0035】
試料チューブ又はカップを試料ラックに配置し、試料ラックを分析器に挿入することにより、患者試料を分析器に導入する。同様に、試薬を試薬ラックに配置し、試薬ラックを分析器に挿入することにより、試薬を分析器に導入する。ラック内の試料及び試薬は、それぞれのバーコードから自動的に識別される。バーコードを使用しない場合、分析器ソフトウェアを使用して、試料を手動で識別することができる。試料は、LISを介して、又は、局所的に分析器ソフトウェアを使用して定義される。分析器は、最も一般的な種類の試料チューブ及びバーコードを受け入れる。試料物質は、例えば、全血、血漿、又は血清であり得る。
【0036】
生体試料は、タンパク質及び脂質などの様々な内因性マトリックス化合物を含有する。これらの低揮発性化合物は、質量分析計のイオン源における、微妙なイオン形成プロセスを妨害する可能性がある、すなわち、イオンの抑制又はイオン増大を引き起こす可能性がある。したがって、生物由来の試料をLC/MSシステムに導入する前に、適切な前処理が必要である。試料調製プロセス中に、試料マトリックス由来の妨害化合物の量が大幅に減少し、次に、検出感度を高め、予想されるLCカラムのブロッキング及びMSの汚染を抑えることにより、計器性能が向上する。
【0037】
既定のマトリックスに存在するタンパク質の多くは、試料調製中に、溶液から沈殿する可能性があるが、分析中に干渉を引き起こす可能性のある、多くの成分がまだ溶液に残っている。これらは、妨害化合物から分析物を分離するために使用されるオンラインのクリーンアップ技術である、TurboFlow技術を使用して除去される。TurboFlow技術により、複雑な試料マトリックス及び分析物の迅速かつ効率的な分離が実現する。
【0038】
TurboFlow技術では、試料は、高速溶媒流でTurboFlowカラムに導入される。カラムには、小さな分子と相互作用する、大きなカラム粒子が充填されているが、タンパク質などの大きな分子は、カラムを通って流れて廃棄される。分子の分離は、大きな分子と小さな分子との間の様々な拡散特性、及び、拡散した小さな分子のカラム粒子への化学結合親和性に基づいている。
【0039】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、溶液中の混合物を個々の成分に分離するために使用される、化学的及び物理的分離である。分析器は、移動相と固定相との間で分配する試料の成分に分離が基づく、分配クロマトグラフィーを利用する。移動相は、様々な比率の溶媒で構成され、固定相は、クイックコネクトカートリッジ内の分析カラムの固体充填剤である。
【0040】
固定相に有利に働く構成比を有する成分は、カラム充填剤の活性基と、より多く、すなわちより強く相互作用するため、LCチャネルを通過するのに、より長い時間を必要とする。固定相に結合した分析物、及び他の化合物を溶出するには、極性の変化によって、分析物が固定相から移動相に分離するように、移動相の溶媒組成を変更する必要がある。分析物が分析カラムを通過するのにかかる時間は、保持時間と呼ばれる。保持時間は、分析物、固定相との相互作用の強さ、使用する溶媒の組成、温度、及び移動相の流量によって異なる。
【0041】
分析物は、最初に、自動試料調製プロセスで、試料マトリックスから抽出される。注入された試料抽出物(上清)は、次に、TurboFlow技術で精製され、分析物は、HPLCで、妨害化合物からクロマトグラフ的に分離される。次に、選択された分析物が検出され、質量分析計で測定される。結果は定量化され、分析物の濃度値がユーザに表示される。
【0042】
ユーザは、均質で完全に混合された試料を有する試料ラック、及び、必要な試薬を有する試薬ラックを、分析器に挿入する。チューブ内の全血試料は、分注前にミキシングチップを使用してオンボードで自動的に混合される。抽出容器を容器ディスクに持ち込み、分注のために開ける。内部標準品及び試料を含む試薬は、アッセイ固有のパラメータを使用して分注される。
【0043】
有機溶媒中の内部標準溶液は、タンパク質の沈殿を引き起こす。全血試料の場合、試薬が、試料中の赤血球を破裂させて分析物を放出させ、続いてタンパク質を沈殿させる。抽出容器の内容物を、シェーカーで混合する。振とうにより、タンパク質の沈殿、及び全血の溶解が増進される。試料及び試薬を混合して、均質な混合物/溶液を形成する。上清が注入ループに注入される。注入器ループをオンラインにすると、試料がLC溶媒流と混合される。試料流はTurboFlowカラムに入る。分析物及び内部標準品などの小さな分子は、タンパク質などの大きな分子から分離される。大きな(妨害)分子は洗い流されて廃棄され、その後、分析物及び内部標準品が、TurboFlowカラムから分析カラムにフラッシュバックされる。分析物及び内部標準品は、分析カラムに入ると、シャープなバンドに集中する。分析物及び内部標準品は、それぞれの極性、及び固定相への親和性に従って、試料内の他の化合物から分離される。有機溶媒の流入割合を増やすと、分析物及び内部標準品が放出され、分析カラムから質量分析計に溶出される。
