(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】皮膚症状の治療および化粧用途のためのアセチルコリンエステラーゼのC末端に由来する環状ペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20230508BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230508BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230508BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20230508BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230508BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230508BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230508BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230508BHJP
C07K 7/64 20060101ALI20230508BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230508BHJP
【FI】
A61K38/46
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/10
A61P35/00
A61Q19/00
A61K8/64
A61Q19/02
C07K7/64
C07K14/47 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559408
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 GB2021050802
(87)【国際公開番号】W WO2021198686
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516008992
【氏名又は名称】ニューロ-バイオ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEURO-BIO LTD
【住所又は居所原語表記】Building F5,Culham Science Centre,Abingdon Oxfordshire OX14 3DB,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グリーンフィールド,スーザン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AD471
4C083AD472
4C083EE13
4C083EE14
4C083EE16
4C083FF01
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA24
4C084CA18
4C084DC22
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA30
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、皮膚、並びに様々な皮膚症状を、治療、予防または改善するための新規組成物、治療および方法に関する。本発明は、化粧品および医薬組成物、並びにそれらを皮膚に使用して様々な症状を治療する方法にも及ぶ。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚疾患の治療、予防、または改善に使用するための、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項2】
治療される皮膚症状が異常なケラチノサイト増殖に関連する皮膚症状である、請求項1に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項3】
治療される皮膚症状が、湿疹、乾癬、黒色腫、皮膚炎、および座瘡からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項4】
前記アセチルコリンエステラーゼが、実質的に配列番号1に示されるアミノ酸配列またはその変異体もしくは断片を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項5】
(i)4~50アミノ酸残基、もしくは8~40アミノ酸;または、
(ii)6~20個のアミノ酸、もしくは6~15個のアミノ酸、
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項6】
環状の配列番号2、またはその機能的変異体もしくは断片を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項7】
環状の配列番号3、またはその機能的変異体もしくは断片を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項8】
環状の配列番号4、またはその機能的変異体もしくは断片を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項9】
デノボペプチド合成法を用いて作製される、請求項1~8のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の治療有効量、および薬学的に許容されるビヒクルを含む、皮膚症状の治療用医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の治療有効量を、薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることを含む、請求項10に記載の皮膚症状の治療用医薬組成物の製造方法。
【請求項12】
瘢痕形成の低減、予防、または阻害に使用するための、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む、環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項において定義される通りである、請求項12に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体。
【請求項14】
皮膚に、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体を塗布することを含む、皮膚の美容的治療方法。
【請求項15】
前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体が、請求項1~9のいずれか1項に定義されている通りである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の、皮膚の美容的治療のための使用。
【請求項17】
前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体が、請求項1~9のいずれか1項に定義されている通りである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
請求項1~9のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の美容上有効量、および美容上許容されるビヒクルを含む、美容組成物。
【請求項19】
請求項1~1のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の美容上有効量を、美容上許容されるビヒクルと組み合わせることを含む、請求項18に記載の美容組成物の製造方法。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の、皮膚美白剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、および様々な皮膚症状を治療、予防または改善するための新規組成物、治療および方法に関する。本発明はまた、化粧品および医薬組成物、並びに湿疹、乾癬、黒色腫、皮膚炎、およびざ瘡などの様々な症状を治療するため、または皮膚美白剤として、または瘢痕化を軽減するためにそれらを皮膚に使用する方法にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
酵素アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は、発生の様々な段階で様々な形で発現し、これらはすべて同じ触媒酵素活性を有するが、分子組成は異なる。「テール」(T-AChE-配列番号1)はシナプスで発現し、発明者らは以前に、T-AChEのC末端から切断し得る2つのペプチドを同定したが、1つは「T14」(配列番号3)と呼ばれる14アミノ酸長のペプチドであり、もう1つは「T30」(配列番号2)として知られる30アミノ酸長のペプチドである。前記AChEのC末端ペプチド「T14」は、非加水分解作用の範囲に関与する前記AChE分子の顕著な部分であると特定されている。
【0003】
前記合成類似体(すなわち「T14」)、および、それに続く、より大きく、より経験的に扱いやすく、それが埋め込まれた、より強力なアミノ酸配列(すなわち「T30」)は、「非コリン作動性」AChEについて報告されているものに匹敵する作用を示し、一方、前記T30配列内の不活性な15アミノ酸長のペプチド(すなわち、「T15」-配列番号4)は効果がない(Bond et al 2009 PLoS one Vol:4 Issue:3 e4846)。前記T14ペプチドは、α7ニコチン受容体のアロステリック部位に結合するが、それ自体では効果がない。しかしながら、アセチルコリンまたは食事性コリンなどの一次配位子の存在下では、T14はこれらの一次因子によって誘導されるカルシウム流入を増強する。過剰なカルシウムはミトコンドリアに取り込まれ、そこで酸化的リン酸化が損なわれ、電子の漏出を引き起こす。その結果、フリーラジカルが形成され、細胞膜が不安定になり、細胞は死ぬ(Day&Greenfield 2004 Exp Brain Res 155:500-508)。
