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▶ アレクトル エルエルシーの特許一覧

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  • 特表-抗MERTK抗体及びその使用方法 図1
  • 特表-抗MERTK抗体及びその使用方法 図2
  • 特表-抗MERTK抗体及びその使用方法 図3A
  • 特表-抗MERTK抗体及びその使用方法 図3B
  • 特表-抗MERTK抗体及びその使用方法 図3C
  • 特表-抗MERTK抗体及びその使用方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】抗MERTK抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230508BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20230508BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230508BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230508BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P37/02
A61P25/00
A61P27/02
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559492
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 US2021024970
(87)【国際公開番号】W WO2021202590
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/003,070
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/165,592
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517041235
【氏名又は名称】アレクトル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クルネラス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サラザール サンティアゴ ヴィヴェロス
(72)【発明者】
【氏名】ロール マリナ
(72)【発明者】
【氏名】イー アンジー グレース
(72)【発明者】
【氏名】イ スン-チュ
(72)【発明者】
【氏名】シュワブ ティナ
(72)【発明者】
【氏名】チャポン マキシム
(72)【発明者】
【氏名】エスタシオ ウィリアム フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンタール アーノン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA20
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA91X
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB22
4C085CC23
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は概して、MerTKポリペプチド、例えば、哺乳動物MerTKまたはヒトMerTKに特異的に結合する抗体、例えば、モノクローナル抗体、抗体断片など、及びその必要のある個体における疾患または障害の予防、リスクの低下、または処置におけるそのような組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトMerチロシンキナーゼ(MerTK)に結合する単離された抗体であって、エフェロサイトーシスを40%を超えて減少させない、前記単離された抗体。
【請求項2】
ヒトMerTKに結合する単離された抗体であって、MerTKに対するProSの結合を減少させない、前記単離された抗体。
【請求項3】
ヒトMerTKに結合する単離された抗体であって、MerTKに対するGas6の結合を減少させない、前記単離された抗体。
【請求項4】
ヒトMerTKに結合する単離された抗体であって、食細胞による貪食を増加させる、前記単離された抗体。
【請求項5】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、ヒトMerTKに結合する単離された抗体であって、
前記重鎖可変領域は、
(a)配列番号:213、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、214、及び224からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1;
(b)配列番号:215、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、216、及び225からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2;ならびに
(c)配列番号:217、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、218、及び226からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3
を含み、
前記軽鎖可変領域は、
(d)配列番号:147、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、及び220からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1;
(e)配列番号:172、163、164、165、166、167、168、169、170、171、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、及び227からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;ならびに
(f)配列番号:196、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、219、221、及び228からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、
任意に、前記抗体は、
(i)それぞれ配列番号:213、215、217、156、180、及び219;
(ii)それぞれ配列番号:64、82、111、138、164、186;
(iii)それぞれ配列番号:65、83、112、139、165、187;
(iv)それぞれ配列番号:66、84、113、138、164、188;
(v)それぞれ配列番号:224、225、226、146、227、及び228;
(vi)それぞれ配列番号:67、85、114、140、166、及び189;
(vii)それぞれ配列番号:68、86、115、141、167、及び190;
(viii)それぞれ配列番号:65、87、116、142、168、及び191;
(ix)それぞれ配列番号:69、88、117、143、169、及び192;
(x)それぞれ配列番号:70、89、118、144、163、及び193;
(xi)それぞれ配列番号:71、90、119、145、170、194;
(xii)それぞれ配列番号:72、91、120、146、171、195;
(xiii)それぞれ配列番号:73、92、121、147、172、196;
(xiv)それぞれ配列番号:65、93、122、148、173、197;
(xv)それぞれ配列番号:66、94、123、149、174、198;
(xvi)それぞれ配列番号:66、95、124、150、164、188;
(xvii)それぞれ配列番号:73、96、125、151、175、及び199;
(xviii)それぞれ配列番号:74、97、126、152、176、及び200;
(xix)それぞれ配列番号:71、98、127、153、177、及び201;
(xx)それぞれ配列番号:66、99、128、138、164、及び188;
(xxi)それぞれ配列番号:75、100、129、154、178、及び202;
(xxii)それぞれ配列番号:71、101、130、155、179、及び201;
(xxiii)それぞれ配列番号:76、102、131,155、179、201;
(xxiv)それぞれ配列番号:77、103、132、157、181、及び204;
(xxv)それぞれ配列番号:78、104、133、158、182、及び205;
(xxvi)それぞれ配列番号:74、105、126、159、176、及び200;
(xxvii)それぞれ配列番号:79、106、134、160、183、及び206;
(xxviii)それぞれ配列番号:74、107、126、161、176、及び200;
(xxix)それぞれ配列番号:70、108、135、144、170、及び207;
(xxx)それぞれ配列番号:80、109、136、162、184、及び208;
(xxxi)それぞれ配列番号:63、81、110、137、163、及び185;または
(xxxii)それぞれ配列番号:214、216、218、220、172、及び221
のアミノ酸配列を含むHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む、
前記単離された抗体。
【請求項6】
ヒトMerTKに結合する単離された抗体であって、MTK-231、MTK-201、MTK-202、MTK-203、MTK-204、MTK-205、MTK-206、MTK-207、MTK-208、MTK-209、MTK-210、MTK-211、MTK-212、MTK-213、MTK-214、MTK-215、MTK-216、MTK-217、MTK-218、MTK-219、MTK-220、MTK-221、MTK-222、MTK-223、MTK-224、MTK-225、MTK-226、MTK-227、MTK-228、MTK-229、MTK-230、またはMTK-232の抗体のHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を含む、前記単離された抗体。
【請求項7】
前記HVRは、Kabatで定義されたHVR、Chothiaで定義されたHVR、またはAbMで定義されたHVRである、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
前記重鎖可変領域は、配列番号:209、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、210、及び222からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:209、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、210、及び222と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
前記軽鎖可変領域は、配列番号:211、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、212、及び223からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:211、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、212、及び223と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、ヒトMerTkに結合する単離された抗体であって、前記重鎖可変領域は、配列番号:209、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、210、及び222からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記単離された抗体。
【請求項11】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、ヒトMerTkに結合する単離された抗体であって、前記軽鎖可変領域は、配列番号:211、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、212、及び223からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記単離された抗体。
【請求項12】
それぞれ配列番号:209及び211;それぞれ配列番号:5及び34;それぞれ配列番号:6及び35;それぞれ配列番号:7及び36;それぞれ配列番号:8及び37;それぞれ配列番号:222及び223;それぞれ配列番号:9及び38;それぞれ配列番号:10及び39;それぞれ配列番号:11及び40;それぞれ配列番号:12及び41;それぞれ配列番号:13及び42;それぞれ配列番号:14及び43;それぞれ配列番号:15及び44;それぞれ配列番号:16及び45;それぞれ配列番号:17及び46;それぞれ配列番号:18及び47;それぞれ配列番号:19及び48;それぞれ配列番号:20及び49;それぞれ配列番号:21及び50;それぞれ配列番号:22及び51;それぞれ配列番号:23及び52;それぞれ配列番号:24及び53;それぞれ配列番号:25及び54;それぞれ配列番号:26及び55;それぞれ配列番号:27及び56;それぞれ配列番号:28及び57;それぞれ配列番号:29及び58;それぞれ配列番号:30及び59;それぞれ配列番号:31及び60;それぞれ配列番号:32及び61;それぞれ配列番号:33及び62;ならびにそれぞれ配列番号:210及び212のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
ヒトMerTKに結合する単離された抗体であって、ヒトMerTKに対する結合について請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体の1つ以上の結合を競合的に阻害する、前記単離された抗体。
【請求項14】
ヒトMerTKに結合する単離された抗体であって、ヒトMerTKに対する結合について、MerTK上の、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体と同じ、本質的に同じ、または重複するエピトープに結合する、前記単離された抗体。
【請求項15】
エフェロサイトーシスを40%を超えて減少させない、請求項2~14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項16】
エフェロサイトーシスを30%を超えて減少させない、請求項1または15に記載の抗体。
【請求項17】
エフェロサイトーシスを20%を超えて減少させない、請求項1または15に記載の抗体。
【請求項18】
エフェロサイトーシスを10%を超えて減少させない、請求項1または15に記載の抗体。
【請求項19】
MerTKに対するProSの結合をブロックせず、任意に、MerTKに対するProSの結合を30%を超えて、20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて減少させない、請求項1、3、及び4~18のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項20】
MerTKに対するGas6の結合をブロックせず、任意に、MerTKに対するGas6の結合を30%を超えて、20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて減少させない、請求項1、2、及び4~19のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項21】
食細胞による貪食を増加させる、請求項1及び3~18のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項22】
前記食細胞によるミエリンの前記貪食を増加させる、請求項4または21に記載の抗体。
【請求項23】
前記食細胞は、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア細胞、または網膜色素上皮細胞である、請求項4、21、及び22のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項24】
MerTKに対するProSの結合をブロックせず、MerTKに対するGas6の結合をブロックせず、任意に、MerTKに対するGas6またはProSの結合を30%を超えて、20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて減少させない、請求項1~23のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項25】
MerTKのリン酸化を増加させる、請求項1~24のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項26】
Gas6の非存在下でMerTKのリン酸化を増加させる、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
Gas6の存在下でMerTKのリン酸化を増加させる、請求項25または26に記載の抗体。
【請求項28】
プロテインキナーゼB(AKT)のリン酸化を増加させる、請求項1~27のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項29】
マクロファージにおける単球走化性タンパク質-1(MCP-1)発現を増加させる、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項30】
ProSの存在下でマクロファージにおけるMCP-1発現を増加させる、請求項29に記載の抗体。
【請求項31】
ProSの非存在下でマクロファージにおけるMCP-1発現を増加させる、請求項29または30に記載の抗体。
【請求項32】
MerTKのN末端ドメイン、Ig様ドメイン1、Ig様ドメイン2、フィブロネクチンIII型ドメイン1、フィブロネクチンIII型ドメイン2、及び/またはMerTKの膜近傍ドメインに結合する、請求項1~31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項33】
カニクイザルMerTKに結合するがマウスMerTKに結合しない、マウスMerTKに結合するがカニクイザルMerTKに結合しない、またはカニクイザルMerTK及びマウスMerTKに結合する、請求項1~32のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項34】
440nM未満、400nM未満、350nM未満、300nM未満、250nM未満、200nM未満、150nM未満、100nM未満、または50nM未満の親和性でヒトMerTKに結合する、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項35】
MerTKの非存在下でGas6リガンドに結合する、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項36】
MerTKの非存在下でProSリガンドに結合する、請求項1~35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項37】
マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、モノクローナル抗体、多価抗体、コンジュゲート抗体、またはキメラ抗体である、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項38】
IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである、請求項1~37のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項39】
IgGクラスのものであり、IgG1、IgG2、またはIgG4アイソタイプを有する、請求項38に記載の抗体。
【請求項40】
全長抗体である、請求項1~39のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項41】
抗体断片である、請求項1~39のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項42】
前記断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、FvまたはscFv断片である、請求項41に記載の抗体。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸配列を含む、単離された核酸。
【請求項44】
請求項43に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項45】
請求項43に記載の核酸または請求項44に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項46】
(i)請求項1~42のいずれか1項に記載の抗体のVHをコードする核酸配列を含む核酸、及び
(ii)前記抗MerTK抗体のVLをコードする核酸配列を含む核酸
を含む、単離された宿主細胞。
【請求項47】
ヒトMerTKに結合する抗体を生成する方法であって、前記抗体が生成されるように請求項45または46に記載の細胞を培養する工程を含む、前記方法。
【請求項48】
前記細胞によって生成された前記抗体を回収する工程をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項47または48に記載の方法によって生成された、抗体。
【請求項50】
請求項1~42及び49のいずれか1項に記載の抗体及び薬学的に許容可能な担体を含む、薬学的組成物。
【請求項51】
個体における自己免疫性障害を予防し、リスクを低下させ、または処置する方法であって、その必要のある個体に治療的有効量の、請求項1~42及び49のいずれか1項に記載の抗体または請求項50に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項52】
前記自己免疫性障害は、多発性硬化症である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
個体における網膜神経節変性障害または網膜色素変性症を予防し、リスクを低下させ、または処置する方法であって、その必要のある個体に治療的有効量の、請求項1~42及び49のいずれか1項に記載の抗体または請求項50に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項54】
個体における失明を予防し、リスクを低下させ、または処置する方法であって、その必要のある個体に治療的有効量の、請求項1~42及び49のいずれか1項に記載の抗体または請求項50に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項55】
サンプルにおけるMerTkを検出するための方法であって、前記サンプルを請求項1~42及び49のいずれか1項に記載の抗体と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項56】
貪食を増加させる方法であって、食細胞を、請求項1~42及び49のいずれか1項に記載の抗体または請求項50に記載の薬学的組成物と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項57】
ミエリンの前記貪食が増加する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
視細胞外節の前記貪食が増加する、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記接触は、in vitroである、請求項56~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記接触は、その必要のある個体におけるin vivoである、請求項56~58のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月31日に出願された米国仮出願第63/003,070号、及び2021年3月24日に出願された米国仮出願第63/165,592号の優先権の利益を主張し、その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:4503_011PC02_SL_ST25.TXT、記録日:2021年3月30日、サイズ:135,229バイト)。
【0003】
本開示の分野
本開示は、抗MerTK抗体及びそのような抗体の使用(例えば、治療的使用)に関する。
【背景技術】
【0004】
本開示の背景
Merチロシンキナーゼ(MerTK)は、受容体チロシンキナーゼのTAM(Tyro3、Axl、及びMerTK)ファミリーに属する。MerTKは、2つの免疫グロブリン(Ig)様及び2つのフィブロネクチン(FN)III型モチーフを有する細胞外ドメインを有する1回貫通1型膜貫通タンパク質である(Graham et al,2014,Nat Rev Cancer,14:769-785(非特許文献1);Rothlin et al,2015,Annu Rev Immunol,33:355-391(非特許文献2))。
【0005】
プロテインS(ProSまたはProS1)、成長停止特異的遺伝子6(Gas6)、Tubby、Tubby様タンパク質1(TULP-1)、及びガレクチン-3を含むMerTKのいくつかのリガンドが特定されている。MerTKは、リガンド結合後の活性化を介して細胞外空間からシグナルを伝達し、MerTKチロシン自己リン酸化(Cummings et al,2013,Clin Cancer Res,19:5275-5280(非特許文献3);Verma et al,2011,Mol Cancer Ther,10:1763-1773(非特許文献4))ならびにその後のERK及びAKT関連シグナル伝達をもたらす。
【0006】
MerTKは、多発性硬化症(MS)感受性遺伝子として特定されており、稀なバリアント及び一般的なバリアントのいずれもが、MSを発症させるまたは疾患経過を変化させるリスクの増加につながる(Ma et al,2011,PLoS ONE,6:1-6(非特許文献5);Binder et al,2016,PLoS Genetics,pp.1-25(非特許文献6);Shen et al,2021,Cell Reports,34,108835(非特許文献7))。MerTKは、貪食によるミエリンデブリのクリアランスを制御する;効率的なミエリンデブリクリアランスは、組織修復及び再ミエリン化のための重要な工程である。MerTKの阻害または喪失は、ミエリン貪食を減少させた(Healy et al,2016,J Immunol,196:3375-3384(非特許文献8);Healy et al,2017,Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm,4:e402(非特許文献9);Tondo et al,2019,Disease Markers,ID2387614:1-13(非特許文献10);Weinger et al,2009,Neurobiology,175:283-293(非特許文献11);Sharit-Zagardo et al,2018,Pharmacol Ther,188:97-117(非特許文献12);Shen et al,2021,Cell Reports,34:108835(非特許文献7))。また、MerTKにおける変異は、網膜色素上皮(RPE)細胞が視細胞外節を貪食する能力を低下させ、RPE細胞から光受容細胞を分離するデブリの蓄積につながり、それらの変性及びその後の失明をもたらした(Lorach et al,2018,Nature Scientific Reports,8:11312(非特許文献13))。
【0007】
自己免疫障害(例えば、多発性硬化症)及び網膜神経節変性に関連する障害を処置または予防するのに有効な新規治療用抗MerTK抗体が必要とされている。本開示は、貪食を増殖させることを含む、MerTK活性を増強する抗MerTK抗体を提供することによってこのニーズを満たす。
【0008】
特許出願及び公報を含む本明細書で引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Graham et al,2014,Nat Rev Cancer,14:769-785
【非特許文献2】Rothlin et al,2015,Annu Rev Immunol,33:355-391
【非特許文献3】Cummings et al,2013,Clin Cancer Res,19:5275-5280
【非特許文献4】Verma et al,2011,Mol Cancer Ther,10:1763-1773
【非特許文献5】Ma et al,2011,PLoS ONE,6:1-6
【非特許文献6】Binder et al,2016,PLoS Genetics,pp.1-25
【非特許文献7】Shen et al,2021,Cell Reports,34,108835
【非特許文献8】Healy et al,2016,J Immunol,196:3375-3384
【非特許文献9】Healy et al,2017,Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm,4:e402
【非特許文献10】Tondo et al,2019,Disease Markers,ID2387614:1-13
【非特許文献11】Weinger et al,2009,Neurobiology,175:283-293
【非特許文献12】Sharit-Zagardo et al,2018,Pharmacol Ther,188:97-117
【非特許文献13】Lorach et al,2018,Nature Scientific Reports,8:11312
【発明の概要】
【0010】
本開示の概要
本開示は一般に、抗Merチロシンキナーゼ(MerTK)抗体及びそのような抗体を使用する方法に関する。本明細書で提供される方法は、個体における自己免疫性障害、例えば、多発性硬化症などを予防または処置することに利用される。いくつかの態様において、本開示は、個体における自己免疫性障害(例えば、多発性硬化症)を処置するための方法であって、方法は、その必要のある個体に治療的有効量の抗MerTK抗体を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0011】
一態様において、本開示は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗MerTK抗体であって、抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号:63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、213、214、及び224からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号:81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、215、216、及び225からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2;ならびに配列番号:110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、217、218、及び226からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号:137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、及び220からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号:163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、及び227からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;ならびに配列番号:185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、219、221、及び228からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、単離された抗MerTK抗体に関する。
【0012】
一態様において、本開示は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗MerTK抗体であって、抗体は、(i)それぞれ配列番号:63、81、110、137、163、及び185;(ii)それぞれ配列番号:64、82、111、138、164、186;(iii)それぞれ配列番号:65、83、112、139、165、187;(iv)それぞれ配列番号:66、84、113、138、164、188;(v)それぞれ配列番号:224、225、226、146、227、及び228;(vi)それぞれ配列番号:67、85、114、140、166、及び189;(vii)それぞれ配列番号:68、86、115、141、167、及び190;(viii)それぞれ配列番号:65、87、116、142、168、及び191;(ix)それぞれ配列番号:69、88、117、143、169、及び192;(x)それぞれ配列番号:70、89、118、144、163、及び193;(xi)それぞれ配列番号:71、90、119、145、170、194;(xii)それぞれ配列番号:72、91、120、146、171、195;(xiii)それぞれ配列番号:73、92、121、147、172、196;(xiv)それぞれ配列番号:65、93、122、148、173、197;(xv)それぞれ配列番号:66、94、123、149、174、198;(xvi)それぞれ配列番号:66、95、124、150、164、188;(xvii)それぞれ配列番号:73、96、125、151、175、及び199;(xviii)それぞれ配列番号:74、97、126、152、176、及び200;(xix)それぞれ配列番号:71、98、127、153、177、及び201;(xx)それぞれ配列番号:66、99、128、138、164、及び188;(xxi)それぞれ配列番号:75、100、129、154、178、及び202;(xxii)それぞれ配列番号:71、101、130、155、179、及び201;(xxiii)それぞれ配列番号:76、102、131,155、179、201;(xxiv)それぞれ配列番号:77、103、132、157、181、及び204;(xxv)それぞれ配列番号:78、104、133、158、182、及び205;(xxvi)それぞれ配列番号:74、105、126、159、176、及び200;(xxvii)それぞれ配列番号:79、106、134、160、183、及び206;(xxviii)それぞれ配列番号:74、107、126、161、176、及び200;(xxix)それぞれ配列番号:70、108、135、144、170、及び207;(xxx)それぞれ配列番号:80、109、136、162、184、及び208;(xxxi)それぞれ配列番号:213、215、217、156、180、及び219;または(xxxii)それぞれ配列番号:214、216、218、220、172、及び221のアミノ酸配列を含むHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む、単離された抗MerTK抗体に関する。
【0013】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗体であって、抗体は、MTK-201、MTK-202、MTK-203、MTK-204、MTK-205、MTK-206、MTK-207、MTK-208、MTK-209、MTK-210、MTK-211、MTK-212、MTK-213、MTK-214、MTK-215、MTK-216、MTK-217、MTK-218、MTK-219、MTK-220、MTK-221、MTK-222、MTK-223、MTK-224、MTK-225、MTK-226、MTK-227、MTK-228、MTK-229、MTK-230、MTK-231、またはMTK-232の抗体のHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を含む、単離された抗体である。いくつかの態様において、HVRは、Kabatで定義されたHVR、Chothiaで定義されたHVR、またはAbMで定義されたHVRである。
