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▶ ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】ニクロサミドの薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20230508BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230508BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/498 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K9/10
A61K47/30
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/26
A61K9/14
A61K9/19
A61K47/40
A61K47/12
A61K47/24
A61K47/18
A61K9/72
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/12
A61K45/00
A61P29/00
A61K31/498
A61P31/04
A61K31/47
A61K31/454
A61K38/16
A61K38/12
A61K31/58
A61K31/4166
A61K31/277
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/18
A61P33/00
A61P3/10
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559809
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 US2021025455
(87)【国際公開番号】W WO2021202928
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/003,793
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ザ サード ロバート オー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス ヒュー ディー. シー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォーンケン ザチャリー エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ミゲル オーランド ジャラ
(72)【発明者】
【氏名】ソ ヒョ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブルノー アシュリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘルピン マシュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA93
4C076BB01
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC34
4C076CC35
4C076DD41
4C076DD46
4C076DD51
4C076DD63
4C076DD67
4C076EE01
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE39
4C076EE48
4C076GG05
4C076GG06
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA24
4C084BA44
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZB372
4C084ZC351
4C084ZC352
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC22
4C086BC28
4C086BC38
4C086BC51
4C086BC52
4C086DA12
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC35
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA07
4C206GA31
4C206JA19
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA41
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA64
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZB37
4C206ZC35
(57)【要約】
本開示は、経口投与され得るか、または吸入によって投与され得る、ニクロサミドの薬学的組成物を提供する。これらの組成物は、肺または消化管への治療有効用量のニクロサミドの達成を可能にし得る。これらの組成物は、ウイルス感染またはがんなどの1つまたは複数の疾患または障害を治療するために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤と、
(B)薬学的に許容されるポリマーと
を含む薬学的組成物であって、
該薬学的組成物が、経口投与のために製剤化されており、
該治療剤が、非晶質固体分散体として非晶質形態である、
前記薬学的組成物。
【請求項2】
ホットメルト押出によって製剤化されている、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
ホットメルト押出が、約100℃~約240℃の温度で行われる、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
ホットメルト押出が、約150℃~約210℃の温度で行われる、請求項3記載の薬学的組成物。
【請求項5】
ホットメルト押出が、約180℃の温度で行われる、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
約5%w/w~約90%w/wの活性剤を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項7】
約10%w/w~約80%w/wの活性剤を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項8】
約20%w/w~約60%w/wの活性剤を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
約30%w/w~約50%w/wの活性剤を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項10】
約40%w/wの活性剤を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項11】
約40%w/w~約95%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項1~10のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項12】
約40%w/w~約80%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項13】
約50%w/w~約70%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
約60%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項1~13のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
約70%w/w~約90%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項16】
薬学的に許容されるポリマーが、中性非セルロース系ポリマー、イオン化可能非セルロース系ポリマー、イオン化可能セルロース系ポリマー、中性セルロース系ポリマーおよびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項1~15のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項17】
中性非セルロース系ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、コポビドンおよびポロキサマーからなる群より選択される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項18】
薬学的に許容されるポリマーがコポビドンポリマーである、請求項1~17のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的に許容されるポリマーが、Kollidon 30(登録商標)(ポリビニルピロリドン)である、請求項1~18のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項20】
イオン化可能非セルロース系ポリマーが、カルボン酸、官能化ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項21】
薬学的に許容されるポリマーが、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールのグラフトコポリマーである、請求項1~20のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項22】
薬学的に許容されるポリマーが、SoluPlus(登録商標)(ポリビニルカプロラクタムポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー)である、請求項1~21のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項23】
薬学的に許容されるポリマーが、ポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポリマーである、請求項1~20のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項24】
薬学的に許容されるポリマーが、VA64(登録商標)(コポビドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニル)である、請求項1~23のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項25】
賦形剤をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項26】
賦形剤が、界面活性剤または乳化剤である、請求項25記載の薬学的組成物。
【請求項27】
賦形剤が、ポリソルベートの誘導体である、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項28】
ポリソルベートの誘導体が、Tween(登録商標)化合物(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)である、請求項27記載の薬学的組成物。
【請求項29】
賦形剤が、ビタミンEのPEG化バージョンである、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項30】
ビタミンEのPEG化バージョンのPEG基が、約400~約4000の分子量を有する、請求項29記載の薬学的組成物。
【請求項31】
ビタミンEのPEG化バージョンがTPGS 1000である、請求項30記載の薬学的組成物。
【請求項32】
賦形剤が、2つ以上の賦形剤の組成物である、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項33】
賦形剤が、2つ以上の界面活性剤または乳化剤である、請求項32記載の薬学的組成物。
【請求項34】
賦形剤が、ポリソルベートの誘導体とモノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドとの混合物である、請求項33記載の薬学的組成物。
【請求項35】
ポリソルベートの誘導体がTween(登録商標)化合物である、請求項34記載の薬学的組成物。
【請求項36】
モノグリセリドとジグリセリドとの混合物である、請求項1~34のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項37】
モノグリセリドとジグリセリドとの混合物が、中鎖脂肪酸モノグリセリドと中鎖脂肪酸ジグリセリドとの混合物である、請求項36記載の薬学的組成物。
【請求項38】
モノグリセリドとジグリセリドとの混合物が、Capmul(登録商標)組成物(モノグリセリドまたはジグリセリドの群)である、請求項37記載の薬学的組成物。
【請求項39】
賦形剤がトリグリセリドである、請求項34記載の薬学的組成物。
【請求項40】
トリグリセリドが中鎖トリグリセリドである、請求項39記載の薬学的組成物。
【請求項41】
トリグリセリドがCaptex(登録商標)化合物(デカン酸;オクタン酸;プロパン-1,2,3-トリオール)である、請求項40記載の薬学的組成物。
【請求項42】
約1%w/w~約20%w/wの賦形剤を含む、請求項25~41のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項43】
約1%w/w~約10%w/wの賦形剤を含む、請求項25~42のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項44】
約5%w/wの賦形剤を含む、請求項25~43のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項45】
賦形剤が、約1:0.1:0.1~約0.1:1:1の比で存在する3つの賦形剤の混合物である、請求項25~44のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項46】
比が約1:0.25:0.25~約0.25:1:1である、請求項25~45のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項47】
比が約2:1:1である、請求項25~46のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項48】
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤
を含む薬学的組成物であって、
吸入による投与のために製剤化されており、10%未満の非晶質材料を含む、前記薬学的組成物。
【請求項49】
乾燥粉末である、請求項48記載の薬学的組成物。
【請求項50】
活性剤が、実質的に結晶形態として存在する、請求項48または請求項49のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項51】
活性剤が、本質的に結晶形態として存在する、請求項48~50のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項52】
活性剤が、完全に結晶形態として存在する、請求項48~51のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項53】
X線回折または示差走査熱量測定によって決定される場合、非晶質粒子を本質的に含まない、請求項48~52のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項54】
5%未満の非晶質材料を含む、請求項48~52のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項55】
1%未満の非晶質材料を含む、請求項48~54のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項56】
0.1%未満の非晶質材料を含む、請求項48~55のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項57】
非晶質材料を含まない、請求項48~56のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項58】
単一の活性剤を含む、請求項48~57のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項59】
単一の活性剤が、ニクロサミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは共結晶である、請求項58記載の薬学的組成物。
【請求項60】
いかなる糖、潤滑剤、帯電防止剤、固着防止剤、流動促進剤、アミノ酸、ペプチド、界面活性剤、脂質およびリン脂質も実質的に含まない、請求項48~59のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項61】
いかなる糖、潤滑剤、帯電防止剤、固着防止剤、流動促進剤、アミノ酸、ペプチド、界面活性剤、脂質およびリン脂質も本質的に含まない、請求項48~60のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項62】
いかなる糖、潤滑剤、帯電防止剤、固着防止剤、流動促進剤、アミノ酸、ペプチド、界面活性剤、脂質およびリン脂質も全く含まない、請求項48~61のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項63】
いかなる加えられた賦形剤も実質的に含まない、請求項48~62のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項64】
いかなる加えられた賦形剤も本質的に含まない、請求項48~63のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項65】
いかなる加えられた賦形剤も全く含まない、請求項48~64のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項66】
いかなる賦形剤も実質的に含まない、請求項48~65のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項67】
いかなる賦形剤も本質的に含まない、請求項48~66のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項68】
いかなる賦形剤も全く含まない、請求項48~67のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項69】
微粒子化されている、請求項48~68のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項70】
微粒子化された薬学的組成物が、活性剤を含有する複数の粒子を含む、請求項48~69のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項71】
粒子が、約0.5μm~約10μmのレーザ回折中央粒径を有する、請求項70記載の薬学的組成物。
【請求項72】
粒子が、約1.5μm~約5μmのレーザ回折中央粒径を有する、請求項70または請求項71のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項73】
粒子が、約2.5μm~約3.5μmのレーザ回折中央粒径を有する、請求項70~72のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項74】
粒子が、少なくとも90%の活性剤を含む、請求項68~73のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項75】
粒子が、少なくとも95%の活性剤を含む、請求項68~74のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項76】
粒子が、少なくとも99%の活性剤を含む、請求項68~75のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項77】
粒子が、100%の活性剤を含む、請求項68~76のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項78】
少なくとも95%の活性剤を含む、請求項48~77のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項79】
少なくとも99%の活性剤を含む、請求項48~78のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項80】
少なくとも100%の活性剤を含む、請求項48~79のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項81】
生理食塩水中に製剤化されている、請求項48~80のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項82】
生理食塩水が、0.9%w/v塩化ナトリウムである、請求項81記載の薬学的組成物。
【請求項83】
いかなるミセルもリポソームも本質的に含まない、請求項48~82のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項84】
ジェットミリングによって製造される、請求項48~83のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項85】
エアジェットミリングによって製造される、請求項48~84のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項86】
脆性マトリックス粒子として製剤化されている、請求項48~57のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項87】
賦形剤を含む、請求項48~57および70~86のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項88】
賦形剤が炭水化物である、請求項87記載の薬学的組成物。
【請求項89】
賦形剤が、ラクトースまたはマンノースである、請求項88記載の薬学的組成物。
【請求項90】
賦形剤がシクロデキストリンである、請求項48~57および70~89のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項91】
賦形剤がスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンである、請求項90記載の薬学的組成物。
【請求項92】
約25%w/w~約95%w/wの量の賦形剤を含む、請求項48~57および70~91のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項93】
賦形剤の量が、約40%w/w~約90%w/wである、請求項92記載の薬学的組成物。
【請求項94】
賦形剤の量が、約60%w/w~約85%w/wである、請求項92記載の薬学的組成物。
【請求項95】
追加の賦形剤をさらに含む、請求項48~57および70~94のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項96】
追加の賦形剤が流動剤である、請求項95記載の薬学的組成物。
