(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】デキストロメトルファンの経皮送達
(51)【国際特許分類】
A61K 31/439 20060101AFI20230508BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230508BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20230508BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230508BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230508BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230508BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230508BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230508BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230508BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230508BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230508BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K31/439
A61K45/00
A61K31/137
A61K9/70 401
A61K47/14
A61K47/32
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/24
A61P9/10
A61P25/04
A61P25/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559484
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2021024572
(87)【国際公開番号】W WO2021202329
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520118717
【氏名又は名称】シンケイ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ボルサディア スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】パテル カルパナ
(72)【発明者】
【氏名】タン ホック エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラバル クルナル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076AA80
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC11
4C076DD45
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE16
4C076EE48
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA122
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC27
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA18
4C086ZA21
4C086ZA36
4C206AA01
4C206FA08
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA15
4C206ZA12
(57)【要約】
本明細書では、新規な、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイス(またはパッチ)、デキストロメトルファンを含む医薬組成物、その調製方法、及びデキストロメトルファンを経皮投与する方法が提供される。本明細書では、本明細書の経皮送達デバイス及び/または医薬組成物を用いて、神経疾患または神経障害(例えば、PBA)などの様々な疾患及び障害を治療する方法もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経疾患または神経障害の治療を必要とする対象のその神経疾患または神経障害を治療する方法であって、前記方法が、前記対象に経皮パッチを貼付することを含み、前記経皮パッチが、
a.バッキング層と、
b.(1)約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量のデキストロメトルファン、(2)約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量のミリスチン酸イソプロピル、(3)約65重量%~約85重量%(例えば、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%,または前記記載値間の任意の範囲、例えば約65~85重量%、約70~85重量%、約75~85重量%など)の量の感圧接着剤、及び任意選択で(4)約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量の結晶化抑制剤を含む、薬物含有接着剤層と
を含み、
前記経皮パッチが、約30cm
2~約100cm
2、例えば、約30cm
2、約40cm
2、約50cm
2、約60cm
2、約70cm
2、約80cm
2、約90cm
2、約100cm
2、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約40~60cm
2、約60~80cm
2などの有効表面積を有する、前記方法。
【請求項2】
前記感圧接着剤が、アクリレート系感圧接着剤、好ましくはアクリレートコポリマー接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬物含有接着剤層が、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%,または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量の結晶化抑制剤を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶化抑制剤が、ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物含有接着剤層が、1)約20mg~約100mgのデキストロメトルファン、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば、約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのデキストロメトルファンと、2)約30mg~約100mgのミリスチン酸イソプロピル、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのミリスチン酸イソプロピルと、3)約150mg~約900mgの前記感圧接着剤、例えば、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約300~500mg、350~450mg、もしくは約300~550mgなどの前記感圧接着剤と、任意選択で4)約30mg~約100mgの量、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどの量の前記結晶化抑制剤とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬物含有接着剤層が、約30mg~約100mgの量の前記結晶化抑制剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記薬物含有接着剤層が、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記薬物含有接着剤層が、約56mgのデキストロメトルファンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記経皮パッチが、約70cm
2の有効表面積を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記経皮パッチが、約0.2mg/cm
2~約5mg/cm
2、例えば、約0.2mg/cm
2、約0.3mg/cm
2、約0.4mg/cm
2、約0.5mg/cm
2、約0.6mg/cm
2、約0.7mg/cm
2、約0.8mg/cm
2、約0.9mg/cm
2、約1mg/cm
2、約2mg/cm
2、約5mg/cm
2、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約0.2~1mg/cm
2、約0.5~1mg/cm
2などの総デキストロメトルファン担持量を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記経皮パッチが、前記バッキング層、前記薬物含有接着剤層、及び任意選択で剥離ライナーからなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記経皮パッチが、一体型パッチの形態である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記経皮パッチが、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm
2/日、例えば約200ug/cm
2/日、約300ug/cm
2/日、約400ug/cm
2/日、約500ug/cm
2/日、約600ug/cm
2/日、約700ug/cm
2/日、約800ug/cm
2/日、約1000ug/cm
2/日、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約200~800ug/cm
2/日、約300~800ug/cm
2/日、約400~800ug/cm
2/日、約500~800ug/cm
2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記経皮パッチを貼付して、治療的に有効な量のデキストロメトルファンを前記対象に経皮送達することを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記経皮パッチを貼付して、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)の1日用量のデキストロメトルファンを前記対象に経皮送達することを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記1日用量が、約35mgのデキストロメトルファンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記経皮パッチが、前記対象に1日1回貼付される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記神経疾患または前記神経障害が、情動調節障害、大うつ病性障害もしくは治療抵抗性うつ病などのうつ病、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせである、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記神経疾患または前記神経障害が、情動調節障害である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としない、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、デキストロメトルファンの高代謝群と特徴付けられる、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、デキストロメトルファンの低代謝群と特徴付けられる、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、CYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、キニジンに伴う1つ以上の副作用を有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、その代謝がCYP2D6阻害剤によって影響を受ける薬物を同時投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象に抗うつ剤を投与することをさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗うつ剤が、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、エリスロヒドロキシブプロピオン、スレオヒドロキシブプロピオン、これらの化合物のいずれかの代謝物またはプロドラッグ、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、キニジンを投与されない、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
神経疾患または神経障害の治療を必要とする対象のその神経疾患または神経障害を治療する方法であって、1日に1回から1週間に1回の投薬頻度で前記対象に経皮パッチを貼付することを含み、前記経皮パッチが、約15mg~約700mg(例えば、約15mg、約30mg、約50mg、約75mg、約100mg、約150mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約15~100mg、約30~100mg、約30~75mg、もしくは約150~500mgなど)のデキストロメトルファンを含み、前記貼付することにより、定常状態で前記対象に治療的に有効な血漿中デキストロメトルファン濃度がもたらされる、前記方法。
【請求項30】
前記経皮パッチが、約30mg~約100mgのデキストロメトルファンを含み、前記貼付することにより、
a)約180h*ng/mL~約2000h*ng/mL、例えば、約200h*ng/mL~約600h*ng/mLまたは約300h*ng/mL~約500h*ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのAUC
0-24,DXM、
b)約8ng/mL~約100ng/mL、例えば、約10ng/mL~約20ng/mL、例えば約15ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのC
Avg,DXM、
c)約6ng/mL~約65ng/mL、例えば、約6ng/mL~約20ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのC
min,DXM、
d)約8ng/mL~約90ng/mL、例えば、約10ng/mL~約30ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのC
max,DXM、
e)約0.18~約0.8、例えば、約0.18~約0.8、例えば約0.3~約0.5の、7日目または定常状態の段階でのデキストロメトルファンの変動度[(C
max-C
min)/C
avg]、
f)約0.2~約1.35、例えば、約0.3~約1、例えば約0.4~0.7の、7日目または定常状態の段階でのデキストロメトルファンの振幅率[(C
max-C
min)/C
min]、
g)約1.5~約5、例えば、約1.5~約3、例えば約1.5~2.5の、AUC
0-24,DXM,D1に対する定常状態の段階でのAUC
0-24,DXMの比率、
h)約12~約35の、定常状態の段階でのAUC
0-24,DORに対するAUC
0-24,DXMの比率、
i)約12~約35の、定常状態の段階でのC
max,DORに対するC
max,DXMの比率、及び
j)約12~約35の、定常状態の段階でのC
Avg,DORに対するC
Avg,DXMの比率、
のうちの1つ以上を特徴とする薬物動態プロファイルが前記対象にもたらされる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記貼付することにより、a)約200h*ng/mL~約600h*ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのAUC
0-24,DXM、b)約10ng/mL~約20ng/mL、例えば約15ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのC
Avg,DXM、c)約6ng/mL~約20ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのC
min,DXM、及び/またはd)約10ng/mL~約30ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのC
max,DXM、を特徴とする薬物動態プロファイルがもたらされる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記貼付することにより、e)約0.18~約1の、7日目もしくは定常状態の段階でのデキストロメトルファンの変動度[(C
max-C
min)/C
avg]、及び/またはf)約0.3~約1の、7日目もしくは定常状態の段階でのデキストロメトルファンの振幅率[(C
max-C
min)/C
min]、を特徴とする薬物動態プロファイルがもたらされる、請求項30または請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記貼付することにより、g)約1.5~約3の、AUC
0-24,DXM,D1に対する定常状態の段階でのAUC
0-24,DXMの比率、を特徴とする薬物動態プロファイルがもたらされる、請求項29~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記貼付することにより、h)約12~約35の、定常状態の段階でのAUC
0-24,DORに対するAUC
0-24,DXMの比率、i)約12~約35の、定常状態の段階でのC
max,DORに対するC
max,DXMの比率、及び/またはj)約12~約35の、定常状態の段階でのC
Avg,DORに対するC
Avg,DXMの比率、を特徴とする薬物動態プロファイルがもたらされる、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
初回投与以外の前記経皮パッチの各貼付では、投与前の血漿中デキストロメトルファン濃度が、直前の投与で観測される平均濃度(C
Avg,DXM)の約20%未満にならない、請求項29~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
デキストロメトルファンの蓄積率が、約1~約5、例えば約1.2~約3の範囲であり、前記対象が、高代謝群または超高代謝群である、請求項29~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記貼付することにより、k)高代謝群または超高代謝群における約11~約29時間、例えば、約11~約24時間、例えば約17時間の、定常状態の段階でのデキストロメトルファンの半減期、及び/またはl)高代謝群または超高代謝群における約0.018h
-1~約0.065h
-1、例えば、約0.020h
-1~約0.06h
-1の、定常状態の段階を達成した後の最終投与後の見かけの一次終末相消失速度定数(λ
z)、がもたらされる、請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記貼付することにより、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)の1日用量のデキストロメトルファンが前記対象に経皮送達される、請求項29~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記貼付することにより、約35mgの1日用量のデキストロメトルファンが前記対象に経皮送達される、請求項29~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記経皮パッチが、前記対象に1日1回貼付される、請求項29~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記神経疾患または前記神経障害が、情動調節障害、大うつ病性障害もしくは治療抵抗性うつ病などのうつ病、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせである、請求項29~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記神経疾患または前記神経障害が、情動調節障害である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としない、請求項29~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、デキストロメトルファンの高代謝群と特徴付けられる、請求項29~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、デキストロメトルファンの低代謝群と特徴付けられる、請求項29~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、CYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容である、請求項29~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、キニジンに伴う1つ以上の副作用を有する、請求項29~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、その代謝がCYP2D6阻害剤によって影響を受ける薬物を同時投与される、請求項29~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象に抗うつ剤を投与することをさらに含む、請求項29~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗うつ剤が、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、エリスロヒドロキシブプロピオン、スレオヒドロキシブプロピオン、これらの化合物のいずれかの代謝物またはプロドラッグ、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、キニジンを投与されない、請求項29~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記経皮パッチが、バッキング層と薬物含有接着剤層とを含み、前記薬物含有接着剤層が、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含み、前記薬物含有接着剤層が、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量のデキストロメトルファンと、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量のミリスチン酸イソプロピルと、約65重量%~約85重量%(例えば、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%,または前記記載値間の任意の範囲、例えば約65~85重量%、約70~85重量%、約75~85重量%など)の量の感圧接着剤と、任意選択で約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量の結晶化抑制剤とを含む、請求項29~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記感圧接着剤が、アクリレート系感圧接着剤、例えばアクリレートコポリマー接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物であり、前記薬物含有接着剤層が、好ましくはビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物である、前記結晶化抑制剤を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記経皮パッチが、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm
2/日、例えば約200ug/cm
2/日、約300ug/cm
2/日、約400ug/cm
2/日、約500ug/cm
2/日、約600ug/cm
2/日、約700ug/cm
2/日、約800ug/cm
2/日、約1000ug/cm
2/日、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約200~800ug/cm
2/日、約300~800ug/cm
2/日、約400~800ug/cm
2/日、約500~800ug/cm
2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する、請求項52または請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記経皮送達デバイスまたはパッチが、1日に1回貼付され、前記経皮パッチ中のデキストロメトルファンの残留量が、前記経皮パッチ中の初期デキストロメトルファン量の50%未満(例えば、40%未満)である、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記経皮パッチが、1日に1回貼付され、前記対象に送達されるデキストロメトルファンの割合が、前記パッチ中の初期デキストロメトルファン量の約50%~約80%である、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
経皮パッチであって、
i.バッキング層と、
ii.1)約2重量%~約12重量%の量のデキストロメトルファン、2)約6重量%~約12重量%の量のミリスチン酸イソプロピル、3)約65重量%~約85重量%の量の感圧接着剤、好ましくはアクリレート系感圧接着剤、及び任意選択で4)約6重量%~約12重量%の量の結晶化抑制剤を含む、薬物含有接着剤層と
を含み、約30cm
2~約100cm
2の有効表面積を有する、前記経皮パッチ。
【請求項58】
前記アクリレート系感圧接着剤が、アクリレートコポリマー接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物である、請求項57に記載の経皮パッチ。
【請求項59】
前記アクリレート系感圧接着剤の量が、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、もしくは約85重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約70~85%、約75~85%などである、請求項57または請求項58に記載の経皮パッチ。
【請求項60】
ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物である、前記結晶化抑制剤が存在する、請求項57または請求項58に記載の経皮パッチ。
【請求項61】
前記結晶化抑制剤が、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、もしくは約12%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約6~12%もしくは8~12%などの量で存在する、請求項60に記載の経皮パッチ。
【請求項62】
前記ミリスチン酸イソプロピルの量が、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、もしくは約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%などである、請求項61に記載の経皮パッチ。
【請求項63】
前記デキストロメトルファンの量が、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、もしくは約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%などである、請求項62に記載の経皮パッチ。
【請求項64】
前記薬物含有接着剤層が、約20mg~約100mgのデキストロメトルファン、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのデキストロメトルファンを含む、請求項63に記載の経皮パッチ。
【請求項65】
前記薬物含有接着剤層が、約30mg~約100mgのミリスチン酸イソプロピル、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのミリスチン酸イソプロピルを含む、請求項64に記載の経皮パッチ。
【請求項66】
前記薬物含有接着剤層が、約150mg~約900mgの前記感圧接着剤、好ましくはアクリレート系感圧接着剤、例えば、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約300~500mg、350~450mg、もしくは約300~550mgなどの前記感圧接着剤を含む、請求項65に記載の経皮パッチ。
【請求項67】
前記薬物含有接着剤層が、約30mg~約100mgの量、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどの量の前記結晶化抑制剤を含む、請求項66に記載の経皮パッチ。
【請求項68】
前記薬物含有接着剤層が、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含む、請求項67に記載の経皮パッチ。
【請求項69】
前記薬物含有接着剤層が、約56mgのデキストロメトルファンを含む、請求項68に記載の経皮パッチ。
【請求項70】
約70cm
2の有効表面積を有する、請求項68に記載の経皮パッチ。
【請求項71】
約0.2mg/cm
2~約5mg/cm
2、例えば約0.2mg/cm
2、約0.3mg/cm
2、約0.4mg/cm
2、約0.5mg/cm
2、約0.6mg/cm
2、約0.7mg/cm
2、約0.8mg/cm
2、約0.9mg/cm
2、約1mg/cm
2、約2mg/cm
2、約5mg/cm
2、または前記記載値間の任意の範囲、例えば約0.2~1mg/cm
2、約0.5~1mg/cm
2などの総デキストロメトルファン担持量を有する、請求項68に記載の経皮パッチ。
【請求項72】
前記バッキング層、前記薬物含有接着剤層、及び任意選択で剥離ライナーからなる、請求項68に記載の経皮パッチ。
【請求項73】
一体型パッチの形態である、請求項68に記載の経皮パッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年3月30日に出願された米国仮出願第63/001,607号に対する利益を主張するものであり、この米国仮出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
様々な実施形態において、本開示は、一般に、例えば、本明細書に記載される神経疾患などの疾患または障害の治療に使用するための、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイス、その調製方法、及びその使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)カプセル20mg/10mgは、臭化水素酸デキストロメトルファン(非競合的N-メチル-D-アスパラギン酸[NMDA]受容体アンタゴニスト及びシグマ-1アゴニスト)及び硫酸キニジン(CYP450 2D6阻害剤)を含む配合剤である。この医薬品は、情動調節障害(PBA)の治療に適応される。臭化水素酸デキストロメトルファンは、中枢神経系(CNS)に作用するNUEDEXTA(登録商標)の薬理活性成分である。硫酸キニジンは、デキストロメトルファンの全身バイオアベイラビリティを高めるためにNUEDEXTA(登録商標)において使用されている、CYP2D6依存性酸化的代謝の特異的阻害剤である。
【0004】
NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)カプセル20mg/10mgの推奨開始用量は、治療開始後7日間では1日1カプセルを経口投与する。治療の8日目以降では、1日用量は、12時間おきに1カプセル、1日合計2カプセルにする必要がある。一部の患者ではPBAの自然な改善が見られるため、継続的な治療の必要性を定期的に再評価する必要がある。
【0005】
NUEDEXTA(登録商標)を服用する患者における最も頻度の高い副作用(発生率3%以上であり、プラセボの2倍を超える)は、降順に、下痢、めまい、咳、嘔吐、無力症、末梢浮腫、尿路感染症、インフルエンザ、ガンマグルタミルトランスフェラーゼの増加、及び鼓腸である。単体成分であるデキストロメトルファンの使用に伴う以下の副作用、すなわち、眠気、めまい、神経過敏または情動不安、吐き気、嘔吐、及び胃痛が報告されている。
【発明の概要】
【0006】
様々な実施形態において、本開示は、一部、本明細書の経皮送達デバイス(パッチ)からの継続的に高フラックスのデキストロメトルファンで、デキストロメトルファンを経皮投与することが可能であるという予期せぬ発見に基づいている。本明細書におけるデキストロメトルファンの経皮送達は、例えば、PBAなどの本明細書の疾患または障害を治療するために、治療的に有効な血漿中デキストロメトルファン濃度を達成する。NUEDEXTA(登録商標)などの製剤による現在利用可能な経口送達と比較して、本明細書のデキストロメトルファンの経皮送達は、多くの利点を有し、そのような経口製剤の満たされていない医療ニーズの多くを解決する。例えば、本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤(例えば、接着剤組成物)は、キニジンなどのCYP2D6阻害剤が同時投与されるかどうかに関係なく、治療的に有効な血漿中濃度を達成するように投与され得る。したがって、本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤は、キニジンなどのCYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容である対象にデキストロメトルファンを経皮送達するために投与することが可能である。本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤は、対象がデキストロメトルファンの低代謝群、中間代謝群、または高代謝群であるかどうかを最初に決定するかしないかにかかわらず、対象にデキストロメトルファンを経皮送達するために便利に投与することが可能である。本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤を用いたデキストロメトルファンの投与はまた、NUEDEXTA(登録商標)と比較して、例えば、より正確な投薬、より低頻度の投薬、キニジンに伴う副作用及び/またはデキストロメトルファン曝露増加(例えば、Cmax)に伴う副作用の可能性の低減、錠剤数の負担の軽減、及び患者コンプライアンスの改善、に伴って優れた臨床経験を提供し得る。
【0007】
様々な実施形態において、本明細書では、新規な、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイス(またはパッチ)、デキストロメトルファンを含む医薬組成物(例えば、接着剤組成物等の経皮製剤)、その調製方法、及びデキストロメトルファンを経皮投与する方法が提供される。本明細書の経皮送達デバイス、医薬組成物、及び方法は、神経疾患または神経障害(例えば、PBA)などの様々な疾患及び障害を治療するのに有用である。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態は、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイスを対象とする。一般的には、経皮送達デバイスは、単層の薬物含有接着剤(DIA)パッチなどの、DIAマトリックスタイプのパッチである。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、任意選択のリザーバ層などの追加の層を有することができる。他の好適なパッチデザインについても本明細書で説明する。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、バッキング層、薬物含有接着剤層、及び任意選択で剥離ライナーを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる。薬物含有接着剤層は、典型的には、本明細書に記載の接着剤組成物を含む。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、デキストロメトルファン、皮膚透過促進剤、感圧接着剤、及び任意選択で結晶化抑制剤を含む。薬物含有接着剤層は、典型的には、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含む。デキストロメトルファン及び皮膚透過促進剤は、典型的には、感圧接着剤中に分散されている(例えば、均一に分散または溶解されている)。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、均一混合物である。いくつかの実施形態では、皮膚透過促進剤は、ミリスチン酸イソプロピルである。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、Duro-Tak 87-2287などのアクリレート系感圧接着剤である。また、デキストロメトルファン経皮パッチに結晶化抑制剤であるビニルピロリドンポリマー(プラスドンK29/32)を含有させることにより、インビトロ及びインビボで、パッチからのデキストロメトルファンの透過性が著しく向上することを発見した。したがって、いくつかの実施形態では、好ましくはビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物である、結晶化抑制剤が存在する。経皮投与デバイスは、典型的には、一体型パッチの形態であり、例えば、約30cm2~約100cm2の有効表面積を有することができる。経皮投与デバイスは、典型的には、必要としている対象に、約15mg~約50mg、例えば約35mgなどの1日用量のデキストロメトルファンを提供するのに十分な量のデキストロメトルファンを含む。経皮送達デバイスは、典型的には、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm2/日のデキストロメトルファンフラックス、例えば、約200~800ug/cm2/日、約300~800ug/cm2/日、約400~800ug/cm2/日、約500~800ug/cm2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する。経皮送達デバイスの成分の好適な種類及び量としては、本明細書に記載されたものが任意の組み合わせで含まれる。本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤を調製する方法もまた、本開示で提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、本明細書に記載されている疾患または障害の治療を必要とする対象(典型的にはヒト対象)の疾患または障害を治療する方法であって、治療的に有効な量のデキストロメトルファンを対象に経皮送達することを含む方法を提供する。一般に、本方法は、本明細書に記載の経皮パッチを対象に貼付することを含む。経皮パッチは、1日に1回から1週間に1回の投薬頻度で対象に貼付されて、例えば、約15mg~約50mgの1日用量のデキストロメトルファンを対象に経皮送達することができる。疾患または障害とは、典型的には、本明細書に記載の神経疾患または神経障害であり、例えば、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、対象は、デキストロメトルファンの高代謝群である。いくつかの実施形態では、対象は、デキストロメトルファンの低代謝群である。好適な投薬レジメン、投薬量、継続期間、経皮送達デバイスなどには、本明細書に記載されたいずれかのものが任意の組み合わせで含まれる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されている疾患または障害の治療を必要とする対象(典型的にはヒト対象)の疾患または障害を治療する方法を提供し、本方法は、本明細書に記載の1つ以上の薬物動態(PK)プロファイルに従って対象にデキストロメトルファンを投与することを含む。一般に、本方法は、本明細書に記載のPKプロファイルを達成するために、所望の1日用量(例えば、約15mg~約50mg、例えば約35mgなど)のデキストロメトルファンを対象に経皮送達することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、1日に1回から1週間に1回の投薬頻度で対象に経皮パッチを貼付して、定常状態で対象に治療的に有効な血漿中デキストロメトルファン濃度を送達することを含む。経皮パッチは、約15mg~約700mgのデキストロメトルファンを有することができる。一般に、経皮パッチは、約30mg~約100mgのデキストロメトルファンを含み、1日に1回貼付される。疾患または障害とは、典型的には、本明細書に記載の神経疾患または神経障害であり、例えば、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせである。好適な投薬レジメン、投薬量、継続期間、経皮送達デバイスなどには、本明細書に記載されたいずれかのものが任意の組み合わせで含まれる。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態は、デキストロメトルファンを必要とする対象にそれを投与する方法を対象とする。一般に、本方法は、本明細書に記載の経皮パッチを対象に貼付することを含む。経皮パッチは、1日に1回から1週間に1回の投薬頻度で対象に貼付されて、例えば、約15mg~約50mgの1日用量のデキストロメトルファンを対象に経皮送達することができる。対象は、典型的には、本明細書に記載の疾患または障害、典型的には、本明細書に記載の神経疾患または神経障害、例えば、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせを患っている。いくつかの実施形態では、対象は、デキストロメトルファンの高代謝群である。いくつかの実施形態では、対象は、デキストロメトルファンの低代謝群である。好適な投薬レジメン、投薬量、継続期間、経皮送達デバイスなどには、本明細書に記載されたいずれかのものが任意の組み合わせで含まれる。