【0014】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗体であって、抗体は、重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、209、210、及び222からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体である。
【0015】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗体であって、抗体は、軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は、配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、211、212、及び223からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体である。
【0016】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗体であって、抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、209、210、及び222から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、211、212、223から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体である。
【0017】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗体であって、抗体は、それぞれ配列番号:5及び34;それぞれ配列番号:6及び35;それぞれ配列番号:7及び36;それぞれ配列番号:8及び37;それぞれ配列番号:222及び223;それぞれ配列番号:9及び38;それぞれ配列番号:10及び39;それぞれ配列番号:11及び40;それぞれ配列番号:12及び41;それぞれ配列番号:13及び42;それぞれ配列番号:14及び43;それぞれ配列番号:15及び44;それぞれ配列番号:16及び45;それぞれ配列番号:17及び46;それぞれ配列番号:18及び47;それぞれ配列番号:19及び48;それぞれ配列番号:20及び49;それぞれ配列番号:21及び50;それぞれ配列番号:22及び51;それぞれ配列番号:23及び52;それぞれ配列番号:24及び53;それぞれ配列番号:25及び54;それぞれ配列番号:26及び55;それぞれ配列番号:27及び56;それぞれ配列番号:28及び57;それぞれ配列番号:29及び58;それぞれ配列番号:30及び59;それぞれ配列番号:31及び60;それぞれ配列番号:32及び61;それぞれ配列番号:33及び62;それぞれ配列番号:209及び211;ならびにそれぞれ配列番号:210及び212のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、単離された抗体である。
【0018】
一態様において、本開示は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗体であって、抗体は、MerTKに対する結合について本明細書における態様のいずれかの抗体の1つ以上の結合を競合的に阻害する、単離された抗体に関する。
【0019】
別の態様において、本開示は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗体であって、抗体は、MerTK上の、本明細書における態様のいずれかの抗体と同じまたは重複するエピトープに本質的に結合する、単離された抗体に関する。別の態様において、本開示は、MerTKタンパク質に結合する単離された抗体であって、抗体は、MerTK上の、本明細書における態様のいずれかの抗体と同じエピトープに結合する、単離された抗体に関する。
【0020】
本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得る所定の態様において、MerTKタンパク質は、哺乳動物タンパク質またはヒトタンパク質である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得る所定の態様において、MerTKタンパク質は、野生型タンパク質である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得る所定の態様において、MerTKタンパク質は、天然に存在するバリアントである。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得る所定の態様において、抗MerTK抗体は、ヒトMerTKならびにカニクイザルMerTK及び/またはマウスMerTKに結合する。
【0021】
本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対する1つ以上のリガンドの結合を阻害または減少させない。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を阻害または減少させない。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6の結合を阻害または減少させない。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6の結合を阻害または減少させず、MerTKに対するProSの結合を阻害または減少させない。
【0022】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、貪食を増加させる。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、貪食によるミエリンデブリのクリアランスを増加させる。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTk抗体は、網膜色素上皮細胞による視細胞外節貪食を増加させる。
【0023】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを40%を超えて減少させない。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを30%を超えて減少させない。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを20%を超えて減少させない。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを10%を超えて減少させない。
【0024】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、Gas6の非存在下でMerTKのリン酸化を増加させる。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、Gas6の存在下でMerTKのリン酸化を増加させる。
【0025】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、プロテインキナーゼB(AKT)のリン酸化を増加させる。
【0026】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、マクロファージにおける単球走化性タンパク質-1(MCP-1)発現を増加させる。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、ProSの存在下でマクロファージにおけるMCP-1発現を増加させる。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、ProSの非存在下でマクロファージにおけるMCP-1発現を増加させる。
【0027】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKのN末端ドメイン、Ig様ドメイン1、Ig様ドメイン2、フィブロネクチンIII型ドメイン1、フィブロネクチンIII型ドメイン2、及び/またはMerTKの膜近傍ドメインに結合する。
【0028】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、カニクイザルMerTKに結合するが、マウスMerTKに結合しない、マウスMerTKに結合するが、カニクイザルMerTKに結合しない、またはカニクイザルMerTK及びマウスMerTKに結合する。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、440nM未満、400nM未満、350nM未満、300nM未満、250nM未満、200nM未満、150nM未満、100nM未満、または50nM未満の親和性でヒトMerTKに結合する。
【0029】
本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKの非存在下でGas6に結合する。本明細書で提供される態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKの非存在下でProSに結合する。
【0030】
本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、モノクローナル抗体である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、抗体は、ヒト抗体である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、抗体は、ヒト化抗体である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、抗体は、二重特異性抗体である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、抗体は、多価抗体である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、抗体は、キメラ抗体である。
【0031】
本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得るいくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである。いくつかの態様において、抗体は、IgGクラスのものであり、IgG1、IgG2、またはIgG4アイソタイプを有する。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得る所定の態様において、抗体は、全長抗体である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得る所定の態様において、抗体は、抗体断片である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得る所定の態様において、抗体は、ヒトMerTKまたは哺乳動物MerTKタンパク質上のエピトープに結合する抗体断片である。本明細書における態様のいずれかと組み合わされ得る所定の態様において、抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、またはscFv断片である。
【0032】
別の態様において、本開示は、先行の態様のいずれかの抗MerTK抗体をコードする核酸配列を含む単離された核酸に関する。いくつかの態様において、本開示は、先行の態様のいずれかの核酸を含むベクターに関する。いくつかの態様において、本開示は、先行の態様のいずれかの核酸または先行の態様のいずれかのベクターを含む単離された宿主細胞に関する。いくつかの態様において、本開示は、(i)先行の態様のいずれかの抗MerTK抗体のVHをコードする核酸配列を含む核酸、及び(ii)抗MerTK抗体のVLをコードする核酸配列を含む核酸を含む単離された宿主細胞に関する。
【0033】
別の態様において、本開示は、ヒトMerTK抗体に結合する抗体を生成する方法であって、抗MerTK抗体が生成されるように先行の態様のいずれかの宿主細胞を培養する工程を含む、方法に関する。所定の態様において、方法は、細胞によって生成された抗MerTK抗体を回収する工程をさらに含む。
【0034】
別の態様において、本開示は、先行の態様のいずれか1つの抗MerTK抗体及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物に関する。
【0035】
一態様において、本開示は、サンプルにおけるMerTkを検出する方法であって、前記サンプルを、先行の態様のいずれかの抗MerTK抗体と接触させる工程を含み、任意に、方法は、サンプルにおけるMerTKに対する抗体の結合を検出する工程をさらに含む、方法に関する。
【0036】
本明細書に記載の様々な態様の特性のうちの1つ、一部、または全てが組み合わされて本開示の他の態様を形成し得ることが理解されるべきである。本開示のこれらの及び他の態様は、当業者に明らかになる。本開示のこれらの及び他の態様は、以下の詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本開示の抗MerTK抗体の添加後のヒトマクロファージにおけるMerTKのリン酸化(pMerTK)を示すデータを示している。
図2】本開示の抗MerTK抗体の平衡解離定数(KD)を示すデータを示している。
図3A】マクロファージにおけるMCP-1発現に対する本開示の抗MerTK抗体の効果を示すデータを示している。
図3B】マクロファージにおけるMCP-1発現に対する本開示の抗MerTK抗体の効果を示すデータを示している。
図3C】マクロファージにおけるMCP-1発現に対する本開示の抗MerTK抗体の効果を示すデータを示している。
図4】Gas6タンパク質の存在または非存在下でのMerTKのチロシンリン酸化(pMerTK)に対する本開示の抗MerTK抗体の効果を示すデータを示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の詳細な説明
本開示は、抗MerTK抗体(例えば、モノクローナル抗体);そのような抗体を作製する及び使用する方法;そのような抗体を含む薬学的組成物;そのような抗体をコードする核酸;ならびにそのような抗体をコードする核酸を含む宿主細胞に関する。
【0039】
本明細書で記載されるまたは参照される技術及び手順は概してよく理解されており、例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3d edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.,(2003);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)に記載されているものなどの広く利用されている方法論などの、当業者によって慣用の方法論を使用して一般的に用いられている。
【0040】
I.定義
「MerTK」または「MerTKポリペプチド」または「MerTKタンパク質」という用語は、本明細書で互換的に使用され、本明細書において、別段示されない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(cyno)))及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含む、任意の脊椎動物源からの任意の天然MerTKを指す。MerTKは、c-mer、MER、がん原遺伝子c-Mer、受容体チロシンキナーゼMerTK、チロシン-プロテインキナーゼMer、STKキナーゼ、RP38、及びMGC133349とも称される。いくつかの態様において、その用語は、野生型配列及び天然に存在するバリアント配列、例えば、スプライスバリアントまたはアレルバリアントの両方を包含する。いくつかの態様において、その用語は、「全長」のプロセシングされていないMerTK及び細胞におけるプロセシングに起因するMerTKの任意の形態を包含する。いくつかの態様において、MerTKは、ヒトMerTKである。本明細書で使用されるとき、「ヒトMerTK」という用語は、配列番号:1のアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。
【0041】
「抗MerTK抗体」、「MerTK抗体」、「MerTKに結合する抗体」、及び「MerTKに特異的に結合する抗体」という用語は、抗体がMerTKを標的とする際に診断剤及び/または治療剤として有用となるように十分な親和性でMerTKに結合することが可能な抗体を指す。一態様において、無関係の非MerTKポリペプチドに対する抗MerTK抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって決定される場合、MerTKに対する抗体の結合の約10%未満である。所定の態様において、MerTKに結合する抗体は、<1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。所定の態様において、抗MerTK抗体は、異なる種からMerTK間で保存されたMerTKのエピトープに結合する。
【0042】
抗体の標的分子への結合に関して、「特異的結合」または特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドもしくはエピトープに「特異的に結合する」または「対して特異的である」という用語は、非特異的相互作用とはある程度異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、標的、例えば、過剰な非標識標的に類似である対照分子との競合によって決定され得る。この場合、プローブへの標識した標的の結合が過剰な非標識標的によって競合的に阻害された場合に、特異的結合が示される。本明細書に使用される、特定のポリペプチド、または特定のポリペプチド標的上のエピトープに「特異的な結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、例えば、標的に対して約10-4M以下、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、10-12M以下のいずれかのKDまたは10-4M~10-6Mもしくは10-6M~10-10Mもしくは10-7M~10-9Mの範囲内のKDを有する分子によって表され得る。当業者によって理解されるように、親和性及びKDの値は、逆相関している。抗原に対する高い親和性は、低いKD値によって測定される。
【0043】
「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において、「抗体」と同じ意味で使用される。本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、特にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成されたものを含む多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物学的活性を呈する場合に限り抗原結合抗体断片を包含する。
【0044】
「天然抗体」とは、通常、2つの同一の軽(「L」)鎖及び2つの同一の重(「H」)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的な間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、これにいくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0045】
異なる抗体クラスの構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Ed.,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994,page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0046】
任意の脊椎動物種に由来する軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、異なるクラスまたはアイソタイプに割り振ることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つのクラスがあり、それぞれ、アルファ(「α」)、デルタ(「δ」)、イプシロン(「ε」)、ガンマ(「γ」)、及びミュー(「μ」)と表記される重鎖を有する。γ及びαのクラスは、CH配列及び機能の相対的にわずかな相違に基づいて、サブクラス(アイソタイプ)にさらに分類され、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造及び三次元構成は既知であり、例えば、Abbas et al.,Cellular and Molecular Immunology,4th ed.(W.B.Saunders Co.,2000)に大まかに記載されている。
【0047】
本開示の抗MerTK抗体などの抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「V」及び「V」と呼ぶことができる。これらのドメインは、一般に、可変性の最も高い抗体部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含有する。
【0048】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定のセグメントが、本開示の抗MerTK抗体などの抗体間で配列が大幅に異なるという事実を指す。可変ドメインは、抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する、特定の抗体の特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメイン全体に均一に分布しているわけではない。むしろ、それは、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインにおいて、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのうち、より高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を主とする4つのFR領域を含み、これらのHVRは、ベータシート構造を接続し、場合により、ベータシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖中のHVRは、FR領域によって極めて近接して一緒に保持され、他方の鎖からのHVRと共に、その抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0049】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体、例えば、本開示の抗MerTKモノクローナル抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る可能性のある天然に存在する変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象としている。異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象としている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンが混入されていないという点で、有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、以下の方法、すなわち、DNA(複数可)、ウイルス様粒子、ポリペプチド(複数可)、及び/または細胞(複数可)のうちの1つ以上でのラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター及び/またはニワトリを含むがこれらに限定されない動物の免疫方法、ハイブリドーマ法、B細胞クローニング法、組換えDNA法、ならびにヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を生成するための技術のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない多様な技術によって作製され得る。
【0050】
「全長抗体」、「インタクト抗体」または「全抗体」という用語は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態にある抗体(例えば、本開示の抗MerTK抗体)を指すために互換的に使用される。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。いくつかの場合において、インタクト抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0051】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995)参照);一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0052】
抗体(例えば、本開示の抗MerTK抗体)をパパイン消化すると、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映した名称を持つ1つの残留「Fc」断片とが生成される。Fab断片は、重鎖の可変領域ドメイン(V)と共に全軽鎖、及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(C1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関しては一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大型F(ab’)断片をもたらし、これは、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合したFab断片にほぼ対応し、依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含むいくつかのさらなる残基を、C1ドメインのカルボキシ末端に有することにより、Fab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における呼称である。F(ab’)抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0053】
Fc断片は、ジスルフィドによって一緒に保持された、両方とも重鎖であるカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列によって決定され、この領域はまた、特定の細胞型にみられるFc受容体(FcR)によって認識される。
【0054】
抗体(例えば、本開示の抗MerTK抗体)の「機能性断片」は、インタクト抗体の部分を含み、概して、インタクト抗体の抗原結合領域もしくは可変領域、またはFcR結合能力を保持するか、修飾されたFcR結合能力を有する抗体のFc領域を含む。抗体断片の例には、直鎖抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0055】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間の可変ドメイン対合を達成し、それによって二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように、VドメインとVドメインとの間に短いリンカー(約5~10残基)を用いてsFv断片(前述の段落を参照)を構築することによって作製された小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVドメイン及びVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在している、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「キメラ抗体」は、抗体(免疫グロブリン)、例えば、本開示のキメラ抗MerTK抗体であって、重鎖及び/または軽鎖の部分が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、かつ、その鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である、抗体、ならびにそのような抗体の断片(ただし、所望の生物活性を呈する場合に限る)を指す。本明細書中で対象とするキメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれ、この場合、当該抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルに目的の抗原で免疫性を与えることによって生成される抗体に由来する。本明細書で使用されるとき、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0057】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態、例えば、本開示の抗MerTK抗体のヒト化形態は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体である。ある特定の態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが、非ヒト抗体のそれらに対応し、そのFRの全てまたは実質的に全てが、ヒト抗体のそれらに対応する。ヒト化抗体は任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の、「ヒト化型」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0058】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生成された抗体(例えば、本開示の抗MerTK抗体)のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製する技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ及び酵母ディスプレイライブラリを含む、当該技術分野において既知の様々な技術を使用して生成され得る。ヒト抗体は、そのような抗体を抗原投与に応答して生成するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物(例えば、免疫化異種マウス)に、抗原を投与することによって調製され、また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成され得る。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、及び/または構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域(例えば、本開示の抗MerTK抗体の抗体可変ドメインの領域)を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがV(H1、H2、H3)にあり、3つがV(L1、L2、L3)にある。天然抗体において、H3及びL3が6つのHVRのうちで最も高い多様性を呈し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖がない状態で、機能的であり、安定している。
【0060】
多くのHVR記述が本明細書で使用され、本明細書に包含される。いくつかの態様において、HVRは、配列可変性に基づくKabatによる相補性決定領域(CDR)であり得、最も一般的に使用されている(Kabat et al.、上掲)。いくつかの態様において、HVRは、Chothia CDRであり得る。Chothiaは、むしろ、構造的ループの位置に言及するものである(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。いくつかの態様において、HVRは、AbM HVRであり得る。AbM HVRは、Kabat CDRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。いくつかの態様において、HVRは、「接触」HVRであり得る。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づくものである。これらのHVRの各々由来の残基が以下に記載される。
【0061】
HVRは、次の「伸長HVR」を含み得る:VL中、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)及び89~97または89~96(L3)、ならびにVH中、26~35(H1)、50~65または49~65(好ましい態様)(H2)及び93~102、94~102または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの伸長HVR定義の各々に対して、Kabat et al.(上掲)に従って付番される。
【0062】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0063】
本明細書で使用される「アクセプターヒトフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVフレームワークまたはVフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、当該フレームワークと同じアミノ酸配列を含んでもよいし、既存のアミノ酸配列変化を含んでもよい。いくつかの態様において、既存のアミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。既存のアミノ酸変化がVHに存在する場合、好ましいそれらの変化が位置71H、73H及び78Hのうちの3つ、2つ、または1つにのみ生じる、例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73T、及び/または78Aであり得る。一態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、配列において、Vヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0064】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVまたはVフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を代表する、フレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンのVまたはV配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからなされる。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)などのサブグループである。例として、Vに関するものを挙げると、サブグループは、Kabat et al.(上掲)などのサブグループカッパI、カッパII、カッパIIIまたはカッパIVであり得る。さらに、Vについては、サブグループは、Kabat et al.(上掲)などのサブグループI、サブグループIIまたはサブグループIIIであり得る。
【0065】
指定位置における「アミノ酸修飾」(例えば、本開示の抗MerTK抗体のアミノ酸修飾)は、指定残基の置換もしくは欠失、または少なくとも1つのアミノ酸残基の指定残基に隣接する挿入を指す。指定残基に「隣接する」挿入とは、その1~2つの残基内への挿入を意味する。挿入は、指定された残基のN末端側またはC末端側であり得る。本明細書における好ましいアミノ酸修飾は、置換である。
【0066】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが非共有結合で緊密に会合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まない半分のFv)であっても、全結合部位よりも低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0067】
