(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】イオン性ビス(スルホニル)イミド部分及びペルフルオロエーテル末端基を有するペンダント基を含むフルオロポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 8/34 20060101AFI20230508BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20230508BHJP
H01M 8/1039 20160101ALI20230508BHJP
H01M 8/1081 20160101ALI20230508BHJP
C25B 1/46 20060101ALI20230508BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20230508BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230508BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230508BHJP
【FI】
C08F8/34
H01M4/86 B
H01M8/1039
H01M8/1081
C25B1/46
C25B1/26 A
C25B9/00 E
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559481
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2021051849
(87)【国際公開番号】W WO2021198808
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リンデル,マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤンドラシツ,ミカエル エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,アンドリュー ティー.
【テーマコード(参考)】
4J100
4K021
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4J100AC26P
4J100AE38Q
4J100BA57Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA42
4J100FA03
4J100FA19
4J100HC69
4J100HC71
4J100JA43
4K021AA01
4K021AA03
4K021BA03
4K021DB32
4K021DB43
4K021DC01
4K021DC15
5H018AA06
5H018BB16
5H018EE18
5H018HH00
5H018HH05
5H018HH06
5H018HH08
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5H126HH10
5H126JJ00
5H126JJ05
5H126JJ06
5H126JJ08
(57)【要約】
以下の式:[式中、Rfは、ペルフルオロエーテルであり、X
1及びX
2は、独立して、カチオン性対イオンである]を有するペンダント基を含む、フルオロポリマーが記載される。本明細書に記載のフルオロポリマーを含む触媒インク、ポリマー電解質膜、及び膜電極接合体を含む様々な物品、並びにフルオロポリマーを製造する方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】
[式中、
Rfは、ペルフルオロエーテルであり、
aは、0又は1であり、
cは、0又は1であり、
b、e、及びfは、独立して、2~6の範囲であり、
dは、0、1、又は1超であり、
X
1及びX
2は、独立して、カチオン性対イオンである]
で表されるペンダント基を含む、フルオロポリマー。
【請求項2】
a及びcが0であり、dが少なくとも1であり、ペンダント基が以下の式:
【化2】
を有する、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項3】
Rfが、3個~12個のペルフルオロ化炭素原子を有するペルフルオロエーテルである、請求項1又は2に記載のフルオロポリマー。
【請求項4】
X
1及びX
2が水素である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項5】
a、c、及びdが、それぞれゼロであり、ペンダント基が以下の式:
-(OC
eF
2e)-SO
2-NX
1-SO
2-Rf
を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項6】
前記フルオロポリマーが、最大10mol%の、少なくとも1つのビス(スルホニル)イミド部分と、スルホン酸及びスルホンアミドから選択される末端基とを含むペンダント基を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項7】
前記フルオロポリマーが、5mol%~50mol%の前記ペンダント基を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項8】
前記フルオロポリマーが、50mol%~95mol%の、-[CF
2-CF
2]-の重合単位を含む主鎖を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項9】
前記フルオロポリマーが、少なくとも
i)25%の相対湿度で1.1E-13、
ii)50%の相対湿度で1.5E-13、
iii)100%の相対湿度で2.2E-13、又は
それらの組み合わせの80℃での電気化学的酸素透過係数を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項10】
前記フルオロポリマーが、23℃及びゼロ相対湿度で少なくとも8.5E-15の酸素透過係数を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項11】
前記フルオロポリマーが、少なくとも
i)25%の相対湿度で0.001S/cm、0.005S/cm、若しくは0.010S/cm、
ii)50%の相対湿度で0.010S/cm、0.020S/cm、0.030S/cm、0.040S/cm、0.050S/cm、
iii)90%の相対湿度で0.050S/cm、0.10S/cm、0.15S/cm、0.20S/cm、0.25S/cm、又は
それらの組み合わせの80℃でのイオン導電率を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項12】
1つ以上のイオン性ビス(スルホニル)イミド部分と末端ペルフルオロエーテル基とを含むペンダント基を含むフルオロポリマーであって、前記フルオロポリマーが、請求項9又は10に記載の酸素透過係数を有する、フルオロポリマー。
【請求項13】
前記フルオロポリマーが有機溶媒中に分散している、請求項1~12のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項14】
前記フルオロポリマーが、水性溶媒中又は水と水混和性有機溶媒との混合物中に分散している、請求項1~13のいずれか一項に記載のフルオロポリマー。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のフルオロポリマーを含む、触媒インク。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載のフルオロポリマーから調製された、ポリマー電解質膜。
【請求項17】
請求項15に記載の触媒インク、又は請求項16に記載のポリマー電解質膜のうちの少なくとも1つを含む、膜電極接合体。
【請求項18】
フルオロポリマーを製造する方法であって、
i)フルオロポリマー主鎖とハロゲン化スルホニルで終端するペンダント基とを含む第1のフルオロポリマー中間体を提供することと、
ii)前記第1のフルオロポリマー中間体の前記ハロゲン化スルホニル基をアンモニアと反応させて、非プロトン性アミン塩基でイオン交換し、前記アンモニウムからプロトンを除去し、スルホンアミド塩で終端する第2のフルオロポリマー中間体を形成することと、
iii)前記第2のフルオロポリマー中間体の前記スルホンアミド塩を、ペルフルオロ化ハロゲン化ジスルホニル及び非プロトン性アミン塩基と反応させて、ビス(スルホニル)イミドハロゲン化スルホニルで終端する第3のフルオロポリマー中間体を形成することと、
iv)前記第3のフルオロポリマー中間体の前記ビス(スルホニル)イミドハロゲン化スルホニルを、アンモニアと反応させて、アンモニウムイオンで終端するビス(スルホニル)イミド塩で終端する第4のフルオロポリマー中間体を形成することと、
v)任意に、前記第4のフルオロポリマー中間体を精製し、イオン交換して、前記アンモニウムイオンを除去し、前記末端スルホンアミドを、非プロトン性アミン塩基と反応性である中和形態又はスルホンアミド塩に変換することと、
vi)前記任意に精製され、イオン交換された第4のフルオロポリマー中間体を、非プロトン性アミン塩基及びペルフルオロエーテルハロゲン化スルホニルと反応させて、末端フルオロポリマーペルフルオロエーテル基を共有結合させることと、
vii)任意に、vi)の前記フルオロポリマーを精製し、イオン交換することと、
を含む、方法。
【請求項19】
vi)の前にステップii)~v)を繰り返すことを更に含み、dがステップii)~v)が行われる回数である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
i)の前記フルオロポリマー中間体の前記ペンダント基が、前記フルオロポリマー主鎖とビス(スルホニル)イミド基との間に、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記フルオロポリマーが、請求項1~12のいずれか一項に記載されるものである、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ペンダントイオン基を含む様々なフルオロポリマーが記載されている。(例えば、米国特許第7,348,088号を参照されたい。)そのようなフルオロポリマーは、電気化学燃料電池のポリマー電解質膜に好適である。
