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特表2023-520016感情鈍麻の予防又は処置のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】感情鈍麻の予防又は処置のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20230508BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K31/495
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/16
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559799
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 IB2021000207
(87)【国際公開番号】W WO2021198778
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】20167895.0
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20185247.2
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】フォレイ,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,ミヒャエル,クロンクィスト
(72)【発明者】
【氏名】フロレア,イオアナ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA15
(57)【要約】
本発明は、患者の感情鈍麻を予防、軽減、又は処置することを含む、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル]-フェニル]ピペラジンの治療的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の感情鈍麻の予防、軽減、又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記患者が、CNS疾患又は障害に罹患している、請求項1に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記患者が、CNS疾患又は障害の一部として感情鈍麻を経験している、請求項1又は2に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記患者が、前記CNS疾患の処置のための薬剤を以前に服用していたか、又はまだ服用している、請求項2又は3に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記薬剤が、感情鈍麻の症状及び徴候をもたらし、前記薬剤が、感情鈍麻のために中止された、又は中止しなければならない、請求項4に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記CNS疾患又は障害が、精神病、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想性障害などの精神障害;双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、月経前不快気分障害などの気分障害;及び物質使用障害から選択される、請求項2~3のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記CNS疾患又は障害が、PTSD、うつ病(大うつ病性障害(MDD)及び大うつ病エピソード(MDE)を含む)、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症から選択される、請求項4~5のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
前記CNS疾患又は障害が、大うつ病性障害及び統合失調症から選択される、請求項2~7のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
前記薬剤が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)又はセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)である、請求項4~5のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
前記CNS疾患又は障害が、大うつ病性障害及び統合失調症から選択され、前記薬剤が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)又はセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)である、請求項4~5のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
前記薬剤が、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、及びデュロキセチンから選択される、請求項9~10のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
前記患者が、オックスフォードうつ病質問票(ODQ)において30を超える合計スコアを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
前記薬学的に許容される塩が、臭化水素酸塩、乳酸塩、及びピログルタミン酸塩からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
前記薬学的に許容される塩が、臭化水素酸塩(α)、臭化水素酸塩(β)、又は臭化水素酸塩(γ)から選択される、請求項13に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩が約5mg、約10mg、又は約20mgの1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンの単位用量で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩が約5mg/日、約10mg/日、又は約20mg/日の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンの用量で投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩が経口錠剤又は経口ドロップとして投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月3日に出願された欧州特許出願第20167895.0号及び2020年7月10日に出願された欧州特許出願第20185247.2号の優先権を主張し、それぞれの内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照による組み込み
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、及び特許公報は、本明細書に記載の発明の日付の時点で当業者に公知の技術水準をより十分に説明するために、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0004】
大うつ病性障害(「MDD」)、大うつ病エピソード(「MDE」)、統合失調症、又は心的外傷後ストレス障害(「PTSD」)などのCNS障害及び状態は、世界中で非常に蔓延している、障害を引き起こす再発性疾患である。これらの患者の中には、幸せや心配を感じる能力などの日常生活の正常な部分である感情の制限を経験する者もいる。
【0005】
MDDは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(「SSRI」)及びセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(「SNRI」)で処置することができる重度の再発性の障害を引き起こす疾患である。しかしながら、全患者の約50%は、抑うつ症状の解消に関して、これらの療法に対して部分的な応答しか示さない(Rush et al.,Am.J.Psychiatry(2006),163,1905-1917(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0006】
加えて、SSRI又はSNRIで処置されたMDDの全患者の約50%が、ある程度の感情鈍麻(emotional blunting)を報告しており、これは薬剤に関連し得る(Goodwin et al.,Journal of Affective Disorders,(2017),221,31-35;Bolling and Kohlenberg,(2004),73,380-385(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。感情鈍麻は、情動の不関及び分離、反応性の低下、動機付けの低下、並びに無関心として臨床的に現れる感情の制限を特徴とする状態である(Price J,Cole V,Goodwin GM.,Br.J.Psychiatry,(2009),195(3),211-217(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。感情が鈍麻した人は、麻痺する感覚、笑うことや泣くことができなくなり、以前は楽しんでいたことを楽しむことができなくなり、共感が低下する感覚、他人に対して無関心になる感覚を報告している。また、彼らは、多くの場合、創造的な活動について刺激や情熱が失われたこと、並びに社会的責任や他人への関心の低下の感情について不満を漏らす。
【0007】
有病率が世界で15%であるMDDは、一次処置及び二次処置として、SSRI又はSNRIなどの一般的に使用される抗うつ薬で処置される。SSRIは、効果的であり、且つ前世代のCNS薬、即ち、いわゆる三環系抗うつ薬と比較して良好な安全性プロファイルを有するため、うつ病及び不安などの多くの中枢神経系(「CNS」)疾患の処置で長年にわたって医師に好まれている。SSRI及びSNRIなどの抗うつ薬でのMDDの処置による既知の有害事象は、睡眠パターンの変化、性機能の変化、頭痛、及び体重増加である。臨床試験であまり一般的に調査されていない副作用は、これらの薬剤を服用している患者が経験する感情鈍麻であり、これらの薬剤には、統合失調症の処置に使用される抗精神病薬も含まれる。
【0008】
現在、ほとんどの利用可能な抗精神病薬は、統合失調症の陽性症状を改善するが、陰性症状や認知機能障害を適切に対処することはできない。これにより、持続的な陰性症状に罹患している統合失調症患者の最大35~40%の部分母集団の処置の選択肢を満たすという未達成の大きなニーズが残されている(Mucci A.et al.,Schizophr.Res.,(2017),186,19-28;Rabinowitz J.et al.,Schizophr.Res.,(2013),150(2-3),339-342(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。陽性症状に関しては臨床的に安定していると考えられている統合失調症患者の50~60%では十分に対処されていない陰性症状も見られ、これが、この患者群における機能障害の主な原因となっている(Bobes J.et al.,J.Clin.Psychiatry,(2010),71(3),280-286(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0009】
さらに、ほとんどの利用可能な抗精神病薬は、錐体外路症状(「EPS」)などの重篤な副作用を引き起こすことが知られている。従って、陰性症状及び認知症状に対して改善された有効性並びに良好な副作用プロファイルを有する中枢神経系作用性薬物の探索は、特に統合失調症において持続性の陰性症状、持続性の顕著な陰性症状、及び/又は認知機能障害に罹患している患者のためのより良い処置の選択肢の開発にとって重要である。このような新しい処置法は、陰性症状及び認知障害に罹患している非統合失調症患者に有益であることも証明され得る。
【0010】
感情鈍麻は、仕事生活、社会生活、家庭生活における患者の機能に影響を与え、完全な機能の回復を妨げるため、臨床的に見過ごせない。例えば、感情鈍麻を経験している患者は、責任を回避又は無視する場合があり、その結果、経済的問題又は職場/学校での問題が発生することがあり、家庭生活又は育児の質が低下し得る。従って、感情鈍麻は、患者にとって負担であり、健康に関連する生活の質及び日常機能に悪影響を及ぼす(Price et al.,2009(上記))。感情鈍麻のような機能障害及び残存症状は、研究により、機能障害があるMDDが寛解した又は統合失調症が安定した患者は再発のリスクが高いことが示されたため見過ごせない(Bobes J.et al.,2010(上記))。
【0011】
感情鈍麻及び無快感症は、中枢ドーパミン作動性、中脳辺縁系、及び中皮質報酬回路の経路の障害に関係している(Pan et al.,Curr.Pharm.Des.(2017),23,2065-2072;Sternat and Katzman,Neuropsychiatr.Dis.Treat.(2016),12,2149-2164(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。無快感症は、喜びを経験する能力が低下した状態であり、MDDの一般的な症状であり、患者の約75%で報告され(Franken et al.,J.Affect.Disord.2007),99,83-89(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる);Sternat and Katzman,2016(上記))、統合失調症患者の陰性症状の一部である(Mucci A.et al.,Schizophrenia Research,(2017),186,19-28;Rabinowitz J.et al.,Schizophr Res.,(2013)150(2-3),339-342(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。無快感症は、快楽的な調子に依存し、低い快楽的な調子は喜びを経験する能力の低下を表し、無快感症の可能性を高める(Franken et al.,2007(上記))。無快感症及び障害のある報酬回路の経路は、予後不良及び最適ではない処置反応に関連している(Buckner et al.,Psychiatry Res.,(2008),159,25-30;Uher et al.,Psychol Med(2012),42,967-980(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。
【0012】
感情鈍麻は、表現型的に無快感症と重複するが、2つの状態は同一ではない(Cao et al.,Prog.Neuropsyhopharmacol.Biol.Psychiatry,(2019),92,109-117;Esperidiao-Antonio et al.,Int Rev Psychiatry(2017),29,293-307;Loas et al.,Compr.Psychiatry(1994),35,366-372(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。Cao et.al.(Cao et al.,Frontiers in Psychiatry,(2019),10,17(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))は、無快感症を、処置を受けているMDDの成人における一般的で持続的な障害を引き起こす現象として説明している。これまで、MDDにおける無快感症に対する効果に関して評価されている抗うつ薬は比較的少ない。Cao et al.(上記)はまた、ボルチオキセチンが、スミス-ハミルトン・プレジャー尺度(「SHAPS」)及びモントゴメリーアスベルグうつ病評価尺度(Montgomery Asberg Depression Rating Scale)(「MADRS」)無快感症因子スコアにおけるベースラインからのエンドポイントの著しい改善によって評価されるように無快感症を有意に改善した結果を再検討する。SHAPS及びMADRS無快感症因子の改善は、一般的な機能(即ち、シーハン障害尺度(Sheehan Disability Scale)(「SDS」))及び生活の質(即ち、世界保健機関(World Health Organization)幸福指数(「WHO-5」))の改善と相関し、一部の患者では、感情鈍麻及び無快感症が表現型の重複を示す。
【0013】
無快感症は、前向きな感情が欠如している状態に関係しているが、感情鈍麻は、前向きな感情及び否定的な感情のすべての感情が欠如又は鈍麻している状態である。無快感症を緩和する薬物が感情鈍麻も緩和するかどうかを予測することはできない。「無快感症」という用語は、主に、喜びを経験できないことを指す(Rizvi SJ,Pizzagalli DA,Sproule BA,Kennedy SH,Neuroscience and Biobehavioral Reviews,(2016),65,21-35(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。無快感症は、大うつ病エピソードの中心的な診断的特徴であり、無快感症の患者は、「抑うつ気分」基準が承認されなくても、MDDの診断を承認することがある(American Psychiatric Association(2013)Diagnostic and statistical manual of mental disorders:DSM-5.Washington,D.C.:American Psychiatric Association(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0014】
感情鈍麻の患者は、非常に頻繁に無快感症を経験するが、鈍麻する感情は喜びに限定されず、否定的な感情を含むいくつかの他の感情を含む。それどころか、無快感症の患者は、否定的な感情を非常によく経験することができ、その認知は、鈍くなるというよりむしろ強調される。これは、SSRIを含むいくつかの抗うつ薬が、大うつ病エピソード中の無快感症に有効性を示しているが、同時に、感情鈍麻を引き起こす能力も示している理由を説明し得る。実際、多くの抗うつ薬は、喜びを経験できないことを改善し、否定的な感情の強さを軽減することができる。しかしながら、同じ抗うつ薬が、感情鈍麻を引き起こし得るため、生理学的な否定的感情(例えば、葬式に行って泣く;何か悪いことが起こったときに悲しくなる)を経験する能力を低下させ、同時に、前向きな感情を「安定」させて、感情を、うつ病のときに経験する強さよりも良いが正常ではない範囲に平坦化する。従って、患者は、無快感症が改善され得る。即ち、患者は、過度の否定的な感情に苦しめられたり、喜びを経験することができなくなったりすることがなくなるが、患者は、例えば、創造性、楽しんで物事にかかわる能力、及び人生の出来事に対する応答が鈍くなるなど、感情的に鈍くなる。
【0015】
前述のように、感情鈍麻は、SSRI又はSNRIによる抗うつ薬処置に関連し得る。通常、感情鈍麻は、SSRIの投与に関連しており、投与量が多いほど症候群を引き起こす可能性が高くなり(Sansone and Sansone,Psychiatry(Edgmont)(2010),7,14-18(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))、場合によっては、用量を少なくすることで解決することがある。他の場合には、状態は、SSRIを中止するまで解消されない。感情鈍麻は、前頭葉のセロトニン作動性効果及び/又は前頭前皮質に突き出た中脳ドーパミン作動系のセロトニン調節に関連すると提案されている。セロトニン作動性伝達を広く増強することにより、SSRI薬は、γアミノ酪酸(「GABA」)介在ニューロンを活性化し、それにより、ノルアドレナリン作動性及びドーパミン作動性入力を抑制する(Blier,Int.J.Neuropsychopharmacol.,(2014),17,997-1008(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0016】
この感情鈍麻の現象は、情動不関、感情的な反応や感度の低下、又は感情の麻痺の感覚として様々に説明されている。Price et al,の研究では、患者は、一般的にこの現象を感情が「鈍麻した」、「麻痺した」、「平坦になった」、又は完全に「ブロックされた」、並びに「空白」又は「平ら」と感じたと表現した。一般に、感情鈍麻は、多くの場合、思考力の減退、集中力の低下、及び性欲減退などの他の症状と同時に発生する。
【0017】
感情鈍麻は、負担が大きく、生活の質及び日常機能に悪影響を及ぼす(Price J,Cole V,Goodwin GM.,Br.J.Psychiatry,(2009),195(3),211-217(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。感情の鈍麻は、患者の社会生活、家族生活、及び仕事生活にとって実際の機能的結果である。一部の患者は、パートナー及び家族に対する愛、愛情、及び誇りの低下、社会的交流における同情及び共感の低下、並びに職場での責任についての懸念及び関心の低下をどのように経験したかを述べている。かつては自分にとって重要だったことを「全く気にしない」という感覚を患者のかなりの割合が経験しており、その効果は、抗うつ薬による処置に起因していた。Goodwin et al.による最近の研究により、SSRI又はSNRIを服用している患者のほぼ半数(46%)が感情鈍麻を経験している可能性があることを見出した。(Goodwin GM,Price J,Bodinat CD,J.Affect.Disord.(2017),221,31-35(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。即ち、たとえ寛解中であっても、患者が通常経験するであろう感情の全範囲で感情が制限される。感情鈍麻はまた、MDD患者が処置を止める一般的な理由と認められてきた(Rosenblat et al.,J Affect.Disord.(2019),243,116-120(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0018】
感情鈍麻の現象の別の説明は、それが抑うつ気分の症状であること、並びにSSRI及び関連薬とのその関連性が、療法自体の単なる副作用というよりも、症状の完全な寛解をもたらせなかったことを反映していることである(Goodwin et al.,2017(上記))。これは、感情鈍麻とMDDの他の特徴、特に無快感症との間の神経生物学的及び表現型の重複のためである可能性が高いようである(Cao et al.,Prog Neuropsyhopharmacol Biol.Psychiatry,2019;Esperidiao-Antonio et al.,2017;Loas et al.,1994;Pan et al.,2017;Sternat and Katzman,2016(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。しかしながら、感情鈍麻は、前向きな感情と否定的な感情の両方が欠如している臨床的状態を表しているのに対し、無快感症は、前向きな感情のみが欠如していることを特徴としている(Sternat and Katzman,2016(上記))。
【0019】
これは、SSRIが大うつ病エピソード(即ち、患者がもはや過度の否定的な感情を経験することも、又は喜びを経験することもできない)中の無快感症の症状に対して有効性を示し得るが、感情鈍麻の症状が持続し得る(例えば、患者が、通常は楽しい活動を楽しんで参加することができないことをなお経験し、人生の出来事に対する応答の低下を示す)理由を説明し得る。感情鈍麻及び無快感症は、中枢ドーパミン作動性、中脳辺縁系、及び中皮質報酬回路の経路の障害に関与している(Pan et al.,2017(上記);Sternat and Katzman,2016(上記))。
【0020】
感情鈍麻に苦しんでいる患者はまた、前向きな感情(例えば、幸福、満足、又は愛情)を経験することを持続的にできないこと、重要な活動への関心又は参加が著しく減少すること、及び場合によっては、他者からの孤立感又は疎外感を示し得る。感情的に麻痺していると感じる患者によって報告され得るその他の関連する主観的経験には、感情的に死んでいる感覚、遮断されている感覚、空虚さ及び/又は空っぽの感覚、並びに感情が全くない感覚が含まれ得る。これらの主観的な経験は、気遣いの欠如の程度と、自己と他者の幸福への関心と関連している。
【0021】
高度の情緒障害は、全般的な生活機能の低下、抑うつ症状からの寛解の質の低下、及び状態のより否定的な認識に関連している可能性が高く、処置中止の理由になり得る(Goodwin GM,Price J,Bodinat CD,Laredo J.,J.Affect.Disord.(2017),221,31-35(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0022】
感情の麻痺は、上記のように、例えばSSRI又はSNRIを用いた医療処置における有害事象として見られる反応だけではなく、特定のCNS疾患又は障害の症状の一部として、例えば、うつ病の発症の一部として、又は極度の感情的又は身体的外傷に対する生物心理学的応答としてさえ概念化することもできる。従って、感情の麻痺又は鈍麻が、極度の感情的又は身体的外傷を経験した患者、例えばPTSDと診断された患者で観察され得る。PTSD患者は、通常は、睡眠障害、寝汗、疲労、及び記憶力又は集中力の低下を含む、原因不明の身体的及び/又は心理的症状で初期診療に訪れる(Walter A.,Pharmacotherapy for Post-traumatic Stress Disorder In Combat Veterans P T.(2012);37(1):32-38(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。米国食品医薬品局(「FDA」)は、パロキセチン及びセルトラリンをPTSDの処置用に承認した。一部の処置ガイドラインでは、フルオキセチン及びベンラファキシンを含む、これら及び他の抗うつ薬を、集中型認知行動療法(「CBT」)とともに同等に第1選択薬として推奨している(Toll WA,Barbui C,Ommeren,JAMA,(2013);310:477-478(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。他の者は、集中型CBTの方がより良い証拠があるとみなし、療法が失敗したか利用できない場合、又は重度のうつ病の場合にのみ抗うつ薬を提案する(Bajor LA,Ticlea AN,Osser DN,Harv.Rev.Psychiatry(2011),19:240-258;(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる);Toll WA,Barbui C,Ommeren,JAMA(2013),310:477-478(上記))。これは、SSRIを用いたいくつかの否定的な無作為化臨床試験(「RCT」)を反映し、外傷集中型(「TF」)-CBTと比較して小から中程度の効果の大きさである。例えばアルコール依存症の処置に使用されるオピオイド(opiod)受容体アンタゴニストであるナルメフェンは、感情鈍麻に対するその効果を確立するために研究されていることが知られている。1988年~1990年に、PTSDと診断された退役軍人を治療するために、非盲検パイロット試験でナルメフェンが投与された。公表されたパイロット試験では、1ミリグラムを1日2回から最大200ミリグラムを1日2回まで徐々に増量した、低用量の薬物の投与が報告された。研究結果に基づいて、ナルメフェンは、感情鈍麻の症状を大幅に軽減し、及び場合によっては、寛解させ、共感、愛、気遣い、及び他者への気遣いを含む様々なヒトの正常な応答を経験している退役軍人の能力を促進することが観察された。この薬物は、悪夢、侵入思考、フラッシュバックを含むPTSDのすべての主要な症状;感情的苦痛又は行動回避の症状を発症することなく、戦闘経験を扱うトピックに関わることができないこと;解離性健忘;他人に対する不信感;及び心的外傷事象に関連する過覚醒及び反応性の状態を有意に改善することも分かった(Diagnostic Statistical Manual-5.American Psychiatric Association,pub,2013(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0023】
