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特表2023-519967多価免疫グロブリン単一可変ドメインの製造及び精製のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】多価免疫グロブリン単一可変ドメインの製造及び精製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/08 20060101AFI20230508BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230508BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230508BHJP
   C12R 1/84 20060101ALN20230508BHJP
   C12R 1/78 20060101ALN20230508BHJP
   C12R 1/85 20060101ALN20230508BHJP
   C12R 1/72 20060101ALN20230508BHJP
   C12R 1/88 20060101ALN20230508BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
C12N15/13
C07K16/46
C12R1:84
C12R1:78
C12R1:85
C12R1:72
C12R1:88
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559523
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021058302
(87)【国際公開番号】W WO2021198260
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】20166803.5
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517123807
【氏名又は名称】アブリンクス・エヌ・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン・マドゥラ
(72)【発明者】
【氏名】ソニア・レテス
(72)【発明者】
【氏名】アン・ブリジュ
(72)【発明者】
【氏名】トム・メルチャーズ
(72)【発明者】
【氏名】エレン・ファン・ホーレン
(72)【発明者】
【氏名】チャキブ・ボルサリ
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE11
4B064CE12
4B064CE20
4B064DA20
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045FA74
4H045GA01
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドの製造のための改善された方法に関する。より詳細には、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドを製造、精製及び単離する改善された方法が提供され、ここで望ましくない生成物に関連するコンホメーション変異体は減少するか又は存在しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から単離又は精製する方法であって、該方法は:
a) コンホメーション変異体を該ポリペプチドに変換する条件を適用すること;
b) コンホメーション変異体を除去すること;又は
c) (a)及び(b)の組み合わせ
を含む、上記方法。
【請求項2】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、宿主における発現により得ることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、下等真核生物宿主である宿主における発現により得ることができる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
下等真核生物宿主は、ピキア、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスのような酵母を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
酵母はピキア・パストリスのようなピキアである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドは、少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、より緻密な形態を特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して減少した流体力学的体積を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、SE-HPLCにおける増加した保持時間を特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、IEX-HPLCにおける変化した保持時間を特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換する条件は:
i) 単離もしくは精製方法の工程において低pH処理を適用すること、[場合により、ここで低pH処理は、組成物のpHを約pH3.2もしくはそれ以下に、又は約pH3.0もしくはそれ以下に低下させることを含む];
ii) 単離もしくは精製方法の工程においてカオトロピック剤を適用すること、[場合により、ここでカオトロピック剤は、塩化グアニジニウム(GuHCl)である];
iii) 単離もしくは精製方法の工程において熱ストレスを加えること、[場合により、コンホメーション変異体を約40℃~約60℃でインキュベートすることを含む];又は
iv) i)~iii)のいずれかの組み合わせ
から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ポリペプチドは、少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなり、そしてここで低pH処理は、組成物のpHを約pH3.0又はそれ以下に低下させることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
pHを、約pH3.2と約2.1との間に、約pH3.0と約2.1との間に、約pH2.9と約pH2.1との間に、約pH2.7と約pH2.1との間に、又は約pH2.6と約pH2.3との間に低下させる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
低pH処理は、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、又は少なくとも約4時間適用される、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
pHを、約pH3.2と約pH2.1との間に、少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
pHを、約pH3.0と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
pHを、約pH2.9と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
pHを、約pH2.7と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前に、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の間に、又はクロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後に適用される、請求項12~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
低pH処理は、クロマトグラフィー技術の固定相に組成物をアプライする前に、又はクロマトグラフィー技術の固定相から組成物を溶出した後に適用される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
カオトロピック剤は、少なくとも約1M又は少なくとも約2Mの最終濃度の塩化グアニジニウム(GuHCl)である、請求項12~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
GuHClは、少なくとも0.5時間、又は少なくとも1時間適用される、請求項12~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
熱ストレスは少なくとも約1時間加えられる、請求項12~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
コンホメーション変異体は、1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術により除去され、場合により、ここでコンホメーション変異体は、1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術により除去される前に、SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー技術により同定されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
クロマトグラフィー技術は、流体力学的体積、表面電荷又は表面疎水性に基づくクロマトグラフィー技術である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
クロマトグラフィー技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、例えば、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)のいずれかから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
HICはHICカラム樹脂に基づく、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
HICはHICメンブレンに基づく、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ポリペプチドの単離又は精製は、組成物をクロマトグラフィーカラムにアプライすることを含み、ここで組成物は、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも20mg、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも30mg、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも45mgの負荷率を使用してカラムにアプライされ、場合により、ここでクロマトグラフィーカラムはプロテインAカラムである、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換する1つ又はそれ以上の条件は、単独で、又はコンホメーション変異体を除去する1つもしくはそれ以上の技術と組み合わせて適用される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを単離又は精製する方法であって、該方法は、以下:
i) 単離もしくは精製方法の工程において、該ポリペプチドを含む組成物に低pH処理を適用すること、[場合により、ここで低pH処理は、組成物のpHを約pH3.2もしくはそれ以下に、又は約pH3.0もしくはそれ以下に低下させることを含む];
ii) 単離もしくは精製方法の工程において、該ポリペプチドを含む組成物にカオトロピック剤を適用すること、[場合により、ここでカオトロピック剤はGuHClである];
iii) 単離もしくは精製方法の工程において、該ポリペプチドを含む組成物に熱ストレスを加えること、[場合により、該組成物を約40℃~約60℃でインキュベートすることを含む];
iv) 該ポリペプチドを含む組成物を、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも45mg/mlの負荷率を使用してクロマトグラフィーカラムにアプライすること、[場合により、ここでクロマトグラフィーカラムはプロテインAカラムである];又は
v) i)~iv)のいずれかの組み合わせ
の1つ又はそれ以上を含む、上記方法。
【請求項33】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、宿主における発現により得ることができる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、下等真核生物宿主である宿主における発現により得ることができる、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
下等真核生物宿主は、ピキア、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスのような酵母を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
酵母はピキア・パストリスのようなピキアである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ポリペプチドは、少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなり、場合により、ここで低pH処理は、組成物のpHを約pH3.0又はそれ以下に低下させることを含む、請求項32~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
pHを、約pH3.2と約pH2.1との間に、約pH3.0と約pH2.1との間に、約pH2.9と約pH2.1との間に、約pH2.7と約pH2.1との間に、又は約pH2.6と約pH2.3との間に低下させる、請求項32~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
低pH処理は、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、又は少なくとも約4時間適用される、請求項32~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
pHを、約pH3.2と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
pHを、約pH3.0と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
pHを、約pH2.9と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
pHを、約pH2.7と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる、請求項39~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前に、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の間に、又はクロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後に適用される、請求項32~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
低pH処理は、組成物をクロマトグラフィー技術の固定相にアプライする前に、又は組成物をクロマトグラフィー技術の固定相から溶出した後に適用される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
カオトロピック剤は、少なくとも約1M、又は少なくとも約2Mの最終濃度のGuHClである、請求項32~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
GuHClは、少なくとも0.5時間、又は少なくとも1時間適用される、請求項32~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
熱ストレスは、少なくとも約1時間加えられる、請求項32~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
請求項1~49のいずれか1項に記載の方法に従って精製又は単離することを含む、少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを製造する方法。
【請求項51】
以下の工程:
a) 場合により、宿主又は宿主細胞を、該宿主又は宿主細胞が増殖するような条件下で培養する工程;
b) 宿主又は宿主細胞を、該宿主又は宿主細胞が上記ポリペプチドを発現し、かつ/又は産生するような条件下で維持する工程;並びに
c) 請求項1~49のいずれか1項に記載の単離又は精製方法の1つ又はそれ上を含む、分泌されたポリペプチドを培地から単離及び/又は精製する工程
を少なくとも含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
宿主はCHO細胞ではない、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
宿主は下等真核生物宿主である、請求項50~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
下等真核生物宿主は、ピキア、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスのような酵母を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
酵母はピキア・パストリスのようなピキアである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から単離又は精製するための方法であって、該方法は:
(1) SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー技術によりコンホメーション変異体を同定すること;
(2) コンホメーション変異体の特異的除去を可能にするようにクロマトグラフィー条件を調整すること;並びに
(3) 1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術により、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からコンホメーション変異体を除去すること
を含む、上記方法。
【請求項57】
少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術により単離又は精製することを可能にするために1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術を最適化するための方法であって:
(1) SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー技術によりコンホメーション変異体を同定すること;
(2) コンホメーション変異体の特異的除去を可能にするようにクロマトグラフィー条件を最適化すること
を含む、上記方法。
【請求項58】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、宿主における発現により得ることができる、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
単離又は精製しようとするポリペプチドは、下等真核生物宿主である宿主における発現により得ることができる、請求項58又は59に記載の方法。
【請求項61】
下等真核生物宿主は、ピキア、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスのような酵母を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
酵母はピキア・パストリスのようなピキアである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
コンホメーション変異体は、請求項8~11におけるように特徴づけられる、請求項56~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
クロマトグラフィー技術は、流体力学的体積、表面電荷又は表面疎水性に基づくクロマトグラフィー技術である、請求項56~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
クロマトグラフィー技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)のいずれかから選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
イオン交換クロマトグラフィー(IEX)はカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
HICはHICカラム樹脂に基づく、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
HIC樹脂は、Capto Phenyl ImpRes、Capto Butyl ImpRes、Phenyl HP、及びCapto Butylのいずれかから選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
HICはHICメンブレンに基づく、請求項65に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 技術分野
本出願は、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)の製造及び精製の分野に関する。
【0002】
本出願は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドの製造のための方法を提供する。より詳細には、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドを製造、精製、及び単離するための改善された方法が提供され、ここで生成物に関連するコンホメーション変異体は、減少するか又は存在しない。本方法に従って製造/精製された少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドは、生成物に関連するコンホメーション変異体が減少しているか又は存在しないので、生成物均一性の点で優れている。このことは、例えば、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドの治療応用の状況において有益である。従って、本方法は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む均一なポリペプチドの製造を提供し、ここで増加した均一性及び/又は効力が得られる。従って、本出願はまた、本発明の方法により得ることができる、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドを含む、治療用途のための改善された組成物を記載する。
【背景技術】
【0003】
2 背景技術
治療応用のために、免疫グロブリンは、非常に高い生成物品質のものでなくてはならない。これには、とりわけ、構造上の均一性が必要である。さらに、製造費用は、製造プロセスの間に直面する困難により強く影響を受ける。低い収率又は均一性の欠如は、製造プロセスの経済に影響を及ぼし、それ故、その治療の費用全体に影響を及ぼす。例えば、所望のタンパク質の構造変異体を所望のタンパク質から分離する困難性は、複雑で費用の高い精製方針を必要とするだろう。
【0004】
要件の中でもとりわけ、治療用タンパク質は完全に機能的でなければならない。タンパク質機能は、因子の中でもとりわけ、発酵、精製及び貯蔵の間のタンパク質の化学的及び物理的安定性に依存する。化学的不安定性は、とりわけ、脱アミド、異性化、ラセミ化、加水分解、酸化、ピログルタミン酸形成、カルバミル化、ベータ脱離及び/又はジスルフィド交換により引き起こされ得る。物理的不安定性は、抗体変性、凝集、沈殿、又は吸着により引き起こされ得る。それらの中で、凝集、脱アミド、及び酸化は抗体分解のもっとも一般的な原因であることが知られている(非特許文献1)。
【0005】
機能的な生成物の適切な収量を得ることの限界は、従来の免疫グロブリン及びそれらのフラグメントについて、広範囲の発現系にわたって報告されており、これらとしては、とりわけ、インビトロ翻訳、大腸菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、チャイニーズハムスター卵巣細胞、昆虫細胞におけるバキュロウイルス系及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。
【0006】
これらの観察された困難性と対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を、大腸菌のような原核生物、ピキア・パストリス(P.pastoris)のような下等真核生物、又はCHO細胞のような高等真核生物のような様々な宿主細胞において、十分な速度及びレベルで完全に機能的な形態で容易に発現させることができる。例えば特許文献1において記載されるように、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)のような高等真核生物におけるISVDの生物学的製剤製造は、しばしば低pH処理による下流精製プロセスにおけるウイルスクリアランス/不活化を必要とする。酵母のような下等真核生物において、ウイルス不活化の問題は存在しない。免疫グロブリン単一可変ドメインは、単一可変ドメインによる抗原結合部位の形成を特徴とし、これは抗原認識のためのさらなるドメインとの相互作用(例えば、VH/VL相互作用の形態)を必要としない。免疫グロブリン単一可変ドメインの1つの具体例としてNANOBODY(登録商標)ISVDの製造は、例えば特許文献2において広範囲にわたって記載されている。
【0007】
これらの想定される利点にもかかわらず、構造的に均一なISVD生成物を製造する際の問題が報告されている。例えば、特許文献3において、ISVDの製造が少なくとも1つのジスルフィド架橋を欠いている生成物関連変異体を伴い得るということが示された。さらに、特許文献4は、少なくとも1つのカルバミル化アミノ酸残基を含む、製造されたISVDの構造的変異体の存在を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 2010/056550
【特許文献2】WO 94/25591
【特許文献3】WO 2010/125187
【特許文献4】WO2012/05600
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Clelandら、1993、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307-377
【非特許文献2】Ryabovaら、Nature Biotechnology 15:79、1997
【非特許文献3】Humphreysら、FEES Letters 380:194、1996
【非特許文献4】Shustaら、Nature Biotech.16:773、1998
【非特許文献5】Hsuら、Protein Expr.& Purif.7:281、1996
【非特許文献6】Mohanら、Biotechnol.& Bioeng.98:611、2007
【非特許文献7】Xuら、Metabol.Engineer.7:269、2005
【非特許文献8】Merkら、J.Biochem.125:328、1999
【非特許文献9】Whiteleyら、J.Biol.Chem.272:22556、1997
【非特許文献10】Gasserら、Biotechnol.Bioeng.94:353、2006
【非特許文献11】Demarest and Glaser、Curr.Opin.Drug Discov.Devel.11(5):675-87、2008
【非特許文献12】Honegger、Handb.Exp.Pharmacol.181:47-68、2008
【非特許文献13】Wangら、J.Pharm.Sci.96(1):1-26、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む構造的に均一な機能的ISVD生成物を得るためのさらなる特定の問題は報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
3 要旨
生成物に関連するコンホメーション変異体は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ポリペプチド生成物の製造プロセスの間に観察された。この生成物に関連するコンホメーション変異体は、宿主において、特に酵母のような下等真核生物宿主である宿主において、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ポリペプチド生成物の製造の際に観察された。少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ポリペプチド生成物のコンホメーション変異体が、宿主における、特に酵母のような下等真核生物宿主である宿主におけるポリペプチドの発現から生じることがわかった。本発明者らは、本明細書において提供されるような、分析用SE-HPLC及び/又は分析用IEX-HPLCのような特定の分析用クロマトグラフィー技術により生成物に関連するコンホメーション変異体を同定することができた。この技術は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ポリペプチドを製造、精製、及び単離する方法に関し、生成物に関連するコンホメーション変異体の減少又はそれが存在しないことを特徴とする。
【0012】
本出願は、少なくとも3つもしくは少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から単離又は精製する方法を提供し、ここで該方法は:
a) コンホメーション変異体を該(所望の)ポリペプチドに変換する条件を適用すること;
b) コンホメーション変異体を除去すること;又は
c) (a)及び(b)の組み合わせ
を含む。
【0013】
本出願により提供される方法により単離/精製しようとするポリペプチドは、宿主における発現により得ることができる。本出願において提供される方法により単離/精製しようとするポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる。本出願により提供される方法により単離/精製しようとするポリペプチドは、酵母のような下等真核生物宿主における発現により得ることができる。コンホメーション変異体は、宿主、特に酵母のような下等真核生物宿主である宿主におけるポリペプチドの発現から生じる。限定することなく、酵母は、ピキア(コマガタエラ(Komagataella))、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス(Citeromyces)、パキソレン(Pachysolen)、デバロミセス(Debaromyces)、メトスクニコウィア(Metschunikowia)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、ロイコスポリジウム(Leucosporidium)、ボトリオアスクス(Botryoascus)、スポリジオボルス(Sporidiobolus)、エンドミコプシス(Endomycopsis)であり得る。一態様において、本出願において提供される方法により単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリス(Pichia pastoris)における発現により得ることができる。
【0014】
一実施形態において、組成物中のコンホメーション変異体のパーセンテージ(%)は、5%又はそれ以下まで低下する。別の実施形態において、組成物中のコンホメーション変異体のパーセンテージ(%)は、コンホメーション変異体4%又はそれ以下、3%又はそれ以下、2%又はそれ以下、1%又はそれ以下、例えば0.5%、0.1%又は0%にまでも減少する。
【0015】
本明細書において記載される方法により変換及び/又は除去しようとするコンホメーション変異体は、より緻密な形態を特徴とする。本明細書において記載される方法により変換又は除去しようとするコンホメーション変異体はまた。減少した流体力学的体積を特徴とする。コンホメーション変異体の緻密な形態は、減少した流体力学的体積に起因し得る。コンホメーション変異体はまた、変化した表面電荷及び/又は表面疎水性を特徴とし得る。従って、コンホメーション変異体は、減少した流体力学的体積、変化した表面電荷、及び/又は変化した表面疎水性を特徴とし得る。いずれの仮説にも拘束されることなく、本明細書において記載される方法により変換及び/又は除去しようとするコンホメーション変異体は、ポリペプチド中に存在するISVDビルディングブロック間の弱い分子内相互作用を特徴とするかもしれず、これが(所望の)ポリペプチドと比較して、コンホメーション変異体の減少した流体力学的体積、変化した表面電荷、及び/又は変化した表面疎水性を生じているかもしれない。
【0016】
上記の生物物理学的パラメーターの差異に起因して、本明細書において提供される方法により変換及び/又は除去しようとするコンホメーション変異体は、分析用SE-HPLC及び/又は分析用IEX-HPLCのようなクロマトグラフィー技術により識別可能である。従って、一実施形態において、本明細書において提供される方法により変換及び/又は除去しようとするコンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較してSE-HPLCにおける増加した保持時間を特徴とする。別の実施形態において、コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較してIEX-HPLCにおける変化した保持時間を特徴とする。さらに別の実施形態において、コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、SE-HPLCにおける増加した保持時間及びIEX-HPLCにおける変化した保持時間を特徴とする。
【0017】
一態様において、コンホメーション変異体は、適切な条件を適用することにより上記ポリペプチドに変換され、ここでコンホメーション変異体を該ポリペプチドに変換する条件は:
i) 単離及び/もしくは精製方法の工程において低pH処理を適用すること;
ii) 単離及び/もしくは精製方法の工程においてカオトロピック剤を適用すること;
iii) 単離及び/もしくは精製方法の工程において熱ストレスを加えること;又は
iv) i)~iii)のいずれかの組み合わせ
から選択される。
【0018】
コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するための低pH処理は、コンホメーション変異体を含む組成物のpHを約pH3.2もしくはそれ以下、又は約pH3.0もしくはそれ以下に低下させることを含む。一態様において、pHを、約pH3.2と約pH2.1との間、約3.0と約pH2.1との間、約pH2.9と約pH2.1との間、約pH2.7と約pH2.1との間、又は約pH2.6と約pH2.3との間に低下させる。pH処理は、コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するために十分な量の時間の間適用される。本出願において提供される教示を考慮して、当業者は、コンホメーション変異体の上記ポリペプチドへの変換が経時的に増加することがわかる。しかし、実用的な有用なレベルまでのコンホメーション変異体の上記ポリペプチドへの変換は、少なくとも0.5時間、例えば少なくとも約1時間の低pH処理の後に既に達成される。従って、一態様において、低pH処理は、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、又は少なくとも約4時間適用される。特定の態様において、pHを、約pH3.2と約pH2.1との間に、例えば約pH3.2、3.0、2.9、2.7、2.5、2.3、又は2.1に低下させる。別の特定の態様において、pHを、約pH3.0と約pH2.1との間、例えば約pH3.0、2.9、2.7、2.5、2.3、又は2.1に低下させる。別の特定の態様において、pHを、約pH2.9と約pH2.1との間、例えば約pH、2.9 2.7、2.5、2.3、又は2.1に低下させる。別の特定の態様において、pHを、約pH2.5と約pH2.1との間、例えばpH2.5、pH2.3、又はpH2.1に低下させる。別の特定の態様において、pHを、約pH3.2又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間低下させる。例えば、pHを、約pH3.2と約2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる。さらに別の態様において、pHを、約pH3.0又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間低下させる。例えば、pHを、約pH3.0と約2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも1.0時間低下させる。さらに別の態様において、pHを、約pH2.9又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間低下させる。例えば、pHを、約pH2.9と約2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも1.0時間低下させる。さらに別の態様において、pHを、約pH2.7又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間低下させる。例えば、pHを、約pH2.7と約2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる。別の態様において、低pH処理は、低pH処理において使用されるpHを少なくとも1pH単位増加させることにより終了される。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。
【0019】
別の特定の態様において、pHを、約pH2.5又はそれ以下に少なくとも約1時間、又は少なくとも約2時間低下させる。別の特定の態様において、pHを、約pH2.3又はそれ以下に少なくとも約1時間低下させる。別の態様において、低pH処理は、低pH処理において使用されるpHを少なくとも1pH単位増加させることにより終了される。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現から得ることができる。
【0020】
コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するために使用される低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前又は後に適用され得る。クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前には、精製しようとするポリペプチドを含む組成物をクロマトグラフィー技術の固定相にアプライする前に、低pH処理が適用されることを意味する。クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後には、精製しようとするポリペプチドをクロマトグラフィー技術の固定相から溶出した後に、低pH処理が適用されることを意味する。クロマトグラフィー技術の固定相は、樹脂又はメンブレンを含むクロマトグラフィーカラムのような使用されるクロマトグラフィー材料である。従って、低pH処理は、使用されるクロマトグラフィー技術の固定相からポリペプチドを溶出した後に適用され得る。低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程により得られた溶出液に適用され得る。この実施形態において、上記ポリペプチドはクロマトグラフィー技術の固定相/クロマトグラフィー材料に結合していないか又は溶出されていない(すなわち、まだ接触している)。溶出後に、次いで得られた溶出液を、本明細書に記載されるように、コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するために十分な量の時間の間低pH処理に調整する。従って、一実施形態において、低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の固定相からのポリペプチドの溶出後に、すなわち溶出液に対して適用される。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。