【請求項97】
追加の賦形剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項96記載の薬学的組成物。
【請求項98】
追加の賦形剤がリン脂質である、請求項95記載の薬学的組成物。
【請求項99】
追加の賦形剤が1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである、請求項96記載の薬学的組成物。
【請求項100】
追加の賦形剤が疎水性アミノ酸である、請求項95記載の薬学的組成物。
【請求項101】
疎水性アミノ酸がロイシンである、請求項100記載の薬学的組成物。
【請求項102】
約0.1%w/w~約25%w/wの量の追加の賦形剤を含む、請求項48~57および86~101のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項103】
追加の賦形剤の量が、約0.25%w/w~約20%w/wである、請求項48~57および86~102のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項104】
追加の賦形剤の量が、約0.25%w/w~約5%w/wである、請求項48~57および86~103のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項105】
追加の賦形剤の量が、約5%w/w~約20%w/wである、請求項48~57および86~103のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項106】
10g/m2超の比表面積を含む、請求項48~57および86~105のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項107】
賦形剤および活性剤が、粒子内に存在する、請求項48~57および86~106のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項108】
粒子が、相分離された賦形剤および活性剤を含有する、請求項107記載の薬学的組成物。
【請求項109】
粒子が、約1.5μm~約10μmの空気力学的質量中央粒子径を有する、請求項48~57および86~108のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項110】
空気力学的質量中央粒子径が、約2.0μm~約8μmである、請求項109記載の薬学的組成物。
【請求項111】
空気力学的質量中央粒子径が、約2.0μm~約4μmである、請求項110記載の薬学的組成物。
【請求項112】
吸入器に充填されている、請求項48~111のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項113】
吸入器が、乾燥粉末吸入器、定量吸入器、単回用量吸入器、多用量吸入器または加圧式定量吸入器である、請求項112記載の薬学的組成物。
【請求項114】
ネブライザで使用するために製剤化されている、請求項48~111のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項115】
ネブライザが、ジェットネブライザまたは振動メッシュネブライザである、請求項114記載の薬学的組成物。
【請求項116】
活性剤がニクロサミドである、請求項1~115のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項117】
活性剤が、ニクロサミドの薬学的に許容される塩である、請求項1~115のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項118】
ニクロサミドの薬学的に許容される塩が、ニクロサミドのエタノールアミン塩またはピペラジン塩である、請求項117記載の薬学的組成物。
【請求項119】
活性剤が無水ニクロサミドである、請求項1~113のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項120】
活性剤が、ニクロサミドの水和物である、請求項1~113のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項121】
活性剤がニクロサミド一水和物である、請求項120記載の薬学的組成物。
【請求項122】
活性剤が、ニクロサミドの共結晶である、請求項1~113のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項123】
ニクロサミドの共結晶が、ニクロサミドと2-アミノチアゾールとの共結晶、ニクロサミドとベンズアミドとの共結晶、ニクロサミドとイソニアジドとの共結晶、ニクロサミドとアセトアミドとの共結晶、ニクロサミドとカフェインとの共結晶、ニクロサミドと尿素との共結晶、ニクロサミドとp-アミノ安息香酸との共結晶、ニクロサミドとテオフィリンとの共結晶、ニクロサミドとニコチンアミドとの共結晶、またはニクロサミドとイソニコチンアミドとの共結晶である、請求項122記載の薬学的組成物。
【請求項124】
単位用量として製剤化されている、請求項1~123のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項125】
単位用量が、硬カプセルもしくは軟カプセル、錠剤、シロップ、懸濁液、エマルジョン、溶液またはウェハとして経口投与のために製剤化されている、請求項124記載の薬学的組成物。
【請求項126】
活性剤が、約100mg~約5gの量で存在する、請求項1~47および116~125のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項127】
活性剤が、約500mg~約2gの量で存在する、請求項126記載の薬学的組成物。
【請求項128】
単位用量が、カプセル、カートリッジまたはブリスタとして吸入のために製剤化されている、請求項124記載の薬学的組成物。
【請求項129】
カプセル、カートリッジまたはブリスタが、吸入器とともに使用するために製剤化されている、請求項128記載の薬学的組成物。
【請求項130】
活性剤が、約100μg~約50mgの量で存在する、請求項48~124、128および129のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項131】
活性剤が、約250μg~約20mgの量で存在する、請求項130記載の薬学的組成物。
【請求項132】
UV光を遮断する容器内に存在する、請求項1~131のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項133】
第2の活性剤をさらに含む、請求項1~132のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項134】
第2の活性剤が抗炎症薬である、請求項133記載の薬学的組成物。
【請求項135】
第2の活性剤がクロファジミンである、請求項134記載の薬学的組成物。
【請求項136】
第2の活性剤が抗微生物薬である、請求項133記載の薬学的組成物。
【請求項137】
第2の活性剤が、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、サリドマイド、プラスミノーゲン、コリスチンまたはポリミキシンBである、請求項136記載の薬学的組成物。
【請求項138】
第2の活性剤が化学療法剤である、請求項133記載の薬学的組成物。
【請求項139】
化学療法剤が、アビラテロン、エンザルタミドまたはビカルタミドである、請求項138記載の薬学的組成物。
【請求項140】
第2の活性剤がタンパク質である、請求項133記載の薬学的組成物。
【請求項141】
請求項1~124および128~139のいずれか一項記載の薬学的組成物を含む、吸入器。
【請求項142】
約0.5バール~5バールの分散エネルギーを有する、請求項141記載の吸入器。
【請求項143】
分散エネルギーが、1、2または3バールである、請求項142記載の吸入器。
【請求項144】
(A)薬学的に許容されるポリマーおよび活性剤を得る工程であって、該活性剤が、ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、またはその共結晶である、工程;ならびに
(B)該薬学的に許容されるポリマーおよび該活性剤をホットメルト押出機に供して、薬学的組成物を得る工程
を含む、請求項1~47のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製する方法。
【請求項145】
薬学的に許容されるポリマーおよび活性剤が、約100℃~約240℃の温度で押し出される、請求項144記載の方法。
【請求項146】
温度が、約150℃~約210℃である、請求項145記載の方法。
【請求項147】
温度が約180℃である、請求項145または請求項146のいずれか一項記載の方法。
【請求項148】
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、またはその共結晶である活性剤を得る工程;
(B)該活性剤をジェットミルに供して、薬学的組成物を得る工程
を含む、請求項48~124および128~139のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製する方法。
【請求項149】
ジェットミルがエアジェットミルである、請求項148記載の方法。
【請求項150】
ジェットミルが、サイクロンをさらに備える、請求項148または請求項149のいずれか一項記載の方法。
【請求項151】
ジェットミルが、約25psi~約150psiの粉砕圧力に設定される、請求項148~150のいずれか一項記載の方法。
【請求項152】
粉砕圧力が、約50psi~約100psiである、請求項151記載の方法。
【請求項153】
粉砕圧力が約80psiである、請求項152記載の方法。
【請求項154】
ジェットミルが、約25psi~約150psiの供給圧力に設定される、請求項148~153のいずれか一項記載の方法。
【請求項155】
供給圧力が、約50psi~約100psiである、請求項154記載の方法。
【請求項156】
供給圧力が約80psiである、請求項155記載の方法。
【請求項157】
ジェットミルが、1g/分未満の供給速度を有する、請求項148~156のいずれか一項記載の方法。
【請求項158】
供給速度が、約0.1g/分~約1g/分である、請求項157記載の方法。
【請求項159】
供給速度が、約0.5g/分~約1g/分である、請求項158記載の方法。
【請求項160】
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、またはその共結晶である活性剤を溶媒に溶解して、薬学的混合物を得る工程;
(B)0℃未満の温度の表面に該薬学的混合物を適用して、凍結された薬学的混合物を得る工程;および
(C)該凍結された薬学的混合物を収集し、該凍結された薬学的混合物を乾燥させて、薬学的組成物を得る工程
を含む、請求項48~124および128~139のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製する方法。
【請求項161】
溶媒が有機溶媒である、請求項160記載の方法。
【請求項162】
溶媒が1,4-ジオキサンである、請求項161記載の方法。
【請求項163】
薬学的混合物を得るために、活性剤を、第2の溶媒に溶解された賦形剤と混合する工程をさらに含む、請求項160~162のいずれか一項記載の方法。
【請求項164】
第2の溶媒が水である、請求項163記載の方法。
【請求項165】
薬学的混合物が、該薬学的混合物が透明になるまで混合される、請求項160~164のいずれか一項記載の方法。
【請求項166】
薬学的混合物が、約0.5mL/分~約5mL/分の供給速度で適用される、請求項160~165のいずれか一項記載の方法。
【請求項167】
供給速度が、約1mL/分~約3mL/分である、請求項166記載の方法。
【請求項168】
供給速度が約2mL/分である、請求項167記載の方法。
【請求項169】
薬学的混合物が、針を用いて適用される、請求項160~168のいずれか一項記載の方法。
【請求項170】
針が19ゲージ針である、請求項169記載の方法。
【請求項171】
薬学的混合物が、約2cm~約50cmの高さから適用される、請求項160~170のいずれか一項記載の方法。
【請求項172】
高さが、約5cm~約20cmである、請求項171記載の方法。
【請求項173】
高さが約10cmである、請求項172記載の方法。
【請求項174】
温度が、約0℃~-100℃である、請求項160~173のいずれか一項記載の方法。
【請求項175】
温度が、約-20℃~約-90℃である、請求項160~174のいずれか一項記載の方法。
【請求項176】
温度が約-80℃である、請求項160~175のいずれか一項記載の方法。
【請求項177】
表面が回転面である、請求項160~176のいずれか一項記載の方法。
【請求項178】
表面が、約50rpm~約500rpmの速度で回転している、請求項177記載の方法。
【請求項179】
表面が、約100rpm~約400rpmの速度で回転している、請求項178記載の方法。
【請求項180】
表面が、約200rpmの速度で回転している、請求項179記載の方法。
【請求項181】
凍結された薬学的組成物が、凍結乾燥によって乾燥される、請求項160~180のいずれか一項記載の方法。
【請求項182】
凍結された薬学的組成物が、第1の減圧下で乾燥される、請求項181記載の方法。
【請求項183】
第1の減圧が、約10mTorr~500mTorrである、請求項182記載の方法。
【請求項184】
第1の減圧が、約50mTorr~約250mTorrである、請求項183記載の方法。
【請求項185】
第1の減圧が約100mTorrである、請求項184記載の方法。
【請求項186】
凍結された薬学的組成物が、第1の低温で乾燥される、請求項181~185のいずれか一項記載の方法。
【請求項187】
第1の低温が、約0℃~-100℃である、請求項186記載の方法。
【請求項188】
第1の低温が、約-20℃~約-60℃である、請求項187記載の方法。
【請求項189】
第1の低温が約-40℃である、請求項188記載の方法。
【請求項190】
凍結された薬学的組成物が、約3時間~約36時間の第1の期間にわたって乾燥される、請求項181~189のいずれか一項記載の方法。
【請求項191】
第1の期間が、約6時間~約24時間である、請求項190記載の方法。
【請求項192】
第1の期間が約20時間である、請求項191記載の方法。
【請求項193】
凍結された薬学的組成物が、再乾燥される、請求項160~192のいずれか一項記載の方法。
【請求項194】
凍結された薬学的組成物が、第2の減圧下で再乾燥される、請求項193記載の方法。
【請求項195】
第2の減圧が、約10mTorr~500mTorrである、請求項194記載の方法。
【請求項196】
第2の減圧が、約50mTorr~約250mTorrである、請求項195記載の方法。
【請求項197】
第2の減圧が約100mTorrである、請求項196記載の方法。
【請求項198】
凍結された薬学的組成物が、第2の低温で再乾燥される、請求項193~197のいずれか一項記載の方法。
【請求項199】
第2の低温が、約0℃~30℃である、請求項198記載の方法。
【請求項200】
第2の低温が、約10℃~約30℃である、請求項199記載の方法。
【請求項201】
第2の低温が約25℃である、請求項200記載の方法。
【請求項202】
凍結された薬学的組成物が、約3時間~約36時間の第2の期間にわたって再乾燥される、請求項193~201のいずれか一項記載の方法。
【請求項203】
第2の期間が、約6時間~約24時間である、請求項202記載の方法。
【請求項204】
第2の期間が約20時間である、請求項203記載の方法。
【請求項205】
(A)活性剤を生理食塩水と混合して、薬学的混合物を形成する工程;
(B)該薬学的混合物を均質化して、薬学的組成物を得る工程
を含む、薬学的組成物を調製する方法。
【請求項206】
活性剤と生理食塩水とが、音波処理によって混合される、請求項205記載の方法。
【請求項207】
音波処理が超音波処理である、請求項206記載の方法。
【請求項208】
均質化が、ロータステータホモジナイザを用いて行われる、請求項205~207のいずれか一項記載の方法。
【請求項209】
ロータステータホモジナイザが、鋸歯ブレード付きロータステータホモジナイザである、請求項208記載の方法。
【請求項210】
薬学的混合物が、約5,000rpm~約50,000rpmの速度で均質化される、請求項205~209のいずれか一項記載の方法。
【請求項211】
速度が、約20,000rpm~約40,000rpmである、請求項210記載の方法。
【請求項212】
速度が約30,000rpmである、請求項211記載の方法。
【請求項213】
薬学的組成物を遠心分離する工程をさらに含む、請求項205~212のいずれか一項記載の方法。
【請求項214】
薬学的組成物が、約50g~約200gの速度で遠心分離される、請求項213記載の方法。
【請求項215】
速度が、約100g~約150gである、請求項214記載の方法。
【請求項216】
速度が約118gである、請求項215記載の方法。
【請求項217】
薬学的組成物を音波処理する工程をさらに含む、請求項205~216のいずれか一項記載の方法。
【請求項218】
第2の治療剤を薬学的混合物に混合する工程をさらに含む、請求項205~217のいずれか一項記載の方法。
【請求項219】
第2の治療剤がタンパク質である、請求項218記載の方法。
【請求項220】
第2の治療剤が治療用タンパク質である、請求項219記載の方法。
【請求項221】
請求項144~220のいずれか一項記載の方法に従って調製された、薬学的組成物。
【請求項222】
請求項1~139および221のいずれか一項記載の薬学的組成物を治療有効量で患者に投与する工程を含む、患者の疾患または障害を治療する方法。
【請求項223】
疾患または障害の治療に使用するための、請求項1~139および221のいずれか一項記載の組成物。
【請求項224】
薬学的組成物が、患者に経口投与される、請求項222または請求項223のいずれか一項記載の方法。
【請求項225】
薬学的組成物が、硬カプセルもしくは軟カプセル、錠剤、シロップ、懸濁液、エマルジョン、溶液またはウェハとして患者に経口投与される、請求項222~224のいずれか一項記載の方法。
【請求項226】
薬学的組成物が、吸入によって患者に投与される、請求項222または請求項223のいずれか一項記載の方法。
【請求項227】
疾患または障害が、微生物感染である、請求項222~225のいずれか一項記載の方法。
【請求項228】
微生物感染がウイルス感染である、請求項227記載の方法。
【請求項229】
ウイルス感染が、コロナウイルスの感染である、請求項228記載の方法。
【請求項230】
コロナウイルスが、MERS-Cov、SARS-Cov1またはSARS-Cov2(COVID-19)である、請求項229記載の方法。
【請求項231】
ウイルス感染がインフルエンザである、請求項228記載の方法。
【請求項232】
ウイルス感染がジカである、請求項228記載の方法。
【請求項233】
微生物感染が出血熱である、請求項228記載の方法。
【請求項234】
出血熱が、エボラおよびラッサ熱である、請求項233記載の方法。
【請求項235】
ウイルス感染がHIVである、請求項228記載の方法。
【請求項236】
HIVが、結核を呈する、請求項235記載の方法。
【請求項237】
微生物感染が扁形動物感染である、請求項227記載の方法。
【請求項238】
扁形動物感染が、住血吸虫症、または住血吸虫症からの合併症である、請求項237記載の方法。
【請求項239】
住血吸虫症が急性肺住血吸虫症である、請求項238記載の方法。
【請求項240】
住血吸虫症からの合併症が、住血吸虫症関連肺高血圧症である、請求項238記載の方法。
【請求項241】
微生物感染が細菌感染である、請求項227記載の方法。
【請求項242】
細菌感染が、腸球菌(enterococci)、緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)またはクロストリジウム・ディフィシル(clostridium difficile)の感染である、請求項241記載の方法。
【請求項243】
細菌感染が、1つまたは複数の抗生物質に耐性の細菌の感染である、請求項242記載の方法。
【請求項244】
感染が、バンコマイシンまたはメチシリンに耐性の細菌の感染である、請求項243記載の方法。
【請求項245】
疾患または障害ががんである、請求項222記載の方法。
【請求項246】
がんが、肺がん、神経膠芽腫または前立腺がんである、請求項245記載の方法。
【請求項247】
前立腺がんが去勢抵抗性前立腺がんである、請求項246記載の方法。
【請求項248】
疾患または障害が糖尿病である、請求項222記載の方法。
【請求項249】
第2の活性剤をさらに含む、請求項222~248のいずれか一項記載の方法。
【請求項250】
第2の活性剤が抗炎症薬である、請求項249記載の方法。
【請求項251】
第2の活性剤がクロファジミンである、請求項250記載の方法。
【請求項252】
第2の活性剤が抗微生物薬である、請求項249記載の方法。
【請求項253】
第2の活性剤が、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、サリドマイド、プラスミノーゲン、コリスチンまたはポリミキシンBである、請求項252記載の方法。
【請求項254】
第2の活性剤が化学療法剤である、請求項249記載の方法。
【請求項255】
化学療法剤が、アビラテロン、エンザルタミドまたはビカルタミドである、請求項254記載の方法。
【請求項256】
活性剤が、肺に吸入される、請求項222~255のいずれか一項記載の方法。
【請求項257】
活性剤が、肺および胃に吸入される、請求項256記載の方法。
【請求項258】
請求項1~139および221のいずれか一項記載の薬学的組成物を治療有効量で患者に投与する工程を含む、患者の肺炎症を低減する方法。
【請求項259】
患者の肺炎症を低減するのに使用するための、請求項1~139および221のいずれか一項記載の組成物。
【請求項260】
薬学的組成物が、患者に経口投与される、請求項258または請求項259のいずれか一項記載の方法。
【請求項261】
薬学的組成物が、硬カプセルもしくは軟カプセル、錠剤、シロップ、懸濁液、エマルジョン、溶液またはウェハとして患者に経口投与される、請求項258~260のいずれか一項記載の方法。
【請求項262】
薬学的組成物が、吸入によって患者に投与される、請求項258または請求項259のいずれか一項記載の方法。
【請求項263】
肺炎症が、ウイルス感染に関連する、請求項258~262のいずれか一項記載の方法。
【請求項264】
薬学的組成物が、複数回投与される、請求項222~263のいずれか一項記載の方法。
【請求項265】
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤と、
(B)生理食塩水と
を含む薬学的組成物であって、
該薬学的組成物が、ネブライザで使用するために製剤化されており、
該活性剤が、約2.0μm~約4.0μmである空気力学的質量中央粒子径を有するように微粒子化されており、
該活性剤の濃度が、約2mg/mL~約6mg/mLである、
前記薬学的組成物。
【請求項266】
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤と、
(B)ポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポリマーである薬学的に許容されるポリマーと
