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特表2023-520024カプサイシンパッチの繰り返しの局所適用のためのレジメン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】カプサイシンパッチの繰り返しの局所適用のためのレジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20230508BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K31/165
A61P25/00
A61P25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559831
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2021058837
(87)【国際公開番号】W WO2021198524
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】20167983.4
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20173155.1
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035404
【氏名又は名称】グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】エールデーケンス・マリエル
(72)【発明者】
【氏名】エンゲレン・シルフィア
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA03
4C206GA28
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA01
4C206ZA08
(57)【要約】
本発明は、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチの第1の適用と、それに続く1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチの第2の適用を含む、神経障害性状態、好ましくは末梢神経障害性疼痛の繰り返しの治療のためのレジメンに関し、第1の適用と第2の適用との間の期間は、応答者率を増加させるために好ましくは短縮される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位であって、神経障害性状態の治療に使用するための、用量単位の総重量に対して少なくとも2.5重量%の濃度でカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含み、
(a)カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、前記患者の皮膚に適用され、第1の適用期間に前記皮膚上に留まり、それにより前記第1の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
(b)前記第1の適用期間後W日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、前記患者の皮膚に適用され、第2の適用期間に前記皮膚上に留まり、それにより前記第2の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
(c)任意に、前記第2の適用期間後X日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、前記患者の皮膚に適用され、第3の適用期間に前記皮膚上に留まり、それにより前記第3の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
(d)任意に、前記第3の適用期間後Y日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、前記患者の皮膚に適用され、第4の適用期間に前記皮膚上に留まり、それにより前記第4の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
(e)任意に、前記第4の適用期間後Z日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、前記患者の皮膚に適用され、第5の適用期間に前記皮膚上に留まり、それにより前記第5の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
W及びXが、互いに独立して、60~120の範囲内の整数であり、
Y及びZが、互いに独立して、60~120の範囲内の整数である、前記高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項2】
前記カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの濃度が、前記用量単位の総重量に対して少なくとも5重量%である、請求項1に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項3】
前記カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの濃度が、前記用量単位の総重量に対して少なくとも8重量%である、請求項1または2に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項4】
W及びXが、互いに独立して、60~109の範囲内の整数である、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項5】
前記使用が、前記神経障害性状態の前記治療における応答者率を増加させるためのものである、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項6】
Wが、
(i)60~109;好ましくは60~91、または60~90、または60~89、または60~85、または60~84、または60~83、または60~69、または60~68、または60~67、または60~64、または60~63、または60~62;または厳密に60;
(ii)62~109;好ましくは62~91、または62~90、または62~89、または62~85、または62~84、または62~83、または62~69、または62~68、または62~67、または62~64、または62~63;
(iii)63~109;好ましくは63~91、または63~90、または63~89、または63~85、または63~84、または63~83、または63~69、または63~68、または63~67、または63~64;
(iii)64~109;好ましくは64~91、または64~90、または64~89、または64~85、または64~84、または64~83、または64~69、または64~68、または64~67;
(iv)67~109;好ましくは67~91、または67~90、または67~89、または67~85、または67~84、または67~83、または67~69、または67~68;
(v)68~109;好ましくは68~91、または68~90、または68~89、または68~85、または68~84、または68~83、または68~69;
(vi)69~109;好ましくは69~91、または69~90、または69~89、または69~85、または69~84、または69~83;
(vii)83~109;好ましくは83~91、または83~90、または83~89、または83~85、または83~84;
(viii)84~109;好ましくは84~91、または84~90、または84~89、または84~85;
(ix)85~109;好ましくは85~91、または85~90、または85~89;
(x)89~109;好ましくは89~91、または89~90;
(xi)90~109;好ましくは90~91;あるいは
(xii)91~109の範囲内の整数である、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項7】
Xが、
(i)60~109;好ましくは60~91、または60~90、または60~89、または60~85、または60~84、または60~83、または60~69、または60~68、または60~67、または60~64、または60~63、または60~62;または厳密に60;
(ii)62~109;好ましくは62~91、または62~90、または62~89、または62~85、または62~84、または62~83、または62~69、または62~68、または62~67、または62~64、または62~63;
(iii)63~109;好ましくは63~91、または63~90、または63~89、または63~85、または63~84、または63~83、または63~69、または63~68、または63~67、または63~64;
(iii)64~109;好ましくは64~91、または64~90、または64~89、または64~85、または64~84、または64~83、または64~69、または64~68、または64~67;
(iv)67~109;好ましくは67~91、または67~90、または67~89、または67~85、または67~84、または67~83、または67~69、または67~68;
(v)68~109;好ましくは68~91、または68~90、または68~89、または68~85、または68~84、または68~83、または68~69;
(vi)69~109;好ましくは69~91、または69~90、または69~89、または69~85、または69~84、または69~83;
(vii)83~109;好ましくは83~91、または83~90、または83~89、または83~85、または83~84;
(viii)84~109;好ましくは84~91、または84~90、または84~89、または84~85;
(ix)85~109;好ましくは85~91、または85~90、または85~89;
(x)89~109;好ましくは89~91、または89~90;
(xi)90~109;好ましくは90~91;あるいは
(xii)91~109の範囲内の整数である、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項8】
Wが、60~109、好ましくは60~89、より好ましくは60~83の範囲内の整数であり、
Xが、60~109、好ましくは60~89、より好ましくは60~83の範囲内の整数である、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項9】
(i)W及びXに対する平均が、60.0~68.0、または69.0~83.0の範囲内であり、
(ii)W、X、及びYに対する平均が、60.0~68.0、または69.0~83.0の範囲内であり;あるいは
(iii)W、X、Y、及びZに対する平均が、60.0~68.0、または69.0~83.0の範囲内である、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項10】
W<Xである、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項11】
Y及びZが、互いに独立して、60~110の範囲内の整数である、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項12】
カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与の際に、ベースラインに対して少なくとも30%の疼痛緩和を知覚しなかった患者が治療される、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項13】
カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与が、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、15~90分間の第1の適用期間に前記患者の皮膚に適用され、それにより前記第1の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを事前に局所投与し、その後除去されることによって達成され、それにより前記患者が、ベースラインに対して少なくとも30%の疼痛緩和を知覚しない、請求項12に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項14】