【0021】
コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するための低pH処理はまた、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の間に適用してもよい。精製工程の間は、低pH処理が、精製しようとするポリペプチドを含む組成物をクロマトグラフィー技術の固定相にアプライしながら(すなわち、精製しようとするポリペプチドを含む組成物を、クロマトグラフィー技術の固定相/クロマトグラフィー材料と接触させる)適用されることを意味する。精製工程の間に、精製しようとするポリペプチドを含む組成物は、固定相/クロマトグラフィー材料と接触していてもよく(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、又は固定相/クロマトグラフィー材料に(可逆的に)結合されてもよい(例えば、アフィニティークロマトグラフィーにおけるように)。一態様において、溶出緩衝液は、pH2.5に等しいか又はそれ以下のpHを有する。溶出液の実際のpHは、低pH溶出緩衝液の初期pHより常に高いことが一般的に知られている。例えば、pH3.0の溶出緩衝液を用いた溶出は、pH3.8の溶出液pHを生じ得る。理由は、使用されるクロマトグラフィー技術の固定相に存在し、そしてより高いpHを有する残留液(例えば、固定相の貯蔵、平衡化もしくは回収のために使用される緩衝液、又は固定相へのポリペプチドの結合のために使用される緩衝液)が、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の間に低pH処理において使用される低pH緩衝液と混合するということかもしれない。従って、あるいは、溶出緩衝液は、上記ポリペプチドを含有する得られた溶出液がpH2.9に等しいか又はそれ以下のpHを有するようなpHを有する。これらの態様において、得られた溶出液は、場合によりpH3.2に等しいか又はそれ以下のpH、例えばpH2.7に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも1時間調整される。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。
【0022】
本出願において提供される教示を考慮して、当業者は、コンホメーション変異体の上記ポリペプチドへの変換が経時的に増加することがわかる。しかし、実用的な有用なレベルまでのコンホメーション変異体の上記ポリペプチドへの変換は、少なくとも0.5時間、例えば少なくとも約1時間の低pH処理後に既に達成される。一態様において、溶出液のpHを、約pH3.2又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間低下させる。例えば、pHを、約pH3.2と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる。別の態様において、溶出液のpHを、約pH3.0又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間低下させる。例えば、pHを、約pH3.0と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる。さらに別の態様において、得られた溶出液のpHを、約pH2.9又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間低下させる。例えば、pHを、約pH2.9と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも1.0時間低下させる。さらに別の態様において、得られた溶出液のpHを、約pH2.7又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間低下させる。例えば、pHを、約pH2.7と約pH2.1との間に少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1.0時間低下させる。あるいは、上記ポリペプチドを含有する得られた溶出液のpHを、pH2.5に等しいか又はそれ以下のpHに低下させる。例えば、pHを、pH2.7又はそれ以下に少なくとも0.5時間、例えば、少なくとも1時間低下させる。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。
【0023】
別の態様において、低pH処理は、低pH処理において使用されるpHを少なくとも1pH単位増加させることにより終了する。
【0024】
別の態様において、コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するための低pH処理は、プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーに基づく精製工程の間に適用される。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。特定の態様において、クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーであり、ここで溶出緩衝液は約pH2.2のpHを有し、そしてここで得られた溶出液のpHは、約pH2.5のpHに少なくとも約1.5時間調整される。
【0025】
一態様において、低pH処理は、pHを約pH5.5又はそれ以上に増加させることにより終了する。さらに、一態様において、低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後に適用される。さらに、一態様において、低pH処理は室温で適用される。
【0026】
別の態様において、コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するためにカオトロピック剤が使用される。一態様において、カオトロピック剤は、塩化グアニジニウム(GuHCl)である。一態様において、GuHClは、少なくとも約1M、例えば約1Mと約2Mとの間の最終濃度である。一態様において、GuHClは、少なくとも約2Mの最終濃度である。カオトロピック剤処理は、コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するために十分な量の時間適用される。一態様において、GuHClは、少なくとも0.5時間、又は少なくとも1時間適用される。カオトロピック剤処理は、ISVDポリペプチド生成物を、カオトロピック剤を含まない新しい緩衝液系に移すことにより終了される。一態様において、カオトロピック剤処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後に適用される。一態様において、カオトロピック剤は室温で適用される。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。
【0027】
コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するために加えられる熱ストレスは、約40℃~約60℃の間、約45℃~約60℃の間、又は約50℃~約60℃の間でコンホメーション変異体を含む組成物をインキュベートすることを含む。熱ストレスは、コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換するために十分な量の時間加えられる。一態様において、熱ストレスは少なくとも約1時間加えられる。熱ストレスは、温度を室温まで低下させることにより終了される。一態様において、熱ストレスは、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後に加えられる。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。
【0028】
別の態様において、コンホメーション変異体は、上記条件の組み合わせを使用してポリペプチドに変換される。
【0029】
別の態様において、コンホメーション変異体は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ポリペプチドを含む組成物から、1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術により除去される。一態様において、クロマトグラフィー技術は、流体力学的体積、表面電荷又は表面疎水性に基づくクロマトグラフィー技術である。一態様において、クロマトグラフィー技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である、一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。
【0030】
さらなる態様において、コンホメーション変異体は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ポリペプチドを含む組成物を、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも20mg、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも30mg、又は樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも45mgの負荷率を使用してクロマトグラフィーカラムにアプライすることにより除去される。この態様の一実施形態において、クロマトグラフィーカラムはプロテインAカラムである。一実施形態において、単離/精製しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。
【0031】
別の態様において、コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換する条件の1つ又はそれ以上が単独で、又はコンホメーション変異体を除去する1つもしくはそれ以上の技術と組み合わせて適用される。
【0032】
少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを製造する方法もまた提供され、ここで該方法は:
a)
i) 単離及び/もしくは精製方法の工程において低pH処理を適用すること;
ii) 単離及び/もしくは精製方法の工程においてカオトロピック剤を適用すること;
iii) 単離及び/もしくは精製方法の工程において熱ストレスを加えること;もしくは
iv) i)~iii)のいずれかの組み合わせ、
によりコンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換すること
[ここで条件は本明細書においてさらに記載されるとおりである];
b) 本明細書においてさらに記載されるようにコンホメーション変異体を除去すること;又は
c) a)及びb)の組み合わせ
を含む。
【0033】
特に、以下の実施形態が提供される:
実施形態1. 少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から単離又は精製する方法であって、該方法は:
a) コンホメーション変異体を該ポリペプチドに変換する条件を適用すること;
b) コンホメーション変異体を除去すること;又は
c) (a)及び(b)の組み合わせ
を含み、
場合により、ここで単離又は精製しようとするポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる、上記方法。
【0034】
実施形態2. コンホメーション変異体は、下等真核生物宿主のような、CHO細胞ではない宿主における上記ポリペプチドの発現から生じる、実施形態1に記載の方法。
【0035】
実施形態3:単離又は精製しようとするポリペプチドは、下等真核生物宿主である宿主における発現により得ることができる、実施形態1に記載の方法。
【0036】
実施形態4:下等真核生物宿主は、ピキア、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスのような酵母である、実施形態2又は実施形態3に記載の方法。
【0037】
実施形態5:酵母はピキア・パストリスのようなピキアである、実施形態4に記載の方法。
【0038】
実施形態6. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較してより緻密な形態を特徴とする、.実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
実施形態7. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して減少した流体力学的体積を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
実施形態8. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、SE-HPLCにおける増加した保持時間を特徴とする、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
実施形態9. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、IEX-HPLCにおける変化した保持時間を特徴とする、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施形態10. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、IEX-HPLCにおける減少した保持時間を特徴とする、実施形態9に記載の方法。
【0043】
実施形態11. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、IEX-HPLCにおける増加した保持時間を特徴とする、実施形態9に記載の方法。
【0044】
実施形態12. ポリペプチドは、少なくとも3つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
実施形態13. ポリペプチドは、少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
実施形態14. ポリペプチドは、3つのISVD、4つのISVD、又は5つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
実施形態15. コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換する条件は:
i) 単離及び/もしくは精製方法の工程において低pH処理を適用すること、[場合により、ここで低pH処理は、組成物のpHを約pH3.2もしくはそれ以下、又は約pH3.0もしくはそれ以下に低下させることを含む];
ii) 単離及び/もしくは精製方法の工程においてカオトロピック剤を適用すること、[場合により、ここでカオトロピック剤は塩化グアニジニウム(GuHCl)である];
iii) 単離及び/もしくは精製方法の工程において熱ストレスを加えること、[場合により、コンホメーション変異体を40℃~約60℃でインキュベートすることを含む];又は
iv) i)~iii)のいずれかの組み合わせ
から選択され、
ここで、条件はいずれも、コンホメーション変異体をポリペプチドに変換するために十分な量の時間適用される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
実施形態16:ポリペプチドは、少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなり、そして低pH処理は、組成物のpHを約pH3.0又はそれ以下に低下させることを含む、実施形態15に記載の方法。
【0049】
実施形態17. pHを、約pH3.2と約pH2.1との間、約pH3.0と約pH2.1との間、約pH2.9と約pH2.1との間、約pH2.7と約pH2.1との間、又は約pH2.6と約pH2.3との間に低下させる、実施形態15又は実施形態16に記載の方法。
【0050】
実施形態18. pHを、約pH3.0、約pH2.9、約pH2.8、約pH2.7、約pH2.6、約pH2.5、約pH2.4、約pH2.3、約pH2.2、又は約pH2.1に低下させる、実施形態17に記載の方法。
【0051】
実施形態19. 低pH処理は、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、又は少なくとも約4時間適用される、実施形態15~18のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態20. pHを約pH2.5又はそれ以下に低下させる、実施形態15~19のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態21. pHを、約pH3.0と約pH2.1との間に少なくとも0.5時間、少なくとも1時間、場合により少なくとも2時間低下させる、実施形態15~19のいずか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態22. pHを約pH2.7と約pH2.1との間に低下させる、実施形態21に記載の方法。
【0055】
実施形態23. pHを、約pH2.7と約pH2.1との間に少なくとも1時間、場合により少なくとも2時間低下させる、実施形態15~19のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
実施形態24. pHを、約pH2.6と約pH2.3との間に少なくとも1時間、場合により少なくとも2時間低下させる、実施形態23に記載の方法。
【0057】
実施形態25. 多価ポリペプチドは5つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態15~24のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態26. pHを約pH2.6又はそれ以下に低下させる、実施形態25に記載の方法。
【0059】
実施形態27. 低pH処理は1~2時間の間適用される、実施形態25又は26に記載の方法。
【0060】
実施形態28. ポリペプチドは配列番号1からなる、実施形態27に記載の方法。
【0061】
実施形態29. 多価ポリペプチドは、4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態15~24のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
実施形態30. pHを、約pH2.9又はそれ以下、例えば約pH2.5に低下させる、実施形態29に記載の方法。
【0063】
実施形態31. 低pH処理は1~2時間の間適用される、実施形態29又は30に記載の方法。
【0064】
実施形態32. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態31に記載の方法。
【0065】
実施形態33. ポリペプチドは、配列番号70又は配列番号71からなる、実施形態31に記載の方法。
【0066】
実施形態34. 多価ポリペプチドは、3つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態15~24のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態35. pHを、約pH3.0又はそれ以下、例えば約pH2.5に低下させる、実施形態34に記載の方法。
【0068】
実施形態36. 低pH処理は、2~4時間の間適用される、実施形態34又は35に記載の方法。
【0069】
実施形態37. ポリペプチドは配列番号69からなる、実施形態36に記載の方法。
【0070】
実施形態38. 低pH処理は、pHを少なくとも1pH単位増加させるか、少なくとも2pH単位増加させるか、又は約pH5.5もしくはそれ以上に増加させることにより終了される、実施形態15~37のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態39. 低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前又は後に適用される、実施形態15~38のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態40. 低pH処理は、クロマトグラフィー技術の固定相に組成物をアプライする前に適用される、実施形態39に記載の方法。
【0073】
実施形態41. 低pH処理は、クロマトグラフィー技術の固定相から組成物を溶出した後に適用される、実施形態39に記載の方法。
【0074】
実施形態42. 低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の間に適用され、ここで精製しようとするポリペプチドを含む組成物は、クロマトグラフィー技術の固定相と接触している、実施形態15~38のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態43. クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーである、実施形態39~42のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態44. クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーであり、そしてここで溶出緩衝液はpH2.5に等しいか又はそれ以下のpHを有する、実施形態43に記載の方法。
【0077】
実施形態45. クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーであり、そしてここで溶出緩衝液は、上記ポリペプチドを含有する得られる溶出液がpH2.9に等しいか又はそれ以下のpHを有するようなpHを有する、実施形態43に記載の方法。
【0078】
実施形態46. 上記ポリペプチドを含有する溶出液のpHは、pH3.2に等しいかもしくはそれ以下のpH、例えばpH3.0に等しいかもしくはそれ以下のpH、又はpH2.7に等しいかもしくはそれ以下のpHに、場合により少なくとも約1時間調整される、実施形態43~45のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態47. 上記ポリペプチドを含有する溶出液のpHは、pH2.5に等しいか又はそれ以下のpHに、場合により少なくとも約1時間調整される、実施形態43~45のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態48. クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーであり、ここで溶出緩衝液は約pH2.2のpHを有し、そしてここで上記ポリペプチドを含有する溶出液のpHは、約pH2.5のpHに少なくとも約1.5時間調整される、実施形態42に記載の方法。
【0081】
実施形態49. 低pH処理後の溶出液のpHを、少なくとも1pH単位増加させるか、少なくとも2pH単位増加させるか、又は約pH5.5もしくはそれ以上のpHに増加させる、実施形態42~48のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態50. 低pH処理は室温で適用される、実施形態15~49のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態51. 低pH処理の後に:
a) 適切な量の1M酢酸ナトリウム pH5.5を組成物/溶出液に加えて、約50mM酢酸ナトリウムの最終濃度を得る工程;
b) 組成物/溶出液のpHをpH5.5に調整する工程;及び
c) 水を使用して、組成物/溶出液の導電率を約6mS/cm又はそれ以下に調整する工程
が続く、実施形態15~50のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態52. b)におけるpHはNaOHを用いて調整される、実施形態51に記載の方法。
【0085】
実施形態53. ポリペプチドは5つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態51又は52に記載の方法。
【0086】
実施形態54. ポリペプチドは4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態51又は52に記載の方法。
【0087】
実施形態55. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態54に記載の方法。
【0088】
実施形態56. GuHClは、少なくとも約1M、又は少なくとも約2Mの最終濃度で適用される、実施形態15~55のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態57. GuHClは、少なくとも0.5時間、又は少なくとも1時間適用される、実施形態15~56のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態58. GuHClは、少なくとも約1Mの最終濃度で少なくとも0.5時間適用される、実施形態56又は57に記載の方法。
【0091】
実施形態59. GuHClは、少なくとも約1Mの最終濃度で0.5時間~1時間適用される、実施形態58に記載の方法。
【0092】
実施形態60. GuHClは、約2Mの最終濃度で少なくとも0.5時間適用される、実施形態56又は57に記載の方法、
実施形態61. GuHClは、少なくとも約2Mの最終濃度で0.5時間~1時間適用される、実施形態60に記載の方法。
【0093】
実施形態62. ポリペプチドは、少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態56~61のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態63. ポリペプチドは配列番号1からなる、実施形態61に記載の方法。
【0095】
実施形態64. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態61に記載の方法。
【0096】
実施形態65. カオトロピック剤処理は室温で適用される、実施形態15又は56~64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態66. カオトロピック剤処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前又は後に適用される、実施形態15又は56~65のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態67. 上記ポリペプチドは、クロマトグラフィー技術の固定相から溶出され、そしてカオトロピック剤処理は、得られた溶出液に適用される、実施形態66に記載の方法。
【0098】
実施形態68. 熱ストレスは、少なくとも約1時間、又は約1~4時間加えられる、実施形態15~67のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態69. 熱ストレスは、約40℃~約60℃、約45℃~約60℃、又は約50℃~約60℃で加えられる、実施形態68に記載の方法。
【0100】
実施形態70. 熱ストレスは、約40℃~約55℃、約45℃~55℃、又は約48℃~約52℃で加えられる、実施形態68に記載の方法。
【0101】
実施形態71. 熱ストレスは約50℃で加えられる、実施形態68に記載の方法。
【0102】
実施形態72. 熱ストレスは約50℃で1時間加えられる、実施形態71に記載の方法。
【0103】
実施形態73. ポリペプチドは少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態72に記載の方法。
【0104】
実施形態74. ポリペプチドは配列番号1からなる、実施形態72に記載の方法。
【0105】
実施形態75. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態72に記載の方法。
【0106】
実施形態76. 熱ストレスは、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前又は後に加えられる、実施形態15、又は68~75のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態77. 熱ストレス処理は、クロマトグラフィー技術の固定相に組成物をアプライする前に、又はクロマトグラフィー技術の固定相から組成物を溶出した後に適用される、実施形態76に記載の方法。
【0108】
実施形態78. コンホメーション変異体は、1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術により除去される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態79. コンホメーション変異体は、1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術により除去される前に、SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー技術により同定されている、実施形態78に記載の方法。
【0110】
実施形態80. クロマトグラフィー技術は、流体力学的体積、表面電荷又は表面疎水性に基づくクロマトグラフィー技術である、実施形態78又は79に記載の方法。
【0111】
実施形態81. クロマトグラフィー技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)から選択される、実施形態80に記載の方法。
【0112】
実施形態82. イオン交換クロマトグラフィー(IEX)は、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)である、実施形態81に記載の方法。
【0113】
実施形態83. HICはHICカラム樹脂に基づく、実施形態81に記載の方法。
【0114】
実施形態84. HIC樹脂は、Capto Phenyl ImpRes、Capto Butyl ImpRes、Phenyl HP、及びCapto Butylから選択される、実施形態83に記載の方法。
【0115】
実施形態85. HICはHICメンブレンに基づく、実施形態81に記載の方法。
【0116】
実施形態86. 組成物は、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも20mg、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも30mg、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも45mgの負荷率を使用してクロマトグラフィーカラムにアプライされ、場合により、ここでクロマトグラフィーカラムはプロテインAカラムである、実施形態1~85のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態87. 組成物は、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも45mgの負荷率を使用してプロテインAカラムにアプライされる、実施形態86に記載の方法。
【0118】
実施形態88. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態87に記載の方法。
【0119】
実施形態89. コンホメーション変異体を上記ポリペプチドに変換する条件の1つ又はそれ以上は、単独で、又はコンホメーション変異体を除去する1つもしくはそれ以上の技術と組み合わせて適用される、実施形態1~88のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
実施形態90. 少なくとも3つもしくは少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを単離又は精製する方法であって、該方法は、以下:
i) 低pH処理を、単離又は精製方法の工程において該ポリペプチドを含む組成物に適用すること、[場合により、ここで低pH処理は、組成物のpHを約pH3.2もしくはそれ以下、又はpH3.0もしくはそれ以下に低下させることを含む];
ii) 単離又は精製方法の工程において該ポリペプチドを含む組成物にカオトロピック剤を適用すること、[場合により、ここでカオトロピック剤はGuHClである];
iii) 単離又は精製方法の工程において該ポリペプチドを含む組成物に熱ストレスを加えること、[場合により、コンホメーション変異体を40℃~約60℃でインキュベートすることを含む];
iv) 少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも45mg/mlの負荷率を使用してクロマトグラフィーカラムに該ポリペプチドを含む組成物をアプライすること、[場合により、クロマトグラフィーカラムはプロテインAカラムである];又は
v) i)~iv)のいずれかの組み合わせ
の1つ又はそれ以上を含み、
場合により、ここで単離又は精製しようとするポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる、上記方法。
【0121】
実施形態91:コンホメーション変異体は、下等真核生物宿主のような、CHO細胞ではない宿主における上記ポリペプチドの発現から生じる、実施形態90に記載の方法。
【0122】
実施形態92. 単離又は精製しようとするポリペプチドは、下等真核生物宿主である宿主における発現により得ることができる、実施形態90に記載の方法。
【0123】
実施形態93. 下等真核生物宿主は、ピキア、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスのような酵母である、実施形態91又は実施形態92に記載の方法。
【0124】
実施形態94. 酵母は、ピキア、例えばピキア・パストリスである、実施形態93に記載の方法。
【0125】
実施形態95. pHを、約pH3.2と約pH2.1との間、約pH3.0と約pH2.1との間、約pH2.9と約pH2.1との間、約pH2.7と約pH2.1との間、又は約pH2.6と約pH2.3との間に低下させる、実施形態90~94のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態96. pHを、約pH3.0、約pH2.9、約pH2.8、約pH2.7、約pH2.6、約pH2.5、約pH2.4、約pH2.3、約pH2.2、又は約pH2.1に低下させる、実施形態95に記載の方法。
【0127】
実施形態97. 低pH処理は、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、又は少なくとも約4時間適用される、実施形態90~96のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態98. pHを約pH2.5又はそれ以下に低下させる、実施形態90~97のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態99. pHを、約pH3.0と約pH2.1との間に少なくとも0.5時間、少なくとも1時間又は少なくとも2時間低下させる、実施形態90~97のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態100. pHを約pH2.7と約pH2.1との間に低下させる、実施形態99に記載の方法。
【0131】
実施形態101. pHを、約pH2.7と約pH2.1との間に少なくとも1時間、場合により少なくとも2時間低下させる、実施形態90~97のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
実施形態102. pHを、約pH2.6と約pH2.3との間に少なくとも1時間、場合により少なくとも2時間低下させる、実施形態101に記載の方法。
【0133】
実施形態103. 多価ポリペプチドは、3つのISVD、4つのISVD、又は5つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態90~102のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態104. ポリペプチドは、少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態90~103のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態105. ポリペプチドは5つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態90~104のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態106. pHを約pH2.6又はそれ以下に低下させる、実施形態105に記載の方法。
【0137】
実施形態107. 低pH処理は1~2時間適用される、実施形態103~106のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態108. ポリペプチドは配列番号1からなる、実施形態107に記載の方法。
【0139】
実施形態109. 多価ポリペプチドは4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態90~104のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
実施形態110. pHを約pH2.9又はそれ以下、例えば約pH2.5に低下させる、実施形態109に記載の方法。
【0141】
実施形態111. 低pH処理は1~2時間適用される、実施形態109又は110に記載の方法。
【0142】
実施形態112. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態111に記載の方法。
【0143】
実施形態113. ポリペプチドは配列番号70又は配列番号71からなる、実施形態111に記載の方法。
【0144】
実施形態114. 多価ポリペプチドは、3つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態90~103のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態115. pHを、約pH3.0又はそれ以下、例えば約pH2.5に低下させる、実施形態114に記載の方法。
【0146】
実施形態116. 低pH処理は2~4時間適用される、実施形態114又は115に記載の方法。
【0147】
実施形態117. ポリペプチドは配列番号69からなる、実施形態116に記載の方法。
【0148】
実施形態118. 低pH処理は、pHを少なくとも1pH単位増加させるか、少なくとも2pH単位増加させるか、又は約pH5.5もしくはそれ以上に増加させることにより終了される、実施形態90~117のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態119. 低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前又は後に適用される、実施形態90~118のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態120. 低pH処理は、クロマトグラフィー技術の固定相に組成物をアプライする前に適用される、実施形態119に記載の方法。
【0151】
実施形態121. 低pH処理は、クロマトグラフィー技術の固定相から組成物を溶出した後に適用される、実施形態119に記載の方法。
【0152】
実施形態122. 低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の間に適用され、ここで精製しようとするポリペプチドを含む組成物は、クロマトグラフィー技術の固定相と接触している、実施形態90~118のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施形態123. クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーである、実施形態119~122のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
実施形態124. クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーであり、そしてここで溶出緩衝液は、pH2.5に等しいか又はそれ以下のpHを有する、実施形態123に記載の方法。
【0155】
