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特表2023-520020無線周波数及び中性ビームパワーを使用する高エネルギプラズマ発生器
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  • 特表-無線周波数及び中性ビームパワーを使用する高エネルギプラズマ発生器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】無線周波数及び中性ビームパワーを使用する高エネルギプラズマ発生器
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/05 20060101AFI20230508BHJP
   G21B 1/11 20060101ALI20230508BHJP
   G21B 1/15 20060101ALI20230508BHJP
   H05H 1/14 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G21B1/05
G21B1/11 L
G21B1/15
G21B1/11 A
H05H1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559814
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 US2021022554
(87)【国際公開番号】W WO2021202100
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】16/839,780
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023641
【氏名又は名称】ウイスコンシン アラムナイ リサーチ ファウンデーシヨン
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】フォレスト,ケリー,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ジェイ,キース
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス,ジョン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハービー,ロバート,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ,ユリ,ヴィ.
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA21
2G084BB02
2G084CC27
2G084FF27
2G084FF29
2G084HH25
2G084HH35
2G084HH45
2G084HH52
(57)【要約】
高エネルギプラズマを発生させる装置が、磁気閉じ込めミラープラグに入射した低エネルギ中性ビームを使用して、よく調整された無線周波数電磁場によってエネルギを融合レベルまでブーストされたプラズマイオンを発生させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギプラズマを発生させる装置であって、
軸方向に延びて、プラズマを保持する閉じ込めボリュームの対向する第1及び第2の端部で収束する磁束線を与える磁気ミラー閉じ込め場と、
粒子の中性ビームを、前記粒子が前記閉じ込めボリューム内で解離してプラズマイオンになるように、所定のピッチ及びエネルギで前記閉じ込めボリューム内に向ける中性ビーム発生器と、
前記プラズマイオンを、前記プラズマイオンの融合に十分なエネルギまで加速させる為の電界を発生させる無線周波数発生器と、
を含む装置。
【請求項2】
前記電界の周波数は、前記磁気ミラー閉じ込め場内の前記中性ビームの前記プラズマイオンの転換点でのサイクロトロン周波数に関数的に依存する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周波数は、前記サイクロトロン周波数より高い、前記サイクロトロン周波数の高調波である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記中性ビームのエネルギは、前記中性ビーム粒子の50%超がプラズマイオンに変換されるように設定される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記中性ビームのエネルギは50keV未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記無線周波数発生器は、前記中性ビームからの前記プラズマイオンのエネルギを2倍超ブーストする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記無線周波数発生器はアンテナを含み、前記アンテナは、前記プラズマイオンの反射限界に非常に近くなるように、且つ、前記磁気ミラー閉じ込め場の前記軸に垂直な回転電気ベクトルを発生させるように配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ピッチは前記軸に対して30~60°である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
