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特表2023-520044経口又は経鼻使用のための新規組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】経口又は経鼻使用のための新規組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20230508BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/465 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230508BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230508BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K45/00
A61K31/465
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/46
A61K47/10
A61K9/14
A61K31/352
A61K31/12
A61K9/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559870
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 SE2021050304
(87)【国際公開番号】W WO2021201765
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2050380-1
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522384813
【氏名又は名称】リウ イノベーション アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビョークホルム、ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】ビョークホルム、ラーシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB22
4C076BB25
4C076CC50
4C076DD38
4C076DD42
4C076DD49
4C076DD59
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE58
4C076FF36
4C076FF51
4C076FF52
4C076FF61
4C076GG01
4C084AA17
4C084MA43
4C084MA57
4C084MA59
4C084NA03
4C084NA13
4C084ZC80
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC20
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA03
4C086NA13
4C086ZC80
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB15
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA63
4C206MA77
4C206MA79
4C206NA03
4C206NA13
4C206ZC80
(57)【要約】
口腔又は鼻腔における使用のための組成物が開示される。組成物は、生物学的活性物質と、β-グルカンを含むマトリックス形成剤と、充填剤とを含む。組成物は、酸化防止剤、保存剤、味又は風味増強剤、pH調整剤、可塑剤及び甘味料などの追加の添加剤をさらに含むことができる。組成物を製造する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活性物質と、β-グルカンを含むマトリックス形成剤と、充填剤とを含む、口腔又は鼻腔における使用のための組成物。
【請求項2】
pHが少なくとも6.5であり、前記生物学的活性物質がニコチン又はカンナビノイドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記β-グルカンが、少なくとも30%のβ(1-3)β(1-4)グルカン、好ましくは70~100%のβ(1-3)β(1-4)グルカンを含み、前記β-グルカンが、好ましくは穀物β-グルカンであり、好ましくはエンバクから得られる穀物β-グルカンである、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記マトリックス形成剤が、少なくとも1つの追加の薬学的に許容され得るガムを含み、好ましくはアルギネート及びその塩、キサンタン、カラギーナン、メチルセルロース、カードラン及びプルランから選択され、好ましくは前記追加のガムがアルギネートの塩であり、より好ましくはアルギン酸ナトリウムである、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記マトリックス形成剤が、少なくとも50%(重量)の穀物β-グルカンを含む、請求項3又は請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも6.5のpHで有効な、好ましくは8~9のpHで有効な酸化防止剤を含み、好ましくは前記酸化防止剤が錯体結合酸化防止剤であり、好ましくは、アスコルベートのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、Ca-ジNa-EDTA、リン酸カルシウム及びクエン酸アンモニウムの少なくとも1つから選択され、より好ましくは、前記酸化防止剤がアスコルビン酸カルシウムである、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記充填剤が繊維材料を含み、好ましくは前記繊維材料が植物繊維であり、より好ましくは前記充填剤が天然又は修飾セルロース繊維を含み、最も好ましくは少なくとも1種の微結晶セルロースを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記充填剤がポリオールを含み、好ましくはマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール及び/又はイソマルチトール、ラクチトール並びにエリスリトールから選択される1又は複数のポリオールを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
植物繊維材料と5~70%(重量)のポリオールとを含む充填剤を含む請求項8に記載の組成物であって、好ましくは、前記充填剤がマンニトール及び少なくとも1種の微結晶性セルロースを含む、組成物。
【請求項10】
保存剤、味又は風味増強剤、pH調整剤、可塑剤及び甘味料から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、先行する請求項のいずれか一項にいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
