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特表2023-520048CCR9阻害剤及び抗IL-23遮断抗体を使用する炎症性腸疾患を治療するための組成物及び方法
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  • 特表-CCR9阻害剤及び抗IL-23遮断抗体を使用する炎症性腸疾患を治療するための組成物及び方法 図1
  • 特表-CCR9阻害剤及び抗IL-23遮断抗体を使用する炎症性腸疾患を治療するための組成物及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】CCR9阻害剤及び抗IL-23遮断抗体を使用する炎症性腸疾患を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20230508BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P1/04
A61K31/517
A61K31/415
A61K31/5377
A61K31/4725
A61K31/502
A61K31/4375
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559875
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 US2021025171
(87)【国際公開番号】W WO2021202731
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/002,747
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】502129656
【氏名又は名称】ケモセントリックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】チャロ,イスラエル
(72)【発明者】
【氏名】シャール,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スィン,ラジンダー
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,イビン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ペングリー
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB17
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086BC37
4C086BC41
4C086BC46
4C086BC73
4C086CB09
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA68
(57)【要約】
クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)の治療を必要とする哺乳動物におけるそれを治療するための組成物、方法、及びキットが、本明細書に提供される。この方法は、IBDを有する対象に、治療有効量のケモカイン受容体9(CCR9)阻害剤化合物及び治療有効量の抗IL-23抗体を含む併用療法を投与することを含む。CCR9阻害剤化合物及び抗IL-23抗体を含むキットもまた、本明細書に提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における炎症性腸疾患の発症を治療又は軽減する方法であって、前記方法が、好適な量のCCR9阻害剤を抗IL-23又は抗IL-23受容体遮断抗体とともに投与することを含み、
前記CCR9ケモカイン受容体阻害剤が、式(I)を有する化合物又はその塩であり、
【化1】
式中、Rが、置換又は非置換C2-8アルキル、置換又は非置換C1-8アルコキシ、置換又は非置換C1-8アルキルアミノ、及び置換又は非置換C3-10ヘテロシクリルからなる群から選択され、
が、H、F、Cl、又は置換若しく非置換C1-8アルコキシであるか、あるいは
及びRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非芳香族炭素環又は複素環を形成し、
が、H、置換若しく非置換C1-8アルキル、置換若しく非置換C1-8アルコキシ、又はハロであり、
が、H又はFであり、
が、H、F、Cl、又は-CHであり、
が、H、ハロ、-CN、-CO、-CONH、-NH、置換若しくは非置換C1-8アルキル、置換若しくは非置換C1-8アルコキシ、又は置換若しくは非置換C1-8アミノアルキルであり、
が、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルであり、
及びRが、一緒になって、炭素環を形成し得、
Lが、結合、-CH-、又は-CH(CH)-であり、
、A、A、A、A、A、A、及びAの各々が、独立して、N、N-O、及び-CR-からなる群から選択され、A、A、A、A、A、A、A、及びAのうちの少なくとも1つかつ2つ以下が、N又はN-Oであり、
が、各々独立して、H、ハロ、-CN、-OH、オキソ、置換又は無置換C1-8アルキル、置換又は無置換C1-8アルコキシ、
-NR2021、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルからなる群から選択され、
20及びR21が、各々独立して、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルである、方法。
【請求項2】
前記炎症性腸疾患が、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗IL-23又は前記抗IL-23受容体遮断抗体が、リサンキズマブ、グセルクマブ、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブ、チルドラキズマブ、又はそれらのバイオシミラー、バイオベター、若しくは生物学的同等物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記CCR9阻害剤及び前記抗IL-23又は前記抗IL-23受容体遮断抗体が、組み合わせ製剤で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記CCR9阻害剤及び前記抗IL-23又は前記抗IL-23受容体遮断抗体が、順次投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記CCR9阻害剤が、前記抗IL-23又は前記抗IL-23受容体遮断抗体の前に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記CCR9阻害剤が、前記抗IL-23又は前記抗IL-23受容体遮断抗体の投与後に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
又はAのうちの1つが、N又はN-Oであり、A、A、A、A、A、A、A、及びAのうちの残りが、-CR-であり、各Rが、独立して選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
、A、A、及びAのうちの2つが、N又はN-Oであり、A、A、A、A、A、A、A、及びAのうちの残りが、-CR-であり、各Rが、独立して選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記阻害剤が、式(III)を有する化合物又はその塩であり、
【化2】
式中、Rが、置換又は非置換C2-8アルキル、置換又は非置換C1-8アルコキシ、置換又は非置換C1-8アルキルアミノ、及び置換又は非置換C3-10ヘテロシクリルからなる群から選択され、
が、H、F、Cl、又は置換若しく非置換C1-8アルコキシであるか、あるいは
及びRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非芳香族炭素環又は複素環を形成し、
が、H、置換若しく非置換C1-8アルキル、置換若しく非置換C1-8アルコキシ、又はハロであり、
が、H又はFであり、
が、H、F、Cl、又は-CHであり、
が、H、ハロ、-CN、-CO、-CONH、-NH、置換若しくは非置換C1-8アミノアルキル、置換若しくは非置換C1-8アルキル、又は置換若しくは非置換C1-8アルコシキであり、
が、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルであり、
及びRが、一緒になって、炭素環を形成し得、
Lが、結合、-CH-、又は-CH(CH)-であり、
Zが、
【化3】
及びそれらのN-オキシドからなる群から選択され、
Z基が、非置換であり得るか、又は1~3つの独立して選択されたR置換基で置換され得、
各Rが、独立して、H、ハロ、-CN、-OH、オキソ、置換又は無置換C1-8アルキル、置換又は無置換C1-8アルコキシ、
-NR2021、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルからなる群から選択され、
20及びR21が、各々独立して、H、置換又は非置換C1-8アルキルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記阻害剤が、式(IIIa)若しくは(IIIb)を有する化合物又はその塩であり、
【化4】
式中、Rが、置換又は非置換C2-8アルキル、置換又は非置換C1-8アルコキシ、置換又は非置換C1-8アルキルアミノ、及び置換又は非置換C3-10ヘテロシクリルからなる群から選択され、
が、H、F、Cl、又は置換若しく非置換C1-8アルコキシであるか、あるいは
及びRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非芳香族炭素環又は複素環を形成し、
が、H、置換若しく非置換C1-8アルキル、置換若しく非置換C1-8アルコキシ、又はハロであり、
が、H又はFであり、
が、H、F、Cl、又は-CHであり、
が、H、ハロ、-CN、-CO、-CONH、-NH、置換若しくは非置換C1-8アミノアルキル、置換若しくは非置換C1-8アルキル、又は置換若しくは非置換C1-8アルコシキであり、
が、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルであるか、
あるいはR及びRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、炭素環を形成し、
各Rが、独立して、H、ハロ、-CN、-OH、オキソ、置換又は無置換C1-8アルキル、置換又は無置換C1-8アルコキシ、
-NR2021、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルからなる群から選択され、
20及びR21が、各々独立して、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルであり、
nが、0、1、2、又は3である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
が、-CHCH、-CH(CH、-C(CH
-C(CHCHCH、-C(CHCH)CN、-C(OH)(CH、-OCH、-OCHCH、-OCH(CH、-OC(CH、-OCHCH(CH、-OCF、及びモルホリノからなる群から選択され、
が、H、F、若しくはClであるか、又は
及びRが、一緒になって、-OC(CHCH-若しくは-C(CHCHCH-を形成し得、
が、H、-CH、又は-OCHであり、
が、H又はFであり、
が、Hであり、
が、H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C、-CHF、-CHF、-CFCH、-CF、-CHOCH、-CHOH、-CHCN、-CN、又は-CONHであり、
各Rが、独立して、H、F、Cl、Br、-CH
-OH、-OCH、-OCHCH、-NH、-N(CH、及び-CNからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
が、-C(CHである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
が、H又はFであり、Rが、Hであり、Rが、Hであり、Rが、-CH、-CHF、-CHF、又は-CFである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、
【化5-1】
【化5-2】
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】
【化6-4】
【化6-5】
【化6-6】
【化6-7】
【化6-8】
【化6-9】
【化6-10】
、及びそれらのN-オキシドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、
【化7】
、又はそれらの塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物における炎症性腸疾患の発症を治療又は低減するための組成物であって、前記組成物が、治療有効量のCCR9阻害剤、治療有効量の抗IL-23又は抗IL-23受容体遮断抗体、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、組成物。
【請求項19】
前記抗IL-23遮断抗体が、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、又はそれらのバイオシミラー、バイオベター、若しくは生物学的同等物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
哺乳動物における炎症性腸疾患の発症を治療又は軽減する方法ためのキットであって、前記キットが、治療有効量のCCR9阻害剤及び治療有効量の抗IL-23又は抗IL-23遮断抗体を、効果的な投与のための説明書とともに含む、キット。
【請求項21】
哺乳動物における炎症性腸疾患の発症を治療又は軽減する方法であって、好適な量のCCR9ケモカイン受容体阻害剤を抗IL-23又は抗IL-23受容体遮断抗体とともに投与することを含み、前記CCR9阻害剤が、式(I)の化合物又はその塩であり、
【化8】
式中、
、X、X、X、及びXが、各々独立して、水素、ハロゲン、-CN、-NO、-OR1a、-C(O)R1a、-CO1a、-O(CO)R1a、-OC(O)NR1a2a、-SR1a、-SOR1a
-SO1a、-NR1a2a、-NR1aC(O)R2a、-NR1aC(O)2a、-NR1a(CO)NR1a2a、非置換又は置換C1-8アルキル、非置換又は置換C2-8アルケニル、非置換又は置換C2-8アルキニル、非置換又は置換C6-10アリール、非置換又は置換の5又は6員ヘテロアリール、及び非置換又は置換の4~7員ヘテロシクリルからなる群から選択され、ただし、X、X、X、X、及びXのうちの1つが水素以外であることを条件とし、
1a及びR2aが、各々独立して、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アリール-C1-4アルキル、アリールオキシ-C1-4アルキル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員複素環からなる群から選択されるか、又はR1a及びR2aが、それらが結合している原子と一緒になって、置換若しくは非置換の5、6、若しくは7員環を形成し得、
、Y、Y、及びYが、各々独立して、水素、ハロゲン、-CN、-NO、-OR3a、-C(O)R3a、-SR3a、-CF、-SOR3a、-SO3a、及び置換又は非置換C1-4アルキルからなる群から選択され、
3aが、独立して、水素、非置換C1-8アルキル、非置換C2-8アルケニル、非置換C2-8アルキニル、非置換C6-10アリール、及び非置換5~10員ヘテロアリールからなる群から選択され、
が、-C(O)-、-S-、-S(O)-、又は-S(O)-であり、
が、置換フェニル又は置換若しくは非置換の5員ヘテロアリールである、方法。
【請求項32】
