(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】皮膚症状に用いるためのアセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 9/16 20060101AFI20230508BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230508BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230508BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230508BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230508BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230508BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230508BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20230508BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230508BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20230508BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20230508BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230508BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20230508BHJP
【FI】
C12N9/16
A61K8/64 ZNA
A61Q19/02
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q17/04
A61Q7/00
A61K38/48 100
A61P17/14
A61P17/16
A61P17/18
A61P17/02
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559407
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 GB2021050798
(87)【国際公開番号】W WO2021198684
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516008992
【氏名又は名称】ニューロ-バイオ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEURO-BIO LTD
【住所又は居所原語表記】Building F5,Culham Science Centre,Abingdon Oxfordshire OX14 3DB,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グリーンフィールド,スーザン
【テーマコード(参考)】
4B050
4C083
4C084
【Fターム(参考)】
4B050CC10
4B050DD11
4B050EE10
4B050JJ10
4B050KK20
4B050LL01
4C083AD411
4C083CC04
4C083CC06
4C083CC19
4C083CC37
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE16
4C083EE17
4C083EE22
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA24
4C084DC03
4C084MA17
4C084MA28
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZA92
(57)【要約】
本発明は、皮膚、並びに皮膚のシワ、変色、および創傷治療などの様々な皮膚症状を治療、予防または改善するための新規組成物、治療および方法に関する。本発明は、美容組成物および医薬組成物、並びにそれらを皮膚に使用して様々な症状を治療する方法にも及ぶ。例えば、前記組成物は、脱毛、禿頭症を治療するために、および皮膚美白剤として使用され得る。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢に関連する皮膚症状の予防、治療、または改善に使用するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項2】
前記アセチルコリンエステラーゼが、配列番号1に実質的に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含む、請求項1に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項3】
(i)3~50アミノ酸残基、3~40アミノ酸残基、3~35アミノ酸残基、もしくは3~30アミノ酸残基;または、
(ii)3~25アミノ酸残基、3~20アミノ酸残基、3~15アミノ酸残基、もしくは3~10アミノ酸残基;または、
(iii)3~8アミノ酸残基、もしくは3~7アミノ酸残基、
を含む、請求項1または請求項2に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項4】
配列番号2に実質的に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項5】
配列番号3に実質的に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項6】
配列番号5または配列番号6に実質的に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項7】
配列番号7または配列番号8に実質的に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項8】
配列番号9、配列番号10または配列番号11に実質的に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項9】
配列番号12に実質的に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項10】
デノボペプチド合成法を用いて作製される、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項11】
加齢に関連する皮膚症状を予防または治療するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の使用。
【請求項12】
前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片が、請求項1~10のいずれか1項に定義される通りである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記加齢に関連する皮膚症状が、小皺;シワ;変色;不均一な色素沈着;たるみ;毛穴の拡大;肌荒れ;乾燥肌;ストレッチマーク;不均一なトーン;傷;皮膚の肥厚または薄化;およびそれらのいずれかの組み合わせからなる症状の群から選択され得る、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片、あるいは請求項11または請求項12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
哺乳動物の皮膚におけるシワ形成のプロセスを予防、遅延、抑止、または逆転させることに使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項15】
皮膚の美容処置のための方法であって、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を皮膚に塗布することを含む、方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドまたはその生物学的に活性な変異体もしくは断片が、請求項1~10のいずれか1項に定義される通りである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(i)脱毛または禿頭症の予防、治療または改善に、または(ii)皮膚美白剤として使用するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、または生物学的に活性なその変異体もしくは断片。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項に定義される通りである、請求項17に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項19】
そのような治療を必要とする対象に、前記アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を投与すること、または投与を継続することを含む、脱毛もしくは禿頭症を予防、治療もしくは改善する、または皮膚を美白する方法。
【請求項20】
創傷の治療に使用するための、前記アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片。
【請求項21】
前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片が、請求項1~10のいずれか1項に定義される通りである、請求項20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
治療有効量の請求項1~10のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含み、薬学的に許容されるビヒクルを含んでいてもよい、皮膚症状の治療用医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~10のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を、薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることを含む、請求項22に記載の皮膚症状の治療用医薬組成物の製造方法。
【請求項24】
請求項1~10のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の有効量を含み、美容的に許容されるビヒクルを含んでいてもよい、美容組成物。
【請求項25】
請求項1~10のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を、美容的に許容されるビヒクルと組み合わせることを含む、請求項24に記載の美容組成物の製造方法。
【請求項26】
(a)日焼け止めクリーム、オイルまたはローション;
(b)保湿剤または保湿製剤;
(c)老化防止製剤、またはシワ防止製剤;
(d)発毛を刺激または促進する製剤;または
(e)美白製剤、
である、請求項22または請求項24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
(i)加齢に伴う皮膚症状;
(ii)創傷;
(iii)脱毛または禿頭症;または
(iv)美白剤として
の予防、治療または改善に使用するための、配列番号2、配列番号3、または配列番号5~12に実質的に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる1つまたは複数のペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、並びに皮膚のシワ、変色、および創傷治療などの様々な皮膚症状を治療、予防または改善するための新規組成物、治療および方法に関する。本発明は、美容組成物および医薬組成物、並びにそれらを皮膚に使用して様々な症状を治療する方法にも及ぶ。例えば、前記組成物は、脱毛、禿頭症を治療するために、および皮膚美白剤として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