を含む薬学的組成物であって、
該薬学的組成物が、経口投与のために製剤化されており、
該活性剤が、非晶質形態で存在し、該薬学的組成物内で相分離されている、
前記薬学的組成物。
【請求項267】
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤と、
(B)マンニトールと
を含む薬学的組成物であって、
吸入による投与のために製剤化されており、約1.5μm~約4μmの空気力学的質量中央粒子径を有する、前記薬学的組成物。
【請求項268】
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤
を含む薬学的組成物であって、
吸入による投与のために製剤化されており、少なくとも99.9%の活性剤を含み、約1.5μm~約4.0μmのレーザ回折空気力学的質量中央粒子径を有する粒子として製剤化されている、前記薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月1日に出願された米国仮出願第63/003,793号の優先権の恩典を主張し、参照によりその内容全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
1. 分野
本開示は、一般に、医薬品および薬学的製造の分野に関する。さらに詳細には、本開示は、組成物、およびニクロサミドを含む薬学的組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
WHOは、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)のアウトブレイクをパンデミックと宣言している(COVID-19に関するミッション概要でのWHO事務局長の開会挨拶-2020年3月12日。www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-mission-briefing-on-covid-19---12-march-2020)。このウイルスは、2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV)、および2012年に中東呼吸器症候群(MERS-CoV)と呼ばれるパンデミックを引き起こした他のコロナウイルスに関連している(Wu et al.,2004;Peeri et al.,2020)。現時点で、このCOVID-19は、他の2つの言及されたパンデミックを合わせたよりも多くの人々を死に至らせている(Gurwitz,2020)。このCOVID-19は、ゲノムの80%近くをSARS-CoVと共有しているため、SARS-CoV-2と命名されている(Yan et al.,2020)。さらに、両ウイルスが、侵入受容体として働くタンパク質であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と同様の親和性で相互作用することが報告されている(Ahmed et al.,2020;Walls et al.,2020)。
【0004】
残念なことに、コロナウイルスのための特定の薬物は存在しない(Walls et al.,2020;Tortoric et al.,2019)。創薬における現在の戦略は、以前にSARSおよびMERSで使用された薬物の試験である(Wang et al.,2020)。近年、1.13μMのIC50で、インビトロ単離COVID-19(Vero E6細胞)に対して薬物クロロキンが成功を収めた。機序は、ニクロサミドと呼ばれる別の薬物について報告されている同じ機序の1つである、エンドソームpHの上昇に起因していた(Jurgeit et al.,2012;Vincent et al.,2005;Wang et al.,2018)。SARS-CoV(2002パンデミック)に感染したVero細胞では、クロロキンの報告されたIC50は4.4μMであるが、ニクロサミドは、ウイルス複製をIC50<0.1μMで阻害する(Wen et al.,2007)。別の実験では、1.56μM~3.12μMの濃度のニクロサミドを使用して、SARS-CoV複製が完全に阻害された(Wu et al.,2004)。これらの理由から、ニクロサミドは、このCOVID-19のパンデミックのための候補として提案されており、近年、0.28μMのIC50を示している(Xu et al.,2020;Jeon et al.,2020)。
【0005】
ニクロサミドは、60年間にわたり使用されており、WHOによってEssential Medicineとして収載されているFDA承認駆虫薬である(Barbosa et al.,2019)。ニクロサミドは、別の目的での利用、とりわけ、複数標的指向型がん治療、広域スペクトル抗ウイルス薬、および抗細菌薬としての利用の候補として提案されている(Xu et al.,2020;Li et al.,2014;Chen et al.,2018;Tam et al.,2018)。これらの効果をいずれも可能にする主な特徴は、特異的なリガンド-受容体相互作用ではなく、分子自体の物理化学のようである(Fonseca et al.,2012)。ニクロサミドは、そのプロトノフォア活性、言い換えれば、膜を通してプロトンを輸送し、いくつかの重要なシグナル伝達経路を調節するpH勾配を破壊する能力のために周知である(Jurgeit et al.,2012;Xu et al.,2020;Li et al.,2014;Chen et al.,2018;Tam et al.,2018;Fonseca et al.,2012;Circu et al.,2016;Ippolito et al.,2016;Mook et al.,2015;Tharmalingam et al.,2018)。CoVでは、ニクロサミドは、プロテアソームおよびオートファジー機構に関連する経路を改変することによって、MERS-CoV複製を1000倍を超えて阻害した(Xu et al.,2020;Gassen et al.,2019)。この特徴により、ニクロサミドは、宿主指向性広域スペクトル抗ウイルス薬になり得る(Chen et al.,2018)。これらの試験の主な制約は、溶媒としてDMSOを使用して行われたことである。
【0006】
ニクロサミドは、SARS-CoV(Wu et al.,2014;Wen et al.,2007)およびMERS-CoV(Wu et al.,2014;Wen et al.,2007;Gassen et al.,2019)に有効である。ニクロサミドが、SARS-CoV-2の治療選択肢となり得ることが提案されている(Xu et al.,2020)。先に述べたように、SARS-Cov-2は、肺(主な侵入)に発現されるだけでなく、腸、腎臓および血管でも発現されるACE2を標的とする(Fang et al.,2020)。これは、これらの受容体が通常アップレギュレートされる糖尿病および高血圧を有する集団のリスクを増加させる(Fang et al.,2020)。一部の患者は、SARS-CoVおよびMERS-CoVと同様の胃腸症状、ならびに心臓の問題を経験する(Rothan&Byrareddy,2020)。SARS-CoVは腸内腔で複製することができ、ニクロサミドは経口的に有用であり得る。
【0007】
ニクロサミドはいくつかの適応症を治療するために使用されてきたが、現在の製剤は、溶解度が低く、肺への吸入による送達に有用な製剤では示されていない。したがって、多数の適応症の潜在的治療のためのニクロサミドの改善された製剤が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、経口投与、または吸入による投与のための、ニクロサミドを含む薬学的組成物を提供する。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、これらの組成物は、1つまたは複数の有利な特性、例えば、増大した薬物負荷、治療有効用量の維持、または標的器官に薬物をさらに効果的に送達する能力などの他の特性を有し得る。いくつかの態様では、本開示は、以下を含む薬学的組成物を提供する。
【0009】
本開示は、経口投与、または吸入による投与のための、ニクロサミドを含む薬学的組成物を提供する。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、これらの組成物は、1つまたは複数の有利な特性、例えば、増大した薬物負荷、治療有効用量の維持、または標的器官に薬物をさらに効果的に送達する能力などの他の特性を有し得る。いくつかの態様では、本開示は、
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤と、
(B)薬学的に許容されるポリマーと
を含む薬学的組成物であって、薬学的組成物が、経口投与のために製剤化されており、治療剤が、非晶質固体分散体として非晶質形態である、薬学的組成物を提供する。
【0010】
いくつかの態様では、組成物は、ホットメルト押出によって製剤化されている。さらなる態様では、ホットメルト押出は、約100℃~約240℃の温度で行われる。なおさらなる態様では、ホットメルト押出は、約150℃~約210℃、例えば約180℃の温度で行われる。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約5%w/w~約90%w/wの活性剤を含む。さらなる態様では、薬学的組成物は、約10%w/w~約80%w/wの活性剤を含む。なおさらなる態様では、薬学的組成物は、約20%w/w~約60%w/wの活性剤を含む。またさらなる態様では、薬学的組成物は、約30%w/w~約50%w/wの活性剤、例えば、約40%w/wの活性剤を含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約40%w/w~約95%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。さらなる態様では、薬学的組成物は、約40%w/w~約80%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。なおさらなる態様では、薬学的組成物は、約50%w/w~約70%w/wの薬学的に許容されるポリマー、例えば、約60%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約70%w/w~約90%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。
【0011】
いくつかの態様では、薬学的に許容されるポリマーは、中性非セルロース系ポリマー、イオン化可能非セルロース系ポリマー、イオン化可能セルロース系ポリマー、中性セルロース系ポリマーおよびそれらの任意の組合せからなる群より選択される。いくつかの態様では、中性非セルロース系ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、コポビドンおよびポロキサマーからなる群より選択される。さらなる態様では、薬学的に許容されるポリマーは、コポビドンポリマー、例えばKollidon 30(登録商標)(ポリビニルピロリドン)である。いくつかの態様では、イオン化可能非セルロース系ポリマーは、カルボン酸、官能化ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される。さらなる態様では、薬学的に許容されるポリマーは、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールのグラフトコポリマー、例えばSoluPlus(登録商標)(ポリビニルカプロラクタムポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー)である。いくつかの態様では、薬学的に許容されるポリマーは、ポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポリマー、例えばVA64(登録商標)(コポビドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニル)である。
【0012】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、賦形剤をさらに含む。さらなる態様では、賦形剤は、界面活性剤または乳化剤である。なおさらなる態様では、賦形剤は、ポリソルベートの誘導体である。またさらなる態様では、ポリソルベートの誘導体は、Tween(登録商標)化合物(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)である。いくつかの態様では、賦形剤は、ビタミンEのPEG化バージョンである。さらなる態様では、ビタミンEのPEG化バージョンのPEG基は、約400~約4000の分子量、例えばTPGS 1000を有する。いくつかの態様では、賦形剤は、2つ以上の賦形剤の組成物である。さらなる態様では、賦形剤は、2つ以上の界面活性剤または乳化剤である。なおさらなる態様では、賦形剤は、ポリソルベートの誘導体とモノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドとの混合物である。またさらなる態様では、ポリソルベートの誘導体は、Tween(登録商標)化合物(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)である。いくつかの態様では、薬学的組成物は、モノグリセリドとジグリセリドとの混合物である。さらなる態様では、モノグリセリドとジグリセリドとの混合物は、中鎖脂肪酸モノグリセリドと中鎖脂肪酸ジグリセリドとの混合物である。なおさらなる態様では、モノグリセリドとジグリセリドとの混合物は、Capmul(登録商標)組成物(モノグリセリドまたはジグリセリドの群)である。いくつかの態様では、賦形剤はトリグリセリドである。さらなる態様では、トリグリセリドは中鎖トリグリセリドである。さらなる態様では、トリグリセリドはCaptex(登録商標)化合物(デカン酸;オクタン酸;プロパン-1,2,3-トリオール)である。
【0013】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、約1%w/w~約20%w/wの賦形剤を含む。さらなる態様では、薬学的組成物は、約1%w/w~約10%w/wの賦形剤、例えば、約5%w/wの賦形剤を含む。いくつかの態様では、賦形剤は、約1:0.1:0.1~約0.1:1:1の比で存在する3つの賦形剤の混合物である。さらなる態様では、比は、約1:0.25:0.25~約0.25:1:1、例えば約2:1:1である。
【0014】
いくつかの態様では、組成物は、リポソームまたはミセルのいずれも実質的に含まない。いくつかの態様では、組成物は、いかなる他の化合物も実質的に含まない。いくつかの態様では、組成物は、いかなる他の化合物も本質的に含まない。いくつかの態様では、組成物は、いかなる他の化合物も全く含まない。
【0015】
他の局面では、本開示は、
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤
を含む薬学的組成物であって、吸入による投与のために製剤化されており、10%未満の非晶質材料を含む、薬学的組成物を提供する。さらなる態様では、薬学的組成物は乾燥粉末である。なおさらなる態様では、活性剤は、実質的に結晶形態として存在する。またさらなる態様では、活性剤は、本質的に結晶形態として存在する。さらなる態様では、活性剤は、完全に結晶形態として存在する。なおさらなる態様では、組成物は、X線回折または示差走査熱量測定によって決定される場合、非晶質粒子を本質的に含まない。
【0016】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、5%未満の非晶質材料を含む。さらなる態様では、薬学的組成物は、1%未満の非晶質材料を含む。なおさらなる態様では、薬学的組成物は、0.1%未満の非晶質材料を含む。またさらなる態様では、薬学的組成物は、非晶質材料を含まない。いくつかの態様では、薬学的組成物は、単一の活性剤を含む。さらなる態様では、単一の活性剤は、ニクロサミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは共結晶である。いくつかの態様では、薬学的組成物は、いかなる糖、潤滑剤、帯電防止剤、固着防止剤、流動促進剤、アミノ酸、ペプチド、界面活性剤、脂質およびリン脂質も実質的に含まない。さらなる態様では、薬学的組成物は、いかなる糖、潤滑剤、帯電防止剤、固着防止剤、流動促進剤、アミノ酸、ペプチド、界面活性剤、脂質およびリン脂質も本質的に含まない。さらなる態様では、薬学的組成物は、いかなる糖、潤滑剤、帯電防止剤、固着防止剤、流動促進剤、アミノ酸、ペプチド、界面活性剤、脂質およびリン脂質も全く含まない。いくつかの態様では、薬学的組成物は、いかなる加えられた賦形剤も実質的に含まない。いくつかの態様では、薬学的組成物は、いかなる加えられた賦形剤も本質的に含まない。さらなる態様では、薬学的組成物は、いかなる加えられた賦形剤も全く含まない。いくつかの態様では、薬学的組成物は、いかなる賦形剤も実質的に含まない。さらなる態様では、薬学的組成物は、いかなる賦形剤も本質的に含まない。なおさらなる態様では、薬学的組成物は、いかなる賦形剤も全く含まない。
【0017】
いくつかの態様では、薬学的組成物は微粒子化されている。さらなる態様では、微粒子化された薬学的組成物は、活性剤を含有する複数の粒子を含む。なおさらなる態様では、粒子は、約0.5μm~約10μmのレーザ回折中央粒径を有する。なおさらなる態様では、粒子は、約1.5μm~約5μmのレーザ回折中央粒径を有する。またさらなる態様では、粒子は、約2.5μm~約3.5μmのレーザ回折中央粒径を有する。いくつかの態様では、粒子は、少なくとも90%の活性剤を含む。さらなる態様では、粒子は、少なくとも95%の活性剤を含む。なおさらなる態様では、粒子は、少なくとも99%の活性剤を含む。またさらなる態様では、粒子は、100%の活性剤を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも95%の活性剤を含む。さらなる態様では、組成物は、少なくとも99%の活性剤を含む。なおさらなる態様では、組成物は、少なくとも100%の活性剤を含む。いくつかの態様では、組成物は、生理食塩水中に製剤化されている。さらなる態様では、生理食塩水は、0.9%w/v塩化ナトリウムである。いくつかの態様では、組成物は、いかなるミセルもリポソームも本質的に含まない。
【0018】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、ジェットミリングによって製造される。さらなる態様では、薬学的組成物は、エアジェットミリングによって製造される。いくつかの態様では、薬学的組成物は、脆性マトリックス粒子として製剤化されている。さらなる態様では、薬学的組成物は、賦形剤を含む。なおさらなる態様では、賦形剤は、炭水化物、例えば、ラクトースまたはマンノースである。他の態様では、賦形剤は、シクロデキストリン、例えばスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンである。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約25%w/w~約95%w/wの量の賦形剤を含む。いくつかの態様では、賦形剤の量は、約40%w/w~約90%w/wである。いくつかの態様では、賦形剤の量は、約60%w/w~約85%w/wである。
【0019】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、追加の賦形剤をさらに含む。いくつかの態様では、追加の賦形剤は、流動剤、例えばステアリン酸マグネシウムである。他の態様では、追加の賦形剤は、リン脂質、例えば1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。他の態様では、追加の賦形剤は、疎水性アミノ酸、例えばロイシンである。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約0.1%w/w~約25%w/wの量の追加の賦形剤を含む。いくつかの態様では、追加の賦形剤の量は、約0.25%w/w~約20%w/wである。いくつかの態様では、追加の賦形剤の量は、約0.25%w/w~約5%w/wである。いくつかの態様では、追加の賦形剤の量は、約5%w/w~約20%w/wである。
【0020】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、10g/m2超の比表面積を含む。いくつかの態様では、賦形剤および活性剤は、粒子内に存在する。さらなる態様では、粒子は、相分離された賦形剤および活性剤を含有する。いくつかの態様では、粒子は、約1.5μm~約10μmの空気力学的質量中央粒子径を有する。さらなる態様では、空気力学的質量中央粒子径は、約2.0μm~約8μmである。なおさらなる態様では、空気力学的質量中央粒子径は、約2.0μm~約4μmである。いくつかの態様では、薬学的組成物は、吸入器に充填されている。さらなる態様では、吸入器は、乾燥粉末吸入器、定量吸入器、単回用量吸入器、多用量吸入器または加圧式定量吸入器である。いくつかの態様では、薬学的組成物は、ネブライザで使用するために製剤化されている。さらなる態様では、ネブライザは、ジェットネブライザまたは振動メッシュネブライザである。
【0021】
いくつかの態様では、活性剤はニクロサミドである。他の態様では、活性剤は、ニクロサミドの薬学的に許容される塩である。さらなる態様では、ニクロサミドの薬学的に許容される塩は、ニクロサミドのエタノールアミン塩またはピペラジン塩である。いくつかの態様では、活性剤は無水ニクロサミドである。いくつかの態様では、活性剤は、ニクロサミドの水和物である。さらなる態様では、活性剤はニクロサミド一水和物である。いくつかの態様では、活性剤は、ニクロサミドの共結晶である。さらなる態様では、ニクロサミドの共結晶は、ニクロサミドと2-アミノチアゾールとの共結晶、ニクロサミドとベンズアミドとの共結晶、ニクロサミドとイソニアジドとの共結晶、ニクロサミドとアセトアミドとの共結晶、ニクロサミドとカフェインとの共結晶、ニクロサミドと尿素との共結晶、ニクロサミドとp-アミノ安息香酸との共結晶、ニクロサミドとテオフィリンとの共結晶、ニクロサミドとニコチンアミドとの共結晶、またはニクロサミドとイソニコチンアミドとの共結晶である。
【0022】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、単位用量として製剤化されている。さらなる態様では、単位用量は、硬カプセルもしくは軟カプセル、錠剤、シロップ、懸濁液、エマルジョン、溶液またはウェハとして経口投与のために製剤化されている。いくつかの態様では、活性剤は、約100mg~約5gの量で存在する。さらなる態様では、活性剤は、約500mg~約2gの量で存在する。いくつかの態様では、単位用量は、カプセル、カートリッジまたはブリスタとして吸入のために製剤化されている。さらなる態様では、カプセル、カートリッジまたはブリスタは、吸入器とともに使用するために製剤化されている。いくつかの態様では、活性剤は、約100μg~約50mgの量で存在する。さらなる態様では、活性剤は、約250μg~約20mgの量で存在する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、UV光を遮断する容器内に存在する。
【0023】
いくつかの態様では、組成物は、第2の活性剤をさらに含む。さらなる態様では、第2の活性剤は抗炎症薬である。なおさらなる態様では、第2の活性剤はクロファジミンである。またさらなる態様では、第2の活性剤は、抗微生物薬、例えば、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、サリドマイド、プラスミノーゲン、コリスチンまたはポリミキシンBである。他の態様では、第2の活性剤は、化学療法剤、例えば、アビラテロン、エンザルタミドまたはビカルタミドである。なお他の態様では、第2の活性剤はタンパク質である。