前記炎症性腸疾患が、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗IL-23又は抗IL-23受容体遮断抗体が、リサンキズマブ、グセルクマブ、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブ、チルドラキズマブ、又はそれらのバイオシミラー、バイオベター、若しくは生物学的同等物である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記CCR9阻害剤及び前記抗IL-23又は抗IL-23受容体遮断抗体が、組み合わせ製剤で投与される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記CCR9阻害剤及び前記抗IL-23又は抗IL-23受容体遮断抗体が、順次投与される、請求項21~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記CCR9阻害剤が、前記抗IL-23又は抗IL-23受容体遮断抗体の前に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記CCR9阻害剤が、前記抗IL-23又は抗IL-23受容体遮断抗体の投与後に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記CCR9阻害剤が、
【化9】
、又はそれらの塩である、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月31日に出願された米国仮出願第63/002,747号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(IBD)は、口、食道、胃、小腸、大腸(結腸)、直腸、及び肛門などの胃腸(GI)管の一部又は全てが冒される、慢性炎症性状態の群である。IBDには、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、及び分類不能型大腸炎が含まれる。CD及びUCは、臨床的、内視鏡的、及び病理学的特徴によって区別することができる。
【0003】
CDは、GI管のあらゆる部分に関与し得る、慢性炎症の疾患である。この疾患の特徴的な症状としては、重度の腹痛、頻繁な下痢、直腸出血、便意逼迫、及び右下腹部の腫れが挙げられる。
【0004】
UCは、結腸の慢性的に寛解及び再発を繰り返す炎症性疾患である。この疾患は、直腸を通り、かつ結腸を通って上向きに広がる表在性粘膜病変に主に関与する、炎症の再発エピソードを特徴とする。急性エピソードは、慢性の下痢又は便秘、直腸出血、けいれん、及び腹痛を特徴とする。
【0005】
IBDは、炎症、並びにリンパ球、顆粒球、単球、及びマクロファージなどの白血球の、血液から腸の粘膜又は上皮内層への浸潤を特徴とする。リンパ球、好中球、マクロファージ、及び樹状細胞を含む複数の炎症性細胞型が、IBDに寄与する。例えば、Tリンパ球は、Tリンパ球の表面の接着分子と内皮の同族リガンドとの間の協調的な相互作用を介して胃腸管の粘膜に浸潤する。ケモカイン受容体及びリガンド、例えば、受容体CCR9及びそのリガンドCCL25もまた、炎症細胞、例えば、エフェクターメモリーTヘルパー細胞の、IBDの腸上皮への移動において役割を果たす。
【0006】
上記を考慮すると、リンパ球の腸組織への浸潤に関連する複数の経路及び/又は複数の細胞型を遮断することができるIBDの有効な治療レジメンが、疾患の治療に有用であり得ることは明らかである。本発明は、医薬組成物及び関連する治療方法とともに、そのような療法を提供する。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、本開示は、哺乳動物における炎症性腸疾患の発症を治療又は低減する方法を提供し、当該方法は、好適な量のCCR9阻害剤を、抗IL-23又は抗IL-23受容体(抗IL-23R)遮断抗体とともに投与することを含む。いくつかの実施形態において、炎症性腸疾患は、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)である。
【0008】
いくつかの実施形態において、CCR9ケモカイン受容体阻害剤は、1500未満の分子量を有する小分子受容体阻害剤である。CCR9小分子受容体阻害剤は、約1495、1450、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500以下の分子量を有することができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるCCR9小分子阻害剤は、式(I)又はその塩によって表され得、
【化1】
式中、X、X、X、X、X、Y、Y、Y、Y、L、及びZは、以下に定義されるとおりである。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるCCR9小分子阻害剤は、式(II)又はその塩によって表され得、
【化2】
式中、R、R、R、R、R、R、L、A、A、A、A、A、A、A、及びAは、以下に定義されるとおりである。
【0011】
いくつかの実施形態において、抗IL-23又は抗IL-23R遮断抗体は、リサンキズマブ、グセルクマブ(TREMFYA(登録商標))、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブ、チルドラキズマブ、又はそれらのバイオシミラー、バイオベター、若しくは生物学的同等物である。
【0012】
いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤及び抗IL-23遮断抗体は、組み合わせ製剤で投与される。他の実施形態において、CCR9阻害剤及び抗IL-23遮断抗体は、順次投与される。更に他の実施形態において、CCR9阻害剤は、抗IL-23遮断抗体の前に投与される。別の実施形態において、CCR9阻害剤は、抗IL-23遮断抗体の投与後に投与される。
【0013】
いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤は、以下の式を有する化合物である。
【化3】
【0014】
いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤は、以下から選択される化合物である。
【化4】
【0015】
別の態様において、本開示は、哺乳動物における炎症性腸疾患の発症を治療又は低減するための組成物を提供し、当該組成物は、治療有効量のCCR9阻害剤、治療有効量の抗IL-23又は抗IL-23R遮断抗体、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、炎症性腸疾患は、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)である。
【0017】
更に別の態様において、本開示は、哺乳動物における炎症性腸疾患の発症を治療又は低減するためのキットを提供し、当該キットは、治療有効量のCCR9阻害剤、治療有効量の抗IL-23又は抗IL-23R遮断抗体、及び効果的な投与のための説明書を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R遮断抗体は、順次投与用に製剤化される。他の実施形態において、CCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R遮断抗体は、同時投与用に製剤化される。
【0019】
いくつかの実施形態において、抗IL-23又は抗IL-23R遮断抗体は、リサンキズマブ、グセルクマブ(TREMFYA(登録商標))、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブ、チルドラキズマブ、又はそれらのバイオシミラー、バイオベター、若しくは生物学的同等物である。
【0020】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び図から当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】3日目の化合物1及び2のトラフ血漿濃度を示す。
図2】MDR-/-マウスと比較した野生型の結腸の重量対長さの比を示す。
図3】化合物1で処置された群及び対照の結腸の重量対長さの比を示す。
図4】化合物2で処置された群及び対照の結腸の重量対長さの比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.序章
本開示は、CCR9阻害剤、例えば、CCR9の小分子阻害剤と、IL-23に対する抗体又はIL-23受容体に対する抗体との併用療法が、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び分類不能型大腸炎などの炎症性腸疾患の治療において相乗的に作用し得るという、予期せぬ発見に部分的に基づく。IBDの治療を必要とする対象、例えば、ヒト又は動物対象におけるそれを治療するための方法、組成物、及びキットが、本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、方法は、IBDを有する対象に、治療有効量のCCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R抗体を投与して、対象における臨床応答を誘発するか、又は臨床的寛解を維持することを含む。
【0023】
II.定義
本発明の化合物、組成物、方法及びプロセスを説明する場合、以下の用語は、別段指示されない限り、以下の意味を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、又は「the」という用語は、1つのメンバーを有する態様を含むだけでなく、複数のメンバーを含む態様も含む。例えば、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、別段明確に指示されない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「薬剤」への言及は、当業者に知られている1つ以上の薬剤などへの言及を含む。
【0025】
「約」及び「およそ」という用語は、一般に、測定の性質又は精度を考慮して、測定された量の許容できる誤差の程度を意味するものとする。典型的な例示的誤差の程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。あるいは、特に生物系において、「約」及び「およそ」という用語は、所与の値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書に記載されている数量は、特に明記しない限り概算であり、「約」又は「およそ」という用語は、明示的に記載されていない場合に推測できることを意味する。
【0026】
「炎症性腸疾患」又は「IBD」という用語は、例えば、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、分類不能型大腸炎(IC)、及びCDであるかUCであるか決定的でない(「非決定性」)IBDなどの胃腸障害を含む。炎症性腸疾患(例えば、CD、UC、IC、及び決定的でない)は、過敏性腸症候群(IBS)を含む、他の全ての障害、症候群、及び胃腸管の異常とは区別される。IBD関連疾患の例としては、膠原線維性大腸炎及びリンパ球性大腸炎が挙げられる。
【0027】
「潰瘍性大腸炎」又は「UC」という用語は、直腸を通って広がり、上向きに進行する表在性粘膜病変を特徴とする、結腸又は大腸の慢性的に寛解及び再発を繰り返す炎症性腸疾患(IBD)を指す。異なる種類の潰瘍性大腸炎は、炎症の場所及び程度に応じて分類される。UCの例としては、潰瘍性直腸炎、直腸S状結腸炎、左側大腸炎、及び汎潰瘍性(全)大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「クローン病」又は「CD」という用語は、胃腸管のあらゆる部分に関与し得る、慢性炎症の疾患を指す。一般的に、小腸の遠位部分、すなわち回腸、及び盲腸が冒される。他の場合、疾患は、小腸、結腸、又は肛門直腸領域に限定される。CDは、時折、十二指腸及び胃に関与し、更に稀に、食道及び口に関与する。UCの例としては、回腸結腸炎、回腸炎、胃十二指腸クローン病、空腸回腸炎、及びクローン病(肉芽腫性)大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「対象」、「個体」又は「患者」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどが挙げられるがこれらに限定されない、哺乳動物などの動物を指す。
【0030】
「C-Cケモカイン受容体タイプ9」、「CCR9」又は「CCR9ケモカイン受容体」という用語は、TECK及びSCYA25としても知られているケモカインCCL25の受容体を指す。ヒトCCR9ポリペプチド配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_001243298、NP_006632、NP_112477、及びXP_011531614に記載されている。ヒトCCR9 mRNA(コード)配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NM_001256369、NM_006641、NM_031200、及びXM_011533312に記載されている。
【0031】
「C-Cケモカイン受容体9阻害剤」、「CCR9阻害剤」又は「CCR9ケモカイン受容体阻害剤」という用語は、CCR9受容体ポリペプチド、そのバリアント、又はその断片の阻害剤又はアンタゴニストを指す。
【0032】
「小分子阻害剤」という用語は、標的分子、生体分子、タンパク質又は他の生物学的生成物を不活性化、阻害、又は拮抗する小分子又は低分子量有機化合物を指す。
【0033】
「抗IL-23遮断抗体」又は「抗IL-23中和抗体」という用語は、IL-23ポリペプチド又はその断片に特異的に結合する抗体又はその断片を指す。IL-23の断片には、IL12b及びIL23aが含まれる。場合によっては、IL-23遮断抗体は、IL-23とそのリガンドのうちのいずれか1つとの相互作用を遮断する。「抗IL-23R遮断抗体」という用語は、IL-23受容体又はその断片に特異的に結合する抗体又はその断片を指す。本明細書で使用される場合、IL-23は、サブユニットIL12b及びIL23aから構成されるヘテロ二量体として存在する、ヒトサイトカインを指すことが意図される。IL-23の構造は、例えば、Oppmann B,et al.,Immunity,November 2000,13(5):715-725に更に記載されている。
【0034】
「バイオシミラー」という用語は、FDA承認の生物学的製品(参照製品)と非常に類似しており、かつ参照製品と薬物動態、安全性、及び有効性の点で臨床的に意味のある差異を有しない、生物学的製品を指す。
【0035】
「生物学的同等物」という用語は、FDA承認の生物学的製品(参照製品)と薬学的に同等であり、かつそれと類似した生物学的利用能を有する、生物学的製品を指す。例えば、FDAによると、生物学的同等性という用語は、「薬学的同等物又は薬学的代替物の活性成分又は活性部分が、適切に設計された研究における同様の条件下で同じモル用量で投与された場合、薬物作用の部位で利用可能になる速度及び程度の有意な差がない」と定義される(United States Food and Drug Administration,「Guidance for Industry:Bioavailability and Bioequicalence Studies for Orally Administered Drug Products-General Considerations」,2003,Center for Drug Evaluation and Research)。
【0036】
「バイオベター」という用語は、FDA承認の生物学的製品(参照製品)と同じクラスにあるが同一ではなく、かつ参照製品よりも安全性、有効性、安定性などの点で改善されている、生物学的製品を指す。
【0037】
「治療有効量」という用語は、標的となる状態又は症状を改善するのに十分な治療剤の量を指す。例えば、所与のパラメータの場合、治療有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は少なくとも100%の増加又は減少を示す。治療効果は、「倍」の増加又は減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、対照に対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、又はそれ以上の効果を有する可能性がある。
【0038】
「投与すること」又は「投与」という用語及びそれらの派生語は、生物学的作用の所望の部位への薬剤又は組成物の送達を可能にするために使用され得る方法を指す。これらの方法としては、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、髄腔内、鼻腔内、硝子体内、注入及び局所注射)、経粘膜注射、経口投与、坐剤としての投与、及び局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、疾患に関連する1つ以上の症状を予防又は軽減するために、治療有効量の本発明の化合物を投与するための追加の方法を知っているであろう。