前記1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、15~90分間の適用期間にわたって前記患者の皮膚に適用され、その後除去される、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項15】
前記適用期間が、30~60分間である、請求項14に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項16】
前記1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位の各々が、剥離ライナーなしのパッチの総重量に対して、少なくとも2.5重量%の濃度でのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチである、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項17】
前記カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの濃度が、剥離ライナーなしのパッチの総重量に対して、少なくとも5重量%である、請求項16に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項18】
前記カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの濃度が、剥離ライナーなしのパッチの総重量に対して、少なくとも8重量%である、請求項16または17に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項19】
各高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチが、バッキング層、接着層、及び剥離ライナーを含み、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの含有量が、剥離ライナーなしの前記薬学的パッチの総重量に対して、少なくとも6.0重量%である、請求項16~18のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項20】
カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの含有量が、剥離ライナーなしの前記薬学的パッチの総重量に対して、約8.0重量%である、請求項19に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項21】
各高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチが、パッチのcmあたり少なくとも400μgのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの含有量でカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む、請求項16~20のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項22】
前記含有量が、パッチのcmあたり約640マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドである、請求項21に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項23】
前記1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位の各々が、高濃度カプサイシン局所用量単位である、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項24】
前記神経障害性状態の前記治療が、神経障害性疼痛の緩和のためである、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項25】
前記神経障害性疼痛が、末梢神経障害性疼痛である、請求項24に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項26】
前記神経障害性疼痛が、有痛性糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、化学療法誘発性神経障害性疼痛、HIV関連神経障害、小線維神経障害、慢性特発性軸索多発性神経障害、外傷後神経障害性疼痛、及び手術後神経障害性疼痛からなる群から選択される、請求項24または25に記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項27】
前記神経障害性状態の前記治療が、ヘルペス後神経痛、化学療法誘発性神経障害性疼痛、HIV関連神経障害、小線維神経障害、慢性特発性軸索多発性神経障害、外傷後神経障害性疼痛、及び手術後神経障害性疼痛からなる群から選択される神経障害性疼痛の緩和のためである、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【請求項28】
前記神経障害性状態の前記治療が、感覚神経繊維の再生及び/または回復のためである、先行請求項のいずれかに記載の使用のための高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2020年4月3日に出願された欧州特許出願第20 167 983.4号及び2020年5月6日に出願された欧州特許出願第20 173 155.1号の優先権が主張される。
【0002】
本発明は、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチの第1の適用と、それに続く1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチの第2の適用を含む、神経障害性状態、好ましくは末梢神経障害性疼痛の繰り返しの治療のためのレジメンに関し、第1の適用と第2の適用との間の期間は、応答者率を増加させるために好ましくは短縮される。
【背景技術】
【0003】
カプサイシンは、一過性受容体電位バニロイド 1 受容体(TRPV1)に対する高度に選択的なアゴニストである。カプサイシンの初期効果は、血管作動性神経ペプチドの放出に起因する突起及び紅斑をもたらす、TRPV1発現皮膚性侵害受容器の活性化である。カプサイシン曝露後、皮膚性侵害受容器は様々な刺激に対して感受性が低くなる。カプサイシンのこれらの後期段階作用は、しばしば「脱感作」と呼ばれ、疼痛緩和の根底となると考えられている。非TRPV1発現皮膚神経からの感覚は、機械的刺激及び振動刺激を検出する能力を含む、非改変のままであることが予想される。カプサイシン誘導性皮皮膚侵害受容器の改変は可逆的であり、健康なボランティアでは正常な機能(有毒な感覚の検出)が数週間以内に回復することが報告され、観察されている。F.Peppin et al.,Ther Adv Neurol Disord(2014)7(1)22-32は、神経障害性疼痛の治療におけるカプサイシノイドの使用を概説している。
【0004】
低濃度のカプサイシンクリーム、ローション、及びパッチ(0.025重量%~0.1重量%のカプサイシン濃度)は、日常的な局所適用を目的として、1980年代初頭からほとんどの国で利用可能である。これらの局所製剤は、通常、自己投与薬であり、多くの場合、処方を必要としない。臨床研究は、2~6週間の期間にわたる1日あたり3~5回の局所皮膚適用が、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、及び慢性筋骨格系疼痛を含む様々な疼痛症候群に対してわずかに有益な効果を有することを明らかにした(V.Fattori et al.,Molecules 2016,21,844,1-33を参照されたい)。
【0005】
中濃度カプサイシンパッチが、臨床治験で試験されている。例えば、J.-Y.Moon et al.,Pain Physician 2017,20:27-35は、末梢神経因性疼痛における0.625%(50μg/cm)及び1.25%(100μg/cm)カプサイシンパッチの有効性ならびに安全性について報告している。
【0006】
液体、クリーム、または油などの高濃度カプサイシン局所剤形は、例えば、WO2004/091521、WO2005/117981、WO2013/036961、WO2015/160941、US6,248,788、US7,771,760、US8,367,733、US8,802,736から知られている。
【0007】
W.R.Robbins et al.,Anesth Analg 1998 86 579-83は、局所大用量カプサイシンによる難治性疼痛の治療について報告している。Webster et al.,Journal of Pain,3(4)S72 2012及びM.Wallace et al.,PainWeek 2014は、ヘルペス後神経痛を有する患者におけるカプサイシンの局所液体製剤を用いた臨床治験について報告している。
【0008】
高濃度カプサイシン局所クリーム(8%)が開発され、筋膜性疼痛症候群の治療に示唆されている。プラセボ対照研究では、患者は身体診察中に最も痛みを伴う誘発点を指摘するように求められた。この誘発は、皮膚に使用するためのスタイラスを備えた直径24mmの円形モールドによって境界を定めた。カプサイシン8%クリーム10gを30分間、境界を定めた皮膚領域に適用した。著者らは、筋膜性疼痛症候群の患者に局所的に適用されたカプサイシン8%が有意な鎮痛効果を示したと結論付けた。この鎮痛は、顕著な副作用を生じさせることなく、1回の適用後、ほぼ2ヶ月間持続した(V.Romero et al.,Rev Bras Anestesiol.2019,69(5),432-438)。
【0009】
高濃度カプサイシンパッチは、例えば、US2001 00002406、US6,248,788、US2004 0202707、及びUS 2014 0335150から知られている。
【0010】
高濃度カプサイシンパッチ(179mgまたは8重量%)は、従来のクリームよりも約100倍高いカプサイシン濃度で市販されている(Qutenza(登録商標))。各280cmの皮膚パッチは、パッチのcmあたり合計179mgのカプサイシンまたは640マイクログラムのカプサイシンを含有する。各パッチは、14cm×20cmであり、活性物質を含む接着側及び外面バッキング層からなる。接着側は、取り外し可能で透明な、プリントされていない、斜めにカットされた、剥離ライナーで覆われている。皮膚パッチは、最も痛い皮膚領域に適用される(最大4つのパッチを使用する)。
【0011】
高濃度カプサイシンパッチは、成人では、疼痛の治療のために単独で、または他の医薬品との組み合わせのいずれかで、EUでの末梢神経障害性疼痛の治療及び米国でのヘルペス後神経痛の治療に適応がある。高濃度カプサイシンパッチの単回適用の有効性は、複数の無作為化比較臨床試験において最大12週間維持されることが示されている。高濃度カプサイシンパッチ治療は、およそ3ヶ月ごとに繰り返すことができる。
【0012】
神経障害性疼痛の管理における8%カプサイシンパッチは、何人かの著者によって概説されている。G.Baranidharan et al.,Ther Adv Neurol Disord 2013 6(5)287-297は、神経障害性疼痛の管理における高濃度カプサイシンパッチ及びその使用経験を概説している。T.Wagner et al.,Pain Medicine 2013 14 1202-1211は、臨床診療における神経因性疼痛に対するカプサイシン8%パッチのレトロスペクティブ分析を提供している。H.A.Blair,Drugs 2018 78 1489-1500は、末梢神経障害性疼痛の治療におけるカプサイシン8%の皮膚パッチを概説している。
【0013】
A.Papagianni et al.,PAIN Reports 2018 3 e644 1-9は、カプサイシン8%パッチが可逆的にAデルタ繊維誘発電位振幅を低下させることが報告している。P.Anand et al.Journal of Pain Research 2019 12 2039-2052は、カプサイシン8%パッチによる化学療法誘発性末梢神経障害の合理的治療における疼痛緩和及び疾患改善に関する。