【0024】
なお他の局面では、本開示は、本開示の薬学的組成物を含む吸入器を提供する。さらなる態様では、吸入器は、約0.5バール~5バールの分散エネルギーを有する。なおさらなる態様では、分散エネルギーは、1、2または3バールである。
【0025】
また他の局面では、本開示は、
(A)薬学的に許容されるポリマーおよび活性剤を得る工程であって、活性剤が、ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、またはその共結晶である、工程;ならびに
(B)薬学的に許容されるポリマーおよび活性剤をホットメルト押出機に供して、薬学的組成物を得る工程
を含む、本開示の薬学的組成物を調製する方法を提供する。
【0026】
いくつかの態様では、薬学的に許容されるポリマーおよび活性剤は、約100℃~約240℃の温度で押し出される。さらなる態様では、温度は、約150℃~約210℃、例えば約180℃である。
【0027】
他の局面では、本開示は、
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、またはその共結晶である活性剤を得る工程;
(B)活性剤をジェットミルに供して、薬学的組成物を得る工程
を含む、本開示による薬学的組成物を調製する方法を提供する。
【0028】
いくつかの態様では、ジェットミルはエアジェットミルである。さらなる態様では、ジェットミルは、サイクロンをさらに備える。なおさらなる態様では、ジェットミルは、約25psi~約150psiの粉砕圧力に設定される。またさらなる態様では、粉砕圧力は、約50psi~約100psi、例えば約80psiである。いくつかの態様では、ジェットミルは、約25psi~約150psiの供給圧力に設定される。さらなる態様では、供給圧力は、約50psi~約100psi、例えば約80psiである。いくつかの態様では、供給速度は1g/分未満である。さらなる態様では、供給速度は、約0.1g/分~約1g/分である。なおさらなる態様では、供給速度は、約0.5g/分~約1g/分である。
【0029】
なお他の局面では、本開示は、
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、またはその共結晶である活性剤を溶媒に溶解して、薬学的混合物を得る工程;
(B)0℃未満の温度の表面に薬学的混合物を適用して、凍結された薬学的混合物を得る工程;および
(C)凍結された薬学的混合物を収集し、凍結された薬学的混合物を乾燥させて、薬学的組成物を得る工程
を含む、本開示の薬学的組成物を調製する方法を提供する。
【0030】
いくつかの態様では、溶媒は、有機溶媒、例えば1,4-ジオキサンである。いくつかの態様では、方法は、薬学的混合物を得るために、活性剤を、第2の溶媒に溶解された賦形剤と混合する工程をさらに含む。いくつかの態様では、第2の溶媒は水である。いくつかの態様では、薬学的混合物は、薬学的混合物が透明になるまで混合される。いくつかの態様では、薬学的混合物は、約0.5mL/分~約5mL/分の供給速度で適用される。さらなる態様では、供給速度は、約1mL/分~約3mL/分、例えば約2mL/分である。いくつかの態様では、薬学的混合物は、針を用いて適用される。さらなる態様では、針は19ゲージ針である。いくつかの態様では、薬学的混合物は、約2cm~約50cmの高さから適用される。さらなる態様では、高さは、約5cm~約20cm、例えば約10cmである。いくつかの態様では、温度は、約0℃~-100℃である。さらなる態様では、温度は、約-20℃~約-90℃、例えば約-80℃である。いくつかの態様では、表面は回転面である。さらなる態様では、表面は、約50rpm~約500rpmの速度で回転している。なおさらなる態様では、表面は、約100rpm~約400rpm、例えば約200rpmの速度で回転している。
【0031】
いくつかの態様では、凍結された薬学的組成物は、凍結乾燥によって乾燥される。さらなる態様では、凍結された薬学的組成物は、第1の減圧下で乾燥される。なおさらなる態様では、第1の減圧は、約10mTorr~500mTorrである。またさらなる態様では、第1の減圧は、約50mTorr~約250mTorr、例えば約100mTorrである。いくつかの態様では、凍結された薬学的組成物は、第1の低温で乾燥される。さらなる態様では、第1の低温は、約0℃~-100℃である。なおさらなる態様では、第1の低温は、約-20℃~約-60℃、例えば約-40℃である。いくつかの態様では、凍結された薬学的組成物は、約3時間~約36時間の第1の期間にわたって乾燥される。さらなる態様では、第1の期間は、約6時間~約24時間、例えば約20時間である。
【0032】
いくつかの態様では、凍結された薬学的組成物は、再乾燥される。さらなる態様では、凍結された薬学的組成物は、第2の減圧下で再乾燥される。なおさらなる態様では、第2の減圧は、約10mTorr~500mTorrである。またさらなる態様では、第2の減圧は、約50mTorr~約250mTorr、例えば約100mTorrである。いくつかの態様では、凍結された薬学的組成物は、第2の低温で再乾燥される。さらなる態様では、第2の低温は、約0℃~30℃である。なおさらなる態様では、第2の低温は、約10℃~約30℃、例えば約25℃である。いくつかの態様では、凍結された薬学的組成物は、約3時間~約36時間の第2の期間にわたって再乾燥される。さらなる態様では、第2の期間は、約6時間~約24時間、例えば約20時間である。
【0033】
また他の局面では、本開示は、
(A)活性剤を生理食塩水と混合して、薬学的混合物を形成する工程;
(B)薬学的混合物を均質化して、薬学的組成物を得る工程
を含む、薬学的組成物を調製する方法を提供する。
【0034】
いくつかの態様では、活性剤と生理食塩水とは、音波処理によって混合される。さらなる態様では、音波処理は超音波処理である。いくつかの態様では、均質化は、ロータステータホモジナイザを用いて行われる。さらなる態様では、ロータステータホモジナイザは、鋸歯ブレード付きロータステータホモジナイザである。いくつかの態様では、薬学的混合物は、約5,000rpm~約50,000rpmの速度で均質化される。さらなる態様では、速度は、約20,000rpm~約40,000rpm、例えば約30,000rpmである。いくつかの態様では、方法は、薬学的組成物を遠心分離する工程をさらに含む。さらなる態様では、薬学的組成物は、約50g~約200gの速度で遠心分離される。なおさらなる態様では、速度は、約100g~約150g、例えば約118gである。いくつかの態様では、方法は、薬学的組成物を音波処理する工程をさらに含む。いくつかの態様では、方法は、第2の治療剤を薬学的混合物に混合する工程をさらに含む。さらなる態様では、第2の治療剤はタンパク質である。なおさらなる態様では、第2の治療剤は治療用タンパク質である。
【0035】
他の局面では、本開示は、本開示の方法に従って調製された薬学的組成物を提供する。
【0036】
なお他の局面では、本開示は、本開示の薬学的組成物を治療有効量で患者に投与する工程を含む、患者の疾患または障害を治療する方法を提供する。同様に、本開示はまた、疾患または障害の治療に使用するための組成物を提供する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、薬学的組成物が硬カプセルもしくは軟カプセル、錠剤、シロップ、懸濁液、エマルジョン、溶液またはウェハとして患者に経口投与される場合などに、患者に経口投与される。他の態様では、薬学的組成物は、吸入によって患者に投与される。さらなる態様では、疾患または障害は、微生物感染である。なおさらなる態様では、微生物感染はウイルス感染である。またさらなる態様では、ウイルス感染は、コロナウイルスの感染である。さらなる態様では、コロナウイルスは、MERS-Cov、SARS-Cov1またはSARS-Cov2(COVID-19)である。他の態様では、ウイルス感染はインフルエンザである。なお他の態様では、ウイルス感染はジカである。また他の態様では、微生物感染は、出血熱、例えば、エボラおよびラッサ熱である。他の態様では、ウイルス感染はHIVである。いくつかの態様では、HIVは、結核を呈する。また他の態様では、微生物感染は扁形動物感染である。さらなる態様では、扁形動物感染は、住血吸虫症、または住血吸虫症からの合併症である。なおさらなる態様では、住血吸虫症は急性肺住血吸虫症である。他の態様では、住血吸虫症からの合併症は、住血吸虫症関連肺高血圧症である。他の態様では、微生物感染は細菌感染である。さらなる態様では、細菌感染は、腸球菌(enterococci)、緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)またはクロストリジウム・ディフィシル(clostridium difficile)の感染である。なおさらなる態様では、細菌感染は、1つまたは複数の抗生物質に耐性の細菌の感染である。またさらなる態様では、感染は、バンコマイシンまたはメチシリンに耐性の細菌の感染である。
【0037】
他の態様では、疾患または障害はがんである。さらなる態様では、がんは、肺がん、神経膠芽腫または前立腺がんである。なおさらなる態様では、前立腺がんは去勢抵抗性前立腺がんである。他の態様では、疾患または障害は糖尿病である。いくつかの態様では、方法は、第2の活性剤をさらに含む。さらなる態様では、第2の活性剤は、抗炎症薬、例えばクロファジミンである。他の態様では、第2の活性剤は、抗微生物薬、例えば、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、サリドマイド、プラスミノーゲン、コリスチンまたはポリミキシンBである。なお他の態様では、第2の活性剤は、化学療法剤、例えば、アビラテロン、エンザルタミドまたはビカルタミドである。いくつかの態様では、活性剤は、肺に吸入される。さらなる態様では、活性剤は、肺および胃に吸入される。
【0038】
また他の局面では、本開示は、本開示の薬学的組成物を治療有効量で患者に投与する工程を含む、患者の肺炎症を低減する方法を提供する。同様に、本開示は、肺炎症の低減に使用するための組成物を提供する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、薬学的組成物が硬カプセルもしくは軟カプセル、錠剤、シロップ、懸濁液、エマルジョン、溶液またはウェハとして患者に経口投与される場合などに、患者に経口投与される。他の態様では、薬学的組成物は、吸入によって患者に投与される。いくつかの態様では、肺炎症は、ウイルス感染に関連する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、複数回投与される。
【0039】
他の局面では、本開示は、
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤と、
(B)生理食塩水と
を含む薬学的組成物であって、薬学的組成物が、ネブライザで使用するために製剤化されており、活性剤が、約2.0μm~約4.0μmである空気力学的質量中央粒子径を有するように微粒子化されており、活性剤の濃度が、約2mg/mL~約6mg/mLである、薬学的組成物を提供する。
【0040】
なお他の局面では、本開示は、
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤と、
(B)ポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポリマーである薬学的に許容されるポリマーと
を含む薬学的組成物であって、薬学的組成物が、経口投与のために製剤化されており、活性剤が、非晶質形態で存在し、薬学的組成物内で相分離されている、薬学的組成物を提供する。
【0041】
また他の局面では、本開示は、
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤と、
(B)マンニトールと
を含む薬学的組成物であって、吸入による投与のために製剤化されており、約1.5μm~約4μmの空気力学的質量中央粒子径を有する、薬学的組成物を提供する。
【0042】
他の局面では、本開示は、
(A)ニクロサミド、その薬学的に許容される塩、水和物、またはその共結晶である活性剤
を含む薬学的組成物であって、吸入による投与のために製剤化されており、少なくとも99.9%の活性剤を含み、約1.5μm~約4.0μmのレーザ回折空気力学的質量中央粒子径を有する粒子として製剤化されている、薬学的組成物を提供する。
【0043】
本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正は、この詳細な説明から当業者には明らかになると考えられるため、詳細な説明および具体的な例は、本発明の具体的な態様を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の局面をさらに実証するために含まれている。本開示は、本明細書において提示される具体的な態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つまたは複数を参照することによってさらによく理解され得る。
【0045】
図1図1は、ニクロサミド40%-VA64(登録商標)60%押出物(非晶質/ガラス)および物理的混合物(PM)の溶解試験を示す。
図2図2は、ニクロサミド35%-VA64(登録商標)60%-TPGS 5%押出物の溶解試験を示す。
図3図3は、異なる薬物負荷(DL)でのニクロサミド-VA64(登録商標)押出物の溶解試験を示す。
図4図4は、ニクロサミド20%-VA64(登録商標)75%-5%界面活性剤/乳化剤の溶解試験を示す。
図5図5は、異なる薬物負荷(DL)でのニクロサミド-Soluplus(登録商標)(Sol)押出物の溶解試験を示す。
図6図6は、40および50%薬物負荷(DL)でのニクロサミド-Kollidon 30(登録商標)(ポリビニルピロリドン)の溶解試験を示す。
図7図7は、結晶性ニクロサミドと比較して、ニクロサミド非晶質固体分散体を投与したマウスにおける時間の関数としてのニクロサミド血漿濃度を示す。
図8図8は、FaSSIF媒体中のニクロサミドASD、その物理的混合物(PM)およびニクロサミド無水物の溶解プロファイルを示す。試料を採取し、0.2μmのフィルタに通した。FaSSIF中2時間後のニクロサミドASDおよびFaSSIF対照の粒径分布。
図9図9は、ニクロサミドASDおよびニクロサミド無水物の拡散プロファイルを示す。それぞれFaSSIFおよびデカノールによって、ドナー細胞およびレシーバー細胞を満たした。
図10図10は、ニクロサミドASDのpHシフト溶解試験を示す。
図11図11は、FaSSIFに懸濁したニクロサミド無水物、FaSSIFに懸濁したニクロサミドASD、およびカプセル内のニクロサミドASDの(ラットにおける)薬物動態プロファイルを示す(n=5)。
図12図12は、ジェットミリング装置のモデルを示す。
図13図13は、ジェットミリングによる微粒子化粒子の粒子分布を示す。
図14図14は、結晶性ニクロサミドおよび微粒子化ニクロサミドの粉末X線回折を示す。
図15図15は、結晶性ニクロサミド、およびニクロサミド吸入組成物の4つの例の粉末X線回折を示す。
図16図16は、DPI1~8の空気力学的直径分布を示す。
図17図17は、薄膜凍結によって作製されたニクロサミド吸入粉末(n=3)の空気力学的粒径分布を示す。装置バーは、カプセルおよび装置内のニクロサミドの残りの質量を示す。スロートバーでは、マウスピースアダプタおよび誘導ポート内のニクロサミドの残りの質量が示される。
図18図18は、シリアンハムスターに対してニクロサミド吸入粉末を投与した後のニクロサミドの血漿濃度プロファイルを示す(各点についてn=5)。各群に、それぞれ145および290μg/Kgの用量のニクロサミドを含有する8.7(暗)および17.4(明)mg/Kgのニクロサミド吸入粉末を投与した。挿入図は、最初の2時間以内のプロファイルを示す。SARS-CoV-2のニクロサミドIC50は0.28μM(91.56ng/mL)である(Jeon et al.,2020)。
図19図19は、シリアンゴールデンハムスターにニクロサミド吸入粉末を投与した後のニクロサミドの肺濃度プロファイルを示す(n=5)。各群に、それぞれ145および290μg/Kgの用量のニクロサミドを含有する8.7(暗)および17.4(明)mg/Kgのニクロサミド吸入粉末を投与した。挿入図は、最初の2時間以内のプロファイルを示す。SARS-CoV-2の推定ニクロサミドIC50は湿潤組織1g当たり0.09156μgであり、湿潤組織は1g/mの密度を有すると仮定された。
図20図20は、湿潤分散剤としてポリソルベート80 0.2mg/mLを使用して、様々な濃度で調製した微粒子化ニクロサミド懸濁液の粒径分布を示す。
図21図21は、湿潤分散剤としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用して、様々な濃度で調製した微粒子化ニクロサミド懸濁液の粒径分布を示す。
図22図22は、PARI(登録商標)LC Sprint装置を使用した2分間の噴霧化後のNIC-MのNGIステージ堆積を示す。
図23A図23A図23Cは、SARS COV2ウイルス力価アッセイのためのプレート概略図を示す。
図23B図23Aの説明を参照のこと。
図23C図23Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0046】
例示的な態様の説明
本開示のいくつかの局面では、本明細書において提供される薬学的組成物は、経口または吸入のための投与のための製剤内にニクロサミドを含み得る。いくつかの局面では、本組成物は、がんなどの全身適用のために肺または消化管のいずれかに治療有効用量を送達するために使用され得る。本開示はまた、微生物感染またはがんなどの疾患または障害を治療するためにこれらの組成物を調製する方法またはこれらの組成物を使用する方法を提供する。
【0047】
これらの組成物を調製および使用する方法も本明細書において提供される。これらの組成物の詳細は、以下にさらに詳細に提供される。
【0048】
I. 薬学的組成物
いくつかの局面では、本開示は、ニクロサミドなどの活性剤を含有する薬学的組成物を提供し、任意で賦形剤を含有し得る。これらの組成物は、経口投与または吸入による投与のために製剤化され得る。
【0049】
A. ニクロサミド
本明細書において記載される薬学的組成物は、活性剤としてニクロサミドを含む。本明細書において記載される薬学的組成物は、組成物全体の約10%~約90%w/w、約20%~約80%w/w、約30%~約70%w/w、または約40%~約60%w/wの量のニクロサミドを含有する。いくつかの態様では、ニクロサミドの量は、約10%、約20%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%~約90%w/w、またはその中の導出可能な任意の範囲である。
【0050】
いくつかの局面では、多種多様な異なる形態のニクロサミドが使用され得る。ニクロサミドは、5-クロロ-N-(2-クロロ-4-ニトロフェニル)サリチルアミドの化学名を有する活性剤である。本明細書において使用されるニクロサミドは、無水であってよいか、またはニクロサミドの水和物、例えば、ニクロサミドの一水和物であってよい。さらに、ニクロサミドは、エタノールアミンまたはピペラジン塩などの塩であってよい。さらに、薬学的組成物にニクロサミドの共結晶を使用してもよく、ニクロサミドの共結晶には、ニクロサミドと2-アミノチアゾール、ベンズアミド、イソニアジド、アセトアミド、カフェイン、尿素、p-アミノ安息香酸、テオフィリン、ニコチンアミドまたはイソニコチンアミドとの共結晶が含まれ得る(Sanphui et al.,2012;Luedeker et al.,2016)。あるいは、参照により本明細書に組み入れられるMook et al.,2015によって記載されたものなどの公知の誘導体も製剤に使用され得ることも企図される。さらに、ニクロサミドは、感光性であり、組成物を光から保護するために暗所で保存されるべきである。
【0051】
1. 吸入
いくつかの態様では、本開示は、空気力学的直径が約0.5~5ミクロン、または0.5~3ミクロンの空気力学的サイズ範囲内になければならない呼吸域粒子に関する。薬学的組成物の空気力学的質量中央粒子径は、約0.4μm、約0.5μm、約0.6μm、約0.8μm、約1.0μm、約1.2μm、約1.4μm、約1.6μm、約1.8μm、約2.0μm、約2.2μm、約2.4μm、約2.6μm、約2.8μm、約3.0μm、約3.2μm、約3.4μm、約3.6μm、約3.8μm、約4.0μm、約4.2μm、約4.4μm、約4.6μm、約4.8μm、約5.0μm、約5.2μm、約5.4μm、約5.6μm、約5.8μm~約6.0μm、またはその中の導出可能な任意の範囲であり得る。いくつかの態様では、Copley(登録商標)Inhaler Testing Data Analysis Software(CITDAS)バージョン3.10(Copley Scientific,Nottingham,UK)を使用して、空気力学的質量中央粒子径(MMAD)、細粒分(FPF)、幾何標準偏差(GSD)および放出画分(EF)を含む空気力学的粒径分布を計算する。質量の累積百分率と、空気力学的直径とによって、空気力学的質量中央粒子径(MMAD)および幾何標準偏差(GSD)を評価した。このサイズ範囲の粒子を得るための典型的な手法は、エアジェットミリング、噴霧乾燥、薄膜凍結、および当技術分野において公知の他の方法による。適切なサイズ範囲の薬物粒子を得るために使用される方法にかかわらず、微粒子化は、一般にエアロゾル分散に耐性である高凝集性粒子をもたらす。これは、典型的には、比較的大きなラクトース担体粒子(例えば、45~75μm)、または他の分散増強賦形剤との相互作用性混合物としての製剤化によって克服される。薬物粒子は、従来の混合を使用して適切な担体粒子とブレンドすることによって混合されるか、または薬物と担体とは、噴霧乾燥プロセスもしくは薄膜凍結プロセスなどによって溶液もしくは懸濁液製剤から同時に調製され得る。
【0052】
いくつかの局面では、本開示は、局所蓄積を増加させる限られた溶解を示し、マクロファージによって容易に貪食される二重送達モードでの経口吸入による、賦形剤を含まないニクロサミド粉末を提供する。送達される用量の約30~60%が肺組織に投与され、これは、肺内の感染を直接かつ迅速に治療するために必要である。さらに、送達される用量の40~70%が口腔(口および喉)に投与され、次いで、これが嚥下される。感染が消化管内にさらに存在する可能性があるため、経口吸入用量も消化管にかなりの量で送達される。経口吸入粉末の、賦形剤を含まない性質は、適切な用量が肺および胃腸標的部位の両方に送達されることを確実にする。第3に、D10(小粒子画分)は比較的小さく、かなりの割合の粒子が拡散サブミクロンサイズ範囲にあるため、鼻腔を通して吐き出す患者では、いくらかの感染が存在し得る鼻粘膜にかなり堆積する。
【0053】
本明細書において記載される薬学的組成物のいくつかの態様では、粒子は、単一粒子内にニクロサミドおよび賦形剤を含有する。さらに、これらの薬学的組成物は、吸入器を介して肺に送達されることを可能にする1つまたは複数の特性を含み得る。これらの薬学的組成物は、さらに小さな成分に分解する能力の向上を示す。薬学的組成物は、高い表面積、低いタップ密度、または低いかさ密度を示し得る。薬学的組成物の表面積は、10m2/g超、25m2/g超または50m2/g超であり得る。薬学的組成物のかさ密度は、1g/mL未満、0.5g/mL未満または0.25g/mL未満であり得る。最後に、薬学的組成物のタップ密度は、0.1g/cm3未満、0.05g/cm3未満または0.025g/cm3未満であり得る。さらに、これらの組成物は、改善された流動性または圧縮性、例えば、20未満、15未満または10未満などの低いCarr指数を示し得る。