「sFv」または「scFv」と短縮されることもある「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖の状態に連結された、VH及びVL抗体ドメインを含む、抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーにより、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能となっている。
【0068】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に帰属する生物活性を指し、抗体のアイソタイプに応じて様々である。
【0069】
本明細書における「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義して使用され、天然配列のFc領域及びバリアントFc領域が含まれる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、アミノ酸残基の位置Cys226またはPro230から、そのカルボキシル末端まで及ぶものと定義される。Fc領域のC末端リジン(EU付番システムによると残基447)は、例えば、抗体の生成もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって、除去されてもよい。したがって、インタクト抗体の組成は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。本開示の抗体において使用するための好適な天然配列Fc領域には、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が含まれる。
【0070】
「天然配列Fc領域」は、天然で見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびにそれらの天然に存在するバリアントが含まれる。
【0071】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)の効力により、天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に約1~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも80%の相同性、最も好ましくは、それらと少なくとも90%の相同性、より好ましくは、それらと少なくとも95%の相同性を保有する。
【0072】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)と結合するものであり、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIのサブクラスの受容体(これらの受容体のアレルバリアント及び選択的スプライシング形態を含む)が含まれる。FcγRII受容体には、同様のアミノ酸配列を有し、主にその細胞質ドメインが異なる、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(「ITAM」)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(「ITIM」)を含有する。今後特定されるものを含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。FcRはまた、抗体の血清半減期を延長し得る。
【0073】
本明細書で使用されるとき、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「アミノ酸配列相同性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じて最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後の、配列同一性の一部としてあらゆる保存的置換を考慮しない、指定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合を指す。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術範囲内である種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要とされる当該技術分野において既知の任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。
【0074】
「競合する」という用語は、同じエピトープまたは重複エピトープについて競合する抗体に関連して使用される場合、試験されている抗体が共通の抗原(例えば、MerTKまたはその断片)に対する参照分子(例えば、リガンド、または参照抗体)の特異的結合を防止するまたは阻害する(例えば、減少させる)アッセイによって決定される抗体間の競合を意味する。多数のタイプの競合的結合アッセイが、抗体が別の抗体と競合するかどうかを決定するために使用され得る(例えば:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.,1983,Methods in Enzymology 9:242-253を参照されたい);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,1986,J.Immunol.137:3614-3619を参照されたい);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照されたい);1-125標識を使用する固相直接標識RIA(例えば、Morel et al.,1988,Molec.Immunol.25:7-15を参照されたい);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.,1990,Virology 176:546-552を参照されたい);及び直接標識RIA(Moldenhauer et al.,1990,Scand.J.Immunol.32:77-82))。典型的には、そのようなアッセイは、これらのいずれかを保有する固体表面または細胞に結合した精製された抗原、未標識試験抗体及び標識参照抗体の使用を含む。競合的阻害は、試験抗体の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することによって測定される。通常、試験抗体は、過剰に存在する。競合アッセイによって特定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、及び生じる立体障害のために参照抗体が結合したエピトープに十分に近い隣接するエピトープに結合する抗体が含まれる。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、それは、共通の抗原に対する参照抗体の特異的結合を少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97.5%、及び/または100%近く阻害する(例えば、減少させる)。
【0075】
本明細書で使用されるとき、MerTKポリペプチドと第2のポリペプチドとの間の「相互作用」は、限定するものではないが、タンパク質-タンパク質相互作用、物理的相互作用、化学的相互作用、結合、共有結合及びイオン結合を包含する。本明細書で使用されるとき、抗体が2つのポリペプチド間の相互作用を中断、低減または完全に排除するとき、その抗体は、2つのポリペプチド間の「相互作用を阻害する」。その本開示の抗体が2つのポリペプチドのうちの1つに結合するとき、その抗体は、2つのポリペプチド間の「相互作用を阻害する」。いくつかの態様において、相互作用は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97.5%、及び/または100%近く阻害され得る。
【0076】
「エピトープ」という用語には、抗体に結合することが可能な任意の決定基が含まれる。エピトープは、その抗原を標的とする抗体に結合する抗原の領域であり、抗原がポリペプチドである場合、抗体を直接的に接触させる特定のアミノ酸を含む。ほとんどの場合、エピトープは、ポリペプチド上に存在するが、いくつかの例では、核酸などの他の種類の分子上に存在し得る。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面分類を含み得、特定の三次元構造的特性、及び/または特定の電荷特性を有し得る。通常、特定の標的抗原に特異的な抗体は、ポリペプチド及び/またはマクロ分子の複雑な混合物において標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0077】
「単離された」抗体、例えば、本開示の単離された抗MerTK抗体は、その生成環境(例えば、天然または組換え)の成分から特定、分離及び/または回収されたものである。好ましくは、単離された抗体は、その生成環境に由来する他の全ての夾雑成分との会合がない。その生成環境に由来する夾雑成分、例えば、組換えトランスフェクション細胞に起因するものなどは、典型的に、抗体の研究上、診断上または治療上での使用を妨げる物質であり、これらには、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。好ましい態様において、抗体は、(1)抗体が、例えば、ローリー法によって決定したときに、95重量%超、いくつかの態様では99重量%超になるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用により、少なくとも15個のN末端もしくは内部アミノ酸配列の残基を得るのに十分な程度になるまで、または(3)クマシーブルー染色もしくは好ましくはシルバー染色を使用して、非還元条件もしくは還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離された抗体には、組換えT細胞内でのin situ抗体が含まれるが、これは、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成成分が存在していないためである。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0078】
抗体(例えば、本開示の抗MerTK抗体)をコードする「単離された」核酸分子は、その核酸分子が生成された環境において通常会合している少なくとも1つの夾雑核酸分子から特定及び分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、その生成環境に伴う全ての構成成分との会合がない。本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする単離された核酸分子は、それが天然に見られる形態または設定以外の形態である。したがって、単離された核酸分子は、細胞中に天然に存在する本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。
【0079】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用されるとき、結合された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つの種類のベクターは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAを指す。別の種類のベクターは、ファージベクターである。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を司ることができる。そのようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技法において利用される発現ベクターは、プラスミドの形態である場合が多い。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、同じ意味で使用され得る。
【0080】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼによりまたは合成反応によりポリマー中に組み込まれ得る任意の基質であり得る。
【0081】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物を組み込むためのベクター(複数可)のレシピエントになり得るか、レシピエントになっている個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、天然、突然、または意図的変異のため、必ずしも元の親細胞と(形態においてまたはゲノムDNA相補体において)完全に同一である必要はない場合がある。宿主細胞には、本開示のポリヌクレオチド(複数可)でin vivoでトランスフェクションされた細胞が含まれる。
【0082】
本明細書で使用される「担体」には、使用される投薬量及び濃度で、それに曝露される細胞または哺乳動物に対して無毒である、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤が含まれる。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「予防する」という用語は、個体における特定の疾患、障害または病態の発生または再発に対する予防を提供することを含む。個体は、特定の疾患、障害または病態にかかりやすく敏感であり得て、あるいは、かかる疾患、障害または病態を発症するリスクがあり得るが、まだ当該疾患、障害または病態であると診断されていない。
【0084】
本明細書で使用されるとき、特定の疾患、障害または病態を発症する「リスクのある」個体は、検出可能な疾患または疾患の症状を有していてもいなくてもよく、本明細書に記載される処置方法の前に、検出可能な疾患または疾患の症状を呈していてもいなくてもよい。「リスクがある」は、個体が、当該技術分野で知られているように、特定の疾患、障害、または病態の発症と相関する測定可能なパラメータである、1つ以上のリスク因子を有することを意味する。これらのリスク因子のうちの1つ以上を有する個体は、これらのリスク因子のうちの1つ以上を有さない個体よりも特定の疾患、障害、または病態を発症する可能性が高い。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「処置」という用語は、臨床的病理の経過中に処置されている個体の自然経過を改変するように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果には、特定の疾患、障害、または病態の進行速度の減速、病理学的状態の回復または緩和、及び寛解または予後の改善が含まれる。個体は、例えば、特定の疾患、障害、または病態に関連する1つ以上の症状が軽減または排除された場合、成功裏に「処置される」。
【0086】
「有効量」は、少なくとも、所望の治療結果または予防結果を達成するために必要な投薬量及び期間における有効な量を指す。有効量は、1回以上の投与で提供され得る。有効量は、治療上有益な効果が処置の任意の毒性効果または有害効果を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除もしくは低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬剤の用量の減少、標的化などを介する別の薬剤の効果の増強、疾患の進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、直接的または間接的のいずれかで予防的または治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床的状況において理解されるように、薬物、化合物または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物または薬学的組成物と併せて達成されてもよいし、そうでなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療薬の投与に関連して考慮される場合があり、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せると望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられることが考慮され得る。
【0087】
処置、予防またはリスク低下の目的のための「個体」は、ヒト、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、競技用または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含む、哺乳動物に分類される任意の動物を指す。いくつかの態様において、個体は、ヒトである。
【0088】
本明細書で使用される「約」という用語は、本技術分野の当業者に容易に理解される、各値の通常の誤差範囲を指す。いくつかの態様において、「約」が数値または数値範囲を修飾するために使用される場合、その用語は、値または範囲より最大で10%上回り及び10%まで下回る逸脱が、記述された値または範囲の意図される意味内に留まることを示す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする態様を含む(かつ記載する)。
【0089】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含む。例えば、「抗体」への言及は、モル量等の1つ~多数の抗体への言及であり、当業者に既知のその等価物を含むといった具合である。
【0090】
本明細書に記載される本開示の態様は、態様を「含む」、態様「からなる」、ならびに態様「から本質的になる」を含むことを理解されたい。
【0091】
II.抗MerTK抗体
本明細書では、抗MerTK抗体が提供される。本明細書で提供される抗体は、例えば、MerTK関連障害の診断または処置に有用な抗体である。本明細書では、抗MerTK抗体が提供される。
【0092】
一態様において、本開示は、本開示のMerTKタンパク質またはポリペプチド内のエピトープに結合する単離された(例えば、モノクローナル)抗体を提供する。本開示のMerTKタンパク質またはポリペプチドには、限定されないが、哺乳動物MerTKタンパク質またはポリペプチド、ヒトMerTKタンパク質またはポリペプチド、マウス(mouse)(マウス(murine))MerTKタンパク質またはポリペプチド、及びカニクイザル(cynomolgus)(カニクイザル(cyno))MerTKタンパク質またはポリペプチドが含まれる。本開示のMerTKタンパク質及びポリペプチドには、MerTKの天然に存在するバリアントが含まれる。いくつかの態様において、本開示のMerTKタンパク質及びポリペプチドは、膜に結合している。いくつかの態様において、本開示のMerTKタンパク質及びポリペプチドは、MerTKの可溶性細胞外ドメインである。
【0093】
いくつかの態様において、MerTKは、細胞に発現する。いくつかの態様において、MerTKは、限定されないが、マクロファージ、樹状細胞、またはミクログリアを含む食細胞に発現する。いくつかの態様において、MerTKは、ミクログリアに発現する。いくつかの態様において、MerTKは、星状細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、内皮細胞、巨核球、及び血小板に発現する。いくつかの態様において、高レベルのMerTK発現はまた、卵巣、前立腺、精巣、肺、網膜、及び腎臓に見られる。
【0094】
抗体活性
いくつかの態様において、ヒトMerTKに結合するが、カニクイザルMerTKに結合しない抗MerTK抗体が提供される。いくつかの態様において、ヒトMerTKに結合するが、マウスMerTKに結合しない抗MerTK抗体が提供される。いくつかの態様において、ヒトMerTKに結合するが、カニクイザルMerTKに結合せず、マウスMerTKに結合しない抗MerTK抗体が提供される。いくつかの態様において、ヒトMerTKに結合し、カニクイザルMerTKに結合する抗MerTK抗体が提供される。いくつかの態様において、ヒトMerTKに結合し、カニクイザルMerTKに結合するが、マウスMerTKに結合しない抗MerTK抗体が提供される。いくつかの態様において、ヒトMerTKに結合し、マウスMerTKに結合する抗MerTK抗体が提供される。いくつかの態様において、ヒトMerTKに結合し、マウスMerTKに結合するが、カニクイザルMerTKに結合しない抗MerTK抗体が提供される。いくつかの態様において、ヒトMerTKに結合し、マウスMerTKに結合し、カニクイザルMerTKに結合する抗MerTK抗体が提供される。
【0095】
MerTK結合パートナー
本開示のMerTKタンパク質は、限定されないが、プロテインS(ProSまたはProS1)、成長停止特異的遺伝子6(Gas6)、Tubby、Tubby様タンパク質1(TULP-1)、及びガレクチン-3を含む1つ以上のリガンドまたは結合パートナーと相互作用する(例えば、結合する)。本開示の抗MerTK抗体は、MerTKと、その様々なリガンド及び結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に影響を及ぼし得る。
【0096】
本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6リガンドの及び/またはProSリガンドの結合をブロックまたは阻害しない。したがって、いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKと1つ以上のMerTKリガンドとの間の結合を阻害または減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を阻害または減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を30%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を20%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を10%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を5%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6の結合を阻害または減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6の結合を30%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6の結合を20%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6の結合を10%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6の結合を5%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6の結合を阻害または減少させず、MerTKに対するProSの結合を阻害または減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を30%を超えて減少させず、MerTKに対するGas6の結合を30%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を20%を超えて減少させず、MerTKに対するGas6の結合を20%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を10%を超えて減少させず、MerTKに対するGas6の結合を10%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対するProSの結合を5%を超えて減少させず、MerTKに対するGas6の結合を5%を超えて減少させない。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、in vitroでMerTKに対するGas6リガンド結合を阻害もしくは減少させず、及び/またはProSリガンド結合を阻害もしくは減少させない。
【0097】
さらに本明細書では、MerTKに結合し、かつMerTKと1つ以上のMerTKリガンドまたは結合パートナーとの間の相互作用をブロックまたは減少させない抗MerTK抗体についてスクリーニングする方法が提供される。
【0098】
エフェロサイトーシス
エフェロサイトーシスは、瀕死細胞またはアポトーシス細胞の食作用クリアランスを指す。エフェロサイトーシスは、プロフェッショナル食細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、ミクログリア)、非プロフェッショナル食細胞(例えば、上皮細胞、線維芽細胞、網膜色素上皮細胞)、または特化した食細胞によって達成され得る。(Elliott et al,2017,J Immunol,198:1387-1394。)エフェロサイトーシスは、死細胞または瀕死細胞の除去をもたらし(それらの膜全体性が破壊され、それらの内容物が周囲組織に漏出する前に)、これにより、毒性酵素、酸化性物質、及び他の細胞内成分に対する組織の曝露を防止する。
【0099】
アポトーシス細胞は、食細胞上の受容体によって認識されるそれらの細胞表面上の多様な分子(「イートミー(eat-me)」シグナル)を露出する。1つのそのような「イートミー」シグナル伝達分子は、ホスファチジルセリン(PtdSer)であり、これは普段は、細胞膜の内葉に格納されている。アポトーシス中、PtdSerは、細胞膜の外葉に露出される。MerTKリガンドProS及びGas6は、それらのN末端ドメインの近くにガンマ-カルボキシル化グルタミン酸残基を含有する;グルタミン酸ドメインのガンマ-カルボキシル化は、ホスファチジルセリンに対する結合を可能とする。Gas6またはProSは、アポトーシス細胞上のPtdSerに結合し、同時に食細胞上のMerTKに結合する。そのようなMerTKとのリガンド係合は、エフェロサイトーシスを活性化する。
【0100】
抗体がエフェロサイトーシスをブロックする(またはブロックしない)能力は、例えば、本明細書の実施例7における方法を使用して決定され得る。例えば、エフェロサイトーシスアッセイは、(i)抗体に曝露されたもしくは曝露されていないまたは試験抗体及び陰性対照抗体に曝露された食細胞にアポトーシス細胞を添加すること、ならびに(ii)食細胞によるアポトーシス細胞の取り込みを決定することを含み得る。食細胞は、上で論述されるようにプロフェッショナル食細胞または非プロフェッショナル食細胞であり得る。いくつかの態様において、食細胞は、マクロファージである。いくつかの態様において、食細胞(例えば、マクロファージ)は、抗体及び/またはアポトーシス細胞への曝露前に飢餓状態とされる(例えば、約1時間)。いくつかの態様において、食細胞(例えば、マクロファージ)は、例えば、約37℃で、アポトーシス細胞に曝露する前に、約5分~約1時間(例えば、約30分)、抗体とインキュベートされる。アポトーシス細胞は、例えば、1μMのスタウロスポリン(SigmaAldrich)などのアポトーシス誘導剤で処置されたJurkat細胞であり得る。アポトーシス細胞は、標識細胞(例えば、染色された細胞)であり得る。いくつかの態様において、アポトーシス細胞は、食細胞(例えば、マクロファージ)に約1時間曝露される。エフェロサイトーシスをブロックしない抗体は、抗体の非存在下または陰性対照抗体の存在下での取り込みと比較して、そのようなアッセイにおいてアポトーシス細胞の取り込みを有意に増加させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを50%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを45%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを40%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを35%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを30%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを25%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを20%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを15%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを10%を超えて減弱させない。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体は、エフェロサイトーシスを5%を超えて減弱させない。
【0101】
貪食
貪食は、食細胞がアポトーシス細胞、粒子、または細胞デブリを取り込むまたは飲み込むプロセスを指す。中枢神経系内では、貪食は、適切な神経回路発達及び維持ホメオスタシスに必要とされる肝要なプロセスである。多発性硬化症で生じるように、CNS内の髄鞘の破壊は、傷害及び炎症の部位で変性ミエリンを生成する。生じるミエリンデブリは、修復を促進するために傷害の部位から貪食を介して排除されなければならない。ヒトマクロファージ及びミクログリアを利用した研究は、MerTKがミエリンのための必須の食作用受容体であり、MerTKの発現がin vitroでミエリン貪食と相関し、MerTKレベルがMS患者マクロファージにおいて減少することを実証した(Healy et al,2016,J Immunol,196:3375-3384;Healy et al,2017,Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm,4:e402;Galloway et al,2019,Front Immunol,10:article 790)。
【0102】
抗体が貪食を増加させる能力は、当該技術分野で知られているアッセイを使用して決定され得る(例えば、Healy et al,2016,J Immunol,196:3375-3384を参照されたい)。例えば、貪食アッセイは、(i)抗体の存在及び非存在下または試験抗体及び陰性対照抗体の存在下でミエリンを細胞(例えば、骨髄細胞)に添加すること、及び(ii)細胞によるミエリンの取り込みを決定することを含み得る。細胞は、細胞(例えば、播種された骨髄細胞)であり得る。細胞(例えば、骨髄細胞)は、極性化され得る。(例えば、Durafourt et al,2012,Glia 60:717-727を参照されたい。)ミエリンは、標識され得る。例えば、ミエリンは、例えば、そのようなph-ローダミン(Invitrogen)などのpH感受性色素を使用して染色され得る。染色されたミエリンを得るために、ミエリン及び色素(例えば、pH感受性色素)は、例えば、約1時間、任意にPBS中でインキュベートされ得る。ミエリン(例えば、染色されたミエリン)は、例えば、約5μg/ml~約20μg/mlの最終濃度まで細胞(例えば、骨髄細胞)に添加され得る。よって、いくつかの態様において、ミエリン(例えば、染色されたミエリン)は、約5μg/ml~約20μg/mlの最終濃度まで細胞(例えば、骨髄細胞)に添加される。ミエリンの貪食を増加させる(すなわち、貪食によってミエリンのクリアランスを増加させる)抗体は、抗体の非存在下または陰性対照抗体の存在下での取り込みと比較してそのようなアッセイにおいて細胞によるミエリンの取り込みを増加させる。
【0103】
マクロファージ走化性タンパク質-1
単球走化性タンパク質-1(MCP-1)は、免疫細胞を傷害部位に動員する。本開示の抗MerTK抗体は、M2c極性化マクロファージにおけるMCP-1レベルを増加させ、抗MerTk抗体が、MerTKの活性を活性化または増加させるのに有効であり、よって、貪食及びエフェロサイトーシスを向上させるのに有効であることを示した。
【0104】
pAKT
プロテインキナーゼB(AKT)シグナル伝達経路は、AKTのリン酸化(pAKT)によって開始するプロセスである、細胞生存及び成長を促進するシグナル伝達経路である。MerTKリガンドGas6は、細胞におけるpAKTレベルを増加させる。本開示の抗MerTK抗体は、Gas6の非存在下で細胞におけるpAKTレベルを増加させた。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、pAKTレベルを少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも4倍増加させる。
【0105】
pMerTK
MerTKリガンドGas6は、MerTKのリン酸化(pMerTK)を増加させる。本開示の抗MerTK抗体は、Gas6の非存在下でMerTKのリン酸化(pMerTK)を増加させた。また、本開示の抗MerTk抗体は、Gas6単独で観察されるものよりも高いレベルまでpMerTKを増加させるのに有効であった。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、pMerTKレベルを少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも4倍増加させる。
【0106】
したがって、いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTK活性を増加させる(限定されないが、食細胞による貪食を増加させることを含む)、エフェロサイトーシスを40%を超えて減少させず、pMerTKレベルを増加させ、pAKTレベルを増加させ、MCP-1発現を増加させ、またはそれらの任意の組み合わせである。理論に縛られることを望むものではなく、本開示の抗MetTK抗体によるMerTKの増加した活性は、MerTKがその結合タンパク質(例えば、Gas6、ProS)と相互作用する能力の増加を可能とすることでミクログリア及び星状細胞にシグナル伝達して、分解されたミエリンの貪食を向上させ、ミエリン再生が必要とされる部位へのそれらの移行を向上させ、ミクログリアの生存及び/または増殖を向上させる。
【0107】
膜結合MerTKは、タンパク質分解切断され、可溶性MerTK(sMerTK)の形成につながることが示されており、これは、マウスにおいて血小板増加症を阻害し、in vitroでエフェロサイトーシスを阻害することが示されている。MerTKは、マウスマクロファージにおいてプロリン485でメタロプロテイナーゼ(例えば、ADAM17、ADAM10)によって切断される。(Thorp et al,2011,J.Biol.Chem.,38:33335-33344)。理論に縛られることを望むものではなく、本開示の抗MerTK抗体によるMerTK切断の減少は、sMerTKの形成を減少させ、よって、MerTK活性及びシグナル伝達を維持または増加させ、増加した貪食及びエフェロサイトーシス活性をもたらすために有効な手段である。
【0108】
A.例示的な抗体及び所定の他の抗体態様
いくつかの態様において、本明細書では、(a)配列番号:63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、213、214、及び224からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、215、216、及び225からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、217、218、及び226からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、及び220からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、及び227からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;ならびに(f)配列番号:185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、219、221、及び228からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む抗MerTK抗体が提供される。
【0109】
いくつかの態様において、本明細書では、(a)配列番号:63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、213、214、及び224からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、215、216、及び225からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2;ならびに(c)配列番号:110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、217、218、及び226からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVHVR配列を含む抗MerTK抗体が提供される。