【0039】
「治療すること」又は「治療」という用語は、哺乳動物(特にヒト若しくは動物)などの患者の疾患又は病状(炎症など)を治療すること又は治療を指し、疾患又は病状を改善すること、すなわち、患者における疾患又は病状を排除するか、又はその退行を引き起こすこと、疾患又は病状を抑制すること、すなわち、患者における疾患又は病状の進行を遅らせるか、又は阻止すること、あるいは患者における疾患又は病状の症状を緩和することを含む。この用語は、特定の疾患を獲得若しくは発症するリスクを予防若しくは低減するため、又は疾患の再発のリスクを予防若しくは低減するための疾患の予防的治療を包含する。
【0040】
「アルキル」は、それ自体で、又は別の置換基の一部として、指定された数の炭素原子を有する直鎖状、環状、分岐状、又はそれらの組み合わせであり得る炭化水素基を指す(すなわち、C1-8は、1~8個の炭素原子を意味する)。「シクロアルキル」という用語は、それ自体で、又は別の置換基の一部として、指定された数の炭素を有する環状アルキル基を指し、「アルキル」という用語のサブセットである。 「アルキル」という用語の他のサブセットとしては、「直鎖状」及び「分岐状」アルキル基が挙げられ、これらは、2つの異なるタイプの非環式アルキル基を指す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。この例のリストにおいて、メチル、エチル、n-プロピル、及びn-ブチル アルキルの例はまた、「直鎖状アルキル」基の例である。同様に、イソプロピル及びt-ブチルはまた、「分岐状アルキル」基の例である。シクロペンチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンは、「シクロアルキル」基の例である。いくつかの実施形態において、シクロプロピルは、2つの他の部分の間の架橋基として使用され得、-CH(CH)CH-として表され得る。「アルキル基は、別段指示されない限り、置換又は非置換であり得る。置換アルキルの例としては、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキルなどが挙げられる。好適な置換アルキルの追加の例としては、ヒドロキシ-イソプロピル、-C(CH-OH、アミノメチル、2-ニトロエチル、4-シアノブチル、2,3-ジクロロペンチル、及び3-ヒドロキシ-5-カルボキシヘキシル、2-アミノエチル、ペンタクロロエチル、トリフルオロメチル、2-ジエチルアミノエチル、2-ジメチルアミノプロピル、エトキシカルボニルメチル、メタニルスルファニルメチル、メトキシメチル、3-ヒドロキシペンチル、2-カルボキシブチル、4-クロロブチル、並びにペンタフルオロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。置換アルキルの好適な置換基としては、ハロゲン、-CN、-COR’、
-C(O)R’、-C(O)NR’R’’、オキソ(=O又は-O)、-OR’、-OC(O)R’、-OC(O)NR’R’’-NO2、
-NR’C(O)R’’、-NR’’’C(O)NR’R’’、-NR’R’’、-NR’COR’’、-NR’S(O)R’’、-NR’S(O)R’’’、
-NR’’’S(O)NR’R’’、|-NR’’’S(O)NR’R’’、-SR’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(O)2NR’R’’、-NR’-C(NHR’’)=NR’’’、-SiR’R”R”’、-OSiR’R”R”’、-N、置換又は非置換C6-10アリール、置換又は非置換5~10員ヘテロアリール、及び置換又は非置換3~10員ヘテロシクリルが挙げられる。可能性のある置換基の数は、ゼロから(2m’+1)の範囲であり、m’は、そのような基の炭素原子の総数である。置換アルキルに関して、R’、R’’、及びR’’’は、各々独立して、水素、置換又は非置換C1-8アルキル、置換又は非置換C2-8アルケニル、置換又は非置換C2-8アルキニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換アリールオキシアルキルを含む、様々な基を指す。R’及びR’’が同じ窒素原子に結合している場合、それらは、窒素原子と合わさって、3、4、5、6、又は7員環を形成し得る(例えば、-NR′R″は、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含む)。更に、R’及びR’’、R’’及びR’’’、又はR’及びR’’’は、それらが結合している原子と一緒になって、置換又は非置換の5、6、又は7員環を形成し得る。
【0041】
「アルコキシ」は、-O-アルキルを指す。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシなどが挙げられる。
【0042】
「アルケニル」は、直鎖状、環状、若しくは分岐状、又はそれらの組み合わせであり得る、不飽和炭化水素基を指す。2~8個の炭素原子を有するアルケニル基が好ましい。アルケニル基は、1、2、又は3つの炭素-炭素二重結合を含み得る。アルケニル基の例としては、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブト-2-エニル、n-ヘキサ-3-エニル、シクロヘキセニル、シクロペンテニルなどが挙げられる。アルケニル基は、別段指示されない限り、置換又は非置換であり得る。
【0043】
「アルキニル」は、直鎖状、環状、若しくは分岐状、又はそれらの組み合わせであり得る、不飽和炭化水素基を指す。2~8個の炭素原子を有するアルキニル基が好ましい。アルキニル基は、1、2、又は3つの炭素-炭素三重結合を含み得る。アルキニル基の例としては、エチニル、n-プロピニル、n-ブト-2-イニル、n-ヘキサ-3-イニルなどが挙げられる。アルキニル基は、別段指示されない限り、置換又は非置換であり得る。
【0044】
「アルキルアミノ」は、-N(アルキル)2又は-NH(アルキル)を指す。アルキルアミノ基が2つのアルキル基を含む場合、アルキル基は、一緒に合わさって、炭素環又は複素環を形成し得る。アルキルアミノ基のアルキル基は置換又は非置換であり得ることを理解されたい。アルキルアミノ基の例としては、メチルアミノ、tert-ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、モルホリノなどが挙げられる。
【0045】
置換アルキル基としての「アミノアルキル」は、最も典型的には1~2つのアミノ基で置換された、モノアミノアルキル又はポリアミノアルキル基を指す。例としては、アミノメチル、2-アミノエチル、2-ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0046】
「アリール」は、単環(二環式)、又は一緒に縮合若しくは共有結合することができる複数の環(好ましくは二環式)を有する、多価不飽和芳香族炭化水素基を指す。6~10個の炭素原子を有するアリール基が好ましく、この炭素原子数は、例えば、C6-10によって表すことができる。アリール基の例としては、フェニル及びナフタレン-1-イル、ナフタレン-2-イル、ビフェニルなどが挙げられる。アリール基は、別段指示されない限り、置換又は非置換であり得る。置換アリールは、1つ以上の置換基で置換され得る。アリールの好適な置換基としては、置換又は非置換C1-8アルキル、及び置換アルキルについて上記で考察された置換基が挙げられる
【0047】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、それ自体で、又は置換基の一部として、塩素、臭素、ヨウ素、又はフッ素原子を指す。
【0048】
置換アルキル基としての「ハロアルキル」は、最も典型的には1~3個のハロゲン原子で置換された、モノハロアルキル又はポリハロアルキル基を指す。例としては、1-クロロエチル、3-ブロモプロピル、トリフルオロメチルなどが挙げられる。
【0049】
「ヘテロシクリル」は、窒素、酸素、又は硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(典型的には、1~5個のヘテロ原子)を含む、飽和又は不飽和非芳香族基を指す。好ましくは、これらの基は、0~5個の窒素原子、0~2個の硫黄原子、及び0~2個の酸素原子を含む。より好ましくは、これらの基は、0~3個の窒素原子、0~1個の硫黄原子、及び0~1個の酸素原子を含む。複素環基の例としては、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノン、ヒダントイン、ジオキソラン、フタルイミド、ピペリジン、1,4-ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリン-S-オキシド、チオモルホリン-S,S-ジオキシド、ピペラジン、ピラン、ピリドン、3-ピロリン、チオピラン、ピロン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、キヌクリジンなどが挙げられる。好ましい複素環基は単環式であるが、それらは、アリール又はヘテロアリール環系に縮合又は共有結合され得る。
【0050】
例示的な複素環基は、以下の式(AA)によって表され得、
【化5】
式(AA)は、M又はMのいずれかの自由原子価を介して結合し、Mは、O、NR、又はS(O)を表し、Mは、CR、O、S(O)、又はNRを表し、R、R、又はRのうちの1つを省略して、例えばCR、CR、又はNなどのM又はMの自由原子価を作成する必要があり得、lは 0、1、又は2であり、jは、1、2、又は3であり、kは1、2又は3であり、ただし、j+kが、3、4、又は5であることを条件とし、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、非置換又は置換C1-8アルキル、非置換又は置換C2-8アルケニル、非置換又は置換C2-8アルキニル、-COR、-CO、-CONR、-NRCOR、-SO-SONR
-NRSO-NR、-OR、-SiR、-OSiR、-QCOR、-QCO2R、-QCONR
-QNRCOR、-QSO、-QSONR、-QNRSO、-QNR、-QORからなる群から選択され、Qは、C1-4アルキレン、C2-4アルケニレン、及びC2-4アルキニレンからなる群から選択されるメンバーであり、R、R、及びRは、独立して、水素及びC1-8アルキルからなる群から選択され、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR置換基の各々の脂肪族部分は、任意選択的に、ハロゲン、-OH、-OR、-OC(O)NHR、-OC(O)NR、-SH、-SR、-S(O)R、-S(O)-S(O)NHR、-S(O)NR、-NHS(O)、-NRS(O)、-C(O)NH
-C(O)NHR、-C(O)NR、-C(O)R、-NHC(O)R、-NRC(O)R、-NHC(O)NH
-NRC(O)NH、-NRC(O)NHR、-NHC(O)NHR、-NRC(O)NR、-NHC(O)NR
-COH、-CO、-NHCO、-NRCO、-CN、-NO、-NH、-NHR、-NR
-NRS(O)NH、及び-NRS(O)NHRからなる群から選択される1~3つのメンバーで置換され、R、R、及びRは、独立して、非置換C1-8アルキルである。加えて、R、R、R、R、R、R、及びRのうちのいずれか2つが結合して、架橋又はスピロ環系を形成し得る。
【0051】
好ましくは、水素以外であるR+R+R+R基の数は、0、1、又は2である。より好ましくは、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、非置換又は置換C1-8アルキル、-C(O)R
-CO、-C(O)NR、-NRCOR、-SO、-SONR、-NSO、-NR、及び
-ORからなる群から選択され、R及びRは、独立して、水素及び非置換C1-8アルキルからなる群から選択され、R、R、R、R、R、R、及びR置換基の各々の脂肪族部分は、任意選択的に、ハロゲン、-OH、-OR、-OC(O)NHR、-OC(O)NR、-SH、-SR
-S(O)R、-SO、-SONH、-SONHR、-SONROR、-NHSO、-NRSO
-C(O)NH、-C(O)NHR、-C(O)NR、-C(O)R、-NHC(O)R、-NRC(O)R
-NHC(O)NH、-NRC(O)NH、-NRC(O)NHR、-NHC(O)NHR、-NRC(O)NR
-NHC(O)NR、-COH、-CO、-NHCO、-NRCO、-CN、-NO、-NH
-NHR、-NR、-NRS(O)NH、及び-NRS(O)NHRからなる群から選択される1~3つのメンバーで置換され、R、R、及びRは、独立して、非置換C1-8アルキルである。
【0052】
より好ましくは、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、及びRgは、独立して、水素又は
C1-4アルキルである。別の好ましい実施形態において、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、及びRgのうちの少なくとも3つは、水素である。
【0053】
「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む芳香族基を指す。例としては、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、フタラジニル、ベンゾトリアジニル、プリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、イソベンゾフリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾトリアジニル、チエノピリジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジン、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プテリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、チアゾリル、フリル、又はチエニルが挙げられる。好ましいヘテロアリール基は、キノリニル、キノキサリニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、キノリル、イソキノリルなどの、少なくとも1個のアリール環窒素原子を有するものである。好ましい6環ヘテロアリール系としては、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニルなどが挙げられる。好ましい5環ヘテロアリール系としては、イソチアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、フリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、チアゾリルなどが挙げられる。
【0054】
ヘテロシクリル及びヘテロアリールは、任意の利用可能な環炭素又はヘテロ原子において結合することができる。各ヘテロシクリル及びヘテロアリールは、1つ以上の環を有し得る。複数の環が存在する場合、それらは、一緒に縮合又は共有結合することができる。各ヘテロシクリル及びヘテロアリールは、窒素、酸素、又は硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(典型的には、1~5個のヘテロ原子)を含まなければならない。好ましくは、これらの基は、0~5個の窒素原子、0~2個の硫黄原子、及び0~2個の酸素原子を含む。より好ましくは、これらの基は、0~3個の窒素原子、0~1個の硫黄原子、及び0~1個の酸素原子を含む。ヘテロシクリル及びヘテロアリール基は、別段指示されない限り、置換又は非置換であり得る。置換基については、置換は、炭素又はヘテロ原子上であり得る。例えば、置換がオキソ(=O又はO-)である場合、得られる基は、カルボニル(-C(O)-)又はN-オキシド(-N+-O-)又は-S(O)-又は-S(O)2-のいずれかを有し得る。
【0055】
置換アルキル、置換アルケニル、及び置換アルキニルの好適な置換基としては、ゼロから(2m’+1)の範囲の数において、ハロゲン、-CN、-CO2R’、-C(O)R’、-C(O)NR’R’’、オキソ(=O又は-O-)、
-OR′、-OC(O)R′、-OC(O)NR′R″-NO2、-NR′C(O)R″、-NR′″C(O)NR′R″、-NR′R″、
-NR’CO2R’’、-NR’S(O)2R’’’、-SR’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R’’、-SiR’R’’R’’’、
-N3、置換又は非置換C6-10アリール、置換又は非置換5~10員ヘテロアリール、及び置換又は非置換3~10員ヘテロシクリルが挙げられ、m’は、そのような基の炭素原子の総数である。