【0004】
皮膚の表皮層は、成熟した成人の継続的な再生プロセスの数少ない例の1つである。前記細胞周期プロセスは、α-7受容体の活性化によって駆動され(Arreondo et al.2002 J Cell Biol.159(2):325-36)、それはT14の標的である(Greenfieldら、2004)。乾癬などの多くの一般的な皮膚疾患では、更新プロセスに関連するケラチノサイト(表皮内の細胞の約90%を構成する)の増殖の根底にある制御メカニズムが失敗する。このような状況では、ケラチノサイトは、過剰な成長率、成長因子に対する異常な応答、不完全な分化、および移動能力の増加を特徴とする増殖の代替経路に入る。
【0005】
したがって、皮膚症状の治療に使用され得るケラチノサイトの増殖を減少または防止する剤を特定する必要がある。
【0006】
本発明者らは、ケラチノサイト細胞株に対するアセチルコリンエステラーゼのC末端由来の環状ペプチドの効果を調査し、前記T14配列(配列番号3)を含む配列であるT30(配列番号2)が、皮膚細胞への細胞内カルシウム流入を刺激し、細胞増殖を誘導することを見出した。本発明者らは、驚くべきことに、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来の環状ペプチド(「NBP-14」として知られる)が、ケラチノサイトへのT30誘導細胞内カルシウム流入を阻害することも示した。したがって、本発明者らは、乾癬および癌などの細胞増殖に関連する皮膚症状を治療、予防または改善するための治療剤としてNBP-14を利用し得ると考えている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の第1の態様では、皮膚疾患の治療、予防、または改善に使用するための、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体が提供される。
【0008】
第2の態様では、皮膚疾患を治療、改善または予防する方法が提供され、前記方法は、そのような治療を必要とする対象に、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列または短縮型を含む環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の治療有効量を、投与すること、または継続して投与することを含む。
【0009】
実施例に記載されるように、本発明者らは、ヒトケラチノサイトについて広く使用され特徴付けられたモデルであるケラチノサイト細胞株HaCaTsに対して細胞内カルシウムイメージングおよび細胞増殖アッセイを行った。本発明者らは、驚くべきことに、直鎖状ペプチドT30が、細胞増殖の刺激と相関するHaCaTにおける細胞内カルシウム流入を誘導し得ることを示した。本発明者らのさらなる研究は、驚くべきことに、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来の環状ペプチド(「NBP-14」として知られる)が、ケラチノサイトへのT30誘導細胞内カルシウム流入を阻害することを示し、これはアセチルコリンエステラーゼのC末端に由来する環状ペプチドが、ケラチノサイトの異常な増殖に関連する皮膚症状の治療に使用され得ることを示す。
【0010】
前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、表皮の深層、例えば基底層、有棘層および/または顆粒層に存在する細胞を標的とし得る。好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、基底層の細胞を標的とする。
【0011】
治療される皮膚症状は、好ましくは異常なケラチノサイト増殖に関連する皮膚症状である。好ましくは、前記治療される皮膚症状は、湿疹、乾癬、黒色腫、皮膚炎、およびざ瘡からなる群から選択され得る。
【0012】
前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、皮膚美白剤としても使用され得る。
【0013】
したがって、第3の態様では、皮膚美白剤として使用するための、第1の態様による環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体が提供される。
【0014】
環状ポリペプチドは、アミノ酸の環状鎖を形成するペプチド結合でN末端およびC末端自体が結合しているペプチド鎖である。
【0015】
「誘導体またはその類似体」という用語は、アミノ酸残基が類似の側鎖またはペプチド骨格特性を有する残基(天然アミノ酸、非天然アミノ酸、またはアミノ酸模倣体のいずれか)によって置換されているポリペプチドを意味し得る。さらに、そのようなペプチドの末端は、アセチルまたはアミド基と同様の特性を有するN末端および/またはC末端保護基によって保護され得る。
【0016】
本発明によるペプチドの誘導体および類似体は、インビボでのペプチドの半減期を増加させるものをも含み得る。例えば、本発明のペプチドの誘導体または類似体としては、ペプチドのペプトイドおよびレトロペプトイド誘導体、ペプチド-ペプトイドハイブリッド、並びにペプチドのD-アミノ酸誘導体が挙げられ得る。
【0017】
ペプトイド、またはポリ-N-置換グリシンは、アミノ酸のようにアルファ炭素ではなく、ペプチド主鎖の窒素原子に側鎖が付加されたペプチドミメティックのクラスである。本発明のペプチドのペプトイド誘導体は、ペプチドの構造の知識から容易に設計され得る。レトロペプトイド(すべてのアミノ酸がペプトイド残基によって逆の順序で置換されている)も、本発明による適切な誘導体である。レトロペプトイドは、1つのペプトイド残基を含むペプチドまたはペプトイド-ペプチドハイブリッドと比較して、リガンド結合溝で反対方向に結合すると予想される。その結果、ペプトイド残基の側鎖は、元のペプチドの側鎖と同じ方向を向き得る。
【0018】
「由来する」という用語は、AChEのC末端およびその一部に存在する、または形成するアミノ酸配列の誘導体または修飾であるアミノ酸配列を意味し得る。
【0019】
「その短縮型」という用語は、AChEに由来する環状ポリペプチドがアミノ酸の除去によってサイズが縮小されることを意味し得る。アミノ酸の還元は、本発明の環状ポリペプチドへの環化の前に、ペプチドのC末端またはN末端から残基を除去することによって達成し得るか、または、環化の前にペプチドのコア内から1つまたは複数のアミノ酸を削除することによって達成し得る。
【0020】
アセチルコリンエステラーゼは、アセチルコリンを加水分解するセリンプロテアーゼであり、当業者には周知である。脳に見られるアセチルコリンエステラーゼの主要な形態は、尾部アセチルコリンエステラーゼ(T-AChE)として公知である。ヒト尾部アセチルコリンエステラーゼ(Gen Bank:AAA68151.1)の一実施形態のタンパク質配列は、長さが614アミノ酸であり、以下のように配列番号1として本明細書に提供される:
【0021】
【0022】
タンパク質が放出される間に配列番号1の最初の31個のアミノ酸残基が除去され、それによって583個のアミノ酸配列が残ることは理解されるであろう。したがって、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、アセチルコリンエステラーゼのC末端由来のアミノ酸配列、またはその短縮型を含むか、またはそれらからなることが好ましく、前記アセチルコリンエステラーゼは、好ましくはN末端の31個のアミノ酸を除いて、実質的に配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の300、200、100または50個のアミノ酸に由来するアミノ酸配列、またはその短縮型を含むか、またはそれらからなり、最も好ましくは、前記アセチルコリンエステラーゼは、実質的に配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の40個のアミノ酸に由来するアミノ酸配列、またはその短縮型を含むか、またはそれからなる。前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の30個のアミノ酸に由来するアミノ酸配列、またはその短縮型を含むか、またはそれからなる。
【0024】
前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、4~50アミノ酸、好ましくは8~40アミノ酸残基、好ましくは10~30アミノ酸、より好ましくは9~20アミノ酸、最も好ましくは10~16アミノ酸、を含むか、またはそれらからなり得る。より好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、13~15アミノ酸残基を含むか、またはそれらからなり得る。
【0025】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、4~50アミノ酸残基、4~40アミノ酸残基、4~35アミノ酸残基、4~32アミノ酸残基、4~30アミノ酸残基、4~25アミノ酸残基、4~20アミノ酸残基、または4~15アミノ酸残基、を含む。
【0026】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、5~50アミノ酸残基、5~40アミノ酸残基、5~35アミノ酸残基、5~32アミノ酸残基、5~30アミノ酸残基、5~25アミノ酸残基、5~20アミノ酸残基、または5~15アミノ酸残基、を含む。
【0027】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、6~50アミノ酸残基、6~40アミノ酸残基、6~35アミノ酸残基、6~32アミノ酸残基、6~30アミノ酸残基、6~25アミノ酸残基、6~20アミノ酸残基、または6~15アミノ酸残基、を含む。
