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特表2023-519969リソソーム蓄積症に関するプロテオミクススクリーニング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】リソソーム蓄積症に関するプロテオミクススクリーニング
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230508BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230508BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230508BHJP
   C12N 9/76 20060101ALN20230508BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALN20230508BHJP
   C07K 17/00 20060101ALN20230508BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N27/62 V
C07K16/18
C12N9/76
C12Q1/37
C07K17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559563
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 US2021025270
(87)【国際公開番号】W WO2021202807
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/002,992
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522349742
【氏名又は名称】シアトル・チルドレンズ・ホスピタル・ドゥーイング/ビジネス/アズ・シアトル・チルドレンズ・リサーチ・インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,シフーン
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ダユハ,レムウィリン
(72)【発明者】
【氏名】イー,ファン
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4B050
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA09
2G041JA02
2G041LA08
2G045BB01
2G045CA25
2G045DA20
2G045DA44
2G045FB06
2G045FB07
2G045JA06
4B050CC07
4B050DD11
4B050KK18
4B050LL03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR48
4B063QS33
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA17
4H045BA60
4H045BA71
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
I型ムコ多糖症(MPS I)及びポンペ病を含むリソソーム蓄積症(LSD)の初期検出は、各疾患が、一度症状が現れると致死性となる可能性があるため、患者の転帰を大幅に改善することができる。乾燥血液スポット(DBS)、口腔スワブ、末梢血単核球細胞(PBMC)、または白血球(WBC)を含む生体試料を使用する、MPS I及びポンペ病のスクリーニングについて記載する。開示された方法及びアッセイは、新生児でLSDをスクリーニングするためのロバストな方法を提供する。開示された方法及び分析により、LSDを有する患者が、酵素補充療法(ERT)に対する免疫応答を生み出すか否かについての速やかな予測もまた可能となり、これにより、LSDの患者に対する治療が改善される。開示された方法及びアッセイは、MPS I及びポンペ病などの、LSDの偽欠損症症例により引き起こされる偽陽性の数もまた、さらに減少させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における、ポンペ病及びI型ムコ多糖症(MPS I)のスクリーニング方法であって、前記方法が、
前記対象に由来する生体試料を入手することと、
前記生体試料由来のタンパク質を酵素により消化して、ペプチドの混合物を得ることと、
前記ペプチドの混合物から、
配列番号5のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドであって、前記GAAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号68のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記GAAシグネチャーペプチドと、
配列番号2の第1のIDUAシグネチャーペプチドであって、前記第1のIDUAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第1のIDUAシグネチャーペプチドと、
配列番号1のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドであって、前記第2のIDUAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第2のIDUAシグネチャーペプチドと、
を濃縮することと、
前記濃縮したペプチドで、液体クロマトグラフィー複数反応モニタリング質量分析(LC-MRM-MS)を実施して、各シグネチャーペプチドの濃度を測定することと、
前記対象が
前記GAAのシグネチャーペプチドの濃度が、所定の閾値濃度を下回る場合、または、前記GAAシグネチャーペプチドが存在しない場合に、ポンペ病を、及び
前記第1及び第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が、対応する所定の閾値濃度を下回る場合、または、前記第1及び第2のIDUAシグネチャーペプチドが存在しない場合に、MPS Iを
患うと診断することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記方法を、前記対象で、フェニルケトン尿症、原発性先天性甲状腺機能低下症、嚢胞性線維症、及び鎌状赤血球症のうちの1つ以上をさらにスクリーニングする、新生児スクリーニング(NBS)の一部として実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法を、前記対象においてポンペ病及び/またはMPS Iの臨床的症状が見られない中で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生体試料が乾燥血液スポット(DBS)、口腔スワブ、末梢血単核球細胞(PBMC)、または白血球(WBC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素がトリプシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生体試料内の、I型ムコ多糖症(MPS I)及び/またはポンペ病の1つ以上のシグネチャーペプチドの検出方法であって、前記方法が、
対象から前記生体試料を入手することと、
前記生体試料由来のタンパク質を酵素により消化して、ペプチドの混合物を得ることと、
前記ペプチドの混合物から、
配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドであって、前記第1のIDUAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第1のIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号2の第2のIDUAシグネチャーペプチドであって、前記第2のIDUAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含むVLドメイン、を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第2のIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号3のポンペ病の第1のGAAシグネチャーペプチドであって、前記第1のGAAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号44のCDRH1、配列番号45のCDRH2、及び配列番号46のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号47のCDRL1、配列番号48のCDRL2、及び配列番号49のCDRL3を含むVLドメイン、を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第1のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号4のポンペ病の第2のGAAシグネチャーペプチドであって、前記第2のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第2のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号5のポンペ病の第3のGAAシグネチャーペプチドであって、前記第3のGAAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号68のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含むVLドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第3のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号6のポンペ病の第4のGAAシグネチャーペプチドであって、前記第4のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第4のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号7のポンペ病の第5のGAAシグネチャーペプチドであって、前記第5のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第5のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号8のポンペ病の第6のGAAシグネチャーペプチドであって、前記第6のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第6のGAAシグネチャーペプチド;及び/または
配列番号9のポンペ病の第7のGAAシグネチャーペプチドであって、前記第7のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、前記第7のGAAシグネチャーペプチド;
を濃縮することと、
ならびに、
前記濃縮したペプチドで、液体クロマトグラフィー複数反応モニタリング質量分析(LC-MRM-MS)を実施して、各シグネチャーペプチドの濃度を測定することで、前記生体試料内の、MPS I及び/またはポンペ病の1つ以上のシグネチャーペプチドを検出することと、
を含む、前記方法。
【請求項7】
前記生体試料が乾燥血液スポット(DBS)、口腔スワブ、末梢血単核球細胞(PBMC)、または白血球(WBC)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素がトリプシンである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
各シグネチャーペプチドの濃度を、対応する所定の閾値濃度と比較することと、
前記対象が、
前記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が、対応する所定の閾値濃度を下回る場合、あるいは、前記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドが存在しない場合に、MPS Iを、及び/または
前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの濃度が、対応する所定の閾値濃度を下回る場合、あるいは、前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドが存在しない場合に、ポンペ病を
患うと診断することと、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
各シグネチャーペプチドに対する前記所定の閾値濃度が、正常な対照対象の集団に由来する、対応する生体試料中の各シグネチャーペプチドの平均濃度の標準偏差から計算される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生体試料がDBSであり、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、前記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、10pmol/L~350pmol/Lの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生体試料がPBMCであり、正常な対照対象の集団由来のPBMCにおける、前記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、300pmol/L~1000pmol/Lの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記生体試料が口腔スワブであり、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブにおける、前記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、100pmol/L~1000pmol/Lの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記生体試料が口腔スワブであり、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブにおける、前記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、30pmol/g~85pmol/gの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記生体試料がDBSであり、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、前記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、10pmol/L~250pmol/Lの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記生体試料がPBMCであり、正常な対照対象の集団由来のPBMCにおける、前記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、350pmol/L~1000pmol/Lの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記生体試料が口腔スワブであり、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブにおける、前記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、100pmol/L~1000pmol/Lの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記生体試料が口腔スワブであり、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブにおける、前記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、30pmol/g~80pmol/gの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記生体試料がDBSであり、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、前記配列番号5のポンペ病の第3のGAAシグネチャーペプチドの平均濃度が、25pmol/L~250pmol/Lの範囲の濃度を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記配列番号1の第1のIDUAシグネチャーペプチドの濃縮に使用した、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号18のVHドメイン、及び/または配列番号21のVLドメインを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項21】
前記配列番号2の第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃縮に使用した、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号30のVHドメイン、及び/または配列番号33のVLドメインを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項22】
前記配列番号3の第1のGAAシグネチャーペプチドの濃縮に使用した、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号57のVHドメイン;配列番号65のVLドメイン;配列番号55の重鎖;または配列番号63の軽鎖のうちの1つ以上を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項23】
前記配列番号5の第3のGAAシグネチャーペプチドの濃縮に使用した、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号79のVHドメイン;配列番号87のVLドメイン;配列番号77の重鎖;または配列番号85の軽鎖のうちの1つ以上を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、MPS I及び/またはポンペ病に対する1つ以上の治療を受けており、前記生体試料が、前記1つ以上の治療の前に入手され、前記方法が、
前記1つ以上の治療中または後に、前記対象に由来する第2の生体試料で、前記入手、消化、濃縮、及び実施を繰り返すこと、
ならびに
前記1つ以上の治療が、
前記1つ以上の治療中または後の、前記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が、前記1つ以上の治療前の、前記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの対応するペプチド濃度を上回る場合、MPS Iに、及び/または
前記1つ以上の治療中または後の、前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの濃度が、前記1つ以上の治療前の、前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの対応する濃度を上回る場合、ポンペ病に
対して効果的であることを測定すること、
あるいは
前記1つ以上の治療が、
前記1つ以上の治療中または後の、前記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が、前記1つ以上の治療前の、前記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの対応する濃度以下である場合、または、前記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドが存在しない場合、MPS Iに、及び/または
前記1つ以上の治療中または後の、前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの濃度が、前記1つ以上の治療前の、前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの対応する濃度以下である場合、または、前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドが存在しない場合、ポンペ病に
対して効果的でないことを測定すること
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、
前記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が存在しない場合、MPS Iに、及び/または
前記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの濃度が存在しない場合、ポンペ病に
対して、酵素補充療法(ERT)に対する免疫応答を生み出すことを予測すること
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項26】
ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート(MTX)、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、リツキシマブ、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、及び/または血漿交換を前記対象に投与して、前記免疫応答を低下または防止することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫応答が、ERTにおいて、酵素に対する中和抗薬剤抗体を生み出すことを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
対象における、I型ムコ多糖症(MPS I)及び/またはポンペ病をスクリーニングするためのアッセイであって、前記アッセイが、
(i)
配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号1のMPS Iのシグネチャーペプチドに結合する、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;
配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号2のMPS IのIDUAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含むVLドメイン;
配列番号44のCDRH1、配列番号45のCDRH2、及び配列番号46のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号47のCDRL1、配列番号48のCDRL2、及び配列番号49のCDRL3を含むVLドメイン;及び/または
配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号68のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含むVLドメイン;及び/または
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント:
及び/または
(ii)
配列番号4のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号6のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号7のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号8のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;及び/または
配列番号9のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
及び/または
(iii)
配列番号1のMPS IのIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号2のMPS IのIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号4のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号5のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号6のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号7のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号8のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;及び/または
配列番号9のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド
を含む参照シグネチャーペプチド
を含む、前記アッセイ。
【請求項29】
前記参照シグネチャーペプチドが同位体標識されている、請求項28に記載のアッセイ。
【請求項30】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが磁気ビーズに付着している、請求項28に記載のアッセイ。
【請求項31】
配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項32】
前記VHドメインが配列番号18で説明され、前記VLドメインが配列番号21で説明される、請求項31に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項33】
配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項34】
前記VHドメインが配列番号30で説明され、前記VLドメインが配列番号33で説明される、請求項33に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項35】
配列番号44のCDRH1、配列番号45のCDRH2、及び配列番号46のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号47のCDRL1、配列番号48のCDRL2、及び配列番号49のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項36】
前記VHドメインが配列番号57で説明される、及び/または、前記重鎖が配列番号55で説明される;ならびに
前記VLドメインが配列番号65で説明される、及び/または、前記軽鎖が配列番号63で説明される
請求項35に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項37】
配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号68のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項38】
前記VHドメインが配列番号79で説明される、及び/または、前記重鎖が配列番号77で説明される;ならびに
前記VLドメインが配列番号87で説明される、及び/または、前記軽鎖が配列番号85で説明される
請求項37に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項39】
(i)
配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号1のMPS Iのシグネチャーペプチドに結合する、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;
配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号2のMPS IのIDUAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含むVLドメイン;
配列番号44のCDRH1、配列番号45のCDRH2、及び配列番号46のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号47のCDRL1、配列番号48のCDRL2、及び配列番号49のCDRL3を含むVLドメイン;及び/または
配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号68のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含むVLドメイン;
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント:
及び/または
(ii)
配列番号4のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号6のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号7のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号8のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;及び/または
配列番号9のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
及び/または
(iii)
配列番号1のMPS IのIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号2のMPS IのIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号4のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号5のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号6のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号7のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号8のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;及び/または
配列番号9のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド
を含む参照シグネチャーペプチド
を含むキット。
【請求項40】