酵素アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は、発生の様々な段階で様々な形で発現する。これらはすべて同じ触媒酵素活性を有するが、分子組成は異なる。「テール」(T-AChE-配列番号1)はシナプスで発現し、本発明者らは、T-AChEのC末端から切断され得る2つのペプチドを以前に同定しており、一方は「T14」(配列番号3)と呼ばれる14アミノ酸長のペプチドであり、他方は「T30」(配列番号2)として知られる30アミノ酸長のペプチドである。前記AChEのC末端ペプチド「T14」は、非加水分解作用の範囲に関与するAChE分子の顕著な部分であると特定されている。
【0003】
前記合成類似体(すなわち「T14」)、およびそれに続く、それが埋め込まれている、より大きく、より経験的に扱いやすく、より強力なアミノ酸配列(すなわち「T30」)は、「非コリン作動性」AChEについて報告されているものに匹敵する作用を示し、一方、T30配列内の不活性な15アミノ酸長のペプチド(すなわち、「T15」-配列番号4)は効果がない。前記T14ペプチドは、α7ニコチン受容体のアロステリック部位に結合するが、それ自体では効果がない。しかしながら、アセチルコリンまたは食事性コリンなどの一次配位子の存在下では、T14はこれらの一次因子によって誘導されるカルシウム流入を増強する。過剰なカルシウムはミトコンドリアに取り込まれ、そこで酸化的リン酸化が損なわれ、電子の漏出を引き起こす。その結果、フリーラジカルが形成され、細胞膜が不安定になり、前記細胞は死ぬ。
【0004】
皮膚の表皮層は、成熟した成人の継続的な再生プロセスの数少ない例の1つである。細胞周期プロセスは、T14の標的である(Greenfield et al.,2004)アルファ-7受容体(Arreondo et al.2002 J Cell Biol.159(2):325-36)の活性化によって駆動される。したがって、本発明者らは、ケラチノサイト皮膚細胞系に対するアセチルコリンエステラーゼのC末端に由来する様々なペプチドの効果を調査し、T14配列を含むT30ペプチド(配列番号2)が、驚くべきことに、皮膚細胞への細胞内カルシウム流入を刺激するだけでなく、細胞増殖も誘導することを観察した。特定の理論に縛られることなく、本発明者らは、T14、ならびにその生物学的に活性な変異体および断片がα7受容体上のアロステリック部位に結合し、それによってカルシウムの侵入を調節し、それが次に細胞の成長および増殖を促進することを提案する。
【0005】
したがって、本発明者らは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のペプチドが、加齢防止および創傷治癒を含む、皮膚細胞の再生に関連する様々な皮膚症状に適用されると考えている。本発明者らは、ケラチノサイトに対するアセチルコリンエステラーゼ由来のペプチドの増殖効果が、加齢に関連する皮膚症状の治療に適用可能であると仮定している。ケラチノサイトの増殖およびそれに伴うケラチノサイトの分化の減衰は、加齢に伴う皮膚症状を改善することが認められている(Gilhar et al,2004、加齢した人間の皮膚は、表皮の厚さの減少、真皮表皮接合部の平坦化、およびケラチノサイト増殖の減少を示す)。
【0006】
ケラチノサイト成長因子は、上皮組織の増殖および分化を調節することが示されており、毛包のクローン形成幹細胞をさえ調節し得る(J.Invest Dermatol.2000,April,114(4):667-730)。したがって、本発明者らは、本発明のポリペプチドを使用して、脱毛および/または禿頭症を治療をもし得ると考えている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の第1の態様では、加齢に関連する皮膚症状の予防、治療または改善に使用するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様では、加齢に関連する皮膚症状を予防、治療または改善する方法が提供され、前記方法は、そのような治療を必要とする対象に、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を投与する、または投与を継続することを含む。
【0009】
本発明の第3の態様では、加齢に関連する皮膚症状を予防または治療するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の使用が提供される。
【0010】
本発明の第4の態様では、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を皮膚に塗布することを含む、皮膚の美容処置のための方法が提供される。
【0011】
したがって、第5の態様では、脱毛または禿頭症の予防、治療または改善に使用するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片が提供される。
【0012】
本発明の第6の態様では、脱毛または禿頭症を予防、治療または改善する方法が提供され、前記方法は、そのような治療を必要とする対象に、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を投与する、または投与を継続することを含む。
【0013】
本発明の第7の態様では、脱毛または禿頭症を予防または治療するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の使用が提供される。
【0014】
さらに、本発明者らは、本発明のポリペプチドが皮膚美白剤として使用され得ると考えている。
【0015】
したがって、第8の態様では、皮膚美白剤として使用するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片が提供される。
【0016】
本発明の第9の態様では、皮膚を美白する方法が提供され、前記方法は、そのような治療を必要とする対象に、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を投与する、または投与を継続することを含む。
【0017】
本発明の第10の態様では、皮膚美白のための、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の使用が提供される。
【0018】
アセチルコリンエステラーゼは、アセチルコリンを加水分解するセリンプロテアーゼであり、当業者には周知である。脳に見られるアセチルコリンエステラーゼの主要な形態は、尾部アセチルコリンエステラーゼ(T-AChE)として知られている。ヒト尾部アセチルコリンエステラーゼ(Gen Bank:AAA68151.1)の一実施形態のタンパク質配列は、長さが614アミノ酸であり、以下のように配列番号1として本明細書に提供される:
【0019】
【0020】
タンパク質が放出される間に配列番号1の最初の31個のアミノ酸残基が除去され、それによって583個のアミノ酸配列が残ることは理解されるであろう。したがって、好ましくは、アセチルコリンエステラーゼは、より好ましくはN末端の31個のアミノ酸を除いて、実質的に配列番号1に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含むか、またはそれからなる。
【0021】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチドは、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の300、200、100または50個のアミノ酸に由来するアミノ酸配列またはその短縮型を含み、好ましくは、前記アセチルコリンエステラーゼは、実質的に配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の50アミノ酸に由来するアミノ酸配列またはその短縮型を含む。
【0023】
アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の40アミノ酸に由来するアミノ酸配列、またはその短縮型を含む。アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の30アミノ酸に由来するアミノ酸配列、またはその短縮型を含む。
【0024】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、3~50アミノ酸残基、3~40アミノ酸残基、3~35アミノ酸残基、または3~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、3~25アミノ酸残基、3~20アミノ酸残基、3~15アミノ酸残基、または3~10アミノ酸残基、を含む。
【0025】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、4~50アミノ酸残基、4~40アミノ酸残基、4~35アミノ酸残基、または4~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、4~25アミノ酸残基、4~20アミノ酸残基、4~15アミノ酸残基、または4~10アミノ酸残基、を含む。
【0026】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、5~50アミノ酸残基、5~40アミノ酸残基、5~35アミノ酸残基、または5~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、5~25アミノ酸残基、5~20アミノ酸残基、5~15アミノ酸残基、または5~10アミノ酸残基、を含む。
【0027】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、6~50アミノ酸残基、6~40アミノ酸残基、6~35アミノ酸残基、または6~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、6~25アミノ酸残基、6~20アミノ酸残基、6~15アミノ酸残基、または6~10アミノ酸残基、を含む。
【0028】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、7~50アミノ酸残基、7~40アミノ酸残基、7~35アミノ酸残基、または7~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、7~25アミノ酸残基、7~20アミノ酸残基、7~15アミノ酸残基、または7~10アミノ酸残基、を含む。
【0029】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、8~50アミノ酸残基、8~40アミノ酸残基、8~35アミノ酸残基、または8~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、8~25アミノ酸残基、8~20アミノ酸残基、8~15アミノ酸残基、または8~10アミノ酸残基、を含む。
【0030】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、9~50アミノ酸残基、9~40アミノ酸残基、9~35アミノ酸残基、または9~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、9~25アミノ酸残基、9~20アミノ酸残基、9~15アミノ酸残基、または9~10アミノ酸残基、を含む。
【0031】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、10~50アミノ酸残基、10~40アミノ酸残基、10~35アミノ酸残基、または10~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、10~25アミノ酸残基、10~20アミノ酸残基、10~15アミノ酸残基、または10~12アミノ酸残基、を含む。