【0110】
いくつかの態様において、本明細書では、(a)配列番号:137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、及び220からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、及び227からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;ならびに(c)配列番号:185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、219、221、及び228からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVHVR配列を含む抗MerTK抗体が提供される。
【0111】
いくつかの態様において、本明細書では、(a)(i)配列番号:63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、213、214、及び224からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号:81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、215、216、及び225からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2、ならびに(iii)配列番号:110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、217、218、及び226からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVHVR配列を含むVドメインと、(b)(i)配列番号:137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、及び220からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、及び227からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2、ならびに(iii)配列番号:185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、219、221、及び228からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVHVR配列を含むVドメインとを含む抗MerTK抗体が提供される。
【0112】
いくつかの態様において、本明細書では、(a)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:81のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:110のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:137のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:163のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:185のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:64のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:82のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:111のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:138のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:164のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:186のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:65のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:83のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:112のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:139のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:165のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:187のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:66のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:84のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:113のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:138のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:164のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:188のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:67のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:85のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:114のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:140のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:166のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:189のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:68のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:86のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:115のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:141のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:167のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:190のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:65のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:87のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:116のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:142のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:168のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:191のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:69のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:88のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:143のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:169のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:192のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:70のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:89のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:144のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:163のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:193のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:90のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:119のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:145のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:170のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:194のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:72のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:91のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:120のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:146のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:171のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:195のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:73のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:92のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:147のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:172のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:196のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:65のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:93のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:148のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:173のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:197のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:66のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:94のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:149のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:174のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:198のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:66のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:95のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:124のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:150のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:164のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:188のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:73のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:96のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:151のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:175のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:199のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:97のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:126のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:152のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:176のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:200のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:98のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:127のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:153のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:177のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:201のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:66のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:99のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:128のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:138のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:164のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:188のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:75のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:100のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:129のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:154のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:178のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:202のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:71のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:101のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:130のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:155のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:179のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:201のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:76のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:102のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:131のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:156のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:180のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:203のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:77のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:103のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:132のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:157のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:181のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:204のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:78のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:104のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:133のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:158のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:182のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:205のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:105のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:126のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:159のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:176のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:200のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:79のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:106のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:134のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:160のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:183のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:206のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:107のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:126のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:161のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:176のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:200のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:70のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:108のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:135のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:144のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:170のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:207のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:80のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:109のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:136のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:162のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:184のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:208のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:213のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:215のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:217のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:156のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:180のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:219のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:214のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:216のアミノ酸配列を
含むHVR-H2;(c)配列番号:218のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:220のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:172のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:221のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(a)配列番号:224のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:225のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:226のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:146のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:227のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:228のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗MerTK抗体が提供される。
【0113】
別の態様において、抗MerTK抗体は、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、209、210、及び222からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(V)配列を含む。所定の態様において、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、209、210、及び222からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するV配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗MerTK抗体は、MerTKに結合する能力を保持する。所定の態様において、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、209、210、または222において合計で1~10アミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。所定の態様において、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、209、210、または222において合計で1~5アミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。所定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVR外の領域で(すなわち、FRで)生じる。任意に、抗MerTK抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、209、210、または222のV配列を含む。特定の態様において、Vは、(a)配列番号:63~80、213、214、及び224からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1(b)配列番号:81~109、215、216、及び225からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2ならびに(c)配列番号:110~136、217、218、及び226からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0114】
別の態様において、抗MerTK抗体であって、抗体は、配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、211、212、及び223からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗MerTK抗体が提供される。所定の態様において、配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、211、212、及び223からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するV配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗MerTK抗体は、MerTKに結合する能力を保持する。いくつかの態様において、配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、211、212、または223において合計で1~10アミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。所定の態様において、配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、211、212、または223において合計で1~5アミノ酸が置換、挿入、及び/または欠失されている。所定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVR外の領域で(すなわち、FRで)生じる。任意に、抗MerTK抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、211、212、または223のV配列を含む。特定の態様において、Vは、(a)配列番号:137~162、及び220からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:163~184、及び227からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2、ならびに(c)配列番号:185~208、219、221、及び228からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0115】
いくつかの態様において、抗MerTK抗体であって、抗体は、上に提供される態様のいずれかにあるようなV、及び上に提供される態様のいずれかにあるようなVを含む、抗MerTK抗体が提供される。いくつかの態様において、本明細書では、抗MerTK抗体であって、抗体は、上に提供される態様のいずれかにあるようなV、及び上に提供される態様のいずれかにあるようなVを含む、抗MerTK抗体が提供される。一態様において、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、それぞれ配列番号:5~33、209、210、及び222ならびに配列番号:34~62、211、212、及び223におけるV及びV配列を含む。
【0116】
いくつかの態様において、本明細書では、重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗MerTK抗体であって、V及びVは、配列番号:5のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:34のアミノ酸配列を含むV;配列番号:6のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:35のアミノ酸配列を含むV;配列番号:7のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:36のアミノ酸配列を含むV;配列番号:8のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:37のアミノ酸配列を含むV;配列番号:9のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:38のアミノ酸配列を含むV;配列番号:10のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:39のアミノ酸配列を含むV;配列番号:11のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:40のアミノ酸配列を含むV;配列番号:12のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:41のアミノ酸配列を含むV;配列番号:13のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:42のアミノ酸配列を含むV;配列番号:14のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:43のアミノ酸配列を含むV;配列番号:15のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:44のアミノ酸配列を含むV;配列番号:16のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:45のアミノ酸配列を含むV;配列番号:17のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:46のアミノ酸配列を含むV;配列番号:18のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:47のアミノ酸配列を含むV;配列番号:19のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:48のアミノ酸配列を含むV;配列番号:20のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:49のアミノ酸配列を含むV;配列番号:21のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:50のアミノ酸配列を含むV;配列番号:22のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:51のアミノ酸配列を含むV;配列番号:23のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:52のアミノ酸配列を含むV;配列番号:24のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:53のアミノ酸配列を含むV;配列番号:25のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:54のアミノ酸配列を含むV;配列番号:26のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:55のアミノ酸配列を含むV;配列番号:27のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:56のアミノ酸配列を含むV;配列番号:28のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:57のアミノ酸配列を含むV;配列番号:29のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:58のアミノ酸配列を含むV;配列番号:30のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:59のアミノ酸配列を含むV;配列番号:31のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:60のアミノ酸配列を含むV;配列番号:32のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:61のアミノ酸配列を含むV;配列番号:33のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:62のアミノ酸配列を含むV;配列番号:209のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:211のアミノ酸配列を含むV;配列番号:210のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:212のアミノ酸配列を含むV;ならびに配列番号:222のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:223のアミノ酸配列を含むV;からなる群から選択される、抗MerTK抗体が提供される。