【発明の概要】
【0002】
産業は、1つ以上のイオン性ビス(スルホニル)イミド部分と、高い酸素透過性などの改善された特性を有するペルフルオロエーテル末端基とを有するペンダント基を含むフルオロポリマーにおいて利点を見出すであろう。
【0003】
一実施形態では、以下の式:
【化1】
[式中、Rfは、ペルフルオロエーテルであり、X
1及びX
2は、独立して、カチオン性対イオンである]
を有するペンダント基を含む、フルオロポリマーが記載される。
【0004】
本明細書に記載のフルオロポリマーを含む触媒インク、ポリマー電解質膜、及び膜電極接合体を含む様々な物品、並びにフルオロポリマーを製造する方法も記載される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書には、ペンダント基を含むフルオロポリマーが記載される。ペンダント基の少なくとも一部は、ペルフルオロエーテル末端基を含む。ペンダント基は、1つ以上のビス(スルホニル)イミド部分及び水素イオン(H+)などのカチオン性対イオンを更に含む。
【0006】
フルオロポリマーのペンダント基は、典型的には以下の式:
【化2】
[式中、
Rfは、ペルフルオロエーテルであり、
aは0又は1であり、
cは、0、1、又は2であり、
b、e及びfは、独立して、2~6の範囲であり、
dは、0、1又は1超であり、
X
1及びX
2は、独立して、カチオン性対イオン(H
+を含む)である]
を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、cは、1又は1超(例えば、2)である。cが少なくとも1である場合、bは独立して、2~6の整数である。いくつかの実施形態では、bは、7、6、5、又は4未満である。いくつかの実施形態では、bは3である。
【0008】
いくつかの実施形態では、a及びcは0であり、dは1又は1超であり、ペンダント基は以下の式:
【化3】
を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、dは、典型的には、4、3、又は2以下である。
【0010】
いくつかの実施形態では、a、c、及びdは、それぞれゼロであり、ペンダント基は、以下の式:
-(OCeF2e)-SO2-NX1-SO2-Rfを有する。
【0011】
これらの実施形態の各々において、Rfは、典型的には、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個の、並びにこれらの整数から派生する任意の範囲の個数のペルフルオロ化炭素原子を有する単一のペルフルオロエーテル基である。例えば、ペルフルオロエーテル基は、3個~6個のペルフルオロ化炭素原子を含み得る。いくつかの実施形態では、Rfは、2つのペルフルオロエーテル基を含むポリペルフルオロエーテルであり、ペルフルオロエーテル基の各々は、今述べたように独立して3個~12個の炭素原子、並びにこれらの整数から派生する任意の範囲の個数の炭素原子を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、eは、2、3、4、5、又は6、並びに2~4又は3~6などのこれらの整数から派生する任意の範囲である。
【0013】
いくつかの実施形態では、fは、2、3、4、5、又は6、並びに2~4又は3~6などのこれらの整数から派生する任意の範囲である。
【0014】
フルオロポリマーは、典型的には、フルオロポリマーの重合モノマーの総モルに基づいて、5mol%~50mol%の、ペルフルオロエーテル末端基を含むペンダント基を有する重合モノマーを含む。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20mol%の、ペルフルオロエーテル末端基を含むペンダント基を有する重合モノマーを含む。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、45、40、35、30、又は25mol%未満の、ペルフルオロエーテル末端基を含むペンダント基を有する重合モノマーを含む。
【0015】
フルオロポリマーは、典型的には、ペルフルオロエーテル末端基ではない異なる末端基を含む他のペンダント基を有する重合モノマーを含む。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、スルホン酸(-SO3H)末端基を含むペンダント基を更に含む。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、スルホンアミド(-SO2NH2)末端基を含むペンダント基を更に含む。フルオロポリマーは、典型的には、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1mol%以下の、ペルフルオロエーテル末端基ではない異なる(例えば、スルホン酸、スルホンアミド)末端基を含むペンダント基を有する重合モノマーを含む。ペルフルオロエーテル末端基ではない異なる末端基を含むそのような他のペンダント基は、ビス(スルホニル)イミド部分を含んでも、又は含まなくてもよい。ペンダント基の様々な部分の相対的割合は、以下の実施例で論じられるように、核磁気共鳴(NMR)分光法によって決定することができる。
【0016】
ペンダント基は、フルオロポリマー主鎖に共有結合している。フルオロポリマーの主鎖は、典型的には、-[CF2-CF2]-の重合(例えば、繰り返し)単位を含む。典型的な実施形態では、-[CF2-CF2]-の重合(例えば、繰り返し)単位の少なくとも50mol%は、テトラフルオロエチレン(TFE)の重合から誘導される。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、フルオロポリマーの重合モノマーの総モル数に基づいて、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、90、又は95モル%の、CF2=CF2の重合単位、すなわちテトラフルオロエチレンを含む。フルオロポリマーの主鎖は、ペルフルオロ化ハロゲン化スルホニルモノマーの不飽和基の重合から誘導される-[CF2-CF]-の単位を更に含む。-[CF2-CF]-の各CFの炭素原子は、本明細書に記載されるペンダント基に結合している。
【0017】
そのようなフルオロポリマーの所望の特性(例えば、酸素透過性)を損なわない限り、様々な他のモノマーをフルオロポリマーの調製に使用することができる。
【0018】
フルオロポリマーは、任意の好適な方法によって製造することができる。
【0019】
フルオロポリマーを調製する1つの具体化された方法は、実施例でより詳細に説明され、
i)フルオロポリマー主鎖とハロゲン化スルホニル(例えば、-SO2F)で終端するペンダント基を含む第1のフルオロポリマー中間体を提供することと、
ii)第1のフルオロポリマー中間体のハロゲン化スルホニル基をアンモニアと反応させて、スルホンアミドアンモニウム塩を生成し、非プロトン性アミン塩基(例えば、トリエチルアミン、(TEA)などの第三級アミン)でイオン交換して、アンモニウムからプロトンを除去して、スルホンアミド塩(例えば、-SO2NH-TEAH+)で終端する第2のフルオロポリマー中間体を形成することと、
iii)第2のフルオロポリマー中間体のスルホンアミド塩を、ペルフルオロ化ジハロゲン化スルホニル及び非プロトン性アミン塩基(例えば、第三級アミン)と反応させて、ビス(スルホニル)イミドハロゲン化スルホニル(例えば、-SO2N-(TEAH+)SO2(CF2)fSO2F)で終端する第3のフルオロポリマー中間体を形成することと、
iv)第3のフルオロポリマー中間体のビス(スルホニル)イミドハロゲン化スルホニルを、アンモニアと反応させて、アンモニウムイオンで終端するビス(スルホニル)イミド塩(例えば、-SO2N-(TEAH+)SO2(CF2)fSO2NH(NH4
+)で終端する第4のフルオロポリマー中間体を形成することと、
v)任意に、第4のフルオロポリマー中間体を精製し、イオン交換して、アンモニウムイオンを除去し、末端スルホンアミドを、中和形態(例えば、-SO2NHSO2(CF2)fSO2NH2)又は非プロトン性アミン塩基(例えば、第三級アミン)と反応性であるスルホンアミド塩(-SO2NHSO2(CF2)fSO2NH-TEAH+)に変換することと、
vi)任意に精製され、イオン交換された第4のフルオロポリマー中間体を、非プロトン性アミン塩基(例えば、第三級アミン)及びペルフルオロエーテルハロゲン化スルホニルと反応させて、末端ペルフルオロエーテル基を共有結合させることと、
vii)任意に、vi)のフルオロポリマーを精製し、イオン交換することと、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、vi)の前にステップiii)~iv)及び任意にv)を繰り返すことを更に含み、上記式のdは、ステップii)及びiv)が実行される回数である。
【0021】
dがゼロであるいくつかの実施形態では、ステップi)、ii)、vi)、及びvii)が実行される。言い換えれば、ステップ3~5は、dがゼロである場合、合成の方法中に除外される。
【0022】
上記のフルオロポリマー中間体のペンダント基は、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロエーテル基、又はそれらの組み合わせを更に含み得る。ペルフルオロアルキレン基及び/又はペルフルオロエーテル基は、本明細書に記載の様々なペンダント基の式に従って、フルオロポリマー主鎖と(例えば、第1の)、ビス(スルホニル)イミド基との間に存在し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のフルオロポリマー中間体は、テトラフルオロエチレン(TFE)と不飽和ペルフルオロ化ハロゲン化スルホニル(例えば、フッ化物)モノマーとを反応させることによって調製することができる。
【0024】