【0032】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、11~50アミノ酸残基、11~40アミノ酸残基、11~35アミノ酸残基、または11~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、11~25アミノ酸残基、11~20アミノ酸残基、11~15アミノ酸残基、または11~13アミノ酸残基、を含む。
【0033】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、12~50アミノ酸残基、12~40アミノ酸残基、12~35アミノ酸残基、または12~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、12~25アミノ酸残基、12~20アミノ酸残基、12~15アミノ酸残基、または12~14アミノ酸残基、を含む。
【0034】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、13~50アミノ酸残基、13~40アミノ酸残基、13~35アミノ酸残基、または13~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、13~25アミノ酸残基、13~20アミノ酸残基、13~15アミノ酸残基、を含む。
【0035】
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、14~50アミノ酸残基、14~40アミノ酸残基、14~35アミノ酸残基、または14~30アミノ酸残基、を含む。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、14~25アミノ酸残基、14~20アミノ酸残基、14~17アミノ酸残基、を含む。
【0036】
より好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、10~35アミノ酸を含む。最も好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、14~30アミノ酸を含む。
【0037】
さらにより好ましくは、ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、3~12アミノ酸、3~10アミノ酸、3~8アミノ酸を含む。さらにより好ましくは、ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、4、5、または6個のアミノ酸を含む。最も好ましくは、ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、4または6個のアミノ酸を含む。
【0038】
T30のアミノ酸配列(配列番号1の最後の30アミノ酸残基に対応する)は、以下のように配列番号2として本明細書に提供される:
KAEFHRWSSYMVHWKNQFDHYSKQDRCSDL (配列番号2)
したがって、一実施形態では、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、実質的に配列番号2に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含むか、またはそれからなる。
【0039】
T14ペプチドのアミノ酸配列(配列番号1の末端に向かって位置する14個のアミノ酸残基に対応し、T30に見られる最後の15個のアミノ酸を欠く)は、以下のように配列番号3として本明細書に提供される:
AEFHRWSSYMVHWK (配列番号3)
したがって、一実施形態では、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、実質的に配列番号3に示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含むか、またはそれからなる。
【0040】
例えば、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来し、T14配列を含むポリペプチドであるT30が、ケラチノサイトにおけるカルシウム流入を誘導し、増殖を刺激することを実証する、
図1および
図3に示されるように、上記の断片の長さのいずれも、それらがT14(配列番号3)またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含む場合、活性であることが理解されるであろう。
【0041】
したがって、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、T14(配列番号3)より多いまたは少ないアミノ酸残基を有し得るが、それにもかかわらず、T14(配列番号3)、またはその生物学的に活性な変異体または断片を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチド、および生物学的に活性なその変異体または断片が、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来し、T14(配列番号3)、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含むかまたはそれらからなることが好ましい。
【0042】
例えば、一実施形態では、前記アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、長さが8~50アミノ酸残基であり得て、T14(配列番号3)、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片を含み得る。他の実施形態では、前記アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、長さが最大50、40、または30個のアミノ酸であり得て、T14(配列番号3)、またはその生物学的に活性な変異体または断片を含み得る。
【0043】
しかしながら、実施例に記載されるように、他の実施形態では、T14よりも短いペプチド(例えば、ペプチドNBP-402、403、610、611、806、807、808および1012)が驚くほど活性であることが示されている。
【0044】
したがって、好ましい実施形態では、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、3個のアミノ酸を含むか、またはそれらからなる。
【0045】
好ましい一実施形態では、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、4個のアミノ酸を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、配列番号5または配列番号6に実質的に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0046】
配列番号5(すなわち「NBP-402」)のアミノ酸配列は、WKAEである。有利なことに、このペプチドは天然に存在しないため、対象の皮膚に使用すると分解し得るプロテアーゼに対する耐性を示す。したがって、配列番号5が好ましい。
【0047】
配列番号6(すなわち「NBP-403」)のアミノ酸配列は、KAEFである。
【0048】
好ましい一実施形態では、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、5個のアミノ酸を含むか、またはそれらからなる。
【0049】
好ましい一実施形態では、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、6個のアミノ酸を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、実質的に配列番号7または配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0050】
配列番号7(すなわち「NBP-610」)のアミノ酸配列は、SSYMVHである。
【0051】
配列番号8(すなわち「NBP-611」)のアミノ酸配列は、SYMVHWである。
【0052】
好ましい一実施形態では、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、7個のアミノ酸を含むか、またはそれからなる。
【0053】
好ましい一実施形態では、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、8個のアミノ酸を含むか、またはそれからなる。好ましくは、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、配列番号9、配列番号10、または配列番号11に実質的に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0054】
配列番号9(すなわち「NBP-806」)のアミノ酸配列は、FHRWSSYMである。
【0055】
配列番号10(すなわち「NBP-807」)のアミノ酸配列は、HRWSSYMVである。
【0056】
配列番号11(すなわち「NBP-808」)のアミノ酸配列は、RWSSYMVHである。
【0057】
好ましい一実施形態では、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、9個のアミノ酸を含むか、またはそれからなる。
【0058】
好ましい一実施形態では、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、10個のアミノ酸を含むか、またはそれからなる。好ましくは、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、実質的に配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0059】
配列番号12(すなわち「NBP-1012」)のアミノ酸配列は、YMVHWKAEFHである。有利なことに、このペプチドは天然に存在しないため、対象の皮膚に使用すると分解し得るプロテアーゼに対する耐性を示す。したがって、配列番号12が好ましい。
【0060】
実施例に記載されているように、これらの直鎖状ペプチドはα7受容体のアロステリック部位に結合し、それによってカルシウムイオンの侵入を調節し、細胞の成長および増殖を促進する。さらに、これらのペプチドは細胞の生存率に悪影響を与えない。
【0061】
T15のアミノ酸配列(配列番号1の最後の15アミノ酸残基に対応する)は、以下のように配列番号4として本明細書に提供される:
NQFDHYSKQDRCSDL (配列番号4)
したがって、一実施形態では、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、配列番号4に示されるアミノ酸配列から実質的に構成されない。
【0062】
本明細書で定義されるポリペプチド、その変異体または断片は、環化され得る。環状ポリペプチドは、アミノ酸の環状鎖を形成するペプチド結合でN末端とC末端自体とが結合しているペプチド鎖である。例えば、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチドは、T14(配列番号3)の環化形態であり得る。
【0063】
本明細書に記載のポリペプチドまたはペプチドのいずれも、当業者に通常知られている標準的なペプチド合成法を使用してデノボ合成され得ること、したがって、本明細書に記載の美容用途/治療用途のいずれにも使用され得ること、が理解されるであろう。したがって、いずれかのペプチドは、本明細書で提供される配列の隣接するアミノ酸間にペプチド結合を形成して完全な配列長を構築することによって生成され得る、すなわち、第1のアミノ酸が提供され、そこに第2のアミノ酸が結合され、ペプチドの望ましい長さまで持続する。したがって、完全なアセチルコリンエステラーゼ配列またはその短い短縮型から開始し、望ましいペプチド長に達するまでN末端および/またはC末端からアミノ酸を除去することによってポリペプチドの長さを短縮する必要はない。実際、速度、利便性、およびコストのために、ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、デノボペプチド合成法を使用して作成されることが好ましい。