【0012】
NUEDEXTA(登録商標)錠剤を投与する方法と比較して、本明細書の方法は、キニジンまたは一般にCYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容である対象など、特定の対象にとっては特に有利であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、CYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、キニジンに対して敏感または不耐容であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、キニジンに伴う1つ以上の副作用を有する。いくつかの実施形態では、対象は、対象の代謝がCYP2D6阻害剤によって影響を受ける薬物を同時投与される。いくつかの実施形態では、対象は、対象の代謝がキニジンによって影響を受ける薬物を同時投与される。いくつかの実施形態では、対象は、キニジンの薬理効果に影響を与え得る薬物を同時投与される。
【0013】
本明細書の方法は、他の薬物療法と併用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、対象にデキストロメトルファン以外の活性薬剤を投与することをさらに含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、対象に抗うつ剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、アムロジピン、カプサイシノイド(例えば、カプサイシンまたはそのエステル)、オピオイドアゴニスト(例えば、μ-オピエート鎮痛剤(例えば、トラマドール))、アデノシン作動性(adenosinergic)アゴニスト、3-(3-ジメチルアミノ-1-エチル-2-メチル-プロピル)-フェノール、ガバペンチン、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上の追加の活性薬剤を対象に投与することをさらに含む。これらの追加の薬剤を、同じ経路または異なる経路を介して、同時にまたは順次に任意の順序で投与することができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下を提供する。
[1]神経疾患または神経障害(例えば、本明細書に記載されているもののいずれか)の治療を必要とする対象のその神経疾患または神経障害を治療する方法であって、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)の1日用量のデキストロメトルファンを対象に経皮送達することを含む、方法。
[2]神経疾患または神経障害が、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせである、[1]に記載の方法。
[3]神経疾患または神経障害が、情動調節障害である、[1]に記載の方法。
[4]1日用量が、約20mg~40mgのデキストロメトルファンである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法。
[5]1日用量が、約35mgのデキストロメトルファンである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法。
[6]経皮送達デバイスを1日1回貼付して、対象に1日用量を経皮送達することであって、経皮送達デバイスは薬物含有接着剤層を含み、薬物含有接着剤層は、約2重量%~約12重量%、好ましくは約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約6~12重量%、8~12重量%など)の量のデキストロメトルファンと、感圧接着剤と、皮膚透過促進剤とを含む、経皮送達することを含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の方法。
[7]経皮送達デバイスが、約30cm2~約200cm2、例えば約30cm2~約100cm2、例えば、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60cm2、約60~80cm2などの有効表面積を有する、[6]に記載の方法。
[8]感圧接着剤が、アクリレート接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物であり、薬物含有接着剤層の約65重量%~約85重量%(例えば、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、もしくは約85重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約70~85重量%、約75~85重量%など)の量で存在する、[6]または[7]に記載の方法。
[9]皮膚透過促進剤が、ミリスチン酸イソプロピルであり、薬物含有接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量で存在する、[6]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[10]薬物含有接着剤層が、結晶化抑制剤、好ましくはビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物を、薬物含有接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量でさらに含む、[6]~[9]のいずれか1つに記載の方法。
[11]薬物含有接着剤層が、約20mg~約100mgのデキストロメトルファン、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのデキストロメトルファンを含む、[6]~[10]のいずれか1つに記載の方法。
[12]薬物含有接着剤層が、約30mg~約100mgのミリスチン酸イソプロピル、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのミリスチン酸イソプロピルを含む、[6]~[11]のいずれか1つに記載の方法。
[13]薬物含有接着剤層が、約150mg~約900mgの感圧接着剤、例えば、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約300~500mg、350~450mg、もしくは約300~550mgなどの感圧接着剤を含む、[6]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[14]結晶化抑制剤が、約30mg~約100mgの量、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどの量で存在する、[10]~[13]のいずれか1つに記載の方法。
[15]1日用量が約35mgのデキストロメトルファンであり、薬物含有接着剤層が約50mg~約70mgのデキストロメトルファンを含む、[6]~[14]のいずれか1つに記載の方法。
[16]経皮送達デバイスが、約0.2mg/cm2~約5mg/cm2、例えば約0.2mg/cm2、約0.3mg/cm2、約0.4mg/cm2、約0.5mg/cm2、約0.6mg/cm2、約0.7mg/cm2、約0.8mg/cm2、約0.9mg/cm2、約1mg/cm2、約2mg/cm2、約5mg/cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約0.2~1mg/cm2、約0.5~1mg/cm2などの総デキストロメトルファン担持量を有する、[6]~[15]のいずれか1つに記載の方法。
[17]経皮送達デバイスが、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm2/日、例えば約200ug/cm2/日、約300ug/cm2/日、約400ug/cm2/日、約500ug/cm2/日、約600ug/cm2/日、約700ug/cm2/日、約800ug/cm2/日、約1000ug/cm2/日、または記載値間の任意の範囲、例えば約200~800ug/cm2/日、約300~800ug/cm2/日、約400~800ug/cm2/日、約500~800ug/cm2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する、[6]~[16]のいずれか1つに記載の方法。
[18]経皮パッチであって、
i.バッキング層と、
ii.1)約2重量%~約12重量%の量のデキストロメトルファン、2)約6重量%~約12重量%の量のミリスチン酸イソプロピル、3)約65重量%~約85重量%の量の感圧接着剤、好ましくはアクリレート系感圧接着剤、及び任意選択で4)約6重量%~約12重量%の量の結晶化抑制剤を含む、薬物含有接着剤層と
を含み、約30cm2~約200cm2、例えば約30cm2~約100cm2などの有効表面積を有する、経皮パッチ。
[19]アクリレート系感圧接着剤が、アクリレートコポリマー接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物である、[18]に記載の経皮パッチ。
[20]アクリレート系感圧接着剤の量が、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、もしくは約85重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約70~85%、約75~85%などである、[18]または[19]に記載の経皮パッチ。
[21]ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物である結晶化抑制剤が存在する、[18]~[20]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[22]結晶化抑制剤が、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、もしくは約12%、または記載値間の任意の範囲、例えば約6~12%もしくは8~12%などの量で存在する、[18]~[21]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[23]ミリスチン酸イソプロピルの量が、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、もしくは約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%などである、[18]~[22]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[24]デキストロメトルファンの量が、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、もしくは約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%などである、[18]~[23]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[25]薬物含有接着剤層が、約20mg~約100mgのデキストロメトルファン、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのデキストロメトルファンを含む、[18]~[24]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[26]薬物含有接着剤層が、約30mg~約100mgのミリスチン酸イソプロピル、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのミリスチン酸イソプロピルを含む、[18]~[25]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[27]薬物含有接着剤層が、約150mg~約900mgの感圧接着剤、好ましくはアクリレート系感圧接着剤、例えば、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約300~500mg、350~450mg、もしくは約300~550mgなどの感圧接着剤を含む、[18]~[26]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[28]薬物含有接着剤層が、約30mg~約100mgの量、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどの量の結晶化抑制剤を含む、[18]~[27]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[29]薬物含有接着剤層が、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含む、[18]~[28]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[30]薬物含有接着剤層が、約56mgのデキストロメトルファンを含む、[18]~[29]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[31]約70cm2の有効表面積を有する、[18]~[30]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[32]約0.2mg/cm2~約5mg/cm2、例えば約0.2mg/cm2、約0.3mg/cm2、約0.4mg/cm2、約0.5mg/cm2、約0.6mg/cm2、約0.7mg/cm2、約0.8mg/cm2、約0.9mg/cm2、約1mg/cm2、約2mg/cm2、約5mg/cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約0.2~1mg/cm2、約0.5~1mg/cm2などの総デキストロメトルファン担持量を有する、[18]~[31]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[33]バッキング層、薬物含有接着剤層、及び任意選択で剥離ライナーからなる、[18]~[32]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[34]一体型パッチの形態である、[18]~[33]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[35]ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm2/日、例えば約200ug/cm2/日、約300ug/cm2/日、約400ug/cm2/日、約500ug/cm2/日、約600ug/cm2/日、約700ug/cm2/日、約800ug/cm2/日、約1000ug/cm2/日、または記載値間の任意の範囲、例えば約200~800ug/cm2/日、約300~800ug/cm2/日、約400~800ug/cm2/日、約500~800ug/cm2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する、[18]~[34]のいずれか1つに記載の経皮パッチ。
[36]神経疾患または神経障害(例えば、本明細書に記載されているもののいずれか)の治療を必要とする対象のその神経疾患または神経障害を治療する方法であって、[18]~[35]のいずれか1つに記載の経皮パッチを対象に貼付することを含む、方法。
[37]貼付することにより、治療的に有効な量のデキストロメトルファンが対象に経皮送達される、[36]に記載の方法。
[38]貼付することにより、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)の1日用量のデキストロメトルファンが対象に経皮送達される、[36]に記載の方法。
[39]1日用量が、約35mgのデキストロメトルファンである、[38]に記載の方法。
[40]経皮パッチが対象に1日1回貼付される、[36]~[39]のいずれか1つに記載の方法。
[41]神経疾患または神経障害が、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせである、[36]~[40]のいずれか1つに記載の方法。
[42]神経疾患または神経障害が、情動調節障害である、[41]に記載の方法。
[43]神経疾患または神経障害(例えば、本明細書に記載されているもののいずれか)の治療を必要とする対象のその神経疾患または神経障害を治療する方法であって、1日に1回から1週間に1回の投薬頻度で対象に経皮パッチを貼付することを含み、経皮パッチが、約15mg~約700mg(例えば、約15mg、約30mg、約50mg、約75mg、約100mg、約150mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約15~100mg、約30~100mg、約30~75mg、もしくは約150~500mgなど)のデキストロメトルファンを含み、貼付することにより、定常状態で対象に治療的に有効な血漿中デキストロメトルファン濃度がもたらされる、方法。
[44]経皮パッチが、約30mg~約100mgのデキストロメトルファンを含む、[43]に記載の方法。
[45]投薬頻度が、1日に1回である、[43]または[44]に記載の方法。
[46]貼付することにより、約180h*ng/mL~約2000h*ng/mL、例えば、約200h*ng/mL~約600h*ng/mLまたは約300h*ng/mL~約500h*ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのAUC0-24,DXMを特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[45]のいずれか1つに記載の方法。
[47]貼付することにより、約8ng/mL~約100ng/mL、例えば、約10ng/mL~約20ng/mL、例えば約15ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのCAvg,DXMを特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[46]のいずれか1つに記載の方法。
[48]貼付することにより、約6ng/mL~約65ng/mL、例えば、約6ng/mL~約20ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのCmin,DXMを特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[47]のいずれか1つに記載の方法。
[49]貼付することにより、7日目または定常状態の段階での約8ng/mL~約90ng/mL、例えば、約10ng/mL~約30ng/mLのCmax,DXMを特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[48]のいずれか1つに記載の方法。
[50]貼付することにより、約0.18~約0.8、例えば、約0.18~約0.8、例えば約0.3~約0.5の、7日目または定常状態の段階でのデキストロメトルファンの変動度[(Cmax-Cmin)/Cavg]を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[49]のいずれか1つに記載の方法。
[51]貼付することにより、約0.2~約1.35、例えば、約0.3~約1、例えば約0.4~0.7の、7日目または定常状態の段階でのデキストロメトルファンの振幅率[(Cmax-Cmin)/Cmin]を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[50]のいずれか1つに記載の方法。
[52]貼付することにより、約1.5~約5、例えば、約1.5~約3、例えば約1.5~2.5の、AUC0-24,DXM,D1に対する定常状態の段階でのAUC0-24,DXMの比率を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[51]のいずれか1つに記載の方法。
[53]貼付することにより、約12~約35の、定常状態の段階でのAUC0-24,DORに対するAUC0-24,DXMの比率を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[52]のいずれか1つに記載の方法。
[54]貼付することにより、約12~約35の、定常状態の段階でのCmax,DORに対するCmax,DXMの比率を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[53]のいずれか1つに記載の方法。
[55]貼付することにより、約12~約35の、定常状態の段階でのCAvg,DORに対するCAvg,DXMの比率を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[54]のいずれか1つに記載の方法。
[56]貼付することにより、a)約200h*ng/mL~約600h*ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのAUC0-24,DXM、b)約10ng/mL~約20ng/mL、例えば約15ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのCAvg,DXM、c)約6ng/mL~約20ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのCmin,DXM、及び/またはd)約10ng/mL~約30ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのCmax,DXMを特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[55]のいずれか1つに記載の方法。
[57]貼付することにより、e)約0.18~約1の、7日目もしくは定常状態の段階でのデキストロメトルファンの変動度[(Cmax-Cmin)/Cavg]、及び/またはf)約0.3~約1の、7日目もしくは定常状態の段階でのデキストロメトルファンの振幅率[(Cmax-Cmin)/Cmin]を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[56]のいずれか1つに記載の方法。
[58]貼付することにより、g)約1.5~約3の、AUC0-24,DXM,D1に対する定常状態の段階でのAUC0-24,DXMの比率を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[57]のいずれか1つに記載の方法。
[59]貼付することにより、h)約12~約35の、定常状態の段階でのAUC0-24,DORに対するAUC0-24,DXMの比率、i)約12~約35の、定常状態の段階でのCmax,DORに対するCmax,DXMの比率、及び/またはj)約12~約35の、定常状態の段階でのCAvg,DORに対するCAvg,DXMの比率を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[58]のいずれか1つに記載の方法。
[60]貼付することにより、初回投与以外の経皮パッチの各貼付では、投与前の血漿中デキストロメトルファン濃度が、直前の投与から観測される平均濃度(CAvg,DXM)の約20%未満にならないことを特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[59]のいずれか1つに記載の方法。
[61]貼付することにより、デキストロメトルファンの蓄積率が、約1~約5、例えば約1.2~約3の範囲であり、対象が、高代謝群または超高代謝群であることを特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[60]のいずれか1つに記載の方法。
[62]貼付することにより、k)高代謝群または超高代謝群における約11~約29時間、例えば、約11~約24時間、例えば約17時間の、定常状態の段階でのデキストロメトルファンの半減期、及び/またはl)高代謝群または超高代謝群における約0.018h-1~約0.065h-1、例えば、約0.020h-1~約0.06h-1の、定常状態の段階を達成した後の最終投与後の見かけの一次終末相消失速度定数(λz)を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる、[43]~[61]のいずれか1つに記載の方法。
[63]貼付することにより、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)の1日用量のデキストロメトルファンが対象に経皮送達される、[43]~[62]のいずれか1つに記載の方法。
[64]貼付することにより、約35mgの1日用量のデキストロメトルファンが対象に経皮送達される、[43]~[62]のいずれか1つに記載の方法。
[65]神経疾患または神経障害が、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせである、[43]~[64]のいずれか1つに記載の方法。
[66]神経疾患または神経障害が、情動調節障害である、[43]~[65]のいずれか1つに記載の方法。
[67]経皮パッチが、[18]~[35]のいずれか1つに記載の経皮パッチなど、本明細書に記載されているもののいずれか1つである、[43]~[66]のいずれか1つに記載の方法。
[68]経皮パッチが、バッキング層と薬物含有接着剤層とを含み、薬物含有接着剤層が、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含み、薬物含有接着剤層が、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量のデキストロメトルファンと、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量のミリスチン酸イソプロピルと、約65重量%~約85重量%(例えば、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%,または記載値間の任意の範囲、例えば約65~85重量%、約70~85重量%、約75~85重量%など)の量の感圧接着剤と、任意選択で約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量の結晶化抑制剤とを含む、[43]~[67]のいずれか1つに記載の方法。
[69]感圧接着剤が、アクリレート系感圧接着剤、例えばアクリレートコポリマー接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物であり、薬物含有接着剤層が、好ましくはビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物である結晶化抑制剤を含む、[68]に記載の方法。
[70]経皮パッチが、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm2/日、例えば約200ug/cm2/日、約300ug/cm2/日、約400ug/cm2/日、約500ug/cm2/日、約600ug/cm2/日、約700ug/cm2/日、約800ug/cm2/日、約1000ug/cm2/日、または記載値間の任意の範囲、例えば約200~800ug/cm2/日、約300~800ug/cm2/日、約400~800ug/cm2/日、約500~800ug/cm2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する、[68]または[69]に記載の方法。
[71]経皮パッチが、約56mgのデキストロメトルファンを含み、約70cm2の有効表面積を有する、[68]~[70]のいずれか1つに記載の方法。
[72]対象が、咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としない、[1]~[17]及び[36]~[71]のいずれか1つに記載の方法。
[73]対象が、デキストロメトルファンの高代謝群と特徴付けられる、[1]~[17]及び[36]~[72]のいずれか1つに記載の方法。
[74]対象が、デキストロメトルファンの低代謝群と特徴付けられる、[1]~[17]及び[36]~[72]のいずれか1つに記載の方法。
[75]対象が、CYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容である、[1]~[17]及び[36]~[74]のいずれか1つに記載の方法。
[76]対象が、キニジンに伴う1つ以上の副作用を有する、[1]~[17]及び[36]~[75]のいずれか1つに記載の方法。
[77]対象が、その代謝がCYP2D6阻害剤によって影響を受ける薬物を同時投与される、[1]~[17]及び[36]~[76]のいずれか1つに記載の方法。
[78]対象に抗うつ剤を投与することをさらに含む、[1]~[17]及び[36]~[77]のいずれか1つに記載の方法。
[79]抗うつ剤が、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、エリスロヒドロキシブプロピオン、スレオヒドロキシブプロピオン、これらの化合物のいずれかの代謝物またはプロドラッグ、及びそれらの組み合わせから選択される、[1]~[17]及び[36]~[78]のいずれか1つに記載の方法。
[80]対象が、キニジンを投与されない、[1]~[17]及び[36]~[79]のいずれか1つに記載の方法。
[81]対象が、ヒト対象である、[1]~[17]及び[36]~[80]のいずれか1つに記載の方法。
[82]経皮送達デバイスまたは経皮パッチが、1日に1回貼付され、経皮送達デバイスまたは経皮パッチ中のデキストロメトルファンの残留量が、経皮送達デバイスまたは経皮パッチ中の初期デキストロメトルファン量の50%未満(例えば、40%未満)である、[1]~[17]及び[36]~[81]のいずれか1つに記載の方法。
[83]経皮送達デバイスまたは経皮パッチが、1日に1回貼付され、対象に送達されるデキストロメトルファンの割合が、経皮送達デバイスまたは経皮パッチ中の初期デキストロメトルファン量の約50%~約80%である、[1]~[17]及び[36]~[82]のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】接着剤の異なる製剤A及び製剤Bを備える経皮送達デバイスのインビトロフラックス試験結果を示すグラフを提示しており、製剤A(アクリレート接着剤)を備えるパッチからのデキストロメトルファン(DXM)のフラックスが、製剤B(シリコーン接着剤)を備えるパッチよりも速いフラックスを有し、上部に示されている。
【
図2】製剤C1~C3を備えるパッチのインビトロフラックス試験結果を示すグラフを提示しており、シリコーン接着剤とアクリル接着剤との異なる比率、54:46(中央)、18:82(下)、及び9:91(上)を含む。
【
図3A】皮膚透過促進剤(ミリスチン酸イソプロピル、IPM)のインビトロフラックス(10%IPM(上)、7.7%IPM(中央)、及び0%IPM(下))に対する影響を示すグラフを提示する。
【
図3B】製剤E1を備えるパッチの平均透過デキストロメトルファン対時間プロファイルを示すグラフを提示する。
【
図4】Aは、DXM経皮パッチ(試験A)の24時間投与の効果とNUEDEXTA(DXM20mg/キニジン10mg)(参照B)の1日2回経口投与の効果とを比較したヒト臨床試験の96時間にわたるデキストロメトルファン血漿中濃度を示す。Bは、同試験での96時間にわたる代謝物であるデキストロルファン(DOR)の血漿中濃度を示す。A及びBでは、試験及び参照の両投与ともが対象に絶食条件下で実施された。血漿中濃度は平均血漿中濃度を意味し、N=16である。
【
図5】多層パッチ設計を示す。上層は皮膚接触接着剤層であり、中間層はリザーバ層であり、下層はバッキング層または接着剤層であり、下層は上層と同じであっても異なっていてもよい。
【
図6A】DXM経皮パッチ(治療A)を24時間おきに7日間投与した場合の効果と、NUEDEXTA(登録商標)(DXM20mg/キニジン10mg)(治療B)を1日2回7日間経口投与した場合の効果とを比較したヒト臨床試験の11日間にわたる平均デキストロメトルファン血漿中濃度を示し、本試験ではNは20である。
【
図6B】同試験の治療Aまたは治療Bの後の1日目の平均デキストロメトルファン血漿中濃度対時間プロファイルを示す。
【
図6C】同試験の治療Aまたは治療Bの後の7日目の平均デキストロメトルファン血漿中濃度対時間プロファイルを示す。
【
図6D】同試験の治療Aまたは治療Bの後のヒト臨床試験の11日間にわたる平均デキストロルファン血漿中濃度を示す。
【
図6E】同試験の治療Aまたは治療Bの後の1日目の平均デキストロルファン血漿中濃度対時間プロファイルを示す。
【
図6F】同試験の治療Aまたは治療Bの後の7日目の平均デキストロルファン血漿中濃度対時間プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
デキストロメトルファン(DXM)は、情動調節障害(PBA)、情緒不安定、アルツハイマー病における激越、大うつ病性障害、治療抵抗性障害、疼痛管理、その他のCNS障害、及びこれらに類するものなどの神経障害を治療するために経口で使用されている。しかし、効果を発揮するには、DXMは、肝酵素であるチトクロームP450 2D6(CYP2D6)を競合的に阻害する物質とともに、送達されなければならない。具体的に、このことは、DXMがキニジンと同時投与されることを意味している。さもなければ、少量のDXMが、消化食物に対する肝臓の作用を受けることになる。
【0017】
本開示は、一般に、本明細書の経皮送達デバイス、製剤(例えば、接着剤組成物)、及び方法を用いたデキストロメトルファンの経皮送達に関し、それによって現在利用可能な経口製剤(例えば、NUEDEXTA(登録商標))に勝る多くの利点を提供し、そのような経口製剤の多くの満たされていない医療ニーズを解決するものである。例えば、本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤は、キニジンなどのCYP2D6阻害剤が同時投与されるかどうかに関係なく、治療的に有効な血漿中濃度を達成するように投与することができる。したがって、本明細書の経皮投与デバイスまたは経皮製剤を投与して、例えば、キニジンなどのCYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容である対象(例えば、キニジンに伴う1つ以上の副作用を有する対象、または代謝がキニジンなどのCYP2D6阻害剤の影響を受ける薬物を同時投与されている対象)にデキストロメトルファンを経皮送達することが可能である。さらに、本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤は、対象がデキストロメトルファンの低代謝群、中間代謝群、または高代謝群であるかどうかを最初に決定するかしないかにかかわらず、対象にデキストロメトルファンを経皮送達するために便利に投与することが可能である。簡略して表現するために、本明細書で使用するとき、特に文脈から明らかでない限り、低代謝群(PM)、中間代謝群(IM)、または高代謝群(EM)は、デキストロメトルファンを代謝する対象の能力を意味する。対象をPM、IM、またはEM(あるいは超代謝群または超迅速代謝群またはUMと称される)と分類することは、当技術分野で公知である。例えば、遺伝子型に基づいて、「正常機能遺伝子コピー3個以上」を含む場合に対象をUMとして割り当てた、Treducu A.L.D. et al. Frontiers in Pharmacology, vol. 9, Article 305 (April 2018)を参照されたい。
【0018】