【0014】
8%カプサイシンパッチは、様々な臨床治験に供されている。例えば、M.Miroslav et al.,Pain Medicine 2010 11 600-608は、高濃度カプサイシンパッチであるNGX-4010に関する非盲検延長による無作為化二重盲検対照試験について報告している。L.R.Webster et al.,Diab Res Clin Pract 2011 93 187-197は、末梢神経障害性疼痛を有する患者を対象とした非盲検研究におけるNGX-4010カプサイシン8%パッチの有効性、安全性、及び忍容性について報告している。D.B.Clifford et al.,J Acquir Immune Defic Syndr 2012 59(2)126-133は、疼痛性HIV関連遠位感覚性多発神経障害の治療のためのカプサイシン8%皮膚パッチであるNGX-4010の無作為化二重盲検対照研究について報告している。
【0015】
いくつかの臨床試験は、ヘルペス後神経痛の治療に焦点を当てた。L.R.Webster et al.,BMC Neurology 2010 10 92 1-11は、ヘルペス後神経痛の治療のために評価された8%カプサイシンパッチであるNGX-4010の多施設無作為対照研究において、ヘルペス後神経痛の持続時間が有効性分析に及ぼす影響について報告している。L.R.Webster et al.,The Journal of Pain,2010 11(10)972-982は、ヘルペス後神経痛の治療のための高濃度カプサイシンパッチである NGX-4010の多施設無作為化二重盲検用量設定研究について報告している。G.A.Irving et al.,Pain Medicine 2011 12 99-109は、ヘルペス後神経痛の治療のための高濃度カプサイシンパッチであるNGX -4010の多施設無作為化二重盲検対照試験に関する。L.R.Webster et al.,BMC Anesthesiology 2011 11 25 1-8は、ヘルペス後神経痛患者におけるリドカイン2.5%/プリロカイン2.5%クリームによる前治療後のカプサイシン8%皮膚パッチであるNGX-410の耐容性について報告している。M.M.Backonja et al.,Pain Med.2010 11(4):600-8は、ヘルペス後神経痛の治療のための高濃度カプサイシンパッチであるNGX-4010について報告している:非盲検の延長を用いた無作為化、二重盲検、対照試験である。
【0016】
C.Maihofner et al.,CMRO 2013 29(6)673-683は、末梢神経障害性疼痛を有する1044人の患者におけるカプサイシン8%皮膚パッチの単回適用後12週間にわたる耐容性及び鎮痛効果に関する前向き非介入研究の第1の結果について報告している(QUEPP研究)。C.Maihofner et al.,Eur J Pain 2014 18 671-679は、QUEPP研究における既存の疼痛が局所カプサイシンによる末梢神経障害性疼痛の治療に及ぼす影響に関する。
【0017】
C.Mankowski et al.,BMC neurology 2017 17 80 2-11は、欧州臨床診療における末梢神経障害性疼痛の管理におけるカプサイシン8%パッチの有効性について報告している(ASCEND研究)。
【0018】
8 %カプサイシンパッチは、難治性神経障害性疼痛症候群の治療において特に有用であることが報告されている。M.Gimenez-Milla et al.BMC Anesthesiology 2014 14 120 1-7は、非糖尿病患者における混合難治性末梢神経障害性疼痛症候群の集団に対する三次病院の疼痛ユニットにおける高濃度カプサイシンパッチの実現可能性の評価について報告している。P.Bardo-Brouard et al.,Curr Med Res Opin 2018 34(5)887-891は、神経線維腫症1型を有する患者の難治性神経障害性疼痛の管理における高濃度局所カプサイシンに関する一連の症例について報告している。
【0019】
高濃度カプサイシンパッチによる長期治療及び繰り返しの治療は、無作為化比較臨床試験に対する非盲検拡張試験及び2つのより大きな単独臨床試験において調査されている。D.M.Simpson et al.,J Pain Sympt Manag 2010 39(6)1053-1064は、末梢神経障害性疼痛を有する患者における高濃度カプサイシンパッチであるNGX-4010の長期安全性について報告している。疼痛性糖尿病性末梢ニューロパチーを有する患者における52週間の無作為化比較臨床試験における高濃度カプサイシンパッチの繰り返しの事前の調査は、標準治療に加えて高濃度カプサイシンパッチを使用すると、標準治療単独よりも優れた有効性を示したことを示している(PACE study,A.I.Vinik et al.,BMC Neurology 2016 16 251 1-14)。同様に、カプサイシン8%パッチ治療を4回連続して受けた患者サブセット(n=100)の非糖尿病性末梢性神経障害性疼痛を有する患者における52週間の試験では、各連続するカプサイシン治療後に平均的な日常的疼痛の減少が観察され、治療間に疼痛の緩和が持続した(STRIDE研究、R.Galvez et al.Clin J Pain 2017 33(10)921-931)。
【0020】
高濃度カプサイシンパッチの局所適用による神経障害性疼痛の従来の治療の問題は、かなりの数の患者が応答しないことであった。N.P.Katz et al.,Clin J Pain 2015 31(10)859-866は、8%カプサイシンパッチ(Qutenza(登録商標))で治療された後のヘルペス神経痛及びHIV関連神経障害を有する患者における応答の予測因子について報告している。Ch.Martini et al.,Journal of Pain Research 2012 5 51-59は、慢性疼痛の治療が薬理学的介入への応答の高い変動性と関連していることを報告している。91人の患者における疼痛性糖尿病性末梢神経障害の治療における単一のカプサイシン8%パッチ適用の効果の大きさ及び発症/消失時間を定量化するために、数学的薬力学モデルを開発した。モデルは、治療に対して異なる応答を示した4つの異なるサブグループを同定した:3.3%の患者(サブグループ1)は疼痛の悪化を示し;31%(サブグループ2)は変化を示さず;32%(サブグループ3)は3週目に最低値に達した疼痛の迅速な減少を示し、続いてベースラインに向かってゆっくりと戻り(12週目に16%±6%の疼痛の減少);34%(サブグループ4)は持続した疼痛の迅速な減少を示した(12週目に70%±5%の減少)。この分析は、カプサイシンによる治療に応答して、異種の神経障害性疼痛集団を、異なる挙動を有する4つの均質なサブグループに分離することを可能にした。
【0021】
したがって、高濃度カプサイシン(例えば、8%カプサイシンパッチまたはクリーム)による局所治療に適切に応答せず、治療が中止されるかなりの数の患者が存在する。利用可能なデータ及び文献は、高濃度カプサイシンパッチの第1の適用を超えた応答者率の詳細な洞察を提供しない。
【0022】
従来技術の欠点を克服する、神経障害性状態、好ましくは神経障害性疼痛、より好ましくは末梢神経障害性疼痛の治療に有用な医薬品に対する需要が存在する。特に、カプサイシンによる末梢神経障害性疼痛の局所治療を、高濃度局所パッチまたはクリームなどの高濃度カプサイシン局所用量単位に、最初に応答しない患者にも利用可能にすることが望ましいであろう。
【0023】
疼痛の治療、好ましくは神経障害性疼痛の局所治療に有用であり、かつ従来技術と比較して利点を有する医薬品を提供することが、本発明の目的である。
【0024】
この目的は、本特許請求項の主題により達成された。
【発明の概要】
【0025】
本発明の第1の態様は、高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位であって、神経障害性状態の治療に使用するための、用量単位の総重量に対して少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%の濃度でカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含み、
(a)カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第1の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第1の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
(b)第1の適用期間後W日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第2の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第2の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
(c)任意に、第2の適用期間後X日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第3の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第3の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
(d)任意に、第3の適用期間後Y日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第4の適用期間に前記皮膚上に留まり、それにより第4の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
(e)任意に、第4の適用期間後Z日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第5の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第5の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、
W及びXが、互いに独立して、60~120、好ましくは60~109の範囲内の整数であり、
Y及びZが、互いに独立して、60~120の範囲内の整数である、高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位に関する。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明は、高濃度カプサイシン局所用量単位であって、神経障害性状態の治療に使用するための、用量単位の総重量に対して少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%の濃度でカプサイシンを含み、
(a)カプサイシンを含む1つ以上の高濃度カプサイシン局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第1の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第1の適用期間中にカプサイシンを局所投与し、その後除去され、
(b)第1の適用期間後W日で、カプサイシンを含む1つ以上の高濃度カプサイシン局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第2の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第2の適用期間中にカプサイシンを局所投与し、その後除去され、
(c)任意に、第2の適用期間後X日で、カプサイシンを含む1つ以上の高濃度カプサイシン局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第3の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第3の適用期間中にカプサイシンを局所投与し、その後除去され、
(d)任意に、第3の適用期間後Y日で、カプサイシンを含む1つ以上の高濃度カプサイシン局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第4の適用期間に前記皮膚上に留まり、それにより第4の適用期間中にカプサイシンを局所投与し、その後除去され、