【0064】
前記加齢に関連する皮膚症状は、以下からなる症状の群から選択され得る:小皺;シワ;変色;不均一な色素沈着;たるみ;毛穴の拡大;肌荒れ;乾燥肌;ストレッチマーク;不均一なトーン;傷;皮膚の肥厚または薄化;およびそれらのいずれかの組み合わせ。
【0065】
好ましくは、本発明のポリペプチドは加齢の徴候を遅らせるためのものである。好ましくは、前記加齢に関連する皮膚症状は、シワまたはシワ形成である。したがって、加齢の兆候を遅らせることは、哺乳類の皮膚のシワ形成のプロセスを防止、遅延、停止、または逆転させることを意味し得る。
【0066】
したがって、本明細書に記載のペプチドは、「加齢」自体ではなく「加齢の影響」を軽減することが理解される。言い換えれば、前記ペプチドの投与は前記対象の見かけの年齢を減少させ、皮膚を実際より若く見せ得る。
【0067】
現在、DNAメチル化(またはエピジェネティクス)の検出は、皮膚の加齢の読み取りとして使用され(Clinical Epigenetics,12,105(2020))、レチノール(ビタミンA1-アルコールとしても知られる)は、他のアンチエイジングスキントリートメント製品を比較するための「ゴールドスタンダード」ベンチマークとして使用される。しかしながら、皮膚年齢の外観を改善し得る改善された方法を提供する必要があることは明らかである。
【0068】
本明細書で使用される「シワ」という用語は、皮膚のひだまたは折り目を指し得る。シワの長さを測定することにより、シワの形成を評価し得る。
【0069】
シワ形成の重症度は、シワ重症度尺度、例えば、シワ重症度評価尺度(WSRS)およびGlogauの分類を使用して決定され得る。
【0070】
シワは、小皺から深い皺まで、サイズおよび強度が様々である。皮膚のシワは、動的シワ、静的シワ、シワのひだの3種類に分類され得る。動的シワは、皮膚の下にある筋肉の収縮が繰り返されることによって引き起こされる。例えば、しかめっ面またはシワを寄せることにより、眉の間のシワ(すなわち、眉間のシワ)を生じるが、一方で、微笑んだり、目を細めることにより、目の末端の角(すなわち、目尻線)にシワが生じる。顔が中立または自然な位置にあるときの、静的シワまたは安静時のシワは、日光による損傷、栄養不足、喫煙、および遺伝的要因など、または痙攣もしくは筋肉の緊張からの、様々な要因から生じ得る皮膚の弾力性の喪失に起因する。例えば、鼻と口との間の深い溝のように見える、シワのひだは、下部の顔の構造のたるみから生じる。
【0071】
本発明のポリペプチドは、美白剤としても使用され得る。
【0072】
実施例に記載されるように、本発明者らは、ヒトケラチノサイトについて広く使用され特徴付けられたモデルであるケラチノサイト細胞株HaCaTに対して、細胞内カルシウム流入のアッセイおよび細胞増殖アッセイを行った。本発明者らは、驚くべきことに、前記直鎖状ペプチドT30が、細胞増殖の刺激と相関するHaCaTにおける細胞内カルシウム流入を誘導し得ることを示した。本発明者らはまた、T30の不活性成分「T15」が細胞内カルシウム流入を誘導せず、細胞増殖を刺激しないことを示し、T30の活性成分がT14であることを示唆している。
【0073】
本発明者らはまた、シワなどの加齢に関連する皮膚症状の予防、治療または改善に有効であることに加えて、本発明のポリペプチドは創傷の治療にも使用され得ると考えている。
【0074】
したがって、本発明の第11の態様では、創傷の治療に使用するための、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片が提供される。
【0075】
本発明の第12の態様では、創傷を治療する方法が提供され、前記方法は、そのような治療を必要とする対象に、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を投与する、または投与を継続することを含む。
【0076】
ポリペプチドまたはその生物学的に活性な変異体もしくは断片は、第1の態様で定義された通りであり得る。
【0077】
本発明による「創傷治療」は、好ましくは、上皮組織の再上皮化を含む。創傷の再上皮化には、角化細胞の移動および増殖が必要である。有利なことに、本発明のポリペプチドはケラチノサイトの増殖を刺激し、したがって創傷治癒の増殖期を助ける。
【0078】
再上皮化は、創傷を閉じるための上皮細胞の移動による無傷の上皮の回復として定義される。上皮は体の内側および外側のすべての表面を覆っている。したがって、治療は再上皮化を含み、いずれかの上皮創傷、すなわち身体の内部または外部に使用され得る。
【0079】
好ましくは、創傷治癒率が増加する。
【0080】
創傷治癒率
好ましくは、本発明のポリペプチドは、創傷治癒の速度を増加させる。創傷治癒率は、1日あたりの絶対治癒面積、1日あたりの初期治癒面積のパーセンテージ、および1日あたりの創傷中心に向かっての創傷縁の進行、創傷閉鎖を完了するまでの時間、または本明細書に記載の方法を含む、当技術分野で知られているいずれかの他の方法、に関連し得る。創傷治癒速度の増加は、対照治療または未治療の創傷の治癒時に生じる治癒レベルと比較して達成されたものを指す。
【0081】
創傷部位
本発明のポリペプチドで治療された創傷は、創傷が生じ得るいずれかの身体部位、およびいずれかの組織または臓器に存在し得る。前記皮膚は、創傷治癒率が高まる好ましい部位である。本発明者らは、本発明のポリペプチドが、あらゆるタイプの上皮創傷における創傷治癒を有益に増加させ得ると考えている。本発明の効果が見られ得る特定の創傷の例としては、皮膚の創傷(火傷、切開創、褥瘡など)、肺の創傷、角膜瘢痕化を引き起こすものなどの目の創傷(レーシック手術、ラセック手術、PRK手術、緑内障濾過手術、白内障手術、または水晶体嚢が瘢痕化し得る手術などの眼科手術による瘢痕の抑制を含む);被膜収縮の対象となる創傷(乳房インプラントの周囲でよく見られる);唇および口蓋などの口腔の創傷(例えば、口唇裂または口蓋裂の治療による瘢痕を抑制するため、または閉鎖または口腔潰瘍を促進するため);消化組織および生殖組織などの内臓の創傷;腹腔、骨盤腔および胸腔などの体腔の創傷(瘢痕化の抑制により、癒着形成の発生数および/または形成される癒着のサイズが減少し得る);並びに外科的創傷(特に、毛髪移植手術のための瘢痕修正またはストリップ移植片の分離などの美容処置に関連する創傷)、からなる群から選択される創傷が挙げられる。本発明のポリペプチドを使用して、再上皮化、創傷治癒の速度を高め、および/または皮膚の創傷に関連する瘢痕化を予防、軽減、または阻害することが特に好ましい。
【0082】
切開創は、本発明のポリペプチドで治療され得る創傷の好ましい群であり得る。外科的切開創は、本発明の薬剤および方法を利用して創傷治癒を促進し得る、特に好ましい創傷群を構成し得る。
【0083】
本発明のポリペプチドは、形成外科手術または美容外科手術に関連する創傷を治癒するために使用され得る。形成外科や美容外科の多くは選択的外科手術で構成されているため、本発明のポリペプチドは、手術前、および/または創傷閉鎖時(例えば、縫合前または後)に投与することが容易に可能であり、この使用は、本発明の特に好ましい実施形態を意味する。
【0084】
通常、外科的治療において、本発明のポリペプチドを投与し得る好ましい経路は、局所注射(皮内注射など)によるものである。そのような注射は隆起した水疱を形成し、それを外科的治療の一部として切開してもよく、または、例えば縫合によって、創傷を閉じた後、創傷縁に注入することによって水疱を隆起させ得る。あるいは、前記ポリペプチドは、クリーム製剤または包帯で投与されてもよく、または切開閉鎖に使用される縫合糸にコーティングされ得る。
【0085】
瘢痕修正は、既存の瘢痕によって引き起こされる美容的および/または機械的破壊を軽減するために、既存の瘢痕を「修正」する(例えば、切除または再調整によって)外科的治療である。おそらくこれらの中で最もよく知られているのは、2つのV字型の皮弁を入れ替えて張力線を回転させる「Z形成術」である。瘢痕修正に関連する治療における本発明のポリペプチドの使用は、本発明による好ましい使用を意味する。
【0086】
火傷による創傷(これは、本発明の目的のために、加熱されたガスまたは固体への曝露、および高温の液体が関与する熱傷;極度の低温にさらされることによって生じる「冷凍熱傷」;放射線火傷;並びに腐食剤によるものなどの化学火傷、を含むと見なされ得る)は、そのように苦しんでいる個人の広い領域に広がり得ることが認識されている。したがって、火傷は、患者の体の大部分を覆う瘢痕形成を引き起こし得る。この広範囲の被覆は、形成された瘢痕が美容上の重要性が高い領域(顔、首、腕または手など)または機械的重要性が高い領域(特に関節を覆う領域または周囲の領域)を覆うリスクを高める。熱い液体による火傷は、子供が(例えば、鍋またはやかんなどをひっくり返した結果として)よく被り、子供は比較的体が小さいため、特に体の大きな部分に大きな損傷を与え得る。したがって、火傷後の瘢痕に関連する美容的および機械的障害のリスクが高くなる。大きな火傷の後は、皮膚移植が治療として使用される。本発明は、皮膚移植片と組み合わせて使用して、移植片から被覆されていない創傷への上皮細胞の移動を促進し、皮膚の移植されていない領域に障壁を迅速に確立し得る。
【0087】
本発明者らは、本明細書に記載のように、長さの異なる多数の直鎖状ペプチドが、皮膚またはケラチノサイトに関連する治療用途および美容用途の範囲を有することを実証した。これらのペプチドは合成され、外因的に皮膚(または毛包)に塗布され、美容効果または治療効果を発揮する。
【0088】
したがって、本発明の第13の態様では、以下の予防、治療または改善に使用するための、実質的に配列番号2、配列番号3または配列番号5~12に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる1つまたは複数のペプチド、その誘導体または類似体が提供される:
(i)加齢に関連する皮膚症状;
(ii)創傷;
(iii)脱毛または禿頭症;または
(iv)美白剤として。
【0089】
本発明の第14の態様では、以下を予防、治療または改善する方法が提供され;
(i)加齢に関連する皮膚症状;
(ii)創傷;
(iii)脱毛または禿頭症;または
(iv)美白剤として。
【0090】
前記方法は、そのような治療を必要とする対象に、実質的に配列番号2、配列番号3、または配列番号5~12に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれらからなる1つまたは複数のペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の治療有効量を投与する、または投与を継続することを含む。
【0091】
本発明の第15の態様では、以下を予防、治療または改善する際に使用するための、実質的に配列番号2、配列番号3、または配列番号5~12に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、1つまたは複数のペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の使用が提供される:
(i)加齢に関連する皮膚症状;
(ii)創傷;
(iii)脱毛または禿頭症;または
美白剤として。
【0092】
本発明の第16の態様では、皮膚の美容処置方法が提供され、前記方法は、実質的に配列番号2、配列番号3、または配列番号5~12に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれらからなる1つまたは複数のペプチド、またはその誘導体もしくは類似体を皮膚に塗布することを含む。
【0093】