【0044】
カートリッジ交換の一例は、以下の通りである。
【0045】
カートリッジ3には、LCドアを開くことにより、アクセスできる。クイックコネクトクランプのハンドル10を開くことにより、カートリッジ3を解放することができ、クイックコネクトカートリッジを解放する。カラムヒータ11は、ハンドル10のロックボタンを押圧し、ハンドルを引くことにより、開くことができる。クイックコネクトクランプが開いたことを示す、ダイアログボックスが開く。古いクイックコネクトカートリッジ3を、クランプから抜き取ることができる。使用済みカートリッジ3は、廃棄、又は、後で使用するために保管することができる。ここで、新しいカートリッジ3は、カートリッジ3のUSBコネクタを、クランプのUSBポートに挿入し、かつ、カートリッジ3を所定位置に押圧することにより、クランプに挿入することができる。カチッと音がするまで、ハンドル10を分析器に向かって押圧することにより、カラムヒータハンドル10を閉じる。クイックコネクトクランプのハンドル及びドアが閉じている。
【0046】
開示された本発明の実施形態は、本明細書に開示された特定の構造、プロセスステップ、又は材料に限定されず、当業者によって認識されるように、それらの均等物に拡張されることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0047】
本明細書を通じた「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所での「一実施形態において(in one embodiment)」又は「一実施形態において(in an embodiment)」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているとは限らない。
【0048】
本明細書で使用されるように、複数の項目、構造的要素、構成的要素、及び/又は材料が、便宜上、共通のリストに提示され得る。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバが、別個の一意のメンバとして個別に識別されているかのように解釈されるべきである。したがって、そのようなリストの個々のメンバは、反対の指示なしに、共通のグループでの提示のみに基づいて、同じリストの他のメンバと事実上同等であると解釈されるべきではない。更に、本発明の様々な実施形態及び例は、本明細書において、その様々な構成要素の代替物とともに参照され得る。そのような実施形態、例、及び代替物は、事実上互いに同等であると解釈されるべきではなく、本発明の別個の自律的な表現と見なされるべきであることが理解される。
【0049】
更に、説明された特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例など、多数の具体的なの詳細が提供される。しかしながら、関連技術の当業者は、本発明が、具体的な詳細のうちの1つ以上を伴わずに、又は他の方法、構成要素、材料などを用いて実施することができることを認識するであろう。他の例では、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造、材料、又は動作は、詳細には図示又は説明されない。
【0050】
前述の例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を例解するものであるが、当業者には、形式、使用法、及び実施の詳細における多数の変更が、発明力を行使することなく、かつ、発明の原則及び概念から逸脱することなく、行うことができることは明らかであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲による場合を除いて、本発明が限定されることは意図されていない。
【0051】
「備える」及び「含む」という動詞は、本明細書では、列挙されていない特徴の存在を除外も要求もしない、開かれた限定として使用される。従属請求項に記載されている特徴は、特に明記しない限り、相互に自由に組み合わされる。更に、本明細書全体を通した、「a」又は「an」、すなわち単数形の使用は、複数形を除外しないことが理解されるべきである。
【0052】
産業上の利用可能性
本発明は、化学分析器、及び分析器の製造に利用することができる。
【表1】
【表2】
【0053】
引用リスト
特許文献
US2017/0023536、US13882116、US15284411、US2008/017925A1、US2009/0014373A1、WO2012/058632
【国際調査報告】