上記の合成のステップiii)において、ペルフルオロ化ハロゲン化スルホニル(例えば、フッ化物)モノマーも利用される。
【0025】
いくつかの実施形態では、不飽和ペルフルオロ化ハロゲン化スルホニル(例えば、フッ化物)モノマーは、以下の式:
CF2=CF-(OCeF2e)SO2F
[式中、eは、上記の式によって定義されるように、独立して2~6の範囲である]
を有する。
【0026】
好適なフッ化スルホニル又は塩化スルホニル化合物は文献に記載されており、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-1,3-ジスルホニルフルオリド、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,3-ジスルホニルフルオリド、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル-1,4-ジスルホニルフルオリド、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ペルフルオロペンチル-1,5-ジスルホニルフルオリド、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-1,2-ジスルホニルクロリド、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル-1,3-ジスルホニルクロリド、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル-1,4-ジスルホニルクロリド、及び1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ペルフルオロペンチル-1,5-ジスルホニルクロリドが挙げられる。
【0027】
ペルフルオロアルキルフッ化スルホニルモノマーは、国際公開第2004/060857号に開示されている手順に従って製造することができる。重合は、最初に、Ultraturrax撹拌機を使用する高剪断混合によって、乳化剤としてペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)を用いて不飽和ペルフルオロアルキルフッ化スルホニルモノマーのプレエマルジョンを水中で製造することによって行うことができる。次いで、プレエマルジョンを、開始剤を添加してTFEと反応させることができる。この実施形態では、上記式のa及びcはゼロである。
【0028】
cが少なくとも1である他の実施形態では、不飽和ペルフルオロ化ハロゲン化スルホニル(例えば、フッ化物)モノマーは、以下の式:
CF2=CF-(OCbF2b)c(OCeF2e)SO2Fを有することができる。
【0029】
一実施形態では、bは3であり、eは2である。
【0030】
aが少なくとも1である更に別の実施形態では、不飽和ペルフルオロ化ハロゲン化スルホニル(例えば、フッ化物)モノマーは、以下の式:
CF2=CF-(CF2)a(OCeF2e)SO2Fを有することができる。
【0031】
cが少なくとも1であるか、又はaが少なくとも1である出発モノマーは、文献で知られている(米国特許第943466792号を参照されたい)。これらの式の各々において、F(すなわち、フッ化物)は、代替的に、塩化物などの他のハロゲン化物であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1のフルオロポリマー中間体は、単一のハロゲン化スルホニルから調製される。他の実施形態では、第1のフルオロポリマー中間体は、2つ以上のハロゲン化スルホニルから調製される。いくつかの実施形態では、ステップiii)は、単一のハロゲン化ジスルホニルを利用する。他の実施形態では、ステップiii)は、2つ以上のハロゲン化ジスルホニルを利用した。
【0033】
非プロトン性アミン塩基はまた、触媒として特徴付けることができる。好適な非プロトン性アミン触媒塩基としては、第三級アミン、ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、又はヒューニッヒ塩基)、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどのトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)が挙げられる。
【0034】
反応は、例えば、混和性である好適な(乾燥)極性非プロトン性溶媒中で実行され得る。好適な極性非プロトン性溶媒の非限定的な例としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリジノン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、及びそれらの組み合わせが挙げられ得る。フルオロポリマー中間体の各々の調製に好適な温度は、以下の実施例に記載されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、水性分散液に形成される。精製及び/又はイオン交換のステップは、典型的には、水中又は水混和性溶媒混合物中にフルオロポリマー中間体を分散させることも含む。フルオロポリマーは、典型的には、水及び有機溶媒の溶液中に、少なくとも10、15、20、又は25重量パーセントの濃度で分散させることができる。いくつかの実施形態では、分散液は、水及び有機溶媒の溶液中に分散した最大30、40、又は50重量パーセントのフルオロポリマーを含有し得る。いくつかの実施形態では、低濃度のフルオロポリマーを有する分散液から水及び有機溶媒を除去することによって、より高い濃度を製造することができる。コポリマーのフルオロポリマー分散液を調製するために有用な好適な有機溶媒の例としては、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、ジグリム、ポリグリコールエーテル、酢酸エーテル、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)、N,Nジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMA)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、N,N-ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、N-メチルピロリジノン(N-methylpyrrolidinone、NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(hexamethylphosphoric triamide、HMPT)、イソブチルメチルケトン、スルホラン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、フルオロポリマー、水、及び有機溶媒は、約250℃の温度に加熱され得る。他の実施形態では、より低い温度が、圧力と組み合わせて使用されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、凝固又は噴霧乾燥(下に記載)の前に、アニオン若しくはカチオン交換プロセス又タンジェント流濾過若しくはクロスフロー濾過による限外濾過のうちの少なくとも1つによって、得られたフルオロポリマー分散液を生成し、官能性コモノマー、アニオン、及び/又はカチオンを除去する。本明細書で使用する場合、「精製する」という用語は、除去が完了するかどうかに関わらず、不純物を少なくとも部分的に除去することを指す。不純物を構成し得るアニオン種としては、例えば、フッ化物、界面活性剤及び乳化剤(例えば、ペルフルオロオクタノエート)からのアニオン性残基、残留化合物、及びペルフルオロエーテル若しくはポリペルフルオロエーテル末端基を欠くペンダント基を有するフルオロポリマーが挙げられる。しかしながら、分散液からペルフルオロエーテル末端基を欠くペンダント基を含有するイオン性フルオロポリマーを除去しないことが望ましい場合があることに留意するべきである。有用なアニオン交換樹脂は、典型的には、様々なアニオン(例えば、ハライド又は水酸化物)と対になった複数のカチオン性基(例えば、四級アルキルアンモニウム基)を有するポリマー(典型的には架橋されている)を含む。フルオロポリマー分散液と接触すると、分散液中のアニオン性の不純物は、アニオン交換樹脂と会合する。アニオン交換工程の後、得られたアニオン交換された分散液は、例えば濾過によって、アニオン交換樹脂から分離される。典型的には、マクロ多孔質アニオン交換樹脂を用いるよりも、ゲル型アニオン交換樹脂を使用した場合に、より良好な収率が得られる。典型的には、濾過膜孔径がフルオロポリマーを保持するのに十分に小さいが、溶媒及び不純物が通過するのに十分に大きい限外濾過によって、最良の収率が得られる。
【0037】
上述の重合から生じるカチオン性不純物の例としては、アルカリ金属カチオン(例えば、Li+、Na+、K+)、アンモニウム、四級アルキルアンモニウム、アルカリ土類カチオン(例えば、Mg2+、Ca2+)、マンガンカチオン(例えば、Mn2+)、及び第III族金属カチオンのうちの1つ以上が挙げられる。有用なカチオン交換樹脂としては、例えばポリスルホネート若しくはポリスルホン酸、ポリカルボキシレート、又はポリカルボン酸などの、複数のペンダントアニオン性基又は酸性基を有するポリマー(典型的には架橋されている)が挙げられる。コポリマーの金属イオン含有量は、コポリマーを燃焼させ、残留物を酸性水溶液に溶解させた後に、フレーム原子吸光分析によって測定することができる。分析物としてのカリウムについては、検出下限は、典型的には、1ppm未満である。
【0038】