【0028】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体は、8~50アミノ酸残基、8~40アミノ酸残基、8~35アミノ酸残基、8~30アミノ酸残基、8~30アミノ酸残基、8~25アミノ酸残基、8~20アミノ酸残基、または8~15アミノ酸残基、を含む。
【0029】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体は、9~50アミノ酸残基、9~40アミノ酸残基、9~35アミノ酸残基、9~30アミノ酸残基、9~25アミノ酸残基、9~20アミノ酸残基、または9~15アミノ酸残基、を含む。
【0030】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、10~50アミノ酸残基、10~40アミノ酸残基、10~35アミノ酸残基、10~30アミノ酸残基、10~25アミノ酸残基、10~20アミノ酸残基、または10~15アミノ酸残基、を含む。
【0031】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、11~50アミノ酸残基、11~40アミノ酸残基、11~35アミノ酸残基、11~30アミノ酸残基、11~25アミノ酸残基、11~20アミノ酸残基、または11~15アミノ酸残基、を含む。
【0032】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、12~50アミノ酸残基、12~40アミノ酸残基、12~35アミノ酸残基、12~30アミノ酸残基、12~25アミノ酸残基、12~20アミノ酸残基、または12~15アミノ酸残基、を含む。
【0033】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、13~50アミノ酸残基、13~40アミノ酸残基、13~35アミノ酸残基、13~30アミノ酸残基、13~25アミノ酸残基、13~20アミノ酸残基、または13~15アミノ酸残基、を含む。
【0034】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、14~50アミノ酸残基、14~40アミノ酸残基、14~35アミノ酸残基、14~30アミノ酸残基、14~25アミノ酸残基、14~20アミノ酸残基、または14~15アミノ酸残基、を含む。
【0035】
本発明者は、AChEのC末端に由来し、本明細書においてT30、T14およびT15と呼ばれる3つのペプチド配列を調製し、ここで数字はアミノ酸番号に対応する。
【0036】
T30のアミノ酸配列(配列番号1の最後の30アミノ酸残基に対応する)は、以下のように配列番号2として本明細書に提供される:
KAEFHRWSSYMVHWKNQFDHYSKQDRCSDL[配列番号2]
T14のアミノ酸配列(配列番号1の末端に向かって位置する14個のアミノ酸残基に対応し、T30に見られる最後の15個のアミノ酸を欠く)は、以下のように配列番号3として本明細書に提供される:
AEFHRWSSYMVHWK[配列番号3]
T15のアミノ酸配列(配列番号1の最後の15アミノ酸残基に対応する)は、以下のように配列番号4として本明細書に提供される:
NQFDHYSKQDRCSDL[配列番号4]
本明細書に記載のポリペプチドまたはペプチドのいずれも、当業者に通常知られている標準的なペプチド合成法を使用してデノボ合成されることができ、したがって、本明細書に記載の美容用/治療用のいずれにも使用され得ることが理解されるであろう。したがって、前記ペプチドのいずれかは、本明細書に提供される配列の隣接するアミノ酸間にペプチド結合を形成して完全な配列長を構築することによって、すなわち、第1のアミノ酸が提供され、それに第2のアミノ酸が付着し、そして望ましい長さのペプチドまで、生成し得る。したがって、完全なアセチルコリンエステラーゼ配列またはその短い切断から開始し、望ましいペプチド長に達するまでN末端および/またはC末端からアミノ酸を除去することによってポリペプチドの長さを短縮する必要はない。実際には、速度、利便性、およびコストのために、前記ポリペプチドは新規ペプチド合成法を使用して作製されることが好ましい。
【0037】
配列番号2~4として表される配列のいずれも、容易に環化(または環状化)して、第1の態様の環状ポリペプチドを形成し得ることが理解される。例えば、ペプチドの環化は、側鎖から側鎖へ、側鎖から主鎖へ、または頭部から尾部へ(C末端からN末端へ)環化技術によって達成され得る。好ましい一実施形態では、頭尾環化が、環状ポリペプチドを生成する好ましい方法である。前記環状ポリペプチドは、古典的な液相直鎖状ペプチド環化または樹脂ベースの環化のいずれかを使用して合成され得る。環化のための好ましい方法は、実施例に記載されている。他の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、環化開裂アプローチを使用して生成され、前記環状ポリペプチドは、段階的な直鎖状ペプチド合成の後に環化によって合成される。この方法の利点は、側鎖を固定する必要がないため、アプローチがより一般的なものとなることである。好ましくは、使用前に、得られた環状ペプチドのサンプルをMALDI-TOF MSによって分析し得る。
【0038】
したがって、本発明による好ましいポリペプチドは、環状の配列番号2、配列番号3もしくは配列番号4、またはその機能的変異体もしくは断片を含むか、またはそれらからなる。
【0039】
本発明者らは、環化した配列番号3(すなわち、本明細書において「環化T14」、「CT14」または「NBP-14」と呼ばれる)が、ケラチノサイトにおけるT30誘導細胞内カルシウム流入を驚くほど阻害することを見出した。
【0040】
したがって、本明細書に記載の本発明で使用される最も好ましい環状ポリペプチドは、環状の配列番号3、またはその機能的変異体もしくは断片を含むか、またはそれらからなる。
【0041】
本発明による環状ポリペプチドは、単剤療法(すなわち、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体のみの使用)として使用され得る医薬品に、皮膚症状を治療、改善、または予防するために使用され得ることが理解されるであろう。あるいは、本発明による環状ポリペプチド誘導体またはその類似体は、皮膚症状を治療、改善、または予防するための既知の療法の補助として、または組み合わせて使用され得る。
【0042】
本発明による環状ポリペプチド誘導体またはその類似体は、特に前記組成物が使用される方法に応じて、多くの異なる形態を有する組成物に組み合わせ得る。したがって、例えば、前記組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液、または人に投与し得るいずれかの他の適切な形態において、治療が必要なヒトまたは動物に投与され得る。本発明による薬剤のビヒクルは、それが投与される対象によって十分に許容され、好ましくは前記環状ポリペプチドの皮膚への送達を可能にするものであるべきであることが理解される。
【0043】
本発明による環状ポリペプチドはまた、徐放または遅延放出デバイス内に組み込まれ得る。そのようなデバイスは、例えば、皮膚の上または下に挿入されることができ、薬剤は数週間または数ヶ月にわたって放出され得る。前記デバイスは、治療部位に少なくとも隣接して配置され得る。そのようなデバイスは、本発明に従って使用される環状ポリペプチドによる長期治療が必要であり、通常は頻繁な投与(例えば、少なくとも毎日の注射)を必要とする場合に特に有利であり得る。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明による薬剤は、皮膚に局所的に、好ましくは治療を必要とする部位に直接投与され得る。
【0045】
必要とされる環状ポリペプチドの量は、その生物学的活性およびバイオアベイラビリティによって決定され、それはまた投与様式、環状ポリペプチドの物理化学的特性、および単剤療法または併用療法のどちらで使用されているか、に依存することが理解されるであろう。前記投与頻度はまた、治療される対象内または対象上の前記環状ポリペプチドの半減期によっても影響を受ける。投与される最適用量は、当業者によって決定されることができ、使用される特定の環状ポリペプチド、医薬組成物の強度、および投与様式によって変化する。対象の年齢、体重、性別、食事、投与時期などの、治療を受けている特定の対象に依存する追加の要因により、投与量を調整する必要がある。
【0046】
一般に、本発明による環状ポリペプチドの、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の間、または0.01μg/kg体重~1mg/kg体重の間の1日量は、どの環状ポリペプチドが使用されるかに応じて、皮膚症状を治療、改善、または予防するために使用され得る。
【0047】
前記環状ポリペプチドは、皮膚症状の発症前、発症中、または発症後に投与され得る。1日用量は、1回の投与(例えば、1日1回の塗布)として与えられ得る。あるいは、前記環状ポリペプチドは、1日に2回以上の投与を必要とし得る。一例として、環状ポリペプチドは、0.07μg~700mg(すなわち、体重70kgと仮定)の1日2回(または治療される皮膚症状の重症度に応じてそれ以上)の用量で投与され得る。治療を受けている患者は、起床時に最初の用量を服用し、その後、夕方(2回の服用体制の場合)またはその後3時間または4時間ごとに2回目の服用を行い得る。あるいは、徐放デバイスを使用して、反復用量を投与する必要なく、本発明による環状ポリペプチドの最適用量を患者に提供し得る。
【0048】
製薬業界で従来から採用されているような公知の手順(例えば、インビボ実験、臨床試験など)は、本発明による環状ポリペプチドの特定の製剤および正確な治療レジメン(前記剤の毎日の用量および投与頻度など)を形成するために使用され得る。本発明者らは、彼らが本発明の環状ポリペプチドの使用に基づいて皮膚症状の治療組成物を提案した最初の者であると考えている。
【0049】