50%(重量)未満、好ましくは40%(重量)未満の前記マトリックス形成剤を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
鼻腔への送達に適合され、20%(重量)未満の水、好ましくは1~15%(重量)の水を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の粉末組成物。
【請求項13】
前記粉末粒子が0.01~2mmの粒径を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記充填剤が、水溶性セルロース、好ましくは水溶性微結晶セルロース、より好ましくは水溶性及び水不溶性微結晶セルロースの組み合わせを含む、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
口腔の粘膜と接触するように適合され、少なくとも30%(重量)の水と微結晶セルロースを含む充填剤とを含む、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
40~60%(重量)の水を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ロゼンジ又は錠剤として口腔内で使用されるように適合され、1~30%(重量)の水と、微結晶セルロース、植物繊維及びポリオールの少なくとも1つを含む充填剤とを含む、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の組成物であって、好ましくは前記組成物が少なくとも50%(重量)の前記マトリックス形成剤を含む、組成物。
【請求項18】
活性物質の経粘膜送達に適した、厚さが0.01~7mmであるフィルムとして構成され、少なくとも50%(重量)の前記マトリックス形成剤及び任意に(optionally)可塑剤を含む、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
0.1~20%(重量)、好ましくは5~10%(重量)の充填剤を含み、好ましくは前記充填剤が微結晶セルロース及び可塑剤であり、好ましくは前記可塑剤がソルビトール及びグリセロールの少なくとも一方から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~請求項19のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
(i)充填剤と、マトリックス形成剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを乾式混合することと、
(ii)前記乾燥混合物を、pH調整剤を含む第1の水溶液と混合することと、
(iii)保存剤、味又は風味増強剤及び甘味料の少なくとも1つを含む第2の水溶液を添加することと、
(iv)1又は複数の生物学的活性物質を含む第3の水溶液を添加し、添加されたすべての成分を適量の水と混合物に混合することとを含む、方法。
【請求項21】
前記充填剤が、前記マトリックス形成剤及び前記酸化防止剤と乾式混合される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記充填剤及び前記酸化防止剤を乾式混合することを含み、前記第3の水溶液が前記マトリックス形成剤及び前記1又は複数の生物学的活性物質を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記得られた混合物の1又は複数のさらなる処理工程によって経鼻使用のための粉末組成物を製造するように構成され、15%未満の水(重量)を含む2mm未満の粒径の粉末に乾燥させることを含む、請求項20~請求項22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
パウチへの充填、錠剤又はロゼンジ形成、押出、パンチング、キャスティング、成形、射出成形、混練紡糸、フィルム形成、及びチューインガムベースとの混合の少なくとも1つを用いて、前記得られた混合物の1又は複数のさらなる処理方法によって口腔内における使用のための組成物を製造するように構成された、請求項20~請求項23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的活性物質と、穀物β-グルカンを含むマトリックス形成剤と、充填剤とを含む、口腔又は鼻腔における使用のための組成物、及び前記組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔及び鼻腔への薬学的活性物質の送達は、一般に、迅速な治療開始を得るため、並びに胃腸系の代謝活性及び初回バイパス代謝を回避するための望ましい投与経路である。ロゼンジ、舌下錠剤、チューインガム、頬側パッチ又はパウチなどの多数の固体剤形が、口腔を通じた治療に応じて患者のための適合剤形を得るために開発されてきた。そのような固体剤形は、典型的には、活性物質、充填剤、結合剤、潤滑剤、並びに粘膜付着性、嗜好性、コンプライアンス及び活性物質の放出を支持する他の成分を含む。
【0003】
無煙タバコ及びニコチン製品の供給業者及び開発者は、口腔又は鼻腔を通してニコチンを送達するように構成された多数の製品を開発してきた。タバコ製品には、例えば、経口的又は経鼻的に使用される噛みタバコ、湿った無煙タバコ、スヌース及び乾燥嗅ぎタバコが含まれる。非タバコ製品は、タバコから抽出された純粋なニコチン、又は例示されているような経口又は経鼻剤形に適した添加剤を配合した合成ニコチンに依存している。口腔用の非タバコ剤形は、例えば、繊維状充填材料及び結合剤として作用するマトリックス形成剤に依存し得る。ニコチン(3-(1-メチル-2-ピロリジニル)ピリジンは、熱、酸素及び光の影響下で分解しやすい揮発性化合物である。このため、口腔内でのニコチンの望ましい放出速度を許容しながら、その製造中の分解を打ち消し、ニコチンの適切な貯蔵安定性を提供し、しかも使用者に順応性のある製品として適切な非タバコ剤形を見出すことは技術的課題である。これらの理由から、ニコチン剤形の開発者は、タバコに取って代わるが長期の貯蔵寿命、望ましい放出プロファイル及び消費者に対する高いコンプライアンスを支持する、新しい薬剤を探している。
【0004】
WO2010/011445は、ニコチンなどの活性物質の送達に適した経口使用のための植物繊維製品を開示している。マトリックス形成剤としてのアルギネートの組み込みは、製品に望ましい放出特性及び受けやすい(liable)活性物質の適切な安定化を提供する。
【0005】
WO2010/104464は、口腔内における使用のためのパウチに封入されたニコチンなどの活性物質を含むアルギネートの粒子を開示している。
【0006】
WO2015/051308及びUS2015/0098996は、主にマルトデキストリンである少なくとも40%重量の水溶性繊維及び15%未満の水を含むタバコ又はニコチンのロゼンジを開示している。しかしながら、ニコチンの貯蔵寿命又は口腔内でのニコチンの放出特性に関しては何も開示されていない。
【0007】