本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤を用いたデキストロメトルファンの投与はまた、NUEDEXTA(登録商標)と比較して、例えば、より正確な投薬、より低頻度の投薬、キニジンに伴う副作用及び/またはデキストロメトルファン曝露増加(例えば、Cmax)に伴う副作用の可能性の低減、錠剤数の負担の軽減、及び患者コンプライアンスの改善、に伴って優れた臨床経験を提供し得る。この開示を考慮して、当業者は、治療的に有効な量のデキストロメトルファンを治療対象により正確に送達するために適切なパッチを選択することができる。さらに、本明細書に記載された定常状態のPKプロファイルは、デキストロメトルファンの経皮送達が、NUEDEXTA(登録商標)錠剤の1日2回の経口投薬に比べて、はるかに少ないが有効なデキストロメトルファン血漿中曝露量を達成できることを示す。したがって、本明細書の方法は、少なくとも高デキストロメトルファン曝露(例えば、Cmax、AUCなど)に伴う副作用の発生率の減少をもたらすことになると予想される。本明細書の経皮送達デバイスは、1日パッチ、2日パッチ、3日パッチ、4日パッチ、5日パッチ、6日パッチ、または7日パッチとして構成することができ、1日に1回から1週間に1回までの投薬頻度、例えば、24時間以上に1回、36時間以上に1回、48時間以上に1回など、または週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、もしくは週6回の投与頻度に適している。本明細書の経皮送達デバイスを使用することで、少なくともNUEDEXTA(登録商標)の1日2回の投薬レジメンを回避することにより、患者コンプライアンスを改善することができる。
【0019】
出願人の研究以前は、デキストロメトルファンを経皮的に送達して、PBAなどの神経疾患または神経障害を治療するための治療的に有効な血漿中濃度を達成できるかどうかは周知ではなかった。経皮投与の予測不能性は広く知られている。例えば、テストステロンは、促進剤なしで、ベータエストラジオールに比べて3桁も高い速度で経皮的に送達することができる。構造的にもLogPの計算からも、これらの化合物はよく似ているので、この差を予想できなかった。2017年10月4日に出願された米国仮出願第62/568,028号(この内容は参照によりその全体が援用される)を参照されたい。U.S.6,335,030B1には、鎮咳効果を達成することを目的とするデキストロメトルファンパッチのいくつかの例が記載されている。しかしながら、米国仮出願第62/680,182号及び国際出願第PCT/US2018/054178号(WO2019/070864として公開されている)(これらのそれぞれの内容は参照によりその全体が援用される)に記載された出願人の研究以前に、デキストロメトルファンの経皮投与に関する薬物動態データは周知ではなかった。
【0020】
PCT/US2018/054178では、キニジンを用いずにデキストロメトルファンを経皮送達することで、ヒトにおいて有意なデキストロメトルファン血中濃度をもたらし得ることが示された。PCT/US2018/054178には、健康なヒトに、約35mgのデキストロメトルファンを含む45cm2の大きさの例示的なパッチ(このパッチは、1日あたり15mgを経皮送達するように設計されており、接着剤層(薬物含有接着剤層)中に、約80重量%の接着剤(Duro-Tak 87-2287)、約10重量%のデキストロメトルファン塩基、及び約10重量%の透過促進剤ミリスチン酸イソプロピルを含有する)を約24時間貼付することで、とりわけ、NUEDEXTA(登録商標)錠剤(20mgデキストロメトルファン及び10mgキニジンの配合)を1日2回ヒト対象に経口投与して観測されるものに迫る、約6ng/mLの平均Cmax及び約92h・ng/mLの平均AUC0-24hを達成した、というヒト薬物動態試験が記載されている。
【0021】
さらなる発展では、本明細書で詳述するように、結晶化抑制剤であるビニルピロリドンポリマー(プラスドンK29/32)をデキストロメトルファン経皮パッチに含有させることにより、インビトロ及びインビボで、パッチからのデキストロメトルファンの透過性を著しく向上させることが示される。本実施例の節では、70cm2のパッチを24時間貼付することで、約32.4mg~約41.1mgのデキストロメトルファンの1日用量をヒト対象に送達することができ、その結果、デキストロメトルファンのフラックスが約0.46mg/cm2/日~約0.59mg/cm2/日であることを示した。これは、ビニルピロリドンポリマーを含まない(接着剤マトリックスDuro-Tak 87-2287に置き換えられた)同様のパッチと比較して著しく大きいフラックスであり、推定フラックスは約0.33mg/cm2/日であった。追加のインビボデータはまた、ビニルピロリドンポリマーを有するパッチにより、単位パッチ面積(cm2)あたりのデキストロメトルファンの送達が向上することを示すものである。例えば、実施例4に示すように、パッチがビニルピロリドンポリマーを有する場合、パッチ面積で規格化された1日目のCmaxまたはAUC0-24は、ビニルピロリドンポリマーを有しないパッチを用いて観測されたものよりも約20%高い。このフラックスの向上には、1cm2あたりのデキストロメトルファン担持量を多くすることは必要とされない。実際に、パッチのデキストロメトルファン担持量は、どちらも約0.8mg/cm2であり、違いはない。
【0022】
また、本明細書の経皮パッチが、所望の1日用量を達成するために必要なデキストロメトルファンの量は、所望の1日用量の2倍の量を超えないことが判明した。例えば、本実施例では、70mg未満のデキストロメトルファン(約56mgのデキストロメトルファン)を有する経皮パッチで、約35mgの所望の1日用量を送達することが可能であったことが示される。したがって、経皮バイオアベイラビリティ(すなわち、送達されたデキストロメトルファンをパッチ内の初期デキストロメトルファンで割ったもの)は、一般に50%よりも高く、最大で80%以上となる。この高バイオアベイラビリティは、一つには、本明細書の経皮パッチのデキストロメトルファンのフラックスを継続的に高くすることが可能であるという予期せぬ発見によって可能になるものである。これらの結果を踏まえると、本明細書のパッチの使用は、例えば、より小さなサイズのパッチで同程度の量のデキストロメトルファンを送達すること、貼付されたパッチにおける残留デキストロメトルファンの量がより少ないことなどを含み、さらに有利である可能性がある。
【0023】
様々な実施形態において、本開示は、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイス及び経皮製剤、それを調製する方法、本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤を用いてデキストロメトルファンを経皮送達する方法、ならびに本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤を用いて疾患または障害を治療する方法を提供する。
【0024】
デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイス
本開示の特定の実施形態は、デキストロメトルファンを含む新規な経皮送達デバイスを対象とする。
【0025】
本明細書の経皮送達デバイスには、様々なパッチ設計を用いることができる。本明細書の経皮送達デバイスは、典型的には、バッキング層、使用時に皮膚接触層となる接着剤層(例えば、薬物含有接着剤層)、及び任意選択でリザーバ層を含む。接着剤層は、典型的には、接着剤、好ましくは感圧接着剤中に分散(例えば、溶解も含む均一分散)したデキストロメトルファンを含む。本明細書の経皮送達デバイスには、複数の接着剤層を使用することができる。接着剤層は、一般に、経皮送達デバイスを所望の期間、使用者の皮膚に付着できるように配合される。例えば、いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約8時間、約12時間、約18時間、約24時間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、または約7日間もしくはそれ以上の間、使用者の皮膚に継続して付着させることが可能である。
【0026】
いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、薬物含有接着剤(DIA)パッチであり得る。いくつかの実施形態では、DIAパッチは単層パッチであり、例えば、この単層は、接着剤中に均一に分散したデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、DIAパッチは多層パッチである。例えば、2つの薬物含有接着剤層がパッチに含まれ得、このパッチは任意選択で膜、例えば速度制御膜、またはリザーバ層によって分離される。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層の一方は、例えば、他の層よりもデキストロメトルファン濃度が高いリザーバ層であり得る。いくつかの実施形態では、2つの薬物含有接着剤層は、リザーバ層を挟むことができる。
【0027】
本明細書の経皮送達デバイスには、薬物含有リザーバ(DIR)設計を使用することもできる。いくつかの実施形態では、リザーバ層と接着剤層とは、互いに積層させてもよく、または例えば速度制御膜によって分離してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、薬物マトリックスなどのリザーバ層を接着剤層と積層させることができる。当業者であれば、そのような接着剤層は、例えば平衡を通じて、一定量の薬物を含むこともできることを理解するはずである。
【0028】
本明細書の経皮送達デバイスには、他のパッチ設計を使用することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、イオントフォレシスパッチなどの活性パッチであり得る。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、マイクロニードルを使用しているパッチなどの侵襲の少ないパッチであり得る。
【0029】
経皮送達デバイスは、デキストロメトルファンを唯一の薬物として、または別の薬物と併用して、含むことができる。明らかに矛盾しない限り、本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、デキストロメトルファンを、経皮送達デバイス内の唯一の薬物とすることができる。デキストロメトルファンは、例えば、遊離塩基または薬学的に許容される塩として、様々な形態で存在することができる。本明細書で使用するとき、デキストロメトルファンに関する重量パーセント、濃度、フラックスなどは、デキストロメトルファンの測定された総量及び/または計算された総量として理解されるべきであり、その値はデキストロメトルファン塩基に対する相当値で表される。さらに、特に文脈から明らかでない限り、全ての重量パーセントは、必要に応じて、最終製剤(例えば、最終接着剤層または最終リザーバ層など)または最終経皮送達デバイスに基づく重量パーセントを指すべきである。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、デキストロメトルファンは、他の成分(複数可)との平衡を通じてプロトン化され得ることを除いて、その遊離塩基形態で存在することが可能である。例えば、本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載されている経皮送達デバイスまたは医薬組成物は、記載量のデキストロメトルファン塩基を他の成分と直接または間接的に混合することによって調製することができる。
【0030】
本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、経皮送達デバイス中のデキストロメトルファンを、重水素化デキストロメトルファン、例えば、d3アナログ(O-CD3、またはN-CD3)またはd6アナログ(N-CD3、O-CD3)と部分的または完全に置き換えることができる。例えば、その内容を参照により全体として援用するU.S.7,973,049の請求項1及び17を参照されたい。そのような実施形態では、重水素化デキストロメトルファンパッチを使用する本方法により、重水素化デキストロメトルファンが使用者に提供されることは明らかであろう。本明細書で使用するとき、重水素化デキストロメトルファンとは、デキストロメトルファンの1つ以上の水素原子を重水素で置き換えることにより、各置換位置が天然存在比を超える重水素量を有する、すなわち置換位置が重水素を富化されることから生じる化合物のことをいう。いくつかの実施形態では、重水素化デキストロメトルファンは、重水素が、少なくとも10%の重水素、少なくとも50%の重水素、少なくとも90%の重水素、少なくとも95%の重水素または少なくとも98%の重水素に富化された少なくとも1つの位置を有する。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、経皮送達デバイス中のデキストロメトルファンは、フッ素化デキストロメトルファンまたはデキストロメトルファンの皮膚透過性プロドラッグなどのデキストロメトルファンアナログと部分的または完全に置き換えることも可能である。
【0031】
接着剤層は、典型的には、感圧接着剤(PSA)を含む。感圧接着剤の有用な機能としては、適切なタック、良好な粘着力及び凝集力が挙げられる。さらに有用な属性としては、生体適合性(例えば、非刺激性、非感作性、非毒性)、製剤適合性、送達システム適合性などが挙げられる。有用な感圧接着剤としては、例えば、ポリアクリレート、ポリアクリル酸エステル、シリコーン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。
【0032】
PSAは、一般に、当技術分野で公知である。例えば、Tan et al.,Pharm Sci & Tech Today, 2:60-69 (1999)を参照されたい。非限定的である有用なPSAとしては、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、ポリイソブチレン接着剤、シリコーンポリマー接着剤、アクリレートコポリマー接着剤、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤を含む。非限定的である有用なアクリレートコポリマーとしては、例えば、ポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば、Henkel Adhesivesにより製造されているDuro-Tak 87-2287、Duro-Tak 87-4098、Duro-Tak 87-4287、またはDuro-Tak 87-2516、Duro- Tak 87-2852、またはDuro-Tak 87-2194などのアクリル感圧接着剤が挙げられる。PIBは、PSAにおいて、主基剤ポリマー及び粘着付与剤の両方として一般的に使用されるエラストマー系ポリマーである。PIBは、イソブチレンのホモポリマーであり、末端のみ不飽和の炭素-水素骨格の規則的な構造を特徴としている。非限定的である有用なPIBとしては、BASFからOppanolの商品名で販売されているものがある。シリコーンポリマーは、ポリマー鎖の末端部に残留シラノール官能性(SiOH)を含む高分子量のポリジメチルシロキサンである。医薬用途で使用するための非限定的である有用なシリコーンPSAとしては、例えば商品名BIO-PSA、例えばBIO-7-4202でDow Corning Corporationから入手可能なものが挙げられる。いくつかの実施形態では、接着剤層は、約0.1mil~約10mil、例えば、約1.5mil~約10mil(例えば、約1.5mil~約2mil)の厚さである。
【0033】
いくつかの実施形態では、好適な接着剤としては、例えば、Dow Corning製の以下のシリコーン接着剤、すなわちBIO-PSA 7-410X、BIO-PSA 7-420X、BIO-PSA 7-430X、BIO-PSA 7-440X、BIO-PSA 7-450X、BIO-PSA 7-460X、及びBIO-PSAホットメルト接着剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、好適な接着剤としては、例えば、Henkel Adhesives製の以下のポリアクリレート/ポリアクリル酸エステル接着剤、すなわちDuro-Tak 87-900A、87-9301、87-4098、87-2510、87-2287、87-2677、87-4287、87-2516、87-2074、87-235A、87-2353、87-2852、87-2051、87-2052、87-2054、87-2194、87-2196、87-6908、387-2510、387-2287、387-2516、387-2353、387-2051、387-2051及び387-2054、GELVA GMS 3083、3253、788及び9073が挙げられる。これらは、例えば、ヒドロキシ官能基、カルボキシル基、ヒドロキシ基及びカルボキシル基を有することがあり、または(前述と同様に活性な)官能基を有しないこともある。これらは、例えば、ビニルアセテートモノマーを含むこともあれば含まないこともある。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、DuroTak(登録商標)2287(87-2287、387-2287など)接着剤及びその類似物などの、非酸性ヒドロキシル官能基を含有するものを含む、アクリレートモノマー及びビニルアセテートから形成されるコポリマーであってもよい。DuroTak(登録商標)2287の代表的な組成は、以下のモノマー、すなわち、2-エチルヘキシルアクリレート(例えば、約68.2%)、ビニルアセテート(例えば、約26.5%)、ヒドロキシエチルアクリレート(例えば、約5.2%)、及びグリシジルメタクリレート(例えば、約0.15%)から形成されるランダムコポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、アクリレートコポリマー接着剤は、約5.2wt%の2-ヒドロキシエチルアクリレート、約20~40wt%のビニルアセテート、及び約55~75wt%の2-エチルヘキシルアクリレートを含むモノマーから形成され得る。米国公開出願第US20060257462A1号及び米国特許第5,693,335号も参照されたい。これらの各内容を参照により全体として本明細書に援用する。
【0034】
典型的には、経皮送達デバイス(例えば、DIAパッチ)は、不透過性バッキングフィルムなどのバッキング層によって支持され、接着面は、使用前に剥離ライナーによって保護されている。本明細書の経皮送達デバイスのバッキング層として、種々の材料を使用することができる。典型的には、バッキング層は不透過性である。例えば、バッキング層を、ポリエステル(PET)フィルムまたはポリエチレン(PE)フィルムなどの不透過性ポリマーフィルムで構成することができる。いくつかの実施形態では、バッキング層は、Scotchpak 9736またはScotchpak 1012などのポリエステル、Scotchpak 9701などのポリウレタンフィルム、またはCoTran 9720などのポリエチレンフィルムを含むことができる。いくつかの実施形態では、バッキングはオーバーレイの一部であり、不織布、ポリウレタンフィルム、または柔軟性及びより良好な着用を提供する他の柔軟な材料であり得る。
【0035】
剥離ライナーは、本発明の所望のサイズで製造することができる。剥離ライナーを、シリコーンまたはフルオロポリマーコーティングポリエステルフィルムで構成することができる。剥離ライナーは、保存中に経皮送達デバイスを保護し、使用前に取り外される。シリコーンコーティング剥離ライナーとしては、Mylan Corporation、Loparex Corporation、及び3M’s Drug Delivery Systemsによって製造されたものが挙げられる。フルオロポリマーコーティング剥離ライナーとしては、3M’s Drug Delivery Systems及びLoparexによって製造され供給されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、剥離ライナーは、3MのScotchPak 9744またはScotchpak 1022を含む。
【0036】
本明細書の経皮送達デバイスは、湿潤剤、可塑剤、抗酸化剤、抗刺激剤、ゲル形成剤、結晶化抑制剤、薬物放出調整剤などの他の好適な賦形剤を任意選択で含むこともできる。これらの賦形剤は、当業者の知識の範囲内であり、例えば、the Handbook of Pharmaceutical Excipients, (7th ed. 2012)中に見出すことができ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、追加の有効成分(複数可)が、本明細書の経皮送達デバイスに含まれることもある。
【0037】
本明細書の経皮送達デバイス(例えば、DIAパッチ)は、その用途に応じて異なるサイズ(パッチサイズ)を有することができる。典型的には、パッチサイズは、約5cm2~約300cm2(例えば、約5cm2、約10cm2、約20cm2、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約80cm2、約100cm2、約120cm2、約150cm2、約200cm2または指定値間の任意の範囲)、例えば、約10cm2~約100cm2であり得る。
【0038】
本明細書の経皮送達デバイス(例えば、DIAパッチ)を対象の皮膚に貼付する場合、理論的には接着面の全てが皮膚と接触するようになる可能性がある。したがって、接着面の面積は、デバイスからの有効成分が皮膚を透過することが可能な皮膚接触面積を画定し、これは本明細書では有効表面積とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、接着面は、貼付時に皮膚と接触する経皮送達デバイスの唯一の表面であり、有効表面積は接着面の面積と同じである。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスの接着面及び1つ以上の他の表面は、貼付時に皮膚と接触しており、皮膚接触面積全体が有効表面積である。典型的なDIAパッチでは、パッチサイズは、有効表面積と同じである。特に文脈から明らかでない限り、単位「/cm2」は、1平方センチメートルあたりの本明細書で定義される有効表面積として理解されるべきである。
【0039】
有効表面積により、送達すべき薬物の用量が決定され得る。典型的には、有効表面積は、約5cm2~約300cm2(例えば、約5cm2、約10cm2、約20cm2、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約80cm2、約100cm2、約120cm2、約150cm2、約200cm2または指定値間の任意の範囲)、例えば、約10cm2~約100cm2であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書の経皮送達デバイスは、デキストロメトルファンを少なくとも約2mg/日(例えば、約2mg/日~約50mg/日)で1日以上、例えば、2日、3日、4日、5日、6日、または7日の期間にわたって使用者(例えば、ヒト対象)に提供するように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、デキストロメトルファンを約5mg/日~約50mg/日(例えば、約5mg/日、約10mg/日、約20mg/日、約30mg/日、約40mg/日、約50mg/日、または記載値間の任意の範囲)で1日以上(例えば、1.5日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、または記載値間の任意の範囲)の間、使用者に経皮送達するように構成され得る。
【0041】
経皮送達デバイスの総デキストロメトルファン担持量は、所望の総用量に基づいて調整することができる。典型的には、総デキストロメトルファン担持量は(例えば、少なくとも2mg/cm2、少なくとも3mg/cm2、少なくとも4mg/cm2、少なくとも5mg/cm2、少なくとも6mg/cm2など)0.2mg/cm2を超える。例えば、いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約0.2mg/cm2~約8mg/cm2、例えば、約0.2mg/cm2~約2mg/cm2(例えば、約0.2mg/cm2、約0.3mg/cm2、約0.4mg/cm2、約0.5mg/cm2、約0.6mg/cm2、約0.7mg/cm2、約0.8mg/cm2、約0.9mg/cm2、約1mg/cm2、約1.2mg/cm2、約1.5mg/cm2、約1.8mg/cm2、約2mg/cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約0.2~1mg/cm2、約0.5~1mg/cm2、約0.5~1.5mg/cm2など)、約0.5mg/cm2~約8mg/cm2または約2mg/cm2~約6mg/cm2(例えば、約2mg/cm2、約3mg/cm2、約4mg/cm2、約5mg/cm2、約6mg/cm2、または記載値間の任意の範囲)の総デキストロメトルファン担持量を有することができる。本明細書で使用するとき、パッチの総デキストロメトルファン担持量は、パッチ中のデキストロメトルファンの総量をパッチの有効表面積で割ることによって算出することができる。
【0042】
例示定な経皮送達デバイス及び経皮製剤
いくつかの実施形態において、本開示はまた、以下の非限定的な例示的経皮送達デバイス、または本明細書で代替的に経皮パッチもしくは単にパッチと呼ばれるもの、及び接着剤組成物などの経皮製剤を提供し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、本開示は、(1)デキストロメトルファン、(2)感圧接着剤、(3)皮膚透過促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)、及び任意選択で(4)結晶化抑制剤(例えば、ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物)を含む接着剤組成物を提供する。いくつかの実施形態では、デキストロメトルファンの量は、接着剤組成物の約2重量%~約12重量%、好ましくは、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)であり、皮膚透過促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)の量は、接着剤組成物の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)であり、感圧接着剤の量は、接着剤組成物の約65重量%~約85重量%(例えば、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約65~85重量%、約70~85重量%、約75~85重量%など)である。デキストロメトルファン及び皮膚透過促進剤は、典型的には、感圧接着剤中に分散されている(例えば、均一に分散または溶解されている)。いくつかの実施形態では、デキストロメトルファン及び皮膚透過促進剤は、感圧接着剤と均一に混合されている。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、均一混合物である。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%,または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量の結晶化抑制剤を含む。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、皮膚透過促進剤は、ミリスチン酸イソプロピルである。感圧接着剤は、本明細書に記載されているもののいずれであってもよい。典型的には、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えば、Henkel Adhesives製のDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物である。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤と追加の接着剤とを含む。例えば、いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤(例えば、Durotak 87-2287)とシリコーン接着剤(例えば、BIO-7-4202)との様々な比率(例えば、約1:20~約20:1、例えば、約10:1~約1:10、例えば約10:1、約4:1、約1:1、約1:4などの範囲、または記載値間の任意の範囲である、アクリレート接着剤対シリコーン接着剤の重量比)の混合物であり得る。結晶化抑制剤は、存在する場合、ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物であり得る。いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤は、約25~35、例えば約29~32などの公称K値を有するビニルピロリドンポリマーである。様々なグレードのPVPポリマーに割り当てられたK値は、平均分子量、重合度、及び固有粘度の関数である。K値は、粘度測定値から導き出され、フィケンチャ-の式に従って算出される。当業者であれば、任意の公称K値が、公称値からの一定の変動、典型的には90~108%を許容することを理解するであろう。例えば、ポビドンK30、すなわち公称K値が30の場合、米国薬局方及び欧州薬局方では、通常、規定値の90%~108%の変動を許容する。したがって、27.0~32.4の範囲のK値を有するポビドンは、ポビドンK30ポリマーの規格範囲内である。特に文脈から明らかでない限り、本明細書中で言及されるK値は公称K値として理解されるべきである。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、特に指定されない限り、または文脈から矛盾しない限り、ビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)などのビニルピロリドンポリマーは、約25~35、例えば約29~32などの公称K値を有することが可能である。本明細書において使用されるビニルピロリドンポリマーは、ホモポリマー及びコポリマーの両方を包含するものとして一般に理解されるべきである。接着剤組成物は、典型的には、本明細書に記載の経皮送達デバイスにおける接着剤層(例えば、薬物含有接着剤層)として使用される。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示は、a)(例えば、本明細書に記載の)バッキング層と、b)本明細書に開示される接着剤組成物または接着剤層とを含む経皮パッチを提供する。接着面は、通常、使用前に剥離ライナーで保護されている。好適な剥離ライナーが本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、a)バッキング層と、b)本明細書に開示される接着剤組成物または接着剤層と、c)任意選択で剥離ライナーとを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる。
【0045】
本明細書における経皮パッチは、典型的には薬物含有接着剤層を含み、この層は、(1)デキストロメトルファンと、(2)感圧接着剤と、(3)皮膚透過促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)と、任意選択で(4)結晶化抑制剤(例えば、ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えばポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物)とを含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなり、デキストロメトルファンの量は、約2重量%~約12重量%、好ましくは、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)であり、皮膚透過促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)の量は、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)であり、感圧接着剤の量は、約65重量%~約85重量%(例えば、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約65~85重量%、約70~85重量%、約75~85重量%など)である。デキストロメトルファン及び皮膚透過促進剤は、典型的には、感圧接着剤中に分散されている(例えば、均一に分散または溶解されている)。いくつかの実施形態では、デキストロメトルファン及び皮膚透過促進剤は、感圧接着剤と均一に混合されている。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、均一混合物である。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%,または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量の結晶化抑制剤を含む。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、皮膚透過促進剤は、ミリスチン酸イソプロピルである。感圧接着剤は、本明細書に記載されているもののいずれであってもよい。典型的には、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えば、Henkel Adhesives製のDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物である。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤と追加の接着剤とを含む。例えば、いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤(例えば、Durotak 87-2287)とシリコーン接着剤(例えば、BIO-7-4202)との様々な比率(例えば、約1:20~約20:1、例えば、約10:1~約1:10、例えば約10:1、約4:1、約1:1、約1:4などの範囲、または記載値間の任意の範囲である、アクリレート接着剤対シリコーン接着剤の重量比)の混合物であり得る。結晶化抑制剤は、存在する場合、ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物であり得る。いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤は、約25~35、例えば約29~32などの公称K値を有するビニルピロリドンホモポリマーポリマーである。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、(1)デキストロメトルファンと、(2)ポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物と、(3)ミリスチン酸イソプロピルと、(4)ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物とを含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなり、各成分の範囲/量は、任意の組み合わせで適切であると本明細書に記載されているもののいずれかにすることができる。経皮パッチは、典型的には、約30cm2~約100cm2、例えば、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60cm2、約60~80cm2などの有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、約70cm2の有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、約100cm2よりも大きい、例えば、最大で300cm2までの有効表面積を有することもできる。
【0046】
本明細書の経皮パッチはまた、所望の量のデキストロメトルファンを含有するように構成することができる。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、(1)約20mg~約100mgのデキストロメトルファン、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのデキストロメトルファンと、(2)約30mg~約100mgのミリスチン酸イソプロピル、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのミリスチン酸イソプロピルと、(3)約150mg~約900mgの感圧接着剤、例えば、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約300~500mg、350~450mg、または約300~550mgなどの感圧接着剤と、任意選択で(4)約30mg~約100mgの量、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどの量の結晶化抑制剤とを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる、薬物含有接着剤層を含む。デキストロメトルファン及びミリスチン酸イソプロピルは、典型的には、感圧接着剤中に分散されている(例えば、均一に分散または溶解されている)。いくつかの実施形態では、デキストロメトルファン及びミリスチン酸イソプロピルは、感圧接着剤と均一に混合されている。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、均一混合物である。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、アクリレート系接着剤、例えば、アクリレートコポリマーである。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、ポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物である。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤と追加の接着剤とを含む。例えば、いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤(例えば、Durotak 87-2287)とシリコーン接着剤(例えば、BIO-7-4202)との様々な比率(例えば、約1:20~約20:1、例えば、約10:1~約1:10、例えば約10:1、約4:1、約1:1、約1:4などの範囲、または記載値間の任意の範囲である、アクリレート接着剤対シリコーン接着剤の重量比)の混合物であり得る。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、結晶化抑制剤を含む。いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤は、ビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物である。いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤は、約25~35、例えば約29~32などの公称K値を有するビニルピロリドンホモポリマーポリマーである。典型的には、薬物含有接着剤層は、約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されている、約10重量%など)の量のデキストロメトルファンと、約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されている、約10重量%など)の量のミリスチン酸イソプロピルと、約65重量%~約85重量%(例えば、本明細書に記載されている、約70重量%または約80重量%など)の量の感圧接着剤と、存在する場合、約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されている、約10重量%など)の量の結晶化抑制剤とを含む。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、唯一の有効成分としてデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、約56mgのデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、約56mgのデキストロメトルファンを含む。経皮パッチは、典型的には、約30cm2~約100cm2、例えば、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60cm2、約60~80cm2などの有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、約70cm2の有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、約100cm2よりも大きい、例えば、最大で300cm2までの有効表面積を有することもできる。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、経皮パッチは、一体型パッチの形態であり得る。