【0054】
いくつかの態様では、本開示は、装置を使用して、本明細書において提供される吸入可能なニクロサミド組成物を投与する方法を提供する。投与は、限定されることなく、吸入器を使用したニクロサミドの吸入であり得る。いくつかの態様では、吸入器は、単純な受動乾燥粉末吸入器(DPI)、例えば、Plastiape RSO1 monodose DPIである。単純な乾燥粉末吸入器では、乾燥粉末は、カプセルまたはリザーバに貯蔵され、噴射剤を使用せずに吸入によって肺に送達される。
【0055】
いくつかの態様では、吸入器は、単回用量DPI、例えば、DoseOne(商標)、Spinhaler、Rotohaler(登録商標)、Aerolizer(登録商標)またはHandihalerである。いくつかの態様では、吸入器は、複数回用量DPI、例えば、Plastiape RS02、Turbuhaler(登録商標)、Twisthaler(商標)、Diskhaler(登録商標)、Diskus(登録商標)またはEllipta(商標)である。いくつかの態様では、吸入器は、Twincer(登録商標)、Orbital(登録商標)、TwinCaps(登録商標)、Powdair、Cipla Rotahaler、DP Haler、Revolizer、Multi-haler、Twister、StarhalerまたはFlexhaler(登録商標)である。いくつかの態様では、吸入器は、複数の薬剤の単回用量の同時送達のためのplurimonodose DPI、例えば、Plastiape RS04 plurimonodose DPIである。乾燥粉末吸入器は、内部リザーバに貯蔵された薬剤を有し、薬剤は、噴射剤の使用の有無にかかわらず吸入によって送達される。乾燥粉末吸入器は、効果的な送達のために30L/分超、例えば、約30~120L/分の吸入気流速を必要とし得る。
【0056】
いくつかの態様では、吸入可能なニクロサミドは、HFA噴射剤などの噴射剤製剤として送達される。
【0057】
いくつかの態様では、吸入器は、定量吸入器であってよい。定量吸入器は、噴射剤の使用によって補助されるエアロゾル化薬剤の短いバーストで規定量の薬剤を肺に送達する。定量吸入器は、3つの主要部分、すなわち、キャニスタ、計量弁およびアクチュエータを備える。噴射剤および任意の必要な賦形剤を含む医薬製剤は、キャニスタに貯蔵される。計量弁は、規定量の医薬製剤を分配することを可能にする。定量吸入器のアクチュエータ、またはマウスピースは、嵌合吐出ノズルを含み、典型的には、汚染を防止するためのダストキャップを含む。
【0058】
いくつかの態様では、吸入器はネブライザである。ネブライザは、肺に吸入されるエアロゾル化ミストの形態で薬剤を送達するために使用される。医薬製剤は、圧縮ガスまたは超音波によってエアロゾル化される。ジェットネブライザがコンプレッサに接続される。コンプレッサは、液体医薬製剤を通して圧縮ガスを高速で放出し、医薬製剤をエアロゾル化させる。次いで、エアロゾル化された薬剤が患者によって吸入される。超音波ネブライザは、高周波超音波を発生させ、医薬製剤の液体リザーバと接触する内部要素の振動を引き起こし、これにより、医薬製剤をエアロゾル化させる。次いで、エアロゾル化された薬剤が患者によって吸入される。ネブライザは、約3~12L/分、例えば約6L/分の流速を利用してもよい。いくつかの態様では、ネブライザは乾燥粉末ネブライザである。
【0059】
いくつかの態様では、組成物は、常用的なスケジュールで投与され得る。本明細書において使用される場合、常用的なスケジュールとは、所定の指定された期間を指す。常用的なスケジュールは、スケジュールが所定のものである限り、同一であるか、または長さが異なる期間を包含し得る。例えば、常用的なスケジュールは、1日2回、連日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、毎月、またはその間の任意の設定された日数もしくは週数の投与を含み得る。あるいは、所定の常用的なスケジュールは、最初の週に1日2回投与し、続いて数ヶ月間連日投与することなどを含み得る。いくつかの態様では、ニクロサミドは、1日1回投与される。好ましい態様では、ニクロサミドは、1日1回未満、例えば、1日おき、3日ごと、または週に1回投与される。いくつかの態様では、ニクロサミドの完全用量は、0.05~30mg、例えば、0.1~10、0.25~5、0.3~5、または0.5~5mgである。
【0060】
いくつかの態様では、ニクロサミドは、カプセル、ブリスタまたはカートリッジなどの単位剤形で提供され得、単位用量は、少なくとも0.25mgのニクロサミド、例えば、1用量当たり少なくとも0.5mgまたは少なくとも1mgのニクロサミドを含む。特定の局面では、単位剤形は、いかなる賦形剤の投与または添加も含まず、吸入用の粉末を保持するためにのみ使用される(すなわち、カプセル、ブリスタまたはカートリッジは投与されない)。いくつかの態様では、ニクロサミドは、少なくとも1mg、好ましくは少なくとも10mg、さらになお好ましくは50mgなどの高放出用量で投与され得る。いくつかの態様では、微粒子化ニクロサミドの投与は、1mg超など、肺深部への高微粒子用量をもたらす。好ましくは、肺深部への微粒子用量は、少なくとも5mg、さらになお好ましくは少なくとも10mgである。
【0061】
いくつかの態様では、装置全体にわたる圧力降下の変化は、放出用量の変化をもたらす。いくつかの態様では、3kPa、例えば、4kPa~1kPaの装置全体にわたる圧力降下の変化は、35%未満、例えば、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%またはそれ以下の放出用量の減少をもたらす。いくつかの態様では、装置全体にわたる吸入圧力降下の変化は、微粒子用量の変化をもたらす。いくつかの態様では、3kPa、例えば、4kPa~1kPaの装置全体にわたる吸入圧力降下の変化は、35%未満、例えば、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%またはそれ以下の微粒子用量の減少をもたらす。
【0062】
2. 経口
ニクロサミドは、消化管内の蠕虫感染を治療するためのその現在承認された適応症では制限因子ではない、不良で可変的なバイオアベイラビリティを有することが以前に知られている、難水溶性の親油性分子である。薬物の全身濃度を必要とする前立腺がんなどの疾患の治療のために薬剤を再利用しようとする場合、バイオアベイラビリティの限界を克服するための課題が明らかになる。ニクロサミドは、難水溶性かつ親油性であるため、薬物の経口吸収のための速度制限段階は、分子の溶解である。
【0063】
残念なことに、インビトロでがんに対して薬理活性を示す薬物の大部分は、難水溶性であるため、バイオアベイラビリティが不良であるかまたは全くない。現在承認されている適応症については制限でないことが多いが、がんを治療する際の有用性では、腫瘍阻害に十分な薬物濃度を達成するために薬物の顕著に良好な吸収が必要とされることが多い。
【0064】
非晶質固体分散体は、難水溶性薬物の溶解度およびバイオアベイラビリティを改善するために使用される。それらは、2007~2017年に食品医薬品局によって承認された19の市販品では、製薬業界によって、溶解度の限界を克服するために使用されている。ほとんどの場合、これらの製品は、薬物と親水性ポリマーとの二元混合物に基づく。ただし、これらの製剤は、特定の物理化学的特性および用量要件を有する薬物、例えば、アトバコンのような親油性が高い薬物に限定され得る(Friesen et al.,2008)。
【0065】
いくつかの態様では、組成物は、常用的なスケジュールで投与され得る。本明細書において使用される場合、常用的なスケジュールとは、所定の指定された期間を指す。常用的なスケジュールは、スケジュールが所定のものである限り、同一であるか、または長さが異なる期間を包含し得る。例えば、常用的なスケジュールは、1日2回、連日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、毎月、またはその間の任意の設定された日数もしくは週数の投与を含み得る。あるいは、所定の常用的なスケジュールは、最初の週に1日2回投与し、続いて数ヶ月間連日投与することなどを含み得る。いくつかの態様では、ニクロサミドは、1日1回投与される。好ましい態様では、ニクロサミドは、1日1回未満、例えば、1日おき、3日ごと、または週に1回投与される。いくつかの態様では、ニクロサミドの完全用量は、約100mg~約5g、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、1.25g、1.5g、1.75g、2g、2.5g、3g、3.5g、4g、4.5g~約5g、またはその中の導出可能な任意の範囲である。
【0066】
3. 組成物の使用
いくつかの臨床的適応症が、バイオアベイラビリティが増強されたニクロサミド組成物の投与から利益を得るであろう。これらの適応症には、細菌、ウイルス、寄生虫または虫などの微生物の感染が含まれる。特に、組成物は、ウイルス感染を治療するために使用され得る。本明細書において記載される組成物を用いて治療され得るウイルス感染のいくつかの非限定的な例には、COVID-10、MERS、SARS、インフルエンザ、ジカ、ラッサ、エボラ、TBなどの合併症を伴うHIVを含むHIV、およびアデノウイルスが挙げられる。他の態様では、薬学的組成物は、住血吸虫症および関連する肺合併症を治療するために使用され得る。加えて、これらの薬学的組成物は、バンコマイシン耐性腸球菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、クレブシエラ・ニューモニエ(klebsiella pneumoniae)、C.ディフィシルまたはMRSAを治療するために使用され得る。さらに、薬学的組成物は、糖尿病を治療または制御するために使用され得る。ウイルス感染に関して、SARS-CoVなどのいくつかのウイルスは、細胞に侵入し、腎臓、肺および小腸などの領域を含む、ACE2+組織が存在する場所で複製することができる(Hoffmann et al.,2020)。他のそのような臨床的適応症には、いくつかのがん、特に去勢抵抗性前立腺がん、神経膠芽腫または肺がんが含まれる。
【0067】
男性では最も一般的に診断されるがんである前立腺がんは、多くの男性では治療可能であるが、毎年30,000人近くがこの疾患のために死亡し続けている(Bray et al.,2018)。前立腺がんは、現在、アンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達プログラムを阻害することによって治療されており、場合によっては、疾患を治療するために去勢が必要とされる。ただし、場合によっては、このがんは去勢に抵抗性であり、成功裏に治療することが困難である。近年、去勢抵抗性前立腺がんであっても、ARシグナル伝達が、重要な役割を果たし、ARの変化を特徴とし、これにより、去勢レベルのアンドロゲンにもかかわらず、標的遺伝子の転写、および腫瘍進行をもたらし続けることが発見された(Liu et al.,2016)これにより、これらの患者の総生存率の改善を示した次世代のARシグナル伝達阻害剤薬物(すなわち、エンザルタミドおよびアビラテロン)が開発された(Matsubara et al.,2018)。これらの患者にとって残念なことに、次世代ARシグナル伝達阻害剤に対する耐性は、避けられないものであり、治療開始後最初の1~2年以内に起こる(Kim and Ryan,2012)。これらの薬剤に対する耐性は、近年、AR変異体と関連していることが示されている。代替的なmRNAスプライシングによって、去勢抵抗性前立腺がん患者ではアップレギュレートされ、前立腺がんの進行、およびAR標的指向型療法に対する耐性に関連するAR変異体が生じる(Mostaghel et al.,2018;Li et al.,2013;Zhang et al.,2011)。特に、エンザルタミド耐性前立腺がん細胞では、変異体AR-V7がアップレギュレートされることが示されている(Liu et al.,2014)。AR変異体、特にAR-V7を標的とすることは(Liu et al.,2014)、この次世代のAR薬に対する耐性を克服し、進行した前立腺がんの治療を改善する可能性を有する。
【0068】
近年の試験では、1120個の小分子のライブラリーと、承認された薬物とを使用して、AR-V7活性のためのハイスループットスクリーニング技術を使用して、AR-V7発現を阻害する化合物が発見された(Liu et al.,2014)。ヒト条虫感染の治療のためにFDAによって承認された薬物であるニクロサミドが同定された。ニクロサミドは、エンザルタミド耐性前立腺がん細胞株では、ニクロサミドを腹腔内注射によって投与した場合、インビトロおよびインビボでエンザルタミドに対する耐性を克服することが示された。ニクロサミドは、Wnt/β-カテニン経路、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)経路、核内因子κB(NF-κB)およびNotchシグナル伝達経路を阻害するその多重標的作用機序に基づいて、結腸直腸がんなどの他のがんの治療では以前に研究されている(Li et al.,2014。ニクロサミドがエンザルタミド耐性前立腺がん細胞の細胞遊走および浸潤を抑制する機序は、STAT3-AR軸の阻害によるものである(Liu et al.,2015)。エンザルタミド耐性を克服することに加えて、ニクロサミドはまた、去勢抵抗性前立腺がん細胞では、経口ニクロサミド治療によりインビトロおよびインビボでアビラテロン治療を増強することが示されているが、ヒトでは、500mg/kgの用量で、最大経口耐量を超えることが分かっている(Schweizer et al.,2018;.Liu et al.,2016)。
【0069】
去勢抵抗性前立腺がんに対するニクロサミドの効果を示すいくつかの試験からの有望な証拠に基づいて、吸収が不良なことが知られているニクロサミドの安全性、忍容性および薬物動態を試験する第I相試験が、去勢抵抗性患者を対象に行われた。研究者らは、がん活性に十分なニクロサミド濃度を達成しようと試みる点で、蠕虫感染を治療するために現在使用されている用量を超える用量では、「がん治療としてのニクロサミドの現在の経口製剤の開発は追求されるべきではない。改善された経口バイオアベイラビリティを有するニクロサミド類似体の開発に注意を払わなければならない」との結論を下した(Schweizer et al.,2018)。現在の製剤ではニクロサミドの薬物動態プロファイルが不良な結果として第I相臨床試験で示された不良な性能と併せて、インビトロでの有望なデータ、およびマウスモデルで示された有望なデータに基づいて、改善された製剤によってニクロサミドのバイオアベイラビリティの限界を克服することは、ニクロサミドが、進行した前立腺がんの治療に対して有効な治療薬になることを可能にする可能性を有する。
【0070】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、1つまたは複数の追加の活性剤と組み合わせて1つまたは複数の疾患または障害を治療するために使用され得る。特に、薬学的組成物は、微生物感染の1つまたは複数の症状を低減する別の抗微生物剤または活性剤と組み合わせて使用され得る。追加の治療剤のいくつかの非限定的な例には、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、サリドマイド、プラスミノーゲン、コリスチン、ポリミキシンBまたはクロファジミンが挙げられ得る。他の組成物では、薬学的組成物は、化学療法剤、放射線療法、外科手術または免疫療法などの1つまたは複数の抗がん剤と組み合わせて使用され得る。追加の治療剤のいくつかの非限定的な例には、アビラテロン、例えば、酢酸アビラテロン、エンザルタミドまたはビカルタミドが挙げられ得る。
【0071】
B. 賦形剤
いくつかの局面では、本開示は、薬学的組成物に配合される1つまたは複数の賦形剤を含む。「賦形剤」は、対象へのAPIの投与もしくは送達を容易にするために使用されるか、または対象の作用部位への送達のために薬学的に使用され得る製剤へのAPIの加工を容易にするために使用される比較的不活性な物質である薬学的に許容される担体を指す。賦形剤の非限定的な例には、安定化剤、界面活性剤、表面改質剤、溶解度向上剤、緩衝剤、カプセル化剤、酸化防止剤、保存剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤および吸収促進剤が挙げられる。さらに、スルホエチルβシクロデキストリンなどのシクロデキストリン化合物を賦形剤として使用してもよい。また、マグネシウム塩などの1つまたは複数の流動促進剤を使用してもよい。流動促進剤のいくつかの非限定的な例には、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムおよびL-ロイシンが挙げられる。
【0072】
いくつかの態様では、薬学的組成物内の賦形剤の量は、約25%w/w~約95%w/w、約40%w/w~約90%w/w、または約60%w/w~約85%w/wである。いくつかの態様では、薬学的組成物内の賦形剤の量は、約20%w/w、約25%w/w、約30%w/w、約35%w/w、約40%w/w、約45%w/w、約50%w/w、約55%w/w、約60%w/w、約65%w/w、約70%w/w、約75%w/w、約80%w/w、約85%w/w、約90%w/w~約95%w/w、またはその中の導出可能な任意の範囲である。いくつかの局面では、薬学的組成物内のさらなる賦形剤の量は、約0.1%~約25%w/w、約0.25%~約20%w/w、約0.25%~約5%w/w、または約5%~約20%w/wである。薬学的組成物内の賦形剤の量は、薬学的組成物全体の約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約9%、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、約20%、約22%、約24%~約25%w/w、またはその中の導出可能な任意の範囲を占める。
【0073】
いくつかの局面では、本開示は、1つまたは複数の賦形剤、例えば、糖、薬学的に許容されるポリマー、または界面活性剤をさらに含み得る。いくつかの組成物は、2つ以上の界面活性剤を含む2つ以上の賦形剤の混合物をさらに含み得る。
【0074】
1. 糖
いくつかの局面では、本開示は、薬学的組成物に配合される1つまたは複数の賦形剤を含む。いくつかの態様では、本明細書において使用される賦形剤は水溶性賦形剤である。これらの水溶性賦形剤には、炭水化物または糖、例えば、二糖、例えば、スクロース、トレハロースもしくはラクトース、三糖、例えば、フルクトース、グルコース、ラフィノースを含むガラクトース、多糖、例えば、デンプンもしくはセルロース、または糖アルコール、例えば、キシリトール、ソルビトールもしくはマンニトールが含まれる。いくつかの態様では、これらの賦形剤は、室温で固体である。糖アルコールのいくつかの非限定的な例には、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリトール、マルトテトライトールまたはポリグリシトールが挙げられる。他の局面では、ロイシン、トリロイシン、ヒスチジンなどを含むアミノ酸、ペプチドおよびタンパク質のようなさらに大きな分子が、吸入送達を促進するために組み込まれる。
【0075】
2. 薬学的に許容されるポリマー
いくつかの局面では、本開示は、薬学的に許容されるポリマーをさらに含み得る組成物を提供する。いくつかの態様では、ポリマーは、薬学的製剤に使用することが承認されており、特定の温度を超えて上昇させると、実質的に分解することなく、軟化、または柔軟性の増加を受けることが知られている。
【0076】
薬学的に許容されるポリマーが組成物内に存在する場合、薬学的に許容されるポリマーは、1%~90%w/w、10%~80%w/w、20%~70%w/w、30%~70%w/w、40%~60%w/wのレベルで組成物内に存在する。いくつかの態様では、薬学的に許容される熱可塑性ポリマーの量は、約5%、約10%、約15%、約50%、約20%、約25%、約30%、約35%、約37.5%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約80%~約90%w/w、またはその中の導出可能な任意の範囲である。
【0077】
本明細書において記載される組成物内では、単一のポリマー、または複数のポリマーの組合せが使用され得る。いくつかの態様では、本明細書において使用されるポリマーは、セルロース系および非セルロース系の2つのクラスに分類され得る。これらのクラスは、それぞれの電荷によって、中性およびイオン化可能にさらに定義され得る。イオン化可能ポリマーは、生理学的に関連するpHで帯電した1つまたは複数の基によって官能化されている。中性非セルロース系ポリマーのいくつかの非限定的な例には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、コポビドンおよびポロキサマーが挙げられる。このクラス内で、いくつかの態様では、ピロリドン含有ポリマーが特に有用である。イオン化可能セルロース系ポリマーのいくつかの非限定的な例には、酢酸フタル酸セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが挙げられる。最後に、中性セルロース系ポリマーのいくつかの非限定的な例には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシメチルセルロースが挙げられる。
【0078】
使用され得るいくつかの特定の薬学的に許容されるポリマーには、例えば、Eudragit(商標)RS PO、Eudragit(商標)S100、Kollidon SR(ポリ(酢酸ビニル)-コ-ポリ(ビニルピロリドン)コポリマー)、Ethocel(商標)(エチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、酢酸酪酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸エステルコポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースブチレート、カルボキシメチルセルロースプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネートエチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー(GA-MMA)、C-5または60 SH-50(Shin-Etsu Chemical Corp.)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、セルロースアセテートトリメレテート(cellulose acetate trimelletate)(CAT)、ポリ(酢酸ビニル)フタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリ(メタクリレートエチルアクリレート)(1:1)コポリマー(MA-EA)、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:1)コポリマー(MA-MMA)、ポリ(メタクリレートメチルメタクリレート)(1:2)コポリマー、ポリ(メタクリル酸-コ-メチルメタクリレート1:2)、ポリ(メタクリル酸-コ-メチルメタクリレート1:1)、ポリ(メチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート-コ-メタクリル酸7:3:1)、ポリ(ブチルメタクリレート-コ-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-コ-メチルメタクリレート1:2:1)、ポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート2:1)、ポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート2:1)、ポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート-コ-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド1:2:0.2)、ポリ(エチルアクリレート-コ-メチルメタクリレート-コ-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド1:2:0.1)、Eudragit L-30-D(商標)(MA-EA、1:1)、Eudragit L-100-55(商標)(MA-EA、1:1)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-PEGグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール/アクリル酸/メチルメタクリレートコポリマー、ポリアルキレンオキシド、Coateric(商標)(PVAP)、Aquateric(商標)(CAP)およびAQUACOAT(商標)(HPMCAS)、ポリカプロラクトン、デンプン、ペクチン、キトサンまたはキチンおよびそれらのコポリマーおよび混合物、ならびに多糖、例えば、トラガント、アラビアガム、グアーガムおよびキサンタンガムが含まれる。