【0117】
いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MerTKに対する結合について、MTK-201、MTK-202、MTK-203、MTK-204、MTK-205、MTK-206、MTK-207、MTK-208、MTK-209、MTK-210、MTK-211、MTK-212、MTK-213、MTK-214、MTK-215、MTK-216、MTK-217、MTK-218、MTK-219、MTK-220、MTK-221、MTK-222、MTK-223、MTK-224、MTK-225、MTK-226、MTK-227、MTK-228、MTK-229、MTK-230、MTK-231、及びMTK-232ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの参照抗体の結合を競合的に阻害する。
【0118】
いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、MTK-201、MTK-202、MTK-203、MTK-204、MTK-205、MTK-206、MTK-207、MTK-208、MTK-209、MTK-210、MTK-211、MTK-212、MTK-213、MTK-214、MTK-215、MTK-216、MTK-217、MTK-218、MTK-219、MTK-220、MTK-221、MTK-222、MTK-223、MTK-224、MTK-225、MTK-226、MTK-227、MTK-228、MTK-229、MTK-230、MTK-231、及びMTK-232から選択される少なくとも1つの参照抗体によって結合されるMerTKエピトープと同じまたは重複する、ヒトMerTKのエピトープに結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的な方法は、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)に提供される。
【0119】
いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、少なくとも1つの参照抗体の結合を競合的に阻害し、または少なくとも1つの参照抗体が結合するMerTKエピトープと同じまたは重複する、ヒトMerTKのエピトープに結合し、参照抗体は、重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗MerTK抗体であり、V及びVは、配列番号:5のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:34のアミノ酸配列を含むV;配列番号:6のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:35のアミノ酸配列を含むV;配列番号:7のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:36のアミノ酸配列を含むV;配列番号:8のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:37のアミノ酸配列を含むV;配列番号:9のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:38のアミノ酸配列を含むV;配列番号:10のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:39のアミノ酸配列を含むV;配列番号:11のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:40のアミノ酸配列を含むV;配列番号:12のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:41のアミノ酸配列を含むV;配列番号:13のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:42のアミノ酸配列を含むV;配列番号:14のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:43のアミノ酸配列を含むV;配列番号:15のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:44のアミノ酸配列を含むV;配列番号:16のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:45のアミノ酸配列を含むV;配列番号:17のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:46のアミノ酸配列を含むV;配列番号:18のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:47のアミノ酸配列を含むV;配列番号:19のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:48のアミノ酸配列を含むV;配列番号:20のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:49のアミノ酸配列を含むV;配列番号:21のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:50のアミノ酸配列を含むV;配列番号:22のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:51のアミノ酸配列を含むV;配列番号:23のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:52のアミノ酸配列を含むV;配列番号:24のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:53のアミノ酸配列を含むV;配列番号:25のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:54のアミノ酸配列を含むV;配列番号:26のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:55のアミノ酸配列を含むV;配列番号:27のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:56のアミノ酸配列を含むV;配列番号:28のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:57のアミノ酸配列を含むV;配列番号:29のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:58のアミノ酸配列を含むV;配列番号:30のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:59のアミノ酸配列を含むV;配列番号:31のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:60のアミノ酸配列を含むV;配列番号:32のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:61のアミノ酸配列を含むV;配列番号:33のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:62のアミノ酸配列を含むV;配列番号:209のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:211のアミノ酸配列を含むV;配列番号:210のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:212のアミノ酸配列を含むV;ならびに配列番号:222のアミノ酸配列を含むV及び配列番号:223のアミノ酸配列を含むV;からなる群から選択される。
【0120】
いくつかの態様において、上の態様のいずれかによる抗MerTK抗体は、ヒト化及び/またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗MerTK抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片である。いくつかの態様において、抗MerTK抗体は、実質的に全長の抗体、例えば、IgGl抗体、IgG2a抗体または本明細書に定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
【0121】
いくつかの態様において、上の態様のいずれかによる抗MerTK抗体は、以下のセクション1~7に記載されているような特徴のいずれかを単独でまたは組み合わせて組み込み得る。
【0122】
(1)抗MerTK抗体結合親和性
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。解離定数は、任意の生化学的または生物物理学的技術、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)、生物層干渉法(例えば、ForteBioによるOctet Systemを参照されたい)、等温滴定熱量測定(ITC)、示差走査熱量測定(DSC)、円偏光二色性(CD)、ストップトフロー分析、及び比色分析または蛍光タンパク質溶融分析を含む任意の分析的技術を介して決定され得る。一態様において、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。いくつかの態様において、RIAは、例えば、Chen et al.J.Mol.Biol.293:865-881(1999)に記載されるように、対象となる抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて実施される。いくつかの態様において、Kは、BIACORE表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定され、例えば、BIACORE-2000またはBIACORE-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、約10反応単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて25℃で実施される。いくつかの態様において、Kは、一価抗体(例えば、Fab)または全長抗体を使用して決定される。いくつかの態様において、Kは、一価形態の全長抗体を使用して決定される。
【0123】
いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、ヒトMerTKに結合し、ヒトMerTKに結合するKは、約1.4nM~約81nMである。いくつかの態様において、抗MerTK抗体は、カニクイザルMerTKに結合し、カニクイザルMerTKに結合するKは、約1.6nM~約107nMである。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、マウスMerTKに結合し、マウスMerTKに結合するKは、約30nM~約186nMである。
【0124】
(2)抗体断片
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv、及びscFv断片、ならびに下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片のレビューについては、例えば、WO93/16185;ならびに米国特許第5571894号及び同第5587458号を参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加した体内半減期を有する、Fab及びF(ab’)断片の考察については、米国特許第5869046号を参照されたい。
【0125】
ダイアボディは、二価性または二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404097;WO1993/01161;Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む、抗体断片である。ある特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(例えば、米国特許第6248516号を参照されたい)。
【0126】
抗体断片は、本明細書に記載される、インタクトな抗体のタンパク分解消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)の生成を含むが、これらに限定されない、様々な技法によって作製され得る。
【0127】
(3)キメラ及びヒト化抗体
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、キメラ抗体である。所定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4816567号に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサル等の非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる実施例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれから変更された、「クラススイッチされた」抗体である。キメラ抗体には、それらの抗原結合断片が含まれる。
【0128】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、ヒト化抗体である。典型的に、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減するために、ヒト化される。所定の態様において、ヒト化抗体は、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である。所定の態様において、ヒト化抗体は、ヒト化抗体の由来となった別の種からの抗体と実質的に同じ標的に対する親和性を有する。例えば、米国特許第5530101号、同第5693761号;同第5693762号;及び同第5585089号を参照されたい。所定の態様において、その免疫原性を減少させながら抗原結合ドメインの天然親和性を減弱させずに修飾され得る抗体可変ドメインのアミノ酸が特定される。例えば、米国特許第5766886号及び同第5869619号を参照されたい。通常、ヒト化抗体は、HVR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、及びFR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。任意にヒト化抗体はまた、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)に由来する対応する残基で置換される。
【0129】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro et al.Front.Biosci.13:161 9-1633(2008)でレビューされており、例えば、米国特許第5821337号、同第7527791号、同第6982321号、及び同第7087409号にさらに記載されている。ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、次のものが含まれるが、これらに限定されない:「最良適合(best-fit)」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい);軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.151:2623(1993)を参照されたい);ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい);及びFRライブラリのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)。
【0130】
(4)ヒト抗体
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を使用して生成することができる。ヒト抗体は、一般に、van Dijk et al.Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0131】
ヒト抗体は、免疫原を、抗原投与に応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を含むインタクトな抗体を生成するように修飾されたトランスジェニック動物に投与することによって、調製されてもよい。そのようなマウスがマウス抗体の非存在下でヒト抗体を生成するであろうことを予期してヒトIg遺伝子座の大きな断片を伴ってマウス抗体生成欠損マウス系統を操作することができる。大きなヒトIg断片は、広い可変遺伝子多様性ならびに抗体生成及び発現の適切な制御を維持し得る。抗体多様化及び選択のためのマウス機構ならびにヒトタンパク質に対する免疫学的忍容性の欠如を利用することにより、これらのマウス系統における再現されたヒト抗体レパートリーは、ヒト抗原を含む、対象となる任意の抗原に対する高親和性完全ヒト抗体を生成し得る。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する抗原特異的ヒトMAbが生成され、選択され得る。所定の例示的な方法は、米国特許第5545807号、EP546073、及びEP546073に記載されている。例えば、米国特許第6075181号及び同第6150584号(XENOMOUSE(商標)技術について記載)、米国特許第5770429号(HUMAB(登録商標)技術について記載)、米国特許第7041870号(K-M MOUSE(登録商標)技術について記載)、ならびに米国特許出願公開第US2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載)も参照されたい。かかる動物によって生成されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに修飾されてもよい。
【0132】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の生成のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.133:3001(1984)及びBoerner et al.J.Immunol.147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体もまた、Li et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1 03:3557-3562(2006)に記載される。追加の方法には、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の生成を記載する)に記載されるものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(Trioma technology)はまた、Vollmers et al.Histology and Histopathology 20(3):927-937(2005)及びVollmers et al.Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27(3):185-91(2005)にも記載される。ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって、生成されてもよい。かかる可変ドメイン配列は次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わされてもよい。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が、以下に記載される。
【0133】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてin vitro方法及び/またはコンビナトリアルライブラリのスクリーニングによって単離されたヒト抗体である。好適な例には、ファージディスプレイ(CAT、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Symphogen、Alexion(旧Proliferon)、Affimed)リボソームディスプレイ(CAT)、酵母ディスプレイ(Adimab)などが含まれるがこれらに限定されない。所定のファージディスプレイ法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリにおいて無作為に組み合わされ、これは次いで抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る(Winter et al.Ann.Rev.Immunol.12:433-455(1994)に記載されているように)。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、かかるライブラリを、所望の結合特性を保有する抗体についてスクリーニングするための、多様な方法が当該技術分野で知られている。Sidhu et al.J.Mol.Biol.338(2):299-310,2004;Lee et al.J.Mol.Biol.340(5):1073-1093,2004;Fellouse Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.J.Immunol.Methods 284(-2):1 19-132(2004)も参照されたい。ファージは典型的に、1本鎖Fv(scFv)断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al.EMBO J.12:725-734(1993)によって記載されるように、ナイーブレパートリーをクローニングして(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、広範な非自己抗原及びまた自己抗原に対する抗体の単一の源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリはまた、Hoogenboom et al.J.Mol.Biol.,227:381-388,1992に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、無作為配列を含むPCRプライマーを使用して高度可変HVR3領域をコードし、in vitroで再配列を達成することによって、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載している特許公開には、例えば、米国特許第5750373号、及び米国特許公開第2007/0292936号及び同第2009/0002360号が含まれる。ヒト抗体ライブラリから単離された抗体は、本明細書でヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0134】
(5)Fc領域を含む定常領域
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、Fcを含む。いくつかの態様において、Fcは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及び/またはIgG4アイソタイプである。いくつかの態様において、抗体は、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである。
【0135】
本明細書で提供される抗体のいずれかの所定の態様において、抗体は、IgG2アイソタイプを有する。いくつかの態様において、抗体は、ヒトIgG2定常領域を含有する。いくつかの態様において、ヒトIgG2定常領域には、Fc領域が含まれる。いくつかの態様において、抗体は、Fc受容体に対する結合とは独立して、1つ以上のMerTK活性を誘導する。いくつかの態様において、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。所定の態様において、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-ガンマ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0136】
本明細書で提供される抗体のいずれかの所定の態様において、抗体は、IgG1アイソタイプを有する。いくつかの態様において、抗体は、マウスIgG1定常領域を含有する。いくつかの態様において、抗体は、ヒトIgG1定常領域を含有する。いくつかの態様において、ヒトIgG1定常領域には、Fc領域が含まれる。いくつかの態様において、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。所定の態様において、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-ガンマ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0137】
本明細書で提供される抗体のいずれかの所定の態様において、抗体は、IgG4アイソタイプを有する。いくつかの態様において、抗体は、ヒトIgG4定常領域を含有する。いくつかの態様において、ヒトIgG4定常領域には、Fc領域が含まれる。いくつかの態様において、抗体は、阻害性Fc受容体に結合する。所定の態様において、阻害性Fc受容体は、阻害性Fc-ガンマ受容体IIB(FcγIIB)である。
【0138】
本明細書で提供される抗体のいずれかの所定の態様において、抗体は、ハイブリッドIgG2/4アイソタイプを有する。いくつかの態様において、抗体は、ヒトIgG2のEU付番によるアミノ酸118~260及びヒトIgG4のEU付番によるアミノ酸261~447を含むアミノ酸配列を含む(WO1997/11971;WO2007/106585)。
【0139】
いくつかの態様において、Fc領域は、アミノ酸置換を含まないFc領域を含む対応する抗体と比較して補体を活性化することなくクラスター化を増加させる。いくつかの態様において、抗体は、抗体が特異的に結合する標的の1つ以上の活性を誘導する。いくつかの態様において、抗体は、MerTKに結合する。
【0140】
また、抗体のエフェクター機能を修飾し、及び/または血清半減期を延長するために、本開示の抗MerTK抗体を修飾することが望ましい場合がある。例えば、定常領域上のFc受容体結合部位を修飾または変異させて、特定のFc受容体、例えば、FcγRI、FcγRII、及び/またはFcγRIIIに対する結合親和性を除去または低減して、抗体依存性細胞媒介細胞傷害を低減し得る。いくつかの態様において、エフェクター機能は、抗体のFc領域(例えば、IgGのCH2ドメイン中)のN-グリコシル化を除去することによって低下する。いくつかの態様において、エフェクター機能は、WO99/58572及びArmour et al.Molecular Immunology 40:585-593(2003);Reddy et al.J.Immunology 164:1925-1933(2000)に記載されるように、ヒトIgGの233~236、297及び/または327~331などの領域を修飾することによって低下する。他の態様において、本開示の抗MerTK抗体を修飾してエフェクター機能を修飾して、ITIMを含有するFcgRIIb(CD32b)に対する発見選択性を向上させて、抗体依存性細胞媒介細胞傷害及び抗体依存性細胞貪食を含む体液性反応を活性化することなく、隣接細胞上でMerTK抗体のクラスター化を増加させることも所望であり得る。
【0141】
抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国特許第5739277号に記載されるようなサルベージ受容体結合エピトープが抗体(特に、抗体断片)中に組み込まれ得る。本明細書で使用されるとき、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のin vivo血清半減期を延長させるのに貢献するIgG分子(例えば、IgG、IgG、IgG、またはIgG)のFc領域のエピトープを指す。他のアミノ酸配列修飾。
【0142】
(6)抗体バリアント
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましいことがある。
【0143】
(i)置換、挿入、及び欠失バリアント
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。抗体のアミノ酸配列バリアントは、適切な修飾を、抗体をコードするヌクレオチド配列中に導入することによって、またはペプチド合成によって、調製されてもよい。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/またはそこへ残基の挿入、及び/またはその内の残基の置換が含まれる。
【0144】
(表A)アミノ酸置換
【0145】
抗体の生物学的特性の実質的な修飾は、置換を選択することにより達成され、これらは、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくは螺旋立体配座、(b)標的部位における分子の荷電もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルクの維持に対するそれらの影響が著しく異なる。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0146】
例えば、非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーと別のクラスからのメンバーとの交換を含み得る。そのような置換残基は、例えば、非ヒト抗体と相同性のあるヒト抗体の領域に、または分子の非相同性領域に導入され得る。
【0147】
本明細書に記載のポリペプチドまたは抗体に変化を加える際に、所定の態様によれば、アミノ酸のハイドロパシー指数が考慮され得る。各アミノ酸は、その疎水性及び荷電特性に基づいてハイドロパシー指数が割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)である。
【0148】
タンパク質に相互作用的生物学的機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当該技術分野で理解されている。Kyte et al.J.Mol.Biol.,157:105-131(1982)。所定のアミノ酸は、同様のハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸で置換され得、なおも同様の生物学的活性を保持することが知られている。疎水性指数に基づいて変化を加える際には、所定の態様において、ハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。所定の態様において、±1以内であるものが含まれ、所定の態様において、±0.5以内のものが含まれる。
【0149】
また、同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて有効に行われ得ることも当該技術分野で理解される(特にそれによって作製された生物学的機能性タンパク質またはペプチドが、本事例のように免疫学的態様での使用が意図されている場合)。所定の態様において、その隣接アミノ酸の親水性によって支配される、タンパク質の最も高い局所平均親水性は、その免疫原性及び抗原性、すなわち、タンパク質の生物学的特性と相関する。
【0150】
以下の親水性値がこれらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0±1);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5)及びトリプトファン(-3.4)。同様の親水性値に基づいて変化を加える場合、所定の態様において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれ、所定の態様において、±1以内であるものが含まれ、所定の態様において、±0.5以内のものが含まれる。親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを特定することもできる。これらの領域は、「エピトープコア領域」とも称される。
【0151】
上で提供されるバリアントVH及びVL配列の所定の態様において、各HVRは、改変されていない。
【0152】
アミノ酸配列挿入には、1つの残基から100個以上の残基を含むポリペプチドの範囲の長さである、アミノ末端及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一のまたは多数のアミノ酸残基の配列内(intrasequence)挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入型バリアントには、酵素(例えば、ADEPTのため)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が含まれる。
【0153】
抗体の適切な立体配座の維持に関与しないHVR外の任意のシステイン残基も概してセリンで置換されて、分子の酸化的安定性が改善され、異常な架橋が阻止され得る。逆に、システイン結合(複数可)を抗体に付加すると、その安定性を改善することができる(具体的には、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
【0154】
(ii)グリコシル化バリアント
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または低下させるために改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか、または除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって、好都合に遂行されてもよい。
【0155】
抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化とは、糖類であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0156】
グリコシル化部位の、抗体への付加は、(N連結グリコシル化部位のための)上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することにより簡便に達成される。改変はまた、元の抗体の配列に1つ以上のセリン残基もしくはトレオニン残基を付加するか、これらの残基で置換することによっても行うことができる(O結合型グリコシル化部位の場合)。
【0157】
抗体がFc領域を含む場合、そこに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳類細胞によって生成される天然抗体は、典型的に、一般にN-結合によって、Fc領域のCH2ドメインのKabat付番によるAsn297に結合される、分岐した二分岐オリゴ糖を含む。オリゴ糖類には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖類構造の「ステム」においてGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの態様において、本開示の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、ある特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作り出すために行われてもよい。
【0158】
一態様において、Fc領域に(直接的にまたは間接的に)結合されるフコースを欠いた炭水化物構造を有する、抗体バリアントが提供される。例えば、米国特許公開第2003/0157108号及び同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損性」抗体バリアントに関する刊行物の例には、US2003/0157108;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を生成することが可能な細胞株の例には、タンパク質フコシル化が欠損しているLed3 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);US2003/0157108)、及びノックアウト細胞株、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)及びKanda et al.Biotechnol.Bioeng.94(4):680-688(2006)を参照されたい)が含まれる。