濾紙カード、パンチツール、口腔スワブ、採血管、消化酵素、消化緩衝液、抗体またはその抗原結合フラグメントの固体支持体;及び溶出緩衝液のうちの1つ以上をさらに含む、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記参照シグネチャーペプチドが同位体標識されている、請求項39に記載のキット。
【請求項42】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが磁気ビーズに付着している、請求項39に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、本明細書に完全に記載されているかのようにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/002,992号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府が後援する研究または開発に関する声明
本発明は、全て国立衛生研究所によって授与されたHD098180及びAI123135の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表に関する声明
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は2GT6083_ST25.txtである。テキストファイルは74KBで、2021年3月31日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0004】
本開示は、I型ムコ多糖症(MPS Iまたはハーラー症候群)、及びポンペ病を含む、リソソーム蓄積症(LSD)に関する臨床診断及び新生児スクリーニングを提供している。開示された方法及び分析により、LSDを有する患者が、酵素補充療法(ERT)に対する免疫応答を生み出すか否かについての速やかな予測もまた可能となり、これにより、LSDの患者に対する治療が改善される。開示された方法及び分析はさらに、LSDの偽欠損症症例により引き起こされる偽陽性の数を減少させることができる。
【背景技術】
【0005】
利用可能な効果的な治療を伴う多くの疾患が存在する。しかし、これらの病気の多くでは、一旦、症状が現れると、その疾患は既に致命的であるか、不可逆的な損傷をもたらしている。そのような障害の例としては、リソソーム蓄積症(LSD)などの代謝障害が挙げられる。これらとしては、I型ムコ多糖症(MPS I)及びポンペ病が挙げられる。
【0006】
LSDは、リソソーム機能の欠陥によりもたらされる、50種類を超える遺伝性代謝障害の群を含む。リソソームは、大型分子の破壊、及び、破壊フラグメントが、リサイクルのための細胞の他の部分への中継を担う酵素で満たされた、細胞内区画である。本プロセスは、いくつかの重要な酵素を必要とし、これらの酵素のうちの1つにおける欠陥は、大型分子の細胞内での蓄積を引き起こし得、最終的に細胞を殺傷する。LSDを有する患者は、骨格筋、骨、及び神経系への損傷を有し得る。
【0007】
LSDに対する治療としては、酵素補充療法(ERT)における、(例えば、薬剤形態での)機能性外部酵素の提供が挙げられる。しかし、患者の中には、中和抗体を含む、ERTに対して免疫が媒介する阻害反応を生み出すものもある。免疫制御を行うと、患者が本免疫応答と戦うことができるものの、これは、ERTの前に開始するときが最も効果的である。したがって、LSDを患う患者が、治療の開始前に、ERTに対する免疫反応を生み出すか否かを知ることが、重要となり得る。現在、どの患者がこのような免疫反応を生み出すかを予想する分子分析は、時間がかかって労働集約的であり、完了するのに数ヶ月を要する。この時間の間に、患者はERT中和抗体を生み出す場合がある。それにもかかわらず、現在、ERTに対する免疫反応の予想に速やかに役立ち得る、速いターンアラウンドタイムを備えた標準的な臨床試験は存在しない。
【0008】
新生児スクリーニング(NBS)は、米国で毎年生まれる400万人の乳児を対象とした、日常的に行われる標準的な公的予防必須スクリーニング検査である。NBSでは通常、生後24~48時間に血液検査が行われる。スクリーニングでは通常、濾紙に付着した新生児のかかとからの数滴の血液を使用する。乾燥血液スポット(DBS)を含む紙は、検査が行われるまで保管してもよい。
【0009】
NBS評価を実施するために、DBSから乾燥血液のパンチを採取し、臨床検査を実施して、出生時には明らかではないが、後年の深刻な健康問題の原因となる障害を示す血液内の特定の物質(マーカーまたはバイオマーカーと呼ばれる)の有無を検出する。スクリーニングされる障害は状態ごとに異なるが、ほとんどの状態では、フェニルケトン尿症、原発性先天性甲状腺機能低下症、嚢胞性線維症、及び鎌状赤血球症がスクリーニングされる。NBSは、患者の転帰を改善し、罹患した個体の長期的な障害を回避すると同時に、医療費を削減するのに非常に効果的であることが証明されている。
【0010】
MPS I及びポンペ病を含む、いくつかのLSDに対するNBSは、多くの州で認可されている。スクリーニングには、典型的には、タンデム質量分析またはデジタルマイクロ流体蛍光分析法による、DBSにおけるリソソーム酵素活性の測定が伴う。所定のカットオフ値を下回る酵素活性に関するアッセイ値を有する新生児が、LSDに対して陽性であるとみなされる。しかし、分析精度を欠いていると、スクリーン陽性結果を確認するために、さらなる二番手の試験の保証が必要となる可能性がある。酵素アッセイは、自然の基質とは同一ではない、合成基質に依存する。したがって、酵素は、これらの人工基質に対して異なる挙動を有し、誤った診断を引き起こす可能性がある。さらに、酵素アッセイは、関連する酵素の機能及び構造がインタクトなままであることを必要とし、これによって、NBS試料を、国または州の様々な場所から運搬及び貯蔵する間に制御することが困難となる。
【0011】
したがって、より低い偽陽性率及び高い陽性予測率でLSDをスクリーニングするために、ロバストでシンプルな方法及びアッセイが必要であり、同時に、患者がERTに対して免疫反応を生み出すか否かの速やかな予測が可能となる。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、I型ムコ多糖症(MPS I;ハーラー症候群)及びポンペ病を含むLSDに関して、対象をスクリーニングするために使用可能な多重アッセイの開発について記載する。このアッセイは、壊滅的でしばしば致命的な臨床症状が現れる前にこれらの障害を確実に診断することにより、影響を受けた個体の転帰を大幅に改善し得る。アッセイは、他の源の生体試料のなかでも、DBSを使用して、これらの障害と関連するマーカーの有無を検出することができる。特定の実施形態では、対象は新生児であり、DBSは既に、既存のNBS手順の一部としてルーティンにより収集されている。特定の実施形態では、試料は、NBSからの推定の陽性結果の後、フォローアップ確認のためにクリニックで収集される、口腔スワブ、末梢血単核球細胞(PBMC)、または、白血球(WBC)を含むことができる。特定の実施形態では、アッセイは、対象がERTに対する免疫反応を生み出すか否かを予測することができ、確認されたLSD患者から、酵素偽欠損症の症例を区別することができる。
【0013】
本開示は、選択された反応モニタリング質量分析(immuno-SRM)と組み合わせたペプチド免疫親和性濃縮を使用して確実に検出及び定量化され得る、各障害に関連するペプチドを記載している。本開示は、示されたペプチドを濃縮するために使用可能な高親和性抗体もまた提供する。
【0014】
特定の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号5のCDR1、配列番号6のCDR2、及び配列番号7のCDR3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号8のCDR1、配列番号9のCDR2、及び配列番号10のCDR3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む。特定の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号13として説明されるVHドメイン、及び、配列番号16として説明されるVLドメインを含む。特定の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号17のCDR1、配列番号18のCDR2、及び配列番号19のCDR3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号20のCDR1、配列番号21のCDR2、及び配列番号22のCDR3を含むVLドメインを含む。特定の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25として説明されるVHドメイン、及び、配列番号28として説明されるVLドメインを含む。特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載する抗体またはその抗原結合フラグメントを含むアッセイ及びキットを提供する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、組換え抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0015】
特定の実施形態は、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、新生児、及びまた、高リスク対象において、MPS I及び/またはポンペ病に関してスクリーニングをすることを含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、MPS I及び/またはポンペ病に関して治療されている対象において、正しい陽性症例を測定し、偽欠損症を取り除き、1つ以上の治療の有効性を測定することことができる。特定の実施形態は、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントを使用して、1つ以上の生体試料において、MPS I及び/またはポンペ病の1つ以上のシグネチャーペプチドを検出することを含む。本開示は、対象が、MPS I及び/またはポンペ病に対する酵素補充療法(ERT)に対して免疫応答を生じるか否かを予測するための方法もまた提供する。
【0016】
本明細書で提出される図面のいくつかは、色つきにすることでよりよく理解され得る。出願人は、元の提出資料の一部として、色つき版の図面を考慮し、後の要旨において、図面の色つき画像を提示する権利を留保する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】I型ムコ多糖症(MPS I;ハーラー症候群)及びポンペ病に対して、選択された反応モニタリング質量分析(immuno-SRM-MS)に連結された、ペプチド免疫親和性濃縮に対して使用される、タンパク質標的及びペプチド配列を列挙する表を示す。総量、親イオン質量、娘yイオン質量、及び娘bイオン質量もまた示す。
図2】immuno-SRM-MSのプロセスを示す概略図である。
図3】11名のMPS I疾患患者(2つの処置後試料を含む9名の処置前患者:2名の弱毒化形態;4名の重症形態;及び3名の不明形態。2名の処置後患者)(ERT:酵素補充療法;BMT:骨髄移植;LOD:検出下限)を示す。Aは、100名の正常対照及び11名のMPS I患者における、IDUA 218ペプチドバイオマーカーレベルを示す(点線は、IDUA 218に対するカットオフを表す)。Bは、0~10pmol/Lからフォーカスした、図3Aの拡大版を示す(破線は、IDUA 218のLODを表す)。Cは、100名の正常対照及び11名のMPS I患者における、IDUA 462ペプチドバイオマーカーレベルを示す(点線は、IDUA 462に対するカットオフを表す)。Dは、0~5pmol/Lからフォーカスした、図3Cの拡大版を示す(破線は、IDUA 462のLODを表す)。
図4】A及びBは、内部標準を乾燥血液スポット(DBS)マトリックスにスパイクしたときの、IDUAペプチドの線形応答を示す(点線は、正常コホートで発見されたペプチド最低レベルを表す)。
図5】A及びBは、DBS及び末梢血単核球(PBMC)試料におけるIDUAペプチド濃度を示す(DBS:5つの3mmパンチ;PBMC:250μgのタンパク質)。
図6】A及びBは、DBS及び口腔スワブ試料におけるIDUAペプチド濃度を示す(DBS:5つの3mmパンチ)。
図7】A及びBは、IDUA 218ペプチドバイオマーカー(図7A)、及び、IDUA 462ペプチドバイオマーカー(図7B)に対する、100名の正常対照(NC)、9名のMPS I患者(MPS I pt)、及び4名の偽欠損症症例(偽MPS I)における、IDUA濃度の比較を示す。
図8A】免疫化ウサギ由来の血清によるペプチド捕捉後の、精製ペプチド(左)及びDBS試料(右)からのGAAペプチドに対する、複数反応モニタリング(MRM)追跡を示す。GAA 332 MRM追跡を示す。
図8B】免疫化ウサギ由来の血清によるペプチド捕捉後の、精製ペプチド(左)及びDBS試料(右)からのGAAペプチドに対する、複数反応モニタリング(MRM)追跡を示す。GAA 855 MRM追跡を示す。
図9】単離された形質細胞由来の上清抗体によるペプチド捕捉後の、PBMC試料からのGAA 855に対する、内部複数反応モニタリング(MRM)追跡を示す。
図10A】免疫化ウサギ由来の血清によるペプチド捕捉後の、精製ペプチド(I)、DBS試料(II)、及び口腔スワブ試料(III)からのGAAペプチドに対する、複数反応モニタリング(MRM)追跡を示す。GAA 155 MRM追跡を示し、TTPTFFPK(配列番号3)、親イオン質量469.7527++である。
図10B】免疫化ウサギ由来の血清によるペプチド捕捉後の、精製ペプチド(I)、DBS試料(II)、及び口腔スワブ試料(III)からのGAAペプチドに対する、複数反応モニタリング(MRM)追跡を示す。GAA 376 MRM追跡を示し、WGYSSTAITR(配列番号5)、親イオン質量571.2855++である。
図11】GAA 376ペプチドバイオマーカー(WGYSSTAITR(配列番号5)親イオン質量571.2855++)に対する、3つの正常対照(NC1、NC2、NC3)、3つの真の陽性ポンペ患者(PD1、PD2、PD3)、ならびに2つの偽欠損症症例(偽1及び偽2)における、DBSでのGAA濃度の比較を示す。
図12】以下を含む、本開示の例示的な配列を示す:
【表1-1】
【表1-2】
【発明を実施するための形態】
【0018】
利用可能な効果的な治療を伴う多くの疾患が存在する。しかし、これらの病気の多くでは、一旦、症状が現れると、その疾患は既に致命的であるか、不可逆的な損傷をもたらしている。初期診断によって恩恵にあずかる障害の例としては、I型ムコ多糖症(MPS I)及びポンペ病を含む、リソソーム蓄積症(LSD)などの代謝障害が挙げられる。
【0019】
LSDは、リソソーム機能の欠陥によりもたらされる、50種類を超える遺伝性代謝障害の群を含む。リソソームは、大型分子の破壊、及び、破壊フラグメントが、リサイクルのための細胞の他の部分への中継を担う酵素で満たされた、細胞内区画である。本プロセスは、いくつかの重要な酵素を必要とする。これらの酵素のうちの1つにおける欠陥は、大型分子の細胞内での蓄積を引き起こし得、最終的に細胞を殺傷する。
【0020】
I型ムコ多糖症(MPS I;ハーラー症候群)は、酸性ムコ多糖体症の群に属する希少なLSDである。MPS Iはさらに、重症型及び弱毒化型に分けることができる。MPS Iの重症形態は、ハーラー症候群としても知られている。MPS Iの重症形態及び弱毒化形態は、類似の症状及び合併症を有する。しかし、MPS Iの弱毒化形態は、よりゆっくりとした疾患の進行、及び/または後の年齢での症状開始を示す。特定の実施形態では、弱毒化MPS Iを患う対象は、早期の進行遅延を示さず、及び/または、精神能力の進行性衰退を経験しない。特定の実施形態では、症状及び合併症の開始は、弱毒化MPS Iを患う患者に関しては、3歳から10歳の間で生じる。特定の実施形態では、疾患重症度のスペクトルは、弱毒化MPS Iを患う個体に対しては広範囲であり、彼ら彼女らの20代から30代における死をもたらす、生命を脅かす合併症から、通常の寿命で、深刻な関節問題及び心肺疾患を伴うことを含む。特定の実施形態では、重症MPS Iを患う個体では、線形成長が3歳までに低下する。特定の実施形態では、精神障害は、重症MPS Iを患う個体において進行性であり深刻である。特定の実施形態では、重症MPS Iを患う個体では、人生の最初の10年以内に死が生じる。特定の実施形態では、重症MPS Iを患う個体と弱毒化MPS Iを患う個体の診断を、臨床及び検査所見を用いて行う。MPS Iを患う個体は、大頭症、脳内での流体増加、心臓弁異常、見た目の異なる顔面の特徴、低身長、関節変形、肝臓及び脾臓の拡大、ならびに大きな舌を有し得る。上気道感染症及び睡眠時無呼吸症が、気道狭窄によって生じる可能性がある。MPS Iを患う人は多くの場合、角膜混濁が進行し、難聴を有し、再発性耳感染症を有する。深刻なMPS Iを患う子どもは通常、寿命が短くなり、後期小児期までしか生きない場合もある。心臓疾患及び気道閉塞が、重症及び減衰したの両方を患う人における、主たる死因である。MPS Iは、IDUA遺伝子内での変化により引き起こされ、グリコサミノグリカン(またはムコ多糖)と呼ばれる、体内で産生される複合糖質類を破壊するために必要な、α-L-イズロニダーゼをコードする。IDUA酵素の欠損により、全ての細胞のリソソーム内での、グリコサミノグリカンの増加、及び、組織の進行性損傷がもたらされる。MPS Iの治療法としては、酵素補充療法(ERT)で欠損した、または失われたα-L-イズロニダーゼ酵素を提供すること;造血幹細胞移植(HSCT);骨髄移植;及び、疾患の症状を緩和することが挙げられる。
【0021】
ポンペ病(PD)は、心筋及び骨格筋を無能にする、希少な遺伝リソソーム蓄積症である。PDは、乳児期に開始するもの、及び遅発性のものを含むことができる。乳児期に開始するPDはさらに、古典的、または非古典的として特徴付けることができる。特定の実施形態では、症状は、古典的な形態である乳児期に開始するPDを患う乳児においては、生後数ヶ月以内に現れる可能性がある。特定の実施形態では、古典的な形態である乳児期に開始するPDを患う乳児は、以下の症状:筋肉衰弱;不十分な筋緊張;肝臓拡大;心臓欠陥;体重増加不能及び想定速度での成長不能;及び/または、呼吸問題を有する可能性がある。特定の実施形態では、古典的な形態である乳児期に開始するPDを患う乳児は、生後1年で心不全により死亡する。特定の実施形態では、症状は、非古典的な形態である乳児期に開始するPDを患う乳児に関しては、1歳までに現れる可能性がある。特定の実施形態では、非古典的な形態である乳児期に開始するPDを患う乳児は、以下の症状:運動スキルの遅れ及び進行性の筋肉衰弱;異常に大きな心臓;及び/または呼吸問題を有する可能性がある。特定の実施形態では、非古典的な乳児期に開始するポンペ病を患う子どもは、初期小児期までしか生きない。遅発性PDは、小児期、青年期、または成人期の遅くに現れ、通常、乳児期に開始する形態よりも軽度である。特定の実施形態では、遅発性PDは、心臓の問題を含む可能性が低い。特定の実施形態では、遅発性PDの経験を患う個体は、特に脚、胴体、及び、呼吸を制御する筋肉において、進行性の筋肉衰弱を有する可能性がある。特定の実施形態では、遅発性PDを患う個体は、呼吸不全を有する可能性がある。PDは、酸α-グルコシダーゼ酵素をコードする、GAA遺伝子における変異により引き起こされる。GAA酵素は、リソソーム内で機能し、グリコーゲンを、筋肉の燃料となる糖であるグルコースに消化する。したがって、GAA酵素の欠損は、体内のあらゆる箇所での、過剰量のリソソームグリコーゲン蓄積をもたらす一方で、心臓及び骨格筋の細胞が、もっとも深刻に影響を受ける細胞である。PDの症状を引き起こす、GAA遺伝子内での最大300個の異なる変異が同定されており、これらは、開始年齢及び重症度の観点から広範に変化し得る。PDの治療は、ERTを含む。アルグルコシダーゼアルファ(Myozyme(C))と呼ばれる、FDAが認可した薬剤を、PDを患う乳児及び子どもの治療に使用することができる。別のアルグルコシダーゼアルファ薬剤であるLumizyme(C)は、遅発性(非乳児)ポンペ病に対して認可されている。
【0022】
PD及びMPS Iを含む、いくつかのLSDに対する新生児スクリーニング(NBS)が、多くの州で認可されている。スクリーニングには、タンデム質量分析(MS/MS)による、または、デジタルマイクロ流体傾向分析法(DMF-F)による、DBSにおけるリソソーム酵素活性の測定が伴う(Gelb et al.,Int J Neonatal Screen.5(1):1,2019)。酵素アッセイは、自然の基質とは同一ではない、合成基質に依存する。したがって、酵素は、これらの人工基質に対して異なる挙動を有し、誤った診断を引き起こす可能性がある。さらに、酵素アッセイは、関連する酵素の機能及び構造がインタクトなままであることを必要とし、これによって、NBS試料を、国または州の様々な場所から運搬及び貯蔵する間に制御することが困難となる。現在のスクリーニング法は、高い偽陽性率及び低い陽性予測率を伴って存在する。さらに、現在のスクリーニング法では、患者がERTに対する免疫応答を生じるかどうかを測定することができない。
【0023】
ERTは、例えば、乳児期PDを患う患者における生残の延長、及び認知発達の保護;ならびに、肺機能の改善、疾患進行の安定化、及び、MPS Iを患う患者における生化学的パラメーターの低下において効果的である。しかし、患者の中には、ERTに対して免疫が媒介する阻害反応(中和抗体)を生み出すものもある。現在では、どの患者が、ERTに対する免疫媒介性阻害反応を生み出すかを予想するために、分子分析、及び交差反応性免疫材料(CRIM)分析を使用する。CRIM陰性状態は、PDの不十分な予後因子である。PDを患う患者の25%以下がCRIM陰性であり、GAAタンパク質を産生せず、ERTに対する持続性の高抗体力価の成長、及び非効果的な治療をもたらす。ERTに対する、免疫媒介性阻害反応は、MPS Iでも生じる。MPS Iを患う患者の90%は、治療の最初の数ヶ月の間に、ラロニダーゼERTに対する抗薬剤IgG抗体応答を生み出す。より高い抗薬剤IgG抗体レベルは、標的組織での酵素取り込みを損なわせ、組織グリコサミノグリカンのクリアランスの低下、及び、免疫媒介性過敏性反応の低下をもたらす。
【0024】
ERT中和抗体の産生を減らす免疫制御が、ERTの前に開始する場合には最も効果的である。したがって、特に、致命的な早期開始心筋症と関連する乳児期PDに対しては、ERTの開始前にCRIM状態を測定することが重要であり得る。しかし、CRIM状態は典型的には、培養した皮膚線維芽細胞を用いるウエスタンブロットによって測定され、これは数ヶ月を要するプロセスである。この時間の間に、患者はERT中和抗体を生み出す場合がある。現在、ERTに対する免疫反応の予想に速やかに役立ち得る、速いターンアラウンドタイムを備えた標準的な臨床試験は存在しない。本明細書に開示されたアッセイ、組成物、及び方法は、関連するタンパク質の量を測定することで、LSD患者の状態を測定し、これにより、人工基質及び酵素機能変動を伴う問題を回避するだけでなく、患者がERTに対して免疫反応を生み出すか否かの速やかな予測が可能となる。
【0025】
開示された組成物及び方法をさらに使用して、MPS I及びポンペ病に対する、NBSにおける偽欠損症症例により引き起こされる偽陽性の数を減少させることができる。LSDと関連する遺伝子の偽欠損症対立遺伝子は、変化したタンパク質をコードする遺伝子の1つのコピーにおける、1つ以上の変異(対応する野生型遺伝子と比較して)を含むか、または、遺伝子の発現を変化させるが、疾患を引き起こさない。偽欠損症対立遺伝子を有する個体は、大幅に低下した酵素活性を示すが、健常である。特定の実施形態では、LSDと関連する遺伝子の偽欠損症対立遺伝子を有する、臨床的に健常な対象は、インビトロで遺伝子によりコードされる酵素の活性の低下を示す。特定の実施形態では、LSDと関連する遺伝子の偽欠損症対立遺伝子を有する、臨床的に健常な対象は、インビトロで遺伝子によりコードされた酵素の活性の低下を示すが、インビボでは同じ酵素の機能活性を示す。特定の実施形態では、臨床的に健常な対象は、偽欠損症対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有することができる。特定の実施形態では、偽陽性結果は、試験結果が陽性である場合の酵素アッセイ試験で生じるが、疾患もしくは罹患は試験した対象には存在しないか、または、疾患は、試験した対象では無症状レベルで存在する。特定の実施形態では、健常な対象は、疾患の症状を示さないか、非常に少ない疾患の症状を示す。特定の実施形態では、健常な対象は、疾患の治療を必要としない。特定の実施形態では、LSDと関連する偽欠損症対立遺伝子を有する健常な対象は、LSDの症状を示さないか、または、非常に少ないLSDの症状を示す。特定の実施形態では、LSDと関連する偽欠損症対立遺伝子を有する健常な対象は、LSDの治療を必要としない。
【0026】
開示された組成物及び方法をさらに使用して、LSDを引き起こす遺伝子の病原性バリアントのキャリアである個体を同定することができる。大部分のLSDは、常染色体劣性様式で遺伝している。したがって、疾患(病原性バリアント(複数可))を引き起こすLSDと関連する、あるバージョンの遺伝子(対立遺伝子)の2つのコピーを有する(劣性である)、または2つの異なる対立遺伝子を有する場合に、個体では、LSDの症状及びLSDの合併症が明らかになるが、キャリアは、LSDを引き起こす遺伝子の病原性バリアントの1つのみのコピーを有するが、疾患を示さない。特定の実施形態では、キャリアは、LSDを引き起こす遺伝子の病原性バリアントの1つのコピー、及び、対応する遺伝子の、1つの野生型コピーを有する。特定の実施形態では、キャリアは、LSDを引き起こす遺伝子の病原性バリアントの1つのコピー、及び、対応する遺伝子の、1つの偽欠損症対立遺伝子を有する。特定の実施形態では、LSDを引き起こす遺伝子の病原性バリアントのキャリアは、LSDの症状を示さないか、または、非常に少ないLSDの症状を示す。特定の実施形態では、LSDを引き起こす遺伝子の病原性バリアントのキャリアは、LSDの治療を必要としない。
【0027】
NBS評価を実施するために、DBSから乾燥血液のパンチを採取し、臨床検査を実施して、出生時には明らかではないが、後年の深刻な健康問題の原因となる障害を示す血液内の特定の物質(マーカーまたはバイオマーカーと呼ばれる)の有無を検出する。スクリーニングされる障害は状態ごとに異なるが、ほとんどの状態では、フェニルケトン尿症、原発性先天性甲状腺機能低下症、嚢胞性線維症、及び鎌状赤血球症がスクリーニングされる。NBSは、患者の転帰を改善し、罹患した個体の長期的な障害を回避すると同時に、医療費を削減するのに非常に効果的であることが証明されている。残念ながら、検出は多くの場合、血液細胞中での、極度に低いタンパク質濃度、及び、DBS中に存在する限定的な血液量により制限される。
【0028】
タンデム質量分析(MS/MS)は、1990年代に最初にNBSに適用され、出生時に収集されたDBS試料からの複数の代謝物、したがっていくつかの疾患の迅速なスクリーニングへの道を開いた(Chace,J Mass Spectrom.Wiley-Blackwell;2009;44:163-170;Millington et al.,J.Inherit.Metab.Dis.1990;13:321-324;Sweetman et al.Pediatrics.2006;117:S308-S314;Almannai et al.,Curr.Opin.Pediatr.2016;28:694-699;Watson et al.,Genet.Med.Nature Publishing Group;2006.pp.1S-252S;Chace et al.,Clin.Chem.1993;39:66-71)。トリプル四重極質量分析計で実行される選択された反応モニタリング質量分析(SRM-MS)により、特定のバイオマーカーの正確で高スループットの分析的にロバストな定量がさらに可能になった。そのため、現在、世界中の臨床NBS検査室での標準治療となっている(Chace,J Mass Spectrom.Wiley-Blackwell;2009;44:163-170;Chace & Kalas,Clinical Biochemistry.2005;38:296-309;Dott et al.,American Journal of Medical Genetics Part A.Wiley Subscription Services,Inc.,A Wiley Company;2006;140:837-842)。
【0029】
PBMCのトリプシン消化物由来のBTK、WASP、及びT細胞マーカーCD3εのシグネチャーペプチドを定量化するための、MSベースのアプローチを使用して、それぞれ、X連鎖型無ガンマグロブリン血症(XLA)、ウィスコットアルドリッチ症候群)(WAS)、及びSCIDをスクリーニングすることができることが、以前に示されている(Kerfoot et al.,Proteomics Clin Appl,2012.6(7-8):p.394-402)。SCID患者全員が、遺伝的不均一性にもかかわらずT細胞リンパ球減少を分かち合っているため、T細胞数の一般的表現として、CD3εを選択した。盲検調査における各患者は、それぞれの疾患に対して特異的なシグネチャーペプチドを欠損していた(すなわち、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を欠くXLA患者、及び、WASタンパク質(WASP)を欠くWAS患者など)。
【0030】
SRM-MSは、目的のタンパク質の化学量論的代理として、タンパク質分解的に生成されたシグネチャーペプチドを利用する。これは、次に、試料中のそのタンパク質を発現する特定の細胞型の数を推定するために使用され得る(すなわち、血中のCD3+T細胞の量を示すためのCD3εの定量化)。各シグネチャーペプチドに対するMSの高い特異性は、その質量、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分離時の保持時間、及び結果として生じる標的特異的フラグメンテーションパターンという3つの物理化学的特性によってもたらされる(Kennedy et al.Nat.Methods.2014;11:149-155)。これらの進歩にもかかわらず、100~1000ngタンパク質/mLの範囲の定量限界があり、血液または血漿などの複雑なマトリックスを使用すると、SRM-MSベースのアッセイによる少量の標的の正確な定量が不可能になる場合が多い。
【0031】
SRM-MSに結合したペプチド免疫親和性濃縮(immuno-SRM)は、少量のマーカーの正確な定量化を可能にする方法である。immuno-SRMは一般に、以下の工程を伴う:(i)疾患の有無を示す標的タンパク質の選択;(ii)存在する場合、標的タンパク質を含む生体試料を酵素で処理し、生体試料中のタンパク質を全て、ペプチドと呼ばれるより小さなフラグメントにすること;(iii)標的タンパク質に由来する選択ペプチドマーカーに対する濃縮;ならびに、(iv)目的の濃縮ペプチドの、質量分析計での分析及び定量化。
【0032】