(e)任意に、第4の適用期間後Z日で、カプサイシン及を含む1つ以上の高濃度カプサイシン局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第5の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第5の適用期間中にカプサイシンを局所投与し、その後除去され、
W及びXが、互いに独立して、60~120、好ましくは60~109の範囲内の整数であり、
Y及びZが、互いに独立して、60~120の範囲内の整数である、高濃度カプサイシン局所用量単位に関する。
【0027】
本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)は、神経障害状態、好ましくは神経障害性疼痛、より好ましくは末梢神経障害性疼痛の治療に使用するためのものである。本発明による神経障害性状態の治療のさらなる好ましい態様は、感覚神経線維の再生及び/または回復、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与に対する非応答者の応答者への変換、疼痛緩和をベースラインと比較して30%超に増加させることなどを伴う。
【0028】
驚くべきことに、カプサイシンの初期局所投与に十分に応答しなかった、または応答しなかった患者(初期非応答者)へのカプサイシンの継続的(例えば、繰り返し)局所投与によって、これらの患者は、時間の経過とともにカプサイシン治療に応答するようになり、すなわち、初期非応答者から応答者に変換されることが見出されている。したがって、驚くべきことに、初期非応答にもかかわらず、カプサイシンの局所投与が継続され、それによって、患者が罹患する神経障害性状態に関して改善を達成し、特に、神経障害性疼痛の緩和を達成することが見出されている。
【0029】
初期非応答者への繰り返し適用は、患者に追加の利益をもたらす。治験にわたって、高濃度カプサイシン用量単位(パッチ)での繰り返し治療では、初期非応答者の3分の1以上が応答者に変換された。12ヵ月時点では、高濃度カプサイシン用量単位(パッチ)に初期に応答しなかった、または十分に応答しなかった患者の応答者率は、全体集団よりも約10%低かったが、初期に応答しなかった患者の応答者率が大幅に増加したことは、治療の繰り返しを正当化するものである。
【0030】
さらに、追加のデータは、より低い初期応答を有し、より早く第2の適用を受ける患者が、より良い初期応答を有し、後に再治療された患者よりも、第2の適用から比例してより多くの利益を受けるであろうことを示す。
【0031】
カプサイシンがその効果を発揮するためには、TRPV1受容体が機能していると仮定される。神経が機能的TRPV1受容体を発現していない場合、論理的にはカプサイシンはその効果を発揮できない。したがって、カプサイシンに応答しない患者のサブセットにおいて、この受容体は、応答を生成するのに十分に機能していないと合理的に仮定することができる。結果として、十分に機能するTRPV1受容体を発現しない神経が、臨床応答を得ることができるような方法で受容体を活性化するために、この用途が第1または第2の投与中に成功しなかったとしても、カプサイシンの第1または第2の適用後に十分に機能するTRPV1受容体を発現する神経に変わることができることは驚くべきことである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明による使用のための1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、カプサイシン{すなわち、(E)-8-メチル-N-バニリル-6-ノネナミド、トランス-8-メチル-N-バニリル-6-ノネナミド、6-ノネナミド、(E)-N-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチル]-8-メチル}及び/または1つ以上のカプサイシノイドを含有する。カプサイシン自体が時にはカプサイシノイドと見なされることもある。しかしながら、本明細書の目的のために、カプサイシンは、カプサイシノイドではない。
【0033】
本明細書の目的のために、「カプサイシン及び/またはカプサイシノイド」とは、(i)カプサイシン、または(ii)カプサイシノイド、または(iii)カプサイシン及びカプサイシノイドのいずれかを意味するが、各場合において、カプサイシノイドは、単一のカプサイシノイド、または互いにカプサイシノイドの任意の組み合わせであってもよい。特に明記しない限り、すべての重量及びパーセンテージは、存在するすべてのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの総量を指す。
【0034】
カプサイシノイドは、当業者に既知であり、市販されている。本発明による好ましいカプサイシノイドとしては、ズカプサイシン(シスカプサイシン、シバミド)、(6,7-)ジヒドロカプサイシン、ノルカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシンI、ノルジヒドロカプサイシンII、ホモカプサイシンI、ホモカプサイシンII、ホモジヒドロカプサイシンI、ホモジヒドロカプサイシンII、ノルノルカプサイシン、ノルノルジヒドロカプサイシン、オクタノイルバニリルアミド、ノナノイルバニリルアミド(ノニバミド)、デカノイルバニリルアミド、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
カプサイシン及びカプサイシノイドは、以下に示されるように、異なるアシル鎖Rを有するバニリルアミンのN-アシル誘導体である:
【化1】
【0036】
【表1】
【0037】
好ましい実施形態では、本発明による使用のための1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、カプサイシンを含むが、本質的にカプサイシノイドは含まない。
【0038】
本明細書の目的のために、「用量単位」は、患者の皮膚への局所適用のための高濃度のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含有する所定量の薬学的製剤として定義される。
【0039】
例えば、薬学的製剤が分注デバイス(例えば、チューブ)内に提供されるクリームである場合、本発明による用量単位は、例えば、分注デバイスから取得される所定の長さのクリームのストランドであり得る。該所定の長さのクリームのストランドは、所定の用量のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含有し、これは、クリームのストランドが患者の疼痛のある皮膚に適用され、その上に広がったときに、患者に部分的に投与される。当業者は、クリーム、ゲル、軟膏、及び他の液体または半固体製剤などの様々な局所システムが、例えばμg/cmで表される皮膚の面積当たりの適用用量が変化し得るように、様々な厚さで皮膚に適用され得ることを認識する。しかしながら、用量単位は、典型的には、それが除去される前の比較的短い適用期間、例えば、15~90分間、好ましくは30~60分間、皮膚に適用されるため、これらの潜在的な厚さの変化は、典型的には、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの投与用量を有意に変化させることはない。典型的には、そのような比較的短い適用期間内に、当初用量単位に含まれていたカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの100%未満が投与される一方で、かなりの量のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドが、適用期間の終了時に用量単位の残りと共に除去される。
【0040】
同様に、薬学的製剤が局所パッチの形態で提供される場合、本発明による用量単位は、治療領域のサイズ及び形状に一致するように任意に切断されるパッチであり得る。該パッチは、所定の用量のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含有し、これは、パッチが患者の疼痛のある皮膚に適用されるとき、患者に部分的に投与される。
【0041】
薬学的製剤の種類(例えば、クリーム、ゲル、軟膏、またはパッチ)にかかわらず、本発明による1つ以上の局所用量単位は、用量単位の総重量に対して、少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも6.0重量%、より好ましくは少なくとも7.0重量%、最も好ましくは少なくともまたは約8.0重量%の比較的高濃度のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含有する。
【0042】
本明細書の目的のために、特に明記しない限り、「高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位」とは、用量単位の総重量に対して、かつカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの総量に対して、少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%、好ましくは少なくともまたは約8重量%の濃度でカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む用量単位を指す。
【0043】
好ましくは、本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位は、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを、局所用量単位が処方された方法で患者の皮膚に適用される場合、適用面積濃度が、局所用量単位のcmあたり少なくとも400マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイド、より好ましくは局所用量単位のcmあたり少なくとも500マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイド、さらにより好ましくは局所用量単位のcmあたり少なくとも600マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイド、最も好ましくは局所用量単位のcmあたり少なくともまたは約640マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドであるような量を含有する。
【0044】
本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位は特に限定されず、任意の局所システムであり得る。
【0045】
FDA Guidance for Industry、Product Title and Initial U.S.Approval in the Highlights of Precribing Information for Human Prescription Drug and Biological Products-Content and Format,January 2018の付録Aによると、「システム」という用語は、拡散動態、能動輸送、または他の手段によってシステムからの薬剤製品の放出速度を制御する薬剤含有送達システムに使用される。活性は、指定された期間にわたるシステムからの活性成分(複数可)の放出速度の観点から定義される。放出速度及び薬物放出の合計持続時間は、典型的には、薬物製品及び容器ラベル及びカートンラベルに表示されるが、製品タイトル行には表示されない。例示的なシステムには、子宮内システム、眼球システム、口腔粘膜システム、歯周システム、局所システム、経皮システム、イオン導入経皮システム、及び膣システムが含まれる。本発明の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位は、好ましくは、この意味に従った「局所システム」である。
【0046】