「誘導体またはその類似体」という用語は、アミノ酸残基が類似の側鎖またはペプチド主鎖特性を有する残基(天然アミノ酸、非天然アミノ酸またはアミノ酸模倣体のいずれか)によって置換されているペプチドを意味し得る。さらに、そのようなペプチドの末端は、アセチルまたはアミド基と同様の特性を有するN末端および/またはC末端保護基によって保護され得る。
【0094】
本発明によるペプチドの誘導体および類似体は、インビボでのペプチドの半減期を増加させるものをも含み得る。例えば、本発明のペプチドの誘導体または類似体としては、ペプチドのペプトイドおよびレトロペプトイド誘導体、ペプチド-ペプトイドハイブリッドおよびペプチドのD-アミノ酸誘導体が挙げられ得る。
【0095】
ペプトイド、またはポリ-N-置換グリシンは、アミノ酸のようにアルファ炭素ではなく、ペプチド主鎖の窒素原子に側鎖が付加されたペプチド模倣体のクラスである。本発明のペプチドのペプトイド誘導体は、前記ペプチドの構造の知識から容易に設計され得る。レトロペプトイド(すべてのアミノ酸がペプトイド残基によって逆の順序で置換されている)も、本発明による適切な誘導体である。レトロペプトイドは、1つのペプトイド残基を含むペプチドまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドと比較して、リガンド結合溝で反対方向に結合すると予想される。その結果、ペプトイド残基の側鎖は、元のペプチドの側鎖と同じ方向を指し得る。
【0096】
「由来する」という用語は、AChEのC末端およびその一部に存在する、またはそれを形成するアミノ酸配列の誘導体または修飾であるアミノ酸配列を意味し得る。
【0097】
「それらの短縮型」という用語は、AChE由来のペプチドがアミノ酸の除去によってサイズが縮小されていることを意味し得る。前記アミノ酸の減少は、ペプチドのC末端および/またはN末端からの残基の除去によって達成され得るか、またはペプチドのコア内からの1つまたは複数のアミノ酸の欠失によって達成され得る。
【0098】
本発明によるポリペプチドは、創傷を治療するため、特に、創傷治癒速度を増加させるため、および/または加齢、脱毛、禿頭症に関連する皮膚症状を治療、予防、もしくは改善するため、または皮膚美白剤としての、単剤療法(すなわち、本発明によるポリペプチドの使用)として使用され得る薬剤および/または化粧品に使用され得ることが理解されるであろう。あるいは、本発明によるポリペプチドは、創傷を治療するため、特に、創傷治癒速度を増加させるため、および/または加齢、脱毛、禿頭症に関連する皮膚症状を予防、治療、もしくは改善するため、または皮膚美白剤としての、公知の治療の補助剤として、またはそれと組み合わせて使用され得る。
【0099】
本発明によるポリペプチドは、特に組成物が使用される方法に応じて、多くの異なる形態を有する組成物に組み合わせ得る。したがって、例えば、前記組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液、または治療が必要なヒトもしくは動物に投与され得る、その他の適切な形態であり得る。本発明による薬剤または化粧品のビヒクルは、それが投与される対象によって十分に許容され、好ましくは皮膚へのポリペプチドの送達を可能にするものであるべきことが理解される。
【0100】
本発明によるポリペプチドはまた、層ごとに組み立てられた包帯などの徐放または遅延放出デバイス内に組み込まれ得る。このようなデバイスは、例えば、皮膚の上または下に挿入されることができ、薬剤または化粧品は、数週間または数ヶ月にわたって放出され得る。前記デバイスは、治療部位に少なくとも隣接して配置され得る。そのようなデバイスは、ポリペプチドによる長期治療が必要であり、通常は頻繁な投与(例えば、少なくとも毎日の注射)を必要とする場合に特に有利であり得る。
【0101】
好ましい実施形態では、本発明による薬剤または化粧品は、皮膚に局所的に、好ましくは治療を必要とする部位に直接投与され得る。
【0102】
必要とされるポリペプチドの量は、その生物学的活性および生体利用効率によって決定され、これは投与様式、ポリペプチドの生理化学的特性、および単剤療法または併用療法として使用されているかどうかに依存することが理解されるであろう。投与頻度はまた、治療される対象内のポリペプチド(直鎖状または環状)の半減期によっても影響を受ける。投与される最適用量は、当業者によって決定されることができ、使用中の特定のポリペプチド、医薬組成物の強度、投与様式、および障害の進行または段階によって変化する。対象の年齢、体重、性別、食事、および投与時期などの、治療を受けている特定の対象に依存する追加の要因により、投与量を調整する必要がある。
【0103】
通常、本発明によるポリペプチドの、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重、または0.01μg/kg体重~1mg/kg体重の1日の用量は、使用されるポリペプチドに応じて、加齢に関連する創傷または皮膚症状を治療するために使用され得る。
【0104】
前記ポリペプチドは、創傷の原因となる損傷の発症前、発症中、または発症後に投与され得る。1日の用量は1回の投与で(例えば、局所用クリームまたはスプレー)与えられる。あるいは、前記ポリペプチドは、1日に2回以上の投与を必要とし得る。一例として、前記ポリペプチドは、0.07μg~700mg(すなわち、体重70kgと仮定)の1日2回(または治療される障害の重症度に応じてそれ以上)の用量で投与され得る。治療を受けている患者は、起床時に1回目の用量を投与し、その後、夕方(2回投与計画の場合)またはその後3時間または4時間間隔で2回目の用量を投与され得る。あるいは、徐放デバイスを使用して、反復用量を投与する必要なく、本発明によるポリペプチドの最適用量を患者に提供し得る。
【0105】
製薬業界または美容業界で従来から採用されているような公知の手順(例えば、インビボ実験、臨床試験など)は、本発明によるポリペプチドの特定の製剤および正確な治療計画または美容計画(薬剤の毎日の用量および投与頻度など)を形成するために使用され得る。
【0106】
したがって、本発明者らは、本発明のポリペプチドを含む新規医薬組成物を製造し得ることを認識している。
【0107】
したがって、本発明の第17の態様では、第1または第13の態様による、ポリペプチド、または生物学的に活性なその変異体もしくは断片の治療有効量を含み、薬学的に許容されるビヒクルを含んでいてもよい、皮膚症状の治療用医薬組成物が提供される。
【0108】
本発明はまた、第18の態様において、第17の態様による皮膚症状の治療用医薬組成物の製造方法を提供し、前記方法は、第1または第13の態様によるポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を、薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることを含む。
【0109】
前記医薬組成物は、好ましくは、加齢に関連する皮膚症状を予防、治療または改善するため、または創傷を治療するために使用される。
【0110】
好ましくは、前記医薬組成物は、実質的に配列番号2、配列番号3、または配列番号5~12に示されるアミノ酸配列を有する1つまたは複数のペプチド、またはその誘導体もしくは類似体を含む。
【0111】
しかしながら、本発明者らは、本発明のポリペプチドを含む新規美容組成物が製造され得ることをも理解する。
【0112】
したがって、本発明の第19の態様では、第1または第13の態様によるポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の有効量を含み、美容上許容されるビヒクルを含んでいてもよい、美容組成物が提供される。
【0113】
本発明はまた、第28の態様において、第19の態様による美容組成物の製造方法を提供し、前記方法は、前記ポリペプチド、またはその生物学的に活性な変異体もしくは断片の治療有効量を、第1の態様または第13の態様において、美容上許容されるビヒクルと組み合わせることを含む。
【0114】
好ましくは、前記美容組成物は、実質的に配列番号2、配列番号3または配列番号5~12に示されるアミノ酸配列を有する1つまたは複数のペプチド、またはその誘導体もしくは類似体を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、日焼け止めクリーム、オイル、またはローションであり得る。
【0116】
他の実施形態では、前記組成物は保湿剤または保湿製剤であり得る。
【0117】
他の実施形態では、前記組成物は加齢防止製剤またはシワ防止製剤であり得る。
【0118】
他の実施形態では、前記組成物は発毛を刺激または促進する製剤であり得る。
【0119】
他の実施形態では、前記組成物は皮膚美白製剤であり得る。
【0120】
前記美容組成物は、好ましくは、以下を予防、治療または改善するために使用される:
(i)加齢に関する皮膚症状;
(ii)創傷;
(iii)脱毛または禿頭症;または
(iv)美白剤として。
【0121】
前記加齢に関連する皮膚症状は、以下からなる症状の群から選択され得る:小皺;シワ;変色;不均一な色素沈着;たるみ;毛穴の拡大;肌荒れ;乾燥肌;ストレッチマーク;不均一なトーン;傷;皮膚の肥厚または薄化;およびそれらのいずれかの組み合わせ。好ましくは、前記美容組成物は、シワまたはシワ形成の減少などの加齢の兆候を遅らせる。
【0122】
「対象」は、脊椎動物、哺乳類、または家畜であり得る。したがって、本発明による組成物および薬剤は、いずれかの哺乳動物、例えば家畜(例えばウマ)、ペットの治療に使用されることができ、または他の獣医学的用途に使用され得る。しかしながら、最も好ましくは、前記対象はヒトである。
【0123】
前記ポリペプチド、前記美容組成物または医薬組成物の「治療有効量」は、対象に投与される場合、創傷を治療するため、または加齢に関連する皮膚症状を治療するために必要とされる前述の量であるいずれかの量である。
【0124】
例えば、使用されるポリペプチド、美容組成物または医薬組成物の治療有効量は、約0.01mg~約800mg、好ましくは約0.01mg~約500mgであり得る。前記ポリペプチド、美容組成物または医薬組成物の量は、約0.1mg~約250mgの量であることが好ましく、約0.1mg~約20mgの量であることが最も好ましい。
【0125】
本明細書で言及される「薬学的に許容されるビヒクル」は、医薬組成物の処方に有用であることが当業者に知られているいずれかの公知の化合物または公知の化合物の組み合わせである。
【0126】
本明細書で言及される「美容上許容されるビヒクル」は、美容組成物の処方に有用であることが当業者に知られているいずれかの公知の化合物または公知の化合物の組み合わせである。
【0127】
一実施形態では、前記美容上または薬学的に許容されるビヒクルは固体であり得て、前記組成物は粉末または錠剤の形態であり得る。他の実施形態では、前記美容的または薬学的ビヒクルはゲルであり得て、前記組成物はクリームなどの形態であり得る。
【0128】
しかしながら、前記美容的または薬学的ビヒクルは液体であり得て、前記美容組成物または薬学的組成物は溶液の形態である。液体ビヒクルは、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、および加圧組成物の調製に使用される。本発明によるポリペプチドは、水、有機溶媒、両者の混合物、または美容上または薬学的に許容される油脂などの美容上または薬学的に許容される液体ビヒクルに溶解または懸濁され得る。前記液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、着香剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定剤または浸透圧調節剤などの他の適切な美容的または薬学的添加物を含み得る。経口および非経口投与のための液体ビヒクルの適切な例としては、水(上記の添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(グリコールなどの一価アルコールおよび多価アルコールを含む)およびその誘導体、および油(分別ココナッツ油およびラッカセイ油など)が挙げられる。非経口投与の場合、前記ビヒクルはオレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルでもあり得る。無菌液体ビヒクルは、非経口投与用の無菌液体形態組成物において有用である。前記加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の美容上または薬学的に許容される噴射剤であり得る。