【0047】
本明細書の経皮パッチは、典型的には、約0.2mg/cm2~約5mg/cm2、例えば約0.2mg/cm2、約0.3mg/cm2、約0.4mg/cm2、約0.5mg/cm2、約0.6mg/cm2、約0.7mg/cm2、約0.8mg/cm2、約0.9mg/cm2、約1mg/cm2、約2mg/cm2、約5mg/cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約0.2~1mg/cm2、0.2~2mg/cm2、約0.5~1mg/cm2などの総デキストロメトルファン担持量を有する。典型的には、1日1回の投薬レジメンで用いるために、本明細書の経皮パッチは、例えば、約0.2mg~約1mg/cm2の範囲のより少ない総デキストロメトルファン担持量を有し得る。他方では、週1回の投薬レジメン、または1日1回~週1回の投薬レジメンなど、投薬間隔がより長い場合、本明細書の経皮パッチは、例えば、約1mg~約5mg/cm2の範囲の比較的多い総デキストロメトルファン担持量を有することが可能である。
【0048】
典型的には、本明細書の経皮パッチに含まれるデキストロメトルファンの量は、治療的に有効な量のデキストロメトルファンを、それを必要とする対象に送達するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、本明細書の経皮パッチに含まれるデキストロメトルファンの量は、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)のデキストロメトルファンの1日用量を、それを必要とする対象に経皮送達するのに十分な量である。好ましくは、本明細書では、1日用量を送達するために、1つの単一パッチが使用される。例えば、1日1回の投薬レジメンの場合、好ましくは、1つの単一パッチを1日1回貼付して1日用量を送達する。しかしながら、場合によっては、2つ以上のパッチを、1日1回、実質的に同時に貼付して、所望の1日用量を満たすことができる。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、1日パッチ、2日パッチ、3日パッチ、4日パッチ、5日パッチ、6日パッチ、または7日パッチとしての使用に適し得、パッチは、パッチが、意図された期間(例えば、1日パッチでは1日、2日パッチでは2日など)対象に貼付されたときに、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)のデキストロメトルファンの1日用量を、それを必要とする対象に送達するように、十分な量のデキストロメトルファンを含む。
【0049】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書の経皮パッチ(例えば、1日パッチ)は、パッチが対象に24時間貼付される場合に、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)のデキストロメトルファンを、それを必要とする対象に送達するのに十分な量のデキストロメトルファンを含むことができる。本明細書の経皮パッチが、所望の1日用量を達成するために必要なデキストロメトルファンの量は、通常、所望の1日用量の2倍の量を超えない。例えば、いくつかの実施形態では、所望の1日用量は約35mgであり、経皮パッチは、70mg未満のデキストロメトルファン、例えば60mg未満のデキストロメトルファンなどを含むことができる。したがって、経皮バイオアベイラビリティ(すなわち、送達されたデキストロメトルファンをパッチ内の初期デキストロメトルファンで割ったもの)は、一般に50%よりも高く、最大で80%以上となる。この高バイオアベイラビリティは、一つには、本明細書の経皮パッチのデキストロメトルファンのフラックスを継続的に高くすることが可能であるという予期せぬ発見によって可能になるものである。いくつかの実施形態では、パッチは、2日及び最大で1週間までなど、より長い期間着用されるように設計されている。そして、そのような実施形態では、貼付終了時の残留デキストロメトルファンはまた、通常、所望の1日用量未満である。
【0050】
本明細書の経皮吸収パッチは、典型的には、治療的に有効な量を、それを必要とする対象に送達するのに適したデキストロメトルファンフラックスを有する。例えば、いくつかの実施形態では、経皮パッチは、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm2/日、例えば約200ug/cm2/日、約300ug/cm2/日、約400ug/cm2/日、約500ug/cm2/日、約600ug/cm2/日、約700ug/cm2/日、約800ug/cm2/日、約1000ug/cm2/日、または記載値間の任意の範囲、例えば約200~800ug/cm2/日、約300~800ug/cm2/日、約400~800ug/cm2/日、約500~800ug/cm2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する。本明細書で述べているように、結晶化抑制剤であるビニルピロリドンポリマー(プラスドンK29/32)は、インビトロ及びインビボの両方で、本明細書の経皮パッチからのデキストロメトルファンのフラックスを著しく向上させ得ることが判明した。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、文脈から直接矛盾しない限り、本明細書の経皮パッチは、本明細書に記載の結晶化抑制剤、例えばビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物を、薬物含有接着剤層に含むことが好ましい。結晶化抑制剤は、典型的には、薬物含有接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量で含まれる。いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤は、対象が24時間などの所望の期間着用するのに適した十分な粘着力を接着剤層が依然として維持できる限り、約12%よりも高い量、例えば、最大50%まで含むことも可能である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、本明細書における方法(例えば、PBAを治療する方法)のための経皮パッチを選択する方法を提供し、この方法は、例えば、ヒト死体皮膚を使用して、本明細書に開示される経皮パッチ(例えば、発明の概要欄の[18]~[35]に示すもの)からのデキストロメトルファンフラックスをインビトロで測定することと、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm2/日、例えば約200ug/cm2/日、約300ug/cm2/日、約400ug/cm2/日、約500ug/cm2/日、約600ug/cm2/日、約700ug/cm2/日、約800ug/cm2/日、約1000ug/cm2/日、または記載値間の任意の範囲、例えば約200~800ug/cm2/日、約300~800ug/cm2/日、約400~800ug/cm2/日、約500~800ug/cm2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する経皮パッチを選択することとを含む。
【0052】
いくつかの具体的な実施形態では、経皮パッチは、a)(例えば、本明細書に記載の)バッキング層と、b)薬物含有接着剤層と、c)任意選択の剥離ライナーとを含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなり、薬物含有接着剤層は、(1)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のデキストロメトルファンと、(2)約65重量%~約85重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約70重量%)の量のポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物と、(3)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のミリスチン酸イソプロピルと、(4)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物とを含む。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約400ug/cm2/日(例えば、約500ug/cm2/日~約800ug/cm2/日)のデキストロメトルファンフラックスを有する。
【0053】
いくつかの具体的な実施形態では、本開示は、一体型経皮パッチを提供し、このパッチは、a)(例えば、本明細書に記載の)バッキング層と、b)薬物含有接着剤層と、c)任意選択の剥離ライナーとを含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなり、薬物含有接着剤層は、(1)約20mg~約100mg(例えば、本明細書に記載されている量、例えば約56mg)のデキストロメトルファンと、(2)約150mg~約900mg(例えば、本明細書に記載されている量、例えば約392mg)のポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物と、(3)約30mg~約100mg(例えば、本明細書に記載されている量、例えば約56mg)のミリスチン酸イソプロピルと、(4)約30mg~約100mg(例えば、本明細書に記載されている量、例えば約56mg)のビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32及びその類似物とを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層中の成分の重量パーセントは、(1)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のデキストロメトルファン、(2)約65重量%~約85重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約70重量%)の量のポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物、(3)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のミリスチン酸イソプロピル、ならびに(4)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物、であり得る。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、約30cm2~約100cm2(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約70cm2)の有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約400ug/cm2/日(例えば、約500ug/cm2/日~約800ug/cm2/日)のデキストロメトルファンフラックスを有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、バッキング層、薬物含有接着剤層、及び任意選択で剥離ライナーを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる経皮パッチを提供し、薬物含有接着剤層は、実施例の項に示すように、製剤A、B、C1、C2、C3、D0、D1、D2、及びE1から選択される製剤を含む。いくつかの具体的な実施形態では、薬物含有接着剤層は、乾燥重量パーセントで、約10%のデキストロメトルファン塩基と、約10%のミリスチン酸イソプロピルと、約70%のポリアクリレート接着剤(DuroTak 387-2287)と、約10%の結晶化抑制剤プラスドンK-29/32とを含有する製剤E1を含む、本質的にこの製剤E1からなる、またはこの製剤E1からなる。いくつかの具体的な実施形態では、薬物含有接着剤層は、実施例1に記載のプロセスによる方法によって製造された製剤E1を含む、本質的にこの製剤E1からなる、またはこの製剤E1からなる。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、約56mgのデキストロメトルファン塩基を有し、約70cm2の大きさである。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、特に文脈から矛盾しない限り、本明細書の経皮パッチは、乾燥重量パーセントで、約10%のデキストロメトルファン塩基と、約10%のミリスチン酸イソプロピルと、約70%のポリアクリレート接着剤(DuroTak 387-2287)と、約10%の結晶化抑制剤プラスドンK-29/32とを含有する製剤E1、または実施例1に記載のプロセスによる方法によって製造された製剤E1、を含み、本質的にこの製剤E1からなり、またはこの製剤E1からなる薬物含有接着剤層を有することができる。
【0055】
本発明の経皮パッチ及び製剤は、室温(25±2℃)、相対湿度(RH)60%±5%RHで、約1か月、3か月、6か月またはそれ以上保存した場合に保存安定性があることが好ましい。保存安定性により、経皮吸収パッチまたは製剤が、初期の経皮パッチまたは製剤と同等である、すなわち、保存開始時と同等であると当業者に受け入れられるであろうことが結果としてもたらされる。保存安定性は、通常、次の1つ以上、すなわち、(1)薬物関連の不純物が実質的に同量であり、個々の不純物または総不純物のいずれについても有意な増加がないこと、(2)デキストロメトルファンの量が実質的に同じであること、(3)引き剥し粘着力、せん断保持力、タック力、剥離力などの物性が実質的に同じであること、及び(4)薬物放出速度及び/またはデキストロメトルファン透過速度が実質的に同じであること、を特徴とする。「実質的に同じ」とは、80~125%または測定許容誤差の範囲内を意味すると理解されるべきである。例えば、デキストロメトルファン56mgを含有する、有効表面積が約70cm2である、製剤E1から調製されたパッチは、室温(25±2℃)、相対湿度60%RH±5%RHで6か月以上保存した後に、保存安定性が認められた。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、経皮送達デバイスまたは接着剤組成物を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、a)デキストロメトルファン、接着剤(例えば、Duro-Tak 87-2287などの本明細書に記載の感圧接着剤)、透過促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)、及び任意選択の結晶化抑制剤(例えば本明細書に記載のもの、例えばビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物)を適切な溶媒(例えば有機溶媒、例えばエステル溶媒またはアルコール溶媒、典型的には揮発性物質、例えば、エチルアセテートもしくはイソプロパノールまたはそれらの組み合わせ)中で混合して、均一混合物を形成することと、b)均一混合物を剥離ライナー上にキャスティングすることと、c)キャスティングを乾燥させて溶媒を除去し、それによって剥離ライナー上に接着剤組成物を形成することと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、接着剤組成物をバッキング層に積層させることをさらに含む。好適な量のデキストロメトルファン及び好適な接着剤、任意選択の結晶化抑制剤、透過促進剤及びそれらのそれぞれの量は、本明細書に記載されたもののいずれかを任意の組み合わせで含むことができる。本明細書の方法によって調製された、剥離ライナーを備えた接着剤組成物または備えない接着剤組成物、及び経皮送達デバイスもまた、本開示の新規態様である。いくつかの例示的な手順は、本明細書の実施例の節に記載されている。
【0057】
任意選択のリザーバ層を備えたTDD
いくつかの実施形態では、本明細書の経皮送達デバイスにリザーバ層が任意選択で含まれ得る。例えば、高1日用量及び/または長期間(例えば、1日以上)貼付の場合、リザーバ層は、使用者にデキストロメトルファンのより持続的なフラックスを提供することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、接着剤を含む接着剤層と、任意選択で、デキストロメトルファンを含むリザーバ層とを含む。いくつかの実施形態では、接着剤層は、接着剤中に分散したデキストロメトルファンを任意選択で含む。いくつかの実施形態では、接着剤層は、リザーバ層との平衡を通じて以外には、デキストロメトルファンを含まない。いくつかの実施形態では、接着剤層は、接着剤中に分散したデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、リザーバ層は、接着剤中にデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、リザーバ層と接着剤層とは同じ層である。いくつかの実施形態では、リザーバ層は、接着剤層とバッキング層との間に挟まれている。いくつかの実施形態では、リザーバ層は、同じであっても異なっていてもよい2つの接着剤層の間に挟まれていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、2つの接着剤層は、同じ濃度の同じ成分を有することができ、いくつかの実施形態では、同じ厚さを有することもできる。しかし、いくつかの実施形態では、2つの接着剤層は、異なる成分、もしくは異なる濃度の同じ成分を有することができ、または異なる厚さなどを有することができる。例示的な構成を
図5で確認することができ、
図5では、接着剤層は上層であり、バッキング層または接着剤層は、上層と同じであっても異なっていてもよく、下層であり、リザーバ層は中間層である。
【0059】
いくつかの実施形態では、リザーバ層は、膜、例えば、微孔性膜などの速度制御膜によって接着剤層から分離されている。リザーバ層は、好ましくは接着剤を含有する。しかし、接着剤層及びバッキング層と適合する場合には、リザーバ層の他の設計も好適である。例えば、いくつかの実施形態では、リザーバ層は、デキストロメトルファンで飽和したスクリム/不織布、またはデキストロメトルファンを他の好適な担体/基材に分散させたものであり得る。
【0060】
デキストロメトルファンは、接着剤層及びリザーバ層中に、種々の濃度で含めることができる。一般的には、リザーバ層中のデキストロメトルファンの濃度は、接着剤層中のデキストロメトルファンの濃度よりも高い。例えば、いくつかの実施形態では、接着剤層は、接着剤層の約2重量%~約12重量%(例えば、約2重量%、約4重量%、約6重量%、約8重量%、約10重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲)の量のデキストロメトルファンを含むことができ、一方、リザーバ層は、リザーバ層の約20重量%以上、例えば約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、例えば約20重量%~約60重量%、約30重量%~約50重量%などの量のデキストロメトルファンを含むことができる。いくつかの実施形態では、接着剤層は、接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲)の量のデキストロメトルファンを含むことができる。いくつかの実施形態では、接着剤層は、接着剤中に飽和濃度または飽和濃度付近で、例えばアクリレート接着剤中に約10重量%で、デキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、リザーバ層は、接着剤中に飽和濃度を超えるデキストロメトルファンを含む。換言すれば、リザーバ層中においてデキストロメトルファンは過飽和状態であり、したがって固体デキストロメトルファンを含み得、これは薬物デポーとして機能し得る。
【0061】
接着剤層及びリザーバ層に好適な接着剤としては、適用できる場合、本明細書に記載されているもののいずれか、好ましくは感圧接着剤が挙げられる。接着剤層及びリザーバ層に含まれる接着剤は同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、接着剤層及びリザーバ層中に含まれる接着剤は同じであり、例えば、アクリレート系接着剤である。他の好適な接着剤としては、ポリイソブチレン接着剤、シリコーンポリマー接着剤、アクリレートコポリマー接着剤(例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、文脈から直接反しない限り、感圧接着剤は、例えば、本明細書に記載されているDuroTak(登録商標) 2287接着剤などの、非酸性ヒドロキシル官能基を含有するポリアクリレートビニルアセテートコポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、接着剤は、アクリレートコポリマー接着剤(例えば、Durotak 87-2287)とシリコーン接着剤(例えば、BIO-7-4202)との様々な比率(例えば、約1:20~約20:1の範囲のアクリレート接着剤対シリコーン接着剤の重量比)の混合物であり得る。いくつかの実施形態では、アクリレート接着剤とシリコーン接着剤との重量比は、約10:1~約1:10の範囲(例えば、約10:1、約4:1、約1:1、約1:4、または記載値間の任意の範囲)である。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、接着剤層は、少なくとも1日の間(例えば、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間)、継続して使用者の皮膚に接着するように構成することができる。
【0062】
接着剤(例えば、感圧接着剤)は、通常は(適用できる場合)接着剤層及びリザーバ層の主成分である。例えば、いくつかの実施形態では、接着剤層は、接着剤層の約50重量%~約90重量%の量の感圧接着剤を含む。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、接着剤層の約60重量%~約85重量%(例えば、約60重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、または記載値間の任意の範囲)の量で存在する。いくつかの実施形態では、リザーバ層は、リザーバ層の約20重量%~約80重量%の量で感圧接着剤を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、リザーバ層の約20重量%~約65重量%(例えば、約20重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約50重量%、約60重量%、約65重量%、または記載値間の任意の範囲)の量で存在する。
【0063】
経皮送達デバイスの好適なサイズが本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約5cm2~約200cm2の有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約10cm2~約150cm2の有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約30cm2~約100cm2(例えば、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、または記載値間の任意の範囲)の有効表面積を有する。
【0064】
接着剤層及びリザーバ層は、様々な厚さであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、接着剤層は、約0.1mil~約10milの厚さ(例えば、約0.5mil~約10mil、約1mil~10mil)である。いくつかの実施形態では、リザーバ層もまた、約0.1mil~約10milの厚さ(例えば、約0.5mil~約10mil、約1mil~10mil)であり得る。
【0065】
接着剤層及びリザーバ層に、皮膚透過促進剤を含有させることも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、接着剤層は、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸、グリセロールモノオレエート、炭素鎖長がC12~C18の他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択される皮膚透過促進剤を含む。いくつかの実施形態では、接着剤層は、ミリスチン酸イソプロピルを含む。同様に、いくつかの実施形態では、リザーバ層は、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸、グリセロールモノオレエート、炭素鎖長がC12~C18の他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択される皮膚透過促進剤を含む。いくつかの実施形態では、リザーバ層は、ミリスチン酸イソプロピルを含む。
【0066】
接着剤層及びリザーバ層には、様々な量の皮膚透過促進剤を使用することが可能である。典型的には、皮膚透過促進剤は、接着剤層またはリザーバ層の約2重量%~約15重量%の量で存在することができる。例えば、いくつかの実施形態では、皮膚透過促進剤は、接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲)の量で存在する。いくつかの実施形態では、皮膚透過促進剤は、リザーバ層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲)の量で存在する。しかし、いくつかの実施形態では、接着剤層及び/またはリザーバ層はまた、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸、グリセロールモノオレエート、炭素鎖長がC12~C18の他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択される皮膚透過促進剤を実質的に含まなくてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、接着剤層及び/またはリザーバ層は、ビニルピロリドンポリマー(例えば、ビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー)、Kollidon(例えば、Kollidon 30 LP、Kollidon 90、またはKollidon VA64)、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及びそれらの組み合わせから選択される薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、この薬剤は、接着剤層またはリザーバ層の約2重量%~約20重量%(例えば、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、または記載値間の任意の範囲)の量で存在することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、そのような薬剤は、接着剤層またはリザーバ層の凝集力を向上させることができると考えられている。さらに、そのような薬剤は、結晶化を抑制するなどの他の機能を有することができる。いくつかの実施形態では、接着剤層は、接着剤層の凝集力を向上させるのに有効な薬剤を含む。いくつかの実施形態では、リザーバ層は、リザーバ層の凝集力を向上させるのに有効な薬剤を含む。
【0068】
接着剤層及びリザーバ層の接着剤、皮膚透過促進剤、薬剤などの成分の同一性、及びそれらの量は、独立して選択され、同じであっても異なっていてもよいことに留意されたい。一般的には、量を変えることができ、一方、同一性を元のままにすることができる。いくつかの実施形態では、接着剤層は、本明細書に記載されている(例えば、発明の概要欄の[18]~[35]に示されている)薬物含有接着剤層であり得る。接着剤層及びリザーバ層の厚さもまた、同じであっても異なっていてもよい。
【0069】
実施例の項で詳述するように、接着剤成分を変えると、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイスのフラックス特性に影響を与えることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示はまた、接着剤層を含み、この接着剤層が2つ以上の接着剤を含む経皮送達デバイスを提供する。典型的には、接着剤層は、2つ以上の接着剤中に分散した(例えば、均一に分散した)デキストロメトルファンを含む。デキストロメトルファンは、典型的には接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲)の量で存在する。
【0070】
いくつかの実施形態では、接着剤層は、種々の比率(例えば、約1:20~約20:1の範囲の、アクリレート接着剤対シリコーン接着剤の重量比)で、アクリレートコポリマー接着剤(例えば、Durotak 87-2287)とシリコーン接着剤(例えばBIO-7-4202)との混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、アクリレート接着剤とシリコーン接着剤との重量比は、約10:1~約1:10の範囲(例えば、約10:1、約4:1、約1:1、約1:4、または記載値間の任意の範囲)である。いくつかの実施形態では、文脈から反していることが明らかでない限り、アクリレートコポリマー接着剤とシリコーン接着剤との混合物を、本明細書に記載の薬物含有接着剤層のいずれにも使用することが可能である。皮膚透過促進剤など、接着剤層中に任意選択で含有させることができる他の成分及び好適な量としては、本明細書に記載されているものが挙げられる。
【0071】
本明細書の経皮送達デバイスのいずれにも、2つ以上の接着剤を有する接着剤層を含める/使用することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のリザーバ層を含む経皮送達デバイスは、本明細書に記載の種々の比率で、アクリレートコポリマー接着剤(例えば、Durotak 87-2287)とシリコーン接着剤(例えば、BIO-7-4202)との混合物を含む接着剤層を有することができる。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、本明細書に記載のリザーバ層の有無にかかわらず、本明細書に記載の種々の比率で、アクリレートコポリマー接着剤(例えば、Durotak 87-2287)とシリコーン接着剤(例えば、BIO-7-4202)との混合物を含む接着剤層を備える。
【0072】
皮膚透過促進剤(経皮促進剤)は、皮膚を通るデキストロメトルファンの皮膚透過性を高めることができ、本明細書の経皮送達デバイスに任意選択で含めることができる。種々の皮膚透過促進剤を含めることができる。非限定的であり有用な皮膚透過促進剤としては、例えば、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、DMSO)、アゾン(Azone)(例えば、ラウロカプラム)、ピロリドン(例えば、2-ピロリドン、2P)、アルコール及びアルカノール(例えば、エタノールまたはデカノール)、エステル、グリコール(例えば、プロピレングリコール(PG))、界面活性剤(例えば、Tween 80)、テルペン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、Williams et al., Adv Drug Deliv Rev. 27;56(5):603-18 (2004)を参照されたい。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、スルホキシド、アルコール、アルカノール、エステル、グリコール、及び界面活性剤から選択される1つ以上の化合物を含む。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オレインアルコール、オレイン酸オレイル、オレイン酸、レブリン酸、他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノール、ならびにTween 80などの界面活性剤から選択される1つ以上の化合物を含む。いくつかの実施形態では、経皮デバイスは、DMSO、N-メチル-2-ピロリドン、アゾン、ミリスチン酸、セスキテルペン油、4-デシルオキサゾリジン-2-オン、尿素、及びこれらに類するものから選択される1つ以上の化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、皮膚透過促進剤は、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸、グリセロールモノオレエート、炭素鎖長がC12~C18の他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択される。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、特に文脈から直接反しない限り、皮膚透過促進剤は、ミリスチン酸イソプロピルであり得る。
【0073】
皮膚透過促進剤は、典型的には、接着剤層の約1重量%~約25重量%、例えば、接着剤層の約2重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、または指定値間の任意の範囲の量で含まれる。いくつかの実施形態では、経皮デバイスは、経皮促進剤を実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、経皮デバイスは、任意の潜在的なそのような促進剤の量が、経皮フラックスを約50%以上高めることが示されている最小量の約20%以下である場合、経皮促進剤を実質的に含まない。
【0074】
いくつかの実施形態では、皮膚透過促進剤及びその量は、ある一定の改善されたフラックス特性を提供するように選択される。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、接着剤中に分散したデキストロメトルファンを含む接着剤層を備えた経皮送達デバイスであって、接着剤層が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスの平均累積透過デキストロメトルファンよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または記載値間の任意の範囲)高い、貼付後24時間での平均累積透過デキストロメトルファンを提供する量で、皮膚透過促進剤を含む、経皮送達デバイスを提供する。デキストロメトルファンは、典型的には接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲)の量で存在する。感圧接着剤は、典型的には接着剤層の約60重量%~約85重量%(例えば、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約65~85重量%、約60~80重量%など)の量で存在する。「皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイス」という用語は、接着剤層中の皮膚透過促進剤の内容物が、他の全ての態様は同じである接着剤で置き換えられている、対照の経皮送達デバイスとして理解されるべきである。例えば、経皮送達デバイスが、80重量%アクリレート接着剤中に分散した10重量%の皮膚透過促進剤及び10重量%デキストロメトルファンを含む接着剤層を含み、他の点では同等なデバイスが、90重量%の同じアクリレート接着剤中に分散した10重量%デキストロメトルファンを含む個別の接着剤層を含むことになり、2つのデバイスの他の全ての態様は同じである。
【0075】
皮膚透過促進剤とその量を調整して、貼付後の異なる時点でのフラックス増大を実現することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、透過促進剤は、以下のうちの1つ以上を提供する量である。すなわち、1)皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または記載値間の任意の範囲)高い、貼付後8時間から24時間までのデキストロメトルファンの平均フラックス、2)皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約2倍(例えば、約3倍、約4倍、約5倍、約8倍、約10倍、または記載値間の任意の範囲)である、貼付後4時間から8時間までのデキストロメトルファンの平均フラックス、及び3)ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約5倍(例えば、約5倍、約8倍、約10倍、約20倍、または記載値間の任意の範囲)である、貼付後0時間から4時間までのデキストロメトルファンの平均フラックス、のうちの1つ以上を提供する量である。実施例において詳述するように、一例では、透過促進剤であるミリスチン酸イソプロピルの量を約10重量%に増加させると、貼付後4時間でも、またはそれ以前でも、フラックスの有意な増大が観測された。
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示はまた、本明細書の経皮パッチのための皮膚透過促進剤及びその量を選択する方法を提供し、本方法は、例えばヒト死体皮膚を用いて、試験皮膚透過促進剤を有する試験経皮パッチからのインビトロデキストロメトルファンフラックスを測定することと、以下のうちの1つ以上を提供する量で皮膚透過促進剤を選択することとを含む。すなわち、1)皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または記載値間の任意の範囲)高い、貼付後8時間から24時間までのデキストロメトルファンの平均フラックス、2)皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約2倍(例えば、約3倍、約4倍、約5倍、約8倍、約10倍、または記載値間の任意の範囲)である、貼付後4時間から8時間までのデキストロメトルファンの平均フラックス、及び3)ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約5倍(例えば、約5倍、約8倍、約10倍、約20倍、または記載値間の任意の範囲)である、貼付後0時間から4時間までのデキストロメトルファンの平均フラックス、のうちの1つ以上を提供する量である。