安定同位体標準及び抗ペプチド抗体による捕捉(Stable Isotope Standards and Capture by Anti-Peptide Antibodies)(SISCAPA)とも呼ばれる、immuno-SRMは、SRM-MS分析の前に、抗ペプチド抗体を利用して複雑な生物学的試料から目的のペプチドを精製及び濃縮することにより、SRM-MSアッセイの感度を高める(Zhao et al.J Vis Exp.2011;53:2812;Whiteaker et al.Mol.Cell Proteomics.American Society for Biochemistry and Molecular Biology;2010;9:184-196;Whiteaker et al.Mol.Cell Proteomics.American Society for Biochemistry and Molecular Biology;2012;11:M111.015347;Kuhn et al.Clin.Chem.2009;55:1108-1117;Anderson et al.J Proteome Res.2004;3(2):235-244;Collins et al.,Frontiers in Immunology,2018.9(2756);Collins et al.,Frontiers in Immunology,2020;11:464;Jung et al.,J Proteome Res,2017.16(2):p.862-871;Collins et al.,Gastroenterology,2021:Feb 25;S0016-5085(21)00457-1)。例示的なimmuno-SRMプロセスを図2に示す。
【0033】
抗ペプチド抗体を使用するシグネチャーペプチドバイオマーカーの、免疫親和性濃縮により、複雑な生物学的マトリックスから、目的のペプチドを単離する。これは、試料マトリックスを単純にし、バックグラウンドを減らし、検体を濃縮して、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)アッセイの感度を向上させる(Anderson et al.,J Proteome Res,2004.3(2):p.235-44;Anderson and Hunter,Mol Cell Proteomics,2006.5(4):p.573-88)。immuno-SRMにより、高い再現性を伴って、血液中に低ピコモル濃度で存在するタンパク質の定量化が可能となる(Whiteaker et al.,Mol Cell Proteomics,2010.9(1):p.184-96;Whiteaker et al.,J Proteome Res,2014.13(4):p.2187-96;Hoofnagle et al.,Clin Chem,2008.54(11):p.1796-804;Hoofnagle et al.,Clin Chem,2016.62(1):p.48-69;Kuhn et al.,Mol Cell Proteomics,2012.11(6):p.M111.013854)。この方法論を用いることで、82個の試料(40個の正常対照と、42個の患者試料)の盲検スクリーニングにおいて、全てが、その対応するペプチド内で有意に減少し、診断カットオフにより、XLA(n=26)、WAS(n=11)、及びSCIDの3症例のうちの2つにおける、分子的に確認された各症例の陽性識別が可能となった(PCT/US2019/054856;Collins et al.,Frontiers in Immunology,2018.9(2756))。
【0034】
immuno-SRMを使用して、X連鎖慢性肉芽腫症(X-CGD)、X連鎖リンパ球増殖症候群(XLP1;SH2D1A欠損症)、家族性血球貪食性リンパ組織球症2(FHL2)、血管拡張性失調症(AT)、分類不能型免疫不全(CVID;B細胞機能障害)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、及び、細胞質分裂8(DOCK8)欠損症の寄与因子などの原発性免疫不全(PCT/US2021/020679)を診断するための、ならびに、血小板(CD42)及びナチュラルキラー細胞(CD56)に対する細胞特異的マーカー(PCT/US2021/020679)を検出するための、これらに結合するシグネチャーペプチドマーカー及び抗体もまた、開発されている。
【0035】
X連鎖型無ガンマグロブリン血症(XLA)、ウィスコットアルドリッチ症候群(WAS)、X-CGD、DOCK8欠損症、及びADA欠損症を示す、2つのキャリアを含む28名の原発性免疫不全症(PIDD)患者由来の試料において、各疾患を示すペプチドは、正常対照と比較して著しく減少し、患者識別は、臨床及び分子診断と素晴らしく一致した。多重パネルには、血小板(CD42)及びナチュラルキラー細胞(CD56)に対する、細胞特異的マーカーもまた含まれた。WASを患う患者において、CD42レベルは、特徴的な血小板減少症と一致して、著しく減少したことが発見された。骨髄移植の前後で分析した、WASを患う患者は、治療後に、正常化したWASタンパク質及び血小板CD42を示した。このことは、immuno-SRMの、PIDD治療の効果を監視する能力を強調している。(Collins et al.,Frontiers in Immunology,2020.11(464))。
【0036】
immuno-SRMアッセイの多くの態様は、診断される障害、各障害に利用可能なバイオマーカー、目的のペプチドを濃縮し得る分子実体を開発する能力、及び質量分析計での目的の各ペプチドの挙動に依存する。臨床症状が出現する前にDBSを使用してNBSパネルの障害を確実に検出できる信頼性の高いアッセイを実現するには、これら全ての態様及びその他の態様を慎重に検討及び実験する必要がある。
【0037】
本開示は、MPS I及びPDを含むLSDを確実に診断するための多重immuno-SRM法を提供する。本明細書に開示される多重immuno-SRMアッセイは、MPS I及びPDにおいて減少または欠如しているタンパク質のペプチドに対して生成された抗ペプチド抗体を利用し得る。開示された方法及び分析により、LSDを有する患者が、酵素補充療法(ERT)に対する免疫応答を生み出すか否かについての速やかな予測が可能となる。開示された方法及び分析はさらに、LSDの偽欠損症症例により引き起こされる偽陽性の数を減少させることができる。
【0038】
本開示の以下の態様を、ここでより詳細に説明する:(I)生体試料の収集及び処理;(II)MPS I及びポンペ病のペプチドマーカー;(III)生体試料におけるタンパク質の酵素的消化;(IV)ペプチドマーカーを濃縮するための抗体;(V)バリアント;(VI)ペプチドの濃縮戦略;(VII)液体クロマトグラフィー(LC);(VIII)質量分析(MS);(IX)使用方法;(X)キット;(XI)例示的な実施形態;(XII)実験例;ならびに(XIII)結部。
【0039】
(I)生体試料の収集及び処理。特定の実施形態では、本開示の方法で使用可能な生体試料としては、血液または細胞に由来する試料が挙げられる。特定の実施形態では、本開示の方法で使用される試料は、DBSである。特定の実施形態では、対象由来の全血は、血液を濾紙カード上に置き、血液を乾燥させることによって調製され得る。
【0040】
特定の実施形態では、対象由来の全血は、任意の抗凝血物質で収集することができる。特定の実施形態では、対象由来の全血は、ヘパリンで収集することができる。DBSは、50~100μL(例えば、70μL)の血液/スポットを濾紙カード(例えば、Protein Saver(商標)903(登録商標)Card,Whatman Inc,Piscataway,NJ)上にピペッティングすることによって調製し、室温で乾燥させてもよい。特定の実施形態では、血液を濾紙カード上で一晩乾燥させる。DBSは、例えば、使用するまで-80℃で密封されたビニール袋に保管してもよい。特定の実施形態では、DBS丸ごとを本開示のimmuno-SRMアッセイで使用してもよい。特定の実施形態では、DBS由来の1つ以上の3mmのパンチを、本開示のimmuno-SRMアッセイで使用してもよい。特定の実施形態では、DBSは、0.1% Triton X-100の50mM重炭酸アンモニウム溶液中で可溶化することができる。
【0041】
特定の実施形態では、本開示の方法で使用する試料としては、口腔スワブまたは粘膜試料に由来する細胞が挙げられる。特定の実施形態では、粘膜試料としては、経口、経鼻、生殖器、及び直腸試料が挙げられる(Espinosa-de Aquino et al.(2017)Methods in Ecology and Evolution 8:370-378)。特定の実施形態では、口腔スワブ試料としては、頬または口に由来する細胞が挙げられる。特定の実施形態では、口腔スワブ試料は、以下に記載する手順に従って、対象から入手することができる:CHLA.(2016年4月4日).Buccal Swab Collection Procedure.CHLA-Clinical Pathology;(2016年7月27日).Buccal DNA Collection Instructions.Pathway Genomics;(2017年12月14日).Instruction for Buccal Swab Sample Collection.Otogenetics;PDXL PDXL.(2017年11月28日).Buccal Swab collection procedure-PersonalizedDx Labs [Video].YouTube.youtu.be/3ftvHkfM71o?t=146のワールドワイドウェブ;及びCenters of Disease Control and Prevention(CDC).(2020年7月8日).Interim Guidelines for collecting, handling, and testing clinical specimens for Covid-19.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/lab/guidelines-clinical-specimens.htmlのワールドワイドウェブ。
【0042】
特定の実施形態では、口腔スワブ試料は、以下の手順により対象から入手することができる。試料収集の前に、患者は少なくとも30分間、喫煙、飲食、ガム噛み、または歯磨きを行わない。スワブをパッケージから注意深く取り出し、先端がいかなる物体または表面にも接触しないようにする。スワブを、頬、歯、及び上歯肉の間の口の片側に位置する、口腔に挿入する。スワブの先端を、片方の頬の内側に押しつけ前後、上下に、円を描くようにこすりつける。こすっている間にハンドルを回転させて、先端全体を、頬の細胞で覆う。先端は、収集プロセスの間、歯、歯茎、及び唇に接触させてはならない。スワブは唾液で飽和させてはならない。収集後、スワブを、歯、歯茎、または唇と接触させることなく、口から取り除く。スワブを室温で少なくとも30分間、空気乾燥させる。ハンドルを取り除き、スワブを冷却バイアルに保管してよい。反対の頬で、第2のスワブを使用して、ステップを繰り返してよい。口腔スワブ試料を、収集後最大72時間、2~8℃で保管してよい、または、72時間を超える場合、-80℃以下で冷凍庫で保管してよい。特定の実施形態では、口腔スワブによる細胞の収集は、少なくとも30秒間であってよい。特定の実施形態では、口腔スワブによる細胞の収集を、最大粘膜表面から収集してよい。特定の実施形態では、対象当たり、1~5個の口腔スワブ試料を収集してよい。特定の実施形態では、口腔スワブ試料は、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間、少なくとも25分間、少なくとも30分間、またはそれ以上の間、滅菌表面で空気乾燥させてよい。特定の実施形態では、対象は、試料収集の前に、口をきれいな水でゆすぐことができる。特定の実施形態では、試料収集の領域を、別のスワブを用いて、生理食塩水で湿らせてもよい。特定の実施形態では、口腔スワブ試料は、25℃、20℃、15℃、10℃、5℃、0℃、-5℃、-10℃、-15℃、-20℃、またはそれ以下で保管してよい。特定の実施形態では、口腔スワブ試料は、1~2週間、-20℃で保管してよい。特定の実施形態では、口腔試料を、スワブの代わりに、水及び/またはマウスウォッシュすすぎ液から収集してよい(Michalczyk et al.(2004)BioTechniques 37(2):262-269)。
【0043】
特定の実施形態では、口腔スワブ試料からの細胞を、0.1% Triton X-100の50mM重炭酸アンモニウム溶液で可溶化することができる。特定の実施形態では、Espinosa-de Aquino et al.(2017)に記載されている手順に従い、口腔スワブ試料からタンパク質を単離することができる。特定の実施形態では、口腔スワブ試料からの細胞を、TRIzol(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)などの適切な緩衝液で抽出してよく、核酸沈殿後の上清を、タンパク質抽出に使用してよい。特定の実施形態では、タンパク質をアセトンにより沈殿させてよく、タンパク質ペレットを、適切な緩衝液(例えば、2.5%グリセロールで懸濁した95%エタノール中のグアニジンヒドロクロリド)に再懸濁してよく、ペレットを音波処理により分散させてよく、ペレットを遠心分離にかけて洗浄してよく、ペレットを乾燥させてよく、ペレットを、適切な緩衝液(例えば、PBS及びドデシル硫酸ナトリウム)に可溶化してよい。特定の実施形態では、可溶化されペレットを100℃で加熱した後、遠心分離にかけて使用のための上清を得ることができる。
【0044】
特定の実施形態では、本開示の方法で使用する試料としては、末梢血単核球細胞(PBMC)が挙げられる。PBMCは末梢血に由来し、骨髄中に存在する造血幹細胞(HSC)を起源にする。PBMCは、丸い核を有する血液細胞であり、単球、リンパ球(T細胞、B細胞、及びNK細胞を含む)、樹状細胞、ならびに幹細胞を含む多くの種類の細胞を含むことができる。PBMCは、密度遠心分離(例えば、Ficoll-Paqueを用いる)を含む、当該技術分野において既知の任意の技術により、単離することができる。密度勾配遠心分離は、細胞密度により細胞を分離する。特定の実施形態では、遠心分離後に、2つの層を混合することなく、全血または軟膜層を、密度培地の上に、またはこの下に層状とすることができる。特定の実施形態では、PBMCは、血漿と密度勾配培地との界面にて、薄い白色の層として現れる。特定の実施形態では、Ficoll-Hypaque、及び、採取される血液からFicoll溶液を分離するゲルプラグを含有する、Vacutainer(登録商標)採血管を使用することができる(cell preparation tubes CPT(商標),BD Biosciences,San Jose,CA;Puleo et al.(2017)Bio-protocol7(2):e2103)。特定の実施形態では、遠心分離前に、密度勾配培地及び試料を混合させないための挿入物を用いて設計された、SepMate(商標)管(STEMCELL(商標)Technologies,Vancouver,CA)を使用することができる。(Kerfoot et al.,Proteomics Clin Appl,2012.6(7-8):394-402;Grievink et al.,Biopreserv Biobank.2016 Oct;14(5):410-415;Corkum et al.(2015)BMC Immunol.16:48;Jia et al.(2018) Biopreserv Biobank 16(2):82-91)。特定の実施形態では、PBMCは白血球搬出法により単離することができる。白血球搬出マシンは、血漿、赤血球、及び顆粒球を含む、血液の残りの部分をドナーに戻しながら、高速遠心分離を使用して、全血をドナーから採取し、ターゲットPBMC画分を分離する自動化デバイスである。特定の実施形態では、単離されたPBMCは、0.1% Triton X-100の50mM重炭酸アンモニウム溶液中で可溶化することができる。
【0045】
特定の実施形態では、本開示の方法で使用する試料としては、白血球(white blood cells)(WBC;白血球(leukocytes))が挙げられる。WBCは免疫系の一部であり、体を感染症及び外来侵入物から守る。特定の実施形態では、WBCとしては、顆粒球(多形核細胞)、リンパ球(単核球)、及び単球(単核球)が挙げられる。特定の実施形態では、WBCとしては、リンパ球及び単球が挙げられるが、顆粒球は含まない。WBCは、密度勾配遠心分離(Boyum(1968) Isolation of mononuclear cells and granulocytes from human blood.Isolation of mononuclear cells by one centrifugation and of granulocytes by combining centrifugation and sedimentation at 1 g.Scand.J.J.Clin.Lab Invest.Suppl.97:77;Boyum(1977) Lymphology,10(2):71-76);浸透圧ショックによる赤血球溶解(Morgensen and Cantrell(1977)Pharm Therap.1:369-383);抗体が媒介する、赤血球への、不必要な細胞の結合、及び、密度勾配分離による除去(Beeton and Chandy(2007)J Vis Exp.(8):326)を含む、RosetteSep(商標)(STEMCELL(商標)Technologies,Vancouver,CA);細胞濃縮または枯渇用の磁気ビーズ(Brocks et al(2006)In vivo 20(2):239);B及び/またはNK細胞を濃縮させるための補体媒介細胞溶解(Faguet and Agee(1993)J Imm Meth 165(2): 217);ならびに、抗体被覆プレートへの接着による、細胞濃縮または枯渇を含む、不必要な細胞を除去するためのパニング(Brousso et al(1997)Immunol Let 59(2):85)を含む、当該技術分野において既知の任意の技術により単離され、場合により濃縮することができる。WBCに対する単離及び濃縮手順の概説に関しては、Dagur and McCoy(2015)Curr Protoc Cytom.73:5.1.1-5.1.16を参照されたい。
【0046】
(II)MPS I及びポンペ病のためのペプチドマーカー。標的タンパク質由来の多くの理論的なタンパク質分解ペプチドがある。それらは、モノクローナル抗体産生の潜在的な候補となり得る。それにもかかわらず、MS/MSによってそれらの特徴をスクリーニングした後、最良の潜在的な候補ペプチドを選択した。最高の感度及び特異性を有するこれらのシグネチャーペプチドを選択して、対応するモノクローナル抗体を開発し、臨床試料を使用して検証した。特定の実施形態では、複数のペプチド及び抗体を多重分析に含めて、immuno-SRMアッセイのスループットを増加させて、アッセイにより必要とされるコスト及び時間を低下させることができる。
【0047】
典型的には、目的のタンパク質に固有であり、MS実験で一貫して観察される1つまたは2つのシグネチャープロテオティピックペプチドを、目的のタンパク質を化学量論的に表すために選択する(Mallick et al.Nat Biotechnol 2007;25:125-131)。シグネチャーペプチドは、以前のMS実験での検出、MSで観察可能な可能性が最も高いペプチドを予測するための計算ツールの使用、またはその両方の組合せによって選択され得る。特定の実施形態では、中程度の疎水性を有する長さ5~22のアミノ酸のトリプシンペプチドを選択してもよい。極めて親水性及び極めて疎水性のペプチドは、HPLCでの保持時間の変動及び表面への損失に起因して、安定性が低下する可能性がある。特定の実施形態では、メチオニン残基(酸化)、N末端グルタミン(環化)、アスパラギンに続くグリシンまたはプロリン(脱アミド化の傾向がある)、及び二塩基性末端(例えば、KK、KR、RR、RKなどの隣接するリジンまたはアルギニン残基は、消化効率が変動する可能性がある)は望ましくない場合がある(Whiteaker及びPaulovich Clin Lab Med.2011;31(3):385-396)。より短いペプチド及びプロリン残基を含むペプチドは、SRMのより良い標的となり得る(Lange et al.Molecular Systems Biology 2008;4:222)。
【0048】
特定の実施形態では、ペプチドは、IDUA及び/またはGAAの一部を含む。特定の実施形態では、ペプチドは、配列番号1~21を含む。特定の実施形態では、本開示のペプチドは、表1A~1C、及び図1に記載されているものを含む。
【0049】
特定の実施形態では、本開示の抗体の例示的なCDR配列は、図1Aに示されている。特定の実施形態では、本開示の抗体の例示的な可変重(VH)及び可変軽(VL)ドメイン配列を、図1Bに示す。特定の実施形態では、本開示の例示的ペプチド及び抗体の配列番号を、表1Cに示す。
【表2】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【0050】
(III)生体試料におけるタンパク質の酵素的消化。生体試料のタンパク質を、タンパク質分解に供してペプチドを生成してもよく、これはLC-SRM-MSによる分析の前に免疫親和性精製によってさらに選択してもよい。特定の実施形態では、生体試料としては、DBS、口腔スワブ試料由来の細胞、PBMC、またはWBCが挙げられる。タンパク質分解は、ペプシン、arg-Cプロテイナーゼ、asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、キモトリプシン、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、エンテロキナーゼ、Xa因子、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、lysC、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビン及びトリプシンなどの部位特異的エンドプロテアーゼを使用して達成され得る。部位を特異的に切断する化学物質も使用してもよい。酵素及び/または化学物質の組合せを使用して、望ましい分析物を得てもよい。
【0051】
特定の実施形態では、生体試料中のタンパク質は、トリプシンでペプチドに消化してもよい。トリプシンは、アルギニン及びリジン残基のC末端を独占的に切断し、生成されたペプチドの質量がほとんどの質量分析計の検出能力(最大3000m/z)と適合していることと、理論的なトリプシン生成ペプチドのデータベースの生成に利用可能な効率的なアルゴリズムがあるという理由のため、ペプチドを生成するための好ましい選択となり得る。高い切断特異性、利用可能性、及び低コストは、トリプシンの他の利点である。タンパク質をトリプシンで処理することによって形成されるペプチドは、トリプシンペプチドとして公知である。
【0052】
(IV)ペプチドマーカーを濃縮するための抗体。抗体は、天然であるか、または部分的もしくは完全に合成的に産生されたかにかかわらず、免疫グロブリン遺伝子(複数可)、またはその機能的フラグメントによって実質的にコードされるポリペプチドリガンドを含む。抗体は、エピトープ(例えば、抗原)に特異的に(または選択的に)結合して認識する。抗体は、免疫グロブリン結合ドメインと相同または大部分が相同である結合ドメインを有する任意のタンパク質を含み得る。抗体調製物はモノクローナルまたはポリクローナルであってもよい。抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEなどの任意のヒトのクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ及びラムダ軽鎖定常領域遺伝子、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー重鎖定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。抗体の「Fc」部分は、1つ以上の重鎖定常領域ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含むが、重鎖可変領域を含まない免疫グロブリン重鎖のその部分を指す。
【0053】
インタクトな抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)鎖及び2つの軽鎖(L)鎖を含み得る。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHまたはVHと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域には、CH1、CH2、及びCH3という3つのドメインが含まれる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと略される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域には、1つのドメインCLが含まれる。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する)にさらに細分化され得る。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。重鎖及び軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1の成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0054】
所定のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列境界は、以下によって記載されたものを含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定され得る:Kabat et al.(1991)”Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(Kabatナンバリングスキーム);Al-Lazikani et al.(1997)J Mol Biol 273:927-948(Chothiaナンバリングスキーム);Maccallum et al.(1996)J Mol Biol 262:732-745(Contactナンバリングスキーム);Martin et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.,86:9268-9272(AbMナンバリングスキーム);Lefranc M P et al.(2003)Dev Comp Immunol 27(1):55-77(IMGTナンバリングスキーム);ならびにHonegger及びPluckthun(2001)J Mol Biol 309(3):657-670(「Aho」ナンバリングスキーム)。所定のCDRまたはFRの境界は、識別に使用されるスキームによって異なる場合がある。例えば、Kabatスキームは構造アラインメントに基づいているが、Chothiaスキームは構造情報に基づいている。KabatスキームとChothiaスキームの両方のナンバリングは、最も一般的な抗体領域の配列の長さに基づいており、挿入は「30a」などの挿入文字に対応し、一部の抗体では欠失が表示される。2つのスキームでは、特定の挿入及び欠失(「インデル」)を異なる位置に配置し、異なるナンバリングをする。接触スキームは、複雑な結晶構造の分析に基づいており、多くの点でChothiaのナンバリングスキームと類似している。特定の実施形態では、本明細書に開示される抗体CDR配列は、Kabatナンバリングによる。
【0055】
抗体フラグメントは、完全長未満である抗体の任意の誘導体または部分を含む。特定の実施形態では、抗体フラグメントは、結合パートナーとしての全長抗体の特異的結合能力の少なくともかなりの部分を保持している。。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、一本鎖可変フラグメント(scFv)、Fv、dsFvダイアボディ、及びFdフラグメント、及び/または本明細書に記載のエピトープに特異的に結合する免疫グロブリンの任意の生物学的に有効なフラグメントが挙げられる。抗体または抗体フラグメントとしては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、及び線状抗体の全部または一部が挙げられる。
【0056】
一本鎖可変フラグメント(scFv)は、短いリンカーペプチドに接続された免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域の融合タンパク質である。Fvフラグメントには、抗体の単一のアームのVLドメイン及びVHドメインが含まれる。Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされているが、それらは、例えば、組換え法を使用して、それらを単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって結合されてもよく、ここでは、VL領域とVH領域が対になって、一価分子(一本鎖Fv(scFv))を形成する。Fv及びscFvに関する追加情報については、例えば、Bird,et al.,Science 242(1988)423-426;Huston,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(1988)5879-5883;Plueckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore(eds.),Springer-Verlag,New York),(1994)269-315;WO1993/16185;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。
【0057】
Fabフラグメントは、VL、VH、CL及びCH1ドメインを含む一価の抗体フラグメントである。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む2価フラグメントである。インビボ半減期が延長したFab及びF(ab’)2フラグメントの考察に関しては、米国特許第5,869,046号を参照のこと。ダイアボディには、二価であってもよい2つのエピトープ結合部位が含まれる。例えば、欧州特許第0404097号;WO1993/01161;及びHolliger,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)6444-6448を参照のこと。二重親和性再標的化抗体(Dual affinity retargeting antibodies)(DART(商標);ダイアボディフォーマットに基づくが、追加の安定化のためのC末端ジスルフィドブリッジを特徴とする(Moore et al.,Blood 117,4542-51(2011))も使用してもよい。抗体フラグメントには単離されたCDRも含まれ得る。抗体フラグメントのレビューについては、Hudson,et al.,Nat.Med.9(2003)129-134を参照のこと。
【0058】
抗体フラグメントは、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体フラグメントは、インタクトな抗体の断片化によって酵素的もしくは化学的に生成されてもよいし、または部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に生成されてもよい。あるいは、抗体フラグメントは、全体的または部分的に合成的に産生され得る。抗体フラグメントは、一本鎖抗体フラグメントを含んでもよい。別の実施形態では、このフラグメントは、例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結されている複数の鎖を含んでもよい。このフラグメントはまた、多分子複合体を含んでもよい。機能的抗体フラグメントは、典型的には少なくとも50アミノ酸を含み得、より典型的には少なくとも200アミノ酸を含む。