【0129】
本発明のポリペプチド、美容組成物および医薬組成物は、他の溶質または懸濁化剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはブドウ糖)、胆汁酸塩、アカシア、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルとその無水物にエチレンオキサイドとを共重合させたもの)などを含む滅菌溶液または懸濁液の形態で経口投与され得る。本発明によるポリペプチド、美容組成物または医薬組成物は、液体または固体組成物の形態で経口投与され得る。経口投与に適した組成物としては、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、および散剤などの固体形態、並びに溶液、シロップ、エリキシル、および懸濁液などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、エマルジョン、および懸濁液が挙げられる。経口摂取によって本発明のポリペプチドを投与することが望まれる状況では、選択されるアゴニストは、好ましくは、分解に対する高い耐性を有するものであることが理解される。例えば、前記選択されるアゴニストは、消化管におけるその分解速度が低下するように(当業者に周知の技術を使用して)保護され得る。
【0130】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、クリーム、ゲル、ローション、軟膏、皮膚溶液、懸濁液、スプレー、フォーム、入浴剤、コロジオン、含浸包帯、または薬用プラスターの形態で局所投与され得る。前記クリームは、水中油型または油中水型のいずれであり得る。本発明のポリペプチドおよび組成物は、硫酸アルキル、アルキルアミン、アルキルピリミジン化合物などの乳化剤とともに局所投与され得る。クリーム製剤に許容される油としては、白色ワセリン、パラフィン、セテアリルアルコール、ココグリセリド、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、カカオ酪酸、オレウムヘリアンティ、セラアルバ、ラノリン、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。ゲルの調製のために、以下のゲル形成添加剤を使用し得る:セルロースガム(カルボキシメチルセルロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、またはラポナイト。
【0131】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、防腐剤、抗酸化剤、錯化剤、溶媒、芳香剤、殺菌剤、臭気吸収剤、ビタミン、保湿剤、セルフタンニング化合物、および抗シワ活性剤とともに局所投与され得る。
【0132】
本発明の組成物は、美容上許容される添加剤またはアジュバント、並びに美容的または皮膚科学的活性剤を含み得る。代表的な添加剤およびアジュバントとしては、例えば、油溶性または油混和性溶媒または共溶媒が挙げられる。添加剤およびアジュバントの適切な例としては、脂肪アルコール、脂肪アミド、アルキレンカーボネート、グリコール、低級アルコール(例えば、エタノール、プロパンジオール)、分散促進剤、ポリマー、増粘剤、安定剤、保湿剤、保湿剤、着色剤、充填剤、キレート剤、酸化防止剤(BHT、トコフェロールなど)、エッセンシャルオイル、香料、染料、中和剤またはpH調整剤(クエン酸、トリエチルアミン(TEA)、水酸化ナトリウムなど)、防腐剤、殺菌剤、コンディショニング剤または柔軟剤(パンテノールやアラントインなど)、植物抽出物などの抽出物、またはこのタイプの化粧品で通常使用されるその他の成分、が挙げられるが、これらに限定されない。添加剤およびアジュバントは、通常、約0.01重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。美容活性剤または皮膚科学的活性剤の例としては、フリーラジカルスカベンジャー、ビタミン(例えば、ビタミンEおよびその誘導体)、抗エラスターゼおよび抗コラゲナーゼ剤、ペプチド、脂肪酸誘導体、ステロイド、微量元素、藻類およびプランクトンの抽出物、酵素および補酵素、フラボノイドおよびセラミド、ヒドロキシ酸およびそれらの混合物、並びに増強剤、が挙げられる。これらの成分は、前記組成物中に存在する油相に溶解または分散可能であり得る。
【0133】
肺または他の呼吸器組織の創傷の治療に使用するための本発明のポリペプチドを含む薬剤および組成物を、吸入用に製剤化し得る。
【0134】
本発明の望ましい効果を達成し得るいずれかの適切な経路を使用して、本発明のポリペプチドの治療有効量を投与し得る。しかしながら、本発明のポリペプチドは、局所投与によって組織に提供されることが一般的に好ましい場合がある。
【0135】
そのような局所投与を達成し得る適切な方法は、問題の組織または器官の同一性に依存する。好ましい投与経路の選択は、治療される組織または器官が、前記選択された薬剤または化粧品に対して透過性であるかどうかにも依存し得る。適切な投与経路は、以下からなる群から選択され得る:注射;スプレー、軟膏、ジェル、またはクリームの塗布;薬剤の吸入;縫合糸または創傷被覆材を含む、生体材料または他の固体薬剤もしくは化粧品からの放出。
【0136】
適切な送達システムは、微粒子システム、足場またはヒドロゲルを含み得る。粒子状粒子としては、マイクロ粒子またはナノ粒子が挙げられる。そのような粒状粒子は、脂質ベースまたはポリマーベースであり得る。好ましくは、ポリマーベースの粒子は生分解性である。足場としては、HA、コラーゲン、およびキトサンなどのネイティブECMに由来する生体材料が挙げられ得る。足場としては、エレクトロスピニングによって生成されるマイクロ/ナノファイバー足場などの、ECMを模倣するように製造された生体模倣材料もまた挙げられ得る。本発明のポリペプチドは、好ましくは、本発明のポリペプチドの治療有効量(または治療有効量の公知の分数または倍数)を提供する1つまたは複数の投薬単位の形態で提供され得る。そのような投薬単位を調製する方法は、当業者に周知であり;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th Ed.(1990)を参照のこと。
【0137】
適切なポリペプチドは、創傷が治療される創傷を覆うために使用され得る、無菌包帯またはパッチ上に提供され得る。
【0138】
本発明のポリペプチドは、デバイスまたはインプラントから放出され得るか、またはそのようなデバイス、例えば、ステントもしくは制御放出デバイスもしくは創傷包帯もしくは創傷閉鎖に使用される、縫合糸をコーティングするために使用され得る。
【0139】
本発明のポリペプチドを含む組成物のビヒクルは、前記患者に十分に許容されることができ、治療される創傷へのポリペプチドの放出を可能にするものであるべきことが理解される。そのようなビヒクルは、好ましくは、比較的「マイルド」、すなわち、非炎症性、生分解性、生体分解性、または生体吸収性である。
【0140】
本発明のポリペプチドを含む組成物の用量は、好ましくは、単回投与で適切なアゴニストの治療上または美容上有効な量を提供するのに十分であり得る。しかしながら、各用量は、それ自体で治療上または美容上有効な量の本発明のポリペプチドを提供する必要がないが、代わりに、適切な用量を繰り返し投与することにより、治療上または美容上有効な量を構築し得ることが理解されるであろう。
【0141】
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドは、薬学的または美容上許容される経皮送達システム、例えば、パッチ/包帯の一部として処方され得る。固体ビヒクルは、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、増量剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤、または錠剤崩壊剤としても機能し得る1つまたは複数の物質を含み得て;カプセル化材料をも含み得る。
【0142】
体腔、例えば腹部または骨盤内の創傷の治療に使用するための本発明による薬剤は、洗浄液、洗浄液、ゲル、または点滴液として製剤化され得る。
【0143】
本発明の薬剤または化粧品または方法で使用するためのポリペプチドは、特に創傷を治療するために放出され得る生体材料に組み込まれ得る。本発明のポリペプチドを組み込んだ生体材料は、多くの状況で、および多くの身体部位での使用に適しているが、本発明の適切なポリペプチドを眼(例えば、網膜手術または緑内障濾過手術後)に、または再狭窄または癒着を阻害することが望まれる部位に提供するのに特に有用であり得る。
【0144】
本発明は、機能的変異体またはその機能的断片などの、本明細書で言及される配列のいずれかのアミノ酸配列または核酸配列を実質的に含む、いずれかの核酸またはペプチドまたはその変異体、誘導体、もしくは類似体にまで及ぶことが理解されるであろう。「実質的にアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列」、「機能的変異体」および「機能的断片」という用語は、本明細書で言及される配列のいずれか1つのアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列と少なくとも40%の配列同一性、例えば、配列番号1~12として識別される配列と40%の同一性を有する配列であり得る。
【0145】
参照される配列のいずれかと、65%を超える、より好ましくは70%を超える、さらにより好ましくは75%を超える、さらにより好ましくは80%を超える配列同一性である、配列同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列もまた、想定される。好ましくは、前記アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、本明細書で言及される配列のいずれかと少なくとも85%の同一性、より好ましくは本明細書で言及される配列のいずれかと、少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも92%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%の同一性、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0146】
当業者は、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性を計算する方法を理解するであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性を計算するには、まず2つの配列のアラインメントを準備し、続いて配列同一性値を計算する必要がある。2つの配列のパーセンテージ同一性は、以下に応じて異なる値となり得る:(i)ClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(様々なプログラムで実装)、または3D比較による構造アラインメントなど、配列のアラインメントに使用される方法;および(ii)アラインメント方法で使用されるパラメーター、例えば、ローカルアラインメントとグローバルアラインメント、使用されるペアスコアマトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)、並びに、ギャップペナルティ、例えば、関数形式および定数。
【0147】
アラインメントを作成すると、2つの配列間のパーセンテージ同一性を計算する様々な方法が存在する。例えば、IDの数を以下のように分類し得る:(i)最短配列の長さ;(ii)アライメントの長さ;(iii)配列の平均長;(iv)非ギャップ位置の数;または(iv)オーバーハングを除く等価位置の数。さらに、パーセンテージ同一性も長さに強く依存することが理解されるであろう。したがって、配列のペアが短いほど、偶然に発生すると予想される配列同一性が高くなる。