EP1622627は、穀物β-グルカン及び医薬品を含む医薬組成物を記載しており、局所麻酔薬などの薬剤を送達するために口腔内で使用することが提案されている。しかしながら、この文献ではそのような製品は製造されておらず、又は実際に試験されていないので、穀物β-グルカンが、受けやすい(liable)活性物質の口腔又は鼻腔への送達に適した添加剤であるかどうかを結論付けることはできない。
【0008】
US2010/158988は、10%(重量)までの充填剤を含むことができる穀物β-グルカンに基づく経口消費可能な乾燥溶解性フィルム又はコーティングを記載している。しかしながら、フィルムは、口腔又は鼻腔へのニコチンの送達に適したニコチン製品であるいかなる適応も実証していない。EP1790687は、ニコチンを含んでもよい同様の乾燥フィルムを記載しているが、消費者に対する、従来のタバコ製品と同様のコンプライアンスのニコチン剤形を教示していない。
【0009】
WO2010091649は、口腔内での使用のためのタバコを含まないニコチン製品に関するものであり、したがってpH値を記載している。しかしながら、意図的に選択された支持剤を用いてニコチンの安定性及び放出にどのように影響を及ぼすかについての開示はない。
【0010】
CN10707494は、ガムマトリックス、β-グルカン、甘味料、及び活性物質としてのセルロースレシチンを含むチューインガムを開示している。
【0011】
CN104784197は、β-グルカンを含む、活性物質没食子酸エピガロカテキンを送達するために特異的な組成物を開示している。
【0012】
US6499490は、β-グルカン及び葉タバコ抽出物を含むタバコ代替シート材料を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、生物学的活性物質を口腔又は鼻腔に送達するのに適した組成物であって、前記薬剤の適切な放出プロファイルを許容しながら、製造及び保存を通して活性物質の安定性を許容する組成物を提供することである。
【0014】
本発明の目的はまた、活性物質の制御された放出速度及び放出速度の適切な持続時間を支持する組成物を提供することである。
【0015】
本発明の目的はまた、貯蔵中に分解しやすい活性物質の安定化を促進して、比較的高い含水量を有する組成物においても長い貯蔵寿命を有する安定な製品を得る組成物を提供することである。
【0016】
また、本発明の目的は、反復又は長期曝露による局所刺激及び副作用を回避するために、口腔又は鼻腔の粘膜との高いコンプライアンスを有する組成物を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、ニコチンを口腔又は鼻腔に送達し、それによって同等及び従来のタバコ製品又は医薬品とのコンプライアンスのユーザの期待を満たすのに適した組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
全般的な態様では、本発明は、生物学的活性物質と、β-グルカンを含むマトリックス形成剤と、充填剤とを含む、口腔又は鼻腔における使用のための組成物に関する。
【0019】
本発明の本明細書において、マトリックス形成剤は、充填剤と一緒になって、生物学的活性物質を包含し、口腔又は鼻腔と接触したときに活性物質の制御可能で望ましい放出プロファイルに寄与しながら、受けやすい(liable)そのような薬剤に対して安定化効果を発揮するのに寄与する凝集性があり均質な組成物を提供することができる。安定化効果及び放出プロファイルは、一態様では、充填剤との(例えばマトリックス形成剤と充填剤の繊維との間の)相互作用又は相乗作用によって引き起こされ得る。したがって、本発明の組成物では、活性物質とマトリックス形成剤との間の相互作用を利用して、放出速度を調整及び制御することができる。
【0020】
本発明のマトリックス形成剤は、組成物中で生物学的活性物質を制御された方法で結合させるためにも使用される。例えば、活性物質がニコチンである場合、制御された量のニコチンが遊離し、未結合のニコチン及び制御された量のニコチンがマトリックス形成剤から徐々に制御可能に放出されるようにマトリックス形成剤を選択することができる。例えば、本発明の組成物中のマトリックス形成剤の量を増加させることにより、より多くのニコチンが結合され、徐々に放出される。したがって、組成物は、口腔又は鼻腔に投与されるニコチンの満足のいく初期用量を使用者に提供し、所定の期間中に組成物からニコチンを徐々に放出させるように開発することができる。ニコチン製品の場合、マトリックス形成剤を使用して、ユーザコンプライアンスの様々な要求を満たすことができる。
【0021】
一態様では、本発明の組成物は、50%(重量)未満のマトリックス形成剤、例えば40%(重量)未満又は30%(重量)未満及び20%(重量)未満、又は0.1~10%(重量)、又は0.5~5%(重量)のマトリックス形成剤を含む。
【0022】
他の態様では、本発明の組成物は、50%(重量)超のマトリックス形成剤、例えば50~90%(重量)又は50~70%(重量)のマトリックス形成剤を含む。
【0023】
また、本明細書において、充填剤は、主に、組成物の嵩及び形状に寄与し、例えば、口腔の異なる部分における使用者のコンプライアンスを許容し、及び/又は組成物の便利な製造、取り扱い及び投与を補助する。充填剤はまた、実施形態において、マトリックス形成剤と積極的に相互作用して、薬剤(複数可)を安定化し、望ましい放出特性を誘導してもよい。
【0024】
組成物のβ-グルカンは、穀類及び酵母を含む様々な供給源から得ることができ、少なくとも30%のβ(1-3)β(1-4)グルカンを含み、好ましくは70~99又はほぼ100%のβ(1-3)β(1-4)グルカンを含む。β-グルカンは穀類から得られることが好ましく、エンバクから得られることがより好ましい。穀物β-グルカンは、例えばJournal of Food Science,2017,82(9)(G Maheshwari et al)及びChemical Engineering and Processing,2014,84,page 90-97(O Benito-Roman et al)に概説されている方法によって、適切な高グレードに精製することができる。
【0025】
一態様では、本発明の組成物は、少なくとも50%(重量)のβ-グルカンを含むマトリックス形成剤を含む。本発明の組成物は、好ましくはアルギネート及びその適切な塩、キサンタン、カラギーナン、メチルセルロース、キュドラン、プルラン、グアーガム、アラビアガム及び同様の多糖類から選択される、食品又は医薬品グレードの少なくとも1つの追加の薬学的に許容され得るガム又はゲル形成多糖類をさらに含むマトリックス形成剤を含むことができ、好ましくは追加のガムはアルギネートの塩であり、より好ましくはアルギン酸ナトリウムである。
【0026】
本発明の組成物の充填剤は、天然源又は合成源であり得る繊維材料を含む。繊維は、好ましくは植物、藻類又は真菌に由来し、天然であってもよいし、バイオプロセス又は化学的方法で修飾されていてもよい。好ましい態様では、繊維材料は植物繊維であり、より好ましくは、充填剤は天然又は修飾セルロース繊維を含み、最も好ましくは少なくとも1種の微結晶セルロースを含む。
【0027】