Oxford Universityの研究により、抗うつ薬使用者の46~71%が処置中に感情鈍麻を経験したことが示された。この研究によると、感情鈍麻に最も一般的に関連する抗うつ薬は、次の3つのクラスのいずれかに分類される:
1.Lexapro(エスシタロプラム)、Prozac(フルオキセチン)、Zoloft(セルトラリン)、及びPaxil(パロキセチン)などのSSRI(Goodwin GM,Price J,Bodinat CD,Laredo J.Emotional blunting with antidepressant treatments:A survey among depressed patients.J.Affect.Disord.2017;221:31-35(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる));
2.Cymbalta(デュロキセチン)、Pristiq(デスベンラファキシン)、及びEffexor XR(ベンラファキシン)などのSNRI;並びに
3.Elavil(アミトリプチリン)及びRemeronなどの三環系及び四環系抗うつ薬。
【0024】
感情鈍麻を経験した人の割合は、3つの薬物クラス間で類似していたが、ばらつきがあった。約33%がWellbutrin(ブプロピオン)(Goodwin GM,Price J,Bodinat CD,Laredo J.,J Affect Disord.(2017),221:31-35(上記))の服用中に感情鈍麻を経験し、75%がCymbaltaで同じ効果を経験した。
【0025】
別の研究では、エスシタロプラムよりもアゴメラチンの方が感情鈍麻の頻度が低いと結論付けられた。実際、エスシタロプラムを服用している約60%に対してアゴメラチンを服用している患者の約28%が、感情強度が低下していると感じ、エスシタロプラムを服用している患者の約53%に対してアゴメラチンを服用している患者の約16%が、病気になる前に気にしていたことがもはや重要ではないと感じた(p=0.024)(Christian de Bodinatet al.,Journal of Neuropsychopharmacology,(2013),16(10),2219-2234(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0026】
Wellbutrin(ブプロピオン)自体は、ドーパミン及びノルエピネフリンの再取り込み阻害剤であるという点で、他の抗うつ薬とは異なる。他のものとは異なり、Wellbutrin(ブプロピオン)は、セロトニン輸送体(「SERT」)を標的にしない(Patel K,Allen S,Haque MN,Angelescu I,Baumeister D,Tracy DK.,Ther.Adv.Psychopharmacol.(2016),6(2),99-144(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。従って、これは、セロトニンの阻害が、SSRI又はSNRIなどの抗うつ薬での感情鈍麻の主な原因の1つであり得ることを示唆し得る。
【0027】
それにもかかわらず、抗うつ薬を服用しているすべての患者で感情鈍麻が報告されているわけではないため、感情鈍麻の正確な理由を特定することは困難であった。鈍麻が抗うつ薬処置の副作用であるのか、それとも恐らく薬物自体の部分的な障害なのか、即ち、残存する抑うつ症状につながるのか、という疑問さえある。
【0028】
Wellbutrin(ブプロピオン)で処置された患者の感情鈍麻の発生率が低いことを考えると、研究は、SERTにおける抗うつ薬の効果が感情鈍麻に大きな役割を果たしていることを示唆しているが、やはり、単一のホルモンがこの現象の唯一の原因である可能性は低いと見なされる。さらに、感情鈍麻は、薬剤の副作用ではなく明らかにされた症状としてよりよく理解されていることが示唆されている(Jones JD,Butterfield LC,Song W,et al.,J Neuropsychiatry Clin.Neurosci.(2015),27(3),213-8(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる));即ち、抗うつ薬がうつ病を緩和すると、感情鈍麻の潜在する症状が、引き起こされるのではなく明らかにされる。
【0029】
本明細書に提示されるデータは、ボルチオキセチンが、感情鈍麻を経験している患者の約半数に緩和をもたらし、研究に参加しているすべての患者の感情鈍麻の症状を有意に軽減することができ、処置の1週間後に既に効果が観察され、処置の次の7週間で効果の大きさが増大していることを示している。この効果は、感情鈍麻が抗うつ薬による医療処置の直接の結果であるかどうか、又は抗うつ薬による医療処置が処置すべき潜在的な症状を明らかにしたかどうかに関係なく、予期されるべきである。同様の効果を、例えば統合失調症又は精神病における陰性症状の一部として、又は抗精神病薬などの統合失調症又は精神病の処置のための薬剤での処置による陰性症状の悪化を経験している患者において、感情鈍麻の処置で期待することができる。
【0030】
ドーパミンの過剰な神経伝達は、統合失調症に関連している。神経弛緩薬とも呼ばれる抗精神病薬は、ドーパミン受容体のいくつかのサブタイプに対して高い親和性を有する化合物のクラスである。様々な抗精神病薬の化学構造により、通常はドーパミンが結合することになるシナプス後反応を引き起こすことなく、ドーパミン受容体に結合することができる。神経弛緩薬は、イオンチャネルを開口させて活動電位を発生させることなくドーパミン受容体をブロックする能力があるため、これを統合失調症患者に投与して、過剰なレベルのドーパミンの低減を促して障害の陽性症状を緩和するのを助けることができる。従来の定型及び非定型抗精神病薬は、幻覚や妄想などの陽性症状の処置における臨床的有効性を実証しているが、ほとんど効果がなく、感情鈍麻の情動や社会的引きこもりなどの陰性症状及び認知機能を悪化させることさえあり得る。これらの後者の症状を処置できないことは、統合失調症に関連する社会機能障害の一因となり得る。統合失調症における複数の神経伝達物質系の機能不全は、1つの神経伝達経路を選択的に標的とする薬物が、この不均一な障害のすべての治療ニーズを満たす可能性が低いことを示唆している(Peng Li et al.Current Topics in Medicinal Chemistry,(2016),16,3385-3403(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0031】
国際公開第2003/029232号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)及び国際公開第2007/144005号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、化合物1-[2-(2,4-ジメチル-フェニルスルファニル)-フェニル]-ピペラジン及びその薬学的に許容される塩を開示している。ボルチオキセチン(1-[2-(2,4-ジメチル-フェニルスルファニル)-フェニル]-ピペラジン)は、受容体活性の調節とセロトニン輸送体阻害を介して作用するマルチモーダル抗うつ薬である。2020年7月1日の時点で、ボルチオキセチンは、2013年9月のFDA及び2013年12月18日の欧州委員会を含め、世界80カ国を超える国々で大うつ病の処置薬として承認されている。臨床開発プログラムでは、ボルチオキセチンは有効且つ安全であり、短期処置及び長期維持療法においてMDDの成人及び高齢者で十分に容認されている。成人におけるボルチオキセチンの承認された治療用量範囲は5~20mg/日である。
【0032】
ボルチオキセチンは、SSRI及びSNRIといくつかの共通の特徴を共有するマルチモーダル抗うつ薬である。しかしながら、ボルチオキセチンは、SSRI及びSNRIとは異なるパターンの効果及び副作用も示すマルチモーダル抗うつ薬であるため、H.Lundbeck A/Sが後援する試験名COMPLETEという名称の臨床試験、試験番号17797A(EudraCT番号2017-004829-33(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))が、感情鈍麻に対するボルチオキセチンの効果を評価するために立ち上げられた。clinicaltrial.govの試験番号NCT03835715(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)では、概要は、試験の目的を:「この研究は、SSRI/SNRIに対する応答が不十分な大うつ病性障害患者の情動機能に対する可変用量のボルチオキセチンの有効性を評価する」として要約している。EudraCT試験登録は、試験の正式名称で同じ目的を引用している。
【0033】
Goodwin et al.(Goodwin et al.,Journal of Affective Disorders,(2017),211,31-35)及びJonathan Price et al.(Jonathan Price et al.,Journal of Affective Disorders,(2012),140,66-74)(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)は、感情的な副作用に関するオックスフォード質問票の使用を報告している。
【0034】
Emmanuelle Corruble et al.(International Journal of Neuropsychopharmacology,(2013),16(10),2219-2234(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))は、感情鈍麻の処置におけるエスシタロプラム及びアゴメラチンによる処置後の患者における感情的な副作用を確立するためのオックスフォード質問票を開示している。この記事は、エスシタロプラムよりもアゴメラチンの方が感情鈍麻の頻度が少ないと述べている。実際、エスシタロプラムを服用している患者の60%に対してアゴメラチンを服用している患者の28%が、感情強度が低下していると感じており、エスシタロプラムを服用している患者の53%に対してアゴメラチンを服用している患者の16%が、病気になる前に気にしていたことはもはや重要ではないと感じた(p=0.024)。ボルチオキセチンが感情鈍麻を経験しているMDDの成人に有効である機序は完全には理解されていない。しかしながら、CNS疾患又は状態に苦しんでいる他の患者の感情鈍麻に対するボルチオキセチンの効果は、同様に良い影響を受けると予想され;そのようなCNS疾患又は状態は、例えば、精神障害又は気分障害であり得る。5-HT1Aアゴニスト及び/又は5-HT3アンタゴニストである化合物がなぜ認知障害の処置に有用であると予想されるかの理論的理由が報告されており、臨床的証拠が、例えば、国際公開第2009/062517号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)によって検証された。T.Sumiyoshi in Am.J.Psych.,158,1722-1725,2001(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、患者が、すべて5-HT1A活性を欠いているハロペリドール、スルピリド、及びピモジドなどの典型的な抗精神病薬をプラセボ又は5-HT1Aアゴニストであるタンドスピロンと組み合わせて服用した研究を報告している。抗精神病薬に加えてタンドスピロンを服用した患者は、認知能力の改善を示したが、プラセボを服用した患者は認知能力の改善を示さなかった。同様に、5-HT1Aアゴニストでもあるクロザピンなどの非定型抗精神病薬は、統合失調症患者の認知力を高めるが、5-HT1A活性を有していないハロペリドールなどの定型抗精神病薬は統合失調症患者の認知力を高めない(Y.Chung,Brain Res.,(2004),1023,54-63(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。健康な男性対象での無作為化二重盲検クロスオーバー試験により、言葉及び空間の記憶と持続的注意の評価により、5-HT3拮抗薬であるアロセトロンが、スコポラミンによって誘発された言葉及び空間の記憶の欠如を軽減することが実証された(Preston,Recent Advances in the Treatment of Neurodegenerative Disorders and Cognitive Function,1994,(eds.)Racagni and Langer,Basel Karger,p.89-93(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。実施例5の国際公開第2009/062517号パンフレット(上記)は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニル-スルファニル)-フェニル]ピペラジン化合物が、ラットの前頭前皮質及び腹側海馬におけるアセチルコリンの細胞外レベルの増加を引き起こし、実施例6は、それらがラットの文脈記憶を改善したことを示している。しかしながら、感情鈍麻に対するボルチオキセチンの効果に関するデータは報告されていない。
【発明の概要】
【0035】
本発明は、感情鈍麻の処置、予防、又は軽減に使用するための、その構造が
【化1】

である1-[2-(2,4-ジメチルフェニル-スルファニル)-フェニル]ピペラジン及びその薬学的に許容される塩に関する。
【0036】
経口剤形、特に錠剤は、投与が容易であり、その後のコンプライアンスが良好であるため、多くの場合、患者及び医師に好まれる。錠剤の場合、活性成分は結晶性であることが好ましい。いくつかの態様では、本発明は、結晶性である化合物に関する。
【0037】
国際公開第2007/144005号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニル-スルファニル)-フェニル]ピペラジンのいくつかの薬学的に許容される塩及び溶媒和物を開示している。1-[2-(2,4-ジメチルフェニル-スルファニル)-フェニル]ピペラジンの好ましい塩は、臭化水素塩;1-[2-(2,4-ジメチル-フェニルスルファニル)-フェニル]-ピペラジンHBrである。国際公開第2007/144005号パンフレット(上記)は、本発明で使用されるさらなる塩のX線粉末回折(「XRPD」)反射をさらに開示する。以下の表は、本発明で使用されるいくつかの化合物の主なXRPD反射をまとめたものである。
【0038】
【表1】
【0039】
本明細書で使用される結晶性化合物は、複数の形態で存在し得る、即ち、それらは多形形態で存在し得る。多形形態は、化合物が複数の形態で結晶化できる場合に存在する。本発明は、純粋な化合物として、又はそれらの混合物として、すべてのそのような多形形態を包含することを意図している。
【0040】
いくつかの態様では、本発明は、精製された形態の化合物を使用する。「精製された形態」という用語は、化合物が他の化合物又は同じ化合物の他の形態を本質的に含まないことを示すことを意図する。
【0041】
ボルチオキセチンの作用機序は、セロトニン受容体活性の直接的な調節及びセロトニン(5-HT)トランスポーター(SERT)の阻害に関連していると考えられている。非臨床データは、ボルチオキセチンが5-HT3、5-HT7、及び5-HT1D受容体アンタゴニスト、5-HT1B受容体部分アゴニスト、並びに5-HT1A受容体アゴニスト及びSERTの阻害剤であり、いくつかの系で神経伝達の調節をもたらすことを示している。このマルチモーダル活性は、動物実験においてボルチオキセチンで観察された抗うつ薬及び抗不安薬のような効果、並びに認知機能、学習、及び記憶の改善の要因であると考えられている。
【0042】
本発明は、患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防、処置、又は軽減に関する。そのような患者は、1つ又は複数のCNS疾患又は状態と診断されていてもされていなくてもよく、そのような患者は、薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴があってもなくてもよい。本発明のいくつかの態様では、CNS疾患又は障害は、精神病、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想性障害などの精神障害;双極性障害、気分循環性障害、大うつ病性障害、気分変調症、月経前不快気分障害などの気分障害、及び物質使用障害の群から選択される。
【0043】
本発明のいくつかの態様では、前記1つ又は複数のCNS疾患又は状態は、PTSD、うつ病(MDD及び大うつ病エピソード(「MDE」)を含む)、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症であり、前記患者は、前記処置に対する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされている。
【0044】
本発明はまた、1つ又は複数のCNS疾患又は状態の処置を受けている患者の感情鈍麻の予防又は処置に関し、前記感情鈍麻は、1つ又は複数のCNS疾患又は状態の前記処置に対する不十分な応答の結果である。
【0045】
本発明はまた、1つ又は複数のCNS疾患又は状態の医療処置を受けている患者の感情鈍麻の予防又は処置に関し、前記感情鈍麻は、1つ又は複数のCNS疾患又は状態の前記医療処置の結果である。
【0046】
本発明はさらに、1つ又は複数のCNS疾患又は状態;PTSD、うつ病(MDD及びMDEを含む)、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症の処置を受けている患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防、処置、又は軽減に関し、前記患者は、前記処置に対する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされている。
【0047】
本発明はさらに、1つ又は複数の疾患又は状態;PTSD、うつ病、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症の処置を受けた患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防又は処置又は軽減に関し、前記患者は、1つ又は複数の疾患又は状態の前記処置に関連する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされた。
【0048】
本発明はさらに、1つ又は複数の疾患又は状態;PTSD、うつ病、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症と診断され、且つ/又はこれらの処置を受けた患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防又は処置又は軽減に関し、前記患者は、1つ又は複数の疾患又は状態の前記処置に関連する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされた。
【0049】
本発明はさらに、1つ又は複数の疾患又は状態;PTSD、うつ病、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症と診断され、且つ/又はこれらの処置を受けた患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防に関し、前記患者は、1つ又は複数の疾患又は状態の前記処置に関連する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされた。
【0050】
本発明はさらに、1つ又は複数の疾患又は状態;PTSD、うつ病、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症と診断され、且つ/又はこれらの処置を受けた患者の感情鈍麻の徴候及び症状の処置又は軽減に関し、前記患者は、1つ又は複数の疾患又は状態の前記処置に関連する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされた。
【0051】
本発明はさらに、1つ又は複数の疾患又は状態;PTSD、うつ病、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症と診断されたが処置されていない患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防又は処置又は軽減に関し、前記患者は、1つ又は複数の疾患又は状態の前記処置に関連する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされた。
【0052】
本発明はさらに、1つ又は複数の疾患又は状態;PTSD、うつ病、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症と診断されたが処置されていない患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防に関し、前記患者は、1つ又は複数の疾患又は状態の前記処置に関連する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされた。
【0053】
本発明はさらに、1つ又は複数の疾患又は状態;PTSD、うつ病、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症と診断されたが処置されていない患者の感情鈍麻の徴候及び症状の処置又は軽減に関し、前記患者は、1つ又は複数の疾患又は状態の前記処置に関連する不十分な応答を経験し、そのような処置の結果として、有害事象、感情鈍麻の症状又は徴候の報告又は診断がなされた。
【0054】
本発明はさらに、統合失調症、精神病、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想性障害などの精神障害;双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、月経前不快気分障害などの気分障害、及び物質使用障害の群から選択されるCNS疾患の処置を受けている患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防又は処置又は軽減に関する。
【0055】
本発明はさらに、精神病、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、及び妄想性障害などの精神障害であるCNS疾患の処置を受けている患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防又は処置又は軽減に関する。
【0056】
本発明はさらに、双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、及び月経前不快気分障害などの気分障害であるCNS疾患の処置を受けている患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防又は処置又は軽減に関する。
【0057】
本発明はさらに、物質使用障害であるか又は物質使用障害に関連するCNS疾患の処置を受けている患者の感情鈍麻の徴候及び症状の予防又は処置又は軽減に関する。
【0058】
以下の図面を参照して本出願を説明するが、これらの図面は、例示のみを目的として示され、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、アッセイI~XIに記載されている試験の概略図を示す;結果は実施例1~12に開示する。
図2図2は、試験の1週目、4週目、及び8週目の終了時のオックスフォードうつ病質問票(「ODQ」)((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)の合計スコア(FAS、MMRM)のベースラインからの概要を示し、表3に記載されている数値を反映している。
図3図3は、ODQ((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)の合計スコアのベースラインスコアを示し、スコアが正規分布していることを示す。
図4図4は、MEI合計スコアのベースラインスコアを視覚化したグラフであり、スコアが正規分布していることを示す。
図5図5は、感情鈍麻の臨床評価と部分相関及び媒介分析をまとめたものであり;***はp<0.0001を意味する。
図6図6は、MEIを使用して評価された動機付け及びエネルギーの改善が、すべてのサブドメイン:認知的及び精神的エネルギー、社会的動機付け、及び身体的エネルギーで、すでに4週目から相当且つ有意であることを示し;***はp<0.0001を意味する。
図7図7は、ODQ((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)の合計スコアの変化によって説明されるSDSの合計スコアの変化の63.4%が、抑うつ症状の改善(MADRS)(SDS合計スコアへの影響の36.6%を説明する)では説明できなかったボルチオキセチンに切り替えた後のODQ((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)の改善の直接的な効果であったことを媒介分析がさらに示すことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
発明の詳細な説明
本発明者らは、SERT阻害、5-HT3拮抗作用、及び5-HT1Aアゴニズムの組み合わせを発揮する1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンが、CNS障害の患者及び/又は1つ若しくは複数のCNS障害の処置のための薬剤を服用している患者の感情鈍麻の予防及び処置に有用であることを見出した。
【0061】
従って、本発明は、1つ又は複数のCNS疾患又は状態に関連する感情鈍麻の予防又は処置又は軽減のための方法を提供し、この方法は、それを必要とする患者への、治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]-ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与を含む。
【0062】
いくつかの態様では、本発明は、1つ又は複数のCNS疾患又は状態に関連する感情鈍麻の予防又は処置又は軽減のための方法を提供し、この方法は、それを必要とする患者への、治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]-ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与を含み、治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]-ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の前記投与は、単独療法として提供されるか、又は1つ若しくは複数のCNS疾患又は障害の予防又は処置のための他の薬剤と併用して提供される。
【0063】
本発明はさらに、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する方法に関し、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0064】
本発明はさらに、患者の感情鈍麻を予防又は処置する方法に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤に対する不十分な応答に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0065】
本発明はまた、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関する。本発明はさらに、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0066】
単剤療法として又は1つ若しくは複数のCNS疾患又は障害の処置のための他の医薬剤と併用して投与される1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を服用することが提案される患者に見られる感情鈍麻は、1つ又は複数のCNS疾患又は障害の処置のための薬剤の適切な用量の投与に関連して見ることができ、前記薬剤の前記適切な用量は、前記薬剤のラベルに記載されている用量である。場合によっては、1つ又は複数のCNS疾患又は障害を処置するための前記薬剤は、抗うつ薬、抗精神病薬、又は精神病若しくは統合失調症を処置するための薬剤である。本発明のいくつかの態様では、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の単剤療法は、前記単剤療法が開始される前に、SSRI又はSNRIなどの前に投与された抗うつ薬を中止する必要がある。