【0148】
したがって、タンパク質またはDNA配列の正確なアラインメントは複雑なプロセスであることが理解されるであろう。周知のマルチアライメントプログラムClustalW(Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Research,22,4673-4680;Thompson et al.,1997,Nucleic Acids Research,24,4876-4882)は、本発明に従ってタンパク質またはDNAの複数のアラインメントを生成するための好ましい方法である。ClustalWに適したパラメーターは以下の通りである:DNAアラインメントの場合:Gap Open Penalty=15.0、Gap Extension Penalty=6.66、およびMatrix=Identity。タンパク質アラインメントの場合:Gap Open Penalty=10.0、Gap Extension Penalty=0.2、およびMatrix=Gonnet。DNAおよびタンパク質のアラインメントの場合:ENDGAP=-1、およびGAPDIST=4。当業者は、最適な配列アラインメントのためにこれらおよび他のパラメーターを変更する必要があり得ることに気付くであろう。
【0149】
好ましくは、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性の計算は、(N/T)×100のようなアラインメントから計算されることができ、ここで、Nは配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tはギャップを含め、オーバーハングを含むか除外して比較される位置の総数である。好ましくは、オーバーハングが計算に含まれる。したがって、2つの配列間のパーセンテージ同一性を計算するための最も好ましい方法は以下を含む:(i)例えば上記のように、適切なパラメーターセットを使用してClustalWプログラムを使用して配列アラインメントを準備すること;および(ii)NとTの値を次の式に挿入すること:-配列同一性=(N/T)*100。
【0150】
類似の配列を同定するための他の方法は、当業者に公知である。例えば、実質的に類似のヌクレオチド配列は、厳格な条件下でDNA配列またはその相補体にハイブリダイズする配列によってコードされる。厳格な条件とは、約45℃の3x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でフィルターに結合したDNAまたはRNAにヌクレオチドがハイブリダイズした後、約20~65℃の0.2xSSC/0.1%SDSで少なくとも1回洗浄することを意味する。あるいは、実質的に類似のポリペプチドは、配列番号1~12に示される配列と少なくとも1アミノ酸だけ異なり得るが、5、10、20、50または100未満のアミノ酸だけ異なり得る。
【0151】
遺伝コードの縮重により、本明細書に記載のいずれかの核酸配列を、それによってコードされるタンパク質の配列に実質的に影響を与えることなく改変または変更して、その機能的変異体を提供し得ることは明らかである。適切なヌクレオチド変異体は、配列内の同じアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって改変された配列を有するものであり、したがってサイレント変更を生じる。他の適切な変異体は、相同なヌクレオチド配列を有するが、置換するアミノ酸と同様の生物物理学的特性の側鎖を有するアミノ酸をコードする様々なコドンの置換によって変更される、配列の全部または一部を含み、保存的な変更を生成する変異体である。例えば、小さな非極性疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが挙げられる。大きな非極性の疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。前記極性の中性アミノ酸としては、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。前記正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが挙げられる。前記負に帯電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。したがって、どのアミノ酸を類似の生物物理学的特性を有するアミノ酸で置き換え得るかが理解され、当業者はこれらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を知っているであろう。
【0152】
本明細書に記載されているすべての特徴(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)、および/またはそのように開示されている方法またはプロセスのすべてのステップは、このような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、いずれかの組み合わせで上記の態様のいずれかと組み合わせられ得る。
【0153】
本発明をよりよく理解するために、また、本発明の実施形態がどのように実施されるかを示すために、例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【
図1】
図1は、直鎖状ペプチドT30およびT15が、低カルシウム条件下でケラチノサイト細胞株への細胞内カルシウム流入を誘導する能力を示す。
【
図2】
図2は、直鎖状ペプチドT30およびT15が、高カルシウム条件下でケラチノサイト細胞株への細胞内カルシウム流入を誘導する能力を示す。
【
図3】
図3は、低カルシウム条件下で直鎖状ペプチドT30およびT15で処理されたケラチノサイト細胞系の(A)細胞生存度および(B)細胞増殖を示す。
【
図4】
図4は、高カルシウム条件下で直鎖状ペプチドT30およびT15で処理されたケラチノサイト細胞系の(A)細胞生存度および(B)細胞増殖を示す。
【
図5】
図5は、T30/NBP-14(対照)と比較して、異なる長さの本発明による直鎖状ペプチド(本明細書ではペプチド402、403、610、611、806、807、808および1012と呼ぶ)のさらなる実施形態を使用した実験の結果、並びにPC12細胞へのカルシウムイオンの流入(「カルシウム」)、アセチルコリンエステラーゼ活性(「AChE」)、および細胞の「生存率」に影響を与えるそれらの能力を示す。右側の列は、「カルシウム」+「AChE」/「生存率」の値を示す。
【
図6】
図6は、PC12細胞のカルシウム流入に対するT14、T30、402および611直鎖状ペプチドの効果を示す。上のパネル:0.5μM、1μM、2.5μM、および5μMでのT14(左)およびT30(右)効果の用量反応。下のパネル:10μM、50μM、100μM、および500μMでの402(左)および611(右)効果の用量反応。すべての治療は、ベースライン減算およびそれぞれの対照に対する正規化を使用して同様の方法で分析された。アセチルコリン(Ach)注射の最初の時点(2秒)は、潜在的な注射の人為的な影響および/またはAch(100μM)の急性副作用のために正規化から除外された。
【
図7】
図7は、T30および直鎖状ペプチド402からのカルシウムイオン流入に対する効果の比較を示す。
【
図8】
図8は、PC12細胞のカルシウム流入に対する直鎖状ペプチド402および611の効果を示す。左パネル:アセチルコリン(Ach)注射後のカルシウム流入の時間経過。値は、ベースラインを差し引いた後の未処理の対照細胞のパーセンテージ(平均±SEM)として表された。Ach注入前のベースラインは、0秒(記録の開始)~1.8秒の値の間で平均化された。右パネル:対照のパーセンテージ(平均±SEM)として表されるカルシウム流入のピーク。前記ピークは、Ach注入後の最初の1秒以内(2.2~3.0秒)に、各n個の「細胞の列」(列ごとに6つの複製/ウェルで構成される)について決定された。前記ピークに対して統計分析を行った。1サンプルt検定(両側P値)を使用して、平均ピークカルシウム流入を100の値(未処理細胞の相対カルシウム流入を示す)と比較した。有意差は、ヒストグラムの上の1つの小さな三角形(P<0.05)と2つの正方形(P<0.01)によって示された。星印(*)は、対応のないt検定後のペプチド402と611との間の有意差を示した。
【
図9】
図9は、PC12細胞におけるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)からのカルシウム流入ピークの濃度応答曲線に対するAchEペプチド(T14およびT30;左パネル)およびより短いペプチド(402および611;右パネル)の効果を示す。カルシウム流入のピークは、
図8のように対照の割合として表された。前記ピークは、Ach注入後の最初の1秒以内(2.2~3.0秒)に測定された。
【
図10】
図10は、現存細胞の代償効果としての細胞外マトリックスでのアセチルコリンエステラーゼ(AChE)放出の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0155】
実施例
原理
本発明者らは、T14、T15およびT30ペプチドとして知られる、アセチルコリンエステラーゼのC末端に基づく多数の直鎖状ペプチドを生成し、ケラチノサイト細胞株におけるそれらの効果を評価した。本発明者らは、ペプチド402、403、610、611、806、807、808、1012、および直鎖状T14の環化バージョン(環状NBP-14として知られている)、として知られている、アセチルコリンエステラーゼに由来する一連の他の短い直鎖状ペプチドを製造し、これらのペプチドは、カルシウムイオン流入、アセチルコリンエステラーゼ活性、細胞生存率などの一連のアッセイでテストされた。前記実験は、皮膚のシワ、変色、傷の治療、脱毛、禿頭症、の治療、および皮膚の美白剤として、様々な皮膚関連の用途で直鎖状ペプチドをどのように使用され得るかを示している。
【0156】
実施例1:T14、NBP-14、T15、およびT30
「テール」アセチルコリンエステラーゼ(T-AChE)はシナプスで発現され、本発明者らは、そのC末端から切断され得る2つのペプチドを以前に同定しており、一方は「T14」(14アミノ酸長)と呼ばれ、他方は「T30」(30アミノ酸長)として知られている。前記直鎖状ペプチドT14のアミノ酸配列は、AEFHRWSSYMVHWK(配列番号3)である。このペプチドはまた、末端のアラニン(A)およびリジン(K)残基を介して環化され、NBP-14を形成している。環化は、いくつかの異なる手段によって達成され得る。例えば、Genosphere Biotechnologies(フランス)は、前記直鎖状ペプチドをN末端からC末端へのラクタムに変換することによって、T14の環化を行った。環状NBP-14を作成するためのT14の環化により、両端、すなわち、HWK-AEF、が結合される。
【0157】
前記直鎖状ペプチドT30のアミノ酸配列は、KAEFHRWSSYMVHWKNQFDHYSKQDRCSDL(配列番号2)である。T30は内因性であり、T30の活性部分はT14であり、どちらもAChEのC末端に見られる。「T15」と呼ばれる他のペプチドは、配列番号1の最後の15アミノ酸残基、すなわちNQFDHYSKQDRCSDL(配列番号4)に対応する。
【0158】
前記AChEのC末端ペプチド「T14」は、非加水分解作用の範囲に関与するAChE分子の顕著な部分であると特定されている。前記合成14アミノ酸ペプチド類似体(すなわち「T14」)、およびそれに続く、より大きく、より安定で、より強力なアミノ酸配列(すなわち「T30」)は、「非コリン作動性AChE」について報告されているものに匹敵する作用を示す。
【0159】
実施例2:ケラチノサイトHaCaT細胞株における細胞内カルシウムに対するアセチルコリンエステラーゼ由来ペプチドの効果
本発明者らは、ケラチノサイト(HaCaT)細胞株への細胞内カルシウム流入を誘導するアセチルコリンエステラーゼ由来ペプチド、T30およびT15の能力を調査した。