【0059】
特定の実施形態では、組換え免疫グロブリンを産生し得る。Cabilly、米国特許第4,816,567号、及びQueen et al.,Proc Natl Acad Sci USA,86:10029-10033(1989)を参照のこと。
【0060】
示されるように、特定の実施形態では、操作された抗体または抗原結合フラグメントの結合ドメインは、リンカーを介して結合され得る。リンカーは、操作された抗体の結合ドメインまたは抗原結合フラグメントの間の高次構造移動のための可塑性及び余地を提供し得るアミノ酸配列である。任意の適切なリンカーを使用してもよい。リンカーの例は、Chen et al.,Adv Drug Deliv Rev.2013 Oct15;65(10):1357-1369に見出され得る。リンカーは、標的への所望の機能ドメインの提示に応じて、可塑性であっても、固定であっても、または半固定であってもよい。一般的に使用される柔軟なリンカーとしては、GGSGGGSGGSG(配列番号34)、GGSGGGSGSG(配列番号35)及びGGSGGGSG(配列番号36)などのGly-Serリンカーが挙げられる。追加の例はとしては以下が挙げられる:GGGGSGGGGS(配列番号37);GGGSGGGS(配列番号38);及びGGSGGS(配列番号39)。CH3単独またはCH2CH3配列などの1つ以上の抗体ヒンジ領域及び/または免疫グロブリン重鎖定常領域を含むリンカーもまた使用してもよい。
【0061】
いくつかの状況において、可塑性リンカーは、特定の使用に必要な結合ドメインの距離または配置を維持できない場合がある。これらの例では、固定または半固定のリンカーが役立つ場合がある。固定または半固定のリンカーの例としては、プロリンリッチリンカーが挙げられる。特定の実施形態では、プロリンリッチのリンカーは、偶然のみに基づいて予想されるよりも多くのプロリン残基を有するペプチド配列である。特定の実施形態では、プロリンリッチのリンカーは、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも48%、少なくとも50%、または少なくとも51%のプロリン残基を有するリンカーである。プロリンリッチのリンカーの特定の例としては、プロリンリッチな唾液タンパク質(PRP)のフラグメントが挙げられる(Carlson,Biochimie 70(11):1689-1695,1988)。
【0062】
抗体が様々な翻訳後修飾を受け得ることも当業者によって理解されるであろう。これらの修飾の種類及び程度は、抗体の発現に使用される宿主細胞株及び培養条件に依存する場合が多い。このような修飾としては、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化、及びアスパラギン脱アミド化の変化を含み得る。
【0063】
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を含み、すなわち、集団を含む個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る可能性のあるバリアント(そのようなバリアントは一般的には少量で存在する)を除いて、同一であるか、及び/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられている。このタイプの抗体は、単一の抗体産生ハイブリドーマの娘細胞によって産生される。モノクローナル抗体は通常、結合する任意のエピトープに対して単一の結合親和性を示す。
【0064】
修飾因子「モノクローナル」は、抗体の均一な集団から得られるものとしての抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。モノクローナル抗体は1種類の抗原のみを認識する。本明細書のモノクローナル抗体としては、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残りの部分は、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列、ならびにそのような抗体のフラグメントと同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)が挙げられる。抗体を産生するための技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、Harlow and Lane“Antibodies,A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbour Laboratory Press,1988;Harlow and Lane “Using Antibodies:A Laboratory Manual”Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999;Tickle et al.JALA:Journal of the Association for Laboratory Automation.2009;14(5):303-307;Babcook et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1996;93:7843-7848;及び米国特許第5,627,052号に記載されている。
【0065】
特定の実施形態では、「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強さを指す。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及びペプチド)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(K)または結合定数(K)で表され得る。親和性は、当該技術分野で公知の一般的な方法によって測定され得る。
【0066】
特定の実施形態では、「結合」とは、抗体の結合ドメインが、10-8M以下の解離定数(K)、特定の実施形態では10-5M~10-13M、特定の実施形態では10-5M~10-10M、特定の実施形態では10-5M~10-7M、特定の実施形態では10-8M~10-13M、または特定の実施形態では10-9M~10-13Mという解離定数(K)でその標的ペプチドと会合することを意味する。この用語はさらに、結合ドメインが、存在する他の生体分子に結合しないことを示すために使用されてもよい(例えば、それは、10-4M以上、特定の実施形態では10-4M~1Mという解離定数(K)を有する他の生体分子に結合する。
【0067】
特定の実施形態では、「結合」とは、抗体の結合ドメインが、10-1以上の親和性定数(すなわち、会合定数、K)、特定の実施形態では10-1~1013-1、特定の実施形態では10-1~1010-1、特定の実施形態では10-1~10-1、特定の実施形態では10-1~1013-1、または特定の実施形態では10-1~10-1という親和性定数でその標的ペプチドと会合することを意味する。この用語はさらに、結合ドメインが存在する他の生体分子に結合しないことを示すために使用されてもよい(例えば、それは、10-1以下の会合定数(KA)、特定の実施形態では10-1~1M-1の会合定数)で他の生体分子に結合する)。
【0068】
本開示の抗体は、MPS I及びポンペ病の診断のためのSRMアッセイで検出された、本明細書に記載のペプチドの免疫親和性濃縮に使用してもよい。高親和性抗体の特定の実施形態としては、抗IDUA 218、抗IDUA 462、抗GAA 155、抗GAA 332、抗GAA 376、抗GAA 601、抗GAA855、抗GAA 882、及び抗GAA 892が挙げられる。
【0069】
特定の実施形態では、例示的抗体は、表1A~1C、及び図12に示す、VH CDR、VHドメイン、重鎖、LH CDR、VLドメイン、及び軽鎖の配列番号を含む。
【0070】
特定の実施形態では、例示的な抗体は、リーダー配列を有する、重鎖または軽鎖コード配列を含む。特定の実施形態では、例示的な抗体は、リーダー配列を有する、可変重ドメインまたは軽ドメインコード配列を含む。特定の実施形態では、例示的な抗体は、リーダーペプチドを有する、重鎖または軽鎖アミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、例示的な抗体は、引き出し線配列を有しない、重鎖または軽鎖アミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、例示的な抗体は、リーダーペプチドを有する、可変重ドメインまたは可変軽ドメインアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、例示的な抗体は、リーダーペプチドを有しない、可変重ドメインまたは可変軽ドメインアミノ酸配列を含む。
【0071】
(V)バリアント。本明細書に開示及び言及される配列のバリアントも含まれる。機能性バリアントは、タンパク質の生理学的効果に実質的に影響を及ぼさない、1つ以上の残基付加または置換を含む。機能性フラグメントは、タンパク質の生理学的効果に実質的に影響を及ぼさない、1つ以上の欠失または切断を含む。実質的な影響の欠如は、結合試験において、実験により比較結果を観察することにより確認することができる。結合ドメインの機能性バリアント及び機能性フラグメントは、野生型参照に相当するレベルで、そのコグネイト抗原またはリガンドに結合する。
【0072】
生物学的活性を損なうことなくどのアミノ酸残基を置換、挿入、または削除できるかを決定する際のガイダンスは、DNASTAR(商標)(Madison,Wisconsin)ソフトウェアなどの当該技術分野で周知のコンピュータープログラムを使用して見出され得る。好ましくは、本明細書に開示されるタンパク質バリアントにおけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電されたアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保守的なアミノ酸の変更には、側鎖に関連するアミノ酸ファミリーの1つの置換が含まれる。
【0073】
ペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の適切な保存的置換は、当該技術分野の当業者に公知であり、一般に、得られる分子の生物学的活性を変えることなく行ってもよい。この分野の当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変化させないことを認識している(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照のこと)。天然に存在するアミノ酸は、一般的に次のように保存的置換ファミリーに分類される:グループ1:アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、及びスレオニン(Thr);グループ2:(酸性):アスパラギン酸(Asp)、及びグルタミン酸(Glu);グループ3:(酸性;極性の負に荷電した残基及びそれらのアミドとしても分類される):アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、Asp、及びGlu;グループ4:Gln及びAsn;グループ5:(塩基性;極性の正に荷電した残基としても分類される):アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、及びヒスチジン(His);グループ6(大きな脂肪族、非極性残基):イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、バリン(Val)、及びシステイン(Cys);グループ7(非荷電極性):チロシン(Tyr)、Gly、Asn、Gln、Cys、Ser、及びThr;グループ8(大きな芳香族残基):フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、及びTyr;グループ9(非極性):プロリン(Pro)、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、及びTrp;グループ11(脂肪族):Gly、Ala、Val、Leu、及びIle;グループ10(小さな脂肪族、非極性、またはわずかに極性の残基):Ala、Ser、Thr、Pro、及びGly;ならびにグループ12(硫黄含有):Met及びCys。追加情報は、Creighton(1984)Proteins,W.H.Freeman and Companyに見出され得る。
【0074】
そのような変更を行う際に、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮し得る。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸インデックスの重要性は、当該技術分野で一般的に理解されている(Kyte and Doolittle,1982、J.Mol.Biol.157(1),105-32)。各アミノ酸には、その疎水性及び電荷特徴に基づいてハイドロパシーインデックスが割り当てられている(Kyte and Doolittle,1982)。これらの値は次のとおりである。Ile(+4.5);Val(+4.2);Leu(+3.8);Phe(+2.8);Cys(+2.5);Met(+1.9);Ala(+1.8);Gly(-0.4);Thr(-0.7);Ser(-0.8);Trp(-0.9);Tyr(-1.3);Pro(-1.6);His(-3.2);グルタミン酸塩(-3.5);Gln(-3.5);アスパラギン酸塩(-3.5);Asn(-3.5);Lys(-3.9);及びArg(-4.5)。
【0075】
特定のアミノ酸が、同様のハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換され得、それでも同様の生物学的活性を有するタンパク質をもたらし得る、すなわち、生物学的に機能的に同等のタンパク質を依然として得ることが当該技術分野で公知である。このような変更を行う際には、ハイドロパシー指数が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のアミノ酸の置換が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸の置換がさらに特に好ましい。同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的に行うことができることも当該技術分野で理解されている。
【0076】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:Arg(+3.0);Lys(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0±1);グルタミン酸塩(+3.0±1);Ser(+0.3);Asn(+0.2);Gln(+0.2);Gly(0);Thr(-0.4);Pro(-0.5±1);Ala(-0.5);His(-0.5);Cys(-1.0);Met(-1.3);Val(-1.5);Leu(-1.8);Ile(-1.8);Tyr(-2.3);Phe(-2.5);Trp(-3.4)。アミノ酸は、同様の親水性値を有する別のアミノ酸で置換されてもよく、それでも生物学的に同等の、特に免疫学的に同等のタンパク質を得ることができることが理解される。そのような変化において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、そして±0.5内のものがさらに特に好ましい。
【0077】
上記で概説したように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づき得る。
【0078】
特定の実施形態では、結合ドメインVH領域は、既知の抗体または本明細書で開示する抗体のVHに由来することができるか、またはこれに基づくことができ、場合により、既知の抗体または本明細書で開示する抗体のVHと比較して、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の)挿入、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の)欠失、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の)アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換もしくは非保存的アミノ酸置換)、または、上述の変化の組合せを含有することができる。挿入、欠失、または置換は、VH領域のアミノもしくはカルボキシ末端、または両端を含む、本領域のあらゆる箇所に存在し得るが、但し、各CDRは、変化がゼロか、または最大でも、1、2、もしくは3個の変化を含み、また、但し、修飾VH領域を含有する結合ドメインは依然として、野生型結合ドメインと同様の親和性で、その標的に特異的に結合することができる。
【0079】
特定の実施形態では、結合ドメイン中のVL領域は、既知の抗体または本明細書で開示する抗体のVLに由来するか、またはこれに基づき、場合により、既知の抗体または本明細書で開示する抗体のVLと比較して、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の)挿入、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の)欠失、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の)アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、または、上述の変化の組合せを含有する。挿入、欠失、または置換は、VL領域のアミノもしくはカルボキシ末端、または両端を含む、本領域のあらゆる箇所に存在し得るが、但し、各CDRは、変化がゼロか、または最大でも、1、2、もしくは3個の変化を含み、また、但し、修飾VL領域を含有する結合ドメインは依然として、野生型結合ドメインと同様の親和性で、その標的に特異的に結合することができる。
【0080】
他の場所で示されるように、遺伝子配列のバリアントとしては、コドン最適化バリアント、配列多型、スプライスバリアント、及び/またはコード化産物の機能に統計的に有意な程度に影響を及ぼさない突然変異が挙げられる。
【0081】
タンパク質、核酸、及び遺伝子配列のバリアントとしてはまた、本明細書に開示されるタンパク質、核酸、または遺伝子配列に対して、少なくとも70%の配列同一性、80%の配列同一性、85%の配列、90%の配列同一性、95%の配列同一性、96%の配列同一性、97%の配列同一性、98%の配列同一性、または99%の配列同一性を有する配列も挙げられる。
【0082】
「%配列同一性」とは、配列を比較することによって決定される、2つ以上の配列間の関係を指す。当該技術分野において、「同一性」はまた、そのような配列のストリング間の一致によって決定される、タンパク質、核酸、または遺伝子配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」(しばしば「類似性」と呼ばれる)は、以下に記載されているものを含む(ただしこれらに限定されない)公知の方法によって容易に計算され得る:Computational Molecular Biology(Lesk,AM.,ed.)Oxford University Press,NY(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,NY(1994);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,及びGriffin,H.G.,eds.)Humana Press,NJ(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(Von Heijne,G.,ed.)Academic Press(1987);及びSequence Analysis Primer(Gribskov,M.及びDevereux,J.,eds.)Oxford University Press,NY(1992)。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列の間の最適適合を得るように設計される。同一性及び類似性を決定するための方法は、公的に利用可能なコンピュータープログラムに体系化されている。配列アラインメント及びパーセント同一性計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR、Inc.,Madison,Wisconsin)のMegalignプログラムを使用して実行され得る。配列のマルチプルアラインメントは、Clustalのアラインメント方法(Higgins and Sharp CABIOS,5,151-153(1989)をデフォルトのパラメーター(GAP PENALTY=10,GAP LENGTH PENALTY=10)で使用しても実行され得る。関連するプログラムとしてはまた、プログラムのGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,Wisconsin);BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990);DNASTAR(DNASTAR,Inc.,Madison,Wisconsin);及びSmith-Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111-20.Editor(s):Suhai,Sandor.Publisher.Plenum,New York,N.Y.。この開示の文脈内で、配列分析ソフトウェアが分析に使用される場合、分析の結果は、参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づいていることが理解されよう。本明細書で使用される「デフォルト値」とは、元々最初に初期化されたときソフトウェアをロードする任意の設定の値またはパラメーターを意味する。
【0083】
(VI)ペプチドの濃縮戦略。SRMの前の所望のペプチド標的の濃縮は、当該技術分野で公知の任意の手段によって達成され得る。試料からの豊富なタンパク質種の免疫吸着ベースの枯渇、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動、溶媒分配、免疫沈降、免疫電気泳動、及び免疫クロマトグラフィーを含む、多くの濃縮手順が利用可能である。特定の実施形態では、試料の消化物からの個々のトリプシンペプチドの特異的抗体ベースの捕捉のためのSISCAPA法を使用してもよい(Anderson et al.,J.Proteome Research 2004;3:235-244;米国特許第7,632,686号)。
【0084】
特定の実施形態では、本明細書に開示される抗体などのペプチドマーカーに結合する抗体は、固体支持体に付着され得る。特定の実施形態は、抗体がクロマトグラフィー媒体に共有結合しているアフィニティーカラムを使用する。特定の実施形態では、POROS(Applied Biosystems,Foster City,CA)ナノカラムを、SISCAPA濃縮で使用してもよく、高い結合能力、標的ペプチドの迅速な濃縮を可能にする比較的高濃度の抗体、及び様々な官能化基によってカラムを調製する能力を特徴とする。あるいは、抗体は、ビーズ、磁気ビーズ、または他の固体粒子に付着されてもよい。付着の1つの手段は、ビーズ上にコーティングされたタンパク質への抗体の結合である。例えば、プロテインGでコーティングされた粒子は、好ましい方向で抗体の結合を提供する。ビーズを抗体で直接コーティングするなど、他の付着手段を使用してもよい。磁性粒子は、抗体への結合を可能にする多様な化学物質で利用し得る。粒子に付着した抗体で濃縮すると、試料の並列処理が可能になる。磁粉処理は、質量分析による分析のためにプレートで溶出するSISCAPA濃縮ステップ用に96ウェルプレートで自動化されている。他の特定の実施形態は、ナノフロークロマトグラフィーシステムに沿ってビーズ処理ステップを実行するために開発された新規のビーズトラップデバイスを使用する(Anderson et al.Mol Cell Proteomics 2009;8(5):995-1005)。これにより、溶出ステップと分析ステップの間の容器へのペプチドの損失が最小限に抑えられる。ペプチド濃縮は、ピペットチップに抗ペプチド抗体を固定化することによっても実行され得る(Nelson et al.Anal Chem.1995;67(7):1153-1158)。遊離ペプチドから抗体結合ペプチドを分離した後、結合ペプチドを溶出し得る。任意の溶出手段を使用してもよい。効率的であることがわかっている1つの溶出手段は、5%酢酸/3%アセトニトリルである。特定のペプチドに効率的であるように、他の酸を含む他の溶出手段、及び他の濃度の酢酸を使用してもよい。
【0085】
(VII)液体クロマトグラフィー(LC)。特定の実施形態では、1つ以上のLC精製ステップを、SRM-MSの前に実行する。濃縮ペプチドの混合物(移動相)は、材料が充填されたカラム(固定相)を通過して、カラムの移動相と固定相に対する重量と親和性に基づいてペプチドを分離し得る。従来のLC分析は、試料成分とカラム充填物質との間の化学的相互作用に依存しており、カラムを通過する試料の層流が、試験試料から目的の分析物を分離するための基礎である。当業者は、そのようなカラムでの分離が拡散プロセスであることを理解するであろう。試料のクロマトグラフィー分離にはさまざまなカラムパッキング材料が利用可能であり、適切な分離プロトコルの選択は、試料の特性、目的の分析物、存在する干渉物質及びその特性などに依存する経験的プロセスである。さまざまなパッキングケミストリーを、必要に応じて使用してもよい(例えば、精製される化合物の構造、極性、溶解性)。特定の実施形態では、カラムは、極性、イオン交換(カチオン及びアニオンの両方)、疎水性相互作用、フェニル、C-2、C-8、C-18カラム、多孔質ポリマー上の極性コーティング、またはその他の市販されているものである。クロマトグラフィーの間、材料の分離は、溶離液(「移動相」としても知られる)の選択、勾配溶出の選択、及び勾配条件、温度などの変数の影響を受ける。特定の実施形態では、分析物は、目的の分析物がカラムパッキング材料によって可逆的に保持され、1つ以上の他の材料が保持されない条件下で、試料をカラムにアプライすることによって精製され得る。これらの実施形態では、目的の分析物がカラムによって保持される第1の移動相条件を使用してもよく、その後、保持されていない材料が一旦洗浄されれば、第2の移動相条件を使用して、保持された材料をカラムから除去してもよい。あるいは、分析物は、目的の分析物が1つ以上の他の材料と比較して異なる速度で溶出する、移動相条件下でカラムに試料をアプライすることによって精製され得る。上記のように、そのような手順は、試料の他の1つ以上の成分と比較して、目的の1つ以上の分析物の量を濃縮し得る。特定の実施形態では、LCは、マイクロフローLC(マイクロLC)である。マイクロフローLCでは、クロマトグラフィー分離は、毎分少ないマイクロリットルの範囲の流量を使用して実行される。特定の実施形態では、LCは、ナノフローLC(ナノLC)である。ナノフローLC(nanoLC)では、クロマトグラフィー分離は、毎分300ナノリットルの範囲の流量を使用して実行される。示した流速により、このタイプのクロマトグラフィーによって得られる高い濃縮効率に起因して、高い分析感度が得られる(Cutillas,Current Nanoscience,2005;1:65-71)。
【0086】
(VIII)質量分析(MS)。質量分析計には、気相イオンの質量電荷(m/z)比に変換できるパラメーターを測定する気相イオン分光計が備えられている。質量分析とは、質量分析計を使用して気相イオンを検出することを指す。質量分析計には通常、イオン源及び質量分析計が含まれる。質量分析計の例は、飛行時間型(TOF)、磁気セクター、四重極フィルター、イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴、静電セクターアナライザー、及びこれらのハイブリッドである。レーザー脱離質量分析計には、分析物を脱離、揮発、及びイオン化する手段としてレーザーエネルギーを使用する質量分析計が備えられる。タンデム質量分析計には、イオン混合物中のイオンを含むイオンのm/zベースの識別または測定の2つの連続した段階を実行し得る任意の質量分析計を備える。このフレーズには、m/zベースの識別またはイオンの空間的タンデム測定の2つの連続した段階を実行し得る2つの質量分析計を備えた質量分析計が含まれる。このフレーズはさらに、m/zベースの識別またはイオンの時間的タンデム測定の2つの連続する段階を実行し得る単一の質量分析器を有する質量分析計を含む。したがって、このフレーズには、Qq-TOF質量分析計、イオントラップ質量分析計、イオントラップ-TOF質量分析計、TOF-TOF質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計、静電セクター-磁気セクター質量分析計、トリプル四重極質量分析計、及びそれらの組合せが明示的に含まれる。
【0087】
質量分析におけるイオン化には、試料中の分析物がイオン化されるプロセスを含む。このような分析物は、さらなる分析に使用される荷電分子になる場合がある。例えば、試料のイオン化は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、レーザースプレーイオン化(LSI)、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、電子イオン化、高速原子衝撃(FAB)/液体二次イオン化(LSIMS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、フィールドイオン化、フィールド脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、及び粒子ビームイオン化によって実行され得る。当業者は、イオン化方法の選択が、測定される分析物、試料のタイプ、検出器のタイプ、ポジティブモード対ネガティブモードの選択などに基づいて決定され得ることを理解するであろう。
【0088】
質量分析器は、イオン化された質量を取り、それらをm/z比に基づいて分離し、それらを検出器に出力し、ここでそれらが検出され、後でデジタル出力に変換される質量分析計の構成要素を備える。m/z比を決定するための適切な質量分析計としては、四重極質量分析計、飛行時間型(TOF)質量分析計、磁気または静電セクター質量分析計、及びイオントラップ(例えば、イオンサイクロトロン共鳴)質量分析計が挙げられる。
【0089】
