(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】バイオプロセスのためのフローセル組立体及び分光装置組立体
(51)【国際特許分類】
G01N 21/05 20060101AFI20230508BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230508BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230508BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230508BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G01N21/05
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12Q1/02
G01N35/08 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559871
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2021058634
(87)【国際公開番号】W WO2021198427
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508053186
【氏名又は名称】ザルトリウス ステディム バイオテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sartorius Stedim Biotech GmbH
【住所又は居所原語表記】August-Spindler-Str.11, D-37079 Goettingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ヘーゼ,マレク
(72)【発明者】
【氏名】レーゲン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グリム,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
2G057
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AA03
2G057AA04
2G057AB01
2G057AB02
2G057AB03
2G057AB06
2G057AB08
2G057AC01
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2G057BB10
2G057BC10
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2G057BD09
2G057CA10
2G057DC10
2G057GA01
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2G058GA06
2G058GD02
4B029AA07
4B029AA08
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4B029CC01
4B029FA01
4B029GA08
4B029GB10
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
フローセル組立体(10)は、筐体(12)と、ガラス体(14)とを備える。筐体は、入口チューブコネクタ(16)と、出口チューブコネクタ(18)と、ガラス体を保持するための保持構造体(20)を有する。ガラス体は、好ましくは石英ガラスで作製された、汎用の単一のガラス体であり、測定チャネル(26)を囲んでいる。測定チャネルは、培地の流れ方向を規定する入口端部(28)及び出口端部(30)を有する。測定チャネルは、培地の流れ方向に垂直な光学測定軸(M)に沿った予め決められた寸法を有する。入口端部は、入口チューブコネクタと流体連通し、出口端部は、出口チューブコネクタと流体連通している。筐体又はガラス体は、プローブヘッド(36)を位置合わせするための位置合わせ構造体(22)と、位置合わせされたプローブヘッドをガラス体に対して移動しないように固定するための固定構造体(24)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(12)と、ガラス体(14)とを備え、
前記筐体(12)は、入口チューブコネクタ(16)と、出口チューブコネクタ(18)とを有し、
前記筐体(12)は、前記ガラス体(14)を移動しないように保持するための保持構造体(20)を更に有し、
前記ガラス体(14)は、汎用の単一のガラス体(14)であり、測定チャネル(26)を囲み、
前記測定チャネル(26)は、培地の流れ方向を規定する入口端部(28)及び出口端部(30)を有し、
前記測定チャネル(26)は、前記培地の流れ方向に垂直な光学測定軸(M)に沿った予め決められた寸法を有し、
前記測定チャネル(26)の入口端部(28)は、前記筐体(12)の入口チューブコネクタ(16)と流体連通し、
前記測定チャネル(26)の出口端部(30)は、前記筐体(12)の出口チューブコネクタ(18)と流体連通し、
前記筐体(12)又は前記ガラス体(14)は、プローブヘッド(36)を位置合わせするための位置合わせ構造体(22)を有し、
前記筐体(12)又は前記ガラス体(14)は、位置合わせされた前記プローブヘッド(36)を前記ガラス体(14)に対して移動しないように固定するための固定構造体(24)を有する、
バイオプロセスのためのフローセル組立体(10)。
【請求項2】
前記位置合わせ構造体(22)と前記固定構造体(24)とが同一である、請求項1に記載のフローセル組立体(10)。
【請求項3】