【0067】
従って、本発明のいくつかの態様では、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンの単剤療法は、セロトニン作動性伝達を増強する抗うつ薬の以前の単剤療法の代替である。本発明のいくつかの態様では、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンの単剤療法は、CNS疾患又は障害の処置のための第1の治療手段である。
【0068】
本発明のいくつかの態様では、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンの1つ又は複数のCNS疾患又は障害の処置のための別の薬剤との併用は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンを別の薬剤の投与と同時に(又は一緒に)投与する。そのような「別の薬剤」は、ドーパミン作動性伝達を低減する薬剤、又はCNS疾患又は障害の処置に使用されるその他の薬剤であり得る。いくつかの態様では、そのような「別の薬剤」は抗精神病薬であり得る。
【0069】
SSRIは、5-HTを介した認知及び感情鈍麻と、NE及びDAの放出も促進する薬剤よりも無快感症への影響が弱いことに関連している(Dale E,Bang-Andersen B,Sanchez C.Emerging mechanisms and treatments for depression beyond SSRIs and SNRIs.Biochem Pharmacol.2015;95(2):81-97;Gardier AM,Lepoul E,Trouvin JH,Chanut E,Dessalles MC,Jacquot C.Changes in dopamine metabolism in rat forebrain regions after cessation of long-term fluoxetine treatment:relationship with brain concentrations of fluoxetine and norfluoxetine.Life Sci.1994;54:l51-l56;Lane RM.Restoration of positive mood states in major depression as a potential drug development target.J.Psychopharmacol.2014;28(6):527-535(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。SSRIの長期使用は、NE伝達を低減することが知られている(Szabo ST,de Montigny C,Blier P.Progressive attenuation of the firing activity of locus coeruleus noradrenergic neurons by sustained administration of selective serotonin reuptake inhibitors.Int J Neuropsychopharmacol.2000;3(1):1-11;Kawahara Y,Kawahara H,Kaneko F,Tanaka M.Long-term administration of citalopram reduces basal and stress-induced extracellular noradrenaline levels in rat brain.Psychopharmacology(Berl).2007;194:73-81((それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。
【0070】
動物実験では、ボルチオキセチンは、内側前頭前皮質及び腹側海馬の両方で5-HT、DA、及びNEの細胞外レベルを増加させた(Mork A,Pehrson A,Brennum LT,Nielsen SM,Zhong H,Lassen AB,et al.Pharmacological effects of Lu AA21004:a novel multimodal compound for the treatment of Major Depressive Disorder.J Pharmacol Exp Ther.2012;340(3):666-675;Bang-Andersen B,Ruhland T,Jorgensen M,Smith G,Frederiksen K,Jensen KG,et al.Discovery of 1-[2-(2,4-dimethylphenylsulfanyl)phenyl]-piperazine(Lu AA21004):a novel multimodal compound for the treatment of major depressive disorder.J.Med.Chem.2011;54:3206-3221(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。ボルチオキセチンは、NE及びDAトランスポーター阻害の機能アッセイにおいて低い効力を示す。しかしながら、NE及びDAレベルへの影響は、おそらく受容体調節を通じて間接的に発揮される。例えば、脳内の多くの介在ニューロンは、5-HT3受容体によって調節され、ブロックされると、5-HT、DA、NE、アセチルコリン、及びヒスタミンの増加をもたらし得る(D’Agostino A,English CD,Rey JA.Vortioxetine(Brintellix):a new serotonergic antidepressant.P T.2015;40(1):36-40(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0071】
ボルチオキセチンは、SSRI及びSNRIといくつかの共通の特徴を共有するマルチモーダル抗うつ薬である。しかしながら、ボルチオキセチンは、SSRI及びSNRIとは異なるパターンの効果及び副作用も示すマルチモーダル抗うつ薬であるため、H.Lundbeck A/Sが後援する試験名COMPLETEという名称の臨床試験、試験番号17797A(EudraCT番号2017-004829-33(上記))が、感情鈍麻に対するボルチオキセチンの効果を評価するために立ち上げられた。clinicaltrial.govの試験番号NCT 03835715(上記)では、概要は、試験の目的を:「この研究は、SSRI/SNRIに対する応答が不十分な大うつ病性障害患者の情動機能に対する可変用量のボルチオキセチンの有効性を評価する」として要約している。EudraCT試験登録は、試験の正式名称で同じ目的を引用している。
【0072】
この研究の結果を使用して、現在のうつ病エピソードでのSSRI/SNRIに対する不十分な応答を経験していることが分かっている、代わりの抗うつ薬に切り替えたいと希望しているMDD患者の感情鈍麻を予防及び/又は処置するためのボルチオキセチン10~20mg/日の有効性を評価した。そのような不十分な応答は、報告又は診断の形で判断され、感情鈍麻の症状又は徴候を含むうつ病のすべての症状を含み得る。
【0073】
驚くべきことに、例えば、ODQ((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)に沿って治験責任医師の質問に答えるなどして評価された効果を以前に報告した患者では、感情鈍麻が大幅に改善され得る、即ち、完全に軽減又は除去され得ることが分かった。
【0074】
この感情鈍麻の減少又は除去の即効は、ボルチオキセチン(10mg)による第1週の処置のうちに見られ、8週間の処置後にさらに顕著になった。患者の約50%が感情鈍麻の知覚から解放された。ODQ((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)によって評価される感情鈍麻、SDSによって評価された機能、デジタル記号置換テスト(Digit Symbol Substitution test)(「DSST」)によって評価される認知能力、Motivation and Energy Inventory(「MEI」)試験によって評価される動機付けとエネルギー、及びMADRSによって評価される抑うつ症状に対するすべての評価の時点で、すべての有効性測定値と試験のエンドポイント(一次及び二次)で有意な効果(公称p<0.05)が見られた。感情鈍麻の軽減と全体的な機能(仕事、家族、社会)の改善と動機付け及びエネルギー(精神的、社会的、身体的)との間に相関関係が見られた。さらに、抑うつ症状の解消は約47%で見られた。ボルチオキセチンの確立されたプロファイルに沿って、安全性と忍容性が報告された。
【0075】
統合失調症の症状の広範な評価では、陰性症状は、陽性症状、混乱、及び抑うつや不安を含む感情症状とは無関係に、別の要因として繰り返し出現した。陰性症状自体の潜在的な構造に焦点を当てた追加の研究は、この症状ドメインが一次元ではないことを示唆している。陰性症状の中で出現する最も信頼できる要因には、表現力の低下(典型的には、顔の表情や声の表現力の低下及び言語表現の低下の症状を伴う)と、無快感症及び非社会性を生み出す要因(無快感症、興味の減退、及び社会的関与の低下の症状で構成される)が含まれる(Blanchard JJ,Cohen AS.The structure of negative symptoms within schizophrenia:implications for assessment.Schizophr Bull.2006;32:238-245(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。広く使用されているすべての陰性症状の評価及び分類手段には、鈍麻又は制限された感情、例えば、陰性症状の評価の尺度(Scale for Assessment of Negative Symptoms)(「SANS」)、陰性症状の臨床評価面接(Clinical Assessment Interview for Negative Symptoms)(「CAINS」)、及び簡易陰性症状尺度(Brief Negative Symptom Scale)(「BNSS」)が含まれる。鈍麻した感情には、3つの要素:(1)顔の表情の減少;(2)表情豊かなジェスチャーやその他のボディランゲージの減少;及び(3)話す音量、ピッチ、スピードの調節の減少があると考えられ得る。鈍麻した感情は、鈍麻の範囲の一番端を指す平坦な感情と区別する必要がある。
【0076】
感情鈍麻は、例えば、パーキンソン病、うつ病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症を含む、統合失調症以外のいくつかの障害に見られ得る。統合失調症の文脈では、抗精神病薬は、この症状を誘発し得るため、鈍麻した感情の評価を複雑にする(Constantino JN,Gruber CP,Davis S,Hayes S,Passanante N,Przybeck T.The factor structure of autistic traits.J.Child Psychol.Psychiatry.2004;45:719-726;Fetoni V,Soliveri P,Monza D,Testa D,Girotti F.Affective symptoms in multiple system atrophy and Parkinson’s disease:response to levodopa therapy.J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry.1999;66:541-544;Tremeau F,Malaspina D,Duval F,et al.Facial expressiveness in patients with schizophrenia compared to depressed patients and nonpatient comparison subjects.Am.J.Psychiatry.2005;162:92-101;Jouvent R,Le Houezec J,Payan C,et al.Dimensional assessment of onset of action of antidepressants:a comparative study of moclobemide vs.clomipramine in depressed patients with blunted affect and psychomotor retardation.Psychiatry Res.1998;79(3):267-275;Robertson JM,Tanguay PE,L’ecuyer S,Sims A,Waltrip C.Domains of social communication handicap in autism spectrum disorder.J.Am.Acad.Child Adolesc.Psychiatry.1999;38:738-745;Sultzer DL,Levin HS,Mahler ME,High WM,Cummings JL.A comparison of psychiatric symptoms in vascular dementia and Alzheimer’s disease.Am.J.Psychiatry.1993;150:1806-1812(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。
【0077】
本発明による感情鈍麻の徴候及び症状の予防、処置、又は軽減は、本発明の化合物の毎日の投与を含み得る。これには、1日1回の投与、1日2回の投与、又はさらに頻繁な投与が含まれ得る。
【0078】
いくつかの態様では、本発明で使用される1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン化合物は臭化水素酸塩である。
【0079】
いくつかの態様では、本発明で使用される1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン化合物は、例えばβ型の臭化水素酸塩である。
【0080】
いくつかの態様では、本発明で使用される1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン化合物は、臭化水素酸塩であり、適切な錠剤は、以下の成分から構成され得る。
【0081】
【表2】
【0082】
特に、錠剤は、以下の成分から構成され得る。
【0083】
【表3】
【0084】
例えば、2.5mg、5mg、10mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、又は80mgの遊離塩基に相当するような異なる量の活性化合物を含む錠剤は、適切な大きさの錠剤と組み合わせた適切な量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン化合物を選択することによって得ることができる。1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンHBr塩の好ましい濃度は、錠剤当たり約5mg、約10mg、又は約20mgである。1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンHBr塩の好ましい濃度は、錠剤当たり約5mgである。1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンHBr塩の好ましい濃度は、錠剤当たり約10mgである。1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンHBr塩の好ましい濃度は、錠剤当たり約20mgである。約5mg、約10mg、又は約20mgの1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその任意の薬学的に許容される塩を含む錠剤の好ましい投与頻度は、1日1回である。毎日約5mgで開始する患者は、1日当たり約10mg又は1日当たり約20mgに濃度を増加させることができる。1日約10mgで開始する患者は、1日当たり約20mgに濃度を増加させてもよいし、又は1日当たり約10mgに濃度を低下させてもよい。1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の治療有効量は、例えば、1日当たり約5mg、約10mg、又は約20mgの1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンであり得る。
【0085】
いくつかの態様では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する方法に関し、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0086】
いくつかの態様では、本発明は、感情鈍麻の徴候及び症状を経験している患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する方法に関し、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0087】
いくつかの態様では、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する前記方法は、前記患者が、感情鈍麻の徴候及び症状を経験しているか、又は感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有する方法であり、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0088】
いくつかの態様では、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する前記方法は、前記患者が、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に関連して感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有する方法であり、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0089】
いくつかの態様では、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する前記方法は、前記患者が、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有する方法であり、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0090】
いくつかの態様では、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する前記方法は、前記患者が、感情鈍麻を経験しているか、又は適切な用量の薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有する方法であり、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0091】
いくつかの態様では、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する前記方法は、前記患者が、感情鈍麻を経験しているか、又は医療処置に対する不十分な応答に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有する方法であり、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0092】
いくつかの態様では、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する前記方法は、前記患者が、感情鈍麻を経験しているか、又はCNS疾患又は障害の医療処置に対する不十分な応答に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有する方法であり、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0093】
いくつかの態様では、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する前記方法は、前記患者が、CNS疾患若しくは障害、又は1つ若しくは複数のCNS疾患若しくは障害の医療処置に関連する感情鈍麻の徴候及び症状を示した病歴を有する方法であり、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、前記方法は、以下のステップを含む:
i)開業医又は医師による前記患者を評価するステップであって、
1)前記患者の感情鈍麻の徴候及び症状の病歴の評価;
2)感情鈍麻の現在の徴候又は症状の評価;並びに/又は
3)前記患者が感情鈍麻の徴候及び/若しくは症状を発症若しくは悪化するリスクの評価を含む、ステップ。
【0094】
いくつかの態様では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0095】
いくつかの態様では、本発明は、感情鈍麻の徴候及び症状を経験している患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置するための前記使用に関する。
【0096】
いくつかの態様では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置するための前記使用に関し、前記患者は、感情鈍麻の徴候及び症状を経験しているか、又は感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0097】
いくつかの態様では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置するための前記使用に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に関連して感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0098】
いくつかの態様では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置するための前記使用に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0099】
いくつかの態様では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置するための前記使用に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は1つ若しくは複数のCNS疾患若しくは障害を処置するための薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0100】
いくつかの態様では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置するための前記使用に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は適切な用量での薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0101】
いくつかの態様では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置するための前記使用に関し、前記患者は、CNS疾患若しくは障害又は1つ若しくは複数のCNSの医療処置に関連する感情鈍麻の徴候及び症状を示した病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、方法は、以下のステップを含む:
i)開業医又は医師による前記患者の評価のステップであって、
1)前記患者の感情鈍麻の徴候及び症状の病歴の評価;
2)現在の感情鈍麻の徴候又は症状の評価;並びに
3)前記患者が感情鈍麻の徴候及び/又は症状を発症又は悪化するリスクの評価を含む、ステップ。
【0102】
いくつかの態様では、前記薬剤の適切な用量は、前記薬剤のラベルに記載されている用量である。いくつかの態様では、本発明による感情鈍麻の予防又は処置に使用するための方法又は1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、1つ又は複数のCNS疾患又は障害の処置のための薬剤又はその適切な用量を意味し、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン(-[2-(2,4-dimethylphenylsulfanyl)-phenyl]piperazine)又はその薬学的に許容される塩ではない前記薬剤の適切な用量は、前記薬剤のラベルに記載されている用量であり、且つ前記薬剤のラベルに記載されている効率的な処置のための用量のいずれか1つから選択される。
【0103】
いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、薬剤の投与に関連して、又はその結果として見られ、本明細書に記載の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置するための方法は、以下のステップを含む:
1)前記薬剤の中止のステップ;及び
2)それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ。
【0104】
いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、薬剤の投与に関連して、又はその結果として見られ、本明細書に記載の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置するための方法は、以下のステップを含む:
1)前記薬剤の投与を維持するステップ;及び
2)それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ。
【0105】
いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、薬剤の投与に関連して、又はその結果として見られ、本明細書に記載の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置するための方法は、以下のステップを含む:
a.CNS疾患又は障害の処置のための前記薬剤の中止のステップ;及び
b.それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ。
【0106】
いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、薬剤の投与に関連して、又はその結果として見られ、本明細書に記載の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置するための方法は、以下のステップを含む:
a.CNS疾患又は障害の処置のために前記薬剤の投与を維持するステップ;及び
b.それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ。
【0107】
いくつかの態様では、感情鈍麻の予防又は処置に使用するための方法又は1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、患者の感情鈍麻を予防するためのものである。
【0108】
いくつかの態様では、感情鈍麻の予防又は処置に使用するための方法又は1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、患者の感情鈍麻を処置するためのものである。いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、CNSの疾患又は障害に関連している。いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、潜在するCNS疾患又は障害に関連している。
【0109】
いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、薬剤の投与に関連して、又はその結果として見られ、前記薬剤は、1つ若しくは複数のCNS疾患若しくは障害、又はその徴候及び症状を処置するためのものである。いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、前記患者によって報告される。いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、開業医又は医師によって診断される。いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、CNS疾患又は障害の医療処置の不十分な応答によって引き起こされるとして、前記患者によって報告される。