実施形態125. クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーであり、そしてここで溶出緩衝液は、上記ポリペプチドを含有する得られた溶出液がpH2.9に等しいか又はそれ以下のpHを有するようなpHを有する、実施形態123に記載の方法。
【0156】
実施形態126. 上記ポリペプチドを含有する溶出液のpHは、3.0に等しいか又はそれ以下のpHに、場合により少なくとも1時間、例えばpH2.7に等しいか又はそれ以下のpHに、場合により少なくとも0.5時間又は約1時間調整される、実施形態123~125のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施形態127. 上記ポリペプチドを含有する溶出液のpHは、pH2.5に等しいか又はそれ以下のpHに、場合により少なくとも約0.5時間又は1時間調整される、実施形態123~125のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
実施形態128. クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーであり、ここで溶出緩衝液は約pH2.2のpHを有し、そしてここで上記ポリペプチドを含有する溶出液のpHは、約pH2.5のpHに少なくとも約1.5時間調整される、実施形態122に記載の方法。
【0159】
実施形態129. 低pH処理後の溶出液のpHを、少なくとも1pH単位増加させるか、少なくとも2pH単位増加させるか、又は約pH5.5もしくはそれ以上のpHに増加させる、実施形態119~128のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
実施形態130. 低pH処理は室温で適用される、実施形態90~129のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
実施形態131. 低pH処理の後に:
a) 適切な量の1M酢酸ナトリウム pH5.5を組成物/溶出液に加えて、約50mM酢酸ナトリウムの最終濃度を得る工程;
b) 組成物/溶出液のpHをpH5.5に調整する工程;及び
c) 水を使用して組成物/溶出液の電導度を約6mS/cm又はそれ以下に調整する工程
の工程が続く、実施形態90~130のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
実施形態132. b)におけるpHはNaOHを用いて調整される、実施形態131に記載の方法。
【0163】
実施形態133. ポリペプチドは5つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態131又は132に記載の方法。
【0164】
実施形態134. ポリペプチドは4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態131又は132に記載の方法。
【0165】
実施形態135. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態134に記載の方法。
【0166】
実施形態136. GuHClは、少なくとも約1M、又は少なくとも約2Mの最終濃度で適用される、実施形態90~135のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
実施形態137. GuHClは少なくとも0.5時間、又は少なくとも1時間適用される、実施形態90又は136に記載の方法。
【0168】
実施形態138. GuHClは、少なくとも約1Mの最終濃度で少なくとも0.5時間適用される、実施形態136又は137に記載の方法。
【0169】
実施形態139. GuHClは、少なくとも約1Mの最終濃度で0.5時間~1時間適用される、実施形態138に記載の方法。
【0170】
実施形態140. GuHClは、約2Mの最終濃度で少なくとも0.5時間適用される、実施形態136又は137に記載の方法。
【0171】
実施形態141. GuHClは、少なくとも約2Mの最終濃度で0.5時間~1時間適用される、実施形態140に記載の方法。
【0172】
実施形態142. ポリペプチドは、少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態90又は136~141のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
実施形態143. ポリペプチドは配列番号1からなる、実施形態142に記載の方法。
【0174】
実施形態144. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態142に記載の方法。
【0175】
実施形態145. カオトロピック剤処理は室温で適用される、実施形態90又は136~144のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
実施形態146. カオトロピック剤処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前又は後に適用される、実施形態90又は136~145のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
実施形態147. 上記ポリペプチドは、クロマトグラフィー技術の固定相から溶出され、そしてカオトロピック剤処理は、得られた溶出液に適用される、実施形態146に記載の方法。
【0178】
実施形態148. 熱ストレスは、少なくとも約1時間、又は約1~4時間加えられる、実施形態90~147のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態149. 熱ストレスは、約40℃~約60℃、約45℃~約60℃、又は約50℃~約60℃で加えられる、実施形態148に記載の方法。
【0180】
実施形態150. 熱ストレスは、約40℃~約55℃、約45℃~55℃、又は約48℃~約52℃で加えられる、実施形態148に記載の方法。
【0181】
実施形態151. 熱ストレスは約50℃で加えられる、実施形態148に記載の方法。
【0182】
実施形態152. 熱ストレスは約50℃で1時間加えられる、実施形態151に記載の方法。
【0183】
実施形態153. ポリペプチドは少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態148~152のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
実施形態154. ポリペプチドは配列番号1からなる、実施形態152に記載の方法。
【0185】
実施形態155. ポリペプチドは配列番号2からなる、実施形態152に記載の方法。
【0186】
実施形態156. 熱ストレスは、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前又は後に適用される、実施形態90又は148~155のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
実施形態157. 熱ストレス処理は、クロマトグラフィー技術の固定相に組成物をアプライする前に、又はクロマトグラフィー技術の固定相から組成物を溶出した後に適用される、実施形態156に記載の方法。
【0188】
実施形態158. 実施形態1~154のいずれか1つに記載の方法に記載のポリペプチドを精製及び/又は単離することを含む、少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを製造する方法。
【0189】
実施形態159. 以下の工程:
a) 場合により、宿主又は宿主細胞を、該宿主又は宿主細胞が増殖するような条件下で培養する工程;
b) 宿主又は宿主細胞を、該宿主又は宿主細胞が上記ポリペプチドを発現し、かつ/又は産生するような条件下で維持する工程;並びに
c) 実施形態1~154のいずれか1つに記載の単離又は精製方法の1つ又はそれ上を含む、分泌されたポリペプチドを培地から単離及び/又は精製する工程
を少なくとも含み、場合により、ここで宿主はCHO細胞ではない、実施形態158に記載の方法。
【0190】
実施形態160. 宿主は下等真核生物宿主である、実施形態158又は159に記載の方法。
【0191】
実施形態161. 下等真核生物宿主は、ピキア、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスのような酵母である、実施形態160に記載の方法。
【0192】
実施形態162. 酵母は、ピキア・パストリスのようなピキアである、実施形態161に記載の方法。
【0193】
実施形態163. 少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から単離又は精製するための方法であって、該方法は:
(1) SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー技術によりコンホメーション変異体を同定すること;
(2) コンホメーション変異体の特異的除去を可能にするようにクロマトグラフィー条件を調整すること;並びに
(3) 1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術により、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からコンホメーション変異体を除去すること
を含み、場合により、ここで単離又は精製しようとするポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる、上記方法。
【0194】
実施形態164. 少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドを、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から単離又は精製することを可能にするために1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー技術を最適化するための方法であって:
(1) SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー技術によりコンホメーション変異体を同定すること;
(2) コンホメーション変異体の特異的除去を可能にするようにクロマトグラフィー条件を最適化すること
を含み、
場合により、ここで単離又は精製しようとするポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる、上記方法。
【0195】
実施形態165. コンホメーション変異体は、下等真核生物宿主のような、CHO細胞ではない宿主におけるポリペプチドの発現から生じる、実施形態163又は164に記載の方法。
【0196】
実施形態166:単離又は精製しようとするポリペプチドは、下等真核生物宿主である宿主における発現により得ることができる、実施形態163又は164に記載の方法。
【0197】
実施形態167:下等真核生物宿主は、ピキア、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスのような酵母である、実施形態165又は実施形態166に記載の方法。
【0198】
実施形態168:酵母はピキア・パストリスのようなピキアである、実施形態167に記載の方法。
【0199】
実施形態169. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較してより緻密な形態を特徴とする、実施形態163~168のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
実施形態170. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して減少した流体力学的体積を有する、実施形態163~169のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
実施形態171. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、SE-HPLCにおける増加した保持時間を特徴とする、実施形態163~170のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
実施形態172. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、IEX-HPLCにおける変化した保持時間を特徴とする、実施形態163~171のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
実施形態173. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、IEX-HPLCにおける減少した保持時間を特徴とする、実施形態172に記載の方法。
【0204】
実施形態174. コンホメーション変異体は、上記ポリペプチドと比較して、IEX-HPLCにおける増加した保持時間を特徴とする、実施形態172に記載の方法。
【0205】
実施形態175. ポリペプチドは、少なくとも3つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態163~174のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
実施形態176. ポリペプチドは、少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態163~175のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
実施形態177. ポリペプチドは、3つのISVD、4つのISVD、又は5つのISVDを含むか又はそれらからなる、実施形態163~176のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
実施形態178. クロマトグラフィー技術は、流体力学的体積、表面電荷又は表面疎水性に基づくクロマトグラフィー技術である、実施形態163~177のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
実施形態179. クロマトグラフィー技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)のいずれかから選択される、実施形態178に記載の方法。
【0210】
実施形態180. イオン交換クロマトグラフィー(IEX)はカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)である、実施形態179に記載の方法。
【0211】
実施形態181. HICはHICカラム樹脂に基づく、実施形態179に記載の方法。
【0212】
実施形態182. HIC樹脂は、Capto Phenyl ImpRes、Capto Butyl ImpRes、Phenyl HP、及びCapto Butylのいずれかから選択される、実施形態181に記載の方法。
【0213】
実施形態183. HICはHICメンブレンに基づく、実施形態179に記載の方法。
【0214】
4 図面の説明
【図面の簡単な説明】
【0215】
図1図1:プロテインA又は非プロテインA捕獲樹脂を使用した捕獲後の溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図2図2:表2に記載されるような溶出緩衝液A、B、C及びDを用いたプロテインA捕獲後の溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図3-1】図3:(1)における溶出緩衝液A及び(2)における緩衝液Bを用いた、pHを中和するか又は中和しないプロテインA捕獲後の溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図3-2】図3-1の続き。
図4図4:ポリッシング展開のために使用されたカチオン交換樹脂上の化合物Aのクロマトグラフィープロフィール。
図5図5:実施例1及び図4に記載される分取用CEXにおいて得られたロード、サイド及びトップフラクションのSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図6図6:実施例1及び図4に記載される分取用CEXにおいて得られたコンホメーション変異体濃縮サイドフラクション及びコンホメーション変異体枯渇トップフラクションのIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図7-1】図7:コンホメーション変異体を濃縮した材料(1)及び枯渇した材料(2)の低pH処理(pH2.5)後のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図7-2】図7-1の続き。
図8図8:コンホメーション変異体濃縮材料の低pH処理(pH2.5)後のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図9図9:2M又は3M GuHClカオトロピック剤で0.5時間室温で処理されたコンホメーション変異体濃縮材料のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図10図10:2M又は3M GuHClカオトロピック剤処理で0.5時間室温で処理されたコンホメーション変異体濃縮材料のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図11図11:50℃で1時間処理されたコンホメーション変異体濃縮材料のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図12図12:50℃で1時間処理されたコンホメーション変異体濃縮材料のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図13図13:実施例4に記載されるように様々な溶出条件を使用した捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図14図14:実施例4に記載されるように様々な溶出条件を使用した捕獲溶出液のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図15-1】図15:(1)及び(2)における低pHインキュベーション及び低pH直後のpH調整後(T0);並びに(3)及び(4)における低pHインキュベーション及び低pHでの1時間インキュベーション後のpH調整後(T1h)の捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図15-2】図15-1の続き。
図15-3】図15-2の続き。
図15-4】図15-3の続き。
図16A図16A:pH調整ストック溶液の2つの異なるセットの適用後のサンプルのSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図16B図16B:実施例4において記載される(第一の実験)ように、IEX-HPLCにより分析された化合物Aの生成物品質に対するpHの影響。
図16C図16C:実施例4において記載される(第二の実験)ように、IEX-HPLCにより分析された化合物Aの生成物品質に対するpHの影響。
図17-1】図17:10Lスケール(1)及び100Lスケール(2)からの捕獲溶出液及び捕獲ろ液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図17-2】図17-1の続き。
図18図18:10Lスケールからの捕獲溶出液及び捕獲ろ液のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図19図19:100Lスケールからの捕獲溶出液及び捕獲ろ液のIEX-HPLCクロマトグラム。
図20図20:化合物Aのコンホメーション変異体の除去のために使用されたクロマトグラフィーMMCプロフィール。灰色の枠内:分析のために選択されたフラクションF8及びF11。
図21-1】図21:実施例6において記載されるようにMMCにおいて得られた(1)におけるロード及びフラクションF8並びに(2)におけるロード及びフラクションF11のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図21-2】図21-1の続き。
図22-1】図22:実施例6において記載されるようにMMCにおいて得られた(1)におけるロード及びフラクションF8並びに(2)におけるロード及びフラクションF11のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図22-2】図22-1の続き。
図23図23:化合物Aのコンホメーション変異体の除去のために使用されたTSK Phenylゲル5 PW(30)樹脂でのクロマトグラフィーHICプロフィール。灰色の枠内:分析のために選択されたフラクションF26及びF41。
図24-1】図24:TSK Phenylゲル5 PW(30)樹脂を用いたHICにおいて得られた(1)におけるロード及びフラクションF26並びに(2)におけるロード及びフラクションF41のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図24-2】図24-1の続き。
図25図25:硫酸アンモニウムグラジエントとともに使用されたCapto Butyl Impres樹脂を用いたHICにおいて得られたトップフラクション及びロードのSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図26図26:化合物Aのコンホメーション変異体の除去のために使用されたCapto Butyl ImpRes樹脂でのクロマトグラフィーHICプロフィール。灰色枠内:分析のために選択されたフラクションF15、F20、及びF29。
図27図27:Capto Butyl ImpRes樹脂を用いたHICにおいて得られたロード並びにフラクションF15、F20及びF29のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図28図28:Sartobind Phenylメンブレン(フィルタープレート)でのメンブレンベースのHIC後の捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図29図29:化合物Aのコンホメーション変異体の除去のために使用されたSartobind PhenylメンブレンでのクロマトグラフィーHICプロフィール。
図30図30:Sartobind PhenylメンブレンでのHICにおいて得られたロード、フラクションプール2、及びストリップフラクションのSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図31図31:化合物BのIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図32図32:ポリッシング工程段階の間の化合物BのクロマトグラフィーCEXプロフィール。灰色枠内:分析のために選択されたフラクション。
図33図33:実施例7において記載されるようにCEXにおいて得られたフラクション2C4及びプールフラクション2C7~2C11のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図34図34:実施例7において記載されるCEXにおいて得られたフラクション2C4及びプールフラクション2C7~2C11のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図35図35:pH2.3で1時間の低pH処理、その後の1M酢酸ナトリウムを用いたpH5.5への調整後の化合物Bの捕獲溶出液のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5にすぐに調整された捕獲溶出液を対照として使用した。
図36図36:pH2.3で1時間の低pH処理、その後の1M酢酸ナトリウムを用いたpH5.5への調整後の化合物Bの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5にすぐに調整された捕獲溶出液を対照として使用した。
図37図37:4時間の低pH2.5処理の後の化合物Bの捕獲溶出液のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図38図38:4時間の低pH2.5処理後の化合物Bの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図39図39:室温での0.5時間GuHClカオトロピック剤処理後の化合物Bの捕獲溶出液のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図40図40:50℃での1時間の熱処理後の化合物Bの捕獲溶出液のIEX-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図41図41:50℃で1時間の熱処理後の化合物Bの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図42A図42A:pH2.3で処理し、その後すぐに又は1時間後にpH5.5に調整した後の化合物Bの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図42B図42B:pH2.5で処理し、そしてその後すぐに又は1時間後にpH5.5に調整した後の化合物Bの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図43A図43: IEX-HPLCによる時間の関数で分析された生成物品質に対する低pH処理の影響。(A)pH2.3及びpH2.5で2時間及び4時間の低pH処理を用いた初期実験;(B)pH2.7、pH2.9、pH3.1、pH3.3、pH3.5及びpH2.7で;2時間及び4時間の低pH処理を用いた追加実験。
図43B図43: IEX-HPLCによる時間の関数で分析された生成物品質に対する低pH処理の影響。(A)pH2.3及びpH2.5で2時間及び4時間の低pH処理を用いた初期実験;(B)pH2.7、pH2.9、pH3.1、pH3.3、pH3.5及びpH2.7で;2時間及び4時間の低pH処理を用いた追加実験。
図44図44:pH2.4及びpH2.6で2時間処理し、そしてその後pH5.5に調整した後の化合物Bの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図45図45:pH2.6で2時間処理し、その後pH5.5に調整した後の化合物Bの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図46図46 化合物Bのコンホメーション変異体の除去のために使用されたクロマトグラフィーCEXプロフィール。灰色枠内:分析のために選択されたフラクション。
図47図47:化合物Bのコンホメーション変異体の除去のために使用されたCapto Butyl ImpRes樹脂でのクロマトグラフィーHICプロフィール。灰色枠内:分析のために選択されたフラクション。
図48図48図47に示されるように、Capto Butyl ImpResでのHICランの選択されたフラクションのSDS-PAGE分析。
図49図49:IEX-HPLC分析により評価された生成物品質に対する負荷率の影響を表すDOEモデルの予測プロファイラ。
図50図50:10Lスケールアップからのサイクル1の代表的な捕獲溶出液及びサイクル1の代表的な捕獲ろ液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図51図51:100Lスケールアップからのサイクル1の代表的な捕獲溶出液及びサイクル1の代表的な捕獲ろ液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図52図52:仮定モデルの略図。
図53A図53:(A)0時間、2時間、及び4時間の低pH3.0処理後の、ピキア・パストリスにおいて産生された化合物Cの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。 (B)0時間、2時間、及び4時間の低pH2.5処理後の化合物Cの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図53B図53:(A)0時間、2時間、及び4時間の低pH3.0処理後の、ピキア・パストリスにおいて産生された化合物Cの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。 (B)0時間、2時間、及び4時間の低pH2.5処理後の化合物Cの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図54図54:実施例14に記載されるようにSE-HPLCにより分析された化合物Cの生成物品質に対するpHの影響。
図55図55:2時間のインキュベーション後のpH5.5での処理と比較した、pH2.6及びpH3.0での低pH処理後の、CHO細胞において産生された化合物Cの捕獲溶出液のSE-HPLCクロマトグラム(ズーム、下部パネルを含む)。
図56図56:実施例16において記載されるようにSE-HPLCにより分析された化合物Dの生成物品質に対するpHの影響。
図57図57:実施例17において記載されるようにSE-HPLCにより分析された化合物Eの生成物品質に対するpHの影響。
【発明を実施するための形態】
【0216】
5 詳細な説明
本開示は、少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体の驚くべき所見を記載する。上記ポリペプチドのコンホメーション変異体は、宿主における該ポリペプチドの産生の間に観察された。特に、コンホメーション変異体は、本明細書に記載されるような下等真核生物宿主のような宿主における少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドの産生の際に観察された。少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ポリペプチド生成物のコンホメーション変異体は、宿主、特に酵母のような下等真核生物宿主である宿主における該ポリペプチドの発現から生じることがわかった。該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体の分子量は同じであるが、コンホメーション変異体は、電荷/表面特徴の変化を示し、異なる物理化学的挙動、例えば分析用サイズ排除クロマトグラフィー及び/又は分析用イオン交換クロマトグラフィーでの異なる保持時間をもたらす。従って、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体を、分析用サイズ排除クロマトグラフィーでの該ポリペプチドを含有するメインピークのショルダーポストピークもしくは分離したポストピーク(SE-HPLCポストピーク1)として、かつ/又は分析用イオン交換クロマトグラフィーにおける該ポリペプチドを含有するメインピークのポストピークショルダーもしくは分離したポストピーク(IEX-HPLCポストピーク1)として観察することができた。このような異なる物理化学的挙動は、スクランブルジスルフィド架橋に起因するものではなかった。
【0217】
これらの観察に基づいて、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドは、分子内相互作用をもたらす特定の構造的可動性を可能にし、その結果該ポリペプチドは、該ポリペプチドのISVDビルディングブロックの配置と比較して、より緻密な形態を生じるISVDビルディングブロックの立体構造配置を有するコンホメーション変異体として存在し得るという仮説を立てた(図52を参照のこと)。ISVDそれ自体は非常に安定な分子であるが、ポリペプチドの価数が少なくとも3又は少なくとも4つのISVDまで増加すると(すなわち、ISVDビルディングブロックの数が3、4又はそれ以降まで増加する)、該ポリペプチドはより分子内相互作用しやすくなり得るということが、驚くべきことに観察された。仮説に拘束されないが、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドは、上記ポリペプチド内の少なくとも2つのISVD間の分子内相互作用を可能にし、緻密な形態を有する該ポリペプチドのコンホメーション変異体を形成することができると結論付けられた。緻密な形態は、上記ポリペプチドと比較して減少した流体力学的体積を特徴とする。さらに、緻密な形態は、変化した表面電荷及び/又は変化した表面疎水性/疎水性露出を特徴とし得るということがわかった。従って、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を、分析用クロマトグラフィー技術に基づいて識別することができる。特に、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチド及びそのコンホメーション変異体は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)、及び/又はイオン交換高速液体クロマトグラフィー(IEX-HPLC)のような分析用クロマトグラフィー技術により、流体力学的体積及び/又は表面電荷のシフトに基づいて識別され得る。
【0218】
本出願において明らかにされた処理条件を使用して、コンホメーション変異体を(所望の)ポリペプチドに変換することができるということがさらに示された。さらに、上記ポリペプチドとそのコンホメーション変異体との間の観察された生化学的/生物物理学的差異に基づいて、コンホメーション変異体は、該ポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から、本明細書に記載されるように、流体力学的体積、表面電荷及び/又は表面疎水性に基づく公知の分取用クロマトグラフィー技術を使用して除去され得るということがわかった。
【0219】
5.1 定義
別の指示又は定義がなければ、使用されるすべての用語は、当業者には明らかな、当該分野におけるそれらの通常の意味を有する。例えば、Sambrookら1989年(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、第1~3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Ausubelら1987年(Current protocols in molecular biology、Green Publishing and Wiley Interscience、New York)、Lewin 1985年(Genes II、John Wiley & Sons、New York、N.Y.)、Oldら1981年(Principles of Gene Manipulation:An Introduction to Genetic Engineering、第2版、University of California Press、Berkeley、CA)、Roittら2001年(Immunology、6th Ed.、Mosby/Elsevier、Edinburgh)、Roittら2001年(Roitt’s Essential Immunology、第10版.、Blackwell Publishing、UK)、及びJanewayら2005年(Immunobiology、第6版.、Garland Science Publishing/Churchill Livingstone、New York)のような標準的な手引書、さらには本明細書において引用される一般的な背景が参照される。
【0220】
当業者には明らかなように、別の指示がなければ、詳細には具体的に記載されていないすべての方法、工程、技術及び操作は、それ自体公知のやり方で行うことができ、かつ行われた。この場合もやはり、例えば、標準的な手引書及び本明細書において言及される一般的な背景技術、並びにそこに引用されるさらなる参考文献;さらには、例えば以下の総説:Presta 2006年(Adv. Drug Deliv. Rev. 58:640)、Levin及びWeiss 2006年(Mol. Biosyst. 2:49)、Irvingら2001年(J. Immunol. Methods 248:31)、Schmitzら2000年(Placenta 21 Suppl. A:S106)、Gonzalesら2005年(Tumour Biol. 26:31)が参照され、これらは 親和性成熟のようなタンパク質操作、並びに免疫グロブリンのようなタンパク質の特異性及び他の所望の特性を改善するための他の技術についての技術を記載する。
【0221】
本明細書において提供されるパラメーター又はパラメーター範囲の文脈において使用される用語「約」は、以下の意味を有するものとする。別の指示がなければ、用語「約」が特定の値又は範囲に適用される場合、その値又は範囲は、それを測定するために使用される方法と同程度正確であると解釈される。許容誤差が出願において特定されていない場合、数値の最後の小数位は、その精度を示す。他の許容誤差が示されていない場合、最大許容誤差は、最後の小数位に四捨五入変換を適用することにより確認され、例えば約pH2.7のpH値については、許容誤差は2.65~2.74である。しかし、以下のパラメーターについては、特定の許容誤差が適用されるものとする:小数位の無い℃で特定される温度は、±1℃の許容誤差を有するものとし(例えば、約50℃の温度値は50℃±1℃を意味する);時間で示される時間は、小数位にかかわらず0.1時間の許容誤差を有する(例えば、約1.0時間の時間値は1.0時間±0.1時間を意味し;約0.5時間の時間値は0.5時間±0.1時間を意味する)。
【0222】
本出願において、用語「約」とともに示される任意のパラメーターはまた、用語「約」を伴わずに開示されることも企図される。換言すれば、用語「約」を使用してパラメーター値に言及する実施形態はまた、そのパラメーターそれ自体の数値に関する実施形態も記載する。例えば、「約pH2.7」のpHを特定する実施形態はまた、「pH2.7」のpHそれ自体を特定する実施形態も開示する;「約pH2.7と約pH2.1」との間のpH範囲を特定する実施形態はまた、「pH2.7とpH2.1との間」などのpH範囲を特定する実施形態も記載する。
【0223】
5.2 免疫グロブリン単一可変ドメイン
用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(ISVD)は、「単一可変ドメイン」と交換可能に使用され、抗原結合部位が単一免疫グロブリンドメイン上に存在し、かつ単一免疫グロブリンドメインにより形成される免疫グロブリン分子を定義する。これは、免疫グロブリン単一可変ドメインを「従来の」免疫グロブリン(例えば、モノクローナル分子)又はそれらのフラグメント(例えばFab、Fab’、F(ab’)、scFv、di-scFv)と区別し、ここで2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインは、相互作用して抗原結合部位を形成する。典型的には、従来の免疫グロブリンにおいて、重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)は総合作用して抗原結合部位を形成する。この場合、V及びVの両方の相補性決定領域(CDR)は抗原結合部位に寄与し、すなわち合計で6つのCDRが抗原結合部位形成に関与する。
【0224】
上記の定義を考慮して、これらの場合、抗原の個々のエピトープへの結合は通常は1つの(単一)免疫グロブリンドメインにより発生せず、一対の(会合した)免疫グロブリンドメイン、例えば軽鎖及び重鎖可変ドメインにより、すなわち、免疫グロブリンドメインのV-V対により発生して、それらがそれぞれの抗原のエピトープに一緒に結合するので、従来の4鎖抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD又はIgE分子;当該分野で公知)の抗原結合ドメイン、又はこのような4鎖抗体から誘導されたFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、例えばジスルフィド連結FvもしくはscFvフラグメント、又は二特異性抗体(diabody)(全て当該分野で公知)の抗原結合ドメインは、通常は免疫グロブリン単一可変ドメインとはみなされない。
【0225】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、さらなる免疫グロブリン可変ドメインと対合することなく抗原のエピトープに特異的に結合することができる。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一のV、単一のVHH又は単一のVドメインにより形成される。
【0226】