【0159】
(iii)修飾された定常領域
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体Fcは、抗体Fcアイソタイプ及び/または修飾である。いくつかの態様において、抗体Fcアイソタイプ及び/または修飾は、Fcガンマ受容体に結合することが可能である。
【0160】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、修飾された抗体Fcは、IgG1修飾Fcである。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、1つ以上の修飾を含む。例えば、いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、同じアイソタイプの野生型Fc領域に対して)を含む。いくつかの態様において、1つ以上のアミノ酸置換は、N297A(Bolt S et al.(1993)Eur J Immunol 23:403-411)、D265A(Shields et al.(2001)R.J.Biol.Chem.276,6591-6604)、L234A、L235A(Hutchins et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA,92:11980-11984;Alegre et al.,(1994)Transplantation 57:1537-1543.31;Xu et al.,(2000)Cell Immunol,200:16-26)、G237A(Alegre et al.(1994)Transplantation 57:1537-1543.31;Xu et al.(2000)Cell Immunol,200:16-26)、C226S、C229S、E233P、L234V、L234F、L235E(McEarchern et al.,(2007)Blood,109:1185-1192)、P331S(Sazinsky et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 2008,105:20167-20172)、S267E、L328F、A330L、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択され、ここで、アミノ酸の位置は、EU付番規則に従うものである。
【0161】
IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるN297A変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるD265A及びN297A変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるD270A変異を含む。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番によるL234A及びL235A変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるL234A及びG237A変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるL234A、L235A及びG237A変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるP238D、L328E、E233、G237D、H268D、P271G及びA330R変異のうちの1つ以上(全てを含む)を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるS267E/L328F変異のうちの1つ以上を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるP238D、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G及びA330R変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるP238D、L328E、G237D、H268D、P271G及びA330R変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるP238D、S267E、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G及びA330R変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるP238D、S267E、L328E、G237D、H268D、P271G及びA330R変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるC226S、C229S、E233P、L234V、及びL235A変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるL234F、L235E、及びP331S変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるS267E及びL328F変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるN325S及びL328F変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるS267E変異を含む。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、IgG1の定常重1(CH1)及びヒンジ領域の、カッパ軽鎖を有するIgG2のCH1及びヒンジ領域(EU付番によるIgG2のアミノ酸118~230)での置換を含む。
【0162】
IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、2つ以上のアミノ酸置換を含まないFc領域を有する対応する抗体と比較して、補体を活性化することなく抗体クラスター化を増加させる2つ以上のアミノ酸置換を含む。したがって、IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、Fc領域を含む抗体であって、抗体は、位置E430Gでのアミノ酸置換ならびにEU付番によるL234F、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、A330S、P331S、及びそれらの任意の組み合わせから選択される残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体である。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番による位置E430G、L243A、L235A、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番による位置E430G及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番による位置E430G及びK322Aでのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番による位置E430G、A330S、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番による位置E430G、K322A、A330S、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番による位置E430G、K322A、及びA330Sでのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番による位置E430G、K322A、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。
【0163】
IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、IgG1修飾Fcは本明細書では、補体活性化を排除するために、EU付番規則による、A330L変異(Lazar et al.Proc Natl Acad Sci USA,103:4005-4010(2006))、またはL234F、L235E、及び/もしくはP331S変異のうちの1つ以上(Sazinsky et al.Proc Natl Acad Sci USA,105:20167-20172(2008))をさらに含み得る。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番によるA330L、A330S、L234F、L235E、及び/またはP331Sのうちの1つ以上をさらに含み得る。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、ヒト血清における抗体半減期を延長させるための1つ以上の変異をさらに含み得る(例えば、EU付番規則によるM252Y、S254T、及びT256E変異の1つ以上(全てを含む))。IgG1修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、IgG1修飾Fcは、EU付番によるE430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345Y、S440Y、及び/またはS440Wのうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0164】
本開示の他の態様は、修飾された定常領域(すなわち、Fc領域)を有する抗体に関する。標的とされた受容体を活性化するためにFcgR受容体に対する結合に依存する抗体は、FcgR結合を排除するように操作された場合、そのアゴニスト活性を喪失し得る(例えば、Wilson et al.Cancer Cell 19:101-113(2011);Armour at al.Immunology 40:585-593(2003);及びWhite et al.Cancer Cell 27:138-148(2015)を参照されたい)。このように、抗体がヒトIgG2アイソタイプからのFcドメイン(CH1及びヒンジ領域)もしくは阻害性FcgRIIB r受容体に優先的に結合することが可能な別のタイプのFcドメイン、またはそれらのバリエーションを有する場合、正確なエピトープ特異性を有する本開示の抗MerTK抗体は、最小の有害作用で標的抗原を活性化し得ると考えられる。
【0165】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、修飾された抗体Fcは、IgG2修飾Fcである。いくつかの態様において、IgG2修飾Fcは、1つ以上の修飾を含む。例えば、いくつかの態様において、IgG2修飾Fcは、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、同じアイソタイプの野生型Fc領域に対して)を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、1つ以上のアミノ酸置換は、EU付番規則に従ってV234A(Alegre et al.Transplantation 57:1537-1543(1994);Xu et al.Cell Immunol,200:16-26(2000));G237A(Cole et al.Transplantation,68:563-571(1999));H268Q、V309L、A330S、P331S(US2007/0148167;Armour et al.Eur J Immunol 29:2613-2624(1999);Armour et al.The Haematology Journal 1(Suppl.1):27(2000);Armour et al.The Haematology Journal 1(Suppl.1):27(2000))、C219S、及び/またはC220S(White et al.Cancer Cell 27,138-148(2015));S267E、L328F(Chu et al.Mol Immunol,45:3926-3933(2008));ならびにM252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択される。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置V234A及びG237Aでのアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置C219SまたはC220Sでのアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置A330S及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置S267E及びL328Fでのアミノ酸置換を含む。
【0166】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番規則によるC127Sアミノ酸置換を含む(White et al.,(2015)Cancer Cell 27,138-148;Lightle et al.Protein Sci.19:753-762(2010);及びWO2008/079246)。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、抗体は、EU付番規則によるC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する(White et al.Cancer Cell 27:138-148(2015);Lightle et al.Protein Sci.19:753-762(2010);及びWO2008/079246)。
【0167】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番規則によるC220Sアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、抗体は、EU付番規則によるC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する。
【0168】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番規則によるC219Sアミノ酸置換を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、抗体は、EU付番規則によるC214Sアミノ酸置換を含むカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有する。
【0169】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、IgG2アイソタイプ重鎖定常ドメイン1(CH1)及びヒンジ領域を含む(White et al.Cancer Cell 27:138-148(2015))。IgG2修飾Fcのいずれかの所定の態様において、IgG2アイソタイプCH1及びヒンジ領域は、EU付番による118~230のアミノ酸配列を含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、抗体Fc領域は、EU付番規則によるS267Eアミノ酸置換、L328Fアミノ酸置換、もしくはその両方、及び/またはN297AもしくはN297Qアミノ酸置換を含む。
【0170】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345Y、S440Y、及びS440Wでの1つ以上のアミノ酸置換をさらに含む。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、ヒト血清における抗体半減期を延長させるための1つ以上の変異をさらに含み得る(例えば、EU付番規則によるM252Y、S254T、及びT256E変異の1つ以上(全てを含む))。IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、A330S及びP331Sをさらに含み得る。
【0171】
IgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、IgG2/4ハイブリッドFcである。いくつかの態様において、IgG2/4ハイブリッドFcは、IgG2のaa118~260及びIgG4のaa261~447を含む。任意のIgG2修飾Fcのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置H268Q、V309L、A330S、及びP331Sでの1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0172】
IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるA330L、L234F;L235E、またはP331S;及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の追加のアミノ酸置換を含む。
【0173】
IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかの所定の態様において、Fcは、EU付番によるC127S、L234A、L234F、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、A330S、P331S、E345R、E430G、S440Y、及びそれらの任意の組み合わせから選択される残基位置での1つ以上のアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G、L243A、L235A、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G及びK322Aでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G、A330S、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G、K322A、A330S、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G、K322A、及びA330Sでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G、K322A、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置S267E及びL328Fでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置C127Sでのアミノ酸置換を含む。IgG1及び/またはIgG2修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E345R、E430G及びS440Yでのアミノ酸置換を含む。
【0174】
本明細書で提供される抗体のいずれかのいくつかの態様において、修飾された抗体Fcは、IgG4修飾Fcである。いくつかの態様において、IgG4修飾Fcは、1つ以上の修飾を含む。例えば、いくつかの態様において、IgG4修飾Fcは、1つ以上のアミノ酸置換(同じアイソタイプの野生型Fc領域に対して)を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、1つ以上のアミノ酸置換は、EU付番規則によるL235A、G237A、S229P、L236E(Reddy et al.J Immunol 164:1925-1933(2000))、S267E、E318A、L328F、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択される。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番規則によるL235A、G237A、及びE318Aをさらに含み得る。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番規則によるS228P及びL235Eをさらに含み得る。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、IgG4修飾Fcは、EU付番規則によるS267E及びL328Fをさらに含み得る。
【0175】
IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、IgG4修飾Fcは、抗体安定化を向上させるために、EU付番規則によるS228P変異(Angal et al.Mol Immunol.30:105-108(1993))及び/またはPeters et al.J Biol Chem.287(29):24525-33(2012)に記載されている1つ以上の変異と組み合わされ得る。
【0176】
IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、IgG4修飾Fcは、ヒト血清における抗体半減期を延長させるための1つ以上の変異をさらに含み得る(例えば、EU付番規則によるM252Y、S254T、及びT256E変異の1つ以上(全てを含む))。
【0177】
IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番によるL235Eを含む。IgG4修飾Fcのいずれかの所定の態様において、Fcは、EU付番によるC127S、F234A、L235A、L235E、S267E、K322A、L328F、E345R、E430G、S440Y、及びそれらの任意の組み合わせから選択される残基位置での1つ以上のアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G、L243A、L235A、及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G及びP331Sでのアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430G及びK322Aでのアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E430でのアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fc領域は、EU付番による位置E430G及びK322Aでのアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置S267E及びL328Fでのアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置C127Sでのアミノ酸置換を含む。IgG4修飾Fcのいずれかのいくつかの態様において、Fcは、EU付番による位置E345R、E430G及びS440Yでのアミノ酸置換を含む。
【0178】
(7)他の抗体修飾
抗体のいずれかのいくつかの態様において、抗体は、誘導体である。「誘導体」という用語は、アミノ酸(または核酸)の挿入、欠失、または置換以外の化学的修飾を含む分子を指す。所定の態様において、誘導体は、ポリマー、脂質、または他の有機もしくは無機部位での化学結合を含むがこれらに限定されない共有結合性修飾を含む。所定の態様において、化学的に修飾された抗原結合タンパク質は、化学的に修飾されていない抗原結合タンパク質よりも長い循環半減期を有し得る。所定の態様において、化学的に修飾された抗原結合タンパク質は、所望の細胞、組織、及び/または器官に対する改善された標的化能力を有し得る。いくつかの態様において、誘導体抗原結合タンパク質は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールを含むがこれらに限定されない1つ以上の水溶性ポリマー結合物を含むように共有結合的に修飾される。例えば、米国特許第4640835号、同第4496689号、同第4301144号、同第4670417号、同第4791192号及び同第4179337号を参照されたい。所定の態様において、誘導体抗原結合タンパク質は、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、ポリ-(N-ビニルピロリドン)-ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)及びポリビニルアルコール、ならびにそのようなポリマーの混合物を含むがこれらに限定されない1つ以上のポリマーを含む。
【0179】
所定の態様において、誘導体は、ポリエチレングリコール(PEG)サブユニットで共有結合的に修飾される。所定の態様において、1つ以上の水溶性ポリマーは、誘導体の1つ以上の特定の位置、例えばアミノ末端で結合される。所定の態様において、1つ以上の水溶性ポリマーは、誘導体の1つ以上の側鎖に無作為に結合される。所定の態様において、PEGは、抗原結合タンパク質についての治療的能力を改善するために使用される。所定の態様において、PEGは、ヒト化抗体についての治療的能力を改善するために使用される。所定のそのような方法は、例えば、米国特許第6133426号(任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる)で論述されている。
【0180】
ペプチド類似体は一般的に、鋳型ペプチドの特性に類似した特性を有する非ペプチド薬物として製薬産業において使用される。これらの種類の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物」または「ペプチド模倣薬」と呼ばれる。Fauchere,J.Adv.Drug Res.,15:29(1986);及びEvans et al.J.Med.Chem.,30:1229(1987)(任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる)。そのような化合物はしばしば、コンピュータ化分子モデル化の助けを借りて開発される。治療的に有用なペプチドと構造的に類似しているペプチド模倣物を使用して、同様の治療的または予防的効果を生み出し得る。通常、ペプチド模倣物は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、当該技術分野でよく知られている方法によって、-CHNH-、-CHS-、-CH-CH-、-CH=CH-(cis及びtrans)、-COCH-、-CH(OH)CH-、及び-CHSO-から選択される連結によって任意に置換された1つ以上のペプチド連結を有する。コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の同じタイプのD-アミノ酸での系統的置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)は、より安定なペプチドを生成するために所定の態様で使用され得る。また、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列バリエーションを含む制約されたペプチドは、当該技術分野で知られている方法(任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる、Rizo and Gierasch Ann.Rev.Biochem.,61:387(1992))によって;例えば、ペプチドを環状化する分子内ジスルフィド架橋を形成することが可能な内部システイン残基を付加することによって生成され得る。
【0181】
薬物コンジュゲーションは、生物学的活性細胞傷害性(抗がん)ペイロードまたは薬物を、特定の腫瘍マーカー(例えば、理想的には、腫瘍細胞内または腫瘍細胞上にのみ見られるポリペプチド)を特異的に標的とする抗体にカップリングすることを伴う。抗体は、身体内でこれらのタンパク質を見つけ出し、それ自体をがん細胞の表面に結合させる。抗体と標的タンパク質(抗原)との間の生化学的反応は、腫瘍細胞におけるシグナルを誘発し、これは次いで細胞毒素と共に抗体を吸収し、または内在化する。ADCが内在化された後、細胞傷害性薬物が放出され、がんを殺傷する。この標的化により、理想的には、薬物は、他の化学療法剤よりも低い副作用を有し、より広い治療ウインドウを提供する。抗体をコンジュゲートするための技術は、当該技術分野において開示されており、既知である(例えば、Jane de Lartigue OncLive July 5,2012;ADC Review on antibody-drug conjugates;及びDucry et al.Bioconjugate Chemistry 21(1):5-13(2010)を参照されたい)。
【0182】
III.核酸、ベクター、及び宿主細胞
本開示の抗MerTK抗体は、例えば、米国特許第4816567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して生成され得る。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体のいずれかをコードするヌクレオチド配列を有する単離された核酸が提供される。かかる核酸は、抗MerTK抗体のVを含むアミノ酸配列及び/または抗MerTK抗体のVを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。いくつかの態様において、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの態様において、そのような核酸を含む宿主細胞も提供される。いくつかの態様において、宿主細胞は、(1)本抗体のVを含むアミノ酸配列及び本抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)本抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び本抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらで形質転換されている)。いくつかの態様において、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。本開示の宿主細胞にはまた、限定するものではないが、単離された細胞、in vitro培養細胞、及びex vivo培養細胞が含まれる。
【0183】
本開示の抗MerTK抗体を作製する方法が提供される。いくつかの態様において、方法は、抗MerTK抗体をコードする核酸を含む本開示の宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することを含む。いくつかの態様において、抗体は、その後、宿主細胞(または宿主細胞培地)から回収される。
【0184】
本開示の抗MerTK抗体を組換え生成するには、抗MerTK抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/または発現のために1つ以上のベクター中に挿入する。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定することができる。
【0185】
本開示の抗MerTK抗体、または本明細書に記載の細胞表面発現断片もしくはそのポリペプチド(抗体を含む)のいずれかをコードする核酸配列を含有する好適なベクターには、限定するものではないが、クローニングベクター及び発現ベクターが含まれる。好適なクローニングベクターは、標準的技術に従って構築することができ、あるいは当該技術分野において入手可能な多数のクローニングベクターから選択してもよい。選択されるクローニングベクターは、使用予定の宿主細胞に応じて変わり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製能を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの標的を1つ有し得、及び/またはベクターを含むクローンの選択に用いることができるマーカーの遺伝子を保持し得る。好適な例には、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが含まれる。これらの及び多くの他のクローニングベクターがBioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業的ベンダーから利用可能である。
【0186】
抗体コーディングベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、本開示の抗MerTK抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合には、細菌において生成され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5648237号、同第5789199号、及び同第5840523号を参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製することができる。
【0187】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物もまた、抗体コーディングベクターに好適なクローニング宿主または発現宿主であり、これらには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の生成をもたらす、真菌株及び酵母株が含まれる(例えば、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004);及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006))。
【0188】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から得ることもできる。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と共に、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションに使用することができる、多数のバキュロウイルス株が特定されている。植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる(例えば、米国特許第5959177号、同第6040498号、同第6420548号、同第7125978号及び同第6417429号(トランスジェニック植物で抗体を生成するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載されている))。
【0189】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳類細胞株が、有用であり得る。有用な宿主哺乳動物細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓株(293細胞または例えばGraham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されているような293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載のTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ科腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);例えば、Mather et al.Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載のTRI細胞;MRC 5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な宿主哺乳動物細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体生成に好適な特定の宿主哺乳動物細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0190】
IV.薬学的組成物/製剤
本明細書では、本開示の抗MerTK抗体及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物及び/または薬学的製剤が提供される。
【0191】
いくつかの態様において、薬学的に許容可能な担体は好ましくは、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。in vivo投与のために使用される薬学的組成物及び/または薬学的製剤は、無菌であり得る。これは、例えば、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0192】