【0110】
いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、開業医又は医師が患者を評価することによって診断され、前記評価は、以下のステップを含む:
a)前記患者に:「感情的な影響は様々であるが、例えば、何らかの形で感情的に「麻痺した」又は「鈍麻した」と感じること;前向きな感情や否定的な感情が欠如していること;周りの世界から切り離されたように感じること;又は以前は気にしていたことを「全く気にしないこと」を含み得る」と説明するステップ;
b)「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」という質問をするステップ;
c)質問b)に対する応答を評価して、感情鈍麻の症状又は徴候が前記患者に存在するかどうかを判断するステップ;及び、任意選択的により、
d)ステップc)の評価が、前記患者が感情鈍麻を経験しているということである場合、前記開業医又は医師が、本明細書の態様及び実施形態に記載の感情鈍麻を処置するための方法又は使用を適用する判断をするステップ。
【0111】
いくつかの態様では、ステップb)で尋ねられた質問に対する前記患者の回答が「はい」である場合、前記開業医又は医師の評価のステップc)は、感情鈍麻の存在という結論につながる。
【0112】
いくつかの態様では、前記感情鈍麻は、開業医又は医師が患者を評価することによって診断され、前記評価は、以下のステップを含む:
a)前記患者に:「感情的な影響は様々であるが、例えば、何らかの形で感情的に「麻痺した」又は「鈍麻した」と感じること;前向きな感情や否定的な感情が欠如していること;周りの世界から切り離されたように感じること;又は以前は気にしていたことを「全く気にしないこと」を含み得る」と説明するステップ;
b)「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」という質問をするステップ;
c)質問b)に対する応答を評価し、質問b)に「はい」と答えた場合、感情鈍麻の症状又は徴候が前記患者に存在すると判断するステップ(いくつかの態様では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、ODQ合計スコアによる評価又は同等の評価で補足してもよいし、又はこの評価に置き換えてもよく、前記ODQ合計スコアは、ODQガイドラインに基づいて計算される);及び、任意選択的により、
d)ステップc)の評価が、前記患者が感情鈍麻を経験しているということである場合、前記開業医又は医師が、本明細書の態様及び実施形態に記載の感情鈍麻を処置するための方法又は使用を適用する判断をするステップ。
【0113】
ODQは、MDD患者の感情鈍麻の症状を具体的に評価するために開発された(Price et al.,2012(上記))。COMPLETE研究からのデータのこの分析の結果は、ODQ((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)(最初の2つのセクションをカバーする質問票の一部と3つのすべてセクションを含む完全な質問票の両方)が、うつ病の重症度を評価するために一般的に使用される他の尺度では十分にカバーされないMDDの状況及び症状を捕捉することを実証している。
【0114】
ODQスコア((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)とベースライン時のMADRS合計スコアとの間には低い相関が観察され、ODQスコアと無快感症の症状、即ち、「感じられない」及び「倦怠感」を具体的に評価するMADRS項目との間にも低い相関が観察された。
【0115】
ODQスコア((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)とベースラインでのMEI合計スコアとの間に最も高い相関が見られ、この動機付け尺度とのある程度の重複を示した。この理論に拘束されるものではないが、これは、感情鈍麻の患者がほとんどの感情及び感覚(感情鈍麻自体を含む)から切り離され、麻痺していることを考えると、うつ病及び障害の症状を過少報告する可能性が高いという事実に起因し得る。療法に反応して、すべての異なる尺度で改善が見られた。8週間のボルチオキセチン処置後のODQスコア((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)と他の評価スコアとの平均変化間に有意な相関が見られ、ODQが臨床状態の変化に敏感であることを示唆している。
【0116】
これには、患者の視点から、即ち、前向きな感情と否定的な感情の両方が存在しない、感情鈍麻の全範囲の症状を評価できるという利点がある。例えば、患者は、次のように報告することがある:「「楽しい」及び「不快」の両方のすべての自分の感情がトーンダウンしている」、又は「美しい場所又は物又は音楽などの自分に喜びを与えるはずの物事を十分に楽しめない」、又は「悲しみ、失望、及び動揺などの不快な感情が、トーンダウンする又は何らかの形で異なるように感じる」。感情鈍麻の影響に関して、患者は、「日常生活は、自分が以前に病気や問題があった時と同じような感情的な影響を自分に与えていない」と報告し得る。
【0117】
定義
本明細書で使用される「ボルチオキセチン」という用語は、Brintellix(登録商標)又はTrintellix(登録商標)の活性成分として知られている「1-[2-(2,4-ジメチル-フェニルスルファニル)-フェニル]-ピペラジン」又は「Lu AA21004」という用語と互換的に使用することができる。従って、本明細書で使用される語句「1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩」は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]-ピペラジンのすべての薬学的に許容される塩を開示し、「1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩」という語句は、具体的には「ボルチオキセチン」、「1-[2-(2,4-ジメチル-フェニルスルファニル)-フェニル]-ピペラジンHBr」、又は「Lu AA21004」を含む。
【0118】
本明細書で使用される「感情鈍麻」という用語は、「感情麻痺」という用語と互換的に使用することができ、感情を感じられないという個人の主観的な経験を指し、自己及び他者に対する気遣い及び関心の欠如を伴う。同様に、「麻痺」又は「麻痺させる」という用語又その他の派生語と、「鈍麻」又は「鈍麻した」という用語及びその他の派生語を互換的に使用することができる。本明細書で使用される「感情麻痺」又は「感情鈍麻」は、うつ病とは区別される。いくつかの態様では、感情鈍麻は、例えば、抗うつ薬又は抗精神病薬などのCNS疾患又は状態の医療処置の直接的な結果である。いくつかの態様では、感情鈍麻は、例えば抗うつ薬などのCNS疾患又は状態の医療処置の直接的な結果である。いくつかの態様では、感情鈍麻は、SSRI又はSNRIなどのCNS疾患又は状態の医療処置の直接的な結果である。いくつかの態様では、本明細書に記載の感情鈍麻は、CNS疾患又は状態の潜在する症状であり得る。いくつかの態様では、本明細書に記載の感情鈍麻は、例えば抗うつ薬又は抗精神病薬などの関連のある又は関連のないCNS疾患又は状態のための薬剤による処置によって明らかにされるCNS疾患又は状態の潜在的な症状であり得る。この文脈における「潜在的な」という用語は、抗うつ薬がうつ病を緩和すると、感情鈍麻の潜在する症状が引き起こされるのではなく明らかになり得ることを意味する。
【0119】
従って、感情鈍麻は、本明細書では感情(抑うつや悲しみを含む)の欠如を意味する。うつ病の人とは対照的に、麻痺又は鈍麻した人は、自分自身や他人に対する敬意、関心、気遣い、又は共感が欠如している。心的外傷を負った人がこの麻痺した心の状態を説明するために使用する一般的な用語には、遮断、麻痺、氷のように冷たい、空虚、死んでいる、及び空っぽで、誰に対しても何に対しても何の感情も気遣いも関心もない、が含まれる。家族は、一般的に、麻痺した親族を冷たい、無情、感情的に無反応であるとみなす。ひどく麻痺した人は、落ち込んでいるというよりも、無表情な顔つきをし得る。非常にまれに、感情的に麻痺した人は、他人には怒っているか悲しんでいるように見え得るが、自身の怒りや悲しみの表情について質問されると、当惑又は否定する。
【0120】
「CNSの疾患又は状態」という用語は、「CNSの疾患又は障害」という用語と互換的に使用することができ、脳が本来の機能を果たさない広義の状態であり、健康及び機能する能力を制限するCNS疾患を表すことを意味する。この状態は、遺伝性代謝障害;感染症、変性状態、脳卒中、脳腫瘍、又はその他の問題による損傷の結果であり得るか;又は未知又は複数の要因から生じる。パーキンソン病、ジストニア、及び本態性振戦などの運動障害は、CNS状態である。それらに共通しているのは、記憶形成(アルツハイマー病での)や随意運動(運動障害での)などの様々な機能を調整する、十分な無傷の神経系回路が失われていることである。この群のほとんどの状態は完全に治すことはできないが、中枢神経系疾患の症状は、多くの場合、医療処置から外科処置まで様々な療法によって管理することができる。新しい療法も研究されている。例えば、脳腫瘍の化学療法又はパーキンソン病の遺伝子治療の可能性を研究している医師は、その活性が疾患の影響を管理又は制限するのを助け得る脳領域に抗がん剤又は補充遺伝子を送達する脳及び脳脊髄注入療法に関心を持っている。「CNS疾患又は状態」又は「CNS疾患又は障害」という用語は、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想性障害などの精神障害;双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、月経前不快気分障害などの気分障害;及び物質使用障害などの障害又は状態を含むことを意味する。
【0121】
本明細書で使用される「CNS疾患又は状態」という用語は、「CNS疾患又は障害」という用語と互換的に使用することができ、精神障害及び神経障害を含む。いくつかの態様では、「CNS疾患又は状態」には、うつ病、例えば、MDD又はMDE、PTSD、統合失調症、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症などの精神障害及び神経障害が含まれる。いくつかの実施形態では、CNS疾患又は状態は、MDD又はMDE、PTSD、統合失調症、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症のいずれか1つ又は複数を含む。
【0122】
精神病は、統合失調症の一部であり、他の障害の一部でもあり得る。精神病は、特定の症状を説明する概念である。統合失調症は、精神病の特徴を有する精神疾患である。精神病の症状には、幻覚、妄想、錯乱、はっきりと考えることができない、迅速及び/又は目まぐるしい思考、混乱した会話、まとまりのない行動、及び緊張病性行動が含まれるが、これらの症状のすべてが存在する必要はない。統合失調症では、精神病は、統合失調症の診断のために満たさなければならない第1の基準である。精神病なしでは統合失調症は存在しないが、精神病は、統合失調症なしでも単独で現れ得る。「精神病」を伴い得る他の障害は、他の精神障害(統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想障害)、気分障害(双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、月経前不快気分障害)、及び物質使用障害であり得る。
【0123】
統合失調症に罹患している患者は、例えば、精神病、陰性症状を経験し、日常生活における機能レベルが低下している。「感情鈍麻」は、統合失調症(統合失調感情障害としても知られる)に関連する陰性症状又は他のCNS疾患若しくは障害に罹患している非統合失調症患者に見られる症状を含む、これらの症状と共存する、又はこれらの症状の一部であり得、「陰性症状」と密接に関連し得る。「陰性症状」には、無関心、失語、無気力、無快感症、非社交性、感情的引きこもり、及び社会的引きこもりも含まれ得る。統合失調症の患者は、時には、気分症状を管理するために抗うつ薬や気分安定薬が処方される。
【0124】
従って、本明細書で使用される「抗精神病薬」又は「抗精神病剤」又は「神経弛緩薬」という用語は、互換的に使用することができ、統合失調症患者が、しばしばそのような薬物による精神病の処置を受けているため、「統合失調症の処置のための薬剤」又は「統合失調症の医療処置」という用語、又は本明細書で使用される同様の語句に含まれ得る。
【0125】
従って、「統合失調症の処置のための薬剤」又は「統合失調症の医療処置」という用語、又は本明細書で使用される同様の語句には、「非定型抗精神病薬」及び/又は「定型抗精神病薬」が含まれ得る。
【0126】
本発明では、「非定型抗精神病薬」は、例えば、アリピプラゾール、イロペリドン、ジプラシドン、ルラシドン、リスペリドン、ブレクスピプラゾール(brexpriprazole)、アセナピン、クエチアピン、カリプラジン、及びオランザピンを含む群から選択され得る。クロザピンは、特別な非定型抗精神病薬であり、通常は、他の抗精神病薬(antiphycotics)が症状を緩和できない場合、又は統合失調症患者が自殺念慮に苦しんでいる場合にのみ処方される。
【0127】
本発明では、「定型抗精神病薬」は、例えば、ハロペリドール、ロキサピン、チオチキセン、フルフェナジン、クロルプロマジン、ペルフェナジン、及びトリフルオペラジンを含む群から選択され得る。
【0128】
抗精神病薬の化学構造に基づいて分類する他の方法もある。世界保健機関(World Health Organization)(「WHO」)のATC/DDD指数によると、抗精神病薬は、クラスN05Aに分類され、主に化学構造に基づいて細分化が行われ;サブクラスAは、N05AA01クロルプロマジン、N05AA02レボメプロマジン、N05AA03プロマジン、N05AA04アセプロマジン、N05AA05トリフルプロマジン、N05AA06シアメマジン、及びN05AA07クロルプロエタジンを含む、脂肪族側鎖を有するフェノチアジンであり;サブクラスBは、N05AB01ジキシラジン、N05AB02フルフェナジン、N05AB03ペルフェナジン、N05AB04プロクロルペラジン、N05AB05チオプロパゼート、N05AB06トリフルオペラジン、N05AB07アセトフェナジン、N05AB08チオプロペラジン、N05AB09ブタペラジン、及びN05AB10ペラジンを含む、ピペラジン構造を有するフェノチアジンであり;サブクラスCは、N05AC01ペリシアジン、N05AC02チオリダジン、N05AC03メソリダジン、及びN05AC04ピポチアジンを含む、ピペリジン構造を有するフェノチアジンであり;サブクラスDは、N05AD01ハロペリドール、N05AD02トリフルペリドール、N05AD03メルペロン、N05AD04モペロン、N05AD0ピパンペロン、N05AD06ブロムペリドール、N05AD07ベンペリドール、N05AD08ドロペリドール、及びN05AD09フルアニゾンを含む、ブチロフェノン誘導体であり;サブクラスEは、N05AE01オキシペルチン、N05AE02モリンドン、N05AE03セルチンドール、N05AE04ジプラシドン、及びN05AE05ルラシドンを含む、インドール誘導体であり;サブクラスFは、N05AF01フルペンチキソール、N05AF02クロペンチキソール、N05AF03クロルプロチキセン、N05AF04チオチキセン、及びN05AF05ズクロペンチキソールを含む、チオキサンテン誘導体であり;サブクラスGは、N05AG01フルスピリレン、N05AG02ピモジド、及びN05AG03ペンフルリドールを含むジフェニルブチルピペリジン誘導体であり;サブクラスHは、N05AH01ロキサピン、N05AH02クロザピン、N05AH03オランザピン、N05AH04クエチアピン、N05AH05アセナピン、及びN05AH06クロチアピンを含む、ジアゼピン、オキサゼピン、チアゼピン、及びオキセピンであり;サブクラスLは、N05AL01スルピリド、N05AL02スルトプリド、N05AL03チアプリド、N05AL04レモキシプリド、N05AL05アミスルプリド、N05AL06ベラリプリド、及びN05AL07レボスルピリドを含む、ベンズアミドであり;並びにサブクラスNは、N05AN01リチウムを含むリチウムである。
【0129】
WHOのATC/DDD指数によると、他の抗精神病薬(antiphycotics)は、クラスN05AXに分類され、このクラスN05AXは、プロチペンジルのコードN05AX07、リスペリドンのN05AX08、N05AX10モサプラミン、N05AX11ゾテピン、N05AX12アリピプラゾール(aripripazole)、N05AX13パリペリドン、N05AX14イロピリオデン(iloperioden)、N05AX15カリプラジン(ccariprazine)、N05AX16ブレクスピプラゾール(brexpriprazole)、及びN05AX17ピマバンセリンを含んでいた。
【0130】
いくつかの実施形態では、「感情鈍麻」は、1つ又は複数のCNS疾患又は状態の徴候及び/又は症状を有する患者、1つ又は複数のCNS疾患と診断された患者、及び/又は1つ若しくは複数のCNS疾患又は状態の医療処置を受けている患者に見られる。
【0131】
いくつかの態様では、鈍麻が深刻な場合、患者は、いかなる感情も覚えなくなり得、無表情で生気のない外見を呈し得る。いくつかの態様では、麻痺した感情を有する個人は、一般的に環境に反応せず、社会的引きこもりである。環境への無反応は、覚醒状態及び意識のレベルの低下と外界への関心の喪失を表す複合障害であり得る。鈍感な感情を有する個人は、他者との共感やつながりの感覚を覚えない可能性がある。社会的状況では、彼らは、疎外され、切り離されていると感じる傾向がある。いくつかの態様では、感情鈍麻は、身体の麻痺及び/又は感覚異常、並びに重苦しさ又は無気力の感覚に関連している。いくつかの態様では、重度の感情鈍麻は、麻痺状態の間に起こった出来事に対する記憶喪失を含む、集中力と記憶力の深刻な障害を伴い得る。いくつかの態様では、あらゆる種類の情報処理が著しく損なわれ得る。感情鈍麻が重度で長引く場合、通常は、生活活動における動機付け、興味、又は喜びの欠如を伴う。従って、いくつかの態様では、鈍感になった人は、感情的、精神的、心理的、及び社会的に障害され得る。
【0132】
感情の麻痺は、一般的に自覚症状として評価される。いくつかの態様では、感情の麻痺又は鈍麻は、持続時間、重症度、社会的背景の3つのパラメータが変化し得る。いくつかの態様では、そのような麻痺又は鈍麻は、連続的又は断続的に数分、数時間、数日、数か月、又は数年間経験され得る。いくつかの態様では、重度又は深刻な感情の麻痺又は鈍麻を有する個人は、まったく感情を有していない。いくつかの態様では、それほど重症でない麻痺又は鈍麻では、高レベルの生理学的覚醒に関連する感情は、例えば、怒り、恐怖、及び脆弱性を経験し得る。いくつかの態様では、優しい愛情のこもった感情が感じられない。重度に鈍麻した感情を有する一部の人は、一定期間、特定の個人(複数可)に対して愛情及び関心を抱くことができるであろう。これは、子供、信頼できる配偶者、又は心に傷を残す出来事で生き残った仲間であり得る。
【0133】
いくつかの態様では、感情の麻痺は、体の重さ又は麻痺、痺れてピリピリする感覚、体の一部のうずき又は麻痺、非現実感、疎外感、及び他者からの切り離しである身体的経験を伴い得る。いくつかの態様では、認知障害には、精神錯乱、記憶喪失、集中力の低下、優柔不断、将来の行動を計画できないこと、及び意志の麻痺が含まれ得る。いくつかの態様では、認知障害が、生理的覚醒又は苦痛のレベルとは無関係に起こり得;物忘れ、見当識障害、又は混乱が、ストレスや不安が先行して明らかに増加しなくても起こり得る。
【0134】
いくつかの態様では、患者は、麻痺とうつ病の精神状態を区別することができない。いくつかの態様では、自己認識の欠如を含む認知障害は、麻痺とうつ病を区別する個人の能力を妨げ得る。いくつかの態様では、個人は、うつ病の状態と麻痺又は鈍麻の状態との間で頻繁に移行する可能性があり、主観的な経験を区別することが困難になる。いくつかの態様では、麻痺とうつ病は、集中力と記憶力の低下及び生活活動への興味や喜びの欠如を含む、特定の症状も共有する。
【0135】
いくつかの態様では、感情の麻痺又は鈍麻の精神状態は、患者及びその家族にとって日常生活に支障をきたす状態である。いくつかの態様では、麻痺や鈍麻は、人生の活動(仕事、親しい関係、セックスなど)を楽しんだり参加したりする個人の能力、及び誰か若しくは何かに対する純粋な愛情、関心、又は心配にする個人の能力を妨げ、これは、多くの場合、夫婦や家族に不和をもたらす。
【0136】
いくつかの態様では、感情の麻痺を有する個人は、麻痺の致命的な効果から逃れようとして、スカイダイビング、レーシングカー、ギャンブル、薬物乱用、自傷行為などの興奮及び危険を冒す活動を求め得る。いくつかの態様では、これらの活動は、強烈な渇望を伴う、抑えきれない中毒性の衝動が前提であり得る。
【0137】
いくつかの態様では、感情の麻痺又は鈍麻の存在は、例えば、本明細書に記載の試験及び評価方法を用いて臨床的に評価することができる。
【0138】
一態様では、認知機能を評価するための神経心理学的試験は、デジタル記号置換テスト(「DSST」)であり得る。
【0139】
いくつかの態様では、感情鈍麻の存在は、PTSDの精神医学的診断の一部として臨床的に評価することができる。
【0140】
いくつかの態様では、患者から報告される感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、少なくとも、「過去6週間にそのような感情的な影響を経験しましたか?」という質問に対する前記患者の回答から収集することができる。
【0141】
いくつかの態様では、患者から報告される感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、少なくとも、「過去6週間にそのような感情的な影響を経験しましたか?」という質問に対する前記患者の回答から収集することができ、前記患者は、感情鈍麻の一般的な感情的な影響について知らされている。
【0142】
いくつかの態様では、患者から報告される感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、少なくとも、「過去6週間にそのような感情的な影響を経験しましたか?」という質問に対する前記患者の回答から収集することができ、前記患者は、感情鈍麻の一般的な感情的な影響について知らされており、前記一般的な感情的な影響は:「感情的な影響は様々であるが、例えば、何らかの形で感情的に「麻痺した」又は「鈍麻した」と感じること;前向きな感情又は否定的な感情が欠如していること;周りの世界から切り離されたように感じること;又は以前は気にしていたことを「全く気にしないこと」を含み得る」と説明することができる。
【0143】
本明細書で使用される「オックスフォードうつ病質問票(ODQ)」又は「ODQ」という用語は、オックスフォードうつ病質問票(「ODQ」)を指す。ODQは、抗うつ薬で処置されている患者に存在する感情的な症状の患者中心の自己報告手段であり、以前は、抗うつ薬の感情的な副作用に関するオックスフォード質問票(「OQuESA」又は「OQESA」)と呼ばれていた。(Jonathan Price et al.“The Oxford Quastionaire on Emotional Side-Effects on Atidepressants(OQuESA):Development,validity,reliability and sensetivity change”Journal of Affective Discorders,140(2012),66-74;Goodwin GM,Price J,Bodinat CD,Laredo J.Emotional blunting with antidepressant treatments:A survey among depressed patients.J Affect Disord.2017;221:31-35(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。
【0144】
本発明で使用され、参照されるODQは、オックスフォードうつ病質問票(ODQ)((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)であり、Oxford University Innovation Limitedの認可を必要とする。ODQは、26項目の患者の自己記入式手段であり、3つのセクションにまたがり、無関心(「NC」)、感情的分離(emotional detachment)(「ED」)、肯定感の低下(「PR」)、及び全般的な低下(「GR」)の4つの側面(定性調査に由来)をカバーしている。必要に応じて、追加の側面、原因としての抗うつ薬(「AC」)も採点することができる。本明細書で言及されるODQは、3つのセクションを含む。セクション1では、過去1週間の感情鈍麻の経験を評価する:12項目、4つの側面(NC、ED、PR、及びGR)のそれぞれから3項目。リコール期間は最終週である。セクション2では、過去1週間の感情鈍麻の経験を、うつ病になる前の感情鈍麻の経験と比較する:4つの側面のそれぞれから2つずつの8項目で、前の週の回答者の経験を、彼らが病気/問題を発症する前の経験と比較する。セクション3(6項目)では、現在の抗うつ薬と感情鈍麻との間の関係についての患者の認識、並びにこの効果が処置の順守に影響を与えたかどうかを評価する。セクション3は、側面ACについて説明する。セクション3は、抗うつ薬が現在処方されている回答者のみが記入する。このセクションでは、参加者が自分の感情的な問題を抗うつ薬が原因であると考える程度、及び参加者がそれを「感情的な副作用」と見なす程度に対応する。また、抗うつ薬の順守に対する感情的な副作用の影響の可能性にも対応する。回答の選択肢は、5段階のリッカート尺度に基づいている。従って、各項目は、1(同意しない)から5(同意する)までの5段階のリッカート尺度で評価され;スコアが高いほど(各項目で4又は5)、感情鈍麻が大きいことを示す、即ち、ODQの値が高いほど、感情鈍麻のレベルが高いことを反映する。結果は、側面ベースで示すか、又は合計して、総合ODQスコアを得ることができる。ACドメインの側面を除くODQスコア(ODQ-20)は、20~100の範囲であり、ACドメインの側面を含むODQスコア(ODQ-26)は、26~130の範囲である。COMPLETE研究では、患者はODQ-26を完了した。
【0145】
従って、本出願を通じて言及されるODQスコアは、オックスフォードうつ病質問票(ODQ)((著作権)Oxford University Innovation Limited,2011)に従ったものである。
【0146】
ODQは、次の質問で構成される。
セクション1:「楽しい」又は「不快」の両方のすべての自分の感情が「トーンダウン」している;美しい場所や物又は音楽などの自分に喜びを与えるはずの物事を楽しめない;自分が気遣うべきと思うほど他人の感情に気を遣わない;物事にあまり関心がないため、家で問題を抱えている;悲しみ、失望、及び動揺などの不快な感情が、トーンダウンする又は何らかの形で異なるように感じる;熱心な期待を持って物事を待ち望んでいない;人々にあまり同情しない;「ボーッとして」、自分の周りの世界から距離があると感じる;自分の感情に強さが欠けている;あるべきと思うほど人生に対する情熱と熱意がない;他人が動揺しても、自分には影響がない;物事にあまり関心がないため、仕事又は大学で問題を抱えている。
セクション2:日常生活は、病気や問題が発生する前と同じほどには感情的な影響を自分に与えない;病気/問題が発生する前ほど楽しい感情を抱かない;病気/問題が発生する前ほど、他人の感情(悲しみ、怒り、動揺など)に反応しない;病気/問題が発生する前ほど、日々の責任を気にしない;病気/問題が発生する前に比べて、感情が麻痺/鈍麻/平坦である;病気/問題が発生する前ほど、人生の良いことで「いい気分」になることがない;病気/問題が発生する前ほど、他人に同情しない;病気/問題が発生する前ほど、物事に気を遣わない。
セクション3:抗うつ剤が、何らかの形で自分の感情を感じるのを妨げる;抗うつ薬は、自分にとって重要なことを気にしなくさせるようである;抗うつ薬は、自分の周りの人々から感情的に切り離されているように感じさせるようである;抗うつ剤は、楽しい感情を感じさせなくする;抗うつ薬は、自分の感情の感じ方を、現時点で自分にとって助けにならない/役に立たないように変えてしまう;抗うつ薬の感情的な副作用のため、中止を検討している(又はすでに中止した)。
【0147】