処置ボリュームを更に含み、前記処置ボリュームは、前記閉じ込めボリュームを通り抜ける高エネルギ中性子を受ける為に前記閉じ込めボリュームの少なくとも一部を取り巻き、別の元素に元素変換される元素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
元素変換される前記元素は、前駆物質99Mo、131I、133Xe、及び177Luからなる群から選択される、医療用ラジオアイソトープの前駆物質である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
元素変換される前記元素は使用済み核燃料である、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記中性ビームは、デューテリウム及びトリチウムからなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記中性ビームはデューテリウムである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記磁気ミラー閉じ込め場を発生させる磁気コイルのペアを含み、前記無線周波数発生器は、前記磁気コイルの間にアンテナを備え、前記閉じ込めボリュームは気密チャンバ内に収容される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
軸方向に延びる第1の磁気閉じ込め場の中に可融性材料を保持する反応ボリュームと、
前記軸に沿って前記反応ボリュームを挟んでいる第1及び第2のプラズマプラグであって、各プラズマプラグは、
(a)軸方向に延びて、プラズマを保持する閉じ込めボリュームの対向する第1及び第2の端部で収束する磁束線を与える磁気ミラー閉じ込め場と、
(b)粒子の中性ビームを、前記粒子が前記閉じ込めボリューム内で解離してプラズマイオンになるように、所定のピッチ及びエネルギで前記閉じ込めボリューム内に向ける中性ビーム発生器と、
(c)前記プラズマイオンを、前記閉じ込めボリュームに入る前記粒子のエネルギを上回るエネルギまで加速させる為の電界を発生させる無線周波数発生器と、
を含む、前記第1及び第2のプラズマプラグと、
を含み、
これによって、前記第1及び第2のプラズマプラグから逃げたプラズマイオンが前記反応ボリューム内で融合反応を発生させる、
融合装置。
【請求項16】
前記第1及び第2のプラズマプラグ内のプラズマイオンの圧力が、前記反応ボリューム内のプラズマイオンの圧力より高い、請求項15に記載の融合装置。
【請求項17】
前記反応ボリュームから中性子を受け取って発電を行う発電機を更に含む、請求項16に記載の融合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究又は開発に関する陳述
本発明は、米国エネルギ省によって授与されたDE-SC0002322の下に、政府支援を受けてなされたものである。米国政府は本発明における一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2020年4月3日に出願された米国特許出願第16/839,780号の利益を主張するものである。
【0003】
本発明は、核融合を促進することが可能な高エネルギプラズマを発生させる装置に関し、特に、磁気ミラー閉じ込め及び中性ビーム入射を、追加の無線周波数パワー入射とともに用いるシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
高温プラズマは、磁気ミラー閉じ込めシステムによって、物理的な容器から離して閉じ込めることが可能であり、それによって、容器へのダメージ及び起こりうるプラズマ消光を防ぐことが可能である。そのような閉じ込めシステムは、磁束線が収束する2つの端部の間を延びる軸方向磁界を提供しうる。この軸方向磁界内を動くプラズマイオンは、局所的なサイクロトロン周波数で磁束線に沿ってらせん運動し、らせん運動しているイオンに作用している磁力の軸方向成分によって「反射」される。この反射させる磁力は、磁束線の収束とこれに付随する磁界強度の増大によって引き起こされ、その収束から離れる方向にある。更に、反射させる力は、磁界に垂直な粒子運動エネルギ成分に比例する。同様の反射させる力がプラズマ電子に作用する。