選択された反応モニタリング(SRM)-MSアッセイは、目的の所定のタンパク質について所定のペプチドのセットを標的とする。SRMは、タンデム質量分析の第1段階で特定の質量のイオン(親イオンまたはプリカーサーイオン)を選択し、検出のための第2質量分析ステージでプリカーサーイオンのフラグメンテーション反応のイオン生成物を選択するタンデム質量分析モードである。選択したプリカーサーイオン及びフラグメントイオンに関連付けられたm/z値の特定のペアは、トランジションと呼ばれる。各シグネチャーペプチドについて、最適なシグナル強度を提供し、試料に存在する他の種から標的されたペプチドを区別するフラグメントイオンが識別される。最適化されたトランジションは、効果的なSRMアッセイに貢献する。このようないくつかのトランジション(プリカーサー/フラグメントイオン対)を経時的にモニターし、特定のトランジションの保持時間及びシグナル強度を座標として有する一連のクロマトグラフィートレースが生成される。シグネチャーペプチドのSRM-MS分析は、通常、トリプル四重極質量分析計(QQQ-MS)で実行され、これは、シグネチャーペプチドのm/zに対応するプリカーサーイオンを選択的に分離し、ペプチド特異的なフラグメントイオンを選択的にモニターする機能を備えた機器である。SRM分析では、特異性は複数の質量分析計(質量フィルター)に依存する。最初の四重極は、所望の親イオンまたはプリカーサーイオンを選択するためである。第3の四重極は、(1つ以上の)フラグメントイオン(複数可)をモニターするためである。フラグメントイオン(複数可)は、第2の四重極で衝突によって誘発される解離によって生成される。共溶出するバックグラウンドイオンが非常に効果的にろ過されるので、2つのレベルの質量選択により高い選択性が可能になる。試料中の全ての分析物を調査する従来のタンデム質量分析(MS/MS)実験とは異なり、SRM分析は、特定の分析物を選択的に標的(フィルター)し、これは、従来の「フルスキャン」技術と比較して感度が1桁または2桁向上することを意味する。さらに、SRMは、最大5桁の広いダイナミックレンジにわたって線形応答を提供する。これにより、非常に複雑な混合物中の少量のタンパク質の検出が可能になる。したがって、SRMは、バックグラウンド干渉が少ない、非常に特殊な検出/モニタリング方法である。1回のMS実施で複数の親イオンをモニタリングする場合、このタイプの分析は、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)として公知である。MRM分析を使用すると、1回の質量分析実施で複数のタンパク質及びタンパク質の複数の領域(シグネチャーペプチド)をモニタリングし得る。選択された反応モニタリング/多重反応モニタリング質量分析(SRM/MRM-MS)は、例えば、米国特許第8,383,417号、WO2013/106603、及び米国特許出願公開第2013/105684号に記載されている。
【0090】
特定の実施形態では、以下のパラメーターを使用して、特定のLC-SRM-MSシステム下でのタンパク質のLC-SRM-MSアッセイを特定し得る:(1)所定のタンパク質の濃縮トリプシンペプチド;(2)LCカラムでのペプチドの保持時間(RT);(3)ペプチドプリカーサーイオンのm/z値;(4)プリカーサーイオンをイオン化するために使用されるデクラスタリングポテンシャル;(5)ペプチドプリカーサーイオンから生成されたフラグメントイオンのm/z値;及び(6)特定のペプチド用に最適化されたペプチドプリカーサーイオンをフラグメント化するために使用される衝突エネルギー(CE)。RTには、分析物の注入から溶出までの経過時間が含まれる。デクラスタリングポテンシャル(DP)には、イオンクラスターを溶解及び解離するための電位が含まれる。これは、製造業者次第で、「フラグメント電圧」または「イオントランスファーキャピラリオフセット電圧」としても公知である。衝突エネルギー(CE)には、プリカーサーイオンが衝突セルに加速されるときに受け取るエネルギーの量が含まれる。
【0091】
本明細書に開示される方法によるペプチドの正確な定量化を容易にするために、目的のペプチドの同位体標識された合成バージョンのセットを、内部標準として使用するために既知の量で試料に添加してもよい。同位体標識ペプチドは、対応する代理のペプチドと同一の物理的及び化学的特性を有するので、クロマトグラフィーカラムから共溶出し、得られたマススペクトルで容易に識別可能である(Gerber et al.Proc.Natl.Asso.Sci.2003;100:6940-6945;Kirkpatrick et al.Methods 2005;35:265-273)。所定のペプチドのアミノ酸を標識できる同位体としては、13C、H、15N、17O、18O、及び34Sが挙げられる。特定の実施形態では、ペプチドは、13C及び/または15Nの重同位体で標識されている。標識標準の添加は、タンパク質分解消化の前または後に行ってもよい。特定の実施形態では、標識された内部標準ペプチドを、タンパク質分解消化の前に加える。同位体標識されたペプチドを合成する方法は、当業者に公知であろう。したがって、特定の実施形態では、実験試料は、内部標準ペプチドを含む。特定の実施形態では、内部標準ペプチドは、参照シグネチャーペプチドを含む。特定の実施形態では、シグネチャーペプチド濃度は、以下を組み合わせることによって決定され得る:(i)シグネチャーペプチドのピーク面積を、LC-MRM-MSアッセイから得られたその対応する参照シグネチャーペプチドのピーク面積と比較することから計算された比、及び(ii)参照シグネチャーペプチドの既知の濃度。参照標準として選択され、定量に適したペプチドは、量子型ペプチド(Q-ペプチド)と呼ばれることもある。Q-ペプチドは、プロテオタイプペプチドの全ての特性を含むが、人工的な修飾及び/または不完全な切断を根絶するために参照ペプチドを構成し得る残基にも制限を課す(Holman et al.Bioanalysis 2012;4(14):1763-1786)。
【0092】
所定のタンパク質(複数可)の絶対定量的レベルは、SRM/MRM方法論によって決定され得、それにより、1つの生物学的試料中の所定のタンパク質からの個々のペプチドのSRM/MRMシグネチャーピーク面積を、既知量の「スパイクされた」内部標準のSRM/MRMシグネチャーピーク面積と比較する。特定の実施形態では、内部標準は、1つ以上の重い同位体で標識された1つ以上のアミノ酸残基を含む同じ正確なペプチドの合成バージョンである。このような同位体標識内部標準は、質量分析がネイティブペプチドシグネチャピークとは異なっており、かつ別個であり、コンパレータピークとして使用され得る、予測可能でかつ一貫性のあるSRM/MRMシグネチャーピークを生成するように合成される。したがって、内部標準を生物学的試料由来のタンパク質調製物に既知の量でスパイクし、質量分析によって分析すると、ネイティブペプチドのシグネチャーピーク面積が内部標準ペプチドのシグネチャーピーク面積と比較され、この数値比較が、生物学的試料からの元のタンパク質調製物に存在する天然ペプチドの絶対モル濃度及び/または絶対重量のいずれかを示す。フラグメントペプチドの絶対定量データは、試料ごとに分析されたタンパク質の量に従って表示される。絶対定量を、多くのペプチド、したがってタンパク質にわたって、単一の試料で同時に、及び/または多くの試料にわたって実行して、個々の生物学的試料及び個々の試料のコホート全体におけるタンパク質の絶対量に関する洞察を得てもよい。
【0093】
ペプチドの絶対定量のための別の戦略は、イコライザーペプチドによる等モル性である。この方法論では、同位体標識された目的のQペプチドをジペプチドとして化学的に合成することを含む。一般的なアミノ酸配列は、Q-ペプチドのN末端に位置し、イコライザーペプチドと呼ばれる。可溶化及びタンパク質分解消化後、Q-ペプチドの量は、単一の光標識ペプチドを参照することにより正確に決定され得る。次に、適切な量の各標準ペプチドを目的の試料に追加して(前消化またはタンパク質分解前のいずれか)、絶対定量を容易にする(Holzmann et al.Anal.Chem.2009;81:10254-10261)。絶対定量には、定量コンカテマー(QconCAT)タンパク質を使用してもよい(Beynon et al.Nat.Methods 2005;2:587-589;Johnson et al.J.Am.Soc.Mass Spectrom.2009;20:2211-2220;Ding et al.J.Proteome Res.2011;10:3652-3659;Caroll et al.Molecular&Cellular Proteomics 2011;Sep 19:mcp-M111)。この戦略では、親和性のタグ付けされた、目的のいくつかのタンパク質由来の標準ペプチドの連結である組換え人工タンパク質が、安定した同位体濃縮培地で増殖したEscherichia coliで異種生産される。次に、QconCATタンパク質は、アフィニティー精製され、試料と共消化され、それを構成する全ての「重い」Qペプチドの化学量論的混合物が生成され、ネイティブタンパク質由来のタンパク質分解ペプチド及び内部標準を、その後分析する。ペプチド連結型標準(peptide-concatenated standards)(PCS)と呼ばれるQconCATアプローチの変形は、内因性環境を反映する人工タンパク質配列内のQペプチド間の隣接領域を使用する(Kito et al.J.Proteome Res.2007;6:792-800)。他の特定の実施形態は、絶対定量化(PSAQ)のためにタンパク質標準を使用する(Brun et al.Mol.Cell.Proteomics 2007;6:2139-2149)。PSAQは、組換えタンパク質を使用するが、いくつかのタンパク質からのペプチドの連結ではなく、定量されるタンパク質全体が、安定な同位体標識された形で発現される。次に、1つ以上のPSAQを、試料の前消化に追加して、定量を容易にしてもよい。
【0094】
特定の実施形態は、強度ベースの測定(America and Cordewener,Proteomics 2008;8:731-749)またはスペクトルカウント(Lundgren et al.Expert Rev.Proteomics 2010;7:39-53)などのタンパク質定量化のための標識なしの戦略を使用する。
【0095】
所定のペプチドの相対的定量的レベルを取得するために、1つの生物学試料における所定のタンパク質からの個々のペプチドまたは複数のペプチドの質量分析由来のシグネチャーピーク面積(またはピークが十分に分解されている場合はピーク高さ)を、同じSRM/MRM手法を使用して、1つ以上の追加のかつ異なる生物学的試料で、同じペプチドまたは同じタンパク質由来のペプチドに対して決定されたシグネチャーピーク面積と比較してもよい。このようにして、所定のタンパク質由来の特定のペプチド(複数可)の量は、同じ実験条件下での2つ以上の生物学的試料にまたがり同じペプチドまたは同じタンパク質由来のペプチドと比較して決定される。さらに、SRM/MRM手法により、その所定のタンパク質のそのペプチドのシグネチャーピーク面積を、生物学的試料由来の同じタンパク質調製物内の異なるタンパク質由来の別の異なるペプチド(複数可)についてのシグネチャーピーク面積に対して比較することにより、単一の試料内の単一のタンパク質由来の所定のペプチド(複数可)について、相対定量を決定し得る。このようにして、所定のタンパク質由来の特定のペプチドの量、したがって所定のタンパク質の量を、同じ試料内の別のタンパク質と比較して決定する。これらのアプローチは、所定のタンパク質由来の個々のペプチド(複数可)を、試料間及び試料内の同じタンパク質由来または異なるタンパク質由来の別のペプチド(複数可)の量に対して定量し、ここで、シグネチャーピーク面積によって決定される量は、この生物学的試料由来のタンパク質調製物中のペプチドの絶対重量対容積または重量対重量の量に関係なく、互いに相対的である。異なる試料間の個々のシグネチャーピーク面積に関する相対的な定量データは、試料ごとに分析されたタンパク質の量に正規化してもよい。相対定量を、単一の試料中で同時に多くのペプチドにわたって、及び/または多くの試料にわたって実行して、相対的なタンパク質量についての洞察を得てもよい。
【0096】
シグネチャーペプチドレベルは、濃度単位(例えば、pmol/L)で表してもよい。特定の実施形態では、MPS I及び/またはポンペ病についてスクリーニングされている対象に由来する試験試料中のシグネチャーペプチドの平均濃度を、正常な対照試料中の対応するペプチドの平均濃度と比較してもよい。特定の実施形態では、正常対照試料は、1つ以上の正常な対照対象から、または正常な対照対象の集団から誘導され得る。特定の実施形態では、正常な対照対象としては、MPS I及び/またはポンペ病を有しないか、または有することが知られていない対象が挙げられる。
【0097】
特定の実施形態では、正常な対照対象としては、MPS Iまたはポンペ病に関連する遺伝子変異を有しない対象が挙げられる。
【0098】
特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のDBSにおけるIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度は、10pmol/L~350pmol/Lの範囲、150pmol/L~300pmol/Lの範囲、及び20pmol/L~250pmol/Lの範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、IDUA 218シグネチャーペプチドの平均濃度は、10pmol/L、15pmol/L、20pmol/L、25pmol/L、30pmol/L、35pmol/L、40pmol/L、45pmol/L、50pmol/L、55pmol/L、60pmol/L、65pmol/L、70pmol/L、75pmol/L、80pmol/L、85pmol/L、90pmol/L、95pmol/L、100pmol/L、110pmol/L、120pmol/L、130pmol/L、140pmol/L、150pmol/L、160pmol/L、170pmol/L、180pmol/L、190pmol/L、200pmol/L、210pmol/L、220pmol/L、230pmol/L、240pmol/L、250pmol/L、260pmol/L、270pmol/L、280pmol/L、290pmol/L、300pmol/L、310pmol/L、320pmol/L、330pmol/L、340pmol/L、350pmol/L、またはそれ以上の濃度を含む。
【0099】
特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のPBMCにおける、IDUA 218シグネチャーペプチドの平均濃度は、300pmol/L~1000pmol/Lの範囲、350pmol/L~800pmol/Lの範囲、及び400pmol/L~700pmol/Lの範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のPBMCにおける、IDUA 218シグネチャーペプチドの平均濃度は、300pmol/L、310pmol/L、320pmol/L、330pmol/L、340pmol/L、350pmol/L、360pmol/L、370pmol/L、380pmol/L、390pmol/L、400pmol/L、410pmol/L、420pmol/L、430pmol/L、440pmol/L、450pmol/L、460pmol/L、470pmol/L、480pmol/L、490pmol/L、500pmol/L、510pmol/L、520pmol/L、530pmol/L、540pmol/L、550pmol/L、560pmol/L、570pmol/L、580pmol/L、590pmol/L、600pmol/L、610pmol/L、620pmol/L、630pmol/L、640pmol/L、650pmol/L、660pmol/L、670pmol/L、680pmol/L、690pmol/L、700pmol/L、710pmol/L、720pmol/L、730pmol/L、740pmol/L、750pmol/L、760pmol/L、770pmol/L、780pmol/L、790pmol/L、800pmol/L、810pmol/L、820pmol/L、830pmol/L、840pmol/L、850pmol/L、860pmol/L、870pmol/L、880pmol/L、890pmol/L、900pmol/L、910pmol/L、920pmol/L、930pmol/L、940pmol/L、950pmol/L、960pmol/L、970pmol/L、980pmol/L、990pmol/L、1000pmol/L、またはそれ以上の濃度を含む。
【0100】
特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブ試料における、IDUA 218シグネチャーペプチドの平均濃度は、100pmol/L~1000pmol/Lの範囲、100pmol/L~900pmol/Lの範囲、及び100pmol/L~800pmol/Lの範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブ試料における、IDUA 218シグネチャーペプチドの平均濃度は、100pmol/L、125pmol/L、150pmol/L、175pmol/L、200pmol/L、225pmol/L、250pmol/L、275pmol/L、300pmol/L、325pmol/L、350pmol/L、375pmol/L、400pmol/L、425pmol/L、450pmol/L、475pmol/L、500pmol/L、525pmol/L、550pmol/L、575pmol/L、600pmol/L、625pmol/L、650pmol/L、675pmol/L、700pmol/L、725pmol/L、750pmol/L、775pmol/L、800pmol/L、825pmol/L、850pmol/L、875pmol/L、900pmol/L、925pmol/L、950pmol/L、975pmol/L、1000pmol/L、またはそれ以上の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブ試料における、IDUA 218シグネチャーペプチドの平均濃度は、30pmol/gのタンパク質~85pmol/gのタンパク質の範囲、30pmol/gのタンパク質~80pmol/gのタンパク質の範囲、及び、30pmol/gのタンパク質~70pmol/gのタンパク質の範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブ試料における、IDUA 218シグネチャーペプチドの平均濃度は、30pmol/gのタンパク質、35pmol/gのタンパク質、40pmol/gのタンパク質、45pmol/gのタンパク質、50pmol/gのタンパク質、55pmol/gのタンパク質、60pmol/gのタンパク質、65pmol/gのタンパク質、70pmol/gのタンパク質、75pmol/gのタンパク質、80pmol/gのタンパク質、85pmol/gのタンパク質、またはそれ以上の濃度を含む。
【0101】
特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、IDUA 462シグネチャーペプチドの平均濃度は、10pmol/L~250pmol/Lの範囲、10pmol/L~200pmol/Lの範囲、及び20pmol/L~150pmol/Lの範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、IDUA 462シグネチャーペプチドの平均濃度は、10pmol/L、15pmol/L、20pmol/L、25pmol/L、30pmol/L、35pmol/L、40pmol/L、45pmol/L、50pmol/L、55pmol/L、60pmol/L、65pmol/L、70pmol/L、75pmol/L、80pmol/L、85pmol/L、90pmol/L、95pmol/L、100pmol/L、110pmol/L、120pmol/L、130pmol/L、140pmol/L、150pmol/L、160pmol/L、170pmol/L、180pmol/L、190pmol/L、200pmol/L、210pmol/L、220pmol/L、230pmol/L、240pmol/L、250pmol/L、またはそれ以上の濃度を含む。
【0102】
特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のPBMCにおける、IDUA 462シグネチャーペプチドの平均濃度は、350pmol/L~1000pmol/Lの範囲、400pmol/L~900pmol/Lの範囲、及び450pmol/L~850pmol/Lの範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のPBMCにおける、IDUA 462シグネチャーペプチドの平均濃度は、350pmol/L、360pmol/L、370pmol/L、380pmol/L、390pmol/L、400pmol/L、410pmol/L、420pmol/L、430pmol/L、440pmol/L、450pmol/L、460pmol/L、470pmol/L、480pmol/L、490pmol/L、500pmol/L、510pmol/L、520pmol/L、530pmol/L、540pmol/L、550pmol/L、560pmol/L、570pmol/L、580pmol/L、590pmol/L、600pmol/L、610pmol/L、620pmol/L、630pmol/L、640pmol/L、650pmol/L、660pmol/L、670pmol/L、680pmol/L、690pmol/L、700pmol/L、710pmol/L、720pmol/L、730pmol/L、740pmol/L、750pmol/L、760pmol/L、770pmol/L、780pmol/L、790pmol/L、800pmol/L、810pmol/L、820pmol/L、830pmol/L、840pmol/L、850pmol/L、860pmol/L、870pmol/L、880pmol/L、890pmol/L、900pmol/L、910pmol/L、920pmol/L、930pmol/L、940pmol/L、950pmol/L、960pmol/L、970pmol/L、980pmol/L、990pmol/L、1000pmol/L、またはそれ以上の濃度を含む。
【0103】
特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブ試料における、IDUA 462シグネチャーペプチドの平均濃度は、100pmol/L~1000pmol/Lの範囲、100pmol/L~900pmol/Lの範囲、及び150pmol/L~850pmol/Lの範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブ試料における、IDUA 462シグネチャーペプチドの平均濃度は、100pmol/L、125pmol/L、150pmol/L、175pmol/L、200pmol/L、225pmol/L、250pmol/L、275pmol/L、300pmol/L、325pmol/L、350pmol/L、375pmol/L、400pmol/L、425pmol/L、450pmol/L、475pmol/L、500pmol/L、525pmol/L、550pmol/L、575pmol/L、600pmol/L、625pmol/L、650pmol/L、675pmol/L、700pmol/L、725pmol/L、750pmol/L、775pmol/L、800pmol/L、825pmol/L、850pmol/L、875pmol/L、900pmol/L、925pmol/L、950pmol/L、975pmol/L、1000pmol/L、またはそれ以上の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブ試料における、IDUA 462シグネチャーペプチドの平均濃度は、30pmol/gのタンパク質~80pmol/gのタンパク質の範囲、30pmol/gのタンパク質~75pmol/gのタンパク質の範囲、及び、30pmol/gのタンパク質~70pmol/gのタンパク質の範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブ試料における、IDUA 462シグネチャーペプチドの平均濃度は、30pmol/gのタンパク質、35pmol/gのタンパク質、40pmol/gのタンパク質、45pmol/gのタンパク質、50pmol/gのタンパク質、55pmol/gのタンパク質、60pmol/gのタンパク質、65pmol/gのタンパク質、70pmol/gのタンパク質、75pmol/gのタンパク質、80pmol/gのタンパク質、またはそれ以上の濃度を含む。
【0104】
特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、GAA 376シグネチャーペプチドの平均濃度は、25pmol/L~200pmol/Lの範囲、30pmol/L~180pmol/Lの範囲、及び35pmol/L~160pmol/Lの範囲の濃度を含む。特定の実施形態では、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、GAA 376シグネチャーペプチドの平均濃度は、25pmol/L、30pmol/L、35pmol/L、40pmol/L、45pmol/L、50pmol/L、55pmol/L、60pmol/L、65pmol/L、70pmol/L、75pmol/L、80pmol/L、85pmol/L、90pmol/L、95pmol/L、100pmol/L、110pmol/L、120pmol/L、130pmol/L、140pmol/L、150pmol/L、160pmol/L、170pmol/L、180pmol/L、190pmol/L、200pmol/L、またはそれ以上の濃度を含む。
【0105】
1つ以上の標準ペプチドは、当該分野で公知の任意の方法で合成され得る。そのような合成ペプチドは、1つ以上の天然修飾を有するアミノ酸をさらに含み得る。このような自然な修飾としては、グルタミン及びアスパラギンの脱アミノ化、アミノ化、酸化、ならびにヒドロキシル化が含まれ得る。
【0106】
(IX)使用方法。本開示の方法は、MPS I及び/またはポンペ病のうちの1つ以上を有する個体を同定することを含む。特定の実施形態では、MPS I及び/またはポンペ病を有する個体の診断は、例えば、NBSの一部として、または障害の症状が個体に明らかになる前に、早期に行われる。特定の実施形態では、本開示の方法は、重症形態のMPS Iを患う個体を同定することを含む。特定の実施形態では、本開示の方法は、弱毒化形態のMPS Iを患う個体を同定することを含む。特定の実施形態では、本開示の方法は、弱毒化形態のMPS Iを患う個体から、重症形態のMPS Iを患う個体を区別することを含む。特定の実施形態では、本開示の方法は、乳児期に開始するポンペ病を患う個体を同定することを含む。特定の実施形態では、本開示の方法は、遅発性ポンペ病を患う個体を同定することを含む。特定の実施形態では、本開示の方法は、遅発性ポンペ病を患う個体から、乳児期に開始するポンペ病を患う個体を区別することを含む。
【0107】
本開示の方法は、DBS、口腔スワブ、PBMC、またはWBC試料を入手することを含む。特定の実施形態では、DBS、口腔スワブ、PBMC、またはWBC試料を、本明細書に記載する方法に従って入手する。特定の実施形態では、DBS、口腔スワブ、PBMC、またはWBC試料を、将来の試験のために、DBS、口腔スワブ、PBMC、またはWBC試料を保管する、DBS、口腔スワブ、PBMC、またはWBC貯蔵庫または実験室から入手する。
【0108】
本開示の方法は、生体試料中のタンパク質を消化酵素で分解させることを含む。特定の実施形態では、生体試料としては、DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBCが挙げられる。特定の実施形態では、DBS、全DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBCの1つ以上のパンチを、適切な緩衝液中で可溶化することができ、本明細書に記載する適切な消化酵素を添加して、DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBCに存在するタンパク質を消化し、ペプチドフラグメントにすることができる。特定の実施形態では、DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBCを、0.1% Triton X-100の50mM重炭酸アンモニウム溶液で可溶化し、トリプシンにより消化することができる。
【0109】
本開示の方法は、MPS I及び/またはポンペ病をスクリーニングするために使用するシグネチャーペプチドを濃縮することを含む。シグネチャーペプチドとしては、MPS Iに対するIDUA 218;MPS Iに対するIDUA 462;ポンペ病に対するGAA 155;ポンペ病に対するGAA 332;ポンペ病に対するGAA 376;ポンペ病に対するGAA 601;ポンペ病に対するGAA 855;ポンペ病に対するGAA 882;及び、ポンペ病に対するGAA 892が挙げられる。特定の実施形態では、シグネチャーペプチドを濃縮することは、消化した生体試料由来のペプチドフラグメントの混合物を、シグネチャーペプチドを認識する1つ以上の結合要素と接触させることを含む。特定の実施形態では、生体試料としては、DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBCが挙げられる。特定の実施形態では、結合要素は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態では、抗体としては、表1A~1C、及び図12に開示されているものが挙げられる。特定の実施形態では、本開示の抗体のアミノ酸配列としては、配列番号10~15、17、18、20、21、22~27、29、30、32、33、44~49、54~57、62~71、76~79、及び84~87が挙げられる。特定の実施形態では、本開示の抗体のコード配列としては、配列番号16、19、28、31、40~43、50~53、58~61、72~75、及び80~83が挙げられる。特定の実施形態では、抗体としては、IDUA 218、IDUA 462、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、及びGAA 892に結合する抗体が挙げられる。特定の実施形態では、配列番号10~15、17、18、20、及び21を含む抗体を使用して、配列番号1を含むIDUAペプチドを濃縮する。特定の実施形態では、配列番号22~27、29、30、32、及び33を含む抗体を使用して、配列番号2を含むIDUAペプチドを濃縮する。特定の実施形態では、配列番号44~49、54~57、及び62~65を含む抗体を使用して、配列番号3を含むGAAペプチドを濃縮する。特定の実施形態では、配列番号66~71、76~79、及び84~87を含む抗体を使用して、配列番号5を含むGAAペプチドを濃縮する。
【0110】
特定の実施形態では、抗体を使用して、配列番号4を含むGAAペプチドを濃縮する。特定の実施形態では、抗体を使用して、配列番号6を含むGAAペプチドを濃縮する。特定の実施形態では、抗体を使用して、配列番号7を含むGAAペプチドを濃縮する。特定の実施形態では、抗体を使用して、配列番号8を含むGAAペプチドを濃縮する。特定の実施形態では、抗体を使用して、配列番号9を含むGAAペプチドを濃縮する。
【0111】