患者が感情鈍麻を経験しているかどうかを確認するために、将来のODQがその後のバージョンのODQに置き換えられ得る。従って、ODQ尺度に関連して本明細書で使用される「又は同等の」という用語は、ODQがその後のバージョンの質問票に置き換えられ得ることを意味する。従って、尺度とスコアシステムは、更新された尺度、及び新しいバージョンで提供されるODQ尺度のガイドラインに適合させる必要がある。従って、本明細書で使用される「ODQガイドライン」という用語又は同様の語句は、ODQのライセンスとともに提供されるガイダンスを意味し、このガイダンスは、ODQのユーザーに対して、どの質問を行うか、及び感情鈍麻がある場合とない場合のカットオフ値を含め、どのようにそれらを採点するかについてガイドする。
【0148】
一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、次の標準化された質問票:ODQ、MEI、又はSDSのうちの1つ又は複数によって収集することができる。
【0149】
一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、少なくともODQによって収集することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、感情鈍麻は、米国精神医学会の診断統計マニュアルの麻痺及び回避の定義に示されているガイドラインを使用して評価される。
【0151】
一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、患者の感情鈍麻の徴候及び/又は症状を評価するために使用できる次の尺度;陰性症状の評価(「SANS」)、陰性症状の臨床評価面接(「CAINS」)、及び簡易陰性症状の尺度(「BNSS」)のうちの1つ又は複数によって収集することができる。
【0152】
一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、次の標準化された質問票:ODQ、陽性及び陰性統合失調症の尺度(Positive and Negative Schizophrenia Symptoms Scale)(「PANSS」)のうちの1つ又は複数によって収集することができる(Peralta V,& Cuesta MJ.Psychometric properties of the positive and negative syndrome scale(PANSS)in schizophrenia.Psychiatry Research.1994;53:31-40;lancu I,Poreh A,Lehman B,Shamir E,& Kotler M.The positive and negative symptom questionnaire:a self-report scale in schizophrenia.Comprehensive Psychiatry.2005;46:61-66(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))、including “blunted effect” and “emotional withdrawal” and rating scale for emotional blunting(“RSEB”)(Kilian,S.,Asmal,L.,Goosen,A.,Chiliza,B.,Phahladira,L.,& Emsley,R.(2015).Instruments measuring blunted affect in schizophrenia:A systematic review.PLoS One,10(6)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
【0153】
いくつかの態様では、感情鈍麻の存在は、例えば、本明細書に記載の試験及び評価方法を用いて臨床的に評価することができる。一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候、症状、及び/又は機能的結果は、次の標準化された質問票:ODQ、MEI、及びSDSのうちの1つ又は複数によって収集することができる。一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、ODQによって収集することができる。
【0154】
いくつかの態様では、感情鈍麻の存在は、例えば、本明細書に記載の試験及び評価方法を用いて臨床的に評価することができる。一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候、症状、及び/又は機能的結果は、次の標準化された質問票:ODQ、MEI、及びSDSのうちの1つ又は複数による情報の収集を含み得る。一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、ODQによって収集することができる。
【0155】
いくつかの態様では、感情鈍麻の存在は、例えば、本明細書に記載の試験及び評価方法を用いて臨床的に評価することができる。一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、次の標準化された質問票:ODQ又はMEIのうちの1つ又は複数による情報の収集を含み得る。一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、ODQによって収集することができる。
【0156】
一態様では、感情鈍麻の徴候及び症状の臨床医による評価は、次の標準化された方法:モントゴメリー-アスベルグうつ病評価尺度(「MADRS」)、臨床全般印象重症度(Clinical Global Impression-Severity of Illness)(「CGI-S」)、及び臨床全般印象-全般改善(Clinical Global Impression-Global Improvement)(「CGI-I」)のうちの1つ又は複数による情報の収集を含み得る。
【0157】
一態様では、感情鈍麻の徴候及び症状の臨床医による評価は、次の標準化された方法:CGI-S及びCGI-Iのうちの1つ又は複数による情報の収集を含み得る。
【0158】
いくつかの態様では、感情鈍麻の存在は、例えば、本明細書に記載の試験及び評価方法を用いて臨床的に評価することができる。一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、次の標準化された質問票:ODQ及びMEIの1つ又は複数によって収集することができる。一態様では、患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状は、ODQによって収集することができる。
【0159】
一態様では、感情鈍麻の徴候及び症状の臨床医による評価は、次の標準化された方法:MADRS、CGI-S、及びCGI-Iの1つ又は複数によって収集することができる。
【0160】
一態様では、感情鈍麻の徴候及び症状の臨床医による評価は、次の標準化された方法:CGI-S及びCGI-Iのうちの1つ又は複数によって収集することができる。
【0161】
麻痺(及び回避)は、個人がPTSDの診断を受けるために満たさなければならない精神障害の4つの区分のうちの1つである。米国精神医学会の診断統計マニュアルの麻痺(及び回避)の定義には、7項目が含まれ、その区分(麻痺及び回避)が満たされるためには、7項目のうちのいずれか3つが存在する必要がある。感情の麻痺は、具体的には7項目のうちの2つによって表される。1つの項目は、感情の範囲の制限、例えば、愛情を持つことができないことを表す。第2の項目は、重要な活動への関心が著しく低下していることを表す。麻痺は、このマニュアルでは、少なくとも次の3つによって示されるように、「心的外傷に関連する刺激を持続的に回避すること、又は一般的な反応を麻痺させること(心的外傷の前には存在しない)」と定義されている:(1)心的外傷に関連する思考又は感情を回避しようとする努力、(2)心的外傷を想起させる活動又は状況を回避しようとする努力、(3)心的外傷の重要な状況を思い出すことができない(心因性健忘)、(4)重要な活動への関心の著しい低下(幼い子供では、トイレトレーニング又は言語スキルなどの最近獲得した発育上のスキルの喪失)、(5)他者からの分離又は疎遠感、(6)感情の範囲の制限、例えば、愛情を持つことができない、及び(7)未来が短縮されたという感覚、例えば、キャリア、結婚、子供、又は長寿を期待しない。
【0162】
一態様では、感情鈍麻の徴候及び症状を含む有害事象は、有害事象(「AE」)の報告又は診断の記録に一般的に使用されるような安全性評価を使用し、記録又は報告することができる。
【0163】
一態様では、感情鈍麻に関連する有害事象による患者の処置の中止は、中止により発現した徴候及び症状の尺度(Discontinuation-Emergent Signs and Symptoms Scale)(「DESS」)の一般的な方法に従って記録又は報告することができる。
【0164】
一態様では、感情鈍麻の症状及び徴候は、音声録音によって記録し、例えばDiscovery by Mindstrongなどの携帯電話のアプリケーションで得られた患者のデータを受動的に収集することができる。
【0165】
本明細書で使用される「処置」及び「処置する」という用語は、疾患又は障害などの状態と闘う目的での患者の管理及びケアを意味する。この用語は、症状又は合併症を緩和するため、疾患、障害、又は状態の進行を遅らせるため、症状又は合併症を緩和又は軽減するため、及び/又は疾患、障害、又は状態を治癒又は排除するため、並びに状態を予防するための活性化合物の投与など、患者が苦しんでいる所与の状態に対する全範囲の処置を含むことを意図し、予防は、疾患、状態、又は障害と闘う目的での患者の管理及びケアとして理解されるべきであり、且つ症状又は合併症の発症を予防するための活性化合物の投与を含む。加えて、「処置する」又は「処置」は、要件ではないが、徴候及び/又は症状の完全な緩和をもたらすことができ、治癒を必要とせず、患者にわずかな効果しか与えない可能性があるプロトコルを含む。
【0166】
本明細書で使用される「低減」又は「低減する」という用語は、例えば感情鈍麻の症状又は徴候の減少、緩和、又は軽減を含み、感情鈍麻の徴候及び/又は症状の完全な除去を必要とせず、治癒を必要としない。
【0167】
本明細書で使用される「予防する(prevents)」又は「予防する(preventing)」という用語は、「予防的」という用語と互換的に使用することができ、疾患又は状態の徴候及び/又は症状を、特定の指示、処置レジメン、又は薬剤の投与に従って部分的又は完全に回避することができる。従って、本発明の態様及び実施形態に記載の方法は、抗うつ薬による患者の処置の結果として感情鈍麻の徴候及び症状の発症を防止することができる、又は潜在するCNS疾患又は障害、例えばうつ病又はPTSDなどの結果として感情鈍麻の徴候及び症状の発症を防止することができる。
【0168】
それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、予防的(予防)及び治療的(治癒的)処置は、本発明の2つの別個の態様である。処置されるべき患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0169】
本明細書で使用される「徴候」という用語は、疾患、障害、又は状態に言及する場合、医療従事者、例えば医師/内科医が観察する徴候を意味する。従って、「徴候」には、物理的な症状及びその他の客観的な尺度が含まれる。疾患、障害、又は状態を指す本明細書で使用される「症状」という用語は、患者が経験又は報告するものを指し、多くの場合、主観的である。従って、ODQは、抗うつ薬で処置された患者に存在する情動性症状の患者中心の自己報告尺度である。ODQは、感情鈍麻症候群の患者の識別を容易にするための臨床ツールとして使用することができる。ODQは、この現象の性質、原因、特に処置についての理解を深めるために、調査研究にも使用することができる。デジタル記号置換テスト(「DSST」)は、ヒトの連想学習を理解するための実験的ツールとして、1世紀以上前に開始された。その臨床的有用性は、その簡潔さと高い判別妥当性により1940年代に初めて認識され、現在では、DSSTは臨床神経心理学で最も一般的に使用される試験の1つである。DSSTは、1枚の紙に提示された紙と鉛筆の認知試験であり、対象がページの上部にあるキーに従って記号と数字を一致させる必要がある。対象は、数字の行の下のスペースに記号を写す。DSSTは、いくつかの固有の特性:簡潔さ、信頼性、並びに言語、文化、及び教育の試験の成績に与える影響が最小限であることにより、おそらく、すべての神経心理学で最も一般的に使用される試験である。DSSTは、臨床診療で経時的に認知機能を監視するための実用的且つ効果的な方法を提供する。MEIは、疲労と倦怠感を評価するために作成された27項目の尺度である。この尺度は、当初は、うつ病患者の動機付け及びエネルギーを改善するための介入を評価する目的で開発されたが、さらに評価することで、その臨床応用を他の患者群に拡張することができる(Fehnel,S.E.,Bann,C.M.,Hogue,S.L.,Kwong,W.J.,Mahajan,S.S.(2004)The development and psychometric evaluation of the motivation and energy inventory.Qual.Life.Res.13,1321-1336(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。MEIは、3つの因子:精神的又は認知的エネルギー、社会的動機付け、及び身体的エネルギーを評価する。SDSは、相互に関連する3つのドメイン:仕事/学校、社会生活、家庭生活における機能障害を評価するために開発された。SDSは、周知であり、研究者及び臨床医によって使用されている。SDSは、特許の自己報告ツールであり、前記ドメイン-責任が、空間視覚的、数値的、及び口頭での記述的アンカーを使用して同時に障害のレベルを評価する10点の視覚的アナログ尺度で患者の症状によって損なわれている程度を患者が評価する。
【0170】
本発明を説明する文脈における用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」及び同様の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。例えば、「化合物」という語句は、別段の指示がない限り、本発明の様々な化合物又は特定の記載された態様を指すと理解されるべきである。
【0171】
別段の指示がない限り、本明細書に記載のすべての正確な値は、対応する近似値を表している。いくつかの態様では、特定の因子又は測定値に関して提供されるすべての正確な例示的な値は、必要に応じて「約」によって修正された、対応する近似測定値も提供すると見なすことができる。
【0172】
1つ又は複数の要素に関して「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、又は「含有する」などの用語を使用する任意の態様又は本発明の態様の本明細書における説明は、別段の記載がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、その特定の要素又は要素「からなる」、「から本質的になる」、又は「を実質的に含む」本発明の同様の態様又は態様の支持を提供することを意図している(別段の記載がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、例えば、特定の元素を含むものとして本明細書に記載される組成物は、その元素からなる組成物も記載するものとして理解されるべきである)。
【0173】
本明細書で使用される「適切な用量」という用語は、処置効果が期待できる用量に達しており、試みられた処置を、無応答、部分応答、又は不十分な応答のために中止及び/又は別の薬剤に置き換えることができることを意味する。
【0174】
1つ又は複数のCNS疾患又は障害を処置するための薬剤の「適切な用量」は、前記薬剤のラベルに開示される証拠に基づいた用量に基づいて選択される。
【0175】
本明細書で使用される「不十分な応答」という用語は、薬剤による処置に対する応答がないこと、薬剤による処置に対する部分的な応答、又は感情鈍麻の徴候及び症状を明らかにする薬剤に対する応答を意味する。
【0176】
本明細書で使用され、感情鈍麻の徴候及び/又は症状に言及する「発症する」という用語は、感情鈍麻の徴候及び/又は症状がない状態から、感情鈍麻の1つ又は複数の徴候及び/又は症状への変化を表すことを意味する。そのような1つ又は複数の徴候及び/又は症状は、本明細書に記載のように評価することができる。感情鈍麻の1つ又は複数の徴候及び/又は症状の非限定的な例は、開業医又は医師によって行われる評価、又は30を超えるODQ合計スコアに等しい評価スコアに関連した本明細書に記載のスクリーニング質問b)に対する回答「はい」であり得る。そのような徴候及び/又は症状のない状態は、本明細書に記載のように評価することができる。感情鈍麻の徴候及び/又は症状のない状態の非限定的な例は、開業医又は医師の評価によって行われる評価、又は26以下のODQ合計スコアに等しい評価スコアに関連した本明細書に記載のスクリーニング質問b)に対する回答「いいえ」であり得る。
【0177】
本明細書で使用され、感情鈍麻の徴候及び/又は症状に言及する「~の悪化」という用語は、感情鈍麻の1つ又は複数の徴候及び/又は症状から、より深刻な段階の感情鈍麻の徴候及び/又は症状への変化(約30超から約60、約40から約55又は約50へのODQ合計スコアの評価など)を表すことを意味する。
【0178】
「前記薬剤はセロトニン伝達に対して増強効果を有する」という用語又は1つ若しくは複数の薬剤を指す同様の語句は、抗うつ薬などの薬剤を説明するために使用される。そのような薬剤は、例えば、いくつかのレベルにあるセロトニンのレベルを増加させることによって、セロトニン伝達に影響を与えることができる。即ち、一部は、セロトニンの再取り込みに影響を与え、他は、セロトニンの放出を阻害し得る。
【0179】
「前記薬剤はドーパミン作動性伝達に対する効果を低減する」という用語又は1つ若しくは複数の薬剤を指す同様の語句は、抗精神病薬及び統合失調症の処置に使用される薬剤などの薬剤を説明するために使用される。そのような薬剤は、例えばいくつかのレベルにあるドーパミンのレベルを低下させることによって、ドーパミン作動性伝達に影響を与え得る。
【0180】
本明細書で使用される「急速な発現」という用語は、本明細書に記載の処置に言及する場合、ODQ又はMEIスコアなどの徴候及び症状の軽減を含むか、又は実施された評価に関連した本明細書に記載のクリーニング質問b)に対する「はい」という回答が、処置の最初の4週間以内、好ましくは処置の2週間又は1週間以内に「いいえ」に切り替わることを含む。患者の約50%は、1日当たり約5mg、1日当たり約10mg、又は1日当たり約20mg、好ましくは1日当たり約10mg又は1日当たり20mgの用量で1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を服用してから1週間以内に、本明細書に記載の処置の効果を経験し得る。
【0181】
実施形態
以下の実施形態は、上記の態様によって概説された本発明をさらに詳細に説明する。本明細書に開示される任意の実施形態の1つ又は複数の特徴は、本発明の範囲内で組み合わせ、且つ/又は再配置して、同様に本発明の範囲内であるさらなる実施形態を提供できることを認識されたい。
【0182】
いくつかの実施形態では、本発明は、CNS疾患又は障害に罹患している患者などの患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0183】
本発明のいくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害は、精神病、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想性障害などの精神障害;双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、月経前不快気分障害などの気分障害;及び物質使用障害の群から選択される。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する方法に関し、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与すること、好ましくはボルチオキセチンの投与を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、本発明は、感情鈍麻の徴候及び症状を経験している患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する方法に関し、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する方法に関し、前記患者は、感情鈍麻の徴候及び症状を経験しているか、又は薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、CNS疾患又は障害の一部として感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0188】
いくつかの実施形態では、本発明は、感情鈍麻を経験している患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状を予防又は処置する方法に関し、前記患者は、薬剤の投与に関連して感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置する方法に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置する方法に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は適切な用量での薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置する方法に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は医療処置に対する不十分な応答に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置する方法に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又はCNS疾患又は障害の医療処置に対する不十分な応答に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、この方法は、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、本発明は、前記感情鈍麻が、1つ又は複数のCNS疾患又は障害の処置のための適切な用量の薬剤の投与に関連して見られる先行実施形態のいずれか1つによる感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記1つ又は複数のCNS疾患又は障害は、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想性障害などの精神障害;双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、月経前不快気分障害などの気分障害;及び物質使用障害の群から選択され、前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、前記薬剤の前記適切な用量は、前記薬剤のラベルに記載されている用量である。
【0194】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、セロトニン作動性伝達に対する増強効果を有する。
【0195】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、他の神経伝達物質に影響を与えることなく、セロトニン作動性伝達に対する増強効果を有する。
【0196】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、SSRI又はSNRIのクラスから選択される。
【0197】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置はSSRIである。
【0198】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、SSRIであり、エスシタロプラム、パロキセチン、セルトラリン、及びシタロプラムからなる群から選択される。
【0199】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、SNRIであり、ベンラファキシン及びデュロキセチンからなる群から選択される。
【0200】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、ドーパミン作動性伝達を低減する薬剤から選択される。
【0201】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、統合失調症の処置に使用される薬剤から選択される。
【0202】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、統合失調症の処置に使用される薬剤から選択され、そのような薬剤は、精神病、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想性障害などの精神障害;双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、月経前不快気分障害などの気分障害;及び物質使用障害の群から選択され得る。
【0203】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、ATC/DDD WHOクラスN05Aから選択される。
【0204】
いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害の前記薬剤又は医療処置は、前記薬剤又は医療処置に対する不十分な応答により感情鈍麻をもたらす恐れがあり、前記薬剤又は医療処置は、定型又は非定型抗精神病薬のクラスから選択される。
【0205】
いくつかの実施形態では、患者は、感情鈍麻の徴候及び症状を経験している場合、予防処置を含め、本発明に従って1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与によって処置される。以下の表は、感情鈍麻を経験している可能性があり、本発明による処置が有益であり得る患者タイプを中央の列に示す。右の列は、推奨される処置計画を示す。
【0206】
【表4】
【0207】
【表5】
【0208】
【表6】
【0209】
いくつかの態様では、患者は、本発明に従って処置され、患者及び処置は、直上の表に従って、示された例A、A1~A4、及びB~Oのいずれか1つから選択される。
【0210】
いくつかの態様では、患者は、直上の表の基準のいずれか1つに従って選択され、処置される。
【0211】
いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオAに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオA1に従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオA2に従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオA3に従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオA4に従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオBに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオCに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオDに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオEに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオFに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオGに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオHに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオIに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオJに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオKに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオLに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオMに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオNに従って選択され、処置される。いくつかの態様では、患者は、上の表のシナリオOに従って選択され、処置される。