有用なスルホン酸カチオン交換樹脂の例としては、スルホン化スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール-ホルムアルデヒド-スルホン酸樹脂、及びベンゼン-ホルムアルデヒド-スルホン酸樹脂が挙げられる。カルボン酸カチオン交換樹脂は、有機酸、カチオン交換樹脂である。カチオン交換樹脂は、様々な供給元から市販されている。カチオン交換樹脂は、一般に、その酸形態又はそのナトリウム形態のいずれかで商業的に供給されている。カチオン交換樹脂が酸形態(すなわち、プロトン化形態)でない場合は、一般的には所望されない、分散液への他のカチオンの導入を回避するために、酸形態へと少なくとも部分的に又は完全に変換することができる。この酸形態への変換は、当該技術分野において周知の手段、例えば、任意の適切な強酸による処理によって実現することができる。フルオロポリマー分散液から不純物を除去することに加えて、カチオン交換樹脂はまた、フルオロポリマーペンダント基の酸性形態を生成し得る。
【0039】
フルオロポリマーは、典型的には、少なくとも600、700、750、又は800g/当量の当量(EW)を有する。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、800超、より典型的には900超、より典型的には1000超の当量(EW)を有する。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、典型的には、1200未満、より典型的には1100未満の当量(EW)を有する。当量は、実施例に記載される試験方法に従って決定することができる。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態では、フルオロポリマー主鎖及びペンダント基の部分は、高い酸素透過性を提供するように選択される。
【0041】
酸素透過係数は、実施例に記載される少なくとも2つの方法によって決定することができる。酸素透過性は、相対湿度及び温度に応じて変化し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、25%の相対湿度で、80℃で少なくとも1.1E-13(すなわち、1.1×10-13)の電気化学的酸素透過係数(試験方法1によって決定される)を有する。いくつかの実施形態では、80℃及び25%の相対湿度でのフルオロポリマーの電気化学的酸素透過係数は、少なくとも1.5E-13又は2E-13である。いくつかの実施形態では、80℃及び50%の相対湿度でのフルオロポリマーの電気化学的酸素透過係数は、少なくとも1.5E-13、2.0E-13、又は2.5E-13である。いくつかの実施形態では、80℃及び100%の相対湿度でのフルオロポリマーの電気化学的酸素透過係数は、少なくとも2.1E-13、2.2E-13、2.3E-13、2.4E-13、2.5E-13、2.6E-13、2.7E-13、2.8E-13であるか、又は80℃及び100%の相対湿度で、100%の相対湿度で、2.9E-13である。いくつかの実施形態では、電気化学的酸素透過係数は、80℃及び25%、50%、又は100%の相対湿度で、2E-12、1E-12、9E-13、8E-13、7E-13、6E-13、5E-13、4E-13、又は3E-13以下である。いくつかの実施形態では、電気化学的酸素透過係数は、80℃及び50%の相対湿度で、2.9E-13、2.8E-13、又は2.7E-13以下である。いくつかの実施形態では、電気化学的酸素透過係数は、80℃及び50%の相対湿度で、2.6E-13、2.5E-13、2.4E-13、又は2.3E-13以下である。
【0043】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、少なくとも8.5E-15の23℃及びゼロ相対湿度での酸素透過の透過係数(試験方法2によって決定される)を有する。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、少なくとも9E-15、9.5E-15、又は1E-14の酸素透過の透過係数を有する。いくつかの実施形態では、酸素透過の透過係数率は、1E-13、9E-14、8E-14、7E-14、6E-14、5E-14、4E-14、3E-14、2E-14、又は1.5E-14以下である。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態では、フルオロポリマー主鎖及びペンダント基の部分は、実施例に記載の試験方法によって決定されるように、高い導電率を提供するように選択される。導電率は、相対湿度及び温度に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、25%の相対湿度及び80℃で、少なくとも0.001シーメンス/cm、0.005シーメンス/cm、又は0.010シーメンス/cm(S/cm)の導電率を有する。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、50%の相対湿度及び80℃で、少なくとも0.001S/cm、0.005S/cm、0.010S/cm、0.020S/cm、0.030S/cm、0.040S/cm、又は0.050S/cmの導電率を有する。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、90%の相対湿度及び80℃で、少なくとも0.001S/cm、0.005S/cm、0.010S/cm、0.020S/cm、0.030S/cm、0.040S/cm、0.050S/cm、0.10S/cm、0.15S/cm、0.20S/cm、又は0.25S/cmの導電率を有する。
【0045】
フルオロポリマーは、今記載された酸素透過性及び導電率の様々な組み合わせを示すことができる。
【0046】
本明細書に開示するコポリマーにおける高い酸素透過性は、例えば、燃料電池の効率を向上させるのに有用であり得る。
【0047】
本開示のコポリマーは、例えば、燃料電池又は他の電解セルにおいて使用するための、触媒インク及びポリマー電解質膜の製造において、有用であり得る。膜電極接合体(MEA)は、水素燃料電池などのプロトン交換膜燃料電池の中心的要素である。燃料電池は、水素などの燃料と酸素などの酸化剤とを触媒的に組み合わせることによって使用可能な電気を生み出す、電気化学セルである。典型的なMEAは、固体電解質として機能するポリマー電解質膜(polymer electrolyte membrane)(イオン伝導膜(ion conductive membrane、ICM)としても知られる)を含む。ICMの1つの特定のタイプは、プロトン交換膜(PEM)である。ICM又はPEMの一方の面はアノード電極層と接触し、反対側の面はカソード電極層と接触する。各電極層には、典型的には白金金属を含む、電気化学的触媒が含まれる。ガス拡散層(gas diffusion layer、GDL)が、アノード及びカソード電極材料との間を出入りするガス輸送を促進して、電流を伝導する。GDLはまた、流体輸送層(fluid transport layer、FTL)又は拡散体/集電体(diffuser/current collector、DCC)と呼ばれることもある。アノード及びカソード電極層を、触媒インクの形態でGDLに適用してもよく、得られるコーティングされたGDLはPEMで挟まれ、5層MEAを形成する。あるいは、アノード及びカソード電極層を、触媒インクの形態でPEMの両側に適用してもよく、得られる触媒コーティング膜(catalyst-coated membrane、CCM)は、2層のGDLで挟まれ、5層MEAを形成する。触媒インクの調製及び膜アセンブリにおけるそれらの使用に関する詳細は、例えば、米国特許公開第2004/0107869号(Velamakanniら)において見出すことができる。典型的なPEM燃料電池においては、プロトンが、水素の酸化によってアノードで形成され、PEMを越えてカソードに輸送されて酸素と反応し、電極同士を接続する外部回路に電流を流れさせる。PEMは、反応物質であるガスの間に、耐久性のある、非多孔性で非導電性の機械的障壁を形成するが、それでもなおH+イオンを容易に通過させる。
【0048】
本開示のコポリマーは、PEMとして有用であり得、かつ/又は触媒インク組成物を製造するために有用であり得る。いくつかの実施形態では、コポリマー(例えば、上記のフルオロポリマー分散液の構成成分として)を、触媒粒子(例えば、金属粒子又は炭素担持金属粒子)と組み合わせることができる。様々な触媒が有用であり得る。典型的には、炭素担持触媒粒子が使用される。典型的な炭素担持触媒粒子は、30重量%~95重量%の炭素と、5重量%~70重量%の触媒金属とであり、触媒金属は、典型的には、カソードについては白金、並びにアノードについては白金又は2:1の重量比の白金及びルテニウムを含む。しかしながら、他の金属、例えば、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、及びこれらの合金が有用である場合もある。MEA又はCCMを製造するために、任意の好適な手段によって触媒をPEMに適用してもよく、これには手動方法及び機械的方法の両方が含まれ、ハンドブラッシング、ノッチバーコーティング、流体ベアリングダイコーティング、巻線ロッドコーティング、スロット供給ナイフコーティング、3ロールコーティング、又はデカール転写が挙げられる。コーティングは、1回の適用で達成してもよく、又は複数回の適用で達成してもよい。有利には、本開示によるコポリマーは、1回のコーティング適用によって触媒層を製造するのに有用であり得る。触媒インクをPEM若しくはGDLに直接適用してもよく、又は触媒インクを転写基材に適用し、乾燥させた後、PEM若しくはFTLに対してデカールとして適用してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、触媒インクは、本明細書に開示されるコポリマーを、触媒インクの総重量を基準として、少なくとも10、15、又は20重量%、かつ最大30重量%の濃度で含む。いくつかの実施形態では、触媒インクは触媒粒子を、触媒インクの総重量を基準として、少なくとも10、15、又は20重量パーセント、かつ最大50、40、又は30重量パーセントの量で含む。触媒粒子は、その実施形態のいずれかで上に記載したように製造した、フルオロポリマー分散液に添加され得る。得られた触媒インクは、例えば加熱しながら混合され得る。触媒インク中の固体の割合は、例えば、望ましいレオロジー特性を得るように選択され得る。