特定の実施形態では、コグネイトシグネチャーペプチドに結合する、表1A~1C、及び図12に開示されている1つ以上の抗体の任意の組合せを使用して、MPS Iをスクリーニングすることができる。特定の実施形態では、コグネイトシグネチャーペプチドに結合する、表1A~1C、及び図12に開示されている1つ以上の抗体の任意の組合せを使用して、MPS Iに対する集団をスクリーニングすることができる。特定の実施形態では、コグネイトシグネチャーペプチドに結合する、表1A~1C、及び図12に開示されている1つ以上の抗体の任意の組合せを使用して、ポンペ病をスクリーニングすることができる。特定の実施形態では、コグネイトシグネチャーペプチドに結合する、表1A~1C、及び図12に開示されている1つ以上の抗体の任意の組合せを使用して、ポンペ病に対する集団をスクリーニングすることができる。
【0112】
本開示の方法は、MS分析の前にペプチドを分離するために、免疫親和性に富むペプチドに対して必要に応じて液体クロマトグラフィーを実施することを含む。液体クロマトグラフィーは、カラムの移動相及び固定相に対するその重量及び親和性に基づいてペプチドを分離し得る。
【0113】
本開示の方法は、所定のシグネチャーペプチドの量を定量化するために、免疫親和性で濃縮したペプチドに対してSRM-MSまたはMRM-MSを実行することを含む。特定の実施形態では、SRM-MSまたはMRM-MSは、本明細書に記載のとおりに実行される。特定の実施形態では、シグネチャーペプチドの定量化は、既知の量でアッセイに導入される参照ペプチドを使用することを含む。特定の実施形態では、参照ペプチドは、参照ペプチドをシグネチャーペプチドから区別するために、例えば、1つ以上の重い同位体で示差的に標識されていることを除いて、あらゆる点でシグネチャーペプチドと同一であり得る。
【0114】
特定の実施形態では、SRM-MSまたはMRM-MSは、IDUAペプチドにおける減少または不存在を検出する。特定の実施形態では、IDUAペプチドは配列番号1を含む。特定の実施形態では、IDUAペプチドは配列番号2を含む。
【0115】
特定の実施形態では、SRM-MSまたはMRM-MSは、GAAペプチドにおける減少または不存在を検出する。特定の実施形態では、GAAペプチドは配列番号3を含む。特定の実施形態では、GAAペプチドは配列番号4を含む。特定の実施形態では、GAAペプチドは配列番号5を含む。特定の実施形態では、GAAペプチドは配列番号6を含む。特定の実施形態では、GAAペプチドは配列番号7を含む。特定の実施形態では、GAAペプチドは配列番号8を含む。特定の実施形態では、GAAペプチドは配列番号9を含む。
【0116】
特定の実施形態は、一定時間にわたり、本明細書に記載するimmuno-SRMを使用して、対象のシグネチャーペプチドレベルを監視することを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載するMPS I及び/またはポンペ病の兆候または症状を示す、あるいは、MPS I及び/またはポンペ病の治療を受けているが故に、本明細書で開示するシステム及び方法に従い監視するために対象を選択する。
【0117】
本明細書にて開示された実施形態は、1つ以上の治療の前に、及び、1つ以上の治療の間、及び/または後で、対象に由来する生体試料を入手することを含む、MPS I及び/またはポンペ病を治療されている対象において、治療の有効性を測定することと、本明細書に記載するimmuno-SRMを使用する治療の前に、対象においてシグネチャーペプチドレベルを検出することと、本明細書に記載するimmuno-SRMを使用する1つ以上の治療の間または後に、対象におけるシグネチャーペプチドレベルを検出することと、治療中もしくは治療後のシグネチャーペプチドレベルが、治療前のシグネチャーペプチドレベルより高い場合に、治療が有効であると測定する、または、治療中もしくは治療後のシグネチャーペプチドレベルが、治療前のシグネチャーペプチドレベル以下である場合に、治療が有効でないと測定することと、を含む。特定の実施形態では、生体試料は、DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBCを含む。
【0118】
特定の実施形態では、MPS I及び/またはポンペ病を治療されている対象において、治療の有効性を測定することで、1つ以上の治療が継続されるべきかもしくは断続されるべきか、または、新しい治療を行うべきか否かをガイドすることができる。特定の実施形態では、1つ以上の治療の間または後の、対象におけるシグネチャーペプチドレベルが、1つ以上の治療の前の、対象におけるシグネチャーペプチドレベルよりも高い場合に、1つ以上の治療を継続することができる。特定の実施形態では、対象における、1つ以上の治療の間または後のシグネチャーペプチドレベルが、MPS I及び/またはポンペ病による影響を受けていない正常対照対象または対照対象で測定したシグネチャーペプチドレベルの、1%超、5%超、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、100%超、またはそれ以上である場合に、1つ以上の治療を断続することができる。特定の実施形態では、治療の間または後の、対象におけるシグネチャーペプチドレベルが、治療前の、対象におけるシグネチャーペプチドレベルと等しい場合、または、シグネチャーペプチドが存在しない場合に、新しい治療を行うことができる。
【0119】
特定の実施形態では、シグネチャーペプチドレベルの「安定した」指標とは、同じ対象での以前の比較に関連して評価した指標であり、最後の測定以来、(t検定またはp値、例えば、p値>0.05などの、当該技術分野において既知の統計指標により測定されるように)有意に変化していない、シグネチャーペプチドレベルを意味する。特定の実施形態では、「安定した」指標とは、同じ患者での以前の比較に関連して評価した指標であり、集約群または平均群の先行測定(例えば、最後の3、4、または5回の測定)以来、(t検定またはp値、例えば、p値>0.05などの、当該技術分野において既知の統計指標により測定されるように)有意に変化していない、シグネチャーペプチドレベルを意味する。
【0120】
シグネチャーペプチドレベルの「未変化の」指標とは、同じ患者での以前の比較に関連して評価した指標であり、特定の対象における参照シグネチャーペプチドレベルに近づく、またはこれから離れる、スコアの統計的に有意な変化を実現することができないことを意味する。特定の実施形態では、「未変化の」指標とは、同じ患者での以前の比較に関連して評価した指標、または、集約群もしくは平均群の先行測定(例えば、最後の3、4、もしくは5回の測定)以来の指標である。
【0121】
リソソーム蓄積症(LSD)の特定の実施形態では、より多くの乳児が、NBSによって早期診断を受けるため、どの患者が、酵素補充療法(ERT)に対する免疫応答を生じるのかを予測する能力は、ますます重要になっている。特定の実施形態では、注射された酵素薬剤は、対象によって外来であると認識され、免疫応答を引き起こす可能性がある。特定の実施形態では、免疫応答を生み出すことは、提供される外部酵素薬剤に対する、中和抗薬剤抗体を生み出すことを含む。特定の実施形態では、MPS I及び/またはポンペ病に関する、ERTに対する免疫応答は、生体試料におけるERTナイーブ酵素濃度の定量化により、予想することができる。特定の実施形態では、生体試料は、DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBCを含む。特定の実施形態では、MPS Iに関する、ERTに対する免疫応答は、IDUA 218及び/またはIDUA 462が存在しない場合に生じる。特定の実施形態では、ポンペ病に関する、ERTに対する免疫応答は、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、GAA 892、またはこれらの組合せが存在しない場合に生じる。
【0122】
MPS I及び/またはポンペ病に関して、ERTに対する免疫応答が、対象において予想または同定される場合、対象、または対象の家族に知らせることができ、免疫応答を予防または治療するための計画を実行することができる。特定の実施形態では、ERTに対する免疫応答を治療する戦略は、ERTナイーブ患者における抗薬剤抗体形成の防止、及び、既存の抗薬剤抗体の急激な減少を含むことができる。特定の実施形態では、ERTナイーブ患者における抗薬剤抗体形成の防止は、B細胞枯渇、免疫抑制、mTOR(ラパマイシンのメカニズム標的)阻害、及び/または免疫制御を含むことができる。特定の実施形態では、ERTナイーブ患者における抗薬剤抗体形成の防止は、ERTの開始前、またはERTの間に、メトトレキサート(MTX)、リツキシマブ、及び/または静脈内免疫グロブリン(IVIG)を投与することを含むことができる。特定の実施形態では、既存の抗薬剤抗体の急激な減少は、葉酸代謝の阻害(新規のDNA合成の遮断)、DNAのアルキル化(DNA複製の遮断)、抗体が媒介する特異的なB細胞枯渇、B細胞/形質細胞枯渇、及び/または、免疫抑制プロテアソームの阻害を含むことができる。特定の実施形態では、既存の抗薬剤抗体の急激な減少は、ミコフェノール酸モフェチル、MTX、IVIG、リツキシマブ、ボルテゾミブ、シクロホスファミドの投与、及び/または血漿交換を含むことができる。
【0123】
特定の実施形態では、開示されたアッセイ及び方法により、LSDにおける偽欠損症症例から生じるアッセイにおける、偽陽性結果の数を減少させることができる。特定の実施形態では、開示されたアッセイ及び方法により、LSDのスクリーニングにおける陽性予想率(すなわち、陽性適中率)を増加させることができる。特定の実施形態では、本方法により、一次または二次力価アッセイとして、開示されたimmuno-SRMアッセイを使用して、LSDのスクリーニングにおいて入手した偽陽性の数を減少させることができる。特定の実施形態では、開示されたアッセイ及び方法が、酵素偽欠損症の症例と、確認されたLSD症例とにおける、シグネチャーペプチドの濃度差を測定することができるため、開示されたアッセイ及び方法は、確認されたLSD症例から、酵素偽欠損症の症例を区別する。特定の実施形態では、疾患をスクリーニングされている対象のアッセイ結果が陽性である(すなわち、対象が疾患を有することを示す)ときに、偽陽性結果が生じるが、対象は健常である。特定の実施形態では、健常な対象は、疾患の症状を示さないか、非常に少ない疾患の症状を示す。特定の実施形態では、健常な対象は、疾患の治療を必要としない。特定の実施形態では、陽性予想率(すなわち、陽性適中率)とは、陽性スクリーニングテストを行う対象が、間違いなく疾患を有する確率を意味する。特定の実施形態では、偽欠損症対立遺伝子を有する患者は、大幅に低下した酵素活性を示すが、健常である。特定の実施形態では、LSDに対する酵素偽欠損症を患う患者は、正常対照と比較して、酵素活性の低下を示し、LSDを患うと確認された患者(「間違いなく陽性の」患者)と同様の酵素活性を示す。特定の実施形態では、対象は、LSDと関連する遺伝子の、同一または異なる病原性バリアント(複数可)の2つのコピーの存在を、対象で分子遺伝試験をすることにより、LSDを有することが確認される。特定の実施形態では、対象は、分子遺伝試験によりLSDにおいて偽欠損症を有することが確認される。分子遺伝試験としては、配列決定、蛍光in situハイブリダイゼーション、一塩基多型マイクロアレイ、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む、遺伝子で変異、欠失、及び/または挿入を検出可能なアッセイを挙げることができる。
【0124】
図7A及び7Bに示すように、immuno-SRMアッセイにより、LSDにおいて偽欠陥対立遺伝子を有する対象と、LSDを患う対象との区別が可能となる。特定の実施形態では、対象は、LSDと関連する遺伝子の同一または異なる病原性バリアント(複数可)の2つのコピーを有する場合に、LSDを有する。特定の実施形態では、LSDを有する対象は、「間違いなく陽性」であると考えられる。特定の実施形態では、測定したシグネチャーペプチド濃度が、当該測定したシグネチャーペプチドに対する所定の閾値濃度を下回る場合に、対象は、immuno-SRMアッセイにより、LSDに対して間違いなく陽性であると同定される。所定の閾値濃度は、本明細書に記載する正常な対照対象の集団に由来する、対応する生体試料中の各シグネチャーペプチドの平均濃度の標準偏差から計算することができる。特定の実施形態では、測定したシグネチャーペプチド濃度が、当該シグネチャーペプチドの検出下限(LOD)濃度を下回る場合に、対象は、immuno-SRMアッセイにより、LSDに対して間違いなく陽性であると同定される。特定の実施形態では、LSDにおいて偽欠損症を有する対象は、LSDに関して間違いなく陽性である、または、LSDを有することが確認された対象の、対応する平均シグネチャーペプチド濃度を上回る、測定したシグネチャーペプチド濃度を有する。特定の実施形態では、LSDにおいて偽欠損症を有する対象は、正常な対照対象の集団の、対応するシグネチャーペプチド濃度の範囲内にある、測定したシグネチャーペプチド濃度を有する。本開示のシグネチャーペプチドのLODは、immuno-SRMアッセイを使用して速やかに検出可能な、シグネチャーペプチドの最低濃度を含む。特定の実施形態では、シグネチャーペプチドのLODは、シグネチャーペプチドを含まない陰性対照とは統計的に区別可能な、シグネチャーペプチドの最低濃度を含む。LODの計算は、当業者に既知である。一例として、シグネチャーペプチドを含まない陰性対照は、immuno-SRMアッセイで20回アッセイ可能であり、結果の平均及び標準偏差を計算する。特定の実施形態では、LODは、陰性対照の平均を2標準偏差、または3標準偏差上回ると考えられる。
【0125】
特定の実施形態では、IDUA 218シグネチャーペプチドに対するLODは、10pmol/L以下、9pmol/L以下、8pmol/L以下、7pmol/L以下、6pmol/L以下、5pmol/L以下、4pmol/L以下、3pmol/L以下、2pmol/L以下、1pmol/L以下、またはそれ以下を含む。特定の実施形態では、IDUA 218シグネチャーペプチドに対するLODは、3.5pmol/L以下を含む。
【0126】
特定の実施形態では、IDUA 462シグネチャーペプチドに対するLODは、10pmol/L以下、9pmol/L以下、8pmol/L以下、7pmol/L以下、6pmol/L以下、5pmol/L以下、4pmol/L以下、3pmol/L以下、2pmol/L以下、1pmol/L以下、またはそれ以下を含む。特定の実施形態では、IDUA 462ペプチドに対するLODは、2.1pmol/L以下を含む。
【0127】
特定の実施形態では、GAA 155シグネチャーペプチドに対するLODは、10pmol/L以下、9pmol/L以下、8pmol/L以下、7pmol/L以下、6pmol/L以下、5pmol/L以下、4pmol/L以下、3pmol/L以下、2pmol/L以下、1pmol/L以下、またはそれ以下を含む。
【0128】
特定の実施形態では、GAA 376シグネチャーペプチドに対するLODは、10pmol/L以下、9pmol/L以下、8pmol/L以下、7pmol/L以下、6pmol/L以下、5pmol/L以下、4pmol/L以下、3pmol/L以下、2pmol/L以下、1pmol/L以下、またはそれ以下を含む。
【0129】
特定の実施形態では、IDUA 218、IDUA 462、またはこれらの組合せの測定したシグネチャーペプチド濃度が、対応するシグネチャーペプチドに対する所定の閾値濃度を下回る場合に、対象は、immuno-SRMアッセイにより、MPS Iを有する(すなわち、対象はMPS Iに対して間違いなく陽性である)と同定される。所定の閾値濃度は、本明細書に記載する正常な対照対象の集団に由来する、対応する生体試料中の各シグネチャーペプチドの平均濃度の標準偏差から計算することができる。特定の実施形態では、IDUA 218、IDUA 462、またはこれらの組合せの測定したシグネチャーペプチド濃度が、対応するシグネチャーペプチドに対するLOD濃度を下回る場合に、対象は、immuno-SRMアッセイにより、MPS Iを有する(すなわち、対象はMPS Iに対して間違いなく陽性である)と同定される。特定の実施形態では、MPS Iにおいて偽欠損症を有する対象は、MPS Iを有することが確認された、または、MPS Iに対して間違いなく陽性であることが確認された対象、または対象の集団由来の試料の、対応する平均ペプチド濃度を上回る、IDUA 218、IDUA 462、またはこれらの組合せの測定したシグネチャーペプチド濃度を有する。特定の実施形態では、MPS Iにおいて偽欠損症を有する対象は、正常対照対象の集団の、対応するIDUAペプチド濃度の範囲内の、IDUA 218、IDUA 462、またはこれらの組合せの測定したシグネチャーペプチド濃度を有する。特定の実施形態では、IDUA遺伝子の同一または異なる病原性バリアント(複数可)の2つのコピーの存在を、対象で分子遺伝試験することにより、対象はMPS Iを有することが確認される。特定の実施形態では、分子遺伝試験により、対象は、MPS Iの偽欠陥対立遺伝子を有することが確認される。特定の実施形態では、正常な対照対象は、MPS Iの症状を示さないか、または、非常に少ないMPS Iの症状を示す。特定の実施形態では、正常な対照対象は、MPS Iを有しない。
【0130】
特定の実施形態では、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、GAA 892、またはこれらの組合せの測定したシグネチャーペプチド濃度が、対応するシグネチャーペプチドの所定閾値濃度を下回る場合に、対象immuno-SRMアッセイにより、ポンペ病を有する(すなわち、対象はポンペ病に対して間違いなく陽性である)と同定される。所定の閾値濃度は、本明細書に記載する正常な対照対象の集団に由来する、対応する生体試料中の各シグネチャーペプチドの平均濃度の標準偏差から計算することができる。特定の実施形態では、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、GAA 892、またはこれらの組合せの測定したシグネチャーペプチド濃度が、対応するシグネチャーペプチドのLOD濃度を下回る場合に、対象immuno-SRMアッセイにより、ポンペ病を有する(すなわち、対象はポンペ病に対して間違いなく陽性である)と同定される。特定の実施形態では、ポンペ病において偽欠損症を有する対象は、ポンペ病を有することが確認された、または、ポンペ病に対して間違いなく陽性であることが確認された対象、または対象の集団由来の試料の、対応する平均ペプチド濃度を上回る、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、GAA 892、またはこれらの組合せの測定したシグネチャーペプチド濃度を有する。特定の実施形態では、ポンペ病において偽欠損症を有する対象は、正常対照対象の集団の、対応するGAAペプチド濃度の範囲内の、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、GAA 892、またはこれらの組合せの測定したシグネチャーペプチド濃度を有する特定の実施形態では、GAA遺伝子の同一または異なる病原性バリアント(複数可)の2つのコピーの存在を、対象で分子遺伝試験することにより、対象はポンペ病を有することが確認される。特定の実施形態では、分子遺伝試験により、対象は、ポンペ病の偽欠陥対立遺伝子を有することが確認される。特定の実施形態では、正常な対照対象は、ポンペ病の症状を示さないか、または、非常に少ないMPS Iの症状を示す。特定の実施形態では、正常な対照対象は、ポンペ病を有しない。
【0131】
特定の実施形態では、開示されたアッセイ及び方法は、弱毒化形態のMPS Iを患う固体から、重症形態のMPS Iを患う固体を区別する。特定の実施形態では、IDUA 218及び/またはIDUA 462のペプチド濃度が、健常な対象の集団に由来する対照試料の、対応する平均IDUAペプチド濃度を下回る、及び、重症形態のMPS Iを有することが確認された対象、または対象の集団由来の試料の、対応する平均IDUAペプチド濃度を上回るときに、対象は、immuno-SRMアッセイにより、弱毒化形態のMPS Iを有すると同定される。特定の実施形態では、IDUA 218及び/またはIDUA 462のペプチド濃度が、健常な対象の集団に由来する対照試料の、対応する平均IDUAペプチド濃度を下回る、及び、弱毒化形態のMPS Iを有することが確認された対象、または対象の集団由来の試料の、対応する平均IDUAペプチド濃度を下回る、または存在しないときに、対象は、immuno-SRMアッセイにより、重症形態のMPS Iを有すると同定される。特定の実施形態では、対象は、MPS Iの症状の観察及び/または測定;患者及び家族歴;IDUA酵素活性レベルの測定;グリコサミノグリカンレベルの測定;及び/または、IDUA遺伝子バリアントを同定するための分子遺伝試験を含む、臨床所見及び検査所見により、弱毒化または重症形態のMPS Iを有することが確認される。特定の実施形態では、IDUA 218及び/またはIDUA 462ペプチドは、immuno-SRMアッセイにより測定されるように、弱毒化MPS Iを有する対象由来の生体試料に存在し、重症MPS Iを有する対象由来の、対応する生体試料には存在しない。特定の実施形態では、健常な対象は、MPS Iの症状を示さないか、または、非常に少ないMPS Iの症状を示す。特定の実施形態では、健常な対象は、MPS Iを有しない。特定の実施形態では、生体試料としては、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBC由来が挙げられる。
【0132】
特定の実施形態では、開示されたアッセイ及び方法は、遅くに開始するPDを患う個体から、乳児期に開始するポンペ病(PD)を患う個体を区別する。特定の実施形態では、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、GAA 892ペプチド、またはこれらの組合せのペプチド濃度が、健常な対象の集団に由来する対照試料の、対応する平均GAAペプチド濃度を下回る、及び、乳児期に開始するPDを有することが確認された対象、または対象の集団由来の試料の、対応する平均GAAペプチド濃度を上回るときに、対象は、immuno-SRMアッセイにより、遅くに開始するPDを有すると同定される。特定の実施形態では、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、GAA 892ペプチド、またはこれらの組合せのペプチド濃度が、健常な対象の集団に由来する対照試料の、対応する平均GAAペプチド濃度を下回る、及び、遅くに開始するPDを有することが確認された対象の集団由来の試料の、対応する平均GAAペプチド濃度を下回る、または存在しないときに、対象は、immuno-SRMアッセイにより、乳児期に開始するPDを有すると同定される。特定の実施形態では、対象は、睡眠試験、肺機能試験、筋機能試験(例えば、核磁気共鳴画像診断)、心機能試験(例えば、胸部x線、心電図法、心エコー法);患者及び家族歴;GAA酵素活性の測定;及び/または、GAA遺伝子バリアントを同定するための分子遺伝試験などの、PDの症状を測定する試験を含む、臨床及び検査所見により、乳児期に開始するPDまたは遅くに開始するPDを有することが確認される。特定の実施形態では、immuno-SRMアッセイにより測定されるように、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、及び/またはGAA 892ペプチドは、遅くに開始するPDを有する対象由来の生体試料に存在し、乳児期に開始するPDを有する由来の、対応する生体試料には存在しない。特定の実施形態では、健常な対象は、PDの症状を示さないか、または、非常に少ないMPS Iの症状を示す。特定の実施形態では、健常な対象は、PDを有しない。特定の実施形態では、生体試料としては、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBC由来が挙げられる。
【0133】
特定の実施形態では、本開示の抗体は、不明瞭な生化学的結果を伴う患者に対して、及び、遺伝試験により、意義不明の変異(VUS)を有する患者に対して、MPS I及び/またはポンペ病を診断するための無料臨床試験でもまた、使用可能である。特定の実施形態では、本明細書で開示する、MPS IのIDUA、及び/または、ポンペ病のGAAをコードする遺伝子にVUSを有する対象を、本開示のimmuno-SRMアッセイにより試験して、VUSが、これらの対象において、対応するシグネチャーペプチドレベルに影響を及ぼすか否かを測定することができる。
【0134】
特定の実施形態では、所定のカットオフ値を、所与のシグネチャーペプチドに対する閾値として使用する。閾値を上回る、所与のシグネチャーペプチドの濃度は、アッセイした生体試料(例えば、DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBC)が、MPS Iまたはポンペ病により苦しまない個体に由来することを示す。閾値を下回る、または存在しない、所与のシグネチャーペプチドの濃度は、アッセイした生体試料(例えば、DBS、口腔スワブ由来の細胞、PBMC、またはWBC)が、MPS Iまたはポンペ病により苦しむ個体に由来することを示す。特定の実施形態では、閾値は、正常対照の集団を分析し、本集団における所与のシグネチャーペプチドの濃度の標準偏差(SD)を計算することにより測定することができる。閾値は、所与のシグネチャーペプチドの平均濃度から、一定のSDにて設定することができる。特定の実施形態では、閾値は、所与のシグネチャーペプチドの平均濃度から、-1SD、-1.1SD、-1.2SD、-1.3SD、-1.4SD、-1.5SD、-1.6SD、-1.7SD、-1.8SD、-1.9SD、-2.0SD、-2.1SD、-2.2SD、-2.3SD、-2.4SD、-2.5SD、-2.6SD、-2.7SD、-2.8SD、-2.9SD、-3.0SD、またはそれ以上である。特定の実施形態では、MPS Iまたはポンペ病の診断またはスクリーニングのために、正常対照の集団を分析し、本集団におけるATP7Bの内部濃度に対する、所与のシグネチャーペプチドの濃度の比率の標準偏差(SD)を計算することにより、閾値を測定することができる。各LSDに対するペプチド濃度カットオフは、各シグネチャーペプチドの平均濃度、または、ATP7Bの内部濃度に対する、所与のシグネチャーペプチドの濃度の比率から導かれる、一定のSDで設定することができる。
【0135】
特定の実施形態では、本開示のシグネチャーペプチドに対する閾値濃度は、正常対照の集団における、対応するシグネチャーペプチドの平均濃度から、-1.0SD、-1.25SD、-1.3SD、-1.35SD、-1.4SD、-1.45SD、-1.5SD、-1.55SD、-1.6SD、-1.65SD、-1.7SD、-1.75SD、-1.8SD、-1.85SD、-1.9SD、-1.95SD、-2.0SD、-2.25SD、-2.3SD、-2.35SD、-2.4SD、-2.45SD、-2.5SD、-2.55SD、-2.6SD、-2.65SD、-2.7SD、-2.75SD、-2.8SD、-2.85SD、-2.9SD、-2.95SD、-3.0SD、またはそれ以上を含む。
【0136】
特定の実施形態では、DBS中のIDUA 218ペプチドに対する閾値濃度は、35pmol/L以下、34pmol/L以下、33pmol/L以下、32pmol/L以下、31pmol/L以下、30pmol/L以下、29pmol/L以下、28pmol/L以下、27pmol/L以下、26pmol/L以下、25pmol/L以下、24pmol/L以下、23pmol/L以下、22pmol/L以下、21pmol/L以下、20pmol/L以下、19.5pmol/L以下、19pmol/L以下、18.5pmol/L以下、18pmol/L以下、17.5pmol/L以下、17pmol/L以下、16.5pmol/L以下、16pmol/L以下、15.5pmol/L以下、15pmol/L以下、14.5pmol/L以下、14pmol/L以下、13.5pmol/L以下、13pmol/L以下、12.5pmol/L以下、12pmol/L以下、11.5pmol/L以下、11pmol/L以下、10.5pmol/L以下、10pmol/L以下を含む。
【0137】
特定の実施形態では、DBS中のIDUA 462ペプチドに対する閾値濃度は、25pmol/L以下、24pmol/L以下、23pmol/L以下、22pmol/L以下、21pmol/L以下、20pmol/L以下、19.5pmol/L以下、19pmol/L以下、18.5pmol/L以下、18pmol/L以下、17.5pmol/L以下、17pmol/L以下、16.5pmol/L以下、16pmol/L以下、15.5pmol/L以下、15pmol/L以下、14.5pmol/L以下、14pmol/L以下、13.5pmol/L以下、13pmol/L以下、12.5pmol/L以下、12pmol/L以下、11.5pmol/L以下、11pmol/L以下、10.5pmol/L以下、10pmol/L以下、9.5pmol/L以下、9pmol/L以下、8.5pmol/L以下、8pmol/L以下、7.5pmol/L以下、7pmol/L以下、6.5pmol/L以下、6pmol/L以下、5.5pmol/L以下、5pmol/L以下を含む。
【0138】
特定の実施形態では、DBS中のGAA 376ペプチドに対する閾値濃度は、30pmol/L以下、29pmol/L以下、28pmol/L以下、27pmol/L以下、26pmol/L以下、25pmol/L以下、24pmol/L以下、23pmol/L以下、22pmol/L以下、21pmol/L以下、20pmol/L以下、19.5pmol/L以下、19pmol/L以下、18.5pmol/L以下、18pmol/L以下、17.5pmol/L以下、17pmol/L以下、16.5pmol/L以下、16pmol/L以下、15.5pmol/L以下、15pmol/L以下、14.5pmol/L以下、14pmol/L以下、13.5pmol/L以下、13pmol/L以下、12.5pmol/L以下、12pmol/L以下、11.5pmol/L以下、11pmol/L以下、10.5pmol/L以下、10pmol/L以下、9.5pmol/L以下、9pmol/L以下、8.5pmol/L以下、8pmol/L以下、7.5pmol/L以下、7pmol/L以下、6.5pmol/L以下、6pmol/L以下、5.5pmol/L以下、5pmol/L以下を含む。
【0139】
特定の実施形態では、シグネチャーペプチドは、所与の疾患を診断またはスクリーニングするための、一次バイオマーカーであると考えることができる。一次シグネチャーペプチドとしては、まず、所与の病気を診断またはスクリーニングするために使用するペプチドを挙げることができる。特定の実施形態では、一次マーカーは、対応するタンパク質を消化することにより何度も入手可能であり、免疫親和性濃縮のための高親和性抗体を有し、及び/または、独立した液体クロマトグラフィーカラム及び/または質量分析機器により再現可能である。特定の実施形態では、シグネチャーペプチドは、所与の疾患を診断またはスクリーニングするための、二次バイオマーカーであると考えることができる。二次シグネチャーペプチドとしては、一次マーカーによる所与の病気の診断またはスクリーニングを確認するために、二番目に使用するペプチドを挙げることができる。特定の実施形態では、IDUAペプチドを、MPS Iを有する対象をスクリーニングするための一次バイオマーカーとして使用することができる。特定の実施形態では、IDUAペプチドを、MPS Iを有する対象を確認するための二次バイオマーカーとして使用することができる。特定の実施形態では、GAAペプチドを、ポンペ病を有する対象をスクリーニングするための一次バイオマーカーとして使用することができる。特定の実施形態では、GAAペプチドを、対象がポンペ病を有することを確認するための二次バイオマーカーとして使用することができる。