様々な実施形態では、充填剤に含まれる植物繊維は、茶、コーヒー、タバコ、ココア、トウモロコシ、竹、エンバク、大麦、ライムギ、テンサイ、ハーブ、ソバ、ジャガイモ、トマト、ナス、カリフラワー、リンゴ、マテ、又はセルロース繊維の1つの様々な供給源及び同様のものに由来し得る。植物繊維は、天然であってもよく、又は様々な生物学的又は化学的方法で修飾されていてもよい。タバコ繊維は、白色度及び/又はニトロソアミン低減のための様々な従来技術に従って加工することができる。
【0028】
充填剤に適した微結晶性セルロース(MCC)は、AVICEL(登録商標)グレードPH-100、PH-102、PH-103、PH-105、PH-112、PH-113、PH-200、PH-300、PH-302、VIVACEL(登録商標)グレード101、102、12、20;EMOCEL(登録商標)グレード50M及び90M、HiCel(登録商標)グレード、例えばHiCel(登録商標)90Mなど、並びにそれらの混合物から選択することができる。水溶性微結晶セルロースが望ましい本発明の組成物の実施形態については、様々なグレードのTABULOSE(登録商標)などのコロイド微結晶セルロースのグレードが有用である。
【0029】
水溶性微結晶セルロースが望ましい本発明の組成物、例えば鼻腔における使用のための粉末状組成物の実施形態については、適切なグレードのコロイド微結晶セルロースは、Cas No.51395-75-6を有するグレードであり、例えば、様々なブランドのTABULOSE(登録商標)である。好ましいこのようなコロイドゲル化MCCは、商品名FEIYUN XW591を有する。
【0030】
本発明の組成物の実施形態では、充填剤は、ポリオールを含み、好ましくはマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール及び/又はイソマルチトール、ラクチトール並びにエリスリトールから選択される1又は複数のポリオールを含む。適切には、本発明の組成物は、植物繊維材料と5~70%(重量)のポリオールとを含み、好ましくは、充填剤は、マンニトール及び少なくとも1種の微結晶性セルロースを含む。
【0031】
鼻腔における使用のための粉末状組成物に関する本発明の実施形態では、充填剤は、セルロース誘導体、デンプン誘導体及びポリビニルピロリドンの少なくとも1つから選択される粘膜付着剤を含むことができ、好ましくは粘膜付着剤は、デンプングリコール酸ナトリウム及び架橋ポリビニルピロリドンの少なくとも1つから選択される。このような実施形態では、充填剤はグアーガム又はデンプンを含むことができる。適切なデンプンは、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン及び修飾又は非修飾デンプンである。
【0032】
鼻腔における使用のための粉末状組成物に関する本発明の実施形態では、組成物は、0.01~2mm、又は0.05~0.5mm、又は0.02~0.2mm、又は0.01~0.1mmなどの制御された平均サイズ(直径)を有する粉末粒子を含む。組成物については、粒子が10μm未満(<)に近づく場合はエアロゾル化及び肺への不注意な粉末分配のリスクを回避し、数mm程度を超える大きな粒子では不十分なコンプライアンス及び分配を回避するように考慮して、粉末粒径が最適化される。
【0033】
生物学的活性物質は、治療用又は一般に医薬品と見なされない非治療用物質、例えば、自然療法製剤、刺激剤又は栄養補助食品であり得る。本発明の組成物によって単独で又は組み合わせて投与することができる治療用生物学的活性物質の例としては、尿失禁剤;抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、抗炎症薬、制吐薬、抗てんかん薬、血管拡張薬、鎮咳薬及び去痰薬、鎮痙薬、ホルモン、利尿薬、抗低血圧薬、気管支拡張薬、抗炎症性ステロイド、抗生物質、鎮静薬、CNS活性物質、カンナビノイド、例えばΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)又はカンナビジオール(CBD)、うっ血除去薬、下剤及び制酸薬が挙げられる。一般に、組成物は、意識消失、重度の片頭痛、急性脳卒中又は胃腸閉塞など、嚥下のための従来のテーブル(tables)を投与することができないことにつながる合併症を患っている患者のための薬物送達剤形として有用である。適切な非治療剤の例は、カフェイン、アルコール粉末、エタノール、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、Bioperin(登録商標)、コエンザイムQ10、セレン、グルタチオン、アルファリポ酸、葉酸、チョウセンニンジン、花粉抽出物、酸化防止剤、ミネラル、パラセタモール、アセチルサリチル酸、ロシア根及びバラ根などである。
【0034】
本発明の実施形態では、組成物は、少なくとも6.5のpH、好ましくは8~9のpHを有し、生物学的活性物質はニコチン又はカンナビノイド、例えばTHCである。
【0035】
いくつかの実施形態では、生物学的活性物質は、ニコチンである。ニコチンという用語は、タバコ属又は他の植物源などのタバコ植物からの合成ニコチン及びニコチン抽出物を含み、任意の固体又は液体形態、例えば非晶質、結晶性、多形などの物理的形態又は異性体及び鏡像異性体などの化学的形態のニコチン又はニコチン誘導体、並びにそれらの任意の薬学的に許容され得る塩、錯体又は溶媒和物を含む。本明細書におけるニコチンという用語はまた、ニコチン塩基及び/又はその塩、例えばニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、ニコチン一酒石酸塩、ニコチン二酒石酸塩、ニコチン硫酸塩、ニコチン塩化亜鉛(一水和物)及びニコチンサリチル酸塩も含む。
【0036】
ニコチンは、典型的には、遊離塩基として計算して、約0.1%(重量)~約5%(重量)、例えば約0.1%(重量)~約4%(重量)、約0.1%(重量)~約3%(重量)、約0.1%(重量)~約2%(重量)、約0.1%(重量)~約1%(重量)、約0.1%(重量)~約0.75%(重量)、約0.2%(重量)~約0.5%(重量)、又は約0.2%(重量)~約0.4%(重量)の濃度で存在する。本発明の組成物と共に使用されるニコチン又はその塩は、好ましくは高純度であり、例えば99.5%純度である。
【0037】
本発明の組成物の酸化防止剤は、少なくとも6.5、例えば8~9のpHで有効な酸化防止剤であり、好ましくは、酸化防止剤は錯体結合酸化防止剤であり、より好ましくは、酸化防止剤は、アスコルベートのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、Ca-ジNa-EDTA、リン酸カルシウム及びクエン酸アンモニウムの少なくとも1つから選択され、さらにより好ましくは、酸化防止剤は、リン酸アスコルビルナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウムから選択されるアスコルビン酸塩である。最も好ましくは、酸化防止剤はアスコルビン酸カルシウムである。この種の酸化防止剤は、生物学的活性物質がニコチンである場合に一般的に好ましい。しかしながら、他の種類の活性物質は、適切な貯蔵安定性を得るために、相補的又は異なる酸化防止剤又は酸化防止剤系を必要とし得る。