本明細書で提供される薬学的組成物及び/または薬学的製剤は、例えば、自己免疫性障害を処置するための薬剤として有用である。
【0193】
V.治療的及び予防的使用
本明細書に開示されるように、本開示の抗MerTK抗体は、疾患及び障害を予防し、リスクを低下させ、または処置するために使用され得る。いくつかの態様において、本開示は、例えば、多発性硬化症などの個体における自己免疫性障害を予防し、リスクを低下させ、または処置するための方法であって、治療的有効量の本開示の抗MerTK抗体を個体に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0194】
MerTKは、多発性硬化症に関連する。MerTKにおけるSNP多型は、多発性硬化症感受性に関連する。したがって、本開示の抗MerTK抗体でMerTKの活性を調節することは、多発性硬化症を予防または処置する有効な手段である。
【0195】
所定の態様において、本明細書では、多発性硬化症の処置をその必要のある対象において行うための方法であって、本開示の抗MerTK抗体、または本開示の抗MerTK抗体を含む薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、方法が提供される。いくつかの態様において、多発性硬化症の処置をその必要のある対象において行うための方法であって、本開示の抗MerTK抗体を対象に投与する工程を含み、抗MerTK抗体は、ミエリンの貪食を増加させる、方法が提供される。いくつかの態様において、多発性硬化症の処置をその必要のある対象において行うための方法であって、本開示の抗MerTK抗体を対象に投与する工程を含み、抗MerTK抗体は、MerTKのリン酸化を増加させる、方法が提供される。
【0196】
いくつかのタイプの多発性硬化症(MS)が記載されている。再発寛解型MS(RRMS)、一次進行性MS(PPMS)、二次進行性MS(SPMS)、及び臨床的に分離された症候群(clinically isolated syndrome:CIS)。再発寛解型MSは、予測不可能な再発と、それに続く数ヶ月~数年の疾患活性の兆候がない相対的停止(寛解)を特徴とする。これは、MSを有する個体のおよそ80%の初期過程を記載する。MSの再発寛解型サブタイプは通常、個体が脱髄を示唆する発作を有するがMSの基準を依然として満たさない臨床的に分離された症候群から始まる。CISを経験する個体の30~70%は、後にMSを発症する。
【0197】
一次進行性MSは、個体のおよそ10~20%で生じ、初期症状の後に寛解がない。それは、発症から障害が進行し、緩和及び改善がなく、または一次的及び少ない緩和及び改善しかないことを特徴とする。二次進行性MSは、初期の再発寛解型MSを有するそれらの個体の約65%で生じ、最終的にいかなる明白な寛解期を伴わずに急性発作間で進行性神経減退を有するが、時折の再発及び小さな寛解が現れ得る。
【0198】
いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、RRMSにおける再発の数を減少させるのに有効である。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、RRMSにおける再発の頻度を減少させるのに有効である。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、RRMSにおける再発の数及び頻度を減少させるのに有効である。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、RRMSからSPMSへの変化を防止または減少させるのに有効である。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、PPMSにおける疾患進行を阻害または減少させるのに有効である。
【0199】
MerTK変異は、網膜色素変性症を含む様々な網膜神経節変性障害に関連する。しばしば、そのような網膜障害は、網膜色素上皮(RPE)細胞が視細胞外節を貪食する能力の減少に関連し、これは、RPE細胞から視細胞を分離するデブリの蓄積につながり、それらの分解及び失明をもたらす。また、MerTK遺伝子の変異は、早期小児期における夜間視力の喪失、視野の緩やかな狭窄、及び成人期前の最終的な視力の喪失に関連する(Lorach et al,2018,Nature Scientific Reports,8:11312)。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、網膜神経節変性障害を処置するのに有効である。いくつかの態様において、本開示の抗MerTK抗体は、視細胞外節の貪食を増加させるのに有効である。他の態様において、本開示の抗MerTK抗体は、網膜色素変性症を処置するのに有効である。
【0200】
いくつかの態様において、対象または個体は、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。いくつかの態様において、対象または個体は、ヒトである。
【0201】
本明細書で提供される抗体(及び任意の追加の治療剤)は、任意の好適な手段によって投与され得る。
【0202】
VI.診断用途
抗体のいずれかのいくつかの態様において、本明細書で提供される抗MerTK抗体のいずれかは、サンプルまたは個体におけるMerTKの存在を検出するのに有用である。「検出すること」という用語は、本明細書で使用されるとき、定量的または定性的検出を包含する。本明細書では、個体におけるまたは個体に由来する組織サンプルにおけるMerTKの検出などの診断目的のために本開示の抗体を使用する方法が提供される。いくつかの態様において、個体は、ヒトである。いくつかの態様において、組織サンプルは、食細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞)、腫瘍組織、がん細胞などである。
【0203】
検出方法は、抗原結合抗体の定量を含み得る。生物学的サンプルにおける抗体検出は、免疫蛍光顕微鏡検査、免疫細胞化学、免疫組織化学、ELISA、FACS分析、免疫沈降、またはマイクロ陽電子断層撮影法を含む、当該技術分野で知られている任意の方法で行われ得る。所定の態様において、抗体は、例えば18Fで、放射性標識され、その後マイクロ陽電子断層撮影法分析を利用して検出される。抗体結合はまた、ポジトロン断層撮影(PET)、X線コンピュータ断層撮影、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)及びコンピュータ体軸断層撮影(CAT)などの非侵襲性技法によって、患者において定量され得る。
【0204】
VII.製造品
本明細書では、本明細書に記載の抗MerTK抗体を含む製造品(例えば、キット)が提供される。製造品には、本明細書に記載の抗体を含む1つ以上の容器が含まれ得る。容器は、バイアル、ボトル、瓶、可撓性パッケージング(例えば、密封マイラーまたはプラスチック袋)などを含むがこれらに限定されない任意の好適なパッケージングであり得る。容器は、単位用量、バルク包装(例えば、複数回用量包装)または分割単位用量でもよい。
【0205】
いくつかの態様において、キットは、第2の薬剤をさらに含み得る。いくつかの態様において、第2の薬剤は、薬学的に許容可能な緩衝液または希釈剤である。
【0206】
製造品のいずれかのいくつかの態様において、製造品は、本開示の方法に従って使用するための指示書をさらに含む。指示書は、一般に、目的の処置のための投薬量、投与計画及び投与経路に関する情報を含む。いくつかの態様において、これらの指示書は、本開示の任意の方法に従って、例えばがんなどの疾患、障害、または傷害を有する個体を予防し、リスクを低下させ、または処置するための本開示の単離された抗体(例えば、本明細書に記載の抗MerTK抗体)の投与の説明を含む。
【0207】
本開示は、以下の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示全体における全ての引用文献は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例
【0208】
実施例1:Hisコンジュゲート化及びマウスFcコンジュゲート化MerTKポリペプチドの生成
本開示の抗MerTK抗体の生成及び特性化において使用するためのポリHisまたはTEVS/トロンビン/マウスIgG2a-Fcタグ付き融合タンパク質を含有するヒト、カニクイザル(cynomolgus)(カニクイザル(cyno))、及びマウスMerTKポリペプチドを以下のように生成した。ヒトMerTK(配列番号:2)、カニクイザルMerTK(配列番号:3)、及びマウスMerTK(配列番号:4)の細胞外ドメイン(ECD)をコードする核酸を、異種シグナルペプチドをコードする核酸を含有し、かつポリHis FcタグまたはTEVS/トロンビン/マウスIgG2a Fcタグのいずれかも含有する哺乳動物発現ベクターにそれぞれクローニングした。
【0209】
ヒトMerTK、ヒトMerTK細胞外ドメイン、カニクイザルMerTK細胞外ドメイン、及びマウスMerTK細胞外ドメインのアミノ酸配列が以下に示されている。
【0210】
ヒトMerTKアミノ酸配列(配列番号:1):
【0211】
ヒトMerTK ECDアミノ酸配列(配列番号:2):
【0212】
カニクイザルMerTK ECDアミノ酸配列(配列番号:3):
【0213】
マウスMerTK ECDアミノ酸配列(配列番号:4):
【0214】
ヒト、カニクイザル、及びマウスMerTK核酸融合コンストラクトをHEK293細胞に一過性にトランスフェクションした。組換え融合ポリペプチドを、Mabselect樹脂(GE Healthcare、Cat#17519902)を使用して製造業者の指示書に従って細胞の上清から精製した。また、市販のDDDDKタグ付きヒトMerTK融合ポリペプチド(Sino Biological,Wayne,PA、Cat#10298-HCCH)またはヒトIgG1 Fcタグ付きマウスMerTK融合タンパク質(R&D systems,Minneapolis,MA、Cat#591-MR-100)を以下に記載されるように抗MerTK抗体特性化のために使用した。
【0215】
実施例2:ヒト及びマウスMerTKを過剰発現するCHO細胞株の生成
ヒトMerTK及びマウスMerTKを過剰発現するCHO細胞株を以下のように調製した。ヒトMerTKオープンリーディングフレーム(ORF)クローンレンチウイルス粒子(Cat#RC215289L4V)及びマウスMerTK ORFクローンレンチウイルス粒子(Cat#MR225392L4V)(Origene,Rockville,MD)(いずれともmGFPタグ付き)を使用して、ヒトMerTKを過剰発現するCHO-K1及びマウスMerTKを過剰発現するCHO-K1安定細胞株世代をそれぞれ調製した。
【0216】
CHO細胞を、10%FBS(Gibco)を含有するF12-K培地(ATCC、Cat#ATCC30-2004)中で>80%コンフルエントまで培養した。次いで細胞をトリプシン緩衝液(0.25%EDTA/トリプシン、Gibco、Cat#25200056)中で解離させ、ヒトまたはマウスMerTKレンチウイルスコンストラクトのいずれかで形質導入する24時間前に6ウェルプレートにおいて70~80%の密集度で播種した。翌日、細胞をレンチウイルス粒子と4℃で2時間インキュベートし、次いでプレートを37℃で5%CO中でインキュベートした。2日後、ピューロマイシン(Invivogen,San Diego,CA,Cat#ant-pr-1)を選択のために添加した;選択したピューロマイシン耐性細胞を後の使用のためにCell Recovery Freezing Medium(Gibco,Cat#12648010)中で凍結させた。
【0217】
これらの細胞株のFACS分析のため、上述したように生成したヒトMerTKを過剰発現するCHO細胞(CHO-huMerTK OE細胞)及びマウスMerTKを過剰発現するCHO細胞(CHO-muMerTK OE細胞)を96ウェルU底プレートにおいてウェル当たり1~2×10細胞で播種し、市販のマウス抗ヒトMerTKモノクローナル抗体「H1」(BioLegend、クローン:590H11G1E3、Cat#367608、San Diego,CA)または市販のラット抗マウスMerTKモノクローナル抗体(ThermoFisher、クローン:DS5MMER、Cat#12-5751-82)と氷上で30分間インキュベートした。細胞を氷冷FACS緩衝液(2%FBS+PBS)で2回すすぎ、次いでAPCコンジュゲート化ヤギ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA,Cat#115-606-071)またはヤギ-抗ラット抗体(Jackson ImmunoResearch、Cat#112-606-071)と氷上で30分間インキュベートした。二次抗体インキュベート後、細胞を氷冷FACS緩衝液で洗浄し、次いで0.25μl/ウェルのヨウ化プロピジウム(BD、Cat#556463)を含有する50~200μlの最終体積のFACS緩衝液に再懸濁した。分析をFACS CantoIIシステム(BD Biosciences)を使用して実施した。
【0218】
得られたヒトMerTK及びマウスMerTKを過剰発現するCHO細胞株を、以下に記載されるように抗MerTK抗体を特性化するための後の研究のために使用した。
【0219】
実施例3:抗MerTKハイブリドーマ抗体の生成
MerTKに対する抗体を得るために、以下の実験を実施して抗MerTKハイブリドーマを生成した。BALB/cマウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)またはMerTKノックアウト(KO)マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,ME)に、ヒト、カニクイザル、及びマウスMerTK(実施例1で上述したように得られた)の精製された細胞外ドメインポリペプチドをアジュバントを用いずにまたは用いて皮下または腹腔内注射によって週2回免疫を与えた。合計で8回の注射を4週にわたって実施した。最後の注射から3日後、脾臓及びリンパ節をハイブリドーマ細胞株生成のためにマウスから採取した。
【0220】
免疫を与えたマウスの脾臓及びリンパ節からのリンパ球を単離し、次いでP3X63Ag8.653(CRL-1580、American Type Culture Collection,Rockville,MD)またはSP2/mIL-6(CRL-2016、American Type Culture Collection,Rockville,MD)マウス骨髄腫細胞と、電気細胞融合(Hybrimmune,BTX,Holliston,MA)を介して融合し、Clonacell-HY Medium C(STEMCELL Technologies,Vancouver,BC,Canada、Cat#03803)中で37℃、5%COで一晩インキュベートした。翌日、融合した細胞を遠心分離し、抗マウスIgG Fc-FITC(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)を有する10mlのClonaCell-HY Medium Cに再懸濁し、次いでHAT成分を含有する90mlのメチルセルロースベースのClonaCell-HY Medium D(STEMCELL Technologies、Cat#03804)と穏やかに混合した。細胞をNunc OmniTrays(Thermo Fisher Scientific,Rochester,NY)に播種し、37℃、5%COで7日間成長させた。次いで蛍光コロニーを選択し、Clonepix2(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用してClonacell-HY Medium E(STEMCELL Technologies、Cat#03805)を含有する96ウェルプレートに移した。合計で、1,728種のIgGを分泌するハイブリドーマクローンを選択した。培養から6日後、ハイブリドーマからの組織培養上清を、以下に記載されるようにヒトまたはマウスMerTKに結合する特異性についてFACS分析によってスクリーニングした。
【0221】
実施例4:FACSによる抗MerTK抗体ハイブリドーマ上清のスクリーニング
上述したように得た1,728種のハイブリドーマからのハイブリドーマ培養上清を、ヒトMerTKを安定的に過剰発現するCHO細胞(CHO-huMerTK OE細胞)またはマウスMerTKを安定的に過剰発現するCHO細胞(CHO-muMerTK OE細胞)(上述したように生成した)、ならびにCHO親細胞;U937細胞(ATCC CRL-1593.2)、SK-MEL-5細胞(ATCC HTB-70)(ヒトMerTKを内因的に発現する)、J774A.1細胞(ATCC TIB-67)(マウスMerTKを内因的に発現する)、及びA375細胞(ATCC CRL-1619)を含む、様々な細胞タイプ上のMerTKに結合するそれらの能力についてスクリーニングした。
【0222】
ハイブリドーマ細胞培養上清のスクリーニングのため、多重FACS実験設計を利用して、これらの複数の細胞株に対する抗MerTK抗体の結合を決定した。簡潔には、細胞を様々な濃度及びCellTrace細胞増殖色素CFSEとViolet(それぞれThermoFisher、Cat#C34554及びCat#34557)の組み合わせで染色して独自にバーコード化された細胞集団を生成した。70,000細胞の各バーコード化細胞タイプを96ウェルU底プレートに分配し、50μlのハイブリドーマ細胞培養上清または5μg/mlの市販の精製されたマウス抗ヒトMerTKモノクローナル抗体(BioLegend、Cat#367602;陽性抗MerTK抗体として機能する)と氷上で30分間インキュベートした。様々なMerTK発現細胞タイプとのこの一次抗MerTKハイブリドーマ上清インキュベートの後、上清を遠心分離を介して除去し、細胞を175μlの氷冷FACS緩衝液(PBS+1%FBS+2mM EDTA)で2回洗浄し、次いで細胞を抗マウスIgG Fc-アロフィコシアニン(APC)(Jackson Labs、Cat#115-136-071)(1:1000で希釈した)と氷上で20分間さらにインキュベートした。この二次抗体インキュベート後、細胞を再度、氷冷FACS緩衝液で2回洗浄し、0.25μl/ウェルのヨウ化プロピジウム(BD Biosciences、Cat#556463)を含有する30μlの最終体積のFACS緩衝液に再懸濁した。細胞に対する結合強度を、死(すなわち、ヨウ化プロピジウム陽性)細胞を除外するように引かれたソーティングゲートを用いて、FACS Cantoシステム(BD Biosciences)を使用して分析した。各バーコード化された細胞集団上のAPC平均蛍光強度(MFI)の比を、試験された各々の抗MerTKハイブリドーマ上清について決定した。
【0223】
この特定のハイブリドーマ上清スクリーンから、親または陰性対照細胞タイプで観察された結合と比較して、ヒトまたはマウスMerTKを安定的に過剰発現するまたは内因的に発現する細胞に対する結合(MFIによって決定される)において2倍を超える差を示した合計で308種の抗MerTKハイブリドーマクローンを特定した。このスクリーンを使用して特定された抗MerTK抗体を以下に記載されるようにさらに特性化した。
【0224】
実施例5:組換えMerTKタンパク質結合アッセイによる抗MerTK抗体ハイブリドーマ上清のスクリーニング
上述したように得られた1,728種のハイブリドーマからのハイブリドーマ培養上清を、無関係のHisタグ付き対照タンパク質に対する結合と比較してポリHisタグ付きヒト、カニクイザル、及びマウスMerTK(実施例1で上述したように調製した)に結合するそれらの能力についてスクリーニングした。簡潔には、96ウェルポリスチレンプレートを、コーティング緩衝液(0.05M炭酸塩緩衝液、pH9.6、Sigma、Cat#C3041)中の1μg/mlのヒト、カニクイザル、またはマウスポリ-Hisタグ付きMerTKポリペプチドで一晩4℃でコーティングした。次いでコーティングされたプレートをELISA希釈剤(PBS+0.5%BSA+0.05%Tween20)で1時間ブロッキングし、300μlのPBST(PBS+0.05%Tween20、Thermo28352)で3回洗浄した。ハイブリドーマ細胞培養上清または2つの市販の精製されたマウス抗ヒトMerTKモノクローナル抗体(BioLegend Cat#367602;R&D Cat#MAB8912)を各ウェルに添加した(50μl/ウェル)。30分のインキュベート(室温、振盪しながら)後、プレートを300μlのPBSTで3回洗浄した。抗マウスIgG Fc-HRP(Jackson Immunoresearch、Cat#115-035-071)二次抗体をELISA希釈剤に1:5000で希釈し、各ウェルに50μl/ウェルで添加し、室温で振盪しながら30分間インキュベートした。最終セットの洗浄(PBST中で3×300μl)後、50μl/ウェルのTMB基質(BioFx、Cat#TMBW-1000-01)をウェルに添加した。次いで反応を、5~10分後に50μl/ウェルの停止溶液(BioFx、Cat#BSTP-1000-01)で抑えた。クエンチした反応ウェルを、GEN5 2.04ソフトウェアを使用してBioTek Synergy Microplate Readerを用いて650nmでの吸光度について検出した。このハイブリドーマ上清スクリーンから、バックグラウンドを上回って組換えMerTKに対する結合において10倍を超える差を示した合計で326種の抗MerTKハイブリドーマクローンを特定した。このスクリーンを使用して特定された抗MerTK抗体を以下に記載されるようにさらに特性化した。
【0225】
実施例6:抗MerTKハイブリドーマ上清を使用したMerTKリガンドGas6及びリガンドProSブロックアッセイ
上述したように特定された抗MerTK抗体ハイブリドーマ上清をELISAによってスクリーニングして、ヒトMerTKに対するヒトGas6リガンドの結合をブロックせず、及び/またはヒトMerTKに対するヒトProSリガンドの結合をブロックしなかった抗MerTK抗体を特定した。簡潔には、ウサギ抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch、Cat#309-005-008)を、2μg/mlで高タンパク質結合プレートに4℃で一晩コーティングした。PBS中の0.05%Tween20で3回洗浄した後、PBS中の5%BSAを1時間添加した。組換えヒトMerTK-ヒトFcキメラタンパク質(R&D systems、Cat#391-MR-100)を2μg/mlで1時間添加し、プレートを洗浄してから、40μlの抗MerTKハイブリドーマ上清及び40μlのHisタグコンジュゲート化組換えGas6(R&D systems、Cat#885-GSB-050)を3μg/mlでまたはHisタグコンジュゲート化組換えProS(R&D systems、Cat#9489-PS-100)を20μg/mlで添加した。さらに1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、HRPコンジュゲート化抗6xHisタグ付き抗体(Abcam,Cambridge,MA、Cat#ab1187)で1時間インキュベートした。次いでプレートを洗浄し、HRP基質であるTMBを添加してプレートを現像した。反応を、50μlの2N HSOを添加することによって停止させ、ODを分光光度計(BioTek)を使用して測定した。
【0226】
合計で308種の抗MerTKハイブリドーマ上清クローンをスクリーニングして、ヒトMerTKに対するヒトGas6リガンドの結合をブロックせず、及び/またはヒトMerTKに対するヒトProSリガンドの結合をブロックしなかった抗MerTK抗体を特定した。29種(29)の抗MerTKハイブリドーマクローンは、組換えヒトMerTKタンパク質に対するProSリガンド及びGas6リガンドの両方の結合をブロックした。145種(145)の抗MerTKハイブリドーマクローンがヒトMerTKタンパク質に対するProSリガンドの結合のみをブロックし、組換えヒトMerTKタンパク質に対するGas6リガンドの結合をブロックしなかった。308種の抗MerTKハイブリドーマクローンのうち残りの134種は、このアッセイにおいて組換えヒトMerTKタンパク質に対してProSリガンドまたはGas6リガンドのいずれの結合もブロックしなかった。ハイブリドーマ上清を以下に記載されるようにさらに特性化した。
【0227】
実施例7:抗MerTKハイブリドーマ上清を使用したエフェロサイトーシスブロックアッセイ
MerTK結合反応性について陽性であるものとして上で特定された抗MerTK抗体ハイブリドーマ上清をスクリーニングして、以下のようにヒトマクロファージによるエフェロサイトーシスをブロックしなかった抗MerTK抗体を特定した。ヒトマクロファージをヒトM-CSFの存在下で7日間ヒト単球から分化させた。マクロファージを採取し(スクレイピングによって)、PBSに再懸濁し、96ウェルプレートに5×10細胞/ウェルで播種した。細胞を1時間飢餓状態とし、続いて抗MerTKハイブリドーマ上清を各ウェルに37℃で30分間添加した。Jurkat細胞を1μMスタウロスポリン(SigmaAldrich)で37℃で3時間処置し(アポトーシスを誘導するため)、pHrodo(ThermoFisher)で室温で30分間標識した。PBSで洗浄した後、pHrodoが標識されたJurkat細胞を各ウェルに1:4の比(1マクロファージ細胞対4Jurkat細胞)で1時間添加した。プレートをPBSで洗浄し、次いで細胞をAPCがコンジュゲートされた抗ヒトCD14で氷上で暗所で30分間染色した。次いで細胞をFACS緩衝液(PBS+2%FBS)中で2回洗浄し、フローサイトメトリーをBD FACS CantoIIで実施した。データをFlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0228】
これらの実験において、pHrodo CD14二重陽性細胞を分析ゲートとして設定し、次いでこの正確なゲートを全てのサンプルに適用することによってエフェロサイトーシス陽性マクロファージを特定した。ベースラインのエフェロサイトーシスレベルを、培地のみで培養されたマクロファージを使用して確立し、これを100%エフェロサイトーシス活性に設定した。相対的エフェロサイトーシスレベルを、抗MerTKハイブリドーマ上清で処置された細胞において観察されたものと比較した、培地単独で処置された細胞において観察されたエフェロサイトーシスのパーセントとして計算した。これらの実験において、以下の追加の抗MerTK抗体を使用した:マウス抗ヒトMerTK抗体H1(BioLegend、クローンID:590H11G1E3、マウスIgG1)及びヒト抗ヒトMerTK抗体M6(WO2016/106221に開示されている)。
【0229】
以下の表1及び表2は、エフェロサイトーシス率として示された、これらのエフェロサイトーシス実験からの結果を示している(培地のみを100%エフェロサイトーシスに設定した)。以下の表1において、試験された例示的なハイブリドーマ上清は、左に示されており、ハイブリドーマ上清ID番号として分類されている;これらの上清は、野生型BALB/cマウスの免疫から特定されたハイブリドーマクローンからのものであった。以下の表2において、試験された例示的なハイブリドーマ上清は、左に示されており、ハイブリドーマ上清ID番号として分類されている;これらの上清は、MerTK KOマウスの免疫から特定されたハイブリドーマクローンからのものであった。表1及び表2の両方において、抗体IDは、追加の特性化について選択され、よって、示されたように特定の抗MerTK抗体名称が与えられた本開示の抗MerTK抗体を指す。抗体の非存在下(培地処置単独)でのマクロファージにおけるエフェロサイトーシスと比較して、アイソタイプ対照マウスIgG1抗体で処置された細胞においてエフェロサイトーシスの有意な変化は観察されなかったことに留意されたい。
【0230】
まとめると、これらの結果は、本開示の所定の抗MerTK抗体が、マクロファージによるエフェロサイトーシスを増加させるのに有効であることを示した。エフェロサイトーシスは、貪食活性の1つの態様であるため、結果は、本開示の抗MerTK抗体が、食細胞による貪食を増加させるのに有効であることを示していた。これらの結果はまた、本開示の抗MerTK抗体が、抗MerTK抗体処置の非存在下でマクロファージによって観察されるもの(例えば、培地単独対照またはアイソタイプ対照抗体添加)と比較して、マクロファージによるエフェロサイトーシス活性を40%を超えて減少させなかったことを示した。
【0231】
(表1)
n.a.データ利用不可
【0232】
(表2)
【0233】
表1及び表2において、両方の表において100%エフェロサイトーシスに設定された培地単独(抗体添加なし)と共に、異なるドナーから得られたヒトマクロファージによるエフェロサイトーシスのパーセントが示されている。様々な抗MerTK抗体ハイブリドーマ上清によるエフェロサイトーシスブロック(非ブロック)活性の程度は、各ドナーから得られたマクロファージにおいて異なっていたが、抗MerTK抗体についてのエフェロサイトーシスブロック(または非ブロック)傾向は、異なるドナーからのマクロファージ間で一致していた。上の表1及び2に示されているように、本開示の抗MerTKハイブリドーマ上清は、抗MerTK抗体H1及び抗MerTK抗体M6(これらの両方がエフェロサイトーシスを阻害する)によって観察されるものと比較して、ヒトマクロファージによるエフェロサイトーシスをブロックまたは減少させる能力がより低いことを示した。これらの結果は、本明細書に記載されるように得られた所定の抗MerTK抗体が、食細胞によるエフェロサイトーシスを阻害またはブロックするのに有効ではなかったことを示していた。
【0234】
実施例8:抗MerTK抗体の分子クローニング
上述したハイブリドーマからの抗MerTK抗体を以下のようにサブクローニングした。5×10ハイブリドーマ細胞を採取し、PBSで洗浄し、次いで細胞ペレットをドライアイス中で瞬間凍結させ、-20℃で保存した。製造業者のプロトコルに従ってRNeasy Mini Kit(QIAGEN、Cat#74104)を使用することによって総RNAを抽出した。cDNAを、製造業者のプロトコルに従ってClontechのSMARTer RACE 5’/3’ Kit(Takara Bio USA、Cat#634859)を使用して生成した。可変重免疫グロブリン領域及び可変軽免疫グロブリン領域を、RACEキットで提供された5’UPMプライマーならびに重鎖及び軽鎖定常領域を認識するリバースプライマーを使用してタッチダウンPCRによって別々にクローニングした。得られたPCR生成物を精製し、pCR2.1-TOPOクローニングベクター(TOPO TA cloning Kit、Invitrogen Cat#450641)にライゲーションし、Escherichia coli(E.coli)細胞に形質転換した。形質転換されたコロニーを単離し、可変重鎖(VH)核酸及び可変軽鎖(VL)核酸を、各対応するハイブリドーマ細胞株についてシーケンシングした。配列決定後、可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を、エンドヌクレアーゼ制限部位を含有するプライマーを使用してPCRによって増幅し、次いでヒトIgG1-Fc及びIgGカッパをコードするpLEV-123(LakePharma,San Carlos,CA)哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。
【0235】
本開示の抗MerTK抗体の可変重鎖及び可変軽鎖のアミノ酸配列が以下の表3に提供されている。表3において、CDR配列(Kabatによる)に下線が引かれている。
【0236】
(表3)
【0237】
本開示の抗MerTK抗体についてのKabatによるCDR配列が以下の表4(重鎖)及び表5(軽鎖)に提供されている。
【0238】
(表4)
【0239】
(表5)
【0240】
実施例9:抗MerTK抗体の生成
抗MerTKハイブリドーマクローンを無血清ハイブリドーマ培地中で培養し、上清中の抗MerTK抗体を、Protein Aチップ(Phynexus Inc,San Jose,CA)を使用してHamilton STARプラットフォーム(Hamilton Company,Reno,NV)で精製した。抗MerTK抗体をまた、ヒトIgG1 Fcドメインを含有するキメラ抗体の生成のための組換え発現プラスミドへの、ハイブリドーマから得られた可変遺伝子領域の直接的クローニングを介して生成した。Tuna293(商標)及びTunaCHO(商標)Processes(LakePharma,San Carlos,CA)を使用して、私有HEK293(Tuna293(商標))またはCHO-K1(TunaCHO(商標))由来細胞を振盪フラスコに播種し、無血清の化学的に定義された培地を使用して増殖させた。発現プラスミドを細胞に一過性にトランスフェクションし、7及び14日後に培養上清を採取した。遠心分離及び濾過による清澄化後、上清中の抗MerTK抗体をプロテインAクロマトグラフィーを介して精製した。
【0241】
実施例10:抗MerTK抗体はSK-MEL-5細胞、CHO-muMerTK OE細胞、及びマウスマクロファージに結合する
本開示の組換え抗ヒトMerTK抗体が、陰性対照としてのA375及び親CHO細胞と比較して、マウスMerTKを過剰発現するSK-MEL-5細胞及びCHO細胞(CHO-muMerTK OE細胞)に内因的に発現したヒトMerTKに結合するかどうかを決定するために、以下の実験を実施した。SK-MEL-5細胞、A375細胞、CHO-muMerTK OE細胞、及びCHO親細胞を100,000細胞/ウェルで播種した。抗MerTK抗体を細胞に10μg/mlで添加した。氷上で60分後、細胞を洗浄し、次いでPEコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Southern Biotech Cat#2040-09、Birmingham,AL)でFcブロック溶液の存在下で氷上で30分間染色し、次いで低温FACS緩衝液(PBS中の2%FBS)で2回洗浄した。マウス抗ヒトMerTK-PEコンジュゲート化(Biolegend、クローン590H11G1E3)または抗マウスMerTK-PEコンジュゲート化(ThermoFisher、クローンDS5MMER)抗体を陽性対照として使用した。染色した細胞をBD FACS Canto IIサイトメーターで取得し、平均蛍光強度(MFI)をFlowJoで計算した。
【0242】
内因性マウスMerTKに結合する抗MerTK抗体を確認するために、骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、MerTK野生型(WT)及びノックアウト(KO)マウス(Jackson Laboratory、Cat#011122)から標準的なプロトコルを使用して単離した。簡潔には、骨髄から単離された細胞を、マクロファージへの分化を可能とするために50ng/mlのM-CSF(R&D Systems、Cat#416-ML)の存在下で7日間播種した。細胞染色、FAC、及びMFIを上述したように実施し、計算した。
【0243】
以下の表6は、SK-MEL-5細胞、A375細胞、CHO-muMerTK-OE細胞、CHO親細胞、及びMerTK WTマウスからのBMDM細胞(MerTK WTマウスから得られたものから差し引かれたMerTK KOマウスからのBMDM細胞で得られた結合/MFIの程度を用いた)に結合する抗MerTK抗体のFACS分析からのMFI値を示している。
【0244】
(表6)
n.a.データ利用不可
【0245】
組換え抗MerTK抗体はSK-MEL-5細胞に結合し、ヒトMerTKに対する抗MerTK抗体結合を示している。12種の組換え抗MerTK抗体は、CHO-muMerTKを過剰発現する細胞及びBMDMの強~中程度の結合を示し、マウスMerTKに対する抗MerTK抗体結合を示していた。
【0246】
実施例11:MerTKに対するリガンドGas6及びリガンドProS結合の抗MerTK抗体ブロック
ヒトMerTKに結合するGas6及び/またはProSリガンドの能力を阻害しない抗MerTK抗体を特定するために、リガンドブロックアッセイを上述したように実施した。抗MerTK抗体を66.6nMから4pMまでの最終濃度にタイトレーションし、抗ヒトMerTK抗体M6(WO2016/106221に開示)またはアイソタイプ対照抗体に対して試験した。
【0247】
表7は、これらの研究において試験された抗体の最も高い濃度(66.6nM)でのヒトMerTKに対するGas6結合及びProS結合を示している;データは、100%結合に設定されたアイソタイプ対照huIgG1抗体のリガンド結合の程度と比較した、MerTKに対するGas6結合のパーセンテージ及びヒトMerTKに対するProS結合のパーセンテージとして示されている。
【0248】