【0056】
置換アリール、置換ヘテロアリール、及び置換ヘテロシクリルの好適な置換基としては、ハロゲン、-CN、-CO2R’、-C(O)R’、-C(O)NR’R’’、オキソ(=O又は-O-)、
-OR′、-OC(O)R′、-OC(O)NR′R″-NO2、-NR′C(O)R″、-NR′C(O)NR’’R’’’、-NR′R″、
-NR′CO2R″、-NR′S(O)2R″、-SR′、-S(O)R′、-S(O)2R′、-S(O)2NR′R″、
-NR′-C(NHR″)=NR′″、-SiR′R″R′″、-N3、置換又は非置換C1-8アルキル、置換又は非置換C2-8アルケニル、置換又は非置換C2-8アルキニル、置換又は非置換C6-10アリール、置換又は非置換5~10員ヘテロアリール、及び置換又は非置換3~10員ヘテロシクリルが挙げられる。可能性のある置換基の数は、ゼロから芳香族環系の開放原子価の総数までの範囲である。
【0057】
上記で使用される場合、置換アルキルに関して、R’、R’’、及びR’’’は、各々独立して、水素、置換又は非置換C1-8アルキル、置換又は非置換C2-8アルケニル、置換又は非置換C2-8アルキニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換アリールアルキル、及び置換又は非置換アリールオキシアルキルを含む、様々な基を指す。R’及びR’’が同じ窒素原子に結合している場合、それらは、窒素原子と合わさって、3、4、5、6、又は7員環を形成し得る(例えば、-NR′R″は、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含む)。更に、R’及びR’’、R’’及びR’’’、又はR’及びR’’’は、それらが結合している原子と一緒になって、置換又は非置換の5、6、又は7員環を形成し得る。
【0058】
アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式-T-C(O)-(CH2)q-U-の置換基で置換され得、式中、T及びUは、独立して、-NR″″-、-O-、-CH2-、又は単結合であり、qは、0~2の整数である。あるいは、アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式-A′-(CH2)r-B′-の置換基で置換され得、式中、A′及びB′は、独立して、-CH2-、-O-、-NR″″-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR″″-、又は単結合であり、rは、1~3の整数である。そのように形成された新しい環の単結合のうちの1つは、任意選択的に、二重結合で置換され得る。あるいは、アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式-(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基で置換され得、式中、s及びtは、独立して、0~3の整数であり、Xは、-O-、-NR″″-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、又は-S(O)2NR’-である。-NR″″-及び-S(O)2NR″″-における置換基R″″は、水素又は非置換C1-8アルキルである。
【0059】
「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、及びケイ素(Si)を含むことが意図される。
【0060】
「薬学的に許容される」担体、希釈剤、又は賦形剤は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに有害でない担体、希釈剤、又は賦形剤である。
【0061】
「薬学的に許容される塩」は、哺乳動物などの患者への投与に許容できる塩(例えば、所与の投薬レジメ(regime)に対して許容できる哺乳動物の安全性を有する塩)を指す。そのような塩は、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて、薬学的に許容される無機又は有機塩基、及び薬学的に許容される無機又は有機酸から誘導することができる。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態を、好適な不活性溶媒の近く、又はその中のいずれかで、十分な量の所望の塩基と接触させることによって得られ得る。薬学的に許容される無機塩基由来の塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(manganic)、マンガン(manganous)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。薬学的に許容される有機塩基由来の塩としては、一級、二級、三級及び四級アミンの塩が挙げられ、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなど、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を、好適な不活性溶媒の近く、又はその中のいずれかで、十分な量の所望の酸と接触させることによって得られ得る。薬学的に許容される酸由来の塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンフォスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルコロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0062】
また、アルギニン酸塩などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などの有機酸の塩も挙げられる(例えば、Berge,S.M.,et al,「Pharmaceutical Salts」,J.Pharmaceutical Science,1977,66:1-19を参照)。本発明のある特定の具体的な化合物は、塩基性及び酸性官能基の両方を含有し、これらは、化合物が塩基又は酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする。
【0063】
化合物の中性形態は、塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を従来の方法で単離することによって再生され得る。化合物の親形態は、極性溶媒への溶解度などのある特定の物理的特性において様々な塩形態とは異なるが、他の方法では、塩は、本開示の目的のために化合物の親形態と同等である。
【0064】
「その塩」は、酸の水素が、金属カチオン又は有機カチオンなどのカチオンによって置換される場合に形成される、化合物を指す。好ましくは、塩は、薬学的に許容される塩であるが、患者への投与が意図されていない中間化合物の塩についてはその必要はない。
【0065】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。状況によっては、親薬物よりも投与が容易な場合があるため、プロドラッグはしばしば有用である。それらは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であるかもしれないが、親薬物はそうではない。プロドラッグはまた、親薬物よりも医薬組成物での溶解度が改善されている可能性がある。プロドラッグの加水分解的開裂又は酸化的活性化に依存するものなど、多種多様なプロドラッグ誘導体が当該技術分野で知られている。プロドラッグの例は、限定されないが、エステルとして投与される本発明の化合物(「プロドラッグ」)であるが、その後、代謝的に加水分解されて、活性実体であるカルボン酸になる。追加の例としては、本発明の化合物のペプチジル誘導体が挙げられる。
【0066】
本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、本発明の化合物を提供するために、生理学的条件下で化学的変化を容易に受ける化合物である。加えて、プロドラッグは、エクスビボ環境において化学的又は生化学的方法によって本発明の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、好適な酵素又は化学試薬と経皮パッチリザーバ内に配置されたときに、本発明の化合物にゆっくりと変換され得る。
【0067】
プロドラッグは、修飾が日常的な操作又はインビボのいずれかで親化合物に切断されるように、化合物に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグとしては、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基が、哺乳動物対象に投与されると、それぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基を形成するように切断する任意の基に結合される化合物が挙げられる。プロドラッグの例としては、本発明の化合物中のアルコール及びアミン官能基の酢酸塩、ギ酸塩及び安息香酸塩誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグの調製、選択、及び使用については、T.Higuchi and V.Stella,「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series;「Design of Prodrugs」,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985、及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987において説明されており、これらの各々は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
本発明の化合物は、その薬学的に許容される代謝産物の形態で存在し得る。「代謝産物」という用語は、本発明の化合物(又はその塩)の代謝誘導体の薬学的に許容される形態を指す。いくつかの態様において、代謝産物は、インビボで活性化合物に容易に変換可能である化合物の機能的誘導体であり得る。他の態様において、代謝産物は、活性化合物であり得る。
【0069】
「酸アイソスター」という用語は、特に明記しない限り、カルボン酸と同様の活性レベル(又は溶解度などの他の化合物特性)を提供する酸性官能基並びに立体的及び電子的特性を有する、カルボン酸を置換することができる基を指す。代表的な酸アイソスターとしては、ヒドロキサム酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルホンアミド、アシル-スルホンアミド、ホスホン酸、ホスフィン酸、リン酸、テトラゾール、及びオキソ-オキサジアゾールが挙げられる。
【0070】
本発明のある特定の化合物は、非溶媒和形態、並びに水和形態を含む溶媒和形態で存在し得る。一般に、溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方は、本発明の範囲内に包含されることが意図される。本発明のある特定の化合物は、複数の結晶又は非晶質形態で(すなわち、多形体として)存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本発明によって企図される使用と同等であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0071】
本発明のある特定の化合物は、非対称炭素原子(光学中心)又は二重結合を有し、ラセミ化合物、ジアステレオマー、幾何異性体及び個々の異性体(例えば、別々のエナンチオマー)は全て、本発明の範囲内に包含されることが意図される。本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する原子のうちの1つ以上において、不自然な割合の原子同位体を含有してもよい。例えば、化合物は、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)又は炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射性標識され得る。本発明の化合物の全ての同位体変動は、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0072】
本発明の化合物は、検出可能な標識を含み得る。検出可能な標識は、低濃度、通常はマイクロモル未満、おそらくナノモル未満、場合によってはピコモル未満で検出可能であり、分子特性(例えば、分子量、質量電荷比、放射能、酸化還元電位、発光、蛍光、電磁特性、結合特性など)の違いにより、他の分子と容易に区別できる群である。検出可能な標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、磁気的、電磁気的、光学的又は化学的手段などによって検出され得る。
【0073】
ハプテン標識(例えば、ビオチン、若しくは西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体などの検出可能な抗体と併せて使用される標識);質量タグ標識(例えば、安定な同位体標識);放射性同位体標識(3H、125I、35S、14C、又は32Pを含む);金属キレート標識;典型的に、0.1を超える量子収率を有する、蛍光標識(フルオレセイン、イソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、リン光標識、及び化学発光標識を含む発光標識;電気活性及び電子伝達標識;補酵素、有機金属触媒西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びELISAで一般的に使用される他のものを含む、酵素モジュレーター標識;光増感剤標識;Dynabeadsを含む磁気ビーズ標識;コロイド金、銀、セレン、若しくは他の金属及び金属ゾル標識などの比色標識(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,120,643号を参照)、又は着色ガラス若しくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズ標識;並びにカーボンブラック標識を含む、多種多様の検出可能な標識が本発明の範囲内である。そのような検出可能な標識の使用を教示している特許としては、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号、同第4,366,241号、同第6,312,914号、同第5,990,479号、同第6,207,392号、同第6,423,551号、同第6,251,303号、同第6,306,610号、同第6,322,901号、同第6,319,426号、同第6,326,144号、及び同第6,444,143号が挙げられ、これらは、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
検出可能な標識は、市販されているか、又は当業者に知られているように調製することができる。検出可能な標識は、任意の適切な位置に位置することができる反応性官能基を使用して、化合物に共有結合させることができる。検出可能な標識を結合させるための方法は、当業者に知られている。反応性基がアルキルに結合しているか、又はアリール核につながれた置換アルキル鎖である場合、反応性基は、アルキル鎖の末端位置に位置していてもよい。
III.実施形態の詳細な説明
A.併用療法による炎症性腸疾患の治療
【0075】
本開示は、CCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R抗体を含む併用療法に基づく方法、組成物、及びキットを提供する。この療法は、対象におけるクローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)などのIBDを治療するのに有用である。本発明は、CCR9阻害剤と抗IL-23又は抗IL-23R抗体との相乗的組み合わせが、IBDの治療において有効であるという、予期せぬ発見に部分的に基づく。
【0076】
1.クローン病
本発明の組成物、方法及びキットは、全てのタイプのCDを含む、CDを有する対象に使用することができる。CCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R抗体の併用療法は、CDを有する対象において臨床反応を誘導するか、又は臨床的寛解を維持するのに有効な量で投与することができる。いくつかの実施形態において、併用療法は、CDの1つ以上の症状の重症度を軽減、低減、又は最小化する。
【0077】