【0038】
本発明による組成物は、可塑剤、pH調整剤、保存剤、味又は風味増強剤、着色剤及び甘味料から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む。
【0039】
可塑剤は、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール及びソルビトールであり得る。好ましい可塑剤は、ソルビトールであり、任意に(optionally)グリセロールの一部を伴う。
【0040】
pH調整剤は、組成物中のpHを少なくとも6.5に維持できるものであり、モノカーボネート、バイカーボネート及びセスキカーボネートを含むカーボネート、及び、アセテート、グリシネート、グルコネート、ボレート、グリセロホスフェート、又はクエン酸などの弱い有機酸、ホスフェートなどの生理的に許容され得る酸の他のアルカリ/アルカリ金属塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物、これらの混合物によって例示される。適切なpH調整剤の例は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム、並びにそれらの混合物である。組成物の製造時にpHがより高いこと(pH8~9など)が好ましいが、pH調整剤は貯蔵及び消費を通してpH>6.5を維持することができなければならない。
【0041】
保存剤は、ソルビン酸、ソルビン酸塩、安息香酸乳酸及び生理学的に許容され得る塩などの食品及び製薬産業で承認された薬剤から選択することができる。好ましい保存剤は、ソルビン酸カリウムである。
【0042】
味又は風味増強剤としては、塩化アンモニウム;アルコール、エステル、アルデヒド及びラクトンの混合物を含む細断された花、葉、皮又はパルプ化された全果実の蒸留、溶媒抽出又は冷間圧搾を含むエッセンシャルオイル;又は、エッセンシャルオイルの希釈溶液、若しくは例えばベルガモット、ユーカリ、オレンジ、マンダリン、シトラス、レモン、ペパーミント、ミント、メントール、甘草、ウィンターグリーン、タバコ、コーヒー、バニラ、ライム、リンゴ、モモ及びそれらの混合物からの所望の風味と一致する合成化学ブレンドの混合物のいずれかを含むエッセンスが挙げられる。さらなる例としては、醸造及び酒類、例えば、コニャック、ウィスキー、ラム、ジン、シェリー、ポートワイン及びワイン;ユーカリ、リコリス、及びメントールの人工的及び天然の風味が挙げられる。
【0043】
着色剤は、インジゴカルミン、アマランス、エリスロシン、カーボンブラック、二酸化チタン及びそれらの任意の混合物などの染料を含む、光を吸収する化学基を含有する染料から選択することができる。
【0044】
甘味料は、口の中で発酵性ではない天然甘味料、又は人工甘味料、例えばアスパルテーム、アセスルファムK、サッカリン、シクラメート、ステビア抽出物及び他の同様の薬剤であり得る。
【0045】
本発明の態様では、組成物は、鼻腔への送達に適合した粉末組成物であり、50%未満、好ましくは0.5~5%(重量)の定義のマトリックス形成剤、20%(重量)未満の水、好ましくは1~15%(重量)の水を含む。このような組成物の粉末粒子は、0.01~5mmのサイズ範囲を有し、又は、好ましくは0.05~2mmのサイズ範囲を有する。このような組成物の実施形態では、充填剤は、水溶性セルロース、好ましくは水溶性微結晶セルロース、より好ましくは水溶性及び水不溶性微結晶セルロースの組み合わせを含む。そのような組成物は、上で定義した活性物質、充填剤及び添加剤をさらに含むことができる。経鼻使用に適した一実施形態では、組成物は、ニコチンと、マトリックス形成剤としてβ-グルカンと、少なくとも部分的に水溶性のセルロースを含む充填剤と、20%(重量)未満の水と、pH調整剤と、酸化防止剤と、保存剤、味/風味増強剤及び甘味料から選択される1又は複数の他の添加剤とを含む。経鼻使用に適した一実施形態では、組成物は、約2mm未満のサイズの粒子を有する粉末であり、ニコチンと、マトリックス形成剤としてβ-グルカンと、少なくとも部分的に水溶性のセルロースを含む充填剤と、20%(重量)未満の水と、pH調整剤と、酸化防止剤と、保存剤、味/風味増強剤及び甘味料から選択される1又は複数の他の添加剤とを含む。経鼻使用に適した別の実施形態では、組成物は、ニコチンと、マトリックス形成剤としてβ-グルカンと、少なくとも部分的に水溶性セルロースを含む充填剤と、1~15%(重量)の水と、pH調整剤として炭酸水素ナトリウムと、酸化防止剤としてアスコルビン酸カルシウムと、保存剤、味/風味増強剤及び甘味料から選択される1又は複数の他の添加剤とを含む、0.01~5mmの範囲内のサイズの粒子を有する粉末である。
【0046】
本発明の態様では、組成物は、粘膜との接触によって口腔に送達するように適合される。そのような組成物は、50%未満、好ましくは0.1~10%(重量)、より好ましくは0.5~5%(重量)の上で定義したマトリックス形成剤を含み、少なくとも30%(重量)の水、好ましくは40~60%(重量)の水を含む。そのような組成物は、上で定義した活性物質、充填剤及び添加剤をさらに含むことができる。実施形態において、組成物は、好ましくは微結晶セルロースを含む少なくとも40%(重量)の充填剤を含む。適切には、そのような組成物は、規定量の組成物がパウチに包装されたスヌース製品などの従来のタバコ製品として提供することができる。そのような組成物の一実施形態では、ニコチンと、マトリックス形成剤としてβ-グルカンと、微結晶セルロースを含む充填剤と、少なくとも30%(w)の水と、pH調整剤と、酸化防止剤と、保存剤、味/風味増強剤及び甘味料から選択される1又は複数の他の添加剤を含み、そのような組成物の一実施形態では、ニコチンと、マトリックス形成剤としてβ-グルカンと、微結晶セルロース並びに任意に(optionally)マンニトール及び/又は他の植物繊維を含む充填剤と、40~60%(wt)の水と、pH調整剤と、酸化防止剤と、保存剤、味/風味増強剤及び甘味料から選択される1又は複数の他の添加剤とを含む。そのような組成物の一実施形態では、ニコチンと、β-グルカン及び上で定義される1又は複数の他の追加の薬学的/栄養的に許容され得るガムを含むマトリックス形成剤と、微結晶セルロース並びに任意に(optionally)マンニトール及び/又は他の植物繊維を含む充填剤と、40~60%(重量)の水と、pH調整剤と、酸化防止剤と、保存剤、味/風味増強剤及び甘味料から選択される1又は複数の他の添加剤とを含む。
【0047】
本発明の態様では、組成物は、唾液と接触して徐々に溶解するロゼンジ又は錠剤として口腔に送達するように適合される。組成物は、30%(重量)未満の水を含む、好ましくは1~30%(重量)の水を含む、先に定義された少なくとも50%のマトリックス形成剤を含む。そのような組成物は、上で定義した活性物質、充填剤及び添加剤をさらに含むことができる。特定の実施形態では、充填剤は微結晶セルロースを含むことができ、特定の実施形態では、ロゼンジは、活性物質を含むコーティング、好ましくは徐放が確立される前に初期の迅速投与による使用を提供するように設計されたニコチンを含むコーティングを有することができる。