【0005】
核融合は、磁気ミラー閉じ込めシステムにおいて、十分に高いエネルギ及び密度でプラズマを発生させることによって促進可能である。この高エネルギ/密度状態に到達する一方法では、電気的に中性の粒子(中性ビーム)を磁気閉じ込め場に通してプラズマに入射させる。このとき、中性ビームの中性粒子はイオン化される(即ち、プラズマイオンと電子とに分割される)。中性ビームは、初期エネルギが融合に必要なエネルギより高い為、結果として得られるプラズマイオンは、プラズマへの投入後にプラズマイオンのエネルギの予想された衝突損失があっても、融合に適するエネルギを保持する。プラズマの密度及びエネルギは、中性ビームによって入射する高速イオンの損失率によって決まり、損失率はビームエネルギが増大するにつれて減少する為、高エネルギイオンは低エネルギイオンよりもよりよく閉じ込められる。
【0006】
中性ビームが、磁気ミラー閉じ込めシステムにおいて高い融合出力を維持するのに十分なエネルギで、高エネルギ粒子の十分な束を発生させることは、エネルギの観点からは困難であり、高コストである。現時点では、そのような方式は、正味の融合エネルギ発生に関して実用的とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明も、磁気ミラー閉じ込めに中性ビームを入射させるが、これまでの方式と異なるのは、有効な融合を直接発生させる為に必要なエネルギよりはるかに小さいエネルギを有する低エネルギ中性ビームを使用することである。その代わり、中性ビームがイオン化された後、それらの中性ビームを源とする高速イオンのエネルギが、無線周波数電界の使用により、磁気閉じ込めボリューム内でブーストされる。無線周波数エネルギを熱イオンよりも高速中性ビームイオンに優先的に移動させることの困難さは、磁気閉じ込め場内に高速イオンの明確に画定された「転換点」が存在するように、中性ビームの入射角度及びエネルギを制御することによって克服される。転換点において無線周波数波をサイクロトロン周波数の倍数(即ち、高調波)にチューニングすることにより、これらの中性ビーム入射イオンが融合レベルまで優先的に活性化され、その際、熱イオンに対して見込まれる波減衰効果はごくわずかである。
【0009】
そこで、具体的に、一実施形態では、本発明は、磁気ミラー閉じ込め場内で高エネルギプラズマを発生させる装置を提供し、磁気ミラー閉じ込め場は、軸方向に延びて、プラズマを保持する閉じ込めボリュームの対向する第1及び第2の端部で収束する磁束線を与える。中性ビーム発生器が、粒子の中性ビームを、磁界に対する所定のピッチ角度と、あるエネルギ範囲とで閉じ込めボリューム内に向ける。これは、粒子が、閉じ込めボリューム内で解離して同じピッチ角度のプラズマイオンになるように、且つ明確に画定された転換点を有するように行われる。転換点では、高速イオンは、完全に垂直なエネルギを有する。そして、ビームを源とするイオンを、プラズマイオンの融合に十分なエネルギまで加速させる為の電界を発生させる為に無線周波数発生器が使用されてよい。
【0010】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、閉じ込め場に入射後のプラズマイオンのエネルギをブーストして、中性ビームの効率を大幅に高めるシステムを提供することである。
【0011】
電界の周波数は、磁気ミラー閉じ込め場内の中性ビームのプラズマイオンの転換点でのサイクロトロン周波数に関数的に依存してよい。
【0012】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、整合するサイクロトロン周波数を有するプラズマイオンにエネルギを優先的に蓄積させることである。
【0013】
一実施形態では、電界の周波数は、サイクロトロン周波数より高い、転換点でのサイクロトロン周波数の高調波であってよい。
【0014】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、より高次のサイクロトロン高調波で発生する、無線周波数電気エネルギの共鳴高速イオンへの優先的移動を活用することである。
【0015】
中性ビームのエネルギは、中性ビーム粒子の50%超がプラズマイオンに変換されるように設定される。
【0016】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、高粒子束に適している、従って、高プラズマ密度になることが可能な低エネルギ中性ビームの使用を可能にすることである。
【0017】
中性ビームのエネルギは50keV未満であってよい。
【0018】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、中性ビーム発生器の設計において、高エネルギよりむしろ高流束速度に関するトレードオフの設定を可能にして、イオン燃料注入速度を高めることである。