【0079】
いくつかの態様では、本明細書において記載される組成物は、ポビドン、コポビドン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニルおよびSOLUPLUS(登録商標)(BASFから市販されているポリビニルカプロラクタムポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー)から選択される薬学的に許容されるポリマーを含有する。特に、薬学的に許容されるポリマーは、ポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポリマーであってよい。特に、コポリマーは、約5~7ビニルピロリドン単位~約3~5単位の酢酸ビニル、特に6単位のビニルピロリドンと4単位の酢酸ビニルとを含み得る。ポリマーの分子量の数平均は、約15,000~約20,000であってよい。薬学的に許容されるポリマーは、25086-89-9のCAS番号を有するKollidan(登録商標)VA 64(コポビドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニル)であり得る。
【0080】
3. 界面活性剤
いくつかの態様では、本開示は、1つまたは複数の界面活性剤を含む。界面活性剤は、脂肪酸、トリグリセリド、脂肪酸のエステル、またはそれらの混合物であり得る。脂質という用語は、脂肪族飽和カルボン酸または脂肪族不飽和カルボン酸の群である脂肪酸を含む。鎖は、通常、分岐しておらず、6~30個、好ましくは8~22個、特に8~18個の炭素原子を有する。飽和脂肪酸のいくつかの非限定的な例には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸およびメリシン酸が挙げられる。さらに、該用語は、1回または複数回不飽和、特に1回、2回、3回、4回、5回または6回不飽和であり得る不飽和脂肪酸を含む。単不飽和脂肪酸(singly unsaturated fatty acid)のいくつかの非限定的な例には、パルミトレイン酸、オレイン酸およびエルカ酸が挙げられ、二重不飽和脂肪酸のいくつかの非限定的な例には、ソルビン酸およびリノール酸が挙げられ、三重不飽和脂肪酸(triply unsaturated fatty acid)のいくつかの非限定的な例には、リノレン酸およびエレオステアリン酸が挙げられ、四重不飽和脂肪酸(quadruply unsaturated fatty acid)のいくつかの非限定的な例には、アラキドン酸が挙げられ、五重不飽和脂肪酸(quintuply unsaturated fatty acid)のいくつかの非限定的な例には、クルパノドン酸が挙げられ、六重不飽和脂肪酸(sextuply unsaturated fatty acid)のいくつかの非限定的な例には、ドコサヘキサエン酸が挙げられる。
【0081】
あるいは、界面活性剤は、グリセロールのエステルであるグリセリドを含み得る。エステル基の数に応じて、グリセリドは、モノ-、ジ-およびトリグリセリドと呼ばれ得る。モノグリセリド内の酸残基は、1位または2位にあってよく、ジ-およびトリグリセリドの酸残基は、同一であるか、または異なっていてもよく、グリセロールの3つの可能な位置にわたって考えられるあらゆる方法で分布していてもよい。酸残基は、好ましくは上記の脂肪酸である。モノグリセリドの例には、グリセロールモノベヘネート、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノココエート、グリセロールモノエルケート、グリセロールモノイソステアレート、グリセロールモノラノレート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノリノレエート、グリセロールモノミリステート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールモノリシノレエート、グリセロールモノステアレートが挙げられ、ジグリセリドの例には、グリセロールジカプリレート、グリセロールジラウレート、グリセロールジミリステート、グリセロールジオレエート、グリセロールジパルミテートおよびグリセロールジステアレートが挙げられ、トリグリセリドの例には、グリセロールトリカプリレート、グリセロールトリラウレート、グリセロールトリミリステート、グリセロールトリオクタノエート、グリセロールトリオレエート、グリセロールトリリシノレエートおよびグリセロールトリステアレートが挙げられる。多くの一般的な薬学的界面活性剤は、1つまたは複数のグリセリドを含み、これらの薬学的界面活性剤には、Capmul(登録商標)(モノグリセリドまたはジグリセリドの群)、CapTex(登録商標)(デカン酸;オクタン酸;プロパン-1,2,3-トリオール)およびLabrafil(登録商標)(2-[2,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)プロポキシ]エタノール;ヘキサデカン酸;オクタデカン酸)が含まれる。さらに、他の界面活性剤は、脂肪酸のエステル、例えば、パルミチン酸メチル、リノール酸エチルまたはパルミチン酸イソプロピルを含み得る。
【0082】
本明細書において使用される場合、界面活性剤という用語は、両親媒性を示し、溶媒、特に水の表面張力を低下させる化合物を指す。界面活性剤は、一般に、カチオン性、アニオン性、双性イオン性または非イオン性の4つのカテゴリーに分類することができる。これらの界面活性剤のいずれも本発明の組成物に使用してもよいと考えられるが、非イオン性界面活性剤は特に有望である。カチオン性界面活性剤には、限定されることなく、長いアルキル鎖を有するアミンが含まれ、生理学的に関連するpH、または恒久的に帯電した第4級アンモニウム塩、例えば、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウムもしくは臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウムでプロトン化される。アニオン性界面活性剤のいくつかの非限定的な例には、硫酸エステル、スルホン酸エステルまたはリン酸エステル、例えば、ドキュセート、ペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネート、アルキル-アリールエーテルホスフェート、もしくはアルキルエーテルホスフェート、または脂肪酸およびその誘導体などの脂肪族カルボキシレートを含むカルボン酸エステルが挙げられる。リン脂質、例えば、ホスホチジルセリン、ホスホチジルコリン、ホスホチジルエタノールアミンもしくはスフィンゴミエリン、スルタイン、例えば、CHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)およびコカミドプロピルヒドロキシスルタイン、またはベタイン、例えばコカミドプロピルベタインを含む双性イオン性界面活性剤の他の例。最後に、非イオン性界面活性剤のいくつかの非限定的な例には、PEGアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、グルコシドアルキルエーテル、PEGアルキルアリールエーテル、例えば、Triton(登録商標)(2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール)およびノノキシノール、グリセロールの単純アルキルエステル、例えば、グリセロールラウレート、ポリソルベート、例えば、Tween(登録商標)(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)、ソルビタンアルキルエステル、例えばSpan、またはポロキサマー(登録商標)(ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのトリブロックコポリマー)、ならびにポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの他のブロックコポリマーが挙げられる。いくつかの態様では、本薬学的組成物に使用される界面活性剤は、1つまたは複数のポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールポリマー、例えば、Tween(登録商標)(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)、Capryol(登録商標)(プロピレングリコールモノカプリレート)、Labrafil(登録商標)(2-[2,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)プロポキシ]エタノール;ヘキサデカン酸;オクタデカン酸)またはLabrasol(登録商標)(カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ポリオキシルグリセリド)を含有する。
【0083】
いくつかの局面では、本開示は、約100~約4000ダルトン、約100~約1000ダルトン、約100~約500ダルトン、または約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1250、約1500、約1750、約2000、約2500、約3000、約3500もしくは約4000ダルトンの分子量を有するPEGポリマーを含む界面活性剤を提供する。いくつかの態様では、PEGポリマーは、疎水性基、例えば、ビタミンまたは脂肪酸をさらに含む。いくつかの態様では、疎水性基は、ビタミン、例えばビタミンEであり得る。そのような化合物は、連結基、例えば、ジアミンまたはジカルボン酸、例えば、1,2-エチレンジアミンまたはコハク酸をさらに含み得る。界面活性剤基は、PEG化トコフェロールサクシネート、例えばTPGS 1000、または同様のトコフェロールサクシネート化合物であり得る。
【0084】
いくつかの局面では、総界面活性剤の量は、約1%~約20%w/w、約2%~約10%w/w、約2%~約8%w/w、または約4%~約6%w/wである。総界面活性剤の量は、薬学的組成物全体の約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約12%、約14%、約15%、約16%、約18%~約20%w/w、またはその中の導出可能な任意の範囲を占める。一態様では、各界面活性剤の量は、薬学的組成物の総重量の0.5%~10%w/wである。各界面活性剤の量は、薬学的組成物全体の約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.25%、約2.5%、約2.75%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%~約10%w/w、またはその中の導出可能な任意の範囲を占める。
【0085】
II. 製造方法
A. ホットメルト押出
したがって、一局面では、本開示は、熱または融合に基づく高エネルギープロセスを使用して調製され得る薬学的組成物を提供する。そのようなプロセスは、ホットメルト押出、ホットメルト造粒、溶融混合、噴霧凝固、焼結/硬化、射出成形または熱動力学的混合プロセス、例えばKinetiSol法を含み得る。同様の熱処理方法は、いずれも参照により本明細書に組み入れられるLaFountaine et al.,2016a、Keen et al.,2013、Vynckier et al.,2014、Lang et al.,2014、Repka et al.,2007、Crowley et al.,2007、DiNunzio et al.,2010a、DiNunzio et al.,2010b、DiNunzio et al.,2010c、DiNunzio et al.,2010d、Hughey et al.,2010、Hughey et al.,2011、LaFountaine et al.,2016b、およびPrasad et al.,2016に記載されている。これらの本開示のいくつかの態様では、薬学的組成物は、熱プロセス、例えば、ホットメルト押出またはホットメルト造粒を使用して調製され得る。他の態様では、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる米国特許第8,486,423号および米国特許第9,339,440号に少なくとも記載されているものなどの熱動力学的混合プロセスを含む、融合に基づくプロセス。
【0086】
本明細書において記載される薬学的組成物を熱的に処理するために使用され得る機器の非限定的な一覧には、ThermoFisher(登録商標)から入手可能なホットメルト押出機、例えばミニラボコンパウンダ、またはLeistritz(登録商標)、例えばツインスクリュー押出機が含まれる。あるいは、米国特許第8,486,423号および米国特許第9,339,440号に記載されているような熱動力学的ミキサなどを含む、外部からの入熱を必要としない、融合に基づく高エネルギープロセス機器を使用して、薬学的組成物を処理してもよい。
【0087】
いくつかの局面では、押出機は、組成物を約60℃~約300℃の温度に加熱することを含み得る。いくつかの態様では、温度は、約150℃~約250℃である。使用され得る温度は、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約90℃、約92℃、約94℃、約96℃、約98℃、約100℃、約102℃、約104℃、約106℃、約108℃、約110℃、約112℃、約114℃、約116℃、約118℃、約120℃、約125℃、約130℃、約135℃、約140℃、約145℃、約150℃、約155℃、約160℃、約165℃、約170℃、約175℃、約180℃、約190℃、約200℃、約210℃、約220℃、約225℃、約230℃、約240℃、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃~約300℃、またはその中の導出可能な任意の範囲である。
【0088】
押出プロセス後に生成される押出物は、一般に、活性剤と薬学的に許容されるポリマーとを含む。押出物は、所望のメッシュサイズまたは直径の顆粒、切断し、錠剤に成形され得るロッド、ならびに成形された形態が投与に適したサイズおよび形状に打ち抜かれ得る好適な厚さのフィルムの形態であり得る。この押出物は、最終薬学的生成物または組成物を得るためのさらなる処理工程で使用され得る。薬学的組成物の押出物は、患者に投与され得る最終組成物を得るために、乾燥されるか、形成されるか、ミリングされるか、ふるい分けされるか、またはこれらのプロセスの任意の組合せであり得る。そのようなプロセスは、常用的であり、当技術分野において公知であり、最終薬学的生成物または栄養補助食品生成物を得るために特定の生成物を製剤化することを含む。さらに、得られた薬学的組成物の押出物は、最終錠剤を得るために、錠剤押圧を使用して加工され得る。さらに、これは、カプセルを形成するか、または錠剤に押圧するために、ミリングされ、1つまたは複数の追加の賦形剤と組み合わされ得る。得られた薬学的組成物はまた、シロップ、懸濁液、エマルジョンまたは溶液を得るために、溶媒に溶解されてもよい。
【0089】
B. 微粒子化およびジェットミリング
本出願で使用される場合、薬学的組成物は、「微粒子化」され得、これは、典型的には10μm未満、好ましくは0.5~5um、さらに好ましくは1~3umの非常に微細な粒子に分解された活性剤などの物質を指す。物質は、ミリング、粉砕または圧砕によって微粒子化され得る。ミリングは、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、エアジェットミル、ボールミル、湿式ミル、高圧均質化または極低温ミルによって行われ得る。
【0090】
いくつかの局面では、圧縮ガスのジェットを使用して粒子を互いにまたはミルの壁に衝突させ、それによって、粒子を微粉状にすることによって粒径を減少させるための装置または方法である「エアジェットミル」。エアジェットミルを使用して粒子を微粒子化してもよい。Aljet Model 00 Jet-O-Mizer(商標)(Fluid Energy,Telford,PA)などのエアジェットミルが市販されている。
【0091】
あるいは、薬学的組成物は、円筒の内部に関心対象の粒子と粉砕媒体とを加え、円筒を回転させることによって粒径を減少させるための装置または方法である「ボールミル」に供され得る。関心対象の粒子は、円筒が回転するにつれて円筒の外部に沿って粉砕媒体が上昇および下降するにつれて分解される。
【0092】
さらに、薬学的組成物は、液体および粉砕媒体を含む媒体を収容する撹拌機を有する装置に関心対象の粒子を加えることによって粒径を減少させるための装置または方法である「湿式ミル」または「媒体ミル」に供され得る。関心対象の粒子を加え、撹拌機が回転すると、それが分散するエネルギーにより、粉砕媒体と関心対象の粒子とが接触し、関心対象の粒子を分解する。
【0093】
他の態様では、薬学的組成物は、圧力および機械的力の両方を組み合わせて関心対象の粒子を破壊する装置に関心対象の粒子を加えることによって粒径を減少させるための装置または方法である「高圧均質化」に供され得る。高圧均質化で使用される機械的力は、とりわけ、衝撃、剪断およびキャビテーションを含み得る。
【0094】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書において使用される場合、用語「極低温ミル」は、ドライアイス、液体窒素または他の極低温液体を用いて関心対象の粒子を最初に冷却し、続いて、関心対象の粒子をミリングしてサイズを小さくすることによって粒径を減少させるための装置または方法を指す。
【0095】
C. 薄膜凍結
したがって、一局面では、本開示は、薄膜凍結プロセスを使用して調製され得る薬学的組成物を提供する。薄膜凍結を使用して薬学的組成物を調製する方法は、いずれも参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第2010/0221343号、Watts,et al.,2013、Engstrom et al.2008、Wang et al.2014、Thakkar at el.2017、O'Donnell et al.2013、Lang et al.2014a、Lang et al.2014b、Carvalho et al.2014、Beinborn et al.2012a、Beinborn et al.2012b、Zhang et al.2012、Overhoff et al.2009、Overhoff et al.2008、Overhoff et al.2007a、Overhoff et al.2007b、Watts et al.2010、Yang et al.2010、DiNunzio et al.2008、Purvis et al.2007、Liu et al.2015、Sinswat et al.2008、および米国特許第8,968,786号に記載されている。いくつかの態様では、これらの方法は、薬学的組成物の成分を溶媒に溶解して、薬学的混合物を形成する工程を含む。溶媒は、水または有機溶媒のいずれであってもよい。使用され得る有機溶媒のいくつかの非限定的な例には、揮発性有機溶媒、例えば、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、tert-ブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタンまたはそれらの組合せが挙げられる。いくつかの態様では、薬学的混合物は、100mg/mL未満の治療剤および賦形剤を含有し得る。薬学的混合物は、100mg/mL未満、90mg/mL未満、80mg/mL未満、70mg/mL未満、60mg/mL未満、50mg/mL未満、40mg/mL未満、30mg/mL未満、20mg/mL未満、17.5mg/mL未満、15mg/mL未満、12.5mg/mL未満、10mg/mL未満、7.5mg/mL未満、5mg/mL未満、2.5mg/mL未満もしくは1mg/mL未満、またはその中の導出可能な任意の範囲を含有し得る。
【0096】
この薬学的混合物は、薬学的混合物を凍結させる温度の表面に堆積され得る。いくつかの態様では、この温度は、周囲圧力での溶液の凝固点未満であり得る。他の態様では、減圧を表面に適用して、周囲圧力の凝固点未満の温度で溶液を凝固させてもよい。表面はまた、移動コンベア型システム上で回転または移動し、それにより、薬学的混合物が表面上に均一に分布することを可能にしてもよい。あるいは、薬学的混合物は、均一な表面を生成するように表面に適用されてもよい。
【0097】
薬学的混合物を表面に適用した後、溶媒を除去して薬学的組成物を得てもよい。減圧下もしくは高温下での蒸発、または凍結乾燥を含む、溶媒を除去する任意の適切な方法を適用してもよい。いくつかの態様では、凍結乾燥は、減圧および/または低温を含み得る。そのような低温は、25℃~約-200℃、20℃~約-175℃、約20℃~約-150℃、0℃~約-125℃、-20℃~約-100℃、-75℃~約-175℃、または-100℃~約-160℃であってよい。温度は、約-20℃、約-30℃、約-35℃、約-40℃、約-45℃、約-50℃、約-55℃、約-60℃、約-70℃、約-80℃、約-90℃、約-100℃、約-110℃、約-120℃、約-130℃、約-140℃、約-150℃、約-160℃、約-170℃、約-180℃、約-190℃~約-200℃、またはその中の導出可能な任意の範囲である。さらに、溶媒は、500mTorr未満、450mTorr未満、400mTorr未満、375mTorr未満、350mTorr未満、325mTorr未満、300mTorr未満、275mTorr未満、250mTorr未満、225mTorr未満、200mTorr未満、175mTorr未満、150mTorr未満、125mTorr未満、100mTorr未満、75mTorr未満、50mTorr未満もしくは25mTorr未満の減圧下で除去されてもよいか、またはその中の導出可能な任意の圧力範囲で減圧下で除去されてもよい。
【0098】
これらの方法を使用して調製された組成物などは、装置によって処理された際に組成物がさらに小さな粒子に容易に剪断されるような脆い性質を示し得る。これらの組成物は、低いかさ密度またはタップ密度を有し、高い表面積を有するとともに、組成物の改善された流動性を示す。そのような流動性は、例えば、Carr指数または他の同様の測定値によって測定され得る。特に、Carr指数は、粉末のかさ密度と粉末のタップ密度とを比較することによって測定され得る。このような化合物は、好ましいCarr指数を示し得、組成物を二次装置によって処理して薬物を送達した際に、粒子がさらに良好に剪断されて、さらに小さな粒子が得られ得る。