触媒インクに含むことについて有用な、好適な有機溶媒の例としては、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、ジグリム、ポリグリコールエーテル、酢酸エーテル、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)、N,Nジメチルアセトアミド(N,N dimethylacetamide、DMA)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide、DMF)、N-メチルピロリジノン(N-methylpyrrolidinone、NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(hexamethylphosphoric triamide、HMPT)、イソブチルメチルケトン、スルホラン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、触媒インクは、0重量%~50重量%の低級アルコール、及び0重量%~20重量%のポリオールを含有する。加えて、インクは、0%~2%の好適な分散剤を含有してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示のコポリマーは、ポリマー電解質膜を製造するために有用であり得る。コポリマーは、注型、鋳造、及び押出を含めた任意の好適な方法によって、ポリマー電解質膜に形成され得る。典型的には、膜は、フルオロポリマー分散液(例えば、それらの実施形態のいずれかで上に記載したもの)から注型し、次いで乾燥させ、アニールし、又はその両方を行う。コポリマーは、懸濁液から注型してもよい。バーコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング、及びブラシコーティングを含めた、任意の好適な注型方法を使用してよい。形成後、膜は、典型的には120℃以上、より典型的には130℃以上、最も典型的には150℃以上の温度でアニールされてもよい。本開示による方法のいくつかの実施形態では、ポリマー電解質膜は、フルオロポリマーの分散液中のコポリマーを得ること、任意にイオン交換精製によって分散液を精製すること、及び分散液を濃縮して膜を製造することによって得ることができる。典型的には、フルオロポリマー分散液を使用して膜を形成する場合、コポリマーの濃度は、有利には高い(例えば、少なくとも20、30、又は40重量パーセント)。多くの場合、フィルム形成を促進するために、水混和性有機溶媒を添加する。水混和性溶媒の例としては、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、酢酸エーテル、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,Nジメチルアセトアミド(DMA)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、イソブチルメチルケトン、スルホラン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
本開示は、本開示のコポリマーを含む触媒インク、又は本開示のコポリマーを含むポリマー電解質膜のうちの少なくとも1つを含む、膜電極接合体を提供する。触媒インク及びポリマー電解質膜は、同じ又は異なるコポリマーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、触媒インクは本開示のコポリマーを含み、ポリマー電解質膜は従来のコポリマー(例えば、本明細書に記載のペンダント基を含まないもの)を含む。
【0052】
本開示のポリマー電解質膜のいくつかの実施形態では、セリウム、マンガン若しくはルテニウムのうちの少なくとも1つの塩、又は1つ以上の酸化セリウム若しくは酸化ジルコニウム化合物を、膜形成の前に、コポリマーの酸形態に対して添加する。典型的には、セリウム、マンガン若しくはルテニウムの塩、及び/又は酸化セリウム若しくは酸化ジルコニウム化合物を、コポリマーとよく混合し、又はコポリマー中に溶解させ、実質的に均一な分散を達成する。
【0053】
セリウム、マンガン、又はルテニウムの塩は、塩化物イオン、臭化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、及び炭酸イオンを含めた、任意の好適なアニオンを含み得る。2種以上のアニオンが存在してもよい。他の金属カチオン又はアンモニウムカチオンを含む塩を含めて、他の塩が存在してもよい。遷移金属塩と酸形態のアイオノマーとの間でカチオン交換が起こったら、遊離したプロトンと元の塩のアニオンとの組み合わせによって形成される酸を除去することが望ましい場合がある。したがって、揮発性又は可溶性の酸を生成するアニオン、例えば塩化物イオン又は硝酸イオンを使用することが有用であり得る。マンガンカチオンは、Mn2+、Mn3+、及びMn4+を含めた任意の好適な酸化状態であってもよいが、最も典型的にはMn2+である。ルテニウムカチオンは、Ru3+及びRu4+を含めた任意の好適な酸化状態であってもよいが、最も典型的にはRu3+である。セリウムカチオンは、Ce3+及びCe4+を含めた任意の好適な酸化状態であってもよい。理論によって束縛されることを意図するものではないが、セリウム、マンガン、又はルテニウムカチオンは、ポリマー電解質のアニオン基に由来するH+イオンと交換されて、これらのアニオン基と会合するため、ポリマー電解質中に留まると考えられる。更に、多価のセリウム、マンガン、又はルテニウムカチオンは、ポリマー電解質のアニオン基同士の間でイオン性架橋を形成して、ポリマーの安定性を更に高め得ると考えられる。いくつかの実施形態では、塩は、固体形態で存在してもよい。カチオンは、溶媒和カチオン、ポリマー電解質膜の結合アニオン基と会合したカチオン、及び塩沈殿物に結合したカチオンを含めた、2つ以上の形態の組み合わせで存在してもよい。塩の添加量は、典型的には、ポリマー電解質中に存在する酸官能基のモル量を基準として、0.001電荷当量~0.5電荷当量、より典型的には0.005~0.2、より典型的には0.01~0.1であり、より典型的には0.02~0.05である。アニオン性コポリマーと、セリウム、マンガン、又はルテニウムカチオンとの組み合わせに関する更なる詳細は、米国特許第7,575,534号及び同第8,628,871号(各々、Freyら)において見出すことができる。
【0054】
有用な酸化セリウム化合物は、(IV)酸化状態、(III)酸化状態、又はこれら両方のセリウムを含有していてもよく、結晶質であっても非晶質であってもよい。酸化セリウムは、例えば、CeO2であってもCe2O3であってもよい。酸化セリウムは、金属セリウムを実質的に含まなくてもよく、あるいは金属セリウムを含有してもよい。酸化セリウム化合物は、他の金属元素を含有しても含有しなくてもよい。酸化セリウムを含む混合金属酸化物化合物の例としては、ジルコニア-セリアなどの固溶体、及びセリウム酸バリウムなどの多成分酸化物化合物が挙げられる。理論によって束縛されることを意図するものではないが、酸化セリウムは、キレート化及び結合したアニオン基同士の間での架橋の形成によって、ポリマーを強化し得ると考えられる。酸化セリウム化合物の添加量は、典型的には、コポリマーの総重量を基準として、0.01重量パーセント~5重量パーセント、より典型的には0.1重量パーセント~2重量パーセントであり、より典型的には0.2重量パーセント~0.3重量パーセントである。酸化セリウム化合物は、典型的には、ポリマー電解質膜の総体積に対して1体積%未満、より典型的には0.8体積%未満の量で存在し、より典型的には0.5体積%未満の量で存在する。酸化セリウムは、任意の好適なサイズの、いくつかの実施形態では、1nm~5000nm、200nm~5000nm、又は500nm~1000nmの粒子であってもよい。酸化セリウム化合物を含むポリマー電解質膜に関する更なる詳細は、米国特許第8,367,267号(Freyら)において見出すことができる。
【0055】
ポリマー電解質膜は、いくつかの実施形態では、最大90マイクロメートル、最大60マイクロメートル、又は最大30マイクロメートルの厚さを有してもよい。膜が薄いほど、イオンが通過する際の抵抗が少なくなり得る。燃料電池において使用する場合、この結果として、動作がより低温となり、使用可能なエネルギーの出力が大きくなる。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示のコポリマーは、典型的には最大90マイクロメートル、最大60マイクロメートル、又は最大30マイクロメートルの厚さを有する薄い膜の形態で、多孔質支持体マトリックスに同化(imbibed)されてもよい。過剰圧力、減圧、ウィッキング(wicking)、及び液浸を含めた、任意の好適な、支持体マトリックスの細孔にコポリマーを同化する方法を使用することができる。任意の好適な支持体マトリックスを使用することができる。典型的には、支持体マトリックスは非導電性である。典型的には、支持体マトリックスはフルオロポリマーで構成され、これはより典型的にはペルフルオロ化されている。典型的なマトリックスとしては、二軸延伸PTFEウェブなどの多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。別の実施形態では、膜を補強するために、充填剤(例えば、繊維)をポリマーに添加してもよい。
【0057】
MEAを製造するために、任意の好適な手段によって、CCMのいずれかの側にGDLを適用してもよい。任意の好適なGDLを、本開示の実践において使用してもよい。典型的には、GDLは、炭素繊維を含むシート材料で構成される。典型的には、GDLは、織布及び不織布炭素繊維構造から選択される炭素繊維構造である。本開示の実践において有用であり得る炭素繊維構造としては、東レ(商標)カーボンペーパー、SpectraCarb(商標)カーボンペーパー、AFN(商標)不織布カーボンクロス、及びZoltek(商標)カーボンクロスを挙げることができる。GDLは、様々な材料によってコーティング又は含浸することができ、炭素粒子コーティング、親水化処理、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によるコーティングなどの疎水化処理などが挙げられる。