【0019】
無線周波数発生器は、中性ビームからのプラズマイオンのエネルギを2倍超ブーストしてよい。
【0020】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、入射後のプラズマイオンの有効なエネルギブーストを実現することである。
【0021】
無線周波数発生器はアンテナを含んでよく、アンテナは、プラズマイオンの反射限界に非常に近くなるように、且つ、磁気ミラー閉じ込め場の軸に垂直な回転電気ベクトルを発生させるように配置される。
【0022】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、プラズマイオンのエネルギ蓄積に関してアンテナを最適化することである。
【0023】
中性ビームの角度は、軸に対して15~80°であってよい。
【0024】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、中性ビームのエネルギと、中性ビームを熱イオンから隔離する転換点との間の良好なトレードオフを実現することである。
【0025】
装置は更に、処置ボリュームを含んでよく、処置ボリュームは、閉じ込めボリュームを通り抜ける高エネルギ中性子を受ける為に閉じ込めボリュームの少なくとも一部を取り巻き、別の元素に元素変換される元素を含む。
【0026】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、材料を中性子で処置するシステムを提供することであり、この処置は、例えば、放射性医薬品を作成することであり、又は例えば、使用済み核燃料を再生することである。
【0027】
中性ビームは、デューテリウム及びトリチウムからなる群から選択されてよく、幾つかの実施形態では、システムは、中性ビームと閉じ込めボリューム内のガスとに関してはデューテリウムだけを使用してよい。
【0028】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、よく理解されている中性ビーム材料で働くことが可能であり、場合によっては、トリチウムの使用を回避してデューテリウムの使用を選択することが可能なシステムを提供することである。
【0029】
一実施形態では、本発明は、軸方向に延びる第1の磁気閉じ込め場の中に可融性材料を保持する反応ボリュームを有する融合装置を作成することに用いられてよい。この実施形態では、第1及び第2のプラズマプラグが軸に沿って反応ボリュームを挟んでよく、各プラズマプラグは、上述のように高エネルギプラズマを発生させる装置であり、第1及び第2のプラズマプラグから逃げたプラズマイオンが反応ボリューム内で融合反応を発生させる。
【0030】
そこで、本発明の少なくとも1つの実施形態の一特徴は、元素変換又は発電を行う融合装置の改良された設計を提供することである。
【0031】
これらの特定の目的及び利点は、特許請求の範囲に収まる幾つかの実施形態にのみ当てはまりうるものである為、本発明の範囲を規定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態の切り欠き斜視図であり、この実施形態は、磁気ミラー閉じ込め場と、ビームを閉じ込めボリューム内に向ける中性ビーム発生器と、中性子ビーム発生器からのプラズマイオンに作用する電界を発生させる無線周波数発生器と、を備える。
図2図1の閉じ込めボリュームの磁束線の側面立面図であり、これにそれらの磁束線の端面図を並べて示しており、これらの図は両方とも、エネルギの異なるプラズマイオンの軌道を、軸方向距離の関数としてのサイクロトロン周波数、ドウェル時間、及び電界強度のグラフとともに示している。
図3図1の磁気ミラー閉じ込め場を採用した融合装置の簡略化された断面立面図であり、磁気ミラー閉じ込め場は、プラグとして、中央ソレノイド磁界セルから高エネルギプラズマイオンが逃げるのをブロックする。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に図1を参照すると、高エネルギプラズマシステム10が、圧力タンク等(図示せず)から弁入口アセンブリ13を介して反応ガス(例えば、デューテリウム又はトリチウム)を受け取る為に、軸14に沿って延びる(例えば、ステンレス綱等の密封された円筒シェルの形態の)圧力容器12を備えてよい。
【0034】
圧力容器12内の、圧力容器12の対向する端部の近くに第1及び第2の電磁コイル16a及び16bが配置されてよく、これによって、それらの間に、磁気閉じ込め場15を有する閉じ込めボリューム17が画定される。電磁コイル16は、それらの間に軸方向B場を確立するように軸14に沿ってアライメントされたヘルムホルツペアを形成するように方向付けられ且つ引き離されている。一実施形態では、電磁コイル16は、当該技術分野において知られているタイプの制御可能な外部DC電源18から電力を供給される、軸14を中心とするらせんを備えたパンケーキコイルであってよい。