【0048】
本発明の他の態様では、組成物は、50%を超えるマトリックス形成剤を含み、活性物質の経粘膜送達に適したフィルムとして構成される。フィルム組成物は、0.01~7mmの厚さを有し、任意(optionally)により可塑剤を含む。一実施形態では、これらの組成物は、0.05~20%(重量)、好ましくは5~10%(重量)の充填剤を含み、好ましくは前記充填剤が微結晶セルロース及び可塑剤であり、好ましくは前記可塑剤がソルビトール及びグリセロールの少なくとも一方から選択される。
【0049】
充填剤及び他の指定された添加剤の成分及び量は、例えば経口又は経鼻使用のための魅力を得るために、最終製品の所望の特性に応じて変化し得る。
【0050】
これら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明においてより十分に例示される。
【0051】
別の全般的な態様では、本発明は、口腔及び鼻腔における使用のための組成物を製造する方法に関する。本方法は、充填剤と、マトリックス形成剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを乾式混合することと;前記乾燥混合物を、pH調整剤を含む第1の水溶液と混合することと;保存剤、味又は風味増強剤及び甘味料の少なくとも1つを含む第2の水溶液を添加することと;1又は複数の生物学的活性物質を含む第3の水溶液を添加し、最後に、添加されたすべての成分を適切な含有量の水と混合物に混合することとを含む。
【0052】
本方法の一実施形態では、第1の工程の充填剤は、マトリックス形成剤及び酸化防止剤と乾燥混合される。
【0053】
本方法の一実施形態では、第1の工程の充填剤は、酸化防止剤と乾燥混合され、第3の水溶液はマトリックス形成剤及び1又は複数の生物学的活性物質を含む。
【0054】
本方法は、1つの代替において、得られた混合物の1又は複数のさらなる処理工程、例えば、約1mm又はそれ以下の粒径の粉末への噴霧乾燥によって、20%未満の水(重量)、例えば1~15%(重量)の水を含む、経鼻使用のための粉末組成物を製造するように構成することができる。
【0055】
本方法は、別の代替において、パウチへの充填、錠剤形成又はロゼンジ形成、押出、パンチング、キャスティング、成形、射出成形、混練紡糸、フィルム、噴霧可能な剤形への希釈、及びチューインガムベースとの形成及び混合の少なくとも1つを用いて、得られた混合物の1又は複数のさらなる処理工程によって口腔内における使用のための組成物を製造するように構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下の表1は、適切な添加剤を含む経口又は経鼻組成物の例をさらに示す。
【表1】
【0057】
実施例1
【0058】
概説された方法で製造された組成物製品の具体例を表2に示す。
【表2】
【0059】
口腔で使用するためのスヌースタイプの製品としてパウチに包装するのに適した、約8.5のpHを有し得る風味のない表2の組成物をニコチンの安定性について試験した。表2の組成物80gの試料及びタバコに基づく市販のスヌース製品を、40℃及び相対湿度75%で9週間比較した(相対湿度を調整しない25℃で10ヶ月に相当)。
【表3】
【0060】
表3は、本発明の組成物のβ-グルカン及び抗酸化剤がニコチン安定性の有意な増加をもたらすことを実証する。表2と同様であるが酸化防止剤を含まない組成物を用いた以前の試験は、市販のタバコベースの製品と同等のニコチン安定性を実証している。この結果は、本発明の組成物によるβ-グルカンを含むマトリックス形成剤が、天然タバコ繊維と同等のニコチン保存能力を有することを示している。結論として、β-グルカンを含むマトリックス形成剤とキレート結合酸化防止剤との組み合わせは、ニコチンの有効な長期安定性を提供する。
【0061】
実施例2
【表4】
【0062】
表4は、マトリックス形成剤としてβ-グルカンを含むロゼンジ又は水溶性錠剤の例を示す。
【0063】
ロゼンジ又は錠剤は、表4のすべての成分を乾式混合することによって製造され、得られた生成物は従来の錠剤成形機に移され、高圧にかけられ、錠剤/ロゼンジに成形される。錠剤は、スプレーコーティングされ、コーティングパン内で乾燥して、甘味料、芳香剤及び同様の薬剤を含む望ましい味のあるコーティングが得られる。コーティングは、任意に
(optionally1)、初期用量を提供するためにニコチンを含む。
【0064】
実施例3
【0065】
0.89%(重量)のニコチン、約41%(重量)の水、マトリックス形成剤として1又は2%のβ-グルカンを含む、本発明及び表1による生成物。上記で概説した2つの代替方法を用いて生成物を作製した。工程1では、β-グルカンを第1の工程で充填材と乾燥混合し、ニコチンの溶液を第3の工程で添加する。工程1による生成物は、1%(重量)のβ-グルカンを含む。工程2では、第3の工程でニコチンを含む溶液に1又は2%(重量)のβ-グルカンを添加する。工程2による生成物は、1%又は2%(重量)のβ-グルカンを含む。生成物を従来のスヌースパウチに包装し、充填剤として微結晶セルロースを含むが、マトリックス形成剤としてβ-グルカンを含まない2つの市販のタバコフリーニコチン製品(それぞれCP1及びCP2)でベンチマークした。本発明による生成物、CP1及びCP2を安定性及びニコチン放出について試験した。安定性試験のために、生成物をすべて40℃及び湿度75%の加熱キャビネットに9週間入れた(室温で7ヶ月に相当する)。
【表5】

【表6】

【表7】
【0066】
表5~7の結果は、βグルカンを含むマトリックス形成剤を含む本発明による生成物が、保存中にニコチン及びpH値の両方をCP1又はCP2のいずれよりも著しく良好に安定化することを示している。生成物間の含水量の変動は、異なる充填剤に起因し得る。
【0067】
本発明による組成物のニコチン放出能力を試験するために、生成物を含むパウチを工程1及び工程2で上に概説したように作製し、CP1と比較した。生成物を回答者によって経口試験し、規定の期間後に取り出し、残留ニコチンについて処理した。消費したパウチを100mlガラス瓶に細断し、水5mlのMilli-Qと共に超音波に5分間曝露した。その後、100mlの0.05M水酸化カリウム溶液を添加し、試料を振盪し、次いで60分間超音波に曝露した。試料を振動テーブル上で一晩振盪し、翌日にさらに30分間超音波に曝露する。その後、試料を遠心分離し、所望のレベルに希釈し、内部標準を添加し、次いで試料をLC/MS/MSによって分析した。3つの試験の平均結果を以下の表8に示す。
【表8】
【0068】
表8は、本発明の組成物のマトリックス形成剤の量を使用してニコチンの放出速度を制御できることを示している。例えば、βグルカンの量を1から2%(重量)に2倍にすると、38分の期間中にマトリックス形成剤に結合したニコチンが18%増加する。また、組成物を製造する方法を使用して、マトリックス形成剤のβ-グルカンに結合したニコチンの量を制御することができる。表8の結果は、製造プロセスの第3の最終工程としてニコチンをマトリックス形成剤と共に添加すると、より多量の結合ニコチンが得られることを示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活性物質と、β-グルカンを含むマトリックス形成剤と、充填剤とを含む、口腔又は鼻腔における使用のための組成物。