【0212】
本発明のいくつかの態様では、開業医又は医師は、患者の評価により感情鈍麻の徴候及び症状が前記患者に存在することを確認した場合、本明細書の態様及び実施形態に記載の感情鈍麻を処置するための方法又は使用を適用することを決定することができる。
【0213】
本発明のいくつかの態様では、開業医又は医師は、患者の評価により、前記患者が感情鈍麻を経験したことが確認された場合、本明細書の態様及び実施形態に記載の感情鈍麻を処置するための方法又は使用を適用することを決定することができる。
【0214】
本発明のいくつかの態様では、開業医又は医師は、患者の評価により、薬剤による処置の結果として感情鈍麻の徴候及び症状が前記患者に存在することを確認した場合、本明細書の態様及び実施形態に記載の感情鈍麻を処置するための方法又は使用を適用することを決定することができ、前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0215】
本発明のいくつかの態様では、開業医又は医師は、患者の評価により、薬剤による処置の結果として感情鈍麻の徴候及び症状が前記患者に存在することを確認した場合、本明細書の態様及び実施形態に記載の感情鈍麻を処置するための方法又は使用を適用することを決定することができ、前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、本明細書の態様及び実施形態に記載の感情鈍麻を処置するための前記方法又は使用は、以下のステップを含む:
1)前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす薬剤を中止するステップ;及び
2)それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ。
【0216】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻を予防又は処置する方法に関し、前記患者は、CNS疾患若しくは障害又は1つ若しくは複数のCNS疾患又は障害の医療処置に関連した感情鈍麻の徴候及び症状を示した病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、この方法は、以下のステップを含む:
i)開業医又は医師による前記患者の評価のステップであって、
1)前記患者の感情鈍麻の徴候及び症状の病歴の評価;
2)現在の感情鈍麻の徴候又は症状の評価;及び/又は
3)前記患者が感情鈍麻の徴候及び/又は症状を発症又は悪化するリスクの評価を含む、ステップ;
ii)ステップ1)で前記臨床医が、感情鈍麻の徴候及び症状が存在するか、又は感情鈍麻の徴候及び症状を発症するリスクが存在すると評価した場合、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ;並びに
iii)ステップ2)で、潜在するCNS疾患に応じて、前記開業医又は医師が、前記1つ又は複数のCNS疾患又は障害の処置のための1つ又は複数の追加の薬剤を投与するか、又は前記1つ又は複数のCNS疾患の処置のための1つ又は複数の薬剤を中止して、治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与に置き換えるかを判断するステップ。
【0217】
いくつかの実施形態では、本発明は、実施形態のいずれか1つによる感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、開業医又は医師が、患者の評価により、感情鈍麻の徴候及び症状が前記患者に存在すること、又はCNS疾患又は障害の処置のための薬剤の使用に基づいた感情鈍麻のリスクが立証されていることが裏付けられた場合、前記先行実施形態による感情鈍麻を処置するための使用を適用することを決定し、任意選択により、そのような処置は、以下のステップを含む:
1)前記CNS疾患又は障害が気分障害であり、前記薬剤が抗うつ剤である場合、第1のステップは、前記薬剤の継続であり、前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない;又は
2)前記CNS疾患又は障害が、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想障害、及び物質使用障害などの精神障害の群から選択される場合、第1のステップは、そのような薬剤が前記CNS疾患又は障害の処置に使用された場合、抗うつ薬又は気分安定薬を継続すること、又は抗うつ剤又は気分安定剤ではない統合失調症又は精神病の処置のための薬剤の投与を維持することである。
【0218】
第2のステップは、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与することである。
【0219】
いくつかの実施形態では、本発明は、先行実施形態のいずれか1つによる感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、開業医又は医師は、患者の評価により、感情鈍麻の徴候及び症状が前記患者に存在することが確認された場合、前記先行実施形態による感情鈍麻を処置するための使用を適用することを決定し、任意選択により、そのような処置は、以下のステップを含む:
a)1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない前記薬剤の中止のステップ;及び
b)それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ。
【0220】
いくつかの実施形態では、本発明は、先行実施形態のいずれか1つによる感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬剤は、1つ又は複数のCNS疾患若しくは障害又はその徴候及び症状の予防又は処置のために投与され、前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、前記感情鈍麻は、(1)前記CNS疾患又は障害の結果である、(2)前記医療処置に対する不十分な応答の結果である、又は(3)CNS疾患又は障害の医療処置の不十分な応答によって引き起こされると報告されている。
【0221】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0222】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、感情鈍麻の徴候及び症状を経験している。
【0223】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、感情鈍麻の徴候及び症状を経験しているか、又は感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0224】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻又はその徴候及び症状の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に関連する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0225】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0226】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は1つ若しくは複数のCNS疾患若しくは障害を処置するための薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0227】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、感情鈍麻を経験しているか、又は適切な用量での薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0228】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、感情鈍麻の徴候及び/又は症状を経験する前に、CNS疾患又は障害の処置を一切受けていない。
【0229】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、薬剤の投与に起因する感情鈍麻の徴候及び症状の病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。
【0230】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、CNS疾患若しくは障害又は1つ若しくは複数のCNS疾患若しくは障害の医療処置に関連する感情鈍麻の徴候及び症状を示す病歴を有し、前記患者に感情鈍麻の徴候及び症状をもたらす前記薬剤は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、この使用は、以下のステップを含む:
i)開業医又は医師による前記患者の評価のステップであって:
1)前記患者の感情鈍麻の徴候及び症状の病歴の評価;
2)現在の感情鈍麻の徴候又は症状の評価;及び
3)前記患者が感情鈍麻の徴候及び/又は症状を発症又は悪化するリスクの評価を含む、ステップ;
ii)ステップ1)で前記臨床医が、感情鈍麻の徴候及び症状が存在するか、又は感情鈍麻のそのような徴候及び症状を発症するリスクが存在すると評価した場合、それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ;並びに
iii)ステップ2)で、潜在するCNS疾患に応じて、前記開業医又は医師が、前記1つ又は複数のCNS疾患又は障害の処置のための1つ又は複数の追加の薬剤を投与するか、又は前記1つ又は複数のCNS疾患の処置のための1つ又は複数の薬剤を中止して、治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与に置き換えるかを判断するステップ。
【0231】
いくつかの実施形態では、前記薬剤の適切な用量は、前記薬剤のラベルに記載されている用量である。いくつかの実施形態では、本発明の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の方法又は使用は、適切な用量の薬剤を指し、前記薬剤は1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではなく、前記薬剤の適切な用量は、前記薬剤のラベルに記載されている用量であり、且つ前記薬剤のラベルに記載されている効率的な処置のための用量のいずれか1つから選択される。
【0232】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻が、薬剤の投与に関連して、又は薬剤の投与の結果として見られ、以下のステップを含む:
1)前記薬剤の中止のステップ;及び
2)それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ。
【0233】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻が、薬剤の投与に関連して、又は薬剤の投与の結果として見られ、以下のステップを含む:
1)CNS疾患又は障害の処置のための前記薬剤の中止;及び
2)それを必要とする患者に治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩を投与するステップ。
【0234】
いくつかの実施形態では、本発明は、CNS疾患又は障害の処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬剤は、感情鈍麻のために中止された、低減された、又は中止しなければならなかった前記疾患又は障害の処置のための別の薬剤を以前に服用した患者に使用するためのものである。
【0235】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態による使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記CNS疾患又は障害は、MDDなどのうつ病である。
【0236】
いくつかの実施形態では、感情鈍麻の予防又は処置に使用するための方法又は1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、患者の感情鈍麻を予防するためのものである。
【0237】
いくつかの実施形態では、感情鈍麻の予防又は処置に使用するための方法又は1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、患者の感情鈍麻を処置するためのものである。いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、CNS疾患又は障害に関連している。いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、潜在するCNS疾患又は障害に関連している。
【0238】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻が薬剤の投与に関連して、又は薬剤の投与の結果として見られ、前記薬剤は、1つ若しくは複数のCNS疾患若しくは障害又はその徴候及び症状を処置するためのものであり、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩ではない。いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、前記患者によって報告される。いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、開業医又は医師によって診断される。いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、CNS疾患又は障害の医療処置の不十分な応答によって引き起こされるとして前記患者によって報告される。
【0239】
いくつかの実施形態では、本発明は、先行実施形態のいずれか1つによる感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬剤は、1つ又は複数のCNS疾患又は障害の処置のために提供され、前記CNS疾患又は障害は:MDD、MDE、PTSD、統合失調症、認知障害、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症からなる群から選択される。
【0240】
いくつかの実施形態では、本発明は、先行実施形態のいずれか1つによる感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬剤は、セロトニン作動性伝達に対する増強効果を有し、任意選択によりSSRI又はSNRIのクラスから選択される。
【0241】
いくつかの実施形態では、本発明は、先行実施形態のいずれか1つによる感情鈍麻の予防又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬剤は、ドーパミン作動性伝達を低減し、任意選択により定型又は非定型抗精神病薬から選択される。
【0242】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、開業医又は医師が患者を評価することによって診断され、前記評価は、以下のステップを含む:
a)前記患者と会話を開始するステップ;
b)「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」という質問をするステップ;及び
c)質問b)に対する応答を評価し、感情鈍麻の症状又は徴候が前記患者に存在するかどうかを判断するステップ。
【0243】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、開業医又は医師が患者を評価することによって診断され、前記評価は、以下のステップを含む:
a)前記患者との会話を開始し、感情鈍麻の一般的な感情的な影響について説明するステップ;
b)「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」という質問をするステップ;及び
c)質問b)に対する応答を評価し、感情鈍麻の症状又は徴候が前記患者に存在するかどうかを判断するステップ。
【0244】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、開業医又は医師が患者を評価することによって診断され、前記評価は、以下のステップを含む:
a)前記患者との会話を開始し、「感情的な影響は様々であるが、例えば、何らかの形で感情的に「麻痺した」又は「鈍麻した」と感じること;前向きな感情や否定的な感情が欠如していること;周りの世界から切り離されたように感じること;又は以前は気にしていたことを「全く気にしないこと」を含み得る」という患者の情報を含み得る、感情鈍麻の一般的な感情的な影響を説明するステップ;
b)「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」という質問をするステップ;及び
c)質問b)に対する応答を評価して、感情鈍麻の症状又は徴候が前記患者に存在するかどうかを判断するステップ。
【0245】
いくつかの実施形態では、ステップb)で尋ねられた質問に対する患者の回答が「はい」である場合、前記開業医又は医師の評価のステップc)は、感情鈍麻が存在するという結論につながる。
【0246】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、開業医又は医師が患者を評価することによって診断され、前記評価は、以下のステップを含む:
a)前記患者に:「感情的な影響は様々であるが、例えば、何らかの形で感情的に「麻痺した」又は「鈍麻した」と感じること;前向きな感情や否定的な感情が欠如していること;周りの世界から切り離されたように感じること;又は以前は気にしていたことを「全く気にしないこと」を含み得る」と説明するステップ;
b)「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」という質問をするステップ;及び
c)質問b)に対する応答を評価して、質問b)に「はい」と答えた場合、感情鈍麻の症状又は徴候が前記患者に存在すると判断するステップ。
【0247】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、ODQ尺度及びODQ合計スコアによる評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、前記ODQ合計スコアは、ODQガイドラインに基づいて計算される。
【0248】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、ODQ尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、ODQ合計スコアは30点以上であり、前記ODQ合計スコアは、ODQガイドラインに基づいて計算される。
【0249】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、ODQ尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、ODQ合計スコアは40点以上であり、前記ODQ合計スコアは、ODQガイドラインに基づいて計算される。
【0250】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、ODQ尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、ODQ合計スコアは50点以上であり、前記ODQ合計スコアは、ODQガイドラインに基づいて計算される。
【0251】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、ODQ尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、ODQ合計スコアは70点以上であり、前記ODQ合計スコアは、ODQガイドラインに基づいて計算される。
【0252】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、ODQ尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、ODQ合計スコアは90点以上であり、前記ODQ合計スコアは、ODQガイドラインに基づいて計算される。
【0253】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、約45以下のMEI合計スコアとの組み合わせで見られ、前記MEI合計スコアは、前記MEIのガイドラインに従って評価される。
【0254】
いくつかの実施形態では、感情鈍麻は、約40以下のMEI合計スコアとの組み合わせで見られ、前記MEI合計スコアは、前記MEIのガイドラインに従って評価される。
【0255】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、約30以下のMEI合計スコアとの組み合わせで見られ、前記MEI合計スコアは、前記MEIのガイドラインに従って評価される。
【0256】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、約15以上のSDS合計スコアとの組み合わせで見られ、前記SDS合計スコアは、前記SDSのガイドラインに従って計算される。
【0257】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、約20以上のSDS合計スコアとの組み合わせで見られ、前記SDS合計スコアは、前記SDSのガイドラインに従って計算される。
【0258】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、約25以上のSDS合計スコアとの組み合わせで見られ、前記SDS合計スコアは、前記SDSのガイドラインに従って計算される。
【0259】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、SANS尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、関連するスコアは、前記SANSのガイドラインに基づいて計算される。
【0260】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、CAINS尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、関連するスコアは、前記CAINSのガイドラインに基づいて計算される。
【0261】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、BNSS尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、関連するスコアは、前記BNSSのガイドラインに基づいて計算される。
【0262】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、PANSS尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、関連するスコアは、前記PANSSのガイドラインに基づいて計算される。
【0263】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、RSEB尺度による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができ、関連するスコアは、ガイドラインに基づいて計算される。
【0264】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、米国精神医学会の診断統計マニュアルの麻痺及び回避の定義による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができる。
【0265】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、以下のステップを含む米国精神医学会の診断統計マニュアルの麻痺及び回避の定義による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができる:
i)前記患者に、以下の1つ又は複数の経験に関する質問票を渡すステップ:
1)感情の範囲の制限、例えば、愛情を持つことができない;及び
2)重要な活動への関心の著しい低下(この重要な活動は、以前は前記患者にとって関心があり重要であった活動と定義することができる);並びに
ii)質問票を評価して、感情鈍麻の症状又は徴候が前記患者に存在するかどうかを判断するステップ。
【0266】
いくつかの実施形態では、前記開業医又は医師の評価の前記ステップa)~c)は、以下のステップを含む米国精神医学会の診断統計マニュアルの麻痺及び回避の定義による評価又は同等の評価によって補足又は置き換えることができる:
i)以下の項目の1つ又は複数を含む、米国精神医学会の診断統計マニュアルの麻痺と回避の定義に従った1つ又は複数の質問を含む質問票を患者に渡すステップ:
1)心的外傷に関連する思考又は感情を回避しようとする努力;
2)心的外傷の記憶を呼び起こす活動又は状況を回避しようとする努力;
3)心的外傷の重要な具体例を思い出すことができない(心因性健忘症);
4)重要な活動への関心の著しい低下(幼い子供では、トイレトレーニング又は言語スキルなどの最近獲得した発育上のスキルの喪失);
5)他者からの分離又は疎外感;
6)感情の範囲の制限、例えば、愛情を持つことができない;
7)未来が短縮されたという感覚、例えば、キャリア、結婚、子供、又は長寿を期待しない;及び
ii)質問票を評価して、感情鈍麻の症状又は徴候が前記患者に存在するかどうかを判断するステップ。
【0267】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法又は使用又は処置は、感情鈍麻の処置のための速効性の方法又は使用である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用は、感情鈍麻の処置のための速効性の方法又は使用であり、徴候又は症状の軽減は、患者によって1週間以内に検出可能であるか、又は、例えば患者が回答した質問票で医師によって評価される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用は、感情鈍麻の処置のための即効性の方法又は使用であり、徴候又は症状の軽減は、患者によって2週間以内に検出可能であるか、又は、例えば患者が回答した質問票で医師によって評価される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用は、感情鈍麻の処置のための即効性の方法又は使用であり、徴候又は症状の軽減は、患者によって4週間以内に検出可能であるか、又は、例えば患者が回答した質問票で医師によって評価される。
【0268】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記ODQ合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約1週間以内に約6点~約10点低下する。
【0269】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記ODQ合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約1週間以内に約6.5点~約13点低下する。
【0270】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記ODQ合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約4週間以内に約15点~約25点低下する。
【0271】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記ODQ合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約4週間以内に約17.6点~約24.8点低下する。
【0272】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記ODQ合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間以内に約25点~約30点低下する。