したがって、本発明の第4の態様では、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端に由来するアミノ酸配列またはその短縮型を含む、前記環状ポリペプチド、または誘導体もしくはその類似体、の治療有効量、および薬学的に許容されるビヒクル、を含む皮膚症状の治療用医薬組成物が提供される。
【0050】
本発明はまた、第5の態様において、第4の態様による皮膚症状の治療用医薬組成物の製造方法を提供し、前記方法は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端に由来するアミノ酸配列またはその短縮型を含む、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の治療有効量を、薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることを含む。
【0051】
前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、好ましくは、本明細書に開示される環状T14(すなわちNBP-14)、すなわち配列番号3を含むか、またはそれからなる。
【0052】
アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来する環状ペプチドがケラチノサイト増殖を減少させ得るがあるという本発明者らの発見は、前記環状ペプチドが、瘢痕形成を減少させるためにも有利に使用さることができ、したがって美容目的にも使用され得ることを示している。いくつかの実施形態では、前記抗瘢痕化活性は治療的であり得る。
【0053】
したがって、本発明の第6の態様では、瘢痕形成の低減、予防、または阻害に使用するための、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。
【0054】
第7の態様では、瘢痕形成を低減、阻害、または防止する方法が提供され、前記方法は、そのような治療を必要とする対象に、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端に由来するアミノ酸配列またはその短縮型を含む環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体、の治療有効量を、投与する、または継続して投与することを含む。
【0055】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、第1の態様で定義されたとおりである。
【0056】
しかしながら、他の実施形態では、前記抗瘢痕化活性は美容的であり得る。
【0057】
したがって、本発明の第8の態様では、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体を皮膚に塗布することを含む、皮膚の美容的治療方法が提供される。
【0058】
好ましくは、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、第1の態様で定義されたとおりである。
【0059】
皮膚の美容的治療は、瘢痕形成の減少、予防、または阻害を含み得る。
【0060】
本発明の第9の態様では、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の、皮膚の美容的治療のための使用が提供される。
【0061】
本発明は、美容組成物にも及ぶ。
【0062】
したがって、本発明の第10の態様では、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端に由来するアミノ酸配列またはその短縮型を含む、前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体の美容上有効量、および美容上許容されるビヒクルを含む美容組成物が提供される。
【0063】
本発明はまた、第11の態様において、第10の態様による美容組成物の製造方法を提供し、前記方法は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端由来のアミノ酸配列またはその短縮型を含む、前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体の美容上有効量を、美容上許容されるビヒクルと組み合わせることを含む。
【0064】
瘢痕化の予防、軽減または阻害
本発明の文脈内での瘢痕化の予防、軽減または阻害は、対照治療または未治療の創傷の治癒時に生じる瘢痕化のレベルと比較して、治療した創傷の治癒時に達成される瘢痕化のいずれかの程度の予防、軽減または阻害を包含すると理解されるべきである。本明細書全体を通して、瘢痕化の「予防」、「軽減」または「阻害」への言及は、通常、文脈上別段の要求がある場合を除き、本発明のポリペプチドによって媒介される同等のメカニズムを含む、実質的に同等の活性を表すと解釈されるべきである。
【0065】
瘢痕化の評価
治療効果を達成するために必要とされる瘢痕化の阻害の程度は、患者のケアを担当する臨床医にとって明らかであり、容易に決定され得る。臨床医は、治療効果が達成されたか、または達成されているかどうかを評価するために、達成された瘢痕化の阻害の程度の適切な決定を行い得る。そのような評価は、必ずしも必要ではないが、本明細書に記載の提案された測定方法を参照して行い得る。
【0066】
創傷閉鎖が達成された後の瘢痕化の阻害の程度は、本発明の方法または薬剤で治療されたヒト患者においてそのような活性剤が達成し得る効果を参照して評価され得る。あるいは、達成され得る瘢痕化の阻害は、適切なインビトロまたはインビボモデルを用いた実験調査を参照して評価され得る。瘢痕化の阻害を調査するための実験モデルの使用は、本発明の環状ペプチドの治療効果を評価する際、またはそのようなポリペプチドの治療有効量を確立する際に特に好ましい場合がある。
【0067】
創傷治癒および瘢痕形成の動物モデルは、本発明の薬剤または方法を使用して達成され得る瘢痕阻害の程度のインビボ評価のための好ましい実験モデルを表す。そのようなモデルの実施例は、説明の目的で以下に説明されている。本明細書に記載の瘢痕化のモデルおよび瘢痕化を評価するための方法を使用して、治療上有効なポリペプチドを決定され得る。
【0068】
本発明の環状ペプチドを用いた瘢痕化の阻害は、これまでに調査されたいずれかの身体部位およびいずれかの組織または器官で効果を発揮し得る。例示の目的で、本発明の環状ペプチドおよび方法の瘢痕阻害活性は、主に、皮膚(体の最大の器官)に生じ得る瘢痕化の阻害に関して記載される。しかしながら、当業者は、皮膚の瘢痕化の阻害を考慮するときに関連する要因の多くが、他の器官または組織の瘢痕化の阻害にも関連することをすぐに理解するであろう。したがって、当業者は、文脈上別段の要求がある場合を除き、皮膚の瘢痕に関して以下で考慮されるパラメーターおよび評価が、皮膚以外の組織の瘢痕化にも適用し得ることを認識するであろう。当業者は、上記が再上皮化および創傷治癒速度の文脈において等しく適用可能であり、瘢痕化の評価に限定されないことを認識するであろう。
【0069】
皮膚において、創傷の治療により、これらの創傷が閉じたときに生じる瘢痕の巨視的および微視的外観が改善され;肉眼的には、前記瘢痕はあまり目立たず、周囲の皮膚と混ざり合い得て、微視的には、前記瘢痕内のコラーゲン繊維は、周囲の皮膚のものに、より似た形態と異方性組織を有し得る。
【0070】
本発明の方法および環状ペプチドを使用して達成される瘢痕化の阻害は、ポリペプチド治療なしの創傷の閉鎖によって形成された瘢痕の外観と比較して、閉鎖を促進するための創傷の治療によって生成された瘢痕の微視的または巨視的外観のいずれかを参照して、評価および/または測定され得る。瘢痕化の阻害は、治療された瘢痕の巨視的および微視的外観の両方を参照しても適切に評価され得る。
【0071】
治療された創傷に起因する瘢痕の前記巨視的外観を考慮すると、瘢痕化の程度、したがって達成される瘢痕化の阻害の大きさは、多数のパラメーターのいずれかを参照して評価され得る。最も好ましくは、独立したエキスパートパネルによる肉眼写真の評価による瘢痕の総合的評価、独立したレイパネルによる、または患者自身の臨床医による肉眼的評価による臨床的評価である。評価は、VAS(ビジュアルアナログスケール)またはカテゴリスケールによって取得される。
【0072】
客観的に評価され得る瘢痕の肉眼的特徴としては、以下が挙げられる:
i)創傷の色。瘢痕は通常、周囲の皮膚と比べて色素沈着が少ないか、色素沈着が過剰であり得る。治療された瘢痕の色素沈着が、未治療の瘢痕の色素沈着よりも、瘢痕のない皮膚の色素沈着に近い場合、瘢痕化の阻害が示され得る。同様に、瘢痕は周囲の皮膚よりも赤くなり得る。この場合、未治療の瘢痕と比較して、治療した瘢痕の赤みが早期に、またはより完全に消えるか、または周囲の皮膚の外観により近く似ている場合、瘢痕化の阻害が実証され得る。皮膚の赤みだけでなく、創傷の跡および創傷のない皮膚の色素沈着に関するデータを提供し得る非侵襲的な比色装置が多数存在する(これは、前記瘢痕または皮膚に存在する血管分布の程度の指標であり得る)。そのような装置の例としては、X-rite SP-62分光光度計、Minolta Chronometer CR-200/300ラブスキャン600;Dr.Lange マイクロカラー;ダーマ分光計;レーザードップラー流量計;分光測光皮内分析(SIA)スコープが挙げられる。
【0073】
ii)創傷の高さ。瘢痕は通常、周囲の皮膚と比較して盛り上がっているか、くぼんでいる。治療された瘢痕の高さが、未治療の瘢痕の高さよりも、瘢痕のない皮膚の高さに近い場合(すなわち、隆起もくぼみもない)、瘢痕化の阻害が示され得る。瘢痕の高さは、形状測定によって患者に直接測定するか、または瘢痕から採取した型の形状測定によって間接的に測定され得る。
【0074】
iii)創傷の表面の質感。瘢痕は、周囲の皮膚よりも比較的滑らかな表面(「光沢のある」外観の瘢痕を生じさせる)または周囲の皮膚よりも粗い表面を有し得る。治療された瘢痕の表面のきめが、未治療の瘢痕の表面のきめよりも、瘢痕のない皮膚の表面のきめに近い場合、瘢痕化の阻害が示され得る。表面のきめは、形状測定によって患者に直接測定されるか、または瘢痕から採取した型の形状測定によって間接的に測定され得る。