【0058】
使用する際、本開示によるMEAは、典型的に、分配プレートとして知られ、バイポーラプレート(bipolar plate、BPP)又はモノポーラプレートとしても知られる2つの剛性プレートの間に挟まれる。GDLと同様に、分配プレートは、典型的には導電性である。分配プレートは、典型的には、炭素複合体、金属、又はめっき金属材料で製造される。分配プレートは、反応物質又は生成物の流体を、典型的には、MEAに面する表面に刻まれたか、フライス処理されたか、成型されたか、又は型打ちされた1つ以上の流体伝導チャネルを通じてMEA電極表面に、かつMEA電極表面から分配する。これらのチャネルは、ときとして、流動場と呼ばれる。分配プレートは、スタック中の2つの連続的なMEAに、かつそれらから流体を分配することができ、一方の面が燃料を第1のMEAのアノードに導く一方で、他方の面は酸化剤を次のMEAのカソードに導く(かつ生成水を取り除く)ため、「バイポーラプレート」という用語で称される。あるいは、分配プレートは、一方の側にのみチャネルを有して、その側においてのみMEAに又はMEAから流体を分配することができ、このプレートは「モノポーラプレート」と称されることがある。典型的な燃料電池スタックは、バイポーラプレートと交互に積層された複数のMEAを含む。
【0059】
別の種類の電気化学的デバイスは電解セルであり、これは電気を使用して化学変化又は化学エネルギーを生み出すものである。電解セルの一例は、クロルアルカリ膜電池であり、ここでは、塩化ナトリウム水溶液が、アノードとカソードとの間の電流によって電解される。電解質は、厳しい条件に曝される膜によって、アノード液部分とカソード液部分とに分離される。クロルアルカリ膜電池においては、腐食性の水酸化ナトリウムがカソード液部分に集まり、水素ガスがカソード部分で生じ、塩素ガスがアノードの塩化ナトリウムリッチなアノード液部分から生じる。本開示のコポリマーは、例えば、クロルアルカリ膜電池又は他の電解セルにおいて使用するための、触媒インク及び電解質膜の製造において有用であり得る。
【0060】
本開示によるコポリマーはまた、他の電気化学セル(例えば、リチウムイオンバッテリー)における電極のためのバインダーとしても有用であり得る。電極を製造するために、粉末化した活性成分を、コポリマーとともに溶媒中に分散させてよく、金属箔基材又は集電体上にコーティングしてもよい。得られた複合体電極は、金属基材に接着されたポリマーバインダー中に粉末化した活性成分を含有する。負極の製造のために有用な活性材料としては、典型元素の合金及び黒鉛などの導電性粉末が挙げられる。負極の製造のために有用な活性材料の例としては、酸化物(酸化スズ)、炭素化合物(例えば、人工黒鉛、天然黒鉛、土状黒鉛、膨張黒鉛、及び鱗状黒鉛)、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、及び炭化ホウ素化合物が挙げられる。正極の製造のために有用な活性材料としては、リチウム化合物、例えばLi4/3Ti5/3O4、LiV3O8、LiV2O5、LiCo0.2Ni0.8O2、LiNiO2、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、LiMn2O4、及びLiCoO2などが挙げられる。また、電極は、導電性希釈剤及び接着促進剤を含むこともできる。
【0061】
本明細書に開示されるコポリマーをバインダー又は固体ポリマー電解質として含む電気化学バッテリーセル(例えば、リチウムイオンバッテリー)は、正極及び負極の各々の少なくとも1つを電解質と接触させて配置することによって製造することができる。典型的には、液体電解質に含浸されたミクロ多孔性のセパレータが、負極と正極が直接接触することを防止するために使用され得る。本明細書に開示されるコポリマーは、電解質及びセパレータとして機能するのに好適であり得る。電極同士が外部で接続されると、リチウム化及び脱リチウム化が電極において起こり、電流が生成され得る。
【0062】
電気化学セルは、充電式バッテリーとして有用であり得、携帯型コンピュータ、タブレット型ディスプレイ、携帯情報端末、携帯電話、モータ駆動デバイス(例えば、個人用又は家庭用の機器及び車両)、装置、照明デバイス(例えば、懐中電灯)、及び加熱デバイスを含めた、様々なデバイスに使用することができる。電気化学セルのうちの1つ以上を組み合わせて、バッテリーパックを提供することができる。
【実施例】
【0063】
別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例及び本開示のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。
【0064】
【0065】
フィルムコーティング方法
フィルムを、全長コーティング距離に対して50mm/秒の速度で設定された自動フィルムアプリケータ(AFA)1132Nドローダウン機(TCQ Sheen,Metamora,MI)を使用して調製した。ドローダウン機コーティング表面を、ガラスプレート(12インチ×17インチ×1/8インチ、30.5cm×43.2cm×0.32cm)及び2ミル(51マイクロメートル)シリコーンコーティングポリエチレンテレフタレート(PET)剥離ライナーに配置した。ガラス及びライナーを、イソプロピルアルコール(IPA)でいかなる破片も洗浄した。剥離ライナー及びプレートは両方とも、内蔵クリップによってドローダウン機構の下に固定された。4インチ(10.2cm)の粉砕されたコーティングノッチバースクエア(Gardco、PaulN.Gardner Co.,Pompano Beach,FL)を、シリコーンコーティングされたPET剥離ライナー上に配置し、フルオロポリマー分散液をノッチバーの前面に注ぎ、アイオノマー分散液を設定速度及び距離でコーティングした。剥離ライナーを、強制空気オーブン内で上昇しないように、4つの角でテープ付けした。剥離ライナー及びコーティングを備えたガラスプレートを、ドローダウン機から引き抜き、破片がコーティングに落下するのを防止するためにアルミニウムパンで覆い、120℃に設定された強制空気オーブン(Despatch,Minneapolis,MN)内の金属ワイヤ棚に設置されたセラミック支持体上に30分間配置した。剥離ライナー及びその上のコーティングをガラスから取り出し、別のアルミニウムパンで覆われたアルミニウムパンに配置し、140℃の設定で15分間オーブンに戻した。温度を160℃に上昇させ、10分間保持した。フィルムを冷却し、マイクロメートル測定によって特性評価した。
【0066】
試験方法
スルホンアミド含有量の決定
生成されたポリマー分散液のスルホンアミド含有量を、ポリマーを乾燥させ、過重水素化溶媒MeOD又はDMSO-d6中に分散させた後に、核磁気共鳴分光計(Bruker Corp,Billerica,MAから商品名「BRUKER A500 NMR」で入手した)によって測定し、-107ppm~-126ppmに見られるフッ化スルホニル、スルホンアミド、ビス(スルホニル)イミド、及びスルホン酸官能基に関連付けられた19FスペクトルCF2ピーク取り込みを比較することによって計算した。
【0067】
メルトフローインデックス
g/10分で報告された調製された状態のポリマーのメルトフローインデックス(MFI)を、Goettfert MPD、MI-Robo、M14メルトインデクサー(Buchen,Germany)を用いて、5.0kgの支持体重量及び265℃の温度で、DIN EN ISO 1133-1に記載される手順に従って測定した。MFIを、直径2.1mm及び長さ8.0mmの標準化された押出ダイを用いて得た。
【0068】
プロトン伝導率
乾燥フィルムを、白金電極を有する標準的な面内、4点プローブ伝導装置を使用して評価した。セルを、ポテンシオスタット(Model 273,Princeton Applied Research,Oak Ridge,TN)及びImpedance/Gain Phase Analyzer(Solartron SI 1260,Ametek Inc.,Oak Ridge,TN)に電気的に接続した。ACインピーダンス測定を、ZPLOT及びZVIEWソフトウェア(Scribner Associates Inc.(Southern Pines,NC))を使用して行った。温度及び相対湿度(RH)を、一定湿度オーブン(model 1000H、Test Equity(Moorpark,CA))で制御した。この試験方法では、80℃の設定温度で70%のRHの初期条件を選択し、次いで、RH%を25%RHに段階的に低下させた後、最大90%のRHまで増加させた。各条件を、90分間、維持した。導電率、シーメンス/cm(S/cm)は、湿度が増加するにつれて様々な湿度で報告される。
【0069】
バルクフィルムの滴定による当量(EW)決定
約0.5g~0.7gの乾燥フィルムを秤量し、50gの1M NaCl(水溶液)に添加した。膜を、4時間超、ボトル内での転動又は振盪による穏やかな撹拌でイオン交換した。生成されたHClを0.03MのNaOHで滴定して、既知の質量を有するフィルムのイオン交換容量を決定した。
【0070】
酸素透過の透過係数-試験方法1
乾燥したアイオノマーフィルムの酸素透過性測定を、以下に記載された材料及びパラメータを利用してZhangらによる論文(J.Electrochem.Soc,160,F616,2013)に記載されている方法に従って行った。
【0071】
【0072】
黒鉛化炭素(Tanaka)上で30重量%に分散した酸化イリジウム(IrOx)をアノード材料として使用した。以下の表の成分を混合することによって、アノードインク及びカソードインクの両方を調製した。各場合において、インクは、窒素不活性化エンクロージャ内で製造された。触媒に最初に水を添加し、続いて追加の溶媒及びアイオノマー溶液を添加した。
【0073】
【0074】