【0035】
電磁コイル16の間の、一方の電磁コイル16bのすぐ近くに無線周波数アンテナ19(簡略化した形で示している)が配置されており、これは、例えば、無線周波数発生器20で駆動されたときに、軸14に沿って延びる、円偏向した電波場を発生させる。当該技術分野において理解されているように、この偏向した電波場は、軸14を中心に回転する、軸14に垂直な電気ベクトル21を発生させる。この目的に適するループアンテナの詳細については、参照によって本明細書に組み込まれている、T.H.ストリクス(T. H. Stix)著「二成分プラズマの高速波動加熱(Fast Wave Heating of a Two-Component Plasma)」、ヌークレア フュージョン(Nuclear Fusion)15、737(1975)、並びにR.W.ハーヴェイ(R. W. Harvey)、M.G.マッコイ(M. G. McCoy)、G.D.カーヴェル(G. D. Kerbel)、及びS.C.チウ(S. C. Chiu)著「トカマクのICRF反応度の強化(ICRF Fusion Reactivity Enhancements in Tokamaks)」、ヌークレア フュージョン(Nuclear Fusion)26、43(1986)を参照されたい。
【0036】
圧力容器12の半径方向外側に処置ボリューム22が配置されてよく、処置ボリューム22は、例えば、同心の外側円筒タンクの形態であり、処置ボリューム22は、例えば、高エネルギ中性子による元素変換の為の水性物質で満たされてよく、そのような物質は、例えば、医療用アイソトープの前駆物質である99Mo(モリブデン99)、131I(ヨウ素131)、133Xe(キセノン133)、及び177Lu(ルテチウム177)であり、或いは、処置ボリューム22は、高エネルギ中性子による元素変換によって再活性化されている使用済み核燃料棒を保持するラックを支持してよい。
【0037】
中性粒子29(正味電荷がゼロである非イオン化粒子)のビーム28を入射させる中性ビーム発生器26が、閉じ込めボリューム17内に向かってピッチ角度θで配置されている。ピッチ角度θは、ビーム28と軸14との間の鋭角として定義される。中性粒子29は、例えば、デューテリウム又はトリチウムの原子であって、ガスライン24を通って導入され、局所プラズマ(図示せず)によってイオン化される原子である。これらのイオンは、当該技術分野において一般的に理解されているように、連続する一連の帯電したプレートを有する加速器チャンバ27の中で加速される。次に、これらのイオンは、中和ガスセル31を通り抜けて、電荷交換過程により中性粒子29を生成し、ビーム28の中性粒子29を生成する。
【0038】
ここで図2も参照すると、コイル16によって発生する磁束線30は、コイル16の間の中間点で軸14から半径方向に膨張し、コイル16のある場所で半径方向に収縮する「ボトル」形状になる。当該技術分野において一般的に理解されているように、この構成によってミラー閉じ込めボリュームが生成され、そこでは、十分なピッチ角度の、ランダムに分散した「熱」プラズマイオン32が、転換点34で画定された領域の間の磁束線30を中心にらせん運動する。
【0039】
当該技術分野において理解されているように、これらの熱プラズマイオンは様々な方法で定着させることが可能であり、例えば、無線周波数アンテナ19を使用することにより(但し効率が低い)、又は高周波のマイクロ波を使用して電子サイクロトロン共鳴加熱を発生させる別個の加熱システムを使用することにより、定着させることが可能である。
【0040】
熱プラズマイオン32は、転換点34の領域で方向が反転するが、これは、磁束線30の収束によって発生する磁気ローレンツ力の軸方向成分が増大することによって引き起こされる。磁束線30を中心とするらせん運動の周波数35は「サイクロトロン周波数」と呼ばれ、軸14に沿う磁界の強度37の関数であり、これを理由として、サイクロトロン周波数35は一般に、電磁コイル16に向かって増大する。各イオンの質量及び電荷が等しい場合、サイクロトロン周波数は、名目上は、イオンの速度又はエネルギに無関係に、軸14に沿う任意の場所で同じになる。これに対し、質量が等しくピッチ角度が異なるイオン32は、通常、異なる転換点34を有する。
【0041】
中性ビーム28の中性粒子29の速度、従って、エネルギ、並びに中性ビーム28のピッチ角度は、中性ビーム28の粒子の大部分(例えば、50%超)が、閉じ込め場から出るまでに閉じ込めボリューム17内でイオン化されてプラズマイオン36になるように設定される。同じピッチ角度にあるこれらのプラズマイオン36は、いまや帯電しており、磁束線30によって捕捉されてプラズマ密度を増大させる。