【0077】
本明細書の経皮送達デバイスのいずれにも、皮膚透過促進剤を含む接着剤層を含める/使用することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のリザーバ層を含む経皮送達デバイスは、皮膚透過促進剤を含む接着剤層を含む接着剤層を有することができる。接着剤層中に任意選択で含有させることができる他の成分及び好適な量としては、本明細書に記載されているものが挙げられる。
【0078】
いくつかの具体的な実施形態では、経皮送達デバイスは、接着剤層及びリザーバ層を含むことができ、接着剤層及びリザーバ層は、例えば、以下の表に示される成分及び量を有することができる。
【0079】
【0080】
表中の全ての量は、各層の総量を100%とした(最終製剤に基づく)各層の重量パーセントを意味する。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約60cm2以上、例えば約70cm2の有効表面積を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、デキストロメトルファンを、約15mg/日~約40mg/日で、例えば、約15mg/日、約20mg/日、約25mg/日、約30mg/日、約35mg/日、約40mg/日、または記載値間の任意の範囲で、使用者に提供するように構成される。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約50mg~約700mg(例えば、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、または記載値間の任意の範囲)のデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、リザーバ層は、同じであっても異なっていてもよい2つの接着剤層の間に挟まれていてもよい。典型的には、そのような経皮送達デバイスはまた、バッキング層及び使用前に接着面を保護する剥離ライナーを含む。典型的には、これらのパッチは、1日に1回未満、例えば1日に1回、または2日以上に1回、例えば週に1回、または週に2回、3回、4回、5回、もしくは6回、例えば週に2回などの投薬頻度で使用することができる。
【0081】
いくつかの具体的な実施形態では、経皮送達デバイスは、接着剤層を含むことができ、接着剤層は、例えば、以下の表に示される成分及び量を有することができる。
【0082】
【0083】
表中の全ての量は、総量を100%とした、最終接着剤層の重量パーセントを意味する。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約10cm2以上、例えば、約30cm2、約45cm2、約60cm2、約75cm2、約90cm2の有効表面積を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、デキストロメトルファンを、約15mg/日~約40mg/日で、例えば、約15mg/日、約20mg/日、約25mg/日、約30mg/日、約35mg/日、約40mg/日、または記載値間の任意の範囲で、使用者に提供するように構成される。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約5mg~約100mg(例えば、約15mg、約30mg、約45mg、約60mg、約90mg、または記載値間の任意の範囲)のデキストロメトルファンを含む。典型的には、そのような経皮送達デバイスはまた、バッキング層及び使用前に接着面を保護する剥離ライナーを含む。典型的には、これらのパッチは、1日に1回以上、例えば1日1回、または12時間に1回などの投薬頻度で使用することができる。
【0084】
インビトロフラックス特性
いくつかの実施形態では、本明細書の経皮送達デバイスは、例えば、ヒト死体皮膚を使用して試験した場合、ある一定のインビトロデキストロメトルファンフラックスプロファイルを提供するように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書の経皮送達デバイスのいずれかは、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、1)貼付後24時間で、少なくとも約200ug/cm2(ugはマイクログラムを指す)(例えば、約200ug/cm2~約2000ug/cm2)の平均累積透過デキストロメトルファン、及び/または2)貼付後8時間から24時間まで、少なくとも約5ug/cm2*h(例えば、約5ug/cm2*h~約20ug/cm2*h、約10ug/cm2*h~約18ug/cm2*h)のデキストロメトルファンの平均フラックス、を提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、本開示はまた、本明細書における方法(例えば、PBAを治療する方法)のための経皮パッチを選択する方法を提供し、この方法は、例えば、ヒト死体皮膚を使用して、本明細書に開示される経皮パッチ(例えば、発明の概要欄の[18]~[35]に示すもの)からのデキストロメトルファンフラックスをインビトロで測定することと、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、1)貼付後24時間で、少なくとも約200ug/cm2(ugはマイクログラムを指す)(例えば、約200ug/cm2~約2000ug/cm2)の平均累積透過デキストロメトルファン、及び/または2)貼付後8時間から24時間まで、少なくとも約5ug/cm2*h(例えば、約5ug/cm2*h~約20ug/cm2*h、約10ug/cm2*h~約18ug/cm2*h)のデキストロメトルファンの平均フラックス、を特徴とするデキストロメトルファンフラックスを有する経皮パッチを選択することとを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、それを必要とする対象に、1日あたり少なくとも約200ug/cm2(例えば、約200ug/cm2~約2000ug/cm2)を経皮送達することができる。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、経皮送達デバイスを、それを必要とする対象に貼付することにより、約2mg/日~約50mg/日のデキストロメトルファンを、対象に経皮送達するようなフラックス特性を有するように構成される。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約5mg/日~約50mg/日(例えば、約5mg/日、約10mg/日、約20mg/日、約30mg/日、約40mg/日、約50mg/日、または記載値間の任意の範囲)を、1日以上(例えば、1.5日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、または記載値間の任意の範囲)の間、対象に経皮送達することができる。経皮送達デバイスのサイズは、典型的には、約5cm2~約200cm2、例えば、約10cm2~約100cm2である。
【0086】
上記のフラックス特性を有する経皮送達デバイスは、本開示を考慮して当業者によって調製することが可能である。実施例の項には、いくつかの経皮送達デバイスの調製も例示されている。累積透過薬物(デキストロメトルファン、重水素化デキストロメトルファン、またはそれらの組み合わせ)は、例えば、接着剤層の組成(例えば、薬物濃度、透過促進剤、薬物担持量、接着剤のタイプなど)を変えることによって調整することができる。
【0087】
本明細書に記載の接着剤層及び/またはリザーバ層のために調剤された医薬組成物もまた、本開示の新規な態様であるという点に留意すべきである。
【0088】
本明細書の経皮送達デバイスはまた、例えば、所望の薬物動態(PK)プロファイル、例えば、本明細書に記載されたもののいずれかを提供する、ある一定のインビボ放出プロファイルを特徴とすることもできる。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、それを必要とする対象において、PKプロファイル、例えば、本明細書に記載の(例えば、発明の概要欄の[46]~[62]に示されている)PKプロファイルのいずれかを提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、例えば、対象における(例えば、本明細書に記載されている、例えばPBAなどの)疾患または障害の治療に有効なPKプロファイルを提供するように構成される。
【0089】
本開示の経皮送達デバイス及び経皮製剤の様々な態様は、全ての可能な組み合わせで組み合わせることができる。
【0090】
デキストロメトルファンの投与方法及び治療方法
種々の実施形態では、本開示はまた、例えば、デキストロメトルファンを、それを必要とする対象、例えば、本明細書に記載の疾患または障害のいずれかに罹患している対象に投与するために、本明細書に記載の経皮送達デバイスまたは医薬組成物を使用する方法を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態は、デキストロメトルファンを、それを必要とする対象(例えば、ヒト対象)に投与する方法を対象とする。いくつかの実施形態では、対象は、キニジンなどのCYP2D6阻害剤に対して敏感であるか、または逆に不耐容であり、例えば、キニジンに伴う1つ以上の副作用を有しており、及び/または代謝がキニジンなどのCYP2D6阻害剤の影響を受ける薬物を同時投与される(またはその薬物を必要する)。いくつかの実施形態では、対象は、例えばQTc延長が認められ、キニジンに対して敏感であるか、または逆に不耐容である。いくつかの実施形態では、本方法は、経皮送達デバイス(例えば、発明の概要欄の[18]~[35]に示すもの)または医薬組成物のいずれかを、対象に、例えば対象の皮膚に、貼付することを含む。いくつかの実施形態では、対象には、別の供給源を介して、例えば経口投与を介してデキストロメトルファンが投与されない。しかし、いくつかの実施形態では、対象には、例えば、デキストロメトルファンの経口製剤を対象に同時投与することにより、別のデキストロメトルファンの供給源が補足されてもよい。いくつかの実施形態では、対象は、咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としない。いくつかの実施形態では、対象は、高代謝群と特徴付けられる。いくつかの実施形態では、対象は、低代謝群と特徴付けられる。いくつかの実施形態では、対象には、CYP2D6阻害剤が同時投与されない。いくつかの実施形態では、対象には、キニジンが同時投与されない。いくつかの実施形態では、対象には、キニジン、ブプロピオンなどのCYP2D6阻害剤が同時投与される。
【0092】
本明細書の方法には、様々な投与レジメンが適している。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、(例えば、本明細書に記載の、例えば発明の概要欄の[18]~[35]に示すものなどの)経皮送達デバイスを、所望の期間、1日1回(例えば、24時間おきに交換され)、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約5mg~約100mgのデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、本方法はまた、(例えば、本明細書に記載の)経皮送達デバイスを、所望の期間、2日以上に1回(例えば、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5回に1回、6日に1回、1週間に1回など)、対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法はまた、(例えば、本明細書に記載の)経皮送達デバイスを、所望の期間、少なくとも1日に1回、例えば2日以上に1回(例えば週に1回)、または週に1回、2回、3回、4回、5回、もしくは6回、対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法はまた、経皮送達デバイス(例えば、本明細書に記載されている、発明の概要欄の[18]~[35]に示すものなど)を、週に1回、対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約50mg~約700mgのデキストロメトルファンを含む。本明細書の方法では、典型的には、経皮送達デバイスを、1日に1回または1日超につき1回の頻度で対象に貼付するが、いくつかの実施形態では、この方法では、経皮送達デバイスを、対象に1日未満につき1回、例えば、1日に2回または1日に3回などの頻度で貼付することもできる。誤解を避けるために、経皮送達デバイスが対象に1日に1回貼付されると言う場合、経皮送達デバイスの各貼付が約24時間持続すること、または治療期間中24時間おきに経皮送達デバイスが交換されることを意味すべきである。同様に、経皮送達デバイスが対象に1週間に1回貼付されると言う場合、経皮送達デバイスの各貼付が約1週間持続すること、または治療期間中1週間おきに経皮送達デバイスが交換されることを意味すべきである。その他の表現も同様に理解されるべきである。
【0093】
本明細書におけるデキストロメトルファンを投与する方法は、典型的には、それを必要とする対象(例えば、ヒト対象)において、例えば、対象の疾患または障害(例えば、PBAなどの本明細書に記載されるもののいずれか)の治療に好適な(例えば、有効な)ある一定の薬物動態プロファイルを提供する。PCT/US2018/054178は、そのような薬物動態プロファイルのいくつかを記載しており、例示的実施形態の項の実施形態B1、B3-7、B9、B11-21、及びB15-18に例が示されている。追加の薬物動態プロファイルが本明細書に記載されており、例えば、発明の概要欄の[46]~[62]を参照されたい。
【0094】
本明細書の方法は、特定の対象または特定のクラスの対象に限定されない。いくつかの実施形態では、対象は、高代謝群と特徴付けられる。いくつかの実施形態では、対象は、低代謝群と特徴付けられる。いくつかの実施形態では、対象には、CYP2D6阻害剤が同時投与されない。いくつかの実施形態では、対象には、キニジンが同時投与されない。いくつかの実施形態では、対象には、キニジン、ブプロピオンなどのCYP2D6阻害剤が同時投与される。また一方、本明細書に記載された実施形態のいずれかでは、対象は、咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としない。
【0095】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、ヒト対象)は、神経疾患または神経障害を有すると特徴付けられる。いくつかの実施形態では、対象(例えば、ヒト対象)は、情動障害、精神障害、脳機能障害、運動障害、認知症、運動ニューロン疾患、神経変性疾患、発作障害、及び頭痛から選択される1つ以上の疾患または障害を有すると特徴付けられる。いくつかの実施形態では、対象は、うつ病、大うつ病性障害、治療抵抗性うつ病、治療抵抗性双極性うつ病、気分循環症を含む双極性障害、季節性情動障害、気分障害、慢性うつ病(気分変調症)、精神病性うつ病、産後うつ病、月経前不快気分障害(PMDD)、適応障害、非定型うつ病、躁病、不安障害、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥・多動性障害(ADDH)、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、双極性及び躁状態、強迫性障害、過食症、肥満または体重増加、ナルコレプシー、慢性疲労症候群、月経前症候群、薬物嗜癖または乱用、ニコチン嗜癖、心理的性機能不全、情動調節障害、及び情緒不安定、から選択される1つ以上の疾患または障害に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、アルツハイマー病、プリオン関連疾患、小脳性失調症、脊髄小脳変性症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、延髄性筋萎縮、フリードライヒ運動失調症、ハンチントン病、レビー小体病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、多系統萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群、皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、ウィルソン病、メンケス病、副腎白質ジストロフィー、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、筋ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、家族性痙性対麻痺、神経線維腫症、オリーブ橋小脳萎縮症または変性、線条体黒質変性症、ギラン・バレー症候群、及び痙性対麻痺、から選択される1つ以上の疾患または障害に罹患している。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、対象は、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛(例えば、術後疼痛、神経因性疼痛)、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせに罹患している場合がある。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、対象は、情動調節障害に罹患している場合がある。
【0096】
治療方法
デキストロメトルファンは、様々な疾患または障害の治療に有用であることが知られている。例えば、Nguyen, L. et al., Pharmacology & Therapeutics 159:1022 (2016)を参照されたい。したがって、いくつかの実施形態では、本開示はまた、デキストロメトルファンを投与することが有益である、疾患または障害の治療を必要とする対象の疾患または障害を治療する方法を対象とする。いくつかの実施形態では、本方法は、治療的に有効な量のデキストロメトルファンを対象に経皮投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与することは、経皮送達デバイス(例えば、本明細書に記載されている、発明の概要欄の[18]~[35]に示すものなど)を対象の皮膚に貼付することを含む。いくつかの実施形態では、投与することにより、本明細書に記載の(例えば、発明の概要欄の[46]~[62]に示す)PKプロファイルがもたらされる。いくつかの実施形態では、対象は、咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳剤を必要としない。いくつかの実施形態では、対象は、デキストロメトルファンの高代謝群である。いくつかの実施形態では、対象は、デキストロメトルファンの低代謝群である。いくつかの実施形態では、対象は、CYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容である。いくつかの実施形態では、対象は、例えばQTc延長が認められ、キニジンに対して敏感であるか、または逆に不耐容である。いくつかの実施形態では、対象は、キニジンに伴う1つ以上の副作用を有する。いくつかの実施形態では、対象は、対象の代謝がCYP2D6阻害剤によって影響を受ける薬物を同時投与される(またはその薬物を必要する)。
【0097】
種々の疾患及び障害が、本明細書の方法によって治療されるのに適している。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、神経障害である。非限定的な例示的神経疾患または神経障害としては、情動障害、精神障害、脳機能障害、運動障害、認知症、運動ニューロン疾患、神経変性疾患、発作障害、及び頭痛が挙げられる。
【0098】
本明細書の方法によって治療することができる情動障害としては、うつ病、大うつ病性障害、治療抵抗性うつ病及び治療抵抗性双極性うつ病、気分循環症を含む双極性障害、季節性情動障害、気分障害、慢性うつ病(気分変調症)、精神病性うつ病、産後うつ病、月経前不快気分障害(PMDD)、適応障害、非定型うつ病、躁病、不安障害、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥・多動性障害(ADDH)及び注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、双極性及び躁状態、強迫性障害、過食症、肥満または体重増加、ナルコレプシー、慢性疲労症候群、月経前症候群、薬物嗜癖または乱用、ニコチン嗜癖、心理的性機能不全、情動調節障害、及び情緒不安定、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本明細書の方法によって治療することができる精神障害としては、恐怖症、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、及び心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含むがこれらに限定されない不安障害;躁病、躁うつ病、軽躁病、単極性うつ病、うつ病、ストレス障害、身体表現性障害、人格障害、精神病、統合失調症、妄想障害、統合失調感情障害、統合失調症傾向、攻撃性、アルツハイマー病における攻撃性、激越、及びアルツハイマー病における激越、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書の方法によって治療することができる薬物嗜癖乱用としては、薬物依存症、コカイン、精神刺激薬(例えば、クラック、コカイン、スピード、メタンフェタミン)、ニコチン、アルコール、オピオイド、抗不安薬及び催眠薬、大麻(マリファナ)、アンフェタミン、幻覚剤、フェンシクリジン、揮発性溶剤、及び揮発性亜硝酸塩に対する嗜癖、が挙げられるが、これらに限定されない。ニコチン嗜癖には、全ての既知の形態のニコチン嗜癖、例えば、タバコ、葉巻及び/またはパイプの喫煙、及び噛みタバコ嗜癖が含まれる。
【0101】
本明細書の方法によって治療することができる脳機能障害としては、知的障害を伴う障害、例えば老人性痴呆、アルツハイマー型痴呆、記憶喪失、健忘症/健忘症候群、てんかん、意識障害、昏睡、注意力低下、言語障害、声のけいれん、パーキンソン病、レノックス・ガストー症候群、自閉症、多動症候群、及び統合失調症、が挙げられるが、これらに限定されない。脳機能障害はまた、脳卒中、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化症、脳静脈血栓症、頭部外傷などを含むがこれらに限定されない脳血管疾患によって引き起こされる障害を含み、症状としては、意識障害、老人性痴呆、昏睡、注意力の低下、及び言語障害が挙げられる。
【0102】
本明細書の方法によって治療することができる運動障害としては、アカシジア、無動症、連合運動、アテトーゼ、運動失調、バリズム、片側バリズム、運動緩慢、脳性麻痺、舞踏病、ハンチントン病、リウマチ性舞踏病、シデナム舞踏病、ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、眼瞼痙攣、痙性斜頸、ドパミン反応性ジストニア、パーキンソン病、レストレスレッグス症候群(RLS)、振戦、本態性振戦、及びトゥレット症候群、及びウィルソン病、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本明細書の方法によって治療することができる認知症としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、血管性認知症、レビー小体型認知症、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、ハンチントン病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、及びピック病、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本明細書の方法によって治療することができる運動ニューロン疾患としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症、ポリオ後症候群(PPS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脊髄運動萎縮症(spinal motor atrophies)、テイ・サックス病、サンドホフ病、及び遺伝性痙性対麻痺、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本明細書の方法によって治療することができる神経変性疾患としては、アルツハイマー病、プリオン関連疾患、小脳性失調症、脊髄小脳変性症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、延髄性筋萎縮、フリードライヒ運動失調症、ハンチントン病、レビー小体病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、多系統萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群、皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、ウィルソン病、メンケス病、副腎白質ジストロフィー、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、筋ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、家族性痙性対麻痺、神経線維腫症、オリーブ橋小脳萎縮症または変性、線条体黒質変性症、ギラン・バレー症候群、及び痙性対麻痺、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書の方法によって治療することができる発作障害としては、てんかん発作、非てんかん発作、てんかん、熱性けいれん;単純部分発作、ジャクソン型発作、複雑部分発作、及び持続性部分てんかんを含むが、これらに限定されない部分発作;全般性強直間代性発作、欠神発作、脱力発作、ミオクローヌス発作、若年性ミオクローヌス発作、及び乳児けいれんを含むが、これらに限定されない、全般発作;ならびにてんかん重積状態、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
本明細書の方法によって治療することができる頭痛のタイプとしては、片頭痛、緊張型頭痛、及び群発性頭痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
本明細書の方法によって治療することができる他の神経障害としては、レット症候群、自閉症、耳鳴り、意識障害、性機能不全、難治性咳、ナルコレプシー、カタプレキシー;外転型けいれん性発声障害、内転型けいれん性発声障害、筋緊張性発声障害、及び音声振戦を含むが、これらに限定されない制御不能喉頭けいれんによる発声障害;糖尿病性神経障害、メトトレキサート神経毒性などの化学療法誘発性神経毒性;腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、及び便失禁を含むがこれらに限定されない失禁;ならびに勃起不全、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、疼痛、関節痛、鎌状赤血球症に伴う疼痛、情動調節障害、うつ病(大うつ病性障害、治療抵抗性うつ病などを含む)、記憶及び認知に関連する障害、統合失調症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レット症候群、発作、咳(慢性咳を含む)など、である。
【0110】
本明細書の方法は、筋骨格系疼痛、神経因性疼痛、がん関連疼痛、急性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、関節炎疼痛、複合性局所疼痛症候群などを含むがこれらに限定されない、任意のタイプの疼痛を治療または緩和するためにも使用することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、異痛症、難治性痛覚過敏症、皮膚炎、疼痛、炎症、またはクローン病などの炎症状態であり得、乾癬、がん、ウイルス感染に関連する疼痛を含み、または多発性骨髄腫のアジュバント療法としてのものであり得る。
【0112】
本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、本方法は、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害、治療抵抗性うつ病など)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛(例えば、術後疼痛、神経因性疼痛)、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせを治療するためのものであることが可能である。
【0113】
好適な投薬レジメン、投薬量、継続期間、経皮送達デバイスなどには、本明細書に記載されたいずれかのものが任意の組み合わせで含まれる。本明細書に記載されている実施形態のいずれにおいても、対象は、ヒト対象であってよい。
【0114】
いくつかの具体的な実施形態では、本明細書の経皮送達デバイス(例えば、発明の概要欄の[18]~[35]に示すもの)を、それを必要とする対象に貼付することを含む、情動調節障害を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約5mg~約100mgのデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、1日1回、例えば、最長で7日までの期間、少なくとも7日間、1か月間、または所望の任意の期間貼付される。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約50mg~約700mgのデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、週に1回、例えば、1週間、1か月間、または所望の任意の期間貼付される。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、週に1回、2回、3回、4回、5回、もしくは6回、例えば、1週間、1か月間、または所望の任意の期間貼付される。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、本明細書に記載されている薬物動態プロファイル(例えば、発明の概要欄の[46]~[62]に示す薬物動態プロファイル、または例示的実施形態欄の実施形態B1、B3-7、B9、B11~21、及びB15~18に示す薬物動態プロファイル)のいずれかを達成するように貼付される。いくつかの実施形態では、対象には、CYP2D6阻害剤が投与されない。いくつかの実施形態では、対象には、キニジンが投与されない。いくつかの実施形態では、対象は、咳に苦しんでいないか、または鎮咳効果を必要としない。いくつかの実施形態では、対象は、低代謝群と特徴付けられる。いくつかの実施形態では、対象は、高代謝群と特徴付けられる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、対象にデキストロメトルファン以外の活性薬剤を投与することをさらに含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象に抗うつ剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗うつ剤は、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、エリスロヒドロキシブプロピオン、スレオヒドロキシブプロピオン、これらの化合物のいずれかの代謝物またはプロドラッグ、及びそれらの組み合わせから選択される。他の好適な抗うつ剤は、例えば、その内容全体が参照により組み込まれている、米国特許第9,861,595号に記載されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象にキニジンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象にCYP2D6阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、アムロジピン、カプサイシノイド(例えば、カプサイシンまたはそのエステル)、オピオイドアゴニスト(例えば、μ-オピエート鎮痛剤(例えば、トラマドール))、アデノシン作動性(adenosinergic)アゴニスト、3-(3-ジメチルアミノ-1-エチル-2-メチル-プロピル)-フェノール、ガバペンチン、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上の追加の活性薬剤を対象に投与することをさらに含む。これらの追加の薬剤は、同時にまたは順次に投与することが可能である。さらに、これらの追加の薬剤は、同じ経路または異なる経路を介して投与することができる。例えば、いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、経皮的または経口的に投与され得る。しかし、いくつかの実施形態では、追加の薬剤はまた、同じ経皮送達デバイスにおいてデキストロメトルファンと併用されてもよい。
【0116】
本明細書に記載の経皮貼付により、初回通過肝臓代謝が回避されるので、本明細書の方法は、デキストロメトルファンの肝臓代謝を妨げる可能性がある薬物療法を受けている対象に、デキストロメトルファンを提供することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、デシプラミン、パロキセチン、チオリダジン、ピモジド、ジゴキシン、アタザナビル、クラリスロマイシン、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、及びそれらの組み合わせを対象に投与することを含む。しかし、いくつかの実施形態では、対象には、デシプラミン、パロキセチン、チオリダジン、ピモジド、ジゴキシン、アタザナビル、クラリスロマイシン、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、及びそれらの組み合わせのいずれも投与されない。いくつかの実施形態では、本方法は、対象がデキストロメトルファンの高代謝群であるか低代謝群であるかを決定することを必要としない。
【0117】
例示的方法
本開示は、デキストロメトルファンを経皮投与する以下の非限定的な例示的方法を提供する。
【0118】
典型的には、本明細書の方法は、デキストロメトルファンを投与することが有益である疾患または障害を治療するためのものである。本明細書には、本明細書の方法で治療することができる好適な疾患または障害が記載されている。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、神経疾患または神経障害の治療を必要とする対象の神経疾患または神経障害を治療するためのものである。そのような神経疾患または神経障害には、情動障害、精神障害、脳機能障害、運動障害、認知症、運動ニューロン疾患、神経変性疾患、発作障害、及び頭痛があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本方法は、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせを治療するためのものである。いくつかの実施形態では、対象は、咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としない。
【0119】
NUEDEXTA(登録商標)錠剤は、情動調節障害またはPBAの治療用としてFDAによって承認された。NUEDEXTA(登録商標)の処方情報(2019年6月版)(その内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。NUEDEXTAの処方情報に記載されているように、PBAは、普通は無関係な様々な神経学的状態に続発して発症し、不随意で突然の頻繁な笑い及び/または泣き叫びの発現を特徴とする。PBAの発現は、一般的には、根底にある感情の状態と不釣り合いに、または不調和に起こる。PBAは、神経疾患または神経損傷がみられる患者で生じ得る、他のタイプの情緒不安定とは異なり、特異的な状態である。
【0120】
いくつかの具体的な実施形態では、本明細書の方法は、PBAの治療を必要とする対象のPBAを治療するためのものである。いくつかの実施形態では、対象はまた、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、及び/またはアルツハイマー病などの神経変性疾患、脳卒中、または外傷性脳損傷などの脳損傷に罹患している。
【0121】
本明細書の方法は、一般的には、治療的に有効な量のデキストロメトルファンを、それを必要とする対象に経皮送達することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に、約15mg~約50mg(例えば、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約20~50mg、約30~50mg、もしくは約20~40mgなど)の1日用量のデキストロメトルファンを経皮送達することを含む。いくつかの実施形態では、1日用量は、約20mg~40mg、例えば約35mgなどのデキストロメトルファンである。いくつかの実施形態では、1日用量はまた、50mgよりも多く、例えば約60mg、最大で約100mgまでなどのデキストロメトルファンであり得る。いくつかの実施形態では、1日用量は、15mgよりも少なく、例えば、約5mg、約10mg、または約5~10mgのデキストロメトルファンであり得る。デキストロメトルファンの1日用量は、典型的には、本明細書の経皮送達デバイスもしくは経皮パッチまたは接着剤組成物/接着剤配合、例えば、本明細書に記載されるもの(例えば、発明の概要欄の[18]~[35]に示すもの)のいずれかを対象に貼付することによって送達される。
【0122】
いくつかの実施形態では、デキストロメトルファンの1日用量は、薬物含有接着剤層を含む経皮送達デバイスを貼付することによって対象に送達され、薬物含有接着剤層は、約2重量%~約12重量%、好ましくは約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約6~12重量%、8~12重量%など)の量のデキストロメトルファンと、感圧接着剤と、皮膚透過促進剤とを含む。デキストロメトルファン及び皮膚透過促進剤は、典型的には、感圧接着剤中に分散されている(例えば、均一に分散されている)。いくつかの実施形態では、デキストロメトルファン及び皮膚透過促進剤は、感圧接着剤と均一に混合され得る。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、均一混合物である。感圧接着剤は、典型的にはアクリレート接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物である。感圧接着剤は、典型的には薬物含有接着剤層の約65重量%~約85重量%(例えば、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、もしくは約85重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約70~85重量%、約75~85重量%など)の量で存在する。皮膚透過促進剤は、典型的にはミリスチン酸イソプロピルである。皮膚透過促進剤は、典型的には、薬物含有接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量で存在する。好ましくは、薬物含有接着剤層は、結晶化抑制剤、例えばビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物をさらに含む。好ましくは、結晶化抑制剤は、薬物含有接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%,または記載値間の任意の範囲、例えば約8~12重量%など)の量で存在する。本明細書で述べているように、ビニルピロリドンポリマーを含有することで、ビニルピロリドンポリマーを含まないが他の点では同じパッチと比較して、インビトロ及びインビボの両方でデキストロメトルファンフラックスを大幅に向上させることができる。経皮送達デバイスは、典型的には、約30cm2~約100cm2、例えば、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60cm2、約60~80cm2などの有効表面積を有する。