本発明による好ましい局所用量単位(局所システム)には、パッチ(例えば、マトリックスパッチ、薬物含有接着パッチ、イオントフォレーシスシステム)、溶液、懸濁液、ローション、塗り薬、クリーム、軟膏、サルブ、ペースト、ゲル(例えば、ヒドロゲル、リポゲル、ポリ(ビニルアルコール)半固体ヒドロゲル)、スプレー、エアロゾル、発泡体、リポソーム製剤(例えば、リポソームシステム、リポスフィアシステム、ニオソーム製剤、薬物含有シクロデキストリンイン変形性リポソーム)、ナノ構造製剤(例えば、ナノ構造脂質担体(NLC)ベースゲル、ナノエムルゲル)、生分解性薬物プラットフォーム(例えば、キトサン及びグアーガムからなる)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位は、エアロゾル(すなわち局所エアロゾル)、クリーム、発泡体(すなわち局所発泡体)、ゲル(すなわち局所ゲル)、ローション、軟膏、ペースト、粉末(すなわち局所粉末)、溶液(すなわち局所溶液)、スプレー(すなわち局所スプレー)、懸濁液(すなわち局所懸濁液)、綿棒、及びシステム(つまり、局所システム)から選択され、好ましくは、すべて、FDA Guidance for Industry、Product Title and Initial U.S.Approval in the Highlights of Prescribing Information for Human Prescription Drug and Biological Products-Content and Format,January 2018の付録Aに従う。
【0048】
本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位は、含浸ガーゼ、含浸ワイプ、含浸スポンジ、含浸布(例えば、織布、不織布、ニット)などの塗布補助剤の形態で提供され得る。本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位は、スプレーディスペンサー、発泡体ディスペンサー、スティック、ロールオン、スムーズオンなどの適用デバイスまたは分配デバイスの形態で提供され得る。低濃度カプサイシンロールオンは、例えば商品名arth Rx(登録商標)、Reliaderm(登録商標)、mintedLeaf(登録商標)で市販されている。
【0049】
本発明による好ましい高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位は、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドならびにヒアルロン酸、界面活性剤、浸透促進剤、アルコールから選択される1つ以上の添加剤を含む。このタイプの局所用量単位は、US 9,956,190、US 10,085,956、US 10,206,892、及びUS 10,583,100から知られている。好ましくは、ヒアルロン酸は、異なる分子量、好ましくは高分子量及び低分子量を有する2つのヒアルロン酸の混合物である。好ましくは、界面活性剤は非イオン性界面活性剤であり、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート、例えばポリソルベート80、Cremophor(登録商標)RH40(ポリオキシ40水素化ヒマシ油)、ソルビタンエステル(Spans)、ポロキサマー、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール、ステアリルアルコールなどから選択されることが好ましい。ポリソルベート80(PS80)及びポリオックス40水素化ヒマシ油が特に好ましい。好ましくは、浸透促進剤は、グリコールモノエチルエーテル(DGME)、プロピレングリコール、エトキシジグリコール、及びジメチルイソソルビドから選択される。DGME及びプロピレングリコールが特に好ましい。好ましくは、アルコールは、エチルアルコール、ベンジルアルコール、グリセロール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどから選択される。エチルアルコール(エタノール)が特に好ましい。
【0050】
好ましくは、本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位は、各事例において、剥離ライナーなしのパッチの総重量に対して、少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも6.0重量%、より好ましくは少なくとも7.0重量%、最も好ましくは少なくとも約8.0重量%の濃度でカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチである。
【0051】
本明細書の目的のため、特に明記しない限り、「高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチ」は、剥離ライナーなしのパッチの総重量に対して、少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも約8重量%の濃度でカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む薬学的パッチを指す。
【0052】
好ましくは、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは各々、バッキング層、接着層、及び剥離ライナーを含み、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの含有量は、剥離ライナーなしの薬学的パッチの総重量に対して、少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも6.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも7.0重量%、最も好ましくは少なくとも約8.0重量%である。好ましくは、カプサイシン及び/又はカプサイシノイドは、接着層(薬剤含有接着)に含まれる。
【0053】
本明細書の目的のために、各高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、バッキング層、接着層、及び剥離ライナーを含み、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの含有量が、剥離ライナーなしの薬学的パッチの総重量に対して、約8.0重量%である高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、「8%カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチ」とも称される。
【0054】
好ましくは、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、パッチのcmあたり少なくとも400マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイド、より好ましくはパッチのcmあたり少なくとも500マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイド、さらにより好ましくはパッチのcmあたり少なくとも600マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイド、最も好ましくはパッチのcmあたり少なくとも640マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含有する皮膚パッチである。
【0055】
好ましくは、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、各パッチが合計179mgのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含有するように、パッチのcmあたり少なくとも640マイクログラムのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含有し、かつ280cm(14cm×20cm)の面積を有する皮膚パッチである。好ましくは、各高濃度カプサイシン及び/又はカプサイシノイド薬学的パッチは、活性物質を含む接着側及び外面バッキング層からなる。接着側は、取り外し可能な剥離ライナーで覆われていることが好ましい。好ましくは、接着側は、カプサイシン及び/またはカプサイシノイド、シリコーン接着剤、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シリコーン油及びエチルセルロースを含むマトリックスからなる。好ましくは、表面バッキング層は、シリコーン処理された内側を有するポリエチレンテレフタレートフィルムからなる。好ましくは、取り外し可能な保護層(剥離ライナー)は、フルオロポリマーでコーティングされたポリエステルフィルムからなる。このタイプの高濃度カプサイシン薬学的パッチ(8%カプサイシンパッチ)は、商品名Qutenza(登録商標)で市販されている。
【0056】
好ましくは、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、患者の皮膚に永続的に適用されるのではなく、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを各々1つ以上の用量単位及びパッチから患者の皮膚に局所投与するために必要な比較的短い適用期間のみである。投与は局所的であり、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの浸透は皮内であり、好ましくは全身的ではない。
【0057】
本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、好ましくは単回使用のためのものである。
【0058】
本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)が、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチの形態で提供される場合、該パッチは、治療領域のサイズ及び形状に一致するように切断されることが好ましい。好ましくは、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、剥離ライナーの除去前に切断される。足を治療する場合、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシンノイド薬学的パッチは、治療領域を完全に覆うように、好ましくは、各足の背側、外側及び足底表面に巻き付けられる。
【0059】
好ましくは、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、15~90分間、好ましくは30分~60分間の適用期間にわたって患者の皮膚に適用され、その後除去される。
【0060】
好ましくは、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、最も疼痛のある皮膚領域に適用される(それぞれ、最大4つの高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド用量単位ならびに高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチを使用する)。本明細書の目的のために、「1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチを皮膚に適用する」とは、1、2、3、または4つの高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド用量単位、ならびに高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチ、好ましくは1、2、3、または4つの8%カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチをそれぞれ同時にまたは本質的に同時に使用することを指す。高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチで覆われる患者の皮膚の面積が、単一の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチで覆われることができるよりも大きいため、複数の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチパッチが必要とされ得る。
【0061】