本開示の抗MerTK抗体は、表7で以下に示されるように、ヒトMerTKに対するGas6結合を阻害しなかった(すなわち、ブロックしなかった)。本開示の抗MerTK抗体の大部分は、ヒトMerTKに対するProSリガンド結合をブロックしなかった。また、抗MerTK抗体MTK-202、MTK-212、MTK-213、MTK-220、MTK-223、及びMTK-230は、このアッセイにおいてMerTKに対するリガンド結合の中程度の阻害(>30%の阻害)を示した。示されているように、抗MerTK抗体M6は、ヒトMerTKに対するGas6及びProSの両方の結合をブロックするのに極めて有効であり、リガンド結合を90%超ブロックした。また、表7に示されているように、本開示の所定の抗MerTK抗体は、MerTKに対するGas6及び/またはProSの結合を向上させるようであった。
【0249】
(表7)
【0250】
実施例12:Gas6及びProSリガンドの直接的抗MerTK抗体結合
Gas6またはProSに直接的に結合する抗MerTK抗体を特定するために、結合アッセイを以下のように実施した。簡潔には、ウサギ抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch、Cat#309-005-008)を、2μg/mlで高タンパク質結合プレートに4℃で一晩コーティングした。PBS中の0.05%Tween20で3回洗浄した後、PBS中の5%BSAを1時間添加した。組換えヒトMerTK-ヒトFcキメラタンパク質(R&D systems、Cat#391-MR-100)または本開示の抗MerTK抗体を2μg/mlで1時間添加し、プレートを洗浄してから、Hisタグコンジュゲート化組換えGas6(R&D systems、Cat#885-GSB-050)を1.5μg/mlで、またはHisタグコンジュゲート化組換えProS(R&D systems、Cat#9489-PS-100)を10μg/mlで添加した。さらに1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、HRPコンジュゲート化抗6x Hisタグ付き抗体(Abcam,Cambridge,MA、Cat#ab1187)で1時間インキュベートした。次いでプレートを洗浄し、HRP基質であるTMBを添加してプレートを現像した。反応を、50μlの2N HSOを添加することによって停止させ、ODを分光光度計(BioTek)を使用して測定した。
【0251】
MerTKの非存在下でGas6及びProSリガンドのいずれかまたは両方に結合するそれらの能力について試験された32種の抗体のうち、抗MerTK抗体MTK-231のみが両方のリガンドに強力に結合することができた。また、抗MerTK抗体MTK-207、MTK-211、MTK-213、MTK-214、MTK-224、及びMTK-232は、ProSリガンドに対する低~中程度の結合を示した。これらの結果は、本開示の所定の抗MerTK抗体が、MerTK及びそのリガンドの1つ以上の両方に結合する追加の特性を有することを示していた。
【0252】
実施例13:MerTKチロシンリン酸化の調節
骨髄細胞におけるMerTKチロシンリン酸化(p-MerTK)に対する抗MerTK抗体の効果を以下のように試験した。単球由来マクロファージを生成するために、ヒト初代単球を、RosetteSep Human Monocyte Enrichment Cocktail(STEMCELL Technologies)を使用して製造業者のプロトコルに従ってヘパリン化ヒト血液(Blood Centers of the Pacific)から単離した。単球を、10%ウシ胎仔血清(Hyclone)及び50ng/mL M-CSF(Biolegend)を含有するRPMI(Invitrogen)に播種してマクロファージの分化を誘導した。6日後、マクロファージを、培地を除去することによって採取し、3mM EDTAと37℃で5分間インキュベートし、その後細胞をこすり落とした。次いでマクロファージを96ウェルプレートに0.1×10/ウェルで播種し、50ng/mL M-CSF(Biolegend)、100nMデキサメタゾン(Tocris)、50ng/mLヒトTgfβ(R&D Systems)及び20ng/mLのIL-10(Pepro Tech)と共に培養した。2日(約48時間)後、細胞から培地を除去し、PBS中の抗MerTK抗体を10μg/mLで添加し、細胞を37℃で8分間インキュベートすることによって細胞を抗MerTK抗体で処置した。次いで処置抗体を除去し、細胞を氷冷PBSで1回洗浄し、150μLの氷冷1X溶解緩衝液(Cell Signaling Technology)で溶解することによって細胞を採取した。96ウェルプレートを振盪機上で溶解緩衝液中で30分間4℃でインキュベートした。次いでプレートを4,300xgで10分間4℃での遠心分離によって細胞デブリを除去した。上清をphospho-Mer(panTyr)ELISA(Cell Signaling Technology)及びBCA(ThermoFisher Scientific)のために収集した。その後、ライセートを製造業者の指示書に従って処理し、p-MerTKレベルを総タンパク質レベルに対して正規化した。
【0253】
本開示の抗MerTK抗体の多くは、このアッセイにおいて試験されたようにp-MerTKを誘導することができた(図1を参照されたい)。抗MerTK抗体は、平均(図1において上側の点線によって示されている)の標準誤差でまたはそれを上回って、一元配置ANOVAテューキーの多重比較検定)を使用して、(図1において下側破線によって示されているように、アイソタイプ対照huIgG1抗体処置細胞において観察されたものと比較して)p-MerTKレベルの有意な増加を示す。アイソタイプ対照huIgG1抗体を1の値に設定した。N=4(各Nは1つのヒトドナーである)。
【0254】
これらの結果は、本開示の抗MerTK抗体が、MerTKのリン酸化を誘導または増加させることによって、少なくとも部分的に、MerTK活性を増強することを示した。
【0255】
実施例14:抗MerTK抗体の結合動態
ヒト、カニクイザル、及びマウスMerTKに対する本開示の抗MerTK IgG1抗体の結合動態を、Carterra LSA装置(Carterra,Salt Lake City,UT)を使用して評価した。簡潔には、抗MerTK抗体を、10mMアセテートpH4.25(Carterra)に50、250及び500倍で希釈して1~113μg/mlの範囲の最終濃度を得ることによって調製した。HC200Mセンサーチップ(Carterra)を、100mM MES pH5.5、100mMスルホ-NHS、400mM EDCの1:1:1の混合物(全てMES pH5.5において再構成した;各100μlをアッセイを実行する直前にバイアル内で混合した)の7分間の注射を用いてシングルチャネルフローセルを使用して活性化した。多重チャネルアレイフローセルにスイッチした後、抗体を、3つの96スポットアレイにおいてそれぞれ10分間、活性化チップ上に注入した。次いでチップ上の残存する非コンジュゲート化活性基を、シングルチャネルフローセルを使用して1MエタノールアミンpH8.5(Carterra)を7分間注入することによってブロックした。得られたセンサーチップは、各抗体について3つの異なる密度で3つのスポットを含有していた。2つの独立した実験を以下のように実施し、各抗体について1~6回決定のNとした。25RU未満の分析物結合もたらしたスポットは、さらなる分析から除外した。
【0256】
0.5mg/mlのBSA(Sigma)を有するランニング緩衝液(HBS-TE、Carterra)でプライミングした後、固定化された抗MerTK抗体を、上述したようにヒト、カニクイザル、及びマウスオルソログを含む、組換えMerTK細胞外ドメインのいくつかの形態に結合するそれらの能力について試験した。親和性の推定値を、シングルチャネルフローセルを使用して抗体アレイ全体にわたった各分析物を注入することによって生成した。MerTK分析物を、ヒト及びカニクイザルMerTKの場合は1μM、及びマウスMerTKの場合は600nMから開始して一連の6つの3倍段階希釈でランニング緩衝液で希釈した。分析物を5分間注入し、解離を10分間追跡した。各分析物注入後、抗体を、1M NaCl(Teknova)を有するプロテインA/G溶出緩衝液(Thermo)、または10mMグリシンpH2.5のいずれかで再生した。3つの緩衝液ブランクを各段階間で流した(1段階当たり1種)。NextGenKITハイスループット動態分析ソフトウェア(Carterra)を使用してデータを処理し、分析した。
【0257】
試験された抗MerTK抗体の各々についてのフィッティングされた会合及び解離速度定数(それぞれk-on及びk-off)から平衡解離定数(K)を計算した。値を組み合わせ、平均及び標準偏差を計算し、GraphPad Prismを使用してグラフを作製した。K値は、以下の表8にまとめられている。また、図2を参照されたい。
【0258】
(表8)
N=決定の数;NT=試験されていない;NA=適用不可;LB=低結合(測定限度未満);NB=結合が検出されなかった
【0259】
これらの結果は、本開示の抗MerTK抗体が、およそ1nM~4μMのMerTKに対する結合親和性の範囲を示したことを示していた。また、これらの結果は、本開示の抗MerTK抗体が、ヒト特異的、ヒト及びカニクイザル交差反応性のみ、またはヒト、カニクイザル、及びマウス交差反応性を含む、この結合親和性範囲内の様々な種結合特異性を示したことを示していた。特に、ヒトMerTKに対する結合についての本開示の抗MerTK抗体の親和性は、およそ1.3nM~440nMの範囲であった;カニクイザルMerTKに対する結合についての本開示の抗MerTK抗体の親和性は、1.4nM~3.6μMの範囲であった;マウスMerTKに対する結合についての本開示の抗MerTK抗体の親和性は、1.7nM~460nMの範囲であった。
【0260】
実施例15:ヒト、カニクイザル、及びマウスMerTKに対する抗MerTK抗体の交差反応性
本開示の抗MerTK抗体の種交差反応性を、上述した結合動態分析データから決定した。本開示の抗MerTK抗体の種結合交差反応性分析の結果が以下の表9にまとめられている。
【0261】
(表9)
【0262】
ヒトMerTKに対して観察されたものと比較したカニクイザルMerTK及びマウスMerTKに結合する抗MerTK抗体の相対的強度が以下の表10にまとめられている。より高いKD値は、より低い結合親和性を表すことに留意されたい。
【0263】
(表10)
NT=試験されていない;LB=低結合(測定限度未満);NB=結合が検出されなかった
【0264】
これらの結合実験からの結果は、本開示の3つの抗MerTK抗体が、ヒトMerTKのみに対する結合について強力な優先性を示した(定量可能な範囲でカニクイザルまたはマウスMerTKに対する結合を示さなかった)ことを示していた;これらは、抗MerTK抗体MTK-207、MTK-216、及びMTK-232であった。
【0265】
本開示の抗MerTK抗体の大部分は、ヒト及びカニクイザルMerTKの両方に対する結合交差反応性を示した;これらは、抗MerTK抗体MTK-202、MTK-204、MTK-205、MTK-206、MTK-208、MTK-210、MTK-211、MTK-215、MTK-217、MTK-219、MTK-220、MTK-221、MTK-222、MTK-223、MTK-225、MTK-229、及びMTK-231であった。これらの抗MerTK抗体のうち、6種は、ヒトMerTKに対する反応性についてカニクイザルMerTKに対する反応性よりも2~5倍の弱い優先性を示し(抗MerTK抗体MTK-202、MTK-204、MTK-215、MTK-220、MTK-223、及びMTK-229)、2種は、ヒトMerTKに対する反応性についてカニクイザルMerTKに対する反応性よりも24及び18倍の中程度の優先性を示した(それぞれ抗MerTK MTK-206及びMTK-212)。
【0266】
本開示の11種の抗MerTK抗体は、試験された3つ全ての種(ヒト、カニクイザル、及びマウス)に対して交差反応性を示した;それは、抗MerTK抗体MerTK(MTK-203、MTK-209、MTK-212、MTK-213、MTK-214、MTK-218、MTK-224、MTK-226、MTK-227、MTK-228、及びMTK-230であった。マウス交差反応性抗体のうち、1種は、ヒトMerTKについてマウスMerTKと比べて3.5倍の弱い優先性を示し(抗MerTK抗体MTK-230)、3種は、12.5、35.4、及び64.2倍の結合でマウスMerTKを上回るヒトMerTKについての中程度の優先性を示した(抗MerTK抗体MTK-203、MTK-209、及びMTK-224)。6種の抗体は、5~30倍の相対的結合の範囲でヒトMerTKと比べてマウスMerTKについて中程度の優先性を示した(抗MerTK抗体MTK-212、MTK-213、MTK-218、MTK-226、MTK-227、及びMTK-228)。
【0267】
実施例16:抗MerTK抗体のエピトープビニング分析
Carterra LSA装置(Carterra,Salt Lake City,UT)を使用してタンデム注入実験を実施することによって本開示の抗MerTK抗体についてエピトープビニング分析を実施した。簡潔には、上述した動態評価に使用したチップを次いでビニングアッセイにおいて試験し、ビニングアッセイでは、固定化された抗体を、組換えヒトMerTK細胞外ドメイン及び注入された抗体とサンドイッチ対を形成するそれらの能力について試験した。各サイクルについて、100nMのMerTKを5分間チップ上に注入し、続いて試験抗体(ランニング緩衝液に30μg/mlまで希釈した)を5分間注入し、次いで再生のために10mMグリシンpH2.5(Carterra)を30秒で2回注入した。エピトープハイスループットビニング分析ソフトウェア(Carterra)を使用してデータを処理し、分析した。固定化された抗体によって捕捉された抗原に結合することができた抗体を「サンドイッチ」または「対合」抗体として指定し、これらの抗体を、固定化された抗体のものとは異なるエピトープビンに割り当てた。対合及び非対合抗体のマトリックスをこれらの実験の結合結果から構築し、これにより抗MerTK抗体のエピトープビンランドスケープを生成することが可能となった。抗体の一部は、重複ビニングプロファイル(それらが、隣接するが完全に重複しないエピトープを認識し得ることを示唆している)を有する。ビン内のわずかな不均一性は、文字a、b、c、及びdをビン名称に加えることによって示されている。2つのエピトープビンに重複するようである抗体については、ビン番号は、重複しているビンを示すように下線を用いて指定されている。このアッセイによって決定されたエピトープビンが以下の表11にまとめられている。
【0268】
(表11)
【0269】
本明細書に記載のエピトープビニング実験の一部として、追加の研究を実施して、固定化された抗MerTK抗体によって捕捉されたMerTKにGas6及びProSが結合する能力を調べた。これらの2つのリガンドのいずれかの結合をブロックしない抗MerTK抗体は、サンドイッチ対合を示すことが予期されるのに対し、Gas6及び/またはProSをブロックする抗MerTK抗体は、結合対を形成しないであろう。この分析の結果が以下の表12に示されている。
【0270】
本開示の22種の抗MerTK抗体は、Gas6と対合したが、このアッセイによって評価されたProSと対合しなかった。これらの結果は、ProSのみのブロッカーであった抗MerTK抗体を示す上述した実験結果と一致していた;MTK-202、MTK-203、MTK-205、MTK-206、MTK-207、MTK-213、MTK-214、MTK-215、MTK-218、MTK-219、MTK-220、MTK-221、MTK-222、MTK-223、MTK-224、MTK-225、MTK-227、MTK-228、MTK-229、MTK-230、及びMTK-232。4種の抗MerTK抗体は、Gas6及びProSの両方と対合し、これは非ブロッカーと一致している(MTK-208、MTK-212、MTK-216、及びMTK-231)。5種の抗MerTK抗体は、Gas6及びProSのいずれとも対合せず、これは二重ブロッカーと一致している(MTK-209、MTK-210、MTK-211、MTK-217、及びMTK-226)。抗体とGas6またはProSとの対合の欠如は、機能的ブロックを示唆するが、それを完全に予測しない場合があり、その理由は、この特性が、細胞上の天然受容体に対する結合について抗体及びリガンドの相対的動態及び濃度にも依存するからであることが留意されるべきである。
【0271】
(表12)
【0272】
実施例17:MCP-1生成に対する抗MerTK抗体の効果
単球走化性タンパク質-1(MCP-1)は、免疫細胞を傷害部位に動員する。脱髄のマウスEAEモデルにおいて、MCP-1の欠損は、炎症性免疫細胞がMCP-1の欠如及び関連する炎症反応により傷害部位に動員されないので、マウスが疾患進行することから保護する。
【0273】
ケモカインMCP-1の生成に対する本開示の抗MerTK抗体の効果を以下のように決定した。ヒト初代単球をHuman Monocyte Isolation Kit(STEMCELL Technologies)を使用して製造業者の指示書に従って末梢血単核細胞から単離した。2%Hepes(Life technologies)、2%Glutamax(Life technologies)、2%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies)、2%ナトリウムピルベート(Life technologies)、2%非必須アミノ酸(Life technologies)、10%熱不活化ウシ胎仔血清(HyClone)、8%ヒト血清AB(Sigma)、及び50ng/mlマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF、R&D Systems)が補充されたRPMI1640(Gibco)中で単球をマクロファージに6日間分化させた。培地を除去し、PBSで洗浄し、次いで3mM EDTAを含有するPBS中で37℃で5分間インキュベートしてから、それらの除去のために細胞をスクレイピングすることによってマクロファージを収集した。細胞を計数し、96ウェル平底皿において100μlの培地中でウェル当たり50,000細胞で播種した。細胞を、血清及びM-CSFを除いたこと以外は分化のためのものと同じ基礎培地中でM2cマクロファージ表現型に極性化した。その基礎培地に50ng/ml形質転換成長因子ベータ(TGF-ベータ、Peprotech)、20ng/mlインターロイキン-10(IL-10、Peprotech)、100nMデキサメタゾン(Tocris)、及び抗MerTK抗体(10μg/ml)を2日間補充した。いくつかの例では、細胞を極性化中にMerTKリガンドProS(100nM組換えヒトプロテインS)の存在下でインキュベートした。
【0274】
アポトーシス細胞は、アポトーシス細胞に関連する内因性リガンド(例えば、Gas6、ProS)とのその相互作用によってM2cマクロファージに発現したMerTKを活性化し得る。アポトーシス細胞の存在を介して同時に活性化されたM2c細胞におけるMCP-1レベルの増加に対する本開示の抗MerTK抗体の効果を調べるために設計された並行研究において、マクロファージを、10%ウシ胎仔血清(HyClone)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies)、及び0.5μMスタウロスポリン(R&D Systems)が補充されたRPMI1640(Gibco)中での一晩の培養によって生成されたアポトーシスJurkat細胞の存在下でM2cマクロファージ表現型に極性化した。2日後、細胞上清を収集した。上清中のMCP-1濃度を、U-PLEX Human MCP-1 Assay(MesoScale Diagnostics)を使用して決定した。
【0275】
図3Aは、MerTKリガンドProSの非存在下でhIgG1アイソタイプ対照抗体で処置された細胞で観察されたものに対して正規化された上清中のMCP-1レベルを示している。図3Aにおける値は、アイソタイプと比較したMCP-1濃度を2倍にすると1の値を有する一方で、分析物濃度を半分にすると-1の値を有するようにlog2スケールでプロットされている。組換えMerTKリガンドProSは、MCP-1生成の増加を単独で誘導した。図3Aに示されているように、本開示の抗MerTK抗体は、MCP-1生成の増加を誘導し、これはMerTKリガンドProSの添加によってさらに向上しなかった。しかしながら、この実験のセットでは、抗MerTK抗体MTK-231は、この特定のアッセイを使用して測定された場合、増加したMCP-1レベルを示すためにProSリガンドを必要とするようであった。
【0276】
図3Bは、これらの研究からの上清において測定されたMCP-1レベルを示している。図3Bに示されているように、本開示の抗MerTK抗体は、培養中のマクロファージの上清中のMCP-1レベルを増加させた。
【0277】
図3Cは、log2スケールで正規化及びプロットされたMCP-1生成を示している。図3Cに示されているように、増加量のアポトーシスJurkat細胞の添加(ProSなし)は、抗MerTK抗体MTK-226及びMTK-228に関連するMCP-1のMCP-1レベル生成の倍増加を減少させた。
【0278】
まとめると、本開示の抗MerTK抗体がMCP-1レベルを増加させることを示すこれらの結果は、抗MerTK抗体が、MerTKを増強する(すなわち、MerTKの活性を活性化または増加させる)するのに有効であり、よって、貪食/エフェロサイトーシスを向上させるのに有効であることを示していた。
【0279】
実施例18:Gas6リガンドの非存在または存在下でのMerTKチロシンリン酸化に対する抗MerTK抗体の効果
MerTKリガンドGas6の存在または非存在下での骨髄細胞におけるMerTKチロシンリン酸化(pMerTK)に対する抗MerTK抗体の効果を以下のように試験した。単球由来マクロファージを生成するために、ヒト初代単球を、RosetteSep Human Monocyte Enrichment Cocktail(STEMCELL Technologies)を使用して製造業者のプロトコルに従ってヘパリン化ヒト血液(Blood Centers of the Pacific)から単離した。単球を、10%ウシ胎仔血清(FBS;Hyclone)及び50ng/mLのM-CSF(Biolegend)を含有するRPMI(Invitrogen)中で培養してマクロファージの分化を誘導した。6日後、マクロファージを、培地を除去することによって採取し、3mM EDTAと37℃で5分間インキュベートし、その後細胞をこすり落とした。次いでマクロファージを96ウェルプレートに0.1×10/ウェルで播種し、50ng/mL M-CSF(Biolegend)、100nMデキサメタゾン(Tocris)、50ng/mLヒトTGFβ(R&D Systems)及び20ng/mLのIL-10(Pepro Tech)と共に培養した。2日(約48時間)後、細胞培地を除去し、10%FBSを除いた完全成長培地(無血清培地)と交換することによって細胞を2時間血清飢餓状態とした。
【0280】
2時間の血清飢餓期間の最後に、細胞培地を除去し、細胞を、200nM Gas6タンパク質(R&D Systems)の存在または非存在下で無血清培地中で様々な抗MerTK抗体とインキュベートした。抗MerTK抗体を10μg/mLの最終濃度で使用し、細胞を37℃で8分間インキュベートした。次いで細胞を処置培地を除去することによって採取し、氷冷PBSで1回洗浄し、150μLの氷冷1X溶解緩衝液(Cell Signaling Technology)で溶解した。各96ウェルプレートを振盪機上で4℃で溶解緩衝液中で30分間インキュベートした。次いでプレートを遠心分離によって4,300xgで10分間4℃で細胞デブリを除去した。上清をphospho-Mer(panTyr)ELISA(Cell Signaling Technology)及びBCA(ThermoFisher Scientific)のために収集した。その後ライセートを製造業者の指示書に従って処理し、pMerTKレベルを決定し、BCA(Thermo Fisher Scientific)によって測定された総タンパク質に対して正規化した。
【0281】
図4に示されているように、本開示のいくつかの抗MerTK抗体は、Gas6の存在(黒色のカラム)または非存在(灰色のカラム)下でpMerTKを誘導することができた。予期されたように、Gas6は単独で、pMerTKレベルをある程度増加させることができた。抗MerTK抗体MTK-201、MTK-202、MTK-203、MTK-206、MTK-209、MTK-210、MTK-211、MTK-212、MTK-213、MTK-215、MTK-217、MTK-221、MTK-222、MTK-224、MTK-226、MTK-227、MTK-229、MTK-230、及びMTK-232は全て、Gas6リガンドの非存在下で、それらだけでマクロファージにおけるpMerTKレベルを増加させるのに有効であった。所定の抗MerTK抗体については、Gas6リガンドの添加は、Gas6の非存在下で観察されたものよりも高いpMerTKレベルのさらなる増加をもたらした。抗MerTK抗体は、アイソタイプ対照抗体で処置された細胞において観察されたものよりも約1倍~約4倍高いマクロファージにおけるpMerTKレベルを増加させた。
【0282】
実施例19:pAKTに対する抗MerTK抗体の効果
AKT(プロテインキナーゼB)シグナル伝達経路は、細胞生存及び成長を促進するシグナル伝達経路である。AKTのリン酸化(pAKT)に対する抗MerTK抗体の効果を以下のように試験した。指数関数的に増殖する培養物からのSK-MEL-5細胞を96ウェルプレートで50,000細胞/ウェルの密度で播種し、一晩インキュベートした。細胞を4時間、血清飢餓状態とした。本開示の抗MerTK抗体を細胞に37℃で15分間添加した(66.6nMの最終抗体濃度)。次いで培地を細胞から除去し、細胞を30分間振盪しながら溶解した。pAKT測定値は、Cisbio phosph-AKT(Ser473)Kit(Cisbio、#64AKSPEG)を使用して2プレートアッセイプロトコルについての製造業者の指示書に従って20mLの最終体積において細胞ライセートから決定した。
【0283】
以下の表13は、対照IgG抗体とインキュベートされたSK-MEL-5細胞において観察されたものに対する、本開示の抗MerTK抗体とインキュベートされたSK-MEL-5細胞におけるpAKTレベルの倍数増加を示している。200nMの組換えヒトGas6(R&D Systems)とインキュベートされた細胞は、対照IgG抗体の存在下で観察されたものよりもおよそ8~12倍pAKTレベルを増加させた。
【0284】
(表13)
nd=未決定
【0285】
本開示の所定の抗MerTK抗体のEC50値を、上述したpAKTアッセイから決定した。EC50値は、上の表13に示されている。
【0286】
実施例20:抗MerTK抗体のドメイン結合分析
以下の研究を実施して、ヒトMerTKに対する本開示の様々な抗MerTK抗体の結合部位を分析した。
【0287】
MerTKは、TAMファミリーのメンバーであり、そのメンバーは、N末端領域(NT)、2つの免疫グロブリン様ドメイン(Ig1及びIg2)、2つのフィブロネクチンIII型ドメイン(FN1及びFN2)、膜近傍領域(JM)、及び細胞内チロシンキナーゼドメインを含有する独自のドメイン構造を共有する。膜近傍領域内の切断は、可溶性MerTK細胞外ドメイン(ECD)の放出をもたらす。ヒトMerTK ECDは、以下のドメインに分けられ得、そのアミノ酸配列は、以下の表14に示されている:
【0288】
(表14)
【0289】
TAMファミリーの別のメンバーであるAxlタンパク質は、以下で表15に示される以下のドメイン及びそのECDにおける関連するアミノ酸配列を有する、MerTKのものと共通のドメイン構造を共有する:
【0290】
(表15)
【0291】
これらの実験において、ヒトMerTKの様々なドメインが、対応するヒトAxlドメインと交換された一連のキメラタンパク質を組換え的に発現させた。得られたキメラタンパク質をExpi293細胞において組換え的に発現させ、次いで本開示の様々な抗MerTK抗体の結合を、Axl/MerTKドメイン交換キメラに結合するそれらの能力について分析した。シグナル配列(MerTKコンストラクトにおけるMGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:241)、及びAxlコンストラクトにおけるMGWSCIILFLVATATG(配列番号:242))及びリンカー+His+Aviタグ(GGSGHHHHHHGGGLNDIFEAQKIEWHE;配列番号:243)を有するドメイン交換キメラ及び欠失変異体をコードするDNAを遺伝子合成によって調製し、発現ベクターpcDNAtopo3.4(GeneArt、ThermoFisher)にクローニングした。Expi293細胞を推奨手順(ThermoFisher)に従って20μgのプラスミド及びExpiFectamineでトランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞を20mLの培養物中で37℃及び5%CO2で4日間振盪しながら成長させた。細胞を遠心分離によってペレット化し、上清を真空によって0.2μMフィルターを介して濾過した。
【0292】
表16は、これらの研究において使用するために生成した様々なAxl/MerTKドメイン交換キメラの構成を示している。この表において、M(MerTK)またはA(Axl)は、その特定のドメインが、対応するキメラタンパク質コンストラクトに含まれていた(すなわち、交換された)タンパク質を示している;NT(N末端ドメイン)、Ig1(免疫グロブリン様ドメイン1)、Ig2(免疫グロブリン様ドメイン2)、FN1(フィブロネクチンIII型ドメイン1)、FN2(フィブロネクチンIII型ドメイン2)、及びJM(膜近傍ドメイン)。
【0293】
(表16)
【0294】
これらのドメイン交換キメラまたは欠失変異体に対する本開示の抗MerTK抗体の結合を、Carterra LSAを使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験した。精製された抗MerTK抗体を、製造業者の指示書(前述した)に従って、アミンカップリングによってHC30Mチップ(Carterra)上に二重に固定化した。
【0295】
コンストラクトを含有する上清を0.5mg/mLのBSA(HBS-TE、Carterra;BSA、Sigma)を含有するランニング緩衝液で1:1で希釈し、固定化された抗体上に注入した。表面を、各コンストラクト注入後に10mMグリシンpH2.0で再生した。サンサーグラムをCarterra Epitopeソフトウェアを使用して分析してコンストラクト結合のパターンを特定した。Axlからドメインが欠失もしくは交換されたMerTKコンストラクトに対する結合の喪失及び/またはMerTKドメインが交換導入されたAxlコンストラクトに対する結合の獲得を評価した。これらの研究からのデータを使用して、抗MerTK抗体及びヒトMerTKの様々なドメインに対するそれらの結合についてのドメイン結合マップを構築した。
【0296】
本開示の抗MerTK抗体に加えて、以下の抗MerTK抗体もこれらの研究において使用した:マウス抗ヒトMerTK抗体H1(BioLegend、クローンID:590H11G1E3、マウスIgG1)、マウス抗ヒトMerTK抗体H2(R&D Systems、クローンID:125518、マウスIgG2b)、マウス抗ヒトMerTK抗体H3(R&D Systems、クローンID 125508、マウスIgG2b)、マウス抗ヒトMerTK抗体H6(eBioscience、クローンID:A3KCAT、マウスIgG1)、マウス抗ヒトMerTK抗体H7(Sino Biological、クローンID:09、マウスIgG2b)、ヒト抗ヒトMerTK抗体M6(WO2016/106221に開示、huIgG1 LALAPS)、ヒト抗ヒトMerTK抗体CDX Ab2000(WO2019/084307に開示、huIgG1 LALAPS)、及びヒト抗ヒトMerTK抗体CDX Ab3000(WO2020/106461に開示、huIgG1 LALAPS)。
【0297】
これらの結合研究の結果が以下の表17に示されている。結合に必要とされるドメイン(複数可)が最初に列挙されており、括弧内に特定されたドメインは、おそらく間接的にコンフォメーショナル効果を介して、より低い程度で結合に影響する。2つのハーフアンドハーフキメラに対する結合の評価は、ここで試験された抗体についての主要な結合ドメインを確立及び/または確認することを補助する。
【0298】
(表17)
【0299】
表17に示されているように、抗MerTK抗体MTK-204、MTK-220、MTK-223、及びH6は、ヒトMerTKのN末端領域を含有するキメラタンパク質コンストラクトに結合した。これは、MerTK N末端を含んでいたが、MerTK C末端、ハーフアンドハーフキメラを含んでいなかった。抗MerTK抗体MTK-202及びMTK-231もまた、MerTK N末端を含む、MerTKのN末端領域を含有するコンストラクトに結合したが、MerTK C末端ハーフアンドハーフキメラには結合しなかったが、結合は、MerTK FN1ドメインがAxl FN1ドメインと交換された場合に減少した。
【0300】
抗MerTK抗体MTK-213、MTK-218、MTK-225、MTK-226、及びM6は、MerTK N末端を含むMerTK Ig1を含有していたコンストラクトに結合したが、MerTK C末端ハーフアンドハーフキメラに結合しなかった。抗MerTK抗体MTK-215は、MerTK N末端を含むMerTK Ig1を含有していたキメラタンパク質コンストラクトに結合したが、MerTK C末端ハーフアンドハーフキメラに結合しなかった;しかしながら、その結合は、MerTK FN1ドメインがAxl FN1ドメインと交換された場合に減少した。
【0301】
抗体H1、H2、及びCDX Ab3000は、結合のためにMerTK Ig2及びFn1ドメインの両方の存在を必要とし、いずれのハーフアンドハーフキメラにも結合せず、それらの結合部位は、これらの2つのドメイン間の接続部にわたって伸長し得ることを示唆していた。同様に、抗MerTK抗体MTK-212による結合は、Ig2及びFN1ドメインの両方の存在を必要とした(それはまた、いずれのハーフアンドハーフキメラにも結合しなかった)が、上記のIg2/FN1結合抗体とは異なり、抗体MTK-212結合は、MerTK FN2ドメインがAxl FN2ドメインと交換された場合に減少した。
【0302】
抗体MTK-203、MTK-209、MTK-214、及びMTK-224は、MerTK C末端を含むMerTK FN1ドメインを含有するコンストラクトに結合したが、MerTK N末端ハーフアンドハーフキメラに結合しなかった。抗体MTK-222、MTK-227、及びMTK-230もまた、MerTK C末端ハーフアンドハーフを含むMTK FN1ドメインを含有するコンストラクトに結合したが、MerTK N末端ハーフアンドハーフキメラには結合しなかったが、それらの結合は、MerTK FN2またはIg1ドメインが存在しなかった場合に減少した。
【0303】
抗体MTK-206、MTK-217、及びMTK-229は、MerTK C末端ハーフアンドハーフを含むMerTK FN2及びJMドメインを含有するコンストラクトに結合したが、MerTK N末端ハーフアンドハーフキメラには結合しなかった一方で、それらの結合は、MerTK FN1ドメインが存在しなかった場合に減少した。抗体H3及びH7は、MerTK JMドメインを含有していたコンストラクト及びMerTK C末端ECDキメラに結合した。抗体MTK-205、MTK-210、及びMTK-219の結合は、MerTK C末端ドメインのいずれか(FN1、FN2、またはJM)が存在しなかった場合に減少し、それらは、MerTK C末端に結合したが、MerTK N末端ハーフアンドハーフキメラには結合しなかった。それらの結合はまた、MerTK Ig1ドメインの非存在下で減少した。本開示の抗MerTK抗体のいずれも、ヒトAxlのECDドメインに結合しなかった(データは示されていない)。
【0304】
上の表11からのビン割り当てを、表17からのドメイン結合と比較すると、エピトープビン1、2、3、4、及び10における抗MerTK抗体には、MerTK ECDのC末端領域に対する結合因子が含まれるのに対し、エピトープビン6、7、8、及び9における抗体には、MerTK ECDのN末端領域に対する結合因子が含まれる。エピトープビン5における抗体は、MerTK ECDのN及びC末端領域の両方を必要とする領域(潜在的にその2つの領域間の接続部に及ぶ)でMerTKに結合する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
【配列表】
2023519962000001.app
【国際調査報告】