【0099】
III. 定義
特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む(comprising)」と組み合わせて使用される場合の単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つを超える」の意味とも一致する。本明細書において使用される場合、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれ以上を意味し得る。
【0100】
本明細書において使用される場合、用語「薬物」、「薬学的」、「活性剤」、「治療剤」および「治療活性剤」は、ヒトまたは動物に対して治療的効果または薬理学的効果を引き起こし、疾患、障害または他の状態を治療するために使用される化合物を表すために区別なく使用される。いくつかの態様では、これらの化合物は、生物への投与について規制上の承認を受けている。
【0101】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用される。本明細書において使用される場合、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれ以上を意味し得る。
【0102】
用語「組成物」、「薬学的組成物」、「製剤」、「薬学的製剤」、「調製物」および「薬学的調製物」は、本明細書において同義的に、かつ区別なく使用される。
【0103】
疾患もしくは状態を「治療すること」または疾患もしくは状態の治療は、疾患の徴候または症状を緩和するために努力する点で、患者に1つまたは複数の薬物を投与することを含み得るプロトコルを実行することを指す。治療の望ましい効果には、疾患進行速度の低下、病状の改善または緩和、および寛解または予後改善が含まれる。緩和は、疾患または状態の徴候または症状が現れる前、およびそれらが現れた後に起こり得る。したがって、「治療すること」または「治療」は、疾患もしくは望ましくない状態を「予防すること」または疾患もしくは望ましくない状態の「予防」を含み得る。さらに、「治療すること」または「治療」は、徴候または症状の完全な緩和を必要とせず、治癒を必要とせず、具体的には、患者にわずかな影響しか及ぼさないプロトコルを含む。
【0104】
本出願を通して使用される用語「治療上の利益」または「治療的に有効な」は、この状態の医学的治療に関して対象の福利を促進または増強するものすべてを指す。これには、限定されることなく、疾患の徴候または症状の頻度または重症度の低下が含まれる。例えば、がんの治療は、例えば、腫瘍のサイズの減少、腫瘍の浸潤性の減少、がんの増殖速度の減少、または転移の予防を含み得る。がんの治療はまた、がんを有する対象の生存期間を延ばすことを指し得る。
【0105】
「対象」および「患者」は、霊長類、哺乳類および脊椎動物などのヒトまたは非ヒトのいずれかを指す。特定の態様では、対象はヒトである。
【0106】
本明細書において一般的に使用される場合、「薬学的に許容される」は、穏当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、合理的な利益/リスク比に相応した、ヒトおよび動物の組織、器官および/または体液と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0107】
「薬学的に許容される塩」は、上で定義されたように薬学的に許容され、所望の薬理活性を有する、本明細書において開示される化合物の塩を意味する。そのような塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など;または有機酸、例えば、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノ-およびジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、ターシャリーブチル酢酸、トリメチル酢酸などによって形成された酸付加塩が含まれる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応することができる場合に形成され得る塩基付加塩も含まれる。許容される無機塩基には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化カルシウムが含まれる。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが含まれる。本発明の任意の塩の一部を形成する特定のアニオンまたはカチオンは、その塩が全体として薬理学的に許容される限り、重要ではないことが認識されるべきである。薬学的に許容される塩ならびにそれらの調製方法および使用方法の追加の例は、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,and Use(P.H.Stahl&C.G.Wermuth eds.,Verlag Helvetica Chimica Acta,2002)に提示されている。
【0108】
用語「その誘導体」は、単量体糖単位のうちの少なくとも1つが原子または分子基または結合の置換によって修飾されている任意の化学修飾多糖を指す。一態様では、その誘導体は、その塩である。塩は、例えば、ハロゲン化水素酸、硫酸またはリン酸などの好適な鉱酸との塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩またはリン酸塩、好適なカルボン酸、例えば、ヒドロキシル化されていてもよい低級アルカン酸、例えば、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸またはピバル酸、ヒドロキシル化および/またはオキソ置換されていてもよい低級アルカンジカルボン酸、例えば、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸との塩、および芳香族、複素芳香族または芳香脂肪族カルボン酸、例えば、安息香酸、ニコチン酸またはマンデル酸との塩、ならびに好適な脂肪族または芳香族スルホン酸またはN-置換スルファミン酸との塩、例えば、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネートまたはN-シクロヘキシルスルファメート(シクラメート)である。
【0109】
本明細書において使用される用語「溶解」は、固体物質、ここでは活性成分が媒体中に分子形態で分散されるプロセスを指す。本発明の薬学的用量の活性成分の溶解速度は、液体/固体界面、温度および溶媒組成の標準化された条件下で単位時間当たりに溶液中に入る原薬の量によって定義される。
【0110】
本明細書において使用される場合、用語「エアロゾル」は、固体粒子または液体粒子の空気中の分散液であって、比較的空中安定性を有するのに十分に細かい粒径、およびその結果生じる低い沈降速度を有する分散液を指す(Knight,V.,Viral and Mycoplasmal Infections of the Respiratory Tract.1973,Lea and Febiger,Phila.Pa.,pp.2を参照)。
【0111】
本明細書において使用される場合、「吸入」または「肺吸入」は、肺、特定の態様では肺の肺胞領域に到達するように吸入によって薬学的調製物を投与することを指すために使用される。典型的には、吸入は口を通すものであるが、代替的な態様では、鼻を通す吸入を伴い得る。
【0112】
本明細書において使用される場合、「乾燥粉末」は、水性液体に懸濁または溶解していない微粒子組成物を指す。
【0113】
「単純な乾燥粉末吸入器」は、気道に薬剤を送達するための装置を指し、薬剤は、使い捨ての単回用量様式で乾燥粉末として送達される。特定の局面では、単純な乾燥粉末吸入器は、10個未満の作用部を有する。いくつかの局面では、単純な乾燥粉末吸入器は、分散エネルギーが外部エネルギー源の印加によってではなく患者の吸入力によって提供されるように受動吸入器である。
【0114】
「中央粒径」は、レーザ回折または画像分析によって測定される幾何学的直径を指す。いくつかの局面では、粒子の少なくとも50体積%または80体積%のいずれかが、中央粒径範囲内にある。
【0115】
「空気力学的質量中央粒子径(MMAD)」は、空気力学的直径(幾何学的直径とは異なる)を指し、レーザ回折によって測定される。
【0116】
用語「非晶質」は、分子が明確な格子パターンで組織化されていない非結晶性固体を指す。あるいは、用語「結晶性」は、固体内の分子が明確な格子パターンを有する固体を指す。組成物内の活性剤の結晶化度は、粉末X線回折によって測定される。
【0117】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「含む(comprising)」(および含む(comprising)の任意の形態、例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する(having)」(および有する(having)の任意の形態、例えば、「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(および含む(including)の任意の形態、例えば、「含む(includes)」および「含む(include)」)、または「含有する(containing)」(および含有する(containing)の任意の形態、例えば、「含有する(contains)」および「含有する(contain)」)は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法工程を排除しない。
【0118】
本明細書において使用される場合、用語「有意」(および有意の任意の形態、例えば「有意に」)は、2つの値の間の統計的な差を暗示することを意味するのではなく、パラメータの重要性、または差の範囲を暗示することのみを意味する。
【0119】
本明細書を通じて、用語「約」は、値が、装置の誤差の固有の変動、値を決定するために採用される方法、または試験対象もしくは実験的試験間に存在する変動を含むことを示すために使用される。別の定義が適用可能でない限り、用語「約」は、示された値の±5%を指す。
【0120】
本明細書において使用される場合、特定の成分に関して「を実質的に含まない(substantially free of)」または「実質的に含まない(substantially free)」は、本明細書において、その特定の成分のいずれも組成物に意図的に配合されておらず、および/または汚染物質としてもしくは微量でのみ存在することを意味するために使用される。あらゆる格納容器、副生成物および他の材料の総量は、2%未満の量でその組成物内に存在する。用語「を本質的に含まない(essentially free of)」または「本質的に含まない(essentially free)」は、組成物が1%未満の特定の成分を含有することを表すために使用される。用語「を全く含まない(entirely free of)」または「全く含まない(entirely free)」は、0.1%未満の特定の成分を含有する。
【0121】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるとしても、特定の実施例に示される数値は、実行可能な程度に正確に報告される。ただし、任意の数値は、それぞれの試験測定値およびパラメータに見出された標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含む。
【0122】
本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、本開示の趣旨および範囲内の様々な変更および修正は、この詳細な説明から当業者には明らかになると考えられるため、詳細な説明および具体的な例は、本開示の好ましい態様を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。
【実施例
【0123】
IV. 実施例
本開示のさらに良好な理解を容易にするために、具体的な態様の以下の実施例が与えられる。以下の実施例に開示される技術は、本開示を実施する際に良好に機能するために本発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることを当業者は理解すべきである。ただし、当業者は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示される具体的な態様では多くの変更を行うことができ、依然として同様または類似の結果を得ることができることを本開示に照らして理解すべきである。以下の実施例は、本開示の全範囲を限定または定義するために決して読まれるべきではない。
【0124】
実施例1-非晶質固体分散体としてのニクロサミドの経口製剤
A. 経口製剤の調製
150rpmのスクリュー速度を有するHAAKE Minilab IIマイクロ押出機を使用して、180℃で製剤を加工した。冷却した押出物を顆粒にミリングし、45μmのふるい上に保持されたが150μmのふるいを通過した粒子をさらなる試験に使用した。200mLの容器およびそれらのパドルを使用するHanson SR8-Plus装置(Hanson Research Co.,USA)内で、異なる薬物負荷でポリマー-ニクロサミド押出物に対して溶解試験を行った。製造業者の仕様に従って、FaSSIF媒体(Biorelevant.com Ltd.,UK)を調製した。80mgのニクロサミドを含有する製剤を150mLのFaSSIF媒体に加え、装置を37.0±0.5℃および100rpmに設定した。サンプリング時間は、5、10、15、30、60および120分とした。試料を回収する際に、これらを0.2μmのフィルタに通した。次いで、HPLC分析のために、0.5mLの試料を1mLのアセトンおよび0.5mLのアセトニトリルと混合した。
【0125】
B. HPLC分析
1mL/分の流速でZORBAX(登録商標)SB-C18カラム(4.6×250mm、5μm)(Agilent(登録商標),USA)を備えたDionex(登録商標)HPLCシステム(Thermo Fisher(登録商標)Scientific Inc.,USA)を使用して、331nmで試料を測定した。2つの移動相を使用し、移動相Aは0.3%のギ酸水溶液、移動相Bはアセトニトリルとし、これらを40:60の比で混合した。
【0126】
C. 経口製剤の溶解分析
ニクロサミドを含むKollidon VA64(登録商標)の試料を物理的に混合し、別の試料を上記のようにホットメルト押出機によって加工した。これらの2つの試料をHPLC分析に供して、組成物内の薬物の溶解を決定した。組成物へのニクロサミドの顕著な溶解を示すHPLC分析を図1に示す。次いで、組成物内の薬物の量を10%薬物負荷~50%薬物負荷で変化させ、これらはいずれも、押出物内のニクロサミドの高い溶解を示した(図3)。溶解アッセイでは、いくつかの界面活性剤組成物を試験して、ニクロサミド濃度を維持する能力を決定した。図4は、3つ全部の組成物がニクロサミドを保持する能力を示したが、TPGSを含む組成物が最も高い全体的な溶解を示したことを示す。最後に、TPGSを5%に維持しながら薬物負荷を35%に減少させると、2時間にわたって持続する高い溶解が示された。図2を参照されたい。2つの他のポリマー賦形剤を試験したところ(Kollidon 30(登録商標)およびSolvPlus(登録商標))、ニクロサミドの溶解を示したが、Kollidon VA64(登録商標)よりも低い程度であった(図5および図6)。
【0127】
D. ミリングしたニクロサミド押出物の薬物動態評価
CD-1マウスに、10ml/kgに相当する体積の0.5% Methocel A4Mに懸濁した500mg/kgの用量の結晶性ニクロサミド、または10mL/kgに相当する体積のpH6.5 FaSSIF媒体(Biorelevant.com Ltd)に懸濁した250mg/kgの用量のミリングしたニクロサミド押出物のいずれかを投与した。緩衝塩である水酸化ナトリウムおよびリン酸一ナトリウム(無水)が、それらの指示された濃度の2倍で存在することを除いて、指示通りにpH6.5のFaSSIF媒体を調製した。投与後0.25、0.5、1、2、4 6および8時間に、マウスから血漿試料を採取し、LC/MS/MSによってニクロサミド濃度について分析した。図7および表1に示すデータを参照されたい。
【0128】
(表1)ニクロサミドのASD製剤の薬物動態データ
【0129】
D. 溶解中の粒径分析
溶解容器から採取した試料を13,000rpm(14,300rcf)で10分間遠心分離した。次いで、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd.,Worcestershire,UK)を使用して上清を測定した。分散剤は水であり、試料を37℃で平衡化した後、自動測定持続時間を用いて173°後方散乱を使用して3連で測定した(図8)。
【0130】
サイドバイサイド拡散セル(PermeGear,Hellertown,PA,USA)を使用して、0.03μmのポリエーテルスルホン膜(Sterlitech Corp.,Kent,WA,USA)を通るニクロサミドASDの拡散を評価した。それぞれ34mLのFaSSIFおよびデカノールによって、ドナー細胞およびレシーバー細胞を満たした。52.1mgのニクロサミドASDおよび18.2mgのニクロサミド無水物を37℃および850rpmでドナー細胞に加えた。5、10、15、30、60、120および180分でレシーバー細胞から試料を収集した。上記と同じHPLC法を使用して、試料を測定した。図9を参照されたい。
【0131】
同じ装置を使用して、2段階でpHシフト溶解試験を行った。最初に、230mgのニクロサミドASDを30mLのHCl 0.01Mに30分間注ぎ入れた。その後、150mLのFaSSIFを容器に加え、180mLの体積を完成させ、前述の溶解試験の同じ時点で試料を採取した。必要に応じて、粒子および未結合薬物を試料から分離するために、Airfuge(商標)Air-Driven Ultracentrifuge(Beckman Coulter,Palo Alto,CA,USA)を30psiで30分間使用した。次いで、HPLCを使用して上清を測定した。図10を参照されたい。
【0132】
E. 動物試験
Pharmaron(Ningbo,China)で経口薬物動態分析を行った。試験プロトコルは、Pharmaronの動物実験委員会(IACUC)ガイドラインに従って承認され、実施された。(IACUC;プロトコル番号AUP-PK-R-06012019)。この試験では、強制経口投与によって、10mg/kgのニクロサミド用量で1群当たりラット5匹(それぞれ体重=205.8±2.9g)にニクロサミド無水物およびニクロサミドASDを投与した。各群に、1.5mg/mLのニクロサミド無水物のFaSSIF懸濁液、1.5mg/mLのニクロサミドASDのFaSSIF懸濁液、およびニクロサミドASDを含有するサイズ9のミニカプセル(Braintree Scientific,Braintree,MA,USA)をそれぞれ投与した(合計3群)。この最後の群では、カプセルサイズ9に、60%のニクロサミドASDと、15%のEXPLOTAB(著作権)と、25%の重炭酸ナトリウムとを含有させた。粉末を乳鉢および乳棒によってブレンドし、サイズ9用のカプセル充填漏斗(Torpac,Fairfield,NJ,USA)を使用してカプセルに充填した。Agilent Eclipse(登録商標)XDB-C18カラム(2.1×150mm、5μm)(Agilent,Palo Alto,CA,USA)を備えたAB Sciex Triple Quad 5500 LC/MS/MSを使用して、0.6mL/分の流速で試料を測定した。2つの移動相を使用した。移動相Aは0.1%ギ酸水溶液であり、移動相Bは5%水と95%アセトニトリル(0.1%ギ酸)との混合物であった。これらを表2に示すように混合した。次いで、タンパク質沈殿用の内部標準混合物を含有する200μLのメタノールに、5μLのメタノールを含む50μLの血漿を加えた。試料を30秒間ボルテックスし、4000rpmおよび℃で15分間遠心分離を行った。その後、上清を水で3倍に希釈し、HPLCに2μL注入した。薬物動態プロファイル試験の結果を図11および表3に示す。さらに、得られた粒子を溶解させ、遠心分離後の得られた上清を分析した。このデータから、FaSSIFへの溶解は、さらに小さなナノ粒子を生成するのに役立つことが留意され得る。表4を参照されたい。
【0133】
(表2)血漿試料の分析に使用した移動相勾配
【0134】
(表3)FaSSIFに懸濁したニクロサミド無水物、FaSSIFに懸濁したニクロサミドASD、およびカプセル内のニクロサミドASDの(ラットにおける)薬物動態パラメータプロファイル(n=5)
【0135】
(表4)13,000rpm×10分での遠心分離後の上清の平均粒径、PDIおよびゼータ電位。試料を異なる時点で溶解装置から採取した。
【0136】
実施例2-ニクロサミドの吸入製剤
A. 微粒子化ニクロサミド製剤
呼吸可能な範囲内の粒径分布になるように、実験室規模のAljet(登録商標)エアジェットミル(モデル00 Jet-O-Mizer、Fluid Energy,Telford,PAとしても知られている)内で、ニクロサミドバルク粉末をエアジェットミリングした。80psiの粉砕圧力(両ノズル)、80psiの供給圧力、および1g/分未満の供給速度(0.5~1g/分)にエアジェットミルを設定した。1つのバッチでは、サイクロンおよび収集容器を使用して粉末を収集した。第2のバッチでは、サイクロンを用いず、収集バッグ内に粉末を直接ミリングした。例示的なジェットミルを図12に示す。
【0137】
次いで、粒径および分散特性を評価した。1、2および3バールの分散圧力でRODOS分散を使用するHELOSレーザ回折機器(Sympatec GmbH,Germany)を用いて、各ミリングバッチの幾何学的粒径分布を評価した。粉末分散およびトリガー活性化後、5~10msごとに測定を行った。5~25%の光学密度の測定値を平均して、粒径分布を決定した。分析結果を表5に示す。1バールの分散圧力でRodosを使用して分散された微粒子化ニクロサミドの例示的な粒径分布。図13も参照されたい。
【0138】
(表5)微粒子化粒子の特性評価および分散
【0139】
Plastiape S.p.a(Osnago,Italy)から譲渡された中抵抗性Monodose RS01 DPIを利用して、インビトロ空気力学的性能試験を行った。サイズ3ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルは、ACGによって提供された。カスケードインパクション(cascade impaction)試験で使用したRS01 Monodose DPIの耐性を、USP Chapter 601の装置Bによる投与量サンプリングユニットを使用して決定し、0.22kPa 0.5分/Lであると計算した。Next Generation Impactor(NGI)(MSP Corporation,MN,USA)を用いて、ミリングしたニクロサミドに関するカスケードインパクション試験を行った。式1を使用してステージ1~7のカットオフ直径を決定し、式2を使用してMOCカットオフ直径を決定した:
式中、D50,Qは、流速Qにおけるカットオフ直径であり、下付き文字nは、Qn=60L/分の保管基準値を指し、指数Xの値は、Marpleらによって決定される保管NGIステージのカットサイズ-流速計算を指す。粒子の跳ね返りおよび再気流同伴を低減するために、1%(v/v)グリセリンのエタノール溶液によってNGIプレートをコーティングし、乾燥させた。
【0140】
USP仕様に従って、装置を通して4Lの空気を引き込むのに十分な持続時間(2.7秒)で、4kPaの圧力降下(中抵抗性RS01装置を用いて88L/分に相当)で、これらの試料に対してカスケードインパクションを行った。ミリングしたニクロサミド分散液の流速依存性を決定するために、3.8秒の持続時間にわたって、装置を通る2kPaの圧力降下(64L/分に相当)でもカスケードインパクションを行った。