【0042】
中性ビーム28の中性粒子29の大部分のこの捕捉を促進する為に、中性ビーム28のエネルギは、中性粒子29がイオン化されるのに十分な飛行時間が得られるように制限される。一般に、中性ビーム28の、イオン化の為の望ましいエネルギは、実質的な融合に必要な運動エネルギを十分に下回るものになり、典型的には100keV未満、又は好ましくは50keV未満、より典型的には15~25keVのオーダーである。これは、先行技術の方式とは対照的である。先行技術の方式では、プラズマイオン36間の融合を促進するのに必要なエネルギを超えるエネルギを有し、典型的には、D-D融合の場合で1000keVを超えるエネルギを有する中性粒子29が必要である。中性ビーム28のエネルギを制限すると、共通の中性子ビーム発生器26において、中性粒子29の磁束密度をより高くし、同時にプラズマ密度を増大させる為のトレードオフが影響を受けうる。
【0043】
引き続き図1及び2を参照すると、中性ビーム28のピッチ角度θは、結果として得られるプラズマイオン36の為の所定の転換点34’が軸14に沿って得られるように、従って、プラズマイオン36の対応する所定のサイクロトロン周波数35が転換点34’において得られるように選択される。このサイクロトロン周波数は、後述のように、無線周波数発生器20の周波数を設定する為に使用される。
【0044】
更に、アンテナ19は、一方の転換点34’の近傍に、その領域での最大電界強度が得られるように配置される。
【0045】
最後に、中性ビーム28のエネルギは、閉じ込めボリューム17内で中性粒子29の所望の捕捉を実現する、中性ビーム28のエネルギレベルの範囲内で可能な限り高く設定される。これは、中性ビーム28によって生成されるプラズマイオン36の軌道(ジャイロ軌道52)の半径が、「熱イオン」32(これは中性ビーム28に直接には由来しないイオンである)の平均的分散ジャイロ軌道52より大きくなるようにする為である。
【0046】
本願発明者等は特定の理論に拘束されることを望まないが、上述の(a)無線周波数発生器20のサイクロトロン周波数を、転換点34’におけるプラズマイオン36のサイクロトロン周波数の高調波に設定すること、(b)プラズマイオン36のエネルギを、熱プラズマイオン32の平均的分散を上回るようにブーストすること、並びに(c)転換点34’での電界強度を最大化することは、全てが一緒に働いて、無線周波数発生器20が、熱プラズマイオン32の減衰効果に無関係に、中性ビーム28からのプラズマイオン36のエネルギを優先的にブーストすることを可能にする。
【0047】
この点において、((a)に従って)無線周波数発生器20を設定することにより、整合する(例えば、高調波の関係にある)サイクロトロン周波数35を有するプラズマイオン36との優先的なカップリングが得られる。これは、熱プラズマイオン32がある範囲の様々な、ドップラーシフトしたサイクロトロン周波数を有していて、カップリングの有効性が低いことと対照的である。このカップリングは、ベッセル関数 Bn-1(k*ν/ωci)の二乗に比例しうる。但し、
nは、入射波の共鳴サイクロトロン高調波次数であり、
は垂直波数であり、
ωciは、共鳴イオンのサイクロトロン周波数である。
【0048】
量k/ωciは、イオンの~v(アルヴェーン速度)であってよい(T.H.ストリクス(T. H. Stix)著「二成分プラズマの速波加熱(Fast Wave Heating of a Two-Component Plasma)」、ヌークレア フュージョン(Nuclear Fusion)15、737(1975)を参照)。ベッセル関数がvに依存するとすると、カップリングは、イオンの垂直速度のパワーに比例し、中性ビームからのホットテールイオン、並びに無線周波数波によって拡散してエネルギが高くなったそれらのホットテールイオンを優先的に減衰させるように調節されてよい。
【0049】
更に、無線周波数発生器20の周波数を、転換点34’でのサイクロトロン周波数35に従って設定することにより、プラズマイオン36に対する無線周波数発生器20からの電界の影響が増大する。これは、転換点34’でのプラズマイオン36の転換時にプラズマイオン36の軸方向速度が最低になる間にプラズマイオン36のドウェル時間50が引き延ばされる為である。これは、例えば、熱プラズマイオン32がこのゾーンを素早く通り抜けて別の転換点34まで移動すること、又は転換点34’までは達しないことと対照的である。
【0050】
上述のように、((b)に従って)プラズマイオン36のエネルギを、熱プラズマイオン32の分散を上回るようにブーストすることにより、且つ、RF発生器20を、プラズマイオン36のサイクロトロン周波数35の高調波であるRF周波数に設定することにより、ジャイロ軌道52の半径がより大きい、より高エネルギのプラズマイオン36が、ジャイロ軌道52がより小さい熱プラズマイオン32を超えるパワーを優先的に吸収する。幾つかの実施形態では、RF周波数は、20~100MHzの範囲に設定されてよく、且つ/又は、n=2より大きい高調波次数n、好ましくはn=4に設定されてよい。