【0123】
経皮送達デバイスは、典型的には、所望の1日用量を送達するのに十分な量のデキストロメトルファンを含むように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約0.2mg/cm2~約5mg/cm2、例えば約0.2mg/cm2、約0.3mg/cm2、約0.4mg/cm2、約0.5mg/cm2、約0.6mg/cm2、約0.7mg/cm2、約0.8mg/cm2、約0.9mg/cm2、約1mg/cm2、約2mg/cm2、約5mg/cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約0.2~1mg/cm2、約0.5~1mg/cm2などの総デキストロメトルファン担持量を有する。典型的には、経皮送達デバイスは、それを必要とする対象に1日1回貼付することができ、それぞれの貼付の持続期間は約24時間となる。1日1回の投薬レジメンでは、総デキストロメトルファン担持量は、典型的には小さい範囲、例えば約0.2~1mg/cm2、約0.5~1mg/cm2などにすることができる。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、それを必要とする対象に、1日超につき1回、例えば1.5日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、または1週間に1回などの投与頻度で貼付することができ、そのような実施形態では、所望の1日用量を送達するために、経皮送達デバイスは、典型的には、約1~5mg/cm2、または5mg/cm2よりもさらに大きく、最大で8mg/cm2などの、より大きい総デキストロメトルファン担持量を有することが可能である。
【0124】
いくつかの好ましい実施形態では、経皮送達デバイスは、それを必要とする対象に、約15mg~40mgのデキストロメトルファンの1日用量を送達するために、1日1回、貼付される。典型的には、経皮送達デバイスの薬物含有接着剤層は、約20mg~約100mgのデキストロメトルファン、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、1日用量は、約20mg~40mg(例えば約35mgなど)のデキストロメトルファンであり、薬物含有接着剤層は、約50mg~約70mgのデキストロメトルファン、例えば、約56mgのデキストロメトルファンを含む。薬物含有接着剤層はまた、典型的には、約30mg~約100mgのミリスチン酸イソプロピル、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどのミリスチン酸イソプロピルを含む。感圧接着剤は、典型的には、約150mg~約900mg、例えば、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約300~500mg、350~450mg、もしくは約300~550mgなどの量で薬物含有接着剤層に含まれる。いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤は、好ましくは、約30mg~約100mgの量、例えば、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60mg、50~60mg、もしくは約50~70mgなどの量で薬物含有接着剤層に含まれる。薬物含有接着剤層の成分は絶対量の範囲で記載されているが、いくつかの実施形態では、成分は、本明細書に記載されるように、薬物含有接着剤層における相対重量パーセントを有してもよいことを理解されたい。デキストロメトルファン及びミリスチン酸イソプロピルは、典型的には、感圧接着剤中に分散されている(例えば、均一に分散されている)。いくつかの実施形態では、デキストロメトルファン及びミリスチン酸イソプロピルは、感圧接着剤と均一に混合されている。いくつかの実施形態では、薬物含有接着剤層は、均一混合物である。感圧接着剤は、典型的にはアクリレート接着剤、例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物である。結晶化抑制剤は、典型的にはビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物である。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約30cm2~約100cm2、例えば、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、または記載値間の任意の範囲、例えば約40~60cm2、約60~80cm2などの有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約50~70mgのデキストロメトルファン、及び約60~80cm2、例えば約70cm2の有効表面積を有する。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスは、約56mgのデキストロメトルファン、及び約70cm2の有効表面積を有する。
【0125】
本明細書の経皮送達デバイスは、典型的には、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、少なくとも約200ug/cm2/日、例えば約200ug/cm2/日、約300ug/cm2/日、約400ug/cm2/日、約500ug/cm2/日、約600ug/cm2/日、約700ug/cm2/日、約800ug/cm2/日、約1000ug/cm2/日、または記載値間の任意の範囲、例えば約200~800ug/cm2/日、約300~800ug/cm2/日、約400~800ug/cm2/日、約500~800ug/cm2/日などのデキストロメトルファンフラックスを有する。いくつかの実施形態では、本明細書の経皮送達デバイスは、薬物含有接着剤層中に約6重量%~約12重量%(例えば、約10重量%)の量のビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32及びその類似物を含み、経皮送達デバイスは、典型的には、ヒト死体皮膚を用いてインビトロで測定された場合に、例えば、約400~800ug/cm2/日または約500~800ug/cm2/日のデキストロメトルファンフラックスを有することができる。
【0126】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書の方法は、高い経皮バイオアベイラビリティ(すなわち、送達されたデキストロメトルファンをパッチ内の初期デキストロメトルファンで割ったもの)を有すると特徴付けることができる。例えば、実施例4Bに示すように、例示的なパッチ(プラスドンK29/32を含む)中の初期(すなわち、貼付前)のデキストロメトルファン量は約56mgであり、この例示的なパッチを対象に24時間貼付すると、約32.4mg~約41.1mgのデキストロメトルファンが対象に送達されたので、パッチからの経皮バイオアベイラビリティは約58%(32.4/56)~約73%(41.1/56)である。この高い送達率は、一つには、本明細書の経皮パッチからのデキストロメトルファンのフラックスを継続的に高くすることが可能であるという予期せぬ発見によって可能になるものである。本明細書の方法のいくつかの実施形態では、(例えば、本明細書に記載の)経皮送達デバイスまたは経皮パッチは、対象に1日1回貼付され、経皮送達デバイスまたは経皮パッチ中のデキストロメトルファンの残留量、すなわち、約24時間着用された後に取り外されたデバイスまたはパッチのデキストロメトルファン残留量は、経皮送達デバイスまたは経皮パッチ中の初期デキストロメトルファン量の50%未満(例えば、40%未満)である。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスまたは経皮パッチは、1日に1回貼付され、対象に送達されるデキストロメトルファンの割合は、経皮送達デバイスまたは経皮パッチ中の初期デキストロメトルファン量の約50%~約80%である。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスまたは経皮パッチは、例えば1.5日に1回、2日に1回、3日に1回、または1週間に1回など、1日超につき1回、貼付され、経皮送達デバイスまたは経皮パッチ中のデキストロメトルファン残留量は、対象に送達される所望の1日用量よりも少なく、例えば、90%未満(例えば、80%未満、または60%未満)である。いくつかの実施形態では、経皮送達デバイスまたは経皮パッチは、1.5日に1回、2日に1回、3日に1回、または1週間に1回貼付され、対象に送達されるデキストロメトルファンの割合は、経皮送達デバイスまたは経皮パッチ中の初期デキストロメトルファン量の約60%~約90%である。典型的には、経皮送達デバイスまたは経皮パッチは、(1)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のデキストロメトルファン、(2)約65重量%~約85重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約70重量%)の量のポリアクリレートビニルアセテートコポリマー感圧接着剤、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物、(3)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のミリスチン酸イソプロピル、ならびに(4)約6重量%~約12重量%(例えば、本明細書に記載されているもの、例えば約10重量%)の量のビニルピロリドンポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマー(またはポビドン)、例えば、ポビドンK30、プラスドンK29/32、及びその類似物を含む、薬物含有接着剤層を含む。1日1回の投薬レジメンでは、経皮送達デバイスまたは経皮パッチは、典型的には、約30mg~約100mgのデキストロメトルファンを含み、パッチのサイズは約30cm2~約100cm2である。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法はまた、本明細書に記載されている独特のインビボ薬物動態(PK)プロファイルに特徴付けられ得る。実施例の節でより詳細に示すように、例示的なパッチをヒト対象に1日1回貼付することで、治療的に有効な血漿中濃度が、ある期間にわたって持続的に提供された。本明細書に記載される新規PKプロファイルを用いた本明細書の疾患または障害の治療は、それ自体、本開示の新規特徴である。これらの独特のPKプロファイルは、より正確な投薬、より低頻度の投薬、キニジンに伴う副作用及び/またはデキストロメトルファン曝露増加(例えば、Cmax)に伴う副作用の可能性の低減、錠剤数の負担の軽減、及び患者コンプライアンスの改善、を含むがこれらに限定されない多くの利点を提供する。
【0128】
本明細書の方法のいくつかの実施形態は、本明細書に記載される新規なPKプロファイルを対象とする。当業者なら理解するだろうが、本開示は、主にデキストロメトルファンの経皮送達に焦点を合わせているが、初回通過代謝を回避して、例えば継続的にまたは実質的に継続的に送達するようにデキストロメトルファンを対象に送達する他の送達経路により、同様のPKプロファイルを達成することができる。したがって、本開示は、デキストロメトルファンを送達するそのような方法をも具体的に企図しており、これは、例えば、デキストロメトルファンを静脈内投与すること、皮下投与すること、筋肉内投与すること、またはデポーを介して投与することを含むことができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、本開示は、神経疾患または神経障害(例えば、PBAなどの本明細書に記載されているもののいずれか)の治療を必要とする対象のその神経疾患または神経障害を治療する方法であって、1日に1回から1週間に1回の投薬頻度で対象に経皮パッチを貼付することを含み、経皮パッチが、約15mg~約700mg(例えば、約15mg、約30mg、約50mg、約75mg、約100mg、約150mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、または記載値間の任意の範囲、例えば約15~100mg、約30~100mg、約30~75mg、もしくは約150~500mgなど)のデキストロメトルファンを含み、貼付することにより、定常状態で対象に治療的に有効な血漿中デキストロメトルファン濃度がもたらされる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、経皮パッチは、約30mg~約100mgのデキストロメトルファンを含む。いくつかの実施形態では、投薬頻度は1日1回である。
【0130】
いくつかの実施形態では、本方法は、経皮パッチの貼付の結果から生じたPKプロファイルを特徴とする。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、神経疾患または神経障害(例えば、PBAなどの本明細書に記載されているもののいずれか)の治療を必要とする対象のその神経疾患または神経障害を治療する方法を提供し、本方法は、約30mg~約100mgのデキストロメトルファンを含む経皮パッチを、好ましくは1日1回、約15mg~約50mgのデキストロメトルファンの1日用量を送達するように、対象に貼付することを含み、貼付することにより、以下の1つ以上を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる。すなわち、
a)約180h*ng/mL~約2000h*ng/mL、例えば、約200h*ng/mL~約600h*ng/mLまたは約300h*ng/mL~約500h*ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのAUC0-24,DXM、
b)約8ng/mL~約100ng/mL、例えば、約10ng/mL~約20ng/mL、例えば約15ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのCAvg,DXM、
c)約6ng/mL~約65ng/mL、例えば、約6ng/mL~約20ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのCmin,DXM、
d)約8ng/mL~約90ng/mL、例えば、約10ng/mL~約30ng/mLの、7日目または定常状態の段階でのCmax,DXM、
e)約0.18~約0.8、例えば、約0.18~約0.8、例えば約0.3~約0.5の、7日目または定常状態の段階でのデキストロメトルファンの変動度[(Cmax-Cmin)/Cavg]、
f)約0.2~約1.35、例えば、約0.3~約1、例えば約0.4~0.7の、7日目または定常状態の段階でのデキストロメトルファンの振幅率[(Cmax-Cmin)/Cmin]、
g)約1.5~約5、例えば、約1.5~約3、例えば約1.5~2.5の、AUC0-24,DXM,D1に対する定常状態の段階でのAUC0-24,DXMの比率、
h)約12~約35の、定常状態の段階でのAUC0-24,DORに対するAUC0-24,DXMの比率、
i)約12~約35の、定常状態の段階でのCmax,DORに対するCmax,DXMの比率、及び
j)約12~約35の、定常状態の段階でのCAvg,DORに対するCAvg,DXMの比率、
である。
デキストロルファン(Dor)濃度及び関連パラメータは、遊離したデキストロルファン、すなわち共役していないものに基づいていることを理解されたい。いくつかの実施形態では、貼付することにより、a)約200h*ng/mL~約600h*ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのAUC0-24,DXM、b)約10ng/mL~約20ng/mL、例えば約15ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのCAvg,DXM、c)約6ng/mL~約20ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのCmin,DXM、及び/またはd)約10ng/mL~約30ng/mLの、7日目もしくは定常状態の段階でのCmax,DXMを特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる。これらのレベルのデキストロメトルファン曝露は有利であり得る。実施例4Bに示すように、NUEDEXTA(登録商標)錠剤を1日2回経口投与した後の7日目または定常状態では、デキストロメトルファン血漿中濃度は上記のものよりもはるかに高かった。したがって、本明細書の方法は、少なくとも高デキストロメトルファン曝露(例えば、Cmax、AUCなど)に伴う副作用の発生率の減少をもたらすことになると予想される。いくつかの実施形態では、貼付することにより、e)約0.18~約1の、7日目もしくは定常状態の段階でのデキストロメトルファンの変動度[Cmax-Cmin)/Cavg]、及び/またはf)約0.3~約1の、7日目もしくは定常状態の段階でのデキストロメトルファンの振幅率[(Cmax-Cmin)/Cmin]を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる。いくつかの実施形態では、貼付することにより、g)約1.5~約3の、AUC0-24,DXM,D1に対する定常状態の段階でのAUC0-24,DXMの比率を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる。いくつかの実施形態では、貼付することにより、h)約12~約35の、定常状態の段階でのAUC0-24,DORに対するAUC0-24,DXMの比率、i)約12~約35の、定常状態の段階でのCmax,DORに対するCmax,DXMの比率、及び/またはj)約12~約35の、定常状態の段階でのCAvg,DORに対するCAvg,DXMの比率を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる。典型的には、初回投与以外の経皮パッチの各貼付では、投与前の血漿中デキストロメトルファン濃度は、直前の投与から観測される平均濃度(CAvg,DXM)の約20%を下回らず、例えば、2回目の投与の投与前濃度は、初回投与から観測される平均濃度の約20%を下回らない。いくつかの実施形態では、デキストロメトルファンの蓄積率は、約1~約5、例えば約1.2~約3の範囲であり、対象は、高代謝群または超高代謝群である。いくつかの実施形態では、貼付することにより、k)高代謝群または超高代謝群における約11~約29時間、例えば、約11~約24時間、例えば約17時間の、定常状態の段階でのデキストロメトルファンの半減期、及び/またはl)高代謝群または超高代謝群における約0.018h-1~約0.065h-1、例えば、約0.020h-1~約0.06h-1の、定常状態の段階を達成した後の最終投与後の見かけの一次終末相消失速度定数(λz)を特徴とする薬物動態プロファイルが対象にもたらされる。本明細書に記載されているPKプロファイルは、様々な神経疾患または神経障害の治療に適している。いくつかの実施形態では、神経疾患または神経障害は、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、神経疾患または神経障害は、情動調節障害である。いくつかの実施形態では、対象は、咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としない。PKプロファイルを提供するために使用できる好適なパッチとしては、本明細書に記載されているパッチ(例えば、発明の概要欄の[18]~[35]に示すパッチ)のいずれかがある。当業者は、本開示の教示を考慮したうえで、本明細書に記載されているPKプロファイルを達成するための適切なパッチを選択または設計することができる。例えば、実施例4Bに示す例示的パッチと同様のものなど、適切なデキストロメトルファンフラックス速度及び1日用量を有するパッチを選択することにより、当業者は、本明細書に記載のPKプロファイルを実現することができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、特定の対象を治療するために特に有用かつ有利であり得る。神経障害(複数可)を有する患者は、多くの場合、複数の併存疾患を有しており、及び/または他の多数の薬物療法による治療を受けている。例えば、PBAに対して行われる治療実験(対照実験または非対照実験)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、ならびに脳卒中及び外傷性脳損傷を含む他の様々な基礎神経疾患を併発している患者集団に基づくものであった。したがって、PBAを有する患者は、通常、ALS、MS、脳卒中、及び外傷性脳損傷などの治療のための薬物療法など、他の薬物療法による治療も受けている。NUEDEXTA(登録商標)錠剤の使用、またはCYP2D6阻害剤を用いてデキストロメトルファン血漿中濃度を高めるという同様の対策は限られており、そのような患者に様々な制限及び薬物間相互作用をもたらす可能性がある。CYP2D6阻害剤の影響を受ける副作用または薬物の一部は、NUEDEXTA(登録商標)の処方情報(2019年6月版)に記載されており、その内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。例えば、NUEDEXTA(登録商標)の処方情報には、次の禁忌が記されている。1)キニジン、キニーネまたはメフロキンによる血小板減少症、肝炎、または骨髄抑制もしくはループス様症候群などの過敏性反応の病歴のある患者、2)デキストロメトルファンに対する既知の過敏性を有する患者、3)MAOIとの併用またはMAOI停止後14日以内に使用すること。NUEDEXTAを停止してからMAOIを開始するまでに14日間あけること、4)QT間隔の延長、先天性QT延長症候群、多形性心室頻拍を示唆する病歴、または心不全、5)ペースメーカーを植え込んでいない完全房室(AV)ブロック、またはAVブロックのリスクが高い患者、及び6)QT間隔を延長しCYP2D6によって代謝される薬物(例えば、チオリダジンまたはピモジド)との併用。また、NUEDEXTA(登録商標)の処方情報には、a)血小板減少症またはその他の過敏性反応、b)肝炎、c)QT延長、d)左心室肥大(LVH)または左心室機能不全(LVD)、e)CYP2D6基質、f)めまい、g)セロトニン症候群、及びh)キニジンの抗コリン作用、を含む種々の警告及び使用上の注意が記されている。これらの禁忌、警告及び使用上の注意の多くは、キニジンに関連している。例えば、NUEDEXTA(登録商標)の処方情報には、「キニジンは、重篤または致死的となり得る免疫性の血小板減少を引き起こす可能性がある」、「キニジンは、多発性関節炎を伴うループス様症候群とも関連している」、「その他の関連性には、発疹、気管支痙攣、リンパ節症、溶血性貧血、血管炎、ブドウ膜炎、血管性浮腫、無顆粒球症、乾燥症候群、筋肉痛、骨格筋酵素の血清中レベルの上昇、及び肺炎がある」、「キニジン投与患者において、肉芽腫性肝炎を含む肝炎が報告されている」と記されている。キニジンはまた、「親薬物の蓄積及び/または活性代謝物の形成不全により、CYP2D6によって代謝されるNUEDEXTAと併用される薬物の安全性及び/または有効性が低下する可能性がある」、「NUEDEXTAの過量投与から起こり得るキニジン曝露で、多形性心室頻拍を含む致命的な心不整脈を起こす可能性がある」を引き起こす可能性がある。NUEDEXTA治療では、慢性的なキニジン中毒が起こり得る可能性がある。さらに、様々な薬物が、CYP3A4阻害剤、P糖蛋白遮断薬など、キニジンの薬理効果に影響を与える可能性があり、薬物が、QTcに直接作用するか、またはそれ自体が催不整脈性であり、利尿剤との関連で血清中カリウムを低下させ、カリウム濃度を中程度に低下させ、それによってNUEDEXTAの使用を制限することがある。キニジンはCYP2D6を阻害するので、デシプラミン、パロキセチンなどのCYP2D6基質に対しても様々な薬物間相互作用が起こり得る。NUEDEXTA(登録商標)の処方情報に記されているように、「CYP2D6産生代謝物によって作用が仲介されるプロドラッグの場合(例えば、鎮痛効果及び鎮咳効果が、それぞれモルヒネ及びヒドロモルフォンによってもたらされると考えられるコデイン及びヒドロコドン)、キニジンを介したCYP2D6の阻害により、NUEDEXTAの存在下では所望の臨床的有用性を得ることができない可能性が高い」。キニジンはまた、P糖蛋白の阻害剤であり、ジゴキシンなどのp糖蛋白の基質となる薬剤の血漿中濃度に大きな影響を与える可能性がある。要約して言えば、キニジンに伴う様々な潜在的副作用のために、少なくとも、キニジンまたは一般にCYP2D6阻害剤に伴う1つ以上の制限及び/または副作用を有する患者集団におけるPBAの治療に関して、満たされていない医療ニーズが存在する。
【0132】
本明細書に記載の経皮送達経路は、キニジンまたは他のCYP2D6阻害剤を使用する必要がないため、キニジンまたはCYP2D6阻害剤に伴う制約のない患者の治療に有利に使用することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、キニジンまたは一般にCYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容である対象を治療することができる。いくつかの実施形態では、対象は、CYP2D6阻害剤に対して敏感または不耐容であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、キニジンに対して敏感または不耐容であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、キニジンに伴う1つ以上の副作用を有する。いくつかの実施形態では、対象は、対象の代謝がCYP2D6阻害剤によって影響を受ける薬物を同時投与される。いくつかの実施形態では、対象は、対象の代謝がキニジンによって影響を受ける薬物を同時投与される。いくつかの実施形態では、対象は、キニジンの薬理効果に影響を与え得るCYP3A4阻害剤などの薬物(例えば、アタザナビル、クラリスロマイシン、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ネファゾドン、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、テリスロマイシン、アンプレナビル、アプレピタント、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フルコナゾール、ホスアンプレナビル、グレープフルーツジュース、及びベラパミル)を同時投与される。いくつかの実施形態では、対象は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(フルオキセチンなど)、三環系抗うつ剤(クロミプラミン及びイミプラミンなど)、及び/またはモノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI)でさらに治療されることが可能である。
【0133】
さらに、本明細書に記載の経皮送達経路は、キニジンまたは他のCYP2D6阻害剤を使用する必要がないため、本明細書の経皮送達デバイスまたは経皮製剤は、対象がデキストロメトルファンの低代謝群、中間代謝群、または高代謝群であるかどうかを最初に決定するかしないかにかかわらず、対象にデキストロメトルファンを経皮送達するために便利に投与することが可能である。低代謝群では、キニジンまたは他のCYP2D6阻害剤の添加は、デキストロメトルファンの血漿中曝露に有意な影響を与えるものとは期待されないが、それでも、そのような添加は、対象をキニジンまたは他のCYP2D6阻害剤に伴う潜在的副作用にさらすことになる。本明細書に記載された経皮送達方法は、そのような欠点に悩まされることはない。いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、対象がデキストロメトルファンの低代謝群、中間代謝群、または高代謝群であるかどうかを最初に決定することなく、対象を治療することが可能である。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、高代謝群である対象を治療することができる。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、低代謝群である対象を治療することができる。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、対象がデキストロメトルファンの低代謝群、中間代謝群、または高代謝群であるかどうかを決定することと、対象に適切な1日用量のデキストロメトルファンを投与することとを含むこともできる。例えば、いくつかの実施形態では、1日用量は、経皮送達が、対象で治療的に有効な血漿中デキストロメトルファン濃度をもたらすように調整され得る。いくつかの実施形態では、1日用量は、経皮送達が、本明細書に記載のPKプロファイルのいずれか(例えば、発明の概要欄の[46]~[62]に示すもの)をもたらすように調整され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、神経疾患または神経障害(例えば、本明細書に記載されているもののいずれか)の治療を必要とする対象のその神経疾患または神経障害を治療する方法であって、(a)第1の経皮パッチ(例えば、発明の概要欄の[18]~[35]に示すもの)を1日1回から1週間に1回の投薬頻度で対象に貼付して、第1の1日用量(典型的には約15mg~約50mg)のデキストロメトルファンを対象に送達することと、(b)貼付が、本明細書に開示される薬物動態プロファイル(例えば、発明の概要欄の[46]~[62]に示すもの)のいずれかをもたらすかどうかを決定することと、任意選択で、(c)貼付が、本明細書に開示される薬物動態プロファイル(例えば、発明の概要欄の[46]~[62]に示すもの)の1つ以上をもたらすように、第1の1日用量の上限または下限を調整することとを含む、方法を提供する。好適な経皮吸収パッチ及び投薬レジメンには、本明細書に記載されているもののいずれかが含まれる。
【0134】
本明細書で述べているように、本明細書の方法は、少なくとも高デキストロメトルファン曝露(例えば、Cmax、AUCなど)に伴う副作用の発生率の減少をもたらすことになると予想される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、高デキストロメトルファン曝露(例えば、Cmax、AUCなど)に伴う1つ以上の副作用を有する対象を治療するのにも有利に使用することができる。
【0135】
本明細書の方法は、他の薬物療法と併用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、対象に抗うつ剤を投与することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、抗うつ剤は、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、エリスロヒドロキシブプロピオン、スレオヒドロキシブプロピオン、これらの化合物のいずれかの代謝物またはプロドラッグ、及びそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、本方法は、アムロジピン、カプサイシノイド(例えば、カプサイシンまたはそのエステル)、オピオイドアゴニスト(例えば、μ-オピエート鎮痛剤(例えば、トラマドール))、アデノシン作動性(adenosinergic)アゴニスト、3-(3-ジメチルアミノ-1-エチル-2-メチル-プロピル)-フェノール、ガバペンチン、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上の追加の活性薬剤を対象に投与することをさらに含むことができる。典型的には、本明細書の方法は、対象にキニジンを投与しない。ただし、いくつかの実施形態では、キニジンを投与することもある。これらの追加の薬剤は、同時にまたは順次に投与することが可能である。さらに、これらの追加の薬剤は、同じ経路または異なる経路を介して投与することができる。例えば、いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、経皮的または経口的に投与され得る。しかし、いくつかの実施形態では、追加の薬剤はまた、同じ経皮送達デバイスにおいてデキストロメトルファンと併用されてもよい。
【0136】
定義
本明細書で使用する場合、本発明に関連する量を修飾する「約」という用語は、例えば、日常的な試験及び取り扱い、そのような試験及び取り扱いにおける不注意による誤り、本発明にて使用される成分/材料の製造、供給源、または純度の違い、ならびにこれらに類するもの、によって起こり得る数量の変動を指す。本明細書で使用する場合、「約」特定値は、その特定値も含み、例えば、約10%は10%を含む。「約」という用語によって修飾されているか否かに関係なく、特許請求の範囲は、記載量の均等物を含む。一実施形態では、「約」という用語は、報告された数値の20%以内を意味する。
【0137】
本明細書で使用する場合、「累積透過薬物」という用語は、所与の期間中の1平方センチメートルあたりの総透過薬物量を指す。特に文脈から明らかでない限り、所与の時間(例えば、投与後24時間)における「累積透過薬物」は、時間0(すなわち、投与時間)からその所与の時間までの1平方センチメートルあたりの総透過薬物量を意味する。特に文脈から明らかでない限り、「累積透過薬物」は、本明細書に記載の方法に従って測定及び/または計算された相加平均値を指す。本明細書で使用する用語「平均値」とは、指定されていない場合、当分野の一般的な慣例に矛盾しない限り、相加平均値のことでもある。
【0138】
本明細書で使用する場合、「フラックス」という用語は、単位時間あたりに単位面積あたりの皮膚を透過した薬物の量を指す。特に文脈から明らかでない限り、「フラックス」は、本明細書に記載の方法に従って測定及び/または計算された相加平均値を指す。フラックスの一般的な単位は、1時間あたりまたは1日あたり、1平方センチメートルあたりのミリグラムである。本明細書で使用される1日当たりのデキストロメトルファンフラックスは、本明細書に記載の方法に従って測定及び/または計算された、貼付後24時間での累積透過デキストロメトルファンの相加平均値として理解されるべきである。
【0139】
本特許出願で言及されているフラックス速度は、インビボ法またはインビトロ法のいずれかによって測定されたものを意味することができる。フラックスを測定する1つの方法は、経皮送達デバイスまたは経皮製剤をヒトボランティアの既知の皮膚領域に配置し、一定の時間制約内で皮膚を透過し得る薬物の量を測定することである。当業者は、場合によっては、インビトロフラッスの絶対値が、異なる死体源を使用して測定した場合、数倍異なる可能性があることを理解するであろう。本明細書で使用する場合、ヒト死体皮膚を使用するインビトロ法によって測定されると具体的に言及される場合、フラックス速度は、実施例2に記載の方法に従って測定されると理解されるべきである。例えば、実施例2の試験済みのパッチを参照パッチとして使用することができ、これは、実施例2に従う方法で試験された場合、当業者によって一般に受け入れられる実験誤差の範囲内で、実施例2で観測されたのと同じフラックスを発生させるはずである。インビトロ法は、ヒトボランティアを使用して皮膚を透過する薬物フラックスを測定するのではなく、死体から得たヒト表皮膜を使用するが、適切に設計され実行されたインビトロ試験の結果を使用して、妥当な信頼性を備えたインビボ試験の結果を推定または予測できるということが、当業者に一般に受け入れられている。
【0140】
本明細書で使用する場合、「治療する」、「治療すること」、「治療」などの用語は、疾患または状態、及び/またはそれに伴う症状を除去、軽減、または改善することを指す。除外されるものではないが、疾患または状態を治療することは、疾患、状態、またはそれに伴う症状が完全に除去されることを必要としない。
【0141】
「治療的に有効な量」という用語は、本明細書で使用する場合、障害または状態(例えば、PBA)の1つ以上の症状の改善をもたらすか、または障害もしくは状態の出現もしくは進行を防ぐか、または障害もしくは状態の退縮もしくは治癒を引き起こすのに十分な治療剤(例えば、デキストロメトルファン)の量を指す。
【0142】
本明細書で使用する「対象」(あるいは本明細書では「患者」と呼ばれる)という用語は、治療、観測または実験の対象であった動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0143】
本明細書で使用する場合、本明細書の経皮送達デバイスの貼付または投与は、そのような経皮送達デバイスが、例えば、ヒト対象の皮膚に標準的に貼付または投与される方法に従って理解されるべきである。
【0144】
例示的実施形態
例示的実施形態A1~55
以下、非限定的な例示的実施形態A1~55を示す。
1.a.接着剤を含む接着剤層であって、前記接着剤層の約2重量%~約12重量%の量で前記接着剤中に分散したデキストロメトルファンを任意選択で含む、前記接着剤層と、任意選択で
b.リザーバ層であって、前記リザーバ層の少なくとも10重量%(例えば、約20重量%~約60重量%)の量のデキストロメトルファンを含む、前記リザーバ層と、
を含む経皮送達デバイス。
2.約2mg/日~約50mg/日のデキストロメトルファンを使用者に経皮送達するように構成されている、実施形態A1に記載の経皮送達デバイス。
3.前記経皮送達デバイスが、約5mg/日~約50mg/日(例えば、約5mg/日、約10mg/日、約20mg/日、約30mg/日、約40mg/日、約50mg/日、または前記記載値間の任意の範囲)のデキストロメトルファンを、1日以上(例えば、1.5日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、または前記記載値間の任意の範囲)の間、使用者に経皮的に送達するように構成されている、実施形態A1または実施形態A2の経皮送達デバイス。
4.約0.5mg/cm2~約8mg/cm2の総デキストロメトルファン担持量を有する、実施形態A1~3のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
5.約2mg/cm2~約6mg/cm2(例えば、約2mg/cm2、約3mg/cm2、約4mg/cm2、約5mg/cm2、約6mg/cm2,または前記記載値間の任意の範囲)の総デキストロメトルファン担持量を有する、実施形態A1~4のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
6.約5cm2~約200cm2の有効表面積を有する、実施形態A1~5のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
7.約10cm2~約150cm2の有効表面積を有する、実施形態A1~6のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