前記ガラス体(14)は、石英ガラス、好ましくは冷間鍛造技術により製造された石英ガラスで作製されている、請求項1又は2に記載のフローセル組立体(10)。
【請求項4】
前記筐体(12)は、プラスチック材料で作製され、ベータ線照射、ガンマ線照射、若しくはX線照射に適するか、又は蒸気滅菌及び/又は衛生化に適する材料で作製されている、請求項1~3のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)。
【請求項5】
前記プローブヘッド(36)は、好ましくは正しい位置に固定する接続により、前記固定構造体(24)に固定される、請求項1~4のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)。
【請求項6】
前記プローブヘッド(36)は、前記ガラス体(14)に対して着脱可能に固定される、請求項5に記載のフローセル組立体(10)。
【請求項7】
前記筐体(12)は、前記ガラス体(14)を取り外しに抗うように固定するための固定構造を有する、請求項1~6のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)。
【請求項8】
前記筐体(12)は、本体(44)と、固定構造として機能する別個の固定クリップ(42)とを有し、
前記固定クリップ(42)は、前記本体(44)の受け部への挿入後に、前記本体(44)及び前記ガラス体(14)に対して予め決められた位置に位置し、
前記固定クリップ(42)は、前記プローブヘッド(36)を位置合わせするための前記保持構造体(20)及び/又は前記位置合わせ構造体(22)、及び/又は位置合わせされた前記プローブヘッド(36)を移動しないように固定するための前記固定構造体(24)を有する、
請求項7に記載のフローセル組立体(10)。
【請求項9】
前記入口チューブコネクタ(16)及び前記出口チューブコネクタ(18)は、プロセスの主な流れ方向を規定し、
前記培地の流れ方向は、前記プロセスの主な流れ方向と同じである、
請求項1~8のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)。
【請求項10】
前記入口チューブコネクタ(16)の断面積、前記出口チューブコネクタ(18)の断面積、及び前記測定チャネル(26)の断面積は、実質的に同じである、請求項1~9のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)。
【請求項11】
前記測定チャネル(26)の前記光学測定軸(M)に沿った寸法は、前記入口チューブコネクタ(16)及び出口チューブコネクタ(18)の平均直径と比較して小さく、
前記培地の流れ方向と前記光学測定軸(M)との両方に垂直な方向における前記測定チャネル(26)の寸法は、前記入口チューブコネクタ(16)及び出口チューブコネクタ(18)の平均直径と比較して大きい、
請求項1~10のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)。
【請求項12】
前記位置合わせ構造体(22)及び前記固定構造体(24)は、凹部(48)と、前記凹部(48)と嵌め合うばね式の押圧部材とを有する、請求項1~11のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)。
【請求項13】
前記筐体(12)は、前記入口チューブコネクタ(16)及び前記出口チューブコネクタ(18)と流体連通するバイパスチャネル(32)を有し、
前記バイパスチャネル(32)は、前記測定チャネル(26)を迂回する、
請求項1~12のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)。
【請求項14】
前記測定チャネル(26)及び前記バイパスチャネル(32)の総断面積は、前記入口チューブコネクタ(16)及び前記出口チューブコネクタ(18)の平均断面積とほぼ等しく、
差は、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満である、
請求項13に記載のフローセル組立体(10)。
【請求項15】
前記バイパスチャネル(32)は、前記フローセル組立体(10)の動作状態において、測定チャネル(26)の鉛直方向における上方に延在している、バイオプロセスに関連した分析測定のための、請求項13又は14に記載のフローセル組立体(10)の使用。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1つに記載のフローセル組立体(10)と、
前記フローセル組立体(10)のプローブ(34)又は前記プローブヘッド(36)に結合される分光計と、
を備え、
前記分光計は、UV-Vis分光計、NIR分光計、蛍光分光計、及びラマン分光計のうち1つである、
バイオプロセスのための分光装置組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオプロセスのためのフローセル、特に下流工程のためのフローセルに関する。さらに、本発明は、バイオプロセスのための分光装置組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を用いた治療の製造工程は、上流工程(分注、培地調製、及び細胞培養を含む発酵工程)と下流工程(産物の精製)に分けられる。バイオプロセスの下流における現在の課題は、重要な品質の特性を分析する能力にある。特に、目的のタンパク質、DNA、タンパク質凝集、及び宿主細胞タンパク質(HCP: host cell protein)は、プロセスチェーン全体に亘って、しばしば流れから離れて(offline)測定される重要な指標である。
【0003】