【0273】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記ODQ合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間以内に約26点~約29.8点低下する。
【0274】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記ODQ合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間以内に約30点以上低下する。
【0275】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記MEI合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約4週間以内に約18点~約30点上昇する。
【0276】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記MEI合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約4週間以内に約18.8点~約28.3点上昇する。
【0277】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記MEI合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間以内に約28点~約40点上昇する。
【0278】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記MEI合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間以内に約28.9点~約39.7点上昇する。
【0279】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記MEI合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間以内に約40点以上上昇する。
【0280】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記SDS合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間以内に約5点~約10点低下する。
【0281】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記SDS合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間以内に約5.9点~約9.5点低下する。
【0282】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記SDS合計スコアは、前記治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与の約8週間後に約10点以上低下する。
【0283】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用が適用され、前記患者の約50%が、本明細書の態様及び実施形態で項目b)として記載され、「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」のように読まれるスクリーニング質問に「いいえ」と答え、前記患者からの前記回答が、少なくとも10mg/日の用量の治療有効量の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又は薬学的に許容される塩の約8週間以上の毎日の投与の後に「いいえ」である。
【0284】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、任意の医療処置の開始前に少なくとも1回は報告又は診断されている。
【0285】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、任意の医療処置の開始前又は開始後に少なくとも1回は報告又は診断されている。
【0286】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、任意の医療処置の開始後に1回は報告又は診断されている。
【0287】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、任意の薬剤の開始前に少なくとも1回は報告又は診断されている。
【0288】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、任意の薬剤の開始前又は開始後に少なくとも1回は報告又は診断されている。
【0289】
いくつかの実施形態では、前記感情鈍麻は、任意の薬剤の開始後に1回は報告又は診断されている。
【0290】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法又は使用では、前記CNS疾患又は障害は、MDD、MDE、PTSD、統合失調症、認知障害、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症からなる群から選択される。
【0291】
いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害はMDDである。いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害はMDEである。いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害はPTSDである。いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害は統合失調症である。いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害はパーキンソン病である。いくつかの実施形態では、CNS疾患又は障害は自閉症である。いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害は、血管性自閉症(vascular autism)である。いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害は血管性認知症である。いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害は、多系統萎縮症(「MSA」)である。いくつかの実施形態では、前記CNS疾患又は障害は認知障害である。いくつかの実施形態では、前記認知障害は、アルツハイマー病又は統合失調症に関連する。
【0292】
いくつかの実施形態では、前記認知障害は、開業医又は医師によって診断される。
【0293】
いくつかの実施形態では、前記認知障害は、DSSTと同様の尺度を使用して、医師、セラピスト、又は理学療法医によって診断される。いくつかの実施形態では、前記認知障害は、患者によって報告される。
【0294】
いくつかの実施形態では、本発明は、感情鈍麻の予防又は処置での使用のための、先行実施形態のいずれか1つによる1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩、又は先行実施形態のいずれか1つによる使用に関し、前記患者は、感情鈍麻の徴候及び/又は症状を経験する前にCNS疾患又は障害のいかなる処置も受けていない。
【0295】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩である。
【0296】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩であり、前記結晶塩は、臭化水素酸塩(α)、臭化水素酸塩(β)、及び臭化水素酸塩(γ)からなる群から選択される。
【0297】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩であり、前記結晶塩は、DL、D-、及びL-乳酸付加塩からなる群から選択される。
【0298】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩であり、前記結晶塩は、DL、D-、及びL-ピロピログルタミン酸(pyropyroglutamate)からなる群から選択される。
【0299】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩であり、前記結晶塩は、5.85±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、9.30±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、17.49±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び18.58±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有する臭化水素酸塩(α);6.89±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、9.73±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、13.78±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び14.62±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有する臭化水素酸塩(β);11.82±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、16.01±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、17.22±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び18.84±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有する臭化水素酸塩(γ)からなる群から選択される。
【0300】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩であり、前記結晶塩は、6.89±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、9.73±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、13.78±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び14.62±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有する臭化水素酸塩(β)である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩であり、前記結晶塩は、6.01±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、10.10±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、10.32±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、12.06±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、12.84±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、13.08±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び13.58±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有するDL-乳酸付加塩;5.33±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、9.75±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、10.10±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び14.63±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有するL-乳酸付加塩;又は5.33±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、9.75±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、10.10±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び14.63±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有するD-乳酸付加塩からなる群から選択される。
【0301】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩であり、前記結晶塩は、10.72±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、12.14(°2θ)±0.2、任意選択により±0.1、16.22±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び18.59±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有するL-ピログルタミン酸;10.72±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、12.14(°2θ)、16.22±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び18.59±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有するD-ピログルタミン酸;6.16±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、9.25±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、17.68±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)、及び18.59±0.2、任意選択により±0.1(°2θ)に主要なXRPDピークを有するDL-ピログルタミン酸からなる群から選択される。
【0302】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、1日当たり約1mg~約50mg、好ましくは約5mg、約10mg、又は約20mgの用量で前記患者に投与される。
【0303】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、1日当たり約10mg又は約20mgの用量で前記患者に投与される。
【0304】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで投与される前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の前記投与が前記患者に必要とされている処置の場合は、第1週、即ち1日目から約6日目又は約7日目に1日当たり約10mgの用量で、そして第1週の後、即ち約7日目又は約8日目に1日当たり約10mg又は約20mgの用量で前記患者に投与される。
【0305】
いくつかの実施形態では、本発明は、感情鈍麻の予防又は処置に使用するための、先行実施形態のいずれか1つによる1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は結晶塩であり、前記結晶塩は、約10mg又は約20mgの1日量の臭化水素酸塩(α)、臭化水素酸塩(β)、臭化水素酸塩(γ)、DL-、D-、若しくはL-乳酸付加塩、又はDL-、D-、若しくはL-ピログルタミン酸塩からなる群から選択され、前記患者は、約1週間にわたって1日当たり約10mgが投与され、開業医又は医師に従って、第1週の後も1日当たり約10mgの用量が維持されるか、又は用量が増加される。
【0306】
いくつかの実施形態では、本発明は、感情鈍麻の予防又は処置に使用するための、先行実施形態のいずれか1つによる1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、約10mg又は約20mgの1日用量のボルチオキセチンであり、前記患者は、約1週間にわたって1日当たり約10mgが投与され、開業医又は医師に従って、第1週の後も1日当たり約10mgの用量が維持されるか、又は好ましくは1日当たり約20mgの用量に増加される。
【0307】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われる。
【0308】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、皮下、静脈内、舌下、又は経口であり得る。
【0309】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は経口である。
【0310】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、錠剤の形態での経口である。いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、以下の成分を含む錠剤の形態での経口である。
【0311】
【表7】
【0312】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、以下の成分の1つ、1つ以上、又はすべてを含む錠剤の形態での経口である。
【0313】
【表8】
【0314】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのDL-、D-、又はL-乳酸塩を含む、国際公開第2010/121621号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている経口ドロップの形態での経口である。
【0315】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンDL-乳酸付加塩、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンL-乳酸付加塩、及び1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンD-乳酸付加塩から選択される1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンの塩を含む液体医薬製剤である経口ドロップの形態での経口である。
【0316】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、舌下組成物の形態での経口である。
【0317】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンDL-、D-、又はL-ピログルタミン酸塩を含む、国際公開第2016/180870号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の舌下ゲル組成物の形態での経口である。
【0318】
いくつかの実施形態では、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に開示される使用又は方法のいずれかで前記患者に投与され、前記1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩の投与は、任意の適切な投与経路によって行われ、前記投与経路は、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジンDL-、D-、又はL-ピロピログルタミン酸塩及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む、国際公開第2016/180870号パンフレット(上記)に記載されている舌下ゲル組成物の形態での経口である。
【0319】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の感情鈍麻の予防、軽減、又は処置に使用するための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0320】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態による使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、CNS疾患又は障害に罹患している。
【0321】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、CNS疾患又は障害の一部として感情鈍麻を経験している。
【0322】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、前記CNS疾患の処置のための薬剤を以前に服用したことがあるか、又は今も服用している。
【0323】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬剤は、感情鈍麻の症状及び徴候をもたらし、感情鈍麻のために前記薬剤を中止した、又は中止しなければならない。
【0324】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記CNS疾患又は障害は、精神病、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、緊張病、妄想性障害などの精神障害;双極性障害、気分循環性障害、大うつ病、気分変調症、月経前不快気分障害などの気分障害;及び物質使用障害から選択される。
【0325】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記CNS疾患又は障害は、PTSD、MDD及びMDEを含むうつ病、認知障害、統合失調症、精神病、パーキンソン病、自閉症、血管性認知症、及び多系統萎縮症から選択される。
【0326】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記CNS疾患又は障害は、MDD及び統合失調症から選択される。
【0327】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬剤は、SSRI又はSNRIである。
【0328】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記CNS疾患又は障害は、MDD及び統合失調症から選択され、前記薬剤は、SSRI又はSNRIである。
【0329】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬剤は、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、及びデュロキセチンから選択される。
【0330】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記患者は、30を超えるODQ合計スコア、例えば、40を超える、50を超えるODQ合計スコアを有する。
【0331】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬学的に許容される塩は、臭化水素酸塩、乳酸塩、及びピログルタミン酸塩からなる群から選択される。
【0332】
いくつかの実施形態では、本発明は、実施形態による使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、前記薬学的に許容される塩は、臭化水素酸塩(α)、臭化水素酸塩(β)、及び臭化水素酸塩(γ)から選択される。
【0333】
いくつかの実施形態では、本発明は、先行実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、約5mg、約10mg、又は約20mgの1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン(遊離塩基として計算)の単位用量で投与される。
【0334】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、約5mg/日、約10mg/日、又は約20mg/日の1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン(遊離塩基として計算)の用量で投与される。
【0335】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる使用のための1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩に関し、1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペラジン又はその薬学的に許容される塩は、経口錠剤又は経口ドロップとして投与される。
【0336】
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の態様の等価物を認識する、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると考えられる。
【実施例
【0337】
一般的な方法
国際公開第03/029232号パンフレット、同第2007/144005号パンフレット、同第2010/121621号パンフレット、及び同第2016/180870号パンフレット(それぞれ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)は、化合物1-[2-(2,4-ジメチル-フェニルスルファニル)-フェニル]-ピペラジン及びその薬学的に許容される塩、並びにそれらの製造方法を開示している。
【0338】
一般的な臨床試験方法
この8週間の非盲検単群試験では、患者は、SSRI/SNRIからボルチオキセチンによる8週間の処置に直接切り替えた(10mg/日を1週間、続いて10~20mg/日を7週間、可変用量)。
【0339】
この試験には、(DSM-5により)MDDと一次診断され、現在のうつ病エピソードが12か月未満の18~65歳の外来患者を含んでいた。スクリーニング来院の少なくとも6週間前に承認された用量でのSSRI又はSNRI単剤療法(SSRI:エスシタロプラム、パロキセチン、セルトラリン;SNRI:デュロキセチン、及びベンラファキシン)に対して不十分な(即ち、部分的な)応答を示した患者を適格とした。ベースラインで21を超え、29未満のMADRS合計スコア(うつ病の重症度)、及び50以上のODQ合計スコア(感情鈍麻の重症度)を含める必要があった。加えて、すべての患者は、Price et al(2012)(上記)によって開発された感情鈍麻に関する標準化された「絶対的基準」スクリーニング質問に「はい」と答えなければならなかった:「感情的な影響は様々であるが、例えば、何らかの形で感情的に「麻痺した」又は「鈍麻した」と感じること;前向きな感情又は否定的な感情が欠如していること;周りの世界から切り離されたように感じること;又は以前は気にしていたことを「全く気にしないこと」を含み得る」。「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」。すべての患者は、自身と治験責任医師の意見によって薬剤の変更の候補者にならなければならなかった。
【0340】
MDDではなく他の現在の一次精神医学的診断を受けた患者又は試験開始前の6か月以内になんらかの物質を乱用した患者は、適切な投与量及び期間の2つの以前の抗うつ剤の一連の処置に対する応答が不十分な患者と同様に除外した。その他の主要な除外基準には、精神遅滞、妊娠、及び自殺のリスクが含まれていた。
【0341】
この試験は、優良臨床試験基準の原則(ICH 2016)及びヘルシンキ宣言(World Medical Association,2002)に従って、2019年2月~2020年2月の間にフランス、スペイン、イタリア、及びリトアニアの合計23の施設で行い、各試験施設の地方倫理委員会によって承認された。適格な患者は、どの試験手順に参加する前にも、書面による同意書を提出した。この試験は、ClinicalTrials.gov(NCT03835715)及びEU Clinical Trials Register(EudraCT番号2017-004829-33)に登録されている。