8.約30cm2~約100cm2(例えば、約30cm2、約40cm2、約50cm2、約60cm2、約70cm2、約80cm2、約90cm2、約100cm2、または前記記載値間の任意の範囲)の有効表面積を有する、実施形態A1~7のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
9.前記接着剤層が、前記接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲)の量のデキストロメトルファンを含む、実施形態A1~8のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
10.前記接着剤層が、皮膚透過促進剤をさらに含む、実施形態A1~9のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
11.前記皮膚透過促進剤が、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸、グリセロールモノオレエート、炭素鎖長がC12~C18の他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択される、実施形態A10に記載の経皮送達デバイス。
12.前記皮膚透過促進剤が、前記接着剤層の約2重量%~約15重量%の量で存在する、実施形態A10または実施形態11に記載の経皮送達デバイス。
13.前記皮膚透過促進剤が、前記接着剤層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲)の量で存在する、実施形態A10~12のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
14.前記接着剤層が、前記接着剤層の凝集力を改善するための薬剤をさらに含む、実施形態A1~13のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
15.前記接着剤層が、ビニルピロリドンポリマー(例えば、ビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー)、Kollidon(例えば、Kollidon 30 LP、Kollidon 90、またはKollidon VA64)、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及びそれらの組み合わせから選択される薬剤をさらに含む、実施形態A1~13のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
16.前記薬剤が、前記接着剤層の約1重量%~約20重量%の量で存在する、実施形態A14または実施形態15に記載の経皮送達デバイス。
17.前記薬剤が、前記接着剤層の約2重量%~約20重量%(例えば、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、または前記記載値間の任意の範囲)、例えば、約2重量%~約6重量%(例えば、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、または前記記載値間の任意の範囲)の量で存在する、実施形態A14~16のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
18.前記接着剤が感圧接着剤を含む、実施形態A1~17のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
19.前記感圧接着剤が、ポリイソブチレン接着剤、シリコーンポリマー接着剤、アクリレートコポリマー接着剤(例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、例えばDuro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物)、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態A18に記載の経皮送達デバイス。
20.前記感圧接着剤が、前記接着剤層の約50重量%~約90重量%の量で存在する、実施形態A18または実施形態A19に記載の経皮送達デバイス。
21.前記感圧接着剤が、前記接着剤層の約60重量%~約85重量%(例えば、約60重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、または前記記載値間の任意の範囲)の量で存在する、実施形態A18~20のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
22.前記接着剤層が、少なくとも1日間(例えば、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間)、継続して使用者の皮膚に接着することができる、実施形態A1~21のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
23.前記接着剤層が、約0.1mil~約10milの厚さ(例えば、約0.5mil~約10mil、約1mil~10mil)である、実施形態A1~22のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
24.前記リザーバ層が、リザーバ層の約30重量%~約50重量%(例えば、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、または前記記載値間の任意の範囲)の量のデキストロメトルファンを含む、実施形態A1~23のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
25.前記リザーバ層が、皮膚透過促進剤をさらに含む、実施形態A1~24のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
26.前記皮膚透過促進剤が、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸、グリセロールモノオレエート、炭素鎖長がC12~C18の他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択される、実施形態A25に記載の経皮送達デバイス。
27.前記皮膚透過促進剤が、前記リザーバ層の約2重量%~約15重量%の量で存在する、実施形態A25または実施形態A26に記載の経皮送達デバイス。
28.前記皮膚透過促進剤が、前記リザーバ層の約6重量%~約12重量%(例えば、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、または前記記載値間の任意の範囲)の量で存在する、実施形態A25~27のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
29.前記リザーバ層が、前記リザーバ層の凝集力を改善するための薬剤をさらに含む、実施形態A1~28のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
30.前記リザーバ層が、ビニルピロリドンポリマー(例えば、ビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー)、Kollidon(例えば、Kollidon 30 LP、Kollidon 90、またはKollidon VA64)、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及びそれらの組み合わせから選択される薬剤をさらに含む、実施形態A1~28のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
31.前記薬剤が、前記リザーバ層の約1重量%~約20重量%の量で存在する、実施形態A29または実施形態A30に記載の経皮送達デバイス。
32.前記薬剤が、前記リザーバ層の約2重量%~約20重量%(例えば、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、または前記記載値間の任意の範囲)、例えば、約2重量%~約6重量%(例えば、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、または前記記載値間の任意の範囲)の量で存在する、実施形態A29~31のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
33.前記リザーバ層が、感圧接着剤中に分散した、例えば、均一に分散した、デキストロメトルファンを含む、実施形態A1~32のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
34.前記感圧接着剤が、ポリイソブチレン接着剤、シリコーンポリマー接着剤、アクリレートコポリマー接着剤(例えばポリアクリレートビニルアセテートコポリマー、例えば非酸性ヒドロキシル官能基を有するもの、例えば本明細書に記載されているもの、Duro-Tak 87-2287接着剤及びその類似物)、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態A33に記載の経皮送達デバイス。
35.前記感圧接着剤が、前記リザーバ層の約20重量%~約80重量%の量で存在する、実施形態A33または実施形態A34に記載の経皮送達デバイス。
36.前記感圧接着剤が、前記リザーバ層の約20重量%~約65重量%(例えば、約20重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約50重量%、約60重量%、約65重量%、または前記記載値間の任意の範囲)の量で存在する、実施形態A33~35のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
37.前記リザーバ層が、約0.1mil~約10milの厚さ(例えば、約0.5mil~約10mil、約1mil~約10mil)である、実施形態A1~36のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
38.前記接着剤層及び前記リザーバ層が速度制御膜によって分離している、実施形態A1~37のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
39.デキストロメトルファンを、それを必要とする対象に投与する方法であって、実施形態A1~38、C1~21、及び発明の概要欄の[18]~[35]に示すもののいずれか1つに記載の経皮送達デバイス/パッチを前記対象に貼付することを含む前記方法、あるいは前記対象に、前記実施例における製剤A、B、C1、C2、C3、D0、D1、D2、またはE1中の成分と同じ成分または実質的に同じ成分を有する接着剤層を含む経皮送達デバイスを貼付することを含む前記方法。
40.前記対象が咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としていない、実施形態A39に記載の方法。
41.前記対象が、高代謝群として特徴付けられる、実施形態A39または実施形態A40に記載の方法。
42.前記対象が、神経疾患または神経障害に罹患している、実施形態A39~41のいずれか1つに記載の方法。
43.前記対象が、情動障害、精神障害、脳機能障害、運動障害、認知症、運動ニューロン疾患、神経変性疾患、発作障害、及び頭痛から選択される1つ以上の疾患または障害に罹患している、実施形態A39~41のいずれか1つに記載の方法。
44.前記対象が、うつ病、大うつ病性障害、治療抵抗性うつ病、治療抵抗性双極性うつ病、気分循環症を含む双極性障害、季節性情動障害、気分障害、慢性うつ病(気分変調症)、精神病性うつ病、産後うつ病、月経前不快気分障害(PMDD)、適応障害、非定型うつ病、躁病、不安障害、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥・多動性障害(ADDH)、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、双極性及び躁状態、強迫性障害、過食症、肥満または体重増加、ナルコレプシー、慢性疲労症候群、月経前症候群、薬物嗜癖または乱用、ニコチン嗜癖、心理的性機能不全、情動調節障害、及び情緒不安定、から選択される1つ以上の疾患または障害に罹患している、実施形態A39~41のいずれか1つに記載の方法。
45.前記対象が、アルツハイマー病、プリオン関連疾患、小脳性失調症、脊髄小脳変性症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、延髄性筋萎縮、フリードライヒ運動失調症、ハンチントン病、レビー小体病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、多系統萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群、皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、ウィルソン病、メンケス病、副腎白質ジストロフィー、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、筋ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、家族性痙性対麻痺、神経線維腫症、オリーブ橋小脳萎縮症または変性、線条体黒質変性症、ギラン・バレー症候群、及び痙性対麻痺、から選択される1つ以上の疾患または障害に罹患している、実施形態A39~41のいずれか1つに記載の方法。
46.前記対象が、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛(例えば、術後疼痛、神経因性疼痛)、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせに罹患している、実施形態A39~41のいずれか1つに記載の方法。
47.前記対象に抗うつ剤を投与することをさらに含む、実施形態A39~46のいずれか1つに記載の方法。
48.前記抗うつ剤が、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、エリスロヒドロキシブプロピオン、スレオヒドロキシブプロピオン、これらの化合物のいずれかの代謝物またはプロドラッグ、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態A47に記載の方法。
49.前記対象にキニジンを投与することをさらに含む、実施形態A39~46のいずれか1つに記載の方法。
50.前記対象にCYP2D6阻害剤を投与しない、実施形態A39~46のいずれか1つに記載の方法。
51.前記対象にキニジンを投与しない、実施形態A39~46のいずれか1つに記載の方法。
52.前記対象に、デシプラミン、パロキセチン、チオリダジン、ピモジド、ジゴキシン、アタザナビル、クラリスロマイシン、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、及びそれらの組み合わせのいずれも投与しない、実施形態A39~46のいずれか1つに記載の方法。
53.アムロジピン、カプサイシノイド(例えば、カプサイシンまたはそのエステル)、オピオイドアゴニスト(例えば、μ-オピエート鎮痛剤(例えば、トラマドール))、アデノシン作動性(adenosinergic)アゴニスト、3-(3-ジメチルアミノ-1-エチル-2-メチル-プロピル)-フェノール、ガバペンチン、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上の追加の活性薬剤を前記対象に投与することをさらに含む、実施形態A39~46のいずれか1つに記載の方法。
54.前記経皮送達デバイスを、例えば、最長7日間以上、または少なくとも7日間、または任意の所望の期間、1日1回貼付する、実施形態A39~53のいずれか1つに記載の方法。
55.前記経皮送達デバイスを、週に1回、または週に2回、3回、4回、5回、もしくは6回、貼付する、実施形態A39~53のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
例示的実施形態B1~26
以下、非限定的な例示的実施形態B1~26を示す。
1.デキストロメトルファンを、それを必要とするヒト対象に投与する方法であって、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイスを前記対象の皮膚に1日1回貼付することを含み、前記貼付することにより、前記ヒト対象における以下の薬物動態プロファイル、すなわち、
a.貼付後1日で、少なくとも約3ng/ml(例えば、約3ng/ml~約12ng/ml)のデキストロメトルファンの平均Cmax;
b.貼付後1日で、少なくとも約40ng*h/ml(例えば、約40ng*h/ml~約150ng*h/ml)のデキストロメトルファンの平均AUC0-24;
c.貼付後1日で、約1.5以下(例えば、約1~約1.5)のデキストロメトルファンのC24h/C12hの平均比;
d.貼付後1日で、少なくとも約1.2(例えば、約1.5~約2.5)のデキストロメトルファンのC24h/C6hの平均比;
e.貼付後1日で、約0.85~約1.3のデキストロメトルファンのC24h/C18hの平均比;
f.貼付後1日で、2ng/ml以下(例えば、2ng/ml以下、1ng/ml以下、または0.5ng/ml以下)のデキストロルファンの平均Cmax;
g.貼付後1日で、10ng*h/ml以下(例えば、10ng*h/ml以下、または5ng*h/ml以下)のデキストロルファンの平均AUC0-24;
h.貼付後1日で、少なくとも約5(少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20)の、デキストロメトルファンのCmax対デキストロルファンのCmaxの平均比;及び
i.貼付後1日で、少なくとも約5(少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、または少なくとも約25)の、デキストロメトルファンのAUC0-24対デキストロルファンのAUC0-24の平均比
のうちの1つ以上がもたらされる、前記方法。
2.前記ヒト対象が咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としていない、実施形態B1に記載の方法。
3.前記ヒト対象が、高代謝群として特徴付けられる、実施形態B1または実施形態B2に記載の方法。
4.貼付後1日で測定したとき、前記貼付することにより、20mgのデキストロメトルファンと10mgのキニジンとの組み合わせを、1日に2回、前記ヒト対象に経口投与することから観測されるデキストロメトルファンの平均Cmaxの少なくとも約30%(例えば、約30%~約80%)のデキストロメトルファンの平均Cmaxがもたらされる、実施形態B1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.貼付後1日で測定したとき、前記貼付することにより、20mgのデキストロメトルファンと10mgのキニジンとの組み合わせを、1日に2回、前記ヒト対象に経口投与することから観測されるデキストロメトルファンの平均AUC0-24の少なくとも約30%(例えば、約30%~約80%)のデキストロメトルファンの平均AUC0-24がもたらされる、実施形態B1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.貼付後1日で測定したとき、前記貼付することにより、20mgのデキストロメトルファンと10mgのキニジンとの組み合わせを、1日に2回、前記ヒト対象に経口投与することから観測されるデキストロルファンの平均Cmaxの約50%以下(例えば、約10%~約30%)のデキストロルファンの平均Cmaxがもたらされる、実施形態B1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.貼付後1日で測定したとき、前記貼付することにより、20mgのデキストロメトルファンと10mgのキニジンとの組み合わせを、1日に2回、前記ヒト対象に経口投与することから観測されるデキストロルファンの平均AUC0-24の約50%以下(例えば、約10%~約30%)のデキストロルファンの平均AUC0-24がもたらされる、実施形態B1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.前記ヒト対象が、情動調節障害、うつ病(例えば、大うつ病性障害または治療抵抗性うつ病)、脳卒中、外傷性脳損傷、発作、疼痛(例えば、術後疼痛、神経因性疼痛)、メトトレキサート神経毒性、パーキンソン病、自閉症、またはそれらの組み合わせに罹患している、実施形態B1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.前記経皮送達デバイスを、最長7日間の期間、または少なくとも7日間、または任意の所望の期間、1日に1回貼付することを含み、前記貼付することにより、前記ヒト対象における以下の薬物動態プロファイル、すなわち、
a.貼付後7日で、少なくとも約8ng/ml(例えば、約8ng/ml~約20ng/ml)のデキストロメトルファンの平均Cmax;及び
b.貼付後7日で、2ng/ml以下(例えば、2ng/ml以下、1ng/ml以下、または0.5ng/ml以下)のデキストロルファンの平均Cmax、
のうちの一方または両方がもたらされる、実施形態B1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.前記経皮送達デバイスが約5mg~約100mgのデキストロメトルファンを含む、実施形態B1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.デキストロメトルファンを、それを必要とするヒト対象に投与する方法であって、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイスを、週に1回、または週に2回、3回、4回、5回、もしくは6回、前記対象の皮膚に貼付することを含み、前記貼付することにより、前記ヒト対象における以下の薬物動態プロファイル、すなわち、
a.貼付後1日目に、少なくとも約3ng/ml(例えば、約3ng/ml~約12ng/ml)のデキストロメトルファンの平均Cmax;
b.貼付後1日で、少なくとも約40ng*h/ml(例えば、約40ng*h/ml~約150ng*h/ml)のデキストロメトルファンの平均AUC0-24;
c.貼付後1日で、約1.5以下(例えば、約1~約1.5)のデキストロメトルファンのC24h/C12hの平均比;
d.貼付後1日で、少なくとも約1.2(例えば、約1.5~約2.5)のデキストロメトルファンのC24h/C6hの平均比;
e.貼付後1日で、約0.85~約1.3のデキストロメトルファンのC24h/C18hの平均比;
f.貼付後1日で、2ng/ml以下(例えば、2ng/ml以下、1ng/ml以下、または0.5ng/ml以下)のデキストロルファンの平均Cmax;
g.貼付後1日で、10ng*h/ml以下(例えば、10ng*h/ml以下、または5ng*h/ml以下)のデキストロルファンの平均AUC0-24;
h.貼付後1日で、少なくとも約5(少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20)の、デキストロメトルファンのCmax対デキストロルファンのCmaxの平均比;及び
i.貼付後1日で、少なくとも約5(少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、または少なくとも約25)の、デキストロメトルファンのAUC0-24対デキストロルファンのAUC0-24の平均比
のうちの1つ以上がもたらされる、前記方法。
12.前記貼付することにより、前記ヒト対象における以下の薬物動態プロファイル、すなわち、
a.貼付後7日で、少なくとも約8ng/ml(例えば、約8ng/ml~約20ng/ml)のデキストロメトルファンの平均Cmax;及び
b.貼付後7日で、2ng/ml以下(例えば、2ng/ml以下、1ng/ml以下、または0.5ng/ml以下)のデキストロルファンの平均Cmax、
のうちの一方または両方がもたらされる、実施形態B11に記載の方法。
13.前記ヒト対象が咳に苦しんでおらず、かつ/または鎮咳薬を必要としていない、実施形態B11または実施形態B12に記載の方法。
14.前記ヒト対象が、高代謝群として特徴付けられる、実施形態B11~13のいずれか1つに記載の方法。
15.貼付後7日で測定したとき、前記貼付することにより、20mgのデキストロメトルファンと10mgのキニジンとの組み合わせを、1日に2回、7日間、前記ヒト対象に経口投与することから観測されるデキストロメトルファンの平均Cmaxの少なくとも約30%(例えば、約30%~約80%)のデキストロメトルファンの平均Cmaxがもたらされる、実施形態B11~14のいずれか1つに記載の方法。
16.貼付後7日で測定したとき、前記貼付することにより、20mgのデキストロメトルファンと10mgのキニジンとの組み合わせを、1日に2回、7日間、前記ヒト対象に経口投与することから観測されるデキストロメトルファンの平均AUC0-24の少なくとも約30%(例えば、約30%~約80%)のデキストロメトルファンの平均AUC0-24がもたらされる、実施形態B11~15のいずれか1つに記載の方法。
17.貼付後7日で測定したとき、前記貼付することにより、20mgのデキストロメトルファンと10mgのキニジンとの組み合わせを、1日に2回、7日間、前記ヒト対象に経口投与することから観測されるデキストロルファンの平均Cmaxの約50%以下(例えば、約10%~約30%)のデキストロルファンの平均Cmaxがもたらされる、実施形態B11~16のいずれか1つに記載の方法。
18.貼付後7日で測定したとき、前記貼付することにより、20mgのデキストロメトルファンと10mgのキニジンとの組み合わせを、1日に2回、7日間、前記ヒト対象に経口投与することから観測されるデキストロルファンの平均AUC0-24の約50%以下(例えば、約10%~約30%)のデキストロルファンの平均AUC0-24がもたらされる、実施形態B11~17のいずれか1つに記載の方法。
19.前記ヒト対象が、情動調節障害に罹患している、実施形態B11~18のいずれか1つに記載の方法。
20.前記経皮送達デバイスが約50mg~約700mgのデキストロメトルファンを含む、実施形態B11~19のいずれか1つに記載の方法。
21.疾患または障害の治療を必要とする対象における疾患または障害を治療する方法であって、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイスを前記対象の皮膚に1日1回貼付することを含み、前記貼付することにより、実施形態B1、B3~7及びB9に記載された前記薬物動態プロファイルの1つ以上がもたらされ、前記疾患または前記障害は、本明細書に記載されているもののいずれかである、前記方法。
22.前記疾患または前記障害が、神経疾患または神経障害、例えば情動調節障害である、実施形態B21に記載の方法。
23.疾患または障害の治療を必要とする対象における疾患または障害を治療する方法であって、デキストロメトルファンを含む経皮送達デバイスを、週に1回、または週に2回、3回、4回、5回、もしくは6回、前記対象の皮膚に貼付することを含み、前記貼付することにより、実施形態B11~12及びB15~18に記載された前記薬物動態プロファイルの1つ以上がもたらされ、前記疾患または前記障害は、本明細書に記載されているもののいずれかである、前記方法。
24.前記疾患または前記障害が、神経疾患または神経障害、例えば情動調節障害である、実施形態21に記載の方法。
25.前記経皮送達デバイスが、実施形態A1~38、C1~21、及び発明の概要欄の[18]~[35]に示すもののいずれかに記載の経皮送達デバイスから選択される、実施形態B1~24のいずれか1つに記載の方法。
26.前記経皮送達デバイスが、前記実施例における製剤A、B、C1、C2、C3、D0、D1、D2、またはE1中の成分と同じ成分または実質的に同じ成分を有する接着剤層を含む、実施形態B1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
例示的実施形態C1~32
以下、非限定的な例示的実施形態C1~32を示す。
1.アクリレート接着剤及びシリコーン接着剤を含む接着剤中に分散したデキストロメトルファンを含む接着剤層を含む経皮送達デバイスであって、
前記アクリレート接着剤対前記シリコーン接着剤の重量比が、約20:1~約1:20の範囲である、前記経皮送達デバイス。
2.前記アクリレート接着剤対前記シリコーン接着剤の前記重量比が、約10:1~約1:10の範囲(例えば、約10:1、約4:1、約1:1、約1:4、または前記記載値間の任意の範囲)である、実施形態C1に記載の経皮送達デバイス。
3.ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、貼付後24時間で、少なくとも約200ug/cm2(例えば、約200ug/cm2~約2000ug/cm2)の平均累積透過デキストロメトルファンを提供するように構成されている、実施形態C1または実施形態C2に記載の経皮送達デバイス。
4.ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、貼付後8時間から24時間まで、少なくとも約5ug/cm2*h(例えば、約5ug/cm2*h~約20ug/cm2*h、約10ug/cm2*h~約18ug/cm2*h)のデキストロメトルファンの平均フラックスを提供するように構成されている、実施形態C1~3のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
5.前記接着剤層が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスの平均累積透過デキストロメトルファンよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または前記記載値間の任意の範囲)高い、貼付後24時間での平均累積透過デキストロメトルファンを提供する量で、前記皮膚透過促進剤をさらに含む、実施形態C1~4のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
6.前記接着剤層が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または前記記載値間の任意の範囲)高い、貼付後8時間から24時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスを提供する量で、前記皮膚透過促進剤を含む、実施形態C1~5のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
7.前記接着剤層が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約2倍(例えば、約3倍、約4倍、約5倍、約8倍、約10倍、または前記記載値間の任意の範囲)である、貼付後4時間から8時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスを提供する量で、前記皮膚透過促進剤を含む、実施形態C1~6のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
8.前記接着剤層が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約5倍(例えば、約5倍、約8倍、約10倍、約20倍、または前記記載値間の任意の範囲)である、貼付後0時間から4時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスを提供する量で、前記皮膚透過促進剤を含む、実施形態C1~7のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
9.1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日の貼付に適した、実施形態C1~8のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
10.1日あたり少なくとも約200ug/cm2(例えば、約200ug/cm2~約20000ug/cm2)のデキストロメトルファンを、使用者に提供するように構成されている、実施形態C9に記載の経皮送達デバイス。
11.約5cm2~約200cm2のサイズを有する、実施形態C1~10のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
12.約10cm2~約100cm2のサイズを有する、実施形態C1~11のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
13.接着剤中に分散したデキストロメトルファンを含む接着剤層を含む経皮送達デバイスであって、
前記接着剤層が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスの平均累積透過デキストロメトルファンよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または前記記載値間の任意の範囲)高い、貼付後24時間での平均累積透過デキストロメトルファンを提供する量で、前記皮膚透過促進剤を含む、前記経皮送達デバイス。
14.前記皮膚透過促進剤が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、前記皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または前記記載値間の任意の範囲)高い、貼付後8時間から24時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスを提供する量である、実施形態C13に記載の経皮送達デバイス。
15.前記皮膚透過促進剤が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、前記皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約2倍(例えば、約3倍、約4倍、約5倍、約8倍、約10倍、または前記記載値間の任意の範囲)である、貼付後4時間から8時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスを提供する量である、実施形態C13または実施形態C14に記載の経皮送達デバイス。
16.前記皮膚透過促進剤が、ヒト死体皮膚を使用してインビトロで試験した場合、前記皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスのデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約5倍(例えば、約5倍、約8倍、約10倍、約20倍、または前記記載値間の任意の範囲)である、貼付後0時間から4時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスを提供する量である、実施形態C13~15のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
17.1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日の貼付に適した、実施形態C13~16のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
18.1日あたり少なくとも約200ug/cm2(例えば、約200ug/cm2~約2000ug/cm2)のデキストロメトルファンを、使用者に提供するように構成されている、実施形態C17に記載の経皮送達デバイス。
19.約5cm2~約200cm2のサイズを有する、実施形態C13~18のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
20.約10cm2~約100cm2のサイズを有する、実施形態C13~19のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
21.前記皮膚透過促進剤が、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸、グリセロールモノオレエート、炭素鎖長がC12~C18の他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択される、実施形態C13~20のいずれか1つに記載の経皮送達デバイス。
22.デキストロメトルファンを、それを必要とする対象に投与する方法であって、経皮送達デバイスを前記対象の皮膚に貼付することを含み、前記経皮送達デバイスは接着剤層を含み、前記接着剤層は、接着剤中に分散したデキストロメトルファンと、皮膚透過促進剤とを含み、前記皮膚透過促進剤は、前記貼付することにより、前記皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスを貼付してもたらされる平均累積デキストロメトルファンよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または前記記載値間の任意の範囲)高い、貼付後24時間での平均累積透過デキストロメトルファンがもたらされるような量である、前記方法。
23.前記皮膚透過促進剤が、前記貼付することにより、前記皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスを貼付してもたらされるデキストロメトルファンの平均フラックスよりも、少なくとも約25%(例えば、約25%、約50%、約100%、約150%、約200%、または前記記載値間の任意の範囲)高い、貼付後8時間から24時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスがもたらされるような量である、実施形態C22に記載の方法。
24.前記皮膚透過促進剤が、前記貼付することにより、前記皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスを貼付してもたらされるデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約2倍(例えば、約3倍、約4倍、約5倍、約8倍、約10倍、または前記記載値間の任意の範囲)である、貼付後4時間から8時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスがもたらされるような量である、実施形態C22または実施形態C23に記載の方法。
25.前記皮膚透過促進剤が、前記貼付することにより、前記皮膚透過促進剤を含まないが他の点では同等な経皮送達デバイスを貼付してもたらされるデキストロメトルファンの平均フラックスの、少なくとも約5倍(例えば、約5倍、約8倍、約10倍、約20倍、または前記記載値間の任意の範囲)である、貼付後0時間から4時間までのデキストロメトルファンの平均フラックスがもたらされるような量である、実施形態C22~24のいずれか1つに記載の方法。
26.前記経皮送達デバイスを、1日以上(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、もしくは7日、またはそれ以上)の間、1日に1回貼付する、実施形態C22~25のいずれか1つに記載の方法。
27.1日あたり少なくとも約200ug/cm2(例えば、約200ug/cm2~約20000ug/cm2)のデキストロメトルファンを、前記対象に経皮送達する、実施形態C26に記載の方法。
28.前記経皮送達デバイスが、約5cm2~約200cm2のサイズを有する、実施形態C22~27のいずれか1つに記載の方法。