【0051】
一般に、より高次の高調波ほど、それらの高調波に関連付けられた、より高次のベッセル関数に従って、エネルギ吸収とジャイロ軌道52との関係をブーストする。具体的には、エネルギ吸収はJn-1(kρ)に比例することになる。但し、Jn-1は、所与の高調波次数nに対応するベッセル係数である。ρは、磁束線30を中心とする、粒子のジャイロ軌道52の半径であり、これは
【数1】
によってエネルギとともに増加する。kは、プラズマイオン36の波数であり、これは、プラズマ内の波及び波を放射するアンテナ19の偏向の特性である。
【0052】
当然のことながら、この、プラズマイオン36によるエネルギの有効な優先的吸収は、エネルギが吸収され、プラズマイオン36のジャイロ軌道が増大するにつれて、自己を強化する。
【0053】
最後に、アンテナ19の最大電界強度を転換点34’の近くに配置することにより、プラズマイオン36は優先的に影響を受ける。
【0054】
一般に、磁気閉じ込め場15は、その端部を通るピッチ角度が小さい一部のプラズマイオン32を失う傾向があるものである。これらの粒子は、「損失コーン」内にあると言われる。損失コーンの外側にある、既知のピッチ角度θを有するプラズマイオン36の個体数をブーストすることにより、プラズマ密度を増大させることが可能である。
【0055】
転換点34’の近くのプラズマイオン36のサイクロトロン周波数、従って、無線周波数発生器20の周波数の所望の設定は、主に、真空磁界強度37の関数であるが、増大するプラズマ密度/圧力の関数として多少シフトする。従って、本発明は、DC電源18又はRF周波数発生器20の一方又は両方が、プラズマイオン36へのエネルギ移動をブーストする上記の関係を維持する為に、動作中に調節されてよいことを想定している。具体的には、この調節は、プラズマ圧力を検出するセンサ56を使用する(例えば、反磁性ループを使用する)閉ループフィードバック制御により行われてよく、これは、プラズマ圧力の増加による磁界の減少を測定して、RF発生器20の励起周波数を、転換点34’での実際の且つ動的なサイクロトロン周波数35と整合させるものである。本発明は又、サイクロトロン周波数が全場(コイル及びプラズマ反磁性からの真空場)によって決まる範囲では、周波数変化は不要であってよいが、転換点の位置が電磁ミラーコイルに近づくことを想定している。
【0056】
次に図3を参照すると、高プラズマ密度を与える場合の本発明のこの利点は、元素変換(上述)又は融合パワー生成を目的として、2つの高エネルギプラズマシステム10がより大規模の中性子発生器60において高エネルギプラズマイオンを捕捉する「プラグ」として働きうるシステムの一部として役立つ。そのような設計は、例えば、タンデムミラー方式を利用してよく、これについては、例えば、参照によって本明細書に組み込まれている、G.ジモフ(G. Dimov)、V.ザカイダコフ(V. Zakaidakov)、及びM.キシネフスキ(M. Kishinevski)著、フィジカ プラズミ(Fiz. Plazmy)2、597(1976)、[ソヴィエト ジャーナル プラズマ(Sov. J. Plasma)]、フィジックス(Phys)2、326(1976)、並びにT.K.ファウラー(T.K. Fowler)及びB.G.ローガン(B.G. Logan)著、コメント オン プラズマ フィジックス アンド コントロールド フュージョン(Comments on Plasma Physics and Controlled Fusion)2、167(1977)に記載されている。
【0057】
より具体的には、そのようなタンデムミラー中性子発生器60において、第1及び第2の高エネルギプラズマシステム10a及び10bが、軸14に沿って発生器ボリューム62を挟んで対向配置されている。一般に、高エネルギプラズマシステム10は軸方向長さが2mのオーダーになるのに対し、発生ボリューム62は格段に大きく、例えば、50m以上のオーダーになる。
【0058】
両方の高エネルギプラズマシステム10a及び10bの電磁コイル16は、軸方向に並べられて、共通軸14に沿って、磁界の同じ方向の偏向を発生させる。従って、第1の高エネルギプラズマシステム10aの磁束線30は、ボリューム62を通り抜けて第2の高エネルギプラズマシステム10bに向かうことが可能である。ボリューム62内では、磁束線30は、ボリューム62の周囲で軸14を円で囲んで軸方向に延びるソレノイドコイル66によってフォーカスされる。
【0059】