CDの症状としては、下痢、発熱、倦怠感、腹痛又はけいれん、血便、口内痛、食欲減退、体重減少、及び肛門周囲疾患が挙げられる。CDの追加の症状又は特徴は、内視鏡検査、例えば、食道胃十二指腸内視鏡検査、結腸内視鏡検査、S状結腸鏡検査、内視鏡的逆行性胆膵管造影、超音波内視鏡検査、及びバルーン内視鏡検査、並びにGI管からの生検の組織学によって評価することができる。疾患の重症度は、軽度から中等度、中等度から重度、及び重度/劇症の疾患に分類することができる。CDに関する追加の説明は、例えば、Lichtenstein et al.,Am J Gastroenterol,2009,104(2):2465-83に見られる。
【0078】
CDの重症度及び併用療法に対する臨床反応は、クローン病活性指数又はCDAIなどの臨床指数を使用して決定することができる(Best et al.,Gastroenterology,1976,70:439-44)。この指数を使用して、CDを有する患者の症状を定量化する。CDAIを使用して、CDの臨床反応又は寛解を定義することができる。CDAIは、8つの要素で構成されており、重み係数又は乗数で調整した後に各々が加算(合計)される。8つの要素としては、液状便の回数、腹痛、一般的な健康状態、腸外合併症、下痢止め薬、腹部腫瘤、ヘマクリット、及び体重が挙げられる。クローン病の寛解は、一般に、150ポイント未満のCDAIの低下又は減少として定義される。重度の疾患は、典型的に、450ポイントを超える値として定義される。ある特定の態様において、クローン病患者における特定の薬物療法への反応は、ベースライン(治療の0週目)から70ポイントを超えるCDAIの低下として定義される。
【0079】
CDAIなどの臨床指標を使用して、本明細書に記載の併用療法がクローン病を有する患者の臨床反応又は臨床的寛解を誘導するかどうかを決定することができる。いくつかの実施形態において、患者のCDAIスコアが、併用療法を受けたときにベースラインから70ポイント以上減少する場合、患者は臨床反応を示している。療法の誘導期の終わりに患者のCDAIスコアが150ポイント未満に減少した場合、患者はCDの臨床的寛解状態にある。
【0080】
2.潰瘍性大腸炎
本発明の組成物、方法及びキットは、全てのタイプのUCを含む、UCを有する対象に使用することができる。CCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R抗体の併用療法は、UCを有する対象において臨床反応を誘導するか、又は臨床的寛解を維持するのに有効な量で投与することができる。いくつかの実施形態において、併用療法は、UCの1つ以上の症状の重症度を軽減、低減、又は最小化する。
【0081】
UCの症状としては、下痢、腹痛及びけいれん、直腸痛、直腸出血、排便の緊急性、排便不能、体重減少、疲労、発熱、又は貧血が挙げられるが、これらに限定されない。疾患の重症度は、軽度から中等度、中等度から重度、及び重度/劇症の疾患に分類することができる。例えば、Kornbluth et al.,Am J Gastroenterol,2004,99(7):1371-85を参照されたい。
【0082】
UCの疾患活性及び治療への反応は、複合指数スコアリングシステムを使用した定量分析によって評価することができる。一般に、臨床医は、UCの疾患活性を評価するときに、臨床症状、生活の質、内視鏡検査の評価、及び組織学評価の少なくとも4つの要素又は変数を考慮する。例えば、大腸炎活性指数(CAI)は、以下の疾患症状:結腸内視鏡検査に基づく結腸の炎症、下痢、腹痛及びけいれん、並びに血便を組み込んだ定量的測定値である。UC内視鏡的重症度の指数(UCEIS)などの標準化された内視鏡的スコアシステムは、患者の疾患指数スコアを確立するために有用である。他の有用な疾患活性指数としては、Mayo Clinicスコア(例えば、Rutgeert et al.,N Eng J Med,2005,353(23):2462-76を参照)及び修正されたMayo疾患活性指数(MMDAI、例えば、Schroeder et al.,N Eng J Med,1987,317(26):1625-9を参照)が挙げられる。Mayo Clinicスコアリングシステムで使用される4つの要素としては、便(腸)の頻度、直腸出血、内視鏡所見、及び医師による疾患重症度の全体的な評価(例えば、毎日の腹部不快感及び一般的な幸福感)が挙げられる。
【0083】
Mayo Clinicスコアと比較して、MMDAIは、内視鏡スコア1からの「もろさ」の除去が含まれる。したがって、もろさの存在は、内視鏡スコア2又は3を反映する。MMDAIは、4つのサブスコア(排便頻度、直腸出血、内視鏡的外観、及び医師の全体的な評価)を評価し、各々が0~3のスケールで、最大合計スコアは12である。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される併用療法に対するUCを有する対象による臨床反応は、MMDAIスコアのベースラインから2ポイント以上の減少及びベースラインからの25%以上の減少、並びに/又は直腸出血サブスコアのベースラインから1ポイント以上の減少に対応する。他の実施形態において、臨床反応は、Mayo Clinicスコアの3ポイント以上及びベースラインから30%の減少に対応する。
【0085】
併用療法を受けたUC対象による臨床的寛解は、直腸出血についてスコア0、並びに排便頻度及びMMDAIサブスケールを使用した医師の評価について合計スコア2ポイント以下に対応する可能性がある。他の実施形態において、UCを有する対象における臨床的寛解は、2ポイント以下のMayo Clinicスコアを有し、1ポイントを超える個々のサブスコア(排便頻度、直腸出血、内視鏡的外観、及び医師の全体的評価)がないことを指す。
B.CCR9阻害剤及び抗IL-23抗体の併用療法
【0086】
IBDを有する対象における炎症の低減においてCCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R抗体の相乗効果を利用する方法、組成物、及びキットが、本明細書に提供される。CCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R抗体の両方を含む併用治療は、化合物/抗体単独のいずれかと比較して、IBDの1つ以上の症状の治療においてより有効である。
【0087】
1.ケモカイン受容体タイプ(CCR9)阻害剤
本発明は、CCR9活性を変調する化合物を提供する。具体的には、本発明は、抗炎症又は免疫調節活性を有する化合物を提供する。本発明の化合物は、ケモカイン受容体機能を特異的に変調又は阻害することにより、不適切なT細胞輸送を干渉すると考えられている。ケモカイン受容体は、ケモカインなどの細胞外リガンドと相互作用し、かつリガンドに対する細胞応答、例えば、走化性、細胞内カルシウムイオン濃度の増加等を媒介する、内在性膜タンパク質である。したがって、ケモカイン受容体機能の変調、例えば、ケモカイン受容体-リガンド相互作用への干渉は、ケモカイン受容体媒介性の応答を阻害又は低減するだけでなく、ケモカイン受容体媒介性の状態又は疾患を治療又は予防することができる。
【0088】
いかなる特定の理論にも拘束されることなく、本明細書に提供される化合物は、CCR9とそのリガンドCCL25との間の相互作用を干渉すると考えられている。例えば、本発明の化合物は、強力なCCR9アンタゴニストとして作用し、このアンタゴニスト活性は、CCR9の特徴的な病状のうちの1つである炎症についての動物試験で更に確認されている。本発明によって企図される化合物としては、本明細書に提供される例示的な化合物及びその塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
例えば、有用な化合物は、強力なCCR9アンタゴニストとして作用し、このアンタゴニスト活性は、CCR9の特徴的な病状のうちの1つである炎症についての動物試験で更に確認されている。したがって、本明細書に提供される化合物は、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療のための医薬組成物及び方法において有用である。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるCCR9小分子阻害剤は、式(I)又はその塩によって表され得、
【化6】
式中、X、X、X、X、Xは、各々独立して、水素、ハロゲン、-CN、-NO、-OR1a、-C(O)R1a、-CO1a、-O(CO)R1a、-OC(O)NR1a2a、-SR1a、-SOR1a
-SO1a、-NR1a2a、-NR1aC(O)R2a、-NR1aC(O)2a、-NR1a(CO)NR1a2a、非置換又は置換C1-8アルキル、非置換又は置換C2-8アルケニル、非置換又は置換C2-8アルキニル、非置換又は置換C6-10アリール、非置換又は置換の5又は6員ヘテロアリール、及び非置換又は置換の4~7員ヘテロシクリルからなる群から選択され、ただし、X、X、X、X、及びXのうちの1つが水素以外であることを条件とする。
【0091】
1a及びR2aは、各々独立して、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アリール-C1-4アルキル、アリールオキシ-C1-4アルキル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員複素環からなる群から選択されるか、又はR1a及びR2aは、それらが結合している原子と一緒になって、置換若しくは非置換の5、6、若しくは7員環を形成し得る;
【0092】
、X、X、X、又はXが、置換C1-8アルキル、置換C2-8アルケニル、及び置換C2-8アルキニルである場合、それは、ハロゲン、-CN、=O、-OC(O)R1a、-OR1a、-C(O)R1a、-CONR1a2a
-NR2aC(O)R1a、-CO1a、-NR1a2a、-SR1a、-S(O)R1a、-S(O)1a、-NR1aSO2a、非置換又は置換アリール、非置換又は置換ヘテロシクリル、及び非置換又は置換ヘテロアリールからなる群から独立して選択される1~3つの置換基を有し得る。好ましい置換C1-8アルキルは、ハロゲン、-CN、=O、-OR1a、-C(O)R1a、-CONR1a2a
-NR2aC(O)R1a、-CO1a、-NR1a2a、-SO1a、非置換又は置換の5又は6員ヘテロアリール、及び5又は6員の非置換又は置換ヘテロシクリルからなる群から独立して選択される1~3つの置換基を有する。
【0093】
X1、X2、X3、X4、又はX5が、置換C6-10アルキル、置換5又は6員ヘテロアリール、及び置換4~7員複素環である場合、それは、ハロゲン、-CN、-OR1a、=O、-OC(O)R1a、
-CO2R1a、-C(O)R1a、-CONR1aR2a、-NR2aC(O)R1a、-NR1aR2a、-SR1a、-S(O)R1a、-S(O)2R1a、-NR1aSO2R2a、非置換C1-8アルキル、及び非置換C1-8ハロアルキルからなる群から独立して選択される1~3つの置換基を有し得る。
【0094】
X1、X2、X3、X4、又はX5が、置換された置換5若しくは6員ヘテロアリール、又は置換5若しくは6員ヘテロアリールである場合、それは、好ましくは、ハロゲン、-OR1a、-C(O)R1a、-CONR1aR2a、-NR2aC(O)R1a、-NR1aR2a、-SO2R1a、非置換又は置換C1-8アルキル、及び非置換又は置換C1-8ハロアルキルからなる群から独立して選択される1~3つの置換基を有する。
【0095】
式(I)の一実施形態において、X1、X2、X3、X4、及びX5のうちの少なくとも1つは、水素以外である。
【0096】
式(I)の一実施形態において、X1は、水素以外であり、X2、X3、X4、及びX5のうちの少なくとも2つは、水素である。好ましくは、X2、X3、X4、及びX5のうちの少なくとも3つは、水素であり、より好ましくは、X2、X3、X4、及びX5は、水素である。
【0097】
式(I)の一実施形態において、Y1、Y2、Y3、及びY4は、各々独立して、水素、ハロゲン、-CN、-NO2、-OR3a、-C(O)R3a、-SR3a、-CF3、-SOR3a、-SO2R3a、及び置換又は非置換C1-4アルキルからなる群から選択される。
【0098】
式(I)の一実施形態において、R3aは、独立して、水素、非置換C1-8アルキル、非置換C2-8アルケニル、非置換C2-8アルキニル、非置換C6-10アリール、及び非置換5~10員ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0099】
式(I)の一実施形態において、L1 -C(O)-、-S-、-S(O)-、又は-S(O)2-。一実施形態において、L1は、好ましくは、-C(O)-である。式(I)の別の実施形態において、L1は、好ましくは、
-S-、-S(O)-、又は-S(O)2-である。
【0100】
式(I)の別の実施形態において、Z1が、置換フェニル又は置換若しくは非置換の5員ヘテロアリールである場合、L1は、好ましくは、-S-、-S(O)-、又は-S(O)2-である。
【0101】
式(I)の一実施形態において、Z1は、置換フェニル、非置換若しくは置換の5若しくは6員ヘテロアリール、又は置換4~7員ヘテロシクリルを表す。好適に置換された5又は6員ヘテロアリールは、ハロゲン、非置換又は置換C1-8アルキル、非置換又は置換C2-8アルケニル、非置換又は置換C2-8アルキニル、=O、-CN、-NO2、-OR4a、-OC(O)R4a、-CO2R4a、-C(O)R4a、-CONR4aR5a、-NR4aC(O)R5a、-NR4aR5a、-SR4a、-SOR4a、-SO2R4a、-SO2NR4aR5a、-NR4aSO2R5a、非置換又は置換フェニル、非置換又は置換の5又は6員ヘテロアリール、及び非置換又は置換の4~7員ヘテロシクリルからなる群から独立して選択される1~3つの置換基を有し得る。存在する場合、1つの置換基は、好ましくは、環内のヘテロ原子のうちの1つに対してオルトに位置するか、又は環ヘテロ原子に直接結合した酸素原子(すなわち、N-オキシド)である。
【0102】
R4a及びR5aは、各々独立して、水素、非置換C1-8アルキル、非置換C2-8アルケニル、非置換C2-8アルキニル、非置換C6-10アリール、非置換5~10員ヘテロアリール、及び非置換3~10員複素環からなる群から選択される。
【0103】
式(I)の一実施形態において、Z1は、置換フェニルを表す。式(I)のいずれかの一実施形態において、基Z1上の少なくとも1つの置換基は、非置換C1-6アルキル(特にメチル)又はC1-6ハロアルキル(特に-CF3)である。
【0104】
式(I)のいずれかの一実施形態において、Z1は、以下の残基である。
【化7】
【0105】
式(I)のいずれかの一実施形態において、Zは、以下の残基のうちの1つから選択される。
【化8】
【0106】
式(I)のいずれかの別の実施形態において、Zは、以下の残基のうちの1つから選択される。
【化9】
【0107】
いくつかの実施形態において、本開示のCCR9阻害剤、例えば、CCR9小分子阻害剤は、式(II)又はその塩によって表され、
【化10】
式中、Rが、置換又は非置換C2-8アルキル、置換又は非置換C1-8アルコキシ、置換又は非置換C1-8アルキルアミノ、及び置換又は非置換C3-10ヘテロシクリルからなる群から選択され、
が、H、F、Cl、又は置換若しく非置換C1-8アルコキシであるか、あるいは
及びRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非芳香族炭素環又は複素環を形成し、
が、H、置換若しく非置換C1-8アルキル、置換若しく非置換C1-8アルコキシ、又はハロであり、
が、H又はFであり、
が、H、F、Cl、又は-CHであり、
が、H、ハロ、-CN、-CO、-CONH、-NH、置換若しくは非置換C1-8アルキル、置換若しくは非置換C1-8アルコキシ、又は置換若しくは非置換C1-8アミノアルキルであり、
が、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルであり、
及びRが、一緒になって、炭素環を形成し得、
Lが、結合、-CH-、又は-CH(CH)-であり、
、A、A、A、A、A、A、及びAの各々が、独立して、N、N-O、及び-CR-からなる群から選択され、A、A、A、A、A、A、A、及びAのうちの少なくとも1つかつ2つ以下が、N又はN-Oであり、
が、各々独立して、H、ハロ、-CN、-OH、オキソ、置換又は無置換C1-8アルキル、置換又は無置換C1-8アルコキシ、-NR2021、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルからなる群から選択され、
20及びR21が、各々独立して、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルである。
【0108】