従って、単一可変ドメインは、それが単一抗原結合単位を形成することができるかぎり;軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V-配列)もしくはその適切なフラグメント;又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、V-配列又はVHH配列)もしくはその適切なフラグメントであり得る(すなわち、単一可変ドメインから本質的になる機能的抗原結合単位、その結果、単一抗原結合ドメインは、機能的抗原結合単位を形成するために別の可変ドメインと相互作用する必要がない)。
【0227】
免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)は、例えば、ラクダ化(camelized)V又はヒト化VHHを含む、V、VHHのような重鎖ISVDであり得る。一実施形態において、これはVHHであり、ラクダ化V又はヒト化VHHを含む。重鎖ISVDは、従来の4鎖抗体又は重鎖抗体から誘導され得る。
【0228】
例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に適したアミノ酸配列)、「dAb」又はdAb(又はdAbとしての使用に適したアミノ酸配列)又はNANOBODY(登録商標)ISVD(本明細書において定義されるとおり、限定されないがVHHが挙げられる);他の単一可変ドメイン、又はそのいずれか1つの任意の適切なフラグメントであり得る。
【0229】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、NANOBODY(登録商標)ISVD(例えば、ヒト化VHH又はラクダ化Vを含むVHH)又はその適切なフラグメントであり得る[注:NANOBODY(登録商標)は、Ablynx N.V.の登録商標である]。
【0230】
HH、VHH抗体フラグメント、及びVHH抗体としても知られる「VHHドメイン」は、もともとは「重鎖抗体」(すなわち、「軽鎖を欠いている抗体」;Hamers-Castermanら Nature 363:446-448、1993)の抗原結合免疫グロブリン可変ドメインとして記載されていた。用語「VHHドメイン」は、これらの可変ドメインを、従来の4鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本明細書では「Vドメイン」と呼ばれる)、及び従来の4鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(本明細書では「Vドメイン」と呼ばれる)と区別するために選択された。VHHのさらなる説明のために、Muyldermansによる総説記事が参照される(Reviews in Molecular Biotechnology 74:277-302、2001)。
【0231】
典型的には、免疫グロブリンの生成は、実験動物の免疫化、免疫グロブリン産生細胞を融合してハイブリドーマを生成すること、及び所望の特異性についてのスクリーニングを含む。あるいは、免疫グロブリンは、天然又は合成のライブラリー、例えばファージディスプレイによるライブラリーのスクリーニングにより生成され得る。
【0232】
VHHのような免疫グロブリン配列の生成は、様々な刊行物において広範囲に記載されており、その中にはWO94/04678、Hamers-Castermanら 1993年及びMuyldermansら2001年(Reviews in Molecular Biotechnology 74:277-302、2001)がある。これらの方法において、ラクダ類は、標的抗原に対する免疫応答を誘導するためにその標的抗原で免疫される。この免疫化から得られたVHHのレパートリーは、標的抗原に結合するVHHについてさらにスクリーニングされる。
【0233】
これらの例において、抗体の生成は、免疫化及び/又はスクリーニングのために精製された抗原を必要とする。抗原は、天然供給源から、又は組み換え産生の過程で精製され得る。
【0234】
免疫グロブリン配列のための免疫化及び/又はスクリーニングは、このような抗原のペプチドフラグメントを使用して行われ得る。
【0235】
マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト及びラクダ免疫グロブリン配列を含む様々な起源の免疫グロブリン配列を、本明細書において記載される方法で製造、精製及び/又は単離することができる。また、完全ヒト、ヒト化又はキメラ配列が、本明細書において記載される方法で製造、精製及び/又は単離され得る。例えば、ラクダ免疫グロブリン配列及びヒト化ラクダ免疫グロブリン配列、又はラクダ化ドメイン抗体、例えばWardらにより記載されるラクダ化dAb(例えば、WO 94/04678及びRiechmann、Febs Lett.、339:285-290、1994及びProt.Eng.、9:531-537、1996を参照のこと)が、本明細書において記載される方法で製造、精製及び/又は単離され得る。さらに、ISVDは、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるように融合されて、多価及び/又は多選択性構築物を形成する(1つ又はそれ以上のVHHドメインを含有する多価多選択性ポリペプチド及びそれらの製造については、Conrathら、J.Biol.Chem.、Vol.276、10.7346-7350、2001、さらには例えばWO96/34103及びWO99/23221も参照される)。ISVD配列は、タグ又は他の機能的部分、例えば毒素、標識、放射性化学物質などを含み得る。
【0236】
「ヒト化VHH」は、天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化」されている、すなわち、ヒト由来の従来の4鎖抗体由来のVドメインにおける対応する位置に存在するアミノ酸残基の1つ又はそれ以上で、上記天然に存在するVHH配列(及び特にフレームワーク配列)のアミノ酸配列における1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を置き換えることによる(例えば、上に示される)、アミノ酸配列を含む。これは、当業者には明らかであるそれ自体公知の方法で、例えば本明細書におけるさらなる記載及び従来技術(例えば、WO2008/020079)に基づいて行われ得る。この場合もやはり、このようなヒト化VHHを、それ自体公知の任意の適切な方法で得ることができ、従って出発物質として天然に存在するVHHドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドに厳密に限定されることはないということに留意すべきである。
【0237】
「ラクダ化V」は、天然に存在するVドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ラクダ化」されている、すなわち、従来の4鎖抗体由来の天然に存在するVドメインのアミノ酸配列における1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を、(ラクダ)重鎖抗体のVHHドメインにおける対応する位置に存在するアミノ酸残基の1つ又はそれ以上で置き換えることによる、アミノ酸配列を含む。これは、当業者には明らかであるそれ自体公知の方法で、例えば本明細書におけるさらなる記載及び従来技術(例えば、Davies及びRiechmann(1994年及び1996年)、前出)に基づいて行われ得る。このような「ラクダ化(camelizing)」置換は、V-V境界部を形成しかつ/もしくはV-V境界部に存在するアミノ酸残基において、かつ/又は本明細書において定義されるようにいわゆるラクダ科(Camelidae)特徴(hallmark)残基において挿入される(例えば、WO94/04678並びにDavies及びRiechmann(1994年及び1996年)、前出を参照のこと)。一実施形態において、ラクダ化Vを生成又は設計するための出発物質又は出発点として使用されるV配列は、哺乳動物由来のV配列、例えばヒトのV配列、例えばV3配列である。しかし、このようなラクダ化Vは、それ自体公知の任意の適切な方法で得ることができ、従って出発物質として天然に存在するVドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドに厳密に限定されることはないということに留意すべきである。
【0238】
1つ又はそれ以上のISVD配列を互いにかつ/又は他のアミノ酸配列に(例えばジスルフィド架橋を介して)連結して、本発明の方法においても有用であるペプチド構築物(例えば、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv構築物、「二特異性抗体」及び他の多選択性構築物)を生じ得るということに留意すべきである。例えば、Holliger及びHudsonによる総説、Nat Biotechnol.2005 Sep;23(9):1126-36)が参照される)。一般に、ポリペプチドが対象への投与を意図される場合(例えば、予防目的、治療目的及び/又は診断目的)、上記対象において天然には存在しない免疫グロブリン配列を含む。
【0239】
免疫グロブリン単一可変ドメイン配列の構造は、4つのフレームワーク領域(「FR」)から構成されるとみなされ得、これらは、当該分野及び本明細書においてそれぞれ「フレームワーク領域1」(「FR1」);「フレームワーク領域2」(「FR2」);「フレームワーク領域3」(「FR3」);及び「フレームワーク領域4」(「FR4」)と呼ばれ;これらのフレームワーク領域は、3つの相補性決定領域(「CDR」)により割り込まれ、これらは当該分野及び本明細書いおいてそれぞれ「相補性決定領域1」(「CDR1」);「相補性決定領域2」(「CDR2」);及び「相補性決定領域3」(「CDR3」)と呼ばれる。
【0240】
WO08/020079(参照により本明細書に加入される)の58頁及び59頁の段落q)にさらに記載されるように、免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸残基は、Riechmann及びMuyldermansの記事、2000年(J.Immunol.Methods 240(1-2):185-195;例えばこの刊行物の図2を参照のこと)においてラクダ由来のVHHドメインに適用されたように、Kabatらにより示されたVドメインについての一般的ナンバリングに従ってナンバリングされ得る(「Sequence of proteins of immunological interest」、US Public Health Services、NIH Bethesda、MD、Publication No.91)。-Vドメイン及びVHHドメインについて当該分野で周知のように-CDRの各々におけるアミノ酸残基の総数は変化し得、そしてKabatナンバリングにより示されたアミノ酸残基の総数に対応しないかもしれない(すなわち、Kabatナンバリングに従う1つ又はそれ以上の位置は、実際の配列において専有されていないかもしれず、又は実際の配列は、Kabatナンバリングにより可能な数よりも多いアミノ酸残基含有するかもしれない)ということに留意すべきである。これは、一般的には、Kabatに従うナンバリングが、実際の配列におけるアミノ酸残基の実際のナンバリングに対応してもしなくてもよいということを意味する。Vドメイン及びVHHドメインにおけるアミノ酸残基の総数は、通常は110~120の範囲、しばしば112と115との間だろう。しかし、より小さい配列及びより長い配列も本明細書において記載される目的に適しているかもしれないということに留意すべきである。
【0241】
CDR配列は、Kontermann及びDuebel(編 2010年、Antibody Engineering、vol 2、Springer Verlag Heidelberg Berlin、Martin、第3章、33-51頁)に記載されるようにAbMナンバリングに従って決定され得る。この方法に従って、FR1は位置1~25のアミノ酸残基を含み、CDR1は位置26~35のアミノ酸残基を含み、FR2は位置36~49のアミノ酸を含み、CDR2は位置50~58のアミノ酸残基を含み、FR3は位置59~94のアミノ酸残基を含み、CDR3は位置95~102のアミノ酸残基を含み、そしてFR4は位置103~113のアミノ酸残基を含む。
【0242】
CDR領域の決定はまた、様々な方法に従って行われ得る。Kabatに従うCDR決定において、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR1は位置1~30のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1は位置31~35のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR2は位置36~49のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR2は位置50~65のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR3は位置66~94のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR3は位置95~102のアミノ酸残基を含み、そして免疫グロブリン単一可変ドメインのFR4は位置103~113のアミノ酸残基を含む。
【0243】
このような免疫グロブリン配列において、フレームワーク配列は任意の適切なフレームワーク配列であり得、そして適切なフレームワーク配列の例は、例えば本明細書において言及される標準的な手引書及びさらなる開示及び先行技術に基づいて、当業者には明らかだろう。
【0244】
フレームワーク配列は、免疫グロブリンフレームワーク配列又は免疫グロブリンフレームワーク配列から(例えばヒト化又はラクダ化により)誘導されたフレームワーク配列(の適切な組み合わせ)である。例えば、フレームワーク配列は、軽鎖可変ドメイン(例えば、V-配列)由来及び/又は重鎖可変ドメイン(例えば、V-配列又はVHH配列)由来のフレームワーク配列であり得る。1つの特定の態様において、フレームワーク配列は、VHH-配列由来のフレームワーク配列(ここで上記フレームワーク配列は場合により部分的又は完全にヒト化されている)であるか、又はラクダ化されている(本明細書において定義されるとおり)従来のV配列のいずれかである。
【0245】
特に、本明細書において記載される方法において使用されるISVD配列に存在するフレームワーク配列は、(本明細書において定義される)特徴残基の1つ又はそれ以上を含有し得、その結果、ISVD配列は、ヒト化VHH又はラクダ化Vを含むVHHのようなNANOBODY(登録商標)ISVDである。このようなフレームワーク配列(の適切な組み合わせ)の非限定的な例は、本明細書におけるさらなる開示から明らかとなるだろう。
【0246】
この場合もやはり、免疫グロブリン配列について本明細書に一般的に記載されるように、1つ又はそれ以上のフレームワーク配列が適切に隣接し、かつ/又はそれらを介して連結している、1つ又はそれ以上のCDR配列を含有するフラグメントのような前述のいずれかの適切なフラグメント(又はフラグメントの組み合わせ)(例えば、これらのCDRと同じ順序で、そしてフレームワーク配列は、そのフラグメントが由来するフルサイズの免疫グロブリン配列中に存在し得る)を使用することも可能である。
【0247】
しかし、本発明の方法において使用される多価ISVDポリペプチド中に含まれるISVDは、ISVD配列の(又はそれを発現するために使用されるヌクレオチド配列の)起源に関しても、ISVD配列又はヌクレオチド配列が生成される(生成された)か又は得られる(得られた)方法に関しても限定されないということに留意すべきである。従って、ISVD配列は、(適切な種由来の)天然に存在する配列であっても、合成又は半合成の配列であってもよい。特定の、しかし非限定的な態様において、ISVD配列は、(任意の適切な種由来の)天然に存在する配列又は合成もしくは半合成の配列であり、これらとしては、限定されないが、「ヒト化」(本明細書において定義されるとおり)免疫グロブリン配列(例えば、部分的又は完全にヒト化されたマウス又はウサギ免疫グロブリン配列、及び特に部分的又は完全にヒト化されたVHH配列)、「ラクダ化」(本明細書において定義されるとおり)免疫グロブリン配列(及び特にラクダ化V配列)、さらには親和性成熟(例えば、合成、無作為又は天然に存在する免疫グロブリン配列から開始する)、CDRグラフティング、化粧張り(veneering)、異なる免疫グロブリン配列に由来するフラグメントの組み合わせ、オーバーラッププライマーを使用したPCRアセンブリ、及び当業者に周知の免疫グロブリン配列を操作するための類似した技術のような技術により得られたISVD;又は前述のいずれかの任意の適切な組み合わせが挙げられる。
【0248】
同様に、ヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列でも合成又は半合成の配列でもよく、そして例えば、適切な天然に存在するテンプレート(例えば、細胞から単離されたDNA又はRNA)からPCRにより単離される配列、ライブラリー(及び特に発現ライブラリー)から単離されたヌクレオチド配列、天然に存在するヌクレオチド配列に(それ自体公知の任意の適切な技術、例えばミスマッチPCRを使用して)変異を導入することにより製造されたヌクレオチド配列、オーバーラッププライマーを使用してPCRにより製造されたヌクレオチド配列、又はそれ自体公知のDNA合成のための技術を使用して製造されたヌクレオチド配列であり得る。
【0249】
上記のように、ISVDは、NANOBODY(登録商標)ISVD又はその適切なフラグメントであり得る。NANOBODY(登録商標)ISVDの一般的な説明については、以下のさらなる記載に加えて、本明細書において引用される従来技術が参照される。しかし、この点において、この記載及び先行技術は、いわゆる「V3クラス」のNANOBODY(登録商標)ISVD(すなわち、DP-47、DP-51又はDP-29のようなV3クラスのヒト生殖系列配列に高度の配列相同性を有するISVDS)を主に記載することに留意すべきである。しかし、その最も広い意味で、本明細書において記載される方法において使用されるISVDポリペプチドは、一般的にいずれの型のNANOBODY(登録商標)ISVDも使用することができ、そして例えば、WO2007/118670に記載されるように、いわゆる「V4クラス」に属するNANOBODY(登録商標)ISVD(すなわち、DP-78のようなV4クラスのヒト生殖系列配列に対して高度の配列相同性を有するISVD)も使用できるということに留意すべきである。
【0250】
一般に、NANOBODY(登録商標)ISVD(特に、(部分的に)ヒト化されたVHH配列及びラクダ化されたV配列を含むVHH配列)は、フレームワーク配列の1つ又はそれ以上(この場合もやはり本明細書においてさらに記載される)における1つ又はそれ以上の「特徴残基」(本明細書において記載される)の存在を特徴とし得る。従って、一般的に、NANOBODY(登録商標)ISVDは、(一般的な)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列として定義され得、
ここでFR1~FR4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、そしてここでCDR1~CDR3はそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、そしてここで特徴残基の1つ又はそれ以上は、本明細書においてさらに定義されるとおりである。
【0251】
特に、Nanobodyは、(一般的)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列であり得、ここでFR1~FR4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、そしてここでCDR1~CDR3はそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、そしてここでフレームワーク配列は本明細書においてさらに定義されるとおりである。
【0252】
より特に、NANOBODY(登録商標)ISVDは、(一般的)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列であり得、ここでFR1~FR4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、そしてここでCDR1~CDR3はそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、そしてここで:
Kabatナンバリングに従う位置11、37、44、45、47、83、84、103、104及び108のアミノ酸残基の1つ又はそれ以上が、以下の表Aにおいて言及される特徴残基から選択される。
【0253】
【表1】
【0254】
5.3 多価ISVDポリペプチド及びそのコンホメーション変異体
少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる多価ISVDポリペプチドの精製又は単離のための方法が提供される。本明細書において記載される方法により単離/精製しようとする多価ISVDポリペプチドは、宿主における発現により得ることができる。特に、多価ISVDポリペプチドは、CHO細胞ではない宿主における発現により得ることができる。多価ISVDポリペプチドは、本明細書において記載されるような下等真核生物宿主、例えばピキア・パストリスにおける発現により得ることができる。少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる多価ISVDポリペプチドの製造、精製、及び単離のための方法が提供される。該方法により単離/精製/製造しようとする多価ISVDポリペプチドは、本明細書において記載されるような宿主、例えば下等真核生物宿主において産生され得る。一態様において、該方法により単離/精製/製造しようとする多価ISVDポリペプチドは、ピキア、例えばピキア・パストリスのような本明細書において記載される酵母宿主において産生され得る。
【0255】
一般に、用語「多価」は、ポリペプチド中の複数のISVD(結合単位)の存在を示す。一実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも「三価」、すなわち、少なくとも3つのISVDを含むか又はそれらからなる。別の実施形態において、ポリペプチドは少なくとも「四価」であり、すなわち、少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらかななる。従って、本明細書において記載される方法において製造、精製及び/又は単離されるポリペプチドは、「三価」、「四価」、「五価」、「六価」、「七価」、「八価」、「九価」などであり得、すなわち、該ポリペプチドは、それぞれ3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つなどのISVDを含むか又はそれらからなる。一実施形態において、多価ISVDポリペプチドは三価である。別の実施形態において、多価ISVDポリペプチドは四価である。さらに別の実施形態において、多価ISVDポリペプチドは五価である。
【0256】
少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる多価ISVD構築物は多選択性であり得る。用語「多選択性」は、複数の異なる標的分子に結合することを指す。従って、多価ISVD構築物は、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」などであり得、すなわち、それぞれ2つ、3つ、4つなどの異なる標的分子に結合することができる。
【0257】
例えば、ポリペプチドは二重特異性-三価であり得、例えば3つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドであり、ここで2つのISVDがヒトTNFαに結合し、かつ1つのISVDがヒト血清アルブミンに結合する(例えば、化合物C、配列番号69)。別の例では、ポリペプチドは三重特異性-四価であり得、例えば、4つのISVDを含むかもしくはそれらからなるポリペプチドであり、ここで1つのISVDはヒトTNFαに結合し、2つのISVDはヒトIL23p19に結合し、かつ1つのISVDはヒト血清アルブミンに結合し(例えば、化合物B、配列番号2);又は、例えば4つのISVDを含むかもしくはそれらからなるポリペプチドであり、ここで1つのISVDはヒトTNFαに結合し、2つのISVDはヒトIL6に結合し、かつ1つのISVDはヒト血清アルブミンに結合する(例えば、化合物D、配列番号70;又は化合物E、配列番号71)。さらに別の例において、ポリペプチドは三重特異性-五価であり得、例えば、5つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドであり、ここで2つのISVDはヒトTNFαに結合し、2つのISVDはヒトOX40Lに結合し、かつ1つのISVDはヒト血清アルブミンに結合する(例えば、化合物A;配列番号1)。
【0258】
本明細書において記載される方法により製造/精製/単離しようとする少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDからなるポリペプチドを、1つ又はそれ以上の適切なリンカー、例えばペプチドリンカーにより連結することができる。2つ又はそれ上の(ポリ)ペプチドを接続するためのリンカーの使用は、当該分野で周知である。例となるペプチドリンカーを表Bに示す。1つの頻繁に使用されるペプチドリンカーのクラスは、「Gly-Ser」又は「GS」リンカーとして知られる。これらは、グリシン(G)及びセリン(S)残基から本質的になるリンカーであり、そして通常は、GGGGS(配列番号4)モチーフのようなペプチドモチーフの1つ又はそれ以上の反復を含む(例えば、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)を有し、式中nは1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上であり得る)。このようなGSリンカーのいくつかの頻繁に使用される例は、9GSリンカー(GGGGSGGGS、配列番号7)、15GSリンカー(n=3)及び35GSリンカー(n=7)である。例えばChenら、Adv.Drug Deliv.Rev.2013年10月15日;65(10):1357-1369;及びKleinら、Protein Eng.Des.Sel.(2014) 27(10):325-330が参照される。一実施形態において、上記ポリペプチドは、9GSリンカーを使用して該ポリペプチドの構成要素を互いに連結する。一実施形態において、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDは、線状(すなわち、非分枝)配列で、場合により1つ又はそれ以上のペプチドリンカーを介して互いに接続される。
【0259】
本発明の方法により製造/精製/単離しようとする少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDからなるポリペプチドは、他の基、残基、部分又は結合単位も含んでいてもよい。これらの他の基、残基、部分又は結合単位は、該1つ又はそれ以上の他の基、残基、部分又は結合単位を含まない対応するポリペプチドと比較して増加した半減期を該ポリペプチドに与え得る。例えば、結合単位は、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンのようなヒト血清タンパク質に結合するISVDであり得る(例えば、WO2012/175400、WO2015/173325、WO2017/080850、WO2017/085172、WO2018/104444、WO2018/134234、WO2018/134235を参照のこと)。さらに、本発明の方法により製造/精製/単離しようとする少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDからなるポリペプチドはまた、任意の精製プロセスに必要な他の適切な基、残基、部分又は結合単位(例えば、Hisタグのようなタグ)を含んでいてもよい。
【0260】
本発明の方法により製造/精製/単離しようとする少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドはまた、例えば、ISVDではないが他の機能をもたらす1つ又はそれ以上のさらなるアミノ酸配列(全て場合により1つ又はそれ以上の適切なリンカーを介して連結される)を含むタンパク質又はポリペプチドの一部を形成してもよい。例えば、かつ限定することなく、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDは、このようなタンパク質又はポリペプチドにおいて結合単位として使用され得、これらは場合により、ISVDではないが結合単位(すなわち、1つ又はそれ以上の他の標的に対して)として、かつ/又は機能的単位として役立ち得る1つ又はそれ以上のさらなるアミノ酸配列を場合により含有してもよい。
【0261】
【表2】
【0262】
製造、精製、及び/又は単離しようとする少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる多価ISVDポリペプチドは、本明細書において記載される製造/精製/単離方法の所望の生成物である。これに関して用語「少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる(多価ISVD)ポリペプチド」は、本出願内において、「上記ポリペプチド」、「所望のポリペプチド(生成物)」、「ISVDポリペプチド」、「所望のISVDポリペプチド」、「(多価)ISVDポリペプチド(生成物)」、又は「(多価)ISVD構築物」と交換可能に使用される。所望のポリペプチド生成物は、「生成物」、「インタクトな生成物」、又は「インタクトな(ISVD)形態」とも呼ばれる。インタクトな形態は、SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー技術におけるメインピークとして現れる。
【0263】
少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる多価ISVDポリペプチドの「コンホメーション変異体」は望ましくなく、そして本出願に記載される方法により、所望のISVDポリペプチドに変換されるべきであり、かつ/又はインタクトな生成物及びコンホメーション変異体を含む組成物から除去されるべきである。コンホメーション変異体は、インタクトな生成物と比較してより緻密な形態を特徴とする。従って、用語「コンホメーション変異体」は、本出願内で「変異体」、「緻密な変異体」、「緻密なコンホメーション変異体」又は「緻密な形態」と交換可能に使用される。
【0264】
緻密な変異体は、所望のポリペプチド生成物と比較して減少した流体力学的体積を特徴とする。一般に、流体力学的体積は、膨張した又は膨潤した分子コイルが吸収された溶媒と一緒に占める見かけの体積である。換言すれば、流体力学的体積は、それが溶液状態である場合に特定のポリマー分子がどれだけの空間を占めるかである(溶液中の高分子の有効水和体積)。高分子の流体力学的体積は、その溶液中での挙動から、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)におけるその保持時間から推定することができ、従って高分子のサイズに基づく力学的特性である。タンパク質/ポリペプチドの流体力学的体積を測定することにより、SECはタンパク質三次構造(又は高分子相互作用を保存する適切な天然条件が使用される場合は四次構造さえも)を分析することができ、折りたたまれたバージョンと折りたたまれていないバージョン、又は同じタンパク質/ポリペプチドの折りたたまれたドメインと折りたたまれていないドメインさえも区別することを可能にする(しかし分子量ではない)。例えば、典型的なタンパク質ドメインの見かけの流体力学的半径は、折りたたまれた形態及び折りたたまれていない形態についてそれぞれ14Å及び36Åであり得る。折りたたまれた形態はそのより小さいサイズに起因してかなりより遅く溶出するので、SECはこれらの2つの形態の分離を可能にする。
【0265】
緻密な変異体は、所望のポリペプチド生成物と比較して、変化した表面電荷及び/又は変化した疎水性露出(表面疎水性)を特徴とする。
【0266】
仮説により拘束されないが - 変異体の緻密なコンホメーションは、上記ポリペプチドの少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDビルディングブロックのうちの少なくとも2つの間の分子内相互作用に起因する(所望のポリペプチド生成物と比較して)。それ故、コンホメーション変異体は、互いに相互作用して所望のポリペプチド生成物と比較して減少した流体力学的体積を生じる少なくとも2つのISVDにより特徴づけられ得る。従ってさらに、緻密な変異体は、互いに相互作用して所望のポリペプチド生成物と比較して変化した表面電荷及び/又は変化した表面疎水性を生じる少なくとも2つのISVDにより特徴づけられ得る。
【0267】
従って、コンホメーション変異体を、流体力学的体積のシフトにより所望のポリペプチド生成物と区別することができる。さらに、コンホメーション変異体を、表面電荷及び/又は表面疎水性のシフトにより所望のポリペプチド生成物と区別することができる。コンホメーション変異体及び所望のポリペプチド生成物は、それらの分子量において差異がない。従って、コンホメーション変異体及び所望のポリペプチド生成物は、それらの分子量により区別することができない。さらに、コンホメーション変異体及び所望のポリペプチド生成物は、それらのジスルフィド架橋において差異がない。従って、コンホメーション変異体及び所望のポリペプチド生成物は、スクランブルジスルフィド架橋により区別できない。
【0268】
上に記載したような変化に起因して、コンホメーション変異体及び所望のポリペプチド生成物を、分析用及び/又は分取用クロマトグラフィー技術において観察される、所望のポリペプチド生成物と比較してコンホメーション変異体の変化した保持時間により区別することができる。例えば、コンホメーション変異体はを、SE-HPLC及び/又はIEX-HPLCのような1つ又はそれ以上の分析用クロマトグラフィー技術により所望のポリペプチド生成物と区別することができる。特に、コンホメーション変異体を、流体力学的体積のシフトにより所望のポリペプチド生成物と区別することができ、ここで上記のシフトは、分析用SE-HPLCにおける増加した保持時間により示される。さらに、コンホメーション変異体を、表面電荷のシフトにより所望のポリペプチド生成物と区別することができ、ここで上記のシフトは、分析用IEX-HPLCにおける変化した保持時間により示される。インタクトな生成物と比較してコンホメーション変異体の増加した保持時間は、ポストピークショルダーとして分析用SE-HPLCにおいて、又はこのSE-HPLCのクロマトグラムにおいて分離されたポストピークとして同定可能である。インタクトな生成物と比較してコンホメーション変異体の表面電荷の変化は、それぞれ分析用IEX-HPLCにおいてプレピークショルダーもしくは分離したプレピークとして、又はこのIEX-HPLCのクロマトグラムにおいてポストピークショルダーもしくは分離したポストピークとして同定可能である。当業者に明らかなように、インタクトな生成物と比較してコンホメーション変異体の保持時間が減少するか又は増加するかは、インタクトな生成物と比較してコンホメーション変異体の表面電荷の質及び量の両方に依存し、さらにはIEX-HPLCにおいて使用される条件(例えば、樹脂、緩衝液、pH、塩濃度/イオン強度など)にも依存する。従って、一実施形態において、コンホメーション変異体は、IEX-HPLCにおける増加した保持時間を特徴とする。別の実施形態において、コンホメーション変異体は、IEX-HPLCにおける減少した保持時間を特徴とする。従って、コンホメーション変異体は、インタクトな生成物と比較してSE-HPLCにおける増加した保持時間を特徴とする。コンホメーション変異体はまた、インタクトな生成物と比較してIEX-HPLCにおける変化した(減少した又は増加した)保持時間を特徴とする。
【0269】
上記の変化に起因して、コンホメーション変異体を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、例えば、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)のような1つ又はそれ以上の分取用クロマトグラフィー技術により、インタクトな生成物と区別することもできる。特に、コンホメーション変異体を、上記の分取用クロマトグラフィー技術から得られた異なるフラクションにおけるその存在により、(所望の)ポリペプチドと区別することができる(上記分取用クロマトグラフィー技術において観察される、所望のポリペプチド生成物と比較してコンホメーション変異体の変化した保持時間に起因して)。例えば、コンホメーション変異体は、トップフラクションとして溶出する所望のポリペプチド生成物と比較して、分取用IEX(例えば、CEX)、分取用MMC(例えば、ヒドロキシアパタイト樹脂に基づく)、及び/又はHIC(例えば、HICカラム樹脂又はHICメンブレンに基づく)におけるサイドフラクションにおけるその存在により特徴づけられ得る。当業者には明らかなように、コンホメーション変異体がプレサイドフラクションとして溶出するか又はポストサイドフラクションとして溶出するか、すなわち、コンホメーション変異体がそれぞれ減少した保持時間又は増加した保持時間のどちらで溶出するかは、所望のポリペプチド生成物と比較したコンホメーション変異体の表面電荷及び/又は表面疎水性の差異の質及び量の両方に依存し、さらに使用されるそれぞれの分取用クロマトグラフィー技術において使用される条件(例えば、樹脂、緩衝液、pH、塩濃度/イオン強度など)にも依存する。
【0270】
従って、SE-HPLC及び/又はIEX-HPLCのような本明細書において提供される特定の分析用クロマトグラフィー技術によるコンホメーション変異体の同定後に、当業者は、コンホメーション変異体を除去するために分取用クロマトグラフィー技術を調整/最適化することができる。
【0271】
さらなる態様において、コンホメーション変異体を、効力の変化により所望のポリペプチド生成物と区別することができ、ここでコンホメーション変異体は、所望のポリペプチド生成物と比較して減少した効力(本明細書において定義されるとおり)を有する。
【0272】
さらに、コンホメーション変異体を、本明細書に記載されるような処理方法において所望のポリペプチド生成物に変換されるその能力により所望のポリペプチド生成物と区別することができる。より詳細には、コンホメーション変異体は:
i) 単離及び/もしくは精製方法の1つもしくはそれ以上の工程において低pH処理を適用すること;
ii) 単離及び/もしくは精製方法の1つもしくはそれ以上の工程においてカオトロピック剤を適用すること;
iii) 単離及び/もしくは精製方法の1つもしくはそれ以上の工程において熱ストレスを加えること;又は
iv) i)~iii)のいずれかの組み合わせ
を行った際に所望のポリペプチド生成物に変換されるその能力により特徴づけられ、ここで変換は、SE-HPLC及び/又はIEX-HPLCのような1つ又はそれ以上の分析用クロマトグラフィー技術により実証される。特に、変換は、分析用SE-HPLCのクロマトグラムにおけるポストピークショルダー又は分離されたポストピークの減少又は消失(さえも)により実証される。さらに、又は代替としては、変換は、分析用IEX-HPLCのクロマトグラムにおけるプレピークショルダーもしくは分離したプレピーク、又はポストピークショルダーもしくは分離したポストピークの減少又は消失(さえも)により実証される。
【0273】
さらに、又は代替としては、変換は、所望のポリペプチド生成物の効力と比較した効力の部分的な回復又は完全な回復により実証される。
【0274】
5.4 製造/精製/単離方法
上記の多価ISVDポリペプチド生成物を単離又は精製するための方法が提供され、ここで単離又は精製しようとする多価ISVDポリペプチドは、宿主における発現により得ることができる。一実施形態において、宿主はCHO細胞ではない。一実施形態において、宿主は本明細書において示されるような下等真核生物宿主である(セクション5.3 「多価ISVDポリペプチド及びそのコンホメーション変異体」)。本明細書において使用される用語「精製する」、「精製」、又は「精製すること」は、所望の多価ISVDポリペプチド生成物及びコンホメーション変異体を含む組成物が、不純要素(その中にはコンホメーション変異体もある)の無いことを意味する。本明細書において使用される用語「単離する」、「単離」、又は「単離すること」は、所望の多価ポリペプチド生成物が、不純要素に加えて所望の多価ISVDポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体の両方を含む組成物から離されるか又は分離されることを意味する。
【0275】
さらに、多価ISVDポリペプチド生成物を宿主において製造するための方法が提供される。一実施形態において、宿主はCHO細胞ではない。一実施形態において、宿主は本明細書に示されるような下等真核生物宿主である。該方法は、上記ポリペプチドをコードする核酸を用いて宿主細胞又は宿主生物を形質変換/トランスフェクトすること、該宿主において上記ポリペプチドを発現させることを含み、その後に1つ又はそれ以上の単離工程及び/又は精製工程が続く。詳細には、多価ISVDポリペプチド生成物を製造する方法は:
a) 適切な宿主細胞もしくは宿主生物において又は別の適切な発現系において、上記ポリペプチドをコードする核酸配列を発現させること;続いて:
b) 所望のポリペプチドを単離及び/又は精製すること
を含み得る。
【0276】
下等真核生物宿主細胞のような宿主により産生された多価ISVDポリペプチドの重要なフラクションにおいて、生成物に関連するコンホメーション変異体の存在が観察される。このコンホメーション変異体の存在は、最終多価ISVDポリペプチド生成物の品質及び均一性に影響を及ぼすかもしれない。しかし、生成物の高い品質及び均一性は、例えば、これらの多価ISVDポリペプチド生成物の治療上の使用に必須である。
【0277】
本出願は、改善された品質を有する(すなわち、コンホメーション変異体の減少したレベルを有するか又はそれが存在しないこと)多価ISVDポリペプチド生成物を含む組成物の製造/精製/単離のための方法を記載する。品質は、特定の条件(1)コンホメーション変異体が所望のポリペプチド生成物に変換される、かつ/又は(2)コンホメーション変異体が多価ISVDポリペプチドの単離もしくは精製工程の間に除去される、を適用することにより改善される。従って、生成物に関連するコンホメーション変異体をISVDを含有する所望のポリペプチド生成物へと変換する方法が本明細書において提供される。生成物に関連するコンホメーション変異体を、(所望の)ポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から除去する方法もまた提供される。生成物に関連するコンホメーション変異体を(所望の)ISVDポリペプチド生成物へ変換し、そして生成物に関連するコンホメーション変異体を、(所望の)ISVDポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物から除去する方法が提供される。
【0278】
5.4.1 少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドの製造
本発明者らは、宿主におけるそのポリペプチドの産生の際に、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体を同定した。コンホメーション変異体は、宿主、特に本明細書に示されるような下等真核生物宿主である宿主における産生の際に観察された。
【0279】
当業者は、宿主細胞において免疫グロブリン単一可変ドメインを製造する一般的な方法が十分にわかる。
【0280】
一般的な実施形態において、少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを製造する方法は、以下のセクション5.4.3「コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換」及び5.4.4「コンホメーション変異体の除去」にさらに詳述されるように、コンホメーション変異体の所望のISVDポリペプチド生成物への変換並びに/又は所望のISVDポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からのコンホメーション変異体の除去を生じる1つ又はそれ以上の精製/単離工程を含む。
【0281】
より詳細には、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドを製造するための方法は、以下の工程:
a) 場合により、宿主又は宿主細胞が増殖するような条件下で宿主又は宿主細胞を培養する工程;
b) 宿主又は宿主細胞が上記ポリペプチドを発現し、かつ/又は産生するような条件下で宿主又は宿主細胞を維持する工程;並びに
c) 分泌されたポリペプチドを培地から単離及び/又は精製する工程、[ここで、該単離及び/又は精製する工程は、コンホメーション変異体の所望のISVDポリペプチド生成物への変換、及び/又は所望のISVDポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からのコンホメーション変異体の除去を生じる1つ又はそれ以上の精製/単離工程を含む]、
を少なくとも含む。
【0282】
本明細書において記載される方法により単離/精製しようとするISVDポリペプチドは宿主において産生され得る。宿主は、CHO細胞ではない宿主であり得る。特に、宿主は、酵母生物のような下等真核生物宿主であり得る。単離/精製しようとするポリペプチドの産生に適した酵母生物は、ピキア(コマガタエラ)、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスである。特定の実施形態において、精製/単離しようとするポリペプチドは、ピキア、特にピキア・パストリスにおいて産生される。
【0283】
ピキア・パストリスのような下等真核生物宿主におけるISVDの製造は、Frenkenら2000年(J.Biotechnol.78:11-21)、WO94/25591、WO2010/125187、WO2012/056000、WO2012/152823及びWO2017/137579に記載されている。これらの出願の内容は、適切な培地及び条件を含めて一般的な培養技術及び方法に関連して明示的に参照される。当業者はまた、よく知られた一般的な知識に基づいて宿主細胞におけるドメインの発現のための適切な遺伝子構築物を構築することもできる。
【0284】
用語「宿主生物」及び「宿主細胞」は、本明細書において「宿主」として一緒に言及される。本明細書に記載される製造方法において、任意の宿主(生物)又は宿主細胞を使用してもよいが、ただし、それらはISVD含有ポリペプチドの産生に適したものである。特に、ポリペプチドの一部が生成物に関連するコンホメーション変異体の形態で産生される宿主(例えば、下等真核生物宿主)が記載される。
【0285】
適切な宿主の具体例は、コリネ型細菌又は腸内細菌科のような原核生物を含む。昆虫細胞、特にトリオプルシアニ(Trioplusiani)又はヨトウガ(Spodoptera frugiperda)由来細胞のようなバキュロウイルス媒介組み換え発現に適した昆虫細胞、限定されないが、BTI-TN-5B1-4 High FiveTM昆虫細胞(Invitrogen)、SF9又はSf21細胞が挙げられる;CHO細胞のような哺乳動物細胞、及び酵母を含む下等真核生物宿主、例えば、ピキア(コマガタエラ)、ハンゼヌラ、サッカロミセス、クリベロミセス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、分裂酵母、シテロミセス、パキソレン、デバロミセス、メトスクニコウィア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスクス、スポリジオボルス、エンドミコプシスも含まれる。一実施形態において、例えばピキア・パストリスのような酵母が宿主として使用される。
【0286】
製造方法において使用される宿主は、ISVD含有ポリペプチドを産生することができる。典型的には、これは1つ又はそれ以上のISVD含有ポリペプチドをコードする1つ又はそれ以上の核酸配列を含むように遺伝的に改変される。遺伝子改変の非限定的な例は、例えば、プラスミドもしくはベクターを用いた形質変換、又はウイルスベクターを用いた形質導入を含む。融合技術により遺伝子改変され得る宿主もある。遺伝子改変は、別々の核酸分子を宿主中に導入すること、例えばプラスミド又はベクター、さらには例えば、宿主の染色体への組み込みによる、例えば相同組み換えによる、宿主の遺伝子材料の直接的な改変を含む。両方の組み合わせがしばしば起こり、例えば、宿主は、相同組み換えの際に宿主染色体中に(少なくとも部分的に)組み込まれるプラスミドを用いて形質変換される。当業者には、宿主がISVD含有ポリペプチドを産生することを可能にするために適した遺伝子改変の方法が分かる。
【0287】
核酸の発現及びポリペプチドの産生のための具体的な条件及び遺伝子構築物は、当該分野で記載されており、例えば、WO 94/25591、Gasserら Biotechnol.Bioeng.94:535、2006;Gasserら Appl.Environ.Microbiol.73:6499、2007;又はDamascenoら Microbiol.Biotechnol.74:381、2007に記載される一般的な培養方法、プラスミド、プロモーター及びリーダー配列。
【0288】
5.4.2 少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドの精製
当業者は、ISVDポリペプチド(例えば、V及びVHH)を精製するための一般的方法を十分知っている。
【0289】
例えば、ISVDの精製は、WO 2010/125187及びWO 2012/056000に記載される。
【0290】
ポリペプチドの産生/発現後に、宿主は慣用の手段により培地から除去され得る。例えば、宿主は、遠心分離又はろ過により除去され得る。培地からの宿主の除去により得られた溶液はまた、培養上清又は清澄化された培養上清とも呼ばれる。
【0291】
多価ISVD生成物は、標準的な方法により培養上清から精製され得る。標準的な方法としては、限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、アフィニティークロマトグラフィー(AC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)を含むクロマトグラフィー方法が挙げられる。これらの方法は、単独で、又は他の精製方法、例えば沈殿と組み合わせて行われ得る。当業者は、よく知られた一般的な知識にもとづいて、ISVD及びISVD含有ポリペプチドのための精製方法の適切な組み合わせを考案することができる。具体的な例については、本明細書において引用される技術が参照される。
【0292】
以下に詳細に記載されるように(セクション5.4.3 「コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換」及び5.4.4「コンホメーション変異体の除去」)、コンホメーション変異体を変換又は除去する条件のいずれか又はそれらの組み合わせが、これらの精製方法の任意の工程の前、任意の工程の時点でもしくは間に、又は任意の工程の後に適用され得るということが想定される。
【0293】
任意の又は全てのクロマトグラフィー工程を任意の機械的手段により行うことができる。クロマトグラフィーは、例えば、カラムで行われ得る。カラムは、圧力をかけて又はかけないで、上から下へ又は下から上へ流され得る。カラムにおける流体の流れの方向は、クロマトグラフィープロセスの間に逆にされ得る。クロマトグラフィーはまた、バッチプロセスで行われてもよく、ここで固形媒体は、重力、遠心分離、又はろ過を含む任意の適切な手段によりサンプルをロード、洗浄及び溶出するために使用される液体から分離される。
【0294】
クロマトグラフィーはまた、サンプル中のいくつかの分子を他の分子より強く吸収又は保持するフィルターとサンプルを接触させることにより行われ得る。以下の記載において、様々な実施形態は、カラムにおいて行われるクロマトグラフィーの文脈で大部分記載される。しかし、カラムの使用は、使用され得るいくつかのクロマトグラフィー様式のうちの単なる一つにすぎず、そして当業者は教示を他の様式、例えばバッチプロセス又はフィルターを使用する様式にも容易に応用し得るので、カラムを使用した説明は、適用をカラムクロマトグラフィーに限定しないということが理解される。
【0295】
適切な支持体は、特許請求される方法を実施するために必要な特徴を有する任意の現在利用可能な材料又は後に開発される材料であってよく、そして任意の合成、有機、又は天然のポリマーに基づくものであり得る。例えば、一般的に使用される支持体の物質としては、セルロース、ポリスチレン、アガロース、セファロース、ポリアクリルアミド ポリメタクリレート、デキストラン及びデンプンのような有機材料、並びに炭、シリカ(ガラスビーズ又は砂)及びセラミック材料のような無機材料が挙げられる。適切な固体支持体は、例えば、Zaborsky 「Immobilized Enzymes」 CRC Press、1973、28-46頁表IVに開示される。
【0296】
一般的な方法条件、溶液及び/又は緩衝液、さらには様々なクロマトグラフィープロセスにおける使用のためのそれらの濃度範囲は、標準的なクロマトグラフィーに関する手引書(例えば、Guenter Jagschies、Eva Lindskog(編)Biopharmaceutical Processing、Development、Design、and Implementation of Manufacturing Processes、第1版2017年、Elsevier)に基づいて、クロマトグラフィーの当業者により決定され得る。
【0297】
ISVDポリペプチド精製プロセスの第一の工程は、しばしば「捕獲工程」と呼ばれる。捕獲工程の目的は、プロセスに関連する不純物の第一の減少を有すること(例えば、限定されないが、宿主細胞タンパク質(HCP)、色及びDNA)及び高い回収を維持しながらISVDポリペプチド生成物を捕獲することである。一実施形態において、捕獲工程は、結合及び溶出モードにおけるプロテインAクロマトグラフィーでの最初の精製を指す。
【0298】
精製プロセスの第二の工程は、しばしば「ポリッシング工程」と呼ばれ、純度改善を目的とする。例えば、ISVDポリペプチド精製プロセスの第二の精製工程として、結合及び溶出モードでのイオン交換クロマトグラフィー工程が、生成物関連変異体(例えば、限定されないが、高分子量(HMW)種、低分子量(LMW)種、及び他の荷電した変異体)、さらには捕獲工程後もなお存在しているいくつかのプロセス関連不純物(例えば、限定されないが、HCP、残留プロテインA、DNA)を除去/減少させるために使用され得る。
【0299】
1つの例となる実施形態において、多価ISVDポリペプチドは、プロテインA及びでのアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせにより培養上清から精製され得る。任意の「精製工程」の参照は、限定されないが、これらの特定の方法を含む。
【0300】
プロテインAベースのクロマトグラフィー
一実施形態において、ISVDポリペプチド含有調製物は、プロテインAクロマトグラフィーにより精製され得る。ブドウ球菌プロテインA(SpA)は、N末端から順にE、D、A、B及びCと名付けられた5つのほとんど相同なドメインから構成される42kDaのタンパク質である(Sjodhal Eur.J.Biochem.78:471-490(1977);Uhlenら J.Biol.Chem.259:1695-1702(1984))。これらのドメインは約58残基を含有し、それぞれアミノ酸配列同一性約65%~90%を共有する。プロテインAと抗体との間の結合研究は、SpAの全てのドメイン(E、D、A、B及びC)がIgGにそのFc領域を介して結合するが、ドメインD及びEは有意なFab結合を示すということを示した(Ljungbergら Mol.Immunol.30(14):1279-1285(1993);Robenら J.Immunol.154:6437-6445(1995);Starovasnikら Protein Sei.8:1423-1431 (1999)。Bドメインの機能的アナログでありかつエネルギー最小化バージョンであるZドメイン(NilssonらProtein Eng.1:107-113 (1987))は、抗体可変ドメイン領域に対して無視できる結合しか有していないことが示された(Cedergrenら Protein Eng.6(4):441-448 (1993);Ljungbergら (1993)前出;Starovasnikら (1999)前出)。
【0301】
最近まで、市販のプロテインA固定相は、それらの固定リガンドとしてSpA(黄色ブドウ球菌から単離されるか又は組み換え発現された)を採用していた。非タンパク質性リガンドを使用すると典型的にクロマトグラフィーの他のモードを用いて行われるので、これらのカラムを使用すると、カラム再生及び衛生のためにアルカリ条件を使用することが不可能であった(GhoseらBiotechnology and Bioengineering Yol.92 (6):665-73 (2005))。より強いアルカリ条件に耐えるように新しい樹脂(MabSELECTTM SuRe)が開発された(Ghoseら(2005年)前出)。タンパク質工学技術を使用して、多数のアスパラギン残基がプロテインAのZドメインにおいて置き換えられ、そして新シリガンドが4つの同じように改変されたZドメインの四量体として生成された(Ghoseら(2005)前出)。
【0302】
したがって、精製方法は、市販のプロテインAカラムを使用して製造者の仕様書に従って行われ得る。例えば、MabSELECTTMカラム又はMabSELECTTM SuReカラム(GE Healthcare Products)を使用することができる。MabSELECTTMは、その固定リガンドとして組み換えSpAを含有する市販の樹脂である。限定されないが、コントロールされた多孔質ガラス(controlled pore glass)に共有結合でカップリングされたプロテインAからなるPROSEP-ATM(Millipore、U.K.)を含むプロテインAカラムの他の市販の供給源を有用に使用することができる。他の有用なプロテインA配合物としては、プロテインA Sepharose FAST FLOWTM(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)、AmsphereTM A3 (JSR Life Sciences)、及びTOYOPEARLTM 650MプロテインA(TosoHaas Co.、Philadelphia、PA)が挙げられる。
【0303】
プロテインAベースのクロマトグラフィーによるタンパク質精製は、固定されたプロテインAリガンドを含有するカラム(典型的には、プロテインAを又はその機能的誘導体からなる吸着剤が固定されたメタクリレートコポリマーの改変した支持体又はアガロースビーズを充填したカラム)で行われ得る。カラムは、典型的には緩衝液で平衡化され、そしてタンパク質の混合物(標的タンパク質、及び混入タンパク質)を含有するサンプルを、カラム上にロードする。化合物がカラムを通過するにつれて、標的タンパク質はカラム内の吸着剤(プロテインA又はその誘導体)に結合し、一方でいくつかの未結合の不純物及び混入物は流出する。次いで、結合したタンパク質はカラムから溶出される。このプロセスにおいて、標的タンパク質がカラムに結合される間、不純物混入物は流出する。標的タンパク質はその後溶出液から回収される。
【0304】
一般的な実施形態において、少なくとも3つ又は少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドを精製/単離する方法が提供され、ここで、セクション5.4.3「コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換」及びセクション5.4.4「コンホメーション変異体の除去」にさらに詳述されるように、該方法は、コンホメーション変異体の所望のISVDポリペプチド生成物への変換並びに/又は所望のISVDポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からのコンホメーション変異体の除去を生じる1つ又はそれ以上の精製/単離工程を含む。
【0305】
5.4.3 コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換
一態様において、ポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物は、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件を適用することにより精製される。
【0306】
この態様において、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件は、a)低pH処理を適用すること、b)カオトロピック剤を適用すること、c)熱ストレスを加えること、及びd) a)~c)のいずれかの処理の組み合わせを適用することから選択され得る。例えば、一態様において、コンホメーション変異体は、低pH処理及びカオトロピック剤を適用することにより、所望のポリペプチド生成物に変換される。別の実施形態において、コンホメーション変異体は、低pH処理及び熱処理を適用することにより所望のポリペプチド生成物に変換される。さらなる実施形態において、コンホメーション変異体は、熱ストレス及びカオトロピック剤を適用することにより所望のポリペプチド生成物に変換される。さらに別の実施形態において、コンホメーション変異体は、低pH処理、カオトロピック剤、及び熱ストレスを適用することにより所望のポリペプチドに変換される。
【0307】
コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件は、(限定することなく)多価ISVDポリペプチドを含む培養上清に(捕獲工程の前に)、捕獲工程の間に、捕獲工程の前であるがポリッシング工程の前に、ポリッシング工程の間に、又はポリッシング工程の後に適用され得る。コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件は、多価ISVDポリペプチドの部分的又は高度に精製された調製物に対して適用され得る。コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件はまた、カラム上に、清澄化された上清に、又はISVD含有ポリペプチドの部分的もしくは高度に精製された調製物に適用され得る。コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件はまた、ろ過工程の前もしくは後、又は精製におけるいずれかの他の工程のような、別の工程の間に適用され得る。
【0308】
以下において、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件は、より詳細に考察される。これらの条件の適用はまた、多価ISVDポリペプチドの「処理」とも呼ばれる。
【0309】
低pH処理
コンホメーション変異体は、低pH処理により所望のポリペプチドに変換され得る。
【0310】
低pH処理は、多価ISVDポリペプチドの精製/単離方法の間いつでも適用され得る。一実施形態において、低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前に適用される。別の実施形態において、低pH処理は、クロマトグラフィー技術、例えばプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィー(AC)に基づく精製工程の間に適用される。例えば、低pH処理は、プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーのISVDポリペプチド捕獲工程の間に適用され得る。別の実施形態において、低pH処理は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後に適用される。例えば、低pH処理は、プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーのISVDポリペプチド捕獲工程の後に(かつISVDポリペプチドポリッシング工程の前に)適用され得る。代替において、低pH処理は、ISVDポリペプチドポリッシング工程の後に適用され得る。
【0311】
低pH処理は、所望のポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物のpHを約pH3.2又はそれ以下に、コンホメーション変異体がインタクトなISVDポリペプチド生成物に変換されるように十分な量の時間低下させることを含む。
【0312】
低pH処理は、所望のポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物のpHを約pH3.0又はそれ以下に、コンホメーション変異体がインタクトなISVDポリペプチド生成物に変換されるように十分な量の時間低下させることを含む。
【0313】
従って、低pH処理は、インタクトなポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物(例えば、(プロテインA)捕獲工程の後の捕獲溶出液)のpHを、約pH3.2又はそれ以下、約pH3.1又はそれ以下、約pH3.0又はそれ以下、約pH2.9又はそれ以下、約pH2.8又はそれ以下、約pH2.7又はそれ以下、約pH2.6又はそれ以下、約pH2.5又はそれ以下、約pH2.4又はそれ以下、約pH2.3又はそれ以下、約pH2.2又はそれ以下、約pH2.1又はそれ以下にも低下させることを含む。詳細には、組成物のpHを、約pH2.9、約pH2.8、約pH2.7、約pH2.6、約pH2.5、約pH2.4、約pH2.3、約pH2.2、又は約2.1に低下させ得る。一実施形態において、pHを、約pH3.2と約pH2.1との間、約pH3.0と約pH2.1との間、約pH2.9と約pH2.1との間、約pH2.7と約pH2.1との間に低下させる。別の実施形態において、pHを、約pH2.6と約pH2.3との間に低下させる。別の実施形態において、pHを約pH2.5と約pH2.1との間に低下させる。
【0314】
低pH処理において、pHを任意の慣用の手段により低下させ得る。例えば、所望のポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物のpHを、HCl(例えば、0.1M~3M、例えば0.1M、1M、3M、又は2.7Mのストック濃度で)を使用して、又はグリシン(例えば、0.1Mのストック濃度で)を使用して低下させ得る。当業者は、他の適切な手段を容易に選択することができる。
【0315】
一実施形態において、低pH処理は、クロマトグラフィー技術、例えば、プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーに基づく精製工程の間に適用される。プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーに使用される溶出緩衝液は、約pH2.5に等しいか又はそれ以下のpHを有し得る。あるいは、プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーに使用される溶出緩衝液は、ポリペプチドを含有する得られる溶出液が、約pH3.2に等しいか又はそれ以下、例えば約pH2.9未満のpHを有するようなpHを有する。上に示されるような溶出緩衝液を使用したプロテインAカラムからのポリペプチドの溶出後に、該ポリペプチドを含有する得られた溶出液のpHを、(場合により)pH2.5に等しいか又はそれ以下のpHにさらに低下させ得る。別の実施形態において、得られた溶出液のpHは、約pH3.2に等しいか又はそれ以下に、少なくとも約0.5時間、例えば1時間又は2時間調整され得る。別の実施形態において、得られた溶出液のpHは、約pH2.9に等しいか又はそれ以下のpHに、少なくとも約0.5時間、例えば1時間又は2時間調整され得る。さらに別の実施形態において、得られた溶出液のpHは、約pH2.7又はそれ以下のpHに少なくとも約1時間調整され得る。別の実施形態において、クロマトグラフィー技術はプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーであり、ここで溶出緩衝液は約pH2.2のpHを有し、そしてここで得られた溶出液のpHは、約pH2.5のpHに少なくとも約1.5時間調整される。
【0316】
本発明の技術はまた、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体を、SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー方法により同定する方法を提供する。本発明の技術はさらに、コンホメーション変異体を低pH処理によりインタクトな生成物に変換する概念を提供する。それ故、本明細書において提供される概念に基づいて、当業者は、本明細書に記載される低pH処理を、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる任意のポリペプチドに対して最適な酸性pH、さらにはインキュベーション時間の点で調整することができる。
【0317】
低pH処理は、上記ポリペプチドを含む組成物のpHを増加させることにより終了され得る。低pH処理は、低pH処理された組成物のpHを少なくとも1pH単位増加させることにより終了され得る。例えば、低pH処理が約pH2.7で行われる場合、pHを少なくとも約pH3.7に増加させることにより処理を終了させることができる。低pH処理は、低pH処理された組成物のpHを少なくとも2pH単位増加させることにより終了され得る。例えば、低pH処理が約pH2.7で行われる場合、pHを少なくとも約pH4.7に増加させることにより処理を終了させることができる。従って、pHを、約pH3.5又はそれ以上に、約pH4.0又はそれ以上に、約pH4.5又はそれ以上に、約pH5.0又はそれ以上に、約pH5.5又はそれ以上に、約pH6.0又はそれ以上に、約pH6.5又はそれ以上に、約pH7.0又はそれ以上に、約pH7.5又はそれ以上に、約pH8.0又はそれ以上などに増加させることにより低pH処理を終了することができる。しかし、pHを高く増加しすぎること(例えば、約pH9又はそれ以上まで)は、ポリペプチド生成物の(重大な)分解を生じるかもしれない。それ故、低pH処理は、pHを、約pH4と約pH8との間に、又は約pH5と約pH7.5との間に増加させることにより終了される。当業者には明らかなように、pH増加は、可能なその後の精製、製剤化又は貯蔵工程に必要なpHに適合され得る。本出願において、低pH処理の終了は、「pH中和」と交換可能に使用される。
【0318】
低pH処理を終了するために、pHを任意の慣用の手段により増加させ得る。限定することなく、例えば、組成物のpHを、NaOH(例えば、0.1M又は1Mのストック濃度で)を使用して、又は酢酸ナトリウム(例えば、1Mのストック濃度で)を使用して増加させることができる。当業者は他の適切な手段を容易に選択することができる。
【0319】
本明細書に記載される方法に基づいて、当業者は、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換するために必要な時間を決定することができる。例えば、低pH処理は、十分な量の時間、コンホメーション変異体が本明細書において記載されるクロマトグラフィー技術により本質的にもはや検出されなくなるまで適用される。例えば、低pH処理は、十分な時間の間、ポストピークショルダーも分離されたポストピークも(コンホメーション変異体を示す)、分析用SE-HPLCを使用した低pH処理後の組成物のクロマトグラムにおいて本質的に観察されなくなるまで適用される。さらに、又は代替としては、低pH処理は、十分な量の時間、プレ/ポストピークショルダーも分離されたプレ/ポストも(コンホメーション変異体を示す)、分析用IEX-HPLCを使用した低pH処理後の組成物のクロマトグラムにおいて本質的に観察されなくなるまで適用される。これに関して、低pH処理は、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間適用され得る。例えば、低pH処理は、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約6時間、約8時間、約12時間、約24時間適用され得る。特定の実施形態において、低pH処理は、少なくとも約1時間、又は少なくとも約2時間、又は少なくとも約4時間適用され得る。
【0320】
一実施形態において、pHを、約pH3.2と約2.1との間に少なくとも0.5時間、約pH2.9と約2.1との間に少なくとも0.5時間、約pH2.7と約2.1との間に少なくとも0.5時間、例えば約pH2.9に、約pH2.7に、約pH2.5に、又は約pH2.3に0.5時間低下させる。別の実施形態において、pHを、約pH3.2と約2.1との間に少なくとも1時間、約pH2.9と約2.1との間に少なくとも1時間、約pH2.7と約2.1との間に少なくとも1時間、例えば約pH2.9に、約pH2.7に、約pH2.5に、又は約pH2.3に1時間低下させる。さらに別の実施形態において、pHを、約pH3.2と約2.1との間に少なくとも2時間、約pH2.9と約2.1との間に少なくとも2時間、約pH2.7と約2.1との間に少なくとも2時間、例えば、約pH2.9に、約pH2.7に、約pH2.5に、又は約pH2.3に2時間低下させる。さらに別の実施形態において、pHを、約pH3.2と約2.1との間に少なくとも4時間、約pH2.9と約2.1との間に少なくとも4時間、約pH2.7と約2.1との間に少なくとも4時間、例えば、約pH2.9に、約pH2.7に、約pH2.5に、又は約pH2.3に4時間低下させる。別の実施形態において、pHを、約pH2.6と約pH2.3との間に少なくとも1時間、又は少なくとも2時間、例えば約pH2.6に1又は2時間低下させる。別の実施形態において、pHを、約pH2.5と約pH2.1との間に少なくとも1時間、又は少なくとも2時間、例えば約pH2.4又はpH2.5に2時間低下させる。
【0321】
低pH処理は、広範囲の温度で適用され得るが、ただし、その温度は、ISVDポリペプチドの不可逆的変性も分解も生じない。例としては、限定されないが、約4℃と約30℃との間の温度である。従って、低pH処理は、約30°、29℃、28℃、27℃、26℃、25℃、24℃、23℃、22℃、21℃、20℃、19℃、18℃、17℃、16℃、15℃、14℃、13℃、12℃、11℃、10℃、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、4℃で適用され得る。当業者は、低pH処理に適した温度を容易に選択することができる。一実施形態において、低pH処理は、約15℃と約30℃との間の温度で適用される。別の実施形態において、低pH処理は、約4℃と約12℃との間の温度で適用される。別の実施形態において、低pH処理は、室温(RT)で、すなわち、約20℃と25℃との間で適用される。
【0322】
カオトロピック剤処理
コンホメーション変異体はまた、カオトロピック剤を適用することにより所望のポリペプチド生成物に変換され得る。
【0323】
カオトロピック剤は、一般的に、水素結合、ファンデルワールス力及び疎水性相互作用のような非共有結合力により媒介される分子間及び分子内相互作用を妨げて、それによりその系のエントロピーを増大させる。生体分子に関して、カオトロピック剤は、タンパク質及び核酸(例えば、DNA及びRNA)のような高分子の構造を破壊し、そして変性させることができる。カオトロピック剤は当業者に周知であり、そして(限定されないが)n-ブタノール、エタノール、塩化グアニジニウム(GuHCl)、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、及び尿素を含む。一実施形態において、コンホメーション変異体は、GuHCl又は尿素であるカオトロピック剤を適用することにより所望のポリペプチド生成物に変換される。特定の実施形態において、コンホメーション変異体は、GuHClであるカオトロピック剤を適用することにより所望のポリペプチド生成物に変換される。
【0324】
カオトロピック剤は、多価ISVDポリペプチドの精製/単離方法の間にいつでも適用され得る。一実施形態において、カオトロピック剤は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前に(例えば、ISVDポリペプチド捕獲工程の前に、又はISVDポリペプチドポリッシング工程の前に)適用される。別の実施形態において、カオトロピック剤は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後に(例えば、ISVDポリペプチド捕獲工程の後に、又はISVDポリペプチドポリッシング工程の後に)適用される。別の実施形態において、カオトロピック剤は、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後すぐに適用され、ここでクロマトグラフィー技術は、プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーである(例えば、ISVDポリペプチド捕獲工程に使用される)。従って、一実施形態において、カオトロピック剤は、プロテインAベースのISVDポリペプチド捕獲工程のすぐ後に、かつポリッシング工程の前に適用される。別の実施形態において、カオトロピック剤は、ISVDポリペプチドポリッシング工程の後すぐに適用される。
【0325】
当業者は、カオトロピック剤が、コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換を可能にするがその不可逆的変性も分解も生じない濃度で適用されなければならないということを十分に知っている。本明細書に記載される方法に基づいて、当業者は、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換するためにカオトロピック剤のどの濃度が適切か決定することができる。コンホメーション変異体が、本明細書において記載されるクロマトグラフィー技術によりもはや検出可能でない場合に、適切な濃度が適用されている。例えば、分析用SE-HPLCを使用して、カオトロピック剤処理後の組成物のクロマトグラムにおいてポストピークショルダーも分離されたポストピーク(コンホメーション変異体を示す)も本質的に観察されない場合に、適切な濃度が適用されている。さらに、又は代替としては、分析用IEX-HPLCを使用して、カオトロピック剤処理後の組成物のクロマトグラムにおいて、プレ/ポストピークショルダーも分離されたプレ/ポストピーク(コンホメーション変異体を示す)も本質的に観察されない場合に、適切な濃度が適用されている。カオトロピック剤によるISVDポリペプチド生成物の不可逆的変性又は分解は、それぞれのSE-HPLC又はIEX-HPLCクロマトグラムが高分子量種(HMW種)(SE-HPLCにおけるプレピーク)の形成並びに/又はIEX-HPLC及び/もしくはSE-HPLCにおける総面積の減少(生成物の損失)もしくはメインピークの減少を示さない場合、除外され得る。
【0326】
一態様において、カオトロピック剤は、約0.5モル濃度(M)と約3Mとの間、約0.5Mと約2.5Mとの間、約1Mと約2.5Mとの間、約1Mと約2Mとの間、例えば、約1M、約2M、約2.5M又は約3Mの最終濃度のGuHClである。別の態様において、カオトロピック剤は、少なくとも約1M、又は少なくとも約2Mの最終濃度のGuHClである。
【0327】
本明細書に記載される方法に基づいて、当業者は、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換するために必要な時間を決定することができる。例えば、カオトロピック剤処理は、コンホメーション変異体が本明細書に記載されるクロマトグラフィー技術によりもはや本質的に検出可能でなくなるまで、十分な量の時間適用される。例えば、カオトロピック剤処理は、分析用SE-HPLCを使用して、カオトロピック剤処理後の組成物のクロマトグラムにおいて、ポストピークショルダーも分離されたポストピーク(コンホメーション変異体を示す)も本質的に観察されなくなるまで、十分な量の時間適用される。さらに、又は代替としては、カオトロピック剤処理は、分析用IEX-HPLCを使用して、カオトロピック剤処理後の組成物のクロマトグラムにおいて、プレ/ポストピークショルダーも分離したプレ/ポストピーク(コンホメーション変異体を示す)も本質的に観察されなくなるまで、十分な量の時間適用される。当業者は、カオトロピック剤が、コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換を可能にするがその不可逆的変性も分解も生じない時間の間適用されなければならないということを十分に知っている。カオトロピック剤によるISVDポリペプチド生成物の不可逆的変性又は分解は、それぞれのSE-HPLC又はIEX-HPLCクロマトグラムが高分子量種(HMW種)(SE-HPLCにおけるプレピーク)の形成並びに/又はIEX-HPLC及び/もしくはSE-HPLCにおける総面積の減少(生成物の損失)もしくはメインピークの減少を示さない場合、除外され得る。これに関して、カオトロピック剤処理は、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間適用され得る。例えば、カオトロピック剤は、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約6時間、約8時間、約12時間適用され得る。一実施形態において、カオトロピック剤は、少なくとも約0.5時間、又は少なくとも約1時間適用され得る。
【0328】
この態様において、GuHClは、少なくとも約0.5時間、又は少なくとも約1時間適用される。一実施形態において、カオトロピック剤は、約1Mと約2Mとの間の最終濃度で約0.5時間のGuHClである。別の実施形態において、カオトロピック剤は、約1Mと約2Mとの間の最終濃度で約1時間のGuHClである。
【0329】