【0075】
iv)創傷の硬さ。瘢痕の異常な組成および構造は、通常、瘢痕を取り囲む損傷していない皮膚よりも硬くなっていることを意味する。この場合、治療された瘢痕の硬さが、未治療の瘢痕の硬さよりも、瘢痕のない皮膚の硬さに近い場合に、瘢痕化の阻害が示され得る。
【0076】
治療された瘢痕は、好ましくは、本明細書に記載された巨視的評価のためのパラメーターの少なくとも1つを参照して評価されるように、瘢痕化の阻害を示す。より好ましくは、治療された瘢痕は、少なくとも2つのパラメーター、さらにより好ましくは少なくとも3つのパラメーター、最も好ましくはこれらのパラメーターの少なくとも4つ(例えば、上記の4つのパラメーターすべて)に関して、瘢痕化が阻害されたことを示し得る。上記のパラメーターは、瘢痕の肉眼的評価のための視覚的アナログスケール(VAS)の開発に使用され得る。VASの実装に関する詳細を以下に説明する。微視的評価はまた、治療および未治療または対照の瘢痕の質を比較するための適切な手段を提供し得る。瘢痕の質の微視的評価は、典型的には、瘢痕の組織学的切片を使用して行われ得る。瘢痕の微視的評価に適したパラメーターとしては、以下が挙げられる:
i)細胞外マトリックス(ECM)繊維の太さ。治療された瘢痕のECM線維の太さが、未治療の瘢痕に見られる線維の太さよりも、無傷の皮膚に見られるECM線維の太さに近い場合、瘢痕化の阻害が示され得る。
【0077】
ii)ECM繊維の配向。瘢痕に見られるECM繊維は、瘢痕のない皮膚(「バスケット織り」と呼ばれることが多いランダムな方向を有する)に見られるものよりも互いに整列している傾向がある。したがって、治療された瘢痕におけるECM繊維の配向が、未治療の瘢痕に見られるそのような繊維の配向よりも、無傷の皮膚に見られるECM繊維の配向に近い場合、瘢痕化の阻害が証明され得る。
【0078】
iii)瘢痕のECM組成。瘢痕に存在するECM分子の組成は、正常な皮膚に見られるものとは異なり、瘢痕のECMに存在するエラスチンの量が減少している。したがって、治療された瘢痕の真皮中のECM繊維の組成が、未治療の瘢痕に見られる組成よりも、無傷の皮膚に見られるそのような繊維の組成に近い場合、瘢痕化の阻害が証明され得る。
【0079】
iv)瘢痕の細胞性。瘢痕は、瘢痕のない皮膚よりも比較的少ない細胞を含む傾向がある。したがって、治療された瘢痕の細胞性が未治療の瘢痕の細胞性よりも無傷の皮膚の細胞性に近い場合に、瘢痕化の阻害が証明され得ることが理解される。
【0080】
v)付属物。瘢痕には、腺や毛包などの付属器構造は含まれていない。治療された皮膚にこれらが存在することは、瘢痕形成ではなく機能的な組織の再生が起こったことを示す。
【0081】
瘢痕の微視的品質を評価する際に考慮され得るその他の特徴としては、周囲の無傷の皮膚に対する瘢痕の隆起またはくぼみ、および無傷の皮膚との境界面における瘢痕の隆起または可視性が挙げられる。
【0082】
上述のパラメーターは、瘢痕化を微視的に評価するためのVASを生成する際に使用され得る。そのようなVASは、真皮乳頭におけるコラーゲン組織および存在量を考慮し得て、網状真皮はまた、瘢痕の質の有用な指標を提供し得る。治療された瘢痕の質が、未治療または対照の瘢痕の質よりも、瘢痕のない皮膚の質に近い場合、瘢痕化の阻害が示され得る。驚くべきことに、皮膚などの瘢痕の全体的な外観は、観察者が見る瘢痕の一部であるにも関わらず、瘢痕を覆う表皮の影響をほとんど受けていないことに注意する。代わりに、本発明者らは、瘢痕内に存在する結合組織(真皮または新真皮を構成するものなど)の特性が、瘢痕化の程度の認識および瘢痕組織の機能に大きな影響を与えることを発見した。したがって、表皮ではなく真皮などの結合組織に関連する基準の評価が、瘢痕化の阻害を決定する上で最も有用であることが判明し得る。
【0083】
ECM繊維の厚さおよびECM繊維の配向は、瘢痕化の阻害を評価するための好ましいパラメーターであり得る。治療された瘢痕は、好ましくは、改善されたECM配向(すなわち、未治療の瘢痕における配向よりも、瘢痕のない皮膚により類似した配向)を有し得る。
【0084】
治療された瘢痕は、好ましくは、上記の微視的評価のためのパラメーターの少なくとも1つを参照して評価されるように、瘢痕化の阻害を示す。より好ましくは、治療された瘢痕は、前記パラメーターの少なくとも2つ、さらにより好ましくは前記パラメーターの少なくとも3つ、さらにより好ましくは前記パラメーターの少なくとも4つ、および最も好ましくは、これらのパラメーターの5つすべて、に関して、瘢痕化の阻害を示し得る。
【0085】
本発明の環状ペプチドまたは方法を使用して達成された瘢痕化の阻害は、異なる評価スキームから組み合わされた1つまたは複数の適切なパラメーターの改善(例えば、肉眼的評価で使用される少なくとも1つのパラメーター、および微視的評価で使用される少なくとも1つのパラメーターを参照して評価される阻害)によって示され得ることが理解されるであろう。
【0086】
瘢痕の臨床測定および評価のための適切なパラメーターのさらなる例は、Duncan et al.(2006),Beausang et al.(1998)およびvan Zuijlen et al(2002)によって記載されたものなどの様々な測定または評価に基づいて選択され得る。文脈上別段の要求がある場合を除き、以下のパラメーターの多くは、瘢痕化の巨視的および/または微視的評価に適用され得る。皮膚の瘢痕の評価に適したパラメーターの例としては、以下が挙げられる:
1.Visual Analogue Scale(VAS)瘢痕スコアに関する評価。
【0087】
瘢痕化の予防、軽減、または阻害は、対照瘢痕と比較した場合の治療瘢痕のVASスコアの低下によって示され得る。瘢痕の評価に使用するのに適したVASは、Duncan et al.(2006)によって、またはBeausang et al.(1998)によって記述された方法に基づき得る。これは典型的には10cmの線で、0cmは目に見えない瘢痕と見なされ、10cmは非常に貧弱な肥厚性瘢痕と見なされる。
【0088】
2.カテゴリスケールに関する評価。
【0089】
瘢痕化の予防、軽減、または阻害は、治療済みの瘢痕と未治療または対照の瘢痕とを比較し、これらの違いに注目し、前記違いを選択したカテゴリに割り当てることによって(その適切な例は、「軽度の違い」、「中程度の違い」、「大きな違い」などであり)、テキストによる説明、例えば、「ほとんど目立たない」「普通肌になじみやすい」「普通肌とは違う」など、に基づいて、瘢痕を異なるカテゴリに割り当てることによって、決定され得る。この種の評価は、患者、治験責任医師、独立した委員会、または臨床医によって行われることができ、患者に対して直接行われ得るか、または患者から採取した写真または型を使用して行われ得る。評価が、治療された瘢痕が未治療の瘢痕または対照の瘢痕よりも一般的により好ましいカテゴリーに割り当てられることを示す場合、瘢痕化の阻害が実証され得る。
【0090】
3.瘢痕の高さ、瘢痕の幅、瘢痕の周囲、瘢痕の面積、または瘢痕の体積。
【0091】
瘢痕の高さおよび幅は、例えばキャリパーなどの手動測定装置を使用して、またはプロフィロメーターを使用して自動的に、対象に直接測定され得る。瘢痕の幅、周長、および面積は、対象に直接、瘢痕の写真の画像分析、瘢痕のシリコン型の印象の分析、またはそのような印象から作成された陽型の分析によって測定され得る。当業者はまた、シリコーン成形、超音波、光学的三次元プロフィリメトリー、および高解像度磁気共鳴画像法などの、適切なパラメーターを調査するために使用され得るさらなる非侵襲的方法およびデバイスを認識するであろう。瘢痕化の阻害は、治療されていない瘢痕と比較して、治療された瘢痕の高さ、幅、面積、周長、または体積、またはそれらのいずれかの組み合わせの減少によって示され得る。
【0092】
4.創傷の歪みおよび機械的性能
瘢痕の歪みは、瘢痕および無傷の皮膚を視覚的に比較することで評価され得る。適切な比較により、選択された瘢痕を、歪みなし、軽度の歪み、中程度の歪み、または重度の歪みの原因として分類し得る。
【0093】
瘢痕の機械的性能は、吸引、圧力、ねじれ、張力、および音響に基づいた非侵襲的な方法およびデバイスを使用して評価され得る。瘢痕の機械的性能を評価するのに使用できる装置の適切な例としては、Indentometer,Cutometer,Reviscometer,Visco-elastic skin analysis,Dermaflex,Durometer,Dermal Torque MeterおよびElastometerが挙げられる。瘢痕化の阻害は、治療されていない瘢痕によって引き起こされたものと比較して、治療された瘢痕によって引き起こされた歪みの減少によって証明され得る。瘢痕化の阻害は、未治療の瘢痕よりも治療された瘢痕の前記機械的性能に類似している、無傷の皮膚の機械的性能によって示され得ることも理解されるであろう。
【0094】
写真評価独立レイパネル
治療済みおよび未治療の瘢痕の写真による評価は、瘢痕の標準化および校正された写真を使用して、評価者の独立したレイパネルによって実行され得る。前記瘢痕は、独立した素人のパネルによって評価され、カテゴリ別のランキングデータ(例えば、特定の治療済み瘢痕は、未治療の瘢痕と比較して「より良い」、「悪い」、または「違いがない」など)、およびDuncan et al.(2006)およびBeausang et al.(1998)によって記載された方法に基づくVisual Analogue Scale(VAS)を使用した定量的データが提供される。
【0095】
エキスパートパネル
治療済みおよび未治療の瘢痕の写真評価は、評価対象の前記瘢痕の標準化および校正された写真、および/またはシリコン型のポジティブキャストを使用して、専門の評価者のパネルによって代替的または追加的に実行され得る。エキスパートパネルは、好ましくは当業者からなり、その適切な例としては、関連する技術的背景を有する形成外科医、皮膚科医または科学者が挙げられる。
【0096】
臨床評価
臨床医、または臨床医の独立したパネルは、前述のパラメーターのいずれか、例えば、VAS、色、カテゴリスケールなど、を使用して、患者の瘢痕を評価し得る。適切な臨床医は、患者のケアを担当する臨床医でもあり得て、あるいは瘢痕化の阻害に対する治療の有効性を調査している臨床医でもあり得る。