このような指標を分析するための光学技術は、多くの場合、1つ又は2つの波長の検出に限定されている。例えば、タンパク質の検出では、約280nmのUV吸光度である。通常、測定は、分光光度計又は光度計によってキュベット内で行われる。平行な光線が試料に向けられ、当該光線は、定められた光路長で試料を通過する。吸光度は、光源から当てられた光と、試料と相互作用した後の光との比として測定される(透過測定又は反射測定)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、広波長域の紫外可視(UV-Vis: ultraviolet-visible)分光測定を下流工程に組み込むための可能な方法はなく、特に単回使用のプロセス装置では、当該方法はない。蛍光又は近赤外(NIR: near-infrared)分光などの他の分光技術にも、同じことが当てはまる。
【0005】
既知の方法によれば、UV透過率の測定は、光路長を変化させて行われる。光路長の変化は、移動するファイバによって実現される。当該移動するファイバは、マイクロメートルからミリメートルの範囲の光路長を可能にする。この方法の利点は、タンパク質を検出するための広い線形範囲にある。欠点は、ファイバの位置合わせを高い精度と再現性で行う必要があるため、非常に時間がかかるプロセスとなることにある。このように、ファイバ位置の位置合わせ中には測定を行うことができないため、この位置合わせの技術は、実行中のプロセスにおけるオンライン測定又はインライン測定には適していない。さらに、この測定技術を単回使用の装置に移すことは、移動する部品、及びファイバの位置決めに求められる精度のために、一層複雑であり得る。
【0006】
さらに、スペクトルデータは、較正に便利に使用され得る。特に、スペクトルの生データ又は情報(スペクトル)を分析物の定量的な予側に移す場合には、較正が必要である。
【0007】
本発明の目的は、バイオプロセスにおいて分光法を効果的に使用すること、又はバイオプロセスに分光法を効果的に組み込むことにある。本発明の更なる目的は、バイオプロセスに関連する較正において、分光法を効果的に使用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、請求項1に記載のフローセル組立体によって解決される。本発明の有利で都合のよい実施形態は、従属請求項から明らかである。
【0009】
本発明は、バイオプロセスのためのフローセル組立体を提供する。フローセル組立体は、筐体と、ガラス体とを備える。筐体は、入口チューブコネクタと、出口チューブコネクタとを有する。筐体は、ガラス体を移動しないように保持するための保持構造体を更に有する。ガラス体は、好ましくは石英ガラスで作製された、汎用で単一のガラス体であり、測定チャネルを囲んでいる。測定チャネルは、培地(medium)の流れ方向を規定する入口端部及び出口端部を有する。測定チャネルは、培地の流れ方向に垂直な光学測定軸に沿った、予め決められた寸法を有する。測定チャネルの入口端部は、筐体の入口チューブコネクタと流体連通する。測定チャネルの出口端部は、筐体の出口チューブコネクタと流体連通する。筐体又はガラス体は、プローブヘッドを位置合わせするための位置合わせ構造体を有する。筐体又はガラス体は、位置合わせされたプローブヘッドをガラス体に対して移動しないように固定するための固定構造体を有する。
【0010】
本発明は、ガラス体が、特には特殊な冷間鍛造技術により、十分に精密に一体に製造され得るという知見に基づく。これは、ガラス体が、別々の部品を接合することなどによって組み立てられるものではないことを意味する。特に、ガラス体内の測定チャネルは、後から機械加工されたり削られたりしない。この製造方法により、予め決められて固定された光路長がより確実なものにされる。当該光路長は、路長の変化がスペクトル応答に直接結びつくことから、光学測定、特に透過測定では重要である。本発明に係るフローセル組立体において、この光路長は、測定チャネルの光学測定軸に沿った高さである。(プラスチックの本体に標準的なガラスの窓を設けるという代替案では、一様の光路長がもたらされないことに留意されたい。)
【0011】
予め決められた正確な光路長を有するモノリシックなガラス体の設計は、一連のフローセル組立体の標準的な設計として確立され得る。製造の再現性は、同じ製造方法により同じ設備で製造された全てのガラス体について、同じ光路長であると推定するのに十分である。そのため、個々のガラス体の光路長を測定する必要はない。これにより、各ガラス体は、フローセル組立体の使用前のあらゆる調整又は較正を必要とせず、異なるフローセル組立体において、及び/又は同一の組立体において数回に亘って、使用可能である。常に光路長が知られていることにより、測定の不確実性は最小化される。
【0012】
フローセル組立体のガラス体に形成された測定チャネルは、バイオプロセスの実行中に、プロセス培地が流れる主なプロセス流路(又はその支流)の一部を形成することができる。これにより、フローセル組立体をバイオプロセスのプロセス流路に完全に組み込み、プロセス培地の特定の指標を、オンラインで、更にはインラインで監視することができる。
【0013】
本発明によれば、光学測定は、離れた又は遠隔の測定チャンバではなく、バイオプロセスの実行中に、プロセス培地が流れる測定チャネルで行われる。したがって、プロセス培地の流れは、妨げられず、測定時に止められる必要はない。これは、特に、細胞の採取(harvest)中にフローセル組立体が使用される場合に重要である。プロセス培地中の細胞は、大きなせん断応力に曝されず、細胞の性質(形態、大きさなど)に悪影響を及ぼし得る凝集も誘発されない。
【0014】
しかしながら、本発明に係るフローセル組立体の用途は、一般的に下流のバイオプロセスに限定されない。むしろ、フローセル組立体、特に単回使用型の組立体は、プロセスの監視及び制御のための様々な指標を検知するために、上流の灌流のバイオプロセスでも使用可能である。一般的には、フローセル組立体は、バイパスチャネル内のフィルタ部よりも上流に配置されることが有利である。この場合、好適な分光技術は、ラマン分光法であるが、一般的には他の分光技術の使用も除外されない。