式(II)のいくつかの実施形態において、A1又はA2のうちの1つは、N又はN-Oであり、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、及びA8のうちの残りは、-CR8-であり、各R8は、独立して選択される。
【0109】
いくつかの実施形態において、A2、A3、A4、A5のうちの2つは、N又はN-Oであり、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、及びA8のうちの残りは、-CR8-であり、各R8は、独立して選択される。
【0110】
いくつかの実施形態において、式(II)の化合物又は組成物は、式(III)又はその塩によって表され、
【化11】
式中、Rが、置換又は非置換C2-8アルキル、置換又は非置換C1-8アルコキシ、置換又は非置換C1-8アルキルアミノ、及び置換又は非置換C3-10ヘテロシクリルからなる群から選択され、
が、H、F、Cl、又は置換若しく非置換C1-8アルコキシであるか、あるいは
及びRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非芳香族炭素環又は複素環を形成し、
が、H、置換若しく非置換C1-8アルキル、置換若しく非置換C1-8アルコキシ、又はハロであり、
が、H又はFであり、
が、H、F、Cl、又は-CHであり、
が、H、ハロ、-CN、-CO、-CONH、-NH、置換若しくは非置換C1-8アミノアルキル、置換若しくは非置換C1-8アルキル、又は置換若しくは非置換C1-8アルコシキであり、
が、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルであり、
及びRが、一緒になって、炭素環を形成し得、
Lが、結合、-CH-、又は-CH(CH)-であり、
Zが、
【化12】
及びそれらのN-オキシドからなる群から選択され、Z基が、非置換であり得るか、又は1~3つの独立して選択されたR8置換基で置換され得、
各R8が、独立して、H、ハロ、-CN、-OH、オキソ、置換又は無置換C1-8アルキル、置換又は無置換C1-8アルコキシ、
-NR20R21、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルからなる群から選択され、
R20及びR21が、各々独立して、H、置換又は非置換C1-8アルキルである。
【0111】
式(III)のいくつかの実施形態において、Zは、置換又は非置換キノリニル、置換又は非置換イソキノリニル、置換又は非置換1,6-ナフチリジニル、置換又は非置換シンノリニル、置換又は非置換フタラジニル、置換又は非置換キナゾリニルからなる群から選択される。
【0112】
一実施形態において、本明細書に提供される式(II)の化合物又は組成物は、式(IIIa)若しくは(IIIb)又はその塩によって表され、
【化13】
式中、R1が、置換又は非置換C2-8アルキル、置換又は非置換C1-8アルコキシ、置換又は非置換C1-8アルキルアミノ、及び置換又は非置換C3-10ヘテロシクリルからなる群から選択され、
R2が、H、F、Cl、又は置換若しく非置換C1-8アルコキシであるか、あるいは
R1及びR2が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、非芳香族炭素環又は複素環を形成し、
R3が、H、置換若しく非置換C1-8アルキル、置換若しく非置換C1-8アルコキシ、又はハロであり、
R4が、H又はFであり、
R5が、H、F、Cl、又は-CH3であり、
R6が、H、ハロ、-CN、-CO2Ra、-CONH2、-NH2、置換若しくは非置換C1-8アルキル、置換若しくは非置換C1-8アルコキシ、又は置換若しくは非置換C1-8アミノアルキルであり、
Raが、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルであるか、
あるいはR及びRが、それらが結合している炭素原子と一緒になって、炭素環を形成し、
各Rが、独立して、H、ハロ、-CN、-OH、オキソ、置換又は無置換C1-8アルキル、置換又は無置換C1-8アルコキシ、
-NR2021、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルからなる群から選択され、
20及びR21が、各々独立して、H、又は置換若しくは非置換C1-8アルキルであり、
nが、0、1、2、又は3である。
【0113】
式(IIIa)若しくは(IIIb)又はその塩の一実施形態において、R1は、-CH2CH3、-CH(CH3)2、-C(CH3)3、-C(CH3)2CH2CH3、
-C(CH2CH2)CN、-C(OH)(CH3)2、-OCH3、-OCH2CH3、-OCH(CH3)2、-OC(CH3)3、
-OCH2CH(CH3)2、-OCF3、及びモルホリノからなる群から選択され、R2は、H、F、若しくはClであるか、又はR1及びR2は、一緒になって、-OC(CH3)2CH2-若しくは-C(CH3)2CH2CH2-を形成し得、R3は、H、-CH3、又は-OCH3であり、R4は、H又はFであり、R5は、Hであり、R6は、H、-CH3、-CH2CH3、-CH(CH3)2、-C3H7、-CH2F、-CHF2、-CF2CH3、-CF3、
-CH2OCH3、-CH2OH、-CH2CN、-CN、又は-CONH2であり、各R8は、独立して、H、F、Cl、Br、-CH3、-OH、-OCH3、-OCH2CH3、-NH2、-N(CH3)2、及び-CNからなる群から選択される。場合によっては、R1は、-C(CH3)3である。
【0114】
式(IIIa)又は式(IIIb)の他の実施形態において、R2は、H又はFであり、R3は、Hであり、R4は、Hであり、R6は-CH3、-CH2F、-CHF2、又は-CF3である。
【0115】
一実施形態において、式(IIIa)若しくは(IIIb)の化合物及び組成物、又はそれらの塩は、
【化14-1】
【化14-2】
からなる群から選択される。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるCCR9阻害剤、例えば、CCR9小分子阻害剤化合物及び組成物は、
【化15-1】
【化15-2】
【化15-3】
【化15-4】
【化15-5】
【化15-6】
【化15-7】
【化15-8】
【化15-9】
及びそれらのN-オキシドからなる群から選択される。
【0117】
いくつかの実施形態において、好ましいR置換基は、以下のとおりである。式(II、III、IIIa、及びIIIb)において、Rは、置換又は非置換C2-8アルキル、置換又は非置換C1-8アルコキシ、置換又は非置換C1-8アルキルアミノ、及び置換又は非置換C3-10ヘテロシクリルからなる群から選択される。Rが置換アルキルである場合、アルキル基は、好ましくは、ハロ又はヒドロキシで置換されている。Rが置換アルコキシである場合、アルコキシ基は、好ましくは、ハロで置換されている。好ましくは、Rは、C3-8シクロアルキル、C2-8ハロアルキル、C1-8ヒドロキシアルキル、非置換C1-8アルコキシ、C1-8ハロアルコキシ、及びC1-8アルキルアミノを含む、非置換C2-8アルキルであり、より好ましくは、非置換C2-8アルキル、C2-8ハロアルキル、非置換C1-8アルコキシ、及びC1-8アルキルアミノであり、更により好ましくは、非置換C2-8アルキル、非置換C1-8アルコキシ、及びモルホリノであり、なおより好ましくは、非置換C2-8であり、最も好ましくは、t-ブチルである。
【0118】
いくつかの実施形態において、好ましいR6置換基は、以下のとおりである。式(II、III、IIIa、及びIIIb)において、R6は、H、ハロ、-CN、-CO2Ra、-CONH2、-NH2、置換若しくは非置換C1-8アルキル、置換若しくは非置換C1-8アルコキシ、又は置換若しくは非置換C1-8アミノアルキルである。R6が置換アルキルである場合、アルキル基は、好ましくは、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、又はシアノで置換されている。好ましくは、R6は、-CN、-CONH2、-NH2、非置換C1-8アルキル、非置換C1-8ハロアルキル、及び非置換C1-8アルコキシであり、より好ましくは、非置換C1-8アルキル又は非置換C1-8ハロアルキルであり、更により好ましくは、非置換C1-8アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0119】
一実施形態において、CCR9小分子阻害剤は、化合物1である。
【化16】
【0120】
一実施形態において、CCR9小分子阻害剤は、化合物2である。
【化17】
【0121】
一実施形態において、CCR9小分子阻害剤は、化合物3である。
【化18】
【0122】
一実施形態において、CCR9小分子阻害剤は、化合物4である。
【化19】
【0123】
本明細書に提供されるCCR9阻害剤化合物及びそのような化合物を調製するための方法の詳細な説明は、例えば、米国特許第6,939,885号、米国特許第8,916,601号、並びに米国特許出願公開第2013/0267492号、同第2013/0059893号、同第2012/0245138号、同第2012/0165303号、同第2011/0021523号、同第2010/0331302号、同第2010/0227902号、同第2010/0190762号、同第2010/0152186号、同第2010/0056509号、同第2009/0163498号、及び同第2009/0005410号に見られ、これらの開示は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
本明細書に提供される化合物は、様々な標準的な有機化学変換を使用して合成することができる。本発明において標的化合物を合成するために広く用いられるある特定の一般的な反応タイプは、実施例に要約されている。具体的には、スルホンアミド形成及びアザ-アリールN-オキシド形成の一般的な手順が記載されており、日常的に用いられていた。
【0125】
網羅的であることを意図するものではないが、本発明の化合物を調製するために使用することができる代表的な合成有機変換が本明細書に含まれる。これらの代表的な変換としては、標準的な官能基の操作;例えばニトロからアミノへの還元;アルコール及びアザ-アリールを含む官能基の酸化;ニトリル、メチル及びハロゲンを含む様々な基を導入するためのIPSO又は他の機序によるアリール置換;保護基の導入及び除去;グリニャール形成及び求電子試薬との反応;Buckwald、Suzuki及びSonigashira反応を含むがこれらに限定されない金属媒介性クロスカップリング;ハロゲン化及び他の求電子芳香族置換反応;これらの種のジアゾニウム塩の形成及び反応;エーテル化;ヘテロアリール基につながる循環凝縮、脱水、酸化及び還元;アリール金属化及び金属交換、並びに続いて起こるアリール金属種と酸塩化物又はワインレブアミドなどの求電子試薬との反応;アミド化;エステル化;求核置換反応;アルキル化;アシル化;スルホンアミド形成;クロロスルホニル化;エステル及び関連する加水分解などが挙げられる。
【0126】
この特許で主張されているある特定の分子は、異なるエナンチオマー及びジアステレオマーの形態で存在することができ、これらの化合物のそのような全てのバリアントは、本発明の範囲内である。
【0127】
以下の合成の説明では、いくつかの前駆体が商業的供給源から得られた。これらの商業的供給源としては、Aldrich Chemical Co.、Acros Organics、Ryan Scientific Incorporated、Oakwood Products Incorporated、Lancaster Chemicals、Sigma Chemical Co.、Lancaster Chemical Co.、TCI-America、Alfa Aesar、Davos Chemicals、及びGFS Chemicalsが挙げられる。
【0128】
2.CCR9阻害剤の医薬製剤
別の態様において、本開示は、CCR9活性を変調する組成物又は製剤を提供する。一般に、ヒト又は動物などの対象におけるケモカイン受容体活性を変調するための組成物又は製剤は、本明細書に提供される化合物及び薬学的に許容される賦形剤又は希釈剤を含むであろう。
【0129】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、指定された量で指定された成分を含む生成物、並びに指定された量の指定された成分の組み合わせから直接的又は間接的に生じるあらゆる生成物を包含することが意図される。「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤、又は賦形剤が、製剤の他の成分と適合性がなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0130】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は、簡便に単位剤形で提示されてもよく、薬剤の技術分野において周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。全ての方法は、活性成分を、1つ以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、医薬組成物は、活性成分を液体担体若しくは微粉化固体担体又はその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。医薬組成物において、活性物体化合物は、疾患のプロセス又は状態に対して所望の効果をもたらすのに十分な量で含まれる。
【0131】
いくつかの実施形態において、本開示のCCR9阻害剤は、結晶形態を有する医薬化合物である。CCR9阻害剤のそのような結晶形態の非限定的な例は、例えば、米国特許第9,133,124号に記載されており、その開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
活性成分を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、舐剤、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、米国特許第6,451,399号に記載されるエマルション及び自己乳化、硬質若しくは軟質カプセル、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤として、経口使用に好適な形態であってもよい。経口使用を目的とする組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野において既知の任意の方法に従って調製され得る。そのような組成物は、薬学的に上品かつ口当たりの良い調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、及び防腐剤から選択される1つ以上の薬剤を含有してもよい。錠剤は、錠剤の製造に好適である他の非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合した活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、セルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、又はアルギン酸;結合剤、例えばPVP、セルロース、PEG、デンプン、ゼラチン、又はアカシア、並びに潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクであってもよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、又は錠剤は、経腸的に、若しくはそうでなければ、胃腸管内での崩壊及び吸収を遅延させ、それにより、より長い期間にわたって持続作用を提供するための既知の技法によって、コーティングされてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料が用いられ得る。それらはまた、米国特許第4,256,108号、同第4,166,452号、及び同第4,265,874号に記載されている技法によってコーティングされ、制御放出のための浸透圧治療錠剤を形成することができる。
【0133】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、若しくはカオリンと混合される硬質ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水若しくは油媒体、例えばピーナッツオイル、流動パラフィン、若しくはオリーブ油と混合される軟質ゼラチンカプセルとして提示されてもよい。加えて、エマルションは、油などの非水混和性成分と調製され、モノ-ジグリセリド、PEGエステルなどの界面活性剤で安定化され得る。