触媒インクは、全ての成分を合わせた後、6mmセラミックZrO2ビーズ(Glen Mills Inc.,Clifton,NJから)を用いて、48時間ボールミル粉砕することによって混合した。3M Companyの社内パイロットスケール製造ラインを使用して、アノード及びカソード電極を、シリコーン剥離面を含有する1ミルのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にコーティングし、最大145℃で乾燥させた。試験するアイオノマー膜を、上記で調製したカソード触媒層デカールとアノード触媒層デカールとの間に、構造体の外側にライナーがあり、触媒がアイオノマー膜に面する状態で、業界で一般的であるように配置した。構造体を、ラミネータドラムに適用した100ポンド/平方インチ(0.69MPa)の空気圧を用いて、1.2フィート/分(0.37m/s)のローラー速度で325°F(163℃)に加熱された加熱鋼6インチ(15.2cm)の直径ローラーを使用して熱間積層させた。シリコーンコーティングされたPET剥離ライナーを、積層直後、構造体から取り外し、CCMを形成した。
【0075】
単一セル燃料試験ステーションでの試験のための組み立て。
【0076】
CCMを2つのGDLの間に取り付け、4つの蛇行黒鉛流場と、ガス拡散層に10%の圧縮を与えるように選択されたガスケットとを有する、50cm2の単一燃料電池(Fuel Cell Technologies(Albuquerque,NM)から「50 CM2 CELL HARDWARE」(50SCH)の商品名で入手)に直接設置した。組み立て後、試験セルを試験ステーション(Fuel Cell Technologies,Inc.から「SINGLE FUEL CELL TEST STATION」の商品名で入手)に接続した。水素ガスの供給をアノード側にもたらし、カソード側に空気を供給した。試験ステーションを使用して、印加されたセル電圧又は電流密度を制御した。以下に記載するすべての試験は、同じ種類のイオン交換膜及びカソード構成を使用して、同じ電気化学セルで行った。
【0077】
データは、Zhangらに記載されているように、膜を横切る電気的短絡、膜厚の補正、及び水分圧に対する必要な補正を生成した。次いで、得られたデータは酸素透過性の外挿をmol・cm・s-1・cm-2・kPa-1で可能にした。この方法は、Zhangらによって記載されたバルクフィルムO2透過性測定値を精製して、複数の膜タイプについて反復可能かつ安定したデータを最もよく達成する。Zhang法との重要な違いは、Pt酸素還元反応(ORR)カソード電極を、より多くのPtかつより活性の高いPtを含有するように変化させることであった。したがって、ケッチェンカーボン電極上の0.4mg Pt/cm2のNECC SA50BK白金を使用した。
【0078】
酸素透過の透過係数-試験方法2
それらのバッキング上に依然としてある乾燥フィルムを、AccuCutダイ及びAccuCut MARKIV機械プレス(Omaha,NE)を用いて直径4インチ(10.2cm)の円形試料を切断した後、接着剤裏打ちアルミニウムマスク(TM Electronics,Inc.,Davens,Massachusetts、PML-800815)を用いて5cm
2の面積にマスクした(両側でマスクした)。マスクを最初に、フィルムの大気開放側に適用し、フィルムの片側をコーティングされた剥離ライナー基材に対して保持した。加重ローラーを使用して、試料の活性領域の周囲の良好な封止を確実にするために、マスクに力を加えた。次いで、剥離ライナーを取り外し、第2のマスクを第1のマスクに整列させて適用し、加重ローラーを再び使用して、マスクと試料との間の良好な封止を確実にした。酸素透過分析装置(8001L酸素透過分析装置、Systech Illinois Instruments Company,Johnsburg,IL)を、N
2中88.6ppmのO
2較正ガス(Oxygen Services Company、SG3 00LG025、証明済み,St.Paul,MN)で較正し、又は証明済み酸素透過率(OTR)値を有するフィルムに対して較正した。マスキングされた試料をセルに取り付け、試験ごとに2つの試料を実行し、その後各セルの周囲に真空グリース(Apiezon,Manchester,UK)を適用して、試料と器具窒素側との間の良好な封止を確実にした。超高純度酸素(99.996%、Oxygen Services Company、SG3 00MG003)試験ガス及び超高純度窒素(99.999%、Oxygen Services Company、NIT 304UHP)キャリアガスを、Oxygen Services Companyから入手した。測定は、セルが適切に封止されていることを確実にするためのチューブパージ及び漏れチェックを行った後に開始した。透過率を20分間隔でサンプリングし、OTRにおける1%以下の変化がサンプリング間隔の間に機器によって決定されたときに試験を停止した。機器からの結果として提供されるOTR値を、試料の厚さ(cm
厚さ)、試料の試験面積
【数1】
mLからの酸素のモル数を得るための理想気体の変換法則
【数2】
及び非加湿試験における試験ガスからキャリアガス側までの酸素の分圧における1気圧差
【数3】
を利用して、
【数4】
から、秒の単位時間当たりの、
【数5】
の単位の酸素透過係数に変換した。試験温度を、試料ごとに指定した。
【0079】
比較例A(CE-A)
以下の構造を有するコポリマーである。
【0080】
コポリマーは、798g/molの当量、19.2mol%の重合スルホネート官能性モノマー及び80.8mol%の重合テトラフルオロエチレンコモノマーを有していた。
【0081】
アイオノマーを水性メタノール溶媒中に再分散させて、アイオノマーの40%固形分分散液を生成することによって、CE-Aのフィルムを調製した。アイオノマーの分散液を、2mil(51マイクロメートル)ポリイミドライナー(KAPTON、DuPont(Wilmington,DE)から入手可能)上に、一定流速で、コーティングダイ及び約1メートル/分のライン速度を用いて、30マイクロメートルの標的乾燥厚さで、ダウンウェブ方向に順次配置されてそれぞれ50℃、100℃、120℃、及び145℃に設定された4つの乾燥ゾーンを有する株式会社ヒラノテクシート(Nara,Japan)により製造されたパイロットスケールコーターを使用して、コーティングした。その後、フィルムを200℃で10分間の第2の熱処理に供した。導電率及び酸素透過性測定(試験方法に記載される)をフィルム上で行った。
【0082】
ビス(スルホニル)イミド部分及びペルフルオロエーテル末端基を有するペンダント基を含むフルオロポリマーの調製
i)第1のフルオロポリマー中間体、FSO2-末端ペンダント基の調製
FSO2C4F8OCF=CF2を、米国特許第6,624,328号に記載されているように調製した。テトラフルオロエチレンとFSO2C4F8OCF=CF2とを、米国特許第7,348,088号に記載されているように共重合した。結果として得られるFSO2末端フルオロポリマー中間体は、798g/molの当量、19.2mol%の重合FSO2C4F8OCF=CF2モノマー及び80.8mol%の重合テトラフルオロエチレンコモノマー、並びに265℃、5kg質量での32g/10分のメルトフローインデックスを有していた。ワイヤメッシュを通してふるい分けすることによって得られた粒径<1mmのフルオロポリマーを、後続反応に使用した。後続反応ステップでは、重合テトラフルオロエチレンコモノマーのモル数(80.8mol%)及び重合FSO2C4F8OCF=CF2モノマーのモル数(19.2mol%)は同じままである。しかしながら、従来の反応スキームに記載されているように、様々な部分を共有結合させることにより、ペンダント基の大部分の分子量が増加する。
【0083】
ii)第2のフルオロポリマー中間体、-SO2NH-TEAH+末端ペンダント基の調製
中間体フルオロポリマー1を、米国特許第9,419,300号の実施例PE1のプロセスのより大きなスケールバージョンを使用して官能化し、ここで、中間体フルオロポリマー1は、NMR法によって、13:1のスルホンアミド(-SO2NH2)対スルホン酸(SO3H)官能性を有する側鎖を有する類似の組成のスルホンアミド官能化ポリマーに変換された。しかしながら、本プロセスでは、スルホンアミドアンモニウム中間体をトリエチルアミンと反応させ、減圧下でゆっくりと加熱して、アンモニアを除去した。窒素不活性化真空オーブンにおいて、分散液を、85℃でPTFE剥離ライナー上で乾燥させ、次いで後続反応で使用した。生成物は、以下に示す構造を名目上有するポリマーのアニオン形態のトリエチルアンモニウム塩であった。
【0084】
iii)第3のフルオロポリマー中間体、-SO
2N
-(TEAH
+)SO
2C
3F
6SO
2F末端ペンダント基の調製
空気駆動式スターラー、添加漏斗、セプタム、及び窒素供給を取り付けた乾燥3Lガラス反応器に、235gの乾燥させた中間体フルオロポリマー2を充填し、続いて、セプタムを通してカニューレによって311.78gの乾燥TEAを添加した。氷水浴上で冷却しながら、撹拌を開始し、953gのACNを添加した。反応混合物中にポリマー粒子を懸濁させるのに十分に速く混合物を撹拌し、熱電対で温度を監視した。325.75gのPPDSFを添加漏斗に移し、反応混合物が3℃に達したら添加を開始した。反応温度を4℃に維持しながら、全量を20分かけて滴下した。撹拌し、室温まで一晩ゆっくりと温めた。ポリマーは膨潤し、懸濁液を非常に弾性にした。ACNで3Lの総懸濁液まで希釈し、これは再び膨潤ポリマーで増粘された。80℃の浴で加熱したところ、少量のポリマーを凝縮させた。凝縮したポリマー塊が更なるプロセスステップを受けることを抑えながら、濃厚な懸濁液を未希釈トルエンに少しずつ移し、ここでは凝縮ポリマー塊が溶液から沈殿し、トルエン-膨潤ポリマー懸濁液体積比が少なくとも3:1であることを確実にした。次いで、固形物を1ガロン(3.8L)ジャグに入れ、50%(w/w)のトルエン中で24時間洗浄し、いかなる残留するACNも抽出させた。ポリマー及び洗浄溶媒スラリーを43℃及び動的真空で約340gのバッチで回転蒸発させて溶媒を除去し、生成された221.14gの-SO
2N
-(TEAH
+)SO
2C
3F
6SO
2F末端フルオロポリマー中間体を収集した。公称式を以下に示す。
【化4】
【0085】
iv)第4のフルオロポリマー中間体、-SO2NHSO2C3F6SO2NH2末端ペンダント基の調整