【0015】
上流の灌流のバイオプロセスにおけるフローセル組立体の典型的な位置は、外部(例えば、チューブライン内)又は内部(例えば、バッグ内)のいずれかの細胞保持システムよりも後方にある採取ラインである。細胞保持システムは、タンジェンシャルフローろ過(TFF: tangential flow filtration)、交互タンジェンシャルろ過(ATF: alternating tangential filtration)、音波(acoustic)システム、比重システム(セトラ)、及び液体サイクロンシステムであり得る。採取ラインで監視される典型的な分析物は、栄養物、代謝物、及び力価である。プロセス制御では、フィード制御のために、栄養物の予測が更に行われ得る。
【0016】
上流の灌流のバイオプロセスにおけるフローセル組立体の典型的な別の位置は、抜き取り(bleed)ラインである。抜き取りラインで監視される典型的な分析物は、細胞の特定の性質又は細胞に関連する性質及び指標であり、例えば、総細胞数(TCC: total cell count)、生細胞密度(VCD: viable cell density)、細胞生存率、バイオマス、細胞サイズ、細胞湿重量、及び力価である。プロセス制御では、特定の性質の予測に基づき、抜き取り率が調整され得る。
【0017】
本発明の基本概念の一つは、機能的な観点から、予め決められた光路長を有する測定チャネルを囲むガラス体が、筐体の入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタから分離され、それゆえにチューブのあらゆる寸法に依存しないことである。これは、原理的には、チューブの各サイズ(直径)について、同じフローセル光学器具(ガラス体)が、要求されるサイズの入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタをそれぞれ有する筐体と組み合わされることを意味する。
【0018】
入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタは、バイオプロセスのプロセスラインへのフローセル組立体の挿入を容易にするために、トライクランプフランジ又はホースバーブとして形成されるか、又は他の標準的な接続技術によって形成されることが好ましい。
【0019】
また、筐体又はガラス体の位置合わせ構造体及び固定構造体も、一連のフローセル組立体のための標準的な構造として確立され得る。これにより、光プローブのプローブヘッドは、常に測定チャネルに対して予め決められた同じ位置及び向きに、より確実に配置される。そのため、各測定の条件は、一連のフローセル組立体のどれが実際に使用されるかとは無関係に同じになる。
【0020】
位置合わせ構造体と固定構造体とは、同じ(同一)であり得ることに留意されたい。これは、1つの共通する構造体が、プローブヘッドを位置合わせする機能と、プローブヘッドをガラス体に対して移動しないように固定する機能との両方を同時に果たすことを意味する。
【0021】
さらに、位置合わせ構造体及び固定構造体は、ブラケット、クランプなどの別個の部材を含んでもよい。
【0022】
特に、本発明に係るフローセル組立体の単回使用型において、筐体は、プラスチック材料で作製され、ベータ線、ガンマ線、又はX線の照射に適する。更なる態様又は別の態様によれば、筐体は、蒸気滅菌及び/又は衛生化、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)又はエチレンオキシドによる衛生化に適した材料で作製されることが好ましい。これは、筐体の材料の性質及び機能が、滅菌及び/又は衛生化の手段及び技術の影響によって損なわれないことを意味する。
【0023】
光プローブのプローブヘッドは、正しい位置に固定する接続(lock-in-place connection)によって固定構造体に固定されることが好ましい。これにより、プローブヘッドは、固定動作の間、予め定められた配置及び向きになるように促され、より確実に、当該配置及び向きに正確に維持される。正しい位置に固定する接続は、理想的には、ねじ又は他の追加部品なしに行うことのできるワンクリック接続である。
【0024】
本発明によれば、光プローブのプローブヘッドは、ガラス体に対して移動しないように固定される。これは、プローブヘッドの固定後には、プローブヘッドとガラス体との相対移動、少なくともスペクトルの大きな変化を引き起こし得る程度の移動が、不可能であることを意味する。いずれにせよ、プローブヘッドは、筐体に恒久的に固定される必要はない。むしろ、プローブヘッドは、着脱可能に固定されていることが好ましい。実際には、プローブヘッドは、全ての測定が行われた後、フローセル組立体の筐体又はガラス体から取り外され、更なる用途に利用可能となる。いずれにせよ、プローブヘッドは、位置合わせされて固定されている限り、ガラス体に対して移動しないままである。
【0025】
筐体及びガラス体の設計次第では、使用中に、取り外しに抗うようにガラス体を固定するための固定構造を筐体に設けることが、好都合であることがある。当該固定構造は、筐体の一体部分又は別個の部品、例えば、ガラス体と筐体の隣り合う部分との間に挟まれる別個の部品であり得る。
【0026】
フローセル組立体の筐体の有利な設計によれば、筐体は、本体と、固定構造として機能する別個の固定クリップとを有する。固定クリップは、本体の受け部への挿入後、本体及びガラス体に対して予め決められた位置に位置する。固定クリップは、保持構造体、プローブヘッドを位置合わせするための位置合わせ構造体、及び位置合わせされたプローブヘッドを移動しないように固定するための固定構造体のうち、少なくとも1つを有する。しかしながら、固定構造体は、筐体の本体の一部であることが好ましい。
【0027】