【請求項2】
pHが少なくとも6.5であり、前記生物学的活性物質がニコチン又はカンナビノイドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記β-グルカンが、少なくとも30%のβ(1-3)β(1-4)グルカン、好ましくは70~100%のβ(1-3)β(1-4)グルカンを含み、前記β-グルカンが、好ましくは穀物β-グルカンであり、好ましくはエンバクから得られる穀物β-グルカンである、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記マトリックス形成剤が、少なくとも1つの追加の薬学的に許容され得るガムを含み、好ましくはアルギネート及びその塩、キサンタン、カラギーナン、メチルセルロース、カードラン及びプルランから選択され、好ましくは前記追加のガムがアルギネートの塩であり、より好ましくはアルギン酸ナトリウムである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記マトリックス形成剤が、少なくとも50%(重量)の穀物β-グルカンを含む、請求項3又は請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも6.5のpHで有効な、好ましくは8~9のpHで有効な酸化防止剤を含み、好ましくは前記酸化防止剤が錯体結合酸化防止剤であり、好ましくは、アスコルベートのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、Ca-ジNa-EDTA、リン酸カルシウム及びクエン酸アンモニウムの少なくとも1つから選択され、より好ましくは、前記酸化防止剤がアスコルビン酸カルシウムである、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記充填剤が繊維材料を含み、好ましくは前記繊維材料が植物繊維であり、より好ましくは前記充填剤が天然又は修飾セルロース繊維を含み、最も好ましくは少なくとも1種の微結晶セルロースを含む、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記充填剤がポリオールを含み、好ましくはマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール及び/又はイソマルチトール、ラクチトール並びにエリスリトールから選択される1又は複数のポリオールを含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
植物繊維材料と5~70%(重量)のポリオールとを含む充填剤を含む請求項8に記載の組成物であって、好ましくは、前記充填剤がマンニトール及び少なくとも1種の微結晶性セルロースを含む、組成物。
【請求項10】
保存剤、味又は風味増強剤、pH調整剤、可塑剤及び甘味料から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
50%(重量)未満、好ましくは40%(重量)未満の前記マトリックス形成剤を含む、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
鼻腔への送達に適合され、20%(重量)未満の水、好ましくは1~15%(重量)の水を含む、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の粉末組成物。
【請求項13】
前記粉末粒子が0.01~2mmの粒径を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記充填剤が、水溶性セルロース、好ましくは水溶性微結晶セルロース、より好ましくは水溶性及び水不溶性微結晶セルロースの組み合わせを含む、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
口腔の粘膜と接触するように適合され、少なくとも30%(重量)の水と微結晶セルロースを含む充填剤とを含む、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
40~60%(重量)の水を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ロゼンジ又は錠剤として口腔内で使用されるように適合され、1~30%(重量)の水と、微結晶セルロース、植物繊維及びポリオールの少なくとも1つを含む充填剤とを含む、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の組成物であって、好ましくは前記組成物が少なくとも50%(重量)の前記マトリックス形成剤を含む、組成物。
【請求項18】
活性物質の経粘膜送達に適した、厚さが0.01~7mmであるフィルムとして構成され、少なくとも50%(重量)の前記マトリックス形成剤及び任意に(optionally)可塑剤を含む、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
0.1~20%(重量)、好ましくは5~10%(重量)の充填剤を含み、好ましくは前記充填剤が微結晶セルロース及び可塑剤であり、好ましくは前記可塑剤がソルビトール及びグリセロールの少なくとも一方から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~請求項19のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
(i)充填剤と、マトリックス形成剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを乾式混合することと、
(ii)前記乾燥混合物を、pH調整剤を含む第1の水溶液と混合することと、
(iii)保存剤、味又は風味増強剤及び甘味料の少なくとも1つを含む第2の水溶液を添加することと、
(iv)1又は複数の生物学的活性物質を含む第3の水溶液を添加し、添加されたすべての成分を適量の水と混合物に混合することとを含む、方法。
【請求項21】
前記充填剤が、前記マトリックス形成剤及び前記酸化防止剤と乾式混合される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記充填剤及び前記酸化防止剤を乾式混合することを含み、前記第3の水溶液が前記マトリックス形成剤及び前記1又は複数の生物学的活性物質を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記得られた混合物の1又は複数のさらなる処理工程によって経鼻使用のための粉末組成物を製造するように構成され、15%未満の水(重量)を含む2mm未満の粒径の粉末に乾燥させることを含む、請求項20~請求項22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