【0097】
患者の評価
患者は、構造化されたアンケートによって評価し得る、および/または瘢痕を比較し得る。適切なアンケートは、以下のようなパラメーターを測定し得る:瘢痕に対する患者の満足度;瘢痕が瘢痕のない皮膚とどれだけうまく調和しているか;および、瘢痕が日常生活に与える影響(適切な質問により、患者が瘢痕を隠すために服を着ているか、あるいは露出を避けているかを考慮し得る)、並びに/あるいは瘢痕症状(かゆみ、痛み、または感覚異常など)。瘢痕化の阻害は、未治療の瘢痕と比較して、治療された瘢痕が患者からより肯定的な評価を受けている、および/または患者の問題がより少ない、および/または瘢痕症状がより小さいまたはより少ない、および/または患者の満足度がより高いことによって示される。カテゴリデータに加えて、適切な視覚化技術と組み合わせた画像解析を使用して、定量的データ(好ましくは上記のパラメーターに関連する)を生成し得る。瘢痕の質を評価するのに使用され得る適切な視覚化技術の例は、特定の組織学的染色または免疫標識であり、存在する染色または標識の程度は、画像分析によって定量的に決定され得る。
【0098】
定量的データは、以下のパラメーターに関連して有用かつ容易に生成され得る:
1.瘢痕の幅、高さ、仰角、体積、および面積。
【0099】
2.コラーゲン組織、コラーゲン繊維の太さ、コラーゲン繊維の密度。
【0100】
3.線維芽細胞の数および方向。
【0101】
4.エラスチン、フィブロネクチンなどの他のECM分子の量および方向
瘢痕化の予防、軽減、または阻害は、治療された瘢痕が、対照または未治療の瘢痕(または他の適切な比較対象)よりも、瘢痕のない皮膚によりよく似ているように、上記で考慮された前記パラメーターのいずれかの変化によって示され得る。上記の評価およびパラメーターは、動物またはヒトにおける対照、プラセボまたは標準治療と比較して、瘢痕形成に対するポリペプチドの効果の評価に適している。これらの評価およびパラメーターは、瘢痕化の予防、軽減または阻害に使用され得る治療上有効なポリペプチドを決定する際に;およびAXLなどの本発明のポリペプチドの治療有効量の決定の際に、利用され得ることが理解される。結果の重要性を調査するために、適切な統計テストを使用して、様々な処理から生成されたデータセットを分析し得る。
【0102】
皮膚以外の器官の瘢痕化の評価に使用され得る他のパラメーターは、問題の器官を参照して決定され得る。例えば、角膜の瘢痕化は、角膜の不透明度または透過/屈折特性を測定し、角膜の曲率を測定することによって評価され得る。そのような評価は、例えば、インビボ共焦点顕微鏡法および/または鏡面顕微鏡法または角膜トポグラフィーを使用して行われ得る。
【0103】
腱または靭帯の瘢痕化の阻害の成功は、本発明の薬剤または方法で治療された組織の機能の回復によって示され得る。機能の適切な指標としては、腱または靭帯の重量、伸張、屈曲などの能力が挙げられ得る。そのような評価は、例えば、電気生理学的反射検査、表面筋電図検査、超音波検査、超音波/MRIスキャン、並びに自己報告による症状、および疼痛のアンケートを使用して行われ得る。
【0104】
血管に発生する瘢痕化の程度は、例えば超音波を使用して直接測定するか、または血流によって間接的に測定され得る。本発明の薬剤または方法を使用して達成される瘢痕化の阻害は、血管内腔の狭小化の減少につながり、より正常な血流を可能にし得る。
【0105】
創傷部位
創傷は、創傷が発生し得る、いずれかの身体部位、およびいずれかの組織または臓器に存在し得る。前記皮膚は、瘢痕形成が防止、軽減、または阻害される好ましい部位である。本発明者らは、本発明の環状ペプチドが、すべてのタイプの上皮創傷における瘢痕形成を有益に減少させ得ると考えている。本発明の効果が見られ得る特定の創傷の例としては、皮膚の創傷(火傷、切開創、褥瘡など)、肺の創傷、角膜瘢痕化を引き起こすものなどの、眼の創傷(レーシック手術、ラセック手術、PRK手術、緑内障濾過手術、白内障手術、または水晶体嚢が瘢痕化する可能性のある手術などの眼科手術による瘢痕化の阻害を含む);被膜収縮を受けやすい創傷(豊胸手術の周囲でよく見られる);唇および口蓋を含む口腔の創傷(例えば、口唇裂または口蓋裂の治療による瘢痕化を阻害するため、または閉鎖潰瘍または口腔潰瘍を促進するため);消化組織および生殖組織などの内臓の創傷;腹腔、骨盤腔、および胸腔などの体腔の創傷(瘢痕化の阻害により、癒着形成の発生率および/または形成される癒着のサイズが減少し得る場合);外科的創傷(特に、毛髪移植手術のための瘢痕修正またはストリップ移植片の分離などの美容治療に関連する創傷)、からなる群から選択される創傷が挙げられる。本発明の環状ペプチドは、皮膚の創傷に関連する瘢痕化を予防、軽減または阻害するために使用されることが特に好ましい。
【0106】
切開創は、本発明のポリペプチドによって阻害され得る瘢痕化をもたらす創傷の好ましい群である。外科的切開創は、本発明の薬剤および方法を利用して瘢痕化を阻害し得る、特に好ましい一群の創傷を構成し得る。
【0107】
本発明の環状ペプチドは、形成外科または美容外科手術に関連する瘢痕化を阻害するために使用され得る。多数の形成外科または美容外科手術は待機外科手術からなるので、本発明のポリペプチドは、手術前、および/または創傷閉鎖前後(例えば、縫合前または後)に投与することが容易に可能であり、この使用は、本発明の特に好ましい実施形態を表す。
【0108】
一般に外科的治療において、本発明の環状ペプチドを投与し得る好ましい経路は、局所注射(皮内注射など)によるものである。そのような注射は、隆起した水疱を形成し、それを外科的治療の一部として切開するか、または縫合などによって創傷を閉じた後、創傷縁に注入することによって水疱を隆起させ得る。あるいは、前記環状ペプチドは、クリーム製剤または包帯で投与され得る、あるいは切開閉鎖に使用される縫合糸にコーティングされ得る。
【0109】
瘢痕修正とは、既存の瘢痕によって引き起こされる美容的および/または機械的破壊を軽減するために、既存の瘢痕を「修正」する(例えば、切除または再調整によって)外科的治療である。おそらくこれらの中で最もよく知られているのは、2つのV字型の皮弁を入れ替えて張力線を回転させる「Z形成術」である。瘢痕修正に関連する治療における本発明の環状ペプチドの使用は、本発明による好ましい使用を表す。
【0110】
火傷による創傷(これは、本発明の目的のために、加熱されたガスまたは固体への暴露、および高温の液体を含む熱傷;極度の低温にさらされることによる「冷凍焼け」損傷;放射線火傷;腐食剤によるものなどの化学火傷、を含むと解釈され得る)は、そのように苦しんでいる個体の大きな領域に及び得ることが認識されている。従って、火傷は、患者の体の大部分を覆う瘢痕形成を引き起こし得る。この広範囲の被覆は、形成された瘢痕が美容上の重要性が高い領域(顔、首、腕または手など)または機械的重要性が高い領域(特に関節を覆うまたは周囲の領域)を覆うリスクを高める。熱い液体による火傷は、子供がよく被り(例えば、鍋またはやかんなどをひっくり返した結果として)、子供の体が比較的小さいため、特に、身体領域の大部分に広範な損傷を与える可能性が高い。したがって、火傷後の瘢痕に関連する美容的および機械的障害のリスクが高くなる。大きな火傷の後は、皮膚移植が治療として使用される。本発明は、皮膚移植片と組み合わせて使用して、移植片から被覆されていない創傷への上皮細胞の移動を促進し、皮膚の移植されていない領域に障壁を迅速に確立し得る。
【0111】
「対象」は、脊椎動物、哺乳類、または家畜であり得る。したがって、本発明による薬剤および化粧品は、いずれかの哺乳動物、例えば家畜(例えばウマ)、ペットの治療に使用されることができ、または他の獣医学的用途に使用され得る。しかしながら、最も好ましくは、前記対象はヒトである。
【0112】
環状ポリペプチドの「治療有効量」は、対象に投与された場合に、皮膚の症状を治療する、または望ましい効果を生み出すのに必要な活性剤の量であるいずれかの量である。前記環状ポリペプチド、またはその誘導体もしくは類似体は、湿疹、乾癬、黒色腫、皮膚炎およびざ瘡などの様々な皮膚症状の治療のためのアジュバントとして使用され得る。これは、他の治療のより低い用量が必要であることを意味する。
【0113】
環状ポリペプチドの「美容上有効な量」は、対象に投与された場合に、望ましい美容効果を生み出すのに必要な活性剤の量であるいずれかの量である。
【0114】
例えば、使用される環状ポリペプチドの治療上または美容上有効な量は、約0.001mg~約800mg、好ましくは約0.01mg~約500mgであり得る。
【0115】
本明細書で言及される「薬学的に許容されるビヒクル」は、医薬組成物の処方に有用であることが当業者に知られているいずれかの既知の化合物または既知の化合物の組み合わせである。
【0116】
本明細書で言及される「美容上許容されるビヒクル」は、美容組成物を処方するのに有用であることが当業者に知られているいずれかの既知の化合物または既知の化合物の組み合わせである。
【0117】
一実施形態では、前記薬学的に許容されるビヒクルまたは美容上許容されるビヒクルは固体であり得て、前記組成物は粉末または錠剤の形態であり得る。しかしながら、医薬品または化粧品ビヒクルは液体であってもよく、医薬品組成物または化粧品組成物は溶液の形態である。無菌溶液または懸濁液である液体医薬品組成物または化粧品組成物は、例えば、筋肉内、くも膜下腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内、および特に皮下注射によって利用され得る。
【0118】
本発明の環状ポリペプチドおよび組成物は、他の溶質または懸濁化剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはブドウ糖)、胆汁酸塩、アカシア、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルとその無水物にエチレンオキサイドとを共重合させたもの)などを含む滅菌溶液または懸濁液の形態で経口投与され得る。本発明に従って使用される環状ポリペプチドはまた、液体または固体組成物の形態で経口投与され得る。経口投与に適した組成物としては、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、および散剤などの固体形態、並びに溶液、シロップ、エリキシル、および懸濁液などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、エマルジョン、および懸濁液が挙げられる。