図1に示すように、T30の塗布は驚くべきことにケラチノサイト細胞株の細胞内カルシウムの増加を誘発したが、不活性T15ペプチドの塗布は細胞株の細胞内カルシウムの上昇を誘発しなかった。主に、T30が溶液中でT14よりも安定しており、凝集する傾向があるため、T30は、内因的に生成されたT14の代替として実験的に使用される。しかしながら、前述のように、T30は活性のあるT14を含む。
【0160】
実施例3:ケラチノサイトHaCaT細胞株の増殖に対するアセチルコリンエステラーゼ由来ペプチドの効果
本発明者らは次に、前記アセチルコリンエステラーゼ由来ペプチド、T30およびT15が前記HaCaT細胞株の増殖を誘導する能力を調査し、また細胞生存率を試験して、前記HaCaT細胞株に対するT15およびT30の細胞毒性を決定した。結果を
図3および
図4に示す。
図3Bおよび
図4Bを参照すると、T30は、未処理の対照(ペプチドなし)と比較して、HaCaT細胞の増殖を有意に誘導した。対照的に、T15は細胞増殖を変更しなかった。
図3Aおよび
図4Aに示すように、T15およびT30の両方が細胞株に有意な細胞毒性効果を誘発しなかった。
【0161】
結論
ケラチノサイトは、発生学的起源および高レベルの遊離T14(前記AChEモノマーの優位性によって示される)を含む主要な脳細胞と多くの共通点を共有し、脳細胞は年齢とともに減少し、同様の傾向が表皮でも生じることとなり、すなわち、T14レベルは年齢とともに低下する。ここに示すように、T14およびT14を含むポリペプチド(T30など)または生物学的に活性な変異体もしくはその断片がケラチノサイトの増殖を促進する場合、したがって、T14の追加は、減少する内因性レベルを補い、若い年齢に見合った細胞増殖率を回復させ、新規の加齢治療を提供する。
【0162】
実施例4:カルシウム流入、アセチルコリンエステラーゼおよび細胞生存率に対する他のアセチルコリンエステラーゼ由来ペプチドの効果
本発明者らは、すべてT14、T15およびT30よりも小さい一連の直鎖状ペプチドを調製した。これらは4-mer、6-mer、8-mer、10-merであり、Neuro-BioPeptide(NBP)以下の表1に要約されるような、402、403、610、611、806、807、808、および1012、として知られている。
【0163】
【0164】
これらの直鎖状ペプチドのそれぞれについて、PC12細胞へのカルシウムイオン流入(「カルシウム」)、アセチルコリンエステラーゼ活性(「AChE」)、および細胞の「生存率」に影響を与える能力についてテストし、最初の結果を
図5に示す。
【0165】
これらのテストの3つの値は、以下の式に導入された:
値スコア=(カルシウム+AchE)/生存率
図5に示すように、T30(T14を反映)の合計スコアは171.05(カルシウム)+169.46(AChE)/74.31(生存率)で、値スコアは4.58である。本発明者らはまた、ケラチノサイト細胞株に対する環状NBP-14の効果を調査し、ケラチノサイトへのT30誘導細胞内カルシウム流入を阻害することを見出した。したがって、T30が環状NBP14(0.5uM)と組み合わされた場合、NBP-14の阻害効果により、値スコアはわずか1.93であった。
【0166】
次に、ペプチド402、403、610、611、806、807、808、および1012のそれぞれを評価し、
図5に見られるように、これらの候補のペプチドはすべて、スコア値がすべてT30/NBP14対照のサンプルよりも有意に高くなっている。驚くべきことに、3つのパラメーターすべてを考慮すると、ペプチド402、611、および1012はT30と非常によく似た挙動を示し、値スコアはそれぞれ4.32、4.39、および1012であった。
【0167】
しかしながら、カルシウム流入のみを考慮すると、ペプチド402および1012はT30よりも優れた挙動を示し、カルシウム値はそれぞれ212および179であり、ペプチド402はT30のベンチマークよりも有意に優れている。
【0168】
本発明者らは、ペプチド402および1012がT14に天然に存在しないことにも注目する。したがって、それらはプロテアーゼに対する耐性を示す必要があり、そうでなければ、対象の皮膚においてインビボで使用すると分解し得る。
【0169】
実施例5:PC12細胞のカルシウム流入に対する直鎖状T14、T30、402および611の直鎖状ペプチドの効果
カルシウム蛍光測定
PC12細胞を、実験の前日に37℃および5%CO2で0.1ml(ウェルあたり:40000~80000細胞)の完全培地(10mM Hepes、2mMグルタミン、10%熱不活化ウマ血清、5%ウシ胎児血清、および0.25%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM)を含む96ウェルプレートにプレーティングした。実験当日、Fluo-8溶液(Abcam)は、9mlのハンクの平衡塩類溶液(HBSS)および1mlのプルロニックF127 Plusを含むアッセイバッファーに20μlのFluo-8を添加することにより、メーカーの説明に従って調製された。続いて、増殖培地0.100mlを除去し、70μlのFluo-8溶液を添加した。ペプチド402、611、T14、またはT30による処理を異なる濃度(402および611:10μM、50μM、100μMおよび500μM;T14およびT30:0.5μM、1μM、2.5μMおよび5μM)でFluo-8内に加え、37℃(および5%CO2)で30分間、室温で30分間インキュベートした。1時間後、プレートを蛍光プレートリーダー(Fluostar、Optima、BMG Labtech、Ortenberg、Germany)に置いた。蛍光を読み取る前に、ニコチン性受容体のアゴニストであるアセチルコリン(ACh)100μMを調製し、Fluostarインジェクターに入れた。各ウェルについて、ニコチン性受容体を介してカルシウムの増加を誘導するアセチルコリン注入に続く基底蛍光読み取りによって読み取り値が形成された。
【0170】
結果
図6を参照すると、PC12細胞におけるカルシウム流入に対するT14、T30、402および611ペプチドの効果が示される。上のパネルは、0.5μM、1μM、2.5μM、および5μMでのT14(左)およびT30(右)の効果の用量反応を示し、下のパネルは、10μM、50μM、100μMおよび500μMでの402(左)および611(右)の効果の用量反応を示す。
【0171】
図6を参照すると、T14およびT30(上のパネル)並びに短いアミノ酸(AA)ペプチド(<7AA)(下のパネル)の用量応答が示される。濃度反応曲線のT14およびT30には、より包括的な範囲が含まれていた。T14およびT30は、合成された、より短いペプチドと比較して、内因性(天然に存在する)である。したがって、本発明者らは、T14およびT30が(アロステリックモジュレーターとして)nAChRに対してより高い親和性を有すると予想し、低用量(<10
-6M)でのそれらの効果を説明する。AChE-ペプチドの高用量(>10
-6M)の阻害効果は、Greenfield et al.2004によって最初に説明されたように、様々なメカニズムを介してnAChR応答をブロックし得る。nAChRのこれらの阻害メカニズムは、アセチルコリンの存在下での受容体の急速な脱感作によって説明され得る。実際に、cAMP依存性プロテインキナーゼによるnAChRのリン酸化は、受容体の急速な脱感作の速度を増加させ、AChの存在下で不活性になる(Huganir 1982)。さらに、これらの高用量(>10
-6M)は、基礎細胞内カルシウムを高レベルに増加させ、一部のnACh受容体を不活性化し得る。
【0172】
要約すると、402および611直鎖状ペプチドは、T14と同様に正のアロステリックモジュレーターとして作用するため、本明細書に記載の様々な皮膚症状の新規の治療法として役立ち得る。さらに、ペプチド402は天然の配列の一部ではないため、インビボ分解に対してより耐性を有し得る。
【0173】
実施例6:PC12細胞のカルシウム流入に対する直鎖状ペプチド402の効果
本発明者らは、ペプチド402を使用してカルシウム流入試験を繰り返し、結果を
図7に示す。観察されるように、402はT30よりも高いカルシウムイオン流入を引き起こし、
図6に示した結果を裏付けている。
【0174】
実施例7:PC12細胞のカルシウム流入に対する直鎖状ペプチド402および611の効果
分析方法
データは、6(611)または5(402)の独立した列からなる(96ウェルの)3つの別個の実験/プレートで得られた。各「治療列」には、個々の値「n」を決定するために最初に平均化された6つのウェルの複製が含まれていた。アセチルコリン(Ach)注射の最初の時点(2秒)は、潜在的な注射の人為的影響および/またはAch(100μM)の急性副作用のために正規化から除外された。すべての治療は、ベースライン減算およびそれぞれの対照に対する正規化を使用して同様の方法で分析された。
【0175】
結果
図8を参照すると、PC12細胞のカルシウム流入に対する直鎖状ペプチド402および611の効果が示される。左側のパネルは、アセチルコリン(Ach)注射以降のカルシウム流入の時間経過を示し、右側のパネルは、対照のパーセンテージとして表されるカルシウム流入のピークを示す。±SEM)。
【0176】
観察されるように、これらのペプチドは皮膚症状に対する新規の治療法として役立ち得て、ペプチド402はT14の天然配列の一部ではないため、プロテアーゼ分解に対してより耐性を有し得る。
【0177】
実施例8:T14、T30、ペプチド402および611を使用した濃度応答実験
図9を参照すると、PC12細胞におけるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)からのカルシウム流入ピークの濃度応答曲線に対するAchEペプチド(T14およびT30;左パネル)およびより短いペプチド(402および611;右パネル)の効果が示される。
【0178】
実施例9:上清中のアセチルコリンエステラーゼ活性に対する直鎖状ペプチド402および611の効果
AChE活性アッセイ
AChE活性は、AChE活性の結果としてのチオール基の存在を測定するエルマン試薬を使用して測定した。PC12細胞は、細胞生存率アッセイと同様に、実験の前日にプレーティングされた。細胞を、T30、T14、402または611ペプチド(1uM、5uM、10uM、100uMまたは500uM)単独で、またはNBP14(1uM)と組み合わせて処理した。処理後、各処理の上清(灌流液)を回収し、各条件からの65ulを新たな平底96ウェルプレートに加え、続いて、エルマン試薬(リン酸緩衝液(0.1M)、pH7.0;基質:ヨウ化アセチルチオコリン0.15M;試薬:5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸(DTNB))0.01MおよびNaHCO317.86mM 50ulを以下の比率で添加した:18(リン酸緩衝液):(ヨウ化アセチルチオコリン):(DTNB)。次に、プレートを室温で30分間インキュベートし、BMG CLARIOstar Plusを使用して412nmで10分間吸光度を読み取った。結果は、MARSデータ解析ソフトウェアを使用して処理された。
【0179】
結果
図10を参照すると、前記現存細胞の代償効果としての前記細胞外マトリックスにおけるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)放出の結果が示される。観察されるように、前記402ペプチドは1uMで前記611ペプチドより強力である。しかしながら、500uMでは、前記611ペプチドは1uMでの402の値よりもさらに高い値を示す。ペプチド402はより強力であるため、低用量で、ニコチン受容体の活性化後にAchEの放出を増強する。高用量では、T14/T30と同様に、ペプチドは阻害性となる。実際に、より高い用量では、ペプチド402は過剰なカルシウムを取り込み、受容体はリン酸化して停止し、AChEの放出はない。5μMから、ペプチド402はカルシウムイオンチャネルに対して阻害効果を有し、活性の低下をもたらす。ペプチド611の場合、この効果はそれほど強力ではないため、高用量に移行する。このシフトは、交差する線によって反映される。
【配列表】
【国際調査報告】