本発明の技術は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体を、SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー方法により同定する方法を提供する。本発明の技術は、カオトロピック剤を用いた処理により、コンホメーション変異体をインタクトな生成物に変換する概念をさらに提供する。それ故、本明細書において提供される概念に基づいて、当業者は、本明細書に記載されるカオトロピック剤処理をカオトロピック剤濃度に加えてインキュベーション時間の点でも、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる任意のポリペプチドに対して調整することができる。
【0330】
カオトロピック剤処理は、ISVDポリペプチド生成物を新しい緩衝液系(カオトロピック剤を含まない)に移すことにより終了され得る。この移行は、慣用の手段、例えば、透析、透析ろ過又はクロマトグラフィー方法(例えば、サイズ排除又は緩衝液交換クロマトグラフィー)により達成され得る。例えば、ISVDポリペプチド生成物は、透析によりPBS中に移され得る。ISVDポリペプチド生成物はまた、生理食塩水中に移されてもよい。当業者は、他の適切な緩衝液系を容易に選択することができる。緩衝液の選択は、可能性のあるその後の精製、製剤化又は貯蔵工程に必要な緩衝液条件に依存し得る。
【0331】
カオトロピック剤処理は、広範囲の温度で適用され得るが、ただし、温度はISVDポリペプチドの不可逆的変性も分解も生じない。例としては、限定されないが、約4℃と約30℃との間の温度が挙げられる。従って、カオトロピック剤処理は、約30°、29℃、28℃、27℃、26℃、25℃、24℃、23℃、22℃、21℃、20℃、19℃、18℃、17℃、16℃、15℃、14℃、13℃、12℃、11℃、10℃、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、4℃で適用され得る。当業者は、カオトロピック剤処理に適した温度を容易に選択することができる。一実施形態において、カオトロピック剤処理は、約15℃と約30℃との間の温度で適用される。別の実施形態において、カオトロピック剤処理は、約4℃と約12℃との間の温度で適用される。別の実施形態において、カオトロピック剤処理は、室温で、すなわち約20℃と25℃との間で適用される。
【0332】
熱処理
コンホメーション変異体はまた、熱ストレスを加えることにより所望のポリペプチド生成物に変換され得る。用語「熱処理」及び「熱ストレス」は本明細書において交換可能に使用される。
【0333】
熱ストレスは、多価ISVDポリペプチドの精製/単離方法の間にいつでも適用され得る。一実施形態において、熱ストレスは、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の前に適用される。別の実施形態において、熱ストレスは、クロマトグラフィー技術に基づく精製工程の後に適用される。例えば、熱ストレスは、プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーのISVDポリペプチド捕獲工程の後(かつISVDポリペプチドポリッシング工程の前)に適用され得る。代替としては、熱ストレスは任意のISVDポリペプチドポリッシング工程の後に適用され得る。
【0334】
熱ストレスは、コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換を可能にするが、その不可逆的な変性も分解も生じない40℃と60℃との間の適切な温度で適用される。本明細書に記載される方法に基づいて、当業者は、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換するためにどの温度が適切であるかを決定することができる。コンホメーション変異体が、本明細書に記載されるクロマトグラフィー技術によりもはや本質的に検出可能でなくなる場合、適切な温度が適用されている。例えば、分析用SE-HPLCを使用して、熱ストレス後の組成物のクロマトグラムにおいてポストピークショルダーも分離されたポストピーク(コンホメーション変異体を示す)も本質的に観察されない場合、適切な温度が適用されている。さらに、又は代替として、分析用IEX-HPLCを使用して、熱ストレス後の組成物のクロマトグラムにおいてプレ/ポストピークショルダーも分離されたプレ/ポストピーク(コンホメーション変異体を示す)も本質的に観察されない場合に、適切な温度が適用されている。ISVDポリペプチド生成物の熱ストレスによる不可逆的変性又は分解は、それぞれのSE-HPLC又はIEX-HPLCクロマトグラムが、高分子量種(HMW種)(SE-HPLCにおけるプレピーク)並びに/又はIEX-HPLC及びSE-HPLCにおける総面積の減少(生成物の損失)もしくはメインピークの減少を示さない場合、除外され得る。従って、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換するために加えられる熱ストレスは、組成物を約40℃~約60℃、約45℃~約60℃、又は約50℃~約60℃でインキュベートすることを含む。熱ストレスはまた、組成物を約40℃~約55℃、約45℃~55℃、又は約48℃~約52℃、例えば約50℃でインキュベートすることも含み得る。
【0335】
本明細書に記載される方法に基づいて、当業者は、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換するために必要な時間を決定することができる。熱ストレスは、本明細書に記載されるクロマトグラフィー技術によりコンホメーションがもはや本質的に検出できなくなるまで、十分な量の時間適用される。例えば、熱ストレスは、分析用SE-HPLCを使用して、熱ストレス後の組成物のクロマトグラムにおいて、ポストピークショルダーも分離されたポストピーク(コンホメーション変異体を示す)も本質的に観察されなくなるまで、十分な量の時間加えられる。さらに、又は代替として、熱ストレスは、分析用IEX-HPLCを使用して、熱ストレス後の組成物のクロマトグラムにおいてプレ/ポストピークショルダーも分離されたプレ/ポストピーク(コンホメーション変異体を示す)も本質的に観察されなくなるまで、十分な量の時間適用される。当業者は、コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換を可能にするが、その不可逆な変性又は分解を生じない時間、熱ストレスを加えなければならないことが十分に分かる。熱ストレスによるISVDポリペプチド生成物の不可逆的変性又は分解は、それぞれのSE-HPLC又はIEX-HPLCクロマトグラムが、高分子量種(HMW種)(SE-HPLCにおけるプレピーク)の形成又はIEX-HPLC及びSE-HPLCにおける総面積の減少(生成物の損失)もしくはメインピークの減少を示さない場合に除外され得る。これに関して、熱ストレスは、4時間より長く適用されないものとする。従って、熱ストレスは、少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、約4時間加えられ得るが、4時間より長くは加えられない。特に、熱ストレスは、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間加えられ得る。一実施形態において、熱ストレスは、少なくとも約0.5時間、又は少なくとも約1時間、例えば、50℃で約1時間加えられる。別の実施形態において、熱ストレスは約4時間、例えば50℃で約4時間加えられる。
【0336】
本発明の技術は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体を、SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー方法により同定する方法を提供する。本発明の技術は、熱処理によりコンホメーション変異体をインタクトな生成物に変換する概念をさらに提供する。それ故、本明細書において提供される概念に基づいて、当業者は、最適な熱ストレス温度に加えてインキュベーション時間の両方の点で、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる任意のポリペプチドに対して熱処理を調整することができる。
【0337】
熱ストレスは、ISVDポリペプチド生成物を含む組成物を、約30℃未満の温度、すなわち、約4℃と約30℃との間の任意の温度に調整することにより終了され得る。従って、熱処理は、約30°、29℃、28℃、27℃、26℃、25℃、24℃、23℃、22℃、21℃、20℃、19℃、18℃、17℃、16℃、15℃、14℃、13℃、12℃、11℃、10℃、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、4℃に組成物の温度を調整することにより終了される。一実施形態において、熱処理は、組成物の温度を約15℃と約30℃との間に調整することにより終了される。別の実施形態において、熱処理は、組成物の温度を約4℃と約12℃との間に調整することにより終了される。別の実施形態において、熱処理は、組成物の温度を室温に、すなわち、約20℃と約25℃との間に調整することにより終了される。温度調整(熱処理の終了のため)は、可能性のあるその後の精製、製剤化又は貯蔵工程に必要な温度に適合され得る。
【0338】
コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件に関する一般的態様
コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する上に記載される処理条件は、タンパク質精製/製剤化に適した広範囲の緩衝液、特に抗体精製/製剤化に適した任意の公知の緩衝液を使用して適用され得る。例としては、限定されないが、PBS、リン酸緩衝液、酢酸塩、ヒスチジン緩衝液、Tris-HCl、グリシン緩衝液が挙げられる。ISVDポリペプチドはまた、生理食塩水中に存在し得る。当業者は、他の適切な緩衝液系を容易に選択することができる。
【0339】
コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する上に記載される条件のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせは、以下にさらに記載されるようなコンホメーション変異体を除去する任意の方法と組み合わせられ得る。
【0340】
本明細書において提供される低pH処理、カオトロピック剤を用いた処理及び熱処理の概念に基づいて、当業者は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなる任意のポリペプチドに対して最適なpH、カオトロピック剤濃度、及び/又は熱ストレス温度、さらにはインキュベーション時間の点において本明細書に記載される処理条件を調整することができる。
【0341】
5.4.4 コンホメーション変異体の除去又は減少
除去又は減少は、生成物に関連するコンホメーション変異体が、所望のISVDポリペプチド生成物及び生成物に関連するコンホメーション変異体の両方を含む組成物から、物理的に分離されることを意味する。正確な意味は文脈から明らかだろう。先行技術において、当業者は、本明細書において提供されるような下等真核生物宿主において産生された場合の、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体の存在について知識を有していなかった。本出願により提供されるこの知識に基づいてのみ、当業者は、所望のISVDポリペプチド生成物及び生成物に関連するコンホメーション変異体を含む組成物中に存在するコンホメーション変異体を除去するか又は減少させるために使用されるアッセイ条件を調整/最適化することができる。従って、本明細書において提供される特定の方法(以下のセクション「分析方法」を参照のこと)による少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体の同定は、当業者が、コンホメーション変異体を特異的に除去できるように従来技術の精製方法を具体的に調整/最適化することを可能にするための要件である。
【0342】
所望のポリペプチド生成物は、所望のポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からコンホメーション変異体を除去する条件を適用することにより単離/精製される。この態様において、コンホメーション変異体は、1つ又はそれ以上の分取用クロマトグラフィー技術により除去される。クロマトグラフィー技術は、流体力学的体積、表面電荷及び/又は疎水性露出/表面疎水性に基づく分取用クロマトグラフィー技術であり得る。一実施形態において、分取用クロマトグラフィー技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、例えば、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)から選択される。
【0343】
一実施形態によれば、コンホメーション変異体は、流体力学的体積に基づく分取用クロマトグラフィー分離により除去される。従って、コンホメーション変異体は、分取用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して除去される。SECにおいて、クロマトグラフィーカラムは、(限定しないが)デキストランポリマー(Sephadex)、アガロース(Sepharose)、又はポリアクリルアミド(Sephacryl又はBioGel P)から構成される微細な多孔性ビーズで充填される。これらのビーズの孔径は、高分子の寸法を見積もるために使用される。限定しないが、SEC樹脂の例としては、Sephadexベースの製品(GE Healthcare、Merck)、バイオゲルベースの製品(Bio-Rad)、Sepharoseベースの製品(GE Healthcare)、及びSuperdexベースの製品(GE Healthcare)が挙げられる。
【0344】
別の実施形態において、コンホメーション変異体は、表面電荷に基づく分取用クロマトグラフィー分離により除去される。従って、コンホメーション変異体は、分取用イオン交換クロマトグラフィー(IEX)(例えば、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX))を使用して除去される。限定しないが、IEX樹脂の例としては、Poros 50HS(ThermoFischer)、Poros 50HQ(ThermoFischer)、SOURCE 30S(GE Healthcare)、SOURCE 15S(GE Healthcare)、SP Sepharose(GE Healthcare)、Capto S(GE Healthcare)、Capto SP Impres(GE Healthcare)、Capto S ImpAct(GE Healthcare)、Q Sepharose(GE Healthcare)、Capto Q(GE Healthcare)、DEAE Sepharose(GE Healthcare)、Poros XS(Thermo ScientificTM)、AG(登録商標)50W(Bio-Rad)、AG(登録商標)MP-50(Bio-Rad)、Nuvia HR-S(Bio-Rad)、UNOsphereTM S(Bio-Rad)、及びUNOsphere Rapid S (Bio-Rad)が挙げられる。
【0345】
別の実施形態において、コンホメーション変異体は、表面疎水性/疎水性露出に基づいて分取クロマトグラフィー分離により除去される。従って、コンホメーション変異体は、分取用疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して除去される。一実施形態において、HICはHICカラム樹脂に基づく。限定することなく、HIC樹脂は、Capto Phenyl ImpRes(GE Healthcare)、Capto Butyl ImpRes(GE Healthcare)、Phenyl HP(GE Healthcare)、Capto Butyl(GE Healthcare)、Capto Octyl(GE Healthcare)、Toyopearl PPG-600(Tosoh Biosciences)、Toyopearl phenyl-600(Tosoh Biosciences)、Toyopearl phenyl-650(Tosoh Biosciences)、Toyopearl butyl-600(Tosoh Biosciences)、Toyopearl butyl-650(Tosoh Biosciences)、TSKgel Phenyl 5-PW(Tosoh Biosciences)から選択され得る。別の実施形態において、HICはHICメンブレンに基づく。限定することなく、HICメンブレンは、Adsorber Q (GE Healthcare)、Adsorber S(GE Healthcare)、Adsorber Phen(GE Healthcare)、Mustang Qシステム(Pall)、NatriFlo HD-Qメンブレンクロマトグラフィー(Natrix Separations)、Sartobind STIC(Sartorius)、Sartobind Q(Sartorius)、又はSartobind Phenyl(Sartorius)であり得る。
【0346】
さらに別の実施形態において、コンホメーション変異体は、流体力学的体積、表面電荷、及び/又は表面疎水性/疎水性露出に基づいて分取用クロマトグラフィー分離により除去される。従って、コンホメーション変異体は、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)を使用して除去される。MMCは、固定相と分析物との間の相互作用の1つより多くの形態を、それらの分離を達成するために利用するクロマトグラフィー方法を指す。従って、MMC樹脂は、いくつかの異なる種類の相互作用:イオン交換、親和性、サイズ排除、及び疎水性が本質的に可能であるリガンドを用いて官能化された媒体に基づく。様々なヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂が市販されており、そして任意の利用可能な形態の材料が使用され得る。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに適した条件の詳細な記載は、WO 2005/044856及びWO 2012/024400(これらの内容はその全体として本明細書に参照により加入される)において示される。
【0347】
一実施形態において、ヒドロキシアパタイトは結晶形態である。ヒドロキシアパタイトは、凝集して粒子を形成し得、そして高温で焼結されて安定な多孔性セラミック塊になり得る。ヒドロキシアパタイトの粒径は、広く変動し得るが、典型的な粒径は、直径1μmから1000μmの範囲に及び得、そして10μm~100μmであり得る。一実施形態において、粒径20μmである。別の実施形態において、粒径は40μmである。さらに別の実施形態において、粒径は80μmである。
【0348】
多数のクロマトグラフィー支持体が、セラミックヒドロキシアパタイトカラムの製造において使用され得、最も広く使用されるものは、I型及びII型ヒドロキシアパタイトである。I型は高いタンパク質結合能を有し、そして酸性タンパク質に対してより良好な能力を有する。しかしII型はより低いタンパク質結合能を有するが、核酸及び特定のタンパク質のより良好な分解能を有する。II型物質はまた、アルブミンに対して非常に低い親和性を有し、そして多くの免疫グロブリンの種及びクラスの精製に特に適している。特定のヒドロキシアパタイト型の選択は、当業者により決定され得る。
【0349】
限定することなく、ヒドロキシアパタイト樹脂は、CHTセラミックヒドロキシアパタイト、I型(20、40又は80μm)(BioRad)、CHTセラミックヒドロキシアパタイトII型(20、40又は80μm)(BioRad)、MPCTMセラミックヒドロキシフルオロアパタイトI型(40μm)、Ca++Pure-HA(Tosoh BioScience)である。
【0350】
さらに、又は代替として、コンホメーション変異体は、上述の分取用SEC、IEX、HIC、又はMMCの任意の連続した組み合わせを使用して除去され得る。
【0351】
本開示を考慮して、当業者は、多価ISVDポリペプチドのコンホメーション変異体を同定し、次いで除去する(又は少なくとも減少させる)ために適したクロマトグラフィー条件を見出すことができる。本明細書に記載されるコンホメーション変異体を同定したら、当業者は、選択されたクロマトグラフィー方法のパラメーター及び条件(グラジエント、緩衝液、濃度)を適合させ、そしてその後にピークの適切なフラクションを取ることができるだろう。例えば、それらに限定されないが、本明細書中の実施例において使用されるクロマトグラフィー条件は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ISVDポリペプチドのコンホメーション変異体の除去(又は少なくとも減少)のために使用され得る。実施例において使用されるクロマトグラフィー条件は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む特定の多価ISVDポリペプチドのコンホメーション変異体を除去する(又は少なくとも減少させる)ために適切なクロマトグラフィー条件の開発のための参照点として少なくとも役立ち得る。
【0352】
詳細には、本出願の教示に基づいて、多価ISVDポリペプチド及びそのコンホメーション変異体の両方を含む組成物からのコンホメーション変異体の除去又は減少は:
i) 分取用クロマトグラフィー技術を適用すること;
ii) 工程(i)から得られたフラクションを、多価ISVDポリペプチドの存在について分析する工程;
iii) 多価ISVDポリペプチドのみを含むがコンホメーション変異体は含まない工程(ii)のフラクションを選択する工程
を含む。
【0353】
工程i)及びii)は、抗体精製の分野、特にISVD精製の分野における当業者に公知の手段により行われ得る。該方法は、本明細書において提供されるコンホメーション変異体の同定及びコンホメーション変異体の除去/減少の両方について詳細に適合/最適化され得る。適切な例となる分析用及び分取用クロマトグラフィー技術は、本明細書に記載される。これらの一般的な技術は、コンホメーション変異体の除去/減少を可能にするために詳細に適合/最適化されなければならない。
【0354】
工程ii)及びiii)は、以下のセクション5.4.5に記載される特定の分析用クロマトグラフィー技術により達成され得る。例えば、(分析用)SE-HPLCにおいて検出可能なポストピークショルダー及び/又は分離したポストピークが無い場合に、クロマトグラフィーフラクションは多価ISVDポリペプチドのみを含むがコンホメーション変異体を含まない。コンホメーション変異体の存在はまた、分析用IEX-HPLCにおいて検出可能な、プレピークショルダー及び/もしくは分離したプレピークが存在しない場合、又はポストピークショルダー及び/もしくは分離したポストピークが存在しない場合も除外され得る。
【0355】
従来技術において、当業者は、本明細書において提供されるような下等真核生物宿主において産生された場合の、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体の存在について知識を有していなかった。本出願により提供されるこの知識に基づいてのみ、当業者は、コンホメーション変異体の具体的な除去/減少が達成され得るように上記の工程i)~iii)を調整/最適化することができる。
【0356】
コンホメーション変異体を含有するフラクションは、廃棄されてもよく、又はコンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換するために本明細書に記載される変換方法(セクション5.4.3「コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への変換」)に従って処理されてもよい。変換の成功は、例えば以下のセクション5.4.5に記載される分析用クロマトグラフィー技術により、本明細書に記載されるように評価され得る。
【0357】
工程iii)の後に得られた多価ISVDポリペプチドのみを含むフラクションは、場合により、当該分野で公知の精製又はろ過工程にかけられてもよい。
【0358】
(分析用)SE-HPLCにおいて検出可能なポストピークショルダー及び/又は分離されたポストピークが本質的に存在しない場合、フラクションは、「多価ISVDポリペプチドのみを含む(がコンホメーション変異体は含まない)」とみなされる。あるいは、分析用IEX-HPLCにおいて検出可能な、プレピークショルダー及び/もしくは分離したプレピークが本質的に存在しない場合、又はポストピークショルダー及び/もしくは分離したポストピークが本質的に存在しない場合、フラクションは、多価ISVDポリペプチドのみを含む(がコンホメーション変異体は含まない)」とみなされる。「プレピークショルダー及び/もしくは分離されたプレピークが本質的に無い」又は「ポストピークショルダー及び/もしくは分離されたポストピークが本質的に無い」は、それぞれSE-HPLC又はIEX-HPLCクロマトグラムにおいて、メインピーク及びプレピーク/ポストピーク(ショルダー)の曲線下総面積に対する、プレピーク/ポストピーク(ショルダー)についての曲線下面積(AUC)の比が、5%より低い、例えば、4.5%もしくはそれ以下、4%もしくはそれ以下、3%もしくはそれ以下、2%もしくはそれ以下、又は1%もしくはそれ以下であることを意味する。一実施形態において、それぞれSE-HPLC又はIEX-HPLCクロマトグラムにおいて検出可能なプレピーク/ポストピーク(ショルダー)は存在しない。
【0359】
別の態様において、コンホメーション変異体は、多価ISVDポリペプチド及びコンホメーション変異体を含む組成物を、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも20mgの負荷率を使用してクロマトグラフィーカラムにアプライすることにより除去されるか又は減少する。この態様の一実施形態において、負荷率は、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも30mg、又は樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも45mgである。一実施形態において、クロマトグラフィーカラムはプロテインAカラムである。従って、コンホメーション変異体は、多価ISVDポリペプチド及びコンホメーション変異体を含む組成物を、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも20mgの負荷率を使用してプロテインAカラムにアプライすることにより除去されるか又は減少する。別の実施形態において、コンホメーション変異体は、多価ISVDポリペプチド及びコンホメーション変異体を含む組成物を、樹脂1mlあたりタンパク質少なくとも45mgの負荷率を使用してプロテインAカラムにアプライすることにより除去されるか又は減少する。
【0360】
ISVDポリペプチド及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からコンホメーション変異体を除去する(又は減少させる)ために使用されるクロマトグラフィー技術は、多価ISVDポリペプチドを含む培養上清に対して適用され得る。例えば、捕獲工程を除去又は減少のために使用することができる。コンホメーション変異体を除去する(又は減少させる)ために使用されるクロマトグラフィー技術はまた、多価ISVDポリペプチドの部分的又は高度に精製された調製物にも適用され得る。例えば、コンホメーション変異体を除去する(又は減少させる)ために使用されるクロマトグラフィー技術は、捕獲工程の後であるが、最初のポリッシング工程の前もしくは最初のポリッシング工程時に、又は1つもしくはそれ以上のさらなるポリッシング工程時に、又はポリッシング工程の後に適用され得る。
【0361】
5.4.5 分析方法
コンホメーション変異体を観察するために使用される分析方法
少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドのコンホメーション変異体は、本明細書において提供される特定の分析用クロマトグラフィー技術により同定され得る。分析用SE-HPLC及びIEX-HPLCのような分析用クロマトグラフィー方法は、当業者に公知である。しかし、コンホメーション変異体を同定する問題に対してこれらの方法を適合/最適化する必要がある。従って、このような分析用クロマトグラフィー技術の適合/最適化のための要件は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含むか又はそれらからなるポリペプチドを下等真核生物において製造すると、本明細書に記載されるようなコンホメーション変異体が(部分的に)生じ得るという知識である。
【0362】
本明細書において提供されるように、減少した流体力学的体積に基づいて、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物と区別することができる。従って、コンホメーション変異体の存在を分析用SE-HPLCにより検出することができる。適切な条件を使用して、コンホメーション変異体の存在は、ポストピークショルダー又は分離したポストピークによりSE-HPLCクロマトグラムにおいて実証される。それ故、コンホメーション変異体の同定のために適合/最適化されたSE-HPLCを使用して、本明細書に記載されるようにコンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件を確認することができる。さらに、コンホメーション変異体の同定のために適合/最適化されたSE-HPLCを使用して、所望のポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からのコンホメーション変異体の除去又は減少を確認することができる。
【0363】
本明細書においてさらに提供されるように、コンホメーション変異体を、変化した表面電荷及び/又は表面疎水性に基づいて所望のポリペプチド生成物と区別することができる。従って、適切な条件を使用して、コンホメーション変異体の存在を(具体的に開発された)分析用IEX-HPLCにより検出することができる。表面電荷及び/又は表面疎水性の変化の質に依存して、コンホメーション変異体の存在は、プレ/ポストピークショルダー又は分離したプレ/ポストピークによりIEX-HPLCクロマトグラムにおいて示され得る。それ故、コンホメーション変異体の同定のために適合/最適化されたIEX-HPLCを使用して、コンホメーション変異体を所望のポリペプチド生成物に変換する条件を確認することができる。さらに、コンホメーション変異体の同定のために適合/最適化されたIEX-HPLCを使用して、所望のポリペプチド生成物及びそのコンホメーション変異体を含む組成物からのコンホメーション変異体の除去及び減少を確認することができる。
【0364】
本開示に基づいて、当業者は、多価ISVDポリペプチドのコンホメーション変異体を同定するために適したクロマトグラフィー条件を見つけることができるだろう。例えば、これらに限定されないが、本明細書における実施例において使用されるクロマトグラフィー条件は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む多価ISVDポリペプチドのコンホメーション変異体の検出のために使用され得る。本明細書における実施例において使用されるクロマトグラフィー条件は、少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDを含む特定の多価ISVDポリペプチドについてコンホメーション変異体を検出するために適したクロマトグラフィー条件の開発のための参照点として少なくとも役立ち得る。基本的な例となる条件を表Cに示す。
【0365】
コンホメーション変異体の特徴づけのために使用されるさらなる分析方法
以下の分析技術は当業者に公知である。例えば、これらに限定されないが、適切な条件は表Cに示される。
【0366】
【表3】
【0367】
ISVDポリペプチドの効力を観測するために使用される分析方法
コンホメーション変異体は、効力の変化によっても所望のポリペプチド生成物と区別され得、ここでコンホメーション変異体は、所望のポリペプチド生成物と比較して減少した効力を有する。さらに、コンホメーション変異体の所望のポリペプチド生成物への(成功した)変換は、それぞれの所望のポリペプチド生成物の効力と比べて、又はコンホメーション変異体を濃縮も枯渇もしていない参照ISVDポリペプチドと比べて、効力の部分的又は完全な回復により実証され得る。
【0368】
これに関して効力は、ポリペプチド中に存在する少なくとも3つ又は少なくとも4つのISVDの1つ又はそれ以上により特定の効果を生じるために必要なポリペプチドの結合能(特定の標的に対して)、機能的活性、及び/又は量を指す。効力は、インビトロアッセイ(例えば、競合リガンド結合アッセイ又は細胞ベースのアッセイ)又はインビボで(例えば、動物モデルにおいて)測定され得る。これらに限定することなく、効力は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子のTNFα誘導発現の阻害、ルシフェラーゼレポーター遺伝子のIL-23誘導発現の阻害、ルシフェラーゼレポーター遺伝子のOX40L誘導発現の阻害、又はヒト血清アルブミンへの結合能を指し得る。所望のポリペプチド生成物とそのコンホメーション変異体との間の効力差異を決定するための適切な例となるアッセイは、(限定することなく):
TNF-アルファ結合部分の効力試験のための細胞ベースのレポーターアッセイ
である。
【0369】
Glo responseTM HEK293_NFkB-NLucP細胞は、NFκB依存性プロモーターの制御下でNanoルシフェラーゼをコードするレポーター構築物で安定にトランスフェクトされたTNF受容体発現細胞である。可溶性ヒトTNFαとのこれらの細胞のインキュベーションは、NFκB媒介Nano-ルシフェラーゼ発現をもたらす。
【0370】
アッセイは、一般的に以下のように行われ得る。Glo responseTM HEK293_NFkB-NLucP細胞は、適切な組織培養プレートにおいて適切な細胞数で通常の増殖培地に播種されるべきである。試験しようとするISVD構築物の希釈系列を、適切で十分な量のヒトTNFαに加え、そして細胞とともに十分な時間(例えば、約5時間)37℃及び5%COでインキュベートする。このインキュベーションの間、ルシフェラーゼレポーター遺伝子のTNF誘導発現は、ISVD構築物により阻害される。インキュベーション後に、プレートを冷却した(例えば、10分間)後、Nano-Gloルシフェラーゼ基質を加えてルシフェラーゼ活性を定量する。基質を加えた5分後に、例えば、Tecan Infinite F-plexプレートリーダーで発光を測定することができる。相対発光量(relative light units)(RLU)として表される発光は、ルシフェラーゼの濃度に直接比例する。
【0371】
IL-23結合部分の効力試験のための細胞ベースのレポーターアッセイ
Glo responseTM HEK293_human IL-23R/IL-12Rb1-Luc2Pは、sis誘導エレメント(SIE)応答性プロモーターの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を含有するレポーター構築物で安定にトランスフェクトされた細胞である。さらに、これらの細胞は、ヒトIL-23受容体の両方のサブユニット、すなわち、IL-12Rb1及びIL-23Rを構成的に過剰発現する。ヒトIL-23を用いたこれらの細胞の刺激は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導する。
【0372】
アッセイは一般的には以下のように行われ得る。Glo responseTM HEK293_human IL-23R/IL-12Rb1-Luc2P細胞は、適切な組織培養プレートにおいて適切な細胞数で通常の増殖培地中に播種されるべきである。試験しようとするISVD構築物の希釈系列を細胞に加え、続いて適切な量の組み換えhIL-23(例えば、3pM)を加える。細胞は十分な時間(例えば、約6時間)37℃でインキュベートされるべきである。インキュベーション工程の後、プレートの冷却期間(例えば、10分間)が必要であり、その後、ルシフェラーゼ基質5’-フルオロルシフェリン(Bio-GloTMルシフェラーゼアッセイシステム)を加えてルシフェラーゼ活性を定量する。基質を加えた5分後に、発光を、例えばTecan Infinite F-plexプレートリーダーで測定することができる。発光(相対発光量RLUで表される)は、ルシフェラーゼ濃度に直接比例する。
【0373】
OX40L結合部分の効力試験のための細胞ベースのレポーターアッセイ
OX40Lの阻害に対する効力を、細胞ベースのレポーターアッセイを使用して評価することができる。例えば、Glo ResponseTM NFkB-luc2/OX40 Jurkat浮遊細胞は、適切な組織培養プレートにおいて適切な細胞数で通常増殖培地中に播種されるべきである。ISVD構築物の希釈系列を細胞に加え、続いて固定濃度の700pM OX40Lを加える。次いでプレートを十分な時間(例えば、3時間)37℃及び5%COでインキュベーターにおいてインキュベートしてOX40L/OX40シグナル伝達によるNF-kBプロモーターの活性化を可能にするべきであり、これが今度はルシフェラーゼ遺伝子の転写を生じる。インキュベーション工程後に、プレートの冷却期間(例えば、10分間)が必要であり、その後ルシフェラーゼ基質5’-フルオロルシフェリン(Bio-GloTMルシフェラーゼアッセイシステム)を加えてルシフェラーゼ活性を定量する。基質を加えた5分後に、例えば、Tecan Infinite F200プレートリーダーで発光を測定することができる。発光(相対発光量、RLUとして表される)は、ルシフェラーゼの濃度に直接比例する。
【0374】
アルブミン結合部分の効力試験のためのELISAベースのアルブミン結合アッセイ
ヒト血清アルブミン(HSA)に対する結合効力を、直接結合ELISAにより測定することができる。例えば、96ウェルマイクロタイタープレートを、炭酸水素塩緩衝液中pH9.6で適切な量のHSAで終夜コーティングし得る。プレート上の非特異的結合部位を、約30分間室温(RT)でSuperblock T20を使用してブロックし得る。ISVD構築物の段階希釈をPBS + 10% Superblock T20中で調製し、そしてHSA被覆プレートに移し、これに約75分間RTにて600rpmで震盪しながらのインキュベーション工程が続く。例えば、1μg/mLのマウス抗ISVD構築物抗体を90分間RTにて600rpmで震盪しながら使用し、続いて50分間0.2μg/mL西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ポリクローナルウサギ抗マウス抗体とともにRTにて600rpmで震盪しながらインキュベーションを行い、結合したISVD構築物を検出することができる。1/3希釈3,5,3’5’-テトラメチルベンジジン(TMB)1液タイプ(one)を加えることにより、結合したHRP標識ポリクローナル抗体を測定することができる。1M HClを加えてHRPと基質との間に生じた発色反応を停止させる。光学密度を、波長450nm及び参照波長620nmで、例えばプレート-分光光度計を使用して測定し得る。このODは、被覆HSAに結合したISVD構築物の量に直接比例する。
【0375】
5.5 製造及び/又は単離もしくは精製方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物
本出願はまた、本明細書に記載される方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物を含む改善された組成物を記載する。これは、生成物に関連するコンホメーション変異体の減少したレベル、又は完全に存在しないことにより特徴づけられる。例えば、本明細書に記載される方法により得ることができるISVDポリペプチドは、生成物に関連するコンホメーション変異体を5%未満、例えば0~4.9%、0~4%、0~3%、0~2%又は0~1%含む。別の実施形態において、本明細書に記載される方法により得ることができるISVDポリペプチドは、生成物に関連するコンホメーション変異体を1%未満、0.5%未満、0.01%含む。一実施形態において、本明細書に記載される方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物は、生成物に関連するコンホメーション変異体を含まない。例えば、本明細書に記載される方法により得ることができるISVDポリペプチドを含む組成物は、生成物に関連するコンホメーション変異体を5%未満、例えば0~4.9%、0~4%、0~3%、0~2%又は0~1%含む。別の実施形態において、本明細書に記載される方法により得ることができるISVDポリペプチドを含む組成物は、生成物に関連するコンホメーション変異体を1%未満、0.5%未満、0.01%未満含む。一実施形態において、本明細書に記載される方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物を含む組成物は、生成物に関連するコンホメーション変異体を含まない。当業者は、例えば本明細書に記載されるようなSE-HPLC及びIEX-HPLCにより、総ポリペプチドの%として生成物に関連するコンホメーション変異体の比率を容易に決定することができる(すなわち、プレピーク又はポストピーク(ショルダー)のAUC/メインピーク及びプレーピーク又はポストピーク(ショルダー)の両方の総AUC を決定することにより)。