この目的の為に、電磁コイル16は超伝導磁石であってよく、例えば、やはり参照によって本明細書に組み込まれている、D.ホワイト(D. Whyte)、J.ミネルヴィニ(J. Minervini)、B.ラボンバルド(B. LaBombard)、E.マーマー(E. Marmar)、L.ブロムバーグ(L. Bromberg)、及びM.グリーンワルド(M. Greenwald)著「より小型に、より高速に:より魅力的な融合エネルギ開発パスの為の新しい超伝導体からの高磁界の活用(Smaller and sooner: Exploiting high magnetic fields from new superconductors for a more attractive fusion energy development path)」、ジャーナル オブ フュージョン エネルギ(Journal of Fusion Energy)35、41(2016)に記載の超伝導磁石であってよい。
【0060】
熱プラズマイオン32のサブセットが、均一に分散したピッチ角度を有しており、プラズマイオン36からの運動的移動によって高いエネルギまでブーストされており、このサブセットが、高エネルギプラズマシステム10から、反応ガス(例えば、デューテリウム又はトリチウム)を収容するボリューム62の中に逃げることによって、融合と、ボリューム62からの中性子64の放射と、を促進することが可能である。高エネルギプラズマシステム10の高い圧力が、高エネルギプラズマイオンがボリューム62から逃げるのをブロックすることにより、有効な融合の為の高密度が維持される。
【0061】
ボリューム62は包含ボリューム22に囲まれてよく、包含ボリューム22は熱交換器液体68を含んでよく、熱交換器液体68は、例えば、(例えば、発電用の)熱力学機関(例えば、タービン等)の作動流体70を、1つ以上の熱交換器を通して受ける。代替として、包含ボリューム22は、上述のように、医療用アイソトープの生成、又は使用済み核燃料の再活性化の為の、材料の元素変換に使用されてよい。
【0062】
本出願は、米国特許出願第2019/0326029号、件名「医療用アイソトープを生成する装置及び方法(Apparatus and Method for Generating Medical Isotopes)」及び米国特許出願第2013/0142296号、件名「医療用アイソトープを生成する装置及び方法(Apparatus and method for generating medical isotopes)」の開示内容を組み込んでおり、これらは、上述の中性ビームを生成する為の中性子乗数生成器及び他の構造詳細並びに機構の使用を含む、アイソトープ元素変換を管理する為の更なる技術について述べている。
【0063】
本明細書では、特定の術語を参考用としてのみ使用しており、それらは限定的であることを意図していない。例えば、「上部(upper)」、「下部(lower)」、「上方(above)」、及び「下方(below)」等の語句は、参照している図面における方向を意味する。「前面(front)」、「後面(back)」、「背面(rear)」、「底面(bottom)」、及び「側面(side)」等の語句は、一貫しているが任意である基準系の中での構成要素の各部分の方位を示し、これらは、論じている構成要素について記述している本文及び関連付けられた図面を参照することにより、明確になる。そのような術語は、具体的に上述された語、それらの派生語、及び同義語を含んでよい。同様に、構造を参照する語句「第1の(first)」、「第2の(second)」、及び他のそのような、数字を使った語句は、文脈によって明確に指示されない限り、特定の並び又は順序を意味するものではない。
【0064】
本開示及び例示的実施形態の要素又は特徴を紹介する場合、冠詞の「a」、「an」、「the」、及び「前記(said)」は、そのような要素又は特徴が1つ以上あることを意味するものとする。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という語句は包含的であるものとし、具体的に述べられた要素又は特徴以外の更なる要素又は特徴があってよいことを意味する。更に当然のこととして、本明細書に記載の方法ステップ、プロセス、及び操作は、実施順序として具体的に特定されない限り、説明又は図示された特定の順序でそれらを実施することが必須であると解釈されるべきではない。やはり当然のこととして、追加又は代替のステップが用いられてよい。
【0065】
特に意図していることとして、本発明は、本明細書に含まれる実施形態及び例示に限定されるものではなく、特許請求項は、実施形態の一部、及び別々の実施形態の要素の組み合わせを含む、それらの実施形態の修正形態を、後述の特許請求の範囲に含まれるものとして包含するものと理解されるべきである。特許及び非特許公表文献を含む、本明細書に記載の公表文献は全て、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
【国際調査報告】