【0141】
80%アセトニトリル:20%脱イオン水で洗浄することによって、カプセル、アダプタ、誘導ポート、ステージ1~7、およびマイクロオリフィスコレクタ(MOC)から、得られた分散した粉末を収集した。水で湿らせたスワブを使用して吸入器装置から粉末を収集し、続いてスワブをすすぎ、80%アセトニトリル:20%脱イオン水溶液で希釈した。Tecan Infinite1 200 PROマルチモードマイクロプレートリーダ(Tecan Systems,Inc.,San Jose,CA,USA)を使用して波長331nmでのUV吸光度を測定することによって、各試料内の薬物質量を定量した。収集された薬物の総質量の割合として、装置から放出された総薬物として、放出画分(EF)を計算した。微粒子(<5μm)画分(FPF 5μm/EF)および微粒子(<3μm)画分(FPF 3μm/EF)は、5および3μm未満の空気力学的直径を有すると予測される放出用量の割合に対応した。微粒子用量(FPD)とは、5および3μm未満の空気力学的直径を有すると予測される、プレートから収集された薬物の総質量である。FPF 5μm/EF値およびFPF 3μm/EF値は、縦座標としてNGIステージの下流に堆積した放出用量の累積百分率、および横座標としてそのステージの粒子カットオフサイズを用いて、グラフから補間した。
【0142】
空気力学的直径(ログスケール)に対して、記載された空気力学的サイズカット(Probitsとして表される)未満の質量の累積百分率をプロットすることによって、各試料について、空気力学的粒径分布(APSD)の質量に基づく中点を表す空気力学的質量中央粒子径(MMAD)、およびAPSDの広がりを表す幾何標準偏差(GSD)を決定した。分布は正規対数であった。線形回帰を行って、50%パーセンタイル(Probit 5)に対応する空気力学的直径を決定してMMADを決定し、15.87%パーセンタイル(Probit 4)および84.13%パーセンタイル(Probit 6)に対応する空気力学的直径を決定してGSDを計算した。これらの結果を表6に示す。
【0143】
(表6)微粒子化ニクロサミドの吸入特性
【0144】
出発ニクロサミド材料および微粒子化材料に対してMiniflex(登録商標)600(Rigaku,Woodlands,TX,USA)を使用して、粉末X線回折を得た。加速電圧40kVおよび15mAを用いて、0.02°/分の工程サイズ、および2°/分の連続走査速度で、5°から40°まで回折パターンを走査した。図14を参照されたい。
【0145】
i. ウイルス力価の低下における微粒子化ニクロサミドの評価
Vero細胞を6ウェルプレートに播種し、SARS-CoV-2に感染させることによって、微粒子化ニクロサミドの有効性を試験した。次いで、薬物5mgを秤量することによって、粉末の1mg/mL懸濁液を調製する。約5mLの細胞培養培地を滅菌環境内で加えた。粉末の塊が残らず破壊されるまで、ボルテックスおよび音波処理を使用して分散懸濁液を生成した。懸濁液は濾過しなかった。懸濁液は、発泡を低減するために遠心分離してもよいが、さらに希釈する前に粒子を再分散させるために音波処理すべきである。この時点から、作業はいずれも滅菌環境で行った。NIC-M懸濁液を10倍希釈して、1mLの100μg/mL懸濁液(ストックA)を生成した。次いで、100μg/mL懸濁液を10倍希釈して、1mLの10μg/mL懸濁液(ストックB)を生成する。ストックAおよびBから希釈して、以下の表7の濃度を達成する。次いで、図23Aに示すように、細胞培養培地を、調製した懸濁液に置き換えた。プレートを3連で調製する。次いで、投与の24時間後にウイルス生存率を試験した。処理群から得られた結果を以下の表8に示す。
【0146】
(表7)微粒子化NIC粉末のインビトロ評価のための試験デザイン
【0147】
(表8)NIC微粒子化粉末を用いた24時間曝露の結果
【0148】
B. クロファジミンとの微粒子化ニクロサミドの組合せ
ニクロサミドとクロファジミンとのさらなる組成物を調製した。Model 00 Jet-O-Mizerエアジェットミルを使用して、2.6μmのD50カットオフ直径、および5.5μmのD90カットオフ直径に、ニクロサミドを微粒子化した。2.2μmのD50カットオフ直径および5.1μmのD90カットオフ直径に、クロファジミンを微粒子化した。以下の質量比、すなわち、4:1ニクロサミド-クロファジミン、1:1ニクロサミド-クロファジミン、および1:9ニクロサミド-クロファジミンで、粉末を物理的にブレンドした。粉末の物理的ブレンドは、Turbulaブレンダを使用して、ブレンドからの粉末アリコートについて5%未満の変動係数パーセンテージをもたらすのに十分な時間の長さにわたって行った。
【0149】
これらの組成物のエアロゾル化特性を表9に記載する。微粒子化ニクロサミド製剤について先に記載したように、インビトロ空気力学的試験を行った。
【0150】
(表9)ニクロサミドおよびクロファジミンの微粒子化組成物
【0151】
ii. ウイルス力価の低下における、クロファジミンを伴うニクロサミドの評価
Vero細胞を6ウェルプレートに播種し、標準プロトコルを使用してSARS-CoV-2に感染させることによって、クロファジミンを伴うニクロサミドの有効性を試験した。次いで、粉末5mgを秤量することによって、9:1 CFZ-NIC粉末の1mg/mL懸濁液を調製した。これに、5mLのDMEM細胞培養培地を滅菌環境内で加えた。粉末の塊が残らず破壊されるまで、ボルテックスおよび音波処理を使用して分散懸濁液を生成する。懸濁液は濾過しなかった。懸濁液は、発泡を低減するために遠心分離してもよいが、さらに希釈する前に音波処理して粒子を再分散させた。懸濁液をDMEMでさらに希釈して、表10に列挙した濃度を達成した。次いで、細胞培養培地を、図23Bに従って、調製した懸濁液に置き換えた。プレートを3連で調製した。投与の24時間後にウイルス生存率を試験した。
【0152】
(表10)9:1 CFZ-NIC粉末ブレンドのインビトロ評価のための試験デザイン
【0153】
最高濃度の薬物による処理(2μg/mLおよび1μg/mLで投与したNIC)は、細胞死をもたらしたため、これ以上評価しなかった。他の処理群から得られた結果を表11に要約する。
【0154】
(表11)9:1 CFZ:NIC粉末製剤を用いた24時間曝露の結果
【0155】
C. 脆性マトリックスニクロサミド粒子
以下の表に従って、4つの異なる炭水化物を伴うニクロサミドの製剤を調製した。ニクロサミドを1-4ジオキサンに溶解した。別個に、それぞれの炭水化物を脱イオン水に溶解した。次いで、2つの溶液をガラスバイアル内で一緒に混合し、透明になるまで振盪した。
【0156】
(表12)成分の表
【0157】
-80±10℃に設定したローリングドラムにドラムの表面から10cmの高さで(19ゲージ針を通して約2mL/分で)滴加することによって、凍結した薄膜になるように薄膜凍結することによって、溶液i~ivを調製した。ドラムをブレードを用いて200rpmで回転させて、凍結した膜を製造後に削り取った。凍結した膜を液体窒素中に直ちに収集し、凍結乾燥するまで-80℃で維持した。凍結乾燥中の一次乾燥を-40℃および100mTorrで1200分間行い、続いて、二次乾燥のために1200分間にわたって25℃まで温度を上げた。25℃および100mTorrでの二次試験を最低1200分間にわたって行った。
【0158】
Next Generation Impaction試験(NGI)によって、製剤i~ivのインビトロ空気力学的性能試験を行った。6.00+-0.18mgの製剤を充填したPlastiape S.p.a(Osnago,Italy)によるRS00乾燥粉末吸入器装置を使用して、4kPaの圧力降下を提供するのに十分な流速である58L/分で、装置を通して4Lの空気を引き込むのに十分な時間である4.2秒間にわたって、製剤の試験を行った。
【0159】
80%アセトニトリル:20%脱イオン水で洗浄することによって、カプセル、アダプタ、誘導ポート、ステージ1~7、およびマイクロオリフィスコレクタ(MOC)から、得られた分散した粉末を収集した。水で湿らせたスワブを使用して吸入器装置から粉末を収集し、続いてスワブをすすぎ、80%アセトニトリル:20%脱イオン水溶液で希釈した。Tecan Infinite1 200 PRO(登録商標)マルチモードマイクロプレートリーダ(Tecan Systems,Inc.,San Jose,CA,USA)を使用して波長331nmでのUV吸光度を測定することによって、各試料内の薬物質量を定量した。収集された薬物の総質量の割合として、装置から放出された総薬物として、放出画分(EF)を計算した。微粒子(<5μm)画分(FPF 5μm/EF)および微粒子(<3μm)画分(FPF 3μm/EF)は、5および3μm未満の空気力学的直径を有すると予測される放出用量の割合に対応した。FPF 5μm/EF値およびFPF 3μm/EF値は、縦座標としてNGIステージの下流に堆積した放出用量の累積百分率、および横座標としてそのステージの粒子カットオフサイズを用いて、グラフから補間した。微粒子用量(FPD)とは、5および3μm未満の空気力学的直径を有すると予測される、プレートから収集された薬物の総質量である。表13を参照されたい。
【0160】
(表13)脆性マトリックス薬学的組成物の分散特性
【0161】
出発ニクロサミド材料および薄膜凍結製剤に対してMiniflex(登録商標)600(Rigaku(登録商標),Woodlands,TX,USA)を使用して、粉末X線回折を得た。加速電圧40kVおよび15mAを用いて、0.02°/分の工程サイズ、および2°/分の連続走査速度で、5°から40°まで回折パターンを走査した。図15を参照されたい。
【0162】
これらの組成物を調製した後、疎水性賦形剤とともに上記の親水性賦形剤を含有する追加の組成物。これらの組成物の製造のための調製では、有機相を含むTBAに、ニクロサミドおよび疎水性賦形剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)を溶解した。親水性賦形剤(例えば、マンニトール、ロイシン、Captisol(登録商標)(スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン)、ラクトース一水和物)を水に溶解し、水相を形成した。次いで、表14に示すように、水相および有機相を混合した。その後、-120℃に冷却した回転する極低温冷却ドラム上に混合溶液を滴下した。凍結固体を液体窒素を用いて収集し、凍結乾燥するまで-80℃の冷凍庫で保存した。一次乾燥プロセスを-40℃で20時間行った後、温度を20時間かけて25℃まで直線的に上昇させ、続いて、温度を25℃で20時間保持した。凍結乾燥プロセス中、圧力を100mTorrに維持した。
【0163】
(表14)各DPI製剤の水相および有機相の組成。(Mg St=ステアリン酸マグネシウム、DSPC=1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)
【0164】
次いで、これらの組成物を試験したところ、上に概説した、以下の表に列挙されるエアロゾル性能を示している。表15を参照されたい。
【0165】
(表15)スクリーニングした製剤のエアロゾル性能
【0166】
i. ハムスターにおける薬物動態試験
TFF製造のための溶液の調製では、有機相を含むTBAにニクロサミドを溶解した。親水性賦形剤、マンニトールおよびロイシンを水に溶解し、水相を形成した。次いで、表16に示すように、水相および有機相を混合した。その後、-120℃に冷却した回転する極低温冷却ドラム上に混合溶液を滴下した。凍結固体を液体窒素を用いて収集し、凍結乾燥するまで-80℃の冷凍庫で保存した。SP VirTis Advantage Pro(登録商標)棚凍結乾燥機(SP Industries,Inc.,Warminster,PA,USA)で凍結乾燥を行った。一次乾燥プロセスを-40℃で20時間行った後、温度を20時間かけて25℃まで直線的に上昇させ、続いて、温度を25℃で20時間保持した。凍結乾燥プロセス中、圧力を100mTorrに維持した。
【0167】
(表16)薄膜凍結によって作製された吸入粉末の組成、ならびに該プロセスで使用したそれらの対応する水相および有機相
【0168】
i. シリアンハムスター
雌シリアンハムスターを対象に、単回用量の薬物動態試験を行った。動物実験は、テキサス大学オースティン校の動物実験委員会(IACUC;プロトコル番号:AUP-2019-0235)によって承認された。雌シリアンハムスター35匹の2つのコホート(35~42日齢、および108±8gの平均体重)に、それぞれ8.7または17.4mg/kgのニクロサミド吸入粉末(それぞれ145および290μg/Kgの純粋なニクロサミド)を投与した。粉末は前述と同じプロトコルを使用して製造したが、DP-4注入器の最小充填重量(1mg)を満たしながらハムスターの体重に対して適切な量を投与するのを容易にするために、ニクロサミドの濃度を混合物中で1.66%(w/w)に低下させた。投与前に、大きな粒子を分解し、使用中に装置が詰まるのを防ぐために、No.200のふるい(75μmの開口部)を使用して、ニクロサミド吸入粉末をふるい分けした。前述のラットに対する方法と同様に、ノーズコーンを使用して、麻酔の誘導のために4%でイソフルランを投与し、続いて、その維持のために2%でイソフルランを投与した。ハムスターを仰向けに置き、絹を使用して45°で固定した。Penn-Century乾燥粉末注入器(商標)DP-4(Penn-Century Inc.,Philadelphia,PA,USA)を使用して、粉末を気管内投与した。装置を3回作動させて、1回の作動ごとに200μLの空気を送達した。ニクロサミド吸入粉末の投与後、各時点についてハムスター5匹を使用して、0.25、0.5、1、2、4、8および24時間の時点で心臓穿刺によって血液試料を採取した。BDマイクロコンテナ(登録商標)(参照番号365985、Becton Dickinson(登録商標),Franklin Lakes,NJ,USA)に試料を加え、10,000rpmで3分間遠心分離して、血漿を分離し、HPLC-MSを使用して定量した。肺組織の場合、肺を洗浄し、PBSを用いて灌流し、取り出し、直ちに凍結した。分析の前に、3.5gのジルコニア/シリカビーズ(BioSpec Products,Bartlesville,OK,USA)とともに、スクリューキャップ(National Scientific Supply,Claremont,CA,USA)を備えたBioStor(商標)バイアルに肺組織全体を入れた。組織を4,800rpmで20秒間均質化した。
【0169】
ii. ハムスターの血漿および肺組織におけるニクロサミドの定量
0.1~1000ng/mLの範囲でブランク血漿溶液にニクロサミド標準溶液を添加することによって、キャリブレータを調製した。200μLの血漿試料およびキャリブレータに、内部標準13C6ニクロサミド(ニクロサミド-(2-クロロ-4-ニトロフェニル-13C6)水和物(Sigma-Aldrich(登録商標),Saint Louis,MO,USA)の100ng/mLメタノール溶液200μLを加えた。次いで、それらをボルテックスし、12,000rpmで15分間遠心分離した。LC/MS/MS分析によって上清を測定した。肺組織の場合、0.5~10,000g/mLの範囲でブランク肺組織にニクロサミド標準溶液を添加することによって、キャリブレータを調製した。秤量した肺試料およびキャリブレータに、100ng/mLの内部標準、13C6ニクロサミド1000μLを加えた。次いで、それらをボルテックスし、12,000rpmで15分間遠心分離した。LC/MS/MS分析によって上清を測定した。Agilent(登録商標)G1367Dオートサンプラ、G4220Aバイナリポンプ、G1316Bカラムコンパートメント、およびG6470Aトリプル四重極質量分析計を使用して分析を行った。Agilent(登録商標)poroshellカラム2.1×50mm、2.7μmカラム(Agilent Technologies(登録商標),Wilmington,DE,USA)を用いて、5分間で0から95%Bの勾配(A=0.025%TFAを含む水、およびB=0.025%TFAを含む95%アセトニトリル水溶液)を使用して、最終条件で流速0.35mL/分で1分間保持して、ニクロサミドを分離した。ラン後のカラム平衡化は4分であった。分析のためにカラムを40℃に保持した。MSのための注入量は10μLであった。
【0170】
注目すべきことに、吸入粉末は、約1μmのMMADを達成し、カスケードインパクタの最終ステージに到達することができた(図18および図19)。SARS-CoV-2に感染している可能性がある患者の治療を考慮すると、乾燥粉末製剤を用いて肺深部領域にニクロサミドを送達することが望ましく、この製剤はさらなる発展を保証する。
【0171】
ii. ウイルス力価の低下における脆性マトリックスニクロサミドの評価
脆性マトリックスニクロサミドを評価するために、Vero細胞を6ウェルプレートに播種し、SARS-CoV-2に感染させた。次いで、粉末10mgを秤量することによって、粉末の2mg/mL懸濁液を調製した。これに、5mLの細胞培養培地を滅菌環境内で加えた。粉末の塊が残らず破壊されるまで、ボルテックスおよび音波処理を使用して分散懸濁液を生成した。懸濁液は濾過すべきではない。懸濁液は、発泡を低減するために遠心分離してもよいが、さらに希釈する前に音波処理して粒子を再分散させた。この時点から、作業はいずれも滅菌環境で行った。NIC-TFF懸濁液を10倍希釈して、1mLの100μg/mLニクロサミド懸濁液(ストックA)を生成した。次いで、再び100μg/mL懸濁液を10倍希釈して、1mLの10μg/mLニクロサミド懸濁液(ストックB)を生成した。表17に従って、細胞処理のために希釈液を調製した。次いで、図23Cに従って、細胞培養培地を、調製した懸濁液に置き換えた。プレートを3連で調製する。投与の24時間後にウイルス生存率を試験した。他の処理群から得られた結果を以下の表18に要約する。
【0172】
(表17)NIC-TFF粉末のインビトロ評価のための試験デザイン
【0173】
(表18)NIC-TFF粉末製剤を用いた24時間曝露の結果
【0174】
D. 噴霧化ニクロサミド製剤
I. 試料1
1.5mg/mL、3mg/mLおよび6mg/mLの濃度で、微粒子化ニクロサミド(NIC-M)の懸濁液を調製した。懸濁液はいずれも、0.2mg/mLポリソルベート80を含有する0.9%w/v塩化ナトリウム(生理食塩水;NS)を用いて調製した。食品医薬品局(FDA)によって吸入製品について現在承認されている最大濃度であるため、この濃度のポリソルベート80を選択した。
【0175】
以下のプロトコルを使用して懸濁液を調製した:
a. 0.2mg/mLのポリソルベート80の最終所望濃度を達成するのに十分な体積のポリソルベート80、10mg/mLのストック溶液を用いて、NIC-M粉末を濡らす。
b. それに、懸濁液の最終所望体積の半分に相当する体積のNSを加える。ウルトラソニケータを使用して分散媒体への粉末の組み込みを補助しながら、よく混合する。
c. 鋸歯ブレード付きロータステータホモジナイザを用いて、30,000RPMで1分間懸濁液を均質化する。
d. 残りの体積のNSを用いてホモジナイザブレードをすすいで、最終所望体積の懸濁液を得る。再び30,000RPMで1分間均質化する。
e. 懸濁液を118xgで5分間遠心分離して、泡を減らす
f. 懸濁液を音波処理して、粒子を再分散させる
【0176】
懸濁液の粒径分布を図11に示す。
【0177】
懸濁液の得られた粒径分布は噴霧化および肺堆積に適していなかったため、これらの懸濁液はネブライザを使用してさらに試験しなかった。
【0178】
II. 試料2
3mg/mLおよび5mg/mLの濃度で、微粒子化ニクロサミド(NIC-M)の懸濁液を調製した。懸濁液はいずれも、様々な濃度のウシ血清アルブミン(BSA)を含有する0.9%w/v塩化ナトリウム(生理食塩水;NS)を用いて調製した。例示的なタンパク質としてBSAを選択した。実際には、免疫学的応答を引き起こさない異なる治療用タンパク質を使用することができる。
【0179】
以下のプロトコルを使用して懸濁液を調製した:
a. NIC-M粉末とBSA粉末とを組み合わせる
b. それに、懸濁液の最終所望体積の80%に相当する体積のNSを加える。ウルトラソニケータを使用して分散媒体への粉末の組み込みを補助しながら、よく混合する。
c. 鋸歯ブレード付きロータステータホモジナイザを用いて、30,000RPMで1分間懸濁液を均質化する。
d. 残りの体積のNSを用いてホモジナイザブレードをすすいで、最終所望体積の懸濁液を得る。再び30,000RPMで1分間均質化する。
e. 懸濁液を118xgで5分間遠心分離して、泡を減らす
f. 懸濁液を音波処理して、粒子を再分散させる
【0180】
懸濁液の粒径分布を図12に示す。
【0181】
その粒径分布が元の粉末の粒径分布に最も近かったため、3mg/mLのNIC-M、100mg/mLのBSAを含有する懸濁液を噴霧化のために選択した。
【0182】
2つの異なるネブライザ:PARI(登録商標)LC Sprint、ジェットネブライザと、Aerogen(登録商標)Solo、振動メッシュネブライザとを使用して、NIC-M懸濁液のエアロゾル化を試験した。装置は、米国薬局方によって指定されているように、予め4℃に冷却したNext Generation Impactor(NGI)で作動させた。流速を15mL/分に設定し、装置を2分間作動させた。NGIの誘導ポートおよびステージに堆積したニクロサミドを収集し、定量した。
【0183】
Aerogen(登録商標)Solo試験からは、定量可能な質量の薬物を収集することができなかった。PARI(登録商標)LC Sprintの放出質量および微粒子用量を表19に示し、ステージ堆積を図13に示す。
【0184】
(表19)PARI(登録商標)LC Sprintを使用した噴霧化後の放出されたニクロサミド質量
【0185】
本明細書において開示および請求されるすべての組成物および方法は、本開示に照らして過度の実験をすることなく作製および実行され得る。本開示の組成物および方法は、好ましい態様に関して説明されてきたが、当業者には、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において説明された方法、および方法の工程または一連の工程に変形例が適用され得ることが明らかであろう。さらに具体的には、化学的および生理学的に関連する特定の作用物質が、同じまたは同様の結果が達成されながら、本明細書において記載される作用物質の代わりになり得ることが明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似の代替物および改変はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨、範囲および概念の範囲内にあると見なされる。
【0186】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書において記載されるものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲まで、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
図1
図2
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図5
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図9
図10
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図20
図21
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図23A
図23B
図23C
【国際調査報告】