本発明の有利な態様によれば、ガラス体の測定チャネルを通る培地の流れ方向は、入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタによって規定される、プロセス培地のプロセスの主な流れ方向と同じである。これにより、プロセス培地がフローセル組立体を流れる間、プロセス培地が逸れるのをより確実に回避できる。
【0028】
さらに、測定チャネルにおける圧力の望まれない上昇を回避するために、入口チューブコネクタの断面積、出口チューブコネクタの断面積、及び測定チャネルの断面積は、実質的に同じである。この断面積の一致は、全てのプロセス培地がフローセル組立体の測定チャネルに滑らかに導かれ得る小規模な用途において、特に実用的である。
【0029】
通常、入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタは、円状の断面を有する。当該円状の断面は、好適な光路長よりも大きな直径、すなわち、光学測定方向における測定チャネルの寸法(高さ)よりも大きな直径を有する。測定チャネルの幅は、プロセス培地のための断面積がプロセス培地のフローセル組立体の通過中に同様に維持されるように、適宜大きくされる。換言すれば、入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタの平均直径と比較すると、測定チャネルの光学測定軸に沿った寸法は小さいが、培地の流れ方向と光学測定軸との両方に垂直な方向における測定チャネルの寸法は大きい。
【0030】
本発明の特に有利な特徴は、汎用のガラス体(フローセル光学器具)の規模の異なる用途への適用柔軟性である。大規模な用途では、筐体の入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタの直径が比較的大きい。このような使用例では、望まれない大きな圧力の上昇なしに、全てのプロセス培地を測定チャネルに流すことは不可能である。そのため、フローセル組立体の大規模用の実施形態では、筐体は、バイパスチャネルを有する。バイパスチャネルは、入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタと流体連通し、測定チャネルを迂回している。フローセル組立体の筐体に流れ込んだプロセス培地は、測定チャネルを流れる一部と、バイパスチャネルを流れる他の部分とに分かれる。バイパスチャネルの存在により、小規模な用途と同じ光路長を有する同じ光学器具(ガラス体)を測定に使用することができる。この条件の下では、測定される指標の確率された数学的モデルを異なる規模の間で移すことができるため、特に有益である。
【0031】
バイパスチャネルを有するフローセル組立体を通るプロセス培地がより確実に滑らかに流れるように、測定チャネル及びバイパスチャネルの総断面積は、入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタの平均断面積とほぼ等しくあるべきである。一方の測定チャネル及びバイパスチャネルの合計断面積と、他方の入口チューブコネクタ及び出口チューブコネクタの平均断面積との差(deviation)は、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満である。
【0032】
プロセス培地中に気泡が存在する場合、気泡は光学測定を妨げ得るため、気泡が測定チャネルに進入しないことが望まれる。したがって、フローセル組立体の有利な使用によれば、フローセル組立体の動作状態において、フローセル組立体の向きは、バイパスチャネルが測定チャネルの鉛直方向における上方の部分に延在するような向きである。フローセル組立体のこの向きにより、気泡がバイパスチャネルに上がり、測定チャネルを気泡のない状態に維持するか、又は少なくとも測定チャネルにおける気泡の発生を減少させることが可能になる。
【0033】
さらに、本発明は、バイオプロセスのための分光装置組立体を提供する。分光装置組立体は、前記に規定されるフローセル組立体と、フローセル、特に光プローブ(ヘッド)に結合される分光計とを備える。分光計自体は、UV-Vis分光計、NIR分光計、蛍光分光計、又はラマン分光計であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の説明及び参照される添付図面から明らかであろう。
【0035】
【
図1】
図1は、本発明に係るフローセル組立体の第1実施形態を示す第1の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のフローセル組立体の切断面A-Aに沿った断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のフローセル組立体の切断面B-Bに沿った断面図である。
【
図5】
図5は、本発明に係るフローセル組立体の第2実施形態を示す第1の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のフローセル組立体を示す第2の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7のフローセル組立体の切断面A-Aに沿った断面図である。
【
図9】
図9は、
図7のフローセル組立体の切断面B-Bに沿った断面図である。
【
図10】
図10は、
図5のフローセル組立体に固定された光プローブの斜視図である。
【
図11】
図11は、フローセル組立体の第2実施形態の変形例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明に係るフローセル組立体の第3実施形態を示す正面図である。
【
図15】
図15は、本発明に係るフローセル組立体の第4実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1~
図4は、バイオプロセスのための、特に下流工程のための単回使用のフローセル組立体10の第1実施形態を示している。フローセル組立体10は、筐体12及びガラス体14である2つの主な部材を含む。