【0119】
好ましくは、本発明の環状ポリペプチドおよび組成物は、クリーム、ゲル、ローション、軟膏、皮膚溶液、懸濁液、スプレー、フォーム、入浴剤、コロジオン、含浸包帯、または薬用絆創膏の形態で局所投与され得る。前記クリームは、水中油型または油中水型のいずれかであり得る。本発明の環状ポリペプチドおよび組成物は、硫酸アルキル、アルキルアミン、アルキルピリミジン化合物などの乳化剤とともに局所投与され得る。クリーム製剤に許容されるオイルとしては、白色ワセリン、パラフィン、セテアリルアルコール、ココグリセリド、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、カカオ酪酸、オレウムヘリアンティ、セラアルバ、ラノリン、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。ゲルの調製において、以下のゲル形成添加剤を使用し得る:セルロースガム(カルボキシメチルセルロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、またはラポナイト。
【0120】
好ましくは、本発明の環状ポリペプチドおよび組成物は、保存剤、抗酸化剤、錯化剤、溶剤、香料、殺菌剤、消臭剤、ビタミン、保湿剤、セルフタンニング化合物、シワ防止剤、と共に局所投与され得る。
【0121】
本発明の組成物は、美容上許容される添加剤またはアジュバント、および化粧品または皮膚科学的活性剤を含み得る。代表的な添加剤およびアジュバントとしては、例えば、油溶性または油混和性溶媒または共溶媒が挙げられる。添加剤および補助剤の適切な例としては、脂肪アルコール、脂肪アミド、アルキレンカーボネート、グリコール、低級アルコール(例えば、エタノール、プロパンジオール)、分散促進剤、ポリマー、増粘剤、安定剤、保湿剤、保湿剤、着色剤、充填剤、キレート剤、酸化防止剤(BHT、トコフェロールなど)、エッセンシャルオイル、香料、染料、中和剤もしくはpH調整剤(クエン酸、トリエチルアミン(TEA)、水酸化ナトリウムなど)、防腐剤、殺菌剤、コンディショニング剤もしくは柔軟剤(パンテノール、アラントインなど)、植物抽出物などの抽出物、またはこのタイプの用途の化粧品で一般的に使用されるその他の成分、が挙げられるが、これらに限定されない。添加剤およびアジュバントは、一般に約0.01重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。美容活性剤または皮膚科学的活性剤の例としては、フリーラジカルスカベンジャー、ビタミン(例えば、ビタミンE、およびその誘導体)、抗エラスターゼ、および抗コラゲナーゼ剤、ペプチド、脂肪酸誘導体、ステロイド、微量元素、藻類、およびプランクトンの抽出物、酵素、および補酵素、フラボノイド、およびセラミド、ヒドロキシ酸、並びにそれらの混合物、並びに増強剤、が挙げられる。これらの成分は、前記組成物中に存在する油相に溶解または分散可能であり得る。
【0122】
本発明の環状ポリペプチドおよび組成物は、他の溶質または懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはグルコース)、胆汁酸塩、アカシア、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルおよびその無水物にエチレンオキサイドを共重合させたもの)など、を含む滅菌溶液または懸濁液で投与され得る。本発明に従って使用される環状ポリペプチドはまた、液体または固体組成物の形態で経口投与され得る。経口投与に適した組成物としては、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、および散剤などの固体形態、並びに溶液、シロップ、エリキシル、および懸濁液などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、エマルジョン、および懸濁液が挙げられる。
【0123】
本発明は、機能的変異体またはその機能的断片などの、本明細書で言及される配列のいずれかのアミノ酸配列または核酸配列を実質的に含む、いずれかの核酸もしくはペプチド、またはそれらの変異体、誘導体、もしくは類似体にまで及ぶことが理解されるであろう。「実質的にアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列」、「機能的変異体」、および「機能的フラグメント」という用語は、本明細書で言及される配列のいずれか1つのアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列と少なくとも40%の配列同一性、例えば、配列番号1~4として識別される配列と40%の同一性を有する配列などであり得る。
【0124】
参照される配列のいずれかと、65%を超える、より好ましくは70%を超える、さらにより好ましくは75%を超える、さらにより好ましくは80%を超える、配列同一性である、配列同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列もまた想定される。好ましくは、前記アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、言及された配列のいずれかと少なくとも85%の同一性を有し、より好ましくは、本明細書で言及される配列のいずれかと、少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも92%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%の同一性、および最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0125】
当業者は、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性を計算する方法を理解するであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性を計算するには、まず2つの配列のアラインメントを準備し、続いて配列同一性値を計算する必要がある。2つの配列の同一性パーセンテージは、以下に応じて異なる値になり得る:(i)配列のアラインメントに使用される方法、例えば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(様々なプログラムで実装)、または3D比較による構造アラインメント;並びに(ii)アラインメント方法で使用されるパラメーター、例えば、ローカルアラインメントvsグローバルアラインメント、使用されるペアスコアマトリックス(BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)、およびギャップペナルティ、例えば、関数形および定数。
【0126】
アラインメントを作成する際、2つの配列間の同一性パーセンテージを計算する様々な方法が存在する。例えば、同一性の数を以下のように分類される:(i)最短配列の長さ;(ii)アライメントの長さ;(iii)配列の平均長;(iv)非ギャップ位置の数;または(iv)オーバーハングを除く等価位置の数。さらに、パーセンテージ同一性もまた、長さに強く依存することが理解されるであろう。したがって、配列のペアが短いほど、偶然に発生すると予想される配列同一性が高くなる。
【0127】
したがって、タンパク質またはDNA配列の正確なアラインメントは複雑なプロセスであることが理解されるであろう。よく知られているマルチアライメントプログラムClustalW(Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Research,22,4673-4680;Thompson et al.,1997,Nucleic Acids Research,24,4876-4882)は、本発明に従ってタンパク質またはDNAの複数のアラインメントを生成するための好ましい方法である。ClustalW に適したパラメーターは以下の通りである:DNAアラインメントの場合:Gap Open Penalty=15.0、Gap Extension Penalty=6.66、およびMatrix=Identity。タンパク質アラインメントの場合:Gap Open Penalty=10.0,Gap Extension Penalty=0.2,およびMatrix=Gonnet。DNAおよびタンパク質のアラインメントの場合:ENDGAP=-1、およびGAPDIST=4。当業者は、最適な配列アラインメントのためにこれらおよび他のパラメーターを変更する必要があり得ることを知っているであろう。
【0128】
好ましくは、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性の計算は、(N/T)×100のようなアラインメントから計算されることができ、ここで、Nは、配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップを含み、オーバーハングを含むか含まないかのいずれかで比較される位置の総数である。オーバーハングが計算に含まれることが好ましい。したがって、2つの配列間のパーセンテージ同一性を計算するための最も好ましい方法は、以下を含む:(i)例えば上記のように、適切なパラメーターセットを使用してClustalWプログラムを使用して配列アラインメントを準備すること;および(ii)NおよびTの値を以下の式に挿入する:配列同一性=(N/T)*100。
【0129】