乾燥及び窒素不活性化された1Lの撹拌反応器(Parr Company,Moline,IL)に、液体窒素で凍結され、微粉末が得られるまで乳鉢及び乳棒で粉砕した70.5gの中間フルオロポリマー3を添加した。容器を回転翼ポンプによって排気した。カニューレによって438.7gのACNを充填し、反応器をイソプロピルアルコール-ドライアイス浴で冷却した。これにより、反応混合物が-10℃に達したら、102gの液体アンモニアをジップチューブ移送により急速に充填し、温度は5分間で3℃に自然に上昇し、その後急速に冷却し、冷浴上で反応物を撹拌させて、室温まで一晩ゆっくりと温めた。反応器を30分間排気させ、反応混合物を丸底フラスコ(RBF)に注ぎ入れた。
【0086】
v)カチオンの任意の精製及びイオン交換
250mLの2MのLiOH(水溶液)を添加し、水及びトリエチルアミンを回転蒸発によって除去して、61.75gの固形物を回収した。2回の分散の実行にわたって、すべての固形分を撹拌した600mLのParr反応器に充填し、250RPMの回転速度で溶解した5当量のLiOH・H
2Oを有するDI H
2O中で250℃で2時間分散させて、6.89重量%固形分の分散液を得た。分散液を1マイクロメートルのガラスマイクロファイバーシリンジフィルター(4524T、Pall Corporation,Port Washington,NY)を通して濾過してから、タンジェント流濾過によって精製し、水性分散液をAmberlite IR 120H+イオン交換樹脂上でイオン交換した。分散液を合わせ、アイオノマー分散液を、500mLの等容量及び20psigの背圧で、中空繊維タンジェント流濾過(TFF)モジュール(S02-S050-05-N、PS/50 kD、Spectrum,Inc.,Rancho Dominguez,CA)を通して透析濾過によって洗浄した。1000mLのDI H
2Oで洗浄し、続いて、4Lの50/50 MeOH/H
2O(w/w)で洗浄し、50mLの2M LiOH(水溶液)を、最初の500mLのMeOH/H
2Oを添加した後に保持液に1回で添加した。次いで水性メタノールを2体積のDI H
2Oで洗浄した。別々に収集された濾過システムのより低い重量%の洗浄を用いて、バルク収集について10重量%の分散液を得た。ポリカーボネートカラム(2.55cm(r)×65cm(h))をAmberlite樹脂で約半分(1.8molの酸部位)に充填した。この樹脂を、ポリマー分散液をイオン交換する前に、20LのDI H
2Oで洗浄した。アイオノマー分散液及び濾過システム洗浄を、1回のパスで樹脂上を通過させ、pH0~1(比色pH試験紙、8880-1,Ricca Chemical Co,Arlington,TX)分散液として収集した。この酸性ポリマーを収集し、強制空気オーブン内で乾燥させて、約60℃で水を除去し、50.55gの最終プロトン化スルホンアミド末端形態ポリマーを得た。中間体フルオロポリマー4の酸性化形態を、J.Am.Chem.Soc.2019,141,13547-13561の補足情報に従って、
19F NMRによって特性評価した。
19F NMRによって決定されるように、側鎖化学は8.5mol%のスルホン酸末端側鎖(-SO
3H)、6.0mol%のスルホンアミド末端側鎖(-SO
2NH
2)、及び85.5mol%の(-SO
2NHSO
2C
3F
6SO
2NH
2)末端側鎖を含んでいた。言い換えれば、総フルオロポリマーに関して、19.2mol%の、第1のフルオロポリマー中間体のペンダントフッ化スルホニルを有する総重合モノマーのうち、16.4mol%がここで(-SO
2NHSO
2C
3F
6SO
2NH
2)末端であり、一方1.6mol%が(-SO
3H)末端であり、1.2mol%が(-SO
2NH
2)末端であった。公称構造を以下に示す。
【化5】
【0087】
vi)ペルフルオロエーテル末端フルオロポリマーの調製
1Lのガラス圧力容器に、大きな撹拌棒(Fisherbrand 14-513-55、卵形状、Fisher Scientific,Waltham,MA)及び50.55gの酸形態の中間体フルオロポリマー4を充填した。容器の頂部にゴムセプタムを取り付け、N
2(g)をシリンジニードルを通して流入及び流出させた。54.28gの乾燥TEA(471283-100mL、Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を、カニューレを介して反応器に充填し、続いて同じ方法で257.48gのACNを充填した。混合物を試薬中に24分間浸して、ポリマーをトリエチルアンモニウム形態に中和し、膨潤させた。以下の構造を参照されたい。
【化6】
【0088】
97.61gのCF
3CF
2OC
4F
8SO
2F(DF-MV4S)を撹拌しながら観察可能な発熱を伴い、急速に添加した。圧力容器に蓋をして、混合物を撹拌するためのホットプレート-撹拌プレート(VWR,Radnor,PA)上で60Vの出力に設定された温度コントローラ(モデル410A、J-KEM Scientific,St.Louis,MO)によって制御されたヒーターコイル(Mange SF100、115Vで1kW)で加熱されたシリコーン油浴内で加熱した。浴を60℃に保持し、周囲条件で15分間撹拌した後、反応器を浴に設定した。ポリマーが反応して膨潤すると、混合物は撹拌するのがより困難になった。35分後に、撹拌棒をより大きな八角形撹拌棒に交換して、適切な混合を可能にした。反応混合物を一晩撹拌したところ、均質で透明なオレンジ褐色に見えた。混合物を更にもう1日撹拌し続けると、見かけ粘度を増加させた。撹拌及び加熱を、合計19日間続けた。ポリマー分散液を冷却させ、反応フラスコから1Lのトルエンにゆっくりとデカントし、400RPMで金属分散機ブレードによって撹拌した。ポリマーは、かすかな白色-黄褐色の固形物に沈殿し、濃い橙色の溶媒を残した。沈殿物をガラスフリット漏斗(Whatman GF-B、GE Healthcare UK Limited,Buckinghamshire,UK)で濾過した。溶媒を70℃の強制空気オーブン内で17.25時間更に蒸発させたところ、クラスト層が形成し、全てのトルエンが蒸発したわけではなかった。ポリマーを2LのRBF内で250mLのnPA中で膨潤させて、2MのLiOH(水溶液)からの10当量のLiOH及び更なる250mLのnPAで処理して、ポリマーを更に膨潤させた。TEAを、ロータリーエバポレーター上の動的真空下で60℃にて除去した。バルク溶媒を除去し(376.77gの膨潤ゲルまで乾燥させ)、754.56gの60/40 nPA/H
2O(w/w)溶媒を添加した。ゲルと分散ポリマーとの混合物を半分に分割し、各アリコートを剪断ミキサー(SL2T実験室用ミキサーエマルシファイア、Silverson,Buckinghamshire,England)で5000RPM以下で5分間処理して、5mmの孔径スクリーンを通る未分散のポリマーに分解し、その後、超音波プローブ(Ultrasonic Processor,Ace Glass Inc.,Vineland,NJ)で半最大振幅で5分間、及び全最大振幅で3分間処理して、濁った淡黄色の粘性の可視ゲルを含まない分散液を得た。最後に、1mm孔径スクリーンを取り付けた剪断ミキサーで更に5分間分散液を処理した。撹拌設定4、温度設定100でホットプレート-撹拌機(RCT basic,IKA Werke,Wilmington,NC)上で分散液を加熱した。30分後に、分散液温度が46.8℃に達し、微細なLiOH塩が混合中に懸濁液として観察され得る。混合物を200mLの70/30 EtOH/H
2O(w/w)で希釈し、塩及び小分子副生成物のTFF精製のために2Lのボトルに注ぎ入れた。2つの分散液を濃縮して、1Lの等容積のプロセス容量まで1つの2Lのボトルに添加し、合計5Lの70/30 EtOH/H
2O(w/w)洗浄溶媒を使用して透析濾過を開始し、以下に示される、70/30 EtOH/H
2O(w/w)中のLi+対イオンを有するフルオロポリマーの分散液を得た。窒素下で乾燥させ、MeOD中に分散させたポリマー試料の
19F NMRを得て、約91.7%の(以下に示すように)ペルフルオロアルキルエーテル末端側鎖を有する最終フルオロポリマー側鎖組成、及び8.3%の-SO
3Liでの終端を示した。
【化7】
【0089】
分散液及び濾過システム洗浄を収集し、4ガロンのDI H
2Oで予めすすいだ約10当量のAmberlite IR-120 H+ビーズ上でLi+対イオンをH
+にイオン交換した。全ての収集物を回転蒸発し、40℃、動的真空でバルク溶媒を除去し、暖かい流動するN
2(g)下で最終乾燥させて、59.96g(0.040mol、87.1%収率)の以下に示したような結果として得られるフルオロポリマーを得た。
【化8】
【0090】
ペルフルオロエーテル末端フルオロポリマー分散液の調製
分散するまで撹拌を増加させるために撹拌棒を備えた60mLのボトル中で回転させることにより、約5gのペルフルオロエーテル末端フルオロポリマーを60/40 nPA/H2O(w/w)溶媒中で分散させることによって、分散液を調製した。分散液は10.5重量%の固形分であった。
【0091】
10.50重量%の固形分の分散液を、フィルムコーティング法に示されるように、25ミル(0.64mm)の湿潤ギャップで剥離ライナー上にコーティングし、滴定分析で固体フィルムを利用して、ペルフルオロエーテル末端フルオロポリマーの当量を決定した。バルクフィルム法の滴定による当量(EW)決定後に、783.4g/molの平均当量を有する2つの別個の試料の2つのアリコートを滴定した。
【0092】
10.50重量%の固形分の分散液を、デシケータ内の同一の溶媒リッチ環境でわずかに減圧した圧力にて数時間脱気した後、フィルムコーティング法に示すように、25ミル(0.64)の湿潤ギャップで剥離ライナー上にコーティングした。コーティングされたフィルムは、29マイクロメートルの乾燥した、表面欠陥を伴わずに完全に無傷であると特徴付けられた。フィルムを、上記の電気化学的及びOTR方法に従って、mol・cm・s-1・cm-2・kPa-1の単位で、酸素透過性について特性評価した。フィルムのイオン導電率も測定した。結果を以下の表に示す。
【0093】
【0094】
【国際調査報告】