【0037】
筐体12は、滅菌可能なプラスチック材料、特にガンマ線によって滅菌可能なプラスチック材料で全体が作製されている。筐体12は、例えば3D印刷によって、単一部品として製造され得る。または、筐体12は、共に組み合わされる2つ以上の別個の部品を含み得る。当該部品は、例えば射出成形によって製造される。
【0038】
筐体12は、両方とも筐体12の内部へ開口する、入口チューブコネクタ16と出口チューブコネクタ18とを含む。これにより、フローセル組立体10は、バイオプロセス装置のプロセス培地ライン、特に下流のプロセスラインに組み込まれ得る。入口チューブコネクタ16及び出口チューブコネクタ18は、例えば、ホースバーブ又はトライクランプのフランジ部として設計され得る。
図1~
図4に示す実施形態は、小規模な用途のために構成されているため、入口チューブコネクタ16及び出口チューブコネクタ18の直径は、比較的小さく、例えば1/8インチ(0.32cm)の範囲である。
【0039】
筐体12は、ガラス体14を保持するための保持構造体20を更に含む。特に、筐体12は、ガラス体14を受けるための受け部を有する。受け部及びガラス体14の形状は、ガラス体14が筐体に対して移動できないように、互いに適合する。このことは、形状の適合(form fit)、挟み込み、及び/又はラッチ機構などによって実現し得る。別の選択肢としては、ガラス体14を決められた位置に維持する追加の(組み込まれた又は別個の)固定構造体(図示せず)がある。
【0040】
また、筐体12は、プローブヘッドを位置合わせするための位置合わせ構造体22と、位置合わせされたプローブヘッドをガラス体に対して移動しないように固定するための固定構造体24とを含む。
【0041】
後に詳細に説明するように、位置合わせ構造体22は、予め決められた位置及び向きで光プローブのヘッドを受けるような形状である。位置合わせ構造体22は、平坦な表面、滑らかな表面、及び/又はプローブヘッドの表面に対応又は一致するのに適した特有の形状の表面を含んでよい。
【0042】
固定構造体24は、プローブヘッドを予め決められた位置及び向きで一時的又は恒久的に固定するために使用される。固定された状態では、プローブヘッドは、筐体12及びガラス体14に対して移動しない。(機能的な観点では、プローブヘッドがガラス体14に対して移動しないことのみが必要である。)固定構造体24は、プローブヘッドのためのクランプ接続又は正しい位置に固定する接続を提供する。
【0043】
ガラス体14は、石英ガラスで作製され、冷間鍛造により単一部品として製造される。また、モノリシックなガラス体14の予め精密に決められた同じの寸法及び特性をもたらす他の材料及び/又は製造方法も用いられ得る。一般的に、ガラス体14は、関連する測定周波数の範囲(例えば、紫外線、200~380nm、より具体的には250~320nm)について、平均で入射光の50%超を透過すべきである。このような材料の例には、石英(SiO2)、サファイア、ホウケイ酸ガラス(BK7)、溶融石英、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、ポリマーガラス様基材が含まれる。ポリマーガラス様基材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE: polytetrafluoroethylene)、ポリメチルメタクリレート(PMMA: polymethyl methacrylate、アクリルガラス)、ポリカーボネート(PC: polycarbonate)などである。
【0044】
測定チャネル26は、ガラス体14を貫通して延びている。すなわち、ガラス体14は、測定チャネル26の周囲を囲んでいる。測定チャネル26の少なくとも中央部は、直線状であり、基本的には矩形状で一定の断面を有する。
【0045】
測定チャネル26の2つの端部は、培地の流れ方向を規定する。後に説明するように、プロセス培地は、フローセル組立体10で行われる測定の間、測定チャネル26を流れる。そのため、一方の端部が入口端部28と呼ばれ、他方の端部が出口端部30と呼ばれ得る。
【0046】
ガラス体14の好適な設計では、測定チャネルの矩形状の断面は、長方形である。すなわち、当該断面は、厳密に平行な2つの長辺と、長辺に垂直な2つの短辺とを有する。長辺及び短辺の各々は、測定チャネル26における培地の流れ方向に対して垂直に延びている。矩形状の断面の長辺が測定チャネル26の幅を表し、断面の短辺が測定チャネル26の高さを表す。特に、測定チャネル26の断面の中央部における高さは、予め決められた寸法(距離)を有する。
【0047】
ガラス体14が筐体12に配置及び固定されると、測定チャネル26の入口端部28は、筐体12の入口チューブコネクタ16と流体連通し、測定チャネル26の出口端部30は、筐体12の出口チューブコネクタ18と流体連通する。接続部は、適切にシールされている。このように、測定チャネル26は、バイオプロセスの実行中にプロセス培地が流れるプロセス流路の一部を形成する。
【0048】
入口チューブコネクタ16、出口チューブコネクタ18、及び測定チャネル26の断面積は、それらの形状が異なるにも拘わらず、実質的に同じであることに留意されたい。さらに、培地の流れ方向は、入口チューブコネクタ16及び出口チューブコネクタ18によって規定されるプロセスの主な流れ方向と平行であるだけでなく、同じであることに留意されたい。したがって、フローセル組立体10を通って流れるときには、圧力の変化は起こらず、プロセス培地の方向が逸れることもない。
【0049】
筐体12内のガラス体14は、測定チャネル26の矩形状の断面の短辺、すなわち測定チャネル26の高さ方向が、フローセル組立体10の筐体12又はガラス体14に固定されるプローブヘッドの光学測定軸Mと対応するような向きにされる。
【0050】
プローブヘッドの位置合わせ及び固定は、