疼痛のある領域は、好ましくは医師によって決定され、皮膚にマークされる。本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、好ましくは、無傷で、刺激性のない、乾燥した皮膚に適用され、足には15~45分間、好ましくは30分間(例えば、HIV関連神経障害、疼痛性糖尿病性末梢神経障害の治療のために)、他の位置には45~75分間、好ましくは60分間(例えば、ヘルペス神経痛の治療のために)、所定の位置に留まることができる。高濃度薬学的パッチの場合、最初に皮膚の疼痛領域のサイズ及び形態に一致するように切断し、続いて皮膚に適用することが好ましい。
【0062】
本明細書の目的のために、特に明記しない限り、「適用期間」は、好ましくは、15~90分間、好ましくは30~60分間の期間を指し、この期間中に、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチが、患者の皮膚に適用され、その後除去される。
【0063】
本発明に従って、15分間より短く、90分間より長い適用期間も企図される。
【0064】
本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)におけるカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの濃度が特に高い場合、例えば、用量単位の総重量に対して8重量%を超える場合、所望の用量のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与するためには、15分間よりも短い適用期間が十分であり得る。
【0065】
本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)におけるカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの濃度が特に低い場合、例えば、用量単位の総重量に対して8重量%を下回る場合、所望の用量のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与するためには、90分間よりも長い適用期間が必要であり得る。これらの状況下で、用量単位の総重量に対して8重量%を下回るカプサイシン及び/またはカプサイシノイド濃度を有する本発明によるいくつかの高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)は、各用量単位が15~90分間、好ましくは30~60分間の適用期間にわたり、数日間連続して繰り返し適用することも企図される。例えば、割り当てられた用量を、連続する4日間の各々で60分間適用することが企図される。
【0066】
本発明による高濃度局所用量単位(局所システム)に含まれるカプサイシン及び/またはカプサイシノイドは、皮膚への送達を意図する。任意の高濃度局所用量単位について、高濃度局所用量単位(局所システム)からのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの投与用量は、適用期間(適用時間)の関数であるが、個々の製剤に応じて、放出速度は時間の経過とともに直線的に変化し得る。個々の放出速度及び他の薬物動態パラメータは、当該技術分野で十分に認識されている日常的な実験(活性物質溶解及び皮膚透過アッセイ)によって決定することができる。例えば、Qutenza(登録商標)カプサイシン濃度8重量%、パッチのcmあたり640μgのカプサイシン)を用いたインビトロ研究に基づいて、約1%のカプサイシンが、1時間の適用中に皮膚の表皮及び皮膚層に吸収されると推定される(すなわち、約6.4μg・cm-2)。
【0067】
好ましくは、適用期間は、高濃度局所用量単位の個々の特性(種類、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの濃度、浸透促進剤などの賦形剤、放出速度など)に応じて、適用期間中に実際に投与される皮膚の面積あたりのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの用量が、少なくとも4.0μg・cm-2、より好ましくは少なくとも4.5μg・cm-2、さらにより好ましくは少なくとも5.0μg・cm-2、さらにより好ましくは少なくとも5.5μg・cm-2、最も好ましくは少なくとも6.0μg・cm-2であるように調整される。
【0068】
皮膚から1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチを除去した後、クレンジングゲルは、好ましくは治療領域に大量に適用され、少なくとも1分間放置される。次いで、クレンジングゲルは、好ましくは、乾燥したガーゼで拭き取られて、残りのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを皮膚から除去する。クレンジングゲルを拭き取った後、皮膚の部分を石鹸と水で穏やかに洗浄することが好ましい。好適なクレンジングゲルは、マクロゴール300、カルボマー、精製水、水酸化ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、及びブチルヒドロキシアニソールを含み得る。
【0069】
好ましくは、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチが、適用期間に患者の皮膚に適用され、皮膚上に留まり、それにより適用期間にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、それにより、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチによる、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの局所投与の結果として、患者が、好ましくは、VASまたはNRS疼痛評価尺度のいずれか、好ましくはNRS疼痛評価尺度で、ベースラインに対して少なくとも30%の疼痛緩和を知覚する。適用期間から鎮痛効果の発症まで、1~3週間程度要し得る。さらに、初期非応答者が応答者に変換されるまで、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチの繰り返しの適用を必要とし得る。
【0070】
例えば、15~90分間、好ましくは30~60分間の適用期間の後、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチが、好ましくは皮膚から除去されるように、局所投与が行われる。このように進行した場合、皮膚からの除去後、投与された用量のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの結果として、疼痛緩和などの神経障害性状態の治療は、最大60日間、90日間、またはさらに長く続く可能性がある。
【0071】
好ましくは、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチが、適用期間に患者の皮膚に適用され、皮膚上に留まり、それにより適用期間にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、それにより、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチによる、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの局所投与の結果として、患者が、好ましくは、少なくとも4週間、より好ましくは少なくとも6週間、さらにより好ましくは少なくとも8週間、ベースラインに対して少なくとも30%の疼痛緩和を知覚する。適用期間から鎮痛効果の発症まで、1~3週間程度要し得るため、適用期間の直後に疼痛緩和期間が開始するとは限らない。
【0072】
本発明による1つ以上の別の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド用量単位、好ましくは1つ以上の別の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチの後続の適用は、好ましくは2~4ヶ月後、好ましくは2ヶ月後または3ヶ月後、例えば60日ごとまたは90日ごとに繰り返され得る。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明による1つ以上の別の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド用量単位、好ましくは1つ以上の別の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチの後続の適用は、2~3ヶ月後、好ましくは90日未満後、より好ましくは84日未満後、さらにより好ましくは2ヶ月後、例えば60日毎に繰り返される。本発明による1つ以上の別の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド用量単位の後続の適用が、より短い間隔で、好ましくはカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与後各々の事例において、89日未満、または88日未満、または87日未満、または86日未満、または85日未満、または84日未満、または83日未満、または82日未満、または81日未満;より好ましくは80日未満、または79日未満、または78日未満、または77日未満、または76日未満、または75日未満、または74日未満、または73日未満、または72日未満、または71日未満;さらにより好ましくは70日未満、または69日未満、または68日未満、または67日未満、または66日未満、または65日未満、または64日未満、または63日未満、または62日未満、または61日未満、または60日未満に進行する場合、応答率を相対的に増加させることができることが見出された。
【0074】
特に好ましい実施形態では、治療は、疼痛の持続または再発によって正当化されるように、90日ごとに後続の適用によって繰り返され得る。90日未満の後の再治療は、個々の患者について考慮されることが好ましい。治療間の最小間隔は60日であることが好ましい。
【0075】
また、本発明によれば、2つの連続する適用期間の間の期間は変化し得、特に全治療期間の過程で増加し得ることが企図される。例えば、好ましい実施形態では、第1の適用期間と第2の適用期間との間の期間は、90日未満、好ましくは84日未満、より好ましくは約2ヶ月、例えば60日であるが、第2の適用期間と第3の適用期間との間の後続の期間は、約3ヶ月、例えば90日である。
【0076】
また、本発明によれば、2つの連続する適用期間の間の時間スパンは、個々の疼痛知覚を考慮して患者によって決定され得ることも企図される。
【0077】
適用が繰り返される場合、該1つ以上の別の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシン系用量単位、好ましくは高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシン系薬学的パッチは、好ましくは、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチも事前、すなわち2~4ヶ月前に適用された患者の皮膚の同じ疼痛のある領域に適用される。
【0078】
現在、治療に初期応答していない患者においても、高濃度局所カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの使用は制限されていないが、この患者サブグループでは、繰り返し治療による改善は現在のところ実証されていない。
【0079】
本発明によれば、患者の疼痛のある皮膚の治療領域は、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシン様局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチを適用する前に、局所麻酔剤(例えば、局所リドカイン(4%)、もしくは局所リドカイン(2.5%)/プリロカイン(2.5%))で事前に治療され得るか、または患者は、経口鎮痛剤(例えば、50mgのトラマドール)を投与され得、潜在的な適用関連の不快感を低減する。局所麻酔剤は、好ましくは、治療領域全体及び周囲1~2cmを覆うように適用される。局所麻酔剤は、好ましくは、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチを適用する前に除去される。