パウチへの充填、錠剤又はロゼンジ形成、押出、パンチング、キャスティング、成形、射出成形、混練紡糸、フィルム形成、及びチューインガムベースとの混合の少なくとも1つを用いて、前記得られた混合物の1又は複数のさらなる処理方法によって口腔内における使用のための組成物を製造するように構成された、請求項20~請求項23のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
表8は、本発明の組成物のマトリックス形成剤の量を使用してニコチンの放出速度を制御できることを示している。例えば、βグルカンの量を1から2%(重量)に2倍にすると、38分の期間中にマトリックス形成剤に結合したニコチンが18%増加する。また、組成物を製造する方法を使用して、マトリックス形成剤のβ-グルカンに結合したニコチンの量を制御することができる。表8の結果は、製造プロセスの第3の最終工程としてニコチンをマトリックス形成剤と共に添加すると、より多量の結合ニコチンが得られることを示している。
<付記>
本開示は以下の態様を含む。
<項1>
生物学的活性物質と、β-グルカンを含むマトリックス形成剤と、充填剤とを含む、口腔又は鼻腔における使用のための組成物。
<項2>
pHが少なくとも6.5であり、前記生物学的活性物質がニコチン又はカンナビノイドである、項1に記載の組成物。
<項3>
前記β-グルカンが、少なくとも30%のβ(1-3)β(1-4)グルカン、好ましくは70~100%のβ(1-3)β(1-4)グルカンを含み、前記β-グルカンが、好ましくは穀物β-グルカンであり、好ましくはエンバクから得られる穀物β-グルカンである、先行する項のいずれかに記載の組成物。
<項4>
前記マトリックス形成剤が、少なくとも1つの追加の薬学的に許容され得るガムを含み、好ましくはアルギネート及びその塩、キサンタン、カラギーナン、メチルセルロース、カードラン及びプルランから選択され、好ましくは前記追加のガムがアルギネートの塩であり、より好ましくはアルギン酸ナトリウムである、先行する項のいずれかに記載の組成物。
<項5>
前記マトリックス形成剤が、少なくとも50%(重量)の穀物β-グルカンを含む、項3又は項4に記載の組成物。
<項6>
少なくとも6.5のpHで有効な、好ましくは8~9のpHで有効な酸化防止剤を含み、好ましくは前記酸化防止剤が錯体結合酸化防止剤であり、好ましくは、アスコルベートのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、Ca-ジNa-EDTA、リン酸カルシウム及びクエン酸アンモニウムの少なくとも1つから選択され、より好ましくは、前記酸化防止剤がアスコルビン酸カルシウムである、先行する項のいずれか一項に記載の組成物。
<項7>
前記充填剤が繊維材料を含み、好ましくは前記繊維材料が植物繊維であり、より好ましくは前記充填剤が天然又は修飾セルロース繊維を含み、最も好ましくは少なくとも1種の微結晶セルロースを含む、先行する項のいずれか一項に記載の組成物。
<項8>
前記充填剤がポリオールを含み、好ましくはマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール及び/又はイソマルチトール、ラクチトール並びにエリスリトールから選択される1又は複数のポリオールを含む、先行する項のいずれか一項に記載の組成物。
<項9>
植物繊維材料と5~70%(重量)のポリオールとを含む充填剤を含む項8に記載の組成物であって、好ましくは、前記充填剤がマンニトール及び少なくとも1種の微結晶性セルロースを含む、組成物。
<項10>
保存剤、味又は風味増強剤、pH調整剤、可塑剤及び甘味料から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、先行する項のいずれか一項に記載の組成物。
<項11>
50%(重量)未満、好ましくは40%(重量)未満の前記マトリックス形成剤を含む、先行する項のいずれか一項に記載の組成物。
<項12>
鼻腔への送達に適合され、20%(重量)未満の水、好ましくは1~15%(重量)の水を含む、先行する項のいずれか一項に記載の粉末組成物。
<項13>
前記粉末粒子が0.01~2mmの粒径を有する、項12に記載の組成物。
<項14>
前記充填剤が、水溶性セルロース、好ましくは水溶性微結晶セルロース、より好ましくは水溶性及び水不溶性微結晶セルロースの組み合わせを含む、項12又は項13に記載の組成物。
<項15>
口腔の粘膜と接触するように適合され、少なくとも30%(重量)の水と微結晶セルロースを含む充填剤とを含む、項1~項11のいずれか一項に記載の組成物。
<項16>
40~60%(重量)の水を含む、項15に記載の組成物。
<項17>
ロゼンジ又は錠剤として口腔内で使用されるように適合され、1~30%(重量)の水と、微結晶セルロース、植物繊維及びポリオールの少なくとも1つを含む充填剤とを含む、項1~項10のいずれか一項に記載の組成物であって、好ましくは前記組成物が少なくとも50%(重量)の前記マトリックス形成剤を含む、組成物。
<項18>
活性物質の経粘膜送達に適した、厚さが0.01~7mmであるフィルムとして構成され、少なくとも50%(重量)の前記マトリックス形成剤及び任意に(optionally)可塑剤を含む、項1~項10のいずれか一項に記載の組成物。
<項19>
0.1~20%(重量)、好ましくは5~10%(重量)の充填剤を含み、好ましくは前記充填剤が微結晶セルロース及び可塑剤であり、好ましくは前記可塑剤がソルビトール及びグリセロールの少なくとも一方から選択される、項18に記載の組成物。
<項20>
項1~項19のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
(i)充填剤と、マトリックス形成剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを乾式混合することと、
(ii)前記乾燥混合物を、pH調整剤を含む第1の水溶液と混合することと、
(iii)保存剤、味又は風味増強剤及び甘味料の少なくとも1つを含む第2の水溶液を添加することと、
(iv)1又は複数の生物学的活性物質を含む第3の水溶液を添加し、添加されたすべての成分を適量の水と混合物に混合することとを含む、方法。
<項21>
前記充填剤が、前記マトリックス形成剤及び前記酸化防止剤と乾式混合される、項20に記載の方法。
<項22>
前記充填剤及び前記酸化防止剤を乾式混合することを含み、前記第3の水溶液が前記マトリックス形成剤及び前記1又は複数の生物学的活性物質を含む、項20に記載の方法。
<項23>
前記得られた混合物の1又は複数のさらなる処理工程によって経鼻使用のための粉末組成物を製造するように構成され、15%未満の水(重量)を含む2mm未満の粒径の粉末に乾燥させることを含む、項20~項22のいずれか一項に記載の方法。
<項24>
パウチへの充填、錠剤又はロゼンジ形成、押出、パンチング、キャスティング、成形、射出成形、混練紡糸、フィルム形成、及びチューインガムベースとの混合の少なくとも1つを用いて、前記得られた混合物の1又は複数のさらなる処理方法によって口腔内における使用のための組成物を製造するように構成された、項20~項23のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】