図5~
図9に示すフローセル組立体10の第2実施形態に関連して、後に説明する。
【0051】
第2実施形態の装置は、第1実施形態の装置と同様である。しかしながら、第2実施形態は、大規模な用途のために設計されている。そのため、入口チューブコネクタ16及び出口チューブコネクタ18の直径は、1/8インチ(0.32cm)よりも大きい。
【0052】
汎用のガラス体14が、フローセル組立体10の異なる実施形態において、特に、小規模な用途と大規模な用途との両方において使用可能であることは、本発明の基本概念である。ガラス体14の測定チャネル26の断面積は、小規模な用途に適している。そのため、大規模な用途では、圧力を著しく上昇させることなく全てのプロセス培地を測定チャネル26に通過させることは、不可能である。したがって、プロセス培地の大部分は、測定チャネル26を迂回可能にされる。
【0053】
フローセル組立体10の第2実施形態では、筐体12は、入口チューブコネクタ16及び出口チューブコネクタ18と流体連通するバイパスチャネル32を含む。このことは、プロセス培地の流れが、入口チューブコネクタ16を通って筐体12に進入した後、測定チャネル26を流れる第1部分と、バイパスチャネル32を流れる第2部分とに分割されることを意味する。プロセス培地が出口チューブコネクタ18を通って筐体12から出る前に、第1部分と第2部分とは、再び合わさる。
【0054】
測定チャネル26及びバイパスチャネル32の断面積の合計は、プロセス培地の流れを妨げずに維持するために、入口チューブコネクタ16及び出口チューブコネクタ18の断面積の平均と等しい。特に、調和した断面積により、プロセス培地がフローセル組立体10を通って流れるときには、著しい圧力差は生じない。
【0055】
図10は、筐体12に固定された光プローブ34を備えたフローセル組立体10の第2実施形態を示す図である。特に、光プローブ34のヘッド36は、筐体12の周囲に係合している。プローブヘッド36は、筐体12の位置合わせ構造体22と位置合わせされ、固定構造体24によって、筐体12の予め決められた位置に、移動しないように固定される。
【0056】
同様の方法で、プローブヘッド36は、フローセル組立体10の第1実施形態における筐体12に位置合わせ及び固定され得る。このように、同一のプローブヘッド36が、フローセル組立体10の異なる実施形態と適合する。
【0057】
プローブヘッド36を移動しないように固定するための固定構造体24は、例えば、
図11の第2実施形態の変形例に示すように、突起部(lugs)24aを含み得る。突起部24aは、筐体12の外壁に設けられ、プローブヘッド36に設けられたスナップ留めフック(snap-in hooks)(
図11に示さず)と嵌め合う。突起部24aとフックとが逆の構成も可能である。同様に、筐体12及びプローブヘッド36には、互いに調和する他の適切な固定手段が設けられ得る。
【0058】
プローブヘッド36は、透過測定を行うように構成されている。光プローブ34によって生成された光は、測定チャネル26を通過する。それに応じて、両実施形態の筐体12は、光をガラス体14に進入させる、及びガラス体14から出させるために、対向する2つの窓38をそれぞれ有する。
【0059】
しかしながら、両実施形態の筐体12及びガラス体14の設計は、原理的に、反射モード及び半透過(transflection)モードでの測定にも適する。一般的に、フローセル組立体10は、光学的な分光技術に関して汎用性があり、各技術に適合させる必要がない。
【0060】
光プローブ34は、分光計(図示せず)に結合される。分光計は、光プローブ34が放射及び捕捉する光に応じて、UV-Vis分光計、NIR分光計、蛍光分光計、又はラマン分光計である。
【0061】
図10の例とは対照的に、フローセル組立体10の第2実施形態の動作状態では、バイパスチャネル32を測定チャネル26の鉛直方向における上方により確実に位置させることが好都合な場合がある。プロセス培地が何らかの気泡を含む場合、当該気泡は、下方の測定チャネル26よりもむしろ、上方のバイパスチャネル32を通過する傾向にある。
【0062】
図12~
図14には、大部分が第2実施形態と同じである、フローセル組立体10の第3実施形態が示されている。このことは、第3実施形態もまた、大規模な用途のために設計され、入口チューブコネクタ16及び出口チューブコネクタ18と流体連通するバイパスチャネル32を含むことを意味する。
【0063】
フローセル組立体10の筐体12は、バイパスチャネル32の外側を覆う蓋40を含む。測定チャネル26の反対側では、筐体12の保持構造体20が、別個の固定クリップ42として形成されている。固定クリップ42は、筐体12の本体44の受け部に挿入され、そこで本体44に対して予め決められた位置に嵌まる(snaps)。したがって、固定クリップ42は、汎用のガラス体14を決められた位置に保持するための保持構造体20として機能するだけでなく、フローセル組立体10の使用中に、筐体12からのガラス体14の意図しない取り外しを防止する固定構造としても機能する。
【0064】
固定クリップ42は、更なる機能を有する。固定クリップ42は、プローブヘッド36を筐体12に対して位置合わせするための位置合わせ構造体22も含む。一方で、プローブヘッド36を予め決められた位置で筐体12に移動しないように固定するための固定構造体24は、筐体の本体44に設けられる。特に、固定クリップ42は、プローブヘッド36を、筐体12、ひいてはガラス体14に対して中央に配置するための構造を含む。
【0065】
図15及び
図16には、第3実施形態と同様であるフローセル組立体10の第4実施形態が示されている。しかしながら、本実施形態は、低容量用に設計されているため、バイパスチャネルを欠いている。実際に、測定チャネル26の高さは、約1mmの範囲である。本実施形態は、以下で更に説明するように、極めて少量の有用な培地のみが抽出されるバイオプロセスに関連する較正に特に適する。