【0134】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合した活性物質を含有する。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントガム、及びアラビアゴムであり、分散剤又は湿潤剤は、天然に存在するリン脂質、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレート、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール等のエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステル及びヘキシトールとの縮合生成物、又はエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステル及びヘキシトール無水物との縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであってもよい。水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤、例えばエチル、又はn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、及びスクロース若しくはサッカリンなどの1つ以上の甘味剤を含有してもよい。
【0135】
油性懸濁液は、活性成分を植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはココヤシ油中、又は流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁することによって製剤化され得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン、又はセチルアルコールを含有してもよい。上記のもの等の甘味剤、及び香味剤が、口当たりの良い経口調製物を提供するために添加され得る。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存され得る。
【0136】
水の添加による水性懸濁液の調製に好適な分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1つ以上の防腐剤との混合物で活性成分を提供する。好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤は、既に上述したものによって例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤、及び着色剤も存在してもよい。
【0137】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルションの形態であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油若しくは落花生油、又は鉱油、例えば流動パラフィン、又はこれらの混合物であってもよい。好適な乳化剤は、天然に存在するガム、例えばアラビアゴム又はトラガカントガム、天然に存在するリン脂質、例えば大豆、レシチン、並びに脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステル又は部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、並びに当該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。エマルションはまた、甘味剤及び香味剤を含有してもよい。
【0138】
シロップ剤及びエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、又はスクロースとともに製剤化されてもよい。そのような製剤はまた、粘滑剤、防腐剤、並びに香味剤及び着色剤を含有してもよい。経口溶液は、例えば、シクロデキストリン、PEG、及び界面活性剤と組み合わせて調製され得る。
【0139】
医薬組成物は、滅菌注射用水性又は油脂性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、上述された好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。用いられ得る許容できるビヒクル及び溶媒の中には、水、リンガー溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油(sterile,axed oil)は、従来、溶媒又は懸濁媒体として用いられている。この目的のために、合成モノ-又はジグリセリドを含む任意の無菌性固定油が使用されてもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製において使用される。
【0140】
本明細書で開示される化合物はまた、薬物の直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、通常の温度で固体であるが、直腸温度で液体であり、したがって直腸内で溶解して薬物を放出する、好適な非刺激性賦形剤と薬物を混合することによって調製され得る。そのような材料は、カカオバター及びポリエチレングリコールである。加えて、化合物は、溶液又は軟膏によって眼の送達を介して投与され得る。更に、対象化合物の経皮送達は、イオントフォレシスパッチなどによって達成され得る。
【0141】
局所使用のために、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液が用いられる。本明細書で使用される場合、局所適用はまた、うがい薬及び口内洗浄液の使用を含むことが意図される。
【0142】
本発明の医薬組成物及び方法は、上述の病的状態の治療に適用されるものなど、本明細書に記載される他の治療効果のある化合物を更に含んでもよい。
【0143】
3.抗IL-23遮断抗体
炎症性腸疾患、例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎の治療に使用するのに好適な抗IL-23抗体には、IL-23とそのリガンドのうちのいずれか1つとの結合を阻害する、任意の所望の供給源からの抗体が含まれる。抗IL-23R抗体は、IL-23受容体又はその断片に結合する。抗IL-23又は抗IL-23R抗体は、ヒト抗体、マウス抗体、ウサギ抗体、キメラ抗体などの操作された抗体、ヒト化抗体、並びにFab、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)2断片などの抗体の抗原結合断片であり得る。
【0144】
本明細書に記載の方法又は組成物で使用するための抗IL-23抗体の非限定的な例としては、リサンキズマブ、グセルクマブ(TREMFYA(登録商標))、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブ、チルドラキズマブ、又はそれらのバイオシミラー、バイオベター、若しくは生物学的同等物が挙げられる。。追加の有用な抗IL-23抗体としては、本明細書に記載の抗IL-23抗体のうちのいずれかの生物学的同等物、バイオシミラー、及びバイオベターが挙げられる。いくつかの実施形態において、抗IL-23遮断抗体は、リサンキズマブである。いくつかの実施形態において、抗IL-23遮断抗体は、グセルクマブである。いくつかの実施形態において、抗IL-23遮断抗体は、ウステキヌマブである。いくつかの実施形態において、抗IL-23遮断抗体は、ブリアキヌマブである。いくつかの実施形態において、抗IL-23R遮断抗体は、ブラジクマブである。いくつかの実施形態において、抗IL-23遮断抗体は、ミリキズマブである。いくつかの実施形態において、抗IL-23遮断抗体は、チルドラキズマブである。
【0145】
いくつかの実施形態において、本開示の抗IL-23抗体は、リサンキズマブなどの抗IL-23参照抗体又は当業者に既知である他の抗IL-23抗体に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する抗体である。いくつかの実施形態において、本開示の抗IL-23R抗体は、ブラジクマブなどの抗IL-23R参照抗体又は当業者に既知である他の抗IL-23R抗体に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する抗体である。場合によっては、抗体バリアントは、参照抗体のある特定のアミノ酸位置に1つ以上のアミノ酸置換、欠失、及び/又は付加を有するが、抗原結合活性を保持している。
【0146】
当業者は、「配列同一性のパーセント」が、比較ウィンドウ又は配列の指定領域にわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定できることを認識し、比較ウィンドウ内のポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両方の配列で同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して一致する位置の数を算出し、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、その結果に100を掛けることによって計算して、配列同一性のパーセンテージを算出することができる。配列同一性のパーセントは、BLAST又はBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、デフォルトパラメータを用いて、又は手動のアラインメント及び目視検査によって測定することができる。
【0147】
抗体、その断片、そのバリアント、及びその誘導体は、当業者によって認識されている様々な標準的な方法を使用して生成され得る。例えば、Harlow,E.and Lane DP.Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988を参照されたい。Fab及びF(ab’)2断片などの抗原結合断片は、遺伝子操作によって産生され得る。キメラ及び更に操作されたモノクローナル抗体の産生の手順としては、Riechmann et al.,Nature,1988,332:323、Liu et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,1987,84:3439、Larrick et al.,Bio/Technology,1989,7:934、及びWinter et al.,TIPS,1993,14:139に記載されるものが挙げられる。ヒト又は部分的にヒトの抗体を産生するためのトランスジェニック動物の産生及び使用のための技法の例は、例えば、Davis et al.,2003,Production of human antibodies from transgenic mice in Lo,ed.Antibody Engineering Methods and Protocols,Humana Press,NJ:191-200に記載されている。
【0148】
4.抗IL-23抗体の医薬製剤
抗体を安定化し、抗体凝集体の形成を低減し、抗体の分解を遅らせ、かつ/又は抗体の免疫原性を最小化することができる、抗IL-23又は抗IL-23R抗体の製剤が、本明細書に提供される。製剤は、抗酸化剤又はキレート剤、少なくとも1つの遊離アミノ酸、界面活性剤、非還元糖、及び/又は緩衝剤を含み得る。
【0149】
酸化防止剤又はキレート剤は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプロール、ジエチレントリアミン五酢酸、又はN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン、好ましくはクエン酸塩又はEDTAであり得る。遊離アミノ酸は、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸及びそれらの組み合わせであり得る。界面活性剤は、ポリソルベート20;ポリソルベート80;TRITON(t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、非イオン性洗剤;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-又はステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、又はセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノレアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ココイルメチルタウリンナトリウム、又はオレイルメチルタウリン二ナトリウム;ソルビタンモノパルミタート;ポリエチルグリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、並びにポロキシエチレン及びポロキシプロピレングリコールのコポリマー;好ましくはポリソルベート80であり得る。
【0150】
緩衝剤は、製剤のpHを約5.0~約7.5、約pH5.5~約7.5、約pH6.0~約7.0、又は約6.3~約6.5のpHに調整することができる緩衝剤であり得る。緩衝剤の非限定的な例としては、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、カコジル酸塩、2-[N-モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビス-トリス)、N-[2-アセトアミド]-2-イミノ二酢酸(ADA)、グリシルグリシン及び他の有機酸緩衝剤、好ましくはヒスチジン又はクエン酸塩が挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態において、抗IL-23又は抗IL-23R抗体は、凍結乾燥製剤、例えば、乾燥形態である。場合によっては、凍結乾燥製剤は、抗体、及び1つ以上の賦形剤、例えば、非還元糖、緩衝剤、遊離アミノ酸、及び/又は界面活性剤を含む。
【0152】
場合によっては、凍結乾燥製剤は、少なくとも約50mg、少なくとも約60mg、少なくとも約70mg、少なくとも約80mg、少なくとも約90mg、少なくとも約100mg、少なくとも約120mg、少なくとも約140mg、少なくとも約180mg、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約400mg、少なくとも約500mg、少なくとも約600mg、少なくとも約700mg、少なくとも約800mg、少なくとも約900mgの抗体を含有する。場合によっては、凍結乾燥製剤は、1つのバイアルに単回用量として保存される。
【0153】
いくつかの実施形態において、抗IL-23又は抗IL-23R抗体は、液体製剤である。そのような製剤は、抗体、緩衝剤、非還元糖、及び/又は遊離アミノ酸を含み得る。
【0154】
液体製剤中に存在する抗体の量は、少なくとも約25mg/ml~約200mg/mlの抗IL-23抗体、例えば、25mg/ml~約200mg/ml、25mg/ml~約150mg、25mg/ml~約100mg/ml、50mg/ml~約200mg/ml、50mg/ml~約150mg/ml、50mg/ml~約100mg/ml、100mg/ml~約200mg/ml、又は150mg/ml~約200mg/mlの抗体であり得る。
【0155】
非還元糖は、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、メレジトース、デキストラン、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース、パラチナイト及びそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、非還元糖対抗IL-23抗体の比は、少なくとも400:1(モル:モル)、少なくとも400:1(モル:モル)、少なくとも400:1(モル:モル)、少なくとも600:1(モル:モル)、少なくとも625:1(モル:モル)、少なくとも650:1(モル:モル)、少なくとも700:1(モル:モル)、少なくとも750:1(モル:モル)、少なくとも800:1(モル:モル)、少なくとも1000:1(モル:モル)、少なくとも1100:1(モル:モル)、少なくとも1200:1(モル:モル)、少なくとも1300:1(モル:モル)、少なくとも1400:1(モル:モル)、少なくとも1500:1(モル:モル)、少なくとも1600:1(モル:モル)、少なくとも1700:1(モル:モル)、少なくとも1800:1(モル:モル)、少なくとも1900:1(モル:モル)、又は少なくとも2000:1(モル:モル)である。
C.併用療法の投与方法
【0156】