【0376】
換言すると、本明細書に記載される方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物は、従来技術の調製物と比較して、改善された構造的均一性を特徴とする。特に、従来技術の調製物は、5%又はそれ以上の比率の生成物に関連するコンホメーション変異体、例えば5~15%、5~20%、5~25%又はそれ以上の比率の生成物に関連するコンホメーション変異体を含み得る。
【0377】
改善された構造的均一性を考慮して、本方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物は、従来技術の調製物と比較して有利である。例えば、本発明の方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物は、治療への応用に有利である。治療上の抗体の使用に関連して、構造的均一性は、臨床上かつ規制に関して最も重要なものである。
【0378】
従って、本出願はまた、本明細書に記載される方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物を含む医薬製剤及び他の組成物を記載する。本明細書に記載される方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物は、治療においても使用され得る(すなわち、医療用途)。
【0379】
当業者は、よく知られた一般的知識に基づいて、本明細書に記載される方法により得ることができる多価ISVDポリペプチド生成物の薬学的に適した製剤を容易に製剤化することができる。さらに、本明細書に引用される、多価ISVDポリペプチドを具体的に扱う参考文献は、明示的に参照される。限定することなく、適用の標準的な経路のための製剤を製造することができ、これらとしては、経鼻、経口、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、腟内、直腸適用、局所適用又は吸入による適用のための製剤が挙げられる。
【0380】
当業者はまた、本明細書に記載される方法により得ることができる治療有効量の多価ISVDポリペプチドの使用を特徴とする処置の適切な方法を容易に考案することもできる。
【実施例
【0381】
6 実施例
以下の実施例は、製造及び精製プロセスの間の多価ISVD構築物のコンホメーション変異体の存在の同定を記載する。このようなコンホメーション変異体が特徴的な生化学的/生物物理学的挙動を示し、クロマトグラフィー方法によるそれらの分離を可能にするということが示された。また、生化学的/生物物理学的特性の差異とは別に、コンホメーション変異体は、それらのそれぞれの標的に対して1つ又はそれ以上のISVDビルディングブロックの効力の差異を示すということがわかった。最終的に、このような望ましくないコンホメーション変異体を、ISVD構築物の精製プロセスの間に、適切な処理条件によりインタクトなISVDポリペプチドに変換することができ、かつ/又はインタクトな形態に加えて望ましくないコンホメーション変異体の両方を含有する組成物から特異的に減少/除去することができるということを示すことができた。
【0382】
6.1 実施例1:化合物Aのコンホメーション変異体の同定
コンホメーション変異体を、多価ISVD構築物の捕獲プロセスの工程の間に同定することができた
多価ISVD構築物のコンホメーション変異体を、多価ISVD構築物の精製の最初の工程(すなわち、捕獲工程段階)の間に同定した。捕獲工程段階は、清澄化された上清から最大のISVD生成物を回収するために行われた。
【0383】
化合物A(配列番号1)の捕獲精製プロセスの間に、分析用サイズ排除プロフィール(SE-HPLC;表Cに示される条件)が、クロマトグラフィープロセスの間に使用される樹脂及び溶出緩衝液によって異なるということが観察された。
【0384】
化合物A(配列番号1)は、3つの異なる標的に結合する重鎖ラマ抗体の可変ドメインが最適化された3つの異なる配列を含む多価ISVD構築物である。ISVDビルディングブロックは、以下のフォーマットでG/Sリンカーとヘッド-トゥー-テイル融合され(N末端からCの末端):OX40L結合ISVD - 9GSリンカー- OX40L結合ISVD - 9GSリンカー - TNFα結合ISVD - 9GSリンカー - ヒト血清アルブミン結合ISVD - 9GSリンカー - TNFα結合ISVD、そして以下の配列を有する:
【0385】
【表4】
【0386】
図1は、プロテインA又は非プロテインA捕獲樹脂でのクロマトグラフィー精製後の溶出液についてのSE-HPLCプロフィールを表す。溶出液のSE-HPLCプロフィールは、非プロテインAと比較して捕獲樹脂としてプロテインAを使用した場合、あまり顕著ではないポストピークショルダー(図1においてポストピーク1と示される)を示した。ポストピークショルダー(ポストピーク1)の存在は、クロマトグラフィー精製の間に使用される条件/樹脂に依存すると結論付けられた。非プロテインA樹脂と対照的に、プロテインA樹脂での溶出は低pHである。これらの観察に基づいて、SE-HPLCプロフィールに対する溶出緩衝液pHの影響を調べた。従って、異なる酸性pHを有する緩衝液A~D(表2に記載される)を、プロテインA捕獲樹脂からの化合物Aの溶出について比較した。
【0387】
【表5】
【0388】
図2は、プロテインA捕獲並びに異なる溶出緩衝液A、B、C、及びDを使用した溶出後(中和なし)の溶出液についてのSE-HPLCプロフィールを表す。ポストピーク1は、B、C及びDと比較して溶出緩衝液Aにおいてあまり顕著ではなかった。図3において、溶出緩衝液A(図3(1))及び溶出緩衝液B(図3(2))を用いた溶出直後の捕獲溶出液及び1M HEPES pH7.0を使用して少なくともpH6.7に中和された捕獲溶出液のSE-HPLCプロフィールを示す。図2並びに図3(1)及び図3(2)において見られるように、SE-HPLCプロフィールにおけるポストピークショルダー(ポストピーク1と示される)は、pH3.6~4.7(緩衝液B~D)での溶出液と比較してpH2.9(緩衝液A)での溶出液についてより低かった。しかし、ポストピーク1は、溶出液をすぐに中和した場合減少しなかった(図3(1)における溶出液と中和した溶出液との比較)。従って、「pH維持」は、ポストピーク1に対する効果を有し得る。溶出緩衝液Bについては、ポストピーク1は、得られた溶出液のその後の中和とは独立して溶出後に観察された(図3(2))。
【0389】
これらの観察に基づいて、SE-HPLCにおけるポストピーク1の検出可能性に対するpHの影響があると結論付けられた。さらに、ポストピーク1はISVD構築物のコンホメーション変異体を表し得ると推測された。わずかに増加した保持時間は、メインピークにより表されるISVD構築物のインタクトな形態と比較して、より緻密なコンホメーションを示し得る。
【0390】
多価ISVD構築物のポリッシング工程段階の間にコンホメーション変異体を同定することができた
多価ISVD構築物のコンホメーション変異体を、ポリッシング工程段階の間にも同定することができた。ポリッシング工程段階は、多価ISVD含有組成物の純度を改善するために捕獲工程の後に行われた。
【0391】
ISVD構築物のポリッシング工程のために、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を行った。従って、25mMクエン酸塩pH6.0中0から350mM NaClへの線形塩グラジエントを、20カラム体積(CV)かけて室温でポリッシングCEX樹脂で適用した。クロマトグラフィープロフィールを図4に示す。
【0392】
線形グラジエントの間に溶出したトップフラクション(図4においてフラクション2A1と呼ばれる)に加えてサイド(フロント)フラクション(図4においてフラクション1C2と呼ばれる)を、SE-HPLCにおいてさらに分析し、そしてロード材料と比較した(図5)。ロード材料についてSE-HPLCで観察されたポストピーク1は、CEX樹脂でのこのグラジエントのトップフラクションには存在していなかった。対照的に、SE-HPLCでの有意なポストピーク1(約60%)が、サイト(フロント)フラクションについて観察された。
【0393】
従って、ISVD構築物のコンホメーション変異体を、ポリッシング工程の間にも同定することができた。CEXポリッシング工程の異なる溶出液フラクションは、異なる比率のインタクトな形態(メインピーク)及びコンホメーション変異体(ポストピーク1)を含有することがSE-HPLCにおいて示された(図5)。CEXポリッシング工程のトップフラクションはコンホメーション変異体が激減していることがわかったが、一方でサイドフラクションは、むしろ濃縮されていた。
【0394】
20CVかけて25mMクエン酸塩pH6.0中0から350mM NaClへのグラジエントを用いてポリッシング手順について試験された、Capto SP Impres(GE Healthcare)及びCapto S ImpAct(GE Healthcare)のような様々なカチオン交換樹脂について、並びに例えば、20CVかけて25mMクエン酸塩pH6.0中0から400mMのグラジエントを用いて(データは示していない)、及び25mMヒスチジンpH6.0及び20CVかけて0から400mMのグラジエントを使用して(データは示していない)、ポリッシング手順について試験された他のCEX樹脂について、これらの結果は同様であった。
【0395】
これらの観察結果は、SE-HPLCで観察されるポストピーク1が、ISVD構築物のコンホメーション変異体を表し得るという結論をさらに強調した。SE-HPLCにおけるわずかに増加した保持時間はより緻密な形態(すなわち、減少した流体力学的体積)を示すが、分取用CEXにおいて観察された保持時間のわずかな差異は、インタクトなISVD生成物と比較して変化した表面電荷を示す。従って、分取用SEC又はCEXのような適切なクロマトグラフィー技術を使用してコンホメーション変異体及びインタクトなISVD生成物を分離する可能性がある。
【0396】
6.2 実施例2:化合物Aのコンホメーション変異体の検証及び特徴づけ
実施例1において、化合物Aは、分析用SE-HPLCの間にメインピーク及びポストピーク1(ポストピークショルダー)として溶出することが示された。わずかに長い保持時間に起因して、ポストピーク1は、多価ISVD構築物のより緻密な形態を指し得ると結論付けられた。さらに、pH2.5の溶出緩衝液を使用したプロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、減少したポストピーク1/メインピーク比を生じ得る。しかし、ポストピーク1/メインピーク比は、捕獲溶出液をすぐに中和した場合に変化しないままであった。従って、コンホメーション変異体はインタクトなISVD生成物に変換可能であり、従って分子サイズは異ならないと結論付けられた。
【0397】
コンホメーション変異体の性質をさらに特徴づけ、そして質量変異体の存在を排除するために、実施例1のCEXポリッシングのコンホメーション変異体を枯渇したトップフラクション及びコンホメーション変異体を濃縮したフラクションを、分析用イオン交換-高速液体クロマトグラフィー(IEX-HPLC;表Cに示される条件、プロトコルI)、キャピラリー等電点電気泳動(CE-IEF)及び逆相超高速液体クロマトグラフィー(RP-UHPLC)による分析にかけた。
【0398】
分析用IEX-HPLCにおける挙動
分析用SE-HPLCと同様に、IEX-HPLCクロマトグラムは、コンホメーション変異体濃縮サイドフラクションについて有意なポストピーク1(約46%)を示し、これはコンホメーション変異体枯渇トップフラクションには存在しないものであった(図6)。
【0399】
CE-IEF/RP-UHPLCにおける挙動
CE-IEF分析試験において、分取用CEX(データは示していない)において得られたサイド(「濃縮」)フラクションとトップ(「枯渇」)フラクションとの間で差異はほどんど観察されなかった。同様に、RP-UHPLC(データは示していない)において両方のフラクションに差異は観察されなかった。
【0400】
CE-IEFと対照的に、IEX-HPLCは、コンホメーション変異体濃縮サイドCEXフラクションとコンホメーション変異体枯渇トップCEXフラクションとの間で異なるクロマトグラフィープロフィールを示した。2つの電荷ベースの方法CE-IEFとIEX-HPLCとの間の主要な差異は、CE-IEFが変性条件(3M尿素)の存在下で実行されることである。CE-IEFにおいて差異がない事は、インタクトなISVD生成物とコンホメーション変異体との間に全体の電荷差異をもたらす化学的改変が無いということを示す。しかし、IEX-HPLCにおける差異は、インタクトなISVD生成物と比較して、コンホメーション変異体のわずかに変化した表面電荷を示唆する。換言すると、コンホメーション変化に起因して表面電荷のみが変化したが、分子の総電荷は変化しなかった。これらの知見はまた、コンホメーション変異体が変性条件により除去され得るという仮説を示唆した。
【0401】
RP-UHPLCにおける両方のCEXフラクションの類似した挙動により、緻密なコンホメーション変異体が、ISVD構築物のインタクトな形態と比較してスクランブルジスルフィド架橋に起因するということは除外された。
【0402】
インタクトなISVD構築物及びそのコンホメーション変異体の効力差異
コンホメーション変異体が任意の程度まで標的結合におけるその効力が異なっているか否かをさらに調べるために、以下のアッセイを、上記の分取用CEXから得られたコンホメーション変異体濃縮サイドフラクション及びコンホメーション変異体枯渇トップフラクションに対して行った。
【0403】
それらのそれぞれの標的に対するISVDの効力を、以下のアッセイを使用して決定した(上の5.4.5項に記載されるとおり):
- TNF-アルファ結合部分の効力試験のための細胞ベースのレポーターアッセイ;
- OX40L結合部分の効力試験のための細胞ベースのレポーターアッセイ;
- アルブミン結合部分の効力試験のためのELISAベースのアルブミン結合アッセイ。
【0404】
サイド(「濃縮」)及びトップ(「枯渇」)フラクションの効力についての結果を表3に示す。
【0405】
【表6】
【0406】
効力の有意な低下が、TNFα効力アッセイにおいて枯渇フラクションと比較してコンホメーション変異体濃縮フラクションについて観察された。従って、化合物Aのコンホメーション変化は、TNFαの結合効力に影響を与える。
【0407】
6.3 実施例3:化合物Aのコンホメーションに影響を与える条件の決定
実施例1及び実施例2からの知見に基づいて、多価ISVD構築物のコンホメーションに影響を及ぼし得る特定の実験条件の影響を評価するために、追加の実験を設定した。試験した条件は、穏やかな変性、ストレス又はカオトロピック剤の存在であった。試験した条件を表4にまとめる。
【0408】
【表7】
【0409】
低pH処理
低pH処理のために、分取用CEX(上に記載される)からの緻密な変異体を濃縮した材料及び枯渇した材料を、pH2.5、pH3.0もしくはpH3.5を有する最終濃度100mMグリシンに達するように、又は配合緩衝液pH6.5(対照)を用いて処理した。サンプルを4時間それぞれのpHでインキュベートし、ついでそのまま分析するか、又は0.1M NaOHで中和し、ついで分析した。緻密な変異体を濃縮した材料及び枯渇した材料に対するpH2.5での処理の影響を、SE-HPLC及びIEX-HPLC(表Cに示される条件;IEX-HPLCプロトコルI)により分析し、そして図7(1)及び(2)(SE-HPLC)並びに図8(IEX-HPLC;緻密変異体濃縮フクラクションのみ)に示した。
【0410】
pH2.5でインキュベートされたコンホメーション変異体濃縮材料について、SE-HPLC及びIEX-HPLCポストピーク1は有意に減少した。両方の分析においてこの減少はメインピークの増加を伴っていたので、これはコンホメーション変異体がインタクトな形態に変換されたことを実証した。さらに、溶出液がpH2.5で4時間インキュベートされた場合(データは示していない)、この変換は中和後も維持された。対照サンプルについてもコンホメーション変異体枯渇材料についても変化は観察されなかった(図7(2);IEX-HPLCについてデータは示していない)。pH3.0及び3.5でインキュベートされた材料については、SE-HPLC及びIEX-HPLCポストピークのわずかな減少のみが観察され、pHが、コンホメーション変異体のインタクトな形態への変換を可能にするほど十分低くなかったことを示唆した(データは示していない)。
【0411】
次いで、インタクトな形態に変換された緻密な変異体の安定性を、pH2.5での低pH処理とその後の中和の後に検証した。インタクトな形態に変換されたこの緻密な変異体の25℃で2週間までの貯蔵の後に、SE-HPLCプロフィールには変化が無く、緻密変異体濃縮材料のpH処理の際のインタクトな形態への変換が維持されたことを実証した(緻密変異体枯渇材料と同様)。同じ結果が5℃で2週間の貯蔵についても得られた(データは示していない)。
【0412】
カオトロピック剤を用いた処理
カオトロピック剤の影響を評価するために、コンホメーション変異体を濃縮した材料及び枯渇した材料を、1M、2M、又は3Mの塩化グアニジニウム(GuHCl)を用いて又は用いずに0.5時間インキュベートし、そしてSE-HPLC(表Cに示される条件;SE-HPLC)及びIEX-HPLC(表Cにに示される条件;IEX-HPLCプロトコルII)により分析した。2M及び3M GuHCl変性剤を用いた処理のコンホメーション変異体濃縮材料に対する影響の結果を図9(SE-HPLC)及び図10(IEX-HPLC)に示す。
【0413】
GuHClとともにインキュベートされた緻密変異体濃縮材料について、SE-HPLC及びIEX-HPLCのポストピーク1は、GuHCl濃度2Mを適用した場合に有意に減少した。さらに、ポストピーク1の減少は、両方の分析についてメインピークの増加を伴っており、コンホメーション変異体がインタクトな形態に変換されたことを実証した。コンホメーション変異体枯渇対照サンプルについては変化は観察されなかった(データは示していない)。
【0414】
3M GuHClの濃度は、試験された化合物Aについては高すぎて、高分子量(HMW)種の形成(SE-HPLCにおけるプレピーク)により実証されるように生成物の分解をもたらした。
【0415】
1M GuHClの適用の際のIEX-HPLC及びSE-HPLC分析におけるポストピーク面積のわずかな減少のみがあった。化合物Aについては、この条件は、コンホメーション変異体をインタクトな形態に完全に変換するためには不十分な変性のようであった(データは示していない)。
【0416】
熱ストレス処理
熱処理については、コンホメーション変異体濃縮材料及び枯渇材料を1又は4時間50℃又は60℃でインキュベートし、その後室温(RT)に再平衡化させた。50℃で1時間の熱ストレスの影響の結果を図11(SE-HPLC)及び図12(IEX-HPLC)に示す。
【0417】
コンホメーション変異体濃縮材料については、SE-HPLC及びIEX-HPLCのポストピークは、材料が50℃で1時間及び4時間のインキュベーションで加熱された場合に有意に減少した(4時間インキュベーションについてのデータは示していない)。この減少は両方の分析についてメインピークの増加を伴っていたので、これはコンホメーション変異体がインタクトな形態に変換されたことを実証した。コンホメーション変異体枯渇サンプルについては変化は観察されなかった(データは示していない)。
【0418】
60℃でのインキュベーションは化合物Aには高すぎるようであり、SE-HPLC及びIEX-HPLCにおける総面積が減少し(生成物の損失)(データは示していない)、生成物の分解をもたらした。
【0419】
pH又はGuHCl処理の際の効力回復
pH2.5処理4時間又は2M GuHCl処理0.5時間の後のコンホメーション変異体の濃縮フラクション及び枯渇フラクション中に存在する化合物AのTNFαに対する効力(実施例2に記載されるとおり)を、未処理のサンプルと比較して決定した。結果を表5に示す。
【0420】
【表8】
【0421】
コンホメーション変異体枯渇フラクションと比較して、未処理のコンホメーション変異体濃縮フラクションについての効力低下が確認された。コンホメーション変異体濃縮フラクションの低pH処理は、コンホメーション変異体枯渇フラクションについて観察されたレベルまでのTNFα効力の回復を生じた。GuHCl処理サンプルについては、効力はより低かったが、処理後の濃縮及び枯渇フラクションに匹敵するものであった。
【0422】
要旨
これらの実験全体で、特定の穏やかな変性条件下で、又は静電相互作用(pH)を変更した場合に、インタクトな形態に変換され得るコンホメーション変異体の存在が確認された。コンホメーション変異体のインタクトなISVD生成物への変換は、変性条件又はpH調整の除去の後も維持されるということも示された。さらに、変換後の効力は回復し、そして25℃又は5℃で2週間維持された(データは示していない)。
【0423】
6.4 実施例4:プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる化合物Aのコンホメーション変異体の分離
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーの間の代替溶出緩衝液の使用又は化合物Aのコンホメーション変異体の除去
コンホメーション変異体の特徴づけの間に得られた結果に基づいて(実施例1及び2)、化合物の捕獲の間に代替の溶出緩衝液条件を試験した。
【0424】
溶出条件及び結果を表6、図13(SE-HPLC)及び図14(IEX-HPLC)に示す(表Cに示される条件、SE-HPLC及びIEX-HPLCプロトコルI)。
【0425】
【表9】
【0426】
少なくとも7.0のpHへの溶出液のpH調整を、0.1M NaOHを使用して行った。
【0427】
0.1Mグリシン中pH2.2での溶出緩衝液を使用して行ったランについて、溶出液材料の一部を0.1M NaOHを使用してすぐにpH7.1に調整し、溶出液材料の別の部分については、pHをpH2.5に調整し、1.5時間インキュベートし、次いでpHを0.1M NaOHを用いてpH7.0に再調整した。
【0428】
SE-HPLCにおいて、ポストピーク1がGuHClを含む溶出緩衝液について有意に減少するということが分かった。しかし、GuHClの存在は、pH2.2の緩衝液を使用した溶出と比較して、溶出液中のHMW種(SE-HPLCにおけるプレピーク)の形成により示されるように、生成物の分解をもたらした。pH2.2での溶出について、SE-HPLCポストピーク1は、非中和溶出液、又はpH2.5に調整され、そして中和前に1.5時間インキュベートされた溶出液と比較して、溶出液がすぐに中和された場合により高かった(図13)。これは、溶出液がすぐに中和された溶出液と比較して、pH2.5に調整され、そして中和前にインキュベートされた溶出液についてポストピークショルダーが消失したIEX-HPLCにおいて裏付けられた(図14)。
【0429】
両方の分析について、ポストピーク(コンホメーション変異体)の減少は、メインピーク(インタクトな形態)の増加を伴っていた。これらの結果全体で、緻密な変異体のインタクトな形態への変換が示唆された。
【0430】
化合物Aのコンホメーション変異体の変換のための、プロテインAのアフィニティークロマトグラフィー後の低pHインキュベーションの使用
上で得られた結果に基づいて、コンホメーション変異体を変換する手段としての低pH処理を、化合物Aについて調べた。
【0431】
低pH処理及びインキュベーションの長さの影響を、pH2.1、pH2.3、pH2.5及びpH2.7、並びに0、1、2、4、6及び24時間のインキュベーションで調べた。捕獲溶出液のpHを、0.1M HClを用いて適切なpH(2.1、2.3、2.5又は2.7)に低下させ、そしてすぐに0.1M NaOHを用いてpH6.0に調整するか(T0)、又は低pHで1時間もしくは2時間もしくは4時間もしくは6時間もしくは24時間インキュベートし、次いでpH6.0に0.1M NaOHを用いて調整した(T1h、T2h、T4h、T6h、又はT24h)。様々な低pH処理サンプルの生成物品質を、0.1M NaOHを用いてすぐにpH6.0に調整された捕獲溶出液(対照;T0)と比較し、そしてIEX-HPLC、SE-HPLC、RP-UHPLC及びキャピラリーゲル電気泳動(CGE)(表C及びに示されるIEX-HPLC条件、プロトコルI)により分析した。SE-HPLC結果を図15(1)及び(2)(T0について)並びに図15(3)及び(4)(T1hについて)に示す。
【0432】
T0で、SE-HPLCにおいて観察されたポストピークは、対照と比較してpH2.1及びpH2.7で低かった。これは、このpH範囲で、化合物Aのコンホメーション変異体の変換が瞬時に起きていることを示す。しかし、SE-HPLCにおいて観察されたポストピーク1は、T0で既にpH2.1、2.3、及び2.5についてより低く、コンホメーション変異体の変換がpH2.5に等しいか又はそれより低いpHで瞬時に起こることを意味する。これはIEX-HPLCにおいて確認され(データは示していない)、ポストピークはT0でpH2.7と比較してpH2.3及び2.5についてより低くかった。
【0433】
1時間インキュベーション以降は、SE-HPLCにおけるポストピークショルダーは全てのpH処理について同様であった。
【0434】
従って、上のデータは、化合物Aのコンホメーション変異体のインタクトな形態への変換が、pH2.1~2.7の範囲に及ぶpHで少なくとも1時間の全ての処理について有効であることを示した。
【0435】
RP-UHPLC及びCGEでは変化が観察されず(データは示していない)、緻密な変異体が分子量(LMWではない)、化学組成、又はジスルフィド架橋(スクランブルS-S)の点で異なっていないということを示す。
【0436】
化合物Aのコンホメーション変異体の変換のための低pHインキュベーションは、pH調整ストック溶液の濃度に依存しない
pH調整溶液の濃度の影響を調べるために、2組のpH調整溶液を試験した:pHを2.6に低下させるために0.1M HCl、及びpHを6.0に調整するために0.1M NaOHを用いる第1の組、並びにpHを2.6に低下させるために2.7M HCl(10% HClに等しい)、及びpHを6.0に調整するために1M NaOHを用いる第2の組。サンプルを1時間pH2.6でインキュベートした後、pH6.0に調整した。SE-HPLC結果を図16Aに示す。
【0437】
2組のpH調整溶液の使用は同等の結果をもたらし、SE-HPLCポストピークの減少はメインピークの増加を伴い、コンホメーション変異体のインタクトな形態への変換に関連付けられた。
【0438】
次いで、中間拡張性を評価するために、低pHインキュベーション工程を、中間スケールランのための過程に導入した。0.1M HClを使用してpHをpH2.6に低下させ、次いで1時間後に0.1M NaOHを加えることによりpH6.0に調整した。
【0439】
SE-HPLC(表C及びに示される条件)結果は、捕獲溶出液(低pH処理前)と比較して、捕獲ろ液(低pHインキュベーション)についてメインピークの増加を伴うポストピーク1の減少を示し、コンホメーション変異体のインタクトな形態への変換を裏付けた(データは示していない)。
【0440】
化合物Aのコンホメーション変異体に対する他の低pH処理の影響
ピキア・パストリスにおける化合物Aの発現、及びタンジェンシャルフローろ過を用いた清澄化の後、Amsphere A3樹脂を使用した捕獲クロマトグラフィーを使用して、化合物Aを他の不純物から単離した。
【0441】
カラムを最初にPBS緩衝液pH7.5で平衡化し、そして目的の化合物を含有する清澄化した無細胞収穫材料をロードした。化合物AはAmsphere A3樹脂に結合し、そして不純物はカラムをフロースルーした。その後、ロードした樹脂を平衡化工程と同じPBS緩衝液で洗浄し、続いてtris緩衝液で洗浄した。tris緩衝液は100mM tris及び1M NaClをpH8.5で含有していた。樹脂をさらに第2の100mM Tris緩衝液pH5.5で洗浄した。化合物Aを、低pHグリシン緩衝液を用いてカラムから溶出した。低pHグリシン溶出緩衝液は、100mMグリシンをpH3.0で含有していた。最後に、樹脂を100mM NaOHを用いて浄化した後、平衡化と同じPBS緩衝液中で貯蔵した。全ての緩衝液を183cm/時で流した。
【0442】
最初の実験において、化合物Aの捕獲溶出液材料のpHを、1M HClを用いてpH2.6、pH2.8、pH2.9、及びpH3.0に低下させた。低pHで1時間及び2時間のインキュベーション後に、0.2M NaOHを用いてサンプルをpH6.0に調整した。T0サンプル、又は対照サンプルは、溶出直後に凍結した捕獲クロマトグラフィーであった。このサンプルはpH4.3を有していた。
【0443】
第2の実験において、クロマトグラフィーカラムから溶出した生成物のpHは、2つの捕獲クロマトグラフィーランにおいて4.1及び3.7であった。捕獲溶出液のpHを、1M HClを用いてpH3.2又はpH3.6に低下させた。低pHで2時間及び4時間のインキュベーション後に、サンプルを0.2M NaOHを用いてpH6.0に調整した。1M HClを用いて化合物Aを目標低pH(すなわちpH3.2又は3.6)に低下させることによりT0を生成し、そしてすぐ0.2M NaOHを用いてpH6.0に調整した(T0)。
【0444】
生成物品質に対するpHの影響を、IEX-HPLCにより時間の関数で分析した。表6-1及び6-2並びに図16B及びCを参照のこと。
【0445】
【表10】
【0446】
【表11】
【0447】
IEX-HPLC結果は、サンプル中のコンホメーション変異体の存在に対する低pH処理の経時的なポジティブな影響を示す。第1の組の実験(pH2.6、pH2.8、pH2.9及びpH3.0)において、対照サンプル中のコンホメーション変異体のレベルは3.5%であった。第2の組の実験(pH3.2及び3.6)において、コンホメーション変異体のレベルは3.1%であった。
【0448】
低pHでの2時間のインキュベーション後に、コンホメーション変異体のレベルは、試験した全てのpHにおいて減少した。コンホメーション変異体に対する低pH処理のポジティブな効果は、pHが低くなるにつれ増加した。最良の減少はpH3.0とpH2.6との間で観察された。
【0449】
6.5 実施例5:化合物Aの低pH処理のスケールアップ(10L及び100L)
前の実施例に基づいて、化合物Aの低pHインキュベーションについて選択された条件は、目標pH2.6、室温で≧60かつ≦120分であった。捕獲溶出液のpHを0.1M HClを使用して低下させ、次いで≧60かつ≦120分後に0.1M NaOHを加えることによりpH6.0に調整した。発酵プロセスを10L及び100Lのスケールにスケールアップした。低pH処理前の捕獲溶出液(「捕獲溶出液」と呼ぶ)及び上記の低pH処理とその後の6.0へのpH調整、そしてろ過の後の捕獲溶出液(捕獲ろ液と呼ぶ)の生成物品質を、SE-HPLC、CGE及びIEX-HPLC(表Cに示される条件、IEX-HPLCプロトコルI)のような分析方法により決定した。全ての出発物質を処理するために、3サイクルの捕獲工程を各スケールについて行った。異なるスケールについての結果を表7に示す。
【0450】
【表12】
【0451】
発酵及び精製のスケールとは無関係に、低pH処理及びろ過工程は、CGE分析でのメインピーク%に関して生成物純度に対して影響を有していなかった。これらの結果は方法の変動の範囲内であった。しかし、驚くべきことに、SE-HPLCによる%HMW種の減少(図17(1)(10L)及び図17(2)(100L)を参照のこと)が、捕獲ろ液及び捕獲溶出液を比較した場合、発酵(それぞれ10L及び100L)及び精製スケールアップ(それぞれ7cm及び20cmカラム直径)の両方において観察された;この減少は、低pH処理及び/又はろ過工程の結果である。さらに、以前に小スケールで観察されたように、メインピーク%純度の有意な増加に加えてポストピーク(コンホメーション変異体)%の減少が、捕獲ろ液を捕獲溶出液と比較した場合に、低pH処理後のIEX-HPLCにおいて観察された(表7並びに図18(10L)及び19(100L))。さらに、ポストピーク1(ショルダー)の減少は、捕獲ろ液のプロフィールについてメインピークの増加を伴っていた。これはIEXデータと相関しており、化合物Aのコンホメーション変異体のインタクトな形態への変換を裏付ける。
【0452】
全体として、これらの結果は、低pH処理が拡張可能なプロセスであり、そして化合物Aのコンホメーション変異体をインタクトな形態に変換するために有効であるということを示した。
【0453】
6.6 実施例6:他のクロマトグラフィー技術による化合物Aのコンホメーション変異体の分離
化合物Aのコンホメーション変異体の除去のためのミックスモードクロマトグラフィー(MMC)の使用
上記の実施例において、化合物Aのコンホメーション変異体を、IEXベースのクロマトグラフィー方法を使用して確実に分離できるということを実証することができた。より低い効力のコンホメーション変異体を、コンホメーション変異体及びインタクトな形態の混合物から除去することも他のクロマトグラフィー方法により達成することができるか否かを決定するために、CHTセラミックヒドロキシアパタイトII型(40μm)樹脂(BioRad)を使用したミックスモードクロマトグラフィー(MMC)を行った。クロマトグラフィー条件を表8にまとめる。
【0454】
【表13】
【0455】
ヒドロキシアパタイト樹脂でのクロマトグラフィープロフィールを図20に示す。CEXと同様に、サイド(フロント)フラクション(F8)及びトップフラクション(F11)を単離し、そしてさらなるSE-HPLC及びIEX-HPLC分析に使用した。両方の分析の結果を図21(1)/(2)(SE-HPLC)及び図22(1)/(2)(IEX-HPLC)に示す。SE-HPLC及びIEX-HPLC(表Cに示される条件;IEX-HPLCプロトコルI)で有意なポストピーク1がフラクションF8(メイン/トップピークの前のピークから採られたフラクション)について観察され、このフラクションがコンホメーション変異体を多く含むということを示した。フラクションF11については、SE-HPLC及びIEX-HPLCポストピーク1がロード材料と比較して有意に減少していたので、このフラクションF11はコンホメーション変異体が枯渇していた。
【0456】
結論として、ヒドロキシアパタイト樹脂での結果は、カチオン交換樹脂で得られた結果と類似していた。従って、ヒドロキシアパタイト樹脂は、化合物Aのコンホメーション変異体及びインタクトな形態の混合物からより低い効力のコンホメーション変異体を除去するために適していることが示された。
【0457】
化合物Aをのコンホメーション変異体の除去のための疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の使用
化合物Aのインタクトな形態からの緻密なコンホメーション変異体の分離は、様々なクロマトグラフィー技術及び樹脂の種類について観察されたので、別のクロマトグラフィー方法である疎水性クロマトグラフィー(HIC)を試験した。最初に、HIC TSK Phenylゲル5 PW(30)(Tosoh)樹脂を使用したグラジエントを、表9に示される条件を使用して実行した。
【0458】
【表14】
【0459】
対応するHICクロマトグラムを図23に示す。CEX及びMMCクロマトグラムに見られるように、試験されたグラジエントは、2つの分離したピーク(第1(メイン)ピーク、続いて第2(サイド)ピークも)を含むHICプロフィールを生じた。各ピークの1つの代表的なフラクションをさらに分析した。メインピーク(F26;トップフラクション)及びサイドピーク(F41;サイドフラクション)の選択されたフラクションからのSE-HPLCデータ(表Cに示される条件)を図24(1)/(2)に示す。対応するSE-HPLCプロフィールにより、SE-HPLCでポストピーク1が見られないので、トップフラクションはより早く溶出するインタクトな形態のみからなるということが分かった。対照的に、SE-HPLCデータは、サイドフラクションの主要な化学種がほとんど完全に、より遅く溶出するコンホメーション変異体である(ほとんど100%ポストピーク1)ということを示した。
【0460】
従って、HICでのグラジエントを使用して、所望のインタクトな形態からのコンホメーション変異体の良好な分離を達成することができた。従って、このHIC樹脂は、化合物Aのコンホメーション変異体及びインタクトな形態の両方の混合物のコンホメーション変異体の除去に適していることが示された。
【0461】
最初に試験したHIC樹脂(TSK Phenylゲル5 PW(30)樹脂)は高分解能樹脂であったので、大規模処理により適している他のHIC樹脂を試験した:Capto phenyl High Sub(GE Healthcare)、Capto phenyl ImpRes(GE Healthcare)、Capto butyl ImpRes(GE Healthcare)、Phenyl HP(GE Healthcare)及びCapto Butyl(GE Healthcare)。硫酸アンモニウム及び塩化ナトリウムを使用したグラジエントを試験した。使用した条件を以下の表10に記載する。硫酸アンモニウムグラジエントとともに使用した樹脂Capto Butyl Impresについてのトップフラクション及びロードのSE-HPLCプロフィールを図25に示す。
【0462】
【表15】
【0463】
SE-HPLCにおけるポストピークは、Capto Phenyl High subを除いて、塩化ナトリウム及び硫酸アンモニウムを使用したグラジエントの両方について、試験した全ての樹脂について有意に減少した。塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムグラジエントのいずれかを用いてHIC樹脂に適したプロセスを使用することにより、コンホメーション変異体を除去することができるということが結果として確認された。
【0464】
樹脂Capto Butyl Impres及び硫酸アンのニウムグラジエントのHICクロマトグラムを図26に示す。クロマトグラムに見られるように、試験されたグラジエントは、2つの分離したピーク、第1(メイン)ピーク及びそれに続くより小さな第2(サイド)ピークを生じた。メインピークのいくつかのフラクション(F15及びF20)及び第2(サイド)ピークの1つのフラクション(F29)を、SE-HPLCによりさらに分析した。得られたクロマトグラム(図27)は、フラクションF29が、より遅く溶出するコンホメーション変異体のみ(ほとんど100% SE-HPLCポストピーク1;ロードピークと比較したピークシフトを参照のこと)を含有することを示した。対照的に、メインピークのフラクション15及び20は、SE-HPLCポストピーク1の存在を示さず、これらのフラクションが、より遅く溶出する望ましくないコンホメーション変異体を枯渇していることを実証した。
【0465】
従って、Capto Butyl Impres樹脂を使用して、疎水性相互作用でグラジエントを使用する化合物Aのコンホメーション変異体の良好な分離が達成された。従って、この樹脂は、化合物Aのコンホメーション変異体及びインタクトな形態の両方の混合物からコンホメーション変異体を除去するために使用可能であることが示された。
【0466】
化合物Aのコンホメーション変異体の除去のためのメンブレンベースのHICの使用
コンホメーション変異体及びインタクトな形態の分離を、カラムにおいてHIC樹脂を使用して十分に達成することができたので、フロースルー中に所望のインタクトな形態を含むフロースルーモードの工程を開発した。従って、HICメンブレンSartobind Phenyl(Sartorius)を使用したさらなるHIC設定を実行した。Sartobind phenylメンブレン(フィルタープレート)でのスクリーニングの条件を表11に記載する。
【0467】
【表16】
【0468】
【表17】
【0469】
代表的な条件(条件C2)のSE-HPLCプロフィールを図28に示す。SE-HPLCポストピーク1は、コンホメーション変異体を含有する参照サンプルと比較して有意に減少した。参照は、低pH処理を受けていないがそのままpH7.4に中和された捕獲溶出液(プロテインAアフィニティークロマトグラフィーから)を使用した。参照はHICにかけなかった。それ故、コンホメーション変異体は参照サンプルから除去もされず変換もしていなかった。
【0470】
さらに、3mL Sartobind phenylメンブレンを使用して最適化を行った。条件を表12に記載する。硫酸アンモニウム及び塩化ナトリウムを、様々な濃度で使用して、フロースルーでのインタクトな形態の回収を最適化した。
【0471】
【表18】
【0472】
最適な条件についてのHICクロマトグラムを図29に示す。ロード、フラクションプール2、及びストリッピングフラクションからのSE-HPLCデータを図30に示す。SE-HPLCポストピーク1は、プール2についてメンブレンのフロースルーから有意に減少した。ストリッピングはSE-HPLCポストピークショルダー、すなわち望ましくないコンホメーション変異体が多く含まれていた。従って、コンホメーション変異体は、HIC phenylメンブレンを使用してフロースルーモードで化合物Aの望ましいインタクトな形態から除去された。回収は硫酸アンモニウムを使用して74%(プール2)、そして塩化ナトリウムを使用して63%(プール2)であった。