【0080】
好ましくは、本発明による高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)は、神経障害状態の治療における応答者率を増加させるために使用される。驚くべきことに、より低い初期応答を有し、より早く第2の適用を受ける患者が、より良い初期応答を有し、後に再治療された患者よりも、後続の適用から比例してより多くの利益を受けるであろうことが見出されている。この所見は、新しい臨床状況を明らかにする。患者が第1の適用間隔後に不十分な応答を示す場合、Wは、初期の再治療が応答速度を改善するため、意図的に減少され、すなわち、第1の適用期間と第2の適用期間との間の時間間隔が短縮され得る。
【0081】
本発明によるレジメンの好ましい実施形態では、Wは、
(i)60~109;好ましくは60~91、または60~90、または60~89、または60~85、または60~84、または60~83、または60~69、または60~68、または60~67、または60~64、または60~63、または60~62;または厳密に60;
(ii)62~109;好ましくは62~91、または62~90、または62~89、または62~85、または62~84、または62~83、または62~69、または62~68、または62~67、または62~64、または62~63;
(iii)63~109;好ましくは63~91、または63~90、または63~89、または63~85、または63~84、または63~83、または63~69、または63~68、または63~67、または63~64;
(iii)64~109;好ましくは64~91、または64~90、または64~89、または64~85、または64~84、または64~83、または64~69、または64~68、または64~67;
(iv)67~109;好ましくは67~91、または67~90、または67~89、または67~85、または67~84、または67~83、または67~69、または67~68;
(v)68~109;好ましくは68~91、または68~90、または68~89、または68~85、または68~84、または68~83、または68~69;
(vi)69~109;好ましくは69~91、または69~90、または69~89、または69~85、または69~84、または69~83;
(vii)83~109;好ましくは83~91、または83~90、または83~89、または83~85、または83~84;
(viii)84~109;好ましくは84~91、または84~90、または84~89、または84~85;
(ix)85~109;好ましくは85~91、または85~90、または85~89;
(x)89~109;好ましくは89~91、または89~90;
(xi)90~109;好ましくは90~91;あるいは
(xii)91~109の範囲内の整数である。
【0082】
本発明によるレジメンの好ましい実施形態では、Xは、独立して、
(i)60~109;好ましくは60~91、または60~90、または60~89、または60~85、または60~84、または60~83、または60~69、または60~68、または60~67、または60~64、または60~63、または60~62;または厳密に60;
(ii)62~109;好ましくは62~91、または62~90、または62~89、または62~85、または62~84、または62~83、または62~69、または62~68、または62~67、または62~64、または62~63;
(iii)63~109;好ましくは63~91、または63~90、または63~89、または63~85、または63~84、または63~83、または63~69、または63~68、または63~67、または63~64;
(iii)64~109;好ましくは64~91、または64~90、または64~89、または64~85、または64~84、または64~83、または64~69、または64~68、または64~67;
(iv)67~109;好ましくは67~91、または67~90、または67~89、または67~85、または67~84、または67~83、または67~69、または67~68;
(v)68~109;好ましくは68~91、または68~90、または68~89、または68~85、または68~84、または68~83、または68~69;
(vi)69~109;好ましくは69~91、または69~90、または69~89、または69~85、または69~84、または69~83;
(vii)83~109;好ましくは83~91、または83~90、または83~89、または83~85、または83~84;
(viii)84~109;好ましくは84~91、または84~90、または84~89、または84~85;
(ix)85~109;好ましくは85~91、または85~90、または85~89;
(x)89~109;好ましくは89~91、または89~90;
(xi)90~109;好ましくは90~91;あるいは
(xii)91~109の範囲内の整数である。
【0083】
本発明によるレジメンの好ましい実施形態では、
Wは、60~109、好ましくは60~89、より好ましくは60~83の範囲内の整数であり、
Xは、60~109、好ましくは60~89、より好ましくは60~83の範囲内の整数である。
【0084】
本発明によるレジメンの好ましい実施形態では、
(i)W及びXに対する平均は、60.0~68.0、または69.0~83.0の範囲内であり、
(ii)W、X、及びYに対する平均は、60.0~68.0、または69.0~83.0の範囲内であり;あるいは
(iii)W、X、Y、及びZに対する平均は、60.0~68.0、または69.0~83.0の範囲内である。
【0085】
本発明によるレジメンの好ましい実施形態では、W<Xである。
【0086】
本発明によるレジメンの好ましい実施形態では、Y及びZは、互いに独立して、60~110の範囲内の整数である。
【0087】
本発明によるレジメンの好ましい実施形態では、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与の際に、ベースラインに対して少なくとも30%の疼痛緩和を知覚しなかった患者が治療される。この実施形態によれば、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチは、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与時に、VASまたはNRS疼痛評価尺度のいずれか、好ましくはNRS疼痛評価尺度のベースラインに対して少なくとも30%の疼痛緩和を知覚しなかった患者の神経障害状態の治療に使用するためのものである。カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与は、主に、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与することができる任意の好適な薬学的製剤によって達成され得る。しかしながら、好ましくは、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与は、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは、本明細書に記載の本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチ、好ましくは8%のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチによっても達成されたが、患者がVASまたはNRSのいずれかの疼痛評価尺度、好ましくはNRSの疼痛評価尺度のベースラインに対して少なくとも30%の疼痛緩和を知覚しなかったように、以前は(まだ)成功していなかった。従来、そのような状況では、通常、効率の欠如により治療が終了する。しかしながら、本発明によれば、治療は、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチ、好ましくは8%のカプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチを再び使用することによって継続され、それにより初期非応答者を応答者に変換する。
【0088】
本明細書の目的のため、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与で、ベースラインに対して少なくとも30%の疼痛緩和を知覚しなかった患者は、「初期非応答者」とも称される。
【0089】
疼痛緩和の発症は、本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位(局所システム)、好ましくは1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチ、好ましくは1つ以上の8%パッチを適用することにより、例えば、1~3週間後にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの局所投与後に遅れて疼痛緩和の発症が起こり得るため、ベースラインに対する疼痛緩和は、好ましくは、局所投与の4週間(28日間)後に決定される。
【0090】
本明細書の目的のため、既存の文献及びガイダンスと一致し、「応答者」は、数値疼痛評価尺度(NRS)または疼痛視覚アナログ尺度(VAS)でベースラインから30%の減少を達成した患者として定義される。逆に、「非応答者」は、そのような評価尺度でベースラインから30%の減少を達成しなかった者として定義される。本発明によれば、慢性疼痛治療の持続的な治療効果を測定するための時点は、12週間後であり得る。この時点は従来のものであり、EMA疼痛ガイダンス(15 December 2016 EMA/CHMP/970057/2011 Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP))に従う。しかしながら、疼痛評価をより頻繁に評価することが一般的であり、したがって、患者が応答者であるか非応答者であるかが評価される時点は、好ましくは、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの先行する局所投与の8週間後である。
【0091】
好ましくは、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与に関して、患者は、完全な非応答者及び不十分な応答者から選択される初期非応答者である。
【0092】
本明細書の目的のために、「完全な非応答者」とは、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与時に、好ましくは、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは本明細書に記載の本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチによるカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの初期局所投与時に、好ましくはNRS疼痛評価尺度で、疼痛の緩和を何ら知覚しなかったか、または疼痛の悪化さえも経験した患者である。
【0093】
本明細書の目的のために、「不十分な応答者」とは、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与時に、好ましくは、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくは本明細書に記載の本発明による1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチによるカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの初期局所投与時に、好ましくはNRS疼痛評価尺度で、疼痛の緩和をある程度知覚したが、ベースラインに対して30%未満であった患者である。
【0094】