別の態様において、本開示は、IBD、例えば、CD及びUCの治療のための併用療法を提供する。併用療法は、治療有効量のCCR9阻害剤及び治療有効量の抗IL-23又は抗IL-23R遮断抗体を含む。治療剤の組み合わせは、相乗的に作用して、様々な障害の治療又は予防をもたらすことができる。このアプローチを使用すると、各薬剤の投与量を減らして治療効果を達成できるため、有害な副作用の可能性を低減することができる。
【0157】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の治療提供者によって求められている、細胞、組織、系、又はヒトなどの動物の生物学的又は医学的応答を引き出す、対象化合物の量を意味する。
【0158】
疾患状態及び対象の状態に応じて、本開示の化合物、抗体、及び製剤は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、嚢内注射又は注入、皮下注射、又はインプラント)、吸入、鼻、膣、直腸、舌下、又は局所投与経路によって投与され得る。更に、化合物及び抗体は、単独で又は一緒に、各投与経路に適した従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及びビヒクルを含有する好適な投薬単位製剤で製剤化することができる。本開示はまた、デポー製剤における本開示の化合物及び抗体の投与を企図する。
【0159】
クローン病及びUCなどのIBDの治療において、CCR9阻害剤の適切な投与量レベルは、一般に、1日当たり患者の体重1kg当たり約0.001~100mgであり、これは、単回又は複数回用量で投与され得る。好ましくは、投与量レベルは、1日当たり約0.01~約50mg/kg、より好ましくは1日当たり約0.05~約10mg/kgである。好適な投与量レベルは、1日当たり約0.01~50mg/kg、1日当たり約0.05~10mg/kg、又は1日当たり約0.1~5mg/kgであってもよい。この範囲内で、投与量は、1日当たり0.005~0.05mg/kg、1日当たり0.05~0.5mg/kg、1日当たり0.5~5.0mg/kg、又は1日当たり5.0~50mg/kgであり得る。
【0160】
経口投与の場合、CCR9阻害剤は、好ましくは1.0~1000ミリグラムの活性成分、特に治療される患者への投与量の症状調整のために1.0mg、5.0mg、10.0mg、15.0mg、20.0mg、25.0mg、50.0mg、75.0mg、100.0mg、150.0mg、200.0mg、250.0mg、300.0mg、400.0mg、500.0mg、600.0mg、750.0mg、800.0mg、900.0mg、及び1000.0mgの活性成分を含む錠剤の形で提供される。
【0161】
CCR9阻害剤は、1日当たり1~4回、好ましくは1日当たり1回又は2回のレジメンで投与されてもよい。
【0162】
クローン病及びUCなどのIBDの治療において、抗IL-23又は抗IL-23R抗体の適切な投与量レベルは、ヒト患者においてIBDの寛解を誘導するのに有効な量の抗体又はその製剤を提供する。いくつかの実施形態において、治療有効量の抗IL-23又は抗IL-23R抗体は、誘導期の終わりに、約5μg/ml~約60μg/mlの抗体の平均トラフ血清濃度、例えば、誘導期の終わりに、約5μg/ml~約60μg/ml、約10μg/ml~約50μg/ml、約15μg/ml~約45μg/ml、約20μg/ml~約30μg/ml、約25μg/ml~約35μg/ml、又は約30μg/ml~約60μg/mlの抗IL-23又は抗IL-23R抗体の平均トラフ血清濃度を達成するのに十分である。
【0163】
抗体の好適な投与量は、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、又は約10mg/kgで投与され得る。
【0164】
いくつかの実施形態において、総用量は、約6mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約650mg、又はそれ以上である。いくつかの実施形態において、抗体は、200mgの2回の皮下注射として与えられる約400mgの初期用量での皮下注射によって投与される。いくつかの実施形態において、抗体は、2週目及び4週目に投与され、応答が発生した場合は、400mgの抗体が4週間ごとに投与される。
【0165】
いくつかの実施形態において、誘導期は、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約9週間、又は少なくとも約10週間の治療である。
【0166】
誘導期中の治療レジメ(regime)には、抗IL-23抗体又はその製剤の高用量投与、頻繁な投与、又は高用量投与と頻繁な投与との組み合わせが含まれ得る。場合によっては、誘導期中、用量は1日当たり1回、1日おき、2日おき、3日おき、1週間当たり1回、10日おき、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、又は1ヶ月に1回投与される。
【0167】
いくつかの実施形態において、誘導投薬は、治療の開始時(0日目)に1回、及び治療の開始後約2週間に1回提供される。誘導期の期間は、6週間であり得る。他の実施形態において、誘導期の期間は6週間であり、最初の2週間の間に複数の誘導用量が投与される。例えば、ヒト患者が重度のIBDを有する場合、又は抗IL-23療法に反応していない場合、誘導期は、軽度から中等度のIBDを有する患者よりも持続時間が長くなる。
【0168】
また、IBDの治療において、抗IL-23抗体の適切な投与量レベルは、ヒト患者においてIBDの寛解を維持するのに有効な量の抗体又はその製剤を提供する。したがって、治療の維持期中、治療有効量の抗IL-23又は抗IL-23R抗体は、維持期中、抗IL-23又は抗IL-23R抗体の約1μg/ml~約25μg/mlの平均定常状態トラフ血清濃度、例えば、誘導期の終わりに、抗IL-23又は抗IL-23R抗体の約1μg/ml~約25μg/ml、約1μg/ml~約20μg/ml、約1μg/ml~約15μg/ml、約1μg/ml~約10μg/ml、約1μg/ml~約5μg/ml、約5μg/ml~約25μg/ml、約5μg/ml~約20μg/ml、約5μg/ml~約15μg/ml、約5μg/ml~約10μg/ml、約15μg/ml~約25μg/ml、約15μg/ml~約20μg/ml、約10μg/ml~約25μg/ml、約10μg/ml~約20μg/ml、約10μg/ml~約15μg/ml、又は約20μg/ml~約25μg/mlの平均定常状態トラフ血清濃度を達成するのに十分である。
【0169】
維持用量は、1週間に1回、隔週に1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、7週間ごとに1回、8週間ごとに1回、9週間ごとに1回、又は10週間ごとに1回投与され得る。維持期中のいくつかの実施形態において、同じ投薬量が投与される。維持期中の他の実施形態において、1つ以上の異なる投薬量が、維持期にわたって投与される。加えて、疾患の経過に応じて、投薬頻度を増やすことができる。
【0170】
抗IL-23若しくは抗IL-23R抗体又はその製剤は、注射、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、動脈内注射、腹腔内注射、硝子体内注射などによって投与することができる。製剤が固体又は凍結乾燥形態である場合、抗体を投与するプロセスは、乾燥製剤を液体製剤に再構成することを含み得る。いくつかの実施形態において、抗体又はその製剤は、例えば、パッチ、クリーム、エアロゾル、又は坐剤で、局所的に投与され得る。他の実施形態において、局所投与経路には、経鼻投与、吸入投与又は経皮投与が含まれる。
【0171】
しかしながら、任意の特定の患者に対する特定の用量レベル及び投薬頻度が変更されてもよく、用いられる特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、遺伝的特徴、全体的な健康、性別、食事、投与方法及び時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、特定の状態の重症度、並びに療法を受けている宿主を含む様々な要因に依存することが理解されるであろう。
【0172】
本明細書に記載のCCR9阻害剤対本開示の抗IL-23又は抗IL-23R抗体の重量比は変動し得、各成分の有効用量に依存するであろう。一般に、各々の有効用量が使用される。したがって、例えば、CCR9阻害剤が抗IL-23抗体と組み合わされる場合、CCR9阻害剤対抗IL-23抗体の重量比は、一般に、約1000:1~約1:1000、好ましくは約200:1~約1:200の範囲であろう。
【0173】
併用療法には、CCR9阻害剤及び抗IL-23抗体の同時投与、CCR9阻害剤及び抗IL-23抗体の順次投与、CCR9阻害剤及び抗IL-23抗体を含む組成物の投与、又はある組成物がCCR9阻害剤を含み、別の組成物が抗IL-23抗体を含むような、別個の組成物の同時投与が含まれる。
【0174】
同時投与には、本発明の抗IL-23抗体の0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20、又は24時間以内に本発明のCCR9阻害剤を投与することが含まれる。同時投与にはまた、同時に、およそ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20、又は30分以内に)、又は任意の順序で順次投与することも含まれる。更に、CCR9阻害剤及び抗IL-23抗体は、各々、1日1回、又は1日当たり2回、3回、若しくはそれ以上の回数投与して、1日当たりの好ましい投与量レベルを提供することができる。
【0175】
併用療法は、治療レジメンの誘導期又は維持期に投与することができる。誘導期において、併用療法は、療法の抗体に対する免疫寛容を誘導し、臨床反応を誘導し、かつ/又はIBDの1つ以上の症状を改善するのに有効な量で投与することができる。また、維持期中に、IBDの1つ以上の症状が再発(return)した場合、又は疾患の寛解から再発(relapse)した場合、患者は、誘導期の治療に対応する量を投与され得る。維持期中、併用療法は、導入療法中に達成された反応を継続するのに、かつ/又はIBDの症状の再発(return)若しくは再発(relapse)を予防するのに有効な量で投与することができる。
【0176】
いくつかの実施形態において、抗炎症性化合物、例えば、スルファサラジン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、抗炎症剤を含有する5-アミノサリチル酸、非ステロイド性抗炎症性化合物、及びステロイド性抗炎症性化合物などの1つ以上の追加の活性成分;IBDの制御のために一般的に投与される抗生物質、例えば、シプロフロキサシン及びメトロニダゾール;又は別の生物学的薬剤、例えば、TNFαアンタゴニストは、本明細書に開示される併用療法と併せて投与することができる。
D.キット
【0177】
いくつかの態様において、CD、UC、及び分類不能型大腸炎を含むIBDなどの胃腸管の炎症を特徴とする疾患又は障害を治療するのに有用である、本明細書に開示されるCCR9阻害剤及び抗IL-23又は抗IL-23R抗体を含むキットが、本明細書に提供される。キットは、CCR9阻害剤化合物、例えば、CCR9の小分子阻害剤を含む医薬組成物、及び抗IL-23又は抗IL-23R抗体を含む医薬組成物を含み得る。いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤化合物は、式(I)、(II)、(III)、(IIIa)、又は(IIIb)の化合物である。いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤化合物は、化合物1である。いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤化合物は、化合物2である。いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤化合物は、化合物3である。いくつかの実施形態において、CCR9阻害剤化合物は、化合物4である。場合によっては、キットは、書面による資料、例えば、化合物、抗体、又はそれらの医薬組成物の使用説明書を含む。限定されないが、キットは、緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器、及び本明細書に開示される任意の方法を実施するための説明書を含む添付文書を含み得る。
【0178】
IV.実施例
以下の実施例は、特許請求される本発明を説明するために提供されるものであり、これを限定するものではない。
実施例1:大腸炎のピロキシカム加速MDR1a-/-モデル
【0179】
機能的なMDR1遺伝子(ABCB1、P-gp又はCD243としても知られている)を欠くFVB系統のマウスは、自然発生的な炎症性腸疾患を発症する。この疾患は、それらの食餌にピロキシカムという薬物を添加することによって加速させることができる。機能的なMDR1遺伝子を持つFVBマウスは、この疾患に耐性がある。
【0180】
ピロキシカムは、マウスの食餌に10日間含まれ、ピロキシカムの給餌中及び給餌後の両方で合計21日間マウスの健康状態が監視される。この間に監視される症状には、下痢の重症度及び体重の変化が含まれる。
【0181】
結腸の炎症は、結腸壁の肥厚及び結腸自体の短縮として現れる。したがって、疾患の重症度は、結腸の重量対その長さの比によって評価することができる。
【0182】
使用したマウスは、雌の6週齢のFVBMDR1a(+/+)及びFVBMDR1a(-/-)であった。マウスは、7週齢に達した時点で体重(body weight、BW)に対して正規化し、その時点で、マウスの飼料を合計10日間、ピロキシカムを含む粉末飼料に切り替えた。BW及び下痢のスコアを、21日間(ピロキシカムを給餌した10日間を含む)モニタリングした。3日目及びテイクダウン時に、トラフ化合物レベルについて血液を採取した。ラットIgGレベル(抗IL23又はアイソタイプが一致した対照)を、最終採血時にELISAによって定量化した。テイクダウン時に、結腸の写真を撮り、重量/長さの比を計算した。将来の病理評価及び疾患スコアリングのために、各群からの2つの結腸をホルムアルデヒドで固定した。浸潤免疫細胞のフローサイトメトリー分析のために、各群からの残りの結腸を解離した。
【表1】
【0183】
化合物1を、10% Cremophor-EL中90mg/kgで、1日2回、皮下投与し、化合物2を、1% HPMC中30mg/kgで、1日1回、皮下投与した。ビヒクル1は10% Cremophor-ELであり、1日2回、皮下投与した。ビヒクル2は1% HPMCであり、1日1回、皮下投与した。抗マウスIL-23クローンG23-8(ラットIgG1)を、300μg/マウスで、1日1回/1日おきに投与し、アイソタイプが一致した対照クローンHRPN(ラットIgG1)を、300μg/マウスで、1日1回/1日おきに投与した。
【0184】
化合物1及び化合物2を投与した全てのマウスからトラフで血液を採取し、液体クロマトグラフィー質量分析によって血漿を分析して、濃度を決定した。投薬から3日目に、トラフ血液を採取した(図1)。群は、表Iに示される名称を参照する。トラフ化合物1(左パネル)及び化合物2(右パネル)レベルは、98%の受容体カバレッジを確立した最小濃度(点線)を満たしたか、又は超えた。
【0185】
ピロキシカム応答における結腸のW:L比(すなわち、慢性炎症の程度)の差異は、野生型FVBマウス(図2、白い丸)とMDR1a遺伝子を欠くFVBマウス(図2、四角)との間で明らかに観察することができる。
【0186】
図3は、化合物1及び抗IL-23の併用療法で処置されたマウスのW:L比が、対照で処置されたマウスから有意に改善された(p=0.0260、逆三角形)が、抗IL-23のみを受けたマウスは、有意に改善されなかったことを示す(p=0.0931、三角形)。
【0187】
図4は、化合物2及び抗IL-23の併用療法で処置されたマウスのW:L比が、対照で処置されたマウスから有意に改善された(p=0.0190、白い逆三角形)が、抗IL-23のみを受けたマウスは、有意に改善されなかったことを示す(p=0.2571、白い三角形)。
【0188】
併用療法のみがW:L比を有意に改善したことから、化合物1及び2は、抗IL-23と相乗作用して結腸炎症を改善した。
【0189】
上記の発明は、理解を明確にする目的で実例及び例としてある程度詳細に説明されてきたが、当業者は、ある特定の変更及び修正が添付の特許請求の範囲内で実施され得ることを理解するであろう。加えて、本明細書に提供される各参照は、あたかも各参照が参照により個々に組み込まれるのと同じ程度に、参照によりその全体が組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】