【0473】
6.7 実施例7:化合物Bの緻密な変異体の同定及び初期特徴づけ
緻密な変異体が他の多価ISVD構築物についても出現することを確認するために、さらなる調査を化合物Bについて行った。
【0474】
化合物B(配列番号2)は、3つの異なる標的に結合する重鎖ラマ抗体の4つの異なる配列の最適化された可変ドメインを含む多価ISVD構築物である。ISVD結合ブロックは、以下の形式でヘッド-トゥ-テイル(N末端からC末端)でG/Sリンカーを用いて融合され:TNFα結合ISVD - 9GSリンカー - IL23p19結合ISVD - 9GSリンカー - ヒト血清アルブミン結合ISVD - 9GSリンカー - IL23p19結合ISVD、そして以下の配列を有する:
【0475】
【表19】
【0476】
化合物Bタンパク質の品質を、技術の中でもとりわけ、分析用IEX-HPLC(表Cに示される条件、IEX-HPLCプロトコルII)により評価した。
【0477】
精製された化合物Bタンパク質について、いくつかの異なるサイドピークがIEX-HPLCプロフィールにおいて観察された(図31)。質量分析計(MS)と共同した2D-LC多元ハートカット分析(multiple heart cutting analysis)を行い、変異体を同定した。2D-LC-MSにより、IEX-HPLC(1D)プロフィールにおいて観察された全てのピークのトップフラクションを別々に集め、そして脱塩工程(2D)の後に、Q-TOF質量分析計で分析し、IEXピークにより表されたタンパク質の分子量を決定した。2D-LC-MS分析は、ポストピーク1が生成物(メインピーク)と同じ分子量を有することを示し、ポストピーク1は、生成物と比較して変化した表面電荷分布を有し、そのため潜在的に緻密な形態を有する(データは示していない)「インタクトな質量変異体」であると結論づけられた。
【0478】
さらに、化合物Bのポリッシング工程段階の間、いくつかのCEX(カチオン交換クロマトグラフィー)樹脂は、CEXで化合物Aのについて以前に観察されたもの(例えば、実施例1及び2を参照のこと)に類似したクロマトグラフィープロフィール(すなわち、プレピーク「ショルダー」を有するメインピーク)を示した。従って、化合物Bのポリッシング工程段階の間に生成された材料を、その後IEX-HPLCにより分析した。CEX樹脂を使用したグラジエントは、ポリッシングプロセスの間に行われており、ラン条件を表14に示し、クロマトグラムを図32に示す。
【0479】
【表20】
【0480】
フラクション2C4及びフラクション2C7~2C11のプール(図32)をIEX-HPLC分析及びSE-HPLC分析(表Cに示される条件)に出した。結果をそれぞれ図33及び図34に示す。
【0481】
IEX-HPLC分析(図33)において、フラクション2C4はIEX-HPLCポストピーク1を33.6%含んでいたが、この変異体はフラクション2C7~2C11のプール中に<1.0%しか存在していなかった。SE-HPLC結果は、化合物Aについて観察されたものと同様のクロマトグラフィープロフィールを示し、フラクション2C4は、フラクション2C7~2C11と比較してポストピークショルダーを示した。総合すると、これらの結果は、IEX-HPLCポストピーク1が、化合物Aについて観察されたように潜在的に効力に影響を有し得る「緻密な」変異体であり得るということを示唆した。従って、フラクション2C4及びフラクション2C7~2C11のプールを効力分析に出した。
【0482】
TNFα、IL-23及びHSAに対する化合物Bの効力を、5.4.5項に記載されるように決定した:
- TNF-アルファ結合部分の効力試験のための細胞ベースのレポーターアッセイ;
- IL-23結合部分の効力試験のための細胞ベースのレポーターアッセイ;
- アルブミン結合部分の効力試験のためのELISAベースのアルブミン結合アッセイ。
【0483】
効力分析の結果を表15に示す。
【0484】
【表21】
【0485】
33.6% IEX-HPLCポストピーク1を含有する濃縮フラクション2C4について、プールフラクション2C7~2C11と比較して、少なくともTNFαに対する効力について有意な低下が観察された。化合物Bの流体力学的体積及び電荷に影響を与えることに加えて、コンホメーション変化は、少なくともTNFαへの結合にも影響を及ぼすと結論付けられた。
【0486】
従って、緻密な変異体を除去/変換する手段を調べた。
【0487】
6.8 実施例8:化合物Bのコンホメーションに影響を及ぼす条件の決定
化合物Bの低pH処理
化合物Aについて得られた観察結果に基づいて、化合物Bの捕獲溶出液材料に対する低pHインキュベーションを試験した。捕獲溶出液のpHを、1M HClを用いてpH2.1、pH2.3又はpH2.5に低下させた。低pHで1時間のインキュベーションの後、サンプルを1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5に調整した。様々な低pHで処理されたサンプルの生成物品質を、1M酢酸ナトリウムを用いてすぐにpH5.5に調整された捕獲溶出液(対照)と比較し、そしてIEX-HPLC(表16及び図35)及びSE-HPLC(図36)で分析した(実施例7及び表Cにも示される条件;IEX-HPLCプロトコルII)。
【0488】
【表22】
【0489】
IEX-HPLC分析の結果は、低pH処理が生成物の増加(%メインピーク純度)だけでなく緻密変異体の減少(%IEX-HPLCポストピーク1)ももたらすことを示す。さらに、そして化合物Aと同様に、SE-HPLCにおいて観察されたメインピークは、低pH処理後に「鋭く」なり、すぐにpH5.5に調整された捕獲溶出液中の変異体の存在を示唆した。これらの結果を総合すると、生成物(IEX-HPLC及び/又はSE-HPLCでのメインピーク)、従って、化合物Aについて観察された活性生成物に変換することができる緻密変異体の存在が実証された。
【0490】
化合物Aについて得られた観察結果に基づいて、そしてIEX-HPLCポストピーク1が変換され得るか否かを評価するために、カオトロピック剤、熱又は低pHに基づく条件を化合物Bをに対して試験した。次いでサンプルをRP-UHPLC、SE-HPLC及びIEX-HPLCにより分析した。IEX-HPLCポストピーク1に関する変化を有する結果のみをここに示す。
【0491】
低pH処理
低pH処理のために、化合物Bを、100mM最終グリシンpH2.5、pH3.0もしくはpH3.5、又は製剤化緩衝液pH6.5(対照)で処理した。4時間室温でのインキュベーション後に、サンプルを分析するか又は0.1M NaOHで中和した後分析した。非中和サンプルのIEX-HPLC及びSE-HPLCの結果をそれぞれ図37及び38に示す;全ての結果を表17にまとめる。
【0492】
【表23】
【0493】
サンプルを100mMグリシン最終pH2.5で処理し、そして中和するか又は中和せずに4時間室温でインキュベートした場合、化合物BのIEX-HPLCメインピーク%は増加したが、IEX-HPLCポストピークの%は対照と比較して減少し(表17及び図37)、IEX-HPLCポストピーク1がコンホメーション変異体であることを示唆した。IEX-HPLCポストピーク1はメインピーク、従って活性生成物に変換され得る。さらに、サンプルを100mMグリシン最終pH3.5で処理し、そして中和するか又は中和せずに4時間室温でインキュベートした場合、対照と比較してIEX-HPLC結果において有意な変化は観察されず、そしてIEX-HPLCポストピーク1についての限定された減少はpH3.0処理の後観察することができなかった。SE-HPLC結果に関して(表17及び図38)、HMW種の増加は観察されず、IEX-HPLCポストピーク1がHMW種(例えば、可溶性凝集体)に変換されなかったことを示す。さらに、SE-HPLC結果により、pH2.5処理がメインピークの形状に影響を及ぼすことが分かった。メインピークはpH2.5処理後に「鋭く」なり、これはIEX-HPLC結果及び化合物Aで生じた結果と相関していた。
【0494】
カオトロピック剤を用いた処理
カオトロピック剤を用いた処理のために、化合物Bを、3M最終グアニジン塩酸塩、2M最終グアニジン塩酸塩、1M最終グアニジン塩酸塩、又はMilli Q(対照)のいずれかで処理し、その後0.5時間室温でインキュベートした。IEX-HPLCの結果を図39に示す。
【0495】
サンプル中のGuHClの存在はIEX-HPLC法の条件と干渉し、対照と比較して処理されたサンプルのUVシグナルの減少を生じた。統合されたデータは低いシグナル信頼性の欠如によるものであるが(従って示されていない)、クロマトグラムのオーバーレイは、GuHClの添加が緻密な変異体のピーク(IEX-HPLCポストピーク1)を減少し得ることを示す。これらの結果は化合物Aについて得られた結果と一致する。
【0496】
熱ストレス処理
熱処理のために、化合物Bを1時間50℃で、4時間50℃で、1時間60℃で、4時間60℃で(その後室温まで再平衡化)、4時間室温でインキュベートするか、又はインキュベートしなかった(対照)。IEX-HPLC及びSE-HPLCの結果をそれぞれ図40及び41に示す(1時間50℃について)に示し、そして表18にまとめる。
【0497】
【表24】
【0498】
1時間50℃、4時間50℃、1時間60℃、又は4時間60℃で熱処理した場合、化合物BのIEX-HPLCメインピーク%は増加したが、IEX-HPLCピストピーク1の%は対照と比較して減少し、IEX-HPLCポストピーク1がコンホメーション変異体であることを示唆した(表18及び図40)。IEX-HPLCポストピーク1は、潜在的にメインピークに変換され得、従って活性生成物である。さらに、4時間室温でインキュベートした場合、対照と比較して有意な変化は観察されなかった。これらのサンプルをSE-HPLCにより分析した場合、HMW種の増加は観察されず、IEX-HPLCポストピーク1はHMW種(例えば、可溶性凝集体)に変換されなかったことを示した。さらに、SE-HPLC結果(表18及び図41)により、熱処理がメインピークの形状に影響を及ぼすことが分かった。メインピークは熱処理されると「鋭く」なり、これはIEX-HPLC結果及び化合物Aで生じた結果と相関する。
【0499】
要旨
総合すると、これらの結果は、IEX-HPLCポストピーク1が、pH2.5での低pH処理、GuHCl処理及び/又は熱処理により、IEX-HPLC及びSE-HPLCにおけるメインピークのより効力の高いインタクトな形態(本明細書において「インタクトな生成物」と呼ばれる)に変換することができる、化合物Bのコンホメーション変異体(本明細書ではより低い効力の「緻密な変異体」と呼ばれる)であることを裏付けた。
【0500】
6.9 実施例9:化合物Bについての低pH処理の最適化
上記の実施例8において記載される化合物A及び化合物Bの処理の結果に基づいて、緻密な変異体を変換する手段としての低pH処理を、化合物Bについて最適化した。
【0501】
ピキア・パストリスにおける化合物Bの発現及び収穫の後、Amsphere A3樹脂を使用した捕獲クロマトグラフィーを使用して、他の不純物から化合物Bを単離した。
【0502】
カラムを最初にPBS緩衝液pH7.5を用いて平衡化し、そして目的の化合物を含有する清澄化した無細胞収穫材料をロードした。化合物BはAmsphere A3樹脂に結合し、そして不純物はカラムをフロースルーした。続いて、ロードされた樹脂を平衡化工程と同じPBS緩衝液で洗浄し、続いてtris緩衝液で洗浄した。tris緩衝液は、100mM tris、及び1M NaClをpH8.5で含有していた。樹脂をさらに第2の100mM Tris緩衝液pH5.5で洗浄した。化合物Bは、低pHグリシン緩衝液を用いてカラムから溶出された。低pHグリシン溶出緩衝液は、100mMグリシンをpH3で含有していた。最後に、樹脂を100mM NaOHで浄化した後、平衡化と同じPBS緩衝液で貯蔵した。全ての緩衝液は183cm/時で流された。
【0503】
捕獲クロマトグラフィー後に、クロマトグラフィーカラムから溶出する生成物のpHはpH3.8であった。次いで、低pHインキュベーション工程を化合物Bに適用した。
【0504】
低pHインキュベーション時間
(1)初期実験:最初に、pH2.3及びpH2.5での低pH処理の影響(実施例1を参照のこと)を、その後の実験で確認し、そして低pHでのインキュベーションの長さをさらに評価した。捕獲溶出液のpHを、1M HClを用いてpH2.3又はpH2.5に低下させ、そしてすぐに1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5に調整するか(T0)、1時間低pHでインキュベートし、次いで1M酢酸ナトリウム用いて調整するか(T1)、2時間低pHでインキュベートし、次いで1M酢酸ナトリウムを用いて調整するか(T2)、又は4時間低pHでインキュベートし、次いで1M酢酸ナトリウムを用いて調整した(T4)。様々な低pH処理サンプルの生成物品質を、すぐに1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5に調整された捕獲溶出液(対照)と比較し、そしてIEX-HPLC、SE-HPLC及びCGE(表Cに示される条件;IEX-HPLCプロトコルII)により分析した。SE-HPLCの結果を図42A及び42Bに示し、そして表19にまとめた。
【0505】
【表25】
【0506】
IEX-HPLCの結果(表19)に関して、対照、pH2.3 T0及びpH2.5 T0の間に差異は観察されなかった。メインピーク純度%の有意な増加に加えてIEX-HPLCポストピーク1(緻密変異体)の%の減少が、低pHでの1時間インキュベーション、2時間インキュベーション及び4時間インキュベーションについて観察された。さらに、 IEX-HPLCポストピーク1の減少は、最も長いインキュベーション時間で最も有効であった。SE-HPLC結果(表19、図42A及び42B)に関して、捕獲溶出液のpHをpH2.3又はpH2.5に低下させることにより、HMW種(プレピーク)がわずかに増加したが、以前に観察されたように主にメインピークが細くなった。CGEプロフィール(表19)は、メインピーク純度について異なるサンプル間で有意な差異を示さず、緻密な変異体はインタクトな生成物と異なる分子量を有していないという初期2D-LC結果(実施例7)を裏付けた。総合すると、これらの結果は、IEX-HPLCポストピーク1は緻密な変異体であり、低pH2.3及びpH2.5処理を1時間、2時間及び4時間行うことによりIEX-HPLC及びSE-HPLCにおけるメインピークに変換することができるということを裏付けた。
【0507】
(2)さらなる実験:次いで、初期実験の低pH処理を拡大した。化合物Bの捕獲材料のpHを、1M HClを用いてpH2.7、pH2.9、pH3.1、pH3.3、pH3.5、及びpH3.9に低下させた。低pHで2時間及び4時間のインキュベーション後に、サンプルを1M酢酸ナトリウムでpH5.5に調整した。
【0508】
化合物Bの捕獲溶出液のpHを、1M HClを用いて目標低pH(すなわち、上に示したようにpH2.7~3.9)に低下させ、そしてすぐに1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5に調整することによりT0を生成した(T0)。
【0509】
時間の関数での低pH処理の生成物品質に対する影響をIEX-HPLCにより分析した。表20及び図43A及びBを参照のこと。
【0510】
【表26】
【0511】
IEX-HPLC結果は、サンプル中のコンホメーション変異体の存在に対して低pH処理のポジティブな影響を示す。T0サンプル中のコンホメーション変異体のレベルは、試験した全てのサンプルにおいて同様であった。実験の初期の組、すなわちpH2.3及び2.5において、このレベルは約4.5%であった。さらなる実験において、T0(pH2.7、2.9、3.1、3.3、3.5及びpH3.7)における対照サンプル中のコンホメーション変異体のレベルは約3%であった。
【0512】
低pHでの2時間のインキュベーションの後に、コンホメーション変異体のレベルは試験した全てのpHにおいて減少した。コンホメーション変異体に対する低pHのポジティブな効果は、より低いpHで、すなわちpH3.0未満で増加した。
【0513】
低pHでの4時間のインキュベーションの後に、コンホメーション変異体のレベルは、試験した全てのpHについてさらに減少した。最良の減少はpH2.3で、pH2.9まで観察された。
【0514】
この実施例において得られた全ての結果は、コンホメーション変異体に対する低pH、特にpH3又はそれ以下のポジティブな影響を示す。
【0515】
さらなる低pH処理
次いで、低pH処理の動作範囲の広さを調べるために、pH2.4及びpH2.6での2時間の低pHインキュベーションを調べた。捕獲溶出液のpHを、1M HClを用いてpH2.4又はpH2.6に低下させ、そしてサンプルを室温で2時間インキュベートした。次いで1M酢酸ナトリウムを用いてサンプルをpH5.5に調整した。様々な低pH処理されたサンプルの生成物品質を、1M酢酸ナトリウムを用いてすぐにpH5.5に調整された捕獲溶出液(対照)を比較し、そしてIEX-HPLC、SE-HPLC及びGEにより分析した。結果を図44に示し、そして表21にまとめる。
【0516】
【表27】
【0517】
-HPLC結果(表21)は、pH2.4及びpH2.6での2時間インキュベーション後に、メインピーク純度%の有意な増加に加えてIEX-HPLCポストピーク1(緻密変異体)%の減少も示す。SE-HPLC結果(表21及び図44)は、捕獲溶出液のpHのpH2.4又はpH2.6への低下がHMW種のわずかな増加をもたらしたが、以前に観察されたようにメインピークが細くなった。CGEプロフィール(表21)は、対照と低pH処理サンプルとの間で有意な差異を示さず、緻密な変異体がインタクトな生成物と異なる分子量を有していないという初期の2D-LC結果(実施例7)を裏付けた。総合すると、これらの結果は、IEX-HPLCポストピーク1が、pH2.4及び2.6で2時間の処理によりIEX-HPLCにおけるメインピークのインタクトな形態に変換することができるコンホメーション変異体であるということを裏付けた。
【0518】
低pH調整手順
最後に、方法の次の精製工程に及ぼす影響を検討するためにpHを適合させる手順を調べた。実際に、低pH処理の後に1M酢酸ナトリウムを用いてpHをpH5.5に達するまで増加させることにより、サンプルの導電率は有意に上昇した。次いでサンプルを、次のクロマトグラフィー工程に適した導電率(≦6.0mS/cm)まで水で高度に希釈しなければならなかった。これはロード体積及び結果として工程所要時間有意に増大させた。
【0519】
低pH処理後のpH調整のための異なるアプローチを、2つの独立して実験で行った(表22)。実験1において、捕獲溶出液を、1M酢酸ナトリウムpH9を用いてすぐにpH5.5及び導電率≦6.0mS/cmに調整するか(対照1)、又は捕獲溶出液を最初に1M HClを用いてpH2.4に2時間調整し、次いで1M酢酸ナトリウムでpH5.5に調整し、そしてMilliQ水で一定導電率(≦6.0mS/cm)に達するまで希釈した。
【0520】
実験2において、捕獲溶出液を、すぐに1M酢酸ナトリウムpH9を用いてpH5.5及び電導度≦6.0mS/cmに調整するか(対照2)、又は捕獲溶出液を最初に1M HClを用いてpH2.6に2時間調整し、次いで(i)所定の体積の1M酢酸ナトリウムpH5.5を加えて約50mM酢酸ナトリウムに到達させること、(ii)0.1M NaOHを用いてpH5.5に調整すること、及び(iii)必要な場合、水を用いて導電率≦6.0mS/cmに調整することにより、pH5.5及び電導度≦6.0mS/cmに調整した。
【0521】
【表28】
【0522】
低pH処理後にpHをpH5.5に増加させるためにアプローチ(表21及び表22)とは独立して、IEX-HPLC ポストピーク1の%の同様の減少がIEX-HPLCにおいて観察された。驚くべきことに、以前の化合物Bの結果と比較して、新しいpH調整アプローチ(1M酢酸ナトリウムpH5.5及び0.1M NaOHの混合)を用いてSE-HPLCにおいてHMW種の増加はなかった(表22及び図45)。さらに、SE-HPLCメインピークが細くなったことは、pH2.6での低pH処理そして新しいpH調整アプローチの後でもなお観察された(図45)。最後に、希釈倍率(pH5.5に調整された溶出液の体積/捕獲溶出液の体積)は、新しいpH調整アプローチでは有意に低く(表22)、従って次の精製工程で処理されるべき体積を減少させることにより工程所要時間全体を改善した。
【0523】
6.10 実施例10:低pH処理の化合物Bに対する影響
初期特徴づけは、IEX-HPLCポストピーク1(すなわち、緻密な変異体)を濃縮したフラクションについて効力の低下を示し、そして低pH処理は化合物Bの緻密な変異体をより活性なインタクトな生成物へと変換するので、化合物Bのコンホメーション変異体に対する低pH処理の影響を、効力が回復するかどうかを評価するために以下において調べた。表23に示されるラン条件を用いてCEX樹脂を使用したグラジエントを実行した。クロマトグラムを図46に示す。
【0524】
【表29】
【0525】
CEXクロマトグラムは、緻密な変異体を含有する予測されたメインピークショルダーを示した。フラクション10~14(図46)のプールを、低pH処理をせず、又はpH2.5での低pH処理の後にIEX-HPLC分析(表C条件に示される条件;IEX-HPLCプロトコルII)に出した。IEX-HPLC結果の要旨を表24に示す。
【0526】
【表30】
【0527】
IEX-HPLCポストピーク1が19.5%から8.0%に減少したことにより証明されるように、低pH処理は、IEX-HPLCポストピーク1の緻密変異体をメインピークのインタクトな生成物に変換した。低pH処理されたサンプルを効力分析に出し、そして以前に得られた結果と比較した(表25)。低pH処理は、緻密な変異体を活性な生成物に変換することにより、効力を、特にTNFαに対して回復した。従って、低pH処理は化合物Bの緻密変異体を活性なインタクト生成物へと変換する手段である。
【0528】
【表31】
【0529】
6.11 実施例11:化合物Bのより低い効力の緻密変異体の除去のためのHICの使用
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により化合物Aの緻密変異体を除去/濃縮することに成功したので、HICを、化合物Bの緻密変異体の除去についても試験した。Capto Butyl ImpRes樹脂(GE Healthcare)を使用したグラジエントを、表26に示されるラン条件を用いて実行した。クロマトグラムを図47に示す。HICロード(適切なローディング条件で交換されたポリッシング溶出液緩衝液)及び溶出フラクション14/19/20/24/28を、SDS-PAGEにより分析した(図48)。フラクション14及びフラクション18~26をIEX-HPLCにより分析した(表27)。
【0530】
【表32】
【0531】
【表33】
【0532】
クロマトグラフィーHICプロフィール(図47)で観察されるように、このグラジエントは2つの分離したピークを生じた。SDS-PAGE分析(図48)は、様々なフラクションのメインバンドが、緻密な変異体について予測されたように、同様の分子量を有していた。興味深いことに、IEX-HPLC分析(表27)は、HICプロフィールの第1のピーク(フラクション14)のみが活性生成物及び活性のより低い緻密な変異体を含有することを明らかにし、それぞれ「インタクトな生成物」47.9%及び「緻密な変異体」52.1%であった。さらに、IEX-HPLC分析(表27)は、HICプロフィールの第2のピーク(フラクション19~26)中に緻密な変異体は存在していないということを示した。従って、化合物Bのコンホメーション変異体を、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより完全に除去し、かつ/又は濃縮することができた。
【0533】
6.12 実施例12:捕獲カラムでの負荷率を増加させることによる、より低い効力の緻密変異体の除去/減少。
【0534】
化合物Bについて捕獲工程を最適化するために、負荷率(生成物mg/樹脂ml)、ロード流量(cm/時)、溶出緩衝液のpH、ロードpH及び精製プロセスの洗浄液のような様々なパラメーター(すなわち、因子)を、JMP (SAS Institute)ソフトウェアからの決定的スクリーニング計画(Definitive Screening Design)(DSD)を使用した実験設計(DOE)アプローチを使用して評価した。これらの因子の応答に対する影響を評価するために、様々な出力(すなわち、応答)を測定した。応答としては、限定されないが、捕獲工程の間にIEX-HPLCポストピーク1を減少させる/除去することが可能か否かを評価するためにIEX-HPLC分析が挙げられる。DOE結果を、DSDアプローチに従ってJMPソフトウェアにより分析した。興味深いことに、試験した様々な因子のうち、負荷率のみがIEX-HPLCポストピーク1に対して影響を有していた(図49)。驚くべきことに、緻密な変異体のIEX-HPLCポストピーク1を、負荷率を増加させることにより有意に除去/減少させることができた(表28)。従って、ISVD生成物を用いた捕獲カラムでの負荷率の増加は、望ましくないより低い効力の緻密変異体を減少させる/除去する手段として使用され得る。
【0535】
【表34】
【0536】
6.13 実施例13:化合物Bの低pH処理のスケールアップ(10L及び100L)
上の実施例に基づいて、化合物Bの低pHインキュベーションのために選択された条件は、2.5の目標pH、室温で2時間であった。捕獲溶出液のpHを1M HClを用いて低下させ、次いで2時間後に、(i)約50mM酢酸ナトリウムに達するように所定の体積の1M酢酸ナトリウムpH5.5を加えること、(ii)0.1M NaOHを用いてpH5.5に調整すること、及び(iii)必要な場合、水を用いて導電率≦6.0mS/cmに調整することにより、pH5.5及び導電率≦6.0mS/cmに調整した。次いで、化合物Bの製造プロセスを、さらなる精製のために10L及び100Lの発酵スケールにスケールアップした。分析方法SE-HPLC、IEX-HPLC、CGEを使用して、低pH処理前の捕獲溶出液(すなわち、捕獲溶出液)及び低pH処理後に上記のように5.5にpH調整し、そしてろ過した捕獲溶出液(すなわち、捕獲ろ液)の生成物品質を分析した。2サイクルの捕獲工程を各スケールについて実行した。様々なスケールの結果を表29に示す。
【0537】
【表35】
【0538】
最初に、発酵及び精製スケールとは関係なく、低pH処理及びろ過工程は、CGE分析及びCGEプロフィールでのメインピーク%に関して生成物品質に影響を有しておらず、それらの結果は方法変動性の範囲内であった(表29)。驚くべきことに、HMW種%の減少が捕獲ろ液及び捕獲溶出液を比較した場合に両方のスケールにおいて観察され、従って低pH処理及び/又はろ過工程に起因し得る(表29)。さらに、SE-HPLC結果(図50及び図51)は、低pH処理がメインピークの形状を影響を及ぼすことを裏付けた。メインピークは低pH処理後に(例えば、捕獲ろ液中)「鋭く」なり、これはIEX-HPLC結果及び化合物A及びについて得られた結果と相関していた。最後に、より小さいスケールで以前に観察されたように、メインピーク純度%の有意な増加に加えてIEX-HPLCポストピーク1(緻密な変異体)%の減少も、捕獲ろ液を捕獲溶出液と比較した場合に低pH処理後にIEX-HPLCで観察された(表29)。
【0539】
総合すると、これらの結果は、低pH処理が拡張可能なプロセスであり、かつ多価ISVD生成物構築物のより低い効力の望ましくない緻密変異体の、効力のあるインタクトな生成物への変換において有効であるということを示した
【0540】
6.14 実施例14:化合物Cの緻密変異体の同定及び初期特徴づけ
緻密変異体が他の多価ISVD構築物についても出現することを確認するために、化合物Cについてさらなる調査を行った。
【0541】
化合物C(配列番号69)は、2つの異なる標的に結合する重鎖ラマ抗体の3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多価ISVD構築物である。ISVDビルディングブロックは、ヘッド-トゥ-テールで(N末端からC末端へ)G/Sリンカーを用いて以下の形式で融合されており:TNFα結合ISVD - 9GSリンカー- ヒト血清アルブミン結合ISVD - 9GSリンカー - TNFα結合ISVD、そして以下の配列を有する:
【0542】
【表36】
【0543】
ピキア・パストリスにおける化合物Cの発現及びタンジェンシャルフローろ過による化合物の収穫後に、Amsphere A3樹脂を使用した捕獲クロマトグラフィーを使用して、他の不純物から化合物Cを単離した。
【0544】
カラムを最初にPBS緩衝液pH7.3を用いて平衡化し、そして化合物Cを含有する清澄化した無細胞収穫材料をロードした。化合物CはAmsphere A3樹脂に結合し、そして不純物はカラムをフロースルーした。続いて、ロードされた樹脂を平衡化工程と同じPBS緩衝液を用いて洗浄した。化合物Cを低pHグリシン緩衝液を用いてカラムから溶出させた。低pHグリシン溶出緩衝液は、100mMグリシンpH3.0を含有していた。最後に、樹脂を100mM NaOHで浄化した後、平衡化と同じPBS緩衝液中で貯蔵した。全ての緩衝液は183cm/時で流された。
【0545】
捕獲クロマトグラフィー後に、クロマトグラフィーカラムから溶出する生成物のpHはpH3.5であった。その後、化合物Cを低pHインキュベートした。捕獲溶出液のpHを1M HClを用いてpH2.5又はpH3.0に低下させた。低pHで2時間及び4時間のインキュベーション後に、サンプルを1M酢酸ナトリウムpH6.0を用いてpH5.5に調整した。1M HClを用いて化合物Cを目標低pH(すなわちpH2.5又は3.0)に低下させ、そしてすぐ1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5に調整することによりT0を生成した(T0)。
【0546】
化合物Cタンパク質の品質をSE-HPLCにより評価した。化合物Cについても、明確なポストピークがSE-HPLCにおいて観察された(図53A及びB)。
【0547】
生成物品質に対するpHの影響を、SE-HPLCにより時間の関数で分析した(表31及び図54を参照のこと)。
【0548】
【表37】
【0549】
SE-HPLC結果は、サンプル中のコンホメーション変異体の存在に対する低pH処理のポジティブな影響を示す。T0サンプル中のコンホメーション変異体のレベルは、試験した2つのサンプルにおいて同様であり、すなわち、pH2.5サンプルについて緻密変異体6.7%及びpH3.0サンプルについてコンホメーション変異体6.8%であった。これら2つの値は、初期サンプル、すなわち低pHで処理されていない捕獲溶出液と同様であり、この場合、コンホメーション変異体のレベルは6.9%であった。低pHでのインキュベーションの2時間後に、コンホメーション変異体の減少が試験した全てのpHについて観察された。この減少は、さらに低pHでのインキュベーション4時間までの間継続した。
【0550】
この実施例において得られた全ての結果は、コンホメーション変異体のパーセンテージに対する低pHのポジティブな影響を示す。
【0551】
6.15 実施例15:CHO細胞におけるISVD産生の際の緻密変異体の不在
化合物C(配列番号69)のCHO細胞における発現の後、MabSelect Xtra樹脂を使用した捕獲クロマトグラフィーを使用して、他の不純物から化合物Cを単離した。
【0552】
カラムを最初にTris緩衝液を用いて平衡化し、そして目的の化合物を含有する清澄化無細胞収穫材料をロードした。平衡化緩衝液は、pH7.5で50mM Tris、150mM NaClを含有していた。化合物CはMabSelect Xtra樹脂に結合し、そして不純物はカラムをフロースルーする。続いて、ロードされた樹脂を平衡化工程と同じTris緩衝液で洗浄し、続いてTris洗浄緩衝液で2回めの洗浄を行った。洗浄緩衝液はpH7.5で10mM Tris、10mM NaClを含有していた。化合物Cを、低pHグリシン緩衝液を用いてカラムから溶出した。低pHグリシン溶出緩衝液は、pH3.0で50mMグリシンを含有していた。最後に、樹脂を100mMグリシン緩衝液pH2.5で再生し、そして50mM NaOH、1M NaClで浄化した後、Et-OH中で貯蔵した。全ての緩衝液を191cm/時で流した。
【0553】
捕獲クロマトグラフィー後に、クロマトグラフィーカラムから溶出する生成物のpHは3.4であった。その後、化合物Cを低pHインキュベートした。捕獲溶出液のpHを、1M HClを用いてpH2.5又はpH3.0に低下させた。低pHでの2時間のインキュベーション後に、サンプルを1M HEPES pH7.0を用いてpH5.5に低下させた。すぐにpH5.5に調整された捕獲溶出液はこの実験における対照サンプルであった。
【0554】
化合物Cタンパク質の品質をSE-HPLCにより評価した。化合物CがCHO細胞において産生された場合、SE-HPLCにおいてポストピークは観察されなかった(図55)。
【0555】
SE-HPLC結果は、サンプル中にコンホメーション変異体が存在していないことを示した。
【0556】
6.16 実施例16:化合物Dのコンホメーション変異体の同定及び初期特徴づけ
化合物D(配列番号70)は、3つの異なる標的に結合する重鎖ラマ抗体の4つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多価ISVD構築物である。ISVDビルディングブロックは、ヘッド-トゥ-テールで(N末端からC末端に)G/Sリンカーを用いて以下の形式で融合され:TNFα結合ISVD - 9GSリンカー - IL-6結合ISVD - 9GSリンカー - ヒト血清アルブミン結合ISVD - 9GSリンカー - IL-6結合ISVD、そして以下の配列を有する:
【0557】
【表38】
【0558】
ピキアにおける化合物Dの発現及び収穫後に、Amsphere A3樹脂を使用する捕獲クロマトグラフィーを使用して他の不純物から化合物Dを単離した。
【0559】
カラムを最初にPBS緩衝液pH7.5を用いて平衡化し、そして目的の化合物を含有する清澄化無細胞収穫材料をロードした。化合物DはAmsphere A3樹脂に結合し、そして不純物はカラムをフロースルーする。続いて、ロードされた樹脂を平衡化工程と同じPBS緩衝液で洗浄した。化合物Dを、低pHグリシン緩衝液を用いてカラムから溶出した。低pHグリシン溶出緩衝液は、pH3.0で100mMグリシンを含有していた。最後に、樹脂を100mM NaOHで浄化した後、平衡化と同じPBS緩衝液中で貯蔵した。全ての緩衝液を233cm/時で流した。
【0560】
化合物Dを低pHインキュベートした。捕獲溶出液のpHを、1M HClを用いてpH2.5、pH2.7、pH2.9、pH3.1、pH3.2、pH3.4及びpH3.6に低下させた。低pHでの2時間及び4時間のインキュベーション後に、サンプルを、0.1M酢酸ナトリウムpH5.6を用いてpH5.5に調整した。1M HClを用いて化合物Dを目標低pH(すなわち、pH2.3、pH2.7、pH2.9、pH3.1、pH3.2、pH3.4及びpH3.6)に低下させ、そしてすぐに1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5に調整することによりT0を生成した(T0)。
【0561】
時間の関数での生成物の品質に対するpHの影響をSE-HPLCにより分析した(表33及び図56)。
【0562】
【表39】
【0563】
SE-HPLC結果は、サンプル中のコンホメーション変異体の存在に対する低pH処理のポジティブな影響を示す。T0サンプル中のコンホメーション変異体のレベルは、試験した全てのサンプルにおいて同様であった。T0、pH2.9、3.1、3.2、3.4及びpH3.6での対照サンプル中のコンホメーション変異体のレベルは約8.7%であった。より低いpH、すなわち、pH2.5、pH2.7では、開始時の量は、pHのポジティブな影響のためにより低かった(pH7.6及びpH8.2)。
【0564】
低pHでの2時間のインキュベーション後に、コンホメーション変異体のレベルは低下した。コンホメーション変異体に対する低pHのポジティブな効果は、より低いpHで増加した。
【0565】
低pHでの4時間のインキュベーションの後、コンホメーション変異体のレベルはさらに低下した。最も良好な減少はpH2.3で、pH3.1まで得られた。
【0566】
この実施例において得られた全ての結果は、コンホメーション変異体に対する低pHの経時的なポジティブな影響を示す。
【0567】
6.17 実施例17:化合物Eのコンホメーション変異体の同定及び初期特徴づけ
化合物E(配列番号71)は、3つの異なる標的に結合する重鎖ラマ抗体の4つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多価ISVD構築物である。ISVDビルディングブロックは、ヘッド-トゥ-テールで(N末端からC末端へ)G/Sリンカーを用いて以下の形式で融合されており:TNFα結合ISVD - 9GSリンカー - IL-6結合ISVD - 9GSリンカー - ヒト血清アルブミン結合ISVD - 9GSリンカー - IL-6結合ISVD、そして以下の配列を有する:
【0568】
【表40】
【0569】
ピキアにおける化合物Eの発現及び収穫の後に、Amsphere A3樹脂を使用した捕獲クロマトグラフィーを使用して、他の不純物から化合物Eを単離した。
【0570】
カラムを最初にPBS緩衝液pH7.5で平衡化し、そして目的の化合物を含有する清澄化した無細胞収穫材料をロードした。化合物EはAmsphere A3樹脂に結合し、そして不純物はカラムをフロースルーした。続いて、ロードされた樹脂を、平衡化工程と同じPBS緩衝液で洗浄した。化合物Eを低pHグリシン緩衝液を用いてカラムから溶出した。低pHグリシン溶出緩衝液は100mMグリシンをpH3.0で含有していた。最後に、樹脂を100mM NaOHで浄化した後、平衡化と同じPBS緩衝液中で貯蔵した。全ての緩衝液を233cm/時で流した。
【0571】
化合物Eを低pHインキュベートした。捕獲溶出液のpHを、1M HClを用いてpH2.5、pH2.7、pH2.9、pH3.1、pH3.2、pH3.4及びpH3.6に低下させた。低pHで2時間のインキュベーション後に、サンプルを、0.1M酢酸ナトリウムpH5.6を用いてpH5.5に調整した。化合物Eを1M HClを用いて目標低pH(すなわち、pH2.5、pH2.7、pH2.9、pH3.1、pH3.2、pH3.4及びpH3.6)に低下させ、そしてすぐに1M酢酸ナトリウムを用いてpH5.5に調整することによりT0を生成した(T0)。
【0572】
時間の関数での生成物品質に対するpHの影響をSE-HPLCにより分析した(表35及び図57)。
【0573】
【表41】
【0574】
SE-HPLCの結果は、サンプル中のコンホメーション変異体の存在に対する低pH処理のポジティブな影響を示す。T0サンプル中のコンホメーション変異体のレベルは、試験した全てのサンプルにおいて同様であった。T0、pH2.9、3.1、3.2、3.4及びpH3.6での対照サンプル中のコンホメーション変異体のレベルは約7.5%(又はそれ以上)であった。より低いpH、すなわち、pH2.5、pH2.7では、pHのポジティブな影響に起因して開始量はより低かった(pH7.2)。
【0575】
低pHで2時間のインキュベーション後に、コンホメーション変異体のレベルは低下した。コンホメーション変異体に対する低pHのポジティブな効果は、より低いpHで増加した。この実施例において得られた全ての結果は、コンホメーション変異体に対する低pHの経時的なポジティブな影響を示す。最も良好な減少はpH2.5でpH2.9まで得られた
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15-3】
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図16A
図16B
図16C
図17-1】
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図18
図19
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図21-1】
図21-2】
図22-1】
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図24-1】
図24-2】
図25
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図27
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図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42A
図42B
図43A
図43B
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53A
図53B
図54
図55
図56
図57
【配列表】
2023519967000001.app
【国際調査報告】