Koltzenburg M,McMahon S,Tracey I,Turk DC(ed.)Wall and Melzack’s Textbook of Pain.6th edition,Saunders,imprint of Elsevier Ltd.,ISBN 978-0-7020-4059-7を参照するEMA疼痛ガイダンスによると、疼痛強度(PI)は、依然として鎮痛剤の有効性の重要な尺度である。疼痛評価尺度のうち、視覚的アナログ尺度(VAS)、数値評価尺度(NRS)、及び言語評価尺度(VRS)が広く使用され、検証されている。VASは、「疼痛なし」から「最も強い疼痛」までを表す10cmの直線上の連続変数であり、NRSは、0~10までの数字を有する疼痛レベルを表す離散変数である(J.T.Farrar et al.Pain 2001;94:149-58)。実用的な考慮のため、後者が最も一般的に使用されるスケールである。一連の口頭による疼痛の記述因子からなるVRSは、VASまたはNRSと比較した場合、PIの変化を検出する感度を欠くことが示されている。
【0095】
本明細書の目的のため、「応答者」は、VASまたはNRS疼痛評価尺度のいずれか、好ましくはNRS疼痛評価尺度において、ベースラインから30%の減少を報告した者として定義される。
【0096】
以下で定義される好ましい投与レジメンは、典型的には、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド用量単位、典型的には、本発明による単一の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチの同時及び/または繰り返しの適用を伴う。したがって、これらの好ましい投与レジメンを実施するために、本発明による複数の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド用量単位、好ましくは複数の高濃度薬学的パッチ、好ましくは複数の8%カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチが使用される。
【0097】
本発明はまた、レジメンに従って、神経障害性状態、好ましくは神経障害性疼痛を治療するための、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくはカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチ、より好ましくは8%カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチの製造のためのカプサイシン及び/またはカプサイシノイドの使用を企図し、(a)カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第1の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第1の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、(b)第1の適用期間後W日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第2の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第2の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、(c)任意に、第2の適用期間後X日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第3の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第3の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、W及びXが、互いに独立して、60~109の範囲内の整数である。
【0098】
本発明はまた、レジメンに従って、1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位、好ましくはカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド薬学的パッチ、より好ましくは8%カプサイシン及び/またはカプサイシノイドパッチによって、神経障害性状態、好ましくは神経障害性疼痛を治療するための方法を企図し、(a)カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第1の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第1の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、(b)第1の適用期間後W日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第2の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第2の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、(c)任意に、第2の適用期間後X日で、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドを含む1つ以上の高濃度カプサイシン及び/またはカプサイシノイド局所用量単位が、患者の皮膚に適用され、第3の適用期間に皮膚上に留まり、それにより第3の適用期間中にカプサイシン及び/またはカプサイシノイドを局所投与し、その後除去され、W及びXが、互いに独立して、60~109の範囲内の整数である。
【0099】
好ましくは、神経障害性状態の治療は、神経障害性疼痛、好ましくは末梢神経障害性疼痛の緩和のためである。
【0100】
好ましくは、神経障害性疼痛は、有痛性糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、化学療法誘発性神経障害性疼痛、HIV関連神経障害、小線維神経障害、慢性特発性軸索多発性神経障害、外傷後神経障害性疼痛、及び手術後神経障害性疼痛からなる群から選択される。特に好ましい実施形態では、神経障害性状態の治療は、ヘルペス後神経痛、化学療法誘発性神経障害性疼痛、HIV関連神経障害、小線維神経障害、慢性特発性軸索多発性神経障害、外傷後神経障害性疼痛、及び手術後神経障害性疼痛からなる群から選択される神経障害性疼痛の緩和のためである。
【0101】
好ましくは、神経障害性状態の治療は、感覚神経繊維の再生及び/または回復のためである。
【0102】
好ましくは、神経障害性状態の治療は、カプサイシン及び/またはカプサイシノイドの事前の局所投与に関して非応答者を応答者に変換するためのものである。
【0103】
好ましくは、神経障害性状態の治療は、ベースラインに対して疼痛緩和を30%超、好ましくはベースラインに対して少なくとも60%、好ましくはNRS疼痛評価尺度で増加させるためのものである。
【実施例
【0104】
下記の実施例は、本発明をさらに例示するものであるが、本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0105】
52週間の期間の2つの選択された治験において、高濃度カプサイシンパッチを足に30分、または他の身体の領域に60分適用した。すべての患者は、末梢神経障害性疼痛と診断された。初期非応答者は、ベースラインからベースライン後3ヶ月まで、数値的疼痛評価尺度で30%未満の減少を有する患者として定義された。応答者は、所定の時点(6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月)で、数値的疼痛評価尺度で≧30%の減少を達成した患者として定義された。
【0106】
実施例1:
すべての患者は、非糖尿病性末梢神経障害性疼痛と診断された。Qutenza(登録商標)による繰り返しの治療は、9~12週間毎に許可された。
【0107】
3ヶ月時点では、高濃度カプサイシンパッチにより治療された患者の76.6%(n=306)が、応答者基準を満たしていなかった(n=168)。これらの168人のうち、115人の患者(68%)は、12ヶ月時点でも依然として治験中であった。注目すべきは、当初の治験集団から、174人の患者(56.9%)は、12ヶ月時点でも依然として治験中であったことである。初期非応答者(n=115)のうち、57.3%は、高濃度カプサイシンパッチの少なくとも4回の適用を受けていた。12ヶ月時点での全体で、初期非応答者の33.9%が治療に対する応答者となっていたが、全集団の43.7%は応答者として分類することができた。
【0108】
結果を以下の表にまとめる。各事例において、2回目の適用を受けた対象のみが含まれる;*最初のQutenza(登録商標)の適用から最初のQutenza(登録商標)の再適用までの時間。ベースラインからの変化率が要約される:ベースラインスコアが10であり、疼痛が7に減少した場合(10ポイントのNRS尺度で)、ベースラインからの変化は、-3、すなわち、-30%のベースラインからの変化%となる。平均は、試料における対象のベースラインからの平均変化率である。中央値は、対象の半分が、示される値を下回る減少%を有し、対象の半分が、示される値を上回る減少%を有することを示す値である。Q1及びQ3は、患者の25%及び75%が、それぞれ上記の減少値%を下回る値を有することを示す)。最小~最大値は、最大の減少及び最小の減少(または数値が正の場合は最大の増加)である。95%CIは、平均周囲の95%信頼区間である。
【0109】
【表2-1】
【0110】
【表2-2】
【0111】
【表3-1】
【0112】
【表3-2】
【0113】
【表4-1】
【0114】
【表4-2】
【0115】
【表5-1】
【0116】
【表5-2】
【0117】
【表5-3】
【0118】
【表5-4】
【0119】
【表5-5】
【0120】
【表6-1】
【0121】
【表6-2】
【0122】
【表6-3】
【0123】
【表6-4】
【0124】
【表6-5】
【0125】
実施例2:
すべての患者は、有痛性糖尿病性末梢神経障害と診断された。Qutenza(登録商標)による繰り返しの治療は、少なくとも8週間の治療間隔で許可された。
【0126】
3ヶ月時点では、高濃度カプサイシンパッチによる初期治療を受けた患者の48.6%(n=313)が、応答者基準を満たしていなかった(n=152)。これらの152人の患者のうち、127人(すなわち、83.5%)は、12ヶ月時点でも依然として治験中であったが、全集団のうち250人(79.9%)は依然として治験中であった。繰り返しの適用を受けている初期非応答者のうち、80.2%は、12ヶ月時点で少なくとも4回の適用を受けていた。12ヶ月時点で、依然として治験中であった初期非応答者(n=127)の45.7%が治療に対する応答者となっていたが、全集団の58%は応答者として分類することができた。58%は、12ヶ月時点での全集団を指し、すべての患者が12ヶ月間完全に治験に残っているわけではなく、一部の患者は時間の経過とともに応答を失った可能性があることを考慮に入れている。
【0127】
最適な繰り返しの治療間隔に関する追加の調査は、応答者率がそれぞれ26.9%及び42.3%である、≧84~<110日または≧110日)の治療間隔の他のサブグループと比較して、第1の適用後に応答した対象の割合(数値的疼痛評価尺度(NRS)でベースラインから30%の減少として定義される)が、より短い治療間隔(<84日)の対象においてより低かった(21.6%)ことを示し、最小の治療間隔の群は、より多くの数の非応答者を含んだことを示す。より小さな治療の利益を有する患者は、そのような患者の治療を遅らせることは、より長い期間にわたって疼痛に陥ることを意味するため、臨床診療において、より早く(すなわち、治療間の間隔がより短い)後退することが論理的である。しかしながら、第2の適用後、より低い治療間隔(<84日及び≧84~<110日)の2群の応答者率は、それぞれ30.6%及び35.8%に増加した。
【0128】
言い換えれば、≧84~<110日の間隔の患者での33.1%と比較して、<84日の治療間隔の患者では、応答者率は41.7%で増加した。この結果はまた、応答者率が繰り返しの適用とともに増加し得ることを支持する。
【0129】
上記実施例1及び2によって示されるように、初期非応答者への繰り返しの適用もまた、患者にさらなる利益を提供する。治験にわたって、高濃度カプサイシンパッチによる繰り返しの治療の際に、初期非応答者の3分の1超が応答者に変換された。12ヶ月時点では、高濃度カプサイシンパッチに初期に応答しなかった患者の応答者率は、全体集団よりも約10%低かったが、初期に応答しなかった患者の>30%に対して、応答者率が大幅に増加したことは、治療の繰り返しを正当化するものである。
【国際調査報告】