29.前記経皮送達デバイスが、約10cm2~約100cm2のサイズを有する、実施形態C22~28のいずれか1つに記載の方法。
30.前記皮膚透過促進剤が、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸、グリセロールモノオレエート、炭素鎖長がC12~C18の他の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択される、実施形態C22~29のいずれか1つに記載の方法。
31.デキストロメトルファンを、それを必要とする対象に投与する方法であって、経皮送達デバイスを前記対象の皮膚に貼付することを含み、前記経皮送達デバイスは、前記貼付することにより、約2mg/日~約50mg/日のデキストロメトルファンが前記対象に経皮送達されるようなフラックス特性を有するように構成される、前記方法。
32.前記経皮送達デバイスは、前記貼付することにより、約5mg/日~約50mg/日(例えば、約5mg/日、約10mg/日、約20mg/日、約30mg/日、約40mg/日、約50mg/日、または前記記載値間の任意の範囲)のデキストロメトルファンが、1日以上(例えば、1.5日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、または前記記載値間の任意の範囲)の間、前記対象に経皮送達されるようなフラックス特性を有するように構成される、実施形態C31に記載の方法。
【実施例】
【0147】
実施例1.デキストロメトルファン経皮パッチの調製
本実施例は、デキストロメトルファン薬物含有接着剤パッチを調製するための1つの手順を示す。デキストロメトルファン塩基は、一般に市販されている。あるいは、デキストロメトルファン塩基は、例えば、モル比1:1のNaOHを使用して、臭化水素酸デキストロメトルファンを遊離塩基に変換することによって調製することができる。
【0148】
製剤Aの調製では、皮膚透過促進剤を含まないアクリレート接着剤を使用する。150mLのビーカー中に、10gのエチルアセテートを加え、続いて2.5gのDXMを加えた。このブレンドを混合してDXMを溶解させた。混合しながら、このブレンドを、アクリルPSA、固形分50.5%のDuroTak 87-2287(Henkel Adhesives)50gに加えた。バッチの内容物を30分間、または内容物が均一になるまで混合した。次に、得られた湿潤溶液を、10milのキャスティングアプリケーターを使用して、剥離ライナー(Loparex Corp.)上にキャスティングした。このキャスティングを強制空気オーブン内で80℃にて10分間乾燥させた。乾燥後、乾燥キャスティングをパッチバッキングフィルムScotchpak 1012(3 M Drug Delivery Systems)に積層させた。パッチを、30cm2の形状にダイカットした。得られた経皮パッチは、接着剤マトリックスの厚さが2.5mil(1パッチあたり約180mgの接着剤マトリックスの重量)で、9%のDXMを含んでいる。HPLC分析により、パッチに約16mgのDXMが含まれていることが確認された。パッチは皮膚接着性が良好であり、48時間を超えて皮膚にぴったりと付着した。パッチをダイカットして、皮膚透過試験のためにフランツセルに固定した。25℃で6か月間、パッチ上に結晶は観測されず、経皮パッチ製剤の良好な安定性が示された。
【0149】
製剤Bの調製では、皮膚透過促進剤を含まないシリコーン接着剤を使用する。150mLのビーカー中に、10gのエチルアセテートを加え、続いて2.5gのDXMを加えた。このブレンドを混合してDXMを溶解させた。混合しながら、このブレンドを、シリコーンPSA、固形分60.0%のBio-PSA DC7-4502(Dow Corning)50gに加えた。バッチの内容物を30分間、または内容物が均一になるまで混合した。得られた湿潤溶液を、15milのキャスティングアプリケーターを使用して、フルオロポリマーコーティング剥離ライナー(3Mの1022)上にキャスティングした。このキャスティングを強制空気オーブン内で80℃にて10分間乾燥させた。乾燥後、乾燥キャスティングをパッチバッキングフィルムScotchpak 1012(3 M Drug Delivery Systems)に積層させた。パッチを、30cm2の形状にダイカットした。得られた経皮パッチは、接着剤マトリックスの厚さが3.5milである。パッチは皮膚接着性が良好であり、48時間を超えて皮膚にぴったりと付着した。パッチをダイカットして、皮膚透過試験のためにフランツセルに固定した。25℃で6か月間、パッチ上に結晶は観測されず、経皮パッチ製剤の良好な安定性が示された。
【0150】
製剤Cの調製では、アクリレート接着剤とシリコーン接着剤との混合物を使用し、皮膚透過促進剤を使用せず、デキストロメトルファンの濃度を9%に維持する。上記の同様の手順に従って、シリコーン/アクリルPSAをそれぞれ54/46、18/82、及び9/91の比率でブレンドした3つの製剤、製剤C1~C3を調製した。
【0151】
製剤Dの調製
上記と同様の手順に従って、種々の量の透過促進剤を含む製剤も調製する。製剤D1は、ミリスチン酸イソプロピルを7.7%の量で含み、製剤D2は、ミリスチン酸イソプロピルを10%の量で含む。対照として、ミリスチン酸イソプロピルを含まない製剤D0も調製した。
【0152】
以下の表1は、上記で調製した異なる製剤の成分を重量パーセントでまとめている。(表中のパーセント値は、乾燥重量を指す。)
【0153】
【0154】
製剤Eの調製
上記と同様の手順に従って、結晶化抑制剤を含む製剤も調製した。製剤E1は、乾燥重量パーセントで、約10%のデキストロメトルファン塩基と、約10%のミリスチン酸イソプロピルと、約70%のポリアクリレート接着剤(DuroTak 387-2287)と、約10%の結晶化抑制剤プラスドンK-29/32(ポリビニルピロリドン)とを含有する。これらの成分をイソプロパノールとブレンドし、均一な溶液を形成した。この湿式製剤は、次の成分、約63.1%のポリアクリレート接着剤(DuroTak 387-2287、固形分約50%)と、約4.5%のプラスドンK-29/32(ポリビニルピロリドン)と、約4.5%のミリスチン酸イソプロピルと、約4.5%のデキストロメトルファン塩基と、約23.4%のイソプロピルアルコールとを有する。この湿式製剤を剥離ライナー(3MilPET8310、シリコーンコーティングポリエステルフィルム)上にキャスティングし、そして乾燥させた。その後、乾燥したキャスティングをパッチバッキングフィルムであるScotchpak 9733 PETフィルムに積層させた。パッチを所望のサイズにダイカットした。一例では、この製剤を用いて、例えば、約56mgのデキストロメトルファン塩基を有し、約70cm2の大きさである経皮パッチを調製した。
【0155】
実施例2.経皮フラックス試験
パッチからのデキストロメトルファンの経皮フラックスを、フランツ拡散セル法によりヒト死体皮膚を使用して試験した。
【0156】
実施例1で調製したパッチ製剤A、B、及びCを、以下のプロトコルを使用した皮膚透過試験に使用した:
・フランツセル組立体-Logan Instruments(6セルユニット)
・各セルは12mLの容積、1.5cmの直径のオリフィスを有する
・受容体媒体はリン酸緩衝液(PBS)pH7.4である
・セル温度を37℃に維持する
・サンプリング方法:HPLCアッセイ用に1.5mLを取り、セルを空にし、未使用の媒体と交換する
・サンプリング時点:4時間、8時間、12時間、24時間、及び48時間
・死体皮膚を使用し、New York Fire Fighters Skin Bankから入手する。皮膚番号MM07116、白人、58歳、男性、皮膚部位:左後脚。
・媒体のアッセイ方法:HPLCベース。
【0157】
製剤A及びBの試験結果を以下の表1に示す(
図1も参照)。皮膚透過実験は、48時間(2日間)まで実施した。提示した値は、1cm
2あたりの透過したDXMの累積量(すなわち、μg/cm
2)である。
【0158】
【0159】
製剤C1~C3の試験結果を以下の表3に示す(
図2も参照)。皮膚透過実験は、7日間まで実施した。提示した値は、1cm
2あたりの透過したDXMの累積量(すなわち、μg/cm
2)である。
【0160】
【0161】
実施例3A.透過促進剤を含むデキストロメトルファン経皮パッチ
製剤D0~D2も、実施例2に記載したのと同じプロトコルに従って、それらのインビトロ皮膚フラックス特性について試験した。結果を表4Aに示す(
図3Aも参照)。
【0162】
【0163】
結果は、IPMのレベルが10%まで増加すると、DXMの皮膚透過が大幅に向上することを明確に示している。
【0164】
実施例3B.プラスドン(PVP)を含むデキストロメトルファン経皮パッチ
製剤E1についてもまた、ダーマトーム採皮されたヒト死体皮膚を使用して、それらのインビトロ皮膚フラックス特性を試験した。
装置:垂直型拡散セル
肌タイプ:ヒト死体皮膚(ダーマトーム採皮)
投与面積:1.767cm2(拡散セルの直径1cmの開口部)
拡散セル容積:12mL
受容媒体:リン酸緩衝食塩水 pH7.4
媒体温度:37℃±1.0℃
サンプリング間隔:4時間、8時間、24時間、及び48時間
サンプリング容量:1.5~2.0mL
【0165】
実施例2に記載したプロトコルに従って、製剤E1の透過性を試験した。様々な時点における単位面積あたりの受容体区画への(各細胞での透過した薬物の濃度から算出される)薬物の透過量(すなわち、μg/cm2)を報告する。
【0166】
【0167】
【0168】
デキストロメトルファンのインビトロ透過が、プラスドンの添加により著しく促進されるのを観測したことは驚くべきことであった。実施例3Aによれば、プラスドンを含まない同じ製剤が達成した24時間フラックスは、約334μg/cm2だけであった。したがって、プラスドンを配合することで、デキストロメトルファンの24時間での累積インビトロ透過は2倍以上となった。両試験は、調製したばかりのパッチに対して実施された。この透過促進は、インビボ試験でも観測された(実施例4参照)。
【0169】
実施例4.インビボ薬物動態試験
実施例4A.単回投与薬物動態試験
この実施例は、試験用デキストロメトルファンパッチ(15mg/24hr)の相対的バイオアベイラビリティを、絶食条件下で、NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)カプセル、20mg/10mg(Avanir Pharmaceuticals,Inc.)のバイオアベイラビリティと比較して評価するために、健康な成人男女16名を対象に実施した非盲検、無作為化、2治療、2期間、2系列交差試験に関する。この試験の16人の対象は全て遺伝子型決定されて、CYP2D6遺伝子型を決定した。16人の対象全てを、デキストロメトルファンの高代謝群として特徴付けることができる。例えば、遺伝子型に基づいて、「正常機能遺伝子コピー3個以上」を含む場合に対象をUMとして割り当てた、Treducu A.L.D. et al. Frontiers in Pharmacology, vol. 9, Article 305 (April 2018)を参照されたい。
【0170】
この試験では、デキストロメトルファンとデキストロルファン(デキストロメトルファンの1つの代謝物)の両方の薬物動態プロファイルを測定した。
【0171】
試験の一期間では、1つのデキストロメトルファンパッチ、35mgのDXMを含む45cm2パッチであって、薬物含有接着剤パッチであり、DIA層が、約80重量%の接着剤(Duro-Tak 87-2287)と、約10重量%のデキストロメトルファン塩基と、約10重量%の透過促進剤ミリスチン酸イソプロピルとを含み、約15mg/24時間を経皮的に送達するように設計された、パッチを、少なくとも10時間の夜間絶食の後、24時間、健康な対象の左上腕外側に貼付した。もう1つの試験期間では、NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)カプセル20mg/10mg、1カプセルを、少なくとも10時間の夜間絶食の後(0時間)、12時間おき(0時間目及び12時間目)に(24時間にわたり40mg/20mgの総用量で)投与した。
【0172】
NUEDEXTA(登録商標)治療では、対象は0時間目投与の前にのみ、少なくとも10時間、夜間絶食とした。投与の順序は、2系列の無作為化スケジュールに従う。血液サンプルは、各試験期間において、投与前、及び試験薬物を投薬した(0時間)後96時間にわたり間隔を置いて採集した。対象は、各試験期間において、投薬の少なくとも10時間前(0時間)から、36時間目の血液サンプル採集後まで、臨床施設に拘束され、48時間目、72時間目、及び96時間目の血液サンプル採集のために臨床施設に戻された。投与(0時間)間隔は少なくとも10日であった。
【0173】
デキストロメトルファン及びその活性代謝物であるデキストロルファンの血漿中濃度を、十分に検証された分析手順によって測定した。平均生物学的同等性方法論を使用した統計分析を実施して、デキストロメトルファン及びデキストロルファンのみの参照品に対する試験製剤のバイオアベイラビリティを評価した。
【0174】
この試験は、NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)カプセルの既知の薬物動態、臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジンカプセルに関するFDAガイダンス草案、ならびに絶食条件下でのバイオアベイラビリティ/生物学的同等性試験の実施について一般的に受け入れられている実施の基準及び粘着力試験に基づいて設計された。キャリーオーバー効果の可能性を最小限に抑えるため、この試験では少なくとも10日間のウォッシュアウト期間を選択した。
【0175】
この試験はまた、この試験の結果に影響を与える可能性のある潜在的な薬物間相互作用を最小限に抑えるように設計した。例えば、MAO阻害剤、三環系抗うつ薬、SSRI、TdPまたは心不整脈に関与する薬物、CYP3A4またはCYP2D6などの誘導剤または阻害剤などの薬物の服用について、対象をスクリーニングし監視した。
【0176】
薬物動態の結果
血液サンプルは(投薬分に関連して)以下の時点で採集した。すなわち、投与前(0時間)、ならびに投与後0.5、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、9.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、20.0、24.0、24.5、25.0、26.0、30.0、36.0、48.0*、72.0*、及び96.0*時間(*再来時サンプル)である。次に、サンプルを処理し、検証済みの分析方法を使用して、デキストロメトルファンとデキストロルファンの両方の濃度を分析した。全ての薬物動態計算及び統計計算には、SAS(登録商標)、バージョン9.4以降を、使用した。
【0177】
表5A~5Dは、この試験の結果を示す。表5A及び表5Cは、1日に2回NUEDEXTA(参照)を経口投与した対象のデキストロメトルファン及びデキストロファンの血漿中濃度をそれぞれ示す。表5B及び表5Dは、デキストロメトルファンパッチを用いて24時間治療を受けた対象における、デキストロメトルファン及びデキストロルファンの血漿中濃度をそれぞれ示す。
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
この試験に基づいて、DXMパッチを用いて治療を受けた対象では、パッチ治療で観測されたDXMのAUC0-24、AUC0-t、及びCmaxのDRPに対する比率が、NUEDEXTA治療で観測されたそれぞれの比率よりも有意に高いことも予想外に明らかになった。例えば、パッチ治療で観測された、DXM対DRPのAUC0-24の平均比は、NUEDEXTA治療で観測された平均比のほぼ3倍(24.54:9.03)であり、以下の表6を参照されたい。
【0183】
【0184】
図4A及び
図4Bは、0~96時間のデキストロメトルファン濃度及びデキストロルファン濃度のグラフを示す。
【0185】
実施例4B.複数回投与の薬物動態試験
この実施例は、試験用デキストロメトルファンパッチ(35mg/24hr)(適用できる場合、1日目から7日目まで7日間(7回)、24時間ごとに1パッチの貼付/貼り替えを行う[8日目の午前に最終貼付を終了])のバイオアベイラビリティを、NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)カプセル、20mg/10mg(Avanir Pharmaceuticals,Inc.;1日目から7日目まで12時間ごとに1カプセルずつ7日間(14回)投与し、1日の総量として40mg/20mgを24時間かけて投与する。)のバイオアベイラビリティと比較して評価するために、健康な成人男女20名を対象に実施した非盲検、無作為化、多剤投与、2治療、2期間、2系列交差試験に関する。試験用デキストロメトルファンパッチは、製剤E1による薬物含有接着剤層を有する。試験用デキストロメトルファンパッチはそれぞれ、約56mgのデキストロメトルファン塩基、約392mgのDuro-Takポリアクリレート(Duro-Tak 387-2287)接着剤、56mgのプラスドンK-29/32約、及び約56mgのミリスチン酸イソプロピルを含み、約70cm2の大きさである。
【0186】
この試験では、デキストロメトルファンとデキストロルファンの両方を測定した。
【0187】
試験の一期間において、対象は、1×試験用デキストロメトルファンパッチ35mg/24hrを、適用できる場合、指定された貼付部位に24時間ごとに7日間(7回)、第1日から第7日まで(第8日目の午前、最終的にパッチを除去)貼付/貼り替えが行われる、治療Aを受けた。1日目の0時間目は少なくとも10時間の夜間絶食後に投与し、その後の投与は少なくとも6時間の絶食後に行った。血液サンプルは、各パッチ貼付前に、1日目と7日目のパッチ貼付後24時間にわたり間隔を置いて、7日目のパッチ除去後72時間にわたり間隔を置いて、採取した。
【0188】
もう1つの試験期間では、対象は、NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)20mg/10mgカプセル1個を、12時間ごとに投与し、1日目から7日目までの7日間(14回)投与される(1日の総投与量40mg/20mg、24時間でデキストロメトルファン塩基として29.31mgに相当)、治療Bを受けた。1日目の0時間目は少なくとも10時間の夜間絶食後に投与し、その後の投与は少なくとも4時間の絶食後に行った。血液サンプルは、1日目の0時間投与前に、1日目の最初の12時間の投薬間隔にわたって間隔を置いて、5日目と6日目の午前(0時間)及び夜(12時間)の投薬前に、7日目の午前(0時間)の投薬前に、7日目の2回の12時間投薬間隔(すなわち7日目の午前投与後24時間)にわたって、採取した。
【0189】
対象は、各試験期間において、1日目の0時間投与の少なくとも10時間前から、7日目の0時間投与の少なくとも36時間後(すなわち1日目の0時間投与の180時間後)まで、臨床施設に拘束された。治療Aを受けた被験者は、48時間、72時間、96時間の血液サンプル採取のために臨床施設に戻った。期間Iの最終投与から期間IIの最初の投与までの間隔は16日であった。
【0190】
デキストロメトルファン及びその活性代謝物であるデキストロルファン(非共役)の血漿中濃度を、十分に検証された分析手順によって測定した。2つの医薬品を7日間投与した後、7日目に、参照品に対する試験製剤のバイオアベイラビリティを評価するために、分散分析(ANOVA)手法を用いた統計分析を実施した。
【0191】
パッチ貼付部位は、対象の上外腕、前胸部、または上背部のいずれかである。貼付後24時間(±5分)でパッチを取り外した。
【0192】
薬物動態サンプル採集
治療A:1日目、0時間のパッチ貼付前60分以内、ならびにパッチ貼付1.0、2.0、4.0、6.0、8.0、10.0、12.0、14.0、16.0、18.0、20.0、22.0、及び23.0時間後に、7mL静脈血を、冷却されたK3EDTAバキュテナーで採集した。2日目には、パッチ貼付前†に投与前のサンプルを採集した。このサンプルは、1日目の貼付後24.0時間のサンプルに相当する。3日目から6日目まで、各パッチ貼付前†に投与前のサンプルを採集した。7日目に、パッチ貼付前5分以内と、投与後1.0、2.0、4.0、6.0、8.0、10.0、12.0、14.0、16.0、18.0、20.0、22.0、23.0、24.0(パッチ除去前5分以内)、24.5、25.0、26.0、28.0、30.0、32.0、36.0、48.0*、72.0*、及び96.0*時間とで、投与前サンプルを採集した(*再来時サンプル)。†サンプルは各投薬の直前に採集されるが、必要に応じて投薬活動に対応するために、-5分の許容差がある。
【0193】
治療B:1日目、0時間の午前の投薬前60分以内、ならびに投与1.0、2.0、3.0、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、10.0、及び12.0†時間後に、7mL静脈血を、冷却されたK3EDTAバキュテナーで採集した。5日目及び6日目には、各用量投与(5日目及び6日目の0時間投与及び12時間投与)†の前に、投与前サンプルを採集した。7日目には、投薬前5分以内†と、投与後1.0、2.0、3.0、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、8.0、12.0†、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、20.0、及び24.0時間とに、投与前サンプルを採集した。†サンプルは各投薬の直前に採集されるが、必要に応じて投薬活動に対応するために、-5分の許容差がある。
【0194】
全ての時間は投薬分に対するものである。採集後、サンプルを処理して分析した。薬物動態及び統計サービスは、全ての薬物動態及び統計計算にSAS(登録商標)、バージョン9.4以降を使用して実行した。
【0195】
以下の薬物動態パラメータを、試験品及び参照品に関して各対象及び各分析物について決定した。
AUC0-12,D1:時間ゼロ(0)から治療Bの初回投与後1日目の午前12時間の投薬間隔の終了までの血漿中濃度時間曲線下面積
AUC0-24,D1:時間ゼロ(0)から治療Aの初回投与後1日目の24時間投薬間隔の終了までの血漿中濃度時間曲線下面積
AUC0-12,D7:時間ゼロ(0)から治療Bの7日目の午前12時間の投薬間隔の終了までの血漿中濃度時間曲線下面積
AUC0-24,D7:治療Aでは時間ゼロ(0)から7日目の24時間投薬間隔の終了まで、治療Bでは午前(0時間)投与から24時間での午後12時間の投薬終了までの2つの12時間投薬間隔にわたる、血漿中濃度時間曲線下面積
AF治療A:治療Aの蓄積率治療A(AUC0-24,D7をAUC0-24,D1で割ったもの)
AF治療B:治療Bの蓄積率治療B(AUC0-12,D7をAUC0-12,D1で割ったもの)
Cavg,D7:AUC0-24,D7/24時間として算出される、7日目の観測平均血漿中濃度
Cmax,D1:治療Aの24時間投薬間隔と治療Bの最初の12時間投薬間隔とにわたる1日目の最大観測血漿中濃度
Cmax,D7:7日目の最大観測血漿中濃度
Cmin,D7:7日目の最小観測血漿中濃度
Cpre,Dx:1~7日目の午前および午後に観測される血漿中濃度。ここで、x=1~7は治療A、x=1M、5M、5E、6M、6E、7M、7E(M=午前、及びE=午後)は治療Bを意味する。
C12,D1:1日目の治療Bの最初の12時間投薬間隔終了時に観測される投与前血漿中濃度
C24,D7:最後の投薬間隔の終了時(すなわち、治療Aの場合は7日目のパッチ貼付後24時間、治療Bの場合は7日目の午前0時間投与後24時間である7日目午後の12時間投与後12時間)に観測される血漿中濃度変動:[(Cmax,D7-Cmin,D7)/Cavg,D7]として算出される
変動度:[(Cmax,D7-Cmin,D7)/Cave,D7]として算出される。7日目に治療Bでは、Cmax,D7とCmin,D7とが異なる投薬間隔になり得る。
振幅率:[(Cmax,D7-Cmin,D7)/Cmin,D7]として算出される。7日目に治療Bでは、Cmax,D7とCmin,D7とが異なる投薬間隔になり得る。
Tmax,D1:治療Aでは24時間の投薬間隔にわたり、治療法Bでは最初の12時間の投薬間隔にわたり、1日目に最大観測血漿中濃度に達するまでの時間
Tmax,D7:7日目に最大観測血漿中濃度に達するまでの時間
λz,D7:7日目の最終投与後の見かけの一次終末相消失速度定数(治療Aのみ)
t1/2,D7:7日目の最終投与後の見かけの一次終末相消失半減期(治療Aのみ)
MRDx代謝比、治療Aでは1日目(MRD1)と7日目(MRD7)のデキストロメトルファンAUC0-24とデキストロルファンAUC0-24の比として、治療Bでは1日目(MRD1)と7日目(MRD7)のデキストロメトルファンAUC0-12とデキストロルファンAUC0-12の比として表現される;MRD7/MRD1比をMRD7/D1として表現する
CLTD 治療Aの7日目におけるデキストロメトルファンの見かけの経皮クリアランス(CLTD=CL/F=用量/AUC0-24,D7、ただし用量=35mg)
CLo 治療Bの7日目におけるデキストロメトルファンの見かけの経口クリアランス(CLo=CL/F=用量/AUC0-12,D7、ただし用量=14.66mg、及び=用量/AUC0-24,D7、ただし用量=2×14.66mg)
【0196】
薬物動態パラメータの相加平均(未変換)をまとめた表を、デキストロメトルファンについては表7に、デキストロルファンについては表8に示す。幾何平均、幾何平均の比、それらに関連する90%信頼区間、及びANOVA(ln変換)に基づく対象内CV(ISCV%)の値を、デキストロメトルファンについては表9に、デキストロルファンについては表10に示す。ヘルマート対比による定常状態の評価のための解析結果を、デキストロメトルファンについては表11に、デキストロルファンについては表12に示す。
【0197】
治療A(試験A、パッチ)では、デキストロメトルファンの平均血漿中濃度は、最初のパッチ貼付から16時間かけて上昇し、その後、濃度は平均Cmax,D1の10990pg/mL(中央値Tmax,D1:18.0時間)付近で維持され、貼付後24時間目にパッチを取り外すまで濃度の変動はほとんどなかった。ほとんどの対象において、濃度は投与後10~14時間までにプラトーに達し、濃度は3日目までに安定化し,その後の4日間は比較的一定であったことが、定常状態到達のためのヘルマート対比法によるその期間の投与前濃度の評価から示され、3日目以降、ヘルマート対比における午前の投与前デキストロメトルファン濃度の最小二乗幾何平均(LSGM)比は、90%超となった(3日目と4~7日目の対比でp=0.0941)。7日目までに、最後のパッチの24時間貼付期間にわたってデキストロメトルファン濃度変動(平均変動:0.41)及びデキストロファン濃度変動(平均変動:0.43)は小さく、デキストロメトルファンの平均ピーク濃度は11.9時間の中央値Tmax,D7で17866pg/mLに達した。1日目から7日目までのAUC蓄積率は、デキストロメトルファンで2.1、デキストロルファンで2.5であり、両方の分析物でほぼ同じであった。8日目にパッチを取り外した後、デキストロメトルファン及びデキストロルファンの濃度は減少し、平均終末相半減期はそれぞれ17時間及び18時間であった。
【0198】
治療B(参照B、NUEDEXTA(登録商標)カプセル)では、1日目のデキストロメトルファンの血漿中曝露の平均ピーク(9691pg/mL)は、試験Aの平均ピーク(10990pg/mL)とほぼ同じであった。しかし、キニジンによるデキストロルファンへのデキストロメトルファン代謝の抑制度は、デキストロメトルファンの平均蓄積率が8.5と高く、デキストロルファンの平均蓄積率が1.9とかなり低く、デキストロメトルファンとデキストロルファンとの代謝AUC0-12比が1日目と比較して7日目で約5倍高い(すなわち、幾何平均MRD7/MRD1=4.81;表9参照)ことから示されるように、参照Bでは1日目と比較して7日目でより顕著であった。Cmaxについても1日目と7日目のデータを用いて同様の結果が観測された。
【0199】
キニジンの最大抑制効果は、午前の0~12時間の投薬間隔(27.0L/hr)と、0~24時間の午前および午後の投薬間隔の組み合わせ(26.8L/hr)との平均CLo値が類似していること、及び定常状態解析において、6日目の午前の投与前デキストロメトルファン濃度(Cpre,D6M)の7日目の濃度(Cpre,D7M及びC24,D7)に対するLSGM比93.3%から、理論的定常状態の少なくとも90%が6日目までに達成されたと考えられることから、7日目までに安定化したことが示された。3つのヘルマート対比のp値は非常に統計的に有意であり(p<0.001;表11参照)、7日目までに定常状態に達しなかったことを示唆している。しかし、ANOVAにおける残留変動が小さいため、ヘルマート対比平均の小さな差(<10%)の間に統計的有意差を検出する可能性が高くなった。
【0200】
CLo(参照B幾何平均:25.8L/h)は、7日目のCLTD(試験A幾何平均:113.9L/h)よりも約4.4倍低い値であった。この試験品及び参照品の複数回投与特性の違いにより、7日目の24時間にわたる試験品Aのデキストロメトルファンバイオアベイラビリティは参照品Bに対して約75%低く、LSGMの試験/参照(A/B)比はCmax,D7が25.56%、C24,D7が27.60%、AUC0-24,D7が26.89%となった。1名を除く20名の対象全員が、7日目の試験Aのデキストロメトルファン濃度が低かった。この対象は、1日目と7日目の試験Aのデキストロメトルファン濃度が最も高く、遺伝子解析で確認されたように、低CYP2D6代謝群であった。
【0201】
代謝ジェノタイピングの結果、1名の被験者が遺伝的に低CYP2D6代謝群であることが判明した。その他の対象は、高代謝群(N=3)、ヘテロ型高代謝群(N=13)、または中間代謝群(N=3)のいずれかの特徴を有している。
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
全体として、薬物動態の結果は、パッチからの薬物放出が7日間一貫しており、定常状態での薬物蓄積率が2.1であり、デキストロメトルファン濃度の変動が小さいことを示している。
【0216】
試験品と参照品との複数回投与特性の違いにより、7日目の24時間におけるデキストロメトルファンのバイオアベイラビリティは参照Bに対して試験Aが約75%低く、LSGMの試験と参照との比率はCmax,D7が25.56%、C24,D7が27.60%、AUC0-24,D7が26.89%であった。1名の対象を除く20名の対象全員が、7日目の試験Aのデキストロメトルファン濃度が低かった。この対象は、1日目と7日目の試験Aのデキストロメトルファン濃度が最も高く、表現型及び遺伝子型的に低CYP2D6代謝群であった。これらのデータは、複数回投与条件下でのNUEDEXTA(登録商標)カプセルと比較したパッチからのデキストロメトルファンの相対的バイオアベイラビリティが、対象のCYP2D6代謝群状態によって影響を受ける可能性があることを示唆している。
【0217】
要約すると、デキストロメトルファンの相対的バイオアベイラビリティは、デキストロメトルファンパッチ35mg/24時間を1日1回7日間貼付した後、NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)カプセル1×20mg/10mgを12時間おきに7日間絶食条件下で経口投与した場合と比較して約4分の1であった。7日目に経口カプセルと比較してパッチからの相対的バイオアベイラビリティが低いのは、参照品の1日目と比較して、7日目のキニジンによるデキストロメトルファンからデキストロルファンへの代謝の抑制度が高いことに起因する。
【0218】
この試験(デキストロメトルファンパッチ、35mg/24時間の1日1回貼付の7日目に113.9L/h)及び実施例4Aに続く試験(デキストロメトルファンパッチ、15mg/24時間の1日貼付で93.4L/h)からの幾何平均CLTD(パッチ)値の類似性に基づいて、パッチからのデキストロメトルファンの薬物動態は線形(すなわち、用量及び時間に依存しない)に見えるが、NUEDEXTA(登録商標)(臭化水素酸デキストロメトルファン及び硫酸キニジン)カプセルからのデキストロメトルファンの薬物動態は、キニジンによるデキストロメトルファン代謝の時間依存性の抑制の結果として非線型である。
【0219】
実施例4Aに示した試験における1日目のCLTD及びCLo値は、1.07の用量正規化AUC0-∞幾何平均比から示されるように非常に類似しており、したがってデキストロメトルファンの総血漿中曝露(AUC)が、同様の1日用量での1日目の24時間にわたるパッチ及びカプセルで、類似しているはずであることを意味している。一方、CLoは、この試験では7日目にCLTDよりも約4.4倍低く、これは、デキストロメトルファンのCYP2D6代謝に対するキニジンの阻害効果が時間依存的であり、1日目から7日目にかけて大きさが増加することを示している。したがって、実施例4Aに示した試験からの1日目の薬物動態データに基づいて15mg/24時間から35mg/24時間に用量を増加させて、投薬初期24時間にわたってパッチ及びカプセルについて同様の血漿中曝露を達成し、その後の複数回投与療法(7日目)の間にカプセルと比較してピーク及び総血漿中曝露が約4分の1に減少することは、カプセルからのデキストロメトルファンの非線形的な時間依存薬物動態特性から予想できないことである。したがって,パッチの投薬レジメンを変更することなく、パッチ及びカプセル中のデキストロメトルファンの同様の全身曝露を、単回投与(1日目)から複数回投与(7日目)まで、一貫して達成する可能性はない。
【0220】
残留デキストロメトルファン分析
臨床現場から戻った貼付(装着)されたパッチのデキストロメトルファン含有量を評価した。十分に検証済みのHPLCメソッドを使用して、経皮送達システム中のデキストロメトルファンの同定と含有量測定とを行った。
【0221】
各パッチは、抽出溶媒であるメタノール/水中で加熱せずに超音波処理することによって抽出し、その後、抽出されたデキストロメトルファンをUV検出器付きのアイソクラティック逆相HPLCで定量した。溶離は、移動相A:アセトニトリル:メタノール(80:20)、及び移動相B:水を含む移動相で行われる。移動相A:移動相Bの比率は78:22である(0.1%トリフルオロ酢酸を含む)。カラムはGeminiC18,5μm、150×4.6mm、110Aで、40℃に維持し、UV検出器は360nmに設定した。
【0222】
その結果(表13A/13B)、着用したパッチ内の平均残留デキストロメトルファンは、約14.9mgから約23.6mgの範囲であることを示している。したがって、デキストロメトルファンの1日の送達量は約32.4mgから約41.1mgであり、インビトロフラックスデータに基づく予測された35mgの送達と一致する。
【0223】
【0224】
【0225】
実施例5.多層パッチ設計
この実施例では、新規な多層設計について説明する。
【0226】
図5に示すように、本明細書の実施形態に有用な例示的なパッチ設計は、接触層及びリザーバ層を含むことができる。接触層(
図5の上層)は、以下の成分、すなわち、1)接着剤(例えば、DURO-TAK 87-2287):約77.5%~約75%;2)薬物(デキストロメトルファン塩基):約10%;3)促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル-IPM):約10%;及び4)Kollidon、例えばKollidon VA64:約2.5%~約5%、を有することができる。リザーバ層は、以下の成分、すなわち、1)接着剤(例えば、DURO-TAK 87-2287):約57.5%~約20%;2)薬物(デキストロメトルファン塩基):約30%~約50%;3)促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル-IPM):約10%;及び4)Kollidon、例えばKollidon VA64:約2.5%~約20%、を有することができる。下層は、バッキング層であり得るか、または上層と同じような接着剤層であり得る。好適なバッキング層について本明細書で記載されている。Kollidonは、ビニルピロリドンポリマー(例えば、ビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー、例えばKollidon VA64)を指す商標名である。貼付する前に、接触層は、典型的には、剥離ライナーで保護されている。好適な剥離ライナーも、本明細書に記載されている。
【0227】
一例では、多層パッチは、60cm2以上、例えば、約60cm2~約150cm2のサイズを有することができる。
【0228】
一例では、多層パッチは、70cm2のサイズを有することができ、合計約370mgのデキストロメトルファン塩基を含むように設計されている。このようなパッチは、7日間の貼付に好適であり、1日あたり約20mg以上のデキストロメトルファンを7日間経皮送達することができる(7日間にわたり、合計約140mg以上の送達)。
【0229】
概要及び要約のセクションではなく、発明を実施するための形態のセクションは、特許請求の範囲を解釈するために使用されることが意図されていることを理解すべきである。概要及び要約のセクションは、発明者(複数可)によって企図される本発明の例示的な実施形態の全てではなく、1つ以上の実施形態を記載することがあり、したがって、決して本発明及び添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0230】
本発明は、明記された機能及びそれらの関係の実装を示す機能的構成要素を用いて上記で説明されてきた。これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、本明細書では適宜定義されてきた。明記された機能とそれらの関係が適切に実行される限り、代替境界を定義することができる。
【0231】
属として記載された本発明の態様に関して、全ての個々の種は、個別に、本発明の別個の態様と見なされる。本発明の態様が、ある特徴を「含む(comprising)」として記載される場合、実施形態はまた、その特徴「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」と考えられる。
【0232】
特定の実施形態の前述の説明は、発明の一般的な性質を完全に明らかにするもので、したがって他者が、当該技術の範囲内の知識を適用することにより、過度の実験をすることなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態を種々の用途のために、容易に変更及び/または適合することができる。したがって、そのような適合及び変更は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の等価物の意味及び範囲内にあることが意図されている。本明細書の専門語または専門用語は限定ではなく説明を目的とするものであり、したがって本明細書の専門語または専門用語は、教示及びガイダンスに照らして当業者によって解釈され得ることを理解すべきである。
【0233】
本発明の幅及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【0234】
本明細書に記載の種々の態様、実施形態、及び選択肢の全ては、あらゆる変形形態で組み合わせることができる。
【0235】
本明細書において言及された全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が、参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されている場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。この文書の用語の任意の意味または定義が、参照により組み込まれた文書の同じ用語の任意の意味または定義と矛盾する場合は、この文書のその用語に割り当てられた意味または定義が優先するものとする。
【国際調査報告】