【0140】
本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される組成物及び方法による、MPS I及び/またはポンペ病のスクリーニングの転帰に基づく対象(例えば、ヒト)の治療を含む。対象の治療には、治療上有効な量の送達が含まれる。治療有効量としては、有効量、予防的処置及び/または治療的処置を提供する量が含まれる。
【0141】
「有効量」は、対象において所望の生理学的変化をもたらすのに必要な組成物の量である。例えば、有効量は、症状の緩和、症状の除去、またはMPS I及び/もしくはポンペ病の治癒を提供し得る。有効量は研究目的で投与される場合が多い。本明細書に開示される有効量は、疾患の発達、進行、及び/または解消の評価に関連する動物モデルまたはインビトロアッセイにおいて統計的に有意な効果を引き起こし得る。
【0142】
特定の実施形態は、「予防的処置」として組成物を投与することを含み得る。予防的処置としては、その処置が、障害を発症するリスクを軽減または低減する目的で施される、MPS I及び/もしくはポンペ病の兆候もしくは症状を示さないか、またはMPS I及び/もしくはポンペ病の初期の兆候もしくは症状のみを示す対象に施される処置が含まれる。したがって、予防的処置は、MPS I及び/またはポンペ病に対する予防的処置として機能する。
【0143】
特定の実施形態では、予防的処置は、MPS I及び/またはポンペ病の発症を予防、遅延、または低減し得る。特定の実施形態では、予防的処置は、MPS I及び/またはポンペ病に関連する症状または合併症の重症度を予防または軽減し得る。
【0144】
MPS Iの症状及び合併症としては、体重減少、鬱血、嘔吐の反復、逆流、及び/または皮疹が挙げられる。ポンペ病の症状及び合併症としては、筋肉の衰え、肝臓の拡大;発育不良、呼吸困難、授乳問題、呼吸器感染症、及び/または聴覚問題が挙げられる。
【0145】
「治療的処置」としては、MPS I及び/またはポンペ病の症状または兆候を示す対象に施され、MPS I及び/またはポンペ病の兆候または症状を軽減または排除する目的で対象に施される処置が挙げられる。特定の実施形態では、治療的処置により、MPS Iを患う対象の細胞内の、リソソームグリコサミノグリカンを減少させることができる。特定の実施形態では、治療的処置により、ポンペ病を患う対象の細胞内の、リソソームグリコーゲンを減少させることができる。特定の実施形態では、この治療的処置は、上記のようなMPS I及び/またはポンペ病の症状及び合併症を低減、制御、または排除し得る。
【0146】
予防的処置及び治療的処置は、相互に排他的である必要はなく、特定の実施形態では、投与された投薬量は、複数の処置タイプを達成し得る。特定の実施形態では、治療法としては、MPS I及びポンペ病に対する酵素療法が挙げられる。
【0147】
特定の実施形態では、治療に有効な量は、MPS Iと診断された対象の細胞のリソソーム内での、グリコサミノグリカンの蓄積を防止する。特定の実施形態では、治療法としては、MPS Iに対するラロニダーゼ酵素を提供することを含む。特定の実施形態では、ラロニダーゼを提供することで、上述のとおり、MPS Iの症状が緩和される、または取り除かれる。
【0148】
特定の実施形態では、治療に有効な量は、ポンペ病と診断された対象の細胞のリソソーム内での、グリコーゲンの蓄積を防止する。特定の実施形態では、治療法としては、ポンペ病に対するアルグルコシダーゼアルファ酵素を提供することが挙げられる。特定の実施形態では、アルグルコシダーゼアルファを提供することで、上述のとおり、ポンペ病の症状が緩和される、または取り除かれる。
【0149】
特定の実施形態では、治療用組成物の投与は、別個のアジュバントの投与を伴ってもよい。例示的なアジュバントとしては、ミョウバン、ベントナイト、ラテックス、及びアクリル粒子;不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント;水酸化アルミニウムなどのアルミニウムベースの塩;カルシウムベースの塩;シリカまたは任意のTLR生物学的リガンド(複数可);シグマアジュバントシステム(Sigma Adjuvant System)(SAS);及びRibiアジュバントが挙げられる。
【0150】
投与について、治療有効量(本明細書では用量とも呼ばれる)は、インビトロアッセイ及び/または動物モデル研究からの結果に基づいて最初に推定され得る。そのような情報は、目的の対象における有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。特定の対象に投与される実際の投与量は、標的、体重、状態の重症度、以前または同時の治療的介入、対象の突発性疾患及び投与経路を含む物理的及び生理学的要因などのパラメーターを考慮して、医師、獣医または研究者によって決定され得る。
【0151】
治療上有効な量の細胞は、10細胞/kg~10細胞/kgの範囲であり得る。特定の実施形態では、治療有効量の細胞としては、10細胞/kg、10細胞/kg、10細胞/kg、10細胞/kg、10細胞/kg、10細胞/kg、またはそれ以上を含んでもよい。
【0152】
有用な用量は、0.1~5μg/kgまたは0.5~1μg/kgの範囲であり得る。特定の実施形態では、用量としては、1μg/kg、15μg/kg、30μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、70μg/kg、90μg/kg、150μg/kg、350μg/kg、500μg/kg、750μg/kg、1000μg/kg、0.1~5mg/kg、または0.5~1mg/kgを含み得る。特定の実施形態では、用量としては、1mg/kg、10mg/kg、30mg/kg、50mg/kg、70mg/kg、100mg/kg以上を含み得る。
【0153】
治療有効量は、治療レジメンの過程中に単回または複数回投与することによって達成され得る(例えば、毎日、隔日、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、毎月、2か月ごと、3か月ごと、4か月ごと、5か月ごと、6か月ごと、7か月ごと、8か月ごと、9か月ごと、10か月ごと、11か月ごと、または毎年)。
【0154】
(X)キット。先天性障害を試験するためのキットも提供されている。キットは、血液を刺すためのランセット、血液滴を収集するためのフィルターカード、頬の上皮細胞を収集するための口腔スワブ、採血するための管、溶液または細胞を可溶化するための溶液、ならびに、DBSまたは細胞内のマーカータンパク質を消化するための緩衝剤及び酵素を含むことができる。キットは、IDUA及び/またはGAAの非存在または減少を評価するための抗ペプチド結合剤(例えば、抗体)及び/または試薬または供給品を含む1つ以上の容器をさらに備えてもよい。特定の実施形態では、キットは、以下の抗ペプチド抗体:抗IDUA 218、抗IDUA 462、抗GAA 155、抗GAA 332、抗GAA 376、抗GAA 601、抗GAA 855、抗GAA 882、及び抗GAA 892を含む、1つ以上のキャリアを含む。特定の実施形態では、抗IDUA 218抗体は、配列番号10~21、40、及び41を含む。特定の実施形態では、抗IDUA 462抗体は、配列番号22~33、42、及び43を含む。特定の実施形態では、抗GAA 155抗体は、配列番号44~65を含む。特定の実施形態では、抗GAA 376抗体は、配列番号66~87を含む。抗体は、カラムまたはビーズなどの固体支持体に固定してもよい。キットには、抗体からペプチドを放出するための溶出緩衝液をさらに備えてもよい。特定の実施形態では、キットは、シグネチャーペプチドの絶対定量化を実行するために、1つ以上の標識された参照ペプチドを備えてもよい。特定の実施形態では、キットはまた、ガーゼ、滅菌接着ストリップ、手袋、チューブなどのような、キットを効果的に使用するために必要な必須の実験室及び/または医療用品のいくつかまたは全てを備えてもよい。本明細書に記載されているキットのいずれの内容にも変更を加えてもよい。
【0155】
キットの構成要素は、保管及び後で使用するために調製し得る。そのような容器(複数可)に関連するのは、キットの製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知であり得、この通知は、必要に応じて、製造、使用、または販売の機関による承認を反映する。
【0156】
必要に応じて、キットは、この方法においてキットを使用するための説明書をさらに含む。様々な実施形態において、この説明書は、このキットの使用に関連する結果を解釈するための適切な指示;関連する廃棄物の適切な処分;などを含んでもよい。この説明書は、キット内で提供される印刷された説明書の形態であってもよいし、またはこの説明書はキット自体の一部に印刷されてもよい。説明書は、シート、パンフレット、小冊子、CD-ROM、もしくはコンピューターで読み取り可能なデバイスの形式である場合もあれば、Webサイトなどの離れた場所にある説明書への指示を提供する場合もある。
【0157】
本開示の特定の実施形態を示すために、以下の例示的実施形態及び実施例を含める。当業者は、本開示の見地から、多くの変化を、本明細書にて開示された特定の実施形態に加えることが可能であり、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、依然として同様または類似の結果を得ることができることを認識するべきである。
【0158】
(XI)例示的実施形態。
【0159】
1.生体試料内の、I型ムコ多糖症(MPS I)及び/またはポンペ病の1つ以上のシグネチャーペプチドの検出方法であって、上記方法が、
対象から上記生体試料を入手することと、
上記生体試料由来のタンパク質を酵素により消化して、ペプチドの混合物を得ることと、
上記ペプチドの混合物から、
配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドであって、上記第1のIDUAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメインと、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインと、を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第1のIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号2の第2のIDUAシグネチャーペプチドであって、上記第2のIDUAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含むVHドメインと、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含むVLドメインと、を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第2のIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号3のポンペ病の第1のGAAシグネチャーペプチドであって、上記第1のGAAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号44のCDRH1、配列番号45のCDRH2、及び配列番号46のCDRH3を含むVHドメインと、配列番号47のCDRL1、配列番号48のCDRL2、及び配列番号49のCDRL3を含むVLドメインと、を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第1のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号4のポンペ病の第2のGAAシグネチャーペプチドであって、上記第2のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第2のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号5のポンペ病の第3のGAAシグネチャーペプチドであって、上記第3のGAAシグネチャーペプチドに結合し、配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号58のCDRH3を含むVHドメインと、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含むVLドメインと、を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第3のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号6のポンペ病の第4のGAAシグネチャーペプチドであって、上記第4のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第4のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号7のポンペ病の第5のGAAシグネチャーペプチドであって、上記第5のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第5のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号8のポンペ病の第6のGAAシグネチャーペプチドであって、上記第6のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第6のGAAシグネチャーペプチド;及び/または

配列番号9のポンペ病の第7のGAAシグネチャーペプチドであって、上記第7のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを有する、上記第7のGAAシグネチャーペプチド;
を濃縮することと、
上記濃縮したペプチドで、液体クロマトグラフィー複数反応モニタリング質量分析(LC-MRM-MS)を実施して、各シグネチャーペプチドの濃度を測定することで、上記生体試料内の、MPS I及び/またはポンペ病の1つ以上のシグネチャーペプチドを検出することと、
を含む、上記方法。
【0160】
2.上記方法を、上記対象で、フェニルケトン尿症、原発性先天性甲状腺機能低下症、嚢胞性線維症、及び鎌状赤血球症のうちの1つ以上をさらにスクリーニングする、新生児スクリーニング(NBS)の一部として実施する、実施形態1に記載の方法。
【0161】
3.上記方法を、上記対象においてポンペ病及び/またはMPS Iの臨床的症状が見られない中で実施する、実施形態1または2に記載の方法。
【0162】
4.上記生体試料が、乾燥血液スポット(DBS)、口腔スワブ、末梢血単核球細胞(PBMC)、または白血球(WBC)である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
5.上記酵素がトリプシンである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
6.各シグネチャーペプチドの濃度を、対応する所定の閾値濃度と比較することと、
上記対象が、
上記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が、対応する所定の閾値濃度を下回る場合、あるいは、上記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドが存在しない場合に、MPS Iを、及び/または
上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの濃度が、対応する所定の閾値濃度を下回る場合、あるいは、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドが存在しない場合に、ポンペ病を
患うと診断することと、
をさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
7.各シグネチャーペプチドに対する所定の閾値濃度が、正常な対照対象の集団に由来する、対応する生体試料中の各シグネチャーペプチドの平均濃度の標準偏差から計算される、実施形態6に記載の方法。
【0166】
8.上記生体試料がDBSであり、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、上記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、10pmol/L~350pmol/Lの範囲の濃度を含む、実施形態7に記載の方法。
【0167】
9.上記生体試料がDBSであり、上記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの所定の閾値濃度が、35pmol/L以下を含む、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
10.上記生体試料がPBMCであり、正常な対照対象の集団由来のPBMCにおける、上記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、300pmol/L~1000pmol/Lの範囲の濃度を含む、実施形態7に記載の方法。
【0169】
11.上記生体試料が口腔スワブであり、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブにおける、上記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、100pmol/L~1000pmol/Lの範囲の濃度を含む、実施形態7に記載の方法。
【0170】
12.上記生体試料が口腔スワブであり、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブにおける、上記配列番号1のMPS Iの第1のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、30pmol/g~85pmol/gの範囲の濃度を含む、実施形態7に記載の方法。
【0171】
13.上記生体試料がDBSであり、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、上記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、10pmol/L~250pmol/Lの範囲の濃度を含む、実施形態7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
14.上記生体試料がDBSであり、上記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの所定の閾値濃度が、25pmol/L以下を含む、実施形態6~9、及び13のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
15.上記生体試料がPBMCであり、正常な対照対象の集団由来のPBMCにおける、上記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、350pmol/L~1000pmol/Lの範囲の濃度を含む、実施形態7または10に記載の方法。
【0174】
16.上記生体試料が口腔スワブであり、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブにおける、上記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、100pmol/L~1000pmol/Lの範囲の濃度を含む、実施形態7、11、及び12のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
17.上記生体試料が口腔スワブであり、正常な対照対象の集団由来の口腔スワブにおける、上記配列番号2のMPS Iの第2のIDUAシグネチャーペプチドの平均濃度が、30pmol/g~80pmol/gの範囲の濃度を含む、実施形態7、11、12、及び13のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
18.上記生体試料がDBSであり、正常な対照対象の集団由来のDBSにおける、上記配列番号5のポンペ病の第3のGAAシグネチャーペプチドの平均濃度が、25pmol/L~250pmol/Lの範囲の濃度を含む、実施形態6~9、13、及び14のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
19.上記生体試料がDBSであり、上記配列番号5のポンペ病の第3のGAAシグネチャーペプチドの所定の閾値濃度が、30pmol/L以下を含む、実施形態6~9、13、14、及び18のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
20.上記配列番号1の第1のIDUAシグネチャーペプチドの濃縮に使用した、上記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号18のVHドメイン、及び/または配列番号21のVLドメインを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
21.上記配列番号2の第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃縮に使用した、上記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号30のVHドメイン、及び/または配列番号33のVLドメインを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
22.上記配列番号3の第1のGAAシグネチャーペプチドの濃縮に使用した、上記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号57のVHドメイン;配列番号65のVLドメイン;配列番号55の重鎖;または配列番号63の軽鎖のうちの1つ以上を含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
23.上記配列番号5の第3のGAAシグネチャーペプチドの濃縮に使用した、上記抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号79のVHドメイン;配列番号87のVLドメイン;配列番号77の重鎖;または配列番号85の軽鎖のうちの1つ以上を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
24.上記対象が、MPS I及び/またはポンペ病に対する1つ以上の治療を受けており、上記生体試料が、上記1つ以上の治療の前に入手され、上記方法が、
上記1つ以上の治療中または後に、上記対象に由来する第2の生体試料で、上記入手、消化、濃縮、及び実施を繰り返すこと、
ならびに、
上記1つ以上の治療が、
上記1つ以上の治療中または後の、上記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が、上記1つ以上の治療前の、上記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの対応するペプチド濃度を上回る場合、MPS Iに、及び/または
上記1つ以上の治療中または後の、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの濃度が、上記1つ以上の治療前の、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの対応する濃度を上回る場合、ポンペ病に
対して効果的であることを測定すること、
あるいは、
上記1つ以上の治療が、
上記1つ以上の治療中または後の、上記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が、上記1つ以上の治療前の、上記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの対応する濃度以下である場合、または、上記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドが存在しない場合、MPS Iに、及び/または
上記1つ以上の治療中または後の、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの濃度が、上記1つ以上の治療前の、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの対応する濃度以下である場合、または、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドが存在しない場合、ポンペ病に
対して効果的でないことを測定すること
をさらに含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
25.上記対象が、
上記第1及び/または第2のIDUAシグネチャーペプチドの濃度が存在しない場合、MPS Iに、及び/または
上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、及び/または第7のGAAシグネチャーペプチドの濃度が存在しない場合、ポンペ病に
対して、酵素補充療法(ERT)に対する免疫応答を生み出すことを予測すること
をさらに含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
26.ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート(MTX)、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、リツキシマブ、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、及び/または血漿交換を上記対象に投与して、上記免疫応答を低下または防止することをさらに含む、実施形態25に記載の方法。
【0185】
27.上記免疫応答が、ERTにおいて、酵素に対する中和抗薬剤抗体を生み出すことを含む、実施形態25または26に記載の方法。
【0186】
28.対象における、I型ムコ多糖症(MPS I)及び/またはポンペ病をスクリーニングするためのアッセイであって、上記アッセイが、
(i)
配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号1のMPS Iのシグネチャーペプチドに結合する、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;
配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号2のMPS IのIDUAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含むVLドメイン;
配列番号44のCDRH1、配列番号45のCDRH2、及び配列番号46のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号47のCDRL1、配列番号48のCDRL2、及び配列番号49のCDRL3を含むVLドメイン;及び/または
配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号68のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号5のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含むVLドメイン;
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント:
及び/または
(ii)
配列番号4のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号6のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号7のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号8のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;及び/または
配列番号9のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
及び/または
(iii)
配列番号1のMPS IのIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号2のMPS IのIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号4のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号5のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号6のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号7のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号8のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;及び/または
配列番号9のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド
を含む参照シグネチャーペプチド
を含む、上記アッセイ。
【0187】
29.上記参照シグネチャーペプチドが同位体標識されている、実施形態28に記載のアッセイ。
【0188】
30.上記抗体またはその抗原結合フラグメントが磁気ビーズに付着している、実施形態28または29に記載のアッセイ。
【0189】
31.配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0190】
32.上記VHドメインが配列番号18で説明され、上記VLドメインが配列番号21で説明される、実施形態31に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0191】
33.配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0192】
34.上記VHドメインが配列番号30で説明され、上記VLドメインが配列番号33で説明される、実施形態33に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0193】
35.配列番号44のCDRH1、配列番号45のCDRH2、及び配列番号46のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号47のCDRL1、配列番号48のCDRL2、及び配列番号49のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0194】
36.上記VHドメインが配列番号57で説明される、及び/または、上記重鎖が配列番号55で説明される;ならびに
上記VLドメインが配列番号65で説明される、及び/または、上記軽鎖が配列番号63で説明される