【0342】
以下の「アッセイ」は、情動機能に対する10mg又は20mgのボルチオキセチン処置の有効性、即ち、感情鈍麻に対するボルチオキセチンの効果を評価するために行った試験を一般的な言葉で説明する。試験の1つの側面は、ある程度の感情の麻痺又は鈍麻を患者の約50%に誘発することが知られているSSRI又はSNRI処置に対する応答が不十分なMDDでの情動機能に対する10mg又は20mgのボルチオキセチン処置の有効性を評価することに関するものであった。この目的のいくつかの側面は、動機付け及びエネルギー、家族、社会、及び仕事の機能、認知機能、及び抑うつ症状に対する8週間の処置後の10~20mgの可変用量のボルチオキセチンの有効性を評価すること、並びに前記ボルチオキセチンの用量の安全性を評価し、SSRI又はSNRIによる以前の処置の突然の中止及びボルチオキセチンによる処置の開始後の潜在的な中止の症状を評価することであった。追加の目的は、デジタルバイオマーカー又はデジタル表現型と、疾患の症状、機能、及び認知能力を含む臨床的特徴との間の関連を調査することであったが、この目的は、時間の制約により調査されなかった。
【0343】
アッセイI-試験方法
上記の目的を持った試験は、介入的、多国間、多施設及び非盲検、及び可変用量の試験として設計した。
【0344】
この試験は、ボルチオキセチンによる8週間の処置期間を含み、その後に安全性評価のための4週間の追跡期間が続いた。有効性と安全性の評価を、0週目、1週目、4週目、及び8週目に行い、用量調整のための予定外の来院は、処置期間中いつでも許可される。
【0345】
試験デザインの概要を図1に示す。
【0346】
以下のアッセイに記載の異なる尺度のすべての評価(assessment)及び評価(evaluation)は、治験責任医師、即ち臨床医が行った。
【0347】
アッセイII-登録基準
患者は、単発性又は再発性MDDの一次診断を受け、DSM-5(登録商標)によるMDEの基準を満たしている18歳以上65歳以下の男性又は女性であった。さらに、患者は、MDDの一次診断を受け、現在のうつ病エピソードが12か月以上持続し、適切な用量でのSSRI又はSNRIによる6週間以上の単剤療法後のMADRS合計スコアが21を超え、29未満に相当する抑うつ症状があり、前記患者は、50を超えるODQ合計スコアで示される感情鈍麻を経験し、感情鈍麻に関するスクリーニング質問で「はい」と回答した(「感情的な影響は様々であるが、例えば、何らかの形で感情的に「麻痺した」又は「鈍麻した」と感じること;前向きな感情又は否定的な感情が欠如していること;周りの世界から切り離されたように感じること;又は以前は気にしていたことを「全く気にしないこと」を含み得る」。「過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」)。患者自身が適切であると考えられた場合、及び/又は治験責任医師が患者を抗うつ薬の変更に適していると考えた場合、それらを登録した。
【0348】
患者は、SSRI/SNRI単剤療法(シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、デュロキセチン、又はベンラファキシン)で、現在のMDEに適切な用量で少なくとも6週間処置され、応答が不十分であり、治験責任医師の意見の変更のための候補である。さらに、患者は、この不十分な応答のために処置を切り替えることを望み、感情的な影響に関するスクリーニング質問(採用基準8)及び50以上のODQ合計スコアによって評価される感情鈍麻について不満を述べている。MADRS合計スコアによって評価される抑うつ症状の重症度は、中等度から重度のうつ病のレベルに対応する22以上28以下でなければならない。
【0349】
約150人の患者を登録する計画であった。この試験は、8週間の非盲検、可変用量処置期間で構成されていた。安全性の追跡評価は、一次転帰来院(Primary Outcome Visit)又は来院取り止め(Withdrawal Visit)の30日後に行う予定であった。
【0350】
患者の流れ及びベースライン特性
登録された151人の患者のうち、150人を処置した;それらのうち、131人(87.3%)が処置を完了し、143人(95.3%)を分析に含めた。合計19人の患者が試験を中止した;主な理由は、有害事象(患者6人[4%])、追跡不能(患者6人[4%])、有効性の欠如(患者2人[1.3%])、プロトコル違反(患者3人[2%])、及び同意の撤回(患者1人[0.7%])、及び「その他の理由」(患者1人[0.7%])であった。患者の平均年齢は47歳(SD=12)であり、105人(70.0%)が女性であった(表0)。ベースラインでの平均MADRS合計スコアは、25.5(SD=1.7)であり、平均ODQ合計スコアは、89.4(SD=15.1)であった。ほとんどの患者(82%)を、試験の開始時にSSRI(最も一般的にはエスシタロプラム)から切り替え、18%を、SNRI(主にベンラファキシン)から切り替えた(表0)。患者の約半分(51.4%)が、8週目に20mgの最終用量のボルチオキセチンを服用した。
【0351】
【表9】
【0352】
アッセイIII-患者のSSRI又はSNRIからボルチオキセチンへの切り替え
登録基準を満たした患者は、SSRI/SNRIから8週間の非盲検ボルチオキセチンに直接切り替えた。10又は20mg/日のボルチオキセチン(Lu AA21004)は経口錠剤である。
【0353】
ベースライン来院時に、すべての患者を、以前のSSRI又はSNRIによる処置からボルチオキセチンによる非盲検処置に切り替えた。開始用量は、第1週目の間は10mg/日のボルチオキセチンとした。その後、用量を、来院2(1週目)で20mg/日に増量してもよいし、又は10mg/日のままにしてもよかった。患者の応答及び治験責任医師の判断に従って、用量を、予定された来院及び予定外の来院時に調整してもよかった(10又は20mg/日)。
【0354】
患者に、来院ごとに10mg又は20mgのボルチオキセチンを投与し、好ましくは1日のうちの同じ時間に1日用量を経口摂取するように指示した。ボルチオキセチンの初回用量を、ボルチオキセチンが患者に投与された翌日(1日目)に服用するように指示した。
【0355】
すべての患者に、来院1の翌日(1週目)から開始して、第1週に10mg/日を投与した。この試験は、可変用量試験として設計した、即ち、第1週後に治験責任医師の診療所への来院が必須であり(来院2)、患者は、治験責任医師と協力して、10mg/日のボルチオキセチン用量を継続するか、又は来院2の翌日から用量を20mg/日に増加させるかを決定することができた。患者はさらに、治験責任医師の診療所での予定された又は予定外の来院に続いて、ボルチオキセチンの用量を調整することが許可されていた。前記予定外の来院は、7週間の処置の間、いつでも許可され得た。従って、次の7週間、患者は、1週目の後の選択に応じて10~20mg/日を服用し、表1は、何人の患者が1週目の後に用量を増加したか、及び/又は2週目の後のある時点、例えば2.5週目、3週目、若しくは4週目、又は8週目の終了前のその他の時点で用量を低減又は増加したかを示した。
【0356】
【表10】
【0357】
ほとんどの患者を、ある日のSSRI又はSNRIによる前の処置から、別の日にボルチオキセチンに切り替えたが、場合によっては、SSRI及びSNRIの用量を、ボルチオキセチンの最初の投与前に低減してもよかった。
【0358】
アッセイIV-有効性評価
患者が報告した感情鈍麻の徴候及び/又は症状を、次の標準化された質問票:ODQ、MEI、又はSDSのうちの1つ又は複数によって収集した。
【0359】
感情鈍麻の徴候及び症状の臨床医による評価を、次の標準化された方法:MADRS、CGI-S、又はCGI-Iの1つ又は複数によって収集した。
【0360】
MDDの処置におけるボルチオキセチンの有効性を、合計14の短期プラセボ対照試験(高齢者での専用試験を含む);3つの短期プラセボ及び実薬試験;1つの長期再発防止試験;及び6つの長期非盲検延長試験で評価した。5~20mg/日の用量範囲でのボルチオキセチンの臨床的価値を、臨床的に適切な効果量を用いた十分に確立された有効性尺度と、レスポンダーとリミッターの割合の分析における臨床的に関連する結果、CGI-Iスコア、及び健康関連の生活の質と全体的な機能の改善によって、プラセボと比較して実証した。ボルチオキセチンの好ましい効果は、短期及び長期の処置の両方で見られ、年齢、性別、人種、BMI、及びベースラインの疾患特性とは無関係であった。加えて、成人MDD患者での3つの大規模な無作為化プラセボ対照試験の結果は、DSST及びその他の認知機能の客観的及び主観的尺度によって評価される患者の認知能力の一貫した臨床的に意味のある改善を示した。機能的能力の客観的試験であるUCSD日常生活技能簡易評価尺度(Performance-based Skills Assessment)(「UPSA」)によって測定すると、有意且つ臨床的に意味のある改善が、日常生活の活動を行う能力においても観察された。
【0361】
アッセイV-神経心理学的検査
感情鈍麻の徴候及び症状を評価するための神経心理学的検査は、例えばDSSTであった。
【0362】
アッセイVI-安全性評価
感情鈍麻の徴候及び症状を含む有害事象は、有害事象の報告又は診断の記録に一般的に使用されるような安全性評価を使用して記録又は報告することができる。
【0363】
感情鈍麻に関連する有害事象による患者の処置中止は、中止により発現した徴候及び症状の尺度(「DESS」)の一般的な方法に従って記録又は報告することができる。
【0364】
ボルチオキセチンの安全性は、ボルチオキセチン処置を受けた約12,500人の患者(健康なボランティアを含む)を含む大規模な臨床試験プログラムで調査されている。有害事象の報告又は診断、実験室での安全性試験値の評価、ECGパラメータ(QTcを含む)、バイタルサイン、及びプラセボと比較した経時的な体重に基づいて、ボルチオキセチンは、安全で忍容性が高いことが分かった。成人及び高齢者におけるボルチオキセチンの安全性プロファイルは類似していることが判明した。約270万人年にわたる曝露を含む、市販後の使用からの経験により、臨床試験で見出された安全性プロファイルが確認されている。
【0365】
合計71人の患者(47.3%)が、TEAEを報告した(表1A)。最も一般的なTEAE(2%超が報告)は、吐き気、頭痛、めまい、嘔吐、及び下痢であり;1人の患者が、重大な有害事象(「稽留流産」)を報告した。試験中に死亡した患者はいなかった。6人の患者が、TEAEのために研究を中止し;2人以上の患者を離脱させたTEAEには、嘔吐、吐き気、及び下痢が含まれていた。平均DESS合計スコアは、ベースライン及び1週目でそれぞれ、1.9(SD=3.8)及び2.2(SD=4.2)であった。
【0366】
【表11】
【0367】
アッセイVII-その他の評価
感情鈍麻の症状及び徴候の状況を、音声録音、及び、例えばDiscovery by Mindstrong Version 2.2などの携帯電話アプリケーションで得られる患者から受動的に収集されたデータによって記録することができる。
【0368】
アッセイVIII-試験のエンドポイント
この試験の特に興味深いエンドポイントの1つは、QDQを使用したベースラインと比較した感情鈍麻の基底状態であった。QDQは、感情鈍麻の4つの側面と、抗うつ薬処置に起因する可能性を評価する26項目の評価尺度である。
【0369】
うつ病の症状を、臨床医がMADRSを使用して評価した。
【0370】
【表12】
【0371】
アッセイIX-統計的方法
ODQ合計スコアのベースラインからの変化を、固定効果としての施設と週、連続共変量としてのベースラインスコア、及びすべての利用可能な観察に基づく週ごとのベースラインスコアの相互作用を含む反復測定の混合モデル(mixed model for repeated measurement)(「MMRM」)アプローチを使用して分析した。標準誤差(「SE」)及びp値を含む、調整済み平均値を報告した。安全性と忍容性を、記述統計を使用して評価した。
【0372】
分析には、以下の分析セットを使用した:
・登録された全患者セット(「APES」)-すべての登録患者。
・処置された全患者セット(「APTS」)-ボルチオキセチンを少なくとも1回服用したAPESのすべての患者。
・全分析セット(「FAS」)-有効なベースライン評価及びODQ合計スコアの少なくとも1つの有効なベースライン後の評価を有するAPTSのすべての患者。
・有効性分析は、FASに基づいており、安全性分析は、APTSに基づいている。
【0373】
アッセイX-一次エンドポイントの分析
【0374】
【表13】
【0375】
ODQ合計スコアのベースラインからの変化は、MMRMアプローチを使用して分析した。このモデルは、固定効果としての施設と週、連続共変量としてのベースラインスコア、及び週ごとのベースラインスコアの交互作用を含む。分析は、利用可能なすべての観察に基づいていた。モデルの調整済み平均値は、両側95%信頼区間(「Cl」)で示す。
【0376】
アッセイXI-二次エンドポイントの分析
【0377】
【表14】
【0378】
二次エンドポイントについては、一次分析で説明したものと同じ方法を使用した。すべての分析は、ベースライン共変量としての特定のエンドポイントのベースラインスコアを含み、CGI-Iを除き、CGI-Sのベースラインスコアを使用した。SDS合計スコアは、3つの単一項目(仕事、社会、家族)の合計として定義される。
【0379】
記述統計
一次エンドポイント及び二次エンドポイントについては、記述統計は、週ごとの絶対値、及び関連する場合はベースラインからの変化によって示した。感情的な影響に関するスクリーニング質問の分布は、両側95%信頼区間で8週目に示した。
【0380】
安全性エンドポイントの分析
有害事象を、記述統計を使用して要約する。
【0381】
記述統計を、DESS項目ごとの中止緊急症状の度数表を用いて、ベースライン時及び第1週目のDESS合計スコアで示す。
【0382】
以下の実施例は、上記の臨床試験方法の結果を示す。
【0383】
実施例1-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるODQ合計スコアによる感情鈍麻の評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載のように処置した。
【0384】
アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。以下の表2及び図2は、ベースラインから、1週目、4週目、及び8週目での試験終了時のODQ合計スコア(FAS、MMRM)の概要を示す。
【0385】
【表15】
【0386】
約90で始まるODQ合計スコアは、8週目に約30点低下したため、ODQスコアが3分の1に相対的に低下した。SSRI又はSNRIからボルチオキセチンに切り替えられた患者は、ボルチオキセチン10mgの処置に切り替えてから第1週の内に感情鈍麻が緩和されたと感じた。
【0387】
これらのデータは、SSRI又はSNRI処置に対する不十分な応答に起因する感情鈍麻を経験しているこのサブグループの患者において、ボルチオキセチンがこれらの望ましくない影響を驚くほど迅速且つ効率的に緩和することを示している。ODQで測定した感情鈍麻に対するボルチオキセチンの効果は、1週間の処置後にすでに顕著であり、次の7週間の処置で大きさが増加し続けたことは注目に値する。試験に参加する前に患者が経験した感情鈍麻が、処方された抗うつ薬(SSRI又はSNRIのいずれか)が原因であり、その副作用であった場合、これらの薬剤の半減期から、処置を中止してから1~2週間以内に副作用が解消されたことは明らかである。従って、ボルチオキセチンは、以前の薬剤に関係なく、感情鈍麻の症状を改善し続けた。
【0388】
ベースラインでのODQの分布をチェックし、正規分布パターンのヒストグラムとして報告することができる。図3を参照されたい。
【0389】
実施例2-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるODQドメインスコアの評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。
【0390】
以下の表3~表8は、ODQドメインスコア無関心(NC)、感情的分離(ED)、肯定感の低下(RD)、全般的な低下(RD)、原因としての抗うつ薬(AC)、及びベースラインから、1週目、4週目、及び8週目の試験終了時のACを含まないODQ合計スコア(FAS、MMRM)の概要を示す。
【0391】
【表16】
【0392】
【表17】
【0393】
【表18】
【0394】
【表19】
【0395】
【表20】
【0396】
【表21】
【0397】
上記のデータから、ODQ合計スコアの低下が、1つ又はいくつかのドメインによって引き起こされたものではないことが明らかである。ODQ合計スコアの低下は、NC、PR、ED、GR、及びACの感情鈍麻すべてのドメインで見られた。ACは、患者が服用している抗うつ薬に関連する症状をどの程度考慮しているかを示した。
【0398】
ACを含まないODQ合計スコアを評価すると、実施例1で報告したように、約74のベースラインから8週目の約25点への変化は、約3分の1の相対的変化と同じであった。
【0399】
実施例3-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者における感情的な影響に関するスクリーニング質問の評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。
【0400】
アッセイIIに記載されている患者登録の一部として、質問「感情的な影響は様々であるが、例えば、何らかの形で感情的に「麻痺した」又は「鈍麻した」と感じること;前向きな感情や否定的な感情が欠如していること;周りの世界から切り離されたように感じること;又は以前は気にしていたことを「全く気にしないこと」を含み得る。過去6週間にそのような感情的な影響を経験したか?」という質問に対して、この試験に登録されたすべての患者が「はい」と答えた。
【0401】
以下の表9は、ボルチオキセチンによる処置後に同じ質問に対して「いいえ」と答えた患者数をまとめたものである。
【0402】
【表22】
【0403】
上記のデータから、SSRI又はSNRIによる処置中に過去6週間以内に麻痺又は鈍麻の感情的な影響を実際に経験したと回答した患者の約50%が、現在、ボルチオキセチンによる処置の8週間後にはこれらの影響がもはや存在しないと回答したことが明らかである。
【0404】
実施例4-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるMADRSの評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。MADRS尺度では、スコアが低いほど、重度のうつ病が少ないことを示した。
【0405】
MADRS合計スコアのベースライン(FAS、MMRM)が、約25から、患者をボルチオキセチン処置に切り替えた後、8週間の間に約14点低下した。MADRS合計スコア(FAS、観察された症例(OC))のベースラインからの少なくとも50%の低下として定義される応答は、8週目に約62%の患者で記録した。8週目に10以下のMADRS合計スコア(FAS、OC)として定義された寛解は、約47%で記録した。
【0406】
実施例5-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるCGI-Sの評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。CGI-S尺度では、スコアが低いほど、疾患の重症度が低いことを示した。
【0407】
約4.5のCGIベースラインスコア(FAS、MMRM)が、約2点低下し、CGI-Sスコア(FAS、OC)によって表される寛解は、約48%であることが分かり、これは、実施例4で報告された寛解レベルの調査結果と同様である。
【0408】
実施例6-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるMEIの評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。MEIスコアでは、スコアが高いほど、動機付け及びエネルギーが高くなる。
【0409】
以下の表10は、MEI合計スコアの洞察を提供する。
【0410】
【表23】
【0411】
約44で始まるMEI合計スコアは、8週目に約34点増加したため、MEIスコアは、85%を超えて相対的に増加した。SSRI又はSNRIからボルチオキセチンに切り替えた患者は、動機付け及びエネルギーのレベルが上がったと感じた。
【0412】
ベースラインでのMEIの分布をチェックして、正規分布パターンのヒストグラムとして報告することができる。図4を参照されたい。
【0413】
実施例7-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるMEIサブスコアの評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。MEIスコアでは、スコアが高いほど、動機付け及びエネルギーが高くなる。
【0414】
以下の表11~13は、MEIの合計サブスコア;精神的及び認知的エネルギースコア、社会的動機付けスコア、及び身体的エネルギースコア(FAS、MMRM)の洞察を提供する。
【0415】
【表24】
【0416】
【表25】
【0417】
【表26】
【0418】
上記のデータから、実施例6で報告されたMEI合計スコアの増加が、1つのMEIサブスコアのみによって引き起こされたものではないことが明らかである。MEI合計スコアの増加は、認知的エネルギー、社会的動機付け、及び身体的エネルギーの3つのサブスコアすべてで見られた。
【0419】
実施例8-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるSDSの評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。SDS尺度では、スコアが低いほど全体的な機能が高くなり、機能障害が少ない。
【0420】
以下の表14は、SDS合計スコアの洞察を提供する。
【0421】
【表27】
【0422】
上記のデータは、ボルチオキセチンによる8週間の処置後に、職場、家庭、及び社会生活での活動をカバーする障害スコアの合計が改善されることを裏付けている。
【0423】
実施例9-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるSDSサブスコアの評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。
【0424】
以下の表15~表17は、SDSサブスコア;仕事/学校スコア、社会生活スコア、生活/家庭責任スコア(FAS、MMRM)の洞察を提供する。
【0425】
【表28】
【0426】
【表29】
【0427】
【表30】
【0428】
上記のデータは、ボルチオキセチンによる8週間の処置後に、職場、家庭、及び社会的状況における総合的な障害が改善されることを裏付けている。
【0429】
実施例10-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるDSSTスコアによる認知の評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。DSSTでは、スコアが高いほど認知能力が高いことを示した。
【0430】
以下の表18は、DSST(FAS、MMRM)によって測定される認知能力に対するボルチオキセチンの効果の概要を示す。
【0431】
【表31】
【0432】
上記のデータは、ボルチオキセチンが認知促進効果を有し、46のDSSTのベースラインスコアを8点増加させることを示している。
【0433】
実施例11-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるMEI合計スコアとODQ合計スコアとの間の相関関係の評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。
【0434】
相関分析は、ボルチオキセチンでは、MEIとODQとの合計スコア間に相関関係があることを示した(r=-0.778;p<0.001)。即ち、感情鈍麻が少ないほど、エネルギー及び動機付けが多くなることを患者が報告した。MADR合計スコアの改善の調整後であっても、関連性は、依然として中程度の強度であり、有意性が高かった(r=-0.532;p<0.001)。表20及び実施例13を参照されたい。
【0435】
実施例12-SSRI又はSNRI処置に対して不十分な応答を経験し、10~20mgのボルチオキセチンによる処置に切り替えられたMDD患者におけるODQ合計スコアとSDS合計スコアとの間の相関関係の評価
患者を登録し、アッセイI~IIIに記載されているように処置した。アッセイIV~VIIIに従ってデータを収集し、アッセイIX~XIに従って分析した。
【0436】
相関分析は、ボルチオキセチンでは、SDSとODQとの合計スコア間に相関関係があることを示した(r=0.699、p<0.001)。即ち、感情鈍麻が少ないほど、全体的な機能が高くなる。MADR合計スコアの改善の調整後であっても、関連性は依然として中程度の強度であり、有意性が高かった(r=-0.5438;p<0.001)。表20及び実施例13を参照されたい。
【0437】
実施例13-感情鈍麻の臨床評価、偏相関分析、及び媒介分析の概要
8週目では、ODQ合計スコアのベースラインからの平均変化は、-29.8(SE=1.9;p<0.0001)であり、1週目からすでに有意な変化が見られた(表19;図5)。すべてのODQサブドメインで有意な変化が見られ、8週目で-7.8(SE=0.6;p<0.0001)(肯定感の低下)から-4.7(SE=0.5;p<0.0001)(感情的分離)の範囲であった。「原因としての抗うつ薬」ドメインでのベースラインからの変化は、-5.1(SE=0.5)であり;このドメインの下位尺度スコアを一次分析の合計スコアから除外すると、ベースラインから8週目までに-24.7(SE=1.6)点の変化が生じた。8週目に、すべての患者の50%が、標準化されたスクリーニング質問で感情鈍麻を報告しなかった。MADRS無快感症因子スコアでは、1週目(-2.2;p<0.0001)から有意な効果が観察され、4週目(-5.9;p<0.0001)及び8週目(-8.9;p<0.0001)まで増加した。
【0438】
【表32】
【0439】
その他の臨床評価
MEIを使用して評価した動機付け及びエネルギーの改善は、すでに4週目からすべてのサブドメイン:認知的及び精神的エネルギー、社会的動機付け、及び身体的エネルギーで実質的且つ有意であった(表18;図6)。認知能力(DSST)の有意な改善が1週目にすでに観察され(4.3;p<0.0001)、8週目まで増加した(7.8;p<0.0001)(表18)。SDSによって測定した全体的な機能のベースラインから8週目までの有意な改善が、合計スコアと単一項目で観察され、仕事/学校ドメインで最も顕著であった(表19)。MADRS合計スコアによって測定した全体的な抑うつ症状の解消は、1週目から有意に改善され(-3.3;p<0.0001)、8週目まで継続的に増加した(13.8;p<0.0001)。MADRSによって測定した8週目の応答率及び寛解率はそれぞれ、61.8%及び46.6%であった。
【0440】
ベースラインの追加補正とMADRS合計スコアのベースラインからの変化を使用して一次分析を繰り返すと、ベースラインから8週目までのODQ合計スコアの変化は-30.2(SE=1.9)となり、これは、MADRS合計スコアのベースラインからの変化を調整すると-10.8(SE=2.4)に減少し、観察されたMADRSの改善とは無関係であるODQの改善の36%に相当する。
【0441】
偏相関分析は、ベースラインから8週目までのQDQ合計スコアとSDS合計スコアの変化が強い正の相関があることを示した(r=0.699;p<0.0001;表19)。さらに、ODQの変化は、MEI合計スコアの変化と負の相関があった(r=-0.778;p<0.0001)。即ち、感情鈍麻の改善は、エネルギー及び動機付けだけではなく、機能的転帰のより良い転帰に関連していた。MADRS合計スコアの改善の調整後、これらの関連性は、依然として中程度の強さであり、非常に有意であり、ODQとSDSの変化の間の部分rは、0.438(p<0.0001)であり、ODQとMEI変化の間の部分rは、-0.532(p<0.0001)であった(表20)。
【0442】
媒介分析は、ODQ合計スコアの変化によって説明されるSDS合計スコアの変化の63.4%が、抑うつ症状の改善(MADRS)(SDS合計スコアへの影響の36.6%を占める)では説明できないボルチオキセチンに切り替えた後のODQの改善の直接的な効果であったことをさらに示した(図7)。
【0443】
【表33】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】