類似の配列を同定するための他の方法は、当業者に知られている。例えば、実質的に類似のヌクレオチド配列は、厳格な条件下でDNA配列またはその相補体にハイブリダイズする配列によってコードされる。厳格な条件とは、約45℃の3x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でフィルターに結合したDNAまたはRNAにヌクレオチドがハイブリダイズした後、約20~65℃の0.2xSSC/0.1%SDSで少なくとも1回洗浄することを意味する。あるいは、実質的に類似のポリペプチドは、配列番号1~4に示される配列と、少なくとも1個であるが5、10、20、50または100個未満のアミノ酸が異なり得る。
【0130】
遺伝コードの縮重により、本明細書に記載のいずれかの核酸配列を、それによってコードされるタンパク質の配列に実質的に影響を与えることなく改変または変更して、その機能的変異体を提供し得ることは明らかである。適切なヌクレオチド変異体は、配列内の同一のアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって改変された配列を有するものであり、したがってサイレントチェンジを生じる。他の適切な変異体は、相同なヌクレオチド配列を有するが、置換するアミノ酸と同様の生物物理学的特性の側鎖を有するアミノ酸をコードする様々なコドンの置換によって変更され、保存的な変更を生成する、配列の全部または一部を含む変異体である。例えば、小さな非極性疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが挙げられる。大きな非極性の疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。前記極性の中性アミノ酸としては、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。前記正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが挙げられる。前記負に帯電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。したがって、どのアミノ酸を類似の生物物理学的特性を有するアミノ酸で置き換えることができるかが理解され、当業者はこれらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を理解するであろう。
【0131】
本明細書に記載されているすべての特徴(付随する特許請求の範囲、要約、および図面を含む)、および/またはそのように開示されている方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、いずれかの組み合わせで上記の態様のいずれかと組み合わせ得る。
【0132】
本発明をよりよく理解するために、また、本発明の実施形態がどのように実施されるかを示すために、例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1A】
図1Aは、環化部位を形成する末端アラニン(A)およびリジン(K)残基を有するNBP-14(配列番号3)の配列を示す。
図1Bは、前記末端アラニン残基とリジン残基とが結合している環状NBP-14ペプチドを示す。
【
図1B】
図1Aは、環化部位を形成する末端アラニン(A)およびリジン(K)残基を有するNBP-14(配列番号3)の配列を示す。
図1Bは、前記末端アラニン残基とリジン残基とが結合している環状NBP-14ペプチドを示す。
【
図2】
図2は、前記環状ペプチド(NBP-14)がケラチノサイトにおけるT30誘導細胞内カルシウム流入を阻害する能力を示す。
【
図3】
図3は、A)前記直鎖状ペプチドT30およびT15並びに前記環状ペプチドNBP-14で治療されたケラチノサイト細胞株における細胞生存度;並びにB)直鎖状ペプチドT30およびT15で治療されたケラチノサイト細胞系の細胞増殖、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0134】
実施例
原理
本発明者らは、T15、T30およびNBP-14ペプチドとして知られるアセチルコリンエステラーゼのC末端に基づく多数の直鎖状ペプチドおよび環状ペプチドを生成し、ケラチノサイト細胞株におけるそれらの効果を評価した。配列番号3は、本明細書において「環化T14」、「CT14」または「NBP-14」と称され、テイルアセチルコリンエステラーゼのC末端由来のアミノ酸配列を有する環状ペプチドであることに留意されたい。
【0135】
材料および方法
ペプチドの環化
本明細書に記載の直鎖状ペプチドの環化、すなわち、側鎖から側鎖へ、側鎖から骨格へ、および頭部から尾部へ(C末端からN末端へ)の環化を達成するために、3つの技術が使用された。頭部から尾部への環化は広く研究されており、Cys-Cysジスルフィド環化(1分子あたり最大2つまで)を含み得る。反応を注意深くモニターすることで、100%の環化が保証される。合成には2つの一般的なアプローチが使用される:(1)高希釈条件下での古典的な液相直鎖状ペプチド環化;および(2)樹脂ベースの環化。固相合成(1)では、2つの異なるプロトコルが使用された:
(a)イミダゾール,3酸,4アミン、またはアルコールなどの側鎖官能基を介して固定されたペプチドの樹脂上環化が行われた。ペプチドは、C末端でエステルとして直交的に保護され、その後、ペプチドは、通常のBoc合成またはFmoc合成とそれに続くケン化、環化、および切断によって組み立てられた。
【0136】
(b)使用された他のプロトコルは、前記環状ペプチドが段階的な直鎖状ペプチド合成の後に環化によって合成される環化切断アプローチであった。この方法の利点の1つは、側鎖を固定する必要がないため、アプローチが(a)よりも一般的なものになることである(Christopher J.White and Andrei K.Yudin(2011)Nature Chemistry 3;Valero et al(1999)J Peptide Res.53,76-67;Lihu Yang and Greg Morriello(1999)Tetrahedron Letters 40,8197-8200;Parvesh Wadhwani et al(2006)J.Org.Chem.71,55-61)。
【0137】
実施例1:環状T14(すなわち「NBP-14」)
前記「テール」アセチルコリンエステラーゼ(T-AChE)はシナプスで発現し、発明者らは以前に、そのC末端から切断され得る2つのペプチドを同定しており、1つは「T14」(14アミノ酸長)と呼ばれ、もう1つは「T30」(30アミノ酸長い)として知られている。前記直鎖状ペプチドT14のアミノ酸配列は、AEFHRWSSYMVHWK(配列番号3)である。前記直鎖状ペプチドT30のアミノ酸配列は、KAEFHRWSSYMVHWKNQFDHYSKQDRCSDL(配列番号2)である。「T15」と呼ばれる他のペプチドは、配列番号1の最後の15アミノ酸残基、すなわちNQFDHYSKQDRCSDL(配列番号4)に対応する。
【0138】
前記AChEのC末端ペプチド「T14」は、非加水分解作用の範囲に関与するAChE分子の顕著な部分であると特定されている。前記合成14アミノ酸ペプチド類似体(すなわち「T14」)、およびそれに続く、より大きく、より安定で、より強力なアミノ酸配列(すなわち「T30」)は、「非コリン作用性AChE」について報告されているものに匹敵する作用を示す。
【0139】
最初に
図1Aを参照すると、前記14アミノ酸長の環状T14ペプチド(すなわち「NBP-14」)が示されている。前記環状ペプチド、NBP-14は、末端のアラニン(A)およびリジン(K)残基を介して環化されており、
図1Bに示されている。環化は、いくつかの異なる手段によって達成され得る。例えば、Genosphere Biotechnologies(France)は、前記直鎖状ペプチドをN末端からC末端へのラクタムに変換することによって、T14の環化を行った。環状NBP-14を製造するためのT14の環化により、両端、すなわち、HWK-AEF、が結合する。
【0140】
実施例2:ケラチノサイト細胞株HaCaTs細胞株における細胞内カルシウムに対するアセチルコリンエステラーゼ由来ペプチドの効果
本発明者らは、ケラチノサイト細胞株への細胞内カルシウム流入を誘導する、アセチルコリンエステラーゼ由来の直鎖状ペプチド、T30およびT15、並びに環状ペプチドNBP-14の能力を調べ、結果を
図2に示す。T30の塗布は、ケラチノサイト細胞株の細胞内カルシウムの増加を誘発し、一方で、不活性なT15ペプチドの塗布は、細胞株の細胞内カルシウムの上昇を誘発しなかった。NBP-14は驚くべきことに、T30の効果を有意に阻害し得た。
【0141】
実施例3:ケラチノサイト細胞株HaCaTs細胞株の増殖に対するアセチルコリンエステラーゼ由来ペプチドの効果
本発明者らは次に、前記アセチルコリンエステラーゼ由来ペプチド、T30およびT15が前記HaCaT細胞株の増殖を誘導する能力を調べ、また細胞生存率を試験して、前記HaCaT細胞株に対するNBP-14、T15およびT30の細胞毒性を決定した。結果を
図3に示す。
図3Bを参照すると、未治療の対照(ペプチドなし)と比較した場合、T30はHaCaT細胞の増殖を有意に誘導した。対照的に、T15は細胞増殖を変更しませんでした。
図3Aに示すように、NBP-14、T15、およびT30は、前記細胞株において有意な細胞傷害効果を誘発しなかった。
【0142】
結論
本発明者らは、ケラチノサイト細胞株に対するアセチルコリンエステラーゼの前記C末端由来の環状ペプチドの効果を調査し、前記T14配列を含む配列であるT30が、皮膚細胞への細胞内カルシウム流入を刺激し、細胞増殖を誘導することを発見した。本発明者らはまた、アセチルコリンエステラーゼの前記C末端由来の環状ペプチド(「NBP-14」として知られる)が、ケラチノサイトへのT30誘導細胞内カルシウム流入を阻害するが、非毒性であることを示した。したがって、本発明者らは、NBP-14が、乾癬および癌(例えば黒色腫)などの細胞増殖に関連する皮膚症状を治療、予防または改善するための治療剤として利用されることができ、また瘢痕形成を予防、軽減および阻害するためにも使用され得ると考える。
【配列表】
【国際調査報告】