実施形態35に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0195】
37.配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号68のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0196】
38.上記VHドメインが配列番号79で説明される、及び/または、上記重鎖が配列番号77で説明される;ならびに
上記VLドメインが配列番号87で説明される、及び/または、上記軽鎖が配列番号85で説明される
実施形態37に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0197】
39.キットであって、
(i)
配列番号10のCDRH1、配列番号11のCDRH2、及び配列番号12のCDRH3を含む重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに、配列番号1のMPS Iのシグネチャーペプチドに結合する、配列番号13のCDRL1、配列番号14のCDRL2、及び配列番号15のCDRL3を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;
配列番号22のCDRH1、配列番号23のCDRH2、及び配列番号24のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号2のMPS IのIDUAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号25のCDRL1、配列番号26のCDRL2、及び配列番号27のCDRL3を含むVLドメイン;
配列番号44のCDRH1、配列番号45のCDRH2、及び配列番号46のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号47のCDRL1、配列番号48のCDRL2、及び配列番号49のCDRL3を含むVLドメイン;及び/または
配列番号66のCDRH1、配列番号67のCDRH2、及び配列番号68のCDRH3を含むVHドメイン、ならびに、配列番号5のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する、配列番号69のCDRL1、配列番号70のCDRL2、及び配列番号71のCDRL3を含むVLドメイン;
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント:
及び/または
(ii)
配列番号4のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号6のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号7のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
配列番号8のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;及び/または
配列番号9のポンペ病のGAAシグネチャーペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント;
及び/または
(iii)
配列番号1のMPS IのIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号2のMPS IのIDUAシグネチャーペプチド;
配列番号3のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号4のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号5のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号6のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号7のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;
配列番号8のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド;及び/または
配列番号9のポンペ病のGAAシグネチャーペプチド
を含む参照シグネチャーペプチド
を含む上記キット。
【0198】
40.濾紙カード、パンチツール、口腔スワブ、採血管、消化酵素、消化緩衝液、抗体またはその抗原結合フラグメントの固体支持体;及び溶出緩衝液のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態39に記載のキット。
【0199】
41.上記参照シグネチャーペプチドが同位体標識されている、実施形態39または40に記載のキット。
【0200】
42.上記抗体またはその抗原結合フラグメントが磁気ビーズに付着している、実施形態39~41のいずれか1つに記載のキット。
【0201】
(XII)実験実施例。
【0202】
実施例1。本研究は、DBSを生体試料として使用するimmuno-SRM法により、MPS I患者をスクリーニングするための、2つのIDUAシグネチャーペプチドバイオマーカー、及びこれらの関連する抗体の有効性を示した。関連する抗体を使用して、2つのIDUAシグネチャーペプチドバイオマーカーが、市販されているPBMCで検出されたこともまた、本研究は示した。
【0203】
材料及び方法。標準的なimmuno-SRMプロトコルを、本研究で使用した。簡潔に述べると、1.25インチのDBSパンチを、各試料に対して入手し、96ウェルプレート(96 Well MASTERBLOCK(登録商標),polypropylene,0.5ml,Greiner)の、指定されたウェルに配置した。各ウェルに、200μLの、0.1%tritonの50mM重炭酸アンモニウム緩衝液、及び、6μLの0.2Mジチオスレイトール(DTT)を添加し、DBSを30分間、37℃のオーブン(ハイブリダイゼーションオーブン,Illumina)で抽出した。抽出後、37.5μLのトリプシン(1μg/μLの50mM酢酸)(TPCK-処理済トリプシン,Worthington,LS003742)を各ウェルに添加し、37℃オーブンで2時間、消化を行った。その後、消化の後で、適量の内部標準(IS)、及び10μLのTris緩衝液(pH8.0)を各試料に添加し、1000rpmにて2分間、十分混合した。
【0204】
次に、200μLの消化溶液を新しいウェルに移し、タンパク質はセーブペーパー(DBS製)に残したままにした。各標的化ペプチドに対して、適量のモノクローナル抗体(mAb)被覆磁気ビーズ(Dynabeads-Protein G磁気ビーズ,Invitrogen,No.10004D)を溶液に添加し、混合物を4℃、1000rpmで一晩放置した。翌日、mAb-ビーズ-ペプチド複合体を、250μLの0.1×PBS+0.01% CHAPSにより、磁気プレートラックを使用して2回洗浄した。2回目の洗浄後、30μLの5%酢酸+3%ACNの水溶液を、ペプチド溶出のためにmAb-ビーズ-ペプチド複合体に添加し、1000rpmで5分間放置した。次に、溶出液及びビーズを磁気プレートラック上で分離した。溶出液を異なる96ウェルプレートに移し、3000rpmで2分間遠心分離にかけた。各ウェルからの、15μLの透明溶出液を、LC-MS/MSを用いるデータ分析のために、新しいウェルに移した。残りの溶出液を-20℃で、バックアップとして保管した。
【0205】
Ionkey源、ならびに、デュアルMクラスグラジエント及びローディングクロマトグラフィーポンプを備えたWaters Xevo TQ-XS(Milford,MA)で、単離したペプチド混合物のLC-MS/MSを行った。クロマトグラフ溶媒は、A:HO+0.1%FA、及びB:ACN+0.1%FAであった。初期ステップとして、ペプチドを、M-Class Trap Symmetry C18カラム(300μM×25mm、100A、5uM)に3分間、A:Bを98:2で、20μL/分の一定速度でロードした。ロード後、逆流させた。ペプチドをトラップカラムから溶出させ、150uM×100mmのBEH C18イオンキー(130A,1.7μM)を使用して分離した。Q1及びQ3四重極の両方でのユニット解像度で、SRM遷移を入手した。各ペプチドに対して、プリカーサー及びフラグメント質量を選択して、最高強度の遷移を生み出した。プリカーサー質量、フラグメント質量、及び衝突エネルギーをチューニングして、生成したシグナルを最適化した。
【0206】
DBSでのイズロニダーゼ(IDUA)レベルを監視して、I型ムコ多糖症(MPS I)患者をスクリーニングするために、シグネチャーペプチドバイオマーカーIDUA 218及びIDUA 462を開発した。標準的なimmuno-SRMプロトコルを用いて、それぞれ、IDUA 218及びIDUA 462に対する、1μg及び4μgの抗体をアッセイで使用して、外部ペプチドと1.25fmolのISの両方を捕捉した。研究には、11名のMPS I患者(弱毒化形態を有する2名の患者:1名の患者はERT前及びERT後試料の両方を提供する;重症形態を有する4名の患者:1名の患者は、ERT前、ERT後、及び、骨髄移植(BMT)後試料を提供する;未知の形態のMPS Iを有する3名の患者;ならびに、2名のBMT後患者)を含んだ。治療前患者は全員、疾患の重症度に関係なく、極度に低レベルのIDUAを示した一方で、正常対照、及び治療後患者は、正常範囲で、一定レベルのIDUAを示した(図3A~3D)。IDUAペプチドバイオマーカーを使用して、MPS Iを診断、及び/または予測することができる。
【0207】
図4A及び4Bに示すように、異なる量のISを、DBSマトリックスにスパイクすることにより、両方のIDUAペプチドバイオマーカーに対して、線形曲線が構築された。図中の点線は、正常前記で定量化された最低量のペプチドを示し、IDUA 218及びIDUA 462に対してそれぞれ、0.64fmol(29.43pmol/L)及び0.30fmol(13.77pmol/L)であった。表2では、正常範囲、暫定的なカットオフ、検出下限(LOD)、定量下限(LOQ)、日中及び日間のバリアント係数(CVS)、ならびに、IDUAimmuno-SRM法のためのIDUAペプチドの、相対的な安定性をまとめている。日中及び日間アッセイCVは、異なる5日間において、5通りのアッセイを行うことで入手した。日中CVは、同日中での、同一試料の5回のアッセイでの結果の一貫性を評価する一方で、CVは、異なる5日間でのアッセイの結果の一貫性を評価する。表2にまとめるように、IDUA分析に対するCVは全て、15%未満であった。DBS試料における、IDUAペプチドの相対的安定性は、2週間の過程にわたり、-20℃、室温(RT)、及び37℃を含む、異なる温度でDBSを保管することにより評価した。RT及び37℃で保管したDBSのIDUA濃度を、-20℃で保管したDBSのIDUA濃度と比較することにより、相対的安定性を計算した。合わせると、IDUA分析のためのimmuno-SRM法は、高定量様式で実施することができることをこれらのデータは示す。
【表5】
【0208】
図3B及び3Dに示すように、大部分のMPS I患者が、存在しないレベルのIDUAを示す、すなわち、IDUA濃度が、両方のIDUAペプチドのLODを下回るにもかかわらず、弱毒化MPS Iを患う1名の患者は、わずかに増加したIDUA濃度(両方のIDUAペプチドのLODを上回る)を示した。より濃縮されたタンパク質、例えば白血球、PBMC、または口腔スワブを有する生体試料により、immuno-SRM法により、これらの2つの患者集団でのタンパク質濃度差の、より細かい調査が可能となるはずであることが予想される。
【0209】
図5A及び5Bに示すように、500μLの商業PBMC試料(500μgのタンパク質/mL)を用いると、対照DBS試料と比較したときに、両方のIDUAペプチドバイオマーカーに対して検出されたペプチド濃度は、8~12倍増加した。
【0210】
実施例2。口腔スワブ由来の細胞において、実施例1に記載する、関連する抗体を使用するimmuno-SRM法により、2つのIDUAシグネチャーペプチドバイオマーカーが検出されたことを、本研究は示した。
【0211】
口腔スワブ試料。制御倫理審査委員会は、口腔スワブ試料用のプロトコルを認可し、対象全員に、書面によるインフォームドコンセントが与えられた。正常な対照の口腔スワブ試料を、商業ベンダーから入手した。口腔スワブ試料は全て、実験室で、-20℃または-80℃で保管した。盲検試料には、送付者により付与されたIDで標識をして識別し、同意した患者試料に、受領時に実験室IDを付与した。剥離パウチ中の、ナイロンでフロック加工された乾燥スワブを、Fisher Scientific(Chicago,IL;カタログ番号23-600-951)から入手した。2mLの冷却保管バイアル内部スレッドを、Fisher Scientific(Chicago,IL;カタログ番号12-567-501)から入手した。口腔スワブ試料収集後のプロトコルは、CHLA.(2016年4月4日).Buccal Swab Collection Procedure.CHLA-Clinical Pathology;(2016年7月27日).Buccal DNA Collection Instructions.Pathway Genomics;(2017年12月14日).Instruction for Buccal Swab Sample Collection.Otogenetics;PDXL PDXL.(2017年11月28日).Buccal Swab collection procedure - PersonalizedDx Labs [Video].YouTube.youtube/3ftvHkfM71o?t=146のワールドワイドウェブ;及び、Centers of Disease Control and Prevention(CDC)(2020年7月8日)に記載されている。Interim Guidelines for collecting, handling, and testing clinical specimens for Covid-19.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/lab/guidelines-clinical-specimens.htmlのワールドワイドウェブに記載されている。細胞を含有する口腔スワブの先端を、可溶化のために管にクリップ止めし、DBSに関して上述したように消化を行った。
【0212】
図6A及び6Bに示すように、口腔スワブを用いて収集した上皮細胞により、DBS試料と比較して、両方のIDUAペプチドバイオマーカーに対するペプチド濃度の、2.9~18.2倍の増加がもたらされ、このことにより、同様の体積の唾液が推定される。
【0213】
実施例3。immuno-SRM法は、確認されたMPS I患者から、MPS Iの偽欠損症症例を区別するための実行可能なオプションであることを、本研究は示した。
【0214】
実施例1で論じる、標準的なimmuno-SRMプロトコルに従い、実験を行った。図7A及び7Bは、4名のMPS I偽欠損症症例に対する、IDUA 218及びIDUA 462の両方のペプチド濃度を示す。偽欠損症IDUA濃度は広範囲にわたった。しかし、偽欠損症症例に対する最低IDUA濃度(IDUA 218及びIDUA 462に対してそれぞれ、8.63pmol/L及び3.82pmol/L)であっても、確認されたMPS I患者に対する最高IDUA濃度(IDUA 218及びIDUA 462に対してそれぞれ、6.76pmol/L及び2.32pmol/L)よりも依然として高かった。immuno-SRMを、MPS IのNBSに対する一次または二次力価試験として使用し、偽欠損症症例から偽陽性率を減らすことができることを、本研究は示す。immuno-SRMを一次スクリーニング法として使用する、将来的な大型コホートパイロットスタディは、MPS I及びポンペ病をスクリーニングするための現在の方法と比較して、優れた偽陽性率を試験するために実施されるであろう。
【0215】
実施例4。GAAペプチドに対するモノクローナル抗体を開発することは実現可能であることを、本研究は示した。
【0216】
抗体産生を以下のとおりに実施した:i)ペプチドを、N末端システインで合成して、ウサギ免疫化の前に、アジュバントタンパク質にコンジュゲートした;ii)免疫化ウサギからの血清試料を収集し、血清中の抗体を、ウサギを選択するためのimmuno-SRMによるペプチド捕捉試験で使用した;iii)2~3回の免疫化ブースト(ウサギへの複数回の免疫付与)後、最良のウサギを選択して、その形質細胞を、細胞選別により単離し、培養して抗体を作製した;iv)実施例1に記載のとおりにimmuno-SRMを実施し、形質細胞が、目的のターゲットに対する利用可能な抗体を産生することを実証した。cDNAをクローニングし、発現させて最終のモノクローナル抗体を産生した。
【0217】
GAA 332及びGAA 855に対するモノクローナル抗体を開発するために、免疫化ウサギの血清試料中の抗体を使用して、図8A及び8Bに示すように、精製したGAA 332及びGAA 855ペプチド、加えて、DBS試料由来の内部GAA 332及びGAA 855ペプチドを捕捉した。免疫化ウサギが、GAA 332及びGAA 855ペプチドに対する、対応する抗体を産生することができることを、本データは示す。抗体を含有する上清を、PBMCを用いるimmuno-SRMアッセイで使用した。図9に示すように、GAA 855に対する上清中の抗体は、PBMC試料(500μLの、商用PBMC試料(500μgのタンパク質/mL))由来のペプチド捕捉後に、強力なシグナルを得ることが可能であった。ウサギは、抗GAAペプチド抗体を生み出すことができることを、本研究は示す。
【0218】
GAA 155及びGAA 376に対するモノクローナル抗体を開発するために、免疫化ウサギの血清試料中の抗体を使用して、図10A及び10Bに示すように、精製したGAA 155及びGAA 376ペプチド、DBS試料由来の内部GAA 155及びGAA 376ペプチド、ならびに、口腔スワブ試料由来の内部GAA 155及びGAA 376ペプチドを捕捉した。DBS及び口腔スワブ試料を入手し、実施例1及び2に記載するimmuno-SRMのために、試料からペプチドを調製した。免疫化ウサギが、GAA 155及びGAA 376ペプチドに対する、対応する抗体を産生することができることを、本データは示す。抗体を含有する上清を、口腔スワブを用いるimmuno-SRMアッセイで使用した。図10A及び10Bに示すように、GAA 155及びGAA 376に対する上清中の抗体は、DBSよりも口腔スワブにおいて、2~100倍大きな分析応答を得ることができた。ウサギは、DBS及び口腔スワブからの濃縮のために、抗GAAペプチド抗体を生み出すことができることを、本研究は示す。
【0219】
実施例5。実施例1で論じる、DBS試料を用いる標準的なimmuno-SRMプロトコルに従い、実験を行った。図11に示すように、immuno-SRM法が、酸α-グルコシダーゼ酵素の偽欠損症から、ポンペ患者を区別するための実行可能なオプションであることを、本研究は示した。GAAペプチドは、間違いなく陽性のポンペ患者において、有意に減少した、または存在しなかった。DBSからの、乳児期に開始するポンペ病を患う患者と、遅発性形態のポンペ病を患う患者とのGAA濃度では、わずかな差が存在した。より濃縮されたタンパク質、例えば白血球、PBMC、または口腔スワブを有する生体試料により、immuno-SRM法により、これらの2つの患者集団でのタンパク質濃度差の、より細かい調査が可能となろうことが予想される。GAAがない患者は、CRIM陰性状態と適合性がある可能性があり、最終的には、ERTの前に遮断抗体を減らすために免疫調節を行う必要がある可能性がある。
【0220】
図11に示すように、immuno-SRM法は、確認されたポンペ患者から、偽欠損症症例を区別するための実行可能なオプションであることを、本研究は示した。したがって、immuno-SRMを、ポンペ病のNBSに対する一次または二次力価試験として使用し、偽欠損症症例から偽陽性率を減らすことができる。
【0221】
予測実施例1。ポンペ病(PD)の診断のための、GAAシグネチャーペプチド(複数可)のimmuno-SRMアッセイ。
【0222】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)及び白血球(WBC)。PBMC及びWBCを、例えば、Kerfoot et al.,Proteomics Clin Appl,2012.6(7-8):394-402;Grievink et al.(2016)Biopreserv Biobank 14(5):410-415;Corkum et al.(2015)BMC Immunol.16:48;Jia et al.(2018)Biopreserv Biobank 16(2):82-91;Boyum(1968)Scand.J.Clin.Lab Invest.Suppl.97:77;Boyum(1977)Lymphology 10(2):71-76;Morgensen and Cantrell(1977)Pharm Therap.1:369-383;Beeton and Chandy(2007)J Vis Exp.(8):326;Brocks et al(2006)In vivo 20(2):239;Faguetand Agee(1993)J Imm Meth 165(2):217;Broussoet al(1997)Immunol Let 59(2):85;及び、Dagur and McCoy(2015)CurrProtocCytom.73:5.1.1-5.1.16に記載されているものなどの、当該技術分野において既知のプロトコルにより、収集することができる。単離したPBMCまたはWBCWBCを可溶化することができ、細胞由来のタンパク質を、DBSに関して上述したとおりに消化する。
【0223】
正常な対照由来の対応する試料と共に、PDを患う患者、または、PDを有することが疑われる患者の、DBS、口腔スワブ試料、PBMC、またはWBC(本明細書に記載するとおり)を、本明細書に記載するように、GAA 155、GAA 332、GAA 376、GAA 601、GAA 855、GAA 882、GAA 892シグネチャーペプチド、またはこれらの組合せを使用するimmuno-SRMにより、分析することができる。immuno-SRM診断を、臨床診断と比較する。入手可能であれば、GAA遺伝子に関する遺伝子情報、及び治療情報を、各患者に関して入手する。immuno-SRMアッセイをシグネチャーペプチドで多重化し、MPS I(IDUA 218及び/またはIDUA 462)を試験することができる。本明細書に記載する抗体を利用するimmuno-SRMアッセイを使用して、DBS、口腔スワブ試料、PBMC、またはWBCを含む生体試料中で、開示されたGAA及び/またはIDUAシグネチャーペプチドを検出することができる、ならびに、検出したシグネチャーペプチドのレベルに基づき、対象がポンペ病及び/またはMPS Iを有するか否かを診断することができる。ことを、これらの研究は示すであろう。さらに、ポンペ病及び/またはMPS Iの偽欠損症症例を、ポンペ病及び/またはMPS Iの真の症例から区別し、これらのLSD診断の偽陽性率を減少させることができることを、研究は示すであろう。
【0224】
(XIII)締めの段落。本明細書に開示される各実施形態は、その特定の記載された要素、ステップ、成分または構成要素を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなってもよい。したがって、「含む(include)」または「含んでいる(including)」という用語は、「含む、からなる、または本質的にからなる」を意味すると解釈されるべきである。移行用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」とは、不特定の要素、ステップ、成分、または構成要素を、たとえ大量であっても、含むがこれらに限定されず有することを意味する。「からなる」という移行句は、指定されていない任意の要素、ステップ、成分、または構成要素を除外する。「本質的にからなる」という移行句は、実施形態の範囲を、特定の要素、ステップ、成分、または構成要素に、及び実施形態に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。重大な影響により、DBS、口スワブ、PBMC、またはWBCに由来する細胞、本明細書に開示された抗体、及びimmuno-SRMを利用して、MPS I及び/またはポンペ病を確実に診断する能力が統計的に有意に低下する。
【0225】
別段示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメーターは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を請求項の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、及び通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。さらに明確にする必要がある場合、「約」という用語は、記載された数値または範囲と組み合わせて使用される場合、すなわち、記載された値または範囲よりいくらか多いまたはいくらか少ないことを示すとき(記載された値の±20%の範囲内まで;記載値の±19%;記載値の±18%;記載値の±17%;記載値の±16%;記載値の±15%;記載値の±14%;記載値の±13%;記載値の±12%;記載値の±11%;記載値の±10%;記載値の±9%;記載値の±8%;記載値の±7%;記載値の±6%;記載値の±5%;記載値の±4%;記載値の±3%;記載値の±2%;または記載値の±1%)、当業者によって合理的に帰される意味を有する。
【0226】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。ただし、数値には本質的に、それぞれの試験測定で見出された標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が含まれている。
【0227】
本発明を説明する文脈で(特に以下の特許請求の範囲で)使用される用語「a」、「an」、「the」及び同様の指示対象は、本書に別段の記載がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。本明細書での値の範囲の列挙は、単に、その範囲内にある各々の個別の値を個別に言及する簡単な方法として機能することを意図している。本明細書に別段の記載がない限り、個々の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく解明することを意図したものであり、それ以外に特許請求される本発明の範囲を制限するものではない。本明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0228】
本明細書に開示される本発明の代替要素または実施形態の分類は、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書に見られる他の要素と任意の組合せで参照及び請求され得る。グループの1つ以上のメンバーが、利便性及び/または特許性の理由から、あるグループに含まれるか、またはあるグループから削除されることが予想される。そのような包含または削除が発生した場合、本明細書には変更されたグループが含まれていると見なされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されている全てのマーカッシュ(Markushグループ)の書面による説明が満たされる。
【0229】
本発明を実施するために本発明者に知られている最良のモードを含む、本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されている。当然ながら、これらの説明された実施形態の変形は、前述の説明を読むと、当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に使用することを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明を実施することを意図している。したがって、本発明は、適用法令によって許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題の全ての変更及び同等物を含む。さらに、その全ての可能な変形における上記の要素の任意の組合せは、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。
【0230】
さらに、本明細書全体を通して、特許、印刷された刊行物、雑誌記事、及び他の書面のテキスト(本明細書の参照資料)に対して多数の参照がなされてきた。参照される資料のそれぞれは、それらの参照される教示のために、その全体が参照により本明細書に個別に組み込まれる。
【0231】
本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることが理解されるべきである。使用され得る他の変更は、本発明の範囲内である。したがって、限定ではないが例として、本発明の代替の構成を、本明細書の教示に従って利用し得る。したがって、本発明は、正確に示され、説明されたものに限定されない。
【0232】
本明細書に示される詳細は、例として、本発明の好ましい実施形態の例示的な議論を目的とするものにすぎず、本発明の様々な実施形態の原理及び概念的態様の最も有用かつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供する目的で提示される。この点に関して、本発明の基本的な理解に必要であるよりも詳細に本発明の構造の詳細を示す試みはなされておらず、図面及び/または実施例とともに行った説明は、本発明のいくつかの形態が、実際に具体化され得る方法を当業者に明らかにしている。
【0233】
本開示で使用される定義及び説明は、以下の実施例で明確かつ明瞭に変更されない限り、または意味の適用がなんらかの構造を無意味または本質的に無意味にする場合を除いて、なんらかの将来の構造を制御することを意味及び意図する。用語の構成によって意味がなくなるか、または本質的に意味がなくなる場合、定義はWebster’s Dictionary、3rd Edition、またはOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Eds.AttwoodT et al.,Oxford University Press,Oxford,2006)などの当業者に公知の辞書から取得する必要がある。
図1-1】
図1-2】
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図1-4】
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図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図12-5】
図12-6】
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図12-9】
図12-10】
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【配列表】
2023519969000001.app
【国際調査報告】