【0066】
筐体12の入口チューブコネクタ16及び出口チューブコネクタ18は、先に説明した実施形態のような返しのある(barbed)コネクタではなく、ルアーコネクタとして形成されている。筐体12は、その本体44に加えて、取付部46を含む。取付部46は、上部に形成された2つの凹部48と、底部に形成された反対の2つの凹部48とを有する。取付部46は、本体44と一体に形成されることができ、又は本体44に強固に接続されることもできる。
【0067】
凹部48は、光プローブ34のプローブヘッド36に設けられたばね式の対応する押圧部材(図示せず)を受けるように設計されている。凹部48とばね式の押圧部材は、ガラス体14に対してプローブヘッド36を位置合わせすること及び移動しないように固定することの両方のために嵌め合う。換言すると、位置合わせ構造体22と固定構造体24との両方が、凹部48及びばね式の押圧部材によって同時に実現する。
【0068】
さらに、任意のグリップ又はハンドル50が、筐体12に一体化されるか、又は筐体12に強固に接続され得る。
【0069】
フローセル組立体10の全ての実施形態は、少なくとも5bar以下、好ましくは12bar以下の圧力に耐え得るように設計されることが好ましい。
【0070】
プローブヘッド36を位置合わせするための位置合わせ構造体22及び位置合わせされたプローブヘッド36を移動しないように固定するための固定構造体24が筐体12に属することは、必須ではない。位置合わせ構造体22及び/又は固定構造体24は、ガラス体14及び筐体12上、又はガラス体14上のみに形成されることもできる。重要であるのは、規定された再現可能な測定をより確実なものとするために、プローブヘッド36が、予め決められた位置及び向きに固定されたときに、ガラス体14に対して移動しないことである。
【0071】
前記の様々な実施形態は例示に過ぎず、これらの実施形態のある特徴は、異なる方法により互いに組合せ可能であることが理解される。
【0072】
フローセル組立体10は、下流工程において特に有用であるが、その実施は、この用途の範囲に限定されるものではない。
【0073】
例えば、フローセル組立体は、バイオプロセスに関連する較正にも使用され得る。始めに述べたように、スペクトルの生データ又は情報(スペクトル)を分析物の定量的な予側に移す場合には、較正が必要である。これは、例えば1つ以上の波長(範囲)の線形回帰である回帰、又は、例えば、PLS(partial least squares,部分的最小二乗)、OPLS(orthogonal partial least squares,直交部分最小二乗)、MLR(multiple linear regression,多重線形回帰)アルゴリズムなどを介した多変量データ解析によって実現し得る。
【0074】
データを取得するには、分析物の濃度が分かっている試料のスペクトルを記録する必要がある。このことは、(i)プロセスラインに直接組み込まれたフローセル組立体10(プロセス内較正)、又は(ii)流れから離れた器具として使用されるフローセル組立体10の2つの方法のいずれかによって実行され得る。
【0075】
1つ目(プロセス内較正)の場合、フローセル組立体10をサンプリング部の近傍に配置することが有利である。1つ以上の分析物に関する基準値は、試料の流れから離れた測定から得られ、試料が採取された時にフローセル組立体10を用いて記録された1つ以上のスペクトルと関連付けられ得る。サンプリング時刻を予め決められた時間単位で補正することは、プロセスラインにおけるフローセル組立体10の特定の位置を考慮する上で、好都合であることがある。例えば、サンプリング部がフローセル組立体10の1m下流にある場合、基準値とスペクトルデータとを揃えるときに、培地がフローセル組立体10からサンプリング部に移動するのにかかった時間を考慮する必要があることがある。このようにして、多数のスペクトルと、対応する数の基準データ点とを有するデータセットが作成され得る。当該データセットに基づき、分析物の予測式(回帰の場合)又は多変量分析物予測モデルが構築される。当該モデルは、基準値が知られていないプロセスの新しいデータに適用され得る。当該モデルは、新たに採取された試料による予測と、流れから離れた基準値の測定とを比較することにより、任意に検証され得る。
【0076】
他方、流れから離れた較正は、プロセス装置に専用のサンプリング部が設けられない場合に有益である。この場合、フローセル組立体10、特に第4実施形態に係るフローセル組立体は、一時的に、プロセスラインに組み込まれるか又はプロセスラインに単に接続され、分析物の濃度が分かっている試料によって満たされるか、又はスペクトルの取得後に照合(referencing)が行われる。理想的には、各々の取得のために、同様の光学系及び同様の光学インターフェイスが使用されるべきである。較正の試料は、プロセス培地と可能な限り類似していることが最も有益である(例えば、試料及びプロセス培地は、同じ緩衝液を基にすべきである)。このようにして、多数のスペクトルと、対応する数の基準データ点とを有するデータセットが作成され得る。当該データセットに基づき、分析物の予測式(回帰の場合)又は多変量分析物予測モデルが構築される。当該モデルは、プロセスインターフェイス(フローセル組立体10、通常より大きな容量を有する)による、基準値が知られていないプロセスの新しいデータに適用され得る。
【符号の説明】
【0077】
10 フローセル組立体
12 筐体
14 ガラス体
16 入口チューブコネクタ
18 出口チューブコネクタ
20 保持構造体
22 位置合わせ構造体
24 固定構造体
24a 突起部
26 測定チャネル
28 入口端部
30 出口端部
32 バイパスチャネル
34 光プローブ
36 プローブヘッド
38 窓
40 蓋
42 固定クリップ
44 筐体の本体
46 取付部
48 凹部
50 グリップ又はハンドル
M 光学測定軸
【国際調査報告】